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ウクライナでのCIA:なぜその行為が挑発行為とはみなされないのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
CIA in Ukraine: Why is this not seen as provocation?
ニューヨーク・タイムズ紙の爆弾記事が示した、米国政府が不必要にロシア側の恐怖をあおり、ロシアによるウクライナへの侵攻(その是非には議論があるが)を引き起こした経緯とは?
筆者:マーク・エピスコポス(Mark Episkopos)
出典:Responsible Statecraft  2024年2月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月15日


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ウクライナでの戦争についてホワイトハウスが伝えてきた内容は、単純だが力強い二つの形容詞でほぼ言い表されてきた。以下は2年ほど前に、ジョー・バイデン大統領がEUのウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン委員長との共同声明の中で述べたことばだ。「私たちは団結して、ロシアによる不当でいわれのないウクライナ侵略を非難します」と。

「不当でいわれのない」という言い方は米国やその同盟諸国の代表的高官が声をそろえて何度も口にしてきたものだが、すぐにこの言い方は、クレムリンに対してバイデン政権が最大限の圧力をかける際のよりどころとなった。

この言葉は、二つの重要かつ基本的な異なる問題を合成したものだ。ロシアによる侵略がウクライナ側の恐ろしいまでの死者数を招き、2022年の2月以前には予期できなかったほどの規模で欧州の安全保障をひっくり返してしまったことに疑問をはさむ余地はない。しかしロシアからの一連の抗議申し立て(西側からは「不当である」と見なされるだろうが)も含めて、その背景には、クレムリンが1945年以来欧州最大の破壊的な戦争に踏み切った挑発行為が存在したのだ。

アダム・エントゥス記者とマイケル・シュワルツ記者か執筆したニューヨーク・タイムズ紙の爆弾記事により、ウクライナへの全面侵略に至った経緯に光が当てられることになった。この記事によれば、ウクライナ政府は対ロシア戦において、CIAと広範な連携を取ってきた、という。この協力体制には、ウクライナのロシア国境沿いに12ものCIAの秘密「前線作戦基地」が設置されたことも含まれていた、という。しかもその基地の設置の開始は、ロシアによる2022年の侵攻前からではなく、今から10年以上前のことだった、という。

ヴィクトル・ヤヌコヴィチ大統領を失脚させ、強固な親欧米政権を誕生させた2014年2月のユーロマイダン革命から数日後、新たにウクライナ治安局(SBU)の局長に任命されたヴァレンティン・ナリヴァイチェンコ氏は、CIAやイギリスの対外情報機関MI6との「三者連携」を提案した、と報じられた。ウクライナの治安当局は、「ロシア海軍に関する秘密文書」を含むロシアに関する情報をCIAに提供することで、次第に米国にとっての価値を証明し、対ロシア活動を調整するためにCIAの拠点をウクライナに設置し、ウクライナの戦闘部隊やその他の先鋭部隊のためのさまざまな訓練計画を実施するに至った。

そのようなCIAの訓練計画の卒業生であるキリーロ・ブダノフ中佐(当時)は、ウクライナ軍情報部の部長になった。

ウクライナ政府は日常的にこの関係の境界線を押し広げ、ロシアと連携する分離主義者たちが支配する領土で、知名度の高いロシア人戦闘員の暗殺を実行することで、オバマ政権が定めた殺傷作戦に関する譲れない一線に違反した。ウクライナ政府とCIAの協力関係はトランプ政権下でさらに深まり、トランプ前大統領が在任中はロシアの利益に従順だったという根拠のない考えはまたもや覆された。

ブダノフ中佐によれば、「(ウクライナ政府とCIAの協力関係は)強まっただけだった。組織的に成長した協力はさらなる領域へと拡大し、より大規模になった」という。この協力は、タイムズ紙が丹念に概説しているように、「ウクライナがロシアから自国を防衛するため」という狭い技術的な意味での支援をはるかに超えていた。むしろ、ウクライナはロシアに対して広範な影の戦争を仕掛ける目的で西側連合に引き込まれた、と言ったほうが正しいだろう。

ニューヨーク・タイムズ紙の暴露記事は、どう考えていいのかわからないような話に事欠かない。言うまでもなく、ウクライナは自国の安全保障を決定する主権国家である。根本的な問題は、ウクライナがCIAとこのような関係を結ぶ(それははっきりしている)権利があるかどうかではない。また、マイダン革命がウクライナを西側諸国との政治協力に向けた一定の道筋に導いたかどうかも問題ではない。

