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ウクライナは訓練を施していない徴兵を「肉挽き場」と化しているドンバスに派遣(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine sent untrained conscripts into Donbass ‘meat grinder’ – WSJ
“Bakhmut will teach you,” a commander reportedly told a soldier who complained he had never held a gun before
「バフムートに行けば自然に覚えるさ」。報道によると、指揮官は、銃を手にしたことがないとこぼした兵士にこう伝えたという。
出典:RT 2023年5月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月1日



歩兵戦闘車に乗り込み、アルチェモフスク(バフムート)に向かうウクライナ兵© AFP / Sergey Shestak


 ウクライナ当局が、訓練を施さず、貧弱な武器しか与えていない部隊を用いて、ドンバスの戦略的に重要な都市であるアルチェモスク(ウクライナ側はバフムートと呼んでいる都市だが)での戦いにあてた(結果、敗北したのだが)のは、ウクライナが計画している反撃攻勢のためだった、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(以後WSJ)は報じた。

 火曜日(5月24日)に出された記事において、米国の報道機関である同紙が報じていたのは、ウクライナの16名からなる部隊についての記事であったが、この部隊は2月にロシア領内のドネツク人民共和国のアルチェモスクの戦いにおいて、ロシア軍に壊滅された部隊だった。

 この部隊の構成員のほとんどは、「貧困層」であり、その多くは失業中だった。これらの人々は、ウクライナ軍により北東部のハルキウ州のいくつかの村から徴集された兵士たちであった、と記事にはある。中には、兵役を既に終了していた人々や、何十年も前に兵役を終えていた人々もいたが、ほとんどの人々は実地の戦闘体験のない人だった、とも同記事には記載されていた。

 WSJによると、部隊員は基地でたった2日間過ごした後、そこでソ連製のライフルや軍の制服が渡され、その後、アルチェモスクに派遣されると伝えられたという。そこは何ヶ月もの間、ロシア軍とウクライナ軍の間で膠着状態が続いていた戦場であり、「肉を挽く」ような地域であると称される、21世紀の戦争の歴史において最大の戦場と呼べる場所だった。



関連記事:「バフムート肉挽き機」の内部: ロシアはいかにしてウクライナ人をドンバスの「要塞」であるはずのアルチョモフスクから撤退させたのか?

 徴兵されたこれらの人々の中には、正式に命令を断る文書に署名することを望むものもおり、彼らはその理由としてこの使命を遂行するための適切な訓練を受けていないからだと主張したという。一人の兵が回想して語ったところによると、これまで自分は銃を手にしたことがないので怖い、と伝えたところ、ウクライナ軍の一人の曹長が「バフムートにいけば自然に覚えるさ」とだけ語ったという。

 これらの16名の徴兵された人々はウクライナの第93機械化歩兵団の第5中隊に編入されたが、アルチェモスクで過ごした時間はたった36時間で、隊員のうち11名は戦死あるいは捕虜にされた、とWSJは生き残った兵たちや戦死した徴兵の親類からの話として報じた。この中隊の一人の兵が、同紙に語ったところによると、彼は生まれて初めてロケット推進式の手榴弾を使ったといい、他の兵たちは、ロシア軍による突撃は、「地上の地獄」のようだったと語った。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の推測によれば、ウクライナ側が、「アルチェモスクでの戦闘」に対して、「兵士や領域防衛部隊を徴兵する際、貧弱な訓練や武器しか与えないこともあったのは、西側により訓練や武器の供給を受けた旅団を、この春から開始されると広く考えられていた反撃攻勢のために温存しておくため」だったからではないか、としている。

 アルチェモスクでの戦闘においてロシア側の最前線で活躍したワグナー民間軍事会社のエフゲニー・プリゴジン代表によると、同民間軍事会社の兵たちは「ウクライナ軍の5万人の兵を壊滅させ」、さらに5万~7万人を負傷させたという。ロシア側は先週土曜日(5月21日)、ウクライナ側の重要な要塞であり兵站の要地であるアルチェモスクを完全制圧したと発表したが、ウクライナ側はまだ、同市を失ったことを正式に認めていない。
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キエフ政権軍において暴動が起こる危機が迫っているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Looming Mutiny Among Kiev Regime Forces?
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
出典;Global Researh  2023年5月25日 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月1日




