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ウクライナにおける人身/臓器の売買についての調査報告(第3部)

<記事原文 寺島先生推薦>

“When You See It, You Won’t Forgive”: Part III of an Investigative Report on Human Trafficking in Ukraine

「それを見れば、だれも許さないだろう」:ウクライナにおける人身売買についての調査報告(第3部)

筆者:デボラ・L・アームストロング(Deborah・ L・Armstrong)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年2月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日


写真:New Eastern Outlook

 年が明けて間もない2023年1月14日、ウクライナの首都キエフで行われた大規模な抗議活動の動画がSNSで拡散され始めた。抗議者の大半は女性だが、中には男性の姿も確認できる。女性たちは、ウクライナ軍第24師団の未亡人や妻たちであることが確認されている。

 キエフにおける抗議者たちが、愛する者の遺体返却を求めている

 抗議者たちは、埋葬するために兵士の遺骨を返せ!と要求している。主に英語で書かれたプラカードを持っている。いくつかのプラカードには、民族主義的なウクライナのシンボルであるガリシア獅子(第2次世界大戦中のSSのシンボル)も描かれている。デモ隊は「スラバ・ウクライナ!スラバ・ゲロヤム!」 と叫ぶ。これは、「ウクライナに栄光あれ!英雄に栄光あれ!」という意味だ。

 ウクライナ国旗の色をした黄色と青の煙が放出され、唱和するデモ隊の上を漂い、10万人のユダヤ人、ポーランド人、そしてロシア人を虐殺した大量殺人者ステパン・バンデラの指示の下、第2次世界大戦でナチスと協力したウクライナ反乱軍OUN-Bの旗を象徴する赤と黒の煙と混ざり合っている。



愛する者の遺品返却を求めるキエフの女性たち。写真:Ruptly/zpnews.ru

 他の動画では、女性たちが行方不明の夫、息子、父親、兄弟の写真を掲げている。なぜ、この人たちはみんな行方不明なのだろう? 戦死したのか、ロシア軍の捕虜にされたのか。彼女たちは、ロシアに愛する人の遺体を返すよう要求しているのだろうか? もしそうなら、なぜ彼女たちのプラカードは英語なのだろう? なぜロシアについては何も言われないのだろうか...?

 それとも、デモ隊は、すべて愛国心という前提条件で注意深い枠組みを作りながらも、(実際は)自分たちのウクライナ政府に対して、声明を出しているのだろうか?

 ウクライナにおける人身売買に関する私の調査報告書第1部第2部をお読みいただいた方は、必ずしも同意していないウクライナ兵や民間人からの臓器摘出を目撃した、あるいは参加したと主張する人々の証言をすでにお読みになっているはずだ。

 戦場での臓器狩りが、少なくとも1990年代後半から行われていたことは、2009年の欧州評議会(PACE)のディック・マーティ副議長による「コソボにおける人々に対する非人道的な扱いと違法な臓器売買」報告書で、すでにお読みいただいた通りだ。そして、戦場での臓器狩りは少なくとも1990年代後半から行われていたことは、ロシア内務大臣顧問のウラジミール・オフチンスキー博士によれば、コソボで移植プログラムの先頭に立った同じ人たちが、現在ウクライナで移植作業を指揮していると言われていることも、お読みいただいた通りだ。

 ウクライナでこのような事業がより円滑に行われるためには、何が必要なのだろうか。第1部の証言者によると、ドナーの体から臓器を取り出して搬送するまでの時間は最短で7分、外科医は、実質的にはベルトコンベアのように遺体を処理しなければならないので、スピードが重視されるとのことだ。

 おそらく、ウクライナの法律を改正すれば、この手順をより効率化し、本人がすでに亡くなっている場合の同意の必要性など、お役所仕事の一部を切り捨てることができるだろう。ロシアがウクライナ国境を越え、2022年2月24日に特別軍事作戦(SMO)を開始するわずか2カ月前の2021年12月16日、まさにそのようなことが起こっていた。



ヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナ国会)写真: Spzh.news

 ヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナ国会)の305人の議員が投票し、法案No.5831を可決、ゼレンスキー大統領が署名し、翌日から施行された。同法案の全文(ウクライナ語)「人体解剖学的材料の移植を規制するウクライナの特定の立法行為の改正について」、同法案の要約は、ウクライナ国会のウェブサイトから閲覧できる。

 2021年の法律では、書面による同意がない場合でも、故人から臓器を摘出することができ、故人の場合は同意が義務づけられなくなった。さらに、書面による同意には、認証や公証人の署名が不要となった。ドナーは権限を与えられた移植コーディネーターに同意を与えることができ、同意は電子的な形式で行うことができる。

 故人の同意がない場合、移植コーディネーター(取次人)は、故人の配偶者、または両親、兄弟、子供などの近親者から同意を得ることになっている。家族が見つからない場合、コーディネーターは故人を埋葬した人から同意を得ることができる。故人となった軍人の場合、部隊長が兵士の臓器摘出に同意することができる。

 この法律は、また、内縁の配偶者は、故人の臓器摘出を妨げることができないことを明確にし、内縁の配偶者や代理家族などに同意を与えるための、親族に属さないひとに権威を与える人物の権利を奪っている。

 ウクライナの国民健康・医療・健康保険委員会の委員長であるミハイロ・ラドゥツキーによると、死後の臓器提供の同意は、 Diia事業として知られるアプリを介して電子的に行うこともできるようになった。

 ラドゥツキーは2021年にTelegram*で、この法律が「ドナーと受容者の適正を照合するアルゴリズムを改善し、臓器摘出の意思決定ができる人の範囲を拡大し、試験的移植事業から医療保証事業による2023年からの資金提供への移行を確立する」と書いた。さらに、2019年にはウクライナで78件の臓器移植が行われ、2021年末までに250件の手術が計画されていると指摘した。
* ロシア人技術者が2013年に開発し、現在はTelegram Messenger LLPが運営しているインスタントメッセージアプリケーションである。 スマートフォンのモバイルアプリケーションとして無料で利用できる。(ウィキペディア)



