「居場所を間違った子どもたち」。ドンバス在住、ファイナ・サヴェンコワ(13)さんによるエッセイ
<記事原文 寺島先生推薦>
Wrong Children: An Essay by Faina Savenkova, a Child of Donbass
筆者:デボラ・L.アームストロング(Deborah L. Armstrong)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2022年10月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年11月5日

Photo: Faina Savenkova
今週、私は、長文ですが、お金がもらえる(!)翻訳活動に勤しんでいます。ですので、さらに記事を書くよりは、ドンバス在住の子ども作家、ファイナ・サヴェンコワさんの作品を紹介することにします。
ファイナさんはたったの13歳で、11歳の時から作品を執筆しています。ファイナさんは既に2冊の小説を書き上げています。ファイナさんは、ロシアでよく知られていますが、ファイナさんの作品を読めば、なぜロシアで彼女が神童と考えられているかが、お分かりになることでしょう。執筆活動に取り組むだけではなく、ファイナさんは活動家でもあります。国連に顔を出し、ドンバスの子どもたちのことを世界に知らせようとしました。不幸にも、この行動のために、ファイナさんは悪名高い「ミロトウォレッツ」の暗殺リストに載せられてしまいました。この暗殺リストは、ウクライナ当局の支援のもと出されているもので、 標的とされた何千人もの記者や活動家などの一般市民の個人情報を晒しているものです。そのなかには300人以上の子どもたちも含まれています。
ファイナさんは、執筆やメディアへの出演を続け、ミロトウォレッツのことを世間に広めようとしています。ウクライナの国粋主義勢力が行っている戦争犯罪について発信することは、ウクライナの法律では、「情報テロ行為」とされていますが、そんなことではファイナさんによる自分の思いの発露を止めることはできません。
皆さんにぜひ、ファイナさんの思いを受け止めていただきたいです。
「間違った子どもたち」
ファイナ・サヴェンコワ
私が皆さんにルガンスクで起きていることを伝えはじめてもう3年になります。私の日々の生活で続いているこの戦争には、悲しみもあれば喜びもあります。
一年前、「ミロトウォレッツ(平和創造者という意味です)」のサイト上で、私の個人情報が公表されました。私は西側諸国の指導者やアーティストたちにたくさん手紙を書きました。私が求めていたのは以下の2点だけです。それは、ミロトウォレッツ上にあるすべての子どもたちの個人情報を削除することと、ドンバスの子どもたちが、殺されることなく、平和な生活を送れる方法を見つけることです。「ミロトウォレッツ」との戦いが始まったとき、私の友人のウクライナの記者たちは、なぜ私がゼレンスキーに手紙を書かず、ただインタビューで彼の名前をあげただけなのかを聞いてきました。その時は答えるのが難しかったです。まだウクライナとドンバスのあいだで、平和が実現し、国連のグレーテス事務総長やユニセフが私を助けてくれると思っていたのです。この2つの機関は国際的によく知られた機関ですので。
でも、残念なことに、私の考えは間違っていました。私がお願いしたことは、この2つの国際機関からすべて無視され、ウクライナは軍事力で私たちを征服しようと決めたのです。私の努力や夢は夢のまま終わっていました。ただひとつ良かったことは、その時、ゼレンスキーに手紙を書かなかったことです。今なら、なぜ私が手紙をかかなかったかが、わかります。 それは、ドネツクやゴロフカやアルチェフスクなどの都市を砲撃するよう命令している人に手紙を書いて、子どもたちを殺さないよう頼むことなどできないからです。出し惜しむことなく、何千人もの兵士を送り込み、その兵士たちを死に追いやり、テロ行為や、子どもたちの殺害を命じる大統領に手紙など書けるわけがありません。こんな虐殺を起こし、自分の国の領土の半分をなくしてしまった大統領に手紙など書けるわけがありません。 負け犬に書く手紙などありません。ドンバスやヘルソンやザポリージャで、子どもたちが 毎日亡くなっています。 その責任はすべてゼレンスキーにあります。全てをなくしてしまう大統領、ゼレンスキーに。
