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ラファでの大虐殺はイスラエルの野蛮さをむき出しにした

<記事原文 寺島先生推薦>
Rafah Massacre Exposes Israel’s Brutality
筆者:ルーカス・ライロズ (Lucas Leiroz)
出典:Strategic Culture 2024年2月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月26日


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© Photo: Public domain


ラファでの最近の攻撃は、西側の世論にイスラエルのやり方を示し、シオニスト国家をさらに国際的に孤立させている。

イスラエルによるガザ地区への攻撃は、ますます暴力的で理不尽なものになっている。ここ数日、シオニスト国家(イスラエル)は、エジプト・シナイとの国境に近いガザ地区南部の都市ラファに対して、一連の残忍な攻撃を開始した。この地域は、紛争が始まって以来、ガザ北部の自宅から避難してきた何千人ものパレスチナ人の避難所となっている。ラファを爆撃することで、テルアビブ(イスラエル政府)はガザのどこにもパレスチナ人の安全はないことをはっきりさせた。

2月11日、イスラエルはラファに対する軍事作戦を開始し、パレスチナ人数十人が死亡、数百人が負傷した。その後も同様の爆撃は続き、さらに多くの犠牲者を出した。さらに、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はラファへの地上侵攻を公言し、現地住民にその結果に対する恐怖を与えた。

今回の事態がとくに複雑なのは、以前、イスラエル当局は、パレスチナ人が北部地域を離れてラファに避難できるよう、ガザの内部移住を奨励する声明を何度か出していたからだ。それまでは、ラファはガザでも数少ない普通の生活が可能な都市と考えられていた。しかし今のイスラエルには、この街に暴力をふるわないという気持ちはもはやないようだ。

その結果、近年の歴史上、最も深刻な人権侵害の事例が生まれた。200万人近いガザ人が、行き来する自由もなく、イスラエルの爆撃の人質となってラファにいるのだ。パレスチナ市民が北部に移動しても、都市は完全に消滅していて、生活の基盤もない。南部に留まれば、イスラエル軍の大砲や航空機による残酷な爆撃を受け続けることになる。同時に、水、食料、エネルギーの封鎖は続いており、この地域での生活はほとんど不可能だ。

ラファでの攻撃は、停戦合意への試みが失敗に終わった直後に起こった。ハマス側は、テルアビブ側が提案した協定の改訂版を提示し、3段階の停戦計画を打ち出したが、イスラエル側はこれを激しく拒否した。当時、専門家の意見では、シオニスト国家(イスラエル)が提案した協定はハマスに極めて有利なものであったため、イスラエルは紛争において弱い立場にあるというのが大勢を占めていた。ハマスがそれにもかかわらずイスラエル側の提案に見直しを求め、さらなる譲歩を要求したという事実は、この交渉で屈辱を味わったネタニヤフ政権にとって「レッドライン」だったようだ。その報復として、イスラエルは停戦交渉を中止しただけでなく、攻撃を拡大し、ラファまで手を伸ばすことにした。

その意味で、ラファに対する作戦は強さを誇示するためのものだった可能性がある。イスラエルは、パレスチナに対する最初の数カ月の攻勢で失敗した後、軍事的イメージを向上させたいのだ。囚人の解放とハマスの排除という目標に失敗したシオニスト国家は、この地域の敵に対する抑止力を取り戻そうとしている。民間人に対する過剰な暴力でパレスチナの抵抗勢力を威嚇し、テルアビブへ大きな要求はさせず、ハマスに停戦合意を受け入れさせようとしているのだ。

しかし、民間人地域に対するこうした攻撃の結果は、世論の面ではイスラエルに壊滅的な打撃を与えかねない。ガザ侵攻が始まって以来、ユダヤ国家はすでに部分的な国際的孤立という状況に直面している。以前は、少なくともテルアビブには、パレスチナ人が戦争の影響から逃れるためにラファに移住できるという主張があった。ラファがイスラエル国防軍の作戦の主な標的となった今、その可能性すらなくなっている。

シオニスト政権に対する国際的な圧力が高まるのは必至だ。ラファの状況を画像で隠すことは不可能だ。子どもたちが死んでいる写真や動画がインターネット上に出回り、欧米諸国の一般市民の怒りを買っている。これは、シオニスト政権への支援を停止または削減するよう、欧米諸国で抗議や国内圧力を呼び起こすことにつながる。

欧米当局からネタニヤフ首相に注意を促す声が上がっているのは偶然ではない。英国では、攻撃が拡大する危険性を考慮し、テルアビブに対しラファでの行動を「再考」するよう求めた。こういった発言が偽善的なのははっきりしている。その西側諸国がシオニストの侵略を軍事的に支持し、イスラエルの拡張主義的で人種差別的なプロジェクトに協力しているのだから。しかし、それでも、西側諸国がこのようなイスラエルの行為を支持し続けることによって、自国のイメージが損なわれることを恐れていることを示すものであり、重要な発言である。

結局のところ、テルアビブはあまりに理不尽な行動をとっているため、もはやその軍事行動の本性をごまかすことはできない。明らかに、その目的は 「ハマスの排除」ではない。そして明らかに、民間人の死は単なる「付随的なもの」ではない。パレスチナ人民に対する集団的抹殺という真の意図があり、「対ハマス作戦」は単なる口実にすぎない。ラファでの民間人殺害は、このことを明らかにした。このように、イスラエルを支援し続ける国はすべて、真のジェノサイドの共犯者になる。
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中国、イスラエル占領に対してパレスチナ側に「武力闘争」の権利があることを支持

<記事原文 寺島先生推薦>
China Backs Palestinians’ Right to ‘Armed Struggle’ Against Israeli Occupation
筆者:The Cradle(西アジアの地政学を報道するオンライン通信誌)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年2月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月24日


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イスラエルによるパレスチナ自治区の不法占拠に終止符を打つため、50カ国以上がハーグでの公聴会に参加している。


「植民地主義、占領、侵略、外国勢力に対する支配に対する武力闘争を含め、民族が解放、自決の権利のために行なう闘争は、テロ行為とみなされるべきではない」。-張軍中国国連大使


国際司法裁判所(ICJ)で4日目に行われた、イスラエルによるパレスチナ自治区の不法占拠をめぐる裁判の公聴会で、中国はパレスチナ人がイスラエルに対して「武力闘争」を行う権利への支持を表明し、これは「テロリズム」ではないと強調した。

中国外務省の法律顧問である馬新民(Ma Xinmin)は、2月22日にこの世界法廷(ICJ)で、「自決権を追求するため、(パレスチナ人は)外国の抑圧に抵抗し、パレスチナ国家の樹立を完成させるために武力行使の権利を有する」と述べた。

国際司法裁判所において中国は、占領に対する武力抵抗は国際法に明記されており、テロではないと指摘。

主流メディアでは報道されることはあっても滅多に取り上げられない視点だ。 pic.twitter.com/wudMcxbFxb

— Saul Staniforth (@SaulStaniforth) February 22, 2024




新民は、武力抵抗によって「植民地支配から解放されたさまざまな民族」の例を挙げながら、イスラエルの占領に対する抵抗行為は「テロリズムではない」正当な武力闘争であり、「不可侵の権利」であると主張した。

「他の数多くの決議が、植民地支配や外国の占領下にある人々が自決権を実現するための武力闘争を含む、あらゆる利用可能な手段による戦いの正当性を認めている」と中国の高官である馬新民は述べた。

「中国の習近平国家主席は、中国が包括的な停戦と、交渉による2国家解決に基づくパレスチナ問題の早期解決を求めることを何度も強調してきた」と彼は付言した。

馬新民の後に登壇したイランのレザ・ナジャフィ外務副大臣(法務・国際問題担当)は、イスラエルがパレスチナ人の自決権を歴史的に侵害していることを強調した。

「イスラエル政権の樹立は、シオニスト運動に沿った、ユダヤ人多数派植民地を作るために、先住民であるパレスチナの人々を強制移住させるという暴力的な過程によって行われた」とナジャフィは語った。

彼はまた、テルアビブによる現在進行中の一連の侵害行為として、パレスチナ占領地における長期にわたる占領と人口構成の操作、エルサレムの性格と地位の変更、天然資源に対するパレスチナ人の永続的な主権に対する差別的措置と権利の侵害を挙げた。

「入植地の拡大、隔離された道路や障壁、検問所は、パレスチナ人社会を孤立させるアパルトヘイトの形態を作り出している」とナジャフィは述べ、その後に国連安全保障理事会(UNSC)の「不作為や不十分な行動」に言及した。これが「パレスチナ人の占領を長引かせている主な原因」の一つであると語り、国連の最高機関が「特定の常任理事国」によって引き起こされた「膠着状態(拒否権)のために麻痺している」ことを強調した。

「過去約8年間にイスラエル政権が犯した残虐行為や犯罪はすべて、このような不作為の結果である」と述べて、イラン高官であるナジャフィは話を締めくくった。

次に、ICJのイラク代表ヘイデル・シーヤ・アル・バラクが壇上に上がり、ICJに対し、イスラエルに対する過去の裁判所命令を尊重するよう求めた。例えば、南アフリカの裁判の後に出された、「パレスチナ人に対する組織的な殺戮機能を止めよ」という条項などである。

「私たちは、裁判所が正義への取り組みをさらに強化し、大量虐殺作戦を終わらせ、パレスチナ人に対する嫌がらせ、封鎖、飢餓政策を防ぐという決意を確認する追加の判断を下すことを願っています」と彼は述べた。

バラクは、世界法廷(ICJ)に対し、「パレスチナ人男性、女性、子供、年長者の生活を守り、すべての人権が達成される尊厳ある安全な生活を享受できるようにする」決定を下すよう呼びかけ、発言を締めくくった。


アンサール・アッラー(フーシ派)のムハンマド・アリ・アル・フーシ氏:「私たちは平和を愛する者です」

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>
Mohammed Ali al-Houthi of Ansar Allah: “We Are Peace Lovers.”
筆者:アーメッド・アブドゥルカリム(Ahmed Abdulkareem)
出典:Internationalist 360° 2024年2月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月11日



モハメド・アリ・アル・フーシ氏、戦況の激化やイエメン封鎖などの見通しについて語る

 昨年10月7日に本格的に始まり、数万人のパレスチナ人の死亡をもたらしたイスラエルのガザに対する戦争と包囲を受けて、アンサール・アッラー派率いるイエメン軍はイスラエルに対する軍事作戦を宣言した。その目的は、イスラエル当局にガザに対する破壊的な戦争を中止させることである。

 サウジアラビアとアラブ首長国連邦が主導し、米国の支援を受けてイエメン国民に対しておこなわれた10年にわたる戦争によりもたらされた飢餓、ジェノサイド、民間人の強制退去を経験してきたアンサール・アッラーは、イスラエルに対するおそらく最も重要な抵抗運動を指導してきた。ガザ地区での血なまぐさい作戦に対して、同派は紅海とアラビア海でイスラエルが所有、あるいはイスラエル船籍、あるいはイスラエルが運航する船舶を標的にするという大胆かつ前例のない措置を講じた。

 西側諸国ではフーシ派という俗称で知られるアンサール・アッラーは、この行動はガザの悲惨な人道的状況への対応であると宣言し、イスラエルの侵略が止まり次第、イスラエルと関係のある船舶を標的とすることをやめると約束した。この発言は、アンサール・アッラーの指導者たちが作戦開始以来繰り返してきたもので、アンサール・アッラーの著名な構成員であり、イエメンのサヌア政府の重要な意思決定者であるイエメンのフーシ最高革命委員会のモハメド・アリ・アル=フーシ氏が当ミント・プレス・ニュース社に明言した。

アンサール・アッラーの対イスラエル作戦に対抗して、西側諸国、特に米国は、紅海とアデン湾での国際航行の自由を守るという口実のもと、軍艦の大艦隊を配置させた。西側報道機関の多くは、アンサール・アッラーは海賊かイランの支援を受けた民兵組織に過ぎないと軽視していた。西側の人々は、アンサール・アッラーの指導者の視点を検閲がかけられていない状態で聞く機会がほとんどない。このため、ミント・プレス・ニュースのアハメド・アブドゥルカリーム特派員は、アンサール・アッラーのモハメド・アリ・アル・フーシ副司令官と対談し、イエメン、ガザ、中東における最近の事象について対談した。

ミント・プレス・ニュース(以下M): 米国の拠点であるヨルダン国内のタワー22を標的とした攻撃で3人の米国兵が殺害され、30人以上の兵士が負傷したことについて、アンサール・アッラーはどのような立場をとっているのでしょうか?またその事件の前に起こった、米国が溺死だと主張する米海軍特殊部隊2名の溺死事件はいかがでしょうか?彼らの死に関するアンサール・アッラーの公式見解は何ですか?


モハメド・アリ・アル・フーシ氏:この攻撃は、米国がおこなった敵対的行動に対する自然な反応であると我々は考えています。これは間違った政策を取っている米国に対するアラブ世界からの大きな不満を表すものです。具体的には、ガザ地区でのジェノサイドの実行、イエメンへの侵攻などです。そのせいで、米国兵士や米国の国益を危険に陥れているのです。

米国民が理解しないといけないことは、他を攻撃するものには必ず報復が来る、ということです。アラブのことわざにあるように、「(アラーの神の)ドアをノックする者は誰でも答えを見つけるだろう」です。

質問の後半で言及された2人の兵士についてですが、この事件は米国で起きたものです。私たちは米国の発表を信用しません。しかし、もし米国側の説明が真実なら、おそらく米国側が隠蔽したがっている重大な犯罪があるということでしょう。米国はもっと悪いことを隠すために兵士たちの事件のことを暴露したのです。きちんとした組織である軍隊が同僚の行方を知らないというのは不合理です。この事件には曖昧なところがあります。米国が何を隠しているかを明らかにするには調査が必要です。

M:あなた方は、イエメンで8年以上続いた戦争の影響で苦しんでいますが、それにもかかわらず、あなたがたはガザと連帯して軍事的・政治的に先進的な立場をとってきました。なぜこのような立場をとるのですか?また、「あなたがたの立場はガザとは無関係である」と主張する米国および英国政府の声明に対してどう思いますか?

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:第一に、私たちの立場は宗教的かつ人道的なものです。その私たちが途方もない不正義を目の当たりにしているのです。私たちは、ガザの人々に対しておこなわれた虐殺の規模と深刻さを知っています。私たちは、米・サウジアラビア・アラブ首長国連邦連合によるテロに苦しんできました。この連合国が、戦争を開始し、私たちを今も封鎖し続けています。だからこそ私たちは、自分たちが置かれた状況ゆえに、同じ犯罪が繰り返されることを望んでいないのです。私たちは、毎週金曜日に数百万人規模で街頭デモを行うわが国民の要求に応えます。私たちはまた、アラブやイスラム諸国の大衆、そしてパレスチナの同胞を守るよう私たちに求めるすべての自由な人々にも応えます。

国際司法裁判所によってジェノサイドとまで認定されたガザの悲惨な人道的状況を目の当たりにして、何もしないわけにはいきません。ですので、私たちの動きの方向性は以下のようになっています。つまり、被抑圧者に立ちはだかる傲慢な者たちと対決することです。被抑圧者は、イスラエルと米国のせいで、悲惨な状況に置かれ、恐ろしい人間的苦痛に耐えています。この二国は、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への支援を停止することさえしています。今すべきことは、この組織への支援を増やし、パレスチナの人々にパンの供給を続けることのはずなのに、です。

M:西側報道機関は、あなた方による紅海の封鎖が紅海を航行するすべての船舶の航行の自由を脅かしていると伝えています。それは正確なのでしょうか? もしそうでないなら、どの国が問題なくバブ・アル・マンダブ海峡の利用を許されているのか、また、アンサール・アラーはどの船舶が通過でき、どの船舶が阻止されるかをどのように決定しているのかを教えていただきたいです。

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:紅海を封鎖しているわけではありませんし、欧米報道機関で宣伝されているような、我々が紅海の国際航行を標的にし、国際貿易を危険にさらしているというのは事実ではありません。紅海の航行は、イスラエルとつながっている船舶を除くすべての船舶にとって安全です。最近まで、私たちが作戦を発表して以来、4874隻の船舶が安全に通過しました。毎日約70隻の船舶がバブ・アル・マンダブ(海峡)を無傷で通過しています。

我々は常に、標的となる船舶は、占領された港に向かう船舶、イスラエル人が所有する船舶、ウンム・アル・ラシャシュ港(エイラート港)に入港する船舶など、「イスラエル」と関係のある船舶のみであることを明言してきました。イエメン軍は、「イスラエル」と関係のないすべての船舶には危害を加えないことを繰り返し明言しています。これは、イエメン軍の海軍作戦に関するすべての発表された声明の中で、軍の公式報道官が繰り返し明言していることです。

私たちは、バブ・アル・マンダブ海峡が閉鎖されることも、紅海が閉鎖されることも望んでいません。このことは、私たちがイスラエル船やパレスチナ占領地へ向かう船を標的にすることに限定していることからも明らかです。もしバブ・アル・マンダブ海峡の閉鎖を望むのであれば、他の手段があったでしょうし、ミサイルを発射するよりも簡単な手段もあったでしょう。

実際、欧米の報道機関で宣伝されているのは、米国の欺瞞の結果です。米国は、この出来事に関する誤った言説を広め、それが国際的な報道機関で支配的になるように躍起になっています。ガザでのジェノサイドを止めず、包囲を解こうとしない悪魔のような国、それが米国であり、英国であるにもかかわらず、です。米・英は紅海を軍事化し、イエメンに対する戦争の激化と侵略を続けています。

イスラエルに向かう船がどのように識別されるかについては、イエメン国防省からの正確な情報に基づいています。イスラエルにつながる船であれば、紅海とバブ・アル・マンダブ海峡を通過してはならないと警告されます。警告を拒否した場合(警告を発表し、明確にし、停船して戻るように合図を送った後)、その船は標的にされます。私たちが信頼している軍のデータによれば、イスラエルの港に向かっていない船が標的にされたことはありません。そして、米国も英国も、我々がこう言っていることが間違っていると証明できていません。

M:バブ・アル・マンダブ海峡、紅海全般、アラビア海、アデン湾を通過する際に、船舶が危険を回避するための通信手段はありますか?

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:海軍はこのことを明言しており、(公的な)声明の中で、通信が可能な16番チャンネルがあることを常に繰り返し伝えています。海運会社には(私たちは直接各社に伝えていますが)、簡単な解決策があることを伝えています。「我々はイスラエルとは関係がない」とさえ書くだけで、安全に通過できるのです。また、デジタル・セレクティブ・コーリング(Digital Selective Calling)の使用も奨励しています。[デジタル・セレクティブ・コーリングは、遭難信号を送信するために海上通信で使用されている技術です。 海上無線のデジタル「呼び出しボタン」のような機能です]。

M: 欧米諸国は、紅海での活動は国際航海の安全と治安維持のためだと言っています。 これに対してどう思われますか?

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:イスラエル船を守るために「繁栄同盟」と呼ぶ同盟を結んで国際航行を危険にさらしているのは米国であり、この同盟のより適切な名称は「破壊同盟、紅海の軍事化、紛争の拡大」というものでしょう。

米国による警告、度重なる報道機関を使ったテロ、船舶へのメッセージや呼びかけは、わが国への軍事攻撃に加えて、世界の航行と貿易に害を及ぼす行為です。

ホワイトハウスは、バブ・アル・マンダブ海峡を通過するのは危険だという嘘話を流し、世界を欺こうとしています。イスラエルとは何のつながりもない国際的な船会社に、紅海を通らないよう圧力をかけています。この行為は、イエメン側に対する不満を煽り、犯罪者(ベンヤミン)ネタニヤフに奉仕するために行われています。我々は米国側に、このような行為を止め、侵略を止め、ガザの人々に対する包囲を解くという最善の解決策に目を向けるよう求めます。イエメン軍は、米英軍の我が国に対する侵略と攻撃に呼応する以外、米英軍の艦船を標的にしたことはありません。それに先立ち、革命の指導者[アンサール・アラーの指導者アブドゥル=マリク・アル=フーシ]は、イエメンに関与しないよう警告していました。

M:アンサール・アッラーに対する米英軍の空爆の本質は何なのでしょうか。 本当に被害をもたらしているのでしょうか?実際に何を標的にしているのでしょうか?これらの攻撃でイエメンの民間人が死亡したことはありますか?

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:第一に、米英のイエメンに対する侵略は何も新しいことではありません。この2カ国は2015年以来、イエメン共和国に対する侵略を実行してきました。それと同じ行動です。私たちは米国が戦争を激化させることを恐れていません。もし両国が陸路での侵攻を決断すれば、ベトナム、アフガニスタン、イラクで直面したものよりもさらに厳しい試練に直面することになるでしょう。

イエメンの人々は自由を愛し、戦士であり、武装しています。軍隊は十分に準備されており、イエメン人はこの地域で、米国に戦略的敗北を与えることのできる多くの選択肢を持っています。

米英軍の空襲は、サヌア、サーダ、ホデイダ、ハジャ、ダマルなどの人口密集都市を標的にしました。それ以前には、紅海で我々の巡視艇を標的にし、多くの海軍兵士が殉教しました。米・英による攻撃は何の効果もなく、その影響力について言われていたことは根拠のない幻想であり、失敗でした。全能のアラーのおかげです。

米国と英国は、海上での攻撃や空爆を通じて、パレスチナでのジェノサイドの継続や、我が敵国イスラエルによる市民殺害という犯罪を止めることなく擁護しています。

一方、イエメン共和国における私たちの立場は、人道を擁護するものです。私たちの作戦は、ジェノサイドを阻止し、殺戮を止めるために実施されます。私たちの選択は人道の選択であり、私たちが犠牲を払う正しい選択です。米国は、我が指導者(アンサール・アッラーの指導者アブドゥル=マリク・アル=フーシ)の警告を真剣に受け止めなければなりません。

M:米国と英国の政界では、イエメンに対する戦争を激化させ、場合によっては地上侵攻を行うという話も出ています。これに対するアンサール・アッラーの反応と、米英が戦況を激化した場合のアンサール・アッラーの軍事作戦拡大計画について教えてください。

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:地上戦はイエメンの人々が望んでいることです。というのも、9年以上にわたって自分たちを苦しめてきた者たちと対峙することになり、復讐の機会となるからです。革命の指導者[アンサール・アッラーの指導者、アブドゥル=マリク・アル=フーシ]が言ったように、「米国側に知って欲しい事実は、もし米国がイエメンに兵士を送れば、米国はアフガニスタンで直面したもの、ベトナムで苦しんだものよりも過酷なものに直面するだろう、ということだ。われわれには敵に立ち向かい、揺るぎない強さがある。われわれの国民は、大規模な侵略に直面して9年間耐えてきた」のです。

M:バイデン政権がアンサール・アッラーをテロ組織として分類したことについて、あなたはどのように考えていますか? この決定はあなた方にとって何かしらの影響がありますか?

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:私たちがガザを支援しているという理由で私たちをテロリストに指定することは、名誉であり誇りです。また、政治的であり、不道徳であり、何の正当性もないことです。米国の動きは私たちには影響しません。私たちは米国の領土に入ることはありません。また、海外に会社や銀行口座を持っているわけでもありません。米国は、この指定が私たちの人道的、倫理的な展開や決定に影響を与えないことは承知の上です。解決策は、ガザへの侵略を止め、食料や医薬品の持ち込みを許可することにあるのですから。

M:欧米諸国はアンサール・アッラーのことをフーシ派と呼んでいます。「フーシ」と「アンサール・アッラー」の根本的な違いは何だとお考えですか?

モハメド・アリ・アル・フーシ氏:私たちの指導者が定義するアンサール・アッラーは、一部の人々が宣伝するような組織、政党、団体ではありません。枠にはめられたり、構造化されたりする組織ではないのです。殉教者の指導者であるサイイド・フセイン・バドレディン・アル=フーシ[アンサール・アッラーの創設者]が組織の結成に着手したときでさえ、彼は、多くの組織や団体、政党が行おこなうような、国際的に知られた手続き(登録所や会員証の付与など)に従って部隊を結成したわけではありません。そうではなく、さまざまな政治的志向、所属、社会的区分の大衆が、この取り組みに含まれる立場の枠組みの中で動くという取り組みを提示したのです。つまり、私たちは広範な大衆運動だと言えます。

私たちの組織の名称であるアンサール・アッラーはコーランから取られたもので、全知全能の神アッラーより与えられた使命を、聖コーランに書かれた方法に則った実用的な対応をあらわす言葉です。私たちはアラーのために支えなければならない国の問題を背負って、アンサール・アラーになろうと常に努力しています。

「フーシ」という名称は、私たち自身をあらわす名称ではありません。私たちはフーシと呼ばれることを拒否しています。それは私たちの名前ではありません。この名称は、敵が私たちにつけたもので、その目的は、私たちの取り組みに賛同するイエメン社会に属する大衆に濡れ衣を着せることにあります。現実には、こうした試みは失敗しています。我が国の国民は、この呼称やその他の否定的な喧伝の影響を受けていません。私たちの指導者は直近の演説のひとつで、このことに言及していました。

M:西側諸国はアンサール・アッラーをイランの手先と非難しています。西側報道機関は最近、米国が中国に対し、アンサール・アッラーの紅海封鎖を止めるようイランに圧力をかけるよう要請した、と報じました。 この問題の真相と、アンサール・アッラーとイランの関係はどうなのでしょうか?

モハメド・アリ・アル=フーシ:先週木曜日(1月25日)の演説で、[アンサール・アッラーの指導者アブドゥル=マリク・アル=フーシは]米英の攻撃は失敗であり、[われわれには]何の影響もなく、われわれの軍事力を制限することはない、と明言しました。 私たちの指導者は、「米国がパレスチナ支援活動を停止するよう我々を説得するために中国に援助を要請しようとしているのは、この先失敗する兆候の一つである」と考えています。

また指導者は、「中国は米国に従わないことが自分たちの利益になるとわかっているので、米国のために自分たちを巻き込むことはしないだろう。中国は米国による敵対政策を承知している。台湾問題を通して、米国が画策している陰謀の大きさをよく知っている」とも指摘しました。

告発者は自分が言ったことを証明しなければなりませんが、私たちは米国の主張が幻想である、とはっきり言います。私たちの決断は私たち自身の手に委ねられており、米国とイスラエルはそのことを知っています。両国がイランを非難するのは、彼らの勝手です。イランは主権国家です。私たちは敵の言葉にわざわざ反応することを好みません。私たちは正しい立場を取っているのですから、敵の言葉など気にしません。

M:アンサール・アッラーとサウジアラビア主導の連合との間で停戦が成立し、現在、オマーンの仲介を通じて交渉が行なわれています。イエメンに平和を取り戻そうという動きは、あなた方による紅海での活動を停止させる圧力として利用されたのですか? 和平への道筋とイエメンでの戦争の当事者間の合意を妨害しているのは誰ですか?

モハメド・アリ・アル=フーシ:まず確認しておきたいのは、この動きは、停戦ではなく、戦闘の緩和である、という点です。イエメン共和国の恒久的な平和を達成し、包囲網を解除するために政治的な活動が継続されることを望んでいます。

2つ目にお伝えしたいことは、私たちは米国から、間接的な伝言や脅迫を受けていることです。具体的には、内部戦闘戦線の開設や戦線の移動、和平の妨害、援助の停止などの行為です。そしてそのような行為をおこなっている理由は、イエメン国民がパレスチナの人々を壊滅させることを許していないからです。

私たちは平和を愛する者です。イエメン共和国を建設したいのです。その地での平和を望んでいます。だから、紅海での私たちの活動は、パレスチナの兄弟のための平和の探求という枠組みの中にあるものなのです。

しかし、9年間もイエメンの和平を妨げてきたのは誰なのでしょう? それを妨害しようと脅したのは米国ではなかったのでしょうか? それは、私がさきほど述べさせてもらったとおりです。

私たちは(イエメンの)包括的な解決策についての視座を提示し、それを報道機関に発表し、国連に届けました。

最近、(すべての当事者が)合意した内容について(発表された)論文に対して、妨害を加えようとする勢力が存在しましたが、それが米国でした。米国当局はこれまでの交渉でもそうしてきたのと同じように、今もまさに和平を妨害しています。

彼ら(米国)はパレスチナで和平を口にしながら、拒否権を行使して戦争の終結を妨げています。イエメンでは、平和について語りながら、同時にイエメン共和国の人々に対して(軍事)作戦を開始しています。

M:アンサール・アッラーと米国との間に直接交渉の経路はあるのでしょうか? この地域での戦況の激化を抑えるために、今後どのような交渉が行なわれるのでしょうか?

モハメド・アリ・アル=フーシ:私たちはまだ米国と直接交渉していません。直接交渉を求められたことはありますが、私たちは拒否してきました。それは、私たちは米国を犯罪と虐殺を継続するためにあらゆることを行なうテロリストの犯罪者とみなしているからです。もし米国が私たちとの対話を望むのであれば、オマーンにいる私たちの兄弟と、そこにいる私たちの交渉団を通じてでなければなりません。これが対話の唯一の方法です。

M:アンサール・アッラーは、封鎖の理由はガザの人々と連帯し、支援するためだと何度も述べています。 アンサール・アッラーがイスラエルの利益に対する封鎖や攻撃を停止するために、イスラエルは何をしなければならないのでしょうか?

モハメド・アリ・アル=フーシ:--私たちがこれまで紅海での作戦行動に訴えたことがないことをきっとご存知のことと思います。主に米国の支援を受けた大規模な戦争にさらされていた時にさえ、です。それでもいま、このような攻撃を行なっているのは、ガザでのジェノサイドを止めるためです。医薬品や食料がガザに入り、侵略が止まり次第、私たちの軍事行動は直ちに停止します。この崇高な人道的目標が達成されるまで、武装した空・海・陸軍は、イスラエル、米国、英国の艦船を標的にし続けるでしょう。この方程式の解法は簡単です。食糧と医薬品をガザの人々に届けさせれば、侵略は停止します。

M:米英両国は、紅海で行なっていることは自衛であり、国際航行を守るためだと繰り返し述べています。 これらの声明についてどう思われますか?

モハメド・アリ・アル=フーシ:真実は、米国当局と英国当局が、自分たちの土地から何千マイルも離れた人々を爆撃しているというところにあります。国連加盟国である独立国に対して、正当性も合法性も法的根拠もない侵略を行なっているのです。イスラエルという(我々の)敵を守るためだけに、イエメンへの侵略を行なっているのです。米・英が防衛態勢を取っていないことは、確かであり、はっきりと目に見える事実です。自分たちの船がフロリダ沖やロンドン沖で攻撃されたとしても、米・英は同じ主張をしていたでしょう。

加えて、米・英の侵略行為にはなんの道理も人道的正当性もありません。イスラエルがパレスチナでさらなるジェノサイドを行ない、市民を殺し続けることができるように、犯罪者を擁護するためにやってきたのですから。

米英両国の政権は、紅海、アデン湾、アラビア海における国際航行の安全など気にかけていないことを、米英両国民は知るべきです。米・英当局が気にかけているのはネタニヤフ首相のことだけであり、自国民の利益や兵士の命を犠牲にしてでも、ガザの人々に対するジェノサイドを続けるよう促しているのですから。

私たちが米・英に言いたいことは以下のとおりです: あなた方はこの地域に火をつけに来た者たちであり、各国船舶の航行を脅かすために動いている者たちであり、紅海やアラビア海、アデン湾に危険やテロを持ち込んでいる者たちです。このような行為をやめ、元の場所に戻りなさい。紅海は米国のものでも英国のものでもありません。米国の政策が敵対的であることは明らかです。東シナ海で野心を抱き、紅海でも野心を抱き、北極圏でもロシアと競合している国なのですから。

アーメッド・アブドゥルカリム(Ahmed Abdulkareem)氏。サヌアを拠点とするイエメン人ジャーナリスト。 ミント・プレス・ニュースやイエメンの地元報道機関でイエメンの戦争を取材している。

ガザやイエメン、そしてウクライナは、米国主導の「ルールに基づく世界秩序」に対する死の警鐘だ

<記事原文 寺島先生推薦>
Gaza, Yemen & Ukraine Sound Death Knell for U.S.-Led ‘Rules-Based Global Order’
出典:Strategic Culture  2024年1月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月9日


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世界はもう戻れないところまで来ている。欧米列強のペテンは見事に露呈し、もはやだれも擁護できなくなっている。

西側諸国が過去に持っていたと推測される道徳的権威や優越性がどのようなものであったにせよ、現在ではそのすべてがズタズタになっている。取り返しのつかないほどに、だ。

アメリカとその西側の同盟国の偽善と二枚舌は、長い年月、実際には何世紀にもわたって認識されてきた。それは目新しいことではない。しかし、これまでと違うのは、その偽りの装いが世界にとって如実に明らかになっていることだ。世界の人々の意識は、それにともなって、侮蔑的な見方になっている。

また、欧米の指導者たちには、自分たちの茶番が見透かされており、自分たちの没落は眼前に迫っている、という自覚が否応もなくある。

今週、英国政府の閣僚たちは、消滅しつつある自分たちの権威に対する国民の支持を集める方法として、世界的な脅威について必死に警告を発した。その結果は笑止千万なことにしかなっていない。

今週は他に、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、世界的な混乱の中で国民統合を嘆願する奇妙な全国演説を行なった。マクロン大統領の声は、どうか自分に敬意を払ってほしいと懇願しているかのような情けないものだった。

皮肉なことに、これらの政治的ペテン師が引用する脅威と混乱は、主に西側の無法行為の結果であり、それはガザでのジェノサイドを事実上支持し、ロシアを挑発するためにウクライナのネオナチ政権に容赦なく資金を提供していることからもはっきりしている。何十年もの間、欧米列強はジェノサイドや違法な戦争、そして世界的な破壊行為をしてもその罰から逃れてきた。今の違いは、さまざまな危機が凝集して彼らの悪意と策謀が顕わになってしまったことだ。

ガザでの虐殺は100日を超え、死者は3万人に近づいている。アメリカの国際政治学者であるリチャード・フォークが嘆くように、これほど誰の目にもはっきり見える形で進行したジェノサイドは歴史上ない。しかも、アメリカとヨーロッパの同盟国は、イスラエル政権による衝撃的な犯罪に完全に加担している。

病院はイスラエル軍に砲撃され、衛生兵やジャーナリストは殺害され、飢えた人々は時折やってくる食糧援助トラックに駆け寄る。ユニセフはこれを「子どもたちに対する戦争」と呼んでいる。ガザでは80万人もの人々が飢餓に直面していると報道されているが、傲慢な欧米列強はこの(イスラエルによる)せん滅行為を止めようともせず、非難すらしない。

ジョー・バイデン米大統領やアントニー・ブリンケン国務長官のような西側の政治指導者の自己満足と独善には吐き気がする。米国と欧州連合は、イスラエル政権を何の制約もなしに権限を与え、武器を供給している。

実際、南アフリカが先週、ハーグの国連国際司法裁判所でイスラエルに対するジェノサイドの告発を行なったとき、米英をはじめとするヨーロッパの大国が、その加担をめぐって事実上、被告の席に座ったことは世界的に明らかだった。

ワシントンやロンドン、そしてブリュッセルは、パレスチナの過激派組織ハマスが人間の盾や病院を基地として使用しているというイスラエルの忌まわしい嘘のプロパガンダを使い回す皮肉な言い訳を口実にして、ガザでの停戦を明確に(イスラエルに)要求することはしなかった。

しかし、アラブ地域で最も貧しい国であるイエメンが、ガザ停戦を実行させるためのテコとして紅海航路を封鎖するという道理にかなった行動をとったが、欧米列強はそれを理由に、今度はイエメンを突然空爆した。イエメンの人々は、1948年のジェノサイド条約に基づき、パレスチナ人・ジェノサイドを防ぐために連帯して行動する権利を行使しているのだ。

このため、西側諸国はガザでのイスラエルの犯罪に武器を供与し、容認し、正当化するだけでなく、パレスチナ人を支援するために行動を起こしたイエメンなどの他の国に対して、イエメンを攻撃することで自らの犯罪行為を倍加させている。

紅海の海運危機は、イエメンが主張しているように、ガザに停戦を呼びかければ簡単に回避できる。では、なぜ西側諸国は応じないのか?結論から言えば、彼らはガザでのジェノサイドを止める気がないのだ。イスラエル政権は、地政学的に重要な中東において、アメリカと西側の帝国主義の砦である。1948年のイスラエル発足以来、米英の新植民地主義的詭弁のもとで何十年にもわたって行なわれてきたように、イスラエルは事実上、殺人を犯しても逃げ切ることを実質的に命じられているのだ。

はっきりさせておこう。スコット・リッターが説明しているように、アメリカとその番犬イギリスはイエメンに攻撃を仕掛ける法的権利を持っていない。これらの西側諸国が犯しているのは、3300万人の人口の半分以上が食糧援助に頼っている国に対する犯罪的な侵略行為である。イエメンの困窮は、2015年から2022年にかけて、アメリカやイギリス、そしてフランスが、彼らのお抱えであるサウジアラビアとアラブ首長国連邦とともに、アンサール・アラー(フーシ派)政権を追放するために行なった空爆の直接的な結果である。

米国とその西側の新帝国主義的パートナーの堕落は目に見えている。彼らが主張する道徳的権威は破綻している。これらの大国は無法ならず者国家にすぎず、その威勢のいい「ルールに基づく世界秩序」は、世界の他の地域を略奪するための一方的な蛮行と盗賊行為のための厚かましい隠れ蓑なのだ。

米国のトップ外交官であるブリンケンは今週、毎年恒例の西側エリート・サミットのためにダボスにいた。そのサミットは、いまや見せかけだけのパロディと化している。ブリンケンは、ガザについて、そしてその苦しみがいかに「彼の心を痛める」ものであるかを説いていた。この非人間的なナルシストの話を聞くことは、道徳的な良識と一般的な知性に対する冒涜だ。

彼の英国の交渉相手であるデイビッド・キャメロン卿(原文のママ)もスイスのアルペン・リゾートで国際法と安全保障について議論していた。キャメロンは、ロシアのプーチン大統領をアドルフ・ヒトラー、ロシアをナチス・ドイツになぞらえて、現在の世界情勢は1930年を彷彿とさせると主張した。キャメロンは歴史をひっくり返した。正しい比較対象は欧米列強とナチス・ファシズムだ。

アメリカやイギリス、そしてその他のヨーロッパ諸国は、イエメンを空爆しながらガザでのジェノサイドを煽り、ロマン・シュケビッチやステパン・バンデラのような第二次世界大戦の第三帝国協力者を公然と崇拝するウクライナのネオナチ政権を後押ししている。

ダボス会議の山頂での催しに出席したウクライナの傀儡大統領ウラジーミル・ゼレンスキーは、いつものように、さらに数十億ドルの資金援助と軍事援助を懇願した。アメリカ主導の対ロシア代理戦争は、50万人のウクライナ兵士の死と、2000億ドルにものぼる西側の税金の無駄遣いを引き起こした。ウクライナの年金受給者や、女性、そして障害者は、西側が支援するキエフ政権が助長した虐殺に加わるために、今や通りから引きずり出されている。

ガザやイエメン、そしてウクライナにおける大規模犯罪は、西側の「ルールに基づく秩序」 と切っても切り離せない。同じ根の大義から発する客観的な教訓なのだ。すなわち、米国を頂点とする西欧帝国主義体制である。

世界はもう戻れないところまで来ている。欧米列強の欺瞞は見事に露呈し、もはやだれもそれを擁護できない。欧米の帝国主義的建前は、その本質的な腐敗によって崩壊しつつある。今は危ういときだが、厳然たる真実は、世界を覇権主義と西欧エリート主義権力の体系的暴力から解き放つことができるときでもあるということだ。

フーシ派は「正しいことをしているから」罰を受けているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Are the Houthis Being Punished for 'Doing the Right Thing'?
筆者:マイク・ホイットニー(Mike Whitney)
出典:The Uns Review  2024年1月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月8日


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「ジェノサイドを止めようとしない者は人間性を失っている」モハメド・アル・ブカイティ、フーシ派報道官


中東での出来事は制御不能になっている。先週、米国はイエメン本土のフーシ派拠点を7回攻撃し、フーシ派は紅海で商船と米軍艦に対して5回攻撃を開始した。同時に、イランはシリア、イラク、パキスタンの拠点に複数の攻撃を開始し、イスラエルはレバノンとダマスカスの両方の標的を攻撃した。火に油を注ぐ形で、イスラエル国防軍はガザに住むパレスチナ人に対する容赦ない攻撃を続け、新たに多数の死傷者を出している。つまり、中東全域で軍事活動が急激に活発化し、着実に増加しているのだ。これは、私たちがここ数週間見てきた低強度の紛争が、より暴力的で広範囲にわたる予測不可能なものに爆発しようとしていることを示唆している。多くの専門家は、私たちは本格的な地域戦争の瀬戸際にあると信じているが、最近の展開を考慮すると、それは避けられないかもしれない。以下はワシントン・ポストの記事からの抜粋だ。

バイデン政権は、10日間にわたる空爆でフーシ派による海上通商攻撃を阻止できなかったことを受け、イエメンのフーシ派を標的とした継続的な軍事作戦計画を策定している。

当局者らは、この作戦がイラク、アフガニスタン、シリアで過去米国が仕掛けた戦争のように何年にもわたって続くとは予想していないと述べた。同時に彼らは、イエメンの軍事能力がいつ適切に低下するのか、終了日を特定したり、推定したりすることはできないことを認めている…。

これまでのところ、攻撃による被害は米国よりも欧州に大きい。また、フーシ派の作戦により、世界の海運地図は形を変え始めている。一部の企業は、アフリカ南部沖合の喜望峰周辺に船舶の航路を変更することを選択し、BP社やシェル社などの大手石油会社は紅海を通る輸送を停止した。

「何が起こるかを正確に予測することは不可能ですし、この先どんな作戦が取られるのかを予測することももちろん不可能です。このような高度な能力を持つテロ組織が、国際的な要衝を通る海運を実質的に停止させたり、支配したりすることは許されないという原則は、我々が非常に強く感じていることです」と一人目の米当局者は述べた。

米当局者らがさらに懸念しているのは、フーシ派に攻撃をおこなえば、出口戦略がほとんどなく、主要同盟国からの支援も限られたまま、米国を紛争に追い込んでしまうという状況だ。注目すべきことに、米国の最も強力な友好湾岸諸国は、米国の作戦への支持を差し控えている。湾岸地域における米国の重要な同盟国であるカタールの首相は、西側諸国の攻撃では暴力は止まらず、地域の不安定化を招く可能性があると警告した。フーシ派が戦い続けると誓う中、米国は継続的な作戦の準備をしている(ワシントン・ポストより)


ワシントン・ポストの記事には新しい情報はほとんどないが、いくつかの重要な点を明確にするのに役立つ。

①米国は現在、国連安全保障理事会、米国議会、米国民によって承認されていない別の「持続的な軍事作戦」(戦争)に巻き込まれているということ。わが国の国内政治が、国が戦争をするかどうかを大統領だけで決定できるところまで悪化しているのは明らかだ。そして、驚くことではないが、こうした戦争は常に、億万長者の支配者層の利益の促進に繋がっている。これらの億万長者らは、選挙で選ばれた政府の影から政策を操っている。実のところ、戦争を起こす原動力はすべてこれらの億万長者が持っているのだ。

②空爆だけではフーシ派の軍事能力は「低下」しないため、「作戦は何年も続くだろう」。 (だから、アフガニスタンと同様に、この先さらに20年間を擁するとの覚悟が必要)。

③政権がフーシ派との直接対話を避けてきた本当の理由は、「テロ組織が......重要な国際的海路を通る海運を支配することは、単純に容認できない」からだ。これは、米国政府が対等とみなさない相手との交渉を拒否していることを暗黙のうちに認めている現れだ。したがって、フーシ側にとって利用可能な唯一の選択肢は、「攻撃をした後に質問する」ことなのである。

④興味深いことに、ワシントン・ポスト紙は「フーシ派は、出口戦略が乏しく、主要同盟国からの支援も限定的な紛争に米国を突き落とした」と認めている。記者が付け加えるべきだったのは、現在の戦略のすべてがいわゆるパウエル・ドクトリン*に違反しているということだ。 達成可能な明確な目標もなく、危険性と費用も十分に分析されておらず、他の非暴力的な選択肢がすべて出尽くしたわけでもなく、もっともらしい出口戦略もなく、米国民に支持されている行動でもない、米国が広範な国際的支持を得ているわけでもなく、重要な国家安全保障上の利益が脅かされているわけでもない。バイデンの外交政策団は、パウエル・ドクトリンの主要な教訓をすべて無視したのだ。その結果、計画も最終目標も戦略目標もなく、イエメンに戦争を仕掛けるというこの計画は、おそらくここ最近で最も衝動的で思慮の浅い作戦となった。
*<span style="font-size:x-small;">パウエル国務長官がベトナム戦争の経験から説いた武力行使の原則。軍事力の行使は、死活的な国益が脅かされた際の最後の手段であると規定。実行する場合は、目的を明確化し、圧倒的に優位な戦力を投入すべきだとする。(英辞郎)

この計画がうまくいくという保証も全くない。実際、この攻撃により、壮大な反撃が加えられ、もっとずっと大きな危機を招くと考えられる要素がいくらでもある。オンライン・ニュースサイトのレスポンシブル・ステートクラフト(RS)の記事からの以下の抜粋をお読みいただきたい。

ここでの真の脅威は、米国の空爆の継続による戦争の激化であると言えよう。実際にその空爆で人々が亡くなっているのだから。当RSがこのサイトで何度も報じているように、フーシ派は戦闘を強化し、彼らの挑発に対する西側の反応によってさらに勇気づけられている。 ......多くの現実主義者の声は、報復的暴力の負の連鎖に再び陥ることの愚かさを批判している。そうなれば真の軍事的危機に繋がる可能性が生じるからだ。複数の米国軍人が殺害されたことを受けての攻撃だとしても、だ。

米国に拠点を置く政策研究所ディフェンス・プライオリティの上級研究員であるベン・フリードマンは以下のように述べている:「攻撃はうまくいかない。 フーシの能力を十分に低下させることはできないし、海運への攻撃を止めることもできない。明らかに無謀なことをなぜするのか? ちょっと頭を冷やせばわかることだが、効果のない空爆をしなければならないという法などどこにもない。 私たちには、無意味な暴力を用いないという選択肢が常にあるのだ」。 アメリカはイエメンを再び攻撃したが、フーシの攻撃は続いている。(RSの記事)



サウジアラビアによる8年間にわたる執拗な空爆がフーシ派を強化することにしかならなかったという事実があっても、同じことを繰り返そうという米政権の熱意は衰えていない。バイデンは、同じ政策が異なる結果を生むと確信している。しかし、それは「狂気」の定義ではないだろうか? そして、これまで指示されてきた方法が実際に機能した証拠がどこにあるのだろうか: アフガニスタン? イラク? シリア? リビア? ウクライナ? これらは、バイデンに正しい道を歩んでいると確信させる「軍事的勝利」の輝かしい例なのだろうか?

