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日本の保険会社、ロシア海域の船舶保険停止へ---危ぶまれる日本への石油、天然ガスの供給

<記事原文 寺島先生推薦>

Japanese firms to halt ship insurance for Russian waters – media
The decision could impact Tokyo’s oil and gas imports

日本企業、ロシア海域の船舶保険停止へ(日本での報道)
この決定は、東京の石油・ガス輸入に影響を与える可能性がある。

出典:RT

2022年12月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月31日



© Getty Images / Boris Fedorenko / EyeEm

 日本経済新聞は金曜日(12月23日)、匿名の情報源を引用して、日本企業3社がロシア海域での船舶の戦争被害に対する保険サービスの提供を停止すると報じた。

 この決定は、モスクワが2月に開始したウクライナでの軍事作戦に関連する危険性を引き受けることを再保険会社が拒否したことに起因すると言われている。

 東京海上日動火災保険、損保ジャパン保険、三井住友海上火災保険は、紛争地域から数千キロ離れた極東ロシア海域を含むロシア海域での戦争被害への補償提供を停止する計画を船主に通知し始めたとされる。この措置は1月1日に発効する。

 現在、船主は、ウクライナやロシアの海域を航行する前に、追加の戦争損害保険に加入することが義務付けられている。保険提供者には支払いや保険料の条件を再確認するために事前に通知しなければならない。来年からは、船主は日本企業3社からその選択肢(船舶戦争保険)を受けることができなくなる。


関連記事:ロシア、主要な石油事業を買収へ

 同紙によると、ロシアの「サハリン2」事業などからの液化天然ガスの日本の輸入は、この決定によって補償が確保できなくなり、影響を受ける可能性があるという。

 9月、ウクライナ関連の制裁措置の一環として、ロシアの海上石油の輸出に価格上限を設けることで七カ国が合意した。12月上旬には、G7諸国、欧州連合(EU)、オーストラリアが1バレルあたり60ドルで合意している。この決定により、基準値を超えて購入した原油を輸送する場合、船舶への海上保険などのサービスが禁止されることになった。これに対し、モスクワは価格上限を定めた契約による石油販売の禁止を約束した。

 東京は、価格制限をロシアのエネルギー収入を減らす有効な手段だとして支持している。一方、ソデコ社経由で「サハリン1」事業に参加している伊藤忠商事の岡藤正広代表は、11月に「日本はロシアからの石油・ガス輸入なしでは生きていけない」と発言した。

 日本企業は反ロシア制裁後も「サハリン1」「サハリン2」の天然ガス事業への参加を維持する方針を示し、プーチン大統領はこれまで米石油大手エクソンモービルが管理していた同事業を国内企業に移管する指示を出していた。

経済・金融に関するその他の記事は、RTのビジネス専門報道部門をご覧ください。
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前線でのウクライナ側の戦死者は7割越え

<記事原文 寺島先生推薦>

American instructor reveals Ukrainian frontline death rates
Mozart Group says dire media reports about the situation in Artyomovsk/Bakhmut are true

米国の訓練士が前線でのウクライナ側の戦死者の数を公表
モーツァルト隊によると、メディアが報じたアルテモフスク(バフムート)での恐ろしい戦死者数は正しいという。

出典:RT

2022年12月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月31日


2022年12月7日、バフムートの前線にいる一名のウクライナ兵 ©  Narciso Contreras/Anadolu Agency via Getty Images

 ウクライナ軍は、ドネツク戦線の要であるアルテモフスク(キエフ側からはバフムートという呼び名の方が知られている)での戦いにおいて、大規模な戦死者を出していることを、米国のモーツァルト隊がニューズウィーク誌に語った。

 同隊の長を務める退役海軍兵によると、この部隊は慈善団体であるが、ウクライナ軍の訓練も行っている。そのモーツァルト隊が伝えたところによると、戦死者の割合が7割かそれ以上にのぼっている部隊があるという。

 ウクライナ軍は報道機関が前線に入ることを厳しく取り締まっている中で、モーツァルト隊は定期的に何が起こっているかについて、画像や動画を示していることは注目に値する。 「私が報道機関で目にしたことのない規模で、ウクライナの前線にある町が完全に消滅しています」と、米海軍で大佐をつとめていたアンドリュー・ミルバーン氏は同誌に語った。 

 「バフムートは、*ドレスデンのようになっていますし、周辺の田舎の風景は、**パッセンダーリのようです 」と同隊長は、第二次世界大戦時に連合国の爆撃により破壊されたドイツの都市と、第一次世界大戦のドロドロの戦場として悪名高かった戦場の名をそれぞれ上げて伝えた。

[訳注]*1945年2月ドイツ東部のドレスデンは英米軍の爆撃で灰燼に帰した。
**第一次世界大戦の西部戦線パッセンダーリにおける主要な戦いの一つ。1917年
7月~11月まで続いた。


 「ただ恐ろしく惨めなだけの場所になってしまいました」

 ウクライナの報道機関が、アルテモフスク[バフムート]について取り上げることは、旧来の報道機関においてもソーシャルメディアにおいてもほとんどないが、その報道では、この戦いを、多くの死者と負傷者を出している「肉挽き器」のようなものであると報じている。なお、正式な戦死者数はまだ公表されていない。



関連記事:Dozens of 'foreign mercenaries' killed in Ukraine – Russia

 ロシア国防省は、アルテモフスク[バフムート]でのウクライナ側の戦死者数の詳細をまだ公表していないが、同市の北側と東側に進軍すると発表し、同市を包囲すると警告している。

 モーツァルト隊と共に訓練を受けているウクライナ側の諸部隊では、「尋常ではない数の戦死者が出ている」とミルバーン氏はニューズウィーク誌に答えている。さらに、「報道機関で目にする、約7割かそれ以上の戦死者が出ている部隊が普通だ、という数字は誇張ではありません」とも語った。

 ウクライナ側は、兵の補填のために、新しい兵たちを確保して前線に送り込もうと必死になっていることをミルバーン氏は認め、訓練のためにモーツァルト隊に送られてくる人々の約8割は、これまで武器を使ったことのない人々だとも語った。

 モーツァルト隊が、ウクライナ軍の戦闘訓練を施していることは認めたが、ミルバーン氏は、自身の「志願者たち」は、「高い感情的知性」を持っていて、実際の戦闘行為には参加していないと主張している。モーツァルト隊は、税金が免除されている慈善団体として登録されており、「主な任務は人道的支援です」もミルバーン氏はニューズウィーク誌に答えている。「モーツァルト隊」という名称は、ロシア側の「ワグナー隊」という民間軍事会社の名称を意識して付けられた。ワグナー隊はバフムート近辺での戦闘に深く携わっている。


(参考地図:訳者)



https://www.google.co.jp/imgres?imgurl=https%3A%2F%2Farticle-image-ix.nikkei.com%2Fhttps%253A%252F%252Fimgix-proxy.n8s.jp%252FDSXZQO2214314027072022000000-1.jpg%3Fixlib%3Djs-2.3.2%26w%3D696%26h%3D522%26auto%3Dformat%252Ccompress%26ch%3DWidth%252CDPR%26q%3D75%26fit%3Dcrop%26bg%3DFFFFFF%26s%3D68ece992b35371f385851940aa606926&imgrefurl=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOCA270LJ0X20C22A7000000%2F&tbnid=LICHRmDfZ6WtvM&vet=1&docid=RVvNf2EkBN7s3M&w=696&h=522&source=sh%2Fx%2Fim
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やはりCovidに関する投稿はTwitter上で検閲されていた

<記事原文 寺島先生推薦>
 
Twitter Files detail Covid censorship campaign
The social media platform suppressed “legitimate content” on coronavirus at the behest of the White House, documents suggest

マスク氏が明らかにしたツイッター社内文書により、Covid関連情報が検閲を受けていた詳細が明らかになった。
ソーシャル・メディア会社である同社は、大統領府の意を受けて、コロナウイルスに関する「正当な情報」を抑圧していた可能性をこれらの文書は示していた。

出典:RT

2022年12月26日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月30日


画像:2021年4月26日、ネバダ州ラスベガスの接種場でモデルナ社製Covid-19ワクチンを接種する人© AP / John Locher


 先日ツイッター社の最高責任者であるイーロン・マスク氏が明らかにした同社の社内文書により、同社は、大統領府の主張と食い違うCovid-19に関する投稿を検閲していたことが明らかになった。能力のある医師や疫学者たちが抑圧を受け、バイデン政権からの直接の指示により、アカウントを停止させられていたことを、同文書は示していた。

 トランプ政権もバイデン政権も、ツイッター社に圧力をかけ、コロナウイルスに関する投稿内容を抑制しようとしていた、とディビッド・ツゥエィグ記者は、12月26日(月)に同社の社内通信記録をもとに報じた。トランプ陣営が抑制したがっていたのは、食料品店の品不足の噂を抑え、買い物に殺到することのないようにすることだった。いっぽう、2021年1月に政権の座に着いたバイデン陣営は、その方向性を転換し、ワクチンについての「偽情報」の抑え込みに力を入れてきた。

 ツゥエィグ記者が目にした文書によると、バイデン側の役員たちは、ツイッター社に直に圧力をかけ、「反ワクチン派の著名人のアカウント」を停止するように迫っていたようだ。その中には、ニューヨーク・タイムズ紙の元記者であるアレックス・ベレンソン氏もいた。同氏は、ワクチンの効用よりも危険性の方が高いことを常々主張してきた。

 ツイッター社はバイデン陣営からの圧力に応じ、2021年7月、ベレンソン氏のアカウントを一時的に停止したが、同社の社員が後日語ったところによると、「バイデン陣営」は、それでも同社の検閲活動に「不満を持って」いて、「いくつかのアカウントを排除する」よう、腹立たしげに要求していたという。



 ツイッター社は、ハーバード大学の一人の疫学者の投稿に警告を発していた。その学者は、「以前に自然感染したことがある人々」は、ワクチンを接種者する必要がないと主張していた。ツイッター社はその学者は「誤解を招くような投稿をしている」と警告し、バイデン政権が自前で出していたCovidの死亡者数の数値を提示していた。同社は人工知能の「bot」と外国の契約社員たちを組み合わせることで、どのような投稿を検閲するかの決定をおこなっていたという。


関連記事:US spies pushed Twitter to censor ‘anti-Ukraine narratives’ – media

 ある医師はワクチン接種と青年層で見られる心停止の間の関連を調べた査読済みの論文を投稿したことで、警告を受けていた。また別の医師のアカウントが永久的に停止されたが、それはその医師が、ワクチンが一時的に男性の精子量を減少させる子ことを示唆する出版済みの論文について言及したからだった。

 「政権の意向とは反対であるが真っ当な内容が、偽情報と決めつけられ、医師などのアカウントが一時的に停止され、意見や確実に正しい情報の投稿ができなくなりました」とツゥエィグ記者はツイートしている。

 ドナルド・トランプ前大統領が、自身が感染して快復した後に、ツイッターのフォロワーに、「Covidを恐れるな」と促した際、ツイッター社の高位の担当者たちは、この投稿に対してどう対応するかについて話し合い、その後結論として、トランプ前大統領の「楽観的な」ものの見方は、偽情報には当たらないと判断したという。

 10月にツイッター社を440億ドルで買収して以来、イーロン・マスク氏は多くの社内文書を明らかにし、同社がこれまで行ってきた不透明な検閲行為が判明しつつある。

 数名の独立系記者が報じているこれらの大量の資料により、分かってきたのは、ツイッター社がジョー・バイデン陣営の選挙運動を損なうような情報を抑制していたことや、FBIと共謀してFBIが隠しておきたがっている情報を排除していたことや、米軍がオンライン上で影響力を強めることを幇助していたことや、米国の複数の諜報機関のために、「反ウクライナ言説」に検閲を加えていた事実だ。
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「親ナチ」のドイツと日本が国連安全保障常任理事国になることはない

<記事原文 寺島先生推薦>

Pro-Nazi’ Germany and Japan Have No Place at the UNSC

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年12月27日
 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月30日



 オレグ・ステパノフ大使がスプートニク通信社に語った。「ドイツと日本が、国連安全保障理事国になることは永遠にない」

 毎年、国連総会では、ナチスやネオナチやその他の関連行為に関する英雄化に反対する決議草案を審議している。毎年恒例のことで、とくに驚きはない。しかし今年の投票で、実に心が痛むようなことが起こった。それは、歴史上の真実を保全することを誰がどのように凝視するのかという点から見て、特にそうだ。最後の世界大戦後に、国連を中心とする世界秩序が形成されたこととも繋がることだからだ。

 ドイツと日本が、初めてこの決議に反対の意を表明したのだ。この両国は、第二次大戦を始め、最終的には敗れた、枢軸国側の主要二カ国の末裔だ。もう何十年間も、両国は暗黒の過去から脱却したがっていた。この両国は、世界全体に、自分たちが犯した戦争犯罪や人類に対する犯罪行為を忘れさせることを望んできた。しかし今、両国は本性をあらわしたのだ。

 このような冒涜的行為を行えば、ナチス・ドイツや日本の軍国主義により被害を受けた人々の記憶を害することになる。この行為は国連憲章にも反する。この両国が世界組織である国連に加盟する際に遵守するよう求められた義務規定があったからだ。その規定とは 国連の目的や主義を遵守することであり 、国連憲章のすべての条項に合致するよう厳しい監査を受けることも織り込み済みだった。

 この件に関する問題は以下の通りだ。「(ロシアが1990年ドイツ統合を認めた)西ドイツがどれほど真摯に、世界大戦の責任について反省の念を持っていたか」という点だ。日本が反省を求められている点については言うまでもない。日本はまだ侵略行為や恐ろしい残虐行為を行った罪を認めておらず、第二次世界大戦の結末を完全に受け入れようとしたがっていないだけではなく、毎年、東京の靖国神社に政府として公式参拝を行い、戦争犯罪者たちの霊を慰めることさえしている。

 両国のこのような行為が、米国の許可のもとで行われたことは確実だ。 米国はこの両国を何層にも渡って密かに支配しており、それが今もまだ続いているのだから。ワシントン(さらにはオタワの現世代の政治がたちも同じだが)で必須事項となっているのは、米国がかつては反ヒトラー連合の一翼を担っていた事実を忘れることだ。新しい地政学において果たすべき使命のために、このような記憶が消されようとしていて、それに伴い、 必死になって歴史を歪曲し、偽証しようとしているのだ。これらの行為は、国連憲章に掲げられている第二次世界大戦の結末や国連憲章やニュルンベルク裁判所の判決や極東国際軍事裁判の判決に疑念を呈することになるのだ。西側の覇権を維持するため ロシアを消滅させようというこれらの諸国の欲求が、倫理や道徳を凌駕しようとしている現れだと言える。

 いずれにせよ、ドイツと日本(及び第二次世界大戦で悪の側に立って戦っていた他の国々)が、2022年12月15日の第77回国連総会の投票において、明確に親ナチの立場を示し、国連憲章の本文から「敵諸国」という文句を消すことについて議論する可能性を妨げたのだ。そして最終的には、ドイツと日本が常任安全保障理事国に立候補することで、国連を再建するという見通しも絶たれてしまったのだ。ドイツや日本、さらにもっと視点を広げて、欧州や世界のナチや軍国主義を根絶やしにする仕事は、まだ完遂されていないのだ。
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EUの停電は避けられない、とオーストリアの防衛相が主張

<記事原文 寺島先生推薦>

EU blackouts inevitable – Austria
It’s not a matter of “if,” but “when” some parts of the bloc go dark, Vienna’s defense minister has said

EUの停電は避けられない。(オーストリアでの報道)
これは、「もしも起こったら」ではなく、「いつ起こるか」の話であると、ウィーン当局の防衛相が主張

出典:RT

2022年12月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月30日


2022年11月25日、ポーランドのワルシャワの夜の通り©  STR / NurPhoto via Getty Images

 ウクライナ戦争のさなか悪化するエネルギー危機により、欧州連合が停電を食い止められる可能性はほぼなく、停電の影響に備えるべきである、とオーストリアのクラウディア・タナー防衛相が、12月27日(火)に警告した。

 ディ・ヴェルト紙の取材に対し同相は、近い将来、EU内で停電になる地域が生じる可能性は、「非常に高い」という見通しを示した。「ウクライナ戦争の影響により、電気供給の停止が広まる危険性が、いま再び深刻に高まっています」と同相は述べた。さらに、「問題なのは、もしも起こったらではなく、いつ起こるかの話です」と同相は語気を強めた。 

 タナー防衛相がさらに、証拠を示すことなく述べたのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、西側諸国の電力供給網に「ハッカーによる攻撃」を加えようとしていることは、「ハイブリッド戦争」の一環である、という内容だった。

 「この攻撃を理論上だけのものだと捉えるべきではありません。オーストリアや欧州内での停電に備えなければなりません」と同相は語った。

 タナー防衛相によると、オーストリア軍をはじめ他の政府諸機関も関連した非常時のための訓練を行っているとのことだ。さらにオーストリア政府は、国民の意識向上の取り組みも行っていて、公共の場所で小冊子を配布し、停電の際にとるべき対応を広報しているという。


関連記事:UK to use coal-fired power plants to keep lights on

 そのような措置は、「混乱状態」を引き起こすことにならないか、と問われた同防衛相は、その懸念を否定した。「平衡感覚をもって意識を高めることと恐怖を煽ることの間には、細い境界線しかないことは承知しています。しかしこれまでのところ、私たちはかなりうまく対応できていると思っています」と同相は述べた。

 停電になるのではという恐怖が欧州各地を覆うようになってもう数ヶ月になる。ウクライナでの戦争に伴う西側がロシアに課した制裁が原因で起きている燃料価格の高騰により、欧州大陸が浮き足立っている中でのことだ。

 今月(12月)上旬、ドイツの報道機関が、エネルギー節約のため、スイスで電気自動車の使用を制限する措置をとることを検討していると報じた。その同時期に、フランスの送電会社RTEのザビエル・ピエハジュク社長は、気温の低下とエネルギー需要の高まりのせいで、フランスが停電に直面する危険があると警告していた。さらに、いくつかの原子炉が、整備のため稼働停止を延長すれば、停電の危険はさらに高まるだろうと先週ブルームバーグ紙は報じた。

 11月下旬、ロシアのマリア・ザハロワの外務省報道官は、EU諸国の政策立案者たちは、現在進行中のエネルギー不足の責任は、身から出た錆であると主張していた。
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「ウクライナは腐敗した最悪の社会だ」と米退役大佐の民間軍事会社創設者は語る

<記事原文 寺島先生推薦>

Mercenary Col. (Ret) Andrew Milburn: “Ukraine is a Corrupt, Fucked-up Society”

民間軍事会社創設者の退役軍人アンドリュー・ミルバーン大佐談「ウクライナは腐敗した最悪の社会だ」

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年12月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月30日



 ある動画において、モーツァルト隊の創設者であるアンドリュー・ミルバーン氏は、ウクライナ軍が「残虐行為」を行っている事実を認めた。

 ウクライナは、ロシアとの戦争を支援しようという西側からの努力に甘えるべきではないという考えを、モーツァルト隊の創設者であるアンドリュー・ミルバーン氏は述べた。この部隊は、ウクライナ軍に訓練を施している部隊である。

 海軍の退役司令官である同氏は、先月(11月)、チーム・ハウスという名のポド・キャストの番組に出演し、ウクライナでの活動における自身の体験とその振り返りを伝えた。その動画投稿以来、視聴者がたったの2万回程度にすぎなかったことに気がついたオンラインサイトのグレー・ゾーンの編集者であるマックス・ブルーメンサルが、12月26日(月)、この動画についてツイートして注目を喚起した。








 このポド・キャスト放送中、ミルバーン氏は、ウクライナは、「腐敗した最悪の社会」だと語った。同氏は、「世界の規範」を維持する必要があるため、ウクライナに対する西側からの支援は継続されることが重要で、正当化できるものだとしながらも、「ウクライナだけにとらわれて」、世界全体を見るべきではないと主張した。

 「私は鞄にウクライナ国旗をつけていますが、私は“おお神よ。ウクライナは素晴らしい国です”などとは思っていません。というのも、ウクライナの支配者層には、最悪な人達がたくさん存在することが分かったからです」とミルバーン氏は語り、自身が「おおいなるウクライナびいき」ではないことを認めた。

 さらに同氏は、ウクライナ軍がロシアの戦争捕虜たちに対して、軍事紛争についての法を定めたハーグ条約に違反するような行為を「多数」行っているとも語った。そして特に問題なのは、拿捕されたロシア兵に対して尋問している場面を撮影し、オンライン上で流している行為であると語った。

 ミルバーン氏によると、モーツァルト隊の訓練士たちはそのような行為を許しておらず、ロシア兵捕虜の殺害動画を見せるような部隊からは距離を置くよう常々努めているとのことだ。「私たちはこのような動画を何度も見せられました」と同氏は語り、さらにウクライナ軍による残虐行為は「無数に」あり、「ありとあらゆる種類の残虐行為が行われている」とも述べた。

 ただし同氏は、自身の訓練士が関わっている部隊のほとんどは、「非常に洗練されていて」、そのような行為に興じることはない点を強調していた。

 ミルバーン氏のモーツァルト隊は、自身の団体は慈善組織であると主張しているが、ウクライナにおける最大の民間軍事会社のひとつであると認識されていて、この戦争開始以来、ウクライナ兵たちに軍事訓練を施してきた。しかしこの部隊は、ウクライナ軍の暗部について気分を害するような報告も数件行ってきた。

 8月には、CBSニュースが、今は削除されている記事において、ミルバーン氏のことを取り上げ、西側から供給された武器が、ウクライナから消え、闇市場で売られている事実を報じていた。さらに先日、ニューズウィーク紙も、ウクライナ軍側の戦死者は7割かそれ以上に上っているという、キエフ当局の主張とは食い違う主張を同氏が行ったことを報じている。
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すべてのソーシャルメディア業者は、米国政府から検閲を受けていた。イーロン・マスク氏談

<記事原文 寺島先生推薦>

Every social media firm censors for US government – Musk
Platforms remove content at the “explicit direction” of US federal agencies, the Twitter CEO has claimed

各ソーシャルメディア業者は、米国連邦の諸機関から「明確な指示」を受け、対象を排除していた、とツイッター社の最高責任者は語った。
 
出典:RT

2022年12月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月30日


画像:2019年3月14日、カリフォルニア州ホーソーンのテスラ社のデザイン・スタジオで新車のテスラモデルYの制作発表前に語っているイーロン・マスク氏
©  AP / Jae C. Hong


 すべてのソーシャルメディア業者は、米国政府と協同して投稿内容に検閲を掛けていた、とツイッター社の最高責任者イーロン・マスク氏は、12月27日(火)に主張した。ツイッター社を買収したマスク氏が明らかにした文書により、同社はFBI、CIA、国防総省などの政府機関と共謀し、選挙運動やウクライナやCovid-19に関する情報を統制していたという。.

 「*すべての* ソーシャルメディア業者が、強力な検閲を行っていました。そしてその検閲には、政府からの指示が色濃く、時にはあからさまに行われていたのです」とマスク氏はツイートし、さらに、「例えばグーグル社は特定のリンク先を消すことをしばしば行っていました」とも付け加えた。



 マスク氏は、マスク氏の委託のもとマット・タイビ記者が明らかにした、ツイッター社内の内部通信の内容に触れ、その情報によれば、同社の重役たちがFBIやCIAの職員と定期的に面会していたと述べた。そしてその面会中、これらの組織がツイッター社の重役たちに2020年の大統領選挙運動に向けて、停止すべき「問題となる数百人のアカウント」の一覧を手渡していたという。

 ツイッター社に加えて、政府は「事実上すべての主要テック業者」と繋がりを持っていた、とタイビ記者は主張し、「その中には、フェイスブック社やマイクロソフト社やべリゾン社やレディット社やピンタレスト社までありました」とも語った。CIAの職員たちは「ほぼ常に」、これらの企業との会合に同席しており、FBIの海外影響作戦部隊もそうだった、とタイビ記者は主張し、この作戦部隊は外国による選挙運動への干渉とされる行為に対応する部隊であったのに、「国内のアカウント削除要求を山のように」おこなっていた、と説明した。


関連記事:Twitter Files detail Covid censorship campaign

 今年初旬、ミズーリ州とルイジアナ州の司法長官が訴状を提出したが、それによると、2020年、12もの政府機関がツイッターのやフェイスブック社などの巨大テック業者の代表者達と毎週面会し、どの言説や利用者を検閲すべきかを決めていたという。そしてその主題は、選挙戦への干渉やCovid-19など多岐にわたっていたという。

 「言論の自由の完全実施者」を自称するマスク氏が10月にツイッター社を440億ドルで買収して以来、多くの社内文書を明らかにし、同社がこれまで行ってきた不透明な検閲行為が判明しつつある。数名の独立系記者が報じているこれらの大量の資料により、分かってきたのは、ツイッター社がジョー・バイデン陣営の選挙運動を損なうような情報を抑制していたことや、FBIと共謀してFBIが隠しておきたがっている情報を排除していたことや、米軍がオンライン上で影響力を強めることを幇助していたことや、米国の複数の諜報機関のために、「反ウクライナ言説」に検閲を加えていた事実だ。

 先週(12月第3週)、FBIは、FBIとツイッター社の職員たちとの連絡は、「我々の組織は、連邦政府と私企業との間を繋げることはこれまで伝統的に長年行ってきたことであり、今も行っていることでしかありません」 との声明を出した。

 大統領府は、FBIがツイッター社に指示を出し、ジョー・バイデン陣営の選挙運動を損なうような情報の検閲を行わせていた疑惑についての回答を拒否している。
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オリバー・ストーン、ウクライナ紛争の根本原因について意見を表明

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Oliver Stone voices opinion on root cause of Ukraine conflict

アメリカは、キエフをモスクワの敵にするのを助けた、と著名な監督は言う

出典:RT

2022年12月15日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年12月28日



ファイル写真©AP / Amr Nabil

 米国が2014年以来、ウクライナを反ロシアの国にしたことが、現在の紛争の根本原因であると、受賞歴のある映画監督のオリバー・ストーン氏は月曜日(12月12日)にセルビアで述べた。

 「他国を非難できると考えるなんて、我が国は自国を何様だと思っているのでしょうか?」 ストーン氏は、彼が審査委員長を務めるサウジアラビアのジェッダで開催される紅海国際映画祭 (RSIFF) の前に記者に語った。 「私たちはロシア人にどうすべきかを命じています。しかし、私たちが行ってきたことを考えると、それはばかげていることです。」

 ストーン氏はさらに、現在ウクライナで起こっていることは「決して単純ではない」のに、西側では「ロシア人の侵略」だけに帰せられつつある、と述べ、2014年以降、ドンバスで起こったことや、アメリカがウクライナを武装させていたために何人が家を追われたのかについては何も言及されていない、とした。

 「2014年以来、ウクライナはもはや中立ではなく反ロシア的な立場を取っており、それが力の均衡を崩しました」とストーン氏はポリティカに語った。さらに、注意深く見れば、「すべての戦争には原因と結果がある」と付け加えた。

 『スノーデン』を撮った同氏は、キエフでの出来事に関する 2つのドキュメンタリー、2016年の『Ukraine on Fire』と2019年の『Revealing Ukraine』も制作した。どちらの映画も、今年1年間を通してずっと禁止、排斥、および攻撃に直面している。


<関連記事>YouTube は、オリバー・ストーンが解説するウクライナのドキュメンタリーを検閲

 米国は、「ルールに基づく国際秩序」に違反していると思われる世界のどの国もすぐに非難しますが、「アメリカは望むときはいつでもすべてのルールを破ります」、とストーン氏はセルビア人記者に語った。

 彼は、ジョー・バイデンに投票したことについて遺憾の意を表明し、この「おじいちゃん」は非常に危険であることが判明したとし、バイデンは、1990年代のように米国が再びロシアを支配するために、モスクワでの政権転覆という「夢」を持っていたと述べた。 バラク・オバマが2008年にバイデンを副大統領候補に選んだのは、民主党の支配者層をなだめるためだったが、「大きな間違いだった」とストーン氏は述べた。 彼はまた、民主党と共和党の両方が軍産複合体の恩恵を受けているため、米国にとって唯一の希望は第三勢力の出現であると主張した。

 ストーン氏の最新のドキュメンタリー『Nuclear(核)』は、気候変動への対処における原子力の役割を扱っており、 RSIFF[紅海国際映画祭]でも上映される。 「今でもあなたは反逆者なのですか」と聞かれたストーン氏は、歳を取り、視力と聴力に問題を抱えているが、「屈して死ぬよりも、自分の足で生きて」いきたい、と答えた。
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イーロン・マスクからのクリスマスプレゼント:コロナワクチンの危険性を指摘した専門家がTwitterに復帰

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Christmas gift from Elon Musk: Drs. Robert Malone, Peter McCullough reinstated on Twitter
The experts were previously banned from the platform for speaking out against the mainstream COVID narrative and highlighting the dangers of the COVID injections.

イーロン・マスクからのクリスマスプレゼント:ロバート・マローン博士、ピーター・マッカロー博士がTwitterに復帰
この2人の専門家は、主流のコロナ言説に反対して、コロナワクチン注射の危険性を強調したためにプラットフォームから追放されていた。

筆者:アンドレアス・ヴァイルザー(Andreas Wailzer)

出典:ビヨンド・ワード

2022年12月13日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年12月28日


撮影者:ブリッタ・ペダーセンプール/Getty Images

 ( LifeSiteNews) ツイッター社は医療専門家であるロバート・マローン博士とピーター・マッカロー博士のアカウントをツイッター復活させた。両博士はこれまで、コロナの主流言説に反対してコロナワクチン注射の危険性を強調したとしてツイッターが使うプラットフォーム(環境)から追放されていた。



(上記ツイートの翻訳)
 12月12日、マローンは「戻ってきました。第五世代(情報)戦争へようこそ。戦場は群れの総意とあなた自身の心です。今日の私のサブスタック*を共有してください。"
*個人でニュースレター(メルマガのようなもの)を配信することができるプラットフォーム

 マローンのアカウントは、COVID-19治療薬のリスクに関して「誤解を招く、潜在的に有害な」情報を流したとされ、2021年12月末から禁止されていた。

 マッカローの個人アカウントも2022年10月には禁止されたが、ツイッターから公式な説明は何もなかった。

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 「よし、みんな!私はツイッターに復帰したぞ!」 マッカローは12月13日、自分のアカウントを再開させた後、こうツィートした。「私の検証が真実であることがわかるだろう。完全に無修正、フォローを解除されないプログラム、ボット*も課されておらずし、および絶対に陰の禁止措置はない。パンデミックに関する医学的真実(98%がそれを望んでいる)を世界に聞かせよう!」
*ロボットによる自動応答プログラム。bot は robot の短縮形。


 2022年5月、マローンとマッカローは、プラットフォーム上で検閲を受けたとしてツイッターを訴え、アカウントの復活を求めていた。その時点ではマッカローの個人アカウントはまだ有効だったが、COVID-19の初期治療法について投稿していたアカウント「@cov19treatments」はTwitterから停止されていた。

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 生物学者で作家のブレット・ワインスタイン(有罪判決を受けた強姦魔ハーヴェイ・ワインスタインとは無関係)は、2人の医師がプラットフォームに戻ったことを歓迎し、イーロン・マスクが彼らを復帰させたことに感謝した。「#TwitterFiles6 (Covid版) が我々の苦境に新たな光を当ててくれますように」と、ワインスタイン氏は付け加えた。

 マローンは、「ブレットは真実の戦士であり、私は彼の友人であることを幸運だと思っている」と答えた。



 ワインスタインは、アンソニー・ファウチ博士とCOVID-19危機への対処をテーマにした、いわゆる「ツイッター・ファイル」の次回作について言及した。

 12月11日、マスクは「私の代名詞は、“ファウチを訴追せよ”だ」とツイートし、COVID-19への対応に大きな責任を負っている米国人医師への法的措置につながる資料を持っていることをほのめかした。



 マスクは、デイブ・リーから、彼のツイートは 「新しいツイッター・ファイルで説明されるのか?」と尋ねられると、「そうだ 」とだけ答えた。
 
 マスクは、これまでにもコロナ関連の施策のいくつかを批判してきたが、強権的な施策の時代に起きた腐敗を明らかにすることに意欲的なようだ。

 120万件以上の「いいね!」を獲得した「ファウチを訴追せよ!」のツイートの後、マスクは「コロナ対策推進派たちは怒っている(笑)」と書き込んでいる。


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西側支配者層は、自国の反ロックダウン抗議運動は否定しながら、中国での抗議活動を賞賛

<記事原文 寺島先生推薦>

Chinese anti-lockdown protesters earn the praise that eluded their Western peers

Establishment politicians and media outlets have praised the ‘freedom-loving’ Chinese, after demonizing those who spoke out against their own lockdowns

中国の反ロックダウン抗議運動が賞賛を得ているが、西側での同じような抗議運動は否定されてきた。
支配者層やメディアは、「自由を愛する」中国民を賞賛しているが、自国で同じような抗議の声をあげた人々は、悪者扱いしてきた。

筆者:レイチェル・マーズデン(Rachel Marsden)
Rachel Marsden is a columnist, political strategist, and host of independently produced talk-shows in French and English.

出典:RT

2022年12月2日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年12月28日


2022年11月27日(日)、中国の上海の路上で、抗議活動中に警官により警察車両に連れ込まれようとされている一人の抗議運動者©  AP Photo


 「市民たちが自分たちの主張を聞いてもらうことができるということ、さらに、非常に多くの人々に関係する、ある特定の問題について抗議活動を行っているということは、本当に重要なことです。権威主義的な国家で、政府が人民を管理している国なら特にそうです。もちろん、私たちはこれらの抗議運動者たちの側に立ちます」とカナダのジャスティン・トルドー首相は今週(11月最終週)、政府のゼロコロナ政策に反対する現在進行中の中国の抗議運動を受けてべた。

 トルドーはどこで支援をしただろうか?さかのぼること2020年の3月に、フランス在住の我々市民の同胞たちが、厳しい罰金で脅されて、2ヶ月間以上も家に閉じこもるよう命じられていた時には。当時、個人的な外出が認められたのは、決められた2~3の理由のうちのひとつの理由により外出許可を認可された人だけだったのに。

 外出が許される理由には、離れた場所からではできない仕事をすることや、食料品店に買い出しに行く(しかも、外で並んで待つ際はお互いの距離を確保するよう命じられていた)ことや、医者に診察に行くことや、家族のことで緊急に外出することなどがあった。運動のために1時間の外出は、一日一度なら認められていたが、家から周囲一キロ以内に制限されていた。

 トルドー首相と仲間である西側諸国の指導者たちは、程度の差はあれ、独自のゼロコロナ措置を採っていたのだ。しかし他国の政策を、市民を自宅監禁させ、市民から様々な権利を奪っていたことを理由に「専制的である」と非難する国は皆無だった。これらの措置により、各国の市民は、移動、集会、抗議活動、労働の自由が奪われ、さらには国の干渉を受けることなく自身の健康や幸福を追求する方法の決定権を剥奪されていたのにも関わらず、だ。

 トルドー首相自身、「フリーダム・コンボイ(輸送の自由)」運動への参加者や支援者たちに対して、緊急事態法を発動することまでしていた。この運動の参加者たちが要求していたのは、ワクチン接種者と非接種者を平等に扱い、同等に仕事や移動ができるようにすることであったが、トルドー首相は 運動の参加者たちをテロリスト扱いにし、参加者や支援者たちの銀行口座を閉鎖するよう命じたのだ。



関連記事:Anti-lockdown protests break out in China (VIDEOS)

 そして今、Covid関連の取締に反対する抗議運動が中国で発生するや、西側の支配者層は、これらの抗議運動に共感を示している。そんな共感は、同じような抗議運動をしていた自国の市民たちに対しては決して示してこなかった。「中国政府のゼロコロナ措置に反対するこれらの抗議運動の中心となっているのは、自由を求めている若い世代だ」と今週CNNは報じた。しかし2020年3月、ロックダウン措置を取ろうとしていたフランスについて、CNNは、「緊急を要しない外出は全て法律違反となり、罰金が課されることもある」とし、当然のこととして、「フランスは、マクロン大統領が、各種事業を保護した上でのロックダウンに入る」と報じていた。今年上旬、CNNは以下のように報じていた。「欧州内の声の大きい、規則無視のワクチン未接種の少数派の人々は、社会のはみだしものになりつつある」と。政府の厳格な対Covid政策からの自由を要求しているこのような人々が、突然、ただのフーリガン(サッカーにかこつけて暴動をおこす人々)扱いにされたということだ。 

 英国のディリー・メール紙は、先日、中国の抗議運動を中国における「Covid革命」だと持ち上げて報じていたが、2020年8月に、ロンドンの路上に、推定一万人の抗議運動者が繰り出し、ロックダウン措置や各種の強制措置に反対の声をあげた時は、これらの抗議運動者たちを「陰謀論者」だと蔑んでいた。

 スカイ・ニュースは中国でのこの抗議運動を、「何ヶ月にもわたって激しい制限を課されてきた多くの市民たちの堪忍袋の緒がついに切れたのだ」と報じていた。しかし2020年9月には、同社は英国で起こった抗議運動を、反ロックダウン派である陰謀論者的な変わり者がふざけているだけだ、と報じていた。 

 ドイツの国営放送局であるドイチェ・ヴィレは、中国での抗議活動を、「中国における素晴らしい転機」であり、「さらにこの先広がりつつある」と報じた。しかし同局は、ドイツ政府の対策に対するドイツ国内の抗議運動は、「不法」であり、「より好戦的な色彩を帯びつつある」と報じていた。


関連記事:China sets record for daily Covid-19 cases

 今週、私はフランスのテレビ局の報道を耳にしたが、それによると、一人の専門家が、中国政府が非難から逃れるために、西側諸国の干渉により、この抗議運動が行われていると主張しているとして、激しく攻撃していた。しかし、これらの専門家たちは、カナダ政府当局者たちを批判すべき時は、どこにいたのだろうか?当時 カナダ政府当局者たちは、抗議運動者たちが示していた懸念を不法行為だととらえ、このような行為は、米国の大衆迎合主義者たちが干渉しようとして利用している有効な手口に過ぎないと考えていたのではなかったか?それなのに、このような抗議運動は外国からの干渉によるものだと考えている政府が、中国政府となれば、そんな考え方は全く考慮に入れられなくなるということだ。

 西側メディアの報道も、中国当局が抗議運動参加者たちを逮捕したり、打ち叩いたりすることを集中砲火のごとく批判していた。そんな批判の声は、ここ数年で起こったフランスの抗議運動参加者たちが被害を受けた際、どこであがっていただろうか?フランスでは、政府の行き過ぎた措置に反対して抗議運動をしていた人々のうち、警察の取締で、少なくとも24名の人の目が失明させられ、5名の手が切断されている。

 今週、シャルル・ミシェル欧州理事会議長が北京に赴き、中国の習近平国家主席と面会した。この動きは、エネルギー供給危機とインフレに苦しみ、不安定な経済状況とエネルギー供給危機に置かれ、産業の空洞化の危険に喘いでいる欧州が、中国との貿易関係の発展を求めている中でのものだ。欧州当局者たちが同議長に託したのは、習近平総書記とCovid措置について話し合うことであるとポリティコ紙は報じている。 しかし、ミシェル議長にそんなことができる道理がどこにあるというのだろう?昨年ミシェル議長が欧州諸国に求めていたのは、ワクチン強制接種に反対する市民運動と戦うことだったのだから。

 自国の市民が立ち上がり、政府によってますます強化されている抑圧に反対しようとすれば、西側諸国の支配者層は迅速に対応して、これらの抗議運動参加者を非難し、自称民主主義(しかし実際のところは民主主義でもなんでもない)のもと保証されているはずの基本的人権を剥奪しようとしている。 それなのに同じような状況が中国で展開されれば・・・。結局、自由を求める声の拡散は止められない、ということですね。

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ウクライナにおけるファシズムの歴史II部:OUNの起源1941-1945

<記事原文 寺島先生推薦>

History of Fascism in Ukraine Part II: The OUN During World War 2, 1941-1945

ウクライナにおけるファシズムの歴史II部:第二次世界大戦中のOUN191-1945

筆者:ヒューゴ・ターナー(Hugo Turner)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月5日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月28日


第14ヴァッフェンSS ガルシア師団


 ウクライナ民族主義者組織(OUN)は、戦後最も成功したファシスト集団である。戦時中、OUNは、120万人のユダヤ人の命を奪ったホロコーストをドイツ軍が実行するのを助けるのに、大きな役割を果たした。彼らはまた、今日の西ウクライナにあたるヴォルヒニアとガリシアに住むポーランド人に対する大量虐殺を試みた。これらの大量殺人は、想像を絶する残忍な方法で行われた。ユダヤ人は鉄の棒で殴り殺され、ポーランド人は斧で切り刻まれ、のこぎりで真っ二つにされた。OUNは、犠牲者を辱め、拷問して死に至らしめることにサディスティック(猟奇的)な喜びを感じていた。ロシア人は生きたまま皮を剥がされることもあった。2014年のウクライナにおけるCIAのクーデターにより、OUNのイデオロギー(思考基盤)はウクライナ国家の公式イデオロギーとなった。ウクライナのユダヤ人現大統領ゼレンスキーでさえ、家族がウクライナでの大量殺人の犠牲者であるのに、ステパン・バンデラについて「彼は一定数のウクライナ人にとって英雄であり、それが普通であり、クールだ」と言っている。ウクライナの歴史は、OUNをナチスとソビエトの両方と戦った英雄として描くために捏造されてきた。

 しかし、ウクライナの歴史が捏造されたのは、マイダン後のウクライナという狂気の館の中だけではない。OUNは、アメリカ、イギリス、ドイツ、ポーランドなどの政府と密接な関係にあったため、自分たちの歪んだ神話をいろいろな出来事の中心的な流れとして受け入れさせることもできたのだ。CIAや他の諜報機関は、OUNは非常に貴重な存在なのだから、その戦時中の犯罪を暴露することはできないと考えた。同様に重要なことは、OUNが反ソビエトのプロパガンダの大きな情報源となったことだ。そして、それが歴史の主流となった。冷戦時代、学問は資本主義と共産主義の戦いにおける主要な武器となった。現在もそれは変わっておらず、ロシアとの新たな冷戦において、ウクライナは現在最も重要な戦場となっている。ウクライナ・ファシストの狂気と残虐性についての真実について西側国民に目隠しをすることが、ウクライナに関して言えば、メディアと学会の主要な目標である。ウクライナは、旧ソ連および東欧の旧ワルシャワ条約機構の国々で繰り広げられている「記憶戦争」の最も極端な例にすぎない。親欧米政府は、ナチの協力者を英雄に仕立て上げ、ソ連を悪魔化し、ソ連がファシズムを倒すために果たした役割の記念碑すべてを破壊しようとしている。私は、主にグルゼゴルツ・ロソリンスキー・リーベ(Grzegorz Rossolinski-Liebe)著『ステパン・バンデラ:あるウクライナ人民族主義者の生涯とその後』という素晴らしい著作に依拠するつもりである。この本は、OUNの歴史について初めて批判的かつ学術的な説明をしたものである。皮肉にも彼の本は2014年の内戦開始直前に発売され、ウクライナの民族主義者たちはこの本の出版を阻止するためにあらゆる手を尽くし、著者を誹謗する公開キャンペーンを繰り広げた。

 この連載の第1部では、ウクライナ・ナショナリズムの起源とそのファシズム運動への変容を記述した。現在のウクライナは長い間、ロシアが支配する中央と東のウクライナに分かれていたことを説明した。西ウクライナはもともとポーランドの一部だったが、18世紀にポーランドが解体されるとオーストリア・ハンガリー帝国の一部となった。第一次世界大戦後、第二共和国として知られる新生ポーランドの一部となり、短命だった西ウクライナ共和国を吸収した。私は、OUNの起源とポーランド国内でのテロ作戦を追跡した。OUNは、暗殺、虐殺、放火、その他の犯罪に手を染めた。このため、OUNの国内幹部指導者ステパン・バンデラは、投獄されたが、2度の裁判によって有名になった。OUNでは、亡命中の指導者たちが指揮権を持っていた。1939年9月、ドイツのポーランド侵攻のお陰で脱獄したステファン・バンデラは、OUNの指導権を握ろうとした。このため、組織はアンドレイ・メルニクに呼応するOUN/Mとバンデラに呼応するOUN/Bに分裂した。ドイツ軍のポーランド侵攻後、ソ連軍の侵攻前の2週間という短い期間を利用し、OUNは数千人のユダヤ人を虐殺し、脱出または帰国しようとしたポーランド軍敗残兵の多くも殺害した。その後、OUNの指導者たちは西ポーランドに向かった。東ポーランドは西ウクライナとなった。到着するや、ソビエト軍はウクライナを再統一し、ポーランドの民族主義者とOUNを厳しく取り締まった。総督府として知られるドイツ占領下のポーランドに亡命したOUNの指導者たちは、ソ連から逃れてきた数万の支援者たちとともに、何十年もスポンサー(資金援助主)だったドイツと密接に協力して、ソ連への侵攻計画作成を立てるのに忙しかった。ステパン・バンデラや他のOUN/Bの指導者たちは、ドイツのソ連侵攻の数ヶ月前にその計画を起草した。それは「闘争と活動」計画として知られていた。それは、OUN/Bが繋がりを活性化してナチスを歓迎し、ユダヤ人、ポーランド人、すべての非ウクライナ人、およびOUNに反対するウクライナ人を殲滅するための民兵を結成することを求めたものであった。OUN/Bは、ファシスト的な反共産主義、反ユダヤ主義の呼びかけ文句を大量に考え出し、それでポーランド中を覆い尽くした。OUN/BとOUN/Mは共に、軍事訓練、警察訓練、政治訓練を行うドイツ軍情報部(Abwehr)と緊密に連携していた。800人のOUN/B隊員が、国防軍に続いてソ連に入り、ウクライナ人を動員してナチスの傀儡政権を計画するための特別任務部隊に参加した。他の800人のOUN/Bメンバーは、Abwehrが統制するナハティガル(Nachtigall)大隊に参加した。OUN/Bはまた、西ウクライナ・ソビエトに2万人の活動的なメンバーと動員可能な150万人の支持者の繋がりを持っていた。OUN/Bは、ステパン・バンデラをプロヴィドニク、つまりファシスト独裁者とするウクライナ「独立」国家を宣言することを計画した。しかし、ヒトラーはウクライナに対して別の計画を持っていた。ヒトラーはウクライナ人をロシア人同様、人間以下のスラブ人と見なし、ドイツ人入植のために虐殺するか奴隷にしなければならないと考えたのだ。ウクライナの豊かな黒土はドイツ帝国の食糧となる。ヒトラーは、ウクライナはドイツにとって、イギリスにとってのインド、ネイティブ・アメリカンを一掃したアメリカにとってのアメリカ合衆国のような存在になると考えていた。実際OUNには、東方占領地担当大臣アルフレッド・ローゼンベルクという、ナチスの強力な協力者がいた。ローゼンベルクはOUNが支配するウクライナをかけがえのない同盟国として考えていた。

 1941年6月22日に始まったナチス・ドイツのソ連侵攻の前夜はこのような状況であった。この戦争で、ソ連では2700万人の死者が出ることになる。ウクライナでは520万人の市民が死ぬ。230万人のウクライナ人がドイツの奴隷労働キャンプに強制送還されることになった。ウクライナの270万人のユダヤ人のうち、160万人が殺された。700の都市、28,000の村が破壊された。OUNがナチスのユダヤ人絶滅計画の成功に及ぼした影響は劇的なものだった。西ウクライナでOUNのプロパガンダを長い間受けてきた地域では、現地のユダヤ人が生き残る可能性は相当低かった。西ウクライナのテルノピルでは、97%のユダヤ人が殺された。これに対して、東ウクライナのハリコフでは、91%のユダヤ人が生き残ることができた。

 OUN/Bは、侵攻の日程を事前に知らされており、来るべき大虐殺の青写真を描いた「闘争と活動」計画をウクライナに密かに持ち込んでいた。OUNの活動家たちは、民兵隊や現地政府を設立して、地方に広がっていった。1941年6月25日、OUN/Bはリヴィウで反乱を起こそうとしたが、ソビエト軍によって鎮圧された。OUN/B軍は、退却する赤軍を攻撃することもあった。しかし、彼らは通常、赤軍が退却するのを待って、その地域に入った。1941年6月30日、ドイツ国防軍はウクライナのナハティガル大隊と共にこの町に進駐し、地元の人々は彼らをステパン・バンデラ大隊と呼んで花を手に歓迎した。ナハティガル大隊はラジオ局を掌握し、ナチスとOUNのプロパガンダ放送を開始した。その朝、ドイツ軍とOUNは、ソ連の秘密警察NKVDが、ドイツの侵攻が始まると、政治犯をドイツ軍に協力させないように虐殺したことを知った。多くは、ローマン・シュケビッチの兄のように、恐ろしい犯罪を実行する前に殺されたOUNメンバーであったことは間違いない。このようなことは多くの地域で起こり、OUNは、このことを、ユダヤ人を生贄として殺害する口実にした。彼らは、NKVDの情報提供者であるという濡れ衣を着せられ、ソ連秘密警察の犠牲になった人々の死について責任を負わされたのだ。これはウクライナ西部全域で行われるようになり、処刑があまり行われなくなった場所では、数年前のテロで処刑された人々を掘り起こし、大衆の怒りに火をつけた。こうして、1941年6月30日には、すでにリヴィウのユダヤ人に対する小規模な虐殺が始まった。その夜8時、ヤロスラフ・ステツコは、ステパン・バンデラの指導の下で、新しいウクライナ国家を宣言する式典を行った。この日は、OUNの亡命者たちによって今でも祝祭日として祝われている。ステツコと一緒に参加したのは、リヴィウのギリシャ・カトリック教会の府主教アンドレイ・シェプティツキー、聖職者でナハティガル大隊のイワン・フリンオク、そしてドイツ軍情報部(Abwehr)からはハンス・コッホとヴィルヘルム・エルンスト・ツ・アイケルンの二人が出席した。シェプティツキーはバンデラによるウクライナ国家建設を支持したが、少数民族に対する寛容さも少し口にしている。彼の教会は、後にユダヤ人とポーランドのカトリック教徒に対する大量虐殺の扇動に関与していることが明らかになる。ドイツ軍情報部(Abwehr)将校はこの祝典を歓迎したが、独立を宣言する時期ではないと警告し、ヒトラーだけが決定できることだとした。

 ヒトラーはすでにウクライナの「独立」反対を決めており、ステパン・バンデラがウクライナに戻ることを禁じられていたのはそのためだ。OUNの神話やOUNの西側弁解者たちによれば、ステファン・バンデラはステツコの早すぎる独立宣言のために直ちに強制収容所に送られたという。実際には、彼とステツコは「名誉監禁」され、当初はベルリンに監禁され、自由に歩き回ることができ、自衛のためのピストルの携帯さえ許されていたのである。その後、OUN/BがOUN/Mの指導者を白昼堂々と殺害したことが、OUN/Bに対するドイツの緩やかな弾圧を引き起こした。この話はまたあとで触れる。バンデラが強制収容所に送られた時も、ルーマニア鉄衛団のリーダーやスターリンの息子などと同じように、後で役に立つかもしれない囚人のための特別区画に収監された。バンデラには特別な特権が与えられ、強制収容所の他の収容者と同じ扱いを受けなかったことは言うまでもない。ガス室に送られたり、奴隷にされたり、銃で撃たれたり、拷問されたり、実験台にされたり、餓死させられたりしたわけではない。それどころか、彼はOUNとの仲介役である妻の面会を許された。バンデラは、週1回のケアパッケージ(家族からの差し入れ)を受け取り、独房に閉じ込められることもなかった。

