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COVID-19の研究所漏洩説は、なぜ再び見出しを飾るようになったのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Why is the Covid-19 lab leak theory back in the headlines?
The US is reviving the pandemic blame game as a countermeasure to China’s public opinion offensive

米国が世界的流行の罪のなすりつけ合戦を復活させたのは、中国の世論が攻撃的になったことへの対策のためだった。

筆者:ティムル・フォメンコ(政治分析家)

出典:RT

2023年3月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月23日


のぞき窓から見える医療従事者の姿。防護服を身につけ、外国人が宿泊しているホテルの廊下を消毒中。医療隔離措置期間中の中国上海。2021年8月12日。© AP Photo/Andy Wong


 世界の大多数の人々にとっては、Covidは終結している。私たちは次の段階に進むことに成功した。もうCovidのせいで心配したり、生活を犠牲にしたり、最も厳しい制限措置に苦しまなくてもよくなったのだ。もちろん未だに少数の地域ではそのような生活が続けられているが、世界のほとんどの人々にとっては完全に過去の出来事になった。

 しかし、世界的流行が終わった後でも、去らずにしつこく残っている懸案がある。それは政治的な罪のなすりつけ合戦だ。ここ数日、米国政府は再び「研究所漏洩説」という陰謀論を広め、Covid-19ウイルスは武漢疫学研究所からの漏洩が起源であると主張し始めた。
 
 これらの主張が再び出現しているのは偶然であるように見えるが、この工作は行政府のあちこちで画策されているものだ。まず、米国エネルギー省が、この件に関する報告書を発表し、その後米国の中国大使であるニコラス・バーンズが中国当局に対して、Covidの起源に対して「もっとも真摯な態度」を取るよう求め、それに続いてクリストファー・レイFBI長官も声明を出した。

 問題なのは、なぜこんなことをしているのか、だ。そしてなぜ今なのか、だ。その答えは、以前と同じことなのだが、米国がこの陰謀論を武器として、中国の世論の勢いを削ごうとしていることだ。その具体的な目的は、中国が最近強調しているいくつかの問題点から、人々の目をそらそうというものだ。その中の一つが、先月(2023年2月)の貨物列車の脱線事故により米国のオハイオ州を襲った有毒物質流出事故とその事故に対するバイデン政権の不手際な対応についてだ。もうひとつは、中国によるウクライナ和平計画だ。




関連記事:ホワイトハウスはCovidの「研究所漏洩説」から距離を取った。


 この3年間、米国はCovid-19の世界的流行を利用して、中国を攻撃する世論を多くの地域で醸成するための武器としていた。その目的は、あからさまに世界的流行とその後の混乱の責任を中国政府に押しつけることであり、さらに中国の流行対策を否定的なものであると決めつける目的もあった。具体的には以下のような言説だ。中国が隠蔽を行ったとしてその罪を咎め、中国はこのウイルスの世界規模での流行の責任があると主張し、中国のロックダウン措置を残忍で非人道的措置であると決めつけ、研究所漏洩説を広めたのだ。この研究所漏洩説については、信頼の置ける生物医療専門家たちからは全く真剣に取り上げられないような説である。

 2023年までには、Covid-19の世界的流行による混乱や対策はついに終わりを迎えたようで、中国は「ゼロ・コロナ」措置を取りやめ、通常の日常生活への回帰に舵を切った。しかし米国の言い分ではそうではないようで、この研究所漏洩説を再度武器として使い始めた。そしてこの漏洩説は、大手メディアがすぐに広め、裏支えした。皮肉にも、この同じ報道機関が、オハイオ州での環境に対する大惨事についてはほとんど報じていないし、ノルド・ストリームが米国の本格的な関与のもとで破壊されたという信頼のおける報告についても同様だ。

 言うまでもないが、この2件の事象が起こったことと併せて、研究室漏洩説が再度出現したということは、ただの偶然ではない。先日の「スパイ気球」事件により、憶測や激しい反中感情が広められたことを受けて、中国の国営報道機関や専門家たちは、米国への激しい反撃を開始した。具体的にはオハイオ州の大惨事を歯に衣着せず非難し、その惨事を利用して自国世論の攻撃対象としたのだ。そのことに加えて、中国当局は、独自の和平計画を提案することで、ウクライナの戦争の方向性に影響を与えようともしている。そしてこの方向性は、米国当局がウクライナで成し遂げようとしている目的を支持しないものであり、ウクライナに妥協を求める内容であるため、その後米国当局からは、却下されている。



