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ならず者超大国のテロ戦争。誰が得するのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

The War of Terror of a Rogue Superpower:Cui Bono?"

筆者:ペペ・エスコバー(Pepe Escobar)

出典:Strategic Culture

2023年2月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日

大手山下訳 137 画像


 グローバル・サウスから見れば、ハーシュ報告書が刷り込んだのは、血のように赤い巨大な文字で書かれた、テロ支援国家としての「ならず者大国」である。

 脳がある人なら誰でも、帝国がそれをやったことはわかっていた。さて、シーモア・ハーシュの爆弾報告書は、ノルド・ストリーム 1とノルド・ストリーム2がどのように攻撃されたかを詳述するだけでなく、毒をまき散らすシュトラウス流*の新自由主義保守派の3人組サリバン、ブリンケン、ヌーランドからテレプロンプター読みの大統領の名前を挙げることさえしている。
*レオ・シュトラウス。ドイツ出身で主にアメリカで活躍した哲学者。彼の思想は現代アメリカ政治、特にネオコンと呼ばれている人に影響を与え、ブッシュ政権の運営の拠り所のひとつと見る向きもある。(ウィキペディア)

 ハーシュ報告書の白眉は、最終的な責任を直接ホワイトハウスに向けていることだ。CIAは、その役割から言って、その責任を逃れられるように描かれている。この報告書全体を、生け贄(にえ)のでっち上げと読むこともできる。すぐにでも馬脚を現しそうな、いい加減な身代わりだ。研究施設の車庫にあった例の機密文書、虚空を延々と見つめる視線、理解不能なつぶやきの数々、そしてもちろん、ウクライナとその周辺で何年にもわたって回転木馬のように繰り返されてきたバイデン一家の腐敗についての説明に関しては、ハーシュは全く手をつけていない。

 ハーシュ報告書は、トルコとシリアで発生した大地震の直後に、偶然掲載された。それだけで、それ自体、調査報道としては地震なみだ。断層をまたぎ、無数の野外の亀裂を明らかにし、 瓦礫の中に埋もれ、喘(あえ)ぐような真実の塊を明らかにした。

 しかし、話はそれだけなのだろうか? ハーシュ報告書は、最初から最後まで、(その説得力を)持ちこたえるのだろうか。イエスでもあり、ノーでもある。まず、第一に、なぜ今なのか? これはリークであり、もともとハーシュの重要な情報源である闇政府の内部関係者の一人から得た情報である。この21世紀版「ディープ・スロート*」であるハーシュは、闇政府の毒性に驚愕しているかもしれないが、同時に、自分が何を言ってもたいしたことにはならないこともわかっている。
*ウォーターゲート事件の際、内部告発者となったマーク・ウェイトFBI副長官を指す言葉

 臆病なベルリンは、この計画の肝心な部分をずっと無視してきたため、キーキー声すら出せないだろう。結局、環境問題をことさらに騒ぎ立てる輩が有頂天になった。なぜなら、このテロ攻撃は、時代を中世に戻すかのような彼らの唱える脱工業化計画を、完璧に前進させるものになったからだ。それと並行したおまけとしては、他のすべてのヨーロッパの家臣たちに、主人の声に従わなければ、自分たちも同じような運命が待ち受けている事実を思い知らせたことが挙げられる。

 ハーシュ報告書は、ノルウェーをテロに重要な共犯者として仕立て上げている。驚くにはあたらない。(ノルウェー出身である)NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(オーウェルの「平和は戦争」を地で行く人物)は、たぶん半世紀にわたりCIAのスパイとなっている。オスロにはもちろん、この取引に参加するオスロなりの動機があった。それは、(ロシアからのエネルギーを失い)途方に暮れるヨーロッパの顧客に、自国の予備エネルギーを売り込んで、臨時収入を懐に入れることだ。

 彼の報告書でちょっと気になるのは、ノルウェーには、アメリカ海軍と違って、まだP-8ポセイドンの運用機がない、と書かれている点だ。当時でもはっきりしていた、アメリカのP-8はアメリカからボーンホルム島へ空中給油をしながら往復していたという事実があるからだ。

 ハーシュ(いやむしろ彼の重要な情報提供者と言うべきか)は、MI6*をこの話から完全に消し去っている。ロシアの情報機関であるSVR(ロシア対外情報庁)は、ポーランドと、当時のMI6にしっかり焦点を合わせていた。この主張の正しさを裏付ける事実は、ハーシュの報告書によれば、「バイデン」の背後にいる組織が計画、情報提供、そして後方支援を行っていたのに、最後の行為(この場合、ソノブイでC4爆薬を爆発させること)は家臣であるノルウェーによって行われたかもしれないとしている、という点だ。
*英国の諜報機関

