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NATOファシズムの歴史--大英帝国の「冷酷さ」に憧れたヒトラー、ナチスを影で支援し引き継いだ米帝国

<記事原文 寺島先生推薦>
NATO’s Fascist History – INTERNATIONALIST 360° (wordpress.com)
(NATOのファシズムの歴史)

投稿者: INTERNATIONALIST 360°

投稿日: 2022年4月28日

筆者:ティム・アンダーソン(Tim Anderson)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月28日


ウクライナにおけるNATOのナチス準軍事組織

 近年、NATO(本質的には米国と西欧)は、4つの大陸にまたがる複数の介入を通じて、そのファシストの本性をむき出しにしてきた。NATO諸国は、ベネズエラ、ホンジュラス、ボリビアでファシストのクーデターを支援し、数十カ国に経済封鎖を課し、リビア、イラク、シリア、ナイジェリアを不安定にするためにアルカイダ/ISIS/ボコ・ハラム宗派テロを扇動し、現在は公然とウクライナのネオナチを武装化している。

 これらのことは、NATO諸国が盛んに宣伝している自分たちの姿、すなわち自分たちは自由主義と民主主義的価値のお手本であり、自由や民主主義について他国に説教さえしているという姿と矛盾しているように思える。NATOは、ファシズムと共産主義の両方と戦ってきたと主張している。しかし実は、20世紀のファシズムの基礎を築いたのは、欧州と北米の帝国主義と植民地主義であった。

 第2次世界大戦―7000万人以上の命を奪った大規模な紛争―以来、ワシントンも欧州も、その大戦で他のどの国よりも多くの命を失ったソ連(主にロシア)と中国の両国の貢献と犠牲を隠すために多大な努力を重ねてきた。

 実際、2019年に欧州議会は、ヨシフ・スターリン率いるソ連と、アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツの両方を、第2次世界大戦の共同責任者として非難するまでに至っている。その決議は、「第二次世界大戦は......1939年8月23日の悪名高いナチス・ソ連不可侵条約の直接的な結果として始まった」と主張したのである。

 この主張には、相手を冷笑しているとまでは言えないが、異常な自己欺瞞がある。社会主義指導者スターリンと毛沢東が道徳的観点から見て西欧のファシスト、アドルフ・ヒトラーと同等であるという何十年にもわたって提示されてきた長い広報活動の成果がここまで来たということだ。

 この欺瞞は、スターリンと毛沢東が何百万人もの死者を出す飢饉を引き起こしたという誤った主張を利用したものである。実際、ウクライナと中国での飢饉は、社会主義以前から起こっていた長い飢饉期の最後の波がきていたものであった。米国の歴史家グルーバー・ファーは、ウクライナの「ホロドモール」飢饉はスターリンによる意図的な行為だったという神話を否定している。

 同様に、第2次世界大戦が独ソの「不可侵条約」の「即時結果」であるという主張も全くの虚偽である。これ以前に欧州では、ナチス・ドイツとの間で同様の協定がいくつも結ばれており、より実質的なものもあった。

 例えば、1935 年の英独海軍協定はドイツの艦隊再建を支援し、1938 年のミュンヘン協定では英仏伊がチェコスロバキアの一部に対するベルリンの領有権を認めた。さらに、ドイツ、スペイン、イタリアの間で、独伊鉄鋼協定を含む積極的なファシスト協働が行われた。

 ヨーロッパのファシストの協力関係の多くは、1936年にナチス・ドイツと日本が共産主義国家に対抗するために結んだ「反共協定」に集約される。この協定は、後にイタリア、ハンガリー、スペイン、そして戦時中にはブルガリア、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ルーマニア、スロバキアの支持を得ることになった。1930年代から1940年代にかけて、ヨーロッパではファシズムが猛威を振るっていた。ナチス・ドイツとのヨーロッパの主な協定は以下の表1の通りである。

表1 ヨーロッパのナチス・ドイツとの主な合意事項

1933年7月20日
バチカンとのコンコルダート(政教協定)
相互承認と不干渉
https://www.concordatwatch.eu/reichskonkordat-1933-full-text-k1211

1933年8月25日
ドイツ系ユダヤ人シオニストとのハーヴァラ協定
パレスチナへの資本と人材の移転に合意
https://www.jewishvirtuallibrary.org/haavara

1934年1月26日
ドイツ・ポーランド不可侵条約
ポーランドがフランスと軍事同盟を結ばないようにするため
https://avalon.law.yale.edu/wwii/blbk01.asp

1935年、6月18日
英独海軍協約
イギリスは、ドイツが海軍をイギリスの35%の規模に拡大することに同意した。
https://carolynyeager.net/anglo-german-naval-agreement-june-18-1935

1936年7月
ナチス・ドイツ、スペインのファシストを援助
ヒトラーはフランコ将軍を支援するため、航空隊と機甲部隊を派遣。https://spartacuseducational.com/SPgermany.htm

1936年
ローマ・ベルリン枢軸合意
イタリア-ドイツのファシストと反共産主義の同盟。
https://www.globalsecurity.org/military/world/int/axis.htm

1936年10月-11月
防共協定
1936年にナチスドイツと日本が主導し、後に欧州の9カ国が参加した反コミンテルン協定。イタリア、ハンガリー、スペイン、ブルガリア、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ルーマニア、スロバキアの9カ国が参加した。

1938年9月30日
ミュンヘン条約
イギリス、フランス、イタリアがドイツのスデテンランド(チェコ)の領有権を認める。
https://www.britannica.com/event/Munich-Agreement

1939年5月22日
鋼鉄協定
1936年のイタリア・ドイツ協定を統合する。
https://ww2db.com/battle_spec.php?battle_id=228

1939年6月7日
ドイツ・ラトビア不可侵条約
ナチス・ドイツとの和平を模索。
https://www.jstor.org/stable/43211534

1939年7月24日
ドイツ・エストニア不可侵条約
ナチス・ドイツとの講和を求める。
https://www.jstor.org/stable/43211534

1939年8月23日
ソ連(モロトフ・リッベントロップ)独ソ不可侵条約
ナチス・ドイツとの和平を求め、勢力圏を定めた議定書。
https://universalium.en-academic.com/239707/German-Soviet_Nonaggression_Pact

ファシズムとは何か?

 この言葉はあまりに頻繁に使われるが、本来の意味がきちんと伝わっていないようである。ファシズムを定義する際は、20世紀のファシズムの歴史に囚われずに、概念的要素を特定する必要がある。

 ファシズムとは、私的な資本主義寡頭政治に関与する、重度の軍国主義、反民主主義、人種差別主義的な植民地体制のことである。ファシズムの第一義は、帝国諸国による所業を指すが、二次的な形態として、ブラジルやチリなどの旧植民地で見られたような、旧植民地の支配者層がその時々の帝国権力と一体化したファシズムも存在する。ファシスト政権は、社会主義や独立国家、人民に対して特に敵対的である。極右政権と異なるのは、極右政権は社会的・政治的民主主義の痕跡を公然と押しつぶす点だけである。帝国的な文化と介入は、常に、どこでも、領内の市民の民主主義と市民に対して責任を負う可能性を否定するので、本質的にファシズムであり、現代のファシズムの根底に残っているものである。

 NATOのファシズムは、欧州諸国の多く(すべてではない)の帝国と植民地の歴史によって築かれた。そこでは、人種と人種的優越性に関するでっち上げられた理論によって、地元の共同体と国家の圧殺が正当化されていた。この植民地を基盤としたファシズムの歴史を否定することにより、ロシアのドキュメンタリー番組が言うように、ヒトラーの台頭は「欧州の民主主義国家の非典型的なものであり、総統の優劣人種の教義は、むしろ不運な成り行きで、欧州で空中から現れた」のだという示唆を生んできたのだ。

 しかし、実際は、ナチス・ドイツのファシズムは、欧州の植民地の歴史と文化に深く根ざしていた。ゲルウィン・シュトロブルの著書『ゲルマン島』が指摘するように、アドルフ・ヒトラー自身、大英帝国の「冷酷さ」を高く評価し、そのような成果を夢見ていたのである。一方、米国は、人類史上最大の奴隷経済を営みながら、「自由」の神話を築いた。ラテンアメリカの偉大なレジスタンス指導者シモン・ボリバールが2世紀前にこう述べていた。「米国は自由の名の下に米国を不幸に陥れるよう、神の摂理によって運命づけられているようだ」。

 第2次世界大戦の前、間、後に、ナチス・ドイツに対する欧州の「宥和政策」を超えるファシストに対する欧州と北米の積極的な協力があった。

 まず、1935年の英独海軍協定は、1919年のベルサイユ条約によるドイツ艦船と潜水艦の制限を破って、ドイツ海軍をイギリスの数分の一に抑えるふりをして、ナチス・ドイツの再軍備を助けた。その後、いくつかの北米企業、特にゼネラルモーターズ、フォード、IBMが、ナチス政権の経済、インフラ、軍事に直接投資した。北米と英国には有力なナチス崇拝者が多くいた。第二次世界大戦の寸前、イギリスの銀行家は第三国(チェコ)の金(きん)をナチスの支配する銀行に流した

 フォードはドイツと占領下のヴィシー・フランスの自動車工場を通じて、第2次世界大戦前から戦時中までナチスの戦争機構を援助していた。フォードはナチスの強制収容所のドイツ人奴隷労働者を利用したが、後に同社はこれらの労働体制を制御できなかったと不満を漏らした。フォード社がこの疑惑から逃れようと奮闘する一方で、ポーランド政府関係者や元受刑者は、フォード社を「(ナチスの死のキャンプの)アウシュビッツの奴隷労働者とつながりのあった500社のうちの1社」と名指ししている。ルーズベルト政権に近い「ニューディール」企業であるIBMも、1930年代から戦争初期にかけてナチス・ドイツに投資し、ナチスの情報システム構築に協力した。

 スイスは、第2次世界大戦の前も対戦中も、ナチスに数百万ドルの武器を売っている。中立を装っていたにもかかわらず、1940年から1944年にかけて、「スイスの軍需品輸出の84%が枢軸国へ輸出された」という。しかし、研究者のブラッドフォード・スネルによれば、「ナチスの戦争機構にとって、スイスよりもゼネラルモーターズの方がはるかに重要であり、GMはドイツの戦争遂行に不可欠な存在であった」。

 北米とヨーロッパのナチスへの投資と協力は、第二次世界大戦中も続いた。その一因は、1940 年から 1942 年にかけての「戦争のための産業基盤の拡大を主目的とした壮大な投資ブーム」に参加しようとしたことであった。それが、フォードとGMにヒトラーとの協力関係を維持させることになったのは間違いない。

 1939-40年、ナチス・ドイツが西欧の大部分を侵略したとき、ベルリンは欧州の多くのファシスト国家や協力主義国家、そして民間のボランティアからの支援をあてにしていた。ナチス・ドイツは、ファシスト・イタリアとの同盟と並んで、フランコ将軍は中立政策を取っていると言われていたにも拘わらず、ファシスト・スペインの支持も当てにすることができた。

 そして、ナチスによって設立された傀儡ファシスト国家には、ヴィシー・フランスノルウェーのクヴィスリング政権があった。ドイツ軍は、オランダクロアチアアルバニアに、何万人ものファシスト志願者を集めて、複数のSS師団を創設した。第一次世界大戦の英雄マーシャル・ペタン率いるヴィシー・フランスは、人種差別的な反ユダヤ法(Statut des Juifs)を制定し、ユダヤ人をフランスにおける二級市民とし、ナチスの略奪に容易にさらされるようにした。ヴィドクン・クヴィスリングのファシスト政権も同様に、地元の親衛隊への参加を奨励し、ユダヤ人の国外追放に手を貸し、ノルウェーの愛国者を処刑した。

 デンマークのクリスチャン10世はユダヤ人社会と友好的であったかもしれないが、ナチスには立ち向かわなかった。クリスチャン王が「デンマークのユダヤ人と連帯してダビデの星(ユダヤの象徴)をつけた」と間違って主張されることがよくある。これはまったくの誤りである。実際には、デンマークの政権はレジスタンス活動に反対し、ナチスと情報を共有していた。この協力の要因のひとつは、デンマークが「厳密にはドイツの同盟国」であったことだ。独の圧力によって、彼らは防共協定に署名していたのだ。この負の歴史を消すため に多大な努力がなされたが、2005年、デンマークのラスムセン首相は、少数民族やレジスタンスの人物をナチス・ドイツに引き渡し、その多くが死に追いやられたことをデンマークを代表して謝罪している。

 バルト三国のすべてで、実質的なナチスへの協力が行われた。ラトビア、リトアニア、エストニアにはすべて親衛隊の部隊があった。彼らは、ウクライナの超民族主義的なナチス協力者とともに、共産主義者、ユダヤ人、ジプシーに対する地元の虐殺に重要な役割を果たした。

 1941年から1944年にかけて、ウクライナでは数十万人が虐殺された。その多くは、ステパン・バンデラのような地元の超民族主義的なナチス協力者によってであった。ロシアの歴史家レフ・シムキンは、「実は、ユダヤ人のホロコーストは、1941年6月のソビエト連邦侵攻とともに、ウクライナで始まった」と言う。大量殺戮は、危険なボルシェビキのユダヤ人に対するヒトラーの偏執的な見方と結びついていた。キエフ、リヴォフ、ケルソンなどウクライナ各地で行われたユダヤ人の大量殺戮は綿密に計画されていた。これらは、現在ロシアがウクライナのネオナチと戦っている地域の一部である。第2次世界大戦中、ウクライナの戦前のユダヤ人人口約150万人のほとんどが「一掃された」。

 学術的な研究により、「ホロコーストにおけるユダヤ人殺害にバルト諸国の国民が大量に参加していた」ことが判明している。ラトビア、リトアニア、エストニアで何万人ものユダヤ人が殺され、その多くが地元の人間の手によって殺された。このようなファシストとの共同作業の醜い歴史が暴露されたことに対し、強い反発が起きている。例えばリトアニアは、ユダヤ人パルチザンの戦争犯罪を非難することで、「ナチスとの醜い協力の歴史」を隠そうとしたと言われている。

 欧州全土で、ファシストの虐殺への大規模な参加があった。ハンガリーでは、ナチスの指導者アドルフ・アイヒマンが40万人以上のハンガリー系ユダヤ人を死の収容所に送るのに「ハンガリー当局の協力に依存した」と言われる。

 これらのことは、欧州と北米の側から見れば、第2次世界大戦はこれらの国家がファシストの「枢軸」との戦いだったとはいえ、基本的にはファシズムに対する戦いではなかったという事実を強調している。この戦争はむしろ、帝国諸国間の競争であったと言える。つまり、ヒトラー率いる枢軸国側が、自給自足に必要な「生活空間」(lebensraum)となる植民地を求めて東征しようと決意したために起こった戦争だったのだ。これに対抗した東欧とロシアの愛国者たちの闘い、そして西側諸国のレジスタンスの多くは、確かに反ファシストの戦いであった。しかし、西側諸国を指導した人々は、理想主義者ではなかった。

 第二次世界大戦後、米国はすぐに、新興の社会主義圏に対する「冷戦」の中で、ナチスの科学技術を利用しようとした。連合国はギリシャの反ファシスト勢力を壊滅させ、西ドイツを軍事的に占領した。いっぽうソ連は、特にバルト諸国、ウクライナ、ドイツ東部など、ファシストの敵と最も深く結びついていた近隣諸国を支配することが確実となった。

 米国は、ナチスの科学者を秘密裏に自国の戦争機構に採用するプロジェクトを開始した。北米がドイツのロケット専門家ヴェルナー・フォン・ブラウンを利用したことは、平和的なアポロ宇宙計画との関連でよく引き合いに出される。しかし、フォン・ブラウンはSSの将校であり、強制収容所から奴隷労働者を集めていた人物だった。米軍はロケットとミサイルの専門家として彼が必要だった。秘密裏に行われたが、今では悪名高くなってしまった「ペーパークリップ作戦」では、何千人ものナチスの科学者が、米軍を強化するために採用され、米国に安全な避難場所を与えられていた。国防総省は、ナチスが「神経ガスの全兵器」を開発したことと、ヒトラーが「ペスト兵器」の開発に取り組んだことに、特に関心を寄せていた。

 米国は大量破壊兵器(WMD)を保有する他国に対して後に不満を漏らしたが、米軍はあらゆる種類のWMDを自由に使えるようにしたかったのである。そして、韓国やベトナムでの生物・化学兵器による攻撃や、日本の広島と長崎という民間都市に対する無慈悲で恐ろしい核兵器の「公開実験」攻撃が示したように、民間人に使用する用意があったのである。しかし、二枚舌の達人であり、「もっともらしい否認」の原則で、米国当局は自らの残虐行為を可能な限り隠している。

 第2次世界大戦後、支配的な大国となった米国は、アメリカ大陸のほとんどの国に介入するために、侵略、クーデター、汚い戦争といったファシストの戦術を使っていたが、同じ手法を他の大陸でも使い始めた。朝鮮半島での恐ろしい戦争は、半島南部での米軍の永久占領につながり、イランの民主政権は1953年に転覆させられ独裁政権が生まれた。ベトナムの人々に対する米国の次の恐ろしい「反共」戦争は失敗に終わったが、数百万人が虐殺された後だった。

 21世紀には、アメリカ大陸で最大の石油生産国であり、米国の戦争機構を動かすために歴史的に重要なベネズエラに対して、ワシントンは複数のクーデター未遂を支援した。2002年、米国とスペインが支援したクーデター計画者たちは、当選したウゴ・チャベス大統領を誘拐し、辞任したと偽って、憲法を破り、選出された国民議会を解散させ、商工会議所の代表者ペドロ・カルモナを大統領として発表した。カルモナは2日しかもたなかったが、その後、何度もクーデターを試みた。これは純粋なファシズムであった。ベネズエラは、米国が支援する執拗なファシズムから自国を守るためには、大規模な民兵を擁する強力な国家が必要だと判断した。

 同時に、世界における支配的な役割の喪失を恐れた米国は、イラン、ソ連の後のロシア、中国の影響力の増大を抑えようと、中東で複数の戦争を開始した。パレスチナ、アフガニスタン、イラク、レバノン、リビア、シリア、イエメンに対する戦争は、この記事の主題ではない。しかし、米国とNATOが大規模な代理軍を使用していることを見ておくことが必要である。これらの代理軍は、アルカイダやISISのように、サウジアラビアによって偏狭な宗教的イデオロギーを吹き込まれた勢力であり、さらにこれらの代理軍は西アジア地域を横切ってアフリカ大陸に入り、そこでは「ボコ・ハラム」として代理戦争を行っている。

 ロシアのウクライナに対する2022年の報復戦争―ウクライナ東部のロシア語を話す住民に対する2014年以降の戦争と、ロシアの不安定化と弱体化を意図したNATO軍の増強によって引き起こされた―には、米国のファシストの手法と欧州の古い植民地主義の組み合わせが見て取れる。米国は「自由」についての二枚舌を維持し、欧州はより劣った人間階級について語る。ウクライナでは、アゾフや右派セクターなどの超民族主義者は自分たちのことをロシア人、ユダヤ人、ポーランド人を殺したいと思っているナチスと呼んでいる。そしてNATOとそれに組み込まれたメディアは、この醜い現実を隠そうとする。

 例えば、ドイツと欧州連合の高官であるフローレンス・ガウブは、ロシア人の人間性を奪うために人種差別的な言い回しを使っている。「たとえロシア人がヨーロッパ人に見えても、文化的な意味で彼らはヨーロッパ人ではない。彼らは暴力や死に対して違う考え方をする。彼らは、リベラルでポストモダンな人生、つまり各個人が選択できる人生という概念を持っていない。 ロシア人は、死んでとっと人生を終わらせればいいと考えているのだ」。批評家たちは、これをナチスの「ウンターメンシェン」つまり劣等人種という概念に回帰したドイツ的なものだと評している。

 ウクライナ危機という新たな状況下で、21世紀型ファシズムが頭角を現しているのだが、21世紀型ファシズムも、20世紀型ファシズムの主要な要素を引き継いでいるものだ。すなわち、帝国主義、重軍国主義、根深い反民主主義、人種差別的な植民地体制が、私的資本主義寡頭制に組み込まれている体制なのだ。21世紀型ファシズムは、その親である20世紀型ファシズムと同様、有毒な2次的ファシズムを生み出している。今も昔も、世界帝国の所業は、すべての民主的人民にとって最大の敵であり続けているのである。
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上海のロックダウンがやり過ぎではない理由はウイルスそのものにある

<記事原文 寺島先生推薦>
The Shanghai Lockdown. Seen from Another Angle
(上海のロックダウンを観点を変えて見てみる)

出典:Global Research  

2022年4月22日

著者:Peter Koenig (ピーター・ケーニッヒ)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月30日


 
 世界のほぼ全てが中国を非難し、人権侵害行為を行っているとして厳しく批判している。具体的には、人口2600万の上海で、たった2万6千件の「新型コロナウイルス」の陽性患者が出ただけなのに、という批判だ。確かに一見尋常ではない措置に思えるし、かなりのやり過ぎではないかともとれる。

 しかし一度振り返ってみよう

 2002年~2004年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行を覚えておいでだろうか?

 およそ8千人が感染し、死亡件数は774件だった。症例と死亡事例のほとんどは中国本土と香港で発生し、台湾でも何例か、日本や米国で少し、それ以外世界20か国以上で症例が出たことが明らかになっている。

 注目すべき点は、すべての「症例」が中国人の遺伝子を持つ人々に現れたことだ。別の言い方をすれば、このウイルスは「中国人種」に狙いを定めて攻撃を加えたということだ。つまりこのウイルスは中国や中国国民を標的にこしらえられたウイルスだったのだ。

 「偶然にも」、その数年前の1999年と2000年に、中国政府は何百人もの西側の「科学者たち」を検出している。特にハーバード大学など西側の著名な学術機関や研究所からの科学者たちだった。これらの科学者たちが中国の地方部の人々からDNAを回収していた。それは特に中国の北東地域でのことだった。

 これらの「科学者たち」は中国の国民を雇い、様々な地域の人々の血液資料を回収する手助けをするよう金を支払っていた。このような西側の科学者たちは発見されればすぐ追放されたが、時既に遅し。これらの科学者たちは中国人から採取した何千人もの血液資料を既に密輸していた。こちらの記事を参照。

 これらの血液資料が後に利用され、中国人の遺伝子を標的にした特殊なコロナウイルスが作られた。その結果引き起こされた2002年から2004年の中国でのSARSの流行は、ただの実験だった。もっと酷いことはその後に来ることになっていた。

 2019年10月18日にニューヨーク市で開催されたイベント201のことを覚えておいでだろうか?このイベントはビル&メリンダゲイツ財団が資金を出し、世界経済フォーラム(WEF)やジョンズ・ホプキンス大学医療安全保障センターが開催したイベントだった。

 このイベントには、世界の主要な人物や団体が参加していた。具体的には、世界銀行、IMF(国際通貨基金)、国連、国連の諸専門機関、ユニセフ、もちろん世界保健機関もだ。さらには主要な諸銀行や金融機関、CDC(疾病予防管理センター)、 FDA(食品・医薬品局)などの米国の主要な医療諸機関、中国のCDCまでもがこのコンピューター上の演習に参加していた。 この演習では、世界で6千万人が2~3年の間に死亡するものとされていた。こちらの記事を参照。

 中国当局は特定の人種を標的にしたウイルスの存在をはっきりと認識していたので、2020年が始まって直ぐにSARS-Cov-2ウイルスが武漢を襲った時、警戒態勢に入った。中国の対応は論理的で、素早く、厳格だった。中国は即座に武漢(人口1100万人)だけでなく、上位区分である湖北省(人口約5千万人)をもロックダウンした。 なお武漢市は湖北省の省都である。 さらに中国国内の他の諸地域でもSARS-Cov-2ウイルスが検出されれば、すぐにロックダウン措置が取られた。つまり後にWHOにより「Covid-19」という都合のいい名称が付けられたこの病気に対して中国当局が取った「蟻の子1匹も通さない」姿勢はここから始まったと言える。さらに覚えておいて欲しいのは、Covid-19、言い換えればSARS-Cov-2ウイルスが新種のウイルスとして単離されたり、特定されたことは一度もないという事実だ。

 特定の遺伝子や人種を標的にしたウイルスであるということを承知していた中国が自国民を守るためにとった反応は、論理的であり早急だった。 そして実際、この蟻の子1匹も通さない対応のおかげで、中国はほぼ6-8ヶ月で、この病気をほぼ克服できたのだ。 この厳しいロックダウン措置の間、中国の8割程度の工業団地は麻痺した。しかし2020年の下旬までには中国のほとんどの生産業や、工場や、運輸業や、農業は再び活気を取り戻した。

 中国当局がとったこの厳しい措置こそが、中国経済がこの新型コロナの流行中もほとんど苦境に陥らなかった主要な要因だ。実際、IMFは中国の2021年の成長率は1.2%と見ていたし、中国自身も 3.5%の成長率であるとの見通しだった。しかし2021年の中国の成長率は5.5%を記録した。中国が示したこの成長と、その結果生じた可能な輸出量の増加のおかげで、多くの国々、特にアジア大陸の国々がコロナのせいで失ったものを取り戻し、経済を前に進める助けとなった。

 1949年の毛沢東の共産主義革命以来ずっと、中国は西側資本主義者たちにとって目の上のたんこぶだった。中国が次第に、経済面においても、戦略的な面においても、超大国へと成長していく中で、中国への攻撃や西側による制裁措置も大きくなっている。国際法や人権から見て、どれだけ不法であるかなどは関係なく、 米国が主導する西側は執拗に中国に対して経済制裁を課してきた。そしていうまでもなく、中国に最も近い同盟国であるロシアに対しても同じ対応をとってきた。

 これらの制裁にもかかわらず、中国は間もなく(遅くともここ3~4年以内のことになるだろう)米国経済を凌駕するだろう。実際経済状況を示す唯一の正しい指標であるPPP(購買力平価。ある通貨で購入可能な商品の価値のこと)の値でみれば、中国は数年前に既に米国を凌駕している。

 中国は未完成の重要な物品や、完成後の物品の供給網だ。これらの物品は西側が消費財を回し、消費者を満足させるために必要なものだ。他方ロシアは、広大な領地で豊富な天然資源を産出し、最大の天然資源供給国となっている。この天然資源は、西側がのどから手が出るほど欲しがっている商品の生産に必要とされている。

 中国もロシアも、経済的にも戦略的にも、西側にとって不可欠な存在だ。しかもこの両国は密接な同盟関係にある。両国は西側が優位を維持するのに脅威となっている。西側はこのような状況には耐えられない。というのも西側の体は支配欲という細胞でできているからだ、南の発展途上の国々が西側の植民地であった数千年の歴史をたどれば、それは一目瞭然だ。 
 絶対に提携すべき両国との協力関係を模索するのではなく、西側が求めているのは、制裁や物理的な戦争を駆使して、両国を支配し、完膚なきまで叩きのめすことだ。西側最大の戦争機関であるNATOは手を抜くことなく、ロシアと中国を脅し、屈服させようと企んでいて、この両国の国境付近に侵入するだけではなく、NATOの軍事力を誇示し、両国の国境付近で軍事演習を行っている。中国が最近ロシアと協力してNATOのさらなる拡大に反対していることには何の不思議もない。両国が西側からの圧力に直面してさらに協力関係を強めている中でのことだからだ。

*
 そしてウクライナとロシア間の戦争が始まった。しかしNATOの拡張はこの戦争のひとつの原因に過ぎない。現時点で世界のほとんどは理解している。大手メディアでさえその秘密をもはや隠そうとはしていない。1991年のソ連解体の際、当時の米国国務長官のジェームス・ベイカー3世(James Baker III)と欧州の米同盟諸国が、当時のソ連・ロシア大統領のミハイル・ゴルバチョフと約束していたのは、NATOがベルリンよりも1インチも東に拡大しないということだった。

 この約束が交わされたのは、ドイツが東ドイツと再統合することとの引き換え条件だったからだ。さらには東ベルリンを西ベルリンに統合し、その統合されたベルリンを再びドイツの首都にすることもその条件に含まれていた。

 周知のとおり、この約束は無惨にも反故にされた。1991年NATO加盟国は16カ国で、そのうち2カ国がアメリカ大陸の国々(米国とカナダ)で、残り14カ国が欧州諸国だった。 その後30年ほど経過した今は、NATO加盟国は30カ国に達している。新しく加盟した14カ国は全て欧州諸国であり、NATO加盟諸国はロシア国境にどんどん近づいている。ウクライナは次のNATO加盟国の候補国だった。そのことはロシアには耐えられないことだった。

 ちょっと考えて欲しい。ロシアや中国がメキシコや中米に軍事基地を設置したらどうなるだろうか?米国はどんな反応を見せるだろうか? それを明らかに示したのが、1961年のピッグス湾事件だった。当時は米国大統領JFKとソ連のニキータ・フルシチョフ筆頭書記間のウィーン会議での交渉により、すべてを破壊することになる可能性のある核戦争への道が回避されたのだ。

 プーチン大統領が今考えている心配については十分すぎるくらい理解できる。それが、プーチンがウクライナへの侵攻を決めた理由の一つになる。もちろんそのことで戦争を正当化するわけでは全くないが、ロシアの反応の説明にはなる。

上海の都市封鎖措置における点を線で結ぶと

 実は、プーチン大統領がウクライナ侵攻に至った理由には、NATOの拡張よりも重要だと思われる理由があるのだ。それはウクライナに米国が資金を出した20~30カ所の生物研究所が、戦争のための研究を行う(第3級の)生物研究所であることだ。これらの生物研究所が建てられたのはここ20年ぐらいの間のことで、そのほとんどは西側が主導した2014年2月のマイダンでのクーデター以降に建てられたものだ。なおこのクーデターがウクライナの、そしてウクライナとロシアとの間の現状のさきがけとなったのだ。

 国家安全保障上の理由で、ロシアはこれらの恐ろしい研究所を抑え、さらにはおそらく破壊する必要がある。そうするため侵攻が必要だったのだ。西側がロシアの侵攻のきっかけとなるような挑発行為をしかけた時期、特にアゾフ・ナチス大隊が分離地域であるドンバス地域での一般市民の殺害行為を行った時期は偶然ではない。マイダンでのクーデターが起こってから8年間、1万4千人の一般市民が亡くなっており、うちほぼ3分の1が子どもであったという記録が残っている。この状況は世界経済フォーラムが掲げる「グレートリセット」の主張とぴったり合う。「グレートリセット」の目的は世界の全ての人々を支配することである。全国連加盟193カ国の人々を、様々な手段を使って支配しようというものだ。

 このグレートリセットが評判の悪い国連の「アジェンダ2030」の全貌なのだ。その手始めが、偽りの「対コロナ戦争」だったのだ。この戦争により、人々の恐怖を煽り、人々が本来持っている免疫力を低下させ、抵抗する気力をくじき、まるで羊の群れのように「ガス室」ならぬ「ワクチン室」に引っ張られることになったのだ。その部屋で人々は「抗新型コロナワクチン」と偽称されている薬品を接種されたのだ。そんな「ワクチン」の実の姿は、伝令RNA を使ったDNA書き換え薬品だ。しかも試用段階にある薬品だ。

 さらに、西側が製造しているワクチンは瓶により、内包されている生物・化学物質が異なっているのだ。酸化グラフェンという物質が含まれている場合もあるが、その最終目的は電磁波を使って人間の脳を操作しやすくすることだ。それは偶然にもクラウス・シュワブが描いている第4次産業革命の主張と同調する。その革命の最終目的はなんとか生き残ることができた人々を完全にデジタル化してしまうことだからだ。

 元ファイザー社の副社長であり、科学部長であったマイク・イェードン博士によると、このような偽ワクチンが人間の免疫系を大きく減退させる働きがあるとのことだ。男性や女性の自己免疫力は、1度目の接種で3割、2回目の接種でさらに3割低下し、いわゆる「追加接種」においてはさらに2割低下するとのことだ。つまり、ワクチンを接種し続けた人はここ1~3年以内に様々な病気に罹患すれば、死んでしまう可能性があるということだ。具体的には悪性ガン、諸種の心臓病などだ。しかしそうなった死因をワクチンに求めることは困難になるだろう。その一例としてこちらこちらの記事を参照。「コロナワクチン接種により女性が不妊となる」。「コロナワクチンにはHIVの構成物が含まれている」

 4度目や5度目あるいはそれ以上の「追加接種」が承認され、人々に対して行われたらどうなるだろうか?すべては計画通りなのだろうか?国連アジェンダ2030完成まで残すところあと7・8年しかない中でのことだ。

 さらに、西側メディアが繰り出す絶え間ない「ワクチン言説」のせいで、多くの人々は(今でも大多数の人々がそうなのだが)「認知的不協和」状態におかれている。わかりやすくいうと、人々は自分たちがずっと政府からウソをつかれてきたことを認められなくなってしまっているということだ。その政府は人々が意図を持って選んだ政府であり、自分たち自身を守るため血税を収めてきたのにだ。政府によるこのような裏切り行為が多すぎて、それが裏切り行為であると認められなくなっているのだ。この計画、さらには国連アジェンダ2030の裏で暗躍する勢力はそのような状況を理解している。だからこそ、人々の目を覚まさせることは本当に困難な仕事なのだ。団結して反対するよう仕向けることは非常に難しくなっているのだ。

再びウクライナのウイルス研究所について

 これらの第3級戦争用生物研究所では、特定の遺伝子を標的にしたウイルスを作成することが可能だ。例えばロシア人の遺伝子や中国人のDNAに狙いを定めることも可能だ。もちろん他の人種に応じたウイルスを作ることもできる。このように設えられたウイルスに関する治験はここ2~30年間で数多く行われてきた。特筆すべきは、西アフリカで発生したエボラ熱の流行だ(2014-2016)。主に被害を受けたのは、ギニア、シエラレオネ、リベリアで、これらの地域が流行の中心地だった。このエボラ熱が流行していた期間にこの3国では、推定されたもの、可能性のあったもの、確証されたものをあわせて2万8616件の症例があり、死亡者数は1万1310人だった。つまり罹患者の死亡率は4割程度という恐ろしい数字だったのだ。こちらの記事を参照。この流行と今の「新型コロナ」の死亡率を比べてみよう。それは0.07~0.1%だ。これはインフルエンザ並だ。

 誰が判断できようか?特定の遺伝子を標的にした病気であったエボラウイルスや、それ以外の恐ろしいウイルスが研究所で作られていた(あるいは今も作られている)ことはないなどと。しかもそれは米国が資金提供した生物研究所で、ロシア軍が「侵攻した」理由は、その研究所を破壊し人類を救うためだったなどありえないなどと。

 もちろん、このような恐ろしい、人口削減を目的とした生物戦争で使われる薬品が「流出したのか」、それともロシアの侵攻前に、狙いを定めて意図的に放出されたのか、どちらなのかの確証を得ることなど全くできないだろう。しかしそれは、グレートリセットや、ビル・ゲイツが、新たなそしてもっとずっと危険な流行がこの先待ち構えていると予見していたこととも繋がるのだが。

 同様に、マールブルク熱(エボラ熱のように内部出血を伴う病気)の流行が起こる可能性があるという警告を、今年の上旬フランスのジャン・カステックス首相が発していた。同首相はその流行のせいで2022年4月の大統領選挙が延期になるかもしれないことを警告していた。今のところ、そうはなっていない。しかしそのような流行が本当に起こるのか、さらにはいつ起こるのかを誰が知ろうか?

 そしてこのようなウイルスが最も標的にしているのはどんな人々なのだろう?中国とロシアの人々なのだろうか?

 生物兵器による攻撃があったことを示す明確な証拠がない中であれば、おそらく中国が「蟻の子一匹通さない」ような上海における完全なる都市封鎖措置をとった理由がより理解できるのではないだろうか?

 我々民衆はお互い、国内の人々や、国外における全ての国々の人々と連帯し、この「闇の企み」を食い止めるべくできることは何でもしなければならない。そして光をもたらそう。一時的な犠牲を払わなければならないとしても。最後にはきっと、光が闇を凌駕するのだから。



関連記事

医療当局がコロナワクチンを正当化するために使った6つの二重基準とは。

<記事原文 寺島先生推薦>
6 Double Standards Public Health Officials Used to Justify COVID Vaccines
(医療当局がコロナワクチンを正当化するために使った6つの二重基準とは)

著者:マダバ・セティ(Madhave Setty)医学博士

出典:Global Research
 
2022年4月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年6月2日



 新型コロナに対する公式見解が、初めからつじつまが合わず、偽善的で、かつあるいは矛盾する内容だったのは、医療当局が二重基準を使って、「公式見解は論理的で理にかなったものである」という幻をかけていたからだ。

 我々は今、疫学的な危機だけではなく、ものごとを正しく認識できなくなる危機にも置かれている。自分が知っていることの正しさをどうやって確認すればいいのか?理にかなった信念とただの意見をどう識別すればいいのか?

 ここ2年間近く、人々は洗練されたことばの拡散にさらされ「科学を信じ」ざるを得なくさせられている。

 しかし科学者ではない人間が「科学が出している本当の答え」をどうやって見抜けるというのか?
伝統的なメディアが我々にくれる答えは単純。「私たちを信じればいいのです」だ。

 いわゆる「独立した」真実調査団が運営するサイトのせいで、公式見解と相いれない考え方は排除され、そのような意見は十把一絡げに少数の懐疑主義として片付けられている。

 「調査する」という意味が、「ウィキペディアの記載を調べること」という意味になってしまっている。

 意味のあるものとして取り上げるのではなく、異論は偽情報として簡単にはねつけられ、そのような情報源は信頼できないとして片付けられる。

 そのような情報源が信頼できないことをどうやって知ればいいのだろう?「これは異論だから信頼できないに違いない!」と考えればいいのか?

 こんな風に堂々巡りする議論が、異論を認めず、考えを一つに凝り固めてしまう主要な原因になっている。「凝り固まった考え」という呪いを解くのは簡単ではないが、不可能なことではない。

 本記事において私は行政医療当局が使っている6つの二重基準について描写する。これらの二重基準を使って、医療当局は「新型コロナの公式見解は論理的で理にかなったものだ」という幻想を形成している。

 そしてこの幻想を使うことにより、ワクチン接種を受ける正当性を激しく高めようとしてきた。

 医療当局の公式見解とは食い違う科学誌や専門家たちの意見(そのような意見が頭から否定されているのは、当サイトThe Defenderで掲載されているからだが)を引用せずに、私は公式見解が、初めからつじつまが合わず、偽善的で、かつあるいは矛盾する内容であることを示したい。

1. コロナによる死亡だと「見なし」でいいが、ワクチンによる死亡は「証明」が必要


 4月8日の時点で、VAERS(ワクチン有害事象報告制度)によるとコロナワクチン接種後に2万6699件の死亡が報告されている。

 しかし米国疾病管理予防センター(CDC)が(ワクチンによる死亡であると)公式に認定しているのはそのうちたった9件だ。

 死因をはっきりさせるために、CDCは検死を求めており、すべての死因が排除されて初めてワクチンが死因であると認定される。

 しかしCDCは、コロナが死因だとされる人を特定する際には全く違う基準を用いている。

 CDCはコロナによる死者は98万6千人だとこちらで報告しているが、脚注1にある通り、その死亡件数は「新型コロナが死因であると確定された、あるいは推定された死亡件数」である。[強調は筆者]

 PCR検査の結果陽性となった人や、コロナに感染していると推定される人が亡くなった場合、CDCはその死亡をコロナによる死亡件数に加える。

 ご注意いただきたいのは、CDCの定義によれば、コロナによる死亡者とはコロナが原因で亡くなった志望者ではなく、亡くなったときコロナに感染していた人のことであるということだ。

 死因がコロナワクチンであることを証明するには検死が必要とされるのに、死因がコロナの場合はなぜ検死が必要とされないのだろう?

 逆の言い方をすると、亡くなる前に新型コロナウイルスに接触したことは十分死因として考えられるのに、亡くなる直前にワクチン接種していたことはただの偶然だと考えられるのだろうか?

2. CDC は心筋炎について調査する際はVAERSのデータを使用しているのに、ワクチンによる死亡については「VAERSのデータは信頼できない」としている。

 2021年6月23日、CDCの予防接種実践諮問委員会(ACIP)は、コロナワクチン接種後に生じる心膜炎・心筋炎の危険度について評価を下すための会議を持った。その対象は特に若い男性についてだった。

 以下はその会議のプレゼンの際に示された重要なスライドの一枚だ。



 上の図から、コロナワクチンの2回目接種を行った18歳から24歳の男性約430万人のうち、心筋炎が219件発生していることがわかる。

 この際CDCはVAERSのデータを使用して、ワクチン接種後に心筋炎が発生する危険度を評価することをよしとしている。それなのに、CDCは(VAERSに)ワクチン接種後に報告された2万6699の死亡件数のうちたった9件だけを認定し、それ以外の死亡件数はすべてワクチンが死因であることを否定している。

 なぜCDCは心膜炎・心筋炎のデータに関してはVAERSのデータを信頼するのに、死亡件数については信頼しないのだろうか?

