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誤解と偽情報がアサンジ事件の真相を踏み潰した。月曜日(12月5日)の夜、ワシントンで行われたヘイデン・センター主催の公開討論会をジョー・ローリアが報告

<記事原文 寺島先生推薦>

Misperception and disinformation overrode the facts of the Assange case at an event organized by the Hayden Center on Monday night in Washington, reports Joe Lauria.

筆者:ジョー・ローリア(Joe LAURIA)

出典:Strategic Culture

2022年12月11日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月2日

 主要5紙がバイデン政権にジュリアン・アサンジに対する告訴を取り下げるよう求めた1週間後、マイケル・V・ヘイデン情報・政策・国際安全保障センターは、その対抗策として、月曜日(12月5日)に、アサンジ事件に関する「情報機関」の偽情報を意図的に前面に押し出した。

 Twitterで叩かれた後、番組の当初のタイトル「ジュリアン・アサンジ: ジャーナリストなのかテクノスパイなのか?」は、「ジュリアン・アサンジ事件」という平凡なものに変更された。この公開討論会は、ワシントンのナショナル・プレス・クラブの大宴会場において討論会として行われたが、アサンジの弁護士バリー・ポラック(Barry Pollack)には不利になるように仕組まれていたらしい。

 ヘイデン・センター所長で元中央情報局参謀のラリー・ファイファー(Larry Pfeiffer)がパネリストを紹介し、「ジャーナリズムとスパイ活動の境界線と、その境界線を越えるのはいつか?」について質問した。タイトルは変えられたものの、目的は同じで、アサンジをスパイとして紹介し、アサンジの米国弁護士バリー・ポラックに反応させる機会を与えることだった。

 ファイファーは、「ヘイデン・センターが目指すのは、機密情報について、そして機密情報が我々の社会、政府において果たす役割について、どのように政策に反映させるか、時には政策を台無しにするか、そしてそれを修正する必要がある場合、我々はどうすればよいか、そんなことを議論することである」と述べた。

 言い換えると、情報機関の真意はただ善意があるだけで、「間違い」は修正するのだから、とにかく情報機関を信じろ、ということだ。その「間違い」たるやイラクなどで何十万人もの命を奪った「間違い」であるし、アサンジの命を奪おうと企てた「間違い」なのだ。

 この公開討論会のパネラーは以下の通り:

① 元F.B.I.の捜査官でトランプ政権時の国家安全保障会議の防諜担当主任だったホールデン・トリプレット(Holden Triplett)、
報道の自由のための記者委員会のテクノロジーと報道の自由プロジェクトの主任、ゲイブ・ロットマン(Gabe Rottman)、
③ 国家安全保障法、言論の自由の憲法申し立て、政府の説明責任を扱う弁護士と言われるマーク・ザイド(Mark Zaid)、そして
④ ポラック。


トリプレットとポラック(ジョー・ローリア撮影)

「明白な犯罪」

 司会は企業メディア記者のサッシャ・イングバー(Sasha Ingber)。元National Public Radio、そして今はNewsy(「話題の豊富な」という意味)社に属している。Newsy社は、今はScripps Newsに社名変更しているが何とも虫唾が走る社名だ。

 元C.I.A.および国家安全保障局長官であるヘイデンは、元情報機関高官の面々とともに最前列に座った。ヘイデンは1999年から2005年までNSAを、2006年から2009年までC.I.A.を率いた。CIAの内部告発者であるジョン・キリアコウ(John Kiriakou)が今日のConsortium Newsコラムで指摘しているように、彼は一時期ブッシュ政権の拷問プログラムを監督していたのである。ヘイデンは、現在ケーブル・ネットワークでこのニュースについてコメントしている元高官たちの一人である。