国民保健・医療・健康保険委員会委員長のミハイロ・ラドゥツキー。写真:ヴェルホーヴナ・ラーダ


 つまり、この法律は、条文を読めばわかるように、故人の同意なしに、簡単に臓器を摘出することができる。戦闘が激しく混乱し、近親者の所在が不明な戦場において、それがどのように機能するかは、想像に難くない。特に、ある情報筋によれば、戦場では遺体は150ドルから200ドルで売られ、たった1つの遺体から採取された臓器の総額は1000万ドルに達することもあるそうだ。

 さらに、ロシアのメディアやロシアのブログなどで、ウクライナ東部の人々が臓器をすべて摘出されて大量に埋葬されたとの報道が多数なされている。このような話は西側では嘲笑され、「ロシアの偽情報」として退けられるが、びっくりするほど多くの報道がある。

 セルゲイ・ペレホドというブロガーは、国籍は不明だが(おそらくロシア人かウクライナ人)、2014年だけで起こった悲惨な発見のリストをまとめている。以下は、彼が指摘した残虐行為の一部である:

 1. 9月24日、ドネツク人民共和国(DPR)の民兵は、ロウアー・クリンカとコムナールの集落で墓を発見し、そのうちの2つの墓には撃たれた男女の遺体が、3つ目には内臓のない40人の遺体があったことにショックを受けた。実際、アメリカ資本の『モスクワ・タイムズ』でさえ、このことを報道したほどである。

 2. 5月5日、ウクライナでは「兵士の臓器が大量に摘出されている 」という噂が飛び交った。公式発表では、死者5名、負傷者12名と発表されたが、救急車の出入りが激しく、犠牲者はその2~3倍は、いたのではないかと思われるほどだった。実際、少なくとも48人が労働組合ビルに追い込まれ、生きたまま焼かれたり、撃たれたり、殴り殺されたりしたオデッサ大虐殺は、そのわずか3日前の5月2日に起きており、この連載の第1部に登場する目撃者の一人は、この大虐殺後に多くの臓器を採取した、と言っている。

 3. 5月20日、カラチュンの丘付近で夜間偵察活動中の民兵が、「腹が引き裂かれた」ウクライナ国家警備隊兵士180人の遺体を発見した。少し離れたトロイツク墓地付近では、さらに300体の遺体が発見され、埋葬されず、臓器が取り除かれていた。地元の人々は、赤十字の車や専門的な機器を持った外国人医師を見たと報告している。ウクライナのメディアはその日、カラチュンの丘で激しい戦闘があったことを報じたが、ロシアのメディア以外ではほとんど確認できない。

 4. 6月28日、対テロ作戦地域(ATO)の情報筋は、ルガンスク地方のルビズネ近郊で内臓のない人々の墓を発見したと報じた。情報筋は、ウクライナ東部で「特殊集団」が活動しており、人間の臓器の売買に従事していると指摘した。

 その最後の日に発見された集団墓地についての裏付けとなる記事は見つからなかった。しかし、2021年、ドンバス在住のラッセル・ベントレーは、ルガンスクのその同じ地域で200体の遺体が掘り起こされたときに立ち会い、彼らは2014年の夏、戦闘が激しくなったときに殺害されてそこに埋められたと書いている。




2021年、ドネツク郊外で発見された集団墓地の現場にいるDPRの民兵隊員。[出典:RT.com]


 ラッセル・ベントレーを信じるべき? そのブロガーの言葉を信じるべきか? どんなブロガーでも信じるべきなのだろうか? 主流メディアが日常的にだまし誤導をし、本当のニュースから私たちの注意をそらす今日、おそらく誰も信じることはできないだろう。

チップ・ボックの漫画: Yahoo news

 いずれにせよ、ウクライナの集団墓地には、内臓を切り取られた兵士や民間人の遺体があるという恐ろしい話が、インターネット上に溢れている。そして、これらの話の1つでも、何か真実に基づいているのであれば、深く調べる価値がある。

 2022年12月、Telegramに、そしてRumble(無料動画サイト)に、ロシア語を話す正体不明の男性が、ウクライナのハリコフ州の都市イジュームで目撃した残虐行為を説明する動画が登場した。彼は20代後半から30代前半に見え、尋ねる人によっては、ロシア空挺部隊、あるいはスペツナズと思われる空色のベレー帽を被っている。ベレー帽にはソ連の赤い星が付いていることから、彼はロシアの正規軍ではなく、ドンバス離脱人民共和国の民兵の一人ではないかと思われる:
彼のことはココ(英語字幕付き)で見られる。

ロシア軍がウクライナ人の子どもの臓器狩り作戦を暴く
ウクライナで起こっている恐怖の実録。子どもからアドレノクロム*や臓器を摘出することは・・・

* アドレナリンの酸化によって生成される分子式C₉H₉NO₃の化合物。誘導体のカルバゾクロムは止血薬として用いられる。化学名は類似しているがクロムとは無関係である。 (ウィキペディア)

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イジュームで子どもの臓器狩りが行われていると語るロシア語話者の男性


 「その集団は、わかったのですが、イジューム周辺に子供たちを集めていたんです」と、ロシア側が発見したことに言及して彼は語っている。「2歳から6、7歳の小さな子供たちを、あの...特別な場所に連れてきました」。ここで兵士は、本当に恐ろしいことを思い出したときのように、少し間を置いた。彼は深くため息をついてから、こう続けた。「子供たちは1階で服を脱がされました。そして2階で...」

 彼は再び言葉を止め、その目には呪われたような表情を浮かべる。「2回目は...切り刻まれました」と、彼は静かに言う。映像は一旦中断され、おそらく男性が回復するための時間が設けられたのだろう。映像は再開され、彼はカメラに映らないときに聞かれたかもしれない別の質問に答える。「廃棄物のように、穴に入れられたり、どこかへ持ち出されて埋められたりするんだ。あいつらは、まるで子豚やウサギのような家畜を屠殺するかのように、彼ら(子どもたち)のことを話していたんだ。まるでどこかの農場のように、「おー、運んできたぞ」という感じだったんです。わかりますか?」