関連記事:FBIが主張したCovid起源説に対する中国当局の反応


 中国のこの対応に対して、米国はどう出るのか? 米国は研究室漏洩説を再燃させ、中国側の主張から目を逸らさせる作戦に出たのだ。市民に対して証拠は何も示さないまま 米国当局者たちからの人騒がせな表明は報道機関により間違いなく詳しく報じられ、その結果、国民の中国に対する憤怒の念が掻き立てられている。その後米国は、反中「ネタ」を次のものにどんどん更新していくのだ。こんな世論操作工作が止むことなく続けられるからこそ、米国当局と中国当局は、両国関係を通常化したり安定化したりできなくなっているのだ。そのせいで悪循環が生じ、両国関係が危険な状態になってしまうのだ。

 結論だが、この研究室漏洩説の再来が画策されたのは、米国が世界中で流布される言説や世論を操作している手口についての決定的な証拠となっている。しかし、この画策の筋書きにおいて、米国が研究室漏洩説を利用している目的には、何か具体的な政策上の目論見がある訳ではない。例えば中国に制裁を課せるような合意形成を狙っている訳ではない。そうではなくて、米国がこのような画策を弄している目的は、オハイオ州での毒物流出事件に対する中国の集中砲火に対する仕返しとして、自国民の意識を逸らすことなのだ。この手法が上手くいくかどうかについては、議論の余地があろう。というのも、世界の人々はCovidに関する罪のなすりつけ合戦にはウンザリしているからだ。しっかりとした証拠が何も示されないままでは、この研究室漏洩説が以前ほど効果的な言い掛かりには決してならないだろうからだ。
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Covidワクチン接種後に血栓と脚の切断に苦しんでいる若者たちは騙されている。そして報道機関は彼らを使って私たちを騙している。

<記事原文 寺島先生推薦>

Young People Who Suffered Blood Clots and Amputations After COVID-19 Vaccination Are Being Lied to, and Media Uses Them to Lie to Us


筆者:ウィリアム・マキス博士(Dr. William Makis)

出典:Global Research

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月23日




 数ヶ月も間を置かずに、大手報道機関が胸が痛くなる悲劇を大々的に報じている記事がある。それは、フロリダ出身の20歳のモデルのクレア・ブリッジズさんの話だ。彼女は両脚を失ったのだ。そしてその理由は「Covid-19」のせいであるということになっている。

 2023年3月5日付のCNN記事にはこうある。「クレアさんは3度心停止を経験し、両脚を切断して、心不全になった。それでもクレアさんは医師たちに対して、自分は’地球で一番幸運である’と語っている。」(こちらをクリック)

 「2022年1月、当時ブリッジズさんは、アパート住まいの20歳のモデルであり、フロリダ州セント・ピーターズバーグ市でバーテンダーのアルバイトをしていた。ブリッジズさんは菜食主義者で、‘すこぶる健康’だったと母親は語っている。」

 「その月にブリッジズさんはCovid-19に感染したとき、誰も彼女が入院するとは思っていなかった。彼女は2度ワクチンを接種していたし、追加接種も済ませていたからだ。

 しかし、ブリッジズさんは生まれつき一般性の遺伝性心不全という併存疾患を持っていた。そのせいか別の不明の理由のせいかは不明だが、ブリッジズさんのCovid-19の症状は重かった。

 「激しい疲労感、冷や汗ーそのような症状が日に日に進行して、どんなものでも飲んだり食べたりしようとするのがどんどん辛くなっていきました」とブリッジズさんは回顧している。「それからある日、私が意識の無いことに気づいた母か私を急いで病院に連れていってくれたのです。その夜、私の心臓は3度止まりました。」
 
 「心筋炎、横紋筋融解症、軽度の肺炎、チアノーゼ(皮膚・粘膜の青紫色変化)、アシドーシス(体内に酸が過剰に存在している状態)と診断されたクレアには機能しなくなった腎臓のための透析が施された! しかしブリッジズさんの身体に生じた損傷のため、下肢に血行不良が生じ、両足の切断処置が行われた。」(こちらをクリック)


CNNによる喧伝行為の向こう側にあるもの

 重要なのは、CNNが流している喧伝やとんでも話の厚い壁を切り裂くことだ。

 今ここにある事実は、完全に健康な20歳の若い女性が、打つ必要のないワクチンを3度接種したために、おそらく体内の免疫系が大きく損傷を受け、心筋炎と血栓やその他の内部器官の障害が引き起こされ、インフルエンザやそれ以外の呼吸器系疾患に罹患した際に、 既にワクチンで弱められていた身体がボロボロにされて、ワクチン後に生じた心筋炎のせいで3度の心停止が起こり、血栓を発症して、その試練の結果、両脚を切断せざるを得なくなったという事実だ。

