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ロシアに対する新しい代理組織を打ち立てようと米国はジョージアでの騒乱に火付け

<記事原文 寺島先生推薦>

US Sparks Turmoil in Georgia to Open New Front Against Russia

筆者:ブライアン・バーレティック(Brian Berletic)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日




 これはただの偶然ではない。ワシントン当局がウクライナで対ロシア代理戦争を仕掛けているときに、ロシア周辺部に位置する問題が多く発生するいつものところで事件が起こっていることについてだ。コーカサス地方に位置するジョージア(グルジア)で、抗議運動が始まったのだ。その抗議の標的は現ジョージア政権であり、抗議の目的は透明性を維持しようとする法案の成立を阻止するためだった。その法案は、米国と欧州諸国からの干渉を明らかにし、そのような干渉に対応するためのものだったのだが、まさに今回の抗議活動はその干渉を表す一例となるものだった。

 BBCが出した記事「ジョージアの抗議運動:抗議者たちが議会に突入するのを警察が阻止」にはこうある:警察は放水砲と催涙ガスを使って、抗議活動の2日目にトビリシにあるジョージア国会議事堂前に集まっていた抗議者たちに攻撃を加えた。群衆たちは、問題の多いロシア型の法律の成立に怒っていた。この法律が通れば、活動資金のうち外国からの支援を2割以上受けている非政府組織や報道機関は、「外国の工作組織」と見なされることになるからだ。

 さらに記事は続く:ロシアにある同様の法律は、報道の自由を厳しく制限し、市民社会を抑圧するために使われてきた。「我が国の政府はロシアの影響下にあると考えています。それは我が国の将来にとってよくないことです」とこの抗議活動に参加している多くの学生の中の一人であるリジーさんは語っている。

 しかし、ひとつ明らかな事実がある。それは、BBCが西側支援によるジョージアでの反政府組織活動を指して「市民社会」という言葉を使ってきたのはソ連崩壊以後だという事実だ。西側の支援する反政府組織が「ロシアの影響」を非難しているのは、皮肉だ。というのも、そのような反政府組織自体、米国や欧州の影響を受けて生まれた組織なのだから。そしてこの抗議活動者たちが特に妨害しようとしているのは、米国や英国やEU当局からの不当な影響から自国を守ろうというジョージア政府の取り組みにあるというのも、皮肉な話だ。

 BBCはジョージア政府がこの法律を成立させようとしていることに対して疑問の声を発そうとしている。しかしこの法律の目的は、ジョージア国内の報道機関や政界における外国資本の流れを明らかにすることにある。

 BBCの記事にはこうある:ジョージアの政党与党「ジョージアの夢」のイラクリ・コバヒデ幹事長は、この法律の草案がロシアの抑圧的な法律と類似しているという批評に対して、それは誤解であるとした。「この法律の最終目的は、扇動を排除し、国民に対してNGOからの資金提供に透明性を持たせることにあります」と同氏は述べている。

 しかし、「透明性を求める国際協会(Transparency International)」のジョージアの事務局長をつとめるエカ・ギガウリ氏が我がBBCに語ったところによると、すでにジョージアにおいては、NGOは10の法律に縛られており、既に財務省はNGOの会計や資金などの情報を完全に掌握できているとのことだった。

 まず「透明性を求める国際協会」という名前がついているこの組織が、外国からの資金という、表に出すことが少し憚れるような事柄に対してさらなる透明性を要求するというこの法律に反対していることの奇妙さが議論されるべきことである。そこでこの「透明性を求める国際協会」自体にどんな資金が流れ込んでいるのかを見てみると、この協会には米国国務省、欧州委員会、英国外務省から資金が流れていることがわかる。この事実から明らかになるのは、この組織が西側の外交政策の目的を前進させるためのものであることだ。実際の透明性などはそれよりも後回しにされるのだ。

 BBCが自身の主張を強化するために、抗議活動者たちが戦っているのはEUに加盟するという彼らの「未来」のためであるという主張を引用しているが、BBCが描いているのは、米国が支援したウクライナを標的にした2014年の政権転覆工作の第2弾にすぎない。この2014年の政権転覆工作が、ロシアが介入した現在進行中の紛争の引き金となったのだ。しかしそれだけではなく、BBCの報道は米国が以前行ったジョージアに対する介入の第2弾につながるものだ。