 この兵士はかなり震えているようだ。彼は続けて言う。「話には聞いていたが、信じられなかった。この目で見るまでは、理解できないだろう。しかし、それを見たら、だれだって許せなくなりますよ」。

 臓器が摘出された遺体が発見されたという報道の多くはロシア側から発信されているように見えるが、ウクライナでの臓器狩りについては、2000年代から世界中で多くの記事が発表されている。ロシアのSMO(特別軍事作戦)が始まるまでは、このような記事は簡単に見つけることができた。そして突然、西側の主流メディアは、このような記事を「ロシアの偽情報 」と呼ぶようになった。




ミハイル・ジス博士。写真: Ynetnews.com


 例えば、2003年、米国国立医学図書館は、臓器売買ネットワークが「エストニア、ブルガリア、トルコ、グルジア、ロシア、ルーマニア、モルドバ、そしてウクライナなどの貧しいヨーロッパ諸国を標的にしており、人々は圧力をかけられてわずか2500ドルで自分の腎臓を売らされている 」と述べた欧州評議会の議会からの報告書を引用した

 2010年、エルサレム・ポスト紙は、ウクライナと他の旧ソ連諸国での臓器売買のために12人のイスラエル人が逮捕されたと報じた。彼らは、主に肝臓をイスラエル人や他の国の国民に、体の一部につき1万ドルで売っていたとして告発された。移植は主にキエフ、アゼルバイジャン、そしてエクアドルで行われていた。

 2011年、ウクライナ・ウィーク紙は、ウクライナで闇臓器売買が盛んであるとの記事を掲載した。記事では、キエフの「闇移植医」グループが2010年に26人の遺体から解剖中に眼球を取り出し、臓器は移植のためにキエフの病院に移されたことを詳述している。記事はまた、2007年にイスラエル人のミハイル・ジスがドネツクで逮捕されたことにも触れている。イスラエルでの医師免許が取り消されたため、闇取引のお金を稼ぐためにウクライナに移住していた。そこでモルドバ人とウクライナ人が1万ドルで臓器を売ることに合意し、ジスは手術をするたびに13万5千ドルを受け取り、そのお金はアメリカの銀行口座に振り込まれたとされている。

 また、2011年、ブルームバーグは、イスラエル人や東欧人が運営する犯罪組織が、身寄りのない人々に腎臓などの臓器を売るよう強制していたことが、5大陸の調査員によって、大規模で絡み合ったネットワークとして明らかになったことを報じた

 WHOは2012年、①人間の臓器が1時間に1個の割合で、闇市場で売られていること、②健康で若い臓器を必要とする富裕層が、中国、インド、パキスタンの犯罪組織から入手した腎臓に15万ドル以上を支払っていること、そして③この犯罪組織は、たった3、500ドルでも、喉から手が出るほどお金を必要としている人から、臓器を採取していると警告した

 また、2012年には、オーストラリアの新聞が、ウクライナで「骨やその他の人体組織が、薄汚れた白いミニバスの中でクーラーに詰め込まれている」という悲惨な発見を報じた。当局が押収した文書によると、遺体は、フロリダに本社を置く米国の医療製品会社「RTI Biologics」の子会社が所有するドイツの工場に向かう途中であったことが明らかになった。




「肋骨2本、アキレス腱2本、肘2本、鼓膜2本、歯2本、などなど...」 ウクライナの家宅捜索で遺体の一部が発見されたOleksandr Frolovの写真を手にする親族。写真 シドニー・モーニング・ヘラルド紙


 2016年、ワシントンDCのシンクタンクであるアトランティック・カウンシルは、「ウクライナは人身売買との戦いにもっと力を入れるべき」と題した記事を掲載し、ウクライナ出身の16万人以上の男性、女性、子供が 「労働、セックス、強制物乞い、そして臓器摘出のために搾取されている」と述べている。

 この記事は、ウクライナの問題の多くが「ロシアの侵略」であるとしながらも、米国国務省と欧州評議会の人身売買対策専門家グループ(GRETA)によると、「国家レベルでの連携が不十分」であったと、ウクライナ当局を批判している。

 2014年に発表されたGRETAの報告書では、「政府省庁間の連携が悪い」とし、ウクライナの人身売買に関する統治評議会が5年間開催されていなかった、と述べられている。




「人体は売り物ではない」と書かれたウクライナの看板(2016年、キエフにて)には、人身売買の被害者が電話できるホットラインが記載されている。写真: アトランティック・カウンシル


 また、ジュネーブ安全保障セクター・ガバナンスセンター(DCAF)が2015年に発表したもう一つ調査では、ウクライナは臓器狩りを含む人身売買の「発地、通過そして到達国」であると結論付けている。報告書の全文はこちらのリンクから読める。

 ロシアのSMOが始まった後、西側のニュースはウクライナでの違法な臓器狩りの報道はほぼしなくなった。しかし、2022年3月、BBCは、数千人のウクライナの子どもたちが行方不明になっており、人身売買業者の手に落ちた恐れがあると報じた

 2022年2月、ドイツの国防大臣クリスティーネ・ランブレヒトは、ウクライナが移動式火葬場を完備した野戦病院を受け取ることになると述べた。ウクライナに武器を送ることに反対していたランブレヒトは、「ウクライナ戦争への、ベルリンの対応をめぐる監視の目が厳しくなる中で」今年1月に辞任した。

 野戦病院と火葬場のニュースは、ウクライナ軍に深刻な動揺をもたらしたと報道されたが、やがて西側の主要メディアは、火葬場はロシアが運営し、ロシア軍の犠牲者数を隠すために使われたと主張する記事で、もちきりになった。