 1941年7月1日までにリヴィウに戻るために、OUN/Bとドイツ軍は民衆を鞭打ち、リヴィウ市のユダヤ人へ怒りの矛を向けさせた。怒った暴徒は何千人ものユダヤ人を取り押させ、NKVDの犠牲者が発見された刑務所に連れて行った。ユダヤ人の男たちは、腐敗した死体を動かすよう強制され、そして残虐に撲殺された。ユダヤ人女性たちは、しばしば強姦された後、腐乱した死体を洗い、その手にキスすることを強制され、そして撲殺された。また、ドイツ軍によって射殺された者もいた。OUN/Bは到着したその日に、処刑を行うためにウクライナ人民兵を結成していた。彼らはすぐに、SSの指導者ハインリヒ・ヒムラーの命令下のウクライナ警察に編入された。ウクライナ人民兵は親衛隊に従うが、ステツコには忠実であり続けた。OUN/Bがホロコーストで大きな役割を果たすことになるのは、補助的な警察の新兵としての役割であった。犠牲者を一網打尽にし、あらゆる反ユダヤ法を執行するのが彼らの役割であった。彼らはまた、しばしば処刑人として行動した。リヴィウでの殺戮の多くは、OUNのプロパガンダに扇動された怒れる暴徒たちによって行われた。彼らは、殺す前に犠牲者を辱めるのが好きだった。女性は裸にされ、しばしば路上で強姦された。ユダヤ人は、ヤジを飛ばす群衆の前で、割れたガラスを素手で掃除したり、道路掃除を強制された。群衆は彼らを鉄のケーブルで鞭打った。ユダヤ人は銃殺される前に共産主義者の歌を歌うことを強制されたり、撲殺される前にスラバ・ウクライニ(ウクライナに栄光あれ)と叫ぶことを強要されたりした。至る所にナチスとウクライナの旗があり、壁には大量虐殺を目的としたOUNの呼びかけ文句が貼られていた。このポグロム(虐殺)は1941年7月3日まで続いた。7月2日、ドイツ軍は数千人のユダヤ人を森に連れ出し、大量処刑した。ウクライナの農民は、犠牲者から奪う予定の戦利品を運ぶために、田舎から荷車を持って流れ込んできた。大量虐殺の主要な動機は強欲さであることが多い。ユダヤ人が所有する事業をドイツ企業が買収するというのがその最たるもので、アメリカの投資家が資金を提供することがよくあった。ソ連に大企業はなかった。しかし、大量虐殺を行ったウクライナ人やその他の協力者、あるいはドイツ兵は、犠牲者たちの私有財産を略奪することができた。ウクライナのポグロムでは、強盗と恐喝が日常茶飯事であった。被害者はいつも脅されて貴重品を巻き上げられ、そして結局は殺された。バンデライト(ステパン・バンデラの信奉者)は、被害者から見れば、盗賊と同義語になった。最初のリヴィウ・ポグロムでは、数日で約8000人のユダヤ人が殺されたが、ナチスとOUNにしてみれば、それはまだほんの手始めだった。リヴィウ・ポグロムの間、OUN/Bはポーランド人教授とその家族、数百人の生徒の死亡者一覧表も提供した。教授たちは、その家族と100人のポーランド人学生とともに射殺された。ドイツがウクライナの独立を認めず、バンデラとステツコを逮捕したことに怒ったOUN/Bを喜ばせるために、1ヶ月後、ドイツは1941年7月25日から28日まで、大量殺人者シモン・ペトリウラ(Symon Petliura)に敬意を表して「ペトリウラ・デー」と呼ばれる第二次リヴィウ・ポグロムを開催する許可を出した。ペトリウラは、第1部で紹介したロシア内戦での軍隊によるユダヤ人虐殺で悪名高い人物である。

 郡部では同じ形式が繰り返された。OUN/Bは独立記念日の式典を行い、すべての共産主義者の象徴を破壊し、ウクライナの旗とナチスの鉤十字を立て、そしてポグロムを開始したのである。1941年7月に西ウクライナで最大140のポグロムがあり、3万5000から3万9000人の犠牲者を出した。リヴィウ・ポグロム以外の最大のポグロムはテルノピルとゾロチフにおいてであった。この時期、OUN/Bは単にドイツの命令を遂行するだけでなく、自分たちのイデオロギーに沿った大量虐殺を熱心に実行していた。彼らは、ドイツ軍が誰もいない場所でユダヤ人の虐殺を行った。ハンガリー軍がOUNに大規模なポグロムを禁じると、彼らは反抗的に小さなポグロムを実行し、ドイツ軍に文句を言った。OUNは各地にナチスを歓迎する凱旋門を建て、ステパン・バンデラやアドルフ・ヒトラーを賞賛した。ナチスは憧れの群衆に迎えられ、彼らの侵略はギリシャ・カトリックの聖職者によって祝福された。OUN/Bの活動家は、ヒトラーとドイツ軍を賞賛する「全権委任状」に群衆を署名させた。同時にステパン・バンデラとヤロスラフ・ステツコの解放を求めた。

 ドイツ軍侵攻の初期に、ステパン・バンデラはウクライナの近くに本部を設置し、OUN/Bに命令を伝えるために運び屋を使っていた。彼は命令を発し、ユダヤ人の虐殺を承認していた。1941年6月30日のステツコの独立宣言は、ドイツ軍を怒らせた。バンデラはナチスとの関係修復に全力を尽くした。1941年7月3日、バンデラはクラクフでエルンスト・クント一般政府次官(ドイツ占領下のポーランド)との会談に出席した。バンデラは、OUNの指導者として自分がウクライナを率いることは人民の意思であると主張した。クントは、そのようなことを決められるのはヒトラーだけだと反論した。バンデラは、ドイツの許可がなければウクライナの国家を作ることはできないと譲歩した。1941年7月5日、バンデラはベルリンに送られ、「名誉捕虜」になった。1941年7月8日、何者かがヤルソラフ・ステツコを暗殺しようとした。1941年7月9日、ステツコは逮捕され、ドイツ軍情報部(Abwehr)によってベルリンに護送された。1941年7月12日、ステツコは解放された。1941年7月14日、バンデラは解放された。彼らはベルリンに監禁され、アパートで一緒に暮らした。バンデラは銃の所持を許可され、RSHA(ハイドリッヒの「国土安全保障」部門)が発行したIDを所持していた。この二人は亡命リトアニア人ファシストや日本大使と繋がりを持っていた。ステツコはドイツ人担当者に渡す自伝を書くのに忙しかった。それには、モスクワを主敵と考え、ユダヤ人をモスクワの道具と考え、絶滅させることを全面的に支持すると書かれている。

 1941年7月19日、ヒトラーは東ガリシアを総督府に編入することを決定した。これは、統一ウクライナの支配を望んでいたOUN/Bの神経を逆なでした。彼らの領土は、ドイツ占領下のポーランドに再び吸収されることになった。実際のところ、それはOUN/Bの利益に合致していることが判明した。ガリシアのウクライナ人はポーランド人やユダヤ人より優遇され、ポーランドの教育機関のウクライナ化を継続することが許されたからである。東ガリシアのウクライナ人はファシストの同盟国であるスロバキアやクロアチアのように扱われていた。ナチスは、総督府地域でヴォロディミル・クビィオヴィッチが運営するウクライナ中央委員会の中にUTSKを設立した。クビィオヴィッチは1930年代にOUNの盟友であり、彼らのイデオロギーを共有していたが、OUNより柔軟性があった。クビィオヴィッチは、ナチスと共に戦うウクライナ国民軍の創設を働きかけ、すべてのユダヤ人財産をウクライナ人に渡すべきだと主張した。1943年には、ウクライナ人で構成されたヴァッフェンSSガリツィア師団が創設され、念願が叶うことになる。一方、旧ソ連のウクライナでは、ウクライナ人は容赦なく搾取された。小学校4年生以上の教育はすべて禁止された。ドイツ人は、ソビエト・ウクライナの農民に対する自分たちの振る舞いについて、アメリカ大農園主を手本にした。黒人奴隷と同じように鞭と棍棒でしか抑えられないと考えたのだ。主な目的は、ウクライナの穀物を略奪することだった。その結果、西ウクライナと東ウクライナでは、ナチスの記憶に対する態度が大きく異なることになる。

 1941年8月30日、OUN/BはOUN/Mの指導者であるメリナ・セニークとミコラ・スティボースキーを白昼、ジトーミルの路上で暗殺した。これはドイツ人と他のウクライナ民族主義者を激怒させた。OUN/Bがこの殺害をドイツのせいにしようとしたため、ドイツ人はさらに激怒した。OUN/Mはドイツ軍にOUN/Bの指導者たちの名前と住所を伝え、彼らは逮捕された。ドイツ軍は、OUN/Bの一部の団員を略奪者として射殺し、ベルリンとウィーンの事務所を閉鎖した。彼らは行政や警察からOUN/B団員を粛清しようとしたが失敗した。1941年9月13日、バンデラとステツコは再び逮捕された。それでも二人はドイツとの関係を修復する努力を続けた。両者ともOUN/Bにドイツ軍に抵抗しないよう、また警察や傀儡政権のために新人要員を供給し続けるよう命令を出した。バンデラは、快適な強制収容所に送られた後も、彼の二人の兄弟が強制収容所で死んだ後も、ドイツとの和解の試みをやめなかった。1944年にドイツ軍の敗北が明らかになった時でさえ、バンデラはOUN/Bをナチスと同盟させることに、これまで以上に力を注いだ。ドイツの追放処分は全く効果がなかった。OUN/Bは継続的に新人要員を投入し、勢力を拡大し続けた。ウクライナ警察の上層部は、OUN/B団員を排除せよという命令はあっさりと無視した。つまり、ナチスがOUN/Bを敵に回しても、この組織は警察に新人要員を供給し続け、ホロコーストの遂行に大きな役割を果たすことになったのである。多くのウクライナの警察は、ヴァッフェンSSガリツィア師団に入隊することになる。また、後にUPA(ウクライナ蜂起軍)に加わり、大量殺人の経験を生かしてポーランド人を大量虐殺する者もいた。

 ウクライナ警察は、ドイツの侵攻を受けてOUN/Bが募集したウクライナの民兵から結成された。彼らは「シュッツマンシャフテン」、つまり「補助警察」として知られていた。1942年3月、ナチスの以前の弾圧にもかかわらず、OUN/Bはその団員に大挙して警察に参加するよう命じた。ウクライナ警察は最終的に親衛隊の総指揮官であるハインリッヒ・ヒムラー親衛隊大将の下に置かれた。毎日2時間のナチスの教化教育が命じられた。都市部では、ウクライナ警察は襲撃、強制送還、射殺を支援した。彼らはゲットーの巡回も行った。彼らは反ユダヤ法を施行し、ユダヤ人に識別用の腕輪をつけさせ、地元の人々を聴取して死亡者一覧を作り、犠牲者を集め、捕虜を守り、処刑場まで護送し、特に子供の場合は射殺することが多かった。ナチスは独自の殺人部隊、アインザッツグルーペCを持っており、この部隊も多くの大量処刑を行った。郡部ではドイツ軍もドイツ警察もほとんど存在せず、ウクライナ警察がユダヤ人虐殺の主役となり、その後何年もかけて生存者を追い詰めた。ウクライナ警察は、OUN/Bがリヴィウ・ポグロムで見せたようなサディスティックな残虐性をしばしば見せた。ある生存者は、何十人もの犠牲者と共に浴場に閉じ込められ、聖なる書物の冒涜を強要されたことを語っている。中には、ひげを燃やされ、その火が衣服に燃え移り、生きたまま焼かれた人もいた。他の者は殴り殺された。その間、犠牲者たちはウクライナ人拷問者を楽しませるために歌うことを強要された。ウクライナ警察は、ウクライナだけでなく、ベラルーシ、ポーランド、スロバキアなど地域におけるテロにも使われた。特に悪名高いのは、ローマン・シュケヴィチが所属していた201大隊である。彼は、ワッフェンSSガリツィア師団にも参加し、UPAの指導者となる。シュケヴィチはバンデラのような怪物で、現在では「ウクライナの英雄」として広く知られている。ユダヤ人、ベラルーシ人、ポーランド人の大量殺戮に加え、シュケヴィチは東ウクライナ人をほとんど理由もなく射殺するのが好きで、内心では全員を絶滅させることも考えていたという。シュケビッチのような201大隊の新兵の多くは、1942年にドイツ軍情報部(Abwehr)のナハティガル大隊やローランド大隊に所属し、反パルチザン戦争の一環としてベラルーシの民間人の大量殺戮を行った経験がある者たちである。

 1943年初頭、ハインリッヒ・ヒムラーは、ヴァッフェンSS第14擲弾兵師団としても知られるヴァッフェンSSガリツィア師団を創設した。ヒトラーに迎合するため、ウクライナではなくガリシアと呼ばれた。オーストリア=ハンガリー生まれのヒトラーは、ガリシアはかつてオーストリア=ハンガリー帝国の一部だったので、彼らにはドイツの血が流れているのだろうと考えていたのだ。8万人以上のウクライナ人がガリシア親衛隊に志願したが、受け入れられたのは8000人に過ぎなかった。すぐにウクライナ警察の隊員を募って1万4千人にまで拡大した。SSガリシアを指揮したウクライナ人将軍はパブロ・シャンドルクであった。ガリシア親衛隊は赤軍と戦うために設立された。また、スロバキアの民族蜂起を鎮圧するために投入され、ワルシャワ蜂起後のワルシャワの破壊に大きな役割を果たすことになった。1944年7月22日、ヴァッフェンSSガリシア師団は、当時はかなり大きくなっていたが、パヴェル・リバルコ指揮の赤軍第1ウクライナ戦線に包囲され、壊滅した。ソ連軍の大砲とカチューシャ・ロケットの砲兵隊によって壊滅させられたのである。しかし、ドイツ軍は隊員を増員して部隊を補充することができ、ガリシア親衛隊師団はイタリア、ユーゴスラビア、フランス、チェコスロバキアでパルチザンや民間人に対する汚い戦争に従事するようになった。彼らは終戦の2日後にイギリスに降伏し、バチカンの助けを借りて、ポーランド国民であると主張することによってソ連への送還を免れることができた。その後、彼らはイギリスを経て、カナダやアメリカに移住し、冷戦時代のOUNディアスポラ(離散集団)を強化することになる。カナダとアメリカのほとんどの国民には知られていないが、両国にはこのヴァッフェンSS退役軍人の記念碑がある。

 1943年、OUN/Bが一斉にヴァッフェンSSに入隊し、ポーランド人を絶滅させるためにUPAを設立するのと同時に、OUN/Bは公にはナチスと距離を置き、将来ソ連と戦うために西側同盟国と同盟を密かに結ぼうとしていた。ここで考慮されたのは、スターリングラードでのソ連の勝利がドイツの最終的な敗北を予感させるということであった。先見の明のあるナチスは、すでに逃亡を計画し、西側情報機関と取引していた。アレン・ダレスのようなアメリカやイギリスの諜報機関の強硬派は、現在のファシストの「敵」(ダレスのような人物にとっては、彼らは友人であり仕事仲間だった)の中の熱心な反共産主義者や反ロシア人を使って、ソ連に対する秘密戦争の準備をすでに進めていた。

 ポーランドが1930年代半ばにピエラツキ暗殺事件を調査していたとき、OUNがドイツ軍情報部(Abwehr)だけでなくMI6ともつながりがあることがわかった。このような事柄になると、歴史的証拠は常に無毒化されたものになるか、どうでもいいようなことに内容を限定されてしまう。CIAは何十年もかけて証拠となる記録を破棄し、誤解を招くような記録や改ざんされた記録の機密指定を解除してきた。つまり、戦時中のOUNとMI6、OSS、米軍情報部とのつながりの初期の歴史を知ることは決してできないだろうと言うしかなくなる。

 OUN/Bは1942年4月、すでに西側での印象を改善しようとしていた。第2回OUN/B会議で、彼らはもうユダヤ人排斥行動には参加しないと主張した。同じ会議で、彼らは依然としてユダヤ人を「ロシア・ボルシェビキ帝国主義の道具」と非難している。さらに、OUN/Bは警察を辞めなかったので、ユダヤ人の大量殺戮を実行するための重要な役割を果たし続けた。1943年までに、ウクライナ西部でユダヤ人はほぼ殲滅された。生き残った人々は、OUN/Bの団員だらけのウクライナ警察によって追われる身となった。2月17日から21日にかけて行われた第3回会議で、OUN/Bは①ドイツとソ連の両方と戦う、②(戦犯)ローマン・シュケヴィチが率いる三頭政治によって支配される民主主義政党である、との主張を展開した。1944年7月、OUNは使者を派遣して、西側の同盟国との取引を試みた。使者の中にはOUNの裏切り者とされるものに対しては、血に飢えたような暗殺として振舞うことで知られるOUN内部治安部門またはSBの責任者であるミコラ・レベドが含まれている。レベドは後にCIAから何十年にもわたる支援を受けることになる。1944年7月、OUN / Bは「民主的」という印象操作の更新をさらに進め、偽装団体であるUHVR(ウクライナ最高解放評議会)を作成した。この組織は後にCIAとMI6に多くの新人要員を提供することになる。

 1943年2月のOUN会議の数ヶ月前に、OUNは後にUPAとなるものを立ち上げた。通念とは裏腹に、UPAは武器を盗む必要があるときだけドイツ軍を攻撃した。ドイツ軍との対立を避けるため、密約を交わしていたのだ。UPAはポーランド人を絶滅させるために結成され、OUNはドイツ軍と戦うと公言していたが、UPAはドイツ軍情報部(Abwehr)から密かに資金援助を受けていた。ドイツ軍が撤退すると、Abwehrはドイツ国防軍の膨大な武器備蓄をUPAに密かに引き渡した。しかし、欧米の支持を得るためのOUNの二枚舌戦略は、後に歴史的記録に泥を塗りたくり、OUNがナチスとソ連の両方と戦ったという神話を作り出すために非常に有効だった。UPAは後に、戦犯ラインハルト・ゲーレンの助けを借りて運営されるCIAの代理軍となる。そして、第二次世界大戦終了後、さらに5年間、反ソ戦争を展開する。70年後、マイダンのクーデターによるウクライナのファシズムの復権は、「民主主義」の勝利として全世界で祝われることになった。

 UPAは1942年11月のOUN会議で創設されたが、もともとはUVV(ウクライナ解放軍)と呼ばれていた。OUN/Bは、OUN/Bと同様の思想と方法論を使い、ウクライナで自身の武装集団を率いていたタラス・ブルバ・ボロヴェッツ(Taras Bulba-Borovets)が率いるウクライナのファシスト・ライバル集団からUPAまたはウクライナ反乱軍という名前を盗んだのである。この組織もまた、ユダヤ人や他のウクライナ人の大量殺戮については責任を共有する。OUN/Bはこの敵対集団に戦争を仕掛け、ブルバ・ボロヴェッツの妻や多くの幹部たちを暗殺した。ボロヴェッツがドイツに助けを求めに行ったとき、ドイツは彼をバンデラやステツコと同じ快適な強制収容所に送った。1943年の3月から4月にかけて、OUN/Bはウクライナ警察の多くの団員が辞職してUPAに参加するようにとの指令を出した。1万2000人の警察のうち、5000人がUPAに参加するために辞めた。他のウクライナ人警察官はワッフェンSSガリツィア支部に入隊した。UPAの新兵は、ユダヤ人の大量殺戮の経験を生かして、ヴォルヒニアとガリシアのポーランド人の民族浄化を新たに計画した。ポーランド人には、去るか死ぬかの最後通牒が突きつけられた。しばしば、その脅迫状は、言葉にできないような拷問を受け、体を切断され殺されたポーランド人の体に貼られた。

 1943年の2月から3月にかけて、UPAは実験的な大虐殺を始め、何百人もの命を奪った。ポーランドの村全体が一掃された。まもなくミコラ・レベドは完全な浄化を開始するよう命じた。UPAは略奪品を運ぶために荷車でやってきて、しばしば現地のウクライナ人農民を虐殺に参加させるために募集した。虐殺は、しばしば斧、熊手、のこぎりを使って、これでもかというほど恐ろしい方法で行われた。UPAは、時には何時間もかけて犠牲者をサディスティックに拷問し、死に至らしめた。その目的は、弾丸を節約することと、ポーランド人を恐怖に陥れて逃亡させることであった。また、手榴弾で教会を攻撃したり、町中の人が参加している時に火をつけたりするのも、彼らのお気に入りの方法だった。また、犠牲者を全員集めて町内会を開き、生きたまま焼き殺すことも好みだった。UPAは、大虐殺の数日後に再びやってきて、生存者を皆殺しにするのが常だった。ポーランド人の孤児の世話をしていた修道女さえも虐殺した。1943年7月11日、UPAは1日に96の異なるポーランド人の村に攻撃を開始し、1万人のポーランド人を殺害した。この大量殺戮作戦でUPAは10万から25万人のポーランド人を殺した。UPAはしばしばソ連のパルチザン(外国侵略勢力に対する地元民からなる武装勢力)のふりをし、パルチザンのせいにできるような偽旗攻撃を行うだけでなく、どの村がパルチザンに同情的であるかという情報を集め、ドイツ情報部の役割を担っていたと思われる。

 また、UPAは森やポーランドの村に潜んでいたわずかなユダヤ人をも狩り続けた。UPAはドイツ軍からユダヤ人犠牲者の搾取の仕方を学んでいた。ある者は虐殺されたポーランド人の農地で働く奴隷労働者として収容され、赤軍によって解放される前に殺された。また、医者、歯科医、看護婦、仕立て屋であったユダヤ人はUPAに徴用され、赤軍が近づくと殺害された。後にこれらの事実は、OUNの擁護者たちによって、UPAはユダヤ人団員がいるからナチスと同盟していないとか、UPAはユダヤ人を「救う」ために行動したのだという神話を捏造することになる。1944年までにUPAは2万5000-3万人の団員を抱えるまでに成長した。ソ連軍の進攻時には、UPAは公然とナチス・ドイツと同盟を結んだ。森に隠れていたユダヤ人に対するUPAの攻撃はあまりに凄まじかったので、一部のユダヤ人は奴隷労働者としてなら生き延びられる可能性が高いと考え、ドイツの強制収容所に実際逃げ込んだ。1944年夏、赤軍は西ウクライナを解放する。UPAはポーランド人の殺害を続け、ソビエトの権威に服従するウクライナ人をますます標的にするようになった。税金を払ったり、集団農場に参加した人は、UPAによって殺されたり、家を焼き払われたりすることもあった。UPAはグラジオ作戦*の原型のようなものになった。これは最初ナチスによって作られ、その後MI6とCIAが取り入れた、敵陣の背後で操作するネットワーク作戦のことだ。UPAとソ連との戦争は1950年まで続いた。彼らの繋がりは、1960年代まで存続することになる。UPAの戦争はウクライナだけでなく、ポーランド、ベラルーシ、チェコスロバキアで行われた。このUPAの話は、冷戦を扱ったこのシリーズの第3部に続く。
グラディオ作戦* ・・・(英語: Operation Gladio、イタリア語: Operazione Gladio) は、冷戦期にアメリカ合衆国と北大西洋条約機構(NATO) が操っていた謀略活動である。名称はラテン語の「グラディウス(古代ローマの剣)」に由来する。(ウィキペディア)

 戦争がソ連に有利になり、ナチス・ドイツが敗戦に直面すると、ドイツはますますOUN/Bの必要性を認識するようになった。ナチスはOUN/Bの要請を受け、ステパン・バンデラとの面会を許可した。バンデラ投獄の経緯は謎に包まれている。OUN/Mの殺人事件の後、ゲシュタポの拘留所から快適なザッヘンハウゼン強制収容所に移され、そこでケアパッケージや妻の訪問を受けたのは、一体いつなのか明らかでない。ステツコは1942年1月と言い、バンデラは1943年だと言っている。記録では、1943年10月となっている。1944年9月28日、ドイツ軍はステパン・バンデラを解放し、その後すぐに、ステツコ、メルニク、ブルバ・ボロヴェッツとさらに300名のOUN/B捕虜も解放した。メルニクは 1944 年に OUN/M が西側情報機関に連絡しようとしたときに逮捕されていた。OUN/Mはナチスとの関係がずっと良好で、傀儡政権に任命された。OUN/MはワッフェンSSガリシア支部に多くの新人要員を供給していた。バンデラは戦争の残りの期間、ナチスと協力して自分たちの大義のためにウクライナ人の新兵募集に力を入れる。しかし、バンデラは、OUN軍とブラショフ軍のKONR(ロシア人民解放委員会、1944年11月14日創設)との合併を拒否した。バンデラは、彼らは「ロシア帝国主義者」であると主張した。その代わりにローゼンベルクは、バンデラ、メルニク、クビヨビッチを含む独立したウクライナ国民委員会(UNK)を設立した。1945年2月23日にヴァッフェンSSガリシア師団を指揮する将軍シャンドルクが委員長の座に就いた。これに先立つ1944年12月、バンデラとステツコは、ドイツ軍情報部(Abwehr)・コマンド・ウクライナ空挺部隊の訓練に手を貸した。この部隊はソ連との戦いを継続しようとするUPA代表ローマン・シュケヴィチに100万ルーブルを持ってリヴィウに降下する予定になっていた。バンデラはすぐに戻ってくるという伝言を送ったが、その約束は守られなかった。ステツコは、1941年6月30日の宣言により、自分はまだウクライナの首相であると主張した。これによりOUN / Bによる波のような大量虐殺が解き放たれた。

 ギリシャのカトリックのクリスマスを家族で祝ったバンデラが、次に訪れたのはドイツのワイマールだった。バンデラは、OUN/Bは最後までナチス・ドイツに「全面的な支持」を与えなければならないと主張した。彼は、まもなく創設されるウクライナ国民軍(UNA)の勧誘に奔走していた。バンデラはベルリンに3週間滞在した。その後ウィーンに向かい、そこでOUN外国人部隊(ZCh OUN)の責任者に選出された。1945年2月5-6日、ウクライナのOUNはバンデラを指導者に選出したが、彼は亡命したままのほうがいい、と判断した。1945年3月17日、ドイツ軍はウクライナ国民軍(UNA)の創設を発表した。ヴァッフェンSSガリシア師団はUNAの第1師団と改称され、その司令官シャンドルクがUNAの司令官に任命された。一方、バンデラは赤軍の接近に伴いウィーンを脱出し、チェコスロバキア、オーストリアのインスブルックに逃れた。バンデラはやがて、米軍が占領地に設立した諜報機関BND(Bundesnachrichtendienst)の初代総裁で、悪名高いラインハルト・ゲーレンの保護下に置かれることになる。ゲーレンは、ドイツ軍情報部(Abwehr)で占領下の東欧を担当していたことから、アメリカの情報機関に採用されたのである。1944年の前半にドイツ軍が赤軍から逃げ帰ったとき、12万人以上のウクライナの協力者と戦争犯罪者が一緒に西に逃げ帰った。冷戦時代、これらの逃亡したウクライナ人戦犯の多くは、西側の情報機関のために働くことになった。その多くは、最終的にアメリカやカナダに再定住することになる。ウクライナのファシズムは、何十年もの間、亡命先で生き続けることになる。最終的には、西側の資金援助者の助けを借りて、ウクライナで再び権力を掌握し、新たな秘密戦争の火種となり、NATOとロシアの間で現在進行中の代理戦争が引き起こされることになる。

 ウクライナにとって、戦争が本当に終わるのは1950年である。しかし、それは第3部の主題である。今回の第2部は、戦争中のウクライナの歴史の表面をかすったに過ぎない。ナチス・ドイツの犯罪については、独自の記事や書籍が必要であろう。ナチスは巨大な大量殺戮組織を作り出した。しかし、彼らはあらゆる段階でウクライナの協力者を頼りにしていた。ドイツ軍のウクライナ征服とソビエト軍のウクライナ解放についても記事が必要だ。これらは、何百万人もの男たちの間で戦われた途方もなく巨大な戦いであった。

 しかし、OUNの罪は明らかである。彼らは、ウクライナ人に大量殺人を実行するよう喧伝した。OUN/Bは、1941年と1943年にも大量殺戮を実行する民兵を作り出した。彼らは、ホロコーストで主要な役割を果たしたウクライナ警察に新人要員を供給した。彼らはOUN/MとともにヴァッフェンSSガリシア師団に参加した。彼らはポーランド人に対する大量虐殺と民族浄化を実行するためにUPAを結成した。バンデラはこれを直接監督することはできなかったが、投獄される前に計画を思いつき、釈放後はナチスのために熱心に働いていた。バンデラはOUN/Bの犯罪への関与を決して認めず、ましてやそれらについて謝罪したり、(逆に)非難をすることもなかった。彼のOUN信奉者たちは、言葉では言い表せないような残虐行為を積極的に実行に移した。バンデライトは、殺人的な盗賊の代名詞となった。OUNの歴史について書かれたものは、恥ずかしいほど数がなく、その多くはOUNを支持する立場から書かれたものであった。悲しいことに、学問の性質上、OUNの歴史が重要であればあるほど、「ロシアの宣伝屋」というレッテルを貼られるのを恐れて、あえて語る人が少なくなってしまうのだ。

 2004年のオレンジ革命の後、ステパン・バンデラは「ウクライナの英雄」に認定された。彼を記念した切手も発行された。2014年のマイダンのクーデターでは、ステパン・バンデラの巨大なポスターが舞台に掲げられた。2014年当時、西側でステパン・バンデラやOUNのことを聞いたことがある人はほとんどいなかった。2022年の今、世界は核戦争の瀬戸際にあり、世界経済は崩壊しつつある。すべては、CIAをはじめとする西側の情報機関が80年近くウクライナのファシストを代理人として使ってきたためだ。第3部、第4部では、冷戦時代、冷戦後、マイダン・クーデター、ウクライナ内戦に至るまでのOUNとその思想的継承者の歴史をたどる予定である。

出典:
私の主に情報源とした著作は『ステパン・バンデラ:あるウクライナ民族主義者の人生とその後:ファシズム、ジェノサイド、そしてカルト』である。これはステパン・バンデラと OUN の詳細な歴史である。学術的な反ソ連の標準的な偏りがかかっているが、必読の書である。

 また、UPAによる大量虐殺の犠牲となったポーランド人の生存者の証言集であるLucina Kulinskaの『国境地帯の子どもたち(Children of the Borderlands)』(ルシナ・クリンスカヤLucyna Kulinska著)を読んだ。英語版はEBayで購入できる。この本は、身の毛もよだつようないろいろな出来事をありありと描写している。しかし、この本は反ソビエトの観点から編集されている。それでも、著者は、親ウクライナのポーランド政府が隠蔽しようとしている、忘れられた大虐殺を暴露したことは賞賛されるべき。

 『ヒトラー・ナチの陰、戦争犯罪、米諜報部、そして冷戦(Hitler's Shadow Nazi, War Criminals, U.S. Intelligence and the Cold War)( Richard Breitman and Norman J.W. Goda著)には、ミコラ・レベドとCIAとOUNの関係についての章がある。機密解除された米国諜報機関の文書に基づき、どうでもいいようなことに内容を限定された記述が提供されている。

 Wendy Lower著『Nazi Empire Building and the Holocaust in Ukraine』は、ドイツの占領と大量虐殺を実行した複雑な機構について恐ろしい描写をしている。しかし、OUN/Bを論じるときには、常にナチスに敵対するものとして描いており、きわめて誤解を招きやすい。おそらくそれは、ハーバード・ウクライナ研究所が彼女の研究に資金を提供したためだろう。さらに悪いことに、彼女は典型的な冷戦の宣伝者/歴史家であるティモシー・スナイダー(Timothy Snyder)と緊密に仕事をしており、彼はこの本の編集を手伝っていた。一般的に、著者の表に現れない繋がりを見るには、ほとんどの人が読み飛ばしてしまう謝辞欄を見ることだ。

モス・ローブソン(Moss Robeson)によるOUNの歴史は、以下の動画を参照。


 私のお気に入りの一連のドキュメンタリー番組「未知の戦争」で、ウクライナを取り上げたものもあった。その番組では、OUN/B のことは出てこないが、ウクライナを解放する壮大な戦争について描写している。



 以下は、エバン・リーフ(Evan Reif)によるOUNの歴史だ。

パート1
How Pre-WW II Ukrainian Fascists Pioneered Brutal Terror Techniques; Later Improved by CIA, Now Ironically Taught to Descendants

パート2

How Monsters Who Beat Jews to Death in 1944 Became America’s Favorite “Freedom Fighters” in 1945—with a Little Help from Their Friends at CIA

エバン・リーフによる、ウクライナにおけるソ連のパルチザンの英雄たちの記事はこちら

Glory to the Heroes: Sidor Kovpak and the War for Ukraine’s Memory

ジェラルド・サスマン(Gerald Sussman)による、OUNとCIAについての記事はこちら

Ukraine: The CIA’s 75-Year-Old Proxy

私が読んだ、冷戦期のOUNについて触れた記事は以下の通り。

Nazis and the CIA
http://anti-imperialist-u.blogspot.com/2014/06/nazis-and-cia.html
Operation Gladio
http://anti-imperialist-u.blogspot.com/2014/06/operation-gladio_23.html
The World Anti-Communist League Part 1
http://anti-imperialist-u.blogspot.com/2016/07/irancontra-pt-3-wacl.html
The World Anti-Communist League Part 2
http://anti-imperialist-u.blogspot.com/2016/08/irancontra-pt-4-wacl-2.html
Ratline: the Vatican, The Nazis, and the CIA
http://anti-imperialist-u.blogspot.com/2019/07/ratline-vatican-nazis-cia-v2.html
Old Nazis, New Right
http://anti-imperialist-u.blogspot.com/2017/10/old-nazis-new-right.html

ゼレンスキーの発言についてはこちらの記事から引用
Lawmakers ask Zelensky to return ‘Hero of Ukraine’ title to Bandera, Shukhevych

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解説:ロシアの「対LGBTQ喧伝法」改正案の詳細

<記事原文 寺島先生推薦>

Russian ‘LGBTQ propaganda’ law signed by Putin explained
The new legislation mandates fines for anyone promoting non-traditional relations, pedophilia, and gender reassignment

プーチン大統領が署名した、ロシアの「対LGBTQ喧伝法」の解説
この新法では、非伝統的な家族関係や小児性愛や性転換に関する情報を拡散した人には罰金刑が課される

出典:RT

2022年12月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月26日


2022年12月2日、モスクワ郊外のノヴォ・オガリョヴォ(大統領官邸のひとつ)での安全保障理事会に出席中のウラジミール・プーチン大統領©  AP / Kremlin Pool Photo

 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、「LGBTQに関する喧伝」行為を完全に禁止する法律の承認に署名した。 この法律は、非伝統的な性的関係や小児性愛や性転換を推進するような情報の拡散行為を犯罪とするものだ。さらに同法により、 この法に違反した外国人をロシアから国外退去できることになった。

 プーチンがこの法案に署名したのは、12月5日(月)のことで、ロシア国会の上院と下院両院が、先月(11月)下旬にこの法案を了承したことを受けてのものだった。

1 この法案が禁じている行為は何か?

 この法が禁じているのは、「未成年者及び成人」に対して、LGBTQに関する情報を拡散することだ。そして対象となるのは、「メディアやインターネットや文学作品や映画」であるとされている、と先月国会から 出された文書には記載されていた。

 禁止されているのは、非伝統的な性的関係や性的指向や小児性愛や性転換を推進する内容だ。

 この法律のもと、非伝統的な性的関係や性的指向を表現するような広告も禁止される。

2 違反者などのようか処罰を受けるのか?


 この新しい規制に違反すれば、個人としては最大40万ルーブル(6600ドル:約72万円)、企業としては最大400万ルーブル(6万6千ドル、約720万円)の罰金が課される。違反した外国人は国外退去させられることになる。

 議会でこの法案が何度か審議された際、議員たちは、罪を繰り返す人々には厳しい罰を加えるという修正案は拒絶した。

3 これまでの法律との違いは?

 未成年者に対するLGBTQに関する情報の拡散を禁じた2013年の法律とは違い、この新法では、対象が全ての年齢層に広げられ、小児性愛や性転換に関する内容も含まれることになった。 これらの件は、前の法律では、明白には規制されていなかった。

4 西側からの批判にロシアはどう対応しているか?

 ほぼ西側諸国の33カ国の代表者から成り立っている自称「権利の平等を求める連合」という団体は、LGBTQの人々に「恐怖と脅迫の気持ち」を与え、「ロシア在住の全ての人々の人権に打撃を加えている」として、ロシア政府を非難している。

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 米国のアントニー・ブリンケン国務大臣は、この法律は、「ロシアにおける表現の自由やLGBTQIなどの人々の人権が、さらに深刻な打撃を受けることになるものだ」と非難した。

 ロシアの駐米大使は、ブリンケン国務大臣の声明を、「我が国の内政問題への大きな干渉である」と非難し、さらに「ロシアは家族についての伝統的な価値観を常に保護しようとしている」とし、「米国に主導された西側の目論見による、人権に関する似非リベラル的で間違った考え方の他諸国への押し付けは拒絶する」と語った。

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ファウチの嘘のせいで人々が死んでいる---イーロン・マスク談

<記事翻訳 寺島先生推薦>

Fauci lied, people died – Musk
“My pronouns are Prosecute/Fauci,” the new Twitter boss has announced

「私の代名詞は、“ファウチを起訴せよ”だ」と新しくツィッター社の最高責任者になったマスク氏が発表

出典:RT

訳注:マスク氏が「代名詞」という言葉を持ち出したのは、性の多様化問題で、heやsheなどの性別代名詞についての議論が白熱化している状況を揶揄するためだった。

2022年12月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月25日


©  Chip Somodevilla / Getty Images
 
 テスラ社とツィッター社の最高責任者を兼任するマスク氏の発言が、12月11日(日)、SNS上での大炎上を呼んだ。マスク氏は、Covid-19皇帝であるアンソニー・ファウチ博士を捜査の対象とすべきであり、起訴すべきであると主張したからだ。 その根拠は、ファウチ博士が、国会の宣誓証言で、中国の武漢の研究所に資金援助をしたことについて、嘘の証言をしたとされていることだ。

 当初は、マスク氏がただふざけて笑いを取ろうとしているだけのように思われていた。マスク氏がまずあげた投稿は、もうすぐ退任する大統領首席医療顧問のファウチ博士が、ジョー・バイデン大統領の耳元で、「我が王よ、今ひとたびのロックダウン措置を」と囁いているネタだったからだ。

 しかし、ファウチ博士の名前が60万以上の件数で呟かれ、トレンド入りした後に、マスク氏はその件について詳しく述べないといけないと感じたに違いない。それでマスク氏は、ファウチ博士主導による米国のCovidの大流行に対する対応がなぜ捜査の対象になるべきなのかについての自身の考えを述べたのだ。

  「ファウチは議会で嘘の証言をしたじゃないか。奴は機能獲得研究に金を出していたんだから。その研究のせいで何百万もの人が亡くなることになったんだ」とマスク氏は、ある批判の声に対してこうツイートしていた。さらに「これは私の意見だが、ファウチは立派な人物なんかじゃない」ともツイートしていた。



 81歳のファウチ博士は、今月(2022年12月)末に引退することになっているが、彼は賛否両論ある米国の Covid対策を主導してきた人物だ。その米国の対策といえば、ファウチ博士が出す指針により二転三転してきた。例えばマスクの件や集団免疫獲得の件などがそうだった。ファウチ博士がバイデン大統領の首席医療顧問とNIH(米国国立衛生研究所)の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の所長を辞任すると発表した直後に、ランド・ポール米国上院議員は、バイデン政権に、この先行われる可能性のある捜査のために、文書や書簡類を保存しておくよう求めていた。



 「ファウチ博士の退任を、この世界的流行の起源についての捜査を完全にやり遂げる障害にすべきではありません。ファウチ博士には、博士が関わっていた武漢の研究所からのウイルスの漏洩の件に関して、宣誓のもとでの証言を必ず行わせる必要があります。ファウチ博士が取ってきた対策のせいで多くの人々が亡くなっているのです」 とポール議員はツイートしている。



 同上院議員は以前、武漢の研究所での機能獲得研究に公的資金を投入させた責任者であるとして、ファウチ博士を非難していた。さらにファウチ博士が議会での宣誓証言で嘘の証言をしたことでも非難していた。この件に関して両者は、上院の公聴会で何度もやり合っている。


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 機能獲得研究とは、病原体を変異させ、様々な点においてこの病原体を強化させるために行われるもので、具体的には、感染力の強化などだ。このような研究が行われる根拠は、科学者たちが新種の菌株を研究でき、そのような新種の菌株に似た菌株が自然界で発生した際に、その菌株を阻止する方法を発見するためだとされている。

 中国の研究所からコロナウイルスが漏洩したのでは、という「研究所漏洩説」を世間に広めたのは、ドナルド・トランプ前大統領だ。トランプ前大統領が、中国との間で貿易摩擦が生じていた際に、そのような主張をしたのだ。 米国の主要なメディアやSNS業者は、当初からそのような説を「偽情報」であると決めつけ、世間の議論の対象にならないよう抑圧してきた。しかし、マスク氏がツィッター社を買収した後、同社はCovid-19に関する「誤解を招くような偽情報を阻止する」指針を中止している。

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世界一汚い男性が数十年ぶりに入浴した後、亡くなった

<記事原文 寺島先生推薦>

‘World’s dirtiest man’ dies after taking first bath in decades
The 94-year-old Iranian allegedly went over half a century without washing

94歳のイラン人男性は、半世紀以上もの間、身体を洗ってこなかったという。

出典:RT

2022年10月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月24日


アモウ・ハジさん© AFP

 イラン人の隠者で、世界で「最も汚い男性」と呼ばれていた男性が、イランのディガ村で94歳で亡くなった、と日曜日(10月24日)にイラン国営メディアが報じた。報道によると、あだ名が「ハジおじさん」であるこの男性は、67年間ほど身体を洗わず、腐った食べ物だけを食してきたという。

 IRNA通信社の報道によると、ハジさんが身体を洗ってこなかったのは、身体を洗うと病気になることを心配していたからだという。 入浴しないというハイジさんの決意は非常に固く、地元の村人たちが、ハイジさんを川に連れて行って水浴びさせようとした際は、車から飛び出して逃げたこともあった、と同通信社は伝えている。

 石鹸を使うことや水を浴びることを嫌っていただけではなく、ハジさんは新鮮な食物を食べたり、新鮮な水を飲んだりすることも嫌がっていて、大好きな食べ物は、腐ったヤマアラシなど、路上で死んでいる動物だと語っていた。ハジさんが常時飲んでいたのは、近くの溝の水で、それを錆びた油差しを使って飲んでいたそうだ。ハジさんの家は、開けっぴろげのレンガでできた小屋で、タバコは吸わず、古いパイプで動物の糞の煙を吸うのが好きだったそうだ。


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 異常な衛生習慣とは裏腹に、ハジさんの健康状態は非常によかったそうだ。今年初旬にテヘラン公共医療大学の医師団がハジさんに一連の検査を行ったが、結果は、バクテリアや寄生虫への感染は見つからず、旋毛虫症に感染していることだけがわかった。この病気は、生肉を食べる人によく起こる感染症だ。ただし、ハジさんには、症状は見られなかった。

 医師団の結論によると、ハジさんが健康を維持できていた理由は、常に厳しい生活状況に置かれているため、尋常ではないくらい強い免疫系を体内に確立しているからだ、とのことだった。

 しかし伝えられるところによると、数ヶ月前、ついに村人たちがこの隠者を説得して、入浴させることに成功したという。それは半世紀以上もの間で初めての入浴だった。

 地方当局者がIRNA通信社に語ったところによると、その後すぐにハジさんは病気になり、10月23日に亡くなったという。
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メルケルが示した西側の二枚舌

<記事原文 寺島先生推薦>

Merkel Reveals West’s Duplicity

筆者: スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年12月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 

2022年12月28日



ドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)とロシアのウラジミール・プーチン大統領。2015年5月10日、クレムリンにて(画像はロシア政府提供)

 アンゲラ・メルケル前独首相が先日行った発言が明らかにしたのは、独・仏・ウクライナ・米による謀略が、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻の引き金になったという事実だった。
いわゆる「西側連合(米、NATO、EU、G7諸国)」は、ロシアによるウクライナ侵攻は、「いわれのない侵略」行為に当たるという主張をし続けているが、実際はそれとはまったくかけ離れたものだ。ロシアは騙され続け、2014年に米国が支援していたキエフ市内のマイダン広場でのクーデター後勃発していた、東ウクライナのドンバス地域での戦闘行為は、外交努力で解決できると思わされてきたのだ。

 ウクライナとウクライナを支援していた西側諸国は、外交ではなく時間稼ぎをしていただけだったのだ。その時間を利用して、NATOがウクライナの軍事力を高め、ドンバス地域全体を占領し、さらにはクリミアからロシアを追い出そうと考えていた。

 先週(11月最終週)、デア・シュピーゲル紙でのインタビューにおいて、メルケル前首相は1938年のミュンヘン会談のことを引き合いに出した。前首相は、ネヴィル・チェンバレン元英国首相が、ナチスドイツに対してとった対応と、ウクライナがNATO加盟することに反対する立場をとった自分の行為を比較していた。彼女がその立場を示したのは、ブカレストでの2008年のNATO首脳会議の場でのことだった。

 メルケル前首相の考えによれば、ウクライナのNATO加盟の是非を保留し、その後ミンスク協定を推し進めたのは、ウクライナに猶予時間を与え、ロシアからの攻撃に反撃できるようにするためだったという。これはチェンバレン元英首相が、英・仏に猶予時間を与えることで、ヒトラー支配下の独に対応できる力を養おうと考えていたのと同じだった、というのだ。

 メルケル前首相が過去のこの事例を持ち出してきたのには驚くしかない。ひとまず、メルケル前首相がヒトラー下のナチスと、ウラジミール・プーチン下のロシアとを同等に扱っていることは置いておいて、メルケル前首相がウクライナをNATOに加盟させれば、ロシアからの武力攻撃を呼び起こすことになると考えていた点について考慮してみよう。

 つまり、メルケル前首相は、そんな可能性が果たしてありうるのかを考えるのではなく、そのようなロシアからの攻撃にウクライナが耐えうるよう手を打っていたということになる。

 となれば、ロシアの敵諸国がとれると考えていた唯一の選択肢は、戦争しかなかった、ということになりそうだ。

プーチン談。「ミンスク合意は間違いだった」

 メルケル前首相の発言は、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ前大統領が西側の数社のメディアに語っていた内容と相容れるものだ。ポロシェンコ前大統領はこう明言していた。「我が国の目的は、まず(ロシアからの)脅威を止めること、あるいは少なくとも戦争の開始を遅らせることでした。この8年間戦争を防ぐことにより、経済を回復させ、強力な軍を創設することができました」。ポロシェンコ前大統領が明らかにしたのは、ウクライナは、ミンスク合意の交渉の席で誠意をもっていなかったという事実だった。

 プーチンもようやくこの事実に気づいたようだ。先日行われた、ウクライナで闘っている兵の妻や母親たち(戦死した兵士の未亡人たちも数名いた)との面会の場で、プーチンが認めたのは、ミンスク合意に賛同したことは間違いであったこと、ドンバス地域の問題は8年前に軍事力を行使して解決すべきであった、ということだった。プーチン大統領は、ロシア議会から委託を受け、クリミア以外の「ウクライナ」でもロシア軍を行軍させる権限を与えられていたにも関わらず、そうしなかったことに後悔の念を示したのだった。

 遅かったとは言え、プーチンがこの事実に気づいたという事実は、ロシアとウクライナの間の戦争は、交渉で何とか解決できるだろうという誤解のもと行動していた、西側のすべての人々の背筋を寒くさせたことだろう。

 ロシアと外交的な交渉を行っている誰ひとりとして、少しの誠実ささえも示していないのは、2014年2月にマイダン広場で起こった流血事件に端を発する民族間抗争を平和裏に解決する正しい方法を模索することだ。このマイダン広場で起こった流血事件は、OSCE(欧州安全保障協力機構)の承認のもと民主的に選出されたウクライナの大統領を失脚させることになったのだから。

抵抗への対応

 ドンバス地域のロシア語話者の人々は、このクーデターに抵抗し、民主的な選挙を守ろうと、ウクライナからの独立を宣言した。この動きに対するクーデター後のキエフ政権の対応は、これらの人々に8年間、敵意に満ちた攻撃を加えることだった。そしてその結果、何千もの市民が亡くなった。プーチンは8年後に彼らの独立を承認し、今年2月、本格的にドンバスに侵攻した。

 プーチンがそれまでずっと待っていたのは、ミンスク合意に期待していたからだった。独・仏両国が保障し、(米国も含めた)国連安全保障理事会が全会一致で承認していたこの合意があれば、ウクライナ領内に残す形で、ドンバス地域の自治権を認めることにより、危機が解決されると考えていたためだ。 しかしキエフ当局はこの合意を履行しようとしなかったし、履行するよう西側から十分な圧力をかけられることもなかった。

 西側のどの勢力も無関心な対応しか見せていない。問題を解決すべき組織であるとされている柱は、皆崩壊している。OSCEの監視員たちがそうだ。(ロシアによれば、標的となっているロシアの分離主義者の情報をウクライナ軍に流している監視員も存在するという)。独仏が中心となっている(ドンバス地域の和平を模索する組織の)ノルマンディー・フォーマットもそうだ。この組織はミンスク合意が履行されているかどうかを確認する組織ということになっているのにその働きを見せていない。米国もそうだ。米国は、「ウクライナの自衛のため」と称して、2015年から2022年までウクライナに軍事支援を行ってきた。まさに「羊の皮をかぶったオオカミ」でしかない。どの組織の状況からも厳しい現実しか浮かんでこず、ロシア・ウクライナ間の紛争に関わる問題を平和裏に解決する方法を見つけだせるようになるとは思えない。

 そしてこの先も決してそうはならないだろう。

 戦争は、「西側連合」が以前求めていた答えだったようだ。でも今は、戦争に答えを求めているのはロシアの方のようだ。

 まさに「風を撒いてつむじ風を刈る(聖書のホセア書より。自業自得の意)」だ。

 よく考えれば、メルケル前首相が、今のウクライナ情勢を伝えるのに、1938年のミュンヘン会談のことを引き合いに出したのは間違っていなかったといえる。唯一の違いは、「高尚なドイツ国民が野蛮なロシア国民を撃退する」という構図ではなく、「二枚舌のドイツ国民(それと他の西側諸国民)が、騙されやすいロシア国民をだまそうとしている」という構図だという点だけだ。

 外交という名の外套に身をまとったドイツもウクライナもそれ以外の国々にとっても、この先良い終わり方にはならないだろう。どの国も皆、背中に剣を隠し持っているという本当の姿を見せないでいるのだから。
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イーロン・マスクの「ツイッター・ファイル」によって、民主党の検閲行為が明らかになる

<記事原文 寺島先生推薦>

Elon Musk’s ‘Twitter files’ make it impossible for Democrats to deny their censorship practices

ツイッターの新CEOは、情報弾圧の取り組みについて自由に議論することを可能にした。

筆者:イアン・マイルズ・チョン(Ian Miles Cheong)


@stillgray@CultureWarRoom

イアン・マイルズ・チョン(Ian Miles Cheong)は、政治・文化評論家。彼の記事は、The Rebel、Penthouse、Human Events、The Post Millennialで紹介されている。


出典:RT

2022年12月3日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年12月24日




ジョー・バイデン米大統領と息子のハンター・バイデン © Nicholas Kamm / AFP=時事

 金曜日(12月2日)の夜、イーロン・マスクが「ツイッター・ファイル」を公表したことで、ドナルト・トランプや多くの保守派がずっと疑っていたが、証明できなかったことを確認できたのだ。つまり、バイデン陣営がソーシャル・メディア企業と結託し、ハンター・バイデンのノートパソコンの中身に関する報道を、父親であるジョー・バイデン現大統領を困惑させるものとして、遮断したことである。

 ノートパソコンには、ハンター・バイデンのコカイン乱用や売春婦との逢瀬を詳述した屈辱的な写真や動画に加え、2015年に、当時副大統領だった父ジョー・バイデンが、若いバイデンをウクライナのエネルギー会社の幹部に紹介するメールが含まれていた。その1年後、ジョーはウクライナの政府高官に圧力をかけ、この会社の調査を開始した検察官を解雇させたとされるが、米上院の調査は結局、息子の事業が動機であったことを証明することができなかった。

 この話が明るみに出たのは、選挙戦終盤の2020年10月、ニューヨーク・ポスト紙がハンター・バイデンの所有するノートパソコンのことを報道したときだった。デラウェア州の修理工場の所有者が所持していたこのノートパソコンには、父親が米国副大統領だった時代に、ハンターが、地位悪用の不祥事やペイ・フォー・プレイ*のもくろみに関与していたことを示唆するメールやその他の文書が含まれていた。
[訳注]ペイフォープレイ(ペイツープレイまたはP2P)は、お金がサービスまたは特定の活動に従事する特権と交換されるさまざまな状況に使用されるフレーズ。贈収賄の違法行為を指す場合もある。

 この記事は爆発的な影響を与える可能性があったにもかかわらず、民主党系のメディアはほとんど無視することを選び、代わりにトランプ大統領の再選に損害を与える可能性のある記事に焦点を当てることを選んだ。

 このハンター・バイデンのノートパソコンに関する報道を抑圧することには、いくつかの理由で懸念されることである。1つは、メディアの偏向報道に対する疑念と、報道機関が自分たちの支持する候補者を守るためにどこまでやるのかという疑念をかき立てるからである。


<関連記事> マスク氏、ツイッターの言論の自由に対する弾圧を暴露

 この件を報道しないようとする動きがあまりに露骨だったため、ニューヨークタイムズやワシントンポストは、この暴露から2年後にようやくラップトップとその中身が本物であることを認めたが、両紙はジョー・バイデンをさらに援護するばかりであった。

 両紙はノートパソコンに関する報道を抑えようとする動きに加わっていたのだ。その防衛策の一つは、その出所を疑う元情報当局者数十人を引き合いに出して、「ロシアの偽情報」であるとごまかすことだった。

 このようなメディアの意思決定は、将来の選挙にとって危険な前例となることが懸念される。もしメディアが、意義とか重要性に関係なく、ある話を無視することを決定できるなら、他の同様の重要な話も報道されない可能性があるからだ。

 ここでイーロン・マスクの登場である。マスクは、報告書の抑圧に参加したプラットフォーム(情報網構築機関)であるツイッター社を買収し、同社の新たな所有者となった。そして彼は、ハンターのノートパソコン報告書が発見されたときに、サンフランシスコに拠点を置くこのソーシャルメディア企業の舞台裏で何が起こったかを明らかにすると公表した。

 独立系ジャーナリストのマット・タイビが、イーロン・マスクから提供された資料を用いた一連のツイートを行った。そのツイートでは、2020年の大統領選挙を控えた時期に、ニューヨーク・ポスト紙による衝撃的な報道を検閲する決定を、同紙がどのように「自主的に行った」かを詳しく述べている。

 (発見されたファイル上の)電子メールは、この報道が出た直後のツイッター社内で、どれほど混沌とした混乱が支配していたかを明らかにしている。ツイッター社の最上位の幹部が、この記事をどのように抑えるかについて議論し、最終的には2016年のドナルド・トランプ氏の大統領選勝利を受けて作成され、2018年に制定された方策を使って、記事を閉め出すことを決定した。タイビによると、この決定は当時のCEO(最高責任者)であるジャック・ドーシー(Jack Dorsey)の知らないところで行われたとのことである。

 「この記事を削除した根拠は、ハッキングされた資料をもとにした記事であったからとされていた。しかし、議論されているように、この措置は急にとられたもので、事実は不明のまめである」と、ツイッターの「信頼と安全」の元責任者ヨエル・ロス(Yoel Roth)は、ツイッターの元総括弁護士ビジャヤ・ガッデ(Vijaya Gadde)との私信で書いている。「ここでの“重大な”危険と2016年の教訓を考えて、我々は警告を出すなどして、この内容が拡散されるのを防ぐ側に回ってしまった。」


<関連記事>マスクのツイッター・ファイル。ハンター・バイデンのノートパソコンの話から何がわかったのか?