問題はむしろ、基本的な安全保障に対する認識の問題である。ロシア政府は、ウクライナが西側諸国によって対ロシア前線基地として利用されるのを防ぐために、思い切った行動をとる用意があると、2014年以前から長年にわたって繰り返し警告してきた。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙がぞっとするほど詳細に記述しているように、それこそが過去10年間に起きたことなのだ。

ウクライナがこの協定に自発的、そして熱狂的に同意したことは、ロシアの核心的な懸念にとって重要ではない。また、この問題をNATO加盟に完全に還元することもできない: ウクライナはNATOに正式に加盟することなく、NATOの東側で反ロシアの前哨基地としての役割を果たすことができる。そしてそのような状況も、クレムリンには受け入れがたいものだ。

正当化とは本来、主観的な働きであるが、この暴露記事で述べられている活動が、クレムリンから見れば挑発行為そのものであり、もし逆の立場になって、敵対する超大国ロシアがメキシコにこのような基地を設置すれば、米国はそのように見なすであろうことは、ほとんど疑う余地がない。この認識は、この戦争の勃発を形作った軍事的・政治的背景の不可分の一部である。被害妄想と見なすこともできるが、そうだとしても、どんな安全保障機関でもこのような状況では同様に被害妄想に駆られるだろう。

このような共同諜報活動が具体的にどのような米国の利益に貢献したのかは不明だ。オバマ政権とトランプ政権が表向き共有していた目標である、ロシアとウクライナ間の緊張緩和や地域の安定を促進するものではなかったことは確かだ。その一方で、ウクライナ政府とCIAの関係が深まったことで、ロシア政府の安全保障上の最悪の懸念が無用に助長され、正当かどうかは別として、ウクライナをめぐる西側諸国との対立を前にロシアが断固として行動しなければならないという結論に至ったことは容易に想像できる。
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「クリミア橋攻撃」についてドイツ軍高官らの電話での漏洩したやりとりの最悪部分はここ。

<記事原文 寺島先生推薦>
Here’s the worst part about the leaked German ‘Crimean Bridge attack’ call
守ると誓った国がどこなのかを忘れてしまった幹部もいるようだ。さらに、騙し方もうまくない。
筆者:タリク・シリル・アマール(Tarik Cyril Amar)。イスタンブールのコチ大学でロシアやウクライナ、東欧、第二次世界大戦史、文化冷戦、記憶の政治について研究中のドイツ出身の歴史家
出典:RT 2024年3月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月15日


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© Leonhard Simon/Getty Images


ロシアは2月19日のドイツ空軍高官らの電話での話し合いの音声を暴露した。この話し合いは、基本的に秘密ではない形を取っていた。そして話の内容は、ドイツのタウルス巡航ミサイルが、ロシア側の標的を攻撃できるかについて(今後、この話し合いのことを「タウルス作戦会議」と呼ぼう)、だった。その暴露以来、西側の人々の反応は大きく2つに分かれた。まず、ドイツ国内での主要な動きは、無様な被害対策だった。ドイツの同盟諸国の中では、狼狽が見られたと同時に、ドイツ側がおかしたいくつかの過ちに対する隠し通せない怒りも生じた。ウクライナでの米・英による秘密工作に関する点については、特にそうだった。

同盟諸国からの激しい怒りが目に見える形で現れたのは、報道各紙からの辛口の見出しからだった。例えば、テレグラフ紙はこう報じていた。「ドイツが英軍の秘密をもらしてしまった。すぐに人目につくようなスマホの動画技術を使うなど、冷戦以来ドイツで最悪のセキュリティ違反事例である」と。オラフ・ショルツ首相が「非常に深刻な」問題であるとしたこの問題を閉じ込めようとする、ドイツの恥ずべき努力にはふたつのありきたりの動きがある。一つ目は、すべてをロシアのせいにしてしまうことだ。「なんと悪質な! ロシアが我が国をハッキングした」と。

