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米政権がマスコミを使って、ウクライナ支援を支持する世論を醸成しようとした手口

<記事原文 寺島先生推薦>

How the US government attempts to control public perception of its aid to Ukraine
A recent media expose on the US effort to arm Ukraine looks as if it’s been curated by the Biden administration to shape public perception
 
 米国政府が、ウクライナへの支援に対する米国の国民感情を抑制しようとしている手口とは 
 先日の報道により明らかになったのは、米国によるウクライナへの軍事支援に対する世論形成に、バイデン政権が関わっていたという事実だった。

筆者:スコット・リッター(Scot Ritter)


Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector.  
@RealScottRitter@ScottRitter

出典:RT

2022年11月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月19日
 

米国製FIM-92スティンガー・ミサイルを運搬中のウクライナ軍兵士たち©  Sergei SUPINSKY / AFP

 NBCニュースが出した記事によると、 この出来事をよく知っている4人の関係者からの話として、米国のジョー・バイデン大統領と、通話相手であったウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の電話会談が、怒りの電話になったという事件があったようだ。そしてその理由は、ゼレンスキーがバイデンにさらなる援助を要求したからだったという。

 6月15日、バイデンはゼレンスキーに電話をかけ、ゼレンスキーに10億ドルほどの支援(その中には米国防省の武器庫にある3億5000万ドル相当の武器や設備の譲渡や、米国防省「ウクライナ安全保障支援構想」のもとでの6億5000万ドルの追加支援も含まれていた)をウクライナに送ることになったことを伝えた。このような両大統領間での電話のやり取りが普通に行われるようになったのは、2022年2月にロシアがウクライナへの派兵を決めてからのことで、その電話では、バイデンがゼレンスキーに、支援計画における主要な支援があるごとに報告を行っていた。その計画では、6月15日時点で、米国による軍事支援として、56億ドルがウクライナに送られることになっていた。

 ただし今回の電話において、ゼレンスキーは、これまで行ってきたように、米国大統領に賛辞を送るのではなく、一歩踏み込んで、さらなる支援を要求し、6月時点での支援内容には含まれていなかったある特定の設備を要求したのだった。NBCの情報筋によると、バイデンが怒りを示したのは、その時点だったという。以下はNBCの記事からだ。「米国民はずっとかなり気前よくウクライナに支援してきたし、米政権や米軍もウクライナを助けようと必死に努力してきた、とバイデンは声を荒らげ、ゼレンスキーはもっとそのことに対する感謝の意を示せるだろう、と語った。」

 NBCの報道によると、バイデンが怒った理由は、ゼレンスキーが米国に対する感謝の気持ちが欠けていたためだという。(NBCによると、両指導者はそれ以降はお互い歩み寄ったとのことだ)。しかし、バイデン大統領府からすれば、段々と大きくなっている実感があったのだ。その実感とは、ウクライナでの戦争支援に白紙小切手を出し続けることに対して、国会の両党派からの支持が薄れてきたことだ。来たる中間選挙において、共和党が下院での過半数支配を取り返すことが期待されていて、上院での過半数支配も窺っているなか、バイデン政権は、選挙後から現職議員の任期がきれる来年1月までの、いわゆるレームダック*期間に、さらにウクライナへの支援として400~600億ドルを捻出する構えをとるようだ。この新しい支援計画については、共和党からの激しい反発が予想されていて、共和党の過半数支配下にある新たな議会が開かれるまで、その議案に対する回答を先送りする作戦に出ると見られている。
  *lame-duck 「足を引きずったカモ(アヒル)」から「再選に落ちて最後の任期を務めている落選議員(のいる期間)」の意。


関連記事: US troops on the ground in Ukraine – media

 NBCニュースが、バイデン・ゼレンスキー間の電話についての人騒がせな報道をする直前に、ザ・ニューヨーカー誌は、米・ウクライナ間の軍事協力の現状についての一際目立つ論説記事を出した。その記事の題名は、「ウクライナを軍事化させる米国の努力の内側」というもので、著者は同誌の寄稿者であるジョシュア・ヤファ氏だった。ヤファ氏は、広範に及びながら、詳細な視点で、米・ウクライナ間の複雑なやり取りをまとめ、軍装備の点だけではなく、米・ウクライナ間の軍や諜報機関の活発な協力体制についても触れている。具体的には、両国の軍や諜報機関が、今回のロシア・ウクライナ間の紛争で実際に行っている行動に関する記述もあり、米国がミサイル発射装置を提供した事実を裏付ける数値も示している。ミサイル発射装置の例をあげると、M777榴弾砲や、M142 高機動ロケット砲システムなどだ。