 ヘイデンがアサンジを敵視しているのは間違いない。2010年、彼はアサンジを「明白な犯罪者」であり、「傲慢と無能の危険な組み合わせ」であるとんだ。

それは問題ない。それでも我々は待っている。遅かれ早かれ。 https://t.co/kGML40sC9A
ー将軍マイケル・ヘイデン(@GenMhayden) July 1, 2022

ハッキングで訴追されているわけではない

 アサンジの弁護士ポラックは、この夜の最初の質問に対して、ウィキリークスの発行人アサンジに対する起訴の事実を冷静に説明した。彼は、アサンジは政府のコンピュータをハッキングした罪には問われておらず、自分の情報源を守るためにチェルシー・マニングの身分を隠す手助けをした(その試みは失敗したが)ことだけが告発されている、と説明した。

 ポラックは、マニングは自分がリークしたすべての文書にアクセスする権限を持っており、したがって、コンピュータをハッキングしたり、アサンジの助けを求めたりする必要はなかったと説明した。「ジュリアン・アサンジを告発する文書には103個の段落がある。そのうち厳密に3つの段落が、もし関係あるとすれば、パスワードを破るためと想定された事柄に関係する」と、ポラックは言った。「そして、そのパスワードは、機密情報にアクセスすることとは何の関係もない。」

 それは、アサンジの起訴状の印刷された文面をみればわかることだ。マニングは、リークしたすべての資料に対して機密情報へのアクセス権を持っており、アサンジはそれを入手するためのハッキングには荷担していない、と書かれている。

 ところが、元F.B.I.のトリプレットはそれを無視し、まるでポラックがステージで隣に座っていないかのように、話を進めたのだ。彼はアサンジを「ハッキング実行者であ」り、「米国の法律で保護される人物ではない」と繰り返し語った。

 「私たちが問題にしているのは、本質的に自分たちは情報機関を称し、世界中の人々に情報を提供しようとしている組織で、その情報を引き出すためにハッキングすることも吝かではないと言っているのです」とトリプレットは述べている。ここで一旦止めよう。

 まず、ジャーナリズムとスパイ活動は、情報収集の段階では共通点がある。しかし、類似点はそこまで。ジャーナリストは集めた情報を世間に知らしめるが、スパイは国家に仕えるために組織内で情報を秘匿する。だから、ウィキリークスは 「世界の人々に情報を提供しようとする諜報機関 」にはなり得ない。それは諜報機関のやることではない。

 第二に、米国政府はアサンジが情報を引き出すためにハッキングしていると訴追してはいないと、ポラックはこの出来事を踏まえて相当網羅的に説明したばかりだった。それなのにトリプレットは、情報を引き出すために「ハッキングすることも吝かではない」とウィキリークスが言っているかのような引用の仕方をしている。

 自分のメッセージを損なうような事実を無視し、そのような事実が存在しないかのように装うのは、偽情報の戦術である。トリプレットやその他の偽情報の提供者は、国民は49ページに及ぶアサンジの起訴状を読んでいない方が多いことを当てにしているが、トリプレットは、読んでいると後で私に語った。

 つまり、トリプレットはポラックが真実を語っていたことを知っているのだ。しかし、標的となる視聴者、つまりアメリカ国民は事実を知らず、むしろアサンジの件について、政府筋から企業メディアを通じて、アサンジは政府のコンピュータをハッキングして機密を盗んだというような偽情報を組織的かつ繰り返し植えつけられていること、そのことが彼の知識の中にある。

 トリプレットはポラックの発言内容からすぐに離れ、「ここで私たちがやりたいのが、この事件の詳細を訴訟に持ち込むことなのか、はよくわからない」と言った。しかし、それこそが、スパイ活動法により起訴された人物に関して、事件の詳細を検証しながら議論すべきことなのだ。

 彼は、国家安全保障の記者が日常的に行っているように、機密資料を盗んだ情報源から機密資料を受け取って公表したジャーナリストなのか、それとも彼自身が盗んだのか?

