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マスク氏、Twitter本社の家主が自分のホームレス避難所計画を却下したと主張

<記事原文 寺島先生推薦>

Musk claims Twitter HQ landlord rejected homeless shelter plan
The property owners torpedoed the idea to use vacant office space to house vagrants, the billionaire claims

不動産(Twitter本社)所有者は、会社の空き空間を利用して浮浪者を収容するという自分の提案を頓挫させたと、億万長者のマスク氏は主張する

2023年4月12日 

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月30日

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© Getty Images / Justin Sullivan

 イーロン・マスク氏が所有するソーシャルメディア企業Twitterの本社はサンフランシスコにあるが、彼にはその本社ビルの空きスペースを同市の野宿生活者による危機を緩和するために利用するという考えがあった。ところがその計画をビルの家主は認めなかった。マスク氏はその家主を非難している。

 マスク氏は、火曜日(4月11日)の夜、BBCニュースのインタビューで「私たちは、この場所を野宿生活者の避難所にしようと思った。でも彼ら(本社ビルの家主)はそれを認めてくれない」と述べ、さらに「私たちは建物の1部しか使っていないので、残りの場所はホームレス用の避難所にすることができる。私たちは今すぐにでもそれを実現したい。ビルの所有者が許可してくれれば、やりますよ」とも。

 昨年10月に440億ドルでのTwitter社の買収を完了して以来、マスク氏は同社の従業員を80%以上削減し、約1500人にした。この人件費削減措置のおかげで、本社内の46万3000平方フィート(約4万3000平方メートル)が利用者のいない空間となった。この物件は、ショーレンスタイン不動産LPの関連会社でJP モルガンチェイス& Co.の傘下にあるSRI ナイン・マーケット・スクエアLLCが所有している。SRIは1月に家賃滞納の疑いでTwitter社を提訴している。


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関連記事:マスク、Twitter社の名前をふざけた名前に変身させる

 マスク氏は、本社にあるTwitterの看板から「w」を取り除き、「Titter*」に改名する計画をめぐっても、家主と衝突している。マスク氏はBBCの取材に対し、所有者が「w」の削除を拒否したため、「w」を白いペンキで隠すことにしたと語った。
* 「くすくす笑う」「女好き男」という意味がある。

 提案された野宿生活者避難所はどのように運営されるのかと尋ねられたマスクは、「わからない。ただ、そこに人を泊めることもできる。いいじゃないですか......。荷物を持ってきてもいいし、テントを持ってきてもいい。何でもいいんだ」。彼は昨年、Twitterを買収する前に、従業員はいずれにしても出社してこないからと言って、この考えについて自身のツイッターのフォロワーに意向調査を取っていた。

 サンフランシスコには約8,000人の野宿生活者がおり、犯罪の増加や、路上での排便や麻薬の注射針の数千件の報告にもつながっている。Twitter社が浮浪者と職場空間を共有することをどのように管理するかは明らかではない。ホールフーズ社*は火曜日、サンフランシスコの販売拠点となっていた中心店舗の閉鎖を発表した。この地域の犯罪が従業員を危険にさらしているとの懸念があるためだ。11月に使用済みの注射器やパイプが床から発見された後、店長は同店のトイレの使用を制限せざるを得なかったと報じられている。
* 有機にこだわった食材を揃え、化粧品や美容商品は天然成分で作られた自然系の商品を数多く取り扱っている。

関連記事:カリフォルニア市長、薬物や路上排泄物に対処するため非常事態を宣言

 マスク氏はBBCの取材に対し、Twitter社の年間売上は買収前の45億ドルから30億ドルに減少し、必要経費は45億ドルから60億ドルに跳ね上がっていると語った。コスト削減や資本注入がなければ、あと4ヶ月間営業を続けられるだけの現金しかなかった。キャッシュフロー(現金流量)*は「現時点ではほぼ収支トントン」だという。
* 現金の流れを意味し、主に企業活動や財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことをいう。欧米では古くからこの会計にもとづく計算書の作成が、企業に義務付けられている。日本では、1999年度から上場企業は財務諸表の一つとしてこの計算書を作成することが、法律で義務付けられるようになった。(ウィキペディア)
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アメリカの子どもたちは前例のない疫病に直面している! アメリカの若い世代の54%が慢性病

<記事原文 寺島先生推薦>

America’s Children Are Facing Unprecedented Epidemics! 54% of US Youth Are Chronically Ill.

筆者:子どもの健康を守る(Children’s Health Defense

出典:Global Research

2023年4月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月29日

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***

子どもの慢性的な健康状態

 概要: 2010年にJAMA(Journal of the American Medical Association)に掲載された全米規模の調査で、子どもたちの健康状態の経年劣化が最悪になったことが明らかになった。1988年から2006年にかけて、4種類の慢性疾患(肥満、喘息、行動・学習問題、「その他の」身体疾患)の有病率が倍増し、アメリカの子供や若者の12.8%から26.6%に上昇したのだ。

 2011年の小児科学会(Academic Pediatrics)の研究では、「米国の子どもの43%(3200万人)が現在、20の慢性的な健康状態のうち少なくとも1つを有していると推定され、太りすぎや肥満、発達の遅れの危険性があることを含めると54.1%に増加する」とされている。また小児の自己免疫疾患も増加傾向にある。自閉症、ADHD、喘息、アレルギーは当時から倍増しており、現在、米国の一部の地域では、自閉症は子どもの30人に1人の割合で発生している。

 「2020-21年、障害者教育法(IDEA)に基づく特別教育の提供を受けた3歳から21歳の生徒の数は720万人で、公立学校の全生徒の15パーセントに相当する。特別教育の措置を受けている生徒のうち、最も多い障害の項目は、特定の学習障害(33%)だった」。

 重金属、殺虫剤、そして除草剤などの環境毒素が主な原因であることを示す証拠が増えつつある一方、ワクチンや有害なワクチン成分が、発作、神経発達障害、そして乳児死亡など、さまざまな健康上の悪影響と関連する研究結果が発表されている。医学界、公衆衛生界、そして政府関係者が、これらの有害物質の汚染による社会的・経済的影響について沈黙を守る中、アメリカの子供たちはかつてないほど病んでいる。

*

十代の10人のうち4人はうつ病

 うつ病になった子どもは、悲しみや絶望感、イライラが続き、無価値感や無用感、あるいは罪悪感を感じることがある。自傷行為や自己破壊的な行動も見られ、自殺を考えたり自殺を計画したりすることもある。

子ども5人のうち1人は肥満

 肥満の子どもたちは、心臓病、呼吸困難、そして2型糖尿病など、他の深刻な健康問題を引き起こす可能性が高くなる。また、不安やうつ病、そして自尊心の低下にも悩まされる可能性が高くなる。

十代5人のうち1人は自殺を真剣に考えたことがある

 自殺は、10~34歳の10代と若年成人の死因の第2位を占めている。自殺や自殺未遂は、精神的、肉体的、経済的に深刻な影響を及ぼす。自殺を試みて生き延びた人は、健康に長期的な影響を与えるような深刻な傷害を経験する可能性がある。また、うつ病やその他の精神衛生上の問題を経験することもある。人が自殺で亡くなった場合、残された家族や友人は、ショック、怒り、罪悪感、うつ病や不安の症状を経験し、自分自身も自殺を考える可能性もある。

2歳から8歳の子ども6人のうち1人は発達障害

 発達障害のある人は、記憶、知覚、注意、言語、問題解決、または社会的相互作用に機能障害が生じることがある。発達障害は、学習の妨げになることがある。発達障害は、通常、幼児期に始まり、日常生活に影響を及ぼし、生涯にわたって続く可能性がある。

子どもたち10人のうち1人は不安症

 不安は、心身の健康に影響を及ぼす可能性がある。免疫系、循環器系、泌尿器系、消化器系、そして呼吸器系に影響を及ぼし、感染症のリスクを高める可能性がある。不安障害は、自分が他の人と同じように生活できないことを恥ずかしく思うようになることがある。その結果、社会的孤立を深め、さらに引きこもってしまうこともある。

子ども10人のうち1人はADHD

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、何百万人もの子どもたちが罹患し、しばしば成人期まで続く慢性疾患だ。ADHDは、注意を持続することが難しい、多動性、衝動的な行動など、持続的な問題が複合的に含まれている。また、ADHDの子どもたちは、自尊心の低下、人間関係のトラブル、学校での成績不振に悩まされることもある。

子ども12人のうち1人は喘息

 喘息は、ゼーゼー、呼吸困難、そして咳を引き起こす深刻な病気だ。生涯にわたり、肺に永久的な損傷を与える可能性がある。毎年、喘息の子どもの6人に1人が救急外来を受診し、喘息の子どもの約20人に1人が喘息のために入院している。

子ども13人のうち1人は食物アレルギー

 米国では食物アレルギーを持つ子どもの40%以上が救急外来で治療を受けている。食物アレルギーを発症すると、突然の激しいアレルギー反応で死に至ることもある「アナフィラキシー」のように、体の免疫反応が激しくなることがある。

子ども44人のうち1人は自閉症

 自閉症スペクトラム障害(ASD)は発達障害のひとつだ。ASDの人は、通常とは言えないやり方で行動し、コミュニケーションをとり、交流し、そして学習することがある。ASDは3歳以前に始まり、生涯を通じて続く可能性がある。

子ども285人のうち1人は20歳までにがんと診断される

 がんは、アメリカの子どもたちの病気による死因の第1位。アメリカでは、がんにかかった子どもの6人に1人が、5年間生存できない。子供ががんと診断された場合、その影響は広範囲に及ぶ。治療や通院のための交通費、学校を休むことへの対応、兄弟の世話、保険や経済的な問題など、親が仕事を辞めなければならないことも少なくない。

* 

関連記事:COVIDの世界的流行を見る視点:誰かがしらじらしい嘘をついている。
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ブラジルのルーラ大統領の訪中が示したのは、ラテン・アメリカはもはや米国の「裏庭」ではないという事実だ。

<記事原文 寺島先生推薦>

Lula’s China trip proves Latin America is no longer the ‘backyard’ of the US
The Brazilian president has asserted his country’s role as a player in its own right in the new multipolar world

ブラジル大統領は、新たな多極化世界において自国が果たすべき役割を断言

筆者:オリバー・バーガス(Oliver Vargas)
* ラテン・アメリカを拠点にしている記者。ブラジルのカワチュン・ニュース社の共同創設者の一人。ポッドキャストの番組「ラテン・アメリカ再考」の司会者。

出典:RT

2023年4月18日 

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月29日



2023年4月14日。北京の人民大会堂での歓迎式典で、妻同伴の中国の習近平国家主席(左)とブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領(右)© Ricardo STUCKERT / Brazilian Presidency / AFP


 ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、高い期待が持たれていた中国への訪問から成功裏に帰国したところだ。この訪問により、ラテン・アメリカが果たす役割が強まっているという良い兆候や熱意が生み出された。

 中国の習近平国家主席による歓迎式典の様子から、関係するすべての人々にとって、この訪問がうまくいきそうな最初の兆候が見て取れた。習近平国家主席とルーラ大統領が、赤絨毯を進んでいるときに、中国軍の演奏団が演奏した曲が「Novo Tempo(新時代)」だったからだ。この曲は、80年代のブラジルの曲であり、米国が支援していた独裁政権に対する反政府運動と関連のある曲だ。

 非公開の会合で、15項目の二国間協定や基本合意書が署名されたが、その中には投資取引、研究計画、開発計画、食品規格、国営通信社、技術移転、および第7次中国・ブラジル地球資源衛星(CBERS)建設の協力に関する内容が含まれていた。この会議は数年に及ぶ両国の戦略的同盟関係に基づいて開かれたものだ。2009年、中国は米国に変わってブラジルの最大の貿易相手国となり、この会議は両国のこれまでの関係強化の過程をさらに深めるものとなった。

 ただし、この訪中のもっとも興味深い側面は、両国の指導者が行った公式発表の声の強さだった。というのも、この公式発表は、ただの外交辞令の域を超えるものであり、両国が世界における指導者的立場を果たそうとする意図がはっきりと示されており、これまで長年続いてきた米政権のもとでの単極支配に挑戦する内容だったからだ。



関連記事:米国はウクライナで「戦争誘発行為」をやめなければならない。(ルーラ大統領の発言)


 「私が毎晩考えているのは、なぜ全ての国がドル建てで貿易を行うよう強制されているかについてです。自国貨幣立てで貿易できないものでしょうか?」とルーラ大統領は上海での催しで語った。ウクライナでの紛争も議題に上がり、ルーラ大統領は、米国が何十億ドル相当もの武器をキエフ政権に送り込むことで、戦争を抑制するどころか、激化させていると語った。さらに、同大統領はこう語った。「必要なことは、米国が戦争を誘発する行為をやめ、平和に向かう発言を始めることです。 欧州連合も和平についての話し合いを開始しなければなりません」と。


ラテン・アメリカ自身の利益の再確認

 この訪中が明らかにしたのは、国際社会において、ラテン・アメリカと米国支配に異議をもつ国々の関係がぐっと近づく幕開けが始まっているという潮流だった。ルーラ大統領帰国後に注目を集める次なる大きな出来事は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相によるブラジル訪問だろう。同外相は、ラテン・アメリカ諸国訪問を予定しており、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアを訪問することになっている。

 ラブロフ外相のブラジル訪問が機会となり、ロシアとラテン・アメリカ間の共通の利益の分野についての話し合いが持たれることになるだろう。具体的には、貿易や投資、エネルギー、防衛に関することだ。同外相はさらに、文化交流を強化しようとするだろうが、これは米国当局が、ロシアやロシア文化に対する嫌悪感を世界規模で促進させようとしている中でのことだ。

 ルーラ大統領の訪中が成功裡に終わったことで、ラテン・アメリカ諸国の政府には明らかに更なる弾みがつき、今週のロシア使節団の訪問を受け入れる体制がしっかりとできたようだ。中国とロシアと結びつくことで、双方にとって利のある協力関係を築けるという状況は、米国が上から目線で申し出てくるような傲慢な態度とは好対照となっている。



関連記事:ブラジルが求めているのは、ドル体制からの「脱却」


 しかし、ラテン・アメリカは、多極化世界樹立の過程にただ受動的に参加するだけの存在ではない。元ブラジル大統領でルーラ大統領の盟友でもあるジルマ・ルセフ氏(この人物も米国が支援したクーデターの被害者)は、新たな任務として、上海のBRICS開発銀行の総裁に職に就いた。この任務は、ブラジル・中国、ロシア・インド・南アフリカにとって重要な重みをもつ任務である。さらにはこの先BRICSは、「BRICSプラス」 として、グローバル・サウス諸国における新興経済大国を加えていく可能性もある。


米国からの逆襲

 米国当局は大統領職に就いてからずっと、ルーラ大統領のご機嫌を取ろうとしてきた。ブラジルはラテン・アメリカ最大の経済大国であるため、そうしないことは賢明ではない、ということだ。米国務省はルーラ大統領の就任を妨害しようとしてブラジル国会議事堂を攻撃した右派の暴動者らを公式に非難する声明を出したが、その声明の中にあった、「ブラジルの民主主義」を支持するという文言には、米国はルーラ氏の大統領職をはく奪するために動くことはない、という意図が込められていたと思われる。つまり、ボリビアやベネズエラの左派大統領に対して米国内が行ったようなことをルーラ大統領にするつもりはない、ということだ。

 そのため米国当局は、ルーラ大統領の訪中やこの先行われるラブロフ外相の訪問に対して公式な反応を見せていない。ただしラテン・アメリカ内の親米「分析家」や「専門家」らは口を挟み、以下のような主張を行っている。すなわち、中国やロシアと接近することは、ルーラ大統領にとって「オウンゴール(間違って自陣のゴールに得点してしまうこと)」になる、というものだ。



関連記事:米国の「孤立化」を経済学の第一人者が憂慮


 ラテン・アメリカ最大の右派デジタル報道機関のひとつであるアルゼンチンに拠点を置くウェブ・サイトのインフォ・バエが、こんな題名の記事を出した。それは、「ルーラ大統領の訪中は、ブラジルにとって失点となる危険性がある」というものだ。 この記事の筆者は 、中国が持つ意図に疑念を表明し、以下のように記していた。「ブラジルは、原料や天然資源という点において世界で最も豊かな国の一つなのだから、自立できるのに必要なものは全て揃っている。外国の助けなどは要らないはずだ。ただしブラジルが自立するためには、政治家の汚職を克服し、汚職に関する厳粛な調査を実施しなければならないだろう」と。

 産業の国有化を非難し、米国との自由貿易を歓迎してきたこの報道機関が、突然踵(きびす)を返し、「第三世界中心主義」や「独立主義」を主張し始めたというわけだ。

 ブラジルが米国の怒りを買うことを懸念する報道機関もいくつかある。「アメリカ季刊誌」という雑誌(西側の石油産業が資金提供している報道機関)に執筆している オリバー・シュテンケル氏は最近以下のように述べた。「訪中時にルーラ大統領がウクライナの話をすればするほど、ブラジルは西側から中立国ではないと認識され、ブラジルは欧米から、欧米に対してよりもロシアに近い立ち位置にいるととらえられてしまう危険が高まります」と。

 おそらく、「ロシアに近い立ち位置」や、欧米に対するよりも中国に近い立ち位置でいるほうが、ラテン・アメリカにとって実り多い未来を迎えることがこの先わかるだろう。米国政府寄りの立場をとってしまえば不平等な貿易協定やクーデター、軍事介入など悪いことしか招かないだろう。ルーラ大統領の訪中が示したのは、そうではないもっと平等な国家間関係がありえるということだ。さらに、ラブロフ外相によるラテン・アメリカ訪問が素晴らしいきっかけとなり、ラテン・アメリカがこのような国家間関係を打ち立て、国際社会におけるラテン・アメリカの存在価値向上に結びつくことだろう。
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ロシアの会社がチャットGPTの対抗機種を明らかに

<記事原文 寺島先生推薦>

Russian company unveils ChatGPT competitor
The new AI tool is geared towards business and government projects, Sistemma has said

新しいAIの道具は、事業や政府の取り組みに向けたものであると、システマ社は述べている。

出典:RT

2023年3月26日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月29日


© Getty Images / MF3d

 モスクワに拠点を置くシステマ社は、OpenAIのChatGPTの対抗馬として、すべて国内サーバーで、ロシア語で動作する独自のものを作成した。この取り組みは、日曜日(3月26日)に自社の公式サイトで公開された。

 このAIはシステマGPT(Generative Pre-trained Transformer:生成可能な事前学習済み変換器)と呼ばれ、スタンフォード大学の研究とともに、同社独自の開発に基づいている。このチャットボット*(会話を自動的に行えるプログラム)は、ロシアの企業や政府機関を対象としている。
* 「チャット(おしゃべり)+ロボット」からの造語

 システマ社のAIは、高品質の文章を書くことができ、「百科事典のような知識」を持っていると、同社は述べている。また、このチャットボットは、「ソフト指南書の作成、随筆の作成、プログラミングコード、履歴書の作成、あるいは著名人になり切った会話を支援することができる」としている。瞬時に情報を見つけ、分析し、顧客や地域の状況に合わせながら、開発戦略や事業計画を作成することができる。




関連記事:チャットGPTの利用者の個人情報が、バグ(不具合)により流出


 このチャットボットは現在、作業中のベータ版で、一般利用者による公募試験は6月に予定されている。また、2023年に予定されている、画像や動画を編集できるAIの開発にも取り組んでいる。

  AIチャットボットが一躍脚光を浴びたのは、2022年11月にOpenAIが開発した米国製の「チャットGPT」が登場した時だった。その後、同製品は1億人の利用者を獲得し、最も早く利用者を集めたアプリという記録を打ち立てた。このAIは、法学部や医学部の試験に合格するほど賢い。ロシアの学生がChatGPTを使って学位論文に見事合格した。

 多くの企業が自社のAI計画に投資を始めている。GoogleとMicrosoftは今月初め、自社のチャットボットを公開した。テスラ(Tesla)社とSpaceX社の代表取締役であるイーロン・マスクも、同様のAIを自社で開発しようとしていると伝えられている。

 サーバー上の安全の専門家のM.H.ホマエイは2月、この種のAIは「機密情報と評判を守るために組織が注意しなければならない安全性を脅かすいくつかの危険」をももたらすと書いている。チャットボットの有効性は、顧客が貴重な情報を与えてくれるかどうかにかかっており、情報漏洩の危険性がある。

 OpenAIは日曜日(3月26日)に、バグのため、利用者の個人情報や支払い情報の一部が、一時的にオンライン上に表示されることがあること明らかにした。
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オーウェル的 RESTRICT 法案は、『1984年』の背筋も凍る再現であり、アメリカの自由の崩壊でもある。

<記事原文 寺島先生推薦>

The Orwellian RESTRICT Act is a chilling echo of ‘1984’ and an erosion of American freedom
Far beyond cracking down on TikTok, the bill envisages frightening powers to control citizens’ access to ‘unwanted’ information.

TikTokの取り締まりをはるかに超えて、この法案は、市民の「不必要な」情報の入手経路を制限する恐ろしい権限を想定している。

筆者:イアン・マイルズ・チョン (Ian Miles Cheong)

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イアン・マイルズ・チョンは、政治・文化評論家。彼の仕事はThe Rebel、Penthouse、Human Events、The Post Millennialで紹介された。

出典:RT

2023年4月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月28日

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2023年3月22日、ワシントンDCの米国連邦議会議事堂前で記者会見するTikTokの支持者たち。© 写真:Alex Wong/Getty Images


 ジョージ・オーウェルの「1984年」を彷彿とさせるような不気味な雰囲気の中、「情報通信技術を危険にさらす安全性への脅威の出現を制限する法律」(RESTRICT法)が、アメリカの自由を脅かす暗雲として迫ってきている。

 この法律は、単なる「TikTok禁止令」ではなく、連邦政府があらゆる国を「外敵」として指定し、その国の管轄下にある企業が間接的に支配するオンラインサービスや製品を禁止し、その国とほとんどすべての取引を行う米国人を厳しく罰することができるようにする、広範囲にわたる権限を有している。

 マーク・ウォーナ上院議員(民主党、バージニア州選出)が提唱するRESTRICT法は、中国と繋がったTikTokという情報拡散基盤商品を対象とするだけでなく、アメリカの自由の基盤そのものを解体する可能性を持っている。政府の監視と統制が蔓延するオーウェルの反理想郷的小説の傑作と比較せずにいられない。恐ろしいことに、この法案は、そのような悪夢のような架空話を厳然たる現実にしてしまうかもしれないのだ。


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関連記事:TikTok、子供のデータを悪用したとして罰金刑


 RESTRICT法の背筋が凍るような規定は、同法に違反する取引を行った個人に対し、商務長官が最高25万ドルの民事罰を科すというもの。法案の取引の定義は極めて広範で、取得、輸入、データ送信、ソフトウェアの更新、修理、データ保持業務、および法律の適用を回避または回避するために設計されたその他の取引などの活動を含んでいる。

 しかし、『1984年』の弾圧的な世界のように、25万ドルの罰金は始まりに過ぎない。この法律に違反していることが判明したアメリカ市民は、最高100万ドルの刑事罰と最高20年の懲役刑に処される可能性がある。

 RESTRICT法が本質的に管理と処罰の道具として機能するように、オーウェルの観点との類似性は顕著である。外国からの安全保障の名の下に、政府の無制限な権力を許せば、この法案は、国民を待ち受ける反理想郷的な運命をはっきりと思い起こさせるものである。

 さらに、この法案では、連邦政府が、電話やパソコン、インターネット中継点、電子商取引技術や業務、暗号通貨、さらには量子コンピュータやポスト量子暗号、高度ロボット工学、生物技術工学などの先端技術など、アメリカ国民の所有するさまざまな機器や業務に入り込み押収できるようになる。

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関連記事:米国によるTikTok禁止への取り組みは、世界最大のスパイ組織による純粋な投影である

 
 さらに、この法案の施行に関連する情報公開法(FOIA)の要求を制限することで、政府は国民の監視から免れることを認められている。この点で、RESTRICT法は、World Wide Web*のかなりの部分から国民を隔離する中国の「グレートファイアウォール(防火長城)」のアメリカ版といえる。
* ネットワーク上のコンテンツを相互に閲覧するために規格化された仕組みのこと

 しかし、中国とは異なり(そこではVPN*の利用が自動的に投獄につながることはなく、また多くの国民がVPNを利用して人気のアプリやビデオゲームへの入手経路を手にしてもお咎めなしなのだが)、RESTRICT法はその規定に違反した者にはるかに厳しい処罰を課している。
* Virtual Private Network”の略称。「仮想専用通信網」。

 すでに保守派はこの法案の危険性に警鐘を鳴らしており、タッカー・カールソンは、この法案が政府に「アメリカ市民を罰し、インターネットでの通信手段を規制する」能力を提供することになると警告する独白をしている

 ドナルド・トランプJr.はTwitterにこう書いた:「何事も見かけとは全然違う。一党独裁を狙う影の勢力は、私たちが何をし、何を見るかを管理するために、さらなる権力を欲している。そして今、私たちは、バイデン派のチンピラたちに、私たちがこの狂気に違反していると判断されたら、私たちを20年間刑務所に入れる能力を与えようとしている? ご免だね」。

 米国下院金融委員会は、RESTRICT法が 「IEEPA*以来最大の行政権拡大のための煙幕としてTikTokを使っている」とし、他の共和党議員に法案を拒否するよう警告を発した
*国際緊急経済権限法。1977年10月28日より施行されたアメリカ合衆国の法律。合衆国法典第50編第35章§§1701-1707により規定されている。( ウィキペディア)

 RESTRICT法の批准が進めば、アメリカ人は地平線の向こうに広がる反理想郷的な現実に目を覚ますことができるのか、まだわからない。彼らのために、そして他のすべての人のために、そうであることを祈ろう。
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パンデミックの影響、露制裁の反動で、G7の経済力はBRICSに追い越された!

<記事原文 寺島先生推薦>
G7 vs BRICS
筆者:スコット・リッター (Scott Ritter)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年3月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年4月27日

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2022年6月28日、ドイツ・クリュンのシュロス・エルマウで行われたG7首脳会議。(ホワイトハウス/アダム・シュルツ) 


PPP調整後の世界GDPで、BRICSがG7を上回る

 昨年夏、世界で最も影響力のある経済大国を自認するG7(Group of 7)が、ドイツのガルミッシュ・パルテンキルヒェンに近いシュロス・エルマウに集まり、年次総会を開催した。その焦点は、追加制裁によるロシアへの懲罰、ウクライナのさらなる武装化、そして中国の封じ込めにあった。

 同時に、中国はテレビ会議を通じてBRICS経済フォーラムを開催した。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成されるBRICSは、いわゆる発展途上国と呼ばれる国々で、経済的な絆の強化、国際的な経済発展、G7の反動的な政策にどう対処するかに焦点を当てている。

 2020年初頭、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務副大臣が予測していたのは、国際通貨基金が予測する購買力平価(PPP)の計算に基づき、BRICSがその年の後半に世界全体に占める割合でG7を追い越す、ということだった。

 (購買力平価(PPP)為替レートによる国内総生産は、その国で生産されるすべての財とサービスの合計額を米国の物価で評価したもので、単純なGDP計算よりも経済力の比較をより正確に反映するもの)
 
 その後、パンデミックが発生し、世界経済がリセットされたことで、IMFの予測は無意味なものとなった。世界はパンデミックからの回復に集中し、その後、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した後、欧米がロシアに対して大規模な制裁を行ったことによる影響に対処することになった。

 G7はBRICSの経済的挑戦に耳を傾けず、ジョー・バイデン米国大統領の政権の信条であった「ルールに基づく国際秩序」の防衛を固めることに注力した。


誤算

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G7首脳やウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領と仮想通話するジョー・バイデン米大統領(2月24日)。(ホワイトハウス/アダム・シュルツ)


 ロシアのウクライナ侵攻以来、G7を中心とするロシア侵攻を非難し経済的制裁を求める側と、BRICSを中心とするロシアの行動を支持するわけでもなくまた制裁にも加わらないという微妙な立ち位置で、世界を覆う思想的分裂が起きている。このため、世界経済の実態を把握する上で、知的空白が生じている。

 米国とG7友好諸国は、制裁がロシア経済に与える影響と、欧米に与える打撃の両方を誤算していたと、今では広く認識されるようになった。

 メイン州の無所属上院議員であるアンガス・キングは、次のことを記憶していると最近述べた

「1年前にこれが始まったとき、制裁はロシアを麻痺させるという話ばかりだった。ロシアは潰れてしまい、街頭で暴動が起きるという話だったのだが、実際にはうまくいかなかった......(中略)制裁の仕方が間違っていたのか? うまく適用できなかったのだろうか? 私たちは、ロシアが制裁を回避する能力を過小評価していたのだろうか? なぜ、制裁体制がこの紛争に大きな役割を果たさなかったのだろうか?」

 なお、IMFは、この制裁の結果、ロシア経済は少なくとも8パーセント縮小すると計算していた。実際の数字は2%で、ロシア経済は――制裁にもかかわらず――2023年以降も成長すると予想されている。

 このような誤算は、世界経済やG7とBRICSが果たすそれぞれの役割について、欧米の考え方に浸透している。2022年10月、IMFは従来のGDP計算に重点を置いた年次世界経済見通し(WEO)を発表した。2022年夏にBRICSが政治的な挑戦を行ったにもかかわらず、IMFはG7が依然として世界経済を主導する同盟として強固であると計算していたため、主流の経済専門家は安心したのである。

 2023年1月、IMFは2022年10月のWEOの更新版を発表し、G7の強い立場を強調した。IMFの首席経済学者であるピエール=オリヴィエ・グランシャによると、「見通しに対する危険度の均衡は依然として下方に傾いているが、10月のWEOよりも不利な結果への偏りは少ない」という。

 この前向きな姿勢が、欧米の主要な経済専門家たちが、この更新版のデータを深く掘り下げることを妨げたのである。私は、個人的に、保守的な編集者たちが「古いデータ」から現在の関連性を引き出そうとすることに消極的であると断言できる。

 幸いなことに、「世界経済と金融市場の分析に全体を網羅する手順を採用するブティック型マクロ経済調査会社」と自称するエイコーン・マクロ・コンサルティングのリチャード・ディアスのような経済専門家も存在する。ディアスは、IMFのバラ色の見通しを福音として受け入れるのではなく、専門家が本来すべきこと、つまりデータを掘り下げ、関連する結論を導き出したのだ。

 IMFの「世界経済見通しデータベース」に目を通したディアスは、G7とBRICSのPPP調整後の世界GDPの割合を比較分析したところ、驚くべき発見をした: BRICSがG7を上回っていたのだ。

 これは予測ではなく、達成された事実を述べたものである:BRICSはPPP調整後の世界GDPの31.5%を占め、G7は30.7%を占めていた。G7にとってさらに悪いことに、予測された傾向は、この2つの経済圏の間の溝が今後ますます広がっていくことを示していた。

 BRICSの世界的な経済力の蓄積が加速している理由は、主に3つの要因に起因しているものと考えられる:

  ・ Covid-19のパンデミックによる残留的な影響、

  ・ ウクライナ侵攻後のG7によるロシア制裁の反動と、G7の経済政策に対する途上国の反発の高まり、そして、

  ・ 各国の経済的潜在力を高めることを支援するという純粋な願いよりも、植民地主義時代後の傲慢さに根ざしていると考えられる優先的な動き、である。


成長格差

 BRICSとG7の経済力が、それぞれ中国と米国の経済に大きく影響されていることは事実である。しかし、これらの経済的枠組みに参加している他の国々の相対的な経済的軌道を無視することはできない。BRICSの大半の国々が今後数年間は力強い成長を遂げるという経済見通しを示しているのに対し、G7諸国は、現在のロシアへの制裁という自業自得の部分もあるが、低成長、英国の場合はマイナス成長であり、この傾向を覆す見込みはほとんどない。

 また、G7加盟国が固定的であるのに対し、BRICSはアルゼンチンやイランが申請し、サウジアラビア、トルコ、エジプトといった地域の主要経済大国が参加に関心を示しているなど、拡大傾向にある。さらに、イランとサウジアラビアの関係を正常化させた中国の外交的功績が、この潜在的な拡大をより爆発的なものにしている。

 米ドルの世界支配が続く見通しが立たなくなり、ロシアと中国が推進するユーラシア大陸横断経済同盟の経済的可能性も相まって、G7とBRICSは相反する軌道に乗った。BRICSは、PPPだけでなく実際のGDPでも、今後数年でG7を追い越すはずである。

 しかし、主流の経済専門家たちが、この結論に達するのを首を長くして待っていてはいけない。ありがたいことに、リチャード・ディアスやエイコーン・マクロ・コンサルティングのように、古いデータから新しい意味を見出そうとする異端児も存在する。

________________________________________
スコット・リッターは、旧ソ連に駐在した元米海兵隊の情報将校である。旧ソ連では軍備管理条約を実施し、ペルシャ湾では砂漠の嵐作戦、イラクでは大量破壊兵器の武装解除を監督した。近著に『Disarmament in the Time of Perestroika』(クラリティ・プレス刊)がある。
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NATO加盟諸国がICC(国際刑事裁判所)の最高検察官に資金を渡し、プーチンに対する逮捕状を出させた手口とは

<記事原文 寺島先生推薦>

How NATO states sponsored ICC prosecutor’s Putin arrest warrant

出典:グレー・ゾーン

2023年4月13日

筆者:マックス・ブルーメンサル(MAX BLUMENTHAL)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月27日


ウクライナのヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領と面会するICCのカリム・カーン最高検察官。2023年3月


ICCのカリム・カーン最高検察官は、NATO加盟諸国から何百万ドルものカネを受け取り、ウラジミール・プーチン大統領に対する逮捕状をでっち上げておきながら、しっかりと文書に残されている米国やイスラエルの戦争犯罪の捜査には手を出していない。その過程で、ワシントンやロンドン、キエフ、さらにはハリウッドにまで、彼には力強い友人ができた。

 カリム・カーンは、国際刑事裁判所の最高検察官をつとめている人物だが、2023年3月3日、演台の前に立ち、尋常ではない発言をした。「私がウクライナの親愛なる友人たちに愛情や気遣いをどれだけ持っていたとしても、ICCの最高検察官として特定の国に偏った関心を持たないということは当然のことです。私たちは、敵対する勢力に対抗しようとする組織ではありません。」

 カーンは英国なまりの英語でこう語った。「私たちの拠り所は法です。私たちが拠り所とし、遵守しているのは法の下の秩序です。」

 カーンがこのような司法権の独立を重視する立場を表明し、「法の正義のための連合」の会合が開かれたという見出しが踊った。その会合とは、ウクライナのリヴィウで個人的に開かれたものであり、主催者はヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領だった。その場でカーンはウクライナの大統領と握手を交わし、メリック・ガーランド米司法長官と協議した。同司法長官がこの会合に立ち寄った目的は、バイデン政権によるロシアのウラジミール・プーチン大統領を戦争犯罪という罪状で法廷に引きずり出す取り組みを前進させるためだった。

 これは2022年2月のロシアによる軍事侵攻開始以来、カーンにとって4度目のウクライナ訪問であった。2023年3月17日、カーンはICCによる正式なプーチンに対する逮捕状を出し、ウクライナの子どもたちをロシア各地の「一連の収容所」に「不法に連行した」として同大統領を非難した。この逮捕状が届いたのは、NATOによるイラク侵攻から20年になる日の数日前だった。このイラク侵攻は、米・英当局が犯した戦争犯罪であるのに、ICCCは今に至るまで起訴はしていない。

 当グレー・ゾーンが報じた通り、ICCによる逮捕状が出されたきっかけとなったのは、国務省が資金を出した報告書であり、その中身には現地調査も戦争犯罪の具体的な証拠もなかった。さらにロシアが本当にウクライナの子どもたちを大規模な連行作戦の対象ととらえていたかを証明する内容も含まれていなかった。実際のところ、この報告書の調査にあたった人々も、「この報告書に記載されていた収容所において、性的虐待や肉体的な虐待を含む、子どもたちに対する虐待行為があったことを示す文書は見つからなかった」ことを認めている。 さらに、この調査報告書の主執筆者が、グレー・ゾーンのジェレミー・ロフレドに語ったところによると、この調査団が調べたロシアの子ども収容所の「大部分」において主に行われているのは、「文化的な教育活動」いわば、お楽しみのようなものです」。

 カーンはプーチンを逮捕することについては政治から独立した行為だと明言しているが、カーンが西側各国政府と密接につながっていることは事実だ。その西側各国政府こそ、現在ウクライナを戦場にしたロシアとの代理戦争にいそしんでいるのだ。これまでカーンは、ICCによるイスラエルの戦争犯罪に対する訴追については、保留の立場を取っている。このため、占領されたガザ地区での恐ろしい暴力行為の被害者の代表をつとめる人権法律家をやきもきさせている。さらにカーンは、米軍がアフガニスタンで起こした行為に対する国際裁判を公式に却下している。

 ウクライナに焦点をあてた言動を取っているカーンは、自身の事務所に対する西側からの金融的支援を急増させてきた。その多くの資金は、ロシア当局についての調査に充てられた。ICCが発行したプーチンに対する逮捕状が出されたのは、偶然にもその主要な資金提供者らが裁判を起こす会議を英国のロンドンで持ったのと同じ日だった。

 ICCの最高検察官の政治的なつながりは、これだけでは終わらない。有名人弁護士であるアマル・クルーニーが、カーンの事務所の特別顧問として活動してきたのだ。同時に彼女は、ウクライナ政府に助言を与え、ICCやそれ以外の国際的な機関を通じてロシア当局を標的に起訴を起こすよう促していた。さらにクルーニーは外務・英連邦・開発省との連絡係としても活躍していた

 となれば、20年にわたるICCとの間に絶え間ない敵対関係があったワシントン当局が、突然この裁判所との関係が雪解けし、その最高検察官から慕われるようになったことは、別に驚くことではない。


米国のメリック・ガーランド司法長官とカリム・カーン(左)。ウクライナのリヴィウにて。2023年2月28日


ICCのカーン最高検察官は、米国からの支援を得て、「エルサレムに安堵のため息」をもたらした

 米国のジョー・バイデン大統領は、ICCの最高検察官カーンがプーチンに対して逮捕状を出したことを、米国が手放しで支持する方向性を打ち出す手助けをし、この行為を「正当である」とした。共和党議員団においては、ウクライナでの代理戦争を米国上院で最も熱狂的に応援しているリンゼー・グラム議員がICCによるこの行動をさらに感激して受諾し、ICCの最高検察官を、現代におけるナチ戦犯追及者であると褒め称えている。

 米国当局が突然ICCを受け入れるようになったことは、突然のことであり、明らかに日和見主義と呼べるものだ。これまで20年間ずっと、両者は反目し合ってきたのだから。

 米国のジョージ・W.ブッシュ大統領が2001年にホワイトハウス入りしたほぼ直後に、同大統領の行政府は、軍人保護法の法案を提出した。この法律は、この先、戦争犯罪を理由にICCが米軍の軍人を起訴する事象が起こった際に、米軍がハーグにあるこの裁判所に対して妨害行為を行うことを承認するものだった。翌年この法案が上院を通過した際、この法案に反対した共和党議員は一人もいなかった

 2019年、米国はICCに対する取り組みを強めたが、それは当時のファトウ・ベンソーダ最高検察官が、占領されたパレスチナ領でのイスラエルによる戦争犯罪の調査を行うと発表したからだった。マイク・ポンペオ国務長官はベンソーダ最高検察官を名指しで非難したが、上院は党を跨いだ決議案を挙げ、同国務長官に、「政治色を帯びた」ICCへの攻撃を強めるよう要求した。グラハム議員はこの決議案に賛同した一人だった。 (バイデン政権も、ICCによるイスラエルの戦争犯罪の捜査には反対している)。

 その翌年、ベンソーダ最高検察官が、アフガニスタンでの戦争犯罪に関して米国とタリバン両者の捜査を行う意図があると明言した際、米国当局は同検察官に制裁を科し、同検察官の米国ビザを無効扱いにした。

 2021年にベンソーダに代わって最高検察官に就任したカーンは、米国や米国の同盟諸国の中でもっとも暴力事象が多発する国々を慰撫するような働きを見せた。2022年6月のエルサレム・ポスト紙の記事にはこうある。「エルサレムでいくぶん安堵のため息がもれていた」と。そしてその理由は、カーンが最高検察官に就任した1年目に、「イスラエル・パレスチナ問題に関する公式声明を何ひとつ出さず、公的な動きを何ひとつ見せなかったから」だとしていた。

 「大きな進歩や措置はまったく取られず、(イスラエルによる残虐行為に対する)捜査は、同検察官の事務所にとっての優先事項ではなく、起訴された事例は今のところまったくありません。さらにカーンの前に事例が示されても、カーンは動こうとはせず、なんの表明も出してきませんでした。」と、ガザ占領地区でイスラエルによる暴力行為の被害者を代表する弁護士団の一人が、当グレー・ゾーンに語っている。

 この弁護士によると、カーンがウクライナからロシアに市民を連行した事件に執着しているのは皮肉だという。というのも、何十万ものパレスチナの人々が強制連行されたことには目をつぶっているからだ。これらのパレスチナの人々は現在「イスラエル」と呼ばれている領地から、中東各地にある占領地や難民キャンプに連行されたのだ。「パレスチナでは、人々はもう何十年ものあいだ、連行され続けています。この事象は、歴史上で最もきちんと文章に残されているものです。パレスチナ問題こそ、法廷の信頼性を守るための最後の砦であるべきなのです。」とこの弁護団は語っている。

 さらにカーンは、ICCによるアフガニスタンの捜査網を狭め、これらの戦争犯罪を行ったのをタリバンだけのせいにして、米軍を守った。「カーンがこのような決定を下したことではっきりと強められた印象は、ICCは西側が設置した西側のための機関であり、西側諸国の政治的な目論見を実現させるための道具にすぎないという事実です」とシャハラザード・アクバル元アフガニスタン独立人権委員会委員長がインターセプト紙に不満をこぼしている

 「カーンによるこの決定は明らかに政治的なものでした。それ以外の解釈の仕方は本当にありません。この決定により、米国とその同盟諸国は牢獄から出られる無料券を手にしたのです」とアフガニスタンでの米軍の虐待行為についての捜査団の団長を務める米国のジェニファー・ギブソン弁護士は、カーンのとった行為について述べている

 もっとも問題の多いこの2点の捜査を止めたことやロシアによるウクライナ侵攻を問題視した行為により、この検察官の事務所が従順な組織であることがはっきりと受け止められ、これまで叩かれる対象だったICCが突然西側から大量の金融支援を受けることになった。

 「(ロシアがウクライナに侵攻した)2月24日の数週間後に、(国際刑事)裁判所には大量の現金や人々が流れ込むようになった」とジャスティスインフォ・ネットは報じている。

 このカネの多くが直接カーンの事務所に流れ込んだが、そのカネの使い道は、ロシア当局を標的にした起訴を起こす取り組みに対してだった。人権NGOのヒューマン・ライト・ウォッチ所属のマリア・エレナ・ヴィニョーリがジャスティス・インフォネットに語ったとおり、「行われた様々な誓約の内容について、各国はそれほど注意はしていませんでした。各国はしばしば自国がウクライナにどれだけ貢献しているかを関連付けようとしていました。そのためICCの取り組みが政治的であったり偏ったりしているという印象をもたれているのでしょう」ということだ。


米国と英国政府がICCのカーンのために道を開いた

 2022年2月28日のことだった。カーンは以下のような意図を発表したのだ。「ウクライナの状況についての捜査を開始します。できるだけ早期にです。」これはロシア軍がウクライナ国内に侵攻した日からたった4日後のことだった。

 その数日後の2022年3月2日、ハーグにある英国大使館がカーンに届けたのは、40人を超える英米の外交官の署名のある委託書であり、その内容はカーンにICCのローマ規程違反の疑いでロシアを捜査することを促すものだった。

 同日、グラハム上院議員は米上院に新しい法案を提出したが、それは「ウラジミール・プーチンとロシア政権の構成員らに、プーチンの指揮下で行われた多くの戦争や侵略や人権侵害行為を行ったことに対する責任をとらせる」ことを求める内容だった。ジョン・ボルトンといったタカ派でさえ、ICCが発行する逮捕状を支持してしまえば、この先米国市民に対する法的行為を正当化される可能性が生じることを警告していたにも関わらず、この法案は全会一致で採択された。

 国際法違反にあたるとされた行為を非難するための法案を提出したほんの数時間後に、グラハム議員はツイートでプーチンの暗殺を求めていた。「ロシアにはブルータスはいないのだろうか? ロシア軍には、(ヒトラー暗殺を謀った)シュタウフェンベルク大佐よりも上手くやれる人材はいないのか?」という懇願を同上院議員は2022年3月にツイートしていた。「この悲劇を終わらせる唯一の方法は、ロシアにいる誰かがやつを追い出すことだけだ。」


 2022年4月3日、バイデンはICCによる対露攻撃にさらに勢いをつけるかのように、プーチンを「戦争犯罪者」呼ばわりし、「戦争犯罪を裁く法廷」にプーチンを引き摺りだすよう求めていた。

 バイデンの目的、さらにはバイデンと歩調を合していたICCの目的を前進させるべく、米国務省が2022年5月に発表したのは、紛争監視所を設立して、ロシアが犯したとされる戦争犯罪の明らかな証拠を集め、それら発見された証拠を広めるというものだった。その理由として、「検察官らが公表された資料をもとに刑事事件として立件できる可能性を持たせるためである」ことだとされた。


 米国政界からの後押しを受けたカーンは、ウクライナへの最初の公式訪問に出向いた。


ウクライナ政府関係者の先導のもと、ウクライナのハルキウを訪問中のICCのカリム・カーン最高検察官


 ウクライナへは4度、公式の物見遊山に出かけているカーンであるが、その最初の訪問は、2022年3月16日のことで、まずボーランドに入り、そこで難民救護施設でウクライナからの難民らと面会した。その後ウクライナの国境を越え、リヴィウでイリーナ・ベネディクトワと協議を行った。この人物はウクライナの検事総長である。その後カーンはゼレンスキーとリモートで話す機会を持った。

 「私たちは不偏で平等で総合的にこの件にあたっています。強調したいことは、私たちはこの紛争に関わる全ての関係者と繋がりをもちたいと考えているという事実です」とカーンは主張していた。


 カーンのウクライナへの二度目の公式訪問はそのほんの数週間後の4月に行われたが、その際ベネディクトワはカーンをブチャの市街地に案内した。ブチャはロシア軍が数週間占領したのちに、その4月の初めに撤退した地域だ。同時にウクライナ当局は、西側の記者団を墓地に連れていき、埋葬地を示して、そこがロシア側が市中で大規模な処刑を行った証拠だとしていた。

 ブチャ市内のあちこちに散見された死体の画像を示すことで、ゼレンスキーはロシア政府を「大量虐殺」を行ったとして非難し、米国のバイデン大統領は、プーチンを戦争犯罪の罪状で法廷に引き摺り出すことを求めていた。しかしそのようなバイデンの要求は、自国の国防省の控えめな主張とは食い違っていた。米国防省は、ロシア軍がブチャ市内でそのような処刑の形をとった大量虐殺を行ったという事実を「今の状況証拠だけで説明する」ことはできないというものだった。

 2022年7月にカーンが3度目のウクライナ公式訪問を行った際は、ハルキウを訪れた。再度ウクライナのベネディクトワ検事総長が付き添い、カーンは、ICCがキエフに現地事務所を設置する計画を立てていることを明らかにした

 その時点で、ゼレンスキー政権は13の野党を違法とし、ゼレンスキーの対抗馬となる大統領候補を投獄し、政権に批判的な全ての報道機関を閉鎖し、ロシア正教会の司教長を禁じ、その最高位の司祭を逮捕しようとしていた。さらにキエフ政権は、政敵や人権活動家らを消し、迫害を加え、その口実をロシア側と結託してウクライナ当局者らを標的にした暗殺計画に加担しているからだ、としていた。ネオナチの民兵らは、ロシア側に靡(なび)いているとされた人々を処刑する動画まで録画していた。

 その頃ウクライナ軍は、ドネツク人民共和国やルガンスク人民共和国じゅうの市民を標的にした攻撃を激化させ、市場を砲撃していた。その一例をあげると、バスに乗っていた通勤者らをトチカUミサイルで大虐殺したこともあった。さらにウクライナ兵らは、非武装のロシア囚人や戦争捕虜を処刑している様子を動画に収めたが、それは捕虜らの膝を射撃している様子だった。

 しかし、ウクライナを物見遊山中のカーンは、部下の職員らがカーンの眼前に提示したきっちりと文書に残されている虐待行為に対して、頑なに無関心を貫いていた。カーンの目がしっかりと向けられていた対象は、プーチンだった。そして、カーンが使命を果たすべく気前よくカネを投じてくれている西側の人々に対しても、だった。


四度目のウクライナへの公式訪問の際、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と面会中のカリム・カーン


第二弾 我らが少女を奪回せよ作戦

 今年3月、カーンはウクライナへの4回目の公式訪問を行ったが、その目的を、こう語っていた。「ウクライナの国家指導者層とのつながりを強化するため」。リヴィウで、カーンは「正義のための連合」という会議に主賓として招かれた。この会議はゼレンスキーが個人的に招集したもので、この会議の目的は「ロシア政権の上層部に、ウクライナに対する侵略行為の刑事責任を取らせるため」だとのことだった。

 その会議の宣伝資料において、この「正義のための連合」の会合が強く主張していたのは、初めて聞くような、人々の感情に訴える問題についてだった。それは、「ロシアがウクライナの子どもたちを強制的に連行している疑いについて、この子どもたちを早急にウクライナに返還することが喫緊の課題である」というものであった。

 この会議の主題は、明らかに2012年のコニー作戦の影響を受けたものだった。この作戦は、ウガンダのジョセフ・コニー将軍に対する作戦であり、同将軍は、「3万人以上の子どもたちを誘拐して軍の強化に充てた」と非難された。この言説を初めに伝えたのは、今は否定されているオンライン上のハッカーらだった。さらに、この会議が思い起こさせるのは、「我らが少女を奪回せよ」というハッシュタグが付けられて拡散された人権感傷主義者らによる取り組みだ。この取り組みを立ち上げたのは、ミシェル・オバマ元大統領夫人を初めとする著名人らであり、北ナイジェリアのイスラム系民兵ボコ・ハラムが数百人の女学生を強制連行した事件を大きく伝える取り組みだった。

 「正義のための連合」会議において、NATO当局者らは、影響を受けやすい西側自由主義者層の怒りを必ずや引き起こすと考えられる主題を提示できたようだ。



上の写真:「正義のための連合」の宣伝動画から。下の写真:2016年のオスカー賞授賞式で「我らが少女を奪回せよ」作戦の強化のために集まったハリウッド俳優たち




 「正義のための連合」会議開催期間中ずっと、参加者らは繰り返し、ロシアが若者たちを強制連行したと決めつける発言を行っていた。「幼い子どもたちが誘拐され、洗脳され、ロシア国民になるよう強制されています」とオランダのウォプケ・フックストラ外相は演題から主張し、「総掛かりでウクライナの子どもたちを強制連行した」としてロシアを非難した。

 米国のメリック・ガーランド司法長官がリヴィウ訪問後に語ったところによると、同長官は、特定すべき「人物を探し」、ロシアが「子どもたちを強制連行する行為を行った」とされる疑惑の証拠を立件する努力を行っていたとのことだった。

 会議での発言中、カーンはウクライナ国内の孤児院を訪問したことについて触れ、「子どもたちがウクライナ国外からロシア連邦の領地に強制連行されているという疑惑が私たちのもとに届いています」と語った。しかし、カーンは、訪問した孤児院から子どもが連れ去られてという事実があったとは言及しなかった。

 ICCのウェブサイトが現在提示しているのは、発言中に触れたウクライナの孤児院の空っぽの寝床の横にいるカーンの写真だった。この写真は明らかに、プーチンの部下らが寝床から幼い子どもたちをさらったと思わせるための広報作戦だった。この孤児院は前線から遙か離れたところにあるのに、カーンは見せびらかすかのように、ケブラー製の保護用ヘルメットを着用していた。



 ロシア当局の餌食にされるウクライナの子どもたちを守る父親のような姿を見せていたわずか数ヶ月前、カーン自身の近親者が児童虐待を行った事件が発生していた。

 2022年5月、カーンの弟であるイムラン・アフマド・カーンが、庶民院議員を辞したのは、15歳の少年に対して性的虐待を行ったとして起訴されたからだった。アフマッド・カーンが18ヶ月服役したのは、有罪判決が出されたからだった。罪状は、その少年の二段ベッドによじ登り、股間をまさぐり、ジンを飲ませて裸の写真をとろうとしていた疑いだった。起訴後、また別の男性が、未成年時に虐待を受けたとして、アフマド・カーンを糾弾した。