 その理由の一つとして、心筋炎の症状が発生するのはワクチン接種後すぐに起こることがあげられるかもしれない。

 言い換えれば、心筋炎の症状は注射後すぐに発生するから、この二つの出来事(ワクチン接種と心筋炎の症状の発生)の間に強い因果関係が推測されるということになる。

 例えば、以下は同じ会議のプレゼンでの一枚のスライドだ。


 ワクチン接種が原因となり発生した心膜炎・心筋炎のほとんどは注射した数日後に起こっている。先述の通り、この両者には強い因果関係が推測される。

 ランセット誌に掲載された最近の論文でも、ワクチン接種後の死亡件数について、VAERSのデータを直接採用した同様のグラフが使われている。


 繰り返しになるが、大多数の症例において、出来事(死亡)はワクチン接種直後に起こっている。
上記の二つのグラフから導き出されることは、接種と副反応の間の経時的な関係においては接種が副反応を引き起こす原因になったという推測は可能だが、証明にはならないという認識だ。ただしもう一つ頭においておくべきことは、ワクチン接種が死亡の原因になったと考えれば、筋はすっかり通りそうだという事実だ。

 明らかなことは、CDCがVAERSの報告による死亡例を否定することに何の正当性もないことである。なぜならCDCは心膜炎・心筋炎の報告に関しては、VAERSが出している同じデータを使うことをよしとしているからだ。

3. CDCはワクチンの効果の見極めには「相対リスク」 を使っているが、副反応の危険度に関しては「絶対リスク」を使って実態を軽く見せようとしている。 

 ファイザー社による第Ⅲ相臨床試験においては、短期間の観察結果であるが、プラセボ偽薬を接種した被験者のほうが、ワクチンを接種した被験者の9倍、コロナ重症に罹ったことが示されている。つまり(ワクチン接種者の)相対リスクが90%低いということだ。

 この調査結果は好ましい結果として、人々がこの「実験段階にある治療法」を受け入れる際の重要な論拠として使用されていた。(なお、長期間の観察結果についてのデータはまったく知らされていない)。

 しかし臨床試験の被験者となった人のうちコロナで重症になる危険度(リンク先の表S5を参照)は、ワクチン接種者においては2万1314人のうち1人だった。そしてプラセボを接種した被験者については、危険度は2万1259人のうちたった9人 (0.0423%)だった。

 絶対リスクからみれば、ワクチンが重症を防ぐ確率は0.038%となる。

 大手メディアやCDCが決して話題にしないことは、絶対リスクの数値を使えば、注射をうつことによってコロナで重症になる確率は非常に小さいという事実だ。

 さらに、臨床試験においてワクチンを接種した被験者の0.6%がワクチンによる重大な副反応を受けた(うち一名は亡くなり、治療や手術が必要になった人、入院した人、命に関わるような重症が出た人々など)。つまりワクチンでコロナの重症を一人防ぐごとに、約16件の重大な副反応が生じるということだ。

 しかしながら、心膜炎・心筋炎の危険度の話については、CDCは以下のように述べている。「特に10代や青年層の男子で、コロナワクチン接種数日後に心筋炎や心膜炎が生じたという報告があったのはまれなことです。」

 さらにCDCはこう記載している。「絶対リスクとしては低い数値だが、心筋炎になる危険度は12歳から39歳の間の男性が高くなっています…。」

 言い換えれば副反応が生じる危険度は、相対リスクではなく、絶対リスクを使って考慮されているということだ。

 上記のCDCのプレゼンのスライド(表1)によれば、18歳から24歳の間の男性の心膜炎・心筋炎についての相対リスクは27であり、この値は(ワクチンを打っていない)同年代の青年男性の200倍高い数値になる。

 ワクチンが原因となる心筋炎についての人々の恐怖を和らげたいときにはCDCは絶対リスクを使うのが効果的だと考えているのだ。しかしワクチンの効果を広めたいときにはCDCは相対リスクの数値を強調している。

 このような二重基準が密かに、そして巧みに利用されることで、「ワクチン接種躊躇者」は減らされ、逆にワクチン接種は促進させられている。

4. FDAは(コロナの)初期治療にはランダム化比較試験*を求めているのに、ワクチンの追加接種には求めない。

*訳注:ランダム化比較試験: 研究の対象者を2つ以上のグループにランダムに分け(ランダム化)、治療法などの効果を検証することです。 ランダム化により検証したい方法以外の要因がバランスよく分かれるため、公平に比較することができます。 ランダム化比較試験では、患者も医師も振り分けられるグループを選ぶことはできません。

 CDCの報告によると、4月8日の時点で、9830万人の米国民がコロナの2度目接種を行っているとのことだ。

 3月29日、米国食品医薬品局(FDA)は免疫不全の人々や50歳以上の人々に2度目の追加接種を行うことを承認した。

 この承認が行われた理由は、追加接種に効果があるという確固たる証拠があるからというよりは、これまでのワクチンの効果は数ヶ月で落ちてしまうという事実が広まった現状を改善したい目的があるからだといえる。

 当サイト「The Defender」の記事において、FDAのワクチン部門・生物学的製剤評価センターのピーター・マークス(Peter Marks)センター長は、先週(4月第3週)承認された4度目接種は、「その場しのぎ的な措置である」ことを認めていた。言い換えれば、この措置はもっとよい解決法がこの先見つかるまでの一時的な措置であるということだ。

 確固たる証拠がない中にもかかわらず、FDAは承認された追加接種の推奨を続けている。

 それなのに、様々な初期治療法の話になれば、FDAはその医薬品の承認を保留している。既にコロナ以外の使用法で使用が許諾や認可されている薬であっても、だ。その場合は違う基準が適応されている。

 以下の2021年8月のCNNのインタビュー映像の中で、国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士は、人々にイベルメクチンを新型コロナの治療薬として服用しないよう警告している。その理由は、「イベルメクチンに効果があるという臨床的な証拠がないからです」とのことだった。

 ヒドロキシクロロキンに関してファウチはこう語っている。「私たちが理解しているのは、良い研究というのはどの研究も、ランダム化比較試験によりデータが確固たるものであり、信頼がおけるものであることが確定されてるということです。その意味においては、ヒドロキシクロロキンは新型コロナの治療薬としては効果がないことが示されています」。この発言は2020年7月19日にBBCで報道されたものだ。

 ではいったいどこで、追加接種がコロナ予防に効果的であるというデータが、ランダム化比較試験により確固たるものであり、信頼できるものであると確認されたというのか?

 そんな研究は全く存在しない。そんな試験は全く行われていない。

 現時点でも、FDAは未だにコロナ治療薬としてイベルメクチンやヒドロキシクロロキンを承認することを拒んでいる。(イベルメクチンヒドロキシクロロキンは)初期治療においても、後期治療においても大きな効果があることを示す何百件もの研究が出ているのだが。

 この件に関する二重基準はまったく明白だ。追加接種にコロナを防ぐ効果があることを示すランダム化比較試験は全く行われていない。

 実験段階にあるこの治療法はFDAにより祝福を受けているのに、安価で効果も高く、安全で、効果が証明されたこれらの医薬品は無視されている。これらの医薬品の使用に効果があることを支持する証拠が数多く示されている中でのことだ。

5. FDA は「免疫」をブリッジング検査で測定することにより、子どもがファイザー社製のワクチンを接種することを正当化しているが、「抗体」がコロナからどれだけ保護する力があるかを推定する際にはブリッジング検査を認めていない。

 免疫ブリッジング検査(Immunobridging)とは、ワクチンが疾病を防ぐ効果があることを推測するための検査だ。具体的には免疫反応がどれだけ引き出されたかを生物化学的指標を使うことにより測定する方法である。その際よく使用されるのは抗体定量検査だ。

 FDAの抑え方では、SARS-COV-2ウイルスに対する抗体が存在しても、コロナから保護する免疫があるとは限らないとしている。

 さらにFDAのワクチンおよび関連生物薬品諮問委員会が先週出した結論によると、免疫定量検査の結果はワクチンの効果との関連には使えないとのことだった。

 FDAによるこの決定事項は、CDCが2021年10月29日に発表した科学研究の発表の要旨と同調するものだ。CDCによると「数値だけで、人間がもつ感染から保護する免疫能力値を決定するのは不十分です。」とのことだった。 

 しかしファイザー社製のワクチンの5歳から11歳のこどもへの接種の承認を正当化する際には、FDAは免疫ブリッジング検査を使用している。その件に関しては、当The Defender」のこちらこちらの記事を参照。

 小児を対象にした臨床試験において、コロナによる死亡例や重症例が出ていないことから、FDA(とFDAの諮問委員会)は、免疫能力値をワクチンの効果と関連づけることを支持しない立場を取っている。

6.ワクチンによる障害には因果関係の証明が求められるのに、ワクチンの効果を証明する際は相関関係だけが求められている

 ワクチンによる障害については、「相関関係と因果関係は別だ」という話を何度も聞かされている。
言い換えれば、その障害は接種後に生じただけであって、ワクチンがその障害の原因になったことにはならないということだ。

 しかし医学における因果関係とはどのように成立するのだろうか? 因果関係を証明するには因果関係が特定化されねばならず、病医学研究によりその因果関係が確定される必要がある。他に考えられる要因は全て排除される必要があるのだ。 そして因果関係は、個々の事例からしか証明できない。

 医学における因果関係の証明には無数の証拠を集めるという努力が求められるということだ。

 例えば、喫煙は肺がんの原因になるのだろうか?その答えは「その通りです。原因になりえます」だ。しかしそれは 「喫煙が必ず肺がんの原因になる」という意味ではない。

 それなのにワクチンなど医療行為の効果の話になると、因果関係は求められない。相関関係で事足りるとされている。

 コロナワクチンの臨床試験において、ワクチンを打った人の中でコロナに罹患した人々の数は、ワクチンを打たなかった人々の中で罹患した人々の数よりわずかに少なかった。ただしこのことが示しているのは、ワクチンを打った人でもコロナに罹患した人がいたという事実だ。

 確かに医療行為に置いてはこのような評価方法が取られることが普通だ。最も厳格な判断のもとで全ての良い効果がワクチンが原因であると証明される必要はなく、ワクチン接種と病気から保護する効果の間に相関関係があればそれでよしとされている。

 そのような効果が確認できるような事象が多発すればするほど、現れた効果がただの偶然の出来事ではないことに確証がもてるということだ。

 同様に、医療行為が引き起こす障害の評価についていうと、最も気をつけるべき事象は致死率だ。ワクチンはある程度の死を防ぐとされている。しかしそのワクチンが防ぐであろう命よりも多くの死者が出ているのが現実だ。そんなワクチンを導入することにどんな良い点があるというのだろうか?

 しかしまさにこの手法こそファイザー社の製品で行われてきた手法なのだ。第Ⅲ相臨床試験の暫定的な結果から分かったことは、ワクチン接種群の治験者の死亡率のほうが、プラセボ群の治験者の死亡率よりも高かったという事実だ。

 しかしこの由々しき問題は脇に追いやられて無視されている。その理由は、プラセボ群治験者からは2名の死者が出たが、ワクチン接種群治験者からは死亡者が1名だったからだ。その事実が、ワクチン製造業者による「ワクチンには罹患を抑制する効果が5割増しである」という主張の根拠にされている。

 しかし、この数値を利用してワクチンには死者を1名減らす効果があったとするのであれば、同時に「このワクチンにより余計な死亡例が1例増えた」という結論も出さざるを得ないことになる。死亡の原因となったすべての原因を考慮しなければいけないのであれば、そうなる。

 その事実に目を向けないというこの手法も、もう一つの二重基準がまかり通っている証となろう。


この世界的流行を別の視点で見る

 これらの二重基準を駆使して、「ワクチンは安全で効果的だ」という言説をでっちあげるやり方がどれだけひどいかについて簡略にまとめるために、もし逆の基準を用いたのであれば、今回の世界的状況がどう記述されるか考えてみよう。

 1.コロナが死因である死亡事例は極端に低い数字になるだろう。検死によって死因がSARS-CoV-2ウイルスにあるかどうかの確認をきっちりと実行したのであれば、死亡事例はほとんどないのではないか。

 逆に、VAERSに報告されている死亡事例はワクチン接種が原因であると推測されることになるだろう。CDCが死亡原因をコロナであると推定する際に採られている手順と同じ手順を踏めば、の話だが。そうすればワクチンによる死亡件数は、2万6千件以上になるだろう。

 2. ワクチンの効果を調べる際に絶対リスク減少という手法を用いれば、効果はほとんどなく、罹患した際、たった0.038%だけしか重症化を防がないとしてワクチンは排除されていただろう。

 3. イベルメクチンとヒドロキシクロロキンがコロナ患者に十分に行き渡っていただろう。さらにワクチンを打ったのにコロナに罹ってしまった人々にとっても、イベルメクチンとヒドロキシクロロキンは追加接種に変わる薬品として使用されたことだろう。追加接種が承認されることはなかっただろう。それは、効果があることを証明するランダム化比較試験が全くおこなわれていないためだ。

 4.  5歳から11歳の子どもが、この危険で試用段階にあるワクチンを接種することはなかっただろう。というのもこの年代の子どもに対する接種は承認されなかっただろうからだ。それは、ファイザー社の小児を対象とした臨床試験からは、5歳から11歳の子どもに効果があるという有意な結果が出ていないからだ。

 5. ファイザー製のワクチンが使用されることはないだろう。なぜなら臨床試験時の暫定的な数値から分かったことは、ワクチン接種群のほうが、すべての死因による死亡率より高かったという事実だからだ。

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ネオナチはウクライナで何をしてきたか、そしてゼレンスキーはそのナチにどのように牛耳られていったか

<記事原文 寺島先生推薦>
How Ukraine's Jewish president Zelensky made peace with neo-Nazi paramilitaries on front lines of war with Russia - The Grayzone

ウクライナのユダヤ人大統領ゼレンスキーは、ロシアとの戦争の最前線でネオナチ準軍事組織といかにして平和を築いたか?

筆者:アレクサンダー・ルービンシュタイン、マックス・ブルメンタール

2022年3月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月27日



 西側メディアがヴォロディミル・ゼレンスキーが有するユダヤ人の遺産を展開するのは、ウクライナはナチスの影響を受けているという非難に反論するためであるが、その一方で大統領はネオナチ勢力に譲歩し、今では彼らを前線の戦闘員として頼っている。

 2019年10月、ウクライナ東部の戦争が長引くなか、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領はゾロテに足を運んだ。そこはドンバスの「グレーゾーン」にしっかりと位置し、親ロシア側を中心に1万4000人以上が殺害された町である。そこで大統領は、数マイル離れた場所で分離主義者との戦いを続ける極右準軍事部隊の屈強なベテラン兵士たちに出会った。

 ロシアとの敵対関係の緩和を掲げて当選したゼレンスキーは、当時のドイツ外相ヴァルター・シュタインマイヤーが提唱した、ロシア語圏のドネツクとルガンスクで選挙を行うといういわゆるシュタインマイヤー方式を実行しようと決心した。

 和平工作を妨害するキャンペーン「降伏はしない(No to Capitulation)」を展開していたネオナチ「アゾフ大隊」の過激派と対峙したゼレンスキーは、頑強な壁に突き当たった。

 前線からの離脱を断固拒否されたゼレンスキーは、カメラに向かってこう言い放った。「私はこの国の大統領だ。41歳だ。私は敗者ではない。私は、あなた方のところにやってきて、武器は捨てろと言ったんだ」とゼレンスキーは戦闘員たちに訴えた。


 この嵐のような対決の動画がウクライナのソーシャルメディアに広がると、ゼレンスキーは怒りの反撃の的となった。

 アンドリー・ビレツキーは誇り高きファシスト・アゾフ大隊の指導者で、かつては「世界の白色人種を率いて、セム人が主導する劣等人種(Untermenschen)に対する最後の聖戦を行う」と誓った人物だ。彼は、ゼレンスキーがこれ以上迫れば、数千人の戦士をゾロテに呼び寄せると宣言した。一方、ウクライナの前大統領ペトロ・ポロシェンコの政党の国会議員は、ゼレンスキーが武装勢力の手榴弾で吹き飛ばされることを公然と妄想していた。

 ゼレンスキーは彼らがわずかに前線離脱するのに成功したものの、ネオナチ準軍事組織は「降伏しない」キャンペーンをエスカレートさせた。そして、数カ月もしないうちに、ゾロテで再び戦闘を過熱させ始め、ミンスク協定違反の新たな連鎖が起こり始めた。

 この時点で、アゾフは正式にウクライナ軍に編入され、国家隊と呼ばれる街頭自警団がウクライナ内務省の監視のもと、国家警察とともに全国に配置されるようになった。2021年12月、ゼレンスキーは、ウクライナ議会での式典で、ファシズム右翼セクターの指導者に「ウクライナの英雄」賞を贈る姿を目撃されることになる。

 ロシアとの本格的な紛争が近づき、ゼレンスキーと過激派準軍事組織の距離は急速に縮まりつつあったのだ。

 この2月24日、ロシアのプーチン大統領がウクライナの「非軍事化・非ナチ化」のために軍隊を派遣したとき、アメリカのメディアは独自のミッションに着手した。それは、同国の軍事・政治領域におけるネオナチ準軍事組織の力を否定することだった。米国政府が出資するナショナル・パブリック・ラジオは「プーチンの(非ナチ化についての)言葉は不快であり、事実上間違っている」と主張した。

 現代のウクライナにおけるナチズムの影響から目をそらすために、米国のメディアは、ユダヤ人出身の元テレビスターで喜劇役者のゼレンスキーという人物が最も効果的なPRツールであることに気づいた。そして俳優から政治家に転身した彼は、その役割を熱心に引き受けたのだ。

 しかし、後述するように、ゼレンスキーは自分の中でネオナチに譲歩しただけでなく、親ロシア派やロシア軍との戦いにおいて最前線の役割を彼らに託してしまったのである。

西側メディアのPR装置としての大統領のユダヤ人化

 BBCによると、プーチン大統領が2月24日、ロシアの作戦目標として非ナチ化を宣言した演説の数時間前、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ナチスと戦って800万人の国民を失った国民が、どうしてナチズムを支持できるのかと問いかけた」という。

 1980年代にソビエト連邦の無宗教のユダヤ人家庭で育ったゼレンスキーは、過去に自分の遺産を軽視したことがある。「私がユダヤ人であるという事実は、私の長い欠点リストの中でかろうじて20番目に入っています」と、2019年のインタビューで冗談を言い、宗教的背景についてこれ以上詳しく説明することを避けた。

 今日、ロシア軍がアゾフ大隊の実効支配下にあるマリウポリのような都市に押し寄せている状況の中で、ゼレンスキーはもはや自分がユダヤ人であることを公表するのを恥じていない。「どうして私がナチスなのか」と彼は演説で声を荒げた。ロシアとの全面的な情報戦を展開する米国メディアにとって、大統領のユダヤ人としての経歴は不可欠な広報手段となったのだ。


 ウクライナで横行するナチズムの疑惑に対する盾として、米国メディアがゼレンスキーを展開したいくつかの例を以下に挙げる(動画は上のマッシュアップ*を参照)。
*複数の動画を組み合わせたもの 

 PBS NewsHourはプーチンのナチス化に関する発言に修飾語をつけて指摘した。「ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領はユダヤ人で、彼の大叔父はホロコーストで死んだのに」。

 Fox & Friendsでは、元CIAのダン・ホフマンが、「ウクライナ国民に非ナチ化を呼びかけるのは偽善の極みだ―彼らの大統領は結局ユダヤ人なのだから」と宣言している。

 MSNBCで、バージニア州の民主党上院議員マーク・ウォーナーは、プーチンは「とんでもなく不愉快な用語を使っている。率直に言ってゼレンスキー氏というユダヤ人の大統領がいるところに ”非ナチ化”とはね。この男(プーチン)は、より大きなロシアを取り戻すために、彼自身の個人的な聖戦のようなものをしている」と言った。

 共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員はフォックス・ビジネスで語った。「ゼレンスキー大統領には感銘を受けたし、彼がいかに立ち向かったかも知っている。さらにわかっていることは、プーチンがしゃしゃり出てきて、”我々は非ナチ化する” と言ったのに、ゼレンスキーはユダヤ人であることだ」。

 CNNのウルフ・ブリッツァーとのインタビューで、米国海兵隊総司令官ジョン・アレンがプーチンが「脱ナチ化」という言葉を使ったことを非難したとき、ニュースマンで元イスラエル・ロビイストのブリッツァーはうんざりして首を横に振った。ブリッツァーとの別のインタビューでは、いわゆる「ウクライナの内部告発者」でウクライナ出身のアレクサンダー・ビンドマンが、この主張は「あきらかに馬鹿げているし、何の効力もない...あなたの言う通りゼレンスキーはユダヤ人だし...ユダヤ人コミュニティはウクライナで受け入れられているし。ウクライナ当局の中枢もそう考えているのだ。だからプーチンの言っているナチやファシストなどという言説の中味は何もない。口実として捏造されているだけだ」と不平を述べた。 

 企業メディアの情報操作の背後には、ネオナチ勢力とそこから利益を受けるゼレンスキー政権との関係が複雑でどんどん深まっている状況がある。ウクライナ国家がネオナチ勢力に軍や政治の重要ポストを与え、またワシントンが2014年にクーデターによって欧米寄りの政権を発足させてからはこれらのファシスト自認団体が権力さえ持つようになったのだ。

 実際、ゼレンスキーの最大の財政的後ろ盾であるウクライナ系ユダヤ人オリガルヒ(財閥)のイゴール・コロモイスキーは、ネオナチのアゾフ大隊や他の過激派民兵の重要な支援者となっている。



2020年8月、マリウポリでナチスを連想させる「狼の罠」の旗を掲げて行進するアゾフ大隊

ゼレンスキーの筆頭資金提供者の支援を受け、ネオナチ過激派が威嚇の波を放つ

 ウクライナ国家警備隊に編入されたアゾフ大隊は、ドンバス地方東部の親ロシア分離主義者と戦う、最もイデオロギー的に熱心で軍事的野心の高い部隊と見なされている。

 ナチスに影響を受けた「狼の罠」の記章を制服に付けたアゾフの戦闘員は、ナチス親衛隊のシンボルをヘルメットにつけて写真(上)に映っているが、彼らは「ネオナチ思想との関連で知られており...米国に拠点を置く白人至上主義組織の訓練と過激化に参加したと考えられている」と、キエフに行ってアゾフと訓練を行った米国の白人民族主義者の数名に対してFBIが出した起訴状には書かれている。

 ユダヤ人の血を引くウクライナのエネルギー王、イゴール・コロモイスキーは、2014年にアゾフが結成されて以来ずっと、アゾフに最も資金を提供してきた人物である。彼はドニプロ大隊やエイダル大隊のような民兵にも銀行融資し、自分の経済的利益を守るための個人的なチンピラ部隊として配備してきた。

 2019年、コロモイスキーはゼレンスキーの大統領候補の最大支援者として登場した。ゼレンスキーは反腐敗を選挙戦の看板に掲げたが、パンドラ文書※により、彼と側近のメンバーがコロモイスキーからの多額の支払いを海外口座の陰の網に隠し持っていたことが暴露された。

※パンドラ文書 金と権力をもつ世界の大物たちが資産を隠し、税を回避し、時にマネーロンダリング(資金洗浄)をしていたことを示す、1200万件近くのリーク書類。2021年10月に公開された。



2019年9月10日、億万長者のオリガルヒでビジネス仲間のイホル・コロモイスキーと会談するゼレンスキー大統領(中央)


 2019年5月にゼレンスキーが就任したとき、アゾフ大隊は南東部の戦略的港湾都市マリウポリとその周辺の村の事実上の支配を維持していた。(ニュースサイトの)オープン・デモクラシーが指摘するように、「アゾフはマリウポリの街路の政治的支配を確実に確立している。この支配を維持するために、彼らは、彼らの政治的意図から十分に乖離した公的な出来事には、公式にはそうでなくても、暴力的に反応しなければならない」。

 マリウポリでアゾフが行った攻撃はいくつもあるが、その中には国際女性デーに行われた「フェミニストとリベラル」の行進に対する襲撃もあった。

 2019年3月には、アゾフ大隊の国民部隊の隊員が、ウクライナの野党の重鎮であるヴィクトル・メドベチュクの自宅を襲撃し、メドベチュクの娘の名付け親であるウラジミール・プーチンとの親交を理由に彼を反逆罪で告発している。

 ゼレンスキー政権はメドベチュクへの攻撃をエスカレートさせ、2021年2月には米国務省の公認を得て彼が支配する複数のメディアを閉鎖し、3カ月後には野党指導者を反逆罪で収監した。ゼレンスキーは、「情報分野でのロシアの侵略の危険と戦う必要がある」という理由で、自分の行動を正当化した。

 次に、2020年8月、アゾフ国家隊は、メドベチュクの政党「生活のための愛国者」のメンバーが乗ったバスに発砲し、ゴム被覆鋼弾で数人を負傷させた。


ゼレンスキーはネオナチの抑制に失敗し、彼らと協力する羽目になった

 2019年10月にゾロテの町でネオナチの武装勢力を復員させる試みに失敗したことを受けて、ゼレンスキーは戦闘員たちをテーブルに呼び寄せ、記者団に「昨日、退役軍人たちと会った。国民軍団もアゾフも、みんないたよ」と言った

 ユダヤ人大統領の数席先には、ネオナチ組織「C14」のリーダー、イェフヴェン・カラスがいた。



イェフヴェン・カラス(右端)、アゾフ大隊のリーダー、ドミトロ・シャトロフスキー(左下)ら「退役軍人」と会談するゼレンスキー氏。

 2014年にウクライナ選出の大統領を追放したマイダン「尊厳革命」の際、C14活動家はキエフの市庁舎を占拠し、壁にネオナチの記章を貼り付けてからカナダ大使館に避難していた。 

 超民族主義者スヴォボダ党のかつての青年団として、C14は、米国のネオナチ指導者デイヴィッド・レーンの悪名高い14語の言葉からその名を取っているようだ。「我々は、我々の民族の存在と白人の子供たちの未来を確保しなければならない(We must secure the existence of our people and a future for white children.)」というものだ。

 お金を払ってくれる人のために壮大な暴力行為を行うことを提案することで、このフーリガンはウクライナのさまざまな統治機関や有力エリートと癒着してきた。



ネオナチ集団C14は、雇われ暴力を実行することを提案する。「C14はあなたのために働きます。私たちの団体の存続にご支援ください。そうすれば、私たちはあなたを助けます。定期的に寄付してくれる人には、願い事を入れる箱を開けています。あなたの敵のうち、どの敵を苦境に追い込みたいですか? 私たちはご希望に添います。」

 ロイターの2018年3月の報道では、「C14とキエフ市政府は最近、C14が街をパトロールする ”市警” を設立することを認める協定に署名した」とあり、ポグロム(集団的迫害行為)を実行するための国家による制裁権を事実上与えていることになる。

 当グレイゾーンが報じたように、C14はキエフ警察と協力してキエフの鉄道駅からロマ族を「粛清」するための襲撃を指揮した。


 この活動はキエフ市政府によって認可されただけでなく、米国政府自身もほとんど問題視せず、それどころか、キエフにあるアメリカ政府の公式機関はC14の若き組織者ボンダールを招待し、彼はそこでポグロムを自慢していた。C14は2018年を通じて、「国家愛国主義教育」の名目のもと、国家資金を受け取り続けた。

 カラスは、ウクライナ・セキュリティ・サーブが分離主義者の集会に関する情報を「我々だけでなく、アゾフ、右派セクターなどにも」伝えると主張していた。

 「すべての派閥の議員、国家警備隊、ウクライナ保安庁、内務省が我々のために働いてくれている。そういっても言い過ぎじゃないだろ」とカラスは言った。

 2019年は、ゼレンスキーと彼の政権が、ウクライナ全土の超国家主義的な要素との関係を深めた年だった。



ネオナチ「ベテランズ・ストロング」コンサートのステージに立つオレクシィ・ホンチャルク首相(当時)

首相がネオナチのコンサートに出席した後、ゼレンスキーは右派セクターのリーダーを称えた。

 2019年11月にゼレンスキーがカラスらネオナチの指導者と会談した数日後、オレクシィ・ホンチャルク(当時の首相及びゼレンスキー大統領府副長官)が、C14の人物で殺人犯とされるアンドリー・メドヴェスコが主催するネオナチのコンサートのステージに登場した。

 ゼレンスキー退役軍人担当大臣は、反ユダヤ的なメタルバンドが複数出演したこのコンサートに出席しただけでなく、Facebookでコンサートの宣伝を行った。

 また2019年、ゼレンスキーはウクライナのサッカー選手、ロマン・ゾルズィヤを 「ナチ」と嘲笑するスペインのファンから擁護した。ゾルズィヤは、第二次世界大戦時代のナチス協力者ステパン・バンデラの写真の横でポーズをとり、アゾフ大隊を公然と支持していた。ゼレンスキーはこの騒動に対し、ウクライナ全土がゾルズィヤを支持すると宣言し、「クールなサッカー選手であるだけでなく、真の愛国者である」と評した。

 2021年11月、ウクライナで最も著名な超国家主義的民兵の一人であるドミトロ・ヤロシュが、ウクライナ軍総司令官の顧問に任命されたことを発表した。ナチスの協力者だったバンデラの信奉者であるヤロシュは、2013年から2015年まで右派セクターを率いていたが、ウクライナの「脱ロシア化」を主導すると公言している。


ウクライナ軍総司令官とポーズをとるドミトロ・ヤロシュ氏

 その1カ月後、ロシアとの戦争が近づくと、ゼレンスキーは右派セクターの司令官ドミトロ・コツユバイロに「ウクライナの英雄」賞を授与した。「ダ・ヴィンチ」と呼ばれるコシュバイロは、前線基地でペットとしてオオカミを飼っており、訪れた記者たちに「ロシア語を話す子供たちの骨を食べさせる」という冗談を言って喜んでいる。




ゼレンスキーは右翼セクターの司令官ドミトロ・コツユバイロに「ウクライナの英雄」賞を授与した。


ウクライナ国家が支援するネオナチ指導者が、ロシアとの戦争前夜に影響力を誇示する


 2022年2月5日、ロシアとの本格的な戦争が始まるわずか数日前に、ネオナチC14のイエベン・カラスはキエフで熱烈な公開演説を行い、自身の組織と同様の組織がウクライナの政治に与えた影響力を強調した。


 「LGBTや外国大使館は『マイダンでナチスは少なかった、本当にナチの思想を持っていた勢力は10%くらいだっただろう』と言っている」とカラスは発言した。「しかしその8パーセント(のネオナチ)がいなければ、(マイダンのクーデターの)効果は90パーセント低下していただろう」と。

 2014年のマイダンの「尊厳の革命」は、ネオナチの援護がなければ、「ゲイのパレード」になっていただろうと、彼は断言した。

 カラスはさらに、西側がウクライナの超国家主義者を武装させたのは、「我々が殺すのを楽しんでいるからだ」と言い切った。彼はまた、ロシアのバルカン化を空想し、ロシアを「5つの異なる」国に分割するべきだと宣言した。


ナチスの敬礼をするイエベン・カラス

「殺されとしてもそれは聖戦の末の名誉の死だ。」

 今年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵入し、東部でウクライナ軍を包囲、キエフに向かって進軍すると、ゼレンスキー大統領は、犯罪者の釈放を含む国家動員を発表した。その犯罪者の中にはロシアで指名手配中の殺人犯も含まれていた。彼はまた一般市民への武器の配布を行い、アゾフ大隊のような戦闘経験の豊富な準軍事組織による訓練が始まった。

 戦闘が進行する中、アゾフ国家隊は、祖母や子供を含む何百人もの一般市民を集め、ハルヴィウ、キエフ、リヴィウの公共広場や倉庫で訓練を行った。


 2月27日、ウクライナ国家警備隊の公式ツイッターアカウントは、「アゾフ戦士」がチェチェン出身のロシア人イスラム教徒戦闘員に屈辱を与えるために豚の脂肪で弾丸に油を塗っている動画を投稿した。

(このツイートは原文サイトからご覧ください。訳者)

 その1日後、アゾフ大隊国家隊ハリコフ地方警察が同市の地方国家行政庁舎を防衛本部として使い始めると発表した。翌日テレグラムに投稿された映像には、アゾフが占拠したビルがロシアの空爆を受ける様子が映し出されている。

 ゼレンスキーは、ロシアとの戦いに参加するために筋金入りの犯罪者の釈放を許可したほか、戦闘年齢にあるすべての男性に国内に留まるよう命じた。アゾフの過激派は、マリウポリ周辺の戦闘から逃げようとする市民を残虐に扱うことで、この方針を徹底させている。

 最近、ギリシャのニュース局のインタビューを受けたマリウポリ在住のあるギリシャ人居住者によると、「逃げようとすると、ウクライナのファシスト、アゾフ大隊のパトロールに遭遇する危険がある」と言い、「彼らは私を殺すだろうし、すべての権力を握っているのが彼らなのだから」と言い添えたという。

 ネットに投稿された映像では、マリウポリのファシスト民兵の制服を着た隊員が、逃げる住民を銃で車から激しく引きずり出す様子が映っているように見える。


 マリウポリ周辺の検問所で撮影された他の映像には、アゾフの戦闘員が逃げようとする市民を撃ち殺し、殺害している様子が映っている

 3月1日、ゼレンスキーはオデッサの地方行政官を、ドンバス地方での数々の戦争犯罪で告発されている極右組織「エイダル大隊」の元指揮官、マクシム・マルチェンコに交代させた。

 一方、ロシアの装甲車の大規模な車列がキエフに押し寄せる中、ネオナチC14のイェフヴェン・カラスは、戦闘員を輸送していると思われる車両の中からYouTubeに動画を投稿している。

 「もし俺たちが殺されたら、それは聖戦で死んだことをなるんだ。クッソ最高よ」とカラスは叫んだ。「もし生き残れば、メッチャいいことがあるさ。だから悪いことは見ない、いいことだけ見てるんだ!」


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アゾフの司令官、処刑した野党活動家たちの陰惨な写真を自慢げに投稿



<記事原文 寺島先生推薦>
Azov commander boasts about gruesome photos of executed civilians

投稿元:RT
2022年5月18日
<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>
2022年5月25日

 ウクライナのネオナチが、残酷に殺された野党活動家を見てほくそ笑み、「裏切り者」は全てこうなって欲しいと語る。

キエフの過激派は、「アゾフ」連隊が付けているSSのシンボル、ヴォルフスアンゲル[オオカミの罠]の旗を掲げている。© AFP Photo/ Sergei Supinsky

 悪名高いネオナチ「アゾフ連隊」を指揮していたこともあるウクライナの将校が、野党メンバーの死体の生々しい写真をソーシャルメディアで公開し、ほくそ笑んでいる。活動家たちは3月初旬にウクライナ領内のセベロドネツク[北ドネツク]から「失踪」し、超法規的に処刑されたようだ。マキシム・ゾーリン(Maksim Zhorin)は、すべての「裏切り者」にそのような運命が待ち受けている、とほのめかしている。

 「これが、セベロドネツクの『生活のための愛国者』の成れの果てだ」と、ゾーリン(Zhorin)は5月18日の水曜日に、今は削除されたテレグラムに投稿していた。「彼らは3月7日に姿を消していたが今になって新しい写真が出てきた。彼らはあんな顔をしている」と、にやにや顔の絵文字を添えて付け加えた。[訳注:画像は最後に記したサイトにあります]

 さらに、1月にロシアに逃亡したウクライナの議員を引き合いに出して、「捜査の結果、彼らが自分で自分の頭を撃ったことが分かっても驚かない。(イリヤ)・キバに協力しに行ったとき、自分たちがいかに愚かだったかを思い知ったはずだ」、と付け加えた。

 キエフの検察当局は、活動家が行方不明になる前日の3月6日に、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の厳しい批判者であるキバを反逆罪で起訴していた。彼は所属する政党 「野党プラットフォーム―生活党 」から追い出され、国外に逃亡していた。

 それでも、この党とその他ほぼ12の政党が救済されることはなかった。3月20日にゼレンスキーによって一時的に活動禁止を命じられたのだ。さらにこれらの野党の永久追放を可能にする法律が5月14日に採択された。


関連記事 ゼレンスキー氏、ウクライナの野党を追放

 ゾーリンの投稿には、遺体袋に入れられた3人の男性と1人の女性のひどく醜い顔が写っていた。彼らは残酷な方法で超法規的に処刑されたようだ、とアゾフのリーダーの投稿に最初に注目したテレグラムチャンネル「ウィッチハント[魔女狩り]」は記載している。

 囚人の残忍な斬首で知られるテロ組織「イスラム国(IS)」を引き合いに出して、ウクライナは「中世の国家ですらない、ISISだ」、と同チャンネルは付け加えた。

 セベロドネツクは、ウクライナ東部の紛争地域であるルガンスク州の軍事行政の中心地であった。キエフに忠誠を誓う部隊の主要な拠点であり、現在、ロシア軍やドネツク、ルガンスク人民共和国軍との激しい戦闘が行われている場所である。

 ゾーリンは、ナチスの図像を採用した悪名高いウクライナの民兵組織「アゾフ」の単なる一員ではない。彼はウクライナの混乱が始まったまさに2014年にアゾフに加わり、2016年8月から2017年9月まで実際に部隊を指揮していた。彼はウクライナ国家警備隊での階級は少尉に過ぎないのであるが。

 彼の公式伝記によると、ゾーリンはマリウポリとマリンカの奪取に参加し、2014年のイロヴァイスクでの敗戦を生き延びたという。2017年10月、彼はアゾフの政治的一翼である「国民軍団」のハリコフ地方支部を立ち上げ、2020年1月に同党の中央委員に就任している。

[訳注]Maksim Zhorin: Zelensky Regime's 'Executioner' Exults Over Mutilated Bodies of Ukraine Opposition Activists 

ここにもゾーリンに関するアンシュ・セスの記事や陰惨な画像があります。
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ロシア、分離地域(=ドンバス)を3月に攻撃するというウクライナの秘密指令書を発見。

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia claims finding secret Ukrainian orders to attack separatist regions in March
The covert orders, allegedly dated January 22 and signed by National Guard of Ukraine commander Col.-Gen. Nikolai Balan, detail supposed preparations for operations in Donbas.
The Jerusalem Post

(ロシア、分離地域(=ドンバス)を3月に攻撃するというウクライナの秘密指令書を発見したと主張。
 1月22日にウクライナ国家警備隊司令官ニコライ・バラン(Nikolai Balan)上級大将が署名したと目される秘密指令にはドンバスでの作戦行動準備とみられる詳細が盛り込まれている。)

2022年3月9日

マイケル・スター( MICHAEL STARR)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月23日



ドンバス地方解放78周年を記念し、ウクライナ政府軍との戦闘で被害を受けたサヴール・モヒラ戦争記念で行われた集会で、ロシアの国旗を掲げる活動家(2021年9月8日、ウクライナ)。
(写真提供:ロイター/アレクサンダー・エルモチェンコ)


 ロシア外務・防衛省は、ウクライナが分離独立したドンバス地域に対する軍事攻勢を3月に行う計画があったことを示す秘密文書を発見したと主張している。



 この秘密指令は1月22日付で、ウクライナ国家警備隊司令官ニコライ・バラン大佐が署名したと目されている。ロシア外務省によると、この指令は1月22日付で、ウクライナ国家警備隊司令官ニコライ・バラン大佐が署名し、ドンバスでの共同軍作戦のための部隊の準備とされる内容が詳述されているという。

 「この文書は、国家警備隊第4作戦旅団の大隊戦術グループの組織とスタッフ構成、その包括的支援の組織、ウクライナの第80分離航空攻撃旅団への再割り当てを承認している」とロシア国防大臣であるイゴール・コナシェンコフ(Igor Konashenkov)少将が語った。(ロシアの通信社タスによる)

 「ウクライナのこの空襲部隊は、アメリカとイギリスの教官によって2016年から訓練を受けていることを強調したい」と彼は付け加えている。

 「我々は、ルガンスクとドネツクの人民共和国の武力掌握の計画はなかったというキエフ政権の指導者の発言を覚えている。ウクライナ国家警備隊の秘密軍事文書の原本は、これらの発言の虚偽性を明確に証明するものである。」とロシア外務省は水曜日(3月9日)の朝に述べた。


