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パレスチナが革命を呼び起こす

<記事原文 寺島先生推薦>
Palestine Awakens the Revolution
筆者:ナイラ・バートン(Nylah Burton)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年1月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月4日


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2023年1月13日、パレスチナ人への支持を表明し、停戦とガザでの大量虐殺の終結を求めるため、40万人以上のパレスチナ支持デモ隊がワシントンでデモ行進を行った。(写真:エマン・モハメド)

パレスチナにおけるイスラエルのジェノサイドを目撃したことで、人々は永遠に変わった。その結果、多くの人々がシオニズム反対の気持ちを固めるだけでなく、欧米全体の役割を拒否するようになった。


1961年にパトリス・ルムンバが暗殺されたとき、ラングストン・ヒューズはこう書いた。 「彼らはルムンバを埋葬した/印のない墓に埋葬した/しかし彼に印は必要ない・・・私の心が彼の墓だ/そこに印がある」 。

イスラエルが10月7日にガザでの虐殺を開始して以来、私はパレスチナの2万5千人以上の人々にとって、自分の心が墓場となるのを感じてきた。私は、世界中の人々とともに、歴史上最も多くの文書や記録が整ったジェノサイドの目撃者となってしまった。私は自分の携帯電話で、国民全体が消滅させられようとしているのを目撃したのだ。


この100日間のジェノサイドは、私の体全体の細胞を入れ替え、私を別人にしてしまった。この残虐行為を目の当たりにする前の私と今の私は違う。私の魂は、この革命(大転回)を中心に転回するようになったのだ。私はひとりではない。世界は変わった。私も変わった。

多くの人々にとって、この変化は、真実を暴くと殺されかねない場に身を置くパレスチナのジャーナリストたちの活動によってもたらされたものだ。

「パレスチナ各地にいる勇気あるパレスチナ人の若者たちが撮影し、出版した数々の英雄的な報告は、イスラエルの植民地入植計画に内在する陰惨な暴力と人種差別を見るための優れたレンズを私たちに提供してくれている」と、シカゴ在住のマナル・ファルハンは言う。彼の家族は1948年の第一次ナクバでパレスチナのアル・マルハの家を追われた。

しかし、こうした深い認識と高まる怒りは、イスラエル入植者の植民地主義だけでなく、欧米のプロジェクト全体に向けられている。


パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区中部に位置する都市ラマッラー在住の翻訳者であり、「Decolonize Palestine(パレスチナを脱植民地化せよ)」の共同設立者であるラワン・マスリは、この記念碑的な世界的変化に気づいたと言う。「この100日間は、イスラエルによるジェノサイドの残虐性を、多くの人々に、そしてすでにこれまで以上に私たちと連帯している人々に初めて暴露したと思います。これはイスラエルだけでなく、欧米の植民地覇権にとっても終わりの始まりだと思います。相当多くの人たちは、それを避けられない現実として受け入れていましたが、今では手に触れられるほど具体的に目撃しています。そんなものを現実にしてはいけないのです」と彼女は言う。


パレスチナの解放は私の解放

パキスタン系アメリカ人の作家兼ジャーナリストで、パレスチナ支援活動に携わってきたイマン・スルタンは、100日以上にわたるジェノサイドを目の当たりにしたことで、「パレスチナ人の人間性を認識することで、自分たちの人間性に気づくという覚醒につながった」と語る。

「また、資本家たちの日常の流れや華やかな場(選挙であれ、政治家たちを中心としたカルト集団であれ、有名人であれ)は事実上廃れてきていると思います」とスルタンは続ける。「そして、権力者たちは、殺人を実行するだけでなく、自分たちの殺人を正当化するようになりました」。

