アメリカの身勝手な「論理」
What if the world started using US logic in its relations with America?
ニール・クラーク
RT OpEd 2018年8月20日
(翻訳:大手山茂、岩間龍男 2018年9月17日)
<記事原文>https://www.rt.com/op-ed/436385-us-sanctions-russia-iran/

(イラク大統領サダム・フセイン像の顔をアメリカ国旗で覆う海兵隊員)
制裁だ! 爆撃だ! 侵略だ! これまでアメリカは「悪事を行っている」と自分が主張する国々にたくさんの懲罰行動を取ってきた。しかし、アメリカ以外の国々がアメリカに同じ基準を当てはめたらどういうことになるのか?
先週の木曜日は本当に特別な日となった。アメリカの新規制裁措置はゼロだった。私に見落としがなければの話だが。 私はその時、腱炎でソファに横になっていた。(幸い妻の「2点法」のお陰もあり1日で回復した)
現在アメリカが積極的に進めている制裁措置プログラムはほぼ20カ国に及んでいる。ベラルーシからジンバブエに至るまでだ。ちょっと考えてみてほしい。大体アメリカがこういった国を制裁する理由はそのままアメリカを制裁する理由にもたぶんなり得るのだ。
最近イランへ再発動された経済制裁を見てみよう。一部は8月6日に発動され、他は11月4日に発動が設定されている。この財政的な懲罰行為はイランにだけ向けられているわけではない。何ともたちの悪い、まるで生徒間のいじめ行為みたいに、イランと取引している国や外国の金融機関も狙い撃ちしているのだ。イランは「悪意のある態度」という理由で糾弾されている。有数の、いや、「世界有数のテロ支援国家」として糾弾されている。
イラン政府が犯してきたとされる悪行と言っても、実際のところは、イランはテロ撲滅を手助けしているのだ。アメリカとシリアにいるアメリカの同調者たちが支援しているこのテロ行為はなぜか「反政府活動」という言い方になる。
もし制裁が「悪意ある態度」と「テロ支援」が理由で発動されるなら、制裁されるべきなのはアメリカであってイランではない。さらにこのアメリカの論理に従えばアメリカと取引をしている国や金融機関もまた制裁を発動されることになろう。ちょっと想像してほしいのは、ワシントンの絶叫だ。もしイランがアメリカと取引をしている企業や銀行に対して、アメリカが宣言した類いの包括的な施策をイランが宣言した場合のワシントンの絶叫だ。イランがそういった施策を取るとしても決して不当なものではない、もし国務省の理屈に従えば、の話だが。
ロシアは2014年以来アメリカが発動する経済制裁の対象となってきた。 ロシアが糾弾されたのは、クリミアを「併合」し、「ウクライナにおける民主的プロセスと諸機関」を「台無しにしたこと」、そしてウクライナの「平和、安全、安定、主権と領土保全」を脅かした、といったことが理由だ。
「この21世紀に19世紀的な振る舞いは絶対にだめです。 他国を侵略するのに完全にねつ造された口実を使うなんて」とジョン・ケリー国務長官は大真面目に言明した。 彼の言明がなぜおかしいかと言うと、「完全にねつ造された口実」で他国を侵略するということになると、ここ数十年で言えばアメリカとその同盟国の回数が一番多いし、やり方も恥知らずだ。イランが大量破壊兵器で他国を攻撃することがあるだろうか?