ロシアのプーチン大統領は2月24日(木)、ロシア国営テレビで特別演説を行い、ウクライナのドンバス地方での軍事作戦を許可した。(写真提供: ロイターTV)

 ロシアは、反政府地域であるドンバス地方へのウクライナの作戦行動についていくつかの主張を行っている。その中には、プーチン大統領が「ウクライナはロシア系民族に対する大量虐殺を行っている」と、侵攻前に主張したことも含まれている。
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アメリカがウクライナを西側に取り込むロシア敵視政策は1990年代半ばから始まっている

<記事原文 寺島先生推薦>
‘Gods of War’: How the US weaponized Ukraine against Russia
原題:「戦争の神々」:米国はどのようにウクライナを兵器として扱い、ロシアに対抗させたのか

The Grayzone 2022年4月1日

TJ コールズ(TJ COLES)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月23日



 2013年から14年にかけてアメリカが起こしたウクライナでのクーデター以来、アメリカ軍はネオナチ部隊を含むウクライナ人に、都市部やその他の民間地域で戦う方法を教えてきた。ウクライナをひとつの兵器として扱うことは、国防総省(ペンタゴン)が言う「全領域支配」を目指すワシントンの目論見の一部である。

 「戦争のすべての様式を学ぶことができれば、戦争の神になれる」と、2016年、米軍から訓練を受けていたウクライナの砲兵司令官は言った。

 この司令官(匿名)の言葉を引用したのは、国防総省の多国籍合同訓練グループ・ウクライナの一員として兵士を訓練する迫撃砲小隊長のクレア・ヴァンダーバーグ(Claire Vanderberg,)中尉である。訓練は、ウクライナの町ヤヴォリブ(Yavoriv)の近く、ポーランドとの国境近くにある、「国際平和維持・安全保障センター」などという馬鹿げた名称が付されている施設で行われた。西側メディアは、ロシアが最近この基地を巡航ミサイルで攻撃したことを報じたが、内部で何が行われたのかについては触れなかった

 上に述べた(アメリカとウクライナ)の関係は、ウクライナをロシアの軌道から引き離すだけでなく、ウクライナをモスクワに対するひとつの兵器として積極的に扱おうと、数十年にわたって米・NATOが取り組んできたことの一端を示すものである。

米国家安全保障局、「ロシアは反撃している」のであって、先制攻撃したわけではないと認める


 国防総省をはじめとする米国の国家安全保障機構は、内部文書の中で、ウクライナがいかにロシアを挑発し、軍事的エスカレーションを引き起こすために利用されたかを説明する際に、反戦左派と同じ議論を繰り返している。大きな違いは、国防総省が臆面もなく帝国主義的な観点から発言していることで、そのような挑発は米国の兵力展開の重要な構成要素と見なされている。

 最近出された、米国国家情報長官(Director of National Intelligence)の年次脅威評価(Annual Threat Assessment)の報告

 「ロシアは、武力行使に至るまで、また武力行使を含むテクニックを駆使して、地域的・世界的にワシントンに対して反撃している」。(要注意:ロシアは「反撃」しているのであって、「先制攻撃」しているのではない。)

 国家情報会議による2021年の報告書は、ロシアと中国の立場を認めている:

 「民主的な大国のために設計され、民主的な大国が支配する国際秩序に、ロシアも中国も安心感を抱いてこなかった。」(ここで言う「民主主義」とは米国とその友好国の意味)ロシアも中国も、「国境と地理的な影響力のある領域内で絶対的な権威を守る主権に基づく国際秩序を推進してきた。」

 2017年10月、ウクライナ人の訓練を担当する米陸軍野戦砲兵学校司令官補のヘイワード・ハトソン(Heyward Hutson)大佐は、こう説明した

 「ウクライナはNATOの国になりたがっているが、ロシアはウクライナがNATOの国になることを望んでいない。ロシアは緩衝地帯を持ちたがっている。」 さらに、彼はもう一つの「問題は、東ウクライナの多くが親ロシアなので、そこの市民が分裂していることだ 」と付け加えた。

 2016年の米陸軍大学校の報告書は、次のことを繰り返し述べている

 「ロシアの基本的な国家安全保障戦略は、「近隣地帯の安定」、NATOの弱体化、中国との親密化、そして米国の焦点を他の場所へ、だ。」

 また、2007年の記事には、「オレンジ革命以降に政権を握った改革派」(親米勢力のこと)は、「ウクライナを、ロシアへの恭順は限定的なものにしたまま、欧州・大西洋共同体へきちんと移行させたいと思っている」と説明されている。

 この文書は、当時、「ウクライナの政治・軍事指導部は、ウクライナが集団安全保障を追求すべきか、中立の立場を維持すべきか、という問題で分裂したままであった」と記している。また、「(ウクライナの)上級指揮官の多くは改革派だが...主力防衛軍には、西側の訓練や作戦に全く、あるいは限定的にしか接していない上級指導者がまだ大勢いる」と結論づけている。

 2013年から14年にかけてアメリカが起こしたクーデターで、ウクライナ軍の部隊を訓練する大規模なプログラムが開始され、アメリカ政府はこの矛盾を解消することができた。


NATO拡大法に署名するビル・クリントン大統領。1995年5月21日。

NATOは 「以前のような外交・抑止のための運動組織ではない」

 ソ連が崩壊すると、その軍事同盟であるワルシャワ条約も崩壊した。しかし、西側諸国は北大西洋条約機構(NATO)を解散させないばかりか、ロシアの国境まで同盟を拡大させた。

 NATOの記録によると、1992年、ソ連からの「ウクライナの独立宣言のわずか4カ月後」、「NATOは、NATOと旧ワルシャワ条約加盟国の間の協力を形成するために設立された北大西洋協力会議の臨時会合にウクライナの代表者を招待した」。

 ロシアは、アメリカの近隣諸国との間で同様の協定を提案することはなかった。

 1994年、ウクライナはいわゆる「平和のためのパートナーシップ(PFP)」に参加した。国連憲章を引用して、PFPは署名者が「いかなる国の領土保全または政治的独立に対する武力の威嚇または行使も行わないこと、既存の国境を尊重し、平和的手段によって紛争を解決すること」に同意すると述べている。米国国務省の解説文は、PFPには下心があったことを明らかにしている。その真の目的は中立性ではなく、ウクライナや他の加盟国をNATOに近づけることだった。「PFPへの参加はNATO入りを保証するものではないが、NATO加盟に関心を持つ国にとっては最良の準備となる。」

 また、この解説文には、PFPメンバーが当初ロシア国境またはその付近で行った52の実際の軍事演習と計画された軍事演習のリストも掲載されている。

 ビル・クリントン時代の政策立案者は、「NATOは単に以前のように予防外交と抑止のための運動組織ではない」と説明している。NATOの拡大には政治的な意図があった。彼らは「NATO拡大は民主化政策である」と考えていた。上記のように、「民主化」は親米を意味する。報告書は、クリントン大統領の1996年の選挙演説を引用して、彼らの考えでは、NATOは「中・東欧の経済発展のために必要な安定をもたらすだろう」と指摘している。言い換えれば、ポスト・ソ連のNATOは、企業の国家所有が普通であった旧ソ連諸国において、米国主導の「自由市場」(それはしばしば自由でも市場でもなく、独占的である)を保証するために設計されたものであった。

 1997年、NATOとウクライナは「明確なパートナーシップに関する憲章」に署名した。この憲章は、ウクライナの政治的独立を損なうものであり、PFP違反であることは一見して自明である。この憲章は、「民間緊急事態計画、軍事訓練、環境安全保障を含む」いくつかのNATO・ウクライナ協力の分野を提案している。NATOとウクライナの協力は、「元軍人の再教育や、NATO主導の演習へのウクライナの招待」という形で「急速に発展した」とNATOは自画自賛している。

ウクライナを「米国の軍事パートナー」にすること

 アメリカ軍は、「ウクライナは1990年代半ばまでさかのぼるアメリカの軍事パートナーである」と言っている。1998年、アメリカの特殊作戦司令部ヨーロッパは、ドイツのシュトゥットガルトで特殊作戦部隊(SOF)会議を主催した。アメリカ陸軍はこう報告している:

 「この会議には、モルドバ、グルジア、そしてウクライナの軍人が集まり、米国SOFの実演を見学し、将来合同交流訓練(JCET)と合同コンタクトチームプログラム(JCTP)行ういろいろな取り組みについて議論した。」

 2000年6月、米海兵隊は、海軍の水陸両用戦艦「トレントン」がエーゲ海から黒海を航行し、オデッサ(ウクライナ)に停泊したことを報告した。第24海兵遠征隊(MEU)は、「プリモルスキー(「臨海」)階段*を登り、オデッサの歴史の一部を直接体験することができた」、という。歓談に加え、「MEU隊員とUSSトレントン乗組員の関心は、ウクライナがホスト国であるNATOの次の演習「Cooperative Partner 2000(CP00)」だった」。

「プリモルスキー(「臨海」)階段*・・・ポチョムキンの階段は、ウクライナのオデッサにある、巨大な階段である。この階段は海の方角からオデッサ市街地の玄関口や象徴と考えられ、オデッサの階段としても知られる。 現在の公式名称は「プリモルスキー の階段」 。当初は「ブールバール の階段」、「巨大階段」 、あるいは「リシュリュー の階段」として知られていた。(ウイキペディア)

 米国主導のNATO訓練・演習への参加に加え、ウクライナの兵士は米国主導の戦争に参加した。9/11の後、彼らはNATOのいわゆる国際安全保障支援部隊を通じてアフガニスタンの占領に参加した。また、ウクライナ軍はアメリカ・イギリスによるイラク占領にも協力した。2008年、陸軍は彼らの仲間となったウクライナ兵士を賞賛した:「ウクライナ5年間のイラク自由化作戦の支援作戦で、5,000人以上のウクライナ軍がイラクで従軍した。」

「2014クーデター」を背後で支えた後、米国は「人を殺すことを目的とする安全保障援助」を提供している

 米国が支援したクーデター中の2014年に設立された米国国務省とペンタゴンのグローバル安全保障偶発基金(GSCF)のウクライナ部門は、数千万ドル相当の訓練と装備を提供して、「ウクライナの国防・国家警備隊の戦術、作戦、制度的訓練能力を開発」している。国務省は、「GSCFはまた、ウクライナ特殊作戦部隊が西側モデルと互換性のある戦術的・制度的能力を開発するのを支援してきた」と述べている。

 ペンタゴンとのつながりがある雑誌から :

 「2014年から2021年まで内務大臣を務めたアルセン・アヴァコフ(Arsen Avakov)のお陰で、準軍事組織の拡大、および国家警備隊へ統合させることが可能になった。」(ナチスのアゾフ大隊もそれに含まれる)

 2015年からは、米国防総省の欧州司令部が、米陸軍と州兵がウクライナ軍を訓練する「多国籍合同任務部隊-ウクライナ(JMTF-U)」を統括している。また、国際軍事教育訓練プログラムを通じて、米国で将校の訓練が行われた。米国議会調査局の報告によると、「これとは別に、米軍特殊作戦部隊がウクライナの特殊部隊を訓練し、助言している」。さらに、米国は毎年行われるNATOの平和のためのパートナーシップ演習「ラピッド・トライデント」に参加している。

 2015年11月、親米新政権の要請と思われるが、オバマ政権はウクライナにAN/TPQレーダーシステム2基を送った。「ペトロ・ポロシェンコ大統領はこの機器を確認する機会があり、米軍関係者からその能力について説明を受けた。」

 米陸軍は後に、このレーダーシステムが純粋な防御用でなかったことを明らかにした。米陸軍ヨーロッパ、フォートシル・ファイアーズセンター・オブ・エクセレンス(FCoE)、そして陸軍安全保障支援訓練管理機構(SATMO)のチームが「4週間の操作訓練を実施」した。

 最初の納入以来、「ウクライナは4台のQ-36レーダーを追加で受け取り...FCoEとUSSATMOの支援のもと、米陸軍通信電子コマンドによる訓練を受けた」という。この米陸軍のサイトは、あるトレーナーの言葉を引用して、「米国チームは、旅団、大隊、小隊の司令官に、射撃と作戦を支援するためにレーダーシステムを戦術的に使用する方法を示した」と述べている。

 2016年以来、SATMOの戦闘教義教育諮問グループ(DEAG)は、「戦闘教義の改訂、専門軍事教育の改善、NATO相互運用性の強化、戦闘態勢の強化のために、作戦レベルでウクライナ治安部隊に助言してきた」と述べている。今年1月、DEAGは2億ドル相当の「ウクライナの最前線防衛のための弾薬を含む、人を殺傷する目的の安全保障支援」の最初の積荷を運んだ。



米国は、民間人の多い地域で戦争をしながら、「地元住民に溶け込む」訓練をウクライナ人に施している。 

 ウクライナにおける米国の、これよりもっと非道徳的な行動の一つは、一般市民が居住する地域で戦うために軍隊を訓練したことだ。ロシアが人口密集地域で戦闘行為をするよう唆し、ウクライナの民間人を殺したときに反ロシア・プロパガンダのポイントを獲得するためだ。

 2015年、アメリカ海兵隊は、アメリカの軍人がウクライナに渡航して戦うことを暗に言っていた。「アフリカの国や以下のヨーロッパ諸国(ウクライナとその近隣諸国を含む)への非公式旅行(休暇または自由)は、司令部O-6レベルの承認を必要とする...これらの.国は、外国クリアランスガイド(FCG)、国務省(DOS)、戦闘部隊、および/または情報機関の脅威通知に基づいて変更することがある。」 これは、「非正規」戦の準備を示唆している。 

 米国の特殊作戦センター・オブ・エクセレンス(SOCE)が公開した2017年頃のものとみられる、ある日付のない文書には、90年代にロシアがチェチェンに侵攻した際の「チェチェン反乱軍の対応から米国は学ぶべき」と記されている。それによると、「反乱軍」は「分散型作戦」を行い、ソーシャルメディアを使って「地元の民衆に溶け込んだ」と説明されている。ロシアの敵は「誤報」を使ってロシア人を操り、反政府勢力の敵を殺させた。

 続けてこのSOCEの論文には、陸軍特殊作戦部隊が「このような環境で活躍できるように訓練されている」と記されている。この文書は、米国がロシアを挑発するために非正規部隊を訓練することを明確に提唱している:
 「米国は、国務省、情報機関のメンバー、そして「国防総省の主導/代表として機能する」特殊作戦司令部である SOCOM と共に、省庁間の作業グループを形成すべきである。このような作業部会は、「ロシアの近代戦の戦術に対抗するためには、SOCOMの行動が従来にない、不規則なものである必要があることを理解するよう」提案している。」

 ウクライナの軍隊を強化し、ロシアを煽ることで、アメリカのエリートたちは公然とウクライナの市民を駒として使ってきたのである。長年にわたり、ウクライナ軍は米国人により都市部での戦闘訓練を受けてきた。つまり、人口密度の高い市民地域でロシア軍と戦うための訓練である。「タスクフォース・イリニ」は、イリノイ州陸軍州兵の第33歩兵旅団戦闘チームの150人の兵士で構成されている。

 2020年9月、米軍は、ポーランド国境に近い西ウクライナの事実上のNATO軍基地であるヤヴォリフの戦闘訓練センターで、「タスクフォース・イリニ顧問が専門知識を提供し、都市作戦のスキルを磨いた」と報告した。



(米陸軍部隊の)「サンダーバード」はウクライナ人を本格的な車両戦闘で訓練

 オクラホマに拠点を置く「サンダーバード」は、前世紀に何回か変身を遂げている。この陸軍部隊はもともと第45歩兵師団として知られ、現在は第45歩兵旅団戦闘団となっている。2017年初頭までに、JMTG-Uの任務は第7陸軍訓練司令部と米陸軍ヨーロッパの下に置かれ、第179歩兵連隊第1大隊のサンダーバードとウクライナの第28機械化旅団と第79空挺旅団の兵士がペアを組むことになった。その目的は、ウクライナ人が本格的な車両戦闘に備えられるようにすることだった。

 プーチンは、ウクライナはNATOの駒であると主張している。米国プロパガンダはこの考え方を否定し、ウクライナのNATO加盟を公に否定することでそれを証明しようとする。しかし2017年4月、米軍はJMTG-Uの下、サンダーバードの任務が 「ウクライナ軍をNATO基準で訓練し、下士官隊を育成し、戦闘訓練センターの設立を支援し、将来的には自分たちの訓練を自分たちで継続できるようにすること」だと認めた。つまり、ウクライナ軍がNATOの基準で訓練され、アメリカの傀儡大統領が監督しているならば、NATOの一部であるのと同じで、アメリカが防衛に乗り出す義務はない、ということだ。

 提案されたセンターは「ヤヴォリブ戦闘訓練センター」となった。米軍は2017年10月、「新しい手榴弾射撃場が開設された」と報告した。モンタナ・ダガー(Montana Dugger)少佐は言う:

 「我々は、今後20年、30年以上にわたってこれらの施設を使用できるよう、長期的保全計画の構築を支援しました。」

 滑稽なダブルスピークになっていることがわからないようで、米軍はウクライナの戦闘訓練センターが「ヤヴォリブ近くの国際平和維持・安全保障センターに設立されている」とも説明している。また、サンダーバードがウクライナでロシア人と戦うためにネオナチ部隊を組み込んだ軍隊を訓練している一方で、1930年代以前の徽章は鉤十字で、オクラホマにあるその博物館では、「古代アメリカインディアンの幸運の象徴」と説明されているということも皮肉なことである。



第45歩兵師団博物館の展示品:部隊オリジナルの1930年以前の鉤十字パッチ

CIAの隠れた作戦目標:「ロシア人を殺せ」

 上記のような公然の、しかし過小評価され、あるいは報告されていない出来事に加えて、米国中央情報局(CIA)は8年間にわたり秘密裏に訓練プログラムを実施してきた。大規模な公然プロジェクトがあるのに、なぜ秘密の作戦が必要なのだろうか?CIAは暗殺、代理戦争、心理作戦、偽旗を専門としている。このことからわかるのは、彼らのやろうとしていることは、ジュネーブ条約で禁止されている戦術を含んでいることだ。

 ヤフー!ニュースは、2014年に 「隠密行動資金」というドクトリンのもと、「CIAを退役した準軍人の少数精鋭グループが、ウクライナの退役軍人と会うために初めて前線に極秘出張した」と報じている。この訓練はCIAの特別活動センターによって行われ、このことから、たとえ「元CIA」特殊部隊であっても、CIA本部にハイレベルなアクセスが与えられ、事実上の公式任務であったことがうかがえる。

 ある工作員の:「アフガニスタンのタリバンが敵の目くらましに弱い高度なハードウェアを持っていないという意味で、元CIAたちはウクライナの民兵をタリバン化しようとした。」つまり、基本的で非技術的な戦争訓練が必要だったのだ。報告書によると、この訓練者たちは:
 
 「そのウクライナ人たちに①狙撃術、②米国から供給されたジャベリン対戦車ミサイルなどの操作方法、③ロシア軍がウクライナ軍の位置を特定するために使用するデジタル追跡を回避する方法―このデジタル追跡のおかげでウクライナはロシア軍の迫撃砲の攻撃に弱かった、④秘密の通信手段の使い方、そして⑤戦場で見つからないようにしながらロシア軍と反乱軍の位置を引き出す方法などの技術を教えた。これらはすべて元CIA職員が語ったことだ。」

 さらに、あるCIA元職員はこう語っている(記者なりに言い換えたもの):

 「CIAは、このウクライナ人たちの「気骨」を見極める必要があった...問題は、「彼らはコロコロと流れに流されるのか、それとも立ち上がって戦う気があるのか」ということだった。

 では、「気骨」、つまり冷酷でサイコパス的な闘争心を持つ傾向があるのは誰か。それはファシストと超国家主義者だ。実際、米国の企業メディアでさえ、ウクライナ軍や準軍事部隊にナチスがはびこっていると広く報じてきた。今日、その同じ企業メディアはこのナチスを単なる民族主義者と呼んでいる。

 2015年から、CIAの地上部門がウクライナ人を米国南部で訓練するよう手配した。この作戦は現在も続いており、バイデン政権下で拡大されている。「数週間にわたる米国を拠点としたCIAのプログラムには、銃器、カモフラージュ技術、陸上ナビゲーション、「カバー&ムーブ」といった戦術、諜報活動などの訓練が含まれている。」 ある上級士官の言:「米国が反乱軍を訓練しているのは…ロシア人を殺すためだ。」

 今年2月、ロシアが侵攻する直前、CIAが「ロシアの占領に対抗してウクライナ人が反乱を起こす準備をさせている」との報道があった。(ロシアの)占領に対して?それとも、占領を誘発するための反乱?

 CIAに加え、米軍も独自の秘密工作を行っている。2018年に開始された「抵抗活動コンセプト」のもと、ペンタゴンはウクライナの民間人で構成される領土防衛ユニットを訓練しているようだ。これにより、ウクライナの特殊作戦部隊が、民間人にゲリラ戦術を教える国家レジスタンスセンターを創設することにつながったようだ。

ウクライナ軍創設は世界を破滅の崖っぷちに追いやることになる

 2014年にロシアがクリミアを併合した後、ドネツクとルハンスクで親ロシア派による東部地域デモが発生した。米国議会調査局(CRS)はこう指摘する

 「キエフの政府は軍事力で対応し、分離主義者を押し返すために地元の民兵を起用した。」

 CRSは、米国が英国、カナダ、リトアニアを従え、国防改革と安全保障協力に関する多国籍合同委員会に参加していることを付け加えた。米国防総省の欧州司令部には当時、「欧州再保証イニシアチブ」(現在は「欧州抑止イニシアチブ」と呼ばれている)があった。このプログラムのもと、数十人のウクライナ人がアラバマ州ハンツビルでRQ-11B、手打ち式無人機レイヴンの運用訓練を受けた。2016年には72機のドローンがウクライナに送られた。

 2016年1月の英国下院図書館の調査報告書には、次のように書かれている

 「ウクライナ政府軍とロシアに支援された分離主義者の間の戦闘は、2014年4月以来9000人以上が死亡し、2万人以上が負傷した。」

 同報告書はさらに続けて、国連安全保障理事会が支援するミンスクII合意で、停戦と双方の前線部隊の撤退が求められた後、ウクライナ議会がルハンスク州とドネツク州の一部に特別な地位を認め、自治権を強化したと述べている。

 王立連合サービス研究所は、英国国防省系のシンクタンクである。その報告書の中で、ロシアがウクライナに関して、主に「防衛政策」をとっていたことを認めている。以下その引用から:

 「ロシアの高官たちは、拡大したNATOやEU、AUKUS、米英両国が推進する民主連合など、拡大し重なり合う西側同盟に警戒感を抱いている。」

 ロシアの戦略の一部は、2011年に米国が主導したリビアの破壊に根ざしていると報告書は説明している。NATOによるリビア爆撃とムアンマル・カダフィの打倒は、「西側の強力な同盟国がいかに(国連安全保障理事会)UNSCを迂回したり操作したりすることができ、ロシアの利益が守られる公開討論会を本質的に回避しているかをはっきりさせた。」

 実際、2022年2月27日、国連安保理は決議2623を採択した。その内容は以下:

「第8979回常任理事国会議で全会一致が得られなかったため、国際平和と安全の維持に対する基本的な責任を果たすことができなかった。」

 ①国際外交の不在、②アメリカ国内の反戦運動の弱さ、そして③プーチンは悪者であるという教義の下での多くの左翼やリベラルの戦争への喝采、は世界を1962年のキューバ・ミサイル危機以来の、いやそれ以上に核による終末的な大惨事に近づかせたのだ。多くのロシア人が街頭に出て、停戦を訴えている。過去8年間、自国の指導者たちがウクライナをロシアに対してひとつの兵器として扱っているのに、西側諸国民はあらぬ方角に視線をやり、多くのロシア人と同じようには停戦を要求していない。

TJ COLES



T.J. Coles is a postdoctoral researcher at Plymouth University’s Cognition Institute and the author of several books, the latest being We’ll Tell You What to Think: Wikipedia, Propaganda and the Making of Liberal Consensus.

 


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ロシア国内のジャーナリストの命を狙う---ウクライナ支援のロシア国内ネオナチ集団の暗殺計画は失敗


<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine-backed radicals considered assassinating RT editor-in-chief – Moscow — RT Russia & Former Soviet Union
ウクライナに支援された過激派がRT編集長の暗殺を検討―モスクワ

2022年4月25日

出典:ホームロシア・FSU

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月22日


マルガリータ・シモニャン © RT

 ロシア国内のネオナチ集団がマルガリータ・シモニャン夫妻を狙ったとFSBが主張
 ウクライナの支援を受けた過激派がRT編集長の暗殺を検討

 ロシア連邦保安庁(FSB)が公開したビデオ映像によると、テレビキャスターのウラジミール・ソロビョフを殺害するようキエフから指示されたとされるネオナチグループは、RT編集長のマルガリータ・シモニャンなど他にも複数のターゲットを持っていたという。

 ウクライナの「非ナチ化」を目的としたロシアの軍事攻勢が続く中、FSBはネオナチのグループを拘束したと主張した。同局によると、このグループはウクライナ治安局(SBU)から、ロシアの人気テレビ司会者でジャーナリストのウラジミール・ソロビョフ氏を殺害するよう指示されていたという。FSBはその後、容疑者の拘束、捜索、尋問の様子を撮影したビデオを公開した。

 拘束された一人によると、このグループは、スプートニク通信のドミトリー・キセリョフ局長、スプートニクとRTのマルガリータ・シモニャン編集長、その夫で著名な映画監督兼テレビ司会者のティグラン・ケオサヤン、さらにはテレビ司会者のオルガ・スカベエバとエフゲニー・ポポフについて、彼らをどうしたら暗殺できるかを話し合っていたのだそうだ。



関連記事:西側諸国はロシアに対する「テロ」に転じた-プーチン大統領

 
プロパガンダを広めた人々の殺人について、つまりソロビョフ、キセリョフ、スカベエワとポポフ、ケオサヤン、シモニャンの名前が挙がっていた」と述べた。

 このニュースについて、シモニャンは次のように述べた。「全ての人は必ず死にます。そうであるならば、私は、沈黙を守るためではなく、自分が正しくかつ可能だと思う方法で真実を語り、そして自分の祖国を守るという喜びを求めて死にます。それは、不治の病や老いによってゆっくりと死んでいくよりも恐ろしいことではありません。それに対する私の態度は哲学的であり、キリスト教的です。」

 拘束された容疑者は、SBUがグループにウラジーミル・ソロビョフを「できるだけ早く」殺害するよう命じたことも明らかにし、「特殊作戦や軍の募集事務所への支援のシンボルがついた車に火をつける」ことについても話し合ったとしている。

 FSBは、捜索中に、爆発装置、8個の火炎瓶、6丁の拳銃、のこぎり付き猟銃、手榴弾を押収したと主張している。さらに、1000発以上の弾薬とウクライナの偽パスポートも押収したという。容疑者のアパートで撮影されたビデオでは、アドルフ・ヒトラーの肖像画も確認できる。


関連記事:ウクライナのロシア人ジャーナリスト殺害計画、失敗―モスクワ

 ロシア連邦保安庁(FSB)のアレクサンドル・ボートニコフ長官は、テレビ局「ロシア」とのインタビューで、このグループに関する追加情報を明らかにしました。彼は、モスクワの6人のロシア市民で構成されていると主張した。彼らは全員拘束されたとのことだ。

 ボルトニコフによると、このグループはネオナチ組織「国家社会主義者/ホワイト・パワー」と関係があるという。容疑者たちの主な任務は「暗殺未遂の場所を特定すること」であり、したがって彼によると、グループのメンバーはソロビョフを追い回していたという。

 キエフは暗殺計画疑惑への関与を否定し、FSBの作戦は「演出」であると主張している。

 ロシアは、ウクライナが2014年に初めて締結されたミンスク協定の条件を履行せず、モスクワが最終的にドンバス共和国であるドネツクとルガンスクを承認したことを受けて、2月末に隣国を攻撃した。ドイツとフランスが仲介したミンスク議定書は、ウクライナ国家内で離脱地域に特別な地位を与えることを目的としたものであった。

 クレムリンはそれ以来、ウクライナは中立国であり、米国主導のNATO軍事圏には決して参加しないことを公式に宣言するよう要求している。キエフは、ロシアの攻撃はこちらから挑発されて行われたものではないと述べ、また同国が武力による2つの共和国の奪還を計画しているというロシアの主張も否定している。
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マニフェスト・デスティニー(天命)の成就―中国とロシアは成功する、米国が失敗したところで


<記事原文 寺島先生推薦>
Manifest Destiny Done Right. China and Russia Succeed Where the U.S. Failed

マシュー・エレット(Matthew Ehret)

2022年1月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月22日

欧亜(ユーラシア)諸国がどんな犯罪を犯したから米国とNATOの軍産複合体の標的になるのか

 「未来を予測する最良の方法は、未来を作り出すことである」
――エイブラハム・リンカーン

 世界は新しい冷戦に吸い込まれつつある。旧来の鉄のカーテン、反共のレトリック、さらには西側一極支配の戦争タカ派による核の軍刀の振り回しがある。第一次冷戦とは異なり、この新しい冷戦は、ロシアと中国、そしてイランが、「一帯一路」構想に参加しつつある国々とともに緊密に連携しているのが特徴である。

 中国、ロシア、イランなど、これらの欧亜(ユーラシア)諸国はどんな犯罪を犯したから、米国とNATOの軍産複合体の標的になるのか。



 それは、科学技術官僚(テクノクラート)による独裁・一極支配に服従しないことを選択したことである。 

 少し前のボリス・エリツィンや趙紫陽が、縮小する地政学の檻の中に閉じ込められるという陰鬱(いんうつ)な運命を、幸福感に満ちて受け入れたようにではなく、今日の欧亜の知識人たちは、文明を脅かす多面的危機の唯一の解決策が未来にあることを認識したのである。これは平凡な言い回しに聞こえるかもしれないが、地政学的な観点から言えば、未来は創造性の生きる場所である。

 資源が独占され、人類の基本的権利に敵対する社会病質的な選良(エリート)によって支配体制が形成されているとき、闘いを成功させるための唯一の抵抗の道は、不正なゲームのルールを変更し、新しい資源を創造することである。これは、1)新しい発見をする機会を増やすことで実現される。そしてその発見が2)新しい資源を生み出し、3)新しく発見された原理を新しい技術改良に変換し、4)人類の(知的、精神的、肉体的)生産力を増大させるのである。もし、1~4のステップが現在は存在しないとしたら、それらはどこにあるのだろうか?

 もう一度言う。「未来」である。

 未来の肯定的な理想が目的を達成する上で(1)、社会を前進させるという概念は、かつて西洋文明の大部分を支配していた強力な概念であった。人間は創造主の生きた姿に似せて作られ、絶え間ない創造のプロセスに参加することができるという考え方は、科学の進歩、自由、主権、生活の質の向上、人口増加において、これまでにない大きな飛躍を促す力強い概念であった。初期の米国では、この概念は「マニフェスト・デスティニー(天命)」として知られるようになった。......神がもっている計画とは、最高の文明を拡大し、進歩の果実をすべての人に与えることである。これは聖書の命令を実現するためであり、人間性を「豊かにし、広げる」、「大地を富かにし、自然を制御する」ことが期待されているのである。

 この思想から人類に多くの財が生まれたが、この思想は諸刃の剣でもあり、もし暴君や奴隷所有者や帝国主義者によって使われると大きな損害を与えるものであった。なぜなら彼らはしばしば次の事実を無視するからである。すなわち、すべての人間は創造主から譲ることのできない権利を与えられているのであり、正しい血統、宗教、言語、人種的特徴を持っていると感じる少数者だけのことではないのだ、という事実を。

 19世紀の開拓時代に流行した「天命」(マニフェスト・デスティニー)の美徳を称える絵画。


欧亜大陸の新たな「天命」の誕生

 ロシアでは、このような未来志向が、21世紀の「ロシアの天命」のような形をとっていて、シベリア極東や北極圏、さらには中央アジア、モンゴル、日本、中国などへ文明を拡大しようとしている。多くの人はしばしば、世界の出来事を「下から上へ」と近視眼的に分析しようとするが、次のことは明らかである。

 2018年以降、ロシアの東部開発という大志は、中国のBRI「一帯一路」構想の北部拡張とますます合体している。それは「極地シルクロード」と名付けられ、鉄道、道路、通信基地、港湾、エネルギー計画、海の回廊の成長を拡大した。海の回廊は、人類の文明を寄せ付けないと長く考えられていた氷の地域を通るのである。

 中国は「一帯一路」構想のかたちをとった中国版「天命」の誕生を見たのである。これは2013年に発表され、変革、相互接続、相互勝利(ウィンウィン)の力を発揮し、8年前にそれの熱狂的支持者が想像したものさえこえてしまった。短期間のうちに、3兆ドル以上が140カ国が参加する大中小の社会基盤整備に費やされた(参加の度合いはさまざまである)。


 世界各地に建設された数千のBRI計画に目を向けると、高速鉄道(磁気浮上式、在来式を含む)、総合開発回廊、新しい先端都市、新しい産業拠点、パイプライン、そして、宇宙開発、原子力、核融合研究、量子コンピューターなどに関連する先端科学の構想が数多く存在することがわかる。

 これらの開発回廊は、北はロシア、中央アジア諸国を経由して伸張してきて、そのなかには「BRIの中間回廊」がある。最近では、中国からパキスタン、イラン、イラク、シリア、レバノンに至る南ルートが開花し、2022年1月12日についにシリアが署名した。また、アフリカ諸国も積極的に乗り出し、アフリカ54カ国中48カ国以上がBRIに署名している。現在、中南米18カ国、アラブ20カ国が参加している。

多様性を犠牲にしてまで合体する必要があるのか?

 中国もロシアも、未開発の資源や労働力、技術的なニーズなど大きな可能性を秘めた大国である一方、文化、宗教、言語、民族など、あらゆる分野の多様な小集団を抱え込んでいる。

 1億4600万人のロシア国民の大多数は、国土の西端5分の1に住んでおり、人口の80%がバルト海からカスピ海に広がる都市部またはその近辺に住んでいる。他方、シベリア北東部はカナダの1.3倍の広大な面積を持つのに、分散する国民が2400万人しか住んでいない。



 中国も同様の問題に直面しており、人口密度と発展部門が西側ではなく、東側の太平洋沿岸に密集している。中国の人口の94%近くはいまだに河北――騰沖(雲南省)線の東側に住んでおり、広大な内陸部には人口のわずか6%しか住んでいない。

 ロシアは193の民族を抱え、人口の20%近くを占めている。中国は漢民族が人口の91%と圧倒的に多いが、56の民族が1億1300万人存在し、その多くがチベット、新疆、内モンゴルに散らばって住んでいる。


 欧亜大陸の指導者が直面する対外膨張の課題は、次のようなものである。科学と産業の発展を、多民族・多言語の領土を越えて国内外に拡大し、その過程で何百、何千という小さな文化集団の文化遺産を破壊することなくおこなうことは、どのように可能なのか。世界史の中であまりにも頻繁におこなわれてきたように、発展は常に小さな民族の文化的多様性を犠牲にしておこなわれなければならないのか、それとも両方の要素の均衡をとる有機的な方法があるのか?