 カリム・カーンは弟の起訴に際して法的な支援を行う意思を示していないが、ガーディアン紙は、アフマド・カーンは「家族、特に兄のカリムやハレド(両者とも弁護士)との親しい関係を」維持しており、「カリムは、ハーグの国際刑事裁判所の最高検察官」だと報じた


カーンのよりどころは、国務省が資金を出した「ホームランボール」的研究だった

 ウクライナについての公式発言中に、カリム・カーンがしばしば強調したのは、ブチャやハルキウのような戦場に足を踏み入れたことだった。それらの地域については、キエフ政権は恐ろしい戦争犯罪を行ったとしてロシアを糾弾していた。しかし、ICCがプーチンに対する逮捕状を出した際、起訴内容は、ロシア軍がこれらの地域で行ったとされた残虐行為に関するものではなかった。焦点とされていたのは、ウクライナの子どもたちを連行したことについてだった。

ICCの最高検察官が出した逮捕状は明らかに、イェール大学の人道研究所(HRL)の研究に触発されたものだった。この研究は、国務省の「紛争と安定化作戦」という組織から資金提供をうけ、支援されているものだ。この組織は、2022年5月にバイデン政権が立ち上げた組織で、ロシア当局の処刑を前進させている。

 その国務省が資金を出した報告書には、当グレー・ゾーンが明らかにしたとおり、ICCの最高検察官の主張とは食い違う長文が記載されていた。さらにその内容に関して、報告書の執筆者が報道機関に出演して語ってもいる。ジェレミー・ロフレド記者との対談の中で、イェール大学ナサニエル・レイモンドHRL所長が語ったところによると、同所長の調査団が調べたロシアの青年向け施設の「大部分」では、「主に文化教育が施されていた。いわばお楽しみのようなものだった」という。

 同所長の調査団がロシア国内のこのような保護施設をあえて訪問しなかった理由を聞かれたレイモンドは、こう答えている。「私たちは、ペルソナ・ノン・グラータ(入国が禁じられている人々のこと)ですので。私たちはロシアからは米国の諜報機関の延長的存在だと思われていますから。」

 それと同時にこのイェール大学のHRL所長が明言したのは、この報告書が国務省の目的を果たすべく書かれたものであり、米国国家情報会議からの「多大なる圧力」を受けていた事実だった。さらに同所長が認めたのは、自身の調査団は国防総省の「米国インド・太平洋軍」に依拠し、「太平洋軍を利用して衛星受信できる範囲を拡大し、シベリアや極東の複数の保護施設の様子を掴んだ」という事実だった。

 レイモンドは、カーンがウクライナのブチャでロシアが行った戦争犯罪の疑惑について逮捕状を出さなかった理由についても質問を受けた。この事件は西側報道機関が何日間も取り上げ続けていた事件だ。この質問に対してレイモンドは、2023年3月にニューヨーク・タイムズ紙の複数の外国特派員との間で交わされた電話の内容について語った。

 「私は金曜日に、ニューヨーク・タイムズの記者らと電話で話しました。これらの記者らは、ブチャの事件を取材していた人々です。基本的に、記者らはこんな感じでした。“ブチャの取材でピューリツァー賞を取りたいと思ったんだ。妙に思ったんだ。カーンが(幼い子どもたちの連行事件を)起訴して、ブチャのことは起訴しなかったことがね”。それで、私はこう言ったんです。“そんなことは、考えられる中で最悪の事態だったね”と。」

 レイモンドは、最高検察官の考え方についてこう説明した。「カーンがブチャの件を起訴すれば、大混乱を招くことになったでしょうね。というのもそうなれば、カーンはロシアに自分の弱点を送り続けることになったでしょうから。ブチャで大虐殺があったのは自明でしょう。だからといって、(ICCの規定書である)ローマ規程に違反することに該当することにはなりません。意図的で体系的な軍師指揮のもとで行われたかどうかという点に関して、です。ロシアがこのような行為を行ったことを立件するには、鑑識や弾道学の知識が必要です。伝達手段も必要になります。ICCがそのような手段を持っているという証拠がないのです。」

 イェール大学のHRLの所長によると、カーンは、「ホームランを打てそうなボールを投げることから始めたのです。基本的な話をさせてもらうと、ブチャの件でプーチンを起訴することは、プーチンの自白だけで、裏を取らずに(事件の)起訴をしているようなものになってしまうからです。子どもたちの連行行為の方が危険は少なくすみます。プーチンは、初歩的な殺害行為による起訴とはならなかったのです。」

 さらにレイモンドは話を続けた。「ニューヨーク・タイムズ紙にとっては嬉しい話ではないでしょう。ブチャの件で、ICCが華々しくプーチンを起訴する算段をしていたのですから」。しかし、(カーンは)プーチンにこう言うつもりなのでしょう。「中佐を落下傘部隊から追い払いにいけ。そうすれば、貴殿に問題はない」と。

 カーンに最も安易なやり方で逮捕状を出させたことに加えて、この起訴により、最も宣伝効果のある攻撃を加えることもできたのだ。それは、最高検察官を、ウクライナの子どもたちの救世主のように描くという攻撃だ。

 その目的を達成すべく、カーンはアマル・クルーニーという決定的な助けを得て広報活動を行ったのだ。この人物は、世界で活躍する弁護士で、ハリウッド俳優である人権問題介入者を夫に持つ人物だ。そしてこの夫は、米国民主党に最も多額の寄付を行っている人々の一人だ。


2022年4月、ロシア当局を処刑する支援の声を高めようと国連に現れたあと、アマル・クルーニーと協議中のICCのカリム・カーン


クルーニーとのつながり。カーンはハリウッドの人権問題介入者らと共闘している

 2021年9月、ICCの最高検察官の地位についてから数週間たったカーンは、スーダンのダルフール地域での残虐行為の捜査において、アマル・クルーニーを特別顧問に任命した。その5ヶ月後、ロシア軍がウクライナに入るやいなや、クルーニーは焦点を移動させ、ウクライナ政府からの招聘を受け、「戦争責任を問う法的対策委員会」の一員に加わった。

 カーンとアマル・クルーニーの協力関係が、少なくとも10年以上続いていることは、ICCの最高検察官である彼の「独立し、不偏で、総合的な」捜査を行うという発言に、更なる疑念が生じる理由となる。

 レバノン生まれのアマル・クルーニーが、世界的に著名となったきっかけは、ときめくハリウッド俳優のジョージ・クルーニーと結婚したことだった。ジョージ自身も、著名な人権問題介入者であり、スーダン政府やスーダンのオマル・バシール元大統領を標的にした運動を先導していた。具体的には、経済制裁を課し、ダルフールでの行為を残虐行為だとして起訴する運動であった。米国内のイスラエルの圧力団体や当時のジョージ・W.ブッシュ米大統領は、スーダン当局に対する戦いを深く支援しており、 ブッシュは豊かな石油埋蔵量をもつこの地域に米軍を派遣すると脅し、バシール大統領に相対していた。 クルーニーといえば、アウシュヴィッツの記憶を思い起こさせることで、ダルフールへの米軍の介入を主張していた。その後ICCがバシールに出した逮捕状は、最終的には意味をなさなくなったが、この取組により、クルーニーは世界の人権問題業界内で真の活動家であると受け止められることになった。

 2016年、ジョージ・クルーニーは焦点を内政問題に転じ、自ら「節度を超えるくらいの多額の資金」と称した額を大統領候補であったヒラリー・クリントン元国務大臣に選挙運動費として投じた。ジョージ・クルーニーとアマル・クルーニーが主催した資金集めの会合での投入額は、夫婦合わせて35万3400ドルにも上ったのだ。


2016年の大統領選において、ヒラリー・クリントンのための選挙資金活動のための会を主催した際のジョージ・クルーニーとアマル・クルーニー(右)


 同年、ジョージ・アマル夫婦は、自費を投じて「正義のためのクルーニー財団」を立ち上げた。ビル・クリントンやバラク・オバマが大統領職を退いた後に立ち上げた財団と同様に、クルーニー夫妻によるこの行為も、自由主義派の億万長者らから資金援助を受けていた。具体的には、ビル・ゲイツ、ジョージ・ソロスであり、マイクロソフト社や国連とも提携していた。さらに「正義のためのクルーニー財団」の公式提携先には、米・英政府が資金を出している諜報機関の代理組織であるべリング・キャット社も名を連ねている。



 人権活動家であるというクルーニーの装いの裏にある目的は、米国当局の外交政策としっかり軌を一にしている。クルーニーの財団が人権運動に取り組む対象国は、米国が政権転覆を謀っている国なのだ。そのいっぽうで、米国やその同盟諸国、さらにはイスラエルが行った、しっかりと文書で証拠が残された残虐行為については目をつぶっている。例えばベネズエラは、米国が制裁や激しい軍事クーデターを使って政権転覆を目論んだ国なのだが、クルーニー財団は、ICCによるニコラス・マドゥロ大統領に対する捜査を支援する意向を示している。

 自身の財団を監督しながら、アマル・クルーニーは英国政府からいくつかの任務を委託されており、その中には、任務期間が2年のジェレミー・ハント英外相が主催する「報道の自由に関する英国特使」の仕事や、英国司法長官の公式国際法律顧問の仕事もあった。

 クルーニーは現在投獄されているウィキリークスを出版していたジュリアン・アサンジの弁護団の一員だったが、ハント外相がクルーニーの元顧客であるアサンジを非難し、アサンジの逮捕を擁護し、米国への連行を承認した際、クルーニーは沈黙していた。


クルーニーが、2019年に「報道の自由に関する英国特使」に任命された際のアマル・クルーニー(左)とジェレミー・ハント英外相。

 2022年4月、クルーニー財団は、調査団をキエフに派遣し、ウクライナ政府に関するICCの捜査活動を支援すると発表した。その4月、アマル・クルーニーは、国連の人権委員会にカーンとともに顔を出したが、その際アマルは、ロシア政府がウクライナの多くの子どもたちの誘拐に加担している疑惑について初めて公表したのだ。

 「こんなことがありえるのでしょうか? 何千もの子どもたちが強制的にロシアに連行されるなんて。10代の少女たちが、町中で、家族や近所の人の面前で連行されるなんて。残念なことに、これは事実なのです」とクルーニーは断言したが、その主張を裏付ける証拠は何も示していなかった。


 その2ヶ月後、カーンとアマル・クルーニーは、ウクライナの検事総長イリーナ・ベネディクトワとの会談で再度顔を合わせた。これはロシア当局を起訴することに関して開かれたEU傘下の欧州司法機構の会議と併せて行われたものだった。


 続いて9月には、カーンは別の欧州司法機構の「ウクライナでの戦争責任を追求するための協同」会議と併せて開かれた会議に参加した。この催しには、ウクライナ・ドイツ・デンマーク・オランダ政府が資金を出していた。カーンICC最高検察官は、アマル・クルーニーやウクライナのドミトリー・コストリン新検事総長とともに、この会議の議長をつとめた。(ゼレンスキー大統領は7月に、反逆行為の疑いがあるとしてベネディクトワを罷免していた)。

 カーンとアマル・クルーニーとの関係が始まったのは、それぞれが世界的に有名になる前からのことだった。遡ること2010年、アマルがまだアマル・アラムディンという名だったとき、アマルはカーンが著者の一人であった随筆集に寄稿していた。さらにカーンはクルーニーが英国の弁護士フィリッパ・ウェブとともに著した2022年の書籍の推薦広告を執筆し、「力作である」と評していた。(クルーニー同様、ウェブもキエフ政権を支援する「ウクライナで行われた戦争犯罪の責任に関する対策委員会」の一員である)。

 「正義のためのクルーニー財団」のウェブサイトには、クルーニーに対する賞賛が嵐のように掲載されていて、以下のように褒め称えている。「黙らせようとする多くの圧力にも負けずに(勇気を持って)発言し続けている巨人である。(アマル・クルーニーが)断固として沈黙させられないよう努力する姿のおかげで、私たちには沈黙しないで発言する勇気が与えられ、さらに(アマル・クルーニーが)決して希望を捨てようとしない姿のおかげで、私たちは前に進む力を与えられている」と。

 ICCのカーン最高検察官がクルーニーを崇拝していることが、明らかにカーンの決意に影響を与え、クルーニーを自身の事務所の顧問の座にとどまらせている。クルーニーが英国政府やウクライナ政府のために活動していても関係ないのだ。両国政府は、ロシアと戦火を交えているというのに。

 当グレー・ゾーンは、ICCの最高検察官の報道担当者に、カーンがクルーニーと親しい協力関係にあることについて問い合わせを行い、クルーニーがウクライナ政府や英国政府のために活動していることが、カーンが誓約した「独立した、不偏で、総合的」な立場と矛盾するのではないかと問いただした。その返答はない。


2023年3月20日。ロンドン。ICCのカーンとドミニク・ラーブ英大法官


ロンドンでの資金回収会議に合わせて取られたICCの行為により戦争終結に向かう交渉の芽は摘み取られた

 今年の3月20日、プーチンに対する逮捕状が出されたちょうど一週間後、カーンはロンドンでの或る催しに姿を見せた。この催しは、英国政府とオランダ政府が主催した催しで、西側諸国にウクライナでの代理戦争にもっと資金を提供するよう呼びかけるためのものだった。その場において、 カーンはドミニク・ラーブ英大法官や大法官の対談相手であるいくつかのNATO諸国やウクライナから来た役人らと大笑いしている姿があった。

 ガーディアン紙は、プーチンに逮捕状か出された時期と寄付者らの会合があった時期が重なっていたことを指摘し、こんな記事を載せていた。「カーンは先週、ロシア大統領に対して劇的な動きを見せたが、これはロンドンで開催された或る会議の前に取られた行為だった。その会議は、英国政府とオランダ政府か主催したもので 、その目的は資金を集めて、ICCによるウクライナ国内での戦争犯罪の捜査活動に充てることにあった」と。

 英国とその同盟国あわせて40ヶ国の法務大臣が一堂に会したその会議では、500万ドルの資金が集められ、ロシア当局を起訴するためのICCの捜査費用に充てられた。

 この資金回収会議が行われたのは、米・英主導で行われたイラク侵攻が開始されて20年になる日の3日後だった。この侵攻により、推定100万人以上のイラク国民の死者が出たとされている。しかし2020年、ICCはイラクにおける英国の残虐行為の捜査を打ち切った

 カーンがパレスチナ占領地を訪問し、休止されているイスラエルによる迫害行為の捜査を強化することを誓約してから3ヶ月以上経つ。イスラエルの暴力によるパレスチナの被害者を代表する弁護士は、当グレー・ゾーンにこうこぼしていた。「カーンがパレスチナに行く計画があるのかどうかを知っている人は皆無です。パレスチナの件が優先事項ではないことは明らかです。」

 もうひとつ明らかなことは、ICCがプーチンに逮捕状を出したことが、ウクライナでの紛争を交渉で終わらせる方向性の新たな障害になっているという事実だ。ゼレンスキーの首席補佐官であるミハイル・ポダリャクは、ICCがプーチンに逮捕状を出した直後にこんなツイートをしている。「今のロシアの指導者層と交渉をする余地は全くない」と。
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すべての道は北京に通ず―2人の巡礼者の物語

<記事原文 寺島先生推薦>

All roads Lead to Beijing
This is the tale of two pilgrims following the road that really matters in the young 21st century.

これは、21世紀初頭、実に重要な道をたどる2人の巡礼者の物語である。

筆者:ペペ・エスコバール (Pepe Escobar)

出典:Strategic Culture Foundation

2023年4月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月27日

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© Photo: REUTERS/Florence Lo


 これは、21世紀の若い時代に本当に重要な道をたどる2人の巡礼者の物語である。1人はNATOの国から、もう1人はBRICSからやって来た。

 まず、「小さな王様」エマニュエル・マクロンから始めよう。広州で習近平と並んで歩く、不自然な笑みを浮かべた彼を思い浮かべてほしい。白雲会館に入り、1000年の歴史を持つ古琴の演奏に耳を傾ける。そして、1000年前のお茶の香りを味わいながら、新たな千年における大国の興亡に思いを馳せる。

 そして、習は「小さな王様」に何を語るのか。この永遠の楽器が奏でる永遠の音楽を聴くとき、あなたは心の友と一緒にいて、高い山と流れる水の音を聞き取ることができると、彼は説明する。それが、25世紀前の楚の国の音楽家Yu Boya (俞伯牙)とZhong Ziqi (钟子期)の昔話の深い意味、「心の友」である。「心の友」だけが、その音楽を理解できるのだ。 

 そして、習近平は中国の学者たちが説明するように、「Zhiyin(知音)*」という概念を持ち出した。Zhong Ziqi (钟子期)が死んだ後、Yu Boya (俞伯牙)は自分の胡琴を壊した。自分の音楽を理解できるのは、他に誰もいないと思ったからだ。この2人の話から、「音楽を理解する人」という意味と、「お互いを完全に理解し合える親友」という意味が加わって、「Zhiyin(知音)」という言葉が生まれた。
* Zhiyin(知音)は普通、心の友、友達を意味する。文字通りの意味は「音楽を理解する」である。中国春秋時代、晋の国の木版画家Zhong Ziqi (钟子期)が、胡琴奏者Yu Boya (俞伯牙)の演奏を深く理解したという故事にちなむ。

 マクロンのような自惚れ屋の傀儡が、習近平の微妙で洗練されたメッセージを理解できるほど教養があるかどうかは、すべて賭けの対象である。それが理解できる人が本当の親友だからだ。しかも、マクロンが習主席から北京や広州に派遣されたのは、心の友になるためではなく、ロシア・ウクライナ問題で習主席をNATOに従わせようとするためだった。

 彼のボディランゲージが決定的な証拠で、腕を組んで退屈をアピールしている。真の友好には相互理解と感謝が必要だという考え方に、最初は抵抗があったのかもしれない。

 しかし、その後、とんでもないことが起こった。習近平のメッセージは、自惚れ屋の「小さな王様」の苦悩に満ちた心の奥底にある重要なポイントに触れたのかもしれない。もし国際関係において、相互理解と感謝こそが、国家が共通の基盤を見つけ、共通の目標に向かって協力するための鍵であるとしたらどうだろうか。

 なんと画期的な考え方だろう。覇権国に押し付けられた「法に基づく国際秩序」とは違うのだ。


あなたの国は、真の主権国家ですか?

 習近平は、「小さな王様」を中国に招き、自ら6時間以上も客人と過ごしたことで、千年来の外交の粋を尽くした。習近平は、フランスとアングロサクソン諸国との間の激動の歴史に思いを馳せ、主権について語ったのである。

 重要で微妙な補足的物語は、「ヨーロッパ」は覇権国に従属することをよく考え、米国との対決の日が来たときの経済的な大混乱を可能な限り小さくすることを考えた方がいいということだ。それは、中国を包囲しようとする米国の動きを断ち切ることが、北京の優先課題であることを暗に示している。

 だから、習近平はフランスをEUの下でも、あるいはEUの教義からやや離れた存在としても、真の主権者になりうる国として遇したのだ。

 もちろん、この儒教的な「認識論的進化への誘い」の下には、もう一つの重要なメッセージが込められていた。複雑な地政学的状況のために中国と友好的になることを望まない人々には、北京が中国国家の「友好的でない」側面を示したとしても、決して遅すぎることはないだろう。もしそのような状況が生じたらではあるが。

 翻訳すると、西側が「マキアヴェッリ」一辺倒なら、中国は「孫子」一辺倒であろう。たとえ、「あなた方は我々の味方か、さもなくば敵である」というテロ戦争や、制裁の認知症的対応をとっても、北京は、美、善、真実の庇護のもとで国際関係を築くことを望む、ということだ。

 では、「小さな王様」は「ダマスカスへの道*」の瞬間を迎えたのだろうか。その判断は自由だ。彼は、ヨーロッパは「アメリカの追随者」となる圧力に抵抗しなければならないという暴言を吐いて、文字通り覇権国を苛立たせた。これは、北京とパリが合意した51項目とほぼ一致しており、「すべての当事者の正当な安全保障上の懸念」に重点を置いている。
* ダマスカスへの道:人生における突然の転機。聖パウロがダマスカスへの道で神の声を聞き、クリスチャンになったという話から来ている。

 マクロンが、ヨーロッパは独立した「第3の超大国」になるべきだと主張したことで、アメリカはさらに驚いた。「小さな王様」は、脱ドル化を支持し(もちろん彼の金融の親玉の監督下でだが)、永遠の戦争を支持しないという小さな歩みを進めていた。

 そこでアメリカはパニックになり、ドイツにおける筋金入りの第5列*、アナレナ・ベアボックを急いで北京に送り込み、「小さな王様」の暴挙を取り消し、ワシントン指令下の独裁者ブリュッセルの公式台本を再確認させることになった。しかし、誰も、どこの国でも、まったく関心を持たなかった。
* 本来味方であるはずの集団の中で敵方に味方する人々、つまり「スパイ」などの存在を指す。

 それは物語全体の中で最も目を引く補助的物語の後に起こった。欧州委員会の女王であるウルスラ・フォン・デア・ライエンが、北京から無関係というよりひどい扱いを受けたのだ。中国のある学者は、彼女を「歯のないイヌ類の代弁者に過ぎない。彼女の吠え声さえも、安楽死させられようとしている末期の犬の鳴き声のように聞こえる」と酷評した。

 その「末期的症状のイヌ」は、パスポート検査と税関を通らなければならなかった(「何か申告することはないか」と聞かれたろう)。外交的地位もない。正式な招待状もない。主権もない。そして、マクロンと一緒に特別高速列車に乗って広州に行くこともできない。そこで、もう1つのメッセージがある。これは非常に生々しいものだ。つまり、3,000年の歴史を持つ中国王朝の精神を台無しにするな、ということだ。


ルーラと 「Zhiyin(知音)」

 中国で第一線の学者たちは、習近平が25世紀前に有効だった外交術を、多極化する世界の舞台で再現することに引きつけられた。

 21世紀に書き直された「戦国時代の戦略」を求める声もある。「ジャングル」を真ん中に置き、マクロンとフォン・デ・ライエンを就職の面接を受けるかのように配置された中国の外交儀礼による大規模な円卓会議は、ウェイボー(Weibo)やウィチャット(We Chat)で巨大な人気となった。その結果、中国はようやく「野蛮人の間に楔を打ち込む」ことができるようになったという議論が延々と続いた。

 このような大騒ぎに比べれば、ブラジルのルーラ大統領が上海と北京を訪れた話は、まるで「知音」の挿絵のように読める。

 ルーラは、BRICSの銀行である新開発銀行(NDB)の新総裁にディルマ・ルセフ前大統領が就任した際、最初から急所を突いてきた。

 サハラ砂漠からシベリアまで、誰にでも理解できる簡潔で直接的な言葉で、ルーラはこう言ったのだ。なぜ自国の通貨で取引できないのだろう? そして、なぜ私たちは革新を起こそうとしないのだろうか?

 直接的に示唆されているのは、各国通貨での貿易を認めるだけでなく、拡大するBRICS+が独自の通貨を設計し、普及させるべきだという事実である(その長く複雑なプロセスはすでに始まっている)。

 ルーラの力強いメッセージは、グローバル・サウス全体に向けられたものだった。ブラジルの例としては、中国のICBC(中国工商銀行)がブラジルに手形交換所を設立し、人民元とレアルを直接交換できるようにしたことが挙げられる。

 CIAの機関紙であるワシントン・ポストが口から泡を吹いて、すぐに闇の国家の裁定を出したのも不思議ではない。ルーラは「法に基づく国際秩序」の命令に従わない、と。

 つまり、闇の国家はルーラとその政府に再び向かってきて、その不安定化のために手段を選ばないということである。なぜなら、ルーラの発言は、過去にサダム・フセインやガダフィ大佐が発言し、実行しようとしたこととまったく同じだからだ。

 だから、ルーラにはあらゆる協力が必要なのだ。もう一度、「知音」の登場である。

 習近平は北京でこうしてルーラを公式に歓迎した。習近平のような大物が目の前で「中国の古い友人だ」と言えば、それで全て受容されていることを、中国人以外の世界中の人々はほとんど理解していない。

 すべてのドアが開かれた。彼らはあなたを信頼し、抱きしめ、守り、話を聞き、困ったときには助け、友情を身近に感じられるよう常に最善を尽くしてくれるのだ。

 そして、北京への道を歩む「心の友」たちの物語は、ひとまずこれで終わりだ。BRICSの友人は、確かにすべてを理解した。真の主権者になることを夢見るNATO諸国の「小さな王様」は、今、その扉を叩いている。
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マルクスの理論は、真理と共に今でも輝いている (習近平、2018年5月4日)

<記事原文 寺島先生推薦>

Marx’s Theory Still Shines with Truth

出典:INTERNATIONALIST 360°

2018年5月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月27日

 2018年5月4日、中国の首都・北京の人民大会堂で行われたカール・マルクス生誕200周年記念会議で、中国共産党中央委員会総書記兼中央軍事委員会主席の習近平が発言した。

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Xinhua

 2世紀が経過し、人間社会の巨大で深い変化にもかかわらず、カール・マルクスの名前はいまだに世界中で尊敬され、彼の理論はいまだに真理の輝きを放っていると、中国の習近平主席は金曜日(2018年5月4日)に述べた。

 中国共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席でもある習近平は、北京で開かれたマルクスの生誕200年を祝う盛大な集会で、こう発言した。

 習近平は、マルクスを「全世界のプロレタリアートと労働者の革命の教師、マルクス主義の主な創始者、マルクス主義政党の創造者、国際共産主義の道案内人、現代における最大の思想家」と述べた。

 「今日、我々はマルクス生誕200年を記念して、彼の偉大な人格と歴史的な行いを記憶し、彼の高貴な精神と輝かしい思想を見直すために、この大集会を大きな敬意をもって開催する」と習近平はこの場で述べている。

 マルクスは生涯、高貴な理想を掲げ、困難や逆境を恐れず、人類の解放のために忍耐強く努力し、真理の追求のために思想の頂点を極め、古い世界を覆して新しい世界を築くための絶え間ない戦いに専念したと、習近平は言う。

 マルクスは世界の重みを背負った偉大な人物であるだけでなく、人生への情熱を持ち、誠実で友情に忠実な普通の人である、と習近平は述べた。

 マルクスが私たちに残した最も貴重で影響力のある精神的財産は、彼の名を冠した科学理論、マルクス主義である。壮大な日の出のように、この理論は人類が歴史の法則を探求し、人類が自らの解放を模索する道を照らしたのだ、と習近平は語った。

 「マルクスの思想と理論は、彼の時代のものであり、彼の時代を超えています」と習近平は言った。「それらはその時代の精神のエッセンスであり、全人類の精神のエッセンスです」。

 習近平は、マルクス主義は人間社会の発展の法則を創造的に明らかにする科学的理論であると述べた。

 マルクスは、唯物史観と剰余価値論を展開し、人類が必然の領域から自由の領域へと飛躍する方法と、人民が自由と解放を実現するための道を示したと習近平は語った。

 人民自身の解放のための最初の思想であるマルクス主義は、人民の理論である。

 「マルクス主義は、初めて人民の立場から人類の自由と解放の道を探り、すべての人が平等と自由を享受する、抑圧も搾取もない理想社会への方向を、科学的理論をもって指し示しました」と習近平は述べている。

 習近平は、マルクス主義が他の理論と異なり、実践的であることが顕著な特徴であると強調し、マルクス主義は世界を変えるよう人々に指示する実践の理論であると述べた。

 常に発展し続け、常に時代の先端を行く開かれた理論である、と習近平は語った。「だからこそ、常に若さを保ち、時代の発展における新たな問題を探求し、人類社会の新たな課題に対応することができるのです」。

 総書記は、『共産党宣言』の出版から170年、マルクス主義は世界中に広まり、その影響力の広さと深さにおいて人類の思想史の中で比類なきものであると述べた。

 第二次世界大戦終結後、多くの社会主義国が建国されたと習近平は述べ、特に中華人民共和国の建国は、世界の社会主義勢力を大きく伸ばしたと強調した。

 習近平は、「世界における社会主義の発展には挫折があるかもしれないが、人類社会の発展の全体的な流れは決して変わっていないし、これからも変わることはありません」と述べた。

 「マルクス主義は世界だけでなく、中国も深く変えました」と習近平は語った。

 ロシアの十月革命の余波は、中国にマルクス・レーニン主義をもたらし、進むべき方向を指し示し、中国人民の生存のための闘いに全く新しい選択肢を提供し、中国共産党の誕生の舞台となった。

 中国共産党は誕生以来、マルクス主義の基本原則を、中国の革命とその建設の現実に結合し、長期的な闘争を通じて人民を団結させ、指導することによって、中華民族を「東アジアの病人」から「立ち上がる人」に変身させた。

 「この驚異的な変化は、社会主義によってのみ中国を救うことができるということを、鉄のように証明するものです」と習近平は言った。

 改革開放以来、中国共産党はマルクス主義の基本原則と中国の改革開放の現実を結合し、立ち上がった国家は豊かになった。

 「この驚異的な変化は、中国の特色ある社会主義によってのみ中国を発展させることができるということを、鉄のように証明するものです」と習近平は言った。

 新時代において、中国共産党は再びマルクス主義の基本原則と新時代の中国の現実を結合し、人民を団結させて指導し、「偉大な闘争を引き受け、偉大な事業を建設し、偉大な目的を前進させ、偉大な夢を実現します」。

 中国国家は、今、豊かになった者が強くなるという、とてつもない変容を迎えるに至った。

 「この驚異的な変化は、中国の特色ある社会主義を堅持し、発展させることによってのみ、国家の若返りを実現できるということを、鉄のように証明しています」と習近平は述べた。

 「歴史と人民がマルクス主義を選択するのは完全に正しいことであり、同時に、中国共産党が自らの旗にマルクス主義を書き、マルクス主義の基本原則と中国の現実を結合する原則を堅持し、マルクス主義を中国の状況と時代に絶えず適応させることも正しいのです」。
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AIの「ストレスは相当のものだ」―マスク

<記事原文 寺島先生推薦>

AI ‘stresses me out’ – Musk
The head of Tesla called the company a leader in “real world AI” but urged more regulation

テスラ社のトップは、同社を「実世界のAI」のリーダーだと呼びながらも、さらなる規制を促した。

出典:RT

2023年3月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月26日

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上海で展示中のテスラ社のロボット© VCG / VCG via Getty Images


 テスラ社CEOのイーロン・マスクは、自社を「実世界のAI」におけるグローバルリーダーであるとしながらも、厳しい監視を求めつつ、AIに「ストレス」を感じていると告白した。

 テスラ社の幹部たちは、水曜日(3月1日)にテキサス州のギガファクトリーで行われた投資家向けの説明会で、電気自動車の生産と運用に関するさまざまな側面を説明し、世界が持続可能なエネルギー構成に移行するための方法についての評価を共有した。

 特に注目を集めたのは、マスクが、テスラの人型ロボット「オプティマス」事業計画の最新情報を発表したことだ。会場に映し出されたビデオには、別の種類のロボットを組み立てている最中と思われる数体のロボットが登場した。

 「我々は現実世界のAIで最も進んでいる」と、億万長者のCEOマスクは発言した。「現実世界のAIを解決する上で、テスラ社に対抗できる存在はないと思う」。

 オプティマスの技術は、テスラの自走能力開発に由来するとマスクは説明し、「自動車は車輪のついたロボットで、これは足のついたロボットだ」と付言した。


 イベントの最後に行われた質疑応答で、「生成型AIは・・・自動車を作るのに役立つのか」という質問に、マスクはやや悲観的な口調だった。「生成型AI」という用語は、画像から工業デザインまで、要求に応じてコンテンツを生成する一種の神経回路網を指している。

 マスクは、そのような援助をテスラ社がすぐに使うとは思えないと答えた。アルゴリズムがより良い車を作れるようになった時点で、「私たちは誰も働かず、ぶらぶら過ごすことになるだろう」とつぶやき、「AI的なもの」に懸念を抱いていることを付け加えた。

 「AI開発を監督し、公益の範囲内で運用されていることを確認する何らかの規制当局が必要だと思う。これは非常に危険な技術であり、私はそれを加速させるようなことをしたのではないかと心配している」と、この起業家(マスク)は述べている。

関連記事:オプティマスのボットには「ネコ少女」オプションが付く―マスク

 マスクは以前から、AI技術が暴走し、人類の文明を終わらせる可能性があるとの懸念を示してきた。確かに大きな利点が生まれるが、大きな注意が必要であると彼は語った。Q&Aセッションが終了する前に、マスクは「このストレス感は相当のものだ」と認めている。
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AIは3億人の労働者の代替になるかもしれない—ゴールドマン・サックス

<記事原文 寺島先生推薦>

AI could replace 300 million workers – Goldman Sachs
Two-thirds of jobs in the US and Europe are vulnerable to some degree of Artificial Intelligence automation, a report has claimed

欧米の3分の2の仕事は、程度の差こそあれ、人工知能による自動化の影響を受けやすいとする報告書が発表された。

出典:RT

2023年3月29日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月26日

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© Getty Images/Colin Anderson Productions pty ltd


 人工知能(AI)がその潜在能力を発揮すれば、労働市場に「大きな混乱」をもたらし、世界中の数百万人の雇用を危うくする可能性があると、ゴールドマン・サックスは主張している。

 ChatGPTのような生成型AIは、投資銀行であるゴールドマン・サックスが日曜日(3月26日)に発表した報告書の推定によると、世界中で最大3億人の常勤勤務(フルタイム)の仕事を置き換える可能性があるとのことだ。新しい素材を独立して作り出すことができるこの技術は、「潜在的に大きなマクロ経済効果を持つ大きな進歩」を意味するとゴールドマン・サックスは主張した。

 欧米ではおよそ3分の2の仕事が「程度の差こそあれAIの自動化」にさらされており、生成型AIは現在の仕事の4分の1を代替するものとして利用される可能性がある。

 ゴールドマン・サックスは、「生成型AIの可能性には大きな不確実性があるものの、人間が作成した出力と見分けがつかないほどの内容を生成し、人間と機械の間の意思疎通の障壁を取り除く能力は、潜在的に多大なマクロ経済効果をもたらす大きな進歩を映し出している」と述べている。

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関連記事:中国に明るい経済見通しが発表される


 同時に、大半の産業は 「部分的な自動化にさらされる」だけであり、「AIに取って代わられるのではなく、補完される」 可能性が高いとしている。米国では約7%の職種がAIに取って代わられる可能性があり、63%は革新的な技術によって補完され、30%は影響を受けないと試算されている。

 ゴールドマン・サックスはまた、歴史的に自動化によって失われた職は、新しい仕事や職業の創出によって相殺され、製品やサービスの価値を高めるとした。

 「大幅な人件費削減、新規雇用の創出、そして代替されない労働者の生産性向上が重なり、経済成長率を大幅に引き上げる生産性上昇の可能性がある」と報告書は述べている。

 ゴールドマン・サックスによると、AIの普及により、最終的に世界の年間GDPは7%増加するとのことだ。
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イタリア、チャットGPTを禁止

<記事原文 寺島先生推薦>

Italy bans ChatGPT
The country's data protection authority has demanded that the chatbot’s creator OpenAI take action or face hefty fines

イタリアのデータ保護当局は、このチャットボットの制作者であるOpenAIに対して、対策を講じなければ多額の罰金を課すよう要求している。

出典:RT

2023年3月31日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月26日

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OpenAI「ChatGPT」アプリのウェルカムスクリーン © Getty Images / Leon Neal


 イタリアのデータ保護監視機関は、プライバシー侵害の疑いがあるとして、OpenAIのチャットボット「ChatGPT」へのアクセスを禁止した。この決定は、3月20日にデータ侵害が発生し、利用者の会話や支払い情報が流出したことを受けて下されたもの。

 2022年11月にサービスを開始したChatGPTは、さまざまな形態や言語で書き、詩を作り、コンピュータコードまで書けることで人気を博している。

 しかし、イタリア個人データ保護庁は、OpenAIによってデータが収集される利用者に対して情報通知を行わなかったとして、このチャットボットを批判した。また、同庁は、プラットフォームを運営するアルゴリズムの「訓練」を目的とした個人データの収集と大量保存を正当化する「法的根拠の欠如」を問題視している。

 このチャットボットは13歳以上を対象としているが、イタリア当局は、OpenAIが利用者の年齢を確認するためのフィルターを設置していないことについても非難している。「絶対に発達段階に合っていない」回答を未成年者に提示することにつながる、としている。

 同庁は現在、OpenAIに対し、この状況を改善するために「実施した措置を20日以内に連絡する」こと、さもなくば、全世界の年間売上高の4%を上限とする罰金に直面することになる、と伝えている。チャットボットを停止し、OpenAIを介したイタリア人ユ利用者のデータ処理を一時的に制限する決定は、「即時発効」したとイタリア個人データ保護庁は付け加えている。

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関連記事:マスク、AIの一時停止を要求

 一方、テスラCEOのイーロン・マスクやアップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアックなど、1,100人以上のAI研究者や著名な技術指導者が、「巨大AI実験」の6ヶ月間の一時停止を要求する公開書簡に署名している。

 署名者たちは、「人間と競合する知能を持つAI体系は、社会と人類に重大な危険性をもたらす可能性がある」と主張し、急速に進歩する技術は、「相応の注意と必要な資源(リソース)をもって計画・管理されるべきである」としている。同団体は、「誰も(その作成者でさえも)理解できず、予測できず、確実に制御できない、さらに強力な電子頭脳を開発・展開する制御不能な競争」を許すことに強く警鐘を鳴らしている。

 AI開発者が自らを律することができないのであれば、政府が介入し、暴走する統治体系を抑制することができる規制機関を設立し、安全性の研究に資金を提供し、超知能体系が人間の仕事を引き継ぐようになったときの経済的打撃を和らげる必要があると、書簡は述べている。
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巨大なAI(人工知能)実験は一時停止せよ:「生命の未来」研究所からの公開書簡

<記事原文 寺島先生推薦>

Pause Giant AI Experiments: An Open Letter - Future of Life Institute

我々は、すべてのAI研究所に対し、GPT-4より強力なAI体系(システム)の訓練を少なくとも6ヶ月間、直ちに一時停止することを求める。

出典:「生命の未来」研究所 (Future of Life Institute)   

2023年3月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月26日

訳註:生命の未来研究所(FLI)は、人類が直面する世界的な破局的リスクと存亡の危機、特に高度な人工知能(AI)による存亡の危機を軽減することを目的とした非営利団体。2014年3月設立。設立者には、マサチューセッツ工科大学(MIT)の宇宙学者マックス・テグマークやスカイプの共同設立者ジャーン・タリンなどがおり、アドバイザーには起業家のイーロン・マスクがいる。所在地は米国マサーチューセッツ州ケンブリッジ。(英語版ウイッキペディア)

 人間並みの知能を持つAI体系は、社会と人類に重大な危険性をもたらす可能性があることは、広範な研究で示され、複数の最高水準のAI研究所が認めている。広く支持されている「アシロマ会議の原則」にあるように、高度なAI体系は地球上の生命の歴史に大きな変化をもたらす可能性があり、相応の配慮と資金をもって計画・管理されるべきものである。しかし、残念ながら、このような計画や管理は行われていない。ここ数カ月、AI研究所は、誰も(その作成者でさえも)理解できず、予測できず、確実に制御できない、より強力なデジタル方式の知力を開発・展開するための制御不能な競争に陥っている。

 現代のAI体系は、一般的な仕事において人間並みの能力を発揮するようになりつつあるので、私たちは自問自答しなければならない。つまり、私たちは機械に私たちの情報チャンネル(伝送路)にプロパガンダや真実でないもので溢れさせるべきなのか? 充実した仕事も含めて、すべての仕事を自動化すべきなのか? 私たちは、やがて私たちよりも数が多く、賢く、未発達で、私たちに取って代わるかもしれない非人間的な精神を開発すべきなのか? 私たちは、文明の制御を失う危険性を冒すべきなのか? このような決定を、選挙で選ばれたわけでもない技術指導者に委ねてはならない。強力なAI体系は、その効果が肯定的であり、危険性が管理可能であると確信した場合にのみ開発されるべきだ。この確実性は十分に証明されなければならず、その体系の潜在的な影響の大きさに応じて増大する。Open AIの人工一般知能に関する最近の声明では、「ある時点で、将来の体系の訓練を開始する前に独立した審査を受けること、そして最も進んだ取り組みでは、新しいモデルの作成に使用する計算機の成長速度を制限することに合意することが重要になるかもしれない」と述べている。私たちは同意する。そのポイントは今だ。

 したがって、我々はすべてのAI研究所に対して、GPT-4よりも強力なAI体系の訓練を、少なくとも6ヶ月間、直ちに一時停止することを求める。この一時停止は、公開され、検証可能であり、すべての主要な関係者を含むものでなければならない。このような一時停止が迅速に実施できない場合は、政府が介入して一時停止を実施する必要がある。

 AI研究所と独立した専門家は、この休止期間を利用して、独立した外部の専門家によって厳格に監査・監督される、高度なAIの設計・開発に関する一連の共有安全の実施要項を共同で開発・実施すべきである。これらの実施要項は、それを遵守する駆動装置が合理的疑いの余地なく安全であることを保証するものでなければならない。これは、AI開発全般の休止を意味するものではなく、出現する能力を持つ予測不可能な得体の知れないモデルをますます大きくする危険な競争から単に一歩離れて見ることを意味している。

 AI体系の研究開発は、今日の強力な最先端体系を、より正確で安全、解釈可能、透明、強固、連携、信頼、忠実なものにすることに焦点を再び合わせるべきだ。

 このAI統治体系には少なくとも次のものが含まれるべきだ。すなわち、AIに特化した新しく有能な規制当局、高度な能力を持つAI体系の監視と追跡、大規模な計算能力の共同管理の監視と追跡、本物と模造の区別の手助け、そしてモデルの流出の追跡を手助けするための由来あぶり出し(電子透かし)機能、強固な会計監査と証明書の収益活動協調体制、AI体系による被害に対する法的責任、AI安全技術研究に対する強固な公的資金、AI体系が引き起こす経済的・政治的混乱(特に民主主義の)に対処するための十分に資金のある公共機関が含まれるべきなのだ。

 人類は、AI体系によって豊かな未来を享受できる。強力なAI体系の創造に成功した今、私たちは「AIの夏」を楽しむことができる。この夏、私たちは報酬を受け取り、すべての人々の明確な利益のためにこれらの体系を設計し、社会に適応する機会を与えることができる。社会は、社会に壊滅的な影響を与える可能性のある他の技術に対して一時停止を行ってきた。私たちは、ここでそうすることができる。長いAIの夏を楽しみ、準備不足のまま秋に突入しないようにしよう。

 メディアやその他の場所での質問や議論に応えて、私たちはいくつかのFAQを用意した。こちらでご覧いただける。

 この公開状に加え、私たちは一連の政策提言も発表している。
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CIAが密かに行っていたアサンジに対する監視方法が明らかに

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA's surveillance methods on Assange revealed
A private contractor installed microphones inside the Ecuadorian Embassy in London where the WikiLeaks co-founder lived, an El Pais investigation has found

ウィキリークス共同創設者(アサンジ)が住んでいたロンドンのエクアドル大使館内に、民間業者がマイクを設置していたことが、El Paisの調査で判明した。

出典:RT

2023年4月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月25日

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© Oscar del Pozo / AFP

 CIAはスペインの民間警備会社UCグローバル社を使い、ウィキリークスの共同創設者ジュリアン・アサンジを監視するためにロンドンのエクアドル大使館内にマイクを密かに設置していた、とスペインの通信社エル・パイス社が同社の内部通信を引用して水曜日(3月29日)に報じた。

 UCグローバル社は、大使館の警備のために雇われていた。当時エクアドルから亡命を認められていたアサンジは、2012年から2019年まで外交施設に居住していたが、その後、英国警察によって強制移動させられた。スペインの会社(UC グローバル社)が米国の情報機関とつながっていることは、2019年にエル・パイス社によって初めて報道された。

 同紙によると、UCグローバルの創業者で代表のデイヴィッド・モラレスが、CIAと初めて接触したのは2017年のこと。その頃、モラレスは従業員に、同社が「X」という名のアメリカの新しい顧客に、「ホテル」と呼ばれるロンドンのエクアドル大使館からデータを収集するサーバーへの遠隔操作を提供する必要があると伝えていた。

 「「ホテル」の仕事に関しては、私たちの情報収集と分析能力をアメリカの顧客に提供したいと思う」と、モラレスは2017年9月の電子メールに書いている。「私たちは・・・それを魅力的で解釈しやすいものにするよう努めなければならない」。

 共有された情報には、弁護士や外交官などアサンジの訪問者のプロフィールや、携帯電話のデータなどが含まれていたとされる。モラレスはチャットメッセージで、「我々の管理者は米国の友人たちだ」と述べたとされる。


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関連記事:ピンク・フロイドのレジェンドが「英国のプードル」にアサンジの解放を促す


 モラレスの一団が大使館内に密かに仕掛けたマイクの一つは、アサンジが監視を防ぐためにホワイトノイズマシンを使う習慣があるにもかかわらず、盗聴するために消火器の下に隠されたとエル・パイス社は述べている。振動を避け、レーザーマイクで音を録音できるように、窓の角にステッカーが貼られていた。「私は、それが最大の関心事であり、米国がそれを望んでいることを知っている」とモラレスは、社員に書き送ったと伝えられている。

 エル・パイス社によると、UC Globalの仕事は、2017年12月にアサンジを大使館からこっそり連れ出す計画をワシントンが阻止するのに役立ったという。当時のエクアドル大統領であるレニン・モレノは、アサンジにエクアドル市民権を与え、外交用の車でイギリスから脱出させようとしたと言われている。

 モラレスの一団は、アサンジとエクアドル政府関係者の会話を録音し、それをすぐに米国に送ったとされる。ワシントンはこれに対し、アサンジの逮捕状を英国に発行した。これにより、アサンジを英国から退去させる計画は頓挫したようだ。

 2019年、スペイン当局がモラレスの会社(UC グローバル社)に対する調査を開始し、一時的にモラレスを拘束した。その後、彼は保釈された。
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米国、初めて、COVIDワクチン被害の申し立てを認める―全部で4634ドル89セントの支払いへ

<記事原文 寺島先生推薦>

U.S. Approves First Three COVID Vaccine Injury Claims — And Pays Out a Total of $4,634.89GR
The Health and Resources Service Administration approved its first three payments to people injured by COVID-19 vaccines — one for anaphylaxis and two for myocarditis — amounting to a total of $4,634.89.

保健資源事業局(HRSA)は、COVID-19ワクチンによって健康被害を受けた人々に対して、アナフィラキシーで1件、心筋炎で2件、合計4634ドル89セント、計3件の支払いを初めて承認した。

筆者:ブレンダ・バレッティ (Brenda Baletti)

出典:Global Research

2023年4月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月24日

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***

 米国政府は、COVID-19ワクチンによって健康被害を受けた人々への3回の支払いを、初めて承認した――総額で4634ドル89セント。

 毎月更新されるHRSAのワクチン損害賠償請求報告では、アナフィラキシー(アレルギーの一種)に対する2019ドル55セントの支払いが1件、心筋炎に対して、1582ドル65セントと1032ドル69セント、計2件の支払いとなっている。

 この支払いは、HRSAの対策傷害補償プログラム(CICP)を通じて行われた。
 
 CICPは、公衆衛生上の緊急時に投与されたワクチンや薬などの「対抗措置」による健康被害の責任から製薬会社を保護する「公共準備・緊急事態準備(PREP)法」に基づいて設立さ れた。

 2010年に最初の請求を承認して以来、このプログラムでは合計33件のワクチン被害の請求を補償してきたが、COVID-19ワクチンについては今回が初めての補償となる。

 「Children's Health Defense (CHD)の顧問弁護士代理であるキム・マック・ローゼンバーグは、「今回待望の裁定は、遅きに失したものでした。期待も高かったし、憶測もいろいろありました。驚くべきことは、支払われた金額が合計で5千ドル未満であったことです。これは、このプログラムの深刻な限界を浮き彫りにするような悲劇です」と語った。

 CHD会長代理のローラ・ボノは、診断から5年以内に死亡率が50%に上昇することを考えてもし、心筋炎に対するこの支払いは「侮辱的」と評した。

 ボノは語っている:

 「CICPは、COVIDワクチンや製品で利益を得ている、製薬業界そのものに全面的な法的保護を与えるのです。政府のプログラムとしては、情けない限りです。被害者の健康被害が長引いたり、費用を自己負担したり、最悪の場合死んでしまったりする一方で、製薬業界は銀行に逃げ込むのです」。

 パンデミック開始以降、COVID-19ワクチンやその他の対策品に関連した健康被害を主張する人々から、1万1425件の補償請求が提出さ れた。

 そのうち、補償の対象となることを宣言され、支払いを決定するための「医療給付審査」を受けているのは、19名のみだ。

 アナフィラキシー事例は2021年秋から、医療給付の審査が保留されていた。心筋炎の2事例は1月から医療給付の審査が保留されていた。

 医療給付の審査では、HRSAが保険、労災、障害、その他の払い戻しや支払いの後に残る費用を決定する。

 ワクチン健康傷害補償の専門家であるウェイン・ローデは、自身のサブスタックに、「健康被害者に支給されたかもしれない過去の医療給付を見直すのに18ヶ月以上かかったこと(アナフィラキシー事例の場合)を考えると、この手続きをみるにつけ、これは膨大な医療費が発生する大きな損害になっていると思う」 と書いている。

 心筋炎は深刻な症状で、多くの医学的処置も必要だとローデは述べている。

 これまでに、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に提出されたCOVID-19接種後の有害事象の報告は154万1275件に上る。


ワクチン被害補償の仕組み。 VICPとCICPについて

 米国保健福祉省(HHS)の下で運営されているHRSAは、全米ワクチン被害補償プログラム(VICP)と対策傷害補償プログラム(CICP)という2つのワクチン傷害補償プログラムを運営している。

 VICPは、米国連邦請求裁判所内に設置された無過失責任の特別法廷であり、小児用ワクチン接種プログラムにある16種類の一般的なワクチン被害賠償請求を扱っている。これまでに、数千人のワクチン被害者に対して、医療費、逸失賃金、弁護士費用、痛みと苦しみに対して40億ドル以上の賠償金を支払っている。

 現在、このプログラムはCOVID-19ワクチン被害を対象にしていない。COVID-19ワクチンがこのプログラムに移行された場合、あらゆる健康被害はすでに手一杯のVICPによって処理されることになる。

 現時点でCOVID-19ワクチン被害を対象にした唯一のプログラムであるCICPは、その対応能力がさらに低い、とローデはThe Defenderに語っている。

 「COVID-19ワクチン被害者にとって、CICPは最悪の場所、最悪の選択肢です。それは本当の補償プログラムではなく、医療費の払い戻しプログラムだからです」とローデは言った。

 CICPでは、保険やメディケイドなどの政府プログラムによって十分に払い戻されなかった医療費、死亡、50,000ドルを上限とする賃金の損失に対してのみ補償を請求することができる。

 米国疾病管理予防センター(CDC)によると、CICPのもとでは

「該当者は、一定の合理的かつ必要な医療費および負傷時の雇用収入の損失を補償される場合があります。死亡給付金は、対象となる対抗措置の受益者のうち、対象となる対抗措置による健康被害の直接的な結果として死亡した一定の遺族に支払われる場合があります。

「米国保健福祉省は、最終手段としての支払者です。したがって、支払額は他の第三者支払者の支払額より少なくなります」。

 「ここには痛みも苦しみもない、何もない 」とローデは言った。

 なぜなら、CICPは司法手続きではなく、行政手続きによって請求を審査・解決するため、支払額以外の詳細は一般に公開する必要はないからだ。

 「非常に複雑で、透明性がないように設計されている」とローデは言う。

 CICPは、パンデミック以前から、請求する手順が煩雑で、請求者が成功する可能性が低いことで知られていた。それ以降、CICPの歩みは覚束ない状態を続けている。

 HRSAの数字によると、2010年以降にCICPに提出された1万1941件の請求のうち、1万1000件近くがまだ審査中である。

 HRSAのCOVID-19ワクチン健康被害補償の予算は2023会計年度に約100万ドルから500万ドルに増加し、職員と契約社員の人件費予算は500万ドルから950万ドルに跳ね上がる。


VICPでCOVIDワクチン被害補償はどのようになるか?