 この動きに対しては、別の幹部である元グローバル・コミュニケーション担当副社長ブランドン・ボーマンからも疑問の声があげられていたほどであった。その疑問とは、「この記事が、我社が方針として禁止している(ハッキングされた資料)の一部であると本当に主張できるのか?」 というものだった。ハンター・バイデンのノートパソコンに関するニューヨーク・ポスト紙自身の報道でもわかるように、資料がハッキングされたという証拠はない。

 また、バイデン陣営と民主党全国委員会(DNC)から、このノートパソコンの件に関してツイッターに投稿された内容を遮断する要請があったことも、同社がこの記事を遮断する決定を行ったひとつの材料となっていた。

 「もっとバイデン陣営の側に立って審査するように」と、名を明かされていないツイッター社の1人の幹部が、別の幹部に、問題になりそうないくつかのツイートのリンクを送っていた。そして、受けとったほうの幹部は「これらのリンクを削除した」と返信していた。

 保守派俳優のジェームズ・ウッズのような有名人でさえ、DNCによって審査され、ツィッター社はその要求に応じて、彼のツイートを削除していた。2020年にデイリー・ワイアー(Daily Wire)が報じたある事例では、DNCは、ウッズがDNCのことを誤って伝えているという話をツイートをしたと訴え、ツイッター社は、このツイートは「誤情報拡散作戦」のひとつであり、「ボーター・スプレッション(選挙戦において敵陣営の不利になる情報を流すことで、有権者の投票意欲を削ぐ行為)」にあたるものと判断し、このツイートを削除した。

 いっぽう、民主党の組織「メイダス・タッチ(MeidasTouch)」や反トランプ派の「リンカーン計画(Lincoln Project)」などが同じような投稿を行っていたにもかかわらず、これらのツイートは、プラットフォーム上に残ることが許されており、ツイッター社は「内容を穏当化」する際に、不公平な対応を取っていることが明らかになった。

 今のところ、巨大IT企業であるツィッター社によるニューヨーク・ポストの報道弾圧に関わったすべての関係者に対して、どのような法的措置が取れるかは不明である。しかし、マスク氏は、「ツイッター社が自発的に言論の自由を抑圧したのであれば、(表現の自由を定めた)憲法修正第1条違反にはならないが、政府からの命令で行動して、司法審査の段階も踏まずに、言論の自由を抑圧したのであれば、憲法違反に値する」 と述べている。

 マスク氏は問いかけた。「これが憲法修正第1条違反にならないなら、何が憲法違反なのか?」

 今回、この件の一部が暴露されたことは、この話をよく追っている人にとっては必ずしも目新しいニュースではなかったとしても、この電子メールの内容は、多くの人が疑っていたが、これまで証明できなかったことを証明してくれているのだ。

 極めて重要なのは、イーロン・マスクの下で打ち出されたツイッター社の新しい方向性によれば、アメリカ政府と結びついた行為者、政治団体、メディアが行っている情報弾圧や情報操作について、検閲を恐れず自由に論議できるようになったということだ。
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バイデン政権は、コロナワクチン接種を推進するために、メディアに密かに金を払っていた

<記事原文 寺島先生推薦>

Biden Administration Secretly Paid Media to Promote COVID Shots

筆者:メーガン・レッドショー(Megan Redshaw)

出典:Global Research

2022年3月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月23日



 バイデン政権がほぼすべての企業メディアに直接金を出して、10億ドル規模の税金を投入した宣伝行動をさせ、Covid-19ワクチンの良い面だけを押し出すような記事を出させ、悪い面を報じる記事には検閲をかけていたことが、ブレイズ社が入手した文書から明らかになった。

 バイデン政権がほぼすべての企業メディアに直接金を出して、10億ドル規模の税金を投入した宣伝行動をさせ、Covid-19ワクチンの良い面だけを押し出すような記事を出させ、悪い面を報じる記事には検閲をかけていたことが、ブレイズ社が入手した文書から明らかになった。

 全米のメディアは、ニュースに広告費を出していたのが連邦政府であったとは明らかにしないままで、視聴者にワクチン接種を推奨していた。

 ブレイズ社が求めた情報開示請求により明らかになったことは、米国保険福祉省(HHS)が多くの主流メディアから広告を購入していた事実だった。具体的には、ABC、CBS、NBC、フォックスニュース、CNN 、MSNBCだ。

 HHSはさらに、以下の主流メディアを通じて大規模な宣伝作戦を展開していた。それは、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・ポスト、buzzフィード・ニュース、ニュース・マックスやそれ以外の全米の多くの地方テレビ局や新聞社を通じたものだった。

 ワクチン接種を推奨させるようニュース通信社に金を支払っていただけではなく、連邦政府はテレビやラジオや紙媒体やSNSに広告費を支払い、広告を出していた。その作戦は、「メディアを包括的に使った運動」だ、とHHSの文書にある。

 この広告作戦は、Covidワクチンの接種者が増える状況の中で展開された。この作戦で中心的に取り上げられた「影響力が強い人」や「専門家」の中には、アンソニー・ファウチもいた。彼は、大統領首席医療顧問であり、国立アレルギー感染症研究所の所長だ。

 2021年3月、フェイスブックはソーシャル・メディア上での一つの計画を発表した。それは「人々のワクチン接種を支援」し、さらにバイデン政権や米国の医療行政諸機関との協力のもと、いわゆる「Covidに関する偽情報」を抑圧する、というものだった。

 バズフィード・ニュースは、65歳以上の人々やCovidに感染すれば重症化する危険度の高い健康状態にある人々や医療従事者たちやウィルスに接触する危険性の高い人々に、ワクチンの追加接種を行うよう推奨していた。この報道は、米国疾病対策予防センター(CDC)が出した指針に則ったものだった。

 ロサンゼルス・タイムズなど他の複数の出版社は、専門家たちからの助言を大きく取り上げる記事を出し、どうすれば読者が、「ワクチン接種を躊躇う人々」を説得し、気持ちを変えさせることができるかについて論じていた。

 ワシントン・ポスト紙は、「人々が聞きたくなるようなワクチン接種を擁護する内容」を伝える記事を出していた。

 ニュース・マックス社は、Covidワクチンが、「安全で効果的なことは実証済み」で、「人々、特に危険の高い人々は、予防接種をうけることが奨励されてきた」という記事を出していた。

 しかし、CDCのワクチン有害事象登録システムからの報告によると、2020年12月14日以降で、すべての年齢層を通して、115万1450件の副反応事例と、2万4827件の死亡事例が発生したことがわかる。

 多くの科学者や公共医療の専門家たちが、Covidワクチンの安全性や効果疑問を呈しており、米国食品医薬品局が承認したこのワクチン接種に関する数値でもそのような結果が出ている。

 これらのメディアがCovidワクチンについて否定的な記事を出すことはほとんどなく、ワクチン接種に疑問を挟むものは、「科学否定者」や「陰謀論者」だと決めつけているメディアもある。

 「これらのメディアは、このワクチンに関する無数の記事や番組を報じてきたことに対して連帯責任を負うべきだ。これらの記事や番組のほとんどは、このワクチンには効果があり安全でもあるという、ワクチンに対して肯定的な内容ばかりだった」とブレイズ社は報じている。

連邦議会は10億ドルの税金を投入して、「ワクチンへの信頼を強化」することを決定

 2021年3月、連邦議会は、保健福祉省(HHS)に対して10億ドルの税金を割り当て、「米国内のワクチンに対する信頼性の強化」活動に充てることを決めた。さらに各地域の組織や信頼されている指導者たちを通じて、30億ドルを、国内の「支援や広報活動」の資金としてCDCに割り当てた。

 HHSの公教育における取り組みを取り仕切っていたのは、米国のビベク・マーシー医務総監、フランシス・コリンズ元NIH局長、ファウチ、マルセラ・ヌネズースミス博士、ロシェル・ワレンスキーCDC局長の4名だった。さらに、ホワイトハウスからその取り組みを主導するカマラ・ハリス副大統領も参加していた。

 連邦法により、CDCなどの他の諸機関を通してHHSは公的機関や私的機関と協定を結ぶことが許された。そしてその目的は、「全国的に証拠に基づいた取り組みを実行することで、ワクチンの安全性や効果に対する気づきや知識を高め、病気の予防や抑止を促すとともに、ワクチンに関する偽情報と相対し、科学や証拠に基づいたワクチン関連の情報を広めることであり、その目標はすべての年代層でのワクチン接種率を高め….ワクチンで防げる病気を減らす、あるいは消滅させることだ」とされている。

 HHSは、「同省が税金を使って、人々にインタビューしたり、広告会社に依頼して、ニュース記事の中のインタビューで、専門家や有名人を配置したかどうか」についての、ブレイズ社からの問い合わせには、すぐに答えなかった。

 さらにブレイズ社は、広告主がニュース記事に影響を与えることがないようにすることを編集者の「鉄則」としているのにもかかわらず、HHSの意を受けた広告を出すようHHSから金を受け取っていたメディアに取材を行っていた。

 「広告主は、お金を出して広告紙面を購入して、そこで伝えたい内容を伝えます。今回の件でもその通りでした。HHSが出した広告も、あきらかにそのようなものです」と、ワシントン・ポスト紙コミュニケーション部のシャニ・ジョージ副部長は答えている。「ニュースの編集室は、広告部からは完全に切り離されています。」

 たしかに、ワシントン・ポスト社にはいくつかの部署があるが、すべての部署は同じ最高責任者や主要経営陣の権限下にある。

 ロサンゼルス・タイムズ紙の女性報道官はこう語っていた。「我が社のニュース編集室は、広告から独立した組織です」と。

ニュース・マックス社の元編集長が、同社が金をもらい、ワクチンの肯定面だけを報じてきた事実を認めた

 デザート・ニュース社は、ニュース・マックス社やワン・アメリカ・ニュース社のホワイトハウス主席特派員を務めていた独立系の記者であるエメラルド・ロビンソンについての記事を報じている。その記事の内容は、ロビンソンが接触したニュース・マックス社内の内部告発者が明言した話として、「同社の重役たちが、バイデン政権下のHHSから金を受け取り、Covidワクチンについては好意的な内容だけ報じることを了承していた」、というものだった。
さらにロビンソンは2021年に二ュース・マックス社の最上位の重役だった人物と面会した際、Covidワクチンに関する否定的な記事を報じないよう命じられたという。そしてその理由は、「やっかいなことになる」からだったという。

 ロビンソンの話によると、彼女は数回重役たちから警告を受けていたそうだ。さらに、ニュース・マックス社と提携していた広告会社の専門家たちからは、Covidワクチンに関して否定的な意見を言いそうな医療専門家や医師たちが、ゲストとして呼ばれることはないだろうという話をされたとのことだった。

 報道によると、ロビンソンがニュース・マックス社を解雇されたのは、彼女がCovidワクチンに関する「陰謀論」をツイートし、Covid-19偽情報に関する「ツイッター上の規約を繰り返し違反した」ことを理由に、ツイッター社からアカウントを停止された後のことだった。

 ニュース・マックス社のクリス・ロディ最高責任者は、バイデン政権のワクチンに対する取り組みを賞賛する論説記事を書いている。
以下の通りだ。

 「我がニュース・マックス社は、世間にワクチン接種を強く推奨してきました。我が社の報道にしばしば登場してくれる多くの医療専門家は、ほぼ例外なくワクチン支持者です。私自身もファイザー社製ワクチンを接種しました。私はワクチンに対して何の疑念も持っていません。もっと早くワクチンが普及していたら、無数の命が救われていたでしょう。」

 ブレイズ社が出していた他の事例の中には、HHSが出した「恐怖心を持たせるようなワクチン広告」では、集中治療室に入院していて、「生きながらえた」Covid患者たちの話を取り上げていて、CNNが報じ、ABCも去年10月に、「ザ・ビュー」という番組で取り上げたものだった。

 HHS がYouTube上に載せた広告には、俳優のマイケル・ケイン卿や歌手のエルトン・ジョンが出演し、何百万もの視聴回数を獲得していた。

 ディフェンダー社が昨年9月に報じた内容によると、Covidワクチンで障害を受けた人々の一団が、自分たちのことを報じるようメディアに迫ったが、各ニュース会社から、「我が社はCovidワクチン接種による障害については報道できません」と言われて終わりだったという。

 クリスティ・ドブス(40)は、ファイザー社製ワクチンにより障害を受けた。ドブスは何ヶ月も費やして、米国の複数の医療当局に懇願し、彼女やほかの人々が経験した神経障害について、治療法を模索するための調査をするよう求めた。

 ドブスの話によると、彼女やほかの人々が神経障害を発症したのは、Covidワクチンを接種した後のことだったという。その経験を記者たちに伝えて、彼女たちが体験したことを世間に広く知ってもらうことを願っていた。

 ドブスの話によると、彼女やほかの人々は自分たちの話を人々に伝える必要があることを理解していたが、「ワクチンに対する躊躇い」を巻き起こそうとは思っていなかったという。ただ、ほかの人々に自分たちと同じ運命をたどってほしくないという気持ちだったという。であるので、彼女の団体の構成員たちは話を聞いてくれそうな人々に手紙を書き、電話をかける活動を始めていた。記者たちやニュース会社や議会の議員たちに対する働きかけも始めていた。

 ドブスによると、普通の米国民の耳に彼女たちの話が届くよう、できる限りのことをしていたという。そしてついに、小さなメディア会社の一人の記者が、この話を記事にしてくれることに前向きになってくれたそうだ。ドブスや彼女の団体のほかの人々は2時間40分間のインタビュー番組に出演した。

 「でもこの番組はどこでも放映されませんでした」とドブスは語っている。ドブスによると、この記者はファイザー社の「上の人」が、このメディア会社に電話をかけてきて、ワクチンの副反応についての記事を報じないよう圧力をかけてきた、と語ったそうだ。
ディフェンダー社が以前報じた記事の通り、ファイザー社と利益をともにする投資会社も各企業メディアの株を所有しているのだ。

 さらに、ファイザー社は連邦政府と契約を結んでおり、政府は何十億ドルもの米国民の税金を使って、Covidワクチンを購入したり、世間に対してワクチンに肯定的な報道だけをさせている。



 「自由の弁護団(Liberty Counsel)」の創設者であり代表でもあるマット・ステーバーは、ディザート・ニュース社の取材にこう答えている。「米国史上最も過酷な喧伝作戦により、人々が障害を受け、命を落としている。しかもその費用は、我々の税金でまかなわれてきたのだ」と。

 「Covidワクチンは、安全でもない。効果もない。それなのに米国の一般市民は、バイデン政権が繰り出す喧伝にだまされています。ニュースメディアから真実が発せられることもなく・・」とステーバーは語っている。

 「そうやって多くの人々が、検閲や喧伝のせいで、いわれのない苦難に直面されることになったのです」
*
関連記事

マスクが明らかにしたTwitterファイル。ハンター・バイデンのノートパソコンの話から何がわかったか?

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Musk’s Twitter files: What have we learned from the Hunter Biden laptop story?

流出したファイルには、ジョー・バイデンの家族に関する有害な報告を隠すための全社的な取り組みの概要が記されていた。

2022年12月3日

出典:RT

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年12月22日


© AFP / Olivier Douliery

 Twitterの上層部の役人の中には、2020年にハンター・バイデンのノートパソコンの話が広まるのを阻止し、その理由を説明するのに苦労していた人々がいたことが、イーロン・マスク新CEOとジャーナリストのマット・タイビが金曜日(12月2日)に公開した文書で明らかになった。RTは、これらのファイルの中身と、調査がどのように展開されたかを検証した。

1 ハンター・バイデンのノートパソコンに何が起こったのか?

 2020年10月14日、ニューヨーク・ポスト紙は、ハンター・バイデンのノートパソコンから得た情報に基づいた、一連の記事の第一弾を掲載した。これらの記事は、ジョー・バイデンが息子の海外事業への関わりで、自身の役職を利用した数々の汚職事件に関与していることを示唆するもので、この記事により大統領選の数週間前になって、時のドナルド・トランプ大統領に対するバイデンの選挙運動を台無しにする恐れが出てきたのだ。


<関連記事>ホワイトハウスは、ハンター・バイデン「陰謀論」を調査しているGOP(共和党)を非難している。


 Twitterは直ちにアルゴリズム(処理手順)を操作してこの記事を抑制し、その後、「ハッキングされた資料」に対する方針を理由にこの記事へのリンクを完全に禁止した。利用者はダイレクトメッセージで記事を共有することさえ禁じられた。この動きは通常、児童ポルノのような「極端な事例」に限られるとタイビは指摘する。ニューヨーク・ポストは2週間アカウントを停止され、トランプ大統領のアカウントは、この記事に言及した動画を共有したために一時的に閉鎖された。

 バイデン陣営は、ノートパソコンの中身はロシアが捏造したものだと主張し、ほとんどの主流メディアはこの話を取り上げることを拒んだ。その後、バイデンがトランプに勝利したずっと後に、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、デイリーメールによってラップトップの中身は本物であると公表された。

2 どのように報道が抑えられたのか?

 Twitterの法務、政策、信託部門の元責任者であるビジャヤ・ガッデが、この話を葬り去る決断を下した、とタイビは報じている。

 職員の中には、この話を「ハッキングされた」と決めつけることに抵抗がある者もおり、コミュニケーション担当のトレントン・ケネディは「この件を安全でないと見なす政策的根拠を理解し難い」と書き、グローバルコミュニケーション担当元副社長のブランドン・ボーラーマンも、「これがツイッター社の会社方針の一部であると正直に主張できるのだろうか?」と疑問を呈している。


 「ハッキングしたものだからとは言い訳だったが、数時間のうちに、その言い訳が通用しないことにほとんどの人が気づいた」と、ある元従業員はタイビに語っている。「しかし、誰もそれを覆す勇気がなかった。」

 元信頼と安全主任のヨエル・ロス(Yoel Roth)氏は、「この件が見せていた”重大”な危険性と2016年の事件から得た教訓を考慮し、我々は警告を発することを含め、このコンテンツが拡散されるのを防ぐ側に回ってしまった」と説明している。明らかにこの釈明は、2016年の大統領選で外部から干渉があったという証明されていない主張に言及したものだ。

3 Twitterの最高責任者は知っていたのか?

 タイビによると、この記事の検閲は当時の最高責任者であるジャック・ドーシーの知らないところで行われ、彼は後に共和議員に、ポスト紙の記事へのリンクを遮断することは「間違っている」と思うと述べたという。

 ドーシーが、政治的分野に及ぶアカウントの停止を疑問視している「複数の事例がこのファイルにある」、とタイビは書いている。

4 バイデン陣営は関与していたのか?

 2020年夏、法執行機関から「外国からのハッキングの可能性」についての「一般的な」警告があったとされていたが、タイビは、ラップトップ記事の検閲に政府が関与した証拠はファイルにはないと述べている。

 バイデン陣営が弾圧のために話を誇張したかどうかは不明だが、陣営はツイッターの投稿監視員と連絡を取り合い、その要請に応じてツイートを削除することが多かったと、タイビが投稿した内部通信は示している。「2020年までには、つながりのある関係者からのツイート削除の依頼は日常的になっていた」と彼は説明する。例えば、ある幹部が別の幹部に、『バイデン陣営の立場に立ってもっと見直すように』と書いて送る。すると、「処理した」という返信が返ってくるのである。

5 なぜ、今になって明るみに出たのだろうか?

 10月にTwitterを440億ドルで買収して以来、マスクはガッデ(Gadde)を含む基幹職員の半分以上を解雇し、基本方針であった、より悪質な言論規制のいくつかを撤廃することに着手した。マスクはトランプのアカウントを復活させ、Covid-19に関する「誤報」の共有に対するTwitterの禁止を解除し、以前に停止されたアカウントに対する「全般的恩赦」を発表した。


<関連記事>公開されたツイッターのファイルに「選挙妨害」の事実が---レクテンワルドがRTに語る

 マスク氏は4月にTwitterの買収手続きを開始。同月、サーガー・エンジェティ記者への回答で、ニューヨーク・ポストの報道に触れ、「真実の記事を掲載した大手報道機関のツイッターアカウントを停止したことは、明らかに信じられないほど不適切だった」と述べている。11月には、この決定を説明するファイルを公開することは、Twitterに対する「社会的信頼を回復するために必要」であると書いている。

 マスク氏は自らを「言論の絶対的自由主義者」と称し、Twitterを買収した理由を 「幅広い信念を健全に議論できる、共通のデジタル空間広場を持つことが文明の未来にとって重要だ」と述べている。
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前独首相メルケル、ミンスク和平協定での欺瞞を認める。その意図は何か。

<記事原文 寺島先生推薦>

Fyodor Lukyanov: How can we explain Angela Merkel’s bombshell revelations about the Ukraine peace deal?
Long the dominant politician in Western Europe, the ex-CDU leader may be taking some artistic license to suit the prevailing mood of today

フョードル・ルキャノフ:ウクライナ和平合意に関するアンゲラ・メルケルの爆弾発言をどう説明すればよいのだろうか?
長い間、西ヨーロッパで支配的な政治家であった元CDU(ドイツキリスト教民主同盟)党首は、今日の一般的な雰囲気に合うように、話を脚色しているのかもしれない。

筆者:フョードル・ルキャノフ(Fyodor Lukyanov)
『ロシアン・イン・グローバル・アフェアーズ』編集長、外交防衛政策会議議長、バルダイ国際討論クラブ研究長。

出典:RT

2022年12月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月22日



2014年1月23日木曜日、ドイツ・ベルリン近郊のメーゼベルク宮殿で光と影とともに撮影されるドイツのアンゲラ・メルケル首相。© AP Photo/Michael Sohn、File

 ドイツのアンゲラ・メルケル前首相が、新聞「ディー・ツァイト」のインタビューで語った発言が、識者の間で波紋を呼んでいる。彼女は「2014年のミンスク協定は、ウクライナに時間を与えようとしたものだった」と認め、「そして、その時間を使って、今日ご覧いただけるように、より強くなった。2014/2015年のウクライナは、今日のウクライナではなかった」と述べた。

 こうしてメルケル首相は、ウクライナ政府関係者、とりわけピョートル・ポロシェンコ元大統領の、キエフは和平協定を履行するつもりはなく、ただ交渉するふりをしていただけだという言葉を裏付けることになった。

 長らくドイツ政府の首相の座をつとめた彼女は、そのような宣言をすることを強要されたわけではない。だから、彼女の発言を文字通りに解釈すればいいのだ。つまりメルケルは、(これまで行ってきた)ごまかしを認めた、いや、むしろ意識的にごまかしてきたことを認めた、と解釈するのが正しい。彼女の発言は、モスクワが以前から言ってきたことを裏付けるものだ。ウクライナは和平交渉に参加するふりをしているだけで、実際には復讐の準備をしており、西側諸国(直接の参加者としてのドイツとフランス、間接の管理者としてのアメリカ)はこの二枚舌に協力していたということだ。

 これはかなり単純化された解釈であり、現実はもっと違っていたのではないかと、あえて推測してみたい。しかし、そのような推測は、ある点では、悪い結果になる。なぜなら、意識的に選択しておこなった行動というものは、頭が混乱してとった行動よりも理解しやすいからだ。和平協定が結ばれたときも結ばれなかったときも、メルケル首相に特別な秘めたる動機はなかったと考えるのが妥当だろう。いずれの場合も、ベルリンとパリは、自分たちは欧州の平和と安全のために努力していると心から信じていたのである。


関連記事:プーチン、ウクライナ、メルケル、核戦争について語る

 ミンスク協定は二度目の挑戦でなんとか発効したが、それはウクライナの軍事的敗北の結果であり、そのため西側支援者の任務は、どんな手段を使ってでも戦闘を阻止する必要があった。当時、一部では、メルケル首相がポロシェンコ大統領に文書案に署名しないよう進言したのは、文書に記された条件がモスクワに有利であることを理解していたからだとも言われていた。ミンスクで提示されたドンバス返還の特別条件によって、ロシアはキエフの地政学的な動きを阻止する一種の「ストップバルブ(逆流防止弁)」を持つことになり、ロシア側にとって好都合だったのだ。

 クレムリンはこれが可能だと考えていたようだが、この対処に反対する者もいた。というのも、ウクライナ側は伝統的な政治文化に導かれていて、最終合意などあり得ないと考えていたからだ。だから、どんな違いがあるというのか。つまり、いまいったんは署名しておき、それから様子を見ようということなのだ。

 ベルリンはある種の狡猾な計画を思いついたのだろうか。(当時はフランソワ・オランドが代表を務めていたパリは別に考えるべきでない。フランス大統領は当時、メルケルの片腕として行動していたからだ。)そうではない。むしろ、2つの本能が働いていたのだ。

 一つは、ウクライナは最初から正しいと決まっていて、ロシアは間違っている、具体的な状況はどうでもいい、というもの。もうひとつは、すべてを隠蔽する方法を見つけることだった。そうすれば、この問題を解決する方法に悩まされて、現在の欧州広域の政治にとっては概して二次的な問題に気を散らす必要がなくなるからだ。

 しかし、後者の方法はうまくいかなかった。いま見ているとおりである。現実には、メルケル首相がいま言っているような路線で物事は進んでいった。ミンスク合意は、ウクライナを再武装させ、ロシアとの戦争に備えるための時間を稼ぐものだった。しかし、これが本来の意図であったと考えるのは、西ヨーロッパの戦略的才能を誇張することになる。

 もちろん、もしミンスク協定が参加者たちによって、(いま言っていることとは違うとはいえ)ある目標を達成するための真剣な道具とみなされていたなら、おそらく有用な役割を果たしたことだろう。しかし、(交渉に関わった)すべての側が、宣言されたもの以上の目的をそれぞれ持っていたため、この交渉過程は本当に全く別のものを隠すための煙幕となってしまった。


関連記事:メルケル首相、ミンスク和平合意の欺瞞を認める―ロシア


 逆説的な言い方だが、負けたのは、協定で宣言された目的と真に望んでいた目的の間の隔たりが小さい側であった。協定で宣言された目的とロシア側の実際の目的は、他の国々に比べてあまり異なっていなかった。また、モスクワはミンスク協定をできるだけ文言どおりに履行するよう求めたが、他の国々は―メルケル首相の発言から―少なくとも時間稼ぎ以外の何物でもないと見ていた。

 メルケル首相がなぜこのような発言をするのか、その理由は明らかである。現在の欧米の枠組みでは、プーチンと関係を持つことは、たとえ昔のことであっても、一見善意に見えるものであっても、犯罪的な共謀とみなされるからである。シュレーダー首相時代から「(ロシアとの)相互依存による和解」に大きな投資をしてきたフランク・ヴァルター・シュタインマイヤーは、「自分が間違っていた、申し訳ない」と謝らないといけないということだ。

 しかし、メルケル首相は、合理的な言い訳を探している、いや、むしろでっち上げている。当時の状況を現在の状況に合うように作り変えたいのだ。しかし、それはプーチンが指摘していることを裏付けるような形で行われている。つまり、それじゃ、どうやって交渉するんだ?、という指摘だ。しかし、それはすでに誰にとっても興味のないことになっている。

 ミンスク合意は過去のものであり、紛争の1つの局面を終結させたに過ぎない。一方、現在は質的に異なる別の紛争が勃発している。2014年から2015年にかけての交渉と似たようなもので終わるとは、とても考えにくい。実際、これまでのところ、交渉について語られるとき、何を意味しているのかさえ、まったく明確ではない。何について交渉するのか? 膠着状態にあるすべての当事者がすでにその存続を宣言しているのだから、どんな妥協があるのだろうか。とはいえ、ミンスク協定の政治的教訓を思い出すことは有用である。後日ではなく今こそ。

この記事はProfile.ruに掲載されたものです。
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さようならキエフ、こんにちはコート・ダジュール。西側は援助物資を送るが、ウクライナの腐敗したエリートは、紛争から利益を吸い取る

<記事翻訳 寺島先生推薦>
 
Bye-bye, Kiev, hello Cote d’Azur: As Westerners send aid, here’s how Ukraine’s corrupt elites are profiting from the conflict
Officials and oligarchs have diverted much of the financial support sent to Kiev

役人や新興財閥たちは、キエフに送られた支援金の大部分を流用してきた

筆者:オルガ・スカレーフスカヤ(Olga Sukharevskaya) 

出典:RT

2022年11月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月10日



ウクライナのキエフにあるウクライナ議会での宣誓式の後、大統領府に向かうウクライナ新大統領に選出されたヴォロデミル・ゼレンスキー大統領 (画面中央) ©  STR /ゲッティイメージズ

 
 ウクライナでのロシアの特殊軍事作戦開始以来、米国、EU、その同盟諸国は、キエフ当局に1260億ドル相当の援助金を供給してきた。この額はウクライナの国家GDP総額にほぼ匹敵する。さらに、何百万ものウクライナ国民が難民としてEUに流れ込んでいる。そこで難民たちは、家や食料や労働許可、さらには心の支えさえ与えられた。難民たちの生活条件は、西側の標準的な生活水準からみても高いものが与えられている。 これらの同盟諸国が、自国は経済やエネルギー危機に苦しむ中でも、キエフ当局を支援してきたことから考えれば、このような支援は特筆すべき状況であると言えよう。

 キエフが、際限なく支援を求めている根拠には、ウクライナ経済が破綻していることがあるが、その理由は、戦争と「ロシアによる侵略に対抗する」ためだ。しかし、その支援金は、意図されている目的地まで届いているのだろうか?


関連記事:Russia’s former southern capital renounces its past: How Ukraine is destroying its heritage

モナコ大隊

 ウクライナが、60歳以下の全ての男性を対象に、総動員体制をとったいっぽうで、多くの元高官や現役の高官、政治家、実業家、新興財閥たちが、安全な外国に移動している。その目的地は、主に欧州だ。

 ウクライナの特権階級の多数の人々が飛行機で移動し始めたのは、軍事衝突が起こる前からだった。2022年2月14日、ウクライナの大統領を出している政党(国民の下僕(しもべ)党)所属の37名の代議士が突然消息を絶った。その翌日に、国会議員の国外渡航を禁止する措置がとられていなければ、他の議員たちも、きっと後を追っていたことだろう。 2月14日の時点では、元政府高官や新興財閥たちは、より自由に海外渡航ができた。イタリアのラ・リパブリカ紙によると、14日、20機の商用ジェット機もボルィースピリ空港を出たという。

 各界の大物たちがその列の先頭に立っていた。起業家で国会議員でもあるヴァディム・ノビンスキーや、実業家のヴァシリー・フメルンツキやヴァディム・ストラーやヴァディム・ ネステレンコやアンドリー・スタヴニーツェルは、皆チャーター便でウクライナを出国した。億万長者の政治家であるイゴール・アブラモビッチは、オーストリア行きの50人乗りの自家用機を予約し、親類や仕事仲間たちや所属する政党の党員を搭乗させていた。新興財閥たちは、キエフからニースやミュンヘンやウィーンやキプロスなどの欧州方面に飛びたった。他の実業家たちの一団は、オデッサから自家用機で飛び立った。ボストーク銀行の所有者は、イスラエルに出発し、トランシップ・グループの代表は、キプロスのリマソルに飛んだ。元オデッサ州知事のスタルカナット・ヴォロデミル・ネミロフスキーも、ウクライナを出国した。

 2022年夏から秋初旬にかけて、ウクライナのメディアであるウクライナ・プラウダは、あるドキュメンタリー番組を制作したが、その内容は、戦争中に南仏コート・ダジュールで休暇を取っていた所を目撃された、安全を求めて国外渡航したウクライナの億万長者や高官たちを追跡するものだった。そのドキュメンタリー番組には、「モナコ大隊」という、皮肉った題名がつけられていたが、その番組が映し出していたのは、ウクライナの新興財閥たちが、別荘や大邸宅やヨットで過ごしている姿だった。番組の冒頭で、実業家のコンスタンチン・ジェバゴが映っていた。この人物は、国際刑事警察機構から指名手配を受けている。そのジェバゴが、7000万ドル相当の自家用ヨットに乗っていた。その番組では、ジェコバの親類たちが下船する際、ヨットがコート・ダジュールの海岸線を綺麗に彩る様子が映し出されていた。ハルキウの起業家であるオレクサンドル・ヤロスラフスキーは、「自分のヨットを売って、ハルキウの復旧資金に充てる」と約束していたのに、ジェコバとともにヨットで航海中のところを映し出されていた。


ウクライナ・プラウダのYouTubeからのスクリーンショット © YouTube / Украинская правда

 ウクライナ・プラウダの記者たちはさらに、実業家のスルキス兄弟の姿をフランスで捉えていた。2人は今、家賃が年200万ユーロのアパートを借りている。

 当時、ウクライナの実業家、ヴァディム・エルモラーエフ所有の30万ドルのベントリーの自動車が、モナコのカジノ付近で目撃されていた。また、ユーロ・エネルゴ・トレード社の共同創設者の一人であるエデュアルゴ・コハンは、モンテカルロのお洒落なホテルで目撃されていた。

 ウクライナの新興財閥たちの共同体が、フランスの特権階級の人々のすみかであるカップ・フェレ地区にまるまる移り住んだかのようだ。土地造成業者のヴァディム・ソラー、新興財閥のドミトル・フィルタシュ、セルゲイ・ロヴォチキンたちが、戦争のさなかに、優雅な生活を楽しんでいる。カップ・フェレの別荘は、かつてはベルギーのレオロルド2世の持ち家だったのだが、ウクライナの新興財閥であるリナト・アフメトフが買い取った。アフメトフの別荘のくには、DAD投資グループ有限責任会社の代表であるアレクサンドル・ダヴチャンや、元ドネツク州議員のヴラディスラヴ・ゲルジンが住んでいる。


関連記事: ‘All the real skinheads went to Ukraine’: An American Neo-Nazi outlines the crimes of his Ukrainian ‘colleagues’

 このドキュメンタリー番組の制作者たちが強調している通り、議会内の「親露」派である代理人や実業家たちがウクライナを出国しているのは間違いない。ただし、現政権を積極的に支援している人々の多くも、外国から自国を守る戦法を好んで取っているようだ。

  ウクライナ・プラウダは、ウラジミール・ゼレンスキー率いる「国民の僕(しもべ)党」所属の国会議員であるプアンドレ・ホロドフに、現在住んでいるウィーンで話を聞くことに成功した。そのオーストリアの首都ウィーンを住処に選んだのは、国粋主義者のニキータ・ポチュラエフやセルゲイ・メルニチュクもそうだ。メルニチュクは、アイダール大隊の元隊長であるが、この大隊はアムネスティ・インターナショナルから、戦争犯罪を犯した団体として報告を受けたことで知られている。元ウクライナ憲法裁判所裁判長のオレクサンドル・トゥピスキー(59)や前ウクライナ司法長官ルスラン・ピャボーシャプカ(49) も、外国の「前線」に陣を引く方をんだ。

 ウクライナの国会議員たちは、戦時中に施行されているウクライナの重要な諸法律をなかなか守ろうとはしていない。ヴォリン・ニュースのテレグラム上の記事によると、3月11日の時点で、20名以上の国会議員が外国に渡航したが、理由は不明だという。行き先は様々で、英国、ポーランド、カタール、フランス、オーストリア、ルーマニア、ハンガリー、アラブ首長国連邦、モルドバ、イスラエルなどだ。3月、ウクライナの司法長官は、まだ外国に留まったままの6名の国会議員についての捜査に着手した。

 明らかに、戦争や懲罰では、ウクライナの国会議員たちを職場に連れ出すことはできていない。7月20日会期の国会に出席したのは、450人中たった99名の議員だった。おそらくそれは、夏の魅力にとりつかれて、コート・ダジュールやモルディブで、ヨット遊びに興じていたからだろう。ウクライナの防衛は、「外国からの志願兵に任せておけ」ということだ。


画像:会議開始前に、空っぽの議事堂内で座っている一人の国会議員。©Sergii Kharchenko / NurPhoto via Getty Images

軍事支援物資や人道支援物資はどこにいってしまったのか?

 ウクライナを支援している西側の人々が最近気づいてきた事実がある。それは、軍事支援物資や人道支援物資のほとんどが、ウクライナ軍や、ウクライナ国内の人々の手に届いていないという事実だ。

 CBSが独自制作のドキュメンタリー番組で伝えたところによると、軍事支援物資の約7割が、支援を必要としている人々の所に届かずに、寄付を行っている国々が意図したようには使用されていないことがしばしばある、という。このドキュメンタリーを制作した人々によれば、武器の中には、闇市場に回されているものもあるとのことだ。米国海兵隊の退役軍人であるアンディ・ミルバーンはこう語っている。「間違いなく言えることは、前線の部隊に以下のような武器は届いていないということです。ドローン、スイッチ・ブレイド(米国製自爆ドローン)、IFAKs(応急処置キット)です。本当に届いていないのです。鎧もヘルメットも何もかもです。」


関連記事: Is there a link between 'Aid to Ukraine,' the US Democratic Party and the suspicious collapse of the FTX Crypto exchange?

 ニュースサイトのグレーゾーンの記事によると、西側からウクライナ軍に送られた武器や人道支援物資が、輸送中に盗まれ、ウクライナ兵達の手には届いていないとのことだ。さらに、それと時期を同じくして最近起こっていることは、ウクライナの国会議員の報酬が7割増しになっているということだ。この記事の著者の主張によると、米国やEUからの何十億ドルもの金が横流しされているのでは、とのことだった。

 イワンという名のウクライナ兵は、記者達に西側からの支援物資は前線には届いていないと語っていた。「米国兵に以下のような話をしたらどう思うだろうか?“俺たちは戦争で自家用車を使っていて、修理費や燃料費は自前だ。鎧やヘルメットも自分たちで購入している。観測器もカメラもないから、兵士達は頭を突き出して、何が来ているのか目で確認しないといけない、つまりいつ何時、ロケットや戦車に頭を吹っ飛ばされるかわからない、ということだ”と」

 米国出身の軍医であるサマンサ・モリスは、医療支援物資の盗難や腐敗が全体的にはびこっている状況について明らかにし、注目を集めた。「スームイ市の軍事基地の医師長は、折に触れ何度か、軍からあるいは軍のために医療器具を注文していたのですが、トラック15台分の供給物資が完全に消えてしまったそうです」とモリスは語っていた。医師達は、スームイ州知事の友人が介入するまでは、医療助手に対する訓練を行うこともできなかった。CNNは米国の退役将校に話を聞いたが、その退役将校によると、ウクライナ軍は物資の供給が不足しているとのことだ。小型武器、医療器具、野戦病院やその他の多くの施設が私設団体の管理下にあるというのだ。そのような私設団体は、同胞の命を救うことよりも、金銭を盗むことのほうに関心が高い。


画像: 首都キエフ近郊のイルピン市へ続く路上にあるウクライナ軍の車両と兵達2022年3月30日撮影© Metin Aktas / Anadolu Agency via Getty Images

 米国務省国際経済政策委員会の元委員であったステファン・マイヤーは、以下のように主張している。「野戦指揮官が軍の装置を売人に横流しすることを止める術はほとんどありません。売人とは、言い換えればロシアや中国やイランなどの人々のことです。指揮官が、そのような装置や武器は”破壊された“と主張すればいいのですから」

 何千トンもの救援物資が盗まれている。9月、ウクライナ反腐敗局(NABU) が示した内容によると、大統領府長官のアンドリー・イェルマーク、同副長官のキリロ・ティモーシェンコ、国民の僕党党首のディビッド・アラハミヤ、彼の友人ヴェミル・ダヴィチャンの4名が、ザポリージャ州での人道支援物資の大規模な窃盗の裏にいるという。ただし。ザポリージャ州の当局者であるスタルクやネクラソワやシチェルビナやクルテフといった人物が、救援物資の横流しを実行した、と表向きにはされている。6ヶ月の間に、これらの人物は22の海上コンテナ、389の鉄道車両、220台のトラックの窃盗行為を組織した。人道支援物資はATBやセルポといったスーパーマーケットで売られた。これらのスーパーマーケットの所有者は、それぞれジェナディ・ブトケヴィッチとウラジミール・コステルマンだ。もちろん、ティモーシェンコやネクラソワやダヴィチャンは皆、「難民」となり、亡命者としてウィーンで目撃されている。


関連記事: The BBC made up a story about a Russian 'attack' on a Ukrainian city's water supply – where are the 'fake news' fact checkers?

 確かにすべての人が海外に逃げ出した訳ではない。元ヴォルィーニ州の行政当局副長官であった、アンドリー・ヤルモルスキーは、不良品の防弾服を供給し、不法に人々を国外に移動させるなど問題の多い人物だが、昇進している。今は、ウクライナ国家安全保障・国防会議で勤務している。

 供給された医療器具も盗まれている。以下は、テレグラフ紙の報道だ。「寄贈された供給物資は、その後各病院の薬品個に陳列された。値付けされ、売り物として並べられる」と。さらに、「医療従事者たちは薬品、包帯、医療器具を横領し、患者達に売っている。それらの物資は、本来は患者たちに無料で配布される物資であった」とその記事は伝えていた。

 同じような話を先述のモリス医師も語っている。「私はドニプロ市にある軍の病院の看護師から電話をもらいました。その看護師によると、病院長が鎮痛剤を全部盗んで売っているとのことでした。さらに、負傷した兵たちが痛みを止める治療を受けられていないとのことでした。その看護師は、鎮痛剤を手渡しで届けるよう私たちに頼み込んでいました。その看護師の話では、病院長から隠すことができれば、兵たちに鎮痛剤を届けられる、というのです。でも私たちはいったい誰を信じればいいのでしょうか?本当に病院長が薬品を盗んでいたのでしょうか?それともその看護師が私たちをだまして鎮痛剤を入手し、売ったり使ったりしようとしているのでしょうか?全くわかりません。みんなが嘘をついているのですから」

戦争を与えられる者もいれば、グッチを手にする者もいる

 西側諸国から流れてくる大量の現金を、腐敗したウクライナの高官たちが恒常的に使い込んでいる。その目的は、私欲のためであり、贅沢品を手にするためだ。

 先日明らかにされた腐敗事例で、オデッサ市の税関当局者たちがこっそりと入手していたのは、ブランドもののシャツやリュックサックやスポーツシューズやベルトなどの贅沢品だ。そのブランドは、ジバンシー、グッチ、ポロ、ドルチェ・アンド・ガバーナ、マイケル・コース、シャネル、ルイヴィトン、アルマーニ。これらのブランドものが、軍用の装置を購入するためとして購入されていたのだ。公式文書によれば、これらの荷物は「ウクライナ軍に必要な物資」だとされていた。この文書には、オデッサ市の現在の税関担当であるヴィタリー・ザコロヂャズニーの署名がつけられていた。国会議員のアレクサンドル・ドゥビャーンスキーによると、この手口は窃盗行為でよく使われるものだという。「税関担当者たちが、自分の仕事に不満を持つ理由は、前線で働いている兵士たちがいるいっぽうで、税関担当の制服を利用して、金儲けをしている人々がいるからです」、と同議員は語っていた。


画像: ロサンゼルスのロングビーチ総合港で、押収された偽造ブランド品の箱を開封している米国税関・国境警備局員© Brittany Murray / MediaNews Group / Long Beach Press-Telegram via Getty Images

 別の例を挙げると、2022年5月、西側諸国がウクライナに対する関税を撤廃した。その1週間以内で、1万4千台を超える自動車がウクライナに運ばれた。ウクライナの生活基盤部局のムスタファ・ナイエム副局長は、こう語っていた。「ポーランドやスロバキアやルーマニアの同胞のみなさんは、戦時中である我が国に、このような早さで自動車が列を成して送り込まれていることに驚いていることでしょう」と。

  ウクライナの一部の人々が贅沢な衣類や自動車を入手するのに躍起になっているだけではなく、これらの窃盗者たちはウクライナから資本を引き出すことにも興味津々だ。


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 ウクライナの経済安全保障局によると、ウクライナの国家予算において、農産業業界から450億UAH(ウクライナ・フリブリャ)相当の税金が使われたという。さらに、「2022年8月から9月にかけて、約1200万トンの穀物と1370億UAH相当と見積もられる石油がウクライナの税関から輸出された。そのうち約400万トンが、書類上にしか存在しない偽の会社に送られていた」とのことだ。そして、「穀物が輸出されている所在地のない会社のほとんどは危険度の高い会社であり、犯罪捜査の対象となっている」とのことだ。これが、国際社会が拍手喝采で迎えた「穀物協定」の真の姿なのだろうか?ウクライナの詐欺師たちは、自国内だけではなく、諸外国でも汚職を行っているようだ。しかもこの事例は氷山の一角にすぎない。

 スルキス兄弟がウクライナを出たとき、1700万ドルを持ち出していた。しかしこの額は、「ユーロマイダンの英雄」が持ち出した額と比べれば些細なものだった。オレグ・ツァリョフ元国会議員によると、戦闘勃発後、ウクライナの主要な政治家たちは、海外に自身の資産も家族も送ったという。

 ツァリョフ氏の話によると、ゼレンスキーや彼の妻の両親や親族は皆、ウクライナを出国したという。ゼレンスキーの前任者のピョートル・ポロシェンコ前大統領は、子息たちを出国させただけではなく、何十億ドルもの資産も現金で英国に送ったそうだ。

 ウクライナの主要な役人たちも同じようなことを行っている。元内務相アルセン・アバコウ、大統領府長官アンドリー・イェルマク、ウクライナ第2代大統領レオニード・クチマ、元首相アルセニー・ヤツェニュクなど多くの人々が家族や資産を国外に持ち出しており、その額は約10億ドルにのぼると推定されている。政治家とつながりのある新興財閥たちも同様の行為を行っていることは言うまでもない。

 より小物の詐欺師たちも、人々を「個人としてEUに加盟」させることができている。賄賂を送れば、従軍すべき年齢にある人々が国外に逃れられる仕組みが確立している。ロシアのイズヴェスチャ紙によれば、その料金は現在8千ドルから1万ドルだという。ウクライナのメディアも、金を払って国境を越える人々についての記事をじている。

***
 戦争に苦しんでいる国を同情する西側諸国の気持ちは理解できる。しかし、自国の経済を危機に陥れることも辞さずに、ウクライナを支援するために最善を尽くしている国々があるいっぽうで、腐敗したウクライナの役人たちが、自分たちの懐を暖め、素晴らしい保養地で優雅な生活を送るためにその支援金を使っている。そしてその資本金の出所は、すべて西側諸国の税金だ。

 2015年、アルセニー・ヤツェニュクは首相の座を辞する際に公言していたのは、自分が億万長者になったという事実だった。この戦争が終わるころには、ウクライナを出国し西側諸国に現れる、外国からの軍事支援物資で潤ったウクライナの新興の超富裕層の大物たちは、何人くらいになるのだろうか?

