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クリス・ヘッジス著「他者排除文化が、リベラリズムの墓場だ」

<記事原文 寺島先生推薦>

Chris Hedges: Cancel culture, where liberalism goes to die



RT論説面

2021年2月15日

クリス・ヘッジス著

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年3月15日


By Chris Hedges, a Pulitzer Prize–winning journalist who was a foreign correspondent for fifteen years for The New York Times, where he served as the Middle East Bureau Chief and Balkan Bureau Chief for the paper. He previously worked overseas for The Dallas Morning News, The Christian Science Monitor, and NPR. He is the host of the Emmy Award-nominated RT America show On Contact.

 支配者層とそのしもべたちは、自分たちの道徳的卓越性を誇示するために、政治的に正しいとされる言説に従わない人々を排除し、沈黙させている。連中は、いわば現在のジャコバン派(訳注 フランス革命後のフランスで恐怖政治を行った一派)だ。

 この記事の元記事はScheerPostで発表されたものである。

 1956年に、ウィル・キャンベル牧師がミシシッピ大学での信仰生活部部長という自分の地位から追い出されることになったのは、キャンベル牧師が融和をよびかけていたからだった。キャンベル牧師は、1957年のリトル・ロック中央高校事件時には、黒人と白人の融和政策に反対する暴徒の中を、黒人の子どもたちによりそって入校させた人物だ。キャンベル牧師は、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「南部キリスト教指導者会議」を設立した団体への加入を進められた唯一の白人だった。キャンベル牧師は、「ナッシュビル座り込み運動」の取りまとめや、「フリーダム・ライド」の組織作りを支援していた。 

訳注 ナッシュビル座り込み運動や、フリーダム・ライドは、差別に反対する黒人たちによる1960年代初旬の抗議活動

 さらにキャンベル牧師は、人種的分離主義者たちから殺害警告を多数受けていたにもかかわらず、クー・クラックス・クラン(KKK 訳注:白人至上主義過激派団体)の地方支部の非公式の牧師をつとめていたのだ。彼はクランの人種差別主義や、テロや暴力行為に対しては激しく非難し、公式にこれらと戦い、地元のミシシッピ州での黒人による公民権運動のもとでの抗議デモ行進に参加していた。それでもキャンベル牧師は生涯を通じ、人種差別主義者たちを「排除する」ことを断固として拒否していた。彼は人種差別主義者たちを「非人間」として悪魔化することを拒否していた。彼の考えによれば、「もちろん人種差別はよくないことなのだが、人種差別主義は資本主義体制ほど悪質ではない。資本主義というのは、経済を低迷させ不安定にさせるものなのだから。そしてこの資本主義体制が、白人を暴力的で人種差別的な暴徒に追いやっているのだ」とのことだった。

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 「公民権運動当時は、戦略を練るとき、誰かがよくこういっていたものだ。“ウィル・キャンベルに電話しろ。ウィルに確認してみよう”と」。これは、ジョン・ルイス牧師がキャンベルの回顧録である『トンボの兄弟』の新版の前書きに書いた言葉だ。この『トンボの兄弟』は私がセミナー研究生時代に読んだ中でもっとも重要な著書の一つだった。「ウイルが知っていたのは、南部の悲劇の歴史の被害者になったのは、私たちの同志だけではなく敵たちもそうだった、という事実だ。ローザ・パークスや、フレッド・シャトルワース(訳注:両名とも黒人活動家)だけではなく、ジョージ・ウォレス(訳注:人種差別主義者者であることを公表していた元アラバマ州知事)やブル・コナー(訳注:公民権運動を徹底的に取り締まった元アラバマ州警察署長)も被害者だったということだ。ウィルは、この悲劇により学生非暴力調整委員会だけではなく、クー・クラックス・クランも生み出されたことをしっかり理解していたのだ。この前提があったからこそ、人種差別意識をなくし、平等という概念を広めるには、勇気や、愛や、信念を追求し、すべての人々を精神的に自由な世界に導くべきだ、とウィルは考えていたのだ」

 ジミー・カーター元大統領はキャンベル牧師をこう評している。「南部の白人と黒人の間を隔てる壁を壊した人物であった」と。「ブラック・パンサー(訳注:1966年に立ち上げられた黒人解放闘争政治組織)」の組織者であるフレッド・ハンプトンが、シカゴでキャンベル牧師と同じようなことをしていて、FBIに暗殺されたのだ。(そのFBIは今、CIAとともに、リベラル派の支配者層による、トランプやトランプ支持者に対する戦いに加担している)。

 キャンベル牧師は、自分の住んでいた町が、7月4日の独立記念日の行進に、クランに山車を出すことを禁じたことに対して、反対はしなかった。ただし、それはガス会社や電力会社も山車を出すことを禁じられていたからだ。無実の人々や弱い人々を苦しめていたのは白人人種差別主義者たちだけではない。人命よりも利益を優先する企業組織もそうなのだ。

 「ガス代や電気代が払えず、暖房を切って、死んでしまう人々もいる。特にお年寄りの中には」とキャンベル牧師は語っている。「このようなこともテロ行為のひとつだ」

 キャンベル牧師は、KKKについてこんなことを言っていた。「KKKが行う行為は、目に見えることであるし、対処もできる。もし、KKKが法律を犯せば彼らに処罰を与えることもできる。しかし、もっと社会に大きく影響を与えている、本当の人種差別主義というのは、かつてそうだったし今もそうなのだが、対処法が困難であり、社会に与える影響も大きいのだ」

 キャンベル牧師が私たちに思い出させてくれるのは、国会議事堂を占拠したトランプ支持者たちを悪者扱いするのはとんでもない間違いだ、ということだ。さらに、不法な人種差別を解消するには、経済を正常化するしかないということも、だ。さらにキャンベル牧師が私たちに呼びかけているのは、自分たちと考え方が違っていたり、言っていることが違っているために、この警察国家化した社会から嘲笑の対象となっている人々に対話の手を伸ばすことだ。彼らは、私たちと同様に、経済的に疎外されているからだ。キャンベル牧師が理解していたのは、富の不均衡や、社会的地位の喪失や、未来への希望の喪失という状況の中、長期にわたり社会から除外されていたことも重なって、本来あるべき連帯が損なわれ、クランや「プラウド・ボーイズ」などの白人至上主義である過激団体を生み出す土壌になっているという事実だ。


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 傷の本質を知ろうとしない限り、その傷を治療することはできない。

 ワシントン・ポスト紙は、1月6日に起こった国会議事堂占拠事件に参加したことで起訴された125名について調査し、以下の事実を報じている。「国会議事堂占拠事件で起訴されている人々のうち60%は何らかの金銭トラブルを抱えていた。具体的には、破産や、立ち退きや担保権執行の宣告、ひどい借金、20年以上に及ぶ税金の未払いなどだ」

 「これらの人々の破産率は18%だった。これは、通常の米国民の二倍にあたる」とワシントン・ポスト紙は報じている。「彼らの4分の1は、金銭を借りていた債権者から訴えられていた。そして、裁判所への提出書類によれば、彼らのうち5人に1人が一時的に家を失ったことがあったという事実がわかった」

 「公文書によると、国会議事堂占拠事件に参加したとされた、或るカリフォルニア在住の男性は、事件の一週間前に破産申告を行っていたことが分かった」と同紙は報じている。「国会議事堂に侵入したことで起訴されたテキサス在住の男性は、事件の1ヶ月前に自分が経営する会社が2千ドル近い租税先取特権を科されていた。この事件に加わり起訴された数名の若者は金銭的に非常に厳しい家庭出身だった」

