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CIAが、幻覚剤LSDの人体実験において、アフリカ系アメリカ人たちを重点的に被験者にしていた

<記事原文 寺島先生推薦>

How the CIA Illegally Used African Americans for Experimental Drug Research

CIAが、アフリカ系アメリカ人たちを試薬実験に使った不法な手口

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年8月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10日31日


 
 今は、MKウルトラ作戦のことをご存知の方は多いだろう。何十年もの間、CIAは、非常に非道徳的な人体実験を行い、洗脳やマインドコントロールや拷問術の完成をめざしていた。おそらくこの作戦で最も悪名高い行為は、向精神薬、特にLSDを対象者たちに大量投与させたことだろう。これらの物質が、1948年にラングレーに拠点を置くCIAに関心を向けさせたのは、リヒャルト・クーンによる。クーンは、第二次世界大戦後のペーパークリップ作戦を通じて、密かに米国に連行された1600名のナチの研究者のうちの一人だった。これらの研究者たちの中には、その5年後にMKウルトラ作戦が正式に打ち立てられたとき、その作戦に関して直接相談をうけた人々もいた。

 それがLSDとは知らなかった米国民に、LSDを投与させた行為は、恥ずべき行為だ。実はCIAの工作員たち自身が、その接種を行ったこともあった。ただし、CIAが、目的を果たすために、精神病患者や囚人や薬物依存症の人たち(匿名のCIA工作員の言葉を借りると「反撃してこれなかった人たち」)を実験台にしていたという事実は、ほとんど知られていない。

 オタワ大学の文化・精神医療格差研究所(Culture and Mental Health Disparities Lab )が出した学術論文により、MKウルトラ作戦のよく知られていない中身に新しい光が当てられ、さらにこれまで全く知られていなかったこの作戦のある側面が、浮き彫りにされた。 つまり、有色人種、特にアフリカ系アメリカ人たちが、この作戦においてCIAにより、全く不均衡な割合で標的とされていた事実が、明らかになったのだ。

動物実験のように語られ、動物のような扱いを受けた

 1973年、CIAの秘密活動が、ウォーターゲート事件をきっかけに、公的に明るみにされる可能性を恐れ、当時のリチャード・ヘルムズCIA長官が、MKウルトラ作戦に関するすべての文書を破棄する命令を下した。

 しかし、何万もの書類がその措置から逃れることができた。さらに都合のよいことに、この作戦内で行われた人体実験についての論文や、査読済みの科学的な記事の重要な部分は、自由に閲覧できる形で公表されている。この人体実験は、80を超える公立や私立大学、刑務所、病院で行われていた。被験者が承知していたかどうかは別として、CIAのために精神的な薬物の人体実験がそれらの場所で行われていたのだ。その薬物の中で、もっとも関心が高く、頻繁に使用されていた物質がLSDだったが、DMT(ジメチルトリプタミン)やメスカリンやシロシビンやTHC(テトラヒドロカンナビノール)といった幻覚剤の効果についての調査も、幅広く行われていた。

 中でも、オタワ大学の研究団が、1950年代から1970年代にかけて書かれたこれらの論文のうちの49件について分析を行っている。これらの人体実験のうち4割は、CIAが直接運営する、ケンタッキー州の依存症研究センターで行われた。

 このセンターの敷地内には、「麻薬および向精神薬取締法」違反で起訴された囚人を収容する刑務所も置かれていた。その刑務所は、薬物研究の「特別病棟」であり、意図的に「中毒者」にされた囚人が収容されていた。
 
 研究者たちは、公然とこのセンターを利用して、以前薬物使用者だった人々や、現在薬物使用者である人々を対象に、好んで人体実験を実施していた。というのも、これらの人々は、違法薬物が持つ効果に対する「経験が豊富」であるので、薬物に手を染めないような禁欲的な人々よりも、安易にインフォームド・コンセント(ある医療を行う際の、医師と患者の間の合意)を行えると考えられていたからだ。実際、CIAにモルモットとして使われた被験者たちは、自分が何を投与されているか不明なことが頻繁にあった。

 利用可能な文献の分析を行った際、研究者たちは、公にされた被験者たちの人種や民族、被験者を集める戦略、実験の手法、被験者たちの身に危険が生じる可能性などについて調査した。それによると、これらすべての実験の被験者たちは、捕まえられたり、刑務所に収容された人々で、実験への参加は強制的で、危険な水準の注入量が使われていて、実験の結果得られる科学的な利点については、疑問が持たれるものであった。

