ジュリアン・アサンジを裏切ったオーストラリアと、彼を収監するベルマーシュ刑務所の拷問的待遇の詳細を暴露した新たなファイル
<記事原文 寺島先生推薦>
New files expose Australian govt’s betrayal of Julian Assange and detail his prison tormentキット・クラーレンバーグ(KIT KLARENBERG)
2021年11月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳「グループ>
2022年1月19日

The Grayzoneが独占的に入手した文書には、オーストラリア政府が自国民であるジュリアン・アサンジを見捨てたこと、そして彼の苦痛に満ちた獄中生活の詳細が衝撃的に記述されている。
オーストラリア政府は、オーストラリア国民であるジャーナリストのジュリアン・アサンジを暗殺するというアメリカ中央情報局(CIA)の計画を知っていたのだろうか?アサンジは逮捕され、現在英国で、過酷な、先行きの見えない厳しい条件の下で投獄されている。
なぜオーストラリアの指導者たちは、選挙によって選出されているにもかかわらず、自国民のひとりを公に擁護することを拒否したのか?拷問に関する国連特別報告者ニルス・メルツァー(Nils Melzer)によれば、アサンジは根拠薄弱な容疑で拘束され、ある外国の強国によって拷問にさらされている。オーストラリア政府はジュリアンの運命について何を知っているのか、そしてそれをいつ知ったのか?
The Grayzoneが入手した文書によると、オーストラリア政府はロンドンのベルマーシュ刑務所でのジュリアンの残酷な扱いを、その最初の日からよく知っていて、それに対してほとんど何もしていないことが明らかになった。実際、「精神が停止するほどひどい状況」という彼の証言を聞いたにもかかわらず、オーストラリア政府は投獄中のジャーナリスト、ジュリアン・アサンジを冷たくあしらった。
オーストラリア政府は、アサンジの投獄と告発を統括する米国と英国政府に効果的な対抗手段を取らなかっただけではない。これらの文書が詳細に暴露しているように、どうやら米国、英国と共謀して、自国民の人権を侵害するという言語道断の所業があったようだ。そのくせ、アサンジが置かれた現状については、国民の目には曖昧なままにしておこうと、やっきになっている。
アサンジに対するCIAの陰謀を知るやいなや、オーストラリア外務省は知っているとも知らないとも判然としない、腹に一物ある言い方をしている。 Yahoo Newsは、CIAがジュリアン・アサンジを監視、誘拐、さらには殺害する計画まであるという驚くべき
ニュースを9月にすっぱ抜いた。これは、The Grayzoneのマックス・ブルーメンタール(Max Blumenthal)が
2020年5月に暴露した内容がほんとうであることを示し、さらに、このニュース記事はそれを基に書かれたものだ。Yahoo Newsの記事が発表された後、NATO指向の「
ファイブ・アイズ」という世界スパイネットワークの高官たちは必死に口裏を合わせようとした。
2021年初頭に引退するまでワシントンの最高防諜責任者だったウィリアム・エヴァニナ(WilliaEvanina)は、ファイブ・アイズ同盟はCIA本部の卑劣な計画にとって「非常に重要」であり、ロンドンのエクアドル大使館からジュリアンが逃亡する可能性は、何としてでも潰せることに「われわれは十分な確信を持っていた」とYahooに語っている。
しかし、米国がジュリアンの母国であるオーストラリア政府に、この作戦について説明や相談をしたかどうかという
質問に対しては、オーストラリア外務省(DFAT[Australian Department of Foreign Affairs and Trade])はその質問をかわした。一方、この、命に係わる審議が行われた当時のオーストラリア首相マルコム・ターンブル(Malcolm Turnbull)は、「私がこのことを耳にしたのは、今日メディアで報道されたのが最初です」と主張した。
