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環境にこだわれば破産する: 「クリーン・エネルギー」は経済学の基礎テストで不合格

<記事原文 寺島先生推薦>
Go green, go broke: ‘Clean energy’ fails a basic economics test
クリーン・エネルギー関連業社の株価が急落しているのは、再生可能エネルギー計画にかかる費用が高すぎることが判明し、環境に対する米国の情熱が脅かされているなかでのことだ。
筆者:Russian Market。
チューリヒを拠点とする金融ブロガー、スイス人ジャーナリスト、政治評論家によるプロジェクト名。 X @runewsでフォローしてください。
出典:RT  2023年11月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月6日





 かつて栄華を誇ったクリーン・エネルギー関連業社の株価は現在、最悪の状況に直面しており、業界は財政危機の底に陥り、米国の環境への野心的な願望が脅かされている。大々的に宣伝されている緑の革命に赤信号がともっているように映っているのは、この分野が数百億ドルの市場価値を大流出させているためだ。

 確かに、私たちが聞かされる話によると、株式市場がこれらの事業に対して大々的に「遠慮しておきます」と宣言しているように見えるにもかかわらず、依然として数千億ドルが再生可能エネルギー市場に投資されているようだ。この業界の申し子であるiシェアーズ・グローバル・クリーン・エネルギーETF(上場投資信託)は、今年30%以上急落し、2021年初頭から比べると、なんと50%も急落した。

 それに負けず劣らず、特定の分野も相応の懲罰を受けている。インベスコ・ソーラーETFは2023年に40%以上下落し、ファースト・トラスト・グローバル風力エネルギーETFは今年約20%、2021年1月と比べると40%という厳しい損失を記録している。まるで帆に当たっていた風がはぎ取られたようなものだ。
 
 この業界の新たな宿敵である金利上昇をその原因にしていいだろう。こうした金利の上昇は費用を増加させるだけでなく、消費者の熱意を弱めることにもなっている。それに伴い、かつては緑の理想郷を約束していたが、現在は利益を上げるのに苦戦している企業の株価の急落が生じている。


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 ソーラー・エッジ社やエンフェーズ・エナジー社などの太陽光発電会社は、自社製品の需要が減少するにつれ、文字どおり「焼け付いて」いる。一方、風力エネルギー業界大手オルステッド社は、米国の洋上風力発電計画において数十億ドル規模の評価損を計上する可能性があることが明らかになり、株価が急落するという、ブルースが流れるかのごとく厳しい状況に追いやられている。

 ドイツでは、ノルド・ストリームの破壊行為の後、ご存じのとおり、エネルギー地政学と単純な計画は常に密接に関連しているため、なんと77%もの懐疑論者が首を振り、2030年までにドイツが電力の80%を再生エネルギー源から賄えるという魔法のような計画は考えられない、と答えた。エネルギーならぬ懐疑論を太陽光発電に変えるというグリーンな考え方は、まだ主流にはなっていないようだ。

 脱原発推進の代表格であるスイスは、現在、「緑の筋肉」を見せびらかすために、原発の稼働期間を延長するという考えを維持するという矛盾を見せている。誰が明確な出口戦略を必要とするだろうか? 2040年まで原子力容認を続ければすむだけなのに。

 バイデンが追い求める「緑の夢」は、太陽を浴びて、お気に入りのアイスクリームよりも溶けるのが速い

 米国では、ニュージャージー州の風力発電プロジェクト2件の破たんは氷山の一角に過ぎず、インフレ、高金利、供給網の混乱が、ジョー(バイデン)の気候変動への野望の歯車を狂わせている。バイデンの気候変動法から3690億ドル(約54兆)という途方もない額の連邦支援があるにもかかわらず、クリーン・エネルギー・計画は大量に減少している。フォード社によるケンタッキー州のEVバッテリー工場の建設延期や、ゼネラルモーターズ社によるEV計画の縮小などの取り組みでも、経済界に吹く大嵐を逃れることはできなかった。クリーン・エネルギー革命への期待よりも早く上昇しているのは、費用面だけのようだ。 しかしまあ、壮大な気候変動目標があれば、手頃な価格で信頼できるエネルギーなど必要ないだろう? バイデンの環境保護計画には冷ややかな現実が突きつけられつつあり、暑さを感じているのは極地の氷冠だけではない。


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 皮肉なものだ。少し前まで、クリーン・エネルギーは地球の救世主としてもてはやされていたが、今やグリーン・アジェンダは赤字の海に溺れているようだ。かつて輝けるスターだったS&Pグローバル・エネルギー・インデックス社は、2020年以降その価値が半減している。まさに華麗なる転落だ。

 現在に至っては、グリーン株は大打撃を受けている。EUと米国政府が、ロシアの石油とガスからのいわゆるグリーンなエネルギーへの移行を支援するために、何十億もの税控除と補助金を提供しているにもかかわらず、投資家が自信をなくす速度ははやく、「再生不可能」だ。

 S&Pグローバル・クリーン・エネルギー・インデックス社は、2023年に30%もの大暴落を経験し、四半期規模で最大の14億ドル(約20兆円)の資金流出を記録した。かつて活況を呈していたこの分野の運用資産総額は現在23%減少しており、ほんの数ヶ月前の全盛期とは大違いだ。

 現在の経済状況に原因がある、具体的には高金利、高騰する費用、供給網の問題がこのメロドラマの悪役なのだ、と言われている。さらには、中国も忘れてはならない悪役のひとりだ。中国は、ソーラー関連供給網をうまく操り、安価な代替品で市場を氾濫させ、地域でグリーン市場を回そうというEUの夢を台無しにしているからだ。

 公益事業関連株がグリーンエネルギーへの転換に苦戦するなか、同分野の営業利益率は圧迫されている。

 棺桶に最後の釘を打つ気なのだろうか? ネクステラ・エナジー・パートナーズ社は成長目標を半減させ、再生可能エネルギー業界に衝撃を与えた。私はこの売りを大げさなものだと考えているが、その痛手は大きく、再生可能エネルギーへの信頼はどん底に落ちている。


