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ビクトリア・ヌーランドが7月11日を第三次世界大戦開始日に見据える。

<記事原文 寺島先生推薦>
11th July: The date set by Victoria Nuland for WWIII
筆者:tts-admin
出典:ザ・トゥルース・セイカー(The Truth Saker)   2023年6月24日
初出は、TFIGlobal.com 2023年5月31日。 筆者は、アンシュ・パンディ (Ansh Pandey)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月23日





 ウクライナでの戦争は、常に緊張状態に置かれている。つかの間の平穏が訪れても、すぐに事態が警戒すべき規模に激化してしまう。その影に潜んでいるのは、悪名高い影の政府だ。この影の政府が、権力者らが繋がっている見えにくい網であり、米国の外交政策を密室で形成している、と言われている。

 ヌーランドが、とんでもない爆弾発言をした。ウクライナ政府とのビデオ会議において、大胆にもヌーランドは、7月11日に第三次世界大戦が勃発する可能性があると宣言したのだ。そう、皆さん、大惨事へのカウントダウンが正式に始まったのだ。


7月11日に勃発する第三次世界大戦

 報道によると、削除されたキエフ当局者とのビデオ会議で、ヌーランドは、第三次世界大戦は7月11日に始めるのが効果的だと述べ、米国とその友好諸国は16年以上かけてその戦争を戦うことになる、と述べた…7月11日が選ばれたのは、リトアニアでの一日間の日程で開かれるNATO首脳会議が行われる日だからだ。

 ヌーランドによるこの大胆な宣告には身震いさせられる。ヌーランドの考えでは、米国とその友好諸国が、終わることのない16年戦争に引き摺りこまれるというのだから。その事実だけでは恐怖を感じない人々のために付け加えるが、ヌーランドが設定した開戦日が、NATO首脳会議と同日なのだ。まるで、ヌーランドがその戦争の進め方に少し劇的な要素を付け加えたかったかのように。

 NATO首脳会議が近づくにつれ懸念されていることは、この会議の目的が何であるのか、という点だ。差し迫ったこの戦争に対する避けられない反撃から欧州を守るためなのか。あるいは、不利な条件を取り除き、空中での惨事を避けることで、ウクライナを無傷で守るために、何機の戦闘機が必要なのかを決めるためなのか。


ヌーランドとは何者か?


 
 非常に人騒がせな女性であり、「民主改革と、ウクライナと西側とのつながりの強化」を揺るぎなく支持する人物として知られている。そしてヌーランドは、プーチンやプーチンに同調する者たちの動きに対して、恐れることなく攻撃を加えてきた。

 ユーロマイダンでの抗議活動の際には、ヌーランド女史は明らかな影響力を示していた。ヌーランドは反対派を支援する立場を取っていたのだが、漏洩したテープの記録からは、ヌーランドが背後から影響力を示していたことがうかがい知れる。ヌーランドは、ウクライナでのこの事件に消せない痕跡を残している。


ロシア政府に対する攻撃

 さらに、ロシア政府がヌーランドにとっての主な標的であり、これは現在のこの戦乱において見逃すわけにはいかない事実だ。プーチン政権を転覆することによりヌーランドが望んでいるのは、ナワリヌイを長とする暫定政権の設立だ。

 西側各国政府の計画から全く抜けているのは、和平に向けた話し合いや外交的な解決法が無視されている点だ。米国の影の政府は、大きくはっきり聞こえる伝言を送っている。「プーチンは何としてでも排除されなければならない」。

 これが、ロシア政府に対する攻撃が、急に大きく増えている原因だと言える。先日ロシア政府は、ウクライナから突然のドローン機による攻撃を再び受けた。そのため、状況はもっと不安定になっている。 

 世界が崩壊の淵に追いやられるなか、核戦争が起こる可能性も、不気味に広がっている。緊張が激化するなか、核攻撃の応酬が起こる可能性が、常に存在する悪夢になっている。そうなってしまえば、その結果は計り知れないほど壊滅的なものになろう。それは直接核戦争に関わっている国々だけではなく、世界すべてにとっても、である。

 時計の針が7月11日に近づくにつれて、私たちの心は落ち着かなくなっている。世界の運命は、不安定な均衡のなかにあり、私やあなた方のような普通の人々は、これから迎えるであろう恐ろしい結果について思いを巡らせるしかなくなっている。

 私たちの世界の運命は、私たちが団結力を発揮できるかにかかっている。その前に立ちはだかるのは、影の政府が描いている破壊へ向かう無謀な道筋だ。破壊へのカウントダウンは続いている。しかし、私たちにはその道程を変える力がある。私たちを奈落の底へ突き落とそうと脅してくる権力に立ち向かえるかどうかは、私たちにかかっている。


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ローマクラブ『成長の限界』の著者が世界人口の86%削減を促進

<記事原文 寺島先生推薦>
Club of Rome “Limits to Growth” Author Promotes Genocide of 86% of the World’s Population
筆者:ローダ・ウイルソン(Rhoda Wilson)
出典:Global Research  2023年6月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月17日


デニス・メドウズは、ローマクラブの『成長の限界』の主要な著者の一人であり、世界経済フォーラムのメンバーだ。




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 デニス・メドウズは、ローマクラブの『成長の限界』の主要な著者の一人であり、ローマクラブの名誉会員および世界経済フォーラムの一員だ。もし、彼の思想が彼の著書の出版以降、その声量を落とし、「反・人間」の考えを弱めたと思うなら、それは間違いだろう。

 以下は、2017年の動画でのメドウズの発言だ。彼は、将来避けられない86%の世界人口の虐殺が「慈悲深い」独裁の下で平和に達成されることを望んでいる、と述べている。彼の発言:

 「もし私たちに賢明な、非常に強力な独裁政権があれば、世界人口80億または90億を[ ]することができるでしょう・・・そして人々が低い生活水準を持っている場合・・・ しかし、私たちは自由を望み、高い生活水準を求めているので、世界人口は10億人になるでしょう。現在は70億人ですから、減らさなければなりません。これがゆっくりと、比較的平等になるよう比較的ゆっくりと進むことを願っています。つまり、そうすれば人々はこの(人口削減という人類の)経験を共有するのです」。





 この記事の最後に明らかになるように、メドウズの言葉が国連気候変動会議COP1で最初に提示された「1995グローバル生物多様性評価」と響き合っているのは偶然ではない。こう書かれている:

 「農業の世界」では、人類のほとんどが農民であり、50億から70億人を支えること ができるはずだ・・・対照的に、現在の北米の物質的生活水準での工業化された社会の合理的な推定人口は10億人だ。

Global Biodiversity Assessment, UNEP, 1995, pg. 773

 この思想の支持者たちが言及しないのは、Worldometerによれば、現在の世界人口は80億人を超えており、彼らの恐怖を煽る予測とは一致しない点だ。十分な理由があって彼らは現実の筋書きを避けるのだが、それは彼らが想定する型がごまかしであり、データを操作しているからだ。

関連記事:Limits to Growth, Climate Change, Digitization of Everything and Worldwide Censorship — All Leading to WEF and the Behemoth Cult Commanding It

 COVID-19危機中のニール・ファーガソンによる予測演算の操作は多くの人々に知られるようになったが、強力なマルサス主義者の繋がりは過去の大半の世紀にわたって同じ手法を利用して自ら掲げる計画を売り込み、押し付けてきた。

 マルサス主義者とは、トーマス・マルサス(1766年-1834年)の信奉者たちを指す。マルサスは、人口水準は常に幾何学的な成長に向かい、一方で農業資源は算術的な成長に向かう傾向があり、比較的予測可能な「危機点」が生じるという数学的な論文を提唱した。マルサスは、イギリス帝国を代表する社会技術者たちは、これらの「危機点」を科学的に管理して「人間の群れ」を取り扱うべきだと信じていた。マルサスは、自然が支配階級に対して重要な課題を達成するための特定の手段を与えていると信じていた。それは戦争、飢饉、そして疫病だ。

 1968年に設立されたローマクラブは、すぐに西側世界に支部を設立し、その会員は、全員、社会の最良の統治形態は科学的独裁であることに同意していた。

 ローマクラブは、世界的な非政府組織(NGO)であり、国家元首、王族、ビジネスリーダー、国際金融家、学術研究者、研究所の科学者、国際連合(UN)、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、そして経済協力開発機構(OECD)などのグローバル・ガバナンス*機関の管理者などを集めて会議を開催している。ローマクラブは、ビルダーバーグ・グループ、王立国際問題研究所(RIIA)、そして外交問題評議会(CFR)の「円卓」構造に倣っており、代表者が持続可能な開発のマルサス主義的な生態学に基づいて、世界の自然資源と人的資源を公共と私的な管理下で計画する会議を支援している。
*地域や国境を越えて解決する、政治的相互作用のこと

 1972年、ローマクラブの『成長の限界』は、マサチューセッツ工科大学(MIT)から集められた統計学者チームによって計算されたコンピュータ演算予測の結果を公表した。これは、ジェイ・フォレスターとデニス・メドウズを名目上の代表とするMITチームによって2年間にわたって行われた研究の集大成だった。『成長の限界』はおそらく「持続可能性」についての最も影響力のある書籍だ。それは現在の反人間主義運動の聖書であり、グリーン・ニューディール・計画の設計図となった。

 ローマクラブの『成長の限界』は、原則としてマルサス主義的であるだけでなく、参考文献の調査からも、人口管理に取り組んできたさまざまなマルサス主義的な優生学者や関連機関による幅広い引用により支持されていることが明らかになっている。

 2012年の記事は、『成長の限界』の40周年を祝いながら次のように述べている:「『成長の限界』を今日読み返す価値があるのは、他のどの本よりも、この本は人為的な気候変動の概念を大衆に紹介したからだ」。他の理由でも『成長の限界』を読み返す価値がある。

 その一つの理由は、『成長の限界』が、世界の気温と人口成長、資源喪失、そして「汚染」という定義の曖昧な分類といった経済変数を結びつけた最初の本であったことだ。メドウズと彼の共著者たち(その中の一人は彼の妻)は、線形方程式を使用して将来の傾向を推測し、次の二つの大きな誤謬をさらけ出した:

■ 物理的な時空の構造は、探知可能な宇宙において本質的に非線形であり、したがってどんな計算能力を持ってしても線形方程式によって表現することはできない。人間の創造的思考は、ひらめきや真理への愛、尊厳、美などの、形式化できない存在の状態に結び付いているため、二進法では近似することができない。ローマクラブのプログラマーたちは、これらの事実を無視し、彼らのソフトウェアと同様に宇宙が二進法であると仮定した。

■データセット自体は、政府政策を形成しようとするコンピュータプログラマーの操作によって容易に歪められ、再構築される可能性がある。我々は、イギリスインペリアル・カレッジのニール・ファーガソンが、将来の筋書きの誤った結果を導くためにこの手法が使用しているのを既にしっかり目撃している。そして同じ手法が生態演算にも適用されている。

 『成長の限界』を読み返すもう一つの理由は、この本が超国家組織に与えた影響を明らかにすることになるからだ。数十年にわたり、ニューエイジ*の指導者であるバーバラ・マルクス・ハバードは、新たな世界秩序を導入するために人口の四分の一を減らすことを提唱し、トランスヒューマニズム**とマルサス主義的な持続可能な開発を支持してきた。これは、グレート・リセットや第4次産業革命の要の考え方だ。ハバードのマルサス主義的な人口過剰理論は、『成長の限界』に一部触発されていた。実際、ハバードの『共創の書』には、生態的な災害につながる「成長の限界」を警告する多数の文章がある。彼女はまた、ローマクラブの共同創設者であるアウレリオ・ペッチェイと個人的に会っている。ペッチェイは世界経済フォーラムの背中を押し、1973年の第3回世界経済フォーラムで『成長の限界』のマルサス主義的な教義を採用させようとした。
*20世紀後半に現れた自己意識運動であり、宗教的・疑似宗教的な潮流(ウィキペディア)
**新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を進化させ、人間の状況を前例の無い形で向上させようという思想(ウィキペディア)


 最後になるが、今回取り上げたローマクラブのメンバーであり、『成長の限界』の著者(デニス・メドウズ)は、独裁政権が世界人口の86%をゆっくりと「平和に」削減することを望んで予測演算を操作したのだ。

 『成長の限界』やそれが推進する計画を決して賞賛してはならない。なぜなら、それは我々の死を促進しているからだ。

Sources
Dennis Meadows [Club of Rome] ‘6 billion People Have To Go’, Why Not News, 21 April 2022
The Club of Rome and the Rise of the “Predictive Modelling” Mafia, Unlimited Hangout, 21 November 2022
Barbara Malthusian Hubbard: From Limits to Growth to UN Agenda 2030, Unlimited Hangout, 3 March 2023
The Revenge of the Malthusians and the Science of Limits, Unlimited Hangout, 28 June 2022

イゴール・マカロフ:G20の政策顧問団は、アメリカの身勝手な「ルールに基づく国際秩序」にうんざりしている。

<記事原文 寺島先生推薦>
Igor Makarov: G20 policy advisors are tired of America’s self-serving ‘rules-based international order’
The ‘Global South’ is starting to question whether Western countries, and primarily the US, should be allowed to continue dictating the international agenda
「グローバルサウス」は、西側諸国、特にアメリカに国際的な課題を決定させ続けることを許していいのかどうかを疑問視し始めている。
筆者:イゴール・マカロフ(Igor Makarov)
イゴール・マカロフ:高等経済学院(HSE)の准教授、気候変動経済学の研究・教育ラボの責任者そして、HSEの現代世界経済の編集長。
出典:RT 2023年5月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月12日



美術家が、G20外相会合に先立ち、インドのニューデリーでG20のロゴを描いている© Arrush Chopra / Getty Images


 私は、先週ムンバイで行われたThink 20の臨時会議に参加した。Think 20は、G20のための「アイデア銀行」を自称し、シンクタンクや高レベルの専門家を集めて、G20に関連する政策課題について議論する。

 そこで出される提案は決して些細なものではない。現在、世界は一連の同時的な構造的危機に直面している:経済、債務水準、持続可能な開発目標、そして、それらとは別に、気候変動がある。とりわけ、世界はグローバル・ガバナンス(一国では解決できない世界規模の課題への対応)の危機にも直面しており、その基本的な構造は(今とは)異なる時代(国々の力の均衡が異なり、異なる目標を持っていた時代)に開発された。

 主な批判の対象は国際金融機関だった。問題は、それらが先進国によってどれだけ効果的に運営されているかではなく(これも大いに議論されている)、共通の目的のために大量の資金を集める任務に十分に対応できていないことだ。世界には多くの持続可能な開発課題に対処するための金融資産は十分にあるが、それらを必要な場所に向けることができていない。



関連記事:数十人の死者と何万もの避難者:インドのムンバイ州の民族間闘争の中で起こったこと。

 例えば、過去5年間における先進(主に西側)世界における資本コストは1.5-2%だったが、アジアでは8%、アフリカでは16%、サハラ以南のアフリカでは22%だった。西側での金融政策の引き締めは、途上国にとって状況をさらに悪化させるだけだ。国際金融機関の役割は、貧しい国々に援助を提供することよりも、世界中の十分な民間の貯蓄を開発事業に振り向けるために、投資家のリスクの一部を引き受けることだ。

 たまたま出されたインドの不満は、世界銀行が自国インドの3兆ドル(米ドル換算)を超える経済に対して雀の涙(たった数十億ドル)の資金提供しかしていないことだ。

 2つ目の必要性はデジタル化だ。焦点は、サービスや公共インフラのデジタル化(産業に利用できる欧米とは対極的)に置かれている。これが機能する例として、インドで開発されているデジタルIDシステムがある。このシステムは銀行口座とつながっている。その結果、南アジアの国でのデジタル取引は中国よりも4倍多く、米国と西ヨーロッパを合わせたよりも11倍多くなった。

 その目的は2つある。1つは、より多くの人々(特に女性)を経済活動に参加させることを容易にすること。もう1つは、技術革新を促進することだ。途上国は、中国の成長モデルであったような西側の産業を受け入れることがますます困難になるため、技術革新は特にサービス部門を通して構築される必要がある。さらに、新たな技術によってグローバル企業がますます外注を行えるようになるため、この傾向が強まっている。



