迫り来るエネルギー危機の中、プラハで7万人規模の反政府・反NATO・反EUのデモ。
<記事原文 寺島先生推薦>
Winter is coming: Prague’s 70,000-strong protest shows what’s in store for Europe
The recent demonstration saw Czechs rally against NATO and the EU amid a looming energy crisis
(冬が近づく。プラハで行われた7万人規模のデモは、この先欧州で起こることの先鞭をつけた。
チェコで最近起こったNATOとEUに反対するデモは、迫り来るエネルギー危機が引き金だ。)
筆者:ブラッドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)
出典:RT
2022年9月6日

Bradley Blankenship is an American journalist, columnist and political commentator. He has a syndicated column at CGTN and is a freelance reporter for international news agencies including Xinhua News Agency.
@BradBlank_
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年9月20日

チェコのプラハのヴァーツラフ広場での反政府デモに集まった数千人の人々。2022年9月3日土曜日撮影。 © AP Photo/Petr David Josek
9月3日(土曜日)、約7万人の人々が、プラハのヴァーツラフ広場に集まり、政府の退陣を要求した。それは、現在進行中のエネルギー危機に対する政府の対応が失敗であることに対する意思表示だった。さらに抗議者たちは明らかに、西側の2つの代表的な組織に対しても反対の意を表明していた。それは、以前東側に属していたチェコが、現在加盟している欧州連合と北大西洋条約機構(NATO)という2組織だ。
市民民主党(ODS)のペトル・フィアラ(Petr Fiala)首相に、何が問題なのかを問うたなら、彼はただこう答えるだろう。この何万人もの人々はただの世間知らずの親露の輩(やから)たちだ、と。 実際にフィアラ首相が言った言葉を紹介すると、「ヴァーツラフ広場での抗議運動は、親露派が力づくで起こしたものであって、過激派に近い勢力によるものであり、チェコの国益とは反するものです」というものだった。批判を受けたあとも、同首相はその立場を9月5日の月曜日にも再度繰り返し、この抗議運動を組織した人々を「ロシアの第5列」呼ばわりした。
さらに踏み込んで、「これらの抗議運動者たちはワルシャワ条約機構に再加盟したがっていて、共産主義時代に戻りたいと思っている」とまで考える政治専門家たちもいた。チェコ共和国でしばらくの間暮らした経験のある私から言わせてもらえば、こんな考え方は全くバカげている。 おおむねチェコ国民は西側になりたがっている。自国が、開かれた自由な社会であって欲しいと思っていて、チェコスロバキア共和国時代の洞穴の中で暮らすような生活には反対している。
さらにこの国で編まれた歴史書のせいで、最もリベラルなチェコ国民でさえも、ロシアに反感を持たざるをえない状況になっており、ロシア人に対してさえも同じ気持ちを抱いている。つまり私の意見では、西側が意図的にチェコを完全に変えてしまったことが、今のチェコ国民の嫌露意識の醸成に関連づけられる、ということだ。チェコの政権が西側寄りになればなるほど、チェコ国民の嫌露感情が高まる、ということだ。

関連記事:EU electricity prices soar to new highs
だからこそ、こんなにも多くの人々が、ロシア国家を支持するための集会に自分の時間を割いて馳せ参じるということは、全く考えにくいのだ。そうではなく、7万人もの人々を9月3日月曜日の路上デモに動員させた要因は、生活費が高騰し、実質賃金は降下しているのに、政府が外交政策に拘って、状況をさらに悪化させているという事実なのだ。そう考える方が非常に論理的で、陰謀論など入り込む隙はない。
実はチェコの労働組合の指導者たちは、この月曜日と同じ場所で、同じ問題について、10月8日にもデモを行うことを求めている。チェコの首相は、ロシア人がチェコの労働運動を扇動しているなどと本気で考えているのだろうか?ロシアに対する嫌悪感が蔓延しているチェコ社会で、そんなことはありえないように思える。
繰り返しになるが、結局はたった一つの結論に至るのだ。政権の支配者層にとっては奇妙なことだと思われるかもしれないが、人々が示している心配は、感情から来るものなのだ。生活がどんどん苦しくなり、チェコ国民はウクライナ政権の言いなりになって、極貧で不安定な暮らしは送りたくない。これは純粋に自分の身を守りたいという気持ちからくる心配だ。仕組まれた「価値観」や理想の話では全くない。