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 キエフ政権とその軍との間の関係が少しも良好ではないということは、取り立てて騒ぎ立てるニュースでもない。しかし、ここ数ヶ月、両者の間の亀裂や距離が拡大し続けていて、危険な規模に到達し、ゼレンスキーやゼレンスキーの取り巻きに対して激しく反発する勢力が軍内に生まれている。現在、ウクライナ軍は、機能不全に陥った寄せ集めの状態になっている。そこには、昔のソ連時代の幹部ら、より最近の「NATO化」された将校団と特殊部隊がおり、さらにNATOから軍事訓練を施されているネオナチであることを広言している様々な部隊も加わっている。ただ、彼らの従軍体験と言えば、そのほとんどは、ドンバスの両共和国での戦闘体験なのだが。
 
 昨年の時点では、何万もの傭兵や志願兵も、この不安定な軍に加えることができるだろう。その中には作戦遂行や訓練、キエフ政権の軍の指揮にあたってきたNATOの特別部隊も含まれている。ウクライナの軍事政権の軍内で、こんなにも多くの異なる集団をまとめ、命令を出すことは本当に骨を折る仕事である。西側諸国政府がほぼ達成不可能な任務をこれらの軍関係者らに課している状況を考えれば、とりわけそうだ。そしてこれらの任務というのは、達成可能な目標を達成するための軍事的な行動ではなく、情報戦争を仕掛けようとする任務なのだ。先日のベルゴロド地方(州)のいくつかの村に対して行われた失敗した攻撃の様子を見れば、現状がよくわかる。

 キエフ政権の先頭に立っているヴォロデミル・ゼレンスキーにとっては、そのような作戦を命じるのはたやすいいことだ。というのも、ゼレンスキーは死の危機に直面する現場に送られることはないからだ。それは、西側各国政府がこれらの戦略的(さらに言えば戦術的)に意味のない「攻撃」を仕掛けて、ロシア軍を中傷しようとしているのと全く同じことだ。このことはまさに、ウクライナ軍内の先述した多くの集団がゼレンスキーやゼレンスキー政権に深い失望感を抱いている理由となっている。ウクライナに「クラウス・フォン・シュタウフェンブルグ (訳注:ヒトラーを暗殺しようとしたドイツの軍人)」や、シュタウフェンブルグに追随する「将軍らによる陰謀」がないとは言い切れないが、軍から強い反発の声が上がっていることは、すでに明らかである。このような状況は、ゼレンスキーにとって非常に危険な状況になり得るだろう。これらの集団がそれぞれの違いを乗り越えて団結することになれば、それはあり得る。

 (控えめに言っても)ゼレンスキーが嫌われているのは、ソ連時代の幹部らからだけではなく、「NATO色を帯びた」司令官たちからもだ。その中には、ペトロ・プロシェンコ元大統領と繋がる経歴をもつ最高位の高官らも含まれている。さらにそこに名を連ねている人々を数名挙げれば、ウクライナのセルヒイ・シャプタラ参謀総長や空中挺進部隊のミハイル・ザブロードスキー元司令官や海軍のオレクシー・ネイツパパ司令官やオレクサンドル・シルスキー陸軍最高指揮官らだ。これらの軍の高官らは、何十年間もかけて面倒で時間がかかる過程を経て、ソ連やNATOから軍事教育を受けてきた。したがって、これらの人々は、ゼレンスキーの取り巻きであるGUR(ウクライナ国防省情報総局)のキリーロ・ブダノフ局長が、急遽台頭した際、落胆し、嫌悪感さえ覚えたのも当然だった。

 いっぽう、ゼレンスキーに対しては、ヴァレリー・ザルジニーという最高位の司令官からあからさまに不満が表明されている。この人物は軍内でほぼ紛れもなく最高の権力を享受している人物だ。これら不満分子には、先述したすべての異なる集団が含まれているが、特筆すべきは、ゼレンスキーを持ち上げる宣伝扇動により本当の姿が見えなくさせられているネオナチ部隊も含まれている点だ。政権の先頭にいるゼレンスキーは、自身がまるで軍の司令官であるかのような姿を演出しようとしているが、実際のところは、明確な軍事作戦などほとんど持っておらず、このような状況も大多数の軍の高官らから反感をかう原因になっている。このゼレンスキーの考え方が招いている事態というのは、ゼレンスキーが本質的には自国軍の奮闘を自分が演出する劇場の出し物くらいにしか捉えられておらず、その軍の奮闘の唯一の目的は、情報戦争を仕掛けるためだけであり、その結果ウクライナ軍にとっては不必要な多くの犠牲者を出すことになってしまっているということだ。