 問題は、ソノブイ*がアメリカのP-8によって落とされた可能性があることだ。そして、ノルド・ストリーム2の 関連箇所うちの1つがなぜ無傷のままだったのかの説明は何もない。
*潜水艦を捜索するために航空機から海面に投下される器材

 ハーシュの仕事のやり方は伝説的である。私は1990年代半ばから米国、NATO諸国から、ユーラシア大陸全域を取材してきた。そういう外国特派員としての私の立場からすると、彼が匿名の情報源をどのように使い、どのように広範な接触リストにアクセスし―そしてそれを保護し―ているかは、簡単に理解できる。この仕事には記者と情報源、双方の信頼関係が必要となる。そういう意味で、彼の実績は、他の追随を許さない。

 しかし、もちろんひとつの可能性は残されている。もし彼が弄ばれているとしたら? これは、真の情報を隠すための思わせぶりな暴露話に過ぎないのだろうか? 結局のところ、彼の報告書の内容は、詳細な事実に基づく情報と尻切れトンボのような中途半端な情報の間で揺れ動き、その特徴は、関係者の動きを証明する膨大な文書と最新情報を持った多くの人々がふんだんに引用されているところにある。そのため、事実よりも大げさに伝えられている部分も存在している。この報告書において、CIAはことをなすことに対して常に躊躇いの姿勢を示している様子が描かれており、そこがこの記事の信憑性について疑念が生じる理由になっている。このような作戦における海底での作業に取りかかる理想の組織は、米国海軍ではなく、CIA特別活動部であることが周知の事実であるということを考えれば、特にそう思える。


ロシアはどうする?

 ほぼ間違いなく、全世界がいま今考えているのは、ロシアがどう出るか、だ。

 現在の状況を示すチェス盤を見渡すと、クレムリンとロシア連邦安全保障会議の視野に入るのは、①メルケル首相が、ミンスク2は単なる策略だったと告白したこと、②ノルド・ストリームに対する帝国の攻撃(彼らはその概要は掴んでいるだろうが、ハーシュの情報源が提供した内部の詳細までは知らないかもしれない)、③イスラエルのベネット前首相が、英米が昨年のイスタンブールで進行中だったウクライナ和平プロセスをどのように破壊したかについての詳細、だ。

 だから、(露)外務省がアメリカとの核交渉の際に、見せかけの善意を提案されても、「正統性がない、その時期ではない、そしておこがましい」とはっきり言うのも無理はないだろう。

 同省は、意図的に、そしてやや不気味な感じで、重要な問題について非常に曖昧にした。重要な問題とは、アメリカの後ろ盾でキエフが仕掛けてきた「原子力施設を対象とした」攻撃のことだ。これらの攻撃は、「軍事技術および情報諜報」の側面を含んでいた可能性がある。

 グローバル・サウスから見れば、ハーシュ報告書が印象づけているのは、血のように赤い巨大な文字で、テロの国家支援者としての「ならず者大国」である。(この間の一連の動きは)バルト海海底における、国際法の、そしてさらには帝国の安っぽい模造品である「規則に基づく国際秩序」の儀式的埋葬だ。

 闇の政府のどの派閥が、ハーシュを利用してその意図を推し進めたかを完全に特定するには、しばらく時間がかかるだろう。もちろん、ハーシュにはそれがわかっている 。しかし、それだからといって、彼が爆弾記事発表に費やした研究(3ヶ月かけた労作)を止めるわけにはいかなかっただろう。米国の主流メディアは、彼の記事を抑え込みし、検閲し、貶(おとし)め、そして無視するためにあらゆることをするだろう。しかし、重要なのは、グローバル・サウス全体で、この報告書はすでに野火のように広がっていることだ。

 一方、ラブロフ外相は、メドベージェフ(ロシア連邦安全保障会議副議長)と同様に、米国がロシアに対して「完全なハイブリッド戦争状態になり」、両核保有国が今や直接対決の道を歩んでいることを糾弾して、冷静さを制御する電源プラグを完全に抜いてしまった。そして、ワシントンがロシアの「戦略的敗北」を目標に掲げ、二国間関係を火の玉にしている以上、もう「平常業務通り」はありえないのである。

