イスラエルによる「リバティ-号攻撃」(1967年)
の真相とそこから学ぶべき教訓
Israel’s Attack on The USS Liberty: An Act of War, A False Flag, A Gross Betrayal
What We Should Have Learned from the Attack on USS Liberty
クレイグ・マッキー
グローバル・リサーチ(2019年6月9日)
(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年7月6日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/what-we-should-have-learned-israels-attack-uss-liberty/5680016

これは大半のアメリカ人が、実際は大半の世界中の人が、一度も耳にしたことがない最大の虚偽のひとつだ。 そしてこの虚偽は、アメリカとアメリカの「一番親密な同盟国」のひとつであるイスラエルとの間のほんとうの関係はどうなのか、について多くのことを暴露している。
これはれっきとした戦争行為だった。 偽旗作戦攻撃あり、大量処刑あり、戦争犯罪あり、おぞましい裏切り行為あり、さらには今日まで続く欺瞞とプロパンダ作戦の始まりでもあった。
50年前に遡る。 イスラエルはアメリカの情報収集艦リバティ-号に驚くべき野蛮な攻撃を仕掛けた。 リバティ-号はシナイ半島とガザ沿岸の公海上を航行していた。 この50年、アメリカとイスラエルの両政府は、主要メディアも同様だが、醜悪で見え見えの隠蔽工作を行い、この出来事はたんに「悲劇的な事故」で、「相手を取り違えた」ケースにあたるという嘘を支持してきた。
しかし、生存者たちはそれが事故なんかではないことを知っている。
1967年6月8日の午後、空には雲ひとつなかった。 ほぼ2時間に亘り、イスラエル軍はあらゆる手立てを講じ、リバティ-号を撃沈させ、294人の乗員(うち3名は民間人)を皆殺しにしようとした。 この作戦は成功しなかった。 しかし攻撃終了時には34名の乗員が死亡し、171名から174名(情報源によって差がある)の負傷者が出た。 イスラエル機は、午前6時にはリバティ-号を、確実にアメリカ船と認識していた。 その8時間後攻撃が始まった。
リバティ-号は大きなアメリカの旗(生存した乗員全員が確認している)と船体には非戦闘艦であることを示すはっきりとした標識があった。 このリバティ-号が攻撃されたのは、イスラエルがエジプト、ヨルダン、そしてシリアへ仕掛けた「六日戦争」の4日目である。 米国防総省のスパイ船であるリバティ-号は、ありとあらゆる最新式監視機器を装備しているので、この海域でそれ以外の船と見られることはなかった。
リバティ-号の任務は地中海へ航行し、アラブ・イスラエル紛争に関する情報をモニターすることだった(ただし、その正確な使命が何であったかは今も極秘)。 午後2時、高速で飛行する複数のジェット戦闘機から発射されたロケット弾がリバティ-号に命中した。 悪夢は始まったばかりだった。
複数のロケット弾、機銃射撃、そしてナパーム弾までリバティ-号に撃ち込まれた。 8名の船員がこの最初の攻撃で死亡した。 リバティ-号は第六艦隊に救援の連絡を取ることができなかった。 緊急事態用周波数は妨害されていたし、通信機器はひどく破損したか、完全に破壊されていたからだ。 しかし、少し時間を置いて、一人の勇敢な乗員が命の危険を冒し、応急処置を行った。 その結果、SOSが同じ海域にいた米軍艦サラトガ号とアメリカ号に発信された。
飛行機が即座に派遣され、リバティ-号の救援に向かった。 パイロットはその時点で、リバティ-号を攻撃した飛行機と船を破壊してもよい、との許可を得ていた。 しかし、現場に到着することもできていないのに、帰還せよとの新たな命令が下された。 イスラエル機によるリバティ-号への攻撃は継続中だったにもかかわらず。
飛行機による攻撃が約35分続いた後、3隻のイスラエル艦が現場に到着し、魚雷を撃ち始めた。 一つがリバティ-号に命中。 新たに26名の乗員が死亡。 約40フィート(120センチ)の穴が船体に空いた。 加えて、機銃掃射が消火活動をしていた乗員と負傷者をストレッチャーに載せて運んでいた救助隊員に向けられた。 イスラエル艦からは、瀕死の重傷を負った乗員を救助すべく水面に下ろされた救命ゴムボートにまで、銃弾が撃ち込まれた。 船を離れよ、との命令は撤回せざるをえなかった。
2005年、「リバティ-号退役軍人協会」は一つのレポートを陸軍大臣に送った。 「報告:1967年6月8日にアメリカ軍人に対して犯された戦争犯罪について」がその表題だ。 このレポートを読めば、リバティ-号が沈没する前に、なぜ攻撃が終結したのかの経緯がわかる。
「第六艦隊が派遣した救援機に交戦規定を送信した直後、イスラエルの魚雷艇は突如攻撃を打ち切り、リバティ-号が救援を必要としているかどうかを問い合わせるメッセージを転送した。 同時に、イスラエルの海軍将校が在テルアビブアメリカ大使館付き海軍武官に、イスラエル軍が誤ってアメリカ海軍の船を攻撃したことを告知し、謝罪した。 この海軍武官は合衆国第六艦隊に通知。 救援機は攻撃現場に到着する前に帰還を指示された。」P.8