 バフムートはこのような状況の最善の(最悪と言った方がいいかもしれないが)の例だ。ザルジニーが何度も撤退を要求してきたにも関わらず、ゼレンスキーは防衛を主張していた。その理由は、バフムートを失えば、西側からの支援や現金の流入が減じられることをゼレンスキーが恐れていたからだった。このような軍事的に不適切な決定をしたせいで、ウクライナの軍事政権は、凄惨な死亡率を出すことになってしまった。情報源により数値は大きく変わるが、最もありえそうな推定では、これまでほぼ25万人のウクライナ兵士が戦死、あるいは重傷を負っていると見られている。いっぽう、今年の2月の時点で、 トルコの報道機関が、(イスラエルの諜報機関からの情報として)詳細に報じた記事によると、ウクライナ側の取り返しのつかない損失は40万人近くに上り、うち約16万人が戦死し、それ以外の兵士は重傷を負ったという。

 キエフ政権側の恐ろしいほどの戦死者数については、数名の高官から明言されていて、その中には、ヴァディム・プリスタイコ駐英ウクライナ大使も含まれる。ザルジニー自身も、米国側のマーク・ミレーウルズラ・フォン・デア・ライエンとの対談においてさえ明言している。ただしライエンがその対談に参加していたことは、大手報道機関という宣伝扇動機関から検閲が掛けられた。その間ずっと、ゼレンスキーはウクライナ国外に多額の資本を確保しており、ゼレンスキー一族の豪華な生活様式は、何百万人ものウクライナの一般市民たちが送っている厳しい暮らしぶりと全く対照的である。このような状況は、ゼレンスキーの同胞らにも当てはまり、ヴェルホーヴナ・ラーダ (ウクライナの最高議会)のルスラン・ステファンチュク報道官(家族をポーランドに移住させた )や、オレクシー・ダニーロウ(息子のマキシムは徴兵を逃れマイアミに逃亡した)などがその例だ。

 ゼレンスキーは、自身のこのような振る舞いがウクライナ国民から総スカンを食らうことを完全に分かっているにちがいない。特に、ほぼ10年間、NATOから軍事訓練を施されてきた軍隊が隣国の軍事超大国との戦争に引きずり込まれて、好戦的な同盟自体が決してなし得なかった方法(航空優勢を完全に欠くこと)で戦争をする羽目になったのだ。ザルニジーがなぜか姿を消したことが、このような現状の全貌の説明になるだろう。ザルジニーは4月13日以降、公に姿を見せていない。ザルジニーの運命について唯一推測できること、及び多くの情報源から推測できることは、何人かが推測している通り、ザルジニーは逮捕され、支持者から遠ざけられている、というものだ。さらに、ザルジニーは殺害されたのでは、とまで述べる人々もいる。真実はどうあれ、キエフ政権内の分断の動きに拍車がかかる状況は避けられないようだ。

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ゼレンスキーがクリミアに所有していた高級別荘が差し押さえられる。

<記事原文寺島先生推薦>
Zelensky’s penthouse seized in Crimea
The luxury apartment is on Russia’s list of nationalized assets
その贅沢な邸宅は、ロシアが国家資産として差し押さえる物件一覧に載せられた
出典:RT 2023年5月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月1日



クリミアのヤルタにある住居家屋。この家屋には以前ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領と妻の所有物だった部屋も含まれていた。©Sputnik/Maks Vetrov


 クリミア議会が全会一致で決めたのは、ウクライナの財閥や政治家らが、クリミア半島内に所有している資産を国有化するというものだったと、RIA ノボスチニュース社が水曜日(5月24日)に、国務院からの記者発表として伝えた。