ロシア(のイメージの)固定化

 トリプレットは、アサンジとロシアとは関係あるとされている件についても、証明された事実には明らかに無関心である。私はこの公開討論会の後、トリプレットの意見に揺さぶりをかけた。正当な反対意見、この場合は正当なジャーナリズムを敵対する外国勢力の道具だと中傷するのは、ほとんどどの政府の文書に書き込まれた最も古い手口である、と彼に言った。

 パネルでトリプレットは陰険な質問をした。「ロシアの諜報機関が出版社を作りたいと思ったら、それはどのようなものになるだろうか?」

 その後、トリプレットと話したが、彼や彼の同僚の頭にはロシアがこびりついていることは疑いない。ロシア(を巡る問題)は彼らに過剰なほどの説明を与えすぎている。公開討論会で彼はWikiLeaksについてこう言った:

  「詳しいことはわからないが、どんな臭いがするかはわかる。諜報活動の臭いがする。これはロシアの諜報活動の典型的な手口だ。彼らは代理人を使う... [アサンジは]GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)と実質的な交流関係を持っていた。...こんな人間(彼はアメリカ人ではない)にそんな力を与えて良いのだろうか?」


ヘイデン・センター公開討論会におけるトリプレットとポラック(Joe Lauria/Cathy Vogan撮影)

‘情報提供者に害を与える’

 この討論会の、そしてアサンジの訴追の大きなテーマは、彼が公開した文書の中で名前をリークすることによって情報提供者を傷つけたというもの。ポラックは、アサンジが公開したものの中で、確かに名前を編集していた(つまり実名は出さなかった)こと、そして、ガーディアン紙の二人の記者が編集されていないファイルのパスワードを公開し、Cryptome.orgが編集されていない電報そのものを公開してから、ウィキリークスも情報提供者を逃がすためにそれを公開したという話を冷静に整理した。 (アサンジの身柄引き渡し審問での証言によれば、アサンジは強要されてガーディアン紙のデビッド・リー(David Leigh)にだけパスワードを教えた)。

 トリプレットはまたもやポラックを無視し、ウィキリークスが編集前のファイルを喜んで公開したため、情報提供者や潜入中の米国諜報員が「相当な危険」にさらされていると話した。彼にとって、編集されていない電報がどのようにして公開されるようになったかというポラックの説明は何の役にも立たなかったのだ。

 公開討論会の後、ある退役海軍情報将校は、アサンジが名前の編集に努めたことを認めても、また、編集されていないファイルはガーディアン紙の記者がパスワードを公開することで可能になったとしても、アサンジがこれらの文書を全く公開しなければ、このようなことは起こらなかっただろうと私に伝えようとした。

 アメリカ社会で最も強力な集団である情報機関が、せっかくゲームがうまく進行しているのに、良心のある「傲慢」で「無能」なオーストラリア人に、それを台無しにされたくないと考えていることは明らかだった。




「犯罪を暴く」

 質問の中で、私はトリプレットに、ロバート・カー元帥がマニングの軍法会議で(ウィキリークスに防衛情報をリークした罪で)、そのリークが米国の情報提供者を傷つけたという証拠はゼロだと証言したことを知っているか、と尋ねた。

 また、ロバート・ミューラー特別顧問が、ロシアゲート報告書のある項目(これは情報公開請求の結果、編集されていない)に、彼はアサンジを告訴できない、なぜならロシアのGRU情報員と取引していたことをアサンジが認識していたと証明できないから、と書いていることを知っているか、と私はトリプレットに尋ねた。このGRU情報員がGufficer 2.0のハンドルネームで「ハッキングした」DNCメールを、WikiLeaksに売りつけたとミュラーは言っているが、そのことは法廷では立証されていない。

 つまり、(アメリカ)政府は、アサンジがロシア情報機関と知りながら協力したことに罪はなく、ロシアが関与していることはまだ証明されていないことを認めたのである。トリプレットは、私の2つの質問に対して、驚くべきことに「イエス、イエス」と答えたのだ。