明らかに、敵勢力が情報を盗み聞きするというよくある事例の是非を問うなどバカげたことに聞こえる。というのも批判しているほうの政府が、パイプラインを破壊したり、軍備を強化することで「同盟諸国」の脱産業化をすることもお構いなしの政府だからだ。こんな泣き言のように聞こえる不平を言うドイツの支配者層は、ますます子どもじみて見える。まさに「*Zeitenwende(ツアイテンベンデ。時代の転換点)」を迎えている新生ドイツ誕生を報告する公共広告だ。そうだ、国家だ。代理戦争の共同遂行者である国家なら特に、機密情報を集めようとするだろう。国の上層部が、簡単にハッキングされて、情報が簡単に漏れるようなオンライン上の情報伝達方法を利用するくらいだらしないのであれば、責められるべきは敵側ではなく自国自身だろう。
*Zeitenwende・・・時代の転換点演説は、2022年2月27日にドイツ首相のオラフ・ショルツがドイツ連邦議会で行った演説である。この演説は、2月24日に始まった2022年ロシアのウクライナ侵攻に反応したもので、ショルツはこの攻撃を「時代の転換点」 と呼んだ。 (ウィキペディア)

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関連記事:Fyodor Lukyanov: The world is entering a very dangerous time

同様に、ドイツのボリス・ピストリアス国防大臣はロシアがドイツの内緒話を暴露したことを「多岐にわたる偽情報攻撃」だとした。実際のところ、同国防大臣にとって不都合な点というのは、「偽情報」の真逆だ。つまり、ドイツでさえこのことを事実であると認めている点だ。このドイツ側の反応が示しているのは、責任逃れをしようとするドイツやウクライナの態度が一本化している、ということだ。それを示すかのように、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領はすでに、いってみれば予防のためだといえるが、自身のまさに崩壊しつつある指導者としての地位に対して、ウクライナ国内でこの先起こる可能性のある反対運動の責めを、ロシアによる「偽情報」のせいにしようとしている。「不思議の国のアリス」に登場する双子よろしく、ドイツというトゥイードルディーとウクライナというトゥイードルダムという双子の兄弟は、どちらも同じ主張をしているのだ。つまり、自分たちの国がめちゃくちゃになった責任はよその国(つまりロシア)に押しつけろ、だ。

今回の大失敗を煙に巻こうとするドイツ側のもう一つの動きは、その漏洩した電話内容について話すことを避けることだ。タウルス作戦会議の内容が要約さえされているのだから、唯一できることといえば、「こんなことは害のない日常的な行為にすぎない」と誤解を招くような主張をすることくらいだ。つまり、「そのあと実際に計画するのは計画者の仕事でしょ、ただ頭の体操的な妄想を語っていたにすぎません」と言い切るのだ。 さらに、「海軍幹部たちはただ命令に従っていただけ」の主張するのだ。(この手口は、ドイツの政治の世界の文化として存在する「古きよき」手法だ)。大臣に説明するための準備をしていただけだ、と主張するのだ。

ここで再びピストリアス国防大臣が登場し、ごまかし作戦の首謀者となり、これらの空軍幹部らは「ただすべきことを果たしていたにすぎません」と述べた。実は、この発言は御里が知れるものになっている。つまり、タウルス作戦会議が、ピストリアス国防大臣の発言のとおり、ドイツの軍人にとっての通常「業務」の一部だったとしたら、すべてのことがもっとずっと悪いことになってしまう、ということだ。

その理由を理解するために私たちがしなければならないことは、多くのドイツ国民が避けたがっていることをすることだ。つまりこの醜聞についての詳細を掘り起こすことだ。

基本は簡単。この会話の録音の長さはほぼ40分。

登場人物は4人。うち2人は高官で要職についているドイツ空軍のインゴ・ゲルハルツ総監と作戦担当参謀次長のフランク・グレーフェ准将。両名とも将軍職だ。残りの2名は官位が下がる(中佐職)宇宙作戦センター航空作戦司令官で、名前はフェンスケとフロシュテッテ(あるいはフロステッテ)という2名も加わっていた。この話し合いでは、タウラスミサイルを使用する可能性について詳しく話し合われていた。使用するのは公的にはウクライナだが、ドイツの参入は避けられないであろうし、おそらく米・英の参入もありえる。そしてその攻撃対象は、クリミア大橋かロシア側の弾薬庫だとされていた。2名(フェンスケ中佐とフロシュテッテ中佐)はそのような作戦は実行可能であることを強調していたようだが、彼の名誉のために言っておくが、1名(グレーフェ准将)は態度を保留し、問題点を指摘しながら、そのような作戦をおこなえばドイツが加担していたことを隠すのは難しい、と語気を強めた。驚くべきことに、空軍の最高位にいるゲルハルツ総監は、彼が「人目を引く」と呼んだ作戦、つまりウクライナ経由でロシア側の標的に秘密のミサイル攻撃をしかける作戦をしない理由を見いだせていない。