 その資産の中には、ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領 夫人であるエレナ・ゼレンスキー所有の高級アパートも含まれていた、とクリミアのセルゲイ・アクショーノフ共和国首長がテレグラム上に投稿した。報道によると、130件以上の物件が差し押さえられたとのことであり、その中には映画館、工場、大規模商業施設、ワイン貯蔵庫、銀行施設も含まれていたという。

 昨年2月、クリミア議会はウクライナの政治家や事業家らが所有していた約500件の資産の国有化も了承した。

 ヤルタ市近郊の黒海沿岸に立つゼレンスキー夫婦の三部屋からなる高級別荘の価格は80万ドルと推定されている。この別荘は、2013年に大物起業家から買ったものであり、当時の価格は16万4000ドル以下だった。ロイター通信の報道によると、2019年4月にゼレンスキーが大統領選に勝利したのち、この別荘には市場価格の半分以下の額が支払われたという。

 この差し押さえ措置は、昨年ウクライナで制定された法律に対応したものだった。その法律は、ロシア国民やロシア諸企業の資産を何の補償もなしに差し押さえることを合法化する法律だった。8月、ウクライナ当局はウクライナ国内にあったロシア国民が所有する900件以上の資産の差し押さえを認めたが、報道によるとその価値は7億6500ドル相当だったという。



関連記事:スイスは凍結されたロシア資産の額を明らかにした。

 ウクライナでの軍事行動以来、ロシアはロシア国家やロシアの諸私企業の何百万ドルもの価値のある資産が、凍結されたり差し押さえられたりするのを目にしてきた。米国と米国の欧州の同盟諸国は、その資産をウクライナ再建費に回す方法について模索し続けている。

 クリミア半島は2014年まではウクライナ領内だったが、住民は、キエフで民主的な選挙で選ばれた政府がマイダンでのクーデターにより転覆させられたのち、クリミアのロシアへの編入を住民投票で決定した。

 ゼレンスキー所有の高級アパートを含め、国有化された資産の売り上げにより得られた利益は、ウクライナでの軍事作戦で戦死した兵士たちの家族の支援に充てられる予定だ、とクリミア議会のウラジミール・コンスタンチノフ報道官が述べたと、ロシアのタス通信社が報じている。
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ナチス・ドイツは敗北した…しかしファシズムは一時的に停止したに過ぎなかったことを、ウクライナでのNATOの代理戦争が示している

<記事原文 寺島先生推薦>
Nazi Germany’s Defeat… But a Pause for Fascism as NATO’s Proxy War in Ukraine Demonstrates
出典:Strategic Culture Foundation 2023年5月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月1日


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 1945年のナチス・ドイツの敗北は、ファシズムに対する長期にわたる歴史的な闘いの一休止にすぎないことが判明した。私たちはその闘争がウクライナで、そしてロシアに対する米国の無謀で精神異常な攻撃とともに展開しているのを目の当たりにしている。

 今週は、1945 年 5 月にナチス・ドイツが敗北してから78周年を迎えた週だった。邪悪な第三帝国は打ち負かされたが、より深い怪物は倒されていなかった。ナチス・ドイツは西側帝国主義ファシズムの一つの型にすぎなかったのだ。戦後、そのファシズムは、アメリカ合衆国とその衛生国家である様々な西側諸国により最大限の力と共に再出現した。

 ワシントンとその西側衛星国を第四帝国と表現するのは誇張ではない。

 ソ連・米・英・それ以外の西側同盟諸国の間の戦時下での臨時軍事同盟は、すぐに冷戦に移行したが、それは歴史上最も破壊的な戦争の戦火がまだくすぶっているときのことだった。このような両勢力のねじれた関係をみれば驚かされる。

 西側の軍国主義がこのように再構成された様は、1945年に設立された国連が、すぐさま米国が主導する西側勢力と1949年に結成されたNATO枢軸諸国から嘲笑の対象になったことから説明できる。これら西側勢力とNATOは外国に対して数え切れないほどの侵略行為を行ってきた。朝鮮戦争(1950年代)から現在のウクライナでの戦争に至るまでずっとそうだ。

