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今日核戦争の脅威は現実の問題である:「ソ連を地図から抹消しろ!」 204個の原爆を66の主要都市へ!米ソが同盟国であった第二次世界大戦中に計画された米国の対ソ核攻撃

今日核戦争の脅威は現実の問題である:「ソ連を地図から抹消しろ!」
204個の原爆を66の主要都市へ!米ソが同盟国であった第二次世界大戦中に計画された米国の対ソ核攻撃
<記事原文 寺島先生推薦>
Today the Threat of Nuclear War is Real: “Wipe the Soviet Union Off the Map”, 204 Atomic Bombs against 66 Major Cities, US Nuclear Attack against USSR Planned During World War II
When America and the Soviet Union Were Allies


2022年2月27日
Global Research
ミシェル・チョスドフスキー(Michel Chossudovsky)教授
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年4月8日
初出:2017年11月4日


***
著者のメモ(と更新)
 世界は危険な岐路に立っている。核戦争の危険は現実的だ。

 最近の動きとしては、プーチン大統領が「NATO高官による "敵対的 "な暴言に対して、ロシアの核抑止力に最高レベルの警戒態勢をとるよう命じた」ことが挙げられる

 核戦争は人類の未来を脅かしている。シナリオはもはや仮定ではない。第三次世界大戦の脅威は現実の問題になっている。


 イラク、シリア、イエメンなど、現在の戦争による人命の損失と破壊は概念的に理解できても、「新しい技術」と高度な兵器を使った第三次世界大戦による惨状は、それが発生し現実となるまで完全に理解することは不可能であろう。米政権は、世界平和の名の下に先制的な核戦争を容認している。「世界をより安全にする」ことが、核兵器によるホロコーストを引き起こす可能性のある軍事作戦を開始する大義となっている。

 小型核は「周囲の市民には無害」と言われている。ジョージ・W・ブッシュ政権以降、先制核戦争は「人道的事業」として描かれるようになった。

 2017年に初出の以下の記事は、冷戦の歴史に疑問を投げかけるものだ。最近の動きとも関係がある。

 米国のロシアに対する核の脅威作戦は、冷戦以前からあった。
 
 (核の脅威作戦は)第二次世界大戦のさなか、米ソの同盟国であったマンハッタン計画のもとで初めて策定された。

 ソ連の66都市を爆撃する秘密計画は、日本が正式に降伏した2週間後の1945年9月中旬に出された

 もしアメリカが、ソ連に対抗するための核兵器を開発しないと決めていれば、核軍拡競争は起こらなかっただろう。

 ソ連も中華人民共和国も、ソ連を消滅させることを目的としたマンハッタン計画がなければ、アメリカに対する「抑止力」として核戦力を開発することはなかっただろう。

2022年に早送り

 ジョー・バイデン大統領は、核戦争がどのような結果をもたらすかについて、まったく理解していない。

 バイデン政権は、オバマ政権下で最初に開始されたペンタゴンの1兆3000億ドルの核兵器計画を含め、兵器産業を大きくするために、巨額の資金を割り当てている。

 人類は今、危険な岐路に立たされている。核戦争は数十億ドル規模の事業となり、米国の防衛請負業者の懐を潤している。問題になっているのは、まさに「核戦争の民営化」である。

 ロシアに対する核兵器の使用は、現在ペンタゴンの計画策定中である。US-NATOの戦争ゲームはロシアの玄関先で行われている。ロシアへの先制核攻撃は排除されていない。

 フィデル・カストロ(Fidel Castro)2010年10月15日の言葉:

 「核戦争 の "付随損害 "は、全人類の死滅となるだろう。核兵器も通常兵器も、戦争に使われるものはすべて消滅させなければならないと宣言する勇気を持とう!」 (フィデル・カストロ・ルース(Fidel Castro Ruz)、2010年10月、筆者との対話)

 最近の出来事との関連で、次のような所見を述べる。ロシアとソ連に対する核戦争の使用は、1945年9月以来、ペンタゴンの計画にあった。(以下の記事参照)

***
 今日、軍事的エスカレーションの危険性は筆舌に尽くしがたいものがある。

 今、ウクライナで起きていることは、地政学的に重大な意味を持つ。第三次世界大戦のシナリオにつながる可能性がある。

 エスカレーションを防ぐという観点から、和平プロセスを開始することが重要である

 グローバル・リサーチ社はロシアのウクライナ侵攻を非難する。

 二国間の平和協定が必要だ。

 ミシェル・チョスドフスキー、グローバル・リサーチ社、2022年2月27日
***

「ソ連を地図から抹消しろ!」204個の原爆を66の主要都市へ!米ソが同盟国であった第二次世界大戦中に計画された米国の対ソ連核攻撃

 1945年9月15日付の秘密文書(機密解除済み)によると、「ペンタゴンは、ソ連を吹き飛ばすことを想定していた、主要都市部に対する核攻撃で。」

 ソ連の主要都市はすべて、66の「戦略的」目標リストに含まれていた。下の表は、各都市の面積(平方マイル)と、その住民を全滅させるのに必要な原爆の数を分類したものである。

 モスクワ、レニングラード、タシケント、キエフ、ハリコフ、オデッサといった大都市をそれぞれ破壊するために、6個の原爆が使われる予定であった。

 国防総省は、「ソ連を地図から消す」ために必要な原爆を合計204個と見積もっていた。核攻撃の標的は66の主要都市であった。

 この作戦を実行するために必要な「最適」な原爆の数は466個であった(下記資料参照)。

 広島に投下された1発の原爆は、最初の7秒間で10万人を即死させた。想像してみてほしい、もし、第二次世界大戦中に米国が秘密裏に立てた計画に従って、204個の原子爆弾がソ連の主要都市に投下されていたらどうなっていたか。


1945年8月6日原爆攻撃された広島

 広島と長崎への原爆投下(1945年8月6日と9日)からわずか1ヵ月後、冷戦勃発(1947年)の2年前の1945年9月に、この極悪非道な軍事計画をまとめた文書が出されたのである

動画
 本記事が初めて発表されたのは2017年。YouTubeは最近、South Front*が制作した短編動画の削除を決定した。この動画は本記事で引用された機密解除文書を大きな拠り所としている。これは検閲行為であり、冷戦史の理解にいろいろな影響を与えるものだ。
South Front*・・・モスクワで登録された多言語情報サイト。「すべてがロシア寄り」だと、西側の評判は悪い。

 しかし、1945年9月15日の日付があるこの秘密計画(9月2日、USSミズーリ号-下の写真-上での日本降伏の2週間後)は、それ以前、つまり第二次世界大戦の真っ只中、米ソが親密な同盟関係にあった時期に策定されたものであった。



 スターリンが、1945年7月24日のポツダム会談で、悪名高いマンハッタン計画についてハリー・トルーマン(Harry Truman)から公式ルートで初めて知らされたことは、注目に値する。広島が攻撃されるまで2週間もなかった。

 マンハッタン計画は、アメリカが第二次世界大戦に参戦する1941年12月の2年前、1939年に開始された。クレムリンは、1942年にはすでにマンハッタン極秘プロジェクトの存在を完全に把握していた

 1945年8月の広島と長崎の攻撃は、ペンタゴンが204個以上の原爆からなるはるかに大規模なソ連への攻撃の実行可能性を評価するために利用されたのだろうか?ソ連の66都市を爆撃(1945年9月15日)するための重要な文書は、広島と長崎の爆撃(1945年8月6、9日)の5-6週間後に最終決定された。

 「1945年9月15日、つまり日本が正式に降伏し、第二次世界大戦が終結してから2週間も経っていない日に、ノースタッド*はこの見積書のコピーを、レスリー・グローブス(Leslie Groves)将軍に送付した。将軍はまだマンハッタン計画の責任者であり、任期はもう長くはないが、アメリカ空軍が欲しがればどんな爆弾でも製造する立場にいた。言うまでもないが、この文書の機密度は高く、「最高機密限定」であり、これは第二次世界大戦中の最高機密とほぼ同じであった。(アレックス・ウェラースタインAlex Wellerstein、最初の原子爆弾の備蓄要件(1945年9月) 
ノースタッド*・・・Lauris Norstad。 広島、長崎への原爆投下作戦の中心にいた空軍少将。

 クレムリンは、1945年のソ連66都市への空爆計画を知っていた。

 これらの文書を見れば、米国がソ連に対する「大量虐殺の計画」に関与していたことがわかる

 「本題に入ろう。手持ちの核分裂性物質が1個か2個分しかないのに、米空軍は原爆将軍であるレスリー・グローブスに何個の爆弾を要求したのだろうか。最低でも123個は必要であった理想を言えば466個だ。こんなやりとりがあったが、広島・長崎への原爆投下から1カ月ちょっとしか時が経過していない時のことだ。

 もちろん、そこは官僚、便利な表を用意してくれている(Alex Wellerstein, 前掲文書)。」

http://blog.nuclearsecrecy.com/wp-content/uploads/2012/05/1945-Atomic-Bomb-Production.pdf







核軍拡競争

 1947年に公式に始まった冷戦を理解する上で、1945年9月にワシントンが策定した66都市殲滅空爆計画は、核軍拡競争の引き金となる重要な役割を担っている

 ソ連は、1942年のソ連情報部によるマンハッタン計画の報告を受けて、脅威を感じ、1949年に独自の原子爆弾を開発した。

 クレムリンは、ソ連を「一掃」するこれらの計画について知っていたが、1945年9月の文書はもちろん機密であったため、広く一般には知らされていなかった。

 今日、1945年9月のソ連邦爆破計画も、核軍拡競争の根本原因も、認識されていない。欧米のメディアは、冷戦時代の米ソ対立に焦点を大きく当てている。第二次世界大戦にさかのぼるソ連邦消滅計画や悪名高いマンハッタン計画には触れない。

 ワシントンの冷戦期の核計画は、常にいわゆるソ連の脅威に対応するために提示されているが、実際には、1945年9月に発表された米国のソ連一掃計画(第二次世界大戦の真っ只中に策定)が、モスクワに核兵器能力を開発させる動機となったのである。

 原子力科学者会報の評価は、1945年9月、ソ連の主要66都市を204発の核爆弾で狙うという米国の秘密計画が発出されてから4年後の1949年に核軍拡競争を開始したソ連を非難したが、それは誤りだ。その誤った非難は今も続いている。

 「1949年: ソ連は否定しているが、秋にトルーマン大統領は、ソ連が最初の核実験を行い、軍拡競争が正式に始まったとアメリカ国民に伝えている。私たちは、アメリカ人に「終末の日が近い」「今から1ヶ月後、1年後に原爆が頭上に落ちてくる」と忠告しているわけではない。しかし、我々はアメリカ人が深く憂慮し、重大な決断をする理由があると考える。」(終末時計の年表、Bulletin of Atomic Scientists、2017年)

 重要:もしアメリカが、ソ連に対抗するための核兵器を開発しないと決めていれば、核軍拡競争は起こらなかっただろう。

 ソ連も中華人民共和国も、ソ連を消滅させる計画をすでに立てていたアメリカに対する「抑止力」の手段として、核戦力を開発することはなかっただろう。

 第二次世界大戦でソ連は2600万人の犠牲者を出した。

 冷戦時代の標的1200都市リスト:

 この1945年当初の66都市のリストは、冷戦の過程(1956年)で更新され、ソ連と東欧のソ連圏諸国の約1200都市が含まれている(下記の機密解除文書を参照)。使用予定の爆弾は、広島・長崎に投下されたものよりも爆発力が強力であった。



 出典:アメリカ国家安全保障アーカイブ

 「1956年の計画では、水爆はソ連、中国、東欧の優先的な「航空戦力」目標に対して使用されることになっていた。東ベルリンを含むソ連圏の主要都市は、原爆投下による「組織的破壊」の最優先事項であった。 (ウィリアム・バー『米冷戦期の核攻撃目標リスト ソ連圏1200都市「東ドイツから中国まで」』ナショナル・セキュリティ・アーカイブ電子ブリーフィング・ブックNo.538、2015年12月号

出典:アメリカ国家安全保障アーカイブ

 ワシントンD.C.、2015年12月22日 - 1956年6月に作成され、今日初めて国家安全保障アーカイブ www.nsarchive.org によって公開されたSAC [Strategic Air Command] Atomic Weapons Requirements Study for 1959は、これまでに機密解除された核標的および標的システムの最も包括的かつ詳細なリストである。知る得る限り、冷戦の歴史のどの時代においても、同等の文書が機密解除されたことはない。

 SACの調査には、恐ろしい内容が含まれている。その著者(複数)によると、目標の優先順位と核爆弾の戦術は、近くの民間人と「友好的な軍隊と人々」を高レベルの致命的な放射性降下物にさらすものであった。 さらに、著者(複数)はソ連圏の都市・産業目標を「組織的に破壊」する計画を立て、北京、モスクワ、レニングラード、東ベルリン、ワルシャワなどすべての都市で「住民」を具体的かつ明確にターゲットにしている。 このように意図的に民間人を標的にすることは、人そのものへの攻撃(近くに民間人がいる軍事施設とは異なる)を禁止する当時の国際規範に直接抵触する。国家安全保障アーカイブ電子ブリーフィングブック第538号、2015年12月。

標的にされた都市一覧


核攻撃のターゲットとされた1200都市の抜粋(アルファベット順)・・・前掲アメリカ国家安全保障アーカイブ

冷戦から今日まで

 冷戦時代以降、ロシア、中国、北朝鮮、イランに向けた核戦争は「検討中」である。

 1962年10月の「キューバ危機」と今日の現実の違いは何か?:

 1. 今日の大統領ジョー・バイデンは、核戦争がもたらす結果について、まったく理解していない。

 2、今日、ホワイトハウスとクレムリン間の意思疎通の回路はかつてないほど細い。対照的に、1962年10月、ジョン・F・ケネディとニキータ・S・フルシチョフという双方の指導者は、核兵器による全滅の危険性をはっきりと承知していた。彼らは、考えられないことを避けるために協力したのだ。

 3. 冷戦時代の核ドクトリンは(今日とは)全く異なるものであった。ワシントンもモスクワも、相互確証破壊の現実を理解していた。今日、広島原爆の3分の1から6倍の爆発(威力)を持つ戦術核兵器は、国防総省によって「爆発は地下で起きるので民間人には無害」と分類されている。

 4. オバマ政権下で打ち出された1兆ドルを超える核兵器計画が進行中である。

 5. 今日の熱核爆弾は、広島の原爆の100倍以上の威力と破壊力を持っている。アメリカもロシアも数千発の核兵器を配備している

 さらに、中国との全面戦争は、米国防総省が現在策定中で、米陸軍の委託を受けたランド社の報告書に概要が示されている。




狂気の米国外交政策

 米国の政治的狂気には、長い歴史がある。それは米国の人道に対する犯罪に人間的な顔の仮面を被らせるものだ。



 1945年8月9日、長崎に2発目の原爆が投下された日、トルーマン大統領(画像上)は、アメリカ国民に向けたラジオ演説で、核兵器の使用に関して、神はアメリカの味方であると結論づけ、次のようにも語った:

 「神の方法と目的のために、それ(原爆)を使うよう、私たちを導いてくださいますように。」

 トルーマンによれば、神は我々と共におられる。原爆を使うかどうか、いつ使うかは神がお決めになる:

 [私たちは]、この爆弾を将来コントロールするための計画を準備しなければなりません。私は、この爆弾の製造と使用が管理され、その力が世界平和に向けた圧倒的な影響力となるよう、議会に対し最後まで協力されんことを要請します。

 私たちは、この新しい力の管理人となり、その悪用を防ぎ、人類への奉仕の道筋をつけなければならないのです

 それは、私たちに課せられた途方もなく大きな責任です。

 私たちは、それ(核兵器)が敵ではなく、私たちのもとに来たことを神に感謝し、神の方法と目的のためにそれ(核兵器)を使うように、神が私たちを導かれんことを祈ります」(強調は筆者)

The original source of this article is Global Research
Copyright © Prof Michel Chossudovsky, Global Research, 2022

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CDCはCOVID-19による死者数の統計を下方修正

CDCはCOVID-19による死者数の統計を下方修正

<記事原文 寺島先生推薦>CDC slashes Covid-19 death tally

Biden administration quietly revises data, including 24% cut to number of US children killed by the virus

バイデン政権は「COVIDウイルスによる米国の子どもの死者数を24%にまで減らす」というデータの修正を行った。

RT 2022年3月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月28日


 オミクロン株が急速に広がる中、COVID-19が死因で亡くなった子どもの数が急増しているとされていたが、実際のところはそのような状況は全く生じていなかったと考えられる。CDC(米国疾病予防管理センター)が死者数の統計を大幅に下方修正したからだ。

 CDCのCOVID数値追跡サイトは、今週(3月第3週)にすべての年齢層における死者数の総数を下方修正したデータを載せた。それによると、死者総数は合計7万1千件削減され、子どもの死者数については416件にまで削減されていた。この修正の前には、CDCの発表によれば米国の1755名の子どもがCOVIDウイルスの犠牲になり、うち738名が今年のオミクロン株の流行で亡くなったとしていた。

 紙媒体メディアやワクチン推進派はこの間違った数値を用いて、オミクロン株は子どもに対して危険であると考えられるとし、COVID-19の予防接種の正当性を訴えていた。昨年11月、CDCのロシェル・ワレンスキー(Rochelle Walensky)所長は当時CDCが出していた数値に触れ、五歳児にさえワクチン接種を可能にする法規制の実現を要求していた。

READ MORE


: CDC withholds Covid-19 data that could be ‘misinterpreted’ – media

 先週(3月第2週)ガーディアン紙に「オミクロン株の流行が急増する中でのCOVID-19による子どもの死亡について」の記事を書いたメロディ・シュライバー(Melody Schreiber)記者は、トレンドになっていた自身のツイートを3月17日に削除した。それはCDCが数値を下方修正したことを受けてのことだった。同記者の削除前の記事の主張では、「マスクの強制着用が取りやめになり、ワクチン接種率が伸び悩む中、子どもたちが直面する危険が増大している」とのことだった。同記者の記事の内容は、「COVID-19に感染していた」死者数に基づいて下方修正された数値を引用したものに書き換えられた。

参考記事 

CDC withholds Covid-19 data that could be ‘misinterpreted’ – media


 CDCが追跡数値を書き換えたのは、パンデミック中で少なくともこれが3度目だ。CDCは今回の書き換えに関して公式声明は出さず、「数値追跡」サイトの脚注に説明を加えているのみだ。その内容は以下の通り。「2022年3月15日、死者数の数値はコンピューターのプログラム上の記号処理のミスが改善された後に書き換えられました。そのためすべての統計上の死者数は減少しています」と。

  CDCが修正した数値により、米国の死者総数は85万1千人以上から78万人程度に減少した。政府による別の統計によれば、COVID-19に感染していた死亡症例の総計は96万7千人程度で、うち子どもは921人とされていた。この子どもの死者数にはCOVID-19が死因だったのではなく、亡くなった時にCOVID-19に感染していた死者も含まれているのだが、それでもCDCの数値追跡サイトが出したCOVID-19によって1300人以上の子どもが亡くなっているという数字よりも低い数字になっている。

READ MORE: CDC justifies shorter isolation

  このようなCDCによる間違いの修正が最近発表されたことで、CDCが、人々が正しくパンデミック時の数値を理解できないよう意図的にその数値を明らかにしていなかったことがわかった一か月前の事件にも焦点が当てられている。例えばCDCは、年齢別や人種別やワクチン接種状況別によるCOVID-19の入院者数を秘密にしていた。その理由の一つには、ワクチンを2度接種していたのにCOVID-19ウイルスにより重症になった米国民が多数いたことを知られたくなかったからということがある。
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サンライズ(日出ずる)国ならぬ、サンクションライズ(制裁を出す)国、日本

サンライズ(日出ずる)国ならぬ、サンクションライズ(制裁を出す)国、日本
<記事原文 寺島先生推薦>

Japan, a Land of the Rising Sanctions

Journal NEO 2022年3月16日

ウラジミール・ダニロフ(Vladimir Danilov)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月31日



 日本は、「ライジング・サン(日出ずる国)」という美称で呼ばれてきた国だが、最近ではそのように呼ばれる国からはますます遠ざかっているようだ。現政権のまずい政策のため、今や日本は「ライジング・サンクション(制裁を出す国)」に変わってしまった。

 つい最近までは、安倍晋三元首相のもと、日露関係は常に良好で、温和でさえあった。安倍とロシアのウラジミール・プーチン大統領間の定期的な取り組みや、個人的なつながりのおかげで、2か国間の貿易や事業協力は促進され、それらが日本にとってのある種の「安全網」になっていた。米国政府からは常に「嫌ロシア」化に向かうよう圧力をかけられていたし、日本国内の極右からは「北方領土問題について戦え」という圧力もかけられている中でも。こんな芸当のような話し合いが持てるかどうかはその人が特異な政治家であることが条件だ。そして安倍はまちがいなくそんな政治家だった。安倍は米国政府の言いなりの普通の首相ではなかった。普通の首相なら、「米国という兄貴を喜ばせる」ためには何だってしてきた。たとえそれが大きな会議で渡された、たった一枚の紙きれに書かれていたとしても。

 明らかに、日本は第二次世界大戦後、自主性を奪われ、米国の従属国に成り下がっている。この75年間以上、米国の占領下で多くの試練に苦しめられてきた。geishaのように何千もの米軍兵のおつきの役をさせられてきた。その米軍兵が大暴れして、日本の人々に対してたびたび罪を犯すのも日常茶飯事だ。その悪名高い米軍は第二次大戦末から日本に駐在し続けている。米軍施設の7割以上が沖縄に集中している。3万人程度の米軍兵士が沖縄に駐留しており、家族まで入れると数万人に上る。統計によれば、日本に駐留する米国民は1972年以降5千件以上の犯罪を犯している。米軍兵士が罪に問われないこともしばしばあった。日本国民は定期的にデモ行進をして米軍基地の解体を要求しているが、日本の政治家たちは国民からのそのような要求に十分応えようとはせず、国連などの国際機関においては「米国を怒らせないよう」に卑屈な態度をとる方を選んでいる。

 しかし米国に対してこのような立場をとっていたにもかかわらず、いまや伝説的だともされている安倍晋三は自分の政策指針を追求し、何よりロシアとの「特別な関係」を維持することに成功していた。安倍の外交政策の肝要は、急激に成長していた中国を米国とともに遮ることに加えて、ロシアと友好関係を結ぶことにあった。両国が、友好関係というよりは、親善関係ともよぶべき関係を築き上げることで、共通の問題の解決に共同して取り組むことが可能になる。安倍はウラジミール・プーチンと本当に個人的な関係を築くことに力を入れ、安倍はプーチンを友と呼び、その友との会談を30回ほど持った。この関係のおかげで、2014年、米国政府からの圧力はあったものの日本政府はロシアに対して柔和で最小限の制裁だけを課した。マスコミはこのことを「礼儀正しい」と報じ、世間からは、いやいやながら仕方なく制裁を行っている、という認識を持たれていた。

 安倍が日本国内で恐ろしく高い支持率を得ていたことを背景に、安倍の力で、両国が都合よい妥協案(例えば領土問題を抱えている千島列島において経済協力活動を行うなど)に同意するのではないか、そうなれば真に新しい両国関係が生まれるのではないかという期待が高まっていた。

 安倍がプーチンとの相互理解に重きを置いていたのは、そうすることで南シナ海の勢力拮抗を確実にできると考えたからだ。南シナ海は、日本が主敵、あるいは不倶戴天の敵と見なしている中国が長年進出しようとひそかに企んでいる地域だ。

 日本は何世紀もの間も武士道という道徳上高貴な精神文化をいつくしんできた国だ。その武士道の精神をもって、日本はずっと世界の他の国々とは一線を画す国であり続けてきた。しかしその日本の安倍後の新政権が決めたのは、安倍が取ってきた政策方針を根本から変換し、米国政府に今まで以上に擦り寄ることだった。すでに1月21日の時点で、米国のジョー・バイデン大統領と日本の岸田文雄首相との会談の結論は、ロシアがウクライナに対する「侵略」を始めた際は、日本が米国とともに新たな主導権を持ち、太平洋地域におけるロシアに対する制裁執行役を第二戦線として担うことであった。

 そして毎日新聞の報道によると、元自衛官50人を含む約70名のボランティアがウクライナに赴き、キエフのナチ権力のために戦うそうだ。さらに共同通信の報道によると、鈴木俊一財務相が、「日本政府はウクライナの状況に対するロシアへの制裁として、VTB銀行を含むロシアの4行の資産を凍結する」と発表したとのことだ。その後日本政府は、ロシアの49社の企業や団体に輸出制裁措置を課し、さらに20名のロシア人にも制裁を加えるとした。その中にはウクライナの非ナチ化と非武装化に対してロシア軍が取った作戦に関係したとされる会社員や、国家役員や、著名なロシアの人々も含まれている。

 明らかに米国政府に触発されて日本政府がナチが権力を握るウクライナ政府を支持していることに対して、東京のロシア大使館がテレグラム上で日本について以下のような投稿を行ったことは驚くべきことではない。「ここ100年で日本がナチ政権に協力するのはこれで2回目になる」と。一度目がヒトラーのナチス・ドイツのことであり、二度目は今のウクライナ政権のことだ。

 これと同時に、日本政府はロシアに対して領土問題についての主張を強めている。それをよく表しているのが、岸田文雄首相が3月7日の国会討論において、北方4島の領土問題については、日本「固有の領土」であると主張したことだ。「不幸にも、日本は西側諸国の主流の主張に流されて、なんの不平も言わずただ言われたことに従っています。日本は今やっていることが、どれだけ自国を破壊に招く行為なのかがわかっていないようです」と3月9日スプートニクラジオでマリア・ザハロワ(Мария Захарова)ロシア連邦外務省報道官は、ロシア政府に対して日本政府が領土問題に関して主張したことについて発言していた。

 しかし日本の産業界は、日本政府や米国政府の対ロシア政策には異を唱えている。西側諸国の諸企業はロシアから引き上げると発表し、蘭英のシェル社はサハリンー2計画からの撤退を表明している事実もあるが、日本の三井物産と三菱商事はこの計画から撤退しない方が得策であると考えている。日経新聞の報道によれば、日本の経済産業省の高官の一人が提出した文書によると、拙速な撤退は危険であり、このチャンスを中国の手に渡してしまうことになる、としていた。サハリンー2計画はロシアでの初めての天然ガス計画であり、ロシアのガスプロム社が5割、シェル社が27.5%。三井物産が12.5%。三菱商事が10%をそれぞれ保有している。日経新聞の報道によれば、日本のこの2社の考えでは、何が起こっても、サハリンー2計画の稼働は続くと考えられるため、もしこの2社がサハリンー2計画から撤退してしまえば、日本の消費者は天然ガス市場での支払いが20憶ドル余計にかかってしまうことになる、としている。




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オレナ・セメニャカとは何者か?:アゾフ大隊を操り、欧州を牛耳る女

オレナ・セメニャカとは何者か?:アゾフ大隊を操り、欧州を牛耳る女

<記事原文  寺島先生推薦>

Meet Ukraine’s Azov Figurehead Olena Semenyaka, Europe’s Female Führer

Strategic Culture

2022年3月20日

デクラン  ヘイズ(Declan Hayes)

<記事翻訳  寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月31日

 この戦争から何かいい事が生まれるとしたら、それは欧州全体がNATOを排除し、剣を鍬に打ち替えるようになることだろう。

 ウクライナの道化師・ゼレンスキー大統領が見出しを独占している中、オレナ・セメニャカのことは脇に追いやられているようだ。これは残念なことだ。というのも、ウクライナのインチキ・ミスタービーンよりも、この女性セメニャカに注目したほうが、ウクライナ問題の核心がはるかによく見えてくるからだ。        

 セメニャカはウクライナ国家主義者たちの「ファースト・レディ」と言われてきた。セメニャカが擬似知性主義を駆使し、世界中のネオファシスト勢力との繋がりを持ち、さらにウクライナではアゾフ勢力に対して教祖的な指導者として君臨していることで、彼女は今やウクライナ政権を影から支配する恐るべき権力者になっている。        

 ゼレンスキーの繰り出すロシア嫌い的なジョーク(そのままの意味だ)に失笑しているうちは、キエフの状況は安泰かもしれない。しかし、セメニャカの言動の方は、笑い飛ばして済ますわけにはいかない。1987年生まれで、ソ連解体後に育ったセメニャカは、優れた哲学科の学生だった。セメニャカは汎スラブ至上主義に関するすべてをかじり、2014年にマイダンでファシストがクーデターを起こしたときには、いま彼女が手にしているウクライナ・ナチスにおける最上位の巫女的立場をすでに確立していたのだった。

 セメニャカは全力を捧げてアゾフ勢力の活動に取り組み、ウクライナをヨーロッパの人種差別主義再興の中心地にしようとしていた。アゾフの国際関係担当と、出版関連担当長を務めているセメニャカは、同様の考え方を持つ海外の諸団体や、その諸団体を運営している様々な諜報機関と関係を築いて きた。さらにセメニャカは、2014年にキエフで結ばれた、いわゆる「鋼鉄協約」のための知的基盤を確立する上で重要な役割を果たした。この協約によって、世界中の白人至上主義者がアゾフの掲げる「嫌ロシア虐殺」の旗の下に集まることとなった。そして何より特筆すべきことは、セメニャカは、その魅力的な容貌と身の振りこなしによって、今日のナチスが裏に潜ませた残虐性をメディアの力で柔和させ、見えなくしてしまう工作の中心人物になっていったことだ。

鋼鉄協約・・・第2次大戦前に独伊が結んだ協約を基とするもの



 セメニャカは優秀ではあるが、斬新さはない。ニュルンベルク裁判で首席検事を務めたロバート・ジャクソン(Robert Jackson)が開廷のときに語った言葉を思い起こせば分かる。彼は、ヒットラーの共犯者たち(セメニャカのような妄信的変人も含めて)を念頭において語っている。セメニャカのような知識人たちが種を撒いたからヒトラー帝国が生まれたのだ。それはハイドリヒ(Heidrich)の副官だったヨアヒム・パイパー(Joachim Peiper)に仕えたナチス親衛隊への志願兵たちが、武力をもって種を撒いたのと同じだ。ドイツ国防軍は、無数のセメニャカのような人々の援助がなければ、誰にも止められないほどの強固な軍隊にはならなかっただろう。アゾフたちにも同じことが言える。セメニャカのようなすごい役者がいなければ、ウクライナ政権を陰から支配する権力とはなれなかったのだ。これらの人々がウクライナ国内の国家主義思想を再興させ、「ロシアに起源を持つウクライナ」を、「汎スラブ主義に基づく反ロシア主義のウクライナ」という袋小路へと導いたのだ。そして後者のウクライナは、現在、ロシアの空爆とロシア軍のウクライナ中心地への侵攻によりズタズタにされている。

 セメニャカは自らが犯したその間違いの責任を取らなければならない。アゾフの司令官アンドリー・ビレツキー(Andriy Biletsky)とともに活動してきたセメニャカは、東ウクライナでのアゾフの8年間の民族浄化行動を美化し、そのような犯罪行為を自身が提唱するインテルマリウム(中欧・東欧統合主義)や汎欧州失地回復というおとぎ話に置き換えようとしてきた。これらの主張は白人至上主義の帝国を具現化しようとする主張であり、西はドイツから東はロシア国境、北はラトビア、南はシチリア島までを帝国の領域にしようという構想に基づくものだ。

 ヒトラーと同様、セメニャカは野望に事欠かなかった。また、アゾフとともに活動してきたセメニャカがその野望を、それがどれだけ実現不可能で達成不可能であったとしても、実現しようと決意していたこともヒトラーと変わらない。

 

 セメニャカには幅広い協力者たちが存在し、これらの協力者たちはこの野望実現の計画に心酔していた。彼女は、人種差別主義に基いた書籍を多数発行し、また他の人々のそのような書籍の宣伝を行うだけではなく、他国の多くの極右勢力と同盟関係を築いてきた。具体的には、ドイツのネオナチ、フランスの新右翼(Nouvelle Droite)、セルビアの悪魔主義者団体、カサ・パウンド・イタリア、エストニア保守人民党(EKRE)、その青年部にあたる「青い目覚め(Sinine Äratus)」勢力、ラトビア国民連合勢力、ポーランドの青年伝統主義者勢力、「スウェーデンの代替案を考える会」、フィンランドの白人至上主義者団体スオメンシス、ポルトガルの白人至上主義者団体エスクド・アイデンティタリオその他さまざまな欧州白人至上主義者の団体、さらには米国の白人至上主義者の団体などだ。これらの団体の関係者の多くが最近ウクライナでアゾフのために戦い、命を落としている。

 セメニャカは自身が持つ哲学的知見を用いて、西欧各地の様々な極右主義を、ウクライナ国家主義に落とし込むことに成功した。それはステパン・バンデラ(Stepan Bandera)などドイツ・ナチスに協力したウクライナの虐殺推進者たちが主張していた国家主義だ。彼女はアゾフの主張をEU諸国の西側的考え方にしみ込ませさせることに成功したのだ。

 しかし哲学という武器は、ロシアの武器に対抗するには弱すぎる。セメニャカの夢は、「バルト海―黒海―アドリア海」を繋いだ地域の統合や、ブラックメタルの旋律により奏でられたアーリア人堕天使主義の拡散、ファシストのもとでの女性主義の実現を夢としているのである。それはウクライナ国家の歌詞の内容と同様に、「反ロシア主義は確固たる基盤である」という間違った前提に立ったものだ。しかしそれは確固たる基盤ではない。それは、つかむことが出来ない流砂のようなものなのだ。アゾフ大隊はいまそのことを身に染みて感じているだろう。

 反ロシア主義は、他のすべての排他主義的な主張と同様に、戦争への序曲につながる以外の何物でもない。ウクライナの真の愛国主義者たちがウクライナのために果たすべきことは、すべての隣国と経済的および社会的なつながりを構築することであり、意味のない虐殺行為をけしかけることではない。そんなことをしても加害者呼ばわりされて終わりだ。これはこれまでの歴史認識を白紙にしたり、歪めたり、あるいは破棄したりすることではなく、真のウクライナ愛国者とは、これまで葉が一枚しかない草が育っていたところに、葉が二枚ある草を育てようとしている人々だという宣告をすることだ。

訳注:ここは、ウクライナとロシアは同一起源だという考え方とウクライナとロシアは起源が違うと考え方を対比している

 この戦争が起こらなくても、ウクライナの経済状況は非常に悪かった。実現しそうもないアーリア人堕天使主義や、セメニャカの怪しげなブラックメタルの旋律を使った聖像の御旗を掲げたインテリマリアム的失地回復の夢を追い求めていなければ、一般のウクライナ国民たちがこんな苦杯を味わわずにすんだのだ。こんな計画がうまくいくはずがなかった。論理的に考えて、神聖ローマ帝国の新生などありえないし、欧州中を巻き込めるくらいの規模でのそんな主張を広めるような社会産業的手段や軍事力もないのだから。アゾフがそんなことを達成できるという希望は、本拠地としているウクライナの森の中にある脆弱な森の基地からも、包囲した都市部の前哨基地からも湧き上がってはこない。アゾフたちはうまく利用されているだけなのだ。ただしアゾフを利用しているのは、セメニャカのような安っぽい哲学者たちや、彼女たちが信奉しているニーチェやワグナーが説いたおとぎ話だけではない。

 ウクライナの戦争は、第二次大戦がそうだったように、ヨーロッパのナチ勢力の敗北という形でいずれ終わるだろう。しかしウクライナや他の国々の真の愛国者たちが恋焦がれている恒久の平和が成し遂げられるためには、怪しげな邪教をすべて排除する必要がある。そうでないと、アーリア人神話の世界ではいざしらず、少なくともこの現実の世界においては、このような邪教は私たちを奈落の底につきおとしてしまう。そんな奈落の底がいかなるものかは、NATOが繰り出してきた終わりなき戦争の矛先にされてきた人々なら、わかりすぎるほどわかっている。

 このひどい戦争から何かいいことが生まれるとしたら、それは、すべてのヨーロッパ人が、セメニャカが唱えるインテルマリウム構想だけにとらわれない立場にたって、NATOの爆弾や銃弾を拒否し、予言者イザヤの言葉を借りるならば、剣の代わりに鋤の刃を作ろうとしなければならない、ということだ。さらにはその方向を目指しながら、セメニャカが推しているような哲学書をドストエフスキーやトルストイの著書に持ち替え、セメニャカが推しているブラックメタルの旋律をチャイコフスキーのクラシックの旋律に置き換えることだ。セメニャカが唱えるニーチェ的聖戦ほど虚無的ではないが、このような方向性の方が、いつまでも人々に利益をもたらし、生産性も高い。そうすれば、ヨーロッパは住む価値のある場所になるかもしれない。私がそう思うだけなのかもしれないが。

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これは危険だ。ウクライナ大統領は親露メディアを禁止

これは危険だ。ウクライナ大統領は親露メディアを禁止
<記事原文 寺島先生推薦>
In risky move, Ukraine’s president bans pro-Russian media



アルジャジーラ 2021年2月5日

マンスール・ミロバレフ( Mansur Mirovalev)
 

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月31日



 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)は 3つのテレビ局を禁じた。それは、ロシア政府が資金を出している「プロパガンダ」を拡散していることを糾弾してのことだった。しかしEUはこの措置を非難している。

 親西側派のウクライナ国民に押される形で、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3つのテレビ局を一夜にして封鎖した。それは同大統領がこれらのテレビ局はロシア政府が資金を出して「プロパガンダ」を拡散し、親モスクワ政党の人気を増やす拡声器の役割を果たしているからとのことだった。

 しかし人口4300万人の旧ソ連のウクライナは言語的にも政治的にも二極化の様相を見せており、このような大統領の措置は、ゼレンスキーのこの先の政治的運命に危機をもたらす可能性がある。なおゼレンスキーはロシア語話者家庭出身の元スターお笑い芸人だ。

 ウクライナの東部や南部には、何百万ものロシア語話者が居住している。彼らは必ずしも親ロシア派であるとは限らない。ゼレンスキーが他の政敵を打ち破り大統領に選出できたのは、これらのロシア語話者たちの投票が後押ししたからだった。

 ゼレンスキーは2019年に得票率73%で大統領に選出された。これは新人政治家にとっては圧倒的な数値だった。ゼレンスキーが政治の中枢を担ったことがある経験は、テレビの人気番組でたまたま大統領役を務めただけに過ぎなかった。

 しかし最近の世論調査の結果によれば、ゼレンスキーへの支持率は40%以下に低下している。これは世間が、ゼレンスキーのどっちつかずの態度や、たびたび内閣を代えることに不満をもっていることを表している。

 ロシア政府が最も恐れる敵の一人であり、旧ソ連の一国を最も上手に改革したことで有名な一人の人物は、ゼレンスキーの取ったこの措置を賞賛した。ゼレンスキーは、2021年2月2日に、112局とNewsOne局とZIK局という3局のTVニュース局を閉鎖したのだ。

 「“ゼレンスキーは決定的な態度を取ることができない“と言っていた人々のことを彼は驚かせるようなことをしました。ゼレンスキーは、これまでの数十年間、どの前任者もできなかったような手段に打って出たのです」とミヘイル・サアカシュヴィリ(Mikheil Saakashvili)は語った。サアカシュヴィリは旧ソ連のジョージアの大統領を2004年から2013年まで務めたのち亡命し、今はゼレンスキーの政治改革顧問をしている。その彼がフェイスブック上で上のような投稿をしたのだ。

「完全な不法行為」


 閉鎖された3局はウクライナの数名の財閥が所有する10のTV局の一部だ。これらの3局は質の高い内容の番組をたくさん製作し、ウクライナの政界を全方位的視点から報じていて、ロシア政府を直接賞賛することはしていなかった。

 しかしこの3局の番組司会者たちはしばしば、中央政府と、ロシアが支援する東部ドンバス地域の分離主義者たちとの紛争を「内戦」と呼び、クリミアの人々が2014年にロシアに併合されることを圧倒的多数で支持したことに触れ、平和や貿易におけるロシア政府との良好な関係の回復を求めていた。

 「紛争が起こっている地域があり、反対勢力から資金援助を受けている全国規模のTV局があるとはどういうことか考えてみてください。イスラエル国内にファタハやハマスが資金を出したテレビ局があるようなものです」とキエフ在住の専門家イガル・ティシュケビチ(Ігор Тишкевич)は当アルジャジーラの取材に、パレスティナの2政党を引き合いに出して答えた。

 これらのTV局の名目上の所有者はタラス・コザック(Тарас Козак)だ。彼は「野党プラットフォーム生活党(以降OPFL)」所属の政治家である。この政党はヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナの下院)における第2政党だ。

 しかし報じられるところによると、これらのTV局の実質上の所有者はOPFLの「影の主役」ヴィクトル・メドベドシュク(Віктор Медведчук)だとのことだ。メドベトシュクは, ウクライナ国内でロシア政府からの影響をうけている重要人物であり、娘はウラジミール・プーチン大統領により洗礼を受けている。米国は2014年にメドベトシュクに制裁を課している。

 メドベトシュクはこれらのTV局の封鎖を「完全な不法行為」だとし、法廷に訴える意向を示した。

 「海の向こうにいるゼレンスキーの仲間たちや主人が、敵側の情報局をゼレンスキーの手で粛正させたことにより、ゼレンスキーはウクライナ政府が不法行為を遂行する道具にされてしまった」と66歳の大物メドベトシュクは2021年2月3日に語った。

 「ゼレンスキーの支持者たちがOPFL党にますます引きつけられる中、同党は影響力を増している」とは事態を見る或る人からの声だ。

 「有名なテレビ司会者であるゼレンスキーが、自分が一番よく分かっている世界で敵に打撃を与えたのだ」とドイツ・ブレーメン大学の研究者ニコライ・ミトローキン(Nikolay Mitrokhin)は当アルジャジーラの取材に答えている。

 実際OPFL党はゼレンスキーの母体政党よりも支持率が高くなっている。ゼレンスキーの母体政党は、2年前にB級政治家たちや成金的政治家たちを寄せ集めて作られたものだ。

 2021年2月2日にレイティング社の世論調査の結果によると、OPFL党の支持率はウクライナ国民の18.9%で、ゼレンスキーの「国民の僕」党の支持率はそこに少し届かない18.6%だった。

報道の自由についての懸念

 2019年に大統領になる直前、ゼレンスキーはこう誓っていた。「TV局を封鎖することは決してありません」と。そして「国民の僕」党の主要な党員たちは、ゼレンスキーが封鎖したこれら3局のテレビ局のスタジオをしばしば訪れていた。

 これらの3つのTV局はゼレンスキー大統領の分離派との闘争との取り組みについて幅広く報じていた。しかしここ3ヶ月間、ゼレンスキーの支持率が下がる中、これらのTV局はゼレンスキーの政策を激しく非難し始めていた。

 これらのTV局の報道は、「侵略国から資金提供を受けたプロパガンダであり、ウクライナの方向性を阻害する」とゼレンスキーは2021年2月3日にツイートした。ウクライナの方向性とはEUやNATOに加盟することを指している。

 しかしEUはゼレンスキーがとった今回の措置を非難している。

 「ウクライナに害を与えようとする偽情報作戦が外国からのものも含めてこれほど進んでいるとはいえ、報道の自由を阻害することはあってはならない」とEUのジョセップ・ボレル外務上級代表報道官は2021年2月3日に声明を出している。

 ゼレンスキーの決定には、大事な同盟者からも反対の声が上がっている。

 ドミトロ・ラズムコフ(Дмитро Разумков)国会報道官はこのような制裁措置には反対し、こう非難していた。

 「TV局に制裁を課すことは良くないことです。そのTV局がどこに属していようが関係ありません」とラズムコフはウクライナのメディア取材で答えている。

米国は支持を強めている

 ゼレンスキーの決定はジョー・バイデン米大統領から好意をえることには成功したようだ。バイデンはTV局禁止措置を出す一日前の2021年2月1日にゼレンスキーに電話をしていた。それはバイデンが大統領になってから初めてのことだった。

 バイデンは、バラク・オバマ政権の副大統領時代の2009年から2017年までウクライナを監督しており、キエフには6度訪問していた。

 欧州における米国の重要人物はゼレンスキーのこの措置を喜んでいたようだった。

 「報道の自由には、悪質なプロパガンダや偽情報を拡散する権利は含まれていません。私たちはウクライナの決定を支持します。ウクライナは自国主権と領土保全を守るために、ロシアが放つ大胆で抽象的な影響力に対抗しているのです」。コートニー・オーストリアン(Courtney Austrian)米国欧州安全保障協力機構長は2021年2月4日に声明を出している。

 しかしゼレンスキーが法廷を通さずにこれらのTV局を突然封鎖したことに対する批判の声は、ゼレンスキーの政治的不安定さをさらに証明する行為だったといえる。

 「ゼレンスキーが取った行為は親ロシア派では全くない東南部の草の根の愛国者たちへの打撃になりました」とキエフ在住の政治専門家アレクセイ・クシュチ(Aleksey Kushch)は当アルジャジーラの取材に答えている。

 クシュチはゼレンスキーによるこの措置を「マッカーシズム(赤狩り)」や「魔女狩り」だとし、低下する支持率の底上げのためにゼレンスキーが取った行為だと批判した。

 「封鎖された3つのTV局はロシアのプロパガンダ拡散機関ではなく、別の方法でウクライナを発展に向かわせようと模索していた報道機関でした」とクシュチは語っている。

 激しく反ロシアを掲げているウクライナ国民たちは、この封鎖措置はゼレンスキーが、自分が親ロシア派でないことを世間に対して見せつけるための措置だと考えている。

 「ゼレンスキーは、大統領に就任してすぐ私たちをロシアに売り払ったのです」と、キエフ在住のヴァレンティナ・セメノビチ(Valentina Semenovich)弁護士は、当アルジャジーラの取材に対してこう答えている。

 

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動画。「マリウポリの現状を語るニコライさん」。市民たちがネオナチのアゾフ連隊が犯した罪を告発

動画。「マリウポリの現状を語るニコライさん」。市民たちがネオナチのアゾフ連隊の犯した罪を告発

<記事原文 寺島先生推薦>
Video: Mariupol: “Nicolay Knows”. Civilians Denounce the Crimes of the Neo-Nazi Azov Regiment

Global Research 3月23日

クリステル・ナン(Christelle Néant)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月29日


 2022年3月20日、私たちがマリウポリの南東の郊外にあるサルタナ村付近で人道支援活動を行っていた際、マリウポリから避難してきたばかりの多くの人々に出くわした。この人々は、ロシア軍とドネツク人民共和国軍の侵攻のおかげで避難できたのだ。その中の一人のニコライ(Nikolay)さんがカメラ取材に応じてくれ、ネオナチのアゾフ連隊が住民たちに行った犯罪行為について話してくれた。ニコライさんの証言については、マリウポリから何とか逃れることができた他の人々が本当であると確認してくれた。

 最後の救援食料と赤ちゃん用のおむつを届けたのはサルタナ近くの村で、それは私たちの人道支援部隊が訪れた5番目の村だった。そこに滞在していた家から出てきた一人の男性が、私たちに話しかけてきた。のちに、この男性は最近マリウポリから避難してきたばかりだということが分かった。彼はマリウポリで3週間恐怖の日々を過ごしてきたとのことだった。

 私はこの男性にマリウポリの産婦人科病院や劇場で起こったことについて知っているかどうか聞いてみた。これらの施設の件については、西側メディアが最近大きく報じていたことだったからだ。すると驚いたことに、この男性ニコライさんはそこで起こったことを知っていた。ニコライさんは自分の目で、その産婦人科病院が軍事施設や射撃場に変えられるところを目撃したそうだ。そしてそれを行ったのはアゾフ連隊(ニコライさんはアゾフ大隊のことをいまだにこう呼んでいた)の兵士たちだったとのことだった。ニコライさんは、その病院は別の場所に移されて、元の場所では医療活動は行われていなかったと明言した。

 さらにニコライさんの話では、マリウポリの劇場でもロシア軍の爆撃による破壊などは全くなく、劇場を吹き飛ばしたのは、アゾフ連隊の兵士たちだった!とのことだった。

 ニコライさんとのインタビュー動画を英語字幕付きでご覧ください。



 ニコライさんはさらに話を続け、ウクライナ軍の兵士たち(正規軍であれ、ネオナチのアゾフ連隊であれ)は市民たちをマリウポリから外に出さないようにしていた、と語った。ニコライさんの話によると、ウクライナ軍兵士たちは、マリウポリから避難しようとしていた車の列に発射したそうで、その時の死体はまだ市民たちが車を運転していた高速道路上にそのままにされているとのことだった。

 ニコライさんのこの話については、アンナ・ニュース社の私の同僚たちが聞いたほかのマリウポリを出た市民たちの証言(英語字幕あり)からも裏がとれている。

 ニコライさんは最後に寒気のするような事実を話してくれた。それはニコライさんの17歳の姪がアゾフ連隊の兵士たちが砦にしていた地下室にあやうく引き込まれそうになったことについてだった。ニコライさんによると、小さい女の子たちも含まれる複数の若い女性たちが、ウクライナのネオナチにその地下室に連れていかれることがあったとのことだ。ニコライさんは強姦については口を濁した。それは話をしている時、近くに子どもたちがいたからだった。しかしニコライさんはただこう言った。「あの娘たちがあいつらからどんな目にあわされたか、みんな知っている」と。

 ニコライさんのこの証言を聞いて、私は他の人たちのことを思い起こした。囚人交換の際にドネツク人民共和国から解放された囚人たちが私に個人的に話してくれた内容によると、マウリポリでは若い女性たちが姿を消された、つまり、ネオナチ戦士たちに強姦されたのちに、処刑された、ということだ。

 私の仕事仲間のローレント・ブレーヤード(Laurent Brayard)による2016年初旬の取材では、ネオナチ大隊の監獄で虐待を受けてきた元囚人の一人は、他の数人の囚人たちが、強姦された後、突如消えてしまったことについて詳しく話していた。

 この手口は、SBU(ウクライナ保安庁)が「図書館」という名前の有名な秘密刑務所で使った手口だ。この刑務所はマウリポリ空港の地下にある。この件については、元囚人のユリア・プロソロバ(Yulia Prosolova)さんが明らかにしている。

 マウリポリ空港はドネツク人民共和国の民兵隊の手に落ちたばかりだ。(この情報は、西側メディアによる“マウリポリでのロシア軍の進撃は止まり、撤退さえしている”という報道を覆すものだ)。マウリポリ空港の掌握により、元囚人たちが告発していた無数の証言を捜査し、証拠を集めることができるようになった。なお、ウクライナ保安庁の元工作員のバシリー・プロゾロフ(Vasily Prozorov)さんも刑務所の件について同様の証言を行っていた。

 今のところマリウポリ市街の50%はロシア軍とドネツク人民共和国民兵隊により掌握されている。その中には鉄鋼圧延会社のアゾフスタール社の工場も含まれている。つまり両軍の侵攻は持続しているということだ。これはウクライナによるプロパガンダや西側「メディア」が言っていることとは真逆だ。

 さらに北部においてドネツク人民共和国民兵隊が手中におさめているのは、マリンカ、ヴェルフニエタレツコエ、スラブノエだ。さらにカメンカ、ノヴォセロヴカⅡ、アウディーイウカでは掌握を目指す戦闘が続いている。

 新たに解放された地域では、市が電気やガスや水の供給の復旧に向けて全力で取り組んでいる。ドネツク人民共和国内で紛争が落ち着いた16の地域では電気が復旧している。具体的には、スタロマリエーフカ、グラニトノイエ、ノヴォセロヴカ、アンドレイエフカなどだ。さらにガスについては11の村で復旧している。パブロポル、ボウガス、ノボグナトフカ、ニコライエフカ、ドンスコエなどだ。

 さらにヴォルノヴァーハでは、ドネツク人民共和国は病院の修復を始めている。その病院はウクライナ兵たちにより射撃場として使用されたのち、破壊されていたものだ。できるだけ早期に稼働できるよう修復が進められている。

 ルガンスク人民共和国の民兵隊は、カリノヴァ・ポパスノイエ、ステプノエ、ヴォグスラスカイエを掌握している。

 ウクライナ兵士たちが市民の社会基盤施設を使用していることはドンバス地方以外でも記録されてきた。例えば、ドローンで撮影したロシア軍発表の映像には、キエフから輸送されたウクライナの複数のロケット発射台が、弾薬庫!に変えられた元ショッピングセンターで給油されているところが映されていた。その元ショッピングセンターは、ロシアのミサイル攻撃により破壊された。

 市民が撮影した他の動画を見れば、ウクライナの兵士たちがショッピングセンターをこのように軍の目的で使用していたことがはっきり分かる。(この動画には市民が撮影することをとがめるようなコメントが付けられている。テレグラムの投稿から取ったスクリーンショットの下の方に書かれたコメントにはこうある。“これがSNS上で我が国の軍施設の動きを投稿すべきではない理由のひとつだ”と)。

 現在ウクライナメディアでは、記者やゲスト専門家たちがどれだけロシアをバカにするかのお披露目コンテストでもやっているかのようだ。ファクフロディン・チャラフマル(Fakhroudine Charafmal)記者は、アドルフ・アイヒマン(Adolf Eichmann:ナチスドイツの親衛隊員)を引き合いに出し、自分がロシアを破壊するためにロシア人の子ども達を殺すことも厭わないという発言までしている。(しかしこの発言を理由にTV局を首になることもなく、行き過ぎた発言だったと謝罪しただけで済んでいる)。その後も、ウクライナの「メンゲレ医師(Mengele doctor:ナチスドイツ下の医師)」とでも呼ぶべきグエナディ・ドロウツェンコ(Guennady Drouzenko)が、(同じTV局で)こんな発言までしている。「私は戦場の病院にいる部下の医師たちに、ロシア兵たちを去勢するよう命じました。なぜならロシア人というのは人間ではなく、退治すべきゴキブリだからです」と。(英語字幕付きの動画はこちら)

 ロシア連邦捜査委員会がグエナディ・ドロウツェンコに対して捜査を開始した後、このウクライナの「メンゲレ医師」は感情に流された発言をしてしまったと発言を取り下げ、捕まえたロシア人兵士たちに去勢手術を課す命令を行ったことは否定した。

 ウクライナのTV局でナチス的な発言が堂々と行われている中、西側メディアは恥知らずの嘘つき合戦を展開している。例えばAP通信は、マウリポリには報道記者は一人もいないと報じているが、フランスのテレビ局のTF1局のエリック・テグナー(Éric Tegnér)と私はロシア人記者やイタリア人記者やフランスのラジオ局RFI局のクリストファー・ミラー(Christopher Millerと)共にマウリポリに赴いていた。なおミラーは、ロシア防衛省が出した声明を曲げて報じ、防衛省がマリウポリから避難しないすべての人々を裁判にかけると脅していると思えるような報じ方をしていた。しかし実際は、その脅しはマリウポリの行政当局にむけられたものであった。というのも行政当局は市民を助けるために何の手立てもしていないからだ。

 ウクライナにおけるロシア軍の侵攻についての情報戦はますます狂気を帯び、偽情報の報道が続けられている。(ロシアメディアのサイトをハッキングしている場合もある)。これらの偽情報は間違いなく反駁されなければならない。期待されることは、マリウポリの戦闘ができるだけ早く終息することだ。市民たちの苦難を終わらせることだ。市民たちはいまだにネオナチのアゾフ連隊の兵士たちによりマウリポリ市内に閉じ込めさせられている。
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マリウポリの劇場爆破は、ウクライナのアゾフ過激派がNATOの介入誘導のために仕組んだのか?

マリウポリの劇場爆破は、ウクライナのアゾフ過激派がNATOの介入誘導のために仕組んだのか?
<記事原文 寺島先生推薦>
Was bombing of Mariupol theater staged by Ukrainian Azov extremists to trigger NATO intervention?