しかし、たとえバイデンのチームが首尾一貫した軍事戦略を持っていたとしても、現在の方策には根本的な問題がある。米国は、ジェノサイド条約を実施しようとしている人々とともに行動すべきであり、敵として扱うべきでない。フーシ派は、ガザにおけるイスラエルの略奪に対して建設的かつ(今のところ)非殺傷的な方策をとっている。この方策は、ジェノサイドの犯罪の防止及び処罰に関する条約第1条に合致している。同条約には次のように明記されている:

締約国は、ジェノサイドが、平時であるか戦時であるかを問わず、国際法上の犯罪であり、その防止と処罰を約束することを確認する。


紅海を通過するイスラエル関連の商業船をフーシ派が封鎖しているのも、「保護する責任」(R2P)の信条に沿ったものである。R2Pは「史上最大の首脳の集まりであった2005年の国連世界サミットにおいて全会一致で採択された」もので、ちなみにこの文書には米国の代表も署名している。以下はその条項からの短い抜粋である:

個々の国家は、自国の住民をジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化および人道に対する罪から守る責任を有する。国際社会はまた、国際連合を通じて、憲章第6章および第8章に従い、適切な外交的、人道的その他の平和的手段を用いて、ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化および人道に対する罪から住民の保護を助ける責任を有する。

柱1
すべての国家には、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、民族浄化という4つの集団残虐犯罪から国民を守る責任がある。


柱2
より広範な国際社会は、個々の国家がその責任を果たすことを奨励し、支援する責任がある。

柱3
ある国家が自国民の保護を明らかに怠っている場合、国際社会は、国連憲章に従い、適時かつ断固とした態度で、適切な集団行動をとる用意がなければならない。



R2Pとは何か?「保護する責任のための世界センター」編より

フーシ派がイスラエル行きの船舶を一方的に封鎖することについて、国連安保理の承認を得ていないのは事実だが、それは以前の停戦決議を阻止したように、米国がそのような措置をすべて阻止しているからである。しかし、国際社会が米国の妨害によって基本的な人道規範を実施できないからといって、人々や国家がその義務を免れるわけではない。国連の承認があればそれに越したことはないが、絶対に必要というわけではない。より高い優先順位は、罪のない人々の命を救うことである。フーシ派のモハメッド・アル・ブカイティ報道官が最近ツイッターで発表した声明の要約はこうだ:

虐げられた人々を支援するために行動を起こすことは...道徳性があるかどうかの真の試験紙であり...ジェノサイドという犯罪を止めるために行動を起こさない者は...人間性を失っているということです。

道徳...価値観は...人種や宗教によって変わるものではありません。私たちは、パレスチナ人が受けているような不当な扱いを他の集団が受けていても、宗教や人種に関係なく、支援するために行動を起こします。

イエメン国民は......すべての国と国民の尊厳、安全、安全を保証する公正な平和を達成するために尽力します。
モハメッド・アル・ブカイティ。@M_N_Albukhaiti


フーシ派が普遍的に認められている正義と人道の原則に従って行動していると考えるのは、私たちの考えが甘いのだろうか?フーシ派が理性的で、封鎖とガザでの猛攻撃を同時に終わらせる協定を交渉できる相手だと考えるのは間違っているだろうか?もしそうなら、バイデンはなぜ彼らの港や都市を砲撃する代わりに、外交的手段で対応しないのだろうか?

そして、念のために言っておく:政権とその盟友である報道機関は、フーシ派による商業船への「無差別」攻撃のために紅海の交通量が歴史的な低水準にあるとほのめかし続けている。しかし、それは事実ではない。月曜日(1月22日)、イランのホセイン・アミール=アブドラヒアン外相は(国連を訪問した際に)、紅海の交通量は、イスラエルに関連する船舶の航行が妨げられているという事実を除けば、比較的正常であるという証拠書類を提出した。つまり、西側報道機関は、戦争への突入を加速させるために、米国民に意図的に誤認させているのだ。以下はプレスTV(イラン国営放送)の記事である:

イラン外相は、米・英がイエメンに対する攻撃をおこなった当時、約230隻の商船と石油タンカーが紅海を航行していたことが衛星画像からわかった、と指摘した。

「つまり、占領しているイスラエル政権が運営する港に向かう船だけが阻止されるというイエメン側の指摘を彼ら(米・英)がよく理解していた、ということです」とアミール=アブドラヒアン外相は述べた。さらに、イランはイエメンへの攻撃に対して米国側に厳重に警告した、と同イラン外相は述べた。 (プレスTVより)


イラン外相の発言は、X上で発表されたフーシ派の公式声明でも強調されている:

イエメン海軍は、封鎖とガザ侵攻の停止まで紅海での活動を継続するという立場を堅持しています。その結果、紅海における海上活動や航行は、イスラエルに所属する船舶やイスラエルの港に向かう船舶を除くすべての船舶に対して安全におこなわれています。イスラエルと関係のない船舶については、以下のチャンネル(無線および電子メール)を通じて、航行中ずっとイエメン当局との不断の連絡を維持することが極めて重要です。イエメン軍は、ジェノサイドを防止し、その責任者を処罰することを目的とする国際的な法的原則を厳守して作戦を遂行することに全力を尽くすことを改めて表明します。さらに、紅海およびより広範な地域における、妨げのない交通の流れを促進し、海上安全保障を維持するという立場を強調します。イエメン海軍 の「自国の船舶が標的にされないよう、自国の船舶を特定するために必要なこと」をお読みください。(フーシ派報道官より)


フーシ派が商業船舶を無差別に攻撃しているという考えは、「嗅覚検査」に合格しない。もっとありそうなのは、イスラエルの敵を悪者扱いするために、そんなふうな話に変えられた、という筋書きだ。

最後に、フーシ派が道徳的に優位に立っただけでなく、米国とイスラエルが無謀で偽善的な行動をとり、自国の利益を損なっていると主張するティム・アンダーソンの短い動画の中身を勝手に書き起こさせてもらった。時間を費やして見る価値があると思う:

米国は、フーシ派を外国テロ組織に指定したが、その理由は、イスラエルのジェノサイドを止めようとしているからだという。アンサール・アラー(別名フーシ派)による封鎖の目的は、国連ジェノサイド条約第1条を守ることである。イエメンは国連ジェノサイド条約の加盟国であることから、フーシ派は、イスラエルがジェノサイドを犯している間、イスラエルへの武器やその他の物資の輸送を阻止する義務がある、とフーシ派は主張している。米国が「テロリスト」呼ばわりしているのは、ジェノサイドをおこなっているほうではなく、ジェノサイドを止めようとしているほうだ。 ...

アンサー・アラーをテロリストに指定することは、米国が現在キューバとベネズエラに対する2つの一方的な経済封鎖を実施していることからも、非常に皮肉なことである。 ...そして、アンサー・アラーによるイスラエル封鎖でまだ誰も死んでいないのとは異なり、米国による封鎖は何千人もの人々を殺している......アンサー・アラーはジェノサイドを阻止するために封鎖を利用しているが、米国の封鎖は対象国を飢えさせ、集団で罰することを目的としており、ジェノサイドの一形態であるとみなされうるものだ。

アンサー・アラーが罰を受けているのはテロ行為が理由ではない。イスラエルの封鎖がうまくいっているから罰せられているのだ。イスラエルは99%の商品を海上輸入している。イスラエルのエイラート港はフーシ派によって封鎖され、85%の活動低下が見られる。 海運会社は上昇した物価とますます希少化している輸入品の費用を消費者に転嫁しようとしている。 ...この戦争はイスラエルにとっては経済不況を招くものになっている。11月に実施された調査によると、イスラエルでは3社に1社の企業の操業率が20%以下に落ちこんでおり、半数以上の企業が売上が50%に減じている。労働省によれば、イスラエル人労働者の18%が戦争に招集され、イスラエルの労働力に大きな穴が空いた、という。100万人以上のイスラエル人が国外に流出し、観光業は崩壊し、企業投資は落ち込み、イスラエル財務省は第4四半期のイスラエルのGDPは15%減少すると予測していて、さらに、この戦争はイスラエルに総額580億ドル(約8兆6000万円)の損害をもたらすという。 ...

国務省の記録によれば、何十年もの間、米国の支配者層は紅海の支配権を失うことを懸念していた。そして2015年、米国はサウジアラビアがアンサール・アラーに対しておこなったジェノサイド戦争に対して武器を与え、資金を提供し、支援した。この戦争はイエメンの人口の3分の2を飢餓の淵に追いやり、人類史上最悪のコレラの大流行を引き起こした。しかし、それでもアンサール・アラーを倒すことはできなかった。そして今、ほんの数年前まで米国の支援による大虐殺に直面していたイエメンの人々が、ガザにおける米国の支援による大虐殺に対して、最も破壊的な行動を起こしている。これはもちろん、米国にとって屈辱的なことだ。

米国がネルソン・マンデラとその支持者を「テロリスト」と見なしたのは、それほど昔のことではない。その後、マンデラらは南アフリカのアパルトヘイトを打ち破った。その意味で、今回、フーシ派勢をテロリストに指定したことは、この非常に長い傾向の継続にすぎない。テロリズムとは高度に政治化された用語である。もちろん、アパルトヘイト国家とその支持者は、アパルトヘイト国家を終わらせようとする試みをテロとみなすだろう。しかし、パレスチナや中東では、本当のテロリストは、病院や学校、近隣全体を絨毯爆撃している者たちである。すなわち、イスラエルと米国だ。



ガザへの戦争で、ジェノサイド・カルト集団としてのシオニズムの本性を露わにしたイスラエル

<記事原文 寺島先生推薦>
How Israel’s War on Gaza Exposed Zionism as a Genocidal Cult
筆者:ジョセフ・マサド(Joseph Massad)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年1月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月7日


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2024年1月11日、オランダ・ハーグで、国際司法裁判所での南アフリカによるイスラエルへのジェノサイド提訴に関する審理に反対するデモで、イスラエルの旗を振るデモ参加者(Robin Utrecht/AFP)

問題はもはや、イスラエル政府が人種差別的で大量虐殺的かどうかではなく、パレスチナ人に対する犯罪を支持する多数のイスラエル系ユダヤ人もまた、この表現に当てはまるかどうかである。


2022年12月にベンヤミン・ネタニヤフ率いるイスラエルの現内閣が誕生して以来、西側の主流派やイスラエルの政治的野党の間でさえ、この内閣がユダヤ人至上主義的で人種差別的な政権であるという意見の一致はあった。

イスラエルのユダヤ人選挙民の大多数の好みを明確に表現したこの政府を、イスラエル史上「最も極端」「最も原理主義的」「最も人種差別的」と評するのが一般的になった。また、イスラエル「初のファシスト」政権と言われることもあった。

現政権が誕生する2年前、歴史的に親イスラエル派であった西側の人権団体が、イスラエルを建国以来の人種差別的な「アパルトヘイト」国家であると断定していた事実はさておき、である。パレスチナ人とその支持者たちもまた、少なくとも1960年代から、イスラエルを表現するのにこのレッテルを使ってきた。

国際的な非難の対象となったのは、パレスチナ人に対する現在進行中のジェノサイド戦争を開始し、これまでに10万人以上のパレスチナ人を殺傷し、200万人以上を強制移住させた政府である。

しかし、この全く同じ人種差別的な政府とそのジェノサイド戦争は、米国とそのヨーロッパの同盟国が支援し、武器を与え、資金を提供している。これらの国々は、初めの頃は、自分たちも(イスラエルを)批判していたことも忘れ、臆面もなくイスラエルの犯罪行為の数々を正当化している。ユダヤ人入植地はアパルトヘイト体制だとの批判からイスラエルを弁護していた以前に完全に舞い戻ってしまったのだ。

しかし、議論の焦点はだんだん、イスラエル政府が人種差別主義者、ファシスト、またはジェノサイドを行なっているかどうかではなく、イスラエルのユダヤ人の多数がこれらの特徴を持つのではないか、そして現政府はこういったイスラエルのユダヤ的政治文化が表面化したものに過ぎないのではないか、に移っている。


「もはや少数派ではない」

ミドル・イースト・アイ紙編集長のデビッド・ハーストが最近言っていることだが、イスラエルのユダヤ人(兵士や歌手、芸術家、そして政治家を含む)の間でジェノサイド的人種差別を表明している人々は「もはや少数派ではありません。彼らはイスラエルの主流派です。パレスチナ人について語るとき、彼らはジェノサイド支持者、人種差別主義者、ファシストになります――臆面もなくそうしているのです。彼らは鼻高々に人種差別を思い、冗談を言い、それを隠そうともしません」。

シオニスト運動はその発足以来、パレスチナの先住民であるパレスチナの民族浄化を常に目指してきた。


イスラエル・デモクラシー研究所とテルアビブ大学が行った世論調査によると、イスラエルによるガザへの大規模な空爆が始まってから1カ月以上が経過した時点で、イスラエル系ユダヤ人の57.5%が「イスラエル国防軍(IDF)のガザでの火力は少なすぎる」と答え、36.6%が「IDFは適切な火力を使っている」と答え、「IDFの火力は多すぎる」と答えたのはわずか1.8%だった。

イスラエルのジャーナリストであるギデオン・レヴィ(Gideon Levy)は、多数のイスラエル・ユダヤ人がジェノサイド賛成意見を持っていることやパレスチナ人を民族浄化することを支持する見解に戸惑ったようだ。「それがイスラエルの真の姿であり、10月7日のハマスの攻撃がジェノサイド正当化を表面化させたのか、または10月7日の攻撃が本当に状況を変えたのか、どちらが真実かわかりません」と彼は言った。

しかし、シオニスト運動がその発足以来、人種差別主義を公言してきたことや、パレスチナからパレスチナ原住民を民族浄化しようとしてきたという周知の事実を考えれば、レヴィの反応は驚くべきものである。

イスラエルのマスコミは、イスラエルが計画しているガザのパレスチナ人の民族浄化と、エジプト領シナイへの追放の可能性を、「ガザの人々に希望と平和な未来を与えるのに、地球上で最も適した場所のひとつ」と表現し、素晴らしいものであるとする、一見「合理的」な記事を掲載している。

しかし、それだったらイスラエルのユダヤ人入植者たちは、彼らの権利と特権が保護されているアメリカやヨーロッパ、特にドイツに自発的に移住したらいいのだ。この提案はおそらく可能だし、また同様な合理性もある。実際、この3カ国は「(イスラエル・ユダヤ人に)希望と平和な未来を与えるのに、地球上で最も適した場所」である。

特にイスラエル政府高官や知識人たちは、自分たちの住んでいる場所は、「悪い」または「厳しい」、さらには「ジャングル」と言っているからなおさらだ。ヨーロッパやアメリカは非常に安全性の高い地域であり、(パレスチナよりは)断然いい。結局、ヨーロッパは「庭園」だが、「残りの世界は大半がジャングル」と、欧州連合の外交政策担当者であるホセップ・ボレルを昨年有名にした発言にもあるとおりだ。

EUのドイツ人議長ウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)は、「ユダヤ文化はヨーロッパの文化」であり、「ヨーロッパは自身のユダヤ的性格を重視しなければならない。「ユダヤ的生活がヨーロッパで再び繁栄するように」と強調している。

このようなイスラエル・ユダヤ人の自発的な動きによって、そのうちの100万人以上がすでにヨーロッパとアメリカのパスポートを持っているので、パレスチナ人(そしてより広くは中東の人々)は、1880年代以来、特に1948年以降、シオニストの植民地化が地域の人々に負わせた暴力と戦争を免れることになるだろう。

おそらく、最近報道されたように、イスラエルとその西側スポンサーが追放されたパレスチナ人を受け入れるよう「コンゴ」やカナダとこそこそ交渉するよりも、国連とアラブ諸国が西側諸国にイスラエル系ユダヤ人を受け入れるよう渾身の力を振り絞って働きかけたほうがいい。


暴力的なカルト

最近の世論調査や分析により、イスラエルのユダヤ人市民の圧倒的多数がパレスチナ人に対して憎しみやジェノサイド的な態度を持っていることが明らかになった。パレスチナ人のヨーロッパやアメリカへの移住は、そういう圧倒的多数のユダヤ人市民に幸福や安心をもたらすことになるだろう。

さらに、イスラエルが自身をそれに重ねる西洋文明と価値を守るためにパレスチナ人抹殺を正当化する人々は、西洋文明をその中心(植民地の国境線や反植民地化の抵抗が存在しない場所)から守る方がずっといいことに気づくだろう。

これに関連して、反ユダヤ主義との闘いとユダヤ人の生活の育成に関する欧州委員会のコーディネーターであるドイツ人のカタリーナ・フォン・シュナーバイン(Katharina von Schnurbein)は最近、「ヨーロッパはユダヤ的遺産なしにはヨーロッパではないでしょう」と断言した。「ユダヤ的遺産はヨーロッパのDNAの一部です。そして、ヨーロッパの機関として、私たちECはユダヤ的遺産を守り、保護し、大切にしたいと思っています。これは、反ユダヤ主義と闘い、ユダヤ人の生活を育成するためのEU戦略の究極の目標であるユダヤ人の生活を育成するための重要な面です」と同氏は付言した。

こんなきっぱりとした発言を聞けば、①1930年代や1940年代とは違って、今度はヨーロッパの扉がユダヤ人のために開かれるかもしれない、あるいは、②ナチスから逃れてきたユダヤ人難民の入国を拒否し、1939年には難民を満載した船をヨーロッパに送り返し、その多くがヒトラーの死の収容所で命を落とすことになった、そんな仕打ちをしたアメリカが、今度はイスラエルのユダヤ人を、より良い隣人として両手を広げて迎え入れるのではないか、と期待する向きもあるかもしれない。

イスラエルの精神科医の多くは、10月7日以来増加している仕事量の多さと、精神保健システムが崩壊寸前であることを理由に、すでに英国の緑豊かな牧草地へと出国している。

1948年以来、パレスチナ人に対する計り知れない虐殺や戦争に対する支持がイスラエルの社会全体および政府のあらゆる層で広まっていることは、驚くべきことではない。暴力的なカルトのメンバーと同様に、彼らの自己救済は、脱プログラムだ。これは間違いなく長くて複雑なプロセスになる。多くのイスラエルのユダヤ人にとっては、数十年にわたる洗脳を解く必要がある。

おそらく、イスラエルを離れた精神科医たちも、イスラエルのユダヤ人を安全なヨーロッパの環境で脱プログラムし、民族浄化と大量虐殺戦争への執着を取り除く手助けをしてくれるだろう。


平和な未来

一方、南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提訴したイスラエルによる大量虐殺を非難する裁判は、ホワイトハウスや西ヨーロッパ各国政府に警鐘を鳴らしている。これは、ICJがイスラエルの犯罪を告発した最新のケースに過ぎない。

1年前、国連総会は、イスラエルによるパレスチナ自治区の占領に関するICJの勧告的意見の要請を賛成87票、反対26票で承認した。反対派のほとんどは、今日、ガザでのイスラエルのジェノサイド戦争を支持している国と同じである。

ICJは来月、この件に関する公聴会を開くことになっている。また、南アフリカが最近起こした裁判については、ICJが1月11日に緊急審理を行う。



ICJは、第二次世界大戦以降、入植者植民地主義の文脈で同様の要請に直面してきた。特に1966年7月、国際司法裁判所は、リベリアとエチオピアが1962年に提出した、南アフリカの入植植民地ナミビアに関する請願を、両国に請願を提出する法的資格がないという理由で却下した。両国はかつて国際連盟に加盟しており、国際連盟は第一次世界大戦後、ナミビアの強制統治国として南アフリカを選んだ。

リベリアとエチオピアの1962年の請願は、ナミビアの法的地位を国際司法裁判所に裁定するよう求めたものだった。裁判長であるパーシー・スペンダー卿(Sir Percy Spencer)は、オーストラリアの入植地出身であり、7対7の賛否同票に対して南アフリカに有利になる決定票を投じた。この決定により、南西アフリカ人民機構(Swapo)が南アフリカのアパルトヘイト支配者に対する武装闘争を開始した。同年、総会は南アフリカの委任統治を取り消したが、何の効果もなかった。

1969年、国連安全保障理事会は、1966年の総会の南アフリカ委任統治撤回を最終的に支持した。南アフリカが国連に反抗し、撤回を拒否したため、1970年7月、この問題は国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見に委ねられた。

1971年のICJ(国際司法裁判所)の決定により、反植民地主義のSwapoとナミビア人の自決権が国際的に認められた。


1966年とは異なり、1971年6月21日に出された国際司法裁判所(ICJ)の見解は、国連の立場を完全に正当化するものであり、ナミビアの合法的な統治権は国連にあり、南アフリカは撤退しなければならないというものであった。

1966年の親植民地的なICJ判決とは対照的に、1971年の判決は、白人至上主義政権がまだ持っていた正統性の最後の痕跡を取り除いた。南アフリカがこの決定を遵守したわけではない。南アフリカを保護する西側NATO諸国は、「和平プロセス」を装った遅延戦術を臆面もなく支援し続け、白人至上主義国家への制裁を求める国連決議に拒否権を行使した。

それにもかかわらず、1971年の国際司法裁判所(ICJ)の判決は、スワポ(Swapo)の国際的な承認とナミビア人の自決権を認めることにつながった。ナミビアが最終的に1990年に独立を達成するためは解放戦争が必要だった。

つまり、イスラエルの戦争をジェノサイドとして非難するICJの決定は、残酷で血に飢えた入植者に対するパレスチナ人の闘いにとって良い前兆となるだろう。

それはすぐに解放と非植民地化をもたらすものではないが、イスラエルのユダヤ人至上主義体制解体のプロセスをかなり加速させ、パレスチナ人とイスラエルのユダヤ人をシオニズムのジェノサイド・カルトから救うことになるだろう。

________________________________________
ジョセフ・マサドはニューヨークのコロンビア大学で現代アラブ政治と知的歴史の教授を務める。著書、学術論文、ジャーナリズム記事多数。著書に『Colonial Effects: The Making of National Identity in Jordan』、『Desiring Arabs』、『The Persistence of the Palestinian Question』など: パレスチナ問題の持続性:シオニズムとパレスチナ人に関するエッセイ』、最近では『リベラリズムにおけるイスラーム』などがある。著書や論文は12カ国語に翻訳されている。

パレスチナが革命を呼び起こす

<記事原文 寺島先生推薦>
Palestine Awakens the Revolution
筆者:ナイラ・バートン(Nylah Burton)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年1月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月4日


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2023年1月13日、パレスチナ人への支持を表明し、停戦とガザでの大量虐殺の終結を求めるため、40万人以上のパレスチナ支持デモ隊がワシントンでデモ行進を行った。(写真:エマン・モハメド)

パレスチナにおけるイスラエルのジェノサイドを目撃したことで、人々は永遠に変わった。その結果、多くの人々がシオニズム反対の気持ちを固めるだけでなく、欧米全体の役割を拒否するようになった。


1961年にパトリス・ルムンバが暗殺されたとき、ラングストン・ヒューズはこう書いた。 「彼らはルムンバを埋葬した/印のない墓に埋葬した/しかし彼に印は必要ない・・・私の心が彼の墓だ/そこに印がある」 。

イスラエルが10月7日にガザでの虐殺を開始して以来、私はパレスチナの2万5千人以上の人々にとって、自分の心が墓場となるのを感じてきた。私は、世界中の人々とともに、歴史上最も多くの文書や記録が整ったジェノサイドの目撃者となってしまった。私は自分の携帯電話で、国民全体が消滅させられようとしているのを目撃したのだ。


この100日間のジェノサイドは、私の体全体の細胞を入れ替え、私を別人にしてしまった。この残虐行為を目の当たりにする前の私と今の私は違う。私の魂は、この革命(大転回)を中心に転回するようになったのだ。私はひとりではない。世界は変わった。私も変わった。

多くの人々にとって、この変化は、真実を暴くと殺されかねない場に身を置くパレスチナのジャーナリストたちの活動によってもたらされたものだ。

「パレスチナ各地にいる勇気あるパレスチナ人の若者たちが撮影し、出版した数々の英雄的な報告は、イスラエルの植民地入植計画に内在する陰惨な暴力と人種差別を見るための優れたレンズを私たちに提供してくれている」と、シカゴ在住のマナル・ファルハンは言う。彼の家族は1948年の第一次ナクバでパレスチナのアル・マルハの家を追われた。

しかし、こうした深い認識と高まる怒りは、イスラエル入植者の植民地主義だけでなく、欧米のプロジェクト全体に向けられている。


パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区中部に位置する都市ラマッラー在住の翻訳者であり、「Decolonize Palestine(パレスチナを脱植民地化せよ)」の共同設立者であるラワン・マスリは、この記念碑的な世界的変化に気づいたと言う。「この100日間は、イスラエルによるジェノサイドの残虐性を、多くの人々に、そしてすでにこれまで以上に私たちと連帯している人々に初めて暴露したと思います。これはイスラエルだけでなく、欧米の植民地覇権にとっても終わりの始まりだと思います。相当多くの人たちは、それを避けられない現実として受け入れていましたが、今では手に触れられるほど具体的に目撃しています。そんなものを現実にしてはいけないのです」と彼女は言う。


パレスチナの解放は私の解放

パキスタン系アメリカ人の作家兼ジャーナリストで、パレスチナ支援活動に携わってきたイマン・スルタンは、100日以上にわたるジェノサイドを目の当たりにしたことで、「パレスチナ人の人間性を認識することで、自分たちの人間性に気づくという覚醒につながった」と語る。

「また、資本家たちの日常の流れや華やかな場(選挙であれ、政治家たちを中心としたカルト集団であれ、有名人であれ)は事実上廃れてきていると思います」とスルタンは続ける。「そして、権力者たちは、殺人を実行するだけでなく、自分たちの殺人を正当化するようになりました」。

この拒絶感は、私たちの生活のさまざまな分野にまで及んでいる。イスラエルに経済的、政治的に圧力をかけ、占領を終わらせることを目的としたBDS(ボイコット、株の処分、制裁)は、かつて見たこともないような支持を受けている。スターバックスがパレスチナを支援しているとしてスターバックス労働組合を訴え、イスラエルのマクドナルドがイスラエル占領軍の兵士に無料で食事を与えながら虐殺を続けている映像が流れた後、ほとんどの親パレスチナ派のアメリカ人はこの2つのファーストフードチェーンでの食事をしなくなった。些細なことに思えるかもしれないが、消費主義を文化全体の柱とするアメリカ人に、その文化の最大の柱である、この2つのファーストフードの消費を止めさせることは、想像を絶することだっただろう。つまり、人々はもはや後戻りはできなくなっているのだ。

また、BDSは一覧表だけにとどまらない。人々は購入する企業を調べ、地元産や中古品を購入し、食品廃棄を制限し、パレスチナ人が経営する企業やHUDA Beautyのようなパレスチナのために生活を賭している企業をはっきりと支援している。マスリによれば、パレスチナでは数え切れないほどの人々が、もう欧米の映画やテレビは見たくないと口に出しているという。

「私がよく耳にするのは、偽善に耐えられないという言葉です」とマスリは説明する。「彼らがやり切れないのは、①(ガザの人々を)爆撃したり、飢餓状態に置くなど、これは問題だと思うことを見なければならないこと、②私たちがそういった事態に対して目隠しされたまま、通常どおりの生活が進行しているのを見なければならない、この2つです」。

パレスチナを支持する人々が増えるにつれて、ケフィーヤなどの抵抗の象徴を身に着けるだけで、仕事を失ったり、暴力や脅迫を受けたり、攻撃を受けたり、停職されたりといった悪影響を受けることが増えている。さらに、活動家として投獄される危険もあり、同盟者にとってこの闘いの危険性はますますのっぴきならないものになっている。

「多くの政府は、ガザでの即時かつ恒久的な停戦を求める民衆の最近の抗議をほとんど無視したり、パレスチナ人の人権を支持して発言すること自体を犯罪とし、処罰したりしてきたが、これは、人間の尊厳を重んじ、保護すると主張するこれらの国々が茶番であることを明確に伝えている。」とファルハンは続け、彼女自身も窓の外にパレスチナ国旗を掲げただけで不動産会社M.Fishmanから立ち退きを迫られていると付け加えた。「人々はこのことの意味を理解している;パレスチナが自由になるまでは、自分たちは本当の意味で自由ではないということ。つまり自分が望むように学び、話し、自分が望むように消費し、自分が望むように集まり、自分が望むような服を着ることができなければならない」。

「パレスチナからスーダン、コンゴ、ハイチ、ティグレ州まで、私たち全員が自由になるまで、私たちの誰も自由ではない!!!」 と書かれた抗議のサイン。アカウント@axmedamiinmaxによってtwitter/xで共有された。


団結した世界VS欧米

世界の最高裁判所とされるハーグの国際司法裁判所において、南アフリカがイスラエルを提訴したことは、この欧米の植民地覇権主義に真っ向から挑戦するものであった。ネスリーヌ・マリクがガーディアン紙に寄稿したように、この裁判は、イスラエルによる75年にわたる血なまぐさい占領と現在の大量虐殺を非難するだけでなく、西側諸国が道徳、論理、ニュアンスの保護者であるという悪質な嘘に挑戦している。「ICJの事例は、多極化した世界において、いかに西側の論理が薄れ、その説得力が衰えているかを示している」とマリクは書いている。

パレスチナの側に立っている国々のほとんどが、西側世界に属さないことが指摘されている。ドイツが1904年から1908年にかけて20世紀最初の大量虐殺を行ったナミビアは、イスラエルを支持するドイツを非難した。イエメンのアンサール・アラー(通称「フーシ派」)は、イスラエルへの海運を妨害する勇気ある行動をとり、報復として首都が米英に空爆された際には、引き下がることなく攻撃者にも妨害を拡大した。この呼びかけに参加する強力な西側諸国がないことに絶望するのではなく、私や私の同志たちは、これをグローバル・サウスの革命だと考えている。彼らは私たちを打ち負かすことはできない。なぜなら、私たちの仲間は地理的にグローバル・サウスにいるだけでなく、西側諸国にもいるからだ。奴隷にされた者、避難民、先住民、難民の子どもたちであり、私たちの拒否の声はとても大きく、世界は私たちの声を聞いている。私たちの悲鳴を彼らにとって耐え難いものにしなければならない。

パレスチナでのジェノサイドは、現在進行中の他のジェノサイドについても認識を高めるきっかけとなった。コンゴ民主共和国では、欧米の干渉とコバルト鉱業によって600万人が殺されている。スーダンでは、アラブ首長国連邦の資金提供によるジェノサイドによって、ダルフールのマサリット人に対する急速支援部隊(RSF)/ジャンジャウィードによるジェノサイドや、スーダン武装勢力(SAF)によるスーダン全土での非アラブ人に対する超法規的殺害など、半年で9000人が殺されている。

「暴力にさらされ、攻撃される立場にあること、そしてパレスチナの大義が世界的な解放を呼びかけた。当然、人々は 「他に誰がいるんだ?」と尋ねました」と、アラブ人ではないスーダンの女性活動家で、自身と家族の安全のために匿名を希望するAは言う。

多くの人々がこのような残虐行為について認識を新たにしている今、世界的な連帯というロマンチックな物語を描くのは簡単だろう。しかし、私たちはまだそこに到達していない。そして不誠実な動きがあればそんな話には簡単には乗れない。

「人々は彼らの解放の考えに疑問を投げかけています。それが真の同盟関係の拡大という試練に耐えられるかどうかです」 とAは言う。「スーダンの場合、10月7日よりもずっと前から、教育、擁護、支援のための情報資材を作成していた地元の活動家がたくさんいました。エチオピアの北部にあるティグレ州のように、離散した人々の間で話を共有する人がほとんどいない他の運動では、真の同盟関係と、別の運動に付随するスローガンとの間の断絶があったのです」 。

暴動や、かつて経験したことのないような反乱、経済が機能しなくなるような市民的不服従行為を呼びかける人々がいる。そうしなければ、私たちはパレスチナ人を失望させ、私たち自身を失望させることになるだろう。

スルタンは、私たちが前例のない時代に生きているとはいえ、まだ長い道のりがあることに同意する。「第一世界と第三世界の間の激変はまだ埋まっていないと思う。それはまだ起こっていない。でも、これは始まりと呼べるでしょう」と彼女は言う。

アフリカ諸国であるコンゴ民主共和国とスーダンは、私たちの運動において、他の国々が受けているような認知度と世界的連帯を得るのに苦労している。「自由コンゴ」や「自由スーダン」という言葉は、私たちの抗議活動の際に付け加えられるが、これらの国に焦点を当てた抗議活動への参加者は少ない。パレスチナが道徳のリトマス試験紙であり続ける一方で、同じように抑圧されている非アラブ系アフリカ人の証言や真実を受け入れようとしない人もいるようだ。このようにわざと知らんぷりすることは、もはや許されるものではない。パレスチナから目を背け、「問題は単純ではない」と一蹴することが許されたのは何年前のことだろうか。

自己満足の時代は終わり、私たちはすべての兄弟姉妹を心に抱き、私たちの戦いの中心に据えておかなければならない。アフリカ人への抑圧が常に世界的な認識と連帯を得るのに苦労してきた世界では、言うは易く行なうは難し、かもしれないが、それはやらなければならない。そして、私たちはさらに前進しなければならない。暴動や、かつて見たこともないような反乱、経済が機能しなくなるような市民的不服従の行為を呼びかける人々がいる。そうしなければ、私たちはパレスチナ人を失望させ、私たち自身を失望させることになるだろう。


悲しみは深いが、解放は手の届くところにある

これは人間としての大きな試練であり、これに失敗すれば、私たちは存在しなくなる。これは誇張でも精神的な比喩でもない。植民地主義と資本主義が、人類がこの地球上で生きる能力を破壊する双子の悪であることは、科学的事実なのだ。ガザでのジェノサイドだけでも、イスラエル軍は3カ月間で、世界で最も気候変動に脆弱な2つの国と同量の排出物を排出した。コンゴからの資源剥奪や、イスラエルに資金を提供しイエメンに戦争を仕掛ける同じ企業や国(アメリカやイギリスなど)は、世界最大の汚染者であり、お金を手にするだけのためにこの地球上で人間が生きるチャンスを奪っている。私たちは、パレスチナだけでなく全世界を陥れている鎖を捨てなければならない。

私たちには時限タイマーがあり、それは終わりに近づいている。もし私たちが、この占領を終わらせ、世界中の私たちの兄弟姉妹を解放することなく、歴史上最も多くの文書や記録が整ったジェノサイドを結果を伴うことなしに許すなら、私たちはすべてを失うことになるだろう。

マスリは、連帯の声によって、自由は手に入れられるものだと感じたという。しかし、それを勝ち取るのは難しいことであり、イスラエルや他の西側諸国が、帝国の死に対して、私たちが決して癒すことのできない恐ろしい暴力行為を犯すであろうことも知っている。

「イエメン、ナミビア、南アフリカなどは希望を与えてくれますが、私たちの前にはまだ長く血なまぐさい道が続いています」と彼女は言う。

しかし、筆舌に尽くしがたい苦しみの中に平安を私は感じる。なぜならば、解放が間近に迫っていることを知っているからだ。永続的な平和をもたらすことで、失われたすべての人々の血の復讐を果たすことになることを私は知っているからだ。生まれて初めて、私にはそれが見える。地平線上や遠い未来ではなく、今ここに。子どもたちのためだけでなく、私のためにも。解放はここにあり、私たちは手を伸ばすだけでいい。これほど近くまで来たことはない。

私の心が墓であることをやめることはぜったいにないだろう。私は自分が目にしたものからは決して癒えることはないだろう。私は永遠に泣きつづけるだろう。それでも、私はこれほど絶望的な気持ちになったこともなく、同時にこれほど希望に満ちたこともない。初めて、私は信念を持ったのだ。

ガザにより、ヨーロッパ哲学の倫理的破綻が露呈された

<記事原文 寺島先生推薦>
Thanks to Gaza, European Philosophy Has Been Exposed as Ethically Bankrupt
ハイデッガーのナチズムからハバーマスのシオニズムまでの哲学は、「他者」の苦しみを重要視しない
筆者:ハミド・ダバシ (Hamid Dabashi)
出典:GR 2024年1月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月4日


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イラン、シリア、レバノン、トルコが、ロシアと中国に全面的に支援され、武装し、外交的に保護され、テルアビブを3カ月間、昼夜を問わず、爆撃し、何万人ものイスラエル人を殺害し、数え切れないほどの負傷者を出し、何百万人もの家を失わせ、現在のガザのように、その都市を人が住めない瓦礫の山と化す意志とやる気があったとしたらどうだろう。

ちょっと想像してみてほしい:イランとその同盟国が、テルアビブの人通りの多い場所、病院、シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)、学校、大学、図書館、あるいは実際に人通りの多い場所を意図的に標的にし、民間人の犠牲者を最大にする。イランとその同盟国は、イスラエルのネタニヤフ首相と彼の戦争内閣を探していただけだと世界に言うような状況を想像してみてほしい。

アメリカやイギリス、EU、カナダ、オーストラリア、そしてドイツは、この架空のシナリオの猛攻撃を受けたら、24時間以内に何をするだろうか?

現実に戻って、10月7日以来(そしてその数十年前から)、イスラエルの同盟国である西側諸国は、イスラエルがパレスチナの人々に行なったことを目の当たりにしてきただけでなく、軍事装備、爆弾、軍需品、外交報道をイスラエルに提供し、アメリカのメディアはパレスチナ人虐殺とジェノサイドを思想的に正当化してきたという事実を考えてみよう。

前述のような架空のシナリオは、既存の世界秩序では一日たりとも許されないだろう。アメリカやヨーロッパ、オーストラリア、そしてカナダの軍事的暴挙がイスラエルを全面的に支援している今、パレスチナ人とまったく同じように、無力な私たち世界の人々も芥子粒みたいな存在だ。これは単なる政治的現実ではなく、「西洋」を自称するものの道徳的想像力や哲学的宇宙にも当てはまる。

ヨーロッパの道徳的想像力の圏外にいる私たちは、彼らの哲学の世界には存在しない。アラブ人やイラン人、イスラム教徒、あるいはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの人々。ヨーロッパの哲学者たちにとって、私たちは、征服し黙らせなければならない形而上学的な脅威としてしか、存在論的な現実を持たないのだ。

イマヌエル・カントやゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルに始まり、エマニュエル・レヴィナスやスラヴォイ・ジゼックに至るまで、西洋哲学者らから見れば、私たちは東洋哲学者が解読する使命を負った奇異な存在であり、物であり、知ることのできる対象である。そのため、イスラエルやアメリカ、ヨーロッパの同盟国によって私たちが何万人殺されても、ヨーロッパの哲学者たちの心は少しも動じないのだ。

関連記事:イスラエル-パレスチナ戦争:イスラエルの復讐対象はすべてのパレスチナ人。


聴衆としての欧州部族

もしそれを疑うなら、ヨーロッパを代表する哲学者ユルゲン・ハバーマスと彼の同僚数人を見たらいい。彼らはあきれるほどの卑劣な野蛮さで、イスラエルがパレスチナ人を虐殺していることを支持している。問題は、現在94歳のハバーマスを人間としてどう考えるかではなくなった。問題は、社会科学者、哲学者、批判的思想家としての彼をどう考えるかだ。彼の思想内容は世界にとって重要性を持っているのだろうか、いや重要性を持つことなどあったのか?

