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国連憲章51条から見ると、ロシアとイスラエルの軍事行動はどう異なるのか(スコット・リッター)

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia, Israel, and the Law of War Regarding Civilians
著者:スコット・リッター(Scott Ritter)
出典:スプートニク  2023年11月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月29日





 10月7日にハマスがガザ周辺のイスラエル軍基地や入植地を攻撃した後、正当防衛の問題や、その攻撃に対するイスラエルの武力行使をめぐる合法性に関する議論が盛んに行われた。

 必然的にこの議論は、ロシアの特別軍事作戦における行動と、ガザに関するイスラエルのこれまでの行動を比較しようとする議論につながる。特にマリウポリの例は、現在進行中のイスラエルのガザ作戦との比較対象としてしばしば取り上げられる。この2つの戦闘を直接比較するのは時期尚早だが、ロシアとイスラエルがそれぞれの軍事作戦を正当化する際に拠り所とした国際法の基盤を検証することはできる。悲しいかな、イスラエルの場合、その基盤は不十分である。


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 ロシアは軍事行動開始の正当化理由として、憲章第51条に明記されている個別的・集団的自衛権を挙げている。

 憲章第51条の条文は以下のとおり:
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全を維持するために必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を損なうものではない。この自衛権の行使において加盟国がとる措置は、直ちに安全保障理事会に報告されるものとし、かつ、この憲章の下で、安全保障理事会が国際の平和及び安全を維持し又は回復するために必要と認める措置をいつでもとる権限及び責任に何ら影響を及ぼすものではない。

 ロシアのプーチン大統領は特別作戦の開始を発表する演説で、NATOの東方拡大がロシアにもたらす脅威と、ウクライナがドンバスのロシア語を話す人々に対して続けている軍事作戦について詳述し、先制攻撃の根拠を示した。

 NATOとウクライナは、「われわれ(ロシア)に、ロシアとわれわれの国民を守るために、今日われわれが使わざるを得ない以外の選択肢を残さなかった。このような状況では、大胆かつ迅速な行動を取らなければならない。ドンバスの両人民共和国はロシアに助けを求めている。この文脈において、国連憲章第51条に従い、ロシア連邦理事会の許可を得て、2月22日に連邦議会が批准したドネツク人民共和国およびルガンスク人民共和国との友好・相互援助条約を履行するため、私は特別軍事作戦の実施を決定した」とプーチンは宣言した。


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 ロシア大統領は、第51条に適用される予見可能な集団的自衛権の原則に基づき、ドンバスのロシア語を話す住民にとって、数千人が死亡した8年間にわたる残忍な砲撃による継続的で差し迫った脅威があるとして、認知可能な主張を示した。

 イスラエルは、ガザでの軍事行動を正当化する際、自衛権の存在を繰り返し強調してきた。しかし、ロシアのワシーリー・ネベンジャ国連大使はこの主張を否定し、「占領国であるイスラエルにはそのような権利はない」と断言した。

 ネベンジャの主張は、国際司法裁判所が2004年に発表した勧告的意見に基づくものである。「憲章第51条は、ある国が他の国に対して武力攻撃を行なった場合の固有の自衛権の存在を認めている。しかしイスラエルは、自国に対する攻撃が外国によるものだとは主張していない。

 ICJ(国際司法裁判所)は、「イスラエルは、その民間人に対する多数の無差別かつ致命的な暴力行為に直面しなければならない」とは述べず、イスラエルには「国民の生命を守るために対応する権利があり、実際にその義務がある」と付け加えた。しかし、国際司法裁判所は、イスラエルがとるいかなる措置も「適用される国際法に合致したもの」でなければならないと判断した。そのため、ガザや現在イスラエルの領土となっている土地の多くが国際法上「占領地」と見なされる限り、また、イスラエルが対応している脅威がこの占領地の外ではなく中から生じていることに注目する限り、イスラエルは国連憲章第51条に基づき、パレスチナ領土の占領の不当性を排除するために、「必要な状態」という主張に基づいて自衛権を発動することはできない。

