中国の時代が来た~デジタル人民元/元と、「道」を重んじる哲学が、米ドルと米国の世界覇権を駆逐する~
<記事原文 寺島先生推薦>
The China Moment
グローバル・リサーチ
2020年11月23日
ピーター・ケーニッヒ
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年1月15日

中国が成し遂げたことは、ほとんど不可能だと思われていたことだった。なんと、自由貿易を行う同意を14カ国と交わしたのだ。その14カ国とは、ASEANの10カ国と韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランドだ。それに中国を含めば15カ国になる。 いわゆる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定だ。この協定の締結には8年を擁したが、その結果、自由貿易を求める国々が手を取り合うことを成し遂げたのだ。具体的にいえば、22億の人々と世界のGNPの3分の1がこの協定で結びついたことになる。こんな大規模な合意はこれまでには全くありえなかったものだ。 規模的にも経済的にも 性質的にも、だ。この東アジア地域包括的経済連携(以下RCEPと呼ぶ)が署名されたのは、11月11日、ベトナムでのことだった。
人類史上最大の貿易に関する同意であることに加えて、この同意は一帯一路構想(BRI)と連携し繋がるものでもある。一帯一路構想はワンベルト・ワンロード(OBOR)や新シルクロードという名で呼ばれることもあるが、これはすでに130カ国以上や30以上の国際機関が加わっている。更に、中国とロシアは長期に渡る二国間の戦略的協力関係を結んでおり、今回の自由貿易協定に加わることになる。さらには、中央アジア経済協力開発機構 (CAEU:この機構参加国はほとんどが旧ソ連圏の国々だ)の参加国もこの東洋の貿易ブロックに加わることになる。

アジア・太平洋地域に位置する、このRCEPに協力することに同意した国々やその一部に同意している国々の集合体が結びつくのは、西側諸国にはあまり知られていないアジアの或る機構のためだ。その機構は上海協力機構(SCO)である。この機構は、2001年6月15日に上海で設立されたものだ。この国家間の機構に参加しているのは、中国とロシアとカザフスタンとクルジスタンとタジキスタンとウズベキスタンだ。この上海協力機構の目的は、安全保障と広大なユーラシア地域の安定を維持することであり、安全保障上の問題や脅威が起こった際には協力して取り組むことや、貿易を強化することである。
今回のRCEPや一帯一路構想によるプロジェクトの基金のほとんどは 、中国アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの中国や参加国の金融機関から低金利で融資を受ける形になる。コロナ危機が引き起こした厳しい情勢の中で、多くの国々が無償の援助金を必要としている可能性がある。その援助金を使ってできるだけ早期に、世界的流行によって引き起こされた膨大な社会的経済的損失を回復するために、だ。そういう意味では、この新シルクロードがアジア大陸における「医療の道」的な役割を果たす可能性があるのだ。

RCEPが締結された真の美点は、この連携が追求しているのが確かな前進である点だ。西側諸国、おもに米国からの妨害にも関わらずに、だ。実際、このRCEPの副産物として、この巨大なユーラシア大陸の統合が生み出される可能性があるのだ。そう、西欧からいわゆるアジア地域にまで広がり、中東やさらには北アフリカも含まれる、しめて5500万平方キロメートルにわたる広大な地域の統合だ 。上図参照 (出典はWikipedia).