The GRAYZONE

マックス・ブルメンタール-2022年3月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月27日


 欧米メディアは「ロシア軍はウクライナのマリウポリにあるドネツク学術地域劇場を意図的に攻撃した」と報じ、さらに「そこには民間人がたくさんいて敷地内には「子供」と書かれた標識もある」と述べている。

 爆撃とされるものは、ちょうどウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が米国議会に飛行禁止区域の設定を訴えたときに起こったのだが、その爆撃によってロシアとの直接軍事対決を求める声が高まっただけでなく、ジョセフ・バイデン大統領がロシアのプーチン大統領を「戦争犯罪人」と決めつけるきっかけともなった。

 しかしよく状況を見てみると、3月16日の事件の3日前にマリウポリの地元住民は、この劇場が建物とその周辺地域を支配している公然たるネオナチ「アゾフ大隊」による偽旗攻撃の場になるのではないかと警告していたことがわかる。

 人道回廊を通って脱出した市民は、その場所でアゾフによって人間の盾として拘束されていたが、アゾフ戦闘員が退却する際に劇場の一部を爆発したと証言している。ロシアの大規模な空爆で建物が灰になったという主張にもかかわらず、すべての市民は命からがらだったが脱出したようだ。

 劇場への攻撃の映像は、本稿執筆時点ではまだ見ることができず、破損した建物の写真のみがある。ロシア国防省は、同劇場への空爆を否定しており、同劇場には軍事的価値がなく、3月16日に同地域で空爆は行われなかったとしている。

 ウクライナでのロシアの軍事行動はマリウポリの人道的危機を引き起こしたが、ロシアが劇場を標的にしても何も得られなかったことは明らかだ。ところが、ロシア民族を含む民間人でいっぱいの建物を標的にしたとなると、ロシアが事実上、悪評判という打撃をさらに受けることは確実だ。

 一方、アゾフ大隊は、ロシアがやったとされる劇的で悲惨な攻撃から利益を得る立場にあった。その戦闘員はマリウポリ周辺から完全に撤退し、「脱ナチス化」に躍起になっているロシア軍の手で残忍な扱いを受ける可能性に直面しているので、彼らの唯一の希望はNATOの直接介入を誘発することにあるように見える。

 同様の絶望感がゼレンスキーが議会で行った綿密に練られた演説用台本にも感じられた。彼はマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの 「私には夢がある」 の演説を引き合いに出し、苦しんでいる民間人を描いた沢山の制作ビデオを再生して飛行禁止区域の必要性を訴えたのだった。

 ウクライナ政府は、ロシアの悲惨な戦争犯罪に対する欧米の人々の怒りを煽ることで、ロシア軍と直接対決することに躊躇するバイデン政権を動かす圧力をかけることを明らかに狙っている。

 しかし、キエフのこれまでで最も感情的な主張―ロシアが劇場内でうずくまっている罪のない子供たちを故意に爆撃したという主張は、マリウポリ住民の証言や、建物への偽旗攻撃を明確に予見させるテレグラムメッセージが広く閲覧されたことによって打ち消された。



2015年、アゾフ大隊が運営するサマー・キャンプで軍事訓練を受ける子どもたち

マリウポリで絶望を深めるアゾフ大隊の戦闘員、欧米の軍事介入を懇願
 
 南東部の戦略的な港湾都市マリウポリは、2014年からアゾフ大隊に押さえられている。その掌握以来、超国家主義準軍事の政治・軍事拠点としての役割を担ってきた。そしてその間、ドネツク離脱共和国の親ロシア分離主義者への攻撃を行っていた。

 2013年から14年にかけてのユーロマイダン・クーデターで、デモ隊に街頭活動をさせた極右活動家たちから集められたアゾフ大隊は、内務省によって正式にウクライナ国家警備隊に編入されている。この大隊は、公然とファシストを組織するアンドリー・ビレツキーによって創設されたもので、彼は「世界の白色人種を率いて、セム人主導の劣等人種(Untermenschen)に対する最後の聖戦を行う」と宣言している。

 アゾフの戦闘員は、ナチスに影響を受けたWolfsangel(狼用かぎ針)のシンボルをユニフォームや旗に付けていて、そのイデオロギー的目標を隠すことはない。アゾフはFBI米国議会、そして自らの戦闘員によってネオナチ部隊と認定され、数々の卑劣な人権侵害に関与してきたにもかかわらず、米国とカナダの軍事訓練指揮官と公然と協力してきた。

 このアゾフをプーチンはマリウポリの基地をウクライナの「脱ナチス化」キャンペーンの最前線としてマークし、彼らがドンバスのロシア系民族を絶滅させようとしていると非難している。2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、同市は激しい市街戦の場となり、ロシアの特殊部隊とドネツク人民共和国の民兵軍が、アゾフの陣地に砲撃を浴びせながらブロック単位で支配権を争う戦いを繰り広げている。

 3月7日、マリウポリからアゾフ大隊のデニス・プロコペンコ司令官がカメラに映り、緊急メッセージを英語で発表した。アゾフの公式YouTubeチャンネルで公開された映像の中でプロコペンコは、時折聞こえる砲撃音の中で、ロシア軍がマリウポリの住民に対して「集団虐殺」を実行していると宣言した。

 プロコペンコ司令官は、西側諸国に対して「ウクライナ上空を最新兵器で支援する飛行禁止区域を作る」ことを要求した。プロコペンコの訴えから、アゾフの立場が日に日に危うくなっていることは明らかだった。

 2022年3月第2週、ロシア軍がアゾフの陣地を急速に縮小させるなか、アゾフの兵士は、マリウポリのドネツク学術地域劇場の衣装ホールに高齢の民間人や女性、子どもを誘導したようだ。

 3月11日に薄暗い建物内で撮影されたビデオでは、地元の男性が「1000人の市民が中に閉じ込められている」と訴え、脱出のための人道的な回廊を要求している様子が映し出されている。しかし、ビデオに映っていたのは、ごく一部の民間人たちだけだった。

 「私はこんなことはやめてほしいと言ってるんです。住民を、そして女性、子供、負傷者を避難させる通路を与えてください」と眼鏡をかけた男性が(下の写真)がビデオの中で訴えている。

3月11日、マリウポリの劇場前。アゾフの兵士(左)が地元の男性とともに現れた。

 ロシアが侵攻を開始して以来、アゾフ大隊の兵士がマリウポリから市民が出るのを阻止する様子が撮影されてきた。準軍事的な検問所を突破しようとする男性を車から無理やり連れ出し、残忍な暴行を加えることさえあった。多くのマリウポリ住民の証言を信じるなら、アゾフは彼らの多くを人間の盾として使っていたことになる。



マリウポリ劇場事件の数日前、偽旗 「挑発」の恐ろしい警告

 3月12日、恐怖のメッセージが流れた。ロシアの新聞「コムソモリスカヤ・プラウダ」のマリウポリ特派員、ドミトリー・ステシェンによるテレグラム・チャンネルでの報告だった。

 ステシェンによると、地元住民は、マリウポルのトルコ製モスク「カヌニ・スルタン・スレイマン」へのロシア軍の爆撃は「トルコを戦争に巻き込む」ための偽旗だと言い、今度はマリウポルの劇場への偽旗攻撃が迫っていると警告したという。

 テレグラムのメッセージは次のようなものであった。

 「マリウポリの読者が送ってくれたものを見てください。もしその情報が検証可能であれば、(メディア向けに)強調する必要があります」。

「ゼレンスキーはマリウポリで2つの[偽旗]挑発を準備しています!!!! その一つは、アクメトフが建てたモスクに隠れていたトルコの市民に対するもので、この挑発は、ニジニャーヤ(下)キルボカの[ジンステヴァ]バルカの位置から、モスクの敷地を砲撃するウクライナの砲兵によって、すでに開始されています。ゼレンスキーは、EU、米国、英国をロシア連邦との戦争に引きずり込むことができませんでした。今、ゼレンスキーはトルコを戦争に引きずり込もうとして、爆発的な感情的性格と、信者が神聖な神社に感じる愛に望みを託しています」。

 ステシェン記者が伝えるマリウポリ住民からの警告は、48万人以上のテレグラムユーザーに見られている。そのメッセージは以下の通りである。また、こちらから(リンク先)でも見られる。



 3月12日、AP通信などの西側メディアは、マリウポリのトルコ式モスクがロシアによって砲撃され、子供を含む80人の民間人が中にいたとするウクライナ政府の主張を繰り返して報じた。

 一方で、トルコの国営メディアは、ウクライナ政府は欧米の記者に間違った情報を与えていると指摘した。カヌニ・スルタン・スレイマン・モスクは完全に無傷だっただけでなく、ロシアの砲撃を一度も受けていないのだ。

 モスクの協会長であるイスマイル・ハシオグル氏は12日、トルコのアンダルー通信に「私たちのモスクは無傷のままだった」と語った。

 マリウポリの劇場にはまだ民間人がいっぱいいて、次に狙われる標的になっていた。



AP通信 (上) はマリウポリのモスクに関するウクライナ政府の主張に全面的に依拠し、トルコのメディア (下) はモスクのトップにインタビューした内容を掲載した。報道内容は真逆である。

ゼレンスキーが議会に軍事介入を懇願する最中に、劇場襲撃のニュース

 マリウポリのモスクをロシアが攻撃したという誤情報が論破されたことが伝えられてから48時間足らずで、ようやく街の周辺に人道回廊が開かれるようになった。何千人もの市民がロシア軍の陣地に向かって飛び立ように逃げたことで、飛行禁止区域を強制するためにマリウポルの住民を担保に取っていたアゾフ大隊はさらに弱体化することとなった。

 3月16日、ロシアの猛攻でアゾフの軍が崩壊する中、有名なコメディアン俳優でもあるウクライナ大統領ゼレンスキーはビデオに登場し、驚愕する米国議員たちの前で、入念な台本と演出でプレゼンを行った。

 「私には夢があります。これは今日、皆さん一人ひとりが知っている言葉です。私はそれが必要だと言えます。私は空を守る必要があるのです」とゼレンスキーは訴えた。ウクライナ大統領は、アメリカで最も尊敬されている反戦活動家キング牧師の最も有名な言葉を引用して飛行禁止区域の必要性を訴えたのだ。それは核武装したアメリカとロシアの軍隊を直接対決を引き起こすことになりかねないものだった。

 そのゼレンスキー演説からわずか数時間後に、ロシアがマリウポルの劇場を空爆したというニュースがアゾフ大隊の報道部から直接届いた。

 アゾフの報道部門は、他の報道機関が存在しないところで、攻撃を受けたとみなされる現場の情報を独占して、そこで破壊された建物の写真を世界中のメディアに流した。

 下の画像の右下には、「アゾフ大隊」の透かし文字がはっきりと確認できる。この写真はSky Newsなどの国際的な報道機関に再掲載されたが、そのときには準軍事組織のブランドは切り取られていた。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙がこの画像を掲載した際には、この透かし文字は取り除かれ、「AP経由アゾフ大隊」と信じさせた。



 事件に関するウクライナ政府の説明を英語メディアが初めて大衆に伝えた人物の一人が、キエフを拠点とする米国で手解きを受けたイリヤ・ポノマレンコ記者であった。彼はロシアによる侵攻が始まって以来、100万人以上のツイッターフォロワーを集めることに成功していた。




 ポノマレンコはそのときキエフ・インディペンデント紙に勤めていたのだが、この新聞はウクライナにおけるアメリカの最も強力な情報兵器の一つとして機能してきた。この新聞は、アメリカの情報機関から切り離されたNED(国家民主主義基金)と、EUから資金提供を受けているEED(欧州民主主義基金)からの「緊急助成金」の援助を受けて設立されている。

 彼について言えば、ポノマレンコはアゾフ大隊のことを「戦友」と呼び、「敵陣」の近くで戦闘員と一緒に「いまひと休みしてるんだ」と自慢げに語っている。

 マリウポリからのニュースに触発されて感情の渦に巻き込まれたかのように、ジョセフ・バイデン大統領はロシアのプーチン大統領を「戦争犯罪者」「殺人独裁者」「純粋な凶悪犯」と非難し始めた。

 次にヒューマン・ライツ・ウォッチはどうなっていたかと言うと、このNGOは「ロシアの攻撃でマリウポリ劇場が打撃を受け、数百人が避難」 というタイトルを付けたにわか作りの記者発表を発表した。億万長者が支援しているこのNGOは、襲撃後にマリウポリの住民への聞き取り調査を行っていないことを認め、ロシアの責任を示す証拠は提示していない。事実、このNGOがロシアを犯人と名指しした唯一の情報源は、ウクライナのドネツク州知事だった。

 ロシア軍は、血に飢え、政治的に破壊的だったで、子どもたちで埋め尽くされていることで知られる建物を意図的に標的にしたのだろうか? それとも、マリウポリ住民が4日前から予測していたように偽旗作戦が実行されたのだろうか?

疑わしき兆候、ウクライナ政府の物語のボロが出始める

 アゾフ大隊は現場での功績を撮影する上品ぶった記者団を自慢し、兵士たちはソーシャルメディア上で自分たちの最も本当のものとは思えない陳腐な動画さえ公開しているが、劇場爆破の映像はどこにも見つからなかった。

 アゾフがウクライナ国内外のメディアに提供する写真には、必ずと言っていいほど、爆撃されたマウリポリの劇場は写っているが、人の姿は、生きているか死んでいるかに拘わらず、映っていることはない。

 空爆の前日、3月15日、マリウポリの劇場前で軍人の男性たちが写真に収まっていた。女性の姿はどこにも写っていない。男たちは、建物の側面に荷台を置き、劇場の敷地を横切って大きな物を運び、モミの木を切り倒している様子が写っている。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチの劇場事件に関する報告書によると、攻撃後に集められた地元の証言はなく、男たちは 「直火で食べ物を調理し、バケツで水を集めていた」と書かれている。

 下の写真にあるように、翌日、爆撃された場所と同じ場所に荷台などが積まれていた。





 劇場はひどい損傷を受けているように見える。ポノマレンコ記者はそれについて「ロシアが建物を爆撃して灰にしたんだが、死者は一人も出なかった」と述べている。

 「奇跡だ」とキエフ・インディペンデントの記者はほほえんだ。



 ABCニュースは3月17日、7分間にわたってニュースと政治的コメントを織り交ぜながら、劇場から市民は全員救出されたが、「まだ何百人も行方不明だ」と訴えた。ウクライナのウィキペディアのページで再現されている控えめな大きさの劇場のデータでは、最大収容人数は680人であり、その地下にどうやって「数百人」を収容できたのかは疑問である。

 さらにABCは、劇場はロシアの砲撃によって攻撃されたと報道し、ポノマレンコや他の多くの人々が主張しているような「ロシアの空爆」ではないと主張した。

 一方、ウクライナのメディアは、この事件に対して混乱を表明している。地方放送局0629は、劇場にいたとされる1000人の市民が謎の失踪を遂げたことについて、攻撃とされる前日にザポロジェ市に避難したと説明を試みたが、「公式の検証情報を待っているところであり、結論を急ぐべきではない」とも述べた。

 マリウポリの住民がロシア軍の人道回廊を通って市外に流出するにつれ、逃げ惑う市民に対するアゾフの冷酷な攻撃、そして地元の劇場での大規模なごまかしについての証言が出始めた。

 「(アゾフ兵が)去るとき、彼らは劇場を破壊した。」

 3月17日、ある若い女性がアブハジアン・ネットワーク通信社(ANNA)にマリウポリ市内の状況について、告発的な証言をした。

 「アゾフの戦闘員は、私たちの後ろに隠れていただけです」と彼女は記者に語った。「私たちは彼らの人間の盾だったのです。彼らは、私たちの周りのすべてを破壊し、私たちを外に出さなかったのです。私たちは15日間、地下室で子供たちと一緒に過ごしました...彼らは私たちに水も何も与えませんでした」。

 アゾフ大隊が地元の防空壕の前に戦車を置いたことについては、その女性は次のように説明した。「アゾフ大隊が去っていくとき、彼らが劇場を破壊したんです。榴散弾を持った人たちが運ばれてきたのよ」。


 アゾフがマリウポリの市民を人質にしているという証言に多くの避難民が賛同し、人道回廊を通って脱出する際には銃撃を受けたとも語った。

 「彼らはすべてを燃やしたのよ」とある老女はロシアのメディアに語った。「あの人たちは私のアパート全体を爆撃したのよ...。彼らは押し入り、今そこに座って火炎瓶を作っているのよ。私は中に入って自分の物を取りたかったんですが、あの人たちは私に言いました。「だめだ、おまえに用はない」って」。

 「誰があなたを襲って家に侵入したんですか」と聞かれたとき、その老女は「もちろん、ウクライナ人よ」と答えた。


 マリウポリからの脱出後にANNAの記者に呼び止められた男性は、涙をこらえながら、ウクライナ軍の陣地を指差した。「アゾフ、あのクソ野郎ども...みんなは避難しようとしたのに...アゾフは...みんなを処刑したんだ...化け物、カス野郎だよ...奴らは銃撃したんだ、バスごと撃ち殺したんだ...」。

 マリウポリから逃れた別の男性は「ウクライナ軍がわたしたちに発砲してきたんだ、人に向かって撃ってきたんだよ」と語った。「私たちの家に向かってだよ」。

 別の避難者は語っている。「ウクライナ軍はおれたちを街から出させなかった。足止めされてたってわけだよ。やつらは言うんだ、ウクライナ軍がやってきて、ロシアが人道回廊を開いたら、おまえたちはどんな状況であっても街から出ることはできないんだ。おまえさんたちはずっと人間の盾になるんだよ、って」。



レッドライン:シリアからの教訓

 マリウポリのドネツク学術地域劇場への爆撃は、地元住民が主張するように、NATOの介入を誘発するためにアゾフ過激派が実行した偽旗攻撃だったのだろうか。もしそうなら、ウクライナ政府が西側諸国を紛争に引き込むために行った利己的なペテンは、これが初めてではないし、これが最後でもなさそうである。

 劇場で事件が起きた3月16日、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は「ロシアが化学兵器、つまり大量破壊兵器を使用する可能性があるという現実的な懸念を持っている」と言明した。次の瞬間、ブリンケン氏はシリアを指さし、「我々は彼らが(化学兵器を)使用するか、使用を黙認するのを見た」と主張したのである。

 オバマ政権が「レッドライン」政策を実施したのはシリアだった。この政策は化学兵器による攻撃は自動的に米国の軍事的対応の引き金になると宣言するものだったが、これは、米国にダマスカスへの介入を強要するために、外国の支援を受けたシリア反体制勢力によって行われたと思われる一連の事件の舞台を設定した。

 2013年8月21日、ダマスカス郊外のグータで最悪の事件が発生した。明らかに反乱軍の支配地域と見られるところからサリン入りのロケット弾が複数の場所に撃ち込まれ、数百人の市民が死亡したのだ。するとオバマはシリア政府を非難して空爆の準備を始めたのだが、その後にシリア政権幹部がある情報をリークしたた。それは、ダマスカスを非難する情報は「スラムダンク」と呼べるほど確実な情報ではないというものだった。実はこの「スラムダンク」という言葉は、イラク戦争前夜にCIAが「イラクは大量破壊兵器を持っている」ことの確実性を表すために使われたものだった。ジャーナリストのセイモア・ハーシュは、その後、米国はグータで反乱軍の罪を指摘する重要な情報を集めていた報告した。ハーシュは、この情報によって、オバマがいわゆる「レッドライン」を放棄するように説得されたと報告している。

 ドナルド・トランプ大統領の下で、米国は2017年と2018年に化学兵器疑惑をめぐってシリアを空爆し、「レッドライン」を復活させようとした。しかし、いずれのケースでも重要な証拠からは、反政府勢力によって行われた自作自演の事件だったと指摘されている。2017年4月のカン・シェイクフンの事件の場合、トランプは情報を無視してシリア軍への空爆を開始した。そして、翌年のダマスカス郊外のドゥーマでは、OPCWの調査員は化学物質攻撃の証拠を発見しなかったが、米国当局が同組織に圧力をかけ、共倒れにしようとしたため、調査結果を加工・検閲させたのである。

 元米国中東大使がジャーナリストのチャールズ・グラスに語ったように、「"レッドライン "は偽旗作戦への公然の招待状だった」のである。

 マリウポリの劇場に対するロシアの攻撃という怪しげな疑惑は、バイデン政権のレッドラインを発動させることに失敗した。いま問題なのは、ウクライナ政府が、自軍の敗北を食い止めるために必要な飛行禁止区域の設定にどこまで踏み込むかだ。
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いま何が起きているのか―ドルを破壊する経済制裁、女装して逃げるウクライナ軍

<記事原文 寺島先生推薦>
In Case You Care to Know What Is Really Going On
原題:いま何が起きているのかを知りたいのなら

ポール・クレイグ・ロバーツ

2022年3月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月28日

プーチンが注目を集めつつある

https://sputniknews.com/20220323/wests-move-to-freeze-russian-reserves-signals-its-defaulting-on-obligations-before-moscow-putin-1094117649.html
 プーチン、エネルギーにルーブル払いを指示

https://sputniknews.com/20220323/wests-move-to-freeze-russian-reserves-signals-its-defaulting-on-obligations-before-moscow-putin-1094117649.html


 しかし、彼はまだ道半ばである。

 プーチンはいつになったら、ロシアの債務不履行が、ロシアの資産を差し押さえるための適切な対応だと気づくのだろうか。 ロシアが西側諸国からもう1セント借りるには、極めて愚かでなければならないだろう。したがって、なぜ外国からの借金の返済を続けることによって、外国からの借入れへのアクセスを保護するのだろうか? 欧米はすでにロシアのお金を盗んでいるのだから、ロシアは債務から手を引くべきだ。ロシアが契約したのは最高級の戦略的失敗だったのだ。
https://www.rt.com/business/552511-imf-us-dollar-reserve-currency


ラヴロフも注目を集めつつある

 「これはすべて、一極集中型世界構築の途上でロシアという障害を取り除くためのものです...これはウクライナについてではなく、世界秩序について言っているのです。そこでは米国が唯一の主権者となり支配することを望んでいます。」

 「ポーランドの同僚はすでに、NATOサミットが開催され平和維持軍が派遣されるべきだと発言しています。私は、彼らが自分たちが何を言っているのかを理解することを望みます。これでは、誰もが避けたいと思っているロシアとNATOの軍隊の、まさに直接的な衝突となってしまうからです。」

 「アメリカは、このプロセスを早く完了させるならば、彼らにとって利益がないという事実からことを進めています。彼らはウクライナに武器を送り続けることを期待しているのです。」

制裁は世界通貨としてのドルを破壊している

 IMFは指摘する。ワシントンによるロシアの外貨準備の違法な差し押さえが、世界の決済システムに「ますますの断片化」を引き起こし、一部の国のドル離れを引き起こしていると。

ロシアの同盟国に対するワシントンの影響力を破壊する制裁措置

 アナトリー・チュバイは、大西洋統合主義の排泄物であるが、持続可能な開発のための大統領補佐官の職を辞し、ロシアから逃亡した。

 厄介払いできたとロシアは語る。

 チュバイはエリツィン時代にロシアを西側に売り渡したロシアの裏切り者だ。 彼は何百万人もの人々を貧困に陥れ、少数のオリガルヒと西側諸国がロシアの資産を押収するのを助けた。 誰も理解できない理由で、プーチンは彼をより低い地位に遇して、銃殺することはなかった。

女装して逃げようとする「勝利のウクライナ軍」

 以下のURLでウクライナのナチスの姿が見られる。米国国防長官によると、ロシア軍を撃破する寸前の写真である。

https://sputniknews.com/20220323/ukrainian-forces-caught-attempting-to-leave-mariupol-dressed-in-womens-clothing-video-1094115798.html

馬鹿なアメリカ人は正義よりも人種的な優遇を優先する

 最高裁はすでに冗談のようなものだ。今や、彼らはそれを笑いものにしようとしている。裁判所の信用を落とすことは、行政府に対する司法の抑制を取り除く彼らの方法である。 専制政治への新たな跳躍だ。

https://sputniknews.com/20220323/poll-majority-of-americans-say-senate-should-confirm-jackson-to-us-supreme-court-1094125450.html

米国防長官にはウクライナにおけるロシアの敗北が見える

 無能で愚か者バイデンが任命した国防長官は、ロシアのウクライナ侵攻は勇敢なウクライナ軍によって阻止されて、ロシアは軍隊を木材粉砕機に投入しており、すぐに兵士が足りなくなると述べた。国防長官の発言は100%ファンタジーである。

 ウクライナは、ロシアが設定した飛行禁止区域である。ロシア軍が到着する前に、ウクライナのレーダー、飛行場、軍事インフラは海軍と空軍とともに破壊された。

 ウクライナ軍の残党は孤立し、包囲されている。部隊は通信手段を持たず、攻撃行動をとることができない。

 米国が支援し武装したネオナチ民兵は、人口密集地に陣取っており、プーチンが助けようとした民間人を盾にして、町や都市を爆破し、西側の報道陣がロシアのせいにしようとしている。 人口密集地が破壊され、市民はネオナチによって殺されているので、ロシアが重火器使用による市民へのリスクを避けるという方針を維持する理由はない。

 ウクライナは黒海から遮断される。プーチンがウクライナに領土を返還するかどうかはまだわからない。ロシアがまた実ることのない善意を示しているからだ。実際、現時点ではウクライナに有効な政府は存在しない。ロシアは非政権との交渉に時間を費やしているのだ。
 
 ロシア軍が活動していない西ウクライナのNATO基地が精密兵器で破壊された。犠牲者の中には、西側から供給された兵器の使い方をウクライナ人に教えていた米国と英国の軍人と諜報員も含まれている。ロシアは、NATO加盟国が紛争に巻き込まれた場合、何が待ち受けているかを明らかにしたのだ。

 本当の謎は、西側諸国の政府高官や報道機関は、空想の報道で何を達成しようとしているのか、ということだ。 西側諸国は、ジョージ・オーウェルの『1984年』のように、存在しない戦争で勝利を主張するところまで来ているのだろうか?

 集結したロシア軍の一部だけが戦闘を行っている。残りはNATOの介入に対処するために待機している。
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西側諸国がプーチンを嫌う理由

西側諸国がプーチンを嫌う理由
<記事原文 寺島先生推薦>
Why the West Hates Putin?

ポール・クレイグ・ロバーツ

2022年3月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月27日

 プーチンは、もはや欧米には存在しない古い意味でのリベラル派である。彼は、紛争を暴力で解決するのではなく、外交的に解決する法律と協定のネットワークを維持することを信じている。政府はエリートの経済的利益ではなく、国民に奉仕すべきであると考えている。 宗教は社会的結束の重要な要素であり、社会が依存する道徳的行動を支えるものであると信じている。 彼は、自分の信念を実行する上で、ワシントンと親欧米的なロシアの指導者層から制約を受けている。 そのため、プーチンは不満と怒りに満ちている。

 プーチンの考えは、今日の西洋でリベラリズムとみなされるものと大きく対照的である。 欧米のリベラル派は、白人と男性に対する人種的、性別的な憎しみを教えている。 西側リベラルにとっての道徳とは、男性が女性であると宣言し、女性のスポーツに参加することができるというような「トランスジェンダーの権利」を擁護することである。 欧米のリベラルは、性別の代名詞の使用を抹消することで、言語の情報的内容を減らすことに積極的である。 リベラルは宗教を戦争や迷信の原因とみなしている。 このように、リベラル派はプーチンを憎む理由をたくさん持っている。 しかし、これらはプーチンが嫌われる主な理由ではない。

 欧米はさまざまな層で構成されている。自分の頭で考えることができない普通の人々は、CNNやFox Newsを見て、NPRを聞き、NY Timesを読んで、戦争プロパガンダのシナリオに洗脳されているからプーチンを憎んでいる。 彼らの中の愛国的な保守派は、自分たちの政府がプーチンを憎んでいるから憎み、国旗を振ることで愛国心を示している。アメリカ大統領がロシア大統領を「戦争犯罪人」「殺人独裁者」「純粋な凶悪犯」と呼ぶのを聞くと、彼らも同じようにするのである。

 普通の人々は物語を吸収してしまう。 憎しみは、その物語を構築した人々に由来している。 西側の知識階級がプーチンを嫌うのは、彼が国民主権を信じているからである。 西側諸国では、国民主権はナチス・ドイツと結びつけられている。欧米の政治家は、トランプとマリーヌ・ルペンを除けば、国境開放に賛成である。ヨーロッパ諸国は、同化しない移民侵略者が国境を越えることを容認し、実際に奨励してきた。 アメリカもカナダも同じだ。 実際、アメリカのリベラル派は、移民侵略者からアメリカの国境を守ることは、市民権侵害であり、人道に対する罪であると考えている。プーチンがロシアの主権を守ることは、ヒラリー・クリントンが彼を「新たなヒトラー」と烙印を押した理由である。

 欧米の支配層と知識層は、世界経済フォーラムに代表される極端な形態を含むグローバリズムに傾倒しており、そこでは支配者以外は、不承認によって割り当てられた収入から切り離される奴隷のようなものである。 グローバリズムは、国民主権の対極にある。 プーチンが嫌われるのは、主権とグローバリズムが矛盾しているからである。

 欧米の理解はこうだ。マリーヌ・ルペンやトランプに浴びせられる憎悪―しかし、これをプーチンが理解しているかどうかはわからない。彼は、グローバリズムを国家間の共同作業と考えているようだ。この考え方はプーチン独特のものであり、グローバリズムの実態ではないことは間違いない。グローバリズムとは、世界的なシステムを動かしている政府(ワシントン)に主権を犠牲にすることなのだから。

 プーチンは、ワシントンの覇権主義とグローバリズムの邪魔をしている。ロシアは中国やアジアの大半の国と同盟を結んでいるので、ワシントンの覇権主義的なグローバリズムの課題を実行することは不可能だ。ワシントンがロシアを排除するのは、ワシントンのアジェンダの履行を制約するからだ。

 ミンスク合意を支持しないワシントン、NATOをロシアの国境に移動させないという公約を守らないワシントン、ロシアの安全保障上の懸念を認めないワシントン、ロシアとの戦争のためにウクライナ軍に心理作戦、制裁、武器、訓練を奨励するワシントンは、最近のカザフのカラー革命未遂やグルジアでの現在のNATO軍事演習と同様、ワシントンのロシア攻撃の主軸となるものだ。

 ロシアの指導者は、欧米がロシアの不安定化を意図していることを理解するのも、直視するのも極めて遅かった。 ロシアの指導者は、ワシントンが資金提供するロシア国内のメディアや組織が政府に対して扇動するのを容認することで、ロシアの不安定化を助長してきた。 どうやら、騙されやすい指導者は、あらゆる意見を許容し、民主主義にコミットしている証拠として、反逆を受け入れなければならないと考えていたようだ。

 ロシアが行ったただひとつの正しいことは、西側にはない、機能する軍隊を作ったことだ。 ウクライナはロシアにとって、西側諸国を威嚇し、挑発行為を停止させる機会であった。 しかし、ロシアは西側の受け取り方に常に気を配っており、その機会を逸してしまった。ロシアはドンバスのロシア人を救出することには成功するだろうが、さらなる挑発が待ち受けている。西側の政治家たちが西側の人々の中に作り上げたロシア人に対する憎しみは、西側の政府に対してその国民が制約を与えないことを保証している。

ウクライナにある米国の生物化学兵器研究所

 ウクライナには米国から資金援助を受けた一連の生物化学兵器研究所がある。今回それがロシア軍によって発見されたのだが、ビクトリア・ヌーランド米国務次官の議会での証言でその存在が認められた。

 この生物化学兵器研究所が発見されたことで、私は5年前にこのテーマで書いた記事を思い出した。

https://www.paulcraigroberts.org/2017/11/01/washingtons-barbarity-reaches-new-heights/

https://www.paulcraigroberts.org/2017/11/03/collection-russian-dna-us/




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ドンバス難民を支援するボランティアが戦禍にあった人々に明るい光をもたらす


ドンバス難民を支援するボランティアが戦禍にあった人々に明るい光をもたらす

<記事原文 寺島先生推薦>
Volunteer Helping Donbass refugees shine a light on the human cost of war

RTはロシアとウクライナの戦闘地域からの避難民に生活必需品を届けるボランティアチームに同行した。

RT 2022年3月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月28日


 国連の推定によると、ここ数週間で250万人以上の難民がウクライナから避難しているとのことだ。これはロシアの軍事侵攻によるものだが、クライナから大量の避難民が出るのはここ10年で2度目のことだ。一度目は2014年のキエフでの「マイダン騒動後」に起こったものだ。この騒動の後、西側諸国に支援された勢力が民主的に選ばれた政府を転覆させ、ロシアによるクリミアの再併合が行われ、ドンバスでの激しい内戦が始まることになった。
当時、騒乱から逃れようとするほとんどの人々が目指していたのは。ロシアとポーランドだった。彼らは目的地を民族や政治や伝統の志向に基づいて決めていた。しかし今回、難民たちが目指している地域は圧倒的にEU諸国だ。ただしロシアやドネツク人民共和国やルガンスク人民共和国を目指している人々も相当数いる。この両共和国は先月(2月)にロシアにより国家として正式に承認された。
その両共和国では、人々は宿泊所や食事や医療の供与を受けている。しかし戦火にある町や市にいるすべての人が避難できているわけではない。ドンバスの前線のすぐ背後で進めなくなり、苦しんでいる人々もいる。これらの人々は、自分の町での爆撃や戦闘を生き抜いた後、破壊された生活に直面させられている。新しい政府当局により、もとの基本的な生活環境が復旧している地域もあるが、僻地で救助の手をまだ必要としている地域もある。ボランティアが赴くのはそのような地域だ。そこに人々が必要としている生活用品を届けに行くのだ。

 RTはドミトリー・プロトニコフ(Dmitry Plotnikov)に依頼し、TYL22ボランティアチームと共にマリウポリに同行させてもらった。ドミトリーさんは自身の目でドンバス住民が大きな心の傷を抱えながらも、元の生活に戻れる努力をしている姿を目撃した。

 マリウポリはロシア国境から約50キロのところにあるアゾフ海岸に或る大きな都市だ。マリウポリよりも大きなドネツクの約100キロ南に位置している。2014年以降、ドネツクは事実上ウクライナ政府の管理下からは脱している。この地域の戦闘は激しい。それはドネツクが戦略的に重要な位置にあり、ネオナチのアゾフ大隊のような超国家主義者のウクライナ戦士の本拠地になっているからだ。
ボランティアの朝は早い。その日どこに行くことになるかは朝の時点では全く分からない。前線近くの状況や軍の動きにより変わってくる。詳しい情報がもらえるのは出発の直前だ。


 指令によって、移動する前にいくつかのことをしないといけない。まずすべきことは車をみつけることだ。例えば。マリウポリ近郊からベジメノエに行くのであれば普通の乗用車で大丈夫だ。しかしヴォルノヴァーハ地域に行くのであれば、SUVやバンを見つけないといけない。道路状況が悪いからだ。次の仕事は運転手を見つけることだ。戦争にかり出されている人もいれば、避難してしまった人もいる。さらには前線近くに行きたがらない人もいる。車を失ったり、車が壊れたりするのをおそれてのことだ。もっと悪いこと(例えば死)を想定して断る人もいる。

 今回はマリウポリの郊外に行くことになった。道路はそんなに悪くないのでどんな車でも行ける。次にすべきことは物資を集めることだ。TYL22ボランティアチームの調整係のタチアナ・クルグロバ(Tatiana Kruglova)さんは長い買い物リストを手にしている。いくつもの食料品店や薬局にいかないといけない。ボランティアが買い物を終わらせるのに何軒も店を行き来しないといけないこともある。或る人々に指定された物資を届けること。それが主な仕事だ。

 新しい場所に初めて行くときは、タチアナさんは最小限の物資を持って行くことにしている。水や、食料や、個人的な衛生用品などだ。このような物資はきっと必要となる。到着してから、一人一人に話を聞いて回り、それぞれが必要な物資をメモする。
それぞれの町や都市の状況によって、必要とされる物資は変わってくる。ヴォルノヴァーハ付近はまだ地元の人々が地下室で暮らしているので、必要となるのは食料や飲用水や暖かい衣服だ。ベジメノエでは、すべての避難民には一時的な宿泊所が用意されているので、必要となるのは個人の衛生用品や薬品類だ。

 タチアナさんはそれぞれの人が必要としているものを届けようとしている。タチアナさんによると、政府当局や主要機関はそれぞれの地域の実情をあまりよく把握できていないので、送ってくる物資は基本的な人道支援物資に限られてくるとのことだ。そうなると、あるものは不足しているのに、あるものは余ってくるという状況が生まれてくる。これが、人道支援物資がヤミ市に回される状況の原因となっているというのだ。リストに書かれた物資にチェックを入れながら、スイーツやお茶やコーヒーや使い捨ての皿や食器やタバコやペットフードを購入していく。医療従事者の要求に応じて、薬局に行って注射器や簡易解熱剤や鎮静剤を手に入れる。避難民には薬品類を集中して届けるような措置もでているが、いつも引く手あまただ。さらに血糖測定器も購入。これはベジメノエの学校に置かれた一時宿泊センターから求められたものだ。

 タチアナさんによると、国が支給している人道支援物資では基本的な物資が賄われ、ボランティアが担当しているのは、それぞれの避難民が必要としているものに対する対応だとのことだ。例えば珍しい薬品を入手したり、親類を連れてきたり、伝言を伝えることなど。「基本的には、緊急事態対応省は食料と宿泊所を提供し、ボランティアは、家が破壊されたせいでなくしてしまったのと同じおもちゃを子どものために見つけてあげることなんです。この仕事も大事なことですよ」とタチアナさんは語った。
  
 「人々の生活をちょっとだけ改善できるこんなことでも、試練を乗り越えてきた人々にとって些細な喜びを与える助けになるんです。ボランティアとはこの先の道を照らす光のような存在なんです」 TYTボランティアチーム、タチアナ・クルグロバさん談。

 避難民は数え切れない問題に直面している。徒歩で戦闘地域をくぐり抜けなければならなかった人もいる。ほとんど着の身着のままの状態で。爆撃のせいで家や財産を失った人々もいる。ドネツク人民共和国にはATMはないので、多くの人々は預金をウクライナの銀行に預けたままだ。

 さらに供給網も脆弱だ。村落地域の方が状況は悪い。村落地域では、お金をもっていたとしても、買えるものがない。店や薬局は空っぽだ。医師たちは爆撃のせいで患者の診察ができない。ちょっとした痛み止めや解熱剤さえなくなっていて、もちろん慢性病の治療薬などない。

参考記事

Under the Wolfsangel: The uncomfortable truth about radical ideologies in Ukraine


 ヴォルノヴァーハへ向かう途中、私はタチアナさんにモスクワを離れ急いでドネツクに来た理由を聞いた。「他の人が行けないところに行けるからです。そして何よりも大事なことは、私はすべてを文書に残したいのです。人々のことを映像に残したいんです。聞いた話を書いておきたいんです。そして利用できるメディアなら何でも使って、世界中にここで起こっていることを伝えたいんです」とタチアナさんは語った。

 タチアナさんによると、この紛争で影響を受けたすべての人々は、力強く、感動的な逸話を持っていて、そのような逸話はいつまでも人々の心に残る、ということだった。個人的な話かもしれないが、これらの逸話は核心をつくものだ。戦闘地域から避難した人々の話や、けがをした地元の人々の話や、家を破壊された人々の話や、生活がズタズタにされた人々の話は、核心をつくものだ。

 「(少なくとも大部分の)ボランティアはかなり頭がいかれてます」とタチアナさんは笑いながら言った。タチアナさんの話では、ボランティアはいつも喜んで記者たちでも入っていこうとしないようなところに入り込みたがるし、ボランティアが書いた記事を読んだら軍でも後ずさりするようなところへも入って行こうとするそうだ。「その地域でまだ報道されていないところに記者が入り込んでみたら、既にそこにはボランティアが入り込んでいて、人々を支援したり助けたりしていた、なんてことはよくあることなんです。」

 最初に車を止めたのは、ヴォルノヴァーハの病院だった。そこは援助をあまり必要としていなかったが、数日前タチアナさんはマリウポリから逃げてきた数人のけが人と会っていて、その人たちと再会を約束していたそうだ。

 トランクから急いでスイーツを取り出して、手術室に行き、タマラ・イヴァノヴナ(Tamara Ivanovna)さんに面会する。彼女はソピン出身の年金受給者だ。タマラさんの家は爆撃で破壊され、頭に重症を負った。何事もなかったかのような口ぶりで、タマラさんはその爆撃に驚いたという話をしてくれた。まるで食料品店に買い物に行ったときの話のように。

 「私は顔の右側が血だらけになってあそこに立っていたんです。近所の人たちははじめ私だと分からなかったくらいでした。でも私は幸運でした。爆弾の破片が私の頭皮をはぎ取りました。骨が見えるくらいだったんです。でもずっと続くような障害はなかったんです。一番大事なのは、まだ両目があることです」。タチアナさんはこう言った。「タマラさんは自分のけがの心配よりも、爆撃で逃げていった飼い犬や飼い猫のことを心配していました」
止むことのない戦闘がマリウポリの外で暮らす人々に取って日常のことになってしまった。射撃、爆発、友人や家族の死。こんなことが、ショックで、おそろしいことだったのは過去のことになってしまった。今や人々はこれらの悲劇を日常生活の中のこととして受け止めている。

 病院に重い荷物を置いてマリウポリに向かった。まだまだすべきことはある。

 ベジメノエの一時宿泊施設は数日前よりもずっと混雑していた。ここにドネツク人民共和国の民兵隊がマリウポリ郊外の占領地からの避難民を連れてきていた。ここに長くとどまるひとはほとんどいない。


 より長期に滞在できるところを求めて、ノヴォアゾフスク地方のリゾート地やレジャーセンターから来ている人々もいる。ドネツク人民共和国内の親類の家で住むことを選ぶ人々や、ロシアに行こうとしている人々もいる。

 ここが血糖測定器を運ばないといけなかった場所だった。ここの医師たちが不満を述べていたのは、十分な測定器がないことだった。

 ここで私はビクトリア(愛称はビカ)さんと出会った。ビカはマリウポリ郊外から家族とともに避難してきた女の子だった。ビカは私たちのところに走ってきて、タチアナさんに暖かいハグをした。ビカが一番気になっていたのは、家においてきた犬たちのことだった。「あの子たちをここにつれてきてくれない?」とビカは頼んだ。タチアナは正直に、「約束はできないけど、ビカの家の方に向かっている兵隊さんに頼んでみるわ」と言った。

 ビカにはもう一つお願いがあった。それを言うとき少し恥ずかしそうにしていた。それは化粧品セットだった。タチアナさんは今度もってくると約束した。

 「こんなことしても意味がないじゃないって言う人もいるかもしれません。生死の問題に晒されている人に、化粧品だなんて。でも私は思うんです。子どもには安全な場所が必要だって。昔のことを思い出せる何かが必要だって。普通の暮らしのことを思い出せる何かが。だから私はビカに化粧品を届けます。なかったら自分でお金を出します」

 ビカは私たちにこの一時宿泊施設にいる多くの人を紹介してくれた。自分たちが困っていることを打ち明けるのをためらっている人々もいた。それは、このような状況では自分たちの話が些細なことに思われると考えてのことだった。緊急事態対応省が食事や寝袋を既に供給してくれている中、他に何を頼めるというの、という雰囲気だった。しかしビカのおかげで人々は自分が必要なものをボランティアに打ち明け始めた。ビカはとても説得力のあることばを言ってくれた。「ボランティアの人たちはみんな優しいよ」と。タチアナさんは人々のすべての要求を書き留めた。タチアナさんは、万一自分がここに戻って来れなくても、メディアを使って、他のボランティアの人にすべてのものを送ってもらうことを約束した。


 
 私たちに話しかけてくれた人の中に、マリウポリの東にあるサルタナ村出身のロマンさんがいた。ロマンさんは妊婦だった妻と共に避難してきた。まもなく出産する妻はドネツクの病院に搬送されなければならなかった。すでにロマンさんのところに吉報は届いていた。二人目の父になった。今度は娘だ。名前はビクトリアに決めた。

 ロマンさんがタチアナさんに依頼したのは、妻に伝言を伝えることだった。今ロマンさんには伝える手段がないからだった。この宿泊施設はこの地で使えるSIMカードをもうすぐくれると約束してくれているが、まだ届いていなかった。タチアナさんはメモを取って、「奥さんの好きな花は何ですか?」と聞いた。ロマンさんは照れ隠しのために「チョコレートケーキか果物のほうが喜ぶかも」とふざけた。

 タチアナさんがロマンさんに聞いたのは、カメラの前で話をしてくれるかどうかについてだった。そうすればもっと多くの人が戦闘地域で生き抜くとはどういうことかを知る機会になる、と。最初ロマンさんは断ったが、すぐに話がとまらなくなった。ロマンさんはすべてを語ってくれた。止むことのない砲撃、自分と妊婦である妻と子どもが冷たい地下室で隠れていた様子、ウクライナ兵がサルタナから安全に避難することを遮っていたことも。ロマンさんが話を止めたのは、この一時宿泊施設に連れてこられたときの話になったときだった。ここでロマン一家の生活はとまってしまったからだ。

「私はいろいろな体験をしてきたし、本当に助けを必要としているのは誰なのかも分かっています。この人たちの話や、この人たちが喜びを感じる些細な瞬間が私に生きる力をくれるのです。この人たちは、私が諦めたくなった時に、自分の進む道が正しいことを示してくれるのです」- TYTボランティアチーム、タチアナ・クルグロバさん談。

 避難してきた人々が滞在している場所で最も恐ろしいことは、何が起こっているのかが全くわからなくなっている感覚だ。さらにはこの先どんな運命が待っているかが全く見えない状況だ。ここにいる人々は自分の人生を自分で決めることができず、できることは何もないと考えているし、何かを変えたりすることは不可能だと思っている。

 だが、人々と話をすることで、幾分か人々のショックを発散してあげることができる。20分話した後、ロマンさんはある計画を思いついていた。ロマンさん曰く、「僕はけがをしていないのだから。戦争が終わったら破壊されたものを再建する手伝いができます。この国のすべての都市や町や村を再建する手伝いが」



 もう一か所行かなければならないところがあった。それはベジメノエ郊外の新しくできたテント村だった。そこで非常事態対策省の人々ともに薬品類が入ったカバンを置いていき、次回の訪問の際に届ける物資を聞く必要があった。さらにお茶、コーヒー、プラスチック製の皿、食器類をテントの住民たちに渡さないといけなかった。毎日新たに訪問する人々がたくさんいるので、手に入れたものは何でもすぐに使うことができる。共和国当局は状況に追いつけていないようで、できる限りのことをしようと努力していたが、いつも課題にぶち当たっている。例えばあるところで歯磨き粉はたくさんあったのに、歯ブラシが全くなかった。そんなこともある。

 大きな軍事用テントの中の住民たちが、家を捨てないといけなくなった話や、ベジメノエにたどり着く道筋でどんなことに耐えてきたのかについての話をしてくれた。私たちに会ったとき、一番最初に人々が聞いてくるのは、最新ニュースはどうなっているかについてだった。マリウポリやその郊外には情報を伝え聞く手段がここしばらくずっとない状態だ。このテントの住民たちはマリウポリ出身ではない。ほとんどは近辺の町や村から来た人々だ。ドネツク人民共和国の民兵の使命は、戦闘地域から地元の人々を避難させることだ。人々が安全な町や村に入れるようになればすぐにその使命を行っている。

 一人の女性が私たちに話してくれたのは、女性と夫が兵士たちの手から逃れて、どうやってマリウポリからベジメノエに来たかについてだった。「私は65歳ですが、こんな景色は今まで生きてきて見たことがありません。映画でもです。でもこの町全体で起こっていることから見たらここの様子などほんの一片のことなんでしょうね。いったい全体何が起こっているのかすべてが分かっているわけじゃありませんから」

ドネツクに戻ってきた時は既に暗くなっていた。私はこの記事を書き始めた。タチアナさんにはもっと大事な果たすべき任務があった。それはロマンさんの奥さんに送るチョコレートケーキを探して届けることだ。直ぐにタチアナさんはロマンさんを再訪するだろう。何が起こってもおかしくない前線付近に赴く。しかしタチアナさんは約束を守るため、喜んでその長い道のりに乗り出すだろう


関連記事

「突然の、コロナ危機終結」VS「突然の、ウクライナ戦争勃発」

「突然の、コロナ危機終結」VS「突然の、ウクライナ戦争勃発」
<記事原文 寺島先生推薦>
“Sudden Death of Corona Crisis” Versus “Sudden War with Ukraine”
By Peter Koenig
Global Research, March 20, 2022

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月26日



 ある日突然、優先順位が変わった。国連や政府、そしてメディアの公式な優先順位が、である。コロナが消え、戦争が始まったのだ。そして、私たち国民はそれを信じなければならない。すべてが変わった。この2年間、息を潜めていたコロナが、突然、何事もなかったかのように消え去り、まさに一夜にしてその場所に戦争が入り込んでしまったのである。核戦争にエスカレートする危険性のある戦争 - 彼らはそう言っている。ロシアがウクライナを攻撃し、核兵器を使用する可能性があり、それによってNATOも核ミサイルで報復するような戦争だと。これは西側メディアが描くシナリオである。

 "ロシアの侵略戦争" これが西側の一般的なシナリオである。悪役は突然、ロシアに移ったのだ。

 誰もどのように、そしてなぜと尋ねないようだ。

 この戦争に先立つ動機、背景、歴史を問う者はほとんどいないようだ。

 世界的な、少なくとも西側の信念を決定するのは、またしてもメディアなのである。

 クラウス・シュワブ(WEF)は、人類の知性を否定する次のような声明をいくつか発表している。



 "何も所有しなければ、幸せになれる"とか、最近のものでは

 "大きな魚が小さな魚を食べるのではなく、速いものが遅いものを飲み込むのだ。"

 これらの発言には、人間に対するある種の蔑視が感じられる。

 人類の多くがまだ眠っている限り、現状は幸福であるという幻想の中でまどろんでいる限り――つまり、ある種の認知的不協和の中で生きている限り、彼の話には一理あるのだろうか。

 欧米の10億ドル、10億ドルの資金を使ったメディアの嘘のプロパガンダの下では、目を覚ますのは簡単ではない。代替メディアにアクセスできる私達は、まだクラウド・ナイン(至福の状態:ダンテの『神聖喜劇』の中ではthe ninth heavenが神に一番近く、いちばん幸福であるとされた)に住んでいる人たちが、光を見ることができるよう手助けをしなければならない。

 実際、そうすることが私たちの道徳的な義務であると、私は強く信じている。彼らを助けるだけでなく、世界がより良い場所、一体感や連帯感のある場所、光のある場所になるよう手助けをすること。

 そう、私たちはクラウス・シュワブや、彼が代表を務めるWEFという道具に打ち勝つのだ。

挿入話 アンデスの農民との出会い

 先日、ペルーのアンデス山脈に住む農民の男性と興味深い話をした。彼は世界情勢をよく知らないのに、ヨーロッパでの戦争について質問してきた......。

 私は、いつものように熱心に西側と東側のことを説明した。彼はじっくりと話を聞いてくれた後、こう言った。

 「この人たちは本当にかわいそうな人たちですね。彼らは暗闇の中にいて、光を見たいと思っているが、その方法が分からないのです。彼らは私たちの憎しみを糧にしています。それが彼らのエネルギーになっています。私たちが彼らや彼らの行動を憎めば憎むほど、彼らは光を見ることができないので、より繁栄するのです。もし私たちが彼らに同情し、哀れみを感じ、実際に彼らを好きになれば、彼らを暗闇に閉じ込めているエネルギーを取り除き、彼らが光を見て昇るのを助けることができるかもしれません。そして、その人たちが光に向かっていくのを助けることができるかもしれません。」

 そして、「憎しみの代わりに愛を持って世界中に送るエネルギーは、私たちには見えない巨大な力を持っており、いつどこでそれが発露するかはわかりません。しかし、それは決して失われることはありません」と締めくくった。

 そして、彼は私と握手をして、去っていった。

 この短い幕間に、私は畏敬の念を抱いた。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」の歌詞にある、私たちを支配しようとする闇の力を描いた、隠された物語を思い起こさせた。この賢者は、おそらくシャーマンであり、彼の波動は私たちとは意識の異なる次元で揺らいでいる。私たちの多くは、なんという困難にさいなまれているのだろう。しかし、乗り越えられないことではない。

 より高い次元で振動し、憎む代わりに愛するためには、何が起こっているかを知り、理解し、目と耳を開き、大きな利害関係者が私たちを支配しようとしていることを認識する必要がある。このことを理解すれば、私たちは恐れから解放され、賢者の助言に従うことができるようになる。

ウクライナにおける戦争の恐怖。恐怖の拡散

 今回の戦争の恐怖がコロナの恐怖に取って代わるものであるということが偶然の一致だと思う人はいるだろうか

 それとも、何か別の理由があるのだろうか?巧妙な計画か?コロナと同じ目的、つまり国連アジェンダ2030の追求か?

 私たちが理解しなければならないこと:地政学に「偶然」はない。あるのは計画と戦略、そして短期、中期、長期の目標だけである。つまり、コロナが世界の舞台から消えることはなく、戦争が突然世界の舞台に登場することもないのである。

 マンリオ・ディヌッチによれば、こうだ。

「米国の対ロシア戦略計画は、ランド社によって3年前に練り上げられた(マニフェスト『ランド社:ロシアを崩壊させる方法』2019年5月21日)」とある。詳しくはこちらをご覧ください。

 コロナも戦争も――どうやら――同じ目的を達するための道具である。複数の目的を持った道具、一方では恐怖を広げ続けること――実際に「核の恐怖」で人々の恐怖とパニックレベルを高めれば、恐怖に満ちた人々は容易に操ることができる。

 そしてもう一つは、戦争によって、世界の人口と母なる地球をその資源ごと完全に征服しようとする、闇に浸された寡頭政治家の本当の意図を隠すための新しい戦略がもたらされることだ。

 そう、忘れてはならないのは、私たちは彼らのことをかわいそうに思うべきであって、憎んでいるのはいけないということだ。ただ、彼らの計画がどのようなものであるかに注意する必要があるだけなのだ。

 ウクライナと「悪いロシア人」に注目が集まる中、WHOはすべてをコントロールする特別なアジェンダを準備しているのだ。それは国連加盟国に対する健康に関するあらゆることについて実際に国家主権を覆すような権限をWHOに与えることになる。私たちはこのことを事実として知っている。この事実の前には愉快な「真実調査団」も沈黙するだろう。こちらこちらをご覧ください。

 光は徐々に世界の舞台、「人民の舞台」への道を切り開いている。

ウクライナの米国生物研究所

 今までに、ウクライナには米国が資金提供している約30の生物兵器研究所があり、そのほとんどがカテゴリー3に分類される危険レベルであることが分かっている。(しかしこのことはすべて米国政府と西側メディアによって激しく否定されている)。

 この否定が嘘であることは複数の真実調査団員によって確認されていたが、数日前、なんとその嘘は他でもない国務省によって突然否定された。

 数日前、フロリダのマルコ・ルビオ上院議員は、ビクトリア・ヌーランド国務副長官にたいして、ウクライナにある20以上の生物研究所に関して上院委員会の前で証言するように求めた。多くの聴衆が驚いたことに、ウクライナ紛争の専門家であるヌーランド夫人は、米国がウクライナにある「研究所」に実際に資金を提供しており、米国はそれらがロシアの侵略者の手に渡ることを恐れていたことをルビオ上院議員に認めたのである

 ヌーランド女史は、ジェフリー・パイアット米国大使とともに、2014年2月22日にキエフで起きたマイダン・クーデターの工作に貢献した(BBCによるこのヌーランド――パイアット通話記録を参照)。

 ヌーランド:よかった。クリッチは政府に入るべきではないと思う。その必要はないと思うし、いいアイデアとも思えない。

 パイアット:そうですね...彼が政府に入らないという点は、そのままにしておいて、政治的な宿題などをやらせればいいのでしょう。ただ、今後のプロセスとして、穏健派の民主党議員をまとめたいと考えているんです。問題はティアニボック(オレ・ティアニボック、もう一人の野党指導者)と彼の仲間たちです。これは(ヴィクトル)ヤヌコヴィッチ大統領も打算していることのひとつでしょう。

 ヌーランド:ヤツェニク(訳注。マイダン騒動後にウクライナ首相になった人物)は経済的な経験も 統治の経験もある男だ。彼は...彼は、クリチコとティアニボックは外に置いてほしいだろう。彼は週に4回、彼らと話をする必要がある。クリチコはヤツェニクのために働いているようなもので、うまくいくわけがない。

 パイアット:ええ、その通りだと思います。OKです。よかった。次の段階として、ヤツェニクとの電話を設定しましょうか?

 ヌーランド: 前の電話では私の理解では.....(間違っていたら言ってね)。ビッグスリー(ヤツェニク・クリチコ・ティアニボック)がまず3人だけで会議をして、その中でヤツェニクが私を入れた3プラス1会談、あるいはあなたも入れた3プラス2会談を提案するつもりだったということだったかしら。そうだったかしら?

 パイアット:そうですね.. ヤツェニクが提案したことなんですが、3人の力関係でいけばクリチコが一番上なので、会議の内容に関係なく、クリチコが少したってから登場して、クリチコが残りの二人に話しかけるという形になるでしょう。ですので、あなたが先にヤツェニクに手を伸ばしておけば、3人の話し合いの雰囲気もうまくもっていけるだろうし、この件に関してあなたが早く動けることにもなるでしょうね。だから前もってヤツェニクに話をしておくことで、なぜヤツェニクが二人を内閣に入れるのを嫌っているか話をしてくれるのではないですか?

 ヌーランド OK、よかった。このやりかた気に入ったわ。ヤツェニクに連絡を取って、その前か後に話したいかどうか聞いてみてはどうか。

  パイアット: わかりました、そうします。ありがとうございます。

 ヌーランド: OK...あなたにもう1つ言いたいことがあるわ。今朝、ジェフ・フェルトマン(国連政治問題担当事務次長)と話したとき、ロバート・セリーっていう国連職員のこと言っていたこと、今朝あなたにメールしたっけ?

 ヌーランド:ええ。セリーと(国連事務総長の)潘基文の両者に、セリーが月曜か火曜に来れるよう同意をとりつけてくれたそうよ。そうすれば、国連がこの問題を解決する手助けになるわ。EUなんて役立たずの糞食らえ!よ。

生物研究所の詳細

 ヌーランドが生物研究所の存在を認めたニュースが報じられた後、数週間にわたって「真実調査団」はヒステリックにその否定に奔走していた。もちろんビクトリア・ヌーランドは、いつものように「ロシアが嘘つきだ」という話で逆に自分の話を強調してしまった。したがってワシントンはこれらの研究所を武装解除するための行動を考慮しなければならなくなった。その数時間前には、これらの研究所が存在するという事実が、インターネット上から消えていた。

 上院のルビオ-ヌーランド公聴会の詳細については、2022年3月9日のフォックス・ニュースのアナリスト、タッカー・カールソンの記録と、タッカー・カールソンの実際のビデオ分析をご覧ください。

 これらの内容は「偽真実調査団」を論破するものだ。

キエフが計画したドンバス攻勢

 2022年3月9日、タス通信は、ロシア国防省が2022年1月22日にウクライナ国家警備隊長ニコライ・バラン大佐が作成・発行した「秘密計画」を入手したとするニュース速報を発表した。――キエフ政府は2022年3月初旬にドンバス地域のドネツク(DPR)とルガンスク(PRL)人民共和国への攻撃を計画していたようである。詳しくはこちらをご覧ください。

 この情報に基づいて、ウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相は、2月24日、主にロシア系住民約410万人をキエフの新たな攻撃から救うために、ウクライナへの介入を決定したようである。

 2014年2月22日に西側の米国/NATO/EUが組織したマイダンのクーデター以来8年間で、14000人近いドンバス市民がキエフの侵略によって殺された。約200万人がドンバスから逃げ出し、そのほとんどがロシアへ向かった。

 忘れてはいけないことは、WEFとその操縦者たちが、より大きなアジェンダ、すなわち国連のアジェンダ2030を持っているという事実だ。 - 従って、この連中がこの機密文書を「用意」して、タイミングよくロシア侵略を促し、コロナ騒ぎの幕引きに利用したと考えられなくもない。ただしKGBの工作員だったプーチン氏は諜報活動の背景に精通しているので、ロシアはドンバス共和国に対するキエフの差し迫った攻撃について、いわゆる「リーク」された秘密文書には頼らず独自に新しい情報を得た可能性も高い。

 ロシアはウクライナへの介入について、(1)ウクライナを非武装化し中立国にする、(2)ウクライナを非ナチ化する、(3)NATOはウクライナに決して入らず、さらにNATOは1997年以前の地理的線まで引き揚げることを西側に明確に約束させる、という三つの目標を掲げている。これらの目標は、1991年のソ連崩壊時に、新生ロシアに対する「連合軍」との間で交わされた合意の一部であり、後に2014年9月5日のミンスク協定で確認されたものでもある。

 この合意は守られることはなかった。1998年と2022年のNATOとの地図をご覧ください。

 さて、欧米や世界のメディアは、核戦争、文字通り第三次世界大戦のシナリオを「警告」している。確かに、これは起こりうるが、ロシアが挑発する可能性は低い。

 ヨーロッパを含む西側帝国は、崩壊が差し迫っていることがますます明らかになってきている。この崩壊の始まりの間、帝国は瀕死の獣のように行動し、可能な限り世界を排水溝へ引きずり込もうとするかもしれない。そうなるかもしれないが、私はそうはならないと確信している。危機に瀕しているものがあまりにも多いのだ。少なくともヨーロッパのかなりの部分が壊滅的な打撃を受けるだろうからだ。

 第三次世界大戦のリスクはさらに低下するかもしれない。大規模な戦争、つまり核戦争が起これば、手に負えなくなり、アジェンダ2030――グレートリセットの主要目標が完了するとされている2030年――の達成を阻害するかもしれないからである。繰り返そう。

 i)大規模な人口削減 ―― そう、第三次世界大戦はこの目標に貢献するだろうが、生き残りのエリートが自分たちの目標を推進するために必要とするかもしれない、重要で、計算できない、重要なインフラを破壊することになるだろう。

 ii)下層階級や中層階級、特に中小企業の倒産からトップ層への巨大な資本と資産の移転、広範な失業、悲惨、飢餓、死の発生。

 iii)あらゆるもののデジタル化。これには、現金の終焉と、完全にデジタル化された貨幣、貨幣取引、商業の台頭、ビル・ゲイツのアジェンダID2020の実施、今日すでに至る所にあるQRコードの形が含まれる。QRコードは、人々の日常生活にどんどん浸透しているが、誰も特に気にしていないようだ。

 QRコードは毒である。QRコードは文字通り無限のデータ保存能力を持つ。銀行口座、健康記録、犯罪記録、あなたの一挙手一投足を網羅するため、すべての人の一挙手一投足を完全に監視することが可能になる。 

 悪いことをすると、銀行口座が閉鎖されたり、(一時的に)ブロックされたりして罰せられるかもしれない。ロボットやAIが、最初は手作業、次に知的な仕事を徐々に引き継ぎ、人間やトランスヒューマンを排除し、穀潰し人間たちを排除していくかもしれない。

 残酷に聞こえますか?