 ワクチン被害の請求がCICPではなくVICPで行われるためには、3つの要件が満たされる必要がある:

1. ワクチンが、小児および/または妊婦への定期的な投与が推奨されている必要がある。
2. ワクチンは、法律で物品税が課されていることが必要。
3. 連邦記録で公表される保険適用通知が必要である。

 COVID-19ワクチンは、今年初めに小児用予防接種スケジュールに追加さ れた。しかし、手続きの次の2つの手順はまだ完了しておらず、公衆衛生当局もこれがいつ実現する可能性があるかは明言していない。

 米国科学・工学・医学アカデミーは先月、2時間だけ一般市民から意見を聞く時間を与えた以外は、非公開で3日間会合を開き、COVID-19ワクチンに関連する有害事象に関する疫学的、臨床的、生物学的証拠を検証した。

 この委員会は、「連邦政府ワクチン被害表」に、健康被害を追加するために使用される報告書を作成する予定である。このワクチン被害表は、既存のワクチンに関連する既知の有害事象を一覧にしたものである。

 この一覧は、VICPとCICPがワクチン被害請求の補償を行うかどうかの判断に活用さ れる。

 全米アカデミーの会合で、ジョージ・ワシントン大学ロースクールのワクチン被害訴訟センター長のレニー・ジェントリー教授は、VICPを創設した関係者(ワクチンメーカー、弁護士、保護者)が、申請者に優しく、非公式で寛大で、非対立であるように設定した、と委員会で述べた。

 しかし、そうではなく、HHSはワクチン被害を認めることに「断固として反対」していると彼女は言う。

 「現在のVICPは、その元々の利害関係者には訳の分からない存在になるのでは、と思います」と彼女は語った。

*

ブレンダ・バレッティ博士は、The Defenderの記者である。デューク大学のライティング・プログラムで10年間、資本主義や政治について執筆し、教鞭をとっていた。ノースカロライナ大学チャペルヒル校で人文地理学の博士号を、テキサス大学オースティン校で修士号を取得した。
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英国、国境なき記者団代表のアサンジ訪問を遮る

<記事原文 寺島先生推薦>

British prevent NGO from visiting Assange
Reporters Without Borders representatives were turned away for “spurious reasons,” its director has claimed

「国境なき記者団」の代表者が「不当な理由」で追い返されたと、同団体の代表が主張した。

出典:RT

2023年4月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月24日


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2022年12月16日、ベルリンのパライヤープラッツにある米国大使館前で、「Free Assange」と書かれた横断幕を掲げる活動家。© John MACDOUGALL / AFP Japan


 国境なき記者団(RSF)の幹部2名が、ロンドンの刑務所でウィキリークスの共同創設者ジュリアン・アサンジとの面会を、事前に承認されていたにもかかわらず、禁じられた、と主張した。

 火曜日(4月4日)、RSFは声明の中で、クリストフ・デロワール本部長とレベッカ・ヴィンセント運営部長が、「事前に審査を受け、確認も取っているにもかかわらず」ベルマーシュ刑務所に入ることを許可されなかったと述べた。

 情報の自由を守るための国際的な非営利団体であるRSFは、活動家たちが望んでいたのは、次の二つだと述べた。①アサンジが拘束されている状況を把握し、②彼と彼の事例について話をすること。ただし、アサンジの妻であるステラには、夫との面会が許されていた、と付け加えている。

 RSFによると、活動家たちは実際にはジャーナリストであるという「情報を受け取った」、だから、彼らは刑務所に入ることを許されなかった、と刑務所の職員は主張した、とのことだ。ドロワールは、この「恣意的な」決定は、直前になって「根拠のない理由」でなされたものであると批判した。

 同団体は、2人がジャーナリストとしてではなく、NGOの一員としてウィキリークスの共同創設者(アサンジ)を訪問しようとしていたと主張した。

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関連記事:CIAによるアサンジへの監視方法が明らかに


 ヴィンセントは、「あらゆる段階において、英国当局はこの事件に関する通常の関与を認めるのではなく、秘密主義と排除を既定路線としている・・・彼らは何を隠す必要があるのだろうか? とはいえ、私たちは「アサンジを解放せよ(#FreeAssange)を目指す運動を引き続き継続する」と述べた。

 オーストラリア出身の発行人であるアサンジは、2010年にウィキリークスがイラクとアフガニスタンの紛争で、米軍が犯した戦争犯罪の疑いを明らかにする機密文書の数々を公開して以来、米国の標的となっている。彼は、ペンタゴンのコンピュータへの乗っ取り行為を共謀したとして告発され、機密文書の公開をめぐってアメリカの1917年のスパイ活動法の下で起訴されている。

 2012年から2019年まで、アサンジはロンドンのエクアドル大使館に避難していた。エクアドル政府によって亡命資格が取り消された後、アサンジは保安体制が最強段階であるベルマーシュ刑務所に移送された。英国から米国への身柄引き渡しの可能性をめぐる法廷闘争が続いている。もし米国へ引き渡されれば、最大175年の刑の言い渡しに直面することになる。
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元CIA長官が暴露―2020年選挙におけるバイデン陣営による情報操作の取り組み

<記事原文 寺島先生推薦>

Former CIA head reveals efforts to help Biden win 2020 election
Dozens of former intelligence officials penned a letter falsely claiming the Hunter Biden laptop story was likely “Russian disinformation”

数十人の元情報当局者が、ハンター・バイデンのノートパソコンの話は「ロシアの偽情報」の可能性が高いと虚偽の書簡を書いた。

2023年4月21日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月24日

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2016年4月13日、バージニア州ラングレーのCIA本部。中央情報局(CIA)の印章が見える。© AP / キャロライン・カスター


 元CIA長官代理のマイク・モレルの証言によると、2020年の米国選挙に向けてのジョー・バイデンの大統領選挙運動が、ある公開書簡の作成に一役買っていたとのことだ。この書簡は、大統領の息子に関する正当な報道を信用させないことを目的としたもので、51人の元諜報関係者が署名している。

 公聴会を知る共和党議員によると、下院司法委員会での最近の非公開の証言で、モレルは、2020年10月にニューヨーク・ポスト紙に載ったハンター・バイデンによる海外ビジネス取引に関する批判報道について、アントニー・ブリンケン(現国務長官、当時バイデンの上級選挙運動員)が彼に接触してきたことを認めた。

 USA Today紙にFBIがハンター・バイデンの記事が「偽情報キャンペーン」の一部であるかどうかを調査していると主張しているものがあるが、ブリンケンはその記事をモレルにメールしたと言われている。

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 モレルは、この議論をきっかけに、ハンター・バイデンの報道には「ロシアの情報操作の典型的な特徴」があるとする情報当局者の公開書簡を作成したと述べた。その後の調査で、この報道はバイデンの息子のノートパソコンから入手した本物の文書に基づいていたことが判明するが、この書簡は、5人の元CIA長官やその他多数の元高官によって支持され、2020年の大統領選を前に大きな影響力を持つこととなった。

 モレルは、ブリンケンと接触する前には書簡をまとめる計画がなかったことを認めたが、「バイデン副大統領を助けたい...選挙に勝ってほしいからだ」と付け加えた。この書簡が掲載のためにポリティコに渡された後、バイデン陣営のスティーブ・リチェッティ委員長はモレルに電話をかけ、手紙を作成したことに感謝したと元職員は続ける。

 バイデンはその後、2020年10月22日に行われたドナルド・トランプ大統領(当時)との討論会でこの公開書簡を引用し、息子が海外で政治的な影響力の売買に関与しているという正当な主張を退けるのに役立てた。

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関連記事:バイデン一家のもう一人(義理の娘)も外国の現金を持ち出していた―報告書


 共和党の議員たちは、モレルの証言を受けて回答を求めており、下院司法委員会のジム・ジョーダン委員長と下院情報委員会のマイク・ターナー委員長は、ブリンケンにさらなる情報を求める書簡を書き送った。

 「バイデン陣営が公開書簡の情報源に積極的な役割を果たしたことは明らかであり、ハンター・バイデンの実際の行動を示す情報を封印し、アメリカ市民が2020年の大統領選挙中に十分な情報に基づいた判断をすることを妨げる効果があった」と彼らは声明で述べている。

 複数のソーシャルメディアは、ハンター・バイデンのラップトップに関する話が出ないように前例のない措置をとり、ツイッターは、ユーザーがダイレクトメッセージで関連内容を共有することを禁止するまでになった。ジョー・バイデンの選挙運動は当時、Twitterやその他のプラットフォームと密接に連絡を取り合い、いくつかの投稿に削除のフラグを立てていたが、ラップトップの話を葬るよう明確に各サイトに促したかどうかは不明である。
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アサンジを中傷し、国民の知る権利を否定するカナダの旧来の報道機関

<記事原文 寺島先生推薦>

Canada’s Legacy Press Smears Assange to Deny the Public’s Right to Know

筆者:ピーター・ビースターフェルト (Peter Biesterfeld)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年4月6日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月23日

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映画「イタカ」(@IthakaMovie)。オンタリオ州トロントでの「イタカ」上映後カメラに納まる、「ジュリアン・アサンジを解放しろ!」の唱道者たちとシプトン夫妻。


 「死の連鎖」は今日のカナダの既成ジャーナリズムの状況を適切に表現している。今日のカナダの既成ジャーナリズムは、国際情勢についてカナダのニュース消費者に誤った情報を与え、グローバルな主体としてのカナダの真の役割について信頼できる洞察と理解をもたらすことができていないのだから。


伝達者の殺害

 「もし嘘が戦争を始めることができるのなら、真実は平和を始めることができる」。 ジュリアン・アサンジ

 ウィキリークス発行人のジュリアン・アサンジは、2011年にロンドンのトラファルガー広場で行われた戦争阻止連合のデモで演説し、イラク戦争とアフガン戦争における報道の共謀について辛らつな発言をした。

 「戦争犯罪者は誰なのか?」とアサンジは問いかけた。「指導者だけでなく、メディアもそうだ。加担しているメディアに問おう、各ジャーナリストの平均死者数は?」

 それから10年以上が経ち、既存のジャーナリストたちは、ウクライナでの戦争の激化を助長することに、足並みを揃えて、加担している。

 カナダの報道機関が、ジャーナリズムの危機に瀕していることを示す唾棄すべき証拠は、現代の報道の自由に関する事例についての報道がほとんどないことだ。

 ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジは、「強欲な権力」について、不都合で気持ちを落ち着かせない真実を公表した。そのために迫害されたことは、カナダの報道機関ではほとんど注目されなかった。

 これまで報道されたわずかな記事から、明らかになったことは、「最も信頼できる」有名通信社で働くカナダのジャーナリストや編集者が、きわめてお粗末な情報しか持たず、アサンジとウィキリークスに対して、梃子でも動かない偏見を抱いていること、だ。

 2019年秋のアサンジの身柄引き渡しの予備審問の後、本記事の筆者(私)はカナダメディアの報道の少なさについて、注目に値するある報道機関に論説を送った。編集者は、私の原稿に変更を加えるよう指示を出した。それは、この編集者(女性)の偏見だけでなく、無知も裏付けるものだった:

「アサンジは多くの点で共感できる人物ではない 」と彼女は電子メールで書いている。「彼は(スウェーデンで)性的暴行とレイプの容疑を受けている。米国の選挙へのロシアの干渉への関与や民主主義との関連、それはこの論説の中で取り上げられる必要があると思う。 カナダ(や他の国)の主要ニュースが引き渡し公聴会を、記事として取り上げないのは、それ(アサンジの「不祥事」)が有力な理由として考えられるのは確かだ」。

 国際人権弁護士ニルス・メルツァーは、350ページにわたる調査報告書『ジュリアン・アサンジの裁判:迫害物語』(2022)の中で、スウェーデンと英国がアサンジに対して仕掛けた法制度の詳細を明らかにしている:

「スウェーデン当局は、無罪となる証拠となるものを意図的に隠すことで、スウェーデンの司法手続法に定められた、アサンジの手続上の権利を侵害しただけでなく、レイプ疑惑を積極的に広めたことと合わせて、冤罪という犯罪行為さえ行ったかもしれない」。

 レイプの容疑はなかったし、アサンジが「ロシアの干渉」に関与しているという証拠もなかった。後者は、独立した報道機関によって論破された主流メディアの作り話である。

 筆者(私)が編集者に、このことを説明すると、彼女は「でも、アサンジはジャーナリストではありませんよ。彼はハッカーなんです」。ウィキリークスとアサンジが長年にわたって受賞したジャーナリズム賞の長いリストを彼女に説明すると、どうやら彼女の懐疑は払拭されたようで、私の投稿は論説から編集者への手紙に格下げされたものの、掲載された。

 ニルス・メルツァーは、拷問に関する国連報告者としての立場にあったとき、2018年にアサンジの弁護士から、英国当局の手によるアサンジの扱いを調査するよう、初めて依頼された。メルツァーは、アサンジに関する公式の説明を耳にして、窮地に立たされたウィキリークスに関していい意見は持てなかった。そのため、依頼は拒否した。

 「ここ数年、ほとんど無意識に吸収していた主流メディアの見出しの数々に、私はまだ影響を受けていました: スウェーデン当局への出頭を拒む臆病な強姦魔アサンジ。ハッカーでありスパイであるアサンジは、エクアドル大使館で司法から逃れている。冷酷なナルシストであり、裏切り者であり、ろくでなしであるアサンジ。などなど」。

 『ジュリアン・アサンジの裁判』でメルツァーが書いていること:

「私は、偏見によって自分の認識がいかに歪んでいたかに、後になって気づいた。多くの人がそうであるように、私も彼についての真実を知っていると確信していた。しかし、その知識がどこから来たのかよく覚えていなかった。公式見解は、私を含む世論を、いいように振り回したのだ」。

 「アサンジ-ウィキリークス」ファイルについての、公式見解やメディアの繰り返し報道に何年もさらされた後、カナダの主流メディアの記者たちは、クリス・ヘッジスが「死の連鎖」と呼ぶジャーナリズムを生み出している。主要な報道の多くが虚偽、誤導、あるいは証拠なしであることが公の記録で示されているにもかかわらず、そのどれもが撤回されたり訂正されたりしていない。

 故クリスティー・ブラッチフォードが2019年4月16日にナショナルポスト紙に発表した「ジュリアン・アサンジはジャーナリストではない、そして彼は適正な法的手続きを受けている。それは十分すぎるほどだ」というタイトルの、事実無根のアサンジ中傷は、今もポストの意見欄で読める。 ブラッチフォードは、あるガーディアンのジャーナリストを引用して、まるで「あの世から」のように、アサンジをめぐって不気味に宣告している:「アサンジはサイコパス(反社会性パーソナリティ障害者)たちに喜んで死のリストを送った」。

 ブラッチフォードを取り上げた理由は、3年後、トロント・スター紙のコラムニスト、ロージー・ディマンノが、ジュリアン・アサンジについて、ブラッチ(彼女の同僚は彼女をこう呼んでいた)からインスピレーションを得て、同様に正気を失った意見を書いたようだからだ。

 見出しは「ジュリアン・アサンジは、データにきちんとした配慮をしないだけで、英雄ではない」となっており、ディマンノの意見はジャーナリズムというより中傷に近い:

「ひどいナルシスト・・・人の命を軽んじ、友人をひどく失望させ、かつての仲間を遠ざけている。自己顕示欲が強く、道徳心がない」。

 ディマンノは、お決まりのアサンジの中傷を繰り返し、国が承認した、しかし全く誤った主張を鸚鵡返しにして、我々の世代で最も重大な報道の自由の事例について、彼女の無知を暴露するだけでなく、スター編集委員会の無知もさらけ出している。どうやら、「どうしてこれが真実だとわかるのか」と問うことを考えた論説委員はいなかったようだ。

 ディマンノは書いている:

「戦闘戦略を暴露したデータに対する彼の不見識は、米国とその同盟国に命がけで情報を提供した何千人もの軍隊と何百人もの脆弱な外国人の命を危険にさらした・・・彼らの名前は暴露した資料から決して削除されることはなかったのだ」。

 8年前のガーディアン紙は、イラク戦争のファイルをウィキリークスに流した内部告発者ブラッドリー・マニング(当時)の軍法会議について、まったく逆の報道をした:

「国防総省を代表して、ウィキリークスの情報公開の影響を調査する情報審査特別部隊を率いる防諜上級将校のロバート・カー准将は、メリーランド州フォートミードの法廷で、インターネットでの情報公開後の報復で、命を落とした人の具体例を発見していないことを明らかにした」。

 ウィキリークスの発表に取り組んだジャーナリストを含む専門家証人は、2020年秋のアサンジの身柄引き渡し公聴会で、実際にアサンジは「データに関して無思慮な扱い」はしていなかった、と証言している。

 2010年にウィキリークスが公開した文書のメディア内協力者であるデア・シュピーゲル誌で働くアメリカ人ジャーナリストのジョン・ゲッツは、ウィキリークスが先頭に立って 「非常に厳格な編集作業」を行った、と証言している。ゲッツは、アサンジが「この膨大な文書の中から(特定の)名前を見つけようとする技術的な側面に無関心ではなかった」と法廷で語り、「私たちがその名前を修正して、公表されないようにし、彼らが傷つくことがないようにした」と述べた。

 アサンジの身柄引き渡しの公聴会について、カナダの主要報道番組でバランスの取れた報道を見つけるのは困難だった。見つかったとしても、中傷が含まれ、米国政府の国家安全保障部門CIA、FBI、司法省、国務長官、国土安全保障省といった、一連の組織が提示する話から逸脱する内容はほとんどなかった。

 ジョン・ピルジャーは、アサンジの公聴会に対するメディアの無関心は世界的なものだという:

「アサンジ裁判が世紀の政治裁判であるならば(私はそうだと思う)、その結果は、自分の仕事をしたジャーナリスト(アサンジ)の運命を封じるだけでなく、自由なジャーナリズムと言論の自由の原則そのものを脅かすことになるだろう。この裁判について主流メディアが真剣な報道をしないことは、どう少なく見積もっても、自滅的である」。

 日刊紙「イル ファット クオティディアーノ(日々の事実)」のイタリア人ジャーナリストであるステファニア・マウリツィは、メディア内協力者として、ウィキリークスのすべての公表に取り組んだ。マウリツィはアサンジの公聴会で、イラク戦争記録について、ウィキリークスは米国政府よりも多くの編集を行い、被害を最小限に抑えるために15000の文書を差し控えていたと証言している。

 13年にわたるアサンジ事件の調査研究の末、マウリツィは、彼の著書 『秘密の権力:ウィキリークスとその敵対勢力』 (2022年)において、情報の自由への、彼女なりの取り組みの結果をまとめた。これは「アサンジの迫害に関する最も詳細な記述」である。

 マウリツィは、また、スウェーデン、英国、米国、そしてオーストラリアとの間で、情報の個人的自由の戦争を戦ってきた。アサンジに対する性的暴行疑惑がなぜ予備段階で長く引き延ばされたのか、その真相に迫ろうとしたのだ。彼は同書で、4カ国の検察当局間の捜査資料や書簡に基づき、英国検察庁(CPS)とスウェーデン検察が結託してアサンジの迫害と投獄を長引かせたことを明らかにしている。

 このマウリツィの著書は、非の打ち所がないほど研究された資料であり、主流メディアで働く記者によって報道されることのなかった現代の法廷闘争を政治的に告発するものである。マウリツィは、アサンジとウィキリークスに対する既存の報道について、あまり良いことは言っていない。

 マウリツィはベルリンの月刊誌「エクスバーライナー」に、「アサンジの件を取材する記者たちは、当局の申告を鵜呑みにすることしか考えていなかった。どのメディアも、彼に関する文書一式に接触しようとはしていない。これはジャーナリズムの信じられない失敗である」と語った。

 証明されていない主張を無批判に報道し、アサンジについて公式情報源が行った中傷を反復することは、ジャーナリズムがよくやる詐欺行為だ。カナダのジャーナリストの一部は、それを後悔し始めている。

 ポッドキャスト「Short Cuts」のエピソード#291で、CANADALANDの出版社ジェシー・ブラウンが、共同ホストのジェン・ガーソンとアサンジの件について議論していた。「技術ジャーナリストとしてMacleansに書いていた時や、Search Engineという番組で、私はアサンジを壮大なロバと呼んだ。彼がロシアの国営放送スプートニクの番組に出ていたとき、私は彼を名声娼婦と呼んだ。衛生状態の悪いアルビノ*の遊牧民と呼んだよ。クリスティー・ブラッチフォードと一緒にね」。
* 先天性白皮症

 ガーソンは、資料の不透明な理解とともに、自分の偏った考えを漏らしている。「彼がロシアの宣伝機関を運営していたことも認識しよう。そのことは、当時彼が受けた個人的な攻撃よりも、今日の問題により適切であると私には思える」。

 Googleで2回クリックするだけで、アサンジがロシア・トゥデイ(RT)のインタビュー番組「The World Tomorrow」を独自に制作し、RTから放送の許諾を得ていることがわかる。

 ブラウンとガーソンの最後のやりとりは、言わば茶番劇のようなものだ。

ジェシー・ブラウン:では、我々は彼を仲間だと言うのか? 彼が本質的に政治犯であれば、我々は彼のために立ち上がるのだろうか? チェルシー・マニングのような情報源があれば、どんな主流メディアの記者でもしたであろうことに対して、政府は彼を追いかけているのです。彼が引き起こした困惑と、同じことをする可能性のある人への警告として、彼を追いかけているのです。私はここで、自分自身の後悔の念から自分を掘り起こそうとしています。彼を個人的に非難する動きがあったことは知っていますし、それが私に影響を与え、私の取材に影響を与えたのだと思います。

ジェン・ガーソン:彼の人格に焦点を当てたキャンペーンは不適切だったと思います。しかし、彼を自分たちの仲間だと主張するかどうかという質問については、おそらく枠組みが違っているのでしょう。政府はスパイ防止法の下で身柄を引き渡そうとしている、と言うのが妥当でしょう。ジャーナリストとしての我々の義務は権力に真実を語ることだ、と言うのも一つの考え方ですが、権力に真実を語ることで、別の権力に奉仕しているに過ぎないのであれば、それは空虚なものになり始めます。アサンジは、ここからが本当に複雑なんです。個人攻撃ではなく、アメリカの国家安全保障を脅かすという明確な意図のもと、ロシアと協調して行動していた度合いについてです。それは、ほとんどのジャーナリストが自分たちと関わりを持とうとする範囲をはるかに超えています。

 アサンジと他のウィキリークス・ジャーナリストが、自分たちの問題としてやったのは、権力者の腐敗した人々がどのように秘密のビジネスを行い、なぜそうなるのかを一般に知らしめた、真実の情報を開示する驚くべき完璧な記録の作成だった。

 ガーソンやブラウンのようなジャーナリストが、真実とかけ離れた言説をまき散らしているのに、誰がプロパガンダなど必要とするのだろうか? アサンジ/ウィキリークスの件でカナダのニュース消費者がもっと必要としているのは、緑の党の指導者候補(2020年)ディミトリ・ラスカリスのような独立した著名なジャーナリストの声だ:

「ジュリアン・アサンジのケースは、正義と民主主義の目的にとって本物のジャーナリズムが根源的に重要であることを思い起こさせます。ジュリアン・アサンジが世界で最も強力な資本家と帝国主義者によって迫害されているのは、まさに、彼が彼らの犯罪を、恐れずに暴露したからです」。

 アサンジとウィキリークスに関するプロパガンダや誤報を払拭することが、24日にトロントの Hot Docs Cinemaで上映された2021年のドキュメンタリー映画「Ithaka」の目的である。ベン・ローレンスが監督し、アサンジの弟ジュリアン・シプトンが製作したこの作品は、「マスメディアによって形成されたアサンジの描写を正すために、たゆまぬ努力を続けている」とPOV誌のレビューでパット・マレンが書いている。

 このドキュメンタリーの徹底した上映予定と、映画上映後の地元の観客との討論や情報交換は、キャンペーンの成功に不可欠なものである。『Ithaka』の25回の上映を終え、後半25回の上映を控えたジョン、ガブリエル・シプトン夫妻は、HotDocsでの講演の前日、カナダ・ファイルズの取材に応じ、このドキュメンタリー・ツアーが、アサンジの苦境だけでなく、公共の利益のためのジャーナリズムに対する差し迫った脅威に対する認識を高めるための大きなキャンペーンの一部であることについて話した。イギリス、フランス、ドイツ、そしてオーストラリアに続き、シプトン夫妻は北米で 『Ithaka』 を上映する。カナダはトロントだけになる。

 「昨夜はマサチューセッツで上映会を行いましたが、100人以上の観客が集まり、前夜は200人以上でした」とガブリエルは語る。「今、観客が集まっているのを見ると、勢いを感じるし、この問題やジュリアンの事件で、実際に何が問題になっているのかについてもっと聞きたい、という人々の真の渇望を見ることができます。そして、その認知度は高まっていると思います」。

 ジョン・シプトンは、ヨーロッパの聴衆がアサンジの身柄引き渡し事件における人権侵害や適正手続きの欠如、法律違反に最も関心を寄せているのに対し、アメリカ人はアサンジがスパイ防止法に基づき有罪判決を受けることで、修正第1条の終焉と権利の喪失を意味すること懸念している、と述べた。

 ジュリアン・アサンジと米国の安全保障国家との長年にわたる戦いの結果をカナダ人が懸念すべき理由を尋ねられたジョン・シプトンは、次のように答えた:

「私たちが若かった頃、世界を安全に回るには、リュックにメイプルリーフ*を縫い付けておくことだったんです。でも、それはもうない。アメリカとは違うカナダという国の良さを感じていただけに、残念でなりません。ワシントンが不機嫌な夜に作った考えの奴隷になるのは、カナダにとって本当に良くないことです。ワシントンはそれをカナダに送りつけてきます。私たちはそれを防御することはできません。
* カナダの国旗のこと。その中央にサトウカエデの葉があしらわれている。

 私たちは、家族が一緒になってメンバーを守る能力、そして地域社会や家族、国家がまともな理解を持つ能力を、原則として、擁護します。そして、私たちはアサンジについても、国家の知性の集合体が、その国家の独立のため、その欲求を満たすための戦略的資産であることを理解しています。例えば、トラック運転手の支援とその感性、トラック運転手に共感すること、カナダで現在行われている調査によって、政府の弾圧のために緊急事態法が歪められたことが明らかになったこと、そういった事情を理解している人々が、アサンジの件に影響していくのだろうと、私は想像しています」。

 ガブリエル・シプトンは、カナダの聴衆に次のことを思い起こさせている:

「本当に危機に瀕しているのは、米国から発信される機密情報を使って国家安全保障を報道するジャーナリストの能力です。また、米国の同盟国やどの国のジャーナリストも、前例のないスパイ防止法の訴追により無期限で刑務所に入れられるという、地域的な要素もあるのです。カナダのジャーナリストや出版社がこのようなことから安全であることはなく、ジュリアンについて言われていることは、世界中の誰にでも適用できる、ということです」。

 「Ithaka」を巡回上映することは、啓発活動に弾みをつけることだと、彼は言っている:

「この映画は、ジュリアンの迫害をめぐる事実にあまり関わってこなかった人々にとって、本当に良い入り口だと思う。ほとんどの人は、ジュリアンの迫害について理解していないのです。このような中傷を広めることに取り組んでいるジャーナリストたちがいるのですから。一般的に、ほとんどの人は、この問題に関心を持ち、事実とこの事件で何が問題になっているのかを理解し、私たちの側につくと思うんです。そのためには、重要な情報を人々に伝える必要があるのです。この映画とツアーは、そのための一つの方法なのです」。

 2023年3月24日、映画上映後の質疑応答の後、100人を超えるHotDocsの観客は散会し、シプトン夫妻は、質問者や地元の「アサンジを解放せよ」擁護者と気軽に交流した。CBCや米国領事館の歩道に、何年も前から「報道の自由」と「アサンジを解放せよ」のメッセージをチョークで書いているシャーロット・シースビー=コールマンは、この夜を振り返った:

「ジュリアン擁護を支持しつつも、この事件の概要しか知らない、私の3人の友人を招待したのですが、事実を知った彼らの、信じられない!という反応は、この映画が一般の人々を教育し、意識を高めるための重要な武器であることを物語っています。できれば、より多くのメディア関係者にも広めたい」。

 シースビー・コールマンのアサンジ支援グループは、アサンジがロンドンのベルマーシュ厳重警備刑務所に収監されてから4周年を迎える4月11日に開催される世界的な行動日に参加する予定だ。


ジャーナリズムの指標

 「ウィキリークスは、世界で最も迫害されている文書を集めた巨大な図書館です。私たちはこれらの文書に保護を与え、分析し、宣伝し、もっと資料を入手するのです。」 ―ジュリアン・アサンジ、シュピーゲル誌のインタビュー

 ウィキリークスは、2007年以来、公益報道を大量に提供してきた。そのほとんどは、政府の嘘、そして、政府、機関、国際企業などによって行われた虐待や犯罪に関するものである。CBCのアーカイブからの一例だ:

「カナダが2003年の米国主導のイラク侵攻への参加を公式に拒否した同じ日、カナダの高官は、激しく物議を醸したこの作戦への秘密軍事支援を米国に密約していた」と、ウィキリークスが公開した外交メモに基づき、CBCのある記事で 2011年、グレッグ・ウェストンが報告している。

 グレッグ・ウェストンの情報源は、マニングがウィキリークスに流出させた1966年から2010年までの外交公電251,287件のウィキリークス・ライブラリーである。独立系ニュースのactivismMunichは最近、The Public Library of US Diplomacy(米国外交の公的図書館)に収められた一連の電報を掲載し、米国とヨーロッパの同盟国が10年以上前にウクライナでの紛争の可能性をどの程度知っていたかを示している。

 ジョージ・ブッシュの駐ロシア大使、現CIA長官のウィリアム・バーンズは、2008年2月1日付でこんな予言的な要約を書いている:

「ブカレスト・サミット(参考A)でウクライナがNATO加盟行動計画(MAP)を求める意向を示したことに対し、最初の反応は穏やかだったが、ラブロフ外相と他の高官は強い反対を繰り返し、ロシアはさらなる東方拡大を潜在的軍事脅威とみなすと強調した。NATOの拡大、特にウクライナへの拡大は、ロシアにとって「感情を揺さぶる、神経を逆なでする」問題であるが、ウクライナとジョージアのNATO加盟に強く反対する背景には、戦略的な政策的配慮がある。ウクライナでは、この問題が国を二分し、暴力や内戦に発展する可能性があり、そうなればロシアは介入するかどうかを決めなければならなくなるとの懸念がある」。

 ブッシュ政権下の米国国連大使で、後にドナルド・トランプのウクライナ担当特別代表となったカート・フォルカーは、「フォルカー、NATOについてカナダ人と相談」と題した外交メモ(2008年6月9日)に、オタワ訪問の概要を書いている。一部抜粋して紹介する:

・ オタワは、ロシアのさまざまな「挑戦」に立ち向かう努力において米国と協力し、ウクライナとジョージアにMAPを提供し、NATOの政策を「役に立たない」方向に誘導しようとするドイツの努力に対抗することを望んでいる。
・ (カナダ首相)ハーパーは、イタリア、ドイツ、フランス、そしてイギリスの担当者に、ウクライナとジョージアへのMAP(NATO加盟行動計画)の早期延長を迫ったと、(外交・防衛政策顧問代理)シンクレアが述べた。カナダの結論は、MAPは「ウクライナにとって必須であるが、ジョージアも同様である」ということである。
• 2008年6月6日付の別の電報では、ドイツの外交官ノーマン・ヴァルターとロルフ・ニケルが、米国のデイヴィッド・メルケルに「NATO加盟の問題で世論が激しく分かれているウクライナでMAPがあまりにも早く進めば、国が不安定になり『分裂』する恐れがある」という懸念を示した。

 ウィキリークスの公開資料は、一次資料の宝庫であり、記者や学者が今後何年も採掘することになる公共情報サービスである。

 「ウィキリークスは、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストといった名だたる新聞社が成し遂げたことをはるかに凌駕している」とジョン・ピルジャーは書いている。「アサンジと(NSA*の内部告発者)スノーデンが開示した権力の秘密と嘘に迫る新聞は存在しない。二人が国外に逃亡していることは、自由民主主義国が自由と正義の原則から後退していることを示している。なぜウィキリークスがジャーナリズムの画期的な存在なのか? その暴露情報は、世界の多くがどのように、そしてなぜ分断され、運営されているかを100%の正確さで教えてくれたからだ。」―ジョン・ピルジャー:『新冷戦&迫り来る脅威』、インド「フロントライン」(2018年12月21日)
* 米国国家安全保障局


死の連鎖

 「ひとたび事実が意見と交換可能になり、ひとたび真実がどうでもよくなり、ひとたび人々が聞きたいことだけを聞かされるようになれば、ジャーナリズムはジャーナリズムでなくなり、プロパガンダになる」。 クリス・ヘッジス

 元ニューヨーク・タイムズ記者のクリス・ヘッジスは、ドナルド・トランプの当選を助ける目的でロシアとウィキリークスが2016年の米国選挙に干渉したとされるスキャンダル、いわゆる「ロシアゲート」報道の分析において、「米国ジャーナリズムの死の連鎖」に言及している。

 ヘッジスは、TwitterのCEOであるイーロン・マスクが、2022年10月にTwitterを440億ドルで買収した後、公開した内部文書「Twitter Files」に基づいて、不気味な主張をしている。ジャーナリストのマット・タイビとバリ・ワイスが、Twitterの一連のスレッドとして文書の詳細の公開を共同で調整している、というのだ。

 2019年にアーロン・メイトによって初めて論破されたロシアゲートは、「タイタニック詐欺」であることが確認された。Fox Newsの司会者タッカー・カールソンのような影響力のある保守的なジャーナリストたちでさえ、ロシアゲートの「報道」が、ウクライナ紛争に至ったロシア嫌いの風潮に少なからず関連があることを報告している。

 タイビなどが、これまでツイッターファイルでさらけ出したのは、「説明責任を果たさない情報当局や 政党系の工作員が、ソーシャルメディア上で一般の人々が見たり閲覧したりすることができるものに影響を与える上で、きわめて大きな役割を果たしている」ことだ。

 タイビは9日に行われた下院司法委員会での証言で、次のように述べている:

「インターネットの最初の期待は、世界的な情報交換を民主化することでした。自由なインターネットは、情報の流れを管理しようとするあらゆる試みを圧倒し、その存在そのものが、どこでも反民主的な形態の政府にとって脅威となるのです。

 私たちが『ファイル』で見つけたのは、その期待を覆し、機械学習やその他の手段を使って、インターネットを検閲や社会統制の道具に変えようとする徹底した取り組みでした。残念ながら、我々の政府はその主役を演じているように見えます」。

 カナダのマスコミは、外交問題やジュリアン・アサンジに関する報道の多くで、ロシアゲートのシナリオに大きく依存し続けているため、今日までツイッターファイルの事後の分析は行われていない。実際、カナダの主流メディアを利用するニュース消費者は、ツイッターファイルやロシアゲートについて触れることは難しく、ましてや「不確かなゴシップを事実として報道されてきた4年間」に対する悔恨の念を抱くことはないだろう。

 ヘッジスは、「何千もの虚偽の記事や報道を作り出した主要な報道機関は、真剣な事後調査を拒否している」と書いている」。

 「死の連鎖」は、今日のカナダの既成ジャーナリズムの状況を適切に表現するものである。それは、国際情勢についてカナダのニュース消費者に誤った情報を与え、世界的な行動者としてのカナダの真の役割について信頼できる洞察と理解をもたらすことができないジャーナリズムである。

 ジョン・ピルジャーは、半世紀にわたる経歴の中で、自らの軌跡を振り返り、公的機関としてのジャーナリズムの衰退を説明しようとした:

「私がジャーナリストとして、特に海外特派員として活動を始めた頃、英国の報道は現在と同様、保守的で強力な体制勢力に所有されていた。しかし、今と違うのは、権威ある既成の「知恵」に異を唱える独立したジャーナリズムの余地があったということだ。その余地は今やすべて閉ざされ、独立したジャーナリストはインターネットや、いわば地下に潜るようになった。」 ジョン・ピルジャー「真のジャーナリストは権力ではなく人々の代理人として行動する」 デイリー・スター紙(バングラデシュ) (2019/1/16)

 世界の平和は、カナダを含む好戦的な米国と連携する「集団的西側」に包囲されつつある。カナダの外交政策は、米国と同じ命題、すなわち無限の資本成長とグローバリゼーションによって導かれている。そして、カナダの報道機関は、資本主義-帝国主義のレンズを通して、それに従って報道している。

 I.F.ストーンの反戦ジャーナリズムの原則は、カナダのジャーナリストによって放棄されている。かつては支持されることがあったにしても。その原則は、次のような形で、何回でも繰り返し語られている: 「見たままの真実を書くこと、強者から弱者を守ること、正義のために戦うこと、人間の恐ろしい憎しみや恐怖に癒しの視点をもたらすこと、そしていつの日か、人間がそのために殺し合うのではなく、人間の庭の違いを楽しむ世界を実現することを願っている」。

 ストーンの今日のヘッドラインにおける問題の予見は、不気味なほどであり、国家の問題について、真実を知る国民の権利のためのジャーナリズムと、国家権力3権との間の闘いにあまり変化がないことを示すものである。

 ストーンは1966年にこう書いている: 「国家安全保障の名の下に真実を抑圧することは、我々が守ろうとしているものを損なう最も確実な方法である。ラテン語の法格言に「Justitia fiat, ruat coelum」というのがある: 天が降ってきても正義が行われるように。私はこれを新聞記者のために言い換えて、こう言いたい:我々が見るままに、真実に語らせよう。政府高官たちが、そんなことをすれば、天が我々の頭上に落ちてくるぞ、と言ったとしても。

 カナダの国家安全保障が約50年後にどのように脅かされているのかを知るには、CSIS*が主導する中国系カナダ人政治家に対する最新のメディアによる中傷は必見だ。
* 戦略国際問題研究所。Center for Strategic and International Studies。米国ワシントンD.C.に本部を置くシンクタンク。

 カナダのグローバル問題や外交政策の記者によるジャーナリズムの不正行為に関するこのシリーズの次回は、中国系カナダ人の政治家が中国から指示を受けてカナダの選挙に介入しているというCSISの疑惑を、カナダの既成メディアがどのように報道しているかを分析する。

________________________________________
 ピーター・ビースターフェルドがThe Canada Filesに寄稿したシリーズの第3弾:事実には破壊的な力がある。反戦・反帝国主義ジャーナリズムの事例。カナダの主要メディアが、外交政策報道で、いかにカナダ人を失望させているか、に焦点を当てている。
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「閲覧注意の警告」がついたアメリカの古典的な小説

<記事原文 寺島先生推薦>

Classic American novel slapped with ‘trigger warning’

‘Gone with the Wind’ now begins with a cautionary note and a lengthy condemnation of “white supremacy”

『風と共に去りぬ』には、注意書きと長文の「白人至上主義」批判が添えられる

出典:RT

2023年4月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月22日

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「風と共に去りぬ」の1場面に登場する女優のヴィヴィアン・リーとハティ・マクダニエル(1939年) © Flickr


 日曜日(4月2日)のテレグラフ紙の報道によると、『風と共に去りぬ』の最新の復刻版は、出版社から「問題あり」「有害」と決めつけられている。この出版社は、文章そのものを編集するのではなく、知識人を雇い、この古典的恋愛小説に、人種差別の悪に関する但し書きを前置きしたのだ。

 1936年にマーガレット・ミッチェルによって書かれた『風と共に去りぬ』は、ジョージア州の農園主の娘であるスカーレット・オハラと、社交的で、南軍兵士としては消極的なレット・バトラー大佐のラブ・ストーリーを、ヤンキー(北部人)による南部征服という背景のもとで描いている。


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 この本とそれに続くハリウッドでの映画化は、奴隷を所有していた南部の大義を、甘美的に表現していると長い間非難されており、HBO Maxは2020年にこの映画を視聴可能作品群から撤去した。また、この小説の最新の再版は、出版社のパン・マクミラン社によって原文のままで出版されたが、代わりに「閲覧注意」という警告文が表紙に添えられている、とテレグラフ紙は報じている。

 その警告文には、 「この小説が書かれた当時に流行していた、この小説の時代背景を忠実に再現した、人を傷つける、あるいは実際に有害な表現・用語があるかもしれないことを読者に警告したい」とあり、出版社がこのような差別的な表現を削除しないことは「このような表現を推奨する意図があるという意味ではない」とも書き添えられている。

 このような表現を但し書きとして使用するのは、ロアルド・ダールの童話から "fat "や "ugly "といった軽度の攻撃的な言葉を削除したパフィン・ブックス(Puffin Book)社のように、強引な編集や書き換えに頼らずに古典作品を再発行しようとする出版社の典型である。イアン・フレミングのジェームズ・ボンド小説の出版社は、今月の再販に先立ち、「n*****r」のような人種的中傷用語は削除し、女性や同性愛者に対する不快な描写はそのまま残すという中間の立場をとった。


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 しかし、パン・マクミラン社は閲覧注意警告よりさらに踏み込んだ。 『風と共に去りぬ』では、警告の後に、イギリスの小説家フィリッパ・グレゴリーの文章が加わり、この物語は「人種差別を擁護」し「白人至上主義を美化している」と断定している。

 「この小説は、アフリカの人々は白人と同じ種族ではない、ということを明確に語っている」とグレゴリーは付け加える。

 グレゴリーは白人でイギリス人だ。パン・マクミラン社は、彼女がこの文章の執筆に選ばれた理由を、「少数派の背景を持つ作家が、多数派を教育する責任を負うという人々の感情に訴えるような文章を書くという労苦を求められることがあってはならない、と考えたからです」と述べている。

 『風と共に去りぬ』は、その主題や表現に何十年も手を焼いてきたにもかかわらず、世界中で3千万部以上売れた、史上最も人気のある本のひとつだ。
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日本には新しい防空壕が必要―与党議員

<記事原文 寺島先生推薦>

Japan needs new bomb shelters – ruling party MP

The nation can no longer take peace for granted, Keiji Furuya has said

日本ではもはや平和は当たり前とは言えない、と古屋圭司氏は述べた。

出典:RT

2023年4月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月21日

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2017年、日本・原にある核避難所。© Duddhika Weerasinghe / Getty Images


 日本は早ければ来年度にも防空壕の普及を促進する法案を可決する可能性があると、与党・自民党の古屋氏が述べた。

 「日本は77年間戦争に巻き込まれていないが、それ以来当たり前だと思ってきたことはもはや通用しない」と、国家公安委員会の元委員長で、この法案を求める国会議員団の共同代表である古屋氏は、火曜日(4月4日)に掲載されたブルームバーグ・ニュースとの聞き取り取材で語った。「世界は大きく変化した」と古谷氏は説明する。

 共同通信によると、日本で防空壕として指定されている場所のうち、地下にあるのはわずか4%だという。

 古屋氏によると、シェルター設置計画をまとめた法案は、早ければ来年度にも成立する可能性があるという。この構想は、東京と北京、そして北京と日本の同盟国である米国との間の緊張が高まる中で生まれた。


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 昨年、日本は、中国軍が台湾周辺で行った演習で発射した弾道ミサイル数発が、日本の排他的経済水域内の海域に落下したと主張し、中国に外交的抗議を行った。それに対して、中国外務省は、演習は国際法に則って実施されたものだと述べた。

 北朝鮮は2022年にミサイル発射実験を大幅に強化し、一部の発射物が日本領土の近くに着弾した。平壌は、この実験は米韓合同訓練に対応したものだと主張している。

 日本の国会議員は2月、新たな安全保障上の課題を理由に、過去最高額となる500億ドルの防衛予算を承認した。また、政府は国家安全保障戦略を改定し、敵の攻撃を先制することを目的とした「敵基地攻撃能力」の獲得をこの戦略に盛り込んだ。

 1月の会談後、日米両政府は軍事演習を増やし、防衛協力を強化することを約束した。東京とワシントンは、水陸両用攻撃や対潜水艦戦に焦点を当てた演習を含む、海上および地上での演習を定期的に実施している。
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スフミは永遠に失われるのか? ジョージアの若者達よ、目を覚ませ。

<記事原文 寺島先生推薦>

Farewell, Sukhumi
Georgian protesters unwittingly imperil their nation's survival

さらば、スフミ
ジョージアのデモ隊は、知らず知らずのうちに国家の存続を危うくしている。

筆者:スコット・リター(Scott RITTER)

出典:ScottRitterExtra.com

2023年3月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月20日

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ジョージア人、外国人代理人登録法案に抗議(2023年3月)


 「ソクミ!」「ソクミ!」「 ソクミ!」

 ジョージアの首都トビリシの国会議事堂前のルスタベリ広場に集まったジョージアの若者たちの群衆から、その叫び声が響き渡る。スフミ(ソクミはジョージア語の発音)はアブハジア共和国の首都で、1年にわたる戦争の末にジョージアから分離した地域である。その戦争では双方で数千人の死者を出し、数十万人のジョージア人が家を失っている。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「 ソクミ!」

 この言葉は、他のアメリカ人よりも私の心に響いた。私の妻はソクミで生まれ育った。1991年の夏、私は妻に結婚を申し込むためにソクミを訪れ、成功した。

 スフミは、妻の両親が出会い、結婚し、一緒に人生を歩んできた場所であり、家族を育てながら地元の大学で教える仕事を続けてきた場所だった。

 妻の父、ビジナは、スフミの亜熱帯農学研究所の他の男性教員とともに、62歳でジョージア軍に徴兵され、都市から南に向かう戦略的橋の警備を任務とする部隊に所属した。彼は、仲間とともに橋を守り抜いたが、そのときに大砲攻撃で耳が聞こえなくなり、最後には空爆で背中に傷を負った。

 1993年9月下旬、ビジナはジョージア防衛軍から街を奪取したアブハジア反乱軍の殺人的な怒りから逃れるために、難民の最後の一波が橋を開けるのを、負傷していたにもかかわらず、仲間の学者たちを助けて最後まで橋を守り抜いた。彼は弾薬を使い果たした後になってやっと自分の持ち場から退き、残骸のような人々の列に加わった。そして山々を越えて安全な場所へと逃げる長い道のりを歩いた。

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1993年9月27日、アブハジア軍に降伏したジョージア軍と、同日中に処刑された後の彼らの遺体。

 妻の実家は、殺されたり、命からがら逃げ出したりした何十万人もの人たちとともに、戦勝国のアブハジア軍に占領されてしまった。

 ビジナは、戦時中の体験をほとんど語らなかった。一度だけ、スフミ撤退時のことを話してもらったことがある。女や子供たちが夜着のまま逃げ惑い、避難した山々を覆う新雪の中で命を落としたことだった。

 ビジナは、凍えた母親が子供を抱きしめて、すでに命のない体に温もりを与えようと必死になっている姿に出くわしたこと、孤児になったばかりの幼児を腕に抱えていたこと、そして、一人では抱えきれないほどの数の幼児に出くわしたことを話した。ある人を救うためには、ある人を為す術なく運命に任せなければならないという、言葉では語れない苦痛を彼の目の中に見たことは当時も今も私を苦しめる。

 彼が孫娘たちを抱きしめたのには理由がある...。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」

 この言葉を唱えた人たち以上に、私はあの街、そしてアブハジア全体が失われたことによる苦しみを知っている。なぜなら、何十年もの間、戻ることを許さない敵によって、妻の家族が自分たちの人生のために働いてきたものが見捨てられたという事実を知り、苦しんでいるのを見てきたからだ。ビジナとその妻ラマラは、自分たちの祖国アブハジアから何千マイルも離れた場所で亡くなり、自分たちを受け入れてくれたことに感謝しながらも、祖国ではない、そして決してそうはなれない国の異国ジョージアの土の下に埋葬されることを宣告された。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」

 この怒れるジョージア人の若者たちが、政府に対して「征服されていない」ジョージアを自国の支配下に戻すよう行動を起こすよう要求しているのを見て、私の目の前で展開されている光景は何かおかしいと思った。彼らの感情が混ぜ合わされたスープには見えない成分があったからだ。そして、その成分は私の国であるアメリカ合衆国であった。



 国会議事堂の前で怒れるジョージアの若者たちを集めたデモは、スフミの解放に関する行動の呼びかけから始まったのではなく、外国から20%以上の資金を得ているメディアや非政府組織に対して、外国の影響力を持つ代理人としての登録を義務付けるという法律案に抗議するためだった。この法律は、1938年に制定された米国の外国代理人登録法(FARA)をモデルとしており、外国政府や政治団体のために米国内でロビー活動を行う場合には、その旨を公表することを義務付けている。

 この法律が成立すれば、ジョージアのNATOやEUへの加盟という目標が妨げられることになると、この法律の批判者たちは断言した。

 外国人工作員法案の現実的な結果は、ジョージアの政治と統治が外国の資金と影響力でどの程度蹂躙されているかを明らかにすることであった。しかし、脅威はロシアからではなく、むしろアメリカからだった。アメリカは、国際開発庁(USAID)を通じて毎年送られてくる4000万ドルの援助金を使って、ジョージアの現政権を、ジョージアではなくアメリカの目標や目的(ロシアに対する「第二戦線」の確立を含む)に従順な政府に置き換えるための「ソフトクーデター」なるものを行っているのである。

 USAIDの監督責任者であるサマンサ・パワーによれば、これらすべては「表現の自由、報道の自由、欧州大西洋統合への道を持つ国」を作るために行われるものだという。

 しかし、彼女が本当に言いたいのは、反対意見を「偽情報」として弾圧し、メディアを国家主導のプロパガンダとして利用し、ジョージアが米国主導のNATO勢力圏に吸収されるのを邪魔するような政治家や政党を権力から排除する国である。

 ジョージアの首相であるイラクリ・ガリバシヴィリは、ロシアとの戦争の拡大を望んでおらず、特にジョージアを紛争に巻き込むような戦争は望んでいない。

 そのため、サマンサ・パワーとUSAIDの手下たちは、ジョージアの首相を解任し、アメリカが支援するジョージアの大統領、サロメ・ズラビシヴィリと同じ親米派から作られた反ロシア(つまり戦争推進)指導者に交代させる必要があると考えている。

 これを達成するために、USAIDは、草の根段階の「多様性」に力を与え、「偽情報に対する社会の耐性」を築くという名目で反対意見を抑圧し、選挙過程を掌握することによって、ジョージアの社会と政治を「下意上達」で変革することを目的とした事業計画に資金を提供し、地方選挙、ひいては全国選挙で米国の支配する「多様性」運動が優位に立てるようにするのだ。

 ジョージアの外国人工作員法案は、これらのUSAIDが資金提供した事業計画や、その他の関連する米国やEUが資金提供した活動が、ジョージア社会にどの程度浸透しているかを暴露することになっただろう。そのため、米国は有償の活動家を動員して街頭に立ち、ジョージアの首相に公共の安全のためにこの法案を撤回するよう迫った。

 元最高裁判事のルイス・ブランデイスは、「日光は最高の消毒剤であると言われている」という有名な言葉を残しているが、これは、民主主義は完全な透明性のある雰囲気の中で繁栄することを意味している。

 サマンサ・パワーとUSAIDが、自分たちの活動がジョージアの主権をどれほど堕落させたかについて、日光が当たることを望まないという事実は、アメリカが資金提供する「ソフトパワー」という病気が、ジョージアの国家にどれほど感染したかを証明するものである。

 ジョージア国民は、アメリカ病感染に対する抗体を作っていると思われる。というのも、ジョージア国民は、2008年8月、短時間ではあるがロシアとの激しい戦争を経験したからだ。この戦争は、NATO加盟の前提条件としてロシアと軍事的に対決せよというアメリカの呼びかけにより始められたものであった。ロシアと対決せよという司令は、2008年7月9日にライス国務長官(当時)がジョージアを訪問した際に、サーカシュヴィリ前大統領に伝えられたものである。この訪問の目的は、ジョージアのNATO加盟の見通しについて話し合うことであったが、その際、米国の上級外交官は、ジョージアの「領土保全」を支持することを公言した。

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詳しくはこちらをご覧ください。

 2008年7月のライス長官の訪問まで、サアカシュヴィリはロシアのメドベージェフ大統領と定期的に会談し、アブハジアと南オセチアの分離独立地域をジョージアの主権に戻すという問題について、交渉による解決の可能性を話し合っていた。ところが彼はライスとの会談の直後、メドベージェフとの連絡をすべて打ち切った。

 ライスがサアカシュヴィリにロシアとの軍事衝突をどの程度促したかは、議論の余地がある。米国務省は、ライスがサアカシュヴィリに対して、ロシアに対して早まった行動を取らないように注意したと主張し、この、ジョージア元大統領は、ライスが行動を起こす許可を与えたと主張している。