世界は、もう一人のドイツの主要な哲学者マルティン・ハイデッガーについても、ナチズムとの有害な関係に照らして同様の疑問を投げかけている。私の意見では、ハバーマスの暴力的なシオニズムと、彼の哲学全体がもたらすと思われる重大な結末について私たちは今、同様の質問をしなければならない。

もしハバーマスがパレスチナ人のような人々に対する道徳的想像力の余地を微塵も持っていないのであれば、彼の哲学が目指すものは、他の人類、つまり彼の直近の聴衆としての欧州部族を超えたものに何らかの関わりを持つと考える理由はあるのか?

イランの著名な社会学者アセフ・バヤトは、ハバーマスへの公開書簡の中で、ガザの状況に関して彼は「自己矛盾を起こしている」と述べた。失礼ながら、私はそうは思わない。パレスチナ人の命を軽視するハバーマスの姿勢は、シオニズムと完全に一致していると思う。イスラエル国防相ヨアヴ・ギャラントが公言しているような、ヨーロッパ人以外は完全な人間ではない、あるいは「ヒト的動物」であるという世界観と完全に一致しているのだ。

パレスチナ人をこんな風に完全に無視してしまうのは、ドイツとヨーロッパの哲学的想像力に深く根ざしている。一般的な認識として、ホロコーストの罪悪感から、ドイツ人はイスラエルへの強固な支持を築き上げてきたと言われている。

しかし世界の他の国々から見れば、南アフリカが国際司法裁判所に提出した堂々たる文書が証明しているように、ドイツがナチス時代に行なったことと、シオニスト時代に現在行なっていることの間には完全な一貫性がある。

ハバーマスの立場は、シオニストによるパレスチナ人の虐殺に加担するというドイツの国家政策に沿ったものだと私は信じている。それはまた、アラブ人とイスラム教徒に対する人種差別的、イスラム嫌悪的、外国人嫌悪的な憎悪と、イスラエルの入植者植民地の大量虐殺を全面支持する「ドイツ左翼」なる集団とも軌を一にしている。

ドイツが今日抱えている問題はホロコーストの罪悪感ではなく、ジェノサイドへの郷愁だと私たちが考えても許してもらうしかない。ドイツは過去の100年間(この100日間のことだけではない)にわたってイスラエルがパレスチナ人を虐殺してきたことを、自分の代わりにやってくれているという思いにふけってきたのだから。


道徳的堕落

ヨーロッパの哲学者の世界観に対して一貫して指摘されるヨーロッパ中心主義という非難は、単に彼らの思考における認識論的欠陥に基づくものではない。それは道徳的堕落の一貫した兆候である。私は過去に何度も、ヨーロッパの哲学的思考とその最も著名な代表者の根底にある矯正不能な人種差別を指摘してきた。

この道徳的堕落は、単なる政治的失策やイデオロギーの盲点ではない。彼らの哲学的想像力に深く刻み込まれている。それは矯正不能なまでに部族的だ。

ここでは、私たちは栄光のあるマルティニークの詩人、エメ・セザールの有名な言葉を振り返らなければならない。

「そう、ヒトラーとヒトラー主義の歩みを臨床的に、詳細に研究することは価値があるだろう。そして、20世紀の非常に優れた、非常に人間主義的で、非常にキリスト教的なブルジョワに次のような事実を明らかにすることは価値があるだろう。

ヒトラーは、①自分も気づかないうちに、その内部に存在しており、②自分の心の中の悪魔であり、③ヒトラーを非難すると、自分に一貫性がなくなり、④根本的に、ヒトラーを許せないのは、その犯罪自体のためでも、人間に対する犯罪のためでも、人間をそんな風に屈辱的に扱ったためでもない、それは白人に対する犯罪であり、白人を屈辱したのであり、それまでは(アラブ人、インド人、アフリカ人)のためだけに用意されていたものをヒトラーはヨーロッパ植民地主義的手続きに適用した。


パレスチナは今日、この文章で引用されている植民地時代の暴虐の延長だ。ハバーマスは自身がパレスチナ人の虐殺を支持していることが、彼の先祖がナミビア共和国で行なったヘレロ・ナマクア虐殺と完全に一致していることがわからないようだ。土中に頭を突っ込めば事実が消えてなくなると思いこむといわれる七面鳥さながらに、ドイツの哲学者たちは自らのヨーロッパの妄想の中に頭を突っ込み、世界が彼らの真の姿を見ていないと思い込んでいる。

私見では、ハバーマスは驚くようなことも矛盾することも何も言っていない。まったく逆で、彼は自分の矯正不能な部族主義的哲学からは一歩も外に出たことはない。自分の哲学には普遍性があると言っているのは誤りだ。

世界は今、そのような誤った普遍性意識から脱却しつつある。コンゴ民主共和国のVYムディンベ、アルゼンチンのウォルター・ミニョーロやエンリケ・デュッセル、日本の柄谷行人のような哲学者は、ハバーマスやその一派が主張した普遍性よりもはるかに正当な主張をしている。

私に言わせれば、パレスチナに関するハバーマスの道徳的破綻は、ヨーロッパ哲学とそれ以外の国々との植民地的関係における転換点を示している。世界はヨーロッパ民族哲学の誤った眠りから目覚めたのである。今日、私たちがこの解放を得たのは、パレスチナ人のような民族の世界的な苦難のおかげである。彼らの長期にわたる歴史的な英雄崇拝主義と犠牲によって、「西欧文明」の基盤にあるむき出しの蛮行がついに解体されたのだ。

*
ハミド・ダバシはニューヨーク市のコロンビア大学でイラン研究および比較文学のハゴップ・ケヴォーキアン教授を務め、比較文学、ワールドシネマ、ポストコロニアル理論を教える。近著に『The Future of Two Illusions: The Future of Two Illusions: Islam after the West』(2022年)、『The Last Muslim Intellectual: The Life and Legacy of Jalal Al-e Ahmad』(2021年)、『Reversing the Colonial Gaze: 2020年)、『皇帝は裸である: On the Inevitable Demise of the Nation-State』(2020年)など。著書やエッセイは多くの言語に翻訳されている。

我々の目標はパレスチナの窮状に焦点を当てることです―南アフリカ共和国外相

<記事原文 寺島先生推薦>
Our aim was to highlight the plight of Palestine – South African FM
国際司法裁判所は、西エルサレムに対する緊急措置についての判断を発表する予定
出典:RT  2024年1月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月28日


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南アフリカのナレディ・パンドール外相 © South African Foreign Ministry


ナレディ・パンドール外相はUbuntu Radioに対し、イスラエルに対するジェノサイド訴訟に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理を前に、南アフリカは希望を抱いていると語った。

国際司法裁判所(ICJ)は金曜日(1月26日)にハーグで会合を開き、国連のジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約違反の疑いに関して、イスラエルに対する緊急措置の可能性について議論する。17人の判事からなるICJパネルは、当日中に決定を発表する予定である。

「ICJ」という3文字は、提訴されるまで南アフリカの多くの人々には知られていなかった、とパンドールは語った。彼女によれば、主な目的は「パレスチナの罪のない人々の窮状に焦点を当てる」であり、「正義と自由が欠落していることに注意を喚起すること」である。彼女は、そのことの成否にかかわらず、「本当の分析と判断は法廷の場で明らかにされるだろう」と付言した。

関連記事:政府与党はイスラエルの人々を敵視しているわけではない。ジェノサイドに反対しているのだ―南アフリカの政治家

プレトリア(南アフリカ政府)は、今月初めの2日間の公聴会の一環として、イスラエルにガザでの軍事作戦を中止させるための予備判決を求めた。この申し立てにはイスラエルが強く反対し、この訴訟自体の却下を求めている。

ハマスが10月7日にイスラエル南部を攻撃し、ロケット弾を発射して人質を取った。イスラエル国防軍は、大規模な空爆作戦とガザへの地上侵攻でこれに応戦し、水と電気の供給を遮断した。パレスチナの保健当局によれば、戦争が始まって以来、ガザでは民間人を中心に2万5000人以上が死亡したという。イスラエルの公式統計によると、少なくとも1,139人のイスラエル人と外国人が死亡し、248人の人質がパレスチナの武装グループによる最初の攻撃で連れ去られた。



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国連の法廷(ICJ国際司法裁判所)、イスラエルに「ジェノサイドの防止」を命令

<記事原文 寺島先生推薦>
UN Court orders Israel to ‘prevent genocide’
ICJは、同時に、ガザへの人道支援を許すよう要求
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月28日


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2024年1月26日、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、南アフリカが提訴したイスラエルに対するジェノサイド裁判の評決発表に先立ち、ICJのジョアン・ドノヒュー所長(C)とICJの判事たち。© Remko de Waal / ANP / AFPBB News

国際司法裁判所(ICJ)は金曜日(1月26日)、南アフリカがイスラエルを提訴していた件に関する最初の判決を下し、イスラエルに対し、ガザでの大量虐殺を防ぐために必要なすべての行動をとるよう命じた。しかし、裁判所はイスラエルに対し、ハマスに対する軍事作戦の中止は命じなかった。

17人の裁判官で構成される裁判員団は、ハーグに本部を置く同裁判所が南アフリカの裁判を審理する管轄権を有することに同意し、プレトリア(南アフリカ共和国政府)が要求した7つの「緊急措置」を可決した。裁判員団は、イスラエルが大量虐殺を行わないよう要求することに加え、ユダヤ国家であるイスラエルに対し、大量虐殺行為を行なった軍人や、パレスチナ人の大量虐殺を公に呼びかけた高官たちを処罰するよう命じた。イスラエルはまた、すでに行われた大量虐殺行為の証拠を保全しなければならない、と判決は述べている。

裁判官団はまた、イスラエルが「ガザ地区での人命にかかわる状況に対処するため、即時かつ効果的な措置を講じなければならない」と裁定した。西エルサレムはさらに、これらの措置を遵守するために何をしているかについての最新情報を1ヶ月以内に裁判所に報告するよう命じられた。

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関連記事:我々の目的はパレスチナの窮状に焦点を当てることだった―南アフリカ共和国外相

この判決は、南アフリカの要求すべてを満たしたわけではない。「ガザ地区における、ガザに対するイスラエルの軍事行動を即座に中止する」という措置は含まれなかった。

しかし、それはイスラエルにとっても打撃となる。イスラエルは、この訴訟を「根拠のないものであり、虚偽のもの」として、裁判所に全面的に却下するよう求めていたのだ。

国際司法裁判所(ICJ)の判決は最終的で法的拘束力を持つが、それを執行する手段はない。とはいえ、パレスチナ外務省は、金曜日(1月26日)の評決を、いかなる国家も法の上に立つものではないという「重要な注意喚起」として歓迎した。

南アフリカのナレディ・パンドール外相は金曜日に、自国の目的は「パレスチナの罪のない人々の苦境を浮き彫りにすること」と「正義と自由が欠落していることに注意を喚起すること」だと述べた。この件がどうなるかは別として、プレトリア(南アフリカ政府)はすでにこれらの目標を達成したとパンドールは*ウブントゥ・ラジオに語った。
*ウブントゥ・・・Debian GNU/Linuxを母体としたオペレーティングシステム(OS)。開発目標は「誰にでも使いやすい最新かつ安定したOS」を提供すること。(ウィキペディア)

南アフリカは12月下旬に提訴し、イスラエルは「ガザのパレスチナ人を殺害し、身体的・精神的に深刻な被害を与え、身体的破壊をもたらすような生活条件を与えている」として、国連ジェノサイド条約に違反していると主張した。



ハマスの戦闘員は10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、250人近くを人質としてガザに連行した。イスラエルはこれに対し、パレスチナ武装勢力に宣戦布告し、ガザをほぼ完全に包囲した。3週間にわたる空爆の後、イスラエル地上軍は10月下旬にガザに入り、現在もハマスと戦闘を続けている。

ガザ保健省が発表した最新の数字によれば、イスラエル軍の作戦によって26,000人以上のパレスチナ人が死亡し、そのおよそ3分の2が女性と子どもだという。今月初めに発表された国連の報告書によれば、ガザ地区の生活基盤の約60%が破壊され、人口の4分の1が飢餓に苦しみ、飲料水を手に入れることができない。

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イエメンがガザの味方に。地の利を活用。

<記事原文 寺島先生推薦>
Yemen Stands for Gaza, Proving its Regional Worth
筆者:ロバート・インラケッシュ(Robert Inlakesh)
出典:Internationalist 360°   2023年12月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月27日


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ガザ地区のパレスチナ人を支援するためにイエメンのアンサール・アラー(フーシ派)がとった行動は、この集団がシオニストに対して打撃を与えただけでなく、その英雄的行為を通じて、敵対勢力から一目置かれるこの地域の強力な存在であることを証明した。


2022年1月下旬、フーシ派はアラブ首長国連邦 (UAE) に対して二度にわたる無人機とミサイル攻撃を開始した。最初の一連の攻撃は、アブダビで死傷者を出し、ドバイの近くに影響を与え、大きな衝撃となった。2回目の攻撃は、イスラエルのアイザック・ヘルツォーク大統領がUAEを訪問中に行われた。

この2回の攻撃は、首長国の指導者たちに、イエメンに対する攻撃を続ければ大きな代償を払うことになるという強いメッセージを送った。しかし、おそらくもっと重要なことは、この攻撃によって、西側の支援はイエメンの国家的任務の遂行を抑えられないこと、そしてこの地域は、西側の課題遂行を選択したアラブ政権の安定確保のために、これまで米国が提供してきた保護だけではもはや十分でないところまで来ていることが証明されたことである。

2022年初頭、フーシ派はサウジアラビア王国の経済的、軍事的に価値の高いさまざまな標的に対してミサイル攻撃や無人機による攻撃も開始した。サウジアラビアの指導部には、イエメン軍の能力が著しく向上したこと、そして新たな方程式が確立されたことがすぐに明らかになった。2022年4月までには、国連(UN)が介入し、イエメンの全国的な停戦を保証した。これで、すべての暴力を完全に停止したわけではなかったが、比較的平穏状態になり大規模な敵対行為は止まった。

欧米ではイエメン紛争はあまり報道されておらず、それゆえ欧米の企業メディアもこのことをほとんど認めていないが、フーシ派はサウジアラビア主導の連合軍が同国への攻撃を継続するのを実質的にやめさせ、サナア(イエメンの首都)に傀儡政権を樹立できるというアメリカ、イギリス、イスラエルの望みを打ち砕いた。

この背景を知ることは、今日のイエメンが直面している苦境を理解するために不可欠である。イエメンの抵抗勢力は、イスラエルが支配する「エイラート」港へ船舶を行かせないことで、シオニスト組織に対する事実上の封鎖に成功した。フーシ派は、紅海でその命令に違反した船舶を拿捕し、攻撃した。このことは、シオニストに危機的状況を引き起こし、大きな経済的影響をもたらした。この危機は、今や米国の危機となっている。米国はこれまで、イエメン国民の民衆の要求に応えようとするフーシ派の国家的任務を抑えられていない。

ロイド・オースティン米国防長官は最近、紅海でのフーシ派の行動に対抗するため、同政権が海軍連合を編成したことを発表した。要するに、ワシントンはアメリカ国民が求めたわけでもなく、議会が承認したわけでもないのに軍事介入を開始したのである。このことは重要である。というのも、もしこの海軍連合軍がイエメンに侵略行為を行えば、この地域で大規模な軍事的エスカレーションを引き起こし、アメリカを西アジアにおける別の戦争に引きずり込む可能性があるからだ。このような紛争は、アメリカ国民にも、アメリカの覇権にも何の利益ももたらさない。シオニストの利益に資するだけだ。

多くの西側諸国海軍がこの連合に参加することに同意していたにもかかわらず、アラブ諸国の中で参加を選んだのはバーレーンだけだった。エジプトやサウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦はこの連合に参加していない。バーレーンという国は、軍事的には取るに足らない国であり、英国に設置された独裁政権は、海軍機動部隊がヨーロッパだけの侵略者連合ではないと主張するために利用される、形だけのアラブ国である以外、実質的な影響を与えることはできない。

特にサウジアラビア(KSA)とアラブ首長国連邦(UAE)が、自国をミサイルの砲火に巻き込むようなアメリカ主導の戦争を望んでいないことは明らかだ。この2国はこの方程式をよく理解しており、緊張がエスカレートすれば、アメリカはこの2国の安定も確保する能力がないことを証明することになる。したがって、サヌアに樹立された政府は、抑止力という方程式を通じて、今日、新たなレベルの正当性を享受していることになる。また、ガザのレジスタンスと連帯することを公然と宣言し、イスラエルに対してミサイルを発射するために軍隊を使用する措置をとった唯一のアラブ政府でもある。

フーシ派(アンサール・アラー)が成功させているこの大きな圧力は、西側をシオニストによるガザへの大量虐殺戦争をより早く終わらせる方向に追い込んでいる。イスラエル人に対する大胆な攻撃は、ガザへの侵略が終われば封鎖も終わる、という明確なメッセージとともに、西側諸国全体が対応策を講じるために奔走せざるを得ない状況に追い込んでいる。フーシ派は連帯の行動を通じて、この地域でのイメージを高め、歴史にその名を刻んだ。そしてアメリカとイスラエル政権には無視できない棘のような存在となっている。

イエメンはイスラエルに対し、もしガザに対する大量虐殺戦争が続けば、非常に厳しい対応をすると警告した。

テレビ記者会見
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国民救済政府のイエメン国防相であるモハマド・アル=アティフィ少将は水曜日(12月27日)に、「もし敵がパレスチナ国民に対する犯罪を止めなかったり、イエメンの安全と主権を侵害しようとするならば、我々は最も厳しく、最も痛みを伴う強力な打撃を敵に与える用意がある」と述べた。

「イエメンには多くの戦略的選択肢があり、必要と判断されれば、それを取ることをためらわない」とアティフィは、同国の軍事・安全保障指導者の合同会議で述べた。

また、すべての治安部隊は、武装勢力と協力・連携して任務を遂行するため、厳戒態勢を敷いていると明言した。

イエメン軍は、戦争で荒廃したガザのパレスチナ人を支援するため、イスラエルの港に向かう船舶や占領地全域の標的に対してミサイルやドローンによる攻撃を仕掛けている。

10月7日にガザの抵抗運動が開始した軍事作戦の後、イスラエル政権が行なった軍事作戦の開始以来、ガザでは21,000人以上が殺害され、そのほとんどが子どもと女性である。

アティフィは、イスラエルによる大量虐殺に強く反対するイエメンの姿勢を、「すべての人道法と国際法に合致した宗教的・道徳的立場」だと述べた。

一方、同会議は、米国が紅海でのイエメン攻撃に対抗する米国主導の海軍連合を形成する計画を進めることに警告を発した。

イエメンの指導者たちは、「我々は、イスラエルのために海洋を軍事化したり、国際航海の安全を損ねることで生じる事態については米国に責任があると警告する」と述べた。

「(イスラエル政権による)パレスチナ人民への弾圧に対するイエメン共和国の確固とした立場を逸らそうと考える者は、誰であれその動きを阻む」とイエメンの指導者たちは述べた。

国民救済政府の内務大臣アブドゥル・カリム・アル=フーシ少将はまた、「イエメンのすべての治安部隊は、イエメンの抵抗運動アンサール・アラー(フーシ派)の指導者アブドゥ=マリク・アル=フーシの指令を実行するために、軍隊と協力して任務を遂行する準備はいつでも整っている」と述べた。

先週、アンサール・アラー(フーシ派)の指導者は、もしワシントンとその同盟国がイエメンに対して軍事攻撃を行なった場合、イエメンの軍隊は紅海にいる米軍の軍艦を標的にすることを躊躇しないと述べた。

南アフリカの弁護士らはガザ地区でのイスラエルによる戦争犯罪に加担したとして、ICJ(国際司法裁判所)に米英を提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
South African Lawyers Prepare Lawsuit Against US, UK for Complicity in Israel’s War Crimes in Gaza
出典:Internationalist 360°  2024年1月15日
筆者:アナドル通信(トルコの通信社)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月27日


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 「米国は今こそ、自らが犯した犯罪の責任を問われなければならない」と、47人の弁護士からなる一団を率い、米国と英国の弁護士らから訴訟の支援を受けているヴィカス・ヴァン・レンスブルグ氏は言う。


 南アフリカがガザでの大量虐殺を理由に国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルを提訴した後、同国の約50人の弁護士が、イスラエル軍によるパレスチナでの戦争犯罪に加担しているとして、米英両政府を相手取った別の訴訟を準備している。

 南アフリカの弁護士ヴィカス・ヴァン・レンスブルグ氏が主導するこの取り組みは、すでに連絡を取り合っている米国や英国の弁護士と協力し、犯罪に加担した者たちを民事法廷で訴追することを目的としている。

イスラエルがガザ地区に対するジェノサイドをおこなうことを可能にしたとして、ジョー・バイデンを起訴

 ここ数週間、イスラエルとその支援諸国の訴追を求める書簡を各国とICJに書き続けてきたレンスブルグ氏は、同僚たちの支援を得て、西側2カ国を提訴する準備を始めた。

 レンスブルグ氏はアナドル通信社のインタビューに対し、「米国は今こそ、自らが犯した罪の責任を問われなければなりません」と語り、米国政府と英国政府がイスラエル当局によるガザ市民に対する戦争犯罪の共犯者として裁かれる道筋を詳細に説明した。

「南アフリカによるICJへの提訴が指針となる」

 訴訟を起こすことを周囲に話すと、多くの支援を受けたとレンスブルグ氏は語った。 「多くの弁護士が訴訟に加わることを決めました。参加した人の多くはイスラム教徒ですが、私はイスラム教徒ではありません。この大義に協力する義務があると感じての行動だと思いますが、私は起きていることは間違っていると信じています。」

 イラクで起きたことはその一例であり、この問題が必要以上に重要視されなかったために、イラクで米国が犯した罪について誰ひとりその責任を追及しなかった、と彼は言った。

 しかし、今パレスチナで起きていることは、法的手続きを実行する上では理想的な展開であると人々は考えている、とこの南アフリカの弁護士は言い、「米国は、(イスラエルが)犯罪を犯すのを許すために、より多くの資金と資源を費やすことに忙殺されています」と付け加えた。

 「やめろ、とか、もう十分だ、という人は誰もいないのです」とレンズブルク氏は述べた。

 レンスブルグ氏は、南アフリカがイスラエルに対してICJに提訴したジェノサイド訴訟は、米国と英国に対する訴訟の指針となるだろうと述べ、この訴訟の結果と国連の取るべき措置に基づいて取り組みを開始する、と述べた。

いまこそ米国は責任を取らなければならない

 レンズブルク氏の考えでは、イスラエルに対するICJの裁判が南アフリカに有利に結審した場合、米国がその評決を受け入れなくても制裁を受ける可能性がある、としている。

 ICJの評決がジョー・バイデンに対する提訴を強化することになる、とレンズブルク氏は付言した。

 レンスブルグ氏は、南アフリカの同僚とともに、米英の法律事務所と連絡を取り、準備を進めている、と語った。

 ドイツが犯したジェノサイドの罪に対して、ドイツ政府が現在も賠償金を支払っていることを引き合いに出し、レンスブルグ氏はこう述べた。「米国は自ら犯した罪の責任を取らなければなりません。その責任を受け入れなければなりません」と。

 ジョージ・ブッシュ元米大統領に対しても2000年代に同様の訴訟が起こされたことを指摘し、海外でのこの法的手順も全員一丸となって協力すれば成功させることができるとみんな信じている、と同氏は語った。

 ハーグでの裁判は南アフリカがより優位な議論を展開しており、もし同裁判所が南アフリカに有利な判決を下した場合、イスラエルがまた攻撃に晒される可能性が出てくるのだぞ、という議論に脅かされていると同氏は述べた。

 先週、現在47名にまで増えた弁護士団は、米英両政府首脳に公開書簡を送り、「責任を回避することはできない」と伝えた。




イエメンがすべてを変えた経緯

<記事原文 寺島先生推薦>
How Yemen Changed Everything
筆者:ペペ・エスコバル (Pepe Escobar)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年12月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月26日


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イエメンの*アンサラー・アラは、1手で西側とその規則に基づいた秩序にチェックメイトをかけた。


*アンサラー・アラ・・・フーシ。 Anṣār Allāh, 実際の発音:アンサール・ッラー、英語: Ansar Allah、日本語で「神の支持者」を意味する)はイエメン北部サアダ県から発展し、北部を拠点に活動するイスラム教シーア派の一派ザイド派の武装組織である。(ウィキペディア)

インド北部で発明されたにせよ、中国東部で発明されたにせよ、ペルシャからトルキスタンまでの中央アジアで発明されたにせよ、チェスはアジアのゲームである。チェスでは、ポーン(将棋で言えば歩)がチェス盤全体をひっくり返すことができるときが必ずやってくる。大抵の場合、その効果を計算することができない後手番での一手を介してだ。

そう、ポーンは地殻構造的とでも言うべきチェックメイトをかけることできるのだ。まさに現在、我々が置かれている地政学的状況がそれだ。

チェス盤の上での1つの動きが連鎖的に及ぼす影響-イエメン・フーシ派の見事で慎重に標的を絞った紅海の封鎖-は世界的な海運やサプライチェーン(物流網)そして経済回廊戦争をはるかに超えている。大きく称賛されていた米海軍の戦力展開が無意味になったことは言うまでもない。

イエメンの抵抗運動であるアンサラー・アラ(フーシ派)は、イスラエル系またはイスラエルを目指す船舶はすべて妨害すると明言している。西側諸国はこれに憤慨し、自分たちが標的になると想像している。そして、それ以外の国々の船舶はすべて自由に通航できることを十分に理解している。ロシアのタンカーは、中国、イラン、グローバル・サウスの船舶と同様に、バブ・アル・マンデブ(最狭部:33km)と紅海を妨害されることなく移動し続けている。

覇権国(アメリカ)だけがアメリカの言う「規則に則った秩序」に対する今回の挑戦に困惑している。覇権国(アメリカ)が違法行為を行なうイスラエルへのエネルギーや商品の提供を妨害され、供給チェーンが断絶し、深刻な危機に陥っていることに激怒している。的はイスラエルの経済に絞られており、その経済は既に大打撃を受けている。イエメンのたったひとつ動きが、帝国の洪水のような制裁よりも効果的であることが証明されたのだ。

このひとつの動きでパラダイムシフト(枠組み変更)が起こってしまうかもしれないことで、覇権国(アメリカ)の苦悩は深まっている。特に、帝国の鼻をへし折ることがこのパラダイムシフトに深く組み込まれているからだ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、はっきりとしたメッセージを送っている:「スエズ運河のことは忘れてください。進むべき道は、ロシアと中国の戦略的パートナーシップ(友好関係)の枠組みの中で、中国が北極海シルクロードと呼んでいる北極海ルートです」、と。

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北-東航路と北-西航路の地図

唖然とするヨーロッパ人のために、ロシア人は三つの選択肢を詳しく説明した。まず、喜望峰を15,000マイル航海する。第二に、ロシアの安くて速い北極海航路を使うことだ。第三に、ロシア鉄道経由で貨物を送ること。

北極海航路を監督しているロシア国営原子力企業のロサトムは、非氷結船は現在夏と秋に航行することができ、原子力砕氷船の艦隊の助けを借りて年間を通じた航行も近いうちに可能になると強調している。

これはすべてイエメンの一手がもたらした直接的結果である。次は何か? 2024年末のカザンでのブリックス+サミットで、ロシアの主催のもとでイエメンが参加することか?


新しい構造の枠組みが西アジアで構築されるだろう

米国主導の無敵艦隊は、「ジェノサイド保護作戦」のために編成されたが、その誕生前に崩壊した。その編成はアンサラー・アラ(フーシ派)に恐怖を与えることとは別に、「イランに警告する」ために計画された可能性がある。フーシ派と同じように、テヘランもほとんど怯えていない。なぜなら、西アジア問題分析家の第一人者であるアラステア・クルークが簡潔に言ったように、「*サイクス=ピコは死んだ」からだ。
*サイクス=ピコ(協定)・・・1916年5月,英仏露3国の間で,オスマン帝国領の分割を定めた協定。 各国の勢力範囲を定めたほか,パレスチナを国際管理地とした。 第一次世界大戦中に強国間で結ばれた領土分割に関する秘密条約の代表的なもの。(コトバンク)

これはチェス盤上の大きな転換だ。これは、米国海軍の「展開」ではなく、西アジアの大国が新しい地域の枠組みを作り上げることを意味する。

それには言葉では言い尽くせない付随的な意味がついてくる。つまり、11の米国航空母艦部隊は実質的に無価値になってしまうことだ。

西アジアの誰もが、アンサラー・アラのミサイルがサウジや首長国の油田を攻撃し、稼働を停止させることができることをよく知っている。だから、リヤドやアブダビがイエメンの抵抗勢力に挑戦する米国主導の海上部隊の一部になることは絶対に受け入れないだろう。それはほとんど驚くにはあたらない。

それに加えて、ロシアとイランが所持している水中ドローンがある。50機の水中ドローンがアメリカの航空母艦を狙ったら、アメリカにはそれに対する防御手段は何もない。アメリカは今でも非常に高性能の潜水艦を持っているが、それとてバブ・アル・マンデブ海峡と紅海を西側の船舶に自由に航行させることはできない相談だ。

エネルギー面では、モスクワとテヘランは、「核」という選択肢を使ったり、世界の石油供給の少なくとも25%、あるいはそれ以上を断ち切る可能性について、少なくともまだ考える必要さえない。あるペルシャ湾について分析家は「それは国際金融システムを取り返しのつかないほど崩壊させるだろう」と簡潔に述べている。

ガザでの大量虐殺を支持する決意を固めている人々には、警告が発せられている。イラクのモハメッド・シーア・アル・スダニ首相はそのことを明言している。テヘラン(イラン政府)はすでに、イスラエルを支持する国々に対して石油とガスの全面禁輸を呼びかけている。

綿密に計画されたイスラエルへの完全な海上封鎖が起きる可能性は、明白に残っている。イスラム革命防衛隊(IRGC)のホセイン・サラミ司令官は、イスラエルは「近いうちに地中海、ジブラルタル海峡、その他の水路の閉鎖に直面するかもしれない」と述べた。

まだホルムズ海峡の封鎖の可能性について話しているわけではないことを念頭に置いてほしい。私たちはまだ紅海およびバブ・アル・マンデブについて話している段階なのだ。

なぜなら、ワシントンDCにいるストラウス派ネオコンが今回のパラダイムシフトによって本当に取り乱し、イランに「教訓を与える」という行動に出る場合、ホルムズ海峡とバブ・アル・マンデブ海峡の組み合わせによる封鎖は石油価格を最低でも1バレル500ドルまで急騰させ、618兆ドルのデリバティブ市場を崩壊させ、国際金融システム全体を崩壊させる可能性があるからだ。


窮地に立つ張り子のトラ

結局、毛沢東は正しかった。アメリカは、実際、張子のトラなのかもしれない。しかし、プーチンははるかに慎重で、冷静で、すべてを計算している。このロシア大統領の場合、非対称的な反応がすべてなのだ。それもだれひとりそんなことは考えてもいないときに。

これによって、チェス盤上のアンサラー・アラ(フーシ派)の単一の動きを覆い隠す影の役者を説明するためにふさわしい重要な仮説が浮上する。

ピュリツァー賞を受賞した調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが、バイデン一味がノルド・ストリーム・パイプライン爆破の経緯をはっきりさせたとき、それが事実上、ガスプロムに対する、ドイツに対する、EUに対する、そして多くのヨーロッパ企業に対するテロ行為であったことに対し、ロシアは何の反応もしなかった。しかしイエメンは今、単純な封鎖によって世界の海運をひっくり返している。

では、どちらがより脆弱なのだろうか? 世界的なエネルギー供給の物理的ネットワーク(パイプライン)か、それともタラソクラシー(海軍の優位性から力を得ている国家)か?

ロシアは「パイプライン・国家」を優遇している。例えば、「ノルド・ストリームス」や「シベリアの力1」や「シベリアの力2」を参照されたい。しかし、「ブリタニアは波を支配する」伝統の後継者である覇権国家アメリカは、常に「タラソクラテスの力(制海権)」に頼ってきた。

そう、今は違う。そして、驚くべきことに、そこに到達するのに、米国政府が狂ったように操作的噂で人々を不安がらせるホルムズ海峡の封鎖という「核」オプションさえ必要としなかった。

もちろん、決定的な証拠はない。しかし、このイエメンの動きひとつをとっても、BRICSの3カ国(ロシア、中国、イラン、ネオコンの新たな「悪の枢軸」)に加え、BRICS+の2カ国、エネルギー大国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦の間で、最高レベルで調整されていた可能性があるというのは興味深い提案だ。もしあなたがそうするなら、私たちはあなたの後ろ盾になる」という形で。

もちろん、イエメンの純粋さは損なわれていない。パレスチナの防衛は彼らの神聖な義務なのだ。

欧米の帝国主義、そしてターボ資本主義(むきだしの資本主義)は、常にイエメンを食い尽くすことに執着してきた。その過程を、イサ・ブルーミはその素晴らしい著書『イエメンを破壊する』の中で、「インド洋世界の多くの経済的、文化的、精神的、政治的原動力としての歴史的役割を、イエメン人は必然的に剥奪される」と表現している。

イエメンは、現地のことわざ「イエメン・ファタカ(命がけ)」に忠実で、征服不可能だ。アンサラー・アラ(シーア派)は、ユーラシア全域の複雑なドラマにおいて、ハートランドの接続性を再定義する中心的な存在として位置を占めている。また、中国の一帯一路イニシアティブ(BRI)、インド・イラン・ロシア主導の国際的な南北輸送回廊(INSTC)、ロシアの新しい北方海路と共に、地中海とアラビア半島周辺の戦略的な難所の制御も含まれている。

これは完全に異なる貿易接続のパラダイム(枠組み)であり、アフロ-ユーラシアの西側植民地支配と新植民地支配を粉々に破壊する。したがって、そう、BRICS+はイエメンを支援することになる。イエメンは1つの行動でパックス・アメリカーナに対して「地政学上の窮地の生みの親」とでもいうべきものを提示したのだ。

インドネシア、ICJにイスラエルを提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
Indonesia Files Lawsuit Against Israel at the ICJ
出典:Internationalist 360°  2024年1月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月25日


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2024年1月15日、インドネシア・ジャカルタの米国大使館前でパレスチナ人を支援するためにパレスチナ旗を振る人々[ギャリー・アンドリュー・ロトゥルン – アナドル通信]


イスラエルのマーリブ紙は、インドネシアがハーグの国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルの占領に対する新たな訴訟を起こしたと報じた。

 これによりインドネシアは、ガザでパレスチナ人に対する虐殺を行なったとしてイスラエルを相手に初の訴訟を起こした南アフリカに加わることになる。

 インドネシア外務省は以前、パレスチナ占領地におけるイスラエルの「政策と慣行」に対する責任をイスラエルに問うため、インドネシアのICJ訴訟の草案作成を支援する専門家団を編成していた。

 国内報道機関であるジャカルタ・ポスト紙のウェブサイト版によると、ルトノ・マルスディ外務大臣は、この訴訟はパレスチナ人支援だけでなく、国際法に基づく世界秩序の支援にも役立つ、と述べた。

 マルスディ氏の声明は、首都ジャカルタで数十人の国際法の専門家や学者が集まる会議に先立っておこなわれた。

 先週ICJは、ガザ地区でパレスチナ人に対する大量虐殺の罪を犯したとして南アフリカがイスラエルに対して起こした訴訟の調査開始の一環として、2回の公聴会を開催した。

 12月29日、南アフリカは、3か月以上激しい戦争にさらされているガザ地区でイスラエルがジェノサイドに相当する犯罪を犯したとしてICJに訴訟を起こしていた。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「ハーグも、(イラン主導の)悪の枢軸も、そして他の誰も我々を止めることはできないだろう」と主張した。

 ネタニヤフ首相は記者会見で「われわれはすべての目的を達成するまでガザ地区での戦争を続ける。ハーグも悪の枢軸も私たちを止めることはない」と述べたが、「悪の枢軸」が何を意味するのかは明らかにしなかった。

スコット・リッター:米国がイエメンへの攻撃で世界を騙した手口とは

<記事原文 寺島先生推薦>
Scott Ritter: How the US misleads the world about its involvement in Yemen
米国政府はフーシ派の施設への攻撃は防御のためであり、完全に合法的であると主張しているが、実際のところはいずれも当てはまらない
筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)
スコット・リッターは、元米海軍諜報員で『ペレストロイカ期の軍縮:軍備管理とソビエト連邦の終焉』の著者。ソビエト連邦でのINF(中距離核兵器全廃)条約実行の査察官として、湾岸戦争時シュワルツコフ将軍のもとで職員として、1991年から1998年までは国連兵器査察官として勤務。@RealScottRitter@ScottRitter
出典:RT  2024年1月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月24日


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イエメンの軍事標的への空爆実行をおこなう米主導連合軍に参軍するため、アクロティリ空軍基地を出発するイギリス空軍のユーロファイター・タイフーン機© AFP / British Ministry of Defence


 「イエメンへの攻撃は必要で、相応のもので、国際法にも違反しない」。この声明とともに、米国国連代表団は、2024年1月12日に実行された米英連合によるフーシ派民兵組織関連施設への攻撃を擁護した。

 この声明の皮肉なところは、この声明をおこなったのが、国連安全保障理事会の場だったという点だ。国連安保理は、そのような行為を許可できる機関ではない。したがって、米国がおこなった主張の正当性は保持できない可能性があるということだ。

 国連憲章は、国際法上、軍事力を行使できる2つの条件を規定している。ひとつは、憲章第51条に明記されている正当な自衛を行使する場合である。もうひとつは、国連安全保障理事会の第7章に基づく決議によって与えられた権限に従った場合である。

 ディビッド・キャメロン英外相は、イエメン攻撃への英国の関与を正当化するために国連安全保障理事会を引き合いに出し、同理事会が「フーシ派は紅海での攻撃を停止しなければならない」と「明言」したと主張した。

 安保理はフーシ派に紅海での国際海運への攻撃をやめるよう求める決議を出したが、この決議は第7章のもとで可決されたものではないため、米・英はイエメンへの攻撃を実行する国際法上の権限はなかったことになる。

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 米英両国はイエメンへの攻撃において自衛の概念を持ち出し、それによって間接的に国連憲章第51条の下で認知される可能性のある行為を示唆した。ジョー・バイデン米大統領は、攻撃終了直後に発表した声明の中で、イエメンのフーシ派武装勢力に対する米軍の攻撃を正当化した。「この軍事行動を命じたのは、国内外の米国民を守るという私の責任に基づくものです」と。

 この主張の最大の問題は、フーシ派は国内外を問わず米国民を攻撃していなかったということだ。以前、米軍がフーシ派の発射した武器と交戦したことがあったとしても、それはフーシ派の攻撃から非米国の資産(イスラエル国や国際海運)を守るためだった。いかなる状況下でも、アメリカはフーシ派に攻撃されたと主張することはできなかった。

 バイデンは、米国の攻撃は「フーシ派の将来の攻撃能力を抑止し、弱めるためにおこなわれた」と主張した。

 この言い方は、米国が国際航路における商業的海上活動に対する差し迫った脅威を排除しようとしていたことを示唆している。集団的自衛権に関する国際法の要件(米国自身が攻撃されていない以上、正当性を主張する唯一の可能性)を満たすためには、米国は、フーシ派から攻撃を受けているか、安保理の介入を求めることができないような差し迫った攻撃の脅威にさらされている国家集団の一員であることを証明する必要がある。

 2023年12月下旬、米国は他の数カ国とともに、「繁栄の守護者作戦」と呼ばれる軍事力集結作戦を取り、2023年11月19日から行われていたフーシ派による海上輸送への攻撃を抑止しようとした。

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 しかし、米国はその後、自分たちの行動が国際法に合致している、つまり国連憲章第51条に従っておこなわれた集団的自衛権による先制攻撃行為である、と主張しうるあらゆる論拠を台無しにした。

 中東での作戦を担当する米中央軍(CENTCOM)は、ワシントンが紅海の海運を標的にしていると主張するフーシ派のレーダー施設に対する2度目の攻撃を開始した直後に記者発表を出した。

 その声明の主張によると、フーシ派のレーダー施設に対する攻撃は、1月12日に実施された攻撃の「後続行動」であり、「紅海、バブ・アルマンデブ海峡、アデン湾で活動する20カ国以上による防衛連合である『繁栄の守護者』作戦とは無関係であり、別個のものである」とのことだ。

 「繁栄の守護者作戦」から距離を置くことで、米国は国連憲章第51条に基づく先制的集団的自衛権の概念を致命的に損ない、イエメンに対する軍事攻撃が一方的で本質的に違法な性質を持つものであることを浮き彫りにした。

ガザでの戦争を終結させることでイスラエルを救う

<記事原文 寺島先生推薦>
Saving Israel by Ending Its War in Gaza
筆者:ジェフリー・サックス (Jeffrey Sachs)
出典:Common Dreams   2024年1月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月24日


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ガザ地区から帰還後、戦車の砲弾を運ぶイスラエル軍兵士(2024年1月1日、イスラエル南部国境にて)。イスラエルはガザ中心部の人口密集地域にまで地上攻撃を拡大し、南部への新たな強制移動を強いている。(写真:Amir Levy/Getty Images)


イスラエル政府は、ハマスとの生き残りをかけた死闘の中にいるのだから、生き残るためにはガザの破壊を含むあらゆる手段を講じなければならないと主張している。これは誤りだ。

1月に議会が再開されれば、ジョー・バイデン大統領は、イスラエル向けの新たな軍備強化策を通じて、イスラエルによるガザでの戦争へのアメリカの加担を深めようとするだろう。アメリカ人は断固としてノーの声を上げるべきだ。

イスラエルへの武器供与は、アメリカの利益に反するだけでなく、イスラエルの利益にも反する。イスラエルの真の安全保障への唯一の道は、パレスチナとの和平である。アメリカは、イスラエルの残虐な戦争への軍需物資の供給を止め、国際法で求められている2国家解決を推進することが和平実現の一助となる。

私は本サイト「コモン・ドリームス」前回のコラムで、2国家解決への外交的道筋を明示した。その道は開かれている。それはアラブ諸国とイスラム諸国によって積極的に推進され、ほぼ全世界によって支持されている。

イスラエルが大量虐殺を終結させれば、現在、同国が直面している世界的な反対も終結するだろう。


ガザにおけるイスラエルの蛮行は、イスラエルの存続に対する真の脅威となりつつある。イスラエルの常軌を逸した暴力のせいで、世界はイスラエル反対の団結がまとまりつつあり、その一方でイスラエルは甚大な軍事的損失を被っている。信じられないことに、イスラエルの指導者たちの中には、中東におけるさらに大規模な戦争を公然と提唱している者もいる。

イスラエルの政策に対する世界的な反対の高まりは、反ユダヤ主義ではない。反ジェノサイドである。それはまた、親平和、親イスラエル、親パレスチナでもある。イスラエルが大量虐殺を終わらせれば、現在、同国が直面している世界的な反対も終わるだろう。