 ただでさえ希少で、しばしば虚偽と見分けるのが難しい真実は、新聞の束の中の針に喩えられるようになった。



ジョエル・ペットの漫画/The Week


ブラック移植とグレー移植

 ドナーやその家族の同意なしに行われる違法な臓器移植は、「ブラック移植」と呼ばれている。しかし、同時に「グレー移植」もある。これは、ドナーの生活が絶望的かつあるいは貧困であることが多く、強引に臓器を売らされるものだ。

 腎臓や肝臓の一部は数千ドルで売れるが、その健康リスクは甚大だ。手術そのものに関する直接的なリスクに加え、高血圧、痛み、神経損傷、ヘルニア、腸閉塞、そして慢性疾患の可能性の増加といった長期的な健康リスクもある。また、障害保険や生命保険に加入しにくくなるなど、さまざまなリスクがある。

 2022年10月、アジアニュースネットワークは、外国人ドナーとの移植を仲介する東京のNPO法人を通じて、経済的に苦しいウクライナ人が腎臓を売買される臓器提供者として確認されたという記事を掲載した。

 この記事は、ウクライナ語のウェブサイトで、腎臓を売りたい人にお金を提供する書き込みが出現していることが触れられている。このような投稿は、2020年のCovid19以降、4倍の頻度で出現するようになったと記事は述べている。投稿には、売買したい臓器の年齢、血液型、種類、そして価格が記載されている。「完璧に健康な20歳!」などと、臓器の 「質」も記載されている。また、電話番号や住所などの連絡先も記載されている。

 この記事によると、これらの投稿は、ロシアのSMOが始まった後も、途切れることなく表示され続けたという。神経科医を名乗る人物のある投稿には、「経済的苦境に陥っているのなら、あなたの腎臓を買います」と書かれていた。彼は、アメリカやインドだけでなく、「日本にも拠点がある」とも付け加えていた。

 「家が買える!」と謳った投稿もあった。記事によると、あるウクライナ人女性は、58歳の日本人女性に提供された腎臓の対価として15,000ドルを受け取ったという。ひとりのトルコ国籍の人物は臓器の売買に関与したとして、ウクライナ当局に逮捕された。

 一方、正式なルートで移植を申請した法遵守主義のウクライナ市民は、待ち続けなければならない。


腎臓移植を待っている透析中のウクライナ女性。写真 :アジアニュース


 臓器提供を直接迫ることはほとんどの国で違法だが、臓器提供の動機付けをすることについては、世界中で関心が高まっている。2月には、マサチューセッツ州の議員が、刑務所の受刑者が刑期を短縮するために臓器や骨髄を提供することを認める法案を提出した。

 このような法律の倫理性にはまだ疑問が残るが、法案の民主党提案者であるジュディス・ガルシア州下院議員は記者団に対し、「黒人や茶色人種社会に対する不当な収監や 過剰取り締まりの悪循環」を解消するのに役立つかもしれない、と述べた。

 ガルシアは、黒人とヒスパニック系は特有の健康状態により臓器移植の必要性が高いが、差別的な投獄率により黒人の待機期間が長くなり、適合する(臓器の)数が制限されると説いた。

 この法案には、すでに多くの批判がある。ワシントンDCに拠点を置く刑事司法改革擁護団体『強制最小化に反対する家族たち』のケビン・リング会長は、この法案について、「ディストピア小説に出てくるような内容だ」と述べている。彼は記者団に対し、「臓器提供の促進は良いことだ。過剰な懲役刑の軽減も良いことだ。ただ、この2つを結びつけるのは倒錯的だ」と述べた。

 法案で提案された制度は、臓器や骨髄の提供と引き換えに、囚人に60日から1年までの減刑を与えるというもので、各囚人の減刑幅を決定する委員会が置かれることになっている。

 現在、米国では受刑者の臓器提供を禁止する法律はないが、受刑者の感染症のリスクが高いことから、移植学会では1990年代から受刑者の臓器提供を控えてきた。

 連邦刑務所の囚人は臓器を提供することはできるが、家族にだけだ。


結論

 この3回にわたる詳細な報告を終えて、女性や子どもの性的搾取や奴隷貿易など、世界各地で違法化されているにもかかわらず一部で続いている人身売買については、まだその表面すら触れていないことを実感している。ウクライナは、商業的な性的搾取や奴隷の供給源、通過国、そして目的地として、すでによく知られている国である。

 これらのテーマは、それ自体が詳細な調査報告に値するものだ。後日、さらに問題を掘り下げるつもりである。

 ウクライナの人身売買に関する調査シリーズの第3部は、これで終わる。第1部はこちら、第2部はこちらでお読みください。


デボラ・アームストロングは現在、ロシアに力点を置いた地政学について執筆している。以前は米国の地方テレビニュースに携わり、2つの地方エミー賞を受賞した。1990年代前半には、ソビエト連邦の末期に滞在し、レニングラード・テレビでテレビコンサルタントとして働いた。
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BKL(モスクワの最新地下鉄)に見る多極性構造:「ニューコイン」列車に乗りながら

<記事原文 寺島先生推薦>

Moveable Multipolarity in Moscow: Ridin’ the ‘Newcoin’ Train

筆者:ペペ・エスコバー(Pepe Escobar)

出典:Strategic Culture

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日

新しいコイン


新しい通貨は、単なる決済単位ではなく、この先、資本や準備金を蓄える「外部通貨」になることができるはずだ。

 旧繊維街のテクスティルシュチキから、至高主義・構成主義のギャラリーであるソコルニキ(マレーヴィチ*が住んでいる!)まで、そして豪華な鉄骨アーチのリジスカヤから130メートルのエスカレーターのあるマリーナ・ロッシャまで、モスクワ全体を71キロ、31駅で一周するビッグサークルライン(キリル文字ではBKL)(訳注:今年3月に開通したモスクワの地下鉄)の楽しさよ。
* カジミール・セヴェリーノヴィチ・マレーヴィチ。ウクライナ・ソ連の芸術家。特に画家として知られ、戦前に抽象絵画を手掛けた最初の人物である。 (ウィキペディア)