選挙で選出されたオーストラリア政府の高官たちが、CIAの提案について知らされていなかった可能性は確かにある。オーストラリアのゴフ・ウィットラム(Gough Whitlam)首相は、ファイブ・アイズの存在そのものを、自国がUKUSA協定*に署名してから17年後の1973年まで
知らなかった。国内スパイ機関であるオーストラリア安全情報機構が、政府に情報を知らせなかったことを理由に警察の手入れがあって初めて知ったのだ。
UKUSA協定*・・・(ユークーサきょうてい、英:United Kingdom – United States of America Agreement)とは、アメリカ合衆国 (USA) の国家安全保障局 (NSA) やイギリス (UK) の政府通信本部 (GCHQ) など5カ国の諜報機関が世界中に張り巡らせたシギント (SIGINT) の設備や盗聴情報を、相互利用・共同利用する為に結んだ協定のことである。(ウイキペディア) ターンブルがこの作戦を知っていたかどうかは問わない。ジュリアンの家族が豪外務省に連絡を取り、マリゼ・ペイン(Marise Payne)豪外相がバイデン政権にアサンジへの告訴を取り下げるよう要求すること、そしてヤフーの記事についてコメントを求めたときの豪外務省の反応は「ふざけるのもいい加減にしろ!」と言いたくなるほどのものだった。
「新聞に書かれたからといって、それが真実とは限りません...CIAはこれまでいろいろなことで非難されています。月面着陸の捏造なんかもそうです」と、豪外務省の担当者は昔ながらののらりくらり官僚答弁で応じた。
このがさつな発言は、ジュリアンの父親であるジョン・シプトン(John Shipton)が豪外相ペインに送った手紙に記されていた。この文書は、ジュリアンのオーストラリアでの法的権限者であるケリー・トランター(Kellie Tranter)がGrayzoneに独占的に提供した多くの文書のうちのひとつに過ぎない。
トランターは何年も前から、オーストラリア政府に対して情報公開請求を行い、ジュリアンに対する政府の真の立場を明らかにしようと努めてきた。また、オーストラリア政府と米国との密接な同盟関係が、彼の自由を求める能力や意欲をどの程度制限しているのかを明らかにしようとしてきた。
トランターが入手した文書は、オーストラリア政府が自国民であるアサンジをまったく守っていないことをあからさまにしている。それどころか、ジュリアンがエクアドル大使館にいる間、そして「
英国版ガンタナモ刑務所」と呼ばれるベルマーシュ高セキュリティ刑務所に収監されている間、オーストラリア政府は、彼の心身の健康が劇的に損なわれ、拷問的な監禁状態にあるという明確な証拠を持っていながら、「見ざる、聞かざる、言わざる」の態度をまったく変えようとはしなかった。
アサンジは豪政府に、米国が彼の種々の権利を侵害していることを伝えている:「自分が受けている行為は違法だ」 特に、アサンジが大使館から、劇でも見ているような形で追放された1カ月後の2019年5月17日に、オーストラリア領事館員がベルマーシュ刑務所を短期訪問した際の記録は、豪政府の姿勢をよく表している。その面会の中で、アサンジは刑務所の状況や1日23時間の独房生活について詳しく語っている。
「彼は1日の大半を独房で過ごし、毎日40分間は 『交友関係』 のために割り当てられている」と、複数のオーストラリア領事官は指摘する。「彼は毎日30分間、外に出ることが許されているが、そうならないこともあると言っている。」しかし、その理由は明らかにされていない。「長い間」全く食べられなかった彼は、現在「少量」を摂取し、台所から食事を取って独房に戻っていた。

アサンジは毎月たった2回、個人的な面会と法律相談を許可されているが、最近、ニルス・メルツァー、ならびに拷問などの不正な扱いを受けながら表には出ない被害者をチェックする医学専門家2人と最近
会ったこと、そしてこれまで自分の家族と話すことができていないことを彼は語った。
この文書を書いたオーストラリア領事官員によれば、アサンジは、「奴隷労働」に従事することを拒否し、法的裁判の準備のために時間を必要とするという理由で、「独房から頻繁に出る機会を与えてくれる」労働プログラムを敬遠したとのことである。英国の刑務所の囚人たちは、大企業のために、過酷で報われない労働に従事し、
