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EU議員は、バネッサ・ビーリー記者などドンバス住民投票のすべての監視員への制裁を要求

<記事原文 寺島先生推薦>

EU parliamentarian calls to sanction Vanessa Beeley and all observers of Donbass referendums
(欧州議会議員がバネッサ・ビーリー記者などドンバスの住民投票監視員全員の制裁を要求)

筆者:マックス・ブルーメンタール

出典:グレー・ゾーン

2022年9月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月10日


左:フランスのナタリー・ロワゾー欧州議会議員
右:バネッサ・ビーリー記者


 フランスのナタリー・ロワゾー欧州議会議員は、ドンバス地域での住民投票に対して、ロシアが組織した監視員すべての人々に、個人に対する制裁をかけるようロビー活動を行っている。ロワゾー議員は、バネッサ・ビーリー記者を名指しで攻撃したが、その根拠はビーリー記者が、この国民投票についての取材を行ったことに加えて、シリア政府に対する外国が支援する戦争について記事を書いていたからだった。

 フランスのナタリー・ロワゾー欧州議会議員は、EU のジョセフ・ボレル外務上級代表に書簡を届け、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国とウクライナ東部でロシアの支配下にある地域で行われた先日の住民投票の国際監視員を、全員制裁の対象にすることをEUに求めた。当グレー・ゾーンが、とある情報源から入手した情報では、この書簡は現在欧州議会内で回覧されていて、必要な数の支持者署名を集めようとしているところだという。

 「私たちは欧州議会議員に選ばれたものとして、この不当な住民投票の組織に何らかの形で自発的に手をかそうとする人々を、個人として攻撃の対象とし、制裁を課すことを求めます」とロワゾー議員は宣告している。

 このフランスの欧州議会議員が書簡を出したのは、ウクライナの公式領であるいくつかの自治体が、ロシア連邦に公的に編入する是非を問う住民投票を行ったことを受けてのものだった。この人気が高かった住民投票を通して、外国が支援したクーデター後のキエフ政権からの独立を2014年に発表した、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国、及びヘルソン地域やザポリージャ地域の人々は、ロシア連邦への編入を圧倒的多数で支持した。

 ロワゾー議員が名指しで非難したバネッサ・ビーリー記者は英国民で、この住民投票を監視するために現地入りしていた。住民投票のことだけにおさまらず不満を明らかにしたこのフランスの欧州議会議員は、 ベーリー記者を非難しこう語った。「シリアに関する偽情報をばら撒き続け、ウラジミール・プーチンやバッシャール・エル(原文ママ。本当は「アル」)・アサドの代弁者としての働きをずっとしている人物だ」と。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領と親密な関係にあるロワゾー議員は、特にビーリー記者を取りあげて、「制裁の対象リスト」に載せるよう求めた。

 ロワゾー議員のこの書簡に対して、ビーリー記者は、当グレー・ゾーンの取材に以下のように答えている。「ドンバスの住民の自決権を反映した合法的な手続きが取られているかについて証言しようとする世界各国の市民に、制裁を課そうとすることはファシズムです。万一EUがこの取り組みを進めるのであれば、今後深刻な事態が生じることになるでしょう。というのもこの行為は、言論の自由や思想の自由に対する攻撃に当たるからです」と。


ロシアの住民投票:NATOとの境界線を引く

 2022年9月中旬、ビーリー記者と100名程度の世界各国からの派遣団が東欧のこの地域を訪問したのは、ヘルソン地域、ザポリージャ地域、独立国であるドンバス人民共和国、ルガンスク人民共和国での、ロシア編入の是非を問う住民投票の監視のためだった。

 なぜこれらの監視員の存在が、西側の各国政府からのこんなにも激しい怒りを買ったのだろうか?その答は、激しい戦闘地域であったこれらの地域の近年の歴史にある。

 ウクライナの公式領であったヘルソン地域とザポリージャ地域が、今年初旬ロシアの統制下に置かれたのは、2月にモスクワが起こした軍事作戦の結果だった。なお、ドネツクとルガンスク両人民共和国は、 2014年にキエフ当局からの独立を宣言していた。

 ロシアがウクライナ領内に特殊軍事作戦を開始したのは、2月24日だった。この軍事作戦は、モスクワが、ウクライナ東部地域であるドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国(ドンバスの2つ人民共和国)の独立を正式に承認したことをうけてのことだった。 ドンバスの親ロシア分離主義者たちは、 米国が支援するキエフ政権により2014年以来ずっと塹壕戦に巻き込まれてきた。

 ウクライナの内戦が勃発したのは、2014年3月のことで、米国と欧州が支援したクーデターがウクライナで起こったあとのことだ。そのクーデターにより、キエフ政権は完全に親NATOの国粋主義者の色を帯びた政権となり、その政権が、国内の少数派であるロシア民族に対する戦争を進めていたのだ。