 1945年の冷戦と、今のウクライナでの戦闘の起源をたどれば、第2次世界大戦終了時に米・英がナチス第三帝国と結んでいた秘密の関係にまで行き着く。


ナチスの戦争機構を再び利用

 ほかの情報源の中でも特に、開示された米国の公文書が明らかにしたのは、何万ものナチスやナチス親衛隊の役員、これらの勢力に協力した人々が、米・英当局により再雇用されていた事実だった。ほとんど明らかにされてこなかった事実は、対ソ連戦争に携わっていた第三帝国の残党が再雇用された事実だった。

 ナチスの最終的解決(訳注:ユダヤ人虐殺の遠回しの言い方)に実際に加担していたウクライナのファシスト勢力は、何百万人ものスラブ系民族を殺害したが、これらの勢力が西側勢力により採用され、対ソ連前線の裏で行われていた代理戦争にかり出されていた。ステファン・バンデラやミコラ・レベドといった大量殺人に加担した人々は、米・英の諜報機関の工作員たちにより保護され、彼らの極悪非道の行為を継続することができた。元ナチスのスパイ部長だったラインハルト・ゲーレン少将が任された使命は、ウクライナとバルト海沿岸のナチスのゲリラを結びつけ、ソ連に対する秘密戦争をけしかけることだった。第2次世界大戦後の数十年間に欧州の西側各国が利用していたこの秘密の部隊にいた人々の名前は少ししか明らかになっていない。その多くは、ソ連社会を妨害するための命令やテロ行為の訓練を米国で受けていた。

 米国の戦略情報局(OSS)の諜報機関の幹部であったアレン・ダレスやジェームス・ジーサス・アングルトンは、故意に欧州内のナチスを採用し、次の戦争であると目されていた対ソ連戦において利用しようとしていた。ナチスの戦争犯罪者の戦争犯罪を回避させる経路が用意され、その経路を利用して、西側の諜報機関は、何千ものナチス関係者を採用しただけではなく、第三帝国が恐怖政治の下で積み上げていた、大量の金(きん)や戦利品をも確保した。この裏金が、その後何十年間にもわたって行われてきた米国による秘密工作の資金に充てられたことを、デビッド・タルボットが著書『悪魔のチェス盤』の中で明らかにしている。クリストファー・シンプソンの影響力の大きい研究である「素晴らしい金髪をもった野獣」も参照あれ。

 以下はCIAが、第2次世界大戦時にナチスと内通していたことと繋がる、世界各地で起こしたクーデターや画策のほんの数例だ: イタリア(1948)、シリア(1949)、イラン(1953)、グアテマラ(1954)、コンゴ(1960)、キューバ (1961)、ドミニカ共和国(1961)、ブラジル(1964)、インドネシア(1965)、チリ(1973)。これらはそれぞれ独立した出来事や日時ではない。米国帝国主義が世界規模に展開した侵略の1枚の綴織のようなものだ。今のウクライナの状況を、この綴織に加えることもできるだろう。


ナチスという敵を排除するための臨時的な軍事同盟というご都合主義

 西側勢力がソ連と軍事同盟を結んでまで、ヒトラー政権を倒そうとしていた理由を問うのはいい質問だ。結局のところ、米・英の支配者層と金融界の首脳は、1930年代にナチスの軍事勢力に手を貸していたが、その目的はソ連や共産主義全般を倒させることにあった。疑いのないことだが、戦時中の同盟関係というのは、ドイツ帝国を排除したいという西側のご都合主義的な取り決めに過ぎなかったという事実だ。当時、ナチス・ドイツは扱いにくい敵帝国になっていたからだ。フランクリン・D.ルーズベルトのように、根っからファシズムに反対している指導者もいたが、ルーズベルトは、国内の指導者層内のファシスト分子から失脚させられる危機に直面した。

 戦後になると西側の軍事同盟は裏切りの様相を見せ、ナチスの関係者を採用することまでしていた。西側支配者層内の危険分子は、ソ連に対して新たに開発された原子力爆弾を使用するよう積極的に動いていた。レズリー・グローヴス将軍は、マンハッタン計画を監督していた人物だが、同将軍が国防総省の科学者らに明言していたのは、この原子力爆弾の真の標的はソ連であり、かねてから広言していたナチス・ドイツではないという事実だった。「想像を絶する作戦(Unthinkable Operation)」や「ドロップ・ショット作戦」という作戦が実際に計画されていて、ソ連が原爆を開発する前に、ソ連に対して先制攻撃を行おうとしていた。