By Olga Sukharevskaya, ex-Ukrainian diplomat
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ウクライナにおけるファシズムの歴史I部:OUNの起源1917-1941

<記事原文 寺島先生推薦>

The History of Fascism in Ukraine Part I: The Origins of the OUN 1917-1941

筆者:ヒューゴ・ターナー(Hugo Turner)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月4日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月20日


2017年10月14日、キエフで行われたアゾフ大隊、スヴォボダなどの極右過激派によるデモ行進
(Reuters / Gleb Garanich)


 ウクライナ戦争が激化するなか、ウクライナにおけるファシズムの歴史をたどるときが来た。かつて時代錯誤の冷戦の遺物と考えられていたOUN(ウクライナ民族主義者組織)は、戦後最も成功したファシスト集団として登場した。世界中の政治家がそのファシスト的な呼びかけ「スラバ・ウクライナ」*を叫ぶ。この言葉は、ウクライナ・ファシスト連盟に端を発し、OUNによって採用され、OUNがポーランドで行っていた暗殺作戦のために裁判中のステパン・バンデラによって一般化されたものであった。ウクライナ、米国、カナダ、そして英国には、100万人以上のユダヤ人、数十万人のポーランド人、無数のウクライナ人、ロシア人、ベラルーシ人を殺害したウクライナSS退役兵の記念碑が建てられている。今日、イスラエルとポーランドはウクライナの最大の資金援助国グループに入っている。ウクライナ国内では、これらの大量殺戮者を批判することは違法である。西側諸国では、冷戦時代の学者たちが、逃亡したウクライナ人戦犯にウクライナとソビエト連邦の歴史を作り上げることを許し、彼らの歴史は何十年も歪曲されてきた。最も重要なことは、CIAが支援する2つのクーデター、「カラー革命」(2004年と2014年)のおかげで、OUNの後継者たちがウクライナをほぼ完全に支配できるようになったことである。OUNの概念はウクライナの公式概念となり、ナチの殺し屋たちは文句を言う者を脅すための完全な免罪符を与えられている。ファシストの準軍事組織が警察や軍に組み込まれた一方で、アゾフ大隊のように、ウクライナ情報局(SBU)や内務省にのみ応える一定の自治権を保持している組織もある。ウクライナの大統領でさえ、こうしたファシスト集団を抑制することは難しい。大統領がちゃんと彼らの機嫌をとらないと、このファシスト集団は公然と反抗する。
「スラバ・ウクライナ」*・・・「ウクライナに栄光あれ!英雄たちに栄光あれ!」(ウクライナ語: «Слава Україні! Героям слава!»、スラーヴァ・ウクライニ、ヘローヤム・スラーヴァ)は、ウクライナの標語、成句。1917年から1921年にかけて行われたウクライナ独立戦争(英語版)で確立され、今日に至るまでウクライナ人に広く認知された文言である。また、外国の政治指導者がウクライナの要人に挨拶をするときにも用いられることがある。(ウィキペディア)

 本稿では、OUNの起源をたどり、ナチス・ドイツのソ連侵攻前夜までの歴史を説明する。その頃、OUNはドイツ軍情報部(Abwehr)およびSSと密接に協力し、ウクライナでの大量虐殺を計画し始めていた。ナチス占領下のポーランドから、OUN/Bは2万人以上の地下活動家を支配し、ユダヤ人、ポーランド人、ロシア人を絶滅させるために武器を取り、ソ連領ウクライナでナチスを温かく迎え入れる準備を整えていたのである。第II部では、OUNが戦時中に行った恐ろしい戦争犯罪を取り上げる予定である。第I部では、最も信頼できるグルゼゴルツ・ロソリンスキー-リーベ(Grzegorz Rossolinski-Liebe)著『ステパン・バンデラ 。あるウクライナ人民族主義者の生涯とその後』に主に依拠することになる。これは、OUNの歴史について深く研究したい人にはお薦めの本だ。

 初期のウクライナ民族主義者は、社会主義に傾倒した穏健派であった。彼らは詩人、ロマンチスト、知識人で、農民やコサック、そして南ロシアでも話されていた独特のロシア方言から着想を得ていた。ウクライナという名前は単に国境地帯を意味し、その人々は「小さなロシア人」を意味するマロロシア人として知られていた。しかし、国家主義の流行がヨーロッパを席巻すると、一部の知識人はウクライナを独立した国家として考えるようになった。その中で、後のファシスト的ウクライナ民族主義者に大きな影響を与えたのは、歴史家ミハイロ・フルシェフスキー(Mykhailo Hrushev’sky)の『ウクライナ史』である。このきわめて重要な本は、ウクライナ人をポーランド人やロシア人とは全く別の民族として描き、密接に結びついたロシアとウクライナの歴史的関係を絶とうとしたのである。ロシア人は自分たちの起源をキエフ・ラス(現在のウクライナのキエフを中心とする)に求め、ウクライナ人やベラルーシ人をロシア人の近親者と見なした。ウクライナ人の多くは自らをロシア人と見なしていた。また、18世紀から19世紀にかけて多くのロシア人がウクライナに移住してきた。現在でもほとんどのウクライナ人がロシア語を話している。ロシア帝国はこの2つのアイデンティティの融合を奨励し、ウクライナ語の使用を控えさせようとした。

 フルシェフスキーのこの本は、ロシア支配下のウクライナで、さらに過激なウクライナ民族主義者ミコラ・ミフノフスキー(Mykola Mikhnovs’kyi)の尻を叩き、ウクライナ民族は撲滅すべき敵に囲まれているとする世界観を説くようになる。彼は、19世紀の社会ダーウィニズムと科学的人種主義をウクライナの国家主義に挟み込み、ロシアの多数派の都市ハリコフで執筆活動をした。彼は「ロシア人、ポーランド人、マジャール人、ルーマニア人、ユダヤ人をウクライナの敵」(彼らがウクライナ人を支配または搾取する限り)とし、コーカサス地方からカルパチア山脈に至るウクライナ国家の建設を目指した。1904年に結成されたUNP(ウクライナ国民党)の十戒は、OUNに大きな影響を与えることになる。その中には、「外国人女性と結婚してはならない。なぜなら、その子供はあなたの敵になるからだ」という印象的な一節が含まれていた。また、ミフノフスキーは他でも「ウクライナ人のためのウクライナ、そして一人でも異国の敵が我が領土に残っている限り、武器を手放すことを許されない」と書いている。

 ウクライナ人の8割はロシア帝国内に住んでいた。残りの20%は、かつてポーランド・リトアニア連邦が支配していた地域で、18世紀後半にポーランドが解体され消滅した後は、オーストリア・ハンガリー帝国に支配されていた地域に住んでいた。彼らはルテニア人と呼ばれ、言語はロシアのウクライナで話されている方言よりもポーランド語に近かった。オーストリア・ハンガリー帝国は、過激なウクライナ国家主義を奨励し、反抗的なポーランド人に対する対抗手段としてウクライナ人を重要視した。ウクライナ人あるいはルテニア人が住んでいた地域は、東ガリシアとして知られていた。1909年、こんな状況のなかでステパン・バンデラ(Stepan Bandera)は生まれた。OUNは、ウクライナのこの西側支配地域を完全な発祥地としている。第一次世界大戦とロシア内戦の後、この領土はポーランド第二共和国という形で再び生まれ変わったポーランドに支配されることになる。第二共和国にはまた、ソビエトとの戦争で征服されたロシア領ウクライナのヴォルフニャ地方に住む西ウクライナ人もいた。

 何世紀にもわたって、ポーランドのウクライナ人貴族は、同化してポーランドの貴族になることを決意していた。かくして、ウクライナ人のほとんどは農民ということになった。ポーランドはまた、ギリシャ・カトリック教会の創設を奨励した。このギリシャ・カトリック教会は、ギリシャ・カトリック正教会の総主教ではなく、ローマ教皇に従属しながらも、ギリシャ・カトリック正教会の儀式を引き続き踏襲した。バンデラの時代までに、ギリシャ・カトリック教会は西ウクライナの国民性を支える重要な要素となっており、ステパン・バンデラのようなOUN指導者の多くはギリシャ・カトリック司祭の子供であり、彼らはまた筋金入りのウクライナ民族主義者であった。ポーランド国家への忠誠を誓う一方で、ギリシャ・カトリック教会はOUNのメンバーが処刑されたり、警察がウクライナ民族主義者の行事を妨害しようとすると、それへの警告として教会の鐘を鳴らしたり、「ウクライナの英雄」のためにパナクヒダ(Panakhydas)と呼ばれる追悼礼拝を行うなどして、ポーランド政府を怒らせる行動をとっていた。「ウクライナの英雄」たちはOUN教団の中では民族主義的な殉教者として承認されていた。

 西ウクライナに住むウクライナ人の多くは、ポーランド人地主とそのユダヤ人監督者のもとで働く農民(1848年までは農奴)であった。こうして西ウクライナでは、ユダヤ人とポーランド人に対する憎悪に満ちた国家主義が誕生した。OUNはこの両者を抹殺の対象とすることになる。OUNは、伝統的なウクライナの反ユダヤ主義とナチスの「人種科学」を融合させることになる。しかし、ポーランドは権威主義的な軍事独裁国家であった。このことも、ポーランドに住むOUNに大きな影響を与えた。ドミトロ・ドンツォフ(Dmytro Dontsov)は、ポーランドの敵であるロシア人とソ連を中傷する方が、ポーランド国家の怒りを買うよりずっと安全だと考えた。ドンツォフは元マルクス主義者で、ウクライナ民族主義は社会主義や民主主義のあらゆる要素を排除すべきだと主張した。彼はウクライナが国家樹立できなかったのは、この二つの要素に原因があると非難した。1922年までにドンツォフは、ムッソリーニのファシスト・イタリアに自分の手本を見出した。そして、さらに強烈な印象を受けたのはヒトラーとナチスだ。ドンツォフは、これらのファシスト思想家たち(ムッソリーニとヒトラー)の著作をウクライナ語に翻訳した。また、ムッソリーニやヒトラーを褒めそやす伝記の序文も書いた。彼は、バンデラと同世代の学生たちに、ファシズム、反ユダヤ主義、ロシア恐怖症を広めた。ニーチェ、フィヒテ、ルソーなどの哲学を低俗的に解釈し、ウクライナ人は従来の道徳を捨て、ウクライナ国家の誕生を本気で考えるならば、どんな犯罪もよろこんで犯す可能性があると主張した。ドンツォフは狂信を美徳とした。しかし、彼はポーランド政府に逮捕されることを恐れて、何度もOUNへの参加を呼びかけられたが、これを拒否した。

 以上で、ウクライナのファシズムを発展させ、あるいは鼓舞した知識人の紹介は終わりにする。次に第一次世界大戦とロシア革命にさかのぼり、OUNの歴史的起源を紹介しよう。OUNは二世代で構成されていた。上の世代は、第一次世界大戦中オーストリア・ハンガリー帝国側で戦った人たちである。その中には、後にOUNの指導者となるレフエン・コノバレッツ(Levhen Konovalets)を含むシーチ銃兵隊*を結成した者もいた。彼らは西ウクライナ出身であった。第一次世界大戦中、ガリシアはロシアとオーストリア、ドイツ軍との戦場となる。ロシアはガリシアを占領したが、再び追い出されることになった。
シーチ銃兵隊*・・・(ウクライナ語: Січові Стрільціスィチョヴィー・ストリリツィー、略称:С.С. 、 СС、SS)は、かつてウクライナに存在した軍事組織。シーチ射撃隊と訳されることもある。
「シーチ」とはウクライナ人が心の拠り所としていたザポロージエ・コサックの根拠地のことであり、一方「銃兵隊」(ストレリツィ)は中世の東欧で組織されていた鉄砲隊に用いられていた名称であった。「シーチ銃兵隊」という組織は旧来ザポロージエ・コサックに存在した軍事組織の名称であった。
この名称を持つ最初の近代的軍隊は、1914年にオーストリア・ハンガリー帝国領であったハルィチナーで結成されたウクライナ・シーチ銃兵隊であった。1917年にこの組織がオーストリア・ハンガリー帝国軍から離脱してキエフに移動、反ボリシェヴィキの立場からウクライナ中央ラーダの軍隊に加わり、その主力として活動した。(ウィキペディア)

 1917年、二月革命でツァーリが倒され、ケレンスキー(Kerensky)が支配する穏やかな左翼の「民主主義」が確立すると、ロシア領ウクライナのウクライナ民族主義者はラーダ(議会)を作り、ロシア帝国内での自治を宣言した。その代表として左翼のヴィニチェンコ(Vinnichenko)が首相に就任した。この年末、10月革命が起こり、ロシアではケレンスキー政権が倒された。ラーダはこの混乱に乗じて、1917年11月20日にウクライナ人民共和国(UNR)を宣言することにした。軍部の代表はシモン・ペトリウラ(Symon Petliura)で、彼は内戦中にユダヤ人を大量に殺害し、5~6万人を殺したことで悪名高くなる。OUNは彼をウクライナの英雄として公認することになる。1926年、ペトリウラは家族を失ったユダヤ人の生き残りであるアナーキスト、ショロム・シュワルツ(Sholom Schwartz)によって暗殺される。シュワルツは裁判でペトリウラ軍の恐ろしい犯罪を暴露し、同情的な陪審員によって無罪とされた。今日では、ペトリウラは再びウクライナの英雄とされるようになった。

 ソ連はドイツとの戦争を終わらせるために必死で、後にブレスト・リトフスク条約と呼ばれることになる条約について交渉していた。ウクライナ人民共和国は交渉に特使を派遣し、ドイツとオーストリアはその主張を認めた。ソ連交渉団も認めた。ソ連は、同時に、自称ソビエト・ウクライナ共和国も支援していた。このソビエト・ウクライナが使節を送ったとき、ドイツは彼らの参加を拒否した。ソ連とウクライナ人民共和国(UNR)の間には、緊張が高まった。UNRは、コルニロフ(Kornilov)将軍率いる白ロシア軍(反革命軍)と、ヘトマン・カレディン(Hetman Kaledin)率いるその同盟者たちにドン・コサック領内での活動を許していた。つまり、彼らは赤軍部隊とウクライナ・ソビエトに忠実な部隊の武装解除と、赤軍に所属するウクライナ軍のウクライナへの帰還を促す活動をしていた。1917年12月15日、ブレスト・リトフスク条約が締結され、ドイツとオーストリアは和平と引き換えにロシアの広大な領土を支配することになった。1917年12月17日、ドイツの脅威から解放されたソ連政府は、ウクライナ人民共和国に最後通牒を送り、①白軍を庇護したり、②ソ連軍の武装を解除したり、そして③赤軍の通行を阻止したりするのをやめるように要求した。イギリスとフランスの使節団は、ソ連の最後通牒に抵抗すれば、ラーダを援助することを約束した。ソ連は、ウクライナ人民共和国(UNR)を公式に承認しながら、ハリコフに共産主義政権を樹立しようとするウクライナの共産主義者の動きを支援していたのである。

 その詳細は、ここで論じるにはあまりに複雑である。しかし、ウクライナは赤軍、ドイツ軍、ポーランド軍、白ロシアの反革命軍との戦場となった。また、西ウクライナ軍、ペトルーラ軍、ウクライナの無政府主義者マフノ軍、様々な盗賊軍閥やコサックも戦っていた。キエフは十数回にわたって政権が交代することになる。当初、ウクライナ人民共和国は、赤軍が白軍を攻撃するために通過することを許可するというソ連の最後通告を拒否した。しかし、戦争は数カ月間回避された。やがて、赤軍はキエフを占領するようになった。それはラーダが国民の支持を失ったためだ。人々が望んでいたのは土地改革だった。多くのロシア語話者が迷惑に思っていたウクライナ化ではなかったのだ。ラーダ軍は脱走して赤軍に走った。しかし、ソビエト軍がキエフを支配したのは3週間だけであった。ラーダはUNRを承認しているドイツとオーストリアを頼った。ドイツ軍はウクライナに侵攻し、赤軍を撤退させた。シモン・ペトリウラ(Symon Petliura)の軍隊が権力を握った。1918年4月、ドイツはラーダを解散させ、ヘットマン・スコルパドスキー(Hetman Skorpadsky)下の傀儡政権を発足させた。ドイツは経済封鎖下にあり、国民は飢餓に直面していた。ドイツ軍はウクライナの穀物を略奪し、農民を激怒させた。1918年11月、ドイツ軍は崩壊し、ウクライナを放棄した。スコルパドスキーも一緒に退却した。ペトリウラと「理事会」と呼ばれる新ラーダ政府は、キエフで再び権力を握ったが、その後赤軍に放逐された。ペトリウラ軍は撤退する際、ユダヤ人に対する大規模なポグロム(大虐殺)を行った。ペトリウラ軍はしばしば共産主義勢力に扮してポグロムを行い、出迎えに来た共産主義同調者たちをまず殺害し、その後何日もかけて残りのユダヤ人を強奪、強姦、殺戮したのである。ドイツが戦線を離脱したことで、イギリスとフランスは、ソ連を破壊しようとする血気盛んな白人のデニキン(Denikin)将軍をだれにも制限されず支援することになった。皮肉なことに、デニキンはロシアの民族主義者で、ウクライナをロシアと不可分のものと考えていた。デニキンの軍隊は、同様に恐ろしいポグロムを実行した。ペトリウラはデニキンと、さらにはポーランドとも同盟関係を結んだ。

 西ウクライナでは、彼らは 1918 年 11 月 1 日にリヴィウで自分たちのウクライナ共和国であるZUNRを宣言した。その軍隊(UHA)の中核は、シーチ銃兵隊の退役軍人であった。同時にポーランドは第二共和国の独立を宣言した。リヴィウではウクライナとポーランドの民兵が街の支配権をめぐって争い、戦争が始まった。ガリシアの支配をめぐってポーランド・ウクライナの戦争が始まった。ポーランドは最終的に西ウクライナ共和国を潰し、吸収することになる。ZUNRの指導者たちは亡命し、UVO(ウクライナ民族主義者組織)を結成する。皮肉なことに、その軍隊から多くの者が赤軍に脱走することになるのだ。これは赤軍がポーランドとウクライナ人民共和国(ロシア領ウクライナ)と戦争をしていたからだ。また、ウクライナ人民共和国は、ポーランドに西ウクライナの支配をゆだねる協定をポーランドと結んでいた。ウクライナにおけるロシアの内戦の複雑な経緯を正しく伝えるには、独自の記事や本が必要だろう。しかし、いくつかの教訓は得ることができる。ウクライナの民族主義者たちは、独立を目指すはずなのに、喜んで外国勢力の道具となった。ウクライナの民族主義者たちは、自国が外国勢力に経済的に搾取されることを望んでいたのだ。ロシア領ウクライナでは、ウクライナ化は人々の心をそれほど惹きつけなかった。ソビエトが勝利した理由は、ウクライナの人々がより重視したのが自分たちの経済だったからだ。1919年1月22日、条約によって一時的に統合された時期もあったが、西ウクライナZUNRとロシアウクライナUNRは激しい敵対関係に終止符を打つことになった。皮肉なことに、大量虐殺(ジェノサイド)を夢見るOUNにとって、大量殺人者ペトリウラは英雄だった。彼が、ポーランドの支援と引き換えに東ガリシアの領有権を認めるという売国行為をしていたことなどどうでもよかった。ペトリウラ暗殺の10年後、OUNはウクライナ人にペトリウラの復讐のためにユダヤ人を殴るか殺すように促す小冊子を発行した。

 1921年3月18日、ついにポーランド・ソビエト戦争は終結した。ポーランドとソビエト連邦はリガ条約に調印し、ポーランドは東ガリシアとヴォルヒィニアを支配し、約500万人のウクライナ人を擁することになった。ウクライナ人はポーランド内最少数民族となり、人口比率は16%。OUNがウクライナ国家を立ち上げようと目論むガリシアの人口は、ポーランド人47%、ウクライナ人42%、ユダヤ人11%。東ガリシアでは、ウクライナ人が62%、ポーランド人が25%、ユダヤ人が12%だった。残りのウクライナはソビエト連邦内の共和国となり、2600万人のウクライナ人(またはロシア人)が住んでいた。チェコスロバキアには約50万人、ルーマニアには約80万人のウクライナ人が住むことになる。チェコスロバキアはウクライナの民族主義を支持し、ウクライナの学校と大学を許可していた。ウクライナには、ハンガリー人、ルーマニア人、ドイツ人など多くの民族が住んでいた。内戦終結後、ソビエト連邦内のウクライナは比較的安定していた。1920年代、社会主義を後退させたNEP(新経済政策)は、農民を優遇した。レーニンはウクライナのソビエト共和国に、ドネツクやルガンスクの工業地帯とともに、ノボロシヤという黒海沿岸のロシア領の広大な土地を与えた。この決定について、レーニンは今でもロシアの民族主義者から非難されている。ロシアは現在の戦争でこの決定を覆すつもりでいるようだ。レーニンはウクライナ化を強力に推進し、政府高官にウクライナ語を学ばせ、ウクライナ語の学校と大学を設立した。1923年、ソビエトは民族主義者のウクライナ人歴史家フルシェフスキー(Hrushevs’kyi)を説得し、ウクライナ科学アカデミーの長として新政府に参画させたほどである。

 1930年代、集団化はウクライナを含むソ連全土で飢饉と小競り合い的な内戦を引き起こすことになる。西側の歴史家は、ソ連が農業を集団化したことが悪いと言いたがるが、それは、何世紀にもわたってロシアを襲ってきた定期的な飢饉をついに終わらせたのが集団化だったという事実を無視したものである。集団化は、ソ連が工業化し、来るべきドイツの大量虐殺的な侵略に対抗するために必要な軍事力を確立するために必要だったのだ。OUNのディアスポラ(離散)メンバーは、(ソ連の)集団化政策の際に起こった飢饉が、計画的大量虐殺(ジェノサイド)「ホロドモール」*だと神話化し、それが第2次世界大戦中のOUNの恐ろしい犯罪を正当化するために利用されたのだ。OUNは、この飢饉はウクライナ人を一掃するために意図的に仕組まれたものだと主張している。これは、ロシアとカザフスタンも同様に被害を受けたという事実を無視したものである。さらに、穀物投機と、西側の買い手から高値を提示されたウクライナの商人による西側への大量の穀物の輸出が果たした役割も見落とされている。飢饉は、悪天候と西側による経済戦争の結果であった。主流派の歴史家たち(特に英語で書かれる文献において)は、ソ連の経済問題とその結果は、常に、そして完全にソ連政府の自作自演であったという見方を、今も捨ててはいない。
「ホロドモール」*・・・1932年から1933年(または1934年)にかけてウクライナ・北カフカース・クバーニなどウクライナ人が住んでいた地域をはじめ、カザフスタンなど、ソビエト連邦各地でおきた大飢饉。(ウィキペディア)

 今日、OUNはソ連を悪者にして自分たちの犯罪を正当化しているが、実のところ、OUNはウクライナ・ソビエトに存在したことはなく、ポーランドとヨーロッパに亡命して活動しただけであった。1939年9月のドイツ軍のポーランド侵攻後、モロトフ・リッベントロップ(Molotov-Ribbentrop)条約の一環としてソ連が西ウクライナを占領することになり、ウクライナは一時的に統一される。ソ連は、ナチス・ドイツのスパイであるファシスト・テロリスト集団OUNの弾圧を開始し、容疑者数千人を逮捕、数百人を処刑した。これは、1941年6月22日にドイツがソ連に侵攻するまで続けられた。

 OUNの起源は、ポーランド第二共和国である。1920年、ウクライナ西部でZUNRのために戦ったシーチ銃兵隊の退役軍人たちが、地下テロ軍団UVOを設立した。UVOはウクライナ語でUkrainian Military Organization(ウクライナ軍事組織)の略である。その創設者はレフエン・コナバレッツ(Levhen Konavalets)、アンドレイ・メルニク(Andrii Melnyk)、そしてローマン・スシュコ(Roman Sushko)の3人。コナバレッツは、UVO、そしてその後OUNとなった組織を死ぬまで統率した。メルニクはコナバレッツの後、OUNを率いた。UVOは大衆的な政治組織ではなく、ドイツのAbwehr(軍事情報機関)のためにスパイ活動することによって資金を調達するテロ集団であった。当初、ウクライナ民族主義者の主要政党は、法的・民主的手段による独立を目指すUNDOで、始めはファシズムやテロリズムに反対していた。しかし、1930年代になると、UNDOの右派は密かにOUNと密接に連携するようになった。UVOは、1929年1月28日から2月3日にかけてウィーンで開催された第1回ウクライナ民族主義者会議において、OUN(ウクライナ民族主義者組織)を設立した。OUNは、ポーランドで人気のあったウクライナ民族主義青年団からメンバーを集めた大衆政治組織となる予定であった。OUNは国民を教化し、ポーランド当局に対してテロ戦争を行う手筈になっていた。亡命中のOUNの指導者たちの古い世代はPUNを結成し、ステパン・バンデラなどの若い新人たちはポーランドに戻って祖国行政府のために働いた。PUNは、ウクライナのすべての政党を統合しようとして失敗したが、多くのウクライナの青年グループに潜入し、その支配権を獲得することに成功した。OUNの若い世代は、年長者よりもさらに過激であり、年長者は自分たちがファシストであることを隠さなかった。若い世代は、8歳で民族主義の若者集団に入り、15歳で10代向けの団体に移った。10代の彼らは、ドンツォフ(Dontsov)や他のファシストの著作を貪るように読んでいた。この若い世代には、ステパン・バンデラ(Stepan Bandera)、ヤロスラフ・ステツコ(Yaroslav Stetsko)、ローマン・シュケヴィチ(Roman Shukhevych)など、後に悪名高い犯罪者となる人物たちがいた。1930年代の初め、OUNの若い世代は非常に意欲的で、狂信的で、無謀な若者たちであった。歴史家は彼らを「バンデラ世代」と呼んでいる。

 ステパン・バンデラ(Stepan Bandera)は1909年1月1日、アンドレイ(Andrii)とミロスラヴァ(Myroslava)・バンデラ夫妻の間に生まれた。父アンドレイ・バンデラはギリシャ系カトリックの司祭であり、熱烈なウクライナ民族主義者で、短命に終わったZUNR(西ウクライナ)の代議員を務め、ウクライナ民族主義者の武装部隊の育成を助け、ZUNRの軍隊UHAの従軍牧師を勤めたことがある。ステパンの母ミロスラヴァはギリシャ系カトリックの司祭の娘であった。バンデラ家には4人の息子と3人の娘がいた。ステパン・バンデラは、村の教師が徴兵されたため、小学校には通わなかった。両親は彼を家庭学習させ、ギリシャのカトリック教徒として、狂信的な民族主義者に育てた。しかし、ステパンは父とは違い、宗教よりも国を大切にするようになる。

 若き日のステパン・バンデラは、民族主義者のスカウト集団「プラスト」に参加し、後にOUN祖国行政府の責任者となるヴァシル・オクリモヴィッチ(Vasyl Okhrymovich)と親交を深めた。この友情は、バンデラのOUNでの急速な出世につながった。バンデラは民族主義青年団OVKUHに入り、そこで後にOUNの悪名高い団員となるローマン・シュケビッチやヤロスラフ・ステツコと知り合った。10代になると、バンデラや他の若いOUN指導者たちは、ドンツォフやミフノフスキー(Mykhnovs’kyi)の著作を読んで過ごす狂信的なファシストとなった。バンデラの趣味は、歌うこと、ハイキング、物まねをすること、爪にピンを刺すこと、自分を鞭打つこと、自分の体を火傷させること、ドアの桟に指をぶつけることであった。拷問に耐えられるように訓練しようとしていたのだ。ウクライナの若い民族主義者たちにとって、ポーランドの高校は戦場だった。ポーランドは、彼らに新しいポーランド国家への忠誠を教えようと決意していた。バンデラのようなウクライナ人は、ポーランド民族主義の象徴を破壊し、可能な限り授業を妨害することで抵抗することを決意していた。バンデラにとって、教育は二の次だった。大義がすべてであった。バンデラは祖国行政府の長になると、高校時代の恩師イワン・バビイを、ポーランド政府の命令に従ったウクライナ人であるという理由で暗殺させることになる。

 1927年までに、バンデラはUVOに加わり、偵察活動を行うようになった。1928年の秋、バンデラはウクライナ民族主義の温床であるリヴィウの大学に移籍した。しかし、民族主義者の扇動や殺人事件との関連で逮捕され、学業が中断されたため、バンデラは卒業することはなかった。バンデラは、ある種の分裂した人格を持っていた。彼は、組織作りのためには真剣そのものであった。しかし、仕事が終わると、仲間のOUNメンバーと冗談を言ったり、悪ふざけをしたりするのが大好きだった。また、あまりぱっとしない体型だったが、人を魅了する話術の持ち主であった。1929年の春、バンデラはOUNに参加した。彼は人を纏めることに長けており、急速に出世していった。1930年までにステパン・バンデラは、OUNのプロパガンダの配布を担当するようになった。彼は、しばしば女装してOUNの任務を遂行したため、女性を意味する「ババ」というあだ名で呼ばれた。1931年、バンデラはチェコスロバキアとグダンスクからOUNのプロパガンダを密かに運び込む責任者になった。この年は、彼の親友でOUNの祖国行政府のトップであるオヒモビッチ(Okhymovich)が死亡した年でもある。ポーランド当局に逮捕され、拷問を受けた可能性がある。イワン・ハブロセビッチ(Ivan Habrosevych)が祖国行政府の新しい代表となり、彼が逃亡を余儀なくされたとき、後任にはバンデラを、と希望した。しかし、バンデラは1932年6月まで獄中にあり、出所後はとりあえず副指導者ということになった。1933年1月までには、バンデラは事実上の祖国行政府の代表になり、1933年6月にベルリンで開かれたOUN会議で正式な委員長になった。バンデラの指導により、OUNの活動は大規模に過激化し、有名人の暗殺が行われることになる。彼は亡命中のOUN指導部であるPUNの命令に従って行動していた。

 PUNは、米国とカナダに離散したウクライナ人の間で資金集めに役立つような、華々しい攻撃を行うためにバンデラを必要としていたのだ。OUNの権力と影響力は、ウクライナ・ロビーという形で、その後数十年にわたり米国とカナダで拡大し続けることになる。もともとカナダのウクライナ人は左翼として悪名高く、ロシア10月革命後は共産主義新政権を広く支持したため、国家安全保障上重大な危険と見なされていた。しかし、ロシア内戦が終わると、多くの白系ロシア人とウクライナ人民族主義者がカナダとアメリカに移住することになる。西ウクライナのUHA軍の退役軍人はウクライナ戦争退役軍人協会を結成し、ウクライナ国民連盟と共にOUNのために4万ドル以上の資金を調達した。アメリカでは、ヘンリー・フォードがウクライナ人ファシストの凶悪犯を使い、組合組織へのテロ活動を行った。

 OUNの主な資金提供者は、ドイツ、リトアニア、イタリアであった。ドイツとリトアニアは、資金、軍事訓練、パスポートを提供した。第一次世界大戦後の国境紛争で、ポーランドはリトアニアの主要都市を含む重要な領土を占領した。リトアニアは報復のためにOUNに資金を提供した。イタリアはOUNの訓練基地を提供し、ステパン・バンデラの弟オレクサンドル(Oleksandr)はファシスト国家のイタリアで数年間、政治学の学位取得のために勉学し、ファシスト活動に従事した。イタリアはクロアチアのウスタシャ*の主要な支援国であった。OUNはクロアチアのウスタシャと緊密な同盟関係にあり、この2つの勢力は共に訓練を受け、共謀していた。この2つの勢力は、後にナチスをも驚愕させるほどの残虐な行為を行ったという特徴を持つようになる。冷戦時代には、両勢力は最も影響力のあるファシスト移民集団のひとつに数えられるようになる。冷戦終結後、両勢力は再び力を取り戻す。クロアチアのウスタシャは1990年代前半にフランヨ・トゥジマン(Franjo Tudjman)のもとで復活し、OUNは2004年と2014年に内戦とNATOの介入を煽った。前者は再びユーゴスラビア破壊の導火線となり、後者はロシアとの戦争に再び火をつけることになる。ナチス・ドイツはOUNの最も重要なスポンサーだった。UVO/OUNのスパイ活動は、ドイツ軍がポーランドに侵攻した際、間違いなく役に立った。ナチス・OUNの同盟関係については後ほど触れることにする。OUNの背後にはイギリスのMI6がいた事実を、ポーランドもつかんでいたことは興味深い。
ウスタシャ*・・・20世紀のクロアチアに存在したファシズム政党・民族主義団体。第二次世界大戦中にドイツと同盟を結び、大量虐殺を行ったことで有名である。(ウィキペディア)

 ポーランドでのOUNのテロ作戦に目を向ける前に、OUNの基底概念について考察してみよう。OUNはその後数十年間、ナチスとの協力関係を正当化したり否定したりすることになる。しかし、実際には、彼らが犯罪を実行したのは、ドイツの主人を喜ばせるためだけでなく、彼ら自身の基底概念にも完全に合致していたからである。OUNは公然たるファシストであった。しかし、初めのころは、国家の支配なしにファシズムが可能かどうかという議論もあった。結局、彼らは国家を樹立するためには、ファシスト運動が必要だと考えた。この運動は、ヒトラーやムッソリーニが既存の国家を掌握するために作り出したようなものでなければならないだろう。OUNは、2種類の革命を信じていた。一つは「永久革命」であり、OUNは、それを自分たちの考えるウクライナ民族主義を大衆に教え込むための果てしない戦争と呼んでいた。ウクライナ人は、ポーランド政府との闘争に絶えず動員され、その過程でますます先鋭化していった。

 第二の革命は、「民族革命」であった。OUNによって統一されたウクライナ国民は、ファシスト独裁政権を設立し、ウクライナ国家を建設することになる。OUNは、共産主義以上に民主主義を軽蔑していた。彼らは、プロヴィドニク(Providnyk)またはヴォーズド(Vozhd)というウクライナ版総統と呼ばれる独裁者を求めていた。民族革命が成功すると、OUNは敵をすべて排除するようになる。ユダヤ人、ポーランド人、ロシア人、その他の少数民族などだ。ユダヤ人がウクライナ人よりも多い都市は浄化される。ウクライナ人と他の民族との婚姻は禁止される。スポーツ、文化、宗教、経済など、生活のあらゆる分野がOUNの目標達成のために再編成される。OUN以外の政党はすべて禁止。OUNの基底概念は、ナチスの基底概念と交換可能なものであった。彼らの計画は、ナチス・ドイツのニュルンベルク人種法*に触発されたものである。1930年代後半には、ヒトラーは西ウクライナでは英雄とされ、OUNはドイツがポーランドに侵攻し、ウクライナ人が自分たちのファシスト独裁政権を樹立できるようになることを望んでいた。しかし、ヒトラーはウクライナに対して別の計画を持っていた。
ニュルンベルク人種法*・・・1935年9月15日に国家社会主義ドイツ労働者党(以下ナチ党)政権下のドイツにおいて制定された2つの法律「ドイツ人の血と名誉を守るための法律」(Gesetz zum Schutze des deutschen Blutes und der deutschen Ehre)と「帝国市民法」(de:Reichsbürgergesetz)の総称。ユダヤ人から公民権を奪い取った法律として名高い。

 永久革命を行うために、バンデラと祖国にいる幹部はテロ作戦を展開し、それは小競り合い的な内戦となった。OUNは、自分たちのテロ作戦がウクライナ人の大量投獄につながることを正しく予見していた。バンデラは、森で活動するOUNの残留者たちの繋がりを構築するよう命じられた。UVOは1921年に、後にポーランドの独裁者となるピウスツキ(Pilsudski)を暗殺しようとしたことがある。ステパン・バンデラの名誉とも不名誉ともなったのは、このOUNの暗殺作戦であった。1930年代、OUNは何百人もの犠牲者を出した。ウクライナの民族主義者を馬鹿にしたポーランド人は、しばしば死ぬことになった。OUNを批判したウクライナ人もそうだった。バンデラは、OUN内部の裏切り者を殺すことにも執念を燃やしていた。バンデラは特に大規模なプロパガンダ作戦を仕掛けることに長けていた。OUNの団員が殺されると殉教者にされ、ギリシャ・カトリック教会の援助を受けて、その人を中心とした礼拝の儀式がきちんと執り行われた。これはバンデラの時代以前から始まっていたことだが、バンデラはこれを一般民衆に広めることに成功した。OUNは外国からの資金に加えて、武装強盗で資金を調達していた。銀行や郵便局を狙った。強盗の一人が殺されると、彼はウクライナの英雄に祭り上げられた。OUNの裁判や逮捕はすべて、OUNの宣伝のために利用された。ウクライナの民族主義者たちは、西ウクライナの短命だったZUNR政府の戦死したUHA兵士を称えるために墳墓を築き上げた。バンデラは、ウクライナのすべての村に、そこに兵士がいる、いないに関わりなく兵士を埋葬する墳墓を築き、そこでのOUN行事に結集するよう命じた。ポーランド政府は墳墓の破壊を命じた。やがてガリシア全土で、ウクライナの村人たちは墳墓を守るために鍬や熊手を持って警察と戦うようになった。OUNは、ポーランド兵や警察官の墓も破壊し始めた。もし政府が墳墓を破壊しても、それはすぐに再建されることが多かった。

 バンデラは、タバコも酒も嗜まなかった。1933年の夏、バンデラは全国的な酒とタバコの不買運動を決行した。しかし、彼の目的は健康問題の先にあった。彼の真の標的は、酒とタバコを売るユダヤ人商人と、その売上から分け前を得るポーランド政府であった。バンデラは、不買運動中に飲酒したウクライナ人を逮捕し、ユダヤ人の経営する酒場を焼き払う放火作戦を命じた。OUNはさらに反ユダヤ計画を展開し、OUNのチンピラ集団はユダヤ人居住区の窓ガラスをすべて割って回った。また、ユダヤ人の家を焼き払い、ポーランド人の農場を破壊して回った。さらにOUNは、ポーランドの鉄道路線や通信インフラを破壊しようとした。バンデラは、学校に掲示されたポーランド民族主義の象徴を破壊する大規模な作戦を展開し、教師の暗殺を命じた。OUNは、親共産主義者と思われる新聞社を爆破した。この時期に殺された何百人ものOUNの犠牲者のほとんどは、このように歴史にまったく名前が残らないごく普通の人々であった。

 OUNによる数々の要人暗殺はOUNの評判を落とし、バンデラの政治家としての道はそれでほぼ断たれた。1933年10月22日、OUNはウクライナの飢饉に抗議するため、リヴィウのソビエト領事を殺害しようとした。しかし、暗殺者は人違いで領事館の秘書アレクセイ・マイロフを殺害し、ポーランド人の清掃員にも傷を負わせた。暗殺者ミコラ・レミックは終身刑に処された。1934年3月31日、バンデラは、ポーランド情報部とつながりがあるのではないかと疑ってOUNメンバーのバチンスキーを暗殺するよう命じた。暗殺者たちはこのバチンスキーと親しかったため、皆で酒を飲み、それから友人である彼を殺害した。1934年6月15日、OUNの最も成功した暗殺。ポーランド内務大臣ブロニスワフ・ピエラツキ(Bronislaw Pieracki)をワルシャワで殺害したのだ。暗殺者フリホリイ・マツェイコは、まずピエラツキを自爆で殺害しようとした。しかし、引き金の引きが弱く、爆弾は破裂しなかった。しかし、マツェイコはピエラツキを追いかけ、後頭部に2発撃った。そして、追っ手に発砲し、警官を負傷させた。OUNの助けを借りて何とか脱出した彼は、チェコスロバキアに密かに導かれ、リトアニアのパスポートでアルゼンチンに逃亡した。死の朝、ピエラツキはナチスの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスと会っており、ドイツがOUNの脱走者たちに避難場所を提供したため、厄介なことになった。当初、警察はポーランドのファシスト集団UNRの犯行とみていた。しかし、不発弾や黄色と青のウクライナ国旗が縫い付けられた服など、ずさんにもこの暗殺者は手がかりを残していたのだ。実はステパン・バンデラはその暗殺の前日、爆弾製造者を含む20人のOUNメンバーを捕らえた襲撃で逮捕されていた。ポーランド人は、バンデラがOUN祖国行政府の代表であることをまだ知らなかったようだ。バンデラ容疑者は、OUNの団員であることも含めて、すべてを否定した。

 1934年6月17日までに、警察はピエラツキ事件を解決していた。しかし、警察はそのことを公にはしなかった。ピウスツキはピエラツキを、アメリカが暗殺された大統領を埋葬するときのように華々しく、国民的殉教者にしてしまったのだ。ポーランドでは国家的な喪に服することが宣言された。棺は汽車で全国を回り、あちこちで弔問客に迎えられた。こうしてポーランドは、1934年7月10日に政府がOUNの責任であると発表したとき、熱狂に包まれた。その2週間後、OUNはバンデラの命令で再び暗殺を実行し、ウクライナ人の高校監督兼教師イワン・バビイを殺害することになる。バビイは、かつて仲間の試験でカンニングを手伝ったバンデラを処罰したことがあった。暗殺者のミハイロ・ツァーリは、逃げ切れないと悟り、自ら頭を撃ち抜いた。この殺人は、ウクライナの民族主義的新聞をも激怒させ、OUNをテロリストとして糾弾する記事を載せた。1934年10月9日、フランスのマルセイユでユーゴスラビア国王アレクサンドル1世とフランス外相ルイ・バルトゥーをウスタシャが暗殺する事件があったが、OUNはその共犯者であった。ムッソリーニは、両派との関係が露見して困惑し、ウスタシャとOUNをシチリアの2つの小さな別々の村に閉じ込めるよう命じた。ウスタシャによる暗殺事件の裁判は、1935年に行われた。ポーランドで行われたOUNの裁判と同時だった。

 ポーランドでは、OUN指導者の2つの大きな裁判が行われた。ワルシャワ裁判はピエラツキ暗殺事件を扱い、1935年11月18日から1936年1月13日まで続いた。リヴィウ裁判は、OUNの他の殺人や犯罪を扱い、1936年5月25日から1936年6月27日まで続いた。合わせて20人ほどの被告が裁かれた。チェコスロバキアの情報機関がOUNの指導者の家を急襲し、数千ページのOUN文書を押収し、ポーランド政府に閲覧を許可した。この「セニーク(Senyk)文書」は、OUNの目標や組織について多くのことを明らかにした。ステパン・バンデラや多くのOUNの団員は、全てを否定し続けた。しかし、数人のOUNの団員はOUNに反旗を翻し、国側の証人として証言することに同意した。そうすれば、OUNは間違いなく彼らを復讐のため殺すだろうということを知った上でのことである。OUNの脱退者の中には、ウクライナ人、特にOUNの仲間の殺人に罪悪感を抱いている者もいたのだ。また、尋問で屈服した者もいた。ポーランドのゼレンスキー検事は、OUNに対する国家の訴えを立証するのに成功した。ワルシャワの裁判では、バンデラ被告らはポーランド語で証言する(彼らはみんなポーランド語に堪能だった)ことを拒み、裁判所もウクライナ語での証言を許さなかった。バンデラ被告は、法廷侮辱罪として法廷から引きずり出され、叫び声を上げた。OUNが初めて「スラバ・ウクライナ(Slava Ukraini)」という掛け声をロマ(ナチ)式敬礼と組み合わせて公然と使い始めたのは、このワルシャワ裁判のときであった。ヴィラ・スヴィエンチツカ(Vira Svientsitska)は、ポーランド語での証言を拒否したために法廷から引きずり出されたとき、法廷で敬礼とともにこの掛け声を叫んだ最初の人物である。バンデラとミコラ・レベド(Mykola Lebed)は、判決の際にこのスローガンを叫ぶことになる。レベドは、戦時中にドイツ軍のために恐ろしい犯罪を行った後、後にCIAの支援を受けたOUNの中心人物だ。ステパン・バンデラ、ミコラ・レベッド、爆弾製造者イアロスラフ・カルピネッツは、1936年6月13日にワルシャワ裁判が終了すると、全員が死刑判決を受けることになった。他の被告は、8年から15年の長い懲役刑に処せられた。OUNにとって幸運だったのは、ポーランド議会が1936年1月2日に死刑を廃止していたことだ。この法律により、何十万人ものポーランド人を殺害することになる運動の指導者たちの命は救われた。その代わり、彼らは終身刑を宣告された。ポーランドはピエラツキ殺害事件を口実に、ウクライナ人の収容所を建設した。多くの下っ端OUN団員が現地で裁判にかけられた。1938年、ポーランド警察が民族主義者のデモ隊を弾圧した結果、ウクライナ人が経営する農業会社が都市への供給を拒否すると、ポーランドは約3万人のウクライナ人を投獄した。

 リヴィウ裁判はもっと緩やかだった。被告はウクライナ語で証言することが許され、OUNは自分たちの犯罪を否定する代わりに、それを正当化しようとした。バンデラは法廷での長い演説を許され、自分を悪者のポーランド人やロシア人から貧しいウクライナの農民を助けるロビン・フッドのような人物であるかのように描写した。彼は、亡命中のOUN指導者コナベレツ(Konavelets)を無視して、OUNのプロヴィドニク、つまり総統として名乗りを上げた。演説の中でバンデラは、OUNの真の評価は死ぬ意志ではなく、殺す意志であり、目的を達成するためには何百人ではなく何千人もの人々が死ぬ必要があると主張した。手前勝手な嘘に満ちたバンデラの伝説的なリヴィウ法廷での演説は、今日でもウクライナのファシストたちによって繰り返し読まれている。リヴィウ裁判によって、バンデラはポーランド在住のウクライナ人や流浪する(ディアスポラの)ウクライナ人の間でスーパースターになった。

 ピエラツキ暗殺の前日に逮捕されたバンデラは、1939年9月に脱走するまでポーランドの刑務所に収監された。バンデラと他のOUNの囚人たちは、獄中での時間を勉強と組織作りのために使った。彼らは、仲間のウクライナ人囚人たちに読み書きを教え、OUNのリーダーたちはそれぞれ異なる学術的なテーマで講義を行った。バンデラとOUNは、獄中でフリョーリイ・ペレヒナク(Hryorii Perehinak)を指導した。彼は、戦時中ヴォルィニアでポーランド人の大量殺戮に大きな役割を果たすことになる人物だ。バンデラとOUNは、3回のハンガーストライキを行ったが、その都度ポーランド人看守が鼻から食べ物を注入することで、ハンストは終わった。また、OUNはバンデラ解放のための策略も練っていた。修道士になりすましてバンデラの逃亡を手助けしようという計画もあった。しかし、ポーランド当局はOUNの手紙を読んでいて、計画者たちを逮捕した。また、海外のウクライナ人から集めた金で、刑務官に賄賂を渡して釈放させるという計画もあった。(しかし次の二つの理由のいずかのために)この計画は中止になった。理由①これは、逃走するバンデラを殺す策略かもしれないことを恐れたこと、理由②バンデラが逃走すると他のOUNの捕虜に報復されることを恐れたこと。このようなOUNの計画を懸念した当局は、ある刑務所に監視塔を建設し、またバンデラを移動させ続けた。バンデラ脱走計画は、1938年5月22日にOUNの代表であるコナバレツがロッテルダムで暗殺されると、さらに激しさを増した。バンデラの支持者は、彼がOUNの支配権を得るために、彼を自由にすることを望んだ。ポーランドは彼をブレストの刑務所に移した。 

 1939年9月1日、ついにナチス・ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が始まった。その混乱の中、1939年9月13日、バンデラはついに脱出することができた。バンデラはリヴィウに向かった。ドイツ軍の一部はガリシア地方を占領していた。OUNが蜂起し、3,000人のポーランド人と不特定多数のユダヤ人を虐殺し始めた。ポーランド軍の残党は、ウクライナ人やユダヤ人を大量に殺戮していた。しかし、バンデラは、ウクライナ西部がモロトフ・リッベントロップ協定*によってソ連の勢力圏に入ろうとしていたため、OUNが権力を握るにはまだ時期が早いとすぐに悟った。バンデラと多くのOUNメンバーは、ドイツが占領しているポーランド西部の総督府と呼ばれる地域に向かった。1939年9月17日、ソ連はポーランドに侵攻し、長年にわたるOUNのプロパガンダにもかかわらず、多くの西ウクライナ人は彼らを解放者として迎え入れた。バンデラの家族は、やがてソ連によるウクライナ西部のOUNへの弾圧に巻き込まれることになる。1941年3月、ドイツ軍のソ連侵攻の数ヶ月前に、ソ連はステパンの父アンドレイとステパンの姉二人を、OUNメンバーをかくまった罪で逮捕した。姉たちはシベリアに追放され、父親は銃殺の判決が下された。
モロトフ・リッベントロップ協定*・・・1939年8月23日にナチス・ドイツとソビエト連邦の間に締結された独ソ不可侵条約。

 バンデラは、3万人のOUN団員とその同調者が住むことになるクラクフ(Cracow)を目指した。そこに向かう途中、バンデラはヤヴォリの町に立ち寄った。そこでOUNとドイツ軍が地元のユダヤ人を残酷に虐殺し、地元のシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)を焼き払った。バンデラはこの事件や他のOUNによる大量殺人について言及することは一度もなかった。クラクフに到着したバンデラは、すぐに将来の妻となるOUN団員のイアロスラヴァ・オパリウンスカ(Iaroslava Oparivska)に出会った。二人は1940年6月に結婚することになる。(しかし)バンデラの心にあったのは、感傷以上のものだった。彼は、OUNの支配権を握ろうと考えていたのだ。

 1939年11月、バンデラはスロバキアのある温泉で開かれたOUNの会合に向かった。その後ウィーンに向かい、現国家主席のロパティンスキ(Lopatyns’kyi)と合流した。そしてローマに向かい、OUNの新代表アンドレイ・メルニクと対決することになった。メルニクはUVOとOUNの創設メンバーであったが、西ウクライナではバンデラほど有名ではなかった。メルニクは 1939 年 8 月にローマで開催された第 2 回ウクライナ国民党大会で OUN の代表となった。暗殺されたOUN代表コノヴァレッツは、遺言でメルニクを後継者に指名していた。バンデラの信奉者たちは、この遺言は偽造であると主張した。バンデラは、メルニクの首席顧問たちを裏切り者とみなしていた。バンデラとロパチンスキーは1940年1月中旬にローマに到着した。ステパンは、1933年にローマに来てから政治経済学の博士号を取得した弟のオレクサンドルと再会した。そして、メルニクに会い、①顧問たちを解任すること、②バンデラの選んだ者をOUNの指導者に任命すること、そして③スイスに亡命すること、を要求した。メルニクは、バンデラを顧問の一人にすることを申し出たが、祖国行政府に服従することを要求した。バンデラは、メルニクが自分の暗殺も命じたと思い、身を隠すようになった。

 OUNは、メルニク率いるOUN/Mとバンデラ率いるOUN/Bに分裂する方向に進んでいた。1940年2月10日、バンデラとその支持者であるローマン・シュケヴィチらは、OUNの革命的指導体制を宣言した。やがて、両者は互いに相手をOUNから追放するようになった。そして、ユダヤ人と結婚している、ソ連に秘密裏に支配されている、などと非難し合った。ちょっとした喜劇のような展開になり、やがて暗転する。戦時中、バンデラはOUN/Mのライバルの多くを暗殺させた。その中には、彼が裏切者のレッテルを貼ったメルニクの顧問たちも含まれていた。今日、高官の裏切り者に対するウクライナ民族主義者の執着は、マイダン後のウクライナに決定的な特徴として残っている。バンデラのOUN/BがOUN/Mとの権力闘争に最終的に勝利したのは、ソ連支配下の西ウクライナのOUN活動家たちとより良好な関係を保ち、ドイツ支配下のポーランドのウクライナ人の間でより人気があり、若者たちにも人気があったからである。ナチスはOUN/MとOUN/Bの両方と密接に協力することになる。彼らは、より管理しやすいOUN/Mを好んでいたようである。思想的には両者の間にほとんど違いはなく、OUN/BとOUN/Mはどちらがより親ナチであるかをめぐって争っていた。