RCEPによる貿易に関する取り決めの要点は、その貿易で使用される貨幣はそれぞれの国の貨幣や元になるという点だ。そう、米ドルではないのだ。
RCEPにより、ドル離れはさらに進むだろう。まずは、主にアジア・太平洋地域において。そしてその流れは次第に世界の他の地域にも起きてくるだろう。
一帯一路構想や新シルクロード構想のもとでのインフラ投資の資金の多くは、米ドルではない貨幣で行なわれる可能性がある。新しく作られた中国のデジタル人民元 (RMB)や元が、まもなく国際的な支払いや為替に利用される法定通貨になることが見込まれており、ドルの使用は劇的に減るだろう。デジタル人民元が多くの国々から魅力的に映るのは、その国々が米国から課された制裁に辟易させられているからだ。米ドルを使用すれば、それらの国々は自動的に以下のような制裁に対して脆弱になるからだ。例えば、ドル使用を禁止されたり、資源を押収されたりという制裁だ。それらの国々の国際的な「態度」が米国政府の命令と食い違えば、間違いなくそのような制裁が課されるのだ。
自国の資源が堂々と盗まれることもある。それを行ったのは米国政府で、罰せられることのない犯罪だった。英国の助けを借り、全世界の国々が見ている中堂々と、ベネズエラ政府がイングランド銀行に預けていた12億ドルの価値のある金を横取りしようとしたのだ。 英国の裁判所に対して、ベネズエラ政府が控訴するなど面倒な法的手続きをして、最終的にはやっとベネズエラ政府の手に戻ったのではあるが。この事件は、多くの国々に対する警告になったのだ。そんな国々が、恐ろしい泥舟ならぬドルの船から飛び降りて、誠実な貿易ができ、しっかりした準備通貨のある船に乗り換えようとしているのだ。その船を提供しているのが、確実で安定した経済が基になっているデジタル人民元や元なのだ。
ドルは既に現在衰退している。20~25年ほど前は、世界の全準備資産の90%を米ドルが占めていたが、この割合は今60%にまで減少しており、さらに減り続けている。国際的な評価が上がっているデジタル人民元や元が、RCEPや一帯一路構想により強化されている中国経済と共に、ドル離れ傾向をさらに進める可能性がある。 そして米国の世界覇権も弱まる可能性がある。 それと同時に、そして徐々に、世界の国々の国庫金における為替として、国際通貨としてのデジタル人民元や元が米ドルやユーロにとって変わっていくだろう。
米ドルは、最終的には単なる一国家の貨幣に戻るかもしれない。しかしそれがあるべき姿だ。そして、中国が持つ哲学のもと、世界は、今の一極集中から、多極化の世界に変わっていくだろう。RCEPや新シルクロード構想は、この崇高な目的を急速に追求している。この目的を追求する方が、ずっと、世界に力関係の均衡をもたらすだろう。
*
西側諸国がこの現実に順応することは簡単なことではなかろう。競争ではなく協力が西側諸国の概念や哲学になったことはないからだ。これまで何千年とは言わなくても、何百年もの間の西側諸国による世界支配が残してきたものは、裕福な植民地支配者による貧しいものたちからの搾取と、悲惨な戦争という二つの悲しい遺産なのだから。
競争や権力を求める戦争ではなく協力するということが、西側諸国に受け入れられるのは簡単なことではない。確実に起こりそうなことは、米国の扇動による貿易戦争であり、米中間の貨幣を巡る戦いは、 もうすでに起こっているようだ。米国の連邦準備制度も、デジタル貨幣(あるいは暗号貨幣かもしれない)を始める計画があることを、大まかにではあるが発表している。これは、デジタル人民元や元に対抗してのことだ。まだデジタル人民元や元の国際的な貨幣としての使用は始まっていないのだが。連邦準備制度が考えている計画の詳細は、この記事を執筆している時点では、まだ明らかになっていない。
この新しいRCEPに順応しなければならなくなり、各国が対等の立場で同意を交わすという事態を、西側諸国が受け入れることは簡単なことではなかろう。西側諸国は、そんなことは許さないだろう。そして、西側諸国が作り、かつ西側諸国の肩を持つ組織である世界貿易機関(WTO)を最大限利用して、RCEPに基づく貿易や、一帯一路構想に基づくインフラ整備や、超国家間の産業の発展の前進を最大限妨害しようとするだろう。