 2014年の暴動後、ウクライナ政府は公式にロシア語を軽視し、キエフ政権が支援する過激派の悪党勢力がウクライナ在住のロシア人市民を虐殺し、威嚇した。それに対抗して、分離派の抗議者たちがロシア民族が多数を占めるウクライナ東部に集まってきた。

 その年の3月、クリミアは正式にロシアへの編入に賛成票を投じたが、ウクライナ東部にあるドンバス地方のドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国は、その同じ月に、キエフ政権からの非公式の独立を宣言した。米軍とNATOからの支持を受け、2014年4月、ウクライナのクーデター政権は、ドンバス地域に対する宣戦布告を公式に行い、その地域での「対テロ作戦」と位置づけ、戦争を開始した。

  ロシアは、キエフ政権に反対する市民たちの運動が続く中ずっと、ドネツクとルガンスク両人民共和国の分離主義者からなる民兵隊を訓練し、軍備を整えてきた。ただしモスクワがドンバスの両共和国の独立を正式に承認するのには、2022年2月までかかった。国連の集計によると、その時点までのウクライナ内戦で、およそ1万3千人の戦死者が出ているという。2014年から2022年までずっと、モスクワがドンバスの分離主義者たちの支援を行っていた一方で、米国と欧州諸国政府は、何億ドルもの資金を投資し、ウクライナ軍へのてこ入れを行ってきた。ウクライナ政権は、軍や諜報機関関係の勢力への依存が強い。それはウクライナが、第二次世界大戦の結果を受けて、歴史的に反ロシア、反ソ連、親ナチの闇の国家の性質を持っていることと直接関係がある。



 2022年2月、ロシア軍は正式にウクライナ国内の紛争に参入した。これはモスクワがドンバスの両共和国の承認をしたことを受けてのことだ。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ドンバスの両共和国の解放を、この軍事作戦の主要目的だとしていたが、それ以外にも、ウクライナの「非ナチ化」や「非軍事化」 も、この作戦の目的としてあげていた。その目的のもと、ロシア軍はドンバス地域外のウクライナ領も統制下におさめている。その地域には、ヘルソン地方やザポリージャ地方も含まれている。

 ウクライナ内戦において、キエフ政権と繋がっているNATOへの投資を増大させている現実と直面していたドンバス地域の地方当局は、2022年9月後半にロシア連邦への編入の是非を問う住民投票を行う、と発表した。さらに、モスクワと連携しているヘルソン地方とザポリージャ地方の地方当局も同様の住民投票の実施を発表した。それぞれの地域の市民は、圧倒的多数でロシアへの編入に賛成票を投じた。

 住民投票の結果に戦々恐々としたのは、キエフ政権だけではなく、キエフの支援者である欧州諸国と米国もであった。西側と繋がるメディアは、この住民投票を見せかけだと決めつけて躍起になって取り上げ、モスクワの軍が、銃で脅して、力ずくでこの地域の住民たちをロシア連邦に編入した、と報じている。世界各国から集まったこの100人程度の数の監視員団が現地入りして、住民投票の手続きに問題がないか監視することがなかったなら、このような西側メディアの言い分が幅をきかせていただろう。

 バネッサ・ビーリー記者のような監視員たちが直面しているのは、西側の自国に戻る際に無法者の指名手配者扱いを受けるのでは、という危惧だ。しかし、ロワゾー議員の書簡が明らかにした通り、この英国記者はウクライナの戦況が激化するずっと前から、攻撃の的にされていたのだ。


ドネツクからの報道を伝えているビーリー記者はじめ欧州諸国の記者たちが、攻撃と起訴の対象に


 バネッサ・ビーリー記者は、米国や英国がシリアのホワイト・ヘルメットに資金提供していることを暴露した最初の独立系メディアの記者の一人だ。このホワイト・ヘルメットは、いわゆる「ボランティア団体」で、外国が支援していたシリア政府に対する汚れた戦争を前線に立って推進しており、西側や湾岸諸国が資金援助しているメディアとも繋がっていた。 この件でもビーリー記者は有益な役割を果たし、ホワイト・ヘルメットがアルカイダのシリア支所と強く繋がっていることを暴いた。 さらには、ホワイト・ヘルメットの隊員が、西側が支援していた武装勢力の犯した残虐行為に加担していたことも、明らかにした。

 シリアでのビーリー記者の働きは、NATOや軍事産業から資金援助を受けている多くの政策研究所から、激しい攻撃を受けることになった。2022年6月、様々なNATO加盟諸国や諸企業や億万長者たちから資金を得ている戦略対話研究所(ISD)は、べーリー記者のことを、2020年以前でシリアに関する「偽情報を一番多く拡散している」人物である、と決めつけた。(ISDによると、ビーリー記者は、当グレー・ゾーンのアーロン・メイト記者に幾分「追い越された」とされている)。しかしこの研究所は、その推測を裏付ける証拠を何ひとつ示していなかった。