関連記事:アンドレイ・スシェンツォフ:EUの新加盟の東欧諸国が、EUを支配してきた手法

 多国間主義は不可欠だ。ただし、問題は一方ではアメリカ、もう一方では中国がそれにどの程度準備ができているかということがある。

 アメリカは次の選挙の結果やその過程そのものに関心があり、世界規模の問題にはそれほど関心を持っていない。一方、中国は中国中心の形式である「一帯一路構想」などの形でこれまでに問題解決に参加してきた。ある参加者がロシアを批判し、世界秩序を乱していると攻撃しようとしたが、ブラジルの議長によって厳しく非難され、その後インドの議長にも同様に反論された。

 一般的に、ムンバイでの「ルールに基づく秩序」という話題は、だれの目にもうんざりするものだった。わずか数年の間に私が見てきたのは、代表者たちがこのような秩序の危機を宣言する姿勢から、だれが実際にルールを作るべきかと主要な人々問う姿勢への明確な変化だ。

 全般的な印象として、2022年から2025年までのインドネシア、インド、ブラジル、そして南アフリカのG20の連続した議長国(彼らの間で非常に活発なやり取りがある)は、これらの国々によって新たな言説を形作るために最大限に活用されるだろう、ということがある。もちろん、これは自動的にはグローバル・ガバナンスの改革にはつながらないが、これらの変化への持続的な圧力となるだろう。

広島におけるインド首相モディ氏:世論、政治、現実

<記事原文 寺島先生推薦>
Modi at Hiroshima: Optics, Politics, Reality
https://libya360.wordpress.com/2023/05/22/modi-at-hiroshima-optics-politics-reality/
筆者:M.K.バドラクマール (Bhadrakumar)
出典:INTERNATIONALIST 360°2023年5月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月11日

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モディ首相(左から4人目)&G7首脳会議特別招待者の家族写真(広島、2023年5月21日)


 インドの首相ナレンドラ・モディの海外訪問は、国内の視覚効果を考慮して注意深く演出されたイベントだ。おそらく、今日はその意味合いが一層強まるだろう。総選挙が迫っているからだ。モディはカルナータカ選挙での壊滅的な敗北の後に広島で表舞台に立つことになった。それは与党バジパイ・ジャンタ党(BJP)の政治的な側面にとっても、モディの個人的な側面にとっても同じくらい強い意味合いを持っている。

 しかし、今回の視覚効果は絶大だった。追従の芸術において、かつては達人であったバイデン大統領は、モディの上を行くために身をかがめ、さらにはサインを求めてモディの「人気」を羨んだと述べている。

 のんびりとした南西部の沿岸都市である広島が、「強力なメッセージを発信する」という象徴的な意味合いで、G7サミットの舞台として選ばれたというのは、私たちの分断された時代の逆説の一つとしか言いようがない。そうは言っても、アメリカが1945年に広島に「リトルボーイ」という原子爆弾を投下(歴史家たちの結論では、まったく不必要な行為だった)し、推定14万人の人々を殺害し、核戦争の理論を恐ろしい現実に変えた唯一の国であることを忘れることはできない。

 広島は、その方向を180°転換させられロシアと中国を非難することになった。G7サミットは、口にすることと実際の行動が真逆な世界の指導者たちで溢れていた。英国の首相リシ・スナクは、キエフに劣化ウラン弾を供給した後、広島に飛んだ。その弾薬はすぐにウクライナ中部のフメリニツキー市で爆発し、周辺地域の土壌を数十年にわたって汚染する可能性のあるガンマ線のレベルを大幅に上昇させた。

 G7は「ダブル・スピーク」が滴っていた。かつての植民地強国は「経済的な強制」について雄弁に語ったが、巧妙に南アフリカを特別招待国から除外し、代わりにコモロスを選んだ。なぜコモロスなのか? それは、コモロスにとって最も重要な国は、かつて植民地国家だったフランスだからだ。そんなコモロスが広島で生意気な行動を取るはずはないだろう。

 もちろん、広島での皮肉な光景はモディの注目を逃れるはずもなかった。彼のG7サミットの作業部会9での「外交的でない」発言は、国連が単なる「話し合いの場」という愚かな現実や、国際法や主権、領土の完全性への尊重の必要性、現状変更への一方的な試みなどについて述べたものであり、西側の指導者たちは、彼の話を聞きながら、気まずさに身をよじらせたことだろう。

 それがモディの意図でなかったにしても、彼が述べたこと(コンマやセミコロン、ピリオドを含めてその一字一句)は、実際にはアメリカによるシリア領土の1/3の違法占拠について凝縮して語っていた。ちなみに、シリアは国連の創設メンバーの一つであり、1945年10月24日から加盟している。G7が見るも無残な光景を呈しているのは間違いない。

 しかし、モディのウクライナ大統領ゼレンスキーとの会談こそが彼の卓越したコミュニケーション技術を引き出した。歯切れのよい英語で書かれた外務省の味気ない声明でも、二人の短い会話の雰囲気が分かる。

 モディは次の3つの重要点を述べた。第一に、彼にとってウクライナの戦争は政治的または経済的な問題ではなく、「人間性、人間の価値の問題」である。第二に、インドは「前進する方法を見つけるために」対話と外交を支持し、紛争解決に協力する意思がある。第三に、インドはウクライナの人々に対して人道支援を継続するだろう。

 私たちはゼレンスキーがこの難しい会話をどのように処理したのかは分からない。おそらく、彼は実際にはモディに「ウクライナの現状について」短く説明したに過ぎないかもしれない。モディの発言からは、彼がインドの中立を堅持し、ウクライナ危機の発生原因やロシアの西側との対立の複雑さ、さらにはNATOのウクライナへの拡大(ゼレンスキーがそれを受け継いだ)や国家主権の喪失といった煩雑な問題をうまく避けたことが伝わってくる。

 代わりに、モディは高い視点に立ち、戦争による人々の苦しみに言及し、「対話と外交」を優先することを強調した。指弾することがモディの意図ではなかったかもしれないにしろ、ゼレンスキーの心に不安を引き起こしたかどうか、を私たちが知ることは絶対にないだろう。

 皮肉なことに、ゼレンスキーの一連の失策がなければ、戦争は勃発せず、現在の暴力のレベルまでエスカレートすることもなかっただろう。彼がドンバス地域に連邦内での地方自治を提供するミンスク合意を拒否したこと、ドンバス地域の疎外問題に対して軍事的解決を追求する頑固さ、昨年3月下旬のロシアの介入から数週間後にイスタンブール協定から撤退したことなどは、英米による後ろ楯としての行動があり、英米はモスクワ政権を強制的に転覆するという独自の目的を持っていた。

 モディは我を忘れて自分のウクライナの紛争解決に個人的名声を賭けてしまったのかもしれない。明らかに、このトンネルの出口に光は見えていない。バイデンは軍事的な敗北やウクライナ国家の崩壊の様子を受け入れることはない。また、ロシアも自らの存在に関わる戦争と考えている問題で妥協することはない。

 (ウクライナ)政府は、インドが冷戦後の時代に本当に一度も開かなかった、西側とロシアという扉を通り、美しい庭園に至らせるなどという魅力的な見通しについての妄想にふけるべきではない。そんなものは、はっきり言って、存在しない。インドには調停者となるだけの資格も影響力もない。

 本当に心が挫けてしまうのは、モディがブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァと手を取り合い、知的資源を共有するという素晴らしい機会が失われたことだ。両国は両方ともグローバルサウスを擁護する大国なのだ。しかし、ワシントンがゼレンスキーのルーラとの約束を阻止することで、計画が狂ってしまった可能性もある。(ゼレンスキーは姿を現さなかった。)

 モディは、アメリカへの今後の国賓訪問(6月21日から24日)を視野に入れて、広島を訪れた。さらに、最近バイデン政権からは、技術移転に関するインドの要望に対してより良い見方が可能かもしれないという打診があった。

 西側からの圧力は、モディ政権にウクライナに関する中立を放棄させようと、今後も続くだろう。最近、欧州連合もこの問題に公式に取り掛かっている(「EU calls out India on Russia sanctions」という私の記事を参照されたし)。しかし、インドの押し返しは信じるに足る。その最も確かな兆候は、モディの「抱擁外交」への転換だ。つまり、ソーシャルメディアにおいてとは言え、外務大臣ジャイシャンカールは、「BJPの核心支持層」に対して素っ気ない言い方をしている。

 問題の核心は、インドとロシアを結びつける戦略的な関係が、国際法に完全に適合しているということだ。そしてそれは、クライナがその一症状に過ぎない不安定な国際状況において、「win-win」の精神と、相互信頼と相互信用に染め抜かれている。

 客観的な現実は、インドとロシアのエネルギー協力(西側にとっては目障り)が、相互の利益に叶うので、より一層深まる可能性さえある。ブルームバーグ紙が週末に報じたところによれば、石油取引を除いても、4月には中国とインドがロシアのアジアへの石炭輸出の2/3以上を占め、エルニーニョ現象の出現により今後数週間でさらに増加する見込みだ。エルニーニョは定期的に起こる温暖な気候パターンであり、その地域で干ばつを引き起こす可能性がある。

 権威ある学術誌Scienceの研究によれば、今年のエルニーニョ現象は5月から7月にかけて発生すると予想され、特に強くなる可能性がある。同紙が引用する専門家の意見:

 「現在のこの灼熱の気温の中で最悪の場所は南アジアだ・・・自国民の基本的な要求さえ満たせない状況では、国際問題に過度の配慮をすることはとてもきびしい・・・ [南アジアの人々] は自問している: アメリカとの対立を避けるか、エネルギーの大幅な割引を諦めるか、どちらを選ぶべきか」。

道化師王子ゼレンスキーのサウジアラビアと日本への「托鉢」旅

<記事原文 寺島先生推薦>
Clown Prince Zelensky’s Saudi And Japanese Slime Trail
筆者:デクラン・ヘイズ(Declan Hayes)
出典:Strategic Culture 2023年5月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月6日


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 この先、日本・台湾・韓国は、サウジアラビアに倣い、できるだけこっそりと、支配者である米国から距離をとるようにすべきだ。

 西欧歴訪を終えたばかりの、道化師王子ゼレンスキーの興ざめの出し物の次の公演先は、サウジアラビアと日本だった。両国とも、 外交辞令や覚え愛でたくする努力が強く求められる国だ。ゼレンスキーは両国で、いつものGIジョー(米国の男子向け兵士人形)さながらの服装を身にまとい登場したが、ゼレンスキーが提唱していた自分勝手な言い分はどれも、計り知れず、取り返しのつかない害をなすだけのものだった。

 まず訪れたサウジアラビアでは、シリアのアサド大統領やアラブ諸国の指導者たちが、この地域で物事がどう進んだかを示した。それは日本でのG7でも同じだった。皆きちんとした服装をして、ルールに従って行動し、事を済ませた。

 これは本当の話だが、日本の成田空港について、最初に目にするモニター画面には、大きな字でこう書かれている:「日本へようこそ。決まりは守ってください」と。そのような決まりのひとつには、「ローマに入ればローマのやり方に従え」というものがある。今回の場合は、「日本に来たら日本のやり方に従え」だが。この決まりは大事だ。日本人に問えば誰でもこう答えるからだ。「出る杭は打たれるよ」と。 丸い穴にピッタリはまる四角のネジなどないのだから。日本でもサウジアラビアでも、 人はその場にあった服装や振る舞いをすべきなのだ。GIジョーの格好が許されるのは、コスプレをする10代の子どもたちまでだ。

 そんな考えはゼレンスキーやお付きのならず者たちには全くなかったようだ。ナチスを真似た軍服姿で登場し、サウジアラビアから通行人役を与えられたが、サウジアラビアからはとっと追い出されたようだ。覚えておいていただきたいのは、サウジアラビアはこの会議で、シリアのアサドと会食し、中国の支援を得て、イランやイエメンとの関係も修復していたという事実だ。

 ではゼレンスキーは何をしたというのか? ゼレンスキーは、アラブ諸国全体に対して、勉強不足の知識をもとにイランやシリア、ロシアの悪口を言ったのだ。その行為が持つ意味は、ゼレンスキーを操る影の勢力があまりにも傲慢で、あまりにも無知なため、アラブ諸国の空気を読めていなかったということだ。「2023年版アサド政権との関係正常化阻止法」を有する米国と、米国の対シリア政策をオウム返ししているナチス・ドイツのアンナレーナ・ベアボックがアラブ諸国をいつどこで失ったのかを知りたいのであれば、彼らはあの愚か者がサウジアラビアで見せた息を呑むほど無知な振る舞いを見るだけでいい。

 当ストラテジック・カルチャーが5月19日に出したG7の広島の集いについての社説は素晴らしかったが、その記事に付随されていた写真にはG7の指導者(原文ママ)たちしか写っておらず、フォン・デア・ライエン委員長などEU関係者が写っていなかったのが玉に瑕だった。これではまるで、EU関係者が歌う歌が、歌なしのカラオケで流れているような写真になってしまった。これらの指導者が、7人の侍なのか、7人の小人なのか、はたまた七つの大罪なのか、彼らが見せる姿にあった呼称で呼ばれればいいだけの話だが、ともかく、あの場面での何枚かのストック写真(後で広報に利用するため予め撮られてあった写真のこと)は、まるで10代の子どもたちが自身のSNS上にあげるような写真に見えた。

 この印象は、彼らが広島を闊歩している姿からも再び浮かび上がった。1945年に行われた悪名高いテロ攻撃の犠牲者たちを馬鹿にするかのように、広島にある平和記念碑を背景に使って写真を撮っていたのだ。これは、ポルノ俳優など社会に高い影響力を持つ人たちがすることと同じことだ。誤解のないように付け加えるが、こんなSNS上で影響力を誇示する人たちの投稿と言えば、見かけだけで中身は全くないのだから。

 日本の首相がバイデンの手を引いて誘導しなければならなかった場面を見てお笑いになられた後で見て欲しいのは、カナダのおバカさんトルドーが、韓国の首相の前で大股を広げている様子だ。こんな格好をするのは、SNS上の人気者であって、一国の指導者ではない。次に見ていただきたいのは、イタリアの首相の姿だ。可愛らしく、この悪党集団の中に自分が入れたことだけで嬉しそうだ。日本の首相とともに、顔を黒塗りにしたことがあるトルドーからトランスジェンダー(体の性と心の性が一致しない人)の権利についての講義を聞く羽目になったとしても、だ。さらに米国の駐日大使もこの講義の講師の一人だったのだが、本当のことを言えば、この大使は米国が長崎や広島や沖縄、そして東京で犯した戦争犯罪について、起きているうちはずっと日本に謝り続けないといけないはずなのだ。

 おっと、ウクライナのGIジョーもこの集まりに加わったことを忘れてはいけない。ゼレンスキーが、彼を影で操るフランスの諜報機関が用意した航空機に乗って広島に現れたとき、MI5の手先であるBBCは、ゼレンスキーが出席したことは、事態を大きく変えることになると高らかに報じた。なんでそうなる? ゼレンスキーが持参したのは、この会議のために用意した托鉢用の器だけで、ゼレンスキーのことも、彼が繰り出すいつもの聞き古された歌謡と舞踏も、もう誰の目にもとまらなかったはずだ。いつも同じ歌しか歌えない物乞いが、施しをくれる人々から相手にされないのと同じように。

 広島でのバカ騒ぎの宴での話題の焦点は、中国に因縁をつけることだったのだが、考えるべき点は、その話し合いの首尾はどうだったかと、なぜインドと超大国のコモロ諸島がこの余興に招待されていたのに、南アフリカとフィリピンが加わっていなかったかという点だ。インドには直面すべき経済上の課題があったため、ナレンドラ・モディ首相は、中国への因縁づけやG7が焚き付けている他の火種に自国は巻き込まれたくないという立場を外交上示すために参加したのだった。小国のコモロ諸島がアフリカ代表として参加した理由は、 ゼレンスキーを操るフランスの勢力が、コモロ諸島なら管理できそうだと考えたからであり、南アフリカをG7が抑える事は不可能だということを知っていたからだ。それは、ヤンキー(米国)の戦争屋が、フィリピンを抑えられないことを理解していたのと同じだ。 G7が狙いを定めていたのは中国を強く非難することだったから、この両国は応じないことが分かっていたからだ。

 ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ大統領がゼレンスキーとの面会を断った理由は一つだけ。一目見てゼレンスキーがただのウクライナのおバカさんだと見抜いたからだ。そして、日本を凌ぎ、いまや世界最大の自動車輸出国となった中国は、もちろんこの会議に呼ばれなかった。というのも、中国は東アジアの悪党だと思われているからだ。そう、1973年の石油ショックの際に、日本がそう思われていたのと同じように。広島でのサーカス公演は、中国を弱体化させる話し合いに終始していたが、経済巨大国である中国にケチを付けられるのは、いわゆる人権問題についてだけなのだ。

 ウクライナの大統領が、ブラジルやインドの気を引けなかった一つ目の理由は、ゼレンスキーに魅力がないからだ。そして二つ目の理由は、インドやブラジルは、ロシアの主要な貿易相手国なので、ゼレンスキーのような負け犬に構っている暇はないからだ。 そのゼレンスキーと言えば、広島の話をするのに、自分や自分が持ってきた托鉢用の鉢を中心にした話しかできないのだから。

 このウクライナのおバカさんにとって一番大事な問題は、ポルノ俳優のような自分が、MI5に手を貸してもらい、キエフ政権の頂点に君臨できた、という点だ。 ただし、ゼレンスキーだけがMI5に手を借りて、広島にやってきたおバカさんではない。 英国のリシ・スナクもそうだ。何の地盤もないところから、ウィリアム・ヘイグ(元保守党党首)から無投票当選が確実な選挙区を譲ってもらい、投票も受けずに議員の座に割り込み、首相にまで上り詰めた人物だ。

 愚か者のリズ・トラス(英前首相、G7時期に台湾を訪問した)、顔を黒塗りにしたことがあるトルドー、失禁して茶色くなったズボンを履いていたことのあるバイデン、それとクック諸島を見れば、中国やロシアは好機到来だと喜んだに違いない。え、クック諸島? その通り、クック諸島も招待されていた。太平洋で中国を止めるためだ。クック諸島の人口は、1万5040人。中国の方がちょっと多いかな?クック諸島のGDPは3億8400万ドル。これも中国の方がちょっと多いかな? でも、安心してください。クック諸島には、道化師王子ゼレンスキーが味方に付いてくれたようだ。

 現実世界の話に戻ると、G7の統制下にある資本は世界全体のGDPの3割弱にすぎない。クック諸島のGDPを足しても、だ。もちろんそれよりも少ない資本で世界を支配下に置くことは理論上不可能ではないが、主要部門であるロシアが持つ防衛産業と中国が持つハイテク部門の広大な領域を手放した状態でそれを成し遂げるのは困難だ。

 これらのことは、通行人役として報酬をもらっている、ゼレンスキーやトルドー、他のSNS上で影響力をもつ人々にとってはなんの関心も持てないことであろうが、両耳の間にある灰白質の中身が少しでも詰まっている、日本や韓国や台湾などの産業界の重役にとったら大問題のはずだ。

 日本の岸田文雄首相もそのような人物の中の一人のはずなのだか、どうやらそのような方向性を取り損ねているようで、顔を黒塗りしたことのあるトルドーや、神が我々に与えたもうたゼレンスキーと同じく、通行人役に徹しているようだ。岸田はこの18ヶ月の間に16カ国ほどを訪問した。具体的には、インドやアフリカ諸国、東南アジア諸国だが、その微妙な外交関係が、日本の切り札になったことはない。日本が好んで選んできたのは、たいてい悲惨な結末しかもたらしてこなかったのだが、 どこかの超大国とひっつく道だけだからだ。

 この先、日本・台湾・韓国は、サウジアラビアに倣い、できるだけこっそりと、支配者である米国から距離をとるようにすべきだ。日本は米国とは広大な国境を接している;カナダの道化師やウクライナの道化師と繋がっている米国と太平洋と呼ばれる国境を接しているのだが、その太平洋を国境とするもう一方には、中国、韓国、台湾がある。そちらの国境からは、双方にとって友好的で利のある関係が、クック諸島、ソロモン諸島、さらには未だに米国の占領下にあるグアムやハワイ両地域の善良な人々と結べる。

 これらの太平洋諸国にとっても、世界全体にとっても、不必要なのは、CIA、その手下であるGIジョー、黒人の権利に理解のある振りをする人、プッシー・ライオット(訳註:ロシア政府に反旗を翻したロシアの女性ロックバンド) 、女性の権利拡大を主張する俳優らが、ソーシャル・メディア上で、広島、長崎、東京、京都といった東アジアの文化の中心地にむけて毒を吐く行為だ。これら日本の諸都市では、これらの勢力が不要であるだけではなく、文化や階級、華やかさ、儀礼という点において日本と比べて完全に劣っている。

ナチス・ドイツは敗北した…しかしファシズムは一時的に停止したに過ぎなかったことを、ウクライナでのNATOの代理戦争が示している

<記事原文 寺島先生推薦>
Nazi Germany’s Defeat… But a Pause for Fascism as NATO’s Proxy War in Ukraine Demonstrates
出典:Strategic Culture Foundation 2023年5月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月1日


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 1945年のナチス・ドイツの敗北は、ファシズムに対する長期にわたる歴史的な闘いの一休止にすぎないことが判明した。私たちはその闘争がウクライナで、そしてロシアに対する米国の無謀で精神異常な攻撃とともに展開しているのを目の当たりにしている。

 今週は、1945 年 5 月にナチス・ドイツが敗北してから78周年を迎えた週だった。邪悪な第三帝国は打ち負かされたが、より深い怪物は倒されていなかった。ナチス・ドイツは西側帝国主義ファシズムの一つの型にすぎなかったのだ。戦後、そのファシズムは、アメリカ合衆国とその衛生国家である様々な西側諸国により最大限の力と共に再出現した。

 ワシントンとその西側衛星国を第四帝国と表現するのは誇張ではない。

 ソ連・米・英・それ以外の西側同盟諸国の間の戦時下での臨時軍事同盟は、すぐに冷戦に移行したが、それは歴史上最も破壊的な戦争の戦火がまだくすぶっているときのことだった。このような両勢力のねじれた関係をみれば驚かされる。

 西側の軍国主義がこのように再構成された様は、1945年に設立された国連が、すぐさま米国が主導する西側勢力と1949年に結成されたNATO枢軸諸国から嘲笑の対象になったことから説明できる。これら西側勢力とNATOは外国に対して数え切れないほどの侵略行為を行ってきた。朝鮮戦争(1950年代)から現在のウクライナでの戦争に至るまでずっとそうだ。

 1945年の冷戦と、今のウクライナでの戦闘の起源をたどれば、第2次世界大戦終了時に米・英がナチス第三帝国と結んでいた秘密の関係にまで行き着く。


ナチスの戦争機構を再び利用

 ほかの情報源の中でも特に、開示された米国の公文書が明らかにしたのは、何万ものナチスやナチス親衛隊の役員、これらの勢力に協力した人々が、米・英当局により再雇用されていた事実だった。ほとんど明らかにされてこなかった事実は、対ソ連戦争に携わっていた第三帝国の残党が再雇用された事実だった。

 ナチスの最終的解決(訳注:ユダヤ人虐殺の遠回しの言い方)に実際に加担していたウクライナのファシスト勢力は、何百万人ものスラブ系民族を殺害したが、これらの勢力が西側勢力により採用され、対ソ連前線の裏で行われていた代理戦争にかり出されていた。ステファン・バンデラやミコラ・レベドといった大量殺人に加担した人々は、米・英の諜報機関の工作員たちにより保護され、彼らの極悪非道の行為を継続することができた。元ナチスのスパイ部長だったラインハルト・ゲーレン少将が任された使命は、ウクライナとバルト海沿岸のナチスのゲリラを結びつけ、ソ連に対する秘密戦争をけしかけることだった。第2次世界大戦後の数十年間に欧州の西側各国が利用していたこの秘密の部隊にいた人々の名前は少ししか明らかになっていない。その多くは、ソ連社会を妨害するための命令やテロ行為の訓練を米国で受けていた。

 米国の戦略情報局(OSS)の諜報機関の幹部であったアレン・ダレスやジェームス・ジーサス・アングルトンは、故意に欧州内のナチスを採用し、次の戦争であると目されていた対ソ連戦において利用しようとしていた。ナチスの戦争犯罪者の戦争犯罪を回避させる経路が用意され、その経路を利用して、西側の諜報機関は、何千ものナチス関係者を採用しただけではなく、第三帝国が恐怖政治の下で積み上げていた、大量の金(きん)や戦利品をも確保した。この裏金が、その後何十年間にもわたって行われてきた米国による秘密工作の資金に充てられたことを、デビッド・タルボットが著書『悪魔のチェス盤』の中で明らかにしている。クリストファー・シンプソンの影響力の大きい研究である「素晴らしい金髪をもった野獣」も参照あれ。

 以下はCIAが、第2次世界大戦時にナチスと内通していたことと繋がる、世界各地で起こしたクーデターや画策のほんの数例だ: イタリア(1948)、シリア(1949)、イラン(1953)、グアテマラ(1954)、コンゴ(1960)、キューバ (1961)、ドミニカ共和国(1961)、ブラジル(1964)、インドネシア(1965)、チリ(1973)。これらはそれぞれ独立した出来事や日時ではない。米国帝国主義が世界規模に展開した侵略の1枚の綴織のようなものだ。今のウクライナの状況を、この綴織に加えることもできるだろう。


ナチスという敵を排除するための臨時的な軍事同盟というご都合主義

 西側勢力がソ連と軍事同盟を結んでまで、ヒトラー政権を倒そうとしていた理由を問うのはいい質問だ。結局のところ、米・英の支配者層と金融界の首脳は、1930年代にナチスの軍事勢力に手を貸していたが、その目的はソ連や共産主義全般を倒させることにあった。疑いのないことだが、戦時中の同盟関係というのは、ドイツ帝国を排除したいという西側のご都合主義的な取り決めに過ぎなかったという事実だ。当時、ナチス・ドイツは扱いにくい敵帝国になっていたからだ。フランクリン・D.ルーズベルトのように、根っからファシズムに反対している指導者もいたが、ルーズベルトは、国内の指導者層内のファシスト分子から失脚させられる危機に直面した。

 戦後になると西側の軍事同盟は裏切りの様相を見せ、ナチスの関係者を採用することまでしていた。西側支配者層内の危険分子は、ソ連に対して新たに開発された原子力爆弾を使用するよう積極的に動いていた。レズリー・グローヴス将軍は、マンハッタン計画を監督していた人物だが、同将軍が国防総省の科学者らに明言していたのは、この原子力爆弾の真の標的はソ連であり、かねてから広言していたナチス・ドイツではないという事実だった。「想像を絶する作戦(Unthinkable Operation)」や「ドロップ・ショット作戦」という作戦が実際に計画されていて、ソ連が原爆を開発する前に、ソ連に対して先制攻撃を行おうとしていた。

 したがって、西側の報道機関や科学界、ハリウッドによる美化作戦にも関わらず、冷戦は第2次世界大戦から続く戦争であるとみるのが正しい見方なのだ。ソ連に対して原爆による先制攻撃をしかけようとする秘密作戦は、欧州各地でナチスの歩兵らを現地採用する作戦と並行して行われていた。ソ連はいわゆる「大祖国戦争」で、少なくとも2700万人を失ったが、そのソ連は西側がこの先裏切ることに気づいていた。ソ連が目にしたのは、ナチスとの関係を絶つといういわゆる戦時中の同盟関係が崩れ、戦争犯罪者を引き渡すという同意が踏みにじられている姿だった。冷戦は、西側勢力が示した最大の裏切り行為であり、西側が欺瞞や冷酷な好戦性を消すことができないという証拠であったと言える。 


戦勝記念日の祝福を犯罪行為とみなす西側指導者層

 あの日からほぼ80年が経ち、今週欧州各地では夢のような催しが開かれた週だった。ロシアではナチス・ドイツに対する戦勝記念日の行進が、伝統的で華麗な式典とともに行われたが、西側各国では、大規模な公的祝賀会は全くなかった。欧州の支配者層、一例をあげれば、欧州委員会の委員長であり、ナチスの末裔でもあるウルズラ・フォン・デア・ライエンらは、装いが改められた「欧州記念日」を祝う方を好み、戦勝記念日は無視しているようだ。実際、欧州の支配者層は、戦勝記念日を祝福した人々を犯罪者扱いすることまでしている。

 このような状況の何がおかしいのだろうか? おそらくそのおかしさは、西側主流報道機関が、第2次世界大戦のことを間違って説明し、おかしな省略を加えて報じていることから来るのだろう。あの戦争時のより深い帝国主義的な陰謀やその皮肉な結末を理解している人々にとったら、そんなおかしさは感じないのだろう。 

 実際、欧州各国の市民たちが組織した戦勝記念日を祝ういくつかの催しは、当局から妨害された。ドイツやバルト海湾岸諸国などの欧州各国の警察は、ベルリンでの赤軍の勝利を祝うため、市民たちが戦没者記念碑にソ連の旗を掲げるのを禁止した。しかし、これらの国々では、ウクライナのファシストの支持者たちが旗を振ることや、赤軍に敬意を払ってナチズムの敗北を記念することを妨害することは許されている。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、赤の広場での行進時に発した声明の中で正しく表明していた通り、今は宣戦布告のない戦争が再びロシアに対して行われているのだ。 本当に驚くべきことなのだが、第二次世界大戦の恐怖の記憶がまだ息づいている中で、このようなことが起こっているのだ。本当に筋が通った考え方をしていて、道徳心のある人にとっては、このような状況は、腐敗した状況であるように映っていることだろう。しかし、帝国主義者やファシストを奉じる野獣の本性というものを正しく理解すれば、 野獣というものは血と肉で育てられずにはいられない存在であることは、しっかりと頭に入っているはずだ。野獣を抑えることはできない。殺さない限りは。


より大きな戦争の中のウクライナの戦場の位置づけ

 ウクライナでの武力衝突は、米国が主導するNATO軍事枢軸とロシアとの戦争というより大きな文脈の中の戦場に過ぎない。プーチンが述べた通り、世界はいまこの惑星の未来や地球の生命の実在的な方向を決めるあらたな歴史的な岐路に立たされているのだ。

 今週、さらに多くの武器がNATO勢力からキエフ政権に供給された。米国は軍事援助としてさらに120億ドルを計上(これまで既に投じられた300~500億ドルへの上乗せとして)し、英国は長距離巡航ミサイルの供給を発表した。このミサイルがあれば、ロシア領内の奥深くまで攻撃が可能となる。ドイツの最高軍司令官カルステン・ブロイアー少将は、ウクライナの諸部隊を調査し、この先予想される反撃についての評価を行った。 NATO枢軸全体が、いま事実上ロシアと交戦状態にある。もはや代理戦争などではなく、完全な全面戦争へと向かっているのだ。核兵器を使った交戦の危機がこれほど高まっているのは、1962年のキューバのミサイル危機以来なかったことだ。誤解のないように付け加えるが、今の酷い状況を作り出したのは、米国と米国の西側衛星諸国が、ロシア側が提案していた外交努力や安全保障協定に応じようとしなかったせいだ。

 不快なキエフ政権は、2014年のCIAが支援した暴力的なクーデターにより権力の座についたのだが、毎週のように過去のナチスの人々などの名誉を挽回し、通りの名前をこれらの人々にちなんだ名前に変換している。2014年に樹立された現政権の目的はロシアに対する手先となることであり、NATOの武器や軍事訓練士らが送り込まれたことを、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は今週報道機関に対して述べた

