不都合な真実。小規模農家の生産網が世界の食料を確保している。
不都合な真実。小規模農家の生産網が世界の食料を確保している。
<記事原文 寺島先生推薦>
An Inconvenient Truth: The Peasant Food Web Feeds the World
Global Research 2022年2月7日
コリン・トドハンター(Colin Todhunter)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月25日

2020年10月、国際貿易協会であるクロップライフ・インターナショナル(CropLife International)は、同協会が国連のFAO(食料農業機関)と新しい戦略的提携を結び、その提携のもと、持続可能な食糧体系の確立を推進していくと発表した。 さらに、同協会の発表によれば、FAOが民間企業とこのような提携を結ぶのは初めてのことであり、この提携により植物科学分野における方向性が確立し、共通の目標のもと、建設的な協力体制がとれる、とのことだった。
貿易とロビー活動を行う強力な団体であるクロップライフ・インターナショナルには世界最大の農業工学産業や農薬業界の企業がメンバーとして加入している。具体的には、ドイツのバイエル(Bayer)社、ドイツのBASF社、スイスのシンジェンタ(Syngenta)社、米国のFMC社、米国のコルテバ(Corteva)社、日本の住友化学だ。 植物科学技術の向上を謳い文句にしているが、その裏で、この団体が何よりも追求しているのは、参加企業が(最終的に)利益を得ることだ。
クロップライフ・インターナショナルとFAOが提携したことが発表されてからあまり時間がたたないうちに、PAN (農薬行動ネットワーク)アジア太平洋支部は、350団体と共同して、FAOの屈冬玉(くつ・とうぎょく)事務局長に書簡を送り、正当な理由を添えて、その提携を止めるよう要請した。
アンハーティッド(Unearthed:NGOグリーンピース が運営する組織)と パブリック・アイ(Public Eye :人権関連のNGO)が共同で行った2020年の調査によると、BASF社、コルテバ社、バイエル社、FMC社、シンジェンタ社は、規制当局により毒性が強いことが示された化学物質を売りさばき、人々に健康上重大な危険を及ぼしながら、何十億ドルもの利益を手にしていた、とのことだった。
両団体の調査結果がさらに明らかにしたことは、これらの企業は化学薬品の売却で10億ドル以上の利益を得ているが、その化学薬品の中には、ヨーロッパの市場で販売禁止になったものもあるという事実だった。その理由は、その化学薬品がミツバチにとって強い毒性を示しているからだ。そして、これらの売り上げの3分の2以上は、ブラジルやインドなど、所得が低い、あるいは中くらいの国々からの売り上げだった。
「国連食料システムサミット2021」に対する「市民からの自発的な対応に基づく政治宣言」にはこう記述されている。「グローバル企業が、世界各国に持続可能性という言説の持つ効果をますます浸透させ、農業の更なる工業化や、地域からの富と労働力の搾取や、企業の持つ権力の集中化を確実なものにしようとしている」と。
このことを念頭において大きく懸念されることは、クロップライフ・インターナショナルが目指しているのは、アグロエコロジーに対するFAOのこれまでの対応を転換させ、食料体系をさらに企業の思いのままに推し進めようとしているのではないか、ということだ。
アグロエコロジー(agroecology)は、一言でいえば、従来の小規模農家が行ってきたような、生態系と調和を保ちながら作物を育てる農法のことで、大企業による工業型農業とよく対比される考え方。
2019年7月の国連FAO専門家によるハイレベルパネル報告の結論によれば、アグロエコロジーの考え方を用いれば、食料の安全は改善され、工業型農業と比べても、栄養面や、ジェンダー問題や、環境問題や、産出量の改善が見込まれるとのことだった。この報告で示された立場が、これまでFAOがアグロエコロジーに対して示してきた立場だった。
参考記事
Living in Epoch-Defining Times: Food, Agriculture and the New World Order
しかし、このアグロエコロジーの考え方を用いれば、クロップライフに参加している企業の利益は直接阻害されることになる。それぞれの地域の特性に応じた農業資源を使うことに重点を置いているアグロエコロージーの考え方に従えば、画一化された化学薬品や、種子や、知識に凝り固まる必要はなくなるからだ。さらに多国間で展開する農業食品産業界に支配された、世界各地に広くめぐらされた供給網も必要なくなる。