もともとの録音音声では、くだけた口調で使われている言葉遣いもたいがい綺麗ではなかった。ちゃんぽんになったおどけたドイツ語(ドイツ人が「Kauderwelsch(カウデルヴェルシュ:ちんぷんかんぷん)」と呼んでいた口調)を使い、文法的におかしな発語も多く、英語から借用したおかしな物言い(たとえば、「to cheat(ズルする)」は「den Trick pullen(トリックを仕掛ける)」という表現を使い、ウクライナ側に「『das Ding zu schiessen(to shoot the thing:それを射撃する)』方法を教えれば、それは実行可能だ」などといった表現)を使っていた。エルンスト・ユンガー(20世紀のドイツの思想家)のような洗練された話し口ではない。

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2つの真逆のまちがった解釈のつじつまをあわさなければならない。一つ目の解釈は、このときの話し合いは、明らかな陰謀には当たらない、というものだ。この話し合いは、一線をしりぞいた幹部らが、ウクライナという代理を使うことでロシアに秘密の巡航ミサイル攻撃をしかける作戦に政界の指導者を引き込もうと公然と話し合う場ではなかった、というものだ。しかしこれも、このタウルス作戦会議について取り繕うとすればせいぜいこんなことが言えるだけだ。そんなものはすぐに乗り越えられてしまう。というのも、私たちが解決すべき2番目に人口に膾炙(かいしゃ)する誤解がここにあるからだ。つまり、「この会議は普通の会議ではなかった」という解釈だ。ピストリアス国防大臣がそのふりをしたがっているとおり、政治からは切り離された軍関係者が軍事的な思考実験として冷静に話し合っていた会議ではない、という解釈だ。(そうとらえても、よくない状況には変わりないが)。実際、この件の本質を最善のひとことで言い当てるとすれば、「どっちつかず」だろう。初歩的な専門家としての分析と大量の偏見や政治、無分別さがまざりあったものである、と考えていただきたい。

おそらくこのタウルス作戦会議のもっとも衝撃的な特徴を一つあげるとすれば、この話し合いの参加者たちがとんでもない不正行為をあたりまえのことである、と考えている点にある。技術的な面以外から、問題があると考えている人は誰もいなかった。事実上、ドイツがロシアを攻撃することについて話し合っているのに、である。ドイツが加担していることが見つからず、否認できれば問題ない、というのだ。まさにこのようなことに軍関係者たちは頭を絞っている。具体的には、攻撃対象の情報の伝達を、安全なデータ回線(今なら皮肉になるが・・・)やポーランド経由で個人国際宅急便を使っておこなう(ドイツはロシアのためにポーランドを標的にしようとしているのか? 邪悪なことを考える者たちよ!)ことなどだ。あるいは、タウルスの製造業者(MBDA社)が隠れ蓑となってドイツ軍が関わっていたことを隠す方法について、だ。このような考え方が、驚くほど残忍なものだが、より重要なことは、彼らの裏切り行為が単なる犯罪行為であり、少年のような無謀な行為である、という事実だ。

戦時においては、何をしても許される、という人もいるだろう。しかしそう言ってしまうことには、二つの間違いがある。一つは、ドイツはロシアと戦争をしていない、という事実だ。そして、この話し合いの参加者らはロシアとドイツが戦争するとは考えていなかった(少なくとも最初はそうだったし、今後どうなるかについては、彼らは興味がなかったようだ)。そして2つ目は、戦時において欺しあうのは伝統的なことであり、戦略における主要な要素であることは間違いのないことなのだが、これらの幹部らが「普通だ」と考えていたこととは別の話だ、という点だ。具体的には、ドイツの戦争相手国ではない、またこの先も戦争相手にならないであろう国に対して戦時中のような秘密作戦を企てるという行為を「普通である」と考えている点だ。このようなことを考えるのは、諜報機関や特殊部隊の仕事だろう(だとしても、良い考えではないことに変わりはないが)。伝統的な意味における軍人がそのような手段について思いをはせること自体、許されること、あるいは「自分たちの仕事(ボリス・ピストリアス国防大臣よ、よく聞け!)」であると考えてはいけないことには、もっともな理由が存在するのだ。