週平均13ドルの収入だ。
翻って大企業は囚人たちを搾取することで莫大な利益を得ている。
感染が広がると命にかかわる歯根管治療のため、刑務所の医師から抗生物質とコデインを処方されたのは幸いだった。が、アサンジは老眼鏡に頼っている状態で、検眼士にもまだかかっていない。アサンジは、さらにある年配の刑務員が「私を目の敵にしている」ことを綿々と述べた。そして彼の独房検査で剃刀が発見され、検査後にそれを片付けなかったことを明記した始末書を訪問者に見せている。
3回目の違反があれば、「運動する特権が取り消されるだろう」と文書に書かれている。報復を恐れたのか、アサンジは職員に刑務官たちにこの問題を刑務所上層部に報告しないよう求めている。明らかに、通常なら自殺の意思を明確に示すものと考えられるものが、単なる懲戒事項として記録されていたのだ。
こういった心理的なダメージのほかに、アサンジが報告しているのは、血液検査を受けたら、HIV陽性と診断されたことだ。ショッキングな診断だ。しかし、その後の検査で検査結果は偽陽性であることが確認され、アサンジは誤診が単なるミスなのか、それとも 「別の何か」なのかと考えざるを得なくなった。これはグロテスクなまでに趣味の悪い心理ゲームと言ってもいいかもしれない。スウェーデンで彼が直面し、彼を狂気に追いやろうとしたでっち上げの性的暴行申し立てを思い浮かべても見当外れではないだろう。

アサンジはまた、ベルマーシュ刑務所を訪れたオーストラリア領事官(複数)が、最近発行された英国内務省の国外退去通知書を持参して、当時のサジッド・ジャビット(Sajid Javid)国務長官が1971年の
英国移民法に基づき、彼の英国での存在が「公共の利益に資さないため、遅滞なく英国から退去させる」と決定し、この決定に対して控訴する余地はまったくないことを告げた、と報告した。
オーストラリア領事官員(複数)の文書には次のように書かれている:
「アサンジ氏は、現在のプロセスを乗り切れるかどうかを懸念し、米国に連れて行かれたら死んでしまうのではないかと恐れています。アサンジ氏は、彼がエクアドル大使館に残しておいた彼の所持品を米国が調べていると主張しました。彼は、この行為は違法だと言っています。彼の所持品には、弁護資金を調達するために売却する予定の貴重な美術品2点、書籍2冊の原稿、法的文書が含まれていると述べています。彼は、自分の法的資料が米国によって自分に不利に利用されることの懸念を表明しました。」

アサンジの危惧は
的中して、機密文書は米国当局によって盗まれた。逮捕直後、彼の弁護士ガレス・ペアース(Gareth Peirce)は、この特権的な資料についてエクアドル大使館に連絡し、緊急に引き渡すよう要求した。ようやく彼の財産が回収されたときには、2冊の最高裁のファイルと「数ページのそれほど重要性をもたない通信文」を除いて、すべての法的書類がなくなっており、彼の身柄引き渡しの弁護は、これまで以上に困難なものとなってしまった。
2020年初頭に行われたジュリアンの身柄引き渡し審理の過程で、バージニア州東部地区のゴードン・クロンバーグ(Gordon Kromberg)連邦検事補佐は、「汚染チーム」がこれらのファイルから資料を削除し、結果として裁判に使われないようにすると、できもしない約束をした。最近の控訴審でも、大同小異の口先だけの「保証」を連発した。
逆に、CIAの請負業者であるUCグローバルが大使館を徹底的に監視して不正に入手した情報を悪用しないという疑問だらけの確約を公にすることすら、今のところ、していない。このスペインの民間警備会社は、あろうことか、大使館の女性用トイレを
盗聴することまでやっていた。このトイレは、アサンジが詮索好きな耳や目から遠ざかり(それが彼の願望だった)、彼の顧問弁護士(女性)と
議論をしていた場所だ。
そんな状況にもかかわらず、ジュリアンはオーストラリア領事官(複数)との話し合いの中で、将来について漠然とした楽観主義を何とか失わず、まさに翌日行われたオーストラリアの連邦選挙の結果を受けて、「新政府が自分のために何か支援をしてくれるかもしれない」と示唆し、マリーズ・ペイン豪外相にその動向を報告するように頼んだ。