現在FAO内部で、クロップライフ・インターナショナルに参加している企業の利益を脅かすような開発方法と農業食品のモデルについてのイデオロギー論争が繰り広げられているようだ。
「私たちに食料を提供してくれるのは誰になる?”工業型農業による食品供給網”対”小規模農家による食品供給網”(ETC Group :[グローバル企業による農業支配に懸念を示している団体], 2017)」という報告において示されていたのは、小規模生産者たちの多様な供給網により、世界の7割の人々が食料を確保しているという事実だった。最も飢えていて、最も社会から除外されている人々についても、それは当てはまるということだった。
注目に値するこの報告によると、工業型農業により生産されている食料供給網は、世界のたった24%の人々にしか届いていないということだった。さらにこの報告によると、工業型農業のほうが、経費も掛かるとのことだった。工業型農業で1ドルかけて生産された食品は、後始末にさらに2ドルかかる、というのだ。
しかし、2件の著名な論文が、小規模農家が生産している食料は、世界の人々のたった35%の人々の食料供給しか確保できていないことを示した。
この2件の論文のうちの一つが、「私たちの世界の食料のうちどれくらいが小規模農家による生産で賄われているか?」 (リチャルデイ[Ricciardi]他、 2018)だ。
もう1件は、FAOによるもので、「どちらの農家の方が世界の食料を賄い、農地をより効果的に使用できているか?(ローダー[Lowder]他、2021)」だ。
8つの主要な組織が、FAOにこのローダーの論文を激しく非難する書簡を送った。それはこの論文が、FAOがこれまで幾度となく示してきた確固たる立場を覆す内容だったからだ。この書簡の署名者には、オークランド協会、土地労働者連盟(Landworkers Alliance), ETCグループ、 成長する文化( A Growing Culture)、アフリカ食料自給を目指す会(Alliance for Food Sovereignty in Africa)、グレイン(GRAIN:穀物)、グランズウエル・インターナショナル(Groundswell International)、農業と貿易政策協会 (the Institute for Agriculture and Trade Policy)という8団体が名を連ねられていた。
この公開書簡がFAOに再確認を求めたのは、農民(小規模農家、零細漁師、牧畜家、猟師、野生食物採集者、近郊農業従事者を含む)たちは、農業資源が豊富ではないのにもかかわらず、より多くの食料を生産しているという事実について、だった。さらに農民たちは、世界人口の少なくとも7割の人々の主要な栄養源を提供している事実についても、だった。
ETCグループはさらに16頁からなる「小規模農家と零細農家が今でも世界の食料を賄っている」という報告書を発表し、先述の2件の論文に反論を加えている。その報告書によると、これらの2件の論文の執筆者たちは、操作された方法論や概念に引きずられて、重要な情報を省略してしまったことにより、35%という数値をはじき出している、とのことだった。 特に顕著だったのは、「家族農家」の定義を変えていたり、「小規模農家」を、「2ヘクタール以下の農地を所有する農家」という定義に変えてしまっていることだ。このような定義は、2018年にFAO自身が出した定義と食い違っている。2018年の定義では、小規模農家の定義には世界統一の基準を使うことを否定し、各国それぞれの基準をより重要視すべきだ、としていた。
ローダー他の論文はさらに、FAOや他の機関が出した最近の報告書の内容とも食い違っている。それらの報告書によれば、1ヘクタール単位で見れば、大規模農家よりも零細農家の方がより多くの食料を生産しており、より栄養価の高い食料も生産している、とのことだった。 この食い違いが示しているのは、政策立案者たちは零細農家の生産について間違った認識を焦点化することで、より大規模な生産団体を重要視するよう画策し続けているという事実だ。
FAOに対する公開書簡に署名している諸団体は、ローダー論文が出した推論に強く異議を唱えている。その推論によると、食料消費状況から食料生産状況は推測でき、食物の市場における商品価値と消費される食品の栄養価を同等に見ることができるというものだ。
この論文には、農業関連産業にとって有利な言説を流す意図があり、零細農家による生産効果を低く見せることにより、 農業関連産業が持つ農薬技術や、 農業関連産業による農業食品の流通方法を推進しようとしている。
