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米国と同盟諸国がISISを創設し、資金を出し、武器を与えていた

<記事原文 寺島先生推薦>
US and Allies Created, Funded, Armed ISIS
筆者:クリス・カンサン(Chris Kanthan)
出典:「ワールド・アフェアーズ」ブログ(world affairs.blog) 2017年5月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月30日


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 米国とその同盟諸国がISISを支援していたという考えは、ほとんどの人たちにとっては驚愕の事実であり、多くの認知的不協和を生み出すことになろう。そんな話を聞いた直後の反応は、「ありえない」「陰謀論だ!」などといったものだろう。しかしながら、全ての議論の余地のない証拠が、私たちの眼前にひろげられている。それらを組み合わせるだけの話だ。


 ご存知のとおり、シリアのアサドを失脚させるために、米国支配者層があからさまにアルカイダやISISに武装させるわけにはいかぬ。そこで登場するのが、サウジアラビアとカタールだ。これら2国が、米国から武器を買い、シリアのテロ組織に輸送するのだ。経路は、主にトルコで、ヨルダンを経由することもある(トルコはシリアの北で国境を接し、ヨルダンはシリアの南で国境を接している)。

 米国の支配者層にいる人たちはみな、ISISに資金提供をしているサウジアラビアとカタールの役割を認識している。例えば・・・

ヒラリー・クリントンは選対委員長ジョン・ポデスタにこう書いた。「カタールとサウジアラビアは、ISISや中東の他のスンニ派過激組織に、秘密裏に資金や軍事支援をおこなっている」と。

ジョー・バイデンも、ハーバード大学での興味深い演説で、サウジアラビアとカタールについて同様の事実を明らかにした。

2009年の国務省の機密電報にはこうあった。「サウジアラビアは世界最大のテロ組織への資金提供国家である」と。

・統合参謀本部長だったマーティン・デンプシー大将は上院での聴聞会でこう語った。「多くのアラブ同盟国がISISに資金提供をしている事実を把握しています」と。

NATO司令官のウェスレイ・クラーク将軍はこう言った。「我が国の友好諸国や同盟諸国はISISに資金提供しています」と。

大統領候補のエヴァン・マクマリンはこんなツイートを投稿した。「CIAでの私の任務は、米国と協働するよう、アルカイダを説得することでした」と。

DIA(米国防情報局)の高官らが2012年の国防総省白書で警告していたのは、米国はシリアの反政府勢力への武器提供をやめるべきだ、ということだった。その理由は、シリアの反政府勢力はもともとムスリム同胞団やアルカイダ、サラフィー主義者(イスラム教スンニ派の過激思想に追従する人々)からうまれたものだから、ということだった。

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サウジアラビアがISISに提供した、爆薬や化学兵器の原料

 ISISに資金や武器を与える国々に米国が何もしないのは変ではないだろうか? 怒りも示さず、非難も浴びせず、制裁も課さず、戦争を起こしたりもしていない。実際、ISISを支援するこれらの国々は、我が国が最も親しい国々でさえある!

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ISISを同志だと思っている人々は誰か?

 もっとおかしなことだが、米国もイスラエルもISISを好意的にとらえている。その理由は、ISISがアサドに対する政権転覆工作を支援している(していた)からだ。いうまでもないことだが、イスラエルとISISのあいだによい関係があることは疑いがない。

ジョン・ケリーが国務長官として認めたのは、米国の目的にはISISをてこに使い、アサドとの交渉を優位に進めることがあるという事実だった。同じ声明においてケリーが述べたのは、米国が多額の資金と努力を費やし、アサドを失脚させようとしていたことだ。さらには、プーチンの登場により、ISISが弱体化したことについても述べた。

イスラエル防衛相がある取材で語ったところによると、ISISがイスラエルを攻撃したのは一度きりで、その際ISISが即座に謝った!という。よく考えれば、この発言はじつに様々な点において尋常ではない。多くの人が、ISISは「イスラエル諜報機関」の味方である、と言っているのは、全く不思議なことではない。

イスラエル軍の諜報機関の長官は、ある演説の中でこう語った。「イスラエルはシリア政府よりもISISの方に好感をもっています」と。

イスラエルの著名なシンクタンクは、ISISは、「イランやヒズボラに対して役に立つ存在です」と述べた。

・ゴラン高原駐在の国連査察官の報告によると、イスラエルはシリアの反乱軍に武器を与え、負傷した反政府勢力団を支援している、という。

・イスラエルの複数の新聞が2017年報じたところによると、イスラエルは永年、ゴラン高原のイスラム民兵組織に武器を与え、資金を提供してきたという。

ニューヨーク・タイムズ紙のトーマス・フリードマンは、アサドよりもISISのほうがましだ、という記事を2本書いた。(2015年と2017年)。

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ISISがイスラエル製の武器を持っていることが判明


ただし、私たちが武器を与えているのは「穏健派反政府組織」だ!!

 シリアに対する6年間にわたる攻撃の中で最大の隠蔽工作は、我が国が支援しているのは「自由を愛する」反乱軍である、というものだった。これを超えるでまかせはないだろう。以下の2点が事実であることが明白なのだから。

A.いわゆる「穏健派反政府組織」の「自由シリア軍」は、タリバンや他のサラフィー主義組織と同程度にしばしばイスラム原理主義者である。つまり、ISISと同じくらい無慈悲で暴力的な組織でしかない、ということだ。

B.穏健派反政府軍はアルカイダやISISと混じり合い、協働していた。そのことは、主流報道機関でさえ幅広く報じていた。より詳しいことは、「穏健派反政府組軍という神話」という私の記事をお読みいただきたい。

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「穏健派反政府軍」支配下の地域では、女性たちの服装に厳しい統制がかけられている

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左:シリア軍兵士の実物の心臓を食べている穏健派反政府軍。右:CIAが精査し武器を与え資金を出しているなかで最大の組織であるアル・ジンキの一員が、10歳の少年の首を斬首したところを、ソーシャル・メディア上に誇らしげに投稿した。

 しかし、想像上の「穏健派反政府軍」を口実に、何十億ドル相当の武器や何万人ものテロリストがシリアに送り込まれた。嘘ばかりつく主流報道機関でさえ、湾岸諸国からアルカイダやシリアのISISに武器が輸送され、資金が流されていることについて、何百もの詳しい記事を報道していた。

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 上記のことが、米国とその同盟諸国がシリアのISISに資金を出し、武器を与え、軍事訓練を施し、支援している説得力のある証拠だ。(ところで、なぜ米国がアルカイダやISISを支援し、必死にアサド政権を転覆させようとしているのだろうか?その理由は、石油・天然ガスのパイプラインと宗教(スンニ派とシーア派の闘争)にある。 私が書いた「シリアでの戦争の裏にある3つの動機と7つの国々」という記事をお読みいただきたい)。

 さて、他の状況証拠についても考えてみよう。これらの状況証拠からも、同じ結論に達するのだが。


点を繋げば・・・ISISを支援している状況証拠が明らかに

 ISISの誕生について深く注意を払ってみよう。つまり、ISISがどのようにして武器と資金を手にし、石油の取引をおこない、衛星放送やソーシャル・メディアを駆使し、強力になったかについてだ。そうすれば、ISISがグローバリストから多くの支援を得てきたことがはっきりと分かる。



ISIS誕生にまつわる疑わしき事実

 まず挙げられることは、イラクのアルカイダ(当初はイラクのイスラム国(ISI)、その後ISISという名称に変更)の最高指導者は、CIAの刑務所で時間をすごしたという事実だ。一番の出世頭はバグダーディーで、ISISの最高指導者になり、2番目のジュラニはシリアのアルカイダ(アルヌスラ)の最高指導者になった。リビアとまったく同じような状況だ。CIAの刑務所出のアブドゥル・ベルハジがガダフィーとの戦争を率いたのだ。

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 さらに、のちにISISに加わった多くの外国人戦闘員はCIAとつながりがあった。たとえば、ISISの司令官のオマール・シシャニは、自分がジョージア国内のCIAの「花形学生」だったと報道機関に誇らしげに語っていた。


ISISは誰にも邪魔されず拡大した

 NSA(米国家安全保障局)やCIAの優れた監視能力からすれば、ISISやアルカイダの最高指導者らの居場所をつかんでいないとは考えにくいことだ。これらのテロリストが、湾岸諸国の一国の贅沢な大邸宅に住み、そこから世界各国でのジハード作戦を監視していることは、別に驚くことではない。

 ISISに関するすべての話は、はじめから馬鹿げていた。たった一本の銃だけを手にした多くのテロリストがイラクの大きな都市をいくつも制圧できるなんて。それと同時に、これらのテロリストは決してバグダッドを攻撃することはなかった。その事実は、この戦乱が「統制された混乱」であることを物語っていた。テロリストたちは巨大な武器を所持していた。戦車や追撃法やロケットなどだ。それほど多くの戦争もせずに、だ。さらにISIS は、これらのハイテク武器の使い方をすぐに理解していた。これは米国が訓練をしたあかしだろう。のちにISISは、広大な砂漠の中を、トヨタ製のピックアップ・トラックの新車や米軍製戦車1000台以上に乗り込み全く妨害をうけずに、進軍していた。イラク空軍やサウジアラビア国内の広大な米空軍軍事基地を使えば、ISISなど簡単に排除できただろうに。

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おっと、ISISが我が国の武器を使っている

 アムネスティ・インターナショナルからの2015年の報告が、「ISISの武器のほとんどは米国製である」と指摘した際、報道機関の専門家らは言い訳と説明に終始していた。その説明によると、米軍がISISの支配地域にうっかり武器を落としてしまった、というものだった。おいおい!

 米国家安全保障局により、25億ドル以上相当の武器・軍事車両がイラクとクエートに送られたという説明のつかない事象が発生していることが明らかにされたのだが、あの件はどうなったのだろうか?
さらには、CNNが報じたISISの訓練キャンプの動画に「US」と書かれたテントがあった件は、どうなったのだろうか?

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 3年間、トルコは盗んだ石油の代価として米国製の武器をISISに売っていた。この行為は、プーチンが登場し、ISISの石油タンカーを破壊するまで続いた。タンカーは戦闘機の標的になりやすいからだ。米国がなぜおなじことをしなかったかについて問われた元CIA長官であり、ヒラリー・クリントンの支持者であるマイク・モレルは、「環境への被害を危惧したため」と答えた!こんな狂気にまみれた嘘など信頼できるはずがない。


ISISには攻撃したふり、シリア軍には本当に攻撃を加える

 オバマはシリアやイラクに何千もの爆弾を落とし続けた。2015年と2016年だけで5万発だ。爆弾一つにつき、ISISの兵士が一人死んだとすれば、ISISの戦闘員は一人も残らなかっただろう。オバマがISISに対しておこなっていた戦争が嘘だということは、このことからも明らかだ。

 米国やイスラエルは幾度となくシリア正規軍に攻撃をしかけた。そのことにより、常にISISやアルカイダを負け戦から救うことになった。(こちらこちらを参照)。

ISISやアルカイダを応援する報道機関と専門家たち


 ISISは軍における、「陽動作戦」として知られている。明らかな事実は、ハリウッドやPR活動を使って、米国・イスラエルがISISの宣伝をおこなっていたことだ。ISISはソーシャル・メディア上で広く拡散されていた。具体的には、YouTubeやフェイスブックなどだ。多くの言語で、信じられないくらい創造的(ただし気分は悪くなるが)な動画やメッセージや衛星放送を使って、西側の人々に流し、残忍な宣伝を広めていたことはすべて、西側諸国の諜報機関から幅広い支援をうけていたはっきりとした証拠だ。(穏健に政治の間違いを指摘するだけでも、フェイスブックやツイッター、YouTubeが、アカウントを閉鎖したり消したりしていることを考えてみてほしい)。

 報道機関との癒着や支配者層による露骨な宣伝の一例として、シリアのサウジアラビア人聖職者アブドラ・ムハイシーニ(ムハイスニ/ムヘイスニとも)を考えてみよう。ロサンゼルス・タイムズ紙は、彼を「スーパースター」、BBCは「カリスマ」と持ち上げている。ムハイシーニは30万人以上のフォロワーを持つツイッターのアカウントを持ち、YouTubeやテレグラムでも人気がある。衝撃的なのは、彼がシリアのテロリストであり、公然とISIS/アルカイダを支援し、幼い子どもたちを自爆テロに勧誘し、集団処刑に堂々と参加していることだ。

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 2017年7月にISISが敗北し、その首都モスルが解放されたときの主流報道機関の記事の題名は多くを物語っていた。祝福するものは誰もなく、モスルが「陥落した」と嘆く記事ばかりだった。そしてその記事で論じられていたのは、イラクがどのように復興するか、イラクが将来ISISのような組織をどのように回避するかというものではなかった。それどころか、ISISがいかにして復活するかという分析がなされていた! 超リベラルなニューヨーカー誌は、「モスル陥落。 ISISの次は何だ?」という記事を出し、保守的なウォールストリート・ジャーナル紙は、「モスル陥落はISISにとって何を意味するのか?」を重苦しく考える記事を出した。

 最後になるが、アサドがシリアで人殺しをすれば、西側諸国は嘘泣きをして、ショックを受けた振りをして、空爆をすべきだと主張する。しかしISISがヨーロッパで人殺しをすれば、政治家や報道機関は、私たちに、慣れればいい、とだけ伝える。


なぜだ。全体像はどうなっているのか?
 
 アルカイダやISISやアル・シャバブ(ソマリア)やアブ・サヤフ(フィリピン)、ボコ・ハラム(ナイジェリア)などのイスラムテロ集団はみな、グローバリストたちにとっては、都合のいい道具だ。イスラムテロ組織は、兵士たちが安い値段で手に入り、しかも獰猛に戦い喜んで死ねる兵士たちだ。数も多く、世界中からかき集めることも可能で、終わることのない戦争の傭兵として利用できるので、世界覇権を夢見る軍産複合体や裏で糸を引く人形使いたちにとって、素晴らしい組織なのだ。さらに彼らを使えば、政治論争や議会・国民の承認抜きで代理戦争を始めることもできる。そうだ。何カ国は破壊され、味方だと思っていた勢力からテロ攻撃を受け、大量のイスラム教徒移民がヨーロッパや米国に押し寄せ、社会混乱が生じるなどの事象が発生するだろうが、得られる利益からすれば、仕方のないことなのだ。これは不都合な真実であり、このことについては、「グローバリスト達とイスラム教徒テロリストたちのけがれた同盟」という私が書いた記事をお読みいただきたい。
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バイデン家は犯罪一家

<記事原文 寺島先生推薦>
The Biden Crime Family
筆者:ソニア・ヴァン・デン・エンデ (Sonja van den Ende)
出典:Strategic Culture 2024年1月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月29日


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バイデン一家は本物のマフィア一族、もしくは、アメリカ史で言うところの 「モッブ(犯罪集団)」の構造を持っている、とソニア・ヴァン・デン・エンデは書いている。

2013年、ウクライナのキエフでいわゆる「マイダン・クーデター」が起きた。ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団などからの資金援助で、アメリカとEUによって実行された。

ジョー・バイデン現米大統領は、オバマ政権下で副大統領を務めていた2014年以来、ウクライナのあらゆるビジネスに投資してきた。息子のハンター・バイデンとともに、彼らは儲かるビジネスを立ち上げた。これは、アメリカとEUがウクライナに傀儡政権を樹立し、ウクライナが乗っ取られた直後から可能になったことだ。ウクライナは現在、完全に西側に依存している。ウクライナでの戦争は、西側が資金を提供し、「平和のための武器」を与え、ドンバスのロシア兵とロシア語を話す自国民を殺害している。

西側に自国を乗っ取らせることを許すのは愚かなことだ。この場合は流血の戦争がその結果だ。米国とその西側の植民地であるEUは、その国に関心がなくなったり、得るものがなくなったりすると、常にその国を裏切る。過去の例で言えば、イラク、クルド人、そしてジョージ・ブッシュ・シニア大統領の下での第一次湾岸戦争でのイラクのシーア派住民殺戮を思い出してほしい。

オバマ政権下では、例えば2013年にシリアを空爆することにまだためらいがあった(もちろん、彼らはシリアをかなり破壊した)が、バイデンは戦争に突き進んでおり、彼の対立候補(トランプ)が警告したように「バイデンは我々を第三次世界大戦に追い込んでいる」。そして今まさにそれが起こっている。


ジョー・バイデンとブリズマ事件

麻薬とポルノ乱用で悪名高いジョー・バイデンの息子ハンターは、2014年のクーデター直後、ウクライナ最大のガス会社であるブリズマ(Burisma)の取締役に就任した。

ブリズマ・ホールディング株式会社(Burisma Holdings Limited)は、エネルギー探査・生産会社のグループ会社。本拠地はウクライナのキエフだが、登記はキプロスのリマソール。2002年からウクライナの天然ガス市場で活動している。

それはウクライナ最大の民間天然ガス生産会社のひとつである。ウクライナのオリガルヒ(寡頭政治家)、ミコラ・ズロチェフスキーが所有している。ウクライナは、100人以上の死者を出したマイダン革命から少し前に立ち直りつつあった。その時ヤヌコビッチ大統領は脅されてロシアに逃れた。

当時のアメリカ副大統領ジョー・バイデンは、「マイダン革命」の背後に100%いた。ハンター・バイデンに加え、ポーランドの元大統領アレクサンデル・クワシニエフスキと、アメリカの情報機関CIAの元トップも、ブリズマ・ホールディングスの取締役会に加わった。ハンター・バイデンの任務は、エネルギー・フォーラムで会社を代表し、ブリズマの月例会議に出席することだった。もちろん、ハンターは麻薬とポルノ乱用の資金を得るために、いい小遣い稼ぎになった。

ウクライナのクーデターから2ヶ月も経たない、わずか28日の間に、バイデン一家に関わる重要な出来事が起こった。2014年4月16日、バイデン副大統領は息子のビジネスパートナーであるデボン・アーチャーとホワイトハウスで会談した。その5日後、バイデン副大統領はウクライナを訪問したが、すぐにマスコミ(主流メディア)は、彼をウクライナの「なじみの顔」と評した。

訪問翌日の2014年4月22日、アーチャーはブリズマの取締役会に加わった。その6日後の2014年4月28日、英国当局はブリズマのオーナーであるミコラ・ズロチェフスキーのロンドンの銀行口座から2300万ドルを差し押さえた。その14日後の2014年5月12日、ハンター・バイデンがブリズマの取締役会に参加し、その後数年間にわたり、ハンター・バイデンとデボン・アーチャーは、取締役会に参加したことでウクライナの腐敗したオリガルヒから数百万ドルを受け取った。

2014年にキエフで起きた抗議デモは、ウクライナの腐敗に反対する「マイダン革命」として知られるようになった。そのいわゆる「革命」の後、ウクライナの政治家たちはアメリカの支援を必死に求めた。ズロチェフスキーは、ウクライナの高官たちがハンターのブリズマ取締役就任に同意し、承知していることを確認したとされる。しかし、ハンター・バイデンが理事に就任したことで、米国とウクライナの両政府高官にとって問題となり、ウクライナ政策の実施に影響を及ぼす利益相反の可能性が生じた。同じ犯罪組織に属するジョン・ケリー(現米国気候相)も、ハインツ家(ケチャップで有名)の後継者であるクリス・ハインツという義理の息子を通じて関与している。

ウクライナの検察官ビクトル・ショーキン(現在軟禁状態)はブリズマ社の件を調査していた。批評家たちは、ジョー・バイデンが息子をかばうために地位を乱用していると非難している。他方、アメリカ大統領は単に汚職官僚を権力から排除しただけだと主張している。ジョー・バイデンは息子のハンター・バイデンと自分自身を守った。ビクトル・ショーキンを解雇すべきだと公言したり、「バイデンは息子の仕事を守るためにウクライナから10億ドルの支援を見合わせると脅したりした。」

ブリズマ社への調査は行なわれていたが、この事件を隠蔽するために、ショーキン検察官の次席検察官であったヴィタリー・カスコは、ジョー・バイデンの介入時にブリズマ社は休眠状態だったと述べている。元駐ウクライナ大使のマリー・ヨバノビッチと欧州・ユーラシア担当国務次官補のジョージ・ケントは、トランプ大統領の弾劾調査において、ショーキン検察官は汚職に手を染めていたと証言した。米国とその同盟国は、彼を追放するために協調的な努力をしていた。

しかし、これだけではない。最近、2020年のアメリカ大統領選挙への干渉の可能性を調査しているアンドレイ・デルカチというウクライナの元国会議員のインタビューを通じて、当時「爆発的な証拠」を保持していたハンター・バイデンのラップトップについて報告したことが知られるようになった。イタリアのジャーナリスト、シモーナ・マンギャンテとのインタビューでデルカチは、ウクライナに対するアメリカの影響力によって、ジョー・バイデンが汚職疑惑に関与した人物を確実に見逃すことができたとほのめかした。

「米国とウクライナからロシアのために働いていると非難されているデルカチは亡命生活を送り、反汚職支援活動でやり玉に挙がっているという。バイデン一族のウクライナ関連の犯罪疑惑を暴露しようとする者は、アメリカ政府高官からモスクワの手先として日常的に排除されている、とデルカチは主張する。」

AP通信によると、ハンター・バイデンは、ルディ・ジュリアーニとトランプ元大統領の別の弁護士を訴え、2人(デルカチとトランプ)がデラウェア州のコンピューター修理店のオーナーから個人情報を入手した後、彼の個人情報に不適切にアクセスし、共有したとしている。

共和党が下院の過半数を占め、調査委員会を支配するようになった今、ハンター・バイデンへの注目は強まり、2023年9月12日以降、息子の海外事業取引をめぐってジョー・バイデンに対する弾劾調査が行われている。


さらなる刑事事件

調査の過程で判明したことは、オバマ政権はハンター・バイデンがブリズマの取締役に就いていることを知っており、それが対ウクライナ政策を効果的に実施する上で問題であったということである。さらに、この調査によって、副大統領の息子がウクライナの悪徳オリガルヒが所有するブリズマ社の取締役に就任した際、オバマ政権内の役人が警告のサインをどの程度無視していたかが明らかになった。リークされた報告書には、バイデン一家が関与した広範かつ複雑な金融取引の詳細が記されており、ウクライナの汚職防止策を支援しようとする際に米政府高官や役人が直面した板挟み状態が描かれている。ラップトップの調査結果は、後にこれを裏付けるものとなった。

もうひとつの汚職事件は、ローズモント・セネカ・パートナーズという会社だ。父親が副大統領に就任した5ヵ月後、ハンターはデボン・アーチャーや、クリストファー・ハインツと共同で投資運用会社ローズモント・セネカ・パートナーズLLCを設立した。ハインツはジョン・F・ケリー上院議員(マサチューセッツ州選出)の義理の息子で食品会社の財産を受け継いでいる。同社はメタビオータなど、さまざまな新興企業に投資している。ロシア国防省によれば、この2社はとりわけ生物兵器の製造・生産に責任を負っており、COVID-19パンデミックやウクライナ市民への実験にも(部分的に)責任があるかもしれない。生物兵器に関する一連の記事(記事の一番下に全記事へのリンクがある)はこちらでお読みください。

結論として、バイデン一族は本物のマフィア一族、つまりアメリカ史で言うところの 「モッブ(犯罪集団)」の構造を持っていると言える。息子(ハンター)をコントロールできない父親(ジョー)は、他の「モッブ」のメンバーであるデボン・アーチャーやクリス・ハインツと関わり、怪しげなビジネスを立ち上げている。こうした犯罪事件から目をそらすため、ハンター・バイデンは現在、薬物でいささか問題を起こしたが、画家になって、今は真っ当な道を歩んでいる 「正直な男」 であることをアピールしている。これが、この国(そして西側)を支配し、戦争や生と死に関する決定をしているアメリカのマフィア組織である!
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ベルゴロドの軍用機墜落により亡くなった捕虜は、「ウクライナは我々を肉扱いしている」と語っていた

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine ‘considers us meat’ POW killed in Belgorod crash
交換される予定だった捕虜兵の一人は、ウクライナ政府の軍隊に対する軽蔑について証言していた
出典:RT  2024年1月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月28日


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ロシア国防省が公開した2022年の動画の静止画に映るウクライナ人捕虜コンスタンチン・ダニルチェンコさん(1978年~2024年)© RT


 水曜日(1月24日)に死亡したウクライナ人捕虜の一人は、2022年に投降した理由についてRTに語っていた。コンスタンチン・ダニルチェンコさんは、ロシアのベルゴロド地方上空でウクライナのミサイルによって撃墜された軍用機に乗っていた。なおこの軍用機に生存者はいなかった。

 ロシア国防省によると、「IL-76機はその日遅くに交換される予定だったの捕虜65人を運んでいた。この軍用機はウクライナのハリコフ州から発射されたミサイル2発の直撃を受け、水曜(1月24日)朝に墜落した。ロシア兵3名と乗組員6名を含む乗員全員が死亡した」という。

 当RTは、墜落した飛行機の乗客名簿の11番にダニルチェンコという名前を見つけた。その名前に聞き覚えがあったのは、ロシア国防省が公開した2022年の動画のためだった。その動画の中で、当時捕らえられたばかりのウクライナ人兵士が投降した理由について語っていた。

 ダニルチェンコさんは動画の中で「生きていたかったからです。私たちは『肉』とみなされており、なぜ私たちの指導部が私たちに対してそれほど冷たいのか誰もが理解しています」とその動画で話していた。

 ウクライナはロシアが戦場で「人海」攻撃をおこなっていると非難している。しかし多くのウクライナ人捕虜によれば、実際にそのような攻撃をしているのはウクライナ側だという。

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関連記事:65 Ukrainian POWs killed in plane crash: What we know so far

 ロシア国防省は水曜日(1月24日)、ウクライナは捕虜の空輸について知らされていたと発表し、ウクライナ側が「テロ行為」で意図的に自国民を乗せた飛行機を撃墜したと非難した。

 ウクライナの報道機関は当初、ハリコフを標的としたロシア軍により、ミサイルを補給していた飛行機が撃墜されたと報じた。これらの報告は、IL-76機がウクライナ人捕虜を輸送していたことが明らかになったとき、静かに削除された。ウクライナ参謀本部は声明を発表し、ハリコフへの攻撃を理由にロシアの輸送機が正当な標的であると述べたが、捕虜の生死について は言及しなかった。

 ウクライナ軍はこれまでにも捕虜を意図的に標的にしており、 2022年8月には米国が供給したHIMARSミサイルをロシア領内のエレノフカにある刑務所に一斉射撃し、マリウポリで捕らえられた悪名高いネオナチ「アゾフ」部隊の隊員50人を殺害したことがある。

 ウクライナ側は過去2年間でどれだけの兵力を失ったかを公式に明言していない。先月、ウラジミール・ゼレンスキー大統領は、戦場での損失を補い、新たな部隊を編成するために50万人の追加兵士を動員する必要があると発表した。今月初め、ウクライナのユーリー・ルツェンコ元検事総長は、国民の入隊を促すため、戦闘による死傷者数(同元検事総長の推定は50万人)の本当の規模を明らかにするよう政府に要請した。


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我々の目標はパレスチナの窮状に焦点を当てることです―南アフリカ共和国外相

<記事原文 寺島先生推薦>
Our aim was to highlight the plight of Palestine – South African FM
国際司法裁判所は、西エルサレムに対する緊急措置についての判断を発表する予定
出典:RT  2024年1月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月28日


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南アフリカのナレディ・パンドール外相 © South African Foreign Ministry


ナレディ・パンドール外相はUbuntu Radioに対し、イスラエルに対するジェノサイド訴訟に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理を前に、南アフリカは希望を抱いていると語った。

国際司法裁判所(ICJ)は金曜日(1月26日)にハーグで会合を開き、国連のジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約違反の疑いに関して、イスラエルに対する緊急措置の可能性について議論する。17人の判事からなるICJパネルは、当日中に決定を発表する予定である。

「ICJ」という3文字は、提訴されるまで南アフリカの多くの人々には知られていなかった、とパンドールは語った。彼女によれば、主な目的は「パレスチナの罪のない人々の窮状に焦点を当てる」であり、「正義と自由が欠落していることに注意を喚起すること」である。彼女は、そのことの成否にかかわらず、「本当の分析と判断は法廷の場で明らかにされるだろう」と付言した。

関連記事:政府与党はイスラエルの人々を敵視しているわけではない。ジェノサイドに反対しているのだ―南アフリカの政治家

プレトリア(南アフリカ政府)は、今月初めの2日間の公聴会の一環として、イスラエルにガザでの軍事作戦を中止させるための予備判決を求めた。この申し立てにはイスラエルが強く反対し、この訴訟自体の却下を求めている。

ハマスが10月7日にイスラエル南部を攻撃し、ロケット弾を発射して人質を取った。イスラエル国防軍は、大規模な空爆作戦とガザへの地上侵攻でこれに応戦し、水と電気の供給を遮断した。パレスチナの保健当局によれば、戦争が始まって以来、ガザでは民間人を中心に2万5000人以上が死亡したという。イスラエルの公式統計によると、少なくとも1,139人のイスラエル人と外国人が死亡し、248人の人質がパレスチナの武装グループによる最初の攻撃で連れ去られた。



ソーシャルメディアへの転載は自由
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自然農法や無調整牛乳は法律違反?米国は、国民の同意なし、やりたい放題の警察国家に成り下がった

<記事原文 寺島先生推薦>
Milk and the Police State: Another State/Bureaucratic Steroid Overdose in Action
著者:アンドリュー・P.ナポリターノ裁判官(Judge Andrew P. Napolitano)
出典:Global Research  2024年1月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月28日


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 先週、ペンシルベニア州ランカスター郡で、州警察と捜査当局がエイモス・ミラーさんの農場のついての捜索令状を執行した。ミラーさんは40年にわたり、混じりっけのない新鮮な乳製品と牧草で育てた牛肉を生産している。ミラーさんは一般の人々には販売しない。州の命令に従った低温殺菌も化学処理もしていない、純粋な生の乳製品が欲しいという理由でミラーさんのクラブに入会した人々だけに販売している。

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 ミラーさんのクラブの会員は、自分たちの体は自分たちのものであり、何を摂取すべきかは政府ではなく自分たちが決めることができると考えている。ミラーさんは誰にも危害を加えたとして訴えられたり、起訴されたりしたことはない。それなのにミラーさんは国が押収した製品を取り戻せていないし、不正行為があったとして起訴もされていない。国は、ミラーさんのクラブの会員がすでに代金を支払った製品を入手することも禁じている。

 以下はその裏話である。

 1776年の春、現在ミラーさんの農場がある場所からそう遠くないところで、革命の気運が高まっていた。議会はフィラデルフィアで開かれ、焦燥感に駆られていた。植民地民兵と英国軍の間で血なまぐさい小競り合いが起こり、地方は混乱していた。英国軍はさらなる兵士を送り込もうとしていた。議会は何かしなければならないと感じていた。英国からの分離独立を決議するためには、その理由を示す説得力のある文書が必要だった。

 歴史家は、当時の手紙、パンフレット、説教、エッセイ、新聞の社説、演説を読んで、武力による分離独立に賛成した入植者は全体の3分の1程度だったと推定している。しかし、その3分の1が変革の風を巻き起こした。

 目前に迫っていたのは、反乱の決定と、それを支持する説得力のある主張だった。革命の年の晩春、議会は5人の委員会を任命し、祖国から分離する理由を記した文書を作成させた。トーマス・ジェファーソンという若い委員が、この文書の起草を任された。彼は4つの草案を書き、その最終案を委員会は議会に提出した。

 議会は1776年7月2日に独立宣言を採択した。この宣言は7月4日付で採択され、署名が完了したのはその年の夏の終わりであった。採決は全会一致だった。これで13植民地は自由と独立を手に入れたのだ。

 宣言の本質は、すべての人には天賦の人権があり、いかなる政府も立法や命令によってそれを奪うことはできないということであった。これらの権利は、生命、自由、幸福を追求し守るために自由に行使することができる。それらの権利には、政府に同意することも、同意しないことも選択できる権利も含まれている。そして、政府の唯一の正当な役割は、その政府に同意した人々の権利を保護することである、と宣言は述べている。

 ジェファーソンが作り上げたこの「被支配者の同意」理論は、当時最も急進的な政府理論だった。そこには、王も支配者もなく、個人の自由を圧殺する勅令もない。ただ、被支配者の同意によって生まれ、その権利を保護することに限定された民衆政府があるだけだ。もちろん、このような政府は血みどろの戦争が終わるまで実現しなかった。

 入植者たちは国王を殺そうとしていたわけではなかった。フランス人ならすぐにそうしただろうが。入植者たちは、英国王がいなくなることを望んでいただけだった。

 しかし、真の革命は心の中で起こったのだ。つまり、政府は同意して制限されない限り正当なものではなく、政府の権力ではなく個人の自由が既定の立場であるという考えである。この理論のすべては急進派によってかき立てられ、ジェファーソンによって明確にされ、議会によって受け入れられ、血によって達成され、英国王によってしぶしぶ受け入れられたものだった。

 1783年までに、入植者らは自由になった。 個人の最大限の自由と最小限の政府という革命精神が、新生アメリカを包み込み、体現した。

 その後の顛末はどうなったのだろう?

 こんにち、エイモス・ミラーさんの米国では、地方や州、連邦段階の政府が、国民の支持さえ得られれば、どんな悪事も正し、どんな行動も規制し、どんな出来事にも課税し、どんな富も移転する権限を主張している。

 かつて、政府が存在するには被支配者の同意が必要であり、さらには政府が何をするにも被支配者の同意が必要だったのに、いまでは私たちが何をするにも政府の許可を必要とすることになってしまっている。かつては自由が保証されていたのに、いまでは自由は笑いものにされている。

 革命の戦士たちが残してくれた遺産が、反転してしまったのだ。

 建国者たちが危険を冒して達成した自由を守る、と宣誓しておきながら、公職に就いてからその宣誓を無視するというのはどういうことなのか。合法的に医療を拒否できるのに、なぜ合法的に自分の飲みたい牛乳を飲む権利を行使する選択肢を得ることができないのだろうか? ジェファーソンが記した自由の中に、選択肢を自分で選べる自由はないのだろうか?

 法律は自由を守るために書かれているのか、それとも秩序を強制するために書かれているのか? 被統治者の同意という概念は実在するのか、それとも作り物なのか? 自由は世代を経るごとに拡大しているのか、それとも縮小しているのか? 政府は本当に、私たちの自由は天賦の権利であり、個人の同意がなければその政府は正当性を欠くと考えているのだろうか? 生きている人間は誰でも、私たちがこれまでそうだったように実際に自分の政府に同意しているのだろうか? それとも、私たちが政府に同意しているというのは単なる神話なのだろうか?

 ロンドンの貴族たちによって課された税金にうんざりしていた入植者たちと同じように、私たちもまた、過保護国家の推進者らが生き方にまで口出しをするような警察国家の規制にうんざりしているのではないだろうか。警察国家とは、法律が政府から自由を守るのではなく、政府を自由から守るものである。

 エイモス・ミラーさんは、顧客が求める製品を提供する事業家として成功している。彼はまた、制御不能に陥り、正気を失った米国政府を写す鏡にもなっている。

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 政府は自由を否定する組織なのか? 政府は私たちの同意を得ているのか、いないのか? 私たちの自由は私たちの存在にとって天賦のものなのか、それともそうではないのか? 自由は実在するのか、それとも作り物なのか?
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国連の法廷(ICJ国際司法裁判所)、イスラエルに「ジェノサイドの防止」を命令

<記事原文 寺島先生推薦>
UN Court orders Israel to ‘prevent genocide’
ICJは、同時に、ガザへの人道支援を許すよう要求
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月28日


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2024年1月26日、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、南アフリカが提訴したイスラエルに対するジェノサイド裁判の評決発表に先立ち、ICJのジョアン・ドノヒュー所長(C)とICJの判事たち。© Remko de Waal / ANP / AFPBB News

国際司法裁判所(ICJ)は金曜日(1月26日)、南アフリカがイスラエルを提訴していた件に関する最初の判決を下し、イスラエルに対し、ガザでの大量虐殺を防ぐために必要なすべての行動をとるよう命じた。しかし、裁判所はイスラエルに対し、ハマスに対する軍事作戦の中止は命じなかった。

17人の裁判官で構成される裁判員団は、ハーグに本部を置く同裁判所が南アフリカの裁判を審理する管轄権を有することに同意し、プレトリア(南アフリカ共和国政府)が要求した7つの「緊急措置」を可決した。裁判員団は、イスラエルが大量虐殺を行わないよう要求することに加え、ユダヤ国家であるイスラエルに対し、大量虐殺行為を行なった軍人や、パレスチナ人の大量虐殺を公に呼びかけた高官たちを処罰するよう命じた。イスラエルはまた、すでに行われた大量虐殺行為の証拠を保全しなければならない、と判決は述べている。

裁判官団はまた、イスラエルが「ガザ地区での人命にかかわる状況に対処するため、即時かつ効果的な措置を講じなければならない」と裁定した。西エルサレムはさらに、これらの措置を遵守するために何をしているかについての最新情報を1ヶ月以内に裁判所に報告するよう命じられた。

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関連記事:我々の目的はパレスチナの窮状に焦点を当てることだった―南アフリカ共和国外相

この判決は、南アフリカの要求すべてを満たしたわけではない。「ガザ地区における、ガザに対するイスラエルの軍事行動を即座に中止する」という措置は含まれなかった。

しかし、それはイスラエルにとっても打撃となる。イスラエルは、この訴訟を「根拠のないものであり、虚偽のもの」として、裁判所に全面的に却下するよう求めていたのだ。

国際司法裁判所(ICJ)の判決は最終的で法的拘束力を持つが、それを執行する手段はない。とはいえ、パレスチナ外務省は、金曜日(1月26日)の評決を、いかなる国家も法の上に立つものではないという「重要な注意喚起」として歓迎した。

南アフリカのナレディ・パンドール外相は金曜日に、自国の目的は「パレスチナの罪のない人々の苦境を浮き彫りにすること」と「正義と自由が欠落していることに注意を喚起すること」だと述べた。この件がどうなるかは別として、プレトリア(南アフリカ政府)はすでにこれらの目標を達成したとパンドールは*ウブントゥ・ラジオに語った。
*ウブントゥ・・・Debian GNU/Linuxを母体としたオペレーティングシステム(OS)。開発目標は「誰にでも使いやすい最新かつ安定したOS」を提供すること。(ウィキペディア)

南アフリカは12月下旬に提訴し、イスラエルは「ガザのパレスチナ人を殺害し、身体的・精神的に深刻な被害を与え、身体的破壊をもたらすような生活条件を与えている」として、国連ジェノサイド条約に違反していると主張した。



ハマスの戦闘員は10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、250人近くを人質としてガザに連行した。イスラエルはこれに対し、パレスチナ武装勢力に宣戦布告し、ガザをほぼ完全に包囲した。3週間にわたる空爆の後、イスラエル地上軍は10月下旬にガザに入り、現在もハマスと戦闘を続けている。

ガザ保健省が発表した最新の数字によれば、イスラエル軍の作戦によって26,000人以上のパレスチナ人が死亡し、そのおよそ3分の2が女性と子どもだという。今月初めに発表された国連の報告書によれば、ガザ地区の生活基盤の約60%が破壊され、人口の4分の1が飢餓に苦しみ、飲料水を手に入れることができない。

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イエメンがガザの味方に。地の利を活用。

<記事原文 寺島先生推薦>
Yemen Stands for Gaza, Proving its Regional Worth
筆者:ロバート・インラケッシュ(Robert Inlakesh)
出典:Internationalist 360°   2023年12月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月27日


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ガザ地区のパレスチナ人を支援するためにイエメンのアンサール・アラー(フーシ派)がとった行動は、この集団がシオニストに対して打撃を与えただけでなく、その英雄的行為を通じて、敵対勢力から一目置かれるこの地域の強力な存在であることを証明した。


2022年1月下旬、フーシ派はアラブ首長国連邦 (UAE) に対して二度にわたる無人機とミサイル攻撃を開始した。最初の一連の攻撃は、アブダビで死傷者を出し、ドバイの近くに影響を与え、大きな衝撃となった。2回目の攻撃は、イスラエルのアイザック・ヘルツォーク大統領がUAEを訪問中に行われた。

この2回の攻撃は、首長国の指導者たちに、イエメンに対する攻撃を続ければ大きな代償を払うことになるという強いメッセージを送った。しかし、おそらくもっと重要なことは、この攻撃によって、西側の支援はイエメンの国家的任務の遂行を抑えられないこと、そしてこの地域は、西側の課題遂行を選択したアラブ政権の安定確保のために、これまで米国が提供してきた保護だけではもはや十分でないところまで来ていることが証明されたことである。

2022年初頭、フーシ派はサウジアラビア王国の経済的、軍事的に価値の高いさまざまな標的に対してミサイル攻撃や無人機による攻撃も開始した。サウジアラビアの指導部には、イエメン軍の能力が著しく向上したこと、そして新たな方程式が確立されたことがすぐに明らかになった。2022年4月までには、国連(UN)が介入し、イエメンの全国的な停戦を保証した。これで、すべての暴力を完全に停止したわけではなかったが、比較的平穏状態になり大規模な敵対行為は止まった。

欧米ではイエメン紛争はあまり報道されておらず、それゆえ欧米の企業メディアもこのことをほとんど認めていないが、フーシ派はサウジアラビア主導の連合軍が同国への攻撃を継続するのを実質的にやめさせ、サナア(イエメンの首都)に傀儡政権を樹立できるというアメリカ、イギリス、イスラエルの望みを打ち砕いた。

この背景を知ることは、今日のイエメンが直面している苦境を理解するために不可欠である。イエメンの抵抗勢力は、イスラエルが支配する「エイラート」港へ船舶を行かせないことで、シオニスト組織に対する事実上の封鎖に成功した。フーシ派は、紅海でその命令に違反した船舶を拿捕し、攻撃した。このことは、シオニストに危機的状況を引き起こし、大きな経済的影響をもたらした。この危機は、今や米国の危機となっている。米国はこれまで、イエメン国民の民衆の要求に応えようとするフーシ派の国家的任務を抑えられていない。

ロイド・オースティン米国防長官は最近、紅海でのフーシ派の行動に対抗するため、同政権が海軍連合を編成したことを発表した。要するに、ワシントンはアメリカ国民が求めたわけでもなく、議会が承認したわけでもないのに軍事介入を開始したのである。このことは重要である。というのも、もしこの海軍連合軍がイエメンに侵略行為を行えば、この地域で大規模な軍事的エスカレーションを引き起こし、アメリカを西アジアにおける別の戦争に引きずり込む可能性があるからだ。このような紛争は、アメリカ国民にも、アメリカの覇権にも何の利益ももたらさない。シオニストの利益に資するだけだ。

多くの西側諸国海軍がこの連合に参加することに同意していたにもかかわらず、アラブ諸国の中で参加を選んだのはバーレーンだけだった。エジプトやサウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦はこの連合に参加していない。バーレーンという国は、軍事的には取るに足らない国であり、英国に設置された独裁政権は、海軍機動部隊がヨーロッパだけの侵略者連合ではないと主張するために利用される、形だけのアラブ国である以外、実質的な影響を与えることはできない。

特にサウジアラビア(KSA)とアラブ首長国連邦(UAE)が、自国をミサイルの砲火に巻き込むようなアメリカ主導の戦争を望んでいないことは明らかだ。この2国はこの方程式をよく理解しており、緊張がエスカレートすれば、アメリカはこの2国の安定も確保する能力がないことを証明することになる。したがって、サヌアに樹立された政府は、抑止力という方程式を通じて、今日、新たなレベルの正当性を享受していることになる。また、ガザのレジスタンスと連帯することを公然と宣言し、イスラエルに対してミサイルを発射するために軍隊を使用する措置をとった唯一のアラブ政府でもある。

フーシ派(アンサール・アラー)が成功させているこの大きな圧力は、西側をシオニストによるガザへの大量虐殺戦争をより早く終わらせる方向に追い込んでいる。イスラエル人に対する大胆な攻撃は、ガザへの侵略が終われば封鎖も終わる、という明確なメッセージとともに、西側諸国全体が対応策を講じるために奔走せざるを得ない状況に追い込んでいる。フーシ派は連帯の行動を通じて、この地域でのイメージを高め、歴史にその名を刻んだ。そしてアメリカとイスラエル政権には無視できない棘のような存在となっている。

イエメンはイスラエルに対し、もしガザに対する大量虐殺戦争が続けば、非常に厳しい対応をすると警告した。

テレビ記者会見
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国民救済政府のイエメン国防相であるモハマド・アル=アティフィ少将は水曜日(12月27日)に、「もし敵がパレスチナ国民に対する犯罪を止めなかったり、イエメンの安全と主権を侵害しようとするならば、我々は最も厳しく、最も痛みを伴う強力な打撃を敵に与える用意がある」と述べた。

「イエメンには多くの戦略的選択肢があり、必要と判断されれば、それを取ることをためらわない」とアティフィは、同国の軍事・安全保障指導者の合同会議で述べた。

また、すべての治安部隊は、武装勢力と協力・連携して任務を遂行するため、厳戒態勢を敷いていると明言した。

イエメン軍は、戦争で荒廃したガザのパレスチナ人を支援するため、イスラエルの港に向かう船舶や占領地全域の標的に対してミサイルやドローンによる攻撃を仕掛けている。

10月7日にガザの抵抗運動が開始した軍事作戦の後、イスラエル政権が行なった軍事作戦の開始以来、ガザでは21,000人以上が殺害され、そのほとんどが子どもと女性である。

アティフィは、イスラエルによる大量虐殺に強く反対するイエメンの姿勢を、「すべての人道法と国際法に合致した宗教的・道徳的立場」だと述べた。

一方、同会議は、米国が紅海でのイエメン攻撃に対抗する米国主導の海軍連合を形成する計画を進めることに警告を発した。

イエメンの指導者たちは、「我々は、イスラエルのために海洋を軍事化したり、国際航海の安全を損ねることで生じる事態については米国に責任があると警告する」と述べた。

「(イスラエル政権による)パレスチナ人民への弾圧に対するイエメン共和国の確固とした立場を逸らそうと考える者は、誰であれその動きを阻む」とイエメンの指導者たちは述べた。

国民救済政府の内務大臣アブドゥル・カリム・アル=フーシ少将はまた、「イエメンのすべての治安部隊は、イエメンの抵抗運動アンサール・アラー(フーシ派)の指導者アブドゥ=マリク・アル=フーシの指令を実行するために、軍隊と協力して任務を遂行する準備はいつでも整っている」と述べた。

先週、アンサール・アラー(フーシ派)の指導者は、もしワシントンとその同盟国がイエメンに対して軍事攻撃を行なった場合、イエメンの軍隊は紅海にいる米軍の軍艦を標的にすることを躊躇しないと述べた。
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南アフリカの弁護士らはガザ地区でのイスラエルによる戦争犯罪に加担したとして、ICJ(国際司法裁判所)に米英を提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
South African Lawyers Prepare Lawsuit Against US, UK for Complicity in Israel’s War Crimes in Gaza
出典:Internationalist 360°  2024年1月15日
筆者:アナドル通信(トルコの通信社)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月27日


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 「米国は今こそ、自らが犯した犯罪の責任を問われなければならない」と、47人の弁護士からなる一団を率い、米国と英国の弁護士らから訴訟の支援を受けているヴィカス・ヴァン・レンスブルグ氏は言う。


 南アフリカがガザでの大量虐殺を理由に国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルを提訴した後、同国の約50人の弁護士が、イスラエル軍によるパレスチナでの戦争犯罪に加担しているとして、米英両政府を相手取った別の訴訟を準備している。

 南アフリカの弁護士ヴィカス・ヴァン・レンスブルグ氏が主導するこの取り組みは、すでに連絡を取り合っている米国や英国の弁護士と協力し、犯罪に加担した者たちを民事法廷で訴追することを目的としている。

イスラエルがガザ地区に対するジェノサイドをおこなうことを可能にしたとして、ジョー・バイデンを起訴

 ここ数週間、イスラエルとその支援諸国の訴追を求める書簡を各国とICJに書き続けてきたレンスブルグ氏は、同僚たちの支援を得て、西側2カ国を提訴する準備を始めた。

 レンスブルグ氏はアナドル通信社のインタビューに対し、「米国は今こそ、自らが犯した罪の責任を問われなければなりません」と語り、米国政府と英国政府がイスラエル当局によるガザ市民に対する戦争犯罪の共犯者として裁かれる道筋を詳細に説明した。

「南アフリカによるICJへの提訴が指針となる」

 訴訟を起こすことを周囲に話すと、多くの支援を受けたとレンスブルグ氏は語った。 「多くの弁護士が訴訟に加わることを決めました。参加した人の多くはイスラム教徒ですが、私はイスラム教徒ではありません。この大義に協力する義務があると感じての行動だと思いますが、私は起きていることは間違っていると信じています。」

 イラクで起きたことはその一例であり、この問題が必要以上に重要視されなかったために、イラクで米国が犯した罪について誰ひとりその責任を追及しなかった、と彼は言った。

 しかし、今パレスチナで起きていることは、法的手続きを実行する上では理想的な展開であると人々は考えている、とこの南アフリカの弁護士は言い、「米国は、(イスラエルが)犯罪を犯すのを許すために、より多くの資金と資源を費やすことに忙殺されています」と付け加えた。

 「やめろ、とか、もう十分だ、という人は誰もいないのです」とレンズブルク氏は述べた。

 レンスブルグ氏は、南アフリカがイスラエルに対してICJに提訴したジェノサイド訴訟は、米国と英国に対する訴訟の指針となるだろうと述べ、この訴訟の結果と国連の取るべき措置に基づいて取り組みを開始する、と述べた。

いまこそ米国は責任を取らなければならない

 レンズブルク氏の考えでは、イスラエルに対するICJの裁判が南アフリカに有利に結審した場合、米国がその評決を受け入れなくても制裁を受ける可能性がある、としている。

 ICJの評決がジョー・バイデンに対する提訴を強化することになる、とレンズブルク氏は付言した。

 レンスブルグ氏は、南アフリカの同僚とともに、米英の法律事務所と連絡を取り、準備を進めている、と語った。

 ドイツが犯したジェノサイドの罪に対して、ドイツ政府が現在も賠償金を支払っていることを引き合いに出し、レンスブルグ氏はこう述べた。「米国は自ら犯した罪の責任を取らなければなりません。その責任を受け入れなければなりません」と。

 ジョージ・ブッシュ元米大統領に対しても2000年代に同様の訴訟が起こされたことを指摘し、海外でのこの法的手順も全員一丸となって協力すれば成功させることができるとみんな信じている、と同氏は語った。

 ハーグでの裁判は南アフリカがより優位な議論を展開しており、もし同裁判所が南アフリカに有利な判決を下した場合、イスラエルがまた攻撃に晒される可能性が出てくるのだぞ、という議論に脅かされていると同氏は述べた。

 先週、現在47名にまで増えた弁護士団は、米英両政府首脳に公開書簡を送り、「責任を回避することはできない」と伝えた。




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必見動画:「あなた方こそ問題」—保守派がダボス会議のグローバリストたちを面前でこき下ろした

<記事原文 寺島先生推薦>
Watch: "You Are The Problem" - Conservative Speaker Slams Davos Globalists To Their Faces
筆者:タイラー・ダーデン(Tyler Durden)
出典:ゼロ・ヘッジ(Zero Hedge)  2024年1月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月27日


保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のケヴィン・ロバーツ会長は、木曜日(1月18日)に開催された世界経済フォーラムで、グローバリストたちに向かってこう語った。「あなた方は解決者ではなく問題児です」と。

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 「この先、実現する可能性のある共和党政権に期待すること」と題された討論で、ロバーツ氏はエリート主義者たちに怒りをぶちまけた。

 「率直に言います」とロバーツは切り出し、「(将来の共和党)政権の構成員全員が持つべき課題は、(WEFで)提案された事案の表を作り、それらすべてに反対することです」と付け加えた。

 さらに、「そうする心づもりがなく、選挙で選ばれたわけでもない組織から権力を取り上げ、米国民の手にその権力を取り戻す覚悟のない者は、次の保守政権の一員となる覚悟がないということです」とも訴えた。

 議論がドナルド・トランプ氏に及ぶと、ロバーツ氏はパネルの司会者である王立国際問題研究所「特別研究員」であるロビン・ニブレット卿に、「あなたや誰かがダボス会議を自由民主主義の保護と表現するのは笑止千万です。ダボス会議で 『独裁』という言葉を使い、それをトランプ大統領に向けるのも同様に笑止千万です。こんな馬鹿げたことはありません」と述べた。

 さらに続けて、「私がダボス会議に出席したのは、この会場にいる多くの人々、そしてそれを見ている人々に、失礼は承知で、悪く思わないで欲しいのですが、あなた方が問題の一部であることを説明するためなのです」とも語った。

 「政界の指導者層が、一般市民たちに、本当は『Y』が真実であるのに、『X』が真実だ、と伝えるのです」とロバーツ氏は断言し、さらに話を続け、国境開放や移民問題、ジェンダー問題に関する事例を取り上げ、気候変動という「人類存亡の危機」を煽ることで、一般市民に日々罪悪感を植え付けておきながら、自分たちは自家用ジェット機で飛び回っているという偽善を指摘した。

 以下の動画をご覧いただきたい。


 ロバーツ氏は昨日、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領がこの会議で述べたのと同じ感想を述べた。

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関連記事:Milei Tells “Collectivist” Davos Elites They Are The Problem

 ロバーツ氏やミレイ大統領のような人物がWEFに招かれ、発言をおこなったことは驚きだ。WEF参加のグローバリストたちは、自分たちの敵について事前に綿密な調査を行なっているとしか思えないからだ。

 パネルディスカッションの前に書かれた文章の中で、ロバーツ氏は「悪名高い偽善的な自称マルクス主義者、プライベートジェット機を乗り回す環境保護主義者、そして大量虐殺に加担する人道主義者たちは、彼らが自分たちの組織を武器にして戦ってきた相手である米国一般市民との 『信頼関係を再構築』する方法を私どもヘリテージ財団から、聞きたがっているのでしょう」と指摘している。
Usually it’s just Klaus Schwab fantasising about giving everyone brain implants and doing away with democratic elections.
 通常は、クラウス・シュワブだけが全員に脳移植を施すことや、民主的な選挙を廃止することを空想しているだけなのだが。

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関連記事:FLASHBACK: Klaus Schwabb Excitedly Said Elections Won’t Be Needed Soon
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「抵抗枢軸」に対する米国が支援する「代理兵器」としてISISが復活した

<記事原文 寺島先生推薦>
Reviving ISIS: A US Sponsored “Proxy Weapon” Against the “Resistance Axis”
米国の西アジアにおける覇権に対する多方面からの攻撃に苦戦しているちょうどその時期に、世界有数のテロ組織が復活しつつあるのは偶然だろうか? さらに奇妙なことに、ISISと米当局の標的は両方とも全く同じだ。
筆者:オンライン・ニュースサイト誌 『ザ・クレイドル』(The Cradle)
出典:Global Research 2024年1月19日
   初出はThe Cradle 2024 年1月16日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月26日


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 イラクの治安関係者らは、国内でのISISの復活を警告しているが、これはイラクとシリアの米軍基地に対するイラクの抵抗作戦の急増や、イスラエルのガザへの軍事攻撃による地域不安定の拡大とあまりにも見事に一致している。

 同テロ組織に対する勝利宣言から6年以上が経過した現在、イラク諜報機関の報告書によると、数千人のISIS戦闘員がイラク西部の2地域で米軍の保護の下、無傷の状態で出現している、という。


パズルで欠けているピース

 本誌ザ・クレイドルが精査した諜報報告書によると、最盛期のISISはイラクで3万5千人以上の戦闘員で構成されており、そのうち2万5千人が殺害され、1万人以上が単に「失踪した」という。

 あるイラク諜報機関の職員は本誌に次のように語っている。

 「2017年末、数百人のISIS戦闘員がトルコとシリアに逃亡しました。2019年にカリフだったアブー・バクル・アル=バグダーディーの死を受けて、アブドラ・カルダシュがISISの指導者に任命された後、この新カリフは組織の再編に着手しました。そして彼の追随者たちにイラクに戻るよう命じました。この組織は、シリアとの長い国境、治安上の混乱、国境の両側の勢力の多様性を利用して、再びイラク領土に侵入したのです。」

 投獄されているISIS関係者らは、イラク国境警備隊による厳格な取り締まりとサーマルカメラ(赤外線を感知して温度を計測するカメラ)などの最新技術の使用のため、国境に侵入するのは簡単な仕事ではないと認めている。

 したがって、このテロ組織に必要だったことは、国境を越えて戦闘員たちを輸送するために、これらの要塞を突破または迂回できる仲介者を特定することだった。

 イラクの治安関係者が匿名を条件に本誌に語ってくれたところによると、米国がこうした国境侵犯を可能にする上で重要な役割を果たしている、とのことだった。

 「ISIS構成員らの通過経路を確保する上で米国が支援していることを裏付けるいくつかの事象があります。それは主に国境にいるイラク軍部隊、時に人民動員部隊(PMU)を砲撃することにより、ISIS 戦闘員が国境を越えることを可能にする隙間を作る行為になります。」

 そのイラク治安関係者が付言したのは、米国のチヌーク・ヘリコプターがシリア東部からイラク西部のアンバール砂漠とイラク東部のジェベル・ハムリーンまで戦闘員を輸送しているという確認された報告があるという事実だった。

 イスラム運動、過激派組織、国際テロリズムを専門とする研究者ムニル・アディブは、ISISが復活した可能性を認め、ISISが「ここ数週間にシリアとイラクで数十回の攻撃」をおこない、民間人と兵士数十人の死者を出した、と述べた。

 アディブによれば、「ガザ戦争とロシア・ウクライナ戦争に対して国際社会の関心が生じたことが、内外の後方支援を受け続けながらISISに隊列を再編する機会を促した」という。


テロをつくり出し密かに輸送する

 ホーラン渓谷はイラク最大の渓谷で、その長さはイラクとサウジの国境からアンバール県ハディーサ市近くのユーフラテス川までの 369 キロメートルに及ぶ。その地形は、高さ 150 ~ 200 メートルのそびえ立つ崖が特徴で、谷を囲む丘陵とその周囲に広がる小さな谷が含まれる。

 この渓谷は、今も昔も州内で最も危険な治安環境にある地域のひとつだ。砂漠地帯であり、混雑した都市部から離れているため、テロ組織はここを安全な避難所として利用している。この渓谷とその周辺地域では数多くの治安事件が起きており、最も顕著なのは2013年12月にISISがイラク軍第7師団長とその補佐官、アンバール県情報局長、将校8名、兵士13名を殺害した事件である。

 イラクのハッサン・セーラム国会議員は、ホーラン渓谷からテロ戦闘員を一掃するための軍事作戦の開始を呼びかけた。同氏は当クレイドル誌に対し、「この渓谷では、数千人のISIS構成員が米国の保護のもと、民間キャンプで訓練を受けている」ことを認め、米軍が「さまざまな国籍の数百人のISIS構成員をこの地域に移送している」と指摘した。

 もちろん、米国の外交政策には、西アジアやラテンアメリカで代理武装民兵組織が創設され、しばしばこれらの組織を利用して標的国の政府を転覆させてきたという歴史的証拠が溢れている。米国政府がイスラム過激派と同盟を結ぶことに全く抵抗がないことは、アフガニスタンのムジャーヒディーンへの武装と資金提供に直接関与し、そこからタリバンとアルカイダが誕生したことからも分かっている。

 米国とISISの関係が初めからあった証拠は非常に明確に存在する。同テロ組織の創設者と第二位の指導者は、米軍が運営する収容施設であるイラク南部のキャンプ・ブッカ刑務所の囚人の中から出ていた。米国人によって捕らえられ、その後解放された高い地位に就いたテロリストの名簿は常軌を逸している。:ISIS指導者アブー・バクル・アル・バグダーディ、彼の後継者アブー・イブラーヒーム・アル=ハーシミー・アル=クラシー、アブ・モハメッド・アル・アドナニ、アブ・ムスリム・アル・トゥルクマニ、ハジ・バクル、アブ・アブドゥルラフマン・アルビラウィ、アブ・アイマン・アルイラなどだ。