 でも、それが計画なのだ。グレート・リセット計画。

 そんな計画が実現してしまうのだろうか?―― 楽観的に考えれば、そうはならない。人間の力学と精神的能力、そして連帯と主権的思考があれば。そして何よりも信じたい。人類は光に向かっているということを。人類はより高い意識で行動するものだという可能性を。人類は憎み合うのではなく、愛し合う存在だということを。手を携え合うことが世界中で熱望されているということを。グローバル化ではなく国民国家の主権を。そして何より各国貨幣を大事にするということを。もちろんデジタルではなく現金貨幣を

 冒頭で述べたアンデスの賢者の話を覚えていますか。彼が語った愛と慈しみと平和についての話を。
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キエフ政府が自国の主権を考え、国の将来を前向きに考えて「降伏」、つまりロシアの軌道に再び乗ることを決めたらどうなるか

ウクライナに光が差し、主権は回復するだろうか。交渉こそ、その解決策。

<記事原文 寺島先生推薦>

Will Ukraine See the Light, Restore its Sovereignty. Negotiations are the Solution


Global Research

2022年3月1日

ピーター・ケーニヒ(Peter Koenig)

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月26日



 戦争は決して紛争を解決するための手段にはならない。悲惨さと罪のない人々の殺戮をエスカレートさせるだけだ。しかし、西側諸国はロシアを非難するとき、次のことを忘れて偽善者ぶるべきではない。アメリカが直接または代理人を介して、イラク、アフガニスタン、イエメン、シリア、リビア、ユーゴスラビア、ハイチ、ソマリア、ベトナム、その他多くの国に、いわれのない侵略を行い、破壊したときに、西側諸国はそれを容認し、場合によっては支援もし、良くて沈黙した。

 2014年2月22日(民主的に選出されたウクライナ大統領とその政権に対する、米国が組織したマイダンのクーデターと大虐殺)以来8年間、米国とNATO主導の西側の執拗な侵略を受け、モスクワの玄関口にさらに別のNATO基地を設置するという有無を言わさぬ脅迫を受けて、ロシアは自衛のために戦っていると言えるのかもしれない。

戦争は問題解決にならない。では何が?交渉の積み重ねだ。

 プーチン大統領は何度も会談や交渉を提案し、ロシアの条件を提示してきたが、まず最もシンプルなのは、ウクライナにNATOの基地を一切置かないということだ。バイデン現米国政権も、これまでの政権も、このシンプルな条件を拒否してきた。

 ロシアがメキシコや中米の国々、あるいは、絶対にありえないことだが、カリブ海に軍事基地を設置することを想像してみたらいい。

 2014年2月に血なまぐさいマイダン色革命を組織した以外に、西側はウクライナのために何をしたのだろうか。何もしていない。

 西側諸国は、旧ソビエト共和国の中で最も豊かなこの国を、西側諸国とNATOの目的のために利用・悪用する以外には、ウクライナに関心を持つことはなかったのだ。モスクワの玄関口に近づくために、ウクライナの敷地内に一つまたは複数のNATO基地を建設し、天然資源の非常に豊かなこの国とその肥沃な農地を食い物にしようとしてきた。

 今回の危機をきっかけに、ウクライナの真の指導者たちは、明るい光を目にし、NATOとの結びつきから脱却し、政治的な独立を主張するようになるかもしれない

 8年間も欧米に虐げられてきたのだから、じっくり考えてみれば、そうする理由は決して突飛なものではないだろう。 

 ウクライナはソ連のBred Basket*と、だてに呼ばれたわけではない。

Bred Basket*・・・Bread Basket(パンかご、穀倉地帯)とBred Basket(育児かご)をかけていると思われる


 ウクライナをロシアの玄関先に置くNATOの重要拠点とするほかに、ヨーロッパの食糧供給や鉱物などの天然資源開発のための領土としても使えるかもしれないのだ。

 「西側」に属することは、ナチス的な要素が組み込まれたキエフ政府にとって容易なことのように思われた。

 将来的にはEUの一員となり、それまではNATOによって邪悪なロシアから守られることになる。

 マイダンのクーデター以来、大多数のウクライナ人はますます貧しくなり、ますます借金漬けになり、ウクライナ全体も同様で、西側の嘘と約束にますます依存し、それによって主権がますます失われていった。

 欧米は8年間、ウクライナを利用してロシアを挑発し、ロシアを脅し、ウクライナ国内では特に東部のドンバス地方、ドネツク州(人口200万人)、ルハンスク州(人口150万人)を脅してきた。この両州をあわせてドンバス地方というが、ウクライナ全人口(4165万人、2021年)の約8%を占めている。ドンバス地方の人口の90%以上がロシア人である。


  2014年の西側が計画し実行したマイダンのクーデター以来--- 米国務副長官ヌーランド(Nuland)女史の "F*ck the EU"発言を記憶されているだろうか?---- ドンバス(ドネスクとルハンスク)はナチスに支配されたキエフ政府からの独立を宣言した。しかし、ドンバスの独立は誰も認めなかった。2022年2月22日、プーチン大統領はドゥーマ(ロシア議会)を通して、ドンハスをキエフ政府から独立したものとして正式に認める決議を採択した。

 これは結局、人命救助のための行動だった。西側NATO諸国はウクライナを武装させ、「技術的軍事顧問」を提供した。すべては西側自身の目的のためで、2014年2月に西側が主導したマイダンのクーデターを許し、それを後押しした後、ロシアによって切り離されたウクライナの住民を助けることはなかったのである。ロシアの介入は、ウクライナ政府がドンバス地方をミサイルとロケット弾で攻撃し、何人もの死傷者を出したことに対する当然の帰結だった。

 何度も警告を発し、キエフとの対話に失敗したロシアは、2月24日、ウクライナの「非軍事化」を目的とした「特別軍事作戦」を開始した。これは主に、NATOの基地は絶対に作らないという意味である。西側諸国のウクライナへの軍事介入を許さない。以上。

 西側が資金を提供するキエフの傀儡政権はこれに応じず、対話にも興味を示さなかった。それどころか、ドンバスへの理不尽な攻撃はエスカレートし、全面戦争を防ぐためにロシアの行動が必要なところまで来ていた。

 同様に、2020年5月、西側/NATOが組織したベラルーシへの潜入は、アレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領の再選出馬を阻止しようとしたものだが、失敗した。その狙いは、ルカシェンコを親欧米の指導者と交代させ、ロシアの玄関口にあるNATO基地をさらにもう一つ増やすために、ベラルーシへ接近することだった。腐敗した西側メディアによる高給取りのプロパガンダにもかかわらず、数ヶ月に及ぶ試みと抗議は失敗に終わった。ルカシェンコ大統領は、2020年8月に再選された。

 ウクライナでは、ナチス率いる傀儡キエフ政府を通じた西側の攻勢で、東部ロシアとドンバスの国境に約15万人のキエフ・ウクライナ軍が集結した。しかし、西側メディアは、ロシア人が居住するドンバス地域へ介入するために必要であれば、この地域に約10万人の軍隊を配置するというロシアの反応だけを報道した。

 「ドネツクおよびルハンスク人民共和国の独立を認め、友好・協力・相互援助に関する条約を批准すれば、そこに住む市民や同胞の虐殺、死が止まるはずだ」と、下院議長のヴャチェスラフ・ボロディン(Vyacheslav Volodin)氏は自身のテレグラムチャンネルに記した。

 モスクワがドネツクおよびルガンスク人民共和国(DPRおよびLPR)の独立を承認した後も、キエフによるドンバスへの砲撃は続き、少なくとも4名の死者と多数の負傷者、さらにインフラの破壊をもたらした。熊(ロシア)への激しい挑発であった。

 ロシアの介入がなければ、ドンバスが人道的危機に陥ることは明らかであった。

 これこそが、西側諸国が「ロシアがウクライナに武力介入!」と叫ぶために待ち続けていた瞬間だ。もちろん、いつものことながら、こうなる前に何があったのかについては何も言わない。西側の反ロシアの嘘プロパガンダは、昔も今も---いや、その程度ますますひどくなっているが---加熱し、極端になっている。

 西側の制裁プログラムがすべて整えられた。もちろん、いつものように、ゾンビ帝国であるワシントンが主導し、ヨーロッパの傀儡たちがそれに続いた。彼らは、そろそろ現実を見て、東側、つまり巨大な連続した大陸であるユーラシアと同盟する時期だと認識するより、むしろ自殺を望んでいるようだった。

 制裁は、無知な西側諸国民向けの単なるプロパガンダである。例えば、プーチン大統領とラブロフ外相の西側での資産を封鎖すること。この二人が西側に資産を持っていると考えることさえ馬鹿げている。あるいは、アメリカへの渡航を阻止することも。なぜ彼らは侵略者の中心地へ旅行したがるのだろうか?

 最新の制裁は---この記事を書いている時点ではまだ検討中だが---ロシアをSWIFTから外すことである。SWIFTは、ベルギーで運営されている民間国際送金プログラムである。西側諸国がその決定を躊躇しているとすれば、それは自分たちの利益が絡むからだ。例えば、SWIFTから外されたら、ロシアは西側の債権者や納入業者に対する膨大な未払い債務をどのように解決することができるのか、また、どのようにその意思を示せるのか。

 ロシアは中国や、世界のGDPの約3割を支配する上海協力機構(SCO)の他の参加国とも長年にわたって密接な関係を保っている。また、このような西側の究極の「制裁」攻撃を予見して、ロシアは経済と外貨準備を完全に脱ドル化した。

 

 ロシアの中央銀行は、経済活動を東方へ、主に中国やSCOに向けなおした。そしてより大きな意味では、世界の人口の約70%、GDPの約3分の2を占める約5500万km2のユーラシア大陸全体に向け直した。加えて、ユーラシア諸国は中国の「一帯一路構想(BRI)」の最初の受益者である。こちらを参照。

 耳を疑うような制裁の一つは、エネルギー需要の70%近くをロシアのガスに依存しているドイツへのロシアからのパイプラインNord Stream 2を、ワシントンの圧力でドイツが中止または不許可にすることである。

 信じられないことに、ドイツはこのようなワシントンやNATOが課す制裁に同意しているのだ。

 ドイツは少なくとも一時的なエネルギー不足に陥り、最終的には約2倍の値段でアメリカから、あるいは他の供給源からガスが供給されることになるかもしれない。


  一方、ロシアは、すでに膨大なエネルギー貿易協定を結んでいる中国をはじめ、ガスの買い手がたくさんいる。

 ウクライナ紛争に話を戻すと、プーチン大統領は、ウクライナの指導層と交渉し、話し合うことを提案し、それは今も変わらない。

  RT(2月26日付)で報じられたように、最新のニュースでは、最初はロシアの申し出を断っていたウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領が、金曜日(2022年2月25日)に、国家間の敵対関係を終わらせるためにロシアとの会談に応じる用意があると述べている。

 同日、プーチン大統領のドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は、モスクワがベラルーシのミンスクで会談を行う用意があると記者団に語った。その後、ウクライナ側が最初にポーランドのワルシャワに会談の場を移すことを申し出たが、その後の応答はない、と主張している。

 2014年のキエフでのクーデター後、ロシア・ウクライナ関係は悪化した。プーチンは、モスクワはドネツクとルガンスク人民共和国を守るとともに、ウクライナの「非軍事化と非ナチ化」を実行することを目指すと述べた。プーチン大統領はさらに、モスクワが脅威とみなす軍事インフラを持つNATOに、ウクライナは決して加盟してはならないと主張した。

 これは興味深いし、論理的な考え方でもあるが、もし、キエフ政府が自国の主権を考え、国の将来を前向きに考えて「降伏」、つまりロシアの軌道に再び乗ることを決めたらどうなるか、という点だ。

 結局のところ、次のことははっきりしている。東方に仲間入りし、ロシアの同盟国になれば、成長と発展のための、無限と言ってもいいほどの機会を手に入れることになる。それは西側の搾取的弔鐘を聞き続けた8年間の回復になる。西側諸国は、ウクライナにそのようなものを提供することはないだろうし、またできもしないだろう。

 西側が主導するキエフの攻撃からドンバスを守るためにロシアがとっている軍事的なものも含めた措置や行動を考慮するだけでも、賢明なウクライナ政府が成立すれば、ロシアやユーラシアに仲間入りし、「一帯一路」から利益を得る機会のある将来を選ぶかもしれない。米帝国もその欧州同盟国も今やほぼ死に体だ。

 どちらのほうが、今アメリカが足を引っ張っている「欧州プロジェクト」にとっても有益なのだろうか?

 明るい未来のある平和的な解決を!

*

Peter Koenig is a geopolitical analyst and a former Senior Economist at the World Bank and the World Health Organization (WHO), where he has worked for over 30 years on water and environment around the world. He lectures at universities in the US, Europe and South America. He writes regularly for online journals and is the author of Implosion – An Economic Thriller about War, Environmental Destruction and Corporate Greed; and co-author of Cynthia McKinney’s book “When China Sneezes: From the Coronavirus Lockdown to the Global Politico-Economic Crisis” (Clarity Press – November 1, 2020)

He is a Research Associate of the Centre for Research on Globalization (CRG). He is also is a non-resident Senior Fellow of the Chongyang Institute of Renmin University, Beijing.


 

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ウクライナで野党が禁止され、「情報の一本化」が目指されている

ウクライナで野党が禁止され、「情報の一本化」が目指されている

<記事原文 寺島先生推薦>Opposition political parties banned in Ukraine and ‘unified information policy’ imposed

ゼレンスキーはウクライナにおける左翼政党や反NATO政党の禁止措置を正当化しようとしている。その言い分は、これらの政党がロシアと繋がっていているからだとしている。しかし実の所はこれらの政党はロシアによる侵攻には反対している。

People's Dispatch 2022年3月21日

アブダル・ダーマン(Abdul Rahman)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月26日

ウクライナの国会議事堂のヴェルホーヴナ・ラーダ

 ウクライナの反政府勢力に対してさらなる攻撃が加えられた。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ国内の主要な野党の活動の禁止を発表したのだ。理由は、これらの野党はロシアとつながりがあるからということだった。さらにゼレンスキー大統領は、ウクライナ国内のすべてのTV局を合併することも発表した。その理由は、「情報を一本化する政策のため」だとした。これにより政府がメディアを完全な支配下に置くことになる。

 ウクライナ国内の連帯を維持するためだというゼレンスキー大統領は、以下のような声明を出した。「ウクライナ国家安全保障委員会の決定により、ロシアの侵略行為による現在の全面戦争戒厳令下において、ロシアと繋がりをもつ多くの政党の活動を中止することになった」と。

 さらにゼレンスキー大統領はウクライナ国内のすべてのTV局を閉鎖し、国営TVに統一することも発表した。同大統領の主張によれば、この措置により、戒厳令下において「情報を一本化する政策」が導入できる一助となるとのことだった。なお既にウクライナではロシアのTV局の放映は禁じられている。

 この措置により11の政党の活動が禁じられたが、その中には「野党プラットフォーム生活党」も含まれていた。この党は総議席が450であるウクライナ国会の中で39議席を持つ政党だ。それ以外に活動が禁止された政党には、シャリティ党、我々の党、左派野党、左派勢力連合党、社会主義党がある。これらの政党のいくつかは左翼政党であり、ウクライナがNATOやEUに加盟することに反対してきた諸政党だ。

 政党活動の禁止が発表された後、「野党プラットフォーム生活党」はこの措置を「不法である」とし、法廷に訴えることを宣告した。同党は同党の活動家や事務職員たちに対して活動を続けるよう依頼し、さらに以下のような声明を出している。「国をどうまとめるかについて、政治論議や政策論議をして妥協点を探す手続きを踏まず、政府当局は襲撃や脅迫や抑圧や報復という形で反対勢力を抑え混もうとしている」と。

 「野党プラットフォーム生活党」はウクライナ東部のロシア語話者居住地に強い基盤を持っている政党だ。党首はヴィクトル・メドヴェードチュク(Віктор Медведчуk)であるが、彼は反逆罪でウクライナ政府から起訴中だ。メドヴェードチュクはロシアによるウクライナ侵攻後、自宅軟禁されていた。しかしウクライナ政府によると、メドヴェドチュクは自宅軟禁から逃れたとのことだ。メドヴェードチュクの弁護士は、この起訴は不当であるとしていた。

 今からほんの数週間前の3月6日には、「ウクライナレーニン主義共産主義青年連盟」の指導者であるアレクサンドル・コノノビッチ(Aleksandr Kononovich)とミハイル・コノノビッチ(Mikhail Kononovich)もウクライナ治安部隊により逮捕され、投獄された。それ以降、この両名の現状に関する情報は極端に制限されている。

 SNSを利用して、野党活動を禁止するこの措置に批判の声を上げている専門家もいる。




 さらに西側メディアにおいてこの措置に対する批判の声が少ないことに疑問を呈して、「これは民主主義を抹殺する行為になる」と嘆く専門家もいる。多くの人が、これこそ西側メディアの「二重基準性」を示すものだとコメントしている。



 ウクライナ政府のこの措置に対して公式見解を出していない西側諸国の政府も、様々な方面からの批判に直面している。



反対派を禁止してきた長い歴史

 野党を切り離そうという今のウクライナの措置が批判されているのは、この措置が、現政権が親西側政策や親NATO政策を批判する勢力を全く受け入れようとしていない姿勢を示すものだからだ。右派やネオナチ勢力による政界支配が見られるようになったのは、2014年のユーロマイダン運動以来のことだ。この運動により当時のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領が辞任に追い込まれた。その理由は、同大統領の政権が親EU路線をとらず、ロシアに接近する路線を提案していたからだった。

 ウクライナ政府が強い憎しみを示している対象は他にもある。それはウクライナに残存する旧ソ連時代の名残だ。ウクライナ政府は公共地からソ連時代の遺物を排除するという問題の多い政策を採ってきた。

 戦争が始まった2月24日より5年も前から、ゼレンスキー大統領は、諸野党と繋がりがあるとして少なくとも3局のTV局の活動を閉鎖した。具体的にはZIK局、NewsOne局、112ウクライナ局だが、閉鎖されたこれらのTV局の所有者はタラス・コザック(Тарас Козак)という「野党プラットフォーム生活党」の国会議員だった。

2015年にはウクライナ当局はウクライナ国内での共産党の活動も禁止した。その理由は、共産党が分離主義や民族闘争を支持していたからとのことだった。具体的には、共産党がロシアによるクリミア併合や、ドネツクやルガンスクの独立運動の動きに同意したためだとしていた。共産党の活動禁止を発令する際にウクライナ当局が使ったのは、2015年5月に成立した「脱共産主義法」という問題の多い法律だった。この法律により、共産党は党名とロゴマークを変えるように命じられた。さらにこの法律により、政府が過去のソ連共産主義時代の遺物を消去できるようになった。

 批判の声が広がったが、ウクライナ当局はこの問題の多い法律の取り消しには応じなかった。このこともウクライナ当局がネオナチ勢力に取り込まれている現状である。ゼレンスキー大統領が右派勢力に対して同様の措置を取っていないことは注目すべき点である。同大統領が標的にしているのは親露とされる勢力であるという事実は、ウクライナ国内でこれらの親露勢力が、政治論議において影響力を持っているということにほかならない。

 

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「ウクライナには25カ所以上の米国が資金提供した生物研究所が存在する」。トゥルシー・ギャバードが動画で訴え

「ウクライナには25カ所以上の米国が資金提供した生物研究所が存在する」。トゥルシー・ギャバードが動画で訴え

<記事原文 寺島先生推薦>Video: ‘There are 25+ US-funded Biolabs in Ukraine’: Tulsi Gabbard

ギャバードが米国バイデン政権に求めたのは、隠蔽するのではなく、米軍によるウクライナ国内の「危険な」生物研究所の稼働を即時中止することだった。

Global Research 2022年3月15日

トゥルシー・ギャバードとOpIndia(インドのニュースサイト)

元記事はOpIndiaの2022年3月14日の記事

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月25日


 3月14日、トゥルシー・ギャバード元国会議員は自身のツイッターに、ウクライナ国内の米国が資金提供していた生物研究所についての主張を繰り返す動画を投稿した。「不慮の事故で、あるいは意図的に」危険な病原体が漏出することに懸念を表明したギャバード元議員が求めたのは、ウクライナ国内の米国が資金提供している生物研究所の稼働を中止することだった。

 2分間の動画においてギャバード元議員が語ったところによると、ウクライナ国内には米国が資金提供している25~30カ所の生物化学研究所が存在するとのことだった。さらに同議員はこれらの研究所の稼働の即刻中止を求めた。それはその研究所から危険な病原体が拡散される可能性があるからだ、とのことだった。



 「否定できない事実です」とギャバードは語っている。それは「ウクライナには米国が資金提供した研究所が25~30カ所存在する」というロシアの主張を支持するものだ。さらにギャバードは以下のように警告している。「米国政府によれば、これらの生物研究所では危険な病原体についての研究が行われていたとのことです。今ウクライナが戦場になっていて、爆撃やミサイル攻撃や砲撃が広がっています。ですので頑丈に守られているとしても、このような研究施設が戦禍にさらされて、そこから恐ろしい病原菌が漏出することは十分考えられます」と。

 さらにギャバードは言葉を続けている。

 「コロナと同じで、これらの病原菌については、国境は関係ありません。これらの病原菌が不意に、あるいは意図的に漏出したり、危険にさらされたりすれば、すぐにヨーロッパ中に蔓延します。米国においても、米国以外のすべての国々においても、甚大な苦しみや、大量の死を引き起こす原因になりかねません。ですから米国民や欧州民や世界の人々を守るために、これらの研究所は即時稼働を停止し、研究所が保有している病原体を破壊する必要があります。」

 さらにギャバードが米国バイデン政権に求めたのは、隠蔽するのではなく、米軍によるウクライナ国内の「危険な」生物研究所の稼働を即時中止することだった。

 「このことを隠蔽しようとするのではなく、バイデン/ハリス政権は、ロシア、ウクライナ、NATO、国連と共同して、付近の安全が確保され、病原菌が破壊されるまで、研究所付近での戦闘行為の即刻中止を実行すべきです」とギャバード元米国国会議員は語っている。

 ギャバードは中国が最近米国を非難した件についても触れていた。ギャバードによると中国の主張では、米国は中国の武漢にある研究所と同じような危険な研究所を世界各所に300ほど保有しているとのことだった。さらに、その武漢の研究所からCOVID-19が出現した可能性があるとのことだった。

 「これらの研究所がどれだけ危険で、かつ脆弱であるかが明らかになったのですから、これらの研究所は2年前に閉鎖すべきだったのです。でもそうはなりませんでした」とギャバードは語り、さらにこの問題は党派を超えて話し合うべき問題である、とも付け加えた。

 「米国政府も議会も、すべての米国民とすべての地球市民の医療と福祉のために即刻行動を起こす必要があります」という言葉で、ギャバードは動画を締めくくっている。

 注視すべきことだが、トゥルシー・ギャバードのこの動画は世間からの注目を集めている。ユタ州選出ミット・ロムニー(Mitt Romney)上院議員は、激しくギャバードを攻撃して、ギャバードが「ウクライナ国内に“米国の研究所”が実在する」と発言したことにより人々が殺されることになるのでは、と指摘している。

 このロムニー共和党員は、以前の政敵ギャラード元議員について、「ロシアのプロパガンダ」に踊らされて「非国民的な嘘をばらまいている」と攻撃した。



 「トゥルシー・ギャバードは、ロシアの間違ったプロパガンダのオウム返しをしているだけだ。この嘘のせいで多くの人々のいのちが奪われるかもしれない」とミット・ロムニーは、トゥルシー・ギャバードがツイッターで投稿した動画に反応していた。

ロシアと中国は米国がウクライナ国内に生物研究所を持っていることを非難

 この件に先立って、ロシアも中国も米軍がウクライナで「危険な」生物研究所を所持していることを非難していたことを思い起こされる人もいらっしゃるかもしれない。3月9日、中国の趙立堅外務省報道官は記者会見からの抜粋をツイートし、ウクライナ国内の米国の生物化学研究所に関して「出来るだけ早期に詳細情報」を出すよう米国に依頼したと明かした。

 3月6日(日)に出された、ロシア防衛省の声明によると、「米国が資金提供した生物研究計画がウクライナで実行されていた証拠がある」とのことだった。

米国もウクライナ国内に生物研究所があることを認めている

 興味深いことに、3月8日、米国のビクトリア・ヌーランド国務次官は、米国が資金提供している研究所がウクライナ国内で生物兵器を開発中であったことを認めるような発言をしている。ヌーランドがワシントンDCでのウクライナに関する上院外交委員会の公聴会で証言したところによると、米国はウクライナと連携してロシア軍の侵略により生物研究で使用していた資料を奪われないようにしている、とのことだった。さらに国務省が懸念しているのは、ロシア軍によりウクライナ国内の生物研究施設が指揮下におかれることだ、とのことだった。

 「“生物兵器や化学兵器攻撃”を行えばロシアにその非が問われる」と述べたということは、ヌーランドはロシア政府が言い続けてきた内容を実質的に認めたということだ。つまり、「ウクライナ国内で、米国が資金提供している研究所が生物兵器の開発を行っていた」ということを認めたのだ。


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日本は自発的な国家戦略を米国に引き渡してしまったのだろうか?

日本は戦略的自発性を米国に引き渡してしまったのだろうか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Japan’s Surrender of Its Strategic Autonomy to the US?
アンドリュー・コリュブコ(Andrew Korybko)
Global Research 2022年3月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月26日


 日本と同様、インド、特にイスラエルは米国の軍事戦略における密接な同盟国だが、日本だけが、何の見返りを得ることもなく自国の自発的な世界戦略を放棄している。つまりインドとイスラエルは真の独立国であり、自国自身の戦略を立てることができている一方で、日本は国際関係において客体的存在として見られており、独立した主体的な存在とは見られていない。

 数年前に日本を見ていた人々は慎重ではあったが楽観視していて、日露が未締結であった第2次世界大戦後の平和条約をついに結ぶのではないかと考えていた。それは安倍晋三元首相がいわゆる「北方領土問題」についての解決に積極的に取り組んでいたからだ。(「北方領土問題」については、日本のとらえ方とは違い、ロシアは「第2次大戦後に千島列島の南部は合法的にロシアに編入されたため問題は存在しない」という立場を取っている)。しかし日露関係が改善するかもしれないという期待は今や消え去ってしまった。それは日本が、米国が主導する西側の対ロシア制裁路線に乗っかり、ロシアに対して経済的・金融的・個人的な制裁を課すことに決めたからだ。

 庇護者である米国からの要求に対して日本が従順であるということは、日本は永遠に米国の「不沈空母」的存在であり続けるであろうということだ。日本が自発的な戦略を柔軟に持てるようになるという期待はできないということだ。日本が自発性を持つことは世界の多くの人々が望んでいることなのだが。日本には新冷戦における巨大両勢力の間を取り持つ役割を果たせる可能性があるのに、残念なことだ。他方、日本と共にQuad(米・豪・日・印4カ国の枠組)の一員であるインドは対照的に、両勢力に対して中立の立場を表明している。しかし日本政府が選んだ道は、日本の自発的な戦略を投げ捨て、米国に追随することだった。何の見返りも得ることなく、だ。

 今起こっているのは、米国が主導する西側諸国が世界において「勢力圏」を構成しようとしていることだ。そしてその勢力圏を北米諸国、カリブ海諸国、ラテンアメリカ諸国、欧州全体、アジア・太平洋地域の数カ国(豪、日、韓、シンガポールなど)にまで伸ばそうとしている。これらの国々は先日ロシアから、「非友好諸国ならびに非友好地域」に指定された。つまりロシア政府はこれらの国々や地域を、米国の「勢力圏」内にあると確認したということだ。この潮流は筆者が以前書いた記事の通り、世界はどんどん分断に向かっているということだ。

 米国が英国を欧州における「不沈空母」化することに成功したのと同様に、米国は日本をアジアにおける「不沈空母」にしたのだ。さらに、アングロ・アメリカ連合(AAA) が西ユーラシアの分断と支配に向けて精力的に動き、ロシアと欧州の関係に深いくさびを入れようと企てている中で、アメリカ・日本連合(AJA)により、アジアで地政学的経済上重要な国々と、露中との関係を分断させようという動きが活発化している。そして最終的には近い将来、米国がユーラシア両側のこの連合を結合させようという戦略だ。

 日本が本質的に果たしている機能は、AUKUS(豪・英・米)反中国軍事・核兵器同盟の事実上の第4国的役割だ。このAUKUSは昨年9月に発表されたものだったがこれは想定外の出来事だった。日本政府はこの新しく作られた同盟には気分を害していた。というのもこの同盟によりQuadが果たすべき中国を「抑え込む」軍事戦略的役割が軽んじられることになる可能性があったからだ。この同盟の決定はおそらく米国政府が、「インドは中国抑え込み作戦には積極的に参加してこないであろう」という見通しをもったからだろう。米印関係は2020年夏以降微妙なものになっている。外交政策の決定権を米国に自発的に委ねている日本の望みは、国際社会において米国と繋がっておくことだ。

 日本のこの期待は間違っている。というのも、日本政府がやったことは、米国政府の「従属国」に甘んじることだけだったからだ。米国と対等な関係にある英国政府のようには、日本政府は米国から決して見なされていない。英国も「ユーラシアを分割して統治する」ため、日本と同様大事な役割をユーラシアの向こう側で担っているのではあるが。さらに日本は、以前交わしていたロシアと連携する事業の契約が不履行になってしまった。それはロシアがウクライナ侵攻前に、対中関係において地政学的なバランスを取るために、資源が豊富な極東地域への投資を増やすことをインドと共に行うという事業だった。

 この筋書きはもはや実施不可能となった。というのも米国が主導する西側が、単極的世界を求める動きの一つとして、ロシアに対して尋常ならぬ攻撃を加えているからだ。それを受けてロシアはウクライナに対して特別軍事行動を開始し、この侵攻によりロシアの世界戦略が完全に変化し、ロシア政府はこれまでにないほど中国への依存度を高めることになった。この状況下で、ロシアは中国に依存することが最も重要な圧力弁となったのだ。ロシアはこれ以降も中国に必要以上に依存しないよう先手を打とうと、他国との関係を深めようとするだろうが、その対象はインドやイランやパキスタンなどロシアが信頼の置ける相手と見なした国々だけであり、「ロシアは非友好国である」と公的に表明した日本のような国々は相手にされないだろう。

 日本がイスラエルのように実質的に中立の立場を取っていたらどうなっただろうか?イスラエルは、象徴ではあるが法的には意味のない国連総会ではロシアに反対する決議に賛成票を投じたが、ユーラシアの巨大国ロシアに対して制裁を行うことには応じていない。日本もイスラエルと同じように、今回のウクライナ紛争において調整役という立場を取ることもできただろう。実際、イスラエルのベネット(Bennet)首相は先週(3月第1週)調整役を積極的に引き受けようと動いていた。日本もそうしておれば、日本の戦略的自発性を最も印象的な形で示せる機会になったであろうし、日本の企業群が、ロシアが行っている資源豊富な極東地域への投資事業における優先権を得られたかもしれなかった。その役目は今やインドに取られてしまいそうだ。

 インドや特にイスラエルは、米国の軍事戦略の重要な同盟国であることは日本と同じだ。しかし日本は、自国の戦略的自発性を米国に差し出してしまっている。しかもそのことに対する米国からの見返りも期待できないのは言うまでもない。つまりインドやイスラエルは真の独立国として自前の広大な戦略を打ち立てることができているが、日本は国際関係において客体的存在のままだ。つまり独立した主権国家にはなれていないのだ。米国の「不沈空母」的機能しか果たせない国であり続ければ、日本は客体的存在のままであり、独自に広大な世界戦略など持てない国のままだ。

*

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This article was originally published on OneWorld.

Andrew Korybko is an American Moscow-based political analyst specializing in the relationship between the US strategy in Afro-Eurasia, China’s One Belt One Road global vision of New Silk Road connectivity, and Hybrid Warfare.

He is a regular contributor to Global Research.

Featured image is from OneWorld
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1945年8月のソ連をターゲットにした核戦争計画

1945年8月のソ連をターゲットにした核戦争計画
<記事原文 寺島先生推薦>
Targeting the USSR in August 1945


アレックス・ウェラーシュタイン教授、ミシェル・チョスドフスキー教授著

グローバルリサーチ、2022年3月13日

制限付きデータ 2012年4月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月24日


はじめに

 本稿は2012年4月に発表されたもので、米ソの「特別な関係」に焦点を当てたものである。ウクライナで起きている出来事と最も関連性の高いものである。

 第二次世界大戦中、米ソは同盟国であったが、アレックス・ウェラーシュタイン教授は、1945年8月に「戦争が正式に終わる前に」行われた米国の対ソ連「戦争準備」の記録を残している。

 そしてその後、何が起こったのか。

 1945年9月15日に陸軍省が発表した、ソ連の主要都市に原爆を投下するという極悪非道な計画の策定(機密解除)である。

 この秘密文書(機密解除済み)によると、「国防総省は、主要都市部に向けた協調的な核攻撃でソ連を吹き飛ばすことを想定していた。」

 

 ソ連のすべての主要都市は、66の「戦略的」標的のリストに含まれていた。皮肉なことに、この計画は冷戦勃発前に陸軍省から発表されたものである。

 

 
 1945年9月15日作戦の全資料はこちらからご覧いただけます。

動画で見る 「ソ連を地図上から消し去る」米国の対ソ核攻撃計画

ミシェル・チョスドフスキー、グローバルリサーチ、2022年3月13日号



1945年8月のソ連をターゲットにした

アレックス・ウェラーシュタイン教授
 
 第二次世界大戦中の米英同盟が特別な関係だとすれば、米ソ同盟は何だったのだろうか。

 特に問題のある関係なのか?

 カウンセリングが必要な関係なのか?

 極度の危機の中で築かれ、後になって大ざっぱなものに思えた関係なのか?(もちろん、大ざっぱな関係と簡単に略すことができる。)妻は、これをショットガンマリッジ(妊娠によるやむを得ない結婚)と呼んではどうかと言っている。

 奇妙な関係という意味では、特別な関係も当てはまるかもしれない。第二次世界大戦が正式に終わる前の1945年8月30日までに、米軍の一部(どの部局かはわからないが、陸軍航空隊が有力)はすでに時間をかけてソ連の原爆の良い標的のリストを作成していた...さらにソ連の地図に核搭載爆撃機の航続距離を重ね合わせて、「第一」「第二」優先標的をマークしていた1。


 片方の同盟国がもう片方の同盟国を核攻撃することを明確に計画している戦争同盟が、他にどれだけあるだろうか。おそらく、それほど多くはないだろう。

 この驚くべき地図はグローブズ将軍のファイルにあり、1945年9月にカーティス・ルメイの考えたアメリカが持つべき原爆の数の見積もりの一部として彼に送られたものである。それについては別の機会にお話しするとして、ヒントは、グローブズ将軍でさえ多すぎると考えたほどでした。おっと。

 これらの「暗黒」計画の大部分はB-29(ファットマンやリトルボーイを運んだのと同じ爆撃機)であり、ソ連周辺のあらゆる種類の「同盟」基地(現在所有しているものもあれば、「踏み台になりうる」とされたものもある)から出て行く(スタバンゲル、ブレーメン、フォッジア、クレタ、ダーラン、ラホール、沖縄、シムシル、アダック、ノームなど)。これは、軍事的な観点から冷戦世界を素早く概念化するのに面白い方法だ。

 非常に大きな空白の区画はB-36のためのものだが、これはまだ存在していなかった。B-36は1949年まで実戦配備されなかったが、戦時中はすでに計画段階に入っていた。実際に納入されたB-36は、ここで推定されたものよりもやや長い航続距離(Wikipediaを信じるなら、合計で6000マイルほど)だった。

 目標都市はちょっとわかりにくいが(今度NARAに行ったらオリジナルの地図を持ってきてもらおう)、「最優先」の都市はモスクワ、スヴェルドロフスク、オムスク、ノボシビルスク、スターリンスク、チェリャビンスク、マニトゴルスク、カザン、モロトフ、ゴーリキだ。レニングラードは「第二優先」目標に挙げられているようで、これは驚きだが、マイクロフィルムが読みにくいだけかもしれない。文字通り、ソ連邦の上位都市(人口、産業、戦争関連度に基づいて)をリストアップし、それらを原爆の標的にしているのである。

 スターリンは偏執狂的な男だという評判は十分にある。しかし、昔から言われているように、偏執狂だからといって、彼らがあなたを狙っていないとは限らないのだ


Alex Wellerstein 科学・核兵器史研究者、スティーブンス工科大学教授。2011年に始まったNUKEMAP.This blogの生みの親でもある。詳しくは@wellersteinをフォローしてください。

備考

1. 引用。"A Strategic Chart of Certain Russian and Manchurian Urban Areas [Project No. 2532]", (30 August 1945), Correspondence ("Top Secret") of the Manhattan Engineer District, 1942-1946, microfilm publication M1109 (Washington, DC: National Archives and Records Administration, 1980), Roll 1, Target 4, Folder 3, "Stockpile, Storage, and Military Characteristics. "あるロシアと満州国の都市地域の戦略チャート".私が持っていたマイクロフィルムの画像は、上下2コマになっていたので、それをフォトショップで貼り合わせました。このとき、紙の折り目などの関係で、下の画像が上の画像と全く揃わないため、Photoshopの「パペットワープ」ツールを使って、変な方向に少し歪ませる必要がありました。このように、ほんの少しですが、コンテンツに影響を与えるような加工が施されている。

制限付きデータ制限付きデータ

米国における核機密の歴史

 

アレックス・ウェラースタイン著

ISBN: 9780226020419

1930年代後半の起源から冷戦後の現在に至るまで、米国の核機密の完全な歴史を初めて明らかにする。

 アメリカの原爆は秘密の中で生まれた。科学者がその可能性を最初に思いついた瞬間から、広島と長崎への原爆投下、そしてその後も、核に関する情報や、このような強力な兵器を可能にした新しく発見された科学的事実の拡散をコントロールしようとする努力がなされてきたのである。原爆が要求していると思われる科学的秘密の徹底は、新しく、異常で、ほとんど前例のないことであった。それは、アメリカの科学とアメリカの民主主義にとって異質なものであり、その両方と相容れない可能性があった。当初から、この秘密主義は論議を呼び、常に争点となっていた。原爆は、単に科学を戦争に応用したのではなく、科学教育、インフラ、国際協力に何十年もかけて投資した結果であった。もし、秘密主義が常態化したら、科学はどのように生き残るのだろうか。

 本書は、著者の努力により初めて政府によって公開された記録を含む膨大な機密解除ファイルを用いて、原爆の最初の囁きから冷戦の緊張が高まる中、そして21世紀初頭までの米国の核機密保護体制の複雑な変遷をたどっている。高邁な理想主義と醜く恐ろしい権力との間の葛藤の上に築かれた、豊かで広大な、アメリカらしい物語である。

 

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アメリカ帝国は自滅する。しかしこんなに早くとは誰が思ったろうか


アメリカ帝国は自滅する。しかしこんなに早くとは誰が思ったろうか。
<記事原文 寺島先生推薦>
The American Empire Self-Destructs, But Nobody Thought That It Would Happen This Fast

Counter Punch 2022年3月8日

マイケル・ハドソン(MICHAEL HUDSON)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月24日



 2022年3月8日

 帝国はしばしばギリシャ悲劇のような経過をたどる。避けようとしていた運命がもたらされるのだ。このことはまさにアメリカ帝国にもあてはまる。それは、それほどゆっくりではなく、自壊してゆく。

 経済や外交の予測の基本的な前提は、すべての国が自国の利益のために行動するということだ。しかし、そのような理屈は今日の世界では何の役にも立たない。政治的領域を超えたところを見る観察者は、米国のロシアやその同盟国(中国)との外交的対立を「自分自身の足を撃つ」といった言い回しで表現する。しかし、誰も「アメリカ帝国」がこれほど早く自滅するとは思っていなかった。

 この一世代以上の間ずっと、米国の著名な外交官たちは警告を発してきた。ロシアと中国の同盟がユーラシア大陸を支配する究極の外的脅威になるだろうと。そしていま、アメリカのロシアに対する経済制裁と軍事的対立がこの2カ国を結びつけ、他の国々をユーラシア大陸の新興軌道に押し込もうとしている。

 アメリカの経済・金融勢力はこの運命を回避できると思われてきた。1971年に米国が金を廃止して以来、半世紀の間、世界の中央銀行は、外貨準備を米国財務省証券、米国銀行預金、米国株式・債券の形で保有し、ドル本位制を維持してきた。その結果、米国は、ドルの借用書を作成するだけで、対外軍事支出や他国への投資買収の資金を調達することができた。米国の国際収支の赤字は、支払い余剰国の中央銀行に外貨準備として預けられ、一方、南半球の債務国は、債券保有者への支払いと対外貿易を行うためにドルを必要とした。

 この通貨的特権―ドル・シニョリッジ(貨幣発行特権)―は、米国の外交が、近東の石油を奪う以外は、自国の軍事力をあまり使うことなく、新自由主義的政策を世界の他の地域に押し付けることを可能にしてきた。

 最近の米国による制裁措置の拡大によって、欧州やアジアなどの国々はロシア、イラン、中国との貿易や投資を阻害され、米国の同盟国は膨大な機会費用(機会損失のコスト)を押し付けられている。そして、最近、ベネズエラ、アフガニスタン、そして今回、ロシアの保有していた金と外貨準備が没収されたこと[1]、併せて外国人富裕層の銀行口座が狙い打ちされたことによって、ドル保有や、今やドルの従属通貨であるポンドやユーロNATOの資産が、世界経済状況が不安定になったときの安全な投資避難所であるという考え方は終わってしまった。(外国人富裕層は取り上げられた自分の口座が戻ってくるかもしれないという期待感につられて自分を納得させようとしているのだが。)

 だから、私は、この米国中心の金融化したシステムが、わずか1~2年の間に脱ドルしていくスピードを見ていると、なんだか悔しくなってくるのだ。というのも、私の提唱する「超帝国主義」の基本テーマは、過去50年間、米国債本位制がいかに外国の貯蓄を米国の金融市場や銀行に流し、ドル外交にただ乗りしてきたか、ということだったからだ。私は、脱ドル化は、米国に緊縮財政を強いている金融の二極化を避けるために、中国やロシアが経済を支配しようとする動きによって主導されるのではないかと思っていた。[2]。しかし米国当局は、逆に、ロシアや中国、その他米国に縛られていない国々に対して、壁に書かれた文字を見て(訳註:[聖書]差し迫った災難のしるしを見る)、脱ドルへの躊躇を克服するように迫っているのだ。

 私は、ドルに依存した帝国経済の終焉は、他の国々が離脱することによってもたらされると予想していた。しかし、そうはなっていない。米国の外交官たちは国際的なドル主義を終わらせることを自ら選択し、その一方で、ロシアが農業と工業を確実に自立させる手段を構築するのを手助けしている。この世界的な崩壊プロセスは、アメリカのNATO同盟国やその他の経済的従属国がロシアと取引するのを妨害する制裁から始まって、実際には何年も続いている。この制裁は、ロシアに対して、保護関税と同じような効果があった。

 ロシアは自由市場の新自由主義的なイデオロギーに魅了され、自国の農業や産業を守るための手段を講じることができないままだった。米国はロシアに国内自立を強いたのだが、それはロシアが自立するために必要な支援となった。どういうことかと言うと、バルト諸国がアメリカの制裁にしたがってチーズなどの農産物をロシア市場に出せなくなると、ロシアはすぐに独自のチーズや乳製品の分野を作り上げ、世界有数の穀物輸出国になったのだ。

 ロシアは、ルーブルの為替レートの裏づけとして米ドルを必要としないことに気づき始めている。(あるいは気づきそうになっている)。自国の中央銀行が国内の賃金支払いや資本形成に必要なルーブルを作り出すことができるのだ。米国がドルやユーロの外貨準備を没収したことで、ロシアはセルゲイ・グラジエフが長年主張してきた新自由主義的な金融哲学を捨て、最後には現代通貨理論(MMT)を支持するようになるのかもしれない。

 米国の表向きの狙いが損なわれる動きは、ロシアの有力な億万長者に対する米国の制裁でも同じであった。1990年代の新自由主義的なショック療法と民営化によって、ロシアの独裁者たちは、公的領域から奪い取った資産を現金化する唯一の方法を手に入れた。それは、その資産を法人化し、ロンドンやニューヨークで株式を売却することだった。国内の貯蓄は一掃され、米国のアドバイザーはロシアの中央銀行に独自のルーブル貨幣を作らないよう説得した。

 その結果、ロシアの国家的な石油、ガス、鉱物の財産は、ロシアの産業と住宅を改善するための資金として使われることはなかった。民営化で得た収益は、ロシアに新たな保護手段を生み出すための投資ではなく、イギリスの高級不動産やヨット、その他の世界中にある資本を移せる資産を買収すること、つまり成金的な買収に使われたのである。しかし、ロシアの億万長者の保有するドル、ポンド、ユーロを人質に取った制裁の効果は、ロンドン・シティが彼らの資産を保有する場所としてあまりにも危険な場所になることでもあった。それはまた米国の制裁対象となりうる他の国の富裕層にとっても同様である。米国の上級官僚は、プーチンに最も近いロシアの富裕層に制裁を加えることで、プーチンが西側から離脱することに反対させ、さらに彼らがNATOの工作員として効果的に働くようになることを望んだ。しかし、ロシアの億万長者にとっては、自国が最も安全な場所に見え始めている。

 これまで何十年もの間、米国連邦準備制度理事会と財務省は、金が外貨準備としてその役割を回復することに反対してきた。つまり、バイデン氏とブリンケン氏は、その国の独自の利益ではなく、米国の「規則の秩序」に従うよう強要しようとしているのだが、インドとサウジアラビアはこのドル保有政策をどのように見ているだろうか? 最近の米国の独断的なふるまいのために、自国の政治的自治を守るためにはドルやユーロの保有を金に転換することしか選択肢がなくなってきている。金を資産に使えば、費用ばかりかさむ米国の破壊的な要求の人質にますますされているという政治責任を追求されることもなくなるからだ。

 米国の外交は、ロシアの外貨準備が封鎖され、ルーブルの為替レートが急落した後、各企業にロシア資産を小銭で捨てさせるようにヨーロッパ政府に指示し、その屈辱的な従属性を詰った。ブラックストーン、ゴールドマン・サックス、その他の米国の投資家は、シェル・オイルやその他の外国企業が売却した資産を買い取るために素早く行動した。

 1945-2020年の戦後世界秩序がこれほど早く崩壊するとは誰も思っていなかった。どのような形になるかはまだ分からないが、真に新しい国際経済秩序が生まれつつある。しかし、「熊を突ついた」結果生じた米・NATOの対ロシア攻撃による対立は臨界質量レベルを超えてしまった。もはやウクライナだけの問題ではない。それは、世界の多くを米国・NATOの軌道から遠ざけるための引き金、触媒に過ぎない。

 次の対決が起きるのは、欧州の愛国的政治家たちが、欧州や他の同盟国を米国に依存した貿易や投資で支配する米国の行き過ぎた権力から脱却しようとするときかもしれない。従属し続けることの代償は価格インフレーションに見舞われ、民主的な選挙政治がアメリカのNATO軍に従わされることだ。

 このような結果は、実は「意図されていなかった」とは考えられない。あまりにも多くの観察者が次に何が起こるかを予想してきた。その筆頭のプーチン大統領やラブロフ外相はNATOが東ウクライナのロシア語話者を攻撃することにこだわって、ロシアの西部国境に重火器を移動させながら自分たちが窮地に陥れば、どんなことが起きるかを説明していた。その結果は予想できたのだ。ただ、米国の外交政策を支配しているネオコンたちは全く気にも留めなかった。ロシアの懸念を認めることは「プーチンの理解者Putinversteher」と見なされるからである。

 欧州の高官たちは、ドナルド・トランプが狂っていて、国際外交のリンゴ箱をひっくり返しているのではないかという心配を世界に伝えることに違和感を覚えなかった。しかし、今度は彼らは盲目になったようだ。バイデン政権がブリンケン国務長官とビクトリア・ヌーランド=ケイガンを介して内臓に秘めていたロシア憎悪を復活させたからだ。トランプの表現様式や物言いは粗野だったかもしれないが、アメリカのネオコン一味はもっと世界中に脅威を与える対立の強迫観念を持っている。彼らにとってはどちらの現実が勝利するかが問題だった。自分たちが作れると信じている「現実」なのか、それともアメリカの支配の外にある経済的現実なのか、ということだ。

 国際通貨基金や世界銀行、米国外交の強力な武器に取って代わるためにそれぞれの国家が自分でしてこなかったことを、米国の政治家はその国にやれと言っている。ヨーロッパ、近東、南半球の国々が自国の長期的な経済的利益を計算しながら離脱するのではなく、アメリカは彼らに自分でその仕事をやるように追い立てているのだ。ロシアや中国にしたのと同じである。ますます多くの政治家が、いま、ドルに依存した貿易や投資、さらには対外債務処理に代わる新たな通貨体制によって自国がより良くなるのかどうかを問うて有権者の支持を求めている。

 エネルギーと食糧の価格高騰は、特に南半球の国々―自国のCovid-19問題や迫り来るドル建て債務の返済期限に直面している国々―を直撃している。何かが起こらなければならない。これらの国々は外国の債権者への支払いのためにいつまで緊縮財政を強いられるのだろうか。

 ロシアのガスや石油、コバルト、アルミニウム、パラジウムなどの基礎原料の輸入に対する制裁に直面し、米国と欧州の経済はどのように対処するのだろうか。アメリカの外交官は、自国経済がどうしても必要とする原材料をリストアップし、それゆえその品目を今回の貿易制裁の対象から外している。これは、プーチン氏にとってアメリカに圧力をかける便利なリストとなるのではなかろうか。世界外交を再構築し、アメリカが従属国に課している高価なアメリカ製品への依存を強いる「鉄のカーテン」からヨーロッパ諸国やその他の国々が抜け出すために使えるからだ。

バイデンが起こすインフレ

 しかし、NATOの冒険主義からの最終的な脱却は、米国自身の内部からもたらされなければならない。今年の中間選挙が近づくと、政治家は、ガソリンやエネルギーに代表される価格インフレが、バイデン政権によるロシアの石油・ガス輸出阻止の政策的副産物であることを米国の有権者に示すことに肥沃な土壌を見いだすだろう。(ただ、ガソリンがぶ飲みの大型SUV所有者には悪いニュースだ!)ガスは暖房やエネルギー生産に必要なだけでなく、肥料を作るのにも必要で、これはすでに世界的に不足している。この状況は、米国とヨーロッパへのロシアとウクライナの穀物輸出を阻止することによって悪化するが、すでに食料価格は高騰している。

 金融業界の現実観と、NATOの主要メディアが宣伝する現実との間には、すでに著しい乖離がある。3月7日、月曜日の欧州株式市場は、ブレント原油が1バレル130ドルにまで高騰する一方で、始値から急落した。BBCの朝のニュース番組「Today」では、石油トレーダーである保守党のアラン・ダンカン議員が、天然ガスの先物価格が2倍近くに上昇し、ヨーロッパに旧価格でガスを供給する企業が倒産する恐れがあると警告していた。しかし、軍事的な「憎しみの2分間」のニュースに戻ると、BBCはウクライナの勇敢な戦士を賞賛し続け、NATOの政治家はさらなる軍事的支援を促した。ニューヨークでは、ダウ平均株価が650ポイントも急落し、金は1オンス2,000ドルを超えて急騰した。これは、金融セクターが米国のゲームの行方をどう見ているかを反映している。ニッケルの価格はさらにもっと上がっている―40%だ。

 ロシアに軍事的な対応を迫り、それによって世界に悪い印象を与えようとすることは、ヨーロッパがNATOにもっと貢献し、さらに大量の米国製兵器を買い、米国への貿易と通貨の依存度を深めることを目的とした演出であることが判明している。このような状況が引き起こす不安定さは米国を脅威的に見せる効果があることも分かっている。それはロシアが西側NATO諸国から脅威的だと言われるのと同じである。


注釈

[1] リビアの金も、2011年のNATOによるムアンマル・カダフィの打倒の後、姿を消している。
[2] 最近では、Radhika Desai and Michael Hudson (2021), "Beyond Dollar Creditocracy:。A Geopolitical Economy,(ドル信用による支配を乗り越える:地政学的経済の視点から)" Valdai Club Paper No.116. Moscow: Valdai Club, 7月7日, repr. in Real World Economic Review (97)を参照。


マイケル・ハドソンは『Killing the Host(宿主を殺す)』(電子版はCounterPunch Booksから、印刷版はIsletから出版されている)の著者である。新著は『J is For Junk Economics(JはJunk Economics(ガラクタ経済学)』。 連絡先: mh@michael-hudson.com
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ウクライナは米国の違法な生物兵器研究所を受け入れていた

ウクライナは米国の違法な生物兵器研究所を受け入れていた
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

Ukraine Hosted Illegal US Biowarfare Laboratories

2022年3月10日 

ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月24日

 ロシア外務省が先週火曜日に確認したことは、米国国防総省が運営・資金提供しているウクライナの違法生物兵器研究所にあるペスト、炭疽菌、野兎病、コレラなどの致死性病原体の在庫がロシアの手に渡るのを防ぐために、ウクライナ当局が破壊したことである。ヴィクトリア・ヌーランド米国務次官がこの報道を確認した。これらの研究所は、国連の生物兵器禁止条約第1条に違反している。この違反により、米国政府は、米国政府自身が制定したニュルンベルク法の下で死刑判決を受ける明確な戦争犯罪人となる。

 ワシントンはこれらの病原体をどうするつもりだったのだろうか。 どの国民がワシントンからの「贈り物」を受け取ることになるのだろうか? ロシアなのか? ヨーロッパなのか、そしてロシアを非難するのか? 西側世界の市民的自由のなごりを破壊するために、新たな感染拡大があるのだろうか?アメリカ政府がウクライナのネオナチと合体した今、鉤十字が西側世界の上を飛ぶまでどれくらいの時間がかかるのだろうか?

 中国政府は、なぜワシントンがウクライナでの違法な戦争犯罪行為を隠していたのか理由を明らかにするよう、ワシントンに要求している。 中国外務省は、ワシントンに "どんなウイルスが保管されているか、どんな研究が行われているかなど、関連する具体的な情報を公開せよ "と要求している。

 間抜けなアメリカ人は、「自分たちの政府」が、実は欲と権力にまみれたエリート統治集団の政府であり、犯罪企業であることを理解していない。アメリカ人は国旗に包まれて、全く無知のまま死地に赴くことになるのだ。

 中国政府の趙立堅報道官は、米国防総省は30カ国に隠された336の生物実験室を管理しており、ウクライナにおける米国の生物兵器の活動は "氷山の一角 "に過ぎないと述べた。

 つまり、ロシアのウクライナ侵攻がもたらしたものは、ワシントンが署名した生物兵器条約に違反し、米国内だけでなく30カ国に生物兵器研究への違法な関与を隠しているという確固たる証拠なのである。

 ワシントンに巣食う悪は、人類史上前代未聞のものである。

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ウクライナを売った男 ―― ゼレンスキー大統領

ウクライナを売った男
The Man Who Sold Ukraine
マイク・ホイットニー (寺島先生推薦)
グローバルリサーチ、2022年3月12日

By Mike Whitney  Global Research, March 12, 2022  The Unz Review

初出:2022年3月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月24日



 ヴォロディミル・ゼレンスキーは現ウクライナ大統領。ロシアとの緊張緩和とウクライナ東部の分離共和国の危機解決を公約に掲げ、2019年に地滑り的勝利で選出された。彼はいずれの問題についても約束を守ろうとはしていない。それどころか、ロシアを執拗に挑発しながら、ウクライナの内部危機を大きく悪化させている。

 ゼレンスキーには、モスクワとの関係を円滑にし、敵対行為の勃発を防ぐ機会が何度もあった。それどころか、ワシントンの指示に盲従することで、常に事態を悪化させてきた。

 西側諸国では、ゼレンスキーは獅子奮迅の活躍を見せ、その勇気を称えられている。しかし、現実問題として、彼は国家の統一を回復することも、和解への唯一の道である重要な和平合意を実行することもできなかった。ウクライナ大統領はいわゆるミンスク議定書を好まず、その基本的な要件を満たすことを拒否している。その結果、過去8年間ウクライナを巻き込んだ民族対立的な戦争は、終わりが見えないまま今日まで続いている。プーチン大統領はクレムリンでおこなった演説で、ゼレンスキーの頑迷さについて言及した。彼はこう言った。

 「昨日のイベントで...ウクライナの指導者は、これらの協定を守るつもりはないと公言した。守るつもりがない。まあ、それ以外に何が言えるというんだ?」 (ウラジミール・プーチン)

 多くのアメリカ人は、ゼレンスキーがミンスク合意を拒否したことが、ラクダの背を折る最後の藁であったことに気づいていない。ロシア政府関係者は、ミンスク合意で8年間、すべての当事者が合意できるような条件を打ち出すために働いていた。ところが、11時になって、ゼレンスキーが手を振って、この協定を打ち切った。なぜだ?誰がゼレンスキーに合意を破棄するように言ったのか?ワシントンか?

 もちろんだ。

 そして、なぜゼレンスキーは6万人の戦闘部隊を接触線の向こう側(東ウクライナ)に配置し、そこに住むロシア系住民の町や村に致命的な砲弾を打ち込むことができたのか?これは明らかに、侵略が迫っており、すぐに家から逃げるか、地下室に避難せよ、というメッセージを国民に送るものであった。ゼレンスキーは、このように身の危険を感じながら家に閉じこもらせることで、何を達成しようとしたのだろうか。そして、それを恐怖の目で見ていたモスクワの指導者たちに、どのようなメッセージを送ろうとしたのだろうか。


 彼は、自分の行動がロシアに警鐘を鳴らし、プーチンが軍隊を召集し、大規模な民族浄化作戦と思われるものから国民を守るために、侵攻の準備をせざるを得なくなることを知っていたのだろうか。

 知っていた。

 では、これらの行動は、国家の統一を回復し、ロシアとのウクライナの問題を平和的に解決するというゼレンスキーの選挙公約とどう整合性があるのだろうか。

 全く一致していない。正反対である。実際、ゼレンスキーはまったく別の脚本で動いているように見える。例えば、ロシアの安全保障上の問題には全く無関心である。

 プーチンが、ウクライナのNATO加盟はロシアにとって「レッドライン」だと繰り返し言っていたことを、ゼレンスキーは知っていたのだろうか。プーチンが2014年以来、同じことを何度も繰り返して言っていることを知っていたのだろうか?プーチンが、ウクライナがNATO加盟に踏み切れば、ロシアは自国の安全を確保するために「軍事技術的」な措置を取らざるを得ないと警告したことを知っていただろうか?

 ゼレンスキーは、NATOがワシントン支配の同盟で、他の主権国家に対して数々の侵略行為を行ってきたことを知っているのだろうか。

 NATOの業績を簡単に列挙してみよう。

1.ユーゴスラビアの破壊
2.アフガニスタンの破壊
3.リビアの破壊
4.イラクの破壊
5.シリアの破壊

 NATOが公然とロシアを敵視し、ロシアをその拡張主義の野心に対する深刻な脅威と考えていることを、ゼレンスキーは知っているのだろうか。

 そう、彼はこれらのことをすべて知っているのだ。それでも、彼は核兵器開発に関心があることを公言した。それは一体どういうことなのだろうか。それがロシアにもたらす問題を想像してほしい。もし、ゼレンスキーのようなアメリカの支援を受けた傀儡が核ミサイルを手にしていたらと想像してみてほしい。ロシアの安全保障にどのような影響を及ぼすと思いますか?プーチンはそのような事態を無視して、ロシア国民を守る義務を果たすことができると思いますか?

 もし彼がロシアとの和平を心から望んでいるのなら、なぜゼレンスキーはウクライナに致死的兵器を次々と送り込むことに同意したのだろうか?プーチンが愚かで、自分の鼻の先で何が起こっているのかわからないとでも思ったのだろうか?兵器を拡大し、自国民を脅し、ワシントンが用意したどんな輪もくぐり抜けることによって、ロシアとの関係を正常化しようとしていると考えたのだろうか?

 それとも、プーチンの安全保障の要求が不合理だと思ったのだろうか?

 そうなのだろうか。彼は、もしアメリカの立場で考えれば、アメリカはメキシコに軍事基地、大砲、ミサイル施設をアメリカ南部の国境沿いに設置することを許可するだろうと考えたのだろうか?

 アメリカの歴史上、プーチンと同じことをしなかった大統領がいるだろうか?

 アメリカの歴史上、もしメキシコにこれらの兵器が置かれたとしたら、先制攻撃を仕掛け、半径20マイルのすべての生物を灰に帰させなかった大統領がいるだろうか?

 いや、プーチンの要求はまったく妥当なものだったが、ゼレンスキーはとにかくそれをはねのけた。なぜか?

 ゼレンスキーは、政府、軍、保安庁に右翼セクトール、ネオナチが存在することを知っているのか。数は少ないが、彼らは侮れない存在であり、ロシア民族に対する憎悪と迫害の大きな要因になっていることを彼は知っているのだろうか?

 これらの極右勢力が聖火パレードに参加し、腕に卍やSSの入れ墨を刻み、アドルフ・ヒトラーの人種主義的イデオロギーを崇拝していることを彼は知っているのだろうか?

 彼は、これらのナチスの多くが、2014年にオデッサの労働組合ビルで40人の民間人を焼却したことを含む残虐な犯罪行為に従事していることを理解しているのだろうか?
 