小規模零細農家は、これらの複合企業体にとっては障害なのだ。 このような観点は、大量生産に基づく生産量という狭い視点だけから見たものであり、社会や文化や経済や農業という高次の視点から物事を見ようとしていない手法だ。 このような高次の視点から見なければ、1エーカーごとの食料自給や栄養価の高い農作物の生産の様子などを見るという観点は生まれてこない。
このような高次の観点から見る手法を用いることは、郊外や地域の発展を広げることにもなる。というのもこれらの発展が、各地域の繁栄や自己持続性に重きを置くことになるからだ。地域を犠牲にして、世界規模の供給網や世界規模の市場の必要に応じないままの人々を軽くあしらうのではなく。 産業界のロビーストたちは、「近代的な農業を進める必要への対応」などと称して、後者の手法を推進しようとしている。決してその手法の本当の名前を言うことはしないで。その名とは「企業帝国主義」だ。
FAOのこの報告書の結論によれば、世界の小規模農家が世界の農地のうち12%を使用し、世界の全食料のうちたった35%の食料しか生産していない、というものだった。しかしETCグループによれば、FAOが出している通常の比較可能な数値から見れば、零細農家が世界の全食料のうち7割を生産しているということは明らかだとのことだ。零細農家は世界の3分の1以下の農地で、農業資源を使用していないのにも関わらず。
しかしたとえ全農地のうち12%の農地しか使用せず、食料の35%しか賄えていないとしても、大規模で、化学薬品を多用する農業に較べ、小規模農家や零細農家への投資が少ないという正当な理由になるのだろうか?
全ての小規模農家がアグロエコロジーや、化学農薬を使わない農業をしているわけではないかもしれないが、小規模農家の方が、各地域の市場やネットワークや身近な供給網との繋がりは強いだろう。さらに食料自給や、より多様な収穫体系や、より健康な食品にも繋がると言える。さらに小規模農家は地元の人々の必要に応じた食品供給に力を入れていて、地域の外の産業に対する利益提供や、地球の裏側にいる企業投資家や、株主への配慮に左右されない。
企業群による公的機関の乗っ取りが起こった場合、真っ先に犠牲になるのは、真実だ。
<記事原文 寺島先生推薦>
An Inconvenient Truth: The Peasant Food Web Feeds the World
Global Research 2022年2月7日
コリン・トドハンター(Colin Todhunter)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月25日

2020年10月、国際貿易協会であるクロップライフ・インターナショナル(CropLife International)は、同協会が国連のFAO(食料農業機関)と新しい戦略的提携を結び、その提携のもと、持続可能な食糧体系の確立を推進していくと発表した。 さらに、同協会の発表によれば、FAOが民間企業とこのような提携を結ぶのは初めてのことであり、この提携により植物科学分野における方向性が確立し、共通の目標のもと、建設的な協力体制がとれる、とのことだった。
貿易とロビー活動を行う強力な団体であるクロップライフ・インターナショナルには世界最大の農業工学産業や農薬業界の企業がメンバーとして加入している。具体的には、ドイツのバイエル(Bayer)社、ドイツのBASF社、スイスのシンジェンタ(Syngenta)社、米国のFMC社、米国のコルテバ(Corteva)社、日本の住友化学だ。 植物科学技術の向上を謳い文句にしているが、その裏で、この団体が何よりも追求しているのは、参加企業が(最終的に)利益を得ることだ。
クロップライフ・インターナショナルとFAOが提携したことが発表されてからあまり時間がたたないうちに、PAN (農薬行動ネットワーク)アジア太平洋支部は、350団体と共同して、FAOの屈冬玉(くつ・とうぎょく)事務局長に書簡を送り、正当な理由を添えて、その提携を止めるよう要請した。
アンハーティッド(Unearthed:NGOグリーンピース が運営する組織)と パブリック・アイ(Public Eye :人権関連のNGO)が共同で行った2020年の調査によると、BASF社、コルテバ社、バイエル社、FMC社、シンジェンタ社は、規制当局により毒性が強いことが示された化学物質を売りさばき、人々に健康上重大な危険を及ぼしながら、何十億ドルもの利益を手にしていた、とのことだった。
