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NATOとロシアが一触即発の危機。ポーランドのミサイル事件は、すんでのところで核兵器による人類絶滅になるところだった。

<記事原文 寺島先生推薦>

NATO’s hair trigger: The Polish missile incident was a close brush with nuclear annihilation
The fervor with which Poland and others sought to drag NATO into a war with Russia should ring alarm bells for everyone

ポーランドなどが、しきりにNATOをロシアとの戦争に引きずり込もうとしたことには、誰もが警鐘を鳴らすべきことだ。

筆者:スコット・リッター

スコット・リッター
元米海兵隊情報将校で、「ペレストロイカ時代の軍縮」の著者。Arms Control and the End of the Soviet Union』(ペレストロイカ時代の軍縮:軍備管理とソ連の終焉)の著者。ソ連ではINF条約を実施する査察官として、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍の幕僚として、1991年から1998年までは国連の兵器査察官として勤務した。


出典:RT

2022年11月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月21日


2022年11月15日、ウクライナとの国境に近いポーランド東部のプリシュトフ村で、ミサイルが男性2人を殺害した現場の空撮写真。© Wojtek RADWANSKI, Damien SIMONART / AFP Japan

 今週(11月第3週)、NATOの一部の加盟国は、ウクライナでロシアに対抗する手段として第4条を発動しようとしたが、失敗し、世界は戦争を回避した。しかし、次回はそうはいかないかもしれない。

 ウクライナの地対空ミサイルが誤ってポーランドに着弾し、2人のポーランド人が死亡したことは、今では世界のほとんどの人が認めるところだが、この出来事は、今日のNATO東部の醜い現実を露呈している。NATOの旧体制派(米、英、仏、独)が控えめな態度をとっているにもかかわらず、東欧の新興勢力は、NATOのウクライナ介入を正当化するための方策を探して躍起になっているようだ。

 なぜなら、ポーランドとバルト三国の政府を支配するロシア恐怖症の役人たちは、ヨーロッパの戦場でNATOがロシアを倒すという幻想を追いかけながら、自分たちの運命に気づかず、ウクライナの崖に向かって走るレミングのような行動をとるからである。


<関連記事> ミサイル事件はウクライナの「挑発」だった---ポーランドの政治家

 ウクライナの地対空ミサイルがポーランドに飛来したことに伴う急ぎすぎの判断は、NATO憲章の本来は防衛的な性格が、紛争の抑止ではなく、むしろ助長に利用されることを痛感させるものだ。

 NATOは、ポーランドのプリスティフ村付近に着弾し、2人のポーランド人を死亡させたミサイルが、発射された瞬間にウクライナの地対空ミサイルであることを認識していたのである。ウクライナの上空は、世界で最も監視の厳しい場所の一つである。情報源や方法を明らかにされていなくても、ウクライナ上空で起こったことで、ポーランドを含むヨーロッパ中のNATO本部の画面に即座に記録されないものはないと言えば十分だろう。

 それなのに、ポーランドはロシア大使を呼び出して抗議を申し入れるべきだと考えた。

 さらにポーランドは、NATO条約第4条*の発動を検討しながら、軍事的な準備態勢を強化すると宣言した。第4条は、NATO発足以来NATOが戦火を交えた全ての国、具体的にはセルビア、リビア、アフガニスンへの戦闘配備を支持した条項だ。
*北大西洋条約第4条は、「締約国は、領土保全、政治的独立 安全が脅かされていると認めたときは、いつでも協議する」という内容。一方、同条約の第5条では「一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす」として、「兵力の使用を含む行動を直ちにとる」としている。

 これを受けて、ポーランドと国境を接するリトアニアのギタナス・ナウシダ大統領は、「NATOの領土は隅々まで守らねばならない!」とツイートした。

 チェコのペトル・フィアラ首相も同様にツイッターでこう絶叫した。「ポーランドがミサイル攻撃を自国領土内で受けたことが確認されれば、これはロシアによるさらなる戦争拡大である。我々はEUとNATOの同盟国をしっかりと支える」と。

 エストニアは、このニュースを「最も懸念される」とし、外相は「ポーランドや他の同盟国と緊密に協議している。エストニアはNATOの領土を隅々まで守る用意がある」とツイッターで表明した。


<関連記事> ゼレンスキー、ミサイルの主張を撤回

 NATOの第5条(集団安全保障条項)を発動する根拠がないことは、すべての当事者間で一致していたが、第4条は非常に重要な意味をもっていた。 ポーランドは断固とした態度で臨んだ。ポーランドに対するミサイル「攻撃」は、明らかに犯罪であり、罰せられないわけにはいかない。そのため、第4条のもと、ポーランドは「NATO加盟国とポーランドが、ウクライナの領土の一部を含む追加の対空防衛の提供について合意する」よう働きかけていたのである。

 そして、そこには 「ウクライナの領土の一部を含めて」、という言葉がある。

 続いて、ドイツも加わる。ドイツ国防省の報道官は、「ポーランドでの事件への即時対応として、ドイツのユーロファイター(NATOの戦闘機)も、その空域での戦闘空中哨戒作戦による航空警察強化の申し出を行う」と宣言している。

 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ブリュッセルでNATO大使の緊急会議を開き、ポーランドの事件について議論した。フィンランド外相(フィンランドはNATO加盟国ではないが、会議に招待された)によれば、「(ウクライナ上空の)領空閉鎖は間違いなく議論されるだろう。ウクライナをどう守るか、さまざまな選択肢が俎上にあがっている」という。

 ドイツは、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することは、ロシアとNATOの直接対決の恐れがあると指摘し、拒否したと伝えられているが、そもそもなぜこのような議論がなされるようになったのか、不思議でならない。ウクライナは地対空ミサイルを発射し、それがポーランドに着弾したのをNATOが追跡した。その結果、NATO加盟国はNATO憲章第4条を発動し、NATO軍機による飛行禁止区域の設定と連動して、ウクライナ領空にNATOの防空機能を拡大する可能性を議論することになった、というのはおかしな筋道ではないのか。


<関連記事>ウクライナ側、ミサイル発射認める ポーランド爆心地付近で - CNN

 元NATO政策企画部長のファブリス・ポティエ氏は「ウクライナのロケットがポーランドに着弾した味方同士の事件であっても、ポーランドが第4条を発動する十分な根拠があると思う」と明言した。

 ポティエ氏が言っていることをはっきりさせておく。ウクライナが地対空ミサイルを発射し、それがポーランドに着弾したため、NATOは第4条の発動を正当化することで、ウクライナでのNATOとロシアの紛争を引き起こし、核兵器による世界絶滅につながる可能性があるというのである。

 NATOが全世界に脅威を与えているという説について、少しでも疑念がある人もいただろうが、そんな疑念を持つ人はこの先、全くいなくなるだろう。

 ポーランドに落ちたミサイルがウクライナ製であることは誰もが認めているにもかかわらず、その可能性を否定し、NATOの介入を期待してロシアを非難するウクライナの指導者になり代わって、この話が広められていることは、この危機の狂気性をさらに高めるだけである。

 今回、世界はNATOの第4条によって引き起こされる死刑宣告の危機を回避したように見えるが、NATOがウクライナへの軍事介入を正当化する理由を求めて、パブロフ的反応で一触即発の危機を引き起こしたことは、誰もが厳しく警戒すべきものである。

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