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 では、このグリーン話の教訓は何だろうか? 結局のところ、グリーン化とは単に地球を救うことではなく、お金がかかることなのだ、ということだろう。再生可能エネルギー関連銘柄の株価が底を打つ中、分析家たちが首を捻っているのは、「今が買い時なのか、それともグリーン・ドリームは本当に終わったのか?」という点だ。

 皮肉な展開だが、グレタ・トゥンバーグは現在、ガザ支持を表明したことで批判にさらされている。我々の気候聖戦士がいまや、キャンセル・カルチャーの大きな矛先にされているのだ。さらには、グレタがすぐに削除したツイートも、批判を浴びている。そのツイートは、ハルマゲドンを予言し、2023年という壮大な期限までに化石燃料の使用を止めない限り、気候変動は「人類を絶滅させる」かもしれないと警告するものだった。この皮肉な状況は北京のスモッグよりも濃い。

 緑の戦士でも市場の容赦ない現実から逃れることはできないようだ。
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不都合な真実。小規模農家の生産網が世界の食料を確保している。

不都合な真実。小規模農家の生産網が世界の食料を確保している。
<記事原文 寺島先生推薦>
An Inconvenient Truth:  The Peasant Food Web Feeds the World

Global Research 2022年2月7日

コリン・トドハンター(Colin Todhunter) 

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月25日


 2020年10月、国際貿易協会であるクロップライフ・インターナショナル(CropLife International)は、同協会が国連のFAO(食料農業機関)と新しい戦略的提携を結び、その提携のもと、持続可能な食糧体系の確立を推進していくと発表した。 さらに、同協会の発表によれば、FAOが民間企業とこのような提携を結ぶのは初めてのことであり、この提携により植物科学分野における方向性が確立し、共通の目標のもと、建設的な協力体制がとれる、とのことだった。

  貿易とロビー活動を行う強力な団体であるクロップライフ・インターナショナルには世界最大の農業工学産業や農薬業界の企業がメンバーとして加入している。具体的には、ドイツのバイエル(Bayer)社、ドイツのBASF社、スイスのシンジェンタ(Syngenta)社、米国のFMC社、米国のコルテバ(Corteva)社、日本の住友化学だ。 植物科学技術の向上を謳い文句にしているが、その裏で、この団体が何よりも追求しているのは、参加企業が(最終的に)利益を得ることだ。

 クロップライフ・インターナショナルとFAOが提携したことが発表されてからあまり時間がたたないうちに、PAN (農薬行動ネットワーク)アジア太平洋支部は、350団体と共同して、FAOの屈冬玉(くつ・とうぎょく)事務局長に書簡を送り、正当な理由を添えて、その提携を止めるよう要請した。

  アンハーティッド(Unearthed:NGOグリーンピース が運営する組織)と パブリック・アイ(Public Eye :人権関連のNGO)が共同で行った2020年の調査によると、BASF社、コルテバ社、バイエル社、FMC社、シンジェンタ社は、規制当局により毒性が強いことが示された化学物質を売りさばき、人々に健康上重大な危険を及ぼしながら、何十億ドルもの利益を手にしていた、とのことだった。

 両団体の調査結果がさらに明らかにしたことは、これらの企業は化学薬品の売却で10億ドル以上の利益を得ているが、その化学薬品の中には、ヨーロッパの市場で販売禁止になったものもあるという事実だった。その理由は、その化学薬品がミツバチにとって強い毒性を示しているからだ。そして、これらの売り上げの3分の2以上は、ブラジルやインドなど、所得が低い、あるいは中くらいの国々からの売り上げだった。

 「国連食料システムサミット2021」に対する「市民からの自発的な対応に基づく政治宣言」にはこう記述されている。「グローバル企業が、世界各国に持続可能性という言説の持つ効果をますます浸透させ、農業の更なる工業化や、地域からの富と労働力の搾取や、企業の持つ権力の集中化を確実なものにしようとしている」と。

 このことを念頭において大きく懸念されることは、クロップライフ・インターナショナルが目指しているのは、アグロエコロジーに対するFAOのこれまでの対応を転換させ、食料体系をさらに企業の思いのままに推し進めようとしているのではないか、ということだ。

アグロエコロジー(agroecology)は、一言でいえば、従来の小規模農家が行ってきたような、生態系と調和を保ちながら作物を育てる農法のことで、大企業による工業型農業とよく対比される考え方。
 
 2019年7月の国連FAO専門家によるハイレベルパネル報告の結論によれば、アグロエコロジーの考え方を用いれば、食料の安全は改善され、工業型農業と比べても、栄養面や、ジェンダー問題や、環境問題や、産出量の改善が見込まれるとのことだった。この報告で示された立場が、これまでFAOがアグロエコロジーに対して示してきた立場だった。  

参考記事
Living in Epoch-Defining Times: Food, Agriculture and the New World Order

 しかし、このアグロエコロジーの考え方を用いれば、クロップライフに参加している企業の利益は直接阻害されることになる。それぞれの地域の特性に応じた農業資源を使うことに重点を置いているアグロエコロージーの考え方に従えば、画一化された化学薬品や、種子や、知識に凝り固まる必要はなくなるからだ。さらに多国間で展開する農業食品産業界に支配された、世界各地に広くめぐらされた供給網も必要なくなる。

 現在FAO内部で、クロップライフ・インターナショナルに参加している企業の利益を脅かすような開発方法と農業食品のモデルについてのイデオロギー論争が繰り広げられているようだ。 

 「私たちに食料を提供してくれるのは誰になる?”工業型農業による食品供給網”対”小規模農家による食品供給網”(ETC Group :[グローバル企業による農業支配に懸念を示している団体], 2017)」という報告において示されていたのは、小規模生産者たちの多様な供給網により、世界の7割の人々が食料を確保しているという事実だった。最も飢えていて、最も社会から除外されている人々についても、それは当てはまるということだった。

  注目に値するこの報告によると、工業型農業により生産されている食料供給網は、世界のたった24%の人々にしか届いていないということだった。さらにこの報告によると、工業型農業のほうが、経費も掛かるとのことだった。工業型農業で1ドルかけて生産された食品は、後始末にさらに2ドルかかる、というのだ。