 1941年3月31日から4月3日まで、OUN/Bはクラクフで独自の第2回ウクライナ民族主義者会議を開催し、メルニクをOUNの代表に任命したローマでの第2回会議を意図的に無視した。バンデラはOUNのプロヴィドニク(総統)と宣言された。OUN/Bは、自分たちの基底概念を表現したパンフレットを発行した。ソ連侵攻までの数ヶ月間、彼らはドイツ軍情報部(Abwehr)担当者たちと共に計画を練っていた。OUN/Bは、「ソ連のユダヤ人はボルシェビキ政権の主要な柱であり、ウクライナにおけるモスクワ帝国主義の前衛である」と主張した。彼らは、ベラルーシ人、フィンランド人、リトアニア人、エストニア人、ラトビア人、その他の「奴隷国」と同盟して、ソ連を破壊する計画を立案中だ、と発表した。彼らは、集団農場を破壊し、自由企業システムに置き換えることを発表した。血と土の象徴である赤と黒のOUN/B旗を作成した。そして、「一人民、一党、一指導者」という方針を打ち出した。1941年4月10日、OUNは、ナチスがユーゴスラビア王国からクロアチアの傀儡国家を切り出すことをウスタシァに許したことに喜びを表明した。その聖職者ファシスト国家クロアチア初代大統領には、1941年、フランヨ・トゥジマンが就任した。そして、ユダヤ人、ジプシー、セルビア人と正教徒に対する大量虐殺作戦を展開した。OUN/Bは、クロアチアの独裁者アンテ・パヴェリッチに個人的に祝電を送った。ナチスはすでにスロバキアにファシストの傀儡国家を作り上げていた。それゆえOUN/Bは、ナチスがドイツの侵攻後にバンデラを独裁者としてウクライナを支配することを認めると確信していた。

 1939年から1941年にかけて、OUNの両派は、ヴィルヘルム・カナリスが率いるドイツの軍事情報機関Abwehrや、SSと密接に連携していた。Abwehrの担当者は、ヴィルヘルム・カナリス、テオドール・オーバーランダー、ハンス・コッホ、そしてアルフレッド・ビサースであった。オーバーランダーは、ウクライナや汎トルコ主義のSS部隊との関係で悪名高い存在となる。Abwehrは、ドイツ占領下のポーランドとソビエト支配下の西ウクライナでOUNの訓練と武装のために資源を提供した。Abwehrは350人のOUN団員をナハティガル大隊に、330人のOUN団員をローランド大隊に採用した。さらに800人のOUN/Bメンバーが、クラクフのイエベン・コノヴァレツ軍事学校で、現地政府を掌握し、ウクライナ人民兵を集めて大量虐殺を実行する任務部隊を編成するための訓練を受けた。AbwehrはOUN団員をスパイ、翻訳者、兵士として採用した。Abwehrはまた、西ウクライナからの難民を訓練し、ソ連に潜入させるために送り返した。ソ連は越境した486人を捕らえることができた。Abwehrは、OUNにソ連軍を後方から攻撃させることを計画していた。

 1941年5月、OUN/Bは数週間の作業の後、同年6月22日に始まるナチスのソ連侵攻作戦(バルバロッサ作戦)に参加するための計画を最終的に決定した。ドイツ軍はOUNに侵攻の正確な日付を伝えるので、ソ連の地下にいるOUNは準備を整えることができた。彼らの計画は、「戦時下におけるOUNの闘争と活動」(略して「闘争と活動計画」)に記録されている。ステパン・バンデラ、後の戦争犯罪人ローマン・シュケヴィチ、レンカヴスキュイ、ヤロスラフ・ステツコ(後の世界反共産主義同盟の反ボルシェビキ圏国家代表であり、レーガンのホワイトハウスに招かれる)の三人が書いたものである。その目的は「ウクライナの全領土にウクライナ民族の全体主義的権力を確立すること」であった。OUN/Bの将来の同盟国として、バルト三国、ベラルーシ、フィンランド人などソ連の他の少数民族を挙げている。もちろん、彼らの重要な同盟国はナチス・ドイツそのものであった。OUNの活動家たちは、ウクライナの独立を宣言し、ステパン・バンデラの名でドイツ軍を歓迎するために地方を回ることになった。彼らは、赤軍との戦闘は避け、ドイツ国防軍に任せることにした。その代わり、彼らは田舎を組織することになる。この計画では、OUNを支持しないポーランド人、ロシア人、ユダヤ人、ウクライナ人を明確に明確な敵として特定していた。これらの敵は清算されることになっていた。この計画では、18歳から50歳までのすべての男性で構成される民兵を地方に結成することを求めていた。森や荒涼とした場所に自分たちの敵を引きずり出し、虐殺する。ユダヤ人はすべて登録され、抹殺されることになっていた。OUN/Bは、ポーランド人とNKVD*へ情報提供者の死亡者リストを作成することになっていた。OUN/Bは、ユダヤ人、ロシア人、ポーランド人で溢れる都市を粛清するために、郡部で人員を募集する予定であった。OUN/Bはすべての現地行政を掌握し、教育制度をウクライナのファシスト路線に沿ったものに作り変える。この計画では、6歳から子供たちを洗脳する青年団を作ることを求めていた。10歳になると次の組織に入り、18歳になると次の組織に入り、21歳になるとOUN、準軍事組織、文化・スポーツ戦線のいずれかに参加させるというものであった。この計画では、大衆を動員するためのOUN/Bファシストの呼びかけ文句の膨大な一覧が用意されていた。「モスクワのユダヤ共産主義に死を」、「ウクライナ人のためのウクライナ」。言い換えれば、OUN/Bはステパン・バンデラが率いるファシスト独裁政権を作り、ユダヤ人、ポーランド人、ロシア人、そして彼らの計画の障害となるウクライナの人々を排除しようと計画していたのである。
NKVD*・・・内務人民委員部(ないむじんみんいいんぶ)は、ソビエト連邦のヨシフ・スターリン政権下で刑事警察、秘密警察、国境警察、諜報機関を統括していた人民委員部。「エヌカーヴェーデー」と略称される。

 しかし、ヒトラーはウクライナとソ連に対して独自の計画を持っていた。ヒトラーの狂気の夢の中では、ウクライナはドイツ版アメリカ西部やイギリス領インドになる運命にあったのだ。彼は、ウクライナの植民地化によってドイツ人入植者が硬化し、変貌していく姿を思い描いていた。ヒトラーは西部劇とカウボーイの大ファンであった。彼の考えでは、ウクライナ人はロシア人と同じように、虐殺され奴隷にされるべき劣ったスラブ人であった。ウクライナは大ドイツの一部となる。ウクライナは大ドイツの一部となり、国民を奴隷にする計画だった。より現実的なナチスの見解は、アルフレッド・ローゼンベルク*とヴァッフェンSS*が唱えたもので、彼らはウクライナ人のような東ヨーロッパに多くの有用な同盟者を見出し、ファシズムは国際性を持つとの見解を唱えたのである。戦争中、流れがナチスに不利になると、ナチスはますますこの実用的な考えを採用し、ウクライナのファシストの同盟国にますます依存するようになった。
アルフレッド・ローゼンベルク*・・・1893-1946。ドイツの思想家。国家社会主義ドイツ労働者党対外政策全国指導者)。第二次世界大戦期には東部占領地域大臣も務めた。ニュルンベルク裁判で死刑判決を受け処刑された。

ヴァッフェンSS*・・・武装親衛隊。国家社会主義ドイツ労働者党の親衛隊における武装組織である。


 1941年6月22日、ドイツはソビエト連邦に侵攻し、OUNはドイツ国防軍に続いてウクライナに侵攻することになる。その後数年間は、ソビエト国民に計り知れない苦しみと恐怖をもたらすことになった。OUNの歴史は最も血なまぐさい局面を迎えることになる。彼らは、ドイツ軍がウクライナや他の占領地で行った大量殺人やその他の犯罪の手助けに、重要な役割を果たすことになる。これらについては、このシリーズの第2回で述べることにしよう。

Sources:
参考資料:
 私の主な情報源は、Grzegorz Rossolinski-Liebe著の非常に詳しい『Stepan Bandera The Life and Afterlife of a Ukrainian Nationalist Fascism, Genocide, and Cult(ステパン・バンデラ ウクライナの民族主義者の生涯、虐殺、カルト)』。ウクライナのファシズムの歴史に関心のある人にはぜひお勧めしたい。

 ロシア内戦中のウクライナの項は、エドワード・ハレット・カーの古典『ボルシェビキ革命1917-1923』第1巻289-307ページに依拠している。ロシア革命の政治、経済、外交史について深く研究したいのであれば、3巻シリーズの一部をお勧めする。

 ヒトラーのウクライナに関する計画の部分は、ドイツによるウクライナ占領の恐ろしさを伝えるウェンディ・ローワー(Wendy Lower)の『ナチスの帝国建設とウクライナのホロコースト』に依拠している。

 2014年のマイダン・クーデター後のウクライナのファシズムについては、クリス・カスパー・デ・プログ(Chris Kaspar de Ploeg)の『Ukraine in the Crossfire』をお勧めする。

「詐欺、飢饉、ファシズム」のPDF版。ダグラス・トットル(Douglas Tottle)著『ウクライナ人虐殺神話 ヒトラーからハーバードまで』は、「ホロドモール」*神話の実態を暴いている。
「ホロドモール」*・・・ウクライナ語で飢え・飢饉を意味するホロド (holodo)と、殺害、絶滅、抹殺、または疫病を意味するモル (mor) との合成語・造語で、飢餓による殺害 (death by hunger) を意味する。具体的には、1932年から1933年(または1934年)にかけてウクライナ・北カフカース・クバーニなどウクライナ人が住んでいた地域をはじめ、カザフスタンなど、ソビエト連邦各地でおきた大飢饉を指す。この飢饉は、当時のソ連のスターリン政権による計画的な飢餓、または不作為による人災、人工的・人為的な大飢饉であったことが明らかになっている。ソ連政府の五カ年計画において、コルホーズ(集団農場)による農業の集団化や、クラーク(富農)撲滅運動において反ソ連分子を強制収容所(グラグ)に収容したり、さらに穀物の強制徴発、ノルマを達成しない農民への弾圧や処罰などを原因として発生した。「富農」と認定されたウクライナ農民たちはソ連政府による強制移住により家畜や農地を奪われ、「富農」と認定されなくとも、少ない食料や種子にいたるまで強制的に収奪された結果、大規模な飢饉が発生し、330万人から数百万人ともされる餓死者・犠牲者を出した。
特にウクライナでの被害が甚大で、かつウクライナを標的としたソビエトの政策が飢饉の原因であったことから、ホロドモールはソビエトの政策に抵抗したウクライナの農民に対するソビエト国家による攻撃の集大成であるともされる。ホロドモールがジェノサイドに該当するかについては議論がある。(ウィキペディア)


Click to access tottlefraud.pdf

Additional details on massacres of Jews during the Russian civil war in Ukraine can be found in Yasha Levine’s recent articles.
Yasha Levine on Petliura
https://yasha.substack.com/p/my-ukrainian-grandma-and-our-lost
Yasha Levine on Denikin
https://yasha.substack.com/p/white-russian-saviors
Yasha Levine on the Holodomor

https://yasha.substack.com/p/holodomor-and-the-erasure-of-jewish?r=45jbs&s=r&utm_campaign=post&utm_medium=email

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コロナ・パンデミックは全く必要なかった。治療法はあったのだ。医療関係者は膨大で増え続ける人々の殺人に責任がある。

<記事原文 寺島先生推薦記事>

The Covid Pandemic Was Entirely Unnecessary. Cures were available.
The medical profession is responsible for the murders of huge and growing numbers of people.

筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)

出典:IPE、September 5, 2022

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月16日

 「コロナ・パンデミック」の誇大広告が始まって間もない頃に書いたように、既知の予防薬と治療薬が2つあった。イベルメクチンとHCQ(ヒドロキシクロロキン)である。この既知の医学的事実は、ファウチ、巨大製薬会社、そして彼らの政治的同盟者によって抑圧されなければならなかった。そうでなければ、治療薬が存在する以上、未試験で極めて危険なコロナ「ワクチン」の緊急使用許可が下りないからである。

 理由は明らかにされていないが、世界中の人々に「ワクチン接種」を受させることが目的であったため、既知の治療法やそれを推奨する医師や科学者は弾圧されたのである。

 その結果、世界中の人々が日々死亡し、また他の人々は「ワクチン」による生涯にわたる健康被害を負っている。

 コロナ・ワクチン・プログラムは、人類に与えられた最悪の犯罪である。責任者は逮捕され、裁判にかけられ、有罪判決を受け、処刑されるべきである。しかし現実は、彼らは巨額の金を稼ぎ、勲章を授与されている。

 ペルーやインドで行われたように、米国でもイベルメクチンを使用すれば、米国で何十万人、世界で何百万人もの死を防ぐことができたはずだ。
 ところがAMA(米国医師会)は、イベルメクチンを処方して命を救った医師から免許を取り上げようとしている。

 イベルメクチンがCOVIDの死亡リスクを92%減少させることが査読付き研究で判明
https://www.theblaze.com/news/ivermectin-covid-treatment-new-study

ポール・サッカ(Paul Sacca)、The Blazeニュース、2022年09月03日


 イベルメクチンの定期的な使用により、COVID-19による死亡リスクが92%減少することが、査読を経た新しい研究で明らかになった。
 この大規模な研究は、Flávio A. Cadegiani, MD(医学修士), MSc(理学修士), PhD(医学博士)によって実施された。Cadegiani博士は、臨床内分泌学の修士号と博士号を持つ、内分泌学会の認定医だ。
 この査読付き研究は、オンライン医療ジャーナル「Cureus」によって水曜日に発表された。この研究は、ブラジルのイタジャイ市に住む8万8012人を対象に、厳密に管理された集団で実施された。
 COVIDに感染する前に予防的にイベルメクチンを使用した人、または薬を服用した人は、死亡と入院が大幅に減少した。
 本研究によると、イベルメクチンの常用者は、非服用者に比べてCOVIDによる死亡リスクが92%減少した。また不定期服用者に比べて死亡リスクが84%減少した。
 「入院率は、不定期使用者と非使用者の両方と比較して、定期的な使用者で100%減少した」と、この研究は述べている。
 イベルメクチン常用者の印象的な減少は、常用者がCOVIDによる死亡リスクが高いにもかかわらず、歴然としていた。なぜなら、イベルメクチン常用者は、非常用者や非使用者に比べて、高齢で、2型糖尿病や高血圧の有病率も高かったからだ。

 イベルメクチンの非常用者は、非使用者に比べて死亡率の減少が37%少なかった。

 本研究では、5ヵ月間に30錠以上のイベルメクチンを使用した人を常用者と定義した。イベルメクチンの投与量は体重によって決められたが、「ほとんどの人が1日2~3錠を15日おきに2日間使用していた」。
 その研究によれば、「イベルメクチンの非使用者は、イベルメクチンの常用者と比較して、死亡率が12.5倍、COVID-19による死亡リスクが7倍増加した」「この用量反応効果は、COVID-19に対するイベルメクチンの予防効果も保証するものだ」
 Cadegiani博士は、この研究が「用量反応効果」を示したと考えていて、それは、イベルメクチンのレベルを上げると、COVID-19による入院と死亡のリスクが減少することを意味している。
 Cadegiani博士はTwitterで、「我々のような規模と解析レベルの観察研究は、無作為化臨床試験として実施することは困難であり、実現不可能である。この結論に反論するのは難しいだろう。信念に関係なく、データはデータである」と書いている。


 以下は、この発表された研究の要約(Summary)である。出典は次のURLを参照されたし。

https://www.cureus.com/articles/111851-regular-use-of-ivermectin-as-prophylaxis-for-covid-19-led-up-to-a-92-reduction-in-covid-19-mortality-rate-in-a-dose-response-manner-results-of-a-prospective-observational-study-of-a-strictly-controlled-population-of-88012-subjects?email_share=true&expedited_modal=true


論文名
 「COVID-19の予防薬としてイベルメクチンを定期的に使用すると、用量反応的にCOVID-19の死亡率が最大92%減少した。8万8012人を対象とした厳格に管理された前向き観察研究の結果」

研究者
 Lucy Kerr, Fernando Baldi, Raysildo Lobo, Washington Luiz Assagra, Fernando Carlos Proença, Juan J. Chamie, Jennifer A. Hibberd, Pierre Kory, Flavio A. Cadegiani.

論文発表日:2022年8月31日(詳細は次のURL参照)
DOI(ネット識別番号): 10.7759/cureus.28624
論文を引用する際は、下記を利用ください
 Kerr L, Baldi F, Lobo R, et al. (August 31, 2022)
 論文名「COVID-19の予防薬としてのイベルメクチンの常用は、用量反応的にCOVID-19死亡率の最大92%減少を導いた。8万8012人を対象とした厳格に管理された前向き観察研究の結果」Cureus 14(8): e28624.doi:10.7759/cureus.28624.


概要

背景
 我々は以前、ブラジル南部(ブラジル、イタジャイ市)の厳密に管理された都市全体のプログラムにおいて、常用者であるかどうかにかかわらず、コロナウイルス病2019(COVID-19)の予防薬としてイベルメクチンを使用すると、COVID-19感染、入院および死亡率の低下と関連することを証明した。
 本研究では、イベルメクチンの常用がCOVID-19からの予防率および関連する結果に影響を与えるかどうかを明らかにし、用量反応効果の実証を通じてイベルメクチンの有効性を確認することを目的とした。

研究方法
 この前向き観察研究の探索的分析は、イベルメクチンを0.2 mg/kg/日の用量で、15日ごとに2日間連続して150日間使用するプログラムを対象としている。
 常用者の定義は以下の通り:
 常用者はプログラム期間中、イベルメクチンを180 mg(30錠×6mg)以上、非常用者は合計で60 mgまでとした。
 非使用者(イベルメクチンを使用しなかった被験者)と常用者・非常用者との比較は、多変量解析により調整した後に行った。
 COVID-19感染とCOVID-19による死亡リスクの算出と比較には,全市のデータベースを使用した。
 比較はこのCOVID-19データベースを用い,入院率および死亡率については傾向スコアマッチング(PSM:propensity score matching)を採用した。

<訳注>傾向スコア (Propensity Score, PS)マッチングは、無作為割付が難しく様々な交絡が生じやすい観察研究において、共変量を調整して因果効果を推定するために用いられるバランス調整の統計手法。観察型の研究において背景情報のバランシングを行うことで、あたかも無作為割り付けを行ったように単純に分析を行うことができるメリットがある。
https://www.stats-guild.com/analytics/6879



結果
 イタジャイー市の22万3128人の対象者のうち、2020年7月7日まで18歳以上でCOVID-19に感染していなかったのは15万9560人。
 このうち4万5716人(28.7%)がイベルメクチンを使用せず、11万3844人(71.3%)がイベルメクチンを使用した。

 イベルメクチン使用者のうち、不定期使用(60mgまで)3万3971人(29.8%)、定期使用(180mg以上)8325人(7.3%)であった。残りの7万1548人(使用量不明)は解析の対象外とした。

 COVID-19の感染率は,非使用者(6.64%)よりも常用者(3.40%)の方が49%低かった(リスク率(RR): 0.51,95%CI:0.45-0.58,p<0.0001)。
 また常用者の感染率は、非正規使用者(4.54%)より25%低かった(RR:0.75,95%CI:0.66-0.85,p<0.0001).
 さらに,非正規使用者では,非使用者に比べて感染率が32%低かった(RR:0.68;95%CI:0.64-0.73;p<0.0001)。

 COVID-19感染者において,常用者は非常用者,非使用者に比べて高齢で,2型糖尿病および高血圧の有病率が高かった。

 PSM後のマッチング解析では、非使用者と常用者、常用者と非常用者の各グループに283人、非使用者と非常用者の間に1,542人の被験者が含まれていた。

 入院率は,常用者では非常用者および非使用者に比べて100%減少し(p < 0.0001),非常用者では非使用者に比べて29%減少した(RR: 0.781; 95% CI: 0.49-1.05; p = 0.099)。

 死亡率は、常用者が非使用者に比べて92%低く(RR: 0.08; 95% CI: 0.02-0.35; p = 0.0008)、非常用者が非使用者に比べて84%低かった(RR: 0.16; 95% CI: 0.04-0.71; p = 0.016)。

 また非常用者は非使用者に比べて死亡率は37%低かった(RR: 0.67; 95% CI: 0.40-0.99; p = 0.049 )。

 COVID-19による死亡リスクでは、常用者は非使用者に比べて86%低く(RR: 0.14; 95% CI: 0.03-0.57; p = 0.006 )、非常用者は非使用者に比べて72%低かった(RR: 0.28; 95% CI: 0.07-1.18; p = 0.083 )、
 他方、非常用者は非使用者よりも死亡リスクが51%低かった(RR: 0.49; 95% CI: 0.32-0.76; p = 0.001 )。
 
結論
 イベルメクチン非使用は、イベルメクチン常用者と比較して死亡率が12.5倍、COVID-19による死亡リスクが7倍増加した。
 この用量反応効果は、イベルメクチンのCOVID-19に対する予防効果を確信させるものである。


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ウクライナの炭疽菌研究所に見えるペンタゴンの足跡


<記事原文 寺島先生推薦記事>
The Pentagon’s Trail in Ukrainian Anthrax Labs

筆者:ミッション・ヴェルダッド(Mission Verdad)

出典: INTERNATIONALIST 360°
2022年12月2日

<翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>
2022年12月13日


 NGOの「ジュディシャル・ウォッチ(Judicial Watch--法の監視)」*が、ウクライナの炭疽菌研究所に米国が資金提供していることを明らかにする文書を入手した。
[訳注]* ジュディシャル ウォッチ( JW ) は、アメリカの保守的な活動家グループで、政府関係者による不正行為の疑いを調査するために、情報公開法(FOIA) の訴訟を起こしている。

 ロシアのドンバス地方を守るための特別軍事作戦が始まる前、ウクライナにある米国の研究所の活動がどれほど危険なものであるかは、完全には明らかにされていなかった。

 今、その研究所の活動が軍事的な性格を持ち、生物・毒物兵器禁止条約(BTWC)に基づく米国と協力国の義務に根本的に違反していることを示す、反論の余地のない証拠が現れている。

 その問題で新たなスキャンダルが勃発した。11月10日、米国防総省の一部門である国防脅威削減局(DTRA)が所有する345ページに及ぶ記録を入手したと、「ジュディシャル・ウォッチ(Judicial Watch)」が報告したのだ。

 同NGOは、情報公開法(FOIA)のおかげで情報に近づくことができた。

 この文書は、これらの計画に関連する米国の請負業者であるBlack&Veatch(ブラック・アンド・ヴィーチ)社*から、ウクライナの生物安全研究所への資金提供に関わるデータを提供するものである。
  [訳注]* Black & Veatch(BV)はカンザスシティ大都市圏最大のエンジニアリング(大型プラントを国内外に建設する)会社。1915年にミズーリ州カンザスシティで設立され、現在はカンザス州オーバーランドパークに本社を置いている。

 なお、国防総省から提供されたページのうち数十ページは、米国の法律に従い、編集されている。

 それでも、この情報からは、米国がウクライナに病原体管理システムを導入し、炭疽菌研究所に資金を提供したことを確認するものであり、すべて1100万ドル以上の資金で行われたものであることが判明した。

 「ジュディシャル・ウォッチ」が特に明らかにしたのは、ウクライナにおける病原体資産管理システム(PACS)の実施に関する報告であり、このシステムは、「現場」、すなわちウクライナの研究所で、3段階に分けて実施されたものである。

 PACS(病原体資産管理システム)は、Black&Veatch社が「旧ソ連諸国における大量破壊兵器の拡散を防ぐ」ために、国防総省のDTRA(国防脅威削減局)と「密接な協力」のもとに開発したプログラムだと、同社のウェブサイトには書かれている。

 このシステムは、公共および民間の研究所にある生物製剤を記録、管理、監視するものである。これにより、国防総省はPACSを導入している、ロシアと国境を接する国々の危険な病原体の所在や使用状況を監視することができる。

 ウクライナの研究所がPACSプログラムに取り組むための研修が、2018年から2019年にかけて開催された。研修会の参加者には、Black&Veatchの社員と、ウクライナの研究所関係者の全リストが含まれている。なお、役職は表示されているものの、個人名は削除されている。

 • 嫌気性感染症研究所 上席研究員
 • 嫌気性感染症研究所 主任研究員
 • 嫌気性感染症研究所 上席研究員
 • 無菌感染症研究所の研究員
 • 無菌感染症分野ではトップクラスの獣医学研究 
 • 動物細菌感染症研究室 主任研究員
 • 炭疽病研究室 室長
 • 炭疽病研究室 研究員
 • ※マイコトキシン学研究室 主任研究員
 • マイコトキシン学の主要な獣医学研究室
 • レプトスピラ症研究室 ジュニア研究員
 • 神経感染症研究室研究室 研究助手
 • 国際関係・地球情報部門 科学研究員
※ カビの二次代謝産物として産生される毒の総称

 同時に、研修の一環として、2018年12月28日、ウクライナの炭疽菌研究所で研究活動が行われたが、その詳細は明らかにされていない。

 また、「ジュディシャル・ウォッチ」は、2018年12月19日から21日にかけて、ウクライナ国立農業科学アカデミー実験・臨床獣医学研究所でPACS導入の最終段階を完了したとするBlack&Veatchの報告書を確認した。

 その報告書によると、この研究所では、すべてのPACS機能が完全に稼働されていたことがわかった。

 掲載されたページの中には、10件の報告書がある。その題名は、「米国政府資産移転報告書」というもので、DTRAと名前が削除されたある組織の間で交わされたものだ。そしておそらく、その組織とは、ウクライナである可能性が高い。


ウクライナをはじめとする旧ソビエト諸国は、米国とそのNATO同盟国による生物兵器の実験場になっている(写真:Getty Images)。
 
 「ジュディシャル・ウォッチ」が公開した文書では、軍事・生物学領域におけるワシントンとキエフの協力関係や、PACSの適用によりウクライナの研究所における病原体の管理を確立しようとする試みが改めて確認されている。

 さらに、これらの研究所の活動に対する資金調達と「米国政府の資産」による資金提供が再び証明された。公開された報告書には、危険な病気の名前、ウクライナの研究所やウイルス研究所の名前、国防総省、その機関DTRA、その請負業者Black&Veatchとともに、多額の資金が登場する。

 この文書が慎重に編集され、危険な情報が取り除かれているという事実そのものが、ホワイトハウスがウクライナの生物学的研究所での作業の過程で追求した目的についていろいろな想像をめぐらすことができる根拠となるのである。

「ジュディシャル・ウォッチ」のトム・フィトン会長の感想は、米国が危険な病原体の実験を行っているという考えを重要視している:
 「これらの新しい文書は、ウクライナの生物実験室における病原体の取り扱いに対する米国の関与を明らかにする、待ち望まれた証拠だ」と、フィトン氏は述べた

 これとは別に、ロシア連邦議会は、ウクライナ国内の米国の生物研究所の活動を調査する議会委員会の専門家の会合があったことを報告した。委員会の共同議長であるイリーナ・ヤロバヤはこう宣言した:

「病原体管理システムが、軍医の助けを借りてウクライナで計画的に実施されたことは明らかである。炭疽菌研究所の資金源も確認され、訓練に参加した職員の一覧表も明らかにされた」と述べた。

 同議員は、ウクライナの研究所が「生物学的破壊工作や生物学的テロ行為の準備・実行に利用されうる」と信じるに足る十分な理由があると述べた。彼女は、BTWC署名国の第9回会議の枠組みの中で、ロシア政府は、「大量破壊兵器よりもはるかに深刻である」この危険な脅威に、国際社会の注意を引くためにあらゆる努力をすると付け加えた。

 ウクライナにおける米国防総省の公的活動は、公衆衛生上の脅威の防止と説明されているが、その説明は、違法な生物学的・軍事的研究の隠れ蓑に過ぎない。
関連記事

ニューヨーク・タイムズが、メディアの先頭に立ち、バイデンにアサンジ訴追の取り下げを求める

<記事原文 寺島先生推薦>

New York Times leads media call for Biden to drop Assange charges
Prosecuting the WikiLeaks founder sets a “dangerous precedent,” according to a group of prominent Western newspapers

ウィキリークス創設者を起訴することは「危険な前例」となる、と西側の著名新聞社グループが指摘

出典:RT

2022年11月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月13日


2022年10月8日、ロンドンでジュリアン・アサンジの釈放を求める抗議者たち© AP / Alberto

 ニューヨーク・タイムズなど主要な報道機関5社は、バイデン政権に対し、ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジに対する告訴を取り下げるよう要請した。要請文には「機密情報」の入手と公開は、「ジャーナリストの日常業務の中核をなすものである」となっている。

 ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、ル・モンド、デア・シュピーゲル、 エル・パイスの各紙は揃って、2010年にウィキリークスが入手した外交文書から詳しい記事を発表した。この外交文書には、米国が同盟国をスパイし、イラクとアフガニスタンにおける民間人の犠牲者を過少に計上し、イエメンで秘密の戦争を行っていたことがはっきり書かれていた。

アサンジは2019年から英国で拘束され、現在は最大警備の刑務所に収容されており、米国への送還を待っている。送還されると、彼はこれらの公電、並びにイラクやアフガニスタンにおける米国の戦争犯罪を主張する膨大な文書を公開したことに関連したスパイ容疑で訴追されることになっている。


関連記事:トランプ大統領の元国務長官がウィキリークス訴訟に出頭   

 11月28日(月)に発表された主要メディア5社の要請文には、「この起訴は危険な前例となり、米国の憲法修正第1条と報道の自由を損なう恐れがあります。公益のために必要な場合に機密情報を入手し開示することは、ジャーナリストの日常業務の中核をなすものです。その仕事が犯罪となれば、我々の公論と民主主義は著しく弱体化することになります」とある。

 そして次のように結ばれている。「『ケーブルゲート*』の公表から12年、米国政府は機密を公開したジュリアン・アサンジの訴追をそろそろ終わらせる時です」。
* 2010年11月28日よりウィキリークスでアメリカ合衆国の外国機密文書が公開された事件。(ウィキペディア)

 オバマ政権は、そうすればすべての新聞社が同様の罪に問われることになるとして、アサンジを起訴しないことを選択した。しかし、ドナルド・トランプ前大統領のCIA長官マイク・ポンペオは2017年、ウィキリークスを「非国家の敵対的情報機関」と宣言し、アサンジはその1年後にトランプ政権時の司法省に起訴された。

 アサンジは、2016年末、民主党からの受けが悪くなった。それは、ウィキリークスが、当時の大統領候補ヒラリー・クリントンの国務長官時代における機密通信の間違った取り扱いを明らかにするメールを公開し、人気候補のバーニー・サンダースをおとしめる党全体の陰謀に彼女も関与していることを暗示したからだった。クリントンは、アサンジがロシアのために働いている、と何の証拠もなくずっと非難し続けた。


関連記事:ハリウッド俳優、ジュリアン・アサンジの身柄引き渡しを行わないよう英国に要請

 ジョー・バイデン大統領は、アサンジ氏に対する訴訟を取り下げる意向は示していない。昨年、英国の判事がウィキリークス創設者アサンジの米国への移送を認めない判決を下した後、司法省のマーク・ライモンディ(Marc Raimondi)報道官は、「我々は、引き続き彼の身柄引き渡し手続きを探る」と述べている。イギリスのプリティ・パテル(Priti Patel)内務大臣は、アメリカ当局がアサンジをアメリカ国内で人道的に扱うと約束した後、6月に身柄引き渡しを承認するに至った。アサンジは現在、この決定を不服として控訴している。
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ロシアのミサイルの備蓄が不足しないのはなぜか―NYTの分析

<記事原文 寺島先生推薦>

New York Times suggests why Kiev and the West got it wrong on Russian missiles
Though the US, UK – and Ukraine itself – have insisted otherwise, Moscow’s stockpile clearly hasn’t run out, the outlet writes

ニューヨーク・タイムズ紙が、キエフと西側諸国がロシアのミサイルに関して誤った判断をした理由を示唆
米国、英国、そしてウクライナ自身も、そうではないと主張しているが、モスクワの備蓄は明らかに尽きていない、と同紙は書いている。

出典:RT

2022年11月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月11日



 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は金曜日(11月18日)、ロシアが今週(11月第3週)ウクライナに対して大規模なミサイル一斉発射を行うことができた理由について、4つの説明の可能性を提示した。なお、これまでキエフ政府、国防総省、英国情報機関は数ヶ月にわたってモスクワの備蓄は不足していると主張してきた。

NYT紙の報道によれば、ウクライナは先月、ロシアが戦前に蓄えていたミサイルの70%を使い切ったと主張した。そして、英国国防省は10月10日のウクライナの生活基盤施設に対する攻撃は、「今後、彼らが狙う標的の攻撃能力を制限する可能性がある」と述べた。

 NYT紙によると、火曜日(11月8日)の攻撃は、96発のミサイルを使用し、これまでの紛争で「最大の空中攻撃」となったが、「ロシアの兵器庫がどの程度枯渇することになるのか、また、モスクワが代替兵器源を見つけて今後の戦いを継続できるのかどうかについては疑問の声が上がっている」とのことだ。

 米国国防総省からもロシアのミサイルが5月の時点で足りなくなりつつあるという説明があったが、ロイド・オースティン国防長官は水曜日(11月9日)に、ロシアは弾薬の在庫を補充するためにイランと北朝鮮に「接触」していると述べている。米国国防総省自身はそんなことはないと公言した。モスクワ、テヘラン、平壌のどちらもこれを否定している。一方、アメリカはキエフのために韓国から砲弾を買おうとしていると伝えられている


関連記事:米国、ウクライナに渡す武器が不足―CNN

 もう一つの可能性は、ウクライナが木曜日(11月10日)から、ロシアがS-300防空ミサイルを使用して地上目標を攻撃したと主張し始めたことから来ている。この検証されていない主張は、火曜日(11月8日)にポーランドのプシェヴォドフ村を攻撃し、2人の民間人を殺害したS-300の件でモスクワを非難しようとするキエフの試みに続くものだった。

 英国の情報企業ジェーンズ社は、ロシアは実際に多くのミサイルを製造しており、おそらく米国とその同盟国が何年も禁輸した備蓄マイクロチップ(超小型集積回路)やその他の技術を使っていると考えている、と述べた。

 また同社は、ロシアは2月以前に「おそらくイスカンダル、カリブ、巡航ミサイルを大量に生産し始めた」し、「我々が話している間にも生産されている可能性が高い」し、ロシアの防衛産業は24時間体制で働いている、とも述べている。


関連記事:欧米、ロシアと戦うためにウクライナを代理人として利用―トルコ政府高官

 ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所のマーク・カンシアン氏は、ロシアがどれだけのミサイルを備蓄しているかを知る西側諸国は少なく、モスクワがNATOとの本格的な戦争に備えて一定量の武器を確保している可能性があると指摘した。
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中国の「ゼロコロナ措置」は、中国に向けて仕掛けられた経済戦争なのか?

中国の「ゼロコロナ措置」は、中国に向けて仕掛けられた経済戦争なのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

“Economic Warfare” Directed against China? The Shanghai “Covid Zero Tolerance Mandate” Extends its Grip to Major Industrial Cities

中国に対する「経済戦争」が仕掛けられているのか?
上海の「ゼロコロナ強制措置」は、中国の主要諸都市に広められている

出典:グローバル・リサーチ

2022年12月3日

著者:ミシェル・チョスドフスキー博士(Prof Michel Chossudovsky)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月8日



この記事の初出は、2022年7月12日

著者による更新

経済や社会に密かに仕掛けられた戦争なのか?
 
 以下の記事の初出は、2022年7月12日で、「ゼロコロナ」ロックダウンと、それが経済と社会に影響を与えた点に焦点を当てた記事だった。

 2022年4月に上海で始められた「ゼロコロナ計画」は、中国各地の主要な諸都市に広められてきた。

 社会を抑え込むこの措置は、各地の大都市で既に採用されている。人々は高層ビルの中のアパートに閉じ込められている。

 中国のこのゼロコロナ措置により、「労働力の閉じ込め」や「職場の麻痺」が促進された。もちろん、交通網の麻痺、学校や大学や文化活動やスポーツの大会などの閉鎖もそうだった。

 ゼロコロナ措置に基づくロックダウンが、中国各地で採用されているが、この措置は「似非(エセ)科学」に基づいたものだ。

 この措置は事実上、「経済戦争」の一環だと言える。中国のこの措置は、2020年3月11日にとられたCovid-19に対する「ロックダウン措置」とほとんど同じ考えをもとにしている。そのロックダウンは、 WHOの肝いりで、国連加盟190カ国以上が採用したものだ。

 このゼロコロナ措置のせいで、中国社会は大損害を被った。さらに、中国経済は弱体化した。

 この措置のせいで、国内の供給網に混乱が生じ、上向きだった中国の商品輸出経済も停滞した。

 中国の国家衛生健康委員会は、(2022年7月11日)に、主要な都市部に封鎖措置を課したが、その措置を正当化する根拠となった中国本土における数値は、以下の通りだった。

・7月10日の新規Covid感染者は352名

うち症状がある新規感染が46件

無症状の新規感染が306件


 国内人口14億5000万人のうちの46件(7月10日時点)いう新規症例者数では、中国の主要都市部を閉鎖することを正当化できないだろう。

 信頼できないPCR検査や関連検査器具を使った最新の数値は以下の通りだ。

 WHOによる11月28日の数値。
 人口14億5000万人以上のうち、いわゆる確認された症例数が1万9130件

 ゼロコロナ措置を採用する後ろ盾となる科学的根拠は何ら存在しない。 こんな根拠で社会を抑圧する措置を何百万もの人々に科すべきではない。このような抑圧的な措置を正当化するような、健康上の懸念は存在しない。

 WHOが発表した、「確認された症例」の数は少なく、(WHOやCDCが確認した)SARS-Cov2ウイルスは、「危険なウイルス」ではない。
 

 3月から始められた、経済と社会を弱体化させる措置(以下の記事を参照)は、上海だけではなく、いくつかの主要産業都市にまで広められている。具体的には、南方の広州や深圳(しんせい)といった中国の世界市場への主要輸出拠点にまでだ。

 野村証券の調べによると、中国のGDPの2割以上が、現在ロックダウン措置下に置かれているという。
 
 2022年11月24日、上海の株式市場は暴落した。
 
 私たちは、世界規模の経済や社会の弱体化の複雑な過程と向き合っている。この過程の裏側にいるのは誰だろう?

 中国が、商品生産にける主要な役割を主導しているという点(世界のすべての主要な地域に多くの商品を輸出している)からすれば、中国における危機は、欧州や北米に対して大きな影響を与えることは避けられないだろう。ましてや、南の発展途上国の国々はいうまでもない。今展開されていることは、意図的な世界経済の崩壊だ。
 
ミシェル・チョスフドスキー、2022年8月23日、2022年11月29日
***
 
 2022年の3月下旬から4月上旬にかけて、中国政府は上海に対して、ゼロコロナロックダウン強制措置を命じた。上海は人口2600万人の港湾都市である。

 これは、上海市当局が発表した公式説明によるものであり、この件に関して中国共産党も、拒否していないのだが、こんな極端な措置は、嘲笑を呼ぶ類いのものだ。
 
 Covid-19に対する新たな「ゼロ・トレランス(許容を許さない態度)」措置が出されたわけだが、まず言っておくべきことは、この病気は存在しない偽りの病気だということだ。そしてこの措置はすべての上海市民に課されたのだが、3月28日[2022年]に、まず手始めに黄浦江(こうほこう)の東岸地域で開始され、4月1日に残りの地域でも開始された。

 おそらくすべての市民がCovid-19の検査を受けさせられることになると推測される。報道によれば、Covid-19の新規症例者数は2万6087件であり、うち症状があるのはたったの914件だという(エマニュエル・パストリッチ氏の記事からの引用はここまで)。


 「上海の労働力の封じ込めは、“ゼロコロナ強制措置”という政策のもとで実行された。中国各地から、少なくとも3万8千人の医療従事者が派遣され、上海の救助に当たった… これは、オミクロン株に対抗するものである…」 (Global Timesの記事)
 
オミクロンという言葉は、バズワード(それらしく聞こえるが、意味が曖昧な言葉)だ。オミクロンと、その亜種であるBA.5もそうだ。
 
 中国の医療行政当局はこう断言している。「核酸検査(PCR検査のこと)が、この戦略の中心となる」と。梁萬年博士が代表を務めるCovid-19対策専門委員会が、中国の国家健康衛生委員会の肝いりで立ち上げられた。「コロナゼロ強制措置」は、「オミクロン株を打破しようとする中国」政策の一環であるが、その根拠には、当てにならないPCR検査が利用されている。このPCR検査では、季節性のインフルエンザとCovid-19の区別さえできない。さらにこの検査は、2021年12月31日に、米国のCDCにより、全く当てにならず、効果の望めない検査法であると分類されている。
 
ジョージ・高福博士が果たした役割


 明らかに、中国の医療行政当局は、ファウチやゲイツが唱えていた「エセ科学」的ロックダウン措置を、臆面もなく追随したのだ。
 
 中国の疾病管理予防センター(CCDC)の代表はジョージ・高福博士だ。彼は、アンソニー・ファウチなどの同僚だ。
 
 高博士は、2019年10月のイベント201に参加していた。このイベントは、コロナウイルスの世界的流行をコンピューター上で演習するものだった。そしてこの演習から3ヶ月もしない2019年12月、武漢で「本物の」2019年新型コロナウイルスの流行が始まったのだ。
 
 最初から、高博士は中国のCovid-19が実際のものよりも恐ろしいものに見せることにおいて、中心的な役割を果たしていた。高博士の動きは、米国のCDC、ファウチのNIAID(国立アレルギー感染症研究所)、ゲイツ財団、WHO、ジョンホプキンス大学などと足並みをそろえていた。
 
 ジョージ・高福博士は、オックスフォード大学出だ。数年間、同博士は巨大製薬業界とつながりのある、ウエルカム・トラスト財団の特別研究員をしていた。高福博士は、アンソニー・ファウチの仕事仲間であり、「長年の友人」だ。

 中国の疾病管理予防センター所長のジョージ・F・高博士は、2020年3月28日に、アンソニー・ファウチからEメールを受け取っている。[米国でロックダウン措置がとられた数日後のことだ]。
 
 流行対策への批判にさらされてたファウチに、高博士は再び救いの手を伸ばしていた。
 
 「(偽ニュースだといいのですが)いくつかのニュースを目にしました。あなたを攻撃する人もいるようですね。こんな不合理な状況に置かれているあなたが、無事であることを祈ります」と高博士は2020年4月8日にメールを送っていた。
 
 その3日後、ファウチは返信し、長年の友人の「優しい気遣い」に対して感謝をのべた。

 「この世には、おかしな人もいますが、すべて順調です」とファウチはメールに書いた、と新聞は報じている。
 

アンソニー・ファウチ博士は、「ダブル・スピーク(二枚舌)」だ
 最初から、ファウチは常に(変種や亜種も含めて)SARS-CoV-2がすぐに手を打たなければならないような危険なものであると主張し続けていた。しかし、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(以下NEJM)に掲載された、同博士の査読済み論文にはこう書かれていた。

 「Covid-19の大まかな臨床的帰結は、症状の重い季節性インフルエンザ(その致死率は約0.1%)や流行性インフルエンザ(1957年や1968年に流行した型に似たもの)と似て非なるものに過ぎない可能性がある…」 (こちらの論文を参照。「Covid-19 —未調査の疾病への対応」、NEJM)

 時期にご注意あれ。この論文記事がNEJM誌に掲載されたのは、2020年3月26日のことで、国連加盟193カ国がCovid-19の世界的流行に対して世界規模でロックダウン措置をとった2020年3月11日からたった2週間しかたっていない時期だった。
 
 ファウチ博士によるNEJM誌の査読済みの分析(この分析はメディアではほとんど取り上げられていない)は、同博士がテレビで熱く語った内容とは全く異なっている。
 
 2020年3月28日(同博士の査読済み論文が発表された二日後)、ファウチはこう語っていた。「Covidは20万人の米国民の命を奪う可能性がある」と。
 
中国も加担しているのか?

 アンソニー・ファウチは、高福博士の相談相手だ。だから中国でも同じような政策が採られているのだ。

 中国のゼロコロナ強制措置は、(「似非科学」を根拠に行われた)2020年3月11日のロックダウン措置の「コピペ」だ。そのロックダウン措置は、アンソニー・ファウチやビル・ゲイツなどの手により、(世界経済フォーラムとの綿密な相談を重ねた)WHOの肝入りで行われた。

 中国のゼロコロナ強制措置は、恐怖を扇る計画に繋がるものだ。

上海のロックダウンが経済に与える悪影響

 2022年7月10日、中国の医療行政当局は、いくつかの主要都市部に「ゼロコロナ強制措置」を導入するよう指導すると発表した。そしてそれは、「感染力の強い異種であるオミクロンBA.5株」に対抗するためのもだとされた。

 多くの産業都市において、労働力が封じ込まれたため、経済や社会における混乱が生じ、経済活動が劇的に低迷した。以下は、ロイター通信の記事だ。

 [変異種である]BA.5系の菌株が、多くの国々で急速に拡散しており、陝西(せんせい)省の西安や遼寧省の大連でも検出されている、という,… この株の症例者が中国で初めて見つかったのは、ウガンダからの航空便で来た患者で、5月13日のことだった、と中国疾病予防管理センターは発表していた。そして、この症例者から中国国内で感染した例は、この月にはなかった、とのことだった。

 このウガンダからの「患者」は、中国のに戻ってすぐにPCR検査を受けたのだろうか?変異種や亜種は、どんな状況下にあっても、このPCR検査で検出できない。(もっとも、もともとのSARS-CoV-2ウイルスも、このPCR検査では検出できないのだが )。

 鼻に綿棒を挿入するやり方で行われるPCR検査に基づいて、遺伝子配列を検出することに焦点をおいた中国のCCDCの研究は、間違った結論を導くものだ。
 

 多くの都市部が、まさに閉鎖されている。こんな措置をとる根拠となる科学的な合理性も、公共医療上の合理性も存在しない:

 「河南省の中心部である秦陽市は、日曜日(7月10日)から70万人の住民に対してほぼ完全にロックダウン措置が採られている。各家庭で一名のみが、食料品店に行くために、二日おきでの外出が認められている。」

 河南省の別の市である武岡市の当局は、同市の29万人の住民が、Covidの検査に出て行く以外、今後3日間、家を出てはいけないという指示を出した。

 中国北西部の甘粛省蘭州市内の4地域と、南部海南省の儋州(だんしゅう)市と海口市では、数日間の一時閉鎖措置が取られていて、併せて600万人に影響が出ている。

 人口630万の南部江西省南昌市では、日曜日(7月10日)に、いくつかの娯楽施設が閉鎖された。ただし、その閉鎖期間は明らかにされなかった。
 
 北西部青海省では、月曜日(7月11日)西寧市で大規模な検査計画が始められた。それは、日曜日(7月10日)に、一名の感染者が出たからだった。

 南部の主要都市である広州市内のいくつかの主要部でも、月曜日(7月11日)、大規模な検査が開始された。
 
 中国の国家健康衛生委員会が、2022年7月11日時点での中国本土の感染状況を以下のように発表している。

§  7月10日に確認されたCovidの新規国内感染者総数は352件

§  症状のある新規症例数が46件 

§  無症状の症例数が306件
 
人口14億5千万のうち、症状のある症例数がたった46件しか出ていない状況では、中国の主要都市部を閉鎖することは正当化できない。


§  こんな決定は、馬鹿げたものだといって、ほぼ間違いではない。

§  科学的根拠はない。

§  何か隠された企みでもあるのだろうか?

§  中国共産党は、だんまりを決め込んでいるのか?

§  中国の指導者層内で分断が起こっているのか? 