 言い換えれば、この話は初めから終わりまでCovid-19のワクチンにより生じた障害についての話なのだ。

 ワクチン未接種の20歳の若者のうち、Covid-19に感染したせいで脚を切断した人が何人いるだろうか? Covid-19の予防接種に入院を防ぐ効果があり、3度接種したクレアさんにその効果が出なかったとすれば、何千人もの未接種の20歳の若者が、Covid-19に感染して脚を切断しなければならなくなっているはずだ。そんな若者たちは、Covid-19のワクチンにより「守られていない」からだ。

 そんな事例は一件も起こっていない。もしあったとすれば、報道機関が我々に必死に伝えようとしていたはずだからだ。Covid-19が20歳のクレアさんをこんな目にあわせたわけではない。犯人はCovid-19のワクチンだ。CNNの報道では、クレアさんがどの会社のワクチンを3度接種したのかは明らかにされていない。アストロゼネカ社とジョンソン&ジョンソン社製のワクチンは、血栓を引き起こすとして市場から排除されている。ファイザー社とモデルナ社製のワクチンは、血栓の副反応事例を何千件も出している。そのような事例は、VAERS(全米ワクチン有害事象報告システム)やEudravigilance(EUの薬物副作用データ報告システム)やソーシャル・メディア上のあちこちで目にするものだ。




















Covid-19のワクチンは全て血栓を引き起こす

 Covid-19のワクチン接種が開始されて以来、何千件もの血栓関連の副反応がVAERSやEudravigilanceや英国のイエロー・カード(副反応報告システム)に報告されていた。以下は2021年5月14日の時点でのイスラエルのジョシュ・ゲツコフ教授による報告だ。






製薬業界の代理人たちはこのことを否定している





ロイター通信によるデタラメな「真偽審査」

 クレア・ブリッジズさんの事例が、ロイター通信による「真偽審査」を受けたという事実は、警告に値するものだ。私はロイター通信とは幅広くやり取りをしてきた経験がある。具体的には、ロイター通信の記者の数人と話をした後に、その記者たちに私の書いた記事に対して、いくつかの完全に間違った真偽審査を行った記事を意図的に出されたことがあったのだ。私が書いたその記事は、Covid-19のmRNAワクチンの危険性を明らかにする内容だった。




私見

 クレアさんが乗り越えてきた体験は完全な悪夢だった。十分考えられる可能性は、クレアさんがCovid-19ワクチンの犠牲者であって、Covid-19の犠牲者ではなかったということだ。 クレアさんのような事例は何千件もある。アストロゼネカ社とジョンソン&ジョンソン社製のワクチンは、血栓を引き起こすとされ市場から排除されたが、ファイザー社やモデルナ社製のワクチンも血栓を引き起こしており、その規模はアストロゼネカ社やジョンソン&ジョンソン社製のワクチンが引き起こす血栓とほぼ同程度だ。

 今に至るまで、ファイザー社もモデルナ社もCovid-19mRNAワクチンが血栓を引き起こす原因になるという事実を否定しており、ワクチンによる被害者たちも医師たちにより無視されてきた。

 どの大手報道機関も、血栓の原因となっているのはCovid-19であり、Covid-19ワクチンではないと報じているため、ワクチンの副反応障害を受けた人々はひどい目にあわされ、残りの人々も堂々と欺かれている。CNNがこんな報じ方をしているのだから、このことは全く驚くに値しない。

 大手報道機関がCovid-19のことを報じるとき、報じられている内容は、ほぼ常に真実とは真逆のものである。クレアさんの件についてこんなにも詳細に報じている事実からわかることは、報道機関は私たちの目を醜い真実から必死に逸らそうとしているということだ。

 上記の動画を再度見ていただきたい。ただし今回は、Covid-19ワクチンの被害についての動画であるという前提で見ていただきたい。感じ方が全く違うものになるだろう。というのも、これらの製薬業者が最初から承知している事実があるからだ。それは自社製品がこれらの障害を引き起こす原因になるという事実だ。製薬業者はそんなことはおかまいなしだし、ワクチンを推奨してきた医師や政治家たちも同じだ。
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議論の的になっている複数の実験と、コロナウイルスのパンデミックを引き起こしたとして疑われている武漢の研究室

<記事原文 寺島先生推薦>

The Controversial Experiments and Wuhan Lab Suspected of Starting the Coronavirus Pandemic

筆者:フレッド・グテル、ナビード・ジャマリ トム・オコナー
(FRED GUTERL , NAVEED JAMALI AND TOM O'CONNOR )

出典:ニューズ・ウィーク誌

2020年4月27日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月23日



武漢ウイルス研究所 Covid-19コロナウイルス研究室
コロナパンデミックは、武漢細菌研究所内で、問題となった実験の結果である可能性があることを、米国の諜報機関は現在認めている。2017年2月23日、中国・武漢のP4実験室内にいる中国のウイルス学者、石正麗氏。JOHANNES EISEL/ AFP VIA GETTY IMAGES