 そのことは聴衆とパネラーからの笑いを誘った。しかし、ウィキリークスが情報提供者に危害を加えることはなかったと米陸軍大将が宣誓証言したことを知っていること、政府がアサンジをロシアのスパイだと証明できないことを認めることで、彼は公開討論会での自分の議論が本質的に崩壊したことを認めたことになる。

 トリプレットは、公開討論会の最初に、なぜ米国政府はアサンジを不安視しているのか、と質問した。そこで私は、質問タイムに、アサンジが米国政府の犯罪や腐敗を暴露したからではないか、と自分の意見を述べた。

 トリプレットの答えは、政府の不正は暴露する必要があるが、ジュリアン・アサンジがその適任者かどうかと質問をした。私が「そうだ、主要メディアは政府に近すぎるからだ」と答える前に、司会者が討論を打ち切った。

 討論会の間、私は最前列に座っていたが、トリプレットが 「なぜ米国はアサンジを不安視するのか」と尋ねたとき、私は「彼が政府の犯罪を明らかにしたからだ」と小声で言った。

 情報機関の退役上級幹部が座る席で、隣に座っていた男性が私の方を向き、「余計なことを言うな!」と怒ったような唸り声をあげたので私は仰天した。その後、席に戻り、彼の名前を確認しようとしたが、彼の名札は取り外されていた。


ポラック、ロットマン、そしてザイド(ジョー・ローリア撮影)

救助者を殺すことは問題ない

 ザイドは、CIAの内部告発者であるキリアコウによって2019年にConsortium Newsで「ザイド(Zaid)は文字通り、国家安全保障における内部告発者として最悪の選択だ」と書かれたいわゆる内部告発弁護士。ザイドは、パネラーとして2つの途轍もなく誤った発言をした。

 まず彼は、米政府高官が機密情報をマスコミにリークすることは「合法」だと述べた。これは米国の課題を押し進めるために日常的に行われていることであり、米国の高官がこれによって罰せられることはほとんどないが、それはそれが 「合法」だからではない。
 ザイドの口から出た2つ目の驚くべき点。マニングによってリークされたCollateral Murderのビデオ*において、非武装の一般人の家族が立ち止まって負傷したイラク人を助けていた。救助者を「敵」と見なすことは当然なのだから、戦闘中に彼らを殺害することに何の問題もない、とザイドが言ったことだ。
Collateral Murderのビデオ*・・・2007年7月12日、イラク侵攻に続くイラクの反乱の最中に、ニューバグダッドのアルアミンアルタニヤで2機の米国AH-64アパッチヘリコプターが、地上の民間人(2名のロイター記者を含む)多数を射殺する様子を伝える映像をウィキリークスが公開した。

 1949 年ジュネーブ条約第 3 条は、「生命及び身体に対する暴力、特にあらゆる種類の殺人」から、「武器を捨てた軍隊の構成員及び疾病、傷害、抑留その他の事由により戦闘能力を失った者」を保護するものである。

 この条約の1977年議定書は、「民間人は『敵対行為に直接参加しない限り』、軍事行動から生じる危険に対する保護を享受するものとする」と規定している。非武装の民間人家族が、負傷者を収容するために、銃撃が止んだ後、小型トラックを停めたことは、「敵対行為に直接参加」しているとは言い難い。

 Collateral Murderのビデオに登場する米軍パイロットは戦争のルールを熟知していた。そのことは、パイロットが負傷した男性に、路上で自分の近くにある武器を拾って戦闘員になるようにしきりに促す声が映像で聞き取れたことでもわかる。 その男は武器を取らない。それでも彼に対して発砲されるのだ。
ヘイデン・センターの公開討論会の様子は次の映像で:



写真:月曜日(12月5日)に行われた「ジュリアン・アサンジ問題を考える公開討論集会」における前CIAとNSA長官マイケル・ヘイデン(左)(ジョー・ローリア撮影)
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