 ほぼ9割の事例において、少なくとも一件の倫理違反が検出され、4分の3を超える事例において、現代の指針では認められない程度の非常に危険な量の注入が行われる日程が取られていて、15%の事例で精神障害をもつ被験者が使われた。ほぼ3割の事例で、有色人種の人々が被験者にされていた。

 多くの研究において、被験者の人種や民族は記録されていなかったが、オタワ大学の研究者たちによるさらなる調査により、実験が行われた被験者集合所には、過剰な数の黒人の米国民が来場していたことが明らかになった。MKウルトラ作戦において、迫害を受けた有色人種の実際の被験者数がずっと多かったという事実は、避けられない事実だ。例えば、当依存症研究センターで実験が行われた際、有色人種の割合は、ケンタッキー州の人口の約7%に過ぎなかったのに、実験に参加した囚人の66%が、黒人やメキシコ系の米国民だった。



オタワ大学文化・精神医療格差研究所

 CIAのよく知られたこのMKウルトラ作戦において、どの事例においても、有色人種の人々は白人の被験者よりもずっと苦しめられていたという事実は、この実験に関する身の毛のよだつような話の詳細から、完全に明らかになっている。例えば、1957年の実験記録によると、数多くの脆弱な人々が精神的にも肉体的にも拷問をうけていたことがわかる。とくに研究者が記載していたある一人の黒人の被験者は、まるで動物であるかのように扱われていた。

 LSDを投与されたこの人は、「野生動物のようにおびえた表情」を示し、「自分の恐怖を和らげる薬」を求めた、とある。その人に対する対応は、彼を縛り、他の被験者たちよりもずっと高い注入量で混合薬を投与させることだった。そしてその人の意思に反して、そうし続けたのだ。

 その前年も同様に、或る実験が黒人の被験者に対して行われた。その際、85日間、毎日180ミリのLSDが投与されていた。一方白人の被験者は、たった8日間、毎日75ミリのLSDが投与されただけだった。或る一人の黒人の被験者は、その投与により、「非常に深刻な」反応を示し、症状が回復したときに、その実験から抜けるよう懇願していた。 しかし、「かなりの努力を伴う説得」の結果、実験の継続に同意した、という。

 この実験を分析した研究者たちが特定したのは、被験者を確保するための不適切な圧力が、しばしばかけられていた、という事実だ。被験者になることを強制させるさまざまな技術が頻繁に取り入れられることにより、残忍で、時には命にも関わる実験に被験者が誘導され、実験が維持されていた

 例えば、依存症研究センターの囚人たちには、被験者に志願する見返りに、刑期の短縮が申し出られたり、 ヘロインなどの薬物が渡されたりしていた。これらの薬物は、実験が終了した時点で手渡されたり、後の「退所」時の「銀行口座」に預金される場合もあった。ほぼすべての事例において、実験の被験者たちは刑務所から早く退所するよりも、依存欲を持続させる方を選んでいた。


「X先生、これは深刻な話です」

 被験者たちが受けた実験の設定も、被験者の人種により大きく変えられていた。それは、同一の実験においても、だった。1960年に行われたLSDの効果を調べる実験では、薬物使用で有罪判決を受け、刑務所内の研究病室で薬物を投与された「黒人」の男性の一団と、調査団長の自宅という居心地のよい環境の中で、志願して、投与を受けた仕事持ちの白人の米国民からなる一団が、横並びで調査されていた。後者は、「不安を取り除かれた社会状況」での実験が意図されていた。

 このような事例から、この実験の目的は、白人と黒人の被験者の間で、向精神薬に対する反応がどう違うかを測定することだったように考えられる。そうとなれば、ある疑問が浮かぶ。それは、CIAはある特定の薬物が、一般市民全般と比べて、有色人種の人々に効果的なのかについて、明確に、(あるいは、大きな)関心を持っていたのだろうか、という疑問だ。


カリフォルニア州ビェジャスの模範囚労働者収容所
LSD研究計画に参加する志願者。1966年9月6日 Photo | AP

 オタワ大学の研究団を率いるダナ・ストラウス氏は、MKウルトラ作戦で、黒人の被験者の割合が不釣り合いに高かったことは、大きな人種差別に当たる行為だが、それはCIAが実験対象にしていた機関内の人種構成に偏りがあったからだけだ、と主張している。ただし、ストラウス氏は、CIAの研究者たちが、意のままに利用できる囚人を容易に集めることができなかったとしても、有色人種の人々を実験対象に選んだであろうことは確実だ、と考えている。それはアラバマ州タスキーギーでの梅毒実験事件の時と同じ手口だ。