 米・英が、第二次世界大戦終結時に第三帝国の残党を雇用したのは、西側の指導者層の階級内には、無数のファシスト分子や「例外主義者」が存在し、これらの人々が、米国には世界に対する優先権と世界支配の権利が神から与えられていると信じていたからだ。これは米国当局に蔓延する考え方である。米国の戦略諜報局 (OSS)はその後1947年にCIAに引き継がれたのだが、CIA創設の命を下したのはハリー・トルーマン大統領だった。(この大統領が広島と長崎に原爆投下を命じた人物だ)。 そしてこの大統領こそ、米国のファシズムを体現するような人物であり、その脇には国防総省の軍産複合体(MIC)があった。CIAとMIC、ウォール街の諸銀行、米国資本主義を奉じる企業支配者層が、影の政府や私企業が支配する政府の代表なのだが、この勢力こそまさにファシズムだ。選挙制度は、ただの「民主主義」の隠れ蓑にすぎない。同じことは大多数の西側諸国やそれらの国々で取られているまやかしのような選挙制度にもあてはまる。真の権力者は選挙で選ばれていない財閥集団の中にいる。端的に言うと、本質的に西側諸国はベニヤ板でできた民主主義のもとでのファシスト体制なのである。まるで、豚に口紅を塗っているようなものだ。

 CIAは英国と共に、筋金入りのナチスを採用し、彼らを利用して、戦後何十年も続いた冷戦期に、世界を暗殺やクーデターや戦争という恐怖に陥れた。ファシストを奉じる米国の支配者層は、米国の大統領のひとりさえ暗殺した。それが、1963年11月22日のジョン・F ケネディだ。ケネディは、ソ連と平和的な関係を築こうとし、ロシアに対する原爆を用いた先制攻撃という作戦に応じなかったため暗殺されたのだ。それはカーチス・ルメイ将軍など国防総省の幹部らが求めていたことであった。


冷戦の終結がもたらすと思われていた平和がなぜ訪れなかったのか

 ファシストの歴史が何十年もの間続いてきた事実は、1991年に冷戦が終結した際に実現すると思われていた平和がなぜ訪れなかったのかの説明になる。今から30年以上前、ソ連は解体したが、それによってより平和な世界が構築されることはなく、国際関係の安定も成し遂げられなかった。

 主に米国の支配者層が牽引しているファシズムを奉じる西側勢力は、他の世界と平和共存できることはない。その理由は、西側の資本主義的帝国主義に基づく政治体制の行き着く先は、全世界を覇権と支配のもとで管理する社会になると考えられるからだ。西側社会の基礎が、このような不平等な人間関係をもとにしたものであり、そのような基礎を支えるために、軍国主義や侵略、国家によるテロ行為、戦争が必須となっているのだ。

 ナチス・ドイツは1945年に敗北したが、それはファシズムに対する戦いのより長い歴史から見れば、単なる小休止にすぎなかったことがわかる。いま私たちの目前には、ウクライナで展開されている戦争があり、さらに米国当局によるロシア、中国、イランなどの国々に対する狂気のもとでの侵略が繰り広げられている。その侵略の理由は、これらの国々が、米国による世界支配にひれ伏して、従属しようとしていないからだ。

 西側の支配者層が、戦勝記念日を祝福する素振りさえ見せないことにはなんの不思議もない。戦勝記念日など、西側の支配者層にとったらなんの意味もないからだ。西側の支配者層が裏切り行為を見せているのは、ロシア国民だけではなく、何百万人もの西側諸国の市民たちに対しても、だ。西側諸国の市民たちも、自分たちの命を犠牲にして、ナチスのファシズムを倒そうとしているのだから。

ブラジルのルーラ大統領の訪中が示したのは、ラテン・アメリカはもはや米国の「裏庭」ではないという事実だ。

<記事原文 寺島先生推薦>

Lula’s China trip proves Latin America is no longer the ‘backyard’ of the US
The Brazilian president has asserted his country’s role as a player in its own right in the new multipolar world

ブラジル大統領は、新たな多極化世界において自国が果たすべき役割を断言

筆者:オリバー・バーガス(Oliver Vargas)
* ラテン・アメリカを拠点にしている記者。ブラジルのカワチュン・ニュース社の共同創設者の一人。ポッドキャストの番組「ラテン・アメリカ再考」の司会者。

出典:RT

2023年4月18日 

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月29日



2023年4月14日。北京の人民大会堂での歓迎式典で、妻同伴の中国の習近平国家主席(左)とブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領(右)© Ricardo STUCKERT / Brazilian Presidency / AFP


 ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、高い期待が持たれていた中国への訪問から成功裏に帰国したところだ。この訪問により、ラテン・アメリカが果たす役割が強まっているという良い兆候や熱意が生み出された。

 中国の習近平国家主席による歓迎式典の様子から、関係するすべての人々にとって、この訪問がうまくいきそうな最初の兆候が見て取れた。習近平国家主席とルーラ大統領が、赤絨毯を進んでいるときに、中国軍の演奏団が演奏した曲が「Novo Tempo(新時代)」だったからだ。この曲は、80年代のブラジルの曲であり、米国が支援していた独裁政権に対する反政府運動と関連のある曲だ。

 非公開の会合で、15項目の二国間協定や基本合意書が署名されたが、その中には投資取引、研究計画、開発計画、食品規格、国営通信社、技術移転、および第7次中国・ブラジル地球資源衛星(CBERS)建設の協力に関する内容が含まれていた。この会議は数年に及ぶ両国の戦略的同盟関係に基づいて開かれたものだ。2009年、中国は米国に変わってブラジルの最大の貿易相手国となり、この会議は両国のこれまでの関係強化の過程をさらに深めるものとなった。

 ただし、この訪中のもっとも興味深い側面は、両国の指導者が行った公式発表の声の強さだった。というのも、この公式発表は、ただの外交辞令の域を超えるものであり、両国が世界における指導者的立場を果たそうとする意図がはっきりと示されており、これまで長年続いてきた米政権のもとでの単極支配に挑戦する内容だったからだ。



関連記事:米国はウクライナで「戦争誘発行為」をやめなければならない。(ルーラ大統領の発言)


 「私が毎晩考えているのは、なぜ全ての国がドル建てで貿易を行うよう強制されているかについてです。自国貨幣立てで貿易できないものでしょうか?」とルーラ大統領は上海での催しで語った。ウクライナでの紛争も議題に上がり、ルーラ大統領は、米国が何十億ドル相当もの武器をキエフ政権に送り込むことで、戦争を抑制するどころか、激化させていると語った。さらに、同大統領はこう語った。「必要なことは、米国が戦争を誘発する行為をやめ、平和に向かう発言を始めることです。 欧州連合も和平についての話し合いを開始しなければなりません」と。


ラテン・アメリカ自身の利益の再確認

 この訪中が明らかにしたのは、国際社会において、ラテン・アメリカと米国支配に異議をもつ国々の関係がぐっと近づく幕開けが始まっているという潮流だった。ルーラ大統領帰国後に注目を集める次なる大きな出来事は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相によるブラジル訪問だろう。同外相は、ラテン・アメリカ諸国訪問を予定しており、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアを訪問することになっている。

 ラブロフ外相のブラジル訪問が機会となり、ロシアとラテン・アメリカ間の共通の利益の分野についての話し合いが持たれることになるだろう。具体的には、貿易や投資、エネルギー、防衛に関することだ。同外相はさらに、文化交流を強化しようとするだろうが、これは米国当局が、ロシアやロシア文化に対する嫌悪感を世界規模で促進させようとしている中でのことだ。

 ルーラ大統領の訪中が成功裡に終わったことで、ラテン・アメリカ諸国の政府には明らかに更なる弾みがつき、今週のロシア使節団の訪問を受け入れる体制がしっかりとできたようだ。中国とロシアと結びつくことで、双方にとって利のある協力関係を築けるという状況は、米国が上から目線で申し出てくるような傲慢な態度とは好対照となっている。



関連記事:ブラジルが求めているのは、ドル体制からの「脱却」


 しかし、ラテン・アメリカは、多極化世界樹立の過程にただ受動的に参加するだけの存在ではない。元ブラジル大統領でルーラ大統領の盟友でもあるジルマ・ルセフ氏(この人物も米国が支援したクーデターの被害者)は、新たな任務として、上海のBRICS開発銀行の総裁に職に就いた。この任務は、ブラジル・中国、ロシア・インド・南アフリカにとって重要な重みをもつ任務である。さらにはこの先BRICSは、「BRICSプラス」 として、グローバル・サウス諸国における新興経済大国を加えていく可能性もある。


米国からの逆襲

 米国当局は大統領職に就いてからずっと、ルーラ大統領のご機嫌を取ろうとしてきた。ブラジルはラテン・アメリカ最大の経済大国であるため、そうしないことは賢明ではない、ということだ。米国務省はルーラ大統領の就任を妨害しようとしてブラジル国会議事堂を攻撃した右派の暴動者らを公式に非難する声明を出したが、その声明の中にあった、「ブラジルの民主主義」を支持するという文言には、米国はルーラ氏の大統領職をはく奪するために動くことはない、という意図が込められていたと思われる。つまり、ボリビアやベネズエラの左派大統領に対して米国内が行ったようなことをルーラ大統領にするつもりはない、ということだ。

 そのため米国当局は、ルーラ大統領の訪中やこの先行われるラブロフ外相の訪問に対して公式な反応を見せていない。ただしラテン・アメリカ内の親米「分析家」や「専門家」らは口を挟み、以下のような主張を行っている。すなわち、中国やロシアと接近することは、ルーラ大統領にとって「オウンゴール(間違って自陣のゴールに得点してしまうこと)」になる、というものだ。



関連記事:米国の「孤立化」を経済学の第一人者が憂慮


 ラテン・アメリカ最大の右派デジタル報道機関のひとつであるアルゼンチンに拠点を置くウェブ・サイトのインフォ・バエが、こんな題名の記事を出した。それは、「ルーラ大統領の訪中は、ブラジルにとって失点となる危険性がある」というものだ。 この記事の筆者は 、中国が持つ意図に疑念を表明し、以下のように記していた。「ブラジルは、原料や天然資源という点において世界で最も豊かな国の一つなのだから、自立できるのに必要なものは全て揃っている。外国の助けなどは要らないはずだ。ただしブラジルが自立するためには、政治家の汚職を克服し、汚職に関する厳粛な調査を実施しなければならないだろう」と。

 産業の国有化を非難し、米国との自由貿易を歓迎してきたこの報道機関が、突然踵(きびす)を返し、「第三世界中心主義」や「独立主義」を主張し始めたというわけだ。

 ブラジルが米国の怒りを買うことを懸念する報道機関もいくつかある。「アメリカ季刊誌」という雑誌(西側の石油産業が資金提供している報道機関)に執筆している オリバー・シュテンケル氏は最近以下のように述べた。「訪中時にルーラ大統領がウクライナの話をすればするほど、ブラジルは西側から中立国ではないと認識され、ブラジルは欧米から、欧米に対してよりもロシアに近い立ち位置にいるととらえられてしまう危険が高まります」と。

 おそらく、「ロシアに近い立ち位置」や、欧米に対するよりも中国に近い立ち位置でいるほうが、ラテン・アメリカにとって実り多い未来を迎えることがこの先わかるだろう。米国政府寄りの立場をとってしまえば不平等な貿易協定やクーデター、軍事介入など悪いことしか招かないだろう。ルーラ大統領の訪中が示したのは、そうではないもっと平等な国家間関係がありえるということだ。さらに、ラブロフ外相によるラテン・アメリカ訪問が素晴らしいきっかけとなり、ラテン・アメリカがこのような国家間関係を打ち立て、国際社会におけるラテン・アメリカの存在価値向上に結びつくことだろう。

パンデミックの影響、露制裁の反動で、G7の経済力はBRICSに追い越された!

<記事原文 寺島先生推薦>
G7 vs BRICS
筆者:スコット・リッター (Scott Ritter)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年3月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年4月27日

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2022年6月28日、ドイツ・クリュンのシュロス・エルマウで行われたG7首脳会議。(ホワイトハウス/アダム・シュルツ) 


PPP調整後の世界GDPで、BRICSがG7を上回る

 昨年夏、世界で最も影響力のある経済大国を自認するG7(Group of 7)が、ドイツのガルミッシュ・パルテンキルヒェンに近いシュロス・エルマウに集まり、年次総会を開催した。その焦点は、追加制裁によるロシアへの懲罰、ウクライナのさらなる武装化、そして中国の封じ込めにあった。

 同時に、中国はテレビ会議を通じてBRICS経済フォーラムを開催した。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成されるBRICSは、いわゆる発展途上国と呼ばれる国々で、経済的な絆の強化、国際的な経済発展、G7の反動的な政策にどう対処するかに焦点を当てている。

 2020年初頭、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務副大臣が予測していたのは、国際通貨基金が予測する購買力平価(PPP)の計算に基づき、BRICSがその年の後半に世界全体に占める割合でG7を追い越す、ということだった。

 (購買力平価(PPP)為替レートによる国内総生産は、その国で生産されるすべての財とサービスの合計額を米国の物価で評価したもので、単純なGDP計算よりも経済力の比較をより正確に反映するもの)
 
 その後、パンデミックが発生し、世界経済がリセットされたことで、IMFの予測は無意味なものとなった。世界はパンデミックからの回復に集中し、その後、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した後、欧米がロシアに対して大規模な制裁を行ったことによる影響に対処することになった。

 G7はBRICSの経済的挑戦に耳を傾けず、ジョー・バイデン米国大統領の政権の信条であった「ルールに基づく国際秩序」の防衛を固めることに注力した。


誤算

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G7首脳やウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領と仮想通話するジョー・バイデン米大統領(2月24日)。(ホワイトハウス/アダム・シュルツ)


 ロシアのウクライナ侵攻以来、G7を中心とするロシア侵攻を非難し経済的制裁を求める側と、BRICSを中心とするロシアの行動を支持するわけでもなくまた制裁にも加わらないという微妙な立ち位置で、世界を覆う思想的分裂が起きている。このため、世界経済の実態を把握する上で、知的空白が生じている。

 米国とG7友好諸国は、制裁がロシア経済に与える影響と、欧米に与える打撃の両方を誤算していたと、今では広く認識されるようになった。

 メイン州の無所属上院議員であるアンガス・キングは、次のことを記憶していると最近述べた

「1年前にこれが始まったとき、制裁はロシアを麻痺させるという話ばかりだった。ロシアは潰れてしまい、街頭で暴動が起きるという話だったのだが、実際にはうまくいかなかった......(中略)制裁の仕方が間違っていたのか? うまく適用できなかったのだろうか? 私たちは、ロシアが制裁を回避する能力を過小評価していたのだろうか? なぜ、制裁体制がこの紛争に大きな役割を果たさなかったのだろうか?」

 なお、IMFは、この制裁の結果、ロシア経済は少なくとも8パーセント縮小すると計算していた。実際の数字は2%で、ロシア経済は――制裁にもかかわらず――2023年以降も成長すると予想されている。

 このような誤算は、世界経済やG7とBRICSが果たすそれぞれの役割について、欧米の考え方に浸透している。2022年10月、IMFは従来のGDP計算に重点を置いた年次世界経済見通し(WEO)を発表した。2022年夏にBRICSが政治的な挑戦を行ったにもかかわらず、IMFはG7が依然として世界経済を主導する同盟として強固であると計算していたため、主流の経済専門家は安心したのである。

 2023年1月、IMFは2022年10月のWEOの更新版を発表し、G7の強い立場を強調した。IMFの首席経済学者であるピエール=オリヴィエ・グランシャによると、「見通しに対する危険度の均衡は依然として下方に傾いているが、10月のWEOよりも不利な結果への偏りは少ない」という。

 この前向きな姿勢が、欧米の主要な経済専門家たちが、この更新版のデータを深く掘り下げることを妨げたのである。私は、個人的に、保守的な編集者たちが「古いデータ」から現在の関連性を引き出そうとすることに消極的であると断言できる。

 幸いなことに、「世界経済と金融市場の分析に全体を網羅する手順を採用するブティック型マクロ経済調査会社」と自称するエイコーン・マクロ・コンサルティングのリチャード・ディアスのような経済専門家も存在する。ディアスは、IMFのバラ色の見通しを福音として受け入れるのではなく、専門家が本来すべきこと、つまりデータを掘り下げ、関連する結論を導き出したのだ。