大半のアメリカ人は、同盟国であるイスラエルが同じ同盟国のアメリカに対して今回行った戦争行為について、完全に蚊帳の外に置かれている。 アメリカのメディアがこの事件についてほぼ完璧に口を閉ざしていることが主な理由だ。 階級の高い軍人やエリート官僚がいろいろ発言をしているのに、それは実質的にどこからも注目されない。 研究者のアリソン・ウィアが「If Americans Knew」というネットサイトに記事を一本載せている。 「メディアの沈黙」についてだが、一読に値する。 ちなみにアリソンはパレスチナとイスラエルの歴史について幅広い著作がある。
「理由はどうあれ、アメリカのニュースメディアが良心に目覚め、イスラエルについて真っ当な報道をしない限り、(中東という)世界で最も不安定な、悲劇的な、そして破滅的な結果にもなり得る紛争地域の一つについてアメリカ人が得る情報は、これまでと同様、どうしようもないほど誤ったものであるだろう。」
2015年2月からのWashington’s Blog上の記事は、自分達がアメリカの船を攻撃していることをイスラエルは十分すぎるほど知っていたという証拠をまとめ上げている。
「最近機密解除されたイスラエルの攻撃隊と地上管制との無線交信記録に依れば、イスラエル機のパイロットは船がアメリカ船であることを最低3回確認し、本当に攻撃していいか地上管制に聞いている。 地上管制は、『そうだ、その船を攻撃せよ』と答えている。」
また、この記事に依れば、イスラエルがこうした攻撃を行った目的は、エジプトがやったことと見せかけ、できればアメリカをこの戦争に引きずり込もうとする一連の流れがあった。
一般のメディアはこのテーマについて報道していないが、ひとつ例外がある。 それは2007年のボルチモア・サンの記事だ。 それは攻撃しているのがアメリカの船であることをイスラエル機が知るにいたった経過と、それを機密解除された政府文書で確認していった経過をかなり詳細に論じている。
「(この機密解除文書を読むと)米国家安全保障局が、攻撃したイスラエル機のパイロットの交信をなぜ一度も傍受しなかったのか、についての疑問が強まる。 この交信記録に目を通した記憶のある人によれば、自分達がアメリカ海軍の艦船を攻撃していることをイスラエル機のパイロットが分かっていることを示す交信記録である。
「この文書が同時に言外に語っているのは、アメリカ政府はこの事件を、重大な欠陥を含んだ駆け足的調査(この調査に参加した人の中にも、そんな調査だった、と現在言っている人がいる)をもって終結させた、ということだ。 アメリカ政府としてはどうしてもイスラエルの評判を守りたかったし、同盟関係を維持したかったのだ。
ワシントンで改ざんされた調査結果
1967年、イスラエルの米艦リバティ号への攻撃
米海軍査問会議が、リバティ-号事件直後招集されたが、事件査定のために与えられた時間はたった1週間だった。 37年間 この査問会議の上級法律顧問だったウォード・ボストンJr大佐はこの事件と性急な調査についての自分の気持ちを他へ漏らさなかった。 しかし、政府の隠蔽を支持するジェイ・クリストル著『リバティ-号事件』が書かれると、ボストンはどうしても発言しなければ、と感じた。
ボストン大佐が暴露したのは、ジョン・S・マケイン提督(前大統領候補ジョン・マケインの父)は、欧州におけるアメリカ海軍総司令官だったにも関わらず、彼と査問会議議長だったアイザック・C・キッドの、リバティ-号攻撃に関与した人物の尋問のためにイスラエルに行くことを許可して欲しい要請を拒絶したことだった。 負傷して審問に出席できないリバティ-号乗員の尋問ができないか、という要請も拒絶された。
2004年1月の声明においてボストンはいくつかの信じがたい告発をしている。 その中には、査問会議の最終報告がワシントンで変更された点も含まれている。 イスラエルを免責するためだ。
「証拠ははっきりしていました。 キッド提督と私の信念は確固たるものでした。 34名のアメリカ水兵を殺害し、他172名を負傷させた「リバティ-号事件」は意図的にアメリカ船を沈没させ、乗員全員を殺害するたくらみがあったのです。
攻撃を遂行したイスラエル人パイロットも、攻撃を命令した上官もリバティ-号がアメリカの船であることを十分知っていたことに私は何の疑いも持っていません。
私の怒りが収まらないのは、イスラエルを擁護しようとして、この攻撃は「誤認」によるものだ、などと言う輩がこのアメリカにいることです。
キッド提督が私に言いました。 ワシントンに戻るとホワイトハウスと国防総省から派遣された文官と同席し、査問会議の調査結果の一部を書き換えるよう命令を受けた、とのことです。
キッド提督は、リバティ-号攻撃に関するすべてのことに「蓋をする」よう命令を受けた、とも言いました。 私たちはこの事件に関して口にすることは絶対に許されませんでした。 また、他の関係者全員にも二度とそのことを口にできない、という警告をしなければなりませんでした。
2004年の私の声明が正しいことを疑う理由を私は持っていません。 一般に公開した査問会議の記録は、私が間違いないと確認し、ワシントンに送付したものと同じではないことを私は知っているからです。」
ボストンの結論:
「政府の隠蔽工作を支持する著作を発行したジェイ・クリストルや他の連中が提示しているデマ情報とは反対に、アメリカ人が真実を知ることは重要です。 はっきりしているのはイスラエルに責任があって、意図的にアメリカ船を攻撃し、アメリカ人の船員を殺害しました。 残された同僚の船員はこういったとんでもない結論を押しつけられて何年も生きてきたのです」