 ネベンジャ大使は、イスラエルの安全保障に対する権利は、「よく知られているように、国連安全保障理事会の決議に基づいてパレスチナ問題が公正に解決された場合にのみ、完全に保証される。また、イスラエルがテロと戦うことを私たちは否定していない」とした。さらに同大使は、「しかし、戦うべき相手はテロリストであって、民間人ではない」とも述べた。

 ロシアはウクライナとの紛争において、国連憲章第51条に定められた自衛の要件を守ることで国際法に合致した行動をとっており、イスラエルは国際法に真っ向から反して活動する占領国であるため、その行動を正当化する理由として第51条の正当な自衛を挙げることができないことを確認した上で、問題は次に、ロシアとイスラエルがそれぞれの軍事任務を国際人道法に定められた基準に合致した方法で遂行しているかどうかという問題に移る。

 正当な戦争行為と戦争犯罪を区別する重要な考慮事項は、「軍事的必要性」の概念である。軍事的必要性の定義によれば、「正当な軍事目的を達成するために実際に必要であり、国際人道法で禁止されていない措置を認めるものである。武力紛争の場合、唯一の合法的な軍事目的は、紛争当事国の軍事力を弱めることである」となる。

 「軍事的必要性」の問題を論じる際には、「区別」の問題が最も重要になる。「区別」という概念は、武力紛争の当事国が「常に、文民と戦闘員、文民の所有物と軍事目標とを区別し、それに応じて軍事目標に対してのみ作戦を指揮しなければならない」ことを保証するものである。この区別は、絨毯爆撃や特定の軍事的目的を欠く砲撃のような「無差別攻撃や無差別な戦争手段・方法の使用」を禁止するものである。

 「軍事的必要性」と「区別」は、国際社会が戦争犯罪を構成する具体的な行為を国際刑事裁判所ローマ規程、特に第8条(戦争犯罪)という形で体系化する際の中核となる原則である。具体的には以下のような内容だ:

・民間人そのもの、または敵対行為に直接参加していない個々の民間人に対する意図的な攻撃の指示

・意図的に民間人の所有物、つまり軍事目標ではないものに攻撃を向けること

・武力紛争国際法の下で文民または文民の所有物に与えられる保護を受ける権利があるという条件のもとで、国際連合憲章に基づき、人道支援または平和維持活動に関与する要員、施設、物資、部隊または車両に対し意図的に攻撃を向けること。

・攻撃によって民間人の生命や負傷、または民間人の所有物への損害が偶発的に発生することを承知の上で、意図的に攻撃を仕掛けること。

 マリウポリとガザをめぐるそれぞれの戦いについて、ロシアとイスラエルはともに、上記のすべての行為に違反する行為を行なっている、と非難されている。しかし、この点でロシアとイスラエルを区別する主な点は、ロシアの原理が上記の行為を明確に禁じていることだ。イスラエルの原理は、文書でも口頭でも、それを受け入れている。

 2006年のレバノン戦争で、イスラエル国防軍北部司令官ガディ・アイゼンコットは、市民地域を占領するために必要な困難で危険な地上戦を行うよりも、市民地域全体を標的にして破壊しようとする軍事戦略を実施した。この戦略の目的は、単にイスラエルの死傷者を減らすこと以上に、ヒズボラ戦闘員の行動に対して民間人全体に責任を負わせることにあった。アイゼンコットは、軍事目標と民間目標を区別するという国際法上の要件を取り払った。この新しい考え方は、ベイルート西部のダヒヤ地区で初めて使用され、この考え方の名前はこの場所に由来する「ダヒヤ」ドクトリンとなった。

 マリウポリでの戦闘におけるロシア軍の行動に関する事実が明らかになるにつれ、ロシア軍兵士が模範的な行動をとり、自らを危険にさらして、国際法の精神と文言の範囲内で、区別と軍事的必要性の原則が自由に適用されるようにしたことが明らかになった。

 「ダヒヤ・ドクトリン」が執拗に実行されているイスラエル国防軍とガザについて、同じような主張をすることはできない。
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