両団体の調査結果がさらに明らかにしたことは、これらの企業は化学薬品の売却で10億ドル以上の利益を得ているが、その化学薬品の中には、ヨーロッパの市場で販売禁止になったものもあるという事実だった。その理由は、その化学薬品がミツバチにとって強い毒性を示しているからだ。そして、これらの売り上げの3分の2以上は、ブラジルやインドなど、所得が低い、あるいは中くらいの国々からの売り上げだった。
「国連食料システムサミット2021」に対する「市民からの自発的な対応に基づく政治宣言」にはこう記述されている。「グローバル企業が、世界各国に持続可能性という言説の持つ効果をますます浸透させ、農業の更なる工業化や、地域からの富と労働力の搾取や、企業の持つ権力の集中化を確実なものにしようとしている」と。
このことを念頭において大きく懸念されることは、クロップライフ・インターナショナルが目指しているのは、アグロエコロジーに対するFAOのこれまでの対応を転換させ、食料体系をさらに企業の思いのままに推し進めようとしているのではないか、ということだ。
アグロエコロジー(agroecology)は、一言でいえば、従来の小規模農家が行ってきたような、生態系と調和を保ちながら作物を育てる農法のことで、大企業による工業型農業とよく対比される考え方。
2019年7月の国連FAO専門家によるハイレベルパネル報告の結論によれば、アグロエコロジーの考え方を用いれば、食料の安全は改善され、工業型農業と比べても、栄養面や、ジェンダー問題や、環境問題や、産出量の改善が見込まれるとのことだった。この報告で示された立場が、これまでFAOがアグロエコロジーに対して示してきた立場だった。
参考記事
Living in Epoch-Defining Times: Food, Agriculture and the New World Order
しかし、このアグロエコロジーの考え方を用いれば、クロップライフに参加している企業の利益は直接阻害されることになる。それぞれの地域の特性に応じた農業資源を使うことに重点を置いているアグロエコロージーの考え方に従えば、画一化された化学薬品や、種子や、知識に凝り固まる必要はなくなるからだ。さらに多国間で展開する農業食品産業界に支配された、世界各地に広くめぐらされた供給網も必要なくなる。
現在FAO内部で、クロップライフ・インターナショナルに参加している企業の利益を脅かすような開発方法と農業食品のモデルについてのイデオロギー論争が繰り広げられているようだ。
「私たちに食料を提供してくれるのは誰になる?”工業型農業による食品供給網”対”小規模農家による食品供給網”(ETC Group :[グローバル企業による農業支配に懸念を示している団体], 2017)」という報告において示されていたのは、小規模生産者たちの多様な供給網により、世界の7割の人々が食料を確保しているという事実だった。最も飢えていて、最も社会から除外されている人々についても、それは当てはまるということだった。
注目に値するこの報告によると、工業型農業により生産されている食料供給網は、世界のたった24%の人々にしか届いていないということだった。さらにこの報告によると、工業型農業のほうが、経費も掛かるとのことだった。工業型農業で1ドルかけて生産された食品は、後始末にさらに2ドルかかる、というのだ。
しかし、2件の著名な論文が、小規模農家が生産している食料は、世界の人々のたった35%の人々の食料供給しか確保できていないことを示した。
この2件の論文のうちの一つが、「私たちの世界の食料のうちどれくらいが小規模農家による生産で賄われているか?」 (リチャルデイ[Ricciardi]他、 2018)だ。
もう1件は、FAOによるもので、「どちらの農家の方が世界の食料を賄い、農地をより効果的に使用できているか?(ローダー[Lowder]他、2021)」だ。
8つの主要な組織が、FAOにこのローダーの論文を激しく非難する書簡を送った。それはこの論文が、FAOがこれまで幾度となく示してきた確固たる立場を覆す内容だったからだ。この書簡の署名者には、オークランド協会、土地労働者連盟(Landworkers Alliance), ETCグループ、 成長する文化( A Growing Culture)、アフリカ食料自給を目指す会(Alliance for Food Sovereignty in Africa)、グレイン(GRAIN:穀物)、グランズウエル・インターナショナル(Groundswell International)、農業と貿易政策協会 (the Institute for Agriculture and Trade Policy)という8団体が名を連ねられていた。