 この事実から以下の主要な2点を要約することができる。ひとつ目は、米国の兵器がウクライナがロシアに対抗する助けとなることで、世界に対して、「プーチンは打倒できる相手だ」ということを示せるという点だ。2つ目は、米国は、超えてはいけない線を踏み外して、戦争が激化し、モスクワ当局との直接対決にならないように細心の注意を払っている、という点だ。

 長年モスクワを拠点に活動していた体験のあるヤファ氏は、ロシア事情に関して経験豊富な記者だ。彼の筆による最新のこの記事を書くにあたり、ヤファ氏が利用している情報源は、幅広く規模も大きく、米・ウクライナ両国の抑えておくべき要人の公人たちを網羅している。名を明かしている情報源も、匿名の情報源もみな、ヤファ氏に内部情報のようなものを伝えるのに適した要職についている人々だ。そのおかげで、彼の記事は魅力的で、得られる情報も多く、読み応えもある。

 ウクライナ側でヤファ氏が取材したのは、アレクセイ・レズニコフ国防相、 ミハイル・ポドリャク大統領主席補佐官、アレクセイ・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記、「ウクライナ軍の高官」である、ヴァレリー・ザルジニー軍総司令官の側近だ。ウクライナの高官が西側の記者たちと関わることはよくあることで、その目的は現在進行中のロシアとの紛争についての言説を形成する取り組みの一つだ。ヤファ氏がこれらの人物たちにインタビューできたことが、驚きではない。むしろ、これらの高官たちが、これまでは不明瞭だった、この紛争で実際に取られている、米国とウクライナ間の緻密な協力関係についての詳細を明らかにしたことが、驚きだった。

 米国は他諸国との秘密の協力関係を明らかすることについては、非常に気をつけている。このような問題に関して沈黙を貫くことは、米国側の関係者たちだけにとどまらず、この秘密活動に関わっている外国側の人々にも課されている。端的に言うと、上記のウクライナ側の3名の高官たちが、ヤファ氏の前に座って、このような米・ウクライナ間の協力体制について話をすることに同意するなど、普通はありえないのだ。
それが可能になるのは、事前にバイデン政権がこれらの高官たちに、取材を受けることを承認していた場合のみだ。

 これらのウクライナ側の高官たちが、この件に関するヤファ氏の取材に対して協力することを決めた際に、バイデン政権がどれだけ絡んでいたかは、この記事の取材に応じた匿名の情報筋について詳しく調べれば明らかになる。「対ウクライナ政策に関わっていたバイデン政権内の役人」、「国防省の高官」、「バイデンの大統領府内でのウクライナ問題に関する議論の内容を知っている人物」、「行政官」、統合参謀本部議長ミリー将軍に近い「米国の高官」、「バイデン政権内の高官」、そして「米国諜報機関の高官」などの多くの人々が、ヤファ氏のインタビューに応じていた。


関連記事: Moscow issues update on frontline reinforcements

 情報が漏れないように細心の注意が払われている国家安全保障関連の活動に触れた経験がある人なら誰でも承知していることだが、このような活動に関しては2つの厳しい壁がある。ひとつは、このような活動は厳しく機密が守られていて、しかも全体像が見えにくいよう細分化されているという壁で、もうひとつは、 このような活動について、権威からの許可なしに、活動の内容を外に漏らすことは、重大な法律違反行為とされ、情報をメディアに渡したものは誰でも、処罰や投獄の対象となる、という壁だ。

 そうであるので、ヤファ氏が利用したすべての情報筋は、集団自殺をすると言われているネズミ科のレミングのような欲求に即座に囚われて、目に見えない崖から飛び込もうと、自身の経歴を失い、牢屋に入れられることも辞さずに、ニューヨーカー誌の若きヤファ記者が、一世一代のスクープを書きあげる手助けをした、ということになる。 あるいは、ヤファ氏の記事は、バイデン政権の情報戦の一環で、その記事を出させる目的は、米・ウクライナ間の軍事協力関係について肯定的な世論を形成するためだとも考えられる。つまり、大手メディアを使ってウクライナの件を世間の討論の場に持ち込むという、中間選挙に向けた世論形成を行おうという、政権側の各所に手を回した努力、の表れ、と取ることもできるのだ。

 私なら後者に賭ける。

 良質な報道とはすべて、「下から上に向かう」記事だ。記者が或るネタを嗅ぎつけ、現場に向かい、関係者から話を聞こうと走り回る記事だ。速記記事とは、情報筋が、自分の口元に差し出してきた匙の中にあるネタを書く記事のことだ。その情報筋の狙いは、とある企みに資することだ。事実に基づく真実を追い求めることが目的では全くない。重要案件についての世論形成が、その目的だ。

 ヤファ氏の「ウクライナを軍事化する米国の努力の内側」という記事は、政府が監督した狡猾で秀逸な速記記事だ。こんな記事を、報道とは呼べない。すべての読者は、そのことを心して読むべきだ。
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