この拒絶感は、私たちの生活のさまざまな分野にまで及んでいる。イスラエルに経済的、政治的に圧力をかけ、占領を終わらせることを目的としたBDS(ボイコット、株の処分、制裁)は、かつて見たこともないような支持を受けている。スターバックスがパレスチナを支援しているとしてスターバックス労働組合を訴え、イスラエルのマクドナルドがイスラエル占領軍の兵士に無料で食事を与えながら虐殺を続けている映像が流れた後、ほとんどの親パレスチナ派のアメリカ人はこの2つのファーストフードチェーンでの食事をしなくなった。些細なことに思えるかもしれないが、消費主義を文化全体の柱とするアメリカ人に、その文化の最大の柱である、この2つのファーストフードの消費を止めさせることは、想像を絶することだっただろう。つまり、人々はもはや後戻りはできなくなっているのだ。

また、BDSは一覧表だけにとどまらない。人々は購入する企業を調べ、地元産や中古品を購入し、食品廃棄を制限し、パレスチナ人が経営する企業やHUDA Beautyのようなパレスチナのために生活を賭している企業をはっきりと支援している。マスリによれば、パレスチナでは数え切れないほどの人々が、もう欧米の映画やテレビは見たくないと口に出しているという。

「私がよく耳にするのは、偽善に耐えられないという言葉です」とマスリは説明する。「彼らがやり切れないのは、①(ガザの人々を)爆撃したり、飢餓状態に置くなど、これは問題だと思うことを見なければならないこと、②私たちがそういった事態に対して目隠しされたまま、通常どおりの生活が進行しているのを見なければならない、この2つです」。

パレスチナを支持する人々が増えるにつれて、ケフィーヤなどの抵抗の象徴を身に着けるだけで、仕事を失ったり、暴力や脅迫を受けたり、攻撃を受けたり、停職されたりといった悪影響を受けることが増えている。さらに、活動家として投獄される危険もあり、同盟者にとってこの闘いの危険性はますますのっぴきならないものになっている。

「多くの政府は、ガザでの即時かつ恒久的な停戦を求める民衆の最近の抗議をほとんど無視したり、パレスチナ人の人権を支持して発言すること自体を犯罪とし、処罰したりしてきたが、これは、人間の尊厳を重んじ、保護すると主張するこれらの国々が茶番であることを明確に伝えている。」とファルハンは続け、彼女自身も窓の外にパレスチナ国旗を掲げただけで不動産会社M.Fishmanから立ち退きを迫られていると付け加えた。「人々はこのことの意味を理解している;パレスチナが自由になるまでは、自分たちは本当の意味で自由ではないということ。つまり自分が望むように学び、話し、自分が望むように消費し、自分が望むように集まり、自分が望むような服を着ることができなければならない」。

「パレスチナからスーダン、コンゴ、ハイチ、ティグレ州まで、私たち全員が自由になるまで、私たちの誰も自由ではない!!!」 と書かれた抗議のサイン。アカウント@axmedamiinmaxによってtwitter/xで共有された。


団結した世界VS欧米

世界の最高裁判所とされるハーグの国際司法裁判所において、南アフリカがイスラエルを提訴したことは、この欧米の植民地覇権主義に真っ向から挑戦するものであった。ネスリーヌ・マリクがガーディアン紙に寄稿したように、この裁判は、イスラエルによる75年にわたる血なまぐさい占領と現在の大量虐殺を非難するだけでなく、西側諸国が道徳、論理、ニュアンスの保護者であるという悪質な嘘に挑戦している。「ICJの事例は、多極化した世界において、いかに西側の論理が薄れ、その説得力が衰えているかを示している」とマリクは書いている。

パレスチナの側に立っている国々のほとんどが、西側世界に属さないことが指摘されている。ドイツが1904年から1908年にかけて20世紀最初の大量虐殺を行ったナミビアは、イスラエルを支持するドイツを非難した。イエメンのアンサール・アラー(通称「フーシ派」)は、イスラエルへの海運を妨害する勇気ある行動をとり、報復として首都が米英に空爆された際には、引き下がることなく攻撃者にも妨害を拡大した。この呼びかけに参加する強力な西側諸国がないことに絶望するのではなく、私や私の同志たちは、これをグローバル・サウスの革命だと考えている。彼らは私たちを打ち負かすことはできない。なぜなら、私たちの仲間は地理的にグローバル・サウスにいるだけでなく、西側諸国にもいるからだ。奴隷にされた者、避難民、先住民、難民の子どもたちであり、私たちの拒否の声はとても大きく、世界は私たちの声を聞いている。私たちの悲鳴を彼らにとって耐え難いものにしなければならない。