4月の報道ではアメリカはシリアの約30%の領土を占領している。この地域にはシリアが産出する原油の大半が埋蔵されている。シリアの人たちはこの問題について投票したか?クリミアでは2014年投票が行われ、圧倒的多数の国民がロシア施政下に復帰することを選択した。
もちろんアメリカのシリア「併合」などのニュースはない。「併合」とは「アメリカが認定した敵」だけがすることだからだ。
ロシアはまた2016年のアメリカ大統領選に干渉した廉で制裁を受けている。このことについてきちんとした証拠があるか無いかはどうでもいい。きちんと証明できるのは1996年のロシア大統領選にアメリカが大々的な干渉を行ったことだ。このことをタイム誌が自慢気にその表紙にまで掲載した。アメリカの選挙干渉は世界中で行われ、数え切れないほどだ。アメリカから他国への干渉を糾弾されるのはノートルダムのせむし男に背筋を伸ばせと言われるようなものだ。あるいはドラキュラ伯爵に道徳的な潔癖さについてレクチャーされるようなものだ。
もし「選挙干渉」のアメリカ基準をアメリカ自身に適用するなら、最低世界の半数の国々がアメリカを制裁する正当性を持つだろう。アメリカ政治への干渉を明々白々に行っている国はイスラエルだ。ノーム・チョムスキーの発言:「アメリカのいろいろな選挙にイスラエルが干渉してきたことはロシアの比ではない。イスラエルの首相(ベンジャミン・)ナタニェフは大統領に通告することもせず、アメリカ議会に直接出向き、発言し、満場の拍手を受け、アメリカ大統領の諸政策にケチをつけたりすることまでする。これは実際2015年オバマ大統領の時に起こったことだ。」
だからアメリカはイスラエルを制裁することになるのか?とんでもない。「アメリカの大物政治家たち」はイスラエルへの軍事援助を380億ドル増額したいと思っている!
その同じ「大物政治家たち」が、びっくり、びっくり仰天、ロシアを懲罰することに大層熱を上げている。今週発動されるロシアへの最新の制裁は3月に毒殺されかけたロシアの元スパイ、スクリパリ親子事件に関連している。 アメリカはこの事件を大真面目で「国際法違反」と呼んでいる。このこともまたどうでもいい。スクリパリ父娘をロシアが毒殺しようとしたことを示す証拠など今のところ何一つ呈示されていないのだから。ちょっと想像してほしい。もし金融安定理事会(FSB)で以前働いていた2名のアメリカ市民への未解決毒殺事件に関連して、ロシアがアメリカへの制裁を導入したらどんなことになるか。 アメリカはそれに対してどんなことを言うのだろう? 実際はもっとひどいことを言っている。アメリカが突きつけている要求はロシアが科学・生物兵器をもう使用していないこと、将来も使用するつもりがないことを90日以内に証明しろ、というのだ。もしどこかの国がアメリカに同様の最後通牒を突きつけたらどうだろう? 何のかの言っても、アメリカが科学兵器を使用し、おそらくは生物兵器も使用してきたことは周知のことだ。2012年までにすべての化学兵器を廃棄するという化学兵器禁止機関の決定をやり過ごし、アメリカは今も化学生物兵器を貯蔵している。
ロシアは、アメリカとは対照的に、2017年には廃棄を完了している。
アフリカに目を向けると、アメリカは2001年来ジンバブエへの経済制裁を実行している。すべてロバート・ムガベが理由?まあ、現在ムガベ同志は表舞台には出ていない。そしてどうなったと思う?今年の夏アメリカはジンバブエ大統領選に先だって制裁を延長した。明白なのは、ジンバブエが経済制裁の対象国になったのは、「誤った」外交政策の同盟者を持っているという理由からだ。再度想像してほしい。アメリカと仲良くしている国々を気に入らないからと言って、アメリカを制裁することになったらどうなるのか。
アメリカが発動する他国への制裁理由として共通に語られるのは、そういった国は「自由で公平な選挙」を実施していない、ということだ。でも、アメリカはどうか?アメリカの政治体制は巨大な金や権力に絡む利権グループに支配されている。