  しかし、2件の著名な論文が、小規模農家が生産している食料は、世界の人々のたった35%の人々の食料供給しか確保できていないことを示した。
 
 この2件の論文のうちの一つが、「私たちの世界の食料のうちどれくらいが小規模農家による生産で賄われているか?」 (リチャルデイ[Ricciardi]他、 2018)だ。
     
 もう1件は、FAOによるもので、「どちらの農家の方が世界の食料を賄い、農地をより効果的に使用できているか?(ローダー[Lowder]他、2021)」だ。

 8つの主要な組織が、FAOにこのローダーの論文を激しく非難する書簡を送った。それはこの論文が、FAOがこれまで幾度となく示してきた確固たる立場を覆す内容だったからだ。この書簡の署名者には、オークランド協会、土地労働者連盟(Landworkers Alliance), ETCグループ、 成長する文化( A Growing Culture)、アフリカ食料自給を目指す会(Alliance for Food Sovereignty in Africa)、グレイン(GRAIN:穀物)、グランズウエル・インターナショナル(Groundswell International)、農業と貿易政策協会 (the Institute for Agriculture and Trade Policy)という8団体が名を連ねられていた。

 この公開書簡がFAOに再確認を求めたのは、農民(小規模農家、零細漁師、牧畜家、猟師、野生食物採集者、近郊農業従事者を含む)たちは、農業資源が豊富ではないのにもかかわらず、より多くの食料を生産しているという事実について、だった。さらに農民たちは、世界人口の少なくとも7割の人々の主要な栄養源を提供している事実についても、だった。

 ETCグループはさらに16頁からなる「小規模農家と零細農家が今でも世界の食料を賄っている」という報告書を発表し、先述の2件の論文に反論を加えている。その報告書によると、これらの2件の論文の執筆者たちは、操作された方法論や概念に引きずられて、重要な情報を省略してしまったことにより、35%という数値をはじき出している、とのことだった。 特に顕著だったのは、「家族農家」の定義を変えていたり、「小規模農家」を、「2ヘクタール以下の農地を所有する農家」という定義に変えてしまっていることだ。このような定義は、2018年にFAO自身が出した定義と食い違っている。2018年の定義では、小規模農家の定義には世界統一の基準を使うことを否定し、各国それぞれの基準をより重要視すべきだ、としていた。

 ローダー他の論文はさらに、FAOや他の機関が出した最近の報告書の内容とも食い違っている。それらの報告書によれば、1ヘクタール単位で見れば、大規模農家よりも零細農家の方がより多くの食料を生産しており、より栄養価の高い食料も生産している、とのことだった。 この食い違いが示しているのは、政策立案者たちは零細農家の生産について間違った認識を焦点化することで、より大規模な生産団体を重要視するよう画策し続けているという事実だ。

 FAOに対する公開書簡に署名している諸団体は、ローダー論文が出した推論に強く異議を唱えている。その推論によると、食料消費状況から食料生産状況は推測でき、食物の市場における商品価値と消費される食品の栄養価を同等に見ることができるというものだ。

 この論文には、農業関連産業にとって有利な言説を流す意図があり、零細農家による生産効果を低く見せることにより、 農業関連産業が持つ農薬技術や、 農業関連産業による農業食品の流通方法を推進しようとしている。

 小規模零細農家は、これらの複合企業体にとっては障害なのだ。 このような観点は、大量生産に基づく生産量という狭い視点だけから見たものであり、社会や文化や経済や農業という高次の視点から物事を見ようとしていない手法だ。 このような高次の視点から見なければ、1エーカーごとの食料自給や栄養価の高い農作物の生産の様子などを見るという観点は生まれてこない。

 このような高次の観点から見る手法を用いることは、郊外や地域の発展を広げることにもなる。というのもこれらの発展が、各地域の繁栄や自己持続性に重きを置くことになるからだ。地域を犠牲にして、世界規模の供給網や世界規模の市場の必要に応じないままの人々を軽くあしらうのではなく。 産業界のロビーストたちは、「近代的な農業を進める必要への対応」などと称して、後者の手法を推進しようとしている。決してその手法の本当の名前を言うことはしないで。その名とは「企業帝国主義」だ。

 FAOのこの報告書の結論によれば、世界の小規模農家が世界の農地のうち12%を使用し、世界の全食料のうちたった35%の食料しか生産していない、というものだった。しかしETCグループによれば、FAOが出している通常の比較可能な数値から見れば、零細農家が世界の全食料のうち7割を生産しているということは明らかだとのことだ。零細農家は世界の3分の1以下の農地で、農業資源を使用していないのにも関わらず。  

 しかしたとえ全農地のうち12%の農地しか使用せず、食料の35%しか賄えていないとしても、大規模で、化学薬品を多用する農業に較べ、小規模農家や零細農家への投資が少ないという正当な理由になるのだろうか?  

 全ての小規模農家がアグロエコロジーや、化学農薬を使わない農業をしているわけではないかもしれないが、小規模農家の方が、各地域の市場やネットワークや身近な供給網との繋がりは強いだろう。さらに食料自給や、より多様な収穫体系や、より健康な食品にも繋がると言える。さらに小規模農家は地元の人々の必要に応じた食品供給に力を入れていて、地域の外の産業に対する利益提供や、地球の裏側にいる企業投資家や、株主への配慮に左右されない。

 企業群による公的機関の乗っ取りが起こった場合、真っ先に犠牲になるのは、真実だ。
 

 



なぜNATO諸国は「エネルギーのハラキリ」を進めるのか?グリーン・ゼロカーボンの狂気。産業崩壊か?

なぜNATO諸国は「エネルギーのハラキリ」を進めるのか?
グリーン・ゼロカーボンの狂気。産業崩壊か?
<記事原文 寺島先生推薦>
Why Do NATO States Commit “Energy Hara Kiri”? Green Zero Carbon Madness. Industrial Collapse?

