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外国兵士の軍事訓練。国防総省がひきおこす政権転覆・クーデター

外国兵士の軍事訓練。国防総省がひきおこす政権転覆・クーデター
<記事原文 寺島先生推薦>
The Pentagon Has a Small Coup Problem
The Nation 2017年8月11日
ニック・タース(Nick Turse)著
国防総省が100以上の国の軍人を訓練し、その後その軍人たちが自国でクーデターを企てていた。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年8月25日


エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領(中央)2013年

 「勝て!」。米軍の話になるとホワイト・ハウスから飛んでくる決まり文句はこれだ。「軍には戦争を防ぐために必要な道具を与えよう。しかし要請があって、戦争をすることも出てくるだろう。その時すべきことはただ一つだ。何か分かるか?勝利だ!勝利だ!」。今年(2017年)初旬、新空母ジェラルド・R・フォード号に搭乗した際、トランプ大統領はこう叫んだ

 しかし第二次世界大戦以来、米国の政策が戦争を防ぐことも、戦争を勝利に導くこともなかった。第二次世界大戦以来、米国はずっと、紛争や介入に巻き込まれてきた。しかし、勝利を収めたことは本当にほとんどなかった。特に9-11以後の世界ではその流れが顕著だ。アフガニスタンでも、イラクでも、ソマリアでも、フィリピンでも、リビアでも、イエメンでも、人命や税金を犠牲にしても、勝利を手にしたことは全くなかった。

 その中で、アマドゥ・サノゴは、米軍が完全な勝利を手にした稀なケースだ。ただし、サノゴは米国民ではなく、その成功は束の間のものだったのだが。サノゴはテキサスで英語を学び、バージニアで米国海軍から指導を受け、アリゾナで諜報活動の手ほどきを受け、ジョージアで陸軍歩兵の基本的な訓練を受けた。地元のマリに帰ってから、この若き軍人サノゴは、米国に滞在し、学び、訓練を受けたことで、周囲から深く尊敬されることになった、と報じられている。

 2012年3月、サノゴは自身の人気と技術を駆使してクーデターを主導し、選挙で選ばれたマリ政府を転覆させた。「米国は素晴らしい軍隊を持つ偉大な国だ。米国で学んだすべてをこの地で実現させるつもりだ」とサノゴは、マリ軍の実力者の地位にいた際、ドイツのDer Spiegel誌にこう語っていた。(最終的には、サノゴは権力を失い、逮捕され、2016年には、“誘拐と暗殺に連座した”ことで起訴された

 9-11以来、米国は2千5百億ドル以上を使って、サノゴのような外国の軍人や警官に対する訓練を行ってきた。米国のこの取組は年々広がりを見せ、今では兵士や保安員20万人に援助し、支援を与えている。2015年には、154カ国から来たその中のほぼ8万人が、「外国軍人訓練(FMT)」という正式名称で知られている訓練を受けた。

 FMTの2つの主要な計画(ひとつは国際軍事教育及び訓練(IMET)、もうひとつは対テロ団体計画(CTFP))の表向きの目的は、「国際間の平和と安全保障」を促進し、外国の軍人たちの「国際的に通用する人権意識」を高めることだ。しかし本音のところでこの計画が重きを置いているのは、世界中の国々と米国との同盟関係を強化し、米国の意を汲む国々を増やすことだ。ただし、その目的が果たされているという証拠はほとんど示されていないのだが。 しかし、2017年7月に発表された、1970年から2009年までの間のデータを分析した論文によると、FMT計画により授けられた技術の中で、少なくともひとつの特殊なタイプの軍事行動は効果的に伝わったという。 「米国で訓練を受けた外国の軍人と、軍によるクーデターの企ての間には強い相関関係があることが分かった」。ピース・リサーチ誌にこう記述したのは、米国海軍大学校のジョナサン・キャバリー氏と トリニティ・カレッジ・ダブリンのジェシー・サベッジだ。

問題児たち

 200近くある個別のプログラムを通して、米国国務省と国防総省(DoD)は、「安全保障協力」や「同盟関係の構築」と呼ばれるものなどの、外国の軍隊への援助活動の取り組みを行っている。2001年に国防総省は、安全保障援助基金のうちの17%を出資していた。 2015年までにはその割合は、ほぼ60%までに急騰している。このことをよく示しているのが、9-11の後で創設された「対テロ団体計画(CTFP)」である。この計画の大部分は国防総省により運営されているが、この計画が重きを置いているのは、対テロリズムの名のもとに、同盟国の軍隊の中堅及び上級軍人向けの訓練である。一方、国務省が後援しているのは、CTEPよりも歴史があり、より大きい組織であるIMETの方である。なおIMETの実際の訓練は、国防総省が執り行っている。