民主党も共和党も根っこは同じ戦争肯定、資本優先党だ。一方は他方よりほんのちょっと社会的にリベラル色があるが、それも選択の自由があるという幻想を有権者に振りまくためだ。アメリカが民主主義に欠損があるから他国を制裁するなどというのは、2016年の大統領選でアメリカの有権者たちに提供された「選択」を考えた時、お笑い草でしかない。さらに偽善的なのはアメリカが「人権」への危惧を他国処罰の理由とすることだ。アメリカは人権問題に熱心なあまり、6月に国連人権理事会をしれっと脱退するような国なのだ。
実際のところ、世界最悪の人権弾圧国家の一部はサウジアラビアやイスラエルのようなアメリカと関係がとても深い同盟国家だ。もちろんアメリカはこの二国を制裁することはない。それどころか武器を提供し、人権弾圧に手を貸す始末だ。
「平和、安全、安定、主権、そして領土保全」。アメリカがロシアを制裁する理由としてあげるこういった言葉をじっくり考えてみよう。そして過去30年間に世界で何が起こっていたのかをもう一度考えてみよう。アメリカとその同盟国家群はユーゴスラビア連邦共和国の「主権と領土保全」に気を配ったことはあるのか?彼らが1999年に同国を78日間爆撃し、コソボの「独立」を達成しようとした時のことだ。アメリカとその同盟国家群は「平和、安全、そして安定」に気を配ったことはあるのか?彼らが2003年イラクに不法な侵略を行い、同国をカオスと流血へ落とし込んだ時のことだ。大虐殺は今でも続いている。彼らはリビヤを2011年に爆撃した時、こういったとても崇高な事柄に気を配ったことはあるのか?リビヤはアフリカで最も生活水準の高い国だった。それを石器時代に戻してしまったのだ。同じことは彼らがシリア・アラブ共和国の安定を乱し、同国の分断を図ろうとしていることにも言える。
アメリカは他国を懲罰することが大好きだ。しかしアメリカに世界の裁判官、陪審員そして死刑執行人になる法的・道徳的権威はまったく無い。そろそろアメリカには自分たちが他国に要求しているのと同じ基準が適用され、必要な時には同じ罰則の対象とされるべき時だ。
私の同僚である論説OpEdコラムニスト、ジョン・ワイトの言葉を引用する。
「制裁がアメリカ『によって』ではなく、アメリカ『に』発動される世界
に生きる時になって初めて私たちは正義が支配していることを知ることになろう。」
ニール・クラーク
RT OpEd 2018年8月20日
(翻訳:大手山茂、岩間龍男 2018年9月17日)
<記事原文>https://www.rt.com/op-ed/436385-us-sanctions-russia-iran/
![]() ニール・クラーク氏はジャーナリスト、作家、放送で発言もし、ブロッガーでもある。 イギリスやイギリス以外の新聞や雑誌に多数寄稿している。 ガーディアン、モーニングスター、デイリー&サンデーエクスプレス、メール・オン・サンデー、デイリー・メール、デイリー・テレグラフ、ニューステーツマン、スペクテーター、ザ・ウィーク、アメリカン・コンサーバティブなど。彼はRTの定期寄稿者でありBBCテレビやラジオ、Sky News、Press TV、Voice of Russiaにも登場する。彼はthe Campaign For Public Ownership @PublicOwnershipの共同設立者である。彼の受賞ブログはwww.neilclark66.blogspot.comで見られる。彼のツイッターは@NeilClark66で政治、国際問題を扱っている。 |

(イラク大統領サダム・フセイン像の顔をアメリカ国旗で覆う海兵隊員)
制裁だ! 爆撃だ! 侵略だ! これまでアメリカは「悪事を行っている」と自分が主張する国々にたくさんの懲罰行動を取ってきた。しかし、アメリカ以外の国々がアメリカに同じ基準を当てはめたらどういうことになるのか?
