ウクライナ側の防衛線:これらの防衛線が破られればどうなるだろうか?
<記事原文 寺島先生推薦>
Ukranian Defense Lines: What Happens When They Are Breached
筆者:アラバマの月(Moon of Albama)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2023年1月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年1月28日

ソレダルはロシア軍の手に落ちた。バフムト (アルチョモフスク) もすぐにそうなるだろう。
本記事は、ドネツク州とリシチャンシク州という2州の中に引かれているウクライナ側の2つめの防衛線が破られたことを伝える記事だ。以下の地図を使って説明しよう。
一つ目の地図が示しているのは、2022年4月1日までにロシア軍が占領した地域だ。(キエフ地方のものは入っていない)。
ロシアは、ドネツク・ルガンスク両人民共和国からの5万人の兵の支援を受け、10万人程度という小規模の軍により侵攻した。対するウクライナ側の正規軍は25万規模であり、その数はすぐに45万人に達し、さらには65万人となった。これらの兵は、予備軍とウクライナ領土防衛隊から動員された。最初の数週間、ロシア軍は巨大な土地を占領したが、そこを維持するための兵士の数は十分とは言えなかった。
その時点で、ロシアはまだトルコで開かれたウクライナとの交渉が、いい方向に向かうことに希望を託していた。その希望がかなうことを確信していたロシア軍は、すでにキエフ周辺から兵を引き始めていた。しかし、英国のボリス・ジョンソン首相から電話が入り、その後訪問を受けたウクライナ政府は、交渉を中止し、ロシアが決して同意しないような要求を突然突きつけてきた。キエフから撤退したロシア軍はそのまま撤退し、ウクライナ東部に移動。そこでウクライナ軍側の最初の防衛線(黄色)への攻撃を開始した。
2022年4月1日

この最初の防衛線は、のちに作られた防衛線と同様に、主要都市を結ぶ鉄路や通信経路に沿って伸びていた。上の地図で、最初の防衛線を形成している諸都市は北から南に、セヴェロドネツィク市、リシチャンシク市、ポパスナ市、スビトロダルスク市だ。2022年7月1日、最初のウクライナ側の防衛線がロシア軍により破られ、ウクライナ軍は2番目の防衛線まで敗走した。ただ、最初の防衛線では、ロシアの特別軍事作戦は小規模な軍によって行われていたため、ロシア側にも犠牲者が出ていた。
2022年7月1日

ウクライナ側の2番目の防衛線は、北から南に、シヴェルシク市、ソレダル市、バフムト市、ニューヨーク地区を通り、ドネツク人民共和国内のかつての休戦ラインに至る。
このウクライナ側の2番目の防衛線においては、ロシア軍は損害を避けるため直接的な攻撃は行わないようにしていた。ロシア側は、北(地図で言うと灰色の部分)からウクライナ側の2番目の防衛線の後ろにあるドネツク地方を攻撃する作戦に出た。イジューム市とリマン市で行われた戦闘の理由は、そこだった。しかし、東西の向きに流れているシベルスキー・ドネツ川と同じ方向に広がっている北側の森林地帯や川そのものを超えるのは困難であることが判明した。重要な部隊にそこを越えさせようとする挑戦は何度か行われたが、失敗に終わっている。
2022年8月の終わりに、疲れ果てたロシア軍は、防衛に重きを置いた体制を取り、「経済的な軍の使用」作戦に転じた。ドネツク州の北にあるハルキウ地方を抑えていた部隊の数は減らされた。残りの軍は、東の前線に移動され、その前線でのロシア側の防衛線の強化に充てられた。
当時ウクライナ側は、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方への攻撃を公表し、準備も行っていた。そしてその最終目標は、ドニエプル川を渡ってクリミアまで進軍することだった。これに対するロシア側の対応は、ハルキウ地方の北部にいた部隊の数を数千人規模にまで激減させ、残りの部隊を使ってヘルソン地方周辺の南部の陣を強化することだった。
秋には、ヘルソン地方におけるウクライナ側の攻撃はすべて失敗し、多くの犠牲を払うことになった。しかし、米国の諜報機関は、ウクライナの司令官に、ロシア軍が抑えていたハルキウ地方を守るロシア軍が手薄であると助言したのだ。そのためウクライナの司令官は攻撃方向を北に変え、ハルキウ地方に進軍することに成功した。いっぽうそこに駐在していたロシア軍は、ずっと東に後退することになった。
ウクライナ側のこの作戦は首尾良く進み、成功したように見えた。しかしこれほど早く進軍できたということは、ウクライナ側の砲兵隊の援護が、ほとんど存在しないほど薄くなってしまったということにもなる。この機会を利用して、退却しつつあったロシア軍は、あらかじめ計画されていた攻撃作戦に則って、自軍の砲兵隊を使って、ウクライナ側の前線部隊を攻撃した。ウクライナ側の攻撃部隊は、西から東に70キロメートルほど素早く進軍した後、多くの損害を出し、戦意を喪失した。ウクライナ側の攻撃部隊はロシア側の新しい防衛線(以下の地図上で、赤で示している)まで到達した。この防衛線には、2本の川が含まれており、突破するのは困難だ。いっぽう、ハルキウ地方の前線では、膠着状態が続いている。
2023年1月1日