 IMET計画のもと、サノゴのような外国の軍人は、米国に赴き、授業を受け、軍隊学校や軍事基地で指導を受ける。「IMETが創設されたのは、外国の軍隊が、①米国との関係を強化すること②米国の軍の設備を学ぶこと③軍人としての職業意識を高めること④軍内での民主主義的な価値観を植え付けることだ」。ジャーナリストのジョシュア・クルランツィックは、これらの外国の軍人訓練計画を再考する目的でまとめられた外交問題評議会の2016年の手記でこう記していた。

 しかし、今年(2017年)初旬に公表された調査書において、「センター・フォ・パブリック・インテグリティ」のローレン・チャドウィックが書いた内容によれば、1985年から2010年までの間に、IMETで訓練を受けた少なくとも17名の外国の高官(うち5名は将軍)が、その後犯罪や人権侵害を理由に、告訴され、有罪判決を受けた場合もあったことが、米国政府の公式文書からわかった、とのことだ。NPOである「センター・フォー・インターナショナル・ポリシー」によるオープン・ソース論文(訳注:書き換えや利用が自由にできる形態の論文のこと)によれば、それ以外に米国で訓練を受けた33名の外国の軍人が人権侵害の罪を犯した、とのことだ。 さらに専門家によれば、米で訓練を受けた上で罪を犯した軍人の数は、実際はもっと多くなるそうだ。というのも、IMETというのは、数多い安全保障援助活動の中で、唯一人権侵害の報告を義務化しているとこだからだ。
 
 「ピース・リサーチ」誌に掲載された論文において、キャバリーとサベッジがIMETに注目し続けているのは、この計画が軍人に対して、「国際的に通用する文民統制の考え方を推奨することを明確に重点化している」計画だからだ。実際米国による外国の軍人援助計画においては、民主主義的な価値観と国際的に通用する基準を身につけさせることの重要性は言うまでもないことだ。それなのに米国で訓練を受けた人々のリストを見れば、西アフリカのブルキナファソのイザック・ジダも、ハイチのフィリップ・ビアンビも、西アフリカのガンビアのヤヒヤ・ジャメも、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシーも、パキスタンのムハンマド・ジア=ウル=ハクも、IMEPで訓練を受けた、ホンジュラスの2009年のクーデターのリーダーも、 そして言うまでもなくアマドゥ・サノゴも、民主主義的価値観や良い統治とは別のものを身につけたとしか思えない。「私たちが必要最低限の時間内で重点的に伝えたものは、価値観や倫理観や軍人としての魂などでは多分ありませんでした」と、かつてアフリカアメリカ軍の司令官であったカーター・ハムは、サノゴがクーデターを企てた後に語っていた。「わたしが思うに、[訓練で]重点が置かれていたのは、戦術面や技術面でした」

 キャバリーが警告しているのは、米国政府が自国の外交政策や国内政策の肝まで外国に輸出してしまわないよう注意すべきだ、ということだ。というのも近年の米国政権は、国務省への予算を削って国防総省に資金をつぎ込んでいることがあまりにあからさまなので、軍の退役大将たちが、国務省にお金を回すよう政権に懇願行わざるを得なかったくらいだ 。キャバリー氏の説明はこうだ。「簡単に言えば、市民社会の内部には、複数の勢力を用意しておく必要があるのだ。それは、軍を補完し、時には軍の力に均衡する勢力が必要だからだ」

 キャバリーとサベッジは、1970年から2009年までに世界各国で、軍人によるクーデターが275件あったとしている。「そのうち165件において、当該国の軍人たちがクーデターの1年前に、IMETかCTEPの何らかの訓練を受けていました。このような訓練を受けた全ての国に訓練を受けた年数をかければ、1年間で3274カ国が訓練を受けたという計算になります。そのうち165カ国でその次の年に、政権転覆運動が起こったということです。その確率を計算すると5%になります。この数値はとても高いと言えます。というのは、クーデターというものはそうそう起こることではないからです」。キャバリーは、ニュースサイトのトムディスパッチの取材でこう答えている。「米国で軍人が訓練を受けていなかった国の数に年数を掛けた総合計は4101になりますが、そのうち110件でクーデターが起こっています。割合でいうと2.7%になります」