 西側メディアも中国メディアも、この件に関しては完全に沈黙を保っている。

 中国の国家健康衛生委員会と中国のCCDCが課したこのような措置が与える影響により、中国の供給網は危機に陥るだろう。「ゼロコロナ」対策により、上海の金融業界や上向きだった中国の輸出経済も不安定化している。さらに、国内の輸送業や国内の商品供給網も不安定化させられている。
 
中国が推し進めているQRコード

 ゼロコロナ強制措置のせいで、社会には大混乱が生じ、何百万もの人々を苦しめている。具体的な措置のひとつに、常時PCR検査の受検を必要とする、特定のQRコードを使わせる措置がある。そのQRコードは、緑・黄・赤の三色でできていて、社会抑制装置として使用されている。
 
 ワシントンに本拠地を置く戦略国際問題研究所(CSIS)は、このQRコードを賞賛している:
或る地域で大成功すれば、他の国々でも採用される可能性があります。オンライン上でできる「健康規約」体系(健康码)が、急速に発展しています」
 
 この革新的なアプリは、個人の移動や人との接触の記録や生体数値(体温など)を、各自のスマートフォンを使って、直接追跡できるものです。」 (強調は筆者)。



世界経済に対する影響

 2022年の4月中旬(上海でロックダウン措置がとられていたのと同時期)、中国元 (CNY)が、米ドル(USD)に対して突然安くなった。 
 
 それは、上海港(およびそれ以外の主要港湾都市)を出入りする商品取引の量が減り、それに伴い、「中国製」商品が行き渡らなくなる状況が、世界中で避けられなくなっているからだ。



 「中国製」の商品は、小売業の根幹をなすものであり、事実上ほとんどすべての分野の主要商品において、家計消費を支えるのに不可欠だ。「中国製」商品は、衣服、履き物、金属製品、電子機器、玩具、宝石、家屋内の様々な部品類、食物、TV、携帯電話など多岐にわたっている。米国の消費者に「中国製」があるか聞いてみればいい。きりのない数になるだろう。
 
 中国からの輸入品は、何兆ドルにもなるもうけ口だ。中国からの輸入品は、米国においてとてつもない利益と富を生み出す源となる。というのも、消費者が購入する商品は、中国の低賃金経済のもとで生み出されているので、小売り段階で、工場渡し価格の10倍以上で売られることがしばしばあるからだ。
 
 卸売りや小売り段階での商品貿易が、世界的に危機に置かれている。世界のすべての主要地域に与える可能性がある影響は、計り知れない。生活必需品が世界規模で品薄になっている状況が、インフレ圧力と一体となっている。

 このような経済不況が進む中で、国民国家としての中国がもつ力にも影響が出てきている。いうまでもないが、「一帯一路」構想にもその傾向が見られている。

 ワシントン当局が掲げている「アジアへの中心軸移動」政策も含めた、この現状の危機の中で、重大な地政学的影響が生じている。そしてその影響により、中米間の対立の激化が進んでいる。
 
中国は資本主義国家

 ほとんどの分析家や歴史家が理解できていないことは、1980年初旬から、中国は完全な資本主義国家に生まれ変わっている、という事実だ。強力な米国のビジネス上の利益がある。具体的には、巨大製薬産業、主要なハイテク諸企業、銀行業界などだ。これらの勢力が中国国内に深く根を下ろしている。

 米国は、中国の業界上層部内、研究組織、科学者、医師たちの中に、信頼できる同胞を有している。これらの同胞は「親米」の傾向がある。

 1980年代の初期から、中国科学院や中国各地(北京、大連、広州)の商業大学 は、米国のアイビー・リーグ諸大学と連携を取っている。その多くは、相互乗り入れMBA(経営学修士)取得過程を有している。例えば、上海の复旦大学は、MIT(マサチューセッツ工科大学)と提携しており、中国内にMITのキャンパスがある。MITは、北京大学などとも提携を結んでいる。  

 ほかにも、清華大学ジャーナリズム・コミュニケーション学院の大学院には、ブルームバーグ財団やウォール街のいくつかの銀行が出資している。中国の億万長者たち(Forbes List 2022Forbes New Billionairesを参照) を含めた、強力な中国諸業界(中でも顕著なのは製薬業界だ)の利益受給者が、中国共産党指導者層の最上位に名を連ねている。 

 つまり、言うまでもないことだが、中国共産党内部には、深い分断が存在している、ということだ。 
 
 


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ウクライナの民家を直撃したミサイルは米国供与のものだった(NYTの記事)

<記事原文 寺島先生推薦>

US-supplied missile hit Ukrainian home – NYT

米国提供のミサイルがウクライナの民家を直撃(ニューヨーク・タイムズ紙の報道)
同紙によると、対レーダー弾に関わる事件は9月下旬にクラマトルスクで発生した。

出典:RT

2022年11月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月10日



戦闘機に搭載されたHARMミサイルを固定する米空軍の飛行士。© AFP/米空軍

 米国からキエフに供与されていた米国製の対レーダーミサイルが9月、ウクライナの住宅を直撃し、3人が負傷したとニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が報じた。

 AGM-88B高速対レーダーミサイル(HARM)による攻撃は、9月26日に同国東部のウクライナ支配下の都市クラマトルスクで発生したと、同紙は11月24日に報じた。

 ウクライナ軍のジェット機が発射したとされるミサイルは、目標を外れて誤作動を起こした可能性が高く、5階建ての住宅ビルの最上階に命中した。直撃されたアパートは人が住んでおらず廃墟になっていたが、その近くの階に住む3人が負傷する結果となったという。

 NYT紙によれば、同紙記者は現場で榴散弾の一部を目視で確認することができた、その破片には組立番号が残っていた、その番号はその破片が、AGM-88Bミサイルにのみ使用される電子回路板の組立番号と関連しているのに気づいた、とのことだ。また、記者が見た爆発した弾薬の他の破片は、古い米国製ミサイルと一致したとも付け加えた。

 HARMミサイルの標的は不明だが、ロシアのレーダーを発見できず、燃料がなくなった後、クラマトルスクの住宅に命中した可能性があると、同紙は示唆した。


関連記事:米ミサイル用に改造されたソ連機、ウクライナで撃墜される―ロシア

 ウクライナ国防省の広報担当者は、同紙が事件について問い合わせた際、回答をしなかった。

 また、ある米軍将校は匿名で、米軍は現在、より新しいHARMが配備されているため、問題のミサイルは古い余剰在庫から来たものであることは「確か」だと、NYT紙に語った。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、クラマトルスクでのミサイル攻撃は、「ウクライナに送られた何十億ドルもの米国の軍事援助が、場合によってはどこにたどり着くかを教えてくれる窓」になると指摘した。

 ロシアとの紛争の中でウクライナの主要な支援者である米国が、いつキエフにHARMミサイルを供給し始めたかは不明である。ただ、ワシントンの当局者は、ウクライナ軍がこの種の軍需品を8月には使用していたことを今回はじめて認めた。

 モスクワは以前から、西側諸国がウラジーミル・ゼレンスキー政権に武器を供給することを批判して、それは、戦闘を長引かせ、ロシアとNATOが直接衝突するリスクを高めるだけだと主張してきた。
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プーチン大統領は、再統合を早く実施しなかったことを、ドンバス兵の母親たちに謝罪

<記事原文 寺島先生推薦>

Putin expresses regret over Donbass

Reunification with Russia should probably have happened earlier, the president told the mothers of soldiers
プーチンは、ドンバスに関する遺憾の念を表明
ロシアとの再統合はもっと早く実施されるべきだったと、同大統領は兵の母親達に伝えた。

出典:RT

2022年11月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月6日


ドネツク人民共和国のマリウポリの街中を歩いている地元の人々 © Sputnik / Alexey Kudenko

 ドンバスの両共和国は、もっと早い段階でロシアに再統合されるべきだったと、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は語った。金曜日(11月25日)、ウクライナの軍事作戦に参加した兵の母親達との面会の場で語ったものだ。「そうであれば、犠牲になった人の数はもっと少なくてすんだかもしれません」と同大統領は、語気を強めた。

 「市民の中でこんなにも多くの犠牲者は出なかったかもしれません。子どもたちもこんなに殺害されることはなかったでしょう」とロシアの指導者であるプーチン大統領は語った。しかし、プーチン大統領は、2014年の時点では、ロシアはドンバスが置かれていた状況や地元の人々の感情を完全には理解できていなかった、とも断言した。

 「[私たちは、]当時はまだ、合意に達することができると考えていました。….ミンスク合意の枠組みの中で、ドネツクとルガンスクをウクライナに統合できると思っていました」とプーチン大統領は述べ、さらにロシアは、「その実現に向けて必死に努力してきました」とも付け加えた。

 さらにこの問題に関して言葉を続けた同大統領は、2014年のキエフでのクーデターを非難し、そのクーデターがドンバスでの危機や、ロシアとウクライナ間の紛争を生み出した、とした。「2014年にウクライナでクーデターが起こっていなければ、[このようなことは]何も起こらなかったでしょう」と同大統領は語った。


関連記事: Ukrainian troops used as ‘cannon fodder’ – Putin

 ドイツとフランスの仲介の元、ミンスク合意が最初に署名されたのは2014年のことで、当時のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領の失脚を受けてのことだった。この失脚が引き金となり、ウクライナでは紛争が発生していた。それはキエフのクーデター後の政権とドネツク地方やルガンスク地方の間のものだった。その後、それぞれの地域では人民共和国が成立し、同年、両領域はウクライナからの独立を宣言した。

 この合意では、ウクライナに留まる形で、ドネツクとルガンスク両地域に、特別な地位を与える、としていた。しかしこの合意の実施は、ずっと保留されたままだった。このことを、モスクワ当局は、キエフ当局に対して繰り返し非難してきた。ピョートル・ポロシェンコ元ウクライナ大統領は、キエフ側の主要な目的は、交渉を利用して、時間稼ぎをし、「強力な軍をつくろう」とすることだった、という事実を認めている。

 2022年2月、クレムリンはドンバスの両共和国を独立国家として承認し、ウクライナに対して、ウクライナは中立国であり、西側の軍事同盟に一切加盟しないことを宣言するよう要求した。2月24日、ロシアは、キエフ当局がミンスク合意を実施していないとして、ウクライナに軍を送った。当時プーチン大統領は、ドンバスのロシア語話者たちを守る必要があるためだ、と語っていた。

 今年の秋、ウクライナ領だった4地域、つまり、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国とヘルソ地方とザポリージャ地方は、住民投票の結果、ロシアに編入された。
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嘘の帝国が「新世界秩序」の名付け親(II部):「アメリカは例外」が意味するのは世界支配

<記事原文 寺島先生推薦>

Empire of Lies Christens the New World Order. Part II: American Exceptionalism Means Global Domination

筆者:ロン・リデヌール(Ron Ridenour)

出典:Strategic Culture

2022年9月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月8日

(II部では、ロシア/ソビエト以外の民族に対する戦争を合理化するために、アメリカ・NATO・EUがつくった嘘に焦点をあてる。最後、ロシアとウクライナの衝突の最新状況の紹介)

 以下は、米国の200年にわたるジンゴイズム(好戦的愛国主義)的で違法な戦争、大量虐殺、そして人類と地球に対するその他の犯罪の素描に過ぎない。米国は何のためにそんなことをしてきたのか?際限のない富を求めた遠征。そして、米国以前の奴隷商人・植民地主義諸国は、5つの大陸だけを支配したが、米国は世界の支配を目的としている。


§アメリカインディアンとの戦争

 2019年の科学的根拠に基づく報告書によると、コロンブスがアメリカ大陸に侵入した日(最初はドミニカ共和国に上陸)からちょうど1600年まで、ヨーロッパの奴隷商人・植民地主義者がアメリカ先住民の90%、つまり5600万人の人間を絶滅させたことが明らかになった。 Earth system impacts of the European arrival and Great Dying in the Americas after 1492 – ScienceDirect

 「17世紀から19世紀後半にかけて、北米では欧州各国政府や植民者たち、後にはアメリカ合衆国やカナダ政府、アメリカやカナダの入植者たちが、主に土地の奪取を目的として、様々なアメリカインディアンや先住民族と戦争を繰り広げた。」 American Indian Wars – Wikipedia

 1778年から1871年の間に、アメリカ政府は北米のさまざまな先住民と368の条約を結び、少なくとも100の条約を破棄したと、さまざまな連邦裁判判例にある。これらの条約は、それぞれの部族が独立した国家であり、自決権を持つという基本的な考えに基づいていた。 How Many American Indian Treaties Were Broken? – HISTORY そして List of some broken native American treaty agreements. – Indigenous Peoples Opportunity Network


§アフリカ人を奴隷化

 中世以降、ヨーロッパの白人政府はアメリカ大陸に兵士/船員と入植者を送り込んだ。18世紀だけで600万から700万人のアフリカ人が「新世界」に移送されたと推定する歴史家もいる。U.S. Slavery: Timeline, Figures & Abolition – HISTORY

 同数のアフリカ人が拘束される際、そして船で搬送される際、死んでいる。 DEATH TOLL FROM THE SLAVE TRADE (worldfuturefund.org)

 「アメリカにおける人種差別軍事帝国」(以降U.S.-ARMEと表記)は、未だに強力な存在だ。だから警察、FBI、そして多くの白人民間人が、肌の色が違うというだけでアフリカ系アメリカ人を殺しても何ら処罰されない。


§アメリカ例外主義/自明の宿命説*/モンロー主義*
自明の宿命説*・・・(19世紀)アメリカの移植者には、西部を開拓して領土を拡張する使命が与えられているとする、当時広く信じられた考え方(英辞郎)
モンロー主義*・・・モンロー米大統領(James Monroe)が宣言(1823年)。欧州諸国による米大陸への干渉を拒否する宣言。後で西半球での米帝国主義を正当化するのに使われた(英辞郎)


 それは、各時代のアメリカ政府と多くの白人が賞賛し、実践してきた正真正銘の「優越宗教」である。アメリカ国旗とイエス・キリストの十字架を掲げながらアメリカは、メキシコの半分を奪った(1846-8)---現在の州で言えば次の通り:カリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州、そしてワイオミング州、コロラド州、ネブラスカ州、オクラホマ州の一部。


§スペイン-アメリカ戦争にまつわる嘘

 キューバの第三次独立戦争は、1895年2月24日、「祖国の父」と呼ばれる詩人・知識人のホセ・マルティ(José Martí)に率いられて始まった。cuba history .org – Independence War (1895-1898).

 キューバ国民はスペインに対する解放戦争に勝利していたので、アメリカはキューバの主権を阻むため、内政干渉する嘘を見つけなければならなかった。セオドア・ルーズベルトのような政治家とハースト(Hearst)に率いられた主流メディアは、スペインが1898年2月15日にハバナ港でアメリカ船を爆破して241人の船員が死亡したという嘘をでっちあげたのだ。メイン号を忘れるな!

 真相は機関室での誤射。メイン号船長の言 Remember The Maine | History| Smithsonian Magazine

 その事実がわかっても、U.S.-ARMEは1898年6月、キューバ人が主権を持つことを阻むための侵攻を止めなかった。スペインは降伏した。キューバ人は条件を設定することを許されなかった。アメリカは、グアンタナモ州の一部(海軍基地のために)、またニッケルが豊富な土地を押収した。以降キューバ人民やキューバ政府の意向は完全に無視されている。ヤンキーは今日もこの基地を利用して人々を拷問している。

 ペンタゴンは何千回も侵略/内政干渉をしている。CIAのクーデターや諜報活動も数千回に及ぶ。ロシアと中国を直接狙ったもの以外の代表的なものを以下に挙げる。

1953年イラン。CIAと親シャ-派のイラン軍が、民主的に選ばれたモハンマド・モサデク(Mohammad Mosaddeq)首相を打倒し、残忍な独裁者シャー・モハンマド・レザー・パーレビ(Shah Mohammad Reza Pahlevi)を再登場させた。

1954年グアテマラ。CIAは民主的に選ばれたハコボ・アルベンツ(Jacobo Árbenz)大統領を打倒し、独裁者カルロス・カスティロ・アルマス(Carlos Castillo Armas)を据えた。そして、左派、特にマヤ・インディアンに対する恐怖支配が始まり、数十万人が殺された。

1973年9月11日、チリ。ニクソン-キッシンジャー-CIAは、民主的に選出されたサルバドール・アジェンデ(Salvador Allende)を打倒し、独裁者アウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)を据え、数万人のチリ人を殺害した。



 「無責任な国民のせいで共産主義化する国を黙って見ている理由はない」。ヘンリー・キッシンジャー国務長官は、1970年6月27日、9月4日の選挙で社会主義者アジェンデが勝利する前に、こう言い放った。

§§1976年10月6日 :CIA長官ジョージ・H・W・ブッシュの監視下、CIAのスパイ部隊はハバナへ向かうバルバドス上空のキューバ・アビエイション455便を爆破した。キューバのジュニア・フェンシング・チーム全員を含む73人の民間人の乗客と乗員全員が死亡した。

 私はそのフライトに主席スチュワーで搭乗するはずだったイグナシオ・ロドリゲス・メナ・カストリョンと知り合いになった。彼の妻、メルセデス・エレロも来る予定だった。二人ともキューバの諜報機関の覆面捜査官だった。CIAに潜入していたのだ。二人は手違いでその便に乗れなかったので、イグナシオの親友が代わりに乗った。

 グナシオが私に語るには、数日後、マドリードでCIAのスパイ担当者ニコラスに会ったとき、イグナシオは彼を殴り、彼の体を揺すったのだという。その諜報員はイグナシオに大胆にも次のことを言ったからだ:「もしお前が搭乗する飛行機がまた標的になるなら、そのことはお前に事前に知らされることになる」。(彼の証言参照。Backfire: The CIA’s Biggest Burn: Ridenour, Ron: 9780962497513: Amazon.com: Books, 第2章「ディーン」)

 犯人は2人のキューバ人亡命CIAスパイ部隊、ルイス・ポサダ・カリレス(Luis Posada Carriles)とオルランド・ボッシュ(Orlando Bosch)、それにベネズエラ人のフレディ・ルゴ(Freddy Lugo)とエルナン・リカルド・ロサノ(Hernan Ricardo Lozano)であった。トリニダッド警察とガイアナ外相は、爆破犯の身元を明らかにした。近々行われる裁判の裁判官は、証拠の書類があると述べた。その書類は消えてなくなった。4人の共犯者全員が、あろうことか、ベネズエラの右翼メディアに、自分たちの「反共産主義」破壊工作を自慢していた。メディアに流されたイラン・コントラゲート文書によると、ロナルド・レーガン大統領の主要な組織者であるオリバー・ノース(Oliver North)大佐は、イラン兵器販売からの利益を、1985年にベネズエラの刑務所からポサダを逃がすために使っている。 CIA terrorist Posada Carriles dead at 90 – World Socialist Web Site (wsws.org)


§1976-83 コンドル作戦

 CIAは、南米のほぼ全域で軍事政権が権力を握るように仕向けた。何十万人もの独裁体制反体派が拷問され、殺害された。

ひとつの例:グレナダ
 グレナダは、米国と国境を接していない(しかしウクライナはロシアと国境を接している)。「世界一の民主主義国」から4,377キロも離れているのだが、米国政府はとにかく脅威を感じていたという。1983年、グレナダの人口は96,020人だった。

 統治側に立つ左翼勢力に内紛が起きたとき、レーガン大統領は帝国を拡大するチャンスと考えた。レーガン大統領は、グレナダ島に留学している600人の米国人医学生が危険にさらされていると主張したが、援助を求める医学生は一人もいなかったのだ。しかし、レーガンは、キューバの干渉を防ぎたかった。グレナダには784人のキューバ人がいた。636人が英国の建設労働者とともに空港を建設していた。英国とキューバの共同事業だった。レーガンは、英国の投資事業に目もくれなかった。

 1983年10月25日、アメリカ陸軍、空軍、海軍、海兵隊からなる7,600人の侵攻軍は、グレナダの抵抗を数日で打ち破った。その後、米国は傀儡政権を樹立し、すべてのキューバ人と少数のロシア人外交官・顧問を追い出した。

 アメリカに対する制裁はなかった。国際裁判も開かれなかった。グレナダやキューバの死者に対して欧米が涙を流すことは一切なかった。(私はコペンハーゲンで、「死の大使館」の正面の大きな窓を2つ、石ころで壊し、短期間刑務所に入った。私は1万ドルの損害賠償の支払いを拒否したのだ。面白いことに、外務省はこの問題を取り下げた)。

 アメリカによる戦争、軍事介入、政権交代は何千回とあるが、「制裁」されたのは、国際司法裁判所によるものだけである。1986年6月27日、国際司法裁判所は、貿易を阻止する目的でマナグアの港に機雷を仕掛け、民間人などを殺害したとして、米国を有罪にしたのである。

 米国は、国際司法裁判所(ICJ)の時もそうだったが、いかなる国際的な法廷にも出廷しようとはしない。また、損害賠償は一切行っていない。 Judgment of the International Court of Justice of 27 June 1986 concerning military and paramilitary activities in and against Nicaragua :

1980年代を通じて、レーガンはエルサルバドルの軍事独裁政権を援助しているが、この軍事政権は大司教オスカル・ロメロ(Oscar Romero)や多くの司祭、修道女を含む一般市民を無慈悲に殺害している。ニカラグアでは、レーガンは非常に残忍な「自由の戦士」であるコントラに、度を超した援助をしている。彼は、それらの拷問者に武器を提供する場合、議会に諮らなければいけないという手続きすら省略している。レーガンは、米国の同盟国イラク(サダム・フセイン率いる)と戦争状態にあった米国の敵、イラン・イスラム国に武器を売った。コントラへ武器を提供する資金調達のためだった。

1990年代、クリントン/NATOはユーゴスラビアに戦争を仕掛け、5つの国に分割し、アルバニアからコソボを切り離した。アルバニアにおける米/NATOと同盟関係にあったのはコソボ解放軍で、これは麻薬密輸、臓器売買、そして武器密輸で米国とEUのテロリスト名簿に載っている集団だった。

 「ギャング国家」を率いたのは、コソボのKLA(コソボ解放軍)指導者で首相のハシム・サチ(Hashim Thaci)である。2010年、欧州評議会の調査は、KLAがセルビア人の囚人を殺害し、その腎臓を売っていたと報告した。この報告書はFBIの情報源まで引用している。 Kosovo PM is head of human organ and arms ring, Council of Europe reports | Kosovo | The Guardian

 いずれにしても、CIAはテロリストのKLAに資金を提供し、武装させた。彼らは78日間で5千から1万8千人のセルビア人を殺害し、1万5千人を負傷させ、2万5千の家屋と数十の学校と教会を破壊した。アメリカはそのテロリストたちを新しい「国家」コソボの新政府とし、その最大の基地の一つであるボンドステル基地を手に入れた。

 クリントン/NATOは、セルビア・ユーゴスラビア大統領スロボダン・ミロシェビッチを国際裁判所に逮捕させた。西側勢力に手足を縛られた状態の裁判所は、心臓が弱かったミロシェビッチを心臓専門医に診せることを拒否した。代わりに看守が、本人にそのことを知らせないまま錠剤を飲ませ、「心臓発作」で死亡したのが2006年3月11日。10年後の2016年3月24日、ユーゴスラビアに関する国際刑事裁判所(ICTY)は、ミロシェビッチの告発された罪状については無罪であることを突き止めた。しかし、この経緯について2,590ページに及ぶ判決文の1,303ページに埋もれるように記載されているだけだ。Trial of Slobodan Milošević – Wikipedia


§1990 イラクに対する湾岸戦争


U.S. war crimes in Iraq | Mary Scully Reports

 米英は1991年から長年にわたり、イラク上空で「飛行禁止区域」を実施した。彼らは「目標」を自由に空爆した。1995年までに、50万人のイラクの子どもたちがこれら侵略者たちによって殺された。1996年5月12日、マドレーン・オルブライト(Madeleine Albright)国連大使は、CBSの番組「60 Minutes 」で、「その犠牲は相応の価値のあることだった」と語った。クリントンは彼女を国務長官に昇格させた。 (574) Madeleine Albright – The deaths of 500,000 Iraqi children was worth it for Iraq’s non existent WMD’s – YouTube

 U.S.-ARMEが主導した3回のイラク戦争(湾岸戦争、有志連合によるイラク戦争、イラク戦争)のせいで、100万人以上が死亡し、(メソポタミア)文明の発祥地から最高の財宝が破壊され、略奪されることになった。米国の納税者が負担した費用は、様々な情報源から2兆ドルから3兆ドルと見積もられている。Iraq War – Wikipedia

 イラクが元に戻ることは決してないだろう。今日、イラクは絶え間ない政治的抗争で荒廃している。4,450万人の人口の半分以上が貧困にあえいでいる。2021–2022 Iraqi political crisis – Wikipedia Iraq Poverty Rate 2006-2022 | MacroTrends


私たちの未来は、長期間、分裂と戦争が繰り返される世界となるだろう。

 ほぼすべての主流派ジャーナリストたちは、現在、反ロシアの集団思考的プロパガンダになだれ込んでいる。彼らは、米国-ARMEの嘘をオウム返しにするだけだ。このことは功を奏し、ウクライナにおける彼らの代理戦争のための支援を、ほぼすべての西側資本主義世界から取り付けることになった。ウォール街・欧州の兵器産業は莫大な利益を享受している。彼らは皆、戦争をロシアのせいにしている。しかしロシアは、十分に装備された主権国家が主権を守るために行うようなことを行っているのだ。プーチン大統領は、エリツィンとは違う。エリツィンは、世界のいじめっ子警察(アメリカ)がロシアをほぼ支配下に置くことを許した。

 この戦争を文脈的に捉えるためには、多くの情報が必要である。例えば、親ファシストのヴォロディミル・ゼレンスキーの役割などである。彼は、ユダヤ人、特にドイツのナチスとウクライナのファシストによって殺された何百万人もの人々を裏切っている。当時のウクライナ・ファシストたちの子孫が、今日先駆けとして動いているのだ。

 大統領になっても、ゼレンスキーは税金を払いたがらない。英国支配者層を代弁するThe Guardian 紙ですら、彼が富を海外に隠していることを記事にした。この2021年10月の記事は、ロシア軍がウクライナの国境から200キロ離れたところで演習を行っていたときに掲載された。この演習について西側は、口を極めて不満の声をあげた---西側諸国は、まるでロシアを標的に軍事演習をしたことがないとでもいうような言い草だ。Revealed: ‘anti-oligarch’ Ukrainian president’s offshore connections | Volodymyr Zelenskiy | The Guardian

 NATOへ加盟して核兵器を保有したい、と公言したゼレンスキー。2022年2月19日、彼はミュンヘンで、5分以内にモスクワを攻撃できる核兵器を配備すると脅迫した。これに対して、プーチン大統領は、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の主権的独立をついに承認した。2月24日、プーチン大統領は「特別軍事作戦」を開始した。こういった一連の行動で、彼はゼレンスキーの核武装誓約に触れた:「彼の言葉は空威張りとして片づけられない。」

 もしロシアがこの声明の前に「特別軍事作戦」を、実際、計画していたなら、歴代の財務大臣たちが愚かにも西側の金融センターに置いてしまった金と外貨の半分を取り戻せただろう。そう、西側はロシアの富を盗んだのだ。ロシアは、嘘の帝国に「言って聞かせる」には他に方法がないと真っ当な感じ方をした。プーチン大統領が、ついに、アメリカを名指しで、その本質を非難したのはそういうことだ。Dumbshit Russians? | (paulcraigroberts.org)

 欧米の政治家や主流メディアは、大統領が「特別軍事作戦」を開始する2カ月前2021年12月17日に、プーチン政府が平和条約を提示したことを告知しない。Treaty between The United States of America and the Russian Federation on security guarantees – Министерство иностранных дел Российской Федерации (mid.ru)

 重要点。 第1条 「締約国は、不可分、平等及び完全な安全保障の原則に基づき協力し、これらの目的のために:他の締約国の安全保障に影響を与える行動をとり、又は活動に参加し、若しくはこれを支援してはならない。」

 第3条 「締約国は、相手国に対する武力攻撃の準備又は実行その他の相手国の安全保障上の中核的利益に影響を及ぼす行為を目的として、相手国の領土を使用してはならない。」

 第4条 「アメリカ合衆国は、北大西洋条約機構の更なる東方への拡張を防止し、旧ソビエト社会主義共和国連邦の国々が同盟に加入することを拒否することを約束するものとする。」

 第5条 「締約国は、その軍隊及び軍備を、国際機関、軍事同盟又は同盟の枠内を含め、相手国がその国の安全に対する脅威と認識し得る区域に展開することを、締約国の自然的領域内におけるその展開を除き、慎まなければならない。」

 米国、NATO、ウクライナがこの真の和平提案を無視し、嘲笑さえした後、プーチン大統領はロシアの存在に対する米国・NATO・ウクライナの侵略を防ぐために軍隊を送り込んだ。

 ダニエル・コバリク(Daniel Kovalik)は、国連憲章第51条が「一方的な戦争行為」に反対しているだけでなく、国家の主権が危うくなった場合の自衛についても規定しているとの主張をする国際法学者の一人である。

コバリクからの引用:
    「ロシアが、米国、NATO、そしてウクライナにおける過激派の代理人たちによる具体的な不安定化工作によって、かなり深刻な形で脅かされていることは間違いない。ロシアは丸8年間、そのような脅威にさらされてきた。そしてロシアがその間目撃してきたのは、イラクからアフガニスタン、シリア、リビアに至るまで、そうした不安定化工作が他の国々にとって何を意味するか、だ。つまり、機能している国民国家としての国がほぼ完全に消滅させられる事態を目撃してきたのだ。

    「国家を防衛するために行動する必要性について、これほど切迫したケースはないだろう。国連憲章は一方的な戦争行為を禁じているが、同時に第51条で「この憲章のいかなる規定も、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない・・・」。そして、この自衛権は、実際の武力攻撃だけでなく、差し迫った攻撃の脅威に対しても、各国が対応することを認めると解釈されてきた。

    「以上のことから、この権利は即座に発動され、ロシアは自衛のために、米国とNATOの代理として、ウクライナ内のロシア民族だけでなく、ロシアそのものへの攻撃となったウクライナに介入する権利があったと私は判断している。これと反対の結論は、ロシアが直面している悲惨な現実を単に無視することになる。」

Why Russia’s Intervention in Ukraine is Legal Under International Law | Algora Blog

 コバリクは、ロシアの自衛権に関する別の記事を書いている。 Russia’s Invasion Signifies The End Of An Era Of Unipolar American Power – PopularResistance.Org

    「フランシス・A・ボイル教授のような国際法の専門家は、ウクライナ軍がロシアとウクライナに住むロシア系住民(その多くはロシア国民である)にとって現実的かつ差し迫った脅威であることから、ロシアはウクライナ作戦を通じて国連憲章51条の自衛規定内で行動したとコメントしている。(ところで、ボイルは、ウクライナにある米国の生物研究所は間違いなく生物兵器施設であり、生物兵器禁止条約の起草を手伝った自分は知っていて当然だ、とも主張している)」。

 ロイターと国連人権高等弁務官によると、8月までにおそらく3万人が殺害され、その約半数はロシア人である。それにもかかわらず、ゼレンスキーは「プーチンは戦犯だ」「アドルフ・ヒトラーよりも悪い」(ヒトラーのせいで亡くなった死者数は、およそ8500万人いるのだが)と主張している。Explainer: Blood, treasure and chaos – the cost of Russia’s war in Ukraine | Reuters

 ロシアがウクライナへ防衛的に兵を進めて以来、米国とその属国はウクライナのために2000億ドルから3000億ドルの現金を使い、さらにポーランドを通じて、ウクライナの手元には既に数十億ドル相当の武器が送られている。新しい兵器は製造中である。欧米はさらに数十億ドルを、約七百万人のウクライナ難民の収容と食料調達のために費やしている。個人的な寄付もメディアを視聴している人々によって集められている。

 寄付金の一部は個人の手に渡り、それ以外の多くはすぐに使われてしまう。ゼレンスキーはN.Y.証券取引所に投資を依頼したばかりだ。つまり、「自分の国を略奪し、市民の労働権を粉砕していることになる。」Zelensky rings New York Stock Exchange bell as Euro dips below dollar – The Grayzone

 このため、欧米諸国はロシアに制裁を加える分野をさらに増やすことになるだろう。米国傘下の少なくとも40カ国は、すでに数百の制裁を行っている:①ロシアとの貿易をほぼゼロに、②ロシアの国際的金融資産に罰則を科す、③ロシアからドイツ、そしてその先のヨーロッパまで、1224kmのパイプを通して天然ガスを流すロシア・ドイツ間のノルドストリームIIを妨害する。これはロシアにとって、まず110億ドルの損失である。また、「自由な市場競争」にも反している。

 それにもかかわらず、欧米諸国はロシアが主戦論者たちに天然ガスを送り続けることを期待している。ロシアは供給を減らしてはいるが、もしロシアがこれら攻撃者たちに相応の対応をするならば、彼らへの燃料をすべて断つべきだろう。

 北欧は平和な民主主義国家ではなく、バーニー・サンダースが唱える程度の社会主義にさえ近いわけでもない。

 ロシアに対する自主的な制裁措置があまりにも広範囲に及んでいるため、制裁をしている側はかえって「しっぺ返し」状態になっている。ガス、石油、電気の料金は時間単位で通常の2倍から11倍に高騰している。私の住むデンマークでは、学校の教室の暖房温度を下げたり、夜間の街灯を消したりしている市町村もある。これはロシアの天然ガスを減らすためで、「ウクライナと連帯するため」だと政治家は言う。一部の市民は、暗い町並みは泥棒や強姦魔を助長すると憤慨している。

 ドイツとイギリスでは、汚い石炭の採掘量が増えている。ドイツとスウェーデンでは原子力発電所が再開されつつある。化石燃料の中で最も汚染をもたらすものの一つである頁岩の破砕は、アメリカではビッグビジネスとなっており、その液体ガスをヨーロッパに輸送している。イギリスも液体ガス輸送禁止を解除している。 Fracking – Fuel for Human Safety (wordpress.com)

 化石燃料や電気料金の大幅な値上げに伴い、食料品の価格も上昇。インフレが加速している。金持ちはさらに金持ちになる。世界最大の海運会社であるモラー・マースク(Møller-Mærsk)などの大資本家は、記録的な利益をすくい上げている。デンマークの海運会社やその他の大資本家は溢れるほどの利益を手にしているが、政府は彼らに追加課税をしない。それどころか、現在の選挙運動では、一部の政党が金持ちへの減税を訴えている。

 医療従事者によると、不安やストレス、将来への不安は健康上の大きな問題だという。最近の調査では、10代の少女の半数が自分のことが好きではない、という結果が出ている。心理的な援助を受けるには、1年から2年の待ち時間が必要。福祉制度は縮小された。保健師や教師になるための勉強を希望する若者は、以前より少なくなっている。保健制度は資金不足で崩壊し、過剰労働の看護師や医師は疲労困憊状態だ。こういったことすべて、世界の半数の政府が、世界の警察官であろうとする狂信的U.S.-ARMEを支援することが最善と考えていることが理由だ。

 デンマークの社会民主党政権は、ロシアがいつかは自国の主権を守るために戦うかもしれないことを予見していたようだ。プーチン大統領が、ウクライナのNATO加盟と核武装を阻止すると発表する2週間前、メッテ・フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相は、外国軍隊を停泊させないという国の長年の方針を覆し、大半のデンマーク国民は寝耳に水と感じた。政府は米軍に対して、デンマークに軍隊と巨大な兵器を恒久的に派遣するよう要請した、つまり、米軍からそう言われたのだ。そのためには、西デンマークのエスビエル港を拡張して、巨大な軍艦を停泊させる必要がある。さらに数百万ドルが流出することになる。

 同時にデンマークは、デンマークの武装傭兵がポーランド経由でウクライナに入国することを許可している。デンマークはウクライナに数百万ドルの現金を送り、船舶を破壊するミサイルなどの武器を倉庫に保管した。自国の軍事予算を倍増させ、NATO予算を国民総生産の2パーセントに増やし、70億ドルを投じて自国の戦艦を「超大国の海軍」に作り直す準備を進めている。

 制御不能な自由市場価格の上昇の埋め合わせとして、政府はエネルギー企業に対して120億ドルの銀行融資保証を提示した。メディアはエネルギー企業の利益がかつてないほど大きかったと言っているのに、これは何だ!

 さらに何百万ドルもかけて、政府は「ロシアの侵略からバルト三国とポーランドを守る」ために、戦闘機2機と戦車を含む大量の兵器、そして千人の軍隊を送り込んだ。ロシアが、愚かにも、NATO加盟国一国にでも侵攻するようなことがあれば、他の30カ国のNATO加盟国は報復に出るだろう。そんなことを政治家や主要メディアは考えもしない。そのような状況になれば、一国が徹底的に潰されることになるだろう。

 これだけの無駄遣いをしながら、政府は八十代のバイキング女王マルグレーテ(Margrethe)の年俸を1250万ドルから1300万ドルに増やし、彼女の家族も同様に400万ドルに増やしている。さらに、女王は多くの城や荘園、自家用飛行機、国営船、そしてどこへ行くにも有給旅行を利用することができる。

 デンマークの分析家たちの中には、社会民主党が、より好戦的なブルジョア政党(Venstre)の上を行っているのは昔からだ、と考えている人もいる。その元首相アンデルス・フォグ・ラズムッセン(Anders Fogh Rasmussen)は、イラクが大規模な破壊兵器を持っているという嘘でイラクと戦争した後、NATOのトップに昇格した。彼の2期目の後、同じスカンジナビア諸国の首相であるノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)がその役職に就いたが、彼は平和的解決を見出すためのロシアの提案をすべて拒否したという栄誉に浴している。

 デンマークの旧植民地で、33万人が軍隊を持たずに平和に暮らしているアイスランドでさえ、ゼレンスキー版ウクライナを受け入れているのである。5月6日、ゼレンスキーはアイスランド議会で演説し、いつものように資金援助と軍事援助の強化を求めた。8月までにアイスランドは850万ドルの援助を送り、スロベニアからウクライナに軍備を輸送するための貨物船を送っている。

 アイスランドで唯一の反NATO政党は左翼緑の党で、その党首は現首相のカトリン・ヤコブスドッティル(Katrin Jakobsdóttir)である。ゼレンスキーの演説に続く賛辞の中で、彼女はこう言った:

 「ウクライナとアイスランドは バイキングの時代にまで遡る共通の歴史がある」。 どうやら彼女は、ノルウェーのバイキングが(多くの国の中から)アイルランドを侵略し、多くの人を殺害し、富を略奪し、その人々の一部を奴隷にし、一部を無人島であるアイスランドに航海させたことを忘れているか、受け入れているかのどちらかであるようだ。874年、彼らは現在レイキャヴィーク(Reykavik)となっている町を作り始めた。Could Icelanders Herald Path to Economic Equality with Prosperity and Peace? – CovertAction Magazine


19世紀に描かれたピーター・ラードシグの絵で、アイルランド人奴隷を指揮するインゴルフ・アルナーソン。

 長い間中立だったスカンジナビア諸国のスウェーデンとフィンランドについて、NATO加盟が進行中である。ヒステリックなプロパガンダが、ついに両国民の大多数を戦争屋NATOに加わることを説得させたからだ。フィンランドは第二次世界大戦中、3年間ロシア国内でドイツのナチスと肩を並べて戦った。ロシアと1300キロの国境を接しており、ロシアにとって大きな脅威となるだろう。

 欧米(そして日本と韓国)がロシア国民に大規模な制裁を加えているにもかかわらず、彼らの生活環境は極端には悪化していない。

 9月7日、ウラジオストク経済フォーラムで、ウラジーミル・プーチン大統領は楽観的な発言をした。以下はロイターの翻訳。 Putin speaks at forum in Russia’s Far East region (yahoo.com)

    「私たちは何も失っていないし、これからも失うことはない。私たちが得たものという点では、主な収穫は我々の主権の強化であると言えるでしょう。」

    「もちろん、世界でも国内でも、ある種の二極化が起こっていますが、これはプラスに作用するだけでしょう。不必要なもの、有害なもの、そして私たちの前進を妨げるものはすべて拒絶されるからです。」

    「ロシアは、この問題を平和的に解決する試みは何回もやってきました。しかし、今、私たちは潜んでいる敵対者(アメリカ)と同じように、報復的な対応をすることにしました。...私たちのすべての行動は、ドンバスに住む人々を支援することを目的としています。これは私たちの義務であり、最後までやり遂げる。これは最終的に、我が国を内部から強化し、その外交政策の立場を強化するものです。」

    「パンデミックに代わって、全世界を脅かすグローバルな課題が出現しています。欧米の、熱に浮かれたような一連の制裁措置のことです。恥知らずにも他国に行動モデルを強引に押し付け、主権を奪い、自分の意のままに従わせようとします。これは何も今に始まったことではありません。これは、西側諸国が何十年にもわたって、一丸となって追求してきた政策なのです。」

    「欧米諸国は、自分たちにだけ有利な旧世界秩序を維持しようと必死です。自分たちが勝手にでっち上げておいて、自分では守ろうとしない悪名高いルール、その時の状況に合わせて自分たちの都合のいいようにいつも変えてしまうルール。そんなルールをすべての人に強制しているのです。」

 「春には、多くの外国企業が、ロシアは他国よりも被害を受けるだろうと信じ込み、ロシアからの撤退を急ぎました。しかし、今、私たちは、ヨーロッパでの生産と雇用が次々と閉鎖されていく様を目の当たりにしています。その大きな理由の1つは、もちろんロシアとのビジネス関係の断絶です。EU当局が自ら、利用可能な原材料、エネルギー資源、そして販売市場を奪っているため、欧州企業の競争力が低下しているのです。」

 「(エネルギー燃料)契約と矛盾するような政治的決断はあるのでしょうか?そう、私たちはその契約をただ遂行しないというだけなのです。私たちの利益に反するものであれば、一切供給することはありません。ガスも、石油も、石炭も、暖房用オイルも、です。何ひとつ供給することはありません」。

 「ドイツでは、ノルドストリーム 2の稼働を要求するデモが行われています。私たちは、ドイツの消費者の要求を共有しています。明日にでも実行する準備はできている、ボタンを押すだけでいいのです。さて、私たちはノルドストリーム2に対して制裁を課してはいません。彼らがやったのです。それもアメリカからの圧力で。」



結論

 ウクライナは、3月にロシアが占拠したザポリージャ原子力発電所(ZAPP)を砲撃していた。それを叩くミサイルは、以前も今も、米国/NATOから供給されたものだ。同原発では、いくつかの小さな火災が起こり、それは消火された。プーチン大統領が国連の原子力監督機関IAESに調査を依頼してからかなり時間が経った9月9日の時点で、4基の原子炉のうち3基が閉鎖され、最後の1基もまもなく停止する見込み。その結果、ウクライナの電力の5分の1が断たれることになる。

 「砲撃により、原発を運営するスタッフが住む市内の電力インフラが破壊され、原子力施設にも脅威を与える完全な停電が発生している。砲撃が増加し、継続していることから、この原子力発電所へ外部から信頼できる電力を再確立する可能性はほとんどない」とIAESのラファエル・マリアーノ・グロッシ(Rafael Mariano Grossi)は、報告した。Ukraine: Shelling in nearby city putting Zaporizhzhya nuclear plant at risk | | UN News

 米/ウクライナは、そこを警備し、そこに住んでいるロシア人に責任があると主張している。発電所にいるロシア人たちが自殺するというのは、完全にねじ曲がった論理だ。もしザポリージャ原発が爆発すれば、大河ドニエプル川と近くの黒海が汚染される。ヨーロッパはもちろん、それ以外の地域も放射能で壊滅的に汚染されるだろう。

 「私たちは占拠地を管理し、ロシアの軍人がそこに配置されています。私たちは自分自身を撃っているというのですか、何なのですか?まったくナンセンスです」Putin speaks at forum in Russia’s Far East region (yahoo.com)

 国連は弱い。米国を非難する勇気もない。アントニオ・グテーレス事務総長は、現在の戦争は自殺行為であると警告しているが、誰が悪いのかに言及することはない。グテーレス事務総長は、「世界は核兵器による滅亡の一歩手前だ」と言えるだけ、と感じているのだ。

 新世界秩序には、いくつかの前向きな進展がある。世界のより多くの人々が、米国が病んでおり、道徳的に崩壊していることに気づいている。その多くの理由のうちの4つが以下:
① 毎日2件の大量殺人(4人以上死亡)がある、
② 学校での銃乱射事件が毎週起きている、
③ 人口は世界の4パーセントなのに囚人の数は世界の4分の1、
④ 最大の死因は処方薬と違法薬物/オピオイド。

 ラテンアメリカでは、最近の大統領選挙でいくつかの進歩的な社会主義政党が勝利している。ホンジュラス、チリ、ボリビア、ペルー。ボリビアは再び勝利した。ボリビアのエボ・モラレス元大統領は、ロシアの自衛権を支持し、NATOを排除するための世界的なキャンペーンを呼びかけている。Evo Morales supports Vladimir Putin and calls for mobilization against NATO — MercoPress

 6月のマドリッドサミットで、NATOに反対する25,000人強のデモ隊は、NATOの終焉を訴えた。元支配者層にいた政治家や諜報部員の何人かは、ウクライナへの武器供給を中止し、交渉を行うことを要求している。

ヤンキー、ゴー・ホーム!ヤンキーは自分の家から外へ出るな!
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市民の抗議運動には、価値付けられるものとそうでないものがある

<記事原文 寺島先生推薦>

Worthy and Unworthy Protest

筆者:マーガレット・キムバレー(Margaret Kimberley)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月30日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月8日


2021年、ロンドンでの「法案を潰せ」抗議活動に参加中の市民たち (Photo: Extinction Rebellion)

 抗議活動が祝福される国々もあれば、抗議活動が無視される国々もある。抗議活動は、人権として尊重されるべきものだが、政権転覆といったよこしまな動機のために利用されることもある。

 英国と北アイルランドは抗議活動を不法行為にする法律が成立する瀬戸際に置かれている。「治安秩序法」案が下院を通過し、貴族院で承認され、法律になる見通しだからだ。この法案は、「国の生活基盤施設を妨害」したり、建築や交通を遮る、いかなる抗議活動も禁じている。この法案により、警察権力は、「合理的な理由」なしで、捜査が可能になる。この法律では、「治安維持に対する深刻な行為を防止する命令 (SDPO) 」が認められている。この規則は意図的に曖昧に作られているので、違反する可能性さえあれば、警察は対象者を逮捕する権利が与えられ、最長2年間は次の抗議行動に参加できなくなる。この禁止に伴い、警察は、この法律に違反していると思われるものは誰に対しても、電子的に監視する権利が与えられる。これらの措置により、市民によるいかなる大規模な抗議活動を事実上阻止することができる。これらの条項に違反した者は、有罪が確定すれば、最大51週間、刑務所に収容される可能性がある。

 保守のトーリー党政権は、この治安秩序法を通過させる構えで、「野党」の労働党は、この件や、この件に類似する別の件に反対する様子はほとんど見せていない。もとは左翼だった労働党は、万一政権を奪還したとしても、この法案を廃案にするどころか、 それを厳しく批判することすらしないという様相を呈している。

 このことを念頭に置いた上で、英国は常に、イランや中国の抗議活動を支持する姿勢を示していることを見ることが肝要だ。英国の外務大臣は、イラン政府を.厳しく非難して、こう語っていた。「我が国の今のイラン政府に対する見方ははっきりしています。外国の関係者を非難するのはやめて、自国民が持つ懸念に責任を持ち、耳を傾けなさい、ということです」と。英国民が、自国政府が国民からの声に聞く耳を持たないと感じても、集団行動を起こすことで、そんな声を伝えることはもはや不可能になるのだ。刑務所に放り込まれる覚悟があれば別だが。

 明らかに、ある抗議活動は、他の抗議活動よりも価値があると見られているのだ。そしてそれらの抗議活動にどう対応するかは、完全に政治的な判断だ。

 ハイチでの大規模な抗議活動は、米国や新興財閥たちが、国民に押し付けた傀儡指導者たちに対するものだった。その米国や新興財閥たちは、カリブ海の石油を、自分たちの利益のために盗んでいた。それなのに、これらの抗議活動は、無視されるか、無法者による運動だと誤った捉えられ方をされている。ハイチ国民による抗議活動は常に、注意を払うべき価値のあるものだとしては扱われていない。

 欧州各国市民たちも、自国政府に対する抗議活動を行っている。ライプツィヒでは、ドイツ国民が「米国は国に帰れ」と叫び、77年間駐留している米軍に出ていくよう求めていた。フランスチェコ共和国では、何千もの人々が集まり、自国がNATO加盟国から抜けるよう要求していた。これらの抗議活動は、EUの各国政府が、米国とともに、ロシアに制裁を加えていることに繋がるものだ。この制裁により、何百万もの人々に、インフレとエネルギー不足が引き起こされているからだ。しかしこれらの抗議活動も、無視されるか、「極右勢力」だと決めつけられ、主張の正しさが否定されている。

 このような抗議活動者たちが、米国でほとんど注目されていない理由は単純だ。これらの抗議活動が、ワシントンの政策と相容れないものだからだ。

 市民に抗議する権利があることは、国際法で認められている。しかし米国や米国の友好諸国から出される声明は、政府の干渉により常に毒されている。イラン国民は、警察に留置された一人の若い女性の死亡に対して政府に抗議活動を起こしたが、米国は、警察が年間1000人の市民を殺害することを許可している。さらに米国には、イランの内政に干渉してきた長い歴史がある。多くの政治家や世論形成者は、そのことはイラン政府の政権転覆を狙ったものであったと公言している。この同じ手口が、中国でも繰り返された。中国で起こったゼロコロナ政策に対する抗議活動は、中国共産党や中国の政治体制全般に対する抗議活動であるとされたのだ。

米国市民や欧州市民がすべき最善の行為は、まず自国の政策や政治を見直すことだ。衝動に駆られて、人権問題複合体*を後追いし、間違った結論を出してはいけない。そんなことをすれば、自国政府の邪悪な目的に手を貸すことになるだけだ。
 *「軍産複合体」をまねた造語。様々な人権の擁護のために活動している組織の集合体。

 我が国(米国)の市民たちは、世界最大の刑務所体制のもとで生活している。さらに健康福祉体制も先進国と見られている国の中で最悪だ。賃金は低く、セーフティ・ネット(困窮者緊急救済保証)は意図的にビリビリの穴だらけにされている。学生の学費の借金や、医療費の借金が何千ドルにもなる危険がある国に住む国民が、自分たちと同様の酷い状況下で生活していない他国民よりも自由であると、どうして言えるのだろうか?

 米国の例外主義は、強力な麻薬であり、他のことでは分別のあるふるまいができる人でも、この件に関しては、自分たちはよい暮らしをしていると思わされ、世界各国の人々は、自分たちが守ってあげないといけない存在である、と思わされてしまうのだ。米国の大統領が選挙に勝ち、大統領府に入れるのは、国民が何を必要としているかについて、嘘をついているからだ。米国大統領は大統領府に入るやいなや突然、自分の手は縛られているから、選挙運動のときにした公約はどれもを果たせなくなった、と宣言し出すのだ。

 こんな二枚舌を通用させるのに必要なことは、他の国々を悪い国であると描くことだ。 そうすることで、政府は意図的に人々の意志に障害を与え、人々は残りの人類に対して強力な権利を有する陣営に与するよう説得される。もちろん、政府は人々に自分たちが政権転覆という夢にほだされている事実や、世界中の人々の意志を弱体化させる方策を模索し続けているとは伝えない。その一方で、自分たちは、慈悲深いという印象を与えようとする。

 米国民も欧州市民も、人権問題が心配なら、まずは自国の人権問題を見つめることから始めないといけないことを悟るべきだ。そうすれば、他の国々の人々の苦境について、いつ意見を述べればいいかが分かるだろうし、自分たちが他国にしか存在しないと思っている権威主義的な政権のもとで自分たちも暮らしている事実におそらく気がつくはずだ。

 このような政治的判断が下されるのは、抗議活動の件だけではない。英国メディアは今、一体となって怒りを示している。それはBBCの記者が逮捕され、短期間拘束されたからだ。中国の上海で、抗議活動を取材中のことだった。もちろん、記者が罰を受けることを恐れることなく、仕事ができるというのは当然のことだが、その英国自身は、米国の要請を受けて、記者のジュリアン・アサンジを未だに投獄している。

 米国・EU・NATOが、世界全体を支配しようとし続ける限り、世の中の風潮は、「偽善」であり続けるだろう。ハイチやフランスやドイツやイランの人々は皆、抗議活動が可能であるべきだし、主権を求める要求は尊重されるべきだ。 彼らが、自分たちが求めるような暮らしを送れていないとしたら、それは米国のせいだ。彼らから権利を奪った張本人として最もありえそうなのは米国だからだ。
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ロシアは冬の攻撃を仕掛けなくとも戦争に勝てそうだ

<記事原文 寺島先生推薦>

It Seems Russia Won’t Require a Winter Offensive to Win the War

筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)

2022年11月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月8日

 ムーン・オブ・アラバマは、ウクライナでの紛争を伝える情報源として信頼できるものであることを証明した。23日に投稿した記事からすると、ロシア政府やロシア軍の一部が、ついに自国が戦争中であることに気づいたようだ。その理由は、以下のリンク先を読めば分かるだろう。https://www.moonofalabama.org/2022/11/ukraine-lights-out-no-water-and-soon-no-heat-.html

 ここ8ヶ月間、クレムリンの政策は、ウクライナを攻撃から守ろうという意図のあるものだった。そうすることで、ウクライナによるロシア軍に対する戦争の遂行を可能にしてきたのだ。しかしそのような政策はもう終わりを迎えたようだ。 生活の基盤施設である、ウクライナの電力と交通と水が止められつつある。ウクライナの国家機能能力に対するロシアの真の攻撃が次第に激化しているのだ。その結果、損害がさらに広範囲に渡り、さらに深刻になっている。ただ、ロシアは、西側陣営とその操り人形であるウクライナ政府が正気を取り戻してくれれば、全てを破壊してしまうつもりはないにように思える。

 言うまでもなく、西側の愚かなメディアは、本当の状況は報じない。西側の御用メディアは、喧伝省さながら、ロシアが負けるという絵物語を描いてきた。 ただ、西側メディアで誰が一番の嘘つきかを決めるのは困難だろう。というのも候補者が掃いて捨てるほどいるからだ。しかし、英国のテレグラフ紙のチャールズ・ムーアは、その先頭を走っている。彼は最もとんでもない記事を書いているからだ。例えばこんな記事だ。「ウラジミール・プーチンの唯一の望みは、西側を恐れさせて、ウクライナの勝利を交渉の条件から取り除くことだ」https://www.telegraph.co.uk/news/2022/11/18/vladimir-putins-hope-now-terrify-west-negotiating-away-ukraines/ 。さらにテレグラフ紙は、こんな記事まで出している。「ウクライナはクリスマスまでにクリミアまで到達する可能性がある」https://www.telegraph.co.uk/world-news/2022/11/19/ukraine-news-russia-war-latest-putin-missiles-severodonetsk/?li_source=LI&li_medium=liftigniter-rhr
 
 米国のいわゆる「ロシア専門家」たちも同じような妄想を広めている。

 その結果、西側諸国の市民たちは完全に偽りの現状を見せられている。しかしロシアなら核兵器を使わなくとも、一日でウクライナを破壊できるだろう。クレムリンが制限をかけている(こんな制限は、私から見れば戦略的な大失態で、この戦争に西側が加担し、戦争の規模を広げることを可能にすることにしかなっていないのだが)のは、ウクライナについては無数の正当な理由があるからだ。ウクライナ領土も、ウクライナ国民も、何世紀もの間ずっと、ロシアの一部だった。多くの人がお互いの国境を越えて結婚してきた。ウクライナ国民のほとんどは、2014年の米国による政権転覆からずっとウクライナを支配しているネオナチ勢力に好感をもっていない。その政権下で、ウクライナ国民はずっと苦しめられてきたからだ。クレムリンは、国境を接するウクライナがジリ貧に苦しむ廃墟となることは望んでいない。ただクレムリンは、ウクライナの生活基盤施設の復旧の責任を取りたいとは思っていない。

 私には信じられないことなのだが、西側の「専門家」や「記者」たちが、非常に愚かで、堕落していて、自分の名前を冠して紛争についての馬鹿げた記事を書いている。こんな行為は完全に無意味だし、ロシアは打倒できる、とか「ウクライナはクリスマスまでにクリミアに到達できる」などという間違った考えを広めることにしかならない。

 こんな馬鹿げた喧伝がうまくいってしまえば、米/NATO連合が地上軍を派遣することになりかねない。そうなれば、その先に待ち受けるのは、第3次世界大戦だ。

 ワシントン側から見れば、ウクライナが破壊されればされるほど都合がいい。ついにプーチンが中途半端なやり方をやめ、本気で戦争を起こす気になれば、この戦争は即座に終わるだろう。もしワシントンが、ウクライナが破壊されるまでゼレンスキーが降伏するのを阻止できれば、ロシアはウクライナの再建に経済的・財政的な負担を強いられることになり、ワシントンは利益を得られる。ワシントン側から見れば、ロシアにとって問題が多くあればあるほど都合がいいのだ。そして、ウクライナ国民が払う犠牲などどうでもいいことだ。

 いま私たちの目前で繰り広げられていることは、ワシントンやNATO加盟各国当局による、とてつもなく大きな非人道的行為だ。全く不条理なことは、西側によるその非人道的行為の犠牲となるのがウクライナ国民であって、ワシントンや西側諸国政府ではないことだ。
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ウクライナ。明かりは消え、水もない。間もなく熱源もなくなる

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine - Lights Out, No Water And Soon No Heat


出典:INTERNATIONALIST360°

2022年11月24日

著者:ムーン・オブ・アラバマ(Moon Of Alabama)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月6日



 今日(11月24日)の朝方、ロシア軍がウクライナの電力網を切断した。 

 これまでは必要な電力の5割程度の電力分配量を押さえ込む攻撃に制限されていた。そのため、1日に数時間行われる計画停電のおかげで、ウクライナのほとんどの地域で、一日に数時間は電気の供給ができていた。しかし今日の攻撃はずっと大きな問題を生じさせた。電力の供給網が攻撃されただけではなく、ウクライナの電力発電施設と送電網を繋ぐ装置も攻撃を受けたからだ。15の原子炉を持つウクライナ国内の4つの原子力発電所が、今停止状態になっている。

 キエフもそれ以外のほとんどのウクライナ国内の都市も、もはや電気がない状態だ。

 国内電力の20%をウクライナからの輸入に頼っている、モルドバも同様に影響を受けている。ウクライナの電力網が遮断されたので、モルドバ国内に一つしかない火力発電所の稼働も止まってしまった。電力網は復旧されるだろうが、その過程は非常に困難なものになるだろう。

 欧州からウクライナに輸出される電力は限られてはいて、まだ輸入できるかもしれないが、その電力が使えるのは、ウクライナの西部だけになるだろう。

 今日の攻撃が起こる以前に、ワシントン・ポスト紙は、電力網の修復は難しい、と報じていた。当ブログMoon of Alabamaが以前説明したとおり、ロシアは、330キロボルト規模の送電網とつながっている複数の変電所を攻撃していw。これらの変電所の修復は難しい:

 「ウクライナ国内のエネルギー体系にどれくらい損害が与えられてきたかが、最近明らかになっている中、ウクライナ当局と西側諸国政府当局は警告を発し始めているが、自国には限られた資源しかないことも実感しつつある。ウクライナ国内にあるソ連時代の発電所の修復は、すぐに、容易にはできないものだ。最も激しい攻撃を受けたいくつかの都市においては、当局が打てる手段が、住民に避難を呼びかけることしかないところもある。これはウクライナで、経済崩壊の危機や、近隣の欧州諸国に難民があふれ出す危険が高まっているということだ。...