 ロシアの「反応」は、ハーシュ報告書以前から、全く別の次元になっていた。広範囲にわたって脱ドル化が進み、EAEU*からBRICSさらにそれ以外の地域に広がっている。さらに貿易相手は完全に方向転換して、ユーラシアやグローバル・サウスなどの地域が対象となっている。ロシアは、さらなる安定のための確固たる条件を確立しつつあり、避けられないその時、つまりNATOに正面から対処する時を予見している。
*ユーラシア経済連合

 軍事的対応として、戦場でロシアが、戦略的にまるで曖昧なアメリカ/NATOの代理軍(ウクライナ)をさらに粉砕していることは、はっきりとした事実だ。もちろん、ノルド・ストリームのテロ攻撃事件の後始末の付け方は常に背後に潜んでいる。(ロシアは)反撃するだろう。しかし、その時間、方法、場所はロシアが選択する。
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ポーランド前外相、ロシアのガス・パイプラインの破壊を米国に感謝

<記事原文 寺島先生推薦>

Ex-Polish FM thanks US for destruction of Russian gas pipeline
Moscow has called the incidents a 'terrorist attack'

モスクワは一連の出来事を「テロリストの攻撃」と呼んだ。

出典:RT

2022年9月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日


© Twitter/screenshot

 米国、ロシア、そしてヨーロッパのほとんどの政府が、ノルド・ストリーム1、2を破損させた月曜日(9月26日)の爆発事故の背後に誰がいるのかについて判断を保留しているのに対し、ポーランドの元外相ラドスワフ・シコルスキはそのようなそんな躊躇いは一切持たなかった。

 シコルスキーは火曜日(9月27日)、バルト海の海域で発生した大規模なガス漏れの写真とともに、「ありがとう、アメリカ」とツイートした。デンマークのボーンホルム島沖で、2つのパイプラインが大きく損傷した。今ではそれを計画的な行為と呼ぶ者が多い。

 シコルスキーはその後、ポーランド語で、ノルド・ストリームが被害を受けたことで、ロシアがヨーロッパへのガス供給を継続したいのであれば、「ブラザーフッド・ガス・パイプラインとヤマル・ガス・パイプラインを支配する国々、つまりウクライナやポーランドと話し合う」必要がでてくる、とツイートし、それを「よくやった」と締めくくった。

 ノルド・ストリーム 1とノルド・ストリーム 2は、スウェーデンとデンマーク当局が後に一連の海底爆発があったと発表した後、月曜日(9月26日)にすべての圧力を失った。ノルド・ストリーム1は、ロシアが技術的な問題であると発表した後、容量を減らして運転され、ノルド・ストリーム2は、ドイツが(運転)認証を拒否したため、加圧は十分だったが運転に至らなかった。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、シコルスキーのツイートが「テロ攻撃であるとの公式声明」に相当するのかどうかの判断に、迷っていた。一方、モスクワの国連副大使ドミトリー・ポリアンスキーは、シコルスキーが 「民間インフラを標的としたこのテロスタイルの背後に誰が立っているのかを明確にした!」と感謝した。



 ポーランドのマテウス・モラヴィエツキ首相は、シコルスキー元外相ほどは踏み込まず、ノルド・ストリーム事件を 「ウクライナ情勢の趨勢を激化させる次のステップに繋がる破壊工作」と表現することを選択した。



関連記事:ロシアのガス・パイプラインが前代未聞の規模の被害を受けた(技師からの報告)


 ただの欧州議会議員ではなく、シコルスキーは元イギリス国籍で、数多くの米国やNATOのシンクタンクでフェロー(特別研究員)を務め、ポーランドの元国防相(2005~2007年)、外相(2007~2014年)でもあった。2014年10月、ロシアのプーチン大統領がウクライナをワルシャワと分割したいと考えているという主張を捏造したことが発覚し、その発言の撤回に追い込まれた。

 シコルスキーは2022年1月にロシアを「連続強姦魔」と呼び、6月にはウクライナのエスプレッソTVで「NATOはキエフに核兵器を与える権利がある」と述べた。彼はアメリカの評論家アン・アップルバウムと結婚しており、彼女もまたロシアを露骨に敵視している。

 シコルスキーがノルド・ストリーム破壊工作について米国に感謝したのに対し、キエフはロシアを非難した。ウラジーミル・ゼレンスキー大統領の顧問ミハイル・ポドリアックは「ロシアが計画したテロ攻撃であり、EUに対する侵略行為」と呼び、最善の対応はウクライナ軍にドイツの戦車を送ることであると主張した。
関連記事