さて、ユニセフや国連やアムネスティ・インターナショナルはどうでしょうか ?ウクライナ軍に殺された子どもたちについて、何か発言したでしょうか?もちろんそんなことはありません。「ミロトウォレッツ」のことについての対応と全く同じです。分かっているはずなのに、黙っていますし、「心配」だとも言いません。いつでもどこでも、あの人たちは黙っています。ユーゴスラビアやシリアやパレスチナやアフガニスタンやイラクやリビアの子どもたちが殺されていた時も、黙っていたのですから。尊敬を集めているこのような機関が、子どもたちが殺されている残酷な状況も目に入らない振りをするのであれば、「ミロトウォレッツ」についての話に何か言うことがあるでしょうか? そうは思えません。結局、私たちは間違った子どもたちなのです。ユニセフやアムネスティ・インターナショナルから見れば、私たちは、間違った場所で生まれて、生活しているのです。 私は以前、エッセイの中で、こう書きました。「戦争にさらされている子どもたちの声が聞こえないのは、大人たちがその声を聞こうとしないから」と。本当にそうなのです。残念なことに、私たち子どもは、そんな大人たちには興味がありません。私たちはそんな大人たちとは違います。大人たちは私たちが殺されても問題ないと考えているようです。そう、静かな殺され方をしたら、です。他の人に私たちが助けてと叫ぶ声を聞かせようとしないのです。本当に残念です。私の生まれた国が、私の大切な全てを、私が愛する全てを砲撃し、破壊しようとしています。それを可能にしているのは、そんな行為を笑顔で認めて、止めることができる戦争を止めようとしない大人たちがいるからです。 不幸なことですが、ウクライナを助けているすべての人たちは、この戦争が自分たちのところまで近づいていることが分かっていないのです。
アメリカ合衆国やヨーロッパの普通の人たちは、ウクライナ軍が行っている残虐行為や、一般市民たちに行っている残酷な砲撃や殺害に気づいていません。
アメリカやヨーロッパの市民たちの耳に届いているのは、この8年間、私たちが自爆攻撃をしている、とかロシア軍が私たちを砲撃している、という話です。この仕打ちがあったから、私たちは、2022年にロシアがここに来てくれるのをずっと待ち続けていたこと は、分かりきっていることなのに。真実とは違う話が流れてしまっています。
でも私は、ずっとこのままだとは絶対に思いません。最後には真実が勝つからです。一番辛いのは、勇気を失わないようにすることです。たとえやることすべて上手くいかなくって、いい結果が得られない時も、です。私たちは、話を聞いてもらえていないのですから。でも、何をやっても無駄だ、と思った時に、自分のやっている事が無駄じゃないと、もう一度思えるような事件が起こるんです。ローマ教皇から手紙をもらった時がそうでした。 私がモスクワにいた時、フランシス教皇から返事を受け取ったんです。 私のイタリアの友人によると、教皇が誰かに返事を書くことはめったにないそうです。それなのに教皇は、私とともに平和に祈りを捧げてくれました。教皇自身が返事を書かれたのか、代理の方が書かれたのかは分かりませんが、大事なことは、ローマ教皇が、ドンバスの子どもからの要求に初めて答えてくれて、「ウクライナの敵」と見なされている私と一緒に、平和に祈りを捧げたいと思ってくれたという事実です。教皇は、私とともに祈ってくれると言ってくれました。ウクライナでは人間扱いされていない、この私とです。私は必ず教皇とともに、ウクライナにより殺害された何百人もの子どもたちのために、祈りを捧げます。そして私たち全てが必要としている平和な生活が実現するよう、祈りを捧げます。

バチカンからファイナ・サヴェンコワさんに届いた手紙。
ファイナさんのエッセイの英語への翻訳は、デボラ・アームストロングによる。