 収容者に対する虐待で知られるキャンプ・ブッカは、過激派分子を一堂に集め、これらの一触即発の輩を6年間(2003年から2009年)かけてゆっくりと煮詰め、その後、現在ではしっかりした連絡網を持つ過激派組織として解き放ったのだ。

 ISISの宗教当局者らは、刑務所で過ごした時間を利用して、解放された後に囚人がテロ組織に参加する誓約を得る活動に充てたとさえ述べている。

 米国諜報機関はまた、ISISの車列がその支配下にある都市間を移動することを許可することで、間接的にテロ組織を保護した。イラクの安全保障専門家らによると、他の保護規定として、拘束されたISIS構成員に対してイラクの裁判所が下した死刑判決の執行を拒否することや、イラク西部と東部にISIS構成員のための安全な避難所を設立することも含まれていた、という。


地域戦争における米歩兵としてのISIS

 1月5日の演説で、ヒズボラ事務総長ハッサン・ナスルラは、米国がこの地域でのISIS復活を支援していると警告した。

 本誌は、レバノンにおける過激派の新たな活動、過激派とイラクやシリアの過激派との間の通信、過激派間の不審な送金活動を監視する治安情報を入手した。

 レバノン陸軍情報部も最近、治安作戦の準備をしていたレバノン人とシリア人の一団を逮捕した。

 重要なことは、このテロ活動が急増していることが、レバノンでの抵抗組織がイスラエルとの安全保障および軍事戦闘をおこなっている時期に発生しており、いつでも開戦に発展する可能性があるという点だ。また、新たなISISの活動がレバノン、シリア、イラク、イランに集中していることも注目に値する。これらの国々は、パレスチナ人の抵抗を政治的、軍事的、兵站的に支援している国々である。

 1月4日、ISISは米軍によるコッズ軍司令官カセム・ソレイマーニー暗殺記念日にイランのケルマーン市で追悼行列を狙った2件の爆破事件に対する犯行声明を正式に発表した。イスラエル当局がベイルートでハマスの幹部指導者サレハ・アル・アロウリを殺害したわずか一日後、米国とイスラエルにとって西アジア最大の敵対国であるイランを標的とした前例のない攻撃で、二重の爆発により約90人が死亡、数十人が負傷した。

 それに先立ち、2023年10月5日、ISISはシリアの都市ホムスにある士官大学の士官卒業式を無人機で攻撃し、約100人を殺害した。これらの攻撃やイラク、シリア、イラン、パキスタン、アフガニスタン、アフリカでの他の攻撃は、新鮮な兵、資金、武器が再びISIS組織の動脈に注入されていることを示している。

 匿名希望のPMU(イラクの人民動員部隊)の高官は、米軍がその地域に接近する治安部隊を攻撃することで、イラク軍がホーラン渓谷に接近するのを阻止している、と本誌に語った。「これは、この地域でISISを攻撃していたPMUの部隊を米国戦闘機が標的にしたときに起こりました」と同高官は、渓谷に数十人のISIS構成員やその他の過激派組織が存在し、そこでこれらの組織は米国から訓練を施され装備を供給されていることを確認したという諜報報告を引用しながら明らかにした。

 情報源であるアンバール作戦司令部の保安関係者らは、次の情報を確認している。

 「このテロ組織による注目に値する活動は、数週間前にイラク西部で記録されていました。ルトバ砂漠付近では、ISIS戦闘員が地下の隠れ家を掘っているところが目撃されています。情報によると、同組織は多くの場所でテロ作戦を実行中であるとのことです」と彼らは本誌に語った。

 同時に、ISISはイラク東部、サラー・アルディン州東部、ディアラ州北東部、キルクーク南部を含む三角地帯、特に地理的に困難なマクール、ハムリン、グーラ、ワディ・アル・シェイ、ザギトゥーン地域で活動を拡大している。

 覚えておくべきことは、米軍がイラクに駐留している前提は、米国がISISと戦う諸国連合の傘下にあるという事実だ。先週、イラク議会が外国軍追放を初めて可決してから4年が経ったが、イラクのムハンマド・シャーア・アル・スーダーニー首相は米軍の「不安定化」の影響を考慮し、これらの戦闘部隊の「迅速かつ秩序ある」撤退を要求した。

 米国政府は、イラクから撤退する「計画はない」と反論しただけでなく、1月14日、イラクとシリアに不法に、両国の同意なしに追加で1500人の軍隊を派兵すると発表した。

 ここでの皮肉の一つは、イラク政府がイラクからの米軍撤退の問題を提起するたびに、ISISが勢いを取り戻しているように見えることだ。

 さらに、ただの偶然とはもはや思えない事実は、再建されたこのテロ組織が標的にしている敵が、米国とイスラエルにとってこの地域で最も有能な敵と同じであることだ。その敵とは、「抵抗枢軸」だ。そして、ちょうど米国とイスラエル両国が、この枢軸からこの地域全域規模での多面的な攻撃に対応しようと苦労している今になって、ISISが復活しているのだ。

 米国と世界有数のテロ集団との間の並外れた相乗効果は、もはや無視することはできない。彼らの標的は同一であり、米政府が西アジアに対する支配力を失い始めているちょうど今、ISISが戦いに加わったばかりである。
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「いくらお金を積まれても、移民受け入れは断固拒否する」ハンガリー首相

<記事原文 寺島先生推薦>
‘No money’ can make Hungary accept immigrants – PM
EUからの資金よりももっと大事なことがある、とハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は発言
出典:RT 2024年1月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月26日


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© ハンガリー首相報道局 / Anadolu Agency / Getty Images


 ヴィクトル・オルバン首相は金曜日(1月19日)、ハンガリーは移民やジェンダー問題、ウクライナ紛争について、何があっても考えを変えるつもりはないと語った。

 国営放送コシュート・ラジオのインタビューでオルバン首相は、「法の支配」と「人権」への懸念を理由にハンガリー向けの約200億ユーロ(約3兆2千億円)の資金を凍結した欧州委員会当局との現在進行中の紛争に触れた。

 同首相によると、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は先日、ハンガリーに関する欧州連合の問題は移民の受け入れとLGBTQ活動家の学校入学を拒否していることであると認めた。

 「欧州委員会の主張は戯言です。移民やジェンダー、戦争の件については譲歩できません。これらの問題はお金よりも重要で、人生のより価値のある部分だからです」とオルバン首相は語った。

 さらに同首相は、「どんなにお金を積まれても、移民を受け入れたり、私たちの国が奪われるようなことはできません」と付け加えた。また、他の一部のEU加盟国では、大量移民がテロリズムや犯罪の増加、さらには「様々な集団に分断された並行社会」を作り出していると同氏は述べた。

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関連記事:EU-Ukraine aid deal is far off – Hungarian official

 同首相は、LGBTQの課題に関する欧州委員会からの要求は「考えられないことです」と述べ、「子どもの育成、特に性教育は学校ではなく家族と親の責任です」と主張した。

 同首相は、6月に予定されている欧州議会選挙の論戦は「移民、私たちの家族、そして戦争を中心に展開します」とウクライナ紛争に触れながら語った。ほとんどのEU諸国とは異なり、ハンガリーはウクライナ政府への武器の送付や領土内通過の許可を拒否しており、ロシアとの和平を繰り返し求めている。

 ハンガリーはまた、今後4年間でウクライナに500億ユーロ(約8兆円)を供与するというEUの提案に反対し、少なくとも毎年の資金監査を要求した。ハンガリーは7月に欧州理事会の輪番議長国に就任する予定で、欧州委員会はオルバン首相が議長代理になることを「必死に」 避けたがっている、とポリティコ紙が今月初めに報じた。

 欧州議会議員のある一団は、ハンガリーからEU内での投票権を剥奪する手続きを開始した。フィンランドのペトリ・サルヴァマー国会議員によれば、これが「ヨーロッパの生活様式と民主主義を守る」唯一の方法だという。
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ロシア対外情報庁長官が「米国留学生による不安定化工作」に警戒を呼びかけ

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia’s top spy warns about US-educated 'fifth column'
セルゲイ・ナルイシキン長官は、米国当局は選挙を前に政治情勢を揺るがすわずかな機会を捉えようとしていると語った。
出典:RT  2024年1月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月26日


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ロシア対外情報局(SVR)セルゲイ・ナルイシキン長官© Sputnik / Viktor Tolochko


 ロシアの対外情報局(SVR)のセルゲイ・ナルイシキン長官が、米国政府は今年3月のロシア大統領選挙に介入するために、米国の学生交換プログラムのロシア人卒業生を利用することを計画していると述べた。

 ナルイシキン長官は木曜日(1月11日)、報道機関に対し、アクセス、アドバンス、サマーワーク&トラベル、FLEX、フルブライト、グローバルUGRADなどのプログラムに基づいて約8万人のロシア人学生が20年間にわたって米国を訪れた、と語った。

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関連記事:US opening ‘second front’ against Russia – Moscow

 同長官は、「ロシア大統領選挙を前に、米国側は我が国の国内政治状況を揺るがすわずかな機会でも捉えようとしている」と述べ、これにはこれらの交換プログラムのロシア卒業生との「協力を強化する」ことも含まれる、と付け加えた。

 同情報局長官によると、米当局の考えでは、「適切な準備」があれば、これらの卒業生がロシアの「第5列の中核」となり、反政府勢力分子の代わりになる、という。反政府勢力分子の多くはウクライナ紛争勃発後に国外に逃亡したからだ。

 米国政府はこれらの卒業生を「ロシア当局に対する政治闘争」に積極的に参加させる計画だ、と強調した。

 これらの学生たちに対する特別な訓練計画がすでに開発されており、その計画は、「民族間および社会的憎悪を煽り、選挙に干渉し、ソーシャルメディア上でロシアの指導者の信用を失墜させる方法」を教えることに重点を置いたものである、とナルイシキン長官は述べた。さらに、これらの卒業生と米国人「管理者」との間で安全なやり取りができることに多大な注意が払われるだろう、とも付け加えた。

 同SVR長官によると、この計画の一環としての最初のセミナーは2月中旬にラトビアの首都リガで開催される予定だという。同長官によると、モスクワとリガの米国在外公館で秘密裏に活動する米国人スパイらがこれらの催しで指導をおこなう予定だという。
 
 セミナーに参加する学生については、ロシア諜報機関が身元を特定するのは難しくない、とナルイシキン長官は警告した。

関連記事:Russia’s top spy warns of new CIA scheme

 先月ロシア議会で各会派の指導者らと会談した際、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、内政干渉の試みは「法律に従って厳しく制限される」と述べた。3月15日から17日に予定されている選挙期間中、同大統領は「政府はロシア国民の自由、主権、将来を選択する権利を守るつもりだ」と集まった議員らを安心させた。
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65名のウクライナ人捕虜が飛行機事故で死亡。現在までにわかっていること。

<記事原文 寺島先生推薦>
65 Ukrainian POWs killed in plane crash: What we know so far
ロシアのベルゴロド州でウクライナ人捕虜65人を乗せた軍用機が墜落し、乗客全員が死亡した。
出典:RT  2024年1月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月26日


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ロシアの大型輸送機IL-76は、ウクライナ国境から約90km離れたベルゴロド州に墜落。同機には、捕虜となった65人のウクライナ軍関係者が乗っていた。ロシア国防省は、この飛行機はキエフ軍によって墜落させられたと主張している。

以下はこの出来事についてこれまでわかっていること。

墜落事故 モスクワ時間水曜日(1月24日)11時15分。ウクライナ人捕虜を乗せたIL-76軍用輸送機が、ウクライナに隣接するベルゴロド州コロチャンスキー郡ヤブロノヴォ村近くの野原に墜落、爆発したとの報道が入った。


関連記事:ベルゴロドでの飛行機攻撃:ウクライナ政府が捕虜を乗せた飛行機を意図的に撃墜したとロシア政府が主張


複数の人が墜落の様子を撮影、そしてその映像をソーシャル・メディアに配信した。

ロシア国防省によると、同機はチカロフスキー飛行場からベルゴロドへ飛行中で、キエフとの捕虜交換のためにウクライナ人要員を輸送していた。捕虜の他に、6人の乗組員と3人の随行員がいた。

ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラドコフ知事によると、この墜落で搭乗者全員が死亡した。しかし、墜落は地上の建造物や人々に損害を与えず、最寄りの村から5~6キロ離れた場所に落下した。

ロシア当局によると、事故当時、さらに80人のウクライナ人捕虜を乗せた別の飛行機も飛行中だったという。アンドレイ・カルタポロフ議員によれば、1機目が墜落した後、2機目は方向転換を指示された。

原因は何だったのか? 事件後、ロシア国防省は声明を発表し、キエフ軍が対空ミサイルシステムを使って飛行機を撃墜したと非難した。同省は、ロシア航空宇宙軍のレーダーがハリコフ州のリプツィ村から2発のウクライナ製ミサイルが発射されたことを記録したと主張した。

同省はまた、ウクライナ側はこの飛行について事前に知らされており、捕虜を運んでいることも認識していたとし、捕虜交換は午後遅くにコロチロフカ検問所で行なわれることになっていたと述べた。

キエフのメディアの報道 事故の直後、ウクライナの報道機関ウクライナスカヤ・プラウダは、ウクライナ軍が飛行機を撃墜したことをウクライナ軍から伝えられ、またこの飛行機がS-300ミサイルを搭載していると考えられるとの情報を(ウクライナ軍から)得ていた、とする報道をおこなった。

しかし、その直後、同報道機関はこの報道を修正し、キエフが飛行機の墜落は認識しているが、ウクライナの捕虜を運んでいたことは確認できなかったとだけ述べた。

一方、アメリカ国営放送ラジオ・リバティなどの西側メディアは、キエフ政府内の情報源から、ロシアとの囚人交換が水曜日(1月24日)に予定されていることを確認したが、それ以上のコメントは発表していない。

キエフの諜報機関 ウクライナ諜報機関のアンドレイ・ユーソフ代表も、捕虜交換が予定されていることは確認した。

一方、ウクライナ戦争捕虜問題調整本部は、「必要なすべての情報を収集・分析している」と述べるにとどめ、計画されている交換については確認することを拒否した。同機関はまた、ロシアがウクライナ社会の不安定化を目的とした「特別な情報活動を積極的に行なっている」とも指摘している。

ロシアの反応 ロシア下院国防委員会のアンドレイ・カルタポロフ委員長は、IL-76は西側のパトリオットかアイリスT防空ミサイルで撃墜されたとの見方を示した。また、キエフとの捕虜交換交渉の中止を提案し、ウクライナを公式にテロ国家、同国政府をテロリスト集団と認定すべきだと主張した。

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関連記事:ウクライナ政府による捕虜搭乗機への攻撃は「狂気の蛮行」とロシア政府

ヴャチェスラフ・ヴォロディン下院議長は、ロシアの議員たちに対し、アメリカとドイツに正式な申し入れを行なうよう呼びかけ、自国の捕虜を殺害するまでになったキエフの「ナチ体制」を積極的に支援することはやめるよう強く説得すべきだ、とした。

また、ロシア国防省は、キエフはモスクワ軍を誹謗中傷するために自国民に対してこのような「テロ行為」を行ない、再び「その本性を現した」と述べた。

ロシア外務省は、この「心ない蛮行」はキエフとの将来の合意の可能性に疑問を投げかけるものであり、ウクライナ当局は自分たちが与えるいかなる保証も結局は守らないことに 「疑いの余地はない」と述べた。

同省はまた、米国とそのNATO同盟国が支援してきたウラジーミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領の政権は、ロシアだけでなく、「国としてのウクライナや、その国民、そして全世界」にとっての脅威であることが再び証明されたと強調した。

元ロシア大統領で現国家安全保障会議副議長のドミトリー・メドベージェフは、IL-76の撃墜は「キエフのネオナチ・エリート」間の内部政治的混乱の結果であった可能性を示唆した。彼は、ウクライナ政府は権力と金を守るために自国の軍隊や捕虜を虐殺し、自国の都市を爆撃し続けるだろうから、「将来的に事態はさらに悪くなる」ことを示唆した。
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イエメンがすべてを変えた経緯

<記事原文 寺島先生推薦>
How Yemen Changed Everything
筆者:ペペ・エスコバル (Pepe Escobar)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年12月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月26日


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イエメンの*アンサラー・アラは、1手で西側とその規則に基づいた秩序にチェックメイトをかけた。


*アンサラー・アラ・・・フーシ。 Anṣār Allāh, 実際の発音:アンサール・ッラー、英語: Ansar Allah、日本語で「神の支持者」を意味する)はイエメン北部サアダ県から発展し、北部を拠点に活動するイスラム教シーア派の一派ザイド派の武装組織である。(ウィキペディア)

インド北部で発明されたにせよ、中国東部で発明されたにせよ、ペルシャからトルキスタンまでの中央アジアで発明されたにせよ、チェスはアジアのゲームである。チェスでは、ポーン(将棋で言えば歩)がチェス盤全体をひっくり返すことができるときが必ずやってくる。大抵の場合、その効果を計算することができない後手番での一手を介してだ。

そう、ポーンは地殻構造的とでも言うべきチェックメイトをかけることできるのだ。まさに現在、我々が置かれている地政学的状況がそれだ。

チェス盤の上での1つの動きが連鎖的に及ぼす影響-イエメン・フーシ派の見事で慎重に標的を絞った紅海の封鎖-は世界的な海運やサプライチェーン(物流網)そして経済回廊戦争をはるかに超えている。大きく称賛されていた米海軍の戦力展開が無意味になったことは言うまでもない。

イエメンの抵抗運動であるアンサラー・アラ(フーシ派)は、イスラエル系またはイスラエルを目指す船舶はすべて妨害すると明言している。西側諸国はこれに憤慨し、自分たちが標的になると想像している。そして、それ以外の国々の船舶はすべて自由に通航できることを十分に理解している。ロシアのタンカーは、中国、イラン、グローバル・サウスの船舶と同様に、バブ・アル・マンデブ(最狭部:33km)と紅海を妨害されることなく移動し続けている。

覇権国(アメリカ)だけがアメリカの言う「規則に則った秩序」に対する今回の挑戦に困惑している。覇権国(アメリカ)が違法行為を行なうイスラエルへのエネルギーや商品の提供を妨害され、供給チェーンが断絶し、深刻な危機に陥っていることに激怒している。的はイスラエルの経済に絞られており、その経済は既に大打撃を受けている。イエメンのたったひとつ動きが、帝国の洪水のような制裁よりも効果的であることが証明されたのだ。

このひとつの動きでパラダイムシフト(枠組み変更)が起こってしまうかもしれないことで、覇権国(アメリカ)の苦悩は深まっている。特に、帝国の鼻をへし折ることがこのパラダイムシフトに深く組み込まれているからだ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、はっきりとしたメッセージを送っている:「スエズ運河のことは忘れてください。進むべき道は、ロシアと中国の戦略的パートナーシップ(友好関係)の枠組みの中で、中国が北極海シルクロードと呼んでいる北極海ルートです」、と。

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北-東航路と北-西航路の地図

唖然とするヨーロッパ人のために、ロシア人は三つの選択肢を詳しく説明した。まず、喜望峰を15,000マイル航海する。第二に、ロシアの安くて速い北極海航路を使うことだ。第三に、ロシア鉄道経由で貨物を送ること。

北極海航路を監督しているロシア国営原子力企業のロサトムは、非氷結船は現在夏と秋に航行することができ、原子力砕氷船の艦隊の助けを借りて年間を通じた航行も近いうちに可能になると強調している。

これはすべてイエメンの一手がもたらした直接的結果である。次は何か? 2024年末のカザンでのブリックス+サミットで、ロシアの主催のもとでイエメンが参加することか?


新しい構造の枠組みが西アジアで構築されるだろう

米国主導の無敵艦隊は、「ジェノサイド保護作戦」のために編成されたが、その誕生前に崩壊した。その編成はアンサラー・アラ(フーシ派)に恐怖を与えることとは別に、「イランに警告する」ために計画された可能性がある。フーシ派と同じように、テヘランもほとんど怯えていない。なぜなら、西アジア問題分析家の第一人者であるアラステア・クルークが簡潔に言ったように、「*サイクス=ピコは死んだ」からだ。
*サイクス=ピコ(協定)・・・1916年5月,英仏露3国の間で,オスマン帝国領の分割を定めた協定。 各国の勢力範囲を定めたほか,パレスチナを国際管理地とした。 第一次世界大戦中に強国間で結ばれた領土分割に関する秘密条約の代表的なもの。(コトバンク)

これはチェス盤上の大きな転換だ。これは、米国海軍の「展開」ではなく、西アジアの大国が新しい地域の枠組みを作り上げることを意味する。

それには言葉では言い尽くせない付随的な意味がついてくる。つまり、11の米国航空母艦部隊は実質的に無価値になってしまうことだ。

西アジアの誰もが、アンサラー・アラのミサイルがサウジや首長国の油田を攻撃し、稼働を停止させることができることをよく知っている。だから、リヤドやアブダビがイエメンの抵抗勢力に挑戦する米国主導の海上部隊の一部になることは絶対に受け入れないだろう。それはほとんど驚くにはあたらない。

それに加えて、ロシアとイランが所持している水中ドローンがある。50機の水中ドローンがアメリカの航空母艦を狙ったら、アメリカにはそれに対する防御手段は何もない。アメリカは今でも非常に高性能の潜水艦を持っているが、それとてバブ・アル・マンデブ海峡と紅海を西側の船舶に自由に航行させることはできない相談だ。

エネルギー面では、モスクワとテヘランは、「核」という選択肢を使ったり、世界の石油供給の少なくとも25%、あるいはそれ以上を断ち切る可能性について、少なくともまだ考える必要さえない。あるペルシャ湾について分析家は「それは国際金融システムを取り返しのつかないほど崩壊させるだろう」と簡潔に述べている。

ガザでの大量虐殺を支持する決意を固めている人々には、警告が発せられている。イラクのモハメッド・シーア・アル・スダニ首相はそのことを明言している。テヘラン(イラン政府)はすでに、イスラエルを支持する国々に対して石油とガスの全面禁輸を呼びかけている。

綿密に計画されたイスラエルへの完全な海上封鎖が起きる可能性は、明白に残っている。イスラム革命防衛隊(IRGC)のホセイン・サラミ司令官は、イスラエルは「近いうちに地中海、ジブラルタル海峡、その他の水路の閉鎖に直面するかもしれない」と述べた。

まだホルムズ海峡の封鎖の可能性について話しているわけではないことを念頭に置いてほしい。私たちはまだ紅海およびバブ・アル・マンデブについて話している段階なのだ。

なぜなら、ワシントンDCにいるストラウス派ネオコンが今回のパラダイムシフトによって本当に取り乱し、イランに「教訓を与える」という行動に出る場合、ホルムズ海峡とバブ・アル・マンデブ海峡の組み合わせによる封鎖は石油価格を最低でも1バレル500ドルまで急騰させ、618兆ドルのデリバティブ市場を崩壊させ、国際金融システム全体を崩壊させる可能性があるからだ。


窮地に立つ張り子のトラ

結局、毛沢東は正しかった。アメリカは、実際、張子のトラなのかもしれない。しかし、プーチンははるかに慎重で、冷静で、すべてを計算している。このロシア大統領の場合、非対称的な反応がすべてなのだ。それもだれひとりそんなことは考えてもいないときに。

これによって、チェス盤上のアンサラー・アラ(フーシ派)の単一の動きを覆い隠す影の役者を説明するためにふさわしい重要な仮説が浮上する。

ピュリツァー賞を受賞した調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが、バイデン一味がノルド・ストリーム・パイプライン爆破の経緯をはっきりさせたとき、それが事実上、ガスプロムに対する、ドイツに対する、EUに対する、そして多くのヨーロッパ企業に対するテロ行為であったことに対し、ロシアは何の反応もしなかった。しかしイエメンは今、単純な封鎖によって世界の海運をひっくり返している。

では、どちらがより脆弱なのだろうか? 世界的なエネルギー供給の物理的ネットワーク(パイプライン)か、それともタラソクラシー(海軍の優位性から力を得ている国家)か?

ロシアは「パイプライン・国家」を優遇している。例えば、「ノルド・ストリームス」や「シベリアの力1」や「シベリアの力2」を参照されたい。しかし、「ブリタニアは波を支配する」伝統の後継者である覇権国家アメリカは、常に「タラソクラテスの力(制海権)」に頼ってきた。

そう、今は違う。そして、驚くべきことに、そこに到達するのに、米国政府が狂ったように操作的噂で人々を不安がらせるホルムズ海峡の封鎖という「核」オプションさえ必要としなかった。

もちろん、決定的な証拠はない。しかし、このイエメンの動きひとつをとっても、BRICSの3カ国(ロシア、中国、イラン、ネオコンの新たな「悪の枢軸」)に加え、BRICS+の2カ国、エネルギー大国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦の間で、最高レベルで調整されていた可能性があるというのは興味深い提案だ。もしあなたがそうするなら、私たちはあなたの後ろ盾になる」という形で。

もちろん、イエメンの純粋さは損なわれていない。パレスチナの防衛は彼らの神聖な義務なのだ。

欧米の帝国主義、そしてターボ資本主義(むきだしの資本主義)は、常にイエメンを食い尽くすことに執着してきた。その過程を、イサ・ブルーミはその素晴らしい著書『イエメンを破壊する』の中で、「インド洋世界の多くの経済的、文化的、精神的、政治的原動力としての歴史的役割を、イエメン人は必然的に剥奪される」と表現している。

イエメンは、現地のことわざ「イエメン・ファタカ(命がけ)」に忠実で、征服不可能だ。アンサラー・アラ(シーア派)は、ユーラシア全域の複雑なドラマにおいて、ハートランドの接続性を再定義する中心的な存在として位置を占めている。また、中国の一帯一路イニシアティブ(BRI)、インド・イラン・ロシア主導の国際的な南北輸送回廊(INSTC)、ロシアの新しい北方海路と共に、地中海とアラビア半島周辺の戦略的な難所の制御も含まれている。

これは完全に異なる貿易接続のパラダイム(枠組み)であり、アフロ-ユーラシアの西側植民地支配と新植民地支配を粉々に破壊する。したがって、そう、BRICS+はイエメンを支援することになる。イエメンは1つの行動でパックス・アメリカーナに対して「地政学上の窮地の生みの親」とでもいうべきものを提示したのだ。
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「多様性・公正性・包括性」がアメリカン・ドリームを台無しにした

<記事原文 寺島先生推薦>
How ‘Diversity, Equity and Inclusion’ is wrecking the American dream
多様性をもつ人々を雇用しないといけないという足枷や、教育の中に「社会正義」を教える時間が入れ込まれたせいで、米国の職場から専門家が奪われている
出典:RT   2024年1月20日
筆者:ロバート・ブリッジ(Robert Bridge)
米国の作家でありジャーナリスト。著書に、『真夜中の米帝国』と『企業とそれに奉仕する政府がアメリカン・ドリームを以下に崩壊させてきたか』がある。
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月25日


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2023年7月2日、カリフォルニア州ロサンゼルス市での「我々人民による全国行進」行動中に旗を掲げるデモ参加者 © Frederic J. BROWN / AFP


 かつては人種や信条、性別に関わらず、最も資格のある人々が頂点に駆け上がることができるという、実力主義に基づいていた米国が、いまや割り当てによりその人の地位が決められる国に成り下がってしまった。

 米国のアイデンティティ政策の是非がちかごろ厳しく問われるようになったのは、米国を代表する大学の3名の女性学長の醜聞が広く報じられたからだった。

 その3名とは、ハーバード大学のクローディン・ゲイ、ペンシルバニア大学のリズ・マギル、マサチューセッツ工科大学のサリー・コーンブルース博士だ。いまのところ問題になっているのは、この3人がハマスとイスラエル間の戦闘のさなかに、「自身の大学の構内でジェノサイドを呼びかけることは、大学の規則違反であり、嫌がらせ行為を助長している」と言おうとしなかった点だ。

 議会前での証言ののち、3名の学長らはすぐにネット上で集中砲火を浴びたが、その中で最も激しい非難を受けたのが、私立大学初の非白人学長となったクローディン・ゲイだった。それは無理もないことだ。というのも、ゲイが自身の論文において何十段落もの箇所を盗用していたことがわかったからだ。このことにより、DEI(多様性・公正性・包括性)を重んじる傾向に非難の声が上がっていることに大きな脚光が当たることになり、さらにはゲイが非常に高い地位を得ることができたのは、学術的資格というよりは、肌の色や性別によるものだったのではないか、という批判も生じた。

 ゲイが米国で最も著名な大学の学長を勤めるに足る品格があるかどうかについての長い議論が交わされたほんの数週間後、彼女は辞任を申し出た。ただし、一学部教員に戻ることになった彼女は、年90万ドル(約1億3千万円)という膨大な報酬を受け続けることになるのだが。

 明らかにこの事例だけが、DEI(多様性・公正性・包括性)の考えのもとで、問題のある候補者らを頂点の役職につけることより生じる弊害の一例ではない。特に、法的にこのような矛盾した政策を強制している州が多いことからすればなおさらのことだ。その例を見たいのであれば、米政府で第2位の地位、つまり副大統領職にある人物のことを考慮するだけでいい。そうすれば、米国がどのような状況に陥ろうとしているかが見えるはずだ。カマラ・ハリスが多様性の確保を理由に選ばれたことは隠された内部の秘密ではない。ジョー・バイデンが選挙遊説の際にそのことを認めたのだから。「私が大統領に選ばれたならば、私の内閣も行政府も我が国が取っているのと同じ政策をとることになりますし、私もそうなるよう口を挟むつもりです。実際、副大統領には女性を選んで任命するつもりです」と。その後バイデンはさらに特定するような発言をした。「有色あるいはかつ、男性ではない性別の人が望ましいです」と彼は述べたのだ。

 さあ、じっくり考えよう。バイデンは、2020年のドナルド・トランプとの大統領選に向けた民主党代表選で1%しか得票率を取れなかった黒人女性を選んだということだ。明らかにもっと優れた資質を持つ他の候補者がいただろう。

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 大統領職まであと一歩の地位について以来、どんな被害が生じてきたのかがすべて明らかになってきたにも関わらず、ハリスは自身への非難の声の高まりを一方的な報じ方と組織的な人種差別からくるものである、と吐き捨てた。ハリスは数が減りつつある支持者らに対して、「私がもし私の前の48人の副大統領のように白人男性であったとしたら、私の報じられ方は違うものになったはずです」と語ったという記事をニューヨーク・タイムズ紙は報じた。米国でもっともリベラルな報道機関である同紙がそう報じていることから明らかにわかることは、ハリスに対する否定的な態度は彼女自身が思っているよりもずっとひどい、ということだ。

 ほかにDEIのおかげで黄金のエレベーターに乗って頂点の地位に就けた人は誰だろう? レイチェル・レヴィン保健福祉庁次官で決まりだ。性転換して女性になった人物だ。レヴィンにはその任務が果たせる資質はないようだ。彼女はUSAトゥディ誌の「2022年、今年の女性」の一人に選ばれたのだが、彼女と同等、あるいは彼女よりも資質があるのに、見落とされた人は何人いただろうか? 彼らはただただ、重要項目にチェックが入らなかった、という理由だけで落とされたのだ。

 現第19代米運輸長官のピート・ブティジェッジはどうだろう? 元インディアナ州のサウス・ベンド市(人口10万3453人)の市長だったブティジェッジ(42歳)は、2015年に自身がゲイであることを宣告したことが、比較的無名の存在だったなかで、2020年の民主党大統領候補選に出馬するところまでのぼりつめた理由だったのではないか。米政界の食うか食われるかの権力争いの中で、権力の頂点への驚くべき昇進はほぼ初耳だし、ブティジェッジが知性においても明晰さにおいても非常に優秀であるという理由以外、彼が同じくらいの資質をもつ何十人もの他の候補者を飛び越えることができた説明にはならないはずだ。ブティジェッジがこんな急速な出世をとげることができた理由に、彼の性的志向がどれくらい貢献したのかが明らかになることは決してないだろうが、民主党が元市長のブティジェッジが、党が望むほど「十分ゲイではない」ことにイライラしていた時期があったことは、事実といって間違いではないだろう。

 現在、ブティジェッジ運輸庁長官管轄下にある連邦航空局は、あらたな「多様性と包括性」計画を明らかにし、「重度の知的障害」や「精神障害」を持つ人々を雇用することを発表したところだが、それはボーイング737マックス機のドアが吹っ飛び、空中での大惨事が起こる寸前になった事件が起こった数日後のことだった。そのため、包括性に走る政策に対してさらなる批判の声が高まっている。「今回対象となっている障害は、連邦政府が政策の一環として、新規採用や雇用において特に重視するとされる障害になります。そこには、聴覚障害や視覚障害、手足の先端部がない、局所麻痺、全身麻痺、てんかん、重度の知的障害、精神異常、小人症をお持ちの方々が当てはまります」と連邦航空局のウェブサイトにはある。

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 連邦航空局はこれらの障害者がどのような仕事に就くかについては明言しておらず、フォックス・ニュースの取材への返答で、以下のような内容を示唆している。すなわち、他の被雇用者らと同様、「もちろん仕事内容によってことなりますが、厳格に資格を満たしていることが求められています」とのことだ。それでも、このような動きを批判している人々がまだ心配なのは、DEI政策を強調することで、空路の安全性が低下してしまうのではないか、という点だ。イーロン・マスクもそのような批判者のなかの一人であり、「空の安全性よりもDEI方針にのっとった雇用を重視してまで、飛行機に乗りたいですか?」というツイートを投稿した。

 しかし、過激なウォーク主義にとりこまれた人々が世間の空気を読み損ねているという事態がこれ以上なく目に入ってしまったのは、ビール製造業者のアンハイザー・ブッシュ社の広告の件だ。同社は広告塔としてソーシャル・メディア上で影響力のあるトランスジェンダーのディラン・マルバニーを登用して、同社製ビールのバドライトを褒めちぎる歌を歌わせたのだが、そのせいで、労働者階級のビール消費者の大部分にそっぽを向かれることになったのだ。あきらかに、マルバニーは、その仕事に適任ではない「男」だったのだ。

 DEI政策は医療界にも良くない影響を与えている。医学生たちが職業上要求される学習に最大限の時間を割くのではなく、今まで聞いたことのないような話題について学ぶことが強制されているからだ。例えば、「無意識の偏見」や「白人特権」などだ。ここにも、DEIが様々な職場の労働の質を下げている一例が見える。

 リチャード・ボスハルト博士は、ナショナル・レビュー誌の先日の記事で、こう書いている。「不器用な研修医から能力のある外科医にまで成長させるために、見習い訓練ができる時間は限られています。優秀な外科医を世の中へ確実に輩出させないといけないのに、単位を取るのに時間がかかるACS(米国化学学会)の手引き書が求めている反人種主義やDEIの教化の時間に縛られてしまっています。こんな状況は、よく言えば愚かで無駄、悪く言えば、私たちの患者に危険を及ぼすものです」と。

 人種や性別、性的指向に関係なく、どんな仕事にもその仕事に似合う資質がある人間がいるということは間違いのないことだ。しかし、いま米国で起こっていることは、必要とされる資質に欠けた多くの人々が、その人々の生活形式が重要な項目にチェックがつくという理由で、高い職に就いているという不適切な状況だ。あるいは、ウォーク思想に基づく新たな経文を不必要に学ぶことが強制されて、専門分野の基本知識の学習に集中できなくなっている状況だ。いずれにせよ、米国の大学や職場での理解がなかなか進んでいないのは、DEI政策が差別をなくすための活動ではなく、逆に差別の原因を作り出す主要因になっている、という事実だ。ある職への候補者の余地を減じることは、「(人種や性別に関係なく誰でもビッグになれるという)アメリカン・ドリーム」に対する巨大な侮辱になるだけではなく、職場から専門性を奪うことになってしまう。そんな社会ではなく、米国民にはもっとよい社会が必要だ。
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「ウクライナ当局の専門知識不足を埋めるために西側傭兵が使われていた」―元CIA分析官

<記事原文 寺島先生推薦>
Western mercenaries used to fill Kiev’s expertise gaps, ex-CIA man tells RT
ラリー・ジョンソン氏は、ウクライナで殺害されたフランス戦闘員は秘密兵器の専門家だった可能性があると述べた
出典:RT  2024年1月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月25日


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ラリー・ジョンソン© RT


 元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏は、ウクライナは西側の複雑な兵器システムを操作できる兵士が不足している可能性が高い、とRTに語った。ハリコフでの「フランス傭兵」への攻撃に関するロシアの今週の報道は、フランス政府が供給を計画している秘密兵器技術者志望者への警告かもしれない、と同氏は考えている。

 ロシア国防省の声明に対し、フランスはウクライナや世界の他の地域に傭兵を置いていることを否定した。ロシア政府は、この長距離攻撃でフランス人を中心とする約60人の外国人戦闘員が死亡したと主張した。いっぽう、エマニュエル・マクロン大統領は、ウクライナ当局の戦いを支援するために空中発射型巡航ミサイル「SCALP」を追加供給する計画を発表した。

 「私が強く疑念を持っているのは、フランスの『傭兵』(英国人や米国人がそこに混じっていても驚きませんが)は、前もって軍隊で訓練を受けたのちに、兵器システムの操作を助けるために連れてこられているのではないかという点です」とジョンソン氏は語った。

 同氏は、有能な外国人職員の配備が必要となる可能性のあるウクライナに寄贈された兵器の例として、米国製の長距離対空ミサイル「パトリオット」と英国のSCALP対応ミサイル「ストーム・シャドウ」を挙げた。


 ジョンソン氏は、ウクライナに公然と軍備提供すれば、フランスは自らが標的にされてしまうことになる、と当RTに語り、いま発生していることとソ連を弱体化させようとした過去の米国の行動を以下のように対比させた。

 「米国がアフガニスタンのムジャーヒディーンに対ソ連資金を提供するためにCIAを通じて秘密作戦を実行したときは、ある程度秘密裏におこなわれ、少なくとも米国は紛争に直接介入しているわけではないという素振りを見せ続けていました」とジョンソン氏は指摘した。

 「ロシアは傭兵たちを殺害するという非常に明確な伝言を送ったと思います。つまり、兵士や物資を送りこむつもりならば、殺すぞ、という伝言です」と同元分析官は付け加えた。

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 ジョンソン氏は、ロシア政府はウクライナの外国援助国を標的にするという点で、もっと大胆な行動を取ることもできたはずで、そうした行動に消極的であることが西側諸国では弱さの表れと受け止められていると考えている。

 「実際は、ロシアが弱腰であるということはないのですが、西側には多くの点でロシアを誤解してきた歴史があります」とジョンソン氏は発言した。
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EUの代表的外交官、ハマスへ資金提供をおこなったとしてイスラエルを非難

<記事原文 寺島先生推薦>
EU’s top diplomat accuses Israel of financing Hamas
ネタニヤフ首相はそのような主張を激しく否定し、パレスチナ人組織への武器と資金の流れはイランからだと非難
出典:RT  2024年1月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月25日


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ジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表。© ゲッティイメージズ/アナドルエージェンシー/ドゥルスン・アイデミール


 EU外交政策責任者のジョゼップ・ボレル氏はイスラエル政府がハマスに資金を提供していると公然と非難したが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの疑惑を否定した。ボレル氏は、ネタニヤフ首相の反対派とイスラエルのメディアが繰り返してきたこの主張について詳しく述べなかった。

 エル・パイス紙によると、ジョセップ・ボレル氏はスペインのバリャドリード大学で講演し、ハマスは「ファタハ党率いるパレスチナ自治政府を弱体化させる目的でイスラエル政府から資金提供を受けている」と述べた。

 ネタニヤフ首相は、ハマスの台頭は「資金、訓練、武器、技術的知識」と諜報活動でパレスチナ過激派組織を支援したイランのせいだと非難した。

 イスラエルは、イラン政府が10月7日のガザ近郊ハマスの奇襲襲撃で約1200人が死亡、数十人が人質となった攻撃計画に関与していたと主張している。地元保健当局者らによると、イスラエルはパレスチナの飛び地であるガザ地区への激しい軍事爆撃で対抗し、これまでに約2万4000人が死亡したという。イスラエルによれば、この作戦はこの武装勢力ハマスの殲滅が目的だという。ハマスは2007年にマフムード・アッバス大統領率いるファタハ運動を武力紛争で破って以来、ガザを統治している。

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は木曜日(1月20日)のテレビインタビューで、「イランはタコの頭であり、フーシ派からヒズボラ、ハマスに至るまで、いたるところにその触手が見られる」と述べ、イスラエル国防軍がイランを直接に攻撃したことを認めた。

 イラン政府はハマスによるイスラエル攻撃への関与を否定しており、イラン外務省報道官のナセル・カナニ氏は、こうした非難は「政治的理由に基づいている」と述べた。

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 ネタニヤフ首相がハマスを秘密裏に支援しているとの主張は数年前に遡る。批評家らは、同氏が和平計画を弱体化させ、パレスチナ国家樹立に関する交渉を台無しにする手段として同組織への資金流入を許可していると非難している。2019年3月、ネタニヤフ首相はリクード党の同僚に対し、「パレスチナ国家樹立を阻止したい者は誰でも、ハマスの強化とハマスへの送金を支持しなければならない」と語っている。

 ジョセップ・ボレル氏は、イスラエル・パレスチナ紛争の唯一の平和的解決策にはパレスチナ国家の樹立が含まれると述べ、これはイスラエルの合意なしに「外部から押し付けられる」必要があるかもしれないと示唆した。

 ボレル氏の発言は、月曜日(1月25日)にブリュッセルで開催されるイスラエル、パレスチナ自治政府、主要アラブ諸国とのEU外相会合に先立っておこなわれた。会合ではガザ地区でのイスラエル・ハマス紛争と将来の和平解決の見通しについて話し合う予定だ。

 木曜日(1月20日)、欧州議会はハマスの解体と人質全員の解放を条件にガザ地区での恒久的な停戦を求める決議を採択した。この決議案は、ネタニヤフ首相がパレスチナ国家樹立の考えを却下し、米国やEUからのそうした要請を拒否した数日後に提出された。
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インドネシア、ICJにイスラエルを提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
Indonesia Files Lawsuit Against Israel at the ICJ
出典:Internationalist 360°  2024年1月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月25日


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2024年1月15日、インドネシア・ジャカルタの米国大使館前でパレスチナ人を支援するためにパレスチナ旗を振る人々[ギャリー・アンドリュー・ロトゥルン – アナドル通信]


イスラエルのマーリブ紙は、インドネシアがハーグの国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルの占領に対する新たな訴訟を起こしたと報じた。

 これによりインドネシアは、ガザでパレスチナ人に対する虐殺を行なったとしてイスラエルを相手に初の訴訟を起こした南アフリカに加わることになる。

 インドネシア外務省は以前、パレスチナ占領地におけるイスラエルの「政策と慣行」に対する責任をイスラエルに問うため、インドネシアのICJ訴訟の草案作成を支援する専門家団を編成していた。

 国内報道機関であるジャカルタ・ポスト紙のウェブサイト版によると、ルトノ・マルスディ外務大臣は、この訴訟はパレスチナ人支援だけでなく、国際法に基づく世界秩序の支援にも役立つ、と述べた。

 マルスディ氏の声明は、首都ジャカルタで数十人の国際法の専門家や学者が集まる会議に先立っておこなわれた。

 先週ICJは、ガザ地区でパレスチナ人に対する大量虐殺の罪を犯したとして南アフリカがイスラエルに対して起こした訴訟の調査開始の一環として、2回の公聴会を開催した。

 12月29日、南アフリカは、3か月以上激しい戦争にさらされているガザ地区でイスラエルがジェノサイドに相当する犯罪を犯したとしてICJに訴訟を起こしていた。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「ハーグも、(イラン主導の)悪の枢軸も、そして他の誰も我々を止めることはできないだろう」と主張した。

 ネタニヤフ首相は記者会見で「われわれはすべての目的を達成するまでガザ地区での戦争を続ける。ハーグも悪の枢軸も私たちを止めることはない」と述べたが、「悪の枢軸」が何を意味するのかは明らかにしなかった。
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スコット・リッター:米国がイエメンへの攻撃で世界を騙した手口とは

<記事原文 寺島先生推薦>
Scott Ritter: How the US misleads the world about its involvement in Yemen
米国政府はフーシ派の施設への攻撃は防御のためであり、完全に合法的であると主張しているが、実際のところはいずれも当てはまらない
筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)
スコット・リッターは、元米海軍諜報員で『ペレストロイカ期の軍縮:軍備管理とソビエト連邦の終焉』の著者。ソビエト連邦でのINF(中距離核兵器全廃)条約実行の査察官として、湾岸戦争時シュワルツコフ将軍のもとで職員として、1991年から1998年までは国連兵器査察官として勤務。@RealScottRitter@ScottRitter
出典:RT  2024年1月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月24日


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イエメンの軍事標的への空爆実行をおこなう米主導連合軍に参軍するため、アクロティリ空軍基地を出発するイギリス空軍のユーロファイター・タイフーン機© AFP / British Ministry of Defence


 「イエメンへの攻撃は必要で、相応のもので、国際法にも違反しない」。この声明とともに、米国国連代表団は、2024年1月12日に実行された米英連合によるフーシ派民兵組織関連施設への攻撃を擁護した。

 この声明の皮肉なところは、この声明をおこなったのが、国連安全保障理事会の場だったという点だ。国連安保理は、そのような行為を許可できる機関ではない。したがって、米国がおこなった主張の正当性は保持できない可能性があるということだ。

 国連憲章は、国際法上、軍事力を行使できる2つの条件を規定している。ひとつは、憲章第51条に明記されている正当な自衛を行使する場合である。もうひとつは、国連安全保障理事会の第7章に基づく決議によって与えられた権限に従った場合である。

 ディビッド・キャメロン英外相は、イエメン攻撃への英国の関与を正当化するために国連安全保障理事会を引き合いに出し、同理事会が「フーシ派は紅海での攻撃を停止しなければならない」と「明言」したと主張した。

 安保理はフーシ派に紅海での国際海運への攻撃をやめるよう求める決議を出したが、この決議は第7章のもとで可決されたものではないため、米・英はイエメンへの攻撃を実行する国際法上の権限はなかったことになる。

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 米英両国はイエメンへの攻撃において自衛の概念を持ち出し、それによって間接的に国連憲章第51条の下で認知される可能性のある行為を示唆した。ジョー・バイデン米大統領は、攻撃終了直後に発表した声明の中で、イエメンのフーシ派武装勢力に対する米軍の攻撃を正当化した。「この軍事行動を命じたのは、国内外の米国民を守るという私の責任に基づくものです」と。

 この主張の最大の問題は、フーシ派は国内外を問わず米国民を攻撃していなかったということだ。以前、米軍がフーシ派の発射した武器と交戦したことがあったとしても、それはフーシ派の攻撃から非米国の資産(イスラエル国や国際海運)を守るためだった。いかなる状況下でも、アメリカはフーシ派に攻撃されたと主張することはできなかった。

 バイデンは、米国の攻撃は「フーシ派の将来の攻撃能力を抑止し、弱めるためにおこなわれた」と主張した。

 この言い方は、米国が国際航路における商業的海上活動に対する差し迫った脅威を排除しようとしていたことを示唆している。集団的自衛権に関する国際法の要件(米国自身が攻撃されていない以上、正当性を主張する唯一の可能性)を満たすためには、米国は、フーシ派から攻撃を受けているか、安保理の介入を求めることができないような差し迫った攻撃の脅威にさらされている国家集団の一員であることを証明する必要がある。

 2023年12月下旬、米国は他の数カ国とともに、「繁栄の守護者作戦」と呼ばれる軍事力集結作戦を取り、2023年11月19日から行われていたフーシ派による海上輸送への攻撃を抑止しようとした。

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 しかし、米国はその後、自分たちの行動が国際法に合致している、つまり国連憲章第51条に従っておこなわれた集団的自衛権による先制攻撃行為である、と主張しうるあらゆる論拠を台無しにした。

 中東での作戦を担当する米中央軍(CENTCOM)は、ワシントンが紅海の海運を標的にしていると主張するフーシ派のレーダー施設に対する2度目の攻撃を開始した直後に記者発表を出した。

 その声明の主張によると、フーシ派のレーダー施設に対する攻撃は、1月12日に実施された攻撃の「後続行動」であり、「紅海、バブ・アルマンデブ海峡、アデン湾で活動する20カ国以上による防衛連合である『繁栄の守護者』作戦とは無関係であり、別個のものである」とのことだ。

 「繁栄の守護者作戦」から距離を置くことで、米国は国連憲章第51条に基づく先制的集団的自衛権の概念を致命的に損ない、イエメンに対する軍事攻撃が一方的で本質的に違法な性質を持つものであることを浮き彫りにした。
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ガザでの戦争を終結させることでイスラエルを救う

<記事原文 寺島先生推薦>
Saving Israel by Ending Its War in Gaza
筆者:ジェフリー・サックス (Jeffrey Sachs)
出典:Common Dreams   2024年1月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月24日


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ガザ地区から帰還後、戦車の砲弾を運ぶイスラエル軍兵士(2024年1月1日、イスラエル南部国境にて)。イスラエルはガザ中心部の人口密集地域にまで地上攻撃を拡大し、南部への新たな強制移動を強いている。(写真:Amir Levy/Getty Images)


イスラエル政府は、ハマスとの生き残りをかけた死闘の中にいるのだから、生き残るためにはガザの破壊を含むあらゆる手段を講じなければならないと主張している。これは誤りだ。

1月に議会が再開されれば、ジョー・バイデン大統領は、イスラエル向けの新たな軍備強化策を通じて、イスラエルによるガザでの戦争へのアメリカの加担を深めようとするだろう。アメリカ人は断固としてノーの声を上げるべきだ。

イスラエルへの武器供与は、アメリカの利益に反するだけでなく、イスラエルの利益にも反する。イスラエルの真の安全保障への唯一の道は、パレスチナとの和平である。アメリカは、イスラエルの残虐な戦争への軍需物資の供給を止め、国際法で求められている2国家解決を推進することが和平実現の一助となる。

私は本サイト「コモン・ドリームス」前回のコラムで、2国家解決への外交的道筋を明示した。その道は開かれている。それはアラブ諸国とイスラム諸国によって積極的に推進され、ほぼ全世界によって支持されている。

イスラエルが大量虐殺を終結させれば、現在、同国が直面している世界的な反対も終結するだろう。


ガザにおけるイスラエルの蛮行は、イスラエルの存続に対する真の脅威となりつつある。イスラエルの常軌を逸した暴力のせいで、世界はイスラエル反対の団結がまとまりつつあり、その一方でイスラエルは甚大な軍事的損失を被っている。信じられないことに、イスラエルの指導者たちの中には、中東におけるさらに大規模な戦争を公然と提唱している者もいる。

イスラエルの政策に対する世界的な反対の高まりは、反ユダヤ主義ではない。反ジェノサイドである。それはまた、親平和、親イスラエル、親パレスチナでもある。イスラエルが大量虐殺を終わらせれば、現在、同国が直面している世界的な反対も終わるだろう。


ハマス打倒はガザにおけるイスラエルのほんとうの目標ではない

イスラエル政府は、ハマスとの生き残りをかけた死闘の中にいるのだから、生き残るためにはガザの破壊を含むあらゆる手段を講じなければならないと主張している。これは誤りだ。ガザを破壊し、何万人もの市民を殺し、200万人をガザから追い立て、ハマスが実際にもたらす予防可能で制御可能な脅威からイスラエルを守るための倫理的、実際的、法的、地政学的論拠は存在しない。

2008年から2022年の間、ハマスやその他の武装勢力は年間12人前後のイスラエル民間人を殺害したが、イスラエルは通常、少なくともその10倍以上のパレスチナ民間人を殺害した。イスラエルがガザに侵攻した2014年には急増し、19人のイスラエル市民が殺されたのに対し、1760人のパレスチナ市民が殺された。ハマスが発射するロケット弾は多いが、そのほとんどが迎撃されるか、ほとんど被害を与えない。イスラエルは(2014年のように)定期的な虐殺と、より定期的な空爆で対応する。イスラエルは定期的な殺戮を「草刈り」という皮肉な名前で呼んでいる。ハマスが長い間、ネタニヤフ首相がイスラエル国民に2国家解決は不可能だと「証明」するための「低コストの」政治的小道具として機能してきたことは、イスラエル内部では常識である。

2007年以降、ハマスがガザを支配している間、ハマスがイスラエルの領土を占領したことは一度もなく、ましてやイスラエルの存在や生存を脅かしたことなど微塵もない。その理由は、そうしたくてもできないからということだけだ。ハマスの戦闘員数は約3万人で、イスラエル国防軍には現役と予備を合わせて60万人以上がいる。ハマスには空軍、機甲部隊、軍需産業基地がなく、ガザの外での地理的な機動力もない。

2023年10月7日、ハマス戦闘員が電撃侵攻を行ない、恐ろしい一日が続いた。これは、ハマスがイスラエルに侵攻する新たな驚異的な能力を持っていたわけではなく、イスラエルの安全保障の衝撃的な失敗が原因だった。イスラエルの指導者たちは、ハマスによる予想される攻撃の多くの警告を無視し、ガザとイスラエルの国境警備を信じられないほど手薄にした。さらに驚くべきことに、イスラエルの過激派がイスラム教の最も聖なる場所であるアル・アクサ・モスク複合体に襲撃した数日後にハマスの侵攻があった。ハマスは、イスラエルの信じられない安全保障の不備を利用して国境を越え、約1,100人のイスラエル市民を殺し240人の人質を取った。その日のイスラエル市民の死者には、イスラエルの航空爆撃やイスラエル国防軍の報復攻撃による銃撃戦によるものもいるが、その数はわかっていない。

ガザとの国境警備を再び強化することで、イスラエルはハマスによるさらなる地上侵攻を阻止した。ネタニヤフ首相がガザの破壊を命じたのは、ハマスからイスラエルを守るためではなく、ガザに人が住めないようにするためである。ネタニヤフ首相は、他の重大な失敗にもかかわらず権力にしがみつくという追加ボーナスを手にした。

イスラエル政府のより基本的な目的は、「大イスラエル」、つまりヨルダン川から地中海までの全土に対する支配を強固にすることだ。ガザ侵攻の目的は、住民をガザから追い出すことだ。10月10日、イスラエルのヨアヴ・ギャラン国防相は、「ガザは以前のようには戻らない。われわれはすべてを排除する」と述べた。さらに最近、ネタニヤフ首相は、ガザ住民の「自発的移住」について語った。自発的移住とは、ガザが廃墟と化し、ガザ住民が避難するように言われた後のことのことを言っている。メトゥーラのダビド・アズーライ市長はつぎのように宣言した:「ガザ地区全体を空にする必要がある。平らにするのだ。アウシュビッツのように。イスラエルの力を世界中に知らせるための博物館にしよう。10月7日はある意味、第二のホロコーストなのだから」。彼は後に、ガザの住民を殺害するのではなく、「配置換え」することを望むと明言した。最近では、ファシストを自認するベザレル・スモトリッチ財務相が、ガザの人口を現在の200万人強から10万〜20万人に削減するよう求めた。イスラエルはガザ侵攻の当初から、ガザ住民をエジプトに押し込もうと狙っていたが、エジプトは民族浄化の当事者になることを断固拒否した。

1970年代には、パレスチナを支配してユダヤ人国家としての大イスラエルを建設するという目的は、周辺的な信念に過ぎなかった。現在ではそれがイスラエルの政治政策の中心となっている。それは占領下のヨルダン川西岸と東エルサレムにおける何十万人ものイスラエル人入植者の政治的重みを一部反映している。

「大イスラエル」とは、1967年戦争以前のイスラエルと、ガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムを合わせたもので、およそ700万人のユダヤ人、700万人のパレスチナ人イスラム教徒とパレスチナ人キリスト教徒が住んでいる。イスラエルが大イスラエルを支配できるのは、700万人のパレスチナ人を支配するか、戦争、暴力、極端な差別によって彼らを家から追い出すことによってのみである。大イスラエルを求めるあまり、イスラエルはパレスチナの人々に対して重大な犯罪を重ねている。進行中の犯罪は、ひどい不正と侮辱を伴うアパルトヘイト支配である。より重大な犯罪は、イスラエルがガザでやろうとしている民族浄化である。ガザで毎週起きている何千人もの罪のない市民の死に見られるように、最も重大な犯罪はジェノサイドである。


過激主義に向かうイスラエル

アメリカ国民は、イスラエルの政治が、宗教的熱狂とパレスチナ人に対する殺人的暴力を混ぜ合わせた過激派によって支配されていることを理解する必要がある。イスラエルのこのような超暴力的な側面は、イスラエル国内ではすぐに明らかだが、アメリカ国民にはまだほとんど知られていない。ガザにおけるイスラエルの蛮行は、多くのアメリカ人にとって驚きであるが、イスラエル国内では当たり前のことになっている。独立系ニュースサイトGrayzoneは、イスラエル兵や著名人がパレスチナ人の死を祝っているショッキングな記事をまとめた。

イスラエルがパレスチナ人に対するジェノサイド的な暴力を行なっていることに対して、イスラエルの大衆はいくつかの理由から共感を抱いている。まず、イスラエルでは常にホロコーストの記憶が影を落としている。ネタニヤフなどの政治家は、常にホロコーストの恐怖を煽り立て、全てのパレスチナ人が全てのユダヤ人を殺すことを望んでいるというまちがった主張し、パレスチナ人の暴力的な鎮圧がイスラエルにとって生死の問題だと主張してきた。勿論、憎しみのらせん状態ではネタニヤフの言辞と行動によって自己達成的予言が生まれ、他の側からの反応や憎しみが引き起こされる。しかし、対話や交流、外交、そして平和構築を通じてそれらを解決しようとするのではなく、憎しみの輪廻が煽られることになる。

第二に、正統派ラビは、神がヨルダン川から地中海までのすべての土地をイスラエル人に与えたので、イスラエルにはパレスチナに対する神聖な権利があると主張することによって、安全保障の間口を広げた。

第三に、1967年に征服されたパレスチナの土地に70万人のイスラエル人入植者が住み、大イスラエルはイスラエル国民の大部分にとって既成事実となり、イスラエルの政治に大きな発言力を持つようになった。これらの入植者たちは、征服された領土に移り住み、今では自分たちの入植地を守ることを熱烈に主張している。国連安全保障理事会(国連安保理決議2334号)は、占領地パレスチナにおけるイスラエルの入植地は国際法に著しく違反していると明確に宣言しているが、内閣のスモトリッチ自身は入植者運動の指導者である。

この暴力的なユダヤ教系譜の出現は、1967年の6日間戦争直後の1970年代初頭にさかのぼる。1967年以降のイスラエルの政策課題は、新たに占領されたパレスチナの土地をどうするか、だった。イスラエルの指導者たちは、イスラエルの指導的政治家イーガル・アロンの提案に基づき、東エルサレムを維持し、占領下のヨルダン川西岸とガザに入植地を建設し、イスラエルの安全保障を守るための「事実を現場に置く」ことを決定した。イスラエル政府は当初から、戦争によるイスラエルの領土獲得を否定した国連安全保障理事会決議242号(1967年)を無視したのだ。

次に起こったことは重大だった。超宗教的ユダヤ人は、イスラエルを「主の御座の地上の支え」にするというメシア的な呼びかけの一環として、占領地でのイスラエル入植の大義を取り上げた(ここp.69)。1974年、*ガッシュ・エムニムは、アブラハム・アイサック・クックとツヴィ・エフダ・クックの父子ラビの信奉者たちによって、超民族主義的な宗教入植者運動として立ち上げられた。彼らの教えは、ヨシュア記の土地所有権、タルムード法、シャーシ派神秘主義、民族主義、政治活動を組み合わせたものであった。
*ガッシュ・エムニム・・・「信仰者の集団」。イスラエルの超ナショナリスト。正統派のユダヤ教右派原理主義活動家組織で、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、ゴラン高原のユダヤ人入植地の設立を目指した。(ウィキペディア)