 IMFの「世界経済見通しデータベース」に目を通したディアスは、G7とBRICSのPPP調整後の世界GDPの割合を比較分析したところ、驚くべき発見をした: BRICSがG7を上回っていたのだ。

 これは予測ではなく、達成された事実を述べたものである:BRICSはPPP調整後の世界GDPの31.5%を占め、G7は30.7%を占めていた。G7にとってさらに悪いことに、予測された傾向は、この2つの経済圏の間の溝が今後ますます広がっていくことを示していた。

 BRICSの世界的な経済力の蓄積が加速している理由は、主に3つの要因に起因しているものと考えられる:

  ・ Covid-19のパンデミックによる残留的な影響、

  ・ ウクライナ侵攻後のG7によるロシア制裁の反動と、G7の経済政策に対する途上国の反発の高まり、そして、

  ・ 各国の経済的潜在力を高めることを支援するという純粋な願いよりも、植民地主義時代後の傲慢さに根ざしていると考えられる優先的な動き、である。


成長格差

 BRICSとG7の経済力が、それぞれ中国と米国の経済に大きく影響されていることは事実である。しかし、これらの経済的枠組みに参加している他の国々の相対的な経済的軌道を無視することはできない。BRICSの大半の国々が今後数年間は力強い成長を遂げるという経済見通しを示しているのに対し、G7諸国は、現在のロシアへの制裁という自業自得の部分もあるが、低成長、英国の場合はマイナス成長であり、この傾向を覆す見込みはほとんどない。

 また、G7加盟国が固定的であるのに対し、BRICSはアルゼンチンやイランが申請し、サウジアラビア、トルコ、エジプトといった地域の主要経済大国が参加に関心を示しているなど、拡大傾向にある。さらに、イランとサウジアラビアの関係を正常化させた中国の外交的功績が、この潜在的な拡大をより爆発的なものにしている。

 米ドルの世界支配が続く見通しが立たなくなり、ロシアと中国が推進するユーラシア大陸横断経済同盟の経済的可能性も相まって、G7とBRICSは相反する軌道に乗った。BRICSは、PPPだけでなく実際のGDPでも、今後数年でG7を追い越すはずである。

 しかし、主流の経済専門家たちが、この結論に達するのを首を長くして待っていてはいけない。ありがたいことに、リチャード・ディアスやエイコーン・マクロ・コンサルティングのように、古いデータから新しい意味を見出そうとする異端児も存在する。

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スコット・リッターは、旧ソ連に駐在した元米海兵隊の情報将校である。旧ソ連では軍備管理条約を実施し、ペルシャ湾では砂漠の嵐作戦、イラクでは大量破壊兵器の武装解除を監督した。近著に『Disarmament in the Time of Perestroika』(クラリティ・プレス刊)がある。

BKL(モスクワの最新地下鉄)に見る多極性構造:「ニューコイン」列車に乗りながら

<記事原文 寺島先生推薦>

Moveable Multipolarity in Moscow: Ridin’ the ‘Newcoin’ Train

筆者:ペペ・エスコバー(Pepe Escobar)

出典:Strategic Culture

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日

新しいコイン


新しい通貨は、単なる決済単位ではなく、この先、資本や準備金を蓄える「外部通貨」になることができるはずだ。

 旧繊維街のテクスティルシュチキから、至高主義・構成主義のギャラリーであるソコルニキ(マレーヴィチ*が住んでいる!)まで、そして豪華な鉄骨アーチのリジスカヤから130メートルのエスカレーターのあるマリーナ・ロッシャまで、モスクワ全体を71キロ、31駅で一周するビッグサークルライン(キリル文字ではBKL)(訳注:今年3月に開通したモスクワの地下鉄)の楽しさよ。
* カジミール・セヴェリーノヴィチ・マレーヴィチ。ウクライナ・ソ連の芸術家。特に画家として知られ、戦前に抽象絵画を手掛けた最初の人物である。 (ウィキペディア)

 BKLはまるで多極性世界の首都(モスクワ)の、生きて、呼吸して、走っている比喩のようだ。アート、建築、歴史、都市デザイン、ハイテク交通、そしてもちろん、中国新シルクロードの友人たちの言葉を借りれば、「人と人との交流」がぎゅっと詰まっている。

 ちなみに習近平主席は、21日にモスクワに来るプーチン大統領とBKLに乗る予定になっている。

 だから、何十年もの経験を持つ、世界の金融市場のトップに立つ経験豊かな投資家が、世界の金融システムに関する重要な洞察を共有することに同意したとき、私がBKLに乗ることを提案し、彼がすぐにそれを受け入れたのも不思議なことではない。彼の名前はS.Tzu氏としておこう。以下は、私たちがBKLに乗りながら行った会話を最小限に編集したものである。

 時間をお取りいただきありがとうございます。しかも、こんな素晴らしい場面設定です。現在の市場の乱高下を考えると、(市場動向を見つめる)画面から離れるのは大変なことでしょう。

 S. Tzu: そうですね、現在、市場は非常に厳しい状況です。この数ヶ月は2007-8年のことを想起させますが、金融市場基金と サブプライムローンではなく、最近はパイプラインと国債市場が吹き飛んでいます。私たちは面白い時代に生きています。

 あなたのお近づきにならせてもらった理由は、ゾルタン・ポザールが提唱した「ブレトン・ウッズ*3」の考え方について、あなたの見解を伺いたいと思ったからです。あなたは間違いなく、その最先端を走っていますね。
* ブレトン・ウッズ体制とは、第二次大戦後に米国を中心に作られた、為替相場安定の枠組み。金・ドル本位制による固定為替制度を取っていた。またブレトン・ウッズ2とは、1973年に固定為替制が廃止され、変動相場制に移行されたことを指す。

 S. Tzu: ずばり本題に入っていただきました。新しいグローバルな金融秩序の出現を目の当たりにする機会は非常に少ないのですが、私たちはそのような機会を目にする一つの時代を生きているのです。1970年代以降でいうと、今から14年以上前に登場したのビットコインが、これから数年後に私たちが目にするものに近い衝撃を持っていたのかもしれません。ビットコインが登場した時期が偶然ではなかったように、現在の世界金融システムの地殻変動の条件は、何十年も前から醸成されていたのです。「この戦争が終わった後、『通貨』は二度と同じものにはならないないだろう...」というゾルタンの洞察の通り、今は金融秩序が変わる時期として完璧な時期のです。


「外部通貨」を理解する

 ビットコインの話が出ましたね。当時は、これの何が画期的だったのでしょうか?

 S. Tzu: 暗号の側面はちょっと置くとして、ビットコインの最初の成功が見込まれたこととその理由は、ビットコインが中央銀行の責任ではない「(ゾルタン氏の優れた用語を借りれば)外部」貨幣を作ろうとしたことがあったからでした。この新しい単位の大きな特徴のひとつは、採掘可能なコインを2100万枚に制限したことで、現行の体制の問題点を見抜くことができる人たちの心に響きました。今でこそそれほどでもないですが、近代的な通貨単位が中央銀行の後ろ盾なしに存在し、デジタル形式の事実上の「外部」貨幣となりうるという発想は、2008年当時としては画期的だったからです。言うまでもなく、ユーロ国債危機、量的緩和*、そして最近の世界的な悪性インフレは、多くの人が何十年も感じてきた不協和音を増幅させただけでした。現在の「(再びポツァール氏の上品な用語を用いれば)内部貨幣」体制の信頼性は、現在行われている中央銀行の準備金凍結や破壊的な経済制裁に至るずっと前に、破壊されてしまっていたのです。残念ながら、信頼に基づくシステムの信頼性を破壊するのに、中央銀行の保管口座にある外貨準備を凍結して没収することほど有効な方法はありません。ビットコイン誕生の背景にある認知的不協和が検証されたのです。「内部通貨」体制は2022年に完全に兵器化されました。その意味合いは深いです。
* 中央銀行が市場に供給する資金を増やすことで金融市場の安定や景気回復を図る措置のこと。

 さて、いよいよ核心に入ってきています。ご存知のように、ゾルタン・ポツァールは次の段階で新しい「ブレトン・ウッズ3」体制が出現すると主張しています。それは一体どういう意味なのでしょうか。

 S. Tzu: ポツァール氏が、現在の欧米の「内部通貨」体制を別のものに変えることを指しているのか、それとも現在の金融体制の外側に、代替案として「ブレトン・ウッズ3」の出現を示唆しているのか、私にもよくわかりません。ただ、政治的な意思の欠如や、以前から蓄積され、近年急激に増大した過剰な政府債務がありますから、現段階で欧米で「外部通貨」制度をまた繰り返しても成功することはあり得ないと私は確信しています。

 現在の欧米の金融秩序が次の進化段階に移行する前に、これらの未払い債務の一部を実質的に削減する必要があります。歴史を振り返れば、その移行はデフォルト(債務不履行)かインフレ、あるいはその2つの組み合わせによって起こるのが普通です。可能性が高いと思われるのは、欧米諸国政府が金融抑圧政策に依存して、船を浮かせ(国を沈没・破綻させないように、の意)、債務問題に取り組もうとすることです。私は、「内部通貨」体制の管理を強化するための多くの取り組みが行われると予想していますが、それはおそらくますます不評を買うでしょう。例えば、CDBC*の導入もその一つでしょう。この点で、これからが大変な時代になることは間違いないでしょう。同時に、現在の「内部通貨」による世界金融秩序に対抗する、何らかの「外部通貨」体制が出現することも、現段階では避けられないと思われます。
* 中央銀行デジタル通貨あるいは中央銀行発行デジタル通貨は、中央銀行が発行したデジタル通貨の一種で、デジタル不換紙幣。現在のCBDCの概念はビットコインに直接触発された通貨管理に由来するが、CBDCは国家の中央銀行が中央集権的に発行する、という点で仮想通貨や暗号通貨とは異なる。(ウィキペディア)

 それは、どうしてですか?

 S. Tzu: 世界経済は、貿易、準備、投資のすべての必要性を、現在の兵器化した状態の「内部通貨」体制にもはや頼ることはできません。制裁と外貨準備の凍結が他国の政権を交代させるための新たな手段であるならば、世界中のすべての政府は、貿易と外貨準備のために別の国の通貨を使うという選択肢を考えているはずです。しかし、現在の欠陥だらけの国際金融秩序に代わるものは何なのか、それは明らかではありません。歴史を振り返ると、金本位制に還元できない「外部通貨」方式で成功した例はあまりありません。そして、金だけ、あるいは金と完全に交換可能な通貨だけでは、現代の通貨体制の基盤としてはあまりにも制約がありすぎるという多くの理由があります。

 同時に、最近増えている現地通貨での貿易も、現地通貨が 「内部通貨」である以上、残念ながらその可能性は限られています。多くの国が、輸出の対価として他国の地域通貨(あるいは自国の通貨)を受け入れたくないという理由は明白です。その点では、マイケル・ハドソンに全面的に同意します。「内部通貨」はその国の中央銀行の負債であるため、その国の信用度が低ければ低いほど、投資可能な資本が必要となり、他国がその負債を保有することに抵抗が出てきます。IMFが要求する典型的な「構造改革」のセットが、例えば、借り手である政府の信用力の向上を目的としている理由のひとつはそこにあります。「外部通貨」 は、IMF と現在の「内部通貨」 金融体制の人質になっていると感じている国や政府によってこそ、ひどく必要とされているのです。


「ニューコイン」の導入

 多くの専門家が「新通貨」の研究をしているようです。例えば、セルゲイ・グラジエフ。

 S. Tzu: そうですね、最近の出版物でそのような示唆がありました。私はこれらの議論には関与していませんが、確かにこの代替体制がどのように機能するかを私も考えてきました。ポツァール氏の「内部通貨」と「外部通貨」という概念は、この議論において非常に重要な部分です。しかし、これらの用語の二元性は誤解を招きます。新しい貨幣単位(便宜上「ニューコイン」と呼ぶことにします)が解決すべき問題に対して、どちらの選択肢も完全に適切とは言えないからです。

 説明させてください。現在の米ドル「内部通貨」体制の武器化と同時に制裁の激化により、世界は事実上「グローバル・サウス」と「グローバル・ノース」(「東」と「西」よりも少し正確な用語です)に分裂しているのです。ここで重要なのは、ポツァール氏がすぐに気づいたことですが、サプライチェーン(供給網)や商品もある程度武器化されつつあることです。友好国への外部委託の動きは今後も続きます。つまり、ニューコインの最優先事項は、北の通貨に頼らず、南半球内の貿易を促進することなのです。

 もしそれだけが目的であれば、人民元や元を貿易に使う、ユーロやECU(ユーロの前身貨幣)、あるいは中央アフリカのCFAフランのような新しい共有通貨を作る、IMFのSDRのような参加地域通貨のバスケット*に基づく新しい通貨を作る、金にペッグ**する新しい通貨を作る、あるいは既存の地域通貨に金をペッグするなど、比較的単純な解決策が選択できたはずです。しかし、残念ながら、これらの方策がそれぞれ新たな問題を引き起こしている例は、歴史上いくらでもあります。
* 固定相場制の一つで、複数の貿易相手国の為替相場を一定水準に固定する制度
**金などを基準とした固定相場制のこと


 もちろん、新しい通貨単位には、これら二つの可能性では対応しきれない別の目的が並行して存在します。例えば、すべての参加国は、新しい通貨が自国の主権を希薄にするのではなく、強化することを望んでいるはずです。次に、ユーロや以前の金本位制の課題は、「固定」為替レート、特に最初の「固定」が通貨圏の一部の国にとって最適でなかった場合の、より広い問題を示すことにありました。特に、最初の「固定」が通貨圏の一部の国にとって最適でなかった場合、問題は時間の経過とともに蓄積され、しばしば激しい切り下げによってレートが「再固定」されるまで続きます。参加国が通貨政策において主権を維持するためには、グローバル・サウス内部の相対的競争力を長期的に調整する柔軟性が必要です。また、商品のような変動しやすいものの価格決定単位になるのであれば、新しい通貨は「安定的」でなければならないでしょう。

 最も重要なことは、新しい通貨は、単なる決済単位ではなく、将来的には資本と準備のための「外部通貨」貯蔵庫となる力をもたなければなりません。実際、私が新しい通貨単位が出現すると確信しているのは、妥協した「内部通貨」金融体制の外に、準備や投資のための実行可能な代替手段がない現状があるためです。

 それで、こういったすべての問題を考慮して、どんな解決策を提案されますか?