 彼は、これらの右翼過激派を武装させ訓練するCIAの秘密プログラムが信頼を築くと考えているのだろうか、それとも、2700万人のロシア人がドイツの国防軍によって絶滅させられた破滅的な戦争をモスクワに思い起こさせると考えているのだろうか?

 ゼレンスキーがやってきたことは、すべてロシアを挑発する意図でおこなわれたことがおわかりだろうか?

 NATO加盟の話、核兵器製造の話、致死的兵器の着実な増強、東方への軍の移動、ミンスク条約の履行拒否、プーチンの安全保障要求の拒否など、すべて。これらはすべて意図的な挑発行為であった。しかし、なぜ?なぜウクライナが「熊の餌」を用意する役を引き受けたのか、それが問題なのだ。

 その答えは、ワシントンがロシアを戦争に誘い込み、プーチンをさらに悪者にし、ロシアを孤立させ、ロシア軍に対する反乱作戦を開始し、ロシア経済に最大の損害を与える厳しい経済制裁を課したいからである。これがワシントンの戦略であり、ゼレンスキーはワシントンの目的達成に協力している。彼は、自分がワシントンの道具になることを許しているのだ。アメリカの利益のために自分の国を犠牲にしているのだ。

 このことは、メディアが決して考慮せず、ケーブルニュースの専門家も決して議論しない点を強調するのに役立つ。つまり、ウクライナは戦争に負けるし、ゼレンスキーはそれを知っているということだ。彼はウクライナ軍がロシア軍にかなわないことを知っているのだ。それは巨人がハエを叩くようなものだ。ウクライナはハエだ。国民はこれを聞く必要があるのだが、彼らはそれを聞いていない。その代わりに、ロシアの侵略者と戦う英雄的なウクライナ人についてのおしゃべりを聞いているのだ。しかし、これはナンセンスだ。危険なナンセンスが、失われた大義のために命を犠牲にする人々を勇気づけるのだ。この紛争の結果に疑問の余地はない。ウクライナは負けるのだ。それは確かだ。そして、行間を読めば、ロシアが戦争に手際よく勝っていることがわかるだろう。彼らはあらゆる場面でウクライナ軍を粉砕しており、ウクライナが降伏するまで粉砕を続けるだろう。FOX の番組『タッカー・カールソン』に出演したダグラス・マクレガー大佐のインタビューを見れば、何が起こっているかが分かるだろう。

 タッカー:「今夜(3月1日)現在、戦況はどうなっていますか?」

 マクレガー大佐:「さて、最初の5日間、ロシア軍のウクライナへの進入は非常にゆっくりとした整然とした動きでした......。彼らはゆっくりと慎重に動き、民間人の犠牲を減らし、ウクライナ軍に降伏する機会を与えようとしました。それはもう終わったことです。ロシア軍は残存するウクライナ軍を包囲し、大規模なロケット砲撃や空爆を行い、ロシア軍の装甲車がゆっくりと、しかし確実に距離を詰め、残存するものを全滅させるべく作戦を展開しているのが現在の段階です。つまり、これはウクライナの抵抗の終わりの始まりなのです。

 タッカー:プーチンの狙いは何ですか?

 マクレガー大佐「プーチンは、2007年のミュンヘン安全保障会議での『NATOが我々の国境に触れるところまで拡大することは許さない、具体的にはウクライナとグルジアだ』という言葉を守るために動き出したのです。プーチンは『私たちは、これらをNATOの軍事力と米国の影響力のトロイの木馬と見ている...』と述べました。彼は何度も何度もこの警告を繰り返しました。ウクライナ東部から反対勢力を一掃するための行動を効果的に回避し、NATOに対して自分の軍隊を配置して、ウクライナを米国と西側の力をロシアに投射するためのプラットフォームとして影響を及ぼしたり変えたりする試みを抑止しようと考えたからです

 彼の目標は、今日現在、ウクライナ東部(ドナイパー川以東)の全域を掌握することであり、彼は川を渡り、キエフ市を完全に掌握する準備を進めています。

 その時点で、プーチンは他に何をしたいのかを決めなければなりません。彼はこれ以上西に進みたいとは思っていないでしょう。しかし、彼は、ウクライナとしてここから生まれるものが、同盟国ではなく「中立」であり、できればモスクワに友好的であることを知りたがっています。彼はそれを受け入れるでしょう。それ以外のものは、彼の戦争は時間の無駄だったということです」(「ダグラス・マクレガー大佐、タッカー・カールソンと」、ランブル)

動画リンク:https://rumble.com/embed/vtmp3r/

 この短いインタビューから何が推測できるだろうか。

 1.ロシアが勝ち、ウクライナは負けるだろう。
 2.ウクライナは分割される。プーチンは自国の安全を確保するために必要な緩衝材を作ろうとしている。
 3.ウクライナ西部を統治する者は誰であれ、「中立」を宣言し(文書で)、NATO加盟の申し出を拒否するよう求められるだろう。もしその約束に違反すれば、力づくで排除される。


 しかし、ここで重要なのは、この大失敗の主役は皆、ウクライナがロシア軍に勝てる見込みがないことを最初から知っていたことだ。それは当然の結論だった。そこで知りたいのは、なぜゼレンスキーはこの悲劇が起こる前に回避する手段をとらなかったのか、ということだ。

 その答えは、「ゼレンスキーの正体」を明らかにするのに役立つ。

 自分自身に問いかけてみてください。

 なぜ、ゼレンスキーはプーチンと交渉するチャンスがあったのに、交渉しなかったのか?

 なぜ、東部から6万人の軍隊を撤退させなかったのか?

 なぜ、ワシントンの武器輸送を止めなかったのか?

 なぜ彼はミンスク条約を履行しなかったのか?

 なぜNATOの加盟を拒否しなかったのか?

 最後に、なぜ彼はモスクワを怒らせ、戦争の可能性を高めるとわかっていることをするのに熱心だったのだろうか?

 これらの疑問に答えるのは難しいことではない。

 ゼレンスキーは最初からワシントンの命令で動いていた。我々はそれを知っている。彼はまた、彼自身でもなく、確実にウクライナのものでもない、ワシントンのアジェンダを実行してきたのである。それもわかっている。しかし、だからといって、彼の責任を免除することはできない。結局のところ、彼は善悪の区別がつく成熟した大人なのだ。彼は自分のしていることが間違っていることも、間違っている以上に許しがたいことも知っている。勝てないとわかっている戦争に兵士を送り込み、理由もなく自国民に計り知れない苦痛と傷害を与えている。ロシアとの最終的な和解によって、ウクライナはバラバラにされ、ゼレンスキーはその責任の一端を担うことになる。

 こんな男が、どうやって生きていくのだろう。

 マイク・ホイットニー: ワシントン州在住の著名な地政学的・社会学的アナリスト。誠実なジャーナリズム、社会正義、世界平和へのコミットメントを持ち、2002年に独立した市民ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせた。


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光り輝くのは必ずしもロシアの金塊ではない

光り輝くのは必ずしもロシアの金塊ではない
<記事原文 寺島先生推薦>

All That Glitters Is Not Necessarily Russian Gold


2022年3月17日
Strategic Culture
ペペ・エスコバール(Pepe Escobar)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月22日

 「ルールに基づく国際秩序」、すなわち「我々のやり方がイヤなら出て行け!」方式は、誰もが予想したよりもはるかに速いスピードで崩壊しつつある。


 ユーラシア経済連合(EAEU)と中国が、ブレトンウッズ体制に対抗するため、セルゲイ・グラジエフ(Sergei Glazyev)の指揮の下、米ドルを経由しない新しい通貨・金融システムの設計に着手している。

 サウジアラビアは、イエメンでの爆撃、飢餓、そして大虐殺の加害者であり、米国、英国、EUから武器装備をされているが、ペトロ人民元の到来を押しすすめている。

 世界第3位の石油輸入国であるインドが、ロシアから石油を大幅値引きしてルーブル・ルピー建てで購入する大口契約を結ぼうとしている。

 リヤド(サウジアラビア)の石油輸出額は、年間およそ1700億ドルにのぼる。その17%を中国が、21%を日本が、15%を米国が、12%をインドが、そして約10%をEUが購入している。米国とその奴隷である日本、韓国、EUはオイルダラー圏にとどまるだろう。インドは、中国と完全に歩調を揃え、オイルダラーの圏を離れる可能性がある。

 (ロシア)制裁への反撃が始まっている。NY連銀、IMF、財務省を経て、超「専門バカ」的なクレディ・スイス(Credit Suisse)社の戦略家、ゾルタン・ポズナール(Zoltan Poznar)のような市場・カジノ資本主義の寵児でさえ、分析ノートでこう認めざるを得なくなった。「欧米が金融安定と物価安定のリスクを最小限に抑え、ロシアの痛みを最大限にする制裁を展開できると思うなら、それはユニコーン(一角獣)に頼るようなものだ 」と。

 ユニコーンは、一部東欧系NATO加盟国の大がかりな心理作戦装置のトレードマークであり、コメディアンのゼレンスキーとポーランド、スロベニア、チェコ共和国の首相との間のキエフでのまったくのフェイク「サミット」がど派手に演出された。しかし、これもジョン・ヘルマー(John Helmer)とポーランド情報によってその偽りが完全に暴かれた。

 現実主義者のポズナールがここでちらっと言っているのは、冷戦初期からどんと居座っていた「ルールに基づく国際秩序」の金融編は、実際は、埋葬の儀式を残すだけ、ということだ:「(ウクライナにおける)この戦争が終わった後、「通貨」はガラリと変わるだろう。」特に、覇権国(アメリカ)が他者の通貨を侵害することによって、自国の「ルール」をこれ見よがしに振り回しているのだから。

 そしてそれは、21世紀の軍事的地政学の中心的な教義を、貨幣/イデオロギーとして構成することになる。世界、特にグローバルサウスは、「通貨」をアメリカ人によって特権が与えられる仮想ターボ・カジノにするか、それともエネルギー源などの現実の有形資産を「通貨」にするか、を決めなければならなくなるだろう。米ドル対人民元という二極金融世界が目前に迫っている。

 確実な証拠はゼローー今のところは。しかし、クレムリンは、制裁によって凍結される可能性のあるロシアの外貨準備を餌に、最終的にオイルダラーが崩壊するように仕向けたのは確かだろう。結局のところ、グローバルサウスの圧倒的大多数は、ポズナールによれば、「貨幣」としての裏づけのない米ドルは絶対に信用できないということを、もう完全にわかってしまっている。

 もしそれが事実なら、プーチンの地獄からの一本勝ちを話題にしたほうがいい。

金塊強奪の(またとない)チャンス

 EAEU(ユーラシア経済連合)と中国が協力して設計する新しい通貨制度からオイル人民元の登場まで、新しいパラダイムの出現の概略を述べてきた。その際見えてきた謎の重要な部分であるロシアの金塊の行方について、真剣な情報交換の議論が始まった。

 ロシア中央銀行が、欧米の制裁を受けやすい外国証券や銀行に資産を預けるという、自殺行為とも言える政策に疑問の声が上がった。

 もちろん、」ドイツやフランスなどロシアの金塊を保有している国々が、ロシアに簡単に国有化できる資産を持っている」というモスクワの計算もある。そして、ロシアとロシア企業の負債総額が、凍結される金塊の額を上回ることも場合によってはある。

 しかし、金塊についてはどうなのだ?

 Z作戦開始の3週間前の2月1日時点で、ロシア中央銀行は6302億ドルの外貨準備高を保有していた。そのほぼ半額の---

 3,112億ドルは外国証券に、4分の1の1,519億ドルは外国の商業銀行や中央銀行への預金に振り向けられた。決して素晴らしい戦略とは言えない。昨年6月現在、戦略的パートナーである中国は、ロシアの外貨準備の13.8%を金と外貨で保有している。

 金塊は、総保有量の21%にあたる1,322億ドルがモスクワ(3分の2)とサンクトペテルブルク(3分の1)の金庫に保管されたままである。

 だから凍結されるロシアの金塊はゼロ? ちょっと待って。ことはそう単純ではない。

 重要な問題は、ロシア中央銀行の外貨準備の75%以上が外貨建てであることだ。その半分は国債のような有価証券で、発行した国の外に出ることはない。また、外貨準備の約25%は、BIS(国際決済銀行)やIMFのほか、民間を中心とした外国銀行とつながっている。

 もう一度、セルゲイ・グラズィエフ(Sergei Glazyev)の画期的なエッセイ『制裁と主権』を思い出すことが必要である:「外貨準備の脱ドル化を完了し、ドル、ユーロ、ポンドを金に置き換えることが必要である。金価格の爆発的な上昇が予想される現状では、その大量海外輸出は反逆行為に等しく、規制当局がそれを止めるべき時が来ている。」

 これは、ロシア中央銀行が金を担保に借り入れを行い、それを輸出していたことを強く告発するものである。実際上、中央銀行は内部犯行として告発される可能性がある。そして結果的に、彼らはアメリカの壊滅的な制裁によって、足元をすくわれたのだ。

 モスクワの専門家によれば、中央銀行は、
「2020年から2021年にかけて、ロンドンにある程度の量の金塊を引き渡していた。この決定は、当時の金価格の高騰(1オンス=2000ドル近く)が動機となっており、プーチンが主導したとは考えにくい。もしそうなら、この決定は非常に愚かな、あるいは陽動作戦の一部と認定できる(中略)ロンドンに引き渡された金塊のほとんどは保管されず、売却されて外貨準備(ユーロまたはポンド)に移され、後に凍結された。」

 ロシアで多くの人が憤慨するのも無理はない。ここで、ちょっと振り返っていみよう。昨年6月、プーチンは金の輸出で得た外貨の本国送還義務を取り消す法律に署名した。その5カ月後、ロシアの金鉱山は狂ったように輸出を始めた。その1カ月後、中央銀行が金の購入を中止した理由を下院が知りたがった。ロシアのメディアが「前代未聞の(金の)強奪」と非難を浴びせたのも無理はない。

 さて話はもっと劇的だ。ロシア情報通信(RIA)ノーボスチ社は、アメリカが指示した凍結を、ズバリ「強盗」と表現し、世界経済の混乱を正式に予測した。 中央銀行は、金の買い付け業務に復帰した。

 しかし、上記のどれもが、事実上ロシア中央銀行が所有していない「行方不明」の金塊を説明するものではない。そこで登場するのが、ハーマン・グレフ(Herman Gref)というちょっと怪しげな人物である。

 このことについて、ロシアの州議会副議長のミハイル・デリャーギン(Mikhail Delyagin)に話を聞いてみることにしよう。彼はロンドンに輸出された金塊にまつわる儲け話について一家言持っている:

 「この作業は1年前から続いている。輸出量は、一説によると600トン。[ロシア中央銀行総裁]ナビウリナ(Nabiullina)は、次のように言っている:
「金を売って現金を得たい人、あるいは金を採掘してそれを取引したい人は、私個人としては、国家があなたから金を市場価格で買うことはない、と申し上げておく。大幅なディスカウント価格となる。まっとうなお金で買いたいのであれば、輸出したほうがいい。金取引の世界の中心はロンドン。そこで、誰もがロンドンに金を輸出し、売るようになった。[ヘルマン]・グレフ([Herman] Gref)氏も例外ではなかった。元国営銀行であるスベルバンクのトップだった同氏は、蓄えていた金の大部分を売り払った。」

 スベルバンク社トップだったグレフの悪巧みについては、こちらを参照。

金の裏付けのあるルーブルから目を離すな

 遅きに失した感は否めないが、少なくともクレムリンでは、中央銀行内の「専門的な事柄にしか視野に入らない」エリート職員ににらみを利かす委員会を設置し、深刻な事態に対処することになった。

 ロシア中央銀行がロシア憲法や司法制度の要請に応えず、IMFに従属しているのは不可解である。こんな見方ができるかもしれない。カルテルが織り込まれたこの金融システム(つまり主権はゼロ)(訳注:IMFのこと)は、地球上のどの国も正面から攻撃することができず、プーチンはそれを一歩一歩弱体化させようとしている、と。これにはもちろん、エルビラ・ナビウリナ(Elvira Nabiullina)をロシア中央銀行総裁の地位にとどまらせることも含まれる。たとえ彼女がアメリカ政府の総意に逐一従っているとしても、だ。

 そう考えると、クレムリンは最初から、大西洋主義者に本当の手の内を明かさせ、世界中の聴衆のために「王様は裸だ」という寓話で彼らのシステムを一気に暴露することを考えていたのかもしれない、という超ハイリスクな話に戻ってくる。

 そこで、グラツィエフ指導のもと、EAEU・中国の新通貨・金融システムが登場する。ロシア、中国、そしてユーラシア大陸の広大な地域がカジノ資本主義から徐々に離れ、ルーブルは金の裏付けがある通貨に再変換され、ロシアは自給自足、生産的な国内投資、グローバルサウスの大部分との貿易接続に焦点を当てることができるのは確かである。

 没収された外貨準備やロンドンで売られた大量の金塊をはるかに超えて、ロシアは究極の天然資源大国であることに変わりはないのだ。不足?ほんの少しの間ほんの少し緊縮財政をすれば済む話だ。1990年代の新自由主義による国家的困窮と比べればどうということもない。そして、他のBRICS諸国、ユーラシアやグローバルサウスの大半の国々に格安な価格で天然資源を輸出することで、さらなる追い風となるだろう。

 西側諸国は、新たな汚らしい東西分断を作り上げたに過ぎない。ロシアは、自らの利益のために、それをひっくり返そうとしている。つまり、多極化した世界の日の出は東から昇っている。

 嘘の帝国は引き下がらないだろう。なぜなら、プランBを持っていないからだ。プランAは、西側諸国全域でロシアを「キャンセル」することである。だから何?ロシア恐怖症、人種差別、連日連夜の心理作戦、加熱したプロパガンダ、文化のオンライン暴徒をキャンセル、そんなものには何の意味もない。

 事実が重要なのだ。熊(ロシア)は、核兵器も極超音速ミサイルもたっぷり持っている。(その気になれば)朝食前の数分間でNATOを粉砕し、食前酒カクテルを手に取る前に、西側諸国に教訓を与えることができる。まともなIQを持つ一部の例外主義者が、「安全保障の不可分性」の意味をようやく理解するときが来るだろう。

The views of individual contributors do not necessarily represent those of the Strategic Culture Foundation.


Pepe ESCOBAR
Independent geopolitical analyst, writer and journalist

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モスクワ、キエフのショッピングモールへのミサイル攻撃について説明


モスクワ、キエフのショッピングモールへのミサイル攻撃について説明

<記事原文>
Moscow explains missile strike on Kiev mall

ロシア軍によると、敷地内にウクライナのロケット・ランチャーが設置されているのを発見し、攻撃を命じたという。

RT 2022年3月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月23日



ロシアが攻撃した疑いがあるとされるウクライナのキエフにあるショッピングモールの破壊された建物と車両の様子。

 ロシア国防省は、民間の建物が隠れ箕として使用された後に、ウクライナのロケット砲がキエフのショッピングモールに隠されたことを示すとするビデオを公開した。この場所は一晩のミサイル攻撃で破壊されたが、ウクライナ当局は民間人を標的にした無差別爆撃だと発表していた。

 イーゴリ・コナシェンコフ少将(Игорь Конашенков; born)は記者団に対し、「3月21日の夜間、高精度長距離兵器が、廃業したショッピングセンターにあるウクライナの多連装ロケット砲の砲台や弾薬を貯蔵する基地を破壊するために使用された」と述べた。

 ロシア軍報道官は、ウクライナ軍がヴィノグラダール地区を作戦の拠点として使用していたと付け加え、その旨を示す監視映像を示した。映像の最後には、1発のミサイルのようなものがこの場所を攻撃している。
(訳者。その映像は以下のリンク先をご覧ください)
https://core.telegram.org/widgets

 キエフ北西側のヴィノグラダール地区とポドルスク地区の間に位置するショッピングセンター「レトロヴィル」は、夜間に攻撃された。ウクライナの救急隊は月曜日、救助隊が現場から8人の遺体を収容したと報告した。

 9階建てのビル(敷地内にあるいくつかのビルのうち最も高いもの)は、爆発とその後の火災によって大きな被害を受け、鎮火したのは3月21日の正午頃であった。爆発後の映像によると、この地域は壊滅的な被害を受けた。数百メートル離れた住宅地の窓は、衝撃波で粉々になったそうだ。

 ウクライナ検察庁は、この攻撃はロシアによって明らかに戦争のルールに違反して行われたものであり、計画的な大量殺人として捜査されるだろうと述べている。
(訳者。その映像と画像は以下のリンク先をご覧ください)
https://core.telegram.org/widgets

 モスクワがドローンの映像を見せる前には、ロシアが攻撃を開始したのは、ウクライナのソーシャルメディアでレトロビルの発射台を映した映像を見たからではないかという憶測がネット上で広まっていた。

 Facebook、Twitter、TikTokの複数のユーザーが、この地域でロケット砲が運びこまれている画像や動画を投稿しており、2つの駐車場の間にあるガレージか地下道のような場所に配置されている様子も映っていたのだ。

 RTは、この映像が本物か、偽造されたものかをすぐに確認することはできなかった。写真と空爆を結びつけたフェイスブックユーザーの1人は、攻撃を正当化するためにフェイクニュースを流すロシアのプロパガンダだと非難されたため、投稿をシェアしたことを謝罪し、その後削除した。


 モスクワは2月下旬に隣国ウクライナを攻撃した。ウクライナがミンスク協定の条件を履行せず、7年間にらみ合った末、ロシアが最終的にドンバス地域の2共和国であるドネツクとルガンスクを承認したことをめぐり起こったことである。ドイツとフランスが仲介したこのミンスク議定書は、ウクライナ国家内でのこれらの地域の地位を正統化するために作られたものであった。

 ロシアは現在、ウクライナは中立国であり、米国主導のNATO軍事圏に決して参加しないことを公式に宣言するよう要求している。キエフは、ロシアの攻撃は全く正当な理由のないものであると主張し、キエフが武力による2つの共和国の奪還を計画しているとのロシアの主張を否定している。

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この霧をうち破ればその向こうに「新しい兵法」の1ページ目が見える

この霧をうち破ればその向こうに「新しい兵法」の1ページ目が見える

<記事原文  寺島先生推薦>
Cutting Through the Fog Masking ‘a New Page in the Art of War’

Strategic Culture  2022年3 月10 日

ペペ・エスコバー(Pepe Escobar)

<記事翻訳  寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月23日

 政府とは呼べないキエフのウクライナ政府は、米帝国からロシアとどんな同意も結ばないようにとだけ命じられている。

 「3つの脅威」とでも呼ぶべき根拠が確証されたのだ。ロシアのZ作戦開始はその3つの根拠を前提として始められていたのだ。

 ①ウクライナが核兵器を開発中であること。この件についてはゼレンスキー自身がミュンヘン安全保障会議でほのめかしていた。

 ②米国の生物化学研究所がウクライナに存在すること。このことをあっさり認めたのは、2014年にキエフでクーデター参加者たちに不吉なクッキーをばらまいたことで有名で、ヌーランド汗国の上級ネオコンを夫に持つビクトリア・ヌーランドだった。彼女が、ロシア軍がウクライナで見つけた施設を「生物化学研究所施設」だと認めたのだ。

 ③多くの一般市民の殺害が伴うであろうウクライナ軍によるドンバスへの攻撃が差し迫っていたこと。ロシア軍が入手した文書によるとその攻撃はこの3月に実行されていた可能性がある。或いは2月下旬であったかもしれないことを、ロシア対外情報庁は伝えている。同情報庁は分刻みで通信回路の分析を行っている。これらの脅威があったからこそ、R2P(Responsibility to Protect。自国を守る力のない国を他国が保護する責任)のロシア版として、ロシアが最終的にZ作戦を開始したのだ。  

 ブリガリアのディヤーナ・ガイタンジーバ(Dilyana Gaytandzhieva)記者が素晴らしい取材で明らかにしたのだが、米国防総省が持つ生物兵器のことが完全に実証されたのだ。

 ウクライナの生物化学研究所の研究員から入手した文書に基づき、ロシア軍高官が明らかにしたところによると、米国防総省が資金提供したその研究所で行われていた研究の中には、コウモリのコロナウイルスについての研究も含まれていたとのことだった。

 これらの研究の目的はすべて、(その中には野鳥によって病原菌をロシアやウクライナや近隣諸国に伝播させようという米国防総省が計画していた計画も含まれている)「恐ろしい病原菌を秘密裡に拡散する体制作りのため」だった。

 お馴染みの陽動作戦を駆使して米国政府は全てをあべこべに変えてしまった。「あのロシアの悪党どもが生物化学研究物質の標本を自由に使えるようになったのだから、ウクライナで生物化学兵器が使われる“事故“が生じれば、ロシアのせいにするしかないだろう!」てな具合に・・

 ホワイトハウスは、自らの愚かさを示す展示会でも開くかのごとく、ロシアには「偽情報」だと非難し、中国には「プロパガンダの拡散だ」と責め立てている。

 ロシア政府のドミトリー・ペスコフ(Дмитрий Песков)報道官は、以下のような大人の対応を見せている。「全世界がウクライナ国内に存在した米国の生物研究所で本当はどんな研究が行われていたかについて、関心を払うでしょう」と。

ウクライナの地域性からの考察
 
 現在ウクライナの市民たちは、西側諸国から何の規制もなしに運び込まれるウクライナの武器の標的にもされながら、戦争の霧から抜け出るために、Z作戦により開かれた道を通って逃れようとしているのに、ネオナチのアゾフ大隊が妨害しているという事実が何度も何度も確認されている。これらバンデラ(訳注:ウクライナのナチの英雄)陶酔者たちは 突撃隊としてウクライナを新たなイドリブ(訳注:シリアの激戦地)に変えてしまう魂胆だ。そう、ご主人様の仰せの通り。

 ネオナチはシリアでISIS(ダーイッシュ)がシリアで行ったことと全く同じことをしている。市民の影に隠れて市民を人質にとるという戦法だ。アゾフ大隊はISIS(ダーイッシュ)の白人版だ。結局、両者は同じご主人様から戦略を授けられたということだ。

 アゾフ大隊は450人の血気盛んな兵士たちからなる部隊により強化されることになるだろう。その出処はどこでもない、そうイドリブからだ。その構成員の多くは、シリア人ではないヨーロッパやマグリブ(アフリカ北部)出身だ。しかしそのほとんどは、アルカイダや東トルキスタンイスラム運動のトルコ支部の一員だ。移動経路はシリア・トルコ国境経由だ。その経路での密入国は誰でも可能だからだ。

 現状、Z作戦の戦略がどう展開するかを最も詳細に見た答えは何だろうか?優れた先見の明をもつアンドレイ・マルチャノフ(Andrei Martyanov)によると、「軍隊と警察が合体した作戦」だとのことだ。つまり軍事行動(諸兵科連合)を基盤に置きながら、同時に警察的な作戦も行うということだ。そして犯罪者の逮捕(あるいは処刑)も行うという作戦だ。 (そうやって”非軍事化”と”“非ナチ化”を最大限に行うという作戦だ)。

 混じり気のない、地べたからみた視点からいけば(ロシア語からの直訳をわかりやすく言い換えた)、ロシアの軍事に詳しいウクライナ在住のアレクサンダー・ダブロフスキー(Alexander Dubrovsky)の論考を打ち負かすことはできないだろう。ダブロフスキーが強調しているのは、Z作戦の目的がいかに「戦略と戦術」に基づいており、急いで事をなそうとすることは、この「全く新しい兵法が取られている中では」問題外であるという点だ。

 霧を打ち破るという意味においては、トルコのアンタルヤで開催されたロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相の話し合いは実質上何の解決にもならないであろうことは皆が認めるところだ。同様に、トルコが建設的な役割を果たすことも考えにくい。

 政府とは呼べないキエフのウクライナ政府は、帝国からロシアと何も同意しないようにだけ命じられている。ウクライナが取れる戦略は時間稼ぎをすることだけだ。Z作戦(あるいは「戦争」と呼んでいいだろう)を止めるには、キエフのお笑い芸人ゼレンスキーがロシアに電話をかけるだけでいいのに。

 少なくともラブロフはいくつかの大事な点に関しては明確な態度を示している。「ロシアは戦争を望んでいないし、石油や天然ガスを武器に使用しない。ただウクライナを中立化させたいだけだ」と。

 さらにラブロフが付け加えているのは、西側は「安全保障の分割など出来ない」という考え方を理解しようとしていない点だ。さらに、ウクライナに武器を与え、傭兵を送り込もうとしている人々は「自分たちが取っている行為に対して責任を持つべきである」ことを理解しないといけないという点だ。そしてヒステリックな制裁措置に関して、ラブロフはこう強調していた。「我が国は我が国の日常のいかなる戦略的分野においても、西側諸国にはもう依存しません」と。

 ラブロフと、何の手がかりも持たずに議論しているNATO信者である「専門家たち」とを同等に考えようとしていることは考えさせられることだ。というのもNATO信者たちはユーラシアのことは眼中に入れずに、「この戦いは領土回復を目指す独裁者とリベラル民主主義との戦いだ」などと分かったような口をきいているからだ。本当に愚かしい。これは国家主権の問題であって、イデオロギーの問題ではないのに。

 もちろんNATO信者たちにはウクライナの非ナチ化の実現など理解できるわけがない。非ナチ化こそ、政治的・文化的・社会科学的分析において重要な問題であるのに。ネオナチに先導されているキエフの崩壊政権を支持している国々のほとんどが、ナチの復権を否定する国連決議に対して反対票を投じた国と重なっているのは偶然の出来事ではない。

 歴史的観点から見れば、これらの「専門家たち」が精読すべき著書は、ミハイル・ブルガーコフ(Михаил Булгаков:ウクライナ出身の小説家。1891-1940)の『白衛軍』だろう。ブルガーコフは、ウクライナを「ステップの民」の再来だと考えていた。文化的に貧しく、何かを創造する力にも乏しく、未開のまま破滅する運命にあると。念頭に入れておくべき重要な事実は、ウクライナが1918年~1920年にかけて国家を建設しようとしていた時、文化や産業の中心地だった、オデッサやヘルソンやムィコラーイフやハリコフやルガンスクは、ウクライナに含まれていなかったという点だ。さらにウクライナ西部は長年ポーランドの一部だったという点も、だ。

ユーラシア列車への乗車準備は出来ている

 経済的観点から言えば、ハイブリッド戦争(正規戦に情報戦などを加えた形態の戦争のこと)の犬どもがうるさく吠えてはいるが、ユーラシアの統合はどんどん進んでいて、米帝国がユーラシア大陸から追い出されることは避けられなくなっている。

 アンタラヤのラブロフ/クレバ会談に先んじて行われた電話会談において、トルコのエルドアン大統領がプーチンに提案したのは、金やルーブルや中国元やトルコリラ立ての貿易体制をうちたて、西側のヒステリックな制裁を打ち破る作戦だった。この情報の情報源はトルコのアブドゥルカディル・セルヴィ(Abdulkadir Selvi)記者だが、彼はエルドアンに非常に近い記者だ。ただしロシアや中国当局はこの件に関する声明はまだ出していない。

 大事なことは、ロシアと中国、さらにはこの件に関しては上海協力機構全体が(この三者を合わせれば世界のGDPの3割を占め、欧州市場と匹敵する勢力をもつ)、西側諸国を全く必要としないという点だ。

 元世界銀行の上級経済専門家であったピーター・ケーニッヒの指摘によると、「西側諸国のGDPは基盤が違う。それは西側社会のGDPは、生産ではなくサービスの割合が高くなっているからだ。一方上海協力機構やグローバル・サウスの国々のGDPは生産を基盤としている。両者の大きな違いは、各国の通貨が占める役割を見れば一目瞭然だ。西側では各国の通貨の役割は全く存在しない。東側諸国での各国通貨はたいてい自国の経済に支えられている。それは特に中国で当てはまるし、ロシアでもまもなくそうなるであろう。つまり自給自足経済が可能になり、西側諸国へ依存しなくて済むようになるということだ。」とのことだ。

 より広範囲な地政学的観点から見れば、米帝国がウクライナを使ってロシアに対して止むことのない消耗戦を仕掛けているのは、新シルクロードに対する戦争を仕掛けているのと同じことだ。2014年のマイダンのクーデターが起こったのは、一帯一路構想(当初はBRI[the Belt and Road Initiative]、その後OBOR[One Belt, One Road]という名に変更)をカザフスタンとインドネシアに接続しようとした数日後のことだった。米帝国によるこの戦争は、ロシアの「大ユーラシア・パートナーシップ構想」に対する戦争でもある。つまりこの戦争はユーラシア統合に対する全面戦争であるということだ。

 そうなれば一帯一路構想の重要な側面が浮き彫りになる。具体的には、ユーラシア鉄道・道路接続計画だ。中国と欧州を結ぶ接続だが、ロシアを経由する経路も含まれている。NATO信者による今のでっち上げのヒステリックな制裁はロシアに対するものだけではなく、中国に対するものでもある。

 米国政府にとっては、一帯一路構想は受け入れがたい以上のものだ。黙示録に出てくる獣のようなものだ。その対応として、西側諸国は、米国が提示しているB3W (“Build Back Better World:よりよい復興)やEUが掲げる「グローバル・ゲートウェイ構想」などというバカげた構想にしがみつこうとしている。これらの構想は今のところは、無視するほどでもないわずかな影響力しかない。

 ウクライナも一帯一路構想から見れば問題にはならない。ウクライナは、中国・欧州接続貨車路線でいくと2%しか占めていない。しかしロシアとなると話は全く別だ。

 中国・欧州貨物列車輸送調整委員会ファン・シービン(Feng Xubin)副委員長によると、中露間の貨物列車輸送計画に支障が出る可能性があるとのことだ。「現在のところ、貨物列車はドル立てで運営されています。[中略] 西側が国際金融体制においてロシアを経由する経路を切断すれば、中露間の決済体制が通常のように行かなくなる可能性があります」とのことだ。

 EUから見れば、貿易が阻害されるのは良いことではない。中国・欧州間貨物列車輸送量は昨年1年で二倍に増えている。

 例えば、欧州復興開発銀行(EBRD)とアジアインフラ投資銀行 (AIIB)の両行は、イスタンブールからブルガリア国境に繋がる時速67キロの高速鉄道の延長事業に共同出資している。

 結局ロシアに対する制裁は、欧州圏の供給網(具体的には、交通、港湾、保険、コミュニケーション産業)を苦しませることになるのだ。多くの制裁は後に解除になる可能性がある。それはEU自体がその制裁により痛みを感じ始めるだろうからだ。

 ロシアに制裁が課されても中国には代替案が豊富にある。一帯一路構想の北ルートの「中国―カザフスタンーロシアーベラルーシーEU経路」は存続するし、カザフスタンのアクタウを通るカスピ海ルートという迂回路も可能だ。トルコの路線を使って、バクー(アゼルバイジャン)ートビリシ(ジョージア)ーカルス(トルコ)(BTK)鉄路を完全に接続させようという動きもある。さらには、南北輸送回廊(INSTC)においても、バクーとイランのカスピ海岸をつなぎ、戦略的に重要なイランのチャバハル港まで鉄路で接続しようという動きもある。

 つまり、ロシアを迂回できる一帯一路構想の南回路の活性化が起こるかもしれないということだ。そうなればトルコや、コーカサス諸国やカスピ海諸国が勢いづくことになる。いずれにせよ中国にとって損はない。さらにロシアにとっても、この迂回路がしばらく続く可能性はあるが、そう大問題にはならないだろう。結局これからのロシアにおいては、ユーラシアの東部と南部における貿易が活発化するということだ。であるのでロシアが西側に制裁を加えるようになることは考えにくい。

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ウクライナの民族主義者がチェルノブイリへの電力供給を停止しようとしたとロシアが主張


ウクライナの民族主義者がチェルノブイリへの電力供給を停止しようとしたとロシアが主張

モスクワはウクライナ軍が "極めて危険な挑発行為 "を行ったと非難している。

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukrainian nationalists attempted to cut power to Chernobyl, Russia claims

RT 2022年3月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月22日


ウクライナのチェルノブイリ近郊で見かけた放射能標識(2018年11月22日)

 ロシア国防省は9日、「ウクライナ民族主義勢力」がチェルノブイリ原発に電力を供給する変電所と送電線を攻撃し、「極めて危険な挑発行為」を行ったと非難した。これより前に、ウクライナ当局は、停電はロシアのせいであり、「ヨーロッパを危険にさらす」恐れがあると主張していた。

 「現在、ウクライナ側は修理・復旧作業の編成を避けるため、あらゆる手段を講じている。我々の意見では、これは民族主義者の行動が絶対に意図的で挑発的であることを再び確認するものだ」とロシアのニコライ・パンコフ国防副大臣は特別記者会見で述べた。

 パンコフ氏によると、ロシアの専門家は、発電所がバックアップ用のディーゼル発電機で駆動することを保証されており、ロシアのパベル・ソローキンエネルギー副大臣は、発電所をベラルーシのエネルギー供給網に接続すれば、恒常的に電力を確保できると述べた。

 「圧縮ステーションに対する妨害行為や挑発行為は、ウクライナ当局の責任であることを強調し警告したい。これは彼らの契約上の義務であり、ウクライナ側の責任である」とソローキン氏は述べた。
ロシア軍は2週間前、ウクライナに入国して数時間でチェルノブイリ原発を制圧したが、その後数日間、散発的な戦闘が報告されている。

 ウクライナの原子力企業であるエネルゴアトムは9日、チェルノブイリとの通信が途絶え、同施設が「電力網から完全に切り離された」と警告した。ロシア軍がこの地域で活動しているため、同社は、ウクライナの修理作業員が電力を回復するために原発に行くことができなかったと主張している。

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AEA comments on Chernobyl safety fears

 ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、原発のバックアップ用ディーゼル発電機がなくなれば、「使用済み核燃料の貯蔵施設の冷却システムが停止し、放射能漏れが間近に迫っている」と明言した。そうなれば、「ヨーロッパ全体が危険にさらされる」ことになるという。

 しかし、国際原子力機関(IAEA)はその直後、同原発の「安全性に重大な影響はない」と発表した。

 「1986年のチェルノブイリ事故から時間が経過しているため、使用済み燃料貯蔵プールの熱負荷とプール内の冷却水量は、電力供給を必要とせずに効果的な熱除去を維持するのに十分である」という更新情報をIAEAは前もって出していた。

 キエフの北約100km、ベラルーシとの国境から10kmに位置するチェルノブイリは、世界最悪の原子力災害の舞台となった場所である。1986年に原子炉の1つが溶融して大火災を引き起こし、周辺住民数千人が危険なレベルの放射線にさらされた。現在も原発周辺の広大な地域は居住不可能なままであり、原発はもはや発電していないが、再び事故が起こらないように常に維持することが必要となっている。

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バカ正直なロシア人
<記事原文 寺島先生推薦>
Dumbshit Russians?


ポール・クレイグ・ロバーツ

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月20日


 読者の皆様もご存知のように、私はしばしば「馬鹿なアメリカ人」という言葉を口にするが、 ロシア人にも同じことが当てはまるのではないかと思い始めている。

 「馬鹿なアメリカ人」については、証拠が後を絶たない。最近ピュー・リサーチ(Pew Research)がアメリカ人を対象に行った世論調査があるが、それが正確であれば、アメリカ共和党員の36%、アメリカ民主党員の35%が、ウクライナでのロシアに対するアメリカの軍事介入を「たとえロシアとの核衝突のリスクがあっても」支持していることがわかる。この世論調査は、アメリカ国民の半数が、ロシアの自国に対する安全保障への懸念は、アメリカの利益に対する「大きな脅威」であると考えていることを示している。
https://www.rt.com/news/552095-americans-nuclear-war-ukraine/

 アメリカ国民の3分の1以上が、全く腐敗したナチス支配のワシントン傀儡国家であるウクライナのために核兵器による破滅に耐えようとしていることに、私は驚かされる。アメリカ人はウクライナに何の興味もないし、ウクライナ人はアメリカの人口に占める割合も少ない。 ウクライナのために核戦争をする気でいる間抜けなアメリカ人は、CNN、MSNBC、Fox Newsを見て、NPRを聞き、NYタイムズやワシントンポストを読んでいる間抜けな人たちである。 彼らは洗脳され、支配エリートの狭い利益にのみ役立つ公式シナリオによって作られた偽りの現実の中で生きている人々である。ほとんどの間抜けは、自分の配偶者、両親、子供のために死ねないだろう。しかし、彼らは御用メディアによってプログラムされているので、ウクライナがドンバス地方のロシア人を村や都市に砲撃できるように、死ぬことをいとわないのである。本当に、これは想像を超えた愚かさだ。

 私はこれまでずっと、プーチンやロシアの統治者層はもっと頭がいいと思っていたが、だんだんそうは思わなくなってきた。確かにプーチンは2007年のミュンヘン安全保障会議で、ワシントンの一極集中は終わった、独立した利益を持つ他の大国が登場している、と言ってワシントンを罵倒した。しかし、それは15年前のことである。 それ以来、ロシアは、アメリカが仕組んだグルジアの南オセチアへの攻撃と、最近カザフスタンで起きたカラー革命の試みを撃退した以外には、自国の重要な利益を守るために何もしていない。それどころか、ロシア中央銀行は外貨準備を海外に置き、それは没収された。クレムリンは、ワシントンとその操り人形であるNATOが提供した武器を使ったウクライナのネオナチによるドンバス共和国への8年間の砲撃を許可することによって、ロシアを小心者とみなす西側の意見を後押ししてきた。そして今、クレムリンは壊滅的な対抗制裁を適用することなく、ロシアに対するあらゆる制裁の暴挙を許容している。プーチンは、世界で唯一、国際法を遵守する政府指導者の役割を担っているのである。驚くべきことに、プーチンはこの正義の誇示が悪魔に影響を与えると考えている。
https://www.rt.com/business/552077-russia-will-respect-private-ownership/ ヤクザの世界において、契約と私的所有権を尊重することがプーチンにとって何の役に立つのだろうか?

 私はしばしば思うのだが、クレムリンは自分たちが何を相手にしているのか、まったくわかっていない。ロシアはソ連の過去に対する疑念にさいなまれており、ワシントンの情報心理作戦の格好のカモになっている。

 私がこうなると言ったように、ロシアの緩慢な戦争は100%敵の思う壺であった。ロシアは、自国に対する壊滅的な情報心理作戦キャンペーンを回避し、NATOのさらなる拡張を威嚇するために、迅速な勝利を必要としていた。西側諸国が人道的な意図を尊重してくれると信じることによってクレムリンが達成したことは、悪名高いものになっている。最終的に核戦争につながるロシアの挑発を思いとどまらせる代わりに、西側が無抵抗とみなすクレムリンの自由主義的なお人好しの戦争政策は、さらなる挑発を促した。いまクレムリンは、数日後にロシアの旧州グルジアがNATOと軍事演習に参加する事態に直面している。 フィンランドは、西側メディアが描くウクライナでのロシアの弱さしか見ていないので、今ではNATO加盟を申請するほど気が大きくなっている。

 ロシア軍が無力なウクライナの一部を制圧するのにかかる時間は、ヒトラーが全ヨーロッパを制圧するのにかかった時間と同じになりそうである。 このことは、ロシアを刺激することは危険だとヨーロッパ人に印象づけるものではない。 またNATOの拡大に対する信念を揺るがすものでもない。NATOの拡大は防御ではなく、攻撃的な手段であることは、すべてのNATO加盟国が知っている。ロシアとの国境にミサイル基地を置く目的は、ワシントンの覇権主義に対する制約としてのロシアを排除することである。

 ザ・セイカーやアンドレイ・マルティアノフはロシアの軍事力を擁護する。しかし、クレムリンが多くの民間人を傷つけたり、ヨーロッパを怖がらせたりしたくないがために、それが使えないとしたら、何の役に立つのか? プーチンは、ワシントンの帝国が破綻すると考えているが、ヨーロッパがロシアの破綻を目の当たりにするとそうはいかない。報道が正しければ、クレムリンはウクライナへの限定的な軍事介入を始める前に、外貨準備を敵の手から引き離すだけの分別もなく、それを没収されてしまった。

 ロシアのマスコミが問うていないのは、ロシアの金と為替の半分が制裁で押収されたと発表したアントン・シルアノフ財務大臣が、ロシアの外貨準備を制裁で簡単に盗まれる海外に分散させることを、なぜ無能なロシア銀行のエルビラ・ナビウリーナ頭取に許可したのか、ということである。 この無能さは第三世界の国でも信じられないレベルである。プーチンはなぜこのような明らかに無能な役人を支持するのだろうか。その行動の一つ一つが、西側諸国の対ロシア制裁の効果を支えているのだ。

 ロシアの問題は、クレムリンが、欧米はロシアのパートナーではなく、敵であるという事実を理解できないことだ。ロシア外務省は、自国が西側の一部になるためには、誤解を解くことだけが必要だと考えているようだ。

 2014年に発表された論文では、ロシアは、明確で、そして使われていない軍事的優位性を持っているにもかかわらず、非力であると説明されている。その著者は述べている。「したがって、プーチン大統領が米国とその同盟国の地政学的攻撃に対してより強力に立ち向かえない、あるいは立ち向かおうとしないのは、軍事的弱点や経済資源の不足そのものよりも、その経済がオリガルヒの経済的役割に依存し、それゆえ、気まぐれな世界市場や欧米列強の帝国主義の気まぐれにも依存しているからだ。悲しいことに、市場のグローバル化、すなわち国際金融市場の気まぐれやグローバルな金権支配の野望に対する経済的依存や脆弱性というジレンマに取り組んでいるのはロシアだけではない」。https://politicaleconomicsinfo.wordpress.com/putin-blinks/ この間、ロシア(と中国)は自分たちに不利な勢力から身を守るためにほとんど何もしてこなかった。

 つまり、ワシントンがエリツィン時代にロシアを征服できたのは、ロシアの知識階級とオリガルヒが彼らの利益はロシアの主権ではなく、西側にあることに気付いたからである。彼らはロシアの国家資源を銀行口座で私有化したのだった。クレムリンは、民主主義と開放性の実現を約束し、西洋とCIAが出資する無数のNGOが、ワシントンのためにロシア国内で活動することを許可した。クレムリンは、その甘さゆえに、ロシアに対する第5列を自国内で容認し、おそらくは支援さえしてきたのだ。ロシアに対抗する第5列をクレムリンが容認していることは、私の理解を超えている。

 私は、ロシアに対する制裁は、主権を志すかもしれない他の国々に警告を与え、世界にとって脅威となるのはロシアではなく、ワシントンの覇権主義であるという認識が広まることを承知している。しかし、その意識は有効なのだろうか。

 西側の報道機関が物語を支配している。プーチンやラブロフがいくら事実を強調しても、西側にとって事実は重要ではない。プーチンたちは時間とエネルギーを浪費させられているだけなのだ。

 欧米では事実は無力だ。あらゆる種類の証拠が無力なように。事実の代わりに、嘘を真実に変え、フィクションを事実に変える公式の物語がある。ロシア人は、誤った非難に対応するために時間を浪費させられる。その非難は情報心理作戦なのだ。クレムリンがその非難に反応するとその非難は正当化されてしまうのである。

 私は、クレムリンには、自分たちよりも賢く、決意の固い悪を相手にしているという自覚が欠けているのだという結論に達した。クレムリンが西側に対して力づくで対処しないことが、世界を核のアルマゲドンに導いているのだ。ワシントンは、ロシアの弱さを感じ取り、多くの同盟国がロシアの降伏に代わる唯一の選択肢は核戦争であると思うまで挑発を推し進めようとしている。

 ロシアには無用な擁護者であるザ・セイカーでさえ、客観的事実がロシアの事例を裏付けているとして、状況は「嘘の帝国とロシアの全面的な(通常と核の)軍事衝突に向かっている」という結論に至っている。https://thesaker.is/russian-special-military-operation-in-the-ukraine-day-20/。

 これは私が最初から言っていたことだ。ロシア人が考えている事実に基づく世界はそこにはない。クレムリンが活動している世界は、ワシントンが活動している世界とは全く関係がないのだ。

 昨日の演説でプーチンは、西側がロシアに閉鎖的で、ロシアが「全くモラルが退廃し、完全に非人間化している」西側との対立に直面していることがようやく分かったと述べた。https://www.rt.com/russia/552096-putin-ukraine-west-speech/

 欧米による制裁やロシア中央銀行の資産差し押さえが、ウクライナのネオナチ勢力に対する米国やNATOの武器供与と同様に、戦争行為であることを認識しているのはごく少数であり、その声もあまり聞こえてこない。クレムリンは彼らの軍事作戦への干渉を警告している。もしクレムリンが西側の行動を干渉と見なすことを選択するならば、より広範な戦争が私たちの前に立ちはだかることになろう。ワシントンがこのようなリスクを冒すのは、覇権への執着と、長年にわたる挑発行為をクレムリンが容認していることの反映でもある。
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いまウクライナで起こっていることは、すべて3年前のランド研究所のプランに書かれていた

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine, It Was All Written in the Rand Corp Plan

マリオン・ディヌッチ(Manlio Dinucci) 、グローバルリサーチ、2022年3月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>、2022年3月20日

 


 マンリオ・ディヌッチが書いたコラムはイル・マニフェスト紙による検閲の対象になってしまった。
以下は、その件に関するマンリオ・ディヌッチの回答だ。

 3月8日、オンライン上で私が書いたコラムを一時公開した後(リンク参照)、マニフェスト編集部は、私が「真理省」の指示に従わず、ウクライナ危機に関する討論を呼びかけたとして、そのコラム「戦争の技術」をサイトからも紙版からも一晩で消滅させた。

 こうして、10年以上にわたってコラムを掲載してきたこの新聞社と私との長い協力関係が終わった。

参考記事
Ukraine and the Orwellian “Ministry of Truth”: The Attack Was Launched by NATO Eight Years Ago.


 読者の皆様には、これからも別のルートで情報をお伝えしていきますので、よろしくお願いします。

マンリオ・ディヌッチ

**
<以下はディヌッチ氏が書いた削除されたコラムの本文>

 米国の対ロシア戦略計画は、3年前にランド研究所によって練り上げられた(マニフェスト『ランド研究所:ロシアを崩壊させる方法』2019年5月21日)。ランド研究所はワシントンDCに本拠を置く「政策課題の解決策を開発するグローバルな研究機関」で、50カ国から採用した1800人の研究者やその他の専門家がおり、75カ国語に対応し、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ペルシャ湾のオフィスやその他の場所に分散している。米国人社員は25カ国以上で生活し、仕事をしている。

 自らを「非営利、無党派の組織」と表現するランド研究所は、国防総省、米陸軍、空軍、国家安全保障機関(CIAなど)、他国の機関、強力な非政府組織から公式に資金提供を受けている。

 ランド研究所は、冷戦時代、ソ連に資源を消費させる過酷な軍事対決を強い、米国の勝利に導く戦略を考案したと自負している。この手口は、2019年に練り上げられた新しい計画「Overextending and Unbalancing Russia」でも継承されている。すなわち、敵対国に過剰な拡張を強いてバランスを崩し、打ちのめすことをけしかけるという手口である。

 以下はランド計画で示された主な攻撃方針で、米国は近年、実際にこの方針で動いている。

 その計画書にはこうある。「まずはロシアのアキレス腱から攻めなければならない。それは天然ガスと石油の輸出に頼っているロシア経済だ。この目的を達成するために、商業・金融制裁を行い、同時に、ロシア天然ガスのヨーロッパへの輸入を減らし、米国の液化天然ガスに置き換えるように仕向けなければならない。」

 「イデオロギーや情報の分野では、ロシア国内で抗議行動を促進させることと同時に、国外でのロシアのイメージを低下させることが必要である。」

 「軍事面では、欧州のNATO諸国が反ロシアの役割を強化するような作戦が必要である。米国は、対ロシア向けの戦略爆撃機や長距離攻撃ミサイルへの投資を増やすことで、リスクが少なく、高い成功率と高い利益を得ることができる。一方欧州には、ロシアに向けた新たな中距離核ミサイルを欧州に配備することで、高い成功率を保証するが、高いリスクも伴う。」

 「それぞれの選択肢で望ましい効果が得られるように調整することで、結局、ロシアは米国との対決で最も高い代償を払うことになるが、米国とその同盟国は、他の目的から転用して大きな資源を投入しなければならない」とランド研究所は結論づけている。

 その戦略の一環として、ランド研究所の2019年の計画では、「ウクライナへ兵器援助を提供することは、ロシアの対外的脆弱性の最大のポイントを突くことになるが、米国が提供するウクライナへの武器や軍事的助言の増加は、近隣のロシアが(軍事的に見て)ウクライナに対して大きな優位性を持つため、はるかに大きな紛争を誘発せずにロシアの犠牲を高めるために慎重に調整されなければならない」と予測されている。

 今回のウクライナ危機で破局が生じたのはまさにこの点である。つまり、ランド研究所が「ロシアにとって最大の対外的脆弱性」と呼ぶものを利用し、「より大規模な紛争を誘発することなく、ロシアの犠牲を増大させるように調整された」方法で、ウクライナを武装させたのである。モスクワは、米国とNATOがますます強化する政治的、経済的、軍事的な締め付けに巻き込まれ、モスクワの度重なる警告と交渉の提案が無視されて、ロシアは軍事作戦で対応し、キエフの支配者ではなく、米国とNATOの司令部が実際に建設し管理していたウクライナの2千以上の軍事施設を破壊してしまった。

 3年前にランド研究所の計画を報じた記事は、次のような言葉で締めくくられている。「計画のいくつかの選択肢は、実際には同じ戦争戦略の別の形態に過ぎず、その犠牲とリスクの代償は我々全員が支払うことになる」。私たちヨーロッパ人は、今それを支払っており、もし私たちが米国とNATOの戦略の使い捨ての駒であり続けるなら、ますます高価な代償を支払うことになるだろう。
*
この記事は、Il Manifestoにイタリア語で掲載されたものである。

マンリオ・ディヌッチ、受賞歴のある作家、地政学的アナリスト、地理学者、イタリア・ピサ在住。グローバリゼーション研究センター(CRG)のリサーチ・アソシエイト。


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ロシア政府はウクライナの産科クリニック爆撃の非難に反論

ロシア政府はウクライナの産科クリニック爆撃の非難に反論
<記事原文 寺島先生推薦>
Moscow responds to Ukraine maternity clinic bombing accusation

施設は攻撃される前にしばらくの間、民間人に使用されていなかったと、ラブロフは述べた。

RT 2022年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月19日


ウクライナの都市マリウポルにある産科病院へのロシアの空爆後の様子

 ロシアのラブロフ外相は、ロシア軍がウクライナで運営されている産科病院を砲撃したというウクライナ側の主張を否定した。この建物は、ウクライナ国家警備隊の極右勢力であるアゾフ大隊の基地として使用されていたと、ロシア外交官トップが3月10日にトルコでの記者会見で主張した。

 病院は数日前からウクライナの準軍事組織の支配下にあり、モスクワは数日前にその証拠を国連安保理に提出したとラブロフは述べた。

 「アゾフ大隊やその他の過激派は、妊婦や看護師、その他のスタッフをすべて追い出してしまったのです。ここはアゾフの超急進派の拠点でした」と、トルコのアンタルヤでウクライナのドミトロ・クレバと会談した後にラブロフは語った。

 ラブロフは、このことと矛盾するウクライナからの報道は、明らかに同国で起きていることについて「世界の世論を操作する」ためのものだとし、プロパガンダに加担している西側メディアを非難した。

 「私は、本当に感情的な報道をいくつも目にしました 。残念ながら、客観的な意見を形成することができる反対の側面が強調されることはありませんでした」と、ラブロフは述べた。


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WHO warns Ukraine conflict creating ‘worst possible’ health conditions

 ロシアの外交官は、ロシア軍が3月9日にマリウポリ市の医療施設を故意に攻撃したというウクライナの主張についてコメントした。ウクライナ当局は、ロシアの空爆により少なくとも17人が負傷したが、死者は出なかったと主張している。

 現場からの映像は、大きく破損した建物の中に壊れた医療機器が散乱し、ウクライナ軍が爆撃の生存者と思われる乳幼児を抱えた女性を助ける様子を映し出していた。

 ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、ビデオ演説で、この事件はロシアがウクライナ人の大量虐殺を行っていることを証明したと述べ、他の国々に対してロシアの残虐行為を止めるよう呼び掛けた。

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は3月10日、この疑惑についてコメントし、詳細はかなり曖昧であり、ロシア軍に詳細を求めた方が良いと示唆した。

 「我々は間違いなく我が軍に尋ねます。そこで何が起こったのか、あなたも私も決定的な情報を持っていないのですから」と記者団に語った。
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カナダのトルドー首相など、ナチ協力者である権威主義者が、ロシアを非難している。

こんな皮肉にはもう慣れっこだ。ナチ協力者である権威主義者たちがロシアを非難している。

<記事原文 寺島先生推薦>

Immune to Irony.Nazi Collaborators and Authoritarian Personalities Denounce Russia.

