フョドール・ルキャーノフ(Fyodor Lukyanov):「サウジアラビアがBRICSに参加する可能性がある。それは世界の西側支配から離脱する動きが止まらないことを示している」
<記事原文 寺島先生推薦>
Fyodor Lukyanov: The possibility of Saudi Arabia joining the BRICS shows the world is moving on from Western dominance
(BRICSが)市場戦略として誕生してから20年、その構想は思いもよらない好転を遂げた。
著者: フョードル・ルキャーノフ
出典:RT
2022年10月21日
By Fyodor Lukyanov, the editor-in-chief of Russia in Global Affairs, chairman of the Presidium of the Council on Foreign and Defense Policy, and research director of the Valdai International Discussion Club.
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年11月12日

FILE PHOTO. © Host Photo Agency/Pool /Anadolu Agency/Getty Images
南アフリカのシリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領は今週初め、リヤドから帰国し、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子が自国のBRICS加盟の意思を表明したとのニュースをもたらした。
アルゼンチンやイランも春に同じことを発表しており、それほど驚くことではない。このままでは、この拡大する組織体のために、もっともっと複雑な略語を考える必要がありそうだが、そんなことはどうでもいい。
BRICSをめぐる盛り上がりは、今、世界で起きている変化のひとつの兆候だ。
BRICS(もともとはBRICと呼ばれていた)、ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール(Jim O’Neill)が、今世紀初め、実際的な用途のために考案した人為的な組織体である。投資家は新興国を「売る」必要があったため、成功実績のあるマーケティング戦略を用いたのである(「ブロックを積み重ねる」とはうまい言葉遊だ)。オニールのやり方もあり、BRICSは長い間、主に経済という角度から見られていた。
しかし、この認識は、最終的には関係国の、真の友好関係樹立を意味する言葉ではなかった。彼らは非常に異なっており、互いに遠く離れており、経済協力を強化するための共通の枠組みを必要とせず、すべては二国間レベルで行うことができたからだ。また、BRICSを結びつける最初の理由であった成長率も変化した。予想されたことではあるが、さまざまなタイプの上昇と下降があった。

関連記事:Timofey Bordachev:Here’s why the emergence of China as a global power is in Russia’s interests
BRICSという構想は、そのイメージが再構成されなかったなら、後からの面白い思いつきというレベルを超えることはなかっただろう。2006年以来、BRIC/BRICSは閣僚レベル、そして元首レベルの定例会議の定番となっている。政治的共同体という特質が表面化するにつれ(強調しておかなければならないのは、これはあくまでも非公式)、基準が自然に形成された。BRICSは完全な主権を持つ、すなわち完全に独立した政策を追求できる国の集まりであるということである。
これは、政治的な自律性(外部の意見に左右されない)だけでなく、この目標を実現するための経済的な潜在力があることも意味している。これが達成できる国はそう多くない。
西側諸国では、今日、米国だけがそのような権利を持っているように見える。他の諸国は、どんなに経済的に発展した国であっても、同盟に参加することによって、自らの政治的主権を自主的に制限している。
しかし、技術的な「主権者連合」というだけで、新しい枠組みが生まれたわけではない。BRICSの中で経済的な結びつきを強めようという試みは、大きな熱狂をもって迎えられることはなかった。また、BRICSをG7への対抗勢力として位置づけようという動きも、すべての参加国が欧米とのつながりを最重要と考えているため、共感を得られなかった。
しかし、この状況は一変した。モスクワが引き起こした2022年の出来事によって、世界は明らかに、ロシアに対して結集する西側部分と、様子見の部分とに分かれた。西側諸国は、モスクワを罰し、不服従がどのように罰せられるかを示すために、あらゆる圧力を意のままに駆使した。
結果は極めて予想外であった。他のすべての国、特にBRICSの大国や自国の役割を主張する国々は、欧米のキャンペーンに参加しないばかりか、そうした姿勢が米国とその同盟国から反発を受ける危険性があるにもかかわらず、全面的に拒否したのである。
もちろん、これはロシアの行動を支持するということではなく、外圧の形態を拒否するということである。そして、それは本質的にシステム的なものであり、世界秩序の特殊性に関連しているため、それに対抗する方法は、世界秩序の特殊性を変える必要がある。
そこで明らかになったのは、BRICSには大きな可能性があるということだ。かなり曖昧なグループ分けかもしれないが、代替的な国際秩序の枠組みに関心を持つ人々にとっては、BRICSは何より備えとなるものである。前述した完全主権(政治的、経済的)は、これらの選択肢を選ぶ前提条件である。
関連記事:Dmitry Trenin:Putin has proclaimed a new national idea for Russia as it abaondons the dream of Greater Europe
したがって、BRICSへの参加は、確固とした欧米の支配を抜け出そうとする世界に属していることの証となる。必ずしも対立する必要はない。
西側の諸制度を迂回し、それとやりとりする危険性を低減できることの方が、はるかに価値がある。例えば、米国やEUが管理する手段に頼らず、金融、経済、貿易関係を行う同様な方法を構築することである。
リヤド(サウジアラビア政府)はその参加意欲を隠そうともしない。もちろん、重要な物質資源を支配し、世界の価格を規制する能力を持つ国サウジアラビアは、独立した行動をとる余裕があり、交流に何だかんだと条件を課さない快適な相手国を選択することができる。
覇権国家が主導する中央集権的な国際システムは、いずれにせよ終焉を迎えることになる。ウクライナ紛争がどのように終結しようとも、そうなるのである。従って、多様な定式が強く求められるようになる。現在進行中の新しい情勢は、BRICSの展望を切り開くだろう。
BRICSの略号を考案したイギリス人(ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール)は、20年前にはこのようなシナリオを想像していなかっただろう。しかし、人生は時として、その発端がどんなにたわいもないと思われるような事業にも寛大に対応してくれることがある。
Fyodor Lukyanov: The possibility of Saudi Arabia joining the BRICS shows the world is moving on from Western dominance
(BRICSが)市場戦略として誕生してから20年、その構想は思いもよらない好転を遂げた。
著者: フョードル・ルキャーノフ
出典:RT
2022年10月21日
By Fyodor Lukyanov, the editor-in-chief of Russia in Global Affairs, chairman of the Presidium of the Council on Foreign and Defense Policy, and research director of the Valdai International Discussion Club.
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年11月12日