ハルキウ地方におけるウクライナ側の「勝利」により、ロシア政府は追加兵の動員に対して必要だった国民の支持を得ることができた。30万人程度の予備兵が招集された。7万人程度の人が志願兵として軍に参加した。軍事民間会社であるワグナー社は、5万人程度まで規模を増やした。2022年の最後の3ヶ月で、これらの新しく参加したすべての兵たちには、必要な武器や防具が供給され、戦争に向けた短期研修を受講した。
この間、セルゲイ・スロヴィキン将軍が、ロシアの新しい司令官の座に着いた。同将軍は即座に、自身がいくつかの難しい決断をしなければならなくなることを警告していた。同将軍が言及していたのは、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方の状況についてのことだった。川を渡ろうとするときに、米国が供給したミサイルの攻撃を常時受けていたことで、物資の輸送が非常に困難になっていた。同司令官は川の後ろまでの退却を決した。この作戦は非常にうまくいった。1万人を超える一般市民と、2万5千人程度の武装兵が、その地点から移動したが、損失はほとんどなかった。

昨年の終わりに、前線が短くなったことと、新しい兵力が導入されたことで、ロシア軍は主導権を取り返した。ロシア軍は、ウクライナ側の2番目の防衛線に対して激しい攻撃を加え始めた。
ソレダル市を占領することに成功したことで、この防衛戦は破られた。そのため、シヴェルシク市、ソレダル市、バフムト市、それとソレダル市の南部の状況は非常に厳しいものになった。現在、ウクライナ部隊も、物資も、この防衛線上にあった道路や鉄路を通れなくなっている。この防衛戦が破られたことで、ロシア軍はこの防衛線の西側に進軍できるようになり、北や南に進軍し、その防衛線の内部に、別の地域を抑えるための釜状の陣が取れるようになる。「防衛線を包み込む」という表現が、この過程を表すいい表現だろう。
ウクライナ側の兵の数が大幅に少なくなる中、ウクライナは二番目の防衛線を放棄し、その西に3番目の防衛線を作らなければならなくなるだろう。

ウクライナ側の3番目の防衛線は、北のスラビャンスクからクラマトルスク、ドルジュキウカ 、コンスタンチニフカを通り、ニューヨーク地区に至る線になるだろう。私の予想では、ウクライナ側の2番目の防衛線の敗北と消滅は3月の終わりになるだろう。
ウクライナ側の3番目の防衛線が陥落するのは、おそらく今年の中旬になるだろう。その時点で残されたウクライナ軍はその後、3番目の西側にある小さな町々を繋いだ線に沿った4番目の防衛線を保持しようとするだろう。