F・ウィリアム・エンダール( F. William Engdahl)著
グローバルリサーチ、2022年1月19日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月8日

***
 米国とEU・NATO諸国の明らかに自殺的な国家グリーン・アジェンダ経済政策から判断すると、ロシアと中国に対する米国とNATOの軍事姿勢がますます侵略的になっているのには大きな矛盾があります。 世界の最も先進的な産業経済の驚くべき転換が進行中であり、勢いを増しているからです。

 転換の核心は、エネルギーであり、2050年までに「ゼロカーボン」エネルギーを実現しようという馬鹿げた要求です。エネルギー産業から炭素を排除することは、現時点では不可能であり、おそらく今後もありえません。しかし、それを推し進めるということは、世界で最も生産的な経済を引き裂くことを意味します。実行可能な産業エネルギー基盤がなければ、NATO諸国の軍事行為などただの悪ふざけになります。太陽光、風力、蓄電池といった「再生可能な」エネルギーなど実際はお話にもなりません。それらは信頼できないエネルギー源なのです。こんなエネルギーに頼ろうというのは、歴史上で最も巨大な科学的妄想の一つです。

 12月31日、新ドイツ連立政権は残りの6基の原子力発電所のうち3基を恒久的に閉鎖しました。天然ガスの埋蔵量が低くなる厳しい冬に入ろうとしている時であり、厳しい寒冷前線によって停電になる可能性がある時にです。ドイツが2番目のロシアのガスパイプライン、ノルド・ストリーム2の輸入を拒否したため、ドイツは2021年1月と比較して電力のスポット価格(訳注:翌日の電気価格を前もって入札で決めておく価格のこと)が500%上昇しています

あらかじめ計画されたEUのエネルギー危機

 2011年、メルケル首相が原子力発電の早期終了を宣言し、彼女の悪名高いエネルギー転換は、原子力を段階的に廃止して再生可能エネルギーにすることでしたが、その時点で17の原子力発電所がすべての電力の25%を確実に国に供給していました。今、残り3つの発電所は2022年末までに閉鎖しなければなりません。同時に、2016年以降の政府のグリーンエネルギー計画は、2022年1月時点で15.8ギガワットの石炭発電を閉鎖しました。太陽光と風力は、輝かしいプロパガンダにもかかわらず、その発電ギャップを埋められず、ドイツの電力網は、EU近隣諸国のフランスとチェコ共和国から重要な電力を輸入しなければなりません。皮肉にもその多くが原子力発電所からの輸入です。ドイツは今日、エネルギー転換の結果として、どの産業国家よりも電力コストが高くなっています。

 現在、フランスからの原子力発電の供給が問題となっています。12月、フランスの国営原子力機関EDF(フランス電力会社)は、腐食損傷の発見後、合計4基の原子炉を点検と修理のために停止すると発表しました。4月の選挙に直面しているマクロン大統領は、ドイツの強い反核の立場に反対していて、EUの中で原子力発電の勝者の役割を演じようとしています。しかしフランスは最近の主張にもかかわらず、原子力電力網は脆弱であり、今後数年間で12基の原子炉を石炭発電と共に停止する計画です。そして、原子力への大規模な新たな投資を行う可能性は低く、フランスとドイツの両方が将来のエネルギー不足に対して脆弱なままになっています。マクロンの「フランス2030年プログラム」は、小型原子力発電技術にわずか12億ドルの投資を要求しているだけです。

 しかし、原子力問題がEUのエネルギー危機の中で唯一の欠点ではありません。現在のEUエネルギー計画はあらゆる面で、現代の産業経済を破壊するように設計されており、ドイツのポツダム研究所のような環境シンクタンクにたっぷり資金提供をしている設計者はそれを知っています。石炭、ガス、原子力に置き換えて、風力と太陽光という二つの危ういエネルギー源だけに頼ることは、単純に不可能だと言われています。

風車と群衆の狂気

 日照が少ないドイツにとって、風力が有力な選択肢です。しかし、2021年の冬が劇的に示したように風力の問題の1つは、それが常に吹くわけではなく、しかも予測できないことです。そうなると、原子力と同様に石炭や天然ガスが強制的に追い出されるときに、停電の可能性や信頼性の高いバックアップ電源の必要性が出て来ます。ドイツのような国が再生可能エネルギーの進歩を誇りたいとき、風力発電は、総電力という面で誤って評価されています。

 実際に大切なのは、ある期間に産み出される実際の電力、容量係数、または負荷係数と呼ばれるものです。太陽光の場合、容量係数は通常約25%に過ぎません。北ヨーロッパや北米の太陽は24時間照るわけではありません。また、空は常に雲がないわけではありません。同様に、風は常に吹くとは限らず、ほとんど信頼性がありません。ドイツは45%の総再生可能エネルギー比率を誇っていますが、それは現実を隠しています。2021年の研究では、フラウエンホーファー研究所は、ドイツが2045年、100%カーボンフリーの目標に達するために、少なくとも現在の6~8倍の太陽光発電所を設置しなければならないと推測されています。報告書によると、現在の総54GWの太陽光発電容量は、2045年までに544GWも必要とされています。これは、3,568,000エーカーまたは140万ヘクタールの土地面積を必要とし、全国で16,000平方キロメートル以上の固体ソーラーパネルを設置しなければなりません。それを補うのに風車の追加が計画されています。こんな計画は、自殺的な計画です。

 カーボンフリーの実際的な選択肢として、風力と太陽光の欺瞞がわかり始めています。今年1月5日、政府が猛烈に風力と太陽光の発電所を建設しているカナダのアルバータ州では、華氏マイナス45°近くの気温で厳しい寒さの日、同州にある13の電力網接続太陽光発電施設は、736メガワットの電力を供給するとされていたのに、たった58メガワットしか貢献できず、2,269メガワットの容量規格を持つ26の風力発電所は、電力網にたった18メガワットの電力しか供給できませんでした。つまり、再生可能エネルギーの合計は、理論的に必要とされていた再生可能エネルギーの3,005メガワットのうち、わずか76メガワットでした。2021年2月の激しい雪の間、テキサス州はドイツと同様に太陽光と風力に問題がありました。また、雪が降るとき、太陽光発電はに立ちません。

「グレート・ゼロ・カーボン」陰謀

 再生可能な供給源を使ってゼロカーボンに到達するには、巨大な土地の作付面積を太陽光発電の反射板で埋め尽くすか、風力発電所専用にする必要があります。1つの推定によると、米国のために想定される46,480の太陽光発電施設のために必要な土地の量は650,720平方マイルであり、これは米国の南部48地域のほぼ20%であり、テキサス州、カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州の地域を合わせた面積になります。米国バージニア州だけとってみても、新しいグリーン法「バージニア・クリーン・エコノミー法(VCEA)」が成立し、これまでに780平方マイルのソーラー板の太陽光発電プロジェクト申請が大幅に増加しました。 デビッド・ウォジックが指摘するように、それは約50万エーカーの田園地帯、農地、森林が破壊され、約500のそれぞれのプロジェクトでバージニア州の農村部の大部分が埋め尽くされることになります。そして主に中国からの輸入になるでしょうが、何百トンもの有毒廃棄物になる運命である驚異的な1億6000万枚のソーラーパネルが必要とされます。

何百万もの仕事を生みだすのか?