 したがって、西側の報道機関や科学界、ハリウッドによる美化作戦にも関わらず、冷戦は第2次世界大戦から続く戦争であるとみるのが正しい見方なのだ。ソ連に対して原爆による先制攻撃をしかけようとする秘密作戦は、欧州各地でナチスの歩兵らを現地採用する作戦と並行して行われていた。ソ連はいわゆる「大祖国戦争」で、少なくとも2700万人を失ったが、そのソ連は西側がこの先裏切ることに気づいていた。ソ連が目にしたのは、ナチスとの関係を絶つといういわゆる戦時中の同盟関係が崩れ、戦争犯罪者を引き渡すという同意が踏みにじられている姿だった。冷戦は、西側勢力が示した最大の裏切り行為であり、西側が欺瞞や冷酷な好戦性を消すことができないという証拠であったと言える。 


戦勝記念日の祝福を犯罪行為とみなす西側指導者層

 あの日からほぼ80年が経ち、今週欧州各地では夢のような催しが開かれた週だった。ロシアではナチス・ドイツに対する戦勝記念日の行進が、伝統的で華麗な式典とともに行われたが、西側各国では、大規模な公的祝賀会は全くなかった。欧州の支配者層、一例をあげれば、欧州委員会の委員長であり、ナチスの末裔でもあるウルズラ・フォン・デア・ライエンらは、装いが改められた「欧州記念日」を祝う方を好み、戦勝記念日は無視しているようだ。実際、欧州の支配者層は、戦勝記念日を祝福した人々を犯罪者扱いすることまでしている。

 このような状況の何がおかしいのだろうか? おそらくそのおかしさは、西側主流報道機関が、第2次世界大戦のことを間違って説明し、おかしな省略を加えて報じていることから来るのだろう。あの戦争時のより深い帝国主義的な陰謀やその皮肉な結末を理解している人々にとったら、そんなおかしさは感じないのだろう。 

 実際、欧州各国の市民たちが組織した戦勝記念日を祝ういくつかの催しは、当局から妨害された。ドイツやバルト海湾岸諸国などの欧州各国の警察は、ベルリンでの赤軍の勝利を祝うため、市民たちが戦没者記念碑にソ連の旗を掲げるのを禁止した。しかし、これらの国々では、ウクライナのファシストの支持者たちが旗を振ることや、赤軍に敬意を払ってナチズムの敗北を記念することを妨害することは許されている。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、赤の広場での行進時に発した声明の中で正しく表明していた通り、今は宣戦布告のない戦争が再びロシアに対して行われているのだ。 本当に驚くべきことなのだが、第二次世界大戦の恐怖の記憶がまだ息づいている中で、このようなことが起こっているのだ。本当に筋が通った考え方をしていて、道徳心のある人にとっては、このような状況は、腐敗した状況であるように映っていることだろう。しかし、帝国主義者やファシストを奉じる野獣の本性というものを正しく理解すれば、 野獣というものは血と肉で育てられずにはいられない存在であることは、しっかりと頭に入っているはずだ。野獣を抑えることはできない。殺さない限りは。


より大きな戦争の中のウクライナの戦場の位置づけ

 ウクライナでの武力衝突は、米国が主導するNATO軍事枢軸とロシアとの戦争というより大きな文脈の中の戦場に過ぎない。プーチンが述べた通り、世界はいまこの惑星の未来や地球の生命の実在的な方向を決めるあらたな歴史的な岐路に立たされているのだ。

 今週、さらに多くの武器がNATO勢力からキエフ政権に供給された。米国は軍事援助としてさらに120億ドルを計上(これまで既に投じられた300~500億ドルへの上乗せとして)し、英国は長距離巡航ミサイルの供給を発表した。このミサイルがあれば、ロシア領内の奥深くまで攻撃が可能となる。ドイツの最高軍司令官カルステン・ブロイアー少将は、ウクライナの諸部隊を調査し、この先予想される反撃についての評価を行った。 NATO枢軸全体が、いま事実上ロシアと交戦状態にある。もはや代理戦争などではなく、完全な全面戦争へと向かっているのだ。核兵器を使った交戦の危機がこれほど高まっているのは、1962年のキューバのミサイル危機以来なかったことだ。誤解のないように付け加えるが、今の酷い状況を作り出したのは、米国と米国の西側衛星諸国が、ロシア側が提案していた外交努力や安全保障協定に応じようとしなかったせいだ。