この4番目の防衛線が、ドネツク州におけるウクライナ側の最後の防衛線となるだろう。その防衛線は、9月の終わりには落ちているだろう。
3番目と4番目の防衛線に対するロシア側の動きは、南からの援軍に支援されるだろう。南では、ザポリージャ地方やドネツク地方の未解放の地域がいずれ解放されるだろうからだ。
これらの作戦とは別に、ロシアの司令官の手元には十分な数の部隊が存在しており、別の大きな攻撃を仕掛けることが可能だ。例えば、北からハルキウ地方に入り、現在は遙か東にあるロシア側の防衛線を攻撃している、ウクライナ軍を背後から襲うことも可能だ。
ウクライナ駐留中のロシア軍の使命は、ロシアが独立国家であると承認している国々(ドネツク・ルガンスク両人民共和国)を解放することだった。さらに自分たちの居住地がロシア領であることに賛成票を投じた地域(ザポリージャ地方とヘルソン地方)の解放も含まれていた。
ドネツク地方におけるウクライナ側の4つの防衛線がすべて破られれば、その使命は果たされたことになる。ただし、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方の一部については別だ。この地域については、この地域だけに通用する別の作戦が必要となる。ロシアの司令官は、ウクライナ側の防衛線を保持しようとしてさらに多くのウクライナ側の部隊が破壊されるまで、この作戦の遂行を待つ気のようだ。
今回の特別軍事作戦のもう一つの使命は、ウクライナを「非武装化」し、「非ナチ化」することだった。主要な諸都市を結んで引かれた防衛線をなんとしてでも保持しようとするウクライナ側の作戦は、大きな犠牲を生むことになった。ロシア側の砲撃力がウクライナ側よりも優れている理由は、枚挙にいとまがない。ロシア軍はその砲撃力を駆使して、防衛線を保持しようとするウクライナ軍を破壊しようとするだろうが、自軍側の損失はほとんど出ないだろう。
今日(2023年1月11日)のウォール・ストリート・ジャーナル紙には、ついにこんな記事が出た。「ウクライナの戦い方では勝利はできない」と。
西側(そしてウクライナ側の何名か)の当局者、兵士、専門家たちが、懸念を深めているのは、ウクライナ政府がバフムト戦においてロシア側に有利にことを進められていることだ。戦略的意義の薄い町にウクライナが頑なにしがみついているうちに、春に行う計画にしていた攻撃に必要な兵が奪われることになるかもしれない状況なのだ。バフムトの西の高台に新しい防衛線を引いて、そこまで退却した方がいいのではないかという声もある。その意図は、そのような撤退をしても、統率の取れた形で軍を組織でき、ウクライナ軍の戦闘能力を保持できるからだ。「私が言っているのではないですよ。“自軍にとって都合の良い場所に陣取っている敵と戦うべきだ”と考えたのはレオニダス1世なんです。」とバフムトで参戦中の一人のウクライナ側の司令官が、テルモピュレの闘いでペルシャ軍と闘ったスパルタの王を引き合いに出して述べている。 「今のところ、ロシア側とウクライナ側の損失を見比べれば、ロシア側が勝っています。このような状況が続けば、我が軍の兵は枯渇してしまうでしょう。」
このウクライナ兵が言っていることは正しい。しかし、戦い方を変えることになれば、動員に遅延が生じ、退却の手間もかかることになり、そこから局地的な反撃を開始することになる。そのためには多くの武器、戦車、歩兵戦闘車両が必要となるが、そのようなものはもはやウクライナ側にはない。さらにそのような戦い方の変更をすれば、そのような戦い方の訓練を受けた部隊や編隊が必要となる。ウクライナが実施した9度目の徴兵措置で召集された60歳くらいの年老いた郵便配達員が、たった2週間の訓練期間でそんな戦い方を会得するのは不可能だろう。
もし、この戦争が始まる前に撤退した正規ウクライナ軍が、防衛線上の都市から撤退することを許され、機動的な複合兵器戦術を使って遅延-後退-反撃を行っていたなら、ことはうまく進んでいたことだろう。しかし、今ウクライナ軍はロシアの砲撃に破壊される一方になっている。それはウクライナ当局が何としてでも都市や防衛線を保持する戦術に固執しているからだ。米国は今になってやっと、ウクライナ軍に対して、複合兵器使用法と共同演習の訓練を開始する。ただ、今の状況への対処としては、全く不十分で、かつ遅すぎる措置だ。
現在報じられている記事のことを言えば、今日NBCから以下のような偽ニュースの見出しが出た。
「プーチンはたった3ヶ月で、ロシアによるウクライナで戦争の司令官の首を取り替えた!」
ワレリー・ゲラシモフが、セルゲイ・スロヴィキンの任を引き継いだ。スロヴィキンは今後、ゲラシモフの副官の一人となる、とロシア国防相が1月11日(水)に伝えた。
ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナでの戦争を主導する司令官を、任命後たった3ヶ月で入れ替えた。ワレリー・ゲラシモフ将軍が、セルゲイ・スロヴィキンの後任をつとめることになる、とロシア国防相が、1月11日(水)にテレグラム上で発表した。この動きは、ウクライナ当局が、これまでの戦場での敗北を逆転するような、ロシアに対して新たな大攻撃を計画していると警告したことを受けてのものだった。
上の記事は誤報だ。官位の呼び方が変わっただけだ。
Russians With Attitude @RWApodcast – 16:09 UTC · Jan 11, 2023 私の理解では、1から2に代わっただけだ。