このような考え方がはっきりとわかるのは、タウルス作戦会議の参加者の一人が、ウクライナ軍に対して、ウクライナでドイツ製ミサイルの使い方の訓練をおこなうすべてのドイツ人が、少なくとも「最初に果たすべき使命」は、「我々の支援のもと実行」されなければならない、と語っていたところだ。ドイツ語をよく知らない人にとってみれば、この表現を誤解するだろうし、翻訳だけではなく、もともとのドイツ語での表現でさえあやふやな表現なのだが、この表現をただ単にウクライナ側が支援を必要としているということを繰り返しているだけだ、ととってはいけない。それは間違いだ。この作戦会議の話し合いの文脈を注意して読み取れば、この表現ははっきりと、これらの攻撃に関して、少なくとも計画や目標設定にドイツが直接加わることを遠回しに伝えていることがわかるはずだ。

タウルス作戦会議のもう一つの注目すべき点は、NATO諸国やウクライナにとって機密性が高くかつ不利な情報が平然と飛び交っているところだ。英・米・仏がロシア軍に対する攻撃に深く関わってきたことについては、初めて聞いた話ではなく、驚きもない。驚愕させられるのは、ドイツ将校らが、自国のものではない秘密の作戦についてまで簡単に口にするという軽はずみな行為だ。ウクライナに関していえば、ウクライナ空軍はドイツ空軍の将校らが、「ウクライナにはある種の戦闘機がほとんど(「一桁程度」)しか残っていないという話をしているのを聞いて、びくびくしたにちがいない。ロシア側がそんな状況を逐一つかんでいたことは確かだ。ただしロシア軍将校らが、ドイツ将校らのこの行為に対して、哀れな不信感と冷めた喜びの入り交じった表情で首を振っていたことは想像にかたくない。

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最後になるが重要な点は、現実のことが頭に浮かんだ瞬間でさえ、タウルス作戦会議参加者たちは妄想的な計画をやめようとしなかった点だ。この会議を主宰していた空軍最高位ゲルハルツ総監も、たとえタウルスが配置されたとしても、そのミサイル数は最大100以内に抑えられ、タウルスを使ったとしても、「戦況を変えることにはならない(もちろんウクライナ側が好転するという意味で)」ことを分かっていた。さらに、もう1人の作戦会議参加者、将軍職にあるフランク・グレーフェ准将が強調したのは、クリミア大橋は標的として狙うのは難しい対象であり、攻撃を加えたとしても持ち堪えるのではないか、という点だった。こんな攻撃は、無駄でしかない、ということだ。確かにそのとおりだ。

それなのに、会議参加者の誰一人も、こんな作戦を実行すれば何が最も危険なのかについて思い至っていなかった。グレーフェ准将はマスコミがドイツ軍によるこの秘密作戦の手口を嗅ぎつけることを警戒していたが、そんなことはこの先起こるかもしれない最悪の事態から比べると児戯のようなものだ。タウルスを使ったこの子どもじみた戦略が逆の意味で、「戦況を変える」ことにつながりかねないからだ。つまり、これまでロシアは西側諸国のほとんどが事実上攻撃を加えてきた事実に目をつぶってきたのに、今後は反撃に転じるきっかけになるかもしれないのだ。その対象は、たとえばドイツだ。

この海軍将校らは、ドイツを守ることを誓約したはずだ。しかし彼らがただただ心配しているのは、ウクライナがロシアと戦う助けをどうできるか、という点にあるようだ。そんな作戦を実行すれば、ドイツがロシアの警戒網から逃げたがっていることがばれてしまう危険があるとはいえ、だ。実際面からいえば、このことについてのいちばんの問題は、これらの将校らが、ドイツ国家に忠誠を誓っているのか、ウクライナ(この件に関してはNATO)に忠誠を誓っているのかの感覚の違いが分からなくなってしまっているように見えることだ。2つ目の問題は、ドイツの閣僚や首相、さらには多くの一般ドイツ国民も、その区別が出来なくなっているように見える点だ。そういう意味では、タウルス作戦会議はドイツのウクライナ政策の勝利として歴史に記載されるかもしれない。ただし不毛な政策として。
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