結局、スコット・モリソン(Scott Morrison)自由国民党は政権を維持し、オーストラリア領事官のアサンジ訪問の過程で判明したことについて、公には何の警鐘も鳴らすことはなかった。実際、ジュリアンの苦悩がいかに凄まじいものであったとしても、それについて口をつぐむことに何の変更もなかった。
オーストラリア外務省(DFAT)はアサンジへの「虐待が酷くなっている」ことについて何の関わりも持っていない、と言明。 2019年
5月30日、WikiLeaksはジュリアンがベルマーシュの医療病棟に移されたという衝撃的な発表を行い、彼の健康状態について「重大な懸念」を表明した。その直後、豪外務省グローバル・ウォッチ・オフィス(Global Watch Office)は、この投稿に注意を喚起する内部メールを発した。
翌日、国連の拷問等に関する特別報告者ニルス・メルツァー(Nils Melzer)は、「ジュリアン・アサンジに対する集団的迫害を今ここで終わらせるべきだ!」と
宣言した。この国際的なベテランの法律家は、「戦争、暴力、政治的迫害の被害者と20年間関わってきて」、「これほど長い間、人間の尊厳と法の支配を無視し、一個人を、寄ってたかって、意図的に孤立させ、悪者扱いし、虐待する民主国家のグループを見たことがない」とも述べた。
次にメルツァーは、米国、英国、スウェーデン、エクアドルによる「執拗で無制限の大衆動員、脅迫、中傷のキャンペーン」を声高に非難した。この4ケ国は、彼を「組織的な司法迫害や、エクアドル大使館での任意監禁から、恣意的な隔離、嫌がらせ、さらには監視に至る持続的でますます厳しくなる虐待」にさらしたことを根拠にしている。
これに対し、
豪外務省は声明を発表し、オーストラリア政府がアサンジに関して「精神的拷問に加担した、あるいはオーストラリア領事館が何の支援もしていない」との見方を否定し、「人権の確固たる擁護者、司法手続きの過程における人道的扱いの強い支持者」であると主張、アサンジは「適切に扱われている」との自信を示した。
領事館が関与するすべての人に適用されるとされる「プライバシーへの配慮」のため、同省は彼の身体的・精神的状態に関するこれ以上の詳細を明かすことはしなかった。
また、ロンドンのオーストラリア高等弁務団は、「ベルマーシュ刑務所当局に確認された健康上の懸念について「以前当局に報告し、対処してもらっている」とし、ジュリアンが保健室に移された後さらなる問い合わせをしたことを付け加えた。
The Grayzoneに提供された文書によれば、オーストラリア政府はウィキリークスの発表を受けて、ベルマーシュに電話や郵便で何度も問い合わせを行ったが、いずれも6日間連続で回答がなかったという。では、なぜオーストラリアの高等弁務官は、文字通り生死にかかわる緊急の問題に介入して、直ちに事態を明らかにするよう要求しなかったのか?
オーストラリア政府が足踏みしている理由が何であれ、2019年年8月8日付の領事ファイルには、ジュリアンがベルマーシュの病室に再入所したことを知らせる父親シプトンの手紙が記録されている。さらには弁護士が、豪外務省に対して「外交筋を使って独立した医療診断(つまり刑務所外の)を求める」ように要請するマリーズ・ペイン宛ての手紙を作成していたことが記されている。
そして11日後、シプトンは、アサンジの兄のガブリエル(Gabriel)が最近刑務所を訪れ、アサンジの「状態の悪化」に心を痛めていることに触れ、オーストラリア総督のデビッド・ハーリー(David Hurley)とモリソン(Morrison)の両氏に不安を訴える手紙を書くことになったという。
10月21日、アサンジは身柄引き渡し事件の公判前審問のため裁判所に出廷した。
主要メディアで大きく報じられたように、彼は虚弱で混乱した様子で、裁判官の質問に対して必死に自分の名前と生年月日を思い出そうとした。裁判長が、「今どんな状況かわかりますか?」と尋ねると、アサンジは「よくわかっていません」と答えた。このことは、ベルマーシュ刑務所で収監生活を送ってきたせいで、「適切に考える」ことができなくなってしまったこととも考えられる。
