ワシントンがシリア後に目指すところ
Here's where Washington's focus will shift to after Syria
RT Op-ed 2019年10月18日
(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年10月29日、updated 2019年10月30日)
<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/471254-china-pacific-syria-trump-withdrawal/

© Global Look Press / US Navy
ワシントンを落胆させるのに十分なことであるが、中国はインドー太平洋地域でさらに勢力を拡大している。アメリカ大統領が中東から手を引く振りをしているが、中国にをさらに利益をもたらすニュースが増えるだろう。
アメリカが、中東やシリア情勢から目を逸らすように(少なくとも表面上は)見える理由は、もっと時間や資源をつぎこむべき新しい戦場を見つけたからだ。それはインドー太平洋地域だ。そんな状況下で、中国と太平洋地域との関係が、ふたたび新聞の見出しになり始めていることに気づいている人もいるだろう。
最近のニュースで声高に聞こえてくるのは、太平洋地域における北京の動向と、今後の台湾問題への不安という長く続く関係のねじれだ。いくつかの報告によると、中国は2023年ソロモン諸島の首都ホニアラで行われる太平洋大会のためのスタジアムに何百万もの資金を提供することに同意したそうだ。
不幸にも、台湾が前もってスポーツ複合施設への資金提供を表明していたのに、それはすべて駄目になってしまった。つい最近、ソロモン諸島は北京からの資金提供(ある報告では7億3千万ドル)を受けるかわりに、台湾との関係を切った。キリバスも、すぐ後に続き、台湾と国交を結んでいる国はたった15カ国になってしまった。北京が支配力を増し、資金提供を申し出る中で、ツバルや残る3つの太平洋の国々も、後に続くだろうと考えざるを得ない状況になっている。
そのすぐ後、アメリカや台湾と外交が残っている太平洋の島国が、台湾を支え、安心させるため、台北で太平洋対話を開催した。面白いことに、アメリカは台湾を「ワシントンの長年の友人」と呼び、「台湾と太平洋地域の島国との関係を強固にサポートする」と表明した。アメリカのこの表明を本気だと見ることは難しい、公式見解では、アメリカは台北を正式に認めない「一つの中国」政策を支持しつづけているからだ。しかし再び、この公式見解が混ぜ返させられるのは時間の問題かもしれない。
時を同じくして、中国―太平洋諸島国家の経済発展および協力フォーラムが、今週の日曜日サモアの首都アピアで開催される。アメリカへの忠誠心厚い同盟国のオーストラリアは、高見から傍観していて、ご想像の通り、中国の最近の勢力拡大にますます大きな関心を示している。中国政府は、ここ数週間のこの地域での成功にしたがって、フォーラムに派遣するには、国家ナンバー3の国務院副総理胡春華氏がふさわしいと見なした。オーストラリアのローウイ協会所長のジョナサン=プルカイはこう言っている。「中国のこんな地位の高い人が、この地域にくるというのは、すごいことだ。手ぶらで来るとは思えない。」
この訪問につづいて、国務院副総理は、アジアー太平洋地域の地政学において重要な役割を担うフィリピンにも訪問する。
真偽のほどはともかく、これまでアメリカ主導の一極支配システムが、ますます人気がなくなり、離れ始めていると、中国は考えている。北京の影響力が、中東や、アフリカ、さらには南アメリカにまで広がっていく中で、アメリカの覇権を減退させる一番の近道は、高い確率で、インドー太平洋地域にあると思われる。今年初旬の中国の防衛白書にはこうある。「アジアー太平洋地域の国々は、自分たちがますます、共通の運命を持つコミュニティーの一員であることに気づき始めている」と。
言い換えれば、もはやアメリカとその同盟国に命令されない「共有された運命」ということだ。中国がこの現実に近づくにつれ、中国の鎧のあちこちにへこみができているというのは、もっともなことだ。一番明白なアメリカによるへこみは、米中貿易戦争だ。それは最近の取り決めで明らかに解決されたのだが、(未だ未解決だ)。もう一つの顕著な出来事は、西側が声高に支援している最近の香港での抗議活動だ。もし中国が、フランス、ましてやアメリカでの抗議活動を支援したとしたら、中国は、外国政府からの激しい干渉にさらされて、糾弾されるのは確実だ。