ロシアに対する新しい代理組織を打ち立てようと米国はジョージアでの騒乱に火付け

<記事原文 寺島先生推薦>

US Sparks Turmoil in Georgia to Open New Front Against Russia

筆者:ブライアン・バーレティック(Brian Berletic)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日




 これはただの偶然ではない。ワシントン当局がウクライナで対ロシア代理戦争を仕掛けているときに、ロシア周辺部に位置する問題が多く発生するいつものところで事件が起こっていることについてだ。コーカサス地方に位置するジョージア(グルジア)で、抗議運動が始まったのだ。その抗議の標的は現ジョージア政権であり、抗議の目的は透明性を維持しようとする法案の成立を阻止するためだった。その法案は、米国と欧州諸国からの干渉を明らかにし、そのような干渉に対応するためのものだったのだが、まさに今回の抗議活動はその干渉を表す一例となるものだった。

 BBCが出した記事「ジョージアの抗議運動:抗議者たちが議会に突入するのを警察が阻止」にはこうある:警察は放水砲と催涙ガスを使って、抗議活動の2日目にトビリシにあるジョージア国会議事堂前に集まっていた抗議者たちに攻撃を加えた。群衆たちは、問題の多いロシア型の法律の成立に怒っていた。この法律が通れば、活動資金のうち外国からの支援を2割以上受けている非政府組織や報道機関は、「外国の工作組織」と見なされることになるからだ。

 さらに記事は続く:ロシアにある同様の法律は、報道の自由を厳しく制限し、市民社会を抑圧するために使われてきた。「我が国の政府はロシアの影響下にあると考えています。それは我が国の将来にとってよくないことです」とこの抗議活動に参加している多くの学生の中の一人であるリジーさんは語っている。

 しかし、ひとつ明らかな事実がある。それは、BBCが西側支援によるジョージアでの反政府組織活動を指して「市民社会」という言葉を使ってきたのはソ連崩壊以後だという事実だ。西側の支援する反政府組織が「ロシアの影響」を非難しているのは、皮肉だ。というのも、そのような反政府組織自体、米国や欧州の影響を受けて生まれた組織なのだから。そしてこの抗議活動者たちが特に妨害しようとしているのは、米国や英国やEU当局からの不当な影響から自国を守ろうというジョージア政府の取り組みにあるというのも、皮肉な話だ。

 BBCはジョージア政府がこの法律を成立させようとしていることに対して疑問の声を発そうとしている。しかしこの法律の目的は、ジョージア国内の報道機関や政界における外国資本の流れを明らかにすることにある。

 BBCの記事にはこうある:ジョージアの政党与党「ジョージアの夢」のイラクリ・コバヒデ幹事長は、この法律の草案がロシアの抑圧的な法律と類似しているという批評に対して、それは誤解であるとした。「この法律の最終目的は、扇動を排除し、国民に対してNGOからの資金提供に透明性を持たせることにあります」と同氏は述べている。

 しかし、「透明性を求める国際協会(Transparency International)」のジョージアの事務局長をつとめるエカ・ギガウリ氏が我がBBCに語ったところによると、すでにジョージアにおいては、NGOは10の法律に縛られており、既に財務省はNGOの会計や資金などの情報を完全に掌握できているとのことだった。

 まず「透明性を求める国際協会」という名前がついているこの組織が、外国からの資金という、表に出すことが少し憚れるような事柄に対してさらなる透明性を要求するというこの法律に反対していることの奇妙さが議論されるべきことである。そこでこの「透明性を求める国際協会」自体にどんな資金が流れ込んでいるのかを見てみると、この協会には米国国務省、欧州委員会、英国外務省から資金が流れていることがわかる。この事実から明らかになるのは、この組織が西側の外交政策の目的を前進させるためのものであることだ。実際の透明性などはそれよりも後回しにされるのだ。

 BBCが自身の主張を強化するために、抗議活動者たちが戦っているのはEUに加盟するという彼らの「未来」のためであるという主張を引用しているが、BBCが描いているのは、米国が支援したウクライナを標的にした2014年の政権転覆工作の第2弾にすぎない。この2014年の政権転覆工作が、ロシアが介入した現在進行中の紛争の引き金となったのだ。しかしそれだけではなく、BBCの報道は米国が以前行ったジョージアに対する介入の第2弾につながるものだ。


