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9/11攻撃の21周年は、アメリカの新しい現実の1周年

<記事原文 寺島先生推薦>

The 21st anniversary of the 9/11 attacks is the 1st anniversary of America’s new reality

(副題)9.11テロ事件から20周年を迎えた米国は、世界唯一の超大国としての地位を維持するために苦闘している。

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:RT

2022年9月11日



Scott Ritter 元米海兵隊情報将校。「ペレストロイカ時代の軍縮:武器の支配とソ連邦の終焉 (Disarmament in the Time of Perestroika:Arms Control and the End of the Soviet Union) 』の著者。ソ連ではINF条約(中距離核戦力全廃条約)実施監察官、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍の幕僚、1991年から1998年までは国連兵器査察官として勤務した。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月2日


ファイル写真. ペンタゴン(ワシントンDC)の9.11記念式典で花輪を捧げるジョー・バイデン米国副大統領。© AFP / SAUL LOEB

 今年は、2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件から21年目にあたる。21年というのは、伝統的に注目される記念日にはならない。人々は、カレンダーの上でのキリのいい数字の魅力に基づいて年月の経過を記録するのが好きなのであって、その事件と現実との関連性にはさほど関心を持たない。1年目の記念日は重要だが、2年目の記念日はそれほどでもない。10年目の記念日は重要だが、11年目の記念日はそうでもない。

 昨年、米国と世界は9.11テロ事件から20周年を迎えた。この日が単なる時間の経過以上に重要だったのは、その関連性である。2021年にアメリカが「世界テロ戦争」として知られるようになる事態に突入したのは、アメリカがアフガニスタンから不名誉な撤退をしてから1カ月もたたない時期であった。2021年8月のカブール撤退は、20年にわたるドラマの最終幕だった。9.11の恐怖を世界支配のきっかけにしようと、アメリカの新保守主義エリートが唱えた「新しいアメリカの世紀」というビジョンが、地政学的な現実の浅瀬で座礁し、転覆し、最終的には自ら作り出した国家的傲慢さの嵐の中に沈んでいったのである。

 20年にわたる「テロとの戦い」(いくつかのはっきりした紛争から成る。アフガニスタン、そして、おそらく最も注目すべきはイラク)という政策の大失敗から(その実像が見えてきた)アメリカは、懲罰と屈辱は受けたが、負けを認めることも、謙虚になることもなかった。ここには①アメリカが現在置かれた地政学的現実と②米国のエリート指導層の自己陶酔的傲慢さ、との間の二項対立がある:

① アメリカはこの20年間世界を見向きもせず、中東の砂漠や山々で国家の血と財と評判を浪費してきた。
② 米国のエリート指導層は米国企業に自分たちが与えた損害を認識できない、及びあるいは、認識しようとしないため、復興のための外交、経済、セキュリティ戦略を構築する上での米国企業の集団的有用性を無効にしている。

 「20年+1年」を迎える9/11はこの新しい現実の初年度


関連記事:9/11 victims’ families appeal to US over seized Afghan funds

 結婚記念日の場合、新郎新婦は最初の結婚記念日とその後の結婚記念日がどう繋がっているのかが、よくわかっている。しかし、アメリカを全体として見た場合、つまり具体的にはアメリカ国民、その指導者、そして主流メディアは、9・11の20周年に自分たちがどこにいて、どのようにしてそこに至り、どこへ向かっているのかについて、事実に基づいて、感情的にならずに考察することができない。つまり、今のアメリカは今年が「ポスト9/11」の1周年を迎えていることを理解していない。アメリカ人の大半はそのことが分かっていないのだ。

 中東と中央アジアという地政学的な荒野を20年間さまよった末に、アメリカは軍事的にも経済的にも外交的にも、はるかに弱い国として姿を現した。この衰退をさらに深刻なものにしているのは、アメリカが20年にわたる自滅行為に従事している間、世界の他の国々は無為に過ごすことはなく、むしろ前進し、自国の能力を高め、必ずしもアメリカと対決することを目的としていないものの、その時が来ればはるかに有利な立場に立つ、という事実だ。