西側諸国は、米国が率いており、常に米軍やNATO軍の軍事力を後ろ盾にしているので、中国のこのプロジェクトに参加している国々を脅すことにためらったりはしないだろうが、うまくはいかないだろう。「あるべき道」を重んじる哲学の下、中国は協定を締結した国々とともに前進を続ける。枯れることのない川の流れのように。 創造を続け、障害を乗り越え、その崇高な目的に向かう。その先に待つのは、世界平和の実現だ。皆が共有できる明るい未来だ。
*
結論を述べよう。RCEPは、「道」を重んじる中国の精神が生み出した傑作である。この連携が築きあげていく方向性は、世界規模での共同体の建設を前進させることであり、人類が共有できる未来に向かうことだ。この連携を支えている精神は、主権国家による共同体の構築である。そして、各国がともに生き、ともに取り組み、ともに発明し、ともに創造し、ともに文化を高めあっていくことだ。そう、平和な世界の中で。
The China Moment
グローバル・リサーチ
2020年11月23日
ピーター・ケーニッヒ
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年1月15日

中国が成し遂げたことは、ほとんど不可能だと思われていたことだった。なんと、自由貿易を行う同意を14カ国と交わしたのだ。その14カ国とは、ASEANの10カ国と韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランドだ。それに中国を含めば15カ国になる。 いわゆる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定だ。この協定の締結には8年を擁したが、その結果、自由貿易を求める国々が手を取り合うことを成し遂げたのだ。具体的にいえば、22億の人々と世界のGNPの3分の1がこの協定で結びついたことになる。こんな大規模な合意はこれまでには全くありえなかったものだ。 規模的にも経済的にも 性質的にも、だ。この東アジア地域包括的経済連携(以下RCEPと呼ぶ)が署名されたのは、11月11日、ベトナムでのことだった。
人類史上最大の貿易に関する同意であることに加えて、この同意は一帯一路構想(BRI)と連携し繋がるものでもある。一帯一路構想はワンベルト・ワンロード(OBOR)や新シルクロードという名で呼ばれることもあるが、これはすでに130カ国以上や30以上の国際機関が加わっている。更に、中国とロシアは長期に渡る二国間の戦略的協力関係を結んでおり、今回の自由貿易協定に加わることになる。さらには、中央アジア経済協力開発機構 (CAEU:この機構参加国はほとんどが旧ソ連圏の国々だ)の参加国もこの東洋の貿易ブロックに加わることになる。

アジア・太平洋地域に位置する、このRCEPに協力することに同意した国々やその一部に同意している国々の集合体が結びつくのは、西側諸国にはあまり知られていないアジアの或る機構のためだ。その機構は上海協力機構(SCO)である。この機構は、2001年6月15日に上海で設立されたものだ。この国家間の機構に参加しているのは、中国とロシアとカザフスタンとクルジスタンとタジキスタンとウズベキスタンだ。この上海協力機構の目的は、安全保障と広大なユーラシア地域の安定を維持することであり、安全保障上の問題や脅威が起こった際には協力して取り組むことや、貿易を強化することである。
今回のRCEPや一帯一路構想によるプロジェクトの基金のほとんどは 、中国アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの中国や参加国の金融機関から低金利で融資を受ける形になる。コロナ危機が引き起こした厳しい情勢の中で、多くの国々が無償の援助金を必要としている可能性がある。その援助金を使ってできるだけ早期に、世界的流行によって引き起こされた膨大な社会的経済的損失を回復するために、だ。そういう意味では、この新シルクロードがアジア大陸における「医療の道」的な役割を果たす可能性があるのだ。

RCEPが締結された真の美点は、この連携が追求しているのが確かな前進である点だ。西側諸国、おもに米国からの妨害にも関わらずに、だ。実際、このRCEPの副産物として、この巨大なユーラシア大陸の統合が生み出される可能性があるのだ。そう、西欧からいわゆるアジア地域にまで広がり、中東やさらには北アフリカも含まれる、しめて5500万平方キロメートルにわたる広大な地域の統合だ 。上図参照 (出典はWikipedia).