スロヴィキンが更迭や降格されたわけではなく、ゲラシモフが昇進したわけでもない。スロヴィキンはウクライナの戦場での指揮を執り続けることになる。今回の人事異動は、司令官が果たすべき責任を変えたわけではなく、特別軍事作戦全体の重要性を高め、この作戦を軍司令官の最優先課題に据えたということだ。
Ukranian Defense Lines: What Happens When They Are Breached
筆者:アラバマの月(Moon of Albama)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2023年1月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年1月28日

ソレダルはロシア軍の手に落ちた。バフムト (アルチョモフスク) もすぐにそうなるだろう。
本記事は、ドネツク州とリシチャンシク州という2州の中に引かれているウクライナ側の2つめの防衛線が破られたことを伝える記事だ。以下の地図を使って説明しよう。
一つ目の地図が示しているのは、2022年4月1日までにロシア軍が占領した地域だ。(キエフ地方のものは入っていない)。
ロシアは、ドネツク・ルガンスク両人民共和国からの5万人の兵の支援を受け、10万人程度という小規模の軍により侵攻した。対するウクライナ側の正規軍は25万規模であり、その数はすぐに45万人に達し、さらには65万人となった。これらの兵は、予備軍とウクライナ領土防衛隊から動員された。最初の数週間、ロシア軍は巨大な土地を占領したが、そこを維持するための兵士の数は十分とは言えなかった。
その時点で、ロシアはまだトルコで開かれたウクライナとの交渉が、いい方向に向かうことに希望を託していた。その希望がかなうことを確信していたロシア軍は、すでにキエフ周辺から兵を引き始めていた。しかし、英国のボリス・ジョンソン首相から電話が入り、その後訪問を受けたウクライナ政府は、交渉を中止し、ロシアが決して同意しないような要求を突然突きつけてきた。キエフから撤退したロシア軍はそのまま撤退し、ウクライナ東部に移動。そこでウクライナ軍側の最初の防衛線(黄色)への攻撃を開始した。
2022年4月1日