 私たちは彼らの生活の厳しさについてしっかりと認識しておかないといけない。人種差別主義や、ヘイトや、暴力に対する渇望は否定しなければいけないのは当然のことだが。把握しておくべきことは、私たちが決して信頼してはいけない敵は、政治的に正しくない人たちではないし、人種差別主義者たちでさえない。真の敵は、企業であり、堕落した政治体制であり、法体制なのだ。こういったものたちが、血も涙もなしに、母なる地球だけではなく、その市民たちを犠牲にしているのだ。やつらが利益を得る代償として。

 キャンベル牧師と同様に、私の家族の多くは都市の労働者階級出身だ。その労働者の多くは長老派教会牧師であった私の父に偏見を抱いていた。父は常に教会から糾弾を受けていた。(訳注:ヘッジスの父は、早くからベトナム戦争に反対し、またゲイに関しても柔軟な考え方を持っていた。そのことは、当時の世間や教会からはよく思われていなかった)。そんな中でも、運と奨学金の力を借りて、私は上流階級のための学校に入学した。そんなことをした人は私の親戚にはいなかった。生来知性の高かった祖父も、高校の最終学年で中退せざるを得なくなった。というのは、祖父の姉の夫が亡くなったからだ。祖父は、姉と姉の子どもたちを養うために農場で働かなければならなかった。米国の貧乏人が、好機を二度もらえることはごくまれだ。一度の好機さえもらえない人も多い。祖父はその一度目の好機を失ったのだ。

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Chris Hedges: Papering over the rot

 
 私の親戚たちの出身地は、粉ひき工場や工場が閉鎖され壊滅的な状況に置かれているメーン州の町々だ。いい仕事などほとんどない。自分たちは、裏切られ、騙されたのだという正当な怒りがくすぶっている。私の親戚たちは、米国の大多数の労働者階級の人々と同様、静かな絶望感の中で人生を送っている。この怒りが、否定的で破壊的な形で噴出するのはよくあることだ。だからといって、「この人たちはどうしようもない人たちだ」と否定してしまう権利は、私にはない。

 理解するということは、許すということではない。しかし、支配者層と、「ジャーナリスト」という仮面をかぶった彼らのしもべたちが、嬉々としてこんな人たちをまるで存在しないかのように報道から除外しているのだ。まるで「非人間」のように扱い続けているのだ。そう、ヒラリー・クリントンが「deplorables (役立たず)」と呼んだように。そして、決して報じようとしないのは、社会の汚い不条理についてだ。その不条理のせいで、この人たちは弱く、不安なままにされているのに、だ。だからこそ、過激派組織がさらに過激な行動を示し、それに伴い、国家による抑圧や検閲が強められることになっているのだ。

 他者排除文化(訳注:英語でcancel culture。他者のちょっとしたあらを探しだし、その他者を排除しようとする文化のこと)は、自称「適切な言論審査員」たちによる魔女狩りだ。この文化がリベラル派たちの“boutique activism”(見せびらかすためだけの活動) と化しているのだ。しかし、リベラル派たちに欠けているのは、権力の中枢にいるものたちに挑みかかろうという勇気と、効果的に組織的運動を進める術だ。そして権力の中枢にいるのは、軍産複合体であり、軍隊規模の力をもつ警察であり、刑務所制度であり、ウォール街であり、シリコン・バレーであり、人類史上最大の規模で我々を調べ、監視し、写真におさめ、追跡する諜報機関の工作員たちであり、化石燃料企業であり、財閥勢力に握られている政治と経済体制なのだ。

 これらの勢力との戦いを避けて、うっかり失言をしてしまった人たちや、リベラル派の支配者層が認めていない言葉づかいで話したり振る舞ったりできない人たちを、敵に回す方がずっと楽だ。このような「テスト」が常軌を逸し、自滅状態にまでなっているのだ。その一例が、ニューヨーク・タイムズの150人のスタッフが、或る記者の失言に関して、経営陣に再調査を要求した事件だ。経営陣は、すでにベテラン記者であるドン・マクニール記者から意見を聞き、彼に対する処罰も決定していたのだが、スタッフたちは、聞き取りが不十分であり、処罰の仕方も正しい判断ではないと抗議したのだ。マクニール記者は、人種問題についての討論の際、人種差別的用語を繰り返し使用した責任を追求されていたのだ。結局経営陣は、しぶしぶ彼を解雇せざるをえなくなった。 

 他者排除文化において、標的になるのは急進的な考えを持つ人たちになることが多い。例えば、「ヴァンクーバー・レイプ被害者救援会と被害女性のためのシェルター」を経営している女性解放論者たちがそうだ。この女性解放論者たちは、性同一性障害をもつ人たちの入居を許可していない。というのは、このシェルターで暮らしている少女や女性たちは、男性の体によって肉体的な侮辱を受け、心の痛みを受けてきたからだ。このような女性解放論者たちを批判する人たちの中に、このシェルターで1日10~12時間過ごし、被害を受けた少女や女性たちの世話をしたことがある人は誰もいない。多くの被害女性たちは子どもの時に、性被害を受けているのだ。それなのに、同施設を攻撃し、同施設への資金援助をやめさせるために、壁面に落書きをする人々がいるのだ。他者排除文化とは「無知の人々に武器を持たせているようなものだ」とは、カナダの女性解放論者であるリー・レイクマンの言葉だ。

 他者排除文化の発祥は、資本主義支配層や、彼らの突撃隊であるFBIなどの工作員たちによる赤狩りだった。彼らはしばしば暴力を伴って、革命的な運動や労働組合運動を破壊していた。「反共産主義」の名の下に、何万という人々が社会から排除された。潤沢な金銭により支援されているイスラエル・ロビーは、他者排除文化の達人だ。アパルトヘイト制を敷いているイスラエル国家に対する批判を封じ込め、反ユダヤ運動である「ボイコット、投資撤収、制裁運動 (BDS運動)」を指示する人々を黙らせている。他者排除文化は、ジュリアン・アサンジの処刑と、ウィキ・リークスに対する検閲と、シリコンバレーによるアルゴリズム(訳注:検索語によりどのようなサイトを上位に配置するかの操作のこと)を促している。このアルゴリズムにより、読者をある種のサイトから排除することができる。私のサイトも排除の対象だ。そう、帝国や企業に批判するサイトは排除されるのだ。 

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 最終的には、このいじめ行為にはSNSが利用される。このSNSが国家の安全保障と監視機関としての機能を果たすことになる。SNSを支持する人たちの主張とは異なるが、SNSは礼節ある行為を広める役割は果たしていない。そうではなく、SNSがやっているのは、反対意見を持つ者たちや、知識人たちや、独立メディアの記者たちを冷酷に黙らせることだ。人々の言論を統制することができるのであれば、人々の思想も統制できるようになる。

 この他者排除文化が、企業メディア所有のプラットフォームに包含されている。グレン・グリーンウォルドによれば、このプラットフォームこそ「もっとも影響力のある三大企業メディアがタッグを組んで、“ジャーナリズム”の名にかけて、精力を注いでいる場所」なのだ。そのメディアとは
①CNNの「メディア監視役」のブライアン・ステラーとオリバー・ダーシー
②NBCの「偽情報検知隊」の ベン・コリンズとブランディ・ザドロズニー
③ニューヨーク・タイムズの科学技術部担当記者のマイク・アイザック、ケヴィン・ルース、シーラ・フレンケルだ。
 そして、彼らは血眼になってネット上を点検し、彼らが常軌を逸していると考える不適切な言論や行動基準、彼らを脅かしている内容がないかを探し回っているのだ。そして見つかった場合には、「厳しい措置(掲載の禁止、検閲、投稿内容の規制、放課後居残りの罰など)を課そうとしている」とのことだ。