Strategic Culture 2022年2月25日

マシュー・エレット(Mathew Ehret)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月25日

 世界経済フォーラムの集中講義を受けた支配層政治家たちに、自己批判をする能力はないし、自分の偽善に気づけるはずもない。


 「ああ、神が我らに与えることのできる才能とは、他人が自分を見るように、己自身を見ることができる力なり。」
-ロバート・バーンズ(Robert Burns)

 スコットランドの偉大な詩人ロバート・バーンによるこの有名な一節は、確固たる存在として個人が成長する前提としてはっきりと心に刻んでおくべき言葉だ。

 バーンズの理解によれば、「他人の目で己を見ることができる」という神が与えし能力を習得することなしでは、さらには間違った偏見がないか自己点検する力や、謙遜な言動 (それを支えるには創造的な洞察力が求められる)を行える力や、間違った動機を正す力なしでは、取るべき行動や信念は完全に見失われる、ということだ。

 だからこそ私は落胆したのだ。それは、予想されたことであって少しも驚くことではなかったとはいえ、自己批判をする方法が完全に存在しないことがわかったからだ。今日の嘘でかためられた船に乗り込んでいる多くの指導者たちの嘘だらけの思わせぶりな演説を聞かされればそう思わざるを得ない。これらの指導者たちは大西洋の両岸の「決まりに基づいた世界秩序」を遵守する人々としても知られている。

枠組みの衝突

 ウクライナ東部での7年間の内戦を経て、1万4千人が犠牲になり、平和の取り決めは何度も反故にされ、ルガンスク共和国やドネツク共和国在住の人々から「ナチが先導する民兵隊が組み込まれたウクライナ防衛軍から独立したい」という数え切れないほどの訴えを受け、ついにロシアは東ウクライナの二共和国の承認を決定した。
 その数日後に、ロシアはウクライナの非武装化と非ナチ化する計画を実行に移し、狙いを絞った軍事攻撃を開始し、(この記事を書いている時点で)74カ所以上の軍事基地と、米国の生物研究所を破壊し、過激ネオナチ軍を包囲した。
 このネオナチ勢力は2014年以降ウクライナ軍に入り込んでいた。

 しかしロシアのこの人道的な干渉は完全に理解できるものであり、確実に侵略行為ではない
 にもかかわらず、西側諸国のお笑い傀儡(かいらい)政権は、「ロシアには帝国的野望がある」や、「この行為は西側の民主主義的な価値観を打ち破るものだ」とロシアに対する非難を止めようとしていない。

 カナダの話をすれば、ジャスティン・トルドーやトルドーを操るものたちは緊急事態法を武器に、オタワの平和的な反対運動を暴力で破壊することを正当化している。
 (そのためこのフリーダム・コンボイ運動に資金を寄付した何百もの人々の銀行口座を凍結することまでしている)。
 そんなカナダ政権から対ロシア制裁についての話がうるさいくらい聞こえてくる。さらには「ロシアの侵略」を大げさに非難し、プーチンをアドルフ・ヒトラーになぞらえることも一度だけではない。

 ロシアが東ドンバスの二共和国を承認したことに対して、ジャスティンはこう語っていた。 「カナダや我が国の同盟諸国は民主主義を守るつもりです」と。
 そして、制裁の規模を拡大することと、カナダ軍をラトビアに派遣することに触れて、トルドーはこう語っていた。「これは全体主義に対して立ち向かうための行動です」と。

 さらに続けて曰く「ウクライナの人々は、他のすべての人々と同様に自国の将来を自由に決めなければなりません」と。
 この最後の一言からすれば、独立をずっと要求し続けてきた東ウクライナの人々は人間ではない、ということになる。

 このような発言がカナダ政権から出てきているが、これは200人近くの人々を逮捕したたった数日後のことだった。逮捕された人々は、オタワで「人々に害を与えた」というひどい罪を犯したためとされ、「秘密の情報」を駆使して銀行口座を凍結された。
 こんな行為を許すために上院議員たちや下院議員たちに投票した人はいないはずだ。
 フリーランド首相代理(この人は親ナチウクライナ人たちとかなりの回数つながりをもっている)に至っては以下のようなことを公言している。
 「緊急事態下で執られた非常措置は、緊急事態が収まった後でも、永久に続けられるべきです」と。

 大西洋の両岸のファイブ・アイズ(米・英・加・豪・ニュージーランド)の籠の中では、「“民主主義”を保護しよう」という同様の美徳が米国やEUや英国で声を合わせて叫ばれていて、よってたかってロシアの侵略を非難しており、ロシアの国会議員たちや、事業家たちや、銀行に同様の制裁を課そうとしている。さらには米国や英国もカナダとともにロシア国境に軍を派遣しようとしている。

 既にエネルギー危機のために何百万もの欧州の人々が苦しい生活を強いられていて、自ら招いた災難とはいえコロナ禍とも格闘している中、ドイツ政府は欠くことのできないノルド・ストリーム2を停止することで自己破壊するよう圧力をかけられている。大義名分は、ロシアを「罰する」ため、だ。

ナチスとグラディオ作戦

 フランス・ティメルマンス欧州委員会副委員長は、典型的な大袈裟な偽善の姿を示し、2月22日にこう語っていた。「今は欧州史における最も暗黒な時代の一つです」と。同副委員長は第1次大戦や第2次大戦が起こったことを忘れてしまったようだ。

 ティメルマンスは自分が知識階級支配者層のピエロ的代理人であることを自認していていて、この8年間の対ロシア制裁を推し進めてきた人物であり、その手始めとして2014年のマレーシア航空17便撃墜事件に関して欠陥だらけの調査を行い、この残虐事件に裏から手を回していたウクライナ政府のことを庇った。
 欧州が直面した「最も暗黒な時代」だと、嘘の涙を流している間に、ティメルマンスはナチの「ステイ・ビハインド作戦(敵国内に自国のスパイを忍び込ませておく作戦)」が大規模に実施された歴史を忘れてしまったようだ。
 この作戦は西側の諜報作戦として冷戦期に採用されたものであり、「グラディオ作戦」という名で知られている。
 これは本当に不思議なことだ。というのもこの作戦が実施されたのが、ティメルマンスがオランダで外交対策委員会の委員長代理を務めていた時期であったからだ。2005年にナチのステイ・ビハインド作戦に関する総括的な報告がオランダ防衛省から出されていたからだ。

 CIAとNATOとMI6により設立されたグラディオ作戦は、数百人に上るテロ分子を使ったものだが、このテロリストたちにはかつてナチス・ドイツで諜報活動を行っていた工作員が当てられていた。
 これらのテロリストたちが欧州各地に配置され、市民たちや厄介な政治家たちの殺害を行っていた。 その過程で諸国の政情の不安定化を焚き付ける行為も行っていた。
 このようなテロ行為は冷戦期において、次第に財閥たちに牛耳られている大西洋両岸諸国の政府により、「緊急事態における特別措置」を正当化するために利用されるようになっていった。
  そしてこのようなテロ行為は、以下のような論理に基づいていた。すなわち「共産主義に対する戦争なら何でも正当化される、ファシズムであっても」というものだった。

 グラディオ作戦はソ連が解体した際に中止されたと主張する人もいるが、全くそうなっていない証拠は存在する。

 よく分かる例を挙げれば、ウクライナのネオナチ政党であるウクライナ社会民族党の設立者であるアンドレイ・パルビイ(Андрій Парубій)だ。彼は政権転覆を目指すクーデター後に、国家安全保障・国防会議(RNBOU) 書記のポストを約束されていた。このクーデターは、ジョー・バイデンの指示のもと、ビクトリア・ヌーランドが取り仕切ったものだった

 特筆すべきことは、カナダのフリーランド首相代理(彼女は自分がヒトラーの協力者であったマイケル・チョミアク(Michael Chomiak)の孫であることを誇りに思っている)と密接なつながりを持つパルビイが、2016年にジャスティン・トルドーと面会していたことだ。
 その席でパルビイは、武器や訓練などの兵站支援をカナダに要請していた。カナダの政治家たちとアゾフ大隊などのウクライナのネオナチ勢力との面会が頻繁に続けられたため、オタワ・シティズン紙は2021年11月9日に以下のような記事を出していた。

 「ネオナチとつながりのあるウクライナの大隊隊員たちと面会したカナダ当局者たちはその勢力を非難しなかったが、メディアがこの面会の詳細についての暴露記事を出すことは懸念していたと、新しく発表された文書に書かれていた。
 カナダ政府当局者たちがアゾフ大隊の指導者たちと面会し、短時間の話し合いを持ったのは2018年6月のことだった。
 当局者や外交官たちは、この勢力が親ナチ団体であるという警告を受けてはいたが、この面会に反対せず、大隊の指導者たちとの写真撮影を許可した。
 その後、アゾフ大隊はこの写真をオンライン上のプロパガンダに利用し、カナダの代表者たちが、“さらに実りのある協力体制を築きたい”語っていたとも記載していた。」



 ウクライナのアンドレイ・パルビイ国会議長代理は、2016年2月にオタワを訪問し、首相と面会していた。(左から)ウクライナのアンドレイ・シェバチェンコ(Андрій Шевченко)カナダ大使、ウクライナ最高議会アンドレイ・パルビー議長代理、ジャスティン・トルドー首相、ボリス・ヴジェスニエフスキ(Borys Wrzesnewskyj)カナダ国会議員.

 つまり「リベラル民主義国家」だとされているカナダや米国や英国やEU諸国において、今も昔もネオナチとの協力関係が実在し、繰り返されていることは、皮肉でも何でもない。さらには、これらのまさにリベラル民主主義諸国家の国内や周辺においてファシスト的行為も行われてきた。
 これらの自称「自由と民主主義の砦」的な国々において、数多くの虐待事象(グアンタナモ湾収容所の事件など)が起こっている。
 さらには、2021年1月6日のトランプ支持者たちによる国会議事堂占拠に参加した、反政府派の人々を不当に逮捕したこともそうだ。
 オタワで起こった専制的な強制ワクチン接種に反対するフリー・コンボイ運動において、それを支援する人々の銀行口座を凍結したこともそうだ。支配者層には受け入れがたい政治的観点を持つ人々だったわけだ。
 さらには、ジュリアン・アサンジなど、内部告発者を投獄することもそうだ。

 世界経済フォーラムの集中講座を受講した体験のあるこれらの政治屋たちは、概して自己批判を行ったり、自分自身の偽善に気づく能力を持ち合わせていないことは明らかだ。
 これらの政治屋たちは自分と同じ感覚を持つ人々の意見にがんじがらめにされていて、自己満足にしかならないおしゃべりを繰り出すだけだ。自分の意見とは相容れない異論と相対することができない。
 本来であれば、このような異論をもつ人々とは、話し合いを重ね、理性をもって対応すべきなのだが。
 世界を単極的に支配すべきだとする論者がもつ典型的な思考回路では、人間として持つべき基本的な特徴が欠落してしまっている。自分とは違う階級、違う団体、さらには違う文化基盤を持つ人々の立場から自分のことを見つめ直すことができなくなっている。
 彼らが期待しているのは、すべての人、あるいはこの世界全体までもが、自分たちの「象牙の塔」の中や価値観内に収まっているという状態だ。ダボスの世界経済フォーラムの連中の考え方はそう固まってしまっているのだ。

 結局のところこれらの政治家たちは、「自己批判という負担」から免除されている。ダボスの連中に苦しめられている普通の人間たちのもつ「自己批判」という観念をもたない。
 だが、最大限の悪知恵を働かせて、八百長試合のルールを法的に破れる手口を創り出せる柔軟性だけは持ち合わせている。そんな柔軟性は、これらの「象牙の塔」に居座って世界支配をもくろんでいる連中だけが理解できるものだ。
 そして連中は、普通の人間が持つ創造的な考え方が持てず、自分の誤った考えを自己批判できないからこそ、全体像を捉える際に盲点が生まれてしまう。そして、その盲点が連中自身の破滅をつくりだすだろう。



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時系列でみる「グレート・リセット」企図 ―「グレート・リセット」のイデオロギーが「ニュー・ノーマル」の世界に居場所を見つけた経緯

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<記事原文 寺島先生推薦>

A Timeline of “The Great Reset” Agenda

How the great reset ideology pitched its tent in the ‘new normal’ camp:


2021年12月20日

Global Research

ティム・ヒンチリフ(Tim Hinchliffe)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月20日


この切り口の鋭い記事の初出は、2021年5月15日Global Research。

 たとえば、今は2014年。少し前からテクノクラート主導の世界経済「グレート・リセット」のアイデアがあるとする。しかしそれが機能するのは地球全体がパンデミックによって揺さぶられる場合のみだ。さてこのアイデアをどのように売りこめばいいのか?

 「今回のパンデミックは、めったにないチャンスで、その狭い窓を通して、私たち世界を見つめなおし、想像を新たにし、そしてリセットする。目的はより健康的で、より公平で、より豊かな未来を創造だ。」-クラウス・シュワブ(Klaus Schwab)(WEF)。

 もしあなたが世界経済フォーラム(WEF)の創設者クラウス・シュワブなら、世界秩序の大リセットによるグローバルユートピアのビジョンを次の3つの簡単なステップで売り込もうとするだろう。

 1. グローバル・ガバナンス(世界政府)で社会のあらゆる面を刷新することを宣言し、そのメッセージを繰り返し発信する。

 2. メッセージが伝わらないときは、偽のパンデミックシナリオをシミュレートして、なぜ世界がグレート・リセットを必要としているのかを示す。

 3. 偽のパンデミックシナリオでは十分な説得力がない場合は、数ヶ月待って本当の世界的危機が発生してから、ステップ1を繰り返す。


 シュワブとダボス会議のエリートたちは、約6年の歳月をかけ、自分たちの「グレート・リセット」のイデオロギーが2014年に小さな種としてスイスで生まれ、2020年には欧州種特大花にまで成長し、地球全体に授粉するところを見守ってきたのだ。

 「グレート・リセット」は、地球上の誰もが「教育から社会契約、労働条件に至るまで、社会と経済のあらゆる側面を見直すために共同かつ迅速に行動する」ことに同意すれば、「より安全で、より平等で、より安定した世界」を築くことを約束するものだ。

 しかし、このような包括的な新世界秩序構想は、社会の根幹に衝撃を与えるような世界的危機(人為的なものであれ、不幸な偶然であれ)がなければ、考えられなかったことであろう。

 「最終的には、数億人の死者、経済崩壊、社会的混乱という史上最も破滅的なパンデミックという悲劇的な結果となった」 -クレードX(Clade X) パンデミックシミュレーション(2018年5月)。

 そこで、2018年5月、WEFはジョンズ・ホプキンス大と提携し、「クレードX」と名付けた架空のパンデミックをシミュレーションし、万が一このような危機に直面した場合に世界がどの程度の備えがあるのかを確認を行った。

 それから1年余り、WEFは再びジョンズ・ホプキンス大と組み、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とともに、2019年10月にイベント201というパンデミック演習を実施した。

 どちらのシミュレーションも、世界は地球規模のパンデミックに対して準備ができていないという結論に達した。

 そして、コロナウイルスの発生を具体的にシミュレーションしたイベント201の終了から数カ月後、世界保健機関(WHO)が2020年3月11日に「コロナウイルスのパンデミック状況」を正式に宣言した。

 「次の深刻なパンデミックは、大きな病気や人命の損失を引き起こすだけでなく、経済的・社会的に大きな連鎖的影響を引き起こし、世界への影響や苦しみの大きな原因となる可能性がある。」 - イベント201パンデミックシミュレーション(2019年10月)。

 それ以来、「クレードX」や「イベント201」のシミュレーションで扱ったシナリオは、次のようにほぼすべて登場するようになった。

 §  各国政府がロックダウンを実施

 §  多くの産業の崩壊

 §  政府と市民の間に広がる不信感            

 §  バイオメトリクス監視技術の普及

 §  誤報対策に名を借りたソーシャルメディア検閲

 §  「当局が発する」情報でコミュニケーション・チャンネルを埋め尽くしたいという願望

 §  世界的な個人用保護具の不足

 §  国際的なサプライチェーンの崩壊

 §  大量失業

 §  街頭での暴動

 §  その他いろいろ!

 2020年半ばまでに悪夢のシナリオが完全に現実化した後、WEFの創設者シュワブは今年6月、「今こそ『グレート・リセット』の時」と宣言している。
                                              
 WEFとパートナー企業の優れた予測、計画、モデル化が、「クレードX」と「イベント201」を予言的中させたのか、それとも、それ以上の何かがあったのだろうか。 

時系列

 以下は、2014年の単なる「希望」から、2020年には皇族メディア世界の首脳たちが喧伝するグローバリズムのイデオロギーとなった「グレート・リセット」の企図を追跡する時系列を凝縮したものである。

2014-2017:クラウス・シュワブが「グレート・リセット」を呼びかけ、WEFはそれを繰り返す

 スイスのダボスで開催される2014年のWEFを前に、シュワブの宣言:「WEFが世界経済のリセットボタンを押すことを期待する」

The ‘Great Reset’: A Technocratic Agenda that Waited Years for a Global Crisis to Exploit

 


  WEFはそのメッセージを何年にもわたって繰り返す。

2014年から2017年にかけて、WEFは1年ごとに世界秩序の再編、再構築、再起動、そしてリセットを呼びかけ、それぞれ様々な 「危機」の解決を目指した。

 §  2014: WEF、「世界の改変:社会、政治、そしてビジネスへの影響」と題した会議議題を発表。

 §  2015: WEFがVOX EUと共同で 「世界経済の再スタートを後押しする必要性」という記事を発表。

 §  2016: WEFは、「世界経済の再起動の方法」と題したパネルを開催。

 §  2017: WEFは「世界運営方法のリセットが必要」という記事を発表。

 そして2018年、ダボス会議のエリートたちは、一転して偽のパンデミックシナリオ・シミュレーションに取り掛かり、異なる危機に直面したときに世界がどれだけ備えることができるかを確認した。

 2018-2019年:WEF、ジョンズ・ホプキンス大、そしてゲイツ財団が偽のパンデミックをシミュレート

 2018年5月15日、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターは、WEFと連携して「クレードX」パンデミック演習を開催。
 
 クレードXの演習では、偽のパンデミックシナリオについて、俳優が台本通りの報道を行う模擬映像が流された(以下の動画)。

 また、「クレードX」では、政府や産業界が架空の世界的大流行に対して十分な備えができていないと評価する実在の政策立案者によるディスカッションパネルも開催された。

 「結局、結果は悲劇的なものだった。何億人もの死者、経済崩壊、社会的混乱を伴う史上最も壊滅的なパンデミックだった」と、WEFのクレードXに関する報告書には書かれている。

 「パンデミックによってもたらされる、まだクリアされていない大きな地球規模の脆弱性と国際的システムに関わる課題があり、それに対処するためには、官民共同の新しい強固な形態が必要となる。」 - イベント201パンデミックシミュレーション(2019年10月)



 そして2019年10月18日、ジョンズ・ホプキンス大、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と提携し、WEFはイベント201を実施した。

 イベント201のシナリオの中では、世界経済全体が揺らぎ、街では暴動が起き、「暴動の拡大を止める」ためにハイテク監視手段が必要とされた。 



 2年間で2つの偽パンデミックがシミュレートされ、それがほんとうのコロナウイルス危機へとつながった。
 
 「各国政府は伝統的な企業メディアやソーシャルメディア企業と提携し、誤報に対抗するための機敏なアプローチを研究・開発する必要がある」 - イベント201パンデミックシミュレーション(2019年10月)。

 ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターは2020年1月24日の公開声明で、イベント201は未来を予測するためのものではないことを言明した。 

 「はっきり申し上げます。健康安全保障センターとそのパートナー団体は、今回の机上訓練で予言したわけではありません。シナリオでは、架空のコロナウイルスによるパンデミックをモデル化しましたが、予言ではないことを明確に述べました。そうではなく、この演習においては、非常に深刻なパンデミックにおいてどうしても必要となる準備や対応に焦点を絞っています。」

 意図的であろうとなかろうと、イベント201はパンデミックの「架空の」課題に「焦点を当」て、非道な「ニュー・ノーマル」にその身を定め、グレート・リセットの企みと手を携えていろいろな提言を行った。

 「次の深刻なパンデミックは、大きな病気や人命の損失を引き起こすだけでなく、経済や社会の大きな連鎖的影響を引き起こし、世界への影響や苦しみに大きな影響を与える可能性がある。」 - イベント201パンデミックシミュレーション(2019年10月)。

 ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、世界経済フォーラム、そしてビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は共同で、パンデミック発生時に政府、国際機関、グローバル企業が従うべき7つの勧告を提出した。

 イベント201の提言では、官民の協力体制の強化を求める一方、WHO、世界銀行、国際通貨基金、国際航空運送機関など、国民が選んだわけでもないグローバルな機関とパートナーシップを確立し、集中的な対応を行うことの重要性を強調している。

 提言のひとつは、政府がソーシャルメディア企業や報道機関と提携し、内容の検閲や情報の流れをコントロールすることを求めている。

 「企業メディアは、当局のメッセージを優先し、誤ったメッセージは確実に抑制する必要がある。その際テクノロジーの活用は非可決(ママ)」-イベント201パンデミックシミュレーション(2019年10月)。

 報告書によると、「政府は従来の企業メディアやソーシャルメディア企業と提携し、誤報に対抗するための機敏なアプローチを研究・開発する必要がある」という。

 「各国の公衆衛生機関は、WHOと緊密に連携し、一貫した健康メッセージを迅速に開発・発表する能力を構築する必要がある。」

 「企業メディアは、当局のメッセージを優先し、誤ったメッセージはテクノロジーの活用を通して確実に抑制する必要がある。」

 これはどこかで聞いたことのある文言では?

 2020年に実際に行われたTwitter、Facebook、YouTubeは、Event 201が推奨していた、WHOの勧告に反するコロナウイルス関連情報をポリシーとして検閲し、抑制することについてのフラグが既にこの時点で立てられていたのである。

 大手ハイテク企業は、同様に2020年の米大統領選の際にも内容弾圧戦術を展開した。選挙の整合性に疑問を呈する内容の投稿に対しては、「これにはいろいろな議論がある」の但し書きをつけた。

 2020:WEFの宣言「グレート・リセットの時は今」

 
 2014年にグレート・リセットを呼びかけた後、ダボス会議の参加者は、さらに数年間同じイデオロギーを繰り返し、偽のパンデミックシナリオのシミュレーションに軸足を移している。

 WEFがコロナウイルスの大流行に誰も対処する準備ができていないことを立証した数ヵ月後、WHOはコロナウイルス・パンデミックを宣言した。

 寝耳に水とはこのこと!この6年間、WEFが温めてきた「グレート・リセット」のシナリオは、突然、「ニュー・ノーマル」を訴える流れにその居場所を見つけることになった。

 「今回のパンデミックは、めったにないチャンスで、その狭い窓を通して、私たち世界を見つめなおし、想像を新たにし、そしてリセットする。目的はより健康的で、より公平で、より豊かな未来を創造だ」とシュワブが宣言したのは2020年6月3日のことだ。

そしてそれが現在の状況だ。

 §  ダボス会議のエリートたちは、何年も前に、経済のグローバルリセットを望んでいると言っていた。

 §  パンデミックが発生した場合の役割分担演習を行っていた。

 §  そして今、彼らはグレート・リセットのイデオロギーがパンデミックの解決策であり、それを迅速に実行する必要があると言っている

 グレート・リセットは目的のための手段である。

 次の課題は、選挙で選ばれたわけでもない官僚が、トップダウンで世界の運営方法を決め、我が物顔に私たちの内面にまで侵入してくるテクノロジーを活用してユーザーの一挙手一投足を追跡し、それに従わない人物を検閲して黙らせようとするテクノクラート政権の下で社会を完全に改造することである。



Tim Hinchliffe is the editor of The Sociable. His passions include writing about how technology impacts society and the parallels between Artificial Intelligence and Mythology. Previously, he was a reporter for the Ghanaian Chronicle in West Africa and an editor at Colombia Reports in South America. tim@sociable.co


 

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米国がロシア近辺を武器で包囲する中、NATOはウクライナ内のナチに大量の武器を与え訓練を施している。

米国がロシア近辺を武器で包囲する中、NATOはウクライナ内のナチに武器を与え訓練を施している。
<記事原文 寺島先生推薦>

NATO Is Arming and Training Nazis in Ukraine, as US Floods Russia’s Neighbor with Weapons

Global Research 2022年3月14日
ベン・ノートン(Ben Norton)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月19日


<以下はGlobal Research編集部からのコメント>

 現在、軍事緊張の高まりは筆舌に尽くしがたい状態になっている。今ウクライナで起こっていることは、重大な地政学上の問題を提起するものだ。第3次世界大戦への道に続く可能性もある。

 重要なことは、緊張の高まりを防ぎ、平和への道が優先されることだ。当Global Researchはロシアによるウクライナ侵攻を支持はしない。しかし、戦争に至った経緯は理解されなければならない。ドンバスの住民たちに向けられたウクライナ軍による爆撃や砲撃は8年前から開始され、居住地の破壊や1万人以上の犠牲者を生んでいる。両国間の平和に向けた合意が求められている。

<編集部からのコメントはここまで。以下は記事本文>

 NATOは武器や訓練指導者を派遣し、ウクライナの白人至上主義者の集まりであるアゾフ連隊がロシアと戦う手助けをしている。これを受けて、西側諸国がウクライナの極右過激派を支持しているという記事が多数出されている。ウクライナ国内のネオナチ過激派がロシア兵と戦う中、米国が主導しているNATO軍は武器をこのネオナチ過激派に送っている。

 2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、米国政府はウクライナに武器を大量に送り込んでおり、キエフに3億5千ドル相当の軍備を送ることも承認している。2月末から3月初旬にかけての1週間以内で、米国とNATO加盟諸国は1万7千機の対戦車武器を送り込んでいた。具体的には対戦車ミサイルなどであり、ポーランドとルーマニア国境からウクライナに運び込んでいる、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 さらに米国政府はキエフに2000機以上の対戦闘機スティンガーミサイルを送り込んでいる。またジョー・バイデン政権は、NATO加盟諸国が戦闘機をウクライナに運び込むことに「ゴーサイン」を出した。

 西側諸国の政府は強硬な極右民兵たちを世界中から呼び寄せ、ウクライナの対ロシア戦争に参加させようとしている。これは1980年代に西側諸国がアフガニスタンで行った行為と同じことだ。そしてこの戦略により、アルカイダやタリバンが生み出されたのだ。

 現在NATOがウクライナでの反乱を作り出している中で、これらの武器を受け取っている兵士たちの中には白人至上主義ファシストも含まれている。
反ロシア活動を行っているメディアのNEXTAは3月8日に以下のようなツイートを投稿した。それによると、NATOは次世代軽量対戦車武器(NLAW)である誘導ミサイルをウクライナに輸送し、ウクライナのハルキフ市にはその武器の使用法の指導者を派遣したとのことだ。

 「アゾフ連隊が、新しい武器について最初に学んだ」ことをNEXTAは認めている。このNEXTAというのは西側が支援しているベラルーシの反体制派のメディアだ。



 アゾフがネオナチ過激派であることは明白な事実だ。

 アゾフ運動はファシスト団として設立され、2014年に米国が資金を出したウクライナでのクーデターの影の立役者として暗躍した。そのクーデターの結果、民主的に選ばれた政府が転覆させられた。前政権はウクライナの地政学上中立の立場を維持していたのだが、その政権に代わって親西側であり激しい反ロシア派の政権が誕生した。

 2014年のクーデターの後、アゾフ中隊が公式にウクライナ国家防衛軍に組み込まれた。今は、アゾフ派閥や、アゾフ連隊という名で知られており、外国の特別作戦の手助けをしている。

 アゾフは白人至上主義を推し進めており、ロシア人を「アジア的だ」と決めつけ、ウクライナ人を「純粋な」白人だとしている。アゾフは無数のネオナチのシンボルを使っていて、中にはドイツのヴォルフスアンゲルや黒い太陽の紋章もある。



 ウクライナのアゾフ中隊が使っているナチの紋章

 アゾフは米国の白人至上主義ファシスト団体とつながりがあることから、短い期間ではあったが、ウクライナのネオナチ民兵をテロ組織と指定しようとする動きもあった。2019年、ニューヨーク州選出の民主党マックス・ローズ(Max Rose)下院議員と39名の議員が内務省に書簡を送り、アゾフ中隊をテロ組織と指定するよう要求していた。しかしアゾフがその指定を受けることはなかった。逆に、米国政府とNATOはアゾフに武器を送り、ロシアに対する代理戦争を焚きつけていた。

 米・英・仏・独・イスラエル・ポーランド・カナダはウクライナのナチスを支援している。

 西側諸国の政府がウクライナのナチを支援した証拠は、NEXTAがツイートした写真以外にも多くある。

 2017年に、米国とカナダの軍当局者がウクライナのアゾフ・ナチスと面会し、東部ドンバス地方の独立を求める兵士たちとの戦い方について助言を行っていた。

 アゾフはこの面会を自身の公式サイト上で公開した。


 
 ウクライナ・ナチスと面会したこれらのカナダ軍当局者は、そのことがメディアで暴露されることを恐れていた。

 オタワ・シティズン紙の記事によると、カナダ人がアゾフ・ファシストに訓練を施したことが暴露したことによって、軍事審査が行われることになったとのことだ。 

 アゾフ・ナチスはイスラエルからも武器を受け取っている。

 2018年、イスラエルの大手メディアであるハーレツ紙の報道によると、著名な人権活動家グループが、イスラエル高等裁判所に対して裁判を起こしたとのことだ。その裁判は、イスラエルがウクライナに武器を送るのをやめるよう求めたものだった。それは、アゾフが自身の公式ユーチューブサイトに動画を載せたのだが、その動画で極右戦士が、イスラエルのタボール銃を使用していたことを受けてのことだった。


 ワシントンDCにあるジョージワシントン大学が2021年に発表した研究によると、西側諸国の政府はウクライナのもう一つのネオナチ勢力であるセンチュリア(Centuria)という団体も支援しているとのことだ。

 センチュリアはアゾフと密接な関係をもっており、その過激派の団員たちが、ナチスドイツを賞賛し、ナチス式敬礼をしている姿が写真や映像に残されている。

 これらの自認ネオナチ勢力が今ウクライナ軍の公式な兵隊になっているが、彼らは米・英・仏・ポーランド・カナダから軍事訓練を施されたのだ。

 このネオナチ団に関するジョージワシントン大学の論文「ウクライナ極右勢力が主要西側諸国から軍事訓練所で訓練を受けた」にはこう記載されている。

 「つい最近の2021年の4月にこれらの極右勢力が発表したところによると、これらの極右勢力が生まれて以来ずっと、団員たちは仏・英・カナダ・米・ポーランドとの共同軍事訓練に参加してきた、とのことだった

 現在ウクライナ軍の訓練や武器供与に関わってきた西側の数カ国は、筆者が求めた回答に対してこう答えている。「ウクライナは西側からの訓練を受けたウクライナ軍兵士を慎重に精査していた」と。つまりこの訓練に関わった西側諸国のどの政府(米・カナダ・英・独)も訓練を施したウクライナ兵に対して、過激派であるかどうかや、過激派とつながりがあるかなどの精査はしなかったということだ。

 2017年にNATOはナチ協力隊であるバルト海周辺に本拠を置く「フォレスト・ブラザーズ(Forest Brothers)」という団体を褒め称える高精度のプロパガンダ映像を発表した。

 米国が主導する軍事同盟であるNATOは、ファシスト過激派を旧ソ連と戦う反ロシアの英雄として描いていた。その一方で、その勢力がアドルフ・ヒトラーと同盟関係にあったことは意図的に見落としていた。

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ロシアはウクライナによるドンバス攻撃計画を発見したと主張

ロシアはウクライナによるドンバス攻撃計画を発見したと主張

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia Claims to Have Discovered Ukrainian Donbass Attack Plan

Telegraph 2022年3月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月18日

 
 「ロシア軍が押収したとされるウクライナの機密文書の内容から、ウクライナ政府が東ドンバス地方の分離地に対する大規模な攻撃を今月(3月)計画していたことが、ほぼ実証された。ロシア政府は、その攻撃に先んじて攻撃を行った」とロシアの防衛省が発表した。3月2日に防衛省は証拠品とされるものも提示した。

 防衛省が提示したのは、6ページの文書の画像だった。この文書はウクライナで入手したものとされている。ウクライナ語で、公式文書と思われる文書構成で書かれているこの文書は、ウクライナ国家親衛隊の機密文書だと思われる。ただし、当RTはこの文書が本当のものなのかの確証は得られていない。

 この文書により、1月の下旬に、ウクライナ国家親衛隊司令官のミコラ・バラン(Mykola Balan)上級大将が、少なくとも複数の部隊に、ウクライナから離脱したドネツク人民共和国及びルガンスク人民共和国に対して戦争行為に入れる体制を整えるよう命じていたことが判明した。

 その文書によると、戦闘行為に向けた様々な準備は2月中に完成し、2月28日がその最終期日とされていた。これらの措置は1月18日にウォロディミル・ゼレンスキー大統領が発したとされる命令に基づいている。しかし同大統領の公式サイトにはロシア政府が提示した文書に関わる文書は提示されていない。

 ロシア軍は、この文書は、ウクライナ政府が反抗勢力に対して、3月のどこかの時点で大規模な攻撃を計画していた明らかな証拠になる、と主張している。ロシア軍の指摘によれば、バラン上級大将は、兵士たちの精神状態や、命令が実行された際に危険を冒す能力の有無を基準にした兵士の選抜を行う必要性を明らかに強調していた。

 

 「ウクライナ政権が出していた声明のことをはっきりと記憶しています。そして2月にその声明を西側メディアは広めていました。具体的には“[分離した二共和国]を軍事的に争奪する計画は持っておらず、すべての問題は外交努力により解決する決意を持っている”という内容の声明でした」とロシア防衛相報道官イゴル・コナシェンコフ(Игорь Конашенков)少将は3月2日の記者会見で述べた。

 

  「しかしウクライナ防衛軍が出したこの秘密の戦闘命令文書の出所を辿れば、そのような声明は嘘であったことが証明されました」と同少将は語った。

 ロシア当局によると、ロシアの軍事行動は、ウクライナによるドネツクとルガンスクに対する大規模な攻撃に対して先手を打つものだったとのことだ。そしてその攻撃は3月に開始されると防衛省は考えていた。

 同報道官はさらに、現在問われるべき唯一のことは、西側諸国がウクライナのこの攻撃計画に参画していたのであれば、どの程度の参画であったかという問題だと付け加えた。NATO加盟諸国は長年、ウクライナ国家親衛隊に軍事訓練を施し、武器も供与してきた、とコナシェンコフ少将は語った。

 ロシアが2月下旬にウクライナを攻撃したのは、二つの分離共和国を主権国家として承認し、この2カ国を保護するため武力を行使すると発表した数日後のことだった。ロシア政府が何よりも強く主張していたのは、この攻撃はウクライナ政府と反政府勢力の敵対関係を止めるために必要な攻撃であるということだった。さらに、この敵対関係は2014年からのもので、それ以来戦闘による一般市民の死が発生し続けているとのことだった。

 ウクライナ政府やウクライナ政府を支援する勢力は、ロシアによる攻撃を理由のない攻撃だとしてきた。米国とその同盟諸国はロシアに対する熾烈な経済制裁を課していて、米国や同盟諸国の経済がこの制裁によって損害を受けるのは、ウクライナを守るための代償であるとしている。

 

 

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ウクライナの「尊厳の革命」は、いかにして戦争と貧困、そして極右の台頭を招いたのか?

ウクライナの「尊厳の革命」は、いかにして戦争と貧困、そして極右の台頭を招いたのか?
<記事原文 寺島先生推薦>
How Ukraine’s ‘Revolution of Dignity’ led to war, poverty and the rise of the far right

ウクライナの過激な民族主義者と親欧米の活動家の雑多な一団は、民主的に選ばれた政府を変えようとした。8年経った今、その結果は期待外れのようだ。

Global Research 2022年2月24日
オルガ・スクハレブスカヤ(Olga Sukharevskaya)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月19日


 2013年から14年にかけてウクライナで起きた「ユーロマイダン」と呼ばれる出来事は、今でも人々の記憶に残っている。紛争の当事者によって見方は異なるが、かつて誰もが見慣れたウクライナが、その後、見分けがつかないほど変わってしまったことは誰の目にも明らかだ。

人民革命かクーデターか?

 この劇的な出来事のきっかけは、当時のヤヌコビッチ大統領が、ヴィリニュスでの「東方パートナーシップ首脳会議」で、ウクライナと欧州連合の連合協定締結を中断し、その後署名しなかったことである。当時のウクライナ首相ニコライ・アザロフによると、ウクライナの欧州産業規格への移行には1500億~1600億ユーロの費用がかかるとされていた。長い準備期間の中で、ウクライナ当局が何を考えていたのか疑問が残るが、この決断は危険な爆弾の役割を果たした。

 この決定の発表直後の11月21日、ウクライナのブロガー、ムスタファ・ナイエム(Mustafa Nayyem)はソーシャルネットワーク上で行動を呼びかける文章を発表した。「独立記念塔の下に22:30に集合しよう。暖かい服装で、傘、お茶、コーヒー、楽しい気分、そして友人を連れてきてください」。これがユーロマイダンの発端となった。しかし、その後の経過を見ると、このデモは、一介の野党ブロガーと数人の学生によるものではなかった。デモが始まって間もなく、多くの政界の大物たちが関わってきたのである。11月30日、イリーナ・ゲラシチェンコ(Irina Gerashchenko)議員はトークショーで、機動隊がデモ隊に暴力を振るい、欧米のジャーナリストが負傷したと発言した。ゲラシチェンコ議員の反対派は、これが意図的な偽情報であると思った。なぜなら、主要都市の広場で警察と活動家の間で実際に衝突が起こったのは翌日だったからだ。ゲラシチェンコの発言は、衝突を誘発するための挑発であった可能性がある。とはいえ、過激な民族主義者たちが警察を攻撃し始めたのは、実はもっと前だった。いくつかの証拠によれば、最初の暴力的な出来事は11月23日に起こったとされている。

 デモの開始と組織化、メディアの配置の準備は、米国とEU加盟国の積極的な支援を受けて、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチがEUとの協定締結延期を決定するずっと以前から始まっていたのである。ユーロマイダンを報道するメディアとして最も注目されたのは、フロマズケ(Hromadske.tv)[公共テレビ]というインターネットチャンネルで、2013年9月に米国大使館から5万ドルの助成を受けていた。さらにオランダ大使館から9万5,000ドルが追加された。ウクライナの治安機関SBUの元長官アレクサンドル・ヤキメンコは後に、その頃から外交郵便の量が増え、キエフの中央広場、後に革命の名称となるマイダン・ネザレジノスティに新しいドル紙幣が出回るようになったと報告している。

 西側諸国は、その関与を隠そうともしなかった。欧米の政治家はマイダンで堂々と演説し、EUの外交官も演説に参加した。米国国務省の公式代表であるヴィクトリア・ヌーランドは、個人的にマイダンに参加しただけでなく、ウクライナの将来の支配者の任命について議論していた。彼女は後に、米国が "民主化促進 "のためにウクライナに50億ドルを費やしたことを認めている。

 2014年2月20日、事件は決定的な局面を迎えた。午前中、マイダンで銃器が使われ始め、デモ参加者と警察官の両方が死亡する事態となった。それらの出来事は、一度も調査されていない。一部の報道では、グルジアからのスナイパーが抗議者の射殺に参加したとされている。グルジアの精鋭部隊Avazaの元司令官であるトリスタン・ティシタシヴィリ(Tristan Tsitelashvili)将軍は、元部下の一人であるコバ・ネルガゼ(Koba Nergadze)が、アレキサンダー・レヴァジシビリ(Alexander Revazishvili)とともにこの作戦に参加したと明言している。この二人は、キエフのスヴャトシンスキー地方裁判所で、ウクライナのベルクト特殊部隊の元隊員の弁護を担当するアレクサンダー・ゴロシンスキー(Alexander Goroshinsky)弁護士とステファン・レシュコ(Stephan Reshko)弁護士に公式証言を行った。グルジア軍の情報筋によると、その命令は、米軍将校ブライアン・クリストファー・ボイエンガー(Brian Christopher Boyenger)によって下されたとのことだ。銃撃に関わったとされる狙撃手の一人はBBCにこの出来事について語ったが、西側メディアは彼らの証言にほとんど関心を示さなかった。

 2月21日、ヤヌコーヴィチ大統領、ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)外相、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ( Radoslaw Sikorski)外相、EUを代行するフランス外務省のエリック・フルニエ(Eric Fournier)大陸欧州部長と、野党代表が、ウクライナの危機の収拾に関する協定に調印した。特に、"この合意書に署名した後48時間以内に、2004年のウクライナ憲法の効力を回復させる特別法を採択し、署名し、公布する "という内容が盛り込まれていた。

 その瞬間から、クーデターは文字通り1分1秒単位でたどることができるようになった。

 ・2月21日午後4時40分:ウクライナ独立通信(UNIAN)は、ヤヌコーヴィチとウクライナ議会であるヴェルホヴナ・ラーダ[最高議会]が2014年2月23日午後4時40分までに協定上の義務を果たすことを要求する署名の情報を公開する。

 ・2月21日から22日の夜。ユーロマイダン活動家が政府庁舎と国会を占拠

 ・2014年2月22日12時29分:ヴェルホヴナ・ラダ(Verkhovna Rada)のウラジミール・リバク議長が解任される

 ・12時34分:代わりにアレクサンドル・トゥルチノフ(Alexander Turchinov)が議長に選出される。

 ・午後1時8分:ヴェルホヴナヤ・ラーダ[最高議会]はウクライナ情勢に対する政治的責任を引き受ける

 ・17時11分:「ウクライナ大統領の憲法上の権限の自己放棄に関する」決議が採択される

 ・2014年2月23日12時36分:大統領の職務をヴェルホヴナ・ラーダ[最高議会]の議長に与える決議が採択される

 憲法改正の合意で定められた期限にはまだ達していないのに、EUはヴェルホヴナ・ラーダ議長のウクライナ大統領代行就任を正当なものとして承認した。


誰が戦争と弾圧を始めたのか?

 ドンバスでの戦争は、公式には、4月7日のドネツク人民共和国の独立宣言を受けて、トゥルチノフが「反テロ作戦」の開始を発表した2014年4月13日に始まった。ルガンスク人民共和国が独立を宣言したのは4月27日で、その時にはすでにキエフの作戦は始まっていた。

 実は、ドンバスにウクライナ軍が投入されたのは、これらの地域が独立を宣言するずっと前の2014年3月である。ユーロマイドン運動の政権獲得に抗議した地元の人々が、政府の建物を占拠し始めたのは事実だ。しかし、この戦術を最初に使ったのは、2014年1月にさかのぼるマイダンの活動家たちだった。

 一方、ウクライナの南東地域に住む親ロシア派の人々は、新政府が自分たちの意見に耳を傾けてくれることを願い、週末に抗議行動を組織しただけだった。オデッサの労働組合ビルで生きたまま焼かれた30人の抗議者たちは、反対派とは異なり、武装していなかった。すべては、ウクライナ大使館がヨーロッパでの上映禁止を要求したCanal+のフランスのドキュメンタリー「革命を覆い隠すもの(The Masks of the Revolution)」で明るみに出たのだ。

 2014年5月9日、ウクライナの戦車が、大祖国戦争の戦勝記念日を祝って非武装の人々が行進していたマリウポリ市街地に進入した。その後、地元警察署の前で極右のアゾフ大隊が関わった銃撃戦があり、警察官や市民に死傷者が出た。

 国連人権高等弁務官事務所が調査を求めても、何一つ調査が行われていない。そのうえ、弾圧体制が本格的に始動し、ソーシャルメディア上で反ユーロマイダンのコメントや「いいね!」を押しただけで実刑判決が下されることが当たり前のようになってしまった。最近の例では、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人の間の結束について述べたアドノクラスニキ(Classmates)のソーシャルネットワークの投稿に「いいね」を押しただけで、ウクライナ刑法第109条により有罪になったシュミー州の地元住民がいる。数日前、国家警察のアレクサンドル・ファツェヴィッチ副長官は、"「ロシアの世界」愛好者は拘束され、裁かれる "と発言した。そして、最近、SBU[ウクライナ国家保安庁]は、深刻な背中の手術を受けた著名なジャーナリスト、ミロスラヴァ・ベルドニク(Miroslava Berdnik)を、ウクライナの領土保全を損なった罪で起訴した。ウクライナ・ヘルシンキ・グループの共同設立者であるオレス・ベルドニク(Oles Berdnik)の娘である彼女は、父の足跡を頑なに追い続ける人権活動家だ。ミロスラヴァ・ベルドニックは、イスラエルのクネセトで演説し、ウクライナにおけるナチズムと反ユダヤ主義の問題を概説したこともある。

 キエフ政府は国際機関の懸念を無視し、ロシアのアーティストがウクライナで公演するのを阻止し、ロシアの書籍やロシア語、さらにはロシア語で放送されているウクライナのテレビチャンネルを禁止しているのである。欧州評議会議会のあらゆる決議にもかかわらず、強制的なウクライナ化は続いている。国連ウクライナ人権監視団のマチルダ・ボグナー(Matilda Bogner)代表は、ウクライナ化に反対する人たちや「ロシア語について肯定的な意見を述べた人、そのほか親ロシアと思われる意見を述べた人」に対するネット上でのいじめ、脅迫、威嚇、暴力扇動などの事件を指摘している。

 EUや米国の国民を含む数千人の個人データを照合した悪名高いMyrotvorets(平和の番人)ウェブサイトは、今も稼働している。最近、クロアチアのゾラン・ミラノビッチ(Zoran Milanović)大統領とドイツ海軍のカイ・アヒム・シェンバッハ(Kai-Achim Schönbach)元司令官をブラックリストに追加した。しかし、「ミーロトバレッツ(Myrotvorets)」データベースに登録された有名人には身の安全を確保する手段がある一方で、ジャーナリストのオレス・ブジナ(Oles Buzina)やウクライナ統合軍事連合代表のオレッグ・カラシニコフ(Oleg Kalashnikov)のような人々は、結局は死んでしまった。

ナチズムの正当化と拡散

 第二次世界大戦に遡るウクライナ民族主義者組織(OUN)の思想を受け継いだ過激な極右の超民族主義者がユーロマイダン抗議運動に積極的に参加したため、今日のウクライナはナチズム支持を容認するようになってしまったのだ。OUNは2010年2月25日のウクライナ情勢に関する欧州議会の決議で非難されたにもかかわらず、2015年、キエフは「20世紀におけるウクライナ独立のための闘士の記憶の法的地位と名誉に関する」法律を採択した。この法律は、第三帝国の教唆者であったOUNとウクライナ反乱軍(UPA)を、ウクライナ独立のための闘士に昇格させた。これらの組織の指導者には、ナチス・ドイツの軍事情報機関アブフェアにスパイ活動で採用されたステパン・バンデラ(Stepan Bandera)や、ドイツ・シャッツマンシャフト201補助警察大隊のハウプトマンでナハティガル大隊の指揮官の1人であったローマン・シュケヴィチ(Roman Shukhevych)がいた。



 1941年6月30日にウクライナ民族主義者組織OUNが発表した「ウクライナ国家再建法」は、今日のウクライナにとって重要な日付とされている。この法律の第3条には次のように書かれている。"新たに成立したウクライナ国家は、ヨーロッパと世界に新秩序を形成している指導者アドルフ・ヒトラーの指導の下、国家社会主義の大ドイツと緊密に協力し、ウクライナ国民がモスクワの占領から解放されるように支援する "とある。

 国連安全保障理事会で演説したイリーナ・ベレジナヤ法政策・社会保護研究所の代表、エレナ・ベレジナヤ(Elena Berezhnaya)氏は、親衛隊SSガリシア師団の美化はウクライナでは常識となっており、バンデラやその支持者を記念するモニュメントの建立、若者の愛国教育を装ったネオナチ集団への政府資金援助もその一つだと指摘する。

 今日のネオ・OUNは、ウクライナの政府と法執行機構の両方に深く浸透している。ジョージ・ワシントン公共政策研究所はレポートを発表している。米政権の支援を受けているウクライナ随一の軍事訓練機関であるヘトマン・ペトロ・サハイダクニ国立陸軍士官学校が、極右団体「センチュリア」の本拠地になっていると。

 また、ウクライナの民族主義者の活動はウクライナ国内にとどまらず、欧米諸国でもナチスの思想を積極的に広めている。米メディア「ポリティコ」によると、ウクライナ議会の元議員アンドリー・ビレツキー(Elena Berezhnaya)氏が率いる「アゾフ大隊」は、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーに公式支部を持つネオナチ団体「北欧抵抗運動」と連携を確立しているという。「Rise Above Movement」の創設者の一人であるアメリカの白人至上主義者ロバート・ルンド(Robert Rundo)は、大隊のメンバーとの会合に招待された一人である。同じ記事によれば、ニュージーランドのクライストチャーチのモスクへの攻撃で51人のイスラム教徒を殺害したオーストラリアの白人至上主義者ブレントン・タラント(Brenton Tarrant)と同民兵団との間につながりがあるとのことである。また、2018年のフロリダ州夫婦殺害事件で指名手配されている米軍退役軍人クレイグ・ラング(Craig Lang)が、ウクライナ東部の前線でキエフ側として戦って活動していたことも報じている。

 米国に拠点を置き、グローバルな安全保障上の課題や外交政策上の問題に取り組んでいるソーファン・センターが発表した新しい報告書には以下のように概説されている。「ウクライナは国境を越えた白人至上主義過激派の幅広いネットワークにおけるハブとして浮上し、世界中から外国人戦闘員を引きつけているのです。ジハード戦士がシリアのような場所で戦うために移動するのに対し、白人至上主義者は今や戦闘を学ぶための独自の場所を持っています。ウクライナでは、親ロシア分離主義者とウクライナ政府軍との紛争が2014年から激化し、双方で戦う戦闘員が世界中から集まってきています。最近の調査では、米国を含む50カ国から約17,000人の外国人がその紛争に戦いに来ていることが明らかになっています。」と。

 しかし、2014年11月にウクライナの国家警備隊に編入されたアゾフ大隊を米国の外国テロ組織リストに正式に掲載するよう米国議会から出された要求は実現されておらず、また、同大隊や他のウクライナのネオナチ民兵への資金提供禁止も実施されていない。

軍国主義化の中での経済的失敗
 ウクライナの軍事費は2013年当時と比べて8倍以上になっているが、経済全体としては不況が深まっている。2021年、ウクライナのGDPは過去最高の1950億ドル(2013年は1820億ドル)に達したが、インフレによってそれは打ち消された。特定の商品に限って言えば、消費者インフレ率は11%に達し、この3年半で過去最高を記録した。シンクタンク「CASEウクライナ」のドミトリー・ボヤルチュク(Dmitry Boyarchuk)CEOは、「輸出価格が輸入価格を上回っただけで、名目上の成長である部分も少なくない」と指摘する。輸出価格が輸入価格を上回っただけで、量的には減っている。生産量は以前と全く同じか、むしろ減っているのだが、世界市場での価格のために、より多くの収入を得ているのだ"。

 同時に、負債も膨らんでいる。2013年、ウクライナの対外債務は279億ドルだったが、2021年末には477億ドルに達している。

 ウクライナは工業国・農業国から原材料供給国へと徐々に変貌を遂げている。2013年には機械製造業の輸出が18.9%(129億ドル)を占めていたが、2017年には9.9%(43億ドル)にまで減少している。2021年の対外貿易構造は、この傾向を裏付けるものである。ウクライナの昨年の輸出上位は、鉄鋼(139億5000万ドル、2020年比81.4%増)、穀物(123億4000万ドル、31.2%増)、動物性・植物性油脂(70億4000万ドル、22.5%増)であった。輸入では、エネルギー資源以外に、機械・設備(142億ドル、22.9%増)、化学・関連産業製品(97億4000万ドル、32.8%増)が必要である。米国大使が「ウクライナは農業大国にならなければならない」と言ったのは皮肉なことである。かつて「ソ連の穀倉」と呼ばれたウクライナは今、食料の輸入量が増えている。2021年には80億ドル相当の食品を輸入している(2020年比19%増)。

 同時に、脱工業化も進んでいる。2014年にはリヴォフ・バス工場が閉鎖され、2018年にはザポロジスキー自動車製造工場を巡って破産手続が開始された。2016年から2019年にかけて、アントノフ航空機製造会社は1機も生産していない。2021年7月、かつてソ連造船業の要であったニコラエフ造船所は正式に閉鎖された。航空宇宙とロケットの大規模工場であるユジマッシュは、2014年以降、かろうじて存続している状態である。2013年にはウクライナで50,449台の自動車が製造されていたが、2021年には、7002台にまで減少している
 

 生活水準も低下している。公共料金は上がり続け、国際通貨基金(IMF)の要求により、現時点で公共事業の債務は30億ドルに達している。ウクライナの政治アナリスト、ウラジミール・チェメリス(Vladimir Chemeris)は「関税は上がり続けるだろう」と説明する。「2020年夏、我が国政府はIMFと覚書を交わし、天然ガス価格を完全に市場決定とすることに合意した。市場価格とは、価格が高くなることを意味する。IMFもこの要件を何度も強調し、我が国政府も同意し、少なくともこれまでの融資を返済するために、より多くの融資を求めた。」

 ロシアとの天然ガス供給契約を打ち切ったウクライナは、エネルギー危機への対応を迫られている。その上、キエフはEU諸国よりも高いガス代を支払わなければならない。10月の天然ガス価格は、EU諸国では300ユーロから700ユーロ、ウクライナでは1,100ユーロに達している。

 それで、ウクライナ人が大量に国外に流出しているのだ。2020年には、601,200人がEUの滞在許可証を取得した。プトゥカ人口社会研究所によると、2021年には移民労働者の数は250万人から300万人になり、2014年から2021年には106万8000人のウクライナ人がロシアの市民権を取得した。2021年の最初の10カ月間で人口流出が60万人を超え、過去11年間で過去最高となった。
 
 キエフ国際社会学研究所が実施した調査によると、ウクライナ国民の64.7%が、物事が間違った方向に進んでいると考えていることがわかった。ウクライナ人の4人に1人、若者の3人に1人が他国への移住を希望している。全体として、これはユーロマイダンの勝利とは言い難い。


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米国がドイツを屈服させるのは、ここ100年でこれが3度目。NATOを支配しているのは、米国の軍産複合体とエネルギー関連産業界と不動産金融産業界だ。

米国がドイツを屈服させるのは、ここ100年でこれが3度目。NATOを抑えているのは、米国の軍産複合体とエネルギー関連産業界と不動産金融産業界だ。

<記事原文 寺島先生推薦>

America Defeats Germany for the Third Time in a Century

The MIC, OGAM and FIRE Sectors Conquer NATO


ThE UNZ REVIEW 2022年2月28日

マイケル・ハドソン(MICHAEL HUDSON)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月11日


 私の懐かしの師匠であるハーマン・カーン(Herman Kahn)とは、シンクタンクのハドソン協会で共に活動した間柄だ。或る公的行事における演説において、カーンはこう語っていた。「ロサンゼルスでの高校時代、私の先生たちからよく聞かされたのは、1940年代や1950年代のリベラル派たちは『戦争は何の解決にもならない』と言っていたという話だった。戦争は何も変えられないから、戦争はすべきではない、という話だった」と。

 ハーマンはこの話には同意せず、世界史において戦争が解決してきたこと、少なくとも戦争が変えたことを数え上げていた。ハーマンの言っていることは正しかった。もちろん、新冷戦におけるウクライナを舞台にした紛争の両陣営もハーマンのいう解決や変化を求めて戦っている。

 問われるべき問いは、今日の新冷戦において変える、あるいは「解決」しようとしている問題は何かということだ。この問いに答えるために有効な手立ては、誰がこの戦争を始めたかを問い直すことだ。戦争には常に二つの陣営が存在する。攻める方と、攻められる方だ。攻める方には或る目的を達したいという意図が存在する。一方攻められる方には、その戦争で何か利を得ようという意図はないように見える。しかし今回の紛争の場合、意図した目的と、得ようとしている利益は両陣営にある。

 1991年以降勃発した軍事力行使や侵略行為はすべて米国によるものだった。ワルシャワ条約機構の加盟国もNATOも軍備を捨てるという方向性は拒絶され、「平和の分配」は行われなかった。その代わり、クリントン政権やそれ以降の政権が採ってきた米国の政策は、NATOを使って軍拡をすすめることだった。つまり米国は30年かけて、欧州の西側諸国などの米同盟諸国の外交政策を、各国独自の政策から米国重視の「国家防衛」のための得体の知れない塊(blob)を基にした政策に切り替えさせてきたということだ。(blobという言葉は特別な利益に関係した言葉であり、それを表すきちんとした名称を使ってはいけない言葉だ)。NATOが欧州の外交政策の本体となり、NATOが各国独自の経済利益より優先される位置に置かれている。

 2014年のマイダン事件以降発生したウクライナ国内のネオナチ勢力による反ロシア人暴力に対して、ロシアが攻撃を加えたのだが、この攻撃の目的は(その目的の遂行は成功しているが)、米国が米国の利益を失うことを恐れて起こした行為に対して決着を付けるためだった。米国の恐怖とは、NATO加盟国や他のドルを使用している米国の衛星国家が経済的にも政治的にも米国への依存を必要としなくなるのでは、という恐怖だ。これらの国々が、収益を拡大するため中国やロシアとの貿易をどんどん増やそうとしつつあるのが目に見えるからだ。

 何が米国の目的や利益の脅威となっているかを理解するには、米国やいわばその「塊」が、何に最も力を入れて政府に政策を作らせているかを理解するだけでいい。ただしその政策が何かを見極めるには、民主的(見かけ上だが)な政治体制だけ見てもわからない。このような政策は、選挙区や選出された州の有権者の代表だとされている米国上院議員や、代議士たちが考えた政策ではない。

米国の外交政策を支配する米国内の3つの利益団体

 米国の経済政策や外交政策をより現実的に把握するには、共和党と民主党の政策を見るよりも、①軍産複合体②石油と天然ガス(と鉱物採掘)関連業者複合体③銀行・不動産関連業者複合体という3つの利益団体を見る方がいい。上院や下院の主要な議員たちは州や地区の代表者というよりは、議員たちの選挙運動を主に支援してきた企業群の経済利益や金融利益の代表者だと言える。ベン図(配管図面、上院下院の支配図)を使えば、「市民連合による世界」後という現状の世界において、米国の政治家たちは選挙運動を支援した人々の代表であり、自分に投票してくれた有権者の代表ではないことが分かる。さらにこれらの選挙運動支援者は、基本的に以下の3つの塊に分けることができる。

 上院や下院を支配する力を授けられた3つの利益団体が、自分たちにとって都合の良い政策を実現してくれる人々を国務省や国防省に派遣しているのだ。一つ目の塊が軍産複合体(MIC)だ。これはレイセオン(Raytheon)社やボーイング(Boeing)社やロッキード・マーティン(Locjheed-Martin)社といった軍事産業だ。これらの企業群がほぼすべての州で工場を建て、雇用を拡げている。そしてそのような地区には、議会の主要な委員会の委員長を出している議員の選挙区がとりわけ選ばれている。これらの企業群は収入基盤を独占地代においており、その土地購入費はNATOや近東の原油輸出諸国などへの武器売却で得られた収益黒字を充てている。これらの企業群の株価はロシアのウクライナ侵攻が報道された直後に急騰し、株価の急上昇が2日間続くことになった。原価にコストが加算される「国防省資本主義(故シーモア・メルマン(Seymour Melman)教授の言葉を借りれば)」においては、戦争が軍事産業にとって「国家を守るため」という大義名分に隠れて利益を独占的に確実に得られるネタであることを投資家たちは知っている。カリフォルニア州やワシントン州選出の上院議員や下院議員は、軍への信頼度が強い南部各州とともに、伝統的にMICの代弁者となっている。先週ロシアが軍事行動を拡大したことは、NATOや米同盟諸国に対する武器販売の需要の拡大に確実に繋がり、政治家たちの選挙資金も増えるということだ。素早いことに、ドイツは軍事費をGDPの2%以上に増やすことに同意した。

 二つ目の主要な利益団体の塊は、政府に対して既得利権をもつ石油・天然ガス業界が、鉱業界を取り込んだ塊(OGAM)だ。このOGAMが米国政府により税金を特別軽減されることにより、天然資源が地下から掘り起こされたのち、そのほとんどが大気中や海洋や水道水に流れ込まされることになっている。銀行業界や不動産業界が経済的な利権を最大限求めて、家屋などの不動産から得られる利益を最大限得ようとしているのと同様に、OGAMの目的はエネルギーや天然資源の価格を最大限つりあげ、天然資源関係の利権を最大限得ることだ。ドル支配下地域の原油市場を独占し、ロシア産の石油や天然ガスを孤立させることが、ここ1年以上米国が主に力を注いできたことだ。そんな中で西欧諸国とロシアの経済の結びつきを強めるものとして、ノルド・ストリーム2パイプラインが米国に警戒されてきたのだ。

 石油・天然ガス・鉱業業界の手のものたちが、米国内のすべての選挙区にいないとしても、少なくともこれらの業界への投資者たちはいる。テキサス州などの西部の石油や鉱物を産出する諸州に、OGAMの主たるロビーストがおり、国務省が石油業界と深く繋がっていることで、この業界に対して国家の庇護のもと特別な減税措置が行われている。この業界が次に重きを置いている政策目標は、環境保護の観点からの動きを無視し、拒絶することで、石油や天然ガスや石炭を他の代替エネルギーに変換することを阻止することだ。それに伴い、バイデン政権は海外における採掘の拡大にまで支援をしている。具体的にはアサバスカ油砂(オイルサンド)にある世界で最も汚い石油源をパイプラインで結ぶ事業を支援していて、米国がその石油の水圧破砕ができることを歓迎していた。



 OGAMが求めている外交政策は、諸外国が自国の石油や天然ガスや鉱物採掘を統制することを妨げ、米国が供給者となっている世界市場でOGAM業者との競争をさせないことまで及んでいる。ロシア(及びイラン)を西側市場から孤立させれば、石油や天然ガスの供給は減少し、価格は上がり、業界の利益が増すことになるだろう。

 3つめの利益団体は、金融と保険と不動産の共同体(FIRE)諸企業だ。この利益団体は、現在の金融資本家たちから構成されているが、これらの資本家たちは、封建制社会後の欧州の古くからの大地主貴族たちの末裔だ。この貴族たちは土地の賃貸料で生計を立ててきた人々だ。今日の世界においてはほとんどの家屋は所有者の所有物になっている(ただし不在地主の割合は急激に高まっている。それは、2008年のリーマンショック後のオバマ政権による立ち退き関連法が出来て以降のことだ)。土地の賃貸料の大部分は住宅ローンの利子や債務償却として銀行に支払われる。(なお負債資本倍率は、銀行貸し出しによる住宅価格の上昇と共に上昇中だ)。米国と英国の銀行ローンの約8割が不動産資産に関するものであり、土地価格の上昇によりキャピタル・ゲイン(株など資産の売却により得られる利益)が手に入るという仕組みだ。これは不在地主たちにとっては有効な免税手段となる。