 2014年のガンビアでは、(1994年に、米国軍人・警察官訓練学校の卒業生のヤヒヤ・ジャメが権力を握ったようには)米国による訓練を受けた勢力が勝利を収めることはできなかったが、勝利した側の軍事政権は米国の訓練と繋がりがある。「上手くいったクーデターというのは、IMETによる訓練や、資金と強く繋がっている」とカーバリーとサベッジは記述している。両氏が明らかにした内容によれば、米国で訓練を受けた軍人たちにより、165件のクーデターが起こされ、うち72件が政権転覆に成功したとのことだ。

大惨事

 米国が大規模に行っている外国の軍人に対する訓練計画は、絶望的に破綻していることを示す重大な証拠がある。2013年の国務省の諮問機関からの報告によれば、米国による他国への安全保障援助活動には効果を正しく判定する手段がなく、体系だった戦略もない、とのことだった。その報告では、この計画の「理解しがたい」体系を、「様々な目論見をもつ様々な団体がごちゃごちゃになった慈善活動のような助成金提供活動」だと揶揄している。

 米国のシンクタンクのランド研究所による2014年の米国の安全保障協力(SC)に関する分析によれば、「SCとアフリカや中東の国々の政権の不安定さの変化との間には統計的に有意な相関関係はない」とのことだ。さらに、米国特殊作戦軍合同特殊作戦大学からの報告は、同盟関係の強化に向けたこの取り組みは、「膨大な資源を消費してその見返りは僅かだった」と 評していた。同年、議会調査局による分析によれば、「国家安全保障戦略においても、軍事作戦においても、[同盟関係の強化は]ますます重要視され、中心課題とされているのだが、外国の治安部隊を打ち立てることが米国の安全保障にとって具体的な益になるだろうという推測は、まだ確かめられていない仮定のままだ」とのことだった。

 「[対テロ]安全保障援助計画の目的を定める標準的な指標は存在しない。同盟関係を強化するための外国の軍人訓練計画や、これらの訓練計画が、米国の外交政策の目的を深めることに適応しているかどうかの見極めについては、特にそうだ」とシンクタンクの「新アメリカ安全保障センター」の2016年の報告に記述されていた。「さらにこのような計画が導入されればどのような効果があるかを測定する指標はほとんどない」とも記述されていた。外交問題評議会において、IMETに関する2016年の報告書を書いたクルランツィックは、この取組は再検討する必要が大いにあると指摘している。 クルランツィックによれば、「この計画には、どの国の軍の幹部がIMETに参加したかを追跡するシステムがない。加えて、この計画では、民主主義的価値観や、軍隊における文官統制の大切さを効果的に促進することはできていない」 とのことだ。

 論文を見ずとも、広域中東地域での米国による軍人訓練の取り組みは何十年もの間、うまくいっていないことが明らかだ。米国が打ち立てたイラク軍が人数の少ないイスラム国の軍と対峙して崩壊したことや、リビアに新しい軍隊を作ろうとした努力が無駄に終わったことや、5億ドルかけてシリアの反乱軍を訓練し、軍装備を整えようという取り組みが失敗したことや、しばしば無能で名前だけで実体がなかったり逃走しがちな兵士で溢れたアフガニスタン軍など、外国の軍隊を建設し、強化させようという米国による大規模な取り組みは、何度も失敗し、焼失している。

 キャバリーとサベッジによれば、米国本土で行われる他国民に対する軍事訓練の意義のひとつになりそうな点は、外国の軍人の「人的資本」を増やしている点だという。具体的には、小隊戦術や戦術計画といった軍人としての職業能力を向上させたり、米国で訓練を受けたことで軍人たちの自国における「箔」が上がったりするというのだ。さらにこの訓練計画には、米国が行っている他の援助活動とは違っている。それは他の援助活動では、各国に資源を次々と送ることで、各国政権がクーデターを起こされないことが可能になっているのだ。その資源を使って各国政権は、国内で敵になりそうな勢力に賄賂を贈ったり、その勢力と均衡を保てるような安全保障部隊(例えば大統領親衛隊など)を育成したりクーデターを防ぐ対策が可能になっている。しかしFMTにはそのような対策はない。キャバリーはニュースサイトのトムディスパッチに対してこう答えている。「政権の組織や規範がきちんと整えられていない国の内部に存在する、武器を所持していて、一定の同胞意識のある集団に資本を提供すれば、政権は不安定化する状況をつくることになるのです。このような政権の不安定化が進んだ場合、政権を完全に覆すようなクーデターが起こることもあるのです」