関連記事:European gas prices soar
プラハで起こったことは、この先他の西側諸国でも起こるであろうことが少し見えただけにすぎない。他の西側諸国がこの先も同じ道程を辿るならばの話だが。そうであれば、きっとそうなる。既に欧州大陸のあちこちで、社会不安の兆候が見て取れる。その理由は、生活費、特にエネルギー価格の高騰のためである。公的な暦では、夏の終わりさえまだ到来していないのに。
9月1日を事実上の秋の開始日であるとするなら、その数日後にプラハで7万人規模のデモが起こったということだ。問題は、寒い季節が到来し、暖房費が高騰したときどんな状況になっているか、だ。いったいどれだけの人々が路上デモに繰り出せば、フィアラ首相のような人たちが、真の問題を認識することで、社会不安の動きをロシアによる陰謀だと決めつけるのを止めるのだろうか?
人々が社会の大義のために自分の利益を犠牲にすることはほぼないという事実は、既に目にしてきた。いや、利益どころか、不便だという理由だけでも人々は自分を犠牲にしない。それはこれまでの COVID-19のパンデミック時に明らかになったことだ。コロナウイルスが明らかにしたことは、そんな理想論など、抗議集会に参加している西側諸国の人々には全く無意味だということだった。人間というものは、あまりに個人主義者で頑固な生き物だ。社会の大義という理由では十分でないことが明白になったのだ。
そう考えれば、EU諸国の市民たちがヴォロデミール・ゼレンスキーや彼の政権の犠牲となって、喜んで貧困に陥るなどと本気で考える人などいるのだろうか?まったくありえないことだ。今の外交政策を続ける限り、今年の欧州の冬は、寒く厳しいものになるだろう。プラハで起こったことは、パリ、ロンドン、ベルリン、マドリードなど、欧州各地に広まっていくことだろう。
Winter is coming: Prague’s 70,000-strong protest shows what’s in store for Europe
The recent demonstration saw Czechs rally against NATO and the EU amid a looming energy crisis
(冬が近づく。プラハで行われた7万人規模のデモは、この先欧州で起こることの先鞭をつけた。
チェコで最近起こったNATOとEUに反対するデモは、迫り来るエネルギー危機が引き金だ。)
筆者:ブラッドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)
出典:RT
2022年9月6日

Bradley Blankenship is an American journalist, columnist and political commentator. He has a syndicated column at CGTN and is a freelance reporter for international news agencies including Xinhua News Agency.
@BradBlank_
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年9月20日

チェコのプラハのヴァーツラフ広場での反政府デモに集まった数千人の人々。2022年9月3日土曜日撮影。 © AP Photo/Petr David Josek
9月3日(土曜日)、約7万人の人々が、プラハのヴァーツラフ広場に集まり、政府の退陣を要求した。それは、現在進行中のエネルギー危機に対する政府の対応が失敗であることに対する意思表示だった。さらに抗議者たちは明らかに、西側の2つの代表的な組織に対しても反対の意を表明していた。それは、以前東側に属していたチェコが、現在加盟している欧州連合と北大西洋条約機構(NATO)という2組織だ。
市民民主党(ODS)のペトル・フィアラ(Petr Fiala)首相に、何が問題なのかを問うたなら、彼はただこう答えるだろう。この何万人もの人々はただの世間知らずの親露の輩(やから)たちだ、と。 実際にフィアラ首相が言った言葉を紹介すると、「ヴァーツラフ広場での抗議運動は、親露派が力づくで起こしたものであって、過激派に近い勢力によるものであり、チェコの国益とは反するものです」というものだった。批判を受けたあとも、同首相はその立場を9月5日の月曜日にも再度繰り返し、この抗議運動を組織した人々を「ロシアの第5列」呼ばわりした。
さらに踏み込んで、「これらの抗議運動者たちはワルシャワ条約機構に再加盟したがっていて、共産主義時代に戻りたいと思っている」とまで考える政治専門家たちもいた。チェコ共和国でしばらくの間暮らした経験のある私から言わせてもらえば、こんな考え方は全くバカげている。 おおむねチェコ国民は西側になりたがっている。自国が、開かれた自由な社会であって欲しいと思っていて、チェコスロバキア共和国時代の洞穴の中で暮らすような生活には反対している。
さらにこの国で編まれた歴史書のせいで、最もリベラルなチェコ国民でさえも、ロシアに反感を持たざるをえない状況になっており、ロシア人に対してさえも同じ気持ちを抱いている。つまり私の意見では、西側が意図的にチェコを完全に変えてしまったことが、今のチェコ国民の嫌露意識の醸成に関連づけられる、ということだ。チェコの政権が西側寄りになればなるほど、チェコ国民の嫌露感情が高まる、ということだ。