歴史は繰り返す

 2003年に遡るのだが、米国はすでにジョージアでの政権転覆工作に資金を出していた。

 ロンドンのガーディアン紙は、2004年に以下のような記事を出している。「キエフでの紛争の裏に米国の影」。ガーディアン紙がこの記事で取り上げていたのは、米国がいわゆるオレンジ革命時にウクライナに介入していたことだけではなく、セルビア・ジョージア両国に干渉していたという事実だった。

 記事にはこうある:この作戦は、米国が用意したものだ。西側の色がつけられて、大量生産の考えのもと、よく考え抜かれた作戦だった。具体的には、4カ国を対象に4年間かけて行われたもので、不正選挙を工作し、気に入らない政権を転覆させようとする作戦だった。

 米国政府から資金を得て組織され、米国の助言家、世論調査員、外交官、米国2大政党、米国の非政府組織を利用したこの計画が始めに実行されたのは、2000年の欧州ベルグラードであり、スロボダン・ミロシェヴィッチを選挙で敗北させた。
 
 その際、ユーゴスラビアの米国大使だったリチャード・マイルズが大きな役目を果たした。そして昨年までジョージアの米国大使を務めていたマイルズが、ジョージアでも同じ手を使ったのだ。つまり、ミヘイル・サアカシュヴィリ(2003年のバラ革命後に大統領に就任)に、エドゥアルド・シェワルナゼ(2003年までの大統領*)を失脚させる手口を教えたのだ。
*1985年から1990年までソビエト連邦の外務大臣を務め、1995年から2003年までグルジア大統領を務めた。(ウィキペディア)

 2003年以降、米国はジョージアに武器を投入し、ジョージア軍に訓練を施してきた。2008年には、ジョージアはロシアを攻撃したが、この代理戦争は短期間で失敗に終わった。この攻撃のため、多くの点において、ロシア当局が2014年以降ウクライナに対して国家安全上の懸念を感じることに正当性をあたえることになった。

 西側各国政府や報道機関の多くが、2008年の紛争を「ロシアによる侵略行為」であると描こうとしているが、2009年、ロイター通信は、「ジョージアがロシアとの戦争を開始。その裏でEUが支援しているとの報道」という記事を出している:「調査団の見解では、この戦争の引き金を引いたのはジョージア側だとしている。ジョージアが、2008年8月7日から8日にかけての夜に、重砲で(南オセチアの)ツヒンヴァリ市を砲撃したのだ」とこの件の調査団長であるスイスの外交官ハイジ・タリアヴィーニ氏は述べている。

 さらに記事にはこうある:…わかったことは、ミヘイル・サアカシュヴィリ大統領政権下にある米国の同盟国ジョージアの関与が決定的であるという点だ。同大統領の政治的立場にさらなる悪影響をもたらすと思われる。

 このミヘイル・サアカシュヴィリこそが、ガーディアン紙が2004年に出した記事の中で、「米国政府により組織された」政治的な介入を受けたのちに権力の座についたと報じた人物なのだ。


再びジョージアでの代理戦争:米国はロシアに対抗するための新たな代理組織を求めている

 トビリシで抗議活動に参加している多くの人々の考えとはちがうだろうが、これらの抗議活動の目的は、実は米国当局が求めているロシアに対抗できる二つ目の代理組織をうちたてることにある。それにより、敗色の色が濃くなっているウクライナでの代理戦争の状況を改善しようというのだ。

 これはただの空想ではない。ジョージアを利用して、まさにこの目的を達成しようという計画が、2019年のランド研究所の論文にはっきりと書かれているのだ。その論文の題名は「ロシアを疲弊させる」だ。

 ロシアを疲労困憊させるための手段の例として、「ウクライナに殺人兵器を供給し」、「南コーカサス地方の緊張を利用する」ことが挙げられていた。

 この論文はこう詳述している:米国がジョージアやアゼルバイジャンにNATOとの関係を強めるよう進めれば、おそらくロシアは南オセチアやアルメニア、アブハジア、ロシア南部の軍の強化に力をいれるだろう。