 S. Tzu:最初に明々白々なことを申し上げます。この問題を技術的に解決することは、ニューコイン圏への参加を希望する国々の間で政治的な合意形成に至るよりずっと簡単です。しかし、現在の必要性は急を要しているので、必要な政治的妥協点は、すぐに見つかると私は考えています。

 ですので、まずは、ニューコインの技術的な設計図の一つを紹介させてください。まず、ニューコインは部分的に(少なくとも価値の40%を)金に裏打ちされるべきであると申し上げましょう。その理由は後でお分かりいただけるかと思います。ニューコインの残りの60%は、参加国の通貨バスケットで構成されることになります。金がこの仕組みにおける「外部通貨」としての軸となり、通貨バスケットの要素が参加国の主権と通貨の柔軟性を維持することを可能にするということです。そしてニューコインのために、中央銀行を設立する必要があるのは明らかです。というのもこの中央銀行から新しい貨幣が発行されることになるからです。この中央銀行は、通貨スワップ*の取引先となるとともに、この体制の決済機関の役目を果たし、規制をかけることもできます。どの国も、いくつかの条件を満たせば、自由にニューコインに参加することができます。
* 異なる通貨間の金利を交換する取引のこと

 まず、ニューコインに参加しようとする国は、国内の保管場所に抵当権等が設定されていない金があることを証明し、対応する額のニューコインを受け取るのと引き換えに一定額の金を有していることを誓約する必要があります(この際に前述の40%の比率が適応されます)。この最初の取引は、ニューコインを裏打ちする「金プール」へ金を売却することにより、経済的等価性が保たれることになります。つまり、そのプールに裏打ちされたニューコインの比例額との交換になるということです。この取引の法的形式は実際にはあまり重要ではなく、発行されるニューコインが常に少なくとも40%の金で裏打ちされていることを保証するために必要なだけです。全部の参加国が十分な所有量が常に存在すると確認できるのであれば、各国の金所有量を公にする必要すらないのです。年に一度共同監査が行われ、監視体制が整備されれば十分でしょう。

 第二に、ニューコインに参加しようとする国は、自国通貨による金価格の算定方法を確立する必要があります。おそらく、参加する貴金属取引所の1つが、それぞれの自国通貨で金の現物取引を開始することになるでしょう。これにより、各国の自国通貨の公正な相場が確立されることになります。「外部通貨」の仕組みが使えるので、長期的な調整が可能になるからです。ニューコイン参加前の各国の通貨における金価格は、新たに発行されるニューコインのバスケットにおいて高くなります。各国は主権を維持し、自国通貨をどれだけ放出するかは自由ですが、その放出量は、最終的にはニューコインの価値に占める自国通貨の割合で調整されることになります。同時に、ある国が中央銀行からニューコインを追加で入手できるのは、追加の金塊の誓約との引き替えに限られます。その結果、ニューコインの各参加国の金換算の価値は透明で公正なものとなり、ニューコインの価値も透明化されることになります。

 最後に、中央銀行によるニューコインの放出や売却は、ニューコイン圏の外部にいる人が金と交換する場合にのみ許可されます。つまり、外部の人間が大量のニューコインを入手する方法は、現物の金と引き換えに受け取るか、提供した商品やサービスの対価として受け取るかの2つだけです。同時に、中央銀行は金と引き換えにニューコインを購入する義務を負わず、「*取り付け騒ぎ」のリスクも取り除かれることになります。
* 銀行が信頼を失い預金者が銀行から預金を引き出そうと殺到することにより生じる混乱

 間違っていたら訂正してください。この提案では、ニューコイン圏内のすべての取引と、すべての外部取引の基準を金相場に固定するようです。この場合、ニューコインの安定性はどうなのでしょうか? 結局のところ、金は過去において(価格が)不安定でしたので。

 S. Tzu: 例えば、金のドル価格が大幅に下落した場合、どのような影響があるのか、ということだと思います。この場合、ニューコインとドルの間に直接的な相互関係はなく、グローバル・サウスの中央銀行がニューコインと引き換えに金を買うだけで、売るわけではないので、裁定取引*は極めて困難であることがすぐにわかるでしょう。その結果、ニューコイン(または金)で表される通貨バスケットの変動率は極めて低くなります。そして、これこそが、この新しい通貨単位の「外部通貨」の軸が貿易と投資に与える意図したプラスの影響なのです。明らかに、いくつかの主要な輸出商品は、グローバル・サウスによって金とニューコインのみで価格が決定され、ニューコインに対する「銀行の取り付け」や投機的な攻撃はさらに起こりにくくなります。
* 市場間、現物・先物の価格差で利益を得る取引(英辞郎)


 時間の経過とともに、グローバル・ノースで金が過小評価されれば、輸出やニューコインと引き換えに、金は徐々に、あるいは急速に、グローバル・サウスに引き寄せられるでしょう。これは「外部貨幣」体制にとって悪い結果ではなく、準備通貨としてのニューコインの幅広い受容を加速させるでしょう。重要なのは、ニューコイン圏外では現物の金準備が有限であるため、不均衡は必然的に是正されるであろう、ということです。というのもグローバル・サウスが主要商品の純輸出国であるという状況はこの先も変わらないでしょうから。

 今おっしゃったことには、貴重な情報が詰まっています。近い将来、全体を再検討して、あなたの考えに対する読者からの反応を議論すべきかもしれませんね。さて、マリナロシャ駅に到着したところで、そろそろ降りましょう!

 S. Tzu: これからもよろしくお願いします。またの機会を楽しみにしています!

ジョージアの「外国の工作員排除」法案廃案事件から、世界が冷戦時代に回帰している様が見える

<記事原文 寺島先生推薦>

Fyodor Lukyanov: Why is everyone looking for ‘foreign agents?'
The latest fashion is a sign that the pendulum is swinging back to the Cold War-era of separate blocs

フョードル・ルキャノフ:なぜ皆が「外国の工作員」を探しているのか?
最新の潮流が示しているのは、世界各国が、いくつかの集団に分かれていた冷戦時代への揺れ戻りつつあることだ。

筆者:フョードル・ルキャノフ(Fyodor Lukyanov)
「世界情勢におけるロシア」誌の編集長。外交及び防衛政策委員会幹部会議長。ヴァルダイ国際討論クラブの研究部長。

出典:RT

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日



ジョージア政府及び外国の工作員に関するロシアの法律の採択に反対する抗議活動でプラカードを手にした抗議者たち。ブリュッセルの欧州議会近辺にて。2023年3月8日© Valeria Mongelli / AFP


 ジョージアが今月(3月)上旬に新聞の見出しを飾ったのは、ジョージア政府が「外国の工作員」に関する法案を通過させようとしたことについてだった。この法案(実際には、法案は2つ存在していた)は、最終的には却下され、この件に関する政府の取り組みは当座のところ取りやめられることになった。この事象が普通でないのは、ジョージア政府が親露でも反西側でも全くないのに、突然に世界の報道機関からこれほどまで激しく蔑まれたことだ。

 もちろん、今の世の中は、何でも白黒を付けたがる世の中だ。とはいえ、この事例は、より広い文脈から見た方がより興味深い。

 「外国の工作員」という考え方は、第二次世界大戦前夜の米国で、敵国からのプロパガンダ(自分たちにとって都合のよい情報を広く流す行為)に対抗するために導入されたものだ。この古い考え方が、21世紀のいま復活している。最近まで、この「外国の工作員」という考え方は、ロシアと西側の論争で使われてきた。西側は、ロシア政府を非難し、この考え方を、公共の場から異論を唱える人々を排除するために利用しているとしていた。ロシア政府の主張は、市民には、外国からの資金が国内でどう使われているのかを知る権利があるというものだったが、西側からは、そのような主張は自由を制限することを正当化する口実に過ぎないと片付けられている。西側の主張では、「文明社会」は「政府から独立した組織から」資金提供を受ける権利があるというものだ。

 この点において、今あちこちでますます頻繁に見受けられるようになった根本的な矛盾が存在する。その矛盾とは、NGOが国境を越えて資金提供を行うということが、良いことだとされるだけではなく、当たり前で必要なことであるという考え方だ。そしてこの考え方が、リベラル(自由)なグローバリゼーション(世界の一体化)の時代の産物であり特徴になっているのだ。 論理的に考えれば、この視点は、リベラルなグローバリゼーションという概念からすれば、自然とそこに帰結するものなのだ。その目的が、貿易面や経済面、さらには理想だが政治面における障壁を取り除き、世界単一の規制当局を創設することにあるとすれば、非政府組織が各国政府と結びつくことは全く許されないこととなるだろうし、世界規模の諸組織と可能な限り繋がらなければならなくなるだろう。



関連記事:マイダンとの共鳴:ジョージアには西側が資金提供している巨大なNGO勢力と暴力的な反政府運動がある。繋がりはあるのだろうか?


 各国のNGOが世界規模の組織と繋がるべきだという考え方は、市民社会に関する古典的な定義とは矛盾する。その本質とは、まさにボトムアップ(下意上達)だからだ。つまり、各国の国内から動きが起こるべきだという考え方だ。しかし西側の考えによれば、トップダウン(上意下達)のやり方が是とされている。もちろん、そうするのが都合がいいときに限られているが。

 5年前、米国は対外政策の中核に、大国間の敵対関係の復活を明記した。その政策は、それまでの冷戦終結後の時期に取られていた政策と一線を画すものであった。冷戦終結後には、この流れが今の西側の対外政策の本質になったのであるとすれば、全ての手段はその方向で講じられていて、以前唱えられていた、「金に国籍はない」や「情報は障壁なく伝えられるべきだ」といった方針は、新たな政策においては、もはや想定外となったのだ。

 この20年間、社会・政治面においても、情報活動においても、各国家の間にはかなりの程度まで開かれた関係が確かに築かれてきた。その理由のひとつは、冷戦後に各国の大使館職員の数がどんどんと増やされたことにある。市民社会とのやり取りも含めて大使館の仕事範囲が拡大されていたからだ。しかし2018年を境に、外交官の数が大幅に減らされたのだ。そのことは、諸国間の関係が崩れたことと関係があるのだが、客観的根拠もある。それは大使館の仕事が昔に戻りつつあることだ。つまり、仕事範囲が狭まったために、そんなに多くの職員が必要なくなったのだ。

 同じような現象が報道活動においても当てはまる。冷戦終結後は、報道活動は比較的自由に行うことが許されていた。しかし、この分野における風潮が変わり、情報活動業界において西側が有する情報源が世界を牛耳っている現状に疑問を唱える声が、西側以外のところからあがってきたのだ。

 西欧や米国では、ロシアのニュース報道機関(中国の報道機関に対しても一定程度)に対して制限措置をとっている理由の説明として、ロシアと中国の報道機関は、国家が資金を出しているという事実をあげている事実をあげている。いっぽう西側の報道機関は、国所有の報道機関もあるが、多くが民間企業であるという説明だ。



関連記事:西側は「地獄からの制裁」によりロシア経済は崩壊すると考えていた。その目論見が外れた理由とは?


 西側によるこの言い分(すべてに当てはまるわけでは全くないが)が正しいとしても、近代の西側諸国の社会・政治構造においても、国家と非国家組織が密接に絡み合っていることは事実だ。したがって、今の西側の構造においては、公的には政府から独立しているとされている組織が国家の意を受けた活動に従事することもありえるのだ。逆もありえるが、そうなることは極めて稀だ。

 そうかもしれないが、これまでの経済や政治におけるグローバリゼーションの形から逸脱すれば、社会に近づこうとする古いやり方はもはや維持できないことになる。 そしてこのような古い形は、もはや、ロシアと西側のあいだの問題の原因になっていない。というのも、当初ロシアは可能な限り自国を外に向け、西側社会と統合しようという期待を持っていたが、その後そのような目的を考え直し、そのような方向性から手を引いたという歴史があるからだ。そのような外に開こうという方向性は、1990年代から2000年代にかけて急速にロシアに根を下ろしてはいたのだが。

 中国を例に取れば、経済面に関しては世界の国々との結合を深めてはいるが、社会・政治面を、外国勢力に差し出すことは決してなかった。しかし「誰が誰に、どこから資金を出しているのか」という縛りが急速に強められていることが、世界のどの国においても共通の懸念になっている。そしてそれは、その国の政体がどうであるかは関係ない。

 異論を唱える人が全て外国の工作員であると決めつけてしまう今の新たな状況は危険だろうか? 間違いなくその答えは、「そう」だ。どの国の政府も同じ本能に駆り立てられている。残念なことに、この新たな現状は、「開かれている」というこれまでの時代を受けた避けられない到着点なのだ。いまや振り子はゆり戻され、冷戦期のような真逆の方向に逆戻りしている。

分離独立の問題を抱えている国は、ドンバスだけではなく、よく知られたコソボ、カタルーニャを含めて世界にはいくつもある。

<記事原文 寺島先生推薦>

Kosovo, Donbass and Catalonia are famous examples, but do you realize how many countries have problems with separatism?
More than 100 governments recognized Kosovo’s self-proclaimed independence 15 years ago, but most of them have their own issues of this kind

コソボ、ドンバス、カタルーニャは有名な例だが、分離独立の問題を抱えている国がどれだけあるかご存知か? 15年前にコソボの独立を承認したのは100カ国以上の政府だが、そのほとんどがこの種の問題を抱え込んでいる。

筆者:ゲオルギイ・ベレゾフスキー(Georgiy Berezovsky)
* ウラジカフカズ在住のジャーナリスト。ウラジカフカズは、ロシア連邦の北カフカス地方に位置する北オセチア共和国の首都。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月10日


コソボ・アルバニア人の「自己決定」運動の支持者数百人が、プリシュティナ中心部で抗議デモを行いながら行進している。© Dimitar DILKOFF / AFP Japan


 2008年2月、アルバニア系分離主義者が多数を占めるコソボ議会は、同州のセルビアからの独立を宣言した。ベオグラード*はこれに反対したが、翌日にはアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、アルバニアがこの新しい「国家」を承認した。その年の暮れには、50カ国以上が続いた。
*セルビアの首都。かつてのユーゴスラビアの首都。

 現在、コソボの主権を承認している国連加盟国は、ほぼ100カ国。しかし、ベオグラードの外交努力により支持を撤回した国もあり、この数字は常に流動的である。それにもかかわらず、プリシュティナは117カ国が「独立」を支持していると主張し続ける。

 実際には、国連に属する国の半数以上がコソボの独立を承認していない。その中には、中国、インド、旧ソビエト諸国のほとんど、そしてEU加盟国であるギリシャ、スペイン、キプロス、ルーマニア、スロバキアが含まれている。




関連記事:カーテンの向こうにいる男。ジョージ・ソロスのプロパガンダ実行機関がいかにメディアを堕落させたかを暴露する新報告書


 ロシアはコソボの独立宣言に反対する主要な国のひとつであり、世界秩序に及ぼす影響について一貫して述べてきた。しかし、よくよく考えてみると、世界の大半の国家が、重大なものからごく小さなものまで、何らかの形で分離独立の問題に取り組んでいることがわかる。


バルカンのパッチワークキルト*
*布を接ぎ合わせて一枚の布にしたもの。

 コソボの地位問題は、バルカン半島で新たな国家的存在の出現をもたらした分離主義の最新の事例に過ぎない。この地域の崩壊は「バルカン化」と呼ばれているが、それは当然である。

 前世紀末、バルカン半島の大部分はユーゴスラビアという統一国家に編入された。現在では、その代わりに7つの独立国が存在するが、これで終わるとは決して言えない。

 セルビアが最初に直面したのはアルバニア人の分離主義だったが、モンテネグロ、ギリシャ、北マケドニアなど、この地域の他の国々にもアルバニア人の共同社会(コミュニティ)が存在する。特に北マケドニアでは、コソボに隣接する同国西部に、全人口の25%を占めるアルバニア人が住んでいるため、その脅威は深刻だ。


スコピエのダウンタウンで反政府デモが行われるなか、マケドニアとアルバニアの国旗を振る人々を見守る男性。© Dimitar DILKOFF / AFP Japan


 セルビアはコソボ問題に加え、セルビア人だけでなくハンガリー人も住む自治区であるヴォイヴォディナにも潜在的な問題を抱えている。

 コソボもまた、独自の内部課題を抱えている。コソボの北部には、セルビア人を中心とした飛び地があり、彼らは祖国から孤立することを好まない。同様に、ボスニア・ヘルツェゴビナでも分離主義の問題は避けられない。その一部であるスルプスカ共和国は、独立またはセルビアとの統一を志向し、将来について中央政府と矛盾する見解を示すことが増えてきた。



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 ボスニアのクロアチア人の飛び地や、クロアチア自体にもセルビア人の飛び地があり、深刻度は低いものの、同じ問題が見られることがある。


イベリア半島。2カ国では足りない

 もし、マドリードに半島の大部分を束ねる王様がいなかったら、「バルカン化」は「イベリ化」と呼ばれていたかもしれない。スペインでは、他のどの西ヨーロッパ諸国よりも多くの分離主義運動が行われている。

 カタルーニャの問題は、全世界がよく知っている。ちょうど5年前の2017年10月、そこの自治体は独立を問う住民投票を行い、投票者の9割以上がスペインからの分離を支持したにもかかわらず、失敗に終わった。マドリードはこの民意の表明を認めようとしなかった。その結果、カタルーニャ分離独立運動の指導者の何人かが逮捕され、他の指導者は国外に逃亡した。しかし、それでも地元住民の思いは消えない。