この最初の防衛線は、のちに作られた防衛線と同様に、主要都市を結ぶ鉄路や通信経路に沿って伸びていた。上の地図で、最初の防衛線を形成している諸都市は北から南に、セヴェロドネツィク市、リシチャンシク市、ポパスナ市、スビトロダルスク市だ。2022年7月1日、最初のウクライナ側の防衛線がロシア軍により破られ、ウクライナ軍は2番目の防衛線まで敗走した。ただ、最初の防衛線では、ロシアの特別軍事作戦は小規模な軍によって行われていたため、ロシア側にも犠牲者が出ていた。
2022年7月1日

ウクライナ側の2番目の防衛線は、北から南に、シヴェルシク市、ソレダル市、バフムト市、ニューヨーク地区を通り、ドネツク人民共和国内のかつての休戦ラインに至る。
このウクライナ側の2番目の防衛線においては、ロシア軍は損害を避けるため直接的な攻撃は行わないようにしていた。ロシア側は、北(地図で言うと灰色の部分)からウクライナ側の2番目の防衛線の後ろにあるドネツク地方を攻撃する作戦に出た。イジューム市とリマン市で行われた戦闘の理由は、そこだった。しかし、東西の向きに流れているシベルスキー・ドネツ川と同じ方向に広がっている北側の森林地帯や川そのものを超えるのは困難であることが判明した。重要な部隊にそこを越えさせようとする挑戦は何度か行われたが、失敗に終わっている。
2022年8月の終わりに、疲れ果てたロシア軍は、防衛に重きを置いた体制を取り、「経済的な軍の使用」作戦に転じた。ドネツク州の北にあるハルキウ地方を抑えていた部隊の数は減らされた。残りの軍は、東の前線に移動され、その前線でのロシア側の防衛線の強化に充てられた。
当時ウクライナ側は、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方への攻撃を公表し、準備も行っていた。そしてその最終目標は、ドニエプル川を渡ってクリミアまで進軍することだった。これに対するロシア側の対応は、ハルキウ地方の北部にいた部隊の数を数千人規模にまで激減させ、残りの部隊を使ってヘルソン地方周辺の南部の陣を強化することだった。
秋には、ヘルソン地方におけるウクライナ側の攻撃はすべて失敗し、多くの犠牲を払うことになった。しかし、米国の諜報機関は、ウクライナの司令官に、ロシア軍が抑えていたハルキウ地方を守るロシア軍が手薄であると助言したのだ。そのためウクライナの司令官は攻撃方向を北に変え、ハルキウ地方に進軍することに成功した。いっぽうそこに駐在していたロシア軍は、ずっと東に後退することになった。
ウクライナ側のこの作戦は首尾良く進み、成功したように見えた。しかしこれほど早く進軍できたということは、ウクライナ側の砲兵隊の援護が、ほとんど存在しないほど薄くなってしまったということにもなる。この機会を利用して、退却しつつあったロシア軍は、あらかじめ計画されていた攻撃作戦に則って、自軍の砲兵隊を使って、ウクライナ側の前線部隊を攻撃した。ウクライナ側の攻撃部隊は、西から東に70キロメートルほど素早く進軍した後、多くの損害を出し、戦意を喪失した。ウクライナ側の攻撃部隊はロシア側の新しい防衛線(以下の地図上で、赤で示している)まで到達した。この防衛線には、2本の川が含まれており、突破するのは困難だ。いっぽう、ハルキウ地方の前線では、膠着状態が続いている。
2023年1月1日

ハルキウ地方におけるウクライナ側の「勝利」により、ロシア政府は追加兵の動員に対して必要だった国民の支持を得ることができた。30万人程度の予備兵が招集された。7万人程度の人が志願兵として軍に参加した。軍事民間会社であるワグナー社は、5万人程度まで規模を増やした。2022年の最後の3ヶ月で、これらの新しく参加したすべての兵たちには、必要な武器や防具が供給され、戦争に向けた短期研修を受講した。
この間、セルゲイ・スロヴィキン将軍が、ロシアの新しい司令官の座に着いた。同将軍は即座に、自身がいくつかの難しい決断をしなければならなくなることを警告していた。同将軍が言及していたのは、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方の状況についてのことだった。川を渡ろうとするときに、米国が供給したミサイルの攻撃を常時受けていたことで、物資の輸送が非常に困難になっていた。同司令官は川の後ろまでの退却を決した。この作戦は非常にうまくいった。1万人を超える一般市民と、2万5千人程度の武装兵が、その地点から移動したが、損失はほとんどなかった。