忘れてならないのは、この件を実際に非難している何人かの著名人がいることである。 たとえば、国務長官のディーン・ラスクとトーマス・H・モーラーだ。 モーラーはリバティ-号攻撃の直後、統合参謀本部議長に指名されている。
1967年6月10日の外交文書で、ラスクはイスラエル大使に書簡を送っている:
イスラエルの魚雷艇が引き続き攻撃を行ったのは、イスラエル軍がリバティ-号の所属を確認、あるいは当然確認したであろう直後と言ってもいいタイミングでした。 これが同じく重大な人命無視であることははっきりしています。 ….リバティ-号は平和的な任務に就いていました。 魚雷艇にいかなる脅威を示すこともありませんでした。 戦闘能力を与える武器を何一つ積んでいなかったこともはっきりしています。 そのことは魚雷攻撃をする前に、視覚的に、近距離で精査することはできましたし、そうすべきだったでしょう」
モーラーは2004年に亡くなったが、1997年に次の声明を公表している:
「イスラエルはリバティ-号がアメリカの船であることを熟知していました。 何と言っても、リバティ-号に掲げられたアメリカの国旗と標識は、同艦の上空を8回飛行したイスラエル機には完全にはっきりと見えていたのです。 その飛行を約8時間以上も継続した後、攻撃が行われました。 これは確信を持って言えますが、イスラエルは進行中の『六日戦争』の当事国や潜在的当事国からの無線通信をリバティ-号が傍受できることを知っており、今回のことは戦争開始から4日目に起きています。 そのイスラエルはゴラン高原をシリアから強奪する準備をしていました。 ジョンソン大統領がそのような動きに反対していたことは知られていました。 私の考えではイスラエルにはわかっていたのです。 もしアメリカが事前に彼らの計画を知っていれば、テルアビブとワシントンの間の交渉が、途轍もないものになることを。
「モーシェ・ダヤン将軍が次のように結論づけたというは私の確信です。 イスラエルの計画をワシントンに気づかれないためには、この情報を真っ先に入手するリバティ-号を破壊することだ、と。 結果的に卑劣で残虐な攻撃となり、34名のアメリカ人水夫が死亡し、171名が瀕死の重傷を負いました。 背筋が凍り、血の気が引いてしまうのは、イスラエルが秘密裏に34名ものアメリカ人を殺害することができたことであることは言うまでもありません。 国民がどんな抗議の声を上げようとアメリカ政府はその沈静化に協力するだろう、という自信がイスラエルにはあったのです。」
故意の殺人
モーラーは、生前、「イスラエルによるリバティ-号攻撃、攻撃中に派遣された軍救援機の呼び戻し、そしてそれに続くアメリカ政府の隠蔽工作」を調査する「独立査問会議」に参加していた。 その日の出来事を精査するために立ち上げた学識経験者から成る会議だ。 他のメンバーとしてはレイモンド・G・デイビス将軍、メルリン・ステアリング海軍少将、そしてジェイムズ・エイキンズ大使(元在サウジアラビア米大使)がいた。
最も衝撃的な会議の調査結果:
① イスラエルの攻撃は米国船を破壊し、乗組員全員を殺害する意図的な攻撃だったという有力な証拠がある。
② リバティ-号攻撃でイスラエルはアメリカ軍人を殺害し、アメリカに対する戦争行為を行ったことになる。
③ イスラエルとの摩擦を恐れ、ホワイトハウスは米海軍がリバティ-号防衛に向かうのを意図的に止めた。 リバティ-号が攻撃されている最中、第六艦隊が軍事的支援に向かうのを呼び戻したのだ。
④ リバティ-号がほぼ完全な破壊から救われたのは、同艦の大佐ウィリアム・マゴナーグル(衛生隊員)と彼の配下の勇敢な隊員たちの英雄的な奮闘のお陰だが、生き残った隊員達は、後に、もし真実を暴露すれば「軍法会議、刑務所行きあるいはそれ以上のことを覚悟しろ」との脅しを受けた。 そしてわが国の政府は彼らを見捨てたのだ。
⑤ アメリカにおけるイスラエルの強力な支持者達の影響力で、ホワイトハウスは意図的にこの攻撃の事実をアメリカ国民の前から隠蔽した。
⑥ アメリカで活動する親イスラエルロビーの継続する圧力で、この攻撃だけが議会による徹底調査のない海軍の重大事故となっている。 今日に至るまで、生存乗組員は公式の場で、この攻撃について公の場で証言することは許されていない。
⑦ アメリカ海軍の歴史の中で前例のない政府サイドの隠蔽工作となっている。 そういった隠蔽工作があることは、海軍少将(退役)で元海軍法務総監のメルリン・ステアリング、そして海軍大佐(退役)で1967年に立ち上げられた査問会議の主席法律顧問だったウォード・ボストンの声明で現在裏付けされている。
⑧ イスラエルの攻撃とその後のホワイトハウスの隠蔽工作についての真実は、今日に至るまで、公式には、アメリカ国民には隠されたままである。 それはアメリカという国の名誉を損ねることになる。
⑨ 国民が選出した役人や政治家がアメリカの利益よりも外国の利益を進んで優先させたりする時、わが国の安全に対する危機はいつも存在する。 両国の利益が合致しないが、イスラエルの利益に反対できないときは特にそうだ。
前述した「リバティ-号退役軍人協会」のレポートは一連の出来事を生存者の観点からまとめている。 とても説得力のある内容となっている。 その結論:
「アメリカ政府がイスラエルのリバティ-号攻撃について完全な調査をしなかったことは、結果的に、生存者をたいへん傷つけることになった。 そして全ての乗組員の家族も同様である。