本題に話を戻すと、今のところ、ニューヨークタイムズは、「中国は太平洋の島をリースし、地元の人はびっくり」というタイトルの速報を出したばかりだ。私の見るかぎり、ニューヨークタイムズがインタビューをしたのは、たった一人の住民だ。
ソロモン諸島やキリバスが、台北との関係を切ることを決定してすぐに、北京は最近、南太平洋のツラギ島と取引を結んだ。ニューヨークタイムズによると、取引には漁業基地や警察の指令センター、「空港の建築や増進」の提供が含まれていた。本質的には、その取引は「どんな発展にも対応できる経済特区や他の産業の」発展とひきかえにしたツラギ島と周りの島々のリースである。
しかし、だれもあまり注目していないようだが、中国は実はアジアー太平洋地域に一番お金を提供している国ではない。
ローウイ協会によれば、オーストラリアが一番の提供国で、そのすぐ次がニュージーランドだ。中国が3番目の提供国で、アメリカと日本がその後に続いている。実際、日本が太平洋地域に2011年から2017年の間に10億ドル以上を提供しているが、その貢献度が過小評価されていると、ローウイ協会は論じている。それでも、その地域を支配しようとか、太平洋の島国を借金地獄に陥れようとか、その地域に戦火をもたらそうとしていると、日本に憤りを感じている人は誰もいない。おそらく、日本はきっとそんなことはしない。そんなことを禁じている憲法があるから。(この状況は、永遠には続かないようではあるが。)
今のところ、アメリカは(おそらくだが)シリアに不法占拠していた軍を引き上げるようだが、しかしそれは、この地域での最終対決の準備のため、軍は再結成され、増強されることに間違いない。一例をあげれば、今月初旬、アメリカ海軍は、中国に対して力を見せつけるため、探索困難な新型の防空軌道ミサイルの実験を太平洋で行った。さらにアメリカは「太平洋防衛」 という名で知られている12,000人規模の軍事訓練を準備しており、アメリカがフィリピンやタイ、マレーシア、インドネシア、ブルネイとともに行動していることを見せつけるつもりだ。今でも台湾と外交を結んでいる、マーシャル諸島やパラオのような国も参加するかもしれない。
この地域全体で、アメリカは合計85.000人の軍隊を恒常的に配置している。だからこそ、メディアがまともさを取り戻して、中米間で戦争が起こるシナリオについての報道を目にすることが多くなったのだ。それでも、今日でさえまだ、私は「戦争が起こってしまったらどうなるか」ではなくて、「どうやったら戦争を回避できるのか?」について議論しようとしているメディアを探そうと苦労している。
たとえば、中国がアメリカの近くの地域に85,000人の軍を置いていないことを指摘せざるを得ない。中国は、航行の自由作戦を通して、アメリカ本土近辺に海軍の力を見せつけることは普通しないし、陸上であれ海上であれ、北アメリカ周辺で大規模な軍事訓練を行ったりはしない。つまり、もし、このまま戦争がおこったとしたら、後生の歴史書に、どちらの国が戦争に貪欲であったと記載されるかは明らかだということだ。
歴史的、地政学的に見て、ツラギ島のような地域の重要性は、言い過ぎて言い過ぎることはない。第2次大戦の結果は、太平洋地域の力のバランスの中で引き起こされたのだ。それでも、まだ、今になっても、世界を可能な限りコントロールしようと企んでいる強大国にとって、この地域がどれほど重要な意味があるかが見落とされている。大戦争が起きてはじめて、このことを実感する愚は避けるべきだ。我々は、もうすでに、一度そんな大戦争を経験したのだから。
![]() ダライアス・シャタマセビは、ニュージーランドを拠点として活動している法律や政治の分析者である。中東やアジアや太平洋地域におけるアメリカの外交政策が専門。彼は2つの国際裁判管区において、正式な弁護士の資格を持つ。 |
RT Op-ed 2019年10月18日
(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年10月29日、updated 2019年10月30日)