歴史は繰り返す

 2003年に遡るのだが、米国はすでにジョージアでの政権転覆工作に資金を出していた。

 ロンドンのガーディアン紙は、2004年に以下のような記事を出している。「キエフでの紛争の裏に米国の影」。ガーディアン紙がこの記事で取り上げていたのは、米国がいわゆるオレンジ革命時にウクライナに介入していたことだけではなく、セルビア・ジョージア両国に干渉していたという事実だった。

 記事にはこうある:この作戦は、米国が用意したものだ。西側の色がつけられて、大量生産の考えのもと、よく考え抜かれた作戦だった。具体的には、4カ国を対象に4年間かけて行われたもので、不正選挙を工作し、気に入らない政権を転覆させようとする作戦だった。

 米国政府から資金を得て組織され、米国の助言家、世論調査員、外交官、米国2大政党、米国の非政府組織を利用したこの計画が始めに実行されたのは、2000年の欧州ベルグラードであり、スロボダン・ミロシェヴィッチを選挙で敗北させた。
 
 その際、ユーゴスラビアの米国大使だったリチャード・マイルズが大きな役目を果たした。そして昨年までジョージアの米国大使を務めていたマイルズが、ジョージアでも同じ手を使ったのだ。つまり、ミヘイル・サアカシュヴィリ(2003年のバラ革命後に大統領に就任)に、エドゥアルド・シェワルナゼ(2003年までの大統領*)を失脚させる手口を教えたのだ。
*1985年から1990年までソビエト連邦の外務大臣を務め、1995年から2003年までグルジア大統領を務めた。(ウィキペディア)

 2003年以降、米国はジョージアに武器を投入し、ジョージア軍に訓練を施してきた。2008年には、ジョージアはロシアを攻撃したが、この代理戦争は短期間で失敗に終わった。この攻撃のため、多くの点において、ロシア当局が2014年以降ウクライナに対して国家安全上の懸念を感じることに正当性をあたえることになった。

 西側各国政府や報道機関の多くが、2008年の紛争を「ロシアによる侵略行為」であると描こうとしているが、2009年、ロイター通信は、「ジョージアがロシアとの戦争を開始。その裏でEUが支援しているとの報道」という記事を出している:「調査団の見解では、この戦争の引き金を引いたのはジョージア側だとしている。ジョージアが、2008年8月7日から8日にかけての夜に、重砲で(南オセチアの)ツヒンヴァリ市を砲撃したのだ」とこの件の調査団長であるスイスの外交官ハイジ・タリアヴィーニ氏は述べている。

 さらに記事にはこうある:…わかったことは、ミヘイル・サアカシュヴィリ大統領政権下にある米国の同盟国ジョージアの関与が決定的であるという点だ。同大統領の政治的立場にさらなる悪影響をもたらすと思われる。

 このミヘイル・サアカシュヴィリこそが、ガーディアン紙が2004年に出した記事の中で、「米国政府により組織された」政治的な介入を受けたのちに権力の座についたと報じた人物なのだ。


再びジョージアでの代理戦争:米国はロシアに対抗するための新たな代理組織を求めている

 トビリシで抗議活動に参加している多くの人々の考えとはちがうだろうが、これらの抗議活動の目的は、実は米国当局が求めているロシアに対抗できる二つ目の代理組織をうちたてることにある。それにより、敗色の色が濃くなっているウクライナでの代理戦争の状況を改善しようというのだ。

 これはただの空想ではない。ジョージアを利用して、まさにこの目的を達成しようという計画が、2019年のランド研究所の論文にはっきりと書かれているのだ。その論文の題名は「ロシアを疲弊させる」だ。

 ロシアを疲労困憊させるための手段の例として、「ウクライナに殺人兵器を供給し」、「南コーカサス地方の緊張を利用する」ことが挙げられていた。

 この論文はこう詳述している:米国がジョージアやアゼルバイジャンにNATOとの関係を強めるよう進めれば、おそらくロシアは南オセチアやアルメニア、アブハジア、ロシア南部の軍の強化に力をいれるだろう。

 南オセチアやアルメニア、アブハジア、ロシア南部の戦力を強化すれば、ロシアがウクライナへの兵力を減らすことになる状況を米国当局は望んでいたのだ。

 さらにこの論文にはこうある:ジョージアは長らくNATO加盟を求めてきた。同国は北大西洋協力会議(NACC)に1992年に加盟したが、これは独立直後のことであり、さらに1994年にはNACCの平和のためのパートナーシップ組織にも加盟した。理論上は、NATOはジョージアの加盟に向けて動いていたのだが、2008年のロシア・ジョージア間の戦争により、加盟に向けた努力は永久に保留されることになった。しかしジョージアは、NATOに加盟するという野望を捨てておらず、地中海やコソボ、アフガニスタンなどでのNATOの軍事行動に参加してきた。欧州諸国が反対することで、ジョージアのNATO加盟が承認されないのであれば、米国がジョージアとの間の二国間協定をうちたてることも可能だ。