関連記事:EU electricity prices soar to new highs
だからこそ、こんなにも多くの人々が、ロシア国家を支持するための集会に自分の時間を割いて馳せ参じるということは、全く考えにくいのだ。そうではなく、7万人もの人々を9月3日月曜日の路上デモに動員させた要因は、生活費が高騰し、実質賃金は降下しているのに、政府が外交政策に拘って、状況をさらに悪化させているという事実なのだ。そう考える方が非常に論理的で、陰謀論など入り込む隙はない。
実はチェコの労働組合の指導者たちは、この月曜日と同じ場所で、同じ問題について、10月8日にもデモを行うことを求めている。チェコの首相は、ロシア人がチェコの労働運動を扇動しているなどと本気で考えているのだろうか?ロシアに対する嫌悪感が蔓延しているチェコ社会で、そんなことはありえないように思える。
繰り返しになるが、結局はたった一つの結論に至るのだ。政権の支配者層にとっては奇妙なことだと思われるかもしれないが、人々が示している心配は、感情から来るものなのだ。生活がどんどん苦しくなり、チェコ国民はウクライナ政権の言いなりになって、極貧で不安定な暮らしは送りたくない。これは純粋に自分の身を守りたいという気持ちからくる心配だ。仕組まれた「価値観」や理想の話では全くない。

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プラハで起こったことは、この先他の西側諸国でも起こるであろうことが少し見えただけにすぎない。他の西側諸国がこの先も同じ道程を辿るならばの話だが。そうであれば、きっとそうなる。既に欧州大陸のあちこちで、社会不安の兆候が見て取れる。その理由は、生活費、特にエネルギー価格の高騰のためである。公的な暦では、夏の終わりさえまだ到来していないのに。
9月1日を事実上の秋の開始日であるとするなら、その数日後にプラハで7万人規模のデモが起こったということだ。問題は、寒い季節が到来し、暖房費が高騰したときどんな状況になっているか、だ。いったいどれだけの人々が路上デモに繰り出せば、フィアラ首相のような人たちが、真の問題を認識することで、社会不安の動きをロシアによる陰謀だと決めつけるのを止めるのだろうか?
人々が社会の大義のために自分の利益を犠牲にすることはほぼないという事実は、既に目にしてきた。いや、利益どころか、不便だという理由だけでも人々は自分を犠牲にしない。それはこれまでの COVID-19のパンデミック時に明らかになったことだ。コロナウイルスが明らかにしたことは、そんな理想論など、抗議集会に参加している西側諸国の人々には全く無意味だということだった。人間というものは、あまりに個人主義者で頑固な生き物だ。社会の大義という理由では十分でないことが明白になったのだ。
そう考えれば、EU諸国の市民たちがヴォロデミール・ゼレンスキーや彼の政権の犠牲となって、喜んで貧困に陥るなどと本気で考える人などいるのだろうか?まったくありえないことだ。今の外交政策を続ける限り、今年の欧州の冬は、寒く厳しいものになるだろう。プラハで起こったことは、パリ、ロンドン、ベルリン、マドリードなど、欧州各地に広まっていくことだろう。
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