 企業資本家たちはこれらの道徳純正テストが私たちにとったら自滅的な行為になることを理解している。企業資本家たちはこの他者排除文化を正当化することにより、(そして、この理由こそ、私がドナルド・トランプをツイッターなどのSNS上でアカウント停止させていることに反対している理由なのだ)、この文化を利用して企業資本家たちの権力構造や、帝国主義者たちの罪を攻撃する人々を黙らそうとしているのだ。完璧な道徳を追求しようというキャンペーンが、リベラルの支配者層と白人労働者階級の間の分断を広げているのだ。そしてこの分断こそ、資本家支配者層の権力を維持するために非常に重要なことなのだ。他者排除文化は、魅力的で人を引きつけるような文化戦争のネタにされているのだ。他者排除文化は、反政府派を親政府派に変える。何よりも重要なことは、他者排除文化は組織だったもっとひどい権力乱用への注意をそらしているということだ。うぬぼれていて、自分だけが正しいと思い込んだこの聖戦こそが、リベラル派を憎むべき存在にしてしまっているのだ。

 ピューリッツァー賞受賞歴のある風刺漫画家ダグ・マレットは、「クズ」という漫画を連載していたが、その漫画で、キャンベル牧師をモデルにしたウィル・B・ダン牧師という人物を描いている。そのマレットが、講演のためにキャンベル牧師をハーバード大学に招いた。そして、当時私もそこで勤務していた。キャンベル牧師の話に対する聴衆の反応は、とまどいとはっきりとした敵意の混じったような反応だった。それが逆に私には心地よかった。だから講演後、会場からすぐに人がいなくなったので、その夜は私とマレットとキャンベル牧師の3人で、ウイスキーやボローニャ・サンドを手に、夜遅くまで語り合った。マレットはキャンベル牧師同様、聖像崇拝否定論者であり、辛辣であり、愉快な人物だった。マレットの風刺漫画は、聖金曜日にキリストが十字架の代わりに電気いすを運んでいる漫画や、ジェリー・ファルエル牧師がエデンの園で蛇になっている漫画などを描いて、激怒した読者たちから抗議の叫びを引き起こしたこともある。

  キャンベル牧師の回顧録『トンボの兄弟』は、文章が美しいだけではない。(キャンベル牧師は、ウォーカー・パーシーの親友だった。パーシーの小説も、私はむさぼり読んだ)。この回顧録は、謙虚さと叡智であふれている。そしてこの二つこそが、独りよがりのSNSのウサギの穴で過ごす時間を減らすべきリベラル派たちがなくしてしまったものなのだ。キャンベル牧師は米国を、「殺人と、虐待と、警告と、脅迫と、威嚇が常態化しているところであり、米国に逆らうものは誰でも、国内でも国外でも潰そうとする、クランスマン的国家だ」と評している。キャンベル牧師は、以下の二者の間には道徳的な違いがあると見なすことを拒絶していた。その二者とは、多くのリベラル派たちが守ろうとしている米帝国と、権利を奪われ怒っている白人たちだ。そしてこの白人達というのは、クランなどの人種差別主義者たちの集団であり、その数年後には現在のトランプ支持者たちになる人々のことだ。労働者たちを搾取し、民主主義を妨害し、国家による抑圧を強めようと画策し、とんでもない量の富をため込み、終わることのない戦争を推し進めてきた帝国の政策立案者たちと支配者層の資本家たち、連中こそが、本当の敵であることをキャンベル牧師は知っていた。  


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 キャンベル牧師は、CBS制作の「クー・クラックス・クラン。見えざる帝国」というドキュメンタリー映画を見たときのことを回顧している。その番組の視聴後に、キャンベル牧師は、一緒に見ていた視聴者たちに一言伝えるよう言われていた。その映画は、ミシシッピ州の3人の公民権運動活動家殺害事件や、アルバマ州でのジャッジ・アーロン去勢事件や、16番通りバプティスト教会爆破事件での4人の少女の死亡事件などをとりあげていた。その映画の中で、右を向こうとしていたクランの隊員に、指導係が「左向け左だ!」と叫んでいる場面が映し出された。そのとき、視聴者たちが「歓声や、ヤジや、口笛や、バカ笑い」で沸き上がった。キャンベル牧師は、このときのことをこう記している。「胸くそが悪くなった」と。

 この映画を見ていたのは、「全米学生協会」により招集された学生たちであり、60年代の急進的左派団体であった「新左翼」や、「民主的社会を求める学生」の代表者たちや、「ポート・ハーロン」のメンバーだった。彼らは全米の大学で抗議活動を率いていた若い白人の男女たちであり、大学の建物に火をつけたり、警察を「ブタ野郎」呼ばわりする風習を定着させた学生たちだった。彼らの多くは、裕福な家庭出身だった。

 「彼らは裕福な一流の大学を卒業したばかりの学生たちだった」とキャンベル牧師はそのときの視聴者たちについて書いている。「彼らは意地悪で、力強かった。しかし私が感じたのは、彼らの魂に本気さはないということだった。というのは、彼らが本気だったとしたら、なぜ右左がわからないかわいそうな無知な農民のことを笑えるというのか? 本当に彼らが本気だったとしたら、その場面を見れば涙を流したはずだ。なぜこの人はこうなってしまったのだろう、と。そして、本当に彼らが本気だったとしたら、あんな映画に浸りきって、その場で座ったままではいられなかったはずだ。そしてあの映画を作ったのは彼らを啓蒙し、彼らを楽しませてきた、支配者層中の支配者であるCBSだ」

 映画終了後に、コメントを求められたキャンベル牧師は、こう語った。「私の名前はウィル・キャンベルです。私はバプティスト派の牧師です。私はミシシッピ州出身です。そして私は親クランスマン派です。というのは、私は親人類派だからです」

 会場は大混乱状態になった。キャンベル牧師は、「ファシストのブタめ」や「ミシシッピの田舎者」などと罵声をあびせられた。学生の多くは退出した。

 「私が言ったのは4語だけだった。“親クランスマン派で、ミシシッピ州出身で、バプティスト派の牧師”という4語だけだった。この4語と私の「白人である容貌」が一緒になって、学生たちはすべてをKKKと結びつけてしまったのだ。彼らにとってのKKKは、敵意丸出しで、いらいらさせる、怒っている、暴力的で、非合理的な団体なのだ」とキャンベル牧師は書いている。「そして私が学生たちに説明できなかったことは、“親クランスマン派”と“親クラン派”は同じではないということだった。前者は人間についてのことで、後者は考え方についてのことなのだ」

 「社会における或る勢力がクランの暴力行為を生み出したのだが、その同じ勢力がワッツや、ロチェスターや、ハーレムや、クリーブランドや、ヒューストンや、ナッシュビルや、アトランタや、ディトンで起こった黒人による暴動事件も生み出しているのだ。両者は同じ土壌からうまれたものなのだから。社会からの隔離、剥奪、経済状況、拒絶、働く母親たち、貧しい学校、ひどい食生活、すべて同じ土壌なのだ」とキャンベル牧師は記述している。

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 そしてこれらの社会における勢力が、警官によるジョージ・フロイドさん殺害事件後に、全米中で起こったBLM抗議活動を生み出し、さらには怒れる群衆による国会議事堂占拠事件を引き起こしたのだ。