この公開書簡がFAOに再確認を求めたのは、農民(小規模農家、零細漁師、牧畜家、猟師、野生食物採集者、近郊農業従事者を含む)たちは、農業資源が豊富ではないのにもかかわらず、より多くの食料を生産しているという事実について、だった。さらに農民たちは、世界人口の少なくとも7割の人々の主要な栄養源を提供している事実についても、だった。
ETCグループはさらに16頁からなる「小規模農家と零細農家が今でも世界の食料を賄っている」という報告書を発表し、先述の2件の論文に反論を加えている。その報告書によると、これらの2件の論文の執筆者たちは、操作された方法論や概念に引きずられて、重要な情報を省略してしまったことにより、35%という数値をはじき出している、とのことだった。 特に顕著だったのは、「家族農家」の定義を変えていたり、「小規模農家」を、「2ヘクタール以下の農地を所有する農家」という定義に変えてしまっていることだ。このような定義は、2018年にFAO自身が出した定義と食い違っている。2018年の定義では、小規模農家の定義には世界統一の基準を使うことを否定し、各国それぞれの基準をより重要視すべきだ、としていた。
ローダー他の論文はさらに、FAOや他の機関が出した最近の報告書の内容とも食い違っている。それらの報告書によれば、1ヘクタール単位で見れば、大規模農家よりも零細農家の方がより多くの食料を生産しており、より栄養価の高い食料も生産している、とのことだった。 この食い違いが示しているのは、政策立案者たちは零細農家の生産について間違った認識を焦点化することで、より大規模な生産団体を重要視するよう画策し続けているという事実だ。
FAOに対する公開書簡に署名している諸団体は、ローダー論文が出した推論に強く異議を唱えている。その推論によると、食料消費状況から食料生産状況は推測でき、食物の市場における商品価値と消費される食品の栄養価を同等に見ることができるというものだ。
この論文には、農業関連産業にとって有利な言説を流す意図があり、零細農家による生産効果を低く見せることにより、 農業関連産業が持つ農薬技術や、 農業関連産業による農業食品の流通方法を推進しようとしている。
小規模零細農家は、これらの複合企業体にとっては障害なのだ。 このような観点は、大量生産に基づく生産量という狭い視点だけから見たものであり、社会や文化や経済や農業という高次の視点から物事を見ようとしていない手法だ。 このような高次の視点から見なければ、1エーカーごとの食料自給や栄養価の高い農作物の生産の様子などを見るという観点は生まれてこない。
このような高次の観点から見る手法を用いることは、郊外や地域の発展を広げることにもなる。というのもこれらの発展が、各地域の繁栄や自己持続性に重きを置くことになるからだ。地域を犠牲にして、世界規模の供給網や世界規模の市場の必要に応じないままの人々を軽くあしらうのではなく。 産業界のロビーストたちは、「近代的な農業を進める必要への対応」などと称して、後者の手法を推進しようとしている。決してその手法の本当の名前を言うことはしないで。その名とは「企業帝国主義」だ。
FAOのこの報告書の結論によれば、世界の小規模農家が世界の農地のうち12%を使用し、世界の全食料のうちたった35%の食料しか生産していない、というものだった。しかしETCグループによれば、FAOが出している通常の比較可能な数値から見れば、零細農家が世界の全食料のうち7割を生産しているということは明らかだとのことだ。零細農家は世界の3分の1以下の農地で、農業資源を使用していないのにも関わらず。
しかしたとえ全農地のうち12%の農地しか使用せず、食料の35%しか賄えていないとしても、大規模で、化学薬品を多用する農業に較べ、小規模農家や零細農家への投資が少ないという正当な理由になるのだろうか?
全ての小規模農家がアグロエコロジーや、化学農薬を使わない農業をしているわけではないかもしれないが、小規模農家の方が、各地域の市場やネットワークや身近な供給網との繋がりは強いだろう。さらに食料自給や、より多様な収穫体系や、より健康な食品にも繋がると言える。さらに小規模農家は地元の人々の必要に応じた食品供給に力を入れていて、地域の外の産業に対する利益提供や、地球の裏側にいる企業投資家や、株主への配慮に左右されない。
企業群による公的機関の乗っ取りが起こった場合、真っ先に犠牲になるのは、真実だ。
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