パレスチナでのジェノサイドは、現在進行中の他のジェノサイドについても認識を高めるきっかけとなった。コンゴ民主共和国では、欧米の干渉とコバルト鉱業によって600万人が殺されている。スーダンでは、アラブ首長国連邦の資金提供によるジェノサイドによって、ダルフールのマサリット人に対する急速支援部隊(RSF)/ジャンジャウィードによるジェノサイドや、スーダン武装勢力(SAF)によるスーダン全土での非アラブ人に対する超法規的殺害など、半年で9000人が殺されている。

「暴力にさらされ、攻撃される立場にあること、そしてパレスチナの大義が世界的な解放を呼びかけた。当然、人々は 「他に誰がいるんだ?」と尋ねました」と、アラブ人ではないスーダンの女性活動家で、自身と家族の安全のために匿名を希望するAは言う。

多くの人々がこのような残虐行為について認識を新たにしている今、世界的な連帯というロマンチックな物語を描くのは簡単だろう。しかし、私たちはまだそこに到達していない。そして不誠実な動きがあればそんな話には簡単には乗れない。

「人々は彼らの解放の考えに疑問を投げかけています。それが真の同盟関係の拡大という試練に耐えられるかどうかです」 とAは言う。「スーダンの場合、10月7日よりもずっと前から、教育、擁護、支援のための情報資材を作成していた地元の活動家がたくさんいました。エチオピアの北部にあるティグレ州のように、離散した人々の間で話を共有する人がほとんどいない他の運動では、真の同盟関係と、別の運動に付随するスローガンとの間の断絶があったのです」 。

暴動や、かつて経験したことのないような反乱、経済が機能しなくなるような市民的不服従行為を呼びかける人々がいる。そうしなければ、私たちはパレスチナ人を失望させ、私たち自身を失望させることになるだろう。

スルタンは、私たちが前例のない時代に生きているとはいえ、まだ長い道のりがあることに同意する。「第一世界と第三世界の間の激変はまだ埋まっていないと思う。それはまだ起こっていない。でも、これは始まりと呼べるでしょう」と彼女は言う。

アフリカ諸国であるコンゴ民主共和国とスーダンは、私たちの運動において、他の国々が受けているような認知度と世界的連帯を得るのに苦労している。「自由コンゴ」や「自由スーダン」という言葉は、私たちの抗議活動の際に付け加えられるが、これらの国に焦点を当てた抗議活動への参加者は少ない。パレスチナが道徳のリトマス試験紙であり続ける一方で、同じように抑圧されている非アラブ系アフリカ人の証言や真実を受け入れようとしない人もいるようだ。このようにわざと知らんぷりすることは、もはや許されるものではない。パレスチナから目を背け、「問題は単純ではない」と一蹴することが許されたのは何年前のことだろうか。

自己満足の時代は終わり、私たちはすべての兄弟姉妹を心に抱き、私たちの戦いの中心に据えておかなければならない。アフリカ人への抑圧が常に世界的な認識と連帯を得るのに苦労してきた世界では、言うは易く行なうは難し、かもしれないが、それはやらなければならない。そして、私たちはさらに前進しなければならない。暴動や、かつて見たこともないような反乱、経済が機能しなくなるような市民的不服従の行為を呼びかける人々がいる。そうしなければ、私たちはパレスチナ人を失望させ、私たち自身を失望させることになるだろう。