Wrong Children: An Essay by Faina Savenkova, a Child of Donbass
筆者:デボラ・L.アームストロング(Deborah L. Armstrong)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2022年10月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年11月5日

Photo: Faina Savenkova
今週、私は、長文ですが、お金がもらえる(!)翻訳活動に勤しんでいます。ですので、さらに記事を書くよりは、ドンバス在住の子ども作家、ファイナ・サヴェンコワさんの作品を紹介することにします。
ファイナさんはたったの13歳で、11歳の時から作品を執筆しています。ファイナさんは既に2冊の小説を書き上げています。ファイナさんは、ロシアでよく知られていますが、ファイナさんの作品を読めば、なぜロシアで彼女が神童と考えられているかが、お分かりになることでしょう。執筆活動に取り組むだけではなく、ファイナさんは活動家でもあります。国連に顔を出し、ドンバスの子どもたちのことを世界に知らせようとしました。不幸にも、この行動のために、ファイナさんは悪名高い「ミロトウォレッツ」の暗殺リストに載せられてしまいました。この暗殺リストは、ウクライナ当局の支援のもと出されているもので、 標的とされた何千人もの記者や活動家などの一般市民の個人情報を晒しているものです。そのなかには300人以上の子どもたちも含まれています。
ファイナさんは、執筆やメディアへの出演を続け、ミロトウォレッツのことを世間に広めようとしています。ウクライナの国粋主義勢力が行っている戦争犯罪について発信することは、ウクライナの法律では、「情報テロ行為」とされていますが、そんなことではファイナさんによる自分の思いの発露を止めることはできません。
皆さんにぜひ、ファイナさんの思いを受け止めていただきたいです。
「間違った子どもたち」
ファイナ・サヴェンコワ
私が皆さんにルガンスクで起きていることを伝えはじめてもう3年になります。私の日々の生活で続いているこの戦争には、悲しみもあれば喜びもあります。
一年前、「ミロトウォレッツ(平和創造者という意味です)」のサイト上で、私の個人情報が公表されました。私は西側諸国の指導者やアーティストたちにたくさん手紙を書きました。私が求めていたのは以下の2点だけです。それは、ミロトウォレッツ上にあるすべての子どもたちの個人情報を削除することと、ドンバスの子どもたちが、殺されることなく、平和な生活を送れる方法を見つけることです。「ミロトウォレッツ」との戦いが始まったとき、私の友人のウクライナの記者たちは、なぜ私がゼレンスキーに手紙を書かず、ただインタビューで彼の名前をあげただけなのかを聞いてきました。その時は答えるのが難しかったです。まだウクライナとドンバスのあいだで、平和が実現し、国連のグレーテス事務総長やユニセフが私を助けてくれると思っていたのです。この2つの機関は国際的によく知られた機関ですので。
でも、残念なことに、私の考えは間違っていました。私がお願いしたことは、この2つの国際機関からすべて無視され、ウクライナは軍事力で私たちを征服しようと決めたのです。私の努力や夢は夢のまま終わっていました。ただひとつ良かったことは、その時、ゼレンスキーに手紙を書かなかったことです。今なら、なぜ私が手紙をかかなかったかが、わかります。 それは、ドネツクやゴロフカやアルチェフスクなどの都市を砲撃するよう命令している人に手紙を書いて、子どもたちを殺さないよう頼むことなどできないからです。出し惜しむことなく、何千人もの兵士を送り込み、その兵士たちを死に追いやり、テロ行為や、子どもたちの殺害を命じる大統領に手紙など書けるわけがありません。こんな虐殺を起こし、自分の国の領土の半分をなくしてしまった大統領に手紙など書けるわけがありません。 負け犬に書く手紙などありません。ドンバスやヘルソンやザポリージャで、子どもたちが 毎日亡くなっています。 その責任はすべてゼレンスキーにあります。全てをなくしてしまう大統領、ゼレンスキーに。