 BKLはまるで多極性世界の首都(モスクワ)の、生きて、呼吸して、走っている比喩のようだ。アート、建築、歴史、都市デザイン、ハイテク交通、そしてもちろん、中国新シルクロードの友人たちの言葉を借りれば、「人と人との交流」がぎゅっと詰まっている。

 ちなみに習近平主席は、21日にモスクワに来るプーチン大統領とBKLに乗る予定になっている。

 だから、何十年もの経験を持つ、世界の金融市場のトップに立つ経験豊かな投資家が、世界の金融システムに関する重要な洞察を共有することに同意したとき、私がBKLに乗ることを提案し、彼がすぐにそれを受け入れたのも不思議なことではない。彼の名前はS.Tzu氏としておこう。以下は、私たちがBKLに乗りながら行った会話を最小限に編集したものである。

 時間をお取りいただきありがとうございます。しかも、こんな素晴らしい場面設定です。現在の市場の乱高下を考えると、(市場動向を見つめる)画面から離れるのは大変なことでしょう。

 S. Tzu: そうですね、現在、市場は非常に厳しい状況です。この数ヶ月は2007-8年のことを想起させますが、金融市場基金と サブプライムローンではなく、最近はパイプラインと国債市場が吹き飛んでいます。私たちは面白い時代に生きています。

 あなたのお近づきにならせてもらった理由は、ゾルタン・ポザールが提唱した「ブレトン・ウッズ*3」の考え方について、あなたの見解を伺いたいと思ったからです。あなたは間違いなく、その最先端を走っていますね。
* ブレトン・ウッズ体制とは、第二次大戦後に米国を中心に作られた、為替相場安定の枠組み。金・ドル本位制による固定為替制度を取っていた。またブレトン・ウッズ2とは、1973年に固定為替制が廃止され、変動相場制に移行されたことを指す。

 S. Tzu: ずばり本題に入っていただきました。新しいグローバルな金融秩序の出現を目の当たりにする機会は非常に少ないのですが、私たちはそのような機会を目にする一つの時代を生きているのです。1970年代以降でいうと、今から14年以上前に登場したのビットコインが、これから数年後に私たちが目にするものに近い衝撃を持っていたのかもしれません。ビットコインが登場した時期が偶然ではなかったように、現在の世界金融システムの地殻変動の条件は、何十年も前から醸成されていたのです。「この戦争が終わった後、『通貨』は二度と同じものにはならないないだろう...」というゾルタンの洞察の通り、今は金融秩序が変わる時期として完璧な時期のです。


「外部通貨」を理解する

 ビットコインの話が出ましたね。当時は、これの何が画期的だったのでしょうか?

 S. Tzu: 暗号の側面はちょっと置くとして、ビットコインの最初の成功が見込まれたこととその理由は、ビットコインが中央銀行の責任ではない「(ゾルタン氏の優れた用語を借りれば)外部」貨幣を作ろうとしたことがあったからでした。この新しい単位の大きな特徴のひとつは、採掘可能なコインを2100万枚に制限したことで、現行の体制の問題点を見抜くことができる人たちの心に響きました。今でこそそれほどでもないですが、近代的な通貨単位が中央銀行の後ろ盾なしに存在し、デジタル形式の事実上の「外部」貨幣となりうるという発想は、2008年当時としては画期的だったからです。言うまでもなく、ユーロ国債危機、量的緩和*、そして最近の世界的な悪性インフレは、多くの人が何十年も感じてきた不協和音を増幅させただけでした。現在の「(再びポツァール氏の上品な用語を用いれば)内部貨幣」体制の信頼性は、現在行われている中央銀行の準備金凍結や破壊的な経済制裁に至るずっと前に、破壊されてしまっていたのです。残念ながら、信頼に基づくシステムの信頼性を破壊するのに、中央銀行の保管口座にある外貨準備を凍結して没収することほど有効な方法はありません。ビットコイン誕生の背景にある認知的不協和が検証されたのです。「内部通貨」体制は2022年に完全に兵器化されました。その意味合いは深いです。
* 中央銀行が市場に供給する資金を増やすことで金融市場の安定や景気回復を図る措置のこと。

 さて、いよいよ核心に入ってきています。ご存知のように、ゾルタン・ポツァールは次の段階で新しい「ブレトン・ウッズ3」体制が出現すると主張しています。それは一体どういう意味なのでしょうか。

 S. Tzu: ポツァール氏が、現在の欧米の「内部通貨」体制を別のものに変えることを指しているのか、それとも現在の金融体制の外側に、代替案として「ブレトン・ウッズ3」の出現を示唆しているのか、私にもよくわかりません。ただ、政治的な意思の欠如や、以前から蓄積され、近年急激に増大した過剰な政府債務がありますから、現段階で欧米で「外部通貨」制度をまた繰り返しても成功することはあり得ないと私は確信しています。

 現在の欧米の金融秩序が次の進化段階に移行する前に、これらの未払い債務の一部を実質的に削減する必要があります。歴史を振り返れば、その移行はデフォルト(債務不履行)かインフレ、あるいはその2つの組み合わせによって起こるのが普通です。可能性が高いと思われるのは、欧米諸国政府が金融抑圧政策に依存して、船を浮かせ(国を沈没・破綻させないように、の意)、債務問題に取り組もうとすることです。私は、「内部通貨」体制の管理を強化するための多くの取り組みが行われると予想していますが、それはおそらくますます不評を買うでしょう。例えば、CDBC*の導入もその一つでしょう。この点で、これからが大変な時代になることは間違いないでしょう。同時に、現在の「内部通貨」による世界金融秩序に対抗する、何らかの「外部通貨」体制が出現することも、現段階では避けられないと思われます。
* 中央銀行デジタル通貨あるいは中央銀行発行デジタル通貨は、中央銀行が発行したデジタル通貨の一種で、デジタル不換紙幣。現在のCBDCの概念はビットコインに直接触発された通貨管理に由来するが、CBDCは国家の中央銀行が中央集権的に発行する、という点で仮想通貨や暗号通貨とは異なる。(ウィキペディア)

 それは、どうしてですか?