数と力

 外国の軍との共同作戦の話になれば、米国には厄介な過去がある。米国には、ラテン・アメリカでも中東でも、残虐行為に関わった軍を守り、後援し、育成してきた長い歴史がある。ここ数ヶ月の話だけでも、米国が訓練したり、援助した軍が、アラブ首長国連邦や、シリアや、カメルーンや、イラクで、囚人を虐待したり、処刑した報告が上がってきている。

 米国で訓練を受けたブルキナファソのイザック・ジナや、マリのアマドゥ・サノゴが自国の政権を転覆させるのに成功したのは、ほんの僅かな期間だった。 ガンビアのヤヒヤ・ジャメ(権力の座に22年間就いた後に亡命した)や、元米国の軍大学生であるエジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領は、有力者として彼らよりもずっと長く自国で君臨した例である。

 キャバリーとサベッジによれば、米国が軍事訓練を行った外国の軍隊は、「軍人を受けた国で、軍が後援するクーデターの動きが起こる確率が2倍になる」とのことだった。さらに米国が資金を使えば使うほど、多くの軍人がIMETの訓練を受ければ受けるほど、クーデターの起こる確率は高まる、とのことだった。

 2014年に米国は、IMETによるマリの援助活動を再開した。それはサノゴによるクーデターがあったために1年間中断されていたのだ。そして援助金も、少しではあるが、3万ドル上乗せされた。しかし西アフリカの国ガンビアは、2012年に起こされたクーデターの痛みからまだ立ち直っておらず、その5年後の今でも反乱に苦しんでいる。その反乱を、サノゴとサノゴの後継者と、仏米が支援している軍事作戦で抑えることが出来ないままだ。 マリ反乱軍人組織が拡大し、広がっていく中で、米国はマリの正規軍の軍人に対する訓練に資金をつぎ込み続けている。 サノゴが権力を掌握した2012年に、米国は、米国内でのマリの軍人のための訓練に6万9千ドルの資金を使った。昨年(2016年)その額は、73万8千ドルに上っている。

 この20年間の大半の期間で、アフガニスタンでも、イラクでも、イエメンでも、パキスタンでも、ソマリアでも、シリアでも、米国によるドローン攻撃や、奇襲攻撃や、大規模な占領などの軍事行動が行われてきたが、それで得られた戦果は小規模の戦略的勝利のみで、その後膠着状態が長く続いている。(死や破壊がそれに伴って続いていることは言うまでもない)。これらの国々(マリ、南スーダン、リビア、フィリピン)の軍隊の訓練や援助活動は、後退や失態や失敗に悩まされ続けている。

 トランプ大統領が約束しているのは、戦争を「防ぎ」、戦争に「勝利」するのに必要な軍事的「道具」を準備することだ。トランプは、「世界で最も洗練された、軍事的資源や、軍人訓練や、軍人設備」を用意すると言いたいのだろう。カーバリーとサベッジの論文が示しているのは、 国防総省は、何千億ドルもつぎ込んで非生産的な結果しか得られていない、この計画を分析し直したほうが、ずっと効果が得られるだろう、ということだ。こんな計画では、ガンビアのヤヒヤ・ジャメや、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシーくらいしか「勝利」を手にできなかったのだから、ということだ。

 キャバリーはこう説いている。「米国の戦士たちが他国の戦士たちの訓練に力を入れている。それだけのことだ。クーデターなどといった二次的な効果は、訓練の際に考慮には入れられていない。だからこそ、米軍による他国軍との協力活動は、他のもっと激しい作戦と同様に、戦略的文脈の中で考慮されるべきなのだ。このような文脈の考慮が現政権には大きく不足しているのだ。いや、これまでの政権においても、そんな考慮がなされていた痕跡はそうなかったのだが」

Nick Turse is a fellow at Type Investigations and the author of Next Time They’ll Come to Count the Dead: War and Survival in South Sudan.



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