 ウクライナのデニス・シュミハリ首相によれば、ウクライナ国内のエネルギー基盤の約半分が、爆撃を受けて、「故障」してる、という...

 もう何週間も、ロシアのミサイルはウクライナの送電系統の複数の主要施設を標的にしてきた。そのため、必要不可欠な複数の変電所が破壊されている。その変電所がなければ、各家庭や、会社や政府の役所や学校や病院などの生活に不可欠な施設に電力を供給できなくなる。...

 火曜日(11月22日)の記者会見において、· 国営電力会社ウクルエネルゴ(Ukrenergo )のウォロディミル・クドリツキー代表は、この電力体系の損害を「とてつもない規模だ」としていた...

 同代表によれば、ロシア側が主に標的にしたのは、発電所からの電力を送電する役割をもつ、電力供給の要となる各地の変電所だという。これらの変電所は、主に単巻変圧器を使用しておいるとのことだ。この単巻変圧器とは、「高い技術が使われ、費用も高い装置」であるため、交換が難しい。

 ワシントン当局内で流れている、ウクライナ最大の民間エネルギー会社のDTEK社が出した「喫緊に必要なもの」一覧表には、回路遮断器や軸受筒やトランス油と並んで「数10台の変圧機」があげられている。

 しかしその変圧器が、単巻変圧器(クドリツキー代表の言葉を借りれば、変電所の「要」)なのだ。それが、ウクライナが今一番必要としているもの一覧の最上位にあげられている。それは、その変圧器がウクライナの電力供給機能を維持するために非常に重要なものだからだ。」

 ウクライナ側は、見つけることができるすべての単巻変圧器を買い上げようとしていて、はるか韓国にまで購入しにいっているが、それでもまだ、もっと多くの変圧器を注文しなければ、再設置ができない状況だ:

 「私たちは世界中にあるものすべてを集めようとしていますし、さらに注文を増やそうとしています」と、ウクライナのエネルギー省のオレナ・ゼレカリ顧問は語っている。

 電力網を修復しようという試みは、ロシアが攻撃を続ける限り意味がない。そしてこれらの攻撃を止めるには、政治的な解決法を取ることが必要となる。ウクライナは降参し、ロシアと何らかの同意点を見いださねばならなくなるだろう。ロシアは、ウクライナが所有する天然ガスの原産地にも攻撃している。:

 先週ロシアは、攻撃対象を広げた。ウクライナ国営エネルギー会社ナフトガス社のオレクシー・チェルニショフ最高責任者は、マスコミからのインタビューで、「大規模なミサイル攻撃」がハルキウ地方とポルタバ地方の10カ所のガス製造施設に着弾した。その中には、最大の生産地であり採掘地域であるシェベリンカ地区も含まれている。

 「もちろん、復旧に向けて私たちは最善を尽くしていますが、時間と資金と材料がかかることになります」、とチェルニショフ最高責任者は語っている。さらに付け加えて、「何よりも大事なのは時間です。冬になったのですから」と語った。

 天然ガスの供給が標的にされたことは、決定的な攻撃だった、とビクトリア・ヴォイティツカ氏は述べている。彼女は、元国会議員で、現在はウクライナに必要な設備を入手する市民団体で活動中だ。同氏によれば、モスクワ当局によりガスの体系が破壊されれば、ウクライナ中の諸都市や村は、「居住不可能になる」可能性がある、と述べている。


 ロシアのガス供給会社であるガスプロム社の発表によると、同社はウクライナ経由で欧州の顧客たちに供給する天然ガスの量を減らす予定であるとのことだ。そしてその理由は、ウクライナがその天然ガスを盗んでいるからだ、という。:

 ガスプロム社によると、モルドバの会社との契約に基づいて、モルドバに送られる予定だった天然ガスの一部が、ウクライナにより奪われていることに気づいたという。天然ガスの供給量と、モルドバに届いた量の計算が合わないことが続けば、11月28日の朝から、ガスプロム社はウクライナを経由して送る天然ガスの量を減らす、とロシアのこの巨大ガス会社が伝えたことを、ロシアのニュース会社タス通信が報じている。


 電気がなければ、諸都市の水道分配網で水を送れなくなる。水がなければ、トイレも使えない。公衆衛生がひどい状況になるだろう。ウクライナ国内のインターネット環境も低下している。



 人間が住めなくなっている国が、戦争を仕掛けて、勝つ見込みなどほとんどないだろう。交通機関もない。電気もない。熱源もない。伝達手段もない。とにかく何もかもが本当に困難になる。

 そのため、難民が波のように生じ、欧州各国は、ウクライナにロシアと和平交渉を持つようますます圧力をかけることになるだろう。その条件はウクライナにとって厳しいものになるだろうが、ほかにこの混乱状況から抜け出す術はない。

 先週、ウクライナによる前線での攻撃は、驚くほどに効果がなかった。大規模な部隊を配置することはもはや不可能だ。現在攻撃を行っている部隊のほとんどは、中隊規模かそれよりも小さな規模しかない。昨日公表された以下の12分間の動画には、そのような攻撃をドローンから撮影した様子が映っている。



 武装化された歩兵用車両の上に座っていた20名程度のウクライナ兵たちは、要塞化された地域に進み、人がいない一つ目の塹壕に入る。そこから、二つ目の塹壕に攻撃しようとする。そこは、数名のロシア兵が抑えている。

 ウクライナ兵たちの装備は非常に精錬されたもののように見え、ヘルメットや軍事用ベストも着用している。しかしこれらの兵たちには援軍がない。

 ロシア軍の歩兵団が反撃する。この歩兵団は、しっかりと狙いを定めている、追撃砲や迫撃砲や戦車や空爆を行う部隊により支援されている。ロシア側はドローン機も飛ばしており、全体像を掴むことができている。ウクライナ側の諸部隊が所持しているのは、ライフル銃と、数個の手榴弾だけだ。攻撃をしている小隊が破壊された後、ロシア側の追撃攻撃が行われ、ロシア軍の出撃地点であった産業地域も破壊された。この作戦は完全な惨劇に終わった。この作戦に関わっていたウクライナ兵は、みな戦死したようだ。ロシア側の被害者はゼロか、あっても数名だった。



 毎日このような攻撃が数回行われているが、成功することはほんのわずかだ。

 以下は「クロバー・リスト(ロシア軍による今日の状況報告)」の記載内容だ:

 ドネツク戦線では、ロシア軍の諸部隊が激しい攻撃を継続した。60人以上のウクライナ兵と、5機の戦闘車両が失われた。南ドネツク戦線では、ロシア軍による砲撃や激しい攻撃により、AFU(ウクライナ軍)の攻撃を撃退し、小隊の戦術部隊一隊をパヴローフカまで押し戻した。さらに、火を使った先制攻撃を行った結果、ウグレダルから進撃していた敵の予備軍を殲滅した。

 ウクライナ軍の破壊工作団と偵察団は、(ザポリージャ地方の)ノヴォダロフカ付近で殲滅された。

 敵側の損失は、ウクライナ兵40名以上の死傷者、3台の武装車両、1台の汎用軽装甲牽引車、4台のピックアップトラックだった。

 ウクライナ軍の機甲化歩兵小隊は、クピャンスク戦線においては、(ルガンスク人民共和国内の)ノヴォシェロフスカエ付近で、攻撃を仕掛けようとしていたが、砲火と重火炎放射器武器により妨害された。

 ロシアによる砲撃の結果、30人以上のウクライナ兵と2台の自動車と一機の追撃砲が失われた。

 クラスニー・リマン戦線では、ウクライナ軍の戦術小隊が移動して、(ルガンスク人民共和国内の)チェルヴォノポフフカを攻撃しようとしたが、火炎による先制攻撃によリ中断された。

 20人以下のウクライナ兵と3人の追撃法操縦者と2台の追撃砲が失われた。

 作戦戦術隊及び陸軍航空隊と砲兵及びミサイル部隊は、(ザポリージャ地方の)ヴォルニャンスク付近に配置されていたウクライナ軍の第 128 山岳突撃旅団の指揮所と、射撃場に配置されていた72隊の砲兵隊と、144の地区に配置されていた兵と武器を無力化した。


 ここに記載があるだけでも、少なくとも150人のウクライナ兵が戦死している。

 ウクライナ側の司令官が、なぜ未だにこんな意味のない攻撃を続けているのか、私には理解不能だ。軍事的に見れば、とうの前に、防御を主にした戦術に変えるべきだったのは明らかだ。そうすれば、ウクライナ国民の命を救い、ロシア軍が攻撃する際に、もっと損害を与えられるだろうに。

 重大な法的拘束力を持たない欧州議会が今日、なんの強制力もない決議をあげた。その中身は、ロシアは「テロ行為に資金を出す国だ」と宣告するものだった。ロシア国民の中には、この宣言に対して憤怒を示したものもいた。 その数時間後、欧州議会は「精巧な」サイバー攻撃を受けた。

 欧州議会のウェブサイトが、ハッカーによる攻撃を受けたと、当局が水曜日(11月23日)に発表したのだ。

 欧州議会のロベルタ・メツォラ議長は、この攻撃は、「精巧なもの」であると述べた。そして親露勢力が犯行声明を出している。

 同議長は、このサイバー攻撃はEU議会議員たちが、ロシアを、ウクライナでの紛争に関わるテロ行為を「支援する国家」であると宣告する議案を通過させたことを受けたものである、と語った。「この攻撃に対する私の返答は、Slava Ukraini(ウクライナに栄光あれ)です」とメツォラ議長は述べている。


 この的外れの頭の固いマルタ出身の御仁には、まだまだ学んでいただかないといけないことが沢山あるようだ。
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中国攻撃の偽情報はどのように捏造されるのか―新疆ウイグル自治区での「大量虐殺」「文化的虐殺」「強制収容所」「脱過激化教育」の真相

<記事原文 寺島先生推薦>
Manufacturing Consent for the Containment and Encirclement of China
中国を封じ込め包囲するための合意の捏造

筆者:Carlos Martinez(カルロス・マルティネス)

出典:Internationalist 360°

2022年10月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月3日



 カルロス・マルティネスによる以下の詳細な記事は、帝国主義勢力が中国に対して行っている、とどまることなきプロパガンダ(デマ宣伝)戦争について調べている。カルロスは、「プロパガンダ戦争も戦争プロパガンダになり得る」、さらに「反中国の中傷の奔流は、米国主導の新冷戦に対する幅広い国民の合意を生み出すという明確な目的を持っている」と指摘している。

 カルロスは、ハーマンとチョムスキーの古典的な著書『合意の捏造』で説明されているプロパガンダの方法が、最新の情報伝達技術を使用してどのように更新および強化されているか、そして特に新疆ウイグル自治区での人権侵害の申し立てに関連して、それが今の中国に対してどのように適用されているのかを示している。カルロスは、この話題に関して最も頻繁に投げられる誹謗中傷を紹介し、その正体を詳細に暴いている。

 著者は、「世界の労働者階級と帝国主義に反対するすべての人々の中の連帯の絆を断ち切る」役目を果たしている、このプロパガンダ活動に、すべての進歩主義者が断固として反対し、その本質を暴露しなければならないと結論づけている。
―社会主義中国の友


 注意しないと、新聞はあなたを、抑圧されている人々を憎み、抑圧している人々を愛するように導くでしょう。(マルコムX)

 欧米マスコミは、中国に対して組織的で猛烈なプロパガンダ戦争を繰り広げている。西側の世論の法廷では、中国は一連の恐ろしい犯罪で非難されているのだ。たとえば、新疆ウイグル自治区のウイグル人イスラム教徒に対する大量虐殺を行っている。香港の民主主義を一掃する。南シナ海を軍事化する。台湾に植民地支配を課そうとしている。アフリカで土地収奪を実行する。チベット人と内モンゴル人が彼らの言語を話すのを妨げる。民主主義世界の善良な人々をスパイする。まだまだあるが、そういった犯罪である。

 オーストラリアの学者ローランド・ボーアは、これらの非難を次のように特徴づけている。「残虐行為のプロパガンダ:一般の人々の消費行動に特定の嘘のイメージを植え付けようとするときに使う方法を、古参の共産主義者や、さらには西洋の路線に従わない人に反対する世論醸成をする際にも用いる」 と。ボーアは、このプロパガンダは、中国を残忍な権威主義的な暗黒郷(ディストピア)として印象づけるのに役立つが、「実際に中国に住んでいる人どころか、実際に中国でいくらかの時間を過ごすだけの人にとってもフィクション(虚構)にしかなり得ない」と述べている。[1]

 なぜ中国がこの種の手の込んだ偽情報活動にさらされるのかを理解するのは難しくない。このメディア攻勢は、中国革命を逆転させ、中国社会主義を転覆させ、中国を弱体化させ、国際問題における中国の役割を縮小し、その結果、多極化と覇権主義のない未来への世界的な軌道を弱体化させようとする帝国主義世界の進行中の試みの一部だからだ。ジャーナリストの陳偉華(チェン・ウェイファ)は指摘した。「米国によるプロパガンダ戦争が激化する理由は明らかだ。ワシントンは、急成長する中国を、米国が世界において維持している優位性を脅かす存在と見なしているからだ」と。さらに、「異なる政治体制を持つ国の成功は、ワシントンの政治家たちには受け入れられない」とも。[2]

 プロパガンダ戦争は戦争プロパガンダにもなり得る。この場合、問題となる戦争は、ますます激化する米国主導の新冷戦である。[3]中国に対するさまざまな誹謗中傷、特に新疆ウイグル自治区での大量虐殺などという最もばかげた非難は、イラクの大量破壊兵器に関する2003年の主張、またはムアンマル・カダフィの下のリビア国家がベンガジでの虐殺を準備していたという2011年の主張と多くの共通点がある。これらの物語は、帝国主義の外交政策を支持する世論を起こさせるために特別に構築されたものだ。その外交政策とは、たとえば、「イラクの人々に対して大量虐殺戦争を遂行する」「石器時代状態にするまでリビアを爆撃する」。そして今日では、「中華人民共和国に対する経済的強制、政治的転覆、軍事的脅威の幅広い活動を実施する」といったものである。

 汎アフリカ主義者でガーナの初代大統領であったクワメ・エンクルマは、彼の著書『新植民地主義、帝国主義の最終段階』の中で、西側諸国が冷戦中に、どのように「陰謀、作戦、中傷活動の形でのイデオロギー的および文化的武器」を用いて、社会主義国とアフリカ、アジア、ラテンアメリカの新たに解放された領土を弱体化させたか」を論じ、さらに「ハリウッドがフィクション映画を作っている間に、巨大な独占報道機関は、洒落た巧妙で高価な雑誌を発行するのに併せて、どんな内容を「ニュース」と呼ばれる報道に選択するかに注意を払っている。...反解放プロパガンダの洪水が西側諸国の首都から発せられて、中国、ベトナム、インドネシア、アルジェリア、ガーナ、そして自由への独自の道を切り拓こうとするすべての国に向けられる」と述べている。[4]

 そのような「陰謀、策略、誹謗中傷の活動」の仕組みは、エンクルマの時代からほとんど変わっていない。英国のメディア研究者であるデビッド・クロムウェルとデビッド・エドワーズは、プロパガンダ・ブリッツ(偽宣伝の集中電撃攻撃)の概念である「最小限の時間で最大の損害を与えることを目的とした動きの速い攻撃」について調べている。これらのメディアによる攻撃は「高い感情的強度と道徳的な怒りをもって伝達され」、重要なのは、専門家、学者、ジャーナリスト、政治家たちがそのプロパガンダに合意している姿を世間に知らしめることである。[5]こうして生まれた合意は、「主張が真実であることを誰もが知っているという印象を生み出す」。[6] その際、右翼の信奉者だけでなく、著名な左派の評論家からも合意が得られた場合に最も強力になる。「有名人の進歩的なジャーナリスト―原則的な立場や派手な靴下とネクタイで有名な人々―までもが非難に加わった場合は、その主張には何かがあるに違いないということになる。そしてこの時点で、それを疑うことは難しくなる。」

 中国に関して言えば、そのような評論家の多くは喜んで仕事を引き受ける。例えば、英国のコラム執筆者、オーウェン・ジョーンズはガーディアン紙に寄稿し、「中国政権の否定にもかかわらず、新疆ウイグル自治区のウイグル人に対する残忍な作戦は現実のものである」と主張する。[7]  ジョーンズは、自身の主張の裏付けとして、他の2件のガーディアン紙の記事を関連記事としているが、この2件の記事は、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が提供する研究に依存している。その研究所はオーストラリア政府、米国政府、およびさまざまな多国籍武器メーカー(詳しい説明は後で)が資金提供するタカ派の反中国シンクタンクである。つまり、この自称社会主義者は、ワシントンで最も極端な中国のタカ派と同じ情報源に依存しているのだ。それでも、彼が、ポール・メイソンのようなNATOと連携した評論家とともに、反中国の中傷を公に支持したことは、この情報が完全に信頼できるという印象を作り出すのに役立っている。[8]その中傷の印象は中国の実態とは異なった、いわば、もうひとつの、極右勢力が繰り出す根拠のない陰謀説となる。

 さまざまな反中国の誹謗中傷は明らかに証拠の裏付けを欠いているが、それでも強力で説得力があり、洗練されている。強硬な反動派や反共派に、中国に対して強硬な態度を取るよう説得するのに大きな技能は必要ないが、プロパガンダ戦争は、進歩的な考えや感情を積極的に利用するように注意深く作成されている。大量虐殺の告発は特に説得力がある。帝国主義の政治家やジャーナリストは、中国が新疆ウイグル自治区のウイグル人イスラム教徒に対して大量虐殺を行ったと非難することにより、イスラム教徒や少数民族の正当な同情心を掻き立て、大量虐殺に対して正当な憤慨を呼び起こすことができる。そのときには、一種の感情的知性のようなものが生まれるので、その中では大量虐殺の告発から中国を守ろうとすることは、ホロコースト否定論者であることと同等になってしまう。したがって、中国と連帯することは、心理的、そしておそらく物質的および肉体的に多くの犠牲を払うことになるのだ。

合意を捏造すること

 エドワード・ハーマンとノーム・チョムスキーの1988年の著作『合意の捏造:マスメディアの政治経済学』は、いわゆる報道の自由が資本主義世界でどのように機能するかについての権威ある不可欠な分析であり続けている。特に、この本は、支配階級の経済的利益とマスメディアを介して伝達される思想との関係を探っている。「メディアは、自分たちを支配し、資金を提供する強力な社会的利益に奉仕し、そのために宣伝する。これらの利益の代表者は、彼らが前進させたい重要な議題と原則を持っており、メディア政策を形作り、制約するのに適した立場にある。」[9]

 ハーマンとチョムスキーは、プロパガンダのモデルを考え出した。そのモデルでは、非公式だが定着した一連の「濾過装置(フィルター)」が、メディア消費者が何を読み、見て、聞くかを決定する。これらのフィルターには、次のものが含まれる。

 • 支配的なマスメディア企業の所有者構造。メディア所有者は資本家階級の一員であり、彼らは一貫してその階級の利益に特権を与えている。

 • 広告収入への依存。ほとんどのメディア事業が生き残れる術は、費用を上回る利益を得るために、大企業からの広告を掲載することしかない。よってそれらの企業の政治的見解に敏感でなければならない。

 • 「政府、企業、およびこれらの主要な情報源や権力の代理人によって資金提供され承認された“専門家”によって提供される」情報への依存。[10] この二人の著者は、例えば、ペンタゴンは「何千人もの職員が関与する広報サービスを行い、毎年数億ドルも費やして反対する個人やグループの情報公開源だけでなく、そのようなグループ全体が拡大しないようにしている」と述べている。[11]

 • 権力者の価値観に適合しないニュース記事に対応する「高射砲」または否定的に反応する仕組み。これは、「手紙、電報、電話、請願、訴訟、議会での演説や法案、その他の苦情、脅迫、懲罰的措置の形をとる可能性がある」。[12]インターネット、特にソーシャルメディアの出現により、「高射砲」の方法は倍増し、一般の人々が消費する情報を条件づける重要な手段を提供している。

 • 「国家の宗教と統制機構」として機能する反共産主義という理論的枠組みの浸透。ここで著者は特に米国に言及しているが、その点は西側の他の場所に当てはまる。
 
 ハーマンとチョムスキーのプロパガンダのモデルによると、「ニュースの原材料は連続したフィルターを通過しなければならず、浄化された残留物だけが印刷に適したものになる」。[13]結果として得られるニュース出力は、「国内社会と国家を支配する特権グループの経済的、社会的、政治的議題を教え込み、擁護する」のに役立つ。[14]

 中国に関する西側の主流メディア報道は、このモデルに快適に適合する。フォックス・ニュースからガーディアン紙、BBCからワシントン・ポスト紙まで、ほぼ例外なく、主要なメディア活動は、一貫して中国に敵対的な物語を提示している。たとえば、2019年の香港での抗議運動に関連して、西側の報道機関は、香港の警察と当局に対する一方的な非難と、「民主化」抗議者への熱烈な支援において共通していた。国会議事堂への襲撃、バスへの攻撃、ガソリン爆弾の投擲(とうてき)、建物の破壊、一般市民の威嚇など、抗議者による暴力は、完全に無視されるか、少数の少数派の行動として帳消しにされたが、一方で香港地方政府は並外れた規模の精査と非難を受けた。ガーディアン紙の社説は、「中国は香港の自由を維持するという約束に違反して、香港の抵抗の断片を打ち砕いている」とまで述べた。[15]そしてその主張を支持するために、大真面目に、香港で最後の(彼の前任者のように選出されていない)英国知事であるクリス・パッテンを引用している。抗議に対する香港警察の信じられないほど抑制された対応と、2020年の夏に米国警察がブラック・ライヴズ・マター(黒人の命が大切)の抗議行動に衝撃的な暴力的弾圧を加えたことを対比することは、著者には明らかに思い浮かばなかったようだ。その弾圧では米国警察によって何人もの犠牲者が出たが、一方で香港の警察の手による死者は間違いなくゼロだったのだ。[16]

 西側の主要な報道機関はどこも、抗議者の暴力を真剣に調査しなかった。また、抗議行動の指導者たちと最も反動的な米国の政治家の何人かとの広範なつながりについても言及しなかった。[17]また、彼らは運動に財政的支援を提供している全米民主主義基金の役割を調査することも選択しなかった。[18] 彼らは抗議行動を支持しなかった何百万人もの香港住民がいたことを臆面もなく無視した。「暴徒や群衆が至る所で公共施設を破壊し、鉄道網などを麻痺させているが、彼らは西側諸国からは“自由の闘士”と呼ばれている」。[19]

 逆に、中国についての前向きな話、例えば貧困緩和[20] 、再生可能エネルギーの分野における進歩[21] 、Covid-19パンデミックの抑制[22] に関連するものなどは無視されるか、魔法のように反中国の物語に変換される。中国が極度の貧困を撲滅するという目標に成功したという発表は、「仰々しく大げさに配信されたが、詳細はほとんど明らかにされなかった」とされ、計画全体は、習近平による「毛沢東以来の国内で最も強力な指導者としての地位を固めるための」狡猾な戦略の一環として無価値なものだとされた。[23] 中国の精力的なゼロ・コロナ戦略の結果として、文字どおり何百万人もの命が救われたが、ニューヨークタイムズ紙にかかると、中国共産党は単に「ウイルスの封じ込めにおける中国の成功を利用して、上意下達の統治形態が自由民主主義の形態よりも優れていることを証明しようとしている」となる。また、何百万人もの命を救うという政策は当然のことながら「依然として強力な国民の支持を享受している」ことを認めているが、これは中国人が「情報の入手が制限されており、当局に説明責任を負わせるための手段がないため」というおなじみの比喩に帰着している。[24]

 古参の政治学者マイケル・パレンティは、冷戦中の社会主義世界に対する西側のプロパガンダの不条理と、反共産主義のレンズを通しての屈折が「既存の共産主義社会に関するあらゆる情報を敵対的な証拠に変える」方法について『黒シャツと赤(Blackshirts and Reds)』に書いた。彼は次のように述べている。

 「ソビエトがある問題で交渉を拒否した場合、非妥協的で好戦的だとされた。譲歩する意思があるように見えた場合、これは私たちを警戒から外すための巧みな策略にすぎないとされた。武器の制限に反対すれば、自分たちの攻撃的な意図を示しているとされた。しかし、実際にソビエトがほとんどの兵器条約を支持したとき、卑劣で狡猾だからだとされた。ソ連の教会が空だった場合、これは宗教が抑圧されていることを示しているとされた。しかし、教会がいっぱいになれば、これは人々が政権の無神論的思想を拒否しているとされた。労働者がストライキを行った場合(そういうことはまれにあった)、労働者が集産主義制度から乖離している証拠だとされた。労働者がストライキをしなかったなら、脅迫され、自由を欠いていたからだとされた。消費財の不足は、経済システムの失敗だとされた。消費者への供給が改善すれば、指導者たちが人民に対する強固な支配を維持するために、反抗的な人々をなだめようとしているだけであるとされた。」[25]

 パレンティの観察は確かに中国に対する現代のメディアの統一見解と共鳴している。そのようなメディアの統一見解が偶然であると見ることは統計的に不可能であろう。それはまさに「国内社会と国家を支配する特権集団」(すなわち帝国主義支配階級)の現在の政治的議題を表している。それはまさに中国に対する新冷戦への合意の捏造を目的としている。

新疆ウイグル自治区

 新疆ウイグル自治区の主流メディア報道ほど、プロパガンダモデルが目立つところはない。中国が新疆ウイグル自治区で大量虐殺(または「文化的大量虐殺」)を犯しているという非難は頻繁に繰り返されてきて、西側の大部分でほぼ真実として受け入れられるほどになっている。この告発にはほとんど証拠がなかったが、この話は世界中のメディアに大騒ぎを巻き起こし、制裁の計画の拡大が打ち出され、さらには2022年2月の北京冬季オリンピックではさまざまな帝国主義国が「外交拒否」することになった。[26]さらに、それは洗練されたソーシャルメディア運動に支えられて、大衆の意識にフィルターをかけた。それはプロパガンダ集中的電撃攻撃の典型的な例になった。上記のように、そしてこれはエドワーズとクロムウェルの説明とも一致しているが、このプロパガンダ・ブリッツ(偽情報集中的電撃攻撃)は、企業メディアの保守・リベラル領域全体―フォックス・ニュースから[27]ニューヨーク・タイムズ、さらには[28]デイリー・メールから[29]ガーディアン紙[30] まで全てに貫かれている。

 ハーマンとチョムスキーのプロパガンダモデルは、そのような物語がどのように勢いを増すかを説明している。

 「有用な物語については、その過程は政府からの一連の情報漏出、記者会見、白書などから始まる...他の主要メディアがこの話を気に入れば、彼らは独自の立場で後追い取材し、その問題は親しみやすくなってすぐに報道価値のあるものとなる。記事がしっかりとした説得力のある文体で書かれ、マスメディアで批判や代替解釈の対象とならず、かつそこで権威者による支持が命じられている場合は、プロパガンダの主題は、実際の証拠がなくてもすぐに真実として確立される。ここでは、反対意見はさらに包括的に締めくくられる傾向がある。なぜなら、反対意見はすでに確立した一般的な信念と矛盾するからだ。このようにして、主題は深刻な反撃を恐れることがなくなり、その結果、さらに膨らんだ主張のためのさらなる機会が開かれてくる。」[31]

 マス・メディアは、帝国主義中枢の急進左翼の多くによって補完されている。人気のある進歩的な報道機関であるデモクラシー・ナウは、新疆ウイグル自治区に関連する、中国に対するあらゆるばかげた非難をオウム返しにしている。[32] 2021年、司会のジャコビンは、『ウイグル人との戦争:新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する中国の運動』の著者であるショーン・R・ロバーツに共感的なインタビューを行い、「ウイグル地域で現在見られるのは、1世紀前の世界の他の場所での文化的大量虐殺の過程によく似ているが、21世紀に現在利用可能なハイテク形態の抑圧の恩恵を受けている」と主張している。[33]一方、英国の「社会主義労働者」紙は、「最大100万人のウイグル人が収容所に閉じ込められている」と主張している。[34]やや皮肉なことだが、ノーム・チョムスキー自身も帝国主義のプロパガンダモデルと無縁ではない。2021年のポッドキャストエピソードで、新疆ウイグル自治区での中国の行動は「ひどい」そして「非常に抑圧的」であると述べ、「再教育キャンプを経験した人が百万人いる」という主張を繰り返している(以下で詳しく説明)。[35]

 一方、議会政治の分野では、右派と左派が中国に対する新冷戦を追求するために汚れた同盟を結成した。マイク・ポンペオなどの右翼原理主義者に加えて、進歩的な民主党下院議員イルハン・オマールも新疆ウイグル自治区に関してはタカ派である。彼は米国企業に対して、中国を非難するオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の報告書を調べ、彼らの会社がウイグル人の強制労働と関係していないことを確認するよう呼びかけている。オマールは、「いかなるアメリカ企業も、強制収容所の利用や、新疆ウイグル自治区の強制収容所で過ごした後に仕事のために移送されたウイグル人囚人から利益を得るべきではない」と述べた。[36]

中国は新疆ウイグル自治区の件で何を非難されているのか?

大量虐殺(ジェノサイド)


 中国のウイグル人に対する扱いに関連してなされたすべての主張の中で、最も深刻なのは、それが大量虐殺を行っているというものである。トランプ大統領の下での国務省の最後の行動の1つは、2021年1月に、中国政府が「新疆ウイグル自治区の北西部地域でウイグル人やその他の主にイスラム教徒の少数民族を大規模に抑圧して大量虐殺と人道に対する罪を犯している。その罪には収容所の使用や強制不妊手術を含む」と宣言することだった。[37]バイデン政権はこの中傷を倍増させ、2021年の年次人権報告書で、「新疆ウイグル自治区の主にイスラム教徒のウイグル人やその他の民族的および宗教的少数派集団に対して、この年に大量虐殺と人道に対する罪が発生した」と主張し、この大量虐殺の構成要素には「100万人以上の民間人の恣意的な投獄またはその他の身体的自由の深刻な剥奪;強制不妊手術、強制中絶、中国の避妊政策のより制限的な適用;強姦;恣意的に拘留された多数の人々の拷問;強制労働;そして、宗教や信仰の自由、表現の自由、移動の自由に対して厳しい制限を課すこと」が含まれると述べた。[38]

 カナダ議会下院(庶民院)はすぐにそれに追随した。[39]フランス国民議会も同様だった。[40] 欧州議会は、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒が「大量虐殺の深刻な危険に晒されている」と主張する、やや保守的な決議を採択した。[41]

 「大量虐殺」という用語は国際法の下で詳細な定義を持っており、それは国家、民族、人種、または宗教集団の全体的または一部の意図的な破壊として要約することができる。[42]それは人道に対する最も重大な犯罪の1つであると正しく考えられている。そのため、不注意に証拠なしに投げかけられるべき種類の告発ではない。にもかかわらず、帝国主義の信奉者は日常的にまさにそれを行っている。ハーマンとチョムスキーが数十年前に指摘したように、「大量虐殺というのは忌々しい言葉で、敵国での被害事例には容易に適用されるが、米国自体または同盟国政権のときは、同様の、またはより悪い被害事例があっても、めったに適用されることはない」。[43]

 著名な学者で経済学者のジェフリー・サックスは、バイデン政権の大量虐殺の告発に関連して、「証拠を提供しておらず、それが可能でない限り、国務省は告発を取り下げるべきである」と書いている。続けて、サックスは大量虐殺の告発は決して軽々しく行われるべきではないとも書いている。「この用語の不適切な使用は、地政学的および軍事的緊張を高め、ホロコーストなどの大量虐殺の歴史的記憶の価値を低下させ、それによって将来の大量虐殺を防ぐ能力を妨げる可能性がある。米国政府は、大量虐殺の責任を負って告発する必要があるが、ここではそれを怠っている。」[44]

 それでは、その大量虐殺の罪状とは、実際はどのようなものなのか。かなり怪しげなワシントンのシンクタンク、ニューライン戦略政策研究所による2021年の報告によると、[45]中国政府は「ウイグル人を集団として破壊する意図」で「包括的な国家政策と実践」を行ったとあり、さらに、ウイグル人が直接に殺されているとは主張していないが、ウイグル人がゆっくりと死滅するように強制的な避妊措置が選択的に適用されていると主張している。

 ただし、これらの主張を裏付ける信頼できる資料はない。新疆ウイグル自治区では出生率が低下傾向にあるが、同じことが中国のすべての省に当てはまる。一方、2010年から2018年にかけてのウイグル人の人口は1,020万人から1,270万人になり、25%増加している。一方で同じ期間に、新疆ウイグル自治区の漢民族の人口はわずか2%しか増えなかった。[46]ウイグル人の出生率がわずかに低下したことついて、パキスタン系カナダ人の平和活動家オマール・ラティフは、その原因は「他の場所と同じである。より多くの女性が高等教育を取得し、労働力に参加する。親が老後に自分の世話をする子供をたくさん生む必要性がなくなった。都市化;女性に対する家父長制の統制の軽減。女性が避妊を行う自由が高まった」[47] と考察している。

 中国の一人っ子政策は、1978年に最初に実施されたが、その時期は中国が大勢の人口を養う能力について比較的不安定だった。(中国は世界人口の18%を占めるが、耕作可能な土地は世界の約12%しかない。加えて慢性的な水不足もある。)[48]この政策は2015年まで実施されており、主に中国の出生率の長期的な低下を説明するのに役立つ。しかし、ウイグル人を含む少数民族は政策から免除されている。実際、ウイグル人の人口は、一人っ子政策が施行されていた期間中に倍増した。最新の国勢調査データによると、少数民族の人口は過去10年間で10.26%(1億2500万人)増加し、漢民族の人口は4.93%(13億人)増えている。

 新疆ウイグル自治区での大量虐殺の主張と矛盾する傾向があるもう一つの資料分析の急所は、この地域の平均寿命が1949年の30歳から今日の75歳に増加したことである。[49]

 さまざまな反中国シンクタンクが検討していない1つの質問は、新疆ウイグル自治区で、差別的な強制的な避妊の「ゆっくりとした大量虐殺」を含む、大量虐殺が起こった場合に、これは難民危機につながらないだろうかということだ。しかし、そのような危機の証拠は確かにない。パキスタンやカザフスタンとの国境沿いに難民収容所はひとつもない。抑圧、戦争、貧困、気候変動が組み合わさって、アフリカ、アジア、中東で現在多数の難民危機を引き起こしているが、中国西部で本格的な大量虐殺が起きてもそのような問題につながらないというのは非常に信じがたいことだ。2021年のタイムの記事は、トランプ政権とバイデン政権の両方が新疆ウイグル自治区での人権侵害をあからさまに批判したにもかかわらず、米国は過去12か月間にウイグル難民を1人も受け入れていなかったことを確認している。[50]同じ時期に、バイデンが「香港の弾圧から逃れた」人々に避難所を提供したことを考えると、[51]迫害から逃れてきた何千人もの新疆ウイグル自治区のウイグル人に米国が難民の地位を提供しないことは想像できない。これは、もし彼らが存在すると仮定した話だが。

 イェール大学法科大学院の学者ニコラス・ベケリンは、2022年8月に発行された人権高等弁務官事務所の「新疆ウイグル自治区における人権懸念の評価」が大量虐殺の容疑について言及さえしていないという事実を嘆き、そのような告発をするための信頼できる証拠の根拠がないとうっかり口を滑らせている。「大量虐殺の犯罪のためには、いくつかの要素が必要である。要素の1つは意図だ。あなたは、国家が大量虐殺を犯す意図を持っていたことを法廷で証明、説得力を持って実証する必要がある。それが最初だ。二つ目は、大量虐殺の犯罪にはいくつかの要素があるということだ。それは、国家的、人種的、宗教的、または民族的集団の体系的で広範囲にわたる絶滅、または絶滅の試みでなければならない。中国の場合にその要素が存在するが、その意図が特定の民族集団の絶滅につながることであるとは、はっきり言えない。」[52]

 大量虐殺の告発が基づいているひと握りの報告は、説得力のある証拠のようなものを提供していない。彼らが提唱したのは、いくつかの非常に選択的な出生率の統計と、虐待を受けたと主張する少数のウイグル人亡命者の証言だ。「疑わしきは罰せず」の原則に基づいて作業するのであれば、中国は決して大量虐殺の有罪とは見なされない。

 余談:執筆時点では、新疆ウイグル自治区でのCovid-19による死亡者の総数は3人だ。[53]特定の民族集団に対して大量虐殺を行っている国軍が、彼らの計画を支援するためにパンデミックを利用できないと信じることは非常に困難だ。地域の保健当局ならば、確実に、この集団の人々がCovid-19で死ぬのを防ぐためにかなりの努力をするだろう。

文化的大量虐殺

 中国政府に対するやや洗練された非難は、新疆ウイグル自治区で文化的に大量虐殺を行っているというものだ。ウイグル人自体を一掃するのではなく、ウイグル人の独自性(アイデンティティ)、ウイグル人の伝統、ウイグル人の信念を一掃するという非難だ。文化的虐殺は国際法では定義されていないが、明らかに次のことを指す。「子供を家族から強制的に連れ去る、国語の使用を制限する、文化活動を禁止する、学校、宗教施設、または記憶の場所を破壊するなどの措置を通じて、集団の独自性を排除すること」。[54]

 文化的大量虐殺の告発は身体的大量虐殺のそれほど極端ではないように見えるが、その告発にも同様に証拠的根拠はない。たとえば、新疆ウイグル自治区のすべての学校は、標準中国語と1つの少数言語(ほとんどの場合ウイグル語)の両方を教えている。[55]中国の紙幣には、中国語、チベット語、ウイグル語、モンゴル語、チワン語の5つの言語がある。[56]何千もの本、新聞、雑誌がウイグル語で印刷されている。さらに、新疆ウイグル自治区には25,000以上のモスク(イスラム教の寺院)がある。この数は1980年の3倍であり、一人当たりのモスク数は世界で最も多いものの1つである。(米国のほぼ10倍)。[57]

 トルコの学者アドナン・アクフィラトは、コーランや他の多くの主要なイスラム教の経典がすぐに入手でき、中国語、ウイグル語、カザフ語、キルギス語に翻訳されていると述べている。さらに、「ウルムチに本部を置く新疆イスラム研究所は、カシュガル、ホータン、イリなどの他の都市に8つの支部を持ち、この地域には新疆イスラム学校を含む10の神学校がある。これらの学校には、毎年3,000人の新入生が在籍している。」[58]アクフィラトは、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒は、祈り、断食、巡礼、イードアルフィトルとイードアルアドハーの祝賀など、宗教的儀式にも自由に従事していると述べている。

 これらの詳細は、近年新疆ウイグル自治区をよく訪れるようになった外交官、当局者、ジャーナリストによって確認されている。2021年3月の外交代表団にはパキスタンの駐中国大使であるモイン・ウル・ハックが含まれていたが、彼は、宗教的迫害の告発を明確に拒否した。「注目すべき重要なことは、中国には信教の自由があり、それが中国憲法に明記されていることだ。それは非常に重要な点である...新疆ウイグル自治区の人々は、自分たちの生活、文化、深い伝統、そして最も重要なことに、自分たちの宗教を楽しんでいる。」[59]

 駐中国パレスチナ大使のファリズ・メダウィは、膨大な数のモスクがあり、宗教的および民族的伝統が尊重されているのがわかると述べ、さらに「モスクの数を、すべてを計算する必要があるなら*、1つのモスクに対して2,000人の住民がいるようなものです。この比率は私たちの国にはない。どこでも手に入らない」 とも語った。メフダウィが「あなたはポチョムキン村**を見せられただけかもしれない」と言われると、彼は答えた。「私たち外交官は、何かを信じるように操縦されるほど未熟ですか...それとも、私たちが陰謀に加担し、自分の目で見たものとは反対のものを是認するとでも言うのですか。そんなことを言うのは失礼ではありませんか。...ここには陰謀はなく、事実があります。そして問題の事実は、中国が新疆ウイグル自治区も含めて、至るところで台頭し発展しているということです。一部の人々はそれが気に入らなくて、是が非でも中国の台頭を止めたいと思っているのです。」[60]
* この部分のメダウィ氏の発言の前は次のようになっている。We were living in a hotel. I can go to the veranda and wherever you look there are mosques. In one crossing there is five mosques actually in the same neighborhood. I mean too much, too many actually, the average I had learned … the average of mosques…. if you calculate it all, it’s something like 2,000 in one mosque this ratio we don’t have it … (筆者の引用では、the average of mosques の部分は、the numbers of mosques となっている。)
**貧しい実態や不利となる実態を訪問者の目から隠すために作られた、見せかけだけの施設などのことを指す。ロシア帝国の軍人で1787年の露土戦争を指揮したグリゴリー・ポチョムキンが、皇帝エカチェリーナ2世の行幸のために作ったとされる「偽物の村」に由来する。


 国連での、中国の人権に関するさまざまな国の投票記録を見て驚くのは、イスラム教徒が多数を占める国で、米国主導の中傷に一貫して賛成票を投じているは、NATO加盟国のアルバニアだけであることだ。2022年の第50回人権理事会では、イスラム協力機構の構成員は、中国の立場を支持する声明を圧倒的多数で共同提案した(37対1)。この比率は、アフリカ(33対2)とアジア(20対2)に反映されている。[61]イスラム教徒が多数を占める国の大多数、およびグローバルサウスの国々が、中国のウイグル人イスラム教徒に対して犯された文化的大量虐殺に直面して、沈黙を守るとは信じがたい。

 以下に挙げるようなことを考えると、文化的大量虐殺の告発は全く支持できないように思える。文化的大量虐殺の証拠がないこと、中国の少数民族文化の保護に関する資料と報告、新疆ウイグル自治区への多数の外交使節団、イスラム教徒が多数を占める国々が中国を中傷から守ることでほぼ一致した合意を形成していること。

強制収容所

 新疆ウイグル自治区の当局に対して最も頻繁に課せられる具体的な告発は、ウイグル人イスラム教徒が大量に閉じ込められている捕虜収容所を運営していることである。そこに入れられている人は、人口1300万人のうち100万人というのが最も頻繁に言及される数字だ。[62]これらの捕虜収容所の目的は、ウイグル人のイスラム文化を根絶し、人々を洗脳して政府を支援すること、つまり「復讐心を育み、ウイグル人の独自性(アイデンティティ)を消し去る」ことだ。[63]

 「強制収容所にいる百万人のウイグル人」の話は、典型的なプロパガンダの集中的電撃攻撃である。欧米マスコミの全面的な繰り返しと、アメリカ国務省の支援を通じて、この驚くべき見出しは、広く受け入れられている真実の力を獲得した。それでも、この「ニュース」の情報源は、笑えるほど偽物だ。

 この100万人の数字の出所を見つけようとした2018年のチャイナファイル誌の記事は、4つの重要な研究を特定している。1つめは、ドイツの人類学者エイドリアン・ゼンツ。2つめは、ワシントンDCを拠点とする非営利の中国人権擁護家(CHRD)。3つめは、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)。4つめは、米国を拠点とするメディアであるラジオフリーアジア(RFA)。2021年には新しいプレーヤーとしてニューラインズ研究所がゲームに参加した、米国フェアファックス大学に拠点を置くシンクタンクである。この研究所は、中国政府が国連の大量虐殺条約に違反していると正式に判断するための「最初の独自の報告書」を発行した。上記の個人や組織は中国に対するこの注目を集める告発に最も責任があるので、彼らが既得権益や下心を持っているかどうかを検討することは価値があるだろう。

 エイドリアン・ゼンツは、100万人のウイグル人が強制収容所に収容されていると主張した最初の人物だった。[64]彼はまた、強制労働と強制不妊手術の申し立てに関しても先駆者のようなものだった。中国を誹謗中傷する彼の執拗な仕事は、CNN、[65]ガーディアン紙、[66]デモクラシー・ナウ、[67]そして他の場所で高く評価されている。中国による強制収容所の使用疑惑に関するニュース報道で、ゼンツ氏の仕事に言及していないものを見つけるのは難しい。

 ウォールストリートジャーナルの聖人伝レポートは、世界的な反中国誹謗中傷機械の構築における、この一人の個人の特大の役割を強調している。「生まれ変わりのキリスト教人類学者が、窮屈な机から一人で始めた研究...中国と西側諸国を、過去数十年で最大の人権紛争の1つに押し込んだ。エイドリアン・ゼンツは、中国のインターネットの薄暗い隅から資料を頑固に探し出し、中国の遠隔地の新疆ウイグル自治区での治安強化を明らかにし、その後のトルコ系イスラム教徒の大量拘留と取締りを明らかにした。彼の調査は、中国がどのように数十億ドルを費やして新疆ウイグル自治区に収容所とハイテク監視網を構築し、それらを運営するために警察官を採用したのかを明らかにした。」[68]

 記事は、ゼンツのイデオロギー的方向性をさりげなくほのめかし、「彼の信仰は彼を前進させる」こと、そして彼の以前の知的活動には「聖書の終わりの時を再検討する本」の共著が含まれていると述べている。[69]彼は反中国誹謗中傷を発するために「神によって非常に明確に導かれていると感じている」。言い換えれば、ゼンツは単に人権に情熱を注ぐ政治的に中立な情報分析家ではない。むしろ、彼は頑固な反共産主義者であり、キリスト教の終末論者だ。彼は共産主義犠牲者記念財団の中国研究所の所長として雇用されている。[70] この財団は1993年に米国議会によって設立された超保守的な組織で、国家社会主義のような「非常に邪悪な専制政治」が再び「世界を恐怖に陥れ*ない」ように「前例のない帝国のホロコーストにおける1億人以上の犠牲者の死」を追悼するために設立された。 [71]彼の著書『逃げる価値がある:なぜすべての信者は苦難の前に天に召されないのか』の中で、彼は手に負えない子供たちは「聖書に記載されているムチでの尻叩き」に服従させるべきで、同性愛は「獣の4つの帝国の1つ」と表現している。[72]
*原文の“so evil a tyranny” as state socialism would ever again be able to “terrorise the world.”におけるeverはneverの誤植である。

 ゼンツの思想的起源と著書から考えると、彼の研究が真剣な精査を受けることを要求するのは不合理ではない。しかし、実際には、新疆ウイグル自治区に関する彼の評価は、西側のメディアと政治機構によって無批判に受け入れられ、広く増幅されている。

 「100万人以上のウイグル人と他のトルコ系イスラム教徒の少数派の一員が「再教育収容所」の広大な組織の網の中に姿を消した」という非難を支持している別の組織は、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)である。[73] ASPIはオーストラリア政府によって設立されたシンクタンクであり、オーストラリア国民の中国に対する態度を形成するという点で非常に影響力がある。新疆ウイグル自治区に関するその報告は、この話題に関して最も引用されている情報源のひとつだ。

 ASPIは自らを「独立した無党派のシンクタンク」と表現しているが、その中核的な資金はオーストラリア政府から来ており、米国国防総省と国務省(「新疆ウイグル自治区の人権」活動に特化している)の他にも、英国外務・英連邦開発局、アマゾン、グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、BAEシステムズ、ロッキード・マーティンなどから多額の寄付を受けている。[74]要約すると、ASPIは冷戦と太平洋軍事化の商業活動にどっぷりと浸かっているので、中国の人権を議論する場合は明らかな利益相反になる。

 新疆ウイグル自治区に関連する反中国プロパガンダを増幅する最新の「無党派シンクタンク」は、ニューライン研究所である。この研究所をジェフリー・サックスは「153人の学生、8人の専任教員、そして明らかに保守的な政策計画を持つバージニアに本拠を置く小さな大学の事業」と表現している。[75]ニューラインズ報告書は「独立した専門家が、中国で進行中のウイグル人の扱いに対して、大量殺戮条約(1948年)を最初に適用したもの[76]」として西側メディアで大きく取り上げられ、強制収容所、強制労働、文化的大量虐殺に関連する中国の責任を証明する動かぬ証拠となった。この報告書は、研究所のウイグル学者作業集団、まさしく(先述の)エイドリアン・ゼンツが率いる著名な集団によってまとめられた。カナダのジャーナリスト、アジット・シンは、ニュースサイト「グレイゾーン」の詳細な調査の中で、「ニューライン研究所の指導者には、元米国国務省職員、米軍顧問、「影のCIA」と言われた民間スパイ会社ストラトフォーで働いていたことがある諜報専門家、および介入主義信奉者の集まりが含まれている」と指摘している。さらに、研究所の創設者兼社長は、米軍のアフリカ司令部の諮問委員会を務めたことで最もよく知られているアーメド・アルワニである、とのことだ。[77]

 BBC、ガーディアン紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙などはどれも、ニューラインズ報告書を、あたかもそれが学問的厳密さの頂点を表しているかのように扱い、米軍産複合体との関係についてさえ言及しなかった。

 新疆ウイグル自治区の捕虜収容所に関する一般的な物語が非常に疑わしい情報源に基づいていることは十分に明らかだ。先述のゼンツやASPIなどによって提供された証拠は、捕虜収容所を示すと称する少数の写真と衛星写真とともに、少数の個々の証言である。これらの写真は、いくつかの刑務所が存在することを証明しているように見えるが、これはひどく興味深い現象でも、異常な現象でもない。確かに中国にはいくつかの刑務所がある。しかし、その投獄率(10万人あたり121人)は米国の20%未満だ。[78]

 何人かの評論家は、ダラスの人口とほぼ同じ100万人の囚人を隠すことは容易ではないと指摘する。オマール・ラティフが指摘しているように、「その数の囚人を収容して住まわせるために必要な建物と生活基盤施設の数を想像してみなさい! 衛星カメラが車両のナンバープレートを読み取ることができる(挿入)のであれば、米国はそれらの刑務所と囚人を非常に詳細に見ることができると誰もが思うだろう。」[79]

 おそらく、新疆ウイグル自治区の捕虜収容所を示すと称する最も象徴的な画像は、青い作業着を着た刑務所の庭にいる男性の集団の画像である。これは、2017年4月に羅埔県改革矯正センターで行われた講演の写真であることが判明している。[80]羅埔センターは普通の刑務所で、普通の犯罪者がいるが、それは、「新疆ウイグル自治区の人々の強制収容所や奴隷労働を証明立て、実際に見せ、あるいは実際にあることをほのめかすために、つまり、人を欺くために使用されてきた」[81] ということだ。

脱過激化教育

 中国当局は、西側の人権団体が強制収容所と呼んでいるものは、実際には宗教的過激主義と暴力的な分離主義の問題に対処するために設計された職業訓練所であると主張している。彼らは、宗教的憎悪の考えを弱体化させようとすることに焦点を当てた社会学と倫理学の授業と、参加者が仕事を見つけて生活水準を向上させることができるような市場性のある技能を提供する授業を組み合わせている。基本的な考え方は、人々の生活の見通しを改善して、原理主義の宗派集団によって過激化される可能性が低くなるようにすることを目指している。

 そのような過激集団からの脅威は十分に現実的である。その中で最大のものは東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)で、2020年10月まで米国国務省によってテロリストグループとして分類されていた。[82] ETIMは、シリアとアフガニスタンでダーイシュやさまざまなアルカイダ集団と一緒に戦うために何千人もの民兵を派遣してきた。[83]

 1990年代半ばから2010年代半ばにかけて、中国では、ウイグル分離主義部隊による一連のテロ攻撃がショッピングセンター、駅、バス停、天安門広場であり、数百人の民間人が死亡した。これは、中東と中央アジアでのテロの増加に対応しており、この地域の進歩的または民族主義的国家に対する西側の代理戦争に少なからず関連している。他の人々と同様に、中国の人々も安全と安心の権利を要求する。そのため、テロリズムは中国政府が簡単に無視できる問題ではないのだ。

 したがって、職業訓練所は、学歴と経済的繁栄を高めることを目的とした全体的な反テロキャンペーンの一環として設立され、それによって過激化を引き起こすことが知られている不平不満に対処しているのだ。教育方法は生活条件の改善に焦点を当てて組み合わされており、2014年から2019年までの5年間で、一人当たりの可処分所得は平均年率9.1%増加している。[84]

 テロリズムに取り組むための中国の方法は、国連の暴力的過激主義防止のための行動計画で提唱されている措置に基づいており、「不可欠な安全保障に基づくテロ対策だけでなく、個人を過激化し、暴力的な過激派集団に加わらせる根本的な状況に対処するための体系的な予防措置を含む包括的な手法を求めている」。[85]したがって、中国は国際法と最良の方法の枠組みの中で積極的に活動しようとしているのだ。このやり方は、例えば、米国が運営している拷問的な収容所と比較してかなり優れている。というのも、この収容所に入所しているのは、テロ容疑者たちであり、その中には、多かれ少なかれ手当たり次第に逮捕された無実の犠牲者ももちろんいるからだ。しかもその収容所は、キューバ領内の不法占拠区域に位置している。[86]

 現地で広範な調査もされていないのに、職業訓練所の運営方法に関する中国当局の主張は検証不可能である。私たちが確実に言えることは、大量虐殺、文化的大量虐殺、宗教的抑圧、強制収容所に関する非難は、十分な証拠として値する情報に裏付けられていないということだ。さらに、最も著名な告発者は、例外なく、中国に対して斧を挽く(密かな企みがある)ことで知られている勢力ばかりだ。

 上記のいずれも、新疆ウイグル自治区に問題があることを否定するものではない。ウイグル人が警察によって虐待されたり民族的に差別されたりすることは決して起こらず、脱過激化学習に関与した強制は一度もなかったというわけではないのだ。しかし、中国でよく理解され、政府が積極的に取り組んでいるこれらの問題は、決して中国に限ったことではない。確かに、ウイグル人に対する差別は、たとえば、米国のアフリカ系アメリカ人や先住民の扱い、またはインドのダリット(不可触民)、アディバシス(インド先住民)、その他多数の少数派の扱いと比較すると大きいとは言えない。

なぜ新疆ウイグル自治区なのか?