 バイデン政権と再生可能エネルギー皇帝ジョン・ケリーは、彼らのグリーンアジェンダと、より良い再建策は、何百万もの新しい仕事を生みだすと偽って主張しています。彼らがあえて触れていない事実は、そのことにより仕事が増えるのは中国であるということです。中国はほぼ独占的に世界の全てのソーラーパネルを生産しているからです。中国は既に10年前に、政府から補助金を得た安価なパネルで米国やEUの競争相手を蹴散らしているのですから。

 同様に、ほとんどの風力発電は中国企業によって中国で作られています。一方、中国は記録的な量の石炭を使用し、EUと米国よりりも10年遅い2060年までにゼロカーボンの公約を延期しました。中国は、偽のデータに基づく気候変動理論、つまりCO2が地球を破壊しようとしているという嘘によって、彼らの産業支配を危険にさらす気はありません。ドイツ労働組合連盟DGBは最近、2011年以降、主に中国製のソーラーパネルがドイツの大手太陽光発電会社を破壊したため、再生可能エネルギー部門だけで約15万人の雇用を失ったと推定しました。そして、ドイツは最もグリーンエネルギーに狂ったEUの国です。自明のこととして、風力や太陽光というエネルギー密度の低い再生可能エネルギーは、基本的な電力コストをかなり高くするので、ドイツは経済全体でこれまで以上に多くの雇用を失うことになるのです。

NATOの産業崩壊

 太陽光と風力は、従来の炭化水素や原子力発電よりもはるかに高くつくので、電力の全体的なコストを押し上げ、多くの企業が閉鎖するか、または他の場所に移転することを余儀なくされています。公式の統計詐欺だけがこれを隠しています。ヨーロッパと北米は、予想される何百万ものソーラーパネルや風力発電所を建設するために、膨大な量の鉄鋼とコンクリートを必要とします。それは従来の石炭や原子力を膨大に必要とします。4,700万台のドイツの電気自動車を自前で充電するには、何台の電気自動車用充電ステーションが必要でしょうか?そして、どのくらいの電力需要が必要とされるのでしょうか?

 米国の重要なグリーン・エネルギー・シンクタンクRethinkXは、2021年に「エネルギーの再考:2020-2030:100%ソーラー、風力、蓄電池はほんの始まりに過ぎない」と題した再生可能エネルギーのプロパガンダ研究を発行しました。風力と太陽光の低容量の問題に対する彼らの答えは、25%の低い容量係数を補うために、想定されるよりも500%または1000%多く発電所を建設することです。彼らは、「我々の分析は、太陽光、風力、蓄電池(SWB)の組み合わせによる100%クリーンな電気が、2030年までに米国大陸全体と世界の他の地域の圧倒的多数に、物理的に可能かつ経済的に手頃な価格で提供されることを示しています。この有り余るクリーンエネルギー出力は、我々がスーパーパワーと呼んでいますが、年間を通してほぼ限界コストゼロで利用できるようになります」。 その声明は、少しのデータや具体的で科学的な実現可能性の分析なしで、単なる独断的な主張として提示されています。

 「国連アジェンダ21」の設計者、カナダ人の故モーリス・ストロングは、億万長者デビッド・ロックフェラーの石油仲間で国連次官であり、1972年6月の「ストックホルム地球の日会議」の事務総長でした。彼はまた、ロックフェラー財団の理事を務めました。彼はおそらく他の誰よりも、ゼロカーボン「持続可能な経済」の脱工業化アジェンダに責任があります。

 1992年の国連リオ地球サミットで、彼はゲイツやシュワブのような急進的な優生学の唱道者のぶっきらぼうな計画を公然と述べました。「[それは]、先進国文明が崩壊しようとする地球のための唯一の希望ではありませんか? それを実現するのは私たちの責任ではないでしょうか?」 その計画こそ、今日の「グレイト・リセット」(地球の大々的な変革)なのです。

戦争をしている場合なのか?

 ヨーロッパ諸国や米国などのNATO加盟国のかつて先進的でエネルギー集約的だった経済が、この自殺の道を歩み続けるならば、圧倒的な軍事防衛や攻撃を仕掛ける能力は蜃気楼にすぎなくなるでしょう。最近、腐敗したドイツEU委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ドイツのハイテク防衛産業とその供給業者が、十分に「グリーン」で、または「持続可能」ではなかったので、銀行信用を受け取るべきではないと宣言しました。報道によると、銀行はすでにそのメッセージを受け取って、石油・ガスと共に防衛産業が対象となるようになりました。ドイツ国防相のフォン・デア・ライエンは、ドイツの防衛が壊滅的な崩壊状態になることを許したことで多くの人々に非難されました。

 今彼らの非常識な「アジェンダ2030」と「ゼロカーボン・アジェンダ」の一方的な追求のせいで、バイデン政権とEUは、この10年が終わる前に、彼らの産業を意図的な破壊への道に押し進めています。そんな時に、ウクライナ、ベラルーシ、アルメニア、そして現在カザフスタンにおいて、ロシアに向かって現在のNATO拡大計画を推進しようというのでしょうか?近い将来、軍事産業インフラの基礎を欠くことを知った上で、今ロシアと戦争を始めて、彼らの産業破壊計画に対する潜在的な抵抗を排除したいとでもいうのでしょうか?中国以外で、ロシアは挑発された場合、NATOに壊滅的な打撃を与える唯一の可能性を秘めた国だというのに。