 米国が中国を抜いてCovid-19の感染者数が最も多い国になった翌日、米国防情報局が新型コロナウイルスの起源に関する評価を更新し、感染症研究所から誤って放出された可能性を示していることが、ニューズウィーク誌の取材で明らかになった。

 3月27日(2020年)の日付で、2人の米政府関係者が裏付けしたこの報告書によると、米国防情報局(DIA)は、「感染勃発が、おそらく自然に発生したと判断」した1月の評価を修正し、昨年末に病原体が初めて観測された中国中部・武漢市の「実験室の安全ではない運営方法」によって「誤って」新型コロナウイルスが出現した可能性を含めるようにしたことを明らかにした。しかし、「中国:COVID-19感染源は明らかでない(China: Origins of COVID-19 Outbreak Remain Unknown)」と題されたこの機密報告書は、この病気が遺伝子操作されたもの、あるいは生物兵器として意図的に放出されたものではないと断定している。

 「SARS-CoV-2が意図的に放出されたこと、あるいは生物兵器として作られたことを示す信頼できる証拠はない」と報告書は述べている。「研究者や中国政府が、このような危険なウイルスを、特に中国国内で、既知の有効なワクチンも持たずに、意図的に放出することは非常に考えにくい」。この記事のためにニューズウィーク誌が取材したすべての科学者も、ウイルスが意図的に放出されたという考えをきっぱりと否定している。

 Covid-19は、世界中で300万人近くが感染し、当初は中国を襲った後、西側が最も大きな被害を受け、米国が最も深い被害を受けた国となっており、4月27日の時点で55,000人以上が亡くなっている。その起源については、科学的な議論だけでなく、国際社会での政治的な論争が続いている。

 DIA(米国防情報局)のこの文書は、学術文献を引用しながら、この病気が本当に最初にどのように出現したのかについて、「決定的な答えは決してわからないかもしれない」と述べている。DIA(米国防情報局)の広報担当者はニューズウィーク誌に、「DIA内部では一つの説に全面的に合意しているわけではない」 と語った。


不確かなウイルスの起源

 新型ウイルスの起源をたどるのは簡単ではない。武漢研究所の研究者たちは、2002年から2003年にかけて発生したSARSウイルスの痕跡を雲南省の人里離れたコウモリの洞窟まで突き止めるのに10年以上の歳月を要した。DIAの文書によれば、2月初旬、中国軍医科学院が「Covid-19の発生が自然発生か実験室の事故によるものかを科学的に判断することは不可能であると結論付けた」としていることは驚くには当たらない。

 中国政府が行った初期の評価では、Covid-19の原因となる新しいコロナウイルスであるSARS-CoV-2は、同市の華南海鮮市場からの自然発生の可能性が高いと指摘された。発生当初、地元当局はウイルスのヒトからヒトへの感染の可能性を軽視し、拡大する感染症について発言する医師を黙殺した。そのため、死亡者数やCovid-19の症例数が過小評価された可能性がある。また、米国が意図的に武漢にウイルスを放ったという疑わしい説も出回り始めた。

 中国外務省は4月23日、世界保健機関が武漢の研究所で流行が始まったという「証拠はない」としたことを記者団に語った。武漢ウイルス研究所の副所長で中国科学院武漢支部長の袁志明(ヤン・ツィミン)氏は、(ウイルスを)意図的に誤用し、作成したという推測を「悪意ある」もので、「あり得ない」と非難している。

 「米国のガルベストン国立研究所の所長は、私たちの研究所は欧米の各研究所と同様にきちんと管理されていると明言しています。武漢の研究所をウイルスの流出と関連付けるのは理解できますが、ウイルスが(武漢の)研究所から流出したと考えるのは、意図的に国民を惑わす悪意ある行動です」 と袁副所長は述べた。

 さらに、「彼らは、自分たちの非難を裏付ける証拠も論理も持っていません。彼らは完全に自分たちの憶測に基づいてそんな主張をしています」とも語った。

 しかし、DIA(米国防情報局)の報告書は、米国政府と中国の研究者が、「最初に確認された41人の症例の約33%は、市場に直接さらされていない」ことを発見したことを引用している。このことは、過去数年間の研究所の仕事について知られていることと合わせて、パンデミックは海鮮市場ではなく、研究所の手違いによって引き起こされたのではないかという合理的な疑いを抱かせるものだった。

 科学的、状況証拠に基づくと、以下のような推測になる。

 2002年、中国の広東省でSARSが発生し、警鐘が鳴らされることになった。その後数十年にわたり、米国、中国、その他の国々は、次の壊滅的なパンデミックを防ぐことを目的に、野生動物に生息する奇妙な新しい病原体を探し出して分類し、それが人間にとってどの程度の脅威となるかを解明する取り組みに資金を注ぎ込んだ。