ハマス打倒はガザにおけるイスラエルのほんとうの目標ではない

イスラエル政府は、ハマスとの生き残りをかけた死闘の中にいるのだから、生き残るためにはガザの破壊を含むあらゆる手段を講じなければならないと主張している。これは誤りだ。ガザを破壊し、何万人もの市民を殺し、200万人をガザから追い立て、ハマスが実際にもたらす予防可能で制御可能な脅威からイスラエルを守るための倫理的、実際的、法的、地政学的論拠は存在しない。

2008年から2022年の間、ハマスやその他の武装勢力は年間12人前後のイスラエル民間人を殺害したが、イスラエルは通常、少なくともその10倍以上のパレスチナ民間人を殺害した。イスラエルがガザに侵攻した2014年には急増し、19人のイスラエル市民が殺されたのに対し、1760人のパレスチナ市民が殺された。ハマスが発射するロケット弾は多いが、そのほとんどが迎撃されるか、ほとんど被害を与えない。イスラエルは(2014年のように)定期的な虐殺と、より定期的な空爆で対応する。イスラエルは定期的な殺戮を「草刈り」という皮肉な名前で呼んでいる。ハマスが長い間、ネタニヤフ首相がイスラエル国民に2国家解決は不可能だと「証明」するための「低コストの」政治的小道具として機能してきたことは、イスラエル内部では常識である。

2007年以降、ハマスがガザを支配している間、ハマスがイスラエルの領土を占領したことは一度もなく、ましてやイスラエルの存在や生存を脅かしたことなど微塵もない。その理由は、そうしたくてもできないからということだけだ。ハマスの戦闘員数は約3万人で、イスラエル国防軍には現役と予備を合わせて60万人以上がいる。ハマスには空軍、機甲部隊、軍需産業基地がなく、ガザの外での地理的な機動力もない。

2023年10月7日、ハマス戦闘員が電撃侵攻を行ない、恐ろしい一日が続いた。これは、ハマスがイスラエルに侵攻する新たな驚異的な能力を持っていたわけではなく、イスラエルの安全保障の衝撃的な失敗が原因だった。イスラエルの指導者たちは、ハマスによる予想される攻撃の多くの警告を無視し、ガザとイスラエルの国境警備を信じられないほど手薄にした。さらに驚くべきことに、イスラエルの過激派がイスラム教の最も聖なる場所であるアル・アクサ・モスク複合体に襲撃した数日後にハマスの侵攻があった。ハマスは、イスラエルの信じられない安全保障の不備を利用して国境を越え、約1,100人のイスラエル市民を殺し240人の人質を取った。その日のイスラエル市民の死者には、イスラエルの航空爆撃やイスラエル国防軍の報復攻撃による銃撃戦によるものもいるが、その数はわかっていない。

ガザとの国境警備を再び強化することで、イスラエルはハマスによるさらなる地上侵攻を阻止した。ネタニヤフ首相がガザの破壊を命じたのは、ハマスからイスラエルを守るためではなく、ガザに人が住めないようにするためである。ネタニヤフ首相は、他の重大な失敗にもかかわらず権力にしがみつくという追加ボーナスを手にした。

イスラエル政府のより基本的な目的は、「大イスラエル」、つまりヨルダン川から地中海までの全土に対する支配を強固にすることだ。ガザ侵攻の目的は、住民をガザから追い出すことだ。10月10日、イスラエルのヨアヴ・ギャラン国防相は、「ガザは以前のようには戻らない。われわれはすべてを排除する」と述べた。さらに最近、ネタニヤフ首相は、ガザ住民の「自発的移住」について語った。自発的移住とは、ガザが廃墟と化し、ガザ住民が避難するように言われた後のことのことを言っている。メトゥーラのダビド・アズーライ市長はつぎのように宣言した:「ガザ地区全体を空にする必要がある。平らにするのだ。アウシュビッツのように。イスラエルの力を世界中に知らせるための博物館にしよう。10月7日はある意味、第二のホロコーストなのだから」。彼は後に、ガザの住民を殺害するのではなく、「配置換え」することを望むと明言した。最近では、ファシストを自認するベザレル・スモトリッチ財務相が、ガザの人口を現在の200万人強から10万〜20万人に削減するよう求めた。イスラエルはガザ侵攻の当初から、ガザ住民をエジプトに押し込もうと狙っていたが、エジプトは民族浄化の当事者になることを断固拒否した。

1970年代には、パレスチナを支配してユダヤ人国家としての大イスラエルを建設するという目的は、周辺的な信念に過ぎなかった。現在ではそれがイスラエルの政治政策の中心となっている。それは占領下のヨルダン川西岸と東エルサレムにおける何十万人ものイスラエル人入植者の政治的重みを一部反映している。

「大イスラエル」とは、1967年戦争以前のイスラエルと、ガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムを合わせたもので、およそ700万人のユダヤ人、700万人のパレスチナ人イスラム教徒とパレスチナ人キリスト教徒が住んでいる。イスラエルが大イスラエルを支配できるのは、700万人のパレスチナ人を支配するか、戦争、暴力、極端な差別によって彼らを家から追い出すことによってのみである。大イスラエルを求めるあまり、イスラエルはパレスチナの人々に対して重大な犯罪を重ねている。進行中の犯罪は、ひどい不正と侮辱を伴うアパルトヘイト支配である。より重大な犯罪は、イスラエルがガザでやろうとしている民族浄化である。ガザで毎週起きている何千人もの罪のない市民の死に見られるように、最も重大な犯罪はジェノサイドである。


過激主義に向かうイスラエル

アメリカ国民は、イスラエルの政治が、宗教的熱狂とパレスチナ人に対する殺人的暴力を混ぜ合わせた過激派によって支配されていることを理解する必要がある。イスラエルのこのような超暴力的な側面は、イスラエル国内ではすぐに明らかだが、アメリカ国民にはまだほとんど知られていない。ガザにおけるイスラエルの蛮行は、多くのアメリカ人にとって驚きであるが、イスラエル国内では当たり前のことになっている。独立系ニュースサイトGrayzoneは、イスラエル兵や著名人がパレスチナ人の死を祝っているショッキングな記事をまとめた。

イスラエルがパレスチナ人に対するジェノサイド的な暴力を行なっていることに対して、イスラエルの大衆はいくつかの理由から共感を抱いている。まず、イスラエルでは常にホロコーストの記憶が影を落としている。ネタニヤフなどの政治家は、常にホロコーストの恐怖を煽り立て、全てのパレスチナ人が全てのユダヤ人を殺すことを望んでいるというまちがった主張し、パレスチナ人の暴力的な鎮圧がイスラエルにとって生死の問題だと主張してきた。勿論、憎しみのらせん状態ではネタニヤフの言辞と行動によって自己達成的予言が生まれ、他の側からの反応や憎しみが引き起こされる。しかし、対話や交流、外交、そして平和構築を通じてそれらを解決しようとするのではなく、憎しみの輪廻が煽られることになる。

第二に、正統派ラビは、神がヨルダン川から地中海までのすべての土地をイスラエル人に与えたので、イスラエルにはパレスチナに対する神聖な権利があると主張することによって、安全保障の間口を広げた。

第三に、1967年に征服されたパレスチナの土地に70万人のイスラエル人入植者が住み、大イスラエルはイスラエル国民の大部分にとって既成事実となり、イスラエルの政治に大きな発言力を持つようになった。これらの入植者たちは、征服された領土に移り住み、今では自分たちの入植地を守ることを熱烈に主張している。国連安全保障理事会(国連安保理決議2334号)は、占領地パレスチナにおけるイスラエルの入植地は国際法に著しく違反していると明確に宣言しているが、内閣のスモトリッチ自身は入植者運動の指導者である。

この暴力的なユダヤ教系譜の出現は、1967年の6日間戦争直後の1970年代初頭にさかのぼる。1967年以降のイスラエルの政策課題は、新たに占領されたパレスチナの土地をどうするか、だった。イスラエルの指導者たちは、イスラエルの指導的政治家イーガル・アロンの提案に基づき、東エルサレムを維持し、占領下のヨルダン川西岸とガザに入植地を建設し、イスラエルの安全保障を守るための「事実を現場に置く」ことを決定した。イスラエル政府は当初から、戦争によるイスラエルの領土獲得を否定した国連安全保障理事会決議242号(1967年)を無視したのだ。

次に起こったことは重大だった。超宗教的ユダヤ人は、イスラエルを「主の御座の地上の支え」にするというメシア的な呼びかけの一環として、占領地でのイスラエル入植の大義を取り上げた(ここp.69)。1974年、*ガッシュ・エムニムは、アブラハム・アイサック・クックとツヴィ・エフダ・クックの父子ラビの信奉者たちによって、超民族主義的な宗教入植者運動として立ち上げられた。彼らの教えは、ヨシュア記の土地所有権、タルムード法、シャーシ派神秘主義、民族主義、政治活動を組み合わせたものであった。
*ガッシュ・エムニム・・・「信仰者の集団」。イスラエルの超ナショナリスト。正統派のユダヤ教右派原理主義活動家組織で、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、ゴラン高原のユダヤ人入植地の設立を目指した。(ウィキペディア)

大イスラエルの宗教的動機は、神がユダヤ人にヨルダン川から地中海までの全土を与えたというものだ。おそらく紀元前6世紀に完成したと思われる『ヨシュア記』では、エジプトから40年の砂漠の旅を終えて到着したイスラエルの民に、自分たちの土地を手に入れるためにカナンの国々を全滅させるよう神が指示している。神は、「南はネゲブの荒野から北はレバノン山脈まで、東はユーフラテス川から西は地中海まで、ヒッタイトの全土を含む」土地を約束する。(ヨシュア記1章4節、新共同訳)。神の後ろ盾を得たヨシュア軍は、この地を占領するために一連の大量殺戮を行なう。

この常軌を逸した暴力的な文章と聖書の関連部分(サムエル記におけるアマレク人の殲滅など)は、宗教・世俗を問わず、右派イスラエル人にとって重要な参照箇所となっている。その結果、今日のイスラエルは、ユダヤ人のためにパレスチナ全域を確保するという紀元前6世紀のメシア的ビジョンを追求している。大イスラエルの支持者は、このイデオロギーの反対派に反ユダヤ主義者というレッテルを貼ることが多いが、ハーバード・ヒレル元事務局長が雄弁に論じているように、それは的外れである。大イスラエル反対派は過激主義と不正義に反対しているのであって、ユダヤ教に反対しているのではない。

ユダヤ人入植者運動は、パレスチナ人に対する殺人も辞さない軽蔑心を引き起こした。イスラエル・シャハク教授は、彼の著書『イスラエルのユダヤ主義原理主義』で、西岸入植地の指導者であるラビ・エリエゼル・ワルドマン氏の宗教的熱狂に注目している。

「私たちは、ユダヤとサマリア(ヨルダン川西岸)の外国領土を占領しているのではない。ここは私たちの古くからの故郷だ。ユダヤ人の信仰と贖罪に対する私たちの責任は、強くはっきりとした声で発言することを私たちに命じている。私たちの民族と私たちの土地をひとつにするという神の導きは、「安全保障」や「外交」といった一見論理的な概念によって曇らされ、弱められてはならない。それらは真実を歪め、私たちの大義の正義を弱めるだけである。私たちは信仰の民である。これこそが、われわれの永遠のアイデンティティの本質であり、いかなる状況下においてもわれわれが存在し続ける秘訣なのだ」。[2002]

シャハクは『ユダヤ人の歴史-ユダヤ教の宗教』(第2版、2008年)の中で、1973年のイスラエル軍中央地域司令部の主任チャプレンの言葉を引用している:「戦争において、わが軍が敵を襲撃するとき、彼らは善良な(パレスチナ人の)民間人、つまり表向き善良な民間人であっても殺すことが許され、ハラカー(ユダヤ教の掟)によってさえ命じられている」(p.76)。

暴力を使ってパレスチナ人の集団離脱を誘発する戦術は、イスラエルが建国された当初からその手口の一部だった。イスラエルの独立前夜、1947年から8年にかけて、ユダヤ人過激派グループは、パレスチナ人がナクバ(アラビア語で「破滅」)と呼ぶ卑劣な手口で、何十万人ものパレスチナ人の集団離脱を誘発するためにテロを使った。

ネタニヤフ政権の狙いは、ガザ住民を隣国エジプトやアラブ中東の他の地域に逃亡させることで、ガザ紛争でナクバを繰り返すことだ。しかし、1947—1948年とは異なり、世界はリアルタイムで注視しており、イスラエルの露骨な民族浄化の試みに対して憤りを表明している。エジプトはイスラエルとアメリカに対し、イスラエルの民族浄化の当事者にはならず、ガザンからの洪水のような難民を受け入れないとはっきり言った。


「大イスラエル」の探求は必ず頓挫する

暴力的に「大イスラエル」を作ろうとするイスラエルの試みは失敗するだろう。イスラエル国防軍は、ガザでの残忍な市街戦で大規模な損失を被っている。イスラエルは2万人以上のガザ住民を殺害したが、そのほとんどは女性と子どもであった。また、イスラエルの侵攻に抵抗するハマスの軍事力は破壊されていない。IDFの指導者たちは、ハマスとの戦いにはさらに何カ月もかかるだろうと言っている。が、そのずっと前に、世界の反対勢力はイスラエルの前面に立ちはだかることになるだろう。

イスラエルの指導者である国防相のベニー・ガンツを含むイスラエルの指導者たちは、絶望の中でレバノンおよびおそらくイランへの戦争拡大を求めている。南カロライナ州の共和党上院議員リンジー・グラハムも、立場上から、そして予想されたように、米国がイランと戦争をするよう強く薦める意見を述べている。しかしこのイスラエルの策略もおそらく失敗に終わるだろう。ウクライナとガザで蓄積された軍需品を減らした後、米国は中東での広範な戦争を戦う立場にはない。アメリカの人々もまた、米国の次の戦争に強く反対しており、選挙年であるから、戦争反対の声がでてくるだろう。これは軍産複合体に支配された議会でも同様だ。

イスラエルの外交的挫折は、反転されない限り、壊滅的なものとなるだろう。イスラエルは世界中で政治的支持を失っている。最近の国連総会の投票では、世界人口の94%を占める174カ国がパレスチナの政治的自己決定に賛成票を投じたが、反対票を投じたのは世界人口の4%を占めるイスラエル、米国、ミクロネシア、ナウルの4カ国だけであった (他の15カ国は棄権または無投票) 。イスラエルの強硬な軍国主義は、それに反対する世界を団結させた。

イスラエルの指導者や外交官は、批判者はすべて反ユダヤ主義者だと叫ぶのをやめ、世界が実際に言っていることに耳を傾けなければならない:イスラエルとパレスチナは、国際法と相互安全保障に基づいて共存する必要がある。


イスラエルは現在、唯一残された支持国である米国を頼りにしているが、米国の支持も衰えつつある。賛成59%、反対19%という大差で、アメリカ人は停戦を支持している。アメリカ人はイスラエルの安全保障は支持するが、過激主義は支持しないのだ。もちろん、アメリカにも聖書正典に基づいて政治を行うキリスト教徒やユダヤ教の狂信者はいるが、世論の中では少数派である。アメリカのイスラエル支持は、2国家解決策を拠り所にしている。バイデンはそれを知っており、米国がイスラエルのガザ戦争に軍需物資を供給しているときでさえ、2国家間解決策への米国の支持を繰り返し述べている。

アメリカのユダヤ人は概してイスラエルを支持しているが、イスラエルの宗教的救世主信仰は支持していない。2020年のピュー調査では、「神が現在のイスラエルの土地をユダヤ人に与えた」と信じているアメリカ人ユダヤ人はわずか30%だった。イスラエルとパレスチナの2国家解決による和平の実現可能性を信じていたのは63%だった。イスラエル政府がパレスチナ人との和平に向けて真摯に努力していると2020年時点で信じていたのは、わずか33%だった。

米国の正統派ユダヤ人でさえ、大イスラエルの問題では意見が分かれている。チャバドのような一部の正統派ユダヤ人共同体は、聖書的動機に基づく大イスラエルを信奉しているが、サトマール共同体(ナチュレ・カルタNaturei Kartaとしても知られる)のような他の共同体は反シオニストであり、ユダヤ教は国家概念ではなく宗教であるとして、イスラエルのパレスチナ人に対する戦争を率直に批判している。サトマール共同体は、ユダヤ人の祖国の復活は、シオニストの行動計画ではなく、神の行動計画に従わなければならないと信じている。


イスラエルの過激主義を支援するのはアメリカの利益にならない

米国はイスラエルの残虐な戦争に軍需物資を提供してきた。この共謀によって、パレスチナ人原告団はアメリカ政府をジェノサイド条約違反で告発する訴訟を起こしている。この法的努力の一環として、米国を拠点とする憲法権利センターは、イスラエルの指導者たちによるジェノサイド発言を、こことここに体系的に記録している。

米国はまた、イスラエルの弁護しようのない行動を擁護するために、深刻で費用のかかる外交的孤立に直面している。最近の米国安全保障理事会や国連総会の投票では、米国はほぼ一国でイスラエルの超暴力的で不当な行動を支持している。このことは、外交政策や世界経済の他の無数の分野で米国を苦しめている。

アメリカの連邦予算は、軍事関連支出からも多大な負担を受けており、その総額は2024年には約1.5兆ドルに達する。2000年にはGDPの約35%だった公的債務を、現在ではGDPの約100%に引き上げる中心的な要因となっている。債務が急増し、住宅ローンや消費者ローンの金利が上昇するなか、国民はウクライナやガザでの戦争資金を賄うためにさらなる赤字支出を求めるバイデンの呼びかけに抵抗しており、中東でのより広範な戦争、特にアメリカが直接戦闘に巻き込まれるような戦争には声高に反対するだろう。

もちろん、アメリカ政治においては、イスラエルへの無限の支持が止められないようだ。イスラエルロビーという強力な勢力は、イスラエルの政治家や裕福なアメリカ人との連携で成り立ち、この強力な支持を構築する上で大きな役割を果たしている。イスラエルロビーは、2022年の議会選挙で3000万ドルの運動資金寄付を行い、2024年もはるかに多額の寄付を行う予定だ。しかし、このロビー活動はイスラエルのガザでの非人道的な行為に対する公衆の反対に直面している。


2国家解決は、今でも、イスラエルの真の平和と安全保障のチャンスだ

イスラエルの指導者や外交官は、批判者はすべて反ユダヤ主義者だと叫ぶのをやめ、世界が実際に言っていることに耳を傾けなければならない:イスラエルとパレスチナは、国際法と相互安全保障に基づいて共存する必要がある。イスラエルとパレスチナは、国際法と相互の安全保障に基づき、共存する必要があるのだ。2国家解決を支持することは、イスラエル国家におけるユダヤ人の平和と安全を支持することであり、パレスチナ人自身の国家における平和と安全を支持することでもある。それどころか、イスラエルによるガザでの大量虐殺を支持し、世界中の反イスラエル(および反米)感情を煽ることは、イスラエルの長期的な安全保障に逆行するものであり、おそらくはイスラエルの存続にも関わる。アラブ・イスラム諸国は、2国家解決という文脈の中でイスラエルとの関係を正常化する用意があると繰り返し宣言してきた。これは2002年のアラブ和平イニシアチブにさかのぼるものであり、2023年11月11日にリヤドで開催された臨時アラブ・イスラム合同首脳会議の重要な最終声明も含まれている。米国とアラブ諸国は、2国家間解決を実施する中で、双方の安全を守るための合同平和維持軍の設置に早急に合意すべきである。

多くの熱烈な宗教的入植者は、古代の聖書の記述に基づいて、パレスチナ国家に強く反対し、それを行使する権利を主張する。しかし、ユダヤ教の目的は数百万人のパレスチナ人を支配することや、民族浄化を行うことではない。真の目的は、世界の非難を引き起こすことではなく、理性と善意を使って平和を見つけることなのだ。ヒレル長老は「あなた自身に対して嫌悪感や不快感を持つことを他人に対しても行なってはならない。これが全ての律法だ。残りは注釈だ。行動して学ぶこと」と宣言した。真の目的は、預言者イザヤ(2:4)の倫理的なビジョンを実現することだ。イザヤは「彼らは剣を打ち直して鋤(すき)に、槍を打ち直して鎌とする。国はもはや国に向かって剣を上げず、もはや戦いを学ぶことはない」と予言した。そうあってほしい。


ジェフリー・D・サックスは、2002年から2016年まで地球研究所の所長を務めたコロンビア大学の大学教授兼持続可能な開発センター所長。国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク会長、国連ブロードバンド開発委員会委員。これまでに3人の国連事務総長のアドバイザーを務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長の下でSDGs唱道者を務めている。近著に『A New Foreign Policy(新しい外交政策)』(2020年)がある: Beyond American Exceptionalism」(2020年)の著者。その他の著書に以下がある: 「新しいアメリカ経済の構築: Smart, Fair, and Sustainable」(2017年)、潘基文との共著「The Age of Sustainable Development」(2015年)など。

ハーグでの裁判の報告は私に任せてくれ。その2

<記事原文 寺島先生推薦>
Your Man in the Hague Part II
筆者:クレイグ・マレー(Craig Murray)
出典:Internationalist360°  2024年1月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月23日


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 初日の南アフリカの発言の終わりには、非常に良い感触があった。誰もが非常にうまくいったと感じ、裁判所が暫定措置から逃れようともがく余地はほとんど残されていなかった。 私たちは傍聴席を出て、コービン(元・英労働党主)とメランション(仏国会議員)と一緒に南アフリカの代表団に会いに行った。この行為は警備当局が了承してくれず、一般傍聴者はすぐに退席し、代表団に会ったり、報道機関の取材に応じたりしないようにとのことだった。当時南アフリカ代表団は法廷外にいたが、敷地内で集団を成していた。

 報道機関はコービンやメランションと話したがっていたので、警備当局によるこの動きはかなり非現実的だった。人々が腕をバタバタさせたり、手を振ったりしていた。私がジェレミーのそばを離れなかった理由の一つには、彼のそばを離れることで彼が孤立無援になることを避けたかったからであったが、一番の理由は、彼の妻ローラがどこかにいて私の携帯電話に気をつけていてくれていたからだった。ICJの職員たちは、コービンとメランションに直接言い付けるのは怖いようで、代理人である私に「ここにとどまってはなりません」とかなり険悪な態度を取り続けた。

 とても不思議な状況だった。その場の雰囲気はとても友好的で、緊張感はなかった。約60人の代議員と同じ数のジャーナリストがいたが、それはそこにいても問題ない人たちだった。それ以外に、コービン、メランション、そして私がいた。私たちはその場から退席すべき立場だったのだが、かといってそこに私たちがいたとしてもその場の状況に何ら違いを与えるものではなかった。審議が終わった後、場違いのところにいるとはいえ、穏やかに振舞っていた私たちが、警備当局から怒りを買う余地などまったくないと私には思えた。しかし、ICJの女性職員が次々とやってきて、現場の緊迫感が増してきた。

 この段階で、南アフリカ代表団は正式な報道声明をまとめるため、建物内の割り当てられた事務所に戻った。私たちも一緒に行った。私は顔見知りのパレスチナのアマール・ヒジャジ外務副大臣と話をしていた。ICJの女性の一人がクリップボードを持ってやってきて、静粛を求め、公的な宣告として、集まった一団にこう尋ねた:「この集まりは法的な会議ですか、それとも政治的な会議ですか?」と。

 誰も答える気はなさそうだった。だから私は「それは哲学的な質問です。そんな単純な二元的区別ができるかどうかわかりません」と答えた。ヴァルシャは「法的な会議ですよ」と断言し、その女性職員は意味もなく、手にしたクリップボードを振りながら、「わかりました、政治的な会議はここでおこなってはならないことになっています」と言った。こんなちょっとした揉め事の後、私たちは再び外に出た。

 私はメランションの姿を見て大いに楽しんでいた。彼の愛想の良さは無尽蔵で、誰に対しても止めどなく話し続けた。警備員たちが労働者協同組合についての講義を望んでいたかどうかはわからないが、彼からの講義を受けたのは確かだ。

 私たちは再び前方のドアのところに行き、インタビューがおこなわれているところに戻った。二人の女性職員が現れて、非常に厳しい様子で私に、絶対にここから出て行くよう詰めた。ジェレミーはイスラエルのTV局からのインタビュー取材を受けていて、メランションはせわしなく建物の中に戻っていった。二人のうちの一人の女性職員が私にこう言った。「ここを出るように依頼しているのに、あなたは言うことを聞いてくれませんね」。私はこう答えた。「いえいえ、そんなことは決してありません。もちろん、あなた方のおっしゃるとおりにしようとしていますよ。ただゆっくりなだけです」と。

 そのときには、3人の並外れた体格の警備員が私の所に来ていた。それは、私が、報道関係者らに取り囲まれているジェレミーから目をそらさないようにして、顔見知りの人々を追いかけ続けていた時だった。警備員の人々がとても親しみやすかったことは認めざるをえないが、なぜ警備員らが私の後をつけていたのかは不明だった。しばらくして、4人目の警備員が現れた。その男性ははげ頭でひげをはやした山のような大男だったが、彼がこう言った。「ここにいたのですか?あなたのことをあちこちずっと探していたんです」と。このことばは奇妙に思えた。おそらくその警備員は、私が多くの警備員に囲まれていたことを知らなかったのだろう。

 ローラがなんとかこの場に入ってきて、私に携帯を返してくれた。ジェレミーはゆっくりと門の方に向かっていたが、不遜な振る舞いをすることはできない人物であり、誰であれ挨拶をしてくれた人々につれない様子を見せることはなかった。私たちが門の外に出たあと、ジェレミーは外にいたもっと大人数の群衆の前で止まる素振りを見せなかったので、私は彼にさよならを言って、ホテルへの帰路に着いた。私の足の指がまた痛み始め、暖かいお風呂が心から恋しくなっていた。

 お風呂のあと、私は食べ物を得ようと階下に降りていった。疲れ切っていた。その理由は、寒い夜に一晩眠ることなく列に並んでいたからだけではなく、バリからの40時間に及ぶエコノミー席での空の旅の疲れからくるものだった。その間、この地に着くまで全く眠れていなかったのだから。時間を数えてみたら、85時間私はベッドに入っていなかった。

 さらに私が感じたのは、報われない、という気持ちだった。いま起こっているこの事象に関して、確かに私には果たすべき役割があった。ジェノサイド条約のことを思い起こさせるために、私が書いた最初の記事の写しが、南アフリカ閣僚の前に置いてあった。それは、これらの閣僚が12月8日、国内の優秀な法関係者に訴追の準備をさせようという最初の決意を表明したときだ。そのような動きを組織したのは私ではなかったし、どのようにしてそんな動きが起こったかを書けば、自信をなくすことになる。感謝してもらおうという期待は何もなかったけれど、寒い中、夜を徹して苦労して法廷内に入ろうとした自分の努力が、報われない運命のいたずらのように思えてしまった。

 読者の皆さん、私はただ疲労困憊のなかで、自己憐憫に陥ってしまっただけだったのだ。まるでお馬鹿な10代の子どもたちがすねているようなものだった。私の脳は疲れ果て、混乱し、法廷見学一日目の報告書を書くエネルギーが見つかるかどうか深刻に悩んでいた。しかもその報告書はすぐに書かねばならないものだった。もう一晩寝ずに過ごし、凍り付く寒さのなか列に並べるくらい体力が残っているか、自信がなかった。テロリストではないかを調べられる、笑ってしまうしかないような検査から逃れようとする努力には飽き飽きしてきたし、自分の子どもたちに会いたくなった。

 私は決めた。もう一晩寝ずにいることはできない、と。読者の皆さんには、私が最善をつくしたことを説明すればいいから、と。私は大きな安心感に包まれ、床につこうと決心した。

 ちょうどそのとき、エレベーターから英国の著名な弁護士であるタヤブ・アリが降りてきたが、彼は背の低い、控えめなアラブ人紳士を伴っていた。

 「やあ、クレイグ。調子はどう?」とタヤブが聞いてくれたが、二人は今からどこかに出かけるらしく、明らかに急いでいた。「こちらは、ガッサーン」。
私たちは軽い握手をしたが、そのときあることを私は思い起こした。
「外科医さんですか?」
ガッサーンは戸惑い、少し気後れしている様子だった。
「ガザで外科医をされていませんか?」
「はい、ガッサーン・アブ・シッタです。」
「お会いできて光栄です。本当に光栄です」
ガッサーンは少し恥ずかしそうな様子で、会議に向かって走り去った。

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 私のほうがずっと恥ずかしくなった。私が今、目の前で会った人物はシファー病院から去ることなく、仕事を続けていた医師だった。この病院には、イスラエルが爆撃やミサイル攻撃を加え、この病院の窓からイスラエルの狙撃手らが発砲していた。それでもガッサーンは仕事を続けた。電気も、包帯も、消毒液も、麻酔剤もないなかで。ガッサーンは1日20時間働いて、子どもたちの手足の切断や縫合などの治療をおこなおうとしている。ガッサーンは爆撃される中で、来る日も来る日も病院に居続けている。それは愛のためだ。ガッサーンは英国有数の形成外科医だから、英国におれば、いくらでも稼げたろうに。

 私は本当に恥ずかしくなった。この男性はこんなにも困難に耐え、多くをなしとげてきたし、人々の苦しみも目にしてきた。それなのに今ここにいる自分は、足の指の痛みと睡眠不足を理由にして諦めようとしている。さらには自分のやっていることが重要なことであると人に思ってもらいたがっている。突然私は悟った。自分が情けないエゴイストである、と。そんな自分が大嫌いになった。痛みがなくなったわけではないが、新たなアドレナリンが吹き出てきたのだ。やってやろうという気になったのだ。私がやっていることがジェノサイドを食い止める何の助けにもならないかもしれないが、いま私たちは、私たちができる限りのことをせねばならぬのだ。

 笑ってくださって結構、でも、私にとってはアブシッタさんと出会えたことが、本当に大事な、意味のある出来事だったのだ。このことで自分は自分が思っている以上にもっとできるということを気づかせてくれ、やろうという意思が沸き起こったのだ。彼がなにか具体的なことばを掛けてくれたわけではなかったのだが。

 しかし私は、明日の準備をしないといけないという気持ちを持ち続けていたので、タクシーを拾ってキャンプ用品店に向かった。そこで私が買える中で一番暖かい寝袋を買い、さらに反射性のグランドシートと防寒靴下と携帯用瓶も買った。

 そこからまたタクシーを拾ってホテルに戻り、まっすぐ自分の部屋に入り、書き始めた。最初の3段落は楽々書き上げることができた。そのとき突然、私は自分の非常にもうろうとした目をカッと見開いたまま、頭をキーボードの上に載せた。横向きではなく、額を載せる形で。そこから3時間、眠りに落ちてしまった。

 その後はまるで蜜の中を歩くかのように、私の筆は止まってしまった。いつものように頭の中でことばはどんどん浮かんでくるのに、そのことばがなぜか指にはきちんと伝わらず、打ち込まれたものは、自分が使いたくないとして却下しようとするものに思える文章になってしまっていた。「assist them(彼ら助ける)」と打ちたかったのに、「his big cyst hen」と打ってしまっていたことを思い出す。遅々として進まなかった。

 午後11時になって、次の日の傍聴席待ちの行列が出来ていないか確かめに行った。まだ誰も並んでいなかった。私が心配していたのは、前日の朝の門のところでの順番の取り合いで揉めたことに多くの人が落胆して、2日目はもっと早くから並び始めるのではないか、ということだった。私はその時までに書き上げていたところまでだけ(つまり最初の段落の説明のところまで)をブログにあげることにして、定期的に行列を点検することにした。寒いところを歩くことで目が覚めた。前日よりもずっと暖かかった。前夜は零下5度だったが、 この日はプラス2度あった。ただし、地面はたっぷりとした露が降りびしょびしょだったし、風も前夜より冷たかった。

 1時半にもう一度確認しに行ったが、まだ誰も並んでいなかった。しかし3時になると、8人が列を成していた。私は急いでホテルに戻り、寝袋とグランドシートをもって、その時点でほとんど完成していた一日目の報告記事をブログにあげた。列に加わった時は、中に入ることが許された14人中の9番目だった。私は素敵なオランダ人女性に出会ったが、もし私が遅れてきたとしたら、その女性は私に順番を譲ってくれるつもりだった。だがお恥ずかしい話、そのお方の名前を忘れてしまった。

 がっかりしたのは、前夜の列に一緒に並んでいた新しい友人たちに一人も再会できなかったことだ。ゆうべの忘れがたい体験や苦労を一緒に共有できたことで、強い絆ができたと思っていた。ほとんど全員が翌日も列に並ぶつもりだと言っていたのだが、寒さと疲れのせいで、そうはできなかったのだろう。しかしそれでもこの第2夜の方がもっと楽しかったのは、そんなに寒くなかったからだろう。

 反射性グランドシートを買ったのは大正解だった。乾いていて、シンシンと増す寒さを阻止するのに驚くほど役に立った。しかしママのように温めてくれるはずの寝袋のほうはいささか問題だった。私は以前ほどスラッとしていないので、重ね着をしてスキージャケットを羽織れば、寝袋に入るにはキチキチだった。きっちりチャックを締めようとしたのだが、最後のひとあげが効かなかった。それが出来たら頭をすぽっと被せられたのだが。その時点で、腕が動かないくらいキチキチになってしまっていたからだ。

 何人かの素敵な女性が手助けをしに来てくれたおかげで、チャックをビシッと締めることができた。この騒ぎで大笑いが生まれた。ネット上の新たなポルノジャンルを生み出せたかもしれない。「老人を袋に詰め込んで完全にチャックを締める」という新しいジャンルを。いや、こんなジャンルはもう既に存在するかもしれないが、 グーグルで調べる気はない。そんなことをすれば、よくあることだが、警備員に身柄を確保されるか、私の電子機器が押収されるかどちらかだから。誤解を招く行為だから。

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 さて、午前3時半になると、私は頭を垂れて、実際5時半くらいまで寝てしまった。快適ではなかったが、寒くはなかった。それから、用を足せる茂みをウロウロ探した。戻ってきたとき、3人の女性が私のグランドシートを横取りして、寝袋を毛布がわりに使っていた。「あなたの陣地を占領したのよ」と冗談を言って。私は「よく分かった。きっと君たちの祖先は3000年前、寝袋を持っていたはずだ」と返した。うまいボケではなかったが、こんな感じで私たちは待ち時間を過ごした。そして、傍聴席の場所取りをしていた私たち14人で集合写真を撮った。

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 前日と少し違っていた。ペンの使用が許された。ただし、前日「ウロウロする人々がいた」せいで、傍聴者は後ろのドアを通って席に案内され、帰る時も同じ道を通るよう、警備員たちは不機嫌そうに伝えた。さらに、自分たちの集団以外の人々と話したり、やり取りをしないようきつく言い渡された。そうやって私たちは狭い傍聴席に座った。列は2列しかなく、座ってみてわかったことは、2列目に座ってしまうと、何も見えなることだった。 ホールからは、傍聴席に2列目があることさえ見えない。再度私は、この法廷が何の注意も払われず、ひどい設計で建てられたことに驚かされることになった。

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 幸運なことに、私の前に座っていた、恐らく傍聴席に入ってはいけないことになっていた若い男性が退席させられたので、私はイスラエル側の答弁の様子を見ることができるようになった。

 南アフリカの時と同様に、イスラエルの場合も、裁判所の手続きに従い、イスラエル外務省のタル・ベッカーという裁判所に常駐する「代理人」によって紹介された。彼は冒頭、「イスラエル国家を代表して再び皆さんの前に姿を現すことができて光栄です」というお決まりの文句で切り出し、裁判官の前に姿を現すことではなく、イスラエルを代表することにこそ名誉があるということを、言い回しや声の調子で純粋に暗示した。

 ベッカーは開口一番、ホロコーストについて語り、ジェノサイド条約が存在する間、イスラエル以上にホロコーストを知っていた者はいなかったと言った。「そのホロコーストで600万人のユダヤ人が殺されました。この条約は通常の戦争の残虐性に対応するために使われるものではありません」と。

 「南アフリカによる訴えはイスラエル国家の正当性を否定することを狙ったものです。10月7日、ハマスは大虐殺や殺傷行為、強姦、拉致行為を犯しました。1200人が殺され、5500人が怪我を負いました」。ベッカーは、何件かの個人による恐ろしい残虐行為について触れ、一人のハマス兵がWhatsApp上で、自分の両親に自分が犯した大量殺人や強姦、殺傷行為を自慢しているところを録音した音声を再生した。

 「今回の事象で起きた唯一のジェノサイドは、イスラエルに対しておこなわれたものでした。ハマスはイスラエルへの攻撃を続けましたし、この法廷が暫定措置を命じれば、イスラエルの自衛権を否定することになります。暫定措置を課すべきなのは、むしろ南アフリカが法的手段を講じてハマスとの関係に基づいてさらなるジェノサイドをおこなおうとしていることに対して、でしょう。ガザは占領下にあるわけではありません。イスラエルはガザが政治的・経済的に発展する可能性を与えてきました。それなのにハマスは、ガザをテロリストの軍事基地に変えることを選択してしまったのです。」

 「一般市民を巻き添えにしたため、市民たちが亡くなった責任はハマスにあります。 ハマスは学校や病院、モスク、国連施設の地下にトンネルとそのトンネルに入れる入口を作りました。ハマスは医療用車両を軍事用車両に変えてしまいました。」

 「南アフリカは市民の建物が破壊されたと主張していましたが、それらの建物がハマスの愚かな罠とハマスによるミサイルの誤射により破壊された事実は伝えませんでした。」

 「南アフリカが示した犠牲者数は、ハマス側の資料によるものであり、信頼できません。その犠牲者のうち何人が兵士だったか、南アフリカは伝えていましたか?子どものうち何人が少年兵だったかを伝えていましたか? 南アフリカが示した内容は根拠が薄く、良からぬ動機に基づくものです。イスラエルに対する名誉毀損に当たります。」

 明らかに冒頭のこのような発言は、強硬さと妥協を許さない姿勢を示すものだった。裁判官らが非常に深い注意を払っているように見えたのは、ベッカーが10月7日の攻撃は自衛のためだったという話から始めたときだった。何人かの裁判官がソワソワし、居心地が悪そうに見え始めたのは、「ハマスは救急車両や国連施設から攻撃を加えている」という話をベッカーがした時だった。ひとことでいうと、ベッカーは行き過ぎた発言をしてしまったということであり、この時点で聴衆はベッカーの話についていけなくなったと思う。

 続いて登壇したのはマルコム・ショー勅選弁護士だった。ショー弁護士は国際法の権威的存在であると目されている人物で、この件に関する基準となる本の編集者でもある。法曹界の興味深い側面なのだが、ある特定の話題に関する基準となるべき著書が定期的に更新され、その中には最近の裁判での主な要点も書き加えられ、そのような審判が与える影響についての説明の文章が加えられたり、補足されていたりする。法曹界の著書の編集者であるということは、コツコツと頑張る学者ぶった人にとって出世への道に繋がっている、ということだ。

 私がショーとたまたま出くわしたのは、彼がエセックス大学の人権センターの共同設立者になった時だった。もう20年ほど前のことになる。そこで二言三言ことばを交わしたことがあるが、話題は、「テロとの戦い」において、人権がどう攻撃を受けるかについてだった。私には、虐待や囚人特別引き渡しの場面を内部から見た体験があった。人権問題の専門家であるとされていたショーであったが、彼は個人の自由よりも、一国の国家安全保障上の利益を支持する傾向が尋常ではない程に強かったように思えた。

 当時熟考していた、という振りをするつもりはない。当時の私には、ショーが極端なシオニストという立場に立っており、特にパレスチナ人の権利を抑圧しようと長年関心を払っている人物であることは分からなかった139カ国がパレスチナを国家と認めた後でさえ、ショーはイスラエル側の先頭に立ち、パレスチナが国際組織に加盟することを法的に反対していた。その国際組織の中には、国際司法裁判所も含まれていた。 1933年のモンテビデオ条約に重きを置くようなショーの主張は、法曹界ではほぼ通用せず、このような主張は失敗だったと言っていいだろう。

 どんな犯罪でも弁護されるべきなのは当然で、殺人者や強姦者を弁護したとして弁護士を責めることは誰にもできないというのは当然だ。というのも、その人が有罪か無罪かを審査するのは法廷の仕事なのだから。だが一般的に考えて、殺害の罪に問われている被告人を弁護士が弁護するのは、その弁護士が殺人行為に同意し、殺人者がさらに殺人行為を続けて欲しいと思っているからではないということは当然のことだと思う。しかし今回のショーの場合はまさにそうなのだ。マルコム・ショーがイスラエル側に立って発言しているのは、彼自身、イスラエルがパレスチナの子どもや女性たちの殺害を続けることで、イスラエルの保安状況が改善することを願っているからなのだ。もちろんそれは彼がそう思っているだけなのだが。

 これがICJでの裁判を含めたほかの裁判とこの裁判の違いだ。通常、弁護団長は先に相手側に雇われたとしたら、喜んで自分の立場を変えるものだ。しかしこの裁判は完全にそうなっていない。この裁判では、弁護士ら(おそらくショーは例外だが)は、自分たちが支援している側を深く信じており、相手側の弁護人として出廷することはないだろう。これは、この事件が、多くのドラマと、少なくとも国際法の将来にとって極めて重要な結果をもたらす、特別な事件であることを物語っている。

 先ほど説明した理由から、ここでのショーの役割は、単なる弁護士としての任務ではない。イスラエルによる殺人行為の拡大を支持した彼は、間違いなく高給取りになるであろう彼の残りの人生において、世界中のまともな人々から除け者扱いされるに違いない。

 ショーは冒頭で、南アフリカ側の発言では常に文脈が語られていると述べた。「南アフリカはイスラエルという国家が存在する75年間について語りました。なぜそこまでなのでしょうか? なぜバルフォア宣言やイギリスのパレスチナ委任統治まで遡らないのでしょうか? これらの出来事の背景にこそ、10月7日の大虐殺と、それに続くイスラエルの自衛権の行使があったのですから」と。ショーは、10月中旬に欧州委員会のウルスラ・フォン・デル・ライエン委員長が発表した、「イスラエルはテロリストによる残虐行為に見舞われたため、自衛の権利がある」とする長い引用文を紹介し、読み上げた。

 「大量虐殺ではなく、10月7日以来続いている武力紛争なのです。それは残忍なものであり、市街戦は常に民間人の犠牲という悲劇を伴っていますが、ジェノサイドではありません。」

 それからショーは、ジェノサイドについての話題に移った。ショーの主張によると、南アフリカはこの訴訟を提起できず、ICJには管轄権がないとのことだった。その根拠は、「この訴訟が提起された時点では、ICJが裁定できるような論争はイスラエルと南アフリカの間には存在しなかったから」だとした。「南アフリカはイスラエルに自国の見解を伝えましたが、イスラエルは実質的な返答をしませんでした。ですので、提訴時にはまだ両者のあいだに論争は存在していませんでした。論争は当事者間の相互作用を伴うものでなければならいものですが、議論は一方の側だけでおこわれていました」と。