先週の木曜日は本当に特別な日となった。アメリカの新規制裁措置はゼロだった。私に見落としがなければの話だが。 私はその時、腱炎でソファに横になっていた。(幸い妻の「2点法」のお陰もあり1日で回復した)
現在アメリカが積極的に進めている制裁措置プログラムはほぼ20カ国に及んでいる。ベラルーシからジンバブエに至るまでだ。ちょっと考えてみてほしい。大体アメリカがこういった国を制裁する理由はそのままアメリカを制裁する理由にもたぶんなり得るのだ。
最近イランへ再発動された経済制裁を見てみよう。一部は8月6日に発動され、他は11月4日に発動が設定されている。この財政的な懲罰行為はイランにだけ向けられているわけではない。何ともたちの悪い、まるで生徒間のいじめ行為みたいに、イランと取引している国や外国の金融機関も狙い撃ちしているのだ。イランは「悪意のある態度」という理由で糾弾されている。有数の、いや、「世界有数のテロ支援国家」として糾弾されている。
イラン政府が犯してきたとされる悪行と言っても、実際のところは、イランはテロ撲滅を手助けしているのだ。アメリカとシリアにいるアメリカの同調者たちが支援しているこのテロ行為はなぜか「反政府活動」という言い方になる。
もし制裁が「悪意ある態度」と「テロ支援」が理由で発動されるなら、制裁されるべきなのはアメリカであってイランではない。さらにこのアメリカの論理に従えばアメリカと取引をしている国や金融機関もまた制裁を発動されることになろう。ちょっと想像してほしいのは、ワシントンの絶叫だ。もしイランがアメリカと取引をしている企業や銀行に対して、アメリカが宣言した類いの包括的な施策をイランが宣言した場合のワシントンの絶叫だ。イランがそういった施策を取るとしても決して不当なものではない、もし国務省の理屈に従えば、の話だが。
ロシアは2014年以来アメリカが発動する経済制裁の対象となってきた。 ロシアが糾弾されたのは、クリミアを「併合」し、「ウクライナにおける民主的プロセスと諸機関」を「台無しにしたこと」、そしてウクライナの「平和、安全、安定、主権と領土保全」を脅かした、といったことが理由だ。
「この21世紀に19世紀的な振る舞いは絶対にだめです。 他国を侵略するのに完全にねつ造された口実を使うなんて」とジョン・ケリー国務長官は大真面目に言明した。 彼の言明がなぜおかしいかと言うと、「完全にねつ造された口実」で他国を侵略するということになると、ここ数十年で言えばアメリカとその同盟国の回数が一番多いし、やり方も恥知らずだ。イランが大量破壊兵器で他国を攻撃することがあるだろうか?
4月の報道ではアメリカはシリアの約30%の領土を占領している。この地域にはシリアが産出する原油の大半が埋蔵されている。シリアの人たちはこの問題について投票したか?クリミアでは2014年投票が行われ、圧倒的多数の国民がロシア施政下に復帰することを選択した。
もちろんアメリカのシリア「併合」などのニュースはない。「併合」とは「アメリカが認定した敵」だけがすることだからだ。
ロシアはまた2016年のアメリカ大統領選に干渉した廉で制裁を受けている。このことについてきちんとした証拠があるか無いかはどうでもいい。きちんと証明できるのは1996年のロシア大統領選にアメリカが大々的な干渉を行ったことだ。このことをタイム誌が自慢気にその表紙にまで掲載した。アメリカの選挙干渉は世界中で行われ、数え切れないほどだ。アメリカから他国への干渉を糾弾されるのはノートルダムのせむし男に背筋を伸ばせと言われるようなものだ。あるいはドラキュラ伯爵に道徳的な潔癖さについてレクチャーされるようなものだ。
Read more ![]() https://www.rt.com/op-ed/407332-gaddafi-west-sirte-recolonization/ |
もし「選挙干渉」のアメリカ基準をアメリカ自身に適用するなら、最低世界の半数の国々がアメリカを制裁する正当性を持つだろう。アメリカ政治への干渉を明々白々に行っている国はイスラエルだ。ノーム・チョムスキーの発言:「アメリカのいろいろな選挙にイスラエルが干渉してきたことはロシアの比ではない。イスラエルの首相(ベンジャミン・)ナタニェフは大統領に通告することもせず、アメリカ議会に直接出向き、発言し、満場の拍手を受け、アメリカ大統領の諸政策にケチをつけたりすることまでする。これは実際2015年オバマ大統領の時に起こったことだ。」
だからアメリカはイスラエルを制裁することになるのか?とんでもない。「アメリカの大物政治家たち」はイスラエルへの軍事援助を380億ドル増額したいと思っている!