悪しき「天命」にならない方法

 皮肉なことに、最近まで「天命(マニフェスト・デスティニー)」の概念は、米国と伝統的に結びつけられてきた。しかし米国は、人口の大半が大陸の東半分に集中しているという点で、中国やロシアと人口学的な特徴を共有している。



 しかし、悲しいことに、アメリカの膨張を形づくった勢力、特に「天命」が最も影響力を持った最初の125年間は、この試練に惨敗することがあまりにも多かった。アメリカは最初の125年間で、1776年には13の後進植民地から1900年には45の工業先進州へと成長した。この間、奴隷に反対したベンジャミン・フランクリン、ジョン・ジェイ、ジョン・クインシー・アダムス、エイブラハム・リンカーン、チャールズ・サムナー、ウィリアム・スワード、ウィリアム・ギルピンの賢明な声は、あまりにしばしば英国崇拝の「ディープステート(闇の政府)」という寄生階級によって覆された。この階級は、北部のウォール街と南部の奴隷権力を牛耳っていたからだった。

 アメリカの中枢に潜むこのヒドラ(多頭の生物)は、「天命」という独自の倒錯した考えを持ち、先述の偉大な政治家たちの大志とは正反対に位置していた。

 ベンジャミン・フランクリンやアレクサンダー・ハミルトンのような奴隷制度廃止論者を率いる人物は、宗教的改宗を強要したり地元の伝統を押しつぶすことなく、知識や技術スキル、科学、技術進歩の成果を黒人や先住民に分け与えることを奨励したのに対し、北部と南部で力をもった「闇の政府(ディープステート)」は征服者のムチによってのみ力を拡大しようとしたのである。



 南部の「天命」の倒錯は、アンドリュー・ジャクソン、ジェファーソン・デイビス、アルバート・パイクが推進したものであり、黒人奴隷を増やし、黒人と先住民を「優れた」白人が踏みつけにすることを想定していた。つまり彼らを、檻のような農園や居留地に囲い込み、自分の運命に口を出すことができなくするのである。

 ジャクソンの1830年のインディアン強制移住法は、先住民の貴重な土地を空にして、それを南部の綿花栽培農家に素早く引き渡した。彼らはアフリカからの黒人奴隷の流入を急速に拡大し、自由州と奴隷州の間の緊張を高め、1861-65年の必然的な南北戦争に至ったのであった。


 しばしば忘れ去られていることは、イタリアの国家主義者マッツィーニとつながりのあるフリーメーソンの一員でもあったフランクリン・ピアース大統領(1853-1857)の下、当時の陸軍長官ジェファーソン・デイビス(後の南部連合大統領)とアルバート・パイク将軍が、奴隷州を通る大陸横断鉄道の「南部代替案」を進める責任者だったことである。

 1863年にリンカーンによって建設が開始された北部鉄道は、産業発展を広め、最終的に中国と結ぶことを目的としていたが(2)、南部鉄道は単に奴隷を主人の支配下に置くための鉄の檻として機能した。このように、南部連合の「天命」は、アフリカ大陸をイギリスの支配下に置こうとした「ケープからカイロに至る鉄道」のセシル・ローズの人種差別的構想や、アフリカからインドに至るグリーンエネルギー網を強要する今日のEU・ロンドンの「グリーンベルト構想」/OSOWOG計画」と何ら変わりはなかったのである。


 南北戦争中、英国は武器、軍艦、後方支援、カナダの情報拠点、資金を、喜んでカナダの反乱軍に提供し、その結果、リンカーンは初期に二つの前線(一つは南部、もう一つは大英帝国)で戦争をすることになるところだった(3)。

 アメリカの「天命」を正当に守る者たちは、戦争を避け、外交に頼って領土を拡大しようとしたが(1804年のルイジアナ購入、1848年のオレゴン領土、1867年のアラスカ購入など)、ウォール街とバージニアの奴隷勢力の「アメリカ」は、帝国的野心を広げるために隣人と喧嘩することを常に喜んでいた(1846-48年のメキシコ戦争や1893年のハワイ王政打倒を参照)。

 残念ながら、かつて英国の帝国主義に抵抗したアメリカの伝統は枯れ果て、今日の共和国は、抜け殻のような悲しむべき存在になってしまった。連邦政府の権力の地位から本物の愛国者を排除した。今日のアメリカは、産業基盤を空洞化させ、キリスト教的価値観や科学的進歩への信仰といった文化的つながりを破壊し、将来への展望を持たない虚無的消費者の疎外された国家となったのである。

アメリカの火の車(金融・保険・資産 VS 製造業)経済

20世紀における環境保護植民地主義の成長

 先住民を部族居留地という形でゲットー化させる人種差別的なプログラムは、何世代にもわたって先住民を社会の他の部分から隔離し、依存、貧困、薬物乱用、乳児死亡率、自殺が、全米平均より何倍も高いというサイクルに彼らを閉じ込めてしまった。

 また、このような扱いを受けている先住民は、「人間の生態系管理」という名の下で、より広範な大陸開発計画を阻止しようともくろむゲームマスター(取り仕切る人)により利用され、その計画への参加を阻害されている。 

 1960年代後半以降、先住民の集団をその地域の生態系の単なる延長として扱うことがますます流行っている。この両者(先住民集団と地域生態系)は、コンピューターモデルによって定常均衡で存在するものとされている。そのモデルは、何十年にもわたって先住民保護地区と最適な先住民増加を計算するために使われてきたものである。



 フランクリン・ルーズベルトやJFKが推進した大規模な経済成長政策が頓挫した理由を理解しようと努める者にとっては(JFKの場合は1960年代後半のベトナム戦争開始時と重なる)、この人種差別主義者による先住民保護区の利用と生態系管理は極めて重要である。

 自然保護公園や連邦政府がインフラ投資を一切禁止している広大な土地は、多くの人が信じているような温厚な自然愛好家によるものではなく、冷徹な計算による政策の結果であり、「限られた資源」という小さな管理世界に社会を閉じ込めようとする地政学的ゲームマスターによるものだったのである。


画像はイメージ。保護区(上)と国立保護区(下)。北米科学アカデミー

 リベラルな帝国主義者たちは、利己的な白人植民者によって長い間虐待されてきた先住民の窮状に「ワニの涙(ウソの涙)」を流す一方で、1970年代を通じて先住民の女性への集団不妊手術を支援し、先住民を、清潔な飲料水、持続する電力、医療、質の高い仕事すら無い状態に保つことに余念がなかった。

 アメリカ大陸横断鉄道(欧亜大陸にまで延長できる)の最も熱心な推進者の一人は、リンカーンの協力者のウィリアム・ギルピン(南北戦争中のコロラド州知事)だった。彼は、先住民保留地を「先端領域に接する刑務所の壁岩のようなもの」と鋭く指摘した。

 この新しいタイプの近代的な植民地主義の裏では、腐敗した部族指導者の金庫に資金が注入されることが多かった。彼ら部族指導者は、石油カルテルに資源を搾取させることに満足し、部族民を援助金依存と技術成長ゼロの悪循環に閉じ込めたままにしてきた。

 この観点から見ると、アフリカに適用された同様の新植民地政策の適用に、明確な並行関係を見出すことができる。

中国――尊厳ある「天命」

 西側の「ファイブ・アイズ」に管理された政治家たちが声高に非難しているにもかかわらず、BRI(一帯一路)のアフリカ提携国や自国少数民族に対する中国のアプローチは、西側支配者が何世代にもわたって展開してきた搾取と文化虐殺の悪しき伝統とまったく対照的である。
*「ファイブ・アイズ」:英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国。スパイ衛星で通信傍受した情報を共有している。

 チベットや新疆で見られるのは、文化遺産センター、爆発的な識字率、伝統的な言語や歌、物語、踊りの賞賛と教育が政府の全面的な支援を受けていることである。

 この文化的成長の証がすべての少数民族区域に広がっていると同時に、長寿、人口密度、生活の質、貧困削減、乳児死亡率削減、高度な産業技術、清潔な水、インターネット、豊富な電力の享受などにも劇的な成長が見られる。

 宗教の面では、59の仏教寺院と253の教会は言うに及ばず、現在2万4400以上のモスクが新疆に存在する。わずか8年の間にサウジアラビアと米国が資金援助してきた中国国内のテロによる破壊にたいして、(アメリカと違って)ただひとつのアラブの国も石器時代に戻すような爆撃を、一度もしてこなかったことは、決して小さな成果ではない。

 チベットでは、高速鉄道と在来線が、貧困に長い間あえいでいた地域社会をより広い世界市場へと導き、耐久性のある技術力と訓練が若い人々の間で生き生きと育っている。




 仏教寺院も政府の全面的な支援で繁栄している。アメリカ民主主義基金NED(CIAの別働隊)が支配する中国とチベットの宣伝機関は、こうした目を見張るような中国人の生活に誰もが気づかないよう配慮してきた。

 西南アジア、アフリカ、そしてその他の地域でも、BRI関連のプロジェクトには中国企業に有利な利権が組み込まれていることは確かだが、インフラ(ハード・ソフト両面)、新しい産業拠点、教育機会が猛スピードで誕生していることは事実である。

 アフリカでは、チベットや新疆で見られたのと同じように、地元の文化的伝統が繁栄していることがわかる。もしあなたが、そんなことを見たことも聞いたこともないというのであれば、エポック・タイムスを捨てて、アフリカのローカルニュースCGTNのアフリカチャンネルを見てほしい。



 中国のアプローチは、IMF=世界銀行=USAIDのプログラムと全く対照的である。そのプログラムは貧しい国々を何十年ものあいだ不当な債務の罠の奴隷状態に置き、魚を買うためのお金は提供しても、自分たちで魚を獲ることは決して許さなかった。一方、中国は大規模な建設計画や製造拠点、そしておそらく最も重要なことだが、高度なエンジニアリング技術の発展を促してきた。

ロシアのマネタリスト(通貨主義者)の障害を克服するために

*マネタリスト:通貨供給や金利操作などの金融政策の重要性を主張する経済学者。主唱者は経済学者ミルトン=フリードマンらで、この考え方は「新貨幣数量説」とも呼ばれる。ケインズ学派とは立場を異にし、1980年代の金融政策に大きく影響を与えた。

 ロシアでは、中央銀行が民営化され、IMFの通貨政策に大きく影響されているため、プーチンの極東構想の実現は、国営銀行が長期的な成長の貴重な手段となっている中国よりもはるかに困難なものとなっている。1990年に設立されたロシアの民間中央銀行は、IMF、WTO、官僚に群がる自由主義的イデオロギーとの根強い構造的な結びつきがあり、「均衡予算」と自由市場の教義が、生産的信用の放出に優先していることに、依然として悩まされている。

 こうした障害にもかかわらず、ロシア独自の「天命」は、セルゲイ・ショイグの「シベリアの巨大開発計画」によって息を吹き返しつつあり、50万から100万の市民が住む5つの新都市の建設が始まっている。

 さらに、9300kmのシベリア横断鉄道と4300kmの南バイカル・アマル幹線鉄道の両方の近代化と複線化、モンゴル・中国さらには日本への統合の拡張・改善が計画されている。これは、モスクワから中央アジア、イランを経てインドに至る国際南北輸送回廊の拡大と連動しており、BRI(一帯一路)と極東構想のもう一つの側面として捉えられるべきである[下の地図参照]。この計画の進捗に伴い、この鉄道路線の貨物輸送量は1億2千万トン/年から2024年には1億8千万トン/年に増加すると予想されている。

 この鉄道拡張は、2019年に採択されたロシアの北方海路開発計画と密接に関連しており、2024年までに年間出荷量を8000万トンに増やそうとしている。この計画には、港や新しい北極圏の採掘拠点に加えて、40隻の新しい船舶(原子力砕氷船の増設を含む)、鉄道、北方海港の建設が含まれており、中国とヨーロッパ間の商品では10日の輸送時間が短縮されることになる。

 さらに、2022年1月15日、プーチンは、バレンツ海までの北極圏鉄道の建設案を2022年5月10日までに提出しなければならないと発表した。この鉄道はネネツ州のインディガ港まで延び、年間8000万トンから2億トンの貨物を処理できる通年型の北極港が建設される予定である。

 中国とロシアは、「氷上のシルクロード」の建設を推進するため、2019年に北極圏科学研究センターを建設することで合意し、2022年にはヤマル島に新たな国際科学研究拠点「スネジンカ(別名:雪の結晶)」の設計開始される予定である。どちらの場合も、宇宙気候学(北極は、気候変動の原動力となる星間宇宙放射の最も密度の高い侵入口)、種の進化、化学に関する純粋な科学研究が、このような新しいセンターでおこなわれる予定である。おそらく最も刺激的な研究分野は、北極圏だけでなく、月や火星といった他の天体で人間の生活を快適に維持するために必要な、新しい人工生態系の設計をテストすることであろう。両国は、今後10年以内に公開される予定の恒久的な月面基地を共同開発することで合意している。

 もし核戦争を回避することができれば、文明間の発展という刺激的な新しい章に沿った発見は、どんなコンピューターモデルでも予測することはできないが、それでもそれは起こるだろう。教育を受け、活性化され、目標に向かう人間の頭脳による創造的発見の解放は、ますます新しい技術を目覚めさせ、まだ経済的な役割を見いだせない何千もの同位体に広く利用できるようになり、原子の新しい用途が見つかるだろう。こうして元素周期表に対する人類の関係を見直すことになるだろう。このようにして、磁気浮上式鉄道、原子力推進システム、新しいエネルギー源がオンライン化され、「近い」「遠い」、「遅い」「速い」という我々の考えを劇的に変え、空間と時間そのものが凝縮されることになるのである。

 植民地時代に旧世界から新世界へ移動するのに何ヶ月もかかったことを思えば、現在の極超音速機による移動はわずか数時間であることがわかるだろう。現在、化学ロケットで火星まで300日かけて移動しているのが、原子力推進で数週間に短縮されるから、このような飛躍的な進歩が期待される。

 理想が過ぎると非難されるかもしれないが、だからどうしたというんだ?

 この過程はいま目の前にすでに展開しつつある。ほんの10年前には多くの人が不可能だと考えていた政治的、科学的現実が、すでに私たちの未来の軌道を変え始めているのだから。

 ただし、もし人類が成熟した自意識のある種へと移行することに、もういちど失敗すれば、すなわち熱核兵器が地球上に散乱する時代になるとすれば、私たちに次の機会が巡ってくる保証はどこにもない。

著者の連絡先:matthewehret.substack.com



(1)「目的論的」とは、物質世界を形成する本質的な目的または設計が存在し、人間の法に対する考えや経済的野心さえも、宇宙の構造に組み込まれたこの目的に合致する程度にのみ良いものであるという考え方を指している。

(2) 大陸横断鉄道の最も強力な擁護者の一人は上院議員のチャールズ・サムナーで、彼は1867年のアラスカ購入を弁護する決議をした(この購入により、ベーリング海峡横断を経てアメリカ大陸からユーラシア大陸へ鉄道と電信が計画されていた)。「アジアの東とアメリカの西を結ぶことは、英国の航海士メアレスが航海の記録を残したときと同様、現在も商業の願望である。もちろん、この結果を助けるものは何でも利点となる。太平洋横断鉄道は今は西に向かって走ることになるが、完成すれば、逆に東へ(アメリカ大陸へ)の新しい高速路になるからだ」。

(3) このイギリスに対する第2次戦線は、1861年、トレント事件により、ほぼ火ぶたが切って落とされた。
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(1年前の記事)マイダンから7年、ウクライナはドンバスへの砲撃を強化


<記事原文 寺島先生推薦>
Seven years after Maidan divided country, Ukraine intensifies shelling of Donbass to sound of deafening silence from Western media
原題:マイダンで分裂した国から7年。ウクライナはドンバスに耳をつんざくような砲撃を強化する。そして欧米メディアの沈黙。
投稿先:RT ホーム ロシア・FSU
著者:エバ・バートレット
2021年3月2日 13:32
<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>


エバ・バートレット
カナダの独立ジャーナリスト。中東の紛争地帯、特にシリアとパレスチナ(4年近く住んだ)に長年取材に訪れている。

@evakbartlett

マイダンから7年、ウクライナはドンバスへの砲撃を強化、西側メディアは沈黙を守る


© RIA
 
 世界の多くがコロナ関連の問題に注目している中、ウクライナのドンバス住民に対する7年にわたる戦争は続いている。ここ数週間、キエフによる市民への砲撃は激化しており、予想通りの西側メディアの沈黙が続いている。

 表向きは、ミンスク合意に基づく停戦があるとされているが、実際には、平和境界線の村に住むドンバス住民は、絶え間なくウクライナの砲撃にさらされている。

 ウクライナは82ミリや120ミリの迫撃砲など協定違反の重火器を使用し、欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視員がいない夜間にいつも繰り返し砲撃を加えている。

 しかし、ウクライナ軍は日中にも砲撃を行っており、最近では白リン弾を使ったとされる砲撃や、前線よりはるか後方に砲撃を行うなど、ますます多くの砲撃を行っている。

 多くの人は、ウクライナのドンバス地方にあるドネツク・ルガンスク両共和国(DPR/LPR)の出来事について知らないかもしれない。企業メディアはこの問題に触れないか、ウクライナ政府によってひどく着色された眼鏡で報道されているからだ。


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EXCLUSIVE: Amid ‘political repression,’ Ukraine becoming American ‘colony’ in Europe, says sanctioned opposition leader Medvedchuk


 実際には定期的に最新情報を発信しているジャーナリストニュースサイトはあるが、それほど広く知られているわけではない。

 私自身、2019年9月にDPR(ドネツク人民共和国)の最前線の村を取材した経験から、現地の状況をアップデートしてくれる記者や住民と連絡を取り合っている。

 その一人、ドネツクの北東にあるゴルロフカ市の市長は、2月19日に自身のテレグラムチャンネルで、近くのザイツェボ村と鉱山6/7(Mine 6/7)が、(ウクライナによる)激しい重火器攻撃を受けていることを詳細に報告していた。2月20日には、鉱山6/7と別の村が早朝から激しい砲撃を受けており、地元の人々は100回以上の被弾があったと書いている。

 同日、北部の都市ゴルロフカの住民アレクセイ・カルプシェフは、「朝の5時頃から今までずっと、空軍の大砲による激しい砲撃がある」と書き込んだ。

 カルプシェフ氏(ウクライナ共産党ゴロフカ委員会の元一等書記官)によると、ここ数週間、ウクライナ軍からの攻撃回数が「大幅に増加」 しているとのことだ。彼は、最近、22歳の民間人が攻撃で重傷を負ったと言った。

 なぜ今、砲撃が増えたのか私は尋ねた。

 「ウクライナの侵略が激化したのは、ちょうど米国でバイデンが政権を取った時だ」 と彼は言った。ホワイトハウスに戦争屋が戻ってきたことで、ボロディミル・ゼレンスキー大統領は自信を深めているのだろう。バイデンが政権をとってから間もなく、アメリカはシリアへの不法爆撃も再開した。

私たちは生きているのではない、生き延びているだけなのだ

 ゴルロフカの北西と北の村では、板で囲われ、破壊された多くの家や砲弾による火災で全焼した家々があり、そこを通り過ぎて、私は、毎晩の砲撃や家屋の損壊があるにもかかわらず、仕方なくそこに留まった住民に会った

 74歳の女性は、何度も砲撃を受け、家がボロボロになっていた。「夜、砲撃が始まると怖いんです。夫は亡くなりました。私は行くところがないんです」。

 別の村では、私がウクライナの狙撃兵に狙われるからと注意されていた小道を、一人の男が歩いて行こうとするのに出会った。彼の家は、今はほとんど人が住んでいない地区にあり、そこへ行くと銃撃戦があるが、他の人と同様、彼にも他に行くところがなかったのだ。

 彼は、カメラなしで話すことに同意してくれた。それは、ビデオインタビューをした直後に、ウクライナが彼の家を砲撃したからだという。また、彼はスナイパーに足を撃たれたこともあり、その他にもスナイパーが発砲したときに地面に伏せなければならなかったことが何度もあったという。



 この地域の別の男性は、彼の家もウクライナの攻撃で被害を受けたが、カメラで話すことに不安はないと言った。

 「第二次世界大戦のことを覚えているのに、なぜナチスを支持するのか?なぜ今ナチを支持するのか?公然とナチスを・・・。なぜヨーロッパは沈黙しているのか?誰もがここに来て私に同意してくれるが、何も変わらない。OSCEは叫ぶが、いざ攻撃されると沈黙し、ウクライナが攻撃したとは言わない

 同じく最前線の村、ザイツェボでは、行政長のイリーナ・ディクンさんが、停戦合意は自分の村には届かなかったと、この6年間の地獄を話してくれた。

 「ここでは、生きているのではなく、生き延びているのです。出て行ける人は出て行った。残っているのはほとんど高齢者です

 ウクライナが砲撃している最前線に近い家では救急車が来ないので、怪我をした住民を助けるために運転を習い、応急処置の訓練も受けたそうだ。彼女は、ウクライナの村の「通りごとの」破壊について詳しく説明するとともに、ロシアが離脱共和国に侵攻しているという西側メディアの主張は誤りであると強調した。

 「ここにはロシアの侵攻はありません。普通の、平和な人々それぞれが、自分の望む生き方をしたいと思っただけです。当初、私たちは共和国を作りたかったわけではなく、自治権を持ちたかっただけなのです。しかし、私たちの声に耳を傾けてはもらえませんでした。ウクライナは国民に対して軍隊を動かし、私たちに対して砲撃をしたのです。」

 私は多くの民兵とも話し、なぜ武器を手にしたのか、さまざまなことを尋ねた。

 「オデッサで人が殺されたからだ。だから、自分たちの地域を守るために軍隊に入ったんだ」と、ある兵士は言った

 別の男性は、最初はキエフのクーデターに反対するデモに参加し、「ナチス政権を支持しない」と言い、最終的には民主共和国を守るために武器を手にした、と言った。

 ウクライナ軍から500メートル離れたその最前線で、私は防弾チョッキとヘルメットを身につけた。ほぼ毎晩のように砲撃や重機関銃の攻撃にさらされる高齢者の話を聞きながら、この勇敢な人たちを守るものは何もなく、ウクライナが毎年、彼らを傷つけ、殺し、家を壊し、破壊するのを防ぐ国際機関もないことを思い知らされた。

 一方、ウクライナには、西側諸国が自分たちの犯罪をごまかして、武器を送っている

ALSO ON RT.COM


After shuttering TV stations, Kiev now bans Telegram channels despite internet providers saying they can’t actually censor them


西側諸国の大使が偽情報の最前線に立っている

 2月11日、ウクライナ報道では、ゼレンスキー大統領と西側大使一行がウクライナ支配下の前線を訪問し、ゼレンスキーが情報操作の仲間にドンバスで起きていることを「自分の目で見る」ことの重要性について無駄口をたたいていたことを報じた。

 そう、違うのだ。彼らは、不毛な訪問の向こうにあるものを何も見ていないのだ。私が前線の向こう側で聞いたような苦悩の証言も聞かなかっただろう。

 彼らはまた、多くの人々が、その多くが高齢者で、家の中や学校の地下に住み、電気、水、調理用ガスを奪われ、援助に頼って生きていることを知ることはないだろう。ウクライナが最近も含め、国連や赤十字の援助がDPR(ドネツク人民共和国)に入るのを妨害していると伝えられていることも。

 2月24日と25日、ウクライナ軍は、国連と赤十字からの人道援助が入る予定の地点であるドネツクの南、イェレノフカを砲撃し、援助物資の搬入を阻止した。

 民間人地域への継続的な砲撃の上に、さらに援助物資を阻止することは、ゼレンスキー大統領が欧米大使に主張した「停戦体制確立の義務を果たす」というウクライナの約束とはほど遠いところにある。

 ロシア政府関係者はウクライナの砲撃下にある400万人の悲惨な運命について警告するが、西側政府関係者は沈黙を守るか、ロシアやドンバス擁護者に対する非難をさらにでっち上げるだけだ。



 西側メディアは予想通り、ウクライナの犯罪について沈黙を守り、ドンバスの擁護者を「親ロシアの分離主義者」として描き、ドンバスの人々が実際に何を望んでいるのかについては、何も伝えていない。私が現地で聞いたところでは、彼らが望んでいるのは、ウクライナの犯罪的政府からの自治であり、何よりも戦争の終結である。

 西側諸国やメディアは「ロシアがドンバスに侵攻した」と騒いでいるが、欧州安全保障協力機構(OSCE)特別監視団の議長でさえ、最近「それは事実ではない」と強調している。

 余談だが、兵士の一人が、ウクライナがナチスのシンボルを大胆に誇示したことに対する欧米人の反応について尋ねてきた。私は、西側メディアのおかげで、ほとんどの人がそのことを知らないのだ、と答えた。

 最近、DPR(ドネツク人民共和国)の代表は、ウクライナからの「どんな攻撃にも対応できるようにしておく必要がある」と警告を発した。実際、バイデン政権の戦争推進政策は、ドンバスの人々をさらに爆撃するために、ウクライナへの欧米の支援を増やすことは間違いないだろう。
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アゾフスタル製鉄所、ついに解放---首や腕にナチス・シンボルを刺青した兵士が次々と投降

<記事原文 寺島先生推薦>
Azovstal ‘fully liberated’ – Russian military — RT Russia & Former Soviet Union

アゾフスタルは「完全に解放された」―ロシア軍

出典:RTホーム・ロシア・FSU

2022年5月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月22日

ウクライナのネオナチ「アゾフ」部隊の最後のメンバーがマリウポリで降伏した。



上の写真。アゾフスタル製鉄所で投降したアゾフ部隊の戦闘員が、ロシアが支配するドネツク人民共和国の港町マリウポリの道路を歩いているところ。©スプートニク/ロシア国防省

 マリウポリのアゾフスタル工場群の全地域が解放されたと、ロシア国防省が金曜日(2022年5月20日)に発表した。ほぼ1カ月にわたって内部に立てこもっていた、ウクライナ軍人とネオナチ・アゾフ部隊のメンバーを含む、2400人以上が武器を置いて降伏した。

 ロシア軍報道官のイーゴリ・コナシェンコフ少将は声明で、「531人の武装勢力の最後のグループが今日、降伏した」と述べた。彼は、5月16日以来、合計「2439人のアゾフ・ナチス」とウクライナ軍人が武器を捨て、アゾフスタル複合施設全体がロシア軍の支配下に入ったと付け加えた。

(動画については下の原文サイトをご覧ください。訳者)
https://www.rt.com/russia/555848-azovstal-surrender-liberated-military/

 アゾフとウクライナ正規軍残党はマリウポリの海岸にある広大な鉄鋼工場に退却したが、4月21日に完全に包囲された。ロシアのプーチン大統領は、軍に襲撃ではなく、「ハエ一匹も中に入れないように」封鎖し、武装勢力を降伏させるよう命じた。

 コナシェンコフによれば、ロシアのショイグ国防相は金曜日(5月20日)にプーチンに作戦の成功を報告したという。また、アゾフ司令官は安全のために装甲車で輸送されなければならなかったという。

 アゾフ・ナチのいわゆる「司令官」は、特別な装甲車で工場から連行された。なぜなら、マリウポリ住民が彼らの数々の残虐行為に対する憎悪から復讐をするおそれがあったからだ。

 その日のうちにソーシャルメディアで公開されたビデオで、アゾフの司令官スヴャトスラフ ・”カリナ”・パラマールは、自分が工場を出たことを否定し、詳細は明かせないが「ある作戦」を実行していると語った。パラマールは「世界」とウクライナの支援に感謝し、「じゃあ、またね」と締めくくった。

 月曜日(5月16日)に武装勢力の第一陣が降伏した後、キエフ政府はマリウポリでの「戦闘行為の終了」を発表し、アゾフスタル部隊に生きながらえるように命じたと述べた。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は5月18日、アゾフスタルからの「避難作戦」は、「最も影響力のある国際調停者」の関与のもと、「わが軍と情報将校によって監督されている」と自ら発言した。

 ウクライナも西側メディアの大半も、武装勢力が武器を置いていることを明確に示すビデオをロシア軍が公開したときでさえ、「降伏」という言葉を使わなかった。

関連記事: ユーロビジョンの優勝者、ネオナチの「避難」をローマ法王に感謝

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偽旗で戦争を継続させる英米NATO。「和平合意」(3/29)は、ブチャ事件と集団墓地発見の報道、そして英国首相ジョンソンのウクライナ訪問によって潰された可能性

<記事原文 寺島先生推薦>

Kiev wants Donbass authorities ‘physically gone’ — RT Russia & Former Soviet Union

キエフ政府、ドンバス政府要人の「物理的消滅(=死亡)」を望む

出典:RT

2022年5月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月22日

 ウクライナ側交渉官の一人、ミハイル・ポドリアク氏は、現在キエフに支配されていないウクライナの地域で、「ロシア人」という言葉そのものが忘却されることを望むと述べた。



マリウポリでの記者会見で記者の質問に答えるドネツク人民共和国のデニス・プシリン代表。© RIA/Sergey Baturin

 ロシアとの和平交渉が停滞しているときに、ウクライナ代表の交渉官の一人が、2月末にロシアが独立国家として承認したドネツクとルガンスクの2つの人民共和国の当局者を「自称当局者」と呼び、その撲滅を求めた。

 ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問であるミハイル・ポドリヤク氏は、木曜日(5月19日)にウクライナのICTVチャンネルで、ウクライナ軍がドンバスを奪還したら「その当局を自称する犯罪者たちは全員、消えてしまう、つまり物理的にいなくなる」ことを望むと表明した。

 ポドリヤク氏は、現時点でのウクライナの最優先課題は、ウクライナ南部のケルソン州とザポロジエ州を「解放する」ことと、その解放をロシア軍とその協力者に関して、できる限り厳しい方法で実行することである、としている。同顧問によると、これらの地域を奪還すれば、キエフがアゾフ海へのアクセスを取り戻すことができる。その奪還はウクライナにとって「絶対に必要なこと」である、という。

 同顧問は、ロシアと国境を接し、キエフが反撃に出ているハリコフ州と、2月末にモスクワから独立を認められたルガンスク州とドネツク州において、その住民が「ロシア人」という言葉を忘れ、歴史から消されることを望んでいると付け加えた。


関連記事:アゾフ司令官、処刑された民間人の陰惨な写真を自慢げに語る

 ポドリヤクが積極的に参加していたモスクワとキエフの和平交渉は、ロシアが隣国を攻撃した直後の2月下旬に始まった。ベラルーシで数回行われ、3月中はビデオ会議も行われ、双方から緩やかな進展が報告された。

 3月29日にはイスタンブールで会談が行われ、ロシアのメディンスキー首席交渉官は翌日、ウクライナは、中立国化と核武装の放棄、さらに軍隊演習はロシアを含む関係国の同意に基づいて行うことについて原則合意したと表明した。

 しかし、4月上旬、ブチャの町でウクライナ人の遺体を含むとされる集団墓地が発見されると、キエフは同地を掌握していたロシア軍の残虐行為を非難した。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、民間人に対する犯罪とされるものは、今後の対話を著しく困難にすると述べた。一方ロシアは、その行為への一切の関与を否定し、ブチャの悲惨な光景は撤退するロシア軍を罠にかけるためにウクライナ軍が演出したものだと主張した。また、イスタンブールでのいくつかの重要合意事項のからウクライナ側が自ら手を引いたためだと主張した。

 4月12日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナが、クリミアがロシア領であることとドンバス地方の2つの共和国の独立を認めないため、和平交渉は「膠着状態に後戻りした」と述べた。

 5月初旬、ウクライナの新聞ウクライナ・プラウダは、4月9日のボリス・ジョンソン英国首相のキエフ訪問が、ウクライナ指導部を勇気づけ、紛争の平和的解決への試みを放棄させたとする報道を掲載した。同誌によると、ジョンソン首相は、ウクライナがロシアと何らかの協定を結ぶことに西側が反対であることを明らかにしたという。

 木曜日(5月19日)、ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務副大臣は、ロシアが交渉を再開する用意があることを示唆し、交渉を保留にしたのは「ウクライナ側」であると付け加えた。
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「最も信頼できる」英国放送協会(BBC)、ウクライナのナチスを美化

<記事原文 寺島先生推薦>

British Bullshit Corporation Whitewashes Ukrainian Nazis

原題:英国デタラメ放送協会(BBC)、ウクライナのナチスを美化する

筆者:フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)
  
2022年3月30日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月19日

 英国放送協会(Beeb)のオーウェル的な現実を見ると、それが世界で「最も破綻した」プロパガンダ発信源になるのは確実だ、とフィニアン・カニンガムは書いている。

 英国放送協会BBCによれば、ウクライナにナチスの存在はなく、アゾフ大隊は単に優れた戦闘員であり、ロシアが主張する政権の非ナチ化は侵略を正当化するための皮肉な捏造である、という。

 自らを世界で「最も信頼できる」ニュース銘柄のひとつと宣伝する英国放送協会の堂々とした態度には、いやはや、感服せざるを得ない。ロシアのニュースメディアを「国営」「クレムリンのプロパガンダ機関」と中傷し嘲笑する一方で、BBCはそれ自体が100%国営であり、英国政府とNATOのプロパガンダの目的と完全に連携しているのだから。そのプロパガンダには、独立したニュース情報であるという傲慢な主張とともに、歪曲や捏造があふれている。

 プロパガンダというのはね、きみ、ロシアがやるもんだよ。英国「呆」送協会はそんなことはしない。まさか、そんなことがあるものかね。いやしくも我々は英国人なんですよ、などと彼らは宣(のたも)うて、フェアプレー、客観的、クリケット、くじけない、こちらロンドン、ビーチで戦え、といった御託を並べるのだが、どれもこれも自称「良心的な」帝国の自画自賛の言葉ばかりだ。

(訳註)
くじけない:keep a stiff upper lip で「動じない」「感情を表に出さない」の意。困難に直面しても動じない英国人の気質を表すと言われる。
こちらロンドン:第二次大戦中のBBC欧州向けのアナウンス「This is London calling…)」に由来する。
ビーチで戦え:第二次大戦中の英国首相チャーチルの言葉「どんな犠牲を払おうと、我が島を守る。我々は海岸で戦い、上陸地で戦い、野原や街で戦い、丘で戦う。我々は、決して降参しない。」に由来。

 最近の放送でも、BBCのいつも気取った口調で話すロス・アトキンスは、ウクライナにナチスはいないと視聴者に断言した。彼は、それはクレムリンがウクライナへの軍事介入の口実としてでっち上げた神話である、と言う。アトキンスにかかると、アゾフ大隊には極右のメンバーがいるが、それは取るに足らないものだということになってしまう。また、アゾフ大隊は2014年に始まったロシアの侵略からウクライナを守るために結成された、と主張するのだ。2014年のキエフでのクーデターに関するBBCの歪曲には本当に呆(あき)れてしまう。まさに「呆」送協会なのだ。

 BBCがウクライナ軍におけるアゾフや他のナチス連隊をあからさまに否定したことは、十分に文書化された事実とはまったく食い違っている。あべこべだ。ステパン・バンデラや他のウクライナ人SS協力者を称える松明行列の画像、ナチスの旗やナチスの敬礼、ナチスの記章の画像はそこら中で見かけるし、アンドレイ・ビレツキーやオレナ・セメニャカのようなアゾフの指導者たちは、公然と第三帝国に敬意を表しているではないか。

 ウクライナ大統領ウラジミール・ゼレンスキーはユダヤ人で、真偽のほどは確かでないが、ホロコーストで死んだ親族がいるのかもしれない。しかし今、彼はナチス旅団に飼われている。政権にとってユダヤ人の顔としての彼のPR価値は大きな資産である(CIA、MI6の諸君は感謝したまえ!)。しかし、ウクライナ軍が2014年から8年間、ウクライナ南東部のロシア語を話す人々に対してテロ戦争を行い、2月24日にロシアの介入によって阻止されるまで、14000人を殺害したファシスト勢力である、という事実を消すことはできない。

 ただ、英国国防省は他のNATO諸国とともに彼らの戦闘員を訓練し、戦闘の準備をさせているのだから、BBCがアゾフを援護するのは不思議でも何でもなく、当然のことだ。

 同じBBCの放送で、アトキンスは、ロシア軍がマリウポリ産科病院とマリウポリ劇場を空爆し、民間人が死亡したことも視聴者に伝えた。でも、それには何の証拠もなければ、死体の画像もない。あるのは、「BBCだから」我々を信頼せよという仮定だけなのだ。

 ここでBBCは、アゾフやナチスについての否定から、実際に彼らのプロパガンダの嘘を拡大することになる。というのも、BBCは極右政治に属するウクライナ人ジャーナリストを雇い、それに頼っているからだ。

 マリウポリから逃げてきた市民は、独立した報道機関に「病院と劇場を爆破したのはアゾフの戦闘員だ。それはロシアを中傷し、ウクライナ政権へのNATO支援を強化するために計画された偽旗作戦だった」と証言している。

 BBCがここでやっていることは、CNNやNBCなどのアメリカのメディアと同じである。また、シリアについても同じことが再現されている。彼らは、シリア軍とロシア同盟軍が民間人を爆撃していると非難していたからだ。実際は、アレッポのような都市や町は、欧米に支援された傭兵と、偽旗の残虐行為を行ったホワイト・ヘルメットの宣伝隊によって包囲されていたのだ。BBCは視聴者に、シリア軍とロシアが民間人を殺害していると伝えたが、実際には民間人は恐怖の支配から解放されたのだ。それと全く同じことをウクライナのアゾフやその他のナチスがやっており、それをBBCやCNNなどが偽って伝え、どんどん拡散しているのだ。

 少し考えてみてほしい。どうしてBBCはシリアから報道しなくなったのか? シリア軍とロシアが町や都市を解放したときに、民間人への戦争犯罪だとヒステックに主張していたことはどうなったのか。なぜBBCは、解放されたシリアの民間人にインタビューして、彼らが今どう思っているのかを聞かないのか。私の想像では、ウクライナにいたそのBBC「ジャーナリスト」は、英国政府とNATOのために次のプロパガンダ戦争を紡ぎだすことで頭がいっぱいになっていたに違いない。

 今年は、「Beeb」の愛称で親しまれる放送局の創立100周年にあたる。Beebは、英国政府によってプロパガンダ放送局として設立された。それ以前の名称には「大英帝国放送」というものもあった。最近まで、スタッフはイギリスの国家情報機関であるMI5によって審査されていた。現在もそうであることは間違いないが、その審査はよりいっそう秘密裏に行われるようになっている。ひとつ付言すると、英国の各家庭は、法律により、BBCの財政を支えるために受信許可書(年間159ポンド)を買わなければならない。それを怠ると、刑事訴追を受け、刑務所行きになる。



 Beebのオーウェル的現実は、それを世界で「最も破綻した」プロパガンダ発信源にすることは確実だ。しかしまた、それこそがBBCのオーウェル的なところなのだ。世界中の多くの人々にとって、BBCはいまだに健全なイメージを保っている。その最新の報道の目玉がウクライナのナチスを美化することであるにもかかわらずそうなのだ。

この記事を書いたのはフィニアン・カニンガム(Finian CUNNINGHAM)である。大手報道機関の元編集者・ライター。国際情勢について幅広く執筆しており、記事は数カ国語で出版されている。
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「ウクライナ南部の住民自身がロシアへの帰属を決するべし」とロシア側は主張

<記事原文 寺島先生推薦>

Kremlin comments on prospect of part of southern Ukraine joining Russia
Such an historic step must be decided by the people and be “absolutely legitimate,” Moscow said


ロシア政府は南ウクライナの一地域がロシアに編入することについての見解を発表。~このような歴史的な一歩は当該住民により決定されなければならず、「法律上完全に正当なもの」でなければならないとロシア側は主張。

RT 2022年5月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 

2022年5月16日


ウクライナのへルソン市の建物の屋上に掲げられたロシア旗。2022年4月撮影© Sputnik

 ロシア政府は、「ロシア併合を求める要請を出すかどうかを決めるのは、ウクライナ南部のへルソン州の住民自身である」との声明を発表した。この声明が出されたのは、ロシア管制下にあるへルソン州当局の高官がそのような意思表示を行ったことを受けてのことだった。

 「そのような要請をすべきなのかどうかを自決しなければならないのはへルソン州の住民であるべきで、さらにこの件については法律の専門家の指導のもとで進められなければなりません」と、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は5月10日(水)に述べた。

 「このような広範囲に影響を及ぼす決定には明確な法的根拠が必要となりますし、完全に法的に正当な手続きを踏まなければいけません。クリミアのときと同様です。」

 住民投票についての言及はあったのかと問われたペスコフ報道官はこう答えた。「私は住民投票のことについては一言も言っていません。」

 ロシア軍は3月上旬にへルソン州を制圧し、クリミアとの境を接するこの州全体を占領した。ロシア管制下で形成された同州新政府のキリル・ストレモウソフ(Kirill Stremousov)副知事が5月10日(水)に語ったところによると、州新当局はウラジミール・プーチン大統領に同地域を「ロシアの完全な一地域」として認定するよう要請する計画があるとのことだ。

 ストレモウソフ氏が引き合いに出したのは、キエフでの2014年のクーデター後にロシアに帰属することについて住民投票を行ったクリミアの件だった。同氏によると、今年の年末までには法的文書を準備し、その後正式な決定を行うとのことだ。

 「それまで、ヘルソン州は軍―市民連立政府が統治することになるでしょう」」とストレモウソフ副知事は述べた。



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 Ukrainian army ‘westernized’ by US and allies to fight Russia – Pentagon

 
 同州のウラジミール・サリド(Vladimir Saldo)知事は、5月8日(月)、ロシアに編入することについては「公的な話し合いや計画は全くない」と述べている。ただし同氏によれば、彼自身、いつかは当地方がロシアの一部になるであろうという意見を持っているとのことだった。

 ウクライナ側は、へルソン州の新当局には法的な正当性がないと捉えている。ウォルディミル・ゼレンスキー大統領は4月に、ロシアの管理下にある「えせ住民投票」を実施すれば、ロシアとの和平交渉を破棄すると語っている。

 ロシアは隣国ウクライナを攻撃したが、それはウクライナが2014年に初めて締結されたミンスク協定の条件を履行せず、モスクワが最終的にドンバス共和国であるドネツクとルガンスクを承認した後のことだった。ドイツとフランスが仲介した議定書は、ウクライナ国家内で離脱地域に特別な地位を与えることを目的としていた。

 ロシア政府はそれ以来、ウクライナは中立国であり、米国主導のNATO軍事圏に決して参加しないことを公式に宣言するよう要求している。(一方)ウクライナ政府は、ロシアの攻撃は完全に一方的なものだと主張し、ウクライナが武力による2つの共和国の奪還を計画しているとの主張を否定している。

 


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あとは野となれ山となれ---ユーゴ、アフガン、リビア、そしてウクライナに見る米国NATO戦争の実態とその末路

<記事原文 寺島先生推薦>
NATO Admits It Wants ‘Ukrainians to Keep Dying’ to Bleed Russia, Not Peace
NATO sees Ukrainians as mere cannon fodder in its imperial proxy war on Russia.