 しかし、8月7日の朝、サアカシュヴィリがジョージア軍を南オセチアに投入したとき、アメリカはライスの指示を軍事力で裏付けることはしなかった。ジョージア軍の侵攻とロシアの反応の後、ホワイトハウスの状況報告室で開かれた緊急会議では、ジョージア軍の支援活動を行うよう米軍に求める参加者もいた。具体的には、南オセチアと北オセチアをつなぐロキ・トンネルの爆撃することなどだ。このトンネルを通じて、ロシアは反撃を支援するための兵員と物資を送っていたのだ。しかし、当時のスティーブ・ハドリー国家安全保障顧問は「我々はジョージアを巡ってロシアと戦争する準備ができているか」という直截な質問で部屋を沈黙させている。

 その答えは「No」だった。

 ジョージアにとってこれは飲み込み難い苦い薬だった。すでにジョージア側は、9-11後のイラクやアフガニスタンの戦争でアメリカを支援し、アメリカへの忠誠のための血の代償として、35人の死者と300人の負傷者を出していたからだ。

 これに今、180人の死亡した兵士とさらに1,174人の負傷者を加えなければならなくなったのだ。ロシア軍は、ジョージア側をたった5日間で敗北させ、即座にジョージア人を南オセチアからジョージア本土に押し込み、首都トビリシのすぐ外で停止した。

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トビリシへの道を行くロシア軍戦車(2008年8月)


 アメリカには、自国の目的のためにジョージア人を死なせる心づもりが十分ある。ジョージアから見れば何の脅威にもならないはるか遠くの大地で死のうが、アメリカの地政学的野心を追求するためにジョージアの土地で死のうが、そんなことはお構い無しだ。

 しかし、ジョージアを守るために、アメリカ人の命を一人でも犠牲にするつもりは微塵もない。

 サマンサ・パワーやコンドリーザ・ライスのようなアメリカの高官たちの頭の中では、ジョージアはアメリカの主人の言いなりになるためだけに存在しているのだ、ということだ。

 ジョージアの若者たちは、トビリシのルスタベリ広場で夕暮れ時に「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」と叫んでいるが、彼らは自分たちとアメリカ人の間にある種の友愛の絆が存在するという誤解の下で頑張っているのだ。

 彼らは、これ以上ないほど間違っている。

 アメリカ人がジョージアとジョージアの文化について知っている範囲では、かれらの「知識」はジョージア料理と踊りの表面的理解に限られている。それは、私が「5つのK」と呼んでいるものに要約できる。Khinkali(ヒンカリ)、Khachapouri(ハチャプーリ)、Khvanchkara(フヴァンチカラ)、Kartuli(カルトゥーリ)、Khoroumi(ホロウミ)である。

 ヒンカリ(ジョージア風餃子)は、ロシアやジョージアのレストランの主食で、ねじった生地にひき肉(伝統的には羊肉だが、牛や豚も混じる)、タマネギ、チリペッパー、塩、クミンを詰めて作る人気の前菜である。火を通していない肉を生地に包んでから煮るため、煮ると香ばしい出汁が出る。ヒンカリの愛好家は、生地からスープを上手に吸い取る方法を心得ていて、中のスープがバラバラにならないように食べ、ねじれた結び目を皿に残すことで、正しい食し方を征服できた証としている。(そこだけは食べることができないからだ*)。
*ねじれた結び目は厚くて火が通っていないことが多い。

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キンカリー(左)とアジャリアン・ハチャプーリ(右)

 ハチャプーリとは、ジョージアの美味しいチーズパンのことで、ジョージアのどこで作られているかによって、様々な種類がある。アジャリアン・ハチャプーリは、厚い舟形のパンにチーズを挟み、その上に卵を乗せたもので、とても人気がある。妻の実家では、イメルリ・ハチャプリという、2枚の薄い生地の間にチーズを挟み、ピザのような皮の中にバターとチーズの風味を閉じ込めた、食べると旨味が溢れ出すようなピザにこだわる。このように、さまざまな変化形がある。

 そして、ヒンカリとハチャプリというジョージアの高級料理を洗い流すには、ジョージアの半甘口の赤ワイン、フヴァンチカラの瓶が最適だ。ワイン製造所のある村にちなんで名付けられたフヴァンチカラ・ワインは、1880年代にジョージアの貴族だったドミトリー・キピアニが完成させた製法に由来する。彼は1907年に、当時「キピアニ・ワイン」と呼ばれていたワインをヨーロッパのワイン祭りに出品し、金賞を獲得した。1927年、キピアニのワイナリーは新しい経営者に引き継がれた(当時はソ連時代で、貴族は公然と嫌われる時代だった)。新しいワイン製造所は「フヴァンチカラ社」と名付けられ、キピアニの伝統を受け継ぎ、名前以外はすべて前任者のものと同じワインを生産した。

 キピアニ・ワインは、若いゼミ生から革命家に転身したイオゼブ・ジュガシヴィリ(後にヨシフ・スターリンの名でよく知られている)の目に留まり、フヴァンチカラとして再登場すると、スターリン(それから3年後にはソ連指導者になっていた)はお気に入りのワインとして、あらゆる食事や行事にこのワインを提供した。現在、フヴァンチカラは、受賞歴のあるワインとしてよりも、かつてこのワインを飲んだ人物の名声によって知られている。

 ジョージア国立バレエ団(旧ジョージア国立舞踊団、1945年にイリコ・スキシヴィリとニノ・ラミシヴィリによって結成された)は、ジョージアの伝統的な舞踊を世界に輸出する主要な輸出者として機能している。公演に参加するほとんどのジョージア人以外の人々の心の中で、特に2つのダンスが際立っている。まず、伝統的なジョージアの結婚式の踊りは、カルトゥーリという名で知られている。ジョージアの女性と男性それぞれを特徴づける優雅さと騎士道の組み合わせが公演全体を通して表現され、演技者は舞台を滑るように移動し、見る人すべてを魅了する。

 しかし、最も魅了されるのは、ジョージアの武術の伝統から生まれた伝統的な踊りであるホロウミ・ホロウミ、とりわけ、劇的な締めくくりの剣の踊りである。また、グルジア国家の悲惨な現実を読み解くことができるのも、ホロウミの起源からである。

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ジョージア国立バレエ団による「ホロウミ」公演

 ホロウミは、アナトリア北東部に位置する紀元前8世紀の部族連合であるディアオクと、ギリシャ神話でジェイソンとアルゴノーツが目ざした場所として知られ、メデアとゴールデン・フリース(金羊毛)の故郷であるコルキスの歴史に由来している。古代ディアオクは現在のアルメニアの前身であるウラル人に敗れ、コルキスはペルシャ人、アルメニア人、ローマ人の相次ぐ侵略に屈している。

 歴史は、古代グルジア(ジョージア)人に、ホロウミの決定的な瞬間となった勝利の剣の踊りを踊る機会を多く与えなかったというのが現実である。

 興味深いのは、ジョージア国立バレエ団で人気のあるホロウミの形が、アジャリア、ラズ、グリアで人気のある踊りから引き出された融合物であることだ。

 アジャリアは、トルコと国境を接するジョージアのイスラム教徒が多い地域で、黒海沿岸のジョージアの主要な港町であるバトゥミがあるところだ。かつてオスマン帝国領であったアジャリアは、1876年から1878年のトルコとの戦争の後、ロシアに奪われ、1918年にオスマン帝国に奪還され(その後1921年にトルコに奪還)、その後、カルス条約によりグルジア(ジョージア)・ソビエト社会主義共和国に編入されたが、その第6条には、トルコがアジャリアの自治を保証することが書かれている(現代のジョージア民族主義者はこのことを心に留めておくべきだ)。

 ラズ族は、コルキスに起源を持ち、現在のトルコのトラブゾン地方に定住したジョージア系民族で構成されている。ビザンティンの下で適度な自治権を与えられたラズ族は、最終的に断続的に続いていたジョージアの公国や王国に吸収され、その間にジョージアの文化的特異性を刷り込まれたが、それは17世紀にオスマン帝国に占領される前のことである。その後200年間、ラズ族はオスマン帝国の支配に抵抗し、ジョージアの遺産を守るために戦い、19世紀半ばにようやく鎮圧された。現在、ラズ族は主にトルコに居住しており、彼らの言語と文化的独自性は、絶滅の危機に瀕している。

 アジャリアの北には、ジョージアのグリア地方があり、何世紀にもわたって、多くの試練と困難があったことが知られている。17世紀には、グリアの王子たちは、オスマントルコの主人に56人の若い女の子と男の子を毎年貢ぐことを余儀なくされた。そして、1876年から1878年にかけてのロシアとオスマントルコの戦争では、グリアは最前線として機能し、廃墟と化した。グリアは、ジョージア全土の中で最も民族的に均質な地域とされ、強い民族意識につながったが、それが破滅的な結果を招いた。

 グリアの農民は、1902年にロシアの貴族に対して反乱を起こし、1905年にも反乱を起こしたが、ツァーリによって派遣されたコサックによって虐殺され、屈服させられた。1918年から1921年まで、グリアは再び主導的な役割を果たし、短命であったグルジア民主共和国の創設に貢献したが、赤軍によって粉砕され、グルジア・ソビエト社会主義共和国へと変貌した。

 グリア人は、北に2つの他のグルジア民族であるスヴァン族とミングレリア族に隣接している。スヴァン族は、ジョージア北部の山岳地帯に定住し、ミングレリア族は、グリア北部の谷と平野を占領している。スヴァネッティとミングレリアは、グリアと同様に、グルジア民族主義の温床と考えられている。1989年の夏、ゼモ・スヴァネティの山岳地帯から上半身裸で現れ、少数民族アブハジア人の不安を抑え込むためにスフミに向かって行進したのがスヴァン人だったことはよく知られている。

 そして、ジョージア民族主義の父と言われ、1991年のソ連からの独立後、ジョージアの初代大統領を務めたのが、ミングレリア人の学者、ズヴィアド・ガムサフルディアである。ソビエト連邦崩壊後、ジョージアの主権と領土保全のために南オセチアの独立を暴力的に抑圧しようとしたのは、ガムサフルディアの指導下であり、2008年にジョージアがロシアと短期間で悲劇的な戦争をするきっかけとなった。

 今日、トビリシには若いジョージア人の群衆が集まり、「ソクミ」「ソクミ」「ソクミ」と叫んでいるが、その行動は、ジョージア政府が武力でアブハジアを奪還し、それによってロシアとの第二戦線を開くというNATO主導の大きな目的を達成するように誘うものだ。しかし、歴史を見てみると、それは彼らがグルジアの民族主義的軍事力に対する懐古に浸りすぎないように、すべてが見かけどおりになるとは限らないことをはっきりと思い出させてくれる。

 1993年9月、スフミの命運がかかっていたとき、ジョージアのアブハジアへの援軍を運ぶ列車を封鎖して武装解除し、スフミ守備隊と彼らが守る民間人を敗北に追い込んだのは、ガムサフルディア派のロティ・コバリアが率いるミングレリア民兵である。

 1993年10月、スフミの陥落後、命からがら逃げていた何万人ものジョージア難民は、ゼモ・スヴァネティの山々を進まければならなかった。そこでは、かつてのスヴァン同盟者の武装ギャングが道路封鎖を行い、ジョージア人が必死で何とか持ってきたあらゆる財産を奪い、雪に覆われたコドリ峡谷へと彼らを送り出し、多くの女性、子供、高齢者が寒さや飢餓のために命を落とした。

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アブハジア軍から逃れ、山を越えるスフミのジョージア人難民(1993年10月)

 私の妻が生まれ育ったアブハジアの首都スフミは、もはやジョージアの支配下にはない。そう、ロシア、チェチェン人、アルメニア人、その他の北コーカサス民族の支援を受けたアブハジア民兵が、何千人ものジョージア市民の虐殺と、私の妻やその弟、両親を含む20万人以上の民族浄化につながる攻撃を実行したのである。

 確かに言えることは、ミハイル・アンドレイエヴィチ・ススロフのようなソ連の思想家たちの政策が、アブハジアや他の北コーカサス民族の分離主義的な想像力を育んで成長させ、新生ジョージアの民族主義に対抗するものにしたことだ。

 しかし、1992年から93年にかけてのアブハジア紛争の起源は、ジョージア人の民族主義の行き過ぎにも行き着くことができる。具体的には、ジャバ・イオセリアニの準軍事組織ムケドリオニ(「ホースメン」)という犯罪組織である。1992年8月、エドゥアルド・シェバルドナゼはその組織をスフミ市に解き放った。その結果、ジョージアとそのアブハジア少数民族の間の政治論争だったものが内戦に変化し、最後はジョージアの敗北で終わった。

 私の目には、ジョージア人がジョージア人を裏切るというのが主題のように映る。1993年にジョージアがスフミ市を含むアブハジア領を失った時もそうだったし、いまジョージアが必死に努力して、ロシアを挑発し、勝てることのない戦争への道をレミング*のように行進しているように見えることもそうだ。そんな戦争が起こってしまえば、ジョージアは真っ当な近代国家として生き残れないだろう。
*ネズミに似た、小型の齧歯類の総称。繁殖が極に達すると海に向かって「集団自殺行進」をすると言われる。

 ジョージアの勇敢な息子や娘たちよ、スローガンを唱え、ヒンカリやハチャプーリを食べ、クフヴァンチカラを飲み、女性がカルトゥーリを踊るのを見て、ホロウミの男らしいドラマに酔いしれろ、というわけである。

 しかし、ホロウミは、栄光への野望が、常に、そして必然的に、より大きな隣人の力によって打ち砕かれた敗北した人々の踊りであることを心に留めておいてほしい。

 ロシアはより大きな隣人である。



スコット・リッターは、「査察官に聞く」の第53話で、この記事について議論し、視聴者の質問に答えます。

 ジョージアの若者たちは、次のことを考えたほうがいいだろう:ジョージアの生活におけるヒンカリとハチャプーリの役割や、フヴァンチカラに凝縮されているジョージアのワイン製造の歴史、カルトゥーリの社会の複雑さ、そしてホロウミの背後にある辛い歴史を理解できるアメリカ人は、かりにいたとしても、ほんの少数だ。

 多くのアメリカ人にとって、それは単なる食事とワイン、そして面白いダンスに過ぎない。

 これが、あなた方ジョージア人が未来を賭けている社会の現実であり、アメリカはあなた方のことなど気にかけていない。

 アメリカ人は、あなたのことが好きでもない。私たちアメリカ人は、貴国の食べ物やワインをかろうじて許容し、貴国の文化を単なる好奇心として見ているだけだ。

 歴史を見ても、我が国民が貴国のために死ぬことは絶対にないことが明らかだ。

 あなた方は、我が国の地政学的な大きな目標や目的のためにのみ存在する。

 あなた方は、米国がロシアの周辺に設置しようとしている「不安定な地域」の一部に過ぎない。

 ジョージアにおけるアメリカの目的は、地域の不安定さを生み出すことだ。その代償を払うのは誰なのか。

 アメリカではない。

 ジョージアだ。

 ジョージアはウクライナの縮小版であり、アメリカの「不安定な地域」のもう一つの歯車なのだ。

 そのことを念頭においてほしい。あなた方がロシアに対して第 2 戦線を開くというアメリカ主導の目標に向けて行動するときには。

 ウクライナの運命に思いを馳せてください。

 何十万人ものウクライナ人の死者について考えてみてください。

 数千万人のウクライナ人が家を失い、ホームレスになっていることに思いを馳せてください。

 ウクライナの生活基盤が受けた1兆ドル以上の損害について考えてみてください。

 ウクライナの領土が永久に失われたことを忘れないでください。

 ウクライナは、その前のアフガニスタン(その前の南ベトナム)と同様、最終的には、良き「友人」であるアメリカ人によってその運命に見放されることになるという事実を覚えておいてください。

 そして、ロシアが1年でウクライナに行ったことは、ジョージアに対してなら1ヶ月以内に達成できることを理解したほうがいい。

 ジョージアはアブハジアと南オセチアを永久に失うだろう―永遠に。ロシアは、ゴリやクタイシと一緒に、念のためにポチを取るかもしれない。当然だろう。ジョージアがロシアにとって恒久的な軍事的脅威となることを望むなら、ロシアはその脅威を恒久的に除去しようとせざるを得なくなるからだ。

 ジョージアが解体され始めると、トルコはアジャリアを手に入れるかもしれない。これはいい加減な推測ではない。トルコのエルドアン大統領は、歴史的に見てトルコにはバトゥミの領有権があると発言しているからだ。その根拠となっているのは、1920年のアッタチュルクの「国民契約」(ミサク・イ・ミリ)、つまりオスマン帝国後のトルコ共和国建国の条件を定めた条項だ。

 ジョージアの分割が始まれば、米国、欧州連合(EU)、NATOのいずれもが、それに対してできること、することはない。

 ジョージアは、存続可能な近代国家として存在しなくなる。

 これは間違いない。

 なぜなのか? もう一度、ジョージアの人々に言っておくが、アメリカは君たちを嫌っている。

 我が国は友人ではない。

 我が国は君たちを利用しているのだ。

 利用し終わったら、見捨てる。

 これを読んでいるジョージア人の皆さんには、次のようなことを考えてもらいたい:

 ロシア人女性が、ヒンカリを作る生地をこねるという忍耐力のいる作業をジョージア人女性と同じようにできるのは、ロシア人女性には、ジョージア人の友人や親類がいるからだ。その人たちと一緒にヒンカリを作って大人になったからだ。ロシアとジョージアの間にそんな社会的繋がりがあったからこそだ。

 ロシア人女性が、さまざまな種類のハチャプリの複雑な作り方を理解できるのは、ジョージアで休暇を過ごしたことがあるからだ。地域によって異なるジョージア料理の愉快な変種をたくさん知っているからだ。

 ロシア人男性がヒンカリのてっぺんを食べ残せたり、一切れのハチャプリをがっつくのは、ジョージアの料理を食べることは、彼らにとって後天的に身につけた習慣のようなものだからだ。ずっとそうしてきたからだ。ジョージア料理は、彼らにとって外国料理ではなく、自国料理なのだ。なぜなら、ロシアの有名な都市にはどこにも、少なくとも1つのジョージア料理レストランがあるからだ。そして、ロシア人男性たちができることは、ジョージア料理を前に、フヴァンチカラを啜り、料理の香ばしい一口を逃さないよう注意しながら、スターリンの遺産について微に入り細にわたって熱く語り合うことだ。そんなことができるのは、ロシア人とジョージア人は、共有する遺産の中で育ってきたからだ。

 ジョージア人とロシア人は、大祖国戦争で共に血を流した。

 ジョージア人とロシア人は、収容所で共に苦しんだ。

 ジョージア人とロシア人は、同じ大学で共に学んだ。

 ジョージア人とロシア人は、結婚し、共に家庭を築いた。

 ロシア人はカルトゥーリやホロウミを鑑賞し、同様にジョージア人は白鳥の湖やくるみ割り人形組曲を鑑賞してきた。そうやって、両者はお互いの、文化的、歴史的重要性と関連性を持ってきたのだ。足の動きや立ち振る舞い、舞台での動きの中でそれらを感じてきたのだ。それは両者にとっての共有文化だったのだ。

 1829年、ロシアの詩人アレクサンドル・セルゲイビッチ・プーシキンは、プロポーズを断られた後、「ジョージアの丘の上で」を書いた。ロシア軍に入隊し、ジョージアに派遣された彼は、コーカサス山脈南部の麓、アラグヴィ川のほとりで、叶わぬ恋を歌ったこの名詩を書き上げた。

  ジョージアの丘に暗黒が降り注ぐ、

  アラグヴァの咆哮が聞こえる。

  悲しくて軽い、私の悲しみは―透明だ、

  私の悲しみは、あなたで満たされている、

  あなたと、あなただけと―私の憂鬱は

  手付かずの状態で残っている、

  そして、もう一度、私の心は燃え上がり、愛する

  そうすることしかできないからだ。

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ジョージア・トビリシにあるアレクサンドル・プーシキン(左)とミハイル・レルモントフ(右)の銅像

 プーシキンは、ジョージアを知り、理解していた。彼は、ジョージアの詩人ショタ・ルスタベリを読んだことがあり、その詩人を基盤にして、グルジアの美しさの中にある、悔いなき愛についての詩を書くことができたのだ。そして同時に、その詩は、多くの人によってロシアの真の魂を表していると認められるようになったひとりの男によって語られたものなのだ。

 プーシキンの言葉は、同じくジョージアに滞在したロシア人将校で、「コーカサスの詩人」と呼ばれるようになったミハイル・ユーリエヴィチ・レルモントフなど、他のロシアの作家にも霊感を与えた。

 私が言いたいのは、ロシア人はジョージアを知っているということだ。ロシア人はジョージアを理解している。ロシア人はジョージアを愛している。

 ロシアとジョージアの間には様々な困難があるが、ロシアはジョージアにとってアメリカよりも良い友人であり、今後もそうであろう。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」

 ジョージアの人々は、アメリカの友好という幻想に誘惑され、スフミへの道はワシントンDCとブリュッセルを通ると信じ込んでしまったのだ。

 私は、ジョージアの愚かな若者たちが、自分たちの知らない、そして自分たちの愚かな行動のために、これからも知ることのない都市の名前を唱えるのを悲しみながら見ている。そして、彼らの愚かな言葉を聞きながら、ジョージアが方針を変えない限り、私と家族は、ジョージア全土とともに、私たちが知っていて愛している街に別れを告げなければならないことを理解している。なぜなら、ジョージアがロシアに対して第二戦線を開くならば、スフミは永遠に私たちから失われることになるからだ。

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アブハジア反乱軍とその同盟軍によるスフミの陥落(1993年9月27日)
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モスクワ、ウクライナの和平要求の概要を示す

<記事原文 寺島先生推薦>

Moscow outlines Ukraine peace demands

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月19日

ロシアの外務副大臣は、キエフが敵対行為を終わらせるために取るべき措置を列挙した。

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ロシア外務省(モスクワ)© Joel Saget / AFP


 ロシアのミハイル・ガルージン外務副大臣は、敵対行為を停止させるためにキエフ政府が取るべき10項目の措置を提示した。ガルージンは水曜日(3月29日)のインタビューで、ウクライナの将来は、キエフとその西側支援者がどれだけ早く現実を把握するかにかかっていると述べた。

 ウクライナが平和をもたらすためには、その軍隊は撤退しなければならず、西側諸国はキエフへの武器の納入をすべて停止しなければならないと、ガルージンはRTVIで語った。

 ウクライナの非武装化と「非ナチス化」、EUやNATOへの不参加、キエフの非核状態の確認など、彼が挙げた他のいくつかの条件は、2022年2月に敵対関係が激化して以来、検討されてきたものだ。さらに、2022年10月には、「新たな領土の現実」(一般的には、へルソン、ザポリージャ、ドネツク、ルガンスクの各共和国がロシアへの加盟を決定したことを意味する)を承認することが追加された。

 ロシア語の保護とロシア語を話す市民、そしてウクライナの他のすべての民族の権利の確保も、ガルージンが挙げた項目の中にあった。さらにウクライナは、ロシアとの国境を再び開き、2014年に米国が支援したクーデター後に破棄したモスクワや他の旧ソビエト共和国との関係の法的枠組みを回復する必要があると述べた。

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関連記事:クレムリンはウクライナ紛争の軍事的解決しか考えていない。


 モスクワは初めて、すべての反ロシア制裁の解除と、「ロシア、その個人および法人に対する請求の撤回と訴追の終了」を要求した。この中には、プーチン大統領と子どもの権利委員会のマリア・ルボヴァ=ベロヴァに対する最近の国際刑事裁判所(ICC)の令状が含まれていると推定される。

 ガルージンが挙げた項目の中の最後の要求は、2014年以降ウクライナ軍が破壊した民間生活基盤組織の再建費用を欧米が負担することだった。

 ウクライナの平和な未来は、ロシア系住民の権利を尊重し、すべての近隣諸国との友好関係を回復し、1990年の独立宣言に謳われた中立・非軍事同盟加盟という建国の原則に立ち返ることにあるとガルージンは述べた。

 「現在のウクライナの領土の将来は、この国の住民自身が決めるべきだ」とガルージンはRTVIに語り、その中には 「ウクライナ人、ロシア人、ユダヤ人、ハンガリー人、モルドバ人、ブルガリア人、ローマ人、ポーランド人、そしてギリシャ人」が含まれていると指摘した。

 「国境がどこであろうと、公然と反ロシア的な国家」を隣国としてモスクワは容認しない、とガルージンは言う。「ロシアも、他のどの国も、安全保障の観点から、そんな国家を受け入れることはないだろう」。

 キエフ政府が採択した「和平綱領」には、ウクライナが自国と主張するすべての領土からのロシアの全面撤退、賠償金の支払い、そして、モスクワの軍および政治指導者を軍事犯罪法廷で裁くことが含まれている。
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ロシア側の捜査によれば、ウクライナは戦争捕虜の体内器官を採取している

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia probes claim Ukrainians harvested POWs’ organs

出典:RT

2023年4月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月17日



当該動画からのスクリーンショット。その動画は現在ロシア側が捜査中©ソーシャル・ネットワーク


自称戦場外科医の男性が、ロシアの捕虜囚人から採取した目を販売していると語っている動画が出現


 ロシア側は現在1本の動画についての捜査を行っているが、その動画の中では、ウクライナ軍の外科医であると自称する人物が、ロシア側の戦争捕虜の身体から器官を取り出す行為に関わっていたことを示唆している。その自称外科医はさらに、それらの器官を闇市場で販売したとも語っている。

 ロシア連邦捜査委員会のアレクサンドル・バストリキン委員長は、この動画について捜査するよう命じたが、この動画は今週(4月第2週)にロシア国内のソーシャル・メディア上で広く拡散された、と同委員会は木曜日(4月13日)に声明を出している。

 ほぼ1分間の長さのあるこの動画では、(SNSの)テレリンク上で激しくやり取りをしていると思われる様子が映されている。やり取りをしているのは、「ウラジミール・バシリエビチ」という自称ウクライナ側の戦場医師と、この医師が「ラッシストのブロガー」としている人物であった。なおこのラッシストとは、この医師がロシア人に対する蔑称として使っている言葉である。

 この動画は部分的に編集されているが、「ウラジミール」の対話者が、ウラジミールを挑発し、その後この自称戦場外科医が主張を行っている場面であり、おそらく相手にウクライナ兵の脚を切断したかどうかを問いただしているところだと考えられる。

 「俺が主に切断したのは、お前たちの仲間の豚どもの脚だけど、腕も目も切ってやったさ。ドイツのおばあちゃんたちが(目に)いくら出すか分かるか?」とウラジミールは答えていた。

 「お前たちの仲間の27歳の [編集されていて聞き取れず] から目や腎臓や切り取ったよ」とウラジミールは嘲(あざけ)るような口調でがなり立てていた。

 さらに「ウラジミール」は、ロシア兵に措置を加える際は、上司の指示に従わず、麻酔をしていなかったとも語っていた。「奴らの目を切り取ってやったさ....楽しかったよ」とウラジミールは語気を強めて語っていた。



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 ウラジミールの身元はまだ未特定のままだ。いくつかの情報によれば、イヴァーノ=フランキーウシク州出身のウクライナ国民であり、2014年から2015年まで、国家警備隊員を勤めていたという。 ウラジミールが自分で語っていた通りの罪を犯したかについての信ぴょう性は、まだ明らかではない。

 2022年3月、ゲナディル・ドゥルジェンカという人物が加担していた同様の事件が発生した。この人物は、憲法学者であったが、 ウクライナの前線の戦場医師となった人物だ。国営テレビでの聞き取り取材において、ドゥルジェンカが述べたのは、配下の医療団が治療していた全てのロシア側の戦争捕虜に対して去勢手術を施す命令を出していたという事実だった。そしてその理由は、「ロシア人はゴキブリであって人間ではないから」としていた。

 後にドゥルジェンカは、自身のこの問題の多い発言を取り消し、このことは事実ではなく、感情の高まりに任せてつい口走ってしまったと断言した。

 ウクライナ当局は、国際的な義務を遵守し、戦争に関する規則を尊重すると誓約している。ロシア国防省の主張によると、戦争捕虜に対する虐待行為や正当な手続きを踏まない処刑までもが、ウクライナ軍で蔓延っているという。
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イーロン・マスク、AI をめぐってビル・ゲイツと口論に

<記事原文 寺島先生推薦>

Elon Musk spars with Bill Gates over AI
The Tesla CEO has criticized Microsoft’s partnership with OpenAI, a company he helped to found in 2015

テスラのCEOは、自身が2015年に設立に携わったOpenAI社とマイクロソフト社の提携を批判している。

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月16日


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© YouTube / Tesla

 イーロン・マスクは、同じ億万長者のビル・ゲイツの人工知能(AI)についての理解が「限られた」ものでしかないことを指摘し、ゲイツが新興技術についてよく理解していないことを示唆した。マスクは、マイクロソフトの創業者が、自分は何年もAI分野に携わってきたと発言したことに反応したのだ。

 マスクは月曜日(3月27日)のソーシャルメディアへの投稿で、他の利用者がマイクロソフトの大物が書いた最近の記事を共有した後、ゲイツを攻撃したのだが、その投稿の中でマスクは、自身が共同設立した技術会社であるOpenAI社の開発チームと2016年から何度も会合を行ってきたと述べている。

 「ゲイツとの初期の会合を覚えています。彼のAIに対する理解は限られていた。今もそうだ」とマスクは語った。

 先週公開されたゲイツが出した記事では、「AIの時代が始まった」と宣言し、OpenAI社と共に取り組んだ活動について説明していたが、その中には「高校生物の飛び級試験に合格できるAIを開発せよ」という「挑戦」も含まれていた。

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関連記事:AIは「私にストレスを与える」―マスク


 「この挑戦によりOpenAI社は2~3年は忙しいだろうと思っていた。でも、彼らはわずか数カ月でそれを完成させた」と、人気プログラム「ChatGPT」の開発元であるOpenAI社について述べている。

 マスクは2018年にOpenAI社の取締役会を去り、それ以来、同社への批判を強めている。それは、オープンソース*の非営利新興企業として設立された同社が、今では「マイクロソフト社が実質的に支配するクローズドソース**の最大利益企業」になってしまったという点についてだ。
* プログラムのソースコード(プログラミング言語を用いて書かれるもの)が公開されていて、自由に利用したり変更したりできるもの。(英辞郎)
** ソフトウエアのソースコードを非公開とし、改変・複製・再配布などを制限したもの。(コトバンク)


 マスクや他の熱狂的な支持者たちはOpenAI社への最初の投資として10億ドルを投じていたが、2019年にマイクロソフト社が同額を出資し、マイクロソフト社はその後、この技術企業OpenAI社への「数年、数十億ドル」の投資計画を明らかにし、その後、OpenAI社のAIをマイクロソフト傘下の検索エンジンBingに統合した。

 月曜日(3月27日)のツイートが、2人の億万長者の起業家の間に敵対関係があることを示した初めての事例ではなく、2020年のCovid-19のパンデミックをめぐって口論になったことがある。ゲイツが同年、テスラではなくポルシェの購入を選んだと述べたことを受けて、マスクはゲイツとのこれまでの会話は「つまらなかった」と述べ、さらに、テスラの株を空売りしているとしてゲイツを非難していた。

関連記事: ロシア企業が ChatGPT と競合する企業を公開

 さらに両者間の摩擦の現れとして、火曜日(3月28日)、テスラ創業者である自身とゲイツ氏の比較を指摘した別のツイッター利用者の投稿に対し、マスク氏が「一本取られたな(笑)」とだけ返答したこともあった。
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前ロシア大統領メドベージェフ氏、EU「平和維持軍」についての見解

<記事原文 寺島先生推薦>

Ex-Russian president comments on EU ‘peacekeepers’

出典:RT

2023年3月31日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月15日


この「羊の皮をかぶった狼」たちは戦闘員となり、死体袋に入って戻ってくる、とドミトリー・メドベージェフは言う。

画像 メドベ

ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長 © Sputnik / Ekaterina Shtukina


 ウクライナに派遣されるEUの「平和維持軍」は、紛争に直接関与する敵性戦闘員とみなされ、相応の扱いを受けることになると、ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領が金曜日(3月31日)に警告した。

 この日、ハンガリーのオルバン首相はラジオのインタビューで、欧州連合(EU)がウクライナのために「ある種の平和維持軍」(おそらくNATOの支援下)を議論していると述べた。これに対し、クレムリンは「極めて危険な考えだ」と反論した。

 ロシア安全保障会議の副議長であるメドベージェフは、この考えを皮肉話の極みと呼んだ。米国主導の勢力は、「キエフ政権に武器や戦車などの軍備を与え続けている」と彼はテレグラムに書いている。だから、彼らが平和を望んでいるなどと想像することは困難だ。

 「彼らの真意は明らかだ。接触線上の強者の立場から、彼らにとって有利な平和を確立することだ。機関銃や戦車を持ち、黄色い星のついた青いヘルメットをかぶった彼らの『平和維持』部隊をウクライナに導入することだ」とメドベージェフは書いている。

画像 ラブロフ

関連記事:NATOはキエフの側で戦っている―ラヴロフ露外相

 
 「いわゆるNATOの平和維持軍が、我々の敵の側で紛争に参入しようとしているだけであることは明らかだ 」と彼は言った。「平和維持者」と呼ばれる人たちが、我々の直接の敵であることも明らかだ。羊の皮をかぶった狼だ。彼らがロシアの同意なしに前線に立たされ、武器を手にし、私たちを直接脅かすようになれば、私たちの軍隊の正当な標的になる。そして、この「平和を作る者」たちは、無慈悲に破壊されなければならない。彼らは敵の兵士である。彼らは戦闘員なのだ」。

 ロシアは、米国とその同盟国に対し、ウクライナに武器を送ることは紛争を長引かせ、核武装した国同士の直接対決を招く恐れがあるため、やめるよう繰り返し警告している。NATOは、キエフに戦車や戦闘機など1,000億ドル以上の軍事支援を送っているが、その一方で、NATOはこの紛争に関与していないと主張している。

 しかし、欧米の複数の高官が、ロシアの「戦略的敗北」が目的であると発言しており、モスクワによれば、米国は最近、ウクライナでの停戦に反対したとのことだ。停戦はキエフが決定することであり、それはこれまで米国が主張していたことを裏切るものだ。
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新世界大戦の準備:「ナチス‐日本」枢軸の再構築

<記事原文 寺島先生推薦>

The Preparation of a New World War: Reconstituting the Nazi-Nippon Axis

筆者:シエリー・メイサン(Thierry Meyssan)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月15日

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日本の岸田首相、キエフに支援を申し出る


 米国は、欧州連合(EU)の同盟国に対し、第三次世界大戦に備えるよう促している。「トゥキュディデスの罠」*から勝者として抜け出したいのであれば、戦うしかない。ただし、この騒ぎが、南米、アフリカ、そしてアジアの多くの国家が「中立」を宣言する中で、同盟国を「味方につける」ための演出に過ぎないのでなければ、の話だ。同時に、軍靴の音が日本の軍国主義者をかき立て、ウクライナの「過激な民族主義者」のように、復活している。
*古代アテナイの歴史家トゥキュディデスにちなむ言葉で、従来の覇権国家と台頭する新興国家が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象を指す。アメリカ合衆国の政治学者グレアム・アリソンが作った造語。( ウィキペディア)

 多極化世界の提唱者たちの伸長に直面し、「アメリカ帝国主義」の擁護者たちは、ぐずぐずした反応はしていない。ここでは、ヨーロッパ共同市場の軍事構造への転換と、第二次世界大戦中の枢軸国の改革という2つの作戦を分析する。枢軸国の改革という側面では、新たな役者を登場させる:日本である。


欧州連合の変化

 1949年、アメリカとイギリスは北大西洋条約機構(NATO)を創設した。その中には、カナダや西ヨーロッパで解放した国も含まれていた。彼らにとっては、自国を守ることではなく、ソ連への攻撃を準備することが問題だった。ソ連は、ワルシャワ条約を作ることで対抗した。

 1950年、朝鮮戦争が始まったとき、アメリカは紛争をドイツ民主共和国(通称「東ドイツ」)にまで拡大することを計画した。そのためには、フランス、ベルギー、そしてルクセンブルクの反対を押し切って、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)を再軍備しなければならなかった。そこで、欧州防衛共同体(EDC)の設立を提案したが、ゴーリスト*やフランス共産主義者の抵抗に遭い、失敗に終わった。
*「偉大なフランスの栄光」を追求したド=ゴール大統領の路線(ゴーリスム)の信奉者。(デジタル大辞泉)

 同時に、マーシャル・プランで西ヨーロッパの再建を支援した。この計画には、ヨーロッパ共同市場の建設など、多くの秘密条項が含まれていた。ワシントンは、西ヨーロッパを経済的に支配し、共産主義の影響やソビエト帝国主義から政治的に保護することを望んでいた。欧州経済共同体(後の欧州連合)は、米国印の民間的側面であり、その軍事的側面はNATOである。欧州委員会は、欧州連合の首脳の政権ではなく、首脳と大西洋同盟との接点である。軍備や建築だけでなく、装備品、衣服、そして食料などに関するヨーロッパの基準は、最初はルクセンブルク、次にベルギーで、NATOの各部門によって確立される。それらは欧州委員会に伝達され、今日、欧州議会で承認を受ける。

 1989年、ソビエト連邦が崩壊しつつある中、フランスのミッテラン大統領とドイツのコール首相は、西ヨーロッパをアメリカの支配から解放し、ワシントンに対抗できるようにすることを考えた。この条約の交渉は、ドイツの四分割占領の終結(1990年9月12日)、両ドイツの統一(1990年10月3日)、そしてワルシャワ条約の解消(1991年7月1日)と同時に行われた。ワシントンは、自分たちの軍事的支配を認める限りにおいて、マーストリヒト条約を受け入れた。西ヨーロッパ諸国はこの原則を受け入れた。

 しかし、ワシントンはミッテランとコールの二人に不信感を抱き、最後の最後で、欧州連合にワルシャワ条約の旧加盟国すべて、さらには旧ソ連から生まれた新しい独立国家を含めることを要求した。これらの国々は、マーストリヒト交渉団の志を共有することはなかった。むしろ、彼らを疑っていた。彼らは、ドイツとロシアの影響から自らを解放したいと考えていた。彼らは、自国の防衛を「アメリカの傘」に頼った。

 2003年、ワシントンはスペインのEU議長国(社会主義者フェリペ・ゴンサレス)およびハビエル・ソラナ共通外交・安全保障政策上級代表を利用して、ブッシュ米大統領の国家安全保障戦略に倣った「欧州安全保障戦略」を採択させた。フェデリカ・モゲリーニ上級代表は、2016年にこの文書を改訂した。

 2022年、ウクライナ戦争の際、アメリカは朝鮮戦争の時のように、再びロシア(ソ連の後継国)に対するドイツの再軍備の必要性を感じていた。そこで彼らは、今度は慎重にEUを変容させている。フランス人のエマニュエル・マクロン大統領の任期中に、彼らは「戦略的コンパス」を提案した。これが採択されたのは、ロシアのウクライナ介入からわずか1カ月後だった。EU加盟国は、協力するために集まったのか、それとも統合するために集まったのか(ヘンリー・キッシンジャーが言うところの「建設的曖昧さ」)、いまだ正確に把握できていないため、一層唖然とすることになった。

 2023年3月、現欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表のジョゼップ・ボレルが、第1回「安全保障と防衛に関するロバート・シューマン・フォーラム」を主催した。EU加盟国から多数の防衛・外務大臣が参加している。親米派の非EU欧州諸国のほか、アンゴラ、ガーナ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、ソマリア、エジプト、チリ、ペルー、グルジア、インドネシア、そして日本など多くの国が閣僚級に名を連ねた。NATOに加え、ASEAN、湾岸協力会議、アフリカ連合も参加した。とりわけ、アラブ連盟は事務総長を派遣している。



 このフォーラムの明確な目的は、「多国間主義とルールに基づく国際秩序」を守ることであり、「国際法に基づく多極化世界」という、ロシアと中国の事業計画を否定する巧妙な方法である。

 COVID-19の流行によって、EUは条約が予見していなかった健康分野での権限をすでに自らに課している。私はCOVID-19流行当初、健康な人を閉じ込めるという措置は歴史上前例がないことを説明した。それは、ギリアド・サイエンシズの前代表で元国防長官のドナルド・ラムズフェルドの要請で、CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)の責任者となり、それゆえにこの措置を世界中で始めたリチャード・ハチェット博士が考案したものである[1]。2005年に発表された彼の機密報告(残念ながら、この報告書が引き起こした反応からしか(その内容は)わからない)によると、健康な一般市民を自宅に閉じ込めることで、①移転可能な仕事を特定し、②欧米の消費財産業を閉鎖し、そして③労働力を防衛産業に集中させることになっていた。我々はまだそこまでわかっていなかったが、条約が予見していなかった公衆衛生の権限を、いかなる憤慨も起こさずに掌握したEUは、今、その条文を解釈して軍事的に強大になろうとしている。

 先週、シューマン・フォーラムで、ジョゼップ・ボレルが「戦略コンパス」の実施に関する最初の報告書を発表した。この構想は、協力というより統合の精神で、情報機関を含む各国の軍隊を結集することを調整するものである。エマニュエル・マクロンの計画は、シャルル・ド・ゴールやフランス共産主義者の計画を葬り去ることになる。「防衛のヨーロッパ」は、EU加盟国の作戦部隊を欧州連合軍最高司令官(SACEUR)(現在は米国のクリストファー・G・カボリ将軍)の権限下に置くだけでなく、従来は各国の議会が担当していたすべての資金調達の決定、さらには加盟国の行政機関が担当していた軍備や組織に関する決定も管理することを目指すスローガンであるように見える。このように、EUは誰が指揮するのかわからないまま、共通の軍隊を組織している。


「ナチス‐日本」枢軸の再構築

 第二次世界大戦というと、ヨーロッパでは1939年と1945年を思い起こす。これは絶対に間違っている。戦争は1931年、日本の将軍が満州で中国兵を攻撃したことから始まった。これは軍国主義派による、日本の文民権力への最初の越権行為であり、数ヵ月後には文民であった首相が軍人のグループによって暗殺され、その動きは増幅された。数年後、日本は軍国主義的で拡張主義的な大国へと変貌を遂げた。この戦争は、1945年の赤軍による満州の解放では終わらなかった。実際、アメリカは日本のソ連への降伏を阻み、降伏が自国の将兵の前でしか行われないようにするため、2発の原爆を使用した。1946年まで戦い続けたのは、それまで太平洋であまり戦っていなかったアメリカに対して、多くの日本人が降伏を拒んだからだ。第二次世界大戦は1931年から1946年まで続いた。このような日付の間違いをするのは、ローマ・ベルリン・東京枢軸(「三国同盟」)で初めて世界規模になったからだ。実際は、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、そしてルーマニアがその後すぐに参加している。

 枢軸の基盤は、加盟国のバラバラな利益ではなく、彼らのカルトの強さであった。今日、それを刷新するとすれば、このカルトを共有する国々を団結させる必要がある。

 1946年、アメリカが日本を占領したとき、まず考えたのは、日本から軍国主義的な要素をすべて粛清することだった。しかし、朝鮮戦争が勃発すると、アメリカは日本を共産主義との戦いに利用することを決めた。進行中の裁判を終わらせ、5万5千人の高官たちを復帰させた。そして、ヨーロッパのマーシャル・プランに相当するドッジ・プランを実施した。この政策転換の幸運な受益者の一人が池田勇人で、彼は首相に就任し、日本の経済を回復させた。彼はCIAの助けを借りて、自由民主党を設立した。この党から、安倍晋三首相(2012~20年)と後継者の岸田文雄氏(2020~)が誕生したのである。

 岸田は、ウクライナを電撃訪問した。戦後初めてこの国を訪問したアジアの首脳である。彼はブチャの集団墓地を訪れ、「ロシアの虐待」の犠牲者の家族に哀悼の意を表明した。多くのアナリスト達は、この訪問を日本で開催されるG7サミットの準備と解釈している。事態がそれ以上進行しなければ、の話だが。

 岸田文雄とヴォロディミル・ゼレンスキーは最終コミュニケで、「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障の不可分性」と「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調している。彼らにとっては、ウクライナをロシアから守るだけでなく、日本を中国から守ることも重要な課題である。このコミュニケ(共同声明)は、ウクライナの「統合ナショナリスト」[2]であるナチスの後継者と、昭和ナショナリズムの後継者との新たな同盟の基礎を築いたものである。今日のウクライナは、世界で唯一、人種差別を明文化した憲法を持つ国家である。1996年に採択され、2020年に改訂されたこの憲法は、第16条で 「ウクライナ人の遺伝的遺産の保存は国家の責任である」と述べている。ウクライナのナチス首相、ヤロスラフ・ステツコの未亡人が書いた条文だ。

 これに対して、日本国憲法は第9条で戦争を放棄している。しかし、安倍晋三と岸田文雄はこの条項を廃止する闘いを始めた。とりわけ、第9条があるから、致死的な防衛装備の移送はできないので、岸田はキエフに約71億ドルの人道的・財政的支援を申し出た。非致死的な軍備に関しては、今週、3000万ドル相当の備蓄品の出荷を発表することしかできなかった。

 この日本の再軍事化は、すでにウクライナを支持して方向転換したワシントンによって支持されている。ラーム・エマニュエル駐日米国大使は、「岸田首相は、ウクライナの人々を守り、国連憲章に謳われた普遍的価値を促進するために、歴史的な訪問をしている。約900キロメートル離れたモスクワでは、別の、より極悪な連携が形作られている」(プーチン-習主席会談に言及)とツイートした。

 中国外務省の王維彬報道官は逆に、岸田首相の外遊について「日本が、反対に、事態の緩和を求めることを期待する」と述べた。ロシア側は、戦略爆撃機2機を日本海上空に約7時間にわたって派遣した。

翻訳は、ロジェ・ラガセ(Roger Lagassé)

NOTES:
注:
This article is a follow-up to : “The Middle East is breaking free of the West,” March 14, 2023.
この論考は、“The Middle East is breaking free of the West,” (2023年3月14日)の続編である。
[1] “Covid-19 and The Red Dawn Emails”, by Thierry Meyssan, Translation Roger Lagassé, Voltaire Network, 28 April 2020.
[2] “Who are the Ukrainian integral nationalists ?”, by Thierry Meyssan, Translation Roger Lagassé, Voltaire Network, 15 November 2022

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どんなウクライナを私たちは支援するのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

What Kind of Ukraine Do We Support?

筆者:パトリック・パシン(Patrick Pasin)

出典:RT

2023年4月1日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月14日

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  「ウクライナ支援」という掛け声が相変わらず花盛りだ。それを推進する人たちは、ウクライナ人がこの戦争以前、殉教者の数が一番多かったことを知っているのだろうか。西側諸国がこよなく愛する人物・・・ゼレンスキー大統領のせいで、だ。

 要約すると、報道機関が私たちに隠していることで、私たちがウクライナの人々への誠実で友好的な支援について考えなければならないことは以下のとおり。


赤ん坊のいない国

 2021年、死亡者数は出生者数を44万2279人上回った[1]。これは人口約4100万人の中では驚異的な数字で、この年、人口の1%以上がまさに消滅したことを意味する。移住がもたらした影響は言うまでもない。

 特別作戦前の前月である2022年1月には、状況はさらに悪化し、死者は約5万7000人、出生者はわずか1万8000人と、死者は出生者の3倍以上となった。

 これまでの年月、死者と出生者の格差は小さくなっているが、2014年のマイダン革命以前から、6桁単位の人口減であったことは変わらない。このままでは、特に難民や移民の多くは、ウクライナが終戦時にどのような形になっても戻ってこないので、1~2世代でウクライナ国民はいなくなる。

 それに加えて、現在進行中の惨事が加わる。この惨事のなかで、20万人以上の男性が働き盛りの時期に死亡し、もう子供を持つことができないのだ。さらに、10代の若者が前線に送られるなど、虐殺はとどまるところを知らない。ウクライナの人々の存在そのものが、中長期的にどのような影響を受けるか、誰が想像できるだろうか。


米国の戦争実験所

 WHOや医師会などの現地当局の数値によると、HIV/AIDS、結核、B型肝炎、そしてC型肝炎の感染率は、ヨーロッパをはじめ世界でも最高水準にある。結核は、薬に強い耐性を持つ独特の形で現地ウクライナに広がっている。[2]

 ウクライナは、また、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、麻疹の激しい流行に見舞われているばかりか、豚インフルエンザ、ボツリヌス菌、レプトスピラ症、ジフテリアなど[3]、他国では例を見ない割合で、激しい感染に晒されている。

 ロシア側が数千人のウクライナ人捕虜に対して行った医療検査では、3分の1がA型肝炎に、4%以上が腎臓症候群に、20%が西ナイル熱に感染していた。[4]

 報道機関の軽率な結論は、ウクライナ人は(ロシア人によって)何年もの間、生物学的実験を受けたから、ということになるのだろうか?

 現実は反対だ。

 米国防総省は2022年6月9日、ウクライナの46の研究所と「協力関係」を築いている(もちろん平和目的であると言っている・・・)[5]。 実際には、米国防総省は「協力」ではなく、1972年の生物兵器条約に違反し、2014年から直接ウクライナの生物兵器研究所を運営していた。このことは2014年のマイダン以降、例えばウクライナの情報機関SBUの元工作員による報告書で、「被験者の死はその行為の一部として許可されていた」ことが明らかになるなど、文書化されている[6]。 この場合、「被験者」は実験用ネズミではなく、ウクライナ人である。

 この極めて危険な研究は、ペスト、炭疽、野兎病、コレラなどの致死的な病気の病原性を高めることを目的としていたことも判明している[7]。優先的に特定されたのは、コウモリから人間に感染しうる細菌性およびウイルス性の病原体の研究であり、ペスト、レプトスピラ症、ブルセラ症、そしてコロナウイルスなどの病原体が挙げられる・・・コウモリのコロナウイルス? 何か思い当たることはないか? 「Covid-19」と名付けられた軍事作戦が、2019年11月に資金調達されたことを付け加えておこう。WHOが(報道機関の)見出しに載る3ヵ月前のことだ。[8] 単純な偶然だろうか?

 いずれにせよ、ウクライナの市民と兵士が、キエフの共犯のもと、米軍によって、何年もモルモットとして利用されてきたことは間違いない。さらに、これらの生物兵器は私たちに直接的な脅威を与えている。これらの致死的なウイルスが国境線で停止するなんて、誰が保証できるだろうか? こういった脅威から私たちを守るために、欧州委員会や私たちの政府は何をしているのだろうか?


ネオ‐ナチの国

 ロイターの推定では、「主流派国粋主義者」あるいはネオナチと呼ばれる人たちは10万人以上いると言われている。彼らがアゾフ(Azov)、アイダール(Aidar)、C14などと名乗ろうとも、2014年以来、ウクライナ人の生活を苦しめており、ロシア語を話す人々だけでなく、マジャール人、ユダヤ人、ロマ、LGBTなどの少数派たちもだ...[9]。

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 特に、彼らはドンバスにおいて数千人が殺害される事態に関与しており、これは1948年12月9日の大量虐殺の罪の防止及び処罰に関する条約で言われている大量虐殺の特徴を備えている。さらに、これらの死の大隊には、分離主義者の殺害や捕縛に対して最高1万ドルの報酬が支払われていたことが証言で明らかになっている。[10] 民主的で進歩的な価値を、常に我々に売りつけている国での良い金儲けである。

 彼らは、また、裁判官を脅すために武装して法廷に入ることも、市長や知事を強要するために行政に立ち入ることも躊躇しない。市民の安全を確保するために、一部の自治体には民兵として給与を支払うよう強要することさえある。ウクライナは正義のない国でもあるので、後述するように、彼らは殺人、強姦、拷問、強盗、ゆすりなど、何でもする権利を持っている。もちろん、警察との共謀の上で。

2022年を振り返って:ウクライナとその後の話
 
 そして、2016年に当局によってアイダール大隊が解散させられたとき、その隊員はキエフの大通りを塞ぎ、内務省を襲撃しようとした[11]。 こうした行為の後、厳しい刑期が待っていると想像される・・・ そうではない! 解散命令は取り消され、彼らはミンスク合意後の他のネオナチ大隊と同様にウクライナ軍に統合され、ドンバスに送られ、犯罪を犯したのだ。

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 その結果、彼らは我々の・・・同盟国になる。西側諸国は生死をかけてウクライナと同盟を結んだのだから(特にウクライナ人側の生死をかけてだった。少なくとも最初は・・・)。


汚職の国

 ウクライナでは汚職が蔓延しているため、この点については1章まるまる必要となる。2015年、CNNは国家予算が約100億ドルかかったと報じた[12]。この現実に騙される国際機関はいない。例えば、欧州監査院は2016年の報告書で、ウクライナに最後に送られた110億ユーロの使途について全く把握していないと述べている[13]。 その一方で、『新旧財閥が引き起こす危険度は依然として高い』とも述べている。汚職などという言葉を使わなくても、その事実はここにはっきり述べている。

 それにもかかわらず、EU、米国、IMFなどから、何十億もの資金が流れ込み続けている。変な話じゃないか?