精神病の集団形成または群衆の狂気

 1852年、英国の歴史家チャールズ・マッケイは、『人々の異常な妄想と群衆の狂気の回想録』というタイトルの古典を書きました。そこでは、12世紀の宗教的な大十字軍、魔女マニアやオランダのチューリップマニア、その他多くの一般的な妄想の背後にある集団ヒステリーにあまり知られていない洞察を与えています。経済的、政治的自殺への世界的な不合理な突進を理解することは重要です。

 証明されていない実験的な遺伝子改変ワクチンと、世界的に続くロックダウンを受け容れさせる大量のCOVIDワクチン計画の背後にいる主要な同じ役者が、ビル・ゲイツとフランシス教皇を含め、クラウス・シュワブ世界経済フォーラムの「グレートリセット」とその「国連アジェンダ2030グリーン・ゼロカーボン」で、世界に前例のない過酷な経済政策を受け入れさせる狂気の背後にいます。

 従順で肉体的にも弱い人々を狂気に追いやる状況を説明するには、ベルギーの心理学教授マティアス・デスメット博士とロバート・マローン博士が、「群衆精神病の集団形成」と名付けた集団心理という概念が必要となるでしょう。いわば多くの人々にかけられた催眠術のようなものです。

 地球温暖化の神話とコロナ・パンデミックのアジェンダの両方が、このような大量催眠術を必要としていることは明らかです。

 COVIDの恐怖ヒステリーがなければ、グリーンアジェンダがここまで進むことはなかっただろうし、私たちの電力網が、まさに停電の危機に瀕し、経済は崩壊の危機に瀕することはなかったでしょう。WHOが主導したCOVIDパンデミックとグリーン・アジェンダの両方の究極の目標は、ブラックロック*やグーグルアルファベット*のような一握りのグローバル企業が利益を独占するために、シュワブが提唱する世界経済全体のディストピアである「グレイト・リセット」へ突き進むことです。

<訳注>*ブラックロック---ニューヨークに本拠を置く世界最大の資産運用会社
*グーグル-アルファベット---グーグルとその持ち株会社アルファベット、
アメリカの多国籍コングロマリット
*

F.ウィリアム・エンダールは、戦略的リスクコンサルタント兼講師であり、プリンストン大学で政治学の学位を取得し、石油と地政学のベストセラー作家です。グローバル化研究センター(CRG)の研究員。
この記事は「New Eastern Outlook」によって最初に公開されました








「農場から食卓まで」という名のグリーン戦略。EUや世界経済フォーラムの連中が、農業を支配しようとしている

「農場から食卓まで」という名のグリーン戦略。EUや世界経済フォーラムの連中が、農業を支配しようとしている

<記事原文  寺島先生推薦>

The “Farm to Fork” Green Agenda: How the EU and the Davos WEF Cabal Plan to Control Agriculture

ウィリアム・エングドール(F. William Engdahl)

Global Research  2021年10月1日

<記事翻訳   寺島メソッド翻訳グループ>

2022年1月12日



 「持続可能」という言葉を聞く時は、常にその耳あたりの良い響きの言葉の裏側に何があるかを批判的に考えた方が得策だろう。グローバリストたちが推奨している2030アジェンダにある、2030年までに実現すべき17項目からなる持続可能な世界構築に向けての目標のひとつ「持続可能な農業の創造」に関して述べると、その目標を熟視すれば、この目標は欧州の農業生産を破壊し、世界の食糧の価格をずっと高価にしてしまう代物であることが分かる。欧州委員会は、この食糧に関する「グリーンディール」に、「Farm to Fork(農場から食卓へ)」という可愛らしい名をつけている。この取組には、あのお馴染みのクラウス・シュワブの世界経済フォーラムや、グレート・リセットが後援している

  念頭に置いておいて欲しいのは、国連やダボスの世界経済フォーラムによる定義では、「持続可能とは2050年までに二酸化炭素排出ゼロを達成することと同義である」という点だ。

 しかし実は二酸化炭素が地球温暖化を生み出し、地球を危機に陥れていることをはっきりと証明する研究結果は出ていないのだ。各所から資金援助を受けている胡散臭いコンピューター演算だけが、そんな警告を出しているに過ぎない。

  無害である二酸化炭素は、全ての人類、動物、植物が生きていくのに必要不可欠なものだ。今、欧州委員会は、トップダウン的な改革を、世界で2番目に重要な食糧生産地である欧州の農業の中枢に押し付けようとしている。準備もしっかりできていない、欧州グリーンディールの一環としてのことだ。このような改革が見通し通りに導入されてしまえば、穀物生産を劇的に減少させ、食肉生産は深刻な減少に転じるだろう。中でも最も危険だと思われるのは、現行のEUが定める法律を変えてしまい、新たなゲノム編集穀物や、GMO2作物に対する規制が取り払われるかもしれないことだ。そうなればその影響は世界中に波及する。

 農場から食卓まで

 2020年5月、欧州委員会は、「農場から食卓まで」戦略を発表した。欧州委員会の言い方を聞けば、食料に関する天国のような状況がこの先待っているかのように聞こえる。欧州委員会によると、「“ 農場から食卓まで‘’という戦略が、欧州グリーンディール構想の中心となるものであり、その目的は、食料体制を公正で、健康で、環境に優しいものにすることです」。おお、なんとも凄そうな戦略だ。

 しかし本当の狙いはその後の話にある。

 「私たちは食料体制を再構築する必要があります。今の食料体制は、世界の温室効果ガス排出のほぼ3分の1の要因となっており、大量の天然資源を消費し、生物の多様化を失わせ、健康に悪影響を与える原因になっています。」

  このような狡い言い回しを使うことで、農民たちを悪者にし、食料生産が二酸化炭素排出の責任を負っていると思わせようとしているのだ。

  では連中が用意した解決法は?

  「新しい技術や、科学研究の発見に加えて、人々の意識も向上し、持続可能な食料体制を求める声が高まっています。このような状況は全ての人々にとってよい状況に繋がるでしょう。」

 新しい技術とは何かについては後述する。

 選挙で選ばれたわけではないEUの幹部たちの計画によれば、どのように「食料体制の再構築」を成し遂げ、2050年までに世界の温室ガス排出を3分の1までに抑えるつもりなのだろうか?