 S. Tzu: 世界経済は、貿易、準備、投資のすべての必要性を、現在の兵器化した状態の「内部通貨」体制にもはや頼ることはできません。制裁と外貨準備の凍結が他国の政権を交代させるための新たな手段であるならば、世界中のすべての政府は、貿易と外貨準備のために別の国の通貨を使うという選択肢を考えているはずです。しかし、現在の欠陥だらけの国際金融秩序に代わるものは何なのか、それは明らかではありません。歴史を振り返ると、金本位制に還元できない「外部通貨」方式で成功した例はあまりありません。そして、金だけ、あるいは金と完全に交換可能な通貨だけでは、現代の通貨体制の基盤としてはあまりにも制約がありすぎるという多くの理由があります。

 同時に、最近増えている現地通貨での貿易も、現地通貨が 「内部通貨」である以上、残念ながらその可能性は限られています。多くの国が、輸出の対価として他国の地域通貨(あるいは自国の通貨)を受け入れたくないという理由は明白です。その点では、マイケル・ハドソンに全面的に同意します。「内部通貨」はその国の中央銀行の負債であるため、その国の信用度が低ければ低いほど、投資可能な資本が必要となり、他国がその負債を保有することに抵抗が出てきます。IMFが要求する典型的な「構造改革」のセットが、例えば、借り手である政府の信用力の向上を目的としている理由のひとつはそこにあります。「外部通貨」 は、IMF と現在の「内部通貨」 金融体制の人質になっていると感じている国や政府によってこそ、ひどく必要とされているのです。


「ニューコイン」の導入

 多くの専門家が「新通貨」の研究をしているようです。例えば、セルゲイ・グラジエフ。

 S. Tzu: そうですね、最近の出版物でそのような示唆がありました。私はこれらの議論には関与していませんが、確かにこの代替体制がどのように機能するかを私も考えてきました。ポツァール氏の「内部通貨」と「外部通貨」という概念は、この議論において非常に重要な部分です。しかし、これらの用語の二元性は誤解を招きます。新しい貨幣単位(便宜上「ニューコイン」と呼ぶことにします)が解決すべき問題に対して、どちらの選択肢も完全に適切とは言えないからです。

 説明させてください。現在の米ドル「内部通貨」体制の武器化と同時に制裁の激化により、世界は事実上「グローバル・サウス」と「グローバル・ノース」(「東」と「西」よりも少し正確な用語です)に分裂しているのです。ここで重要なのは、ポツァール氏がすぐに気づいたことですが、サプライチェーン(供給網)や商品もある程度武器化されつつあることです。友好国への外部委託の動きは今後も続きます。つまり、ニューコインの最優先事項は、北の通貨に頼らず、南半球内の貿易を促進することなのです。

 もしそれだけが目的であれば、人民元や元を貿易に使う、ユーロやECU(ユーロの前身貨幣)、あるいは中央アフリカのCFAフランのような新しい共有通貨を作る、IMFのSDRのような参加地域通貨のバスケット*に基づく新しい通貨を作る、金にペッグ**する新しい通貨を作る、あるいは既存の地域通貨に金をペッグするなど、比較的単純な解決策が選択できたはずです。しかし、残念ながら、これらの方策がそれぞれ新たな問題を引き起こしている例は、歴史上いくらでもあります。
* 固定相場制の一つで、複数の貿易相手国の為替相場を一定水準に固定する制度
**金などを基準とした固定相場制のこと


 もちろん、新しい通貨単位には、これら二つの可能性では対応しきれない別の目的が並行して存在します。例えば、すべての参加国は、新しい通貨が自国の主権を希薄にするのではなく、強化することを望んでいるはずです。次に、ユーロや以前の金本位制の課題は、「固定」為替レート、特に最初の「固定」が通貨圏の一部の国にとって最適でなかった場合の、より広い問題を示すことにありました。特に、最初の「固定」が通貨圏の一部の国にとって最適でなかった場合、問題は時間の経過とともに蓄積され、しばしば激しい切り下げによってレートが「再固定」されるまで続きます。参加国が通貨政策において主権を維持するためには、グローバル・サウス内部の相対的競争力を長期的に調整する柔軟性が必要です。また、商品のような変動しやすいものの価格決定単位になるのであれば、新しい通貨は「安定的」でなければならないでしょう。

 最も重要なことは、新しい通貨は、単なる決済単位ではなく、将来的には資本と準備のための「外部通貨」貯蔵庫となる力をもたなければなりません。実際、私が新しい通貨単位が出現すると確信しているのは、妥協した「内部通貨」金融体制の外に、準備や投資のための実行可能な代替手段がない現状があるためです。

 それで、こういったすべての問題を考慮して、どんな解決策を提案されますか?

 S. Tzu:最初に明々白々なことを申し上げます。この問題を技術的に解決することは、ニューコイン圏への参加を希望する国々の間で政治的な合意形成に至るよりずっと簡単です。しかし、現在の必要性は急を要しているので、必要な政治的妥協点は、すぐに見つかると私は考えています。

 ですので、まずは、ニューコインの技術的な設計図の一つを紹介させてください。まず、ニューコインは部分的に(少なくとも価値の40%を)金に裏打ちされるべきであると申し上げましょう。その理由は後でお分かりいただけるかと思います。ニューコインの残りの60%は、参加国の通貨バスケットで構成されることになります。金がこの仕組みにおける「外部通貨」としての軸となり、通貨バスケットの要素が参加国の主権と通貨の柔軟性を維持することを可能にするということです。そしてニューコインのために、中央銀行を設立する必要があるのは明らかです。というのもこの中央銀行から新しい貨幣が発行されることになるからです。この中央銀行は、通貨スワップ*の取引先となるとともに、この体制の決済機関の役目を果たし、規制をかけることもできます。どの国も、いくつかの条件を満たせば、自由にニューコインに参加することができます。
* 異なる通貨間の金利を交換する取引のこと