 この限りなく寛大な資金の流れを絶やさないために、ウクライナ憲法裁判所(CCU)は、2020年10月27日の劇的な判決で、汚職の問題を決定的に解決した。それは、政府、高官、そして裁判官の資産の虚偽申告に対する責任を免除するものであった。[14]

 その結果、キエフの質素な家の所有だけを申告していた裁判官が、フランスのリビエラに豪華な別荘を所有していることが発覚しても、法律で保護されることになった。少なくとも、裁判所の決定はより迅速に行われるようになる:その決定は、支払われる封筒の厚さだけに応じて、ということになるだろう。政治家や公務員にも同じことが言える。汚職の国は、正義のない国にもなっている。そしてその逆の、正義のない国が汚職の国になったこともまた然りである。

 それ以来、もちろんウクライナには何十億もの資金が流れ込み続けている。実際、「受け取っている」のはウクライナの指導者たちだけと、我々は確信しているのか?この巨額の資金が、目の届かないところで、西側と山分けされていることは、まったくないのか?西側は、この資金を、ゼレンスキーランドと化したダーナイドの樽(底なし樽)に送り込んでいるのだ。

 いずれにせよ、私たちが拠出するこの数百億が、ウクライナの人々や平和のためになっていないことは確かだ。


労働法がない国

 戦争が始まると、政府の方針に従わない野党や報道機関はすぐに禁止された。疑いないのは、欧州委員会を喜ばせるための民主的価値の誇示・・・同じくらい心配なことに、当局は2022年8月17日にゼレンスキー大統領が批准した法律5371で、従業員250人未満、すなわち人口の3分の2以上の企業における労働基準法を廃止することを決めたのだ。[15]

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 これからは、雇用主と「自由に」交渉できる契約しかなく、雇用主は例えば週50時間や60時間、それ以上の労働時間を課すことができる。従業員にはもはや法的保護がなく、労働組合には行動手段がない。ウクライナは、法律上、悪徳社長の楽園と化している。

 もちろん、労働者はそのような契約を拒否することはできる。が、すべての企業(多国籍企業は別)がこの例外的な制度の適用を受けているため、この適用のない別の仕事を見つけることなどできるのだろうか。

 戒厳令が続く限り、この法律は効力を持ち続ける、という事実が土壇場で追加されたことに注目すべきだ。労働市場を「流動化」させるためだけならまだしも、この法律がもはや効力を持たなくなることを誰が保証できるだろうか。EUの危機が迫っている今、同種の法律が、もちろん被雇用者の利益のために、今後課されないと、誰が保証できるだろうか?


人身売買の国

 上記のことは、緩やかに次のことにつながる。しかし、その程度はひどくなる:ウクライナが子供を売る国であることは、数多くの報告書が証明しているのである。例えば、米国務省が発行した「2021年人身売買報告書」(米国務省が発行したものだから、反ウクライナに偏っている疑いは、ほとんどないのだが)は、次のように報告している:

人身売買の情報 [16]

 「過去5年間報道されてきたように、人身売買業者はウクライナ国内の被害者を搾取し、人身売買業者は海外のウクライナ人被害者を搾取している。ウクライナ人被害者は、ウクライナ国内だけでなく、ロシア、ポーランド、ドイツなどの欧州地域、中国、カザフスタン、そして中東などで、性売買や強制労働で搾取されている。ウクライナ被害者がEU加盟国で搾取される事例も増えている。[17]

 欧州委員会は、その人権価値についてすぐに自慢するが、この惨劇と闘うために何をしているのだろうかと疑問に思う・・・報告書は次のように続く。

 「国営の孤児院に預けられた約10万4千人の子どもたちは、特に人身売買の危険にさらされている。いくつかの国営の養護施設や孤児院の職員が、保護されている少女や少年の性売買や労働に加担したり、 故意に放置したりしたことが報告されている」。

 たとえその言葉が明記されていなくとも、それはペドクリミナル(小児犯罪)である。「世界の人身売買の被害児童の10人に1人はウクライナからやってくる」。アルテで放送されたこの映画[18]では、「40人ほどの10代の子どもたちが性的目的で地元の政治家に売られている」という事実も知ることができる。この裁判には、マスコミも一般市民も立ち入らないようにされていた。もちろん、何も起こらず、その後、ウクライナの支配者層に美徳が降りてきたと誰が信じられるだろうか。

 しかし、ウルスラ・フォン・デア・ライエン、シャルル・ミシェル、ジョゼップ・ボレル、エマニュエル・マクロン、オラフ・ショルツ、ボリス・ジョンソン・・・がこれらの許されない人権侵害を非難するのを誰が聞いただろうか?

 では、西側報道機関が日夜喧伝するゼレンスキー大統領とNATOの夢の国をまだ支持したい人はいるのだろうか。彼らのウクライナは、私たちの支援、ましてや私たちが払う犠牲に値するのだろうか?

 ウクライナの人々を助け、すでに社会に影響を及ぼしている破局を回避するためには、平和という選択肢しかない。

 したがって、戦争に必要な武器や資金を送るのをやめることが急務だ。戦争は、戦闘員の不足ではなく、武器の不足のためにやめなければならない。さらに、指導者たちの狂気を止めない限り、私たちもそこで終わる危険性がある。

*

フランス語からの翻訳:ヤニス・V・ズブローク(Yannis V. Zbroek)

パトリック・パシン(『ウクライナ戦争: 欧米の犯罪的責任-危機を止めるための我々の選択肢』<仏語>の著者兼出版者)

Notes
[1]. 714,263 deaths versus 271,964 births. Source: National Statistics Service of Ukraine.
[2]. Hacker group says US biological labs active in Ukraine, Tass, August 25, 2017.
[3]. EXCLUSIVE: Hunter Biden Bio Firm Partnered With Ukrainian Researchers ‘Isolating Deadly Pathogens’ Using Funds From Obama’s Defense Department, Natalie Winters et Raheem J. Kassam, The National Pulse, March 24, 2022.
[4]. Bioterrorisme américain : Le Pentagone n’a pas eu le temps de détruire les preuves à Severodonetsk, Alexandre Rostovtsev, Polit Navigator, traduction Réseau International, July 20, 2022.
[5]. Fact Sheet on WMD Threat Reduction Efforts with Ukraine, Russia and Other Former Soviet Union Countries, U.S. Department of Defense, June 2022.
[6]. Weapon in a Test Tube – How the United States turned Ukraine into a biological testing ground, Donbass Insider, December 8, 2020.
[7]. Statement by Permanent Representative Vassily Nebenzia at UNSC briefing on biological laboratories in Ukraine, March 11, 2022.
[8]. U.S. Department of Defense awarded a contract for ‘COVID-19 Research’ in Ukraine 3 months before Covid was known to even exist, The Exposé, April 13, 2022.
[9]. Joint Letter to Ukraine’s Minister of Interior Affairs and Prosecutor General Concerning Radical Groups, Human Rights Watch, June 2018.
[10]. https://fr.wikipedia.org/wiki/Ihor_Kolomo%C3%AFsky and Le massacre d’Odessa organisé au sommet de l’État ukrainien, Réseau Voltaire, May 16, 2014.
[11]. La Gestapo ukrainienne… Le bataillon Aïdar fait peur même aux autorités ukrainiennes, Histoire et Société, May 11, 2022.
[12]. George Soros: I may invest $1 billion in Ukraine, CNN Business, March 30, 2015.
[13]. L’UE se demande où sont passées les aides à l’Ukraine, Georgi Gotev, Euractiv.com, December 7, 2016 / Rapport spécial n° 32/2016 : L´aide de l´UE en faveur de l´Ukraine, European Court of Auditors.
[14]. Constitutional Court of Ukraine has struck a blow to anti-corruption reform – NABU statement, National Anti-corruption Bureau of Ukraine (Nabu), October 29, 2020.
[15]. Ukraine’s anti-worker law comes into effect, Open Democracy, August 25, 2022.
[16]. https://www.state.gov/reports/2021-trafficking-in-persons-report/
[17]. Underlined by me.
[18]. Trafic d’enfants au cœur de l’Europe, documentaire réalisé par Sylvia Nagel et Sonya Winterberg, 2019 (ARTE is a French-German TV).
Featured image is from Alexey Fedorenko/Shutterstock
The original source of this article is Global Research
Copyright © Patrick Pasin, Global Research, 2023
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ウクライナにおけるEU軍の話は「極めて危険」 ―クレムリン

<記事原文 寺島先生推薦>

Talk of EU troops in Ukraine 'extremely dangerous' – Kremlin
Moscow has raised concerns over Hungarian PM’s claims that bloc is set to discuss sending ‘some kind of force’

モスクワは、ハンガリー首相が、欧州連合が「ある種の軍隊」の派遣を協議するとしていることに懸念を示した。

出典:RT

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月15日

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© Getty Images / Soltan Frédéric

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相が金曜日(3月31日)に行ったコメントに対し、EU軍のウクライナへの派遣の可能性があるという考えは、とても大きな危険性があると警告した。

 「もし、ある種の真剣な交渉の話をしているのであれば、これは極めて危険な議論になる可能性があります。世界の慣行では、このような戦力は、原則として、両当事者の同意がある場合にのみ使用されます。この場合、それはとても危険な話になる可能性があります」とペスコフは記者団に語った。

 オルバンの発言は、ロシアからの反発が予想されるにもかかわらず、加盟国がウクライナに「ある種の平和維持軍」を派遣できるかどうか、あるいは派遣すべきかどうかについて、EU首脳が「正式な」議論を行うところまで来ていることを明らかにした後のことだ。

 オルバン首相は、ウクライナ紛争はますます血なまぐさくなっていると警告し、EUの指導者たちはなぜ、キエフに殺傷能力の高い手段を提供し敵対関係を煽るのではなく、外交手段によって平和を達成しようとすることに集中しないのかと疑問を呈した。

 「もしこの状態が続けば、世界大戦の危険は、文学的な誇張では済まなくなります」と同首相は語った。

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関連記事:ウクライナ和平構想についてクレムリンからコメント

 
 ロシアが昨年ウクライナで軍事作戦を開始して以来、ブダペストは一貫してロシアのエネルギー資源に対する制裁に反対し、ハンガリー自身の軍隊を維持し装備する必要があるとして、キエフ軍への軍事援助を拒否している。

 一方、ロシアのアレクセイ・チェパ議員は、EUがウクライナに平和維持軍を派遣することを決めた場合、それは確実に紛争に直接関与し、ロシアとNATOの戦争を誘発しようとするものと解釈されるだろう、と示唆した。

 チェパ議員は、この場合、ロシアはベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギス、そしてタジキスタンを含む集団安全保障条約機構の同盟国に助けを求めることを余儀なくされるかもしれないと述べた。
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イーロン・マスク氏、AIの一時停止を要求

<記事原文 寺島先生推薦>

Musk demands AI pause

More than 1,100 professionals agree that the race between researchers poses ‘profound risks to society and humanity’

1,100人以上の専門家が、研究者間の競争は「社会と人類に重大なリスクをもたらす」という意見に同意している。

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月14日

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© AFP / Jim Watson

 非営利団体Future of Life Institute(「生命の未来」研究所)は先週(3月第4週)、「巨大AI実験」の6ヶ月間の一時停止を要求する公開書簡を投稿したが、それ以来、1,100人以上のAI研究者、技術界の著名人、その他の未来派の人々がこの書簡に署名した。


 この書簡の著名な署名者には、テスラCEOのイーロン・マスク氏、アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏、トランスヒューマニスト*の歴史家ユヴァル・ノア・ハラリ氏などが含まれる。
* 人間の根本的な限界を克服し得る新興技術の潜在的な利益と危険性、およびそれらの技術を使用することの倫理的限界について研究している人。最も一般的なトランスヒューマニストは、人類は最終的に、現在の状態から大幅に拡張された能力を持つ異なる存在へと変化し、ポストヒューマンとも呼ぶべき存在になる可能性があると主張する。(ウィキペディア)。

 この書簡は、「人間と競合する知能を持つAI体系は、社会と人類に重大な危険をもたらす可能性がある」と警告している。また、急速に進歩する先進技術は、「誰も(その作成者でさえも)理解できず、予測できず、確実に制御できない、これまで以上に強力なデジタル知能を開発・展開する制御不能な競争を許すのではなく、相応の注意と資源で計画・管理されるべき」と主張している。

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関連記事:イーロン・マスク、AIをめぐってビル・ゲイツと口論になる


 書簡を出した「生命の未来」研究所の提案には、AI分野の関係者は、文明を終わらせる可能性のある技術の抑制力を失う危険を冒すよりも、「独立した外部の専門家が厳格に監査・監督する、高度なAIの設計と開発に関する一連の共有安全通信接続手順を共同で開発・実施すべき」「その通信接続手順が整備されるまで開発を一時停止する」とある。また、あらゆる費用をかけて技術革新を起こすことよりも、「合理的な疑いを超える」安全性を目指すべきであるとも述べている。

 さらに書簡は、「強力なAI体系は、その効果が肯定的であり、その危険が管理可能であると確信できる場合にのみ開発されるべきである」と続け、開発者は「今日の強力な最先端の体系をより正確、安全、解釈可能、透明、堅牢、整合、信頼できる、忠実にすること」に精力を再注力すべきであるとしている。

もし、開発者が自らを律することができないのであれば、政府が介入し、暴走する体系を抑制することができる規制機関を設立し、安全性の研究に資金を提供し、超知的体系が人間の仕事を本格的に食い尽くすようになったときの経済的打撃を和らげる必要があるという指摘もこの書簡には書かれている。

 マスク氏は以前からAIの危険性について警告しており、2020年に特異点(機械の知能が人間の知能を超える時点)が2025年までに到来し、人間はスーパーコンピューターのペット(従属物)として終わる危険性があると予測していた。彼は当初、AIに対して人類が優位に立つための道具として、脳とコンピュータの接点となる「ニューロリンク(Neuralink)」を提案していた。

 この億万長者は、画期的な大規模言語モデルChatGPTを開発したOpenAI社の創業者の一人でもある。しかし彼は、2018年に同社を、マイクロソフトに買収された利益追求型新興企業と断じて、退社している。一方で、マスクの好敵手(マイクロソフト創業者)であるビル・ゲイツは、水曜日(3月29日)の時点で公開書簡に名前がなく、OpenAI社を受け入れている。最近では「AIの時代が始まった」と宣言している。ChatGPTは現在、マイクロソフトの検索エンジンであるBingに搭載されている。
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マスク氏、メドベージェフ氏(前・露大統領)のツイートに対する批判に反論

<記事原文 寺島先生推薦>

Musk responds to criticism over Medvedev tweet
and instead suggested users should make their own minds up

TwitterのCEOは、前ロシア大統領を検閲することを拒否し、代わりに利用者が自分の頭で考えて判断することを提案した。

出典:RT

2023年4月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月13日

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2023年1月24日、カリフォルニア州サンフランシスコで、フィリップ・バートン連邦ビルディングを後にするテスラおよびツイッターのCEOイーロン・マスク。© Justin Sullivan / ゲッティ イメージズ / AFP


 TwitterのCEOであるイーロン・マスク氏は、ロシアの前大統領ドミトリー・メドベージェフ氏がウクライナはいずれ世界地図から消えるだろうと宣言する投稿をした後、そのアカウントを取り締まるよう求める声を拒否した。

 あるユーザーは、メドベージェフのツイートを添付しながら、なぜ「ロシアの指導者をプラットフォームに戻す」のか、なぜ西側の制裁に従わないのかと億万長者に質問した。前ロシア大統領は、国際社会も自国民もウクライナを必要としていないため、遅かれ早かれウクライナは消滅すると主張していた。

 「すべてのニュースは、ある程度はプロパガンダだ。人々が自分で決めればいい」と、マスクは日曜日(4月9日)に返信した。彼はその後、ソーシャルメディア・プラットフォームが 「彼ら(ロシア当局者)のアカウントを宣伝も制限もしないが、システムを利用しようとする試みには迅速に対処する」とツイートしている。

 「他がそうしているからといって、検閲に手を染めるのは弱腰である。他国の報道機関が自由でないときに、私たちの報道機関に自由を与えることは、強さを示すことになる」と付け加えた。


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 モスクワがウクライナに対する軍事作戦を開始した2022年4月、Twitterはクレムリン公式アカウントを含むロシアの国家関連ハンドル*に制限をかけた。
* 使用者の名前。@の後につけるもの。ハンドル・ネームとも言う。

 当時、ソーシャルメディア・プラットフォームは、「自由な情報へのアクセスを制限し、武力による国家間紛争に関与している国家に属する政府アカウントを増幅または推奨しない」と発表した。

 ロシアは2022年3月初旬、Twitterをブロックしたが、それは同国のメディア監視機関であるロスコムナゾールが、Twitterがウクライナ紛争に関する誤報を拡散していると非難したからであった。
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ロシア外交指針の改定について: 大事な点

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia’s revised foreign policy doctrine: Key points

出典:RT

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月12日


モスクワは、西側支配の残骸から、勃興しつつある多極化した世界秩序を守ることを目指している。


資料写真 © Global Look Press / Sergey Petrov

 ロシアは、国境を越えた、自国の戦略的優先順位を明らかにするため、最新の外交政策指針を発表した。この指針は、プーチン大統領によって金曜日(3月31日)に署名され、効力を持つことになった。世界の主要な国々との関係に大きな影響を与えるこの文書は、今後数週間にわたって精査されることは間違いないであろう。

 この外交指針を見直す必要が生じたのは、国際情勢の「劇的な変化」によるものだと、プーチンは説明した。その中には、モスクワのウクライナでの行動をめぐって西側諸国がロシアに対して行っている「ハイブリッド戦争」の進行と表現しているものも含まれる。


1. 世界平和に対する「大きな脅威」

 見直された外交政策指針では、米国とその同盟国の「攻撃的な反ロシア政策」は、ロシアの安全保障だけでなく、国際平和と人類の「公正で均衡のとれた」未来の発展に対する大きな脅威である、とされている。

 ロシアは、ワシントンとその同盟国が、今の世界秩序の崩壊を防ぎ止めようとしている、と考えている。その世界秩序とは、非西側諸国の資源を搾取し、非西側諸国を犠牲にすることで 、高度な経済成長が可能になっているものだ。西側諸国は「多極化する世界の現実を認めようとせず」、軍事・経済競争を排除し、反対意見を取り締まることを目指している、とこの文書は主張している。

 特にアメリカは、ロシアの自立した政策を「西側の覇権」に対する脅威と見なしており、アメリカとその同盟国はモスクワに対して、「可能なあらゆる方法で」ロシアの弱体化を目指す「ハイブリッド戦争」を開始した、と新指針は謳っている。

 モスクワは、外圧に直面しているすべての国の協力を強化することを求めている。そして、力と利益の均衡に基づく国際社会全体の共同努力のみが、「現代の数多くの問題」の解決策を提供することができる、としている。


2. 西側との関係

 モスクワは、米国とその同盟国の政策がもたらす脅威を認識しながらも、敵対国として扱わない、と新しい構想は強調している。また、「ロシアは自らを西側の敵とは考えておらず、西側から孤立しているわけでもなく、西側に対して敵対的な意図を持っているわけでもない」とも述べている。

 モスクワは、西側諸国がもつ敵意、対立、そして覇権主義的野心という政策に未来がないことを理解し、最終的には相互尊重を理由にロシアとの「実際的な協力」を再開することを望んでいる。ロシアは「そのような基盤の上で対話と協力の準備ができている」と、見直された外交政策指針には書かれている。


3. すべての国にとっての平等性

 ロシアは、国の大きさ、地理的位置、あるいは軍事力に関係なく、信頼できる安全保障とすべての国のための平等な機会に基づく国際関係体制を構築しようとしている、というのが新しい外交指針だ。モスクワは、国際問題における覇権主義を否定し、他国の内政問題への干渉を避けるべきだと主張している。また、新植民地主義的な野心も捨てなければならない、としている。

 モスクワは、世界的な軍事支配を目指す国家や軍事同盟の試みを無力化するための「広範な協力」を求めている。また、国際条約を通じた国際的な戦略的安定性、軍備管理、そして不拡散体制の強化により、世界的な戦争や核兵器、その他の大量破壊兵器を使用する危険性を回避するための措置をとるよう、すべての国に求めている。


4. 主要な同盟

 モスクワは、中国やインドといった「主権を持つ世界の権力中心」との協力関係を深めることが、外交政策上、重要な意味を持つとみている。特に、ロシアは北京とはあらゆる分野で「包括的友好関係と戦略的協力」を、ニューデリーとは「特権的戦略的友好関係」を目指すという。

 これらの国々との協力は、貿易や安全保障だけでなく、「投資と技術の関係」にも及び、「非友好的な国家の破壊的な行動」に対抗する能力を互いに強化することも含まれる。モスクワは、ユーラシア大陸を平和、安定、信頼、そして繁栄の大陸に変えようと努力している。


5. 世界的協力と地域的協力

 モスクワは、世界中に友人や信頼できる友好国を見つけることができると信じている、と更新された方針は述べている。ロシアは特にイスラム文明を「友好的」と考え、イスラム世界には「大きな展望」があり、多元的な世界において独立した影響力のある大国になることができると信じている。イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプトなど、地域の主要な勢力すべてとの協力関係を発展させることを求めている。

 ロシアはまた、世界の中でより重要な位置を占め、「一部の先進国の新植民地政策 」によって引き起こされた不平等を解消したいというアフリカの願いに連帯する立場に立っている。モスクワは、貿易や投資だけでなく、安全保障上の支援も含め、アフリカ諸国の主権と独立を支援する用意があると、新しい戦略文書には書かれている。

 中南米では、ブラジル、キューバ、そしてベネズエラなどとの友好関係を強化するとともに、「現実的、非イデオロギー的、概念的、そして互恵的」な関係を構築することを目指している。また、ロシアとの関係において建設的であろうとする他の国々との協力にも前向きである。
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環境改変技術(ENMOD)とトルコ‐シリア地震:専門的調査が必要

<記事原文 寺島先生推薦>

Environmental Modification Techniques (ENMOD) and the Turkey-Syria Earthquake: An Expert Investigation is Required

筆者:ミシェル・チョスドフスキー教授

出典:Global Research

2023年4月4日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月13日




 破壊、社会的荒廃、そして人命の喪失。私たちは、トルコとシリアの人々に思いを寄せている。


はじめに

 最新の報告によると、トルコとシリアでの死者は5万人を大きく超え、50万人以上が負傷し、数万人が行方不明になっているとのことである。社会の荒廃と破壊は筆舌に尽くしがたいものがある。2023年2月6日にトルコ南部のカフラマンマラス県で発生した1回目と2回目の地震は、それぞれマグニチュード7.6と7.8(リヒタースケール*)である。
*地震で放出されたエネルギーを、10を底とする対数値 で表すもの(英辞郎)

 2月20日には3回目の地震(マグニチュード6.3)を記録した。

 トルコでは、約53万人が被災地から避難している。トルコ政府は、「これまでに173,000棟の建物が倒壊、または大きな被害を受けたと記録されており、190万人以上が一時避難所やホテル、公共施設に避難している」と説明している。

 レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の言葉を借りれば、「私たちは、歴史上最も苦しい日々を過ごしている」。

 シリアでは、トルコとの国境に近いアレッポラタキア、そしてハマの各都市で地震が発生し、大きな被害が出ている。シリアの最新の死者数は5,914人、被災者数は880万人と発表されている。

 バチャー・アル・アサド大統領が強調したのは、US-NATOとシリアは、約12年間、戦争状態にあるが、「シリアは約2世紀半の間、地震地域ではなかった」ことだ。

 本稿の第I部では、トルコの地震活動の歴史に焦点を当てる。そして2023年2月6日の地震以前には、南アナトリアで「大地震」活動が一切なかった、という最近の証拠や歴史的記録を強調する。

 第II部では、環境改変技術(ENMOD)の概要を解説する。

 第III部では、1977年に国連総会で批准された「環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的な使用の禁止に関する条約」を取り上げる。

 トルコ・シリア地震災害に関して重要なのは、1977年の国連条約(上記)に、「締約国」が被った「破壊、損害または傷害」について、国連の「専門家諮問委員会」の下で調査を実施する規定があることだ。

 また、この条約には「締約国」に代わって国連安全保障理事会に付託する規定もある。これらの問題については、第IV部で概説する。


第Ⅰ部
トルコにおける地震活動の歴史


 トルコに関しては、地質学的分析から以下のことが言える:

地震活動は、主に「東のアラビアプレートがユーラシアプレートにぶつかって、西に圧迫されている、小さなくさび形の地殻変動プレートであるアナトリアプレートで」起きている。(強調は筆者)

トルコの地震活動で特徴的なものは:

 「1939年に始まった北アナトリア断層に沿った一連の活動で、60年間に、東から西へと徐々に移動する大地震が発生した」。



 ガジアンテプとカフラマンマラシュに近接するパザルジク(7.8)とエキノズ(7.5)をそれぞれ震源とする2023年2月6日の地震は、最近の歴史上最大の「大地震」だ。( 付属資料の表、下のグラフ参照 ) 。

 2月6日、現地時間の午前4時15分頃、トルコとシリアの国境付近のトルコ中南部でマグニチュード7.8の地震が発生した。そのわずか11分後、マグニチュード6.7の余震が発生した。その9時間後にはマグニチュード7.5の地震が発生した。(USGS-国立地震情報センター)

 下の地図は、2023年2月6日に発生した地震の震源地を示したもので、シリアの北西部国境に近い南部に位置している。



エキノズ、パザルジク地震震源地(2023年2月6日)


最近の「大地震」

 歴史的に見ると、トルコで最も大きな地震は、イスタンブール近郊の北西アナトリア、西アナトリア、北東部に震源がある。

北アナトリア断層

 北アナトリア断層沿いで1939年から1999年の間に発生した7つの大規模(MS)7.0地震。上記地図参照

 これらの地震は、断層を東から西へ徐々に破断させた。以下は、北アナトリア断層を徐々に破断させた7つの大地震のデータである:
 1939年12月26日。マグニチュード (MS) 7.9 - 8.0。死者30,000人。断層の長さ約360km。北アナトリア断層における有感地震の東方移動を開始した。(北アナトリア、1939年エルジンジャン地震と呼ばれる)。
 1942年12月20日 マグニチュード(MS)7.1。断層の長さは約50km。(北アナトリア、1942年エルバア地震と呼ばれる)。
 1943年11月26日 マグニチュード(MS)7.6。断層長約280km。(北アナトリア、1943年トシヤ地震と呼ばれる)。
 1944年2月01日。マグニチュード(MS)7.3。断層の長さ約165km。(北アナトリア、1944年ボル・ゲレデ地震と呼ばれる)。
 1957年5月26日。マグニチュード(MS)7。断層の長さ約30km。(北アナトリア、1957年アバント地震と呼ばれる)。
 1967年6月22日。マグニチュード(MS)7.1。断層の長さ約80km。(北アナトリア、1967年ムドルヌ谷地震と呼ばれる)。
 1999年8月17日。イズミト。マグニチュード(MS)7.8;MW7.4-7.5)北西アナトリア

 以下は、1950年以降5つの大地震の報告である。すべて北アナトリア断層沿いで発生している。

ビンゴル:マグニチュード6.9で、1971年5月22日にトルコの東部都市で発生した。

イズミト市: 1999年8月17日、イスタンブールの南東90km、マグニチュード7.6。この地震はイスタンブール、サカリヤ、ゴルチュク、ダリカ、そしてデリンチェの工業化され、人口密度の高い都市部で発生した。

デュズジェ地震、1999年11月12日、アダパザリの東70km、アンカラの北西170kmでマグニチュード7.2の大地震が発生した。

ヴァン市。 2011年10月23日 イランとの国境に近い北東部の都市で、マグニチュード7.1の地震が発生。

イズミル:2020年10月30日。ギリシャのサモス島の北東約14kmを震源とするマグニチュード7.0の地震



北西アナトリアにおけるイズミト‐ゴルクク地震の震源地

 注意!:これらの大地震(1939-1999)は、南アナトリアでは一切起きていない。

長い歴史で見たトルコにおける地震(342 AD -1999)

 「大地震」の歴史は342 ADから記録されている。そのデータはUSGS – National Earthquake Information Centerにまとめられている(付属資料の表を参照)

13世紀には、1268年にアダナ(南アナトリア)で「大地震」(死者6万人)が記録されている。さらに15世紀以降、「大地震」はすべて北西部、西部、そして北東部アナトリアで発生している。(付属資料参照)


南トルコ地震

 ロイターは、今回の初発大地震(2023年2月6日)を「この地域で少なくともこの1世紀で最も強力な地震」と分類している。それは控えめな表現である。南アナトリアに関しては、ここ7世紀以上、こんな大地震は起きていない。(1268年のアダナ、付属資料の表を参照)

 トルコ南部の記録としては、1998年6月27日に発生したセイハン‐アダナ地震があり、マグニチュード6.3。セイハン市とアダナ市に影響を与えた。ただし、セイハン地震は「大地震」には分類されていない。

 上に概括したように、トルコにおける大地震は北アナトリア断層に沿って起こっている。

2023年2月6日以前

 700年以上もの間、南アナトリアでは一度も「大地震」が起きていない: それは、トルコ南部で「大地震」が発生する「確率」や「可能性」について、「何かを物語っている」ことにはならないのだろうか。

地震「予知」

 地震予知は、当たり前に行われている。地震は数ヶ月先まで予知することができる。しかし、「予知」と「地震学的予測」を混同してはいけない:
 オランダの太陽系幾何学調査所(SSGS)で働くオランダの地震学者フランク・ホーガービーツは、トルコでの地震を発生3日前の2023年2月3日に予測した

テロ攻撃であるという確たる証拠は皆無

 政治的なレベルでの疑念はあるかもしれないが、現段階では、これがテロ攻撃であるという確たる証拠はない。公開されている情報(機密情報ではなく)に基づくと、トルコとシリアに対して「環境改変技術」が使用されたという具体的な証拠はゼロだ。

 しかし、重要なのは、トルコ宇宙庁の長官セルダール・フセインがロシアのテレビのインタビューで語った非公式な発言(まだ確認されていない)があったことだ。硬いチタン合金の棒が、強力なエネルギービームを地球に送り込むことに、彼は言及した。それも地中深くまで。

 以下は、彼のインタビューの翻訳。

音声起こし(翻訳)

 トルコ宇宙庁の長官セルダール・フセイン、地震を起こせる兵器について:

 街角にある電柱をご存知でしょうか。あれもこの柱と同じようなもので、高さは8~10メートルくらい。金属の棒です。

 棒の中には爆薬も何も入っていません。硬いチタン合金素材でできた金属製の棒なんです。

 それを人工衛星に搭載するのです。そして、地球に狙いを定めて発射するのです。それはまるで尖った棒のようなものです。例えば、そんなことあってほしくはありませんが、どこかに落下した場合、今は災害想定図を伏せますが、地上に落下すると同時に、地球の深部5kmまで貫通するのです

 これは、あっという間にマグニチュード7‐8の地震を起こします。

 その衝撃の結果、そこにあるものはすべて破壊されるのです。いいですか、ここには武器も、爆薬も、爆弾も、そんなものはありません。単なる杖(棒)です。しかし、宇宙からやってくるたいへんな力があり、それは見えません、止められません、あるいは、それから身を守ることもできません」。 (強調は筆者)
映像はこちら


第 II 部
環境改変技術


 軍事利用のための気象改変技術に関する膨大な文献があり、その多くは機密扱いになっている。米国とロシアは、記録に記載されている。彼らは高度なENMOD技術を持って いる。

 米軍は気象を操作できる。これは、米空軍の文書「Weather as a Force Multiplier:2025年に気象を我が物にする」ではっきりしている。

 世界的に著名な科学者である故ロザリー・バーテル博士は、「米軍の科学者は、潜在的な兵器として気象体系の研究に取り組んでいる」ことを明らかにした。 すでに1970年代、元国家安全保障顧問のズビグニュー・ブレジンスキーは、著書『二世代の間で』の中で次のように予測していた:

 「技術によって、主要国の指導者は、最小限の治安維持部隊だけが知っていればよい、極秘の戦争を行うための技術を利用できるようになる...」。

 科学者のニコラス・ベギッチ博士は、HAARP(高周波活性オーロラ調査プログラム)の反対運動に積極的に参加し、HAARPを次のように表現している:

 「ビームを集束させて、加熱することにより、電離層(大気圏の上層)を持ち上げる超強力な電波照射技術。電磁波は地球に跳ね返ってきて、あらゆるものを貫通する。命あるものも死者も」。

 元フランス軍将校のマルク・フィルターマンは、電波を使った「非通常兵器」について、いくつかの種類に分けて概説している。彼は「気象戦争」に言及し、指摘しているのは次のこと:

「米国とソ連は、1980年代初頭にはすでに、突然の気候変動(ハリケーンや干ばつ)を引き起こすのに必要な技術をすでに習得していた」。

 2008年5月22日にThe Ecologistに掲載された「気候戦争」と題する私の記事は、軍事利用のための環境改変(ENMOD)技術について、私が以前に書いたいくつかの詳細な記事の要約である:

・ 地球規模の気候変動に関する議論ではほとんど認識されていないが、世界の気候は現在、新世代の高度な電磁波兵器の一部として変更することが可能である。米国とロシアは、軍事利用を目的に気候を操作する能力を開発している。

・ 環境改変の技術は、半世紀以上前から米軍に応用されてきた。米国の数学者ジョン・フォン・ノイマンは、米国国防総省と連絡を取りながら、冷戦の真っ只中の1940年代後半に気象改変の研究を始め、「まだ想像もつかない気候戦争の形態」を予見していた。

・ベトナム戦争では、1967年の「ポパイ計画」を皮切りに、モンスーンの季節を長引かせ、ホーチミンルートの敵の補給路を遮断することを目的に、人工雨の技術が使われた。

・米軍は、気候変動を選択的に変化させることができる高度な能力を開発した。高周波活性オーロラ研究プログラム(HAARP)[2014年に閉鎖され、正式にアラスカ大学に移管]の下で完成されたこの技術は、戦略的防衛構想-「スター・ウォーズ」の付属物である。軍事的な観点から見ると、HAARPは大気圏外から作動する大量破壊兵器であり、世界中の農業や生態系を不安定にすることが可能だ。

・1992年、アラスカ州ゴコナに設立されたHAARPは、高周波の電波を通して電離層(大気圏の上層)に大量のエネルギーを送る高出力アンテナの配列である。その建設には、アメリカ空軍、アメリカ海軍、国防高等研究計画局(DARPA)が資金を提供した。

・HAARPは、空軍研究所と海軍研究所の共同運営で、「電離層の制御された局所的な変化」を作り出すことができる強力なアンテナのシステムである。

・国際公衆衛生研究所(International Institute of Concern for Public Health)のロザリー・バーテル所長は、HAARPは「電離層に大きな崩壊を引き起こし、致死的な放射線を地球に浴びせないようにする保護層に、穴だけでなく長い切り傷を作ることができる巨大なヒーター」として作動すると言う。

・物理学者のバーナード・イーストランド博士は、「これまでに作られた中で最大の電離層ヒーター」と呼んでいる。

 HAARPはアメリカ空軍の研究計画として発表されているが、軍事文書によると、その主な目的は、気象パターンを変え、通信やレーダーを妨害することを目的とした「電離層の変調を誘発する」ことである。
全文はこちら

HAARPについてのCBCドキュメンタリー

 重要なのは、CBCテレビの報道(1996年)で、米空軍が支援するアラスカのHAARP施設が、台風、地震、洪水、そして干ばつを誘発する能力があることを認めていることだ:

  「指向性エネルギーは、電離層を加熱して気象を戦争の武器に変えることができるほど強力な技術です。洪水を使って都市を破壊したり、竜巻を使って砂漠で迫り来る軍隊を壊滅させたりすることを想像してください。軍は、戦闘環境の構想として、気象改変に膨大な時間を費やしてきました。電磁パルスが都市の上空で発生したら、基本的に家の中の電子的なものは、すべて瞬く間に消えてしまい、永久に破壊されるでしょう」。

CBCのテレビ報告(1996)



 ここで注意すべきことは、アラスカ州ガコナを拠点とするHAARPプログラムは2014年に閉鎖(アラスカ大学に移管)されたが、それでもHAARPプロジェクトを管理する米空軍は、軍事利用のためのENMOD技術は継続する予定である、と認めたことである:

 「私たちは、さらに進んで、電離層を管理する他の方法考えています。HAARPは、本当は、これを行うために作られたのです」と彼は言った。

 「電離層にエネルギーを注入して、実際に操作できるようにすること。その作業は完了しました」。

「フォースマルチプライヤー*:気象を我が物にする」
*戦力を倍増させる航空機(早期警戒管制機や空中給油機など)(英辞郎)

 軍事的な観点から見て、その根底にある目的は、「気象を我が物にする」ことだ。この米空軍調査が依頼された1996年当時、HAARPプログラムは、CBCドキュメンタリーにあるように、すでに完全に稼働していた。

CBSドキュメンタリーで報告された目的は、以下のとおり:

この論文では、気象改変を適切に応用することで、これまで想像もしなかった程度の戦場支配を実現できることを示す。将来、このような作戦は空と宇宙の優位性を高め、戦域形成と戦域認識のための新たな選択肢を提供し、私たちがすべてをひとまとめにするのを待っている。「2025 年には、私たちは「気象を我が物にする」ことができるだろう。(米空軍委託文書 AF 2025 Final Report, (公開文書))

 米空軍の報告書によると、気象改変は「敵対者を打ち負かす、あるいは威圧するための幅広い選択肢を戦士に提供する」もので、その能力は洪水、ハリケーン、干ばつ、そして地震の誘発にまで及ぶとしている:

 気象改変は国内および国際的な安全保障の一部となり、一方的に行われるようになるだろう・・・攻撃的および防衛的な応用が可能で、抑止の目的で使用されることさえある。地上に降水、霧、嵐を発生させる能力、宇宙気象を修正する能力・・・そして人工気象の作成はすべて、統合された一連の(軍事)技術の一部である」。

 US Air Force document AF 2025 Final Report, (空軍文書の原本へのリンクはもうできない)

 米空軍の委託文書参照

 自然の気象パターンを小規模に調整することで味方の作戦を強化したり、敵の作戦を妨害したりすることから、グローバルな通信や対空間制御を完全に支配することまで、気象改変は戦争戦士に、敵対者を打ち負かしたり、威圧したりするための幅広い選択肢を提供する。気象改変システムが戦時中の最高司令官(CINC)に提供できる潜在的な能力のいくつかを表 1 に挙げる。(強調は筆者)

 地震の誘発はHAARP技術に不可欠な要素であるが、上記の米空軍の文書には、地震という用語は、明確には記載されていない。報告書の付録AとBは、最大使用可能周波数(MUF)に関連する電離層の特徴を指摘している。

ENMODにおけるCIAの関わり

 2013年7月、MSNニュースは、地球工学と気候操作に焦点を当てた米国科学アカデミー(NAS)のプロジェクトの資金援助にCIAが関与していると報じた。この報道は、これらの技術を認識していただけでなく、米国の諜報機関が、気候操作の問題に取り組むことに、日常的に関与していることを裏付けたものであった:

 「CIAが支援するNASの研究の目的は、NASのウェブサイトによると、「限定された数の提案された地球工学技術の技術評価」を行うことです。科学者たちは、どの地球工学技術が実現可能かを判断し、それぞれの影響とリスク(「国家安全保障上の懸念」を含む)を評価しようとする」 (2013年7月、 Slate参照)

 「CIAが研究資金を援助しているのは、NASが「世界のどこかで展開されている地球工学技術に関連する(かもしれない)国家安全保障上の懸念」を評価する計画もあるからだ」と、NASの報道官であるカーニーは述べた。


第 III 部
1977年国連条約
環境改変技術の使用について


 1977年、国連総会で「広範囲、長期的または深刻な影響を有する環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的使用」を禁止する国際条約が批准された。

 ENMODの技術は、地震にも当てはまる:
.
「環境改変技術」とは、「自然のプロセスを意図的に操作することによって、生物相、岩石圏、水圏、そして大気圏を含む地球、あるいは宇宙空間の力学、組成、構造を変化させるあらゆる技術」と定義されている。(強調は筆者)

 国連総会で批准された1977年の歴史的な条約。「広範囲、長期的、または深刻な影響を持つ環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的使用 を禁止」



・・・この条約の各締約国は、他の締約国に対する破壊、損害又は傷害の手段として、広範かつ長期にわたる又は深刻な影響を有する環境改変技術の軍事・・・使用に関与しないことを約束する。(環境改変技術の軍事的又はその他の敵対的使用の禁止に関する条約、1977年5月18日、国際連合、ジュネーブ。発効:1978年10月5日、付属資料の条約全文参照)

 国連条約の全文はこちら

 条約を、批准ないし署名した国のリスト

 2022年現在、シリア、トルコ、イラク、イラン、米国、ロシア連邦を含む78カ国が批准または同意している。イスラエルは同条約を批准していない。

 国連公式文書

欧州議会委員会の決議動議

 また、1998年2月、欧州議会の外交・安全保障・防衛政策委員会が、ブリュッセルでHAARP計画に関する公聴会を開催したことも注目される。欧州議会に提出された同委員会の「決議動議」:
「HAARPは・・・環境に対するその広範囲な影響により、世界的な関心事であると考え、その法的、生態学的、そして倫理的な意味を国際的な独立機関によって検討することを求める・・・; [委員会は] 米国政府が・・・HAARPプログラムの環境と公共のリスクに関する公聴会で・・・証拠を出すことを繰り返し拒否したことを残念に思う」。 (強調は筆者)


第 IV 部
「ENMODの敵対的使用」への「専門的調査」


 トルコ・シリア地震の重大性、人命の損失、壊滅的な社会的・経済的影響に鑑み、「環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的使用」を禁止する1977年の国際条約を前提とした「専門家調査」が実施されるべきである。

 なお、上記で引用した1977年の国連条約の批准以降、軍事利用のためのENMODの技術は、ますます巧妙になっていることを申し添えておく。

 国連は信頼できるか?トルコとシリアという2つの「締約国」は、国連の支援による専門家調査の実施に先立ち、協力して独自の内部調査を行うべきである。

 この調査の職務権限は、国連条約の協定条項に記載されている。

 専門家調査の本質について明らかにした第1条、第2条、第5条(抜粋)を参照させていただく。(強調は筆者)。全条文は、こちら

第Ⅰ条 1.
この条約の各締約国は、他の締約国に対する破壊、損害又は傷害の手段として、広範囲、長期的又は深刻な影響を有する環境改変技術の軍事的又はその他の敵対的使用に関与しないことを確約する。

 第II条は、地震を含むENMOD技術に言及している

II条
 
第I条で使用される「環境改変技術」とは、生物相、岩石圏、水圏及び大気を含む地球又は宇宙空間の動態、組成又は構造を、自然過程の意図的な操作により変更する技術をいう。

V条
1. この条約の締約国は、互いに協議し、この条約の目的又は規定の適用に関連して生ずるあらゆる問題の解決について協力することを約束する。この条に基づく協議及び協力は、国際連合の枠内において、その憲章に従い、適当な国際手続を通じて行うこともできる。これらの国際的手続には、本条第2項に規定する専門家諮問委員会のほか、適当な国際機関の業務をも含めることができる。

2. 本条第1項に規定する目的のため、寄託者は、この条約のいずれかの締約国から要請を受けた後1箇月以内に、専門家諮問委員会を招集するものとする。...

3. この条約の締約国は、他の締約国がこの条約の規定から生ずる義務に違反して行動していると信じるに足りる理由を有するときは、国際連合の安全保障理事会に訴えを提起することができる。このような告発には、すべての関連する情報及びその正当性を裏付ける、すべてのあり得る証拠を含まなければならない。

4. この条約の各締約国は、国際連合憲章の規定に従い、安全保障理事会が受理した訴えに基づき開始することができる調査の実施に協力することを約束する。安全保障理事会は、調査の結果を締約国に通知する。

 条約の本文の附属書には、次のものがある:
1. 専門家諮問委員会は、委員会の招集を要求する締約国がこの条約の第V条第1項に従って提起した問題に関連する適切な事実認定を行い、専門家の意見を提供することを引き受けるものとする。
強調は筆者


まとめ

 私たちは、トルコとシリアの人々と連帯しています。

 現段階で、単純な結論を出すのは賢明ではなく、時期尚早でしょう。

 禁断の真実というものがあります。私は、分析と理解の枠組みを提供することを試みました。

 今回の被害や人命の損失は筆舌に尽くしがたいものがあります:1977年に締結された「環境改変技術の軍事的その他の敵対的使用」を禁止する国際条約を参考に、この問題を分析し、対話し、議論する必要があります。

 「締約国」であるトルコとシリアは、国連専門家諮問委員会および/または国連安全保障理事会に付託する前に、第一段階として、独自の内部調査を実施しなければなりません。


Annex
Source: This Information was provided by USGS – National Earthquake Information Center
Earthquakes in Turkey that caused 10,000 or more deaths (342 AD- 1999)

The following are the sources and footnotes
ISK: Earthquake catalog of Kandilli Observatory, Bogazici University, Istanbul, supplied by NOAA/NGDC (Meyers and Von Hake), Boulder CO, 1985.
ITU: K. Ergin, U. Guclu and Z. Uz, A Catalog of Earthquakes for Turkey and Surrounding Area (11 AD to 1964 AD), Technical University of Istanbul, Faculty of Mining Engineering, 1967.
AFAD: Earthquake Risk Map by AFAD, Department of Disasters and Emergency Management, 2018.
NG(n): R. Ganse and J. Nelson, Catalog of Significant Earthquakes 2000 BC – 1979 Including Quantitative Casualties and Damage, NOAA/NGDC Report SE-27, Boulder CO, 1981. The number in parentheses is from their references table, as listed below:
2: Lomnitz, Global Tectonics and Earthquake Risk, 1974.
3: Bath, Introduction to Seismology, 1978.
5b: (there is no source 5b — probably should be 55?).
7: Meyers and von Hake, Earthquake data file summary, 1976.
51: Munchener Ruckversicherungs-Gesellschaft, World Map of Natural Hazards, 1978.
55: Milne, Catalogue of Destructive Earthquakes, 1911.
73: U.S. Congress, Great Earthquakes, 1888.
99: Karnik, Seismicity of the European Area, 1971.
120: Alsinawi and Galih, Historical Seismicity of Iraq, 1978.
138: Ambraseys, Middle East A Reappraisal of Seismicity, 1978.