同様に軽視できないのは、この不作為が結果的にアメリカ合衆国の名誉に消しがたい染みをつけてしまったことである。 アメリカの軍務に服する男女に、自分達の幸福よりは外国の利益が常に優先されるというシグナルを送ってしまったことになる。 この不作為について考えられる唯一の理由は、イスラエルの利益をアメリカの軍人、従業員、そして退役軍人のそれより優先するという政治的な決定があったからだ。」(P.32)
このレポートにはまた、リバティ-号に乗務していた退役軍人達が、イスラエルとその支持者達から悪意のある攻撃を受けていた様子が書かれている。 20ページには、その攻撃の犠牲者達が今日に至るまで不当な扱いを受けている様子の記述がある。
「イスラエルの意向を受けたPRキャンペーンの結果、リバティ-号の生存者達は、攻撃が意図的なものだったと言明していること、彼らが正義を求める動きをしていることに対して中傷の対象となっている。 「ネオナチ」、「反イスラエル」、あるいは「陰謀理論信奉者」などというレッテルが張られている。 彼らが望んでいるのはリバティ-号と自分達に向けられた攻撃の嘘偽りのない、オープンな調査に他ならないのに。」
生存者と死亡した乗組員の家族には金銭的な補償が支払われた。 しかし、攻撃に参加したイスラエル軍兵士は誰一人処分されていない。
The Jewish Virtual Library[ユダヤの真の解放]というウェブサイトが、イスラエルは事前に周到な計画を立てこの攻撃を遂行したという、高まる疑問をまとめた論文を掲載している。 この論文には証拠についての相当公明正大な評価が書かれていると思うが、こんな記述も出てくる:
「浮かび上がってくる図柄は犯罪に関わるものでは全くない。 いわんや刑事過失なんかでもない。 アメリカとイスラエルの双方において、①情報伝達がうまくいかなかったこと、②人為的なミス、③不運な巡り合わせ、そして④装備の故障、などが連動したということだ。 戦争のどさくさの中ではよくあることだが、悲劇的で愚かしい誤謬の類いだ。
イスラエルの「リバティ-号攻撃」への査問法廷は、政府サイドの隠蔽の域を超えていなかった。 その結論は、リバティ-号は所属を示す旗をまったく掲げていなかった、というものだ。 しかし、リバティ-号に乗船していた乗員は全員、「最初5×8フィートの旗を掲げていたが、攻撃で、それは破損され、二番目に大きな旗と差し替えられた」と証言している。 査問法廷のもう一つの結論は、どこかの戦艦がシナイ半島のイスラエル陣地を砲撃していたことが混乱と一連の誤りに繫がった、というものだ。
私たちは何を学んだか?
この論文をお読みの多くの方々は、「リバティ-号事件」が何を意味するか、うすうすお分かりになっただろうと思う。 これが恐らく「リバティー号事件」の全容なのだが、それに目を通され、①地政学について、②偽旗作戦について、③どのように権力が嘘とプロパガンダの霧の中でいかに行使されるかについて、ご理解を深められたことと思う。 イスラエルとシオニズムの歴史、そして、パレスチナ人に対して過去70年間どんなことがなされてきたか、についてもご存知かもしれない。
しかし、こういったことが心底お分かりになる人は、それだけで極少数派の人間ということになる。 大半の人はここで述べた野蛮極まりない行為を耳にすることはまったくない。 だから、それが意味することにも皆目見当がつかない。 それにも関わらず、「リバティー号事件」から私たち全員が学ぶべき、軽視できない教訓がいくつかある。(読者の方はきっとさらに多くの教訓を提示していただけると思う)
① イスラエルは、「シオニズム運動」の課題を前進させるためであれば、同盟国を、アメリカでさえ攻撃することができる。 「9/11」ついては、どうしてもこの観点から考えざるを得ない。
② イスラエルは嘘をつき、偽りの大義名分の下、アメリカを戦争に引きずり込む。 またイスラエルはエジプトの
ような第三国に対して、やってもいない残虐行為を非難するのに何の疑念も抱かない。
③ イスラエルがアメリカの権力サークルに十分な力を発揮するので、アメリカ政府はイスラエルを困らせないよう気を遣い、自国民を守ることは二の次になる。
④ アメリカのメディアは、アメリカに対する戦争行為の隠蔽を進んで行い、イスラエルを指弾することはしない。
⑤ イスラエルがリバティ-号生存者達に向ける攻撃は、各国政府と主流メディアが「陰謀論者」を無視するやり 口と同じだ。
⑥ イスラエルはまた、「リバティ-号事件」で犠牲になったり、事情説明を求め続けるアメリカ軍人に対して、「反イスラム」や「ネオナチ」のカードを切る。
⑦ 半世紀が経過してもなお、アメリカ政府はこの嘘を守り続け、生存者への迫害はそのままにして置く。
⑧ イスラエルは、絶えざる威嚇の下で自分達が犠牲になった国であり、国民だというイメージを育て上げている。 しかし、今回の驚愕すべき出来事が真に明らかにしているのは、イスラエルは人であれ、国であれ、たとえ「友人」と考えられる人でも、自分達の政治的目的に邪魔であれば脅迫する、ということだ。
一部の観測筋の主張に依れば、「リバティ-号攻撃」は偽旗作戦であり、エジプトを巻き込み、後ろ向きのアメリカを戦争に引きずり込む意図があった。 確かなことは、イスラエルのリバティ-号を撃沈し、乗員全員を殺害する腹積もりを前提にすれば、この考えは成立する。 別の観測筋の見方だが、イスラエルが恐れていたのは、リバティ-号のことについてあれこれ調査されると、イスラエルがヨルダン、あるいはシリアとの敵対行動を始める計画を持っていることがアメリカ人にわかってしまうことだ。 そのことはリンドン・ジョンソンが強く諫めていた。 恐らく二つ観測筋はそれぞれ真実を突いている。