<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/471254-china-pacific-syria-trump-withdrawal/

© Global Look Press / US Navy
ワシントンを落胆させるのに十分なことであるが、中国はインドー太平洋地域でさらに勢力を拡大している。アメリカ大統領が中東から手を引く振りをしているが、中国にをさらに利益をもたらすニュースが増えるだろう。
アメリカが、中東やシリア情勢から目を逸らすように(少なくとも表面上は)見える理由は、もっと時間や資源をつぎこむべき新しい戦場を見つけたからだ。それはインドー太平洋地域だ。そんな状況下で、中国と太平洋地域との関係が、ふたたび新聞の見出しになり始めていることに気づいている人もいるだろう。
最近のニュースで声高に聞こえてくるのは、太平洋地域における北京の動向と、今後の台湾問題への不安という長く続く関係のねじれだ。いくつかの報告によると、中国は2023年ソロモン諸島の首都ホニアラで行われる太平洋大会のためのスタジアムに何百万もの資金を提供することに同意したそうだ。
不幸にも、台湾が前もってスポーツ複合施設への資金提供を表明していたのに、それはすべて駄目になってしまった。つい最近、ソロモン諸島は北京からの資金提供(ある報告では7億3千万ドル)を受けるかわりに、台湾との関係を切った。キリバスも、すぐ後に続き、台湾と国交を結んでいる国はたった15カ国になってしまった。北京が支配力を増し、資金提供を申し出る中で、ツバルや残る3つの太平洋の国々も、後に続くだろうと考えざるを得ない状況になっている。
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そのすぐ後、アメリカや台湾と外交が残っている太平洋の島国が、台湾を支え、安心させるため、台北で太平洋対話を開催した。面白いことに、アメリカは台湾を「ワシントンの長年の友人」と呼び、「台湾と太平洋地域の島国との関係を強固にサポートする」と表明した。アメリカのこの表明を本気だと見ることは難しい、公式見解では、アメリカは台北を正式に認めない「一つの中国」政策を支持しつづけているからだ。しかし再び、この公式見解が混ぜ返させられるのは時間の問題かもしれない。
時を同じくして、中国―太平洋諸島国家の経済発展および協力フォーラムが、今週の日曜日サモアの首都アピアで開催される。アメリカへの忠誠心厚い同盟国のオーストラリアは、高見から傍観していて、ご想像の通り、中国の最近の勢力拡大にますます大きな関心を示している。中国政府は、ここ数週間のこの地域での成功にしたがって、フォーラムに派遣するには、国家ナンバー3の国務院副総理胡春華氏がふさわしいと見なした。オーストラリアのローウイ協会所長のジョナサン=プルカイはこう言っている。「中国のこんな地位の高い人が、この地域にくるというのは、すごいことだ。手ぶらで来るとは思えない。」
この訪問につづいて、国務院副総理は、アジアー太平洋地域の地政学において重要な役割を担うフィリピンにも訪問する。
真偽のほどはともかく、これまでアメリカ主導の一極支配システムが、ますます人気がなくなり、離れ始めていると、中国は考えている。北京の影響力が、中東や、アフリカ、さらには南アメリカにまで広がっていく中で、アメリカの覇権を減退させる一番の近道は、高い確率で、インドー太平洋地域にあると思われる。今年初旬の中国の防衛白書にはこうある。「アジアー太平洋地域の国々は、自分たちがますます、共通の運命を持つコミュニティーの一員であることに気づき始めている」と。
![]() ALSO ON RT.COM China sees new era of ‘shared destiny’ with US no longer in the driving seat |
言い換えれば、もはやアメリカとその同盟国に命令されない「共有された運命」ということだ。中国がこの現実に近づくにつれ、中国の鎧のあちこちにへこみができているというのは、もっともなことだ。一番明白なアメリカによるへこみは、米中貿易戦争だ。それは最近の取り決めで明らかに解決されたのだが、(未だ未解決だ)。もう一つの顕著な出来事は、西側が声高に支援している最近の香港での抗議活動だ。もし中国が、フランス、ましてやアメリカでの抗議活動を支援したとしたら、中国は、外国政府からの激しい干渉にさらされて、糾弾されるのは確実だ。