 南オセチアやアルメニア、アブハジア、ロシア南部の戦力を強化すれば、ロシアがウクライナへの兵力を減らすことになる状況を米国当局は望んでいたのだ。

 さらにこの論文にはこうある:ジョージアは長らくNATO加盟を求めてきた。同国は北大西洋協力会議(NACC)に1992年に加盟したが、これは独立直後のことであり、さらに1994年にはNACCの平和のためのパートナーシップ組織にも加盟した。理論上は、NATOはジョージアの加盟に向けて動いていたのだが、2008年のロシア・ジョージア間の戦争により、加盟に向けた努力は永久に保留されることになった。しかしジョージアは、NATOに加盟するという野望を捨てておらず、地中海やコソボ、アフガニスタンなどでのNATOの軍事行動に参加してきた。欧州諸国が反対することで、ジョージアのNATO加盟が承認されないのであれば、米国がジョージアとの間の二国間協定をうちたてることも可能だ。

 もちろん、そうなるかどうかは、ジョージアが米国の従属政権により統治されていることが条件となる。さらに今回の抗議活動自体が、ロシアの国境付近を不安定化させ、結局はロシアに圧力をかける(ウクライナへの兵力を減らす)、という同じ目的を果たすことにもなる必要があるのだ。

 BBCが最近出した記事によれば、ジョージアでの抗議活動者たちは自分たちの利益のために戦っているとのことだが、ランド研究所の論文に書かれている内容は、米国がロシア対策としてジョージアを利用してきたやり口がどれだけ酷いかについてだった。

 その論文にはこうある:2008年8月、分離主義者たちとの和平交渉が決裂したのち、ジョージアは南オセチアと飛び地領アブハジアに軽い戦争を仕掛けた。この両地域は、ジョージア国内の親露の半独立地域だった。この戦争の結果は、ジョージアにとってはひどいものだった。すぐにロシアが介入して、結局この両地域を占領し、短期間ではあるがジョージア国内の他地域も占領した。ジョージアは2008年8月14日に停戦に合意したが、それはロシアが介入したわずか8日後のことだった。ただしロシア軍は南オセチアとアブハジアに駐留し続けており、両地域はそれ以後独立を宣言している。

 この論文がさらに警告していたのは、ジョージア当局がNATO加盟に固執すれば、「ロシアは再び介入してくるだろう」という点だった。

 米国の外交政策に国と国民と政府が取り込まれ、完全な自滅への道を歩んでいるウクライナと同様に、米国はロシアの辺境地域にある国々の国土に火を放ち、炎を燃え上がらせようとしている。そしてその目的は、「ロシアを疲弊させる」ことだ。このことは、米国の政策論文の題名にはっきりと書かれている。ジョージアもその中の一国なのだ。

 この点に加えて、米国が支援している抗議活動者たちが「ロシアの影響」について不満を表明しているのに、外国からの資金に透明性を持たせようとする法律に激しく反対しているという事実から再度わかることは、「西側的価値観」とされるものが、ただの煙幕にすぎず、その裏には米国とその同盟諸国が自国の外交政策の目的を前進させようという魂胆が見えるということだ。そのような魂胆は、国際法に反するものであり、国際法に則ったものではない。



– 米国が支援する反対勢力で組織されているジョージアでの抗議活動 (実際米国や英国の旗を振っている)の意図は、外国勢力に対する透明性を広げるという法案を妨害することだ。しかし、この法案の目的は外国からの干渉を減らすことにある。

– 米国は2003年に、ジョージア政府の政権転覆に成功していることを、ロンドンのガーディアン紙が報じている

– ジョージアがロシアを攻撃したのは、米国が2008年までにジョージアに武器をふんだんに供給して軍に訓練を施したのちであったと、EUの調査団は報告している。

–米国がジョージアの抗議活動を扇動している目的は、再度ロシアを「疲弊させる」ため であると、ランド研究所の2019年の論文「ロシアを疲弊させる」に詳述されている.

– 米国は他の国々にも圧力をかけ、外国の干渉から自国を保護しようとする法律の成立を妨害しようとしていることは、先日タイでもあった。


引用文献

BBC – 「ジョージアの抗議活動。警察が議会に入ろうとする抗議活動者を抑えている」 (2023): https://www.bbc.com/news/world-europe…

Transparency International – 「私たちの支援者」 https://www.transparency.org/en/the-o…

CNN – 「ジョージア政府が提案した「外国からの干渉」排除法案が、抗議者の怒りを買う」(2023): https://edition.cnn.com/2023/03/09/eu…

Guardian – 「キエフでの騒動に米国の影」(2004): https://www.theguardian.com/world/200…

Reuters – 「ジョージアがロシアとの戦争を開始。EUが支援しているとの報道」 (2009): https://www.reuters.com/article/us-ge…

RAND Corporation –「ロシアを疲弊させる」 (2019): https://www.rand.org/pubs/research_re…


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