What We Should Have Learned from the Attack on USS Liberty
クレイグ・マッキー
グローバル・リサーチ(2019年6月9日)
(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年7月6日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/what-we-should-have-learned-israels-attack-uss-liberty/5680016

これは大半のアメリカ人が、実際は大半の世界中の人が、一度も耳にしたことがない最大の虚偽のひとつだ。 そしてこの虚偽は、アメリカとアメリカの「一番親密な同盟国」のひとつであるイスラエルとの間のほんとうの関係はどうなのか、について多くのことを暴露している。
これはれっきとした戦争行為だった。 偽旗作戦攻撃あり、大量処刑あり、戦争犯罪あり、おぞましい裏切り行為あり、さらには今日まで続く欺瞞とプロパンダ作戦の始まりでもあった。
50年前に遡る。 イスラエルはアメリカの情報収集艦リバティ-号に驚くべき野蛮な攻撃を仕掛けた。 リバティ-号はシナイ半島とガザ沿岸の公海上を航行していた。 この50年、アメリカとイスラエルの両政府は、主要メディアも同様だが、醜悪で見え見えの隠蔽工作を行い、この出来事はたんに「悲劇的な事故」で、「相手を取り違えた」ケースにあたるという嘘を支持してきた。
しかし、生存者たちはそれが事故なんかではないことを知っている。
1967年6月8日の午後、空には雲ひとつなかった。 ほぼ2時間に亘り、イスラエル軍はあらゆる手立てを講じ、リバティ-号を撃沈させ、294人の乗員(うち3名は民間人)を皆殺しにしようとした。 この作戦は成功しなかった。 しかし攻撃終了時には34名の乗員が死亡し、171名から174名(情報源によって差がある)の負傷者が出た。 イスラエル機は、午前6時にはリバティ-号を、確実にアメリカ船と認識していた。 その8時間後攻撃が始まった。
リバティ-号は大きなアメリカの旗(生存した乗員全員が確認している)と船体には非戦闘艦であることを示すはっきりとした標識があった。 このリバティ-号が攻撃されたのは、イスラエルがエジプト、ヨルダン、そしてシリアへ仕掛けた「六日戦争」の4日目である。 米国防総省のスパイ船であるリバティ-号は、ありとあらゆる最新式監視機器を装備しているので、この海域でそれ以外の船と見られることはなかった。
リバティ-号の任務は地中海へ航行し、アラブ・イスラエル紛争に関する情報をモニターすることだった(ただし、その正確な使命が何であったかは今も極秘)。 午後2時、高速で飛行する複数のジェット戦闘機から発射されたロケット弾がリバティ-号に命中した。 悪夢は始まったばかりだった。
複数のロケット弾、機銃射撃、そしてナパーム弾までリバティ-号に撃ち込まれた。 8名の船員がこの最初の攻撃で死亡した。 リバティ-号は第六艦隊に救援の連絡を取ることができなかった。 緊急事態用周波数は妨害されていたし、通信機器はひどく破損したか、完全に破壊されていたからだ。 しかし、少し時間を置いて、一人の勇敢な乗員が命の危険を冒し、応急処置を行った。 その結果、SOSが同じ海域にいた米軍艦サラトガ号とアメリカ号に発信された。
飛行機が即座に派遣され、リバティ-号の救援に向かった。 パイロットはその時点で、リバティ-号を攻撃した飛行機と船を破壊してもよい、との許可を得ていた。 しかし、現場に到着することもできていないのに、帰還せよとの新たな命令が下された。 イスラエル機によるリバティ-号への攻撃は継続中だったにもかかわらず。
飛行機による攻撃が約35分続いた後、3隻のイスラエル艦が現場に到着し、魚雷を撃ち始めた。 一つがリバティ-号に命中。 新たに26名の乗員が死亡。 約40フィート(120センチ)の穴が船体に空いた。 加えて、機銃掃射が消火活動をしていた乗員と負傷者をストレッチャーに載せて運んでいた救助隊員に向けられた。 イスラエル艦からは、瀕死の重傷を負った乗員を救助すべく水面に下ろされた救命ゴムボートにまで、銃弾が撃ち込まれた。 船を離れよ、との命令は撤回せざるをえなかった。
2005年、「リバティ-号退役軍人協会」は一つのレポートを陸軍大臣に送った。 「報告:1967年6月8日にアメリカ軍人に対して犯された戦争犯罪について」がその表題だ。 このレポートを読めば、リバティ-号が沈没する前に、なぜ攻撃が終結したのかの経緯がわかる。
「第六艦隊が派遣した救援機に交戦規定を送信した直後、イスラエルの魚雷艇は突如攻撃を打ち切り、リバティ-号が救援を必要としているかどうかを問い合わせるメッセージを転送した。 同時に、イスラエルの海軍将校が在テルアビブアメリカ大使館付き海軍武官に、イスラエル軍が誤ってアメリカ海軍の船を攻撃したことを告知し、謝罪した。 この海軍武官は合衆国第六艦隊に通知。 救援機は攻撃現場に到着する前に帰還を指示された。」P.8
大半のアメリカ人は、同盟国であるイスラエルが同じ同盟国のアメリカに対して今回行った戦争行為について、完全に蚊帳の外に置かれている。 アメリカのメディアがこの事件についてほぼ完璧に口を閉ざしていることが主な理由だ。 階級の高い軍人やエリート官僚がいろいろ発言をしているのに、それは実質的にどこからも注目されない。 研究者のアリソン・ウィアが「If Americans Knew」というネットサイトに記事を一本載せている。 「メディアの沈黙」についてだが、一読に値する。 ちなみにアリソンはパレスチナとイスラエルの歴史について幅広い著作がある。
