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フランスの「黄色いベスト運動」は全EU諸国労働者の勝利

France's Yellow Vest movement strikes a victory for working people across the EU

ジョン・ワイト

RT Op-ed 2018年12月5日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年1月11日)

<記事原文>(寺島先生推薦)
https://www.rt.com/op-ed/445661-yellow-vest-victory-working-class/



ジョン・ワイトは様々な新聞やウェブサイトに寄稿している。その中には、the Independent, Morning Star, Huffington Post, Counterpunch, London Progressive Journal, and Foreign Policy Journalなどがある。 
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© AFP / Abdulmonam EASSA

フランスの「黄色いベスト運動」はどこからともなく噴出したように見えるかもしれないが、この成果に至るまでには時間がかかっている

カール・マルクスは言った。「人間は自分自身の歴史をつくる。 しかし、それは人間の自由意志からではない。 自分で選んだ環境のもとではなく、すぐ目の前にある、与えられ、維持されてきた環境の下でつくるのである。」  

そして、ここ数週間、「黄色いベスト」を着て抗議に立ち上がり、パリの中心部を占拠している数千人もの人たちが、更にはフランス国内の数百万もの普通の労働者も含めて、この間ずっと対決し続けているのは、破綻し、機能しなくなった新自由主義経済モデルがもたらしている深刻な現実に対してである。 それに輪を掛けて事態を悪化させているのが、フランス大統領エマヌエル・マクロンを中心とする新自由主義経済推進者たちの動きだ。 彼らは新自由主義の名で粉飾された、深刻で悲惨な現実(ディストピア)に人々が覚醒しないようにしているのだ。

フランス政府が燃料税の提案を保留する決定を下したことは、フランス国民の勝利だった。 人間の尊厳を保った生活の質を求める権利のために戦い、争うのはフランス国民の数世紀に及ぶ長い伝統なのだ。 

マクロンが、自分の信奉する新自由主義の神の言いなりに、国民を無視する態度は尋常ではなかった。 そんなマクロンを実力行使で譲歩させた黄色いベスト運動は、全EU諸国の労働者に大きな貢献をすることになった。 つまり、不正を前にされるがままというのは、更なる不正を招き寄せるということにしかならない、ということを思い起こさせたのである。  

マクロンは当初、譲歩は認めない(つまり、彼は以前しっかり譲歩をしていたことになる)という「ケーキを食べさせておけばいい」的なトンチンカンな大言壮語を身の程知らずにも国民に対して言明していた。 つまり、「燃料の価格が上がることに不満を言う人間は、汚染や子どもたちが苦しむ現状に不満を言う人間と何ら変わらない」と。どう転んでも、マクロンは自ら大統領職を辞任するか、次の大統領選で国民の審判を仰ぐかのいずれかだ。 

明々白々なのは、上位100の会社や企業だけで世界の71%の排出に責任があるという事実に、現在のエリゼ宮(大統領府)の占
拠者たちは良心の咎めをあまり感じていないらしい、ということである。マクロンは、経営者や富裕層の減税、そして年金削減と所得最底辺層の福祉削減などの施策を最近続けざまに行い、そういった会社や企業の気まぐれな関心に熱心に奉仕している。

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‘Out of touch’: Protesting French people want to be heard – but gov't does not listen


更に、そういった会社や企業に巨額な恩恵的資金が制度的に流れ込み、世界の一流銀行や金融機関が優遇されていると言われている。他でもない、2008年の世界的金融危機と世界規模の不況を引き起こした張本人は銀行だった。このことは、一転して、金融危機には責任のない庶民が、緊縮財政という形での経済的戦争に直面させられる事態となった。 

上に述べた汚点を明らかにすることでしか、体制側のメディアが執拗に吐き出す新自由主義的なプロパンガンダの霧の中を切り進む道はない。 メディアそのものが問題に取り込まれた存在と見られるようになってからだいぶ時間が経っている。 メディアの元々の役割は富裕権力層のお抱えではなく、労働者の顔に降りかかった塵を払うことだったはずだ。 

マクロンは、自分を世界の舞台で闊歩する巨像のように思っているかもしれない。しかし、彼以外の人間には安っぽいナポレオンにしか見えない。そんな人物が欧州軍を話題にする様子は、新自由主義が年月をかけてこしらえ、誕生させた政治家の典型の姿にすぎない。 現在の危機に至る前にも、彼の支持率は地を這うほど低かった。それでも、同じように贅沢な他の指導者たちと変わらず、現実世界には無頓着なだけなのだが、それを何故か強力な指導力と思ってしまうのだ。

そういったことは、実際のところ、問題のはぐらかしにしかなっていない。 つまり、他とは隔絶された西側の新自由主義支配層に寄生する輩が、自分たちに甚大な損害をもたらす経済的独裁の帰結に、一体、いつ目覚めるのかという問題だ。 もっとも、そんなことがあるとすれば、の話だが。

ここイギリスではトニー・ブレアが「反ブレグジット(=反EU離脱)」運動の事実上のリーダーとして担ぎ出されるという許しがたい光景が展開している。 中東に石油とマッチを持ち込んだ人間が、しかもこの国のブレグジット運動の中心ではハエほどの重さしか持たない人間が、金ぴかの豪邸とテレビ局を往復する車のお抱え運転手に指示を出す以上のことができる、と信じる人がいるということがびっくりだ。

アメリカに目を向けてみよう。 政治的には死んだはずのヒラリー・クリントンの棺桶の蓋がこじ開けられた。 犯人は現実を理解していないワシントンのリベラル派の体制である。 2016年の選挙でトランプが当選した後、地球を離れ、今でも宇宙のどこかで漂っているはずの連中だ。

トランプは、クリントンやオバマが長い年月アメリカ国民の食卓に提供してきたものを政治的受け継いでいる、という事実をアメリカのリベラル派が直視しないことは破局的な事態だ。 トランプが通常のビジネスをいやいや妨害するという話ではない。 自由の国アメリカで大麻の合法化に未だ反対する強力な議論が存在するのと同レベルの話だ。  

ドイツ西部の町トリーアが生んだ聖人カール・マルクスに話を戻す。 次の一節は19世紀の古典である『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』で、21世紀の各国政府が資本という神を祀る祭壇に額づく現実を詳細なテクニカラー版で描き出している。

「ボナパルト(=マクロン)はすべての階級に恩恵を施す長老として登場したいと思っている。 だが彼が一つの階級に恩恵を与えるには、もう一つの階級からむしり取ってこなければならない。」

黄色いベスト運動は、むしり取られるだけのフランスの労働者階級の時代が過ぎ去ったことを知らしめた。

一方、緊縮財政が大虐殺の大半を引き起こしてきたヨーロッパのこの国、つまりイギリスのことになると、フランスの運動に呼応して「黄色いベスト運動」に応えようとするものが何もない。 そんなところを見ると「フランスではエリートは人民を恐れるが、イギリスでは人民がエリートを恐れる」という古い諺が真実性を帯びてくる。 

2010年に保守党が権力を握って以来、イギリスの国中で、新自由主義支配層によってその腸(はらわた)がくり抜かれ、首には鉄環を巻き付けられたようになってしまった地域社会において、フランスの蜂起に呼応して聞こえてくるのは、今のところ飢えた子どもたちの腹鳴だけだ。 2018年には400万人以上の子どもたちが飢えているというデータがある。

さて、いくらイギリスが覚醒しにくいライオンだとしても、いつかは目を覚ます必要がある。 イギリスが覚醒したら、さて?
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