 この主張には裁判官たちも大いに興味を示した。初日にも書いたが、ジョン・デュガード教授が南アフリカについて同じ点を取り上げたとき、このことが何よりも裁判官を積極的にさせていた。私の報告は以下のとおりだった:

 裁判官らはデュガード教授による指摘を特に好意的に受け取ったようで、熱心に書類に目を通し、下線を引いていた。何千人もの死んだ子どもたちの件を扱うことは裁判官らにとって少し難しいことだったが、公正な管轄権が与えられた裁判官なら、本領を発揮できることが示された。

 ショーが同じ点について論を展開したとき、裁判官らはさらに興奮した。ショーの主張で、裁判官らは結審の出口を得ることができたからだ。

 この主張に従えば、この裁判を無効にすることが可能になり、西側の有力諸国を動揺させることも、世界中が目にした大虐殺をなかったことにして自分たちの愚かな姿をさらしてしまう事態も回避できるからだ。しばらくの間、裁判官らは目に見えて安堵したように見えた。

 ここで話を止めておくべきだったのに、ショーは、その後1時間もの間、苦労して話を続けたが、メモか書かれた紙をぐちゃぐちゃにすることで少し安心している様子だった。即興でふるまったり、議論を建て直したりする能力が全くない勅選弁護士の姿を見るのは興味深かった。ショーは常に落ち着かず、メモの書かれた紙をパタパタさせていた。

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 ショーは、裁判所が暫定措置を採用した場合、イスラエルは高い軍事的・政治的な損害を受けることになるため、南アフリカに確かな証拠があるかどうかを判断するハードルはかなり高くならざるを得ないと主張した。また、ショーは、「この段階でも大量虐殺の意図があったことを示す必要があります。そうでなければ、大量虐殺は「エンジンのない車」になってしまいます。イスラエル側は、注意深く的を絞った軍事行動をおこなっていたので、違法行為がおこなわれたのであれば、イスラエル自身の軍事法廷が調査し、それに基づいて行動するでしょう」とも主張した。

 「無差別にイスラエルの大臣や高官らが感情的な発言をした事実は重要ではありません。民間人を保護すべしという公式の方針は、この戦争について話し合われたイスラエルの内閣と国家安全保障会議の議事録に記載されています。一般市民を危険から遠ざけようとするイスラエルの努力は、国際人権法上認められた措置であり、集団拉致と見なすべきではありません。」

 「ハマスと共謀してジェノサイドに加担した南アフリカにこそ有罪です。南アフリカがイスラエルに対しておこなった主張は、「憤慨するしかない」ものでした。」

 イスラエル側の次の弁護士は、イスラエル法務省のガリット・ラグアンという名の人物だった。彼女によると、現場で起こっている真実は、イスラエルが一般市民の犠牲者が出ないよう細心の注意を払っており、人道的救済を援助しようとしている、とのことだった。「都市部の戦争には常に一般市民の犠牲がつきものです。建物や生活基盤施設を破壊した責任はハマス側にあります。」

 「ハマスが病院を軍事用施設として使用していた証拠は驚くべき程に存在します。イスラエル軍は、ガザにあるどの病院も、ハマスが軍事用施設として使用していたという証拠をつかんでいます。多くの一般市民を避難させたのは、人道的かつ合法的措置でした。イスラエルは食料や水、薬をガザに供給してきましたが、供給物資がハマスによる攻撃を受けたのです。ハマスは自軍の兵士たちのために救援物資を盗んだのです。」

 次に登壇したのは、弁護士のオムリ・センダーだった。彼によると、今ガザには10月7日以前よりも、1日の食料を運ぶトラックの数は増えている、とのことだった。その数は1日70台から109台に増えているという。燃料やガス、電気は全て十分に供給されており、イスラエルは下水道体系も修理した、という。

 この時点で、イスラエル側は弁護士からの関心を失ったようだ。この人物をかなりあやしげな様子で見ていた裁判官が1~2名いた。2人は完全に眠ってしまっていた。それはおそらく、センダーの話が聞くに耐えないほど嘘まみれだったからだろう。

 こんなまやかしのような話について、メモをとる人さえいなかった。裁判官らはイスラエルを非難しないですむ方法を模索していたようだったが、こんなありえないような嘘話に付き合うことはできなかったようだ。センダーは話を続け、「作戦が新たな段階に入ったため、戦争の範囲や激しさは減りつつあります」と語った。

 恐らく誰も自分の話を信じないことをわかった上で、センダーは以下のように述べた。「この法廷で暫定措置を命じることはできませんが、善良な意図に基づくイスラエル側の発言を受け入れるべきです。それは「国家による一方的意思表明」という宣言があるからです」と。

 ここで白状しないといけないが、私が把握していない国際法が少し存在したのだ。特にICJでの審議に関しての国際法だ。その条項を一読すると、ICJに対して「国家による一方的意思表明」宣言をした国家を束縛できる、という内容だった。その宣言によりICJが、その国家が十分誠意を持っている国だと強制的に捉えさせられる訳ではない、と私には読めた。イスラエル側のこのような主張は、いわば言ってみただけに過ぎず、他に主張できることがないから何とかこじつけたもののように私には思えた。

 おそらくこの見立ては間違っていないようだ。というのも続いて登壇した勅選弁護士のクリストファー・ステーカーは開口一番、ハマスについてこれまでの発言者らと同じような話をし始めたからだ。つけ加わったものといえば、芝居じみた憤懣だけだった。私が思うに、ステーカーはどちらの側にでも喜んで立てる弁護士なのだろう。というのも、明らかに彼は芝居をしていたからだ。しかもその芝居はあまり上手くなかった。

 ステーカーによると、こんな裁判が起こされたこと自体、驚くべきことだという。「この訴えにはイスラエルの自衛権を阻止する意図があります。イスラエルはいまだにハマスの攻撃に晒されているというのに。ハマスは攻撃を続けると言っているのですから」と。

 「ハマス側の罪をやわらげようという意図も含めて、全体としてこの工作を見れば、イスラエル側にジェノサイドをおこなおうとする意図が存在しないことは明白です。イスラエルは信じられないほど危険な状況に置かれています。提案されている暫定措置は、このような状況からすれば公正なものではありません。考えてみてください。第二次世界大戦中に、ある法廷が、一般市民の犠牲者を出しているからといって連合国側に戦争を止めるよう命じ、枢軸国側に殺戮行為を続けることを許すのと同じことなのです。」

 最後の発言者はイスラエルのギラド・ノーム司法副長官だった。彼の発言は、「提案されている多くの暫定措置は拒否されるべきです。というのも、そうなればイスラエルがハマスからの攻撃に晒されることになるからです。さらに3つの暫定措置も拒否されるべきです。その理由はその措置は、ハマス外のパレスチナ人を対象にしたものだからです。イスラエルにはジェノサイドをおこなおうとする意図はありません。内閣や官僚が、一時的な感情の高まりから発したことばは、むしろ民主主義や言論の自由の一例として捉えるべきです。ジェノサイドがあったとして扇動したことこそ、犯罪行為として捉えるべきではないでしょうか」というものだった。

 「この法廷は、ジェノサイドと自衛を一緒にしてはいけません。南アフリカ側の発言は、ジェノサイドの意味を軽視し、テロ行為を奨励するものです。あのホロコーストは、イスラエルが常に存続の危機に置かれてきたことあらわしていました。ジェノサイドを犯しているのはハマスの方です。」

 つまりはそういうことだったのだ。最終的にイスラエルは物議を醸していた残虐行為の動画を法廷で見せることが許されなかったから、発言者らの発言内容を同じ内容の繰り返しにすることで、時間稼ぎをしたのだな、と私には思えた。

 以下のことはしっかりと頭に入れておくべきだ。それは、イスラエル側の希望は、論争がなかったという点で手続き上の利点を得て、 国家による「一方的意思表明宣言」や国家の権限を主張することだった点だ。「家屋や生活基盤施設の被害はハマスの手によるものだ」や「ガザにトラックを入れたのはイスラエルだ」や「犠牲者の数は偽造されている」という明らかに間違った主張は、大事ではなかったのだ。裁判官らに信じてもらおうとは思っていなかったようだ。裁判で得たかったのは手続き上の利点だけだ。あとは報道機関向けの宣伝行為だったのだろう。

 英国では、BBCとスカイ局、両局がイスラエル側の発言をほとんど全てライブで放送した。いっぽう、南アフリカ側の発言は全く放送しなかった。米国やオーストラリア、ドイツでも同様だっただろう。

 法廷審議進行中にドイツが発表したのは、この件に介入して、イスラエルを援護するということだった。ドイツが明らかに主張しているのは、世界で最も厳しいジェノサイドをおこなった過去のある国として、この裁判の判決において独自の大きな役割を果たせる、という点だ。これはいわば、著作権問題だ。ドイツは、ジェノサイドという分野での知的所有権を守っている、ということだ。そのうち、「ジェノサイド」ということばの特許を取得するか、イスラエルにその名称の使用を許可することでジェノサイドを継続させようとするかもしれない。

 裁判官団がこの事態を脱したいと思っているのは確かだし、手続き上の得点を得ようとしているのかもしれない。ただし、イスラエル側からの「論争は存在しない」という主張は深刻な問題をはらんでいる。この主張が認められれば、ジェノサイドを犯した国は異議申し立てに返答しないだけで済むことになってしまうからだ。というのも、「返答がない」ということは「論争が存在しない」という意味になってしまうからだ。このようなことを裁判官らが「明らかに不条理である」と思っていることを私は望む。もちろん実は裁判官らはそのことに気づきたくないと思っているかもしれないが......。

 この先、どうなるだろうか? ある種の「妥協」が生じるだろう。裁判官らは、南アフリカの要求とは異なる暫定措置を出し、イスラエルに民間人を保護する措置を取り続けるよう求めるとか、そんなまやかしのような判決を出すのだろう。間違いなく米国務省は、そのような草案をドノホー裁判長向けに作成済みであるに違いない。

 私は自分の見通しが間違いであることを願っている。国際法をあきらめたくはない。ひとつ確かなことがある。ハーグでのこの2日間は、国際法や人権の概念に意味が残されているかどうかを判断する上で、絶対に欠かせないものだった、という点だ。私は今でも、裁判所が行動を起こせば、米国と英国が手を引き、何らかの救済措置が講じられる可能性があると信じている。今は、ガザの子どもたちのために、それぞれのやり方で祈り、願おう。




イスラエル軍、ハマス攻撃時 (10/7) に自国の民間人や兵士を殺害(イスラエル有力紙)

<記事原文 寺島先生推薦>
Israeli Army Ordered Mass Hannibal Directive on October 7
原題:10月7日、イスラエル軍は大規模なハンニバル指令を出していた。
筆者:ザ・クレイドル(The Cradle)
出典:Internationalist 360°  2024年1月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月17日


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訳註:「ハンニバル」は2001年の米国映画のタイトル。「人食」を表す「カニバル」を連想させることばであり、実際この映画の登場人物「ハンニバル」も人肉を食べる。ここでの「ハンニバル作戦」とは、「自分の味方をも犠牲にして厭わない作戦」の意味で使われている。


 イスラエルの有力紙の調査によれば、イスラエルは、ハマスのアル・アクサ・フラッド作戦の際、ガザに捕虜として連れ戻されるのを防ぐため、自国の民間人や兵士の多くを故意に殺害したという。

 イスラエルの有力紙、イェディオト・アハロノト紙の調査によると、イスラエル軍は10月7日のハマスの攻撃時に「ハンニバル指令」を実行し、ハマスが捕虜としてガザに連れ帰るのを防ぐために自国の民間人や兵士を殺害したという。

 同紙ヘブライ語版は1月11日付で、「調査で明らかになったことのひとつは、10月7日の真夜中に、IDF(イスラエル軍)は、『ハンニバル手順』を使用するよう、すべての戦闘部隊に命令していた。ただし、はっきりとことばでその指示は出していなかった」と報じた。

 その命令とは、「テロリスト・ハマスがガザに戻ろうとする試みはどんな犠牲を払っても、つまり、拉致被害者が敵方にいても」阻止することだった、と同紙は書いている。

 タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、ハンニバル手順(指令)は、「兵士が敵の手に落ちるのを防ぐために、兵士が潜在的に大量の武力を行使することを許可している。その兵士を捕虜にさせないためにはその命を危機に晒すこともあり得る」という流れになっていた。

 以前イスラエルのハアレツ紙がこの指令について調査したところ、「軍から見れば、死んだ兵士の方が、捕虜となった兵士が苦しむよりマシであり、その兵士の解放を得るために国家は何千人もの捕虜を解放せざるを得なくなってしまう」という結論に達した。

 10月7日の攻撃で、ハマスと他のパレスチナ人は、入植地(キブジムとも呼ばれる)や軍事基地から約240人のイスラエル軍兵士と民間人を捕虜としてガザに連れ戻すことに成功した。ハマス側は、イスラエルの刑務所に収容されている女性や子どもを含む数千人のパレスチナ人と彼らを交換することを望んでいた。

 ハマスはトヨタのピックアップトラックやオートバイ、入植地から盗んだ車を使って、捕虜をガザに連れ帰った。また、徒歩やトラクターに引かれた荷車で連行された者もいた。

 イェディオト・アハロノト紙によると、入植地とガザ地区の間の地域で、約1000人の「テロリストと潜入者」が殺害されたという。

 しかし同紙は、ハンニバル指令の発動によって何人の拉致被害者が殺されたかは、現時点では明らかではないと付け加えた:

 「攻撃の翌週、精鋭部隊の兵士たちは、入植地とガザ地区の間に残された約70台の車両を確認した。これらはガザに到着しなかった車両で、途中で戦闘ヘリや対戦車ミサイル、戦車に撃たれ、少なくとも車両に乗っていた全員が死亡した事例もあった。」

 ジャーナリストのダン・コーエン氏が報じたように、イスラエル軍は10月7日、エフラット・カッツさん(68歳)を、キブツ・ニール・オズからトラクターに引かれた荷車に乗せてガザに運ぶ途中で殺害した。彼女の娘ドロン・カッツ=アッシャーちゃんと2人の孫娘ラズちゃん(2歳)とアビブちゃん(4歳)もその荷車に乗っていた。

 ドロン・カッツ=アッシャー氏が後にイスラエルのチャンネル12に語ったところによると、イスラエル軍はトラクターに発砲し、母親のエフラットさんを殺害し、2人の娘を負傷させた、という。

 イスラエル軍が非公式にハンニバル指令を発令していたことが明らかになったことで、当初ハマスの捕虜となったと推定されながら、後にガザ国境フェンス付近で遺体が発見された多くのイスラエル民間人の死について疑問の声が上がっている。

 多くの場合、遺体はひどく焼かれたり、切り刻まれたりしており、歯の記録やDNAでしか身元を確認することができない。このことは、彼らが国境付近でハマスによって機関銃を使って処刑されたのではなく、イスラエル軍の戦車やヘリコプターの射撃などの重火器によって殺されたことを示唆している。

 たとえば、80歳のカルメラ・ダンさんと12歳の自閉症の孫娘ノヤさんは、10月7日の朝に失踪した。家族は二人ともハマスの捕虜になったのだと思っていた。しかし2週間後、イスラエル当局は「国境フェンス付近で遺体が発見された」と発表した、とフォーリン・ポリシー紙は報じている。

 10月19日、カルメラさんの姪はNBCニュースにこう語った。「イスラエル軍による遺体回収作戦が数日前におこなわれましたが、私たちが知っている限り3度のDNA鑑定がおこなわれたため、それが2人の遺体であることを確認するのに時間がかかったんだと思われます」と。

 イェディオト・アハロノト紙は、ハンニバル指令は10月7日の真夜中に非公式に出されたと報じているが、もっと前に出されていたことを示唆するものも多い。

 イスラエルのバラク・ヒラム准将はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、10月7日、キブツ・ベエリの民家で14人のイスラエル人捕虜がバリケードに閉じこめられていたにもかかわらず、ハマスの戦闘員を殺害するために戦車隊長に発砲命令を下したことを認めた。

 日没になり、ヒラム准将は戦車隊長に言った:「交渉は終わりだ。民間人を犠牲にしてでも侵入しろ」と。

 ハマスの戦闘員と、捕虜の1人を除き12歳の双子リエルさんとヤナイ・ヘッツローニさんを含む捕虜全員が殺された。彼らの遺体はひどく損傷し、焼かれていたため、身元を確認するのに数週間を要した。

 10月26日のチャンネル12とのインタビューで、ヒラム准将がベエリの家への発砲命令を公に認める前に、同准将は10月7日の自身の論理に言及した。それによると、同准将が懸念していたのは、「ソラナ(テルアビブにあるイスラエル軍司令部)に戻り、あらゆる種類の交渉をおこなおうとすれば、我々の手を縛る罠にはまり、必要なことができなくなるかもしれない」ということだったという。

 ベエリの別の事件では、マティ・ワイスさんとアミール・ワイスさんという老夫婦が、10月7日の朝、家に侵入したハマスの戦闘員によって殺害されたとされている。マティさんは息子のユヴァルさんに、戦闘員が家に入り、アミールさんが撃たれたとメッセージを送った。

 キブツの警備団の一員だったユヴァルさんは、両親の居場所を軍に提供し、ハマスの戦闘員が家の中にいると伝えた。

 老夫婦の死を説明するために、ハアレツ紙はこう書いている。「マティ・ワイスさんとアミール・ワイスさんはテロリストに襲われ、セーフルーム(安全のための隠れ部屋)の壁のひとつを爆破され、撃たれた」と。

 しかし、ハアレツ紙が公開したワイスさん宅の写真によると、家の壁に大きな穴があき、屋根に大きな損傷があったことから、戦車の砲弾かヘリコプターの攻撃による損壊であると思われる。

 ハンニバル指令が出ていたことは、10月7日、ハマスが364人のイスラエル人パーティー参加者を虐殺したとされるノヴァ音楽祭事件でも明らかになった。

 イスラエル軍の地上部隊は10月7日のハマスの攻撃に何時間も対応しなかったが、イスラエル警察南部方面総司令官アミール・コーエン空軍大将は午前6時42分、コードネーム 「フィリスティン・ホースマン(Philistine Horseman)」と呼ばれる命令を下し、国境警察部隊を各所に派遣してハマスの攻撃に立ち向かわせた。

 イスラエル政府関係者がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、これらの部隊には、ヘリコプターで派遣されたヤマムと呼ばれる対テロ先鋭部隊が含まれていたという。

 これらの部隊は、ハマスが人々を拘束しているときに、パーティーの参加者に発砲したようだ。

 ドイツのタブロイド紙『ビルト』は、この催しを生き延びたマヤ・Pさんの証言を報じた。ビルト紙は、「道路封鎖を仕掛けたテロリストたちは、警察官や兵士に変装してやってきた」と報じている。

 「人々は救出を願って彼らのもとに走ったんです、そしたら処刑されたんです」とマヤさんは泣きながら語った。

 もう一人の生存者、ユヴァル・タウピさんはCNNの取材に対し、こう語った。「警察の女性が、テロリストのほとんどは兵士や警官、警備員のような格好をしているから、誰のことも信じてはいけない、と言っていました」と。

 マヤさんもユヴァルさんも、イスラエル軍が自分たちに発砲したとは考えられなかったので、ハマスの戦闘員が兵士や警察に変装しているに違いないと思ったのだろう。

 イスラエル軍の攻撃ヘリコプターもノヴァの会場に配備され、パーティー参加者に発砲した。

 ハアレツ紙の報道によると、「警察の情報筋によると、この事件に関する調査の結果、ラマット・ダビデ基地から現場に到着したイスラエル軍の戦闘ヘリコプターがテロリストに向けて発砲したが、その場にいた数人の観衆にも命中したらしいことも判明した」とのことだ。

 BBCは、ヘリコプターの銃撃によるハンニバル指令の明白な事例を記録した。英国国営放送である同放送局は、ジャーナリストが確認した車載カメラの映像から以下のように報じた。「男たちの一団が現れた。武装しているのは1人だけで、彼らは略奪のためにそこにいるようだ......車の中に隠れていた男女2人が発見され、連行されていく」

 「連れ去られた女性は2分後、突然姿を現した。彼女は飛び跳ね、腕を振り上げた。きっと助けてもらえると思っていたに違いない。このとき、イスラエル国防軍は侵攻を撃退する努力を始めていた。しかしその数秒後、銃弾が彼女の周囲にばらまかれ、彼女は床にへたり込んだ。彼女が生き延びたかどうかは不明だ」と。

 以前当Cradleが報じたように、イスラエル空軍(予備役)のノフ・エレズ大佐は、10月7日のイスラエルの行動を、アパッチ・ヘリコプターと戦車の使用に対応した「大規模なハンニバル作戦」であると表現した。「私たちが見たのは、「大規模なハンニバル作戦」でした。塀にたくさんの穴が開き、何千人もの人々が人質と一緒に、あるいは人質なしで、さまざまな車に乗っていました」と同大佐はハアレツ紙に語った。

ハーグでの裁判の報告は私に任せてくれ

<記事原文 寺島先生推薦>
Your man in the Hague.
筆者:クレイグ・マレー(Craig Murray)
出典:Internationalist360°  2024年1月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月17日


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 私は木曜日(1月11日)、国際司法裁判所(ICJ)でおこなわれたイスラエルのジェノサイドに対して南アフリカが起こした訴訟の審理に出席した。私は公聴席に座り、すべての審議を見ることができた。ただし私の報告には欠陥があった。それは、ペンや鉛筆の使用は許されていなかった(紙は許されていたが)からだ。私はICJの警備責任者に、なぜ公聴席でペンの使用が許されないのか、と尋ねた。その警備責任者は完全に真顔で、武器として使えるからだ、と言った。ボールペンがないという致命的な欠陥のせいで、この説明記事は私が思っていた以上に、詳細さよりも印象的な描写が多い内容になってしまった。

 私は1月10日(水)の早朝、インドネシアから飛行機でハーグに到着した。ハーグに至るまでは4機の飛行機を乗り継いだ。シンガポール行き、ミラノ行き、コペンハーゲン行き、最後がハーグのスキポール空港行きだった。1月10日(水)、私は友人の古いスキージャケット以外はビーチウェアしか持っていなかったので、ハーグにあるチャリティー・ショップで暖かい服を必死に探した。まず私はICJに電話し、1月11日(木)の朝の審議を傍聴する方法についての情報を入手した。

 若い女性が私に教えてくれたのは、壁の中にあるアーチ型の門の外で列に並ばなければならない、ということだった。さらに、法廷は午前6時に開場し、先着15名が入廷できる、とのことだった。私は、正確にはどこに並べればいいのかも聞いた。係の女性は、そこまでする必要があるかわからないが、木曜日(1月11日)の午前6時に到着すれば問題ないはずだ、と教えてくれた。

 私は徒歩5分ほどのところにあるホテルに泊まっていた。水曜日(1月11日)の夜10時、すでに気温が-4°Cまで下がっていたが、行列ができていないか確認しに行った。まだ誰も並んでいなかった。一度ホテルに戻ったが、その後も1時間おきに行列ができていないか確認しに行った。真夜中や午前1時には誰も並んでいなかったが、午前2時にはすでに8人が並んでいて、とても寒そうにしている3つの小さな集団できており、分かれて座っていた。みんなとても寒そうに見えたが、みんな親しみやすく、おしゃべりだった。

 門のすぐ横にいた最初の集団は、若いオランダ人女性3人組で、毛布を敷いて座り、ホットコーヒーの入った携帯用瓶とバクラヴァ(甘いお菓子)の箱があり、準備万端だった。2番目の集団は、国際法を専攻する3人の若い学生で、全員がアラブ人で、他の事件を傍聴したことがあり、ここでのコツを知っていた。3番目の集団は、オランダ人とアラブ人の2人の若い女性で、寒そうでつらそうな顔をしてベンチに座っていた。

 私たちはすぐに打ち解けて話し合うようになり、私たち全員が、容赦ない占領に反対するパレスチナ人の闘いへの支援に動機づけられてここに来たことがわかった。その後まもなく、もう一人のアラブ人紳士が到着したが、年配の権威ある人物だった。スコットランドのゴードンストウン寄宿舎学校で教育を受けていたそうだ。背の高いチュニジア人男性が電話をかけながら行ったり来たりしていた。彼はせわしない様子で、どちらかというと恥ずかしがり屋のようにみえた。

 入廷できる人数について、私たちはみな同じような情報を与えられていたが、15人、14人、13人と言われた人もいた。列に並んでいた人の数は数時間12人で止まっていた。そして午前4時30分ごろ、一台の車が飛び出してきて、現れたのは、「プログレッシブ・インターナショナル」のヴァルシャ・ガンディコタ・ネルトラだった。彼女はジェレミー・コービン(英国労働党首)とジャン・リュック・メランション(フランスの国会議員)のための場所取りとして来ていた。彼女の組織の他の構成員も少しずつ到着した。そして午前6時が近づくと、パレスチナの国旗を持ち、クーフィーヤを身に着けた人々が少しずつ押し寄せてきた。

 本当に大変な寒さだった。4時間後、足の指はひどい痛みから感覚がなくなり、指が反応しなくなってきた。よくあることだが、午前5時から寒さはますます厳しくなった。

 メランションとコービンは午前5時30分に到着し、列に並ぶと、メランションは相変わらず活発で、しっかりと目を覚ましていて、誰とでも会えたことに喜びを示し、耳を傾けてくれる人には誰にでも経済と社会組織について講義した。私の脳はすでに凍りついていたので、その輪に私は入れなかった。ジェレミーも同様に、いつものジェレミーで、列の中で誰の位置も奪いたくないと気遣っていた。

 そして、反対側で門を開ける準備が始まると、事態は不愉快な方向に進んだ。一晩中そこにいた私たちは、到着の順番を知っていたが、門にたどり着くために私たちを通り過ぎたり、周りを押しのけたりする遅れた人たちに圧倒され始めた。私は自己主張して、列を整えなければならなくなった。

 群衆の中の活動家たちはこれに異議を唱え、入国の基準は到着時間ではなく、パレスチナ人に場所を与えるべきだと提案した。一番最初から並んでいたオランダの女性2人組の1人は、この提案を受けいれ、自分の順番を諦めた。

 すべてが悲惨な状況になった。列の14番のすぐ後ろにいたスウェーデンのパレスチナ人女性は、入場できないという考えにひどく心を痛め、午前6時過ぎに到着したパレスチナ人紳士のカップルは、断固として列を押しのけ始めた。

 私は、少し反論の演説をし、私たちは皆、パレスチナ人を助けるためにここにいるのだと説明したが、誰もお互いの話を知らなかったし、誰かの出席がパレスチナの大義にとってどのような役に立つかという問題は、ひどく傷ついた人々の個人的な感情を満足させることと同じくらい重要だった。

 気難しいチュニジア人が順番を取っていたところには、元チュニジア大統領が変わって入ったのだが、この並んでいた男性は本当に気さくで気取らない人だったが、その場の雰囲気は状況をいい方向には向けなかった。結局、私たちは5人ずつの集団に分かれての入場が許され、手続きを済ませた。一番最初に到着したオランダ人女性の一人が、パレスチナ人に自分の居場所を譲った。私は9番の整理券を握りしめてホテルに戻り、そのまま熱いお風呂に入った。足の指や指が解凍されるときの痛みは本当に不快だった。

 その後、午前9時にすぐに戻ってきて、必要以上に煩わしい安全点検と財布やペンの持ち込みを確認する検査を飽きるほどされた。その後、私たちは公聴席に案内された。

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 平和の宮殿は、アンドリュー・カーネギーの手により建設された。この人物は、道徳的に非常に複雑な篤志家であり、凶悪で信じられないほどの成功を収めた資本家の独占者でもあった。鉄骨とコンクリート構造とは裏腹に、塔の上に塔がそびえ立つおとぎ話のような外観を持ち、内部はマジョリカタイルが貼られ、トイレは頑丈なアーミテージ・シャンクス社製のものが使われている。この建物はカーネギー財団によって現在も所有・管理されている。

 世界法廷として建てられた建物にしては、不思議なことに法廷があるようには見えない。大広間は、建物の片側の側翼を占める、何もない大広間にすぎない。比較的近代的で、質素で緩やかなカーブを描くひな壇がホールの長さを横切って挿入され、裁判官用の長いテーブルと17脚の椅子が置かれているが、この構造は一時的なもので、まるで撤去されて結婚式に使われるかのようだった。裁判の当事者は、ひな壇の下のホール本体に並べられた質素なスタッキング・チェア(積み重ねることができる椅子)に座っており、これまた裁判所というより結婚式のようだった。裁判官たちの頭上には、派手な色彩とかなり怪しげなステンドグラスの窓が広がっていた。

 私はこれまで、国際司法裁判所(ICJ)に対する信頼、その公平な判断の歴史、そして国連総会による選出制度について述べてきた。国際司法裁判所は、はるかに若い姉妹機関である国際刑事裁判所(ICC)の評判によって、むしろ不当に汚されている。ICCは西側の道具と揶揄されるのは当然だが、ICJはそうではない。パレスチナだけを見ても、ヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの「壁」は違法であり、イスラエルには占領地における自衛権はないとの判決を下している。また、「英国はインド洋チャゴス諸島を非植民地化しなければならない」という判決を下したが、この問題は常々私の心の片隅にあったものだ。

 ジェノサイドに反対する私たちが、希望を持ってハーグまで足を運んだのには、十分すぎる理由があった。

 通常の15人の裁判官に加えて、紛争当事者である南アフリカとイスラエルはそれぞれ、追加の裁判官を指名する権利を行使した。裁判官の入廷後、この2人の裁判官が公平を宣誓して審理が始まった。この行為が、この裁判でイスラエルがついた最初の嘘だったと言っていいだろう。

 アハロン・バラクが国際司法裁判所のイスラエル人裁判官に指名されたのは、異例のことだ。というのもこの人物は、イスラエル最高裁判所長官として、イスラエルが設置した壁の違法性に関するICJ判決の履行を拒否し、「ICJよりも自分のほうが問題の事実をよく知っている」と述べた人物だからだ。

 バラクには、イスラエル国防軍によるパレスチナ人に対するあらゆる形態の弾圧を「国家安全保障」のために合法として受け入れてきた極めて長い経歴があり、イスラエルが長年おこなってきたパレスチナ人家屋の破壊を集団的懲罰にあたる、とした判決を繰り返し拒否してきたことが特筆される。このような立ち位置は、現在のガザの民間基盤施設の破壊に対する立ち位置と直接に繋がるものだ。

 バラクはイスラエルでは、司法と行政の間の憲法闘争において「リベラル」と見なされている。しかし、それはネタニヤフの腐敗が問題にしない能力に関することであり、パレスチナ人の権利について、「リベラル」な立場であるわけではない。明らかに意見が対立しているバラクをICJに任命することで、ネタニヤフは典型的な狡猾さを示した。もしバラクがイスラエルに不利な裁定を下せば、ネタニヤフは国内の敵対者バラクは国家安全保障に対する裏切り者だと主張することができる。もしバラクがイスラエルに有利な裁定を下したとしても、ネタニヤフはイスラエルのリベラル派がガザ破壊を支持していると主張することができる。

 私の願いは、後者の主張をするバラクの姿を見ることだ。

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 私は公聴席に座り、そこから17人の裁判官の姿を長時間見守っていた。どの裁判官が予期せぬ方向に立場を表明するかはこれまで縷々(るる)書かれてきた。それぞれの裁判官は出身国の政府に振り回されるだろうと考えるのは、安易な仮定に過ぎる。実際どう判断するかは、裁判官によって違う。

 ICJのジョーン・ドナヒュー法廷長は、米国務省のクリントンの息がかかった人物であり、人生で一度も独自の考えを形成したことがないが、その彼女が今さら自身の考えを表明し始めたら、私は驚くに違いない。私はホールの壮大な深い浮き彫りのパネル張りの木製の天井の穴からうそっぱちが見えてくるのでは、と半分期待するところがあった。しかし、他の点に関しては皆目見当がつかなかった。

 ドイツほど猛烈に国家の指導者層が反パレスチナを掲げている国はない。かつての先人がおかした罪の意識を引き継ぎ、ジェノサイド全般に対して反対の意思を表明するのではなく、今回のジェノサイドを反撃であると捉えて推進する方向に向かおうと決めたようだ。それに加えて、ICJのドイツ人裁判官であるノルテは、リベラルであるという評判があるわけではない。しかし、ミュンヘン在住の友人によると、ノルテは武力紛争法に特別な関心を持っており、物事を深く考えることにこだわっているという。友人らの見解によると、ノルテの職業上の自尊心や熟考する性格が鍵となり、イスラエル国防軍がガザの民間人に対してあからさまにおこなったことに関するノルテの答えは、たった一つの方向を指し示すことになる、とのことだ。

 一方、ICJにはウガンダの裁判官がいるので、この裁判官は南アフリカに同調すると思われるかもしれない。しかし、ウガンダは、私に言わせればよく理解できない理由で、米国やイスラエル側に立ち、パレスチナの国際刑事裁判所への加盟を認めないようだ。そしてその理由として、パレスチナは実在する国家ではないという点を挙げている。同様に、BRICSの主要加盟国であるインドが、同じ加盟国である南アフリカを支援することを期待する人もいるかもしれない。しかし、インド政府は、醜悪なイスラム嫌悪に陥りがちなヒンドゥー民族主義政府だ。私はインドのバンダリ裁判官がインド国内の異なる共同体の間の問題に関して取り組んだかの記録を調べたが、その証拠は見つからなかった。

 しかし、現在、世界法廷で争われているこの事件において、国連総会は自分で自分の首を絞めたのではないか、と思われる。というのも、国連総会は、ある英国人判事をインド人判事と交代させたからだ。現在世界において、発展途上諸国が勝ち組になりつつある状況にあるから、そうしたのであろう。私が言いたいのは、これらの問題は非常に複雑であり、私の親愛なる同業者たちからのものを含め、私が見てきた分析の多くも内容がてんでんばらばらであるということだ。

 この大法廷が法廷としてふさわしくない様相であるだけでなく、世界法廷にしては公聴席の数はごくわずかだ。公聴席は廊下の片側を走っていて、バルコニーの端から落ちたら死んでしまうほどの高さにあり、奥行きはわずか2席分しかない。さらに、劇場風の座席は100年前につくられたもので、いまにも壊れそうな代物だ。座るところは地面から20センチしか離れておらず、席が傾いているので、太ももから地面までは10センチしかない。椅子全体が前方に突き出されているので、体が端から出てしまう。カーネギー財団は、座席を固定するのではなく、バルコニーの手すりの上の壁から壁にくくりつけた強力なケーブルで固定するほうを選び、このケーブルが事実上第2の手すりとして機能し、さらに15センチ分保護してくれている。

 公聴席の3分の1は、視聴覚投影器具とウェブ上での放送設備を置くために利用されており、公聴席の空席はわずか24席だった。列に並んだのは私たち14人で、残りはヒューマン・ライツ・ウォッチや世界保健機関(WHO)などの主要なNGOや国連機関の代表だった。これらの人々はペンの使用を許されていたが、それは彼らが誰も殺さないほど立派であると判断されていたからだった。私は、彼らの手伝いをするという純粋な理由を使えばそのうちの一人からペンを借りることができたかもしれない。いや、それはできなかったかな?というのも、昨今、何がテロリズムと見なされるかを見極めることは非常に難しいからだ。

 南アフリカ側の発言は、大使と法務大臣のロナルド・ラモラ氏の声明で幕を開けたが、それは華々しいものだった。私は、南アフリカがまずは弱腰の体(てい)で、10月7日の攻撃の件でハマスを非難し、イスラエルへの同情を表明すると思っていたが、そうではなかった。最初の30秒で、南アフリカはイスラエルに対して「ナクバ」という言葉と「アパルトヘイト国家」という言葉の両方を投げつけた。これには、椅子から崩れ落ちないよう座席にしがみついていなければならいくらいの衝撃を受けた。この先すごいことが展開されそうな波乱の幕開けだった。

 ラモラ法務大臣は、今回の件について、非常に記憶に残るようなことばを発することで、話を始めた。それは、パレスチナ人は「75年間のアパルトヘイト、56年間の占領、13年間の封鎖」に苦しんできた、ということばだった。よくぞ言った。弁護団に話を譲る前から、南アフリカ国家の「代理人たち」は、裁判所の法令に照らして、議論を組み立てていた。具体的には、「この不正、そして歴史そのものは、10月7日に始まったのではない」という指摘だ。

 同法務大臣の発言の2つ目の重要な点として挙げられることは、南アフリカが強調したのは、「暫定措置」の要請が認められるためには、現段階でイスラエルがジェノサイドを犯していることを証明する必要はない、とした点だ。そうではなく、イスラエルによる行為が、一見してジェノサイド条約の条項に抵触する、ジェノサイドとして成立する可能性があることを示すだけでよい、と指摘した点だ。

 その後、弁護団はアディラ・ハシム博士を招聘した。彼女は、イスラエルはジェノサイド条約第2条a)、b)、c)およびd)に違反していると述べた。

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a) パレスチナ人殺害について、彼女は飾り立てることなく単純な事実を概説した。2万3200人のパレスチナ人が殺害され、その70%が女性と子どもたちだった。7千人以上が行方不明となり、瓦礫の下敷きになったと推定されている。イスラエルは200回以上、パレスチナ人が避難を命じられたガザ南部の住宅地に2000ポンド爆弾を投下した。

 6万人が重傷を負った。35万5000戸の家屋が損壊または破壊された。確認されたことは、大量虐殺の意図を示す実質的な行為がおこなわれたという事実だ。

ハシム博士は冷静で、ことばや発言内容を慎重に選んでいた。しかし、残虐行為、特に子どもに対する残虐行為を詳細に述べるとき、彼女の声は感情で少し震えることがあった。裁判官らは概して(もっと多くのことが続くのではと)落ち着かない様子で、顔を上げて彼女の話に細心の注意を払っていた。

 続いてテンベカ・ングカイトビ弁護士 (今日の法廷には南アフリカ側の弁護士のみ登壇)は、大量虐殺の意図の問題を取り上げた。彼の担当した箇所は一番簡単だった。というのも、彼は数多くの事例を挙げることができたからだ。例えば、イスラエルの大臣や高官らがパレスチナの人々を「動物」呼ばわりしたことや、パレスチナの人々の殺戮とガザの完全な破壊を呼びかけたこと、無辜のパレスチナ市民はいないと強調したことなどだ。

 ングカイトビ弁護士が特に首尾良く主張できたのは、こうしたジェノサイドの考えが政府高官から現場の兵士らに効果的に伝わっていたことを強調した点だ。具体的には、現場の兵士たちが、残虐行為を犯しながらそれを正当化する自分たちの姿を撮影する際に、政府高官らが使っていたのと同じことばやジェノサイド的な考えを表明していた点を指摘したのだ。さらに同弁護士が強調したのは、イスラエル政府が、ジェノサイドの扇動を防止し、それに対して行動する義務を公民両面において無視してきた点だ。

 彼が特に焦点を当てたのは、ネタニヤフがアマレク(かつてユダヤ人に征服された古代パレスチナ人のこと)人の歴史を持ちだすことで、イスラエル兵士らの意見と行動に明白な影響を与えた事実であった。イスラエルの閣僚たちは自分たちが発した言葉に大量虐殺の意図があることを今では否定できなくなっている、と彼は言った。つまり、「本気でなかったのであれば、口に出すべきではなかった」との主張だ。

 尊敬すべき著名なジョン・デュガード教授は、鮮やかな緋色のガウンを着た印象的な人物で、裁判所の管轄権と南アフリカの地位の問題を取り上げた。デュガード教授は、ジェノサイド条約に基づくすべての締約国がジェノサイドを防止するために行動する義務と、裁判所の判断を指摘した。

 デュガード教授は、ジェノサイド条約第8条を引用し、ボスニア対セルビアの裁判所の判決の第431段落全文を読み上げた。

ジェノサイドを防止する義務は、ジェノサイドの実行が開始されたときにのみ発生するのではない。そのように考えることは不条理である。というのも、防止義務の要点は、行為の発生を防止するか、防止しようとすることであるからだ。実際、国家の予防義務とそれに対応する行動義務は、ジェノサイドがおこなわれるという重大な危険の存在を国家が知った瞬間、または通常知るべきであった瞬間に生じる。その瞬間から、国家は、ジェノサイドを準備したと疑われる者、または特定の意図(dolus specialis)を抱いていると合理的に疑われる者に対して抑止効果を有する可能性のある手段を利用できる場合には、状況が許す限り、これらの手段を使用する義務を負う。


 正直な感想を言わせてもらえば、今日の裁判にはとても満足している。デュガード教授の主張は微動だにしていなかったのだ。私はジェノサイド条約が発動されるべき理由を説明した12月7日の記事で同じ文章を引用した。

 裁判官らはデュガード教授による指摘を特に好意的に受け取ったようで、熱心に書類に目を通し、下線を引いていた。何千人もの死んだ子どもたちの件を扱うことは裁判官らにとって少し難しいことだったが、公正な管轄権が与えられた裁判官なら、本領を発揮できることが示された。

 次のマックス・デュ・プレシス教授は、特に率直な物腰と平易な語り口で、裁判に新たな活力をもたらした。彼は、パレスチナ人が裁判所に求めているのは、最も基本的な権利、つまり存在する権利である、と述べた。

(以下は同教授の主張)

 パレスチナ人は50年にわたる抑圧に苦しんでおり、イスラエルは何十年もの間、ICJの判決と安保理決議の両方を無視して、自分たちは法の及ばない存在だと考えてきた。その文脈が重要だ。一人一人のパレスチナ人は、ジェノサイド条約上、集団の構成員として保護され存在する権利を有する。

 南アフリカによる訴訟は、国際法の尊重に基づいており、法律と事実に基づいている。南アフリカは、何千枚もの残虐行為の動画や写真を法廷に見せないという決定を下した。それは、南アフリカによる訴訟は法律と事実に基づくものであり、衝撃や感情を引き起こすことで、法廷を劇場に変える必要はないからだ。
(同教授の主張はここまで)

 この指摘は、デュ・プレシス教授による賢明な一撃だった。公聴会は当初、両陣営それぞれ2時間の予定だった。南アフリカは、イスラエルが10月7日の1時間に及ぶ残虐行為の動画を見せることに固執したため、3時間に増やされたと、かなり後から聞かされていた。しかし、実際には、裁判所がこのような指針を出した背景には、この種の映像資料が使用されることは「まばら」でないといけないという長年の考えがある。2万3千人が死んだとしても、遺体を見せることで説得力が増すことにはならないし、10月7日の死者1000人についても同じことが言える。

 デュ・プレシス教授は、パレスチナ人の生命を支える生活基盤組織の破壊、住民の85%を、まだ爆撃が続いている狭い地域に強制移動させたこと、これらはすべて大量虐殺の意図の明白な例であると結論付けた。

 しかし、間違いなく午前中の最高潮は、アイルランドのブリンヌ・ニー・グラライ勅選弁護士による驚くべき提言だった。彼女の仕事は、裁判所が「暫定措置」を命じなければ、取り返しのつかない損害が発生することを証明することだった。

 作家が敗北を認めなければならない時がある。あの法廷で彼女が与えた印象を、私は十分にあなたに伝えることができない。仕事仲間の他の発言者らと同様に、彼女は残虐行為をあからさまに示すことを避け、単純な事実を平易に、しかし優雅に提示した。彼女は、南アフリカの代表団全員が用いた策略、つまり、自分自身は感情的な言葉を使わず、国連高官の深い感情的な言葉を長々と引用するという策略を採用した。彼女は一日の死者数の概要を死因別に紹介したが、それは衝撃的な内容だった。

 彼女の言うことに耳を傾けることを強くお勧めする。「毎日10人以上のパレスチナ人が、1本以上の手足を切断されるだろう、しかもその多くは麻酔もなしで...」



 裁判所の様子についてもっと書いておく必要がある。南アフリカ代表団は法廷の右側にいる弁護士の隣に座り、イスラエル代表団は左側にそれぞれ約40人ずつ座った。南アフリカの人々は、南アフリカ国旗のスカーフとケフィーヤを肩に掛け、色鮮やかだった。南アフリカ人とパレスチナ人が混ざり合うなか、パレスチナ自治政府のアマール・ヒジャーズ外務副大臣が目立っていたので、私は嬉しい気持ちになった。

 南アフリカの代表団は、活気に溢れ、お互いに支え合っている様子がうかがえ、包み込むような身振りやかなり生き生きとした様子が見えた。いっぽうイスラエルの代表団の様子は、正反対だった。厳格で尊大に見えた。あたかも代表団全員が何らかの作業に取り掛かるよう指示されており、どのような審議がおこなわれているかにも気を払っていないかのようだった。総じて若く、自信過剰な人々だと表現するのが妥当だと思う。ブリンヌ勅選弁護士が話しているとき、彼らは特に、自分たちが聞いていないことを必死に皆に知らせようとしているように見えた。

 その身体言語を見ればイスラエルが被告であると思う人間はだれもいないだろう。実際、法廷で態度が特に怪しく、有罪であるように見えたのは裁判官らだけだった。裁判官らは本当にそこにいたくないように見えた。ひどく居心地が悪そうで、そわそわしたり、書類をいじったりすることが多かったようで、話している弁護士らを直視することはめったになかった。

 本当に法廷にいたくないのは裁判官であり、実際裁きを受けているのは裁判官であり、法廷自体なのだと私には思えた。ジェノサイドの事実は議論の余地がなく、明白に述べられていた。しかし、裁判官の何人かは、米国とイスラエルを喜ばせ、現在のシオニストの言説に逆らわない方法を見つけようと必死になっている。それがエリートの座に、快適に身を置くために必要なことなのだ。

 裁判官らにとって、個人的な慰め、NATOの働きかけ、この先に楽にカネがもらえる仕事につけるかのどれがもっと重要なのだろうか? 裁判官らは、これらの事柄のために、国際法の真の概念を捨て去る覚悟があるのだろうか?