 まず、ニューコインに参加しようとする国は、国内の保管場所に抵当権等が設定されていない金があることを証明し、対応する額のニューコインを受け取るのと引き換えに一定額の金を有していることを誓約する必要があります(この際に前述の40%の比率が適応されます)。この最初の取引は、ニューコインを裏打ちする「金プール」へ金を売却することにより、経済的等価性が保たれることになります。つまり、そのプールに裏打ちされたニューコインの比例額との交換になるということです。この取引の法的形式は実際にはあまり重要ではなく、発行されるニューコインが常に少なくとも40%の金で裏打ちされていることを保証するために必要なだけです。全部の参加国が十分な所有量が常に存在すると確認できるのであれば、各国の金所有量を公にする必要すらないのです。年に一度共同監査が行われ、監視体制が整備されれば十分でしょう。

 第二に、ニューコインに参加しようとする国は、自国通貨による金価格の算定方法を確立する必要があります。おそらく、参加する貴金属取引所の1つが、それぞれの自国通貨で金の現物取引を開始することになるでしょう。これにより、各国の自国通貨の公正な相場が確立されることになります。「外部通貨」の仕組みが使えるので、長期的な調整が可能になるからです。ニューコイン参加前の各国の通貨における金価格は、新たに発行されるニューコインのバスケットにおいて高くなります。各国は主権を維持し、自国通貨をどれだけ放出するかは自由ですが、その放出量は、最終的にはニューコインの価値に占める自国通貨の割合で調整されることになります。同時に、ある国が中央銀行からニューコインを追加で入手できるのは、追加の金塊の誓約との引き替えに限られます。その結果、ニューコインの各参加国の金換算の価値は透明で公正なものとなり、ニューコインの価値も透明化されることになります。

 最後に、中央銀行によるニューコインの放出や売却は、ニューコイン圏の外部にいる人が金と交換する場合にのみ許可されます。つまり、外部の人間が大量のニューコインを入手する方法は、現物の金と引き換えに受け取るか、提供した商品やサービスの対価として受け取るかの2つだけです。同時に、中央銀行は金と引き換えにニューコインを購入する義務を負わず、「*取り付け騒ぎ」のリスクも取り除かれることになります。
* 銀行が信頼を失い預金者が銀行から預金を引き出そうと殺到することにより生じる混乱

 間違っていたら訂正してください。この提案では、ニューコイン圏内のすべての取引と、すべての外部取引の基準を金相場に固定するようです。この場合、ニューコインの安定性はどうなのでしょうか? 結局のところ、金は過去において(価格が)不安定でしたので。

 S. Tzu: 例えば、金のドル価格が大幅に下落した場合、どのような影響があるのか、ということだと思います。この場合、ニューコインとドルの間に直接的な相互関係はなく、グローバル・サウスの中央銀行がニューコインと引き換えに金を買うだけで、売るわけではないので、裁定取引*は極めて困難であることがすぐにわかるでしょう。その結果、ニューコイン(または金)で表される通貨バスケットの変動率は極めて低くなります。そして、これこそが、この新しい通貨単位の「外部通貨」の軸が貿易と投資に与える意図したプラスの影響なのです。明らかに、いくつかの主要な輸出商品は、グローバル・サウスによって金とニューコインのみで価格が決定され、ニューコインに対する「銀行の取り付け」や投機的な攻撃はさらに起こりにくくなります。
* 市場間、現物・先物の価格差で利益を得る取引(英辞郎)


 時間の経過とともに、グローバル・ノースで金が過小評価されれば、輸出やニューコインと引き換えに、金は徐々に、あるいは急速に、グローバル・サウスに引き寄せられるでしょう。これは「外部貨幣」体制にとって悪い結果ではなく、準備通貨としてのニューコインの幅広い受容を加速させるでしょう。重要なのは、ニューコイン圏外では現物の金準備が有限であるため、不均衡は必然的に是正されるであろう、ということです。というのもグローバル・サウスが主要商品の純輸出国であるという状況はこの先も変わらないでしょうから。

 今おっしゃったことには、貴重な情報が詰まっています。近い将来、全体を再検討して、あなたの考えに対する読者からの反応を議論すべきかもしれませんね。さて、マリナロシャ駅に到着したところで、そろそろ降りましょう!

 S. Tzu: これからもよろしくお願いします。またの機会を楽しみにしています!
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ジョージアの「外国の工作員排除」法案廃案事件から、世界が冷戦時代に回帰している様が見える

<記事原文 寺島先生推薦>

Fyodor Lukyanov: Why is everyone looking for ‘foreign agents?'
The latest fashion is a sign that the pendulum is swinging back to the Cold War-era of separate blocs

フョードル・ルキャノフ:なぜ皆が「外国の工作員」を探しているのか?
最新の潮流が示しているのは、世界各国が、いくつかの集団に分かれていた冷戦時代への揺れ戻りつつあることだ。

筆者:フョードル・ルキャノフ(Fyodor Lukyanov)
「世界情勢におけるロシア」誌の編集長。外交及び防衛政策委員会幹部会議長。ヴァルダイ国際討論クラブの研究部長。

出典:RT

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日



ジョージア政府及び外国の工作員に関するロシアの法律の採択に反対する抗議活動でプラカードを手にした抗議者たち。ブリュッセルの欧州議会近辺にて。2023年3月8日© Valeria Mongelli / AFP


 ジョージアが今月(3月)上旬に新聞の見出しを飾ったのは、ジョージア政府が「外国の工作員」に関する法案を通過させようとしたことについてだった。この法案(実際には、法案は2つ存在していた)は、最終的には却下され、この件に関する政府の取り組みは当座のところ取りやめられることになった。この事象が普通でないのは、ジョージア政府が親露でも反西側でも全くないのに、突然に世界の報道機関からこれほどまで激しく蔑まれたことだ。