 その答えは、農民たちを廃業させることだ。その手口は、生産活動にお金がかかる新たな装置を要求したり、安全性が証明されていない新たな特許つきの遺伝子組み換え作物の栽培を求めるというやり方だ。そして連中の最大の目論見は、今は事実上禁じられているゲノム編集作物の栽培を認めさせることだ。ご存知のない方々のために申し添えると、これはファイザー社や、モデルナ社が、安全性が証明されていないCRISPR(訳注:Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeatsの略で、近年原核生物でファージやプラスミドに対する獲得免疫機構として機能していることが判明したDNA領域のこと)を使った技術でCOVIDワクチンを作っているのと同じことだ。

 ヤヌシュ・ボイチェホフスキ (Janusz Wojciechowski)欧州委員会農業担当委員は、「農場から食卓へ」についてこうコメントしている。

 「農家の皆さんにこの先必要となるのは、生産方法の抜本的改革を行うことと、技術や、デジタルや、宇宙工学を最大限駆使することです。そして新しい農法を導入することです。」

  なるほど。連中の計画は、抜本的改革ということか。この時点で既に胡散臭い。

  2030年までに、無農薬のオーガニック農法の割合をEU全体の25%にまで増やすと同時に、化学肥料の使用を3割減らそうという目標は、内実をよく知らされていない人々には素晴らしいことに思えるだろう。モンサントや遺伝子組み換え業者が「遺伝子組み換え作物は必要な肥料を減らすことができる」と主張していたのと同様に、この話は嘘だ。EUはこの話を餌に現行のEUの規則を根本的に変えようとしているのだ。今の規則では、農業におけるゲノム編集を行った植物や動物の承認を得るのは困難だ。2020年5月の「農場から食卓へグリーンディール戦略」の文書でEUが述べたところによると、欧州委員会は、「新しいゲノム編集技術の可能性を見据えた研究を実行中であり、食料供給網に伴う持続可能性の改善をはかっているところだ」とのことだ。つまりは、ゲノム編集や、 CRISPR/Cas9(訳注:遺伝子改変操作の一種)遺伝子組み換えの研究を行っているということだ。

「新ゲノム編集技術」

 今年(2021年)4月、欧州委員会は新ゲノム編集技術(NGTs)研究について発表した。新ゲノム編集技術を使えば、ゲノム編集作物からゲノム編集動物までも生み出すことが可能だ。

 この報告によれば、新遺伝子技術とは「ひとつの器官のゲノムを改変する技術であり、食料体制をより持続可能なものにすることが見込まれている。これはEUグリーンディールと“農場から食卓へ”政策の一環だ」とのことだ。この報告はこの件について「人々との話し合い」を持った上で、遺伝子組み換え作物の承認に対するEUの厳格な法律を変えることを要求している。現行の法律では遺伝子組み換え作物については幅広い検査や、表示が求められている。

 この法律のおかげで、2001年以降、欧州各国の遺伝子組み換え作物の使用制限はよく守られてきた。一方米国では、遺伝子組み換え作物は主要穀物において規制を受けない方が支配的だ。2018年にEUの裁判所である欧州司法裁判所が出した判決は、ゲノム編集作物は先行の遺伝子組み換え作物と同様の厳格な規制に基づいて取り扱われるべきだ、という内容だった。ダボス会議とEUが掲げる「農場から食卓へ」計画の本当の狙いは、肥料を大幅に減らすことだと見せかけて、実はゲノム編集作物の導入にある。

 EU委員会は、バイエル・モンサント社などの遺伝子組み換え業者のロビー活動と結託し、欧州司法裁判所が出したその制限措置を取り除こうと躍起になっている。ステラ・キリヤキデス欧州委員会保健・食品安全総局長は4月のEUの研究についてこう語っている。「今日発表した研究結果の結論は、この新しいゲノム編集技術があれば、農作物の持続可能性を促進できる可能性があるということです。これは私たちが掲げている“農場から食卓へ”政策の目的と軌を一にするものです」。新しいゲノム編集技術とは、ゲノム編集作物を婉曲的に言っているだけの言葉だ。

  グリーンディール政策の責任者であるフランス・ティメルマンス(Franz Timmermans)欧州委員会副委員長があからさまに認めている事実は、肥料を大幅に削減するという明るい見通しの裏には、ゲノム編集の制限を取り除こうという意図があるということだ。同副委員長が最近EUグリーンディール会議で語ったところによると、EUの目的は、農家に新たな精密農業を取り入れるための道具を授け、種子を最大限利用する科学的発見の梃入れをすることにある、とのことだ。曰く「それが肥料への依存を制限する方法なのです。」

  精密農業や、種子を最大限利用する科学的発見という言い分は、EUの二枚舌だ。その裏にはゲノム編集の規制を大規模に撤回させようという意図がある。「環境に優しい農業に向かうということは、昔のように草を食み、洞窟暮らしに戻るというわけではありません。最新の技術を駆使して、環境に優しい農業をめざすという意味です」。つまりそれがCRISPRを使ったゲノム編集だ。

 わかりやすいことばに翻訳すると、「農場から食卓へ」政策の肝は、2018年の欧州司法裁判所の判決を覆すということだ。その判決の中身は、「CRISPRを使ったゲノム編集作物や動物も、遺伝子組み換え作物と同様の厳格な「予防原則」措置に則る」というものだった。

  何の制限もなければ、バイエル・モンサント社のような多くのゲノム編集を扱う会社は、試験段階にあって、安全性が確認されていない遺伝子書き換え作物や動物を、何の表示もなしで、私たちの食料品として自由に流通させるだろう。

  このような自由なゲノム編集体制は、米国では既に存在する。米農務省も、規制当局も、以下のようなものを許容している。それは、ゲノム編集を使った大豆油、黒い部分がないマッシュルーム、繊維がより多い小麦粉、発育の良いトマト、除草剤に対する耐性をもつアブラナ、成長過程で汚染土壌を吸い込まない米などだ。米国にはさらに、ゲノム編集を行った怪しげな魚や動物までいる。例えばCRISPR技術を使ったゲノム編集により生み出されたオスの子牛しか産まない雌牛や、去勢の必要がない豚や、角のない乳牛や、CRISPR技術を使ったゲノム編集により生み出された成長力が強化されたナマズなどた。そのナマズは筋肉細胞が多くなるようゲノム編集されている。聞いているだけでよだれが出そうだ・・・・(もちろんジョークだ)