 それが法廷での本当の問題なのだ。国際司法裁判所が審議されている、ということなのだ。

 ブリンヌ勅選弁護士が話しているとき、裁判長は突然、ブリンヌ勅選弁護士の驚くほど赤いiPadに強い関心を示した。本当に明るいマニキュアのような色だった。そんな場面が、今日の審議中に何度かあった。私にはこれらのiPadの外観を、話し合われていることと結びつけることは決してできなかった。そのiPadを使って、事例や文書が引用され、調べられたわけではなかったからだ。

 南アフリカの弁護団の最後の演説者はヴォーン・ロウで、彼はイスラエルの弁護に対抗するという微妙な任務を負っていた。この任務はやりにくいものだった。というのも、イスラエル側の議論を聞く前に反論しなければならないからだ。私にとっては、この発言は、午前中の審議の中での最高力作だった。それくらい、ヴォーン・ロウの陳述は傑出していた。

 彼はまず、南アフリカには訴訟を起こす立場があると主張し、ジェノサイド条約の下でジェノサイドを防止するために行動する国家の義務に関するデュガード教授の指摘を繰り返した。彼は、ジェノサイドが起こったかどうかをめぐって、条約の条項に論争があると述べた。さらに、南アフリカは、イスラエル政府に送った一連の外交口上文書上でこの論争を展開したが、イスラエル側から満足のいく返答はなかった、とした。

 ロウは、一連の個別の事件が戦争犯罪として国際刑事裁判所によって捜査されていることは認められているが、他の犯罪が存在するにしても、それらがより広範なジェノサイドの一部である可能性を排除するものではないと述べた。というのも、ジェノサイドは、その性質上、ジェノサイドを助長するためにおこなわれた他の戦争犯罪に付随する傾向がある犯罪だからだ。

 最後にロウは、ジェノサイドは決して正当化されるべきではないと述べた。それは絶対的であり、それ自体が犯罪である、と。ハマスがイスラエルやイスラエル市民に対して犯した残虐行為がどれほど恐ろしいものであったとしても、大量虐殺的な対応は適切ではなく、決してあり得ない。

 ヴォーン・ロウは、南アフリカがハマスに対してではなく、イスラエルに対して行動を求めたのは、ハマスが国家ではなく、したがって裁判所の管轄権に服さないからだと述べた。しかし、法廷がハマスに対して行動できないからといって、現在の差し迫った大量虐殺の危険を防ぐために、ハマスがイスラエルに対して行動することを妨げるものであってはならない、とも述べた。また、裁判所は、イスラエルの自発的な自制の申し出に左右されてはならない、とも述べた。さらに、イスラエルが「ガザを粉々に粉砕」した行為について、いかなる悪事も認めなかった事実からわかることは、イスラエル側は自国は何も悪いことをしていないと考えているため、その行動を調整しようとする保証が全く持てないということだ、とも述べた。

 今日の審議は、南アフリカ大使が、南アフリカが裁判所に課すことを望んでいる暫定措置を繰り返し主張した後、終了した。その主張は以下のとおり。

(1) イスラエル国家は、ガザ地区内およびガザ地区に対する軍事作戦を直ちに停止する。

(2) イスラエル国家は、イスラエル国家によって指示され、支援され、または影響を受ける可能性のある軍隊または非正規武装部隊、ならびにその支配、指示、または影響下にある可能性のある組織および個人が、上記(1)で言及された軍事作戦を促進するためにいかなる措置も講じないことを確保するものとする。

(3) 南アフリカ共和国及びイスラエル国は、それぞれ、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約に基づく義務に従い、パレスチナ人民との関係において、ジェノサイドを防止するために、その権限の範囲内であらゆる合理的な措置をとる。

(4) イスラエル国は、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約に基づく義務に従い、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約によって保護される集団としてのパレスチナ人民との関係において、条約第2条の範囲内におけるあらゆる行為を行わない。特に、(a) 当該集団の人々を殺害すること。

(b) 当該集団の人々に深刻な身体的または精神的危害を加えること。

(c) 当該集団に対して、全体的または部分的に、物理的破壊をもたらすように計算された生活条件を当該集団に故意に与えること。

(d) 当該集団内での出生を防止することを目的とした措置を課すこと。

(5) イスラエル国家は、上記(4)(c)の規定に従い、パレスチナ人に関して、以下のことを阻止するための関連命令、制限および/または禁止の撤回を含め、その権限の範囲内ですべての措置をとるものとする。

(a) 家からの放逐や強制移動
(b) (i) 適当な食糧及び水の入手経路の剥奪

(ii) 十分な燃料、住居、衣服、衛生及び衛生の入手経路を含む人道援助の入手経路

(iii) 医療物資及び援助

(c) ガザにおけるパレスチナ人の生活の破壊。

(6) イスラエル国家は、パレスチナ人との関係において、イスラエル国軍、ならびにイスラエル国家によって指示され、支援され、その他の影響を受ける可能性のある非正規武装部隊または個人、ならびにその支配、指示または影響下にある可能性のある組織および個人が、上記(4)および(5)に述べられているいかなる行為も行わないことを確保する。または、ジェノサイドを犯すための直接的かつ公的な扇動、ジェノサイドを犯すための陰謀、ジェノサイドを行おうとする試み、またはジェノサイドへの共謀に関与し、それらに関与する限りにおいて、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約の第1条、第2条、第3条および第4条に従って処罰に向けた措置がとられること。

(7) イスラエル国家は、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約第2条の範囲内における行為の申し立てに関する破壊を防止し、かつ、証拠の保存を確保するための効果的な措置をとる。そのために、イスラエル国家は、事実調査団、国際的委任状、その他の機関によるガザへの立ち入りを拒否し、その他の方法で制限し、当該証拠の保存と保持の確保を支援する行動をとってはならない。

(8) イスラエル国は、この命令の日から1週間以内に、またその後、裁判所が本件に関する最終決定を下すまで、裁判所が命じる一定の間隔で、この命令を実施するためにとられたすべての措置に関する報告書を裁判所に提出する。

(9) イスラエル国は、いかなる行動も慎み、裁判所における紛争を悪化させ、若しくは拡大し、又は紛争の解決をより困難にするような行動をとらないことを確保する。

 今日の審議は、この議論で締めくくられた。今後、この議論に対してイスラエル側が応じることになる。

南アフリカ共和国、イスラエルのガザ殲滅作戦を提訴。背筋も凍る詳細を明らかに。

<記事原文 寺島先生推薦>
South Africa Presents a Devastating Case Against Israel Exposing Genocidal Acts in Horrifying Detail
筆者:ロバート・ハーブスト(Robert Herbst)
出典:Internationalist 360°  2024年1月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月16日


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2023年12月29日、ガザ市シュジャイヤ地区の破壊を見下ろすガザ郊外に駐留するイスラエル兵。(写真:© Atef Safadi/EFE via ZUMA Press APAimages)


南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提出した、ガザでの大量虐殺を行なったイスラエルに対する訴訟手続きの開始を求める84ページに及ぶ申請書は、イスラエルの大量虐殺行為と声明を恐ろしいほど詳細に記した、衝撃的な文書である。

12月28日(木)、南アフリカは国際司法裁判所(ICJ)に対し、ガザでの大量虐殺を行なったイスラエルに対する法的手続きを開始し、「保全措置」、すなわちイスラエル政府と軍に対し、裁判所による完全な審理が行われるまでの間、ガザでの大量虐殺行為を停止するよう求める予備的命令を求める手続きを開始する申請書を提出した。


<上のX(旧チャット)に掲示されたICJへの提訴文の翻訳>

南アフリカ共和国は、イスラエル国への訴訟手続きを開始、ICJが保全措置を講じるよう要請

2023年12月29日、オランダ・ハーグ。南アフリカは、本日ガザ地区のパレスチナ人に関するジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約(「ジェノサイド条約」)に基づくイスラエルの義務違反の疑いについて、国際連合の主要司法機関である国際司法裁判所(ICJ)に対し、イスラエルに対する訴訟申請をした。

申請書によれば、「イスラエルによる作為と不作為は、必要な具体的意図をもって行われたものであり、虐殺的な性格を有している。ガザのパレスチナ人を、より広範なパレスチナの国家的、人種的、民族的集団の一部として破滅させるため」であり、「イスラエルが、その国家機関、国家代理人、およびその指示に基づいて、あるいはその指示、支配、影響下で行動するその他の人物や団体を通じて、ガザのパレスチナ人に関連して行なった行為は、ジェノサイド条約に基づく義務に違反している」との内容だ。

申請書にはさらに、「イスラエルは、特に2023年10月7日以降、大量虐殺を防止することができず、大量虐殺への直接的かつ公的な扇動を訴追することができなかった」とし、「イスラエルは、ガザのパレスチナ人に対する大量虐殺行為に関与し、現在も関与しており、さらに関与する危険性がある」と書かれている。

南アフリカは、南アフリカとイスラエルの両国が締結している国際司法裁判所規程第36条第1項およびジェノサイド条約の第9条に基づいて裁判所の管轄権設置を求めている。
<以上でICJへの提訴文の翻訳終了>

南アフリカ共和国の申請書は84ページに及び、イスラエル国家、大量虐殺行為を行い、その意図を公然と語っているユダヤ人の政治的・軍事的指導者や職員、彼らを頑強に支持しているイスラエル、アメリカ、ヨーロッパの人々、そしてイスラエルがその名の下に行動していると称するユダヤの人々にとって、衝撃的な内容となっている。

申請書は、ガザ戦争に関する外交や主要メディアの議論にしばしば欠落している背景を指摘した上で、これらの大量虐殺行為と発言を背筋も凍るほど詳細に記述している。イスラエルの大量虐殺行為について、南アフリカは次のように述べている:

(今回のイスラエルの大量虐殺行為は)イスラエル政府と軍がこれまでガザで行なった制裁または他の国際法違反とは区別される。南アフリカは次のような事例は司法裁判所の対象となると主張する。つまり民間人や民間施設、宗教、教育、芸術、科学、歴史的な建造物、病院、負傷者の収容場所などに意図的に攻撃を加えること、拷問、戦争手段としての市民の飢餓、および他の戦争犯罪や人道に対する犯罪などだ。これらの事例は、「イスラエルの75年にわたるアパルトヘイト政策、56年にわたるパレスチナ領土の侵略的占拠、および16年にわたるガザ封鎖の広範な文脈の中で」起こったことだ。


実際、この申請書の最も重要な部分のひとつは、イスラエルが10月7日以前にガザの人々に振るった陰惨な仕打ちを丹念に記録している点だ。厳しい封鎖を行い、事実上ガザを外界から遮断し、農業に利用できる面積を縮小し、オスロ合意で定められた20マイル圏内での漁業能力を著しく低下させた、 また、2006年の「離脱」とハマスの選挙勝利後、一人当たりのカロリーによる食料輸入を人道的上最低限の水準にまで厳しく制限し、電力を制限し、飲料水の唯一の自然水源である沿岸帯水層を汚染し、日常生活と経済を滅茶滅茶にし、その結果、失業率は45%、貧困率は60%となり、国民の80%が何らかの国際援助に依存している。そして10月7日以前の3年間で、イスラエルは約1,700人の子どもを含む約7,500人のガザの人々を殺戮した。封鎖に反対する分離フェンスでの毎週の平和的抗議行動を18ヶ月にわたって続けた結果、イスラエル軍の狙撃兵は数百人を殺害し、約9,000人の子どもを含む36,000人以上を負傷させた。約5,000人の非武装の人々が下肢を撃たれたが、その多くは数百メートル離れた場所に立っていたのだ。

それだけでもその悪辣さは十分と言えるだろう。しかし、この申請書が示すように、イスラエルはジェノサイドの防止と処罰に関する1948年条約に基づくジェノサイドの定義に明らかにあてはまるまったく新しいレベルの犯罪行為に及んでいる: つまり「パレスチナの国家的、人種的、民族的集団の実質的破滅を意図した行為」に及んでいるのだ。

ガザの230万人は、占領下にある550万人の実質的な集団を形成していることは明らかだ。申請書は条約に違反したこれらのジェノサイド行為を詳細に記述している:ガザの人々を大量に殺害し、彼らに重大な身体的および精神的な苦痛を与え、彼らの物理的な破滅をもたらす生活条件を押しつけている。

申請書の説明はこうだ:

「イスラエルは、現在までに21,110人以上のパレスチナ人を殺害した。その中には、7,729人以上の子供が含まれており、780人以上が行方不明で、がれきの下で死亡したと推定されている。また、55,243人以上のパレスチナ人が重傷を負った。イスラエルは、ガザの広範な地域、全ての地区を壊滅させ、35万5,000軒以上のパレスチナ人の家屋(ガザの住宅の60%以上)を損壊または破壊した。また、広範な農地、パン屋、学校、大学、事務所、礼拝所、墓地、文化・考古遺跡、市庁舎や裁判所、水道・衛生施設、電力網などの重要なインフラを破壊し、パレスチナの医療および保健システムに対しても執拗な攻撃を続けている。イスラエルは、ガザをがれきに変え、そこに住む人々を殺害し、傷つけ、破滅させ、集団として存立できないような生活環境を創り出している」。


イスラエルは、南アフリカ提訴の*本案と予備的救済の要求にどのように対応するかを決定しなければならない。イスラエルは、国連の加盟国であり、ジェノサイド条約の締約国として、これに応じる義務があるのだ。敗訴した場合、イスラエルは単なる助言的意見ではなくひとつの判断に直面する。それゆえ、この十分に考えられた、十分な事実に基づいたジェノサイド告発は、ユダヤ国家イスラエルを、ホロコーストからまだ100年も経っていないのに法的、倫理的にのっぴきならない事態に追い込むことになる。
*本案(the merits)・・・民事訴訟上、訴えの本旨である請求。また、その手続きの主目的または中心をなす事項。 : デジタル大辞泉 (小学館)

イスラエルはすでに、自国を提訴した南アフリカを非難する最初の声明を発表し、ICJに対して「南アフリカの根拠のない主張をきっぱり斥けること」を求めている。 イスラエル外務省の声明は、テロ組織に協力する国による*「血の中傷」と呼び、イスラエル軍はハマスに対してのみ軍事的努力を傾けていると主張した。
*「血の中傷」・・・ユダヤ人がキリスト教徒の子どもの血を儀式のために使用したという言いがかり(英辞郎)


ジェノサイドの意図

南アフリカの申請書を読めば、イスラエルの主張を信じる者は誰一人いないだろう。なぜなら、イスラエル高官たちの発言を聞けば、ジェノサイドの意図が明確に示されており、イスラエルがガザのパレスチナ人全体に対して故意に戦争を繰り広げていることははっきりしているからだ。胸糞が悪くなるような発言の一部を紹介する。 ネタニヤフ首相:イスラエル人によるアマレク人の全滅という聖書の物語を引用。その該当箇所:「誰も助けるな、男も女も、乳飲み子も、牛も羊も、ラクダもロバも、皆殺しにせよ」。

ヘルツォグ大統領:

 「そこにいる国民全体に責任がある。一般市民が関与しておらず知らないという言葉遣いは正しくない。全く正しくない・・・ 我々は彼らの背骨をへし折るまで闘い続ける」。


国防大臣ギャラント:

イスラエルは「ガザを完全に包囲している。電気も食料も水も燃料もない。すべてが閉鎖されている。我々は人間の姿をした動物と戦っており、それに従って行動している」。
「ガザは以前の状態には戻らない。我々はすべてを一掃する。一日で終わらなければ一週間。数週間、あるいは数カ月かけて、あらゆる場所に足を踏み入れるだろう」。


国家安全保障大臣ベン-グヴィル:

 「はっきりさせておきたいのは、ハマスを壊滅させるというのは、ハマスを祝福する者、支援する者、キャンディを配る者、それらもまたテロリストであり、彼らも同時に壊滅させるということだ」。


エネルギー・インフラ大臣カッツ:

 「ガザの全市民は即時退去が命じられている。我々は勝利する。彼らがこの世から去るまで、一滴の水も、一本の電池も彼らが受け取ることはない」。


スモトリッチ財務大臣:

 「我々は過去50年間にだれも見たこともないような衝撃を与え、ガザを陥落させる必要がある」。


遺産大臣エリヤフ:

 「北ガザ地区は、一段と美しい。すべてが爆破され、平坦になり、見ていても心地良い・・・我々は今後のことを話さねばならないのだ。私の考えでは、これまでガザのために戦ってきた人々やグッシュ・カティフ(かつての入植地)から追放された人々に、多くの土地を渡すことになるだろう」。「ガザには無関係な一般市民など存在しないのだ」。


農業大臣ディヒター:

「我々が今やっているのはガザ・*ナクバの全面展開だ」。


*ナクバ・・・1948年に約75万人のアラブ人の社会と祖国が破壊され、大多数のパレスチナ人が恒久的に退去を余儀なくされた出来事。(ウィキペディア)
クネセット(イスラエル国会)副議長、そして外務安全保障会議メンバーのヴァツーリ:

「我々の共通目標はひとつ。それはガザ地区を地球上から消し去ること」。


イスラエルの軍人たちは、ジェノサイドを叫ぶ政治指導者たちに呼応している:

イスラエルの予備兵少将であり国防大臣補佐官であるアイランド:

「イスラエルは次のことを始めた。ガザ地区へのエネルギーや水、ディーゼルの供給停止。・・・しかし、それだけでは足らない。包囲を効果的にするためには、他の人々のガザへの支援を止めなければならない・・・(ガザ地区の)人々には2つの選択肢があると伝えるべきだ。飢え死ぬか、去るか、だ。もしガザで人々死ぬことをエジプトや他の国々が選ぶのであれば、それは彼らの選択だ」。

「他国と戦争しているときは、食料を与えず、電気もガスも水道も何も提供しない・・・国が機能不全に陥る瀬戸際まで、もっと広範な攻撃だってあり得る。これが、ガザで起きている出来事の必然的な結果なのだ」。

「イスラエルは、ガザ地区の復興には興味がない。これはアメリカ人に明確に伝える必要がある重要な点だ」。

「イスラエル国は、ガザを一時的に、あるいは恒久的に、住居不能な場所にするしかない」。

「もしシフア[病院]での軍事行動の予定があっても(それは不可避と考えるが)、CIA長官には、なぜこれが必要であり、なぜアメリカが最終的にこのような作戦を支持しなければならないのか、そしてたとえそれに続いて街中に何千もの市民の遺体が出るとしても、アメリカはそのような行動を支持すべきだ、という点についての説明はしてあると思う」。

「イスラエルはガザに人道危機を引き起こし、何万人、何十万人もの人々をエジプトや湾岸に避難させる必要がある・・・ガザは人の住めない場所になるだろう」。

「ガザの "かわいそうな "女性たちとはだれのこと?彼女たちは皆、ハマスの殺人犯の母親、姉妹、あるいは妻なのだ・・・国際社会は、ガザでの人道的災害と深刻な伝染病について我々に警告している。我々は、それがどんなに困難なことであっても、こんなことから尻込みしてはいけないのだ。結局のところ、ガザ地区の南部で深刻な伝染病が蔓延すれば、勝利が近づくだろう・・・戦争を終結に近づかせるためには、まさにそこに住む住民を総崩れにさせなければならない。イスラエルの高官たちがメディアで「我々か彼らか」と言うとき、「彼ら」とはだれか、という問題ははっきりさせたほうがいい。「彼ら」とは、武器を持ったハマスの戦闘員だけでなく、病院管理者や学校管理者を含むすべての「民間人」であるし、さらには10月7日にハマスを熱狂的に支持し、その残虐行為に喝采を送ったガザ住民全体のことを指している」。


1948年のナクバでの*デイル・ヤシン虐殺の退役軍人である95歳のエズラ・ヤチンは、地上侵攻の前にイスラエル軍の「士気を高める」ための演説者として招集された。イスラエル軍の車両に乗せられ、イスラエル国防軍戦闘服を着てソーシャルメディアに彼はこう語った。
*デイル・ヤシン虐殺・・・第一次中東戦争直前の1948年4月9日、当時イギリスの委任統治領であったパレスチナのエルサレム近郊のデイル・ヤシン村で起こったユダヤ人武装組織による住民の虐殺事件。(ウィキペディア)

「勝ち誇れ!奴らにとどめを刺し、だれひとり生かしてはいけない。奴らの記憶を消し去れ。奴らの家族も、母親も、子供たちも消し去れ。こんな動物たちはもう生きてはいけないのだ・・・武器を持つユダヤ人は皆、奴らを殺しに行くべきだ。近くにアラブ人がいたら、ためらわずその家に行って撃ち殺せ!・・・我々は侵略したいのだ。以前とは違う。侵入して目の前のものを破壊し、家を破壊し、それから次から次へと破壊するのだ。全軍で、完全に破壊し、侵入し、破壊する。はっきりしているのは、これまで夢にも思わなかったことを我々はこれから目撃することになることだ。奴らの頭上に爆弾を投下し、奴らを消し去ってしまえ」。


申請書が記述する唯一の考えらえる結論は次のとおり:

イスラエルの意思決定者と軍関係者による上記の発言は、それ自体、ガザのパレスチナ人を「そのような」集団として壊滅するという明確な意図を示すものである。それらはまた、ジェノサイド(大量虐殺)への明確な直接的かつ公的な扇動であり、野放しにされ、処罰もされていない。現地のイスラエル軍の行動から、膨大な数の民間人が殺傷され、ガザにもたらされた避難、破壊、荒廃の規模から、これらの大量虐殺的な声明や指示がパレスチナ人民に対して実行されていることは明らかである。


申請書はさらに、ガザの地上に駐留しているIDF(イスラエル国防軍)兵士の意見を引用している。彼らは、この結論を支持しており、クネセト(訳註:イスラエルの議会)の非閣僚やイスラエルのメディア、そして市民社会一般の間でも、同様のジェノサイド的な言い方が広まっている。基本的に言われているのは、ガザには罪のない者はおらず、230万人のテロリストは一掃されなければならないということだ。ドレスデンと広島はしばしば肯定的な例として挙げられている。

以上のことから、だれもが納得できるほどはっきりしているのは、10月7日の攻撃に対するイスラエルの対応は、イスラエルが主張するようにハマスが主たる標的ではなく、むしろガザ住民全体が標的であり、非戦闘員に最大限の集団罰を与え、ガザ住民全体の退去を促すことであった。 この大規模な民族浄化は、1948年のそれを凌ぐものだ。パレスチナに残るパレスチナ人集団の大部分を壊滅させるというイスラエルの意図が明確に立証された以上、申請書で目をそむけたくなるほど詳細に述べられているイスラエルの種々の行為は、ジェノサイド(大量虐殺)にあたる。


ジェノサイド的行為

そしてイスラエル軍の行為は、読み、かみ砕き、じっくり考えるにつけ、実に吐き気を催すものだ。 要約すると以下のとおり: 「(1)子どもを含むガザのパレスチナ人を大量に殺害すること。(2)ガザのパレスチナ人(パレスチナ人の子どもを含む)に身体的、精神的に深刻な害を与えること。そして彼らに集団としての破滅をもたらす生活条件を押し付ける。 それらの条件には以下が含まれる: (3)家屋や居住地域の大規模な破壊と並行して、家から追いたて集団強制移住させること、(4)適切な食料と水へのアクセスを剥奪すること、(4)適切な医療へのアクセスを剥奪すること、(5)適切な住居、衣服、衛生設備へのアクセスを剥奪すること、(6)ガザ地区パレスチナ人の生活を破壊すること、(7)パレスチナ人の出産を阻止すること」。

各章ごとに、南アフリカの弁護士がまとめた証拠の要点を紹介しようと思うが、イスラエルが行なってきたこと、そして今も続けている陰惨な現実を本当に理解するためには、(84ページの「申請書」)全文を読んだほうがいい。

1.パレスチナ人を殺害すること

イスラエルがガザで使用した非誘導型の重爆弾の「予測される致死半径」は最大360メートルで、これは5分の1から4分の1マイル(4〜5街区)となる。「着弾地点から全方向800メートル、つまり半マイル(10街区)は深刻な損傷を引き起こすと予測される」。 つまり、あなたがニューヨークのタイムズスクエアに立っているとしよう。 北と南、東と西の4ブロック先を見てほしい。 それがガザに落とされる爆弾の殺傷範囲だ。 米国から供給されたこれらの爆弾を使う人間たちが、世界で最も人口密度の高い地域のひとつであるガザで、一度に数百人という膨大な数の非戦闘員(女性、子ども、家族全員)を、意図的に殺さないはずがない。パレスチナの子どもたちは毎日115人以上殺されている。「ガザにおいて最初の3週間だけで殺されたパレスチナの子どもの数(合計3,195人)は、2019年以降、世界の紛争地帯で毎年殺される子どもの総数を上回ると推定されている」。これは大規模な意図的虐殺である。

「ガザのパレスチナ人は、自宅や避難所、病院、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校、教会、モスクなどで、そして家族のために食べ物や水を探し求める最中に殺害されている。彼らは、避難しなかった場合に殺害され、避難した場所でも殺害され、イスラエルが「安全経路」だと宣言した経路に沿って逃げている場合ですら殺害された。家族であれば見境なく(男性、女性、高齢者も含め)、イスラエル兵によって即決処刑されたとの報告が増えている」。
 「現在までにイスラエルは、医師や救急車の運転手を含む311人以上の医師、看護師、その他の医療従事者(勤務中に殺害された医師や救急車の運転手を含む)、103人のジャーナリスト(1日1人以上、2023年に世界で殺害されたジャーナリストやメディア関係者の総数の73%以上)、40人の民間防衛隊員(被災者を瓦礫から掘り出すのを助ける役割を担っている)、209人以上の教師や教育職員を殺害した。国連職員も144人が殺害されており、これは国連史上、これほど短期間に殺害された援助職員の数としては最多である」。



2.ガザ地区のパレスチナ人に重度の肉体的精神的損傷を引き起こしている

55,000人の負傷者の大半は女性と子供である。そのうちの1000人は片足または両足を失っている。イスラエルが使用している白リンは、「皮膚深層へ重度のやけどを引き起こし、骨まで貫通し、初期治療後に再燃する可能性がある。特にガザ北部には機能している病院がないため、負傷者は手術も応急処置以上の治療も受けられずに「死を待つ」ことになり、負傷や感染症で苦しみながらゆっくりと死んでいく。

「度外れなまでの爆撃と安全な場所の欠如は、ガザのパレスチナ人に深刻な精神的トラウマを引き起こしている」。このことは、以前の攻撃による深刻なトラウマに加えて、パレスチナの子どもの80%がより高いレベルの、次のような精神的苦痛を与えている。夜尿症 (79%) や反応性緘黙症 (59%) 、自傷行為 (59%) 、そして自殺念慮 (55%)だ。11週間にわたる容赦のない爆撃、避難、そして喪失感は、父か母(あるいは両親)を失なったり、家族でただひとり生き残った推定数万人のパレスチナ人の子どもたちの、想像を絶するトラウマを一層大きく、さらに深刻なものにしている。

3.パレスチナ人を家から大規模に放逐したり強制移動させる

人口の85%に当たる230万人のガザ住民のうち190万人以上が、安全な逃げ場がないにもかかわらず、家を追われている。イスラエルは、避難命令と、避難できない人々や避難を拒否する人々を殺害することによって、これを達成した。12月上旬、イスラエルはガザの人々に、以前逃げるように言った南部の地域から離れるよう促すビラを投下し、安全という偽りの約束さえ反故にした。国連事務総長によれば、「ガザの人々は、人間ピンボールのように移動するように言われています。彼らは南部のますます狭い地域を行ったり来たりしており、基本的生存に必要なものが何もない状況に置かれています」。強制移住者の間に恐怖を引き起こすだけでなく、人口密度が高まることで、イスラエルによる砲撃がさらに致命的なものとなっている。これは偶然ではなく、故意によるものだ。ガザの住宅の60%が損壊または破壊されているため、家からの強制避難は「必然的に永続的」である。そして、ガザの破壊の程度は、この青空刑務所を「ほとんど居住不可能」にした。住宅と民間インフラが「破壊されつくし」、この恒久的な集団強制移動は、「ガザのパレスチナ人を物理的に破滅させようと計算された状況で行われているという点で、大量虐殺的である」。

4.適切な食料と水へのアクセスをガザ在住のパレスチナ人から剥奪している

10月9日から21日にかけて、イスラエルはガザを完全に包囲した。電気、食料、水、燃料はない。10月21日以降はこれまでの、1日500台を大幅に下回る数台の支援トラックが許可されている。11月21日以降、一部の燃料の搬入は許可されているが、搬入口からガザ周辺への移動が容易ではないため、 「人道支援活動の最低要件をはるかに下回っている」 。だから、ほとんどの困っている人には届かない。

12月22日の安保理決議は、効果的な人道支援を可能にするために国連が指摘した4つの要素(安全、スタッフ、ロジスティクス、商業活動の再開)に適切に対処していないため、ほとんど何の役にも立たない。執拗なイスラエル軍の砲撃、国連職員が安全に生活・活動できないことや北ガザから急いで避難するときに破壊されたり置き去りにされたりした国連トラック、そして通信手段の遮断などはすべて「援助活動を大規模に妨げている」

「ガザのパレスチナ人のほとんどが飢えており、飢餓のレベルは日々上昇している」。

「世界で最も飢えている人々の5人に4人がガザにいる」。

「ガザの人口の93%が危機的レベルの飢餓に直面しており、食料不足と高レベルの栄養失調が続いている。」。

世界保健機関は、ガザ「水や食料などあらゆる生命に必要なものを」を遮断するイスラエルの行動を、「ガザの全住民に対する」「狂気じみた作戦」と呼んでいる。

包囲による状況は、イスラエルによるガザへの継続的な攻撃(パン屋、水道施設、最後に残った操業中の工場など)、農地、農作物、果樹園、温室の破壊などによって悪化している。



水の枯渇も深刻だ。イスラエルはガザ北部への送水遮断を続けており、北部の淡水化プラントは機能していない。2023年10月15日から、イスラエルは「民間人をガザ南部に押しやる」ためもあって、少量の水を南部に供給し始めた。イスラエル軍の空爆や砲撃の被害により、水道システムの大半も使用不能となっている。世界食糧計画(WFP)の報告によると、すべての用途(飲料、洗濯、食事の準備、衛生管理)に使用できる清潔な水は、1人1日あたり1.5~1.8リットルしかない。これは、「戦争や飢饉のような状況」での「緊急時基準値」である1日15リットルや、「生存基準値」である1日3リットルをはるかに下回っている。

専門家たちは、ガザのパレスチナ人が空爆よりも飢餓や疾病で亡くなる可能性が高まっていると予測している。しかし、イスラエルは爆撃作戦を強化しており、人道支援の効果的提供をできなくさせている。イスラエルは、ガザでの行動と政策によって、パレスチナ人を破滅させる生活条件を意図的に押し付けようとしていることは明らかだ。



5. ガザのパレスチナ人に対する適切な住居、衣服、衛生状態、および公衆衛生設備へのアクセスの剥奪

190万人の強制移住者のうち120万人は、UNRWAが運営する学校やテントに避難している。しかしそこも安全ではない。イスラエルはそこで何百人ものパレスチナ人を殺害しているからだ。イスラエルには同等の国連施設がすべて配置されているのだ。UNRWAは12月7日、これらの施設は 「崩壊寸前」であることを認めた。平均して、486人が1つのトイレを使用している。*Oxfamの報告によると、十分な衛生設備、食料、水、医療がないため、避難所の新生児は回避可能な原因で死亡している。
*Oxfam・・・オックスフォード飢餓救済委員会(Oxford Committee for Famine Relief)◆発展途上地域を支援する、英国の民間団体(英辞郎)

避難所にいる人々は、他の70万人の強制移住者よりも恵まれている。この70万人の多くは病院の中庭や仮設キャンプにいるか、ただ路上で寝泊まりし、風雨にさらされている。平均シャワー数は4500人に1つだ。

2023年12月20日、世界保健機関(WHO)の事務局長は、「ガザではすでに感染症の発生率が急上昇している」と警告した。5歳以下の子どもの下痢患者は、紛争前の25倍にもなっている。このような病気は、栄養失調の子どもたちにとって致命的であり、保健サービスが機能していない状況ではなおさらである」。汚水はもはや管理できないため、パレスチナ人が暮らす通りにたれ流されている。「どこを見ても、仮設避難所でごった返している。どこに行っても、人々は絶望し、飢え、怯えている。こうした状況は、イスラエルが意図的に押し付けたものであり、ガザのパレスチナ人集団を破滅させるために計算されたものである。



6 .ガザ地区のパレスチナ人に対する適切な医療支援の剥奪

「イスラエルのガザに対する軍事攻撃は、何よりも、ガザのパレスチナ人の生活と生存に不可欠な、ガザの医療保健システムへの攻撃である」。


12月7日、国連特別報告者は、「ガザ地区の医療インフラは全滅状態だ」と指摘した。

12月4日、国境なき医師団の代表は書いている:

「病院が死体安置所や廃墟と化すのを私たちは見ている」。

「我々自身も含めた医療スタッフは、疲労困憊しているし絶望状態だ」。


2023年12月初めから、イスラエル軍によるパレスチナの病院への攻撃は「ますます激化している。イスラエル軍は、病院や医療センターを攻撃し包囲し続け、効果的な機能と設備を維持するために重要な電力と燃料を奪い、医療用品、食料、水を受け取ることを妨害し、病院の退去と閉鎖を強制し、効率的に破壊してきた・・・イスラエルは、ガザのパレスチナの病院を癒しの場所から「死のゾーン」と「血の海」「死、破壊、絶望」の現場に変えた。多くの病院は今や単なる「死を待つ場所」となっている」。

「ガザでは、現在までに238件以上の "医療 "に対する攻撃があり、61以上の病院やその他の医療施設が破損したり破壊されたりしている・・・イスラエル軍は、病院の発電機やソーラーパネル、酸素ステーションや貯水タンクなどの救命設備を標的にした。また、救急車や医療隊、救急隊員も標的となった。医療従事者が殺されている(1日平均4人が殺されている)」[。]

「パレスチナの病院の体制的な破壊と専門家のパレスチナ人医師の殺害は、現在のガザのパレスチナ人のケアにだけでなく、ガザ・パレスチナ人への医療システムの将来展望にも影響を与えている。ガザの再建とガザ・パレスチナ人への有効なケアの能力を破壊している」。

「医師や医療従事者は、イスラエル当局によって殺されるだけでなく、拘束され失踪状態になっている。その中には、11月23日以来、連絡が取れなくなっているアル・シファ病院の総院長とそのスタッフも含まれる」。

「パレスチナ人は、北から南へ、そしてまた南からその先へと行進を強いられ、病院のベッドを車の後ろに繋ぎ止めたり、車椅子を押したり、その場しのぎの担架で持ち上げたり、単に腕に抱えて運んだりして、病人、障害者、負傷者を避難させなければならなかった」。
麻酔薬、鎮痛薬、医薬品、消毒薬など、スタッフや物資の危機的な不足は、不必要な手足の切断だけでなく、しばしば懐中電灯で照らしながらの無麻酔切断にもつながっている。妊婦は麻酔なしで帝王切開されている。患者は血にまみれた汚れた床で治療を受けており、生理食塩水があるところでは、家族が生理食塩水バッグを持って立っていなければならない。適切な創傷処置や術後の創傷処置のための人員も資源も不十分で、不潔な創傷(多くの場合、虫やハエがはびこっている)はあっと言う間に感染し、壊死や壊疽を起こす。患者は食べ物や水を懇願する。基本的な鎮痛治療さえも受けられないことが多く、患者は治療可能な症状で命を落とす危険性がある。


言うまでもなく、何十万人ものガザの人々は、慢性疾患のために定期的な医療を必要としているが、現在はその医療を受けられていない。また、UNRWAの避難所だけで36万件以上の伝染病の報告がある。それは不衛生な状況、飢餓、清潔な水の不足が原因となっている。

7.ガザ地区パレスチナ人の殺戮

11月16日、15人の国連特別報告者と21人の国連作業部会メンバーは、それまでに起こった破壊のレベルは「住宅だけでなく、病院、学校、モスク、パン屋、水道管、下水、電力網・・・ガザでのパレスチナ人の生活の継続を不可能にする恐れがある」と述べた。

南アフリカの申請書の記述は次のとおり:

イスラエルは、個々の住まいや家屋、そしてアパート全体を破壊しただけでない;道路や近隣一帯を破壊した。ガザの基本的な市民制度を標的にした。イスラエルは、パレスナ最高裁判所や憲法裁判所、控訴裁判所、第一審裁判所、行政裁判所、治安判事裁判所のほか、裁判記録やその他の歴史的ファイルの保管所がある、ガザのパレスチナの主要な裁判所建物である司法宮殿を標的にしている。イスラエルはまた、パレスチナ立法評議会の複合施設に大きな損害を与えた。ガザ市の中央公文書館を標的にした。そこには100年以上前の数千の歴史的文書や国家記録が保管されており、ガザ市の都市開発のためのより近代的な記録だけでなく、パレスチナの歴史の重要な記録保管所となっている。イスラエルはガザ市の主要な公共図書館を廃墟にした。また、数え切れないほどの書店、出版社、図書館、数百の教育施設を破損または破壊した。イスラエルは、ガザ地区で最も古い高等教育機関であり、何世代にもわたって医師や技術者などを養成してきたガザ・イスラム大学を含むガザの4つの大学すべてを標的にし、ガザの将来の世代のパレスチナ人を教育するためのキャンパスを破壊している。イスラエルは他の多くの学者とともに、パレスチナの有力な学者を殺害してきた。イスラム大学の学長であるスフィアン・タイエ教授は、受賞歴のある物理学者であり、パレスチナの天文学・宇宙物理学・宇宙科学のユネスコ議長であるが、家族とともに空爆で死亡した。パレスチナ大学のソフトウェア工学部長であるアフメドハムディ・アボ・アブサ博士は、3日間の強制失踪から解放され、立ち去ろうとしたところをイスラエル兵に射殺されたと伝えられている。免疫学とウイルス学の教授であり、ガザ・イスラム大学の元学長であるムハンマド・イード・シャビル教授と、詩人であり、ガザ・イスラム大学の比較文学と創作の教授であるラファット・アラレール教授は、家族とともにイスラエルによって殺害された。

イスラエルは、アル・ザファール・ドゥマリ・モスクや写本・古文書センターなど、パレスチナの多くの学習と文化の中心地を破壊し、破壊した。たとえば、正教文化センターやアルカラ文化博物館、ガザ文化芸術センター、アラブ社会文化センター、ハカウィ文化芸術協会、そして何百もの文化的・考古学的遺物が収蔵されているラファ・ミュージアム(ガザに新しくオープンしたパレスチナ遺産の博物館)などだ。イスラエルの攻撃はガザの古代の歴史を破壊した。イスラム遺産リストとユネスコの世界遺産暫定リストに登録されている2,000年前のローマ時代の墓地の遺跡であるガザの古代港(「アンテドン港」 または 「アル・バラキヤ」 として知られる)を含む8つの遺跡が損傷または破壊された。イスラエルはまた、146年の歴史的家屋、モスク、教会、市場、学校を含むガザ市の 「旧市街」 を破壊した。25年前、ビル・クリントン米大統領とヤーセル・アラファト・パレスチナ大統領が歴史的な会談を行ったラシャド・アル・シャワ文化センターや、劇場、図書館、イベント空間を備えたガザのパレスチナ人にとって重要な文化拠点など、より希望に満ちた時代のガザの最近の歴史も破壊してきた。そしてイスラエルは、ガザの将来の学問と文化の可能性を破壊しているのだ。352のパレスチナ人学校を損壊・破壊し、4,037人の生徒・学生と209人の教師・教育スタッフを殺害し、7,259人の生徒・学生と619人の教師を負傷させた。