 SARS-CoV-2コロナウイルスは、2019年の秋に、国際的な大都市である武漢の中心で出現した。中国当局は当初、このウイルス「SARS-CoV-2」は動物との直接接触によってのみ感染すると主張していた。しかし、武漢の初期患者の多くは野生動物市場とは無関係であり、ウイルスはすでに人から人へと広がっていたことになる。この事実が明らかになると、中国からの情報の信憑性が疑われたが、このウイルスは恐ろしいパンデミックに向かおうとしていた。

 当初、ウイルスの起源については、SARSと同様にコウモリで発生し、センザンコウなどの哺乳類に感染し、野生動物市場を通じて人々に流入するという説が有力であった。

 3月になっても、野生ウイルス説はSARS-CoV-2の起源を説明する最も有力な説であったが、周辺から少しボロが出てきた。武漢市街の動物市場にほど近い武漢ウイルス研究所には、野生のコウモリから採取したコロナウイルスの収集が世界最大規模でなされており、その中にはSARS-CoV-2と類似したウイルスが少なくとも1種類は含まれていた。さらに、武漢ウイルス研究所の科学者たちは、過去5年間、いわゆる「機能獲得」(GOF)研究に取り組んできた。この研究は、将来のパンデミックを予測する目的で、ウイルスの特定の性質を強化することを目的としている。機能獲得技術は、ウイルスを世界的な大流行を引き起こすことができるヒトの病原体に変えるために使用されてきた。

 これは、軍の地下壕にある極悪非道な秘密プログラムではない。武漢の研究所は、主にウイルス発見のために、プレディクト(PREDICT)という10年間で2億ドルかけた国際的事業の一部から資金を得ている。そのPREDICTは、米国国際開発庁(USAID)やその他の国々から資金提供を受けている。同様の研究は、米国国立衛生研究所(NIH)から一部資金援助を受けて、世界中の数十の研究所で実施されている。この研究の中には、致命的なウイルスを採取し、集団の中で素早く拡散する能力を強化するものもある。この研究は、このプログラムがパンデミックを引き起こす可能性があると何百人もの科学者が反対して、長年警告してきたが、その反対を押し切って行われていた。

 SARSの発生から数年、世界中の研究所で病原体の誤放出による事故が多発している。米国では、2014年に米国政府の研究所から炭疽菌が放出され、84人が被爆するなど、数百件の漏洩事故が発生した。2004年には北京の研究所からSARSウイルスが流出し、4人の感染者と1人の死者を出した。偶発的な放出は複雑ではなく、悪意も必要ない。研究所の職員が体調を崩して帰宅し、知らず知らずのうちに他の人にウイルスをばらまいてしまうだけなのだ。

 北京の米国大使館の職員が2018年1月19日の公電で警告したように、武漢研究所には偶発的な流出につながる可能性が考えられる粗雑な慣行の記録がある。ワシントンポストによると、「武漢ウイルス研究所(WIV)の科学者との交流の中で、彼らは、新しい研究室には、厳しく封鎖されているこの研究室を安全に運営するための適切な訓練を受けた技術者と調査員の深刻な不足があると指摘した」と外電は述べている。

 確かに、SARS-Cov-2が武漢の研究所から流出したという証拠はないし、このウイルスが巧妙に操作された産物であるという証拠もない。ほとんどの科学者は、入手可能な証拠に基づいて、自然起源が最も可能性の高い説明であると信じている。しかし、流出や操作の可能性を否定したわけでもない。「現段階では、COVID-19のパンデミックを引き起こしたウイルスの出所を正確に特定することはできない」と、世界保健機関(WHO)はニューズウィーク誌に声明を出している。「利用可能なすべての証拠は、このウイルスが天然の動物由来であり、操作された、あるいは作成されたウイルスではないことを示唆している」と。

 状況証拠からわかることは、研究所の研究計画と実践を調査の中心にすることには十分な根拠があるという事実だ。そして、自然の病原体の脅威から国民を守ろうとする科学者の努力が行き過ぎたものであったのかどうか、あらためて考えてみる価値があるのではないだろうか。



<関連記事>中国がCOVID-19の起源に関する研究を検閲している。削除されたウェブページが示唆すること。


動物経路

 10年前、最も話題になったウイルス性病原体は、コロナウイルスではなく、インフルエンザであった。特に、鳥類から発生し、感染者の多くを死亡させたH5N1型インフルエンザである。一時期、このウイルスが大きな話題となった。しかし、鳥インフルエンザに感染した人のほとんどが、鳥を扱うことから直接ウイルスに感染したことが明らかになった。伝染病を引き起こすには、ウイルスが効率よく殺せるだけでは不十分である。ウイルスが伝染病を引き起こすには、殺傷能力が高いだけでは不十分で、人から人へ簡単に感染することが必要である。