大イスラエルの宗教的動機は、神がユダヤ人にヨルダン川から地中海までの全土を与えたというものだ。おそらく紀元前6世紀に完成したと思われる『ヨシュア記』では、エジプトから40年の砂漠の旅を終えて到着したイスラエルの民に、自分たちの土地を手に入れるためにカナンの国々を全滅させるよう神が指示している。神は、「南はネゲブの荒野から北はレバノン山脈まで、東はユーフラテス川から西は地中海まで、ヒッタイトの全土を含む」土地を約束する。(ヨシュア記1章4節、新共同訳)。神の後ろ盾を得たヨシュア軍は、この地を占領するために一連の大量殺戮を行なう。

この常軌を逸した暴力的な文章と聖書の関連部分(サムエル記におけるアマレク人の殲滅など)は、宗教・世俗を問わず、右派イスラエル人にとって重要な参照箇所となっている。その結果、今日のイスラエルは、ユダヤ人のためにパレスチナ全域を確保するという紀元前6世紀のメシア的ビジョンを追求している。大イスラエルの支持者は、このイデオロギーの反対派に反ユダヤ主義者というレッテルを貼ることが多いが、ハーバード・ヒレル元事務局長が雄弁に論じているように、それは的外れである。大イスラエル反対派は過激主義と不正義に反対しているのであって、ユダヤ教に反対しているのではない。

ユダヤ人入植者運動は、パレスチナ人に対する殺人も辞さない軽蔑心を引き起こした。イスラエル・シャハク教授は、彼の著書『イスラエルのユダヤ主義原理主義』で、西岸入植地の指導者であるラビ・エリエゼル・ワルドマン氏の宗教的熱狂に注目している。

「私たちは、ユダヤとサマリア(ヨルダン川西岸)の外国領土を占領しているのではない。ここは私たちの古くからの故郷だ。ユダヤ人の信仰と贖罪に対する私たちの責任は、強くはっきりとした声で発言することを私たちに命じている。私たちの民族と私たちの土地をひとつにするという神の導きは、「安全保障」や「外交」といった一見論理的な概念によって曇らされ、弱められてはならない。それらは真実を歪め、私たちの大義の正義を弱めるだけである。私たちは信仰の民である。これこそが、われわれの永遠のアイデンティティの本質であり、いかなる状況下においてもわれわれが存在し続ける秘訣なのだ」。[2002]

シャハクは『ユダヤ人の歴史-ユダヤ教の宗教』(第2版、2008年)の中で、1973年のイスラエル軍中央地域司令部の主任チャプレンの言葉を引用している:「戦争において、わが軍が敵を襲撃するとき、彼らは善良な(パレスチナ人の)民間人、つまり表向き善良な民間人であっても殺すことが許され、ハラカー(ユダヤ教の掟)によってさえ命じられている」(p.76)。

暴力を使ってパレスチナ人の集団離脱を誘発する戦術は、イスラエルが建国された当初からその手口の一部だった。イスラエルの独立前夜、1947年から8年にかけて、ユダヤ人過激派グループは、パレスチナ人がナクバ(アラビア語で「破滅」)と呼ぶ卑劣な手口で、何十万人ものパレスチナ人の集団離脱を誘発するためにテロを使った。

ネタニヤフ政権の狙いは、ガザ住民を隣国エジプトやアラブ中東の他の地域に逃亡させることで、ガザ紛争でナクバを繰り返すことだ。しかし、1947—1948年とは異なり、世界はリアルタイムで注視しており、イスラエルの露骨な民族浄化の試みに対して憤りを表明している。エジプトはイスラエルとアメリカに対し、イスラエルの民族浄化の当事者にはならず、ガザンからの洪水のような難民を受け入れないとはっきり言った。


「大イスラエル」の探求は必ず頓挫する

暴力的に「大イスラエル」を作ろうとするイスラエルの試みは失敗するだろう。イスラエル国防軍は、ガザでの残忍な市街戦で大規模な損失を被っている。イスラエルは2万人以上のガザ住民を殺害したが、そのほとんどは女性と子どもであった。また、イスラエルの侵攻に抵抗するハマスの軍事力は破壊されていない。IDFの指導者たちは、ハマスとの戦いにはさらに何カ月もかかるだろうと言っている。が、そのずっと前に、世界の反対勢力はイスラエルの前面に立ちはだかることになるだろう。

イスラエルの指導者である国防相のベニー・ガンツを含むイスラエルの指導者たちは、絶望の中でレバノンおよびおそらくイランへの戦争拡大を求めている。南カロライナ州の共和党上院議員リンジー・グラハムも、立場上から、そして予想されたように、米国がイランと戦争をするよう強く薦める意見を述べている。しかしこのイスラエルの策略もおそらく失敗に終わるだろう。ウクライナとガザで蓄積された軍需品を減らした後、米国は中東での広範な戦争を戦う立場にはない。アメリカの人々もまた、米国の次の戦争に強く反対しており、選挙年であるから、戦争反対の声がでてくるだろう。これは軍産複合体に支配された議会でも同様だ。

イスラエルの外交的挫折は、反転されない限り、壊滅的なものとなるだろう。イスラエルは世界中で政治的支持を失っている。最近の国連総会の投票では、世界人口の94%を占める174カ国がパレスチナの政治的自己決定に賛成票を投じたが、反対票を投じたのは世界人口の4%を占めるイスラエル、米国、ミクロネシア、ナウルの4カ国だけであった (他の15カ国は棄権または無投票) 。イスラエルの強硬な軍国主義は、それに反対する世界を団結させた。

イスラエルの指導者や外交官は、批判者はすべて反ユダヤ主義者だと叫ぶのをやめ、世界が実際に言っていることに耳を傾けなければならない:イスラエルとパレスチナは、国際法と相互安全保障に基づいて共存する必要がある。


イスラエルは現在、唯一残された支持国である米国を頼りにしているが、米国の支持も衰えつつある。賛成59%、反対19%という大差で、アメリカ人は停戦を支持している。アメリカ人はイスラエルの安全保障は支持するが、過激主義は支持しないのだ。もちろん、アメリカにも聖書正典に基づいて政治を行うキリスト教徒やユダヤ教の狂信者はいるが、世論の中では少数派である。アメリカのイスラエル支持は、2国家解決策を拠り所にしている。バイデンはそれを知っており、米国がイスラエルのガザ戦争に軍需物資を供給しているときでさえ、2国家間解決策への米国の支持を繰り返し述べている。

アメリカのユダヤ人は概してイスラエルを支持しているが、イスラエルの宗教的救世主信仰は支持していない。2020年のピュー調査では、「神が現在のイスラエルの土地をユダヤ人に与えた」と信じているアメリカ人ユダヤ人はわずか30%だった。イスラエルとパレスチナの2国家解決による和平の実現可能性を信じていたのは63%だった。イスラエル政府がパレスチナ人との和平に向けて真摯に努力していると2020年時点で信じていたのは、わずか33%だった。

米国の正統派ユダヤ人でさえ、大イスラエルの問題では意見が分かれている。チャバドのような一部の正統派ユダヤ人共同体は、聖書的動機に基づく大イスラエルを信奉しているが、サトマール共同体(ナチュレ・カルタNaturei Kartaとしても知られる)のような他の共同体は反シオニストであり、ユダヤ教は国家概念ではなく宗教であるとして、イスラエルのパレスチナ人に対する戦争を率直に批判している。サトマール共同体は、ユダヤ人の祖国の復活は、シオニストの行動計画ではなく、神の行動計画に従わなければならないと信じている。


イスラエルの過激主義を支援するのはアメリカの利益にならない

米国はイスラエルの残虐な戦争に軍需物資を提供してきた。この共謀によって、パレスチナ人原告団はアメリカ政府をジェノサイド条約違反で告発する訴訟を起こしている。この法的努力の一環として、米国を拠点とする憲法権利センターは、イスラエルの指導者たちによるジェノサイド発言を、こことここに体系的に記録している。

米国はまた、イスラエルの弁護しようのない行動を擁護するために、深刻で費用のかかる外交的孤立に直面している。最近の米国安全保障理事会や国連総会の投票では、米国はほぼ一国でイスラエルの超暴力的で不当な行動を支持している。このことは、外交政策や世界経済の他の無数の分野で米国を苦しめている。

アメリカの連邦予算は、軍事関連支出からも多大な負担を受けており、その総額は2024年には約1.5兆ドルに達する。2000年にはGDPの約35%だった公的債務を、現在ではGDPの約100%に引き上げる中心的な要因となっている。債務が急増し、住宅ローンや消費者ローンの金利が上昇するなか、国民はウクライナやガザでの戦争資金を賄うためにさらなる赤字支出を求めるバイデンの呼びかけに抵抗しており、中東でのより広範な戦争、特にアメリカが直接戦闘に巻き込まれるような戦争には声高に反対するだろう。

もちろん、アメリカ政治においては、イスラエルへの無限の支持が止められないようだ。イスラエルロビーという強力な勢力は、イスラエルの政治家や裕福なアメリカ人との連携で成り立ち、この強力な支持を構築する上で大きな役割を果たしている。イスラエルロビーは、2022年の議会選挙で3000万ドルの運動資金寄付を行い、2024年もはるかに多額の寄付を行う予定だ。しかし、このロビー活動はイスラエルのガザでの非人道的な行為に対する公衆の反対に直面している。


2国家解決は、今でも、イスラエルの真の平和と安全保障のチャンスだ

イスラエルの指導者や外交官は、批判者はすべて反ユダヤ主義者だと叫ぶのをやめ、世界が実際に言っていることに耳を傾けなければならない:イスラエルとパレスチナは、国際法と相互安全保障に基づいて共存する必要がある。イスラエルとパレスチナは、国際法と相互の安全保障に基づき、共存する必要があるのだ。2国家解決を支持することは、イスラエル国家におけるユダヤ人の平和と安全を支持することであり、パレスチナ人自身の国家における平和と安全を支持することでもある。それどころか、イスラエルによるガザでの大量虐殺を支持し、世界中の反イスラエル(および反米)感情を煽ることは、イスラエルの長期的な安全保障に逆行するものであり、おそらくはイスラエルの存続にも関わる。アラブ・イスラム諸国は、2国家解決という文脈の中でイスラエルとの関係を正常化する用意があると繰り返し宣言してきた。これは2002年のアラブ和平イニシアチブにさかのぼるものであり、2023年11月11日にリヤドで開催された臨時アラブ・イスラム合同首脳会議の重要な最終声明も含まれている。米国とアラブ諸国は、2国家間解決を実施する中で、双方の安全を守るための合同平和維持軍の設置に早急に合意すべきである。

多くの熱烈な宗教的入植者は、古代の聖書の記述に基づいて、パレスチナ国家に強く反対し、それを行使する権利を主張する。しかし、ユダヤ教の目的は数百万人のパレスチナ人を支配することや、民族浄化を行うことではない。真の目的は、世界の非難を引き起こすことではなく、理性と善意を使って平和を見つけることなのだ。ヒレル長老は「あなた自身に対して嫌悪感や不快感を持つことを他人に対しても行なってはならない。これが全ての律法だ。残りは注釈だ。行動して学ぶこと」と宣言した。真の目的は、預言者イザヤ(2:4)の倫理的なビジョンを実現することだ。イザヤは「彼らは剣を打ち直して鋤(すき)に、槍を打ち直して鎌とする。国はもはや国に向かって剣を上げず、もはや戦いを学ぶことはない」と予言した。そうあってほしい。


ジェフリー・D・サックスは、2002年から2016年まで地球研究所の所長を務めたコロンビア大学の大学教授兼持続可能な開発センター所長。国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク会長、国連ブロードバンド開発委員会委員。これまでに3人の国連事務総長のアドバイザーを務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長の下でSDGs唱道者を務めている。近著に『A New Foreign Policy(新しい外交政策)』(2020年)がある: Beyond American Exceptionalism」(2020年)の著者。その他の著書に以下がある: 「新しいアメリカ経済の構築: Smart, Fair, and Sustainable」(2017年)、潘基文との共著「The Age of Sustainable Development」(2015年)など。
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ハーグでの裁判の報告は私に任せてくれ。その2

<記事原文 寺島先生推薦>
Your Man in the Hague Part II
筆者:クレイグ・マレー(Craig Murray)
出典:Internationalist360°  2024年1月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月23日


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 初日の南アフリカの発言の終わりには、非常に良い感触があった。誰もが非常にうまくいったと感じ、裁判所が暫定措置から逃れようともがく余地はほとんど残されていなかった。 私たちは傍聴席を出て、コービン(元・英労働党主)とメランション(仏国会議員)と一緒に南アフリカの代表団に会いに行った。この行為は警備当局が了承してくれず、一般傍聴者はすぐに退席し、代表団に会ったり、報道機関の取材に応じたりしないようにとのことだった。当時南アフリカ代表団は法廷外にいたが、敷地内で集団を成していた。

 報道機関はコービンやメランションと話したがっていたので、警備当局によるこの動きはかなり非現実的だった。人々が腕をバタバタさせたり、手を振ったりしていた。私がジェレミーのそばを離れなかった理由の一つには、彼のそばを離れることで彼が孤立無援になることを避けたかったからであったが、一番の理由は、彼の妻ローラがどこかにいて私の携帯電話に気をつけていてくれていたからだった。ICJの職員たちは、コービンとメランションに直接言い付けるのは怖いようで、代理人である私に「ここにとどまってはなりません」とかなり険悪な態度を取り続けた。

 とても不思議な状況だった。その場の雰囲気はとても友好的で、緊張感はなかった。約60人の代議員と同じ数のジャーナリストがいたが、それはそこにいても問題ない人たちだった。それ以外に、コービン、メランション、そして私がいた。私たちはその場から退席すべき立場だったのだが、かといってそこに私たちがいたとしてもその場の状況に何ら違いを与えるものではなかった。審議が終わった後、場違いのところにいるとはいえ、穏やかに振舞っていた私たちが、警備当局から怒りを買う余地などまったくないと私には思えた。しかし、ICJの女性職員が次々とやってきて、現場の緊迫感が増してきた。

 この段階で、南アフリカ代表団は正式な報道声明をまとめるため、建物内の割り当てられた事務所に戻った。私たちも一緒に行った。私は顔見知りのパレスチナのアマール・ヒジャジ外務副大臣と話をしていた。ICJの女性の一人がクリップボードを持ってやってきて、静粛を求め、公的な宣告として、集まった一団にこう尋ねた:「この集まりは法的な会議ですか、それとも政治的な会議ですか?」と。

 誰も答える気はなさそうだった。だから私は「それは哲学的な質問です。そんな単純な二元的区別ができるかどうかわかりません」と答えた。ヴァルシャは「法的な会議ですよ」と断言し、その女性職員は意味もなく、手にしたクリップボードを振りながら、「わかりました、政治的な会議はここでおこなってはならないことになっています」と言った。こんなちょっとした揉め事の後、私たちは再び外に出た。

 私はメランションの姿を見て大いに楽しんでいた。彼の愛想の良さは無尽蔵で、誰に対しても止めどなく話し続けた。警備員たちが労働者協同組合についての講義を望んでいたかどうかはわからないが、彼からの講義を受けたのは確かだ。

 私たちは再び前方のドアのところに行き、インタビューがおこなわれているところに戻った。二人の女性職員が現れて、非常に厳しい様子で私に、絶対にここから出て行くよう詰めた。ジェレミーはイスラエルのTV局からのインタビュー取材を受けていて、メランションはせわしなく建物の中に戻っていった。二人のうちの一人の女性職員が私にこう言った。「ここを出るように依頼しているのに、あなたは言うことを聞いてくれませんね」。私はこう答えた。「いえいえ、そんなことは決してありません。もちろん、あなた方のおっしゃるとおりにしようとしていますよ。ただゆっくりなだけです」と。

 そのときには、3人の並外れた体格の警備員が私の所に来ていた。それは、私が、報道関係者らに取り囲まれているジェレミーから目をそらさないようにして、顔見知りの人々を追いかけ続けていた時だった。警備員の人々がとても親しみやすかったことは認めざるをえないが、なぜ警備員らが私の後をつけていたのかは不明だった。しばらくして、4人目の警備員が現れた。その男性ははげ頭でひげをはやした山のような大男だったが、彼がこう言った。「ここにいたのですか?あなたのことをあちこちずっと探していたんです」と。このことばは奇妙に思えた。おそらくその警備員は、私が多くの警備員に囲まれていたことを知らなかったのだろう。

 ローラがなんとかこの場に入ってきて、私に携帯を返してくれた。ジェレミーはゆっくりと門の方に向かっていたが、不遜な振る舞いをすることはできない人物であり、誰であれ挨拶をしてくれた人々につれない様子を見せることはなかった。私たちが門の外に出たあと、ジェレミーは外にいたもっと大人数の群衆の前で止まる素振りを見せなかったので、私は彼にさよならを言って、ホテルへの帰路に着いた。私の足の指がまた痛み始め、暖かいお風呂が心から恋しくなっていた。

 お風呂のあと、私は食べ物を得ようと階下に降りていった。疲れ切っていた。その理由は、寒い夜に一晩眠ることなく列に並んでいたからだけではなく、バリからの40時間に及ぶエコノミー席での空の旅の疲れからくるものだった。その間、この地に着くまで全く眠れていなかったのだから。時間を数えてみたら、85時間私はベッドに入っていなかった。

 さらに私が感じたのは、報われない、という気持ちだった。いま起こっているこの事象に関して、確かに私には果たすべき役割があった。ジェノサイド条約のことを思い起こさせるために、私が書いた最初の記事の写しが、南アフリカ閣僚の前に置いてあった。それは、これらの閣僚が12月8日、国内の優秀な法関係者に訴追の準備をさせようという最初の決意を表明したときだ。そのような動きを組織したのは私ではなかったし、どのようにしてそんな動きが起こったかを書けば、自信をなくすことになる。感謝してもらおうという期待は何もなかったけれど、寒い中、夜を徹して苦労して法廷内に入ろうとした自分の努力が、報われない運命のいたずらのように思えてしまった。

 読者の皆さん、私はただ疲労困憊のなかで、自己憐憫に陥ってしまっただけだったのだ。まるでお馬鹿な10代の子どもたちがすねているようなものだった。私の脳は疲れ果て、混乱し、法廷見学一日目の報告書を書くエネルギーが見つかるかどうか深刻に悩んでいた。しかもその報告書はすぐに書かねばならないものだった。もう一晩寝ずに過ごし、凍り付く寒さのなか列に並べるくらい体力が残っているか、自信がなかった。テロリストではないかを調べられる、笑ってしまうしかないような検査から逃れようとする努力には飽き飽きしてきたし、自分の子どもたちに会いたくなった。

 私は決めた。もう一晩寝ずにいることはできない、と。読者の皆さんには、私が最善をつくしたことを説明すればいいから、と。私は大きな安心感に包まれ、床につこうと決心した。

 ちょうどそのとき、エレベーターから英国の著名な弁護士であるタヤブ・アリが降りてきたが、彼は背の低い、控えめなアラブ人紳士を伴っていた。

 「やあ、クレイグ。調子はどう?」とタヤブが聞いてくれたが、二人は今からどこかに出かけるらしく、明らかに急いでいた。「こちらは、ガッサーン」。
私たちは軽い握手をしたが、そのときあることを私は思い起こした。
「外科医さんですか?」
ガッサーンは戸惑い、少し気後れしている様子だった。
「ガザで外科医をされていませんか?」
「はい、ガッサーン・アブ・シッタです。」
「お会いできて光栄です。本当に光栄です」
ガッサーンは少し恥ずかしそうな様子で、会議に向かって走り去った。

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 私のほうがずっと恥ずかしくなった。私が今、目の前で会った人物はシファー病院から去ることなく、仕事を続けていた医師だった。この病院には、イスラエルが爆撃やミサイル攻撃を加え、この病院の窓からイスラエルの狙撃手らが発砲していた。それでもガッサーンは仕事を続けた。電気も、包帯も、消毒液も、麻酔剤もないなかで。ガッサーンは1日20時間働いて、子どもたちの手足の切断や縫合などの治療をおこなおうとしている。ガッサーンは爆撃される中で、来る日も来る日も病院に居続けている。それは愛のためだ。ガッサーンは英国有数の形成外科医だから、英国におれば、いくらでも稼げたろうに。

 私は本当に恥ずかしくなった。この男性はこんなにも困難に耐え、多くをなしとげてきたし、人々の苦しみも目にしてきた。それなのに今ここにいる自分は、足の指の痛みと睡眠不足を理由にして諦めようとしている。さらには自分のやっていることが重要なことであると人に思ってもらいたがっている。突然私は悟った。自分が情けないエゴイストである、と。そんな自分が大嫌いになった。痛みがなくなったわけではないが、新たなアドレナリンが吹き出てきたのだ。やってやろうという気になったのだ。私がやっていることがジェノサイドを食い止める何の助けにもならないかもしれないが、いま私たちは、私たちができる限りのことをせねばならぬのだ。

 笑ってくださって結構、でも、私にとってはアブシッタさんと出会えたことが、本当に大事な、意味のある出来事だったのだ。このことで自分は自分が思っている以上にもっとできるということを気づかせてくれ、やろうという意思が沸き起こったのだ。彼がなにか具体的なことばを掛けてくれたわけではなかったのだが。

 しかし私は、明日の準備をしないといけないという気持ちを持ち続けていたので、タクシーを拾ってキャンプ用品店に向かった。そこで私が買える中で一番暖かい寝袋を買い、さらに反射性のグランドシートと防寒靴下と携帯用瓶も買った。

 そこからまたタクシーを拾ってホテルに戻り、まっすぐ自分の部屋に入り、書き始めた。最初の3段落は楽々書き上げることができた。そのとき突然、私は自分の非常にもうろうとした目をカッと見開いたまま、頭をキーボードの上に載せた。横向きではなく、額を載せる形で。そこから3時間、眠りに落ちてしまった。

 その後はまるで蜜の中を歩くかのように、私の筆は止まってしまった。いつものように頭の中でことばはどんどん浮かんでくるのに、そのことばがなぜか指にはきちんと伝わらず、打ち込まれたものは、自分が使いたくないとして却下しようとするものに思える文章になってしまっていた。「assist them(彼ら助ける)」と打ちたかったのに、「his big cyst hen」と打ってしまっていたことを思い出す。遅々として進まなかった。

 午後11時になって、次の日の傍聴席待ちの行列が出来ていないか確かめに行った。まだ誰も並んでいなかった。私が心配していたのは、前日の朝の門のところでの順番の取り合いで揉めたことに多くの人が落胆して、2日目はもっと早くから並び始めるのではないか、ということだった。私はその時までに書き上げていたところまでだけ(つまり最初の段落の説明のところまで)をブログにあげることにして、定期的に行列を点検することにした。寒いところを歩くことで目が覚めた。前日よりもずっと暖かかった。前夜は零下5度だったが、 この日はプラス2度あった。ただし、地面はたっぷりとした露が降りびしょびしょだったし、風も前夜より冷たかった。

 1時半にもう一度確認しに行ったが、まだ誰も並んでいなかった。しかし3時になると、8人が列を成していた。私は急いでホテルに戻り、寝袋とグランドシートをもって、その時点でほとんど完成していた一日目の報告記事をブログにあげた。列に加わった時は、中に入ることが許された14人中の9番目だった。私は素敵なオランダ人女性に出会ったが、もし私が遅れてきたとしたら、その女性は私に順番を譲ってくれるつもりだった。だがお恥ずかしい話、そのお方の名前を忘れてしまった。

 がっかりしたのは、前夜の列に一緒に並んでいた新しい友人たちに一人も再会できなかったことだ。ゆうべの忘れがたい体験や苦労を一緒に共有できたことで、強い絆ができたと思っていた。ほとんど全員が翌日も列に並ぶつもりだと言っていたのだが、寒さと疲れのせいで、そうはできなかったのだろう。しかしそれでもこの第2夜の方がもっと楽しかったのは、そんなに寒くなかったからだろう。

 反射性グランドシートを買ったのは大正解だった。乾いていて、シンシンと増す寒さを阻止するのに驚くほど役に立った。しかしママのように温めてくれるはずの寝袋のほうはいささか問題だった。私は以前ほどスラッとしていないので、重ね着をしてスキージャケットを羽織れば、寝袋に入るにはキチキチだった。きっちりチャックを締めようとしたのだが、最後のひとあげが効かなかった。それが出来たら頭をすぽっと被せられたのだが。その時点で、腕が動かないくらいキチキチになってしまっていたからだ。

 何人かの素敵な女性が手助けをしに来てくれたおかげで、チャックをビシッと締めることができた。この騒ぎで大笑いが生まれた。ネット上の新たなポルノジャンルを生み出せたかもしれない。「老人を袋に詰め込んで完全にチャックを締める」という新しいジャンルを。いや、こんなジャンルはもう既に存在するかもしれないが、 グーグルで調べる気はない。そんなことをすれば、よくあることだが、警備員に身柄を確保されるか、私の電子機器が押収されるかどちらかだから。誤解を招く行為だから。

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 さて、午前3時半になると、私は頭を垂れて、実際5時半くらいまで寝てしまった。快適ではなかったが、寒くはなかった。それから、用を足せる茂みをウロウロ探した。戻ってきたとき、3人の女性が私のグランドシートを横取りして、寝袋を毛布がわりに使っていた。「あなたの陣地を占領したのよ」と冗談を言って。私は「よく分かった。きっと君たちの祖先は3000年前、寝袋を持っていたはずだ」と返した。うまいボケではなかったが、こんな感じで私たちは待ち時間を過ごした。そして、傍聴席の場所取りをしていた私たち14人で集合写真を撮った。

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 前日と少し違っていた。ペンの使用が許された。ただし、前日「ウロウロする人々がいた」せいで、傍聴者は後ろのドアを通って席に案内され、帰る時も同じ道を通るよう、警備員たちは不機嫌そうに伝えた。さらに、自分たちの集団以外の人々と話したり、やり取りをしないようきつく言い渡された。そうやって私たちは狭い傍聴席に座った。列は2列しかなく、座ってみてわかったことは、2列目に座ってしまうと、何も見えなることだった。 ホールからは、傍聴席に2列目があることさえ見えない。再度私は、この法廷が何の注意も払われず、ひどい設計で建てられたことに驚かされることになった。

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 幸運なことに、私の前に座っていた、恐らく傍聴席に入ってはいけないことになっていた若い男性が退席させられたので、私はイスラエル側の答弁の様子を見ることができるようになった。

 南アフリカの時と同様に、イスラエルの場合も、裁判所の手続きに従い、イスラエル外務省のタル・ベッカーという裁判所に常駐する「代理人」によって紹介された。彼は冒頭、「イスラエル国家を代表して再び皆さんの前に姿を現すことができて光栄です」というお決まりの文句で切り出し、裁判官の前に姿を現すことではなく、イスラエルを代表することにこそ名誉があるということを、言い回しや声の調子で純粋に暗示した。

 ベッカーは開口一番、ホロコーストについて語り、ジェノサイド条約が存在する間、イスラエル以上にホロコーストを知っていた者はいなかったと言った。「そのホロコーストで600万人のユダヤ人が殺されました。この条約は通常の戦争の残虐性に対応するために使われるものではありません」と。

 「南アフリカによる訴えはイスラエル国家の正当性を否定することを狙ったものです。10月7日、ハマスは大虐殺や殺傷行為、強姦、拉致行為を犯しました。1200人が殺され、5500人が怪我を負いました」。ベッカーは、何件かの個人による恐ろしい残虐行為について触れ、一人のハマス兵がWhatsApp上で、自分の両親に自分が犯した大量殺人や強姦、殺傷行為を自慢しているところを録音した音声を再生した。

 「今回の事象で起きた唯一のジェノサイドは、イスラエルに対しておこなわれたものでした。ハマスはイスラエルへの攻撃を続けましたし、この法廷が暫定措置を命じれば、イスラエルの自衛権を否定することになります。暫定措置を課すべきなのは、むしろ南アフリカが法的手段を講じてハマスとの関係に基づいてさらなるジェノサイドをおこなおうとしていることに対して、でしょう。ガザは占領下にあるわけではありません。イスラエルはガザが政治的・経済的に発展する可能性を与えてきました。それなのにハマスは、ガザをテロリストの軍事基地に変えることを選択してしまったのです。」

 「一般市民を巻き添えにしたため、市民たちが亡くなった責任はハマスにあります。 ハマスは学校や病院、モスク、国連施設の地下にトンネルとそのトンネルに入れる入口を作りました。ハマスは医療用車両を軍事用車両に変えてしまいました。」

 「南アフリカは市民の建物が破壊されたと主張していましたが、それらの建物がハマスの愚かな罠とハマスによるミサイルの誤射により破壊された事実は伝えませんでした。」

 「南アフリカが示した犠牲者数は、ハマス側の資料によるものであり、信頼できません。その犠牲者のうち何人が兵士だったか、南アフリカは伝えていましたか?子どものうち何人が少年兵だったかを伝えていましたか? 南アフリカが示した内容は根拠が薄く、良からぬ動機に基づくものです。イスラエルに対する名誉毀損に当たります。」

 明らかに冒頭のこのような発言は、強硬さと妥協を許さない姿勢を示すものだった。裁判官らが非常に深い注意を払っているように見えたのは、ベッカーが10月7日の攻撃は自衛のためだったという話から始めたときだった。何人かの裁判官がソワソワし、居心地が悪そうに見え始めたのは、「ハマスは救急車両や国連施設から攻撃を加えている」という話をベッカーがした時だった。ひとことでいうと、ベッカーは行き過ぎた発言をしてしまったということであり、この時点で聴衆はベッカーの話についていけなくなったと思う。

 続いて登壇したのはマルコム・ショー勅選弁護士だった。ショー弁護士は国際法の権威的存在であると目されている人物で、この件に関する基準となる本の編集者でもある。法曹界の興味深い側面なのだが、ある特定の話題に関する基準となるべき著書が定期的に更新され、その中には最近の裁判での主な要点も書き加えられ、そのような審判が与える影響についての説明の文章が加えられたり、補足されていたりする。法曹界の著書の編集者であるということは、コツコツと頑張る学者ぶった人にとって出世への道に繋がっている、ということだ。

 私がショーとたまたま出くわしたのは、彼がエセックス大学の人権センターの共同設立者になった時だった。もう20年ほど前のことになる。そこで二言三言ことばを交わしたことがあるが、話題は、「テロとの戦い」において、人権がどう攻撃を受けるかについてだった。私には、虐待や囚人特別引き渡しの場面を内部から見た体験があった。人権問題の専門家であるとされていたショーであったが、彼は個人の自由よりも、一国の国家安全保障上の利益を支持する傾向が尋常ではない程に強かったように思えた。

 当時熟考していた、という振りをするつもりはない。当時の私には、ショーが極端なシオニストという立場に立っており、特にパレスチナ人の権利を抑圧しようと長年関心を払っている人物であることは分からなかった139カ国がパレスチナを国家と認めた後でさえ、ショーはイスラエル側の先頭に立ち、パレスチナが国際組織に加盟することを法的に反対していた。その国際組織の中には、国際司法裁判所も含まれていた。 1933年のモンテビデオ条約に重きを置くようなショーの主張は、法曹界ではほぼ通用せず、このような主張は失敗だったと言っていいだろう。

 どんな犯罪でも弁護されるべきなのは当然で、殺人者や強姦者を弁護したとして弁護士を責めることは誰にもできないというのは当然だ。というのも、その人が有罪か無罪かを審査するのは法廷の仕事なのだから。だが一般的に考えて、殺害の罪に問われている被告人を弁護士が弁護するのは、その弁護士が殺人行為に同意し、殺人者がさらに殺人行為を続けて欲しいと思っているからではないということは当然のことだと思う。しかし今回のショーの場合はまさにそうなのだ。マルコム・ショーがイスラエル側に立って発言しているのは、彼自身、イスラエルがパレスチナの子どもや女性たちの殺害を続けることで、イスラエルの保安状況が改善することを願っているからなのだ。もちろんそれは彼がそう思っているだけなのだが。

 これがICJでの裁判を含めたほかの裁判とこの裁判の違いだ。通常、弁護団長は先に相手側に雇われたとしたら、喜んで自分の立場を変えるものだ。しかしこの裁判は完全にそうなっていない。この裁判では、弁護士ら(おそらくショーは例外だが)は、自分たちが支援している側を深く信じており、相手側の弁護人として出廷することはないだろう。これは、この事件が、多くのドラマと、少なくとも国際法の将来にとって極めて重要な結果をもたらす、特別な事件であることを物語っている。

 先ほど説明した理由から、ここでのショーの役割は、単なる弁護士としての任務ではない。イスラエルによる殺人行為の拡大を支持した彼は、間違いなく高給取りになるであろう彼の残りの人生において、世界中のまともな人々から除け者扱いされるに違いない。

 ショーは冒頭で、南アフリカ側の発言では常に文脈が語られていると述べた。「南アフリカはイスラエルという国家が存在する75年間について語りました。なぜそこまでなのでしょうか? なぜバルフォア宣言やイギリスのパレスチナ委任統治まで遡らないのでしょうか? これらの出来事の背景にこそ、10月7日の大虐殺と、それに続くイスラエルの自衛権の行使があったのですから」と。ショーは、10月中旬に欧州委員会のウルスラ・フォン・デル・ライエン委員長が発表した、「イスラエルはテロリストによる残虐行為に見舞われたため、自衛の権利がある」とする長い引用文を紹介し、読み上げた。

 「大量虐殺ではなく、10月7日以来続いている武力紛争なのです。それは残忍なものであり、市街戦は常に民間人の犠牲という悲劇を伴っていますが、ジェノサイドではありません。」

 それからショーは、ジェノサイドについての話題に移った。ショーの主張によると、南アフリカはこの訴訟を提起できず、ICJには管轄権がないとのことだった。その根拠は、「この訴訟が提起された時点では、ICJが裁定できるような論争はイスラエルと南アフリカの間には存在しなかったから」だとした。「南アフリカはイスラエルに自国の見解を伝えましたが、イスラエルは実質的な返答をしませんでした。ですので、提訴時にはまだ両者のあいだに論争は存在していませんでした。論争は当事者間の相互作用を伴うものでなければならいものですが、議論は一方の側だけでおこわれていました」と。

 この主張には裁判官たちも大いに興味を示した。初日にも書いたが、ジョン・デュガード教授が南アフリカについて同じ点を取り上げたとき、このことが何よりも裁判官を積極的にさせていた。私の報告は以下のとおりだった:

 裁判官らはデュガード教授による指摘を特に好意的に受け取ったようで、熱心に書類に目を通し、下線を引いていた。何千人もの死んだ子どもたちの件を扱うことは裁判官らにとって少し難しいことだったが、公正な管轄権が与えられた裁判官なら、本領を発揮できることが示された。

 ショーが同じ点について論を展開したとき、裁判官らはさらに興奮した。ショーの主張で、裁判官らは結審の出口を得ることができたからだ。

 この主張に従えば、この裁判を無効にすることが可能になり、西側の有力諸国を動揺させることも、世界中が目にした大虐殺をなかったことにして自分たちの愚かな姿をさらしてしまう事態も回避できるからだ。しばらくの間、裁判官らは目に見えて安堵したように見えた。

 ここで話を止めておくべきだったのに、ショーは、その後1時間もの間、苦労して話を続けたが、メモか書かれた紙をぐちゃぐちゃにすることで少し安心している様子だった。即興でふるまったり、議論を建て直したりする能力が全くない勅選弁護士の姿を見るのは興味深かった。ショーは常に落ち着かず、メモの書かれた紙をパタパタさせていた。

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 ショーは、裁判所が暫定措置を採用した場合、イスラエルは高い軍事的・政治的な損害を受けることになるため、南アフリカに確かな証拠があるかどうかを判断するハードルはかなり高くならざるを得ないと主張した。また、ショーは、「この段階でも大量虐殺の意図があったことを示す必要があります。そうでなければ、大量虐殺は「エンジンのない車」になってしまいます。イスラエル側は、注意深く的を絞った軍事行動をおこなっていたので、違法行為がおこなわれたのであれば、イスラエル自身の軍事法廷が調査し、それに基づいて行動するでしょう」とも主張した。

 「無差別にイスラエルの大臣や高官らが感情的な発言をした事実は重要ではありません。民間人を保護すべしという公式の方針は、この戦争について話し合われたイスラエルの内閣と国家安全保障会議の議事録に記載されています。一般市民を危険から遠ざけようとするイスラエルの努力は、国際人権法上認められた措置であり、集団拉致と見なすべきではありません。」

 「ハマスと共謀してジェノサイドに加担した南アフリカにこそ有罪です。南アフリカがイスラエルに対しておこなった主張は、「憤慨するしかない」ものでした。」

 イスラエル側の次の弁護士は、イスラエル法務省のガリット・ラグアンという名の人物だった。彼女によると、現場で起こっている真実は、イスラエルが一般市民の犠牲者が出ないよう細心の注意を払っており、人道的救済を援助しようとしている、とのことだった。「都市部の戦争には常に一般市民の犠牲がつきものです。建物や生活基盤施設を破壊した責任はハマス側にあります。」

 「ハマスが病院を軍事用施設として使用していた証拠は驚くべき程に存在します。イスラエル軍は、ガザにあるどの病院も、ハマスが軍事用施設として使用していたという証拠をつかんでいます。多くの一般市民を避難させたのは、人道的かつ合法的措置でした。イスラエルは食料や水、薬をガザに供給してきましたが、供給物資がハマスによる攻撃を受けたのです。ハマスは自軍の兵士たちのために救援物資を盗んだのです。」

 次に登壇したのは、弁護士のオムリ・センダーだった。彼によると、今ガザには10月7日以前よりも、1日の食料を運ぶトラックの数は増えている、とのことだった。その数は1日70台から109台に増えているという。燃料やガス、電気は全て十分に供給されており、イスラエルは下水道体系も修理した、という。

 この時点で、イスラエル側は弁護士からの関心を失ったようだ。この人物をかなりあやしげな様子で見ていた裁判官が1~2名いた。2人は完全に眠ってしまっていた。それはおそらく、センダーの話が聞くに耐えないほど嘘まみれだったからだろう。

 こんなまやかしのような話について、メモをとる人さえいなかった。裁判官らはイスラエルを非難しないですむ方法を模索していたようだったが、こんなありえないような嘘話に付き合うことはできなかったようだ。センダーは話を続け、「作戦が新たな段階に入ったため、戦争の範囲や激しさは減りつつあります」と語った。

 恐らく誰も自分の話を信じないことをわかった上で、センダーは以下のように述べた。「この法廷で暫定措置を命じることはできませんが、善良な意図に基づくイスラエル側の発言を受け入れるべきです。それは「国家による一方的意思表明」という宣言があるからです」と。

 ここで白状しないといけないが、私が把握していない国際法が少し存在したのだ。特にICJでの審議に関しての国際法だ。その条項を一読すると、ICJに対して「国家による一方的意思表明」宣言をした国家を束縛できる、という内容だった。その宣言によりICJが、その国家が十分誠意を持っている国だと強制的に捉えさせられる訳ではない、と私には読めた。イスラエル側のこのような主張は、いわば言ってみただけに過ぎず、他に主張できることがないから何とかこじつけたもののように私には思えた。

 おそらくこの見立ては間違っていないようだ。というのも続いて登壇した勅選弁護士のクリストファー・ステーカーは開口一番、ハマスについてこれまでの発言者らと同じような話をし始めたからだ。つけ加わったものといえば、芝居じみた憤懣だけだった。私が思うに、ステーカーはどちらの側にでも喜んで立てる弁護士なのだろう。というのも、明らかに彼は芝居をしていたからだ。しかもその芝居はあまり上手くなかった。

 ステーカーによると、こんな裁判が起こされたこと自体、驚くべきことだという。「この訴えにはイスラエルの自衛権を阻止する意図があります。イスラエルはいまだにハマスの攻撃に晒されているというのに。ハマスは攻撃を続けると言っているのですから」と。

 「ハマス側の罪をやわらげようという意図も含めて、全体としてこの工作を見れば、イスラエル側にジェノサイドをおこなおうとする意図が存在しないことは明白です。イスラエルは信じられないほど危険な状況に置かれています。提案されている暫定措置は、このような状況からすれば公正なものではありません。考えてみてください。第二次世界大戦中に、ある法廷が、一般市民の犠牲者を出しているからといって連合国側に戦争を止めるよう命じ、枢軸国側に殺戮行為を続けることを許すのと同じことなのです。」

 最後の発言者はイスラエルのギラド・ノーム司法副長官だった。彼の発言は、「提案されている多くの暫定措置は拒否されるべきです。というのも、そうなればイスラエルがハマスからの攻撃に晒されることになるからです。さらに3つの暫定措置も拒否されるべきです。その理由はその措置は、ハマス外のパレスチナ人を対象にしたものだからです。イスラエルにはジェノサイドをおこなおうとする意図はありません。内閣や官僚が、一時的な感情の高まりから発したことばは、むしろ民主主義や言論の自由の一例として捉えるべきです。ジェノサイドがあったとして扇動したことこそ、犯罪行為として捉えるべきではないでしょうか」というものだった。

 「この法廷は、ジェノサイドと自衛を一緒にしてはいけません。南アフリカ側の発言は、ジェノサイドの意味を軽視し、テロ行為を奨励するものです。あのホロコーストは、イスラエルが常に存続の危機に置かれてきたことあらわしていました。ジェノサイドを犯しているのはハマスの方です。」

 つまりはそういうことだったのだ。最終的にイスラエルは物議を醸していた残虐行為の動画を法廷で見せることが許されなかったから、発言者らの発言内容を同じ内容の繰り返しにすることで、時間稼ぎをしたのだな、と私には思えた。

 以下のことはしっかりと頭に入れておくべきだ。それは、イスラエル側の希望は、論争がなかったという点で手続き上の利点を得て、 国家による「一方的意思表明宣言」や国家の権限を主張することだった点だ。「家屋や生活基盤施設の被害はハマスの手によるものだ」や「ガザにトラックを入れたのはイスラエルだ」や「犠牲者の数は偽造されている」という明らかに間違った主張は、大事ではなかったのだ。裁判官らに信じてもらおうとは思っていなかったようだ。裁判で得たかったのは手続き上の利点だけだ。あとは報道機関向けの宣伝行為だったのだろう。

 英国では、BBCとスカイ局、両局がイスラエル側の発言をほとんど全てライブで放送した。いっぽう、南アフリカ側の発言は全く放送しなかった。米国やオーストラリア、ドイツでも同様だっただろう。

 法廷審議進行中にドイツが発表したのは、この件に介入して、イスラエルを援護するということだった。ドイツが明らかに主張しているのは、世界で最も厳しいジェノサイドをおこなった過去のある国として、この裁判の判決において独自の大きな役割を果たせる、という点だ。これはいわば、著作権問題だ。ドイツは、ジェノサイドという分野での知的所有権を守っている、ということだ。そのうち、「ジェノサイド」ということばの特許を取得するか、イスラエルにその名称の使用を許可することでジェノサイドを継続させようとするかもしれない。

 裁判官団がこの事態を脱したいと思っているのは確かだし、手続き上の得点を得ようとしているのかもしれない。ただし、イスラエル側からの「論争は存在しない」という主張は深刻な問題をはらんでいる。この主張が認められれば、ジェノサイドを犯した国は異議申し立てに返答しないだけで済むことになってしまうからだ。というのも、「返答がない」ということは「論争が存在しない」という意味になってしまうからだ。このようなことを裁判官らが「明らかに不条理である」と思っていることを私は望む。もちろん実は裁判官らはそのことに気づきたくないと思っているかもしれないが......。

 この先、どうなるだろうか? ある種の「妥協」が生じるだろう。裁判官らは、南アフリカの要求とは異なる暫定措置を出し、イスラエルに民間人を保護する措置を取り続けるよう求めるとか、そんなまやかしのような判決を出すのだろう。間違いなく米国務省は、そのような草案をドノホー裁判長向けに作成済みであるに違いない。

 私は自分の見通しが間違いであることを願っている。国際法をあきらめたくはない。ひとつ確かなことがある。ハーグでのこの2日間は、国際法や人権の概念に意味が残されているかどうかを判断する上で、絶対に欠かせないものだった、という点だ。私は今でも、裁判所が行動を起こせば、米国と英国が手を引き、何らかの救済措置が講じられる可能性があると信じている。今は、ガザの子どもたちのために、それぞれのやり方で祈り、願おう。




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キエフではナイフが抜かれた: ウクライナが戦争に負ければ、エリートたちは互いを食い合うようになるだろう

<記事原文 寺島先生推薦>
The knives are out in Kiev: Once Ukraine loses the war, its elites will eat each other alive
ウラジーミル・ゼレンスキー大統領とヴァレリー・ザルジニー総司令官との権力闘争がこれほど明白になったことはない。
筆者:タリク・シリル・アマル (Tarik Cyril Amar)
ドイツ出身の歴史家。イスタンブールのコチ大学でロシア、ウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史、文化的冷戦、記憶の政治について研究している。
出典:RT  2023年12月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月20日


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資料写真: ヴァレリー・ザルジニー将軍と握手するウラジーミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領(右) © Alexey Furman / Getty Images


ウクライナの2人の最も重要な人物、すなわちウラジーミル・ゼレンスキー大統領と軍最高司令官ワレリー・ザルジニー将軍との間で長くくすぶっていた対立が拡大している。否定的な言辞、とくに何でも「ロシア人」 のせいにしようとするいつもの試みほど今回空しく響くものはない。

ゼレンスキーは最高司令官との仕事上の関係について話している。が、彼らの対立や、ザルジニーの解任が間近に迫っているという絶え間ない噂については、「敵を利する」という理由で、コメントしない。政治的な話で言えば、それは自分の結婚が離婚の準備が整っていることを認め、単に隣人のゴシップの餌にならないように維持することに等しい。

ソ連の上層部の政治は敷物の下で戦うブルドッグに似ているとかつて冗談を言ったチャーチルなら、キエフの軍—民の揉め事を興味深く見るだろう。つい数週間前、ザルジニー将軍とゼレンスキー将軍が公の場で衝突し、将軍は対ロシア戦争が「膠着状態」に陥ったことを認めた。実際には、それは控えめな表現であったが、それでも大統領にとってはあまりにも現実的すぎた。

内紛の激化を示す最新の兆候は、盗聴スキャンダルである。12月17日、ザルジニーのオフィスのひとつに盗聴器が仕掛けられているのが見つかった。ウクライナ当局によると、盗聴器は作動しておらず、出所も特定できなかったという。ウクライナの参謀本部のオフィスでも盗聴器が発見された。

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参考記事:時局は大詰め:ウクライナは敗北後の処理をどうするか?

なぜかウクライナのメディアは一様にロシアのスパイ行為を非難するような反応を示していない。それどころか、内部の権力闘争に関する憶測が一般的で、その中には、この盗聴器は将来AIがザルジニーの声をけた外れに偽造するための序章としてのみ機能するものだったのではないかという疑惑も含まれている。そう、それだけウクライナの政界には信頼がないということなのだ。

他の論者は、この盗聴未遂事件を、ザルジニー将軍の最側近であったゲンナジー・チャスティヤコフ少佐の突然死に関連づけている。公式には事故とされているが、チャスティヤコフの奇妙な最期は、その誕生日プレゼントがウイスキーのボトルと作動する手榴弾ということで、暗殺とする方が理にかなっている。

盗聴は、ザルジニーと参謀本部の信用を失墜させるためのゼレンスキー・チームがやったこという見方もある。たとえば、反転攻勢が失敗したのは軍部の情報漏洩があったからだ、と言わんがために。また、大統領とその部下を中傷するための偽旗作戦の背後には、軍部、そしておそらくは狡猾なキリル・ブダノフ中将率いる情報部がいると見る者もいる。誰にわかろうか? 重要なのは、この種の憶測はウクライナではもはや自然なことだということだ。

このスキャンダルの背景を推測するのは難しくない:ウクライナのエリートたちはますます精神的重圧にさらされている。ロシアとの戦争で敗北が迫っているのだ。ゼレンスキーも、ウクライナの国家安全保障・防衛会議のアレクセイ・ダニロフ長官も、今夏の反転攻勢の失敗を認めている。

一方、西側では、米国の外交政策軍事主義の代弁者であるワシントン・ポストさえも最近は冷静な口調になっている。その詳細なルポルタージュによれば、反転攻勢の失敗は実際には1つではなく2つの戦略的失敗で構成されていたことが明らかになった。最初に、まずあげなければならないのは、西側が押しつけたNATOの作戦は実行不可能であることがはっきりしたのだ。そして、ゆっくりとした長期的な兵士の大量死により、NATOの空想的作戦に替えてウクライナ独自の作戦を試みようとしたのだが、文字どおりどうにもならなかった。戦争にはクラウゼヴィッツ流の偶発性と予測不可能性が不可分だ。しかしこの死のゲームは、クラウゼヴィッツが言うチェスでもルーレットでもなく、カードゲーム(トランプ)のそれになっている。が、キエフの手持ちカードはどうにもならないほど弱い。

同時にウクライナの「いわゆる友人たち」は損失を切り詰める準備をしている。事実、ゼレンスキーは正式なEU加盟交渉参加という象徴的なお情けを受けることになった。また、米国のホワイトハウスと共和党、ハンガリーのビクトル・オルバンと残りのEU参加国との間でどのような応報措置が進展するかによって(またはしない場合もあるかもしれない)、キエフはさらなる大規模援助を受ける可能性もある。

しかし、現在でも、一部のEUの指導者は既に慎重になっている。アイルランドのレオ・バラドカル首相は、ウクライナが今すぐにでも正式な加盟国になることはない、もしなるとしてもまだ先だと、しびれを切らして言ってしまった。そして、お金については、それがどんな風に流れているのかが激しい議論の的になっていることが本当に重要だ。ウクライナ援助はもはや神聖なる大義名分ではない。反転攻勢が大勢として失敗したことを背景にして、西側の代理戦争への投資は、いずれにしても、終わるだろう。今すぐではなくてもそんな先ではない。ジョー・バイデン大統領の言葉は、「どんなに時間がかかっても(as long as it takes)」から「我々のできる範囲で(as long as we can)」という表現に変わった。これはバイデンにしては驚くほど正直だ。援助は終わり。今日でなければ明日終わる。

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参考記事:ゼレンスキーとのデート:英国は首相として失敗した人物を新しい外相に任命

そして、NATO加盟とは何だったのか覚えているだろうか? ゼレンスキーは今、それは素晴らしいが、実現の見通しはないと認めるようになった。「彼らは我々を招待していない」。招待するという「合図」は、「いつかどこかで」という「無意味な」なものであり、「具体的なものは何もない」と彼はようやく理解した。彼はまた、ウクライナの「一部」だけが参加するという最近の奇妙な憶測も否定している(キエフと西側諸国は、ロシアが主張し支配している領土をいつまでたってもロシア領と認めないからだ)。要するに、ゼレンスキーの言っていることは、たぶん、昨日までロシアの手先と揶揄されていた人々が言っていたこととまったく同じようなのだ。

ゼレンスキー政権がウクライナの中立性を2022年2月、また3月や4月に譲歩することができなかったために、亡くなった何十万人ものウクライナの兵士たちの家族に対して、どんなメッセージを伝えられるのか? このナルシスト的なコメディアンの平坦な学習曲線のために払われた代償は甚大だ。大した「民衆の僕」だ。

西側の援助は、キエフにとって絶対に不可欠だ。その大半が引き上げられてしまえば、ウクライナはロシアが出す条件で和平を結ぶか、あるいはさらに劣悪な敗北を被るしかない。実際、ウクライナ政府は崩壊したり反乱が起こったりする可能性がある。なぜなら、結局ウクライナは2014年の「ユーロ・マイダン革命(クーデター)でできた国なのだ。さらに、ウクライナ国家は官僚たちへの給与の支払いなどの基本的な能力を喪失するかもしれない。より野心的な実行計画の遂行など問題外だ。

このような背景から、将軍と政治家の間の緊張が高まっていることは驚くに値しない。誰かが反転攻勢の失敗と不必要な損失の責任を問われなければならない。キエフが信頼していた「友人」たちが、予想どおり、壮大な地政学のチェス盤の駒としてウクライナを利用したという事実、そして最後になったが重要なのは、2022年春に和平が手の届くところにあったにもかかわらず、和平が成立しなかったという事実だ。

戦争の全面回避の可能性を失ってしまったことは言うに及ばない。

ゼレンスキーは非難ゲームにおいて手を抜いていない。彼はザルジニー将軍に対し、あからさまに「前線での結果について彼が責任を負わなければならない」と述べた。自分は軍から「解決策」と「戦場での非常に具体的なこと」を期待しているのだから、と言うのだ。まるで戦争は兵士たちの「劣悪な従軍姿勢」が問題であるかのように。

しかし、ゼレンスキーのライバルや後継者候補たちは、同じように反撃することができる。ウクライナへの援助が西側で神聖視される時代が終われば、不可侵の戦争指導者であるゼレンスキーの国内での地位も終わる。元ボクシングチャンピオンで現在はキエフ市長のビタリ・クリチコは、(ゼレンスキーの)ノックアウトを感じており、同大統領の独裁主知主義と戦争における失敗の責任を公に非難した。彼はまた、戦闘が終わった後は、大統領を含めて誰もが自分たちの過ちについて説明しなければならないと強調した。特に戦争に負けた場合の展望は目が当てられない。ゼレンスキーの執政をチャーチルのそれと理不尽に比較する向きもあるが、チャーチルは戦争に勝利しても選挙では敗れた。明らかに、ウクライナの国内政治には血が流れており、そこをサメたちが回遊している。

一方、ザルジニーは、ロシアに対してではなく、自国の大統領に対しても攻勢に出ている。将軍は、8月にゼレンスキーが行なった軍事動員関係者の粛清には全く同意できいことを口にする勇気がなかった。今、ザルジニーは、これらの人々は自分の仕事を知っている「プロ」だったと言う。もちろん、彼らを解雇した大統領は自分の仕事を知らない、と言えるはずもないのだが!

この上司に対する粗野な口撃の裏で、ザルジニー司令官は深刻な問題に切り込んでいる。海外からの援助と同様、極度の緊張状態にあるウクライナのアキレス腱は動員なのだ。たとえば、国会議員であり、同国会の国家安全保障・防衛・情報委員会の委員でもある影響力のあるジャーナリスト、セルゲイ・ラフマニンが認めているように、動員はひどく落ち込んでいる。一方、軍はさらに45万人から50万人の新兵を求めている。

この新たな財政出動が行われるとして、そのための約120億ユーロに相当する資金をどのように捻出するのかは未知数だ。

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参考記事:「天秤は傾いた」: 2024年、ロシアとウクライナの紛争はどうなる?

ゼレンスキーは、女性を動員する法律には署名しないが、徴兵年齢の引き下げには前向きだと国民に再度伝えている。ウクライナで最も影響力のある週刊誌「ゼルカロ・ネデリ」が最も重要な問題と呼んでいる動員解除や休暇については、依然として答えが出されていない。

大砲の新たな餌の確保を難しくしているのは、ウクライナの徹底的に統制したメディアが何を隠そうとも、2つのことが明白になりつつあるからだ。1) 戦争は敗北しつつあり、2) これ以上多くの兵士や女性を犠牲にすることは、ウクライナの将来の利益につながらないため、無駄であるばかりか、むしろ反逆的になる、ことだ。

平和は、できれば1年以上前に締結されていればよかったのだ。

反対に、これはアメリカのネオコンとそのヨーロッパの追随者たちの戦略に奉仕する犠牲になっている。その上、その戦略は失敗しつつある。

キエフのエリートたちは、終盤戦に向けて自分たちの立場を固めている。

ロシアとの戦争ではない。戦闘が国民の悲痛な失望感で終われば、身内同士の内紛となるだろう。

彼らの絶えることのない非情な対立は今に始まったことではない。通常に戻っただけのことだ。しかし、独立したウクライナは今まで経験したことのないものに直面するだろう。 大規模な敗北の、文字どおりの嵐と、国を血だらけにした「同盟国」に見捨てられ、前例のない広範な不満が広がるのだ。

今回はユーロ・マイダン革命(クーデター)ぐらいでは済まないかもしれない。
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ウクライナに監禁され亡くなった、「虐待を受けていた」米国のジャーナリストとはどんな人物なのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Who was the ‘tortured’ US journalist who died in Ukrainian captivity?
ゼレンスキー大統領政権の批判者だったゴンザロ・リラ氏が、ハルキウ刑務所で数ヶ月を過ごしていた。
出典:RT  2023年12月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月18日


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 米国とチリの国籍を持つ、ジャーナリストであり映像制作者でもあるゴンザロ・リラ氏がウクライナ国内の刑務所で亡くなった。リラ氏の家族が1月12日にリラ氏の死亡を報告したが、後にこのことを米国務省が確認した。

 リラ氏は2023年5月以降、公判前拘束を受けていたが、その罪状はウクライナに対するロシアの軍事作戦を正当化した点だった。1月4日にリラ氏の姉(妹)が受け取った手書きのメモをニュースサイトのグレーゾーンが父親から提供を受けたのだが、そのメモによると、10月中旬から、リラ氏は肺炎と気胸による深刻な健康問題に苦しんでいたという。ウクライナの刑務所当局がそのことを知ったのは12月22日のことであり、同当局は今後リラ氏が手術を受けることになる、としていた。

 リラ氏の父であるゴンザロ・リラ・シニア氏は、自身の息子は「虐待を受けていた」が、キエフの米国大使館は、息子を助けるために、「何もしてくれなかった」と述べた。

ゴンザロ・リラ氏とはどんな人物だったのか?