 新疆ウイグル自治区周辺の邪悪なプロパガンダ作戦は、複数の目的を果たしている。これは、アメリカ主導の新冷戦におけるひとつの要素であり、中国の台頭を遅らせ、アメリカの覇権を維持し、多極世界の出現を防ぐために設計されたハイブリッド戦争の事業だ。[87]それはまた、資本主義国の労働者階級、そして一般的に抑圧された人々が社会主義世界に対して感じるかもしれない自然な連帯を混乱させることを目的とした、百年前の悪質な反共産主義の反復に関連している。最後に述べたいのは、新疆ウイグル自治区の地政学的重要性は、中国を弱体化させる全体的な戦略において特別な役割を果たしていることを意味する、ということだ。ロシア、モンゴル、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンと国境を接する新疆ウイグル自治区は、一帯一路構想の主要な東西陸路に沿った要所を構成している。それは中国を中央アジア、したがってペルシャ湾、中東、そしてヨーロッパにも結びつける。また、新疆ウイグル自治区は中国最大の天然ガス生産地域であり、中国の太陽光発電と風力発電の中心地でもある。つまり、中国の安全保障にとって非常に重要なのだ。

 英国の政治学者ジュード・ウッドワードは、新疆ウイグル自治区の位置は、中国と中央アジアとの貿易関係の中心にあると指摘した。「そこは、中国のウィンウィン(双方満足)の地政学と米国の旧来の地政学との対立が、最も対照的な形で展開されている世界の一部なのだ。...中国は、中央アジアは再創造されるユーラシアの交差点にあるべきだと提案している。そこは、石油とガスのパイプライン、高速列車、連続した車道で接続され、成長に支えられ、貿易によって支えられた安定性を備えた場所になるのだ。中国は世界の未来像を提供している。それは、『真ん中の王国』ではなく、アジア大陸全体を人間開発の次の段階の中心に据える未来なのだ。」[88]

 この進展を混乱させるために、米国は不安定化と悪魔化に訴えてきた。最大の目標は疑似独立新疆ウイグル自治区の基礎を築くことだ。そこは、実際には米国の属国に変わり、中国や地域の他の国々に対するさらなる侵略の強力な足がかりとなる、最小限の、そしてはるかに可能性の高い目標は、中国とユーラシア大陸を結ぶ価値連鎖を混乱させ、それによって一帯一路構想を減速させ、中央アジア、中東、ヨーロッパとの中国の貿易関係を損なうことである。

 余談だが、西側が新疆ウイグル自治区の不安定さを煽り、制裁を課していることは、気候崩壊との戦いへの取り組みのいい加減さをも露呈している。

 2021年、新疆ウイグル自治区は再生可能エネルギー源(主に太陽光と風力)から2兆4800億キロワットの電力を生成し、これは中国の総電力消費量のほぼ30%にあたる。[89]ソーラーパネル(太陽電池板)の必須部品であるポリシリコンの世界供給の約半分は、新疆ウイグル自治区から来ている。[90]

 米国とその同盟国がカーボンニュートラル(二酸化炭素±ゼロ)を追求し、生態学的大惨事を防ぐことに真剣に取り組んでいるというなら、彼らは中国と緊密に協力して再生可能エネルギーの供給網と送電能力を開発してもいいだろう。中国の太陽光発電と風力発電技術への投資は、すでに世界中で価格の劇的な引き下げにつながっている。[91] ところが、彼らは、そんなことは頭になくて、中国に全面的な制裁を課し、新疆ウイグル自治区をクリーンエネルギーの供給網から切り離そうとしている。[92]これは、帝国主義支配階級が、気候破壊の防止よりも反中国プロパガンダ戦争を優先していることをかなり明確に示している。「赤(red)よりも死んだ(dead)ほうがいい」という標語は21世紀も続いているようだ。

捏造合意を拒否する

 アフリカ系アメリカ人の公民権運動指導者で革命家のマルコムXが、「注意しないと、新聞は抑圧されている人々を憎み、抑圧している人々を愛するように導く」と言ったのは有名な話だ。[93]

 中国が台頭している。その平均余命は今や米国のそれを追い抜いた。[94]極度の貧困は過去のものであり、人々はますます元気に暮らしている。中国は、気候破壊との戦いにおける主導的な力としての地位を確立している。パンデミックから人類を救うための戦いで。そして、より民主的で多極的な国際関係のしくみに向かう動きにおいて。習近平の言葉を借りれば、中国は「今やグローバル社会主義運動の旗手」なのだ。[95]

 米国とその同盟国は新冷戦を追求している。その目的は、中国を弱体化させ、その台頭を制限し、最終的に中国革命を覆し、共産党の支配を終わらせることだ。反中国プロパガンダの集中砲火は、この新冷戦の宣伝広告を提供する。西側の支配階級は、中国の社会主義を差別、権威主義、捕虜収容所と結びつけることを望んでいる。貧困を終わらせ、地球を救うことではない。帝国主義諸国の読者は、自分たちがこのように捏造された合意を望むかどうか、自分たちが支配階級の外交政策目標を彼らと共有しているかどうか、について検討すべきだ。

 米国とその同盟国が彼らの目的に成功し、中華人民共和国がソビエト連邦と同じ運命をたどった場合、どのような影響が考えられるだろうか?

 ひとつは、気候危機の観点からの結果は潜在的に壊滅的なものになるだろう。資本主義政府となった中国は、現在追求されている水準で再生可能エネルギー、植林、保全の事業を継続する意志も資源も持たなくなるだろう。Covid-19の規模のパンデミックは完全に壊滅的になり、数千人ではなく数百万人の中国人が死亡するだろう。一方、マラリア、コレラ、その他の病気はすべて復活することが予想される。貧困、過密、気温と海面の上昇という完璧な嵐、つまり病原体にとって「最適な状態」になるからだ。

 貧困緩和と共同繁栄は歴史に追いやられるだろう。何億人もの人々が 自分たちの利益を優先する理由が何もない支配階級によって貧困に追いやられることになるだろう。ホームレス、暴力犯罪、麻薬中毒は、ソビエト崩壊後のロシアで起こったように、再び当たり前になるだろう。さらに、資本主義の中国は、米国の友情と保護を獲得することに必死になって、多極化を促進し帝国主義に反対するという、彼らの国際的な役割を終わらせるだろう。

 われわれは、反中国中傷に断固として反対し、その本質を暴露しなければならない。それは世界の労働者階級と帝国主義に反対するすべての人々の連帯の絆を断ち切ることを目的としているからだ。また社会主義を中傷し、弱体化させようとするものだからだ。さらに、それは毎日、より多くの貧困、より多くの悲惨さ、より多くの抑圧、より多くの暴力、より多くの環境破壊を生み出し、人類の生存そのものをますます脅かす瀕死の資本主義システムを永続させるのに役立つものでしかないからだ。

参照
[1]ボーア、ローランド。「中国の特色を持つ社会主義:外国人のための案内」。シンガポール:スプリンガー、2021年、p.11
[2]チェン、W 2021、「米国は中国に対するプロパガンダ戦争を終わらせることによって間違いを正すべきだ」、チャイナデイリー、2022年8月27日、アクセス、https://www.chinadaily.com.cn/a/202110/15/WS6168b867a310cdd39bc6f0b4.html>
[3]マルティネス、C 2021で詳細に議論される。「左翼は米国主導の中国に対する新冷戦に断固として反対しなければならない。未来を創造せよ」、2022年8月27日アクセス、<https://invent-the-future.org/2021/06/the-left-must-resolutely-oppose-the-us-led-new-cold-war-on-china/>
[4]エンクルマ、クワメ。『新植民地主義:帝国主義の最終段階』。転載。ロンドン:パナフ、2004年。
[5]エドワーズ、デビッド、デビッド・クロムウェル。『プロパガンダ集中電撃攻撃:企業メディアが現実をどのように歪めるか』。ロンドン:プルートプレス、2018年、p.1
[6]同書、p.8
[7]ジョーンズ、O 2021、「右派はウイグル人の虐待について中国を非難する。左翼もそうしなければならない」、ガーディアン、2022年8月27日アクセス、<https://www.theguardian.com/commentisfree/2021/jan/21/right-condemns-china-over-its-uighur-abuses-left-must-do>
[8]マルティネス、C 2020、「社会主義者は中国に対する新しい冷戦に反対する必要がある―ポールメイソンへの返信」、モーニングスター、2022年8月27日アクセス、<https://morningstaronline.co.uk/article/socialists-should-oppose-new-cold-war-against-china-%E2%80%93-reply-paul-mason>
[9]ハーマン、エドワードS.、ノーム・チョムスキー。『合意の捏造:マスメディアの政治経済学』。ロンドン:ヴィンテージデジタル、2010年、p.12
[10]同書、p.78
[11]同書、p.101
[12]同書、p.111
[13]同書、p.78
[14]同書、p.490
[15]「香港の弾圧に関するガーディアン紙の見解:政治的反対への攻撃」(2021)、ガーディアン紙、2022年8月28日アクセス、<https://www.theguardian.com/commentisfree/2021/jan/06/the-guardian-view-on-hong-kongs-crackdown-an-assault-on-political-opposition>
[16]たとえば、バーカー、Kを参照。ベイカー、M;ワトキンス、A、2021、「どの都市でも、警察はブラック・ライヴズ・マターの抗議を誤って処理した」、ニューヨークタイムズ紙、2022年8月28日アクセス、<https://www.nytimes.com/2021/03/20/us/protests-policing-george-floyd.html>
[17]コイル、K 2020、「香港では、労働運動の忠誠心が分かれている」、モーニングスター、2022年9月19日アクセス、<https://morningstaronline.co.uk/article/kenny-coyle-based-interview-hk-trade-unionist-alice-mak>
[18]チョン、T;ラオス、C 2022、「北京の報告書によって非難された、米国が支援する集団と関係のある香港人は、非難の危険がある可能性がある、と分析家は警告している」、サウスチャイナモーニングポスト、2022年9月15日アクセス、<https://www.scmp.com/news/hong-kong/politics/article/3177383/hongkongers-ties-us-backed-group-slammed-beijing-report>
[19]コイル、K 2022、「香港:真実が明らかになった」、モーニングスター紙、2022年8月28日アクセス、<https://morningstaronline.co.uk/article/f/hong-kong-truth-is-out>
[20]マルティネス、C 2022「中国の貧困に対する長い戦争:未来を創造せよ」、2022年9月15日アクセス、<https://invent-the-future.org/2022/06/chinas-long-war-on-poverty/>
[21]マルティネス、C 2019、「中国は気候崩壊への取り組みを主導する:未来を創造せよ」、2022年9月15日アクセス、<https://invent-the-future.org/2019/10/china-leads-the-way-in-tackling-climate-breakdown/>
[22]マルティネス、C 2020、「武漢のカールマルクス:中国の社会主義はCOVID-19をどのように打ち負かしているか:未来を創造せよ」、2022年9月15日、<https://invent-the-future.org/2020/03/karl-marx-in-wuhan-how-chinese-socialism-is-defeating-covid-19/>にアクセス
[23]Kuo、L 2021、「中国は貧困をなくしたと主張しているが、数字は厳しい課題を覆い隠している」、ワシントンポスト紙、2022年9月15日アクセス、<https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/china-poverty-economy-growth/2021/02/25/9e92cb18-7722-11eb-9489-8f7dacd51e75_story.html>
[24]Li、Y 2022、「中国の“ゼロ・コロナ”の混乱は独裁政治がすべての人を傷つけることを証明している」、ニューヨークタイムズ、2022年9月15日アクセス、<https://www.nytimes.com/2022/04/13/business/china-covid-zero-shanghai.html>
[25]パレンティ、マイケル。『黒シャツと赤:合理的なファシズムと、共産主義の転覆』。カリフォルニア州サンフランシスコ:シティライツブックス、1997年、p.43
[26]ヤング、I 2022年、「カナダと英国は、人権上の懸念の中で、北京冬季オリンピックの外交拒否に参加する」、サウスチャイナモーニングポスト、2022年9月20日、アクセス、<https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3158979/canada-joins-diplomatic-boycott-beijing-winter-olympics-citing>
[27]ハグストロム、A 2022年、「ハッキングされた新疆ウイグル自治区の文書は、中国のウイグル人虐殺の詳細を明らかにする:『やつらは殺せばいい』」、フォックスニュース、2022年9月21日アクセス、<https://www.foxnews.com/world/china-xinjiang-uyghur-genocide-leak>
[28]ラムジー、A 2019年、「『情けは絶対に与えるな』:洩されたファイルは、中国がイスラム教徒の大量拘留をどのように組織したかを明らかにする」、ニューヨークタイムズ紙、2022年9月21日アクセス、<https://www.nytimes.com/interactive/2019/11/16/world/asia/china-xinjiang-documents.html>
[29]プレザンス、C 2022、「北京が隠そうとしている中国のウイグル人収容所についての真実:ハッキングされた資料は、“再教育”を受けることを余儀なくされた何千人もの囚人がいたことを明らかにしている...逃げようとした者に対しては「撃って殺せ」という方針があった」、デイリーメール、2022年9月21日アクセス、<https://www.dailymail.co.uk/news/article-10848301/Chinas-Uyghur-detention-camps-exposed-huge-leak-Xinjiang-police-data.html>
[30]ジョンソン、S 2021、「“暗黒郷の地獄の風景”に住んでいる中国のウイグル人―アムネスティの報告」、ガーディアン、2022年9月21日アクセス、<https://www.theguardian.com/global-development/2021/jun/10/china-uyghur-xinjiang-dystopian-hellscape-says-amnesty-international-report>
[31]ハーマンとチョムスキー、前掲書、p.122
[32]ハイフォン、D 2021、「デモクラシー・ナウは今、進歩的な顔を装いながら、中国に対する国務省のプロパガンダ運動を増幅している」、 グレーゾーン、2022年9月21日アクセス、<https://thegrayzone.com/2021/02/22/democracy-nows-china-state-departments-cold-war/>
[33]ロバーツ、S 2021、「ウイグル人抑圧の終結を要求する」、ジャコバン、2022年9月21日アクセス、<https://jacobin.com/2021/04/uyghur-oppression-ccp-surveillance-reeducation-war-on-terror>
[34]ンジリー・エバンス、T 2019、「なぜ中国はウイグル人イスラム教徒を迫害するのか?」、社会主義労働者、2022年9月21日アクセス、https://socialistworker.co.uk/features/why-does-china-persecute-the-uyghur-muslims/>
[35]Mounk、Y 2021、「ノーム・チョムスキーが、独自性を要求する政治、言論の自由、中国について語る」、グッドファイトポッドキャスト、2022年9月24日アクセス、https://www.persuasion.community/p/chomsky
[36]オマール、I 2020、「オマール議員はアップル、アマゾン、グーグルを含むCEOに手紙を送り、中国での強制ウイグル人労働の使用を非難する」、イルハンオマールのウェブサイト、2022年9月24日アクセス、<https://omar.house.gov/media/press-releases/rep-omar-leads-letter-ceos-including-apple-amazon-and-google-condemning-use>
[37]ウォン、E;バックリー、C 2021、「米国は中国のウイグル人への弾圧は“大量虐殺”であると述べている」、ニューヨークタイムズ紙、2022年9月25日アクセス、<https://www.nytimes.com/2021/01/19/us/politics/trump-china-xinjiang.html>
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[39]「カナダ議会は、中国によるウイグル人への処遇を“大量虐殺”と断言」、BBCニュース、2022年9月25日アクセス、<https://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-56163220>
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[41]「新疆ウイグル自治区の警察資料を含む新疆ウイグル自治区の人権状況に関する決議」、欧州議会、2022年9月25日アクセス、<https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/RC-9-2022-0310_EN.html>
[42] 「大量虐殺」、大量虐殺防止と保護する責任に関する国連事務所、2022年9月25日アクセス、<https://www.un.org/en/genocideprevention/genocide.shtml>
[43]ハーマンとチョムスキー、前掲書p.25
[44]サックス、J;シャバス、W 2021、「新疆ウイグル自治区虐殺の主張は不当である」、プロジェクトシンジケート、2022年9月25日アクセス、<https://www.project-syndicate.org/commentary/biden-should-withdraw-unjustified-xinjiang-genocide-allegation-by-jeffrey-d-sachs-and-william-schabas-2021-04>
[45]Chi、Z 2021、「不安な意図と疑わしい起源:DCに本拠を置くニューラインズ研究所は、反中国の収納室により多くの骸骨を持っている」、人民日報、2022年9月25日アクセス、<http://en.people.cn/n3/2021/0326/c90000-9832855.html>
[46]「新疆ウイグル自治区の人口変化に関する真実と捏造」、チャイナデイリー、2022年9月25日アクセス、<https://global.chinadaily.com.cn/a/202102/05/WS601cba78a31024ad0baa7830.html>
[47]ラティフ、O 2021、「中国、西側、ウイグル人:特別報告書」、カナダ平和会議、2022年9月25日アクセス、<https://www.canadianpeacecongress.ca/uncategorized/china-the-west-and-the-uighurs-a-special-report/>
[48]「耕作可能な土地(土地面積の割合)」、世界銀行、2022年10月12日アクセス、<https://data.worldbank.org/indicator/AG.LND.ARBL.ZS>
[49]「新疆の平均寿命は74.7年に伸びる:白書(2021)」、新華社、2022年10月2日アクセス、<http://www.xinhuanet.com/english/2021-07/14/c_1310060001.htm>
[50]アギレラ、J 2021、「米国は昨年、ウイグル難民は1人もいないことを認めた。これがその理由だ」、タイム誌、2022年10月2日アクセス、 <https://time.com/6111315/uyghur-refugees-china-biden/>
[51]フォックス、B 2021、「香港の取り締まりから逃れた人々は一時的な米国の避難所を取得する」、APニュース、2022年10月2日アクセス、<https://apnews.com/article/hong-kong-fd6eee4affe1edfbf74f5e635c8e6445>
[52]チョティナー、I 2022、「なぜ国連は中国を新疆ウイグル自治区での大量虐殺で非難しなかったのか?」、ニューヨーカー、2022年9月25日にアクセス、<https://www.newyorker.com/news/q-and-a/why-hasnt-the-un-accused-china-of-genocide-in-xinjiang>
[53]「2022年6月7日現在の中華圏における新しいコロナウイルスCOVID-19感染、死亡および回復症例の数、地域別」、スタティスタ、2022年10月2日アクセス。<https://www.statista.com/statistics/1090007/china-confirmed-and-suspected-wuhan-coronavirus-cases-region/>
[54]クローニンファーマン、K 2018、「中国は新疆ウイグル自治区での文化的大量虐殺を選択した—今のところ」、フォーリン・ポリシー、2022年9月25日アクセス、<https://foreignpolicy.com/2018/09/19/china-has-chosen-cultural-genocide-in-xinjiang-for-now/>
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[56]「中国の通貨の言語学的考察」、チャイナブリーフィング、2022年9月26日アクセス、<https://www.china-briefing.com/news/a-linguistic-look-at-chinas-currency/>
[57]ハッサン、M 2020、「新疆ウイグル自治区のモスクを取り壊しとの申し立てには根拠がない」、人民日報、2022年9月26日アクセス、<http://en.people.cn/n3/2020/0821/c98649-9737215.html>
[58]アクフィラト、A 2021、「10個の帝国主義の嘘とウイグルの真実(パート2)」、CGTN、2022年9月26日アクセス、<https://news.cgtn.com/news/2021-02-25/10-imperialist-lies-and-Uygur-truths-Part-2–Y9bVWkDYME/index.html>
[59]「パキスタンは新疆ウイグル自治区に関する中国の立場を完全に支持している:特使(2021)」、デイリータイムズ、2022年9月26日アクセス、<https://dailytimes.com.pk/743754/pakistan-fully-supports-chinas-position-on-xinjiang-envoy/>
[60]「論点:三人の大使は新疆ウイグル自治区について劉新と何を話すか?」、YouTube、2022年9月27日アクセス、<https://www.youtube.com/watch?v=ebeGipO6-gU>
[61]ワン、C 2022、「バチェレによる「新疆ウイグル自治区における人権懸念の評価」は、OHCHRの信用を傷つけ、人権体制を政治化する危険性がある」、社会主義中国の友人、2022年10月7日アクセス、<https://socialistchina.org/2022/09/09/bachelets-assessment-of-human-rights-concerns-in-xinjiang-risks-discrediting-the-ohchr-and-politicizing-the-human-rights-regime/>
[62]Maizland、L 2022、「新疆ウイグル自治区における中国のウイグル人弾圧」、外交問題評議会、2022年9月27日アクセス、<https://www.cfr.org/backgrounder/china-xinjiang-uyghurs-muslims-repression-genocide-human-rights>
[63]バックリー、C 2018、「中国はイスラム教徒を大量に拘留している。その目標は“思想改造”」」、ニューヨークタイムズ、2022年9月27日アクセス、<https://www.nytimes.com/2018/09/08/world/asia/china-uighur-muslim-detention-camp.html>
[64]Seibt、S 2022、「“新疆警察の資料”の背後にいる学者エイドリアン・ゼンツ、中国によるウイグル人の虐待について」、フランス24、2022年9月28日アクセス、<https://www.france24.com/en/asia-pacific/20220525-adrian-zenz-the-academic-behind-the-xinjiang-police-files-on-china-s-abuse-of-uighurs>
[65]「エイドリアン・ゼンツ博士はCNNニュースルーム(2020)で、漏洩した新疆文書について議論している」、YouTube、2022年9月28日アクセス、<https://www.youtube.com/watch?v=25QhBJt3vCw>
[66]ウィンター、P 2021、「漏洩した論文は新疆ウイグル自治区の弾圧と中国の指導者を結びつけている」、ガーディアン紙、2022年9月28日アクセス、<https://www.theguardian.com/world/2021/nov/29/leaked-papers-link-xinjiang-crackdown-with-china-leadership>
[67]「子どもの分離と捕虜収容所:ウイグル人イスラム教徒に対する中国の活動は“文化的大量虐殺”(2019)」、デモクラシー・ナウ、2022年9月28日アクセス、<https://www.democracynow.org/2019/7/26/china_xinjiang_uyghurs_internment_surveillance>
[68]チン、J 2019、「中国のイスラム教徒の弾圧を暴露したドイツのデータダイバー」、ウォールストリートジャーナル紙、2022年9月28日アクセス、<https://www.wsj.com/articles/the-german-data-diver-who-exposed-chinas-muslim-crackdown-11558431005>
[69]サイアス、マーロンL.、ゼンツ、エイドリアン。『逃げる価値はある:なぜすべての信者は艱難の前に天に召されないのか』。アメリカ合衆国:オーサー・ソリューション社、2012年。
[70]エイドリアン・ゼンツ博士、「共産主義犠牲者のための記念財団」、2022年10月2日アクセス。<https://victimsofcommunism.org/leader/adrian-zenz-phd/>
[71]アタ、T 2022、「共産主義の犠牲者の本質を明らかにする」、インターナショナル、2022年10月2日アクセス、<https://www.internationalmagz.com/articles/unveiling-true-nature-of-victims-of-communism>
[72]ポーター、G;ブルーメンソール、M 2021、「中国の“大量虐殺”に対する米国国務省の告発は、極右信奉者による資料の乱用と根拠のない主張に依存していた」、 グレーゾーン、2022年10月12日アクセス、<https://thegrayzone.com/2021/02/18/us-media-reports-chinese-genocide-relied-on-fraudulent-far-right-researcher/>
[73]シェイ、V;ケイブ、D;ライボルト、J;マンロー、K;ルーザー、N 2020、「売りに出されるウイグル人」、オーストラリア戦略政策研究所、2022年10月2日アクセス、<https://www.aspi.org.au/report/uyghurs-sale>
[74]「ASPIの財源」、オーストラリア戦略政策研究所、2022年10月2日アクセス、<https://www.aspi.org.au/about-aspi/funding>
[75]サックス、J;シャバス、W 2021、「新疆ウイグル自治区で大量虐殺があるという主張は不当だ」、プロジェクトシンジケート、2022年9月25日アクセス、<https://www.project-syndicate.org/commentary/biden-should-withdraw-unjustified-xinjiang-genocide-allegation-by-jeffrey-d-sachs-and-william-schabas-2021-04>
[76]「ウイグル人虐殺:中国の1948年ジェノサイド条約違反に対する調査(2021)」、ニューライン戦略政策研究所、2022年10月2日アクセス、<https://newlinesinstitute.org/uyghurs/the-uyghur-genocide-an-examination-of-chinas-breaches-of-the-1948-genocide-convention/>
[77]シン、A 2021、「偽の大学、中国を“罰する”ためにロビー活動を行っているネオコン信奉者がもたらしたウイグルでの大量虐殺を主張する“独自の”報告書レポート」、グレーゾーン、2022年10月2日アクセス、<https://thegrayzone.com/2021/03/17/report-uyghur-genocide-sham-university-neocon-punish-china/>
[78]ウィドラ、E;ヘリング、T 2021、「投獄の状態:世界の実態2021」、刑務所政策イニシアチブ、2022年10月2日アクセス、<https://www.prisonpolicy.org/global/2021.html>
[79]ラティフ、O 2021、「中国、西側、ウイグル人:特別報告書」、カナダ平和会議、2022年9月25日アクセス、<https://www.canadianpeacecongress.ca/uncategorized/china-the-west-and-the-uighurs-a-special-report/>
[80]ウールフォード、K 2021、「新疆ウイグル自治区:偽情報の波に浮かんでいる」、チャレンジ、2022年10月2日アクセス、<https://challenge-magazine.org/2021/04/13/xinjiang-staying-afloat-in-a-wave-of-disinformation/>。
[81]「新疆ウイグル自治区:報告書と資料のまとめ(2020)」、チャオコレクティブ、2022年10月2日アクセス、<https://www.qiaocollective.com/education/xinjiang>
[82]ライプス、J 2020、「米国はETIMをテロリストから削除し、新疆ウイグル自治区の取り締まりに対する中国の口実を弱める」、ラジオフリーアジア、2022年10月2日アクセス、<https://www.rfa.org/english/news/uyghur/etim-11052020155816.html>
[83]チュウ、A 2021、「中国によって標的にされた2021年の過激派グループETIMは、アフガニスタンで活動し続けている―国連の報告書」、SCMP、2022年10月2日アクセス、<https://www.scmp.com/week-asia/politics/article/3143053/militant-group-etim-which-has-been-targeted-china-remains-active>
[84]「新疆ウイグル自治区のGDPは2014年から2019年(2021年)にかけて毎年7.2%成長」、新華社、2022年10月2日アクセス、<http://www.xinhuanet.com/english/2021-02/05/c_139724061.htm>
[85]「暴力的過激主義を防ぐための行動計画」、国連テロ対策事務所、2022年10月2日アクセス、<https://www.un.org/counterterrorism/plan-of-action-to-prevent-violent-extremism>
[86]ウェストン、D 2004、「グアンタナモ湾の米国の占領は違法であると、キューバ連帯運動の筆頭弁護士は主張」、2022年10月4日アクセス、<https://cuba-solidarity.org.uk/cubasi/article/32/us-occupation-of-guantanamo-bay-is-illegal-says-top-lawyer>
[87]マルティネス、C 2021、「左翼は、米国主導の中国に対する新冷戦に断固として反対しなければならない」、Ebbマガジン、2022年10月4日アクセス、<https://www.ebb-magazine.com/essays/the-left-must-resolutely-oppose-the-us-led-new-cold-war-on-china>
[88]ウッドワード、ジュード。『米国対中国:アジアの新冷戦?地政学的経済学。マンチェスター:マンチェスター大学出版局、2017年、p.281
[89]「新疆ウイグル自治区の再生可能エネルギーによる発電はAI技術を統合して即時に容量を把握する (2022)」、環球時報、2022年10月5日アクセス、<https://www.globaltimes.cn/page/202202/1252283.shtml>
[90]マータフ、D 2021、「太陽熱発電産業が新疆ウイグル自治区をやめるのがとても難しい理由」、ブルームバーグ、2022年10月5日アクセス、<https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-02-10/why-it-s-so-hard-for-the-solar-industry-to-quit-xinjiang>
[91]Chiu、D 2017、 「東は緑です:再生可能エネルギーにおける中国の世界的指導力」、国際戦略研究センター、2022年10月5日アクセス、<https://www.csis.org/east-green-chinas-global-leadership-renewable-energy>に
[92]エンジェル、R 2021、「米国は新疆ウイグル自治区の強制労働の懸念をめぐって中国の太陽熱発電板産業を標的にすることを禁止している」、ガーディアン、2022年10月5日アクセス、<https://www.theguardian.com/world/2021/jun/25/us-bans-target-chinese-solar-panel-industry-over-xinjiang-forced-labor-concerns>
[93]「マルコムXとディック・グレゴリー、オーデュボンボールルームで(1964年12月13日)」、マルコムXファイル、2022年10月6日アクセス、<http://malcolmxfiles.blogspot.com/2013/07/at-audubon-ballroom-dec-13-1964.html>
[94]フイ、M 2022、「中国の平均余命は現在、米国よりも長くなっている」、Quartz、2022年10月6日アクセス、<https://qz.com/china-life-expectancy-exceeds-us-1849483265>
[95]ジェン、W 2022、「習近平の記事は、共産党大会に先立って中国の方向性についての洞察を提供する。」、SCMP、2022年10月6日アクセス、<https://www.scmp.com/news/china/politics/article/3192677/xi-article-gives-insight-chinas-direction-ahead-party-congress>

関連記事

ポーランド上空で偽旗作戦? ミサイルに誤作動などはなかった。

<記事原文 寺島先生推薦>

A False Flag Over Poland? There Was No Missile Malfunction

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月3日



NATOをウクライナでの紛争に引き込もうとする明らかな陰謀は、この惑星上の全ての人類への直接の脅威となる。
 
 ウクライナのS-300地対空ミサイルがポーランド領内に着弾し、悲劇的にも2人が亡くなった話が明らかになる中、いくつかの動きが出現した。まずいくつかのNATO諸国(ポーランド、ラトビア、リトアニア、エストニア、チェコ共和国)が、パブロフの条件反射的な即刻の反応を見せて、結論に飛びつき、この事件はロシアのNATO加盟国に対する明らかな侵略行為にあたるのでNATOは何らかの措置を取るべきだ、と発表したのだ。 具体的には、NATOの対空防衛区域をウクライナにまで拡大、さらには ウクライナの上空の一部に、飛行禁止空域を設定することを求めたのだ。 2つ目の動きは、 ウクライナの権力構造の最高位の高官たちが、この事件に関わって示した混乱状態だ。その中には、ウクライナのヴオロデミル・ゼレンスキー大統領が、問題のミサイルの出処が、ウクライナであると認めることを拒否している状況も含まれる。

 これらのNATO諸国は、今回のミサイル事件を受けて、NATO憲章の第4条の適用を求めているが、彼らは事前にその発動を準備していたように思われる。また、今回のミサイル発射が、あたかもウクライナの高官の預かり知らぬところで、許可もなく実行されたようにも思える。ゼレンスキーやゼレンスキー配下の軍部の補佐官でさえも知らなかったかのように。

 そうなれば、今回の事件の捉え方は、ウクライナにとっての同盟国である北方のNATO加盟諸国は、ロシアとの戦争のネタを探しているだけだ、ということになる。その様は自ら崖から飛び込もうとするネズミのレミングの集中した激しさのようだ。どんな筋書きにも飛びつこうとしているからだ。たとえそれが、NATOのウクライナ干渉をあまり乗り気ではない加盟国でも実行できるように歪めて書かれていたとしても、だ。

 このような捉え方は、いまほとんどのNATO加盟諸国やその言いなりの西側メディアの速記記者のたちの間で広まっている説明と軌を一にするものだ。その中身は、ウクライナのS-300ミサイルがポーランドに着弾したのは悲劇的な事故だった、問題のそのミサイルはロシアによるミサイル攻撃の反撃のために発射された、しかしそのウクライナからのミサイル発射には誤作動のようなものが生じていた、その結果ミサイルは本来の軌道を外れ、最終的にはポーランドの農家の畑に落ちるという悲劇的な結末になった、というものだ。

 幾何学の基本的な知識でウクライナの防空戦域を捉えれば、このような説明は、精査に耐えうるものではないことがわかる。ロシアからウクライナに来るミサイルの軌道は、大まかに言って東から西の方向だ。それに伴い、ウクライナの防空体制は、西から東に向けた観点で取られている。そして、検知レーダーは、できるだけ遠くから、近づいてくる標的を検知できるよう設定されており、追跡レーダーに合図が送られるのは、地対空ミサイルを、設定された標的に導かせる必要が生じた時だ。そして、近づいてくるロシアからの標的物に対して発射されたS-300ミサイルは、大まかに言って西から東の方向に発射されると考えられる。 それは、そのミサイルが標的に向けて発せられたレーダーを辿るからだ。つまり、ウクライナのS-300ミサイルは、ポーランドに着弾したミサイルの軌道とは180度真逆の方向に発射されたであろう、ということだ。

 一般的な話をすると、ミサイルの誤作動が起こったり、レーダーの誘導を見失ったとしても、ミサイルは発射時の方向と同じ方向に飛んでいくものだ。このような状況を逸脱しているということは、ミサイルの翼面が誤作動を起こしたか、損害を受けたせいだ、と通常は考えられる。そうなれば、ミサイルは正しい軌道を維持できなくなり、統制を失い墜落するなどの事態が生じるものだ。ウクライナのS-300ミサイルがポーランドに到達するためには、完全に機能する空力制御装置が必要だった。つまりミサイルが誤作動を起こしたわけではない、ということになる。

 歴史的に見て、防空ミサイルは元来、陸への攻撃に陸から対抗する(地対地)ためのものだ。核兵器も搭載できるナイキ・ハーキュリーズミサイルは、このような地対地用ミサイルとして利用可能だ。イラクが使用していたソ連製のSA-2とSA-3ミサイルも、そのような地対地ミサイルだった。いっぽう、米陸軍や海軍が使用しているSM-6ミサイルは、 陸の標的も空の標的も両方攻撃できる。S-300ミサイルは、防空のための武器として製造されたものだ。(そのためこのミサイルの弾頭は比較的小さく、100~143キログラムの榴弾用になっている。)このミサイルは、地対地対応もできる。追跡レーダーを使って定められた方向に、ただ高度はミサイルが燃料切れになるまでに弾道が伸ばせるところに設定して、光線を放てばいいのだ。ミサイルは、光線が示した方向に飛び、定められた地点に落下する。

 ただしそうするためには、追跡レーダーの光線がたどらなければならない軌跡はロシアから近づいてくる標的の方向、つまりポーランド側とは、真逆の方向をむくことになる。

つまり、ポーランドに着弾したウクライナのS-300ミサイルは、事故の結果そうなったのではなく、意図的にポーランド領内に着弾しようと発射されていた、ということだ。

 ポーランド側は、2名の死者を出したこの事件にかかわる状況を捜査中だ。S-300ミサイルの発射が意図的なもの(論理的に考えればその結論になるだろう)であったとすれば、ポーランドはウクライナ側を犯罪の加害者と見なければならない。そうなれば、ポーランドは、このミサイルの発射やこの事件に関わったレーダーの稼働をやめさせ、問題になっているミサイルの発射に関連した記録や数値を証拠品として提出させ、それをポーランド側の検察当局に渡すことを求めてもおかしくはない。同様に、このミサイル発射に関わったすべての関係者を拘束し、訓練を受けた犯罪捜査官にその人々の捜査をゆだねることも、要求していいはずだ。

 ウクライナのヴォロデミル大統領は、ウクライナが問題のミサイルを発射した事実を否定しており、その根拠は、空軍や軍の司令官の高官が提供した情報を信じているからだとした。ゼレンスキーの話が本当だとすれば、ウクライナ軍の幹部の中で陰謀があったということになる。その陰謀とは、偽旗事件をおこすことで、この紛争にNATOを引き込もうというものだ。ポーランドを襲った、このミサイルの発射の際に使用された指揮統制を調査すれば、この陰謀が指揮系統のどの程度の高い地位まで関わっていたかを突き止めることができるはずだ。

 同様に、問題のミサイルがウクライナからのものであることを自国軍が認識していたにもかかわらず、ポーランドやバルト諸国が、条件反射的な反応を見せ、ポーランドを攻撃した責任はロシアにあるという尚早な結論に飛び乗ったという流れからわかることは、この攻撃の加害者と、ロシアに対して即座に非難の声を上げた側との間には、事前に何らかの申し合わせがあった可能性があった、ということだ。

 今回のポーランドの事件をきっかけに、NATOとロシアの間の直接の軍事対決が起こってしまえば、米国とロシアの間での全面的な核兵器の応酬に発展してしまう可能性が生じることは、疑う余地もない。この陰謀に関わり、偽旗事件を使ってNATOをウクライナ紛争に引き込もうとしているウクライナやポーランドやバルト諸国のどの国も、この惑星上のすべての人類に対する直接の脅威を演出している、ということだ。

 米国も、この件に関して米国より責任が重いNATO同盟諸国も、ウクライナによるポーランドに対するS-300ミサイル攻撃の底で何が起こっているかを突き止める必要がある。そんな陰謀が本当にあれば、の話だが、この偽旗事件を使った陰謀を特定しそこない、そんな陰謀を芽のうちに摘んでおくことができなければ、このような陰謀に関わった勢力が、また同じことを繰り返すことは十分考えられる。彼らはNATOとロシア間の直接軍事衝突という自殺的な目的を果たすまでは、何度でもやるということだ。
関連記事

NATOが作り出した怪物フランケンシュタイン...ポーランドへの犯罪的な偽旗攻撃で暴かれたキエフ政権

<記事原文 寺島先生推薦>

NATO’s Frankenstein Monster… Kiev Regime Exposed in Criminal False-Flag Attack on Poland

出典:Strategic Culture

2022年11月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月1日


問題は、NATOに資金を出している勢力が、キエフで構築されたネオナチ勢力を今後どう扱うかだ。

 ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領は、今週、ポーランドのミサイル着弾事件に関して、明らかなウソをついているところを目撃されている。キエフ政権を支援している米国やNATO加盟諸国さえ、当初流れていたロシアを非難する主張を否認している。そのミサイルはウクライナから来たものであることを、NATOは認識しているのに、それでもゼレンスキーはそのミサイルはウクライナ軍からのものではない、と主張し続けた。明らかなことは、死者を出したこの事件が、キエフ政権による意図的な挑発行為であったことだ。その狙いは、戦争を激化させ、NATOとロシア間の全面戦争に発展させようというものだ。その結果が第3次世界大戦の勃発になるとしても、だ。

 キエフ政権には、挑発行為を行おうという習癖があり、そのことは文書でも残っている。西側メディアは、そのことを必死に隠そうとはしているのだが。西側メディアが見えないようにかぶせている布は、いまにもはちきれそうだ。それはウクライナのネオナチ政権が、調子に乗りすぎて、完全な犯罪行為をおこなっているからだ。

 2月24日に、モスクワ当局が特殊軍事作戦を開始して以来始まったこの紛争は、もう9か月間近く続いている。モスクワ当局が兵を出した理由は、ドンバス地域のロシア民族に対する恐ろしい挑発行為を終わらせるためだった。そして、NATOが支援するキエフ政権は、それ以外にも無数の犯罪的な挑発行為を行ってきた。それらの挑発行為の中には、3月の下旬にブチャで起こったような虐殺行為の実行や、ザポリージャ原発への砲撃や、「汚い核爆弾」を爆発させようというたくらみがあった。当ストラテジック・カルチャーが10月28日に出した週刊記事の見出しはこうだった。「キエフ政権の不当な手口や腐敗した状態からすれば、汚い核爆弾は、さもありなんである」

 今のキエフ政権は、汚い手口から生まれたものだ。2014年12月、マイダン広場で狙撃手が起こした、ウクライナ国民や警察官に対する虐殺事件が、最終的にクーデターにつながったのだから。

 今週起こった事件は、オランダの法廷が、2014年のマレーシア航空機撃墜事件の犯人はロシアであるとの判決を出した事件とも重なる。289名の乗客が空中に吹き飛ばされた、この事件の真犯人は、キエフ政権の軍であったのだ。キエフ側が、その責めをロシアが支援するドンバスの分離主義者のせいにしようとしていたのだ。

 このような汚い手口の目的はすべて、「残虐行為を行った」としてロシアを犯罪者扱いし、戦争を激化させ、米国や米国のNATO同盟諸国からの軍事支援をさらに増やそうというものだ。西側諸国や、その言いなりの企業メディアがこの喧伝(けんでん)に完全にひたって、ロシアを悪魔化しようとしてきた。常にというわけではないにしても。

 今週、ミサイルがポーランド東部ルブリン地方のプシェドヴフ村に着弾し、二名の市民が亡くなった11月15日、キエフ政権は即座にロシアを非難した。喜劇役者から転身したゼレンスキー大統領は、この事件を「テロ行為」だとし、NATOに対する攻撃であり、NATOが集団防衛規約の発動に当たる行為であると述べた。ゼレンスキー政権のドミトロ・クレーバ外相は、NATOに対して強い口調で要求したのは、ウクライナ上空に「飛行禁止区域」を設定し、F-15およびF-16戦闘機を供給することだった。

 あのミサイルと同様に、このような冷静さを失した主張は、完全に信頼性を欠くものだ。ロシアによる空爆は、ウクライナとポーランドの国境地帯において、そのとき全く行われていなかった。弾薬の破片を映した動画からも、そのミサイルはキエフ政権軍が発射したS-300防空ミサイルであることがすぐに推測できた。

 ただし注目すべきは、ゼレンスキーが扇動的な主張をしたにもかかわらず、その主張は、米国のジョー・バイデン大統領や国防総省やNATO諸国の指導者たちから即座に反駁されたことだ。彼らは皆ポーランドに着弾したミサイルは、ロシアの武器ではなく、ウクライナの防空砲台から発射されたものだ、と断言した。そしてそのミサイルは、対象を誤り、事故的にポーランド領内に着弾した、とのことだった。

 しかしそんな愚かな説明さえ、全く信頼できるものではなかった。なにより、ロシア軍はその地域を精密誘導ミサイルの標的にはしていなかった。ロシアから飛んでくるロケットなどなかったのだ。では、ウクライナのS-300ミサイルは、何を目標にして発射されたのだろう?S-300がウクライナの西にあるポーランドの方向に発射されたという事実からわかることは、その発射は意図的なものであり、ウクライナにとっての隣国でNATO加盟国であるポーランドを狙ったものだったということだ。

 キエフ政権の主張が、米国や他のNATO諸国から即座に否定されたという事実が明らかにしたことは、ゼレンスキーやゼレンスキーの内閣が嘘つきだ、ということだけではない。この事実が意図せぬ形で明らかにしたもう一つの事実は、ゼレンスキーやゼレンスキーの内閣が犯罪的なおとりの手口を使うものたちで、喧伝や政治的な都合という理由で、一般市民を殺害することも辞さないようなものである、ということだ。

 ワシントン当局やワシントン当局の欧州の諸属国は、ある事実をおそらく実感し始めたのであろう。それは、自分たちがフランケンシュタインのような怪物をキエフで作ってしまったことだ。そしてこの怪物が持つ犯罪性や腐敗は、際限がないのだ。米国とその帝国の下っ端たちが、地政学的な支配という大きな枠組みの中で、ロシアを弱らせ、隷属させたいと考えていることは確かだ。しかし、覇権者になろうとしているこれらの傲慢な輩たちでも、第3次世界大戦は、勝者を生まない狂気の行為になることをきっとわかっているはずだ。キエフ政権は、米国やEUから出せるだけの支援をむしり取って、NATOの軍産複合体にとって素晴らしい大儲けの機会を作り出したのだ。しかしこのキエフ政権の捨て鉢的な行為や無謀な企みは、第3次世界大戦を引き起こしかねず、さすがの西側諸国の資金提供者たちにもやり過ぎに映っているようだ。

 重要なことは、その後ワシントン当局が、キエフ政権をなだめて、ロシアと和平交渉を持たせようとする動きが見えたことだ。統合参謀本部長である、米国の最上位の司令官マーク・ミレー将軍が、キエフ当局に対して、「和平を構築する機会を掴む 」よう促したのだ。

 それとは別に、 深い洞察力を持つ独立系メディアの分析家である、 スコット・リッターやダグラス・マクレガーが、ロシアにはこの紛争を優位に進められる決定的な手段があることを指摘している。戦争が長引き、季節が冬に突入すると出現する真の恐怖は、NATOやその他欧米の同盟諸国が、経済不況による圧迫と歪みのせいで崩壊するかもしれない、というものだ。 だからこそ、米国とNATO加盟諸国の指導者たちが、 この戦争から抜け出したいという圧力を感じ始めているようなのだ。

 特筆すべきは、キエフ政権がモスクワ当局と和平についての話し合いをもつことを提案されたことに対して、激しく食ってかかっていたことだ

 このことは、なぜゼレンスキーとその徒党がポーランドにミサイルを打ち込むという危険な行為に打って出る決定をしたのか、の説明になるだろう。プシェボドゥフ村が標的に選ばれたのは、犠牲者を最低限に抑えるための暗黙の了解だったのだろう。そうとは言え、意図的な殺人を犯すことは、 この上なく見下げ果てた、とんでもなく悪い行為であることには間違いはないことだが。

 問題なのは、このウクライナの内閣が、こんなにも腐敗していて、手が付けられない状態になっていて、十分考慮することもなく、このような明らかな犯罪行為を行っている現状だ。今回のミサイル攻撃は、逆にキエフ政権の犯罪性をはっきり浮かび上がらせるという結果に終わってしまった。

 問題は、NATOに資金を出している勢力が、キエフで構築されたネオナチ勢力を今後どう扱うのか、ということだ。明らかにキエフ政権は、西側諸国にとって、制御不能で信頼できないものになっている。西側諸国は通常戦でロシアに勝てないことはわかっているし、核戦争になればなおのこと勝てないとわかっている。そうであれば、この先何らかの形で、ゼレンスキーとその取り巻き連中の排除劇が見られるのだろうか? 外国にいるご主人様たちには、ゼレンスキーたちが手に負えなくなってきたのだから。

 歴史が示していることは、西側陣営がナチスやファシストを自分たちの代理戦争の執行者として利用してきた過去があることだ。そしてその戦争の標的は、ソ連などの敵国だった。しかし西側は最後には、これらのナチスやファシストを切り離してきた。それはこれらの勢力が、西側陣営にとって利用価値がなくなった、あるいは威圧的になりすぎたからだった。
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