さて、ユニセフや国連やアムネスティ・インターナショナルはどうでしょうか ?ウクライナ軍に殺された子どもたちについて、何か発言したでしょうか?もちろんそんなことはありません。「ミロトウォレッツ」のことについての対応と全く同じです。分かっているはずなのに、黙っていますし、「心配」だとも言いません。いつでもどこでも、あの人たちは黙っています。ユーゴスラビアやシリアやパレスチナやアフガニスタンやイラクやリビアの子どもたちが殺されていた時も、黙っていたのですから。尊敬を集めているこのような機関が、子どもたちが殺されている残酷な状況も目に入らない振りをするのであれば、「ミロトウォレッツ」についての話に何か言うことがあるでしょうか? そうは思えません。結局、私たちは間違った子どもたちなのです。ユニセフやアムネスティ・インターナショナルから見れば、私たちは、間違った場所で生まれて、生活しているのです。 私は以前、エッセイの中で、こう書きました。「戦争にさらされている子どもたちの声が聞こえないのは、大人たちがその声を聞こうとしないから」と。本当にそうなのです。残念なことに、私たち子どもは、そんな大人たちには興味がありません。私たちはそんな大人たちとは違います。大人たちは私たちが殺されても問題ないと考えているようです。そう、静かな殺され方をしたら、です。他の人に私たちが助けてと叫ぶ声を聞かせようとしないのです。本当に残念です。私の生まれた国が、私の大切な全てを、私が愛する全てを砲撃し、破壊しようとしています。それを可能にしているのは、そんな行為を笑顔で認めて、止めることができる戦争を止めようとしない大人たちがいるからです。 不幸なことですが、ウクライナを助けているすべての人たちは、この戦争が自分たちのところまで近づいていることが分かっていないのです。
アメリカ合衆国やヨーロッパの普通の人たちは、ウクライナ軍が行っている残虐行為や、一般市民たちに行っている残酷な砲撃や殺害に気づいていません。
アメリカやヨーロッパの市民たちの耳に届いているのは、この8年間、私たちが自爆攻撃をしている、とかロシア軍が私たちを砲撃している、という話です。この仕打ちがあったから、私たちは、2022年にロシアがここに来てくれるのをずっと待ち続けていたこと は、分かりきっていることなのに。真実とは違う話が流れてしまっています。
でも私は、ずっとこのままだとは絶対に思いません。最後には真実が勝つからです。一番辛いのは、勇気を失わないようにすることです。たとえやることすべて上手くいかなくって、いい結果が得られない時も、です。私たちは、話を聞いてもらえていないのですから。でも、何をやっても無駄だ、と思った時に、自分のやっている事が無駄じゃないと、もう一度思えるような事件が起こるんです。ローマ教皇から手紙をもらった時がそうでした。 私がモスクワにいた時、フランシス教皇から返事を受け取ったんです。 私のイタリアの友人によると、教皇が誰かに返事を書くことはめったにないそうです。それなのに教皇は、私とともに平和に祈りを捧げてくれました。教皇自身が返事を書かれたのか、代理の方が書かれたのかは分かりませんが、大事なことは、ローマ教皇が、ドンバスの子どもからの要求に初めて答えてくれて、「ウクライナの敵」と見なされている私と一緒に、平和に祈りを捧げたいと思ってくれたという事実です。教皇は、私とともに祈ってくれると言ってくれました。ウクライナでは人間扱いされていない、この私とです。私は必ず教皇とともに、ウクライナにより殺害された何百人もの子どもたちのために、祈りを捧げます。そして私たち全てが必要としている平和な生活が実現するよう、祈りを捧げます。

バチカンからファイナ・サヴェンコワさんに届いた手紙。
ファイナさんのエッセイの英語への翻訳は、デボラ・アームストロングによる。
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