 リラ氏は、ジャーナリストであり、ブログ主であり、作家であり、ハリウッドでの勤務体験もある映像制作者でもあった。何冊かの著書を英語とスペイン語で著しており、2002年にはスパイ・スリラーものである『アクロバット』という作品を残している。さらに55歳の彼はオンライン上では、「レッド・ピル・コーチ」として知られており、男性の閲覧者向けに生活形式についての助言をおこなっていた。

 報道によると、リラ氏がウクライナに移住したのは2010年のことであり、そこでウクライナの女性と結婚したという。ブログ主であるリラ氏はウクライナ東部、ロシアとの国境からそう遠くない位置にあるウクライナ第二の都市ハルキウに住んでいた。

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関連記事:US journalist missing after attempt to flee Ukraine

 ロシアとウクライナの長年にわたるもめ事が2022年の軍事紛争に発展したのち、リラ氏はソーシャル・メディア上で積極的にこの紛争について報じ始めた。リラ氏によると、リラ氏はウクライナとウクライナ国民を愛していており、起こっているすべてのことが悲劇であるが、この戦争を引き起こした責任はゼレンスキー政権とそれを支援する西側にある、と主張していた。ブログ主であるリラ氏は、ウクライナにはロシアに勝算はなく、敗北に終わると主張していた。

 さらにリラ氏が非難していたのは、西側の報道機関がウクライナを「民主主義国家である」と報じている点であり、ウクライナ政権内の大きな腐敗について声をあげ、ゼレンスキーに反対している人々の一覧表を公開した。これらの人々は、ウクライナ当局により、「消された」と主張していた。

三度逮捕されたリラ氏

 2022年4月にリラ氏が失踪したことは、世界的に大きく報道され、ソーシャル・メディア上には、リラ氏が、ウクライナ当局を批判していることを理由に、悪名高いネオナチ団「クラケン」により拉致され、殺された可能性がある、と主張する投稿も見られた。

 しかし数週間後、リラ氏はソーシャル・メディア上に再び現れ、自身がウクライナ保安庁(SBU)に拘留されていたと投稿した。リラ氏によると、自分はおとがめなしとされ、解放されたが、自分のアカウントへのアクセスが禁じられ、ハルキウから出ないよう命じられた、とのことだった。

 リラ氏は2023年5月に再度逮捕されたが、最終的には、保釈金を支払い、公判前拘留所から解放された。その件に関してリラ氏が主張していたのは、自身が拘留所において恐喝や肉体的な虐待を受けていたということだった。

 リラ氏は7月に再び逮捕されたが、ウクライナの警察によると、リラ氏がオートバイでハンガリーに出国しようと企てていたからだという。

リラ氏の逮捕に対する米国側の反応

 米国はリラ氏の件に関してはおおむね沈黙を保っており、リラ氏によれば、拘留されていた自分を気遣ってくれたのはチリからの派遣団だけで、米国大使館は電話を「三度かけてきたが、なんの『支援』もしてくれず、空約束だけしかしてくれなかった」という。さらにリラ氏によると、万が一自分がウクライナを出国できたとしても、ウクライナに連れ戻されて終わりだろう、というのもビクトリア・ヌーランド米国務次官が、「僕が梃子でも動かない人間であることを嫌っている、つまりそう聞かされているからね」とのことだった。

 8月に、リラ氏が逮捕されたことについて聞かれたマシュー・ミラー米国務省報道官は、この件について何ら具体的な回答をおこなうことを拒み、その理由を「個人的な問題であるから」だとしていた。

 「海外在留中のすべての米国民の安全保証は、私たちが何より大切にしていることです。個人情報の問題のため、具体的な事例について多くを語ることはできませんが、米国民の身の安全を守ることが、私たちの最優先事項であることは間違いありません」とミラー報道官は当時、報道関係者に語っていた。

リラ氏の父の言い分

 収監されたジャーナリストのゴンゾラ・リラ氏の父が米国政府とウクライナとの癒着に対して、正面から批判している。自身の息子が処刑されたことの背景には、自分の息子が、ゼレンスキーの「反対派」12名が「消された」ことを勇敢にも記事に取り上げた事実が起因していると、父リラ氏は主張している。

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関連記事:Father of American journalist jailed in Ukraine blames Biden

 「それと同じことが、私の息子の身にもおこってしまったのです。私の息子はバイデン政権とその操り人形であるゼレンスキーにより殺されてしまったのです」と父リラ氏は米国のジャーナリスト、タッカー・カールソンとの対談で述べた。

 米当局とブログ主であるリラ氏が受けた辛苦との間にある関連は、もっと深い可能性がある、というのも、息子がウクライナで2度目に逮捕されたのは、「息子がジョー・バイデンとカマラ・ハリスをこき下ろした」ほんの数日後だったからだ、と父リラ氏は主張している。

 「なぜもっと以前に息子は拘留されなかったのでしょうか? 前年に解放されたあとも、息子はあの戦争に反対する非難の声を挙げ続けていたというのに」と父リラ氏は付け加えた。

 この対談には、ほかでもないスペースX社とテスラ社のイーロン・マスク最高経営責任者が関心を示した。マスク氏は、ジョー・バイデン米大統領とウクライナ側の交渉相手であるウラジーミル・ゼレンスキー大統領に対して、リラ氏の現状に関して回答するよう求め、ウクライナで米国民が拘留されるということがなぜ起こりうるのか、米国は「1000億ドル以上の支援金」を、ロシアと交戦中であるウクライナ当局に支援しているのに、という疑問の声を挙げていた。「ゼレンスキーを非難していたという理由だけ」でこのジャーナリストが処刑されることになれば、これは「重大な問題」になる、とマスク氏は12月にも語っていた。

ウクライナ側の言い分

 ウクライナ側の主張は、ウクライナがリラ氏の行動を警戒対象にしたのは正当な行為であり、ウクライナ保安庁は、このジャーナリストが「ロシアによる軍事侵攻を正当化するような、さらにはウクライナ軍に関する「偽情報」についての記事を書き、拡散してきた」という罪状があることを繰り返し指摘してきた、というものだ。リラ氏に対する最初の公聴会は12月12日に予定されている。
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イスラエル軍、ハマス攻撃時 (10/7) に自国の民間人や兵士を殺害(イスラエル有力紙)

<記事原文 寺島先生推薦>
Israeli Army Ordered Mass Hannibal Directive on October 7
原題:10月7日、イスラエル軍は大規模なハンニバル指令を出していた。
筆者:ザ・クレイドル(The Cradle)
出典:Internationalist 360°  2024年1月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月17日


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訳註:「ハンニバル」は2001年の米国映画のタイトル。「人食」を表す「カニバル」を連想させることばであり、実際この映画の登場人物「ハンニバル」も人肉を食べる。ここでの「ハンニバル作戦」とは、「自分の味方をも犠牲にして厭わない作戦」の意味で使われている。


 イスラエルの有力紙の調査によれば、イスラエルは、ハマスのアル・アクサ・フラッド作戦の際、ガザに捕虜として連れ戻されるのを防ぐため、自国の民間人や兵士の多くを故意に殺害したという。

 イスラエルの有力紙、イェディオト・アハロノト紙の調査によると、イスラエル軍は10月7日のハマスの攻撃時に「ハンニバル指令」を実行し、ハマスが捕虜としてガザに連れ帰るのを防ぐために自国の民間人や兵士を殺害したという。

 同紙ヘブライ語版は1月11日付で、「調査で明らかになったことのひとつは、10月7日の真夜中に、IDF(イスラエル軍)は、『ハンニバル手順』を使用するよう、すべての戦闘部隊に命令していた。ただし、はっきりとことばでその指示は出していなかった」と報じた。

 その命令とは、「テロリスト・ハマスがガザに戻ろうとする試みはどんな犠牲を払っても、つまり、拉致被害者が敵方にいても」阻止することだった、と同紙は書いている。

 タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、ハンニバル手順(指令)は、「兵士が敵の手に落ちるのを防ぐために、兵士が潜在的に大量の武力を行使することを許可している。その兵士を捕虜にさせないためにはその命を危機に晒すこともあり得る」という流れになっていた。

 以前イスラエルのハアレツ紙がこの指令について調査したところ、「軍から見れば、死んだ兵士の方が、捕虜となった兵士が苦しむよりマシであり、その兵士の解放を得るために国家は何千人もの捕虜を解放せざるを得なくなってしまう」という結論に達した。

 10月7日の攻撃で、ハマスと他のパレスチナ人は、入植地(キブジムとも呼ばれる)や軍事基地から約240人のイスラエル軍兵士と民間人を捕虜としてガザに連れ戻すことに成功した。ハマス側は、イスラエルの刑務所に収容されている女性や子どもを含む数千人のパレスチナ人と彼らを交換することを望んでいた。

 ハマスはトヨタのピックアップトラックやオートバイ、入植地から盗んだ車を使って、捕虜をガザに連れ帰った。また、徒歩やトラクターに引かれた荷車で連行された者もいた。

 イェディオト・アハロノト紙によると、入植地とガザ地区の間の地域で、約1000人の「テロリストと潜入者」が殺害されたという。

 しかし同紙は、ハンニバル指令の発動によって何人の拉致被害者が殺されたかは、現時点では明らかではないと付け加えた:

 「攻撃の翌週、精鋭部隊の兵士たちは、入植地とガザ地区の間に残された約70台の車両を確認した。これらはガザに到着しなかった車両で、途中で戦闘ヘリや対戦車ミサイル、戦車に撃たれ、少なくとも車両に乗っていた全員が死亡した事例もあった。」

 ジャーナリストのダン・コーエン氏が報じたように、イスラエル軍は10月7日、エフラット・カッツさん(68歳)を、キブツ・ニール・オズからトラクターに引かれた荷車に乗せてガザに運ぶ途中で殺害した。彼女の娘ドロン・カッツ=アッシャーちゃんと2人の孫娘ラズちゃん(2歳)とアビブちゃん(4歳)もその荷車に乗っていた。

 ドロン・カッツ=アッシャー氏が後にイスラエルのチャンネル12に語ったところによると、イスラエル軍はトラクターに発砲し、母親のエフラットさんを殺害し、2人の娘を負傷させた、という。

 イスラエル軍が非公式にハンニバル指令を発令していたことが明らかになったことで、当初ハマスの捕虜となったと推定されながら、後にガザ国境フェンス付近で遺体が発見された多くのイスラエル民間人の死について疑問の声が上がっている。

 多くの場合、遺体はひどく焼かれたり、切り刻まれたりしており、歯の記録やDNAでしか身元を確認することができない。このことは、彼らが国境付近でハマスによって機関銃を使って処刑されたのではなく、イスラエル軍の戦車やヘリコプターの射撃などの重火器によって殺されたことを示唆している。

 たとえば、80歳のカルメラ・ダンさんと12歳の自閉症の孫娘ノヤさんは、10月7日の朝に失踪した。家族は二人ともハマスの捕虜になったのだと思っていた。しかし2週間後、イスラエル当局は「国境フェンス付近で遺体が発見された」と発表した、とフォーリン・ポリシー紙は報じている。

 10月19日、カルメラさんの姪はNBCニュースにこう語った。「イスラエル軍による遺体回収作戦が数日前におこなわれましたが、私たちが知っている限り3度のDNA鑑定がおこなわれたため、それが2人の遺体であることを確認するのに時間がかかったんだと思われます」と。

 イェディオト・アハロノト紙は、ハンニバル指令は10月7日の真夜中に非公式に出されたと報じているが、もっと前に出されていたことを示唆するものも多い。

 イスラエルのバラク・ヒラム准将はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、10月7日、キブツ・ベエリの民家で14人のイスラエル人捕虜がバリケードに閉じこめられていたにもかかわらず、ハマスの戦闘員を殺害するために戦車隊長に発砲命令を下したことを認めた。

 日没になり、ヒラム准将は戦車隊長に言った:「交渉は終わりだ。民間人を犠牲にしてでも侵入しろ」と。

 ハマスの戦闘員と、捕虜の1人を除き12歳の双子リエルさんとヤナイ・ヘッツローニさんを含む捕虜全員が殺された。彼らの遺体はひどく損傷し、焼かれていたため、身元を確認するのに数週間を要した。

 10月26日のチャンネル12とのインタビューで、ヒラム准将がベエリの家への発砲命令を公に認める前に、同准将は10月7日の自身の論理に言及した。それによると、同准将が懸念していたのは、「ソラナ(テルアビブにあるイスラエル軍司令部)に戻り、あらゆる種類の交渉をおこなおうとすれば、我々の手を縛る罠にはまり、必要なことができなくなるかもしれない」ということだったという。

 ベエリの別の事件では、マティ・ワイスさんとアミール・ワイスさんという老夫婦が、10月7日の朝、家に侵入したハマスの戦闘員によって殺害されたとされている。マティさんは息子のユヴァルさんに、戦闘員が家に入り、アミールさんが撃たれたとメッセージを送った。

 キブツの警備団の一員だったユヴァルさんは、両親の居場所を軍に提供し、ハマスの戦闘員が家の中にいると伝えた。

 老夫婦の死を説明するために、ハアレツ紙はこう書いている。「マティ・ワイスさんとアミール・ワイスさんはテロリストに襲われ、セーフルーム(安全のための隠れ部屋)の壁のひとつを爆破され、撃たれた」と。

 しかし、ハアレツ紙が公開したワイスさん宅の写真によると、家の壁に大きな穴があき、屋根に大きな損傷があったことから、戦車の砲弾かヘリコプターの攻撃による損壊であると思われる。

 ハンニバル指令が出ていたことは、10月7日、ハマスが364人のイスラエル人パーティー参加者を虐殺したとされるノヴァ音楽祭事件でも明らかになった。

 イスラエル軍の地上部隊は10月7日のハマスの攻撃に何時間も対応しなかったが、イスラエル警察南部方面総司令官アミール・コーエン空軍大将は午前6時42分、コードネーム 「フィリスティン・ホースマン(Philistine Horseman)」と呼ばれる命令を下し、国境警察部隊を各所に派遣してハマスの攻撃に立ち向かわせた。

 イスラエル政府関係者がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、これらの部隊には、ヘリコプターで派遣されたヤマムと呼ばれる対テロ先鋭部隊が含まれていたという。

 これらの部隊は、ハマスが人々を拘束しているときに、パーティーの参加者に発砲したようだ。

 ドイツのタブロイド紙『ビルト』は、この催しを生き延びたマヤ・Pさんの証言を報じた。ビルト紙は、「道路封鎖を仕掛けたテロリストたちは、警察官や兵士に変装してやってきた」と報じている。

 「人々は救出を願って彼らのもとに走ったんです、そしたら処刑されたんです」とマヤさんは泣きながら語った。

 もう一人の生存者、ユヴァル・タウピさんはCNNの取材に対し、こう語った。「警察の女性が、テロリストのほとんどは兵士や警官、警備員のような格好をしているから、誰のことも信じてはいけない、と言っていました」と。

 マヤさんもユヴァルさんも、イスラエル軍が自分たちに発砲したとは考えられなかったので、ハマスの戦闘員が兵士や警察に変装しているに違いないと思ったのだろう。

 イスラエル軍の攻撃ヘリコプターもノヴァの会場に配備され、パーティー参加者に発砲した。

 ハアレツ紙の報道によると、「警察の情報筋によると、この事件に関する調査の結果、ラマット・ダビデ基地から現場に到着したイスラエル軍の戦闘ヘリコプターがテロリストに向けて発砲したが、その場にいた数人の観衆にも命中したらしいことも判明した」とのことだ。

 BBCは、ヘリコプターの銃撃によるハンニバル指令の明白な事例を記録した。英国国営放送である同放送局は、ジャーナリストが確認した車載カメラの映像から以下のように報じた。「男たちの一団が現れた。武装しているのは1人だけで、彼らは略奪のためにそこにいるようだ......車の中に隠れていた男女2人が発見され、連行されていく」

 「連れ去られた女性は2分後、突然姿を現した。彼女は飛び跳ね、腕を振り上げた。きっと助けてもらえると思っていたに違いない。このとき、イスラエル国防軍は侵攻を撃退する努力を始めていた。しかしその数秒後、銃弾が彼女の周囲にばらまかれ、彼女は床にへたり込んだ。彼女が生き延びたかどうかは不明だ」と。

 以前当Cradleが報じたように、イスラエル空軍(予備役)のノフ・エレズ大佐は、10月7日のイスラエルの行動を、アパッチ・ヘリコプターと戦車の使用に対応した「大規模なハンニバル作戦」であると表現した。「私たちが見たのは、「大規模なハンニバル作戦」でした。塀にたくさんの穴が開き、何千人もの人々が人質と一緒に、あるいは人質なしで、さまざまな車に乗っていました」と同大佐はハアレツ紙に語った。
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ハーグでの裁判の報告は私に任せてくれ

<記事原文 寺島先生推薦>
Your man in the Hague.
筆者:クレイグ・マレー(Craig Murray)
出典:Internationalist360°  2024年1月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月17日


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 私は木曜日(1月11日)、国際司法裁判所(ICJ)でおこなわれたイスラエルのジェノサイドに対して南アフリカが起こした訴訟の審理に出席した。私は公聴席に座り、すべての審議を見ることができた。ただし私の報告には欠陥があった。それは、ペンや鉛筆の使用は許されていなかった(紙は許されていたが)からだ。私はICJの警備責任者に、なぜ公聴席でペンの使用が許されないのか、と尋ねた。その警備責任者は完全に真顔で、武器として使えるからだ、と言った。ボールペンがないという致命的な欠陥のせいで、この説明記事は私が思っていた以上に、詳細さよりも印象的な描写が多い内容になってしまった。

 私は1月10日(水)の早朝、インドネシアから飛行機でハーグに到着した。ハーグに至るまでは4機の飛行機を乗り継いだ。シンガポール行き、ミラノ行き、コペンハーゲン行き、最後がハーグのスキポール空港行きだった。1月10日(水)、私は友人の古いスキージャケット以外はビーチウェアしか持っていなかったので、ハーグにあるチャリティー・ショップで暖かい服を必死に探した。まず私はICJに電話し、1月11日(木)の朝の審議を傍聴する方法についての情報を入手した。

 若い女性が私に教えてくれたのは、壁の中にあるアーチ型の門の外で列に並ばなければならない、ということだった。さらに、法廷は午前6時に開場し、先着15名が入廷できる、とのことだった。私は、正確にはどこに並べればいいのかも聞いた。係の女性は、そこまでする必要があるかわからないが、木曜日(1月11日)の午前6時に到着すれば問題ないはずだ、と教えてくれた。

 私は徒歩5分ほどのところにあるホテルに泊まっていた。水曜日(1月11日)の夜10時、すでに気温が-4°Cまで下がっていたが、行列ができていないか確認しに行った。まだ誰も並んでいなかった。一度ホテルに戻ったが、その後も1時間おきに行列ができていないか確認しに行った。真夜中や午前1時には誰も並んでいなかったが、午前2時にはすでに8人が並んでいて、とても寒そうにしている3つの小さな集団できており、分かれて座っていた。みんなとても寒そうに見えたが、みんな親しみやすく、おしゃべりだった。

 門のすぐ横にいた最初の集団は、若いオランダ人女性3人組で、毛布を敷いて座り、ホットコーヒーの入った携帯用瓶とバクラヴァ(甘いお菓子)の箱があり、準備万端だった。2番目の集団は、国際法を専攻する3人の若い学生で、全員がアラブ人で、他の事件を傍聴したことがあり、ここでのコツを知っていた。3番目の集団は、オランダ人とアラブ人の2人の若い女性で、寒そうでつらそうな顔をしてベンチに座っていた。

 私たちはすぐに打ち解けて話し合うようになり、私たち全員が、容赦ない占領に反対するパレスチナ人の闘いへの支援に動機づけられてここに来たことがわかった。その後まもなく、もう一人のアラブ人紳士が到着したが、年配の権威ある人物だった。スコットランドのゴードンストウン寄宿舎学校で教育を受けていたそうだ。背の高いチュニジア人男性が電話をかけながら行ったり来たりしていた。彼はせわしない様子で、どちらかというと恥ずかしがり屋のようにみえた。

 入廷できる人数について、私たちはみな同じような情報を与えられていたが、15人、14人、13人と言われた人もいた。列に並んでいた人の数は数時間12人で止まっていた。そして午前4時30分ごろ、一台の車が飛び出してきて、現れたのは、「プログレッシブ・インターナショナル」のヴァルシャ・ガンディコタ・ネルトラだった。彼女はジェレミー・コービン(英国労働党首)とジャン・リュック・メランション(フランスの国会議員)のための場所取りとして来ていた。彼女の組織の他の構成員も少しずつ到着した。そして午前6時が近づくと、パレスチナの国旗を持ち、クーフィーヤを身に着けた人々が少しずつ押し寄せてきた。

 本当に大変な寒さだった。4時間後、足の指はひどい痛みから感覚がなくなり、指が反応しなくなってきた。よくあることだが、午前5時から寒さはますます厳しくなった。

 メランションとコービンは午前5時30分に到着し、列に並ぶと、メランションは相変わらず活発で、しっかりと目を覚ましていて、誰とでも会えたことに喜びを示し、耳を傾けてくれる人には誰にでも経済と社会組織について講義した。私の脳はすでに凍りついていたので、その輪に私は入れなかった。ジェレミーも同様に、いつものジェレミーで、列の中で誰の位置も奪いたくないと気遣っていた。

 そして、反対側で門を開ける準備が始まると、事態は不愉快な方向に進んだ。一晩中そこにいた私たちは、到着の順番を知っていたが、門にたどり着くために私たちを通り過ぎたり、周りを押しのけたりする遅れた人たちに圧倒され始めた。私は自己主張して、列を整えなければならなくなった。

 群衆の中の活動家たちはこれに異議を唱え、入国の基準は到着時間ではなく、パレスチナ人に場所を与えるべきだと提案した。一番最初から並んでいたオランダの女性2人組の1人は、この提案を受けいれ、自分の順番を諦めた。

 すべてが悲惨な状況になった。列の14番のすぐ後ろにいたスウェーデンのパレスチナ人女性は、入場できないという考えにひどく心を痛め、午前6時過ぎに到着したパレスチナ人紳士のカップルは、断固として列を押しのけ始めた。

 私は、少し反論の演説をし、私たちは皆、パレスチナ人を助けるためにここにいるのだと説明したが、誰もお互いの話を知らなかったし、誰かの出席がパレスチナの大義にとってどのような役に立つかという問題は、ひどく傷ついた人々の個人的な感情を満足させることと同じくらい重要だった。

 気難しいチュニジア人が順番を取っていたところには、元チュニジア大統領が変わって入ったのだが、この並んでいた男性は本当に気さくで気取らない人だったが、その場の雰囲気は状況をいい方向には向けなかった。結局、私たちは5人ずつの集団に分かれての入場が許され、手続きを済ませた。一番最初に到着したオランダ人女性の一人が、パレスチナ人に自分の居場所を譲った。私は9番の整理券を握りしめてホテルに戻り、そのまま熱いお風呂に入った。足の指や指が解凍されるときの痛みは本当に不快だった。

 その後、午前9時にすぐに戻ってきて、必要以上に煩わしい安全点検と財布やペンの持ち込みを確認する検査を飽きるほどされた。その後、私たちは公聴席に案内された。

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 平和の宮殿は、アンドリュー・カーネギーの手により建設された。この人物は、道徳的に非常に複雑な篤志家であり、凶悪で信じられないほどの成功を収めた資本家の独占者でもあった。鉄骨とコンクリート構造とは裏腹に、塔の上に塔がそびえ立つおとぎ話のような外観を持ち、内部はマジョリカタイルが貼られ、トイレは頑丈なアーミテージ・シャンクス社製のものが使われている。この建物はカーネギー財団によって現在も所有・管理されている。

 世界法廷として建てられた建物にしては、不思議なことに法廷があるようには見えない。大広間は、建物の片側の側翼を占める、何もない大広間にすぎない。比較的近代的で、質素で緩やかなカーブを描くひな壇がホールの長さを横切って挿入され、裁判官用の長いテーブルと17脚の椅子が置かれているが、この構造は一時的なもので、まるで撤去されて結婚式に使われるかのようだった。裁判の当事者は、ひな壇の下のホール本体に並べられた質素なスタッキング・チェア(積み重ねることができる椅子)に座っており、これまた裁判所というより結婚式のようだった。裁判官たちの頭上には、派手な色彩とかなり怪しげなステンドグラスの窓が広がっていた。

 私はこれまで、国際司法裁判所(ICJ)に対する信頼、その公平な判断の歴史、そして国連総会による選出制度について述べてきた。国際司法裁判所は、はるかに若い姉妹機関である国際刑事裁判所(ICC)の評判によって、むしろ不当に汚されている。ICCは西側の道具と揶揄されるのは当然だが、ICJはそうではない。パレスチナだけを見ても、ヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの「壁」は違法であり、イスラエルには占領地における自衛権はないとの判決を下している。また、「英国はインド洋チャゴス諸島を非植民地化しなければならない」という判決を下したが、この問題は常々私の心の片隅にあったものだ。

 ジェノサイドに反対する私たちが、希望を持ってハーグまで足を運んだのには、十分すぎる理由があった。

 通常の15人の裁判官に加えて、紛争当事者である南アフリカとイスラエルはそれぞれ、追加の裁判官を指名する権利を行使した。裁判官の入廷後、この2人の裁判官が公平を宣誓して審理が始まった。この行為が、この裁判でイスラエルがついた最初の嘘だったと言っていいだろう。

 アハロン・バラクが国際司法裁判所のイスラエル人裁判官に指名されたのは、異例のことだ。というのもこの人物は、イスラエル最高裁判所長官として、イスラエルが設置した壁の違法性に関するICJ判決の履行を拒否し、「ICJよりも自分のほうが問題の事実をよく知っている」と述べた人物だからだ。

 バラクには、イスラエル国防軍によるパレスチナ人に対するあらゆる形態の弾圧を「国家安全保障」のために合法として受け入れてきた極めて長い経歴があり、イスラエルが長年おこなってきたパレスチナ人家屋の破壊を集団的懲罰にあたる、とした判決を繰り返し拒否してきたことが特筆される。このような立ち位置は、現在のガザの民間基盤施設の破壊に対する立ち位置と直接に繋がるものだ。

 バラクはイスラエルでは、司法と行政の間の憲法闘争において「リベラル」と見なされている。しかし、それはネタニヤフの腐敗が問題にしない能力に関することであり、パレスチナ人の権利について、「リベラル」な立場であるわけではない。明らかに意見が対立しているバラクをICJに任命することで、ネタニヤフは典型的な狡猾さを示した。もしバラクがイスラエルに不利な裁定を下せば、ネタニヤフは国内の敵対者バラクは国家安全保障に対する裏切り者だと主張することができる。もしバラクがイスラエルに有利な裁定を下したとしても、ネタニヤフはイスラエルのリベラル派がガザ破壊を支持していると主張することができる。

 私の願いは、後者の主張をするバラクの姿を見ることだ。

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 私は公聴席に座り、そこから17人の裁判官の姿を長時間見守っていた。どの裁判官が予期せぬ方向に立場を表明するかはこれまで縷々(るる)書かれてきた。それぞれの裁判官は出身国の政府に振り回されるだろうと考えるのは、安易な仮定に過ぎる。実際どう判断するかは、裁判官によって違う。

 ICJのジョーン・ドナヒュー法廷長は、米国務省のクリントンの息がかかった人物であり、人生で一度も独自の考えを形成したことがないが、その彼女が今さら自身の考えを表明し始めたら、私は驚くに違いない。私はホールの壮大な深い浮き彫りのパネル張りの木製の天井の穴からうそっぱちが見えてくるのでは、と半分期待するところがあった。しかし、他の点に関しては皆目見当がつかなかった。

 ドイツほど猛烈に国家の指導者層が反パレスチナを掲げている国はない。かつての先人がおかした罪の意識を引き継ぎ、ジェノサイド全般に対して反対の意思を表明するのではなく、今回のジェノサイドを反撃であると捉えて推進する方向に向かおうと決めたようだ。それに加えて、ICJのドイツ人裁判官であるノルテは、リベラルであるという評判があるわけではない。しかし、ミュンヘン在住の友人によると、ノルテは武力紛争法に特別な関心を持っており、物事を深く考えることにこだわっているという。友人らの見解によると、ノルテの職業上の自尊心や熟考する性格が鍵となり、イスラエル国防軍がガザの民間人に対してあからさまにおこなったことに関するノルテの答えは、たった一つの方向を指し示すことになる、とのことだ。

 一方、ICJにはウガンダの裁判官がいるので、この裁判官は南アフリカに同調すると思われるかもしれない。しかし、ウガンダは、私に言わせればよく理解できない理由で、米国やイスラエル側に立ち、パレスチナの国際刑事裁判所への加盟を認めないようだ。そしてその理由として、パレスチナは実在する国家ではないという点を挙げている。同様に、BRICSの主要加盟国であるインドが、同じ加盟国である南アフリカを支援することを期待する人もいるかもしれない。しかし、インド政府は、醜悪なイスラム嫌悪に陥りがちなヒンドゥー民族主義政府だ。私はインドのバンダリ裁判官がインド国内の異なる共同体の間の問題に関して取り組んだかの記録を調べたが、その証拠は見つからなかった。

 しかし、現在、世界法廷で争われているこの事件において、国連総会は自分で自分の首を絞めたのではないか、と思われる。というのも、国連総会は、ある英国人判事をインド人判事と交代させたからだ。現在世界において、発展途上諸国が勝ち組になりつつある状況にあるから、そうしたのであろう。私が言いたいのは、これらの問題は非常に複雑であり、私の親愛なる同業者たちからのものを含め、私が見てきた分析の多くも内容がてんでんばらばらであるということだ。

 この大法廷が法廷としてふさわしくない様相であるだけでなく、世界法廷にしては公聴席の数はごくわずかだ。公聴席は廊下の片側を走っていて、バルコニーの端から落ちたら死んでしまうほどの高さにあり、奥行きはわずか2席分しかない。さらに、劇場風の座席は100年前につくられたもので、いまにも壊れそうな代物だ。座るところは地面から20センチしか離れておらず、席が傾いているので、太ももから地面までは10センチしかない。椅子全体が前方に突き出されているので、体が端から出てしまう。カーネギー財団は、座席を固定するのではなく、バルコニーの手すりの上の壁から壁にくくりつけた強力なケーブルで固定するほうを選び、このケーブルが事実上第2の手すりとして機能し、さらに15センチ分保護してくれている。

 公聴席の3分の1は、視聴覚投影器具とウェブ上での放送設備を置くために利用されており、公聴席の空席はわずか24席だった。列に並んだのは私たち14人で、残りはヒューマン・ライツ・ウォッチや世界保健機関(WHO)などの主要なNGOや国連機関の代表だった。これらの人々はペンの使用を許されていたが、それは彼らが誰も殺さないほど立派であると判断されていたからだった。私は、彼らの手伝いをするという純粋な理由を使えばそのうちの一人からペンを借りることができたかもしれない。いや、それはできなかったかな?というのも、昨今、何がテロリズムと見なされるかを見極めることは非常に難しいからだ。

 南アフリカ側の発言は、大使と法務大臣のロナルド・ラモラ氏の声明で幕を開けたが、それは華々しいものだった。私は、南アフリカがまずは弱腰の体(てい)で、10月7日の攻撃の件でハマスを非難し、イスラエルへの同情を表明すると思っていたが、そうではなかった。最初の30秒で、南アフリカはイスラエルに対して「ナクバ」という言葉と「アパルトヘイト国家」という言葉の両方を投げつけた。これには、椅子から崩れ落ちないよう座席にしがみついていなければならいくらいの衝撃を受けた。この先すごいことが展開されそうな波乱の幕開けだった。

 ラモラ法務大臣は、今回の件について、非常に記憶に残るようなことばを発することで、話を始めた。それは、パレスチナ人は「75年間のアパルトヘイト、56年間の占領、13年間の封鎖」に苦しんできた、ということばだった。よくぞ言った。弁護団に話を譲る前から、南アフリカ国家の「代理人たち」は、裁判所の法令に照らして、議論を組み立てていた。具体的には、「この不正、そして歴史そのものは、10月7日に始まったのではない」という指摘だ。

 同法務大臣の発言の2つ目の重要な点として挙げられることは、南アフリカが強調したのは、「暫定措置」の要請が認められるためには、現段階でイスラエルがジェノサイドを犯していることを証明する必要はない、とした点だ。そうではなく、イスラエルによる行為が、一見してジェノサイド条約の条項に抵触する、ジェノサイドとして成立する可能性があることを示すだけでよい、と指摘した点だ。

 その後、弁護団はアディラ・ハシム博士を招聘した。彼女は、イスラエルはジェノサイド条約第2条a)、b)、c)およびd)に違反していると述べた。

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a) パレスチナ人殺害について、彼女は飾り立てることなく単純な事実を概説した。2万3200人のパレスチナ人が殺害され、その70%が女性と子どもたちだった。7千人以上が行方不明となり、瓦礫の下敷きになったと推定されている。イスラエルは200回以上、パレスチナ人が避難を命じられたガザ南部の住宅地に2000ポンド爆弾を投下した。

 6万人が重傷を負った。35万5000戸の家屋が損壊または破壊された。確認されたことは、大量虐殺の意図を示す実質的な行為がおこなわれたという事実だ。

ハシム博士は冷静で、ことばや発言内容を慎重に選んでいた。しかし、残虐行為、特に子どもに対する残虐行為を詳細に述べるとき、彼女の声は感情で少し震えることがあった。裁判官らは概して(もっと多くのことが続くのではと)落ち着かない様子で、顔を上げて彼女の話に細心の注意を払っていた。

 続いてテンベカ・ングカイトビ弁護士 (今日の法廷には南アフリカ側の弁護士のみ登壇)は、大量虐殺の意図の問題を取り上げた。彼の担当した箇所は一番簡単だった。というのも、彼は数多くの事例を挙げることができたからだ。例えば、イスラエルの大臣や高官らがパレスチナの人々を「動物」呼ばわりしたことや、パレスチナの人々の殺戮とガザの完全な破壊を呼びかけたこと、無辜のパレスチナ市民はいないと強調したことなどだ。

 ングカイトビ弁護士が特に首尾良く主張できたのは、こうしたジェノサイドの考えが政府高官から現場の兵士らに効果的に伝わっていたことを強調した点だ。具体的には、現場の兵士たちが、残虐行為を犯しながらそれを正当化する自分たちの姿を撮影する際に、政府高官らが使っていたのと同じことばやジェノサイド的な考えを表明していた点を指摘したのだ。さらに同弁護士が強調したのは、イスラエル政府が、ジェノサイドの扇動を防止し、それに対して行動する義務を公民両面において無視してきた点だ。

 彼が特に焦点を当てたのは、ネタニヤフがアマレク(かつてユダヤ人に征服された古代パレスチナ人のこと)人の歴史を持ちだすことで、イスラエル兵士らの意見と行動に明白な影響を与えた事実であった。イスラエルの閣僚たちは自分たちが発した言葉に大量虐殺の意図があることを今では否定できなくなっている、と彼は言った。つまり、「本気でなかったのであれば、口に出すべきではなかった」との主張だ。

 尊敬すべき著名なジョン・デュガード教授は、鮮やかな緋色のガウンを着た印象的な人物で、裁判所の管轄権と南アフリカの地位の問題を取り上げた。デュガード教授は、ジェノサイド条約に基づくすべての締約国がジェノサイドを防止するために行動する義務と、裁判所の判断を指摘した。

 デュガード教授は、ジェノサイド条約第8条を引用し、ボスニア対セルビアの裁判所の判決の第431段落全文を読み上げた。

ジェノサイドを防止する義務は、ジェノサイドの実行が開始されたときにのみ発生するのではない。そのように考えることは不条理である。というのも、防止義務の要点は、行為の発生を防止するか、防止しようとすることであるからだ。実際、国家の予防義務とそれに対応する行動義務は、ジェノサイドがおこなわれるという重大な危険の存在を国家が知った瞬間、または通常知るべきであった瞬間に生じる。その瞬間から、国家は、ジェノサイドを準備したと疑われる者、または特定の意図(dolus specialis)を抱いていると合理的に疑われる者に対して抑止効果を有する可能性のある手段を利用できる場合には、状況が許す限り、これらの手段を使用する義務を負う。


 正直な感想を言わせてもらえば、今日の裁判にはとても満足している。デュガード教授の主張は微動だにしていなかったのだ。私はジェノサイド条約が発動されるべき理由を説明した12月7日の記事で同じ文章を引用した。

 裁判官らはデュガード教授による指摘を特に好意的に受け取ったようで、熱心に書類に目を通し、下線を引いていた。何千人もの死んだ子どもたちの件を扱うことは裁判官らにとって少し難しいことだったが、公正な管轄権が与えられた裁判官なら、本領を発揮できることが示された。

 次のマックス・デュ・プレシス教授は、特に率直な物腰と平易な語り口で、裁判に新たな活力をもたらした。彼は、パレスチナ人が裁判所に求めているのは、最も基本的な権利、つまり存在する権利である、と述べた。

(以下は同教授の主張)

 パレスチナ人は50年にわたる抑圧に苦しんでおり、イスラエルは何十年もの間、ICJの判決と安保理決議の両方を無視して、自分たちは法の及ばない存在だと考えてきた。その文脈が重要だ。一人一人のパレスチナ人は、ジェノサイド条約上、集団の構成員として保護され存在する権利を有する。

 南アフリカによる訴訟は、国際法の尊重に基づいており、法律と事実に基づいている。南アフリカは、何千枚もの残虐行為の動画や写真を法廷に見せないという決定を下した。それは、南アフリカによる訴訟は法律と事実に基づくものであり、衝撃や感情を引き起こすことで、法廷を劇場に変える必要はないからだ。
(同教授の主張はここまで)

 この指摘は、デュ・プレシス教授による賢明な一撃だった。公聴会は当初、両陣営それぞれ2時間の予定だった。南アフリカは、イスラエルが10月7日の1時間に及ぶ残虐行為の動画を見せることに固執したため、3時間に増やされたと、かなり後から聞かされていた。しかし、実際には、裁判所がこのような指針を出した背景には、この種の映像資料が使用されることは「まばら」でないといけないという長年の考えがある。2万3千人が死んだとしても、遺体を見せることで説得力が増すことにはならないし、10月7日の死者1000人についても同じことが言える。

 デュ・プレシス教授は、パレスチナ人の生命を支える生活基盤組織の破壊、住民の85%を、まだ爆撃が続いている狭い地域に強制移動させたこと、これらはすべて大量虐殺の意図の明白な例であると結論付けた。

 しかし、間違いなく午前中の最高潮は、アイルランドのブリンヌ・ニー・グラライ勅選弁護士による驚くべき提言だった。彼女の仕事は、裁判所が「暫定措置」を命じなければ、取り返しのつかない損害が発生することを証明することだった。

 作家が敗北を認めなければならない時がある。あの法廷で彼女が与えた印象を、私は十分にあなたに伝えることができない。仕事仲間の他の発言者らと同様に、彼女は残虐行為をあからさまに示すことを避け、単純な事実を平易に、しかし優雅に提示した。彼女は、南アフリカの代表団全員が用いた策略、つまり、自分自身は感情的な言葉を使わず、国連高官の深い感情的な言葉を長々と引用するという策略を採用した。彼女は一日の死者数の概要を死因別に紹介したが、それは衝撃的な内容だった。

 彼女の言うことに耳を傾けることを強くお勧めする。「毎日10人以上のパレスチナ人が、1本以上の手足を切断されるだろう、しかもその多くは麻酔もなしで...」



 裁判所の様子についてもっと書いておく必要がある。南アフリカ代表団は法廷の右側にいる弁護士の隣に座り、イスラエル代表団は左側にそれぞれ約40人ずつ座った。南アフリカの人々は、南アフリカ国旗のスカーフとケフィーヤを肩に掛け、色鮮やかだった。南アフリカ人とパレスチナ人が混ざり合うなか、パレスチナ自治政府のアマール・ヒジャーズ外務副大臣が目立っていたので、私は嬉しい気持ちになった。

 南アフリカの代表団は、活気に溢れ、お互いに支え合っている様子がうかがえ、包み込むような身振りやかなり生き生きとした様子が見えた。いっぽうイスラエルの代表団の様子は、正反対だった。厳格で尊大に見えた。あたかも代表団全員が何らかの作業に取り掛かるよう指示されており、どのような審議がおこなわれているかにも気を払っていないかのようだった。総じて若く、自信過剰な人々だと表現するのが妥当だと思う。ブリンヌ勅選弁護士が話しているとき、彼らは特に、自分たちが聞いていないことを必死に皆に知らせようとしているように見えた。

 その身体言語を見ればイスラエルが被告であると思う人間はだれもいないだろう。実際、法廷で態度が特に怪しく、有罪であるように見えたのは裁判官らだけだった。裁判官らは本当にそこにいたくないように見えた。ひどく居心地が悪そうで、そわそわしたり、書類をいじったりすることが多かったようで、話している弁護士らを直視することはめったになかった。

 本当に法廷にいたくないのは裁判官であり、実際裁きを受けているのは裁判官であり、法廷自体なのだと私には思えた。ジェノサイドの事実は議論の余地がなく、明白に述べられていた。しかし、裁判官の何人かは、米国とイスラエルを喜ばせ、現在のシオニストの言説に逆らわない方法を見つけようと必死になっている。それがエリートの座に、快適に身を置くために必要なことなのだ。

 裁判官らにとって、個人的な慰め、NATOの働きかけ、この先に楽にカネがもらえる仕事につけるかのどれがもっと重要なのだろうか? 裁判官らは、これらの事柄のために、国際法の真の概念を捨て去る覚悟があるのだろうか?

 それが法廷での本当の問題なのだ。国際司法裁判所が審議されている、ということなのだ。

 ブリンヌ勅選弁護士が話しているとき、裁判長は突然、ブリンヌ勅選弁護士の驚くほど赤いiPadに強い関心を示した。本当に明るいマニキュアのような色だった。そんな場面が、今日の審議中に何度かあった。私にはこれらのiPadの外観を、話し合われていることと結びつけることは決してできなかった。そのiPadを使って、事例や文書が引用され、調べられたわけではなかったからだ。

 南アフリカの弁護団の最後の演説者はヴォーン・ロウで、彼はイスラエルの弁護に対抗するという微妙な任務を負っていた。この任務はやりにくいものだった。というのも、イスラエル側の議論を聞く前に反論しなければならないからだ。私にとっては、この発言は、午前中の審議の中での最高力作だった。それくらい、ヴォーン・ロウの陳述は傑出していた。

 彼はまず、南アフリカには訴訟を起こす立場があると主張し、ジェノサイド条約の下でジェノサイドを防止するために行動する国家の義務に関するデュガード教授の指摘を繰り返した。彼は、ジェノサイドが起こったかどうかをめぐって、条約の条項に論争があると述べた。さらに、南アフリカは、イスラエル政府に送った一連の外交口上文書上でこの論争を展開したが、イスラエル側から満足のいく返答はなかった、とした。

 ロウは、一連の個別の事件が戦争犯罪として国際刑事裁判所によって捜査されていることは認められているが、他の犯罪が存在するにしても、それらがより広範なジェノサイドの一部である可能性を排除するものではないと述べた。というのも、ジェノサイドは、その性質上、ジェノサイドを助長するためにおこなわれた他の戦争犯罪に付随する傾向がある犯罪だからだ。

 最後にロウは、ジェノサイドは決して正当化されるべきではないと述べた。それは絶対的であり、それ自体が犯罪である、と。ハマスがイスラエルやイスラエル市民に対して犯した残虐行為がどれほど恐ろしいものであったとしても、大量虐殺的な対応は適切ではなく、決してあり得ない。

 ヴォーン・ロウは、南アフリカがハマスに対してではなく、イスラエルに対して行動を求めたのは、ハマスが国家ではなく、したがって裁判所の管轄権に服さないからだと述べた。しかし、法廷がハマスに対して行動できないからといって、現在の差し迫った大量虐殺の危険を防ぐために、ハマスがイスラエルに対して行動することを妨げるものであってはならない、とも述べた。また、裁判所は、イスラエルの自発的な自制の申し出に左右されてはならない、とも述べた。さらに、イスラエルが「ガザを粉々に粉砕」した行為について、いかなる悪事も認めなかった事実からわかることは、イスラエル側は自国は何も悪いことをしていないと考えているため、その行動を調整しようとする保証が全く持てないということだ、とも述べた。

 今日の審議は、南アフリカ大使が、南アフリカが裁判所に課すことを望んでいる暫定措置を繰り返し主張した後、終了した。その主張は以下のとおり。

(1) イスラエル国家は、ガザ地区内およびガザ地区に対する軍事作戦を直ちに停止する。

(2) イスラエル国家は、イスラエル国家によって指示され、支援され、または影響を受ける可能性のある軍隊または非正規武装部隊、ならびにその支配、指示、または影響下にある可能性のある組織および個人が、上記(1)で言及された軍事作戦を促進するためにいかなる措置も講じないことを確保するものとする。

(3) 南アフリカ共和国及びイスラエル国は、それぞれ、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約に基づく義務に従い、パレスチナ人民との関係において、ジェノサイドを防止するために、その権限の範囲内であらゆる合理的な措置をとる。

(4) イスラエル国は、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約に基づく義務に従い、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約によって保護される集団としてのパレスチナ人民との関係において、条約第2条の範囲内におけるあらゆる行為を行わない。特に、(a) 当該集団の人々を殺害すること。

(b) 当該集団の人々に深刻な身体的または精神的危害を加えること。

(c) 当該集団に対して、全体的または部分的に、物理的破壊をもたらすように計算された生活条件を当該集団に故意に与えること。

(d) 当該集団内での出生を防止することを目的とした措置を課すこと。

(5) イスラエル国家は、上記(4)(c)の規定に従い、パレスチナ人に関して、以下のことを阻止するための関連命令、制限および/または禁止の撤回を含め、その権限の範囲内ですべての措置をとるものとする。

(a) 家からの放逐や強制移動
(b) (i) 適当な食糧及び水の入手経路の剥奪

(ii) 十分な燃料、住居、衣服、衛生及び衛生の入手経路を含む人道援助の入手経路

(iii) 医療物資及び援助

(c) ガザにおけるパレスチナ人の生活の破壊。

(6) イスラエル国家は、パレスチナ人との関係において、イスラエル国軍、ならびにイスラエル国家によって指示され、支援され、その他の影響を受ける可能性のある非正規武装部隊または個人、ならびにその支配、指示または影響下にある可能性のある組織および個人が、上記(4)および(5)に述べられているいかなる行為も行わないことを確保する。または、ジェノサイドを犯すための直接的かつ公的な扇動、ジェノサイドを犯すための陰謀、ジェノサイドを行おうとする試み、またはジェノサイドへの共謀に関与し、それらに関与する限りにおいて、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約の第1条、第2条、第3条および第4条に従って処罰に向けた措置がとられること。

(7) イスラエル国家は、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約第2条の範囲内における行為の申し立てに関する破壊を防止し、かつ、証拠の保存を確保するための効果的な措置をとる。そのために、イスラエル国家は、事実調査団、国際的委任状、その他の機関によるガザへの立ち入りを拒否し、その他の方法で制限し、当該証拠の保存と保持の確保を支援する行動をとってはならない。

(8) イスラエル国は、この命令の日から1週間以内に、またその後、裁判所が本件に関する最終決定を下すまで、裁判所が命じる一定の間隔で、この命令を実施するためにとられたすべての措置に関する報告書を裁判所に提出する。

(9) イスラエル国は、いかなる行動も慎み、裁判所における紛争を悪化させ、若しくは拡大し、又は紛争の解決をより困難にするような行動をとらないことを確保する。

 今日の審議は、この議論で締めくくられた。今後、この議論に対してイスラエル側が応じることになる。
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南アフリカ共和国、イスラエルのガザ殲滅作戦を提訴。背筋も凍る詳細を明らかに。

<記事原文 寺島先生推薦>
South Africa Presents a Devastating Case Against Israel Exposing Genocidal Acts in Horrifying Detail
筆者:ロバート・ハーブスト(Robert Herbst)
出典:Internationalist 360°  2024年1月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月16日


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2023年12月29日、ガザ市シュジャイヤ地区の破壊を見下ろすガザ郊外に駐留するイスラエル兵。(写真:© Atef Safadi/EFE via ZUMA Press APAimages)


南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提出した、ガザでの大量虐殺を行なったイスラエルに対する訴訟手続きの開始を求める84ページに及ぶ申請書は、イスラエルの大量虐殺行為と声明を恐ろしいほど詳細に記した、衝撃的な文書である。

12月28日(木)、南アフリカは国際司法裁判所(ICJ)に対し、ガザでの大量虐殺を行なったイスラエルに対する法的手続きを開始し、「保全措置」、すなわちイスラエル政府と軍に対し、裁判所による完全な審理が行われるまでの間、ガザでの大量虐殺行為を停止するよう求める予備的命令を求める手続きを開始する申請書を提出した。


<上のX(旧チャット)に掲示されたICJへの提訴文の翻訳>

南アフリカ共和国は、イスラエル国への訴訟手続きを開始、ICJが保全措置を講じるよう要請

2023年12月29日、オランダ・ハーグ。南アフリカは、本日ガザ地区のパレスチナ人に関するジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約(「ジェノサイド条約」)に基づくイスラエルの義務違反の疑いについて、国際連合の主要司法機関である国際司法裁判所(ICJ)に対し、イスラエルに対する訴訟申請をした。

申請書によれば、「イスラエルによる作為と不作為は、必要な具体的意図をもって行われたものであり、虐殺的な性格を有している。ガザのパレスチナ人を、より広範なパレスチナの国家的、人種的、民族的集団の一部として破滅させるため」であり、「イスラエルが、その国家機関、国家代理人、およびその指示に基づいて、あるいはその指示、支配、影響下で行動するその他の人物や団体を通じて、ガザのパレスチナ人に関連して行なった行為は、ジェノサイド条約に基づく義務に違反している」との内容だ。

申請書にはさらに、「イスラエルは、特に2023年10月7日以降、大量虐殺を防止することができず、大量虐殺への直接的かつ公的な扇動を訴追することができなかった」とし、「イスラエルは、ガザのパレスチナ人に対する大量虐殺行為に関与し、現在も関与しており、さらに関与する危険性がある」と書かれている。

南アフリカは、南アフリカとイスラエルの両国が締結している国際司法裁判所規程第36条第1項およびジェノサイド条約の第9条に基づいて裁判所の管轄権設置を求めている。
<以上でICJへの提訴文の翻訳終了>

南アフリカ共和国の申請書は84ページに及び、イスラエル国家、大量虐殺行為を行い、その意図を公然と語っているユダヤ人の政治的・軍事的指導者や職員、彼らを頑強に支持しているイスラエル、アメリカ、ヨーロッパの人々、そしてイスラエルがその名の下に行動していると称するユダヤの人々にとって、衝撃的な内容となっている。

申請書は、ガザ戦争に関する外交や主要メディアの議論にしばしば欠落している背景を指摘した上で、これらの大量虐殺行為と発言を背筋も凍るほど詳細に記述している。イスラエルの大量虐殺行為について、南アフリカは次のように述べている:

(今回のイスラエルの大量虐殺行為は)イスラエル政府と軍がこれまでガザで行なった制裁または他の国際法違反とは区別される。南アフリカは次のような事例は司法裁判所の対象となると主張する。つまり民間人や民間施設、宗教、教育、芸術、科学、歴史的な建造物、病院、負傷者の収容場所などに意図的に攻撃を加えること、拷問、戦争手段としての市民の飢餓、および他の戦争犯罪や人道に対する犯罪などだ。これらの事例は、「イスラエルの75年にわたるアパルトヘイト政策、56年にわたるパレスチナ領土の侵略的占拠、および16年にわたるガザ封鎖の広範な文脈の中で」起こったことだ。


実際、この申請書の最も重要な部分のひとつは、イスラエルが10月7日以前にガザの人々に振るった陰惨な仕打ちを丹念に記録している点だ。厳しい封鎖を行い、事実上ガザを外界から遮断し、農業に利用できる面積を縮小し、オスロ合意で定められた20マイル圏内での漁業能力を著しく低下させた、 また、2006年の「離脱」とハマスの選挙勝利後、一人当たりのカロリーによる食料輸入を人道的上最低限の水準にまで厳しく制限し、電力を制限し、飲料水の唯一の自然水源である沿岸帯水層を汚染し、日常生活と経済を滅茶滅茶にし、その結果、失業率は45%、貧困率は60%となり、国民の80%が何らかの国際援助に依存している。そして10月7日以前の3年間で、イスラエルは約1,700人の子どもを含む約7,500人のガザの人々を殺戮した。封鎖に反対する分離フェンスでの毎週の平和的抗議行動を18ヶ月にわたって続けた結果、イスラエル軍の狙撃兵は数百人を殺害し、約9,000人の子どもを含む36,000人以上を負傷させた。約5,000人の非武装の人々が下肢を撃たれたが、その多くは数百メートル離れた場所に立っていたのだ。

それだけでもその悪辣さは十分と言えるだろう。しかし、この申請書が示すように、イスラエルはジェノサイドの防止と処罰に関する1948年条約に基づくジェノサイドの定義に明らかにあてはまるまったく新しいレベルの犯罪行為に及んでいる: つまり「パレスチナの国家的、人種的、民族的集団の実質的破滅を意図した行為」に及んでいるのだ。

ガザの230万人は、占領下にある550万人の実質的な集団を形成していることは明らかだ。申請書は条約に違反したこれらのジェノサイド行為を詳細に記述している:ガザの人々を大量に殺害し、彼らに重大な身体的および精神的な苦痛を与え、彼らの物理的な破滅をもたらす生活条件を押しつけている。

申請書の説明はこうだ:

「イスラエルは、現在までに21,110人以上のパレスチナ人を殺害した。その中には、7,729人以上の子供が含まれており、780人以上が行方不明で、がれきの下で死亡したと推定されている。また、55,243人以上のパレスチナ人が重傷を負った。イスラエルは、ガザの広範な地域、全ての地区を壊滅させ、35万5,000軒以上のパレスチナ人の家屋(ガザの住宅の60%以上)を損壊または破壊した。また、広範な農地、パン屋、学校、大学、事務所、礼拝所、墓地、文化・考古遺跡、市庁舎や裁判所、水道・衛生施設、電力網などの重要なインフラを破壊し、パレスチナの医療および保健システムに対しても執拗な攻撃を続けている。イスラエルは、ガザをがれきに変え、そこに住む人々を殺害し、傷つけ、破滅させ、集団として存立できないような生活環境を創り出している」。


イスラエルは、南アフリカ提訴の*本案と予備的救済の要求にどのように対応するかを決定しなければならない。イスラエルは、国連の加盟国であり、ジェノサイド条約の締約国として、これに応じる義務があるのだ。敗訴した場合、イスラエルは単なる助言的意見ではなくひとつの判断に直面する。それゆえ、この十分に考えられた、十分な事実に基づいたジェノサイド告発は、ユダヤ国家イスラエルを、ホロコーストからまだ100年も経っていないのに法的、倫理的にのっぴきならない事態に追い込むことになる。
*本案(the merits)・・・民事訴訟上、訴えの本旨である請求。また、その手続きの主目的または中心をなす事項。 : デジタル大辞泉 (小学館)

イスラエルはすでに、自国を提訴した南アフリカを非難する最初の声明を発表し、ICJに対して「南アフリカの根拠のない主張をきっぱり斥けること」を求めている。 イスラエル外務省の声明は、テロ組織に協力する国による*「血の中傷」と呼び、イスラエル軍はハマスに対してのみ軍事的努力を傾けていると主張した。
*「血の中傷」・・・ユダヤ人がキリスト教徒の子どもの血を儀式のために使用したという言いがかり(英辞郎)


ジェノサイドの意図

南アフリカの申請書を読めば、イスラエルの主張を信じる者は誰一人いないだろう。なぜなら、イスラエル高官たちの発言を聞けば、ジェノサイドの意図が明確に示されており、イスラエルがガザのパレスチナ人全体に対して故意に戦争を繰り広げていることははっきりしているからだ。胸糞が悪くなるような発言の一部を紹介する。 ネタニヤフ首相:イスラエル人によるアマレク人の全滅という聖書の物語を引用。その該当箇所:「誰も助けるな、男も女も、乳飲み子も、牛も羊も、ラクダもロバも、皆殺しにせよ」。

ヘルツォグ大統領:

 「そこにいる国民全体に責任がある。一般市民が関与しておらず知らないという言葉遣いは正しくない。全く正しくない・・・ 我々は彼らの背骨をへし折るまで闘い続ける」。


国防大臣ギャラント:

イスラエルは「ガザを完全に包囲している。電気も食料も水も燃料もない。すべてが閉鎖されている。我々は人間の姿をした動物と戦っており、それに従って行動している」。
「ガザは以前の状態には戻らない。我々はすべてを一掃する。一日で終わらなければ一週間。数週間、あるいは数カ月かけて、あらゆる場所に足を踏み入れるだろう」。


国家安全保障大臣ベン-グヴィル:

 「はっきりさせておきたいのは、ハマスを壊滅させるというのは、ハマスを祝福する者、支援する者、キャンディを配る者、それらもまたテロリストであり、彼らも同時に壊滅させるということだ」。


エネルギー・インフラ大臣カッツ:

 「ガザの全市民は即時退去が命じられている。我々は勝利する。彼らがこの世から去るまで、一滴の水も、一本の電池も彼らが受け取ることはない」。


スモトリッチ財務大臣:

 「我々は過去50年間にだれも見たこともないような衝撃を与え、ガザを陥落させる必要がある」。


遺産大臣エリヤフ:

 「北ガザ地区は、一段と美しい。すべてが爆破され、平坦になり、見ていても心地良い・・・我々は今後のことを話さねばならないのだ。私の考えでは、これまでガザのために戦ってきた人々やグッシュ・カティフ(かつての入植地)から追放された人々に、多くの土地を渡すことになるだろう」。「ガザには無関係な一般市民など存在しないのだ」。


農業大臣ディヒター:

「我々が今やっているのはガザ・*ナクバの全面展開だ」。


*ナクバ・・・1948年に約75万人のアラブ人の社会と祖国が破壊され、大多数のパレスチナ人が恒久的に退去を余儀なくされた出来事。(ウィキペディア)
クネセット(イスラエル国会)副議長、そして外務安全保障会議メンバーのヴァツーリ:

「我々の共通目標はひとつ。それはガザ地区を地球上から消し去ること」。


イスラエルの軍人たちは、ジェノサイドを叫ぶ政治指導者たちに呼応している:

イスラエルの予備兵少将であり国防大臣補佐官であるアイランド:

「イスラエルは次のことを始めた。ガザ地区へのエネルギーや水、ディーゼルの供給停止。・・・しかし、それだけでは足らない。包囲を効果的にするためには、他の人々のガザへの支援を止めなければならない・・・(ガザ地区の)人々には2つの選択肢があると伝えるべきだ。飢え死ぬか、去るか、だ。もしガザで人々死ぬことをエジプトや他の国々が選ぶのであれば、それは彼らの選択だ」。

「他国と戦争しているときは、食料を与えず、電気もガスも水道も何も提供しない・・・国が機能不全に陥る瀬戸際まで、もっと広範な攻撃だってあり得る。これが、ガザで起きている出来事の必然的な結果なのだ」。

「イスラエルは、ガザ地区の復興には興味がない。これはアメリカ人に明確に伝える必要がある重要な点だ」。

「イスラエル国は、ガザを一時的に、あるいは恒久的に、住居不能な場所にするしかない」。

「もしシフア[病院]での軍事行動の予定があっても(それは不可避と考えるが)、CIA長官には、なぜこれが必要であり、なぜアメリカが最終的にこのような作戦を支持しなければならないのか、そしてたとえそれに続いて街中に何千もの市民の遺体が出るとしても、アメリカはそのような行動を支持すべきだ、という点についての説明はしてあると思う」。

「イスラエルはガザに人道危機を引き起こし、何万人、何十万人もの人々をエジプトや湾岸に避難させる必要がある・・・ガザは人の住めない場所になるだろう」。

「ガザの "かわいそうな "女性たちとはだれのこと?彼女たちは皆、ハマスの殺人犯の母親、姉妹、あるいは妻なのだ・・・国際社会は、ガザでの人道的災害と深刻な伝染病について我々に警告している。我々は、それがどんなに困難なことであっても、こんなことから尻込みしてはいけないのだ。結局のところ、ガザ地区の南部で深刻な伝染病が蔓延すれば、勝利が近づくだろう・・・戦争を終結に近づかせるためには、まさにそこに住む住民を総崩れにさせなければならない。イスラエルの高官たちがメディアで「我々か彼らか」と言うとき、「彼ら」とはだれか、という問題ははっきりさせたほうがいい。「彼ら」とは、武器を持ったハマスの戦闘員だけでなく、病院管理者や学校管理者を含むすべての「民間人」であるし、さらには10月7日にハマスを熱狂的に支持し、その残虐行為に喝采を送ったガザ住民全体のことを指している」。


1948年のナクバでの*デイル・ヤシン虐殺の退役軍人である95歳のエズラ・ヤチンは、地上侵攻の前にイスラエル軍の「士気を高める」ための演説者として招集された。イスラエル軍の車両に乗せられ、イスラエル国防軍戦闘服を着てソーシャルメディアに彼はこう語った。
*デイル・ヤシン虐殺・・・第一次中東戦争直前の1948年4月9日、当時イギリスの委任統治領であったパレスチナのエルサレム近郊のデイル・ヤシン村で起こったユダヤ人武装組織による住民の虐殺事件。(ウィキペディア)

「勝ち誇れ!奴らにとどめを刺し、だれひとり生かしてはいけない。奴らの記憶を消し去れ。奴らの家族も、母親も、子供たちも消し去れ。こんな動物たちはもう生きてはいけないのだ・・・武器を持つユダヤ人は皆、奴らを殺しに行くべきだ。近くにアラブ人がいたら、ためらわずその家に行って撃ち殺せ!・・・我々は侵略したいのだ。以前とは違う。侵入して目の前のものを破壊し、家を破壊し、それから次から次へと破壊するのだ。全軍で、完全に破壊し、侵入し、破壊する。はっきりしているのは、これまで夢にも思わなかったことを我々はこれから目撃することになることだ。奴らの頭上に爆弾を投下し、奴らを消し去ってしまえ」。


申請書が記述する唯一の考えらえる結論は次のとおり:

イスラエルの意思決定者と軍関係者による上記の発言は、それ自体、ガザのパレスチナ人を「そのような」集団として壊滅するという明確な意図を示すものである。それらはまた、ジェノサイド(大量虐殺)への明確な直接的かつ公的な扇動であり、野放しにされ、処罰もされていない。現地のイスラエル軍の行動から、膨大な数の民間人が殺傷され、ガザにもたらされた避難、破壊、荒廃の規模から、これらの大量虐殺的な声明や指示がパレスチナ人民に対して実行されていることは明らかである。