NATOは、平和ではなく、ロシアから血を流すために「ウクライナ人が死に続ける」ことを望んでいると認める。
NATOは、ウクライナ人をロシアとの帝国的代理戦争における単なる大砲の餌とみなしている。

著者:ベン・ノートン(Ben Norton)

出典:グローバル・リサーチ(Global Research)

2022年4月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月17日



 アメリカ主導のNATO軍事同盟は、ロシアを血祭りに上げ、西側の地政学的権益を拡大するために、ウクライナ人が最後の1人まで戦うことを望んでいることを明らかにした。

 衝撃的なほど露骨な告白として、ワシントン・ポスト紙は、NATO加盟国の中には、ロシアが政治的利益を得るのを妨害するために「ウクライナ人が戦い続け、死に続ける」ことを望んでいる国があることを認めた。

 4月5日のウクライナとロシアの和平交渉に関する報告において、その米国有力紙は、NATOが恐れているのはキエフがモスクワの要求に屈することだと明らかにした。

 ワシントン・ポスト紙は明確にこう書いている。「NATOの一部にとって、ウクライナ人が戦い続けて、どんどん死んでいく方が、キエフや他のヨーロッパ諸国が、あまりに早く、あるいは戦費をたくさん使いすぎて、和平を達成するよりも都合がいいいのだ」。

 匿名の西側外交官は、「NATOの一部が和平を勝ち取るために妥協することには限界がある」と強調し、ロシアが安全保障上の懸念を抱くのを妨害できるのなら、ウクライナでの戦争はむしろ長引いたほうがいいのだと言う。

 同紙は、NATO加盟国は「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に勝利の形見を与えたくない」と必死になっており、そのためにはウクライナ人を肉弾戦に追い込むことも厭わないと述べている。

 米国のジェイク・サリバン国家安全保障顧問は、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の政権はワシントンと緊密に連携しており、ホワイトハウスと「ほぼ毎日」連絡を取り合っていると指摘した。誰が本当の責任者なのかは明白だ。

 同紙は同様に、米軍がヨーロッパに10万人以上の部隊を展開していることも明らかにした。

 ワシントン・ポスト紙は米国政府と密接な関係にある。同紙のオーナーは、2000億ドルの富豪ジェフ・ベゾスで、歴史上最も裕福な人物の一人である。

 ベゾスは巨大企業アマゾンの創業者兼会長でもあり、CIAペンタゴンNSA(米国国家安全保障局)FBI(米国連邦捜査局)ICE(米国移民・関税執行局)など米国政府機関と数百億ドル規模の契約を結んでいる。

関連記事:NATOはロシアに宣戦布告したのか?
Did NATO Just Declare War on Russia? - Global ResearchGlobal Research - Centre for Research on Globalization


 もしワシントンポスト紙が、ホワイトハウスの高官からの引用で、NATOに関するこの情報を開示しているなら、明らかにワシントンの広報責任者から許可を得ているのだろう。

 この報道は、NATOがウクライナ人をロシアとの帝国的代理戦争における単なる大砲の餌と見ていることを半公的に認めるものである。

 実際、西側諸国の高官の中には、このことを公然と述べている者もいる。

 国務省の元高官で、右翼の戦争タカ派のエリオット・A・コーエンは、『アトランティック』誌の記事で、「アメリカとNATOの同盟国は、ロシアとの代理戦争に従事している」と自慢げに語った。

 彼は誇らしげにこう言っている。「彼らはロシア兵を殺すために何千もの弾薬を供給し、うまくいけば他の多くのこと、例えば情報の共有も、行っている。それは、多ければ多いほど、早ければ早いほどいいんだ」。

 国務省の古参は、「ウクライナに入る武器の流れは洪水である必要がある」とまで言っている。

 これはまさにNATO加盟国が行っていること、つまり、ロシアの隣国を武器であふれさせることなのだ。

 米国とEUはロシアとの和平交渉を支援する代わりに、積極的に戦争をエスカレートさせ、ウクライナに数十億ドルに値する武器を送り込んでいる。数万発の対戦車ミサイル、数千発の対空ミサイル、数百機の神風ドローン、さらには戦車や装甲車等々。

 言及されないのは、米国とヨーロッパの軍需企業がいかにこの戦争で大きな利益を得てきたかということだ。2月24日にロシアがウクライナに軍を派遣した後に民間軍事関連企業の株価が急騰したのは西側諸国が軍事費の大幅増を約束したからだ。

 ジョー・バイデン政権は2月下旬に3億5000万ドルの兵器を直ちに提供し、3月にはウクライナに136億ドルの追加支援を約束し、そのうちの65億ドルは軍事支援用だった。

 NATOの外相たちは4月6日と7日にブリュッセルの軍事同盟本部で会合を開き、ウクライナでの戦争をさらに拡大することを誓い合った。

 西側の政治家たちは、日本、韓国、グルジア、フィンランド、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドなど、NATO以外の加盟国数カ国の代表と一緒に参加した。

 ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、この会議のためにブリュッセルを訪れ、NATOが本当に平和ではなく更なる戦争を望んでいるのかという疑問がすっかりなくなった。

 「私は今日、3つの最も重要な事柄について議論するためにここに来た。それは、武器と武器と武器である」とクレバ氏は自分の話をまとめた。

 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も同様に宣言した。「侵攻後、同盟国はさらなる軍事支援、ますますの軍事装備に踏み出した。今日の会議で明確に示されたことは、同盟国はもっとやるべきことがあり、もっと大量の兵器を提供する準備ができており、さらにその緊急性を強く、強く認識していることである」。

 ストルテンベルグ氏は言うに事欠いて、ウクライナに対するNATOの直接的な軍事支援は2014年にまでさかのぼり、何万人ものウクライナ兵がNATOによって訓練されてきた。それはロシアが侵攻するずっと前のことだ、とまで自慢げに話した。

 NATOは、ロシアの弱体化と不安定化を期待して、ウクライナ人が命を犠牲にし続けることを望んでいることが透けて見える。

 一方、これ以上戦争するのはやめて、平和が解決策であるべきだと考えるウクライナ人は、悲惨な結末に直面している。

 ロシアとの和平交渉に参加していたウクライナ人交渉官、デニス・キレーエフが殺害されている。ネオナチなどの極右過激派に影響されていることで有名なウクライナ保安局(SBU)が殺害したと伝えられている。

 このような極端な暴力や戦争挑発主義は、「防衛的」同盟であるはずのNATOの主張と真っ向から対立するものである。

 しかし、実際には、NATOは民主主義はおろか、防衛に専念したことすらない。1949年に軍事同盟を設立したメンバーの中には、ポルトガルのファシスト独裁政権も含まれていた。

 第1次冷戦時代、NATOは悪名高いグラディオ作戦で、かつてのナチスの協力者とファシストを支援した。NATOの支援により、極右過激派は左翼を抑圧するためにヨーロッパでテロを行ったが、特にイタリアの悪名高い「鉛の時代」の時はそうであった。

 第1次冷戦が終わると、NATOはロシア国境への拡張を続け、1990年のドイツ再統一後、軍事同盟は「1インチも東に移動しない」という米英仏の約束を繰り返し破ってきた。

 1990年代の空爆で、NATOは旧ユーゴスラビアを破壊し、切り刻んだが、この国はもう存在しない。 

 そして、2001年に米国が開始したアフガニスタン戦争に協力し、2021年まで共同で軍事占領を続けた。

 2011年、NATOはアフリカで最も繁栄した国であるリビアに戦争を仕掛けた。欧米の軍事作戦は、リビアの国家を粉々にした。それから、化石燃料を扱う外国企業が北アフリカの膨大な石油資源を略奪した。

 2022年の今日も、リビアには統一された中央政府は存在しない。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカ難民のための野外奴隷市場は存在する。

 リビア、アフガニスタン、旧ユーゴスラビアの廃墟は、NATOが本当に世界に何を提供しているのかを示している。

 そして、米国主導の軍事同盟は今、ワシントンとウォール街の利益を促進するために、ウクライナを犠牲にするつもりである。

この記事を書いたベン・ノートンは、地政学と米国の外交政策を専門とする独立系ジャーナリストである。
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「アサンジ米国引き渡し」を決めた主席判事は「闇の政府」の代理人だった。

<記事原文 寺島先生推薦>
Lady Emma Arbuthnot: Who Is Behind the Chief Judge Who Was Trying Julian Assange?

エマ・アーバスノット卿夫人:ジュリアン・アサンジを裁いていた主席判事の背後には誰がいるのか?

著者:マンリオ・ディヌッチ(Manlio Dinucci)
出典:グローバル・リサーチ(Global Research)

2022年4月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月16日


 このマンリオ・ディヌッチの鋭い記事は、グローバル・リサーチが2020年9月18日に最初に発表したもので、ジュリアン・アサンジの引き渡しの裁判を行ったエマ・アーバスノット裁判長の「利益相反」を指摘している。

 アーバスノット判事はジェームズ・アーバスノット卿と結婚している。彼は有名なトーリー党(訳註:英国保守党の前身)の「タカ派」で元・国防調達担当大臣である。軍産複合体や英米情報機関とのつながりもある。

 エマ・アーバスノット判事は利益相反状態にあったのか?2020年、彼女は忌避を受け入れなかった。アサンジの弁護団は、彼女を忌避する要求を出したのだろうか?
(訳註:彼女は夫とアサンジが利益相反関係にあったため「司法行動指針」により自動的に退任しなくてはならなかったが、そうしなかった。)

*** 
 エマ・アーバスノットは、ロンドンにいるジュリアン・アサンジを米国へ引き渡すための裁判を行った主任判事である。米国では、彼は「スパイ行為」の罪により175年の実刑判決を受けることになっている。彼の「罪」はイラクとアフガニスタンでの民間人殺害のビデオを含む米国の戦争犯罪の証拠を調査ジャーナリストとして公表したことである。ヴァネッサ・バライツァー判事に割り当てられた米国での裁判では、弁護側の要求はことごとく却下された。

2018年、スウェーデンでアサンジに性的暴行の容疑をかける企みが失敗した後、アーバスノット判事は逮捕状の取り消しを拒否し、アサンジはエクアドルに亡命することができなくなった。アーバスノットは、アサンジの恣意的な拘束に関する国連ワーキンググループの調査結果を拒否した。また国連職員の拷問に対する発言にも耳を貸さなかった。

 「アサンジは不当な隔離という極限状態で拘束されており、心理的拷問に長期間さらされた典型的な症状を示している」

 2020年、コロナウイルス対策として数千人の被拘束者が軟禁状態に移される中、アサンジは刑務所に留め置かれ、体調を崩した状態で感染の危険に晒されていた。

 法廷では、アサンジは弁護士に相談することもできず、装甲ガラスの檻の中に隔離され、口を開けば追放されると脅されている。この執念深さの背景には何があるのだろうか。

 ジェームズ・アーバスノット卿はトーリー党の「タカ派」として有名である。また元・国防調達大臣であり、軍産複合体と諜報機関につながる人物でもある。アーバスノット判事はその彼と結婚したので「卿夫人」という肩書きをもっているのだ。アーバスノット卿は、とりわけ、航空宇宙軍事システムを専門とするフランスの多国籍企業タレスの英国諮問委員会の会長であり、戦略的諜報活動を専門とするモントローズ・アソシエーツのメンバーである(高給取りの役職)。

 アーバスノット卿は、米国政府・情報機関とつながりのある大西洋横断の有力シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン協会(HJS)にも所属している。昨年7月、マイク・ポンペオ米国務長官はロンドンで開かれたHJSのラウンドテーブルで講演した:2017年にCIA長官を務めて以来、アサンジが創設したウィキリークスを「敵のスパイ活動」と非難していた

 ヘンリージャクソン・ソサエティも同様のキャンペーンを主導し、アサンジは「独裁政権の支援を受け、西側民主主義政府の道徳的立場に疑問を投げかけている」と非難した。現職の英国内務省長官プリティ・パテル女史は、アサンジの引き渡し命令の責任者であるが、最近までアーバスノット卿と並んでHJSの政治委員を務めていた。  

 アーバスノット卿夫人は、アーバスノット卿をはじめとする有力者からの指令を受けて、アサンジの引き渡しに向けて活発なキャンペーンを行っているこの圧力団体と、本質的につながっている。

 彼女は2016年9月に女王によって主席判事に任命されたが、それはウィキリークスが3月に米国にとって最も危険な文書を公開した後のことだった。これらの文書には、ヒラリー・クリントン国務長官のメールが含まれており、そこにはNATOによるリビア戦争の真の目的、すなわちリビアが所有している金準備を利用して、ドルやCFAフラン(フランスが14の旧植民地に課した通貨)に代わる汎アフリカ通貨を創設するのを阻止することなどが書かれていた。

 アサンジが裁かれている本当の「罪」は、政治とメディアの沈黙の壁に亀裂を入れたことである。その壁は「ディープ・ステート(闇の政府)」で活動し、戦争というカードを使う強力なエリートの真の利益を覆うものだった。この闇に潜む力によってジュリアン・アサンジは裁判にかけられるのだ。そしてその裁判はアーバスノット卿夫人によって指示される。被告人がそこでどう扱われるかを考えると聖なる異端審問の犠牲者のことを思い起こさざるを得ない。

 もしアサンジが米国に引き渡されたら、彼は英国よりもはるかに厳しい「特別行政措置」を受けることになる。狭い独房に隔離され、家族との連絡もできなくなり、彼のメッセージを伝えたら起訴されるであろう弁護士を通じてさえも、話すことができなくなるのである。つまり、それは死刑を意味する。
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「ウクライナ軍は焦土作戦を用いた」。マリウポリからエヴァ・バートレットの報告

<記事原文 寺島先生推薦>

Eva Bartlett Reports from Mariupol: “Ukraine Forces Used Scorched Earth Tactics”

マリウポリからエヴァ・バートレットの報告 「ウクライナ軍は焦土作戦を用いた」

投稿者:INTERNATIONALIST 360°

投稿日:2022年4月25日

<記事飜訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年5月16日



(上の動画)数日前にマリウポリで出会った女性、ヴァレリーは、アゾフが住宅地を占拠して、そこから砲撃していることについて語っている。

 
 「私たちの土地から、狂った人たちが一掃されなければなりません。彼らをナチスと呼ぶ人もいますが、ナチスという言葉がぴったり当てはまると思います。」



(上の動画)4月21日、マリウポリにて。ロマン・コサレフ氏、人道支援について話しながら、砲撃の大きな音がして、それを説明するため、いったん話を止める。

 「ご覧の通り、砲撃はまだ続いています。ナチスとウクライナ軍の残党が立てこもるアゾフスタル(鉄鋼)工場で起こっているのです。」

 プーチン大統領は、空爆して工場を爆撃するよりも、まずナチス・ウクライナ軍に武器を置いて降伏する時間を与えることを決定したと、彼は話しました。

 周りの破壊されたアパートについては、悪意を持って攻撃されたために荒廃したのではなく、ウクライナとナチスが占領していたためであると彼は話しました。

 「地元の人から聞いた話ですが、民族主義大隊とウクライナ軍の区別がつかないそうです。アゾフ[大隊]は最近ウクライナ軍の一部になったからです。見分け方はタトゥーや鉤十字を見ればいいそうです......。」

 「彼らは住民の建物に入り、そこに武器を設置し、向かってくるロシア軍とドネツク人民共和国軍に発砲し始めたのです。だから、相手側は明らかに反撃を強いられました。人々は低層階や地下室に押し込められ、基本的にウクライナ軍に“人間の盾”として利用されました。そして、彼らは撤退する際にも、家屋を砲撃し続けたのです。」

 私は、テロリストがシリアで行ったように、ウクライナ軍はより多くの民間人を殺すために偽装爆弾や地雷を設置したのかと尋ねました。

【参照:https://ingaza.wordpress.com/2014/07/…】

【参照:https://ingaza.wordpress.com/2017/10/...】。

 「そう、偽装爆弾も、地雷も、すべてです。彼らは焦土作戦をとっているのです。」



 4月21日と22日、私はジャーナリストのロマン・コサレフ氏と共にマリウポリに向かい、ひどく困っている人たちに人道支援物資を届けに行きました。彼は3週間前から支援を行っています。

 初日、車で移動しながら、私はロマンに、私たちが目にする破壊について尋ねました。シリアでの取材でその破壊の理由は私にはわかっていましたが...

 「ホムスやアレッポで見たような建物を見ることになるでしょう。なぜかって?ウクライナ兵とアゾフの民族主義者たちは、住居の中に武器を置き、住民を地下や低層階に追いやり、高層階を占拠したのです。」

 「ロシアやドネツク人民共和国軍がこれらの建物に反撃して損害を与え、民間人を攻撃しているのです、そういう恐ろしいロシア人という完璧なイメージを作り上げることを期待して、そうしたのですが、それは真実ではありません。」

 「これらの民族主義者とウクライナ兵がアゾフスタル(鉄鋼)工場の奥深くまで後退すると、彼らはこれらの建物を砲撃し続けました。そこに人がいることを知っていてもそうしたのです。そしてその砲撃をロシア兵とドネツク人民共和国兵士のせいにしていました。私だけではなく、マリウポリの人々も何度もインタビューでそう言っていました」。




(上の動画)ウクライナ軍が駐屯しているアゾフスタル工場から1km離れたマリウポリの街並みの様子

 たしかに破壊行為はあります。しかしそれは、ウクライナ軍やナチスが住宅地に陣取り、アパートを占拠しているから起こっていることなのです。ここはラッカじゃありません。米国違法連合がシリアのラッカを完全破壊したことを知らないなら、それを調べてみてください。

 [ジャーナリストのロマン・コサレフが破壊行為の理由を詳しく説明している以下の映像もご覧ください。https://t.me/Reality_Theories/5907 ]

 戦闘が終わった今、再建を始めることがでます。ウクライナとナチスの腐敗した危険な支配がなければ、安定が戻り、状況が改善することが可能になるでしょう。

iframe width="700" height="394" src="https://www.youtube.com/embed/X3lenjpOO1k" title="YouTube video player" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen>



 西側メディアは現在、ロシア軍が密かに「最大9000人のマリウポリの民間人」を、街のすぐ西の町の「集団墓地」に埋葬したことは明らかだという同じ主張を「コピー貼り付け」して報道しています。

 しかし、そんなことはありえないし、集団墓地もありません。

 「墓穴もなければ、集団墓地もない、ただの整然とした小さな墓地があるだけだ」、と墓掘り人たちは西側の主張に反論しています。

 4月23日、ジャーナリストのロマン・コサレフ氏と共にマングーシュ(ウクライナ語でマンフーシュ)に行き、何の変哲もない普通の墓地を見つけました。埋葬の責任者と話をしましたが、彼らは(ロシアにかけられている)疑惑を否定して、ウクライナ兵も含めて一人ずつ棺を埋めたと言っていました。



 マリウポリで発見された集団墓地は、ロシア軍が戦争犯罪を隠すために行った埋葬の結果できたものであると、西側メディアは世界に報じていた。しかし政治専門家のエヴァ・バートレット氏はこう主張している。「西側メディアは同じ嘘を繰り返します。」(この記事の原典はteleSUR)


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シリアでの偽旗化学兵器作戦がウクライナで再発することをロシアは警戒

<記事原文   寺島先生推薦>

‘Syrian scenario’ possible in Ukraine, Russia warns

A potential false-flag chemical attack would trigger a probe to blame Moscow, using fabricated evidence, the military says

“シリアでの作戦”がウクライナでも行われる可能性をロシアは警戒~偽旗化学兵器攻撃を行い、ねつ造された証拠を使い、ロシアを非難するための調査を行う可能性がある、とロシア軍は警戒

2022年5月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月16日



化学兵器による攻撃が行われたとされたシリアのダマスカス近郊ドゥーマ市内の瓦礫に埋もれた或る通り。2018年4月16日

 「大量破壊兵器を用いた罪をロシア軍になすりつけようとしている」とロシア政府は、ウクライナ当局を非難した。具体的には、「“シリアで行われたのと同じ手口”で、その事件の調査を行う口実を作り、証拠を偽造し、濡れ衣を着せてロシアを非難する可能性がある」とロシアの放射能・化学・生物防護部隊のイゴール・キリロフ中将が5月10日水曜日に語っている。

 「ロシア国防省は、ウクライナ側が或る挑発行為の準備をしているという情報を入手しました。その挑発行為の目的は、武器を使った大量破壊行為を行ったとして捜査を行い、ロシア軍を非難することです。これはシリアで行われた捜査と同じ手口です。この偽旗攻撃により、必要となる証拠を捏造し、対象国に非難を浴びせることが可能になるのです」とキリロフ中将は、2018年にシリアのドゥーマで発生したとされる化学兵器による攻撃に関わる事件に、はっきりと言及しながら述べた。



READ MORE: Worst lie since fake claim sparked Iraq war? OPCW report behind Syria bombings was altered, whistleblower tells UNSC



 当時、米英仏は即座にダマスカスのシリア政権を非難し、調査が可能になる前からシリア領内に攻撃を加えた。OPCW(化学兵器禁止機関)によるその後の捜査はシリア政権を非難することが前提となっていたが、その捜査は不整合さや、内部告発者による告発のせいで不首尾に終わった。

 「ウクライナ政権は化学兵器を使用した事件の捏造を入念に準備しており、その準備は現在進行中のロシアとウクライナの紛争が2月下旬に起こる前から行われていた」と同中将は述べた。

 「このような挑発行為が行われる可能性が高いことを示す例として、キエフ政権が皮膚や呼吸器官を保護する個人保護装置の供給を要求していたことがあげられます。これらの保護装置は毒性のある化学物質や生物物質から身を守るために使われるものです」と同中将は付け加えた。

「有機リン系の毒物の解毒剤をウクライナに供給していたという事実は非常に懸念される事態です。2022年だけでも、ウクライナ保健省の要求に応じて、22万瓶以上のアトロピンが米国から届いています」

 ロシア政府は、「偽旗攻撃を仕掛けてロシア軍に罪をなすりつけようとしている」とキエフ政権を繰り返し非難してきた。4月下旬に、キリロフ中将はウクライナ軍が大量破壊兵器(WMD)を使う可能性として「3つの筋書き」があると表明していた。その中で、「①一般市民を攻撃するという偽旗攻撃を行う②大量破壊兵器の一部を作動させてウクライナ国内で破壊行為を行う」という2点が最も考えられる行為だ、とのことだった。



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 ウクライナ側が考慮すると思われるそれ以外の作戦には、大量破壊兵器を「少量」だけ「散発的に」使用する作戦や、「大量破壊兵器を戦場であからさまに使用する作戦」も考えられるが、後者の作戦をとることはほとんど考えられない、とキリロフ中将は述べた。
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次々と明らかになるウクライナ生物研究所の実態:ドイツとポーランドも関与

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia names EU countries linked to Ukrainian biolabs
ロシア、ウクライナの生物研究所に関連するEU諸国を名指しで非難

出典:ホームロシア・FSU

2022年5月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月15日



NBC防護具を装着するドイツ軍の兵士。© Getty Images / DPA / Patrick Pleul


ドイツとポーランドがウクライナで極秘の生物実験に関与していたとモスクワが主張

 ロシアは、米国が資金提供したウクライナの秘密生物研究所の広大なネットワークに関する主張を強化し、他のNATO諸国が疑わしい研究に関与していると述べた。

 ロシア放射線・化学・生物防護部隊のトップであるイゴール・キリロフ中将は水曜日(5月10日)に、米国以外にドイツとポーランドがウクライナ国内の生物学的研究プログラムに参加していると述べた

 「米国だけでなく、NATOの同盟国の多くもウクライナ領内で軍事的な生物学的プロジェクトを実施している」と彼は言った。「ドイツ指導部は、2013年にワシントンから独立した国家主導の生物学的安全性プログラムを開始した。ウクライナを含む約12カ国がこのプログラムに参加している。」

 この取り組みには、ロバート・コッホ研究所やドイツ軍微生物学研究所など、ドイツを代表する科学機関が関わっていると、キリロフ氏は述べた。モスクワが入手した文書によると、後者は2016年から2019年にかけて、ウクライナの25地域に住む人々から約3,500の血液血清のサンプルを入手したと、同中将は付け加えている。

 ドイツ連邦軍に従属する機関の関与は、ウクライナの研究所で行われている生物学的研究の軍事的性質を確認し、ウクライナ人の生体物質を収集しているドイツ軍が追求する目標に疑問を投げかけるものである。

 ポーランドもこのようなプログラムに積極的に関与してきた。文書によると、ワルシャワはウクライナ西部の都市リヴォフにある国立医科大学に資金援助している。同大学の分校である疫学・衛生学研究所は、米軍の生物学的プロジェクトに参加したことがある、と彼は指摘する。

 さらに、ポーランド獣医学部は、「ウクライナにおける疫学的脅威と狂犬病ウイルスの蔓延に関する研究」に参加している、と同中将は述べた。また「特筆すべきは、これらの研究は、ペンタゴンの主要な請負業者の一つである米国のバテル研究所と共同で行われたことである」とも彼は述べた。


関連記事:米国防省とアメリカ企業がウクライナ軍の生物研究所に関与―ロシアの筆頭調査官

ロシアは、2月下旬にモスクワとキエフの間で紛争が発生した直後、ウクライナに散在する米国資金による生物研究所の広大なネットワークについて首尾良く入手した証拠の公表を始めた。この秘密施設は、倫理的に問題のある研究を行い、生物兵器を開発する可能性があるとされている。

 先週、ロシアの調査委員会の責任者であるアレクサンダー・バストリキン氏は、米国防省職員や米軍と密接な関係にある企業など、軍事生物学研究に関与したアメリカ人を「明確に特定」したとRTに語った。バストリキン氏は、2005年から2022年初頭の間に、ウクライナの生物学的研究に2億2400万ドル以上が費やされたと主張している。

 米政府高官は、ウクライナに「生物研究所」があることは認めているが、生物兵器の開発を伴わない取り組みに対して「支援」と呼ぶものを提供しただけだという。
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ウクライナの「悪魔の飽食」―結核菌実験の被験者にされたルガンスクの子どもたち


<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine targetted children with TB plot
ウクライナは結核の謀略で子供たちを標的にした。

出典:ホームロシア・FSU
2022年5月11日 21:32

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月15日



© Getty Images / D-Keine

モスクワは、キエフが2020年にルガンスク人民共和国の村の子供たちに結核に感染した偽札を配ったと主張している。

 モスクワは、ウクライナがロシアと同盟関係にあるルガンスク人民共和国の住民に結核を感染させようと試み、米国政府にはハリコフの精神科病棟で人体実験をすることを許可していたと主張した。

 ロシア国防省がウクライナの米国出資とされる生物研究所に関する調査結果を説明した際、ロシアの放射性・化学・生物防護部隊のイゴール・キリロフ中将は、ロシア軍はキエフが2020年にルガンスク人民共和国(LPR)のスラビャノセルブスク地区の住民に高病原性結核菌を感染させようとしたことを示す証拠を手に入れたと主張した。

 「偽札の形をしたチラシに結核の原因物質を付着させて、ステポヴォエ村の未成年者に配布した」とキリロフ氏は述べ、この犯罪の首謀者は、「口に物を入れる」「手を洗わずに食べ物を扱う」といった子供の行動に配慮したと付け加えた。

 キリロフは、細菌学的研究の結果、チラシから発見された分離菌が一次および二次抗結核薬に対して耐性を持つことが確認され、そのことは、その分離菌によって引き起こされる病気の治療は従来よりもはるかに困難で高価になることを意味すると述べた。



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 彼はさらに、ルガンスク共和国衛生疫学局の結論を引用し、「この紙幣の感染状態は、結核の感染と発症を確実にすることができる濃度を有する極めて危険な病原菌の株が含まれているので、紙幣の感染は人為的である可能性が最も高い」と述べた。

 キリロフは、LPR結核診療所も「高病原性の生体物質によるチラシの意図的、人為的な汚染」の兆候を指摘したと付け加えた。

 ロシア当局者はまた、米国防省がハリコフの少なくとも2つの精神科施設の患者に対して「非人道的な」実験を行っていたと主張している。「実験対象者の主なカテゴリーは、40歳から60歳の肉体的に非常に疲弊した男性患者のグループであった」とキリロフ氏は述べた。

 その実験を実際に行ったのは、第三国を通じてウクライナに入国した外国の専門家だったが、それは米国の関与を隠すためであった。この専門家たちは今年始め、ロシアの軍事作戦が始まる直前に突然国外に避難したとキリロフ氏は指摘する。

 「2022年1月、実験を行った外国人は緊急避難し、使用した機材や薬剤はウクライナの西部地域に運ばれた」と述べた。

 先週(5月第2週)、ロシアの調査委員会責任者であるアレクサンダー・バストリキン氏はRTに対し、当局はウクライナの軍事利用の生物研究に関与した複数のアメリカ人を「明確に特定した」と述べ、その中には米国防省職員や、米軍と密接な関係にある企業も含まれていることを明らかにした。ロシアの推計によると、ワシントンは2005年から2022年初頭の間に、同国での生物学的研究に2億2400万ドル以上を注ぎ込んだと、バストリキン氏は明言した。



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 米政府高官は、ウクライナに「生物研究施設」が存在することは認めたが、米国は生物兵器の開発に関与しない取り組みに対して「支援」と呼ぶものを提供しただけだと述べた。
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ウクライナの生物研究所は大手製薬会社を儲けさせ、米民主党の選挙資金になっている

<記事原文 寺島先生推薦>
US Democrats use Ukraine biolab profits for campaign funding – Russia — RT Russia & Former Soviet Union
原題:米民主党、ウクライナの生物研究所の利益を選挙資金に使う

出典:RT&FSU

2022年5月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月14日

ワシントンDCで行われた式典に出席するジョー・バイデンとヒラリー・クリントン(2016年12月08日)。© Tom Williams / CQロールコール

大手製薬会社、国防総省、民主党の有力議員が極秘研究計画に関与

 米国民主党は、ジョージ・ソロスやビル・ゲイツが率いる大手製薬会社や友好的な財団と提携してウクライナに生物研究所を設立し、このプロジェクトを選挙の追加資金調達に利用していると、ロシア軍が水曜日(5月10日)に行われた最新の記者発表で主張した。

 ロシア放射線・化学・生物防護部隊のトップであるイゴール・キリロフ中将は、「ウクライナにおける米軍所属の生物研究所の擁護者は、民主党の幹部だと言う必要がある」と述べた。

 米国政府は、連邦予算から直接に軍事利用の生物研究に資金を提供する仕組みを作ったが、政府保証を利用して「民主党の指導者が支配する非政府組織」からも資金を調達したと、キリロフ氏は付け加えた。

 そうした組織の例として、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、(ビル&ヒラリー)クリントン財団、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティと投資ファンド、ロックフェラー財団、エコヘルス同盟、ハンター・バイデンのローズモント・セネカ・パートナーズの名前が記されたスライドを示した。

©ロシア国防省

 キリロフ氏はまた、この計画に関与している「大手製薬会社」としてファイザー、モデルナ、メルク、ギリアドの名前を挙げ、この計画を利用して国際安全基準を回避しながら薬の治験を行っていることを明らかにした。これにより、彼らの研究開発の費用が削減され、製薬会社の利益が増えることで「民主党の指導者が選挙運動のために追加の資金提供を受け、その流通ルートを隠蔽できる」とキリロフ氏は主張した。
(訳註:「その流通ルート」は上図のチャートにおける→が示している。)

 国防総省は、ウクライナを国際的な統制の及ばない事実上の実験場として利用し、多国籍製薬企業の技術力を活用することで、「生物兵器の製造分野のみならず、抗生物質耐性や特定地域の住民における特定の病気に対する抗体の存在に関する情報を得るなど、研究の可能性を大幅に拡大させた」とキリロフ氏は指摘している。


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 ロシア調査委員会のアレクサンダー・バストリキン委員長は先週(5月第2週)、RTに、国防総省の職員やそれと関係のある企業数社を含む、ウクライナの軍事利用のための生物研究に関与した米国人を「明確に特定した」と語った。

 バストリキン氏によれば、米国は2005年から2022年初頭の間に、ウクライナの生物研究プログラムに2億2400万ドル以上を費やしていたという。

 ロシア軍は以前にも、ウクライナの生物研究所にアメリカ政府が関与しているという証拠を提示したことがある。3月末、キリロフ氏は、ジョー・バイデン現米大統領の息子ハンターが、いくつかのプロジェクトの資金調達に関与していることを指摘するスライドを示した。キリロフ氏はまた、キエフが兵器化された病原体を配布するためのドローンを装備することに関心を持っていることを示す文書も提示した。

 米国当局は、ウクライナに「生物研究施設」があることを認めてはいるが、生物兵器の開発に関与していない取り組みに対して「支援」と呼ぶものを提供したに過ぎないと言っている。
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ペルシャ湾岸諸国は自らの地政学的立ち位置を自決し始めている

ペルシャ湾岸諸国は自らの地政学的立ち位置を自決し始めている
<記事原文 寺島先生推薦>
The Persian Gulf is Now Taking an Independent Geopolitical Stance

ジャーナル・ネオ 2022年4月22日

ビクトル・ミヒン(Viktor Mikhin)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月25日


 
 いま新しい現実として起こっているのは、バイデン政権が、ロシアによるウクライナへの特殊作戦にあからさまに介入し、キエフのナチ政権に対して政治的に支援するだけではなく、武器の供給まで行うことにより、既に新しい世界戦略に着手し始めていることだ。 このような戦略を取れば、世界の他の超大国(主にロシアと中国)との衝突の激化は明らかに避けられなくなるだろう。米国が、大規模な包囲作戦として、軍や武器を敵国となるこれらの超大国の国境付近に配置しようと力を入れている中でのことだ。米国がいま特に注意を払っているのは、昔からの米国の同盟諸国との関係再建や、同盟諸国の新たな増加だ。この世界戦略を推し進めることにより米国政府が求めていることは、敵諸国との紛争の勝利と、 同盟諸国との関係を強化することである。

 この視点から見れば、今のウクライナ危機は、米国の新世界戦略とそれ以外の様々な代替案とを試すリトマス試験紙の意味合いを持っているということだ。米国の現在の政界においては、大多数が現政権を支持しており、ジョー・バイデンも最善を尽くしているのだが、 今のところこのウクライナ危機への対応に関して世間をひとつにまとめることは上手くいっておらず、バイデンによる政策の中では例外的な状況になっている。バイデン政権が取っている方向性は、欧州諸国に対して「調整と協力」の考え方をもとにしている場合もあれば、ただ単に命令を下している場合もある。いずれにせよ、ウクライナに最新兵器を渡して「ウクライナ人が最後の一人になるまで」戦うよう促しているが、その目的は、そうすることで米国の軍産複合体がかつてない規模での高い利益を新たに手にすることだ。 米国がこのような立場を取っていることを確信させるような発言を、既に引退している米国のチャス・フリーマン(Chas Freeman)元大使が行っている。フリーマンいわく「ウクライナで米国は宣戦布告なしの戦争をロシアと戦っているが、その目的は米国が世界の覇権を維持するためだ」とのことだ。フリーマンの考えでは、米国当局があからさまにロシアと戦う素振りを見せれば、 ロシア政権は特殊作戦を開始して、米国が設立し武装させたウクライナのネオナチ軍を打ち破ろうとするだろう。 現状についてのこのフリーマンのことばはまさに、「米国はウクライナ人が最後の一人になるまでロシアと戦う」姿勢のあらわれだ。

 しかし、このウクライナ危機が西側諸国に与えている結果と、中東や全イスラム世界が見せている反応は全く異なっている。今回のウクライナ危機が明らかにしたのは、米国と米国の同盟国であるイスラム諸国との間にある数多くの矛盾点だ。イスラム諸国は、西側から厳しい圧力をかけられている中でも、ロシアとの関係を反故にしたくはないのだ。それと同時にEUや米国が課している大規模な対ロシア制裁のおかげで、ロシア政府とアラブ諸国との協力関係が促進されているのだ。そのような現状を伝える最新の例をあげると、西側諸国と米国の提案による国連人権理事会でのロシアの資格剥奪の決議に対する動きだ。その決議に対して100カ国がロシアの立場を支持したのだ。投票を棄権した国々や、ロシアの資格剥奪に反対票を投じた国々もあり、投票自体に参加しない国々もあった。ロシア政府を支持した国々の中には、多くのイスラム諸国が含まれていた。具体的にはイラン、スーダン、イラク、レバノン、シリアなどの多くの国々だ。

 西側諸国がロシアに対して課している制裁のおかげで、ロシアはアラブ諸国と協力関係を結ぶ大きな機会を得ることになった。具体的には、武器貿易やITの特別専門家の入国などだ。少なくともこの理由のため、イスラム諸国はロシア政府と揉めごとを起こしたくないのだ。というのもロシアとの関係強化には実用的な理由が十分あり、望ましい展望がひらけることに気づいているからだ。それは西側諸国がヒステリックにロシアをさらに悪者にしようとしている中でも、その展望が見えているのだ。さらにロシアは中国やブラジル、インド、アラブ、アフリカ諸国と持続可能な貿易関係を結んでおり、西側の制裁によって石油や天然ガスの価格が上昇したことで、ロシアには安定して外貨が流入している。それと同時に、「ロシア、ブラジル、インド、中国、南アフリカは、他の無数の国々とともに、既に新しい金融体制の開発に力を入れて取り組んでいる。その金融体制は西側の金融体制と同規模のもので、米国の影響力、とくにSWIFT(国際銀行間通信協会)の影響力からも逃れることができる体制である」とロシアのアントン・シルアノフ(Anton Siluanov)財務大臣は語っている。 さらにロシアは(西側から)独立した格付け機関の設立も計画しており、支払い体制を統合し、輸出や輸入において自国通貨を使用することを目指している。

 これらすべてのことが明確に示しているのは、米国の拡大主義者たちがたてた計画が不首尾に終わり、ペルシャ湾岸諸国からの必要な支持を得ることができなかったことだ。ペルシャ湾岸諸国は、以前は米国政府を支持し、米国のもとでの世界支配に大きく貢献してきたのに、だ。米国がペルシャ湾岸の米国の同盟諸国をあからさまに軽視することが明白になってきたのは、米国が世界戦略におけるペルシャ湾岸諸国の地位や役割の見方を変えてからだ。このことがよりはっきりしてきたのは、ジョー・バイデンが2021年大統領職に就いてからであり、特にアフガニスタンから駐留軍を不名誉にも、突然引き上げることにしてからだ。この出来事のせいで、米国はこれまでの同盟諸国を簡単に裏切る国だという印象がついてしまった。

 多くのアラブの政治家たちの意見では、2015年に(イランと米露など6カ国間の)核合意がペルシャ湾岸諸国に犠牲を払わせる形で合意された事実があったのにも拘わらず、バイデン政権は核計画に関してイランに大幅な譲歩を行う用意があると見ている。アラブ諸国の考えでは、米国によるこの動きは、「イランの野望を抑え込むのではなく、湾岸地域におけるイランの地位や軍事的可能性を強めることになる」としている。このことに加えて、最近になって米国政府が、イランが支援しているイエメンのフーシ派抵抗勢力をテロ組織であると認定しなかった事実もある。国連安全保障理事会はこの勢力を「テロリスト」と呼んでおり、さらにフーシ派抵抗勢力はイエメンの保護を目的に多くの湾岸諸国に対して活動を広めている中でのことだ。バイデン政権がさらに目指しているのは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦に対して近代兵器の供給をある程度までに制限しようとしていることだ。両国はつい最近まで米国が信頼を置く同盟国であり、両国が米国の軍産複合体にとって多額の儲け口になっていたのにも拘わらず、である。

 今回のウクライナ危機が明らかにしたのは、米国と湾岸諸国間の乖離が広まっているということだ。これらの多くの湾岸諸国は米国との同盟関係から離れ始めており、現状において頼りにできるのは自国のみだということを実感したのだ。何よりもこの状況を示す証は、バイデン政権の現状の政策を受け入れることをペルシャ湾岸諸国が拒否していることだ。この地域の2大国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦が特にそうなのだ。特筆すべきは、両国が米国からの圧力に屈さず、反ロシア同盟に参加せず、米国政府の要求に応じて石油生産を増加することには応じず、これまでのようには西側諸国の利益を重視しようとしていないことだ。

 米国がロシアの特殊作戦の開始後について予想していた推測や思惑とは食い違い、ペルシャ湾岸諸国は現在の米国主導体制を完全に支持する立場を取っていない。米国は、ロシア経済を厳しく封鎖しようと躍起になっている。米国政府の積極的な政策は現時点では、意志薄弱で聞き分けのよい欧州諸国には少なくとも功を奏しているようだが、ペルシャ湾岸諸国はそうはいっていない。国連安全保障理事会において、アラブ首長国連邦はロシアの特殊作戦に対して厳しい非難を行わず、サウジアラビアはバイデン政権が要求した石油増産には応じなかった。サウジアラビアとアラブ首長国連邦が見せたこの態度が示しているのは、ロシアと米国や欧州との関係において両国は中立を維持したいと考えているということだ。サウジアラビアやアラブ首長国連邦がごく自然にこのような立場に依拠していることは、ロシアを喜ばせるだけではなく、米国政府のペルシャ湾岸諸国に対する粗暴で不遜な態度に対する反応の現れだといえる。というのも、湾岸諸国の利益などは考慮していないバイデン政権は、たとえその外交政策が湾岸諸国の国家利益に反するものであっても、湾岸諸国が自動的に米国の要求に応じた外交政策をとることを期待しているからだ。

 全体的に見て、最近の出来事が再び明らかにした事実は、湾岸諸国は世界情勢において非常に重要な役割を担っているということだ。いま起こっている混乱状態のせいで、これらの湾岸諸国がロシアからの石油や天然ガスの輸出の代替国になるという好機になっている中でも、湾岸諸国が果たす役割の基盤になっているのはエネルギー資源だけではない。湾岸諸国が産出する天然資源(石油、天然ガス)が問題になると考えるのは全くの見当違いだ。現状が明らかに示しているのは、米国や一般的な西側諸国の思惑がどれだけ思慮に欠け、傲慢であるかという事実だ。というのも米国や西側諸国は「自分たちこそ湾岸地域のすべての紛争を解決してきた」と考えているからだ。湾岸諸国ははっきりと「自分たちが今でも重要な役割を担っている」ことを意志表示している。諸国の指導者たちは自国の開発計画に意欲的に取り組み、自国の利益と自国民の安全を保護することを目指している。湾岸諸国は西側の影響力に従うつもりはさらさらなく、米国が繰り出す戦争ゲームの駒の一つに使われることを許す気もない。この新しい状況において、米国は自国の計画を断念し、湾岸地域で破壊的な紛争を招くような挑発行為をやめ、新しい中東地域の出現に備えるべきだ。この新しい中東地域においては、湾岸諸国は米国の利益に慮ることなく、自国の利益を焦点にした戦略を自発的に追求するようになるだろう。

 今回のウクライナ危機がこれまでの関係を考え直す契機となったのは、ペルシャ湾岸諸国の存在意義がこれまでになく増し、米国と欧州による覇権に対抗できる勢力であるということが明白になったからだ。それはエネルギー資源に関しても、世界の市場の安定化という意味においても、である。当面の不安定な状況がさらに示しているのは、湾岸諸国には、外交政策や世界の超大国の国々との関係作りにおいて様々な代替案があるということだ。湾岸諸国は、米国が湾岸諸国の資源をかき集めることで、湾岸諸国のこの先の発展機会を阻害することは許さないだろう。そんなことをしても米国に奉仕し、米国に利益をもたらすことにしかならず、自分たちの国や、その資源が搾取されるだけだからだ。それなのに西側諸国はできるときでも全く支援の手をさしのべようとはしてこなかったのだ。こんにち、湾岸諸国は世界戦略に影響を与える力も意欲も有しており、自国の利益を守る決意も持っていて、米国や他の西側諸国との協力関係などあてにしてはいない。

Viktor Mikhin, corresponding member of RANS, exclusively for the online magazine “New Eastern Outlook”.