 キャンベル牧師は、リベラル派の人たちに、リベラル派から去るよう言わなかったのと同じ理由で、自分が知っているクランの構成員に団体を去るようには決して言わなかった。キャンベル牧師はリベラル派をこう評している。「リベラル派の人たちが所属しているのは、尊敬すべきであり、見栄えのいい組織や団体である。しかし、私がわかりつつあったのは、これらの組織はすべて本質的には、クランよりもずっと人種差別主義者であるということだ」

 キャンベル牧師が示していたこの愛こそ、マーティン・ルーサー・キング博士が抱いていた思いの中核をなすものだった。この愛こそが、キングにゆるがない非暴力主義をとらせたのだ。この愛の導きにより、キングは、ベトナム戦争に反対し、米国政府をこう非難していたのだ。「今日の世界で最も暴力を駆使している国だ」と。そしてこの愛のせいで、キングはメンフィスで暗殺されたのだ。キングは、メンフィスで経済的正義をもとめて立ち上がっていた清掃作業員のストライキを支持していた。

 以下は、キャンベル牧師が生涯座右の銘としていた言葉だ。「誰かを愛するつもりであれば、すべての人を愛さなければならない」。キングと同様に、キャンベル牧師は、許すことが、人を贖罪し人を変える力になると信じていたのだ。

 支配者層とそのしもべたちは、自分たちの道徳的卓越性を誇示するために、政治的に正しいとされる言説に従わない人々を排除し、沈黙させている。連中は、いわば現在のジャコバン派だ。連中は聖人ぶった怒りに陶酔している。そんなことができるのは、彼らがあらかじめもっている特権があるからだ。その聖人ぶった仮面のおかげで、連中が持つ企業資本家たちの力や、不道徳さが見えなくなっているのだ。連中は、社会や経済の不条理とは闘わない。連中は、デジタル媒体を扱うシリコン・バレーからの熱烈な支援を受けて攻撃を加えるのだ。その矛先は、抑圧された体制により破壊され、粉々にされた人々や、丁寧で適切な言語表現を身につけられずに育った人々に向けられている。彼らは、私企業や警察国家の勢力拡大にうまく利用される愚者たちなのだ。他者排除文化に従っても、再建などできない。その道は専制政治へと続いている。

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イスラム教徒がフランスに対して怒るべきは風刺画ではない。

<記事原文 寺島先生推薦>  

Muslims are strangely obsessed with cartoons, all while there are very real crimes over which they should be angry at France


RT 論説面
2020年10月30日
ダリウス・シャタマセビ

Darius Shahtahmasebi

is a New Zealand-based legal and political analyst who focuses on US foreign policy in the Middle East, Asia and Pacific region. He is fully qualified as a lawyer in two international jurisdictions.






 最近起こったニースでの3人の無実な人々の殺害事件は、教員が授業で生徒に悪名高いチャリー・ヘブドーの風刺画を見せたことが引き金になったのだが、この事件が明らかにしているのは、イスラム教世界の論理の弱点を表していると言える。

 正直、私にはフランスをどう理解したらよいか分からない。フランス人のことも分からないし、フランスという国自体がどんな国なのかも。しかし、フランスの各政権がこれまで取ってきた外交政策を見れば類推はできる。今のエマニュエル・マクロン下の政権の外交政策からもだ。元対テロリスト警官がRTの取材で答えている通り、フランスは自分でジハードを呼び込んできたとも言える。しかもそれは一度のことではない。

 例えばリビアでは、フランスとお仲間のNATO諸国(それは米国による非公式爆撃キャンペーンの一環だった)がアルカイダ関連の過激派のためにリビアの領空封鎖を行ったのは、ムアンマル・ガダフィを倒すためだった。これらの過激派こそ、米軍が何年もイラクで戦ってきた相手であり、フランス軍がマリで戦ってきた相手でもある。

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‘We are in a war’: French interior minister says country must brace for more terrorist attacks fueled by ‘Islamist ideology’


 リビアを破壊しようという決定は何ごとも起こさなかっただろう。イスラム過激派がアフリカ大陸中に拡がり難民が押し寄せるという危機が迫ってこなかったのであれば。 崩壊した国に姿を変えさせられたリビアからは武器や過激派思想や奴隷が輸出され始めることになった。全部フランスのおかげだ。さらに、いくつかの報道によると、 この爆撃キャンペーン期間中にNATO軍はリビアの主要な水道基盤を爆撃し、使用できない状態にしてしまったようだ。この水道基盤はリビア国民の70%に水を供給していた。イスラム教徒が大半を占める国で水の供給の70%を破壊したのだから、少なくとも1名のイスラム教徒くらいは抗議して当然だ。しかし、この話は一度置いておこう。

 イスラム教徒が大半を占める国を爆撃していなくても、フランス政府はセーファフラン(フランスの旧植民地で使用されている共同通貨)を使って、それらの国々の経済に壊滅的な影響を与えている。イタリアの前外務省副大臣(現在は大臣)はこう語っていた。「フランスは、アフリカ14ヶ国の紙幣を印刷することにより、それらの国々の発展を妨げているような国だ。そんなフランスのせいで、それらの国々の難民が自国を離れ、渡航中に海で亡くなったりイタリアの海岸にたどり着くということになっているのだ」

 フランスは、イスラム文明を弱体化してきたという長くそして恥ずべき歴史を持っている。例えば、シリアやアルジェリアだ。アルジェリア独立戦争中に、フランス軍兵士たちは残虐行為を犯した。拷問さえも行われた。30万人のアルジェリア人が戦闘のため亡くなった。大手メディアではほとんど報じられないが、アルジェリアは未だにフランスによる血塗られた歴史を引きずり、問題の多い国になっている。

 こんな話は氷山の一角に過ぎない。このアルジェリアの件は一冊の本では描ききれない内容だろう。それでも私はこの件をもっと西側メディアにとりあげて欲しいという希望を持っている。

 ただ私が同時に苛立ってしまうのは、イスラム世界がこれらのことについて無関心な反応をしていることだ。 なぜイスラム教徒たちはフランスを非難しないのか!フランスが同じイスラム教徒の兄弟であるイエメンの人々を苦しめる大虐殺行為に直接かかわっているというのに。イスラム教徒の団結はどこに行った?抗議活動は?集会は?無実のイスラム教徒がフランスの長年に渡る帝国主義的な野望のせいで殺されているというのに。

 イスラム教徒たちは風刺画で躍起になっているがそれはお門違いだ。マクロン大統領が「風刺画をやめさせることはない」と表明すると同時に以下のような反応が突然起こった。フランス製品をボイコットする声があちこちで広まり、実際カタールとクエートでは店舗からフランス製品を排除している。トルコの大統領はマクロン大統領を名指しで直接批判した。イスラエルやガザやバングラデシュやイランやアフガニスタンやヨルダンで抗議活動が起こった。(今あげた国々は一部に過ぎない)。フランス国旗が焼かれ、大手新聞社からは批判の声が上がった。そしてついには狂信者が教会に通っている無実のフランス人を公開縛り首にするという事件が起こってしまった。まるでムハンマドがアラビア半島を統一した紀元629年の世界だ。

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 あるイランの新聞はマクロン大統領を「パリの悪魔」とさえ呼んだ。ああ。とうとうマクロンも悪魔にされてしまったか。マクロンが事実上、イランに最も近い中東の同盟国であるシリアを紛れもなく国際法に違反してまで砲撃した時にも、そんな称号はもらわなかったのに。サウジアラビアに武器を売り続けてイエメンに対する戦争犯罪への支持を続けていた時も。イエメンはイランのもうひとつの同盟国であるのに。

 「ムハンマドの絵を書くことは禁じられている」。 バングラデシュのある政党の党首アーマッド・アブダル・キアイウムという人物が抗議活動に集まった人々の前でこう語った。