申請書はさらに、ガザの地上に駐留しているIDF(イスラエル国防軍)兵士の意見を引用している。彼らは、この結論を支持しており、クネセト(訳註:イスラエルの議会)の非閣僚やイスラエルのメディア、そして市民社会一般の間でも、同様のジェノサイド的な言い方が広まっている。基本的に言われているのは、ガザには罪のない者はおらず、230万人のテロリストは一掃されなければならないということだ。ドレスデンと広島はしばしば肯定的な例として挙げられている。

以上のことから、だれもが納得できるほどはっきりしているのは、10月7日の攻撃に対するイスラエルの対応は、イスラエルが主張するようにハマスが主たる標的ではなく、むしろガザ住民全体が標的であり、非戦闘員に最大限の集団罰を与え、ガザ住民全体の退去を促すことであった。 この大規模な民族浄化は、1948年のそれを凌ぐものだ。パレスチナに残るパレスチナ人集団の大部分を壊滅させるというイスラエルの意図が明確に立証された以上、申請書で目をそむけたくなるほど詳細に述べられているイスラエルの種々の行為は、ジェノサイド(大量虐殺)にあたる。


ジェノサイド的行為

そしてイスラエル軍の行為は、読み、かみ砕き、じっくり考えるにつけ、実に吐き気を催すものだ。 要約すると以下のとおり: 「(1)子どもを含むガザのパレスチナ人を大量に殺害すること。(2)ガザのパレスチナ人(パレスチナ人の子どもを含む)に身体的、精神的に深刻な害を与えること。そして彼らに集団としての破滅をもたらす生活条件を押し付ける。 それらの条件には以下が含まれる: (3)家屋や居住地域の大規模な破壊と並行して、家から追いたて集団強制移住させること、(4)適切な食料と水へのアクセスを剥奪すること、(4)適切な医療へのアクセスを剥奪すること、(5)適切な住居、衣服、衛生設備へのアクセスを剥奪すること、(6)ガザ地区パレスチナ人の生活を破壊すること、(7)パレスチナ人の出産を阻止すること」。

各章ごとに、南アフリカの弁護士がまとめた証拠の要点を紹介しようと思うが、イスラエルが行なってきたこと、そして今も続けている陰惨な現実を本当に理解するためには、(84ページの「申請書」)全文を読んだほうがいい。

1.パレスチナ人を殺害すること

イスラエルがガザで使用した非誘導型の重爆弾の「予測される致死半径」は最大360メートルで、これは5分の1から4分の1マイル(4〜5街区)となる。「着弾地点から全方向800メートル、つまり半マイル(10街区)は深刻な損傷を引き起こすと予測される」。 つまり、あなたがニューヨークのタイムズスクエアに立っているとしよう。 北と南、東と西の4ブロック先を見てほしい。 それがガザに落とされる爆弾の殺傷範囲だ。 米国から供給されたこれらの爆弾を使う人間たちが、世界で最も人口密度の高い地域のひとつであるガザで、一度に数百人という膨大な数の非戦闘員(女性、子ども、家族全員)を、意図的に殺さないはずがない。パレスチナの子どもたちは毎日115人以上殺されている。「ガザにおいて最初の3週間だけで殺されたパレスチナの子どもの数(合計3,195人)は、2019年以降、世界の紛争地帯で毎年殺される子どもの総数を上回ると推定されている」。これは大規模な意図的虐殺である。

「ガザのパレスチナ人は、自宅や避難所、病院、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校、教会、モスクなどで、そして家族のために食べ物や水を探し求める最中に殺害されている。彼らは、避難しなかった場合に殺害され、避難した場所でも殺害され、イスラエルが「安全経路」だと宣言した経路に沿って逃げている場合ですら殺害された。家族であれば見境なく(男性、女性、高齢者も含め)、イスラエル兵によって即決処刑されたとの報告が増えている」。
 「現在までにイスラエルは、医師や救急車の運転手を含む311人以上の医師、看護師、その他の医療従事者(勤務中に殺害された医師や救急車の運転手を含む)、103人のジャーナリスト(1日1人以上、2023年に世界で殺害されたジャーナリストやメディア関係者の総数の73%以上)、40人の民間防衛隊員(被災者を瓦礫から掘り出すのを助ける役割を担っている)、209人以上の教師や教育職員を殺害した。国連職員も144人が殺害されており、これは国連史上、これほど短期間に殺害された援助職員の数としては最多である」。



2.ガザ地区のパレスチナ人に重度の肉体的精神的損傷を引き起こしている

55,000人の負傷者の大半は女性と子供である。そのうちの1000人は片足または両足を失っている。イスラエルが使用している白リンは、「皮膚深層へ重度のやけどを引き起こし、骨まで貫通し、初期治療後に再燃する可能性がある。特にガザ北部には機能している病院がないため、負傷者は手術も応急処置以上の治療も受けられずに「死を待つ」ことになり、負傷や感染症で苦しみながらゆっくりと死んでいく。

「度外れなまでの爆撃と安全な場所の欠如は、ガザのパレスチナ人に深刻な精神的トラウマを引き起こしている」。このことは、以前の攻撃による深刻なトラウマに加えて、パレスチナの子どもの80%がより高いレベルの、次のような精神的苦痛を与えている。夜尿症 (79%) や反応性緘黙症 (59%) 、自傷行為 (59%) 、そして自殺念慮 (55%)だ。11週間にわたる容赦のない爆撃、避難、そして喪失感は、父か母(あるいは両親)を失なったり、家族でただひとり生き残った推定数万人のパレスチナ人の子どもたちの、想像を絶するトラウマを一層大きく、さらに深刻なものにしている。

3.パレスチナ人を家から大規模に放逐したり強制移動させる

人口の85%に当たる230万人のガザ住民のうち190万人以上が、安全な逃げ場がないにもかかわらず、家を追われている。イスラエルは、避難命令と、避難できない人々や避難を拒否する人々を殺害することによって、これを達成した。12月上旬、イスラエルはガザの人々に、以前逃げるように言った南部の地域から離れるよう促すビラを投下し、安全という偽りの約束さえ反故にした。国連事務総長によれば、「ガザの人々は、人間ピンボールのように移動するように言われています。彼らは南部のますます狭い地域を行ったり来たりしており、基本的生存に必要なものが何もない状況に置かれています」。強制移住者の間に恐怖を引き起こすだけでなく、人口密度が高まることで、イスラエルによる砲撃がさらに致命的なものとなっている。これは偶然ではなく、故意によるものだ。ガザの住宅の60%が損壊または破壊されているため、家からの強制避難は「必然的に永続的」である。そして、ガザの破壊の程度は、この青空刑務所を「ほとんど居住不可能」にした。住宅と民間インフラが「破壊されつくし」、この恒久的な集団強制移動は、「ガザのパレスチナ人を物理的に破滅させようと計算された状況で行われているという点で、大量虐殺的である」。

4.適切な食料と水へのアクセスをガザ在住のパレスチナ人から剥奪している

10月9日から21日にかけて、イスラエルはガザを完全に包囲した。電気、食料、水、燃料はない。10月21日以降はこれまでの、1日500台を大幅に下回る数台の支援トラックが許可されている。11月21日以降、一部の燃料の搬入は許可されているが、搬入口からガザ周辺への移動が容易ではないため、 「人道支援活動の最低要件をはるかに下回っている」 。だから、ほとんどの困っている人には届かない。

12月22日の安保理決議は、効果的な人道支援を可能にするために国連が指摘した4つの要素(安全、スタッフ、ロジスティクス、商業活動の再開)に適切に対処していないため、ほとんど何の役にも立たない。執拗なイスラエル軍の砲撃、国連職員が安全に生活・活動できないことや北ガザから急いで避難するときに破壊されたり置き去りにされたりした国連トラック、そして通信手段の遮断などはすべて「援助活動を大規模に妨げている」

「ガザのパレスチナ人のほとんどが飢えており、飢餓のレベルは日々上昇している」。

「世界で最も飢えている人々の5人に4人がガザにいる」。

「ガザの人口の93%が危機的レベルの飢餓に直面しており、食料不足と高レベルの栄養失調が続いている。」。

世界保健機関は、ガザ「水や食料などあらゆる生命に必要なものを」を遮断するイスラエルの行動を、「ガザの全住民に対する」「狂気じみた作戦」と呼んでいる。

包囲による状況は、イスラエルによるガザへの継続的な攻撃(パン屋、水道施設、最後に残った操業中の工場など)、農地、農作物、果樹園、温室の破壊などによって悪化している。



水の枯渇も深刻だ。イスラエルはガザ北部への送水遮断を続けており、北部の淡水化プラントは機能していない。2023年10月15日から、イスラエルは「民間人をガザ南部に押しやる」ためもあって、少量の水を南部に供給し始めた。イスラエル軍の空爆や砲撃の被害により、水道システムの大半も使用不能となっている。世界食糧計画(WFP)の報告によると、すべての用途(飲料、洗濯、食事の準備、衛生管理)に使用できる清潔な水は、1人1日あたり1.5~1.8リットルしかない。これは、「戦争や飢饉のような状況」での「緊急時基準値」である1日15リットルや、「生存基準値」である1日3リットルをはるかに下回っている。

専門家たちは、ガザのパレスチナ人が空爆よりも飢餓や疾病で亡くなる可能性が高まっていると予測している。しかし、イスラエルは爆撃作戦を強化しており、人道支援の効果的提供をできなくさせている。イスラエルは、ガザでの行動と政策によって、パレスチナ人を破滅させる生活条件を意図的に押し付けようとしていることは明らかだ。



5. ガザのパレスチナ人に対する適切な住居、衣服、衛生状態、および公衆衛生設備へのアクセスの剥奪

190万人の強制移住者のうち120万人は、UNRWAが運営する学校やテントに避難している。しかしそこも安全ではない。イスラエルはそこで何百人ものパレスチナ人を殺害しているからだ。イスラエルには同等の国連施設がすべて配置されているのだ。UNRWAは12月7日、これらの施設は 「崩壊寸前」であることを認めた。平均して、486人が1つのトイレを使用している。*Oxfamの報告によると、十分な衛生設備、食料、水、医療がないため、避難所の新生児は回避可能な原因で死亡している。
*Oxfam・・・オックスフォード飢餓救済委員会(Oxford Committee for Famine Relief)◆発展途上地域を支援する、英国の民間団体(英辞郎)

避難所にいる人々は、他の70万人の強制移住者よりも恵まれている。この70万人の多くは病院の中庭や仮設キャンプにいるか、ただ路上で寝泊まりし、風雨にさらされている。平均シャワー数は4500人に1つだ。

2023年12月20日、世界保健機関(WHO)の事務局長は、「ガザではすでに感染症の発生率が急上昇している」と警告した。5歳以下の子どもの下痢患者は、紛争前の25倍にもなっている。このような病気は、栄養失調の子どもたちにとって致命的であり、保健サービスが機能していない状況ではなおさらである」。汚水はもはや管理できないため、パレスチナ人が暮らす通りにたれ流されている。「どこを見ても、仮設避難所でごった返している。どこに行っても、人々は絶望し、飢え、怯えている。こうした状況は、イスラエルが意図的に押し付けたものであり、ガザのパレスチナ人集団を破滅させるために計算されたものである。



6 .ガザ地区のパレスチナ人に対する適切な医療支援の剥奪

「イスラエルのガザに対する軍事攻撃は、何よりも、ガザのパレスチナ人の生活と生存に不可欠な、ガザの医療保健システムへの攻撃である」。


12月7日、国連特別報告者は、「ガザ地区の医療インフラは全滅状態だ」と指摘した。

12月4日、国境なき医師団の代表は書いている:

「病院が死体安置所や廃墟と化すのを私たちは見ている」。

「我々自身も含めた医療スタッフは、疲労困憊しているし絶望状態だ」。


2023年12月初めから、イスラエル軍によるパレスチナの病院への攻撃は「ますます激化している。イスラエル軍は、病院や医療センターを攻撃し包囲し続け、効果的な機能と設備を維持するために重要な電力と燃料を奪い、医療用品、食料、水を受け取ることを妨害し、病院の退去と閉鎖を強制し、効率的に破壊してきた・・・イスラエルは、ガザのパレスチナの病院を癒しの場所から「死のゾーン」と「血の海」「死、破壊、絶望」の現場に変えた。多くの病院は今や単なる「死を待つ場所」となっている」。

「ガザでは、現在までに238件以上の "医療 "に対する攻撃があり、61以上の病院やその他の医療施設が破損したり破壊されたりしている・・・イスラエル軍は、病院の発電機やソーラーパネル、酸素ステーションや貯水タンクなどの救命設備を標的にした。また、救急車や医療隊、救急隊員も標的となった。医療従事者が殺されている(1日平均4人が殺されている)」[。]

「パレスチナの病院の体制的な破壊と専門家のパレスチナ人医師の殺害は、現在のガザのパレスチナ人のケアにだけでなく、ガザ・パレスチナ人への医療システムの将来展望にも影響を与えている。ガザの再建とガザ・パレスチナ人への有効なケアの能力を破壊している」。

「医師や医療従事者は、イスラエル当局によって殺されるだけでなく、拘束され失踪状態になっている。その中には、11月23日以来、連絡が取れなくなっているアル・シファ病院の総院長とそのスタッフも含まれる」。

「パレスチナ人は、北から南へ、そしてまた南からその先へと行進を強いられ、病院のベッドを車の後ろに繋ぎ止めたり、車椅子を押したり、その場しのぎの担架で持ち上げたり、単に腕に抱えて運んだりして、病人、障害者、負傷者を避難させなければならなかった」。
麻酔薬、鎮痛薬、医薬品、消毒薬など、スタッフや物資の危機的な不足は、不必要な手足の切断だけでなく、しばしば懐中電灯で照らしながらの無麻酔切断にもつながっている。妊婦は麻酔なしで帝王切開されている。患者は血にまみれた汚れた床で治療を受けており、生理食塩水があるところでは、家族が生理食塩水バッグを持って立っていなければならない。適切な創傷処置や術後の創傷処置のための人員も資源も不十分で、不潔な創傷(多くの場合、虫やハエがはびこっている)はあっと言う間に感染し、壊死や壊疽を起こす。患者は食べ物や水を懇願する。基本的な鎮痛治療さえも受けられないことが多く、患者は治療可能な症状で命を落とす危険性がある。


言うまでもなく、何十万人ものガザの人々は、慢性疾患のために定期的な医療を必要としているが、現在はその医療を受けられていない。また、UNRWAの避難所だけで36万件以上の伝染病の報告がある。それは不衛生な状況、飢餓、清潔な水の不足が原因となっている。

7.ガザ地区パレスチナ人の殺戮

11月16日、15人の国連特別報告者と21人の国連作業部会メンバーは、それまでに起こった破壊のレベルは「住宅だけでなく、病院、学校、モスク、パン屋、水道管、下水、電力網・・・ガザでのパレスチナ人の生活の継続を不可能にする恐れがある」と述べた。

南アフリカの申請書の記述は次のとおり:

イスラエルは、個々の住まいや家屋、そしてアパート全体を破壊しただけでない;道路や近隣一帯を破壊した。ガザの基本的な市民制度を標的にした。イスラエルは、パレスナ最高裁判所や憲法裁判所、控訴裁判所、第一審裁判所、行政裁判所、治安判事裁判所のほか、裁判記録やその他の歴史的ファイルの保管所がある、ガザのパレスチナの主要な裁判所建物である司法宮殿を標的にしている。イスラエルはまた、パレスチナ立法評議会の複合施設に大きな損害を与えた。ガザ市の中央公文書館を標的にした。そこには100年以上前の数千の歴史的文書や国家記録が保管されており、ガザ市の都市開発のためのより近代的な記録だけでなく、パレスチナの歴史の重要な記録保管所となっている。イスラエルはガザ市の主要な公共図書館を廃墟にした。また、数え切れないほどの書店、出版社、図書館、数百の教育施設を破損または破壊した。イスラエルは、ガザ地区で最も古い高等教育機関であり、何世代にもわたって医師や技術者などを養成してきたガザ・イスラム大学を含むガザの4つの大学すべてを標的にし、ガザの将来の世代のパレスチナ人を教育するためのキャンパスを破壊している。イスラエルは他の多くの学者とともに、パレスチナの有力な学者を殺害してきた。イスラム大学の学長であるスフィアン・タイエ教授は、受賞歴のある物理学者であり、パレスチナの天文学・宇宙物理学・宇宙科学のユネスコ議長であるが、家族とともに空爆で死亡した。パレスチナ大学のソフトウェア工学部長であるアフメドハムディ・アボ・アブサ博士は、3日間の強制失踪から解放され、立ち去ろうとしたところをイスラエル兵に射殺されたと伝えられている。免疫学とウイルス学の教授であり、ガザ・イスラム大学の元学長であるムハンマド・イード・シャビル教授と、詩人であり、ガザ・イスラム大学の比較文学と創作の教授であるラファット・アラレール教授は、家族とともにイスラエルによって殺害された。

イスラエルは、アル・ザファール・ドゥマリ・モスクや写本・古文書センターなど、パレスチナの多くの学習と文化の中心地を破壊し、破壊した。たとえば、正教文化センターやアルカラ文化博物館、ガザ文化芸術センター、アラブ社会文化センター、ハカウィ文化芸術協会、そして何百もの文化的・考古学的遺物が収蔵されているラファ・ミュージアム(ガザに新しくオープンしたパレスチナ遺産の博物館)などだ。イスラエルの攻撃はガザの古代の歴史を破壊した。イスラム遺産リストとユネスコの世界遺産暫定リストに登録されている2,000年前のローマ時代の墓地の遺跡であるガザの古代港(「アンテドン港」 または 「アル・バラキヤ」 として知られる)を含む8つの遺跡が損傷または破壊された。イスラエルはまた、146年の歴史的家屋、モスク、教会、市場、学校を含むガザ市の 「旧市街」 を破壊した。25年前、ビル・クリントン米大統領とヤーセル・アラファト・パレスチナ大統領が歴史的な会談を行ったラシャド・アル・シャワ文化センターや、劇場、図書館、イベント空間を備えたガザのパレスチナ人にとって重要な文化拠点など、より希望に満ちた時代のガザの最近の歴史も破壊してきた。そしてイスラエルは、ガザの将来の学問と文化の可能性を破壊しているのだ。352のパレスチナ人学校を損壊・破壊し、4,037人の生徒・学生と209人の教師・教育スタッフを殺害し、7,259人の生徒・学生と619人の教師を負傷させた。

イスラエルは推定318のイスラム教とキリスト教の宗教施設を損傷または破壊し、パレスチナ人が何世代にもわたって礼拝してきた場所を破壊した。イスラエルは、ガザのパレスチナ人の歴史と遺産の物理的な記念碑を破壊するとともに、その遺産を形成し創造してきたパレスチナ人そのものを破滅させようとしてきた。ガザの著名なジャーナリスト、教師、知識人、公人、医師、看護師、映画製作者、作家、歌手、大学の学長、病院長、著名な科学者、言語学者、劇作家、小説家、芸術家、音楽家などを、である。イスラエルはパレスチナ人の語り部や詩人、パレスチナ人の農民や漁師を殺害してきたし、今も殺害している。その中には、パレスチナで最も古いキリスト教徒の家系に生まれた84歳のエルハム・ファラも含まれていた。彼女はアコーディオン奏者であり、音楽教師でもあった。彼女はショッキングな赤い髪から、パレスチナの音楽学生の世代から 「マザー・オレンジ」と呼ばれていた。彼女は暖かい服を取りに家に戻ったとき、ガザ市の聖家族教会の外でイスラエル人の狙撃手に射殺され、出血を放置され亡くなった。

ガザの公文書やランドマークを破壊することによって、ガザのパレスチナ人の公式な記憶と記録を破壊しているように、イスラエルは、爆撃やブルドーザーによる墓地の破壊、家族の記録や写真の破壊、多世代にわたる家族の全滅、子どもたちの一世代を殺害し、傷つけ、トラウマを与えることによって、パレスチナ人の個人的な生活や個人的な記憶、歴史や未来を消し去ろうとしている。

イスラエル軍は、ガザにおけるパレスチナ人の生活の基盤そのものを破壊している。イスラエルはそれによって、ガザのパレスチナ人集団に、その滅亡をもたらすような生活条件を意図的に押し付けているのだ。



8. パレスチナ人を産ませないための方策の押し付け

毎月5万人以上のガザ地区の妊婦が出産している。現在、これらの妊婦とその新生児は避難生活を余儀なくされ、食料や水、シェルター、衣服、衛生設備が利用できず、医療サービスも受けられない。医師たちは、出産後に「出血」した若い女性の命を救うために、通常であれば不必要な子宮摘出手術を行わなければならず、その結果、彼女たちはそれ以上子どもを産めなくなる。生後3カ月までの新生児が、下痢や低体温症などの予防可能な原因で命を落としている。必要不可欠な設備や医療支援がなければ、未熟児や低体重児が助かる可能性はほとんどない。

救援策

ユダヤ人国家の大量虐殺行為と意図の証拠を詳細に朗読した後、南アフリカは、イスラエルがガザのパレスチナ人に関連して大量虐殺を行い、ジェノサイド条約の締約国としての義務に違反したことを宣言し、次のことをICJに要請した。(1)イスラエルはすべての虐殺行為を直ちに中止しなければならない、(2)それらに関与し、共謀し、企て、扇動し、または加担したすべての者が、イスラエルまたは国際法廷によって処罰されることを保証する、(3)大量虐殺の証拠を集めて保存する、(4)強制退去させられたパレスチナ人や誘拐されたパレスチナ人の安全で尊厳のある帰還を可能にし、ガザで破壊したものの再建を提供するなど、パレスチナ人被害者のために賠償の義務を果たす、(5)条約違反が繰り返されないことの保証と保証を提供する。

「保全措置」の要請

「ガザのパレスチナ人が被っている進行中の、極度の、取り返しのつかない被害」及びイスラエルのジェノサイド条約違反の明白性に鑑み、申請書は、申し立てられたジェノサイド行為の少なくとも一部が条約の規定に該当する可能性がある場合には、ICJ規則及びそのような措置を認める判例に基づく「保全措置」の予備的救済を要請する。南アフリカは、大量殺人、課された深刻な身体的・精神的危害、ガザのパレスチナ人の破滅をもたらすために計算された意図的な生活条件の押しつけ、グループ内での出産を防止することを意図した措置、これらすべてが条件に適っていると主張している。

南アフリカによると、クロアチアとボスニアのセルビアに対するジェノサイド事件におけるICJの過去の決定は、集団の成員の死を求めるために採用される殺害以外の物理的破滅方法は「条約の規定要件を構成する」としている。これには、食料、医療、住居または衣服の剥奪、衛生の欠如、住まいからの組織的な放逐、または身体酷使による体力消耗、集団を、生存ぎりぎりの食生活にさらすことなどが含まれる。適切な医療を施さず、適切な食料、水、住まい、衣類、衛生設備がどこにもない状態は、緩慢な死につながる状況を作り出している。南アフリカの申請書に詳述されている事実は、イスラエルがこれらすべての物理的破壊方法を採用しており、今後もそうする可能性が高いという主張を裏付けるものだ。

もし同裁判所が同意すれば、南アフリカの*本案に関する審理が始まる前に、重要な予備的救済を命じることができる。
*本案・・・民事訴訟上、訴えの本旨である請求。また、その手続きの主目的または中心をなす事項。(デジタル大辞泉_小学館)

ICJの管轄権

この訴訟は、国際司法裁判所(ICJ)「係争事件」管轄下にあり、国際司法裁判所は、条約の解釈又は適用について意見の相違がある場合には、一方が紛争を裁判所に付託することができるという規定を含む条約の締約国でもある2つの国連加盟国間の紛争を取り扱うことができる。南アフリカとイスラエルはともに国連加盟国であり、ジェノサイド条約の締約国でもある。同条約第9条は、ジェノサイド条約の解釈、適用または履行 (ジェノサイドに対する国の責任を含む) に関する締約国間の紛争は、いずれかの紛争当事者の要請に応じてICJに提出されることを規定している。南アフリカは、12月21日に南アフリカのイスラエル大使館に「口上書」を送付することで、10月30日以来、ガザでの行動がジェノサイドであることをイスラエルに繰り返し明らかにしてきたと述べている。11月17日、南アフリカはジェノサイド問題を国際刑事裁判所(ICC)に付託した5カ国のうちの1つだった。イスラエルは口上書に回答していないが、ガザへの攻撃がジェノサイドの法的定義に合致している、あるいはイスラエルが条約上の義務に違反しているという提言には公にきっぱりと拒絶している。そのことは、国際司法裁判所の制定法および判例法の下で、南アフリカの見解ではあるが、条約の解釈と適用、およびそれを審理し決定する国際司法裁判所の管轄権をめぐる認識可能な「紛争」を立証するのには役立つ。それは国際司法裁判所が管轄権を持つことへの強力な主張であるように思われる。そしてイスラエルの最初の声明は、簡潔で予備的ではあるが、本案について「根拠がない」として南アフリカの主張に異議を唱えたが、国際司法裁判所の管轄権に異議を唱えてはいないようだ。



考えられる結果とその意味するもの

本案に関して、南アフリカの弁護団は、イスラエルの大量虐殺行為とその意図、そして求めている予備的救済について、説得力のある訴えを行なった。南アフリカだけではない。ジェノサイド条約の締約国であるアルジェリア、バングラデシュ、ボリビア、コロンビア、キューバ、エジプト、ホンジュラス、イラン、イラク、ヨルダン、リビア、マレーシア、ナミビア、パキスタン、シリア、トルコ、チュニジア、ベネズエラの大統領またはその他の国家高官は、申請書によれば、イスラエルの行為をジェノサイドと表現または言及している。これらの国は、ICJにおける南アフリカの訴えを支持するかもしれない。

国連加盟国であるイスラエルは、自国が当事者である「係争事件」において、ICJの判決を遵守する義務を負う。もしイスラエルがそうしなければ、安全保障理事会に訴えられるかもしれない。安全保障理事会は、判決を実現するための措置を決定することができる。もちろん、米国はこれまでも安保理で拒否権を行使してイスラエルを守ってきたし、予備的保全措置やイスラエルに不利な本案判決が出た場合、再び拒否権を行使する可能性は十分にある。確かにイスラエルは、2004年に「勧告的手続き」の管轄下で出された、分離壁は違法であるという裁判所の拘束力のない勧告的意見を無視した。しかしそれは、裁判所の「係争事件」管轄権下でイスラエルが直面する可能性のある拘束力のある判決とは異なるものだった。そしてそれは壁だった。ジェノサイドは、特に判決が全会一致であれば、南アフリカの申請と同じように文書化され、理路整然としたものであれば、(「壁」のときとは)異なるかもしれない。

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ロバート・ハーブストは公民権弁護士。ICAHD-USAの理事会共同議長を務め、2014年から2017年までWestchester Jewish Voice for Peaceの支部コーディネーターを務めた。シエラレオネ特別法廷およびルワンダ国際刑事裁判所残留メカニズムで独立調査官および検察官を務めた。
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米国籍のゴンサロ・リラ氏、ウクライナ刑務所で医療的放置により死亡

<記事原文 寺島先生推薦>
American citizen Gonzalo Lira dies from neglect in Ukrainian prison
筆者:アレクサンダー・ルービンシュタイン(Alexander Rubinstein)
出典:ザ・グレー・ゾーン(The Grayzone)  2024年1月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月16日





 ロシア・ウクライナ戦争の著名な解説者であり、同国政府を批判する発言をしたとしてウクライナで投獄されていたゴンサロ・リラ氏が、ウクライナ当局による数週間の医療的放置の末に死亡した。

 チリ系米国民の戦争解説者ゴンサロ・リラ氏が、2024年1月11日正午直前、ハリコフの病院で死去した。ウクライナでのロシアの戦争遂行を正当化したとして告発され、8か月間投獄されていた。

 リラ氏が注目を集めたのは、2022年に独裁化が進むウクライナで批判的な発言者として登場したときだ。2023年5月に「ロシアのウクライナへの武力侵略を正当化する資料の作成と配布」の容疑で逮捕されたことは、米国の戦争資金提供に対する米国内の反対派を刺激し、ハイテク界の王イーロン・マスク氏やアメリカの政治評論家タッカー・カールソン氏らによる釈放を求める声につながった。

 リラ氏が書き、父親が当グレイゾーンに提供したメモによると、彼の死は3か月近くにわたる肺炎との闘病の末であったが、ウクライナの看守たちは死の数週間前までこの症状を無視していたようだ。リラ氏の死は、息子の医療緊急事態への介入をアメリカ大使館に数週間かけて懇願していた父親のゴンサロ・リラ・シニア氏によって明らかになった。

 当グレイゾーンが入手した電子メールによると、リラ氏は息子の病気を知った後、1月3日に大使館に介入するよう促した。同氏は米当局者らへのメッセージの中で、家族や法定代理人からの息子のリラ・ジュニア氏の健康状態に関する情報をウクライナ当局が隠蔽しようとしているようだと指摘した。父リラ氏は、「ハリコフの未決刑務所の医療監視員は息子の健康状態について情報を提供していない」とし、「息子の状態を知ってから12日が経った」と書き結んだ。


 翌日、リラ・ジュニア氏はついに病院に運ばれ、弁護士との面会を許可された。弁護人はリラ氏から自分の状況を説明する手書きのメモを受け取って面会を終えたが、これがリラ氏からの書面による最後の通信と考えられている。

 手紙には次のように書かれていた。「私は二重肺炎(両方の肺)、気胸、そして非常に重篤な浮腫(体のむくみ)を患いました。これらすべては10月中旬に始まりましたが、刑務所は無視しました。12月22日の審理で私が肺炎であることを認めただけでした。これから肺の浮腫圧を下げる手術を受ける予定ですが、そのせいで極度の息切れが起こり、最小限の活動、つまり2分間会話しただけでも気を失いそうになります」と。



 父ゴンサロ・リラ氏は、息子がウクライナの病院で適切な医療を受けられるかどうか確信が持てず、状況を監視するよう大使館に訴え続けた。翌日、父リラ氏は再び大使館に次のような手紙を書いた。「大使館には、息子が入院している間、緊密に連絡を取り合い、入院中の息子の健康状態が順調に進んでいることを確認してもらいたいです。また、入院中に息子ゴンサロの担当医師に連絡し、息子の回復状況を確認する必要があります」と。

 しかし父リラ氏の努力は無駄だった。1週間後、息子が亡くなったという知らせを受け、父リラ氏の最悪の不安が現実となった。彼は現在、息子の死について米当局とウクライナ当局を非難している。

 「息子の死に方を受け入れることができません。息子は8か月と11日間拷問され、自白を強要され、連絡が取れませんでしたが、米国大使館は息子を助けるために何もしてくれませんでした」と父リラ氏はそのニュースを発表した電子メールに書いた。

 「この悲劇の責任は独裁者ゼレンスキーにあり、もうろくしたジョー・バイデン米大統領も同意を与えている。私の痛みは耐え難いです。世界は、あの非人道的な独裁者ゼレンスキーによってウクライナで何が起こっているのかを知らなければなりません」と父リラ氏は綴った。

 世界の注目がウクライナでの西側代理戦争から(ガザへ)移る中、父リラ氏も息子の死を悲しむ何十万もの父親たちの一員となってしまった。ただし多くの人々とは異なり、父リラ氏の息子は戦場で死んだのではなく、多くの人を不名誉な運命に運命づけた戦争を非難した罪により刑務所で死んだのだ。
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レプリコン(体内複製型)mRNAワクチン:日本は世界で初めて自己増幅mRNAワクチンを承認

<記事原文 寺島先生推薦>
Replicon mRNA Vaccine: Japan Approves World’s First Self-Amplifying mRNA Vaccine
新たな悪夢が市場を直撃。いまはどうなっているのか? 何が問題なのか? 接種者からの伝播は大丈夫なのか?
筆者:ウィリアム・マキス(William Makis)博士
出典:Global Research   2024年1月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月15日


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 2023年11月27日– 日本の厚生労働省は、CSL社・アークトゥルス・セラピューティクス社製のARCT-154を承認した。これはCOVID-19に対して承認された初の成人向け自己増幅型mRNAワクチンである

・「世界で初めて自己増幅型メッセンジャーRNA(sa-mRNA)が承認されるという歴史的事件だ」
訳註・・・メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンとは、ウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部を注射するワクチンのこと。
また自己増幅型メッセンジャーRNA(sa-mRNA)ワクチンとは、免疫の誘導に関わるリボ核酸(RNA)が体内で自己増殖し、大量の抗原をつくりだす仕組みを注射するワクチンのこと。


・CSL社とアークトゥルス・セラピューティクス社の発表によると、日本の厚生労働省が、ARCT-154を世界で初めて承認した。これは自己増幅型mRNA(sa-mRNA)COVID-19ワクチンであり、18歳以上の成年の初回および追加接種に利用されるという。

・ノーベル賞受賞者のドリュー・ワイズマン博士は、「自己増幅mRNA技術は、永続的なワクチンの選択肢となる可能性を秘めています。この次世代mRNA技術により、多くの人をCOVID-19やおそらく他の有害な感染症から守る様子を見るのを楽しみにしています」と語った。

・この承認は、ベトナムで実施されている1万6000人の被験者を対象とした有効性試験や 、COVID-19追加接種試験の第3相試験を含む、いくつかのARCT-154試験から得られた肯定的な臨床データに基づいている。この治験の結果、標準的なmRNA COVID-19ワクチンと比較し、より高い免疫原性*と良好な安全性が得られた。初期の研究結果はメドアーカイブ(MedRxiv)誌に掲載され、年内には査読付き研究誌に掲載される予定である。
*免疫原性・・・抗原が抗体の産生や細胞性免疫を誘導する性質のこと

・CSL社の子会社でワクチン部門を司るCSLセキーラス(Seqirus)社は、世界最大のインフルエンザ・ワクチン供給業者であるが、この子会社がsa-mRNA COVID-19ワクチンARCT154の日本での販売に関してMeiji Seikaファルマ社と独占的に提携した。

・「我がアークトゥルス社が世界で初めて承認されたsa-mRNA製剤を開発し、検証するために、この共同研究で果たした役割を誇りに思います」とアークトゥルス・セラピューティクス社(本社はカリフォルニア州サンディエゴにある) のジョセフ・ペイン最高経営責任者は述べた。


自己増幅型mRNAワクチンとは何か?

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・「レプリコン(自己複製型)ワクチンは、標的細胞に投与された直後に複製数を増加させるために、独自の複製機構をコード化*している」
*コード化・・・体内で特定のタンパク質を複製できるよう遺伝子構造を組み込むこと

・「レプリコンRNAはさらに、ウイルス・レプリカーゼ*の遺伝子もコード化している。これらの遺伝子により、mRNA の迅速な増幅が可能になる。自己増幅型ウイルス遺伝子は、アルファウイルスやフラビウイルス(いずれもRNAウイルスの一種)などのウイルスに由来する」
*ウイルス・レプリカーゼ・・・ウイルスRNAの複製に関与する酵素

日本政府が承認に利用したベトナムの研究施設での16件の「安全性研究」

・ワクチン: 「ARCT-154 は、ベネズエラ馬脳炎ウイルスに起源をもつレプリコンで構成されている。このレプリコン内において、ウイルス構造タンパク質をコード化するRNAが、SARS-CoV-2 D614Gウイルスの全長スパイク (S) 糖タンパク質をコード化するRNAに置き換えられている。なおこのウイルスは、一度の点突然変異だけを経験したCOVID-19祖先株の初期の変異体である。そしてこのレプリコンは脂質ナノ粒子に包まれている。小瓶に入れられたワクチンの有効成分100μgが -20℃ 以下で保存され、使用直前に10mL の滅菌生理食塩水で溶解され、5μgの有効成分を含む0.5 mLのワクチンが、 三角筋に筋肉注射して投与される」

・「宿主細胞がワクチンのmRNAの複製を作ることが可能になるので、より少ない用量のmRNAの投与で生成されるタンパク質の量を増加させることができる」

・「迅速承認」=我々は、現在の加速化された第1/2/3a/3b相統合試験を開始したが、この治験はEMA(欧州医薬品庁)やFDA(米国食品医薬品局)、 WHOの指針に従い設計されたものであり、ARCT-154 の安全性や反応原性(副反応の状況)、免疫原性、および有効性を評価するための治験である。

・我々がまず示す研究結果は、この新規ワクチンによるボランティアの被験者へ最初のワクチン接種をおこなってから3ヵ月後までの研究結果である。

・90%が初回投与後に少なくとも1つの有害事象を経験した(ほとんどが軽度な事象だった)。

・「全体的な全身性の副反応と局所反応は、すでに認可されているmRNAワクチンよりもARCT-154の接種者では頻度が低かった」

・「日本での並行研究の結果によると、mRNAワクチン(主にBNT162b2であるが)を一次ワクチンとして完全に接種した成人では、中和抗体(重症化を防ぐ働きのある抗体)により測定した際、ARCT-154の追加接種による免疫反応は、BNT162b2の追加接種による免疫反応よりも優れていたことが分かった」

・「ARCT-154は、最初に接種するワクチンとしてよりも、追加接種としての利用が望ましい。それは、このワクチンにより、蔓延する変異株に対する免疫力を強化し、拡大することができるからである」


小田らによる2023年12月20日の日本での研究結果

・18歳から64歳までの828人の参加者が登録した。

・mRNAワクチン3度接種者(ファイザーまたはモデルナ)には、4度目の追加接種として、ARCT-154かファイザー社製ワクチンのいずれかが投与された。

・ARCT-154の注射後28日目ではファイザー社製ワクチンと比較して免疫反応が良好。

・「どちらの追加接種も耐容性(被験者があまり痛みを感じないこと))は同様に良好だった」


ロー(Low)らによる2022年12月13日の研究結果

・ボランティア被験者は169 名、I層及びII層治験

・ARCT-021は、7.5μgの用量までは一般に良好な耐容性を示した。

・10μgの用量での接種は、第3基準の重症度を含む、より多くの局所的および全身的な特定副反応と関連していた。

・ワクチンの注入量と第2基準以上のリンパ球減少症には相関関係があるようだ。注入量、1.0、3.0、5.0、7.5、10 μg を受けた参加者の リンパ球減少症の発生率はそれぞれ、0%、25%、26.5%、30.0%、および 40.0% という値を示した。このようなリンパ球減少症の発症は注射後24時間以内に起こり、通常は1日以内に無事に解消された。


このワクチンの「利点」

・ARCT-154 (5 μg) は、他の RNA系のCOVID-19追加ワクチン注射剤と比較して、1人あたりのワクチン必要量が10分の1~6分の1で済む。

・1回の注射で投与されるワクチンの量が減るということは、当然「生産にかかる費用が下がる」。

・saRNA はウイルスに似た性質を持っているため、独自の方法で免疫系と相互作用する。

・ARCT-154の承認が日本で確保されたことを受けて、当該開発業者は現在ヨーロッパでの承認を求めている。来年には規制当局の決定が下される予定。

・昨年8月、感染症対策イノベーション連合(CEPI )は 、自己増幅型saRNAの基盤開発に最大360万ドルを提供する、と発表した。

・「一度投与すると、これらの分子の発現は長期間持続する」。したがって製造業者は、製造量を減らすことで費用の節約ができると同時に、接種者の接種負担の軽減にもなる。さらに、接種用量が少なくて済むため、潜在的な副反応の発生も少なくなる可能性がある。

・RNA ワクチン候補となっているワクチンの生産にかかる時間は短く、例えばインフルエンザ用のワクチンの候補となっているワクチンはわずか8日で生産される、と報告されている。

・「mRNA が被接種者の体内のゲノムに組み込まれるという危険性はない。mRNA は感染する性質を持っておらず、被接種者の体内細胞のRNase(リボヌクレアーゼ:酵素の一種) により分解されるため、細胞内に存在するのは一時的」

・「sa-mRNAワクチンはCOVID-19に対する持続的な免疫力を促進する」

・ワクチン接種後の12か月間、免疫反応の上昇を維持する。


このワクチンの問題点

・アークトゥルス社は独自の「脂質ナノ粒子」を使用しているが、詳細は明らかにされていない。同社の主張では、ファイザー社とモデルナ社のLNP(脂質ナノ粒子)と同様のものだ、という。

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・アークトゥルス社のLNP についての安全性や生体内分布に関する研究は明らかにされていない。

・sa-mRNA の大きさは、(追加の複製機構配列により) 従来のものより最大3倍もある。

・「そのため、合成中に生成物関連の不純物が増加したり、その大きさが理由となりクロマトグラフィー(分離・精製)段階で結合能力が低下するなど、製造中の問題を引き起こす」

・欠陥のあるsa-mRNAが注入されると細胞内で増幅され、欠陥タンパク質の濃度が高くなる。

・ほとんどの saRNA ワクチンは、アルファウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス (VEEV)、シンドビス ウイルス (SINV)、またはセムリキ森林ウイルス (SFV) のゲノムに由来するものである (以下の図を参照)。

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・saRNA ワクチン構築においては、原料として使用されているアルファ・ウイルスの構造タンパク質が抗原遺伝子 (COVID-19ワクチンのスパイク・タンパク質のこと) に置き換えられる。

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・どれだけ「増幅されたmRNA」が生成されるかの記載はない。

・どれだけのスパイク・タンパク質が生成されるかの記載はない。

・(複製の際に酵素の働きをする)ウイルス・レプリカーゼは、まずポジティブ・センスゲノムを鋳型として使用して、相補的なネガティブ・センスRNAを合成し、その後、そのネガティブ・センスRNAが、ゲノムおよびサブゲノム*のポジティブ・センス鎖RNAの合成の鋳型として利用される。
訳註・・・DNAの2本の鎖のうち、遺伝子情報が書き込まれている方を「ポジティブ・センス鎖」あるいは「プラス鎖」、そのポジティブ・センス鎖を補完するもういっぽうの鎖を「ネガティブ・センス鎖」あるいは「マイナス鎖」と呼ぶ。
*完全なゲノム(遺伝子情報)ではないが、その構造に準じる構造をもつもの


----サブゲノム RNA はウイルス・ゲノムよりも過剰に生成される 。

----この過程により、従来のmRNAと比較して、抗原*の発現の程度や持続性が増す。
*免疫応答を引き起こす物質のこと

----遺伝子が付加された細胞において、RNAが自己増幅すると、細胞が消耗し、 dsRNA(二本鎖RNA)干渉*による免疫刺激が生じ、それに伴い宿主細胞の抗ウイルス反応が止まってしまうことになる。
*dsRNA干渉・・・二本鎖RNAと相補的な配列を持つmRNAが特異的に分解される現象

----多くの点において、このような過程はウイルス感染を模倣したものであるため、抗原特異的なB細胞応答やT細胞応答*を強化することになる。
*細胞応答・・・免疫系の細胞が反応して侵入を防いだり、攻撃し排除するような働きのこと

・RNAの自己増幅や抗原の発現がどれほど持続するかを明らかにする必要は依然としてある。

----ルシフェラーゼ(発光酵素)を組み込んだsaRNAを注射した結果、効果は1ヶ月で基本水準に戻ることがわかった。

----さらに理論的には、もしsaRNAが出芽能を持つウイルス糖タンパク質*を発現していれば、小胞内で放出され、さらなる細胞へのsaRNAの移行につながるかもしれない。このことは、saRNAワクチンの安全性評価において考慮されなければならない問題である。
*ウイルス糖タンパク質・・・タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの

・DNAの混入はあるのか?もちろんある。

----saRNAとtaRNA*は、mRNAと同様に試験管内での転写合成とキャップ構造*の付加により産生される。
*taRNA・・・トランス(転写)するRNAのこと
*キャップ構造・・・5'末端塩基の三リン酸にメチルGTPが5'−5'向きに結合したもので、RNAの5'末端の保護や翻訳を補助する働きを持つ


・「自然免疫の活性化を回避するいくつかの手段が適用できる; しかし、sa/taRNAワクチンの場合、ヌクレオシド(塩基と糖の結合物の一種)修飾*は増幅の段階で失われ、あまり有益ではない。
*修飾・・・RNAがもつ塩基構造が転写後に少し変化することを修飾という。

・mRNAワクチンとは対照的に、細胞内RNA増幅はdsRNAとなり、自然免疫応答をより強力に活性化する。RNAはTLR3、TLR7など複数のパターン認識受容体*によって認識される。
*パターン認識受容体・・・細胞において病原体由来分子パターンを認識する受容体の総称

----その結果、シグナル伝達カスケード(通路)は、I型インターフェロン*(IFN)と炎症性サイトカイン*の産生につながる。
*インターフェロン・・・動物体内で病原体や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のこと。
*サイトカイン・・・炎症の重要な調節因子で細胞から分泌される低分子のタンパク質の総称


----自然免疫反応には特異的免疫反応を促進するアジュバント効果があるが、RNA分解を誘導し、抗原発現を低下させることもある。

----saRNAワクチンの使用に際して、IFN活性化を減少させる方針が記載されている。

・LNP製剤にもアジュバント効果がある。


sa-mRNAを製品化しようとしている企業一覧

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私の懸念・・・自己増幅型mRNAは伝播するのではないか?

・ファイザー社は、同社の製品が吸入や皮膚接触による「環境暴露」をもたらすことを認めている。

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・しかし、LNP/mRNAやエクソソーム/mRNAを介して、ファイザー社やモデナ社のCOVID-19 mRNAワクチン接種者から少量でも伝播を受けたとすれば、その人はワクチンによる免疫はついていない。
*エクソソーム・・・エンドサイトーシス(細胞が細胞外の物質を取り込む機構の一種)により細胞内にできたエンドソームがさらに陥入することで作られた膜小胞が、細胞外に放出されたもの

・その人の免疫系がその伝播物を破壊するので問題はない。

・しかし、自己増幅型mRNAの伝播を受けたとしたらどうだろうか?

・そうなると、理論的には、そのmRNAは伝播を受けた人の体内で未知の量の複製物を丸1カ月作ることができることになる。1ヶ月もあれば、永久的な内部損傷を引き起こすのに十分だと言える。

・この危険性については、未研究だ。

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結論

 日本は世界で初めて自己増幅型 sa-mRNA COVID-19ワクチンを承認した。以下にこの技術がもたらすと懸念される問題点を列挙する。

・mRNAの用量は少なくて済むが、複製されるスパイク・タンパク質の量は多く、生じる副作用一覧は従来のmRNAと同じである。利益といえるかどうかは疑問だが、大手製薬会社の生産費用の削減にはなる。

・アークトゥルス社はファイザー社と同様に独自の脂質ナノ粒子 (LNP) を使用しているが、生体内分布や安全性に関する研究は行われていない。

・これらのLNPは、血液脳関門や胎盤関門を越えて、外来のプソイドウリジン*修飾sa-mRNAを全身に送達する。
*プソイドウリジン・・・tRNAやリボソームRNAに微量含まれる塩基.

・人体を単なるスパイク・タンパク質の工場ではなく、スパイクsa-mRNA及びスパイク・タンパク質の生産工場に変えてしまう。

・DNA プラスミド*の混入も依然として発生する。
*プラスミド・・・細胞内で染色体から独立して増殖できる環状の二本鎖DNA

・sa-mRNA はファイザー社製mRNAの3倍の長さ(独自の複製機構のための遺伝子情報が追加されているため)があるが、これは製造中に不純物が製造される危険性が高くなることを意味する。

・精製がさらに困難になるため、DNA混入はさらに深刻になる可能性がある。

・ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEEV)のゲノムを複製機構に使用している。

・欠陥のあるsa-mRNA配列が体内で増幅され、未知の結果をもたらす変異タンパク質が生成される危険性が増加する。

・sa-mRNA は細胞内で最長1か月間、増幅されるが、どのくらい量産されるかは分かっていない。(複製源のsa-mRNA はプソイドウリジン修飾されているが、細胞内で複製された複製物は修飾されていないため)。

・sa-mRNA 増幅の忠実度は不明であり、未検証である。

・スパイク・タンパク質の生成量は未知である。

・変異したスパイク・タンパク質と非スパイク・タンパク質を生成量は未知である。

・小田氏による日本の研究では、ファイザー製のCOVID-19追加接種と同じ副作用症状一覧が示されている(これは悪い兆候だ)。

・製造業者はRNAワクチンの候補となる薬品を迅速に生産することができ、例えばインフルエンザ・ワクチン候補となる薬品は、わずか8日で生産されたと報告された(これもよい兆候を示す話ではない)。

・研究では、mRNAが宿主ゲノムに組み込まれる危険性はないと主張されているが、それを裏付ける証拠はない。

・免疫応答を刺激するdsRNA中間体を生成するが、その効果(および副作用)は完全には理解されていない。

・自己増幅型 mRNA では、伝播はさらに危険になる。

・伝播を受けた人は、約1か月間、未知の量のsa-mRNAを生成し始め、永久的な損傷を引き起こす可能性がある。

・最終的には、sa-mRNA全体がゲノムに組み込まれると、スパイク mRNA が無限に増幅される (そしてスパイク・タンパク質が生成される) ことになる。

・長期的な安全性研究はおこなわれていない。

 この自己増幅型mRNA 技術は、ファイザー社とモデルナ社のCOVID-19mRNA ワクチンで経験したことよりもさらに大きな被害を引き起こすように思える。

 こんなワクチンに興味は湧かない。



Dr.William Makisは、放射線学、腫瘍学および免疫学の専門知識を有するカナダ人医師である。州知事賞、トロント大学奨学生。100以上の査読付き医学出版物の著者。
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マスク氏、ウクライナの刑務所での米国人ジャーナリストの死亡に反応

<記事原文 寺島先生推薦>
Musk reacts to death of US journalist in Ukrainian prison
スペースXとテスラ社のCEOである同氏は、ブロガーのゴンサロ・リラ氏の運命についてウクライナ政府と米国政府を非難
出典:RT  2024年1月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月15日



ファイル写真: SpaceXとテスラ社CEOイーロン・マスク氏© Global Look Press / Ron Sachs


 イーロン・マスク氏は、キエフで投獄され、最終的にウクライナにより拘留されていた中で死亡した米国人ジャーナリスト、ゴンサロ・リラ氏の事件における米国当局の無策を非難した。現地当局はリラ氏の深刻な健康問題を長い間無視してきたが、一方リラ氏はウクライナに対するロシアの軍事作戦を正当化した容疑で拘留されたままだったという。

 リラ氏はウクライナに移住し、2010年に地元の女性と結婚した。ロシア当局とウクライナ当局の間で長くくすぶっていた緊張が2022年2月に軍事衝突に転じると、ジャーナリストであるリラ氏はソーシャル・メディアでこの戦闘を積極的に報道し始めた。同氏はまた、このような事態におちいった原因はウクライナ当局とその西側支援諸国のせいだとし、ウクライナにはロシアに勝つ好機はないと主張した。

 亡くなったとき55歳だったリラ氏はまた、ウクライナを「民主主義国家」として描こうとする西側報道機関の報じ方を批判し、ウクライナで蔓延する汚職を指摘し、リラ氏の主張によると、さまざまな権力により「失踪」させられたというゼレンスキー反対派のリストを公表していた。


関連記事:State Dept confirms death of US journalist jailed by Ukraine – TASS

 米国務省は金曜日(1月12日)、ロシアのタス通信の報道により、リラ氏の死亡を確認した。同氏は2023年5月からウクライナのハリコフ市で公判前拘留されていた。ニュース・ウェブサイト「ザ・グレイゾーン」によると、同氏は昨年10月以来、肺炎と肺虚脱による重度の健康上の問題を抱えていたという。同サイトが引用したリラ氏自身のメモによると、ウクライナ当局は12月22日に初めてこの問題を認めたという。

 「こんなめちゃくちゃな話はない!」マスク氏は土曜日(1月13日)、X(旧ツイッター)上で、同じくリラ氏に対するジョー・バイデン米大統領の無策を非難した起業家で投資家のデービッド・サックス氏による投稿にコメントを残した。


関連記事:Trump Jr. condemns Zelensky for US journalist’s ‘murder’

 「バイデン政権は電話一本でゴンサロ・リラ氏を取り戻せたかもしれないが、何もしなかった。だからこそ、ウクライナ政府は、リラ氏に何をしても罰を受けずに行動できることを知っていたんだ」とサックス氏は書いた。同氏はまた、リラ氏の事件はウクライナが「凶悪で無秩序な政権」によって支配されていることの証拠だと述べた。

 マスク氏は先月、キエフに対する米国のやり方に疑問を呈し、ロシアとの紛争のさなかウクライナ当局を支援するために「1000億ドル以上を送金したにもかかわらず、米国人がウクライナで投獄されている」ことがどうしてあり得るのかと疑問を呈した。同氏はまた、ウクライナでウラジミール・ゼレンスキー大統領を「単に批判しただけ」という理由で投獄されるのは「深刻な問題」だと述べた。その後、テスラとスペースX社のCEOである同氏は、ウクライナ大統領に状況を明確にするよう求めた。

 土曜日(1月13日)には、ドナルド・トランプ元大統領の息子であるドナルド・トランプ・ジュニア氏もこの問題に言及した。同氏はリラ氏の死を「殺人」であると非難し、米国民が殺害された国に援助を送る米国の政策に疑問を呈した。

 ウクライナ当局は、リラ氏の活動を警戒対象にしたのは正当なことだと主張、同ジャーナリストが「武力侵略を正当化する資料を作成・配布した」ほか、同国軍に関する「捏造」を流布した疑いがあると繰り返し述べている。
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イスラエルは、世界法廷のジェノサイド評決を恐れている

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel is Terrified the World Court Will Decide It’s Committing Genocide
筆者:マージョリー・コーン(Marjorie Cohn)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2024年1月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月14日


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2018年7月23日、オランダのハーグにある国際司法裁判所の内観。2018年7月23日、ABDULLAH ASIRAN / ANADOLU AGENCY / GETTY IMAGES


この約3カ月間、イスラエルは、パレスチナ人への残虐な犯罪行為に対して実質的に免罪を享受してきた。それが12月29日にできなくなった。ジェノサイド条約の締約国である南アフリカが、イスラエルがガザでジェノサイド(集団大虐殺)を犯していると主張する84ページの申請書を国際司法裁判所(ICJ、または世界裁判所)に提出したからだ。

南アフリカの確固とした資料に基づく申請書は訴えている。「イスラエルによる行為や不作為は、...... ジェノサイド(集団大虐殺)的な性格を有していて、ガザのパレスチナ人を国家的、人種的、民族的集団の一部として殲滅するという具体的意図をもって行われたものである」。そして「イスラエルの行為は、イスラエルの国家機関、国家の代理機関、そしてその他の人々や組織が、その指令や統制や影響の下に行動していて、ガザのパレスチナ人との虐殺において、ジェノサイド条約に基づく義務に違反している。」

イスラエルは、ICJ(国際司法裁判所)がガザでジェノサイドを犯していると認定するのを阻止するため、全面的な圧力をかけている。1月4日、イスラエル外務省は各大使館に対し、受け入れ国の政治家や外交官に圧力をかけ、ICJでの南アフリカの提訴に反対する声明を出すよう指示した。

南アフリカは申請書の中で、イスラエルがガザで大量虐殺を行なっているという主張を裏付ける8つの申し立てを挙げている。それらは以下のとおりである。

(1) ガザでパレスチナ人を殺害していること。21,110人以上の死者のうち、女性や子どもの割合が多く(約70%)、中には即刻処刑された者もいるようだ。

(2) ガザのパレスチナ人に対し、深刻な精神的・身体的危害を加えたこと。その中には、身体傷害、心理的外傷、非人道的で卑劣な扱いを含む。

(3) 子ども、高齢者、病人、負傷者を含む、ガザにいるパレスチナ人の約85%を強制退去させ、移住させている。イスラエルはまた、パレスチナ人の家、村、町、難民キャンプ、地域全体の大規模な破壊を引き起こし、パレスチナ人のかなりの割合が故郷に戻ることを妨げている;

(4) 包囲されたガザのパレスチナ人に必要な人道支援を妨げ、広範な食糧不足、飢餓、飢餓、脱水を引き起こしている。必要な食料、水、燃料、電気を遮断し、パン屋、製粉所、農地、その他の生産・生活手段を破壊している。

(5) 190万人の国内避難民を含むガザのパレスチナ人に対し、適切な衣服、避難所、衛生、公衆衛生の提供を怠り、制限した。このため、避難場所を日常的に標的とし、破壊し、女性、子ども、高齢者、障害者を含む避難している人々を殺傷している。

(6) ガザのパレスチナ人に対し、医療を提供すること、またはその医療提供を保護することを怠っている。それには、大量虐殺行為によって深刻な身体的被害を引き起こしている医療上の必要性を含んでいる。これは、パレスチナの病院、救急車、その他の医療施設への直接的な攻撃、パレスチナの医師、医療従事者、看護師(ガザで最も有能な医療従事者を含む)の殺害、ガザの医療システムの破壊と無力化によって生じている。

(7) ガザの生活基盤施設、学校、大学、裁判所、公共施設、公文書、図書館、商店、教会、モスク、道路、公共施設、その他パレスチナ人の集団生活を維持するために必要な施設を破壊することによって、ガザにおけるパレスチナ人の生活を破壊している。イスラエルは、家族全員を殺害し、口承史料をすべて抹消し、社会の著名人や著名人を殺害している。

(8) パレスチナ人女性、新生児、乳幼児、子どもたちに加えられた出産・育児に関する暴力を含め、ガザにおけるパレスチナ人の出産を阻止することを意図した措置を課している。

南アフリカは、ジェノサイドを意図している直接的な証拠となる、イスラエル政府高官の無数の発言を挙げた。

「ガザは以前のようには戻らない。ガザが以前の状態に戻ることはない。われわれはすべてを排除する」、とイスラエルのヨアヴ・ギャラント国防相は述べた。「ガザが以前のように戻ることはない。数週間、あるいは数カ月かけて、あらゆる場所で排除は行なわれるだろう。」

イスラエルのアヴィ・ディヒター農業大臣は、「我々は今、実際にガザのナクバ(1948年のパレスチナ人強制排除)を展開している」と宣言した。

クネセト副議長で外交安全保障委員会のニシム・ヴァトゥリ委員は、「いまやわれわれは、地球上からガザ地区を消し去るという共通の目標を持っている」、と宣言した。


国際司法裁判所(ICJ)で南アフリカを敗訴させるイスラエルの戦略

イスラエルとその主要な後援者である米国は、南アフリカの国際司法裁判所(ICJ)申請の重大さを理解しており、憤慨している。イスラエルは通常、国際機関を馬鹿にしているが、南アフリカの訴訟は深刻に受け止めている。2021年、国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルによるガザでの戦争犯罪疑惑の調査を開始したとき、イスラエルは調査の正当性を断固として拒否した。

テルアビブ大学の国際法専門家であるエリアフ・リーブリッヒ教授はハアレツ紙に語った。「イスラエルは通常、このような手続きには参加しない。しかし、これは国連の調査委員会やハーグの国際刑事裁判所(ICC)ではない。それは国際司法裁判所(ICJ)であり、イスラエルが加盟した条約から権限を得ているため、権限がないという通常の理由で拒否することはできない。それは国際的な威信を持つ機関でもある」。

イスラエル外務省の1月4日付の公電によれば、イスラエルの「戦略的目標」は、ICJが南アフリカによるイスラエルのガザでの軍事行動差し止め請求を却下し、イスラエルがガザで大量虐殺を行なっていると認定することを拒否し、イスラエルが国際法を遵守していると裁定することだという。

同公電は、「同裁判所による裁定は、法律の世界だけでなく、現実的な二国間、多国間、経済、安全保障に大きな影響を及ぼす可能性がある。私たちは、次のような明確な声明を直ちに発表することを求めます。『あなたの国は、イスラエルに対してなされたとんでもない、不条理で根拠のない申し立てを拒否することを、公然と明確に表明することを求める』」、と述べた。

この公電は、外交官や政治家の高官に対して、次のように促すことをイスラエル大使館に指示している。「イスラエルは、大量虐殺テロ組織による10月7日の恐ろしい攻撃の後、自己防衛のために行動しながら、ガザへの人道支援を拡大し、市民への被害を最小限に抑えるために(国際的な関係者とともに)取り組んでいることを公に認めるように」、と。

「イスラエル国家は、南アフリカの不条理な”血の名誉毀損*”を払拭するため、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に出廷する」と、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の報道官エイロン・レヴィは宣言した。南アフリカの申請は「法的なメリットがなく、卑劣な宣伝と法廷侮辱にあたる」と彼は述べた。