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隠しておきたい歴史――冷戦期、ウクライナのネオナチはすでに米国の手下となりソ連と戦っていた。

<記事原文 寺島先生推薦>

Partnering with neo-Nazis in Ukraine: an inconvenient history

原題:ウクライナのネオナチとの提携:不都合な歴史

投稿元:アンチウォー・ドットコム(Antiwar.com

著者:テッド・スナイダー(Ted Snider)

2022年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月10日



ウクライナ人の中にはステパン・バンドラを英雄と言う人がいるが、それは当然で素晴らしいことだ。(ゼレンスキー)


 ヴォロディミル・ゼレンスキーが2019年の選挙でペトロ・ポロシェンコを破ったときの選挙公約には、ロシアと和解してミンスク協定に調印することが含まれていた。ミンスク合意はドンバス地方のドネツクとルガンスクに一定の自治権を認めるものであった。これらの地域では、2014年に米国支援クーデターで米国が手塩にかけて育ててきた親西・反露政権が誕生した後に、住民投票が行われてウクライナからの独立が宣言されていた。ゼレンスキーがミンスク協定支持派からミンスク拒否派に変わったのは、極右の超国家主義者からの強烈な圧力があったからだ。少ない支持率とは不釣り合いな大きな力を持つネオナチ政党からの圧力で、ゼレンスキーは選挙戦での平和の約束を放棄し、ドンバスの指導者たちとの話し合いとミンスク合意の履行を拒否したのである。
 
 2014年のクーデターの際、スヴォボダ党や右派セクターを含むそれらの超民族主義組織は、再び、その大衆からの支持よりもはるかに大きく暗い影を投げかけた。彼らは平和的な抗議行動を乗っ取り、別の形に作り変えた。彼らは、停戦と早期選挙を求める平和的解決を拒否した。現在、いくつかの証拠が強く示唆していることは、デモを内戦へと向かわせた2014年2月20日に起きた虐殺の狙撃手は、政府軍ではなく、超民族主義者の反乱軍のメンバーだったことだ。そして、彼らこそが、政府庁舎を占拠し、選挙で選ばれた大統領をウクライナから逃亡させた張本人だったのだ。

  クーデター後、そのネオナチ勢力はドンバスの分離主義勢力との戦いを残酷に先導することになる。彼らは戦いを指揮する立場にあった。というのも、彼らの中で最も有名だったアゾフ大隊が正式にウクライナ国家警備隊に編入されたからだ。リチャード・サクワ(訳註:イギリスの政治学者)が著書『前線ウクライナ(Frontline Ukraine)』で言ったように、この超民族主義者たちは「マイダン(デモ)の正当な一部」「ウクライナ国家発展の新常識」になっただけでなく、ウクライナ軍の正式な一員ともなったのだ。

 さらに彼らはウクライナ政府の正式な一員にもなることになる。サクワによれば、ウクライナのクーデター政権の中核的な閣僚ポストのいくつか(国家安全保障、防衛、法律のトップポストなど)は公然たるネオナチ政党である右派セクターとスヴォボダによって占められたということだ。副首相と法務大臣はどちらもスヴォボダのメンバーだった。アンドリー・パルビイは、サクワが「超民族主義的な活動の長い歴史」と呼ぶスヴォボダの創設者の一人なのだが、その彼が国家安全保障防衛会議の事務局長になった。サクワはパルビィの就任を「信じられないことだ」と言っている。

 また、プリンストン大学のロシア学と政治学の名誉教授だったスティーブン・コーエンは、「米国のネオナチとの共謀」というウクライナに関する記事の中で、ウクライナのクーデター政権は組織的にウクライナのナチスドイツ協力者の名誉を挽回させ、記念式典の対象にするようになったと述べている。ウクライナ政府が追悼しているナチス協力者の中には、ナチスと同盟し、ユダヤ人、ポーランド人、ロシア人に対して残虐行為を行ったステパン・バンデラも含まれている。サクワによれば「マイダンのデモの間、バンデラの巨大な肖像画が...ステージにあった」ということである。

 少し歴史を振り返ると、ステパン・バンデラと、バンデラほどは知られていないミコラ・レベジは、ウクライナ民族主義者組織(OUN)の重要なメンバーであった。1940年、OUNは分裂し、バンデラはより急進的なOUN-B派の指導者となった。バンデラのOUNはナチスと同盟を結んだ。この同盟は、当初はウクライナ国家の樹立を主な目的としていたかもしれないが、バンデラのOUNはナチスに非常に積極的な協力者になった。

 サクワによれば、「バンデラは、敵意をもった完全民族主義の形を信奉した。それはウクライナ国家の中心的定義を他民族排除とするもので、彼の考え方を損なうとされる人々、例えば、ポーランド人、ユダヤ人、ロシア人などに残酷な誹謗中傷を行った。. . .」 バンデラ軍は、これらの人々の大量殺戮に参加することになる。



 リンゼー・オルーク(訳註:ボストン大学准教授)は彼女の著書『秘密の政権交代(Covert Regime Change)』の中で1941年7月のOUN-Bの宣言を引用している。「ユダヤ人は”厳しく扱わなければならない”。 我々は彼らを仕留めなければならない。…ユダヤ人については、彼らの破壊につながるあらゆる方法を採用する」。彼女はまた「ドイツ軍の侵攻後、OUN-B軍は東ガラシア全域でポグロム(集団的迫害行為)を開始し、推定1万2千人のユダヤ人市民を殺害した」と述べている。

 OUN-Bと他のメンバーは、後にウクライナ反乱軍(UPA)に加わり、ロシアとナチスの両方からウクライナを独立させるために戦うことになる。彼らは他民族排他的な国家という夢を実現するために「この地域のポーランド人、ドイツ人、ソ連人、ユダヤ人に対して広範なテロ、大量殺害、民族浄化を行った」とオルークは言う。彼らの呼びかけは「ユダヤ人、ポーランド人、ドイツ人のいない、より偉大な独立ウクライナ万歳」「ポーランド人はサン(訳註:南アフリカの狩猟採集民サン族)の後ろへ、ドイツ人はベルリンへ、ユダヤ人は絞首台へ」だった。オロークによれば、OUN-Aのリーダー、ミコラ・レベジは「革命的な全領土からポーランド人を一掃せよ」と宣言した。そして彼らはその宣言を実行した。「1943年前半、UPAのパルチザンは、約4万人のポーランド人を殺害した。ヴォルィーニで約4万人のポーランド人を殺害した」。

 しかし、プーチンがウクライナ政府と軍隊の非ナチ化について、おそらくは大げさに主張している最中に、米国とその同盟国がロシアと戦うために、あるいはロシアに政権交代をもたらすために、ウクライナのネオナチ分子と提携するという考えを持つ人が、今日どうして存在するのだろうか。理由は簡単、彼らはこれまでそうしてきたからだ。 

 実は、バンデラとレベジのナチスへの協力と、2014年のクーデターによる超民族主義的な政権強奪の間には、冷戦時代にソ連と戦うためにバンデラやレベジのOUNと米英が協力したという、あまり語られていない物語があるのだ。

 1947年9月、米国情報部はドイツでウクライナの非正規軍のグループに遭遇した。CIAの専門家ジョン・プラドスは彼の著書『民主主義の安泰(Safe for Democracy)』の中で、ウクライナ最高解放評議会が「連合国の諜報機関の注意を引くために」非正規軍に西へ行くよう命じたと述べている。それは成功した。そして、米英とナチスに協力したウクライナ人との間の蜜月が、冷戦時代のソ連との戦いの中で極秘裏に始まったのである。

 プラドス氏によれば、それ以前の1946年にソ連はステパン・バンデラの身柄引き渡しを要求していた。しかし、アメリカの諜報機関は、彼を戦争犯罪人として巻き込む可能性のある情報を無視して、彼を保護したのである。それは「Anyface(どんな顔でも)」というコードネームで呼ばれる作戦だった。

 その後、米国と英国がそれぞれの相棒を選ぶことになる。英国はバンデラやOUN-Bと、米国はOUN-Bの保安部長のミコラ・レベジと組んだ。

 ティム・ワイナー(訳註:米国のジャーナリスト)は著書『灰の遺産―CIAの歴史(Legacy of Ashes: the History of the CIA)』の中で、「”ナイチンゲール”はウクライナの非正規軍のコードネームである。(国防長官)フォレスタルがスターリンに対する秘密戦争の遂行を許可した」「その指導者には、何千人もの人々を殺害したナチスの協力者が含まれていた」と述べている。1947年の米国対外情報局(CIC)の報告書には、すでに「バンデラ運動との密接な関係」との記載がある。

 オルークによると、1947年2月、レベジは「協力の可能性をCICに打診した」。CICはこれに同意し、ワイナーによれば、CIAはレベジを米国に密入国させ、米国の入国管理局に対して、レベジは「ヨーロッパで本庁CIAに貴重な援助をしている」と告げたという。

 バンデラのときと同様、CIAもレベジの過去を知らなかったわけではない。ワイナーは、「CIAのファイルには、レベジが率いるウクライナ派閥が”テロ組織”として記述されている」と述べている。そして、彼らはレベジがナチスと同盟を結んだことも知っていた。マイナーはまた「司法省は彼がウクライナ人、ポーランド人、ユダヤ人を虐殺した戦争犯罪人であると断定した」とも言っている。彼らはレベジを強制送還しようとさえしたが、アレン・ダレスが介入し、連邦移民局長官に対して、レベジは「本庁にとって計り知れない価値がある」と言った。

 オロークが引用した1948年4月の国家安全保障会議に対するCIAの極秘報告書は、ウクライナの超民族主義的なナチス協力者との冷戦協力計画の概要を示し、彼らには「プロパガンダ、破壊工作、反共産主義の政治活動を目的とした米国政府に役立つ可能性がある」と述べている。

 この作戦は後に「AERODYNAMIC(空気力学)作戦」というコードネームで呼ばれるようになり、1948年にCIAによって開始されることになる。オロークは、CIAのフランク・ワイズナーの「ウクライナのレジスタンス運動の規模と活動性を考慮すると、これは最優先のプロジェクトであると考えられる」という言葉を引用している。彼女は、情報公開法に基づいて入手したCIAの文書を引用し、「政治・心理戦(および)抵抗・ゲリラ戦」のために「ウクライナの抵抗運動を利用・拡大する」作戦計画を明らかにしている。

 AERODYNAMIC作戦は失敗、つまりCIAが言うところの 「不運で悲劇的」なものに終わった。

 第二次世界大戦中のOUNのナチスとの協力の話や、2014年のクーデターとその後のウクライナ軍・政府における超民族主義者の役割の話は、これまでにも語られてきたことだが、主流メディアが報じることはほとんどなかった。しかし、時系列的にはこの2つの出来事の間に、冷戦時代に米国とその同盟国がウクライナの超民族主義者のナチス協力者と組んでソ連と戦っていたという物語がある。あまり語られてはいない話ではあるが。

 米国とその同盟国が、ロシアと戦うためにウクライナの超民族主義者と協力すると言うと誰もが信じるのはなぜか。それは、彼らがこれまでもずっとそうしてきたからなのだ。

関連記事

(2015年の記事)米国議会、ウクライナにおけるナチの役割を認める

米国議会、ウクライナにおけるナチの役割を認める
<記事原文 寺島先生推薦>
U.S. Congress Admits Nazi Role in Ukraine
Global Research


2022年3月17日

ロバート・パリー(Robert Parry)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月10日


 2015年6月にGRに初投稿された故ロバート・パリー氏による詳細なドキュメント記事。
**

 しっかりお読みください。現在進行中のウクライナ危機に関連しています。

 「米露間の核対決になるかもしれない危機について、(NY)タイムズは読者に十分な情報を提供するよりも、国務省プロパガンダの発信源となることを選んだ。キエフのナチの突撃隊員のことを話題にする場合も「ロシアのプロパガンダ」という言い方を多くする。

 ところが今、よりによって米国下院が、全会一致でこの不快な真実を認めたのだ。」 (ロバート・パリー、2015年6月、強調はGR)

***
 先月2月[2014年]、ロシア民族の反政府勢力がウクライナのマリウポリ港に迫っていたとき、ニューヨーク・タイムズ紙は、この都市と、そして実際に、西側文明を守る英雄たち――門前に押し寄せる野蛮人に立ち向かう勇気あるアゾフ大隊――を熱狂的に描写した。ニューヨーク・タイムズ紙が読者に伝えなかったのは、この「英雄」たちがナチであり、そのうちの何人かは卍とSSのシンボルマークを身につけていた、ということだ。

 リック・ライマン(Rick Lyman)によるニューヨーク・タイムズの長い記事は、アメリカの「記録紙面」としても残念ながら出来が悪い。完全なプロパガンダに成り下がっており、キエフにおけるクーデター後の政権の暗い側面を表に出さない。しかし、このライマンの悲しくなるほど判で押したような記事がいま注目されるのは、共和党が支配するアメリカ下院が、ナチスとの結びつきを理由にアゾフ大隊に行くアメリカの援助を禁止することを全会一致で決めたからである。

 タカ派の下院でさえ、ウクライナ東部のロシア系住民を攻撃するウクライナ政府の武器の一番槍として奉仕するナチスの突撃隊員に我慢ならないのに、この同じナチスを立派だと見るニューヨーク・タイムズの真っ正直さと品位について、タカ派下院はどんな言葉を出すのだろう。

 さらにニューヨーク・タイムズはナチスの汚点に言及するスペースがなかったというわけでもない。この記事は、アゾフの指導者を大きく表に押し出し、多くのカラー写真を載せ、内容も詳しかった。ただこれらのナチス部隊がアメリカ側に立って現在、進行中の内戦でいかに重要な役割を果たしたかという不都合な真実に言及する余地がなかったというだけだ。ニューヨーク・タイムズは、アゾフを単に 「志願兵部隊」と呼んだ。

 しかし、6月10日、米下院はミシガン州選出のジョン・コニャーズ・ジュニア(John Conyers Jr.)議員、フロリダ州選出のテッド・ヨーホー(Ted Yoho)議員の超党派による国防歳出法修正案を承認した。この修正案は、米国によるアゾフ大隊の訓練を停止し、イラクとウクライナへの対戦闘機肩撃ち式対空ミサイルの移送を阻止するものであった。

 「昨夜、下院が私の修正案を全会一致で可決し、我が軍が、虫唾が走るようなネオナチ・アゾフ大隊のメンバーを訓練しないことを保証してくれたことに感謝しています。と同時に、危険なのに易々と取引されるMANPAD*をこれらの不安定な地域から排除するための私の法案も通していただきました。」とコニヤースは木曜日(2015年6月11日)に語った。
MANPAD*・・・携帯式防空ミサイルシステム(英語: man-portable air-defense systems, MANPADS/MPADS、携帯式地対空ミサイルシステムとも)は、1人で携行可能(man-portable)な地対空ミサイル・システムのこと。 通常、肩に乗せて射撃する。(ウイキペディア)

 彼は、ウクライナのアゾフ大隊について、ウクライナ国家警備隊の1000人規模の志願民兵組織であると説明した。Foreign Policy Magazineはアゾフ大隊を「公然たるネオナチ」「ファシスト」と見なした。そして、アゾフは何か正体の分からない部隊ではない。ウクライナの武装民兵を監督するアルセン・アヴァコフ(Arsen Avakov)内相は、「恐れ知らずの守備隊(Fearless Guardian)」のコードネームで呼ばれる訓練ミッションでウクライナに派遣されている300人の米軍顧問の訓練を受ける最初の部隊に、アゾフの部隊が含まれると発表している。

白人至上主義

 金曜日(2015年6月12日)、レオニド・ベルシズキー(Leonid Bershidsky)によるBloomberg Newsの記事は、コニャーズが「なぜ」ウクライナの議員アンドリー・ビレツキー(Andriy Biletsky)が指揮する軍隊を問題視するのかは簡単にわかると指摘した。コニャーズはCongressional Black Caucus(アメリカ議会黒人幹部会)の創設メンバーであり、ビレツキーは白人至上主義者である。

 「ビレツキーは2005年からPatriot of Ukraine(ウクライナの愛国者)(アゾフ大隊の前身)を管理していた。2010年のインタビューで彼は、この組織を民族主義の「突撃隊」であると述べた...この集団のイデオロギーは「社会民族主義」であり、歴史家であるビレツキーはこの用語が何を意味するかが分からない人間はひとりもいないことを知っていた。...

 (以下は引用)
 2007年、ビレツキーは、人種差別発言に対する罰金を導入するという政府の決定に対して、「では、立法府レベルでの "黒人愛 "はなぜなのか?」と強い調子で抗議した。政府のやりたいのは、自分たちや家族、自分たちの土地の主人である権利を守るために立ち上がったすべての人々を破滅させることだ。政府は、ウクライナ国民があらゆる異質なものに対して生物学的に抵抗しようとするのを粉砕したいのだ。旧ヨーロッパに起こったことを私たちにも起こそうとしている。そこでは、移民の大群がフランス人、ドイツ人、そしてベルギー人にとって悪夢となり、都市は急速に「黒化」し、犯罪や麻薬取引は国の隅々にまで侵入している。」
 (引用はここまで)

 The Bloombergの記事は、さらに続く:
「ビレツキーは、彼の組織が一連の銃撃戦や戦闘に参加した後、2011年に刑務所に収監された。昨年のウクライナのいわゆる尊厳革命の後、彼は政治犯として解放された。準軍事的な訓練を受けた右翼組織は、ヴィクトール・ヤヌコヴィッチ(Viktor Yanukovych)前大統領に対する蜂起の暴力的な局面で重要な役割を演じた。超民族主義政党スヴォボダを含む新当局は、感謝の意を示したかったのだ。

 (以下は引用)
 東部における戦争はビレツキー率いる突撃隊に、かつて望んだ以上の地位を与えることになった。彼らは激しく戦い、昨年秋には400人規模のアゾフ大隊が国家警備隊の一部となり、2000人への増員許可を得て、重火器へのアクセスも可能になった。では、隊員の何人かがナチスのシンボル(卍)を体に刺青し、部隊のに第二次世界大戦中にナチスが広く使用した「ウルフスアンゲル(SS)」を掲げていたとしたらどうだろう。

 昨年9月、ウクライナの雑誌『Focus』のインタビューで、国家警備隊の責任者であるアヴァコフは、ヒーローと崇める自分の部下を守るように語っている。彼はウルフスアンゲル(SS)について、つぎのように語っている:
 「ヨーロッパの多くの都市では、市の紋章の一部になっている。確かに、アゾフに集まった連中の多くは特殊な世界観を持っている。しかし、それで彼らを判断することは誰にもできない。アゾフ大隊がこの国のために何をしたかを忘れてはいけない。マリウポリ(Mariupol)の解放、イロベイスク(Ilovaysk)での戦闘、アゾフ海付近での最新の攻撃を忘れてはならない。彼らを批判する者が、彼らが行ったことの10パーセントでもできるならやってみたらいい。そして、彼らがナチスの考えを説き広め、鉤十字をつけている、などと言ってくる者は、素っ頓狂な嘘つきでばか者だ。」

 6月10日の下院の投票は、米国が支持するキエフ政権のこの暗い一角にスポットライトを当てたかもしれないが、その現実は何ヶ月も前からよく知られていた。しかし、西側のほとんどのニュースメディアは、これを真っ当に取り上げず、「ロシアのプロパガンダ」としてはねつけた。

 (引用はここまで)

 ニューヨーク・タイムズでさえ、この現実について少なくとも1回は、さらっとではあれ、書いている。ただ、それは記事をよく読まなければわからない。2014年8月10日、ニューヨーク・タイムズの記事。アゾフ大隊のナチスの汚点に触れているのは最後の3段落。それも別のトピックに移る長い文章の中でだ。

 「ドネツクへ向けた戦闘は、多大な死傷者を生み出す様相を示し始めた。(つまり)正規軍が分離主義者の拠点を遠くから爆撃し、その後、ドネツクを囲む半ダースほどの準軍事的な組織が市街戦に突入することを望んで、無秩序な激しい攻撃を行う」と、ニューヨーク・タイムズタイムズ紙は報じている。

 (以下は引用) 

 「キエフの当局者によれば、民兵と軍は行動を調整しているが、約7000人の戦闘員から成る民兵は怒っており、時には制御不能に陥ることもある。そのひとつ、マリンカ村を占拠したアゾフとして知られる民兵組織は、鉤十字に似たネオナチのシンボルを旗として掲げている。」 [Consortiumnews.comの「ニューヨーク・タイムズはウクライナのネオナチが参戦していることを発見」参照]。

 (引用はここまで)

背筋が寒くなる

 保守的なロンドン・テレグラフ紙は、特派員トム・パーフィット(Tom Parfitt)の記事でアゾフ大隊の詳細を紹介し、「ウクライナ政府は、ロシアが支援するドネツクとルハンスクの『人民共和国』を制圧するためにボランティアの準軍事組織を使っているのは...ヨーロッパの背筋を震え上がらせるだろう」と書いている

 (以下は引用)

 「ドンバス、ドニプロ、そしてアゾフといった最近になって結成された大隊は、数千人の隊員から成り、公式には内務省の管理下にあるが、その資金調達は不透明で、訓練は不十分、その思想はしばしば憂慮すべきものである。アゾフの隊員たちは、ネオナチの「ウルフスアンゲル」のシンボルを旗に使い、隊員たちは白人至上主義者、あるいは反ユダヤ主義者であることを隠しもしない。」

 (引用はここまで)

 民兵のメンバーへのインタビューを基礎に、テレグラフ紙は、戦闘員の中にはホロコーストなんて本当にあったのかと疑う者、アドルフ・ヒトラーへの賞賛を表明し、自分たちがまさにナチスであることを認めている者がいると報じた。

 アゾフ司令官であるビレツキーは、「社会国民会議と呼ばれるウクライナの過激派グループの長でもある」としたテレグラフ紙の記事では、ビレツキーによる次のような宣言を引用している。「この重大な瞬間におけるわが国の歴史的使命は、世界の白人種の生存のための最後の十字軍を率いることである。セム人率いる劣等人種に対する十字軍だ」。

 言い換えれば、第二次世界大戦後はじめて、ひとつの政府がナチスの突撃隊をヨーロッパの住民を攻撃するために派遣したのである-そしてキエフの当局者は自分たちが何をしているのか知っていた。テレグラフ紙はキエフのウクライナ当局に質問した。キエフ当局は、一部の民兵の過激なイデオロギーについて認識していたことを認めたが、より優先すべきは、戦う意欲を強く持った軍隊を持つことであると主張した。[Consortiumnews.comの「ウクライナのネオナチ突撃隊を無視する」参照]。

 しかし、昨年8月のロシア系民族が率いる反乱軍の反攻は、キエフが得た多くの利益を覆し、アゾフ軍と他の政府軍を港町マリウポリに追い返した。Foreign Policyの記者アレック・ルーン(Alec Luhn)もナチスに遭遇している。彼はこう書いている:

  (以下は引用)
 「黒と黄色のウクライナの旗が、完全に焼け落ちた市庁舎の建物とマリウポリ市周辺の軍事検問所周辺にはためいている。しかし、巨大な冶金工場に近いスポーツ学校では、別のシンボルが目を引く。第三帝国で広く使われ、ネオナチグループが採用しているウルフスアンゲル(「狼の罠」「SS」)のシンボルである。...

 「親ロシア勢力は、紛争においてウクライナの民族主義者や「ファシスト」と戦っていると言っているが、アゾフや他の大隊について言えば、これらの主張は基本的に真実である。」

 (引用はここまで)

SSヘルメット

 ウクライナ政府の戦闘員の中にナチスが存在するという証拠が続々と出てきた。ドイツ人は、アゾフ民兵の兵士が自分たちの装備を鉤十字(卍)と 「ルーン文字で書かれたSS」で飾っているビデオを見て、ショックを受けた。NBCニュースが報じている

 (以下は引用)

 「ドイツ人が自国の暗い過去を突きつけられたのは・・・ドイツの公共放送局ZDFが、夕方のニュース番組で、ヘルメットにナチスのシンボルをつけたウクライナ兵のビデオを見せた時だった。

ウクライナのアゾフ大隊の隊員が着用するヘルメットにはナチスのシンボルが描かれている。(ノルウェーの撮影隊が撮影し、ドイツのテレビで放映されたもの)。

 「このビデオは、ノルウェーの放送局TV2のカメラチームによって、ウクライナで撮影されたものだ。「私たちは東部の都市ウルズフ(Urzuf)でウクライナのアゾフ大隊についての映像レポートを撮影していたとき、これらの兵士に遭遇した」と、民間テレビ局の特派員であるオイステン・ボーゲン(Oysten Bogen)はNBCニュースに語った。「映像が録画される数分前に、ボーゲンは、大隊がファシスト的な傾向を持つかどうかを広報担当者に尋ねたという。「絶対にない、我々は単なるウクライナの民族主義者」と答えた、とボーゲンは語っている。」

 (引用はここまで)

 米国が支援する政府がナチスの突撃隊を派遣してウクライナの都市を攻撃するというのはニュース価値があるにもかかわらず、米国の主要な報道機関はこの行動を許すために異常なまでに力を尽くし、ワシントンポスト紙などはアゾフの鉤十字の使用は単に「ロマンを求めたもの」だったと、憚ることなく、それを正当化することまでしてみせた。

 ホロコーストや第二次世界大戦の荒廃を貶めたりすることに最も関連するシンボルに対してこんな風に奇妙に説明するのは、2014年9月に出版されたワシントンポスト紙のリード記事の最後の3段落に見ることができる。ポスト紙の特派員アンソニー・ファイオラ(Anthony Faiola)は、アゾフの戦士たちを、「ロシアの侵略」に気高く抵抗し、必要なら「ゲリラ戦」に訴えることもいとわない「戦いに傷ついた愛国者」であると描いているのだ。

 この記事では、アゾフのロシア人に対する「破壊工作、標的型暗殺、その他の反乱戦術」の計画について、他の文脈ではそのような行為がテロとみなされるにもかかわらず、何の不都合もないとしている。過激派は、もしウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領が民兵の意にそぐわないロシア東部との和平協定に合意すれば、彼の政府にも脅しをかけるとまで言っている。

 「もしキエフが自分たちの支持しない反政府勢力と取引したら、準軍事的な戦闘員が自分たちで親ロシア派のターゲットを攻撃する可能性がある、あるいは政府そのものを攻撃する可能性もあると言っている」と記事は述べている。

 ポスト紙の記事は、ウクライナに関するほぼすべての報道と同様に、東部でロシア民族と戦うキエフ軍を賞賛するものであったが、アゾフ大隊の兵舎を飾る鉤十字の写真を説明するために、ワシントンポストは思考を素早く切り替える必要がどうしてもあった。そこで、記事の最後の3段落でファイオラはこう報じた:
「キルト(Kirt)と名乗るある小隊のリーダーは、このグループの極右的な考え方がヨーロッパ中から約二十人の外国人戦闘員を引き寄せていることを認めている。

「ある部屋では、新兵がベッドの上に鉤十字を飾っている。しかしキルトは...イデオロギーの問題を退け、志願兵たち(その多くはまだ10代)はある種の「ロマン」の一環としていろいろなシンボルを受け入れ、過激な観念を信奉しているのだと言った。」


 これら十分に実証された事実があるにもかかわらず、ニューヨーク・タイムズは昨年2月のアゾフ大隊のマリウポリ防衛に関する記事からこの現実を削除した。しかし、ナチスの役割はニュースにする価値があるのではないだろうか?他の文脈では、タイムズ紙はヨーロッパにおけるナチスの復活の兆候を素早く指摘し非難する。しかし、ウクライナでは、アンドレイ・パルビイ(Andriy Parubiy)のようなネオナチがクーデター政権の最初の国家安全保障責任者を務め、ナチの民兵が政権の軍事作戦の中心となっているが、タイムズはこの件に関して沈黙を守っている。

 タイムズ紙は、米露間の核対決に発展する可能性のある危機について読者に十分な情報を提供するよりも、単に国務省のプロパガンダの源泉となることを選んだのである。キエフのナチス突撃隊への言及を「ロシアのプロパガンダ」と呼ぶことが多い。しかし今回、米国下院は、あろうことか、全会一致で、この不快な事実を認知した。

Investigative reporter Robert Parry broke many of the Iran-Contra stories for The Associated Press and Newsweek in the 1980s. You can buy his latest book, America’s Stolen Narrative, either in print here or as an e-book (from Amazon andbarnesandnoble.com). You also can order Robert Parry’s trilogy on the Bush Family and its connections to various right-wing operatives for only $34. The trilogy includesAmerica’s Stolen Narrative. For details on this offer, click here.
The original source of this article is Consortiumnews



関連記事

マリウポリ近郊で報告された「集団墓地」で私が見つけたものはこれだ

マリウポリ近郊で報告された「集団墓地」で私が見つけたものはこれだ

<記事原文 寺島先生推薦>
Here’s What I Found at the Reported ‘Mass Grave’ Near Mariupol

投稿者: INTERNATIONALIST°360°
投稿日:2022年4月28日
エバ・カレン・バートレット

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月7日

塹壕に何千人もの遺体があるとキエフが主張している現場

 最近の西側メディアによると、ロシア軍はマリウポリ市民の最大9000人を、ウクライナの都市マリウポリのすぐ西にある町の「集団墓地」に埋めたという。これらの報道は、衛星画像を証拠として使い、「死体は何層にも埋められているかもしれない」「ロシア軍は4月中毎日、塹壕を掘り、死体を埋めた」と、キエフに忠実な当局者の主張を繰り返しているのである。

 私は問題の現場に行ってみたが、集団墓地は見つからなかった。



 4月23日、私はRTのロマン・コサレフ記者とと一緒に、マングシュの町にあるその場所を訪れた。私が見たのは、新しい、整然とした墓の区画で、まだ空のものもあった。その場所は、すでに存在する墓地の延長部分だ。大きな墓穴はない。墓の多くには、死者の名前と生年月日を記したプラカードがあり、残りの区画には埋葬順の番号が振られていた。

 メディアは基本的に同じ情報源、つまりマリウポリの前ヴァディム・ボイチェンコ市長(現在同市から遠く離れたところにいるようだ)からの情報のコピペだが、その中のひとつ、ワシントンポストの記事から引用してみよう。

 この記事によれば、ボイチェンコは「この場所を『新しいバビ・ヤール』と呼んでいる。バビ・ヤールとは、キエフ郊外にあるヨーロッパ最大の集団墓地の一つで、第二次世界大戦中の1941年に、ナチスによって33000人のユダヤ人が殺された場所を指している」のだそうだ。

 この件はいくつかの点で皮肉なことである。キエフ市内で暴れ回っているネオナチ、特に市民を人間の盾として使い、民間施設を占領して軍事化し、市民を至近距離で処刑したアゾフ大隊の連中を白眼視する市長が、(存在しない)集団墓地を第2次大戦のナチの大虐殺と比較しているのである。

 一方、キエフ政権は歴史を書き換え、第二次世界大戦のナチスとその協力者を国家の英雄に仕立て上げている。最も悪名高い例は、第二次世界大戦の人、ステパン・バンデラである。

 ボイチェンコのもう一つの驚くべき主張は、疑惑の 「集団墓地」 が 「21世紀最大の戦争犯罪」 であるというものであった。今世紀はまだ22年しか経っていないが、すでにアメリカ主導のイラク侵攻と破壊、シリアのラッカの平定、サウジアラビアのイエメンでの進行中の戦争、これらはすべて、どこにも見つからないマングシュの「集団墓地」よりもはるかに強力な戦争犯罪の候補である。

 実際の現場には、100近い空の墓を含め、約400の墓しかない。9000体の遺体と「21世紀最大の戦争犯罪」というのは、マリウポリから逃げだした市長による主張であり、検証はできていない。その主張をメディアは、記事の下の方に「この事実は自ずと検証できる」という但書をつけて報じていた。しかし実際のところは、被害はロシア侵攻以前に既に生じていたのだ。

墓堀り人たちが集団墓地説を覆す

 現場を歩いていると、埋葬の責任者である2人の男が現れ、前市長の集団墓地に関する告発を聞いて、その主張を激しく否定したのである。

こちらの記事を参照
OSCE(欧州安全保障協力機構)によるロシアの戦争犯罪の主張について


 「ここは集団墓地ではないし、誰も死体を穴に投げ入れたりはしていない」と、一人が私に言った。



 死体安置所では、棺桶と墓を一人一人別に埋葬し、その詳細を記録し、名前と年齢に関する資料があれば、その詳細を記したプラカードを区画に記される、それ以外は番号で表示されるそうだ。
 
 興味深いことに、新しい墓の一部にはウクライナ兵が埋葬されているとのことであった。「彼らも人間なんだよ」と、もう1人の男性は言った。

 位置に関して疑問のある人は、ロマンの報告を見てください。西側メディアが使用する衛星写真と全く同じ場所であることが、ロマンのドローン映像で確認できる。

 移動中にロマンが歩きながら指摘したように、集団墓地は以前からウクライナが非難されてきたものだ。彼はDPR(ドネツク人民共和国)の指導者であるデニス・プシーリンが、2014年以来そうした場所が少なくとも300箇所発見されたと述べていると語った。

 ロマンはまた、自分が目撃したことを語った。「2014年か2015年に、アゾフやアイダルの戦闘員がドネツク地方から退却する際に、集団墓地が発見されました。私は一人の女性も見つけました。掘り起こされたとき、腕を後ろで縛られ、妊娠後期で、頭に穴が開いていました。つまり彼女は処刑されたのです。」

 ルガンスクに長年住んでいるアメリカ人ジャーナリスト、ジョージ・エリアソンは、こうした残虐行為とされる行為について書いています。この問題に関するドキュメンタリーで、彼はこう言っています。「 ここに着いた最初の5分間で、彼らが見つけた最初の5人の話を聞かされたんだ。その5人は、みな首切りされたって。みんな民間人だった。こんなことをするのは誰なんだ?」

 マングシュの集団墓地の話も、西側メディアの捏造だ。以前にも、イラク兵が保育器の中の赤ん坊を床に投げつけた話や、イラクの大量破壊兵器に関する嘘や、起こってもいないドゥーマでの化学兵器攻撃の話を広めるなど、西側メディアによるありもしない報道を挙げれはキリがない。



 一方、私が4月21日と22日にマリウポリに行ったとき、確かに破壊行為があった。これはネオナチとウクライナ正規軍が住宅の上階を占拠して軍事拠点とし、応戦したせいでその建物が攻撃されたためだ。しかし、通りに人がいるのも見たし、そのビルを再建するための清掃作業が始まるのも見えた。



 シリアに関する西側メディアの報道(同国の現場から見た私の経験では、そのメディアの大部分が不誠実だった)について述べたことを繰り返そう。こうしたデマや戦争プロパガンダを推進する人々は、自分たちの手が血塗られているのだ。

 欧米の企業メディアから無数の嘘が発せられ、新しい主張が出されるたびに、人々が批判的思考を行使することを私は願っている。特にそれがいつもの容疑者によって大合唱されるときには。

エヴァ・バートレットは、カナダの独立系ジャーナリストである。中東の紛争地帯、特にシリアとパレスチナに4年近く滞在し、現地で取材を行っている。

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中東のソーシャルメディアが映し出すウクライナ危機

中東のソーシャルメディアが映し出すウクライナ危機
<記事原文 寺島先生推薦>
Crisis in Ukraine Through the Prism of Middle Eastern Social Media

ジャーナル・ネオ
2022年4月13日

ユーリー・ジニン(Yuriy Zinin)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月8日


 ロシアがウクライナで行っている特殊作戦については、中東地域のソーシャルメディア上で盛んに論じられ続けている。中東の地元政治専門家たちは、インターネット上でこの紛争がどのように見られているかや、この紛争がどのような印象を持たれているかについて、生活様式や政治体制が異なる様々な地域において追跡調査を行っている。

 モロッコの研究者によれば、その捉えられ方は様々であることが、利用者たちの反応やコメントやブログを書いている人々の投稿記事から明らかだ、とのことだ。 この傾向は、人々の政治的思想的傾向や主張が入り交じるアラブ諸国ならではのことだと言える。ただし今回のウクライナでの出来事に関しての批判は、モスクワに対してではなく、米国とその同盟諸国の方により多くの矢が向けられているようだ。

 このような声が上がっていることには多くの理由がある。その主要な理由のひとつは、いま起こっていることから受け取れる感情が、かつて西側諸国がアラブ地方を支配していたときの記憶と切り離せないことだ。 この点に関して、アラブ地方は苦い体験をしてきたため、この決して癒されることのない傷が多かれ少なかれ、西側に対する批判に繋がっているのだ。

 この何十年間にもわたって形成されてきた反西側感情が、いま新しい意味を持ちつつある。だからこそアラブ世界に住む多くの人々が米国の主張を受け入れようとしていないのだ。その主張とは、現在ウクライナで起っていることに関して、米国が国際法や各国の主権について訴えている主張のことだ。米国が主張している国家主権や諸国が持つべきそのような権利が、パレスチナやイラクやリビアの場合、米国により侵害されてきたことに対して批判の声が巻き起こっているのだ。さらに最初から、そしてずっと以前から、ウクライナの指導者層は西側との関係を強めることに賭けてきたのだ。

 今のウクライナ政権が使っている言葉は、ロシアの敵諸国やロシアの不幸を望んでいる国々から借りてきた言葉だ。この言葉を聞いたアラブの人々は、以下のような正当な疑問を持っている。「ロシアと闘っているウクライナの国家主義者たちは、自己防衛のために闘っているのだろうか?それともその逆で、米国やNATOに必死に気を使っているのだろうか?」

 注目すべきことは、今ウクライナで起こっていることやそれに対する西側諸国の反応と、中東での紛争との比較が、ソーシャルメディア上で行われていることだ。そして国際社会からの両者に対する反応が同じではないことについてだ。

 西側のメディアはキエフ政権に肩入れした報じ方に力を入れているが、このことが、西側メディアが何に道徳的基盤を置いているかについてアラブ諸国が疑念を持つことに繋がっている。ウクライナ国民たちの苦しみを全面に押し出す記事やテレビ報道により、その報道に接する人々に同情心を持たせようとする意図が余りにあからさまなので、これらの報道が、ソーシャルメディアの発信者たちの間に真逆の効果を生み出している。
 ブログを書く人々が皮肉っているのは、欧州がウクライナからの難民たちに救いの手を差し伸べているのに、ウクライナからの難民よりずっと苦しんでいるシリアやリビアやアフガニスタンからの難民が置かれている状況には沈黙を保っている点だ。アル・ジャジーラの報道によると、この件が、西側が世界に自身の文化の冷酷さを示す機会になってしまっているとのことだ。つまり西側は、人種差別と二重基準に依存した社会だということを示してしまっている、というのだ。

 ソーシャルメディアの利用者たちによると、世界中のメディアやネット空間はウクライナでのこの紛争について騒ぎ立てているが、本当に何が起こっているかについては語らず、隠していることの方がずっと多いとのことだ。ウクライナの工作員たちが、偽情報の拡散や事件の偽造を行っていることがネット上で見つかっている。

 アラビア語のウェブサイト「ミスバー」は、2019年からオンライン空間での偽情報の発見や暴露を専門としてきたサイトだ。このミスバーがウクライナによる偽情報の発信に関して活発に反応している。ここ数週間、ミスバーはウクライナでのこのようなかなりの多くの件案について調査し、検証済みの文書情報をもとに明らかにしている。

 ミスバーが明らかにした偽情報の中で特筆すべきは、ウクライナのスームィ町でロシア軍が焼いたとされて投稿された複数の家屋のいくつかの写真だ。ミスバーによると、これらの写真は2020年2月2日にウクライナのトランスカルパチア地方のイルシャバ市で起こった火災後の写真にほかならなかった。他の例を上げると、キエフでウクライナにより攻撃されたとされたロシアの装甲車両の映像だ。実の所、これはニセモノだった。この映像は、2014年にウクライナで起こった民衆による抗議活動の際、デモ隊がウクライナ軍の装置に火炎瓶を投げつけている映像だった。