 このウォール街を中心とする銀行や不動産業(FIRE)の塊は、MIC(軍産複合体だ)よりも幅広く地域と密着したロビー活動を展開している。例を挙げれば、ウォール街から選ばれたニューヨーク州選出で民主党上院の院内総務チャック・シューマー(Chuck Schumer)上院議員や、クレジット・カード業界から長年後援を受けてきたデラウェア州選出のジョー・バイデン元上院議員や、コネティカット州を拠点とする保険業界から後援を受けている同州選出の上院議員たちだ。国内においては、FIREの目的は土地賃貸料を最大限に高くし、高騰化する土地賃貸料の結果生じる「キャピタル」ゲインを得ることだ。国外におけるFIREの目的は、外国の経済を民営化することだ。(なかでも米国の手による信用創造(銀行が貸し付けを繰り返して預金通貨を増やす仕組みのこと)という特権を守ることだ)。そうすることにより、政府の経済基盤や公共企業を、利潤追求を目的とした独占市場に変換し、社会の基盤となる産業 (医療、教育、交通、伝達、情報技術など)を、最大限の価格で提供できるようになる。これまでのような生活や事業を行うための費用を減らすために政府が補助金を出して低く付けられた価格ではなく、だ。さらにウォール街は常に石油・天然ガス業界と密接に繋がってきている。(具体的には、ロックフェラーが支配しているシティグループや、チェース・マンハッタン銀行グループなどだ。

 FIREやMICやOGAMが3大「不労所得生活者」団体だ。これらの団体が「産業資本主義後」に現れた今の「金融資本主義」を牛耳っている。これらの団体がお互い結託して得ている富は急上昇している。それを支えているのはMICやOGAM業界の持ち株数の急増だ。ロシアを西側金融体制から排除しようという動き(さらにはSWIFT(国際銀行間通信協会)からも一部排除しようとしている)が、欧州経済をロシアが輸出しているエネルギーから切り離そうとして生じる副作用とあいまって、ドルによる金融体制の安定を乱す要素になることは疑いがない。

 最初に書かせてもらったように、米国の経済政策や外交政策をより現実的に把握するには、共和党と民主党の政策を見るよりも、①軍産複合体②石油と天然ガス(と鉱物採掘)関連業者複合体③銀行・不動産関連業者複合体という3つの利益団体を見る方がいい。上院や下院の主要な議員たちは州や地区の代表者というよりは、議員たちの選挙運動を主に支援してきた企業群の経済利益や金融利益の代表者だと言える。だからこそ製造業も農業も米国の外交政策において支配的な地位を得ることができていないのだ。米国の3つの支配的な「利権」団体による結合された目的が、労働者たちの利益や、MICが持つ産業資本よりも優先されている。そしてこの結合こそ、産業資本主義後の今日の金融資本主義の決定的な特徴であると言える。 この結合が政府と癒着した経済利権構造への回帰であり、この構造下においてはこれらの3大利権団体が労働政策や社会資本政策に阻害されることはない。

 今追跡しておかないと行けない動きは、なぜ財閥たちの集合体がロシアをせっついているか、だ。この動きにより、ロシアは現状を殺るか殺られるかの状況だと見ており、ウクライナ東部のルガンスクとドネツク地区のロシア語話者たちに対するますます激しくなっている攻撃に応対している。更には西側諸国のロシアに対する脅威も増大する一方だ。

利権に群がる「集合体」が新冷戦で何を得ようと望んでいるのか

 バイデン大統領の説明の通り、米国の工作で動いている今の軍事的緊張の高まり(「クマへのちょっかい」) の目的はウクライナのことではない。のっけからバイデンが言っていたように、米国は軍を出す気はない。 バイデンがここ一年以上要求し続けているのは、ドイツがノルド・ストリーム2パイプラインを通じて、天然ガスを産業や各家庭に供給することをやめることだ。そして安い値段で買えるロシアの天然ガスではなく、ずっと高価な米国の天然ガスを買わせようという魂胆だ。

 米国当局は始めパイプライン建設の完成を妨げようとしていた。この建設に手を貸していた業者は制裁の対象にされたが、ロシアは自力でパイプラインを完成させた。次に米国が圧力を掛けたのは、伝統的に外からの攻撃に弱いドイツの政治家たちだった。米国がその政治家たちに伝えたのは、「ドイツもその他の欧州諸国もロシアが安全保障上の脅威になる、というのも、ロシアは天然ガス供給を止めるというカードを使って政治的譲歩や経済的譲歩を引き出しにかかるだろうから」という話だった。 その際ロシアからどんな譲歩を迫られるかという具体的な話は考えられておらず、曖昧でウヤムヤな感じだけが残っていた。今回のウクライナ問題で、ドイツはノルド・ストリーム2計画の進行の承認を公式に拒否した。

 この新冷戦の主要な目的は、米国からの輸入液化天然ガス(LNG)を市場で独占させることだ。(既にドナルド・トランプ政権下で、アンジェラ・メルケル は圧力をかけられ、10億ドルを注ぎ込んで、ドイツが使用する天然ガスを米国のタンカーが搬送する新しい港湾施設の建設を約束させられていた)。メルケル 氏のドイツ政界からの引退を受けて行われた民主的な選挙による勝利の結果、この港湾建設への投資が打ち切られた。それによりドイツはロシアの天然ガスを輸入する以外、エネルギー確保方法がなくなる。ロシアの天然ガスにより、各家庭の暖房や、電気製品の電力源や、天然資源を使った肥料作りをして、農業生産を維持するしかないのだ。

 つまり米国がNATOとロシアの武力衝突の緊張を高めようとしている一番の戦略的目標は、石油と天然ガスの価格を上げることにより、ドイツに損害を与えることなのだ。利益や米国の石油会社の株価を得ることだけではなく、エネルギー費用の価格が高くなれば、ドイツ経済の勢いを削げるだろうからだ。この攻撃は、ここ100年で米国がドイツを敗北させる3回目の攻撃になる。回を追うごとに米国はドイツに対する支配力を強め、ドイツは米国からの輸入や米国主導の政策の進め方に対する依存を深めている。NATOは、米国によるドイツ支配に対するドイツ国内の反対勢力を効果的に点検する機能を果たしている。


 ガソリンや暖房費などのエネルギー価格が上がれば、米国や他の国々(特にエネルギー購入で赤字を出しているグローバルサウスの国々)の消費者に打撃を与え、米国の一般家庭の家庭用品やサービスに使うお金を少なくしてしまうことなる。そうなれば貧しい家屋所有者たちや投資家たちは苦しみ、米国における家屋の不在地主者や、商業用不動産所有者たちへの富の集中がさらにすすむことになるだろう。さらには暖房費やエネルギー価格の高騰に直面させられる他の国々のじり貧の不動産所有者たちからの土地の買い占めもおこるだろう。しかしそんなことは産業社会後の世界を牛耳っている集合体からは、副産物的な損害としてしか捉えられていない。

 小麦を筆頭に食品価格も上昇するだろう。(ロシアとウクライナは世界の小麦輸出の25%を占めている)。そのため中近東や、食料を輸入に頼っているグローバル・サウスの多くの国々は苦しむことになるだろう。食料費の高騰により、これらの国々からの外国への支払いのバランスが悪化し、債務不履行が生じる危険に陥るだろう。

 ルーブルやSWIFTに対する制裁の対抗策としてロシアはロシアの天然資源の輸出を止める可能性がある。そうなれば、主要な天然資源の供給網が崩壊する恐れが出てくる。 具体的には、コバルトやパラディウムやニッケルやアルミニウムだ。 (これらの天然資源にかかる生産コストの主要素は電力費だ。そのため金属の価格も上昇するだろう)。中国が次に自国が制裁対象国になることを恐れて、ロシアと手を結び、米国が仕掛ける貿易と金融戦争に参戦することを決めれば、西側諸国の経済が受ける衝撃は深刻な ものになるだろう。

 米国の新冷戦戦士たちの長期的な目的は、ロシアを崩壊させることだ。あるいは少なくとも、エリツィン・ハーバード学閥時代のような泥棒政権に戻すことだ。当時は新興財閥たちが国家財産を私物化して得た現金を西側の株式市場に投入していたのだ。 OGAMは今でもユコス社(ロシアにかつて存在した石油会社)やガスプロム社(ロシアの天然ガス会社) の主要な支配権を買い取ろうと目論んでいる。ウォール街はロシア株が市場でブームになることは大歓迎だろう。 さらに MICへの投資家たちも喜んで武器の売り込みを増やし、ロシア特需発生に貢献しようとするだろう。

米国が予期していなかった現状からロシアが得られる利益とは

 ロシアの望みは何だろう?最も切羽詰まった目的は、ネオナチ反ロシア勢力の中枢部を排除することだろう。この勢力が、2014年にマイダンで起こった虐殺事件やクーデターを主導したのだ。ウクライナは中立化されるだろう。それはロシアから見れば基本的に親露になるということだ。ドネツクやルガンスクやクリミアがウクライナの主導権を握るということだ。ロシアの目的は、ウクライナが米国の手による反ロシア運動の場になることを防ぐことだ。チェチェンやジョージアの二の舞にはしないということだ。

 長期的に見たロシアの目的は、欧州をNATOと米国支配から切り離すことだ。そしてその過程において、中国と共に多極化した世界秩序を構築することだ。そしてユーラシア経済の融合を目指すことだ。ロシアの目的はNATO解体と、軍備の廃棄と脱核兵器の潮流を広範囲に拡げることだ。それはずっとロシアが推し進めてきたことだ。そうなれば、他の国々は米国の武器購入費を削減できるだけではなく、 将来米軍の冒険主義に基づく軍事行動に対する制裁措置をしなくても済むようにもなるだろう。さらにそうなれば、米国が軍事行動に回せるお金も減り、脱ドル化が加速するだろう。

 しっかりと情報を得ている人々にとっては以下のことは明白だ。 (1) NATOの目的は侵略であって防衛ではない。(2)NATOにはもう旧ソ連領内で侵略できる所は残っていないのに、加盟国であり続ける欧州諸国はどこへ向かおうとしているのか?ロシアが欧州に再度侵攻することがないのは明白だ。何も得るものはない。ウクライナと戦っても得るものは何もなかった。 NATOの拡大戦略の代理戦争に駆り出されたウクライナの攻撃や、NATOが支援しているノヴォロシアでの攻撃への反撃以上の意味はない。

 欧州の国家主義者の指導者たち(左翼は大抵親米なので)は以下のような疑問を持つだろうか?①なぜ我が国は米軍に費用を出して自国を危険に晒すことにしかならない行為をしようとしているのだろうか?②なぜ値段の高い米国産天然ガスやエネルギーを買わなければならないのだろうか? ③なぜ穀物の価格が上げられたり、ロシア産の天然資源の価格が上げられたりしなければならないのだろうか?④ロシアに平和的な投資を行って利益を得たり、輸出の売上を伸ばしたりする機会をなぜ失わなければならないのだろうか?⑤そのような貿易相手として中国をも失いかねないのに。

 米国がロシアの外貨準備金を没収しようとしているのは、昨年米国がアフガニスタンの外貨準備金を凍結したことに続く窃盗行為だ。(英国も英国に預けていたベネズエラの金を押収した)。このような動きのため、各国はドルを基軸とした経済への追随を見直し、 世界各国の中央銀行が、外貨交換預金としてドルを使うことも危うくさせている。 そうなれば世界各国のドル離れが加速されるだろう。既に中露はお互いの貿易において、ドルではなく互いに自国通貨を使い始めている。

 より長い目で見て予想されることは、ロシアが中国と連携して、米国の手中にあるIMFや世界銀行に代わる機関を作ることだ。ロシアの発表によれば、ロシアの望みはウクライナのナチを逮捕して、彼らの戦争犯罪を法廷にかけることのようだ。そしてその法廷とは、ロシアがウクライナに勝利した後、ハーグの国際司法裁判所に代わるものを設立しようと考えているようだ。 ウクライナのネオナチを裁く裁判を起こし、最終的にニュルンベルク裁判の結果できた法律を基に、米国当局を人道に対する罪で訴えることができるのは、新しい国際司法裁判所しかないだろうからだ。

 私の予想ではロシアは今週中(3月第1週)で兵を引くだろう。ロシアがウクライナを占領して、人命や資源を無駄にするとは考えられない。ロシアがまず果たしたかったのは、ウクライナ東部のロシア語話者たちに対する攻撃を止めさせることと、クリミアを保護することだった。その次に果たしたかったのは、 ネオナチ民兵勢力を排除することだった。 そしてネオナチの指導者たちを拘留し、もし可能であれば、彼らを戦争犯罪の罪で裁判に引き出すことだった。それに続いて、ネオナチに資金を出していた米国のNGOのNED(全米民主主義基金)などをも裁判に引き出すことだった。

 もちろん欧州諸国が逃げ出すことも十分考えられる。そうなれば、ロシアは中国や上海協力機構加盟諸国の方に目を向けるだろう。そうなれば欧州諸国は深刻な供給網確保問題や、物価の高騰や、国民や政府の予算縮小に苦しむことになるだろう。

米国利権団体集合体はNATOがロシアに戦争を仕掛ければどうなるかをきちんと考えていたのだろうか?

 ブラックユーモアにしかならないのは、米国が中国を説得してロシアによるウクライナ侵攻の非難を共にしてくれるだろうなどと考えることだ。米国の外交政策において最も望まない結末は、中国とロシアが、イランや中央アジア諸国などと共に、一帯一路構想で協力関係になるということである。

 ロシアは新世界秩序の創造を目論んでいた。しかし世界を完全に新しい秩序で支配しようとしていたのは米国の冒険主義の方だった。しかし今はその新秩序は中国の手によるものに見える。 というのも、勝つと目されていた欧州経済は深刻な壊滅状態にあり、米国は掴んでいたと思っていたロシアやアフガニスタンを失い、この先他国から支援を受ける能力も有していない 。


 しかしここまで私が書いてきた全てのことが無に帰す可能性もある。というのもロシアと米国が核を使った脅しを掛け始めているからだ。私の唯一の望みは、プーチンとバイデンが同意することだ。具体的には、もしロシアが英国や欧州に水爆を落としたとしても、米露両国は互いに核攻撃をしないという「悪魔同盟(紳士同盟ではない!)」を結ぶことだ。

 こんなことを書いていると50年前にハーマン・カーンと交わした話し合いが思い起こされる。カーンは『考えられないことを考える』、つまり核戦争についての著者を著したことで悪名高くなった人物だ。映画『ストランジラヴ(邦題:博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか)』で揶揄されていた通り、カーンは本当に「(核戦争後も)生き残る人々はいるだろう」と発言していた。ただしカーンは以下のようなことも付け足していた。「だが私は原爆投下の真下にいたいものだ。そんな世界で生き残りたくはないからね」と。





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中国は米国防総省にウクライナの「生物研究所」の情報開示を要求

中国は米国防総省にウクライナの「生物研究所」の情報開示を要求
<記事原文 寺島先生推薦>

China urges Pentagon to open up about ‘biolabs’ in Ukraine

中国政府によれば、米軍は世界中で336の研究所を管理しているとのことだ

RT 2022年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月18日



 中国の外相は米国に対して国防総省のものだとされるウクライナ国内の複数の生物化学研究所についての情報を「できるだけ早く」開示するよう求めた。

 3月7日に、ロシア軍が伝えたところによると、ウクライナ当局はウクライナ国内の複数の生物化学研究所で研究されていた病原菌を破壊したとのことだ。ロシア政府の主張では、米国が資金提供したウクライナ国内30箇所の生物化学研究所において、米軍が協力していたという。

 ウクライナ政府は生物化学兵器の開発については否定している。キエフの米国大使館ホームページ上の米国国防総省「生物学的危機削減計画」には、感染症対策として以下のような記載があるのみだった。「提携諸国と協力し、流行の危機に対応する」と。2020年同大使館は、米国が資金援助したウクライナ国内の研究室についての話は「偽情報である」としていた。

 しかし3月9日の記者会見で趙立堅中国外務省報道官が述べたところによると、中国がつかんだ情報によれば、ウクライナ国内の複数の研究所はただの「氷山の一角」に過ぎず、米国防総省は「世界30カ国336カ所の研究所を統括している」とのことだった。そしてこの研究所統括を行っている前提は、「生物化学的危機を減らすための協力」であり「世界の医療を強化するため」となっている、と趙報道官は語った。

 中国政府が、米国防総省が統括している研究所の数だとされる数字を明らかにしたのはこれが初めてだ。趙報道官によると、「米国自身が出している数値」によれば、ウクライナには26カ所の米国の研究所が存在しているとのことだ。そして、趙報道官が求めたのは、ロシアのウクライナ侵攻が進む中で「関連するすべての要素」を明らかにして、研究所の安全を確保すべきだ、という点だった。

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 「特に米国は、これらの研究所についてもっともよく把握しているので、詳細な関連情報を出来るだけ早急に発表すべきです。どの研究所でどんなウイルスの研究をしていたのかも含めて、です」と同報道官は語った。

 同報道官はさらに、米国が激しく妨害しているのは「第3者による検証手順を設置することです」とした。趙報道官によると米国のそのような行為は、「国際社会の不安をさらに悪化させるものです」とのことだった。

 ブラジルのリオ・タイムズの報道によると、ウクライナの米国大使館は、ウクライナ国内にある米国防総省が資金を出した化学研究所についてのすべての情報を、2月26日にホームページ上から削除したとのことだ。しかしディリアナ・ゲータンジバ(Dilyana Gaytandzhieva)記者の主張によれば、大使館職員が或る文書の削除をし忘れていたとのことだ。その文書には、国防総省がキエフとオデッサの2カ所の新しい化学研究所に資金を投入する内容が記載されていたとのことだ。

 「これらの軍事生物研究所はウクライナ政府の管理下にはない。ウクライナ政府はこの計画に関する機密情報を発表することは許されていない」とリオ・タイムズは報じている。

 ここ20年以上、米国との共同で設置されたウクライナの「科学技術センター」には2億8500万ドルの資金が投入され、1850件の研究が科学者たちにより実施されている。ゲータンジバ記者によれば、その科学者たちはかつて大量破壊兵器に開発に携わっていたとのことだ。

 この最新情報に関して、米国当局はまだ声明を出していない。


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米・EUの宣戦布告にロシアはどう対抗するのか

米・EUの宣戦布告にロシアはどう対抗するのか
<記事原文 寺島先生推薦>
How Russia Will Counterpunch the U.S./EU Declaration of War

Strategic Culture

2022年3月4日
ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月12日

 自立経済だけが完全な独立を可能にする。そして、世界がその方向に向かうことは、グローバル・サウス(南半球)の人々にも熱烈に理解されている。

 今回のロシア・ウクライナ・NATO対立の重要な基本テーマの一つは、この戦いに嘘の帝国(プーチンが米国を指して使った言葉)が芯から震え上がっている点だ。その理由は、ロシアは超音速ミサイルと、西側からの核ミサイルを阻止できる防御兵器の両者を保有しているからだ。つまり、相互確証破壊(M.A.D:核戦争が起こった場合は必ず共倒れになるという考え方)という考え方が成り立たなくなるからだ。

 このためアメリカは、熱戦に近接する危険を冒すことになった。その目的は、ウクライナ西部の国境にまだ持っていない超音速ミサイルを設置し、モスクワへ3分以内に到達できるようにするためである。そのためには、もちろんウクライナだけでなく、東欧のポーランドやルーマニアもアメリカは必要としている。

 ウクライナでは、アメリカはヨーロッパの最後の最後まで戦うことを決意している。これは(核の)サイコロの最後の一振りになるかもしれない。したがって、ロシアを服従させるための最後の一撃は、残り少ない実行可能なアメリカの大量破壊兵器、つまりSWIFT[国際銀行間通信協会]を使用することである。

 しかし、この兵器は、自立経済を急速に取り入れることによって、簡単に無力化することができる。

 私は、マイケル・ハドソン(Michael Hudson)の貴重な意見を参考に、ロシアが制裁の嵐を乗り切るための可能性について述べた。私の論考においては、ロシアの「ブラックボックス防衛*」(及び反撃)の全容さえも考慮に入れてはいない。その「ブラックボックス防衛」とはジョン・ヘルマー(John Helmer)が或るエッセイの序文で述べたものだ。そしてそのエッセイは他でもない「セルゲイ・グラジエフ*(Сергей Глазьев)の復活」を宣告するエッセイだった。
*[訳注]:セルゲイ・グラジエフ。エリツィン政権下の外交大臣、祖国党代表などを務め、大統領候補になったこともある。現在はプーチン政権の大統領顧問としてユーラシア統合などを担当している。

 グラジエフは、予想通り大西洋主義者たちの間で嫌われているが、プーチン大統領の重要な経済顧問であり、現在はユーラシア経済連合(EAEU)の統合・マクロ経済担当大臣である。彼は常にロシア中央銀行や英米金融と密接な関係にあるオリガルヒ・ギャングを激しく批判してきた。

 彼の最新のエッセイ「制裁と主権(Sanctions and Sovereignty)」(原文はexpert.ru、翻訳はジョン・ヘルマー)は、真剣に精査されるに値するものである。

 以下は同エッセイの重要な部分からの抜粋である。

 「2014年以来のロシアのGDPの損失は、約50兆ルーブルに達する可能性がある。しかし、制裁による損失はそのうちの10%に過ぎず、80%は金融政策の結果であった。米国は対ロシア制裁の恩恵を受け、ロシアに替わってEU・中国へ炭化水素を輸出し、ロシアに替わって欧州製品を輸入している。もしロシア銀行がワシントンの金融機関の勧告ではなく、ルーブル相場の安定を確保するという憲法上の義務を果たせば、金融制裁の悪影響を完全に相殺することができる。」

脱オフショアか破綻か

 グラジエフは本質的な提言をしている。

 ---「経済の真の脱オフショア化」である。

 ---「資本の輸出を止め、投資資金を必要とする企業に的を絞った融資を拡大するために、
    通貨規制を強化する措置」

 ---「通貨投機や国内市場におけるドルやユーロの取引への課税」

 ---「制裁の影響を受けた分野における自国の技術基盤の発展を加速させるため、研究開発
    への大幅投資(防衛産業、エネルギー業界、運輸業界、通信業界を優先させて)」

 そして最後に、「外貨準備の脱ドル化、ドル、ユーロ、ポンドの金への置き換え」

 ロシア中央銀行は、耳を傾けているようだ。これらの施策のほとんどは、すでに実施されている。そして、プーチンと政府は、ついにロシアの新興財閥の急所をつかみ、国家にとって極めて困難なリスクと損失の共有を強いる準備が整ったようだ。ロシアから持ち出した資金を海外やロンドグラード*に備蓄するのは、もうおさらばだ。
   *[訳注]ロンドグラード:ロンドンの蔑称。ロシアの新興財閥がロンドンの
            銀行に多額の預  金を預けたことからつけられた。


 グラジエフは本物だ。2014年12月、私はローマでの会議に出席しており、グラジエフは電話で参加してくれた。「ローマと北京の間で」という当時私が書いたコラムを見直して、私は唖然とした。その記事内でグラジエフが、2022年の今の状況のことを言っているかのように語っている箇所があったからだ。

 そのコラムから2段落の引用をお許し願いたい。

 「フレスコ画が美しい15世紀のドミニコ会の食堂で開かれたシンポジウムで、モスクワから電話したセルゲイ・グラジエフは、冷戦2.0を鋭く批判してこう述べていた。『キエフには本当の意味での“政府”はなく、アメリカ大使が仕切っています。反ロシア教義は、ヨーロッパでの戦争を煽るためにワシントンで作られたもので、ヨーロッパの政治家はその協力者になっています。ワシントンは中国との競争に負けているので、ヨーロッパでの戦争を望んでるのです』と。」

 「グラジエフは制裁の本筋が見失われていることについてこう語っていた。『ロシアは以下の3つを同時にやろうとしています。①国際通貨基金(IMF)の政治改革②海外への資本流出対策③多くのビジネスマンのための融資限度額を銀行が閉鎖することの影響の最小化です。しかし、制裁を行えば最終的には、ヨーロッパ経済が究極の敗者となるのです。ヨーロッパの官僚は、アメリカの地政学者の乗っ取りにより、何に焦点をおいて経済を見るかの視点を失ってしまっているのです』」と。」

「独立税」を払わなければならない

 モスクワでは、「ロシア経済はすぐに安定化する」という合意が生まれつつあるようだ。それは制裁により産業界の人材が不足し、多くの人手が必要になるため、失業がなくなるという見通しからだ。モノ不足が生じたとしても、インフレにはならないだろう。欧米の高級品の販売はすでに縮小されている。輸入品の価格は統制され、必要なルーブルはその価格統制により入手可能となるだろう。同じことは第二次世界大戦中の米国でも起こっていた。

 この先、資産国有化の波が押し寄せるかもしれない。エクソンモービルは、日産20万バレルのサハリン1プロジェクト(彼らはサハリン2には手を出さなかった、あまりにも高価だと判断した)から撤退することを発表した。英国BP社とノルウェーのエクイノール社が、ロスネフチ社*とのプロジェクトから撤退すると発表したのに続いてである。実はBP社は、ロスネフチ社の分け前をすべて手に入れることを夢見ていたのだが。
*訳注:ロスネフチはロシア最大の国営石油会社

 ミハイル・ミシュスティン首相によると、クレムリンは今、売却を考えている外国人投資家の資産売却を妨害しているという。これと並行して、例えばロスネフチ社は、すでにいくつかのプロジェクトで少数株主となっている中国やインドから資金を調達し、自社株を100%買い取ることになるはずで、ロシアビジネスにとって絶好のチャンスとなる。

 「根本となる制裁対抗策」とも言うべきものは、まだ発表されていないが、メドベージェフ安全保障理事会副議長自身は、すべての選択肢がテーブルの上にあることをほのめかしている。

 セルゲイ・ラブロフ外相は、道教僧侶一万人分の忍耐力で、そして現在の[制裁]ヒステリーが消え去ることを期待しながら、制裁を「ロシアの独立に対して支払う税のようなものです」と表現し、さらに「ロシアで操業することを禁止した国々の会社は、“大きな圧力”を受けています」と語った。

 しかし、致命的な反撃策も排除されているわけではない。グラジエフ氏が勧めるように、完全にドル建てから脱却する以外に、ロシアにはチタン、レアアース、核燃料の輸出を禁止したり、既に実施されているがロケットエンジンの輸出を禁止するという手もある。

 ロシアが取れる相手に損害を与える手段として以下のような策も考えられる。敵対国の海外資産をすべて差し押さえる。西側の銀行へのローン返済をすべて凍結し、その資金をロシアの銀行の凍結口座に入れる。敵対する外国メディア、外国メディアの所有権、各種NGO、CIAの工作員たちを完全に禁止する。友好国には最新兵器を供給し、情報共有と共同訓練・軍事演習を実施する。

 確かなことは、マイケル・ハドソンらが議論しているように、ロシアのSPFS(金融メッセージ転送システム)と中国のCHIPS(クロスボーダー銀行間決済システム)を統合した新しい決済システムの構築が、近いうちにユーラシアと南半球の数多くの国々(イラン、ベネズエラ、キューバ、ニカラグア、ボリビア、シリア、イラク、レバノン、北朝鮮など、すでに制裁を受けている国々)に提供されるかもしれないということだ。

 ゆっくりと、しかし確実に、アメリカの金融戦争に影響されない、大規模な南半球のブロックが出現しつつある。

 BRICSのRIC(ロシア、インド、中国)は、すでに自国通貨による貿易を増やしている。国連でロシアに反対票を投じなかった国、ロシアによるウクライナZ作戦への非難決議を棄権した国、それにロシアを制裁しなかった国のリストを見れば、少なくとも南半球全体の70%の国がそうであったことが分かる。

 つまり、またしても西洋(そしてアジアの日本やシンガポールのような属国・植民地を含む)対、残りの国々(ユーラシア、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカ)という構図が生じているのである。

来るべきヨーロッパ崩壊

 マイケル・ハドソンは以下のように語っていた。「アメリカと西ヨーロッパは、『Froelicher Krieg(幸せな戦争;ドイツ語)』を期待していた。ドイツや他の国々は、ガスや鉱物、食料の欠乏の痛みをまだ感じ始めていない。痛みが分かったときがロシアにとって本当の勝負になるだろう。NATOを介した米国の支配からヨーロッパを切り離すことが目的だ。そのためには、一昔前の共産主義のように、新世界秩序に向かう政治運動や政党を作り、“お節介”をしていくことになるのだろう。それは、“新しい大きな覚醒”と呼べるかもしれない。」と。

 確かに来たるべき大きな覚醒が、すぐにNATO圏諸国を巻き込むことはないだろう。現状西側諸国は、むしろロシアを「大いに切り離しにかかる」傾向にあるからだ。西側諸国は公言をはばからずロシアを破壊しようと西側諸国全体を兵器化し、さらには、長年の夢であるロシアの政権交代を引き起こそうとさえしている。

 ロシア調査庁の長官であるセルゲイ・ナリシキン(Серге́й Нары́шкин)が、それを簡潔に表現している。

 「仮面は剥がされました。西側諸国は、ロシアを新たな“鉄のカーテン”で囲い込もうとしているだけではありません。我々の国家を破壊しようともしているのです。ロシア国家を“廃止”させようとしているのです。この”廃止“ということばは、”寛容な“リベラル・ファシストたちがよく使う言葉なのですが。米国とその同盟諸国は、オープンで率直な軍事・政治的対決において、ロシアの廃止を成し遂げようという能力も精神もないため、卑劣な試みを駆使して、経済的、情報的、人道的な”封鎖“を確立しようとしているのです。」

 間違いなく2022年のネオナチのジハード聖戦の始まりにおいて、西側のヒステリーは頂点に達している。それはCIAの監督下でポーランドに集結している2万人の傭兵軍団である。その大部分は、アカデミ(旧ブラックウォーター)*やダインコープ*などの民間軍事会社から派遣されたものである。彼らは「フランス外人部隊からのウクライナ人帰還者」と偽っている。これらの傭兵は、かつてアフガンにいた傭兵たちが再編成されたものであり、こんな曲芸はCIAにしかできない。
    *訳注:アカデミも、ダインコープ・インターナショナル (DynCorp International)
        も、アメリカ合衆国に本拠を置く民間軍事会社


 現状から考えれば、欧米の経済全体が路頭に迷うことになるだろう。商品分野での混乱は、エネルギーや食料コストの高騰を招く。例えば、ドイツの製造業の60%、イタリアの製造業の70%が永久に操業停止に追い込まれる可能性があり、社会的に壊滅的な影響を与えるだろう。

 選挙で選ばれたわけでもないブリュッセルの非現実的なものの見方しかできないEU機構は、三つの自殺行為を選択したのである。すなわち、①EUは米帝国の無残な属国であると大見得を切り、②フランスとドイツに残っていた国家主権奪還欲求を破壊し、③ロシアと中国からの離反をEU諸国に押し付けることである。

 その一方で、ロシアは、自立経済のみが完全な独立をもたらすという道を示すことになるだろう。そして、この「大きな構想」は、グローバル・サウスにもはっきりと理解されている。いつか誰かが立ち上がり、「もうたくさんだ」と言わなければならなかったのだ。そしてその裏づけとなるのは最大限の生々しい力だ。
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「No To War」と叫ぶ左翼陣営の欺瞞。今それを言うか!

<記事原文 寺島先生推薦>
The Hypocrisy of a Leftist “No to War” that Comes too Late
筆者:ラミロ・ゴメツ(Ramiro Gomez)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2022年2月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2022年3月12日



Ramiro-Gomez in Donbass

 「これでドンバスの人々は、8年ぶりに避難所を出て、体を吹き飛ばされる心配なく子供たちと公園で遊べるようになる。」

 こみ上げる怒りと憤激を何とか押さえつけながら、私は今この記事を書いているが、ロシアのウクライナへの反撃に対する西側諸国の左翼や、一般の人たちの反応はいったい何なのだ!

 実際は、こんな文章を書いてどうなると思っているわけでもない。(ただ)次の2点について私は腐るほどの証拠を持っている:
① 一番の盲人(めしいびと)とは、目を開けようとしない人間だ。
② あなた方は「テレビが操作しているのだ」と口を酸っぱくさせながら言う。しかし、西側メディアが奏でるリズムに合わせて踊ることをあなた方はやめない。

 昨日私は、「NO TO WAR」のプラカードがSNS上に溢れているのを目にした。こんなものはイラク戦争以来ほぼ20年間蜘蛛の巣状態だった。その蜘蛛の巣がきれいに払われ、またぞろ登場した。

 同種のプラカードが悪評の詰まった引き出しの底で忘れ去られていると言ってもいいだろう。その間にイスラエルはパレスチナを大虐殺している。その間に、米国はアフガニスタンやリビアを大規模な爆撃で破壊し、結果的に15万人以上の死者を出している。その中には数千人の子どもたちも含まれている。米国はその死を調査することを拒否した。しかし、こんなことを数え上げるのはいくらだってできる。これはどうだ。リビアの時と同様にシリアに介入しなければならないとメディアが再び言い、アメリカがひとつの主権国家を攻撃し、石油を略奪する間、あなた方は沈黙したままだった。

 また、これはどうだ。2022年2月現在までに、パレスチナ、ダマスカスにおいてイスラエルの爆撃による死者が出ている。イエメンやソマリアでもそうだ。しかし、あなた方の「NO TO WAR!」のプラカードは忘れ去られたままだ。

 さらにこれはどうだ。西側の政策で地中海沿岸(ウクライナ)で大虐殺が止まらない。こう言う私を4人のバカどもはデマゴギーと非難するだろう。はっきりしているのは、死にも重みのある死とそうでない死があるということだ。

 マルコムXがよく言っていた。「メディアには気をつけろ。さもないと、抑圧者を擁護することになる。」

 しかし、私が焦点を当てたいのは2014年にウクライナで起こった戦争だ。それに対して、あなた方は気の抜けた「NO TO WAR」のプラカードを掲げていない。8年後の今頃になってそれを持ち出している。誰しも、ぼーっとすることはある。過ちだって犯す。しかし、その「過失」次第では、手が付けられない事態が進行している可能性だってある。

 記憶はとても重要だ。どうでもいいような衝突が次から次へと作られる社会においてはとくにそうだ。衝突が起きてもたいていの人は自分のプロフィール写真に流行のアバターを貼り付けるだけで済ませてしまう。そんなものは、数日経ってタブロイド紙的な記事にサッカーや、他の糞みたいな内容が載れば不毛な大地に消失してしまう。

 まず何よりも、①今時戦争はどこからともなく現れるものではなく、②地球規模の戦争はずっと前に始まっていたことを多くの人が理解している、この2つのことを理解する必要がある。もう一つは、私たちが糧としているメディアは、天気がどうであるか、どんな紛争が存在するか、どんな紛争が存在しないかを決めるが、世界の多くの地域では何年も戦争が続いていても、その背後にある経済的利益が西側同盟のUSA-NATOを支持しているために見えなくなっている。

 NATO-USAは何年も前から公約を破り、ロシアとの国境沿いに軍用基地を建設し、ドルやユーロに対抗しかねないユーラシア諸国を弱体化させ、包囲することを意図している。

 世界中のNATO基地を地図で調べれば、いかに嫌がらせの軍事的な動きが何年も続いているかがわかる。

 ウクライナ戦争は、はるかに長い歴史上の一連の出来事の一つの章に過ぎず、ここ数日の出来事を分析する際には、そのことを心に留めることが肝要であろう。

 最初に、これからチョロチョロ顔を出すかもしれないネズミどもに警告する意味も含め言っておこう。私はプーチンにうんざりしているし、そしてロシアはソ連ではなく、今のロシアの諸政策はソ連の過去とは何の関係ない、と。私はロシアに焦点を当てるつもりはない。そんなことをすれば、バランス軸を間違えるし、結果的に(西側によって)操作された立場に身を置きかねないと考えるからだ。

 私が焦点を当てようと思うのは、愛するドンバスの人々だ。

 2013年に政治的腐敗に対する社会的反応だと考えられたマイダン運動が起こったとき、ドンバスの労働者や鉱夫たちは、共感的にこの運動を捉えた。彼らは、行政から長く見捨てられた都市、首都(キエフ)からも遠く離れた都市の石炭ストに参加していたのだ。
 
 ここ(ドンバス)からは、キエフでの大規模なデモの様子や、警察と激しくぶつかり合う様子などの映像も見ることができた。

 それまでは、すべてが順調だった。赤と黒の旗(ウクライナ民族主義者組織)は、私たちのようないろいろな色合いから成り立つ社会に対して、ちょっとした色どりを添え、複数のシンボルを褒めたたえ、こういった運動を支持することになった。

 警察を攻撃するデモ隊が準軍服で、その盾にナチスのシンボルが描かれ始めた頃から、事態はおかしくなり始めた。きな臭くなってきた。赤と黒の旗は、ナチスのステパン・バンデラのウクライナ反乱軍のシンボルであることがわかった。彼は第二次世界大戦でドイツのナチスと手を組み、ドイツ人自身がショックを受けるほど、仲間のウクライナ系ユダヤ人の虐殺を実行に移した人物である。

 どう考えても奇妙なのは、エウスカディやカタルーニャ、マドリードで警察に石を投げればテロリスト同然、ベネズエラやウクライナで警察官を生きたまま焼けば自由のための活動家となることだ。

 実際、この後の出来事は誰もが知っている通りだ。ヤヌコヴィッチ(Yanukovych)大統領(御多分に漏れず、彼も腐敗した人物)がウクライナを去り、クーデターによってポロシェンコのような誰もがファシストと認める人物が政権トップに置かれた。ナチスは街頭に出た。徐々にはっきりするだろうが、そのような抗議運動は、ブリーフケースに詰められたアメリカドルに支えられ、そのドルを湯水のように流し込んでポロシェンコという戦争モンスターを育て上げたのだ。

 それ以後の暴力は残虐で日常的なものになった。彼らがまずしたことは、共産主義者や反ファシストの本部へ行き、それを叩き壊すことだった。武装したナチグループがすべての集会にやってきて、「我々に加わらないなら殺すぞ!」と言った。多くの者が逃げ出し、移動し、他の「同志たち」は、ウクライナ統一を求めてナチスの隊列に加わった。不条理な話だが、そうだったのだ。

 ウクライナの人口構成は非常に多様で、ロシア系が20%、主に東部のドンバスという鉱床地帯に定住している。その他、タタール人、ベラルーシ人、ルーマニア人、モルドバ人、ハンガリー系ポーランド人、ジプシー、ユダヤ人などがいる。

 ウクライナ東部では、スターリンが石炭資源の豊富なドンバス地域の廃鉱に数千人のロシア人労働者を送り込み、鉱山を開発した際、ロシア人とウクライナ人の家族が融合し、憎しみよりも兄弟愛の強い健全な共存関係を築いた。ロシア人の父とウクライナ人の母、あるいはその逆の家庭が、そこではごく普通に存在していたのである。

 しかし、不吉なことが、数年前から起こっていた。

 まず、教育現場では、それまで非国民的な無法者とされてきたステパン・バンデラの反乱軍を歪曲し、「祖国の英雄」として各学校に売り込み始めた(今日では、この野蛮な殺人者たちを象徴する赤と黒のエンブレムをつけた子供たちが描かれた小学校の教科書は簡単に見つけることができる)。

 他方、ウクライナのテレビでは、主要な政治トーク番組から、民族的憎悪の温床が作られ始めた。入念な構想を施し、国民が受け入れやすいように手を加え、ロシア人をウクライナ人が被るすべての経済的悪の犯人として仕立て上げるのだ。こういった動きも、「繁栄するヨーロッパ」よりもロシアとの貿易関係を優先するというヤヌコヴィッチの地方政策で一筋縄ではなかった。

 このようなトークショーの中で、彼らはドンバスの住民を、大学や近代的な世界を持つキエフのウクライナ人とは対照的に、炭鉱を掘ることしかできない人間以下の猿のように描き始めたのである。民族的な憎悪が絶えず浴びせかけられた。

 インターネット上には、ウクライナの有名なトークショーの司会者が「受け入れがたい事実だが、あの人たちは重荷で、我々を貧しくし、我々本当のウクライナ人が必要とする空間を占領している。言いにくいことだが、ドンバスには死ななければならない人たちがいる。」と語る映像が流れている。これはそのままネット上に残っている。一方、ウクライナのナチス政党であるプラヴィー・セクトールとスヴォボダは、長年にわたり、並行して、西側の資金で武装勢力に戦争と戦闘技術の準軍事的訓練を施してきた。

 マイダンに話を戻すと、こうした戦略の効果は、彼らが期待したとおりの果実をもたらした。ナチスや人種差別主義者の憎悪は、キエフで人種差別主義者、同性愛者、左翼、ソ連の過去を懐かしむ人々へのリンチへと転化した。殺人は毎日のように起こっていた。その時、極右の準軍事集団が、コロモスキ(Kolomoski)などの地元オリガルヒの財布から直接高給を得て、正式な軍の大隊として結成された。これらの大隊はドンバスに向かっている。

 これらの編隊が、シンボルや制服でドイツのナチス集団を模倣して行進する一方で、キエフの市民は「ロシア人に死を」「ウクライナに栄光を、英雄たちに栄光を」と唱えながら拍手喝采している。悲劇が漂っていた。

 これらナチスの部隊がドンバスの人々を壊滅させるために移動している間、超国家主義的な市民の過激派は、すべての都市で彼らの法律を押し付け始めた。彼らが最初にしたことは、レーニン像(東部ではすべての町に1つある)をすべて取り壊し、祖国の敵とみなした者をすべてリンチすることであった。

 レーニン像に花を運ぶ老人の頭を、若者やそれほど若くない者が容赦なく蹴りつけるいろいろな場面の映像がたくさんある。

 こういったやりたい放題の暴力を受けた人たちの大半は死んだ。

 東部出身のロシア系の人たちは、対応せざるを得なかった。彼らは、自分たちの立場を示すために、レーニンの広場や銅像の周りに集まり、自衛のための組織作りを始めた。

 多くの国の、何千人もの人々の人生を変えた運命の日がやってきた。2014年5月2日である。一触即発の場面のど真ん中にサッカーリーグは、「偶然にも」、サポーターの主流がファシストたちである2つのサッカーチームによる「祖国のための」親善試合を企画した。試合前、彼らは全員でウクライナ祖国の統一のためのデモに参加した。

 このデモのルート近く、労働組合会館の門前には、ロシア系の反マイダン派デモ隊が野営していた。

 ロシアでは、彼らの「聖なる週」はソ連の歴史に刻まれており、労働者階級の日の5月1日からドイツ第三帝国に対する勝利の日を記念する5月9日までが休日で、人々はそれを利用して親類を訪ねたり、小旅行に出掛けたりするのだ。だから、反マイダン派の野営地には年金生活者と若者を中心に数百人しかいなかった。

 ファシストの行進のある地点でルートを逸脱して、一斉に労働組合会館に向かったのだ。それがどのようにして起こったのか、どの工作員たちが関与したのか、言いたいことは山ほどあるが、今それを突っ込んだら話は終わらない

 結果は皆知っている。野営地にいた人々は、ウクライナの旗を持ったナチスのあの激怒した集団を見て、労働組合会館の建物の中に避難せざるを得なくなったのだ。

 ナチスは建物を取り囲み、中にいる全員を燃やした。16歳を含む50人以上の犠牲者が焼け死んだ。他のデモ隊が「ロシア人に死を」と叫ぶ中、ナチスに電話線で絞め殺された妊婦の映像が誰でも見られるように公開されている。

 炎から逃れようと3階から道路に飛び降りた人々は、「無垢な一般市民」の暴徒に鉄棒を突きつけられ、撲殺された。

 実際のデータには、その焼かれた50人のほかに、どこに行ったかわからないまま行方不明になった人が150人も含まれる。

 恥ずべき所業はそれだけでは終わらない。なぜなら、その襲撃に何もせずにその場にいた当局が、あろうことか、協力さえしていたからだ。この事件で逮捕されたのは、襲撃された人たちだけだった。一方、ウクライナの政治家たちは、インターネット上でこの出来事を公に称賛した。焼かれた同志たちの遺体の画像はひどいものだ。

 また、20代前半のウクライナの少女や少年たちが、仲間を生きたまま焼き殺すための火炎瓶にガソリンを満たしている映像もひどいものである。あるいは、ウクライナのFEMEN*のリーダーが、燃え盛るビルを背に大虐殺を祝っている画像(Googleで「FEMEN, Odessa」と検索すればすぐにわかる)。
*フェメン。2008年に設立された、ウクライナのキエフを中心に活動する第三波のフェミニズム抗議団体である。「ウクライナの若い女性のリーダーシップ、知性、道徳性を磨く」、「ウクライナは女性にとってチャンスの国だというイメージをつくる」などの理念を掲げている。( ウィキペディア)

 この国(ウクライナ)では、ロシア人がいかに悪いか、この戦争に抗議するために今日も街頭に出るべきだと言っているのと同じメディアが、この事件の後、「ロシア分離主義者との衝突で50人以上死亡」という見出しを掲げたのである。

 よほど見下げ果てた犯罪者でないとそんな見出しは出せない。犠牲者たちを死刑執行人だと言いくるめようなんて。別に目新しいことでもないのだが。

 この後の展開は予想どおりであった。

 ナチスはロシア民間人をリンチし、首を吊り、生き埋めにし、女性を強姦し、人々を磔にした後に火を放った。これらの写真を添付するのは簡単だが、私は病的な状態に陥りたくない。さらには犠牲者の友人や仲間に敬意を表し、これらの写真を常に眼前に置かなくても彼らの記憶に刻んでおけるようにしたい。

 しかし、先ほども言ったように、それらの画像は公開されており、探そうと思えば誰でも手に入れられる。私は、このことを否定し、メディアが押し付けるクソのような情報を飲み込むことを好む人間たちの心が変わるとは思っていない。彼らの見下げ果てた存在の中に取り組むべき事柄はたっぷりある。

 ドンバスを占領し、東部にいる人口の20%を絶滅させるというウクライナの言い分を前にして、彼らは家族と家を守るために対応せざるを得なかったのである。

 ウクライナから独立し、ロシアに助けを求める住民投票が行われた。例えばクリミアでは人口の97%がロシア人であり、これらの住民投票の結果は予想できた。誰だって、自分を殺したいと思っている国に居たいとは思わない。

 ウクライナ人民共和国の独立宣言が相次いだ。

 ウクライナ軍は宣戦布告し、ナチス大隊(アゾフ、アイダー、等々)は親ロシア派の代表的な都市を包囲し砲撃しはじめた。

 このような内戦や民族戦争は、NATOの対ロシア経済冷戦(秘密の、あるいはそれほど秘密でない場合もある)における非常に重要な飛び地を乗っ取るという計画が隠されていたと言わざるを得ない。彼らはクーデターを起こし、西側の傀儡を配置し、ロシアの玄関口に軍事基地を設置したのである。そのために、戦略的に非常に重要な要素が海軍基地と黒海の支配権を持つクリミア半島だった。

 ロシアもバカではないので、すぐにクリミア住民投票を支持して併合した。

 クラマトルスクもハリコフも*軍用砲の包囲に耐えることができず、すぐに屈服してしまった。この後に続くナチスの暴力沙汰は目を覆うほどだった。
*いずれもウクライナ東部、北東部に位置する都市

 しかし、ルガンスクとドネツクは強くなった。労働者、鉱山労働者、市民、そしてロシア系の警察官や兵士の一部が、自ら組織し、宿泊所を設営、自衛の民兵を結成して武装したのだ。彼らは、むざむざ自分たちが殺されることを潔しとはしなかった。

 ナチスの大隊とウクライナ軍は、これらの都市を孤立させる包囲網を作り、あらゆる人権条約・規約に違反する民間人への無慈悲な爆撃を開始したのである。

 まず最初にやったのは、水道、電気、発電所の爆撃だった。住民を、水も電気もなく、ラジオ、電話、テレビなどの通信手段もないままにした。そして、主要な輸送路を破壊して、食料の供給が受けられないようにした

 あなた方の小さな戦争反対の看板は、あなた方の良心という埃まみれのクローゼットの中で、安らかに眠っていた。国際社会は沈黙したままだった。

 これらの都市は数ヶ月間、最も残酷な方法で暴虐の限りを尽くされた。何千人もの人々、老人、子供などが、血まみれの大虐殺の中、体をバラバラにされ、吹き飛ばされた。

 病院も、学校も、幼稚園も、爆撃を免れることはできなかった。周辺の町や村も破壊された。何十万人もの人々が国外に脱出し、ロシアに迎え入れられ、爆撃から守られた。

 ファシストのサディズムは、ラ・デスバンダの爆撃を行ったフランコ・スペインを模倣している。ルガンスクからロシアにつながる最後の道路で、恐ろしいことが起こった。ウクライナ軍はドンバスの市民に対し、24時間発砲を停止し、ロシアに逃げようとする市民がすぐに逃げられるようにすると通告したのだ。

 バスの車列が道路を走り始めた。ウクライナ軍は発砲し、車列全体を虐殺し、黒焦げの死体の間にねじれた鉄のくすぶる瓦礫と化したのである。今、同じ軍隊がロシアによって罰を受けている。鉄で殺す者は、鉄で死ぬのだ。

 私は述べたが、5月2日の出来事は、多くの私たちの心に永遠に刻みこまれた。憤怒と正義を求める錯綜した涙の中で、多くの人々がすべてを捨て、ドンバスの人々をファシストの虐殺から守るために自らの心臓を盾として、手を道具として提供することを決意したのだ。私もその一人で、すべてを捨て、恐怖の涙の中、たった一人で飛行機に乗り、数千キロを横断し、ウクライナ軍の包囲網を突破し、ルガンスクに身を置いて、あなた方が忘れた人々に手を貸そうと思った。

 私がそこで見ることができたものを、多くの人はロシアのプロパガンダとしてはねつけてしまう。私が見た恐ろしいイメージと経験を克服するためには、長い時間と多くのカウンセリングセッションが必要となるだろう。私は、全身の力を振り絞り、心も体も柔軟にし、死を逃れたことが幾度となくあった。私の周りには、それほど幸運ではない人たちがいた。子供や老人、罪のない男女の切断された死体や散乱した内臓を目にした。あの匂い、あの血、それらの光景は、生涯決して忘れることはないだろう。

 ウクライナ軍がドンバスの人々を容赦なく、途切れることなく虐殺し続けて8年になる。あなた方みんなが何も声を上げないことで残酷な共犯者となったクソのような8年間だった。メディアもそうだし、今、「NO TO WAR」の、胸糞悪くなるような小さなプラカードを掲げているあなた方もそうだ。

 「公式」の民間人犠牲者数は、実数より限りなく少なく、14,000人が殺されたとしている。

 ナチスの大隊は、村全体を占領し、女性や少女を好き勝手にレイプし、家を略奪し、男性を拷問し、母親の前で赤ん坊をレイプする乱交パーティさえ行った。トルネード大隊の実態は、あなた方自身の目で確かめることができる。

 40度の暑さの中、一滴の水もなく、食事も洗濯もできず、ウクライナの爆撃を避けるために隅や地下室、さらには下水道で寝泊まりしながら、彼らと共に生活する中で、彼らがいかに苦しんでいるかを知ることができたのだ。

 ポロシェンコ大統領が「ドンバスの子供たちはネズミのように地下室に隠れなければならないが、我々の子供たちは学校に行くことができる」と言ったとき、すべてのウクライナ人から喝采を浴びた。彼を支持する国民はみんな拍手をした。戦時中にプラヴィー・セクトール(Pravy Sektor)*のナチス指導者たちに国防省の役職を与えたのと同じ人々だ。「自分は無垢な民間人だ!」などと言っても、容赦なく拷問し、殺し、レイプする本物の精神病質者に権力を与えてしまったことの何の言い訳にもならない。

*右派セクター。ウクライナの民族主義者らで構成される極右政治団体・政党・準軍事組織。ロシアへの強硬な対抗姿勢で知られる。創設者はドミトリー・ヤロシ。現在の代表はアンドレイ・タラセンコ。( ウィキペディア)

 さて、かねてからこれ以上の包囲と危機に晒されることを許さないと警告してきたロシアは、行動を起こすことにした。明らかに、自国の利益を守るため、そしてNATOがミサイルと軍隊で武装し、包囲し続けるのを阻止するためにそうしようとしている。私は、プーチンや今日のロシアに同調するつもりはない。とんでもない!しかし、ロシアに焦点を当てることで、今回の恥ずべき振る舞いの輪に入ることはしない。目を完全にふさがなければそんなことはできないだろう。そもそも、大きな国同士の地政学的な対立の結果には、長年にわたって他の土地を爆撃し、支配を拡大し続けるために軍を動かしてきた多くの責任ある勢力が関わっているのであって、自らに降りかかってくるものを見た反対側の勢力が軍を動かすのは完全に正当だと私は考えているからだ。

 他方、すでに申し上げたように、ニュースはそう決めつけているからあなた方が急に心配しているこの戦争は、2022年2月23日に始まったわけではないのだから。この戦争は、あなた方が傍観したり、見て見ぬふりをしている間に、8年間も罪のない人々を容赦なく殺し続けてきたのだ。あなた方の小さな「NO TO WAR」のプラカードは、残酷なまでに遅い。NATO主義者の利益に間接的に奉仕しているのだ。

 彼らが求めているのは、途切れなく続いた8年間、私たちの国民が苦しんできた野蛮な行為の操作された共犯者に、あなた方を変えることだ。この8年の間、ウクライナはミンスク協定のすべての合意事項を無視した。

 ちょっと頑張って、理解してみてほしい。今、あなた方が(喜びで)飛び上がっている姿を見て、私がどんな怒りと憤激を感じていると思われるのか!

 ロシアのほんとうの意図などどうでもいい。確かなことは、ついにドンバスの人々が苦しむことと、血にまみれた廃墟の地下室に隠れて暮らすことが終わるということだ。

 実際、このテロリストで殺人者のウクライナ軍は、その基地、火薬庫、武器や爆弾の倉庫を破壊することによって非武装化される。彼らはドンバスに爆弾を落とすこともできなくなる。

 確かなことは、アゾフ大隊のような超残忍なネオナチ大隊は、もはやレイプも拷問も行わないということだ。昨日、彼らはマリウポルの軍事基地で何千人も死んだからである。ナチスの指導者たちは排除され、捕らえられた戦犯のリストは非常に長く、ドンバスの人々の前で裁かれることになる。

 「キエフの無辜の市民たち」は一日中サイレンに怯え、地下や地下鉄のホームに隠れ、キエフの特派員たちが中継してくれる映像に涙を流しているのだ。彼らは虐殺の市ドンバスには一歩も足を踏み入れようとはしなかった。あなた方は24時間以内に今回の事態を目にして憤激した。ドンバスの子どもたちの命にも同じ価値はないのか?

