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民間の戦争請負業者の競合:米国がロシアのワグネル社を気にする理由

<記事原文 寺島先生推薦>

Private military competition: Why the US is so worried about Russia’s Wagner
Having used private contractors like Blackwater for decades, Washington is now 'concerned' about the new household-name PMC

ワシントンは数十年にわたりブラックウォーター社のような民間の戦争請負業者を利用してきたが、今や、よく知られるようになった新しい名前の業者を「懸念」している。

筆者:レイチェル・マースデン(Rachel Marsden)
     コラムニスト、政治戦略家。フランス語と英語で独自に制作したトークショーの司会者でもある。

2023年1月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月20日

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ルガンスク人民共和国にて、ロシアの民間軍事会社ワグネル集団の軍人が撮影。© Viktor Antonyuk / Sputnik


 民間企業を通じて他国の問題に干渉することは、長い間、米国の影響力行使の定番となっている。今、ワシントンはロシアが同じことをしていると非難しようとしているが、それは突然に悪いことになったようだ。

 最初にスタートを切れば必ず勝てるというわけではない。例えば、BlackBerry の携帯端末がどこにでもあって、iPhoneなんてほとんど聞いたことがなかった頃を覚えている人はいるだろうか。アメリカは何十年にもわたり、さまざまな偽装企業を通じて軍事・諜報活動を外部委託してきた結果、民間軍事・警備請負業者の BlackBerry、つまり Blackwater を作り上げた。そして今や、彼らは新しいiPhoneに相当するロシアのワグネル集団に夢中で、POLITICOが入手した外電によれば、ワシントンはウクライナ、シリア、アフリカ全域、セルビアでの彼らの活動(未確認の作戦を含む)を追跡している。

 報告書に引用されている「政権高官」によると、「アメリカ政府は、ワグネルが主権国家の内政にどの程度まで干渉し、人権を侵害し、鉱物資源を奪っているのかを懸念している」のだという。ワシントンが鉱物資源(これは開発途上国がいくらかの自由と民主主義のために米国の標的にされる主な根本的理由であることが多いのだが)をめぐって開発途上国の主権に新たな懸念を抱いているということはさておくとしても、ワグネル集団の存在が米国と同盟国の秘密活動の標的として既に知られている場所に集中しているように見えることを、彼らは無視できないのだろう。

 例えば、昨年、マリは、ワグネル集団を新たな相棒として選んでいるが、それはフランス軍を追い出した後だった。フランス軍はその国の治安を確保するのに苦労し、数年のうちに2度の政権転覆工作が起こるほどだった。また、ワグネル集団がセルビアに進出する可能性は、現在広く議論されている。この民間軍事会社はベオグラードの「文化センター」に拠点を置いているとされているが、当初テレグラムの投稿を情報源としたこの主張は、ワグネルの代表エフゲニー・プリゴジンとセルビア大統領アレクサンダル・ヴチッチの両方によって否定されている。また、ヴチッチ大統領は、最近ソーシャルメディアに現れたセルビア語のワグネル募集広告を批判していた。


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関連記事:米国のブラックウォーター傭兵がバグダッドで民間人を大量殺戮してから15年、民間軍事請負業者にとって何か変化があったのだろうか?


 もしこれらの主張が将来的に真実であると判明したならば、セルビアは、モスクワとその第一の同盟国であるベオグラードを標的とした西側支援の政権交代の温床になるのを防ぐのを助けるために誰かを雇うことを考えていたように思える。そして、ウクライナにおける西側の民間軍事請負業者の存在は確立されており、紛争が始まった当初から仕事の依頼が舞い込んできたと伝えられている。「募集:多言語を操る元兵士で、ウクライナに潜入し、1日最大2,000ドルとボーナスという高額な報酬で、深刻化する紛争から家族を救う手助けをしてくれる人」と書かれている。このように秘密裏に安全保障の役割を果たすだけでなく、戦争の霧に覆われた中で、戦闘的作戦に向けたちょっとした「先の見えない使命」*が魅力的でないと考えるためには、人はかなり世間知らずでなくてはならないだろう。
* mission creep本来は米軍事用語で任務を遂行する上で目標設定が明確でなく当初対象としていた範囲を拡大したり、いつ終わるか見通しが立たないまま人や物の投入を続けていかなくてはならなくなった政策を意味し批判的に使われる言葉(英辞郎 on the web)


 現代の防衛請負の青写真を作ったのは米国政府である。自動車用ミラー発明者エドガー・プリンスの息子、エリック・プリンスがブラックウォーター社を設立した。彼の父は、当時、共和党の最高献金者の一人であり、元国防長官(後に副大統領)ディック・チェイニーの友人でもあった。この会社は後に米国政府の対テロ世界戦争中にイラクとアフガニスタンのために有利な無入札警備契約を獲得することになった。同社は、CIAや国防総省の高官や幹部のための老人ホームのような存在になり、彼らは同社に転職して、高額の報酬を手にするようになった。2007年にイラクのニスール広場でブラックウォーター社の社員が発砲して14人の市民を殺害する事件を起こしたりして、同社はカウボーイ的な評判を得ることとなったが、その後の米政権下では米国の民間警備モデルとして繁栄してきた。

 ブラックウォーター社は、米国政府がもっともらしい否認の理由をつけて長い間委託していた秘密工作を明るみに出した。ニューヨーク・タイムズ紙に訓練し、カナダの特殊部隊を2年間訓練し、ニューヨーク・タイムズ紙が「アルカイダ幹部の追跡と暗殺の秘密計画」と表現したように、CIAと直接に関わって仕事をしていた。紛争地域でアメリカ人を保護するための、どちらかといえば善良に見えるアメリカ政府の公式契約にもかかわらず、CIAによって援助プログラムを通して資金提供されている他の組織と同じように、ワシントンの防衛、情報、外交政策の利益の直接的延長として機能していたのである。

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関連記事:ロシア国防省、「無私の」ワグネル戦士を賞賛


 2010年に遡るこのようなプログラムでは、USAID(米国国際開発庁)の資金で民間請負業者が雇われ、スンスネオ(ZunZuneo)というTwitterのようなソーシャルメディアネットワークの構築を通じてキューバで影響力作戦を実行した。この計画は、「議論の余地のない内容」を通じて無防備なキューバ人を引き込み、最終的に暴徒を内乱に導くというものだった。

 冷戦の最中、CIAは報道家でフェミニスト活動家のグロリア・スタイネムの活動に資金を提供した。彼女が仕事をした「独立調査局」は、国際青年フェスティバルを組織する偽装団体で、その目的は、ソ連の革命主義に代わる魅力的な選択肢を提示し、世界中の若者に影響を与えることであった。

 航空会社のエア・アメリカは、世界各地でアメリカの軍事・情報活動に重要な支援を提供したことで悪名高い存在である。1974年に解散するまで、CIAと国防総省の秘密の隠れ蓑として、ベトナム戦争から失敗したピッグス湾のキューバ侵攻まで活動した。

 このように、世に出た例は氷山の一角に過ぎない。

 米国とその同盟国にとってワグネル集団の本当の問題は、欧米の同業者と競合し、欧米の行動計画から逸脱した顧客の利益を保護する役割を果たしかねないことである。もしアメリカ政府が今そのことを問題にしているなら、そもそもそのような事態を引き起こしたのは自分たちであることを思い出すとよいだろう。
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