昨年の終わりに、前線が短くなったことと、新しい兵力が導入されたことで、ロシア軍は主導権を取り返した。ロシア軍は、ウクライナ側の2番目の防衛線に対して激しい攻撃を加え始めた。
ソレダル市を占領することに成功したことで、この防衛戦は破られた。そのため、シヴェルシク市、ソレダル市、バフムト市、それとソレダル市の南部の状況は非常に厳しいものになった。現在、ウクライナ部隊も、物資も、この防衛線上にあった道路や鉄路を通れなくなっている。この防衛戦が破られたことで、ロシア軍はこの防衛線の西側に進軍できるようになり、北や南に進軍し、その防衛線の内部に、別の地域を抑えるための釜状の陣が取れるようになる。「防衛線を包み込む」という表現が、この過程を表すいい表現だろう。
ウクライナ側の兵の数が大幅に少なくなる中、ウクライナは二番目の防衛線を放棄し、その西に3番目の防衛線を作らなければならなくなるだろう。

ウクライナ側の3番目の防衛線は、北のスラビャンスクからクラマトルスク、ドルジュキウカ 、コンスタンチニフカを通り、ニューヨーク地区に至る線になるだろう。私の予想では、ウクライナ側の2番目の防衛線の敗北と消滅は3月の終わりになるだろう。
ウクライナ側の3番目の防衛線が陥落するのは、おそらく今年の中旬になるだろう。その時点で残されたウクライナ軍はその後、3番目の西側にある小さな町々を繋いだ線に沿った4番目の防衛線を保持しようとするだろう。