 CRISPRの危険度は巨大だが、効果は薄い

  ゲノム編集作物や動物に関するEUの規制を排除しようと躍起になっているロビィイストたちの出現元の多くは、バイエル・モンサント社などの遺伝子組み換え農産業界の巨大企業だ 。具体的には、スイスのシンジェンタ社、ドイツのBASF社、ダウ・デュボン社から分離独立した米国のコルテバ社だ。

  2020年11月に、リアム・コンダン(Liam Condon)バイエル・モンサント社会長が、バイエル社の「農業の未来を考える会」の穀物科学部門で語ったところによると、バイエル社は「非常に強力」なロビー活動を行っていて、遺伝子組み換え作物に対するEUの規制を変えて、ゲノム編集を認めさせようとしているとのことだった。コンダンはこう語っている。「(私たちが)非常に強力に推し進めているのは、今の規制を新しい技術にあった規制に変えることです。そして、この新しい技術の使用を認めてもらうことです。これは欧州の人々にとっても利点だけではありません。ヨーロッパの規制にならおうという他の世界の人々にとっての利益にもなるのです」。コンダンは、ゲノム編集や、CRISPR技術のことを「驚異的な進歩」であると捉えており、これらの技術を使えば農業がより持続可能なものになる、としている。コンダンが敢えて言わなかった事実は、ゲノム編集作物の規制をなくせば、バイエル・モンサント社のような大手遺伝子書き換え企業にとっては、農民たちに特許付きの「持続可能な」種子を売りつける機会が生まれる、という事実だ。

 ゲノム編集植物や、ゲノム編集動物が、言われているようなまったく危険がないものではない。この技術はまったく正確なものでもないし、統制もとれていない。しかも予想もできないような生産物を産むこともよくある。例えば、意図しなかった遺伝子変異が起こったり、ゲノム編集が加えられる器官のゲノムに、他の種由来のDNAや、ゲノム全体を、うっかりと組み込んでしまったりすることさえある。

 このようなゲノム編集技術はまだまだ新しい、試用段階にある技術なのだ。このような技術の良さを主張しているバイエル・モンサント社などの主張によれば、植物にゲノム編集を加えることは正確に行えている、とのことだ。しかし詳しい調査によれば、そうであるという証明など到底できていないのだ。   農業科学について考える機関であるバイオ・サイエンス・リソース・プロジェクトのアリソン・K・ウイルソン(Allison K Wilson)博士はこう語っている。「ゲノム編集を使った植物は、UTs(意図していなかった効果や、遺伝的な損失)を生み出す傾向もあります。ゲノム編集が加えられた植物や動物の検査結果からは、標的とされた箇所や、その近くの箇所において、ゲノム編集により意図していなかった変異を産んでいることもわかっています。具体的には、ベクター遺伝子や、バクテリアなどの不必要なDNAが入り込んでしまって、意図していなかった規模でDNAが消滅してしまったり、DNAの再構築が起こってしまったりするのです。」

  これらの現象は無視できるような小さな被害ではない。ウイルソン博士の結論はこうだ。「ゲノム編集を行った植物にどのような影響が出るかは、正確には掴めておらず、予想もできないものなのです。さらには、現在使用されている技術に依存すれば、ゲノム編集は突然変異を誘発する可能性が高いといえます。理論上は、いつかは持続可能な農業という目標に即した遺伝子組み換え作物を作り出すことはありえるかもしれませんが、実際のところは、そんなことができるようになるとは非常に考えにくいことなのです。」

 EUの「農場から食卓へ」政策について、農業に関する記事に詳しいニュースサイト「Global Ag Media」はこう分析している。「これらの政策がもたらす効果により、EUの農業生産量と、農家の収入は予想できないほど減少することになるでしょう。どの分野においても生産量は5~10%減少しています。とくにその影響が大きいのは畜産分野です。対策は打たれているのでしょうが、生産価格は約10%増加していますが、それは農家の収入が減っているという負の部分から来るものです」。EUの農民組合であるコパ・コゲカ(Copa-Cogeca)の警告によれば、この政策の結果、農業生産量は予想できないほどに減少する、とのことだ。しかしその状況こそが、「持続可能な農業」を求める本当の目的なのだ。

 ダボス会議とEUが掲げる「農場から食卓へ」政策

  EUが掲げるこの「農場から食卓へ」という抜本的な改革は、ダボスの世界経済フォーラムが提唱していた内容に呼応するものだ。世界経済フォーラムは既に2014年には、「有効な取引を。農場から食卓へ」と名付けられた政策を推進していたのだ。

 2018年1月の世界経済フォーラムの報告によると、「CRISPR-Casのような技術を使ったゲノム編集技術によって、多面的な改良の実現に繋がり、生産効率の向上を進めることになる。それにより干ばつによる食糧不足の改善や、食物の栄養面での改善につながるだろう」とのことだった。この取り組みに賛同していたのは、米国のコンサルタント会社マッキンゼー・アンド・カンパニーであった。同社は世界経済フォーラムの「食料安全保障と農業に関する取り組み」や、グレートリセットの一環として賛同していた。世界経済フォーラムと提携しているのは、バイエル社や、シンジェンタ社や、BASF社も含まれている。世界経済フォーラムのホームページの記載内容によると、「2020年1月のダボスでの世界経済フォーラム年次総会には、多くの産業界のリーダー達が集いました。特筆されるのは、フランス・ティメルマンス欧州委員会副委員長が欧州グリーンディール政策を浸透させる方法を模索するために参加していました」。バイエル社のリアム・コンダン以外にも、シンジェンタ社や、BASF社の会長も参加していた。

 EUの農業部門がゲノム編集遺伝子書き換え作物計画に取り込まれたなら、EUの生産は大規模に減少することになり、ひいては世界中のさらなる食糧不足を引き起こすことになろう。これがダボス会議の連中がCOVID-19を使った優性思想に基づくグレート・リセットに伴った計画なのだ。「農場から食卓へ」という呼び名は、人畜無害に聞こえる。実像は明らかに、まったくかけ離れている。

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