 ビーリー記者が非難轟々を浴びることになったのだが、フランスのナタリー・ロワゾー欧州議会議員は、EUに対して、この記者に制裁をかけるよう求めたことが、西側当局が同記者の活動を犯罪であると正式にみなした最初の事例だった。実際、ロワゾー議員がまったく隠し立てすることなく、ビーリー記者を攻撃の対象としているのは、ビーリー記者が住民投票の監視を務めたからだけではなく、ビーリー記者のシリアに関して持っている意見や、シリアでの報道活動があったからだ。

 ロワゾー議員が、EUや米国市民である監視員たちに個人としての制裁を課すことを求めているのは、ドイツ政府が独立系メディアのアリーナ・リップ記者を起訴したことに続くものだ。2020年3月、ベルリンはドイツ国民であるリップ記者を公式に犯罪者として起訴したが、その罪状は、同記者がドネツク人民共和国から伝えた報道が、 新しくドイツが定めた言論の規制に違反していたからだ、とされた。



 リップ記者の起訴に先立ち、戦略対話研究所(ISD)はメディアを使った取り組みを立ち上げ、リップ記者を「偽情報」や「親クレムリンの内容」を発信する記者である、と決めつけた。

 現在ロンドンにおいて、英国政府は、英国民で独立系メディアのグラハム・フィリップス記者に個人としての制裁を課しているが、その理由は同記者がドネツクからの報道を伝えているからだった。

 そしてブリュッセルでは、ビーリー記者に対してロワゾー議員が見せている動きは、個人的な復讐の意図から来るものが大きいようだ。


ナタリー・ロワゾー議員とフランスのマクロン大統領

ナタリー・ロワゾーとは誰か?

 2021年4月、ビーリー記者は個人ブログで、ロワゾー議員の詳細な履歴をとりあげた。そのブログ記事の題名は、「壁は落ちる」というもので、このフランスの欧州議会議員を他国の政権転覆を目論む人物として描き、 「世界の不安定さを維持し、戦争を永久的に続けようとしている」と評していた。 ビーリー記者の記載によれば、フランス政権がシリアに対する空爆を承認した時、ロワゾー議員はフランスのエマニュエル・マクロン大統領政権下の大臣をつとめていたのだが、その空爆は、シリア政府が2018年4月にドゥーマで行ったという真偽の程が怪しい主張に基づくものだった、とのことだった。

 さらにビーリー記者が報告していた内容は、ロワゾー議員が「シリア運動(Syria Campaign)」という団体と深く繋がっていた、というものだった。この団体はホワイト・ヘルメット作戦を実行していた民間の広報活動組織だ。英国系シリア人の億万長者であるアイマン・アスファリ氏が支援するこの団体は、戦略対話研究所(ISD)がまとめた報告書に資金を出しており、その報告書において、ビーリー記者は、シリアに関する「代表的な偽情報拡散者」だと決めつけられていた。

 ロワゾー議員は、欧州議会の中枢内で自身の活動を広げているが、その際安全保障と防衛に関する欧州議会小委員会委員長という自身の肩書きを利用し、同僚たちからの疑問の声を封じている。沈黙させられているのは、シリアにおける政権転覆を求める西側各国の取り組みについて多すぎる質問をする人々だ。

 2021年の公聴会の際、ミック・ウォレス欧州議会議員が、化学兵器禁止機関(OPCW)について、フェルナンド・アリエスOPCW事務局長に質問しようとした。質問の内容は、同事務局長がOPCWによる調査に対して検閲をかけたのでは、という疑惑に関することだった。 なおこの調査の結果は、2018年4月に、シリアのドゥーマで化学兵器攻撃はなかった、というものだった。

 即座にロワゾー議員は激しい怒りをあらわにし、ウォレス議員を遮り、発言させなかった。

 「国際機関による活動に疑問を挟もうとしている貴殿のことを私は許せませんし、貴殿がそんな言い方をすれば、被害者の方々の証言にも疑問を呈することになります」とロワゾー議員は憤慨した。

 ウォレス議員もロワゾー議員の態度に対して憤怒の意を表し、こう尋ねた。「欧州議会ではもはや言論の自由は保証されていないのでしょうか?貴殿は私が自分の意見をいう行為を否定しておられるじゃないですか!」



 一年後、ウォレス議員は、盟友のアイルランドのクレア・ダリー欧州議会議員とともに、アイルランド放送協会を、名誉毀損を行った、として訴えた。 それは同放送協会がロワゾー議員のインタビューを報じた際、そのインタビュー内で、ロワゾー議員が根拠なしに、ウォレス議員とダリー議員を「嘘つき」だと決めつけていたことに対してだった。ロワゾー議員は、両議員が欧州議会内でシリアについての偽情報を広めた、と語っていたのだ。

 いまロワゾー議員はビーリー記者に対する復讐を果たそうとしているようで、同記者を犯罪者として起訴することを要求している。そして、今回の住民投票の監視員をつとめたことだけではなく、べーリー記者がこれまで報じてきた記事の内容についても罪状に加えようとしている。
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