 これは例外にはならない。西側諸国には表現の自由という理想があるからだ。西側諸国というのは、このような風刺画が存在していい場所なのだ。同様に、イスラム法を非イスラム国に住む非イスラム教徒に適用することはできないのだ。さらに、キアイウム氏の主張に同意するとしても、以下のような事実に向き合わないといけなくなる。その事実とは、 フランス市民たちには、伝統的なイスラム教徒の価値観に従わないといけないという法律も論理も道徳規範も存在しないということだ。

 私がキアイウム氏の主張に同意したとしても、理解できないのは、なぜ預言者の肖像画がこんなに重要に扱われているか、だ。イスラム教徒が激怒すべきことは他にもっとあるだろう。イスラム教徒の同胞に爆撃の雨を降らせ、代理戦争のために国土を破壊し、地政学的な暗黙の目的のためにテロリスト集団を支持し、資金を与え、天然資源を強奪し、国家の発展を阻害している行為よりも、なぜ肖像画の件が重く受け止められているのだろう。

 本当のイスラム恐怖症(イスラムフォビア)は、一握りの風刺画を描き、イスラム共同体を激しく侮辱しただけで終わるものではない。イスラムの神はそんな小さな架空の罪など気にもとめないと思いたい。現実に起こっているもっと深刻な罪が山のように存在しているのだから。 多くの深刻で重大な戦争犯罪や、人間として犯してはならない数々の犯罪が起こっているのだから、そういう犯罪に対してこそ抗議すべきだ。そうすることにより、この世界で最も脆弱なイエメンの民衆たちを良い方向に導くという変化を起こすことができるのだから。

 そして、もしこの記事を読んでムッとした人がいたとしたら、私がこの記事で言いたかったツボはまちがっていなかったということになる。

ホワイト・ヘルメットを認めないロックスターのロジャー・ウォーターズが人権保護団体のアムネスティとべリング・キャットから受けた侮辱。


<記事原文 寺島先生推薦>How rock star Roger Waters was hung out to dry by Amnesty and Bellingcat for his views on Syrian ‘chemical attack’

RT 論説面
キット・クラレーバーク
2020年10月14日

By Kit Klarenberg, an investigative journalist exploring the role of intelligence services in shaping politics and perceptions. Follow Kit on Twitter @KitKlarenberg

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年11月28日



 入手された電話音声(ニュースサイトのグレイゾーンが最初に明らかにした)によると、人権団体のアムネスティは、音楽バンドのピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの人権に関する活動を無視するよう圧力をかけられたとのことである。ロジャー・ウォーターはシリアのドゥーマでの「化学兵器による攻撃」に疑念を示していた。その化学兵器攻撃が西側諸国によるシリア爆撃の理由にされていたのだ。

 今年(2020年)8月、環境に関する圧力団体のアマゾン・ウォッチが放映したのは、スティーブン・ドンジガー弁護士を中心としたオンラインでのパネルディスカッションだった。ドンジガー弁護士は活動家であり、米国のエネルギー関連企業の大手シェブロン社を相手に、アマゾン川流域で環境破壊を広げたことについて訴訟を起こした人物である。その結果、ドンジガー氏は、生活と自由のために生涯をかけて戦わざるを得なくなっている。

 2011年2月、シェブロン社はエクアドルの裁判所において、環境破壊の責任があるという判決を受けた。それは同社の子会社であるテキサコ社が1964年から1992年までに行っていた原油生産のために引き起こされたという判決だった。その法廷闘争を起こし、導いて来たのがドンジガー氏だった。

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 しかしシェブロン社は示談金を一銭も払っていない。というのも、この画期的な判決が2014年の3月に、証拠不十分として米国連邦裁判所で覆されたからだ。判決にあたり、ルイス・A・カプラン裁判長が大きな根拠にしたのは、裁判でドンジガー弁護士が嘘の証言をしたという事実を、エクアドルの元判事が裁判後に認めたことだった。 それ以来、ドンジガー弁護士は、法廷侮辱罪の罪に問われ、自宅で軟禁状態におかれ、もう1年以上も裁判を待っている。

 そのドンジガー弁護士自身が参加していた8月のある夜のアマゾン・ウォッチのネット会議には、彼以外にも著名な活動家たちが多数参加していた。具体的には、非営利団体のグローバル・ウィットの創始者であるサイモン・テイラー氏やロックバンドのピンク・フロイドの創設者の一人であるロジャー・ウォーターズ氏たちだ。

 この会議は、前もって数多くの人権活動家たちや非営利団体に向けて広報されていた。その中でも特に有名な団体は、アムネスティ・インターナショナルである。

 しかし、アムネスティによる広報活動がSNS上での批判の洪水を招くことになった。それはシリアの政権転覆を目指している数多くの著名な活動家たちからの声だった。そのためアムネスティの米国支所は、公式ツイッターでこの会議を広報するツイートをしていたのに、なんの断りもなしになぜかそのツイートを削除する、という事態が発生した。



 ある批判者からのツイートを受けて、アムネスティ英国支所クリスティアン・ベネディクト所長は、このネット会議のことを広報するのは「全く良いことではない」とツイートし、そのネット会議を広報するツイートは「削除された」ことを確認した、ともツイートした。




グレイゾーンとRTは、ある電話音声を入手した。その電話は9月25日のウォーターズ氏とアムネスティ・インターナショナル米国支所の2名の幹部の間で行われたものだ。その2名とは、芸術家部門担当部マット・ボーゲル部長と開発部タマラ・ドマウト部長だ。彼らの電話は、この話題に大きな光を当てる内容になっている。

 この電話での会話の冒頭で、ウォーターズ氏が語ったのは、彼が「アムネスティからこのパネルディスカッションについてツイッターを使って前もって広報することを知らされていた」だけではなく、「アムネスティが出したパネルディスカッションの広報ツイートを自分のアカウントでリツイートした。つまり、現時点で37万5000人いるフォロワーにアムネスティが出した情報が伝わった」 ということだった。

 しかし、ある関係者がウォーターズ氏に伝えたところによると、そのパネルディスカッション開始直前に、そのサイトに行こうとしたが場所が分からなかった、ということだった。パネルディスカッションが終了してから、ウォーターズ氏はアムネスティのツイートが削除された原因を探し始めたという。

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 「ちょっとした捜索」の後、ウォーターズ氏が突き止めたのは、アムネスティがツイートを削除したのは、数多くの人々からの圧力に耐えきれなくなったからだという事実だ。その人たちの中で特筆すべき人物をあげると、ウォーターズ氏の「旧敵」であるエリオット・ヒギンズ氏だ。彼はウェブサイトのべリング・キャット(このサイトには賛否両論がある)の創設者である。そしてエリオット氏が圧力をかけたのは、「シリア民間防衛隊」すなわちホワイト・ヘルメットに対するウォーターズ氏の見方についてだった。 回答を求めて、ウォーターズ氏はアムネスティと連絡を取ろうとしたが、何度も邪険に扱われたらしく、やっとのことでボーゲル氏とドラウト氏と電話で話せることができたようである。

 ウォーターズ氏に応えて、ドラウト氏が確認したのは、ツイートを削除した理由は、ホワイト・ヘルメットに対する「様々な意見」を考慮したためだとした。「我々は、ホワイト・ヘルメットは人権活動におけるチャンピオンであり、自国民たちの保護と自由の為に闘ってきた組織だと考えています。あの広報ツイートをあげた時に、あげるべき内容なのかをきちんと吟味できていませんでした。するとすぐにホワイト・ヘルメットのメンバーから連絡が来ました。彼らが聞いてきたのは“なぜウォーターズを広報するのか“ということでした。あなたがホワイト・ヘルメットについて何を語っているか知っているからです。他のシリアの人権活動家からも連絡が入りました」。トラウト氏は、ウォーターズ氏が話を遮るまで話し続けていた。ウォーターズ氏がその後尋ねたのは、ウォーターズ氏のホワイト・ヘルメットに対する見方と、「北エクアドルの熱帯雨林に住む人たちが抱える苦境」との間にどんな関連があるのか?ということだった。