悲しみは深いが、解放は手の届くところにある

これは人間としての大きな試練であり、これに失敗すれば、私たちは存在しなくなる。これは誇張でも精神的な比喩でもない。植民地主義と資本主義が、人類がこの地球上で生きる能力を破壊する双子の悪であることは、科学的事実なのだ。ガザでのジェノサイドだけでも、イスラエル軍は3カ月間で、世界で最も気候変動に脆弱な2つの国と同量の排出物を排出した。コンゴからの資源剥奪や、イスラエルに資金を提供しイエメンに戦争を仕掛ける同じ企業や国(アメリカやイギリスなど)は、世界最大の汚染者であり、お金を手にするだけのためにこの地球上で人間が生きるチャンスを奪っている。私たちは、パレスチナだけでなく全世界を陥れている鎖を捨てなければならない。

私たちには時限タイマーがあり、それは終わりに近づいている。もし私たちが、この占領を終わらせ、世界中の私たちの兄弟姉妹を解放することなく、歴史上最も多くの文書や記録が整ったジェノサイドを結果を伴うことなしに許すなら、私たちはすべてを失うことになるだろう。

マスリは、連帯の声によって、自由は手に入れられるものだと感じたという。しかし、それを勝ち取るのは難しいことであり、イスラエルや他の西側諸国が、帝国の死に対して、私たちが決して癒すことのできない恐ろしい暴力行為を犯すであろうことも知っている。

「イエメン、ナミビア、南アフリカなどは希望を与えてくれますが、私たちの前にはまだ長く血なまぐさい道が続いています」と彼女は言う。

しかし、筆舌に尽くしがたい苦しみの中に平安を私は感じる。なぜならば、解放が間近に迫っていることを知っているからだ。永続的な平和をもたらすことで、失われたすべての人々の血の復讐を果たすことになることを私は知っているからだ。生まれて初めて、私にはそれが見える。地平線上や遠い未来ではなく、今ここに。子どもたちのためだけでなく、私のためにも。解放はここにあり、私たちは手を伸ばすだけでいい。これほど近くまで来たことはない。

私の心が墓であることをやめることはぜったいにないだろう。私は自分が目にしたものからは決して癒えることはないだろう。私は永遠に泣きつづけるだろう。それでも、私はこれほど絶望的な気持ちになったこともなく、同時にこれほど希望に満ちたこともない。初めて、私は信念を持ったのだ。
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ガザにより、ヨーロッパ哲学の倫理的破綻が露呈された

<記事原文 寺島先生推薦>
Thanks to Gaza, European Philosophy Has Been Exposed as Ethically Bankrupt
ハイデッガーのナチズムからハバーマスのシオニズムまでの哲学は、「他者」の苦しみを重要視しない
筆者:ハミド・ダバシ (Hamid Dabashi)
出典:GR 2024年1月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月4日


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イラン、シリア、レバノン、トルコが、ロシアと中国に全面的に支援され、武装し、外交的に保護され、テルアビブを3カ月間、昼夜を問わず、爆撃し、何万人ものイスラエル人を殺害し、数え切れないほどの負傷者を出し、何百万人もの家を失わせ、現在のガザのように、その都市を人が住めない瓦礫の山と化す意志とやる気があったとしたらどうだろう。

ちょっと想像してみてほしい:イランとその同盟国が、テルアビブの人通りの多い場所、病院、シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)、学校、大学、図書館、あるいは実際に人通りの多い場所を意図的に標的にし、民間人の犠牲者を最大にする。イランとその同盟国は、イスラエルのネタニヤフ首相と彼の戦争内閣を探していただけだと世界に言うような状況を想像してみてほしい。

アメリカやイギリス、EU、カナダ、オーストラリア、そしてドイツは、この架空のシナリオの猛攻撃を受けたら、24時間以内に何をするだろうか?