The original source of this article is Global Research
Copyright © Prof Michel Chossudovsky, Global Research, 2023
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ICCによるプーチンへの逮捕状は米国務省が資金提供した研究所の虚偽の報告書に基づいている。

<記事原文 寺島先生推薦>

ICC’s Putin arrest warrant based on State Dept-funded report that debunked itself

ICC(国際刑事裁判所)が出したプーチン大統領への逮捕状は、米国務省が資金提供した報告書に基づくものだが、それは虚偽である。

筆者:ジェレミー・ロフレド、マックス・ブルメンタール
(Jeremy Loffredo and Max Blumenthal)

出典:グレーゾーン(GRAYZONE)

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月12日

512-1.jpg


1.国際刑事裁判所(ICC)は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、ウクライナの子どもたちをロシア国内の収容所ネットワークに「強制移送」したとして、逮捕状を発行した。この逮捕状は、米国国務省の資金援助を受けている「イェール大学人道研究所(HRL*)」の報告書に基づくものである。
* Humanitarian Research Lab

2.米国人ジャーナリストのジェレミー・ロフレド氏は、問題となっているロシア政府主催のキャンプのひとつを訪れた。モスクワ郊外にある「The Donbas Express(ドンバス急行)*」で、ロフレド氏は紛争地域の若者たちに会った。彼らは無料の音楽指導を受け、安全な環境にあることに感謝しながら、生き生きと過ごしていた。本記事では、彼の独占映像レポートを掲載する。
* 「ドンバス急行」は、ウクライナ、ドンバス地域の青少年を集めて、音楽など文化教育を行う施設。

3.「イェール大学人道研究所」の報告書に関する当サイト「Grayzone」による論評記事では、報告書の内容が、ICC(国際刑事裁判所)の令状に含まれる多くの主張と矛盾していることが判明した。また、イェール大人道研究所の所長ナサニエル・レイモンドがメディアに登場した際に発した扇動的な発言の虚偽も裏付けられた。

4.ロフレド氏とのインタビューで、イェール大学人道研究所のレイモンド所長は、ロシアで進行中の大規模な「人質事件」について、CNNのインタビューでの誘拐の主張をさらに否定し、彼が調査したキャンプのほとんどは「テディ・ベア」*のような文化プログラムだったことを認めた。また、米国情報機関との協力関係も明らかにした。
* テディベア(熊のぬいぐるみ)と名付けられた音楽教育プログラム。ドンバス地域の青少年のためのもの。


 3月17日、国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン検事総長は、ロシアのプーチン大統領とマリア・ルロヴァ=ベロヴァ「子どもの権利担当委員」に対する逮捕状を提出した。この逮捕状は、プーチンとロルヴァ=ベロヴァがウクライナの子どもたちをロシア連邦内の「収容所ネットワーク」に「不法送還」したことを非難するもので、欧米では煽情的な論評が相次いだ。

 米国議会で最も積極的にロシアとの戦争を応援していると思われるリンゼイ・グラハム上院議員は、こう宣言した。「プーチンは、少なくとも16,000人のウクライナの子どもたちを家族から誘拐し、ロシアに送った。これはまさに第二次世界大戦でヒトラーがやったことだ。」

 CNNのファリード・ザカリアはグラハム上院議員と同じ意見で、ICCの令状はプーチンが「実際にヒトラーの脚本にそって行動している部分がある」ことを明らかにしたと述べた。

 ICCの検察官は、イェール大学の人道研究所(HRL)が作成した研究に基づいて逮捕状を取ったようだ。イェール大学人道研究所の研究は、バイデン政権が2022年5月に設立したロシア高官の訴追を進めるための組織である国務省の「紛争・安定化作戦局」から資金提供と指導を受けている。

 イェール大学人道研究所のナサニエル・レイモンド所長は、CNNのアンダーソン・クーパーとのインタビューで、自身の報告書が「数千人の子どもたちが人質状態にある」という証拠になると主張した。彼はホロコーストを引き合いに出して、「私たちは21世紀に見られる最大の子ども収容所のネットワークのことを問題にしているのだ」と主張した。

 しかし、この報告書の共著者であるジェレミー・ロフレドとのインタビューや、イェール大学人道研究所の自身の論文の中で、レイモンド所長は、子供の人質についてメディアに対して行った大げさな主張の多くを否定している。共著者ロフレドとの電話会談でレイモンド所長は、彼のチームが調査したキャンプの「大部分」が「主に文化教育―言うなれば、テディベア文化・音楽教育のようなもの」であったことを認めた。

 イェール大学人道研究所の報告書も同様に、調査したキャンプのほとんどが、恵まれない青少年のために無料のレクリエーション・プログラムを提供しており、その親たちは「継続する紛争から子供を守る」「住んでいる場所では手に入らないような栄養のある食べ物を確保する」ことを求めていたことを認めている。同報告書によると、ほぼすべてのキャンプ参加者は、両親の同意のもとに参加した後、適時に帰宅していたそうだ。国務省が資金提供した報告書はさらに、「子供の虐待を示す文書はなかった」と認めている。

 イェール大学人道研究所の調査はすべて、マクサー(米国宇宙技術会社)の衛星データ、テレグラムの投稿、ロシアメディアの報道に基づいて行われ、その解釈はグーグル翻訳に頼り、時には引用記事を誤認していた。国務省が資金を提供したこの調査団は、論文のために現地調査を行わなかったことを認め、「現地での調査は行わないので、収容所での取材は要求していない」と述べている。

 ICCの逮捕状のきっかけとなったイェール大学の調査員とは異なり、(ジャーナリストの)ロフレド氏はモスクワにあるロシア政府のキャンプを自由に取材することができた。そこはまさにイェール大学人道研究所つまりはICC―がウクライナの子ども人質の「再教育キャンプ」として描いてきたような場所だったが、彼が発見したのは、一流の講師から母国語のロシア語で無料のクラシック音楽のレッスンを受ける幸せな参加者でいっぱいのホテルだった。レイモンド氏はその若者達を「テディベア」と呼んでいた。

 モスクワ郊外にある音楽キャンプ「The Donbas Express」で、若者たちはロフレド氏に、ウクライナ軍による長年にわたる砲撃と包囲のキャンペーンから避難できたことに感謝している、と語った。ドンバスの戦争から逃れることで、子どもたちは、イェールHRLとICCがほとんど関心を示さない悪夢のような軍事衝突から逃れたのだ。




無料の音楽レッスン、「精神的な豊かさ」、戦争からの安全、そして米国の非難:「the Donbas Express」への訪問記

 私ジェレミー・ロフレドが2022年11月にロシアの青少年音楽キャンプを訪れたとき、私は、私が目撃したような利他的なプログラムを、米国政府が政治的戦争を進めるためにすぐに利用することになるとは思いもしなかった。

 当時、私は前職の「Rebel News(抵抗ニュース)社」の仕事でモスクワに滞在し、街中の一般人に街頭インタビューを行っていた。

 私はロシアの音楽界に影響力のある奥さんを持つ人に会った後、モスクワの南西45マイルにある、米国国務省が資金援助した研究者が「再教育キャンプ」と表現しているプログラムを見学するように誘われた。ポクロフスコエという町にあるソ連時代のホテルで、私はプーチンに対するICCの逮捕状の中心となっている、いわゆる施設のひとつに入ることになった。

 私が訪れた時には、ロシア政府はこのホテルを、ドネツクとルガンスクの分離独立共和国出身の子どもたちのための臨時宿泊施設に作り替えていた。私が訪れたthe Donbas Expressと呼ばれるセンターは、音楽芸術に興味を持つ子どもたちにクラシックのためのトレーニングを提供することに重点を置いていた。この企画に本国の紛争から家族を守りたいという親たちが自分の子どもたちを参加させていた。

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 プロのバイオリニストであり、the Donbas Expressの講師でもあるピーター・ルンドストレム氏は、「国家大統領基金の支援のおかげで、ドネツクとルガンスク地方から80人の子どもたちを連れて来ることができました。彼らは才能ある若い音楽家で、12日間ここに滞在しています。彼らはここで生活し、優れた音楽教師からレッスンを受けます。コンサートを開催することもあります。そして教育を受けるのです」。

 米国務省が資金提供したイェール大学人道研究所の報告書は、重大な欠陥があり、現場での裏付けを求めなかったにもかかわらず、the Donbas Expressに登録された子供たちの経験について、1つだけ正しいことを述べている。彼らはこの企画に参加していることを秘密にする可能性があることだ。ウクライナ当局の目には、たとえ無料の音楽レッスンのためであっても、ロシアに旅行するという単純な行為は、敵に協力することに等しいと映るのだ。

 報告書にもあるように、「ウクライナの多くの家族は、自分たちが(ウクライナから)ロシアへの協力者と見られることを恐れて、(キャンプや学校の)体験を公にしたがらない」と言う。

 The Donbas Expressに関わった学生たちについて、ルンドストレムは、「ウクライナでこのような子供たちに何が行われているかを理解してもらうために(そのことを話すと)...ロシア人やロシア国家から何らかの援助を受けた子供たちは...単に殺されてしまうでしょう」と述べている。

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The Donbas Expressでのコンサートの様子

 この若者たちは、人生の大半を、日常的に死の脅威と隣り合わせで生きてきた。ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻するまでの8年間、ドンバスのロシア系住民は、米国が支援するキエフの民族主義政府の手による定期的な砲撃に耐えてきた。2022年2月以前にも、この内戦によって、私がthe Donbas Expressで出会った子どもたちを含む何千人もの市民が命を落としている。

 「もちろん、(the Donbas Expressに在籍する若者の)多くは、この紛争によって大きな被害を受けました」と、ルンドストレムは言う。「彼らの多くは家を失いました。親族や友人を失った人もいます。紛争地では、実際、彼らは音楽の専門的な勉強を続けることができません。ドネツクでは、フィルハーモニーや一般教育機関が機能していないのです」。

 国務省が資金提供したイェール大学人道研究所の報告書は、the Donbas Expressのような合宿所を開放するロシアの動きが戦争犯罪に相当するとアメリカ人に思わせるだろうが、私がそこで出会った学生たちはそこを去りたがらなかったのだ。

 「もちろん、彼らは皆、このプログラムの継続を望んでいます。もちろん、彼らはこのプログラムが続くことを望んでいます。しかし、私たちができるのは、このような小さなことだけです。私たちは将来、またこのようなことをするかもしれません」とルンドシュトレムは私に語った。

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 私は、the Donbas Expressの学生2人とカメラで話をした。この学生はどちらもこのプログラムへの感謝の言葉を口にしていた。

 ドネツクの学生は「私は招待されて、寛大な招待を受けてここにいます。モスクワに来れるなんて思ってもみませんでした。私は、精神的な豊かさや魂の浄化に役立つコンサートに出演するために、お手伝いをしてきました。そして、音楽演奏の技能を高めるためにここに来ました」。

 「ここで、周囲に何があっても音楽の勉強を続けるのは、それが私たちに安らぎを与えてくれるからです」と、もうひとりのドンバス出身の若者は私に言った。

 このプログラムに参加する他の生徒と同様、音楽家を目指す彼らが育ったのは、ロシア正教の宗教宗派を禁止し、ロシア語の禁止を求め、国内のロシア系住民を激しく攻撃したウクライナ政府に対して公然と反抗する地域であった。

 講師によれば、the Donbas Expressに在籍する学生の全員ではないにせよ、そのほとんどがロシア国家を意識しているそうだ。「彼らはこの(愛国的な)歌を持っています。<祖国が帰ってくる>という歌です」とルンドシュトレムは述べている。「この80人の子供たちは、みんなこの歌を叫んでいました。ただこの歌を叫んでいるだけなのです」。

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 しかし、先生は「私たちは政治的な理由で(the Donbas Expressを)組織しているわけではありません」と強調した。「例えば、『ロシアよ永遠に!』と言うためにここにいるのではないのです。私たちは子どもたちを助けるためにここにいます。でももちろん、私たちはロシア人です」。

ウクライナ東部からthe Donbas Expressのようなプログラムに参加した子供たちの政治的共感とロシア人であるという民族的背景については、国務省出資のイェール大学人道研究所報告書では、ほんの少ししか言及されていない。

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イェール大学人道研究所の報告書の内容はICCの逮捕状と矛盾する

 国務省が後援するイェール大学人道研究所所長、ナサニエル・レイモンドは2023年2月16日、CNNのアンダーソン・クーパー360に出演し、「ウクライナの子どもたちのためのアンバー・アラート*」と称する発表を行った。
*AMBER Alert 児童(未成年者)誘拐事件及び行方不明事件が発生した際、テレビやラジオなどの公衆メディアを通じて発令される緊急事態宣言(警報)の一種(ウィキペディア)

 レイモンド所長は、ホロコーストを連想させるように、彼と彼のチームが「21世紀に見られた最大の数の収容所」を発見したと主張し、この発見は「大量殺戮の証拠」となり得るとした。

 レイモンド所長は「彼らは彼らをロシア人に仕立て上げようとしている」と語り、「ロシア当局は、ウクライナの子どもたちを家族から強制的に引き離し、強制的な軍事訓練を施している」と主張した。

 「何千人もの子供たちが人質になっている」と、国務省の支援を受けたイェール大学の研究者は宣言した。

 CNNのクーパーは憤懣やるかたない表情で、「これは本当に気持ち悪い」とつぶやいた。これは病気だ」と。

 しかし、レイモンド所長が国務省を代表して指示した2023年2月14日の調査の実際の内容は、彼の主張する「人質事件」と相反するものだった。

 レイモンド所長が多くの青少年キャンプ内の状況について無知であることは、彼や彼の同僚がキャンプを訪れようとしなかったことに起因しているかもしれない。また、キャンプに参加した子どもたちやその親、スタッフに連絡を取ろうともしなかった。

 「イェール研は、目撃者や被害者へのインタビューは行わず、オープンソース*で入手できる特定の情報のみを収集する」と報告書に記されている。研究者が、ある子どもが家に戻ったかどうかに関する公開情報を特定できない場合、その子どもの現在の状況を把握することは困難となる。同様に、イェール大学人道研究所は現地での調査を行わないため、キャンプへの直接取材は要求していない。
* コンピュータプログラムの著作権の一部を放棄し、ソースコードの自由な利用および頒布を万人に許可するソフトウェア開発モデル(ウィキペディア)

 つまり、ICCのプーチンへの逮捕状を伝えた研究者は、現地調査を行わず、子どもたちの状況に関する具体的な情報を得ることができなかったことを認めている。

 実際、論文では「キャンプに参加した子どもたちの多くは、予定通り家族のもとに戻っているようだ」と認めている。

 また、報告書の中に埋もれているのは、次のような開示である。「キャンプに連れて行かれた多くの子どもたちは、親の同意を得て数日から数週間の合意された期間だけ送られ、当初の予定通り親のもとに戻される」。

 「これらの親の多くは低所得者であり、子供のために無料の旅行を利用したかった」と、イェール大学人道研究所/国務省の論文は続けている。さらに「ある者は、進行中の戦闘から子供を守りたい、衛生状態の良い場所に行かせたい、住んでいる場所では手に入らないような栄養価の高い食べ物を食べさせたい、と考えていた。また、単に自分の子供が休暇を取れるようにと願う親もいた」とも。

 では、子供たちが自発的にキャンプに参加し、ほとんどが期限内に戻され、ほとんどの親が「意味のある」同意をして、子供たちが健康な食べ物で安全な場所にいられることに感謝していたとしたら、レイモンドがCNN出演時に主張した「大量虐殺の証拠」はどこにあったのか。

 イェール大学人道研究所/国務省の論文によると、「この報告書で参照されたキャンプの中には、性的・身体的暴力を含む子どもの虐待を示す文書はない」という。

 報告書の引用には、ロシアのマガダンという町で行われた2週間のサマー・キャンプ(夏季合宿)に関するRIA Novosti*の記事へのリンクが含まれている。この記事で引用された子ども、ポリーナ・ツヴェトコワは、Donbas Expressの参加者が提供したものと同じような、はっきりとした肯定的な感想を語っている:
* リアノーボスチ。かつて存在したロシアの国有通信社で、現在はRTのロシア国内向放送局(ウィキペディア)

 「空港から車で移動している間、私たちは地元の風景にとても感動しました。私は野原を歩き、花を摘むのが好きです。自然を見るのはとても面白いんです。あらゆる種類の美しい景色を見ることができます。車を走らせていると、山から小さな川が流れているのが見えました。とても美しい、景色がとにかく素敵なんです」。

 イェール大学人道研究所/国務省の論文は、引用したRIA Novostiの記事にあるサマーキャンプの参加者の喜びの声を省略している。その代わりに、「子供たちはバス、列車、民間航空機、そして少なくとも1つのケースではロシアの航空宇宙軍によって(キャンプに)運ばれてきた」と主張するために、この記事を利用したのである。

 CNNに出演したときと同様、レイモンド所長の国務省後援の報告書は、「何千人もの(ウクライナの)子どもたちが人質状態にある」という彼の主張全体を崩壊させる一つの事実を覆い隠している。それは、イェール人道研究所/国務省の報告書で言及された子どもたちのほぼ全員が、キエフの民族主義政権との対立でロシア側についた家庭や地域出身のロシア民族であるということだ。

 RIA Novostiの記事で言及されたキャンプに参加した若者たちは、2014年にウクライナから分離し、2022年に正式に独立を宣言したドネツク共和国の町、ジュダノフカ出身だった。しかし、ICCと他のすべての公式西側情報源は、これらの若者を単に「ウクライナ人」と呼び、あたかも彼らがロシア軍に占領された親キエフ派の地域から強制的に引き出され、ロシアの収容所内で洗脳を受けたかのように言及した。

 イェール大学人道研究所/国務省は、若者対象の合宿参加者の政治的・民族的背景については一点だけ言及している。「ウクライナの多くの家族は、ロシアへの協力者と見られることを恐れて、(キャンプでの)経験を公にしたがらない」という指摘である。

 イェール大学人道研究所/国務省の論文の著者たちは、これらの家族の安全に対する関心が全くないことを示しただけでなく、ウクライナ政府によって拷問されたり殺されたりする可能性のある紛争地帯に即座に帰還させるよう呼びかけるきっかけを作った。

 2022年2月、ウクライナ軍が分離主義共和国への攻撃を激化させたタイミングでドネツクから500人の孤児が避難したことについて、著者はこう書いている。「当時ロシア政府が公にした理由は、いわゆるドネツク人民共和国(DPR)とルハンスク人民共和国(LPR)に対するウクライナ軍による攻撃の脅威のためであるとされていた」。

 この主張を裏付けるために提供された引用は、ドンバス・インサイダーによる報告で、2022年2月19日にウクライナ軍がドネツクの民間地域への砲撃を強化し、住宅、養鶏場、変電所を破壊し、800人の住民が電気の使えない状態になったことを詳細に伝えている。ドネツク人民共和国でのウクライナによる43回目の停戦違反であった。その5日後、ロシア軍はウクライナに侵攻し、「非武装化」の使命を発表した。


 では、ドネツクの紛争地域からロシア連邦内の安全な場所に孤児を脱出させることは、レイモンド所長が主張するように「誘拐」という犯罪になるのだろうか。

 イェール大学人道研究所/国務省の研究者は、この用語の定義を極めて緩やかにしているようだ。2020年、レイモンド所長は、トランプ政権(バイデン政権も継続)の移民親から未成年者を引き離す政策を非難するワシントン・ポスト紙の社説を承認するツイートをしている。「言葉を濁すのはやめよう。トランプ政権は子どもたちを誘拐したのだ」、と。

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「テディベア」合宿:インタビューでイェール大学人道研究所所長が「人質事件」の主張に反論、米情報機関との関係も公開

 ナサニエル・レイモンド所長は、オックスファム*からハーバード大学のシグナル・プロジェクトまで、さまざまな国際NGOや大学で働いてきた技術者であり、ICC(国際刑事裁判所)の技術顧問チームを務めていたと主張している。イェール大学公衆衛生大学院の講師になる前は、スーダンのダルフール地方の窮状を有名にしたハリウッドの有名人、ジョージ・クルーニーの下で働いていた。クルーニーは、親イスラエル団体や、ダルフールに米軍を派遣すると脅したブッシュ大統領と一緒にキャンペーン活動した。
* オックスファム・インターナショナルは20の組織から編成される貧困と不正を根絶するための持続的な支援活動を90カ国移譲で展開している。(ウィキペディア)

 2012年、レイモンド所長はガーディアン紙に「ジョージ・クルーニーのために宇宙から戦車を数えた」と軽口を叩き、人権侵害の疑いを記録するためにマクサー(米国の宇宙技術会社)の衛星技術を先駆的に利用したことについて触れた。

 私ジェレミー・ロフレドは、レイモンド所長のイェール大学人道研究所がthe Donbas Expressのようなロシア政府の青少年プログラムに関する報告書を発行したことを知り、2022年11月にこれらのキャンプのひとつに行ったことがあると彼にメールで報告した。私は、自分の経験を彼と共有することに前向きであることを伝えた。彼は、電話で話すことに同意してくれた。

 レイモンド所長は、2021年にイェール大学人道研究所に来たとき、アフガニスタン政府による少数民族ハザラ人に対する虐待を記録する国務省後援のプロジェクトを指揮していた、と説明してくれた。しかし、米国情報機関がロシアのウクライナ侵攻が迫っていることを警告し始めたため、ミッションはすぐに変更された。

 レイモンド所長は、「私たちの最初の作戦構想は、実はアフガニスタンに関してだった。そして、ウクライナに迂回させられた。つまり、ハザラ人を監視するつもりだったが、この作戦に参加することになったんだ。そして、侵攻の2週間前に、待機して部隊を編成するように言われ、春には、良いことが起きることがわかった」と述べた。

 レイモンド所長は、米国国家情報会議(NIC)がイェール大学人道研究所の彼のチームに対して、ウクライナ東部からロシア連邦に市民を移動させるロシア政府の作戦を記録するよう「多くの圧力」をかけてきたと付け加えた。

 「私たちは、”よし、ではどうやってやるんだ?"という感じでした」と振り返る。「そして、夏から秋口にかけて、作戦構想を練り上げようとしました。そして、10月(2022年)になって初めて、その方法を理解したのです。そして、私たちがそれを実行したとき、ロシアのVPN*ネットワークに入り込み、まるでロシア市民が地元の市長のVK(ロシアのソーシャルメディア)アカウントを見ているように見えたのです」。
* VPN(Virtual Private Network)、仮想プライべート・ネットワークとも言う。公衆回線を用いてデータを暗号化し、通信の内容が漏れることを防ぐ接続方法。

 レイモンド所長は、彼のチームは、ペンタゴンの米国インド太平洋司令部に頼って、「シベリアと東部の陣営を得るために、太平洋司令部の衛星アクセスを拡大した」と述べた。

 研究チームがthe Donbas Expressのようなロシア国内のプログラムを訪問しようとしなかった理由を尋ねると、レイモンド所長は「私たちはペルソナ・ノン・グラータ*だ」と答えた。ロシアでは、私たちは米国諜報機関の延長線上にあると思われているのです」。
* 好ましからざる人物

 米国情報機関や国務省と緊密に連携していることは認めたものの、レイモンド所長は、イェール大学人道研究所がウクライナによる残虐行為は除いて、ロシアによるとされる残虐行為に焦点を当てたのは、米国政府が資金提供しているからだという指摘を否定した。「ウクライナの残虐行為とされるものは、我々の手段ではおそらく見ることができない」と彼は主張した。「多くは捕虜を使った小部隊の事件だからだ。例えば、彼らは何人も膝を撃ち抜いたと言われている」、と。

 レイモンド所長は、「ウクライナのでたらめ」の典型例として、ウクライナの穀物サイロに対するロシアの攻撃を記録した部隊の記録を挙げた。「ウクライナ人がやっていたと思われることは、彼らがサイロの下にリン酸アンモニウムの研究所があり、軍需品を製造していたことだ」と述べた。

 彼は、「あの(爆)穴を作ることができるのは、基本的に爆弾工場だけだ」と言ったものの、レイモンドは、その疑いを確かめることは不可能だと主張した。

 彼は、イェール大学人道研究所がロシア政府を追い詰めることだけに集中していた理由を、交通違反の比喩を使って説明した:「武力紛争法の観点からは、バス停留所での駐車違反になる。一方、ロシア軍はショッピングモールを16輪車で走り抜け、飲酒運転をしている」。

 レイモンド所長は、ウクライナ軍が無防備な捕虜を射殺したり、軍事施設を隠すために民間インフラを利用したりすることが記録されるのを最小限に抑える一方で、ロシアの文化プログラムに民族的にロシア系の子供たちを連れてくる政策に焦点を当て、モスクワが「ロシア化」という犯罪的プロセスをとっていると非難した。

 イェール大学人道研究所が調査したプログラムに参加した子どもたちのほとんどが、すでに自分たちをロシア人だと思っており、ウクライナの米国が支援する政府によって暴力の対象となっているロシア民族の分離主義地域の出身であり、紛争で破壊されて帰る家がない者もいるという事実について尋ねると、レイモンド所長は否定的な態度を示した。

 「仮にそれが事実だとしても、戦争犯罪だ」とレイモンド所長は主張する。「ジュネーブ条約では、武力紛争の一方の当事国は、いかなる場合であっても、他方の当事国の子どもを養子にしたり、移したりすることはできない」、と。

 レイモンド所長は、子どもたちの権利が侵害されているかどうかを判断する際に、子どもたちの民族的・政治的背景を考慮することはないが、イェール大学人道研究所の彼のチームが調査したキャンプの大半は、the Donbas Expressのように、「主に文化教育であり、言ってみればテディベア(若者)対象の教育」であることは率直に認めている。
関連記事

トルコ—シリア地震:これはテロか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Turkey-Syria Earthquake: Is This An Act of Terror?

筆者:ピーター・ケー二ッヒ (Peter Koenig)

出典:Global Research

2023年3月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月12日




***

筆者が今考えていること

 本論の末尾に書かせてもらった「ここまで証拠なし」という結論は、この恐ろしい地震がENMOD(Environmental Modification Techniques環境改変技術)によって操作された災害の結果であるという強い疑いに言及したものであった。今日までのところ、48,000人以上が死亡し、50万人以上が負傷し、数万人が行方不明になっている。

 一体正義はあるのだろうか?

 犯人と目される人間たちは裁判にかけられるのだろうか?

 特に、トルコ宇宙庁のセルダール・フセイン長官がロシアのテレビで話しているのを聞くと、「証拠がない」という発言はますます色あせていくような気がする。

 彼が、硬いチタン合金材料が地球に向けて発射されることについて話す時は、誇張された象徴的な話し方をする。彼の話によれば、チタン合金の棒を使って、この殺傷力のある超強力なエネルギーを地球に送り込み、地中深くに地震を引き起こすというのだ:

転写(翻訳)

トルコ宇宙庁のセルダール・フセイン・ユルディリム長官が、地震を起こすことができる兵器について:

 街角にある電柱をご存知でしょう。この柱と同じようなもので、高さは8~10メートルくらいです。金属の棒です。

 棒の中には爆薬も何も入っていませんが、硬いチタン合金素材でできた金属棒です。 

 衛星に入れるのです。ある一定の量をね。そして、地球に狙いを定めて発射する。尖った棒のようなものです。例えば、そんなことがあってはならないが、どこかに落ちる(今はどの災害なのかは伏せる)。地上に落ちたとたん、それは最大で5kmも地中深くまで貫通する。

 これが非常に迅速に起こり、マグニチュード7~8の地震が発生する。

 衝撃の結果、そこにあるものはすべて破壊される。いいですか、ここには武器も、爆薬も、爆弾も、そんなものはありません。単なる棒(ロッド)です。しかし、宇宙からやってくるため、強大な力があり、それを目で見ることも、止めることも、身を守ることもできないのです。

映像はこちらから

 セルダール・フセインの発言はまだ検証されていない。

ピーター・ケー二ッヒ,2023年2月22日

 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領によると、「トルコの壊滅的な地震により、1300万人以上の人々が影響を受けている」。(2023年2月7日付タス紙より引用):

「地震は甚大な被害をもたらしました。我が国の歴史上だけでなく、全世界の歴史上、史上最大の災難です。

 私たちは、歴史上最も辛い日々を過ごしています。ガジアンテプ市に近いカフラマンマラス州のパザルジクとエルビスタンを震源とする2つの強い地震は、10県に大規模な被害をもたらしました。これらの地域では、約1350万人(トルコ人口8500万人のうち)の国民が被災しています」。

 2023年2月6日(月)早朝4時頃、トルコ南東部とシリアを震源とするマグニチュード7.8の巨大地震が発生した。米国地質調査所によると、震源地はシリア国境から100km離れた主要都市で州都のガジアンテプ(人口210万人)から約30kmの地域を襲った。地震の震源は深さ約18km。

 その後、約10分後にマグニチュード6.7の強い余震が発生した。詳しくはこちら。また、NY Postのドローンによる一部被災地の映像もある。



 この地震による死者は今のところ5,400人を超え、負傷者は約32,000人となっている。これは2日目以降だけのことで、多くの破壊と瓦礫の中から生存者や遺体を探し出すことはまだできていない。

 この地震はシリア北部でも発生し、これまでに少なくとも1,200人が死亡、数千人が負傷している。(左の2つのグーグルマップを参照) *訳註:原文に地図はない

 これに比べ、1960年にサンティアゴ周辺を襲ったチリ地震は、死者約1700人、それに伴う津波で死者2000~2500人、負傷者数万人であり、今回の地震は近年の歴史上最も大きな地震の一つであるといえる。

▪ 巨大なテロ行為?

 もしエルドアン大統領が正しいのであれば、これは世界最大の災難のひとつであるが、実際その通りであるようだ。いろいろな戦争が世界で起こっているにもかかわらず、これはテロ行為となるのだろうか?

 トルコは、このような破壊的な反応を引き出すために、何をしたのだろうか。実行者は?

 USのA?その司令部と言えば、ワシントンと国防総省ということになるNATO?

 NATOの主要メンバーであり、東西の間に位置する戦略的な地理的優位性を持つトルコが最近行ったいくつかの取り組みは、NATOの同盟国の怒りを買ったかもしれない。

 以下は、必ずしも優先順位が高い順にはなっていない:
1. トルコはロシアと同盟を結んだが、これはNATO加盟国にとっては「敵と寝る」 (Michel Chossudovsky)ようなものだ。こちらこちらを参照。NATOの敵国とのこのような提携は、西側諸国にとって絶対に許されないことだ。

2. NATO同盟の下、トルコは米国のパトリオット・システムではなく、ロシアのS-400防空システムを購入することを決定した。パトリオット・システムはNATO加盟国、特にトルコのような重要な国にとっては望ましいシステムである。パトリオット(Phased Array Tracking Radar for Intercept on Target標的迎撃用指向性レーダーの略)は地対空ミサイル・対弾道ミサイルシステムそれはNATOの防空システムである。パトリオットの代わりに、トルコがより洗練され、より正確で効果的なロシアのS-400を選択したことは、ロシアとトルコの同盟関係にとって強力な屋台骨となる。

3. エルドアン大統領は2017年、プーチン大統領とS-400について25億米ドルの契約を調停した。S-400ミサイル砲台の最初の納品は2019年に到着した。

4. S-400システムは、NATO同盟だけでなく、アメリカで最も高価な兵器であるF-35にも脅威をもたらすと言われている。トルコは、当時、トランプ大統領によって厳しい制裁を受け、特に外国が操作したトルコ・リラの通貨切り下げによって、トルコ経済は壊滅的な影響を被った。ワシントンがNATO加盟国の振る舞いを「罰する」というのは異例中の異例で、ほとんど前例がない。

5. 米軍艦USS Nitze、トルコの支配するボスポラス海峡から黒海への進入を禁じられる。USNI Newsによると、2023年2月上旬、黒海付近で活動する米軍駆逐艦USS Nitzeが目撃された。プーチンのウクライナ侵攻が始まって以来、米軍艦がロシアに最も近づいたと言われる。

6. 2月3日、トルコに寄港する途中、ボスポラス海峡の南端でNitzeが目撃された。同海峡を通過した最後の米軍艦は、2021年12月15日に黒海を出港したUSSアーレイ・バーク(DDG-51)である。以下のGoogleマップを参照。次に、USS Nitzeに関する動画を参照。





7. 2022年2月、トルコは地中海から黒海へのボスポラス海峡を、黒海に母港を持たないすべての船舶に対して閉鎖した。つまり、米国の軍艦は地中海からボスポラス海峡を通って黒海に渡ることができなくなったということだ。ロシアは、黒海から例えばUSS Nitzeのような米国の駆逐艦を巡航ミサイルで攻撃される可能性がある中でのことだ。一方、Nitzeはマルマラ海のギョルク海軍基地への寄港を予定している(上のグーグルマップを参照)。

8. トルコはNATOの主要国で、東西の間にあり、重要なボスポラス海峡を境界線としているが、そのトルコがNATOの同盟国-NATO司令官に対して、重要な戦略的通路を閉鎖する(アメリカの敵であるロシアを守る)ことは、ワシントンにとって喜ばしいことではないであろう。

9. トルコとシリアの和解は、確かにワシントンの望むところではない。アラブ・センター・ワシントンDCが報じたように、これは、この地域の驚きの最新動向であるーこれを参照。

10. トルコのエルドアン大統領がシリアのアサド大統領との和解に関心を示していることは、国内と地域の微妙な均衡を取るための新たな一歩であり、エルドアンの友人や敵、特に米国は、この進展が彼らにどのような影響を与えるかについて頭を悩ませている。和解が成功すれば、シリア北部の国内・地域力学はさらに複雑になり、エルドアンにとって、おそらく次期トルコ選挙を超える明確な利益を確保することはないだろう。

11. シリアにおけるロシアの関与を覚えているだろうか? アメリカがシリアから追い出されたときのことである。バッシャール・アル=アサド大統領の要請で、2015年9月から2017年末までのロシア軍、主に空軍の干渉は、ワシントンがシリアから完全ではないにせよ、大幅に撤退したことに大きな役割を果たした。2017年、「任務完了」と同時にロシアの戦闘部隊は撤退したが、ロシアはシリア北部に名目上の軍事警察を駐留させている。

12. トルコの爆弾的行動、つまり、数日前、スウェーデンのNATO加盟を拒否したことは、わらの最後の一本が、ラクダの背中を折ることわざのようなものだったかもしれない。新しい国がNATO加盟国になるには、すべてのNATO諸国がその新しい候補国を承認しなければならないのだ。

13. スウェーデンは、トルコの条件のいくつかを自国には満たすことができないと言っている。その中には、スウェーデンがエルドアンの宿敵であるクルド人労働党(PKK)のメンバーを支援しているというトルコの非難がある。

14. トルコの危機管理団によると、1984年以降、PKKとトルコ政府との間の戦闘で、約3万人から4万人が死亡したと推定されている。

15. トルコがスウェーデンのNATO加盟を拒否したのも、ロシアの利害が絡んでいたのかもしれない。1809年以来、スウェーデンとロシアの間には平和が続いてきたが、他の隣国との状況とは異なり、両国が親密な関係を実現することはなかった。特に現在のスウェーデン政府はそうである。

▪2023年5月14日のトルコの総選挙

 もし地震の時期が計画の一部であったとしたら、来る2023年5月14日の総選挙に完全に合致することになる。エルドアン大統領とその率いる公正発展党(AK党)は、現在、支持率調査でうまくいっていない。

 震災への対応次第では、首相と党の支持率は上がるかもしれないし、下がるかもしれない。通常、「自然」災害は、責任の有無にかかわらず、政権にとっては良い結果をもたらさない。

 いずれにせよ、新たな選挙は新たな「機会」をもたらすものだ。一方、ほとんどの専門家にとって明らかなのは、真に「民主的」な選挙は存在しないということである。つまり、決定的な票、決定的な影響力がアングロサクソン西側帝国に影響されない選挙は、世界にはまさに存在しないのである。

 エルドアンを米国の手先と交代させれば、トルコは、NATOに従順で、ロシアとの同盟もなく、「敵と寝る」こともない、望ましい国として戻ってくるかもしれない。

 トルコがスウェーデンのNATO加盟候補を拒否した数日後、トルコで巨大な、死者を出す、すべてを破壊する地震が発生し、シリアに深刻な影響を与え、キプロスやレバノンにも影響を与えたのは偶然だろうか?

▪ 今回の地震はテロ攻撃だったのか? 証拠はない

 人工地震は以前にも発生したことがある。例えば、2010年1月12日にハイチの首都ポルトープランス沖で発生した地震は、カリブ海の沿岸に多く埋蔵されている巨大な石油を地表に近づけて利用しやすくするために、水中/地下爆発によって引き起こされたと疑われている。ウィリアム・エングダールの「ハイチにおける石油の戦略的否定か」は、この方向性を明確に示している。

 F. ウィリアム・エングダールによると、ハイチの沖合に大量の石油や鉱物が埋蔵されている可能性があることは地球物理学的に指摘されている。2010年1月30日の9分間の動画を参照。



▪米空軍の気象戦

 気象改変は、米空軍の文書AF 2025 Final Reportによると、「戦士に、敵対者を打ち負かす、あるいは強要するための可能な幅広い選択肢を提供する」:

 「気象改変は国内および国際的な安全保障の一部となり、一方的に行うことができる...攻撃的および防衛的な応用が可能で、抑止目的に使用することもできるだろう。地上に降水、霧、そして嵐を発生させる能力、宇宙気象を修正する能力...そして人工気象の生成はすべて、統合された一連の(軍事)技術の一部である。」

 米空軍から委託された研究: 軍事力増強要因としての気象、2025年における気象の保有、1996年8月

▪高周波活性オーロラ研究計画(HAARP)


 アメリカ空軍の「気象戦」は、1990年代初頭に開発された「高周波活性オーロラ研究計画(HAARP)」に関連している。

 HAARPに関する科学報告書(HAL Id: hal-01082992)(2011, 2014)は、電離層の変調HF加熱によって発生する高出力ELF放射が、地震やサイクロン、局所的な加熱を引き起こすと説明している。フラン・デ・アキノ・マランハオによる論文は、その科学的知見を次のように要約している::

 「HAARPは現在[2014年]、[アラスカ州ガコナで計画が終了し、2014年に移管]、電離層に極低周波(ELF)電磁波を発生させるために用いられる最も重要な施設だ。このELF放射を発生させるために、HAARPの送信機はELFで変調された高周波(HF)の強いビームを放射している

 この高周波加熱は、D領域電離層の電子の温度を変調させ、変調された導電率と時間変化する電流をもたらし、変調周波数で放射される。最近、HAARPの高周波送信機は、2.5Hzの周波数で変調された3.6GWの有効放射電力で作動した。現在のHAARP加熱器のようなHF電離層加熱器から発生する高出力ELF放射は、地震、サイクロン、強い局所加熱を引き起こす可能性があることが示されている。」

 HAARPプログラムの開発に使用された特許は、レイセオン社がE-Systems社の子会社を通じて所有している。

 なお、2014年にアラスカ州ガコナの高周波活性オーロラ研究プログラム(HAARP)計画が別の場所へ移動して閉鎖されたことにより、ペンタゴンの国防高等研究計画局(DARPA)はENMOD研究に活発に取り組んでおり、そのほとんどは機密扱いになっている。こちら参照

 本稿執筆時点では、トルコ・シリア地震が環境改変技術に起因するテロ行為であるとの疑いはあるが、具体的な証拠はない。

 上記の記述については、引き続き十分な検証が必要である。


 ピーター・ケーニッヒは、地政学的分析家であり、元世界銀行と世界保健機関(WHO)の上級経済学者として、30年以上にわたって世界中で活躍した。米国、欧州、南米の大学で講義を行う。オンラインジャーナルに定期的に執筆している。著書に『Implosion - An Economic Thriller about War, Environmental Destruction and Corporate Greed』、Cynthia McKinneyの著書『When China Sneezes』の共著者である: From the Coronavirus Lockdown to the Global Politico-Economic Crisis" (Clarity Press - November 1, 2020) がある。グローバル化研究センター(CRG)特別研究員。また、北京人民大学重陽研究所の非居住上級研究員でもある。
関連記事

安倍晋三はなぜ暗殺されたのか: そこには「欧州合衆国」と国際連盟樹立を目指す構想がある

<記事原文 寺島先生推薦>

Why Shinzo Abe Was Assassinated: Towards a ‘United States of Europe’ and a League of Nations

筆者:シンシア・チャン(Cynthia Chung)

出典:the Saker ブログ

463 画像   

2023年02月06日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月12日

 本稿の前編である拙稿「日本は米国の<アジアへの軸足>の犠牲になって、自らの首を絞めるつもりなのか」で既に述べたように、日本は世界経済にとって時限爆弾となったのである。

 これは日本にとって予期せぬ結果ではなく、三極委員会*の政策展望(ただし、この三極委員会に限ったことではないが)として過去50年来、仕組まれていたことである。実際、国際連盟の構想は、第一次世界大戦を始めた人々が望む項目のひとつに載せてきたものである。彼らは、世界が地域化され、帝国に奉仕する一つの世界政府を受け入れることを期待していた。イタリアやドイツに見られた「国家社会主義」的なファシズムの台頭を通じて、国際連盟という構想を再び実現しようとしていたのが世界恐慌を画策した勢力だったのである(この構想の実現は、経済危機がなければ不可能だった)。そして、そのような構想を世界に強引に導入しようとする絶望的な試みのために、第二次世界大戦が始まったのである(詳しくは、こちらこちらを参照)。
* 三極委員会は、国際社会における日本・北米・欧州の協同を促進する為に設立された非営利の政策協議組織である。世界各国から著名な政治家、官僚、財界人、学者、メディア企業取締役などが参加する。 発足時の名称は「日米欧三極委員会」。


 このような構想を実現するために、民主主義者を自称する人々は、しばしばファシストを自称する人々と同居することになったのである。

 汎ヨーロッパ主義の父であるリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵(たまたま親ファシストでもあった)は、1943年の自伝『汎ヨーロッパのための十字軍』の中でこう書いている:

「反ファシストたちはヒトラーを憎んでいた...しかし彼らは...ヒトラーの成功への道を切り開いた。反ファシストたちは、ヒトラーの最強の敵であったムッソリーニを、1933年と1934年の間にヒトラーの最強の味方に変えることに成功したのだから。私は、イタリアとスペインの反ファシストたちの、冷酷な政敵に対する勇敢でごく自然な戦いを責めるつもりはない。しかし、私は民主的な政治家、特にフランスの政治家を非難する。彼らは、ムッソリーニがヒトラーの同盟者となる前から、ムッソリーニをヒトラーの盟友として遇していたのだ。」

 カレルギーや、同様の血統を持つ多くの「エリート」によれば、ファシストによる汎ヨーロッパ支配が起こることは必然であり、カレルギーはこの「必然」に対する反ファシストや民主主義者の抵抗を明確に軽んじていることを表明した。カレルギーからすれば、ファシズムへの移行に対する反ファシストや民主主義者のより「平和的」な抵抗のために、ファシズムが暴力的な力で押しつけられなければならない状況を作り出してしまったというのである。これらの国々が単に「民主的」な条件でファシズムを受け入れていれば避けられたかもしれない悲劇であったとカレルギーは見ている。

 リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵は、もう一つの自伝『ある思想が世界を征服する』の中でこう書いている:

プロパガンダのための集団催眠術の使用は、危機的状況にあるときに最も成功する。当時、中流階級の家庭はプロレタリアート(賃金労働者階級)に、労働者階級の家庭は仕事がない状態にまで落ち込んでいた。第三帝国は、取り残された人々、社会的地位を失った人々、そして無意味になった自身の存在に新しい基盤を求める根無し草の人々の最後の希望となった...。

 ヒトラー運動の経済的背景は、ヒトラーの2つの革命が、ドイツの2つの大きな経済危機、すなわち1923年のインフレと1930年代初頭の不況、そしてその失業者の波と重なったことを思い起こせば明らかである。その間の6年間は、ドイツにとって比較的豊かな時期であったが、ヒトラー運動はほとんど存在しなかった。(強調は筆者)とある。

 汎ヨーロッパ主義の父であり、EUの精神的父であるリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵は、オーストリアやイタリアのファシズム、さらにはカトリックのファシズムをよく語っていたため、彼の上記の引用は不気味さを増している。カレルギーは、ドイツに2度の極端な経済危機がなければ、ヒトラーの台頭はあり得なかったと認めている。問題は、これらの危機が有機的に発生したものなのか、それともむしろ計画されたものなのか、ということである。

 カレルギーは、1954年の自伝『思想が世界を征服する』の中で、「ヒトラーの人気が、主にベルサイユ条約に反対する狂信的な闘いにあったことは間違いない」と書いている。

 カレルギーが歩んできた政治的な系譜を見ると、マックス・ウォーバーグ、ルイ・ロスチャイルド男爵、ハーバート・フーバー、フランク・ケロッグ国務長官、オーウェン・D・ヤング、バーナード・バルーク、ウォルター・リップマン、ハウス大佐、タスカ・ブリス将軍、ハミルトン・フィッシュ・アームストロング、トマス・ラモント、ヒューズ判事といった人々が、ヒトラー台頭の疑問を解くヒントになっている。これらの人物はすべて、カレルギーが自伝の中で、アメリカにおける彼の支持基盤として直接名前を挙げている。彼らはカレルギーが提唱する汎ヨーロッパ主義、別名「ヨーロッパ合衆国」を断固として支持し、国際連盟構想の強固な支持者であり、パリ講和会議(1919-1920)の設計者であった。その講和会議によるヴェルサイユ条約が、ドイツに極度の経済危機の第一波をもたらしたのである(この話の詳細については、こちらをご覧ください)。

 前回の論文、「日本は米国の<アジア基軸>の犠牲になって、自らの首を絞めることを望んでいるのか?」では、三極委員会の究極の目的は、極端な構造改革を推し進めるために経済危機を引き起こすことであったと論じた。

 金融専門家で歴史家のアレックス・クレイナーはこう書いている

「三極委員会は1973年7月、デビッド・ロックフェラー、ズビグニュー・ブレジンスキー、アラン・グリーンスパンやポール・ボルカーを含むアメリカ・ヨーロッパ・日本の、銀行家・公務員・学者のグループによって共同設立されました。この会議は、今日の西側帝国の3ブロック構造を構成する国家間の緊密な協力を促進するために設立されたものでした。その“緊密な協力”は、不死身の大英帝国の執事たちによって策定された帝国の「3ブロック構造計画」のまさに基礎となることを意図したものでした。」

 その編成は、英国の対米工作機関である外交問題評議会(CFR)(別名:英国王室御用達のシンクタンクである王立国際問題研究所の後継組織)によって組織されることになる。

 1978年11月9日、三極委員会のメンバーであるポール・ボルカー(1979年から1987年まで連邦準備制度理事会議長)は、イギリスのウォリック大学での講演でこう断言した。 「世界経済の統制された崩壊が、1980年代の本当の目的である」。これは、ミルトン・フリードマンの「ショック療法」を形成してきたイデオロギーでもある。

 1975年、CFR(外交問題評議会)は「1980年代プロジェクト」と題する世界政策の公開研究を開始した。そのテーマは、世界経済の「管理下での崩壊」であり、その政策が世界の大多数の人々にもたらす飢餓、社会的混乱、死を隠そうともしなかった。

 これはまさに日本が経験してきたことであり、経済学者リチャード・ヴェルナーが著書『円の王子たち』で実証したものだ。なお、この著書の同名のドキュメンタリー映画も制作された。日本経済は、経済危機を引き起こし、極端な構造改革の必要性を正当化するために、捏造されたバブルを経験させられたのである。

 次に、アメリカ、タイガー・エコノミー*、ヨーロッパも同じように経済危機が作り出され、それが今日の世界にとって何を意味するのか、ヨーロッパが「ヨーロッパ連合」モデルを採用した結果どうなったのか、国際連盟の一国政府モデルと主権国家からなる多極的枠組みはどう違うのかを簡単に説明する。最後に、なぜ安倍晋三が暗殺されたのかについて言及し、本論を締めくくる。
* 東南アジアで急成長しているいくつかの経済を表すために一般的に使用される用語。 アジアのトラ経済圏には通常、シンガポール、香港、韓国、台湾が含まれる。


植民地主義2.0―タイガー・エコノミーのアジア経済危機

 1990年代、大恐慌以来の深刻な不況に見舞われたのは、日本だけではない。1997年、東南アジアのタイガー・エコノミー諸国の通貨は、米ドルとの固定為替レートを維持することができなくなった。1年以内に60~80%も暴落したのだ。

 この暴落の原因は、1993年までさかのぼる。この年、韓国、タイ、インドネシアといったアジアのタイガー・エコノミー圏は、積極的な資本勘定の規制緩和と国際銀行機能の整備を行い、企業や銀行が戦後初めて海外から自由に借入できるようにした。実際には、この経済圏が海外から資金を借りる必要性はなかった。国内投資に必要なお金は、すべて国内で作ることができたからだ。

 『円の王子たち』のドキュメンタリーはこう述べている:

 「資本移動の自由化に対する圧力は、外から来たものである。1990年代初頭から、IMF、世界貿易機関、米国財務省は、国内企業が海外から借金をすることを認めるよう、これらの国々に働きかけていたのだ。新古典派経済学では、自由市場と自由な資本移動が経済成長を促進することが証明されている、と彼らは主張した。

 資本勘定が規制緩和されると、中央銀行は、国内企業が海外から借り入れを行うための抗しがたい誘因を生み出すことに着手した。それは、国内通貨での借り入れを米ドルでの借り入れよりも高くすることだった。

 中央銀行は公の場で、米ドルとの固定為替レートを維持することを強調し、借り手が自国通貨での返済額が当初の借り入れ額を上回ることを心配する必要がないようにした。銀行は貸し出しを増やすよう命じられた。しかし、生産性の高い企業には海外からの借り入れの奨励金が与えられていたため、経済の生産部門からの融資需要は少なくなっていた。そのため、銀行はリスクの高い借り手への融資を増やさざるを得なくなった。

 中央銀行が自国通貨を米ドルに固定することに合意していたため、輸入は減少し始めた。競争力は低下したが、国際収支は統計上、輸出としてカウントされる外債があるため、経常収支は維持された。投機筋がタイ・バーツ、韓国ウォン、インドネシア・ルピーを売り始めたとき、それぞれの中央銀行は外貨準備のほとんどを使い果たすまでペッグ制*を維持しようと無駄な試みをした。このため、外国人金融機関は、割高な為替レートで資金を引き出す機会を十分に得ることができた。
 * 自国の通貨と、米ドルなど特定の通貨との為替レートを、一定に保つ制度。貿易規模が小さく、輸出競争力のある産業をもたない国等が、多く採用をしている。

 中央銀行は、各国が外貨準備を使い果たせば、デフォルト(債務不履行)を避けるためにIMFに助けを求めなければならないことを知っていた。なぜなら、このような場合のIMFの要求は、過去30年間同じであったからである。つまり、中央銀行を独立させること、(そして、IMFの命令に従わせること)である。

 7月16日、タイの財務大臣は、日本に救済を要請するため、飛行機で東京へ向かった。当時の日本の外貨準備高は2,130億ドルで、IMFの総資本を上回っていた。日本は喜んで支援しようとしていたが、ワシントンは、この日本からの働きかけを止めた。なぜなら、アジア危機の解決には、IMFを通じたワシントンからの支援が必要だったからである。

 2カ月にわたる投機的な攻撃の後、タイ政府はバーツを変動相場制にした。

 IMFは、タイ、インドネシア、韓国の経済危機に対して、現在までに約1200億ドルの支援を約束している。危機的状況にある国々に到着すると、IMFのチームはすぐに中央銀行内にオフィスを構え、そこから降伏条件ともいうべきことを指示した。IMFは、中央銀行や銀行の信用創造の抑制、大規模な法改正、金利の急上昇など、一連の政策を要求した。金利が上昇すると、リスクの高い借り手は貸し倒れを起こすようになった。

 大量の不良債権を抱えたタイ、韓国、インドネシアの銀行システムは、事実上破綻した。健全な企業も信用収縮に苦しむようになった。企業倒産は急増した。失業率は1930年代以降で最も高いレベルにまで上昇した。

 IMFは、自分たちの政策がどのような結果をもたらすか、よく知っていた。韓国の場合、金利が5%ポイント上昇した場合、どれだけの韓国企業が倒産するかという、詳細だが非公開の研究結果まで準備されていた。IMFの韓国との最初の合意は、まさに5%ポイントの金利上昇を要求したのである。

 リチャード・ヴェルナーはインタビューでこう述べている

 「IMFの政策は、明らかにアジア諸国の景気回復を目的としたものではありません。IMFの政策は、アジア諸国の景気回復を目指すものではなく、アジア諸国の経済、政治、社会システムを変えるという、まったく異なる課題を追求するものです。実際、IMFの取引は、韓国やタイのような関係国のリフレ[通貨再膨張政策]を妨げているのです。」

 インタビュアー:「興味深いですね。つまり、それが危機を悪化させ、IMFには隠された意図があると言いたいのですね?」

 リチャード・ヴェルナーはこう答えた。「IMFは、アジア諸国に対して、外国資本が銀行から土地まで何でも買えるように法律を改正するようはっきりと要求しているからです。実際、IMFの取引によれば、銀行システムの資本増強は外国の資金を使うことによってのみ可能です。そのために外国の資金は必要ないのです。つまり、アジアを外国の利益のために開放することが目的なのです。」

 IMFは、経営難に陥った銀行を救済するのではなく、閉鎖して不良資産として安く売却することを要求し、多くの場合、米国の大手投資銀行に売却された。ほとんどの場合、IMFの指示した「趣意書」には、銀行を外国人投資家に売却しなければならないと明示されていた。

 アジアでは、経営不振に陥った金融機関を存続させるために、政府が組織的に救済することは許されないことだった。しかし、その1年後、アメリカで同じような危機が発生したとき、同じ金融機関が異なる対応をした。

 『円の王子たち』のドキュメンタリーはこう語る。

 「コネチカット州のヘッジファンド、ロングターム・キャピタルマネジメントは、富裕層の個人投資家と機関投資家のみを顧客としていたが、50億ドルの顧客資金をレバレッジ*することでその25倍以上の資金を動かし、世界の銀行から1000億ドル以上を借り入れていた。この会社が出した損失がこの会社に資金を貸し出した銀行を弱体化させ、米国の金融システムと経済を危うくする全般的な銀行危機の可能性が生じたとき、FRBはカルテル的な救済策をとり、ウォール街や国際銀行に資金を提供させて、デフォルト(債務不履行)を回避するように仕向けた。
* 預けた資金(証拠金)を担保とし、その何倍もの金額の取引ができる仕組みのこと

 米国は、自国内で同じルールを実施するつもりもないのに、なぜ自由市場の名の下に外国にそれを要求するのだろうか。

 日本やアジアの危機の例は、経済的所有権の再分配を促進し、法的、構造的、政治的変化を実施するために、危機がいかに操作されるかを示している。

 アジアの銀行が救済されることを禁じられたのは、これらのアジア経済に対する外国人による買収が行われるようにするためであった。IMFが帝国の植民地的狙いを保証している今、誰がかつてのイギリスの東インド会社のような力を必要としたでしょうか。


IMFと三極委員会の「それほど隠されていない」予定計画

 IMFは明らかに西洋の銀行によるアジアの乗っ取りを目標に掲げているが、この勢力圏内に位置していたヨーロッパやアメリカの人々にとっての「狙い」は何だったのだろうか。彼らは帝国の略奪から利益を得る運命にあったのだろうか?