「理由はどうあれ、アメリカのニュースメディアが良心に目覚め、イスラエルについて真っ当な報道をしない限り、(中東という)世界で最も不安定な、悲劇的な、そして破滅的な結果にもなり得る紛争地域の一つについてアメリカ人が得る情報は、これまでと同様、どうしようもないほど誤ったものであるだろう。」
2015年2月からのWashington’s Blog上の記事は、自分達がアメリカの船を攻撃していることをイスラエルは十分すぎるほど知っていたという証拠をまとめ上げている。
「最近機密解除されたイスラエルの攻撃隊と地上管制との無線交信記録に依れば、イスラエル機のパイロットは船がアメリカ船であることを最低3回確認し、本当に攻撃していいか地上管制に聞いている。 地上管制は、『そうだ、その船を攻撃せよ』と答えている。」
また、この記事に依れば、イスラエルがこうした攻撃を行った目的は、エジプトがやったことと見せかけ、できればアメリカをこの戦争に引きずり込もうとする一連の流れがあった。
一般のメディアはこのテーマについて報道していないが、ひとつ例外がある。 それは2007年のボルチモア・サンの記事だ。 それは攻撃しているのがアメリカの船であることをイスラエル機が知るにいたった経過と、それを機密解除された政府文書で確認していった経過をかなり詳細に論じている。
「(この機密解除文書を読むと)米国家安全保障局が、攻撃したイスラエル機のパイロットの交信をなぜ一度も傍受しなかったのか、についての疑問が強まる。 この交信記録に目を通した記憶のある人によれば、自分達がアメリカ海軍の艦船を攻撃していることをイスラエル機のパイロットが分かっていることを示す交信記録である。
「この文書が同時に言外に語っているのは、アメリカ政府はこの事件を、重大な欠陥を含んだ駆け足的調査(この調査に参加した人の中にも、そんな調査だった、と現在言っている人がいる)をもって終結させた、ということだ。 アメリカ政府としてはどうしてもイスラエルの評判を守りたかったし、同盟関係を維持したかったのだ。
ワシントンで改ざんされた調査結果
1967年、イスラエルの米艦リバティ号への攻撃
米海軍査問会議が、リバティ-号事件直後招集されたが、事件査定のために与えられた時間はたった1週間だった。 37年間 この査問会議の上級法律顧問だったウォード・ボストンJr大佐はこの事件と性急な調査についての自分の気持ちを他へ漏らさなかった。 しかし、政府の隠蔽を支持するジェイ・クリストル著『リバティ-号事件』が書かれると、ボストンはどうしても発言しなければ、と感じた。
ボストン大佐が暴露したのは、ジョン・S・マケイン提督(前大統領候補ジョン・マケインの父)は、欧州におけるアメリカ海軍総司令官だったにも関わらず、彼と査問会議議長だったアイザック・C・キッドの、リバティ-号攻撃に関与した人物の尋問のためにイスラエルに行くことを許可して欲しい要請を拒絶したことだった。 負傷して審問に出席できないリバティ-号乗員の尋問ができないか、という要請も拒絶された。
2004年1月の声明においてボストンはいくつかの信じがたい告発をしている。 その中には、査問会議の最終報告がワシントンで変更された点も含まれている。 イスラエルを免責するためだ。
「証拠ははっきりしていました。 キッド提督と私の信念は確固たるものでした。 34名のアメリカ水兵を殺害し、他172名を負傷させた「リバティ-号事件」は意図的にアメリカ船を沈没させ、乗員全員を殺害するたくらみがあったのです。
攻撃を遂行したイスラエル人パイロットも、攻撃を命令した上官もリバティ-号がアメリカの船であることを十分知っていたことに私は何の疑いも持っていません。
私の怒りが収まらないのは、イスラエルを擁護しようとして、この攻撃は「誤認」によるものだ、などと言う輩がこのアメリカにいることです。
キッド提督が私に言いました。 ワシントンに戻るとホワイトハウスと国防総省から派遣された文官と同席し、査問会議の調査結果の一部を書き換えるよう命令を受けた、とのことです。
キッド提督は、リバティ-号攻撃に関するすべてのことに「蓋をする」よう命令を受けた、とも言いました。 私たちはこの事件に関して口にすることは絶対に許されませんでした。 また、他の関係者全員にも二度とそのことを口にできない、という警告をしなければなりませんでした。
2004年の私の声明が正しいことを疑う理由を私は持っていません。 一般に公開した査問会議の記録は、私が間違いないと確認し、ワシントンに送付したものと同じではないことを私は知っているからです。」
ボストンの結論:
「政府の隠蔽工作を支持する著作を発行したジェイ・クリストルや他の連中が提示しているデマ情報とは反対に、アメリカ人が真実を知ることは重要です。 はっきりしているのはイスラエルに責任があって、意図的にアメリカ船を攻撃し、アメリカ人の船員を殺害しました。 残された同僚の船員はこういったとんでもない結論を押しつけられて何年も生きてきたのです」
忘れてならないのは、この件を実際に非難している何人かの著名人がいることである。 たとえば、国務長官のディーン・ラスクとトーマス・H・モーラーだ。 モーラーはリバティ-号攻撃の直後、統合参謀本部議長に指名されている。