イスラエルは推定318のイスラム教とキリスト教の宗教施設を損傷または破壊し、パレスチナ人が何世代にもわたって礼拝してきた場所を破壊した。イスラエルは、ガザのパレスチナ人の歴史と遺産の物理的な記念碑を破壊するとともに、その遺産を形成し創造してきたパレスチナ人そのものを破滅させようとしてきた。ガザの著名なジャーナリスト、教師、知識人、公人、医師、看護師、映画製作者、作家、歌手、大学の学長、病院長、著名な科学者、言語学者、劇作家、小説家、芸術家、音楽家などを、である。イスラエルはパレスチナ人の語り部や詩人、パレスチナ人の農民や漁師を殺害してきたし、今も殺害している。その中には、パレスチナで最も古いキリスト教徒の家系に生まれた84歳のエルハム・ファラも含まれていた。彼女はアコーディオン奏者であり、音楽教師でもあった。彼女はショッキングな赤い髪から、パレスチナの音楽学生の世代から 「マザー・オレンジ」と呼ばれていた。彼女は暖かい服を取りに家に戻ったとき、ガザ市の聖家族教会の外でイスラエル人の狙撃手に射殺され、出血を放置され亡くなった。

ガザの公文書やランドマークを破壊することによって、ガザのパレスチナ人の公式な記憶と記録を破壊しているように、イスラエルは、爆撃やブルドーザーによる墓地の破壊、家族の記録や写真の破壊、多世代にわたる家族の全滅、子どもたちの一世代を殺害し、傷つけ、トラウマを与えることによって、パレスチナ人の個人的な生活や個人的な記憶、歴史や未来を消し去ろうとしている。

イスラエル軍は、ガザにおけるパレスチナ人の生活の基盤そのものを破壊している。イスラエルはそれによって、ガザのパレスチナ人集団に、その滅亡をもたらすような生活条件を意図的に押し付けているのだ。



8. パレスチナ人を産ませないための方策の押し付け

毎月5万人以上のガザ地区の妊婦が出産している。現在、これらの妊婦とその新生児は避難生活を余儀なくされ、食料や水、シェルター、衣服、衛生設備が利用できず、医療サービスも受けられない。医師たちは、出産後に「出血」した若い女性の命を救うために、通常であれば不必要な子宮摘出手術を行わなければならず、その結果、彼女たちはそれ以上子どもを産めなくなる。生後3カ月までの新生児が、下痢や低体温症などの予防可能な原因で命を落としている。必要不可欠な設備や医療支援がなければ、未熟児や低体重児が助かる可能性はほとんどない。

救援策

ユダヤ人国家の大量虐殺行為と意図の証拠を詳細に朗読した後、南アフリカは、イスラエルがガザのパレスチナ人に関連して大量虐殺を行い、ジェノサイド条約の締約国としての義務に違反したことを宣言し、次のことをICJに要請した。(1)イスラエルはすべての虐殺行為を直ちに中止しなければならない、(2)それらに関与し、共謀し、企て、扇動し、または加担したすべての者が、イスラエルまたは国際法廷によって処罰されることを保証する、(3)大量虐殺の証拠を集めて保存する、(4)強制退去させられたパレスチナ人や誘拐されたパレスチナ人の安全で尊厳のある帰還を可能にし、ガザで破壊したものの再建を提供するなど、パレスチナ人被害者のために賠償の義務を果たす、(5)条約違反が繰り返されないことの保証と保証を提供する。

「保全措置」の要請

「ガザのパレスチナ人が被っている進行中の、極度の、取り返しのつかない被害」及びイスラエルのジェノサイド条約違反の明白性に鑑み、申請書は、申し立てられたジェノサイド行為の少なくとも一部が条約の規定に該当する可能性がある場合には、ICJ規則及びそのような措置を認める判例に基づく「保全措置」の予備的救済を要請する。南アフリカは、大量殺人、課された深刻な身体的・精神的危害、ガザのパレスチナ人の破滅をもたらすために計算された意図的な生活条件の押しつけ、グループ内での出産を防止することを意図した措置、これらすべてが条件に適っていると主張している。

南アフリカによると、クロアチアとボスニアのセルビアに対するジェノサイド事件におけるICJの過去の決定は、集団の成員の死を求めるために採用される殺害以外の物理的破滅方法は「条約の規定要件を構成する」としている。これには、食料、医療、住居または衣服の剥奪、衛生の欠如、住まいからの組織的な放逐、または身体酷使による体力消耗、集団を、生存ぎりぎりの食生活にさらすことなどが含まれる。適切な医療を施さず、適切な食料、水、住まい、衣類、衛生設備がどこにもない状態は、緩慢な死につながる状況を作り出している。南アフリカの申請書に詳述されている事実は、イスラエルがこれらすべての物理的破壊方法を採用しており、今後もそうする可能性が高いという主張を裏付けるものだ。

もし同裁判所が同意すれば、南アフリカの*本案に関する審理が始まる前に、重要な予備的救済を命じることができる。
*本案・・・民事訴訟上、訴えの本旨である請求。また、その手続きの主目的または中心をなす事項。(デジタル大辞泉_小学館)

ICJの管轄権

この訴訟は、国際司法裁判所(ICJ)「係争事件」管轄下にあり、国際司法裁判所は、条約の解釈又は適用について意見の相違がある場合には、一方が紛争を裁判所に付託することができるという規定を含む条約の締約国でもある2つの国連加盟国間の紛争を取り扱うことができる。南アフリカとイスラエルはともに国連加盟国であり、ジェノサイド条約の締約国でもある。同条約第9条は、ジェノサイド条約の解釈、適用または履行 (ジェノサイドに対する国の責任を含む) に関する締約国間の紛争は、いずれかの紛争当事者の要請に応じてICJに提出されることを規定している。南アフリカは、12月21日に南アフリカのイスラエル大使館に「口上書」を送付することで、10月30日以来、ガザでの行動がジェノサイドであることをイスラエルに繰り返し明らかにしてきたと述べている。11月17日、南アフリカはジェノサイド問題を国際刑事裁判所(ICC)に付託した5カ国のうちの1つだった。イスラエルは口上書に回答していないが、ガザへの攻撃がジェノサイドの法的定義に合致している、あるいはイスラエルが条約上の義務に違反しているという提言には公にきっぱりと拒絶している。そのことは、国際司法裁判所の制定法および判例法の下で、南アフリカの見解ではあるが、条約の解釈と適用、およびそれを審理し決定する国際司法裁判所の管轄権をめぐる認識可能な「紛争」を立証するのには役立つ。それは国際司法裁判所が管轄権を持つことへの強力な主張であるように思われる。そしてイスラエルの最初の声明は、簡潔で予備的ではあるが、本案について「根拠がない」として南アフリカの主張に異議を唱えたが、国際司法裁判所の管轄権に異議を唱えてはいないようだ。



考えられる結果とその意味するもの

本案に関して、南アフリカの弁護団は、イスラエルの大量虐殺行為とその意図、そして求めている予備的救済について、説得力のある訴えを行なった。南アフリカだけではない。ジェノサイド条約の締約国であるアルジェリア、バングラデシュ、ボリビア、コロンビア、キューバ、エジプト、ホンジュラス、イラン、イラク、ヨルダン、リビア、マレーシア、ナミビア、パキスタン、シリア、トルコ、チュニジア、ベネズエラの大統領またはその他の国家高官は、申請書によれば、イスラエルの行為をジェノサイドと表現または言及している。これらの国は、ICJにおける南アフリカの訴えを支持するかもしれない。

国連加盟国であるイスラエルは、自国が当事者である「係争事件」において、ICJの判決を遵守する義務を負う。もしイスラエルがそうしなければ、安全保障理事会に訴えられるかもしれない。安全保障理事会は、判決を実現するための措置を決定することができる。もちろん、米国はこれまでも安保理で拒否権を行使してイスラエルを守ってきたし、予備的保全措置やイスラエルに不利な本案判決が出た場合、再び拒否権を行使する可能性は十分にある。確かにイスラエルは、2004年に「勧告的手続き」の管轄下で出された、分離壁は違法であるという裁判所の拘束力のない勧告的意見を無視した。しかしそれは、裁判所の「係争事件」管轄権下でイスラエルが直面する可能性のある拘束力のある判決とは異なるものだった。そしてそれは壁だった。ジェノサイドは、特に判決が全会一致であれば、南アフリカの申請と同じように文書化され、理路整然としたものであれば、(「壁」のときとは)異なるかもしれない。

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ロバート・ハーブストは公民権弁護士。ICAHD-USAの理事会共同議長を務め、2014年から2017年までWestchester Jewish Voice for Peaceの支部コーディネーターを務めた。シエラレオネ特別法廷およびルワンダ国際刑事裁判所残留メカニズムで独立調査官および検察官を務めた。

イスラエルは、世界法廷のジェノサイド評決を恐れている

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel is Terrified the World Court Will Decide It’s Committing Genocide
筆者:マージョリー・コーン(Marjorie Cohn)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2024年1月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月14日


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2018年7月23日、オランダのハーグにある国際司法裁判所の内観。2018年7月23日、ABDULLAH ASIRAN / ANADOLU AGENCY / GETTY IMAGES


この約3カ月間、イスラエルは、パレスチナ人への残虐な犯罪行為に対して実質的に免罪を享受してきた。それが12月29日にできなくなった。ジェノサイド条約の締約国である南アフリカが、イスラエルがガザでジェノサイド(集団大虐殺)を犯していると主張する84ページの申請書を国際司法裁判所(ICJ、または世界裁判所)に提出したからだ。

南アフリカの確固とした資料に基づく申請書は訴えている。「イスラエルによる行為や不作為は、...... ジェノサイド(集団大虐殺)的な性格を有していて、ガザのパレスチナ人を国家的、人種的、民族的集団の一部として殲滅するという具体的意図をもって行われたものである」。そして「イスラエルの行為は、イスラエルの国家機関、国家の代理機関、そしてその他の人々や組織が、その指令や統制や影響の下に行動していて、ガザのパレスチナ人との虐殺において、ジェノサイド条約に基づく義務に違反している。」

イスラエルは、ICJ(国際司法裁判所)がガザでジェノサイドを犯していると認定するのを阻止するため、全面的な圧力をかけている。1月4日、イスラエル外務省は各大使館に対し、受け入れ国の政治家や外交官に圧力をかけ、ICJでの南アフリカの提訴に反対する声明を出すよう指示した。

南アフリカは申請書の中で、イスラエルがガザで大量虐殺を行なっているという主張を裏付ける8つの申し立てを挙げている。それらは以下のとおりである。

(1) ガザでパレスチナ人を殺害していること。21,110人以上の死者のうち、女性や子どもの割合が多く(約70%)、中には即刻処刑された者もいるようだ。

(2) ガザのパレスチナ人に対し、深刻な精神的・身体的危害を加えたこと。その中には、身体傷害、心理的外傷、非人道的で卑劣な扱いを含む。

(3) 子ども、高齢者、病人、負傷者を含む、ガザにいるパレスチナ人の約85%を強制退去させ、移住させている。イスラエルはまた、パレスチナ人の家、村、町、難民キャンプ、地域全体の大規模な破壊を引き起こし、パレスチナ人のかなりの割合が故郷に戻ることを妨げている;

(4) 包囲されたガザのパレスチナ人に必要な人道支援を妨げ、広範な食糧不足、飢餓、飢餓、脱水を引き起こしている。必要な食料、水、燃料、電気を遮断し、パン屋、製粉所、農地、その他の生産・生活手段を破壊している。

(5) 190万人の国内避難民を含むガザのパレスチナ人に対し、適切な衣服、避難所、衛生、公衆衛生の提供を怠り、制限した。このため、避難場所を日常的に標的とし、破壊し、女性、子ども、高齢者、障害者を含む避難している人々を殺傷している。

(6) ガザのパレスチナ人に対し、医療を提供すること、またはその医療提供を保護することを怠っている。それには、大量虐殺行為によって深刻な身体的被害を引き起こしている医療上の必要性を含んでいる。これは、パレスチナの病院、救急車、その他の医療施設への直接的な攻撃、パレスチナの医師、医療従事者、看護師(ガザで最も有能な医療従事者を含む)の殺害、ガザの医療システムの破壊と無力化によって生じている。

(7) ガザの生活基盤施設、学校、大学、裁判所、公共施設、公文書、図書館、商店、教会、モスク、道路、公共施設、その他パレスチナ人の集団生活を維持するために必要な施設を破壊することによって、ガザにおけるパレスチナ人の生活を破壊している。イスラエルは、家族全員を殺害し、口承史料をすべて抹消し、社会の著名人や著名人を殺害している。

(8) パレスチナ人女性、新生児、乳幼児、子どもたちに加えられた出産・育児に関する暴力を含め、ガザにおけるパレスチナ人の出産を阻止することを意図した措置を課している。

南アフリカは、ジェノサイドを意図している直接的な証拠となる、イスラエル政府高官の無数の発言を挙げた。

「ガザは以前のようには戻らない。ガザが以前の状態に戻ることはない。われわれはすべてを排除する」、とイスラエルのヨアヴ・ギャラント国防相は述べた。「ガザが以前のように戻ることはない。数週間、あるいは数カ月かけて、あらゆる場所で排除は行なわれるだろう。」

イスラエルのアヴィ・ディヒター農業大臣は、「我々は今、実際にガザのナクバ(1948年のパレスチナ人強制排除)を展開している」と宣言した。

クネセト副議長で外交安全保障委員会のニシム・ヴァトゥリ委員は、「いまやわれわれは、地球上からガザ地区を消し去るという共通の目標を持っている」、と宣言した。


国際司法裁判所(ICJ)で南アフリカを敗訴させるイスラエルの戦略

イスラエルとその主要な後援者である米国は、南アフリカの国際司法裁判所(ICJ)申請の重大さを理解しており、憤慨している。イスラエルは通常、国際機関を馬鹿にしているが、南アフリカの訴訟は深刻に受け止めている。2021年、国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルによるガザでの戦争犯罪疑惑の調査を開始したとき、イスラエルは調査の正当性を断固として拒否した。

テルアビブ大学の国際法専門家であるエリアフ・リーブリッヒ教授はハアレツ紙に語った。「イスラエルは通常、このような手続きには参加しない。しかし、これは国連の調査委員会やハーグの国際刑事裁判所(ICC)ではない。それは国際司法裁判所(ICJ)であり、イスラエルが加盟した条約から権限を得ているため、権限がないという通常の理由で拒否することはできない。それは国際的な威信を持つ機関でもある」。

イスラエル外務省の1月4日付の公電によれば、イスラエルの「戦略的目標」は、ICJが南アフリカによるイスラエルのガザでの軍事行動差し止め請求を却下し、イスラエルがガザで大量虐殺を行なっていると認定することを拒否し、イスラエルが国際法を遵守していると裁定することだという。

同公電は、「同裁判所による裁定は、法律の世界だけでなく、現実的な二国間、多国間、経済、安全保障に大きな影響を及ぼす可能性がある。私たちは、次のような明確な声明を直ちに発表することを求めます。『あなたの国は、イスラエルに対してなされたとんでもない、不条理で根拠のない申し立てを拒否することを、公然と明確に表明することを求める』」、と述べた。

この公電は、外交官や政治家の高官に対して、次のように促すことをイスラエル大使館に指示している。「イスラエルは、大量虐殺テロ組織による10月7日の恐ろしい攻撃の後、自己防衛のために行動しながら、ガザへの人道支援を拡大し、市民への被害を最小限に抑えるために(国際的な関係者とともに)取り組んでいることを公に認めるように」、と。

「イスラエル国家は、南アフリカの不条理な”血の名誉毀損*”を払拭するため、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に出廷する」と、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の報道官エイロン・レヴィは宣言した。南アフリカの申請は「法的なメリットがなく、卑劣な宣伝と法廷侮辱にあたる」と彼は述べた。

イスラエルは、「血の名誉毀損」(ユダヤ人がキリスト教徒の子どもたちを儀式の犠牲にしたと誤って非難する反ユダヤ主義的な表現)の卑劣な告発などに、あらゆる手段を講じている。

「人種差別と闘うことを誇りとする虹の国(民族多様性の国)が、反ユダヤ人種差別主義者のために無償で闘うとは、なんと悲劇的なことか」とレヴィは皮肉った。彼は、ガザのハマス壊滅のためのイスラエルの軍事作戦は、ユダヤ人の大量虐殺を防ぐためのものだという驚くべき主張をした。

古い格言にあるように、町から追い出されそうになったら、群衆の前に出てパレードを先導しているように振る舞え。

バイデン政権は同盟国イスラエルを守るために立ち上がった。ジョン・カービー米国家安全保障会議報道官は、南アフリカのICJ申請を「メリットがなく、逆効果で、まったく事実無根だ」と非難した。カービー報道官は、「イスラエルはパレスチナの人々を地図から消し去ろうとはしていない。イスラエルはガザを地図から消し去ろうとしているのではない。イスラエルは、大量殺戮を行うテロリストの脅威から自国を守ろうとしているのだ」と、イスラエルのとんでもない主張を繰り返した。

イスラエルが大量虐殺を防ごうとしているというカービー報道官の主張は、10月7日にハマスが1200人のイスラエル人を殺害して以来、イスラエル軍が少なくとも22,100人のガザ人を殺害し、そのうちの約9,100人が子どもであるという事実を考えれば、とりわけ馬鹿げている。少なくとも57,000人が負傷し、少なくとも7,000人が行方不明になっている。計り知れない数の人々が瓦礫の下敷きになっているのだ。


イスラエルに対する暫定措置は直ちに影響を与えることができる

南アフリカはICJに対し、「ジェノサイド条約に基づいて、パレスチナ人に対する、さらなる深刻かつ回復不能な被害から彼らを守る」ために、暫定措置(暫定的差止命令)を命じるよう要請している。南アフリカはまた裁判所に、「イスラエルのジェノサイド条約に基づく義務を遵守させ、イスラエルにジェノサイドに関与させないこと、ジェノサイドを防止し処罰すること」を求めている。

南アフリカが求めている暫定措置には、イスラエルに対し、「ガザ内およびガザに対する軍事作戦を直ちに停止すること」、そして、「パレスチナ人を殺害し、身体的または精神的に深刻な危害を加えること、彼らの全部または一部を殺害することを意図した生活条件を彼らに科すこと、パレスチナ人の出産を妨害する措置を中止し、やめること」を命じることが含まれている。南アフリカはICJに対し、イスラエルがパレスチナ人を追放し、強制的に避難させ、食料、水、燃料、医療品や援助を奪うことをやめるよう命じることを求めている。

国連の司法機関であるICJは、国連総会と安全保障理事会によって選出された15人の裁判官で構成され、任期は9年である。国際刑事裁判所のような刑事法廷ではなく、国家間の紛争を解決するものである。

ジェノサイド条約の締約国は、他国がその義務を履行していないと考える場合、その国の責任を問うためにICJに訴えることができる。ボスニア対セルビアの裁判では、セルビアがジェノサイド条約の下でジェノサイドを防止し処罰する義務に違反したと裁判所が判断した。

ジェノサイド条約における義務は、「エルガ・オムネス・パルテス」、すなわち、国家がこの条約のすべての締約国に対して負う義務である。国際司法裁判所(ICJ)は、「このような条約においては、締約国は自国の利益を有しているのではなく、条約の存在意義である崇高な目的の達成という共通の利益を有しているだけである」と述べている。

国連憲章第94条は、紛争当事国はすべてICJの決定に従わなければならないと定めており、もしある当事国が従わない場合には、もう一方の当事国は国連安全保障理事会にその決定の執行を求めることができると定めている。

平均的なICJの裁判は、開始から終了まで数年かかることもある(1993年にボスニアがセルビアに対して初めて提訴してから、2007年に本案に関する最終判決が出されるまでには15年近くかかった)。しかし、裁判が直ちに影響を及ぼすこともある。国際司法裁判所(ICJ)への提訴は、国際社会がイスラエルの行為を容認せず、その責任を追及するという強いメッセージをイスラエルに送ることになる。

暫定措置は迅速に出される。例えば、ボスニアの裁判が開始されてから19日後、ICJは暫定措置を命じた。暫定措置は命令された当事国を拘束し、その遵守はICJと安全保障理事会の双方によって監視される。

国際司法裁判所(ICJ)が当事者間の紛争で下した本案に関する判決は、当事国を拘束する。国際連合憲章第94条は、「国際連合の各加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件についても、(国際司法裁判所の)決定に従うことを約束する」と定めている。裁判所の判決は最終的なものであり、上訴はできない。

南アフリカの暫定措置請求に関する公聴会は、オランダ・ハーグの平和宮にあるICJで1月11日と12日に開催される。公聴会の模様は、東部時間午前4:00-6:00、太平洋時間午前1:00-3:00に、同裁判所のウェブサイトおよびUN Web TVで生放送される。裁判所は公聴会後1週間以内に暫定措置を命じる可能性がある。


ジェノサイド条約の他の締約国も南アフリカの裁判に参加できる

ジェノサイド条約の他の締約国は、南アフリカが提訴した裁判への参加許可を求めるか、ICJにイスラエルに対する独自の申請を提出することができる。南アフリカの申請には、イスラエルのガザでの大量虐殺に言及した数カ国が名を連ねている。その中には、アルジェリア、ボリビア、ブラジル、コロンビア、キューバ、イラン、パレスチナ、トルコ、ベネズエラ、バングラデシュ、エジプト、ホンジュラス、イラク、ヨルダン、リビア、マレーシア、ナミビア、パキスタン、シリアが含まれている。

ヨルダンのアイマン・サファディ外務大臣は、南アフリカがICJでイスラエルに対して起こしたジェノサイド訴訟を支持すると発表した。サファディ外相は、ヨルダン政府がこの裁判を応援するための法的告訴に取り組んでいるとも付け加えた。トルコ、マレーシア、イスラム協力機構(OIC)もこの訴訟を支持すると発表した。

新たに結成された「パレスチナにおけるジェノサイドを阻止する国際連合」は、世界中の600以上の団体に支持され、ジェノサイド条約発動を締約国に促すために招集された。

同連合の主張は、「南アフリカによるイスラエルへのジェノサイド条約発動を支持する介入宣言は、国連によってジェノサイド犯罪認定が肯定され、すべてのジェノサイド行為を終わらせるための行動がとられ、その行為に責任を負う者が責任を問われる可能性を高めるだろう」としている。

1月の第1週、「CODEPINK」、「ワールド・ビヨンド・ウォー」、「RootsAction」が率いる「草の根外交官」の代表団は、ICJにおける南アフリカ対イスラエル裁判への介入宣言を提出するよう各国に促すキャンペーンを全米で展開した。活動家たちは12都市を回り、コロンビア、パキスタン、ボリビア、バングラデシュ、アフリカ連合、ガーナ、チリ、エチオピア、トルコ、ベリーズ、ブラジル、デンマーク、フランス、ホンジュラス、アイルランド、スペイン、ギリシャ、メキシコ、イタリア、ハイチ、ベルギー、クウェート、マレーシア、スロバキアの国連公館、大使館、領事館を訪問した。

「これは、各国政府に南アフリカの訴訟支援を集団的・社会的圧力をかけるまれな機会です」と、ニューヨークを拠点とするパレスチナの弁護士、ラミス・ディーク氏は述べ、その事務所でパレスチナ解放議会の戦争犯罪の正義、賠償、帰還に関する委員会を招集した。「私たちはもっと多くの国が訴訟介入を支援する必要があります。そして、米国の政治的圧力に耐えられるよう、裁判所には大衆の監視の目が必要なのです。」

全米法律家組合(National Lawyers Guild)のスザンヌ・アデリー会長は、「イスラエルと米国、そして欧州の同盟国が世界的に孤立を深めていることは、民衆運動が自国政府を動かし、これらの措置を講じ、歴史の正しい側に立つ方向へと導く重要な瞬間であることを示す指標である」と指摘した。実際、10月7日以来、世界中で何百万人もの人々がパレスチナ解放を支持して行進し、抗議し、デモを行なってきた。

「RootsAction」と「ワールド・ビヨンド・ウォー」は、他のジェノサイド条約締約国に対し、南アフリカによるイスラエルに対するジェノサイド訴訟への介入宣言をICJに提出するよう促すために、組織や個人が使用できる定型書式を作成した。

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マージョリー・コーンは、トーマス・ジェファーソン・スクール・オブ・ローの名誉教授であり、ナショナル・ロイヤーズ・ギルドの元会長、アサンジ弁護団とベテランズ・フォー・ピースの国内諮問委員、国際民主法律家協会の事務局メンバーである。著名な学者であり、講演家でもある。彼女の著作は『カーボーイ共和国;ブッシュ暴力団が法を無視する6つの方法』、『ドローンと標的殺害:法的、倫理的、地政学的問題』などがある。また、地元、地方、国内、国際的なメディアに解説を提供し、ラジオ「Law and Disorder」の共同司会者でもある。

国際司法裁判所(ICJ)は厳しい選択を迫られている

<記事原文 寺島先生推薦>
The ICJ is Facing a Stark Choice
筆者:フラニー・ラスキン(Franny Rabkin)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2024年1月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月14日


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ガザのシュハダ・アルアクサ病院で避難民が避難する中、イスラエル軍の攻撃で負傷したパレスチナ人がベッドに横たわっている。 南アフリカはイスラエルを大量虐殺で非難した。 画像: ロイター/モハメッド・アル・マスリ


「ICJは厳しい選択に直面している。南アフリカに有利な判決を下して暫定措置を示すか、それともいまいましい国際法を忘れ去るかだ。」


「状況はこれ以上ないほど切迫している」と南アフリカは述べ、国際司法裁判所(ICJ)に「暫定措置を示す」よう説得している。その措置とは、イスラエルに対して拘束力のある暫定命令を出し、ガザでの軍事作戦を即時停止すること、パレスチナ人の殺傷をやめること、そして「([彼らの]殺戮をもたらすように計算された生活条件を意図的に与える」ことをやめること、である。

イスラエルは南アフリカの申請に対して書面による回答を提出していない。この準備段階では必須ではないが、木曜(1/11)と金曜(1/12)にハーグの平和宮殿で予定される暫定措置公聴会で申請に反対する予定だ。

イスラエルは南アフリカの申請を「血の名誉毀損」と呼んだ。

まだ回答書が出ていないため、暫定措置に関するイスラエルの訴訟は法的にはまだ明らかにされておらず、南アフリカの弁護士にさえも同様だ。南アフリカは木曜日(1/11)に申し立てを行い、イスラエルは金曜日(1/12)に返答する予定だ。

南アフリカはまた、次のことを暫定措置として裁判所に求めている。イスラエルがパレスチナ人の家からの追放をやめること、食料と水を剥奪するのをやめること、人道支援や医療物資へのアクセスを妨害するのをやめること、である。

同政府は、長期的には訴訟にとって重要な証拠の隠滅を防ぎ、事実調査団によるアクセスを許可する命令と、「前記証拠の確実な保存と保管を支援する」国際的な義務を望んでいる。

暫定措置公聴会は南アフリカのイスラエルに対する訴訟の最初の部分である。

もっと大きな問題は、やがて議論されることになるが、イスラエルがさまざまな方法で大量虐殺条約に違反しているということである。イスラエルは、条約第3条(a)に違反するガザ地区での大量虐殺を行なっているだけでなく、第1条に違反する大量虐殺を阻止できず、直接かつ公然と第3条(b)に違反する大量虐殺を共謀している。 第 III 条 (c) に違反して大量虐殺を扇動したこと、第 III 条 (d) に違反して大量虐殺を企てたこと、第 III 条 (e) に違反して大量虐殺に加担したこと、第 IV 条と第 V 条に違反して大量虐殺を処罰しなかったこと。他にもある。

しかし、暫定訴訟であっても、これらの違反容疑の範囲は重要である。なぜなら、この時点で南アフリカが法廷に示す必要があるのは、これが「妥当な」訴訟であることだけだ。暫定措置を実施するには、南アフリカが足を踏み入れるだけで十分なのだ。

訴訟手続きのこの段階では、裁判所は、南アフリカが保護しようとしている権利が存在することに満足しているかどうかを判断するよう求められていない。 南アフリカが本案に基づいて主張し、保護を求めている権利が「少なくとも妥当」であるかどうかを判断するだけでよい。

「少なくとも妥当な」事件を立証しようとして、南アフリカは84ページの申請書で、10月7日からずっと前のイスラエルのパレスチナ人に対する扱いに関する詳細で事実を重視した歴史を明らかにした。おぞましい事実が書かれている。そしてこの歴史に関する情報源のほとんどは国連の報告書である。

大量虐殺行為は「必然的に連続体の一部を形成する」と南アフリカは言う。

これは、ジェノサイドという用語を作ったラファエル・レムキンによって認識された概念であると申請書は述べている。

「この理由から、イスラエルの行為は、75年に及ぶアパルトヘイト、56年に及ぶパレスチナ領土の好戦的占領、16年に及ぶ封鎖中のパレスチナ人に対するものだったという広い文脈の中に大量虐殺行為を位置づけることが重要である」

南アフリカは、2006年のハマスの選挙勝利後のガザの「厳格な」封鎖に言及し、世界保健機関の報告では、この封鎖によりイスラエルが渡航制限を課し、緊急治療のためにガザを出るための医療許可を待っている間に839人が死亡したと指摘する。同国は、2007年から2010年にかけて「一人当たりの消費カロリーに応じて、食品の移動を「人道的最小限度」に制限するために課された食品輸入制限」にも言及する。

さらに南アは、漁業制限とパレスチナ人が農業に利用できる農地の縮小にも言及する。

「2015年に国連貿易開発会議は、イスラエルが課した制限措置により、2020年までにガザが居住不能になる危険性があると警告した」と申請書には記載されている。

申請書によれば、2000年9月29日から2023年10月7日までの間に、1,699人の子供を含む約7,569人のパレスチナ人が殺害された。これには、2001年、2008年、2009年、2015年、2019年の国連事実調査団による抜粋が含まれており、そのすべてがイスラエル国防軍による残虐行為や虐待、場合によっては戦争犯罪や人道に対する罪の可能性があることについて警鐘を鳴らしている。

2021年、パレスチナ領土の人権状況に関する特別報告者は、「残念ながら、占領行為におけるイスラエルの例外主義に対する国際社会の驚くべき寛容により、現実政治が権利を打ち破り、権力が正義に取って代わられ、責任を無視する免責が許された」と述べている。

このようにして、この申請書は、おそらくイスラエルからの反論の可能性を予期して、イスラエルの現在の行動が昨年10月7日のハマスの恐ろしい攻撃に対する具体的な対応であるという考えを払拭しようとしている。全体像としては、イスラエルがやっていることはこれまで何年もやってきたことと一致しており、ほとんど同じだが、限りなく悲劇的に悪化しているということだ。

このことは、申請書の中の、ハマスが支配していないヨルダン川西岸に関する部分によって裏付けられているが、申請書は「パレスチナ人をアパルトヘイト体制に従属させるためにイスラエルが適用している、差別的な法律、政策、慣行という制度化した体制」について詳述している。

これらには、隔離壁、差別的な土地区画、二重法制度、裁判なしの拘禁、日常的な暴力的な家宅捜索、拘留中の死亡などが含まれる。ヨルダン川西岸のイスラエル人はパレスチナ人よりも多くの水を手に入れており、パレスチナ人の家は入植者のための家を建てるために取り壊されている。パレスチナ人立ち入り禁止区域もある。これらの特徴は、南アフリカ人にはよく知られたものだろう。

申請書には、「入植者による極度の暴力の結果」10月7日以降、少なくとも2,186人のパレスチナ人がヨルダン川西岸で国内避難民になっていると記載されている。2023年、ヨルダン川西岸では495人のパレスチナ人が殺害され、そのうち295人が10月7日以降に死亡している。

これらすべては、10月7日のハマス攻撃後の出来事に至る前に、申請書によって詳しく説明されている。申請書は、ハマスによる民間人を狙った攻撃と人質の奪取を「明白に非難」している。

イスラエルの現在の戦争について、申請書は裁判所の介入の緊急性を強調し、ガザは「生き地獄」であり、「何が起こっているのか説明する言葉がない」という国連職員の言葉を引用している。

ガザには安全な場所はどこにもない、と国連事務総長は申請について詳しく語った。

申請のこの側面は南アフリカの訴訟にとって重要である。なぜなら、法廷でのイスラエルの反応はまだ明らかにされていないが、同国の報道官エイロン・レヴィが述べたように、政府は人道的回廊と安全地帯を創設したことを強調し、爆撃に先立って避難するよう民間人に警告しているからだ。イスラエルは、これらの行為は大量虐殺の認定に必要な特別な意図と両立できないと主張するかもしれない。

南アフリカの申請書には、「ガザのパレスチナ人は、自宅、避難場所、病院、UNWRA*の学校、教会、モスクで、家族のために食料と水を見つけようとして殺害された」と述べられている。彼らは、避難しなかった場合、避難先の場所で、さらにはイスラエルが宣言した『安全なルート』に沿って逃げようとした際にも殺害されている。」
*国際連合パレスチナ難民救済事業機関

申請書によると、強制避難は多くのパレスチナ人にとって恒久的なもので、推定35万5000戸の家屋が破壊され、これはガザ地区の全住宅量の60%に相当するという。

「ガザでの強制避難は、ガザのパレスチナ人の物理的破壊をもたらすように計算された状況で行われているという点で、大量虐殺である」と申請書は述べている。

イスラエルはパレスチナ国民を飢餓の瀬戸際に追い込んでいる、パレスチナ人のほとんどが飢えている、水の枯渇が深刻だ、とも申請書は述べている。

「専門家らは、ガザ地区のパレスチナ人は空爆よりも飢餓と病気で死亡する可能性が高いと予測しているが、イスラエルは爆撃作戦を強化しており、パレスチナ人への人道支援の効果的な提供を妨げている。イスラエルがガザでの行動や政策を通じて、パレスチナ人を殺戮するように意図的に計算された生活条件を与えていることは明らかだ。」

同申請は「大量虐殺の意図の表現」のリストを作成しており、殺害、負傷、強制退去、破壊のレベルと組み合わせると、「大量虐殺が進行中であり、継続している証拠」であるとしている。

リストにはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、アイザック・ヘルツォーク大統領、ヨアヴ・ギャラント国防相、イトマール・ベン・グヴィル国家安全保障相らの発言が含まれている。

この文書には、他の「元国会議員やニュースキャスターを含むイスラエル社会の著名なメンバー」の発言も含まれており、南アフリカ政府は、これらは明らかに直接的かつ公然と大量虐殺を扇動しているものの、「イスラエル当局によるチェックも処罰も受けていない」と主張している。

ここで南アフリカは、これらの発言の一部はイスラエル国家の代表者によってなされたものではないというイスラエルからの別の主張を予想しているのかもしれない。しかし、それらは国家が大量虐殺を防止しているのか、それとも大量虐殺を処罰しているのかに関係するだろう。大量虐殺も条約で罰せられるため、暫定措置を示す裁判所の権限を発動することができる。

イスラエルの件について何も知らなければ、南アフリカの強さを評価するのは難しい。しかし、多くの国際法の専門家や解説者は、裁判所が自らの判断を含む法律と事実に基づいて決定を下すのであれば、特に暫定措置に関しては南アフリカの訴えが有力であることに同意している。

一部の人にとって、この事件は法廷そのもの、そして長年批判の対象となってきた国際公法の体系全体に対する試練となるかもしれない。

西安交通リバプール大学の学習・教育副学部長であるモーセン・アル・アタール氏は、最近のブログ投稿で次のように述べた。

「イスラエルは、ジェノサイド条約、ジュネーブ条約、そしてIHL(国際人道法)の最も基本的な原則に違反していることを白日の下にさらすことで、自らを窮地に追い込み、ICJには南アフリカの強硬な行動を受け入れる以外に選択肢がなくなった。

ICJは厳しい選択に直面している。南アフリカに有利な判決を下して暫定措置を示すか、それともいまいましい国際法を忘れ去るかだ。」

BRICS加盟国の南アフリカ、シオニズムを訴えて提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
BRICS Member South Africa Takes Zionism to Court
出典:INTERNATIONALIST 360° on JANUARY 10, 2024
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2024年1月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月13日


変更場増


イスラエルが行っている大量虐殺に対するプレトリア*の提訴は、ガザでのテルアビブの虐殺を止めるためだけでなく、世界の法廷に多極主義の最初の旗を立てるためにも極めて重要である。これは、西側諸国の免責を停止し、国連憲章で想定されている国際法を回復させようとする、多くの取り組みの最初のケースである。
*南アフリカ共和国の首都

国際法とは何かという完全な概念そのものが、今週(1月第2週)ハーグの裁判で争われる。世界中が見ている。

シオニズムによって展開された鉄の鎖を断ち切ろうとするには、アラブやイスラムの国ではなく、BRICSの一員であるアフリカの国が必要だった。それは、恐怖、経済力、絶え間ない脅威によって、パレスチナだけでなく地球のかなりの範囲を奴隷にしている。

歴史的な詩的正義のねじれによって南アフリカはアパルトヘイトについて1つか2つのことを知っている国になったのだが、それゆえ、道徳的に優位な立場に立ち、国際司法裁判所 (ICJ) でアパルトヘイトのイスラエルに対して最初に訴訟を起こさなければならなかった。

84ページの訴訟は、徹底的に議論され、完全に文書化されて2023年12月29日に提出されたもので、占領下のガザ地区で行われているすべての恐怖を詳述している。またその恐怖はスマートフォンを持つ世界中のすべての人が目撃しているものだ。

南アフリカは、国連の機構であるICJに対して、あることをきわめて率直に要求している。それは、イスラエル国家は10月7日以来、国際法上のすべての責任に違反していると宣言せよ!だ。

そして、それは決定的に、1948年のジェノサイド条約の違反を含んでいる。それによると、ジェノサイドは「国家的、民族的、人種的又は宗教的集団の全部又は一部を殺戮する意図をもって行われる行為」で構成されている。

南アフリカは、ヨルダン、ボリビア、トルコ、マレーシア、そしてイスラム諸国を統合したイスラム協力機構 (OIC) によって支援されている。その機構は57の加盟国で構成され、そのうち48の加盟国はイスラム教徒が多数派を占めている。これらの国々は、グローバル・サウスの圧倒的多数を代表しているかのようだ。

ハーグ*で何が起ころうと、イスラエルの大量虐殺を非難する可能性をはるかに超える可能性がある。プレトリアもテルアビブもICJ(国際司法裁判所)に加盟しているため、判決には拘束力がある。理論的には、ICJは国連安全保障理事会よりも重要な役割を担っている。国連安全保障理事会では、イスラエルの慎重に構築された自己イメージを傷つけるような事実があれば、米国は拒否権を行使する。
*オランダの事実上の首都。国際司法裁判所がある。

唯一の問題は、国際司法裁判所に強制力がないことだ。

実質的に南アフリカが目指しているのは、ICJがイスラエルに侵略とジェノサイドを直ちに停止する命令を出すことだ。それが最優先であるべきだ。


殺戮しようとする特定の意図

南アフリカの申請書の全文を読むのは恐ろしい作業だ。これは文字どおり、21世紀のテクノロジー中毒の若者の目の前で起こっている歴史であり、遠い宇宙で起こっている大量虐殺のSFではない。

プレトリアの申請には、全体像を示すという利点がある。その像は「75年間のアパルトヘイト、56年間のパレスチナ領土の好戦的占領、16年間のガザ封鎖の間のイスラエルのパレスチナ人に対する行為をより広い文脈において」捉えているからだ。

原因、結果、意図が明確に描写されていて、それは、2023年10月7日のパレスチナ抵抗軍によるアル・アクサ洪水作戦以来、繰り返された惨劇を超えたものとなっている。

それからさらに、「他の国際法違反に相当する可能性のあるイスラエルによる行為と不作為」がある。南アフリカは、それは「本質的にジェノサイドである。なぜなら、ガザ地区のパレスチナ人を、より広範なパレスチナ国民、人種、民族集団の一部として、殺戮するという必要不可欠な特定の意図(dolus specialis)を持って行われているからだ」としている。

申請書の9ページから紹介されている「事実」は残酷なものである。その事実には、民間人の無差別虐殺から大量追放まで含まれている。「ガザの人口230万人のうち190万人以上のパレスチナ人、つまり人口の約85%が家を追われていると推定されている。彼らが避難するための安全な場所はどこにもなく、避難できない、または避難を拒否することができない人々は、殺害されているか、自宅で殺害される危険性が非常に高い。」

もう後戻りはできない。「国内避難民の人権に関する特別報告者が指摘したように、ガザの住宅と民間の生活施設は破壊され、ガザの避難民が帰還する現実的な見通しが立たず、イスラエルによるパレスチナ人の大量強制移住の長い歴史が繰り返されている」。


殺戮に加担している覇権国

申請書の項目142にはドラマ全体が凝縮されているかもしれない。「全人口が飢餓に直面している。ガザの人口の93%が危機的レベルの飢餓に直面しており、4人に1人以上が壊滅的な状況に直面している。」―つまり死が差し迫っているのだ。

こうした状況を背景に、イスラエルのネタニヤフ首相は、12月25日、クリスマスの日に、虐殺的な表現をさらに強調し、「私たちは止めていません。私たちは戦いを続けています。私たちは今後も戦いを強化していきます。これは長い戦いになり、終わりには近づいていません」と述べたのだ。

そのため、「非常に緊急の問題として」、 「裁判所がこの事件を本案とする決定を下すまで」 、南アフリカは暫定措置を求めている。その第一の措置は、「イスラエル国がガザでの、そしてガザに対する軍事作戦を直ちに停止すること」である。

これは永久停戦に等しい。*ネゲブからアラビアまでのすべての砂は、米国の外交政策を担当するネオコンの精神異常者―彼らの飼い犬、遠隔操作された、老衰したホワイトハウスの占有者を含む―が、イスラエルの大量虐殺に加担しているだけでなく、停戦の可能性に反対していることを知っている。
*イスラエル南部の砂漠地方

ちなみに、ジェノサイド条約によれば、このような共犯も法律で罰せられる。

したがって、ワシントンとテルアビブが手段を選ばないことは当然である。あらゆる圧力と脅しの手段を使って、ICJによる公正な裁判を阻止するだろう。この裁判は、例外主義をかかげるワシントン-テルアビブ連合を国際法に従わせるためにどの国際裁判所も行使する極めて限られた権限とまったく同じものを使うことなる。

ガザへのイスラエルの前例のない軍事攻撃では3ヶ月足らずの間に人口の1%以上が殺害され、それに対して危機感を募らせているグローバル・サウスが行動を起こしているが、その一方で、イスラエル外務省は、自国の大使館の外交官や政治家に圧力をかけて次のような「即時かつ明確な声明」の発表を急がせた。「あなたの国がイスラエルに対してなされた言語道断で、不条理で、根拠のない主張を拒否することを公にかつ明確に表明すること」。

どの国がこの命令に従うかを見るのは、非常に啓発的なことになるだろう。

プレトリアの現在の取り組みが成功するかどうかは別として、これは、数ヶ月、あるいは数年後に世界中の裁判所で初めて提起される訴訟となる可能性が高い。南アフリカが重要な加盟国であるBRICSは、西側の覇権とその「規則に基づく秩序」に挑戦する国際機関の新たなうねりの一部である。この規則は何の意味も持たない。誰もこれを見たことがないからだ。

多極主義は、数十年にわたる国連憲章からの移行を是正し、これらの幻想的な「規則」に具体化された無法状態に突入するために出現したと言えるかもしれない。世界秩序を支える国民国家体制は、それを保障する国際法なしには機能しない。法律がなければ、私たちは戦争、戦争、そしてさらなる戦争に直面する。覇権国家が理想とする終わりのない戦争の世界だ。