 これに対する短い答えは、もう明らかだろうが、「ノー」である。

 アメリカやヨーロッパで引き起こされた危機は、ごく小さな集団に権力を集中させるためのものであり、これらの地域にたまたま住んでいた人々、つまり統治される人々のためでなかったことは明らかである。

 ヨーロッパは特に、「ヨーロッパ合衆国」という視点に固執したために、自分自身を苦しめることになった。ユーロ圏の国々は自国通貨を持つ権利を放棄し、中央銀行の中でも最も強力で秘密主義的な欧州中央銀行(ECB)にその権限を委ねてしまった。

 このような体制の下では、ヨーロッパのどの国も自国の経済を管理することはできず、ECBが決定することに完全にさらされてしまう。

 リチャード・ヴェルナーはこう言っている。 「ECBは金利よりも信用創造*に力を入れなければなりません。ECBは過去の失敗から学ぶべきことがたくさんあります。なぜなら、基本的に信用創造を十分に注意深く観察していなかったと思うからです。スペインやアイルランドでは、ECBの監視下で大規模な信用拡大**が行われましたが、ユーロ圏では金利はもちろん同じですが、信用創造の循環量は大きく異なります。ユーロ圏全体の金利は同一ですが、2002年にECBはブンデスバンク(ドイツの中央銀行)に対して、史上最大だった信用創造量を減らすように指示し、逆にアイルランドの中央銀行には、明日がないかのように(信用創造を増やすことで)お金をたくさん刷れと指示しました。何が起きたと思いますか? 金利は同じです。成長も同じだったでしょうか? いいえ、ドイツでは不況、アイルランドでは好景気になりました。その違いは何だったのでしょう? 信用創造の規模です。」
* 信用銀行が預金を利用した貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨をつくりだすこと。
** 信用拡大とは、市場に資金が十分に供給され、銀行が積極的に貸し出しを行える状態。


 2004年からECBの監視下で、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル、スペインの銀行信用は年率20%以上増加し、不動産価格は急騰した。銀行の信用が落ちると、不動産価格は暴落し、開発業者は倒産し、アイルランド、ポルトガル、スペイン、ギリシャの銀行システムは債務超過に陥った。

 『円の王子たち』のドキュメンタリーはこう指摘する。

 「ECBはバブルを防ぐことができたし、その後の銀行危機や経済危機を終わらせることもできたはずだ。しかし、ECBは、財政と予算の権限を各国からEUに移譲するなどの大きな政治的譲歩がなされるまでは、それを拒否した。

 スペインでもギリシャでも、若者の失業率は50%に達し、多くの若者が海外に就職することを余儀なくされている。ECBの意思決定機関の審議は秘密である。例えば、民主的な議論や討論を通じてECBに影響を与えようとすることは、マーストリヒト条約によって禁じられているのである。

 ECBは国際的な組織であり、いかなる国の司法権の法律よりも上位に位置し、その外にある。上級職員は外交官パスポートを所持しており、欧州中央銀行内のファイルや文書は、いかなる警察や検察官によっても捜索や押収を受けることができない。

 欧州委員会は、選挙で選ばれたわけでもない組織であり、統一国家のような装飾を施した「欧州合衆国」を建設することを目的としているため、個々の政府や欧州の民主的な議会の影響力を弱めることに関心がある。マーストリヒト条約で根拠とされた中央銀行の独立性の根拠は、欧州委員会自身が依頼したたった1つの研究だけに由来していることが判明した」。


「ヨーロッパ合衆国」のファシスト的ルーツ

 1930年2月15日、チャーチルはサタデー・イブニング紙に「ヨーロッパ合衆国」と題する記事を掲載し、次のように書いている[1]。

 「汎ヨーロッパの思想の復活は、クーデンホーフ=カレルギー伯爵の考えとほぼ一致している。国際連盟は、米国がその広大かつ増大する利益を考慮して、軽率にも参加しなかったが、形式的にはともかく、事実上、主としてヨーロッパの機関とならざるを得なかった。クーデンホーフ=カレルギー伯爵は、ヨーロッパの力、利益、感情を1本の枝に集中させることを提案し、それが成長すれば幹そのものになり、明らかに優位性を獲得することになると述べた。ヨーロッパがどれほど強大か、しかしそれが分裂していた場合を考えてみてほしい!そしてすでにほぼ事実となっているように、ロシアをアジアに後退させればよいと、カレルギー伯爵は提案する。カレルギー伯爵の計画では除外されている大英帝国が、自らの世界進出の理想を実現するとしても、ヨーロッパの集団は、統合されたり、連邦化または部分的に連邦化されたり、ヨーロッパ大陸として我々はひとつであるという自己認識がなされれば、アフリカとアジアに所有地や植民地を有していることから、英国とは比較にならない有機体を構成するだろう」。(強調は筆者)。

 リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵の『ある思想が世界を征服する』には、こう書かれている:

「驚いたことに、ヨーロッパ人の意識は十字軍の時に初めて現れたのだと知った。ローマ帝国が崩壊した後、十字軍はヨーロッパの連帯を最も強力に広報するものであった。そして、1834年、マッツィーニ*は、国家主義と民主主義を基礎とした新しい統一ヨーロッパを建設するために、既存のすべての革命運動を調整するための運動、ヤング・ヨーロッパ**を設立した」。(強調は筆者)
* ジュゼッペ・マッツィーニ 、(1805年~1872年)は、イタリアの政治家、ジャーナリスト、イタリア統一運動(リソルジメント)の活動家であり、イタリア革命運動の先頭に立っていた。彼の努力は、9世紀まで存在していたいくつかの別々の州(多くは外国勢力によって支配されていた)の代わりに、独立した統一されたイタリアをもたらすのに役立った。
** 1834年にイタリアの思想家ジュゼッペ・マッツィーニが創始した政治結社。カルボナリ(19世紀に伊・仏で興った革命的秘密結社)を通じての国際運動に限界を感じていたマッツィーニは、新たな汎ヨーロッパ的視野を持つ共和主義団体を作る必要性を感じていた。これにイタリア本国は無論、ドイツ・ポーランド・スイスなどの知識人が呼応し、1834年に「青年ヨーロッパ党」が結成された。


 興味深いことに、カレルギーは、自身が「国家主義と民主主義を基礎とする統一ヨーロッパ」に向けた最も近代的な組織者であると考えたジュゼッペ・マッツィーニは、イタリアにおけるファシズムの先駆者であると考えられていた、ともしている。カレルギーは次のように書いている[2]。

 「当時(イタリア)のファシズムは、まだ議会主義や民主主義と決別していなかった。イタリアの新政府は連立政権であり、立憲君主制の原則を尊重し、それに新たな活力と権威を与えようとしたに過ぎなかった。イタリア新政府は、若者の英雄的本能、犠牲の精神、理想主義に訴えかけるものであった。宗教的価値の尊重と古代ローマの輝かしい伝統の回復に努めた。そして、イタリア新政府は、マッツィーニをファシズムの先駆者として称えたのである」というものである(強調は筆者)。

 十字軍という主題は、カレルギーが汎ヨーロッパを構想する上で中心的なものとなり、汎ヨーロッパのための旗に十字軍のシンボルを取り入れたほどであった。

 1943年の自伝の中で、カレルギーは汎ヨーロッパの十字軍という主題について、さらに次のように説明している[3]。

 「私は、この運動のシンボルとして、黄金の太陽に赤い十字架を重ねたものを選んだ。赤十字は、中世の十字軍の旗であり、ヨーロッパの超国家的な兄弟愛の象徴として最も古くから知られているようだ。また、近年では、国際的な救援活動の象徴としても認知されている。太陽は、世界を照らすというヨーロッパ文化の功績を表すために選ばれた。ヘレニズムとキリスト教、キリストの十字架とアポロンの太陽は、ヨーロッパ文明の永遠の柱として並んでいる(強調は筆者)」とある。

 この「ヨーロッパ合衆国」というカレルギーの「汎ヨーロッパ」構想は、巧妙かつ不誠実な言葉遊びであった。アメリカはもともと、大英帝国に従順な13の植民地という形で存在していた。しかし、アメリカは大英帝国からの独立を目指し、国家としての主権を確立したとき、建国の父たちはハミルトン銀行を中心に新共和国を統一した。この政治経済の革新は、返済不可能な債務を連邦政府の信用制度に転換し、地域の産業成長に有利な連邦保護主義を制定し、銀行を一般福祉向上への投資を中心に方向付けた。

 こうして、アメリカ合衆国は、1つの通貨と国立銀行を形成し、貿易を促進することで、新しく誕生した国家の経済主権を維持することができた。

 このハミルトン流の経済組織は、ドイツの経済学者フリードリッヒ・リストの「国民政治経済システム」に影響を与え、ツォルフェライン(関税同盟)につながった。当時のドイツもアメリカのように地域ごとに分かれており(この時点までドイツは国家ではなかった)、ツォルフェラインによってドイツは歴史上初めて主権国家としての地位を確立し始めることになったのだ。フリードリッヒ・リストは、ハミルトン主義の経済体系に直接言及し、ドイツに創造性を与えた。この体系は、中華民国の父である孫文の「人民の三原則」にも影響を与え、リンカーン/ヘンリー・C・キャリーの経済計画に直接言及したもので、それ自体はアレキサンダー・ハミルトンの経済原則を引き継いでいた。これはまた、明治維新で始まった産業成長計画を組織するために、日本にいるアメリカの親リンカーン経済学者という形で復活したのである。

 このハミルトン流の経済組織の流れが、多極化の枠組みが続けている、主権を持つ国民国家の防衛と成長に受け継がれているのである。そうだ、地域協力は必要だ。鉄道のような大きなインフラ計画では、多数の国が関わるので地域協力が必要である。しかし、地域協力と国際連盟の構想とを混同してはいけないし、実際に政治的、経済的に提案されているものを見れば、両者の違いはすぐにわかるはずだ。近い将来、このテーマについてより直接的に論じる論文を書くつもりだが、今のところ、この点についてさらに詳しい内容はこちらを参照していただきたい。

 国際連盟、汎ヨーロッパ、ヨーロッパ合衆国などの構想の場合、それはまったく逆だった。それは、主権を持つ国民国家の枠組みから権力を奪い、帝国体制に従属する国家へと変貌させることだった。つまり、「ヨーロッパ合衆国」という言い方は、元来のアメリカの13の植民地に対して不誠実で誤解を招く表現であった。なぜなら、ヨーロッパ諸国は、国家の経済的主権をさらに促進するのではなく、主権を取り除き、欧州連合(中央集権的政治力)と欧州中央銀行(中央集権的経済力)、NATO(中央集権的軍事力)による中央集権に従うことを期待されたからである。欧州のどの国も、このような締め付けの中で、政治的、経済的、軍事的な運命を掌握することはできないだろう。

 国際連盟の構想が引き継がれるためには、主権を持つ国民国家は解体されなければならないだろう。この話については、拙著『黒い太陽*が沈まない帝国』を参照されたい。
*黒い太陽は、12個の放射状のジークルーネ(ᛋ)あるいは3つの重ね合わせた鉤十字(卐)で構成された、秘教的シンボルの一つである。

 1990年代以降、黒い太陽のシンボルは、ネオファシスト、ネオナチ[4]、極右、白人国粋主義者に広く使われている。

 アメリカやヨーロッパの経済危機が教えてくれたのは、ごく少数者に力を与えるために、かつては主権国家だった経済が乗っ取られ中央集権化され、一般市民の権利や福祉がますます軽視されるようになり、納税者がそのツケを払わされることになるということである。


安倍晋三はなぜ暗殺されたのか

 安倍晋三元首相は、2022年7月8日に暗殺された。暗殺された時点で日本の首相の座には(2006年から2007年、2012年から2020年9月16日まで在任)いなかったが、日本の歴史上最も長く首相を務め、日本の政策形成に大きな影響力を与え続けた。

 安倍首相が暗殺されたというニュースは、世界中で両極端から非常に強い感情で受け止められた。ある人は彼の死に慄き、彼が日本のために行ったことをほとんど聖人のように称賛した。また逆に、日本の帝国時代の暗黒面を復活させようとしたり、第二次世界大戦中の日本のファシストへの賛辞を公の場で表明したことから、いいことは何もなかった考え、大喜びして彼の死を祝う者もいた。このニュースがまだ新鮮で、混乱が頂点に達していたとき、安倍首相の死を画策したのは中国であると非難する者さえ多数いた。

 確かに安倍首相は、日本を帝国主義的な帝国に戻すという非常に危険で破壊的な使命を担っていた。彼は、日本政府の危険な民営化を推し進め、富裕層と中流市民の間の格差を拡大させた腐敗した当事者だったのだ。しかし、彼の死を絶対的な勝利として祝うのも、あまりに単純な話である。安倍首相の暗殺から7カ月が経過した今、日本は平和的で東側の友好国との対話が可能になったのではなく、むしろ好戦的で、ますます戦争に熱狂する西側の要求に協力する姿勢を強めていることがよくわかる。また、安倍首相が生きていたころはまだ進んでいたロシアや中国との経済的・政治的な協力関係も大きく断ち切られてしまった。

 安倍首相が暗殺されたのは、ペロシが台湾に曲芸のような訪問を行う数週間前だったことも興味深い。ペロシの挑発は軍事的対決には至らなかったが、その意図がなかったとは言い切れないし、中国と米国の軍事的対決という点では、まったく違った展開になったかもしれない。

 読者は、2014年に日本が憲法を改正、あるいは「解釈変更」して、自衛隊に大きな権限を与え、同盟国が宣戦布告された場合、自衛隊に「他の同盟国を守る」ことができるようにしたことを思い出してほしい。もちろん、アメリカはこの動きを全面的に支持した。

 この日本国憲法の「解釈変更」によって、日本は事実上NATOに加盟することになった。

 2022年12月、日本は新たな国家安全保障戦略を発表した。この新戦略では、防衛費を倍増させる。日本はまた、米国のトマホーク巡航ミサイルの購入や独自の兵器システムの開発など、反撃能力への投資も計画している。

 日本が帝国としての「栄光」の時代に戻るという安倍首相の壮大な構想こそが、国際連盟の構想にとって問題であった。つまり、安倍首相は日本を属国として売り渡すつもりはなかったが、それこそが欧米の絶対命令が日本に本質的に求めていたものだった。この欧米の指示の下で、日本は経済的に崩壊して絶望に沈み、軍国主義と過激さを増し、日本文明の破滅につながる中国やロシアとの戦争に神風を吹かせるという運命を受け入れるよう命じられていた。安倍首相は、そのような日本の厳しい未来像に沿うつもりはなかったようだ。

 エマニュエル・パストリッチは「安倍晋三大公の暗殺」と題する洞察に満ちた論文を書いている。[この論文は「グローバリストがルビコンを渡った時:安倍晋三の暗殺」という題名でもある]。

 パストリッチは、「(安倍は)...射殺されたとき、すでに日本の歴史上最も長く首相を務め、3度目の首相就任を計画していた」と書いている。

 言うまでもなく、世界経済フォーラム(WEF)の背後にいる権力者は、たとえグローバリストらが描く予定計画に適合していても、国民国家の中で抵抗を組織することを可能にする、安倍のような国家指導者を望んでいない。

...ロシアの場合、安倍首相は2019年、ロシアとの関係を正常化し、北方領土(ロシア語でクリル諸島)に関する紛争を解決するための複雑な平和条約を交渉することに成功した。ワシントンが東京への制裁圧力を強めても、日本企業のエネルギー契約を確保し、ロシアに投資機会を見出すことができたのだ。

 ジャーナリストの田中宇(さかい)は、ロシア政府が他の日本政府代表の入国を禁止した後も、安倍はロシアへの入国を禁止されなかったと指摘している。

 安倍は中国とも真剣に関わり、長期的な制度的関係を固め、第15回協議(2019年4月9日~12日)で突破口を開いた自由貿易協定交渉を推進した。安倍は中国の有力政治家とすぐに接触でき、その反中的な暴言を吐くことはあっても、彼らから信頼でき、予測できる者と思われていた。

 安倍の暗殺に至る経緯を引き起こしたと思われる決定的な出来事は、マドリードでのNATO首脳会議(6月28~30日)であった。

 そのNATO首脳会議は、裏の隠れた勢力が新しい世界秩序の法則を打ち立てた瞬間だった。NATOは、ヨーロッパを守るための同盟を越えて、世界経済フォーラムや世界中の億万長者、銀行家たちと協力して、かつてのイギリス東インド会社のように機能する「世界軍隊」として、説明責任を果たさない軍事大国に進化する道を急ぎつつある。

 NATO首脳会議に日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳を招待するという決定は、このNATOの変革の重要な部分であった。

 この4カ国は、情報共有(ハイテク多国籍企業に外注)、先端兵器システムの使用(ロッキード・マーチンなどの多国籍企業の職員が管理しなければならない)、合同演習(抑圧的な意思決定過程の前例を作る)、その他国家内の指揮系統を弱める「協調」構想など、安全保障における前例のない規模の統合に加わるために招待された。

 7月1日に岸田が東京に戻ったとき、最初に会談を持った1人に安倍元首相がいたことは間違いないだろう。岸田は、バイデン政権が日本に要求してきた無理難題を安倍に説明した。

 ところで、ホワイトハウスは今や、ビクトリア・ヌーランド(政治担当国務次官)ら、ブッシュ一族に鍛えられたグローバリストの道具と化している。

 日本に出された要求は、日本にとって自殺行為的なものであった。日本はロシアに対する経済制裁を強化し、ロシアとの戦争の可能性に備え、さらに中国との戦争に備えなければならなかった。日本の軍事、情報、外交機能は、NATO周辺の饗宴に集う新興の民間業者の集団に移管されることになっていた。

 安倍首相が死の直前の1週間に何をしたかはわからない。おそらく、ワシントンD.C.、北京、モスクワ、そしてエルサレム、ベルリン、ロンドンにあるすべての繋がりを駆使して、高度な政治的駆け引きに乗り出し、日本が裏口から中国やロシアとのデタント(緊張緩和)を模索しながら、バイデンに全面的に協力しているという印象を世界に与えるような多層的な対応策を考えていたのだろう」。

 正直に言おう、この時点でホットメス*はむしろ誰の目にも明らかなはずだ。IMF、NATO、世界経済フォーラムの悲惨な政策を推進する立場にある人々は、司令部ではない。たったの2ヶ月弱で首相の座を降りた英国のリズ・トラス元首相が、ロシア領とウクライナ領の区別もつかず、ロストフやボロネジをロシア領とは認めないと答えて恥をかいたのは、ほとんど毎日のように起きている例のひとつに過ぎない。このような非常識な政策が最適なのは、まさにこの理由からで、彼らは自分たちが最終的にどのような結果をもたらすのか理解していない。彼らは全く無知であり、したがって、切り取られた厚紙として使い捨てにされるのである。
* ホット・メス(hot mess)は、魅力的でありながらも、目を見張るような成功を収めていない人物や物のことを指す。

 本当に起こっているのは、この対立の先に生き残れる国家はひとつもないということだ。

 西側諸国が東側諸国と対立するという話ではない。すべての国家を破滅させ、一つの帝国を形成すること、あるいは、この言葉を好むなら、一つの世界政府を形成することである。繰り返すが、これは第一次世界大戦以来、ごく少数の勢力の夢であった国際連盟の構想なのである。

 この構想の主旨は、西洋の民主主義や自由主義、西洋の価値観のことではない。帝国体制の復活を目指すものであるし、これまでもずっとそうであったのだ。この構想のせいで、第一次世界大戦が引き起こされ、第二次世界大戦も引き起こされ、この先起こるであろう第三次世界大戦もそうなのだ。

 興味深いことに、私たちは、ドイツと日本が、地球を再び本格的な世界大戦に突入させる準備の整った罠の横に位置しているのを再び目にすることになる。そして、ドイツと日本という2つの国の運命はどうなるのだろうか。ドイツと日本は、からくり人形に過ぎない「指導者」たちが、第二次世界大戦中に愚かにも誤った考えをしてしまったように、世界を火の海にしても何とか生き残る「特権階級」集団の中に自分たちが含まれていると愚かにも考えている。彼らは、自分たちが受け入れられたいと切に願う「特権階級」集団にとって、自分たちの国民や文明がいかに消耗品であるかを改めて思い知ることになるだろう。

 安倍首相が暗殺されて以来、確かなことが一つある。日本は、再び歴史の間違った側に立つ危険に繋がる、非常に危険な道をますます急速に進んでいる。問題は、ドイツと日本が同じ過ちを2度犯すほど愚かなのか、ということである。


1.クーデンホーフ=カレルギー、リチャード(1943)『汎ヨーロッパのための十字軍』: Autobiography of a Man and a Movement. G.P. Putnam's Sons, New York, pg. 198-200.
2.クーデンホーフ=カレルギー, リチャード. (1943) Crusade for Pan-Europe: Autobiography of a Man and a Movement. G.P. Putnam's Sons, New York, pg. 78.
3.クーデンホーフ=カレルギー, リチャード. (1954) An Idea Conquers the World. Purcell & Sons Ltd., Great Britain, pg. 98.
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「地球上のすべての人が死ぬ」 AI 研究の第一人者が警告

<記事原文 寺島先生推薦>

‘Everyone on Earth will die,’ top AI researcher warns — RT World News

人類は、はるかに賢い人工知能との戦いに生き延びる準備ができていない、とエリエゼル・ユドコフスキーは言う。

出典:RT

2023年4月1日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月9日


映画「ターミネーター2」で使用されたターミネーターロボット "T-800 "の実物大フィギュア。© AFP / 津野義和


 世界中の高度な人工知能システムの開発を停止し、その一時的停止に違反した者を厳しく罰することが、人類を絶滅から救う唯一の方法であると、著名なAI研究者が警告している。

 機械知能研究所(MIRI)の共同創設者であるエリエゼル・ユドコフスキーは、水曜日(3月29日)にタイム誌に意見書を寄稿し、「すべてのAI研究所は、今月初めにOpen AI[アメリカの人口知能研究所]が発表したマルチモーダル(多機能)大規模言語モデルであるGPT-4*より強力なAIシステムの訓練を少なくとも6カ月間直ちに一時停止せよ」と求める請願書**に署名しなかった理由について説明している。
* Generative Pre-trained Transformer 4。幅広い一般知識と問題解決能力があり、画像を読み取り、その内容を説明できる次世代のAI言語モデル。
** 2023年3月22日にネット上で発行された公開書簡のこと。全文は以下で読める。
Pause Giant AI Experiments: An Open Letter - Future of Life Institute


 ユドコフスキーは、イーロン・マスクやアップルのスティーブ・ウォズニアックなどが署名したこの書簡は、AIの急速かつ無秩序な発展がもたらす問題を「解決するにはあまりにも少ない要求」だと主張した。

ユドコフスキーは、「超人的に賢いAIを開発した場合、現在のような状況下では、まさに地球上のすべての人が死ぬことになります」と書いている。




関連記事:マスク、AIの一時停止を要求


 ユドコフスキーは、「私たちのことも、一般的な感覚を持つ生命体のことも気にかけない」コンピュータ・システムとの戦いを生き延びるには、「精密さ、準備、そして新しい科学的洞察」が必要であり、それを人類は現時点では持っておらず、近い将来にもそれを得られそうにないと主張した。

 「十分に知的なAIは、長い間コンピュータの中に閉じこもってはいられないでしょう」と、ユドコフスキーは警告している。彼の説明では、DNAの文字列を実験室にメールしてタンパク質を製造することがすでに可能であることから、AIが「人工生命体を構築したり、ポスト生物学的分子製造に着手して」して世の中に出ていく可能性が高いとのことだ。

 この研究者によると、新しい大規模なAI訓練の無制限かつ世界的な一時的停止を直ちに導入する必要がある、という。「政府や軍を含め、例外は許されない」と彼は強調する。

 そして、このようなAIシステムの訓練に使用できる計算能力の上限を定める国際協定を結ぶべきだと、ユドコフスキーは主張する。

「協定を結んでいない国が一連のグラフィック・プロセッシング・ユニットGPU(画像を表示するために必要な計算を行う半導体装置)を構築しているとの情報が流れた場合には、(AIの開発の)一時的停止が破られることを危惧しなければなりません。それに比べれば、国家間の軍事衝突は小さな懸念材料です。そして、不正行為を行った国のデータセンターを空爆で破壊することをためらうな」と、彼は書いている。

関連記事:Chat GPTの制作者がAIの危険性を警告する

 人工知能の脅威は非常に大きいので、「AIによる(人類)絶滅シナリオを防ぐことが、全面的な核戦争を防ぐことよりも優先されるべきであることを国際外交で明示する必要があります」ともユドコフスキーは述べた。
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ビル・ゲイツ、パンデミックのためのグローバルな「消防署」を望む

<記事原文 寺島先生推薦>

Bill Gates wants global ‘fire department’ for pandemics

出典:RT

2023年3月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月9日


ソフトウェア大王は、WHOの世界保健緊急部隊への資金提供を呼びかけた。



資料写真: 2022年5月25日、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで、記者会見するビル&メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ © AP Photo/Markus Schreiber


 Covid-19のような、次のパンデミックを防ぐには、世界保健機関を中心とした「消防士」による地球規模の対応ネットワークを構築する必要があると、億万長者のビル・ゲイツは主張している。さらに、著名な専門家と各国の公衆衛生当局がこの取り組みを主導すべきであると付け加えた。

 ゲイツは、日曜日(3月20日)に掲載されたニューヨーク・タイムズの意見欄に、「私たちは、火事と戦う準備をするのと同じように、病気の発生と戦う準備をする必要があります」と書いている。これは、「危険が迫ったときにすぐに行動に移せるような、十分な資金を備えた体制」を意味する。

 ゲイツは、「世界保健緊急軍団」と呼ばれる「保健緊急事態のトップリーダー」のネットワークを構築するWHOの取り組みを支持した。この「あらゆる国や地域から集まった専門家集団」は、十分な資金を持ち、「国境を越えた脅威」に対応できるようにする必要がある、とゲイツは書いている。

 このような組織は、ゲイツが2022年に出版した『次のパンデミックを防ぐ方法』で提案されたが、ゲイツはこれを世界疫病対応と動員(GERM)と呼び、その規模や資金を3000人、WHOの予算を10億ドル追加すると規定した。

 ゲイツは、「緊急部隊を成功させるためには、既存の専門家のネットワークを活用し、国の公衆衛生機関の長や疫病対策の責任者のような人々が主導しなければならない」と主張した。そうは言いながら、Covid-19への対応に責任がある既存の公衆衛生体制は、彼自身不十分だと述べていた。




関連記事:世界保健機関はCovidの起源についての米国の主張を支持する証拠を欲している


 ゲイツによれば、2020年のパンデミックは、「多くの警告があったにもかかわらず、パンデミックに備えることができなかった集団的失敗」だという。彼自身の財団は2019年10月、「イベント201」と名付けられた、新型コロナウイルスが世界的に流行することを軸としたパンデミック対策演習を開催した。このイベントを共催したジョンズ・ホプキンス大学は、後に、この演習は実際のコロナウイルスのパンデミックとは何の関係もないことを明らかにする必要に迫られた。

 ゲイツは、「Covid-19を最後のパンデミックにするために、世界は今すぐ行動を起こさなければなりません。私たちができる最大の動きの1つは、世界の主要な保健専門家であるWHOを支援し、世界保健緊急部隊に投資して、その能力を十分に発揮できるようにすることです」とタイムズ誌で主張した。

 マイクロソフトの共同創業者であるゲイツは、そのソフトウェアで得た資産をビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団に投資し、予防接種キャンペーンやパンデミック対策の推進に数百万ドルを費やしている。ゲイツはまた、米国で農地を取得し、グリーンエネルギーと代替食料源を推進するために数百万ドルを費やしてきた。先月のインタビューでは、火星を植民地化する宇宙計画に資金を提供するSpaceX社の大物、イーロン・マスクを批判し、そのお金はワクチンに使った方が良いと述べた。

 妻のメリンダは2021年に離婚を申請し、ビルが告発された小児性愛者の性売買人ジェフリー・エプスタインとの関係など、長年にわたって積み重なったさまざまなことを理由に離婚を申し出た。ただし、財団の運営は二人で続けている。
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バイデンCovid情報を公開へ

<記事原文 寺島先生推薦>

Biden to release Covid intelligence

出典:RT

2023年3月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月9日



ホワイトハウスのイーストルームでスピーチするジョー・バイデン大統領(2023年3月20日、ワシントンDC) © AP / Evan Vucci


 ジョー・バイデン米大統領は、連邦政府に対し、Covid-19パンデミックの発生に関する資料の機密解除を指示する法案に署名した。ホワイトハウスは、ウイルスと中国の機密研究室との「潜在的な関連」を示唆している。

 この法案は反対もなく両院を通過し、バイデンは今月初めの月曜日(3月20日)の夜に署名した。この法律は、国家情報長官室に健康危機の起源に関する情報を公開することを求めているもので、機密解除された報告書を90日以内に議員に転送しなければならないと定めている。

 大統領は声明の中で、「将来のパンデミックをより確実に防ぐために、Covid-19の起源を解明する必要がある」と述べ、「中国の主要研究所である武漢ウイルス研究所との関連性」を含め、パンデミックに関する「すべての機密情報を引き続き検討する」と付け加えた。




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 しかし、バイデンは、情報機関が「Covid-19については可能な限り多くの情報」を共有することに言及する一方で、「国家安全保障を害する情報の開示から保護する」という権限を発動し、一部の記録は秘密にしておかなければならないことを示唆した。月曜日に大統領が法案に署名したことを確認するまで、ホワイトハウスはバイデンがこの法案を支持していたかどうかを明らかにすることを拒否していた。

 多くの政府高官が、Covid-19の起源は中国の武漢にある研究所から漏れたものである可能性を示唆しており、FBI長官のクリストファー・レイは、Covid-19ウイルスがこの施設から発生した可能性が「最も高い」と最近発言している。レイ長官は、公的に入手可能な証拠はないとしながらも、この発言を受けて、エネルギー省も起源に関する問題について立場を変え、研究所からの流出説を支持するが、「信頼度は低い」とする報道が続いた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、少なくとも他の4つの米国連邦機関と「国家情報委員会」は、パンデミックが自然に動物から人間に広がった可能性が高いと判断し、2つの機関は未確定であるという。

 北京は、バイオセーフティーレベル4の研究室(最も致死性の高い病原体を厳格な安全基準の下で保管する研究室)からウイルスが流出したという主張を繰り返し否定しており、この説は海外での中国のイメージを汚すための方法であるとして否定している。外務省関係者は、ワシントンがパンデミックについて「神話を広めている」と非難し、最近では世界保健機関に対し、中国で行われた同様の調査を反映した新しい起源調査を米国で開始するよう要請している。

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ジョージアとウクライナにある米国生物研究所:若手兵士は今でもモルモットとして使われているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

US Biolabs in Georgia and Ukraine: Are Young Soldiers Still Being Used as White Rats?

ヘンリー・カメンズ(Henry Kamens)

INTERNATIONALIST 360°

2023年3月21日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月9日

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 いったん何かが否定されると、しかもむきになって否定されると、それが真実であるのか、あるいは不都合な問題がありすぎるのか、どちらだろうかと思うことがある。たとえば米国がウクライナの実験室で製造したサリンガスがシリアで使用されたといった古いニュースなどは、無人機から投下された毒ガスの入った容器で、恐ろしい死を遂げたロシア兵の生々しい映像を見れば、これはまさに今現在の時事的な問題になる。

 問題のニュースは、2014年にさかのぼる。トビリシ(ジョージア)で、米国が出資するルガー研究所で働いた後、複数の米国人防衛契約者が、同じ症状で死亡したことが明らかになったのだ。彼らの死は公式には食中毒とされ、ジョージア人ジャーナリスト(複数)は、ジョージア情報局から取材はするな、と脅された。

 しかし、複数の情報源(オンラインニュースサイトNEOに頻繁に寄稿している米軍情報誌Veterans Todayのゴードン・ダフやジェフリー・シルバーマンなどを含む)が、2014年に偽旗攻撃の一環としてシリア政府のせいにした「シリア化学兵器攻撃に米国の契約者(複数)が関わっていた」ことを、労を惜しまず記事にしたのだ。

 ダフは、ジョージアからシリアに化学兵器が海上輸送される仕組みを詳細に説明した。シルバーマンは、ダフが提供した情報が信頼できる情報源に基づいていることを確認し、ダフとアメリカの退役軍人のチームが、シリアの化学兵器の供給がトルコ経由で外から入ったことを突き止めた。

 実際、シルバーマンは、彼が数年前にボルジョミのBP(英国の石油会社)の倉庫からトルコ国境までトラックで運ばれていた貨物を追跡したため、ジョージア治安当局に拘束されたことがある。その貨物は、羊飼いを装ったトルコ情報機関(MIT)の手に渡り、最終的にはシリアの反政府勢力が使用するために移送されたことは明白であったという。

 次のことは、認識しておくべき事実である。つまり、①シルバーマンは、ケンタッキー大学に在学中、米国の化学兵器保管場所であるケンタッキー州リッチモンドのブルーグラス陸軍基地に駐在したことがあり、そのような兵器がどのように保管、輸送、配備されるかを内部関係者として知っていたこと、そして、さらには、②ベクテル・ナショナル社(米国の多国籍総合建設業者)との繋がりや、ジョージアや旧ソ連における米国の生物兵器研究所、研究施設、(これらの施設の表向きの任務はそうだとされている)公衆衛生の三者は繋がっているという主張についても彼は知っていた。


ウクライナもしかり!

 「ブルーグラス陸軍基地(BGAD)は、全領域の軍事作戦を支援するため、米国の統合戦闘員に、信頼性が高く、タイムリーで費用対効果の高い軍需品と化学防御装置の提供に尽力している」と自負している。その中にはウクライナも含まれている可能性が高いが、そのことには触れていない。

 しかし、BGADにあるのは化学兵器の備蓄だけではない。イグルーと呼ばれる土で覆われた弾倉が902基あり、そのうちの853基は、世界中の米国の共同戦線に送られるさまざまな通常弾薬を保管するために使用されている。

 ダフとシルバーマンは、地下壕や特殊な化学・生物・核研究施設の建設に使用できる重金属が、2010年にジョージアに輸入された経緯についても、詳しく説明している。

 ロシア国営テレビのイズベスチヤは2月下旬、米軍がバイオ資材(ESP、特に危険な薬剤)の一部をウクライナから移設したことに関する一連の調査報道を行い、ジョージアの首都で、若い新兵を含む住民に対して、危険なウイルスのナチス式実験が今も行われていることを詳細に伝えた。

 これに対する大衆の憤りは、すでにトビリシで燃え上がったと言われている。ペンタゴンが管理するルガー・センターで今も行われている危険な実験について、ジョージア在住の自由契約の特派員、ゲオルギー・ジャビシュヴィリが、ますます多くのことが分かってきたと報じた。


ジョージア、ウクライナ、そしてNATO加盟国における米国の軍事プロジェクト

 ジャビシュヴィリは最近、ジョージア、ウクライナ、そしてNATO同盟国における米国の軍事プロジェクトの間の、不都合なつながりを調査するために協力している複数の回答者にインタビューを行った。ジェフリー・シルバーマンとゴードン・ダフによる以前の調査に続き、ジョージアの調査員と共同で、ウクライナ軍が使用する化学・生物兵器の証拠も入手することに成功した。

 例えば、作戦行動中の2人のロシア兵が痙攣を起こす短い映像があるが、これは苦痛を伴う死をもたらす神経ガスによるものであろう。この映像は上のリンクから見ることができるが、閲覧には十分な注意が必要である。

 ジョージア退役将軍のトリスタン・チテラシビリによると、反応は、見たところ、毒殺でしか生じないもので、「見るからに怖い」ものだという。生物・化学兵器は使用が禁じられており、米国もウクライナと同様、これらを禁止する条約や文書にすべて署名している。

 「軍人として、どうしてこのような兵器を使うことになるのか、想像もつかない。全員、ハーグ裁判で裁かれるべきだ。全員だ! 組織した者も、この種の兵器を使用した者も、だ」と、ジョージア元将軍のチテラシュヴィリは語った。

 ウクライナから急遽持ち出され、その後リチャード・ルガー研究所に届けられた「試験管」(水筒、シャーレ)の経路を追跡した秘密文書のコピーを受け取っていることから、将軍は自分の主張に自信を持っているのである。

 「少なくともコンテナ1個分が、ここに持ち込まれたことは確かだ。例えば、ウクライナでは、兵士が戦車の下に身を投げ出すような特殊な錠剤や、ウクライナ軍ですでに使用されている窒息性ガスが製造されていた」と彼は言った。

 プーチン大統領が2週間前の連邦議会演説で、その脅威が特別軍事作戦を開始する理由の一つであると述べたのは、ウクライナなどにあるそうした研究所を指していたのである。

 アメリカの生物学者たちの仕事の成果は、研究所の開設からわずか1年後の2012年には、トビリシで広く知られていた。シルバーマンは、2ヶ月前にいくつかのTVインタビューで同じことを示唆し、「歴史が書かれるとき、ウクライナにおけるロシアの特殊作戦の主な理由の一つは、ロシアの国家安全保障と国際公衆衛生と安全に対するバイオの脅威のためである」と詳しく述べた。

 ウクライナにこうした生物学的研究室が存在することは、8日、米国が公式に確認した。ビクトリア・ヌーランド国務副長官は、生物学的研究がロシア軍の手に渡ることがあってはならないと述べた。これらの研究がロシア軍の手に渡ることがあってはならないと、彼女は言ってしまったのだ。つまり、研究所が存在しないのであれば、そんなことが起きることはないということだ。


自国(アメリカ)に持ち帰れ

 ロシア軍の手に渡らないように、米軍とその民間業者が協力して、生物研究所(複数)をウクライナからジョージアへ移送していることが明らかになりつつある。ジョージアの首都では現在、危険なウイルスの実験が行われている。

 これらの研究所が実際にどのようなことに関与しているのか、多くの主張がある。そのため、これらすべてがどこへ向かうのか、言い切ることは難しい。5月、ジェフリー・D・サックスは、コロンビア大学のニール・L・ハリソン教授とともに『米国科学アカデミー紀要』に論文を書き、COVID-19が研究所で生まれたとする見解を示した。

 ある人には当たり前のように見えることに疑問を持つことは、自分の評判やキャリアのことがあるから、難しいことだ。しかし、「6月、(サックスは)スペインのシンクタンクでの公的発言でさらに踏み込み、COVIDウイルスはおそらくアメリカ起源であると述べ、NIHと中国の間には、エコヘルス・アライアンスを経由したつながりがあることを考えると、パンドラの箱は空けられるのを待っているようだ」と述べている。


真実は我々を自由にする

 FBI長官は、COVIDパンデミックは中国の研究所から発生した可能性が高いと今では発言し、また エネルギー省も、COVID-19パンデミックは、中国の研究所からの漏洩が原因とする可能性が高い、と結論付けている。

 彼らはこれが「ニュース」であるかのように振る舞っている。これまで3年間沈黙し、それを口にした人たち全員を黙らせてきたというのに。それは隠しようもなかった事実なのに、今になって、FBIとエネルギー省は、実際に知られていたことをようやく認めたのもこれが明らかな事実だからだ。そう言ってきたのに、彼らに黙らせられてきた人たちはどうなのだろう。謝罪を手にすることになるのだろうか?

 ジョージアとウクライナで、合計3,000人の若い新兵が、しばしば強要され、適切なインフォームド・コンセントなしに、民間研究という薄っぺらなベールで覆われたペンタゴンの攻撃的なプログラムの一部として、自分の血を使われたことが米軍の文書からわかっている。この研究については、「ジョージアCBR(生物化学兵器)/DTRA(アメリカ国防脅威削減局)における人間疾患疫学とEDPs(電子情報処理)調査」(GG-21)と記載されているだけで、公的な言及は殆ど見当たらない。

 クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)、西ナイルウイルス(WNV)ブルセラ症、野兎病、炭疽病、Q熱など、人類が媒介する感染症や人獣共通感染症に関する研究も行われている。これらが公衆衛生にとって重要であると言われているにもかかわらず、GG-21プログラムは脚注として言及されるだけで、その不穏な目的はすべてインターネット上から消去されてしまっている。

 筆者は、ルガー研究所で働く関係者(米国人とジョージアの両方)から提供された、この研究に関連する危険な文書を持っている。これらには、その目的が次のように記されている:

(1) 過去に資金提供を受けたCBEP(共同生物学関与プログラム)プロジェクトから収集したサンプルやヒトサンプル(GG-21)を用いて、患者集団におけるCCHFV(クリミア‐コンゴ出血性熱)およびハンタウイルス(Hantaviruses)の有病率と血清学的多様性を決定する。選択されたサンプルは、安全実験室(BSL-3)または高度安全実験室(BSL-4)という密閉された研究所でウイルス特異中和試験(ワクチンの効果を確かめるための試験)を行うために、米国陸軍感染症研究所(USAMRIID)に送られる予定。

 これらすべては、ジョージア軍病院と米国陸軍研究連合(USMRU-G)との間で、特に危険な病原体(EDP)を標的とした戦略的研究協力を確立するための取り組みの一環であるとされている。この研究の実験的性質は、軍自身の文書によって確認されており、研究に使用された材料のほとんどが、米国食品医薬品局の認可を受けておらず、あまり正確ではない酵素免疫吸着測定法(ELISA)の迅速検査であることが記述されている。

 この研究は、先行被爆に関連する疫学的危険因子を特定し、特に危険な病原体(EDS)に関する科学的研究のために軍の疾病監視システムを利用するものだ。1,000人の若い新兵(多くは徴兵された人)の血液サンプルは、ウクライナからのいわゆる新兵2,000人も参加する、米軍の広範なプロジェクトの一部として使用されることが見込まれている。得られた知識は、14種類の病原体の基準値を確立し、調査や医学的審査とともに、軍事目的に使用される予定だ。

 シルバーマンが最近のテレビインタビューで語ったように、より平易な言い方をすると、「彼らは何百人もの兵士、つまり契約書にサインすることを許されない若い素朴な人々を連れて行き、保険に加入させ、インフォームド・コンセントを提供したと称し、彼らから血を抜き、そして彼らがその気になれば拒否できること、そして「おそらく」拒否できないことについて、彼らを検査したのだ。

 「国際学習到達度調査(PISA)の結果やさまざまなメディアの報道によると、ジョージアでは例年、15歳の60~70%が、十分に読み書きができるようになっている。2009年のPISAプラス報告書によると、ジョージアの生徒のうち、生活において効果的かつ生産的に参加するために必要な基準値以上の読み書きの能力を有する、と推定されたのは、わずか38%だった。

 「当然ながら軍隊に入ることになる人の多くは、大学に進学したり、医療や支払いを含む他の革新的な方法を見つけたりして、強制的な兵役を回避することができなかった人々です。当然、彼らの読み書きレベルは低く、若い兵士として、権威や訓練中の強い仲間にひどく怯え、言われたとおりにしないと、少なくとも彼らの想像の中では、兵舎に戻ったときに酷い目に合わされるかもしれない、ということなのです」。


これは生物兵器の実験だったのか?

 米軍の機密文書によると、ジョージアでの研究期間はおよそ5年と考えられている。 アメリカ国防脅威削減局によって記録が無期限に保管されるため、遅かれ早かれ、この明らかに違法な研究がやろうとしたことについて、歴史に記されることになるだろう。

 この研究の研究者は、ニュルンベルク綱領と臨床研究における被験者保護の法的根拠を無視したようであり、同じ法的根拠に基づく法的賠償に直面する可能性がある。ニュルンベルク綱領は、1947年にニュルンベルクで行われた医師裁判の最後に起草され、過去60年間、医学・研究倫理の基礎として機能してきた。

 それを精査すると、1931年の「人体実験ガイドライン」に基づいていることがわかる。ドイツ軍は、ウクライナや旧ソ連の一部で、戦傷者のために子どもたちから血を抜いたのではなかったか。

 プロジェクト報告書によると、「この研究で各ボランティアから採血される量が、貧血の症状につながる可能性は非常に低い」ということを知ることができるのは良いことだ。しかし、報告書はまた、「この研究調査に参加することで、個々のボランティアに直接的な利益があるわけではない」とも述べている。

 したがって、この研究の唯一の目的は、国際条約法上違法な生物兵器関連の研究である。除外基準はすべて自己申告とし、年齢確認は行わず、記載された副作用は一切考慮しない。

 新兵の多くは、識字能力がないことはさておき、ジョージアの少数民族の出身である。このことは、米国国防総省の規則やジョージアの公衆衛生規則で規定されているインフォームド・コンセントが求められなかったことと相まって、この研究はヨーゼフ・メンゲレ式の戦争犯罪に近いものとなっている。


インフォームド・コンセントの翻訳

 本研究の規定にはこう書かれている:「ボランティアがインフォームド・コンセント文書(ICD)を読めない場合は、研究チームメンバーが読み聞かせ、ボランティアは署名欄に印または指紋を付け、研究チームメンバー以外の立会人がその過程を観察し、ICDに署名と日付を記入する」とある。しかし、この文書はジョージア語で書かれており、アゼリやアルメニアなどの民族に属する新兵が全員知っているわけではない。

 ジョージア語をよく知らない人への対応については言及されておらず、すべての翻訳は訓練を受けた翻訳者が行い、英語版をジョージア語に翻訳するとだけ説明されている。ナチスの死の収容所ではこうだったのだろうか。

 当然のように、この研究に関連した死亡はCOVIDに起因するものとして片付けられてきた。報告書の最後のセクションである9:0 予期せぬ問題や死についての報告では、これら予期せぬ問題や死の定義に当てはまる条件について、非常に制限的な基準が設定されている。すなわち:

・承認された研究手順および被験者集団の研究内容に照らして、(性質、重大性、あるいは頻度の点で)予想外であること
・被験者の研究参加に関連する可能性があること;そして
・研究により、対象者または他者が、これまで知られていた、または認識されていたよりも大きな危害(身体的、心理的、経済的、または社会的困難)を受ける危険性があることが示唆されること。

 これらの文書は、軍やルガー研究所で働く人たちが調査ジャーナリストと共有している。一部の事実確認サイトは、これらを偽ニュース、ロシアによる偽情報と見なし、関係するジャーナリストを批判したいと考えている。

 ジョージアの生物兵器プログラムを暴露した主要な調査ジャーナリストには、脅迫や物理的な攻撃さえある。これでもこの研究は、公衆衛生に関わる内容なのだろうか?
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画期的な分析: COVIDワクチンは2022年だけで30万人の超過死亡、1470億ドルの経済的損害をもたらした。

<記事原文 寺島先生推薦>

Groundbreaking Analysis: COVID Vaccines Caused 300,000 Excess Deaths, $147 Billion in Damage to Economy in 2022 Alone

筆者:マイケル・ネブラダキス (Michael Nevradakis)

出典:Childrenshealthdefense

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月8日




ポルトガルに本拠を置く調査会社フィナンス・テクノロジーズの一部門であるヒューマン・プロジェクトの新しい分析によると、米国ではCOVID-19ワクチンは2660万人に肉体的損傷を与え、136万人に障害を与え、30万人以上の超過死亡をもたらし、経済に推定147億ドルの損害(2022年だけで)を与えた、となっている。

 今月発表された「ワクチン被害プロジェクト」の研究者たちは、「ワクチンによって引き起こされた、あるいは早められた死亡」を含む「人的コストの推定」と、「ワクチン被害の各側面が経済全体に与える影響」を追求しているという。

 フィナンス・テクノロジーズは、元ブラックロックの資産運用管理者であるエドワード・ダウドが、ユーリ・ヌネス博士カルロス・アレグリア博士とともに設立した会社だ。

 COVID-19ワクチン接種と巨大製薬会社の腐敗に反対する内部告発者として登場したダウドは、『「原因不明」: 2021年、2022年の突然死の流行』の著者だ。



ヒューマン・プロジェクトの筆者たちによると:

 「ワクチン被害調査の各側面には、利益を得る経済主体があり、被害を受ける経済主体がある。例えば、死亡率超過によって霊安室会社が利益を得、生命保険会社が損害を受けることは明らかなようだ。これは、異なる経済主体による資源の再配分とリスクの再価格付けにつながるだろう。

もっと広範な手法として、ワクチン被害の各側面が経済全体に与える影響を推定することができる。生産年齢人口が減少すれば、GDPの減少につながる。この影響は今のところ無視できると考えている。

 中長期的には、労働力人口における障害者の増加により、より大きな影響が生じると考えられる」。


人的コスト:超過死亡、障害、欠勤

 ヒューマン・プロジェクトは、米国労働統計局やその他の公的な政府資料のデータを活用し、COVID-19ワクチンの影響を、「影響なし/無症状」「傷害(軽度~中度)」「障害(重傷)」「死亡」の4つの人的コストに類型化した。

 ヒューマン・プロジェクトの調査結果によると、人口の約81%が、「COVID-19ワクチン接種後に有害事象が発生しなかった人々からなる」「無影響または無症状」グループに分類される。しかし、このグループの実際の規模は確実にはわからないとヒューマン・プロジェクトは指摘している。

 研究者たちは、4つの類型は「静的なものではなく、互いに影響し合う可能性がある」とし、「ワクチン接種後に目に見える影響がなかったが、それでも影響を受ける可能性がある個人」も含まれると指摘した。

 18%というかなりの割合の人が、軽度から中等度の傷害類型に分類されている。この類型は、「ワクチン接種後に軽度から中等度の副作用を経験した人」を指し、「一時的なものから長期的、あるいは慢性的なものまである」ため、「仕事における生産性の低下」につながる可能性がある。

 「米国疾病管理予防センターのV-safeデータベースから得られたワクチン接種者の関連有害事象の超過率(23.90%)と、ファイザー社の臨床試験におけるプラセボ基準値(5.98%)を用いて」、研究者たちは、「ワクチンにより障害を受ける可能性のある人の集団は、人口の約18%」と結論付けている。

 この類型の一般的な調査結果は、2019年から2022年の間に労働時間の損失が50%増加し、欠勤率が28.6%増加し、2019年から11標準偏差変動し、影響を受けるアメリカ人は2660万人と推定されている。

 人口の約1%(0.93%)が「障害-重度結果」に該当した。この数字から推定されるのは、「16~64歳の民間労働力の中に、2021年以降にワクチンによる障害を負った層が存在する」ことだ。

 研究チームは、米国の労働力人口における障害請求に関する先行研究、および「ファイザー社とモデルナ社の臨床試験における、ワクチン接種者のプラセボ基準値に対する重篤な有害事象の超過率」、米国の集団レベルでの障害の増加、V-safeデータベースから得られた入院率から、この研究を行った。

 全部で2021年以降、障害者が24.6%増加し、推定136万人に影響を及ぼしていることがわかった。

 2022年11月現在、労働統計局とセントルイス連邦準備銀行の統計によると、米国の障害者数(16歳以上)2016年4月には2997万4千人、2017年4月には3061万2千人だった。これに対してその中の労働者の数は、2015年10月には581万1千人、2017年6月には633万5千人だった。

 しかし、2021年10月には、この数字がそれぞれ3119万5千人、698万7千に増加した。そして、2022年10月には、3281万9千人、779万7千人となった。



 第4の類型は、死亡した人を指し、25歳から64歳の人口の0.05%から0.1%が影響を受けたと、研究者たちは推定している。

 「このグループは死亡率の結果として死亡した」とし、「2021年夏以降、集団予防接種の導入、ウイルスへの曝露による自然免疫の上昇、そして、より穏やかで伝染力の強いウイルス株の出現があった、・・・COVID-19が超過死亡率に大きな役割を果たしたと主張することは困難である」と研究グループは言っている。

 2021年と2022年には、全部で23%の超過死亡と、この年齢層では、集団レベルで推定31万人の超過死亡が発生したことが、この研究者たちの調査でわかった。

 2月24日、ロックダウン、ワクチンとマスクの義務化、厳格なCOVID-19対策を避けたスウェーデンは、パンデミックの最初の2年間の超過死亡者数の合計がヨーロッパ最も少なかったと報告した。」



経済的影響は1470億ドルを突破 --- 2022年だけで


 ヒューマン・プロジェクトの研究のもう一つの柱は、COVID-19ワクチンの経済的影響に焦点を当て、「個人へのCOVID-19集団接種による直接経済コスト」を推定することだった。

 研究者たちによると、セントルイス連邦準備銀行から入手した国内総所得のデータをもとに、その数値を超過死亡、障害、労働時間の損失などの統計を含む人的コスト分析のデータに当てはめたという。

 そして、4つの類型ごとに経済コストを試算した。

 軽度から中等度の損傷類型を見るにあたり、研究者たちが使ったのは「2022年の絶対的な超過損失労働時間率であり・・・生産性の損失という観点で経済コストを推定するためだった」。

 この数字を国内総所得の統計に当てはめると、休業率の増加による直接的な経済コストは899億ドルであることがわかった。

 重傷(障害)類型では、16歳から64歳の民間労働力において、2021年以降、障害の絶対数が0.93%増加していることが判明した。このデータを国内総所得に当てはめると、障害の増加による直接的な経済コストは522億ドルであることがわかった。

 研究者たちは、「これらの人は後遺症が残る可能性が高いため、このコストは今後数年間継続すると予想される 」と指摘している。

 最後に、25歳から64歳の人口について、2021年以降の超過死亡の絶対数が年平均0.05%上昇し、国内総所得のデータと照らし合わせると、56億ドルの直接的な経済コストが発生することを研究者たちは明らかにした。

 この結果、全体では、2022年だけで1478億ドルの経済コストが発生することになる。研究者たちによると、「障害が軽いほど、人口のより多くの部分に影響を及ぼすため、より大きな経済コストとなる」そうだ。

 また、ダウドはツイートで、この数字は現在「測定できるもの」に過ぎず、雇用はされながら、生産性が低下してゆく労働者などの波及効果は含まれていないと指摘している。



 「ワクチン被害は重要な経済的影響に直結するため、より長期的な影響を監視する必要がある」と研究者たちは結論付け、次のように付け加えた:
 「ワクチン接種で障害を負った人が、時間の経過とともに、重い障害になったり、死亡などの極端な結果になったりする可能性もある」。


Michael Nevradakis, Ph.D.
マイケル・ネブラダキス博士は、ギリシャのアテネを拠点に、The Defenderの上級記者であり、CHD.TVの "Good Morning CHD" の輪番司会者の一人です。
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米国はノルド・ストリーム破壊工作の役割を「隠蔽」しようとしている(シーモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦>

US trying to ‘cover up’ Nord Stream sabotage role – Seymour Hersh

出典:RT 

2023年3月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日


CIAはパイプライン破壊の代替ストーリーをメディアに提供するよう指示されている、とベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュは述べている。



資料写真.ノルド・ストリーム2から流出するガス© Getty Images / Swedish Coast Guard


 ピューリッツァー賞受賞のジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、ロシアの海底パイプライン「ノルド・ストリーム2」の破壊にワシントンが関与したことを隠蔽するために、米国が意図的にメディアに偽の記事を提供したと主張した。

 ベテラン記者シーモア・ハーシュは、水曜日(3月22日)に自身の「Substack」上に投稿した記事で、CIAはベルリンの情報機関BNDと共同で、ノルド・ストリーム2の爆破に関する「代替案」をアメリカやドイツのマスコミに提供する偽装記事の作成を任されていた、と主張している。

 「情報機関の言葉を借りれば、バイデンがパイプラインの破壊を命じたという主張を否定するために、CIAは『報道機関を動かす』ことになった」と、ハーシュは外交情報に通じた匿名の関係者を引用して書いている。

 そして、CIAが任務を完了し、ドイツの協力を得て、ニューヨーク・タイムズ紙とドイツの週刊誌『Die Zeit』に記事を掲載したことを指摘した。この記事は、「親ウクライナ派」のグループが行ったとされる「その場限りの『オフレコ』作戦」に言及しており、豪華なヨットを使ってノルド・ストリームに爆発物を仕掛けた、とされている。


関連記事:「明らかに」米国がノルド・ストリームを爆破した(フランスの政治家の発言)


 「それは、アメリカの情報機関がドイツに伝え、あなたの話の信用を失墜させることを目的とした完全なでっち上げだった」と、アメリカの情報機関の関係者がハーシュに語ったと言われている。

 「CIA内部の偽情報専門家は、プロパガンダの作戦は、受け取る側の人間が、望まない真実を矮小化したり置き換えたりできるような話を必死に求めている場合にのみ機能することをよく理解しています。そして、問題となっている真実は、ジョー・バイデン大統領がパイプラインの破壊を許可したということです」と付け加えた。

 ハーシュは2月、昨年9月に起きたガスパイプライン「ノルド・ストリーム1」と「2」の爆発事故に関する爆弾レポートを発表し、ワシントンがこの攻撃を画策したと非難した。ホワイトハウスは責任を否定した。先週(3月第3週))、欧米の複数のメディアが、犯人はウクライナに関係している可能性があると主張した。モスクワは、この報道を 「メディアによる協調的なデマキャンペーン」と断じた。
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セイモア・ハーシュがノルド・ストリーム破壊工作について新たな発言

<記事原文 寺島先生推薦>

Seymour Hersh makes new Nord Stream sabotage claim

出典:RT

2023年3月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日

ピューリッツァー賞受賞者のシーモア・ハーシュは、米国がパイプラインを爆破したのは、ウクライナに対するドイツの支援不足に不満があったからだと主張した。



エルマウ城(南ドイツ)で行われたG7首脳サミットで、ドイツ首相のオラフ・ショルツ(左)が隣の米大統領ジョー・バイデンに話しかけている© AFP / Lukas Barth


 ジョー・バイデン米大統領がノルド・ストリーム・パイプラインの破壊を命じたのは、ロシアと対立するウクライナに対してオラフ・ショルツ独首相が提供した支援が気に入らなかったらだと、ベテラン調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが主張している。

 ハーシュは、最初、2月に発表した記事で、ワシントンがヨーロッパの重要なガス供給ルート(ノルド・ストリーム)を破壊したと非難し、金曜日(3月24日)に発表した中国新聞とのインタビューで、さらなる主張を展開した。

 「(米国)大統領は、ショルツ首相が、(キエフに)もっと銃や兵器を投入することに前向きでないことを恐れていた。それだけです。それが怒りなのか、罰なのかはわからないが、結果として西ヨーロッパを通る主要な動力源を断ち切ってしまうことになってしまいました」とハーシュは主張している。

 米国はノルド・ストリーム攻撃への関与を否定しようとしているが、「欧州は、今、危機的状況にある」ので、バイデンは今後数ヶ月で「自分のしたことに対して多くの批判」を受けるだろう、とハーシュは主張した。

 ハーシュは、パイプラインを破壊する「仕事を最初に依頼された人々」は、2021年末ころ、ジェイク・サリバン米国国家安全保障顧問から連絡を受けたと主張した。


関連記事:ノルド・ストリーム2の近くにデンマーク海軍の存在(メディア報道より)


 ロシアのガスをドイツ経由でヨーロッパに届けるために建設されたノルド・ストリーム1と2に爆薬を仕掛ける当初の目的は、「(米国)大統領が(ロシアの)プーチン大統領に『(ウクライナで)戦争をするならパイプラインを破壊する』と言える選択肢を与えるためだった」とハーシュは主張した。




関連記事:米国はノルド・ストリーム爆破への関与を隠蔽しようとしている(シーモア・ハーシュの主張)


 バイデン自身はその姿勢を公然と認めていたが、「残念ながら、欧米のマスコミの人たちは忘れてしまったようだ」とハーシュは述べている。

 モスクワのウクライナでの軍事作戦開始のわずか3週間前、バイデンは2月7日の記者会見で「もしロシアが侵攻したら...ノルド・ストリーム2はもう存在しないだろう。我々はそれに終止符を打つだろう」と警告している。

 ハーシュによれば、バイデンが昨年9月にバルト海底で機雷の爆破を命じることを決めたのは、アメリカの視点から見て紛争が「ウクライナでうまくゆきそうもない」と考えたからだ、という。ハーシュが 「バイデン大統領が熱心に支援したアメリカの戦争」と表現したものは、その時期、「せいぜい膠着状態」だったのだ。
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ノルド・ストリーム近辺で発見された謎の物体は何か?