 ロシアがウクライナから撤退すれば、あなた方のNO TO WARは満足するだろう。そして、あなたは再び小さなプラカードをメディアに従わせ、再び沈黙を守り、ドンバスの息子や娘たちを自分のシャベルで葬るだろう。

 本当はあなた方を軽蔑しているのだ

 私たちがドンバスで訪問した、破壊された土地に永遠に取り残された子供たちの孤児院(複数)にあなた方をお連れしたいと思う。それらの孤児院から去る時、私は怒りと悲しみで泣いていた。5歳の孤児たちが、爆弾から身を守るために、先生の命令で体を丸めて地面に投げ出すことに慣れていたからだ。そして、日々、この子どもたちがどのように命を落としていったのかを想像したからだ。

 いまさら、戦争反対を私がいっしょになって叫ぶことなど期待しないでほしい。

 戦争はいつの時代も、そしてこれからも、金持ちの引き起こす面倒でその代償は貧乏人が支払う。しかし、この戦争は、あなた方を、忘却の彼方から見ている多くの、多くの命を殺してきた。そしてその命を奪った処刑人たちをあなた方は守ろうとしている。

 このようなことから、ウクライナで一般市民が死ぬことが正当化されると言っているのではない。偽善的になるつもりはない。死人は出るだろうし、そのようなシナリオでは避けることはできない。しかし、ウクライナ軍が組織的に民間人を虐殺し、今朝もゴロフカ(Gorlovka)の学校で教師2人を殺害したのとは異なり、ロシア軍は軍人にのみ犠牲を出そうとしているのは事実だ。ただテレビでは、シリアなどでの爆撃の記録映像を使って、そうではないと伝えてはいるが。プロパガンダ・マシンはフルスロットルで動いている。私が言いたいのは、あなた方の支援も連帯も得られないまま何万人もの子どもや老人、女性が死んでいたのに、それには口を噤み、今回の戦争についてぺらぺら話すのは恥知らずだということだ。

 私に悲しみの気持ちを求めても無駄だ。斜に構えて「紙一重で死を免れた」などと、口にすることはない。私は心を盾にして、民衆に対する銃弾を止めるために、あらゆる危険を冒して現地に赴いたのだ。しかし、私の心の中には、私が死ぬのを見た多くの人々、私が泣くのを見た多くの子供たち(そして死んだ子供もいた)、忘れられた隠れ家でバラバラにされたり、飢えと渇きで死んだり(なぜそんな目に合わなければいけないのだ!)という多くの老人たちがいる。その人たちのために、そして正義のために、私にはやるべきことをする義務がある。

 NATO、アメリカ、ヨーロッパは犯罪者であり、殺人者である。ロシアを含む列強の戦争は、直ちに中止されるべきだ。世界中の働く女性や男性は、彼らの戦争に反対し、すべての戦争に反対し、両陣営のオリガルヒたちに反対して団結すべきだ。それが理想だろう。ウクライナとロシアの労働者がオリガルヒを収奪し、相互支援と連帯の環境を構築する。

 しかし、私たちはそこから何光年も離れている。今、私にとって重要なのは、ドンバスの人々が8年ぶりに自爆テロを恐れることなく、避難所を出て、子どもたちと公園で遊べるようになることである。

NEITHER WAR BETWEEN PEOPLES, NOR PEACE BETWEEN CLASSES

諸国民の間に戦争があってはならない。階級間に平和があってはならない。


Ramiro Gomez is a member of the Brigade Ruben Ruiz Ibarruri- Anti-Fascist Caravan of Banda Bassotti.
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<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine: Getting it Right: A Revolutionary Pan-African Perspective


投稿者: INTERNATIONALIST 360°
投稿日: 2022年2月28日
ジェラルド・A・ペレイラ

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月11日


 2月18日以降、ドネツクとルハンスクから数千人の民間人がロシアに避難している。ウクライナ軍の砲撃が強化されているからだ。これらの地域は2014年の米国支援によるクーデター以降ずっと砲火を浴びている。

 「ホワイトハウスのヒステリーは、これまで以上に明らかになっている。アングロ・サクソンは何が何でも戦争が必要なのだ。挑発、誤報、脅しは、自分たちの問題を解決するためのお気に入りの方法である。アメリカの軍事・政治マシーンは、人々の生活を再び押しつぶす準備ができている。」
―マリア・ザハロワ ロシア外務省報道官

 カリブ海には「猿は跳ぶときにどの足を支点にするのかを知っている」ということわざがある。少なくとも、猿は知っているはずだ。このことは、通常、アメリカ帝国とその犯罪的創造物であるNATO(北大西洋部族機構)にも当てはまる。彼らは、軍事力の点で自分たちに歯が立たない国々を選ぶからだ。しかし、今回はそうではない。彼らはロシア連邦との勝負に出た。ウラジーミル・プーチンが彼らのハッタリに開き直ったからだ。

 米国大統領ジョー・バイデン、英国首相ボリス・ジョンソン、NATO総書記イェンス・ストルテンベルグ、欧州委員会委員長アーシュラ・フォン・デア・ライエンは、この数ヶ月間、大口を叩いていた。しかし、それはすべてハッタリだった。一方、ウラジーミル・プーチン大統領はハッタリではなかった。ロシア国民は、ファシストが目の前にいることがどういうことかをよく知っている。当時のソ連はナチス・ドイツとの戦いを主導し、2022年2月24日、ロシアは再び、アングロ・サクソンのファシストたち、今回はアゾフ大隊などのウクライナのネオ・ファシスト民兵や、ウクライナ軍の極右勢力に対して軍事行動を取らざるを得なくなったのだ。米国が画策し、NATOの同盟国が支援した2014年のウクライナでのクーデター以来、ロシアは挑発に次ぐ挑発に耐えてきたが、戦争屋は落ち着かず、戦争を切望しており、彼らの無謀な行動はロシアに行動を起こすしかない状態に追い込んだ。

アゾフ大隊とファシスト・インターナショナル

 極右組織「アゾフ大隊」は、ウクライナ民族主義者組織を起源とする。冷戦期から今日に至るまで、米国帝国主義や西側諸国の情報機関は、ウクライナ民族主義者組織(OUN)、後にその分派であるアゾフ大隊に資金その他の支援を提供した。ウクライナの様々なファシスト集団の会員数は、60万人以上と推定されている。ヴォロディミル・ゼレンスキー政権は、自らを「中道派」と称しているが、国家保安機構を含むあらゆるレベルで、これらのファシスト組織に浸透されている。モスクワは、このことが、ロシアだけでなく、ヨーロッパと世界に対して非常に現実的な危険をもたらすことをよく認識している。すでにウクライナのファシストは、いかなる和平交渉も妨害すると言っている。これらのファシスト集団は、ハンガリー、ポーランド、ドイツ、フランス、イギリス、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アメリカ、ブラジル、ペルー、ベネズエラなど多くの国に支部と支持者を持つ国際組織を構成しており、ベネズエラではマドゥロ政権を不安定にして転覆しようとする最前線に立ってきた。彼らは「統一プラットフォーム」として知られる「民主的行動」や「民衆の意思」といった多くの政治団体に潜り込んでいるのだ。また彼らはオーストラリアやニュージーランドといった遠くの国にまで進出している。実際、2019年にニュージーランドのクライストチャーチの2つのモスクで起きたテロ事件で51人のイスラム教徒を惨殺した白人至上主義者は、この国際的なネオナチ陣営の支部につながっていた。


米国が支援したもう一つのクーデター

 2014年、アメリカはウクライナで疑似革命を画策し、それを「尊厳の革命」と呼んだ。暴力的な街頭抗議行動を通じて、民主的に選出されたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権を転覆させたのだ。このクーデターに先立ち、戦争屋のジョン・マケインがウクライナを訪れ、大勢の観衆を前にして、ヤヌコビッチ率いるモスクワ寄りの政権に反対するよう扇動していた。ヨーロッパとアメリカからネオナチがウクライナにやってきて、アゾフ大隊や他の極右準軍事組織とともに訓練して戦った。その間ずっと、ビクトリア・ヌーランドは、オバマ大統領時代の疑似「尊厳の革命」の「指南役」であり、現在はバイデン政権の政治問題担当国務次官だが、ウクライナ・プロジェクトに50億米ドルを費やしたことを自慢していた。彼女の指導の下、ウクライナは反モスクワの感情を広めることを目的としたNGO、訓練、社会的プログラムで溢れかえった。米国が画策したクーデターの11日前の2014年2月6日のことだが、ビクトリア・ヌーランドと当時の駐ウクライナ米国大使ジェフリー・パイアットは電話で誰がウクライナ新政府に入るかを公然と話し合っている。その記録は漏れ出てネット上で見ることができるのだが、全てはロシアの国境で行われている。ロシアがカナダやメキシコで同じことをしていたらと想像してください。


米国はファシストの友人


 米国とその情報機関は、ファシストを採用し、共謀し、協力してきた長い実績がある。ブラッドリー・W・ハートは、よく研究された彼の著書『ヒトラーのアメリカの友人:米国における第三帝国の支援者たち』の中で「ゼネラル・モーターズは自社でドイツ部門を持っていて、ドイツ空軍のために航空機部品を製造していた」と書いている。ベン・アリスとダンカン・キャンベルはガーディアン紙(2004年9月25日付)の記事で、ジョージ・ブッシュSnrの父親で米国上院議員のプレスコット・ブッシュがナチス・ドイツと多額の金銭取引をしていたことを暴露している。ナチス・ドイツが崩壊すると、CIAはナチスの諜報員をできるだけ多く採用し、そのほとんどを南米のボリビア、チリ、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジルに配置した。アメリカは、これらのファシストを長年にわたって利用し、彼らが作ったフロント組織を通じて、進歩的で革命的な政権を弱体化させ、不安定化させた。ボリビアのアメリカ大使館は、「リヨンの虐殺者」として知られる悪名高いクラウス・バービーと緊密に連携していた。バービーはボリビア軍の大佐の地位を与えられ、チェ・ゲバラを標的とし追跡するチームを率いたと自慢していた。

ゼレンスキーは民族浄化と大量虐殺のプログラムを促進する

 2月24日、ウクライナ政府はさらなる挑発行為として、ドネツクとルハンスクの人民共和国に対する8年にわたる戦争をエスカレートさせた。これらの共和国は、2014年のクーデター後に自治を宣言し、反ロシア、親NATOのヴォロディミル・ゼレンスキー政権下で生きることを拒否した。彼は「中道派」と言われているが、これらの地域のロシア民族が様々な新ファシスト民兵によって標的とされ攻撃されており、何千人もの市民の犠牲と死者を出している。ゼレンスキーは、民族浄化と大量虐殺のプログラムを促進した罪で起訴された。ドネツクとルハンスクのある東ウクライナのドンバス地域の人々は、ロシア語を話し、ロシア連邦の一部になることを望んでいる。ウクライナ・ソビエト社会主義共和国は1922年にソビエト連邦の建国メンバーになったので、ロシアとウクライナはかつて同じ国の一部だった。ゼレンスキーは、アングロ・サクソンの手先の暗黙の支持を受けて、ミンスク協定を履行するつもりはなかったのである。その協定はウクライナ情勢の平和的・外交的解決の青写真を含み、離脱地域とロシアが支持するものだったが、彼は、西側の同盟国とともに、ただ一つのこと、ロシアとの紛争を誘発することだけを考えていたのだ。

プーチン大統領は2月24日のテレビ演説で、ドンバス共和国(ドネツク、ルハンスク)の指導者からの訴えを受け、「8年間キエフ政権による虐待と虐殺に苦しんできた」これらの地域の人々を守るために特別軍事作戦を実行する決定を下したことを発表した。ドネツクとルハンスクから何千人もの難民がロシア国境を越えて押し寄せた。これをロシアによるウクライナへの「侵略」と呼ぶのは誤りだ。プーチンは、ロシアがウクライナを占領することに何の関心もないことをはっきりと述べている。しかし、明白な理由でロシアと国境を接する国々へのNATOの拡張を断固として阻止している。NATOのような敵対的な戦争マシーンが、弾道ミサイルを含む大量破壊兵器を国境に配備することを、ロシアはどうして許すことができるのだろうか。米国と国境を接する国や、米国が「裏庭」と呼ぶ場所に、ロシアが核兵器やミサイルを配備することを想像できるだろうか? これこそがまさに1962年のキューバ・ミサイル危機を勃発させたのだ。

NATO - 北大西洋民族の破壊的戦争遂行マシーン

 NATOは1949年に結成された。表向きの理由は、ソ連と共産主義者の西ヨーロッパへの進出に対する抑止力だった。ソ連圏はNATOの軍事複合体に対抗するため、ワルシャワ条約機構を結成した。ソ連と東欧圏が解体されると、ワルシャワ条約機構も解体された。レーガン政権は、ゴルバチョフに「NATOは東欧に進出しない」と約束した。しかし、数年後、ゴルバチョフ氏はドイツの新聞「ビルト」のインタビューで、「モスクワは騙された」と言い放った。「西側の多くの人々は、密かに手を擦り、勝利の喜びのようなものを感じていた―東方には1センチも動かないと約束していた人々も含めて」。いま私たちが知っているように、NATOは東へ、ロシアの国境近くまで移動し、現在の紛争に至っている。 NATOは、その存在理由はもはや存在しないのに、解散する代わりに、人類が知る限り最も高度な兵器で武装した、攻撃的で破壊的な巨大組織に変身したのである。アメリカ帝国に率いられたNATOは、アングロ・サクソンの支配を拡大し強化する目的で、世界中で戦争を行っている。アフガニスタン、イラク、リビアといった国々を無残に破壊し、文字どおり何百万人もの民間人を死なせている。彼らは東ヨーロッパにできる限り進出し、現在、ロシアを包囲しようとしている。ロシアは、その領土の完全性と主権を守ることができない状況に置かれているのだ。これは、いかなる状況であれ、ロシアにとっては当然受け入れがたいことだが、特に反ロシアのヒステリーが冷戦時代を彷彿とさせるレベルまで高められている現在の政治環境においては、なおさらである。

お金と資源の追求

 アメリカの外交政策立案者であるズビグニュー・ブレジンスキーの次の言葉に注目することが重要である。彼はその著書『グランド・チェスボード』の中で「ユーラシアを支配する勢力は、世界の最も先進的で経済的に生産性の高い3地域の3分の2を支配するだろう」と書いている。地図を見てみれば、ユーラシア大陸を支配することは、ほぼ自動的にアフリカを従属させることになることがわかる。ユーラシアは世界のGNPの60%を占め、世界の既知のエネルギー資源の4分の3を占めている。

 著名なビルダーバーグ・グループの研究者、ダニエル・エストゥリンは、人類の歴史は「ユーラシア大陸の中心部を支配することが既知の世界全体を支配する鍵であることを常に示してきた」と指摘している。

すでに始まっている世界大戦

 白人至上主義が支配する世界では、アングロ・サクソンがヨーロッパに攻め込んだときだけ戦争になる、という不条理な考え方が定着している。現在でも、このヨーロッパ紛争の一挙手一投足が世界中で熱狂的に注目され、ニュースの見出しは再び第三次世界大戦の予感があると叫んでいる。

 ロシアがドンバス共和国を助けに行き、ウクライナに組み込まれているネオ・ファシストに対してついに行動を起こしたのと同じ日に、アメリカはAFRICOMを通じてソマリアを爆撃し、アメリカの代理人であるサウジアラビアはイエメンを爆撃し、より多くの女性や子供を殺害した。イスラエルという人種差別的で犯罪的な組織が、シリアを攻撃したのだ。パレスチナ、イラク、アフガニスタン、ソマリア、リビア、シリア、イエメンに住んでいる人は、自分が長引く世界大戦に巻き込まれていること、そして今も巻き込まれ続けていることを知っているはずだ。そして、それらはホットスポットの一部に過ぎない。韓国、ベトナム、グレナダ、パナマ、旧ユーゴスラビアなど、数え上げたらきりがない。そして、これらすべては、アングロ・アメリカとその同盟国、すなわちロシアを挑発しているのとまったく同じ勢力によって画策され、煽られ、永続されている。1945年から2001年にかけて世界153の地域で起こった248の武力紛争のうち、201は米国が引き起こしたもので、全体の81%を占めている。

 実のところ、「南半球」全体が永久戦争とホロコーストの状態にあるのだ。この汚い戦争の塹壕の中にいる私たち(訳注:著者はリビアに長年住んでいた。)は、物心ついたときから、容赦ない世界大戦の中にいたことを知っている。米国は、武器売却に依存する経済全体、すなわち軍産複合体を構築してきた。このため、戦争と不安を捏造し続けなければならない。彼らの主要輸出品である大量破壊兵器は、平和共存の世界ではあまり売れないからだ。しかし、これは単なる経済学的な話ではなく、もっと複雑な話なのだ。事実、アングロ・サクソン系民族は、ヨーロッパに初めて出現して以来、ずっと戦争をしてきた。彼らは、他のどの民族にもない方法で、戦争の芸術と技術を習得してきた。彼らは、ヨーロッパ人以外の指導者、特にアフリカ人に対してこの言葉を使いたがるにもかかわらず、典型的な軍閥なのだ。この地球上で、アングロ・サクソン系民族ほど執拗かつ永続的に戦争を続けてきた文明はない。これは意見ではなく、議論の余地のない歴史的事実である。

ヨーロッパ部族間戦争

 百年戦争(1337-1453)とは、主にフランス人とイギリス人の間で起こったヨーロッパの部族間戦争で、他のヨーロッパの部族もどちらかを支持していた。この戦争では、推定350万人の命が奪われた。そして、ヨーロッパの大多数の国が参加した30年戦争(1618~1848年)があった。戦史研究者は、この戦争で少なくとも800万人の死者が出たと推定している。そして、いわゆる第一次世界大戦と第二次世界大戦が起こった。どちらもヨーロッパの戦争で、植民地化された人々は、北大西洋のさまざまな部族とともに戦うことを余儀なくされた。悲しいことに、今日でも私たちの多くは、北大西洋の諸部族を擁護し、その側で戦い、帝国の目的を推進し、その過程で自国民を服従させ、破壊しているのである。

ロシア人はこの敵を知っている


 ロシア人は、西ヨーロッパの最も悪名高いファシストと戦うことに関しては経験豊富である。歴史を正確に読めば、ナチス・ドイツの敗北を主導したのはソビエトであったことがわかる。2600万人以上の市民を失ったと言われている。当時、ソ連は、反ソ連感情が蔓延していたため、弱みを見せるわけにはいかなかったので、その損失の実態を明らかにしなかった。アングロ・サクソンの悪魔、チャーチルとチェンバレンは、戦局が落ち着く前に密かに会談し、ソ連を滅ぼすために戦争を延長する方法を考えていたが、この計画を断念した。というのも、自分たちはソ連兵に自軍の兵を差し向けるわけにはいかないと思ったからだ。彼らはソ連赤軍と一緒に戦い、ヒトラーの猛攻からヨーロッパを守るために払ったソ連兵の勇気と犠牲を目の当たりにしていたのだ。

そして「ウクライナ、2022年、情報戦争」まで早送りすると

 この歴史を知っていれば、他国からの干渉は「歴史上見たことのない結末」を招くと警告したウラジーミル・プーチンの言葉がハッタリではなかったことがわかるはずだ。ついに、世界の覇権を握る者の傲慢と偽善に立ち向かう者が現れたのだ。そしてもちろん、ネット上は事情が分からない人々、常識があってしかるべき人たち、そして意図的に偽情報を流している親帝国主義の意図を持つ人たちによる混乱で燃え上がっている。

 「すべての戦争と軍事侵略に反対」「プーチンに反対、戦争はダメだ」といった空虚なスローガンと共に「すべての話には二つの側面がある」という言説も広がっている。企業メディアとアメリカ帝国主義のシリコンバレー応援団のおかげで、多くの方面で、ゼレンスキーとアゾフ大隊は英雄として歓迎され、ロシアのテレビは放送を禁止された。このような誤ったシナリオに騙されている人は、よく調べるか、黙っている必要がある。ウクライナ情勢をめぐるこうした立場は、具体的な現実に即していないだけである。厳密な歴史的分析がなされておらず、このような力学に対する完全な誤解を引き起こしている。私がこの記事を書いている間にも、ウクライナ軍の職員が、市民を避難させる列車やバスにアフリカからの留学生を乗せるのを拒否している映像が出回っている。アフリカ系、アジア系、カリブ海系の市民が、ウクライナとポーランドの国境で行列に加わることを拒否し、もし加わったとしても行列の最後尾に押しやるウクライナ軍兵士による差別、場合によっては暴力に直面しているという報告もある。

 多くの人は、ものごとをありのままに語ることを恐れている。南半球の新植民地政権は、帝国ヘゲモニーに挑戦する勇気がない。結局のところ、彼らは帝国主義者に代わってそれぞれの国を管理しているに過ぎない。そしてこれは、帝国主義の路線に従うこと、そして彼らの嘘を再生産することを意味する。たとえば、ここガイアナでは、政府も議会野党も、それが嘘であることを知っているにもかかわらず、アメリカ-NATOの路線を採用している。彼らが何かに同意したことなど記憶にないが、案の定、彼らはこれに同意し、現実を完全に否定する立場をとるようにいじめられている。彼らは「役職」に就いているかもしれないが、何の力も持っていない。私たちの政治団体、「人民勝利のための組織(OVP)」には「役職」にはついていないが、私たちの国民議会のスペースを占めるすべての舌足らずの政治家よりも多くの力を持っている。私たちの力は真実を語る能力にある。CARCOM(カリブ共同体)もまた、その地位にいる多くの人々はよく分かっているにもかかわらず、アングロ・サクソン的な出来事を支持する必要があることを知っている。それは、帝国によって行われる支配と報復の恐怖である。この記事を書いている最中にも、ここに書かれているような見解を公表すれば、重大な結果を招くと警告する人がいる。こんなふうにして覇権国家は世界を人質にとって身代金を要求するのだ。

 2014年3月1日、ウクライナの工業都市ドネツクでの集会で、「ドネツク地域はロシアとともに」という横断幕と「ファシズムに反対する南東部」というプラカードを掲げるデモ参加者たち。(AFP Photo/Alexander Khudoteply) ©AFP

アングロ・サクソンによる世界支配の終焉

 プーチンやロシアを、世界平和に対する脅威の度合いという点で、米国やNATOと同列に扱おうとしている人々は、事実を知らないか、低俗な政治的日和見主義、知的不正直、粗野な歴史修正主義に囚われている。新植民地主義政権、リベラル派の識者、新トロツキスト、実情に無知なマルクス主義者や社会民主主義者など多くの人々が、この偽情報を流し、大混乱を引き起こしている。アメリカ帝国とNATOの同盟国に対する世界的な抵抗に参加する準備ができている人々の前にはたくさんの戦場がある。戦略的な戦場の1つは、思想の戦いである。私たちは、どこにいても声を上げ、それによって帝国の巧妙に仕組まれた欺瞞的なアジェンダに挑戦しなければならない。かつて、彼らの物語は支配的だったが、より多くの人々が彼らのゲームと嘘に目覚めるにつれて、それは確実に崩れつつある。アングロ・サクソンの世界支配/白人至上主義に抵抗し、最終的に終わらせるための戦いは、それが醜い頭を持ち上げて以来、ずっと続いている。全ての帝国は崩壊し、アメリカ帝国とその西側同盟国も例外ではない。私たちは、この地球上の西洋/アングロ・サクソンの災いを取り除くための戦いにおいて、非常に重要な歴史的岐路に立たされている。だからこそ、私たちアフリカ人にとって、実際に何が起きているのかを明確にし、さまざまなプレイヤーの歴史、特徴、意図を理解することが非常に重要だ。NATOは非合法な存在であり、解散に追い込まなければならないのだ。

 アルゼンチンの政治アナリスト、アドリアン・サルブチは指摘する。「最近になって…ロシアは、特にシリアとイランにおいて、西側の覇権主義的野心に対してますます行動的になっている。2011年11月と2012年2月、ロシアは米英仏が後援する2つの対シリア国連決議に拒否権を発動した。もし決議されれば、国連決議1973がリビアにもたらしたのと同じ破壊的な影響をシリアに与えただろう。…ロシアがNATOによるペルシャ湾と地中海の軍事化に対抗して信頼できる抑止力としての軍隊を派遣している」。

アフリカにおけるロシア

 また、ロシアは、ソ連時代以前から、アフリカ各地の解放闘争を支援してきた。古くは1895年、第一次イタリア・エチオピア戦争でエチオピアに武器を提供したのはロシアであった。ソ連時代には、多くのアフリカの解放運動に対して、資金援助、数千の奨学金、軍事訓練などの援助を行った。これは、米国とその西側同盟国がアパルトヘイト時代に人種差別主義者のアングロ・サクソン系ボーア人を支援していた時期に行われたものである。現在、ロシアは、サヘルに大混乱を引き起こしている異端的な偽イスラムグループを根絶するために、マリの正当な闘いを支援している。ISIS、ボコ・ハラム、イスラム・マグレブのアルカイダといったこれらのグループは、アメリカ、イスラエル、そしてその同盟国によって援助され、幇助されている。NATOは、非協力的な政権を打倒するための多くの戦争で、これらの偽物のジハード主義者を歩兵として使ってきた。そして今、アフリカ大陸に騒乱を起こし、アフリカ全域でのAFRICOMの存在を正当化するために彼らを使っているのである。マリはフランスを追放した。フランスはいわゆるジハード主義の諸グループとの戦いにおいて自分たちを支援することに真剣ではなく、マリの存在は単にフランスの経済的利益を高めるためであることにようやく気付いたからだ。ロシア軍がシリアで偽のジハード主義者を一掃するのに多大な貢献をしたのを目の当たりにして、彼らはロシアに援助を訴え、ロシアはマリの呼びかけに応じた。実は、ウラジーミル・プーチン自身、ソ連の軍事顧問という立場で、タンザニアで4年間(1973-77年)、さまざまな解放運動のアフリカ人自由戦士を訓練していたのである。

 汎アフリカ史家のウォルター・ロドニーが指摘するように、スラブ・ロシアは捕虜となったアフリカ人の取引に参加して国を建設したわけではない。また、アフリカやその他の「南半球」の国々を植民地化することもなかった。アフリカ、アメリカ大陸、カリブ海諸国への侵略、破壊、植民地化は、基本的にアングロ・サクソン/西ヨーロッパの帝国プロジェクトであり、現在もそうである。


左から3人目がウラジーミル・プーチン、その横がモザンビークの自由戦士サモラ・マシェル、その横がジンバブエの現大統領エマーソン・ムナンガグワ。プーチンはタンザニアで4年間(1973-77年)、アフリカの自由戦士の訓練に励んだ。

活動と組織化こそが思想の拠り所だ

 キーボードの前で観察者や評論家の地位にとどまっている純粋主義者たちに、革命的な汎アフリカ主義者、クワミ・トゥールの言葉を引用しよう。彼は、現場で、組織の中で活動していない人とこうした会話をすることについて何度も何度も警告している。なぜか? なぜなら、彼らは必然的に頭の中で生きているからだ。活動や組織化というのは思想の拠り所になるのだ。私は、すべての超大国に生じるマイナス面や矛盾を否定しているわけではない。もちろん、多くの問題がある。リビア危機に対するロシアと中国の対応、あるいは対応の欠如、アメリカとNATOによるリビア国土の破壊を許したやり方には私は深く失望した。リビアの破壊は、汎アフリカ運動にとって大きな打撃となった。しかし、革命家として、失望によって原則的な立場をとることが出来なくなったら、すべての抵抗はとっくの昔に停止していただろう。私が言いたいのは、もし私たちが純粋に白人至上主義、より具体的にはアングロ・サクソンの世界支配とテロリズムを終わらせることに関心があるなら、困難な状況に向き合っていても、すべての超大国が同じではないことを認識しなければならないということだ。超大国をすべて同じと見なすのは単純すぎるだけでなく、歴史的にも、目の前に広がる現実からも完全にかけ離れている。私は確信している。ムアンマル・カダフィが、ロシアがNATOのリビア侵攻に関する判断を誤ったにかかわらず、いまこのときに私たちが、革命的な汎アフリカ主義者として、ロシア側に付きNATOに反対することをはっきりと望んだであろうことを。

 実際、アフリカで最も繁栄した国民国家であるリビア国土が2011年に破壊されたことは、完全な非同盟が、イデオロギー的には健全で理想的ではあっても、現在のグローバルな政治環境では得策でないことを明確に示している。ロシアは、進歩的で革命的な政権に酸素を供給し、いじめっ子のアングロ・サクソンの敵対心から生き延びる手助けをしてきた。ロシアのタイムリーな介入がなければ、シリアはリビアと同じ運命をたどっていただろう、というのが真実である。私たちは、この闘いの中で、多くの痛みを伴う教訓を学びながら生き抜いてきた。私たちが効果的に抵抗し、その過程で現実の世界について学び、理解を得ることができるのは、どこにいても、地上での組織化と活動によってのみである。そうすることで、私たちの闘いは前進する。ありがたいことに、力学は変化しつつあり、ウクライナ危機はこの変化を加速させた。なぜなら、それは米帝国とそのNATOの同盟国の脆弱さを示したからである。毛沢東が数十年前に言ったように、「米帝は紙の虎」なのだ。

偽善と二枚舌

 欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長とNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ロシアによるこれらの共和国の防衛を、独立国に対する「野蛮な」攻撃と評した。ストルテンベルグによると、ロシアは「欧州の安定と国際平和秩序全体」を脅かしている。国際平和秩序? 私たちは何かを失ったのだろうか?

 フォン・デア・ライエンは最近、ロシアと中国が「既存の国際ルールに取って代わろうとし、法の支配よりも強者の支配を好み、自決の代わりに威嚇を好む」と暴言を吐いている。これこそ「戦争は平和、奴隷は自由、無知は力」である。フォン・デア・ライエン女史は明らかに二枚舌だ。なぜなら、彼女は「強者の支配」という考え方や、自己決定の尊重の代わりに脅迫を好むのはロシアや中国だとしているが、実際には、NATOによるそのような価値観の強制を支えているのは、まさに彼女自身のEUだからだ。

 一方、ヴォロディミル・ゼレンスキーは、諺にもあるように、顔に卵をつけられたような状態になった。米国とその同盟国によってウサギの穴に導かれたゼレンスキー氏は、誰もウクライナと一緒に戦ってくれないのか、と自問自答している。この記事を書いている今、8年間の戦争の後に、ロシアはウクライナのファシストを無力化し、ドネツクとルハンスクの独立した領土がウクライナのネオ・ファシストから解放されることが順調に進んでいる。

 愚かな政治家ジョー・バイデンとボリス・ジョンソンがウクライナの情勢を深刻化させたことにより、ロシアと中国の関係は強化になり、アングロ・サクソン帝国の崩壊をさらに進めることにしかならなかった。そしてプーチンとロシア連邦は、これらの帝国主義者がいじめっ子、偽善者、犯罪者であることを暴露したのだ。

 世界政治の厳しい現実に直面せざるを得ないわれわれは、常に矛盾に陥る。どのような矛盾に直面しても、私たちは毛沢東の有名な矛盾の正しい処理に関する指針、すなわち一次的矛盾と二次的矛盾の重要な違いを認識することに留意しなければならない。一次的矛盾とは、西洋アングロ・サクソン帝国主義と地球支配、そしてその覇権を拒否する国々との間の矛盾である。アングロ・サクソンの覇権と地球支配を消滅させるための戦いは熱を帯びている。私たち一人一人に問われているのは、私たちが歴史のどの側にいるのか、ということである。


ジェラルド・A・ペレイラ 作家、教育者、神学者、政治活動家。彼はガイアナを拠点とする「人民勝利のための組織(OVP)」の議長であり、「カリブ海・汎アフリカ・ネットワーク(CPAN)」の執行メンバーである。彼は長年リビアに住んでおり、リビアのトリポリに本拠を置く「ワールド・マタバ」の創立メンバーでした。連絡先は、mojadi94@gmail.com。


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嘘で固められた帝国

嘘で固められた帝国

<記事原文>

The Empire of Lies

ブログ Paul Craig Roberts

2022年3月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月6日

 3月になったので、私が年に4度呼び掛けさせてもらっている寄付のお願いをさせてもらいたい。このサイトは読者の皆さんの月ごとの寄付金で運営されている。年に4度のペースで寄付をくださっている読者の皆さんも、人類において絶滅危惧種になっている真実を伝える当サイトへのご支援をお願いしたい。覚えておいていただきたいのは、真実は当たり前に手に入るものではないということだ。西側世界においては、真実はほぼ存在しない。

 ここ2年間私たちが目にしてきたのは、西側諸国の人々はこれまでの歴史上のどの人々よりも、酷い破壊への道に導かれているということだ。人々が騙されているのは、完全にでっち上げの「COVIDパンデミック」だ。確かにウイルスは実在する。「パンデミック」の方がでっち上げなのだ。その手口は、偽陽性を出す確率が97%のPCR検査を使うやり方だ。その理由のせいでこの検査は既に使用を止められている。 COVIDの症例数の大部分がこの偽の陽性結果に基づいたおとぎ話だ。死者数も操作されてきた。どんな死でもCOVIDが死因であると報告すれば、病院に多額のカネが入る仕組みだった。そうやってでっち上げられた症例数や死者数を使って恐怖が増幅され、得体の知れないワクチンを接種させられてきたのだ。分かってきたことは、きちんと臨床試験が行われていないこの「ワクチン」 の方が、COVIDそのものよりも「ワクチン」を接種した人々の体内に悪い作用を与え、亡くなったり障害を受ける確率が高くなっていることだ。この「ワクチン」による長期的に見た死亡率がどのくらいになるのかは、まだ分からないままだ。

 ワクチンとそれ以外のCOVID対処法はどれもみな害を与えるだけで、良いことは何もない。マスクは病気を防ぐどころか病気の原因になる。ロックダウン措置は生産業を阻害し、仕事や事業や供給網をなくし、今の物価の急騰の原因になっている。

 過剰な自尊心にまみれた西側世界は、自分たちは「例外」だと考え、世界覇権の権利を与えられたと宣言し、ロシアからの相互安全保障同盟の申し出に聞く耳を持たなかった。 米国大統領や、米国務長官やNATOの事務総長の任についているこれらの愚者たちは、ロシアの主張するレッド・ラインを無視し、ロシア国境に軍事基地を設置し続けることを宣言している。

 私が「愚者」という言葉を使うのは、本当の愚者に対してだ。起こってしまったら対処できない戦争を挑発するなど、愚の骨頂だ。

 制裁を使うという手もあるという人もいるだろう。しかし制裁で損をするのはドイツと欧州と米国だ。欧州での天然ガスの価格は爆発的に上昇している。原油価格はとんでもなく上がっている。食料品や天然資源(2つともロシアが主要輸出国だ)の価格も上がっている。つまり西側の愚かな「指導者たち」はロックダウン措置のせいで上がった物価を、制裁措置でさらに上げようとしているということだ。そしてロシアは制裁に対する反撃をまだ加えていない。ロシアが欧州への天然ガスの輸出を止めればどうなるか想像いただきたい。欧州は天然ガスの46%をロシアに依存している。 欧州のエネルギー会社の或る代表取締役によると、ロシアが天然ガスの供給をやめれば、EUはドイツを送電網から外さなければならなくなるだろうとのことだ。つまりドイツの産業界は完全にストップしてしまうということだ。愚かな西側が制裁措置を取れば、自分自身の足も膝小僧も最後には頭をも撃つことになってしまうということだ。  

 周りを見渡せばあちこちからロシアに対するばかげた威嚇の声が聞こえる。デンマークの御用メディアや、米国のおバカな司会者ショーン・ハニティ(Sean Hannity)やリンゼイ・グラハム(Lindsey Graham)共和党上院議員などからの声だ。彼らはプーチン大統領の暗殺を叫んでいる。それなのにSNSから追放されはしない。こういうことだ。「多様な性を尊重せず、heやsheを使えばSNSから追放される危険が高まるが、プーチンの暗殺のことを書いても問題はなく、逆に賞賛の対象となる。」

 ディビッド・スワンソン(David Swanson)とかいう馬鹿者が何千もの欧州市民に呼びかけているのは、「平和使節」になり、ウクライナの戦線に入り込むということだ。この低脳の持ち主は、1212年の「少年十字軍」の過ちを繰り返したいのだろうか?この少年十字軍は、キリストからフランス王に宛てた手紙を授かったと称したフランスのクロイエ出身のステファンが3万人の子どもたちを率いた末、サラセン帝国の手に落ちたという事件だ。愚かなスワンソンは、その千年後に同じ過ちを繰り返したいのだろうか。

 それ以外で西側の愚か者たちが言っているのは、プーチンを捕らえて戦争犯罪の罪で、オランダハーグの国際司法裁判所に訴えようというものだ。もちろんそんなことができるのは、ウクライナがロシアを打ち負かすことが前提だ。こんなとんでもないことがあるだろうか。西側がロシアの戦争犯罪について訴えるなどありえない。米国と欧州が、セルビア、アフガニスタン、パキスタン、イラク、リビア、ソマリア、シリアで犯した大規模な戦争犯罪は棚にでも置こうというのか。  西側諸国の急速な没落が続くのであれば、ロシアが法廷にジョージ・W・ブッシュ、ディック・チェニー、コンディ・ライスなどの全ての米国シオニストネオコンたちや、米国の戦争犯罪を支えた英国や欧州諸国の多くの人々(例を上げればトニー・ブレア)を訴えることになるだろうに。   

 西側がロシアに対して非難を浴びせかけている姿を見れば、西側世界の無能さと、政策の的外れさが分かる。このような馬鹿げた非難の中でも特筆すべきは以下の攻撃だ。ジョー・ローリア(Joe Lauria)がコンソーティアム・ニュースに書いた記事が冗談でないのなら、国際猫連盟が行った攻撃ほど頭のおかしな警告はないだろう。この連盟はロシアを屈服させようと、ロシアで育てられた猫の輸入を完全に禁止したのだ。「ロシアのどの協会が認定した飼育に関わらず」だとのことだ。

https://consortiumnews.com/2022/03/03/ban-on-russian-cats/ 

 この猫連盟によると、今回のウクライナ侵攻には、「非常な衝撃を受け、恐れおののいた」とし、「ロシア連邦軍がウクライナ共和国に侵攻し、戦争が開始されました。多くの罪のない人々が亡くなり、もっと多くの人々が負傷しました。何十万ものウクライナ国民が命を守るために家を捨てなければならなくなっています。私たちが目にしているのはこれまでにない酷い侵略行為により引き起こされた破壊と混乱です」とのことだ。

 なんという信じられないことだろう。この8年間、ウクライナはドンバス在住の何千ものロシア人たちを爆撃死させ、もっと多くの人々を負傷させてきたというのに。そのことについては、国際猫連盟から何の非難の声も上がらなかった。ウクライナによるドンバス在住ロシア人たちに対する重火器爆撃でドンバスの猫たちの体がバラバラにされてもお構いなしだったのに。某所から資金を得ているCIAお抱えメディアであるニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、NPR、CNN、MSNBC、BBCなどの西側おバカメディアからも批判の声は全く上がっていなかったのに。

 この国際猫連盟による禁止措置にはどんな意味があるというのか?法的拘束力などないし、できることなどないのだから。本当にこのジョー・ローリアの記事は冗談ではないのだろうか?

 この措置で止められるのは、米国民やカナダ国民や欧州諸国の人々がロシアからロシアンブルー猫を買うことだけで、米国やカナダや欧州の飼育家からは今まで通りロシアンブルー猫を買える。

 この国際猫連盟の動きこそ西側諸国の無能さを象徴するものだ。旧約聖書に出てくる、神に滅ばされた町ソドムとゴモラのように、西洋諸国は奈落の底への階段を急落している。米国ネオコンの口ぶりを使えば、「ロシアにNATO加盟国をいくつか選ばれて、壁に押し込まれて、『強いのは誰だ』と凄まれたなら、そんなロシアになにか出来る国など存在しない」ということだ。   

 確かにロシアの軍備力は凄いが、ロシア政府はその有利さを無駄にしてしまっている。最近行った演説の中でプーチンは、グローバル社会に加担する意志を示した。報道によると、プーチンは世界経済フォーラムの指導者育成コースに参加していたとのことだ。プーチンは毎年ダボス会議に顔を出し、演説している。 恐らくプーチンは気づいていないのだろうが、ロシアの国家主権はグローバリズムとは相容れない。共存することは不可能なのだ。世界経済フォーラムのトップのクラウス・シュワブは完全なナチだ。となれば、プーチンは世界経済フォーラムのナチは好きなのに、ウクライナのナチは好きでないという矛盾が生じる。 

 私が思うに、ロシア政府はまだまだ学ぶべきことがある。ロシアの考え方は間違っている。共産主義的イデオロギーを使って西側諸国と相対するやり方はもうやめたということを伝えれば、皆が仲良くなれると思っている。ロシアが見落としているのは、米国政府と仲良くなるというのは、米国政府の傀儡国家になるということだ。プーチンはロシアが米国の傀儡国家になることは望んでいなかった。その決意を示したのが、2007年のミュンヘン安全保障会議だった。 米国政府はプーチンにジョージアの南オセチア侵攻という報酬を与えた。この侵攻がロシアの侵略であるという言説が確立してしまったのは、プーチンが北京五輪から帰国した時だった。それからプーチンはジョージアを制圧し、ジョージアに国家主権を復権させ、軍を引き上げた。ロシアが軍を引き上げたのにも関わらず、西側はプーチンが米国が解体したソ連の再建をしようとしているという言説をでっち上げた。

 プーチンは米国の傀儡政権になることに抵抗し続けたので、米国政府はウクライナの政権を転覆させ、傀儡政権の設置に成功した。しかしその新政権はバンデラ・ナチ勢力を抑え込めず、その勢力は急速に民兵隊を組織し、ウクライナ在住のロシア人たちにテロ行為を行い始めた。そのことで、クリミアと、ドンバス地区の2つの共和国で住民投票が行われ、もともとの国であったロシアへの帰属を決めた。 プーチンがクリミアを取り戻したのは、ロシアが所有する黒海の海軍基地を守るためであったが、プーチンはドンバスのロシア人たちを救うことは拒否し、その結果8年間の戦争に耐えなければならなかった。 そしてついにこの戦争を止めるために、西側と、ウクライナの傀儡政権がロシアの要求に応じなかったことを受け、ロシアは外交努力では解決できなかった問題を兵を送ることで解決しようとしたのだ。

 西側はロシアと軍事的に戦うのではなく、告発と非難とを武器に戦うことを決めた。西側は言論戦では勝利できる。というのは西側はメディアを抑えているからだ。

 米国に残存する数少ない知識人のひとりクレーズ・リン(Claes Ryn)は、イタリアのヒューマニタス大学で、人間の行動が理性や合理的な考えのもとに起こされることは以下の要因よりも少ないと書いている。すなわち、「憎しみや怒りや自由奔放さや厳しい絶望感や果てしない野望などその時の感情の爆発によるものだ」と。今の核兵器の世界では、この言葉には深い説得力がある。

 最近、米国に残存している数少ない真の記者のひとりグレン・グリンウォルド(Glenn Greenwald)も同じことを主張する記事を書いている。その記事は最近私がブログで取り上げた。言い換えれば、私たちが直面している現実においては、破壊兵器を持つことが合理性を保つ手段になっているということだ。というのも、西側世界においては、理性が死に絶えつつあるからだ。

 こんにち西側の大学、特に米・英の大学においては、理性とは「白人の人権差別主義者が構築したもの」であり、「有色人種たち」、すなわち非白人たちを抑圧するために使用されるものだとされている。理性が他人種抑圧の道具としか見なされないのであれば、理性が人間の行動を規制する機能をはたせることになる訳がない。人種差別を想起させるものと捉えられ、理性は排除される。COVIDやロシアの安全保障の件に関する西側の対応に、理性があるかを見るだけでいい。理性の欠片もない。

 今の西側は理性が存在しない世界だ。今ははるか昔の世界、魔女など他の存在が理性を追いやっていた時代に戻ってしまった。西側では理性ははるか遠くに消え去っているからこそ、国際猫連盟が、ロシアに罰を与えるには、西側の人々がロシア原産猫の飼育を禁止すればいい!などと考えるのだ。

 つまり、今の崩壊しつつある文明社会が理性でものごとを考えられない段階にまで成り下がっているということだ。

  この先どうすればいいだろうか?

 恐れおののいている西側のリベラル派や進歩派や左翼が、ロシア人を防御しようとしているロシアの行為を重大な罪であると見ている一方で、盲目的な怒りの旗を振り続けている保守派たち(ハニティやリンゼイなど)の姿も目にする。彼らはロシア大統領の暗殺を求めている。

 プーチンは気づくべきだ。自身の暗殺を可能にするのは、プーチンがロシア政府内の親米一派や米国が資金を出しているロシアメディアやNGO組織を放置していることが原因なのだ。これらの勢力がロシアの政権転覆の動きに荷担しているのだ。明らかにプーチンは自分が民主主義に与していることを証明しようとしているのだが、そうすれば西側から資金を得ている勢力が自由に工作する余地を与え、ロシアの弱体化、さらにはプーチン自身が暗殺されることになってしまうことに注意を払うべきだ。

 ロシアには西側諸国の一員になりたいという欲求がある。しかしそれは現実からかけ離れた欲求だ。ロシアが直面している勢力の不合理さについてもう少し理解しない限り、ロシアの選択肢は以下の二つだけになってしまうだろう。核戦争を選ぶか、米国の新たな傀儡国家になるか、だ。

 

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ウクライナ情勢 続報4

ウクライナ情勢 続報4

<記事原文>Ukraine Update #4

ブログ Paul Craig Roberts

2022年3月3日

<記事翻訳>寺島メソッド翻訳グループ

2022年3月5日

 ウクライナで何が起こっているかについて正確な説明を行うことはやっかいなことだ。西側メディアの情報はまったく当てにならない。嘘のニュースしか伝えないからだ。ロシアの残虐行為や、ロシアによる死傷者や、ロシアが負けていることや、西側諸国の指導者たちからの終わることのない全く意味のない警告など、偽ニュースばかりが報じられている。ウクライナの報道記事は、米国が侵攻中だった頃のイラクの記事よりも馬鹿げた内容になっている。さらに、ウクライナの諸都市や、ウクライナ軍の残存勢力が包囲され、捕えられている中、ウクライナの国内メディアは締め出されて、ニュースを提供できる状態にはない。米国とは違い、ロシアはテレビで自国の戦争状況を伝えず、多くは報じない。欧州諸国の政府はRTやスプートニクが伝えるその乏しいニュースさえ禁じている。ロシア国防省は、ウクライナ軍を包囲する際に498名のロシア兵の命が犠牲になったことを発表しなかった。私の考えだが、この兵たちが死んだのは、ロシア政府が使用可能な軍事力の使用を軍に対して制限したせいだ。ロシア政府は敵を殺さずに戦争に勝つことを望んでいる。

 御用メディアは、ウクライナ救出のために派遣された雇われ兵士たちと戦闘機のことを報じているが、これらの記事はすべて全く意味のないものだ。ボランティア兵士たちがロシアの戦闘部隊と相対することなどできるわけがない。さらに、ウクライナの空路と領空はロシアに抑えられているので、外国からのそのような兵や武器は包囲されているウクライナには届かず、輸送の段階で破壊されるだろう。

 ロシアが迅速に勝利を収めれば、世界にとっては戦争を早く終わらせることになるだろう。うかうかしていたら西側の頭の悪い数カ国が戦争を拡大する失態を犯しかねない。さらにロシアが迅速に勝利を収めれば、西側諸国の政府が馬鹿者のそしりを受けたり、意味のない非難を受けたり、無意味な脅しを掛けたりしなくてすむだろうに。

 アレクサンドル・グルシコ(Александр Грушко)ロシア外相代理はこの紛争を終わらせるための最大限の軍事力行使の遅延がもたらす危険について理解している。軍事力行使が遅れれば愚かなNATO加盟諸国にウクライナに対する救援隊を準備する時間を与えることになる。グルシコはそのような不合理な考え方は戦争の拡大を招くと語っている。さらに「衝突が起こらないという保証がなくなり、完全に不必要な方向に事態が悪化することも否定できない」とも語っている。

 ロシアが迅速に勝利すれば、西側諸国の愚かな介入を阻み、優柔不断さを消し去り、皆にはっきりとロシアの意図を伝えることができる。その意図とは、ロシアが「我が国の玄関前から立ち去れと警告したのだから、そこに足を踏みいれるな!」という意図だ。このさき世界平和を維持し、核戦争を回避するには、ロシアに足を踏み入れるというゲームはもう終わっていることを愚かな西側諸国が理解しないといけない。今回のウクライナ侵攻の最も重要な機能は、欧州諸国が今回のことを教訓とすることだ。ウクライナのナチ化を止めることではない。もちろんそれも大事なことだが。

 戦争を迅速に終わらせることを阻止している最も大きな要因は、ロシアのラブロフ外相やロシア政府が軍事力の行使を最小限に抑えていることだ。ラブロフ外相はロシア政府の優柔不断な態度を見せなくすることができないまま交渉を求め、ウクライナにロシアの要求は最小限のものであることを約束し、ロシアはウクライナや欧州全体の安全を保証することを再確認するという態度を示している。そして、優柔不断だと取れる態度を示した後で、ラブロフ外相はこうこぼしている。「また、ウクライナとウクライナの保護国は言い訳を見つけて交渉を延期しようとしている」と。誰かラブロフ外相に伝えるべきだ。「交渉を求めるのは勝者ではなく、敗者の方だ」と。何度も言っているように、ロシアが学ぶべきなのは、口を動かすのではなく、迅速な行動で示すことだ。そうしなければ、ロシアのウクライナ侵攻はただの無駄な努力となり、ロシアが決めたレッドラインの本気度をきちんと伝えることができないまま終わってしまうだろう。

 

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米帝国は世界を灰にしてから支配する

米帝国は世界を灰にしてから支配する
<記事原文 寺島先生推薦>
Ruling over the Ashes

Strategic Culture 2022年2月20日
イーモン・マッキニー(Eamon McKinney)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月10日

 「銃を手にした白人たちが善良な意思の告白とともに現れたとき、アジアの苦難が始まる」。これがアジアの歴史だ。


 アジア太平洋地域が最近脚光を浴びている。そこに映し出されているほとんどは、あからさまに中国や、中国のめざましい台頭に害を与えようとする企てである。オバマの「アジア基軸戦略」を覚えておいでだろうか?「中国が近隣諸国に脅威を与えている」という主張が支配的だ。しかし当地域の住民たちから「中国から脅威を与えられている」という感情を耳にすることはほとんどない。反中国論を駆使して常に攻撃を加えようとしている西側諸国の理解では、「アジア諸国は中国を恐れていて、西側諸国から保護してもらうことを歓迎している」となる。本当にそうなのだろうか?以下論述する。

 この考え方を理解するためには、不都合な歴史の振り返りを行わなければならない。タイを例外として、すべての東南アジア諸国は西側植民地主義の餌食となってきた。具体的には、ベトナム、台湾、香港、マレーシア、インドネシア、そして中国だ。これらの国々はすべて西側による抑圧に大きく苦しまされてきた。フィリピンや韓国や日本には、いまでも米軍基地が置かれていて、その結果これら3国は米国の事実上の属国扱いだ。しかしこれら3国の圧倒的多数の人々は、そのような状況に怒りを表明しており、その証拠として反帝国主義運動デモが数え切れないほど起こっているのだが、少数派である各国政府の支配層によりこれらのデモはすべて無視されている。「銃を手にした白人たちが善良な意思の告白とともに現れたとき、アジアの苦難が始まる」。これがアジアの歴史だ。

 このような状況が今日まで400年以上も続けられている。西側の言い分はアジアでは聞き流されている。それは、これまでアジア諸国と西側の間で交わされてきた約束が反故にされ続けてきたからだ。アジア諸国が分かっていることは、西側はアジア諸国と自分たちと平等に扱う気はないという事実だ。そして今、アジア諸国に見えているのは、西側帝国主義の利益に奉仕するために、再び苦しみを味わされようとしていることだ。

 ここ40年間この地域は、平和で、安定し、繁栄した時代を享受してきた。これは長いアジアの歴史の中でなかったことだ。より正確な言い方をすれば、この地域内には歴史的に見て大きな敵意をもつ国同士が存在する。日韓間や日中間などにおいては、衝突してきた悲劇的な歴史がある。そのような国々の間には愛情は薄く、憎しみの感情のほうが強く残っている。南シナ海に関しては、係争中の領土問題が残されていて、多くの国々が丁々発止の主張のやりとりを続けている。現在の地図上に引かれた海上の国境線について議論が行われており、納得している国はひとつもない。実は、これらの国境線を引いたのは西側であり、第1次世界大戦後のことだった。しかもアジアのどの国もその議論に参加させないまま決めてしまったのだ。その国境線は西側帝国主義諸国の利害をもとに決められたもので、アジア諸国の利害をもとにしたものではなかった。アジア諸国のやり方に従えば、これらの国境問題は外交により解決するものであり、戦争で解決しようとする国などない。すべての国々はその地域での航海の自由を享受しており、西側が主張しているような大問題にはなっていない。

 大統領職に就いてすぐに、トランプは北朝鮮に標的を定めた。北朝鮮は米国にとって何の脅威にもなっていなかったにも関わらず、トランプが長らく放置されてきた問題に手をつけてしまったことで、その地域が大きく不安定化する原因を作ってしまった。想定内のことだったが、韓国は特に警戒させられたが、この平和な国の大多数の国民の常識的な見方は「トランプは口を閉じて、自分の国のことだけ見ておいてくれないか」というものだった。同様に台湾でも、市民の大多数が受け入れているのは、「中国は平和的な再統合を望んでいる。ここ70年以上の中国の動きを見ればわかる」という考え方だ。度重なる挑発にも乗らずに、中国はこの問題には冷静な立場を維持しており、米国の横やりがなければ、そのうち台湾問題は自然と平和裡に解決するだろう。

 日本は長年米国の中国侵略の拠点にされていることをよくは思ってこなかった。確かに日本の人々は中国に対して友好的ではないが、だからといって中国はここ70年間、日本に核爆弾を投下したり、日本を占領したり、日本を下等国扱いしたりすることは全くなかった。日本国民は、憎たらしい米国のためにこれ以上苦しむことは望んでいない。 近年日中両国は、有意義な二国間首脳会議を持ち、米国が吹っかけてくる言説を覆そうとしている。アジア独自のやり方を用いれば、敵対心によりこじれている諸国感の乖離を解決できるだろう。 皆にとって明白なのは、米国が、中国に害を与えるために犠牲を強いる準備をしているということだ。そして米国が犠牲を強いるのは、当地域の全てのいわゆる「友好諸国」であり、その犠牲のもと中国の台頭を阻止しようとしているのだ。

 このアジアの現状と同様の動きが今欧州でも見られている。それがでっち挙げられたウクライナ危機だ。欧州諸国が重々承知しているのは、欧州が平和や安定を享受することが、米国の覇権にとっては脅威になると米国が見ていることだ。ドイツがロシアの天然ガスを本当に必要としているので、ノルド・ストリームに巨額を投資してきたのに、米国はロシアの天然ガスを買わさずに、欧州の人々が凍えているのを見るつもりのようだ。米国がウクライナに対して行っているむき出しの侵略のせいで、ロシアは欧州戦線に引きずり出されようとしている。しかし賢明にもロシアはその挑発には乗っていない。これは台湾を使った挑発に中国が乗らないのと同じことだ。米国にとっての最悪の展開は、欧州がロシアを平和理に国家間の連合の中に組み込んでしまい、双方にとって経済的利益が得られる関係を作ってしまうことだ。 ロシアという巨大な悪党がいなくなれば、NATOの存在意義もなくなり、米軍を引き入れる理由もなくなり、欧州内の全ての米軍基地の撤退を余儀なくされるだろう。ロシアや中国とのどんな戦争も世界にとって想像もできない惨劇をもたらすことになるだろう。そしてハッキリとしているのは、紛争を求めている国など米国以外にはないだろうという事実だ。ドイツやフランスはNATOとは離れた所から、ロシアとの平和を模索しようと努力し続けている。NATO派閥が、米国が欧州に持っている唯一の同盟国であって、この超国家派閥は、どの国民国家の利益の代表者にはなっていない。崩壊しつつある米帝国は息たえだえで、国内においては社会的にも経済的にもボロボロになっている。従って、いかなる戦争も崩壊の目くらましの道具に使うつもりだ。今はっきりとわかるのは、米帝国は世界を戦いの火の中に落とそうとしていることだ。その灰の上でしか世界支配ができなくなっているのだ。
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プーチン、アメリカの仕掛けた戦争の罠から巧みに逃れる

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政治的にアメリカとウクライナの面目をつぶす
<記事原文 寺島先生推薦>
Putin Deftly Eludes the US-laid War Trap
Egg on American and Ukrainian Political Faces


2022年2月23日
Global Research
キム・ピーターセン(Kim Petersen)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月3日


***
 戦争に行き、高価な戦争機械やミサイルを使うことは、人の気持ちを惹きつけたり、倒錯的な高揚感をもたらしたりすることもありうる。しかし、戦争は人の死や壊滅的な結果をもたらすのだから、「戦争もひとつのゲーム」などのような言い方で軽くみてはならない。ロシアのウラジミール・プーチン(Vladimir Putin)大統領による最新の政治作戦は、アメリカの戦争の罠を回避するための、ゲーム流れを変える見事な一手であった。ウクライナを取り巻く緊張の高まりの中で、ロシアはあらゆる段階で、攻撃の手ぐすねを引くアメリカを何度も阻止してきた。このことを理解するためには、時系列を少し過去に遡ってみる必要がある。

 1990年2月9日 - アメリカのジェームズ・ベーカー(James Baker)国務長官は、ソ連のミハエル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)大統領に対し、ドイツ統一を認める代わりにNATOを「1インチたりとも東進させない」と約束した。

 1999年 - チェコ共和国、ハンガリー、ポーランドがNATOに加盟し、消滅したソビエト連邦に数インチ近づいた。

 2004年 - ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニアがNATOに加盟。

 2009年 - アルバニアとクロアチアがNATOに加盟。

 2014年2月 - アメリカの支援を受けたウクライナのクーデターで親ナチ政権が成立。

 2014年3月 - クリミア人が住民投票でウクライナから離脱し、ロシアの一部となることを圧倒的多数で決定。

 2014年9月 - ウクライナ、ロシア、欧州安全保障協力機構(OSCE)が即時停戦、重火器の撤退、囚人交換を求める「ミンスクI協定」に調印する。

 2015年2月 ミンスクⅡ合意により、停戦、武器の撤退、OSCEによる停戦監視、ドネツクおよびルハンスク人民共和国のウクライナにおける将来の地位に関する地方選挙の実施が改めて要請される。ミンスクⅡをめぐっては、解釈の違いから大きな不一致が生じている。

 2017年 – モンテネグロがNATOに加盟。

 2020年 北マケドニアがNATOに加盟。東進の様相を呈しているのは明らか。ウクライナもNATO加盟を模索している。

 2021年11月18日 – ロシア、「(これ以上の東進は許さないという)レッド・ライン」を繰り返し語る

 2021年12月14日 – ロシア、安全保障についての懸念を提案の形でアメリカに表明

 2022年1月16日 プーチンは、ウクライナのNATO加盟を、ロシアの安全保障を侵害するロシアとNATOの関係におけるレッド・ラインと認定する。米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は、ロシアの安全保障上の懸念を一蹴した。「これは明々白々たること---NATOの門戸は開かれており、今後も開かれたままである。そのことははっきりと申し上げておく。」

 2022年1月26日 – ロシア、アメリカより安全保障に関してロシアが提案したことに対する回答文書で受け取る。ロシアが喜ぶ内容ではないだろう。

 2022年2月16日 - 国家安全保障顧問のジェイク・サリバン(Jake Sullivan)によると、信頼できる米国の諜報機関の情報に基づくと、この日2月16日が、ロシアがウクライナに侵攻する日であった。この日は何の侵攻もなく過ぎ去った。

 2022年2月17日 - ロシア、ウクライナと欧州の安全保障に関する米国とNATOの提案に回答。

 ロシアがドネツク、ルハンスク両人民共和国の独立を認めるに至るまで、多くの挑発行為があった。その中には、NATOの拡大、ロシアの安全保障上の懸念を真剣に受け止めなかったこと、ウクライナの武装化、西側独占メディアを通じたロシアの悪者化などがある。そして、ウクライナからドンバスへの砲撃により、ドンバスの市民がロシアに避難する事態となった。

 それは明らかにウクライナの無謀な行為だ。もしウクライナがミンスク合意を守っていれば、ドネツクとルハンスクは自治権を持ちながらも今でもウクライナの一部だろう。国の中に自治区があるのは珍しいことではない。中国では広西チワン族自治区、内蒙古自治区、寧夏自治区、チベット自治区、新疆ウイグル自治区がある。ロシアにも1つの自治区域と10の自治区がある。それにもかかわらず、戦争と火遊びの誘惑に駆られながら、ウクライナは少しずつ及び腰になっている。

 ロシアはというと、囮につられてウクライナに侵攻したわけではない。代わりにドンバスに平和維持軍を送り込んでいる。ウクライナが最新鋭の強力なロシア軍を攻撃する可能性は極めて低いと思われる。

 つまり、ジョー・バイデンは「ロシアの侵略」の予測が外れたわけだ。バイデンを支える立案者たちはまたもや失敗したことになる。バイデンはアフガニスタンから米軍を撤退させるという正しい判断を下したが、その撤退はひどく失敗し、ベトナムで米軍が屋上から尻尾を巻いて脱出した記憶を呼び起こさせることになった。そして、アフガニスタンからの撤退の大失敗をさらに悪化させるために、バイデンは哀れなアフガニスタン国民のお金を盗むという恥知らずで無慈悲なことをしたのである。彼は、公然とシリアの石油を盗んだ前任者ドナルド・トランプの足跡をたどっている--この盗みはバイデン政権の下でも続いている。

 一方、ウクライナや離脱共和国周辺の情勢は、今後もいろいろな変化があるだろう。より健全な頭脳によって緊張が緩和され、戦争が回避されることが期待される。

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クラウス・シュワブの世界経済フォーラムには「COVID独裁者のための学校」が存在。授業内容は「グレートリセットに向けた計画」

クラウス・シュワブの世界経済フォーラムには「COVID独裁者のための学校」が存在。授業内容は「グレートリセットに向けた計画」

<記事原文 寺島先生推薦>

Klaus Schwab’s WEF “School for Covid Dictators”, a Plan for the “Great Reset”

Global Research 2022年2月13日

マイケル・ロード(Michael Lord)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月3日


 この記事の初出は2021年12月18日

 経済学者のアーンスト・ヴォルフ(Ernst Wolff)の考えによれば、政治や企業の指導者たちの或る秘密の同盟により、このパンデミックが利用されて、各国経済の破壊と、それに伴う世界規模でのデジタル貨幣の導入が目論まれている、とのことだ。

 世界190以上の国々がCOVID-19のパンデミックに対して、ほとんど同じような対策を取っている。具体的には、ロックダウンであり、マスクの強制であり、ワクチンカードといった政策だ。それが世界各地で当たり前のことにされつつある。その秘密の同盟は、どのような手口で、そのようなことを可能にしているのだろうか?

 その答えは、青年世界リーダー学校(Young Global Leaders school)にあるのかもしれない。この学校は世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ(Klaus Schwab)が創設し、運営しているものだ。そして今日の政界や、企業の著名な指導者たちが、この学校を卒業した後、権力の頂点に駆け上がっている。

 ドイツの経済学者で、記者で、作家のアーンスト・ヴォルフは、シュワブの「世界青年リーダー学校」についてのいくつかの事実を明らかにしている。「ドイツコロナ対策委員会」がポドキャスト上で出した動画内で確認できるこれらの事実により、パンデミック中の世界の出来事の関連性が理解できる。ヴォルフは世界の金融システムの批判者の一人としてよく知られているが、最近ヴォルフが力を入れているのが、彼の視点から見た、世界中で講じられている対COVID措置の裏側に隠された企みに光をあてることだ。

謎に満ちた始まり


 この学校の話は、世界経済フォーラムの話から始まる。この団体はクラウス・シュワブが立ち上げたNGOだ。シュワブはドイツの経済学者で機械技師でもある。彼が世界経済フォーラムをスイスで立ち上げたのは1971年のことで、当時まだシュワブは32才だった。

 世界経済フォーラムについて世間から最も知られているのは、毎年1月にスイスのダボスで開催される年次会議だ。この会議の目的は、世界中の政界や産業界の指導者たちが一堂に会し、現在の課題について話し合うことだ。今日、この会議は世界の権力者層の最も重要な情報網のひとつとされており、約1000社の多国籍企業から資金提供を受けている。

 世界経済フォーラムは1987年までは欧州運営フォーラムと呼ばれていたが、1971年2月の第1回の会議で、すでに世界31カ国から440名の重役を招くことに成功していた。ヴォルフが指摘しているとおり、シュワブのような人物がそんなことを成し遂げたのは予想もできないことだった。この第1回の会議まで、シュワブは国際的な経験も、教授としての経験もほとんどなかった。


 ヴォルフはその理由は、シュワブが大学時代にとある人物と授業で接点があったからではないか、としている。その人物は他でもない元国家安全保障問題担当大統領補佐官および国務長官であったヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)だ。さらにヴォルフが指摘していたのは、シュワブが大学在学中に、ハーバード・ビジネス・スクールが自学独自の運営フォーラムを立ち上げる計画を持っていて、同学が最終的にシュワブにそのフォーラムを組織する任務を課したのではないか、ということだった。

 当初このフォーラムが招集していたのは、経済界の人々だけであったが、しばらくすると政治家や、メディア界の著名人(BBCやCNNの人々)や、セレブまでが集まるようになった。

シュワブの青年世界リーダー学校は、「グレートリセット」の保育器だったのか?