現実に戻って、10月7日以来(そしてその数十年前から)、イスラエルの同盟国である西側諸国は、イスラエルがパレスチナの人々に行なったことを目の当たりにしてきただけでなく、軍事装備、爆弾、軍需品、外交報道をイスラエルに提供し、アメリカのメディアはパレスチナ人虐殺とジェノサイドを思想的に正当化してきたという事実を考えてみよう。

前述のような架空のシナリオは、既存の世界秩序では一日たりとも許されないだろう。アメリカやヨーロッパ、オーストラリア、そしてカナダの軍事的暴挙がイスラエルを全面的に支援している今、パレスチナ人とまったく同じように、無力な私たち世界の人々も芥子粒みたいな存在だ。これは単なる政治的現実ではなく、「西洋」を自称するものの道徳的想像力や哲学的宇宙にも当てはまる。

ヨーロッパの道徳的想像力の圏外にいる私たちは、彼らの哲学の世界には存在しない。アラブ人やイラン人、イスラム教徒、あるいはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの人々。ヨーロッパの哲学者たちにとって、私たちは、征服し黙らせなければならない形而上学的な脅威としてしか、存在論的な現実を持たないのだ。

イマヌエル・カントやゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルに始まり、エマニュエル・レヴィナスやスラヴォイ・ジゼックに至るまで、西洋哲学者らから見れば、私たちは東洋哲学者が解読する使命を負った奇異な存在であり、物であり、知ることのできる対象である。そのため、イスラエルやアメリカ、ヨーロッパの同盟国によって私たちが何万人殺されても、ヨーロッパの哲学者たちの心は少しも動じないのだ。

関連記事:イスラエル-パレスチナ戦争:イスラエルの復讐対象はすべてのパレスチナ人。


聴衆としての欧州部族

もしそれを疑うなら、ヨーロッパを代表する哲学者ユルゲン・ハバーマスと彼の同僚数人を見たらいい。彼らはあきれるほどの卑劣な野蛮さで、イスラエルがパレスチナ人を虐殺していることを支持している。問題は、現在94歳のハバーマスを人間としてどう考えるかではなくなった。問題は、社会科学者、哲学者、批判的思想家としての彼をどう考えるかだ。彼の思想内容は世界にとって重要性を持っているのだろうか、いや重要性を持つことなどあったのか?

世界は、もう一人のドイツの主要な哲学者マルティン・ハイデッガーについても、ナチズムとの有害な関係に照らして同様の疑問を投げかけている。私の意見では、ハバーマスの暴力的なシオニズムと、彼の哲学全体がもたらすと思われる重大な結末について私たちは今、同様の質問をしなければならない。

もしハバーマスがパレスチナ人のような人々に対する道徳的想像力の余地を微塵も持っていないのであれば、彼の哲学が目指すものは、他の人類、つまり彼の直近の聴衆としての欧州部族を超えたものに何らかの関わりを持つと考える理由はあるのか?

イランの著名な社会学者アセフ・バヤトは、ハバーマスへの公開書簡の中で、ガザの状況に関して彼は「自己矛盾を起こしている」と述べた。失礼ながら、私はそうは思わない。パレスチナ人の命を軽視するハバーマスの姿勢は、シオニズムと完全に一致していると思う。イスラエル国防相ヨアヴ・ギャラントが公言しているような、ヨーロッパ人以外は完全な人間ではない、あるいは「ヒト的動物」であるという世界観と完全に一致しているのだ。

パレスチナ人をこんな風に完全に無視してしまうのは、ドイツとヨーロッパの哲学的想像力に深く根ざしている。一般的な認識として、ホロコーストの罪悪感から、ドイツ人はイスラエルへの強固な支持を築き上げてきたと言われている。

しかし世界の他の国々から見れば、南アフリカが国際司法裁判所に提出した堂々たる文書が証明しているように、ドイツがナチス時代に行なったことと、シオニスト時代に現在行なっていることの間には完全な一貫性がある。

ハバーマスの立場は、シオニストによるパレスチナ人の虐殺に加担するというドイツの国家政策に沿ったものだと私は信じている。それはまた、アラブ人とイスラム教徒に対する人種差別的、イスラム嫌悪的、外国人嫌悪的な憎悪と、イスラエルの入植者植民地の大量虐殺を全面支持する「ドイツ左翼」なる集団とも軌を一にしている。