イスラエルは、「血の名誉毀損」(ユダヤ人がキリスト教徒の子どもたちを儀式の犠牲にしたと誤って非難する反ユダヤ主義的な表現)の卑劣な告発などに、あらゆる手段を講じている。

「人種差別と闘うことを誇りとする虹の国(民族多様性の国)が、反ユダヤ人種差別主義者のために無償で闘うとは、なんと悲劇的なことか」とレヴィは皮肉った。彼は、ガザのハマス壊滅のためのイスラエルの軍事作戦は、ユダヤ人の大量虐殺を防ぐためのものだという驚くべき主張をした。

古い格言にあるように、町から追い出されそうになったら、群衆の前に出てパレードを先導しているように振る舞え。

バイデン政権は同盟国イスラエルを守るために立ち上がった。ジョン・カービー米国家安全保障会議報道官は、南アフリカのICJ申請を「メリットがなく、逆効果で、まったく事実無根だ」と非難した。カービー報道官は、「イスラエルはパレスチナの人々を地図から消し去ろうとはしていない。イスラエルはガザを地図から消し去ろうとしているのではない。イスラエルは、大量殺戮を行うテロリストの脅威から自国を守ろうとしているのだ」と、イスラエルのとんでもない主張を繰り返した。

イスラエルが大量虐殺を防ごうとしているというカービー報道官の主張は、10月7日にハマスが1200人のイスラエル人を殺害して以来、イスラエル軍が少なくとも22,100人のガザ人を殺害し、そのうちの約9,100人が子どもであるという事実を考えれば、とりわけ馬鹿げている。少なくとも57,000人が負傷し、少なくとも7,000人が行方不明になっている。計り知れない数の人々が瓦礫の下敷きになっているのだ。


イスラエルに対する暫定措置は直ちに影響を与えることができる

南アフリカはICJに対し、「ジェノサイド条約に基づいて、パレスチナ人に対する、さらなる深刻かつ回復不能な被害から彼らを守る」ために、暫定措置(暫定的差止命令)を命じるよう要請している。南アフリカはまた裁判所に、「イスラエルのジェノサイド条約に基づく義務を遵守させ、イスラエルにジェノサイドに関与させないこと、ジェノサイドを防止し処罰すること」を求めている。

南アフリカが求めている暫定措置には、イスラエルに対し、「ガザ内およびガザに対する軍事作戦を直ちに停止すること」、そして、「パレスチナ人を殺害し、身体的または精神的に深刻な危害を加えること、彼らの全部または一部を殺害することを意図した生活条件を彼らに科すこと、パレスチナ人の出産を妨害する措置を中止し、やめること」を命じることが含まれている。南アフリカはICJに対し、イスラエルがパレスチナ人を追放し、強制的に避難させ、食料、水、燃料、医療品や援助を奪うことをやめるよう命じることを求めている。

国連の司法機関であるICJは、国連総会と安全保障理事会によって選出された15人の裁判官で構成され、任期は9年である。国際刑事裁判所のような刑事法廷ではなく、国家間の紛争を解決するものである。

ジェノサイド条約の締約国は、他国がその義務を履行していないと考える場合、その国の責任を問うためにICJに訴えることができる。ボスニア対セルビアの裁判では、セルビアがジェノサイド条約の下でジェノサイドを防止し処罰する義務に違反したと裁判所が判断した。

ジェノサイド条約における義務は、「エルガ・オムネス・パルテス」、すなわち、国家がこの条約のすべての締約国に対して負う義務である。国際司法裁判所(ICJ)は、「このような条約においては、締約国は自国の利益を有しているのではなく、条約の存在意義である崇高な目的の達成という共通の利益を有しているだけである」と述べている。

国連憲章第94条は、紛争当事国はすべてICJの決定に従わなければならないと定めており、もしある当事国が従わない場合には、もう一方の当事国は国連安全保障理事会にその決定の執行を求めることができると定めている。

平均的なICJの裁判は、開始から終了まで数年かかることもある(1993年にボスニアがセルビアに対して初めて提訴してから、2007年に本案に関する最終判決が出されるまでには15年近くかかった)。しかし、裁判が直ちに影響を及ぼすこともある。国際司法裁判所(ICJ)への提訴は、国際社会がイスラエルの行為を容認せず、その責任を追及するという強いメッセージをイスラエルに送ることになる。

暫定措置は迅速に出される。例えば、ボスニアの裁判が開始されてから19日後、ICJは暫定措置を命じた。暫定措置は命令された当事国を拘束し、その遵守はICJと安全保障理事会の双方によって監視される。

国際司法裁判所(ICJ)が当事者間の紛争で下した本案に関する判決は、当事国を拘束する。国際連合憲章第94条は、「国際連合の各加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件についても、(国際司法裁判所の)決定に従うことを約束する」と定めている。裁判所の判決は最終的なものであり、上訴はできない。

南アフリカの暫定措置請求に関する公聴会は、オランダ・ハーグの平和宮にあるICJで1月11日と12日に開催される。公聴会の模様は、東部時間午前4:00-6:00、太平洋時間午前1:00-3:00に、同裁判所のウェブサイトおよびUN Web TVで生放送される。裁判所は公聴会後1週間以内に暫定措置を命じる可能性がある。


ジェノサイド条約の他の締約国も南アフリカの裁判に参加できる

ジェノサイド条約の他の締約国は、南アフリカが提訴した裁判への参加許可を求めるか、ICJにイスラエルに対する独自の申請を提出することができる。南アフリカの申請には、イスラエルのガザでの大量虐殺に言及した数カ国が名を連ねている。その中には、アルジェリア、ボリビア、ブラジル、コロンビア、キューバ、イラン、パレスチナ、トルコ、ベネズエラ、バングラデシュ、エジプト、ホンジュラス、イラク、ヨルダン、リビア、マレーシア、ナミビア、パキスタン、シリアが含まれている。

ヨルダンのアイマン・サファディ外務大臣は、南アフリカがICJでイスラエルに対して起こしたジェノサイド訴訟を支持すると発表した。サファディ外相は、ヨルダン政府がこの裁判を応援するための法的告訴に取り組んでいるとも付け加えた。トルコ、マレーシア、イスラム協力機構(OIC)もこの訴訟を支持すると発表した。

新たに結成された「パレスチナにおけるジェノサイドを阻止する国際連合」は、世界中の600以上の団体に支持され、ジェノサイド条約発動を締約国に促すために招集された。

同連合の主張は、「南アフリカによるイスラエルへのジェノサイド条約発動を支持する介入宣言は、国連によってジェノサイド犯罪認定が肯定され、すべてのジェノサイド行為を終わらせるための行動がとられ、その行為に責任を負う者が責任を問われる可能性を高めるだろう」としている。

1月の第1週、「CODEPINK」、「ワールド・ビヨンド・ウォー」、「RootsAction」が率いる「草の根外交官」の代表団は、ICJにおける南アフリカ対イスラエル裁判への介入宣言を提出するよう各国に促すキャンペーンを全米で展開した。活動家たちは12都市を回り、コロンビア、パキスタン、ボリビア、バングラデシュ、アフリカ連合、ガーナ、チリ、エチオピア、トルコ、ベリーズ、ブラジル、デンマーク、フランス、ホンジュラス、アイルランド、スペイン、ギリシャ、メキシコ、イタリア、ハイチ、ベルギー、クウェート、マレーシア、スロバキアの国連公館、大使館、領事館を訪問した。

「これは、各国政府に南アフリカの訴訟支援を集団的・社会的圧力をかけるまれな機会です」と、ニューヨークを拠点とするパレスチナの弁護士、ラミス・ディーク氏は述べ、その事務所でパレスチナ解放議会の戦争犯罪の正義、賠償、帰還に関する委員会を招集した。「私たちはもっと多くの国が訴訟介入を支援する必要があります。そして、米国の政治的圧力に耐えられるよう、裁判所には大衆の監視の目が必要なのです。」

全米法律家組合(National Lawyers Guild)のスザンヌ・アデリー会長は、「イスラエルと米国、そして欧州の同盟国が世界的に孤立を深めていることは、民衆運動が自国政府を動かし、これらの措置を講じ、歴史の正しい側に立つ方向へと導く重要な瞬間であることを示す指標である」と指摘した。実際、10月7日以来、世界中で何百万人もの人々がパレスチナ解放を支持して行進し、抗議し、デモを行なってきた。

「RootsAction」と「ワールド・ビヨンド・ウォー」は、他のジェノサイド条約締約国に対し、南アフリカによるイスラエルに対するジェノサイド訴訟への介入宣言をICJに提出するよう促すために、組織や個人が使用できる定型書式を作成した。

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マージョリー・コーンは、トーマス・ジェファーソン・スクール・オブ・ローの名誉教授であり、ナショナル・ロイヤーズ・ギルドの元会長、アサンジ弁護団とベテランズ・フォー・ピースの国内諮問委員、国際民主法律家協会の事務局メンバーである。著名な学者であり、講演家でもある。彼女の著作は『カーボーイ共和国;ブッシュ暴力団が法を無視する6つの方法』、『ドローンと標的殺害:法的、倫理的、地政学的問題』などがある。また、地元、地方、国内、国際的なメディアに解説を提供し、ラジオ「Law and Disorder」の共同司会者でもある。
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国際司法裁判所(ICJ)は厳しい選択を迫られている

<記事原文 寺島先生推薦>
The ICJ is Facing a Stark Choice
筆者:フラニー・ラスキン(Franny Rabkin)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2024年1月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月14日


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ガザのシュハダ・アルアクサ病院で避難民が避難する中、イスラエル軍の攻撃で負傷したパレスチナ人がベッドに横たわっている。 南アフリカはイスラエルを大量虐殺で非難した。 画像: ロイター/モハメッド・アル・マスリ


「ICJは厳しい選択に直面している。南アフリカに有利な判決を下して暫定措置を示すか、それともいまいましい国際法を忘れ去るかだ。」


「状況はこれ以上ないほど切迫している」と南アフリカは述べ、国際司法裁判所(ICJ)に「暫定措置を示す」よう説得している。その措置とは、イスラエルに対して拘束力のある暫定命令を出し、ガザでの軍事作戦を即時停止すること、パレスチナ人の殺傷をやめること、そして「([彼らの]殺戮をもたらすように計算された生活条件を意図的に与える」ことをやめること、である。

イスラエルは南アフリカの申請に対して書面による回答を提出していない。この準備段階では必須ではないが、木曜(1/11)と金曜(1/12)にハーグの平和宮殿で予定される暫定措置公聴会で申請に反対する予定だ。

イスラエルは南アフリカの申請を「血の名誉毀損」と呼んだ。

まだ回答書が出ていないため、暫定措置に関するイスラエルの訴訟は法的にはまだ明らかにされておらず、南アフリカの弁護士にさえも同様だ。南アフリカは木曜日(1/11)に申し立てを行い、イスラエルは金曜日(1/12)に返答する予定だ。

南アフリカはまた、次のことを暫定措置として裁判所に求めている。イスラエルがパレスチナ人の家からの追放をやめること、食料と水を剥奪するのをやめること、人道支援や医療物資へのアクセスを妨害するのをやめること、である。

同政府は、長期的には訴訟にとって重要な証拠の隠滅を防ぎ、事実調査団によるアクセスを許可する命令と、「前記証拠の確実な保存と保管を支援する」国際的な義務を望んでいる。

暫定措置公聴会は南アフリカのイスラエルに対する訴訟の最初の部分である。

もっと大きな問題は、やがて議論されることになるが、イスラエルがさまざまな方法で大量虐殺条約に違反しているということである。イスラエルは、条約第3条(a)に違反するガザ地区での大量虐殺を行なっているだけでなく、第1条に違反する大量虐殺を阻止できず、直接かつ公然と第3条(b)に違反する大量虐殺を共謀している。 第 III 条 (c) に違反して大量虐殺を扇動したこと、第 III 条 (d) に違反して大量虐殺を企てたこと、第 III 条 (e) に違反して大量虐殺に加担したこと、第 IV 条と第 V 条に違反して大量虐殺を処罰しなかったこと。他にもある。

しかし、暫定訴訟であっても、これらの違反容疑の範囲は重要である。なぜなら、この時点で南アフリカが法廷に示す必要があるのは、これが「妥当な」訴訟であることだけだ。暫定措置を実施するには、南アフリカが足を踏み入れるだけで十分なのだ。

訴訟手続きのこの段階では、裁判所は、南アフリカが保護しようとしている権利が存在することに満足しているかどうかを判断するよう求められていない。 南アフリカが本案に基づいて主張し、保護を求めている権利が「少なくとも妥当」であるかどうかを判断するだけでよい。

「少なくとも妥当な」事件を立証しようとして、南アフリカは84ページの申請書で、10月7日からずっと前のイスラエルのパレスチナ人に対する扱いに関する詳細で事実を重視した歴史を明らかにした。おぞましい事実が書かれている。そしてこの歴史に関する情報源のほとんどは国連の報告書である。

大量虐殺行為は「必然的に連続体の一部を形成する」と南アフリカは言う。

これは、ジェノサイドという用語を作ったラファエル・レムキンによって認識された概念であると申請書は述べている。

「この理由から、イスラエルの行為は、75年に及ぶアパルトヘイト、56年に及ぶパレスチナ領土の好戦的占領、16年に及ぶ封鎖中のパレスチナ人に対するものだったという広い文脈の中に大量虐殺行為を位置づけることが重要である」

南アフリカは、2006年のハマスの選挙勝利後のガザの「厳格な」封鎖に言及し、世界保健機関の報告では、この封鎖によりイスラエルが渡航制限を課し、緊急治療のためにガザを出るための医療許可を待っている間に839人が死亡したと指摘する。同国は、2007年から2010年にかけて「一人当たりの消費カロリーに応じて、食品の移動を「人道的最小限度」に制限するために課された食品輸入制限」にも言及する。

さらに南アは、漁業制限とパレスチナ人が農業に利用できる農地の縮小にも言及する。

「2015年に国連貿易開発会議は、イスラエルが課した制限措置により、2020年までにガザが居住不能になる危険性があると警告した」と申請書には記載されている。

申請書によれば、2000年9月29日から2023年10月7日までの間に、1,699人の子供を含む約7,569人のパレスチナ人が殺害された。これには、2001年、2008年、2009年、2015年、2019年の国連事実調査団による抜粋が含まれており、そのすべてがイスラエル国防軍による残虐行為や虐待、場合によっては戦争犯罪や人道に対する罪の可能性があることについて警鐘を鳴らしている。

2021年、パレスチナ領土の人権状況に関する特別報告者は、「残念ながら、占領行為におけるイスラエルの例外主義に対する国際社会の驚くべき寛容により、現実政治が権利を打ち破り、権力が正義に取って代わられ、責任を無視する免責が許された」と述べている。

このようにして、この申請書は、おそらくイスラエルからの反論の可能性を予期して、イスラエルの現在の行動が昨年10月7日のハマスの恐ろしい攻撃に対する具体的な対応であるという考えを払拭しようとしている。全体像としては、イスラエルがやっていることはこれまで何年もやってきたことと一致しており、ほとんど同じだが、限りなく悲劇的に悪化しているということだ。

このことは、申請書の中の、ハマスが支配していないヨルダン川西岸に関する部分によって裏付けられているが、申請書は「パレスチナ人をアパルトヘイト体制に従属させるためにイスラエルが適用している、差別的な法律、政策、慣行という制度化した体制」について詳述している。

これらには、隔離壁、差別的な土地区画、二重法制度、裁判なしの拘禁、日常的な暴力的な家宅捜索、拘留中の死亡などが含まれる。ヨルダン川西岸のイスラエル人はパレスチナ人よりも多くの水を手に入れており、パレスチナ人の家は入植者のための家を建てるために取り壊されている。パレスチナ人立ち入り禁止区域もある。これらの特徴は、南アフリカ人にはよく知られたものだろう。

申請書には、「入植者による極度の暴力の結果」10月7日以降、少なくとも2,186人のパレスチナ人がヨルダン川西岸で国内避難民になっていると記載されている。2023年、ヨルダン川西岸では495人のパレスチナ人が殺害され、そのうち295人が10月7日以降に死亡している。

これらすべては、10月7日のハマス攻撃後の出来事に至る前に、申請書によって詳しく説明されている。申請書は、ハマスによる民間人を狙った攻撃と人質の奪取を「明白に非難」している。

イスラエルの現在の戦争について、申請書は裁判所の介入の緊急性を強調し、ガザは「生き地獄」であり、「何が起こっているのか説明する言葉がない」という国連職員の言葉を引用している。

ガザには安全な場所はどこにもない、と国連事務総長は申請について詳しく語った。

申請のこの側面は南アフリカの訴訟にとって重要である。なぜなら、法廷でのイスラエルの反応はまだ明らかにされていないが、同国の報道官エイロン・レヴィが述べたように、政府は人道的回廊と安全地帯を創設したことを強調し、爆撃に先立って避難するよう民間人に警告しているからだ。イスラエルは、これらの行為は大量虐殺の認定に必要な特別な意図と両立できないと主張するかもしれない。

南アフリカの申請書には、「ガザのパレスチナ人は、自宅、避難場所、病院、UNWRA*の学校、教会、モスクで、家族のために食料と水を見つけようとして殺害された」と述べられている。彼らは、避難しなかった場合、避難先の場所で、さらにはイスラエルが宣言した『安全なルート』に沿って逃げようとした際にも殺害されている。」
*国際連合パレスチナ難民救済事業機関

申請書によると、強制避難は多くのパレスチナ人にとって恒久的なもので、推定35万5000戸の家屋が破壊され、これはガザ地区の全住宅量の60%に相当するという。

「ガザでの強制避難は、ガザのパレスチナ人の物理的破壊をもたらすように計算された状況で行われているという点で、大量虐殺である」と申請書は述べている。

イスラエルはパレスチナ国民を飢餓の瀬戸際に追い込んでいる、パレスチナ人のほとんどが飢えている、水の枯渇が深刻だ、とも申請書は述べている。

「専門家らは、ガザ地区のパレスチナ人は空爆よりも飢餓と病気で死亡する可能性が高いと予測しているが、イスラエルは爆撃作戦を強化しており、パレスチナ人への人道支援の効果的な提供を妨げている。イスラエルがガザでの行動や政策を通じて、パレスチナ人を殺戮するように意図的に計算された生活条件を与えていることは明らかだ。」

同申請は「大量虐殺の意図の表現」のリストを作成しており、殺害、負傷、強制退去、破壊のレベルと組み合わせると、「大量虐殺が進行中であり、継続している証拠」であるとしている。

リストにはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、アイザック・ヘルツォーク大統領、ヨアヴ・ギャラント国防相、イトマール・ベン・グヴィル国家安全保障相らの発言が含まれている。

この文書には、他の「元国会議員やニュースキャスターを含むイスラエル社会の著名なメンバー」の発言も含まれており、南アフリカ政府は、これらは明らかに直接的かつ公然と大量虐殺を扇動しているものの、「イスラエル当局によるチェックも処罰も受けていない」と主張している。

ここで南アフリカは、これらの発言の一部はイスラエル国家の代表者によってなされたものではないというイスラエルからの別の主張を予想しているのかもしれない。しかし、それらは国家が大量虐殺を防止しているのか、それとも大量虐殺を処罰しているのかに関係するだろう。大量虐殺も条約で罰せられるため、暫定措置を示す裁判所の権限を発動することができる。

イスラエルの件について何も知らなければ、南アフリカの強さを評価するのは難しい。しかし、多くの国際法の専門家や解説者は、裁判所が自らの判断を含む法律と事実に基づいて決定を下すのであれば、特に暫定措置に関しては南アフリカの訴えが有力であることに同意している。

一部の人にとって、この事件は法廷そのもの、そして長年批判の対象となってきた国際公法の体系全体に対する試練となるかもしれない。

西安交通リバプール大学の学習・教育副学部長であるモーセン・アル・アタール氏は、最近のブログ投稿で次のように述べた。

「イスラエルは、ジェノサイド条約、ジュネーブ条約、そしてIHL(国際人道法)の最も基本的な原則に違反していることを白日の下にさらすことで、自らを窮地に追い込み、ICJには南アフリカの強硬な行動を受け入れる以外に選択肢がなくなった。

ICJは厳しい選択に直面している。南アフリカに有利な判決を下して暫定措置を示すか、それともいまいましい国際法を忘れ去るかだ。」
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BRICS加盟国の南アフリカ、シオニズムを訴えて提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
BRICS Member South Africa Takes Zionism to Court
出典:INTERNATIONALIST 360° on JANUARY 10, 2024
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2024年1月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月13日


変更場増


イスラエルが行っている大量虐殺に対するプレトリア*の提訴は、ガザでのテルアビブの虐殺を止めるためだけでなく、世界の法廷に多極主義の最初の旗を立てるためにも極めて重要である。これは、西側諸国の免責を停止し、国連憲章で想定されている国際法を回復させようとする、多くの取り組みの最初のケースである。
*南アフリカ共和国の首都

国際法とは何かという完全な概念そのものが、今週(1月第2週)ハーグの裁判で争われる。世界中が見ている。

シオニズムによって展開された鉄の鎖を断ち切ろうとするには、アラブやイスラムの国ではなく、BRICSの一員であるアフリカの国が必要だった。それは、恐怖、経済力、絶え間ない脅威によって、パレスチナだけでなく地球のかなりの範囲を奴隷にしている。

歴史的な詩的正義のねじれによって南アフリカはアパルトヘイトについて1つか2つのことを知っている国になったのだが、それゆえ、道徳的に優位な立場に立ち、国際司法裁判所 (ICJ) でアパルトヘイトのイスラエルに対して最初に訴訟を起こさなければならなかった。

84ページの訴訟は、徹底的に議論され、完全に文書化されて2023年12月29日に提出されたもので、占領下のガザ地区で行われているすべての恐怖を詳述している。またその恐怖はスマートフォンを持つ世界中のすべての人が目撃しているものだ。

南アフリカは、国連の機構であるICJに対して、あることをきわめて率直に要求している。それは、イスラエル国家は10月7日以来、国際法上のすべての責任に違反していると宣言せよ!だ。

そして、それは決定的に、1948年のジェノサイド条約の違反を含んでいる。それによると、ジェノサイドは「国家的、民族的、人種的又は宗教的集団の全部又は一部を殺戮する意図をもって行われる行為」で構成されている。

南アフリカは、ヨルダン、ボリビア、トルコ、マレーシア、そしてイスラム諸国を統合したイスラム協力機構 (OIC) によって支援されている。その機構は57の加盟国で構成され、そのうち48の加盟国はイスラム教徒が多数派を占めている。これらの国々は、グローバル・サウスの圧倒的多数を代表しているかのようだ。

ハーグ*で何が起ころうと、イスラエルの大量虐殺を非難する可能性をはるかに超える可能性がある。プレトリアもテルアビブもICJ(国際司法裁判所)に加盟しているため、判決には拘束力がある。理論的には、ICJは国連安全保障理事会よりも重要な役割を担っている。国連安全保障理事会では、イスラエルの慎重に構築された自己イメージを傷つけるような事実があれば、米国は拒否権を行使する。
*オランダの事実上の首都。国際司法裁判所がある。

唯一の問題は、国際司法裁判所に強制力がないことだ。

実質的に南アフリカが目指しているのは、ICJがイスラエルに侵略とジェノサイドを直ちに停止する命令を出すことだ。それが最優先であるべきだ。


殺戮しようとする特定の意図

南アフリカの申請書の全文を読むのは恐ろしい作業だ。これは文字どおり、21世紀のテクノロジー中毒の若者の目の前で起こっている歴史であり、遠い宇宙で起こっている大量虐殺のSFではない。

プレトリアの申請には、全体像を示すという利点がある。その像は「75年間のアパルトヘイト、56年間のパレスチナ領土の好戦的占領、16年間のガザ封鎖の間のイスラエルのパレスチナ人に対する行為をより広い文脈において」捉えているからだ。

原因、結果、意図が明確に描写されていて、それは、2023年10月7日のパレスチナ抵抗軍によるアル・アクサ洪水作戦以来、繰り返された惨劇を超えたものとなっている。

それからさらに、「他の国際法違反に相当する可能性のあるイスラエルによる行為と不作為」がある。南アフリカは、それは「本質的にジェノサイドである。なぜなら、ガザ地区のパレスチナ人を、より広範なパレスチナ国民、人種、民族集団の一部として、殺戮するという必要不可欠な特定の意図(dolus specialis)を持って行われているからだ」としている。

申請書の9ページから紹介されている「事実」は残酷なものである。その事実には、民間人の無差別虐殺から大量追放まで含まれている。「ガザの人口230万人のうち190万人以上のパレスチナ人、つまり人口の約85%が家を追われていると推定されている。彼らが避難するための安全な場所はどこにもなく、避難できない、または避難を拒否することができない人々は、殺害されているか、自宅で殺害される危険性が非常に高い。」

もう後戻りはできない。「国内避難民の人権に関する特別報告者が指摘したように、ガザの住宅と民間の生活施設は破壊され、ガザの避難民が帰還する現実的な見通しが立たず、イスラエルによるパレスチナ人の大量強制移住の長い歴史が繰り返されている」。


殺戮に加担している覇権国

申請書の項目142にはドラマ全体が凝縮されているかもしれない。「全人口が飢餓に直面している。ガザの人口の93%が危機的レベルの飢餓に直面しており、4人に1人以上が壊滅的な状況に直面している。」―つまり死が差し迫っているのだ。

こうした状況を背景に、イスラエルのネタニヤフ首相は、12月25日、クリスマスの日に、虐殺的な表現をさらに強調し、「私たちは止めていません。私たちは戦いを続けています。私たちは今後も戦いを強化していきます。これは長い戦いになり、終わりには近づいていません」と述べたのだ。

そのため、「非常に緊急の問題として」、 「裁判所がこの事件を本案とする決定を下すまで」 、南アフリカは暫定措置を求めている。その第一の措置は、「イスラエル国がガザでの、そしてガザに対する軍事作戦を直ちに停止すること」である。

これは永久停戦に等しい。*ネゲブからアラビアまでのすべての砂は、米国の外交政策を担当するネオコンの精神異常者―彼らの飼い犬、遠隔操作された、老衰したホワイトハウスの占有者を含む―が、イスラエルの大量虐殺に加担しているだけでなく、停戦の可能性に反対していることを知っている。
*イスラエル南部の砂漠地方

ちなみに、ジェノサイド条約によれば、このような共犯も法律で罰せられる。

したがって、ワシントンとテルアビブが手段を選ばないことは当然である。あらゆる圧力と脅しの手段を使って、ICJによる公正な裁判を阻止するだろう。この裁判は、例外主義をかかげるワシントン-テルアビブ連合を国際法に従わせるためにどの国際裁判所も行使する極めて限られた権限とまったく同じものを使うことなる。

ガザへのイスラエルの前例のない軍事攻撃では3ヶ月足らずの間に人口の1%以上が殺害され、それに対して危機感を募らせているグローバル・サウスが行動を起こしているが、その一方で、イスラエル外務省は、自国の大使館の外交官や政治家に圧力をかけて次のような「即時かつ明確な声明」の発表を急がせた。「あなたの国がイスラエルに対してなされた言語道断で、不条理で、根拠のない主張を拒否することを公にかつ明確に表明すること」。

どの国がこの命令に従うかを見るのは、非常に啓発的なことになるだろう。

プレトリアの現在の取り組みが成功するかどうかは別として、これは、数ヶ月、あるいは数年後に世界中の裁判所で初めて提起される訴訟となる可能性が高い。南アフリカが重要な加盟国であるBRICSは、西側の覇権とその「規則に基づく秩序」に挑戦する国際機関の新たなうねりの一部である。この規則は何の意味も持たない。誰もこれを見たことがないからだ。

多極主義は、数十年にわたる国連憲章からの移行を是正し、これらの幻想的な「規則」に具体化された無法状態に突入するために出現したと言えるかもしれない。世界秩序を支える国民国家体制は、それを保障する国際法なしには機能しない。法律がなければ、私たちは戦争、戦争、そしてさらなる戦争に直面する。覇権国家が理想とする終わりのない戦争の世界だ。

南アフリカのイスラエルに対するジェノサイド訴訟は、国際システムに対するこれらの明白な違反を覆すために明らかに必要なものであり、世界を安定、安全、常識に戻すための、イスラエルとその同盟国に対する最初の訴訟になることはほぼ確実である。
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大胆な発言:ロシアとの関係改善で世界にメッセージを送るインド

<記事原文 寺島先生推薦>
Bold statement: India sends a message to the world by improving ties with Russia
ニューデリーが微妙なバランス感覚を保つ中、S・ジャイシャンカル外相のモスクワでの相互交流が西側諸国で注視されている。
筆者:アーリアマン・ニジャワン (Aaryaman Nijhawan)
国際関係研究者、政治評論家。デリー大学、モスクワ国立国際関係研究所(MGIMO)卒
出典:RT 2023年12月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月11日


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モスクワでの記者会見に臨むセルゲイ・ラブロフ外相とスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相。(スプートニク)


インド外務大臣スブラマンヤム・ジャイシャンカル博士の5日間の訪問が終了し、2023年は、古き友であるニューデリーとモスクワの二国間関係にとって、まさに比類なき年となった。両国は現在、強力で予測可能な、互恵的だがやや低迷している関係を再び活性化させるための明確な道筋をたどっていると考えることができる。

公式日程の一環として、ジャイシャンカル外相は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相やデニス・マントゥロフ副首相と会談した。そして、モスクワのインド人コミュニティと交流し、プーチン大統領とも歓談した。この歓談はクレムリンとしては異例のものだった。

ジャイシャンカル外相の今回の訪問は、ヨーロッパのみならず世界的に深い地政学的分裂を引き起こしているウクライナ紛争のために、重要な意味を持っている。インドは一貫して中立の立場を維持し、平和的手段による解決を追求するようすべての当事者に呼びかけてきた。そのため今回の訪問は、ロシアとインドの関係が重要な役割を果たしていることを浮き彫りにしている。なぜなら、欧米諸国がモスクワへの制裁やロシアの輸出品(特に石油や軍需品)のボイコットを求めているにもかかわらず、その訪問が行われたからだ。

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ジャイシャンカル外相は、インド人コミュニティとの約1時間にわたる交流の中で、世界政治におけるインドとロシアの関係は、「例外的な安定性と一貫性のある関係」であると指摘した。また、2つの大国間の関係の安定性を賞賛し、国家間のほとんどすべての関係には「良い時期」と「そうでない時期」があるが、インドとロシアの関係は1950年代初頭以来、世界政治において唯一不変のものであるとも述べた。

公式には、印露関係は特別かつ特権的な戦略的友好関係というユニークな称号を享受している。ウクライナ危機が始まって以来、ロシアとヨーロッパが地政学的な関係で断絶に見舞われた一方で、その後のロシアの東方重視とインドの中立は、冷戦時代の伝統的な同盟国間の爆発的な貿易と通商をもたらした。ジャイシャンカル外相は、この関係の重要性を強調し、この関係を育むために歴代の指導者たちが細心の注意を払ってきたことを強調した。

西側諸国がロシアの石油輸入に制限を課しているため、ロシアはインドの石油購入に熱い市場を見出した。アメリカとヨーロッパの同盟国が主導し、ロシア産原油に1バレルあたり60ドルという新たな価格上限が設定された。しかし、インドは欧米の価格上限を認めることを静かに拒否している。

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スロバキアで開催された「Globsec 2022フォーラム」で、ウクライナ紛争に対するインドのユニークな立場について質問された際、ジャイシャンカル外相は有名な反論をした。 「ヨーロッパは、『ヨーロッパの問題は世界の問題であり、世界の問題はヨーロッパの問題ではない』という考え方から脱却しなければならない」、と述べた。

演説の中で、ジャイシャンカル外相はまた、両国間の経済関係が著しい成長を示している時に、インドからロシアへの輸出を増やすことは歓迎されるだろうと強調した。このほか、両国で台頭している経済の担い手や情報システム、活動基盤についてよく慣れていないという課題も指摘された。また、文化交流の強化、企業間交流、観光、両国の市民社会組織間の協力などが、成長の可能性を秘めた分野として挙げられた。

インドの外務大臣はまた、12月28日にクレムリンでロシアのプーチン大統領と交流した。プーチン大統領は、インドとロシアの経済的パートナーシップの高まりを強調し、特に石油、石炭、ハイテク分野において、両国の商業的協力関係がより大きな投資が期待されると指摘した。

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<関連記事>ロシアからインドへの石油供給は世界市場の「大混乱」を防いだ―同省

インドは現在、石油のほぼ20%をロシアから輸入している。世界第3位の石油購入国であるインドは、増大する経済需要を賄うためのエネルギー純輸入国である。ロシアは最近、イラクとサウジアラビアを抜いて、インドにとって最大の供給国に浮上した。ロシアからの石油輸入は現在、インドの総石油需要の40%を占め、前年比44%の伸びを示している。

石油の輸入はまた、過去数年間、主に防衛装備品に限定されていた関係に新たな経済的推進力を与えている。両国は現在、商業関係を拡大・活性化させる方法を模索しており、モスクワはアジア市場との統合拡大を、そしてインドは経済的地位の上昇を後押しする新たなビジネス協力関係を模索している。

ウラジーミル・プーチンは、ナレンドラ・モディ・インド首相が来年ロシアを訪問するよう招待した。プーチンは、「平和的な手段でこの問題を解決するためにあらゆることをしたいという彼の願いを知っている」と述べ、ウクライナ危機についてモディは「何度も報告を受け」、常に実情を把握しているとも指摘した。

<関連記事> インドとロシアの関係は「前向きな軌道」に乗っている ― 外相

インドは、ウクライナにおけるロシアの行動を批判していると見られる国連決議への参加を一貫して拒否してきた。今年初め、ロシア大統領は、ニューデリーが近年獲得しようとしているインドの国連安全保障理事会常任理事国入りをモスクワが支持することを改めて表明した。水曜日(12月20日)のジャイシャンカル外相との共同記者会見でも、ラブロフ外相は同じことを繰り返した。

防衛、核、宇宙分野でのロシアとの協力拡大について議論した際、ジャイシャンカル外相は、観察者として注視せずにはいられないと強調した。インド人コミュニティとの交流の中で、彼は「これらの協力は、本当に高い信頼関係がある国とのみ行うものだ」と述べた。また、クダンクラム原子力発電所(KNPP)共同プロジェクトの拡大について重要な合意が交わされたと付け加えた。

特にインドは、西側諸国との関係を拡大する一方で、モスクワとの協力関係を深めるという難しい外交の綱渡りに成功している。今回の訪問は、インドが米国やその同盟国との距離を縮めつつある今、インドが自国の利益を追求するための独立した外交政策と戦略的自主性を示すものでもある。

インドとロシアの長年にわたる関係は、ジャイシャンカル外相の最近の投稿が最もよく表している。その投稿には、1962年に彼が父親と一緒に赤の広場に行ったときのソ連の訪問カードの写真と、クレムリンの前での最近の写真が掲載されており、「どのように始められたのか。どのように継続しているか」という解説が添えられている。
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グローバル・サウスのだれにも止められない行進:ロシアとアフリカはいかにして2023年を相互関係にとって極めて重要な年にしたのか

<記事原文 寺島先生推薦>
Unstoppable march of the Global South: How Russia and Africa made 2023 a pivotal year for bilateral relations
こうした多くの潮流は、来年以降もロシア政府とアフリカ友好諸国の交流を形成し続けるだろう。
出典:RT 2023年12月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月8日



© RT/ RT

 2023年は再び「アフリカの年」となったようで、この広大な大陸全体の発展に報道機関の大きな注目が集まった。実際、この地域の54か国と9つの中核地域連合 (SADC、ECOWAS など)には、報道すべきネタが豊富にある。

 2023年の一年間を通じて、失敗したクーデターや成功したクーデターがあり、交渉が停滞している間に紛争が勃発し、気候問題は食料安全保障の懸念によって影が薄くなった。同時に、BRICSが拡大し、アフリカ連合が正式な構成員としてG20への加盟を認められるなど、アフリカ大陸が勢いづいた1年だった。

 アフリカ大陸の外にいる多くの関係者にとって、アフリカ諸国との関与は新たな取り組みとなっている。ロシアは、この地域に対する外交政策の推進を再考し、2023年の新しい「対外政策概念」に示されたより建設的な方向性がそれを支えた。

 しかし、本記事においては、ロシアとアフリカの関係を形成し、その関係を強固なものにした主な出来事の概要を紹介する。


関連記事:Pavel Kalmychek: Why Russia and Africa is a natural partnership

ロシア-アフリカ首脳会談の価値が証明された

 第2回ロシア-アフリカ首脳会談(及びロシア-アフリカ経済・人道会議)は7月下旬にサンクトペテルブルクで開催された。重要な点は、ロシア側もアフリカの友好諸国側もこの会議を定期的に開催する方向を選んでおり、それにより互いの友好関係の枠組みを強化しようとしている点だ。最終宣言に加えて、参加諸国は「2026年に向けた行動計画」にも合意した。この計画は相互協力のための道筋を拡げるものだ。この新たな取り組みは、より実践的な志向をもとにしており、分野ごとの特定の取り組みの概要を示すものであるが、ロシアはこれらの文言を現地で実行に移す前に既に先行した取り組みをおこなっている。この移行を前に進めるために、「(世界)経済フォーラム」はロシアがすべきことを紹介しながら、より広範囲な政治的課題を補った。ここでもまた、あれこれの案の説明から「実地試験」への移行を期待している。そうすることでアフリカのロシア友好諸国が自らの経験を積み重ね、3年後には相互友好関係の効果が立証することになる、というわけだ。
 
 首脳会談は、いまは三年ごとに開かれることになっているが、優先事項や計画の調整のための折衝は常時おこなわれなければならない。この目標に向かって、ロシア-アフリカ友好関係は、様々な段階で、様々な問題に関して、さらには両側の相互安全保障の枠組みをとおした恒久的な政治的対話により維持されることになるだろう。この相互安全保障の枠組みについてだが、この動きは歓迎されるべき動きであるといえる。というのも、参加諸国が掲げる「安全保障」という概念は、様々な問題を取り囲む包括的な手法を反映したものだからだ。具体的には、テロや過激派、気候変動、不安定な食料供給、宇宙やサイバー空間で起こる可能性のある諸問題のことだ。このさきアフリカとロシアの国会議員たちは年次会議で面会し、会議の空き時間に当事者間で話し合いを持つことになるだろう。したがって、2023年は、多くの会議が形成された年ではあったが、その最初の結果を目にできるのは、翌年のことになる、ということだ。


2023年7月28日、サンクトペテルブルクでの第2回ロシアーアフリカ首脳会談での家族写真でカメラに向かうロシアのウラジーミル・プーチン大統領とアフリカ諸国の指導者たちや代表団© Alexey DANICHEV / AFP

BRICSが拡大、ロシアはアフリカからの声を歓迎

 8月にヨハネスブルグで第15回記念として開かれたBRICSでは、加盟国を11カ国に拡大することが決定された。なかでも、エジプトとエチオピアというアフリカの2国の翌年からの加盟が決まり、この世界有数の重要な会議での討議に加入することとなった。南アフリカがこの会議を主催したことは、BRICSが新しい時代に入ったことの証だといって間違いないだろう。

 エジプトとエチオピアが加盟したことで、BRICS内でアフリカからの声を軽んじることが難しくなった。
BRICSの拡大に対する熱い思いは、ロシア側でも新たに加わった国々でも同様に高まった。外交面におけるこのような決定的瞬間に引きずられて、新規加盟諸国は、間違いなくこの話し合いの場に利益をもたらすことになるであろう。


関連記事:BRICS expansion: What’s in it for Africa?

 2024年にロシアがBRICSの会議を主催することにより、この組織の機能が拡大され、世界を変えるような新たな決まりや基準や構造が打ち立てられることになるだろう。世界の多数派の中のもっとも力強い構成要素として、アフリカ諸国は、この新しい取り組みの貢献者としても現場としても、このような発展において利益を受けることになるだろう。

重要なことは、このような動きが経済と貿易における脱ドル化へ動きと共通した動きであることだ。この脱ドル化に伴い、より多くの国々が国家間の決済において自国通貨を使う方向へと準備を進めている。もしアフレキシンバンク(アフリカ輸出入銀行)が年内にアフリカ大陸の最大20カ国を「汎アフリカ決済システム」に参加させることに成功すれば、これは長年の国際経済の規則に対する重要な転換となり、金融主権の拡大を意味する。 ロシアはアフリカ諸国の仲間として、国家段階、そしてそれ以上の段階での解決策を模索している。

 12月初旬、アフレキシンバンクはカイロで「ユーラシア経済委員会」の代表団と会談し、貿易に残された障壁の撤廃、自国通貨の広範な使用、技術移転の見通しについて話し合った。 実施すべきことはまだたくさんあるが、今年はロシアとアフリカの貿易状況に前向きな変化をもたらした。ドルとユーロの割合は、わずか2年前の98.2%から8.5%へと著しく低下した。


2023年8月22~24日、南アフリカ・ヨハネスブルグで開催されたBRICS首脳会議。© Per-Anders Pettersson/Getty Images

防衛面における友好関係の強化に新たな弾み

 ロシアのユヌス・ベク・エフクロフ国防副大臣のアフリカ歴訪は、ロシア政府とアフリカ大陸の友好諸国との軍事協力の進展を示すものだった。

同副大臣は数ヶ月の間に、マリ、ブルキナ・ファソ、ニジェール、中央アフリカ共和国、リビアを訪問した。 これにより、同副大臣は国防大臣の意を受けた事実上「アフリカ軍団」の中心人物的役割を果たすようになった。

 このような計画が、ロシア政府とアフリカとの結びつきがより強固なものになったことを反映しているかどうかを判断するのは時期尚早だとしても、エフクロフ副大臣は本質的に、この地域にとって信頼できる戦略的友好大使として浮上している。友好関係の新たな段階は、接触強化や新たな協定によって最もよく反映されており、慎重かつ現実的な楽観主義を示唆している。西側諸国にとっては、むしろ望ましくない変化の前触れであり、それを阻止しようとした。実際、エフクロフのリビア訪問のわずか数日後には、AFRICOM(アメリカ・アフリカ軍)のマイケル・ラングレー米大将が交渉再開のためにトリポリに派遣され、ボリス・ピストリウス独国防相はクーデター後のニジェールとの協力再開に向けた政策転換を発表した(米国もその準備はできていた)。

 しかし、今日の安全保障とは、内外の脅威に対する抵抗力と、貧困削減、雇用創出、飢餓救済など目に見える社会的成果との相互作用である。新しい戦略の一環としてこれらも考慮されるのであれば、ロシアは友好関係にさらに真剣に取り組むことを宣言していることになる。


ブルキナ・ファソ滞在中のユヌス=ベク・バマトギレイェヴィチ・エフクロフ © Présidence du Faso

外交高官が頻繁に会談、ロシアは外交拠点を拡大

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、2023年を通じてアフリカ諸国の首都を頻繁に訪れている。南アフリカ、アンゴラ、エスワティニ、エリトリア、マリ、モーリタニア、スーダン、ケニア、ブルンジ、モザンビークで、より多くの食料安全保障、より多くの貿易、より多くの交流の展望について議論してきた。

 その都度、彼の任務の後には、合意に達したことを頓挫させ、対ロ制裁とウクライナへの軍事支援を大義名分としてアフリカ諸国政府を味方につけようとする欧米の外交官たちが続いた。二国間でも多国間でも、アフリカにかけられた圧力は想像に難くない。米国がプレトリアの独立的立場を理由にAGOA(アフリカ成長機会法African Growth and Opportunity Act)プログラムからの南アの追放を検討し、実際に中央アフリカ共和国、ガボン、ニジェール、ウガンダを追放したことを思い出せば十分だ。それでもほとんどのアフリカ諸国は中立を保ち、バランスの取れた建設的なアプローチを好んだ。多くの人々は、これをロシア勝利と高く評価した。しかし、より可能性が高いのは、アフリカの主体性と常識の勝利だったということだ。

 さらに2023年、ロシアはブルキナ・ファソと赤道ギニアに大使館を再設置することを約束し、エチオピアとナイジェリアでの貿易使節団を通じてこの地域での経済的足跡を固め、大陸との友好関係作りへとさらに活動領域を拡大した。

 より広範な外交上の存在感が必要とされるようになって久しい。1990年代に放棄されたものが、いまや復活しつつある。各大使館がまだ最初のロシア特使を迎えていないにもかかわらず、ロシア政府はすでにワガドゥグーやマラボとの関係を前進させている。ブルキナ・ファソが過渡期に国際的な承認を取り戻そうとしているときに、赤道ギニアは首都を島の港であるマラボから熱帯雨林の真ん中にある「平和都市(オワイヤラ)」に移そうとしている。


ブルンジ共和国ブジュンブラでの会談後、記者会見で握手するロシアのラブロフ外相とブルンジのアルバート・シンギロ外相。© Sputnik/Russian Foreign Ministry

ロシアがアフリカ人向け大学院研修を開始、教育交流で最高段階に到達

 12月下旬、モスクワで第1回e-Gov(電子政府)知識共有週間が開催された。この取り組みは、高等経済学校のアフリカ研究センターが企画し、非国家開発機関のインノ・プラクチカとロシア政府が支援した。アフリカの上級公務員を対象とした教育計画は、おそらくロシアで初めてのものだろう。研修の代わりに採用された「知識の共有」という革新的な形式は、一方的な指示によって議題や規則、価値観を押し付けるのとは対照的に、互恵的な交流を意味するものとして好評を博した。


関連記事:Africans are increasingly learning Russian. Why?

 23もの国々からデジタル統制部門の指導者層が集まり、ロシアの専門家とデジタル化の経験と展望について議論した。議論は、ロシアとアフリカの専門家が共同開発した「E-Governance in Africa 2024」という本とコンピューター・ネットワークのハブによって盛り上がった。この取り組みは永続的な友好関係のもと継続されることが期待され、2026年までの活動が計画されている。

 今年はまた、より多くのアフリカの学生をロシアに連れてくるという真の躍進が見られた。2023年初頭の時点で、約2万7000人のアフリカからの留学生がロシアの大学を選んだ。これは、1991/92年にわずか1万5000人の学生しか学びに来なかったソビエト時代後期の数字を大幅に上回る。

 2023年7月、アフリカ9カ国(ガーナ、エジプト、ジンバブエ、アンゴラ、マリ、ナミビア、ザンビア、ナイジェリア、南アフリカ)は、天然資源分野のスペシャリストを養成する大学の共同体を構築するため、ロシアで最も歴史のある工科大学であるサンクトペテルブルク鉱山大学と協定を結んだ。その結果、ロシアとアフリカの大学共同体である「ネドラ(「アフリカの底土」という意味)」が12月に設立され、アフリカ大陸の30以上の大学で構成されている。


ロシアのチタにあるトランスバイカル国立大学の教室で、カメラに向かうカメルーンの学生たち。© Sputnik/Evgeny Yepanchintsev

ロシア語の人気が急増

 2023年、ロシア教育省は10以上のロシア教育大学と共同で、アフリカ諸国に新しいロシア語教育センターを開設した。センターとクラスは現在、カメルーン、アルジェリア、チュニジア、エジプト、ウガンダ、マリ、ザンビア、ナミビア、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、コートジボワールで運営されている。

 チュニジア、モロッコ、エジプト、エチオピア、タンザニア、ザンビア、南アフリカ、コンゴ共和国、シエラレオネとの関係を促進するためにロッソトルードニチェストヴォ(独立国家共同体・在外同胞・国際人道協力局)が立ち上げたロシア・ハウスは、年間を通じて幅広い文化・教育活動を行い、国の外交努力に協力してきた。

 ロシア語と準備コースの人気は、ロシアの大学で学びたい外国人学生に提供される奨学金と直接結びついている。ロッソトルードニチェストヴォの報道部によると、昨年、奨学金を受けるための平均競争率は1カ所あたり約5人だったため、2023-24年度には奨学金の数が2300人から4700人に倍増したという。ギニア、アンゴラ、マリ、コンゴ共和国、エジプト、ナイジェリアが最大の経済的恩恵を受ける国である。


ニアメにあるニジェール空軍基地とフランス空軍基地の前で、ニジェール国土安全保障国民評議会(CNSP)の支持者がデモに集まった際、ロシア国旗をかぶった男性。© AFP

意思決定と科学的専門知識の著しい成長

 今年はロシアでアフリカに対する学術的関心が急上昇した年であり、最も重要な科学分野のいくつかでアフリカとの協力が改めて注目された年でもあった。 重要なのは、これがモスクワやサンクトペテルブルグでの開催にとどまらなかったことだ。むしろ、アフリカの友好諸国への働きかけにまで拡がった。

 たとえば、ブルキナ・ファソでデング熱が流行した際、ロシアのウイルス学者団が現地の専門家を支援し、デング熱の症例を観察するための移動検査室を配備した。この支援は、デング熱と闘うためにできるだけ多くの症例を報告することだけが目的ではなかった。むしろ、地元の能力開発という意味合いが強く、当局からも好意的に受け止められていた。その結果、首都ワガドゥグーで開催された「医療と主権」会議にロシアから専門家が招かれる道が開かれた。さらに重要なことは、この積極的な経験によって、ロシア政府によって承認された疾病と闘うための包括的な取り組みによって、さらなる関与の拡大が促進されたことである。この取り組みは2026年まで続く、12億ルーブル(約19億円)の資金援助を受けるものだ。

 サヘルの2カ国、マリとブルキナ・ファソに対して、ロシアは基礎的な原子力研究の訓練を提供し、原子力発電が国家開発の目標にもたらす可能性について、より幅広い認識を高める一助となった。

 広大なアフリカ大陸に隣接する島国マダガスカルでは、ロシアの卒業生と探検隊が、海洋世界、遺伝学、気候変動に関する相互研究を促進する協定を結ぶことができる。この場合も、地元のトアマシナ大学との対等な友好関係のもと、共同研究や交流が行われる。

 2023年5月、モスクワにあるHSE(ロシア国立研究大学経済高等学院)のアフリカ研究センターの専門家たちは、慎重な意思決定のための明らかな情報格差を埋めようと、包括的な『アフリカ2023ハンドブック』を発表した。本書は、ありきたりの手法を払拭し、アフリカで事業を行う際の危険性を評価する際に生じる適切な質問に対する答えを提供している。ロシアの「アフリカ・アクション・プラン」の実践的な手引書である本書は、すでにアフリカに関わるすべてのロシアの意思決定者にとっての手引書となっている。


ロシア、クラスノダール地方の科学と芸術のシリウス・パークで開催された第3回若手科学者会議。 © Sputnik/Evgeny Biyatov

ロシアの穀物がアフリカの食糧安全保障を強化

 ソマリアとブルキナ・ファソ向けのロシア産穀物を積んだ最初の2隻の船が、12月初旬に到着した。両国はそれぞれ2万5000トンの穀物を受け取った。この成功を受けて、年末までにさらに多くの穀物が中央アフリカ共和国、ジンバブエ、マリ、エリトリアに送られる予定である。

 人口が増加し、気候に関する圧力が高まるアフリカ諸国は、最も脆弱な国々における食糧不安を緩和するために、ロシアによる援助を歓迎しているようだ。その結果、ロシアは増大する需要に対応できる、信頼できる食糧安全保障の提供国として台頭してきた。ロシアは2022年に1150万トンの穀物をアフリカに輸出したが、2023年の上半期で、すでに1000万トンの大台に達した。


関連記事:Africa against neocolonialism: Why does the continent's struggle for self-sufficiency remain so difficult?