RCEPによる貿易に関する取り決めの要点は、その貿易で使用される貨幣はそれぞれの国の貨幣や元になるという点だ。そう、米ドルではないのだ。
RCEPにより、ドル離れはさらに進むだろう。まずは、主にアジア・太平洋地域において。そしてその流れは次第に世界の他の地域にも起きてくるだろう。
一帯一路構想や新シルクロード構想のもとでのインフラ投資の資金の多くは、米ドルではない貨幣で行なわれる可能性がある。新しく作られた中国のデジタル人民元 (RMB)や元が、まもなく国際的な支払いや為替に利用される法定通貨になることが見込まれており、ドルの使用は劇的に減るだろう。デジタル人民元が多くの国々から魅力的に映るのは、その国々が米国から課された制裁に辟易させられているからだ。米ドルを使用すれば、それらの国々は自動的に以下のような制裁に対して脆弱になるからだ。例えば、ドル使用を禁止されたり、資源を押収されたりという制裁だ。それらの国々の国際的な「態度」が米国政府の命令と食い違えば、間違いなくそのような制裁が課されるのだ。
自国の資源が堂々と盗まれることもある。それを行ったのは米国政府で、罰せられることのない犯罪だった。英国の助けを借り、全世界の国々が見ている中堂々と、ベネズエラ政府がイングランド銀行に預けていた12億ドルの価値のある金を横取りしようとしたのだ。 英国の裁判所に対して、ベネズエラ政府が控訴するなど面倒な法的手続きをして、最終的にはやっとベネズエラ政府の手に戻ったのではあるが。この事件は、多くの国々に対する警告になったのだ。そんな国々が、恐ろしい泥舟ならぬドルの船から飛び降りて、誠実な貿易ができ、しっかりした準備通貨のある船に乗り換えようとしているのだ。その船を提供しているのが、確実で安定した経済が基になっているデジタル人民元や元なのだ。
ドルは既に現在衰退している。20~25年ほど前は、世界の全準備資産の90%を米ドルが占めていたが、この割合は今60%にまで減少しており、さらに減り続けている。国際的な評価が上がっているデジタル人民元や元が、RCEPや一帯一路構想により強化されている中国経済と共に、ドル離れ傾向をさらに進める可能性がある。 そして米国の世界覇権も弱まる可能性がある。 それと同時に、そして徐々に、世界の国々の国庫金における為替として、国際通貨としてのデジタル人民元や元が米ドルやユーロにとって変わっていくだろう。
米ドルは、最終的には単なる一国家の貨幣に戻るかもしれない。しかしそれがあるべき姿だ。そして、中国が持つ哲学のもと、世界は、今の一極集中から、多極化の世界に変わっていくだろう。RCEPや新シルクロード構想は、この崇高な目的を急速に追求している。この目的を追求する方が、ずっと、世界に力関係の均衡をもたらすだろう。
*
西側諸国がこの現実に順応することは簡単なことではなかろう。競争ではなく協力が西側諸国の概念や哲学になったことはないからだ。これまで何千年とは言わなくても、何百年もの間の西側諸国による世界支配が残してきたものは、裕福な植民地支配者による貧しいものたちからの搾取と、悲惨な戦争という二つの悲しい遺産なのだから。
競争や権力を求める戦争ではなく協力するということが、西側諸国に受け入れられるのは簡単なことではない。確実に起こりそうなことは、米国の扇動による貿易戦争であり、米中間の貨幣を巡る戦いは、 もうすでに起こっているようだ。米国の連邦準備制度も、デジタル貨幣(あるいは暗号貨幣かもしれない)を始める計画があることを、大まかにではあるが発表している。これは、デジタル人民元や元に対抗してのことだ。まだデジタル人民元や元の国際的な貨幣としての使用は始まっていないのだが。連邦準備制度が考えている計画の詳細は、この記事を執筆している時点では、まだ明らかになっていない。
この新しいRCEPに順応しなければならなくなり、各国が対等の立場で同意を交わすという事態を、西側諸国が受け入れることは簡単なことではなかろう。西側諸国は、そんなことは許さないだろう。そして、西側諸国が作り、かつ西側諸国の肩を持つ組織である世界貿易機関(WTO)を最大限利用して、RCEPに基づく貿易や、一帯一路構想に基づくインフラ整備や、超国家間の産業の発展の前進を最大限妨害しようとするだろう。
西側諸国は、米国が率いており、常に米軍やNATO軍の軍事力を後ろ盾にしているので、中国のこのプロジェクトに参加している国々を脅すことにためらったりはしないだろうが、うまくはいかないだろう。「あるべき道」を重んじる哲学の下、中国は協定を締結した国々とともに前進を続ける。枯れることのない川の流れのように。 創造を続け、障害を乗り越え、その崇高な目的に向かう。その先に待つのは、世界平和の実現だ。皆が共有できる明るい未来だ。
*
結論を述べよう。RCEPは、「道」を重んじる中国の精神が生み出した傑作である。この連携が築きあげていく方向性は、世界規模での共同体の建設を前進させることであり、人類が共有できる未来に向かうことだ。この連携を支えている精神は、主権国家による共同体の構築である。そして、各国がともに生き、ともに取り組み、ともに発明し、ともに創造し、ともに文化を高めあっていくことだ。そう、平和な世界の中で。
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