 不快なキエフ政権は、2014年のCIAが支援した暴力的なクーデターにより権力の座についたのだが、毎週のように過去のナチスの人々などの名誉を挽回し、通りの名前をこれらの人々にちなんだ名前に変換している。2014年に樹立された現政権の目的はロシアに対する手先となることであり、NATOの武器や軍事訓練士らが送り込まれたことを、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は今週報道機関に対して述べた

 米・英が、第二次世界大戦終結時に第三帝国の残党を雇用したのは、西側の指導者層の階級内には、無数のファシスト分子や「例外主義者」が存在し、これらの人々が、米国には世界に対する優先権と世界支配の権利が神から与えられていると信じていたからだ。これは米国当局に蔓延する考え方である。米国の戦略諜報局 (OSS)はその後1947年にCIAに引き継がれたのだが、CIA創設の命を下したのはハリー・トルーマン大統領だった。(この大統領が広島と長崎に原爆投下を命じた人物だ)。 そしてこの大統領こそ、米国のファシズムを体現するような人物であり、その脇には国防総省の軍産複合体(MIC)があった。CIAとMIC、ウォール街の諸銀行、米国資本主義を奉じる企業支配者層が、影の政府や私企業が支配する政府の代表なのだが、この勢力こそまさにファシズムだ。選挙制度は、ただの「民主主義」の隠れ蓑にすぎない。同じことは大多数の西側諸国やそれらの国々で取られているまやかしのような選挙制度にもあてはまる。真の権力者は選挙で選ばれていない財閥集団の中にいる。端的に言うと、本質的に西側諸国はベニヤ板でできた民主主義のもとでのファシスト体制なのである。まるで、豚に口紅を塗っているようなものだ。

 CIAは英国と共に、筋金入りのナチスを採用し、彼らを利用して、戦後何十年も続いた冷戦期に、世界を暗殺やクーデターや戦争という恐怖に陥れた。ファシストを奉じる米国の支配者層は、米国の大統領のひとりさえ暗殺した。それが、1963年11月22日のジョン・F ケネディだ。ケネディは、ソ連と平和的な関係を築こうとし、ロシアに対する原爆を用いた先制攻撃という作戦に応じなかったため暗殺されたのだ。それはカーチス・ルメイ将軍など国防総省の幹部らが求めていたことであった。


冷戦の終結がもたらすと思われていた平和がなぜ訪れなかったのか

 ファシストの歴史が何十年もの間続いてきた事実は、1991年に冷戦が終結した際に実現すると思われていた平和がなぜ訪れなかったのかの説明になる。今から30年以上前、ソ連は解体したが、それによってより平和な世界が構築されることはなく、国際関係の安定も成し遂げられなかった。

 主に米国の支配者層が牽引しているファシズムを奉じる西側勢力は、他の世界と平和共存できることはない。その理由は、西側の資本主義的帝国主義に基づく政治体制の行き着く先は、全世界を覇権と支配のもとで管理する社会になると考えられるからだ。西側社会の基礎が、このような不平等な人間関係をもとにしたものであり、そのような基礎を支えるために、軍国主義や侵略、国家によるテロ行為、戦争が必須となっているのだ。

 ナチス・ドイツは1945年に敗北したが、それはファシズムに対する戦いのより長い歴史から見れば、単なる小休止にすぎなかったことがわかる。いま私たちの目前には、ウクライナで展開されている戦争があり、さらに米国当局によるロシア、中国、イランなどの国々に対する狂気のもとでの侵略が繰り広げられている。その侵略の理由は、これらの国々が、米国による世界支配にひれ伏して、従属しようとしていないからだ。

 西側の支配者層が、戦勝記念日を祝福する素振りさえ見せないことにはなんの不思議もない。戦勝記念日など、西側の支配者層にとったらなんの意味もないからだ。西側の支配者層が裏切り行為を見せているのは、ロシア国民だけではなく、何百万人もの西側諸国の市民たちに対しても、だ。西側諸国の市民たちも、自分たちの命を犠牲にして、ナチスのファシズムを倒そうとしているのだから。
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