 アラブ首長国連邦の政府報道機関の指摘によると、ウクライナ大統領は大規模な西側の応援団の助けを借りて、ロシアの攻撃による一般市民の犠牲者の数を水増しする手口を使っているとのことだ。さらに 「戦争犯罪」の証拠として上げられた多くの写真は、合成写真であったことも判明している。アルジェリアの新聞社であるル・ジュネ・アンダパンダン(Le Jeune Indépendant)紙は、ブッチャでの大虐殺事件のでっちあげを、「大西洋主義者たちによるロシアを悪者にするための新しい嘘だ」と報じている。

 「アラブ界隈(Arab street)」(訳注:大衆の意見や考えの隠喩。アラブの世界ではStreet は大衆の意見交換の場としてとして主要な場所であったことに由来する)では、国際体制を信頼できないという声が上がっている。というのも、その国際体制のもとで、アラブ地域は危機的状況に置かれ、ウクライナへは救援の手が急いで差し伸べられているのに、多くのアラブ諸国で起こったことや、今でも起こっている都合の悪いことについては目を向けようとはしていないからだ。

 サウジアラビアの新聞社であるアル・オカズ(Al-Okaz)紙によると、アラブの大衆も、文化的な指導者層もウクライナ寄りではなく、ロシア寄りの立場をとっているとのことだ。同紙はその理由を、アラブが西側に対して持っている敵意のせいであり、その敵意はアラブとイスラエル間の紛争において、西側がこの70年間以上ずっとイスラエルを支援してきたことから生まれたものだとしている。だからこそキエフ政権との紛争においてアラブがロシアを支持しているのは論理的な動機のもとでのことだ、という論調だ。

 「ウクライナでのロシアの軍事行動は特別な意義を持つ」と語るアラブの作家もいる。 この作家は、「この紛争は長年待ち続けてきた煌めきであり、この煌めきがきっかけとなって、 これまで世界が体験してきた、不確かで、“政治の流れに翻弄されてきた”時代を乗り越えることができるのでは」と期待している。

 覇権を追求する政策に凝り固まった西側全体の特徴としてあげられることは、諸国の富を略奪し、制裁を課すことで諸国の自発的な意志を粉砕しようとすることだ。さらに西側諸国は、自分たち以外の「極」の出現も阻止しようとしている。その「極」は、諸国が自国の経済や機関を成長させることにより少しずつ打ち立ててきたものだ。そうやって諸国は、自国の国力を拡大し、国際社会の力の均衡の中で居場所を手にしてきたのだ。それなのにこのような極が生じる度に、西側は既得権益を維持しようという確固たる決意のもと、 これらの極を粉砕してきた。常に西側は、自分たちが世界の中心であり続けている確信が持てる鍵を手元に置いておきたがってきたのだ。

 ウクライナの件だけではなく、世界各地で国家間の関係が入り乱れ、複雑化しているという事実は、 ある変化が起ころうとしている前触れだ。その変化とは、ここ数十年間、世界の存在の基盤としてきた体制の機能不全を正そうという変化だ。

Yuri Zinin, a senior researcher at the Center for Middle Eastern Studies, Institute of International Studies of the Moscow State Institute for International Relations, exclusively for the online magazine “New Eastern Outlook”.
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新しい世界金融体制に向けて--- セルゲイ・グラジエフ

新しい世界金融体制に向けて--- セルゲイ・グラジエフ
<記事原文 寺島先生推薦>
Towards A New Global Financial System: Sergey Glazyev

ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)著

グローバルリサーチ、2022年4月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月5日
***


 デジタル通貨に支えられた世界の新しい通貨体制は、新しい複数の外国貨幣と通貨バスケットに裏打ちされることになる。そしてそれは、西側の負債とIMFが誘発した緊縮財政から南半球を解放するものである。

通貨バスケット・・・固定相場制の一つで、複数の貿易相手国の為替相場を一定水準に固定する制度。 一般的に貿易量などによって複数の通貨レートの比重を決め、加重平均して自国通貨のレートを算出する。 特定の通貨が急激に変動しても、複数の通貨で構成されているため影響が緩和され、為替相場が安定しやすい。

 セルゲイ・グラジエフは、現在の地政学的・地理経済的嵐の渦中にいる人物である。彼は世界で最も影響力のある経済学者の一人で、ロシア科学アカデミーの会員であり、2012年から2019年までクレムリンの大統領顧問だった。そして過去3年間、ユーラシア経済連合(EAEU)の統合とマクロ経済担当の大臣としてモスクワの超戦略資産構成を指揮している。

 グラジエフの最近の知的生産について言えば、エッセイ『制裁と主権』や、ロシアのビジネス誌のインタビューで新しい地政学的観点についての幅広い議論を展開するなど、変革的なものばかりである。

 最近のもう一つのエッセーで、グラジエフがザポロジェでどのように育ったのかを書いている。「私はザポロジェで育ちましたが、そこは現在激しい戦闘が行われている場所の近くです。ウクライナのナチスは、私の小さな祖国には存在しなかったのです。今行われている戦争はそのネオナチを滅ぼすための戦争です。私は、ウクライナの学校で学び、ウクライナの文学と言語をよく知っています。ウクライナ語は、科学的な観点から言えば、ロシア語の方言です。ウクライナの文化にロシア恐怖症のようなものは見当たりません。ザポロジェで17年間生活していましたが、バンデリスト[訳注:ナチに協力したステパン・バンデラを崇拝する人々]には一度も会ったことがありませんでした。」

 グラジエフは、忙しいスケジュールの合間を縫って、今後、特に「南半球」に焦点を当てた対話を続けていくために、最初の一連の質問に丁寧に答えてくれた。これは、「オペレーションZ[訳注:ロシアのウクライナ侵攻作戦]」開始以来、初めての海外メディアとの対談だ。ロシア語を英語に翻訳してくれたアレクセイ・スボティン(Alexey Subottin)さん、ありがとうございました。

*
 The Cradle[訳注:ニュースサイト]: あなたは今、経済地政学的発展が革新的に進行している最前線におられます。 EAEU(ユーラシア経済連合)と中国の連合による、米ドルを介さない新しい通貨・金融体制の設計が進んでおり、その草案の完成も間近にせまっています。この体制は、ブレトン・ウッズ体制の第3弾とは呼ぶべきものではなく、これまでの「ワシントン主導のもとでの常識」に代わるものであり、「南半球」の要求に応えるものだと思いますが、その特徴についてお聞かせください。

ブレトン・ウッズ体制・・・1944年に定められた、アメリカ合衆国ドルを基軸とした固定為替相場制のこと。その後1971年に変動為替に移行した。

 グラジエフ:ロシア恐怖症による興奮状態の中で、米国の支配者層は、ロシアに対するハイブリッド戦争[訳注:正規の戦闘だけではなく、サイバー攻撃や情報戦などの非戦闘行為を伴う戦争のこと]で最後の切り札を使いました。欧米の中央銀行が保有するロシアの外貨準備を「凍結」して、米国、EU、英国の金融当局がドル、ユーロ、ポンドの基軸通貨としての地位を傷つけたのです。この措置は、ドルを基軸とする世界経済秩序の解体を急激に加速させました。

外貨準備・・各国の通貨当局の管理下にある、直ちに利用可能な対外資産のこと

 10年以上前、アスタナ経済フォーラムの仲間と私は、参加国の通貨を指標とした新たな統合取引通貨に基づく新たな世界経済体制への移行を提案しました。その後、私たちは、約20の交易商品を追加して、基礎となる通貨バスケットを拡大することを提案しました。このように拡大された通貨バスケットに基づく通貨単位は、数学的にモデル化された演算により、高い弾力性と安定性が実証されました。

 現在、米国はその覇権を維持するために戦っていますが、かつて英国が2つの世界大戦を引き起こしたものの、植民地経済体制の陳腐化によって帝国と世界の中心的地位を維持できなかったのと同様に、失敗することが運命づけられているのです。奴隷労働に基づく英国の植民地経済体制は、米国とソ連の構造的により効率的な経済体制に追い抜かれました。米国もソ連も、垂直統合型[訳注:生産者と消費者が分かれておらず一体となっていること]の体制で人的資本を管理することに長けており、世界をそれぞれの勢力圏に分割していたのです。ソ連邦の崩壊後、新しい世界経済秩序への移行が始まりました。そして現在、この以降は、米国の世界支配の基盤であったドル依存の世界経済体制の崩壊が目前に迫っているという結論に達しようとしています。

 中華人民共和国とインドで生まれた新しい一点収束型経済体制は、中央集権的な戦略立案と市場経済、国家による貨幣的・物理的な社会基盤の管理と起業家精神の両方の利点を組み合わせた、次の必然的な発展段階と言えるでしょう。この新しい経済体制は、アングロサクソンやヨーロッパの代替案よりも実質的に強力な方法であり、共通の幸福を高めるという目標を中心に社会の様々な階層を団結させました。これが、ワシントンが始めた世界規模でのハイブリッド戦争で勝つことができない主な理由です。これはまた、現在のドル中心の世界金融体制が、新しい世界経済秩序に参加する国々の合意に基づく新しい体制によって取って代わられる主な理由でもあります。

 移行の最初の段階では、これらの国々は自国通貨と二国間通貨交換に裏打ちされた決済機能を使用することに依存します。この時点では、価格形成はまだほとんどがドル建ての様々な取引所での価格によって行われています。ロシアが海外に所有しているドル、ユーロ、ポンド、円の外貨準備高が「凍結」されたのですから、これらのドルやユーロやポンドや円立ての外貨準備高を蓄積し続ける国はなくなるでしょう。その代わりに諸国は自国通貨と金を使用するようになるでしょう。  
   
 移行の第2段階には、ドルを参考にしない新しい価格形成機能が含まれます。国内通貨での価格形成にはかなりの間接費が伴いますが、ドル、ポンド、ユーロ、円などの「裏付けのない」危険な通貨での価格設定よりも魅力的です。唯一残っている世界通貨候補である人民元は、その兌換性の欠如と中国の資本市場への外部からの進入の制限のために、その地位を占めることはありません。さらに価格基準としての金の使用は、支払いのために不便なので制約されます。
 
 新経済秩序移行の最終段階である第3段階は、透明性、公平性、信頼度、効率性の原則に基づく国際合意による新しいデジタル決済通貨の創設になります。この段階では、私たちが開発した通貨単位のモデルがその役割を果たすと期待しています。このような通貨は、BRICS諸国の通貨準備高を貯蔵して発行することができ、関心を持つすべての国が参加することができます。通貨バスケット方式における各通貨の比重は、各国のGDP(購買力平価などに基づいた値)、国際貿易シェア、参加国の人口や領土の広さなどに比例させることができます。

購買力平価・・・ある国の通貨建ての資金の購買力が、他の国でも等しい水準となるように、為替レートが決定されるという考え方。あるモノが日本で120円、米国で1ドルである場合、1ドル120円であれば、120円(1ドル)は日本でも米国でも、それを1単位として購買する力を持っており、購買力平価が成立していることになる。

 さらに、バスケット方式には、金などの貴金属、主要な工業用金属、炭化水素、穀物、砂糖、水などの天然資源など、取引所で取引される主要な商品の価格指数を含めることも可能でしょう。この通貨の裏付けと弾力性を高めるために、やがては関連する国際資源備蓄を設けることができます。この新しい通貨は、国境を越えた支払いにのみ使用され、あらかじめ定められた計算式に基づいて参加国に発行される予定です。参加国がバスケット方式ではなく自国通貨を使用するのは、自国の投資や産業に必要な資金調達のための信用創造と、政府系ファンドに使用する資金のためです。そして資本収支の国境を越えた流れは、引き続き各国の通貨規制によって管理されます。

信用創造・・・銀行が貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨をつくりだすこと

 The Cradle: マイケル・ハドソンは以下のような具体的な問いを立てています。それは、「この新しい体制によって、南半球の国々がドル建て債務を停止することが可能になり、(外国為替における)支払い能力がこの新しい体制に基づくことになった場合、これらの融資が原材料と紐付けされたり、あるいは中国の場合のように、社会資本への投資による有形株式所有と紐付けされる際は、対外債務は非ドル建てでおこなうことが可能になるのか?」というものです。

 グラジエフ:新しい世界経済秩序への移行は、ドル、ユーロ、ポンド、円での債務の履行を組織的に拒否することを伴うでしょう。この点では、イラク、イラン、ベネズエラ、アフガニスタン、ロシアの外貨準備を数兆ドル単位で奪った通貨発行諸国の例と変わりないでしょう。アメリカ、イギリス、EU、日本は義務を果たすことを拒否し、自国通貨で保有する他国の富を没収したのだから、ほかの国々は返済や融資の義務を負わなければいけなくなることはないでしょう。

 いずれにせよ、新しい経済体制への参加は、古い経済体制における義務によって制約されることはないでしょう。南半球の国々は、ドル、ユーロ、ポンド、円での累積債務に関係なく、新体制に完全に参加することができます。仮にこれらの通貨での債務が不履行に陥ったとしても、新金融体制での信用度には全く関係がありません。また、鉱物などの採掘産業が国有化されても、同様に混乱は生じません。さらに、これらの国が新経済体制の裏付けとして天然資源の一部を留保すれば、新通貨単位の通貨バスケットにおけるそれぞれの国の比重が高まり、その国の通貨準備高と信用力が高まります。また、貿易相手国との二国間通貨スワップ協定により、共同投資や貿易金融のための十分な資金を確保することができます。

 The Cradle:先生は最新のエッセイ『ロシア勝利の経済学』の中で、「技術における新しい観点の形成と新しい世界経済秩序の制度形成を加速する」ことを呼びかけておられます。その中で、特に「EAEU加盟国の自国通貨による決済体制」の構築と、「EAEU、SCO、BRICSにおける独立した国際決済体制の開発と実施」を提案していますが、これは米国が支配するSWIFT体制に対する重大な依存を排除できるのではないでしょうか?EAEUと中国が共同で、SCO加盟国、他のBRICS加盟国、ASEAN加盟国、西アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々に新体制を「売り込む」ことは可能なのでしょうか?そして、その結果、「西側」と「それ以外」という二極化した地政学的経済が生まれるのでしょうか?

 グラジエフ:確かにその通りです。残念なことに、ロシアの通貨当局は、外貨準備を西側に奪われた後も、依然としてワシントンの枠組みに属し、ドル建て体制の仕組みに則っています。一方、最近の制裁措置は、他の非ドル圏諸国の間で広範な自省を促しました。西側の「影響力のある代理人」は依然としてほとんどの国の中央銀行を支配し、IMFが定めた自殺行為のような政策を適用することを強要しています。しかし、現時点では、こうした政策は明らかに非西洋諸国の国益に反しているため、非西洋諸国の当局は金融安全保障について正当な懸念を募らせています。

 新しい世界経済秩序の形成において、間違いなく中国とロシアが中心的な役割を果たす可能性があると指摘されています。しかし残念ながら、現在のロシア中央銀行(CBR)の指導者は、ワシントン規範の知的袋小路に閉じこもり、新しい世界経済・金融の枠組みを構築する際に創設の一役を担うことができません。それと同時に、ロシア中央銀行は、既に現実を直視し、SWIFT に依存しない銀行間通信体系のための国家体制を構築し、外国の銀行にも開放しなければなりませんでした。主要参加国との間では、すでに通貨スワップ協定が設定されています。EAEU加盟国間の取引のほとんどはすでに自国通貨建てであり、国内貿易に占める自国通貨の割合は急速に高まっています。

 中国、イラン、トルコとの貿易でも、同様の移行が進んでいます。インドも同様に自国通貨建て決済に切り替える用意があることを示唆しています。自国通貨による決済のための決済機能を開発するために多くの努力が払われています。これと並行して、銀行を通さない決済をデジタルで行う開発の取り組みも進んでいます。この決済では、金やその他の上場投資信託取引所商品、すなわち「安定コインという名の暗号通貨」が結び付けられることになります。

 銀行系統に課された最近の米国と欧州の制裁措置により、こうした取り組みが急増しています。新しい金融体制に取り組んでいる国々は、新しい貿易通貨の枠組みと準備の完了を発表するだけで、そこから新しい世界金融秩序の形成過程がさらに加速されることになります。それを実現するためには、SCO(上海協力機構)やBRICSの定例会議で発表するのが最善策でしょう。私たちはそれに取り組んでいます。

 The Cradle: これは、西側諸国の独立系専門家たちによる議論において、絶対的に重要な問題でした。ロシア中央銀行は、ロシアの金生産者に対し、ロシア政府や中央銀行が支払うよりも高い価格を得るために、ロンドン市場で金を売るように助言していたのでしょうか?米ドルに代わる新たな通貨が、主に金をもとにしたものでなければならないことを、全く予期していなかったのでしょうか?今回のことをどう評価しますか?短期的、中期的にロシア経済にどれだけの損害を与えたのでしょうか?

 グラツィエフ: IMFの勧告に沿って実施されたロシア連邦準備銀行の金融政策は、ロシア経済にとって壊滅的な打撃となりました。外貨準備高約4,000億ドルの「凍結」と、オリガルヒ(財閥)が経済から吸い上げた1兆ドル超の国外の西側への流出という複合的な災害が起こりました。この背景となったのもCBRの壊滅的な政策のせいでした。その政策とは、外国為替レートの急騰により 過度に高い実質金利という、同様に悲惨なロシア連邦準備制度の政策を背景にして発生したものです。その結果、約20兆ルーブルの投資不足と約50兆ルーブルの生産不足が発生したと推定されます。

 ワシントンの勧告に従って、CBRは過去2年間、金の購入を停止し、国内の金採掘業者に事実上、生産量の全額(結果的に500トンの金)を輸出させました。最近になって、この過ちとその弊害は非常に明白になっています。現在、中央銀行は金の購入を再開しており、過去10年間のように国際的な投機家の利益のために「インフレ目標」を設定するのではなく、国民経済の利益のために健全な政策を継続することを望んでいます。

 The Cradle: ロシアの外貨準備の凍結について、FRB(米国連邦準備制度)だけでなくECB(欧州中央銀行)も相談を受けていない。ニューヨークやフランクフルトでは、もし相談があれば反対しただろうと言われています。個人的に凍結を予想していましたか?また、ロシアの指導者はそれを予期していたのでしょうか?

 グラジエフ: すでに紹介した私の著書『最後の世界大戦』は、2015年の時点で出版されていますが、いずれそうなる可能性が非常に高いと論じていました。このハイブリッド戦争では、経済戦争と情報戦・認知戦が重要な戦場となります。この両戦線において、米国とNATO諸国は圧倒的な優位に立っており、いずれこれを全面的に活用するだろうと、私は何の疑いも持ってはいませんでした。

 私は長い間、外貨準備のドル、ユーロ、ポンド、円を、ロシアで豊富に産出される金で置き換えることを主張してきました。しかし、多くの国の中央銀行や格付け会社、主要な出版社で重要な役割を担っている欧米の影響力のある代理人たちは、残念ながら私の考えを封じることに成功しました。例えば、FRBとECBの高官が、反ロシア金融制裁の策定に関与していたことは間違いないでしょう。これらの制裁は一貫して激しさを増しており、EUにおける官僚的な意思決定の難しさはよく知られていますが、ほとんど即座に実行されているのです。

 The Cradle: ロシア中央銀行の総裁にエリヴィラ・ナビウリナ氏が再登板しました。これまでの彼女の行動と比較して、何が違うのでしょうか?また、それぞれの政策の進め方に関わる主な指針は何でしょうか。

 グラジエフ:私たちの政策の進め方の違いは、非常に単純です。彼女の政策は、IMFの勧告とワシントンの視点からの考え方を正統に実行したものであり、私の勧告は、科学的手法と過去100年にわたる先進国での経験則に基づくものです。

 The Cradle: ロシアと中国の戦略的パートナーシップは、プーチン大統領と習近平国家主席自身が常に再確認しているように、ますます鉄壁のものとなっているように思われます。しかし、西側諸国だけでなく、ロシアの一部の政界でも、この戦略的パートナーシップに反対する声があがっています。この極めて微妙な歴史的岐路において、中国はロシアのいつも変わらぬ味方として、どの程度信頼できるのでしょうか。

 グラジエフ: ロシアと中国の戦略的パートナーシップの基盤は、常識と共通の利益、そして数百年にわたる協力の経験です。米国の支配者層、世界における覇権的地位を守るために、中国を主要な経済的競争相手、ロシアを主要な対抗勢力として、世界規模でのハイブリッド戦争を開始しました。当初、米国の地政学的な試みは、ロシアと中国の間の対立を作り出すことを目的としていました。西側の影響力を持つ代理人が、我々のメディアで外国人嫌いの考えを増幅させ、自国通貨での支払いに移行しようとする試みを妨害していたのです。中国側では、西側の影響力のある代理人が、米国の利益の要求に沿うように政府を動かしていました。

 しかし、ロシアと中国の主権的利益は、論理的には、ワシントンから発せられる共通の脅威に対処するために、戦略的パートナーシップと協力関係を深めることにつながりました。米国の対中関税戦争と対露金融制裁戦争は、こうした懸念を立証し、両国が直面している明確な現在の危機を明らかにしました。生存と抵抗という共通の利益が中国とロシアを結び付けており、両国は経済的に大きく共生しています。両者は互いに競争上の優位性を補完し合い、高めています。このような共通の利益は、長期にわたって持続するでしょう。

 中国政府と中国国民は、日本の占領からの解放と、戦後の中国の工業化においてソ連が果たした役割を非常によく覚えています。両国は戦略的パートナーシップのための強力な歴史的基盤を有しており、共通の利益のために緊密に協力する運命にあります。一帯一路とユーラシア経済連合の結合によって強化されるロシアと中国の戦略的パートナーシップは、プーチン大統領の計画である大ユーラシアパートナーシップの基礎となり、新しい世界経済秩序の核となることを期待しています。

*

この記事は、The Cradleに掲載されたものです。

ペペ・エスコバル ブラジル生まれ。アジア・タイムズ紙特派員兼編集長、モスクワのコンソーシアム・ニュース誌およびストラテジック・カルチャー誌のコラムニスト。1980年代半ばからロンドン、パリ、ミラノ、ロサンゼルス、シンガポール、バンコクに在住し、海外特派員として活動。パキスタン、アフガニスタン、中央アジアから中国、イラン、イラク、中東まで幅広く取材している。著書に『Globalistan - How the Globalized World is Dissolving into Liquid War』『Red Zone Blues: A Snapshot of Baghdad during the Surge』がある。イタリアの「The Empire and The Crescent」と「Tutto in Vendita」の寄稿編集者でもある。最近の2冊は『Empire of Chaos』と『2030』である。また、パリを拠点とするEuropean Academy of Geopoliticsのメンバーでもある。パリとバンコクを行き来する生活を送っている。

グローバル・リサーチ誌に定期的に寄稿している。
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チーム・ゼレンスキー、天狗になってドイツに喧嘩を売る

チーム・ゼレンスキー、天狗になってドイツに喧嘩を売る

<記事原文 寺島先生推薦>
Team Zelensky Overplays Hand By Humiliating Germany - Islam Times

フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)

2022年4月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月4日


 イスラムタイムズ――ゼレンスキーと彼の黒幕は、ヨーロッパ全体を奈落の底に突き落としたいと考えている。しかし、才能あるゼレンスキー氏は、許容限度を超えて脚本を押し進め、ベルリン叩きを始めるまでになっている。



 チーム・ゼレンスキーはこれまで、手際よく、ただ辟易するほど阿(おもね)った態度で、ゲームをこなしてきた。ウクライナ大統領は、戦時中の多忙なスケジュールの合間を縫って、ここ数週間、世界各地の17以上の議会で演説を行い、その都度、特定の文化的感情を刺激するような特別誂えの演説を行ってきたのだ。

 ゼレンスキーは、技巧を凝らしたスピーチの原稿読みを演じるだけでなく、毎日のように世界の指導者たちと電話で話し、ロシア軍が犯したとされる恐怖を語り、ウクライナにもっと武器を送るよう、またモスクワにもっと厳しい制裁を加えるよう強く要求しているようである。彼はまた、ハリウッドの聴衆を前にして、涙を誘うようなスピーチをする時もある。この男は、単独で活動するにはあまりに多忙である、とだけ言っておこう。

 チーム・ゼレンスキー:ウラジーミル・ゼレンスキー大統領には、見た目以上のものがあると結論づけざるを得ない。カリブ海に数十億ドルのオフショア口座があるという報道も、そう判断する一つの指標となる。

 ユダヤ人の血を引くこの喜劇俳優は、ナチスの軍隊がはびこる政権の顔になるには打って付けの腹話術人形である。そしてこの操り人形はますます重要になっている。というのも、西側の「民主主義」国家が、ナチスのワッフェン-SSの記章を誇らしげにつけた兵士がいるこの政権を後援、武装することに夢中になっているからである。

 しかし、ゼレンスキーは、世界をガス燈のように照らす旅をするうちに図に乗りすぎて、自分の力が彼の黒幕CIA、MI6と同じだと思うようになったようだ。今週、チーム・ゼレンスキーは、調子に乗りすぎて欧州連合の要であるドイツまでこき下ろしたのだ。

 ドイツ大統領フランク・ヴァルター・シュタインマイヤーがゼレンスキーの側近に言われたことは、ポーランドとバルト三国の指導者を含む代表団の一員としては彼をキエフには招かないということだった。この4人の指導者はキエフへの「連帯訪問」を決行したが、シュタインマイヤーはベルリンに取り残されることになった。この冷遇はドイツ国内で大きな困惑を引き起した。温厚と言われるオラフ・ショルツ首相でさえ、この国家元首への侮辱に「憤慨している」と発言したほどだ。

 シュタインマイヤーを軽視する理由の一つは、彼がロシアに近すぎると思われているという不満である。メルケル前首相の連立政権時代、シュタインマイヤーは外相として、2014年、2015年のミンスク和平協定の交渉に携わった。キエフはそれらの協定を否定し、それが2月24日にロシアの介入で現在のウクライナ戦争がエスカレートする一因となっている。しかし、それを理由にキエフがシュタインマイヤーを「ロシアに近すぎる」と主張するのはおかしな話で、キエフ政権がいかに理不尽で執拗な反ロシア政権であるかを示しているに過ぎない。

 しかし、どうも裏にはそれ以上のものがあるようだ。ゼレンスキーと彼の米英の助言者は、フランスだけでなく、ドイツも動かして、ロシアに対してさらに敵意をあおる制裁を科すことを狙っているのだ。今週、ワシントン・ポスト紙は、ヨーロッパの経済大国でありNATO加盟国でもあるこの2カ国は、ウクライナへの武器供給という点において自分の務めを十分に果たしていないと指摘して憤慨している。

 ショルツ首相は今のところ、ウクライナにもっと重火器を送るようにという圧力に抵抗している。ベルリンは「ヘルメットだけ」を供給していると嘲笑されている。

 同様に、ロシアの石油とガスの輸入を全面的に禁輸するよう求める声も拒否している。ドイツ経済にとって自殺行為であることは間違いない。

 しかし、ゼレンスキーとその脚本家たちは、ますます声を荒げて文句を言うようになった。今週、ゼレンスキーは苛立った口調で、全ヨーロッパがロシアとのエネルギー貿易を直ちに停止し、「ロシアの軍事機構を支援するのをやめる」ようにと表明した。

 モスクワに対して十分に積極的でないベルリンへの不満を強調するために、チーム・ゼレンスキーはどういうわけか分からないが、ドイツの大統領を侮辱するのが良い考えだと思ったようだ。

 しかし、ゼレンスキーと彼の腹話術師たちの悪乗りが度を越すと、高飛車なアメリカの指導の下でNATOとEUにとって最重要である「統一」を分裂させてしまう危険性を冒しかねない。

 この見かけ上の結束は、ジョー・バイデン米大統領の表向きの威勢のよさ以上にもろいものである。ワシントンは、ロシアとの代理戦争を戦うことに関して、NATOとEUを同じ仮想戦場に留めておくことに必死である。もしNATO加盟国がウクライナの武装化という狂気の政策全体に疑問を持ち始めたり、EU加盟国が自滅的な制裁に不信感を募らせるようになったら、米国主導の反ロシア戦線は崩壊し始めるからだ。

 チーム・ゼレンスキーは、図に乗りすぎて筋書きから逸れる心配がある。ヨーロッパの周辺にある、寡頭制の腐敗とナチスの準軍事組織にまみれた人工的な国が、コメディアンから政治家に転身した人物によって牛耳られ、ベルリンやパリ、さらにはヨーロッパ連合全体に政策を指示する権限があるという高慢な思い上がりを獲得したかのようである。

 それだけでなく、キエフ政権はポーランドとバルト三国によって強化されているが、この国々は「自由主義の模範的なヨーロッパ人」と考えられているわけではない。ウクライナ紛争が起こる前、ブリュッセルとワルシャワは、ポーランドが反EU政策をとっているという疑惑で衝突していた。(訳註:ベルギーの首都ブリュッセルはEU(欧州連合)の本部所在地とされている。)

 ゼレンスキーがシュタインマイヤー大統領に恥をかかせてドイツを侮辱したのは、彼と彼の黒幕が自分たちの力を過大評価していることを示している。

 他国の指導者の心理的弱点を突く練り込まれた演説は、チーム・ゼレンスキーによる成功の手法である。しかし、彼らはゼレンスキーが周辺国出身の一介の暗号解読者に過ぎないことを見落としている。いずれ、狂気と誇張は消え去り、残されるのは、ゼレンスキーという暗号がヨーロッパの国家元首に指示を出すという不釣り合いな構図である。反ロシアのプロパガンダを押し通すには、信義と忍耐の限界がある。ショルツもマクロンもルペンも、彼らの完全な堕落を受け入れるつもりはない。

 ゼレンスキーと彼の黒幕たちは、ヨーロッパ全体が奈落の底に突き落とされることを望んでいる。しかし、才能あるはずのゼレンスキー氏は、許容限度を超えて脚本を押し進め、ベルリン叩きを始めるまでになっているのだ。
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ウクライナとロシアの戦争も世界経済フォーラムが仕組んだグレートリセットへの一里塚なのか

ウクライナとロシアの戦争も世界経済フォーラムが仕組んだグレート・リセットへの一里塚なのか? 

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine-Russia and the World Economic Forum (WEF). A Planned Milestone
Towards “The Great Reset”?


Global Research 2022年3 月28日

ピーター・ケーニッヒ(Peter Koenig)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月4日



 我々人類は権力に執着する。

 現在進行中の惨状を引き起こしているウクライナとロシア間の戦争は、権力への執着の結果起こったものだ。これまでのことを振り返り、点を線で結んで何が見えるか分析してみよう。この戦争に世界経済フォーラムは絡んでいるのだろうか?この戦争はグレート・リセットに向かう権力闘争なのか?

 権力に心を奪われた個人や集団が、国や地域や世界を手中に収めたがることは、これまでの歴史で幾度となく繰り返されてきたことだ。それが我々の眼前で今起こっているのだ。そしてその過程において、何千あるいは何百万もの何の罪も犯していない人たちが亡くなったり、窮状に追い込まれたりする。それは、病的な理由のせいで、心が悪に取り憑かれている権力に飢えた人々の気まぐれのためだ。連中は自分たちが人類や世界の資源を管理しないといけないと考えている。

 ずっと小規模だが、同様の事件はここ100年で何度も起こった。ここ100年というか、ここ2000年、いや人類が地球上に出現してからずっとそうなのだ。人類は進化したと言われているし、実際そうなのだろう。しかしそれはいわゆる技術の「進歩」であって、人類そのものの進化は実はたいして進んでいない。そして今日の犯罪者たちが持つ動機は、何年も前の犯罪者たちが持っていた動機と同じようなものだ。今も昔も連中は同じ心の病を患っている。支配欲に駆られ、憎しみを糧にしている。全く進歩せず、同じような犯罪行為を行っている。

 いま起こっていることも、ここ2年間起こってきたことも、人類に対する途方もない広範囲に渡る世界規模での犯罪行為で、近年なかったことだ。

 この犯罪行為は恐らく世界を支配しようという目論見の中で、これまでで最も大きく、違法なものだ。人類の未来を本当に脅かすものだ。この犯罪行為は何十年も、そして恐らく少なくとも100年かけて準備されてきた。さらにこの犯罪行為は狡猾にも、平和と正義と各国の主権と人権を守るために作られたと考えられてきた組織、すなわち欺瞞に満ちた国連を隠れ蓑にして計画されてきた。

 そしてその手引書は「国連アジェンダ2030」という名で呼ばれている。このアジェンダは高尚な計画の形をした仮面を世界に向けて発信している。その仮面とは、いわゆる「17項目の持続可能な開発目標(SDGs)」だ。この目標は同じ名を持つ国連サミットで2015年9月にニューヨーク市で決定されたものだ。これらのSDGsの達成は「南の発展途上国を貧困から抜け出させることだ」と表向きにはなっている。

 しかしこれらの開発目標を精査した政治家や真面目な経済学者なら、そんな目標を取り入れようとすることは全くの幻にすぎないことに気づいているだろう。SDGsの17項目には明記されてはいないが、費用の面、政治的意図、実現可能性、さらにはずっと差し迫った要因といった観点から見ればそれは明らかだ。これらの目標を考え出した政策立案者たちや、彼らの背後にいるご主人様たちは、SDGsなどただの煙幕に過ぎないことは百も承知だ。そんな目標など達成できるわけがない。ではいったいその煙幕の裏には何が潜んでいるのだろうか?

 信じ難いほどの狂気に基づいた目論見が何十年以上もかけて着々と準備されてきたのだ。そしてこの目論見の中味を解きほぐすことは不可能ではないが非常に困難だ。その理由は、こんな世界を築こうとしている計画の裏側にいる連中は、強力な金融資産家たちや組織だからだ。 連中は良心の呵責も、 自責の念も、普通の人間なら持っているであろう感情も持ち合わせていない。

 この恐ろしい計画のもと、影から新世界「構築」を進めているのは何者なのだろうか?それは世界経済フォーラム(WEF)が、創設者であり、永久代表取締役でもあるクラウス・シュワブのもとで、進めているのだろうか?

 世界経済フォーラムは非政府組織(NGO)として1971年1月に設立された。本部はスイスのジュネーブ市近郊の緑豊かなコロニー市に置かれている。今日まで世界経済フォーラムは非政府組織(NGO)のままだ。しかし、この世界経済フォーラムは世界で最も強力で裕福な非政府組織(NGO)であり、関連企業や産業界や巨大金融会社を通じて何十億ドルもの金を動かし、利用している。 世界経済フォーラムは「欧州経営フォーラム」を始点とし 、1987年に欧州委員会の協力を得て、今の世界経済フォーラムへと変化したものだ。世界経済フォーラムは、前身のフォーラムよりも、より広範囲、すなわち世界規模に影響力を持ち、より多額の金を動かし、より強力な力を持ち、より支配力のある機関となった。

 世界経済フォーラムが掲げる目的は以下の通りだ。 「世界の計画や意思決定に直接影響を与え、官民の提携関係を促進していく」。こちらの記事を参照。

 クラウス・シュワブは、数十億ドルをはるかに超える資産を持つ心が病んだ超富裕層にとっては、理想的な指導者だ。精神的に異常のあるこの超富裕層は、可能であれば全宇宙を完全に掌握したいと考えている。イーロン・マスクが自身のスペース・シャトル計画について語っている話を聞くだけで、連中が宇宙のかなりの部分を掌握したがっていることがわかるだろう。さらに連中が欲しているのは、完全にデジタル化されたひとつの政府のもとの世界秩序(One World Order: OWO)だ。ひとつの専制政権のもとの世界秩序(One World Tyranny :OWT)と言った方がより正確だろう。 あるいはシュワブの言葉を借りれば「第4次産業革命」、別名「グレート・リセット」だ。 これこそクラウス・シュワブが抱く最大の夢想だ。そして明らかにこの夢想はシュワブと同じような考えを持つ世界中の多くの人々からも支持されている。

 この目論見の実行者として、シュワブは適任者だ。シュワブの持つ影響力は、世界中の「野心家たち」や、政治家たちや、大物起業家たちや、民間企業の運営者たちや芸術家たち(とにかく著名人で名声のある人なら誰でも)の間に広がっている。

 今や有名な(悪名高いという人もいるが)、スイスのダボスでの年次総会には、世界の支配者層の人々やその関係者たちが一堂に会し、シュワブとその取り巻き連中が、自分たちにとって都合のいいものになるよう世界を作り替えようとしている。もちろん、シュワブはこれ以外の行事や個人的な繋がりを通しても、交友関係にある権力者たちや組織とつながり、 世界の方向性を私的に決定しようとしている。

 この話を地球外宇宙人に伝えれば、その宇宙人はそんな話を本当だとは思わないだろう。79億程の人々からなる地球を自分たちの思い通りに作り替えようとしているこの「地球人たち」こそ、選挙で選ばれたわけではない「宇宙人」なのだから。

 考えてみてほしい。シュワブや世界経済フォーラムを選挙で選出した人は誰もいないし、シュワブを取り巻く裕福な企業界や金融界の 取り巻き連中についても、選出した覚えはない。それなのに連中は「自分たちが母なる地球(いや恐らくは全宇宙)の所有者だ」と考えているかのように振る舞っている。この件は一考に値する問題だ。

 以下はディビッド・ロックフェラーの言葉だ。



「世界は今、より洗練され、世界政府樹立にむかう準備ができつつある。この世界政府は知的に優れた人々と世界を股に掛ける銀行員たちによる超国家権力となり、これまで取られてきた各国家の自発的な決定の元での国家運営よりも望ましい体制となるだろう」 (アスペン・タイムズ紙2015年8月15日の記事からの引用。強調は筆者)

 我々民衆は選挙で選ばれたわけではない個人や組織が勝手に押し付けたこんな体制を受け入れはしない。シュワブも、世界経済フォーラムも、G7も、G20も、NATOも、だ。連中が我々と、我々の子どもたちの未来まで勝手に決めることは許さない。

 民衆よ。目を覚ませ!

コロナ禍から始められたグレート・リセット 

 シュワブによると、コロナ禍から始まったグレイト・リセットは、世界の支配者層が支持しているという。しかし、世界の民衆は全く支持してはいない 。繰り返すが、シュワブによるとコロナ禍こそ世界の再構築のまたとない好機である。選挙で選ばれたわけでもないのに、シュワブや取り巻き連中は人類79億がこれから過ごさないといけない未来を勝手に決めているのだ。

 シュワブは世界の人々が世界の再構築を望んでいるかどうか問うたことはあるだろうか?その世界はシュワブの掲げる新自由主義のもとでの専制政治であり、民衆を隷属化するという敵意のある考えに支えられた世界だというのに。 ダメだ。そんな世界は全く許容できない。自身の権力を拡大することにしか興味のない奴らは、我々民衆のことなどこれっぽっちも気にかけてはいない。

 我々民衆はこんなことは受け入れはしない。我々民衆は、勝利する。

グレート・リセットとプーチンとシュワブ間の繋がり 

 世界経済フォーラムとその仲間たちは、もし平和に関心を持てばの話だが、自身のもつ影響力を駆使し、時には誇示すれば、今のウクライナでの悲惨な戦況を止めることができるだろう。悲惨な殺し合いを止めることができるだろう。しかし世界経済フォーラムは沈黙を保ったままで、やったことといえばプーチンと世界経済フォーラムとの繋がりを示唆するような記載を世界経済フォーラムのホームページから削除しただけだ。これはいったいどういうことなのだろう?

 プーチン大統領は2021年のオンラインでの「ダボス会議」で基調演説を行い、クラウス・シュワブとの30年間の友好関係を誇示した。さらにプーチンはクラウス・シュワブ主催の「世界青年指導者(YGL)」教室にも参加していた。

 しかし、プーチンとシュワブの繋がりを示すような言及や写真がネット上から消去されたのだ。プーチンの名前が世界経済フォーラムのホームページ上から消えた。 世界経済フォーラム(クラウス・シュワブと言ってもいいが)は、プーチンと繋がりがあると世界の人々に思われたくないようだ。明らかなことは、一夜にしてこれまでの関係が全くなくなってしまうことなど普通はないということだ。世界のほとんどの人々に両者の関係を明らかにする証拠が見えなくなったというだけの話だ。

 しかし以下の複数の写真を見れば両者の関係は一目瞭然だ。



  以下はクラウス・シュワブが2021年1月に開催されたオンライン上での世界経済フォーラムの会議で、ウラジミール・プーチンを紹介している動画だ。彼はプーチン大統領を招き、特別演説をするよう依頼していた。

 ウラジーミルは演説の冒頭で、友人であるクラウス・シュワブについて触れ、1992年から旧知の中である(つまり30年間)と語った。

以下の動画全編(43分)をご覧あれ。



 プーチン大統領はシュワブや世界経済フォーラム、さらには西側を支配している支配者層とは袂を分かったのだろうか?つまり、ロシアや世界を思い通りに動かそうとしている連中だ。 ありえることだが今のところはそうとは言いきれない。線として繋がってはいないが怪しい点は今でもたくさん見受けられる。例えば、ロシア中央銀行総裁のエリビア・ナビウリア女史の件だ。

 プーチン氏は西側や欧州と良好な関係を築けるようできる努力は惜しまずにきた。しかしなんの効果も得られなかった。プーチンが頑張れば頑張るほど、拒絶が増すだけだった。プーチンが西側に向けて根気強く提案をし、外交努力を重ねてきたことは第三者の目からすれば、愚かな媚へつらいにしか見えなかった。

 最新の出来事からプーチンの明らかな失態例を上げれば、 ロシア中央銀行を取り仕切ってきた人物を権力の座に留めたことだ。明らかに西側の第5列[訳注:敵対勢力の内部に紛れ込んで諜報などの活動を行う部隊や人]に属するナビウリア女史のことだ。 彼女のせいで、ロシアは5兆ドル規模の資産を失ったようだ。「(資産を)閉鎖した」という言い方は、「盗んだ」ことを遠回しに伝える言い方なのだから。そして「盗んだ」のは、G7加盟諸国だ。



 このようなことは計画されていた茶番劇なのか?それとも本当に起こったことなのだろうか?