 「我々が行ったパネルディスカッションの広報に口出しをしてきた人々の主張は、あなたがホワイト・ヘルメットに対する見方を広く伝えている点についてです。私はこの件の対応では後手後手に回ってしまいました。あのツイートを削除するべきではありませんでした。そんなやり方はしたくありません。この件に関してもっと開放的な論議をし、真摯に対応しておくべきでした」。トラウト氏はそう釈明した。

 ウォーターズ氏が世界中の新聞の見出しになったのは、2018年4月のことだった。ウォーターズ氏がバルセロナでのコンサート中に曲の演奏を中断し、シリアのドゥーマでの化学兵器による攻撃について語り始めたことが見出しになったのだ。その攻撃はコンサートの6日前に起こったとされていた。

 ウォーターズ氏は、ホワイト・ヘルメットのことを「聖戦士とテロリストの喧伝を広めるニセ組織」だと名指しした。さらにウォーターズ氏は、西側諸国の世論は操作されており、「我々はシリアに侵攻して爆撃を開始するよう自国政府に圧力をかけるように仕組まれている」と主張した。 ほんの数時間後にウォーターズ氏の予見は現実のものになった。フランスと英国と米国がシリアの複数の政府施設に対して軍による攻撃を加えた。

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 2019年5月、ウォーターズは再度激しい攻撃を受ける対象になった。それは、ウォーターズ氏が自身の公式フェイスブックにおいて、漏洩文書により自分の嫌疑が晴れた旨の投稿をした時だった。その文書とは、化学兵器禁止機関(OPCW)の事実解明チームが出した専門的な報告であった。そのチームは攻撃があったとされた数日後にドゥーマを訪れていた。同チームの出した結論は「高い可能性がある」というものだった。その可能性とは、ドゥーマの2箇所で見つかった化学兵器の欠片とされた円筒については、ホワイト・ヘルメットによれば、シリア軍のヘリコプターが投下したものだということだったのだが、「手作業で置かれたものであり、飛行機から落とされたのではない」という可能性だ。

 西側メディアやSNS上で化学兵器の欠片とされた円筒の写真が広く伝えられ、シリアが化学兵器を使用したという主張が広まることになった。その写真や、ドゥーマで病院に運び込まれる住民たちの映像や口から泡を吹いているように見える子どもたちの映像や、団地に死体が並べられている映像。これらすべてはホワイト・ヘルメットが捏造し広めたものだ。 それは「シリア政府がシリア市民を化学兵器の使用対象にしている」というありえない事実の証拠として提出されたものだ。そしてその証拠がフランス政府、英国政府、米国政府がシリアに軍事侵攻する根拠とされたのだ。

 化学兵器禁止機関の事実解明チームが出した「化学兵器の欠片とされた円筒は空から来たものではない」という指摘は、理由が不明のままドゥーマに関する同機関の最終報告書には全く記されなかった。その報告書が出されたのは、ウォーターズ氏がフェイスブックに投稿する2ヶ月前のことだった。

 シリアで進行中の危機に関するホワイト・ヘルメットの役割については、ほとんど公表されてこなかったのに、ウォーターズ氏はネット上で洪水のような激しい攻撃をホワイト・ヘルメットを支持する西側諸国の支持者から受けた。

 電話の話に戻ろう。憤怒したウォーターズ氏は、既に削除されたエリオット・ヒギンズ氏のツイートについて話し始めた。そのツイートは、アムネスティ・インターナショナルに対して、「ロジャー・ウォーターズが人権問題について語る語り手として適切な人物である理由を説明すべきだ」ということを問いただす内容だった。 ウォーターズ氏はこう語った。「ヒギンズの疑問に対して建設的な反応をせず、アムネスティは、彼から受けた批判の圧力に屈するだけだったじゃないか!」 

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 ウォーターズ氏は続けた。「僕が人権問題を語る人物として適切である理由は、だと?僕はこれまでの人生でずっと人権について強く訴えかけてきたよ。ホワイト・ヘルメットが何か本当に邪悪なことに加担していることは明白な事実だ。それなのにアムネスティは今まで決して認めてこなかった。“ホワイト・ヘルメットがドゥーマで作った動画は嘘八百だ“ということをね」

 「現地の医師が言っているのは、その日彼らが知る範囲では、死者は誰もいなかったということだけではなく、病院にいた患者が言っていたのはホコリを吸い込んだことであり、ガス攻撃を受けたことではなかった、ということだ。君たちは未だにあの動画を信じているのか?真実を伝えたものだと思っているのか?」

 ドラウト氏はこう答えた。「あなたが自説を擁護したいお気持ちは理解できます。しかしこのような話し合いは建設的だとは思えません。私がお答えできるのは、あなたが問い合わせている“ツイートをなぜ削除したか“ということについて、“ツイートを削除した理由は、ツイートした直後に我々が受けた反論のためであり、その反論の内容がホワイト・ヘルメットについての我々の理解と一致していたからであり、我々に刺さる内容だったから“ということだけです。アムネスティとしては、あのパネルディスカッションにおいて、あなたが人権問題について語る権利や専門知識や資格がないとは考えていませんでした」。

 ウォーターズ氏はそれに対してこう答えた。「なぜあなたは僕が適切な人物であるという説明を批判者にしなかったのか?それに“あのツイートを削除するつもりはないです。このパネルディスカッションはとても重要なものですから“となぜ告げなかったのか?」 

 「僕が若い頃は、あなた方アムネスティは曲がりなりにも、人権をきちんと考えている団体だったと思っていたよ。今日の私との対話であなた方が見せた姿は以前とは違うことが分かった。だって僕の簡単な質問にさえ答えられないのだから。ホワイト・ヘルメットがドゥーマで作成した動画についての、ね」。ウォーターズ氏はこう語った。

 これに答えて、ボーゲル氏が急いで割って入り、アムネスティがドンジガー氏が提起している「非常に重大な問題」を支持していることを確認した後、ボーゲル氏の個人としての意見を表明した。すなわち、このパネルディスカッションは「とても重要で行う価値のあるものである」と。

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 「ということは、今回の件は、ただただ僕を排除しようとしただけなんだな!?エリオット・ヒギンズのようなとんでもない人物が言ったことを真に受けて。そういうことになるね」。ウォーターズ氏はこう主張した。

 「僕のことに関してだけ例外扱いか?僕を排除するために、僕のことを批判するツイートを取り上げて。そのツイートは、ただ僕に嫌悪感を持っている奴が送り付けてきただけのものなのに。ただ僕が、奴らがシリアの政権を転覆させたがっていることや、実際は起こらなかったドゥーマの化学兵器使用に関して同意していないからという理由だけで、あなた方アムネスティ・インターナショナルは私を排除しようとし、私がエクアドルの人たちのために活動することを遮ろうというのか。活動家として出来ることが私にはあるのに。なんてことだ!あなた方アムネスティというのはとんでもない団体だ。言い過ぎかもしれないが」。

 その後、ドラウト氏が会話に戻り、ツイートを削除したことを平謝りし、ウォーターズ氏を排除しようという意図は「さらさらなかった」と告げた。ただアムネスティは、ホワイト・ヘルメットについてのウォーターズ氏の考えには同意しなかったが。