10月21日の公聴会を獄中から見守るアサンジ(左上)の法廷スケッチ画
アサンジは、「どうしてこれが公平なのか理解できない。何も調べることができないし、自分の書いたものにもアクセスできない。この状況を何とかしてもらいたい」とはっきり述べた。
アサンジの弁護士マーク・サマーズ(Mark Summers)は、2020年2月に予定されている最初の身柄引き渡し審問を、事件の複雑さを理由に3カ月遅らせるべきだと主張した。「この事件の証拠を揃えることは...どんな弁護士が取り組んでもほぼ無茶だ」とサマーズは述べた。さらに、コンピュータへのアクセスがないことから、拘置所にいる依頼人のアサンジと連絡を取ることが非常に困難であることを問題視した。
裁判官はこの要求を
拒否した。その結果、ジュリアンは審問のわずか数週間前まで、「適切な意見陳述をするための必要な最低限のアクセス」を奪われることになるだろう。
アサンジの弁護人、オーストラリア外務省に「差し迫った危機」を警告 3日後、アサンジの弁護士ガレス・ペアース(Gareth Peirce)は高等弁務官事務所に手紙を出し、領事官の体表者が法廷に出席していれば、「法廷にいた全員が観察して明らかだったことを間違いなく指摘したでしょう」、つまり彼女の依頼人アサンジは「衝撃的なほど状態が悪く...精一杯だったのはその状況に対処することだけではなかったのです。自分が言いたいことをはっきり言語化することにも苦労していました」と強く主張した。
信じがたいことに、トランターが発見した豪外務省の報告書には、ジュリアンのみすぼらしい姿や、明らかに精神状態がおかしくなっていることについては、まったく触れられていない
さらにピアースは、このような状況下では、アサンジがオーストラリア政府に彼の医療に関する情報を提供することを刑務所職員に許可しなかったのは当然であると主張した。「(この医療に関する情報は)法を甚だしく無視した形で、一定期間洩らされていました。あろうことか、ベルマーシュ刑務所にいる間ですら、少なくとも1回は誤った情報が、刑務所内の情報源から、報道機関に流されているのです。」
ピアースの手紙の続き:
「私たちがこうして口にできていることを、独立した専門の臨床医を含む人の綿密な観察に基づいたものとして、高等弁務官が受け入れることを望みます。ベルマーシュ刑務所が呼んだ少なくとも1人の独立した医師を含む、刑務所に提供されたあらゆる専門家の警告は無視されてきました。
差し迫った危機(強調は筆者)に介入することで、事態の改善と危機回避に貢献してくださるのであれば、いつでも喜んでお会いしたいと思います。」
そして、11月1日、領事関係者がベルマーシュを訪れたのである。そのやり取りの中で、アサンジは、豪外務省がメディアに対して行った、彼が支援の申し出を拒否したとする虚偽の発言を批判した。
次に、刑務所の医師がアサンジの状態を「心配している」ことを明らかにした。実際、アサンジは自分の心理状態が「精神活動が停止するほど悪い」と言っており、ほぼ常時隔離されているため、「考えることも、弁護活動の準備をすることもできない」と言っている。
筆記用具すらなく、調べ物もできず、弁護士との面会でも書類を受け取ることができず、郵便物はすべて刑務官に読まれてから渡された。
ロンドン大学のマイケル・コペルマン(Michael Kopelman)名誉教授(神経精神医学専攻)は、ジュリアンがベルマーシュで過ごした最初の6カ月間の面会、両親、友人、同僚、彼のパートナーで、彼との間に2人の子どもを儲けたステラ・モリス(Stella Morris)との会話に基づいて、ジュリアンの精神状態についての報告書を作成した。
ヴァネッサ・バライツアー(Vanessa Baritser)判事が1月に下した米国の身柄引き渡し請求に関する
判決で明らかにしたように、コペルマンはジュリアンを重度の再発性うつ病性障害と診断し、時には幻覚などの精神病的特徴を伴い、頻繁に自殺願望を抱くこともあると述べた。