 ナビウリナ女史は、2012年5月から2013年6月の間も、プーチン大統領補佐官をつとめていたが、その前には2007年9月から2012年5月まで経済開発貿易相も歴任している。

 2019年に、ナビウリナ女史はフォーブ誌が選ぶ世界で最も強力な女性ランキングで53位に選ばれている。

 つい最近になってやっと、経済の天才セルゲイ・グラジエル氏がクレムリン政権に戻り、プーチン氏の首席補佐官を務めている。復帰したグラジエルの助言により繰り出された最初の妙手のひとつをプーチンは実現させた。それはロシアが西側に向けて販売する炭化水素の支払いをロシア・ルーブル立てにすると決定したことだ。

 その結果、ルーブルの価値は一夜にして戦争が始まって以来の最高値を記録した。ルーブルはさらに高値が付きそうだ。というのも西側は喉から手が出るほどエネルギーを欲しがっていて、その主な供給源はロシアだからだ。

 私たちは石油通貨ルーブルをすぐに持つようになるのだろうか。そのことで、ロシアはルーブルを無制限に印刷することになるだろう。1973年に米ドルがOPECの炭化水素取引通貨となったとき、米国財務省が行ったのと同じ手口だ。

 ロシアが炭化水素の支払いをルーブル立てにすることは、世界経済フォーラムが目論んでいる「専制的世界政府(OWT)」のもとでの世界規模のデジタルにより支配される世界(その世界では最終的に単一のデジタル貨幣が使われることになるだろう)と折り合いがつく体制なのだろうか?その世界を支配するのは、他でもない西側の金融財閥たちであるのに。


上の画像はArmstrong Economicsから

 さてここでご登場いただくのはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だ。ゼレンスキーもシュワブは、全く知らないわけではない。彼はクラウス・シュワブとはなれ合いの関係にあるようだ。世界経済フォーラムは、元コメディアンのゼレンスキーをウクライナのトップに据える際に何かしらの役割を果たしたのだろうか?その答は時が経てば分かるだろう。

 現時点で、シュワブと世界経済フォーラムは対プーチンと同様にゼレンスキーに対しても沈黙を保っているようだ。平和協定に向けた休戦の推奨さえしていない。なぜしないのかと思っている人もいるだろう。「世界経済フォーラムがもつ影響力により戦争や、殺し合う狂気をやめさせ、ロシアとウクライナ両側を交渉のテーブルにつかせ、平和を促進できるのに」と期待している人もいるだろう。

 罪のない人々を何万人も殺害され、いくつもの都市や人々の家屋が破壊されるという意味のない行為が横行しているのに、なぜシュワブは戦争を止めようとする素振りさえ見せないのか?シュワブは何を企んでいるのか? 世界経済フォーラムの望みは戦争なのか、平和なのかを見極められずモヤモヤしている人もいるだろう。というのも、世界経済フォーラムはこの暴力的な戦争をしている両者の指導者と親しい関係にあるのに、ダンマリを決め込んでいるからだ。なぜ両者を呼び出して平和協定の締結に向けた話し合いを促さないのか?

 この戦争の前に起こっていたコロナ禍と同様、この戦争もクラウス・シュワブが夢想しているグレート・リセット実現に向けた計画の一部なのだろうか?

 コロナ禍がグレート・リセット計画の一部であったし、今もそうであることは推察できる事実だ。実際クラウス・シュワブは、2020年に著したグレート・リセットに関して書いた著書が出版された時に嬉々としてこう語っていたからだ。

 「(コロナの)世界的流行のおかげで、狭い窓が開く千載一遇の好機がうまれたのです。世界のあり方を考え直し、再認識し、再構築する絶好の機会になるのです」

 急いで開発されたワクチンの中に何が混入されているのか、シュワブは知っているのだろうか?その混入物が優生思想者たちの目論見の実現に貢献し、時間が経つごとに何も聞かされていなかった何百万もの人々の命を奪い、最終的には何千万もの人々を殺害する可能性のある代物であることを知っているのだろうか?

 複数の報道によると、ワクチン、特にファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンの中には、毒性や致死性のある物質が混入されていたとのことだ。具体的には、酸化グラフェンや、HIVウイルスや 「添加物(モデルナ社が使った言葉だ)」などだ。これらの物質は、女性を不妊症にし、流産させる原因になる。こちらの記事を参照。ただしこの件に関してはまだ証明された訳ではなく、更なる調査が待たれている。

ウクライナ危機 

 ウクライナは西側の悪の巣窟だ。子どもや女性の人身売買や、麻薬売買、人体器官の売買が横行している。 ウクライナは途方もない額の資金洗浄の場となっている。さらにウクライナは米国政府の高官やその息子たちが怪しい事業を展開している場だ。その中には、バイデン大統領の息子、ハンター・バイデンもいる。

 ハンター以外にも米国国会議員の子息たちが勝手放題を行っている。ウクライナという地は、マフィアと(言うまでもないが)ホワイト・カラーの管理職の罪人たちが先頭を切って悪行を尽くしても許される沼地だからだ。普通の文明国家なら罰せられることもまかり通すことができる国なのだ。こちらの短い記事を参照。その中には米国の現地記者ローラ・ローガン記者による4分間の動画もある。ローラはこのような現状の解明のため、取材努力を惜しんでいない。

 いま戦争が行われている地、ウクライナとは西側に起源を持つ国なのだが、なぜか西側諸国のどの国の指導者も真剣に介入して戦争を止めようとはしていない。NATOである必要はない。欧州のどの友好国でもいいのだ。連帯の意識を持ってロシアに進撃を止め、和平合意に至るよう求めたり、ゼレンスキーに、少なくとも休戦を成し遂げるためにプーチンが出している条件を飲むよう伝えるなどして、和平合意に向けた交渉を真剣に設定しようという国は出てこないのだろうか?

 これらの欧州諸国の指導者の誰でも仲介に入れるはずだ。それなのにおかしなことに、そうしようとする指導者は出てきていない。みな「悪者」に制裁を課すことのほうを好んでいる。こんな制裁をしても一番苦しむのは欧州自身であることは分かっているはずなのに。

 その代わり聞こえてくる話は、近々NATOがロシアを攻撃するのではという噂話だ。これがただの噂話のままであることを祈ろう。

 西側諸国が平和の回復に消極的で、自分たちのところに戻ってくるブーメランのような制裁を課すという自殺行為を行っているのは、もっと大きな企みを実現するための自己犠牲なのだろうか?世界経済フォーラムと繋がって、グレート・リセットに踏み出す大きな一歩を進めているととればいいのだろうか?

 繰り返すが、婦女子を含むどれだけの市民が亡くなろうが、奴らグローバリストたちは人命など気にもかけていないのだ。グローバリストたちはむき出しの権力欲で、専制政治のもとでの世界政府(OWT)樹立に躍起になっている。

 戦争で数千人が亡くなっていることに加えて戦争のせいで既に2~3百万の難民たちが西欧に流れ込んでいて、表面上は比較的歓迎されて受け入れられている。ウクライナからの難民たちが歓迎されているという事実は、西側の本性を直接示す指標になっている。アフリカやアフガニスタンなどの国々から、戦争や経済的理由や政治的な理由で難民となった有色人種の人々に対してこれまで欧州が取ってきた態度と比べればよく分かる。 これら有色人種の子どもたちや女性たちや男性たちは欧州では拒絶され、差別されることが常だった。これらの人々のほとんどは極度に厳しい状況や困窮状況から逃れてきた人々だというのに。

 この件は西側諸国の本性を伝える伏線だと言えないだろうか?西側諸国がこんな無慈悲な行為や、あからさまな差別を行うことができるということから考えれば、西側諸国が悪魔と共謀することも厭わないと考えるのは論理的だ。 世界経済フォーラムとその支援者たちと結託して、 グレート・リセットや世界政府(OWT)の実現に邁進していると考えてもおかしくはない。

 米国は、この戦争に対する準備や、戦闘が開始されて以来、武器販売を8倍に増加させている。 そのほとんどがNATO加盟国への輸出であり、その武器はその後ウクライナに送られ、訓練を受けた兵たちや軍人ではない人々に渡されている。このような統制下に置かれていない武器が、ウクライナに入ったあとに闇市場に回されているのは確実だ。マフィアのような組織に渡ったり、再輸出されたりしているだろう。

 米国経済は復興しつつある。

 「戦争は新しい成長を来たすための条件なのだ。つまり既存の政治体制を維持させるためだけではなく、何よりまさに経済を維持させるための条件なのだ」。 (ドイツの社会学及び政治学の研究者クラウディア・フォン・ウェルホフ(Claudia von Werlhof)のことば)。 米国経済は5割以上を軍産複合体に依存している。その中にはそれ以外の戦争関連産業やサービス業も含まれる。

 戦争や紛争はこの先の専制政治のもとでの新世界(NWT)においても必要な要素になるだろう。その世界が新自由主義的金融体制や経済構造を維持するのであればだが。ウクライナはこれから更に起こることのほんの前触れにすぎない。世界経済の低迷(仕組まれた低迷)が、全デジタル貨幣制度実現の推進力となっている。

  戦争は金になる。殺し合いも大きな利益を産む。大量破壊兵器を使った大量殺戮はもっと儲かる。西側から愛されたウクライナ国民たちが何万人亡くなろうが、関係ない。なんという偽善か!

 人殺しはお金になるのだ。

 そして全能の力を誇る世界経済フォーラムは、平和に向けて、殺し合いを止める干渉に乗り出そうとしないのか?世界の再構築を目指し、世界を「より良い」場所にしたいと願い、その振りをしている世界経済フォーラムが、戦争を止める舵取りをしないのだろうか?

 さて、以下のビックリさせられるニュースをどう取ればいいだろうか?ブラック・ロック社のラリー・フィンク会長は最近株主宛に出した書簡にこう記していたのだ。「ロシアによるウクライナ侵攻は、ここ30年間我々が体験してきたグローバリゼーションに終止符を打つものです」と。本当なのか、嘘なのか。 こちらのRTの記事を参照。

 ラリー・フィンク(ブラック・ロック社と言ってもいいが)は、クラウス・シュワブや世界経済フォーラムの密接な支持者のひとりだ。脱グローバリゼーションの戦争は、グレート・リセット実現に向けてどんな意味合いを持つのだろう?

ウクライナ紛争:「核戦争の民営化」に向かう戦争なのか?  

  2020年3月2日にチョスドフキー教授はこう記している。

 「2003年8月6日のヒロシマの日、ネブラスカのオファット空軍基地にある戦略司令部の密室で秘密の会議が開かれた」

 「核産業界や軍産複合体の重役たちが出席していた。国防省と契約を結んでいるこれらの団体がヒロシマの悲劇を偲ぶために寄り集まったわけではない。この密会の目的は、新世代核兵器の開発に向けた準備をするためだった。より「小型」で、「安全」で、「使いやすい」核兵器の開発についてだ。そしてこれらの核兵器を21世紀に「実際に起こる核戦争」で使用しようと考えていたのだ」。 (ミシェル・チョスドフスキー、2011年8月)

 この密会がきっかけとなり、「核戦争の民営化」の準備が開始され、オバマは1兆2000億ドルの核兵器計画を主導し、現在(バイデン政権下で)2030年までに2兆ドルにまで上乗せされることになっている。」(前掲書

 となれば、いま行われているウクライナ紛争がすぐに終わるということはないということなのか?核戦争に変わる可能性もあるのか?

 チョスドフスキーはさらにこう書いている。

 「核戦争の語られない真実は、相互確証破壊(MAD)であり、人類の滅亡であることは、周知の事実だ」

 ロシア・ウクライナ戦争の民営化は、グレート・リセット、言い換えれば国連のアジェンダ2030に拍車をかける出来事であることは間違いない。そうであるなら、ラリー・フィンクの「グローバリゼーションの終焉」という予見とは食い違う。世界経済フォーラムはこの戦争に無言のうちに加担しているのだろうか。「大目に見る」という姿勢で。 さらにロシアの動きは世界経済フォーラムに同調したものなのだろうか。というのもロシアは世界経済フォーラムにとって貴重な提携先だからだ。確かにそのようにとることは可能だ。しかしそんなロシアの動きは到底正当化できるものではない。

 プーチン大統領とクラウス・シュワブや世界経済フォーラムとの密接な関係をさらに示しているのは、ロシアがロシア国内に「第4次産業革命センター」を設置したことだ。このセンターは、モスクワの「ANO(Autonomous Non-profit Organization自発的非営利団体)デジタル経済」という団体が運営する。ANOとは官民が提携する仕組みであり、デジタル経済を促進しようとするもので、専門家や実業界の参入を調整する組織だ。 「このセンターの任務は世界規模の繋がりを通して、危険性は最低限に抑えながら、AI(人工知能)やあらゆるモノのインターネット化などの技術により得られる利益を最大限にすることです」

2021年10月13日に世界経済フォーラムは「ロシアが第四次産業革命センターのネットワークにと繋がった」という声明の中でこう記載している。
 
(以下は抜粋)
 2021年10月13日、ロシアのモスクワからロシアは第四次産業革命を軌道に乗せる上で重要な役割を果たすことになるでしょう。 今日ロシア連邦の指導者たちと世界経済フォーラムは、ロシアに第四次産業革命センターを設置することを発表しました。

 世界経済フォーラムのグローバルネットワークの一部である新センターは、主要な企業、政策立案者、市民社会のメンバーを集め、技術統治への革新的な手法を共同設計し、試験的に実施します。

 ここ5年間で、世界経済フォーラムの第四次産業革命センターは15カ国に広がっています。このプロジェクト・チームは民と官を相互に行き来し新しい政策を立案しようとしています。例えば、世界統一領空内で、ドローンや商業用航空機が飛行できるような政策や、人工知能を政府が調達する政策や、世界の供給網における暗号貨幣の存在価値を促進させる政策などです。

 モスクワに置かれるこのセンターは「ANOデジタル経済」という団体が運営することになります。そしてこのセンターの任務は、世界規模の繋がりを通して、危険性は最低限に抑えながら、AI(人工知能)やあらゆるモノのインターネット化などの技術により得られる利益を最大限にすることです。
(抜粋はここまで)
 


 プーチン大統領とクラウス・シュワブや世界経済フォーラムとの間のこれまでの親密な関係を考えれば、ひとつの疑問が浮かびあがる。それは、「この戦争は世界経済フォーラムが目論んでいる世界統一政府である専制政治の下での世界支配をさらに進める一手なのだろうか?」という疑問だ。あるいは、プーチン氏はシュワブや世界経済フォーラムと手を切り、西側に対して決定的な離別を宣言したのだろうか?

 後者であるとすれば、シュワブや取り巻き連中が計画を立て、夢想してきたグレート・リセットは終結することになる。そして多極化した社会のもとでの世界に向かうことになる。その世界は広大なユーラシア大陸を軸とし、中国とロシアの先導により構築されることになるだろう。ただしその世界とは、各国の自治や主権が維持されている世界だ。

 ここ数週間、中国が世界に向けて繰り返し訴えているのは、戦争は解決にはならず、平和に向けた話し合いが持たれるべきであるということだ。さらに、新しい世界構造は多極化(これはクラウス・シュワブが夢見ているような単極化した世界とは真逆だ)のもとにあるべきで、各国の主権は尊重されるべきということだ。

 最終結論を下すには早すぎるかもしれない。しかし、次の事実を念頭においておくことが早すぎるということは決してない。選挙で選ばれたわけではない世界経済フォーラムと、それに関連する得体のしれない支配者たちとともに、我々民衆は極悪な闇の狂信的集団に隷属化されようとしているという事実だ。私たちはそれを許すわけにはいかない。

 民衆よ!平和のために立ち上がり、平和を求めていこう。

 我々民衆は世界経済フォーラムのグレート・リセットは拒絶する。我々民衆は国連のアジェンダ2030も拒絶する。

 我々民衆は、全てがデジタル化され、完全に統制下に置かれ、監視下に置かれた世界などは拒絶する。 

 我々民衆は、専制政治の下での世界政府など絶対に受け入れない。

 各国の主権が尊重される世界に戻って、真の民主主義を追求しよう。民衆が自分たちの暮らしや将来を自分たちで決めていく民主主義を。

 最後に言いたい。連中のことは許そう。自分たちが何をやっているのか分かっていないのだから。
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生物兵器にされる渡り鳥

生物兵器にされる渡り鳥
<記事原文 寺島先生推薦>
Migratory Birds of Mass Destruction

M. K.バドラクマール(M. K. Bhadrakumar)

グローバル・リサーチ 
2022年4月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月2日



渡り鳥として有名なアホウドリは、恋の鳥でもある。一夫一婦制で知られ、一人の相手と長期に渡る絆を結び、それが途切れることはほとんどない。交尾したペアは、片方の鳥が死ぬまで決して別れることはない。 (出典:Indian Punchline) 

 国連安全保障理事会は4月6日、ウクライナなどにおける生物学的活動について、「生物学的安全保障に関するアリア式会合」という名称で臨時理事会を開催した。予想通り、米国と英国の代表はこの場に姿を見せず、西側メディアもその模様をテレビでは報道しなかった。しかし、だからといって、この会議の意義が損なわれることはない。

 2時間以上に及んだ安保理でのハイライトは、ロシア軍の放射線・化学・生物防衛部隊のチーフであるイーゴリ・キリロフ将軍が、ワシントンが各国に生物研究所を作り、それらを統一システムに接続していることを明らかにしたことだった。

 キリロフ将軍は次のように述べた。米国は2005年以来、軍事的な生物学プログラムに50億ドル以上を費やしており、ロシアと中国に隣接する地域だけでも、この期間に約60の施設が近代化されている。ウクライナの研究所ネットワークは、14の人口密集地にある30の施設で、生物学的状況を研究・管理するためのものである。

 ウクライナの生物研究所にあった機密性の高い物質が、ロシアの特殊作戦が始まる直前の2月上旬に米国に輸出され、残りはロシアの手に渡らないように廃棄するよう命じられた。しかし、この隠蔽工作は部分的に成功したに過ぎない。実際は、ロシアは極めて有罪性の高い証拠を所有している。

 ペンタゴンの生物的軍事活動については、ロシアは以前にも多くの文書を公開している。それらの文書を見ると、ペンタゴンが敵対する国に生物研究所を設置し、その国に対して標的型のウイルス兵器を開発するという世界的なプロジェクトを目指していることが分かる。

 4月6日の安保理会議の議事録は公有財産(public domain)として公開されており、アクセス可能である。以下のビデオ参照。



 ロシアは具体的な疑惑を示し、次のように指摘した。

 ・ウクライナの生物研究所に対するペンタゴンの資金提供。
 ・生物研究所の所在地(ウクライナだけでなく、世界36カ国にある)。
 ・研究作業が行われている病気や伝染病、それを放出する手段、実験が行われている国々(これらの国の政府が知らない場合でも)、そしてもちろん、
 ・コロナウイルス(およびこのウイルスを媒介するコウモリ)に関連する実験も。

 しかし、米国はこれまで、このような証拠となるものの管理と検証を全面的に拒否し、検証機構の設置を要求する声も封じてきた。生物兵器禁止条約(BWC)や国連など、関連国からの説明を公正かつ公平に聞くための適切な枠組みはあるのだが、米国がそのような国際的な検証プロセスを許可することはありえないだろう。なぜなら、それは自国が人道に対する罪を犯していることを暴露される可能性があるからだ。

 ウクライナのロシア軍が偶然に発見した驚くべき「発見」は、ペンタゴンが資金提供する研究所が番号のついた鳥を使用していたことである。これはほとんどSFの世界であり、アルフレッド・ヒッチコック卿なら、欺瞞と無邪気が混ざり合い、自然に対する人間の残酷さが耐えられないほどグロテスクになるような大作映画を作ることができただろう。このプロジェクトは、次のような仕組みになっている。 (訳註:アルフレッド・ヒッチコックは米国の映画監督。革新的な映画技法や独自の作風を使用し、「サスペンスの巨匠」「スリラーの神様」と呼ばれた。)


 まず最初に、ペンタゴンは環境問題の専門家や動物学者と協力して、鳥の移動に関する科学的データを入手する。四季を通じて鳥を観察して、毎年、国から国へ、さらには大陸から大陸へと移動する経路を知るのである。

 このデータをもとに、渡り鳥の群れを捕まえてデジタル化する。鳥にコンピュータで制御するためのチップを搭載した細菌カプセルを付けるのである。そして、その鳥たちを米国の情報機関が悪意を持つ対象国に向かう渡り鳥の群れの中に放つのだ。

 もちろん、これらの渡り鳥は長距離を移動する。例えば、ワタリ・アホウドリは、南太平洋を東へ少なくとも8500キロ、南米沿岸まで移動することが知られており、ハジロ・アホウドリはインド洋を西へ、南アフリカ沿岸まで移動する。

 ペンタゴンの生物研究所でデジタル化された鳥たちの長い飛行の間、その動きは人工衛星によって逐次に監視され、正確な位置が割り出される。バイデン政権(あるいはCIA)が、例えばロシアや中国(あるいはインド)に危害を加える必要がある場合、鳥がその国の上空を飛んでいるときにチップを破壊するというアイデアなのだ。

 簡単に言えば、伝染病を運ぶ鳥を殺せばいいのだ。悲しいことに、私は米国の作家ハーパー・リーの小説『モッキングバードを殺すのは(To Kill a Mocking Bird)』を思い出してしまうのだ。(訳註:この題名は、小説の主人公ジーンが隣人のモーディ嬢に「青カケスは撃ってもいいけど、マネシツグミ(モッキングバードの和名)は殺してはいけないよ、彼らは私達を歌で楽しませる以外何もしないのだから」と言われた言葉に由来する。邦題は『アラバマ物語』。)

 現実の話に戻ると、「デジタル化」された鳥が殺され、その鳥が持つ病原菌のカプセルが放出されると、その病気は「X」または「Y」の国で蔓延する。戦争もクーデターもカラー革命も必要なく、敵国に危害を加える費用対効果の高い方法となるのである。

 ロシアは、ペンタゴンの生物研究所ではデジタル化された渡り鳥が実際に所有されているというショッキングな主張をしている。

 渡り鳥は他国の青空を自由に飛び交うため、国際法では渡り鳥にナンバリングすることは禁じられている。その渡り鳥に病原菌を与えれば、大量破壊兵器になるのだ。これはまさに人間の知恵だ! しかし米国は、国際法からの完全な免責を享受していることになる。

 要するに、今世紀に大量破壊兵器の鳥によって、これまで全人類がどこで感染したかを知っているのは、米国の諜報機関、そしてバイデン大統領(もし彼が覚えていられるならばの話だが)だけなのである。アフリカを荒廃させたエボラは実験台であり、来るべきものの前兆であったのだろうか? (訳註:バイデン米大統領は認知症にかかっており、病状がしだいに悪化して職務の履行に障害が出ているとも言われている。)

 米国の資金援助による研究所から発生したことが知られているCovid-19はどうだろうか? 米国が中国人を殺すために渡り鳥を使った可能性は非常に高い。明々白々なことは、世界的な衰退を逆転させようと必死になっている米国は、多極化に向かって容赦なく動いている世界秩序の中で、自国の覇権を回復するためにあらゆる手段を講じているということだ。
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ペンタゴンの生物兵器は、ファシスト日本とナチスドイツの戦争犯罪を土台にしている

ペンタゴンの生物兵器は、ファシスト日本とナチスドイツの戦争犯罪を土台にしている

<記事原文 寺島先生推薦>
Pentagon’s Biological Warfare Built on War Crimes of Fascist Japan and Nazi Germany — Strategic Culture (strategic-culture.org)


フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)
2022年4月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月1日

 フォート・デトリックがファシスト日本やナチスドイツと共謀して生物学的大量破壊兵器を開発していたことは、遠い過去の不気味な遺物ではない。


 ロシアと中国は、モスクワが2月に軍事介入を開始するまで、国防総省がウクライナで運営していた何十もの研究所について、独立した調査を行うよう国連安全保障理事会に働きかけている。

 ロシアは、国防総省が生物学的大量破壊兵器の開発に従事していたことを示す機密文書を公表している。ワシントンはロシアや中国の懸念に対して「偽情報」と反論し、研究所は病気に関する生物医学的な防衛研究を行っていたとしている。

 では、研究所からのサンプルが無実の生物医学研究のためのものであれば、なぜ米国務省のビクトリア・ヌーランドは、ロシア軍がそれを入手する可能性があると懸念したのだろうか? ロシア軍がウクライナに侵攻したとき、なぜ研究所はウクライナ政府からサンプルを直ちに廃棄するように命じられたのだろうか?

 生物兵器に関する米国の著名な専門家でさえ、ロシアや中国の立場に同調して、ペンタゴンのウクライナへの関与は、少なくとも公平な調査に値する不吉な目的を暗示していると言っている。

 さらに、フォート・デトリックの職員や組織が、近年ウクライナの施設に直接関与していることも懸念材料だ。フォート・デトリックの第二次世界大戦中の起源と、米国の生物兵器開発のために日本やナチスの科学者と効果的に協力したことを考えれば、その邪悪な歴史的背景が現在のロシアと中国の懸念を下支えしていることがわかる。

 第二次世界大戦後、日本とドイツの戦犯たちは、米国の政治的介入によって絞首台から救われた。生物・化学兵器で覇権を争う軍拡競争が予想される中、米国がソ連に対して優位に立つために、免責の取引が行われたのである。

 米国は、1945年8月に広島と長崎に投下された2つの原爆によって、核兵器の新しい力を実証し、すでに核兵器に精通していた。ソビエトは1949年にこの兵器を獲得し、それによって核の均衡が確立されることになる。

 しかし、大量破壊兵器の他の分野では、ワシントンは自分たちの優位性をそれほど確信していなかった。だから、第二次世界大戦末期、アメリカは日本やナチス・ドイツのファシズムの専門知識を生物・化学兵器に利用しようとした。

 医学者の石井四郎とクルト・ブロームは、それぞれ戦時中の日本とドイツによる生物・化学兵器研究の司令官だった。石井は、日本が占領した中国の満州にあった悪名高い731部隊の指揮官であり、ブロムは、アウシュビッツやナチスの死の収容所で、生物兵器や毒ガスの実験に携わった科学者のリーダーである。

 日本とナチス・ドイツは、炭疽菌、腸チフス、コレラ、天然痘、ペスト、ボツリヌス菌の拡散を含む新しい生物兵器の実験データを共有するために集中的に協力していた。

 石井の731部隊は、戦争中、湖南省と浙江省の中国の都市に飛行機から病原体を投下し、生物兵器の使用により最大50万人の死者を出したと推定される。この部隊はまた、病気やワクチンの疫学を研究するために、中国やロシアの捕虜に対して糖尿病の強制実験も行っていた。収容者は病原体に感染させられ、恐ろしい苦痛の死を強いられた。

 石井四郎とその犯罪組織は、ソ連の切実な要求にもかかわらず、戦後も裁判にかけられることはなかった。その代わり、日本本土を占領したアメリカは、生物・化学兵器実験への独占的なアクセスと引き換えに、彼と彼の医師団に訴追を免除することを許可した。国防総省は、メリーランド州フォート・デトリックから専門家を派遣し、日本のデータの宝庫を探らせた。

 連合国最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥は、石井や他の戦時中の日本人専門家が訴追されないように、自ら介入した。石井は1959年に東京で67歳の若さで亡くなり、自分が指揮した大量殺戮の罪を裁かれることはなかった。

 一方、ドイツ国防軍の生物化学戦の責任者であったクルト・ブロームは、ニュルンベルク医師団裁判で裁判にかけられたが、主にアメリカの介入によって1947年に無罪となった。

 ただ、ブロムは、ペーパークリップ作戦の一環としてアメリカに採用された1,000人以上のナチスの科学者や技術者の1人に過ぎない。彼らはその後、アメリカのミサイル技術やNASAの宇宙開発計画に重要な貢献をすることになる。

 国防総省の生物兵器センターであるフォート・デトリックはブロムの炭疽菌やその他の病原体の兵器化に関する専門知識を利用したのである。タブンやサリンなどの神経ガスの知識はCIAのMK-Ultraプログラムでも政敵を暗殺するために利用された。ブロムは、CIAの生物・化学兵器部門を率いるシドニー・ゴットリーブと密接に働いていた。ゴットリーブはCIAの「毒殺王」として知られ、キューバの指導者フィデル・カストロの暗殺に何度も個人的に関与している。皮肉なことに、ハンガリー移民のユダヤ人の息子であるCIAの彼は、アウシュビッツで実験を行っていたナチスの科学者と一緒に働くことになった。

 このような背景を考えると、戦時中の米英ソの同盟関係が、あっという間に冷戦状態に陥ったのも無理はない。アメリカ(とイギリス)は、ファシストの戦争犯罪人が裁かれないように手助けをしていたのだ。そればかりか、アメリカは核兵器による大量破壊兵器、それもソ連や共産中国を標的にした兵器を開発するために、最も邪悪な方法と技術を駆使していたのである。

 フォート・デトリックは、1969年に当時のリチャード・ニクソン大統領が「攻撃的」兵器開発の中止を命じるまで、国防総省の生物・化学兵器開発の中心地として機能しつづけた。それ以降、生物研究所は公式に「防衛的」研究と実験に従事することになった。表向きは、病原体の診断やワクチンなどの技術革新が含まれるが、兵器化は除外されている。

 米国は1975年の生物兵器禁止条約に調印している。1989年には生物兵器を違法とする国内法を制定している。この国内法の著者であるフランシス・ボイル教授は、以前の記事で戦略文化財団に、ペンタゴンのウクライナでの活動は生物兵器禁止条約と米国の国内法に違反しており、明らかに、ロシアと中国が説明責任を求める権利のある兵器プログラムを構成している、と述べている。

 米国は1997年の化学兵器禁止条約にも調印している。しかし、すべての備蓄を廃棄する義務を履行していないと考えられている。一方で、ロシアは2017年、国連の監視下で生物兵器を完全に廃棄している。

 中国メディアの報道によると、米国の法的義務にもかかわらず、30年前に終わったはずの冷戦の終結以来、国防総省は約30カ国で300以上の研究所の拡大を監督してきたという。これらの国の多くは、ロシアや中国と国境を接している。

 ウクライナにあるペンタゴン後援の研究所は、米国が「生物医学研究」という公式な名目で、国家の安全を脅かす秘密兵器プログラムを進めているというロシアと中国の懸念を新たにした。

 ウクライナ全土にある30の研究所の運営にフォート・デトリックの職員が関与していたことは、ロシアと中国の懸念を強調するものでしかない。ロシアが2月24日にウクライナへの軍事介入を開始したとき、これらの施設はウクライナ政府によって慌ただしく閉鎖された。モスクワはその後、研究所が生物医学的公衆衛生上の防御ではなく、生物兵器プログラムに従事していたことを示す内部文書を公表した

 フォート・デトリック研究所がファシスト日本やナチスドイツと共謀して、生物学的大量破壊兵器を開発していたことは、遠い過去の不気味な遺物ではない。このような兵器に最も苦しめられたロシアと中国にとって、過去は現在と極めて密接な関係がある。国防総省の生物学研究所がウクライナで行っていたこと、また他の場所で行っていることの責任を問う国際的な調査を要求する権利が両者にはある。フォート・デトリックの極悪非道な起源を考えると、アメリカには免責的な証拠を示す非常に大きな責任がある。そうしようとしないことは、米国による国際法の重大な違反と、ロシアと中国に対する受け入れがたい脅威の投影という疑いを強めるだけである。


フィニアン・カニンガム(Finian CUNNINGHAM):大手報道機関の元編集者、ライター。国際情勢について幅広く執筆し、記事は数ヶ国語で出版されている。
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ロシアと中国に深刻な脅威となっているのは、米国の大言壮語ではなく、ペンタゴンの生物兵器だ

<記事原文 寺島先生推薦>
Despite U.S. Bluff and Bluster, Pentagon’s Bioweapon Threat to Russia and China Is Serious - Islam Times
(米国の脅しとハッタリよりも、ペンタゴンの生物兵器がロシア・中国への深刻な脅威となっている。)

フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)

2022年4月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年5月1日



 イスラムタイムズ紙―私たちは、ウクライナに間違いなく存在する生物兵器プログラムから、ペンタゴン(米国国防総省)のロシアに対する脅威を考慮に入れなければならない。
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 ロシアのプーチン大統領は今週(訳註:2022年4月第4週)「我が国はウクライナに軍事介入する以外に「選択の余地」はなかった。それは、ドンバスのロシア語を話す人々に対する大量虐殺を止め、増大しつつあるウクライナ領土に起因するロシアへの国家安全保障上の脅威を無力化するためだった」と述べた。

 NATOの支援を受けたキエフ政権による8年間のドンバス地域への軍事攻撃(1万4000人の死者を出した)は、その証拠Aである。また、キエフ軍連隊の文書化されたナチスのイデオロギーとロシア人を殺すという明確な願望は証拠Bであり、ナチスとの提携にもかかわらずNATOがこの政権を訓練し武器化したことは証拠Cになる。

 そして4つめの証拠Dとして考えなくてはならないのは、ペンタゴンがウクライナに間違いなく存在する生物兵器計画によってロシアへ脅威を与えていることである。その脅威は中国にも及ぶ。なぜなら、ペンタゴンは中国の国境付近にも生物研究所を増設しているからである。

 ロシアが2月24日にウクライナへの介入を開始すると、キエフ政権は即座に、ペンタゴンが資金提供し管理する30箇所の研究所ネットワークに病原体標本の破壊を命じた。これらの研究所が生物兵器開発に従事していたことは、その後3月8日に米国務省のビクトリア・ヌーランド氏が上院外交委員会の公聴会で認めている。

 このヌーランド氏の告白は、ロシア側が公表した文書によって裏付けられている。この文書はロシアがウクライナで軍事行動をする中で入手したものである。

 これらの文書には、研究所建設に関与したペンタゴンや米国の民間企業に勤務していた複数のアメリカ人高官の名前が記されている。また、研究所の目的が炭疽菌やコロナウイルスのような病原体を使った生物兵器の開発だったことも同文書から明らかだった。

 ペンタゴンの国防脅威削減局(この名前にはオーウェル的な響きが聞こえる)のトップはジョアンナ・ウィントロールという名前で、彼女のウクライナでの仕事はキエフのアメリカ大使館と連携して行われていた。

訳註:ジョージ・オーウェルの小説『1984年』で描かれた国家には、半永久的に戦争を継続するための「平和省」、思想・良心の自由を統制する「真理省」などが登場する。ここではそれをふまえて「国防脅威削減局」という名前を揶揄している。

 歴史的に見ると、ペンタゴンは生物兵器施設の廃棄という名目で、ウクライナや他の旧・ソビエト共和国の研究所を買収してきた。しかし、実際に起こったことは、ペンタゴンは病原体プログラムを更新し、拡大したのだった。このことは、米国がかつての敵国の生物兵器技術と人材を利用してきた歴史と一致している。第二次世界大戦後、米国は日本とナチスの生物兵器プログラムをメリーランド州にある当時新設されたフォート・デトリック施設において再び始めている。

 ウクライナでロシア人が発見した文書の束は、ペンタゴンのプログラムが、ドローンからの空輸で病原体を兵器化する方法を検討していたことも示している。また、ウクライナからロシアへの鳥の移動を利用して致命的な病気をどのように拡散させるかも検討されていた。

 ロシアは、ウクライナにおけるペンタゴンの活動は数年前にドンバスで致死性の病気が発生したことと一致すると主張している。具体的には、2018年にロシア語圏で複数の標準的薬物治療に耐性を持つ結核が発生して死者が出ている。

 ロシアと中国はこれまで、ウクライナにおける生物兵器の話題を国連安保理で議論するように提案してきたが、すべて米国に拒否されてきた。米国は、ロシアと中国の懸念は「偽情報」であると断言している。4月6日にロシアと中国が求めた公聴会でも、米英は安保理会合にさえ出席しなかった。

 しかし、懸念を表明しているのは、モスクワと北京だけではない。フランシス・ボイル教授は生物兵器に関する世界的に有名な著作家であり、法律の専門家でもあるが、彼によれば、米国がウクライナで生物兵器プログラムの実施に関与したことは間違いなく、そのような活動は米国が生物兵器条約に直接違反することになる、という。

 ボイル氏は、ウクライナの研究所にフォート・デトリックの職員が関与し、国防総省が密接に連携していたことは、その研究が大量破壊兵器の製造のためだったことを示していると指摘する。

 「ペンタゴンはウクライナの生物兵器研究所に資金を提供し、フォート・デトリックはペンタゴンの付属機関である。ペンタゴンの右腕はペンタゴンの左腕が何をしているかを知っていたと思う」。『生物兵器とテロリズム(Biowarfare and Terrorism)』(2005)の著者でもあるボイル氏は語っている。

 昨年、2021年6月、フォート・デトリックは数名の軍事専門家をウクライナに派遣し、「実験室と実戦環境」においてウクライナ軍と共に「劇場内で能力を理解し互いに援助する」ための訓練を行ったと、ミリタリータイムズ紙は報じている。

 フォート・デトリックには冷戦初期から続く生物兵器開発の由緒ある悪しき歴史がある。炭疽菌のような「機能獲得型」病原体を何十年にもわたって秘密裡に研究してきた。さらに、病気の疫学を研究するために、何も知らないアメリカ国民を対象にした実験を行ってきたことまで知られている。

 中国は特に、メリーランド州フレデリックにあるアメリカの生物兵器センターについて、独立した検査官に開放し、その研究所の実態を調査すべきだと訴えている。中国は、2019年にアメリカで未知のインフルエンザに似た感染症が大量に発生した後、フォート・デトリックが一時的に閉鎖されたことを指摘している。これは、2019年末に中国の武漢市でCovid-19(新型コロナ)の発生が検出される数カ月前のことである。中国の疑惑に拍車をかけたのは、武漢での発生が、2019年10月に同市で開催された「世界軍人運動会」の後に起こったことだ。その祭典には米国からもチームが参加している。

訳註:第7回目は武漢で開催された。世界109カ国から一万人近い軍人アスリートが参集。米国からは約300人が参加した。

 Covid-19の世界的大流行を引き起こしたSARSコロナウイルスも、ウクライナの国防総省の研究所で実験が行われていたとみられている。

 ところが、米国は臆面もなく、武漢のウイルス研究所がコロナウイルスを流出させた可能性があるとして、中国に国際査察団への開放を要求している。一方で、中国はすでにWHOの2つの科学チームが武漢で発症状況を調査することを許可し、WHOは自然界で動物からヒトに感染が広がったと結論づけている。

 しかし、これとは対照的に、米国はロシアと中国から、ペンタゴンが支援している研究所がウクライナで何をしていたかについて国連で議論するよう求められたが、すべて拒否している。また、フォート・デトリックの生物学的実験に関する独立した調査を求める中国の要求も米国は拒否している。

 ワシントンがモスクワと北京を非難し、要求を突きつける権利があると感じているのは、傲慢さの現れだ。しかし、米国の有罪性の証拠はさらにうずたかく積み重なっている。

 中国は、冷戦が終結したとされる過去30年の間に、ペンタゴンが30カ国以上に300以上の生物学研究所を拡張してきて、しかもその大部分がロシアと中国の隣国にあることを指摘している。

 フォート・デトリックが生物学的大量破壊兵器を利用してきた不吉な記録と、特定の攻撃目的のためにその記録がウクライナで存在感を増していることが、ロシアの軍事介入をつくり出しているのだ。中国が批判的な立場をとり、米国からの回答と説明責任を求めるのも、また正当な行動である。
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