 ドラウト氏に礼を述べてから、ウォーターズ氏が依頼したのは、「どのようにそしてなぜあのパネルディスカッションを広報するツイートか削除されたかを」公表することだった。さらに、削除が行われたのは「アムネスティ・インターナショナルが守っている聖域の全く外で行われた」ことを公表することだった。 そう告げてから、ウォーターズ氏はステファン・ドンジガー氏とエクアドル市民たちにお詫びをした。しかし、電話口で、依頼されたことを近々実行するということは、代表者2人の口からは出てこなかった。そして10月12日の時点で、ツイートを消したことに対する釈明や謝罪はアムネスティからは出されていないままだ。

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 2018年4月のコンサートでの表明のせいで、ウォーターズ氏は明らかに世間から批判を受け検閲される対象となったのだが、その表明以降、多数の文書が漏洩している。その多数の文書は、ウォーターズ氏が当初から持っていた疑念が非常に的を得たものであったことを強力に支持するものになっている。さらに化学兵器禁止機関(OPCW)の結論では、ドゥーマで化学兵器による攻撃があったことは「十分な証拠があり」、「毒性のある化学物質は塩素分子であったようだ」という内容だったのだが、これは研究者たちが収拾した極めて大多数の証拠品が示すものとは真逆の内容だということも分かってきている。

 化学兵器禁止機関(OPCW)が外に出ることを抑えていた内部資料も、今は多数、一般に知られるものになっている。これらの内部資料については、主流メディアの記者たちは無視しているが、この内部資料が伝えていることは、驚くべき内容だ。

 例えば、これらの内部資料によれば、2018年の7月に化学兵器禁止機関(OPCW)の長は秘密裡に、1名の緊急隊員を除き、調査団のスタッフを総入れ替えしていたことが分かる。この調査団というのは、実際にドゥーマを訪問した調査団だ。その調査を終わらせる責任を引き継いだのは、全く別のチームで、そのチームはシリアではなくトルコに行っていた。そしてその新しいチームが、証言者たちからの聞き取り調査やホワイト・ヘルメットが提供した現地の土を引き継いだ。さらに新しいチームのスタッフは、今まで調査に関わってこなかった新しいスタッフだった。

 これらの証拠から導き出された結論は、当初シリアで集められた証拠から導き出された結論と全く違う内容だった。そしてそういった不一致は、流出した下書き段階の文書で繰り返し散見されていた。そのような不一致については、公にされた文書では全く触れられていなかった。

 下書きからは、他にも重要な事実が見つかった。それは、化学兵器禁止機関(OPCW)の調査員たちは、初期の段階から、何らかの化学兵器による攻撃があったとは全く考えていなかった、ということだ。一例をあげれば、神経ガスが使われたという形跡は全くなかった。この神経ガスについては、ホワイト・ヘルメットもシリア米国医療協会も医療救援組織連合も米・英・仏政府もみな「この攻撃に使われた」と主張していたにもかかわらず、その神経ガスは全く見つからなかったのだ。しかしこの神経ガスが使用されたという話は、2018年6月までにはできあがっていた。

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 そして、化学兵器禁止機関(OPCW)の要請を受け、4名の化学兵器の専門家がこの攻撃の証拠品の再検証を行った。彼らは、ドゥーマで攻撃を受けたとされる被害者たちの症状を観察したのち結論を出した。その被害者たちの様子はホワイト・ヘルメットが提供した映像にも映されていたものだった。再検証の結論は、「化学物質が放出されたとは考えにくい」というものだった。さらに「このような症状を引き起こす原因になると思われる他の化学物質は検出できなかった」 とのことだった。

 化学兵器禁止機関が公表した結論に疑問を呈するものは他にも存在する。ドゥーマで同機関が収拾した証拠品によると、見つかった化学混合物の量はあまりにも少なく、10億分率程度の量だった。この事実は先述の下書き原稿には記載されてあったのだが、このことも、公表された文書には記載がなかった。

 2020年1月の国連安保理事会で、元化学兵器禁止機関の調査団長のイアン・ヘンダーソン氏が発言している。ヘンダーソン氏は、11年間同機関に勤務したベテラン調査員であり、ドゥーマの真相解明チームの一員だった。ヘンダーソン氏は、化学兵器による攻撃があったとされた事案についての調査結論について、こう証言した。すなわち、真相解明チームが出した結論は、化学兵器による攻撃は明らかになかったというものであり、この事件はシリア政府に反対する勢力が、シリア侵攻の理由づけのためにでっち上げたものである可能性を示唆する内容であった。

 ロジャー・ウォーターズ氏の言い方を借りれば、「ホワイト・ヘルメットは西側諸国が作りあげた喧伝普及組織であり、西側各国の政府がシリア市民たちに爆弾の雨を降らせることを推進している組織だ」という事実をさらに確実なものにする文書が出てきた。それは、ハッカー集団であるアノニマスが公表した外務・英連邦省(FCO)の内部資料だ

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 中でも特筆すべきは、その文書により、膨大な資金や年数をかけてある作戦を遂行しようとしていた事が明らかになったことだ。その作戦とは、
シリアや西側諸国の市民たちに向けての喧伝行為を行おうというものだ。それはバッシャー・アサド政権やISのような過激派に対して、一貫性のある確実で穏やかな反対意識を植え付けるための喧伝行為だ。そして最終的には英国政府が進めるシリア政権転覆政策への支持を醸成しようという魂胆だ。

 この計画を支えるため、ARK・インターナショナルという会社が存在する。この会社は「紛争の解決と安定への助言」を行うことを目的としており、外務・英連邦省(FCO)のベテラン外交官であったアリスター・ハリス氏により創設されたものだ。この会社が開発し運用してきたのが、ホワイト・ヘルメットのことを「世界に向けて発信する計画をたて、世界からの認知度を向上させる」ということだ。

 「ARKはシリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメット)の代理人としてツイッターアカウントとフェイスブックのページを始め、いまでも運用している。そして画像を投稿し、英語による活動記録を更新している。昼となく夜となく、だ。 この活動のおかげで世界中のウェブサイトや専門家たちから高い知名度を得るようになった。そして、ニューヨークに拠点を置く団体であるシリア・キャンペーンという運動団体が、ツイッターを通じてホワイト・ヘルメットと連絡を取るようになり、ARKと連携ができている。この団体がホワイト・ヘルメットを前面に出すことにより、シリアのニュースを世界に流すことを決めた」。以上が流出した内部資料に書かれていたことである。

 興味深いことに、ARKはさらに150人のシリアの「活動家たち」に特別な訓練を行い、装備を提供していた。その訓練の中身は、「カメラの操作法や照明の仕方や音声について、それに聞き取り調査の仕方や動画の撮影法」などであり、撮影後の動画編集技術も含まれていた。具体的には「動画や音声の編集法、ソフトの使い方、ナレーションの入れ方、脚本の書き方」や「視覚効果の入れ方、2次元・3次元アニメの作り方、ソフト」などだ。

 受講生たちは、実際のプロパガンダ理論についてさえ指導されていた。具体的には、「標的となる人々の絞り込み、多数の多様なタイプの喧伝技術、メディアやメディアの分析法や監視法」「行動特性の把握や理解」「キャンペーン計画の作り方」「行動と行動を変えさせる方法」「 どのような伝え方をすればそのような喧伝を広めることができるか」などであった。

 受講生たちが作成したものはその後、ARKと「深い関係を築いている」各メディアの関係者たちに提供された。メディアとは具体的には、アルジャジーラやBBCやCNNやガーディアンやニューヨーク・タイムズやロイターなどだ。ARKの受講生が「現地の声を伝える現地在住の記者」として直接そういったメディアに雇われる場合もあった。