FILE PHOTO. © Host Photo Agency/Pool /Anadolu Agency/Getty Images
南アフリカのシリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領は今週初め、リヤドから帰国し、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子が自国のBRICS加盟の意思を表明したとのニュースをもたらした。
アルゼンチンやイランも春に同じことを発表しており、それほど驚くことではない。このままでは、この拡大する組織体のために、もっともっと複雑な略語を考える必要がありそうだが、そんなことはどうでもいい。
BRICSをめぐる盛り上がりは、今、世界で起きている変化のひとつの兆候だ。
BRICS(もともとはBRICと呼ばれていた)、ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール(Jim O’Neill)が、今世紀初め、実際的な用途のために考案した人為的な組織体である。投資家は新興国を「売る」必要があったため、成功実績のあるマーケティング戦略を用いたのである(「ブロックを積み重ねる」とはうまい言葉遊だ)。オニールのやり方もあり、BRICSは長い間、主に経済という角度から見られていた。
しかし、この認識は、最終的には関係国の、真の友好関係樹立を意味する言葉ではなかった。彼らは非常に異なっており、互いに遠く離れており、経済協力を強化するための共通の枠組みを必要とせず、すべては二国間レベルで行うことができたからだ。また、BRICSを結びつける最初の理由であった成長率も変化した。予想されたことではあるが、さまざまなタイプの上昇と下降があった。

関連記事:Timofey Bordachev:Here’s why the emergence of China as a global power is in Russia’s interests
BRICSという構想は、そのイメージが再構成されなかったなら、後からの面白い思いつきというレベルを超えることはなかっただろう。2006年以来、BRIC/BRICSは閣僚レベル、そして元首レベルの定例会議の定番となっている。政治的共同体という特質が表面化するにつれ(強調しておかなければならないのは、これはあくまでも非公式)、基準が自然に形成された。BRICSは完全な主権を持つ、すなわち完全に独立した政策を追求できる国の集まりであるということである。
これは、政治的な自律性(外部の意見に左右されない)だけでなく、この目標を実現するための経済的な潜在力があることも意味している。これが達成できる国はそう多くない。
西側諸国では、今日、米国だけがそのような権利を持っているように見える。他の諸国は、どんなに経済的に発展した国であっても、同盟に参加することによって、自らの政治的主権を自主的に制限している。
しかし、技術的な「主権者連合」というだけで、新しい枠組みが生まれたわけではない。BRICSの中で経済的な結びつきを強めようという試みは、大きな熱狂をもって迎えられることはなかった。また、BRICSをG7への対抗勢力として位置づけようという動きも、すべての参加国が欧米とのつながりを最重要と考えているため、共感を得られなかった。
しかし、この状況は一変した。モスクワが引き起こした2022年の出来事によって、世界は明らかに、ロシアに対して結集する西側部分と、様子見の部分とに分かれた。西側諸国は、モスクワを罰し、不服従がどのように罰せられるかを示すために、あらゆる圧力を意のままに駆使した。
結果は極めて予想外であった。他のすべての国、特にBRICSの大国や自国の役割を主張する国々は、欧米のキャンペーンに参加しないばかりか、そうした姿勢が米国とその同盟国から反発を受ける危険性があるにもかかわらず、全面的に拒否したのである。
もちろん、これはロシアの行動を支持するということではなく、外圧の形態を拒否するということである。そして、それは本質的にシステム的なものであり、世界秩序の特殊性に関連しているため、それに対抗する方法は、世界秩序の特殊性を変える必要がある。
そこで明らかになったのは、BRICSには大きな可能性があるということだ。かなり曖昧なグループ分けかもしれないが、代替的な国際秩序の枠組みに関心を持つ人々にとっては、BRICSは何より備えとなるものである。前述した完全主権(政治的、経済的)は、これらの選択肢を選ぶ前提条件である。

関連記事:Dmitry Trenin:Putin has proclaimed a new national idea for Russia as it abaondons the dream of Greater Europe
したがって、BRICSへの参加は、確固とした欧米の支配を抜け出そうとする世界に属していることの証となる。必ずしも対立する必要はない。
西側の諸制度を迂回し、それとやりとりする危険性を低減できることの方が、はるかに価値がある。例えば、米国やEUが管理する手段に頼らず、金融、経済、貿易関係を行う同様な方法を構築することである。
リヤド(サウジアラビア政府)はその参加意欲を隠そうともしない。もちろん、重要な物質資源を支配し、世界の価格を規制する能力を持つ国サウジアラビアは、独立した行動をとる余裕があり、交流に何だかんだと条件を課さない快適な相手国を選択することができる。
覇権国家が主導する中央集権的な国際システムは、いずれにせよ終焉を迎えることになる。ウクライナ紛争がどのように終結しようとも、そうなるのである。従って、多様な定式が強く求められるようになる。現在進行中の新しい情勢は、BRICSの展望を切り開くだろう。
BRICSの略号を考案したイギリス人(ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール)は、20年前にはこのようなシナリオを想像していなかっただろう。しかし、人生は時として、その発端がどんなにたわいもないと思われるような事業にも寛大に対応してくれることがある。
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