 しかし、穀物は諸問題の解決の一つの方法にすぎない。アフリカの人口の20%が直面している慢性的な飢餓は、生産効率の悪さや輸入が需要を満たせないことよりも、むしろ基盤施設の欠如が本質的な原因である。アフリカの飢餓の流れを変えるためには、ロシアは長期的な役割を果たし、アフリカ諸国の能力開発に頼る努力をおこなう必要がある。援助は必要な基盤施設と、精密農業や選抜育種の手引を備えた有資格者、農業機械、肥料の安定供給に充てられなければならない。2024年の幕が開ける時には、 ロシアはこの程度まで関与できる準備ができていなければならない。

ロシアとアフリカはスポーツ界の繋がりを強化

 今年、ソ連時代の伝統が復活し、ロシアのサッカーチームはカメルーンやケニアと親善試合を持った。これらの試合により、ロシアが置かれている厳しい国際環境の中で、ロシアのスポーツ界に新たな局面を開くものとなった。

 「政治がスポーツに圧力をかけることはできない」というのは、アフリカ・オリンピック委員会協会(ANOCA)が再確認した重要な提起であり、ロシアが長い間支持してきたことを本質的に支持するものである。国際オリンピック委員会(IOC)が最近、ロシア選手をオリンピックに再度出場させることに関する各国間の溝を埋めるための選択肢を模索していた際、アフリカ大陸の5つのオリンピック協会だけでなく、アフリカの個々の国々が表明した立ち位置が大きくものを言い、2024年パリ大会でのロシア選手が中立旗とともに出場することを認めるという今年の最終決議の前進につながった。この問題に関するアフリカ諸国の声は一致しており、モーリタニアのヌアクショットで開催された会議の後、アジア・オリンピック評議会でも同様の決定を出すよう反映させた結果、グローバル・マジョリティはこの動きを支持することになった。


トルコのアンタルヤにあるマルダン・スポーツ・コンプレックスで行われたサッカー親善試合、ロシア対ケニアの試合でボールを奪い合うロシアのアレクセイ・ミランチュク(右)とケニアのエリック・オティエノ。© Sputnik/Mikhail Shapaev

文化における関係がより緊密に

 イノプラクティカ・スクールが主導するダンスやバレエの振付大会は、2023年で4回目を迎え、世界中から才能あるダンサーが集まった。今回、ボリス・エイフマン・ダンス・アカデミーは、「世界的な価値観」の旗印のもと、セネガル、モザンビーク、ブルキナ・ファソ、ウガンダ、ルワンダ、ナイジェリアのアフリカ6カ国から10人のダンサーを迎えたことは特筆される。この催しは、サンクトペテルブルクでのロシア・アフリカサミットの際、有名なアレクサンドリンスキー劇場の舞台で開催され、ダンサーらは世界で最も熱心な取り組みの成果を見せてくれた。

 また、今年は「アフリカ文化・映画デー」が初めて開催され、ロシア人のアフリカに対する関心が高まった。

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 この記事はロシアとアフリカの関係における2023年についての記事であったが、この概観の枠では関連するすべての問題を収めることは確かにできなかった。しかし、上記のような出来事や潮流は今後も続くだろう。
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イスラエルのガザ戦争は、ヨーロッパの植民地支配の歴史そのものだ

<記事原文寺島先生推薦>
Israel’s War on Gaza Encapsulates the Entire History of European Colonialism
筆者:ハミド・ダバシ (Hamid Dabashi)
出典:Internationalist 360°  2023年12月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月8日


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2023年12月25日、ガザ地区中央部のマガジ難民キャンプに対するイスラエル軍の空爆で死亡した親族を悼む男性(Mahmud Hams/AFP)


シオニストがヨーロッパやアメリカの指導者たちから全面的な支持を得ているのは、「すべての獣を絶滅させる」という大量虐殺の衝動が彼らの精神の奥深くに埋め込まれているからだ。

ガザに閉じ込められた何百万人ものパレスチナ人が飢餓と大量虐殺に直面しているとき、イスラエルの侵攻軍は、「コンサートやマッサージチェア、ビュッフェ、その他」で贅沢をする「若返り複合施設」を楽しむ自分たちの姿を必ず撮影した。

自分たちの祖国でパレスチナ人を虐殺しながら、ちやほやされるイスラエル人を見るのはシュールだ。

これは、少なくともバルトロメ・デ・ラス・カサスの『インド諸島の破壊に関する簡潔な報告(A Short Account of the Destruction of the Indies)』(1552年)以来続いている入植植民地主義の種族ジェノサイドだ。彼はその中で、スペイン人の残忍な暴力行為を後世のために記録し、「野蛮なインド人」を大量虐殺する光景を詳細に記述した。イスラエルもパレスチナ人に対して同様のことを行なっている。

北アメリカや南アメリカ、オーストラリア、アジア、そしてアフリカなどに、ヨーロッパの入植植民者たちは、その病的ジェノサイドの痕跡を残している。

ヨーロッパの大西洋横断奴隷貿易によって、アフリカの人口は半減したと考える歴史家もいる。アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そして多くのアフリカ植民地はすべて、原住民の組織的な絶滅や強制退去、そして強制収容の上に築かれた。

現在、ガザや他のパレスチナ地区で激しく展開されているイスラエルの入植者=植民地主義において、ヨーロッパ植民地主義は、その殺人的悪名に従って行動しており、復讐心をもって世界の舞台に戻ってきた。

数十年にわたり、ヨーロッパ植民地主義の研究者たちは、世界中の先住民の計画的大量虐殺の事例を文書化し、アーカイブ化し、つなげるために精力的に働いてきた。

しかし、ガザやヨルダン川西岸では、そのような丹念な研究は必要ない。そこでは、イスラエル軍と入植者たちの蛮行が、ソーシャル・メディアやグローバル・サウスの主流メディアで、自分の目で確かめようとする人なら誰でも見られるように、十分に公開されているからだ。

イスラエルは、ヨーロッパ系アメリカ人による入植植民地主義の全歴史とその大量虐殺本能を、余すところなく全世界さらけ出した。

西側メディアは、イスラエルの殺人行為をごまかすために、たゆまず、恥知らずに働いている。「別の事実」を提供し、パレスチナ人を悪者にし、イスラエル人を尊崇し、シオニズムを浄化して、イスラエルが「最も道徳的な軍隊」であることを世界に保証している。しかし、世界は概して、彼らの悪質なジャーナリズムから解放されている。


入植者植民地主義ジェノサイド

イスラエルがパレスチナ人に対するジェノサイドを進める一方で、アメリカ議会はイスラエルの行動に反対する者を迫害し、ユダヤ人に対する架空の脅威を追及した。その動きは大富豪たちによっても支援されている。彼らは(大学にはもう金を出さないぞと)大学の学長たちを恫喝して正気を失わせているのだ。

数十年にわたり、先駆的な反植民地主義者やポストコロニアル*思想家による批判的思考は、ヨーロッパ人やアメリカ人によって世界中で行われた野蛮行為に対する私たちの認識を根本的に変えてきた。
*経済や文化、政治に残存する植民地主義の影響を明らかにし、現状を変革するための思想。「ポスト」という接頭辞は、様々な地域が解放された後に、現在もなお植民地主義の影響のもとにあることを強調するために用いられている。(知恵蔵)

米国では、批判的な人種理論家や横断的フェミニスト*が、「既成の」世界史に対して画期的な挑戦を行っている。
*全ての性が平等な権利を持つべきだという理由から女性の権利を主張する行為(フェミニズム)を支持する人

イスラエルはその植民地支配の歴史の縮図であり、すべてがシオニストの殻の中に詰め込まれている。

「数週間も経たないうちに、ガザでのイスラエルの軍事作戦によって殺された子どもの数は、私が事務総長になって以来、紛争当事者によって殺された子どもの数よりもはるかに多くなります」と、アントニオ・グテーレス国連事務総長は2023年11月30日に述べた。

しかし、パレスチナ人は一貫して非人間化され、彼らの運命は非歴史化され、イスラエル人はいわれのない攻撃に報復する犠牲者に仕立て上げられている。シオニストが欧米の支援を受けてパレスチナを征服した歴史は、一貫して抹消されている。パレスチナ人には歴史も人間性も文化もない。イスラエル人は天地創造の時からパレスチナにいた。福音的シオニズムは世界全体で最も重要な物語だった。

イスラエル人がパレスチナでやっていることは、フランス人がアルジェリアで、イギリス人がインドで、ベルギー人がコンゴで、アメリカ人がベトナムで、スペイン人がラテンアメリカで、イタリア人がアフリカで、ドイツ人がナミビアでやったことであり、ヨーロッパのジェノサイド史の新たな章である。

エッセイ『入植者植民地主義と先住民の抹殺(Settler Colonialism and the Elimination of the Native)』(2006年)の中で、「ヨーロッパ人の行なったジェノサイドと入植者植民地主義が、人種の文法を組織化することを典型的に用いてきた」経過をパトリック・ウルフは明示した。

さらに痛烈に、マルティニーク島(カリブ海の島)出身の作家で政治家であるエメ・セザール(Aime Cesaire)は、彼の1950年の重要な著作『植民地主義論(Discourse on Colonialism)』で、植民地主義者が先住民を奴隷化し、人間性を奪い、彼らの土地を奪い、労働を搾取し、資源を荒らすという悪質な動機を描写した。


マニフェスト・デスティニー(明白な運命)

どうしてある民族が他の民族にこんなことをするのか。もちろん、それは自分たちが神によって運命づけられたと思っているからだ。

シオニズムは、人種差別主義者の米国の教義 「明白な運命(manifest destiny)」のユダヤ版である。「マニフェスト・デスティニー」とは白人の人種的優位性を信じ、彼らが絶滅させたネイティブアメリカンや他のグループに対する米国の植民地支配の決定的な拠り所となっている。

「マニフェスト・デスティニー」と同様、シオニストたちは、パレスチナは彼らの約束の地であり、そこは彼らの神によって運命づけられ、約束されたものであり、先住民は残酷に排除されるべき厄介者であると信じている。



イスラエル軍がガザで行なっていることは、シオニスト版の「偉大な交代」理論である。その理論の主張は、有色人種が白人に取って代わりつつあり、そのプロセスは逆転させなければならないというものだ。

米国でこのような意見が出ると、真面目な新聞コラムニストたちはそれを嘲笑し、陰謀論だと一蹴する。しかし、そのような見解がイスラエルで表明されると、彼らはそれを支持し、承認し、イデオロギー的に武装し、武器にする。

アメリカの「マニフェスト・デスティニー」のイデオロギーの根底には、キリスト教の熱狂主義があった。これは現在、福音主義のシオニズムに変容しており、その目的は「聖地」を征服し、彼らのメシアの再来に備えることだ。(彼らが言うメシアは、パレスチナのイエス・キリストやラテンアメリカの解放神学とは何の関係もなく、アメリカの帝国主義的な想像力の完全な架空の構築物だ)。


「すべての野獣を根絶やしにせよ」

歴史家フレデリック・ジャクソン・ターナーは、1893年に発表した古典的なエッセイ『アメリカ史におけるフロンティアの意義』の中で、アメリカの入植植民地主義者たちは、自分たちが後に残したヨーロッパ文明と、「新世界」で直面する野蛮さによって、自分たちの運命が決められていると見ていたと説いた。

ターナーは、アメリカ人の性格はこれらの信念によって形成されていると信じていた。福音主義のシオニズムを通じて、あのフロンティア、「野蛮」に対するあの戦いが、イスラエルの入植植民地プロジェクトをパレスチナの抵抗に対して駆り立てているものだ。

ジョセフ・コンラッドの1899年の小説『闇の奥(Heart of Darkness)』では、アフリカの無名の土地(コンゴ自由国*と思われる)にベルギーの怪しい会社から送り込まれた象牙商人カーツが、「すべての獣を根絶やしにせよ」とつぶやく。
*「コンゴ自由国」は、かつてアフリカのザイール川流域に存在した国である。国と称しているが、実態はベルギー国王レオポルド2世の私領地であった。ベルギーの植民地時代を経て、のちに「コンゴ共和国」として独立を果たした。(ウィキペディア)

スウェーデンの作家スヴェン・リンドクヴィスト(Sven Lindqvist)は、1992年に出版した本のタイトルにこの言葉を使った。この本は、アフリカにおけるヨーロッパの植民地主義、人種差別、大量虐殺の根源について道徳的に考察したものである。

ハイチ出身のドキュメンタリー映画監督ラウル・ペック(Raoul Peck)は、リンドクヴィストの著書の一部を基に、2021年にHBOのミニシリーズ『Exterminate All the Brutes(すべての野獣を根絶やしにせよ)』を制作した際、ヨーロッパ植民地主義の蛮行を記録するために世界中を回ったが、パレスチナの状況は「複雑」であるというリベラル・シオニストの陳腐な言及を除いては、あえてパレスチナには近寄らなかった。

だが、パレスチナの状況は複雑ではない。征服、植民地化、ジェノサイドという悪質なヨーロッパ人入植者の狂気が、私たちの目の前で繰り広げられているのだ。

シオニストの背後には、ヨーロッパやアメリカ、カナダ、そしてオーストラリアの入植者たちの忠実かつ無条件の支援がある。

そのため、歴史的にヨーロッパの残忍さによって長らく苦しめられてきた世界全体が、パレスチナ人のようになったということだ。

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筆者のハミド・ダバシは、ニューヨーク市のコロンビア大学でイラン研究と比較文学のハゴップ・ケヴォーキアン・センターの教授で、比較文学、世界映画、ポストコロニアル理論を教えている。最近の著書に『二つの幻想の未来:西洋の後のイスラム』 (2022) などがある。最後のイスラム知識人:ジャラル・アル・エ・アフマドの生涯と遺産 (2021年);『植民地の視線の逆転:ペルシャの海外旅行者』 (2020年) 、『皇帝は裸である:国民国家の不可避な終焉』 (2020年) 。彼の本やエッセイは多くの言語に翻訳されている。
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ラテンアメリカの指導者、急進的改革を強行する計画を検討中

<記事原文 寺島先生推薦>
Latin American leader mulls plan to force through radical reforms
ハビエル・ミレイ大統領は、国民投票によって、改革に反対するアルゼンチンの議員に圧力をかけることができると述べた。
出典:RT  2023年12月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月7日


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ファイル写真: 2023年11月、大統領選の決選投票に臨むハビエル・ミレイ。© Tomas Cuesta / Getty Images


新大統領に就任したアルゼンチンのハビエル・ミレイは、国民議会に対して「臨戦態勢」をとっており、政策提案に対する国民投票を実施することで議会に圧力をかける可能性があると、ラ・ナシオン紙は水曜日(12月7日)に報じた。

内閣が今月初めに提出した主要な経済改革について、ミレイ大統領はラ・ナシオン紙に次のように語った。「もし彼ら(議会)がそれを拒否するならば、私は国民投票を要求し、彼らがなぜ国民に反対するのか私に説明してもらおう」。

提案されている法案は、2年間の非常事態宣言、経済の規制緩和、国有財産の民営化、国民医療制度の変更などを行うものである。

アルゼンチンの法律では、拘束力のある国民投票と拘束力のない国民投票の両方が認められている。行政府による拘束力のない提案が国民投票で承認された場合、国会はそれを検討する義務を負う。

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<関連記事> アルゼンチン、「ショック療法」改革を発表


「彼らは自分たちが負けたこと、国民が別のものを選んだことを受け入れることができないのだ」、とミレイ氏は国民議会の野党について述べた。彼は一部の議員が「賄賂を要求している」と主張したが、この疑惑を裏付ける詳細は示さなかった。

アルゼンチンで拘束力のない国民投票が行われた例としては、1984年、チリとの国境紛争*を解決するための政府の計画について投票が呼びかけられたことがある。圧倒的な国民の支持は、その後、議会の野党に圧力をかけた。
*チリ南端のピクトン島、レノックス島、ヌエバ島の所有権とこれらの島々の海洋管轄権の範囲をめぐるチリとアルゼンチン間の国境紛争であるビーグル紛争は、1978年に両国を戦争の瀬戸際に追い込んだ。この紛争は教皇の調停によって解決され、1984年以来アルゼンチンはこの諸島をチリの領土として承認した。

自由主義経済学者で元国会議員のミレイは、先月のアルゼンチン大統領選挙ではダークホース(穴馬)と目されていた。彼は、急進的な公共支出削減と自由化を通じて経済成長を生み出すという公約を掲げて当選した。アルゼンチンは高水準のインフレに苦しんでおり、ミレイ氏は「ショック療法」で対処すると宣言している。

新大統領は、自身の計画に反対する人々は「ストックホルム症候群」*に陥っていると主張し、政権下で厳しい取り締まりを行うと宣言している。
*1973年にストックホルムで起きた人質立てこもり事件で、人質が犯人に協力する行動を取ったことから付いた名称

関連記事:デモ参加者は "ストックホルム症候群"-ミレイ氏

ラ・ナシオン紙との同じインタビューで、ミレイ氏は2万ペソ札と5万ペソ札の導入を望んでいることを認めた。現在、最も大きい紙幣は2,000ペソだが、インフレにより、その価値は長年に渡ってほとんど失われている。札束を持ち続けることはアルゼンチン人にとって「拷問」であり、大金を持ち運ぶ者に「ここで盗め」という看板を抱えていることになるとミレイ氏は主張した。
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世界規模の組織が、世界法廷でイスラエルを訴えた南アフリカを支持するよう各国に働きかけ

<記事原文 寺島先生推薦>
Global Coalition Pushes for Countries to Back South Afrist Israel
筆者:Black Alliance for Peace
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年1月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月7日





 新たに結成された連合は、南アフリカによるイスラエルに対するジェノサイド訴訟を支持し、国際司法裁判所(JCJ)に介入宣言を提出するよう他国に求めている。

 「パレスチナにおけるジェノサイドを阻止する国際連合」は、イスラエルによる壊滅的な空爆作戦と、占領下のパレスチナ領土で行われている新たな戦争犯罪を終わらせる方法として、各国が「ジェノサイド条約」を発動させる緊急の必要性について協議した。この取り組みは12月29日、南アフリカがイスラエルを相手取って国際司法裁判所(JCJ)に提訴したことで、前進した。

 この連合には、「プログレッシブ・インターナショナル」、「国際民主法律家協会」、「サミドゥン・パレスチナ囚人連帯ネットワーク」、「平和のための黒人同盟」、「今こそアラブ世界のための民主主義を」、「解放のためのパレスチナ人集会」、「民衆の抵抗」、「CODEPINK」が参加しているが、この連合は「1月2日にパレスチナ反アパルトヘイト調整委員会(PAACC)が発表した呼びかけを強く支持し、南アフリカが各国政府に対して、同国が出した「イスラエルに対する緊急の介入宣言をおこなうことをJCJへ求める訴え」を支持するよう促すものだ。なおこの訴えに対する支持表明は、2024年1月11日と12日に予定されている審問の前でも後でも提出可能である」とのことだ。

 同連合は次のように述べている:「南アフリカがイスラエルに対してジェノサイド条約の発動を支持する介入宣言は、国連においてジェノサイド犯罪への肯定的な認定が増加し、その結果としてジェノサイド行為を終結させるための措置が講じられ、これらの行為に責任のある者が問責される可能性を高めるだろう。」と。

 「そのためには、イスラエルが国際法の下で責任を問われることを要求するという歴史に残るような南アフリカの旗振りに、より多くの国が追随することが不可欠です」と、ナショナル・ロイヤーズ・ギルドの会長であり、国際民主法律家協会の事務局の一員であるスザンヌ・アデリーは述べた。さらに、「そうするための分かりやすく必要不可欠な方法は、ジェノサイド条約に基づき、(世界裁判所とも呼ばれる)国際司法裁判所(ICJ)に提訴している南アフリカを支持し、介入宣言を提出することです。イスラエルとアメリカ、そしてヨーロッパの同盟諸国が世界的に孤立を深めていることが示しているのは、いまこそ、民衆による運動が自国の政府を動かし、こうした措置を講じさせ、歴史上正しい側に立つ方向に向かわせるための重要な瞬間であるという事実です」とも述べた。アデリーは昨年11月、国際代表団を率いてカイロを訪れ、パレスチナのラファ国境開通を要求した。

 占領下のパレスチナで進行中のイスラエルの大量虐殺行為を繰り返し非難してきた「平和のための黒人同盟」のアジャム・バラカ調整委員長は、「南アフリカ政府の行動は、人権と国際法を守るための国際的枠組みの信頼性を救済することにほかならない、勇気ある試みです。南アフリカによる請願は、国家と国際市民社会にとって、不処罰に反対することが法的にも道徳的にも必須であることを思い起こさせるものです。大量虐殺は、最も悪質な国際犯罪のひとつとされています。イスラエル国家とその支援諸国が正義と国際的非難を免れることが許されるなら、それは現在の国際的な司法制度の正当性を剥奪することになります」と述べた。

ニューヨークを拠点に活動するパレスチナ人のラミス・ディーク弁護士は、「戦争犯罪の正義、賠償、帰還に関するパレスチナ解放総会」の招集者であり、「パレスチナのための世界法律家協会」の共同創設者でもあるが、同氏も以下のように語った。「この裁判は非常に稀な裁判です。というのも、多くの人々が団結して、南アフリカの訴えを支持するよう各国政府に圧力をかけているからです。このような動きはパレスチナ問題の方向性を決定的に変える動きになる可能性があります。国際司法裁判所(ICJ)を通じて、南アフリカは、イスラエルが米国と連携して主導しているこの残虐な大量虐殺と拷問行為に決定的な打撃を与える態勢を整えています。もっと多くの国々が介入を支持する申し立てをする必要があります。そして、同裁裁判所に大衆からの監視の目を感じさせ、裁判所にかけられる米国からの極端な政治的圧力に耐えられる状況を作らなければなりません。国際人道法と諸機関は、大衆を守るための装置であるべきであり、またそう捉えられるべきものです。大衆から遠く離れた抽象的存在であってはなりません。大衆は、戦略的かつ強力な役割を果たすことができるし、そうすべきなのです。具体的には、この訴えを連帯活動に組みこむことです。そして、自国政府が支援介入を申し立てるだけで満足せずに、ICJが正義を実現するまで、活動を続けるべきなのです」と。

 パレスチナにおけるジェノサイドを阻止する国際連合は現在、この取り組みへの世界的な支援を構築するため、署名入りの書簡を配布しており、すでに100を超える団体が賛同している。書簡はこちらでお読みいただけます。

 この取り組みの連絡先は以下のとおり。
   アジャム・バラッカ、ajamubaraka2@gmail.com
   ラミス・ディーク、Deek@DeekDictorAdi.com
   スザンヌ・アデリー、suzanne.adely@gmail.com
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ウクライナ、ドンバスの重要な町からの撤退を確認

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine confirms retreat from key Donbass town
キエフの最高司令官は、ロシアによるマリインカの占領を認め、自軍がマリインカ郊外に撤退したと述べた。
出典:RT  2023年12月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月7日


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写真。ドネツク州マリインカの破壊された建物の前を歩くウクライナ兵。© Diego Herrera/Getty Images


ウクライナの総司令官、ヴァレリー・ザルジニーは、彼の部隊がドンバス地域の要所であるマリインカ郊外に後退したことを確認した。ロシア軍は月曜日(12月25日)、拠点を確保するための激しい戦闘の数か月後に勝利を宣言した。

ザルジニーは火曜日(12月26日)の記者会見で、ドネツクの西に位置するマリインカからのウクライナ軍の撤退を認めた。彼は、ここ数ヶ月のマリインカをめぐる激しい戦闘を、ウクライナが今年初めにアルチョモフスク(ウクライナ語ではバフムート)を失ったことになぞらえた。

「これはバフムートのときとまったく同じです。街路の一本一本、区画のひとつひとつで、わが軍の兵士たちが標的にされました。そしてその結果がこれです」とザルジニーは述べた。「これは戦争なのだから、われわれがマリインカの郊外に撤退し、一部の地域でマリインカの背後に陣地を構えたからといって、世論の反発を招くようなことはありません。悲しいことに、これが戦争というものなのです」。

関連記事:ロシア軍はドンバスの重要拠点を解放-モスクワ

ロシアのショイグ国防相は月曜日(12月25日)、モスクワ軍がマリインカを完全に解放したと発表した。ウクライナ軍は、ドンバスの分離主義者たち、そして後のロシア軍との戦いの重要な拠点として、この町を10年近く使っていた。ウラジーミル・プーチン大統領は、この勝利によってウクライナ軍がドネツクからさらに遠ざかり、今後の作戦行動においてロシア軍により広い作戦の自由を与えることになると述べた。

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関連記事:ゼレンスキーはさらなる徴兵への動きに水を差した―ウクライナ最高司令官

ウクライナ高官たちは、マリインカを占領したというロシアの主張を否定し、マリインカ奪回の戦闘は続いていると述べた。しかしザルジニーは、キエフ軍はマリインカの北の外れにしか残っていないと述べた。彼は、領土の隅々までウクライナにとって重要だが、「兵士の命は我々にとってさらに重要だ」と付け加えた。

キエフの最高司令官(ザルジニー)はここ数カ月、ウラジーミル・ゼレンスキー大統領と衝突することが増えている。ゼレンスキー大統領府は11月、ザルジニーが西側メディアに対し、ロシアとの紛争は「膠着状態」に達したと発言したことを非難した。ゼレンスキーは、ずっと期待されていた夏の反転攻勢を繰り返し声高に宣伝したが、ウクライナに約16万人の死傷者を出してしまった。戦場での大きな成果は得られなかったのだ。

ロシア軍はこの反転攻勢を阻止することで、2023年の主要目標を達成したと、ショイグは火曜日(12月26日)に述べた。さらに、ロシア軍は紛争における全面的な勝利に向けて着実に前進しており、「常に有利な位置を取り、あらゆる方向に支配地域を拡大している」と付け加えた。

参考記事:ロシア軍は2023年の主たる目標は達成した―ショイグ露国防大臣

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ウクライナの武器在庫は「空っぽ」―モスクワ

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine’s weapon stocks ‘empty’ – Moscow
ロシアの高位外交官は、キエフへの西側諸国の武器納入が「急増」することはないと述べた。
出典:RT  2023年12月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月6日


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ドイツのゲパルト高射砲戦車に座るウクライナの乗組員。© AFP / Roman Pilipey


軍事安全保障と軍備管理に関するウィーン協議のロシア代表団代表コンスタンチン・ガブリロフは、ウクライナの武器在庫は枯渇しており、それは戦場に表れていると述べた。

西側諸国はキエフにミサイルや防空システムを供給し続けているが、かつてのような規模ではない、とガブリロフは金曜日(12月29日)にロシア24TVに語った。同外交官は、米国とその同盟国による武器供与が「急増」することはないと述べた。

ウクライナの「在庫は空っぽ。NATOとアメリカの軍事兵器庫は空っぽです・・・戦場で何が起きているかを見ればわかることです。ウクライナ軍はすでに、われわれの10発や20発の砲弾に対し、わずか数発の砲弾で応戦しているのです」とガブリロフは述べた。

金曜日(12月29日)、英国はウクライナに200発の防空ミサイルを新たに輸送することを約束した。グラント・シャップス英国防長官は、この輸送について、「今こそ自由世界が団結し、ウクライナが勝利するために必要なものを手に入れる努力を倍加する時だ」と述べた。

今週初め、アメリカはまた、各種ミサイル、砲弾、小火器弾薬を含む最大2億5000万ドル相当の軍事援助を発表した。

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Read more:Kiev’s battle plans ‘ended in complete fiasco’ – Moscow

ワシントン・ポスト紙は今月初め、キエフが深刻な弾薬不足に陥っていると報じた。ウクライナ軍は、紛争初期の50発から減少し、1日に10~20発の砲弾を発射していると同紙に語った。

キエフに対する欧米の軍事援助額はここ数カ月で減少している。アメリカでは、共和党議員がジョー・バイデン大統領政権によるキエフへの600億ドルの追加援助を押し通そうとする動きに抵抗しており、ハンガリーはEUが計画している4年間の500億ユーロ(約550億円)のウクライナ支援策に拒否権を発動した。

ロシア政府は、米国とその同盟国によるキエフへの武器供与は、軍事作戦の目標達成を妨げるものではなく、ロシアとNATOの直接対決のリスクを高めるだけだと繰り返し警告してきた。ロシア当局者によると、ウクライナ軍の武器供与、情報共有、訓練は、西側諸国がすでに紛争の事実上の当事者になったことを意味する。
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ゼレンスキーの元最高顧問は今、キエフが西側に対抗してロシアと手を組むことを望んでいる。一体何が起こっているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky's former top adviser now wants Kiev to join up with Russia against the West – what exactly is going on?
アレクセイ・アレストビッチの最新の考えは、交戦中の二つの国が、アメリカが率いるブロックを一緒に訴えるべきだというものだ
筆者:タリク・シリル・アマル(Tarik Cyril Amar)
ドイツ出身の歴史家。イスタンブールのコチ大学でロシア、ウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史、文化的冷戦、記憶の政治について研究している。
出典:RT  2023年12月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月5日


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Aleksey Arestovich. © Wikipedia


キエフ政権はロシアのウラジーミル・プーチン大統領と合意に達する必要があり、その後、キエフとロシアは団結して西側諸国を訴えるべきだ。

あなたは上記の考えはかなり過激で珍しいと思うかもしれない。西側諸国を訴える? どこで? どこの裁判所で? ウクライナや米国(あるいはその両方)がドイツの―そしてEUの―重要な燃料を運ぶ給油網(パイプライン)を爆破しても相変わらず何の問題にもしない西側諸国を訴えるのか。あるいは、1948年の国連ジェノサイド条約第三条(e)で明確に禁止されている犯罪である、イスラエルによるガザでのジェノサイドに自国の指導者が加担していることを無視している西側諸国を訴えるのか?

しかし、その答えは、この非常に型破りなアイデアを生み出した豊かな心について聞くまで待ってほしい。その人は、他ならぬアレクセイ・アレストビッチだ。かつてウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領の顧問だった男だ。ウクライナ国外では必ずしも有名ではないが、つい最近までアレストヴィッチはウクライナで並外れた影響力を持っていた人物であり、彼はその力をこれまで代理戦争を精力的に推進するのに使ってきた。ところが、いま彼は、その代理戦争を終わらせ、その責任を西側だけに問いたいと思っているのだ。

アレストヴィッチは、大学中退、世知辛いポップ心理学者 (いかに他人を操って成功するかというタイプ) 、元軍人であり、事実上間違いなく諜報部員でもあり、非常に適応的な見解を持つブロガーであり、地政学の指導者になろうとしていた。そしてもちろん、2020年から2023年までゼレンスキーの補佐官を務めていた。彼、アレストヴィッチは、単なる個人ではなく、いまの状況を体現する症候群でもある。彼は社会におけるひとつの形態を象徴しており、頭は良いが、精神異常とおぼしきほど共感能力のない詐欺師で、マキャヴェリを赤面させるような冷徹な皮肉で、ソ連崩壊後の社会に残された見当識障害*を容赦なく利用した。
*「今日はいつか(時間)、ここはどこか(場所)、この人は誰か(人物)など、自分の置かれている状況についての認識がうまくできない。認知症の初期症状のひとつ。(AllAbout健康・医療)

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関連記事:キエフではナイフが出てきた。戦争に負けたら、エリートたちは生きたまま食い合うだろう

いま彼は、ウクライナ人とロシア人がいくつかの地方都市でお互いに華々しく殺し合いをしていることを嘆いている。「何のために?」と彼は自問した。アレストヴィッチの答えは、少し前であれば西側諸国ではプーチンの手先だ、懐柔役だと言われて、無視されていた類いのものだ。彼は「私たちは、ワシントンとブリュッセルのオブコーム(ソビエト時代の地方行政を示すことば。現在は、蔑称として使われている)の本部長を喜ばせた。彼らは私たちの周りに立って拍手を送り、ナイフを持った2匹の猿がお互いにやり合うのを見ている」と言ったのだ。

アレストヴィッチの180度の方向転換は、キエフのエリートたちの劇場政治が生み出したもう一つの不条理だ。しかし、この元戦争屋の非凡な人物が平和についてや誰が非難されているのかを語るのを聞くのは不愉快かもしれないが、古い反ロシアの好戦的愛国者であるアレストヴィチと、ロシアの 友人であり西側の敵となるはずの新しいアレストヴィチとの間の明白な対照は、事実上の権威主義的なゼレンスキー政権の下でウクライナの政治がいかに無責任になっているかを憂鬱になるほど正確に示している。

2019年、ウクライナのNATO加盟をめぐるロシアとの大規模で壊滅的な戦争(2014年に始まった紛争を超える)を悪名高く「予言」したのはアレストヴィッチだったが、結局2022年になって、一部の無知な欧米人は彼の「不気味な」先見の明に興奮した。

ただし、アレストヴィッチは2019年の大戦争を実際には予測していなかった。そうではなく、彼はその予言をできる限りうまく売り込んだのだ。当時進行していたドンバス共和国(ミンスクⅡ、皇帝か何か?)との小規模な紛争を平和的に終わらせる可能性を排除し、彼はいつもの根拠のない論点を使った。例えば、プーチンはソ連を再建し、NATOとEUを破壊したいと思っている、とか、EUよ、ヨーロッパを支配せよと言ったり、はたまた、アナレナ・バーボック*からティム・スナイダー**に至るまで、当時流行っていた大騒ぎを利用して、大規模な戦争への昇華を絶対に避けられないものとして提示した。ミンスク2合意はこの偉大な空想戦略家のレーダーにほとんど映らなかっただけでなく、彼はまた、ウクライナの中立性は不可能であると主張し、たとえウクライナが内乱勢力やロシアと未解決の領土紛争を抱えていたとしても、NATOはウクライナを簡単に(「いますぐにでも」)受け入れるだろうと主張して彼の支持者を誤解させた 。
*独の女性外相。「有権者の思いがどうあれ、ドイツはウクライナを支援する」と発言 **米国の歴史家。イェール大学教授

同時に、アレストヴィッチはウクライナの大きなチャンスとして将来の大戦争を提示した。ロシアとの大戦争の後にNATOに加盟するか(ウクライナが勝つと彼は無謀にも想定していた)、近い将来にモスクワに吸収されるという少なくとも当時においては誤った2つの選択肢を想定していた彼は、第一の選択肢であるロシアとの戦争を心から推奨した。そのような戦争が3度連続して続くことさえ、彼には不可避であり賢明であるように思えた。当時はそうだった。

そして最後に、彼はウクライナの人々に、ロシアが崩壊して政権交代するかもしれないという西側の好きな幻想に浸るようにも誘った。「ある種のリベラル」が権力を握り、「私たちは再び良い国になった」という未来が待っているだろう、と彼は主張した。外交、妥協、平和への断固とした「ノー」を売り込んでいた彼のこの部分は、今では特に皮肉だ。というのは、彼はロシアのジャーナリストで放送作家のユリア・ラティニーナとのインタビューで、完全かつ完璧に心変わりしたことを発表したからだ。

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関連記事:第三次世界大戦が接近-計画どおり

ラティニナはもちろん、ロシア人のほとんどが耐えられないような一種の「リベラル」(彼女自身は自分が「リバタリアン(自由主義者)」と言われる方を好んでいる)を体現しているが、それには優れた理由がある。彼女は、2008年に米国務省から「自由賞」を受賞したほどの右翼プロパガンダにとって信頼できる情報提供者であった。その領域は、地球温暖化の否定から、貧しい国が過度の民主主義を持つ必要はないという考え方、そしてほとんど強迫的なイスラム恐怖症に至るまで及んでいる。

古き良きヨーロッパでさえ、彼女の目には依然として、素朴な人々には甘すぎるものとして映っている。人権などについての「社会民主主義的」な大風呂敷は、ラティニーナには通用しない。彼女の真のヨーロッパの「価値観」は、財産、革新、競争に関するものだ。政権交代の幻想なんてそんなものだ。アレストヴィッチが賭けていたのはラティニーナ型だ。ウラジーミル・プーチン大統領に批判的な人々を含め、ほとんどのロシア人が「それ以外なら誰でも」と言うのも無理はない。

しかし、最近YouTubeで公開された二人の対決(tête-à-tête)では、ウクライナの詐欺師とロシアの自由主義者は完全に一致することはできなかった。ラティニーナでさえ、アレストヴィッチがNATO諸国を訴えるためにロシアと手を組むという考えは、ちょっと実現不可能だと感じていた。さらに、彼女は西側諸国に畏敬の念を抱いているので、西側諸国は「ウクライナに何の借りもない」ことを彼に思い出させなければならなかった。アレストヴィッチは最新の脳波に夢中になり、借りはある、と主張した。

どちらも論点がずれていた。欧米が何を借りているか、借りていないかは問題ではない。西側諸国は常に、西側諸国(そしてそれは通常米国を意味する)にとって最善のものだけを提供してくれる。そして、それが「無」であれば、あなたが手に入れるのはそれだ。アレストヴィッチのような傲慢な元戦争屋が、ようやく現実を直視し始めたらいいのに。その現実のすべてを。
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ガザでの戦争は「あと何カ月も」長引く―イスラエル国防総省(IDF)

<記事原文 寺島先生推薦>
War in Gaza to drag on for ‘many more months’ – IDF
Israel’s military chief has warned of a long process to thoroughly dismantle Hamas
イスラエル軍総司令官は、ハマスの徹底的な解体には長い時間がかかると警告した。
出典:RT  2023年12月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月5日


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火曜日(12月26日)、カーン・ユニスのビルに対するイスラエルの攻撃で負傷した男性が病院に運ばれる。© Belal Khaled/Anadolu via Getty Images


イスラエル軍の最高司令官は、パレスチナの過激派組織ハマスを完全に破壊し、再び脅威となるのを防ぐためには、長期にわたる断固とした戦いが必要であるため、ガザでの戦争は 「あと何か月も」 長引く可能性が高いと警告した。

イスラエル国防軍(IDF)のヘルジ・ハレヴィ参謀総長は火曜日(12月26日)、記者団に「魔法のような解決策はない」と語った。テロ組織を徹底的に解体するためには、頑固で断固とした姿勢で戦う以外に近道はない、とも。

ハレヴィの発言は、イスラエルのネタニヤフ首相が月曜日(12月25日)、ハマスとの戦争は「終わりそうにない」と述べた後のことだ。ネタニヤフ首相は、ガザを「非武装化」し、パレスチナ社会を「脱過激化」して、永続的な和平のための条件を整えなければならないと付け加えた。

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READ MORE: Hamas must be destroyed – Netanyahu

現地の保健当局によれば、10月7日の開戦以来、ガザでは2万1000人近くが死亡している。ハマスがイスラエル南部に奇襲攻撃を仕掛けて紛争を引き起こし、700人近いイスラエル市民と71人の外国人を含む1,100人以上が死亡、数百人の人質を確保した。

ハレヴィは、パレスチナ自治区北部のハマス大隊の大半を解体した後、IDFはガザ中央部と南部で作戦を拡大していると述べた。「我々は多くのテロリストと指揮官を排除した。一部はわが軍に投降し、何百人もの捕虜を確保した。我々は多くの地下インフラと武器を破壊した」と彼は語った。

イスラエル国防軍総司令官は、この地域が密集した都市部であることを考えると、おそらくガザ北部にはもっと多くのハマス戦闘員が隠れているだろうと述べた。彼は、イスラエル軍が治安情勢を10月7日以前の状態にまで後退させ、市民をハマスの攻撃再発の危険にさらすことは許されないと誓った。

「この戦争は必要であり、目標は容易には達成できません」と彼は述べた。「これは複雑な地域で行われています。そのため、戦争はさらに数か月続くでしょうし、異なる手法を用いて、その成果を長期間維持するよう努めます」と彼は言った。

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ロシアや中国など複数の国(アントニオ・グテーレス国連事務総長も含む)が即時停戦を求めている。しかし、イスラエルとその主要同盟国であるアメリカは、今すぐの停戦はハマスの利益にしかならないと主張している。
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ジャーナリストのお手本、ジョン・ピルジャー死去

<記事原文 寺島先生推薦>
Iconic journalist John Pilger dies
ゴーイング・アンダーグラウンドの司会者アフシン・ラッタンシ(Afshin Rattansi)は、この有名なドキュメンタリー作家は「歴史上最も偉大なジャーナリストの一人」だと語った。
出典:RT  2023年12月31日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月5日


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© Getty Images / Don Arnold


調査報道ジャーナリストでドキュメンタリー映画監督のジョン・ピルジャーが土曜日(12月30日)、ロンドンの自宅で、84歳で死去したことを、遺族がX(旧ツイッター)への投稿で発表した。

ピルジャーは、ベトナムやカンボジア、そしてイラクでの戦争から、西欧民主主義諸国による労働者階級への組織的な抑圧に至るまで、帝国の人的犠牲についての痛烈な暴露で知られていた。彼のドキュメンタリーには、『0年カンボジアの静かな死(Year Zero: The Silent Death of Cambodia)』や『沈黙を破る:テロとの戦いの真実と嘘(Breaking the Silence: Truth and Lies in the War on Terror)』、 『パレスチナはまだ問題(Palestine is Still the Issue)』そして『来るべき中国との戦争(The Coming War with China)』などがある。

「すべてのジャーナリストは、たとえそれに気づいていなくても、ジョン・ピルジャーに対して恩義がある」と、「ゴーイング・アンダーグランド」の司会者であるアフシン・ラッタンシは日曜日(12月31日)にRTに語り、この受賞歴のある映画製作者を「歴史上最も偉大なジャーナリストの一人」と呼んだ。



ピルジャーは、「ジャーナリズムはエリート向けではなく、普通の人のために物事を明らかにするものであり、賞のためではない」と自覚していた。これは、彼の今は故人となった友人で同僚であるラッタンシが説明し、ピルジャーを称賛して「彼の道徳的な羅針盤は、すべてを底辺から、一般の人の視点から見るものだった」と述べた。

「彼は偽ジャーナリズムを声高に批判していましたが、それはガザやウクライナを見ても明らかです。もちろん、彼がRTを自分が話すことのできるメディアとして見つけたのは、彼が事実上すべてのイギリスのメディアから締め出されていたからです」と同氏は述べた。

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ピルジャーは長らく主流メディアのニュース局であるデイリー・ミラーやロイター、そしてITVの「ワールド・イン・アクション」などで働いていた。しかし、この10年間で徐々に支配層から排除され、ガーディアン紙が2015年に彼のコラムの定期掲載を終了したのが最後となった。その最後のコラムの中で、このジャーナリスト自身が「ガーディアン紙がもはや言わなくなったことを言っていた者たちを粛正した」と記述した。

元同僚たちはそれにもかかわらず、ソーシャルメディアに集まり、彼に敬意を表した。ピルジャーは「当時のデイリー・ミラーの素晴らしいジャーナリストであり、もっともすぐれたジャーナリストの一人だった。勇敢で洞察力があり、権威に立ち向かい、本能的に弱者の側に立っていた」と、デイリー・ミラーの副編集者であるケビン・マグワイア(Kevin Maguire)がX上で述べた。

ITVの代表取締役ケビン・ライゴ(Kevin Lygo)は、ピルジャーを「キャンペーンジャーナリズムの巨星」と呼び、「50年以上にわたり、ずぶずぶの合意を避け、代わりに時事問題に対する過激で代替的なアプローチと、異議を唱える声の場を提供した人物」と評価した。

ラッタンシは、2019年にロンドンのエクアドル大使館から警察に引きずり出されて以来、英国のベルマーシュ刑務所に収監されているウィキリークスの発行人ジュリアン・アサンジのためにピルジャーが行なった精力的なキャンペーンを、彼の遺産の顕著な部分として強調した。彼は、「アサンジが生存していて、CIAの陰謀(当時CIA長官はマイク・ポンペオ)で殺されなかった」のは、このジャーナリストの功績だったと称えた。

ピルジャーには、妻、そして作家でもある2人の子供サムとゾーイがいる。
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南アフリカ、国際司法裁判所にイスラエルを「大量虐殺」の罪で提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel sued for ‘genocide’ at The Hague
南アフリカ、国際司法裁判所にガザ紛争への介入を要請
出典:RT  2023年12月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月4日



画像:2023年10月31日、ガザ地区ガザ市のアル・シャティ難民キャンプでイスラエルの攻撃が続く中、破壊された建物の破片。© Ali Jadallah / Anadolu via Getty Images


 南アフリカはハーグの国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、ガザでのイスラエルの行為は「大量虐殺」に当たるとして、それを阻止するための「暫定措置」を求めた、と国連最高裁判所が金曜日(12月29日)に発表した。

 その申請書の主張は、「イスラエルによる作為と不作為は…大量虐殺的な性格のものである。というのも、これらの行為には明らかに特定の意図があるからだ。その意図とは、ガザ地区のパレスチナ人を破滅させることである。そしてこれらのパレスチナ人は、より広大なパレスチナの国家や人種、民族の一部である」 というものである、とICJは声明でこう述べた。

 南アフリカ政府は、ガザにおけるパレスチナ人に対するイスラエルの行為は「ジェノサイド条約に基づく義務に違反している」と述べた。同政府はさらに、10月7日以来「大量虐殺を阻止できず」、「大量虐殺への直接的かつ公的な扇動を訴追しなかった」としてイスラエルを非難した。

 イスラエルはガザ地区でパレスチナ人に対する大量虐殺行為をおこなってきたし、いまもおこない続けているし、この先もさらに続ける危険がある

 さらに南アフリカがICJに要請したのは、「暫定的な措置」であり、その目的は、ジェノサイド条約に基づき、パレスチナ人を「更なる深刻かつ取り返しのつかない被害から守る」ことだとした。ICJはまた、これらの措置を詳細に列挙した84ページの文書を公表したが、その最初の内容はイスラエルに「ガザ内およびガザに対する軍事作戦の即時停止」を求める、というものだった。


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 南アフリカ政府はまた、西エルサレムのイスラエル当局に対し、パレスチナ人に対するあらゆる攻撃を停止し、さらに「住居からの追放と強制退去」や、食料や水、燃料、住居、医療用品などの入手経路の剥奪を最終目的とする命令を取り消すことも要求している。

 大量虐殺やその陰謀の「直接的かつ公的な扇動」に関与した者は誰でも裁かれなければならない、とこの訴追状の主張にある。そして南アフリカはイスラエルに対し、これらすべての要求の遵守に関する報告書を1週間以内に提出するよう要求した。

 ICJの規則によれば、暫定措置の要請により、南アフリカの申請は他のすべての訴訟よりも優先される。

 南アフリカはこれまで、国際刑事裁判所(ICC)にイスラエルを戦争犯罪で告発しようとしていた。西エルサレムのイスラエル当局はICCの署名国ではないが、ICJと同じくハーグに拠点を置くICCは以前、ガザとヨルダン川西岸を管轄する、と宣言している。

 いっぽう、南アフリカとイスラエルは、第二次世界大戦中のナチスによるユダヤ人大量虐殺を受けて1948年に初めて採択された「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」に加盟している。
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中国、世界最大の自動車輸出国に

<記事原文 寺島先生推薦>
China to become world's largest automobile exporter – data
ロシアとメキシコへの配送量が急増していると伝えられている
出典:RT  2023年12月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月4日



© Getty Images / NurPhoto / 投稿者


 日経アジア紙は金曜日(12月29日)、中国自動車工業協会(CAAM)の暫定データを引用して、中国が今年、史上初めて世界第1位の自動車輸出国になる軌道に乗っている、と報じた。

 統計によると、同国は1月から11月までに441万台の自動車を輸出し、2022年の同時期と比べて58%増加した。これにより、中国はかつて輸出首位だった日本を追い越した。日本の通年の輸出総額は約430万台になると予想されているからだ。報告書によると、日本が最後に首位の座から転落したのは2016年で、その時はドイツに抜かれた、という。

 「中国は自動車大国になることを目指しており、その目標を達成する手段としてEV(電気自動車)への移行を世界規模で生じさせることを検討している」と日経は報じた。

 この報告書は、中国の対ロシア輸出の急増は、新たな制裁の中で日本や欧米の自動車製造業者がロシア市場から撤退したことを受けてのことだ、と指摘した。CAAMの統計によると、1~10月に中国がロシアに輸出した車両は73万台で、前年同期の7倍となった。奇瑞汽車と長城汽車は、中型および大型のスポーツ用多目的車(SUV)を含む主にガソリン車を同国に輸出している、と伝えられている。

 第2位の輸出市場はメキシコであり、同国における中国車の販売台数は71%増の33万台となった。「中国の自動車製造業者は、最終的に米国とカナダ市場に進出するための足がかりとして、メキシコ国内に顧客基盤を構築しようとしている」と日経は報じた。

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 データによると、1~10月の中国のEV車やその他の新エネルギー車の輸出は前年同期比77%増の143万台となったという。CAAMによると、これらは同月の自動車輸出全体の 34%を占めたという。また日経は、中国のEV車輸出のほとんどは欧州と東南アジアに向けられたと報じている。
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「どのみち我々は皆死ぬんだから」―ウクライナ陸軍ザルジニー将軍補佐官の発言

<記事原文 寺島先生推薦>
We will all die anyway’ – Ukrainian army adviser
ウクライナの最高司令官の側近による動員についての斬新な主張
出典:RT  2023年12月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月4日



2023年12月29日の放送中の、ウクライナ軍最高司令官ヴァレリー・ザルジニー将軍の補佐官アラ・マルティニュク氏。© Telegram / uniannet


 「自動車事故で死ぬよりも戦闘で死ぬ方が好ましい」とウクライナの軍最高司令官ヴァレリー・ザルジニー将軍の補佐官アラ・マルティニュクは金曜日(12月29日)のインタビューで述べた。

 37歳のマルティニュク補佐官は元舞台女優、テレビ女優で、現在はザルジニー将軍の「外部顧問」を務めている。キエフに本拠を置く通信社ユニアン社がソーシャル・メディアで共有した放送の中で、同補佐官は軍隊への動員に対するほとんどのウクライナ人の反応に対して批判的な発言をおこなった。

 「私が目にするのは、子どもが軍からの召喚状を受け取ると、母親たちが即座に手紙を書く様子です。その手紙に書かれている内容は、母親たちがすでに冷静さを失い、息子たちの命に別れを告げる、というものです。しかし、言っておきますが、このような反応は正しくありません。冷静さを失う必要は全くありません。自分の息子が英雄となり、国家の花になる、と信じなければいけないのですから」マルティニュク補佐官はその放送で語った。
 
 「どの道、私たちは皆死ぬのです。尊厳を持ってこの人生を去ることは、道を歩いていてレンガが落ちたり、車に轢かれたりする死に様よりもはるかに良いものです」と同補佐官は付け加えた。

 ザルジニー将軍はマルティニュク補佐官のこの発言から距離を置き、ソーシャル・メディアで、自分の代わりに「給料をもらっていない側近が公の場で発言する権限はありません」と述べた。同将軍は、木曜日(12月28日)以降、「給料をもらっていない補佐官や相談員はひとりもいない」と言うようになった。


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 ウラジミール・ゼレンスキー大統領は最近、全国の当局者が徴兵枠の達成が困難であることを認めているにもかかわらず、戦場での損失を補うために50万人の追加兵力を動員する計画を発表した。

 ウクライナ議会が徴兵年齢の25歳への引き下げと女性の戦闘動員の許可を議論する中、ゼレンスキー大統領とザルジニー将軍はこの状況の責任を互いに転嫁しようとしている。また、さらに抜本的な対策を提案している一部の知事らもいる。

 現在、最高議会の小さな野党を率いるユリア・ティモシェンコ元首相は、ゼレンスキー大統領の動員提案は効果がなく、さらに違憲である、と主張した。同元首相はまた、ウクライナは動員する代わりに警察と訓練を受けた治安要員を最前線に派遣する方がよい、とも述べた。
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なぜワシントン・ポスト紙は、ネタニヤフの長年にわたるハマスとのファウスト的取り引きを暴露したのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Why’s WaPo Blowing The Whistle On Bibi’s Years-Long Faustian Bargain With Hamas?
筆者:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
出典:本人のサイト 2023年11月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月4日


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民主党は、ビビ(ネタニヤフ)と彼が象徴するすべてを一掃するまたとない機会と考えた。だから、彼らは自称ユダヤ人国家の信頼を失墜させる可能性のある10月7日以前のイスラエルとハマスの関係についての議論をあえて俎上に載せたのだ。

ワシントン・ポスト紙(WaPo)が、イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフ(「ビビ」)に関する非常に厳しい記事を掲載した。その記事は「ネタニヤフとハマスはお互いに依存していた。そして両者ともに去りゆく可能性がある」と題されており、イスラエルの専門家たちの発言を引用している。記事によれば、ネタニヤフはハマスとの長年にわたるファウスト的取り引きをしており、それがハマスによる10月7日の奇襲攻撃に寄与した可能性が示唆されている。言い換えれば、彼とハマスとの暗黙の合意がホロコースト以来最大のユダヤ人虐殺の一因となったとされている。

主流メディアの情報に依存していない人の中には、すでにその結論に達している人もいたが、西側に立つWaPosi紙がこれを報じたのは初めてだ。これはこの件に関する一般向け議論の正常化に役立った。とある目論見に引きづられている門番たちはこれまで、「反ユダヤ的陰謀論を広めている」者たちを非難してきたが、イスラエルの専門家自身を引用しているWaPo紙の報道に関しては、手の出しようがない。

WaPo紙によれば、ビビがハマスを利用してパレスチナの問題を分裂させ、それによってイスラエルが二国家解決に進展しない「公的にもなるほどと思わせる」口実となるようにしたのだ。その証拠として、これらの専門家は、彼の政府が「定期的な囚人解放、カタールからの資金移転によるガザでの公務員給与の支払い、インフラの改善、そして、批判者によれば、ハマスの軍事作戦の資金提供に同意した」ことを指摘した。その代わりに、ハマスはガザを統治し続け、それがハマスの利益になった。

このファウスト的取り引きは10年以上続き、その間に「ハマスが全面戦争ではなく、ガザ建設に焦点を当てた、より信頼できる統治組織へと進化しつつあるとの期待が高まった。この状況に利点を感じていたのはネタニヤフ首相だけではない。イスラエルの穏健派は、生活水準が向上し、安定したガザを視野に入れた未来を描くようになった。ビジネス界は、ユダヤ国家とのより強い結びつきを築こうとするアラブ近隣諸国とのイスラエルの関係改善を歓迎した」。

端的に言えば、イスラエル国民は、政治的考えの如何に関わらず、長引く現状に騙され、ハマスがビビを裏切ることはないだろうと信じていた。この悪名高い事件の余波で、WaPo紙は、国民感情はビビとハマスの両方に背を向け、このファウスト的駆け引きのきっかけとなった権力保持が危うくなったと主張している。

WaPo紙の報道は、客観的に存在する現実を正確に反映しているが、WaPo紙という西側で評判の高い主流メディアが、イスラエルの指導者をこれほど非難する記事を掲載したことが、いかに予想外であったかは否定できない。それゆえ、WaPo紙の記事は、10月7日以前のイスラエルとハマスの関係についての一般大衆の言説に革命を起こす画期的な出来事である。

WaPo紙が何をするか予想できた者はほとんどいなかったので、(情報検閲の)門番たちはこれに不意をつかれた。しかし、米国の与党である民主党とWaPo紙の関係を思い起こし、今年初めにイスラエルで起きた反政府デモへの彼らの支援を思い出せば、これは実際にある程度予想できたことだった。バイデン政権がビビに対する圧力作戦を倍増させたため、3月下旬には「米国が支援するイスラエルのカラー革命は危機的状況に達した」と評価されていた。

迂闊な観察者であれば、アメリカがいかなるイスラエル政府も不安定化させるなどありえないだろうと一蹴するかもしれない。しかし、こんな見解を持つ人々は、バイデン政権のリベラル・グローバリストとビビの保守・国粋主義者との間の緊張に気づいていないのだ。要するに、民主党はイデオロギー的な理由からイスラエルの政権を軽蔑している。また西側の対ロシア制裁に従わないこと、さらにはシリアでロシアと連携し続けることに罰を与えたいと考えている。

確かに、前回2つのビビ在任期間の間に成立した暫定的なリベラル・グローバリスト政権も、これらの制裁に従わなかったし、シリアでのロシアとの協力を抑制しなかったが、それでもバイデン政権からは、他のすべての問題に関してより政治的に信頼できるとみなされていた。民主党は当然、彼らが政権に復帰することを望んでいる。それゆえ、今年初めに彼らがビビの保守ナショナリスト政権に対して組織した「カラー革命」を手助けしたのだ。

しかし、民主党政権はビビを交代させたがってはいたが、暗黙のレッドラインを越えることはイスラエル国家全般の信用を失墜させる恐れがあるため、どこまで踏み込むかには一定の限界があった。そのため、10月7日以前にビビのハマスとのファウスト的駆け引きの話題を取り上げることをタブー視していた。前述したリベラル・グローバリストの暫定政権も、彼らの統治下で同じ政策を続けていることもあった。とはいえ、ハマスの奇襲攻撃はビビの在任中に起きたことなので、こうした懸念はもはや関係ない。

イスラエル国民自身はすでに、どのような誤った政策がこのような事態を招いたかについて話している。そのため、民主党はもはやこの問題をタブー視する理由はないと考えている。特に、この感情的な問題は、彼に対する感情をさらに煽るために、彼らの印象管理者が簡単に武器にすることができることもある。ビビが長年政権に就いていることは、平均的な有権者がこの政策について、暫定リベラル・グローバリスト政権よりもビビを非難し、そのため次の投票でビビを罰しようとする可能性が高いことを意味する。

その実現の可能性を最大限にするために、WaPo紙という民主党の同盟者は、彼ら自身が共有されている目標を暗黙のうちに理解しているにせよ、民主党からのひと押しがあったにせよ、この問題についてのタブーを破り、ついに秘密を暴露するという決定を下したのだ。その目的は、イスラエル国民がホロコースト以来最大のユダヤ人虐殺についてビビの個人的な責任を追及し、彼の政治的キャリアを終了させ、保守的で国粋主義的な彼の政府を解体させることだ。

基本的に民主党は、ビビと彼が象徴するすべてを一掃するまたとない機会と考えた。だから、民主党は、10月7日以前のイスラエルとハマスの関係について議論の俎上に載せることが、自称ユダヤ人国家の信頼を失墜させる可能性があるのにあえてそうしたのだ。WaPo紙の報道活動は、それ故、政権を交代させるという思惑が働いていた。ただ、すべての事情を考慮すれば、このタブーが積極的に守り続けられず、最終的には破られたことにより、よりよい事態を迎えることになった。
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ロシア、パトリオット問題で日本に警告

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia warns Japan over Patriots — RT Russia & Former Soviet Union
東京がアメリカへの軍需品の輸出を決定したことは、世界の安全保障に悪影響を及ぼすとロシア外務省が主張
出典:RT   2023年12月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月4日


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防衛省で撮影されたパトリオット迎撃ミサイル(PAC-3)。© Getty Images / Junko Kimura


ロシアは、パトリオットPAC-3対空ミサイルをアメリカに送るという日本の決定を非難し、この動きはモスクワと東京の関係に悪影響を及ぼすと警告した。特に軍需品がウクライナに届くようなことがあれば、なおさらだ、と。

水曜日(12月27日)にモスクワで行われた定例記者会見で、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、日本の動きは地域と世界の安定に悪影響を与えるに違いないと述べた。

「日本の岸田文雄首相の政権は、戦後憲法の平和主義的な条項を一貫して解体する方向性を再び強めた。日本の再軍国主義化の加速と相まって、これは世界と地域の安全保障に具体的な否定的結果をもたらすだろう」とザハロワ報道官は述べた。

憲法に明記された日本自身の原則に反するだけでなく、日本は事実上兵器の管理を失いつつあり、アメリカは兵器を好きなように動かしている。日本のPAC-3ミサイルがウクライナに輸送されることになれば、ロシアと日本の関係に重大な影響を与えることになる、と彼女は警告した。

「もし日本のミサイルがウクライナ軍の手に渡れば、そのような行動はロシアに対する明確な敵対行為とみなされ、日本にとって最も深刻な結果を招くだろう」とザハロワ報道官は強調した。

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関連記事:日本は第2次世界大戦以来初めて武器を輸出

日本は先週、1947年の平和主義憲法の下で課された軍事輸出の禁止を解き、アメリカの許可の下で生産しているPAC-3ミサイルをアメリカ政府に供給することに合意した。日本政府は現在、外国の許可の下で日本において製造された武器を、許可を与えた国に輸出することができるようになった。

「今回の行動を取ることによって、我が国は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り、インド太平洋地域の平和と安定の実現に貢献できることを望んでいる」と、岸田首相は、日本が輸出禁止措置を撤回することを閣議決定した後に述べた。

しかし、同首相は「平和主義国家としての原則に変更はない」とも主張した。

日本製ミサイルが直接ウクライナに送られることはないだろうが、この出荷によって、ワシントンは米国の在庫ミサイルを日本製ミサイルに置き換えて、キエフにもっと多くのアメリカ製パトリオットを送ることができるようになる可能性がある。

東京の武器輸出政策の見直しは、岸田外相が昨年打ち出した軍備増強が継続される中で行なわれた。5年間の増強計画によって、日本はアメリカと中国に次ぐ世界第3位の防衛費支出国になる可能性がある。PAC-3の輸出が決定された同じ日に、日本政府は過去最高となる16%の軍事費増額を了承した。これは、現在のところ、国会の承認待ちである。
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この一人の男で米国のふたつの大政党を打倒できるのか

<記事原文 寺島先生推薦>
Can this one man dethrone both major US parties?
ロバート・F・ケネディ・ジュニアの政策は、トランプとバイデンの政策の寄せ集めだが、多くのがらくたを除いたものだ。
筆者:ロバート・ブリッジ(Robert Bridge)
アメリカの作家、ジャーナリスト。著書に『Midnight in the American Empire, How Corporations and Their Political Servants are Destroying the American Dream(米帝国の闇:大企業とその従僕たちはいかにアメリカン・ドリームを壊したのか)』がある。
出典:RT  2023年12月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月3日


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無所属の米大統領候補ロバート・F・ケネディ・ジュニア © Eva Marie Uzcategui / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / Getty Images via AFP


ロバート・F・ケネディ・ジュニアが米大統領選への無所属出馬を表明したとき、ワシントン政界の内外に衝撃が走った。ケネディ一族の末裔が単なるぶち壊し立候補者となるのか、それともこの政治的新人がホワイトハウスを勝ち取るだけの影響力を持つのか。

民主党と共和党が何よりも嫌うことがあるとすれば、お節介な無所属候補や第三党候補が政治的な争いに加わり、1853年以来ワシントンDCを圧政で支配してきた二大政党制を崩壊させる恐れがあることだ(1850年にホイッグ党の旗の下、ミラード・フィルモアが大統領に選出された。) ロバート・F・ケネディ・ジュニアが民主党に別れを告げ、無所属での出馬を表明したのはそのためだ。

69歳のケネディは今、アメリカの政治システムとして知られる毒蛇の穴の上で危険な綱渡りをしている。この目的を達成するために、故ロバート・F・ケネディ(1968年6月5日に暗殺された上院議員)の息子は、ジョー・バイデンとドナルド・トランプの政治手法から多くを借りている。その結果、両イデオロギー陣営の信念の寄せ集めとなり、危険な動きだが、それなりのメリットもある。

例えば、ウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦に対するケネディの立場を考えてみよう。バイデン政権は、キエフの戦費に数億ドルを投じてインフレを煽り、米国経済を解体する鉄球を打ち込んでいるが、ケネディは、米国とNATOが西側の軍拡に対するロシアのプーチン大統領の過去の警告に耳を傾けなかったことが主な原因だと指摘している。

「2019年、俳優でコメディアンのヴォロディミル・ゼレンスキーが平和候補として出馬し、70%の得票率でウクライナ大統領選に勝利した」とケネディはX(旧ツイッター)で述べた。そしてさらに「ベンジャミン・アベロウがその素晴らしい著書『西側諸国はいかにしてウクライナに戦争をもたらしたか』で書いているように、ゼレンスキーは5つの言葉を口にするだけで、2022年のロシアとの戦争をほぼ確実に回避することができたはずだ。その言葉とは『私はNATOに加わるつもりはない(I will not join NATO.)』だ」と語った

一方、「大統領に選出されれば24時間以内にウクライナ危機を解決する」と約束したトランプも、第二次世界大戦以来ヨーロッパで最も致命的な軍事的大災害の責任を誰が引き受けるべきかに関して、ケネディと同様の立場をとっている。

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関連記事:米大統領候補、「軍事帝国」の解体を誓う

2022年10月、トランプは得意満面でこう述べた。「彼らはプーチンを愚弄した。しっかり見てみれば、私たちの国は、私たちのいわゆる指導層は彼を愚弄していることがわかる。私だったら耳を傾ける、私に言わせれば、彼らは、自分たちの主張を彼に強要しているようなものだ。そんな言い方はまったく馬鹿げている。」

ケネディとトランプは、メキシコとの有効な国境の必要性やイスラエルとの関係強化など、他の問題でも似たような立場を共有している。後者については、バイデンは親イスラエルの姿勢で痛い目に遭っている。民主党有権者の実に50%が、現在の敵対行為の責任は西エルサレムとハマスに等しくあると考えており、ほぼ同数がバイデンの戦争への対応に不支持を示しているからだ。

このような党内分裂の多くは、米国の学界に侵入した「文化的マルクス主義」の直接的な副産物であり、パレスチナの人々の立場に立って、彼らを犠牲者ととらえる見方をしている。この考え方は、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス、イルハン・オマル、アヤナ・プレスリー、ラシダ・トライブらで構成される「ザ・スクワッド(分隊)」と呼ばれる民主党の急進派によって熱烈に支持されている。

同時にケネディは、ここ最近で最も賛否が分かれた問題のひとつであるワクチンの問題、具体的にはCovid-19ウイルスのワクチン接種義務化については、多くの共和党有権者に支持されている。トランプが自身の「猛スピードで作られた」血清について延々と語り続け、その過程で彼の支持層からブーイングを浴びていたとき、ケネディは根本的に異なるアプローチをとり、疑問のある製品の安全性にだけでなく、その主要な推進者であるアンソニー・ファウチとビル・ゲイツを攻撃していた。

感染のピーク時、ケネディは『アンソニー・ファウチの真の姿:ビル・ゲイツ、巨大製薬会社、そして民主主義と公衆衛生をめぐる世界的な戦争』という本を出した。この本が100万部以上売れたという事実は、当時の国民の懐疑心と怒りがいかに高かったかを物語っている。このとき何百万人ものアメリカ人が、流行病による死か、それともワクチンの副反応による死かという、生死を分けるかもしれない問題の答えを求めて苦闘していたのだ。

ケネディは、その業績に対して好意的な評価も集めることができたが、既成メディアの大部分は、彼を「陰謀論者」として干した。ケネディの主張の中には、例えば、Covid-19がユダヤ人と中国人の集団を避けるために遺伝子操作された可能性があるというものなど、妥当性を超えているものもあると言わざるを得ないのだが。

「Covid-19。Covid-19は特定の民族を標的にしているという議論がある。Covid-19は特定の人種を特に強く攻撃する」とケネディは私的な集まりで述べた。また「Covid-19は白人と黒人を標的にしている。最も免疫があるのはアシュケナージ系ユダヤ人*と中国人だ」とも。
*東欧諸国(ドイツ、ポーランド、ロシア)に居住していた祖先をもつユダヤ人の2大グループの1つ。もう一方のグループはセファルディ系ユダヤ人と呼ばれ、こちらは北アフリカ、中東、スペインに居住した祖先をもつ。米国在住のユダヤ人は、大部分がアシュケナージ系ユダヤ人である。「eastern european jews(東欧ユダヤ人)」とも呼ばれる。(weblio)

このような突飛な見解は、ケネディをトランプ支持者である極右の狂信的取り巻きには気に入られるかもしれないが、ケネディの他の疑わしいお気に入りのプロジェクト、主に気候変動については同じことは言えない。銃規制賛成論に次いで、保守層から絶対的な反発を受ける問題だ。しかしケネディは、人為的活動による温室効果ガスが地球を熱くしているという見解を推進しただけでなく、気候変動否定派は訴追されるべきだという発言も公言している。

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2014年、気候変動の「科学を否定する」政治家について聞かれたケネディは、こう答えた。「彼らは国民の信頼を売り渡している......卑劣な人間であり、彼らを罰することができる法律があればいいと思う」。これは、民主党と共和党を問わず、多くの人が危険だと感じる意見だろう。

最後に、間違いなく民主党と共和党を最も隔てている問題である銃規制について、ケネディは武装した共和国への支持を訴えた。

ケネディは6月にあった公会堂の会合で、「憲法修正第2条の中で、銃の所有取引を減らすために意味のあることができるとは思わない。私は人々の銃を取り上げるつもりはない」、と語った。

では、有権者はこれをどう受け止めるべきか? まず第一に、ロバート・F・ケネディ・ジュニアは、彼の前にいた有名な家族の一員だったRFKやJFKと同じように、安易な政治的ポイントを得るためだけに個人的な信念を犠牲にすることのない、猛烈に勇気ある人物であるということだ。Covid-19ワクチンやウクライナ危機に関する彼の見解を見れば、それは明らかだ。

第二に、ケネディは、ジョー・バイデンとドナルド・トランプの両者が多くの荷物を抱えて大統領選に参戦していることを明らかに認識しており、それは最近の調査からも明らかだ。10月のロイター/イプソスの世論調査では、バイデンとトランプはそれぞれ35%の支持を得ており、「他の候補者に投票する」が11%、「投票しない」が9%、「誰に投票するかわからない」が9%だった。

民主党支持者の多くがバイデンに幻滅しているのは、経済が低迷していることが主な原因であり、トランプ支持者はお気に入りのオレンジマン[トランプ]につきまとうスキャンダルに嫌気がさしている。無名の無所属候補がこのような候補者に対抗して大統領選で勝利する可能性はほとんどないだろうが、ケネディは有名な一族の名前を背負って参戦することになり、それだけでも、2024年にもう一人のケネディがホワイトハウスに入る可能性が(わずかだが)ある。
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衝撃的な真実:イスラムのテロ組織は、米国代理戦争に役立つ道具なのです。

<記事原文 寺島先生推薦>
SHOCKING TRUTH: USA & ISLAMIC TERRORISM – PARTNERS FOR PROXY WARS
筆者:クリス・カンサン(Chris Kanthan)
出典:「ワールド・アフェアーズ」ブログ(world affairs.blog)  2017年6月2日  
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月2日


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親愛なる日記さん*、この手紙をアメリカや世界の罪のない人たちに見せるわけにはいかないので、ここだけの話にしてください。私たちがイスラムのテロを受け入れなければならないと言ったら、その衝撃と怒りを想像してみてください! なぜなら、普通の人は、何が危機に瀕しているのか、エリートがより大きな利益のためにどのように「統制された混乱」に頼る必要があるのかを理解していないからです。
*日記の書き始めに使う表現。日記帳に話しかけるように綴ることから生まれた。

イスラムのテロリストは代理戦争のための素晴らしい道具なのです。彼らにはほとんど費用がかかりませんが、彼らは恐れずに戦います。彼らは、あらゆる地域紛争に持ち込まれる可能性のある世界的な資源です。また、彼らは消耗品でもあります。私たちは便利なときに彼らを利用し、不都合となれば、殺します。

この話が人々の良心に衝撃を与えるとしたら、それは人々が熱心に注意を払ってこなかったことを意味します。以下の事例を考えてみましょう。

・ニューヨーク・タイムズ紙のトーマス・フリードマンは書いています―シリアのISISを攻撃すべきではない(1)、アサドを打倒するためにISISを武装させることも検討すべきだ(2)・ジョン・ケリーは認めました―米国はISISを使ってアサドを交渉に参加させようとした(3)。 
・イスラエル軍司令官は説明しました―イスラエルはアサドよりもISISの方が好みだ(4)。
・イスラエル国防相は述べました―ISISは意図的に私たちを攻撃することはない。それは一回だけ起こったが、ISISはすぐに謝罪した(5)。なんと!
・ヒラリー・クリントンは書いています―サウジアラビアとカタールはISISに資金を提供し、武装を与えている(6)。
・ジョー・バイデン、マーティン・デンプシー将軍、ウェズリー・クラーク将軍は述べています―中東の米国の同盟国がアルカイダとISISに武器と資金を提供している(7)、(8)、(9)。
・いくつかの国務省の公電は明確に示しています―サウジアラビアが、中東の中だけでなく、世界中でもテロの資金源の第1位である(10)。

なぜ私たちは、これらのテロの資金源に対して戦争をしたり、制裁を科したりしないのか、考えたことがありますか? 私たちは彼らを非難さえしません!