 その資料には、ARKの受講生たちが、西側諸国の視聴者に向けて化学兵器による攻撃をでっち上げるやり方を教えてもらったかどうかについては書かれていない。しかし受講生たちが学んだ技術を使えば化学兵器による攻撃など容易にでっち上げることができ、濫用されることになるだろう。だからこそ、彼らが本当にその事に関与していたかどうかをより詳しく調査することは、本当にやる価値のある事だといえる。 


男の切断された首を持っているメドゥーサの新しい銅像を見れば、Me Too運動の何が間違っているのかがわかる。さらに、なぜMe Tooが女性にとって不利な状況を作っているのかの理由も。


<記事原文 寺島先生推薦>A new statue depicting Medusa holding a man’s severed head symbolises what’s bad about #MeToo – and why it’s backfired on women

RT 論説面 2020年10月17日


アレクサンダー・アダムス
Alexander Adams
is an artist, art critic and author. His

book

‘Iconoclasm, Identity Politics and the Erasure of History’ is published by Societas. Follow him on Twitter @AdamsArtist

 ギリシャ神話において、男性たちが恐れていたのは髪の毛が蛇でできている妖怪女が見る人を石にする一瞥だった。こんにち、世の男性たちは同じような恐怖心を味わっている。しかし皮肉なことに、女性たちの機会を台無しにする今の動きに対して、反対運動は巻き起こってはいない。

 男性の切断された首を手に抱えた2メートル13センチの高さのメドゥーサの銅像が、今週からニューヨークで展示されている。この彫刻はアルゼンチンとイタリアのハーフの美術家ルチアード・ガルバーティチの手によるもので、これから6ヶ月にわたりマンハッタン高等裁判所の審議をみつめることになる。その裁判所では、ハーヴェイ・ワインスタインが性犯罪の犯人として起訴されている。相手は複数の女優と映画制作スタッフたちだ。

 この銅像がこの場所に設置された理由は、男性強姦者を成敗する正義の象徴とするためだ。しかし、より正確な言い方をすれば、(意図的にそうなったわけではないのだが)この銅像が象徴しているのは、一般的には勝利をおさめているといえる#MeToo運動が、一方では米国の女性たちに悪い影響を与えている現状であるといえる。

 メドゥーサ(ギリシャ神話の登場人物で、髪の毛が蛇でできており、彼女から少しでも直視を受けた男性は石になるという女妖怪)の銅像でもっとも有名な銅像は1596年のガラヴァッジオの手によるものだ。カラヴァッジオは、同時代のイタリアの美術家ヴァザーリがレオナルド・ダ・ビンチ作の失われた絵画について説明したのを聞き刺激を受けたと言われている。それ以来、メドゥーサは美術家たちにとってよく使われる題材となってきた。ガラヴァジオによる銅像は2008年に作られたもので、その後#MeToo運動の象徴として使われるようになった。


 道徳的な怒りだったはずが、金銭面で利を得る道具になってしまった

 #MeToo運動は、2017年に端を発する。当初はハリウッドで行われた性的暴行に関する事件でありその主張に過ぎなかった。しかし、この運動はそこから広がりをみせ、強姦や性的虐待や不適切な性的関係や望まれない交際を無理に強いることや、性ビジネスまでもが対象となった。

 実際の犯罪と、倫理上の問題や職業上の問題、さらには同意の下の性行為(ただし後にくやまれるもの)との区別できなくなる中で、この運動は拡散していった。性的虐待を行った疑いのせいで、契約や仕事や結婚まで失うことになる場合も出てきた。さらには自殺を引き起こすことも。道徳の嵐が吹き荒れる中で、以下のような事件が、強姦事件と一緒にされている。ベン・アフレックがビデオインタビュー中に女優に痴漢行為をした事件や、アジズ・アンサリとデートした女性からの苦情ルイス・CKが同僚たちの前で(彼女たちの同意のもと)裸身をさらした事件などだ。

 それぞれの事件の深刻度がどれほどなのかの判断がつきにくくなる中で、この運動が失ったものは、この運動が問題にしている道徳にどれほど信頼がおけるかということである。そして、当初の目的とはちがって、仕返しのための手段やゆすりたかりのネタに使われるようになってしまった。もし罪が犯されたのであれば、警察に通報すればいいだけの話で、公開討論会の議題にあげるべきではない。糾弾されている方も、被害者と同様、匿名性が保たれる必要がある。正式な判決が出るまでは。

 性的な問題に関する告発というのは、米国の大衆文化においては武器としてこれまでも多用されてきた。一例をあげれば、女流漫画家たちの間に存在した「ささやき連絡網」が男性漫画家たちを標的にしていたことがある。彼女たちは、(本当の罪を犯していた場合もあったが)男性漫画家たちに言いがかりをつけることで、女流漫画家たちの活躍の機会を得ようとしていた。これは男女問題ではない。欺瞞や誇張を使って自分の道を築いていくことは、そのようなことばが生まれたころからこの世に存在する。

 米国のテレビ界や映画制作界において、#MeToo運動は「タイムズアップ」運動を通じて制作での支配を強め、女性の取り分を高め、金を得てきた。この運動は女性にとって安定してお金が儲かる仕事を奪い取ることになった。そのことについては、公衆からは善意をもって、管理職からは恐れをもって受け取られた。タイムズアップ運動には、ケイティ・マクグラフが共催していた。マクグラフは、バッド・ロボット・プロダクションというプロダクション会社を夫のJ.J・アブラマスとともに経営している。バッド・ロボット社は「社会正義に優しい企業」として売り出していた歴史を持っている。今年の夏、暴動者が店舗に火をつけ歴史的な建造物を破壊していた際に、バッド・ロボット社は、評判の悪い声明を出した。その内容は、「礼儀正しい話はもういい。白人だけが快適に暮らすのはもうたくさんだ」というものだった。

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意図せぬ顛末
 自社が倫理感をもち、社会問題にも関心をもっていると表明することにより、その企業は大手企業から利益を得ることのできる理想的な企業となる。というのは、大手企業、相手先の能力ではなく会社の考え方に基づいて取引先を決めるからだ。個人や企業が目にしてきたのは、性的虐待が、多くの世間の同情を集めることで自分の利益につなげられる道具となっているということだ。そして、企業は、その危険性を実感している。

 実は、#MeToo運動や「タイムズアップ」運動ほど、女性の働く機会を奪っている活動はないのだ。制作会社は、たとえ女性が率いている会社であっても、女性社員を雇えば、のちにゆすりや補償のネタになる可能性がでるのでは?と心配する。その結果、会社は女性を雇うのをやめている。それはのちのち法的措置や、会社の評判を下げるようなSNSによる運動のせいで、金がかかる羽目になる可能性を見越してのことだ。何十年もかけて行われてきた、男性上位の産業界を説得して女性の雇用を増やそうという運動の結果、女性を雇用する利点や女性の人材確保は発展してきたのに、#MeToo運動が起こした混乱した道徳のせいで、女性を雇用する不利益が表面化するという結果に陥っている。

 男性の管理職がいま女性を見る目というのは、恐れだ。そう、ギリシャ神話の英雄たちがメドゥーサに見つめられることを恐れていたのと同じ気持ちだ。皮肉なことに、ガルバーティチの手による銅像は、女性がもつ力を祝福するのではなく、この運動の負の部分の象徴に見えてくる。はじめはうまくいっていたのに、結局はまた男性が女性に不信感を持つようになるという顛末をむかえているこの運動の象徴に。

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