本題に話を戻すと、今のところ、ニューヨークタイムズは、「中国は太平洋の島をリースし、地元の人はびっくり」というタイトルの速報を出したばかりだ。私の見るかぎり、ニューヨークタイムズがインタビューをしたのは、たった一人の住民だ。
![]() READ MORE: Not great, not terrible: US tests refurbished missiles after admission nuclear refit lagging behind |
ソロモン諸島やキリバスが、台北との関係を切ることを決定してすぐに、北京は最近、南太平洋のツラギ島と取引を結んだ。ニューヨークタイムズによると、取引には漁業基地や警察の指令センター、「空港の建築や増進」の提供が含まれていた。本質的には、その取引は「どんな発展にも対応できる経済特区や他の産業の」発展とひきかえにしたツラギ島と周りの島々のリースである。
しかし、だれもあまり注目していないようだが、中国は実はアジアー太平洋地域に一番お金を提供している国ではない。
ローウイ協会によれば、オーストラリアが一番の提供国で、そのすぐ次がニュージーランドだ。中国が3番目の提供国で、アメリカと日本がその後に続いている。実際、日本が太平洋地域に2011年から2017年の間に10億ドル以上を提供しているが、その貢献度が過小評価されていると、ローウイ協会は論じている。それでも、その地域を支配しようとか、太平洋の島国を借金地獄に陥れようとか、その地域に戦火をもたらそうとしていると、日本に憤りを感じている人は誰もいない。おそらく、日本はきっとそんなことはしない。そんなことを禁じている憲法があるから。(この状況は、永遠には続かないようではあるが。)
今のところ、アメリカは(おそらくだが)シリアに不法占拠していた軍を引き上げるようだが、しかしそれは、この地域での最終対決の準備のため、軍は再結成され、増強されることに間違いない。一例をあげれば、今月初旬、アメリカ海軍は、中国に対して力を見せつけるため、探索困難な新型の防空軌道ミサイルの実験を太平洋で行った。さらにアメリカは「太平洋防衛」 という名で知られている12,000人規模の軍事訓練を準備しており、アメリカがフィリピンやタイ、マレーシア、インドネシア、ブルネイとともに行動していることを見せつけるつもりだ。今でも台湾と外交を結んでいる、マーシャル諸島やパラオのような国も参加するかもしれない。
![]() ALSO ON RT.COM Catalonia ‘separatists’ bad, HK ‘pro-democracy protesters’ good: Orwell’s 1984 becomes user’s manual for Western ‘free media’ |
この地域全体で、アメリカは合計85.000人の軍隊を恒常的に配置している。だからこそ、メディアがまともさを取り戻して、中米間で戦争が起こるシナリオについての報道を目にすることが多くなったのだ。それでも、今日でさえまだ、私は「戦争が起こってしまったらどうなるか」ではなくて、「どうやったら戦争を回避できるのか?」について議論しようとしているメディアを探そうと苦労している。
たとえば、中国がアメリカの近くの地域に85,000人の軍を置いていないことを指摘せざるを得ない。中国は、航行の自由作戦を通して、アメリカ本土近辺に海軍の力を見せつけることは普通しないし、陸上であれ海上であれ、北アメリカ周辺で大規模な軍事訓練を行ったりはしない。つまり、もし、このまま戦争がおこったとしたら、後生の歴史書に、どちらの国が戦争に貪欲であったと記載されるかは明らかだということだ。
歴史的、地政学的に見て、ツラギ島のような地域の重要性は、言い過ぎて言い過ぎることはない。第2次大戦の結果は、太平洋地域の力のバランスの中で引き起こされたのだ。それでも、まだ、今になっても、世界を可能な限りコントロールしようと企んでいる強大国にとって、この地域がどれほど重要な意味があるかが見落とされている。大戦争が起きてはじめて、このことを実感する愚は避けるべきだ。我々は、もうすでに、一度そんな大戦争を経験したのだから。
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