 ストラウス氏はミントプレス社の取材にこう答えている。

 「囚人たちは既に黒人でいっぱいだった。実験者たちは、自由市民を被験者にすることもできたが、自由市民たちであれば、このような実験から逃れることも可能だった。当時、囚人の被験者のような社会的に脆弱な人々を保護する術はなかった。そのためそのような実験は、基本的に実験する側の思うがままであった。このような人たちが、これらの危険な研究の標的にされたのは、彼らが黒人で、囚人で、人間としての価値が低いと思われていたからだった」

 ナチの強制収容所の閉じられた環境で、ジョセフ・メンゲレのような怪物じみた人物が、健康や安全などは考慮に入れず、非情で恐ろしい人体実験をしていたのと同じように、刑務所か収容施設のいずれか、あるいは両方に入れられていた有色人種の人々が、「反抗できない人々」とされ、CIAによって途切れることなく被験者にされ、CIAの思いのままに、搾取され、権利を侵された。そしてCIAは、その行為に対して精査を受けたり、責任が追求されることはなかった。

 ストラウス氏によると、実験の過程において、研究者たちは、ギリギリの量までの向精神薬を投与して、人体の反応を調べていた、という。MKウルトラ作戦に関わっていた研究者たちが、アウシュビッツで展開されたような邪悪さ野蛮さに匹敵しなかったとしても、少なくとも私たちが分かる範囲で、アウシュビッツでの実験と同程度の被験者に対する軽蔑の念があったことは、いくつかの研究で明らかになっている。そのような蔑視があったことが、ある特定の実験において気ままで過剰な特性が見られた理由の説明になるだろう。 そのような実験では、実験目的が不明確で、実験の結果得られる科学的価値が全く見いだせないものだった。

 1955年、ある研究団が、スプリング・グローブ州立病院に入院中だった4人の統合失調症患者を被験者にした実験を行った。その病院があるのはメリーランド州のバルチモア市で、今は住民の大多数が黒人である市だ。被験者たちは、大量のLSDを、過剰な期間、投与された。 はじめは1日100ミリを2週間、その後1日の投与量をさらに100ミリ増やされ、どの程度まで量をあげても許容できるかについて調べられた。比較のために書き添えるが、現在の向精神薬研究の指針では、LSDの投与量の最大許容投与量は200ミリとされていて、さらに、投与期間を長くすることは危険である、と警告されている。

 投与行為とともに、研究者たちは配慮なしに被験者たちを監視することもしていた。そこには被験者に対する軽蔑と非人間的扱いがあった。この実験の結果をまとめた報告書に見られる客観的な表現から、この実験の堕落性が浮き彫りになる。研究者たちの卑劣な盗撮行為は過剰で、「トイレの回数」や「性欲」の観察までに及んでいた。その実験報告には、この4人の被験者たちが、どれくらいの頻度で、「尿を漏らし」、「便で汚す」かも書かれていた。さらには、どのくらいの頻度で、「自慰行為や性的な会話をする」かまで記載されていた。そして、1人の被験者が、自分たちが受けている酷い仕打ちについて、絶望的にこう語っていたことも記録されている。「X先生。これな深刻な問題です。私たちは惨めです。私たちをおもちゃにしないでください。」

「明らかな不法行為のもとでの研究」

 ストラウス氏からすれば、これだけ全貌が明らかなはずのMKウルトラ作戦の人種差別的中身が、世間から認識されておらず、長い間隠されていたという事実は、「我々がいったいどんな社会に住んでいるかの答えになるだろう」と記述している。

 CIAの研究者たちが、黒人の米国民や囚人たちの命を軽視していたのと同様に、学会の立場はそれ以来変わっていない。しかもその自覚さえない場合もある。ストラウス氏の記述によると、現在の学者たちも非白人の精神病治療についての関心は非常に薄い、という。ストラウス氏は、最近の幻覚剤を使った研究の8割以上は、非ヒスパニック系の白人であったという、最近の研究結果を指摘している。

 ストラウス氏はミントプレス紙の取材にこう答えている。「全体的に、幻覚剤の研究や、心理学や、学術研究機関は、今でも白人が支配的な分野だ。2015年、米国の85%以上の心理学者が白人で、黒人は、5%以下でした。黒人の心理学者である、モニカ・ウィリアムス博士は、MKウルトラ作戦で行われていた虐待と、道徳上許されない行為について調査した最初の研究者でした。私の考えでは、本当の疑問は、なぜウィリアムス博士以外に、これらの明らかに不法な研究について、調べた人がいなかったのか、というものです。」