この4番目の防衛線が、ドネツク州におけるウクライナ側の最後の防衛線となるだろう。その防衛線は、9月の終わりには落ちているだろう。
3番目と4番目の防衛線に対するロシア側の動きは、南からの援軍に支援されるだろう。南では、ザポリージャ地方やドネツク地方の未解放の地域がいずれ解放されるだろうからだ。
これらの作戦とは別に、ロシアの司令官の手元には十分な数の部隊が存在しており、別の大きな攻撃を仕掛けることが可能だ。例えば、北からハルキウ地方に入り、現在は遙か東にあるロシア側の防衛線を攻撃している、ウクライナ軍を背後から襲うことも可能だ。
ウクライナ駐留中のロシア軍の使命は、ロシアが独立国家であると承認している国々(ドネツク・ルガンスク両人民共和国)を解放することだった。さらに自分たちの居住地がロシア領であることに賛成票を投じた地域(ザポリージャ地方とヘルソン地方)の解放も含まれていた。
ドネツク地方におけるウクライナ側の4つの防衛線がすべて破られれば、その使命は果たされたことになる。ただし、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方の一部については別だ。この地域については、この地域だけに通用する別の作戦が必要となる。ロシアの司令官は、ウクライナ側の防衛線を保持しようとしてさらに多くのウクライナ側の部隊が破壊されるまで、この作戦の遂行を待つ気のようだ。
今回の特別軍事作戦のもう一つの使命は、ウクライナを「非武装化」し、「非ナチ化」することだった。主要な諸都市を結んで引かれた防衛線をなんとしてでも保持しようとするウクライナ側の作戦は、大きな犠牲を生むことになった。ロシア側の砲撃力がウクライナ側よりも優れている理由は、枚挙にいとまがない。ロシア軍はその砲撃力を駆使して、防衛線を保持しようとするウクライナ軍を破壊しようとするだろうが、自軍側の損失はほとんど出ないだろう。
今日(2023年1月11日)のウォール・ストリート・ジャーナル紙には、ついにこんな記事が出た。「ウクライナの戦い方では勝利はできない」と。
西側(そしてウクライナ側の何名か)の当局者、兵士、専門家たちが、懸念を深めているのは、ウクライナ政府がバフムト戦においてロシア側に有利にことを進められていることだ。戦略的意義の薄い町にウクライナが頑なにしがみついているうちに、春に行う計画にしていた攻撃に必要な兵が奪われることになるかもしれない状況なのだ。バフムトの西の高台に新しい防衛線を引いて、そこまで退却した方がいいのではないかという声もある。その意図は、そのような撤退をしても、統率の取れた形で軍を組織でき、ウクライナ軍の戦闘能力を保持できるからだ。「私が言っているのではないですよ。“自軍にとって都合の良い場所に陣取っている敵と戦うべきだ”と考えたのはレオニダス1世なんです。」とバフムトで参戦中の一人のウクライナ側の司令官が、テルモピュレの闘いでペルシャ軍と闘ったスパルタの王を引き合いに出して述べている。 「今のところ、ロシア側とウクライナ側の損失を見比べれば、ロシア側が勝っています。このような状況が続けば、我が軍の兵は枯渇してしまうでしょう。」
このウクライナ兵が言っていることは正しい。しかし、戦い方を変えることになれば、動員に遅延が生じ、退却の手間もかかることになり、そこから局地的な反撃を開始することになる。そのためには多くの武器、戦車、歩兵戦闘車両が必要となるが、そのようなものはもはやウクライナ側にはない。さらにそのような戦い方の変更をすれば、そのような戦い方の訓練を受けた部隊や編隊が必要となる。ウクライナが実施した9度目の徴兵措置で召集された60歳くらいの年老いた郵便配達員が、たった2週間の訓練期間でそんな戦い方を会得するのは不可能だろう。
もし、この戦争が始まる前に撤退した正規ウクライナ軍が、防衛線上の都市から撤退することを許され、機動的な複合兵器戦術を使って遅延-後退-反撃を行っていたなら、ことはうまく進んでいたことだろう。しかし、今ウクライナ軍はロシアの砲撃に破壊される一方になっている。それはウクライナ当局が何としてでも都市や防衛線を保持する戦術に固執しているからだ。米国は今になってやっと、ウクライナ軍に対して、複合兵器使用法と共同演習の訓練を開始する。ただ、今の状況への対処としては、全く不十分で、かつ遅すぎる措置だ。
現在報じられている記事のことを言えば、今日NBCから以下のような偽ニュースの見出しが出た。
「プーチンはたった3ヶ月で、ロシアによるウクライナで戦争の司令官の首を取り替えた!」
ワレリー・ゲラシモフが、セルゲイ・スロヴィキンの任を引き継いだ。スロヴィキンは今後、ゲラシモフの副官の一人となる、とロシア国防相が1月11日(水)に伝えた。
ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナでの戦争を主導する司令官を、任命後たった3ヶ月で入れ替えた。ワレリー・ゲラシモフ将軍が、セルゲイ・スロヴィキンの後任をつとめることになる、とロシア国防相が、1月11日(水)にテレグラム上で発表した。この動きは、ウクライナ当局が、これまでの戦場での敗北を逆転するような、ロシアに対して新たな大攻撃を計画していると警告したことを受けてのものだった。
上の記事は誤報だ。官位の呼び方が変わっただけだ。
Russians With Attitude @RWApodcast – 16:09 UTC · Jan 11, 2023 私の理解では、1から2に代わっただけだ。

スロヴィキンが更迭や降格されたわけではなく、ゲラシモフが昇進したわけでもない。スロヴィキンはウクライナの戦場での指揮を執り続けることになる。今回の人事異動は、司令官が果たすべき責任を変えたわけではなく、特別軍事作戦全体の重要性を高め、この作戦を軍司令官の最優先課題に据えたということだ。
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