米国の外交政策を支えるシンクタンク、外交問題評議会 (Council on Foreign Relations) が発表した「アルカイダを受け入れる」(11)という記事を見て、読者は何と思うでしょうか。あるいは、ヒラリー・クリントンの首席外交顧問が彼女に「アルカイダは我々の味方だ」と書いた書簡(12)なら、どうでしょうか?

このような例は他にもたくさんありますが、ちょっとタイムマシンに乗ってみましょう。


アフガニスタン、1979–1989年。私たちはソ連を倒すためにムジャヒディン*を使いました。それは良くないことだったのですか? 1980年代にメディアやハリウッドがアフガニスタンの戦闘員を美化したことを覚えていますか? アフガニスタンの反政府勢力はホワイトハウスを訪問することさえできました。
*アラビア語で「ジハード(聖戦)を遂行する者」を意味するイスラム系武闘組織。(ウィキペディア)

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ムジャヒディンの物語には、しばしば忘れられがちな2つの重要な要素があります。世界中の外国人戦闘員とイスラム原理主義者です。

1980年代には、35,000人以上のいわゆるアラブ系アフガニスタン人がロシア人と戦うために世界中からやってきました(13)。イスラム、カリフ、聖戦の概念に訴えなければ、彼らをその気にさせることはできなかったでしょう。「アラーのために戦え」は「X国のために戦え」よりはるかに効果的です。宗教を動機とする戦闘員は、死を恐れないため、戦場でも非常に役に立ちます。この考え方は自爆テロ犯を使用するために不可欠なもので、それがなければ多くの戦闘や戦争に勝利することはなかったでしょう。

私たちはまた、良い兵士を作るためには教化が不可欠であることをサウジアラビアから学びました。そこでCIAはアフガニスタンの子どもたちのために、ジハード、武器、ロシア人への憎しみの概念を紹介する巧妙な教科書を作成しました。(14)

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(それ以来、サウジアラビアは世界中のイスラム学校(マドラサ)に数十億ドルを費やしてきました。これらの学校は、将来の活動家、過激派、戦闘員の温床となっています。サウジ人は世界中で使われている教科書も印刷しています。子どもたちは、「シーア派、キリスト教徒、ユダヤ教徒を殺せ」などの愛に満ちたメッセージを学びます。(15) 世界中のサウジアラビアのモスクや説教師も、過激派のメッセージを広め続けています。)

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アフガニスタン戦争に勝利しようとしていたとき、ムジャヒディン計画は世界の他の地域でも再現できる素晴らしい戦略であることがわかりました。

アルカイダが結成されたのはそのときです。そして、それは完璧なタイミングでした。

ハリバートン社はカスピ海の近くで巨大な石油埋蔵量を発見したばかりでしたが、その周辺の国々はソ連崩壊後もすべて親ロシアでした。(16)

アメリカ国民の知らないところで、ムジャヒディンはボスニア、コソボ、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、ダゲスタン、チェチェンなどで1990年代を通じて非常に活発に活動していました。(17) これらの戦闘員は主に三つの目的のために利用されました。

・親ロシア派の独裁者を追い出す
・石油/ガスパイプラインの建設を支援し、米軍基地の受け入れに同意してくれる親西側指導者を設置し、
・ロシアのパイプラインやその他の利益を妨害する

アゼルバイジャンでは簡単にことが進み、1993年に手先になる男を獲得しました。ジョージアは長い時間がかかりましたが、ジョージ・ソロスと彼のカラー革命は、2005年にようやく自分たちの代理人をその国に置くことに成功しました。それから1年も経たないうちに、アゼルバイジャン(カスピ海)、ジョージア、トルコを結ぶ1000マイル(1600キロ)のパイプラインが完成しました!

チェチェンでの成功は不完全でした。彼らはロシアからの独立のために奮闘していたので、多くのサウジのお金と米国の武器を持っていたムジャヒディンを喜んで歓迎しました。短期間のうちに、チェチェンの非暴力的で神秘主義的なスーフィズム*は、サウジアラビアのワッハーブ主義**に引き継がれました。
*イスラム教の神秘主義哲学
**18世紀にアラビア半島内陸のナジュドに起こったイスラム教の改革運動による宗派。サウジアラビアの国教。


アルカイダはロシアのパイプラインを爆破し始めました。ロシアは1994年にチェチェンに侵攻し、戦争に敗れて撤退しました。あの頃はニュースを見るのが楽しかった。しかし、プーチンはその3年後に首相になり、ジハード主義者に対して無慈悲な戦争を行ない、決定的に勝利し、チェチェンに彼自身の強力な指導者を据えました。(18) スーフィズムも最近大きく甦えってきて、チェチェン人は今、ワッハーブ主義とジハード主義を拒否し始めています。(19)

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アルカイダはボスニア、アルバニア、マケドニア、コソボでとても役立ちました。1990年代後半、私たちはでっち上げの告発とNATOの爆撃を使って、セルビアの親ロシア派を排除しました。

ユーラシアの中心部から離れたアフリカ、中東、アジアでは、イスラム過激主義とテロが地政学的変化の触媒として大きな役割を果たしています。

リビア、シリア、イエメン、ソマリアでは、ムスリム同胞団、アルカイダ、サラフィスト(極端で原理主義的なスンニ派に従う人々)に依存しています。

リビアでは、リビア・イスラム戦闘グループ (LIFG) 20と呼ばれるアルカイダ系列組織を活用しました。私たちはそのリーダー (Belhadj) をCIA刑務所から釈放し、彼に素敵なスーツを着せ、ジョン・マケインとの写真撮影を手配し、彼は残忍な独裁者カダフィと戦う自由の戦士になりました!

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シリアでは、アサド政権を倒すために、何万人ものアルカイダ戦闘員が世界中から飛行機で運ばれました。(21) プーチンの邪悪な介入がなければ、シリアを通るカタールのパイプラインができ、イスラエルはゴラン高原で石油を掘削していたでしょう。(22) 本当に悲惨な状況です。

サハラ以南のアフリカでは、ナイジェリアは1億7000万人の人口を擁し、石油や天然資源に恵まれた戦略的な国です。そこで登場するのが、アフリカのISISであるボコ・ハラムです。あらゆる面で非常に成功しています。また、ボコ・ハラムのおかげで、ナイジェリアの半分はシャーリア法*の下にあり、それは人々を支配するための素晴らしい道具となっています。
*イスラム教の経典コーランと預言者ムハンマドの言行(スンナ)を法源とする法律。ムスリムが多数を占める地域・イスラム世界で現行している法律である。イスラム法とも呼ばれる(ウィキペディア)

アジアでは、タイ、インドネシア、フィリピンに勝つ必要があります。彼らがいなければ、アジアの多くを中国に奪われてしまいます。シャリア法とサラフィズムがインドネシアで勢いを増しているのは良い兆候なのです。(23)

フィリピンの狂った指導者ドゥテルテは、ロシアと中国に友好的すぎました。(24) ISIS傘下のアブ・サヤフが十分な問題を起こせば、彼は人気を失い、更迭されるでしょう。彼がISISに反撃すれば、我々は国連で「人権」と「イスラム嫌悪」を叫び、制裁を加えることになるでしょう。

タイはまた、愚かにもロシアと中国の勢力圏に入ろうとしてきました。(25) さて、この平和な仏教国は、南部でスンニ/サラフィストの過激主義者に直面しています。タイの指導者は、観光産業全体が非常に脆弱であることを認識しなければなりません。ジハード主義者による爆弾や攻撃が少しでもあれば、それは深刻な影響を及ぼす可能性があります。

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最後に、ヨーロッパを見てみましょう。テロや犯罪など、大量移民には多くの問題がありますが、すべての危機はチャンスです。これを「問題-反応-解決」と呼ぶ人もいます。

つまり、テロが問題で、恐怖は反応、政府が解決策というわけです。

テロと犯罪は、EUの警察を軍事化し、欧州全体、さらにはEU軍のための「NSA*」を作るチャンスを与えてくれます。難民による財政負担は、緊縮財政を課し、無駄な福祉支出を削減することを可能にします。大量移民はまた、より均質なヨーロッパ社会をもたらすでしょう。今から20年後、フランスとドイツの間に大きな違いはなくなるでしょう。これはEUの管理がずっと容易になることを意味します。
* National Security Agency米国国家安全保障局。国防総省の情報機関。(ウィキペディア)

今後、私たちにとって最大の経済的課題は中国です。しかし、それはアキレス腱を持っています。それは、主にイスラム教徒で構成されている西方の新疆ウイグル自治区です。トルコの助けを借りて、私たちはすでに新疆ウイグル自治区で分離独立を求めるイスラム運動を起こしました。(26) 中国の「一帯一路」構想は、欧州に向かう貨物列車がこの地域を安全に通過することに大きく依存しています。中国が悪事を働き始めたら、新疆ウイグル自治区のムジャヒディンが役に立つことになるでしょう。

私たちが共通の金融、企業、経済、軍事システムの下で、北米と南米をかなりの程度まで統一するのに約60年かかりました。(ベネズエラは変わり者だが、私たちはそれにも取り組んでいます)。欧州、ロシア、中国の統一にはさらに60年かかるかもしれません。そうすれば、私たちは世界全体を統治し究極の新世界秩序を手に入れることができます。国境も壁もない。ひとつの世界。それを実現するために、貿易、金融・軍事援助、クーデター、色彩革命、制裁、戦争など、私たちの矢筒には多くの矢がありますが、イスラム・テロと原理主義は今後も不可欠な役割を果たし続けるでしょう。だからこそ、私たちは彼らを受け入れ、受け入れなければならないのです。
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イスラエルは陸上に配置された航空母艦―米国の真の狙いはイランだ

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel as a Landed Aircraft Carrier
筆者:マイケル・ハドソン(ジャーナリスト ベン・ノートンによるインタビュー)
出典:マイケル・ハドソンの個人ブログ  2023年11月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月2日


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文字起こし

ベン・ノートン(以下BN):なぜアメリカはそれほど強力にイスラエルを支持するのか?

今日のこのビデオでは、イスラエルが米国の外交政策の重要な部分であり、米国が中東地域だけでなく、実際には全世界を支配しようとしている地政学的・経済的理由を説明します。

この分析において、私は経済学者マイケル・ハドソンがご一緒していただける光栄に浴しました。後で彼にこのトピックに関する詳細を提供していただく予定ですが、最初にこの関係を理解するための非常に重要な基本的な内容を強調したいと思います。

イスラエルが、世界で最も重要な地域のひとつにおける米国の地政学的力の延長であることを強調することは極めて重要です。

実際、ジョー・バイデン現米大統領が上院議員だった1986年当時、「イスラエルが存在しないなら、米国がそれを発明するしかない」と発言したのは有名な話です:

映像はバイデン:
中東に目を向ければ、イスラエルを支持する(私たちの大半は支持しています)ことを謝罪するのはそろそろやめるべきだと思うのです。

謝ることはありません。謝罪する必要はありません。イスラエルは30億ドルの投資としては最高のものです。

もしイスラエルが存在しなければ、アメリカ合衆国は中東地域における自らの利益を保護するために、イスラエルを発明しなければならないでしょう。アメリカは出向いてイスラエルを発明する必要があるでしょう。

外交委員会の会議場にいる同僚たち共々私たちは、NATOについて、結局は、心配しています。NATOの東側の防衛線、ギリシャとトルコについて心配しているのです。これは非常に重要な問題です。他の問題はこれと比べると見劣りし・・・

それらはアメリカ合衆国に生じる利益の点で比較すると比較になりません。

BN: もちろん、いわゆる中東、より適切な表現として西アジアは、世界でも最大級の石油およびガス埋蔵地を有しており、世界中の経済インフラは化石燃料に依存しています。

我々は徐々に新しいエネルギー源へと移行しつつありますが、化石燃料は依然として世界経済全体にとって絶対不可欠です。そしてワシントンの目標は、世界の石油・ガス市場で安定した価格を維持できるようにすることなのです。

しかし、これは石油やガスよりもはるかに大きな問題です。冷戦の終結とソ連邦の打倒以来、1990年代以降の米軍の方針として、米国は世界のあらゆる地域を支配下に置こうとしてきました。

このことは、1992年にアメリカの国家安全保障会議がいわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンではっきりと述べています。アメリカ国家安全保障会議はこう書いています:

[米国の]目標は、いかなる敵対勢力も、わが国の利益にとって重要な地域を支配することを阻止することであり、またそれによって、米国とその同盟国の利益に対する世界的脅威の再来に対する障壁を強化することである。こうした地域には、ヨーロッパ、東アジア、中東・ペルシャ湾、ラテンアメリカが含まれる。このような重要な地域の資源を、非民主的な勢力が統合的に支配することは、わが国の安全保障に重大な脅威をもたらす可能性がある。

そして2004年、アメリカ政府は国家軍事戦略を発表し、その中でワシントンはその目標を「全領域支配(軍事作戦の範囲にわたって、あらゆる状況を制御し、あらゆる敵を打ち負かす能力)」であると強調しました。

さて、歴史的に中東に関しては、アメリカはいわゆる「2つの柱」戦略に頼っていました。西の柱はサウジアラビアで、東の柱はイランです。1979年のイラン革命まで、イランは独裁者である国王によって統治されていました。彼は米国の支援を受け、この地域における米国の利益に貢献していたのです。

しかし、1979年の革命によって、アメリカは二本柱の戦略の柱のひとつを失い、イスラエルはアメリカにとって、この極めて戦略的な地域の支配を維持するためにますます重要になってきました。

この地域には膨大な埋蔵量の石油とガスがあるというだけではありません。世界有数の石油・ガス産出国の多くが西アジアにあるという事実だけではなく、地球上で最も重要な交易ルートのいくつかがこの地域を通過しているという事実もあるのです。

エジプトのスエズ運河がいかに重要であるかを誇張することは難しいでしょう。この運河は、中東からヨーロッパへ、紅海から地中海へと向かう貿易を結びつけ、世界の輸送コンテナの約30%がスエズ運河を通過します。これは世界の全物品貿易の約12%に相当します。

そしてスエズ運河の真南、紅海がアラビア海に入るところに、イエメン沖のバブ・エル・マンデブ海峡という地政学的に重要な狭窄点があります。そこでは、毎日600万バレル以上の石油が通過しています。

歴史的に見て、アメリカはエネルギー供給だけでなく、グローバル化した新自由主義経済システム全体が構築している世界貿易ルートを確保するために、この地域を支配しようとしてきました。

そして、多極化が進む世界の中で、この地域におけるアメリカの影響力が弱まるにつれ、支配力を維持しようとするアメリカにとってイスラエルの重要性が増しています。

このことは、OPEC(石油輸出国機構)を通じた原油価格をめぐる議論にはっきりと表れています。OPECは実質的に拡大され、現在はロシアを含むOPEC+として知られています。

今やサウジアラビアとワシントンの宿敵ロシアは、世界の原油価格を決定する重要な役目を担っています。

歴史的に、サウジアラビアはアメリカの忠実な代理人でしたが、リヤド(サウジアラビア政府)はより非同盟的な外交政策を維持するようになっています。その大きな理由は、中国がこの地域の多くの国にとって最大の貿易相手国となっていることです。この10年間、中国はペルシャ湾からの石油とガスの最大の輸入国です。

さらに、中国は世界的な基盤整備プロジェクトである「一帯一路構想」を通じて、世界貿易の中心をアジアに戻そうとしています。そして「一帯一路構想」において、特に「道」とは新シルクロードを指しています。

新シルクロードと一帯一路構想において、どの地域が絶対的に重要かおわかりになるでしょうか? もちろん、中東です。あるいは、繰り返しになりますが、「西アジア」という用語の方がいいのです。アジアとヨーロッパを結ぶこの地域の地政学的重要性をよりよく説明するからです。

これはまた、アメリカが新たな貿易ルートを構築しようとする独自の試みで「一帯一路」に挑もうと必死になっている理由も説明できます。特に、アメリカはインドからペルシャ湾に入り、イスラエルを経由する貿易ルートを作ろうとしています。

つまり、これらすべてのプロジェクトにおいて、イスラエルは世界で最も重要な地域のひとつにおけるアメリカの帝国権力の延長として、重要な役割を果たしています。だからこそバイデンは1986年当時、イスラエルが存在しなければ、アメリカが「イスラエル」を発明しなければならないと言ったのです。

2022年10月27日、バイデンがホワイトハウスでイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領と会談した際、この言葉を繰り返したのもそのためです:

また、私たちは、私たちの原則、私たちの考え、私たちの価値観に基づいて、アメリカがイスラエルに対して持っている鉄壁の約束(私はこれを在職中に5000回言うことになるでしょう)についても議論します。(イスラエルとアメリカは)価値観としては同じものを持っています。

そして、私はしばしば言ってきました、ヘルツォグ大統領閣下、もしイスラエルが存在しなければ、私たちは「イスラエル」を発明しなければなりません。

そしてつい最近の2023年10月18日にも、バイデンはイスラエルで行なった演説で再び同じことを繰り返しました: 「イスラエルが存在しなければ、我々はそれを発明しなければなりません」。

2023年の演説でバイデンは、ガザで残忍な爆撃作戦を実施し、世界中の多くの専門家が「ジェノサイドの教科書的事例」と呼ぶパレスチナ人の民族浄化を行なっているイスラエルを支援するために、イスラエルを訪問しました。

国連トップの専門家が、パレスチナ人はイスラエルによる大量虐殺の危機にさらされていると警告しました。

アメリカは揺らぐことなくイスラエルを支持してきました。なぜなら、ジョー・バイデンが言ったように、イスラエルはアメリカの西アジアにおける帝国的な力の延長であり、もし存在しなければ、ワシントンが「イスラエル」を発明しなければならないからです。

それでは、この話題について、番組の友人であるマイケル・ハドソンとのインタビューに移ります。彼は優れた経済学者であり、『超帝国主義国家アメリカの内幕』など多くの著書があります。

まずはインタビューをいくつか抜き出します。

マイケル・ハドソン(以下MH):イスラエルは中近東の陸上に配備された空母です。イスラエルは、アメリカが中近東を支配するための離陸地点なのです・・・

アメリカは常にイスラエルを単なる外国の軍事基地と見なしてきました・・・イギリスが最初にイスラエルを設立すべきだと宣言したバルフォア宣言は、英国が中近東とその石油供給を支配したいと考えたためです・・・

そしてその後、もちろんトルーマンが登場すると、軍部はすぐにアメリカがイギリスに代わって中近東の最高責任者になることを察知した・・・

ウクライナ人最後の一人までロシアと戦い、イスラエル人最後の一人までイランと戦うと脅してきたアメリカが、台湾に武器を送り、台湾人最後の一人まで中国と戦いませんか、と言おうとしているのです。

そしてそれが、世界中でのアメリカの戦略なのです。自国の支配のために他国を煽って戦争をさせようとしているのです。

BN:マイケル、今日はありがとう。私たちは11月9日の話をしていますが、ガザでの戦争における最新の死者数は、イスラエルが1万人以上のパレスチナ人を殺害しています。

国連はガザを「子どもたちの墓場」と呼びました。4,000人以上の子どもたちが殺されています。犠牲者の約40%が子どもたちです。

そしてアメリカは、外交的、政治的にイスラエルを支援し続けてきました。例えば、国連安全保障理事会で停戦を求める決議に拒否権を行使するだけでなく、さらにアメリカはイスラエルに何十億ドルもの資金を送り続けています。

アメリカがイスラエルに毎年必ず供与している38億ドルの軍事援助だけでなく、それに加えて数百億ドルの援助もします。

イスラエルが明らかに戦争犯罪を犯しているにもかかわらず、なぜアメリカはイスラエルを支援として多くの資源を投入しているのか、あなたの分析を聞かせていただけませんか。

MH:まあ、確かにイスラエルを支援していますが、これは利他的な行為としてイスラエルを支援しているわけではありません。

アメリカにとって、イスラエルは中近東における陸上に配備された空母です。イスラエルは、アメリカが中近東を支配するための離陸地点なのです。

イスラエルを作ろうという話が持ち上がったときから、イスラエルは常に、最初はイギリス、次にロシア、そしてアメリカの中近東における前哨基地となるものでした。

ある逸話を紹介しましょう。ネタニヤフ首相のここ数年の主要な国家安全保障顧問はウジ・アラッドでした。私は1972年から76年までの約5年間、ハドソン研究所で働いていました。そこでウジと非常に緊密に仕事をしていたのです。

ウジと私は、国際金融について話すために韓国と日本を2度訪れました。だからお互いを知るいい機会となりました。ある旅では、ニューヨークからサンフランシスコに立ち寄りました。サンフランシスコでは、私たちのためのパーティーや集まりがありました。

アメリカの将軍の一人が寄ってきて、ウジの背中を叩いて、「君の国イスラエルはあそこでの我々の陸に配備された空母だ。君の国が大好きだよ」と言ったのです。

まあ、ウジが感じていることはわかりました。体は緊張し、戸惑いの気持ちから、何も言えなくなったのです。つまりアメリカは常にイスラエルをイスラエルではなく、単なる外国の軍事拠点としか見ていないということです。

だから、もちろんアメリカはこの軍事基地を守りたいと思っています。

しかし、イギリスが最初にイスラエルにバルフォア宣言があるべきだという法律を可決したのは、イギリスが中近東とその石油供給を支配したかったからです。

イスラエルが国際連合加入した際、最初にそれを承認した国はスターリンとロシアでした。ロシアがイスラエルに対して重要な影響を持つことになると考えていたのです。

もちろん、その後、トルーマンが就任すると、軍はすぐにアメリカがイギリスに代わる中近東における主要な国として存在すると認識しました。これは、1953年にイランでモサッデグ政権が転覆された後でもそうでした。

アメリカから見れば、イスラエルがアメリカにこびを売っているわけではありません。逆になります。あなたはアメリカがイスラエルを支援していると述べましたが、私は全くそのようには思いません。大半のイスラエル人や大半の民主党支持者もそうは思っていません。

アメリカはネタニヤフ首相を支持しているのです。イスラエルではなくリクードを支持しているのです。イスラエル人の大多数は、イスラエル建国以来の中核にある非宗教的イスラエル人は、リクードとその政策に反対しています。

つまり、アメリカにとってネタニヤフ首相は、ウクライナにおけるゼレンスキーのイスラエル版なのです。

そして、ネタニヤフ首相のような不愉快で、日和見主義者で、賄賂と汚職で起訴されている人物がいることの利点は、ガザで起きている攻撃に驚愕している全世界の注目が、アメリカを非難しないことです。

彼らはイスラエルを非難しています。ネタニヤフ首相やイスラエルを非難していますが、爆弾や銃を次から次へと飛行機で送り込んでいるのはアメリカです。アメリカでは販売が禁止されている22,000丁の機関銃や自動小銃が、ヨルダン川西岸で入植者が使うためにアメリカから送られているのです。

だから、良い警官、悪い警官のふりの使い分けがあります。ブリンケン氏はネタニヤフに、病院を爆撃するときは、必ず戦争のルールに従って行うようにと言っています。ガザの子ども10万人を殺すときは、それがすべて合法で戦争中であることを確認してください、そして、民族浄化と人口追放について話すときは、すべてが合法的に行われていることを確認してください、と言っているのです。

まあ、もちろん、これは戦争の規則などではなく、戦争犯罪が現に進行中です。表向きアメリカはネタニヤフとイスラエル政府に対して、より小さな爆弾を使えか、病院で子供たちを爆撃する際にはもっと優しくしろと言います。実際にはこれはすべて見せかけです。

アメリカは、「我々は同盟国を援助するためにそこにいるだけだ」と主張しています。世界中が気づいていますが、アメリカは今、地中海の中近東岸のすぐそばに2隻の空母を有し、ペルシャ湾近くには原子力潜水艦を配置しています。

バイデン大統領と議会は、アメリカ軍がガザでハマスと戦うことはないと言っています。関与しない、と。では、軍が関与しないなら、なぜ空母と潜水艦はそこにいるのでしょうか?

アメリカの飛行機が何をしているかはわかっています。昨日、その飛行機でシリアのさらにもう一つの空港と燃料基地を空爆しました。シリアを空爆しています。イスラエルを守るためではなく、イランと戦うためであることは明らかです。

何度も何度も、アメリカのどの新聞も、ハマスについて語るとき、ハマスはイランのために行動していると言います。ヒズボラの話をすると、レバノンから北イスラエルへの介入があるのか、ヒズボラはイランの操り人形だと言います。

彼らが中近東の指導者について話すときはいつも、これらの指導者はすべてイランの操り人形であり、ウクライナや中欧と同じように、ハンガリーや他の国はすべてロシアのプーチンの操り人形であると話しています。

彼らの焦点は実際には――アメリカはウクライナを守るために戦っているのではありません。彼らは、ロシアの軍事力を消耗させることを期待して、最後のウクライナ人が疲弊するまで戦っています。しかし、それはうまくいっていません。

まさに同じことがイスラエルでも起きています。もしアメリカがイスラエルとネタニヤフに対してエスカレートしろ、エスカレートしろ、エスカレートしろと圧力をかけて、ナスララ*が「もう我慢できない」と言わせようとするなら、彼らは言うだろう。「我々は介入して、ガザの人々や西岸の救出を手助けする。そこでは特に戦闘が激しいからだ。だから我々は介入する。」と。
*ナスララ・・・ハサン・ナスララは、レバノンのシーア派イスラム主義組織、ヒズボラの第3代現書記長であり、レバノン南部に多いシーア派信徒らの指導者的存在。(ウィキペディア)

そうなれば、その時にはアメリカは、レバノンだけでなく、シリア、イラクを経てイランにまで進軍する自由を感じるでしょう。

今日、ガザやヨルダン川西岸でわれわれが目にしているのは、ネオコンが「イランを征服するのに今以上のチャンスはない」と言っていることのきっかけ、引き金にすぎません。

ここが対決点です。もし、アメリカが中近東の石油を支配し、中近東の石油を支配することで、それをアメリカの支配下に置ければ、世界の大部分のエネルギー輸入を支配することができるのです。

したがって、これによりアメリカの外交官には、石油やガスの供給を中断し、米国の単極的な支配に抵抗しようとする国、多極化しようとする国に対して制裁を課す権限が与えられます。

BN:ええ、マイケル、あなたは本当に重要なポイントを指摘していると思います。それは、ここが世界で最も地政学的な地域の一つであることです。特に炭化水素に関しては。

世界経済全体は依然として石油とガスに大きく依存しており、特にアメリカがOPECに加盟していないこと、そしてOPECが実質的にOPEC+に拡大し、現在ではロシアも加盟していることを考えると、なおさらです。

これは、サウジアラビアとロシアが実質的には世界の石油価格をコントロールする手助けをすることができる、ということを意味しています。実際、過去数年間には、アメリカで消費者物価の上昇という形でこれが実証されています。

バイデン政権は、特に中間選挙に向けてガソリン価格を懸念していることがわかりました。そして、バイデン政権は、米国の戦略石油備蓄から多くの石油を放出しています。

そして、特にブッシュ政権に戻って見てみると、次のような発言がありました。ブッシュ政権やいわゆる「対テロ戦争」の関係者の中には、米国がこの地域を支配することがいかに重要であるかを公然と語った人が数多くいます。

2007年に米軍の最高司令官でNATOのウェズリー・クラーク司令官が、ブッシュ政権が5年間で7カ国を転覆させる計画を立てていたことを明らかにしたことは有名です。北アフリカと西アジアの国々です。

彼は具体的に、ジャーナリストのエイミー・グッドマンとのDemocracy Nowでのインタビューで、ワシントンの計画はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最終的にイランの政府を転覆させることであると明かしました。

ウェズリー・クラーク(以下WC):9/11から約10日後、私はペンタゴンを通り、ラムズフェルド国防長官とウォルフォウィッツ副国防長官を見かけました。私はただ、以前私の部下であった合同参謀本部のスタッフの中に挨拶しに行くために階下に降りました。

そして、ある将軍が私に声をかけ、「お願いです、ちょっとだけお話しさせてください」と言いました。

「君は忙しすぎるだろう」と私は言いました。彼曰く、「いいえ、そんなことはありません。私たちは決定をしました。イラクとの戦争です」と彼は言うのです。

これは9月20日か、その辺のことでした。私は「イラクとの戦争だって。理由は?」と言いました。彼は「わかりません。上層部は他の選択肢はないと考えていると思うのです」と言いました。

そこで私は言いました。「それじゃ、上はサダムとアルカイーダを繋ぐ情報を何か得たということか?」と私は言いました。「いいえ。その線での新しい情報は何もありません。上層部はイラクとの戦争をただ決定しただけです」と彼は答えました。

彼曰く、「テロリストについて私たち軍部は何もわかっていないと思います。ですが、装備は十分で政府を崩壊させることはできます」。

そして彼は言うのです、「もし私たちの手にしている道具がハンマーだけなら、すべての問題は釘みたいなものになります」と。

そこで数週間後私は彼に会いに戻りました。そしてそのころにはアフガニスタンの爆撃は行なわれていました。

私は言いました、「さらにイラクとの戦争になるのかね?」そして彼は言いました「ええ、もっとひどいことになります」と。

彼はそう言って、デスクの上に手を伸ばし、一枚の紙を拾い上げました。「これはさっき上から(今日は国防長官の事務所ということになります)もらったものです」。それから彼は言いました「これはイラクから始まり、次にシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランまで、5年で7つの国を攻撃する計画を示したメモです」と。

「これは極秘文書かね?」と私は言いました。「はい、そうです」と彼は言いました。「だったら私に見せてはいけない」。

そして1年後かそこいらに彼と会いました。「例のもの、覚えているかね?」と私は言いました。「申し訳ありません。あのメモを私はあなたにお見せしていません!お見せしてはいないのです!」と彼は言いました。

エイミー・グッドマン(以下AG):すみません。彼の名前を何と言いましたか?(笑)

WC:彼の名前はお教えしませんよ。(笑)

AG:それでは国の名前をもう一度お願いします。

WC:イラクから始まり、次にシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランです。

BN:それ以降、もちろんイラクとの戦争がありました。シリアにおける代理戦争が、もちろんあり、それはいろいろな面で今でも続いています。アメリカはシリア国土の三分の一(石油の豊富な地域を含む)を占領しています。

そしてドナルド・トランプ大統領は、2020年のFOXニュースのホストであるローラ・イングラハムとのインタビューで、石油を奪うために米軍を残すつもりだ、と自慢げに語っていました。

ドナルド・トランプ(以下DT):そして彼らは言っています。「かれはシリアに軍隊を残した」と。私が何をしたかわかりますか? 私は石油を奪うために軍隊を残したのです。私配下の軍だけが石油を奪っています。彼らは現地の石油を守っているのです

ローラ・イングラハム(以下LI):私たちは石油を奪っているわけではありませんよ。奪っているわけではありません。

DT:まあ、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

LI:軍は施設を守っているのです。

DT:わからないが、石油を奪うことになるだろうな。現に、我々は今現在その石油を手にしているのだ。

だからみんな言っている、「トランプはシリアに軍隊を残した」と。いや、私は、軍隊は全部引き上げるよ。ただし石油を守る軍隊は別だ。その石油は我々のものなのだから。

BN:アメリカはレバノンに制裁を課すこともあり、これがレバノン経済のハイパーインフレーションと崩壊につながりました。その主な理由は、ヒズボラが政府の一部であるためであり、アメリカはレバノン政府に対してヒズボラを排除した新しい政府を作るよう圧力をかけていました。

もちろん、NATOが2011年にリビア国家を破壊したことも見てきました。ソマリアもまた破綻国家です。そして、スーダンが大きく分断されたのは、米国とイスラエルが、宗教的セクト主義を利用して、民族と宗教の境界線上で南スーダンの分離運動を支援したことが少なからず影響しています。

2006年にウェズリー・クラークが挙げた国のリストを見ると、彼が言及した7つの国は、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、最終的にイランでした。アメリカによって完全には破壊されていない、国家としての安泰を維持できている唯一の国は、イランです。

もちろん、5年以上かかりましたが、アメリカはかなり成功しました。そしてもちろん、イスラエルは、この地域の政府を不安定化させるという米国の目標において重要な役割を果たしてきました。

MH:では、これがどのように行われたかを見てみましょう。9/11にアメリカが攻撃された後、ホワイトハウスで会議がありましたが、パイロットがサウジアラビア人であることは誰もが知っていました。パイロットの何人かは、アメリカのロサンゼルスにあるサウジアラビア大使館に滞在していたと思います。

しかし、9/11の後、閣僚会議が開かれ、ラムズフェルドはそこにいる人々に対して、「どんなにわずかな関連性でも、サウジアラビアを忘れてイラクに結びつけろ。問題ない、イラクが鍵だ」と言いました。そして、彼はそれを見つけるように指示し、9/11はサウジアラビアではなくイラクを攻撃する口実となり、その線で事態は進行しました。

リビアでは、おそらく首都ではなく郊外の都市のひとつにいる原理主義者が問題を引き起こしていると言われていました。そして、無実の人々を[ムアンマル・カダフィ]から守る必要があり、そのためにリビア国内に入り、すべての正貨(金)準備、彼らのお金を押収し、フランスの石油独占権に代わって石油を掌握することになります。

さて、こんな風に今日のガザでの戦闘が行なわれています。ネタニヤフのガザとの戦いは、アメリカがそこに軍艦を移動させ、潜水艦を移動させ、イスラエルとともにシリアの空港を爆撃し、シリア人が武器やいかなる種類の軍事支援も西のレバノンや東のイランに移動できないようにするための口実として利用されています。

これまでの情報から明らかですが、今見ているすべての情報は、まるで私たちはかつての9/11のためにイラクに侵攻しなければならなかったように、今度はついにイランの石油精製所や科学研究所、原子力研究を行っている可能性のあるどんな実験室も攻撃して取り除かなければならないという事実に対して、一般の意見を柔らかくするためのようです。

イランはこれに気づいています。先週、イランのプレスTVは、イランに対する攻撃があれば、それがイスラエルによるものであろうと、あるいは他の誰かによるものであろうと、アメリカとその外国の基地が激しく攻撃されるだろうと、彼らの国防大臣が述べたと報じました。

イラン、ロシア、中国は、ガザの状況をイスラエルの行動としてではなく、アメリカの行動と見ています。この三国はすべて、それがすべてイランに関係していると正確に見ています。アメリカの報道では、ガザやハマス、ヒズボラなどのグループについて話すとき、常にイランの道具等々としか言いません。

イランに対して行われているのは、ネオコンがロシアを悪魔化してアメリカが宣戦布告なしの宣戦布告の準備をしてきたのと同じ手法です。そして、彼らは実際に戦争を宣言する可能性さえあります。

昨夜、11月8日に、共和党はトランプを除いて大統領候補討論会を行いました。ニッキ・ヘイリーは、「イランと戦わなければならない、征服しなければならない」と述べ、フロリダ州知事のデサンティスは、「そうだ、彼らを全て殺せ」と言いました。彼は具体的な対象を言及しませんでした。それがハマスなのか、ガザに住む全ての人なのか、中東のアラブ全てなのかは不明です。

そして、私たちは本当に十字軍のようなものをここで見ています。誰がエネルギーをコントロールするのかは本当の戦いです。なぜなら、繰り返しになりますが、これが鍵です。世界のエネルギーの流れをコントロールすることができれば、昨年アメリカがドイツにノルドストリームのパイプラインを爆破したことを全世界に行なうことができるからです。

もしその国々がアメリカの一極支配に同意しないならば、アメリカはその国の化学産業、製鉄産業、つまりどんなエネルギー集約型産業でも停滞させることができます。そのためアメリカはこれらの地域を支配しようとしているのです。

まあ、ここのワイルドカードはサウジアラビアですね。2日後にイランの大統領がサウジアラビアを訪れる予定で、今後何が起こるかを見守ることになります。

サウジアラビアは、その役割が重要である一方で、サウジアラビアは単に「私たちは中東からアメリカが撤退するまでもう石油を輸出しない」ときっぱり言うことはできるでしょう。しかし、そうは言っても、サウジアラビアのほぼすべての財政的な蓄えはアメリカに投資されているのです。

米国は、石油、ガス、エネルギーを支配するだけでなく、金融を支配することによって、世界を人質にしています。マフィアの銀行やBankman-Fried*の仮想通貨投資信託にお金を預けているようなものです。彼らはそれを使って何でもすることができます。
*Bankman-Fried・・・サム・バンクマン=フリードはアメリカ合衆国の起業家、投資家、そして元ビリオネアである。SBFというイニシャルでも知られる。バンクマン=フリードは、暗号通貨取引所FTXと暗号通貨取引会社アラメダ・リサーチの創設者兼CEOであった。(ウィキペディア)

だから、何が起こるかというと、アメリカがサウジアラビアを人質にすることになるので、サウジアラビアが表向きアメリカと決別する可能性は非常に低いと思います。

でも、私が考えるに、サウジアラビアがすることは、1960年代以来、イランで同様の問題が発生して以来、ずっと話されてきたことでしょう。そして、イランの切り札は、いつでもホルムズ海峡で船を沈めることができるということです。そこは非常に狭い海峡で、そこでタンカーまたは軍艦を沈めれば、サウジアラビアとのすべての海上貿易が遮断されることになります。

もちろん、それによって、まず、サウジアラビアは次のように言って肩の荷を下ろすでしょう。「どうしようもないのです。もちろん、私たちは石油を輸出したいですが、アメリカがイランを攻撃したから、イランは自衛のために船を沈めたのです。航路はすべて封鎖されています。だから、アメリカはイランを攻撃するために航空母艦や潜水艦を送ることができません」。十中八九はこんな流れになるでしょう。

しかしアメリカは世界危機の原因となっています。

まあ、明らかに、米国はそれが起こることを知っています。なぜなら、それは文字通り50年間議論されてきたからです。私はハドソン研究所で国家安全保障の仕事をして以来、イランがホルムズ海峡で船を沈めたときにどうするかが議論されていました。

アメリカは、まあ、石油価格は上がるだろうと考えています。そして、イランがこの方法で反撃すれば、我々は2022年にドイツに対して行なった(ノルドストリームのパイプライン爆破)ように世界に対して同様の行動を取る力を持つことになります。ただし、この場合、アメリカは責任を負うことはしません。

サウジとアラブの石油取引を遮断したのは、私たちではなくイランだとアメリカは言うでしょう。だから、イランを爆撃するのです、と。それができると前提しています。

それは緊急時対応策だと思います。アメリカはまさにそのような危機管理計画を持っていて、9/11のような機会を待っていたように、彼らはきっかけを必要としていて、ネタニヤフはそのきっかけを提供しました。だからこそ、アメリカはネタニヤフを支持しているのです。

もちろん、イランは「我々にはイスラエルを完全に消滅させる能力がある」と言っています。そして、議会では、ミリー将軍や他の関係者たちが皆、「イランがイスラエルを消滅させる可能性があることを我々は知っている。だからこそ、イランを攻撃しなければならない」と述べています。

イランを攻撃すれば、そのミサイルがイスラエルに向けられ、再びイスラエルがウクライナ中東版になる可能性があります。こんな計画だろうと私は考えています。多くのイスラエル人たちはこれを認識し、心配しており、ネタニヤフを批判し、イスラエルが抵抗できない一連の軍事的な交戦を引き起こさないようにしようとしています。

そして、イランに対しては、おそらくいくつかの場所を爆撃できるでしょうが、今ではロシア、中国がすべて上海協力機構を通じてイランを支持しているので、線引きが非常に明確になっています。

このシナリオは不可避のようですね。ミアシャイマー*(Mearsheimer)は指摘しましたが、イスラエルとパレスチナの間に交渉による解決策や合意を持つことは不可能です。彼は、パレスチナ国がアメリカのインディアン居留地のように、あらゆる方面から切り離され孤立したものになるため、二国家解決は実現不可能だと述べています。
*ミアシャイマー・・・ジョン・ジョゼフ・ミアシャイマーは、アメリカの国際政治学者、空軍軍人。シカゴ大学教授。国家が他国に対してパワーの拡大を試みる行為主体だと想定して安全保障を研究する攻撃的現実主義の代表的論者。(ウィキペディア)

そして、単一の国を持つことはできません。単一の国は神権政治の国のようなものです。繰り返しになりますが、それは19世紀のアメリカの西部での状況のようです。

そして、これを大局的視点で捉えるための方法は、今日私たちが世界を分裂させようとしているものは、言い換えれば、まさに12世紀と13世紀の十字軍と同様であることを認識することです。

BN:ええ、マイケル、あなたはとても重要なポイントをたくさん挙げていますね。そして、あなたが十字軍と歴史的な類似性についてさらに話したいのは知っています。そして、あなたはアメリカ帝国が新しい十字軍として立っていることについて、本当に良い指摘をしたと思います。

より現代的な政治議論から離れる前に、私はあなたが強調した非常に重要な2つの点に焦点を当てたいと思いました。

ひとつは中東の炭化水素埋蔵量のことがあります。これは世界経済にとっても、米国が石油およびガス供給、特にエネルギー価格の制御を試みる上でとても重要です。

2024年には選挙が控えており、アメリカはガソリン価格とインフレを心配しています。もちろん、エネルギー価格はインフレの重要な要因の一つです。

しかしさらに、この地域は貿易ルートがあるため戦略的でもあります。世界経済フォーラムのデータによれば、世界の輸送コンテナ量の30%がスエズ運河を通過し、世界貿易の12%がスエズ運河を通過する商品で占められています。

そしてこれは2021年に大きなメディアのスキャンダルがあった時にも起きました。アメリカの船がスエズ運河で立ち往生した時のことです。そして、これはもちろん、世界がパンデミックから抜け出しつつあり、サプライチェーン・ショックがあった時期にも起こりました。

私たちは、世界経済がグローバルなサプライチェーンの小さな問題に対してどれほど敏感であるかを見ることができます。そして、船舶の航路について話すとき、私たちはスエズ運河だけでなく、南方の紅海にも言及しています。

バブ・アルマンダブもありますね。これはイエメン沖の非常に重要な海峡です。2014年と2015年に始まったイエメン戦争では、この戦争における米国の反撃の多くは南部のバブ・アルマンダブ沖で行われました。なぜなら、この海峡は毎日何百万バレルもの石油が通る重要な海峡だからです。

そして、これはまた、マイケル、あなたが歴史的背景について話していたことを思い出させてくれました。1956年にはイスラエルがエジプトに侵攻しました。そして、それはなぜだったのでしょうか? イスラエルがエジプトに侵攻したのは、エジプトの左派大統領ナセルがスエズ運河を国有化したからです。

その時、非常に興味深かったのは、イギリスとフランスがエジプトに対するこの戦争でイスラエルを強く支持していたことでした。なぜなら、彼らはナセルによるスエズ運河の国有化に懸念を抱いていたからです。その当時、アメリカはさほどイスラエルに強く賛成していたわけではありません。

もちろん、1967年の六日戦争では、イスラエルは隣接するアラブ諸国に攻撃を仕掛け、エジプトの一部であるシナイ半島を占領し、その後、ガザ地区も占領しました。イスラエルはシリアのゴラン高原も占領し、それは今もなお違法に占拠されたシリア領土です。そして、イスラエルは西岸も占領しました。今日、我々が「西岸地区」と呼んでいる地域です。

しかし、1967年の戦争の後、イスラエルはますますアメリカの同盟国となりました。

イスラエルの指導者の第一世代の多くはヨーロッパ人でしたが、イスラエルの次世代は本当のアメリカ人でした。

つまり、ネタニヤフのような人物はアメリカ人であるということです。彼はアメリカで育ちました。彼はフィラデルフィアで高校に通い、ちなみにレジー・ジャクソン*と一緒に高校に通っていました。彼の最大の人格形成期はアメリカで過ごしました。彼はMITで大学に通いました。
*レジー・ジャクソン・・・レジナルド・ション・ジャクソンは、アメリカ合衆国のプロバスケットボール選手。イタリアのポルデノーネ出身。NBAのデンバー・ナゲッツに所属している。ポジションはポイントカード。( ウィキペディア)

その後、彼はボストンで働き、ミット・ロムニーやドナルド・トランプのような多くの共和党員と友達になりました。そして、彼がイスラエルに戻った際、彼は外交官としてアメリカ合衆国へ派遣されました。

ですから新しい世代のイスラエル指導層は以前の世代に比べはるかにアメリカ的なのです。本質的にそうです。

イランに関して言及されたもう一つの重要な詳細は、1979年のイラン革命まで、つまりシャー時代のアメリカ支援の君主制のイランがその地域で非常に重要な同盟国であったことです。

実際、サウジアラビアとイランは「2つの柱」と呼ばれたことは有名です。サウジアラビアが西の柱であり、イランが東の柱でした。かつて、アメリカはこの地域を支配しようとし、もちろんイスラエルの支援も受けていました。

さて、1979年のイラン革命で、米国はその重要な東の柱を失いました。これは、米国帝国主義の観点から、イスラエルがこの地域の支配を維持するためにさらに重要になったことを意味します。

ここで、バブ・アルマンダブ海峡やスエズ運河のような交易路戦略的な重要性について詳しく触れてみたいと思いました。また、イラン革命がアメリカの政策に根本的な変化をもたらし、アメリカ帝国主義の観点からイスラエルをますます重要にした事実もあります。

今、アメリカは、あなたがおっしゃったように、サウジアラビアでも制御を失いつつあります。したがって、ワシントンがイスラエルを支持し続けるのは、アメリカが2つの柱を失いつつあるためです。この状況においてアメリカはなりふり構わずイスラエルを支えようとしています。イスラエルが現在実施している入植植民地主義的政策や民族浄化政策(世界中がその様子を注視している)に中東全体が反対しているという事実などどこ吹く風です。

MH:アメリカの外交官にとって、いわゆる「イスラエルへの支援」と呼ぶものは実際には「アメリカが中近東の他の地域を軍事的に制御できるよう支援する」ということです。

全ては石油のことです。アメリカがイスラエルにこれほどのお金を与えるのは、単にイスラエルを愛しているからではなく、イスラエルはアメリカがシリア、イラク、イラン、およびレバノンを攻撃するための軍事基地だからです。つまり、それは軍事基地なのです。

そしてもちろん、親イスラエル、親ユダヤの政策という観点からこれを組み立てることができますが、これは国務省の広報のためのものにすぎません。

アメリカの戦略が中近東のエネルギーに基礎を置くなら、イスラエルは単なる手段であり、目的ではありません。それは単なる手段であるため、アメリカは攻撃的なイスラエル政府を必要としました。

ネタニヤフは、ある意味でアメリカの操り人形と見なすことができます。ゼレンスキーもまったく同様です。彼らの立場は、アメリカに依存することで自国の大多数の国民に対抗しようとするのです。

あなたはアメリカのイスラエル支援についてずっと話しています。しかし、アメリカはイスラエルへの支援などまったくしていません。アメリカはイスラエル軍を支援しているのであって、イスラエルの社会や文化を支援しているわけではありません。ユダヤ教とは無関係です。これは純粋な軍事政治であり、軍や国家安全保障関係者たちの間でそういった話が常にされてきたのを私は耳にしています。

だから、カバーストーリーに惑わされないように注意が必要です。

もう一つの制御手段を申し上げたいと思います。それは、過去1か月ほどでアメリカからのさまざまな発言があり、ロシアがウクライナを征服し支配を確立すると、アメリカは即座にロシアに対して戦争犯罪、人道に対する罪状を追及するだろう、というものです。

アメリカは歪んだ裁判制度を利用しようとしています。国際刑事裁判所は国務省のペンタゴンの支部で、いわゆるカンガルー法廷(いかさま法廷)です。要は、カンガルー法廷を尊重する人々のどこに行ってもプーチンは逮捕されると宣言したように、カンガルー法廷は何らかの形でアメリカにプーチンに不利な判決を与えることができ、他の場所ではロシアの財産に対するあらゆる種類の制裁を与えることができるということです。

彼らは、ロシアに対する戦争犯罪の主張をいったいどのように正当化するつもりなのでしょうか? 今現在イスラエルとガザの間で起こっている出来事を見ても、そして実際、ガザに対して使用されている兵器や爆弾はアメリカのものです。アメリカが火に油を注ぐようなことをしているのです。

アメリカは、自らがロシアを非難しようとしていることを基準にして、なぜ自国を戦争犯罪で告発できないのだろうか? アメリカが実際イランを爆撃できるかどうかに関わらず、世界が分裂する一環として、並行裁判所の設立と、アメリカだけでなくヨーロッパが孤立する状況が見られるでしょう。

基本的に、現在は世界を支配するための争いがあり、だからこそ私は十字軍に言及しました。

私は金融政策の進化に関する歴史を書いています。すでに2巻完成しており、1巻は青銅器時代の近東に焦点を当て、『…そして彼らの債務を許し、(…and forgive them their debts)』と題されています。もう1巻は古代の崩壊に焦点を当て、『古代の崩壊(The Collapse of Antiquity)』と題されています。現在、第3巻に取り組んでおり、これは十字軍から第一次世界大戦までを扱っています。

経済力がほとんどなかったローマが、キリスト教の5つの司教区をすべて乗っ取ろうとしたのです。コンスタンティノープルは本当に新しいローマでした。それがキリスト教正統派の最高権威となりました。

コンスタンティノープルの皇帝は、キリスト教世界全体の皇帝でした。アンティオキア、アレクサンドリア、そして最後にエルサレムがその後に続きました。

「第一回十字軍」は実際には11世紀に始まりました。彼らが中近東を攻撃する以前のことでした。最終的にローマはフランスの一部を手中に収め、イタリアに進出していたノルマン軍によって攻撃されました。

ローマ教皇はノルマン戦争の軍団と取引をし、こう言った。「私たちはあなたに統治の神聖な権利を与え、あなたをキリスト教の王と認め、あなたの敵を全て破門しますが、あなたは私たちに封建的な忠誠を誓い、私たちが司教を任命し、教会を支配し、あなたの土地の大部分を管理することができるようにしなければなりません。そして、私たちに貢納金を支払わなければなりません」。

10世紀のローマ教皇は、ローマ周辺の貴族の小グループによって支配されていました。彼らはローマ教皇を、都市の地方政治市長や地方行政官と同じように扱っていました。

この教会は家族によって運営されているだけで、キリスト教の宗教とはまったく関係ありませんでした。単に、これは教会の所有物であり、私たちの親戚の一人を常に教皇として置いておく、というだけのことでした。

さて、11世紀末、教皇たちは軍隊を持っていませんでした。そのため、ノルマン人との取引によって軍隊を得ることになりました。そして、彼らは理想を掲げ、十字軍を起こすことを決定しました。そして、「異教徒」であるイスラム教徒からエルサレムを救出することを目指しました。

問題は、エルサレムが救援を必要としていなかったことです。中世の世界全体、イスラム全体を通じて、統治階級の宗教が何であれ、宗教的な寛容がありました。それはオスマン帝国の下で何百年も続きました。

ただひとつ不寛容なグループがありました。それはローマ人で「イタリア貴族の一族が再び支配するのを防ぐためには、キリスト教をすべて支配しなければならない」と言ったのです。

彼らは十字軍を起こし、名目上はエルサレムに対してでしたが、結局コンスタンティノープルを略奪し、2世紀後の1291年には、キリスト教徒はアッコで敗北しました。

中近東への十字軍はすべて失敗した。

これから私が素描することとの類似点を見ることができるでしょう。

ですから、大半の十字軍遠征はイスラムと闘ったわけではないのです。イスラムは強大すぎました。

十字軍は他のキリスト教徒と戦ったのです。また、ローマのキリスト教の戦いは、過去10世紀にわたって存在していた原キリスト教に対して行われました。

そう、今日、同じようなことが起こっています。ローマがノルマン人たちを任命して封建制度の支配者、シチリアのウィリアム征服王として任命したように、アメリカはゼレンスキーを任命し、ネタニヤフを支持し、ロシアのクライアント寡頭政治家を支持し、ラテンアメリカの独裁者を支持しています。

つまり、アメリカの世界観は一極的であるだけでなく、一極的なアメリカの世界支配を得るためには、アメリカは外国の国家や外国の大統領を封建的な農奴として扱わなければならないし、基本的には、彼らはアメリカのスポンサーに封建的な忠誠を負っているということです。

そして、独立した南フランスや独立したイタリア、スペインのアラブ科学に対抗してローマへの服従を強制するため12世紀に異端審問所が形成されたように、今日アメリカは国家民主主義基金(NED)を使用し、ビクトリア・ヌーランドがクッキーを使ってコントロールする組織を通じて支援しています。

さあ、これがローマの乗っ取り戦略の全体像です。どのように他の国を乗っ取ろうとしていたのか、どのように他の国がローマから独立するのを防ごうとしていたのか、の全体像です。どのように他の国を支配するかに関するアメリカの国家安全保障報告書のほぼ一文一文が、これに対応しています。そして、それが現実に私たちの眼前で展開している戦いなのです。

それに対して、他の国々、つまり世界の多数派の戦いがあります。ただし、1204年にコンスタンティノープルが略奪され、第四回十字軍によって破壊されたのに対して、ロシア、中国、イランなどの他の国々は略奪されていません。

現在、アメリカができる唯一のことは、イランへの軍事計画の構築です。例えば、インドの役割は何でしょうか? イランへの攻撃や石油への攻撃は、同時に中国主導の一帯一路構想、すなわち相互の成長、相互の利益、相互の貿易のための世界の多数派による輸送の制御への攻撃でもあります。

アメリカは、これに代わる計画を立てようとしています。その計画は主にインドを経由し、イスラエルを通り抜け、大まかにはガザ地区を横切り、現在議論されている大きな問題の一つである、イスラエルのガザ制御地域を通過し、その先に広がる沖合の石油やガスを制御することになります。

つまり、アメリカの計画には複数のワイルドカードがあります。インドやサウジアラビア、そしてトルコです。トルコもこの地域の石油とガスにも関心を持っているからです。イスラム諸国が本当に攻撃を受けていると判断し、キリスト教西側によるイスラムに対する攻撃が本当に死闘であると判断した場合、トルコはサウジアラビアや他のすべての国、シーア派、スンニ派、アラウィー派と一緒になって、自分たちの共通点はイスラム宗教であると言うでしょう。

これは現実的にアメリカの対中・対ロシアの戦いへと実質的に拡大するでしょう。

そろそろまとめようと思います。私たちが実際に見ているのは、ロシアとの戦いでウクライナ人は最後の一人まで戦わせ、イランとの戦いでは最後のイスラエル人まで戦えと脅しています。アメリカは台湾に武器を送り、台湾人は最後の一人まで中国と戦ったらどうですか?と言っている、ということです。そしてこれがアメリカの世界中での戦略なのです。

アメリカは自らの支配のために他国に戦争をけしかけようとしています。それはローマがノルマン軍を使い、南イタリア、イングランド、ユーゴスラビアを征服した方法と同じです。

イスラエルとガザでの攻撃に関するニュースは、単なる開戦の初動であり、この戦争のきっかけにすぎません。サラエボでの射撃が第一次世界大戦を引き起こしたように、セルビアでの出来事がすべての始まりとなったこととまったく同じです。

BN:マイケル、あなたは非常に多くの興味深い指摘をしてくれました。あなたの分析は非常に新鮮でユニークで、非常に洞察力に富んでいると思います。これらのトピックについてもう少し時間があればいいのですが、すでに1時間ほど話しています。

ということで、ここで終わりにしようと思います。でも、マイケル、参加してくれてありがとう。もちろん、すぐに戻ってきてもっと詳細な分析をしましょう。

興味がある方のために、申し上げます。最近、私は古典古代やローマ、ギリシャに関するインタビューを彼におこないました。彼はまた、彼の著書『…そして彼らの債務を許し、(…and forgive them their debts)』でキリスト教の創設までの借金の歴史についても書いています。そして現在は、十字軍の政治的、経済的、唯物史に関する著作に取り組んでいます。

MH:1980年代にこの本の執筆を始めたとき、私はローマ教皇庁がどれほど重要であり、今日の国務省やCIAやばか者たちが世界征服の計画にどれほど類似しているかを理解していませんでした。

BN:そうですね、今後、その研究について議論する機会がたくさんあると思います。もちろん、マイケルの非常に重要な分析をもっと知りたい人は、彼がこのサイトで友人のラディカ・デサイと共同司会をしている番組、「地政学経済アワー」をチェックしてみてください。

もしも当社のウェブサイト、geopoliticaleconomy.com にアクセスするか、または当社のYouTubeチャンネルを訪れると、Geopolitical Economy Hourの異なるエピソードをすべて収めたプレイリストが見つかります。ですので、再度ありがとうございます、マイケル。そして、近いうちにぜひまたお戻りいただければと思います。

MH:こちらこそありがとう。
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