 この頃、オランダのエラスムス大学の科学者ロン・フーシエは、鳥インフルエンザ・ウイルスを恐ろしい伝染性ウイルスに変異するためにはどうしたらよいかと考えていた。この疑問は、ヒトへのパンデミックを予測するウイルス学者の使命にとって重要だった。もし、H5N1がヒトへの感染性を獲得するまであと1、2歩というところであれば、世界は危機に瀕していた。H5N1の感染型は、数千万人が死亡した1918年のインフルエンザのような破壊的なパンデミックに急速に発展しかねない。

 この疑問に答えるには、研究室でウイルスを細胞培養して繁殖させ、その変異を確認する必要がある。しかし、このような作業は実施するのが難しく、結論を出すのも難しい。では、最終的に感染するかどうかは、どうすればわかるのだろう?

 そこでフーシエが考え出したのが、「動物経路(animal passage)」と呼ばれる手法である。フェレット(白イタチ)を選んだのは、白イタチが人間のいい代用になるとして広く知られていたからで、白イタチの間を飛び移れるウイルスなら、人間にも飛び移れる可能性が高い。白イタチに鳥インフルエンザ・ウイルスを感染させ、発病するまで待ち、白イタチの体内で増殖したウイルスのサンプルを綿棒で採取する。ウイルスは体内で増殖するときに少しずつ変異するので、白イタチの体内から出てきたウイルスは、体内に入ってきたウイルスとは少し違っていた。1匹目の白イタチのウイルスを2匹目に感染させ、2匹目の白イタチの変異したウイルスを3匹目に感染させる......という具合に、フーシエは続けた。

 10匹の白イタチにウイルスを感染させたところ、隣のケージにいた白イタチが発病した。これは、このウイルスが白イタチに感染すること、つまり人間にも感染することを示すものであった。フーシエは、自分の研究室でパンデミック・ウイルスを作り出すことに成功したのである。




<関連記事>医師たちは、革新的な新技術でどのようにコロナウイルス患者を救っているのか



 2011年、フーシエが動物通過実験を雑誌『サイエンス』に発表したとき、オバマ政権のバイオセキュリティ担当者は、危険な病原体がフーシエの研究室から誤って漏れることを懸念し、研究の一時停止を推し進めた。フーシエは、エボラ出血熱や類似のウイルスを対象とするBSL-4(バイオ・セキュリティ・レベル:生物研究の安全性の高さを示す指標)ではなく、重症度が中程度のブドウ球菌などの病原体を対象とするBSL-2の研究室で研究を行っていた。BSL-4の実験室は、通常、空気循環システムやエアロック(気密式出入口)などを備えた独立した建物であり、入念な安全対策が施されている。これに対し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、この研究の一時停止を宣言した。

 その後、科学者たちの間で、機能獲得研究のリスクと利点をめぐって激しい論争が繰り広げられた。フーシエの研究は、ハーバード大学の疫学者マーク・リプシッチが2015年の学術誌『Nature』に書いたように、「実験室の事故がパンデミックを引き起こし、数百万人が死亡するという比類ないリスクを伴う」ものだ。

 リプシッチと他の17人の科学者は、機能獲得研究に反対してケンブリッジ審議会を結成した。そしてこの審議会が、米国で天然痘、炭疽菌、鳥インフルエンザに関わる実験室事故が 「増加しており、平均して週に2回以上発生している」 と指摘する声明を発表したのである。

 「感染力の強い、危険なウイルスの新種を実験室で作ることは...実質的にリスクを高めることになる。このような環境での偶発的な感染は、制御が困難か、または制御不可能な大流行を引き起こす可能性がある。歴史的に見ても、新型インフルエンザがヒトに感染すると、2年以内に世界の人口の4分の1以上に感染している」とこの声明は述べていた。最終的に200人以上の科学者がこの立場を支持した。

 機能獲得(GOF)研究の推進派の態度も同様に熱烈であった。「遺伝子や突然変異と病原体の特定の生物学的特性との因果関係を証明するために、機能獲得(GOF)実験が必要だ。機能獲得(GOF)という過程は、感染症研究において絶対に必要なものだ」たなフーシエは『ネイチャー』誌に書いている。

 米国立衛生研究所(NIH)は結局、フーシエなどの推進派の側に立った。パンデミックが起きた時に役立つ抗ウイルス薬を作ることができるのだから、機能獲得研究は危険を伴っても挑戦するに値すると考えたのである。