さらに、睡眠不足や体重減少、集中力の低下、泣き出しそうな状態が続き、疲れ果てるまで独房内を歩き回り、頭を殴ったり、壁にぶつけるなど、激しい興奮状態に陥った。
アサンジはコペルマンに、自分の人生は生きるに値しないと考えており、「1日に何百回も」自殺について考え、自傷行為や自殺をしたいという「絶え間ない欲求」があると教授に語った。さらに自殺の仕方についても事細かに説明しているが、「それは十分実行可能だ」と教授は考えた。
「サマリタンズ」(精神的苦痛や対処に苦しんでいる人、自殺の危険がある人に精神的支援を提供する英国の慈善ヘルプライン)への電話は「事実上」毎晩のようにかけ、連絡が取れない時には、アサンジは孤独感を紛らわすために自分の太ももや腹部を切りつけていた。
コペルマンは、アサンジが米国で長期間独房に拘束された場合、彼の精神衛生は「実質的に悪化し、持続的な重度の臨床うつ病と不安障害、PTSD、自殺願望の深刻な悪化が生じる」と結論付けており、特に英国で得られるさまざまな「保護要因」が米国にはないためであるとしている。
バライツァ判事の判決文から:
「例えば、彼はほぼ毎日パートナーと電話で話し、監禁前には彼女と子供たち、様々な友人、父親、その他の親族が訪ねてきていた...[コペルマンは]、非常に高い自殺のリスクを示すことが分かっている危険要因が山のようにあると考えた。彼は「米国への引き渡しが迫れば、アサンジ氏は自殺する方法を見つけると、精神科医としてこれ以上ないほど確信している」と述べている。」
この教授の報告は、引き渡し命令が却下される根拠となった。これまでバライツァ判事が判決を下した事件の
96%引き渡しを認めていることを考えると、驚くべき結果である。
それにもかかわらず、彼女は司法省が提出した他のすべての議論と告発を受け入れた。
事実上、多くのまったく正当なジャーナリズム活動を犯罪とし、どの国の国民も、米国の法律に違反の疑いがあれば米国に送還されることができるという冷酷な前例を作り、したがってワシントンの法的管轄が世界規模で行われていることを暗に示したことになる。
アサンジに関するオーストラリア外務省と米国務長官との話し合いが全面的に編集される この判決を受けて、オーストラリアのシャドー司法長官マーク・ドレフュス(Mark Dreyfus)は
力強い声明を発表し、特にジュリアンの「不健康」を考えると「この問題は十分に長く引きずっている」と野党労働党は考えていると宣言し、モリソン政権に対して「この問題にけじめをつけて、米国政府にこの問題を終わらせるよう促すためにできることをする」よう要求している。
これに対して豪外務省は、役所独特の簡潔で魂を欠いた
メモを発表した。オーストラリアは「この事件の当事者ではなく、現在進行中の法的手続きを尊重し続ける」とだけ述べ、ジュリアンがオーストラリア領事館からの援助の申し出を何度も拒否したという以前の誤った主張を蒸し返した。
オーストラリア政府は、6月にアイスランドの出版社Stundinが、2020年9月にアサンジに対して起こされた「
上乗せ起訴」が、シッギ・ソーンダーソン(Siggi Thordarson)という男の、虚偽とわかっている証言を基になされた
詳しい経緯を明らかにしても、ただ無言だった。アサンジとウィキリークスの他の人間が「ハッカーを募集してコンピュータ侵入を行うことに同意した」との起訴内容だ。シッギは 詐欺師、社会病質者、そして小児愛で有罪判決を受けたことがある。彼は以前ウィキリークスから巨額の資金を横領し、創設者を内部から弱体化させるためにFBIに採用された人物である。
オーストラリア政府がアサンジの起訴を知っていたと考えるには十分な理由がある。2020年7月、ペイン外相は「二国間協議の主要な場」である
豪米閣僚協議大会でマイク・ポンペオCIA長官と
会談している。
トランターは二人が同じ場所に居合わせることになった詳細について情報の自由を要求したが、彼女が受け取った文書は完全に編集されたものだった。
2021年5月のペイン外務大臣とアントニー・ブリンケン(Anthony Blinken)国務長官のトップ会談に関するファイルも同様である。
この会談でアサンジが話題になったことはほぼ確実だ。豪外務省の
言い分:
①ペイン外務大臣が9月にブリンケンに再会した際に「この状況について提起した」、
②ペイン外務大臣自ら、2020年2月にキャンベラを訪れたドミニク・ラーブ(Dominic Raab)英外相とアサンジの処遇に関するオーストラリアの「期待」を具体的に
議論した。
トランターはこの会談に関する記録も要求したが、何も存在しないと言われている。
ジュリアンが逮捕されたとき、モリソン首相は「他のオーストラリア人と同じ待遇を受ける」と
断言した。
「オーストラリア人が海外に渡航し、法律上の問題に直面した場合、その人は当該国司法制度に向き合うことになります。犯したとされる犯罪がどのようなものであるかは関係ありません。そんな風に現在の制度は動いています」とモリソン首相は語った。
しかし、トランターがオーストラリア司法長官事務所から入手した2019年4月5日付の内部メールは、徹頭徹尾アサンジに対する侮蔑の念で貫かれたものだった。メモには「参考までに:アサンジは立ち退きを迫られるかもしれません。彼の弁護士団が彼に対するオーストラリアの責任について(
あまり説得力のない)[強調は筆者]主張をするかどうかはわかりませんが、注意する価値はあると思いました」とはっきり書かれている。
例によって、オーストラリア当局はアサンジの引き渡しが迫っていることについて公の場で何も語っていない。
アサンジの扱い、そして彼の投獄、刑務所の状況、彼を執拗に追跡するためにワシントンが行ったあからさまな手続き上の虐待、ウィキリークス創設者であるアサンジを誘拐and/or殺害するCIAの計画に対する怒りが全くないことは、2018年9月にスパイ容疑の疑いで10年間
イランに投獄されたオーストラリア系英国人の学者、カイリー・ムーア-ギルバート(Kylie Moore-Gilbert)に対するオーストラリアの対応と大きく乖離している。
秘密裏に、オーストラリア外交団がほぼ2年間必死に動き、カイリー・ムーア・ギルバートは解放された。結果的に、彼女はタイにいる3人のイラン人受刑者(うち2人は2012年に
バンコクで起きた爆破テロ事件に関連して有罪判決を受けた)と交換されたことになる。ペイン外相は声明の中で、ムーア・ギルバートが「(外交団の)プロフェッショナルで断固とした働き」の結果、ようやく解放されたことに安堵感を示し、オーストラリア政府は彼女が拘束された理由を「一貫して認めなかった」と述べている。
一方、オーストラリア政府は、アサンジに対するアメリカ政府の立場を一貫して強化してきた。実際、オーストラリア政府関係者は時として、米国政府よりもさらに先に進んで、アサンジと彼の行動を公に非難してきた。
2010年12月、当時のジュリア・ギラード(Julia Gillard)首相は、ウィキリークスが米国の外交文書を公開したことは、アサンジが「違法行為を行っている」ことを意味すると宣言し、連邦警察が「関係者の犯罪行為の可能性について助言する」ために捜査を行っていると発表した。しかし、オーストラリア政府に対して公平であろうとすれば、そこで選ばれた代表者は事実上、この問題に対して選択の余地がないのかもしれない。
調査ジャーナリストのダンカン・キャンベル(Duncan Campbell)に
よると、ファイブ・アイズの各メンバー国は理論上、諜報機関が収集した個人、グループ、組織に関する情報提示の要求に対して別のメンバー国が拒否する権利を有している。しかし、キャンベルの説明では、「オーストラリアやニュージーランドのような後輩挌のメンバー国であれば、決して拒否することはない。」たとえ、表向きのメンバー国となっている国がその機密情報をどう扱うか懸念されるような状況であっても、である。
トランターが入手し、The Grayzoneに提供した文書には、オーストラリアというファイブ・アイズの後輩挌メンバー国の国民の一人が、長年にわたって彼を追ってきた帝国権力を裏切ったことが、あからさまに示されている。ジュリアン・アサンジの権利がことごとく侵害される中、オーストラリア政府もその加害者の側にいたようだ。
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