 イラン、中国、ロシアなどの国々は、アメリカが亡霊を追って力を使い果たすのを見ながら、アメリカの軍事力、経済の脆弱性、外交的欠点について知らず知らずのうちに与えられた教訓を心に留めていた。これらの教訓は、民主主義の学校であるはずの米国の混沌とした状況によって、さらに拡大された。この20年間で世界は、内戦のような抗争をくりひろげてきたアメリカの二大政党制から生じる政策と原則の乱脈な揺らぎを証言することになった。ジョージ・W・ブッシュによる8年間の新保守主義的な侵略に続いて、バラク・オバマによる8年間の新自由主義的な欺瞞があった。トランプ政権の4年間の思い上がりによる混乱は、今度はバイデン政権による2年間の誤った無能な復権主義に取って代わられた。バイデン政権の前提は、何十年にもわたるアメリカの政策の失敗から生じたダメージは、それが無くなれとただ強く思えば元に戻せる、ということだ。

 アメリカの民主主義は、「丘の上の輝く街」として、世界の人々に「私たちのようになりたい」と思わせることで、私たちの先導に従わせるはずだったが、高級住宅地を装ったゲットーに過ぎないポチョムキン村*であることが露呈してしまった。世界はこの変形の一部始終をじかに目撃することができた。その一方で、アメリカ人は、自由な消費主義という偽りの約束によって服従させられ、何もわからないというおめでたい状態に甘んじている。

ポチョムキン村*・・・主に政治的な文脈で使われる語で、貧しい実態や不利となる実態を訪問者の目から隠すために作られた、見せかけだけの施設などのことを指す。「見せかけだけのもの」とは、物理的に存在するものであることもあるし、あるいは資料や統計など比喩的なものであることもある。(ウィキペディア)


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 しかし、借金はいずれ返さなければならない。「9.11の20+1周年」は、国内外の多くの負債が返済期限を迎えたという現実を反映している。

 「9.11の20+1周年」で、アメリカは政治的な内戦状態にあり、その結果、南北戦争以来見られなかった範囲と規模の、党派主導の暴力に爆発する恐れがある。アメリカが、各国による主権的な経済政策の決定に干渉してくることにうんざりした世界市場が、地域通貨「バスケット」を支持して、米ドルを下落させていることから、世界の基軸通貨としての米ドルの優位性は、非常に疑わしいものとなっている。ロシアを「国家を装ったガソリンスタンド」に過ぎないと非難した後、米国とその同盟諸国は、荒野の中の高速道路で立ち往生している運転手の立場に置かれている。燃料タンクは空っぽ。ガソリンスタンドも見えない。旅に出る前にすべてのガソリンスタンドを閉鎖してしまったことが主な理由だ。西側諸国によるロシアへの経済制裁は、ヨーロッパの経済が崩壊し、アメリカが救うことができない、及びあるいは、救う気がないという自傷行為と化している。

 アメリカが世界の指導者たる地位を維持してきたのは、アメリカの民主的統治モデルが、アメリカが頼りにしている社会的、経済的、軍事的強さを生み出すのに役立ち、世界の悪の勢力と立ち向かえるという前提のもとに成り立っていた。

 このモデルはもはや存在しない。その理由は、9.11テロ後の最初の20年間、アメリカがどのように振舞ったかに負うところが大きい。

 「9.11の20+1周年」で米国は、ウクライナ、太平洋、中東、アフリカ、アジア......そして国内において、自分たちが引き起こしたことの現実に直面しつつある。聖書には、「風を蒔き、つむじ風を刈り取る」(ホセア書8:7)とある。

訳注:この言葉の意味は、自分がどんな種を撒くかによって、その結果生じる収穫の中身が決まるというもの。自業自得の意。
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