 さらに衝撃的な事実は、科学者や医学教授は、非人道的で不法なナチの研究を持ち出し、その道徳性について熱く議論が交わされ続けている一方で、ストラウス氏や彼女の研究団が調査した、非常に非道徳的で、人種差別に基づいていたMKウルトラ作戦における研究に関しては、明らかにそのような懸念の声が上がっていないことだ。MKウルトラ作戦については、今でも合法的な学術的研究として引用され続けている。


幻覚誘発剤に関する1966年3月の裁判での証言において、LSDの標本を見せている科学者のセシル・ハイダー氏。Walter Zeboski | AP


 ストラウス氏の希望は、これらの研究論文がきっかけとなり、より幅広い議論が展開されることだ。その議論の中身は、研究による虐待が、有色人種の人々にどう影響を与えてきたか、そして今でもどう影響を与え続けているかについてと、精神医療研究が、どうすればより社会的責任や文化的発展を果たせるかについて、だ。

 より一般的な話をすれば、MKウルトラ作戦の真実照合委員会を立ち上げることが明らかに喫緊の課題である、ということだ。CIAの役員たちも、この研究に参加していた人々も責任を問われることもなければ、罰を受けることもなかった。彼らにはCIAの庇護のもとで行われた、人類に対する数え切れないほどの罪状がある。さらにこの計画の全貌は未だに不透明で、謎が多いままだ。この事例はずっと闇に包まれてきたのではあるが、もっと邪悪な秘密計画があったことも分かっている。その中には、MKウルトラ作戦の海外版といえるMKデルタ作戦も含まれる。

 2021年12月、CIAが、何十年もの間、身体に負担のかかる実験をデンマークの子どもたちにおこなっていた事実が明らかになった。その子どもたちの多くは孤児で、インフォームド・コンセントも受けていなかった。その後、成人した一人の被害者が、地域の機関で保存されていたこの研究を、残忍にも黙認していたことを示す文書を閲覧しようとした際、関係当局はその文書をシュレッダーにかけた。ヨーロッパの他の地域でも、CIAが同様の研究を行っていた可能性について、大きな疑問が浮かび上がる。

 明らかに、この隠蔽工作は継続されている。このような圧力がかかっている理由は、過去の歴史的犯罪行為に蓋をしたいという反射的な欲求のためという理由だけではなく、このような記録が明らかにされれば、CIAによる現在進行中の活動の曝露に繋がる可能性があるという理由もあることは確かだ。

 ミントプレス紙が4月に出した記事の通り、MKウルトラ作戦が公式に実在していた期間に研ぎ澄まされた、拷問器具や精神操作の技術が、 グアンタナモ湾収容施設の囚人たちのために使われ、大きな効果を出している。そのような技術が、今はどこでも使われていない、あるいはこの先使われることはない、と考えられる保証はない。

 リチャード・ヘルムズが恐れていた、MKウルトラ作戦に関する議会による調査は、最終的には1977年に採択された。その調査において証言者となった一人に、エドワード・M・フラワーズさんがいた。フラワーズさんは、CIAによるマインド・コントロールの実験の被験者とされた生き残っていた囚人の中で、唯一居場所が突き止められた人物だった。フラワーズさんは、1950年代に囚人施設に収容されていた時、依存性センターで幻覚剤の実験の被験者となっていた。国会の公聴会に出たことで、フラワーズさんは、科学という名のもとに、自分の身になされたことに関する
不穏な事実を新たに知ることになったのだが、そのことで何かが変わったわけではない。

 「公聴会に参加した時の第一印象の直感で、私は裏に何かあることに気づきました。このこと全ての後ろに、CIAの影がある、と感じました。奴らは、私を利用して、利を得ようとしていたのです」と、フラワーズさんは、何年も経った後で、回顧していた。「私が国会の証言台に2回目に上がった時です。私の近くには数名の人が座っていました。その人たちは、補償金についてしなければいけないことの話をしていました。でも補償金のことを聞いたのはその時限りでした。」

 これとは対称的な事例だが、1966年11月、CIAがカリフォルニア州でクロック・コカインの販売に手を貸していた疑いについて、人々からの怒りの声が強まっていた。CIAはそれで得られた資金をニカラグアでの秘密工作の資金に利用しようとしていた。これを受けて、当時のジョン・ドイッチCIA長官が、ロサンゼルス住民からの厄介な質問に対処させられることになった。質問の中身は、報道されたこの陰謀に関することで、この会議には前例のない規模の数の市民が参加していた。

 オタワ大学の研究団によるこの発見によって引き起こされた人々からの怒りに関して、CIAの代表者たちが、CIAについての説明を公表するよう再び圧力をかけられない、という道理はない。CIAにはそうすべき理由がいくらでもある。
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