 カタルーニャの問題に加えて、バスクの分離主義もある。これはカタルーニャとは異なり、より過激な形態をとることが多い。ETA(エウスカディ・タ・アスカタスナ=バスクと自由)の過激な民族主義者は、40年以上にわたってスペインとスペイン王室からの独立を求めて戦い、800人を殺害した。2018年、同団体は自己解散を発表したが、だからといって問題がなくなったわけではない。この地域の最大政党のひとつであるバスク民族主義党は、いまだにマドリードからの独立という考えを支持している。


スペイン北部のバスク地方都市ドノスティア(サンセバスチャン)で、10月1日に実施予定のマドリードからの独立を問う住民投票とカタルーニャを支持するデモで、バスクとカタルーニャの旗を掲げるデモ隊。© Gari Garaialde / AFP


 スペインは、17の自治体(地域)に分かれている。分離主義まではいかないが、それぞれの自治体で、ある程度、地域自治の考え方が盛んである。地方選挙では、アラゴン、アンダルシア、カスティーリャ、アストゥリアス、カンタブリア、ガリシアなどの自治州で、独立と自治の強化を訴える候補者が定期的に大きな得票率を獲得している。

 イベリア半島のもう一つの国、ポルトガルでも、すべてが甘美で明るいわけではない...リスボンの権力から自由になろうとする地域が、大西洋の海を隔てて存在するからだ。大都市から離れているのは事実だが。マデイラ諸島やアゾレス諸島のことである。



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イギリス。バラバラになった王国

 スコットランドの分離主義は、ここ数年、ロンドンを悩ませている。前回の地方選挙で独立支持派が勝利した後、彼らはイギリスからの分離独立を問う2度目の住民投票を実施する意向を表明した。1回目は2014年に行われ、55%が離脱に反対し、45%が離脱を支持した。投票結果に自信を持ったロンドンは、その時はスコットランド人の意思に干渉しなかった。

 しかし、その2年後、英国はEU離脱を決議し、エジンバラは、スコットランド人が明らかにEU残留を望み、62%の圧倒的な反対票を投じたことから、新たな住民投票を要求した。スコットランド当局は2023年10月に新たな住民投票を実施することを望んでいたが、昨年11月、英国の最高裁判所は、独立に関する国民投票はロンドンの同意がなければ実施できないとの判断を下した。今回、トーリー(保守党)政権下の議会は、それを認めるつもりはない。エジンバラは諦めるつもりはなく、前スコットランド政府のトップであるニコラ・スタージョンは、「スコットランドの民主主義は否定されない」と約束した。

 先週、スタージョンはスコットランドの第一大臣としての辞任を発表したが、それでも後継者について、その人が「スコットランドを独立へと導いてくれる」と自信を見せた。


スコットランド・エディンバラで行われたAUOB(All Under One Banner)の行進のため、スコットランド独立派の支持者がホリールード公園から市街地を抜けてメドウズに向かう。© Ewan Bootman/NurPhoto via Getty Images


 北アイルランドとの関係も、ロンドンにとっては小さくない問題である。2022年春の地方選挙では、アイルランド共和国との統一とUKからの分離独立を主張するシン・フェイン党が第一党となった。ブレグジットの際にロンドンとEUの間で結ばれた「北アイルランド議定書」が、分離派の人気上昇に貢献したと思われる。この議定書では、(EU加盟国の)ダブリンとベルファストの間の単一の関税空間を維持することを求めているが、そのかわりブリテン島と北アイルランドの間に関税が課されることになるからだ。

 ロンドンの問題はこれにとどまらず、コーンウォール、メルキア(ウェストミッドランドとイーストミッドランド地域)、ノーサンバーランド、ヨークシャー、ジャージー、ウェールズでも程度の差こそあれ分離主義者の活動があり、さらにはイングランド自体の英国離脱の話もある。しかし、これらはスコットランドやアイルランドの問題に比べれば、陳腐なものに見える。



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西ヨーロッパ。国の中にさらに国がある国々

 西ヨーロッパの国々は、そのほとんどが模範的な単一国家であり、一般的にはそうであるように思われる。しかし、地域における帰属意識(アイデンティティ)が強く、自治の拡大が望まれ、分離主義的な傾向があるのも事実である。

 例えば、フランスでは、南部に7地域にも及ぶ広大な面積を占めるオクシタン族という問題がある。積極的なフランス語化政策も、この問題を決定的に解決するには十分ではなかった。この地域のすべての標識は、オクシタニア語でも記載されているのが常である。

 北西部に位置するブルターニュ地方もまた、強い地域性を持っている。その住民は独自のケルト語を持ち、自分たちをフランス人ではなく、ブルトン人と呼ぶことを好む。20世紀後半には、ブルトン革命軍の武装組織であるブルトン解放戦線が、祖国の独立を主張するスローガンを掲げながら、テロを起こしたこともある。コルシカ島では、今世紀に入っても、独立のために暴力的な手段をとることを辞さない過激派がいる。

 オクシタン党、ブルトン党、自由コルシカ党など、各分立派は、自治権の拡大から完全な独立まで、さまざまな政策を掲げている。コルシカ民族解放戦線(FLNC)は昨年夏、16件の放火を行い、非コルシカ人が所有する夏の住宅や建設会社、パトカーを爆破したと主張している。


フランス、バスティアでのコルシカ民族主義グループ「F.L.N.C」の記者会見。© LEGRAND/Gamma-Rapho via Getty Images


 EUの経済機関車であるドイツが、チェコやオーストリアと国境を接し、国土の約2割を占める豊かな地域、バイエルンで問題を起こしている。バイエルン人は、他のドイツ人とは大きく異なる。その方言は、公式には認められていないものの、実は別の言語と考えられている。地域の独自性は極めて強いものの、バイエルンは少なくとも公には分離主義を口にすることはほとんどない。しかし、紛争がないときでも、ベルリンはミュンヘンを注視している。



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 ドイツの主要政党の一つであるキリスト教民主同盟は、その代表が繰り返しドイツの首相に選ばれているが、バイエルン州では選挙に参加していない。バイエルン州のキリスト教社会同盟は、バイエルン州の分離主義者や急進的な民族主義者の政党を吸収し、純粋なバイエルン州のキリスト教社会同盟と同盟を結んでいる。

 イタリアでは、ロンバルディア州とヴェネト州の北部地域で独立の問題が議論されている。そして、これらの議論はローマにとってむしろ不愉快なものである。たとえば、ヴェネトの政治家たちは、ヴェネト語をイタリア語と並ぶ地域の公用語として認めさせることに成功した。2014年3月、この地域で行われたオンライン投票では、回答者の89%が主権を持つヴェネト連邦共和国の創設を支持した。しかし、まだ住民投票には進んでいない。これらの地域でより大きな独立を望むのは、主に経済的な要因からだが、南チロルでは、国家的な問題も一役買っている。第一次世界大戦後にイタリアの一部となったこの豊かなドイツ語圏の地域は、100年以上前からオーストリアとの統一を望んでいる。

 西ヨーロッパで最も崩壊の可能性が高いのは、間違いなくベルギーである。ベルギーは、全く異なる民族が住む2つの地域から構成されている。オランダ語を話すフラマン人が人口の約6割を占め、フランス語を話すワロン人が4割を占める。フラマン人は、失業率が2倍、1人当たりGDPが3分の1という南隣のワロン人が、自分たちを犠牲にして生活していると考えるのは当然である。30年前、フランドル(フラマン人が住む地域のこと)はこの状況に不満を抱き、統一ベルギーを連邦制に移行させることに貢献した。今、フランドルは自治権をさらに拡大しようと闘い、ワロン人はその努力をはねのけようとしている。

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ブリュッセル近郊のウェゼンベーク・オッペム市で、フラマン民族主義グループ「Voorpost(アウトポスト)」のメンバーが、フラマン民族の独自性を支持するデモの際に、フラマンの旗を振り回している。© Dominique Faget / AFP


まだまだ、ある...。

 分離主義の問題は、東欧、特にソビエト後の空間ではさらに深刻で、中央と地域の当局が合意に至らないために、しばしば戦争が勃発している。トランスニストリア、アブハジア、南オセチア、ナゴルノ・カラバフ、ウクライナ東部などである。



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 しかし、分離主義的な願望は、ヨーロッパに限ったことではない。アジア、アフリカ、そしてオセアニアでも見られる。特に植民地支配を経験した国々では、外圧によって国境線が引かれることが多く、地域の要因や部族や民族の伝統的な母国を無視した国境線が引かれてきた。

 今日、最も強力な非ヨーロッパ諸国も、この問題と無縁ではない。たとえば、中国が直面している分離主義の脅威は、世界中がよく知るところである。米国は最近、台湾、チベット、新疆ウイグル自治区、香港、マカオの独立を主張することが多くなっている。半世紀余り前、北京は内モンゴル自治区の分離独立と戦っていたが、人口動態の変化により、この問題はあまり意味を持たなくなった。

 とはいえ、外から見ると一枚岩のように見えるアメリカでさえ、11の小国に分けることは容易である。カリフォルニア州やテキサス州など、個々の州の独立を主張するアメリカ人の話は時々メディアに登場するし、カスケーディアやニューアフリカ共和国など、地域全体の独立を主張する興味を引く運動も存在する。

 いずれにせよ、世界中の分離独立運動を網羅したリストは、図書館の別室を占領してしまうだろう。

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© independent.co.jp


解決策はあるのだろうか?

 モスクワにあるバルダイ国際討論クラブ*の企画担当責任者ティモフェイ・ボルダチェフは、「世界的に見て、分離主義は、解離、新しい壁の建設、民族主義の台頭に対する反応である」と考えている。
*専門家の分析センターで、2004年にロシアの大ノヴゴロドで設立された。(ウィキペディア)

 「もし本当の全世界一体化(グローバリゼーション)があれば、分離主義は存在しない。国境は透明化され、人々はどこに住もうが構わなくなるからだ。」

 分離主義とは、名ばかりの国の国粋主義に対する闘争である。

 ドンバスや東ウクライナの住民は、なぜキエフの権力から抜け出したいと思うのか。その理由は、ウクライナの国粋主義である。南オセチアやアブハジアでグルジアとの決別を望む分離主義者が現れたのはなぜか? トビリシがこれらの地域にグルジアの国粋主義を押し付けようとしたからだ。それだけである。分離主義の背景には、常に大きな国の国粋主義がある」とこの専門家はRTに語っている。



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 モスクワ国立国際関係研究所欧州法学部の准教授であるニコライ・トポルニンは、少し違った見解を持っている。彼によれば、「分離主義的傾向とグローバルな統合過程との間に明確な関係はない」という。

 「それぞれのケースには、それぞれの歴史、特徴、ルーツがあります。しかし、多くの場合、分離主義の背景には、歴史的、文化的、宗教的、言語的、教育的、経済的な理由が複雑に絡み合っています」とトポルニンは指摘した。

 ある意味、グローバリゼイション(世界統一化)は分離主義を助長している。その結果のひとつが、グローカリゼーション(世界地域化)の出現であり、消滅すると思われていた地域差は、むしろ強まっている。「合併や統一が進む代わりに、分離主義的な傾向、地域差への関心の高まり、古い伝統への関心の高まり、方言の復活など、逆の傾向が生まれ、強くなっている」と彼は述べている。

 このような状況下で、分離主義に対抗するには、弾圧と譲歩の2つの方法しかない。各国はこの2つの方法を同時に採用し、分離主義を志向する活動家を迫害すると同時に、分離主義地域にさらなる自治権を与えることが多い。しかし、ティモフェイ・ボルダチェフによれば、より普遍的な処方箋があるという。

 「分離主義の問題に理論的な解決策はあるのだろうか? ある。それは帝国主義だ。分離主義に対する唯一の処方箋は帝国主義である。つまりロシア、中国、そしてある程度は米国のような、多国籍、多会派の大国のことである。」

市民の抗議運動には、価値付けられるものとそうでないものがある

<記事原文 寺島先生推薦>

Worthy and Unworthy Protest

筆者:マーガレット・キムバレー(Margaret Kimberley)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年11月30日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月8日


2021年、ロンドンでの「法案を潰せ」抗議活動に参加中の市民たち (Photo: Extinction Rebellion)

 抗議活動が祝福される国々もあれば、抗議活動が無視される国々もある。抗議活動は、人権として尊重されるべきものだが、政権転覆といったよこしまな動機のために利用されることもある。

 英国と北アイルランドは抗議活動を不法行為にする法律が成立する瀬戸際に置かれている。「治安秩序法」案が下院を通過し、貴族院で承認され、法律になる見通しだからだ。この法案は、「国の生活基盤施設を妨害」したり、建築や交通を遮る、いかなる抗議活動も禁じている。この法案により、警察権力は、「合理的な理由」なしで、捜査が可能になる。この法律では、「治安維持に対する深刻な行為を防止する命令 (SDPO) 」が認められている。この規則は意図的に曖昧に作られているので、違反する可能性さえあれば、警察は対象者を逮捕する権利が与えられ、最長2年間は次の抗議行動に参加できなくなる。この禁止に伴い、警察は、この法律に違反していると思われるものは誰に対しても、電子的に監視する権利が与えられる。これらの措置により、市民によるいかなる大規模な抗議活動を事実上阻止することができる。これらの条項に違反した者は、有罪が確定すれば、最大51週間、刑務所に収容される可能性がある。

 保守のトーリー党政権は、この治安秩序法を通過させる構えで、「野党」の労働党は、この件や、この件に類似する別の件に反対する様子はほとんど見せていない。もとは左翼だった労働党は、万一政権を奪還したとしても、この法案を廃案にするどころか、 それを厳しく批判することすらしないという様相を呈している。

 このことを念頭に置いた上で、英国は常に、イランや中国の抗議活動を支持する姿勢を示していることを見ることが肝要だ。英国の外務大臣は、イラン政府を.厳しく非難して、こう語っていた。「我が国の今のイラン政府に対する見方ははっきりしています。外国の関係者を非難するのはやめて、自国民が持つ懸念に責任を持ち、耳を傾けなさい、ということです」と。英国民が、自国政府が国民からの声に聞く耳を持たないと感じても、集団行動を起こすことで、そんな声を伝えることはもはや不可能になるのだ。刑務所に放り込まれる覚悟があれば別だが。

 明らかに、ある抗議活動は、他の抗議活動よりも価値があると見られているのだ。そしてそれらの抗議活動にどう対応するかは、完全に政治的な判断だ。

 ハイチでの大規模な抗議活動は、米国や新興財閥たちが、国民に押し付けた傀儡指導者たちに対するものだった。その米国や新興財閥たちは、カリブ海の石油を、自分たちの利益のために盗んでいた。それなのに、これらの抗議活動は、無視されるか、無法者による運動だと誤った捉えられ方をされている。ハイチ国民による抗議活動は常に、注意を払うべき価値のあるものだとしては扱われていない。

 欧州各国市民たちも、自国政府に対する抗議活動を行っている。ライプツィヒでは、ドイツ国民が「米国は国に帰れ」と叫び、77年間駐留している米軍に出ていくよう求めていた。フランスチェコ共和国では、何千もの人々が集まり、自国がNATO加盟国から抜けるよう要求していた。これらの抗議活動は、EUの各国政府が、米国とともに、ロシアに制裁を加えていることに繋がるものだ。この制裁により、何百万もの人々に、インフレとエネルギー不足が引き起こされているからだ。しかしこれらの抗議活動も、無視されるか、「極右勢力」だと決めつけられ、主張の正しさが否定されている。

 このような抗議活動者たちが、米国でほとんど注目されていない理由は単純だ。これらの抗議活動が、ワシントンの政策と相容れないものだからだ。

 市民に抗議する権利があることは、国際法で認められている。しかし米国や米国の友好諸国から出される声明は、政府の干渉により常に毒されている。イラン国民は、警察に留置された一人の若い女性の死亡に対して政府に抗議活動を起こしたが、米国は、警察が年間1000人の市民を殺害することを許可している。さらに米国には、イランの内政に干渉してきた長い歴史がある。多くの政治家や世論形成者は、そのことはイラン政府の政権転覆を狙ったものであったと公言している。この同じ手口が、中国でも繰り返された。中国で起こったゼロコロナ政策に対する抗議活動は、中国共産党や中国の政治体制全般に対する抗議活動であるとされたのだ。

米国市民や欧州市民がすべき最善の行為は、まず自国の政策や政治を見直すことだ。衝動に駆られて、人権問題複合体*を後追いし、間違った結論を出してはいけない。そんなことをすれば、自国政府の邪悪な目的に手を貸すことになるだけだ。
 *「軍産複合体」をまねた造語。様々な人権の擁護のために活動している組織の集合体。

 我が国(米国)の市民たちは、世界最大の刑務所体制のもとで生活している。さらに健康福祉体制も先進国と見られている国の中で最悪だ。賃金は低く、セーフティ・ネット(困窮者緊急救済保証)は意図的にビリビリの穴だらけにされている。学生の学費の借金や、医療費の借金が何千ドルにもなる危険がある国に住む国民が、自分たちと同様の酷い状況下で生活していない他国民よりも自由であると、どうして言えるのだろうか?