 米国立衛生研究所(NIH)が一時中断を解除した2017年までには、数十件の例外が認められていた。2009年に開始されたPREDICT事業は、10年間で2億ドルを費やし、世界中にウイルス学者を派遣して新規ウイルスを探し、そのウイルスの機能獲得研究を一部サポートした。この事業は2019年に資金が底をついたが、その後延長された。

 現在のパンデミックが発生する頃には、動物経路実験は一般的になっていた。世界中に30以上あるBSL-4研究室の多くの科学者が、呼吸器系病原体の感染性を高めるために動物経路実験を行っていた。

 今回のパンデミックでは、この実験が役に立ったのだろうか? ジョージタウン大学の新興感染症の専門家であるコリン・カールソン氏は、『ランセット(Lancet)』誌の最近の記事で、PREDICTが資金提供した研究は、SARS-CoV-2ウイルスが発生したときにウイルス学者が迅速に分離・分類するのに役立ったと主張している。しかし、この研究は、「広範な影響力を持たせられるよう、もっとうまく配置することができたはずだ」ともしていた。このプログラムでは何百もの新しいウイルスが発見されたが、これらのウイルスがヒトに対してどれほど危険なのかを科学者たちが判断できるところまでには至っていない。可能なのは、「ヒトへの感染を観察すること」 だけである。

 ラトガース大学の感染症専門家であるリチャード・エブライトは、もっと露骨にこう言い放った。「PREDICT事業では、感染拡大の予防や対策に役立つような結果は全く出ていません。抗ウイルス薬の開発に役立つ情報を提供するものではありません。またワクチンの開発に役立つ情報を提供するものでもありません。」


武漢市街の動物市場にほど近い武漢ウイルス研究所には、野生のコウモリから採取したコロナウイルスの世界最大のコレクションがある。この施設は、人から人への感染リスクが高い危険なウイルスであるクラス4病原体(P4)の取り扱いを許可された、世界でも数少ない研究所のひとつである。ヘクター・レタマル/AFP ゲッティ イメージズによる


中国の役割

 武漢ウイルス研究所は、PREDICTの資金援助を受けた多くの研究所のひとつだ。何百種類ものコロナウイルスを収集し、「コウモリ女」と呼ばれるウイルス学者石正麗は、研究所の職員とともに、2002年にオリジナルのSARSウイルスが発生したと考えられているのと同じコウモリの洞窟を探検した。彼女の研究者たちは、人里離れた洞窟に入り、コウモリの肛門に綿棒を入れ、排泄物を採取した。研究所に戻ると、発見したウイルスを培養し、ゲノム配列を決定し、研究室で細胞や動物にどのように感染するかを調べようとしていた。

 研究所は2015年、コウモリ・コロナウイルスの機能獲得研究プログラムを開始した。これは、選択した菌株を採取し、そのウイルスが人から人へ感染する能力を高めることを目指したものである。機能獲得研究は、査察事業と密接に連携していた。科学者たちが、ヒトの細胞に感染する能力を持つ新しい部類のコウモリ・ウイルスを特定したため、そのウイルスがヒトに感染し、パンデミックの脅威となるためには、自然界でどのような変化が生じなければならないかという疑問が生じた。


<関連記事>コロナウイルスの発生は、私たちがいかに無防備であるかを示す警鐘である。

 2015年、武漢の研究所は、カット・アンド・ペースト(切り貼り)遺伝子工学を用いた機能獲得実験を行った。そこでは、科学者が自然のウイルスを採取し、そのRNAの配列に直接置換を加えて感染力を高める研究が行われていた。SARSウイルスの一部を切り取り、SARSに似たコウモリ・コロナウイルスの断片を挿入した結果、ヒトの細胞に感染できるウイルスが誕生したのである。このような方法で改変された天然ウイルスであれば、遺伝子解析において注意旗を立てることは容易だろう。古いビクトリア調の家に現代的な増築をするようなものだ。

 しかし、動物実験によって作られたウイルスは、発見するのが非常に難しい。これらのウイルスは直接操作されているわけではないからだ。ウイルスが動物から次の動物に移るとき、その進化の過程で野生で起こるのと同じようなことが起こる。したがって、野生のコロナウイルスが10匹の白イタチを通過しても、人工的に操作されたものであることを特定するのは難しいだろう。