その同じ「大物政治家たち」が、びっくり、びっくり仰天、ロシアを懲罰することに大層熱を上げている。今週発動されるロシアへの最新の制裁は3月に毒殺されかけたロシアの元スパイ、スクリパリ親子事件に関連している。 アメリカはこの事件を大真面目で「国際法違反」と呼んでいる。このこともまたどうでもいい。スクリパリ父娘をロシアが毒殺しようとしたことを示す証拠など今のところ何一つ呈示されていないのだから。ちょっと想像してほしい。もし金融安定理事会(FSB)で以前働いていた2名のアメリカ市民への未解決毒殺事件に関連して、ロシアがアメリカへの制裁を導入したらどんなことになるか。 アメリカはそれに対してどんなことを言うのだろう? 実際はもっとひどいことを言っている。アメリカが突きつけている要求はロシアが科学・生物兵器をもう使用していないこと、将来も使用するつもりがないことを90日以内に証明しろ、というのだ。もしどこかの国がアメリカに同様の最後通牒を突きつけたらどうだろう? 何のかの言っても、アメリカが科学兵器を使用し、おそらくは生物兵器も使用してきたことは周知のことだ。2012年までにすべての化学兵器を廃棄するという化学兵器禁止機関の決定をやり過ごし、アメリカは今も化学生物兵器を貯蔵している。
ロシアは、アメリカとは対照的に、2017年には廃棄を完了している。
アフリカに目を向けると、アメリカは2001年来ジンバブエへの経済制裁を実行している。すべてロバート・ムガベが理由?まあ、現在ムガベ同志は表舞台には出ていない。そしてどうなったと思う?今年の夏アメリカはジンバブエ大統領選に先だって制裁を延長した。明白なのは、ジンバブエが経済制裁の対象国になったのは、「誤った」外交政策の同盟者を持っているという理由からだ。再度想像してほしい。アメリカと仲良くしている国々を気に入らないからと言って、アメリカを制裁することになったらどうなるのか。
アメリカが発動する他国への制裁理由として共通に語られるのは、そういった国は「自由で公平な選挙」を実施していない、ということだ。でも、アメリカはどうか?アメリカの政治体制は巨大な金や権力に絡む利権グループに支配されている。
Read more![]() ネルソンマンデラの遺産は、自由計画を売り物にする西欧によってハイジャックされた。 https://www.rt.com/op-ed/433822-mandela-legacy-distorted-obama/ |
民主党も共和党も根っこは同じ戦争肯定、資本優先党だ。一方は他方よりほんのちょっと社会的にリベラル色があるが、それも選択の自由があるという幻想を有権者に振りまくためだ。アメリカが民主主義に欠損があるから他国を制裁するなどというのは、2016年の大統領選でアメリカの有権者たちに提供された「選択」を考えた時、お笑い草でしかない。さらに偽善的なのはアメリカが「人権」への危惧を他国処罰の理由とすることだ。アメリカは人権問題に熱心なあまり、6月に国連人権理事会をしれっと脱退するような国なのだ。
実際のところ、世界最悪の人権弾圧国家の一部はサウジアラビアやイスラエルのようなアメリカと関係がとても深い同盟国家だ。もちろんアメリカはこの二国を制裁することはない。それどころか武器を提供し、人権弾圧に手を貸す始末だ。
「平和、安全、安定、主権、そして領土保全」。アメリカがロシアを制裁する理由としてあげるこういった言葉をじっくり考えてみよう。そして過去30年間に世界で何が起こっていたのかをもう一度考えてみよう。アメリカとその同盟国家群はユーゴスラビア連邦共和国の「主権と領土保全」に気を配ったことはあるのか?彼らが1999年に同国を78日間爆撃し、コソボの「独立」を達成しようとした時のことだ。アメリカとその同盟国家群は「平和、安全、そして安定」に気を配ったことはあるのか?彼らが2003年イラクに不法な侵略を行い、同国をカオスと流血へ落とし込んだ時のことだ。大虐殺は今でも続いている。彼らはリビヤを2011年に爆撃した時、こういったとても崇高な事柄に気を配ったことはあるのか?リビヤはアフリカで最も生活水準の高い国だった。それを石器時代に戻してしまったのだ。同じことは彼らがシリア・アラブ共和国の安定を乱し、同国の分断を図ろうとしていることにも言える。
アメリカは他国を懲罰することが大好きだ。しかしアメリカに世界の裁判官、陪審員そして死刑執行人になる法的・道徳的権威はまったく無い。そろそろアメリカには自分たちが他国に要求しているのと同じ基準が適用され、必要な時には同じ罰則の対象とされるべき時だ。
私の同僚である論説OpEdコラムニスト、ジョン・ワイトの言葉を引用する。
「制裁がアメリカ『によって』ではなく、アメリカ『に』発動される世界
に生きる時になって初めて私たちは正義が支配していることを知ることになろう。」
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