ドイツが今日抱えている問題はホロコーストの罪悪感ではなく、ジェノサイドへの郷愁だと私たちが考えても許してもらうしかない。ドイツは過去の100年間(この100日間のことだけではない)にわたってイスラエルがパレスチナ人を虐殺してきたことを、自分の代わりにやってくれているという思いにふけってきたのだから。


道徳的堕落

ヨーロッパの哲学者の世界観に対して一貫して指摘されるヨーロッパ中心主義という非難は、単に彼らの思考における認識論的欠陥に基づくものではない。それは道徳的堕落の一貫した兆候である。私は過去に何度も、ヨーロッパの哲学的思考とその最も著名な代表者の根底にある矯正不能な人種差別を指摘してきた。

この道徳的堕落は、単なる政治的失策やイデオロギーの盲点ではない。彼らの哲学的想像力に深く刻み込まれている。それは矯正不能なまでに部族的だ。

ここでは、私たちは栄光のあるマルティニークの詩人、エメ・セザールの有名な言葉を振り返らなければならない。

「そう、ヒトラーとヒトラー主義の歩みを臨床的に、詳細に研究することは価値があるだろう。そして、20世紀の非常に優れた、非常に人間主義的で、非常にキリスト教的なブルジョワに次のような事実を明らかにすることは価値があるだろう。

ヒトラーは、①自分も気づかないうちに、その内部に存在しており、②自分の心の中の悪魔であり、③ヒトラーを非難すると、自分に一貫性がなくなり、④根本的に、ヒトラーを許せないのは、その犯罪自体のためでも、人間に対する犯罪のためでも、人間をそんな風に屈辱的に扱ったためでもない、それは白人に対する犯罪であり、白人を屈辱したのであり、それまでは(アラブ人、インド人、アフリカ人)のためだけに用意されていたものをヒトラーはヨーロッパ植民地主義的手続きに適用した。


パレスチナは今日、この文章で引用されている植民地時代の暴虐の延長だ。ハバーマスは自身がパレスチナ人の虐殺を支持していることが、彼の先祖がナミビア共和国で行なったヘレロ・ナマクア虐殺と完全に一致していることがわからないようだ。土中に頭を突っ込めば事実が消えてなくなると思いこむといわれる七面鳥さながらに、ドイツの哲学者たちは自らのヨーロッパの妄想の中に頭を突っ込み、世界が彼らの真の姿を見ていないと思い込んでいる。

私見では、ハバーマスは驚くようなことも矛盾することも何も言っていない。まったく逆で、彼は自分の矯正不能な部族主義的哲学からは一歩も外に出たことはない。自分の哲学には普遍性があると言っているのは誤りだ。

世界は今、そのような誤った普遍性意識から脱却しつつある。コンゴ民主共和国のVYムディンベ、アルゼンチンのウォルター・ミニョーロやエンリケ・デュッセル、日本の柄谷行人のような哲学者は、ハバーマスやその一派が主張した普遍性よりもはるかに正当な主張をしている。

私に言わせれば、パレスチナに関するハバーマスの道徳的破綻は、ヨーロッパ哲学とそれ以外の国々との植民地的関係における転換点を示している。世界はヨーロッパ民族哲学の誤った眠りから目覚めたのである。今日、私たちがこの解放を得たのは、パレスチナ人のような民族の世界的な苦難のおかげである。彼らの長期にわたる歴史的な英雄崇拝主義と犠牲によって、「西欧文明」の基盤にあるむき出しの蛮行がついに解体されたのだ。

*
ハミド・ダバシはニューヨーク市のコロンビア大学でイラン研究および比較文学のハゴップ・ケヴォーキアン教授を務め、比較文学、ワールドシネマ、ポストコロニアル理論を教える。近著に『The Future of Two Illusions: The Future of Two Illusions: Islam after the West』(2022年)、『The Last Muslim Intellectual: The Life and Legacy of Jalal Al-e Ahmad』(2021年)、『Reversing the Colonial Gaze: 2020年)、『皇帝は裸である: On the Inevitable Demise of the Nation-State』(2020年)など。著書やエッセイは多くの言語に翻訳されている。
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