1967年6月10日の外交文書で、ラスクはイスラエル大使に書簡を送っている:
イスラエルの魚雷艇が引き続き攻撃を行ったのは、イスラエル軍がリバティ-号の所属を確認、あるいは当然確認したであろう直後と言ってもいいタイミングでした。 これが同じく重大な人命無視であることははっきりしています。 ….リバティ-号は平和的な任務に就いていました。 魚雷艇にいかなる脅威を示すこともありませんでした。 戦闘能力を与える武器を何一つ積んでいなかったこともはっきりしています。 そのことは魚雷攻撃をする前に、視覚的に、近距離で精査することはできましたし、そうすべきだったでしょう」
モーラーは2004年に亡くなったが、1997年に次の声明を公表している:
「イスラエルはリバティ-号がアメリカの船であることを熟知していました。 何と言っても、リバティ-号に掲げられたアメリカの国旗と標識は、同艦の上空を8回飛行したイスラエル機には完全にはっきりと見えていたのです。 その飛行を約8時間以上も継続した後、攻撃が行われました。 これは確信を持って言えますが、イスラエルは進行中の『六日戦争』の当事国や潜在的当事国からの無線通信をリバティ-号が傍受できることを知っており、今回のことは戦争開始から4日目に起きています。 そのイスラエルはゴラン高原をシリアから強奪する準備をしていました。 ジョンソン大統領がそのような動きに反対していたことは知られていました。 私の考えではイスラエルにはわかっていたのです。 もしアメリカが事前に彼らの計画を知っていれば、テルアビブとワシントンの間の交渉が、途轍もないものになることを。
「モーシェ・ダヤン将軍が次のように結論づけたというは私の確信です。 イスラエルの計画をワシントンに気づかれないためには、この情報を真っ先に入手するリバティ-号を破壊することだ、と。 結果的に卑劣で残虐な攻撃となり、34名のアメリカ人水夫が死亡し、171名が瀕死の重傷を負いました。 背筋が凍り、血の気が引いてしまうのは、イスラエルが秘密裏に34名ものアメリカ人を殺害することができたことであることは言うまでもありません。 国民がどんな抗議の声を上げようとアメリカ政府はその沈静化に協力するだろう、という自信がイスラエルにはあったのです。」
故意の殺人
モーラーは、生前、「イスラエルによるリバティ-号攻撃、攻撃中に派遣された軍救援機の呼び戻し、そしてそれに続くアメリカ政府の隠蔽工作」を調査する「独立査問会議」に参加していた。 その日の出来事を精査するために立ち上げた学識経験者から成る会議だ。 他のメンバーとしてはレイモンド・G・デイビス将軍、メルリン・ステアリング海軍少将、そしてジェイムズ・エイキンズ大使(元在サウジアラビア米大使)がいた。
最も衝撃的な会議の調査結果:
① イスラエルの攻撃は米国船を破壊し、乗組員全員を殺害する意図的な攻撃だったという有力な証拠がある。
② リバティ-号攻撃でイスラエルはアメリカ軍人を殺害し、アメリカに対する戦争行為を行ったことになる。
③ イスラエルとの摩擦を恐れ、ホワイトハウスは米海軍がリバティ-号防衛に向かうのを意図的に止めた。 リバティ-号が攻撃されている最中、第六艦隊が軍事的支援に向かうのを呼び戻したのだ。
④ リバティ-号がほぼ完全な破壊から救われたのは、同艦の大佐ウィリアム・マゴナーグル(衛生隊員)と彼の配下の勇敢な隊員たちの英雄的な奮闘のお陰だが、生き残った隊員達は、後に、もし真実を暴露すれば「軍法会議、刑務所行きあるいはそれ以上のことを覚悟しろ」との脅しを受けた。 そしてわが国の政府は彼らを見捨てたのだ。
⑤ アメリカにおけるイスラエルの強力な支持者達の影響力で、ホワイトハウスは意図的にこの攻撃の事実をアメリカ国民の前から隠蔽した。
⑥ アメリカで活動する親イスラエルロビーの継続する圧力で、この攻撃だけが議会による徹底調査のない海軍の重大事故となっている。 今日に至るまで、生存乗組員は公式の場で、この攻撃について公の場で証言することは許されていない。
⑦ アメリカ海軍の歴史の中で前例のない政府サイドの隠蔽工作となっている。 そういった隠蔽工作があることは、海軍少将(退役)で元海軍法務総監のメルリン・ステアリング、そして海軍大佐(退役)で1967年に立ち上げられた査問会議の主席法律顧問だったウォード・ボストンの声明で現在裏付けされている。
⑧ イスラエルの攻撃とその後のホワイトハウスの隠蔽工作についての真実は、今日に至るまで、公式には、アメリカ国民には隠されたままである。 それはアメリカという国の名誉を損ねることになる。
⑨ 国民が選出した役人や政治家がアメリカの利益よりも外国の利益を進んで優先させたりする時、わが国の安全に対する危機はいつも存在する。 両国の利益が合致しないが、イスラエルの利益に反対できないときは特にそうだ。
前述した「リバティ-号退役軍人協会」のレポートは一連の出来事を生存者の観点からまとめている。 とても説得力のある内容となっている。 その結論:
「アメリカ政府がイスラエルのリバティ-号攻撃について完全な調査をしなかったことは、結果的に、生存者をたいへん傷つけることになった。 そして全ての乗組員の家族も同様である。
同様に軽視できないのは、この不作為が結果的にアメリカ合衆国の名誉に消しがたい染みをつけてしまったことである。 アメリカの軍務に服する男女に、自分達の幸福よりは外国の利益が常に優先されるというシグナルを送ってしまったことになる。 この不作為について考えられる唯一の理由は、イスラエルの利益をアメリカの軍人、従業員、そして退役軍人のそれより優先するという政治的な決定があったからだ。」(P.32)