<記事原文 寺島先生推薦>

Mysterious object found in vicinity of Nord Stream explained

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日

発見されたのは使用済みの発煙ブイであることが判明した、とデンマーク・エネルギー庁が発表した。


© Danish Defence Ministry


 デンマーク・エネルギー庁は水曜日(3月29日)、ノルド・ストリーム2の爆発現場付近で発見された謎の物体を引き揚げ、それが廃棄された発煙ブイであることが判明した、と発表した。

 「調査の結果、対象物は視覚的標示に使用される空の海煙ブイであることが判明した。この物体は危険なものではない」と、同庁は声明で述べた。

 この物体は今月初め発見されたもので、ロシアのプーチン大統領はテレビのインタビューで、昨年9月に破壊工作でパイプラインが破られた場所から約30キロ離れたガスプロム社の調査中に発見されたことを明らかにした。

 デンマークは、パイプライン事業者であるノルド・ストリーム2 AGの代表を引き揚げに参加させた。同時に、同国はロシアに対し、ノルド・ストリーム破壊工作の調査への参加を拒否している。デンマークのラース・ラスムセン外相は、デンマーク、ドイツ、そしてスウェーデンの3カ国が行っている調査は、これらの国の強力な「法の支配」を考えれば十分だと主張している。



関連記事:クレムリンは国連によるノルド・ストリーム調査結果に「遺憾」


 このブイの引き揚げは、国連安全保障理事会が月曜日(3月27日)、パイプラインの爆発に関する国際的な独立調査を求める ロシアが提案した決議案を否決した後に行われた。この決議は、ロシア、中国、ブラジルのみが支持し、他の12名の常任理事国および臨時理事国は棄権した。モスクワの国連常任代表であるヴァシリー・ネベンジアは採決後、「ノルド・ストリーム破壊工作の背後に誰がいるのかという疑念は増すばかりだ」と述べた。

 先月、ベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュは、この破壊工作がアメリカ大統領ジョー・バイデンによって直接指示されたアメリカとノルウェーの共同作戦であるとする爆弾的な調査結果を発表した。この工作の最終目的は、ドイツをロシアからの安価なエネルギー供給から永久に切り離し、ウクライナ紛争におけるドイツの支援を強固なものにすることであった。

 ワシントンとオスロはこの疑惑を強く否定し、作り話だと切り捨てた。ロシアの大統領は先週、ハーシュの結論に「完全に同意する」と述べた。
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グローバリストたちはルビコン川を渡ってしまった:安倍晋三暗殺の真実

<記事原文 寺島先生推薦>

When the Globalists Crossed the Rubicon: The Assassination of Shinzo Abe

筆者:エマニュエル・パストリッチ(Emanuel Pastreich)

出典:Global Research

2022年7月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日




 7月8日は、日本の古都の蒸し暑い一日だった。日本の政界において最も力を持っていた人物である安倍晋三が、自由民主党の選挙候補の応援演説を近鉄奈良駅の前で行っていた。そのとき突然、大きな騒音が起こり、奇妙な煙が立ち上った。

 この件に対する反応は信じられないものだった。尋常でない数の群衆が集まっていたのに、かばおうと走りよる人も、怖がって地面に伏せる人も誰もいなかった。

 安倍元首相の護衛は、なぜか演説中に元首相から離れたところにいたのだが、無表情のままで、元首相を守ったり、安全なところに搬送する素振りも見せなかった。

 その数秒後、安倍元首相は身をかがめ、地面に倒れ込み、意識を失って横たわった。いつもの青ジャケット、白シャツには、血がついていた。常に付けている北朝鮮による拉致被害者への連帯の印であるバッジも見えた。おそらく即死したと見られていた。
そのときになってはじめて、護衛らが容疑者である山上徹也を取り抑えた。同容疑者は安倍元首相の後ろに立っていた。山上容疑者と護衛との格闘はテレビ視聴者のために用意された演出的な踊りのようで、プロの手による取り抑え方には見えなかった。

 山上容疑者は即座に報道機関により、元海上自衛隊員の41歳で、安倍元首相に個人的な恨みを持っている人物だと特定された。

 山上容疑者は躊躇なく警察に全てを話した。同容疑者は現場から逃げ出そうともせず、護衛に取り抑えられた時も、子ども騙しの自家製銃を手にしたままだった。

 安倍元首相が歩道に横たわった後でさえ、誰一人として避難しようと逃げる人はいなかったし、辺りを見回して、銃弾がどこから発射されたかを見抜こうとする人も誰もいなかった。まるで魔法にかけられたように、皆がこれで襲撃が終わったことを悟っているようだった。

 その後喜劇が展開された。安倍元首相をリムジンに乗せて連れ出そうとはせずに、安倍元首相の周りに立っていた人々がやったことと言えば、通行人に呼びかけて、医師がいないかを尋ねることだった。

 報道機関は即座にこの攻撃は「単独の狙撃手による犯行」であるという結論を受け入れ、山上容疑者がいかに統一教会と関係があったかについての話を面白おかしく報じていた。この宗教は預言者的呪術師である川瀬カヨを開祖とするものである。さらに報道機関は、山上容疑者が安倍元首相を非難する理由や、この宗教団体と交流があったのは誰かや、山上容疑者の母親の問題が原因だったことなどを報じ立てた。

 統一教会には、文鮮明尊師が設立した世界基督教統一神霊協会の信奉者がおり、ミシェル・ペン記者が飛びついた結論では、安倍元首相殺害につながる陰謀は、安倍元首相が世界基督教統一心霊協会とのつながりの結果であるとしていた。

 主流報道機関はこのようなおとぎ話のような説を受け入れていたが、日本の警察や保安機関は、別の解釈を否定することはできなかった。北川高嗣さんというブロガーが7月10日に投稿した内容から示唆されたことは、安倍元首相は前から撃たれたのであって、山上容疑者が立っていた後ろからではないという事実だった。そしてその銃弾は、駅前広場の向かい側の片側、あるいは両側にある高層ビルの屋上から間違いなく発射されたことを示唆していた。

北川高嗣さんの投稿




 銃弾がどこを通ったかについての北川さんによる分析は、どの報道機関による報道よりも科学的だった。これらの報道の主張で説明されていなかったことは、安倍元首相は1発だけ撃たれたとされていたのに、その夜の担当医の発表では2発の銃弾があったとされたことについての理由だった。

 一人の男性が不格好な自家製銃を手に、5メートル以上離れた群衆の中から安倍元首相に銃弾を2発食らわせる可能性は低い。テレビ番組の司会者小園浩己さんは、銃の専門家であるが、「スッキリ」という番組(7月12日放送分)で、そんな離れ業を行うことは信じられないと語っていた。

動画を注意深く見てみれば、複数の銃弾が、近くのビルの屋上から消音器付きのライフルから発射されていたことが確認できる。


世界に対する趣意 

 安倍晋三のような人物、つまり日本で最も重要な政治家であり、日本の政治家や官僚らが列をなして、現在の地政学上の危機から生み出されたこれまでに前例のない状況に際して意見を求められるような人物が、厳重な身辺警護が行われずに射殺されたということはありえないことだ

 おそらく、家でテレビを見ている人々には、この事件の趣意が伝わらなかったであろうが、日本の他の政治家たちには水晶のごとくはっきりと伝わったことだろう。その点に関して、ボリス・ジョンソンにとっても、この趣意の意味はしっかりと伝わった。ジョンソンが権力の座から追われたのは、安倍元首相が射殺されたのとほとんど同時期だったからだ。さらには、エマニュエル・マクロンにとっても、そうだ。マクロンも突然米国のウーバー社との密約に関わったという醜聞を告発され、大統領職からの追放要求に直面させられたのだ。それは7月11日のことだった。これまで何ヶ月もの間に行われた大規模な反政府運動でも、マクロンの失職は成し遂げられなかったのだが。

 この趣意は、安倍元首相に白シャツ一面に真っ赤な血のインクで書かれていたのだ。グローバリストたちが提唱する体制を受け入れ、COVID-19に関する政策を推進するだけでは、身の安全は保障されないということだ。たとえG7諸国の指導者であっても。

 いまのところ安倍元首相が、最高位の被害者である。加害者は、世界中の国民国家の統治権を食い荒らす隠れたガンだ。つまり組織的な病気だ。この病気が、国民政府から決定権を奪い、民間業社の網の中にその決定権を移行させようとしている。その網の中にいるのは、イスラエルのテルアビブやロンドンや米国のレストンにあるスーパーコンピューターを有する銀行、民間株式団体、雇われ諜報機関などだ。さらには世界経済フォーラムやNATOや世界銀行など凄い組織に雇われた政策考案者たちもだ。



 第四次産業革命は、ただの口実だった。その真の目的は、各国の中央政府が全ての情報の出し入れを管理下に置くことにあった。フェイスブックやアマゾン、グーグル、SAP(欧州最大のソフトウェア開発会社)などが、効率の名のもとにその管理に携わっている。

 J. P. モルガンの発言どおり、「全てのものには理由が二種類ある。ひとつは良い理由で、もうひとつは本音の理由だ」である。

 安倍元首相の暗殺により、これらの巨大技術関連業者の親玉がルビコン川を渡ってしまい、国家権力の頂点に君臨するものであっても、命令に従わなければ、生命の危機から免れる特権を剥奪されることが証明されたのだ。


日本についての問題点

 日本は、アジアで唯一「西側」陣営に与している先進国だとされており、特権的な組織であるG7の一員となり、諜報共有計画との提携(加入もありえる)を結ぶ資格も与えられている。その計画とは、ファイブ・アイズだ。

 しかし、日本は期待や要求に逆らい続けてきた。それは、ワシントン政権内部やウォール街に巣食う世界を股に掛ける諸金融業者や政策立案者らからの期待や要求だ。そして彼らの目的は新世界秩序の樹立だ。

 アジアでは韓国が、「日本ほど同盟国としての役割を果たしていない」としてワシントン政権から常にお叱りを受ける国だったのだが、実は国防総省や世界経済全体を抱き込むことに忙殺されている超富裕層は、日本は信頼できないという疑念を募らせているのだ。

 世界銀行やゴールドマン・サックス銀行やハーバード大学のベルファー科学国際問題センターが、グローバリスト養成機関として、「先進国」から、もっとも優れ、もっとも頭の良い人材を集めている。

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 豪、仏、独、ノルウェー・伊の優秀な人材が、ワシントンやロンドン、ジュネーブにある政策立案研究所や大学で、流暢な英語の話し方を身につけ、しばらく時間を過ごし、その後銀行や政府機関や研究機関での安定した職を得て、よい報酬をもらい、「エコノミスト」誌に書かれている常識や金銭への愛やものの見方を福音書のごとく自分たちの中に取り込んでいる。

 しかし日本は、発展してた独自の銀行体系を持ち、発展した技術を駆使できるため工作機械の面においては、ドイツの唯一無二の好敵手になれるほどであり、
洗練された教育体制のおかげで、多くのノーベル賞受賞者を生み出しているにもかかわらず、「先進」国であるために必要とされるこの型にはまるような指導者層を生み出せていない。

 日本の優秀な人材のほとんどは海外留学をしないため、日本の洗練された知識層は、海外の学界や報道記事から入ってくる情報に頼っていない。

 他の国々とは違い、日本人は洗練された雑誌論文でも全て日本語で記して、日本の専門家たちの論しか引用していない。実際のところ、植物学や細胞生物学の分野においては、日本は世界で通用する水準の複数の学術誌が日本語だけで書かれている。

 同様に、日本の国内経済は洗練されたものであるが、多国籍諸企業が簡単に乗っ取れない。もちろんその努力はしているのだが。

 この10年間で生じた大規模な富の集中により、超富裕層は目に見えないつながりを構築して、秘密裏に世界政府の樹立を目指せるようになった。 それをもっとも分かりやすく体現しているのが、世界経済フォーラムの青年世界指導者養成計画であり、シュワルツマン・スカラーズ計画*だ。この目論見の中で台頭しつつある人々が、各国の政府や産業や研究機関に入り込むことで、グローバリストたちが描く企みが邪魔されることなく前進している。
*米国最大手の投資ファンド・ブラックストーンの創業者であるスティーブン・シュワルツマン氏が約100億円の私費を投じ、2016年設立時点で各界からの300億円近い寄付金を加えて中国清華大学に設立した1年間の全額奨学制の国際関係学修士プログラム(ウィキペディアより)

 世界を統治しようとするこのずるいやり方からすれば、日本のことは奇異に思われてきた。さらに、英語を上手に話せる日本人や、ハーバード大学で学んだ日本人が、必ずしも日本社会において出世街道を歩んでいる訳ではないという事実もある。

 日本の外交や経済には厳格な自立性が見られる。そのことが幾分、COVID-19騒ぎの中、ダボス会議の連中にとって心配の種だったのだ。

 安倍政権(後続の岸田政権もだが)は世界経済フォーラムや世界保健機関からの指令にしたがい、ワクチンや社会的距離をとる政策を受け入れていたが、日本政府は、市民生活に押しつけがましく介入することは他のほとんどの国と比して少なく、各機関にワクチン接種を強制させることもあまり成功していなかった。

 QRコードを利用してワクチン未接種の人々へのサービスを阻害することも、他の「先進国」と比べて、日本では制限された導入に留まっていた。

 さらに、日本政府は求められていたデジタル化という企みについても、完全な導入には後ろ向きだった。そのため、多国籍テック巨大諸企業は、他の地域でできているような管理を日本では成し遂げられていない。日本のデジタル化が遅れていることで、ワシントンD.C.にあるウィルソン・センターは、牧島かれんデジタル大臣(デジタル省は世界の金融界からの圧力を受けて2021年9月に立ち上げられた)を呼び出し、同大臣は日本がなぜデジタル化が遅れているかの説明をさせられることになった(7月13日)。

 日本人がますます実感できていることは、デジタル化を導入することや、政府や大学の機能を多国籍テック巨大諸企業に完全に外部委託することや、情報を民営化することに抵抗することが、日本の利益にならないという事実だ。

 日本の政府機関は、古い慣習にもとづき日本語が使われており、書面による記録もいまだ日本語によるものを利用している。さらに、いまだに日本人は本を読み、韓国人や中国人のようには、AIに夢中になっていない。

 日本が見せるこのような抵抗は、1867年の明治維新にまでさかのぼることができる。日本が打ち立ててきた政治体制においては、西側の概念が日本語に翻訳され、日本の概念と組み合わされ、複雑な国内議論が交わされてきた。明治時代に確立した政治体制が、今も大きく生き残っているのだ。つまり、現在採用されている統治形式は、日本や過去の中国から取られた前近代的な主義を基盤にして、19世紀のプロイセンやイングランドの政治体制から取り込まれたものだ。

 その結果、日本の統治形式には封建的な趣向が残っている。具体的には、各省の大臣が官僚らの職務領域を監督し、官僚らは自省の予算を注意深く守り、自分たちの内部指揮系統を維持するという形が取られているのだ。


安倍元首相についての問題点

 安倍晋三は、この時代で最も洗練された政治家の一人であり、米国や他の国際的機関とは常に目に見える形で交渉をしながらも、日本がグローバリストたちの指揮下に置かれないように細心の注意を払っていた。
安倍元首相は帝国としての矜持を持てるくらい日本を再興するという夢を抱いており、明治天皇の生まれ変わりになろうと考えていた。

 安倍元首相がジョンソンやマクロンと異なる点は、TVに出演することに関心がなかったことだ。というのも、安倍元首相は日本内部で意思決定経路を牛耳れる立場にあったからだ。

 安倍元首相の執政を讃える必要はない。そうしようとしている勢力はあるのだが。安倍元首相は、腐敗した売国奴であり、政府を私物化し、教育を空洞化させるという危うい橋も渡っていたし、中流階級から富裕層への大規模な資産の移動も支援してきた人物だったからだ。

 安倍元首相は日本会議という極右団体を使って、超国家主義的な企みを推進し、過去の日本の帝国主義が持っていたもっとも攻撃的な面を賞賛したりもしてきた。このような行為は実に嘆かわしい行為だった。安倍元首相は、どれだけ愚かしくとも、防衛費の拡大を断固として支持してきたし、米国からのどんな無理難題も喜んで支援していた。

 そうとはいえ、岸信介首相の孫であり、安倍晋太郎外相の息子として、安倍晋三は幼い頃から抜け目のない政治家という姿を見せてきた。安倍晋三は幅広い政治的手腕を使うことにおいては独創的であり、その手腕により自身の企画を前進させ、世界中の民間企業や各国政府の首脳陣の門を容易く叩くことができた。そんなことができる政治家はアジアには存在しなかった。

 私は個人的に安倍元首相と2度面会したことがあるが、そのとき受けた印象をはっきりと覚えている。安倍元首相がどれほど冷酷な政策を推進しているとしても、聴衆に対しては、純粋さと明快さが伝わるのだった。日本語でいうところの「素直さ」だ。そこが彼の魅力だった。安倍元首相の振る舞いからは、受容性や開放感が伝わり、支持者の忠誠心を刺激するものであり、逆に彼の政策に敵対する勢力からすれば恐ろしい力だった。

 総じて言えば、安倍元首相は洗練された政治家であり、自由民主党内においても、国際社会においても、両側の勢力ともうまくやっていける力がある、気遣いと善意のある指導者であるといって良かった。

 このことから、安倍元首相の民族国家主義的な考え方に反対する人々も、彼を支持することを厭わなかっのだ。さらにこれらの人々の考えでは、日本が国際政治において指導的役割を再び担えることを可能にする唯一の人物であるとしていた。

 日本の外交官や軍人らは日本が独自の視点をもっていないことにいらいらし続けていた。これらの外交官や軍人らはその理由を、日本には巨大な権力を有する資格が十分あるにもかかわらず、日本を取り仕切っているのが、そろいもそろって東大卒のさえない人々だからと考えていた。つまり、テストで点は取るのは得意だが、危険を冒そうとはしない人々だ。
 
 日本は、プーチンや習近平とまではいかなくとも、マクロンやジョンソン並の指導者さえ生み出せずにいるのだ。

 安倍元首相は指導者になりたがっており、コネと才能と無慈悲さを持っていた。その能力は国際社会で一躍を担うのに必要な力だ。安倍元首相は日本の歴史上最長の首相在位期間をつとめていて、首相の3期目もめざしていたが、退陣した。

 ただ、言うまでもないことだが、世界経済フォーラムの背後にいる権力者たちは、安倍元首相のような国家指導者を求めていない。たとえそのような指導者が、権力者たちが求めているグローバルな企みに従おうとしていても、だ。というのも、安倍元首相のような指導者は、自国内での抵抗勢力を組織する力を持っているからだ。


どこでまちがったのだろうか?

 安倍元首相は、伝統的な政治手腕を駆使して、この10年間日本に突きつけられてきた解決不可能な問題をやりくりすることができていた。それは、中国やロシアとの経済的結びつきを強めながらも、米国やイスラエル、NATO同盟諸国と歩調を合わせて政治的安全保障的結合を保つという方法だった。日本にとって不可能だったことは、米国と米国の同盟諸国との関係を密にしながら、中国やロシアとの友好関係を維持することだった。だが、安倍元首相はそれをほとんどやりとげたのだった。

 安倍元首相は注意深く、また冷静さを保った。使える手腕とコネを全て駆使して、日本が独自の立場に立てるよう段取りをつけたのだ。その過程において、安倍元首相が洗練された外交手腕を託したのは、戦略考察にあたっていた外務省の谷内正太郎であり、谷内の力により、日本が国際社会において日の当たる場所に居続けられることが確証された。

 安倍元首相と谷内は、賛否両論あるが効果的でもある地政学上の戦略を駆使して、西と東、両側とのつながりを作り、秘密外交を幅広く展開し、粘り強い交渉を重ねながら、世界の覇権争いに日本を参戦させようとしていた。

 他方、安倍元首相はオバマやトランプに対しては、日本は、韓国や豪州、インドなどの国々よりも米国を支援する姿勢を示していた。安倍元首相は、国内からの激しい非難に耐えしのぼうとしていた。安倍元首相は、米国の対東アジア計画に沿うための軍備の再強化を推進しようとしていたからだ。

 ワシントン政権には、自分はいかにも親米であるという印象を強く印象づけ、武器を購入することでその姿勢を確実なものにしながらも、安倍元首相は中国とロシアに対しても、最高位段階でのやり取りを行っていたのだ。これは、簡単にできることではない。各政府への洗練された政治運動をワシントン当局内部や中国やロシア当局内で展開していたのだ。

 ロシアの場合、安倍元首相は2019年にロシアとの平和条約締結に向けた困難な交渉を成功させ、両国関係の正常化と北方領土(ロシア語ではクリル諸島)問題の解決が目指された。さらに安倍元首相は、日本企業とのエネルギー契約を確定させ、ロシア国内で投資する機会を見出すことに成功していた。それは米国政府が日本に対してロシアに対する制裁を強めるよう圧力をかけていた時でさえ、そうだった。

 田中宇(さかい)という記者の記載によると、ロシア政府が日本政府のほかの全ての政治家のロシア入りを禁止した後でさえも、安倍元首相だけは例外だったという。

 安倍元首相は中国からも、重要人物であると目されていて、長期にわたる組織的なつながりを固め、第15回自由貿易協定交渉会合(2019年4月9日~12日)においては、打開策が提示された。安倍元首相には中国の指導者層にすぐにつながる経路があり、中国の指導者層からは、信頼がおけ、想定内の言動をとる人物であると見なされていた。安倍元首相は、激しい反中的なものの言い方をする人物であったにもかかわらず、そうであった。

 安倍元首相の暗殺に繋がる過程の決定的な引き金となったのは、マドリードでのNATO首脳会議(6月28日~30日)だろう。

 このNATO首脳会議というのは、舞台裏で暗躍する勢力が新世界秩序に向けての法を敷いた瞬間だった。
NATOは急速に欧州を守る同盟を超えて、必要以上の軍事力をもつ、 世界経済フォーラムや世界中の億万長者や銀行家らのために働く組織と化している。つまり、「世界のための軍」となり、時代は異なるが、英国の東インド会社と同じ様な機能を果たしているのだ。

 NATO首脳会議に日本、韓国、豪州、ニュージーランドの指導者を招いたことが、NATOの変節の重要な部分だった。

 これらの4カ国が招かれたのは、安全保障面で前例のない規模で参画させるためだった。具体的には、情報の共有 (巨大なテック産業への外部委託)、発展した武器体系(その武器の管理をするのは、きっと多国籍企業であるロッキード・マーティン社の社員だ)、合同軍事演習(その演習が、抑圧的な意思決定過程の前例とされることになろう) 、その他の「協力」体制への参画だ。そしてこのような参画により、これら4カ国の国内の命令系統は弱体化されることになるのだ。

 岸田首相が7月1日に東京に戻った時に最初に面会したのは、まちがいなく安倍元首相だっただろう。岸田首相は安倍元首相に、バイデン政権が日本に要求した無理難題について説明したはずだ。

 なお、今のホワイトハウスは、完全にグローバリストの手先と化しており、ビクトリア・ヌーランド(国務次官(政治担当)として)やブッシュ一族に鍛えられた人々により牛耳られている。

 日本に課された要求というのは、本質的には日本の自殺を意味した。その要求を飲めば、日本はロシアへの経済制裁を強化し、起こりうるロシアとの戦争の備えをし、さらには中国との戦争の準備をしなければならなくなることが予想された。そして、日本の軍や諜報機関や外交機関の果たすべき機能が、NATOの周りでご馳走を求めて群がる契約を受けた民間諸会社という新興勢力に移行されることになると考えられた。

 安倍元首相が、死の1週間前に何をしたのかは分からない。一番考えられるのは、洗練された政治手法を駆使して、ワシントンDCや北京やモスクワにいる関係者全てに手を回したということだ。さらにはエルサレムやベルリン、ロンドンにも手を回し、世界各国からの多層的な反応を得ることで、世界に対して、日本は常にバイデン政権の支援者であるという印象づけをしようとしていたのだろう。 同時に裏から手を回して、中国やロシアとの緊張緩和をもはかっていたことだろう。

 この反応がまずかったのは、他の国々はロシアと断絶させられていたのに、このような洗練された手腕を見せた日本が、世界の準行政機関的な働きを示した唯一の主要国だった点だ。

 安倍元首相の死との密接な関連が思い浮かぶのは、朴 元淳(パク・ウォンスン)元ソウル市長の死だ。この人物は、2020年7月9日に行方不明になったが、この日は安倍元首相の暗殺のちょうど2年前のことだった。朴元市長は、ソウル市議会が出したCovid-19に対する社会的距離確保対策案を棄却しようとしていた。 この対策は、韓国の中央政府から課されているものだった。朴元市長の遺体は翌日発見されたが、 死因はすぐに自殺で、同僚によるセクハラの告発で気分が滅入っていたことが理由だとされた。


今すべきことは?

 現在の危険な状況を過小評価すべきではない。田中宇記者の推測の通り、米国は、日本国民が国家指導者に一番望むことを粉砕したという事実と、グローバリストたちの望みは、この先ずっと日本の総理大臣の座につくのは、ワシントン政権や、姿は見せないが人々から搾取している寄生虫のような勢力に依存する弱腰の人物であるという事実に気がつく日本人の数が増えていけば、日米関係は完全に断絶され、両国間での政治的あるいは軍事的衝突に発展する可能性があるからだ。

 考えさせられる点は、ワシントンD.C.における知日派で最高位の地位にある人物であるマイケル・グリーンが、グリーンの所属機関であるCSIS(戦略国際問題研究所)のホームページで掲載された、安倍元首相の死に際して追悼文を書いた最初の人物ではなかったという事実だ。

 グリーンは、ブッシュ政権下の国家安全保障委員会の委員や、CSISでアジア部門ヘンリー・A.キッシンジャーのもと、CSISのアジア問題担当部長をつとめた古参であり、著書に『優位への道:安倍晋三政権下での日本の総合的戦略』がある。グリーンは、安倍元首相との関係が近く、おそらく米国民の中でもっとも親しい間柄だっただろう。

 安倍元首相に対する追悼文の草案を書いたのは、クリストファー・ジョンストーン(CSISの日本議長で元CIA職員)だった。この首をひねるような選択から示唆されることは、この暗殺が非常に微妙な問題であるため、グリーンは本能的に、最初の執筆者となることを回避し、自ら執筆するのではなく、他の人が職務上の行為として書くよう仕向けたのではないか、ということだ。

 ワシントンや東京やそれ以外の世界各地在住の責任ある立場にある知識人や市民たちがこの怪しげな暗殺事件に対して唯一取れる実行可能な対応は、国際的な科学捜査を要求することだ。
その過程には痛みが伴う可能性があるが、そうすることにより私たちは、自国政府が目に見えない勢力により抑え込まれている現実を直視することができるだろう。

 しかし、舞台の裏にいる真の陰謀団を特定しない限り、我々の行く末は、非難の矛先が各国政府の首脳陣に向けられたり、世界の国同士が戦争を始めざるを得ない状況になりかねない。その目的は、真犯人である世界を股にかける金融業界の罪をみえなくすることだ。

 日本政府が軍部により支配権を奪われた最後の事件は、ある意味、1932年5月15日の犬養毅首相暗殺事件や1936年2月26日の斎藤実(まこと)暗殺事件だといえる。ただし、国際社会という舞台から見れば、安倍元首相暗殺との関連をより強く感じさせる事件と言えば、1914年6月28日のオーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公暗殺事件だろう。
この事件は、ロスチャイルドやウォーバーグ財閥などの諸銀行が利益を得るために世界経済を統合しようとした魂胆から引き起こされたものだ。それが、第一次世界大戦へと繋がってしまった。

*

エマニュエル・パストリッチはアジア協会の協会長をつとめた経歴がある。この協会は、ワシントンD.C.、ソウル、東京、ハノイに事務所を持つ政策研究所だ。さらにパストリッチは、未来における都市環境協会の代表をつとめている。パストリッチは2020年2月に、米国大統領の無党派候補者に立候補した。パストリッチは、当グローバル・リサーチに定期的に執筆している。
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日本は、子どものおもちゃのロシアへの輸出を禁止

<記事原文 寺島先生推薦>

Japan bans exports of kids’ toys to Russia

この制限策の意図は、「ロシアの産業の基礎の強化」の妨害にある

出典:RT

2023年3日31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日



ポケモンのピカチュウのぬいぐるみ© James Matsumoto / SOPA Images / LightRocket via Getty Images


 日本は金曜日(3月30日)、ロシアに対する新たな制限措置を導入し、輸出禁止項目商品の一覧に子どものおもちゃを加えた。

 日本の通産省から、「ロシアの産業の基礎の強化に繋がる商品」についての貿易に関する制限の見直しを行ったという公式声明が金曜日に出された。

 更新された品目一覧には、鉄鋼、アルミ、建設機械、電気装置、航法用無線設備、航空機、宇宙船が加えられた。さらにこの一覧に、子ども用の商品も加えられた。具体的には、玩具、縮尺模型、パズル、車輪のついたもの(自転車やベビーカー)などだ。

 「200年以上にわたる制裁の歴史の中で、子ども用品に制裁がかけられたことはありません」とロシア国立研究大学経済高等学院の世界の経済・世界の政治学部アンドレイ・スズダルツェフ氏はテレグラム上に投稿した。さらに「これは明らかに、日本がロシアの子どもたちに宣戦布告を行ったということです」とも付け加えた。

 独立系ニュース機関であるBNNの記事によると、「輸出禁止品目におもちゃ、特に、人気のあるポケモンの営業販売権を加えたことは、日本がロシアに様々な方策を弄して圧力をかけようとする意思があることをはっきりと示している。文化的にも経済的にも重要な消費財を標的にすることも含めてだ」という。

 この禁輸策は4月7日から発効となる。



関連記事:日本はロシア産石油に上限価格を設定



 日本が先日禁止したのは、今年初旬に課された制裁を拡大するものであった。今年初旬の制裁は、軍事目的に使用することができる品目や軍民両用物品や特定の商品や半導体にかけられたものだった。

 ロシアによるウクライナでの軍事作戦の開始以来、日本は、ロシアの指導者たちや銀行や企業に制裁を課し、ロシアを貿易最恵国から外した。日本政府は50人以上の起業家と900人以上の個人を要注意人物扱いとした。さらに日本当局は、ロシアの諸銀行の資産と40近い数の企業や組織の資産を凍結した。

 これに対してロシア政府は、日本をいわゆる「非友好国」のひとつとみなし、数十人の日本の政治家や報道機関の代表らのロシア訪問を禁じた。それ以外の措置として、ロシアは1991年からの取り決めを廃止し、日本国民のビザ無しの千島列島訪問を禁止し、第二次世界大戦を正式に終結させる日本との話し合いの中断を決めたが、その理由は、日本側の「明らかに非友好的な態度」にあるとした。両国が第二次世界大戦後、正式な平和条約を結べていないのは、千島列島の最南端にある四島の領有に関する議論があるからだ。日本側はこの四島を、「北方領土」と称している。
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米国スパイの言葉:「親ウクライナ集団」がノルド・ストリームを破壊した(ニューヨーク・タイムズ紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

US spies say ‘pro-Ukrainian group’ bombed Nord Stream – NYT

出典:RT

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月5日

匿名の工作員が不特定多数の情報を引用し、パイプライン攻撃に対する米国の責任を否定した。



2022年9月28日、バルト海のアットシーで、ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の漏洩から発せられるガスの放出が確認された。© Swedish Coast Guard via Getty Images


 出処不明の新しい情報によれば、2022年9月のノルド・ストリーム・パイプラインに対する攻撃の背後に「親ウクライナのグループがいたらしい」と、ニューヨーク・タイムズ紙が匿名の米国当局者の話を引用して、火曜日(3月7日)に報じた。

 ニューヨーク・タイムズ紙の匿名の情報源は、「破壊工作員はウクライナ人かロシア人、あるいはその組み合わせである可能性が高い」とし、「アメリカ人やイギリス人は関与していない」と述べている。さらに彼らは、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領や彼の「最高幹部」が関与した証拠もなく、「いかなるウクライナ政府関係者」も攻撃を指示したとは言えないとした。

 匿名の関係者は、誰が「作戦」を指示し、費用を負担したのかについては言及できず、「ウクライナ政府またはその治安当局とつながりのある代理勢力によって、表に出ない形で攻撃が行われた可能性がある」と述べている。




関連記事:西側はノルド・ストリーム爆破の調査結果を隠蔽するつもりのようだ。フランスの一将軍の発言


 バルト海の海底で4本のパイプラインのうち3本をバラバラにした爆弾は、「軍や諜報機関に勤務しているようには見えない」ものの、「過去に政府の専門訓練を受けた可能性がある」経験豊富な潜水士たちが仕掛けた「可能性が高い」と、匿名の関係者は主張している。

 また、バイデン米大統領とその側近はノルド・ストリームへの攻撃を「許可していない」とし、爆破に「米国の関与はない」とも述べた。これらの発言は、米国が爆破を指示し、爆発物を仕掛けたと非難した調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュの先月の報告書に正面から反論している。

  西欧の当局者もこの攻撃が国家によるものだと考えているが、「米国の当局者は、この作戦が国家によるものだと考えていると公言していない」と同紙は指摘した。

 「ウクライナとその同盟国」がパイプラインを破壊する「潜在的には最も論理的な動機」を持っていると考える当局者もいる。同盟国がどこを指しているかははっきりしない。ただ、ポーランドはノルド・ストリームを最も露骨に批判しているし、米国とNATO圏全体は過去1年間に1000億ドル相当以上の武器やその他の援助をキエフに送っている。

 「キエフやウクライナの代理人に責任を押し付けるような調査結果は、欧州の反発を招き、欧米がウクライナを支持する統一戦線を維持することが難しくなる」と、同紙の記者は指摘している。

 ノルド・ストリームの爆発は、ロシア人ジャーナリストのダリヤ・ドゥギナが死亡したモスクワの自動車爆弾テロ事件から5週間後に起こった。米国の匿名スパイは昨年10月、ゼレンスキーではなくウクライナ政府内の「関係者」が犯人だと考えていると同紙に語ったが、誰の名前も挙げることはしなかった。キエフは公式にいかなる責任も否定している。

 「ノルド・ストリーム作戦の後、ワシントンでは、ウクライナ政府の一部が作戦にも関与しているのではないかという、ひそかな憶測―そして心配―があった」と、タイムズ紙は火曜日に報じた。

 同紙の取材に応じた匿名の関係者は、ウクライナ政府が関与している「証拠は今のところない」とし、ジョー・バイデン大統領のゼレンスキーに対する信頼は「着実に高まっている」と述べた。同紙は、キエフが米国に「深く依存している」にもかかわらず、米国の諜報機関が「ウクライナの意思決定に対する視界が限られている」ことは認めた。
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ノルド・ストリームにおける環境的大惨事

<記事原文 寺島先生推薦>

Environmental Сatastrophe at Nord Stream

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日



バルト海のネズミイルカ


 ヨーロッパの科学者によると、海底ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の損壊は、バルト海の生態系を破壊することにつながったという。この破壊工作の結果はさまざまだが、自然への累積ダメージは甚大である。

 パイプラインの爆発がもたらした直接的な影響は、海洋動物の死であった。リサーチ・スクエアの調査によると、爆発は海洋環境に「連鎖反応」を引き起こし、タラやネズミイルカを含む特定の魚種や海洋動物の絶滅につながる可能性があるという。

 ネズミイルカは、北半球の海域に広く生息する小型のクジラ類で、その数はおよそ70万頭だ。しかし、バルト海にいるその個体群は、遺伝子的にも外見的にも、他の代表種とは異なっている。その数は500頭強で、実は絶滅の危機に瀕している。

 ネズミイルカは通常、5月と10月にスウェーデン領海のゴバーグズ(Goburgs)と、ミドスジェバンケン(Midsjöbanken)の周辺に集まってくる。これらは爆発地点から約40km東に位置する。この爆発により、半径4km以内の動物が死亡し、50km離れた動物が聴覚障害を負った可能性がある。科学者たちは、バルト海の亜種の動物が1匹でも死んだり怪我をしたりすると、その小さな集団全体に大きな影響を与えることを強調する。

 デンマーク自然保護協会のマリア・ジェルディング(Maria Gjerding)会長は、この状況がバルト海の運命に深刻な懸念をもたらすと指摘した。報告書によると、爆発によって海水の状態が悪化した。この海域は、すでに非常に深刻で危機的な状態になっているのだ。

 WWF(世界自然保護基金)のボー・オクスネビャーグ(Bo Øksnebjerg)デンマーク事務局長もこの考えに同意している。彼は、被害は水中に入り込んだ有害物質によって引き起こされたとも考えている。爆発とそれに伴う噴流によって、有毒物質を含む25万トン以上の汚染された海底がかき回された。ボーンホルム空洞の周辺にいる魚の内分泌系に有害物質が影響したため、タラはかなりの被害を受けたと考えられる。

 有害物質の中には、船体や技術構造物(杭、柱など)の汚れを防ぐための塗料の成分として使われているトリブチル錫(TBT)がある。これも爆発でかき回された海底に長く蓄積されてきた。報告書の作成チームを率いたオーフス大学環境科学部のハンス・サンダーソン上級研究員によれば、TBTは海洋動物の繁殖能力を破壊する。

 つまり、今、バルト海の海洋環境は、まさに生き残るために必死になっているのだ。

 デンマークの社会民主党のマグナス・ホイニッケ環境相は、「一見、影響は局所的なものに見えるが、バルト海はすでに深刻な状況にあり、そのため、我々はもちろん、その影響を強く懸念している」と述べている。デンマーク政府は継続的に監視し、バルト海周辺の近隣諸国と情報を共有することで、影響の全体像を把握し、適切な対応ができるようにすると述べている。しかし、ドイツ、デンマーク、そしてスウェーデンの3カ国は、まだ爆発事故の調査を終えておらず、一般市民や他の国には一切情報を提供していない。したがって、バルト海の生物多様性保全の問題は未解決のままである。

 以前は、ガスパイプラインの爆発が環境に与える影響について、メディアは主に水中や大気中への天然ガスの排出について書いていたことに留意する必要がある。特に水中では、その規模を評価するのは容易なことではない。

 排他的経済水域で破壊工作が行われたデンマーク、スウェーデン、そしてドイツは、流出の規模について異なるデータを発表した。しかし、いずれも大気中への排出を強調している。

 メタンの気候への影響を調べるには、二酸化炭素(CO2)換算するのが一般的だ。地球温暖化係数は、100年または20年の観点で計算さ れる。前者の場合、メタンの「温暖化」効果はCO2の28倍、後者の場合、84倍となる。

 ドイツ連邦環境庁(UBA)は、バルト海の海底に敷設されたパイプラインの爆発により、100年間で750万トンのCO2に相当する30万トンのメタンが放出されたと推定した。これは、同庁の報告書によると、ドイツの年間排出量のおよそ1%に相当する。

 デンマーク・エネルギー庁の数字は少し違う。4つの流出のうち2つは、デンマークのボーンホルム島付近だった。デンマークでは7億7800万立方メートルの天然ガスが計測され、これは1460万トンのCO2に相当し、2020年に同国が排出する全温室効果ガスの32パーセントに相当する。

 スウェーデンは、大気中の二酸化炭素よりもメタンの方が早く減衰するため、20年という予測期間をより正確だと考えている。「この漏洩は、20年間で4000万トンの二酸化炭素に相当する。これは、昨年のスウェーデンの総排出量4,800万トンに匹敵する」とスウェーデン・テレビ・ニュース(Svt Nyheter)はスウェーデン環境保護庁の環境経済学者を引用して書いている。

 ノルド・ストリームの破壊に関連して、もう一つ憂慮すべき事実がある。第二次世界大戦後、ドイツの非武装化に関するポツダム会議の決定により、ドイツの化学兵器はバルト海の底に埋められた。そのうちのかなりの部分が、ちょうど爆発が起こった近くのボーンホルム島の地域にある。3万2千トンの軍需品と1万1千トンの化学薬品が投棄されたのだ。70パーセントがマスタードガス、20パーセントがヒ素を含む物質である。今のところ、これらの危険な埋蔵地に重大な事態は起きていないが、科学者によると、海底が不安定になれば、深刻な事態につながる可能性があるという。
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西側はノルド・ストリーム爆破犯人を知っている(タイムズ紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

West knows who is responsible for Nord Stream attack – The Times

出典:RT

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日

 妨害工作の背後にいるウクライナ人容疑者の名前は、「何ヶ月も前から諜報界に流れていた」と、タイムズ紙は指摘している。

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2022年9月27日、バルト海で発生したガスパイプライン「ノルドストリーム2」の漏れから発せられるガスの放出。© Getty Images / Swedish Coast Guard via Getty Images


 西側情報機関は、昨年のノルド・ストリーム爆破事件がウクライナと関係のある人物によって計画されたものであるとほぼ即座に判断したが、キエフとベルリンの間の外交問題を避けるためにこの情報を隠すことを選択したと、水曜日(3月8日)にThe Timesが報じた。

 タイムズ紙によると、スカンジナビアの調査団は、2022年9月、ロシアとドイツをバルト海底経由で結ぶ海底ガスパイプラインが攻撃された1週間後に、それが「あるウクライナ発の民間企業によって」仕掛けられたことを知ったという。彼らはブリュッセルで行われた情報説明会でこの情報を入手したとのことだ。

 「(攻撃の)民間支援者の疑いのある名前は...数ヶ月前から諜報界に出回っていたが、明らかにされていない」と同紙の記事は伝えている。

 タイムズ紙は、名前を公表することなく、犯人はキエフの政府関係者ではないウクライナ人であるとした。また、容疑者は「変わったテレホンカードを残しているようだ」とも指摘しているが、詳細は明らかにしていない。

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関連記事:ノルド・ストリームに関する新しい報道は「組織的なデマ」のように見える(モスクワ)

 
 また、この問題の調査がなぜこのように遅いペースで進んでいるのかについての質問を一切受け付けないよう、調査団は指示されているともこの記事は伝えている。

 タイムズ紙は、NATO当局が「ウクライナがドイツと公然と争いになることから守りたかった」ようだと指摘した。事件当時、ベルリンは同盟国の支援なしに、キエフにレオパルト2戦車を供給することに消極的だった。ドイツは2023年1月に考えを改め、他の西側諸国も戦車納入を約束した。

 この報道は、ニューヨーク・タイムズ紙が火曜日(3月7日)、匿名の情報源を引用して、パイプラインへの攻撃の背後に「親ウクライナ派」のグループがいた可能性があると主張したことを受けたもの。同日、ドイツのメディアは、この事件を調査している捜査当局が、攻撃に使われたとされるヨットが、2人のウクライナ人が所有するポーランドにある会社のものであることを発見したと報じた。

 これらの報道について、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、この疑惑は「メディアによる協調的なデマキャンペーン」であり、真犯人から注意をそらそうとする試みのように見えると述べている。

 先月、米国の著名なジャーナリストであるシーモア・ハーシュが、ノルド・ストリーム攻撃を画策したのはワシントンであるとする調査結果を発表した。ホワイトハウスは責任を否定しているが、1月にはヴィクトリア・ヌーランド米国務次官(政治担当)が、ノルド・ストリーム2がもはや稼働していないことを知り、ワシントンは「とても喜んでいる」はずだと述べている。
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ポーランド大統領、ノルド・ストリームの爆破は欧州にとって「有益」と発言

<記事原文 寺島先生推薦>

Polish president claims Nord Stream blasts were ‘beneficial’ for Europe

出典:RT

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日

昨年の破壊工作は、モスクワの「支配」計画を混乱させたとアンジェイ・ドゥダは主張する。



資料写真:ポーランド大統領アンジェイ・ドゥダ© Global Look Press / Mateusz Slodkowski


 ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領が水曜日(3月8日)にCNNで語ったところによると、ロシアのガスをヨーロッパに供給するノルド・ストリーム・パイプラインの破壊は良いことであったという。ドゥダ大統領は、この破壊工作によって、大陸がモスクワの「支配」計画から解放されたと主張し、ポーランドのロシア産ガスへの依存が解消されたと付け加えた。

 この発言は、2022年9月に起きたパイプラインへの攻撃の背後に親ウクライナ派勢力がいた可能性があるというメディアの報道を受けたもの。ドゥダは、こうした主張を裏付けることはできないとしながらも、ノルド・ストリームが消滅すれば、欧州にとって「有益」であると主張した。

 ポーランドはガスパイプライン計画に大反対し、攻撃のおよそ1カ月前の2022年8月には廃棄を求める働きかけまでしていた。ドゥダはまた、このプロジェクトを、ロシアとの関係における欧州の宥和戦略の一部と呼んだ。




関連記事:ウクライナ国民がノルド・ストリーム爆破に関わっていた容疑は「ありえる」とドイツは主張


 今週初め、ニューヨーク・タイムズ紙は、米国の情報筋を引用して、2022年9月の攻撃の背後に「親ウクライナ派」のグループがいたと報じた。同誌はまた、西側の情報機関は妨害工作の背後にいる人物の身元を把握していたが、容疑者がウクライナと関係があるため、ベルリンとキエフの間の対立を避けるためにこの情報を隠すことに決めたと述べている。

 アラブ首長国連邦を訪問中にCNNのインタビューに応じたポーランド大統領は、ポーランドのMiG-29戦闘機をすべてキエフに引き渡すことも提案したが、それはあくまでも国際的連携の一環であるとした。「我々はこれらの戦闘機を提供する準備ができており、ウクライナもすぐに使用する態勢を整えられると確信している」と述べた。しかし、ワルシャワがソ連製戦闘機の数を、まだどれだけ保有しているのかについては明言しなかった。

 ドゥダは、ウクライナのパイロットに米国製F16戦闘機の操縦訓練を行うよう求め、キエフの軍隊はいずれにしても「NATOの水準に達する」ことを熱望していると発言した。「ウクライナ人パイロットの訓練は重要であり、必要不可欠だ」と彼は付け加えた。

 CNNによると、現在、少なくとも2人のウクライナ人パイロットが米国に滞在しており、フライトシミュレーター(模擬操縦訓練装置)を使って、米国製の各種軍用機の操縦を習得するために必要な時間を確認しているという。
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CIAはノルド・ストリームについて同盟国に事前の警告を出していた(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA issued advance Nord Stream warning to allies – WSJ

出典:RT

2023年3月9日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月5日


(CIAの)通知には、親ウクライナ派がパイプラインの破壊を企てているとの警告が含まれていたとされる。



資料写真:バルチック海におけるノルド・ストリーム2パイプラインの敷設(2021年9月)© Nord Stream 2 AG / AFP


 CIAは、親ウクライナ派によるガスパイプライン「ノルド・ストリーム」への攻撃の可能性について、EUの同盟国に警告したと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が情報当局者の話を引用して、3月8日(水)、報じた。

 それによると、昨年6月から7月にかけて、CIAはドイツの連邦情報局(BND)など欧州の機関に、ウクライナ人3人がパイプラインを狙うために、スウェーデンなどバルト海周辺の国々で船を借りようとしていたことを伝えた。その攻撃は結局9月に行われた。

 CIAのバーンズ長官とホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障顧問は、爆破事件から1ヵ月後には、キエフがロシアのガスをドイツに送るために作られたパイプラインの破壊工作を指揮した可能性を検討していたと言われている。

 この報道は、ニューヨーク・タイムズ紙が3月7日(火)に米政府関係者の話を引用し、正体不明の「親ウクライナ派」が爆破を実行した可能性があるとしたことを受けて行われた。WSJは、米情報当局によるこの評価は「決定的なものではない」とし、犯人とされる人物がウクライナ政府と関係があることを「示すものはない」と主張したと述べた。




関連記事:米国の諜報員によると、「親ウクライナ勢力」がノルド・ストリームを爆破したという。(ニューヨーク・タイムズの報道)


 ドイツの報道機関は今週、捜査当局が、ウクライナ人2人が所有する「らしい」ポーランドの会社が運営するヨットを、破壊工作との関連の可能性で調べていると報じた。その後、ドイツ当局は1月に同船舶を捜索したことを確認したが、押収品の詳細については明らかにしなかった。

 ウクライナの関与が疑われる新たな報道は、ベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュが先月行った調査と矛盾するもので、ハーシュはある情報源を引用して、爆撃はノルウェーの助けを借りて米国が行ったと主張している。米国とウクライナはともに関与を否定しており、ホワイトハウスはハーシュ氏の主張を「全くの虚偽」と断じた。

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は水曜日、ウクライナとの関連についての報道は、真の犯人から注意をそらし、NATO諸国を免責しようとするものであると示唆した。「明らかに、これはメディアによる協調的なデマキャンペーンだ」とペスコフは述べた。

 モスクワは、西側諸国は事件の包括的な国際調査にあまり関心がないと主張している。
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