 もちろん、今の世の中は、何でも白黒を付けたがる世の中だ。とはいえ、この事例は、より広い文脈から見た方がより興味深い。

 「外国の工作員」という考え方は、第二次世界大戦前夜の米国で、敵国からのプロパガンダ(自分たちにとって都合のよい情報を広く流す行為)に対抗するために導入されたものだ。この古い考え方が、21世紀のいま復活している。最近まで、この「外国の工作員」という考え方は、ロシアと西側の論争で使われてきた。西側は、ロシア政府を非難し、この考え方を、公共の場から異論を唱える人々を排除するために利用しているとしていた。ロシア政府の主張は、市民には、外国からの資金が国内でどう使われているのかを知る権利があるというものだったが、西側からは、そのような主張は自由を制限することを正当化する口実に過ぎないと片付けられている。西側の主張では、「文明社会」は「政府から独立した組織から」資金提供を受ける権利があるというものだ。

 この点において、今あちこちでますます頻繁に見受けられるようになった根本的な矛盾が存在する。その矛盾とは、NGOが国境を越えて資金提供を行うということが、良いことだとされるだけではなく、当たり前で必要なことであるという考え方だ。そしてこの考え方が、リベラル(自由)なグローバリゼーション(世界の一体化)の時代の産物であり特徴になっているのだ。 論理的に考えれば、この視点は、リベラルなグローバリゼーションという概念からすれば、自然とそこに帰結するものなのだ。その目的が、貿易面や経済面、さらには理想だが政治面における障壁を取り除き、世界単一の規制当局を創設することにあるとすれば、非政府組織が各国政府と結びつくことは全く許されないこととなるだろうし、世界規模の諸組織と可能な限り繋がらなければならなくなるだろう。



関連記事:マイダンとの共鳴:ジョージアには西側が資金提供している巨大なNGO勢力と暴力的な反政府運動がある。繋がりはあるのだろうか?


 各国のNGOが世界規模の組織と繋がるべきだという考え方は、市民社会に関する古典的な定義とは矛盾する。その本質とは、まさにボトムアップ(下意上達)だからだ。つまり、各国の国内から動きが起こるべきだという考え方だ。しかし西側の考えによれば、トップダウン(上意下達)のやり方が是とされている。もちろん、そうするのが都合がいいときに限られているが。

 5年前、米国は対外政策の中核に、大国間の敵対関係の復活を明記した。その政策は、それまでの冷戦終結後の時期に取られていた政策と一線を画すものであった。冷戦終結後には、この流れが今の西側の対外政策の本質になったのであるとすれば、全ての手段はその方向で講じられていて、以前唱えられていた、「金に国籍はない」や「情報は障壁なく伝えられるべきだ」といった方針は、新たな政策においては、もはや想定外となったのだ。

 この20年間、社会・政治面においても、情報活動においても、各国家の間にはかなりの程度まで開かれた関係が確かに築かれてきた。その理由のひとつは、冷戦後に各国の大使館職員の数がどんどんと増やされたことにある。市民社会とのやり取りも含めて大使館の仕事範囲が拡大されていたからだ。しかし2018年を境に、外交官の数が大幅に減らされたのだ。そのことは、諸国間の関係が崩れたことと関係があるのだが、客観的根拠もある。それは大使館の仕事が昔に戻りつつあることだ。つまり、仕事範囲が狭まったために、そんなに多くの職員が必要なくなったのだ。

 同じような現象が報道活動においても当てはまる。冷戦終結後は、報道活動は比較的自由に行うことが許されていた。しかし、この分野における風潮が変わり、情報活動業界において西側が有する情報源が世界を牛耳っている現状に疑問を唱える声が、西側以外のところからあがってきたのだ。

 西欧や米国では、ロシアのニュース報道機関(中国の報道機関に対しても一定程度)に対して制限措置をとっている理由の説明として、ロシアと中国の報道機関は、国家が資金を出しているという事実をあげている事実をあげている。いっぽう西側の報道機関は、国所有の報道機関もあるが、多くが民間企業であるという説明だ。



関連記事:西側は「地獄からの制裁」によりロシア経済は崩壊すると考えていた。その目論見が外れた理由とは?


 西側によるこの言い分(すべてに当てはまるわけでは全くないが)が正しいとしても、近代の西側諸国の社会・政治構造においても、国家と非国家組織が密接に絡み合っていることは事実だ。したがって、今の西側の構造においては、公的には政府から独立しているとされている組織が国家の意を受けた活動に従事することもありえるのだ。逆もありえるが、そうなることは極めて稀だ。

 そうかもしれないが、これまでの経済や政治におけるグローバリゼーションの形から逸脱すれば、社会に近づこうとする古いやり方はもはや維持できないことになる。 そしてこのような古い形は、もはや、ロシアと西側のあいだの問題の原因になっていない。というのも、当初ロシアは可能な限り自国を外に向け、西側社会と統合しようという期待を持っていたが、その後そのような目的を考え直し、そのような方向性から手を引いたという歴史があるからだ。そのような外に開こうという方向性は、1990年代から2000年代にかけて急速にロシアに根を下ろしてはいたのだが。

 中国を例に取れば、経済面に関しては世界の国々との結合を深めてはいるが、社会・政治面を、外国勢力に差し出すことは決してなかった。しかし「誰が誰に、どこから資金を出しているのか」という縛りが急速に強められていることが、世界のどの国においても共通の懸念になっている。そしてそれは、その国の政体がどうであるかは関係ない。

 異論を唱える人が全て外国の工作員であると決めつけてしまう今の新たな状況は危険だろうか? 間違いなくその答えは、「そう」だ。どの国の政府も同じ本能に駆り立てられている。残念なことに、この新たな現状は、「開かれている」というこれまでの時代を受けた避けられない到着点なのだ。いまや振り子はゆり戻され、冷戦期のような真逆の方向に逆戻りしている。
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