このレポートにはまた、リバティ-号に乗務していた退役軍人達が、イスラエルとその支持者達から悪意のある攻撃を受けていた様子が書かれている。 20ページには、その攻撃の犠牲者達が今日に至るまで不当な扱いを受けている様子の記述がある。
「イスラエルの意向を受けたPRキャンペーンの結果、リバティ-号の生存者達は、攻撃が意図的なものだったと言明していること、彼らが正義を求める動きをしていることに対して中傷の対象となっている。 「ネオナチ」、「反イスラエル」、あるいは「陰謀理論信奉者」などというレッテルが張られている。 彼らが望んでいるのはリバティ-号と自分達に向けられた攻撃の嘘偽りのない、オープンな調査に他ならないのに。」
生存者と死亡した乗組員の家族には金銭的な補償が支払われた。 しかし、攻撃に参加したイスラエル軍兵士は誰一人処分されていない。
The Jewish Virtual Library[ユダヤの真の解放]というウェブサイトが、イスラエルは事前に周到な計画を立てこの攻撃を遂行したという、高まる疑問をまとめた論文を掲載している。 この論文には証拠についての相当公明正大な評価が書かれていると思うが、こんな記述も出てくる:
「浮かび上がってくる図柄は犯罪に関わるものでは全くない。 いわんや刑事過失なんかでもない。 アメリカとイスラエルの双方において、①情報伝達がうまくいかなかったこと、②人為的なミス、③不運な巡り合わせ、そして④装備の故障、などが連動したということだ。 戦争のどさくさの中ではよくあることだが、悲劇的で愚かしい誤謬の類いだ。
イスラエルの「リバティ-号攻撃」への査問法廷は、政府サイドの隠蔽の域を超えていなかった。 その結論は、リバティ-号は所属を示す旗をまったく掲げていなかった、というものだ。 しかし、リバティ-号に乗船していた乗員は全員、「最初5×8フィートの旗を掲げていたが、攻撃で、それは破損され、二番目に大きな旗と差し替えられた」と証言している。 査問法廷のもう一つの結論は、どこかの戦艦がシナイ半島のイスラエル陣地を砲撃していたことが混乱と一連の誤りに繫がった、というものだ。
私たちは何を学んだか?
この論文をお読みの多くの方々は、「リバティ-号事件」が何を意味するか、うすうすお分かりになっただろうと思う。 これが恐らく「リバティー号事件」の全容なのだが、それに目を通され、①地政学について、②偽旗作戦について、③どのように権力が嘘とプロパガンダの霧の中でいかに行使されるかについて、ご理解を深められたことと思う。 イスラエルとシオニズムの歴史、そして、パレスチナ人に対して過去70年間どんなことがなされてきたか、についてもご存知かもしれない。
しかし、こういったことが心底お分かりになる人は、それだけで極少数派の人間ということになる。 大半の人はここで述べた野蛮極まりない行為を耳にすることはまったくない。 だから、それが意味することにも皆目見当がつかない。 それにも関わらず、「リバティー号事件」から私たち全員が学ぶべき、軽視できない教訓がいくつかある。(読者の方はきっとさらに多くの教訓を提示していただけると思う)
① イスラエルは、「シオニズム運動」の課題を前進させるためであれば、同盟国を、アメリカでさえ攻撃することができる。 「9/11」ついては、どうしてもこの観点から考えざるを得ない。
② イスラエルは嘘をつき、偽りの大義名分の下、アメリカを戦争に引きずり込む。 またイスラエルはエジプトの
ような第三国に対して、やってもいない残虐行為を非難するのに何の疑念も抱かない。
③ イスラエルがアメリカの権力サークルに十分な力を発揮するので、アメリカ政府はイスラエルを困らせないよう気を遣い、自国民を守ることは二の次になる。
④ アメリカのメディアは、アメリカに対する戦争行為の隠蔽を進んで行い、イスラエルを指弾することはしない。
⑤ イスラエルがリバティ-号生存者達に向ける攻撃は、各国政府と主流メディアが「陰謀論者」を無視するやり 口と同じだ。
⑥ イスラエルはまた、「リバティ-号事件」で犠牲になったり、事情説明を求め続けるアメリカ軍人に対して、「反イスラム」や「ネオナチ」のカードを切る。
⑦ 半世紀が経過してもなお、アメリカ政府はこの嘘を守り続け、生存者への迫害はそのままにして置く。
⑧ イスラエルは、絶えざる威嚇の下で自分達が犠牲になった国であり、国民だというイメージを育て上げている。 しかし、今回の驚愕すべき出来事が真に明らかにしているのは、イスラエルは人であれ、国であれ、たとえ「友人」と考えられる人でも、自分達の政治的目的に邪魔であれば脅迫する、ということだ。
一部の観測筋の主張に依れば、「リバティ-号攻撃」は偽旗作戦であり、エジプトを巻き込み、後ろ向きのアメリカを戦争に引きずり込む意図があった。 確かなことは、イスラエルのリバティ-号を撃沈し、乗員全員を殺害する腹積もりを前提にすれば、この考えは成立する。 別の観測筋の見方だが、イスラエルが恐れていたのは、リバティ-号のことについてあれこれ調査されると、イスラエルがヨルダン、あるいはシリアとの敵対行動を始める計画を持っていることがアメリカ人にわかってしまうことだ。 そのことはリンドン・ジョンソンが強く諫めていた。 恐らく二つ観測筋はそれぞれ真実を突いている。
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