 もちろん、そうなるかどうかは、ジョージアが米国の従属政権により統治されていることが条件となる。さらに今回の抗議活動自体が、ロシアの国境付近を不安定化させ、結局はロシアに圧力をかける(ウクライナへの兵力を減らす)、という同じ目的を果たすことにもなる必要があるのだ。

 BBCが最近出した記事によれば、ジョージアでの抗議活動者たちは自分たちの利益のために戦っているとのことだが、ランド研究所の論文に書かれている内容は、米国がロシア対策としてジョージアを利用してきたやり口がどれだけ酷いかについてだった。

 その論文にはこうある:2008年8月、分離主義者たちとの和平交渉が決裂したのち、ジョージアは南オセチアと飛び地領アブハジアに軽い戦争を仕掛けた。この両地域は、ジョージア国内の親露の半独立地域だった。この戦争の結果は、ジョージアにとってはひどいものだった。すぐにロシアが介入して、結局この両地域を占領し、短期間ではあるがジョージア国内の他地域も占領した。ジョージアは2008年8月14日に停戦に合意したが、それはロシアが介入したわずか8日後のことだった。ただしロシア軍は南オセチアとアブハジアに駐留し続けており、両地域はそれ以後独立を宣言している。

 この論文がさらに警告していたのは、ジョージア当局がNATO加盟に固執すれば、「ロシアは再び介入してくるだろう」という点だった。

 米国の外交政策に国と国民と政府が取り込まれ、完全な自滅への道を歩んでいるウクライナと同様に、米国はロシアの辺境地域にある国々の国土に火を放ち、炎を燃え上がらせようとしている。そしてその目的は、「ロシアを疲弊させる」ことだ。このことは、米国の政策論文の題名にはっきりと書かれている。ジョージアもその中の一国なのだ。

 この点に加えて、米国が支援している抗議活動者たちが「ロシアの影響」について不満を表明しているのに、外国からの資金に透明性を持たせようとする法律に激しく反対しているという事実から再度わかることは、「西側的価値観」とされるものが、ただの煙幕にすぎず、その裏には米国とその同盟諸国が自国の外交政策の目的を前進させようという魂胆が見えるということだ。そのような魂胆は、国際法に反するものであり、国際法に則ったものではない。



– 米国が支援する反対勢力で組織されているジョージアでの抗議活動 (実際米国や英国の旗を振っている)の意図は、外国勢力に対する透明性を広げるという法案を妨害することだ。しかし、この法案の目的は外国からの干渉を減らすことにある。

– 米国は2003年に、ジョージア政府の政権転覆に成功していることを、ロンドンのガーディアン紙が報じている

– ジョージアがロシアを攻撃したのは、米国が2008年までにジョージアに武器をふんだんに供給して軍に訓練を施したのちであったと、EUの調査団は報告している。

–米国がジョージアの抗議活動を扇動している目的は、再度ロシアを「疲弊させる」ため であると、ランド研究所の2019年の論文「ロシアを疲弊させる」に詳述されている.

– 米国は他の国々にも圧力をかけ、外国の干渉から自国を保護しようとする法律の成立を妨害しようとしていることは、先日タイでもあった。


引用文献

BBC – 「ジョージアの抗議活動。警察が議会に入ろうとする抗議活動者を抑えている」 (2023): https://www.bbc.com/news/world-europe…

Transparency International – 「私たちの支援者」 https://www.transparency.org/en/the-o…

CNN – 「ジョージア政府が提案した「外国からの干渉」排除法案が、抗議者の怒りを買う」(2023): https://edition.cnn.com/2023/03/09/eu…

Guardian – 「キエフでの騒動に米国の影」(2004): https://www.theguardian.com/world/200…

Reuters – 「ジョージアがロシアとの戦争を開始。EUが支援しているとの報道」 (2009): https://www.reuters.com/article/us-ge…

RAND Corporation –「ロシアを疲弊させる」 (2019): https://www.rand.org/pubs/research_re…


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