 武漢研究所では、コロナウイルスの動物経路実験の記録は公表されていない。この研究所は2018年に最初のBSL-4研究室を手に入れたが、このBSL-4研究室を有することが、この種の作業の必須条件とされている(ただし、一部の作業は強化されたBSL-3の研究室でも進行している)。そして、研究者がBSL-4研究室で動物経路作業を始めていたものの、今回のパンデミックの前に公表するのに間に合わなかった可能性がある。当時、中国はその情報の公表を厳しくしていたからだ。その作業が秘密裏に行われた可能性もある。しかし、科学者の中には、その可能性は低いと考える人もいる。しかし、高価なBSL-4ラボが、動物経路型の研究をしていないとは考えにくいとする科学者もいる。というのも、当時はそのような研究は珍しいものではなかったからだ。


起源をたどる

 SARS-CoV-2がどこから来たのかを解明するために、スクリップス研究所のクリスティアン・アンダーセンらは遺伝子解析を行った。彼らは3月11日に、『ネイチャー』でその研究を公表し、広く引用された。この研究者たちは、ウイルスのある遺伝的特徴に注目し、「操作」の兆候を探ったのである。

 その一つの特徴は、ウイルスが人体のACE2受容体(肺やその他の臓器の細胞の分子的特徴)に効果的に付着するために使用するタンパク質のスパイク(トゲ)である。SARS-Cov-2のスパイクは、もとのSARSウイルスのスパイクと異なっていることから分かることは、「自然淘汰の産物である可能性が高い」、つまり、研究室で操作されたものではなく、自然にできたものであると結論付けている。

 しかし、この論文では、特に動物経路が否定される理由について、明確ではない。「理論的には、SARS-CoV-2が細胞培養に適応する過程で変異を獲得した可能性がある」と著者たちは書いている。そして、センザンコウのような哺乳類を宿主としてウイルスが変異したという説は、「より強力な...説明を提供する」ものだとしている。この説に実験室での動物との接触が含まれるかどうかについては、著者らは述べていない。アンダーセンはニューズウィーク誌のコメント要請に応えなかった。

 ラトガー大学のエブライト教授は、機能獲得研究に長年反対してきたが、アンダーセンの分析は、SARS-CoV-2の起源として動物経路を否定するものではないという。しかし、「その理由は不十分である」と彼は『ニューズウィーク』誌への電子メールで書いている。「彼らは『ウイルスがセンザンコウのような動物の宿主を経由して変異した』という可能性を支持しながら、同時に『動物経路』で変異した可能性を否定している。この2つの可能性は経路を除けば別個のものであるため、一方を支持し、他方を支持しないという論法は通用しない。」


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 カリフォルニア大学デービス校の進化生物学者であるジョナサン・アイゼンは、決定的な証拠ではないものの、このウイルスは研究室ではなく、自然界からもたらされたことを示唆しているという。「何か不自然なもの、つまり、遺伝子操作されたもの、操作されたものがあることを示唆するものはない」と、彼は言う。しかし、「この研究結果には、ウイルスが実験室で動物を経路として作り出された可能性を認める『若干の余地がある』。『経路』を立証するのは難しい。さらに実験室からの流出を調べるのは難しい」と彼は言う。「(武漢の研究者が)野外から何かを採取し、それを使って研究室で実験をしていて、ある人が感染し、そこから広がったとしても、野外で直接広まったのとそれを区別するのは本当に難しいでしょう。」

 武漢は、既知のウイルスの中で最もSARS-CoV-2に似ているとされるRATG13というウイルスを保有しており、この2つは遺伝物質の96パーセントを共有している。ノースカロライナ大学のウイルス学者で、2015年の機能獲得研究で石正麗と共同研究したラルフ・バリックは、「この4パーセントの差は、動物通過研究にとって手ごわい差だ」と言う。「あり得ないような問題にぶつかり続けている」と彼は言う。武漢では、おそらくRATG13よりもSARS-CoV-2に近いウイルスから始める必要があっただろうが、それはただの仮定の話だ。

 バリックは、「この問題を解決する唯一の方法は、透明性と開かれた科学研究であり、実際に調査することだ。中国がそれを許すとは思えない。このような状況で、どの国がどのような行動をとるかはわからない。米国は透明性を保つと思いたい」と言う。

 ジェニー・フィンク(Jenni Fink)によるこの記事への追記。

 2020年4月29日16時20分。誤解のないよう付け加えるが、この微妙な問題について、この記事に引用されているジョナサン・アイゼン(Jonathan Eisen)による記述は、本人からの要請により、「or manipulated (あるいは操作された)」という言葉を含むように変更された。現在は次のようになっている。「不自然なものがあったという兆候は見られない。つまり遺伝子に手が加えられた、あるいは変異されたという形跡のことだ。」

 2020年4月30日午後10時40分。訂正。PREDICT事業に関する記述箇所を変更し、同事業の資金のほとんどがウイルス発見活動に使われたことを明確にする。また、同事業の2回目の5年間の資金提供の延長は、既報の2018年ではなく、2019年に終了する予定であった。
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