 1992年に、シュワブが世界経済フォーラムと並立する組織として立ち上げたのが、明日の世界リーダーたちのための学校(Global Leaders for Tomorrow school)だった。この学校が2004年に青年世界指導者学校として再創設された。

 この学校に入学するには入会検査を受けねばならず、その後も厳格な選考を突破しなければならない。

 1992年のこの学校の一期生には、後にリベラル派の重要な政治家となった人物が多数含まれていた。具体的には、アンジェラ・メルケル(Angela Merkel)や、ニコラス・サルコジ(Nicolas Sarkozy)や、ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)やトニー・ブレア(Tony Blair)だ。

 現在までにおよそ1300人の卒業生を出していて、卒業生の名簿には、後に各国の保健省のトップに上り詰めた人々も数名いる。

 その中に、ドイツの元厚生大臣と現職の厚生大臣が4名いる。2018年から連邦厚生大臣を務めているイェンス・シュパーン(Jens Spahn)と、2009年から2011年まで厚生大臣を務め、2014年にシュワブから任命され世界経済フォーラムの経営委員を務めているフィリップ・レスラー(Philipp Rösler)らだ。他にこの学校の名簿に載っている著名人を挙げると、ニュージーランドの首相のジャシンダ・アンダーン(Jacinda Ardern)がいる。同首相は厳格なロックダウン措置を採り、世界の医療当局者たちから賞賛を受けてきた人物だ。


 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)。仏大統領。2017年の青年世界リーダークラス出身。

 セバスチャン・クルズ(Sebastian Kurz)。つい最近までオーストリアの首相だった。

 ヴィクトル・オルバーン(Viktor Orbán)。ハンガリー首相。

 ジャン・クロード・ユンケル(Jean-Claude Juncker)。元ルクセンブルク首相で、欧州委員会委員長


 アンジェラ・メルケル(Angela Merkel)。1992年の明日の世界リーダークラス出身。

 アンナレーナ・ベアボック(Annalena Baerbock)。ドイツの緑の党の党首。今年の連邦選挙で緑の党として初の首相候補となり、現在もメルケルの次の首相の候補者の一人となっている。


 さらにはカリフォルニア州ギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事も名簿に載っている。2005年に入学生として選ばれた。ニューサムも元大統領候補者だ。

  さらに現職の米国運輸大臣のピート・ブティジェッジ(Peter Buttigieg)もそうだ。彼はつい最近の2019年に入学生として選ばれたばかりだ。

  ここ2年政権のポストを与えられたこれらすべての政治家たちはCOVID-19パンデミックに対して厳格な対策を進め、それに伴う各国政府の権力強化に貢献してきた。

 ただしこの学校の卒業生名簿に載っているは、政界のトップたちだけではない。



 民間業界の多くの指導者たちの名前も見つけることができる。具体的には、マイクロソフトのビル・ゲイツとアマゾンのジェフ・ベゾスは、1998年の明日の世界のリーダークラスの卒業生だ。英国バージングループのリチャード・ブランソン(Richard Branson)やクリントン財団のチェルシー・クリントン(Chelsea Clinton)もだ。

 繰り返すが、これらすべての人々はパンデミックに対する世界規模の対策措置を支持しており、多くの人々は、対策措置の結果利益を大幅に伸ばしている。

 ヴォルフは、世界経済フォーラムや世界リーダー学校の裏側にいる人々が、政界のリーダーを誰にするかの決定を行っていると考えている。しかしヴォルフが強調しているのは、シュワブ自身もそのような決定を行っている一人だろうが、彼はただの調整役にすぎないという点だ。さらにヴォルフが指摘しているのは、この学校の卒業生の中には欧米だけではなく、アジアやアフリカや南米などの人々もいるので、その影響は世界規模に波及しているという点だ。

 2012年、シュワブと世界経済フォーラムはもう一つの新たな協会を設立した。それが、世界形成者会議(Global Shapers Community)だ。この組織は、彼らが指導者としての素質があると認めた世界中の30才以下の人々を招集するものだ。

 今日までに、およそ1万人の参加者がこの会議に参加していて、400の都市で定例会を開いている。ヴォルフの考えでは、このような動きも、将来の政界の指導者たちが前もって選ばれ、入念に検査され、整備され、その過程を経た後、世界各国の政界でポストを得ている証拠になる、とのことだ。


 ヴォルフ(上の画像)が指摘したのは世界リーダー学校の卒業生のほとんどは、自分の履歴書にそのことを記載していないという事実だった。ヴォルフによると、その例は一例しか見つからなかったとのことだ。それはドイツの経済学者であるリチャード・ヴェルナー(Richard Werner)だ。ヴェルナーは現行の政治体制を批判していることで知られている。

 ヴォルフの推測によると、この学校は体制側を批判する人々を受け入れることもやぶさかではないようだ。例えば、卒業生の中にグレゴール・ハックマック(Gregor Hackmack)がいる。彼は署名サイトChange.orgのドイツの代表者をしている。彼は2010年にこの学校に在籍していた。ヴォルフの考えによると、この組織は自身の組織が公平で均整が取れていることを示すためにそのような批判者も受け入れているのではないかとのことだ。批判者層も統率内にあることを確認したい意図もあるだろう。

 世界リーダー学校の卒業生たちの共通点としてもう一つ言えることは、これらの卒業生のほとんどが、履歴書にほとんど記載がないことだ。記載のある内容といえば、彼らが権力者の座に駆け上がる以前に参加していた教育プログラムに参加したことくらいだ。この事実から、彼らがシュワブが関わっている複数の協会とコネができたことが窺える。そのコネこそが、卒業生たちが権力の座につけた決定的な要因だ。このことを最もはっきりと表しているのは、この学校の卒業生が公的に疑念を持たれるのは、前もって組織から伝えられていなかった問題に対するときだという事実だ。そのような問題に対しては、卒業生たちが答えを出そうと苦慮していることが明らかな証拠になる。ヴォルフの主張によれば、これらの卒業生たちは、彼らの後ろにいる影の支配者たちの代弁者の役割を果たすだけだとのことだ。そして卒業生たちが話をする話題は、影の支配者たちが人々に話し合って欲しいと願っている限られた問題についてだけだ、とのことだ。

シュワブ傘下のイエスマンたちが発動中

 COVID対策措置に対する不満の声が高まっている。そして、その措置を実行に移しているのは、現在各国の指導者層になっているこの学校の卒業生たちだ。ヴォルフの考えでは、これらの指導者たちが選ばれたのは、この組織の意思にのっとって、言われたことなら何でもやる人々だからだろうということだ。さらに、これらの指導者たちはわざと失敗するように指導者の座に据えられているとのことだ。そうなれば、その失敗を利用して、新しい世界政府の創設が正当化できるからだ。

 ヴォルフの記述によれば、独特な個性や、強力で、特異な観点をもった政治家たちが、近年ほとんど出てきていないとのことだ。そしてここ30年間の各国の指導者の特徴といえば、温和であり、指導者たちを上から操作しているグローバリストたちが示す方向に従順であることだとのことだ。このような兆候をはっきりと示しているのが、ほとんどの国々で採られているパンデミックの対策法だ。2年前にはまったく知らなかったウイルスなのに、政治家たちは突然「コロナは深刻な医療危機を引き起こす」と宣言し、人々を家に閉じ込めたり、事業を停止させたり、経済を完全に崩壊させたりしている。

 この学校が、どのような作用を引き起こしているのかを正確に見極めるのは難しいが、ヴォルフは何かをつかんでいるようだ。1年間の教育課程で数回開かれる授業の中には、それぞれのクラスのメンバーの会合が含まれている。例えば、10日間の「集中講義」がハーバード・ビジネス・スクールで開かれている。ヴォルフの考えでは、この級友たちとの会合を通して、より広範なつながりが形成され、卒業生たちは卒業後の経歴で頼ることのできる人々との関係を築いているのではないかとのことだ。

 今日、この学校の教育課程の中には、5年間という期間で不定期に授業が開催されるコースもある。その際、参加者たちの政治的、あるいは職業的経歴の開始と学校在籍期間がかぶる場合もある。つまり、これらの人々はダボス会議の常連になるということだ。例えばエマニュエル・マクロンやピート・プティジェッジは、ここ5年以内に生徒として選ばれているが、そうなると、自身の政治活動と並行して、青年世界リーダー学校関連の催しに常に参加できるということだ。さらに彼らはいまだにこの学校に籍をおいている可能性もある。

世界規模の「富と影響力」のつながり

 若者世界リーダー学校や、以前の明日の世界リーダー学校の卒業生たちは、自分たちの地位を非常に安定したものにすることができた。それは彼らがその学校に通ったことにより世界経済フォーラムがもつ各方面の関係者たちと繋がることができたからだ。現在の世界経済フォーラムの取締役員にはきら星のような著名人が並んでいる。例えば、元IMF(国際通貨基金)専務理事であり、現欧州中央銀行総裁のクリスティーナ・ラガルドだ。

 フォーブス誌の「世界で最も力のある100人の女性」の一人に選ばれたヨルダンのラーニア王妃や、ブラックロック社のラリー・フィンク(Larry Fink)会長もそうだ。ブラックロック社は世界最大の資産運用会社であり、年間約9兆ドルの資産を運用している。

 ヴォルフによるとこの学校の卒業生の関係をたどれば、卒業生たちが互いに頼りあってそれぞれの取り組みを行っていることがわかるとのことだ。そのような関係は世界リーダー学校に在籍した後もずっと続いているとのことだ。

 ヴォルフの考えによると、エリート大学の多くは、世界を世界経済フォーラムが決定した方向に向かわせる役割を負っているとのことだ。そしてそのようなエリート大学が政治や経済から離れたところで研究を行っているなどと考えるべきではないとのことだ。ヴォルフはハーバード・ビジネス・スクールを例に挙げている。それによると同学は毎年何百万ドルもの寄付金を集めている。ハーバード公的医療大学(Harvard School of Public Health)も同様だ。この大学は、香港生まれの億万長者ジェラルド・チャン(Gerald Chan)から3億5千万ドルの寄付を得たのち、学名がハーバード・T.H.チャン公的医療大学(Harvard T. H. Chan School of Public Health)に変更された。同じことがジョンズホプキンス公的医療大学(Johns Hopkins School of Public Health)にも当てはまる。同学はメディア界の大物マイケル・ブルームバーグ(Michael Bloomberg)から2018年に180億ドルの寄付を得たのち、学名がジョンズホプキンスブルームバーグ公的医療大学(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)に変わった。ヴォルフによると、世界経済フォーラムが持つ影響力は、世界リーダー学校や、世界形成者会議に対する影響力を遙かに凌ぐとのことだ。というのもダボスでの年次会議に参加する人々の数というのは、予想以上に多いからだ。ヴォルフが得た情報によると、毎年このイベントへの参加者を乗せた自家用機が約1500機ほど集まり、スイス各地の空港が満杯状態になるとのことだ。

巨大業界と政府の同盟関係

 ヴォルフは、世界経済フォーラムの活動の主な目的は、巨大産業界と各国政府の間でのより緊密な協力関係を調整することだと考えている。そしてその兆候がすでに起こっているのが見られるとのことだ。「コロナ対策委員会」のポドキャストのもう一人の出演者であるビビアン・フィシャー(Viviane Fischer)の指摘によると、英国に拠点を置くセルコ(Serco)社は英国政府に渡りを付け、世界中の刑務所ビジネスに手を出している。世界の製薬業界にも同じような動きが見られる。ヴォルフによると、例えば世界リーダー学校出身のビル・ゲイツは長年ファイザー社と提携しているが、このファイザー社は問題の多いCOVID用mRNAワクチンの主な製造者であり、今回のパンデミックが起こるずっと前から、ゲイツ財団のアフリカでの公的医療の取り組みを共同で行っていた。おそらく偶然ではないだろうが、ゲイツはロックダウン措置やCOVIDワクチン政策が採られ始めた当初からずっと熱心に推進している人物のひとりである。ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)誌の記事によると、ゲイツ財団は、ワクチン分配による「社会的利益」として2000億ドルほどの利益を、このパンデミックが起こる前にすでに得ていたとのことだ。今ならその利益にさらに上乗せできていることは、簡単に想像がつく。
 
 今やあちこちで蔓延しているデジタル技術も、支配者層たちが描いている世界像において重要な役割を果たしている。ヴォルフが特に取り上げたのはブラックロック社だ。この会社は世界リーダー学校出身のラリー・フィンクが所有者だ。現在フィンクは、世界各国の中央銀行の最も巨大な助言者として君臨しており、ここ30年以上の世界中の金融システムのデータを手にしているため、各国の中央銀行よりも、金融システムの動きについてずっと熟知している。 

 ヴォルフの考えでは、多くの国々の政府が今追求している政策の目的の一つは、中小企業の事業を破壊することだとしている。そうなれば米国や中国に拠点を置く多国籍企業が、世界各地で事業を独占できるからだ。特に、つい最近まで世界リーダー学校出身のジェフ・ベゾスが最高責任者だったアマゾン社はロックダウン措置のおかげで巨大な利益を手にしている。このロックダウン措置のせいで中流階級は壊滅的な被害を受けているのにである。

 ヴォルフは、この巨大企業による支配の最終目的は、デジタル貨幣の導入にあると見ている。ここ数ヶ月だけみても、中国の国際金融フォーラム(世界経済フォーラムと似たような組織だ)は、デジタル元の導入を提案している。そうなればディエム暗号通貨をもとにした仮想通貨網が、国際的に展開できることになる。面白いことに、このディエム暗号通貨は、マーク・ザッカーバーグ所有のフェイスブックが最初に発表したリブラ(Libra)という暗号通貨の後継通貨であり、これがドルや元が持つ力を超越し、中国や欧州諸国や米国の事業網で使用される新しい世界通貨として、議論のまな板に載せられている。この中国の国際金融フォーラムの監視委員会に名前が挙がっているのが、世界経済フォーラムのクリスティーヌ・ラガード、元欧州中央銀行総裁ジャン・クロード・トルシェ(Jean-Claude Trichet)、元IMF専務理事ホルスト・ケーラー(Horst Köhler)だ。

 さらにヴォルフの説明によると、ここ2年間行われたロックダウン措置とそれに伴う救済措置のために、各国は破産の危機に瀕しているとのことだ。経済崩壊を避けるために、各国政府が当てにしているのは、6500億ドル相当の特別引出権(SDRs)だ。これはIMFが運用している補完的な外貨準備資産だ。このSDRが実際に請求された場合、請求した国々は苦境に追いやられることになり、デジタル貨幣導入が急激に推し進められる理由にされるかもしれない。そのような状況こそが、ロックダウン措置の隠れた目的だったのかもしれない。

 ヴォルフによると、欧州の2カ国はすでにデジタル貨幣の利用開始の準備を始めているとのことだ。それがスイスとスウェーデンだ。スウェーデンはパンデミック対策として事実上ロックダウン措置をとってこなかったし、スイスは非常に軽い制限措置しか課してこなかった。ヴォルフの考えによると、そうなった理由は両国には経済を崩壊させる必要がなかったからだとのことだ。それはパンデミックが始まる前から、両国はすでにデジタル貨幣の使用開始の準備ができていたからだとのことだ。ヴォルフの主張によれば、新しい段階のロックダウン措置が準備中で、それにより世界経済の息の根を完全に止め、大規模な失業を生むことで、世界規模でのベイシック・インカム制度と、世界唯一の中央銀行が運営するデジタル貨幣の使用につなげようとしているとのことだ。このデジタル通貨は使用が制限される可能性がある。具体的にはその通貨を使用できる人物と、その通貨が使用可能な時間設定に制限がかけられるかもしれない。

 さらにヴォルフの記述によると、現在世界中で進行中のインフレは避けられない事実だということだ。それは各国政府が各国の中央銀行から借金をし、ここ2年以内の間で世界経済に約20兆ドルを排出しているからだ。前回のリーマンショックの際、救済金は直接市場に投入されたが、今回のパンデミックでは一般の人々に投入されている。その結果、一般の人々がお金を使う対象(例えば食料品)の生産価格が高騰してるのだ。

民主主義が破壊されている

 ヴォルフによると、これらすべての状況から引き出せる最終結論は、私たちがこうあるべきだと思っていた民主主義がこっそり破壊されているということだ。自分の国では、民主主義的な手続きがで維持されていると思わされている中、実際は世界の各国政府がどう振る舞うかの検査が行われているのだ。超富裕層や、強大な権力を有する一部の人々が、世界を効果的に支配し、政界にも入り込んでいることが、このパンデミックに対する対応の中で明らかにされている。

 ヴォルフによると、このような現状と闘う最善の方法は人々に今何が起こっているかをきちんと伝えることだけだとのことだ。「非常に危険なウイルス」という言説が嘘であり、操作されることを受け入れさせるためにでっち上げられた言説であり、自分たちの利益とは逆方向に向かっていることを伝えることだとのことだ。一般市民の1割がこの真実に気づき、行動を起こす決意をしたならば、支配者層の計画は挫折し、一般市民への窓が開かれ、自分の人生を自分で切り開く権利を取り戻すことができるだろう。

インタビュー動画

 アーンスト・ヴォルフはライナー・フュエルミヒ博士による一連のインタビュー動画に出演している。フュエルミヒ博士はドイツの弁護士であり政治家でもある。同博士が Corona Ausschuss(コロナ対策委員会)という名称のポドキャストを主宰している。同委員会はドイツ政府の対パンデミック政策を批判的に見ている。以下の動画はこの委員会が出してるポドキャストからの一編だ。

こちらをクリック。https://rumble.com/embed/vmdygo/?pub=4

 さらにこのポドキャストのグループチャット欄には、ビビアン・フィシャー(Viviane Fischer)も登場している。この人はベルリン在住の商法弁護士であり経済学者でもあり、「コロナ委員会」の動画によく出演している。さらにドイツ社会民主党の元国会議員ヴォルフガング・ワダルグ(Wolfgang Wodarg)も、ドイツ政府のロックダウン措置やワクチン措置に対して反対の声を上げている。

関連記事

感染症と、ワクチン、そして戦争

感染病、ワクチン、そして戦争
<記事原文 寺島先生推薦>
Infectious Diseases, Vaccines and War

Global Research
2022年1月26日
マーク・ハーバーマン(Marc Herbermann)教授
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>



 「ワクチンは毎年何百万人もの命を救っている。最も安全で効果的な公衆衛生上の介入策のひとつである・・・」。

 こういった言い方は、今日自明の理のように思われる。現在、政府が義務付けているCovid-19の予防治療に批判的な多くの著名人でさえ、ワクチンの推進派であると公言している。

 この小論は、mRNA製剤の効果に関する議論に参加するつもりはない。その代わりに、上であげたワクチンの効果についての一般的な紹介的な言い方を検証してみたいのである。それは、実際のワクチンの効果に裏打ちされたものなのだろうか?科学には、その存在意義に疑義を挟んではいけないような聖なる領域は存在しない。もし、ワクチンの研究開発が科学的であるならば、なぜワクチンが効くのかの根拠を問うことも許されるし、同様にどんな副作用があるのかを問うことも許されるのである。

感染症が減少した理由は何なのか?

 インフルエンザ・ウイルスは、米国疾病対策予防センター(CDC)が指摘するように、数百の亜型と変種株からなり、常に変異を繰り返している。米国では、ワクチン接種が普及するずっと前の20世紀前半に、インフルエンザによる死亡率が激減している。しかし、実体のないインフルエンザ・ウイルスに対するワクチンは、依然として導入されていた。1979年から2019年の間に年間配布数は10倍以上の1億8900万回に上ったが、その間のインフルエンザ平均死亡率はほぼ一定だった[1]。 19世紀末以降の同様の動きは、米国とカナダで他の病気についても見られた。麻疹、結核、猩紅熱、百日咳の死亡率は、対応するワクチンが導入される前にすでに大幅に低下していたのだ。

 早くから集団予防接種が無意味であることは他の国でも示されていた。19世紀の欧州でのワクチン接種と病気に関する信頼できる数値がかつてより紹介されていた。イギリスの医師で疫学者のトーマス・マッキューン(Thomas McKeown)は、イングランドとウェールズにおける結核が、その感染力に関する論争が解決するよりもずっと前から減少していたことを実証している。1882年にロバート・コッホ(Robert Koch)が結核菌を発見するよりもずっと前のことだ[2]。 トーマス・マッキューンの報告「Reasons for the Decline of Mortality in England and Wales during the Nineteenth Century(19世紀イングランドとウェールズにおける死亡率の減少)」では、イングランドとウェールズの人口が、1700年から1851年までに三倍になっていることは、考えられる「感染症の挙動における自然の変化」を超えていると述べている。もしこの見解を受け入れ、もし特定の医療措置が死亡率に大きな寄与をしなかったことに異論がないのであれば、18世紀後半から19世紀初頭にかけての人口増加の主因は、経済・社会状況の改善にあったと結論づけなければならない」と述べている。

 19世紀から20世紀にかけてのドイツにおける複数の感染症のワクチン接種と発生件数の増減においても、同様の状況が見られる。結核、百日咳、ジフテリア、破傷風など、感染症のほとんどが予防接種が導入されるずっと以前から減少していたことが、呼吸器内科医のゲルハルト・ブッフバルト(Gerhard Buchwald)によって徹底的に検証されている。ブッフバルトによれば、ドイツで始まった集団予防接種は、プラスではなく、むしろマイナスに作用した。ワクチン接種が広く行われた後、曲線は右肩下がりではなく、時には右肩上がりに転じることさえあった。1925年、ジフテリアの予防接種が導入された年、ドイツにおけるジフテリアの患者数は約5万人であった。その後、患者は急増し、1939年までに15万人に達した。ポリオとの戦いも同様である。1950年代にビレロン(Virelon)という薬を使った予防接種が広まった後、ドイツでは患者が増加したとブッフバルトは説明する。

 21世紀に入ってからも、同様に有害な健康施策が見受けられる。WHOの大規模なポリオ予防接種キャンペーンは、2005年以降、ナイジェリア北部でポリオ感染を急増させた;数十万人がワクチン由来の循環型ポリオウイルスであるcVDPV2に感染した。2000年から2017年にかけて、さらに大きな大惨事がインドで起こった。インド政府が取得したポリオ件数追跡調査の数値に基づく研究では、インドで小児の非ポリオ急性弛緩性麻痺(NPAFP)が急増した原因は、経口投与ポリオワクチン(OFP)の投与を急激に増やした結果だと結論づけた。OFPの投与を繰り返すうちに症例数が増加し、「さらに49万1千人の子どもたちが麻痺した」のはOFP投与が原因とも考えられるとしている。

 ワクチン接種推進論者は、ワクチンの有効性の証拠として、ポリオのワクチン接種キャンペーンを引き合いに出したがるしかし、このようなキャンペーンが「感染を減らすため」という本来の趣旨とは逆の作用をするのであれば、私たちはこの主張をどう考えればよいのだろうか?①NPAFPはポリオの典型的な症状を表すもうひとつの指標に過ぎない、そして②この用語を使うことで、ワクチン接種が完全に失敗しただけでなく、プラスよりもはるかに大きなマイナスをもたらしたという事実を隠蔽することになる、と私たちは考えることができるのではないだろうか?

 ロバート・F・ケネディJr.は、20世紀後半から21世紀初頭にかけて、ワクチンが各国で果たした役割について詳細に書いている。豊富な情報源、事例、ケーススタディによって、彼は「アンソニー・スティーブン・ファウチもウィリアム・ヘンリー・ゲイツも...自分たちのワクチンが「何百万人もの命を救った」という重要な主張を裏付ける経験的証拠を提示したことはない」という主張の裏付けを彼の著作で書くことができている。

READ MORE:How Vaccine Hysteria Could Spark A Totalitarian Nightmare
 

 ロバート・F・ケネディJr.は次のことも実証している:「ゲイツが開発したアフリカ向け、アジア向けの大ヒットワクチン(ポリオ、DTP、B型肝炎、マラリア、髄膜炎、HPV、Hib)のほぼすべてが、ワクチンが防ぐよりもはるかに多くの後遺症や死亡を引き起こしている。」

医学とは関係ない諸目的

 アフリカ諸国は、植民地時代、長い間、医学実験の実験場としての役割を担ってきた。今日も一部の製薬会社は、他の手法を使ってこの伝統をアフリカ引き継いでいる。新しいタイプの生体認証方式が西アフリカでは、数年前から進んでいる。Covid-19危機のずっと以前からだ。ゲイツが資金提供するGAVIワクチン同盟とマスターカード社は、「トラスト・スタンプ」を開発した。このプログラムは、個人のデジタル生体認証に個人のワクチン接種記録をリンクさせるものだ。個人認証データとキャッシュレス決済を絡めて監視し、政府の政策やWHOの施策に沿った行動を強制することが可能になる。

 2020年にジンバブエで導入された生体認証システムを使って、3000人のいわゆる「ゴーストワーカー」が発見され、給与支払名簿から削除された。このように、アフリカは医療実験の実験室としてだけでなく、Covid-19危機をきっかけに欧米先進国で本格的に導入されつつある、市民のデジタル全方位管理の実験場としても機能しているのである。2021年8月、WHOはかねてから準備していた、二次元バーコードで予防接種状況をデジタル認証・「証明」する提案を明らかにした。これは「医療に関連しない」目的にも利用できる。

戦争と平和――歴史からの教訓


 再度言おう。中央ヨーロッパでは、ワクチンが広く導入される前に、ほとんどの感染症が減少していた。(減少したのは)ワクチンのせいではない。衛生的な生活環境の改善、特にきれいな水、規制された廃棄物処理、そして十分なビタミンCを含む食料などがあったからだ。こういった発見を考慮すれば、今日の国家の介入についていろいろな結論を導き出すことができる。

 例えば、インドでは栄養不足が全土に広がっており、結核発生率も世界で一番だ。WHOは、2012年の結核による死亡者数を世界全体で130万人と発表している。今回、WHOは、1990年から2010年までのインド中東部州における結核の発生状況を報告した。これらの報告に基づいて、保健科学者のグループは、栄養不足を減らしたらどうなるか、を推定した。彼らは、栄養問題に介入すると「インド中東部の州における結核関連死亡率は43%から71%に亘って」減らすことができる結果を導き出した。彼らの想定の一番大事なところは、「栄養不足問題に介入することで、栄養不足が蔓延している地域の結核の発生率と死亡率にかなりの影響を与えることができる」とした点だ。

 公式に流布される効果と実際に起こっている集団接種後のもろもろの結果の間にはあるギャップが存在する。それは平時ばかりでなく戦時においてもそうだ。戦時中は、国のインフラが崩壊し、医療体制が崩れ、感染症対策もままならないことが多い。そのため、疾病管理プログラムは混乱し、人道支援機関同士の連携も不十分になる。こうした状況はすべて、「感染症の発生と感染を増大させる」のだ。
 
 また、感染症は「生物兵器として」意図的に使用されることもある。メイール・コノリー(Máire Connolly)とデイヴィッド・L・ヘイマン(David L. Heymann)は、さまざまな危機的状況にある地域で仕事をしたり、WHOに勤務していた。この二人の記述によれば、「ナポレオン戦争時、イギリス軍の病死者は戦傷者の8倍であった。アメリカ南北戦争では、推定66万人の兵士の死因の3分の2が肺炎、腸チフス、赤痢、マラリアであり、こういった事情で戦争が2年延びた。」1871年、ゲルハルト・ブッフバルト(Gerhard Buchwald)によると、ドイツ帝国のほぼ全人口が天然痘の予防接種を受けていた。しかし、何万人もの天然痘患者が発生した。その発生源はフランス人捕虜の収容所であった。彼らは天然痘の予防接種を受けていたが、収容所の衛生状態は非常に悪く、天然痘の流行はドイツ国民に急速に広がった。

 第一次世界大戦の終わり、ある世界的大惨事が第一次世界大戦そのものより多くの人命を奪った。人類の三分の一を感染させたスペイン風邪は、5千万から1億人の命を奪った。科学ジャーナリストのハンス・トルツィン(Hans Tolzin)は、そのレポート「Die Seuchen Erfinder(疫病の発明者たち)」の中で、4つの伝染病とされるものを分析した。40ページにわたって、彼は現代の資料を参照しながら「スペイン風邪」を検証した。トルツィンは、「スペイン風邪」に先立って、米軍の宿舎で天然痘と腸チフスの集団予防接種が行われたことを書いている。1911年、米軍では腸チフスの予防接種が義務化された。その後、第一次世界大戦に至るまで、米軍兵士を対象とした数多くの実験的な予防接種が行われた。

 しかし、集団予防接種は軍隊だけで行われたわけではない。1918年には、愛国心に訴えたり、注射をしないと取り残されると言われたり、またアリゾナ州やインディアナポリス州では民間人に強制接種をしたりして、人々の気持ちを動かし、天然痘などの予防接種をさせた。医学博士で生理学の教授でもあるロベルト・コッホ(Robert Koch)は、次のような説明をしている。1918年に米軍は:
「何の感染症も起きていないフィリピンで328万5376人の原住民にワクチン接種を強制し、...接種者のうち47369人が天然痘にかかり、このうち16477人が死亡した。1919年には、実験の規模を2倍にした。7,670,252人の原住民が予防接種を受けた。このうち65,180人が天然痘にかかり、44,408人が死亡した。最初の実験では3分の1が死亡し、2回目では感染者の3分の2が死亡した。」

 アメリカ陸軍で腸チフスの予防接種が義務化された後、腸チフスをはじめ、ワクチンで予防できるはずの病気が急激に増加した。アメリカ軍の新兵は、アメリカが第一次世界大戦に参戦する前に14回から25回の予防接種を受けた。エレノア・マクビーン(Eleanor McBean)博士は、「予防接種を受けた兵士の間には、未接種の一般市民と比べて7倍の病気があり、その病気は予防接種を受けていたものであった」と述べている。新たに公開された文書からの証拠も、当時大規模な軍用ワクチン実験があったことを示している。

 その後の戦争、例えば1991年の湾岸戦争でも、兵士たちは再び毒物にさらされ、あらゆる種類の実験的なワクチンを接種された。米国政府は、「湾岸戦争症候群」の存在を無視、あるいは否定している。この湾岸戦争において、何万人もの米軍兵士が死亡し、何十万人もの兵士が医学的障害を負うことになるなど、おびただしい数の多様な身体機能低下症状が集団的に発生している。

結論

 以上の検証は、多くの感染症が減少したのはワクチンのおかげであるとする、一般に流布されているワクチン接種擁護論に疑問を投げかけるものである。ワクチン接種が有効でない、あるいは逆効果であることの証拠を縷々示した。

 適切な保健衛生・公衆衛生、きれいな水、十分な栄養など、現代の生活環境改善がもたらす効果は、予防的な医薬品を投入するよりも、感染症や死亡率の減少につながっているのだった。

 一方、戦争は感染症の蔓延を加速させるが、戦争が終結すると感染症は減少する傾向にある。一方、戦時中に行われた集団予防接種は、戦後何年も経っても深刻な健康被害をもたらすことになった。現在の流れを見ると、21世紀には、ワクチン接種が監視の目的でも使われるようになることが予想される。人間へのワクチン接種について、その効用をあれこれ、私たちの目をくらますような明るい見通しを述べ立てるが、そうなることはない。

*
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Marc Herbermann is an assistant professor at the Division of Global Language and Literature at Kyonggi University in Suwon, in South Korea. One of his fields of interest is medicine in German speaking countries. He is also particularly interested in studying the conditions of war and peace.


Notes
1. CDC 2019; 2020a; 2020b; Doshi 2009; Geier, King, and Geier 2006.
2. Colgrove 2002; Wegmann 1988, 174; McKeown and Record 1962.


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迫り来る戦争の影から逃れる道を見出すことは困難

迫り来る戦争の影から逃れる道を見出すことは困難

<記事原文>Difficult to Find a Way Out of the War that is Enveloping Us

ブログ Paul Craig Roberts

2022年2月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月3日

 戦争を避ける道がどれほど狭いかの説明を、グレン・グリーンウォールド(Glenn Greenwald)の記事にまかせよう。

 「ウクライナがより軍国化し、より権威主義に陥り、無謀になっているというプロパガンダ」

https://greenwald.substack.com/p/war-propaganda-about-ukraine-becoming?utm_source=url

 米国民は洗脳され、偽情報を流され過ぎたせいで、今から何が起こるのかを全く考えられなくなっている。米国民たちのお気楽さの代償として、米国が滅亡の危機に追いやられている。

(以下は記事からの抜粋)

「誇張しすぎてしすぎることはないが、米国の政府関係者や米国メディアが一致団結して、共通理解を保っている様は驚くべきものだ。まるで全会一致状態で、何の異論も許さないような雰囲気だ。このような状況は9/11以降初めてのことのように思える。マルコ・ルビオ(Marco Rubio:共和党議員、金融業界の代弁者的存在)がバーニー・サンダース(Bernie Sanders)と全く同じようなことを語り、リンセー・グラハム(Lindsay Graham:共和党議員)の言動はもはやナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi:民主党議員、米下院議長)とほとんど違いが分からない。CNNやニューヨーク・タイムズが報じているウクライナ侵攻についての一語一句は、CIAや米国防総省が言っていることと一致している。その潮流に従って米国民の世論は、大幅で急激な変化を見せている。直近の世論調査によれば、ウクライナで米国が主要な役割を果たすべきかについては、大多数の米国民が反対の意思表示をしていた。しかし2月25日に発表された最新のギャラップ社(Gallup)の世論調査では、米国民の52%が「ロシアとウクライナ間の紛争が米国にとって大きな脅威となる」と答えており、さらにその回答は党派による違いを乗り越えるものだった(共和党支持層の56%と民主党支持増の61%がそう答えていた)。さらに米国民の85%がロシアに嫌悪感をもっており、ロシアに好感を持っているのは15%にとどまった。」

(記事からの引用はここまで)

 米国民が、洗脳されたただの愚者に成り下がる中、米国政府の指導者たちやメディアも狂気の精神異常者だ。以下に、グリーンウォールドの記事からの2段落を記す。

(以下は記事からの抜粋)

 「メディアに最も愛されている国会議員のうちの一人であるアダム・キンジンガー(Adam Kinzinger:共和党。イリノイ州選出)が、2月25日にはっきりと、語気を強めて要求したのは, 米軍をウクライナに派遣し、「飛行禁止区域」を打ち立てるべきだということだった。つまり米国兵たちが、ロシアに対してウクライナの航空領土に侵入しないよう命じる、ということだ。そしてその命令に従わないロシアの戦闘機などの軍機に攻撃を加えるというものだ。そうなれば現時点で地球上最大の核兵器をもつ米露二国がウクライナ上空で戦闘状態になることは避けられなくなる、ということだ。

 キンジンガーのおとぎ話のような話によると、ロシアは合理的な計算のもと、米国の支持(指示)に即時に従うということだ。こんな馬鹿げた話はない。今やプーチンは、話の通じない狂人(比喩的な意味だけではなく医学的に見て)と化し、普通の常識を持ち合わせていないという言説を前提にしているのだろう。そして今のプーチンはどんな危険を冒してでもウクライナを降伏させ、歴史に名を残そうとしていると考えているのだろう。こんなおかしな提案がなされるのはこれが初めてではない。キッシンガーがこの計画を明らかにする数日前には、一人の記者が、国防総省のジョン・カービー(John Kirby)報道官に、バイデン大統領はなぜロシアに対して戦闘的な態度で臨まないのかについて質問していた。米国シンクタンクのブルッキングス研究所のベン・ウィッツ(Ben Wittes) が2月27日に 要求したのは、「ロシアの政権転換」だった。リチャード・ハース(Richard Haass)外交問題評議会会長はこの発言を歓迎し、「ロシアで望まれる政権転換が起こる可能性についても話し合いのまな板の上に乗せるべきだ」と語っていた。

(記事からの抜粋はここまで)

 アダム・キッシンガー議員はおそらく、この世で最も物事を知らない人物だろう。同議員の考えによれば、米国の運命はウクライナと直接繋がっていて、米国政府は米国民もウクライナ国民も簡単に救うことができるというものだ。そしてその理由は、「ロシアは我が国の空軍を脅かす力は持っていないから」だというのだ。なんとすごい考え方だろう。ロシアは遙かに離れたところから米軍の戦闘機の行動を防げる術を持っているというのに。グリーンウォールドは、我々が迫り来る壊滅から逃れられない理由を以下のように説明してくれている。

(以下は記事からの抜粋)

 「戦争へのプロパガンダは、私たちの心理面にも、無意識にも、本能にも最も強力な刺激を与える。プロパガンダに操作され、私たちは理性を失ってしまう。このプロパガンダにより、部族主義や好戦的愛国主義や道徳心や情緒主義が引き起こされる。これらすべての要素が何千年にもなる人間の進化の歴史の中で組み込まれてきたものだ。世間を覆い尽くしている「道徳的な言説」を支えようという連帯心が強まれば強まるほど、批判的にその言説の是非を捉えることが困難になってしまう。プロパガンダが閉ざされたものになればなるほど、(プロパガンダが閉ざされる理由は、言説に対する異論が強力な検閲により排除されているか、自国に対する従順や忠誠がないことを批判されることで、そのような異論が邪悪なものであるとうまく思わされているかだが)、皆が今そのような渦中にあることを認識することさえ困難になっていく。

 道徳的に完全に正しいとされる言説が確立されることにより、人々の批判的思考能力が低下させられれば、私たちの脳内の理性が支配する部分の能力が機能しなくなってしまう。だからこそ、オバマ政権のロシア大使であったマイケル・マックフォール(Michael McFaulh)のような反ロシア派のトップに立つ人々は「プーチンのためのプロパガンダ(つまりはウクライナ紛争をマックフォールの観点以外の観点で見る人のこと)」を存在させないよう要求しているのだ。そのようなプーチン・プロパガンダーは、SNS上にアカウントを持つことさえ許さないというのだ。さらには「フェイスブックはロシアメディアが広告を出したり、収益を上げたりすることを禁止していない」ことに対して、多くの人々が怒りの声を上げているのも同じことだ。マーク・ウォーナー(Mark Warner:民主党、バージニア州選出)上院議員は、今は普通のことになってしまった 政府当局がソーシャルメディア業界に対して、SNS上での言論の自由を抑え込む作戦を駆使して、どんな言論が許され、どんな言論が許されないかまで口を出せることを前提に、2月26日こう発言している。「私が懸念しているのは、ロシアについての偽情報がネット上に散乱していることです。ですので今日、私は主要テック産業の代表取締役たちに書簡を送り、ロシアのプロパガンダを拡散させないよう依頼しました」と。異論はすべて抑え混むこと。あるいは少なくとも、そのような異論は非国民の意見として、市民が無視してしまえるような環境整備をすること。これがプロパガンダ体制を強力に維持するための手口だ。」

(記事からの抜粋はここまで)

 お気楽度を測るのには方法がある。私が使っている方法は、私のブログの新しい投稿に関するニュースレターに登録している読者のうち、どれだけの読者がそのお知らせメールを開封しているかを確認する方法だ。そのニュースレターの登録者数を見れば、読者が何に警戒をし、何に興味を持っているかがわかる。危険な戦争が展開されようとしている最中なのに、そのお知らせメールを開封しているのがニュースレター登録者の半分にもいっていない。私が分かったことは、自分の知っている状況を他の人に説明することも、今はできなくなっているということだ。その理由は、ほとんどの米国民が核戦争など起こるはずもないし、もしそうなっても、我が米国が勝利すると思わされているからだ。

 ウクライナの最新の策は、同盟国であるイスラエルにロシアとの仲立ちを懇願することだった。ロシアがこの策に乗ったとしたら、話をうまく片づけられてしまうだろう。しかしおそらくこの策には好機もある(にもなる)。プーチンがイスラエルを以下のように説き伏せることもできるからだ。すなわちNATOが包囲網を強めれば、NATO加盟国の南端に予防措置を講じる計画があると伝えるのだ。つまりイランにS400ミサイルを供給して、イランにロシア軍基地を置くと伝えるのだ。ウクライナがNATO加盟国にならず、ネオナチ民兵を解散させれば、それを止めると伝えるのだ。

 希望の星を見い出す方法をかねてから考えておくべきだったのだ。


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ウクライナ情勢続報3

ウクライナ情勢続報3
<記事原文>

Ukraine Update #3

ブログ Paul Craig Roberts
2022年3月1日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月3日

 まずはマイケル・ハドソン(Michael Hudson)による解説を読んでいただきたい。その解説によると、ロシアに対する制裁の被害を受けるのはドイツだが、米国政府に手を伸ばしている3つの利益団体(軍産複合体、石油会社、金融・保険・不動産関連業界)にとっては利益になる。https://www.unz.com/mhudson/america-defeats-germany-for-the-third-time-in-a-century/つまり制裁はロシアに害を与えるというよりも、米国政府にたかっている連中の利益獲得のために行われる意味が強いということだ。ロシアが負う主たる負担は屈辱感だ。

 ロシアは、米国や欧州に対して大きな被害を与えられる制裁を加えることができる立場にいる。しかし今のところロシアはそうはしていない。ロシアは送る軍はできるだけ少なくするよう決めているようだ。ロシア政府は天然ガスの輸出を止めてドイツを麻痺させる策には出ていない。ロシアはロシア国内の米国や欧州諸国の資産を国有化する策にも出ていない。ロシアは天然資源の販売を差し止めることで世界の供給網を阻害する策にも出ていない。ロシアは小麦の輸出も止めてはいない。ロシアは米国や欧州諸国に対して、国際逮捕状を発行してもいない。その逮捕状とは、米国と欧州諸国がセルビア、アフガニスタン、パキスタン、イラク、リビア、シリアに対して犯した戦争犯罪や、多くの人々を暗殺した罪を問う逮捕状のことだ。

 現状の軍事戦線についていえば、ウクライナ軍は事実上包囲されていて、反撃を加えたり、効果的な抵抗を示したりはできなくなっている。ただし例外は、人口が集中しているところに大型武器を配置しているネオナチ民兵だ。ロシア政府の現在の戦時法においては、ロシア軍が一般市民の在住地区に、重火器を使用することは禁じられている。もちろんこんな法律を遵守してもロシアに何の利もない。西側の御用メディアは「ロシアが一般市民たちに攻撃を加えている」という偽情報を垂れ流し続けている。

 このような御用メディアの報じ方こそ、西側の人々の愚かさを示していると言えるだろう。ロシアが非軍事施設や民間人を標的にして軍の資源を無駄にすると考えるなど本当に愚かだ。プーチンが言っているように、西側は「嘘で固められた帝国」だ。そのうちきっとニューヨーク・タイムズで読んだり、NPRやCNNで聞くニュースの中に、「ロシア軍が未熟児の赤ちゃんたちを保育器から引きずり出したり、子どもたちを銃殺したりしている」というニュースが出てくるに決まっている。

 西側が脅威や告発を喚き散らしているのは、他にできることがないからだ。西側の低脳者たちが脅しているのは、ISISの聖戦士をウクライナに送り込みロシアと闘わせることだ。さらには米軍の退役軍人をボランティアの雇い兵としてポーランドに派遣することだ。その情報と同時に聞こえてくるのは、ウクライナがロシアの侵攻を食い止め、勝利に転じつつあるという情報だ。それなのにいったいなぜ、外国から援軍を期待しなければいけないのだろうか?

 ウクライナのドミトル・クレバ(Дмитро Кулеба)外相は、国連に「ロシアの非武装化」を要求しているが、これは想像もできないくらいのばかげた芸当だ。ウクライナ政府が自国の運営さえままならないときに、なぜクレバのような人物が外相を務めているのかと思われても仕方ないだろう。フランスのブリュノ・ル・メール財務大臣は「ロシアに対する完全な経済・金融戦争」を宣告している。この発言に対してロシアのドミートリー・メドヴェージェフ(Дмитрий Медведев)安全保障会議副議長は、「発言に注意してください。さもないと本当の戦争になりますよ」と警告している。愚かなウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員会委員長は声明で、EUはポーランド経由でウクライナに戦闘機を派遣すると語ったが、この声明はポーランドのアンジェイ・ドゥーダ(Andrej Duda)大統領の発言と全く矛盾している。「我が国はウクライナに戦闘機を派遣するつもりは全くありません。そうすればウクライナ紛争に軍事的に介入する道を開くことになるからです。ウクライナの紛争に参戦するつもりはありません。NATOはこの紛争には関わっていません。」https://www.rt.com/news/550955-poland-bulgaria-deny-warplanes-ukraine/ 

 プーチンはNATO加盟国にウクライナに武器を供給しないよう警告している。もしそのような武器の輸送があれば、運輸の際に破壊されるだろう。ロシアはウクライナの空路を制圧している。ウクライナ軍は包囲されている。そんな中でどうやって武器がウクライナに届くというのか?なぜ西側の愚者たちは負けた戦争を長引かせようとしているのか?なぜホワイトハウスはゼレンスキーに降伏し、ロシアから得られる最善の状況を交渉で引き出させようとはしないのか?

  西側諸国の指導者たちの無意味な大言壮語の中には、ウクライナをNATOに加盟させるという話はでてこない。出てくるのは、ウクライナをEUに入れるという話だ。EUというのは軍事同盟ではなく経済同盟だ。しかしゼレンスキーが亡命中のウクライナにとって、EUに加盟することにどんな意味があるのかは明らかではない。ウクライナの将来は、ロシア軍の引き上げにかかっている。ロシア軍は目的を達せば出て行くだろうからだ。

 ここ数年私がずっと書き続けていたように、西側に対するロシアの辛抱は永遠に続くわけではなかった。そして西側が圧力をかけることを止めない限りは、ロシアは反撃し続けるとも指摘してきた。私が言ったのは、ロシアが長い期間辛抱すればするほど、ロシアが行う反撃は厳しくなるということだった。さらには、まったくの愚者だらけで固められている西側世界の状況からすれば、状況は危険なものになるということだった。ロシアと米国が核兵器を警告に使っている今、状況は本当に危険だ。米国の利益のために奉仕する、米国の操り人形的欧州諸国が、「ウクライナの不穏分子一掃作戦の邪魔をするな」というプーチンの警告を無視すれば、今度は欧州がロシアの攻撃対象になり、無力なNATOが反抗するか、降参するかどちらかを選ばなければならなくなりかねない。今の状況を注視しよう。「嘘で固められた帝国」である西側諸国は、そこまで追い詰められているのだ。

 

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COVID-19ワクチン接種後14日以内はワクチン死とカウントしない COVID-19ワクチンによる死亡率が従来の報告よりはるかに高いことを示すドイツの驚くべき分析結果

COVID-19ワクチン接種後14日以内はワクチン死とカウントしない
COVID-19ワクチンによる死亡率が従来の報告よりはるかに高いことを示すドイツの驚くべき分析結果
J. D. ハイズ著
<記事原文>Stunning German Analysis Finds that COVID-19 Vaccine Death Rates Are Far Higher than Previously Reported
By J. D. Heyes
Global Research, February 04, 2022
NaturalNews.com 2 February 2022

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  
2022年3月2日



 ドイツの研究者が数カ国のデータを使っておこった衝撃的な新しい分析によると、Covid-19ワクチンによる「毎日の死」が、世界中の政府が認めているより「数千」も多いことが明らかになった。

 レーゲンスベルク大学のクリストフ・クーバンドナー教授の分析で明らかになったのは、「極めて憂慮すべき状況」であり、「われわれが気づかないうちに毎日ワクチンで死んでいる」ひとびとが「何千人も」いる、と報道されている。

 オーストリア、ドイツ、イスラエル、イギリスから集められた死亡率データは、servus.tvが放送したオーストリアの報道でまとめられた。それは、クーバンドナー教授が「たまたまごく最近、ResearchGate誌で、論文著者たちがイギリス国家統計局(ONS)ワクチン死亡率調査報告書について調べた査読前論文を見かけた」後のことだったとも、そのオーストリアの報道は伝えていた。

 一見すると、ワクチンを接種した人の「全死亡率」は、ワクチンを接種していない人よりはるかに低いように見える、とこの査読前論文の分析では指摘している。しかし、クーバンドナー教授ら研究者が精査をおこなった結果、「データに根本的な矛盾と異常がある」ことがわかり、「未接種とワクチン接種という異なるカテゴリー間で死亡の体系的な誤分類があった」ことなどが示されたと、同教授らの報告書は指摘している。

 例えば、COVID-19ワクチンが世界中の一般市民に提供されるようになって間もない2021年の1~38の暦週では、60~69歳と70~79歳の年齢層でCOVID以外の死亡率に強いピークがあり、ワクチンを打った人の死亡率は「安定していた」と報告書は続けている。



 「クーバンドナー教授は、何か非常に変わったことが起こっていることに注目し、80歳以上の年齢層についてもその傾向を調査した。以下は、3つの年齢層のプロットである。ピークと死亡が相殺されている」とも報告されている。


 研究者はこう指摘する。

 例年、60~69歳、70~79歳、80歳以上の各グループは、1年のうち同じ時期に死亡率のピークを迎える(4月のCovidのピークをどの年齢層もすべて同時に迎えた2020年を含む)。しかし、2021年には、各年齢層とも、ワクチン未接種者のCovid以外の死亡率ピークが、異なる時期、すなわち、これらの年齢層に対するワクチン接種の展開プログラムがピークに達する時期に発生している。

 ワクチンは段階的に展開された。具体的には、高齢者(80歳以上)は最も脆弱であると判断されたため、最初におこなわれ、その後、70~79歳のグループ、60~69歳のグループ、といった具合に提供された。

「その後、ワクチン接種が行われた年齢層においてワクチンを受けていない人々の死亡のピークが出現している」と報告書は言い、疑問を付け加えた。「なぜ、ワクチンを受けていない人が大量に死亡し、ワクチンを受けている人が死亡しないのだろうか?」

 それは、ヨーロッパでは、2回接種の最後の14日後まで「ワクチン接種者」に指定されないため、それ以前の死亡は「ワクチン未接種者」の死亡としてカウントされるからだと、報告書は付け加えている。

 14日未満で死亡した場合は「未接種」としてカウントされ、実際にそうやってワクチン関連の死亡が隠されている、と報告書は述べている。

 「上記の図5-7が示すように、ワクチン投与直後に何千もの死者が出ており、その多くがワクチン自体に関連していると指摘されている。もし、これが英国だけでなく、世界的に起こっているとすれば、ワクチンによる死亡者数は膨大なものになるかもしれない。悪夢は本当だったようだとクーバンドナー教授は示している」と記事は述べている。

 クーバンドナー教授によれば、ドイツでも同様の死亡パターンが見られたという。

 「これらの死は直接的にはワクチン接種の結果であるように見える。偶然の一致を否定することはできない」と記事は続ける。

 servus.tvのインタビューで教授は、「これを数字で表すと、平均して1日に700人以上死亡していることになる」と述べている。「毎日、人を乗せた民間飛行機が2機墜落するようなものだ」

 「もし、ワクチン接種に因果関係があることが判明すれば、われわれは極めて憂慮すべき事態を扱っていることになります」とクーバンドナー教授は付け加え、イスラエルを含む全ての調査対象国で同様の結果が得られたことを指摘した。

 「そして、私たちが気づかないうちに、毎日何千人ものひとびとがワクチンで死んでいるという現実がここにあるのです」と付け加えた。
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COVID-19は、2020年3月に「インフルエンザ・レベル」に格下げされ、もはや高リスク感染症(HCID)に分類されなくなった。

COVID-19は、2020年3月に「インフルエンザ・レベル」に格下げされ、もはや高リスク感染症(HCID)に分類されなくなった。
「2020年3月19日をもって、COVID-19は英国におけるHCIDとは見なされなくなった。HCIDに分類されない重症化する病気は数多く存在する」
Vernon Coleman博士による
グローバルリサーチ社、2021年12月19日
<記事原文>
COVID-19 Was Downgraded to “Flu Level” in March 2020. “No Longer Categorized as a High Consequence Infectious Disease (HCID)”
"As of 19 March 2020, COVID-19 is no longer considered to be a high consequence infectious disease (HCID) in the UK. There are many diseases which can cause serious illness which are not classified as HCIDs"


By Dr. Vernon Coleman
Global Research, December 19, 2021
Dr. Vernon Coleman 10 February 2021

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月28日



 この記事は、2021年2月に掲載されたものである。

 3月に当サイトでお伝えしたように、3月19日、英国の公衆衛生機関、危険病原体諮問委員会は、この新病をもはや「結果の大きい感染症」に分類すべきではないと決定した(下記リンクをクリックすると、その証拠を見ることができる)。コロナウイルスはインフルエンザ・レベルに格下げされた

 以下はその声明である。

 2020年3月19日をもって、COVID-19は英国におけるHCID(高リスク感染症high consequence infectious disease)とは見なされなくなった。HCIDに分類されない重症化しやすい病気はたくさんある。



COVID-19の現状

 2020年3月19日現在、COVID-19は英国におけるHCID(high consequence infectious disease)とはみなされなくなりました。HCIDに分類されない重症化しやすい病気はたくさんあります。

 4カ国の公衆衛生HCIDグループは、2020年1月にCOVID-19をHCIDに分類する中間勧告をおこないました。これは、ウイルスと疾患に関する英国のHCID基準を、流行の初期段階で入手可能な情報に基づいて検討したものです。COVID-19についてより多くのことが知られるようになった現在、英国の公衆衛生機関は、COVID-19に関する最新の情報を英国のHCID基準に照らし合わせて検討しました。特に、死亡率についてはより多くの情報が入手可能であり(全体としては低い)、現在では臨床的な認識が高まり、特異的で感度の高い臨床検査が可能となり、その利用可能性は高まり続けています。

 危険病原体諮問委員会(ACDP)も、COVID-19はもはやHCIDとして分類されるべきではないという意見を持っています。

 世界保健機関(WHO)は引き続きCOVID-19を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)とみなしているため、国として協調して対応する必要性があり、政府のCOVID-19対応によってこの事態の対応が満たされているのです。

 COVID-19の症例は、もはやHCID治療センターのみで管理されることにはなりません。感染の可能性のある患者や確定した患者を管理するすべての医療従事者は、COVID-19に関する最新の国家感染予防(IPC)治療指針に従う必要があり、これはCOVID-19に関するこれまでのIPC治療指針に取って代わられるものです。この治療指針には、さまざまな臨床シナリオに適したさまざまな個人用保護具(PPE)の組み合わせに関する指示が含まれています。 

 出典(イングランド公衆衛生省

 この決定の数日後、英国政府はロックダウンを導入し、英国議会史上最も抑圧的な法案を提出した。

 358ページにも及ぶこの緊急事態法案は、イギリスを全体主義国家に変え、政府と警察に前代未聞の権力を与えた。公会堂や選挙が禁止され、「情報の使用と開示の制限」に関する新たな権限が与えられたのである。

 コロナウイルスの脅威が3月に「インフルエンザ」に格下げされたことを知らない人がまだいる。このリンクを国会議員や新聞社に送ってください。3月以降に起こったことはすべて嘘であったことが証明されます。


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PCR検査はCOVID "危機 "の目的を果たし、今や至る所で中止されている

PCR検査はCOVID "危機 "の目的を果たし、今や至る所で中止されている
<記事原文>
PCR Tests Have Served Their Purpose in the COVID “Crisis”, They’re Now Being Cancelled – Everywhere

ローダ・ウィルソン
グローバルリサーチ社、2022年1月10日
ザ・エキスポーズ 2022年1月7日


<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月28日


 2021年7月7日、CDC(米疾病管理予防センター)はRT-PCR Covid検査の「使用説明書」を更新した。12月31日とは、Covid検査をおこなう臨床検査室や検査施設に対して、それまで使用していた検査の緊急使用許可(「EUA」)を撤回し、別のFDA認可のCovid検査への移行を開始するよう通知したまさにその日付である。

 PCR検査の使用説明書の40ページには、以下のように記載されている(強調は筆者)。

 「検査が開発されこの研究が実施された時点では2019-nCoVの定量化されたウイルス単離株をCDC(米疾病管理予防センター)は使用できなかったため、2019-nCoV RNAの検出用に設計されたアッセイ(分析)の検査の際に使用されたのは、本来のウイルス株とみなされた、試験管内で転写された既知の力価(1μLにおけるRNAの量)を持つ全長RNA(N遺伝子:GenBank登録番号:MN908947.2)であった。このRNAを、ヒトA549細胞の懸濁液とウイルス輸送媒体(VTM)からなる希釈液に混ぜこんで、臨床用の標本にしてしまっていたのだ



 こちらの動画を参照

 PCR検査の誤った不正使用が2年近く続いた後、その使用を停止させるための政府の取組が世界中でおこなわれているようである。以下はその例だ。

 「ここ数日、COVID-19 PCR検査を求めるカナダ人は、オミクロンの変種が広がる中で需要が高まったので、検査センターでの長い行列や予約枠の不足に直面したのかもしれない」 - CTVニュース、2021年12月26日

 「(北アイルランドでの)記録的な需要の中、PCR検査の治療指針に変更が加えられた。公衆衛生局は、『サービスの継続的で的を射た提供』を確実にするために、新しい治療手順を発行したと述べた」- ベルファスト・テレグラフ、2021年12月29日付

「分権国全体でPCR検査が広く不足しているのは、管理上のミスによるものであると、スコットランド首相が述べた。」 - ベルファスト・テレグラフ、2021年12月29日付

 「ウェールズで陽性と判定された無症状の人は、PCR検査を受ける必要がなくなった」 - ITV、2022年1月5日

 「今日から、NI(北アイルランド)で(自宅で検査ができる)ラテラルフロー検査で陽性になった人は、Covid-19に感染していると考えてください-結果を確認するためのPCR検査は必要なくなった」 - 4NI、2022年1月5日

 「ボリス・ジョンソンは、オミクロンによる経済停止を阻止するために、むやみやたらにCovid検査を行う取り決めを廃止した……そして、抗原検査で陽性がわかった人々は、PCR確認をする必要はなくなった」 - デイリーエクスプレス、2022年1月6日

 「検査センターと研究室のひっ迫を軽減するために、PCR検査の必要性が今(スコットランドで)変更された」 - デイリーレコード、2022年1月6日

 「オーストラリア人は、COVID陽性の結果を確認するためにPCR検査を受ける必要がなくなった」 - ABCネット、2022年1月6日

 COVID19の原因であるウイルスに関する20年にわたる特許出願の痕跡を辿れば、この病気が新しいものでも、動物からヒトへの飛び越えの結果生じたものでもないことが証明できる。2021年7月、これらの主張を裏付ける証拠書類が、デビッド・マーティン(David Martin)博士によって、国際コロナ調査委員会に提出された。2001年後半に発生した最初のSARSは、「米国疾病管理予防センター(CDC)による『非常に問題のある』2003年4月の特許出願を生じさせた。それは、SARSの遺伝子配列全体と、PCR検査[今日SARS-CoV-2感染の診断に広く使われているとされる]を含む検出手段をカバーする一連の派生特許になっていた」とTCW(The Conservative Woman Culture)誌は書いている。

 「人々が忘れてはならないのは、すべての『COVID』症例データが無意味なPCRと抗原検査に基づいていることである。PCR検査と抗原検査は、通常のインフルエンザの人にも陽性の結果を出している。インフルはCovid-19と呼ばれている病気と全く同じ症状をもつからだ。この混同は火を見るより明らかで、誰にでも指摘されなければならないし、リスク便益分析をおこなわず、国民に対する詐欺を永続させ、ナチスやソ連時代と同等の基本的人権の制限を行っているとして、世界中の政府を法廷に立たせる必要がある」とロビン・モノッティ(Robin Monotti)は2021年12月31日にテレグラムに投稿した。



 マイク・イェードン博士 Covid-19 Lies - The PCR Test, The Highwire, 14 June 2021 (10 mins). 動画はこちらからご覧ください。



































  マイク・イェードン博士の主張
  (ファイザー社の元研究主任・元副社長)

1.マスクは役に立たない
2.ロックダウンは感染を防止する効果がない
3.ハンドジェル(手指消毒)は無意味である
4.PCR検査は臨床的な感染を診断せず、増幅回数を増やせば、ほとんどが偽陽性
5.自然免疫こそ「最高の免疫力」を発揮する
6.新型コロナは季節性インフルエンザと同程度の致死率
7.二年後にはウイルス変異は微少になり、1変異体への自然免疫は、全変異体への免疫になる
8.新型コロナは最も治療しやすい呼吸器系ウイルス性疾患
9.スパイクタンパク質は免疫応答を起こしにくく、ワクチン接種しても免疫力が増加せず、感染や伝達を防げない
10.スパイクタンパク質は危険なので、ワクチン接種後に死亡を含む前例のないレベルの有害事象が発生する
11.欧州医薬品庁への請願書と「コロナ倫理医師団」の書簡で予測された副作用のほとんどが起きてしまった
12.ワクチンパスポートは公衆衛生上のメリットは何ひとつないのに、存在している。

https://www.globalresearch.ca/pcr-tests-served-their-purpose-covid-crisis-now-being-cancelled-everywhere/5766753
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