 米国の例外主義は、強力な麻薬であり、他のことでは分別のあるふるまいができる人でも、この件に関しては、自分たちはよい暮らしをしていると思わされ、世界各国の人々は、自分たちが守ってあげないといけない存在である、と思わされてしまうのだ。米国の大統領が選挙に勝ち、大統領府に入れるのは、国民が何を必要としているかについて、嘘をついているからだ。米国大統領は大統領府に入るやいなや突然、自分の手は縛られているから、選挙運動のときにした公約はどれもを果たせなくなった、と宣言し出すのだ。

 こんな二枚舌を通用させるのに必要なことは、他の国々を悪い国であると描くことだ。 そうすることで、政府は意図的に人々の意志に障害を与え、人々は残りの人類に対して強力な権利を有する陣営に与するよう説得される。もちろん、政府は人々に自分たちが政権転覆という夢にほだされている事実や、世界中の人々の意志を弱体化させる方策を模索し続けているとは伝えない。その一方で、自分たちは、慈悲深いという印象を与えようとする。

 米国民も欧州市民も、人権問題が心配なら、まずは自国の人権問題を見つめることから始めないといけないことを悟るべきだ。そうすれば、他の国々の人々の苦境について、いつ意見を述べればいいかが分かるだろうし、自分たちが他国にしか存在しないと思っている権威主義的な政権のもとで自分たちも暮らしている事実におそらく気がつくはずだ。

 このような政治的判断が下されるのは、抗議活動の件だけではない。英国メディアは今、一体となって怒りを示している。それはBBCの記者が逮捕され、短期間拘束されたからだ。中国の上海で、抗議活動を取材中のことだった。もちろん、記者が罰を受けることを恐れることなく、仕事ができるというのは当然のことだが、その英国自身は、米国の要請を受けて、記者のジュリアン・アサンジを未だに投獄している。

 米国・EU・NATOが、世界全体を支配しようとし続ける限り、世の中の風潮は、「偽善」であり続けるだろう。ハイチやフランスやドイツやイランの人々は皆、抗議活動が可能であるべきだし、主権を求める要求は尊重されるべきだ。 彼らが、自分たちが求めるような暮らしを送れていないとしたら、それは米国のせいだ。彼らから権利を奪った張本人として最もありえそうなのは米国だからだ。

主要五カ国のドル離れとその理由

Top 5 countries opting to ditch US dollar & the reasons behind their move

RT/ Home/Business News/   2019年1月2日 

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年3月23日)

<記事原文>寺島先生推薦
https://www.rt.com/business/447915-top-states-ditching-dollar/

Top 5 countries opting to ditch US dollar & the reasons behind their move
© Getty Images

昨年は、世界の地政学的空間を二つの陣営に分裂させることになった出来事がたくさんあった。 二つの陣営の一つは、ドルを普遍的金融ツールとして使うことを支持する陣営であり、もう一つはドルから離反しつつある陣営である。 

アメリカ政府が仕掛ける様々な経済制裁や貿易摩擦によって国際的な緊張が高まり、標的となった国々は、現在のドル一辺倒の支払いシステムを見直さざるを得なくなっている。 

RTは最近の「脱ドル化」現象の真相を探った。 以下、主要五カ国のドル依存脱却の現状と依存脱却に至る理由をまとめた。

中国

米中間の貿易摩擦が進行中であることと、また中国の主要貿易相手国への経済制裁のため、世界第二位の中国経済は、やむを得ず自国経済のドル依存緩和へと舵を切っている。

中国政府には特徴的なソフトパワー・スタイルで、この問題に関してまだ声高な声明は出していない。 しかし、中央人民銀行は米国債の保有高を定期的に削減している。 それでもなお中国は世界最大の米国債保有国だが、2017年5月以来過去に例を見ないほどの保有高にまで削減した。 

さらに、中国は直ちにドルに背を向けることはせず、自国通貨である元を国際化する努力をしている。 これまでドル、円、ユーロ、そしてポンドで構成されていたIMFの通貨バスケットに、2016年、元が加わった。 中国政府は元の強化に向けて、最近次のような手段を講じている。 
    ① 金保有量を増やす
    ② 元建ての原油先物取引を手がける
    ③ 貿易相手国と元で交易する

野心的な「一帯一路」構想の一貫として、元の使用を促進するため、参加国へ「スワップ執行ファシリティ」*を導入する計画がある。 さらに、中国は「地域包括的経済連携(RCEP)」と呼ばれる自由貿易協定を積極的に推し進めている。 この協定には東南アジア各国が含まれる。 RCEPは「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」に容易に取って代わることもできるだろう。 アメリカはトランプ大統領が政権を取るとすぐに同協定から離脱したため、TPPの骨組みはガタガタになっているからだ。 RCEPには16カ国が参加しており、34億人近い人口をまとめ上げる協定となることが期待され、49.5兆ドル規模の経済基盤を形成することになる。 これは世界のGDPのほぼ40%にあたる。 
   *[訳注:スワップ執行ファシリティ(swap-execution facilities) ]  (「投資
   用語集」より)
      デリバティブ取引は実態把握が困難であり、そのためリーマン・ショッ
     クに端を発する金融危機を未然に防げなかったとの反省から、2013年
     10月から米国で導入された電子取引基盤のこと。
      デリバティブ取引の大半が情報開示の義務の無い店頭(OTC:over-the
     -counter)等の相対取引であったため、金融危機再発防止のたに制定さ
     れたドッド・フランク法(金融規制改革法)によりデリバティブ取引をスワッ
     プ執行ファシリティ(SEF)上で行うことが義務付けられ、取引所の売買と
     同様でそれぞれ複数の売買注文を受け付けて取引を成立させることと
     なり、取引の透明度の向上や金融規制当局の不正監視が容易となった。
     また、デリバティブ取引の清算後に取引情報蓄積機関(swap data
     repository)への取引報告も義務付けられている。
      EUにおいては、「組織化された取引施設(OTF:organized trading facility)」
     がSEFと同様な電子取引基盤として整備されている。


インド

世界第六位の経済大国にランクされるインドは、世界最大の商品輸入国のひとつである。 同国が世界のほぼすべての地政学的紛争からの影響をまともに受け、貿易相手国に課せられた制裁によって大きな影響があることは当然である。

今年初め、インド政府はルーブルを使ってロシア製S-400対空システムの対価を支払った。 アメリカがロシアに対して経済的なペナルティーを導入した結果である。 インドは、また、アメリカ政府がイランに対する経済制裁を再開した後、ルピーを使ってイランの原油を購入せざるを得なかった。 12月、インドとアラブ首長国連邦は「通貨スワップ」協定に調印し、第三者の通貨[ドル]を介さずに、交易と投資の拡大を図ることにした。

インドが購買力平価では世界第三位の国であることを考えると、同国のこのような動きは世界貿易におけるドルの役割を著しく低下させることにもなるだろう。 

トルコ

今年初め、トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンはドル独占を終了させる新しい政策を発表し、貿易相手国とは非ドル仕立ての交易を目指す、とした。 その後の声明で、エルドアン大統領は、中国、ロシア、ウクライナと自国通貨で交易する準備を進めていることを発表した。 また、トルコはイランとの交易にドルではなく自国通貨が使えないかどうかの議論も行った。 

こういった動きの背景には、いくつかの政治的、経済的理由がある。 トルコとアメリカの関係は、2016年のエルドアン大統領追放クーデター未遂事件以来、悪化している。 報道によれば、エルドアンはこのクーデターにアメリカが関与しているのではないかと疑っている。 そして、トルコ政府がクーデターの黒幕として非難している亡命中のイスラム聖職者フェトフッラー・ギュレンに、アメリカが隠れ家を提供していることを糾弾している。

トルコ経済が落ち込んだのは、クーデター未遂事件に関連して、アメリカの福音派牧師アンドルー・ブランソンがテロ容疑で逮捕されたことに対して、アメリカが経済制裁を導入してからだった。 

エルドアンは、アメリカ政府が、①世界貿易戦争の端緒を開いた、②トルコに経済制裁を科した、③イランを孤立させようとしたことを繰り返し非難した。

さらにトルコは、ドルから離れ、自国通貨を支える試みに取り組んでいる。 トルコ通貨リラはドルに対して昨年度比ほぼ50%安となっている。 リラ暴落に、猛烈なインフレと物価、公共サービスの値上げが加わり、事態はさらに悪化した。

イラン

イランは世界交易の場面に意気揚々と復帰したが、長くは続かなかった。 トランプは大統領当選後、2015年イランとの間で署名された「核合意」から離脱する選択をした。 この「合意」にはイギリス、アメリカ、ドイツ、ロシア、中国、そしてEUも参加していた。

石油資源の豊富なイランは、アメリカ政府が再開した厳しい経済制裁の標的となった。 アメリカは、同時に、この禁輸措置に違反するいかなる国もペナルティーの対象になる、と脅した。 一連の懲罰的措置でイランとのビジネスは禁止され、イランの石油産業は身動きが取れなくなった。

アメリカが経済制裁を発動したため、イラン政府はドルに代わる通貨で、輸出した原油の代金を受けざるを得なくなった。 インドの原油代金支払いはインド通貨ルピーで行う契約で、イランは何とか取引きをつなぎ止めることができた。 また、隣国イラクとは通貨を介在させない「バーター取引」の交渉も行った。 この二国は、相互交易にイラク通貨ディナールを使うことも計画している。 ドル依存の度合いを減らすためだ。 アメリカの経済制裁に関連して、銀行業務には種々の問題が発生している。

ロシア

アメリカは「ドルの信頼を失墜させる」ことで「戦略的には壮大な誤りを犯している」、とプーチン大統領は述べた。 プーチンは、ドルを使った取引きの制限や、ドルの使用を禁ずる指示を一度もしたことがない。 しかし、今年初め、ロシア金融大臣アントン・シルアノフは、次のように語った。 ロシアとしてはアメリカ国債の保有を止め、より確かな資産としてルーブル、ユーロ、そして貴金属に傾かざるを得ない、と。

ロシアは、自国経済の脱ドル化に向けた措置をすでにいくつか実施している。 2014年以来、様々な問題をめぐるアメリカの経済制裁のために、ずっしりとロシア経済に大きな負担をかけてきているためだ。  アメリカが、ロシアの金融システムを標的にした新たな、一層厳しい経済制裁の脅しをかけきたので、ロシアは、「国債銀行間通信協会(SWIFT)」、Visa、マスターカードに代わる自国支払いシステムを開発した。 

これまでのところ、ロシア政府は輸出取引きの一部で、ドル建てを止めることができた。 中国、インド、そしてイランを含む国々と「通貨スワップ」協定の署名をしている。 ロシアは最近、ドルではなくユーロを使ったEUとの交易を申し出た。

かつてはアメリカ国債保有高上位10カ国に入っていたロシアだが、それをほぼゼロにした。 アメリカ国債を売却したお金を使い、外貨準備高を増やし、自国通貨ルーブルを安定させるため金の備蓄に努めている。 

カール・マルクスの社会主義理念は、200年たって世界でどのように受け入れられているか

How the world still embraces Karl Marx's socialist ideals after 200yrs

RT World News 2018年5月5日
(翻訳:新見明 2018年11月14日)
<記事原文> https://www.rt.com/news/425918-karl-marx-socialism-global/


2018年5月1日スリランカのコロンボで社会主義戦線党により組織されたメーデー集会のカール・マルクス© Dinuka Liyanawatte © Reuters

革命的哲学者カール・マルクスの生誕200年後も、彼の仕事は未だ有効である。社会主義が復活していて、世界中の人々がマルクスの理想を受け入れている。

欧米世界で社会主義の政治家が最近人気を得ていることは、当然、資本主義からの変化を願っていることだ。アメリカでは自称社会主義者バーニー・サンダース上院議員が大統領候補の選挙運動中、社会主義革命を公言した。一方イギリスでは誇り高き社会主義指導者ジェレミー・コービンの下、労働党が昨年の選挙で大きな躍進を遂げた。

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Meanwhile in Greece, the anti-austerity Syriza party – a radical left-wing coalition which promoted itself on its commitment to Marxism – swept to power in 2015 as the country was in the midst of a debt crisis.
カール・マルクス生誕200年:RTはマルクスを重視するイギリス政治家たちを考察する。一方、ギリシャでは、反緊縮のシリザ党がマルクス主義を推進し、極左連合を形成して、2015年の国が金融負債危機の最中に、政権の座についた。


マルクス生誕200年に先立ち、イプソスによって行われた世界的調査では、2万人の大人にマルクス主義の理想に関して調査した。例えば無償教育、医療の無償、ユニバーサル・インカムの権利についてである。


調査によると、10人中9人が、教育は無償で、医療も無償であることが人権であるべきだと考えている。ロシア人はどちらの項目にも最も支持が多く、次がセルビアだった。

無条件のベイシック・インカムの権利に関して、回答者の3分の2以上がその施策を支持した。28カ国すべてで約10分の8が、貧困層を支えるために富裕層がさらに多く課税されるべきだと考えている。最も多かったのはスペイン、セルビア、中国だった。

しかし、世界で3分の2の人々が、自由市場の競争は人々に最もよいものをもたらすと考えており、ほぼ70%が、才能のない人より、才能のある人が多く儲ける権利があると考えている。

中華人民共和国の人々はほとんど、社会主義の理想が社会の発展に大きく寄与するという主張に賛成であり、そしてインド、マレーシアが続いている。回答者は全般的に、社会主義の今日的可能性について意見が分かれている。半数が社会の発展に大きな貢献をすると答え、ほぼ半数が社会主義を抑圧の手段と考えている。

中国はマルクス生誕200年に大きな祝典を計画し、偉大な思想家の巨大なブロンズ像をマルクスの生誕の地ドイツのトリーアに贈った。


そのブロンズ像は、当然ドイツの意見を分断した。ドイツの東半分は1949年から1990年の再統一まで、共産主義ソ連によって支配されていた。論争があっても、記念碑は欧州委員会委員長のジャン・クロード・ユンケルによって除幕された。しかしその除幕式は「共産主義幹部会の米議会犠牲者」によって非難された。

「マルクス主義体制は少なくとも1億人を虐殺した責任がある。中国では6500万人、ソ連では2000万人以上、北朝鮮では200万人以上が犠牲になった」とそのグループはユンケルに再考を促し、もしくはマルクスの名でなされた「暴虐」に反対するように手紙を書いた。ユンケルの返事では「マルクスは全ての虐殺に責任があるわけではない。彼の後継者と自称する者が答えなければならない」と述べた。

マルクスは論争のタネになる人物であり続けている。しかしマルクスはソ連崩壊により死んで葬り去られた、という主張にもかかわらず、彼のイデオロギーは世界中で重要性を増している。


活動家達は、よりよき労働状態を求めた集会に参加する。2018年5月1日パキスタン、カラチ© Akhtar Soomro © Reuters /

このいつまでも残る影響は、世界中の労働組合が街頭に出て、よりよい労働者の権利を求めるメーデーの日に特に明かだ。カール・マルクスは、しばしば活動家が彼の写真を掲げているように、これらの集会で呼び覚まされている。 そしてよく「共産主義の父」として描かれる伝説の男が、今日も生きていることを資本主義者に思い出させるのだ。

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