南アフリカのイスラエルに対するジェノサイド訴訟は、国際システムに対するこれらの明白な違反を覆すために明らかに必要なものであり、世界を安定、安全、常識に戻すための、イスラエルとその同盟国に対する最初の訴訟になることはほぼ確実である。

イスラエルのガザ戦争は、ヨーロッパの植民地支配の歴史そのものだ

<記事原文寺島先生推薦>
Israel’s War on Gaza Encapsulates the Entire History of European Colonialism
筆者:ハミド・ダバシ (Hamid Dabashi)
出典:Internationalist 360°  2023年12月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月8日


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2023年12月25日、ガザ地区中央部のマガジ難民キャンプに対するイスラエル軍の空爆で死亡した親族を悼む男性(Mahmud Hams/AFP)


シオニストがヨーロッパやアメリカの指導者たちから全面的な支持を得ているのは、「すべての獣を絶滅させる」という大量虐殺の衝動が彼らの精神の奥深くに埋め込まれているからだ。

ガザに閉じ込められた何百万人ものパレスチナ人が飢餓と大量虐殺に直面しているとき、イスラエルの侵攻軍は、「コンサートやマッサージチェア、ビュッフェ、その他」で贅沢をする「若返り複合施設」を楽しむ自分たちの姿を必ず撮影した。

自分たちの祖国でパレスチナ人を虐殺しながら、ちやほやされるイスラエル人を見るのはシュールだ。

これは、少なくともバルトロメ・デ・ラス・カサスの『インド諸島の破壊に関する簡潔な報告(A Short Account of the Destruction of the Indies)』(1552年)以来続いている入植植民地主義の種族ジェノサイドだ。彼はその中で、スペイン人の残忍な暴力行為を後世のために記録し、「野蛮なインド人」を大量虐殺する光景を詳細に記述した。イスラエルもパレスチナ人に対して同様のことを行なっている。

北アメリカや南アメリカ、オーストラリア、アジア、そしてアフリカなどに、ヨーロッパの入植植民者たちは、その病的ジェノサイドの痕跡を残している。

ヨーロッパの大西洋横断奴隷貿易によって、アフリカの人口は半減したと考える歴史家もいる。アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そして多くのアフリカ植民地はすべて、原住民の組織的な絶滅や強制退去、そして強制収容の上に築かれた。

現在、ガザや他のパレスチナ地区で激しく展開されているイスラエルの入植者=植民地主義において、ヨーロッパ植民地主義は、その殺人的悪名に従って行動しており、復讐心をもって世界の舞台に戻ってきた。

数十年にわたり、ヨーロッパ植民地主義の研究者たちは、世界中の先住民の計画的大量虐殺の事例を文書化し、アーカイブ化し、つなげるために精力的に働いてきた。

しかし、ガザやヨルダン川西岸では、そのような丹念な研究は必要ない。そこでは、イスラエル軍と入植者たちの蛮行が、ソーシャル・メディアやグローバル・サウスの主流メディアで、自分の目で確かめようとする人なら誰でも見られるように、十分に公開されているからだ。

イスラエルは、ヨーロッパ系アメリカ人による入植植民地主義の全歴史とその大量虐殺本能を、余すところなく全世界さらけ出した。

西側メディアは、イスラエルの殺人行為をごまかすために、たゆまず、恥知らずに働いている。「別の事実」を提供し、パレスチナ人を悪者にし、イスラエル人を尊崇し、シオニズムを浄化して、イスラエルが「最も道徳的な軍隊」であることを世界に保証している。しかし、世界は概して、彼らの悪質なジャーナリズムから解放されている。


入植者植民地主義ジェノサイド

イスラエルがパレスチナ人に対するジェノサイドを進める一方で、アメリカ議会はイスラエルの行動に反対する者を迫害し、ユダヤ人に対する架空の脅威を追及した。その動きは大富豪たちによっても支援されている。彼らは(大学にはもう金を出さないぞと)大学の学長たちを恫喝して正気を失わせているのだ。

数十年にわたり、先駆的な反植民地主義者やポストコロニアル*思想家による批判的思考は、ヨーロッパ人やアメリカ人によって世界中で行われた野蛮行為に対する私たちの認識を根本的に変えてきた。
*経済や文化、政治に残存する植民地主義の影響を明らかにし、現状を変革するための思想。「ポスト」という接頭辞は、様々な地域が解放された後に、現在もなお植民地主義の影響のもとにあることを強調するために用いられている。(知恵蔵)

米国では、批判的な人種理論家や横断的フェミニスト*が、「既成の」世界史に対して画期的な挑戦を行っている。
*全ての性が平等な権利を持つべきだという理由から女性の権利を主張する行為(フェミニズム)を支持する人

イスラエルはその植民地支配の歴史の縮図であり、すべてがシオニストの殻の中に詰め込まれている。

「数週間も経たないうちに、ガザでのイスラエルの軍事作戦によって殺された子どもの数は、私が事務総長になって以来、紛争当事者によって殺された子どもの数よりもはるかに多くなります」と、アントニオ・グテーレス国連事務総長は2023年11月30日に述べた。

しかし、パレスチナ人は一貫して非人間化され、彼らの運命は非歴史化され、イスラエル人はいわれのない攻撃に報復する犠牲者に仕立て上げられている。シオニストが欧米の支援を受けてパレスチナを征服した歴史は、一貫して抹消されている。パレスチナ人には歴史も人間性も文化もない。イスラエル人は天地創造の時からパレスチナにいた。福音的シオニズムは世界全体で最も重要な物語だった。

イスラエル人がパレスチナでやっていることは、フランス人がアルジェリアで、イギリス人がインドで、ベルギー人がコンゴで、アメリカ人がベトナムで、スペイン人がラテンアメリカで、イタリア人がアフリカで、ドイツ人がナミビアでやったことであり、ヨーロッパのジェノサイド史の新たな章である。

エッセイ『入植者植民地主義と先住民の抹殺(Settler Colonialism and the Elimination of the Native)』(2006年)の中で、「ヨーロッパ人の行なったジェノサイドと入植者植民地主義が、人種の文法を組織化することを典型的に用いてきた」経過をパトリック・ウルフは明示した。

さらに痛烈に、マルティニーク島(カリブ海の島)出身の作家で政治家であるエメ・セザール(Aime Cesaire)は、彼の1950年の重要な著作『植民地主義論(Discourse on Colonialism)』で、植民地主義者が先住民を奴隷化し、人間性を奪い、彼らの土地を奪い、労働を搾取し、資源を荒らすという悪質な動機を描写した。


マニフェスト・デスティニー(明白な運命)

どうしてある民族が他の民族にこんなことをするのか。もちろん、それは自分たちが神によって運命づけられたと思っているからだ。

シオニズムは、人種差別主義者の米国の教義 「明白な運命(manifest destiny)」のユダヤ版である。「マニフェスト・デスティニー」とは白人の人種的優位性を信じ、彼らが絶滅させたネイティブアメリカンや他のグループに対する米国の植民地支配の決定的な拠り所となっている。

「マニフェスト・デスティニー」と同様、シオニストたちは、パレスチナは彼らの約束の地であり、そこは彼らの神によって運命づけられ、約束されたものであり、先住民は残酷に排除されるべき厄介者であると信じている。



イスラエル軍がガザで行なっていることは、シオニスト版の「偉大な交代」理論である。その理論の主張は、有色人種が白人に取って代わりつつあり、そのプロセスは逆転させなければならないというものだ。

米国でこのような意見が出ると、真面目な新聞コラムニストたちはそれを嘲笑し、陰謀論だと一蹴する。しかし、そのような見解がイスラエルで表明されると、彼らはそれを支持し、承認し、イデオロギー的に武装し、武器にする。

アメリカの「マニフェスト・デスティニー」のイデオロギーの根底には、キリスト教の熱狂主義があった。これは現在、福音主義のシオニズムに変容しており、その目的は「聖地」を征服し、彼らのメシアの再来に備えることだ。(彼らが言うメシアは、パレスチナのイエス・キリストやラテンアメリカの解放神学とは何の関係もなく、アメリカの帝国主義的な想像力の完全な架空の構築物だ)。


「すべての野獣を根絶やしにせよ」

歴史家フレデリック・ジャクソン・ターナーは、1893年に発表した古典的なエッセイ『アメリカ史におけるフロンティアの意義』の中で、アメリカの入植植民地主義者たちは、自分たちが後に残したヨーロッパ文明と、「新世界」で直面する野蛮さによって、自分たちの運命が決められていると見ていたと説いた。

ターナーは、アメリカ人の性格はこれらの信念によって形成されていると信じていた。福音主義のシオニズムを通じて、あのフロンティア、「野蛮」に対するあの戦いが、イスラエルの入植植民地プロジェクトをパレスチナの抵抗に対して駆り立てているものだ。

ジョセフ・コンラッドの1899年の小説『闇の奥(Heart of Darkness)』では、アフリカの無名の土地(コンゴ自由国*と思われる)にベルギーの怪しい会社から送り込まれた象牙商人カーツが、「すべての獣を根絶やしにせよ」とつぶやく。
*「コンゴ自由国」は、かつてアフリカのザイール川流域に存在した国である。国と称しているが、実態はベルギー国王レオポルド2世の私領地であった。ベルギーの植民地時代を経て、のちに「コンゴ共和国」として独立を果たした。(ウィキペディア)

スウェーデンの作家スヴェン・リンドクヴィスト(Sven Lindqvist)は、1992年に出版した本のタイトルにこの言葉を使った。この本は、アフリカにおけるヨーロッパの植民地主義、人種差別、大量虐殺の根源について道徳的に考察したものである。

ハイチ出身のドキュメンタリー映画監督ラウル・ペック(Raoul Peck)は、リンドクヴィストの著書の一部を基に、2021年にHBOのミニシリーズ『Exterminate All the Brutes(すべての野獣を根絶やしにせよ)』を制作した際、ヨーロッパ植民地主義の蛮行を記録するために世界中を回ったが、パレスチナの状況は「複雑」であるというリベラル・シオニストの陳腐な言及を除いては、あえてパレスチナには近寄らなかった。

だが、パレスチナの状況は複雑ではない。征服、植民地化、ジェノサイドという悪質なヨーロッパ人入植者の狂気が、私たちの目の前で繰り広げられているのだ。

シオニストの背後には、ヨーロッパやアメリカ、カナダ、そしてオーストラリアの入植者たちの忠実かつ無条件の支援がある。

そのため、歴史的にヨーロッパの残忍さによって長らく苦しめられてきた世界全体が、パレスチナ人のようになったということだ。

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筆者のハミド・ダバシは、ニューヨーク市のコロンビア大学でイラン研究と比較文学のハゴップ・ケヴォーキアン・センターの教授で、比較文学、世界映画、ポストコロニアル理論を教えている。最近の著書に『二つの幻想の未来:西洋の後のイスラム』 (2022) などがある。最後のイスラム知識人:ジャラル・アル・エ・アフマドの生涯と遺産 (2021年);『植民地の視線の逆転:ペルシャの海外旅行者』 (2020年) 、『皇帝は裸である:国民国家の不可避な終焉』 (2020年) 。彼の本やエッセイは多くの言語に翻訳されている。

世界規模の組織が、世界法廷でイスラエルを訴えた南アフリカを支持するよう各国に働きかけ

<記事原文 寺島先生推薦>
Global Coalition Pushes for Countries to Back South Afrist Israel
筆者:Black Alliance for Peace
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年1月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月7日





 新たに結成された連合は、南アフリカによるイスラエルに対するジェノサイド訴訟を支持し、国際司法裁判所(JCJ)に介入宣言を提出するよう他国に求めている。

 「パレスチナにおけるジェノサイドを阻止する国際連合」は、イスラエルによる壊滅的な空爆作戦と、占領下のパレスチナ領土で行われている新たな戦争犯罪を終わらせる方法として、各国が「ジェノサイド条約」を発動させる緊急の必要性について協議した。この取り組みは12月29日、南アフリカがイスラエルを相手取って国際司法裁判所(JCJ)に提訴したことで、前進した。

 この連合には、「プログレッシブ・インターナショナル」、「国際民主法律家協会」、「サミドゥン・パレスチナ囚人連帯ネットワーク」、「平和のための黒人同盟」、「今こそアラブ世界のための民主主義を」、「解放のためのパレスチナ人集会」、「民衆の抵抗」、「CODEPINK」が参加しているが、この連合は「1月2日にパレスチナ反アパルトヘイト調整委員会(PAACC)が発表した呼びかけを強く支持し、南アフリカが各国政府に対して、同国が出した「イスラエルに対する緊急の介入宣言をおこなうことをJCJへ求める訴え」を支持するよう促すものだ。なおこの訴えに対する支持表明は、2024年1月11日と12日に予定されている審問の前でも後でも提出可能である」とのことだ。

 同連合は次のように述べている:「南アフリカがイスラエルに対してジェノサイド条約の発動を支持する介入宣言は、国連においてジェノサイド犯罪への肯定的な認定が増加し、その結果としてジェノサイド行為を終結させるための措置が講じられ、これらの行為に責任のある者が問責される可能性を高めるだろう。」と。

 「そのためには、イスラエルが国際法の下で責任を問われることを要求するという歴史に残るような南アフリカの旗振りに、より多くの国が追随することが不可欠です」と、ナショナル・ロイヤーズ・ギルドの会長であり、国際民主法律家協会の事務局の一員であるスザンヌ・アデリーは述べた。さらに、「そうするための分かりやすく必要不可欠な方法は、ジェノサイド条約に基づき、(世界裁判所とも呼ばれる)国際司法裁判所(ICJ)に提訴している南アフリカを支持し、介入宣言を提出することです。イスラエルとアメリカ、そしてヨーロッパの同盟諸国が世界的に孤立を深めていることが示しているのは、いまこそ、民衆による運動が自国の政府を動かし、こうした措置を講じさせ、歴史上正しい側に立つ方向に向かわせるための重要な瞬間であるという事実です」とも述べた。アデリーは昨年11月、国際代表団を率いてカイロを訪れ、パレスチナのラファ国境開通を要求した。

 占領下のパレスチナで進行中のイスラエルの大量虐殺行為を繰り返し非難してきた「平和のための黒人同盟」のアジャム・バラカ調整委員長は、「南アフリカ政府の行動は、人権と国際法を守るための国際的枠組みの信頼性を救済することにほかならない、勇気ある試みです。南アフリカによる請願は、国家と国際市民社会にとって、不処罰に反対することが法的にも道徳的にも必須であることを思い起こさせるものです。大量虐殺は、最も悪質な国際犯罪のひとつとされています。イスラエル国家とその支援諸国が正義と国際的非難を免れることが許されるなら、それは現在の国際的な司法制度の正当性を剥奪することになります」と述べた。

ニューヨークを拠点に活動するパレスチナ人のラミス・ディーク弁護士は、「戦争犯罪の正義、賠償、帰還に関するパレスチナ解放総会」の招集者であり、「パレスチナのための世界法律家協会」の共同創設者でもあるが、同氏も以下のように語った。「この裁判は非常に稀な裁判です。というのも、多くの人々が団結して、南アフリカの訴えを支持するよう各国政府に圧力をかけているからです。このような動きはパレスチナ問題の方向性を決定的に変える動きになる可能性があります。国際司法裁判所(ICJ)を通じて、南アフリカは、イスラエルが米国と連携して主導しているこの残虐な大量虐殺と拷問行為に決定的な打撃を与える態勢を整えています。もっと多くの国々が介入を支持する申し立てをする必要があります。そして、同裁裁判所に大衆からの監視の目を感じさせ、裁判所にかけられる米国からの極端な政治的圧力に耐えられる状況を作らなければなりません。国際人道法と諸機関は、大衆を守るための装置であるべきであり、またそう捉えられるべきものです。大衆から遠く離れた抽象的存在であってはなりません。大衆は、戦略的かつ強力な役割を果たすことができるし、そうすべきなのです。具体的には、この訴えを連帯活動に組みこむことです。そして、自国政府が支援介入を申し立てるだけで満足せずに、ICJが正義を実現するまで、活動を続けるべきなのです」と。

 パレスチナにおけるジェノサイドを阻止する国際連合は現在、この取り組みへの世界的な支援を構築するため、署名入りの書簡を配布しており、すでに100を超える団体が賛同している。書簡はこちらでお読みいただけます。

 この取り組みの連絡先は以下のとおり。
   アジャム・バラッカ、ajamubaraka2@gmail.com
   ラミス・ディーク、Deek@DeekDictorAdi.com
   スザンヌ・アデリー、suzanne.adely@gmail.com

ガザでの戦争は「あと何カ月も」長引く―イスラエル国防総省(IDF)

<記事原文 寺島先生推薦>
War in Gaza to drag on for ‘many more months’ – IDF
Israel’s military chief has warned of a long process to thoroughly dismantle Hamas
イスラエル軍総司令官は、ハマスの徹底的な解体には長い時間がかかると警告した。
出典:RT  2023年12月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月5日


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火曜日(12月26日)、カーン・ユニスのビルに対するイスラエルの攻撃で負傷した男性が病院に運ばれる。© Belal Khaled/Anadolu via Getty Images


イスラエル軍の最高司令官は、パレスチナの過激派組織ハマスを完全に破壊し、再び脅威となるのを防ぐためには、長期にわたる断固とした戦いが必要であるため、ガザでの戦争は 「あと何か月も」 長引く可能性が高いと警告した。

イスラエル国防軍(IDF)のヘルジ・ハレヴィ参謀総長は火曜日(12月26日)、記者団に「魔法のような解決策はない」と語った。テロ組織を徹底的に解体するためには、頑固で断固とした姿勢で戦う以外に近道はない、とも。

ハレヴィの発言は、イスラエルのネタニヤフ首相が月曜日(12月25日)、ハマスとの戦争は「終わりそうにない」と述べた後のことだ。ネタニヤフ首相は、ガザを「非武装化」し、パレスチナ社会を「脱過激化」して、永続的な和平のための条件を整えなければならないと付け加えた。

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READ MORE: Hamas must be destroyed – Netanyahu

現地の保健当局によれば、10月7日の開戦以来、ガザでは2万1000人近くが死亡している。ハマスがイスラエル南部に奇襲攻撃を仕掛けて紛争を引き起こし、700人近いイスラエル市民と71人の外国人を含む1,100人以上が死亡、数百人の人質を確保した。

ハレヴィは、パレスチナ自治区北部のハマス大隊の大半を解体した後、IDFはガザ中央部と南部で作戦を拡大していると述べた。「我々は多くのテロリストと指揮官を排除した。一部はわが軍に投降し、何百人もの捕虜を確保した。我々は多くの地下インフラと武器を破壊した」と彼は語った。

イスラエル国防軍総司令官は、この地域が密集した都市部であることを考えると、おそらくガザ北部にはもっと多くのハマス戦闘員が隠れているだろうと述べた。彼は、イスラエル軍が治安情勢を10月7日以前の状態にまで後退させ、市民をハマスの攻撃再発の危険にさらすことは許されないと誓った。

「この戦争は必要であり、目標は容易には達成できません」と彼は述べた。「これは複雑な地域で行われています。そのため、戦争はさらに数か月続くでしょうし、異なる手法を用いて、その成果を長期間維持するよう努めます」と彼は言った。

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ロシアや中国など複数の国(アントニオ・グテーレス国連事務総長も含む)が即時停戦を求めている。しかし、イスラエルとその主要同盟国であるアメリカは、今すぐの停戦はハマスの利益にしかならないと主張している。

南アフリカ、国際司法裁判所にイスラエルを「大量虐殺」の罪で提訴

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel sued for ‘genocide’ at The Hague
南アフリカ、国際司法裁判所にガザ紛争への介入を要請
出典:RT  2023年12月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月4日



画像:2023年10月31日、ガザ地区ガザ市のアル・シャティ難民キャンプでイスラエルの攻撃が続く中、破壊された建物の破片。© Ali Jadallah / Anadolu via Getty Images


 南アフリカはハーグの国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、ガザでのイスラエルの行為は「大量虐殺」に当たるとして、それを阻止するための「暫定措置」を求めた、と国連最高裁判所が金曜日(12月29日)に発表した。

 その申請書の主張は、「イスラエルによる作為と不作為は…大量虐殺的な性格のものである。というのも、これらの行為には明らかに特定の意図があるからだ。その意図とは、ガザ地区のパレスチナ人を破滅させることである。そしてこれらのパレスチナ人は、より広大なパレスチナの国家や人種、民族の一部である」 というものである、とICJは声明でこう述べた。

 南アフリカ政府は、ガザにおけるパレスチナ人に対するイスラエルの行為は「ジェノサイド条約に基づく義務に違反している」と述べた。同政府はさらに、10月7日以来「大量虐殺を阻止できず」、「大量虐殺への直接的かつ公的な扇動を訴追しなかった」としてイスラエルを非難した。

 イスラエルはガザ地区でパレスチナ人に対する大量虐殺行為をおこなってきたし、いまもおこない続けているし、この先もさらに続ける危険がある

 さらに南アフリカがICJに要請したのは、「暫定的な措置」であり、その目的は、ジェノサイド条約に基づき、パレスチナ人を「更なる深刻かつ取り返しのつかない被害から守る」ことだとした。ICJはまた、これらの措置を詳細に列挙した84ページの文書を公表したが、その最初の内容はイスラエルに「ガザ内およびガザに対する軍事作戦の即時停止」を求める、というものだった。


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 南アフリカ政府はまた、西エルサレムのイスラエル当局に対し、パレスチナ人に対するあらゆる攻撃を停止し、さらに「住居からの追放と強制退去」や、食料や水、燃料、住居、医療用品などの入手経路の剥奪を最終目的とする命令を取り消すことも要求している。

 大量虐殺やその陰謀の「直接的かつ公的な扇動」に関与した者は誰でも裁かれなければならない、とこの訴追状の主張にある。そして南アフリカはイスラエルに対し、これらすべての要求の遵守に関する報告書を1週間以内に提出するよう要求した。

 ICJの規則によれば、暫定措置の要請により、南アフリカの申請は他のすべての訴訟よりも優先される。

 南アフリカはこれまで、国際刑事裁判所(ICC)にイスラエルを戦争犯罪で告発しようとしていた。西エルサレムのイスラエル当局はICCの署名国ではないが、ICJと同じくハーグに拠点を置くICCは以前、ガザとヨルダン川西岸を管轄する、と宣言している。

 いっぽう、南アフリカとイスラエルは、第二次世界大戦中のナチスによるユダヤ人大量虐殺を受けて1948年に初めて採択された「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」に加盟している。

なぜワシントン・ポスト紙は、ネタニヤフの長年にわたるハマスとのファウスト的取り引きを暴露したのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Why’s WaPo Blowing The Whistle On Bibi’s Years-Long Faustian Bargain With Hamas?
筆者:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
出典:本人のサイト 2023年11月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月4日


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民主党は、ビビ(ネタニヤフ)と彼が象徴するすべてを一掃するまたとない機会と考えた。だから、彼らは自称ユダヤ人国家の信頼を失墜させる可能性のある10月7日以前のイスラエルとハマスの関係についての議論をあえて俎上に載せたのだ。

ワシントン・ポスト紙(WaPo)が、イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフ(「ビビ」)に関する非常に厳しい記事を掲載した。その記事は「ネタニヤフとハマスはお互いに依存していた。そして両者ともに去りゆく可能性がある」と題されており、イスラエルの専門家たちの発言を引用している。記事によれば、ネタニヤフはハマスとの長年にわたるファウスト的取り引きをしており、それがハマスによる10月7日の奇襲攻撃に寄与した可能性が示唆されている。言い換えれば、彼とハマスとの暗黙の合意がホロコースト以来最大のユダヤ人虐殺の一因となったとされている。

主流メディアの情報に依存していない人の中には、すでにその結論に達している人もいたが、西側に立つWaPosi紙がこれを報じたのは初めてだ。これはこの件に関する一般向け議論の正常化に役立った。とある目論見に引きづられている門番たちはこれまで、「反ユダヤ的陰謀論を広めている」者たちを非難してきたが、イスラエルの専門家自身を引用しているWaPo紙の報道に関しては、手の出しようがない。

WaPo紙によれば、ビビがハマスを利用してパレスチナの問題を分裂させ、それによってイスラエルが二国家解決に進展しない「公的にもなるほどと思わせる」口実となるようにしたのだ。その証拠として、これらの専門家は、彼の政府が「定期的な囚人解放、カタールからの資金移転によるガザでの公務員給与の支払い、インフラの改善、そして、批判者によれば、ハマスの軍事作戦の資金提供に同意した」ことを指摘した。その代わりに、ハマスはガザを統治し続け、それがハマスの利益になった。

このファウスト的取り引きは10年以上続き、その間に「ハマスが全面戦争ではなく、ガザ建設に焦点を当てた、より信頼できる統治組織へと進化しつつあるとの期待が高まった。この状況に利点を感じていたのはネタニヤフ首相だけではない。イスラエルの穏健派は、生活水準が向上し、安定したガザを視野に入れた未来を描くようになった。ビジネス界は、ユダヤ国家とのより強い結びつきを築こうとするアラブ近隣諸国とのイスラエルの関係改善を歓迎した」。

端的に言えば、イスラエル国民は、政治的考えの如何に関わらず、長引く現状に騙され、ハマスがビビを裏切ることはないだろうと信じていた。この悪名高い事件の余波で、WaPo紙は、国民感情はビビとハマスの両方に背を向け、このファウスト的駆け引きのきっかけとなった権力保持が危うくなったと主張している。

WaPo紙の報道は、客観的に存在する現実を正確に反映しているが、WaPo紙という西側で評判の高い主流メディアが、イスラエルの指導者をこれほど非難する記事を掲載したことが、いかに予想外であったかは否定できない。それゆえ、WaPo紙の記事は、10月7日以前のイスラエルとハマスの関係についての一般大衆の言説に革命を起こす画期的な出来事である。

WaPo紙が何をするか予想できた者はほとんどいなかったので、(情報検閲の)門番たちはこれに不意をつかれた。しかし、米国の与党である民主党とWaPo紙の関係を思い起こし、今年初めにイスラエルで起きた反政府デモへの彼らの支援を思い出せば、これは実際にある程度予想できたことだった。バイデン政権がビビに対する圧力作戦を倍増させたため、3月下旬には「米国が支援するイスラエルのカラー革命は危機的状況に達した」と評価されていた。

迂闊な観察者であれば、アメリカがいかなるイスラエル政府も不安定化させるなどありえないだろうと一蹴するかもしれない。しかし、こんな見解を持つ人々は、バイデン政権のリベラル・グローバリストとビビの保守・国粋主義者との間の緊張に気づいていないのだ。要するに、民主党はイデオロギー的な理由からイスラエルの政権を軽蔑している。また西側の対ロシア制裁に従わないこと、さらにはシリアでロシアと連携し続けることに罰を与えたいと考えている。

確かに、前回2つのビビ在任期間の間に成立した暫定的なリベラル・グローバリスト政権も、これらの制裁に従わなかったし、シリアでのロシアとの協力を抑制しなかったが、それでもバイデン政権からは、他のすべての問題に関してより政治的に信頼できるとみなされていた。民主党は当然、彼らが政権に復帰することを望んでいる。それゆえ、今年初めに彼らがビビの保守ナショナリスト政権に対して組織した「カラー革命」を手助けしたのだ。

しかし、民主党政権はビビを交代させたがってはいたが、暗黙のレッドラインを越えることはイスラエル国家全般の信用を失墜させる恐れがあるため、どこまで踏み込むかには一定の限界があった。そのため、10月7日以前にビビのハマスとのファウスト的駆け引きの話題を取り上げることをタブー視していた。前述したリベラル・グローバリストの暫定政権も、彼らの統治下で同じ政策を続けていることもあった。とはいえ、ハマスの奇襲攻撃はビビの在任中に起きたことなので、こうした懸念はもはや関係ない。

イスラエル国民自身はすでに、どのような誤った政策がこのような事態を招いたかについて話している。そのため、民主党はもはやこの問題をタブー視する理由はないと考えている。特に、この感情的な問題は、彼に対する感情をさらに煽るために、彼らの印象管理者が簡単に武器にすることができることもある。ビビが長年政権に就いていることは、平均的な有権者がこの政策について、暫定リベラル・グローバリスト政権よりもビビを非難し、そのため次の投票でビビを罰しようとする可能性が高いことを意味する。

その実現の可能性を最大限にするために、WaPo紙という民主党の同盟者は、彼ら自身が共有されている目標を暗黙のうちに理解しているにせよ、民主党からのひと押しがあったにせよ、この問題についてのタブーを破り、ついに秘密を暴露するという決定を下したのだ。その目的は、イスラエル国民がホロコースト以来最大のユダヤ人虐殺についてビビの個人的な責任を追及し、彼の政治的キャリアを終了させ、保守的で国粋主義的な彼の政府を解体させることだ。

基本的に民主党は、ビビと彼が象徴するすべてを一掃するまたとない機会と考えた。だから、民主党は、10月7日以前のイスラエルとハマスの関係について議論の俎上に載せることが、自称ユダヤ人国家の信頼を失墜させる可能性があるのにあえてそうしたのだ。WaPo紙の報道活動は、それ故、政権を交代させるという思惑が働いていた。ただ、すべての事情を考慮すれば、このタブーが積極的に守り続けられず、最終的には破られたことにより、よりよい事態を迎えることになった。

イスラエルは陸上に配置された航空母艦―米国の真の狙いはイランだ

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel as a Landed Aircraft Carrier
筆者:マイケル・ハドソン(ジャーナリスト ベン・ノートンによるインタビュー)
出典:マイケル・ハドソンの個人ブログ  2023年11月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月2日


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文字起こし

ベン・ノートン(以下BN):なぜアメリカはそれほど強力にイスラエルを支持するのか?

今日のこのビデオでは、イスラエルが米国の外交政策の重要な部分であり、米国が中東地域だけでなく、実際には全世界を支配しようとしている地政学的・経済的理由を説明します。

この分析において、私は経済学者マイケル・ハドソンがご一緒していただける光栄に浴しました。後で彼にこのトピックに関する詳細を提供していただく予定ですが、最初にこの関係を理解するための非常に重要な基本的な内容を強調したいと思います。

イスラエルが、世界で最も重要な地域のひとつにおける米国の地政学的力の延長であることを強調することは極めて重要です。

実際、ジョー・バイデン現米大統領が上院議員だった1986年当時、「イスラエルが存在しないなら、米国がそれを発明するしかない」と発言したのは有名な話です:

映像はバイデン:
中東に目を向ければ、イスラエルを支持する(私たちの大半は支持しています)ことを謝罪するのはそろそろやめるべきだと思うのです。

謝ることはありません。謝罪する必要はありません。イスラエルは30億ドルの投資としては最高のものです。

もしイスラエルが存在しなければ、アメリカ合衆国は中東地域における自らの利益を保護するために、イスラエルを発明しなければならないでしょう。アメリカは出向いてイスラエルを発明する必要があるでしょう。

外交委員会の会議場にいる同僚たち共々私たちは、NATOについて、結局は、心配しています。NATOの東側の防衛線、ギリシャとトルコについて心配しているのです。これは非常に重要な問題です。他の問題はこれと比べると見劣りし・・・

それらはアメリカ合衆国に生じる利益の点で比較すると比較になりません。

BN: もちろん、いわゆる中東、より適切な表現として西アジアは、世界でも最大級の石油およびガス埋蔵地を有しており、世界中の経済インフラは化石燃料に依存しています。

我々は徐々に新しいエネルギー源へと移行しつつありますが、化石燃料は依然として世界経済全体にとって絶対不可欠です。そしてワシントンの目標は、世界の石油・ガス市場で安定した価格を維持できるようにすることなのです。

しかし、これは石油やガスよりもはるかに大きな問題です。冷戦の終結とソ連邦の打倒以来、1990年代以降の米軍の方針として、米国は世界のあらゆる地域を支配下に置こうとしてきました。

このことは、1992年にアメリカの国家安全保障会議がいわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンではっきりと述べています。アメリカ国家安全保障会議はこう書いています:

[米国の]目標は、いかなる敵対勢力も、わが国の利益にとって重要な地域を支配することを阻止することであり、またそれによって、米国とその同盟国の利益に対する世界的脅威の再来に対する障壁を強化することである。こうした地域には、ヨーロッパ、東アジア、中東・ペルシャ湾、ラテンアメリカが含まれる。このような重要な地域の資源を、非民主的な勢力が統合的に支配することは、わが国の安全保障に重大な脅威をもたらす可能性がある。

そして2004年、アメリカ政府は国家軍事戦略を発表し、その中でワシントンはその目標を「全領域支配(軍事作戦の範囲にわたって、あらゆる状況を制御し、あらゆる敵を打ち負かす能力)」であると強調しました。

さて、歴史的に中東に関しては、アメリカはいわゆる「2つの柱」戦略に頼っていました。西の柱はサウジアラビアで、東の柱はイランです。1979年のイラン革命まで、イランは独裁者である国王によって統治されていました。彼は米国の支援を受け、この地域における米国の利益に貢献していたのです。

しかし、1979年の革命によって、アメリカは二本柱の戦略の柱のひとつを失い、イスラエルはアメリカにとって、この極めて戦略的な地域の支配を維持するためにますます重要になってきました。

この地域には膨大な埋蔵量の石油とガスがあるというだけではありません。世界有数の石油・ガス産出国の多くが西アジアにあるという事実だけではなく、地球上で最も重要な交易ルートのいくつかがこの地域を通過しているという事実もあるのです。

エジプトのスエズ運河がいかに重要であるかを誇張することは難しいでしょう。この運河は、中東からヨーロッパへ、紅海から地中海へと向かう貿易を結びつけ、世界の輸送コンテナの約30%がスエズ運河を通過します。これは世界の全物品貿易の約12%に相当します。

そしてスエズ運河の真南、紅海がアラビア海に入るところに、イエメン沖のバブ・エル・マンデブ海峡という地政学的に重要な狭窄点があります。そこでは、毎日600万バレル以上の石油が通過しています。

歴史的に見て、アメリカはエネルギー供給だけでなく、グローバル化した新自由主義経済システム全体が構築している世界貿易ルートを確保するために、この地域を支配しようとしてきました。

そして、多極化が進む世界の中で、この地域におけるアメリカの影響力が弱まるにつれ、支配力を維持しようとするアメリカにとってイスラエルの重要性が増しています。

このことは、OPEC(石油輸出国機構)を通じた原油価格をめぐる議論にはっきりと表れています。OPECは実質的に拡大され、現在はロシアを含むOPEC+として知られています。

今やサウジアラビアとワシントンの宿敵ロシアは、世界の原油価格を決定する重要な役目を担っています。

歴史的に、サウジアラビアはアメリカの忠実な代理人でしたが、リヤド(サウジアラビア政府)はより非同盟的な外交政策を維持するようになっています。その大きな理由は、中国がこの地域の多くの国にとって最大の貿易相手国となっていることです。この10年間、中国はペルシャ湾からの石油とガスの最大の輸入国です。

さらに、中国は世界的な基盤整備プロジェクトである「一帯一路構想」を通じて、世界貿易の中心をアジアに戻そうとしています。そして「一帯一路構想」において、特に「道」とは新シルクロードを指しています。

新シルクロードと一帯一路構想において、どの地域が絶対的に重要かおわかりになるでしょうか? もちろん、中東です。あるいは、繰り返しになりますが、「西アジア」という用語の方がいいのです。アジアとヨーロッパを結ぶこの地域の地政学的重要性をよりよく説明するからです。

これはまた、アメリカが新たな貿易ルートを構築しようとする独自の試みで「一帯一路」に挑もうと必死になっている理由も説明できます。特に、アメリカはインドからペルシャ湾に入り、イスラエルを経由する貿易ルートを作ろうとしています。

つまり、これらすべてのプロジェクトにおいて、イスラエルは世界で最も重要な地域のひとつにおけるアメリカの帝国権力の延長として、重要な役割を果たしています。だからこそバイデンは1986年当時、イスラエルが存在しなければ、アメリカが「イスラエル」を発明しなければならないと言ったのです。

2022年10月27日、バイデンがホワイトハウスでイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領と会談した際、この言葉を繰り返したのもそのためです:

また、私たちは、私たちの原則、私たちの考え、私たちの価値観に基づいて、アメリカがイスラエルに対して持っている鉄壁の約束(私はこれを在職中に5000回言うことになるでしょう)についても議論します。(イスラエルとアメリカは)価値観としては同じものを持っています。

そして、私はしばしば言ってきました、ヘルツォグ大統領閣下、もしイスラエルが存在しなければ、私たちは「イスラエル」を発明しなければなりません。

そしてつい最近の2023年10月18日にも、バイデンはイスラエルで行なった演説で再び同じことを繰り返しました: 「イスラエルが存在しなければ、我々はそれを発明しなければなりません」。

2023年の演説でバイデンは、ガザで残忍な爆撃作戦を実施し、世界中の多くの専門家が「ジェノサイドの教科書的事例」と呼ぶパレスチナ人の民族浄化を行なっているイスラエルを支援するために、イスラエルを訪問しました。

国連トップの専門家が、パレスチナ人はイスラエルによる大量虐殺の危機にさらされていると警告しました。

アメリカは揺らぐことなくイスラエルを支持してきました。なぜなら、ジョー・バイデンが言ったように、イスラエルはアメリカの西アジアにおける帝国的な力の延長であり、もし存在しなければ、ワシントンが「イスラエル」を発明しなければならないからです。

それでは、この話題について、番組の友人であるマイケル・ハドソンとのインタビューに移ります。彼は優れた経済学者であり、『超帝国主義国家アメリカの内幕』など多くの著書があります。

まずはインタビューをいくつか抜き出します。

マイケル・ハドソン(以下MH):イスラエルは中近東の陸上に配備された空母です。イスラエルは、アメリカが中近東を支配するための離陸地点なのです・・・

アメリカは常にイスラエルを単なる外国の軍事基地と見なしてきました・・・イギリスが最初にイスラエルを設立すべきだと宣言したバルフォア宣言は、英国が中近東とその石油供給を支配したいと考えたためです・・・

そしてその後、もちろんトルーマンが登場すると、軍部はすぐにアメリカがイギリスに代わって中近東の最高責任者になることを察知した・・・

ウクライナ人最後の一人までロシアと戦い、イスラエル人最後の一人までイランと戦うと脅してきたアメリカが、台湾に武器を送り、台湾人最後の一人まで中国と戦いませんか、と言おうとしているのです。

そしてそれが、世界中でのアメリカの戦略なのです。自国の支配のために他国を煽って戦争をさせようとしているのです。

BN:マイケル、今日はありがとう。私たちは11月9日の話をしていますが、ガザでの戦争における最新の死者数は、イスラエルが1万人以上のパレスチナ人を殺害しています。

国連はガザを「子どもたちの墓場」と呼びました。4,000人以上の子どもたちが殺されています。犠牲者の約40%が子どもたちです。

そしてアメリカは、外交的、政治的にイスラエルを支援し続けてきました。例えば、国連安全保障理事会で停戦を求める決議に拒否権を行使するだけでなく、さらにアメリカはイスラエルに何十億ドルもの資金を送り続けています。

アメリカがイスラエルに毎年必ず供与している38億ドルの軍事援助だけでなく、それに加えて数百億ドルの援助もします。

イスラエルが明らかに戦争犯罪を犯しているにもかかわらず、なぜアメリカはイスラエルを支援として多くの資源を投入しているのか、あなたの分析を聞かせていただけませんか。

MH:まあ、確かにイスラエルを支援していますが、これは利他的な行為としてイスラエルを支援しているわけではありません。

アメリカにとって、イスラエルは中近東における陸上に配備された空母です。イスラエルは、アメリカが中近東を支配するための離陸地点なのです。

イスラエルを作ろうという話が持ち上がったときから、イスラエルは常に、最初はイギリス、次にロシア、そしてアメリカの中近東における前哨基地となるものでした。

ある逸話を紹介しましょう。ネタニヤフ首相のここ数年の主要な国家安全保障顧問はウジ・アラッドでした。私は1972年から76年までの約5年間、ハドソン研究所で働いていました。そこでウジと非常に緊密に仕事をしていたのです。

ウジと私は、国際金融について話すために韓国と日本を2度訪れました。だからお互いを知るいい機会となりました。ある旅では、ニューヨークからサンフランシスコに立ち寄りました。サンフランシスコでは、私たちのためのパーティーや集まりがありました。

アメリカの将軍の一人が寄ってきて、ウジの背中を叩いて、「君の国イスラエルはあそこでの我々の陸に配備された空母だ。君の国が大好きだよ」と言ったのです。

まあ、ウジが感じていることはわかりました。体は緊張し、戸惑いの気持ちから、何も言えなくなったのです。つまりアメリカは常にイスラエルをイスラエルではなく、単なる外国の軍事拠点としか見ていないということです。

だから、もちろんアメリカはこの軍事基地を守りたいと思っています。

しかし、イギリスが最初にイスラエルにバルフォア宣言があるべきだという法律を可決したのは、イギリスが中近東とその石油供給を支配したかったからです。

イスラエルが国際連合加入した際、最初にそれを承認した国はスターリンとロシアでした。ロシアがイスラエルに対して重要な影響を持つことになると考えていたのです。

もちろん、その後、トルーマンが就任すると、軍はすぐにアメリカがイギリスに代わる中近東における主要な国として存在すると認識しました。これは、1953年にイランでモサッデグ政権が転覆された後でもそうでした。

アメリカから見れば、イスラエルがアメリカにこびを売っているわけではありません。逆になります。あなたはアメリカがイスラエルを支援していると述べましたが、私は全くそのようには思いません。大半のイスラエル人や大半の民主党支持者もそうは思っていません。

アメリカはネタニヤフ首相を支持しているのです。イスラエルではなくリクードを支持しているのです。イスラエル人の大多数は、イスラエル建国以来の中核にある非宗教的イスラエル人は、リクードとその政策に反対しています。

つまり、アメリカにとってネタニヤフ首相は、ウクライナにおけるゼレンスキーのイスラエル版なのです。

そして、ネタニヤフ首相のような不愉快で、日和見主義者で、賄賂と汚職で起訴されている人物がいることの利点は、ガザで起きている攻撃に驚愕している全世界の注目が、アメリカを非難しないことです。

彼らはイスラエルを非難しています。ネタニヤフ首相やイスラエルを非難していますが、爆弾や銃を次から次へと飛行機で送り込んでいるのはアメリカです。アメリカでは販売が禁止されている22,000丁の機関銃や自動小銃が、ヨルダン川西岸で入植者が使うためにアメリカから送られているのです。

だから、良い警官、悪い警官のふりの使い分けがあります。ブリンケン氏はネタニヤフに、病院を爆撃するときは、必ず戦争のルールに従って行うようにと言っています。ガザの子ども10万人を殺すときは、それがすべて合法で戦争中であることを確認してください、そして、民族浄化と人口追放について話すときは、すべてが合法的に行われていることを確認してください、と言っているのです。

まあ、もちろん、これは戦争の規則などではなく、戦争犯罪が現に進行中です。表向きアメリカはネタニヤフとイスラエル政府に対して、より小さな爆弾を使えか、病院で子供たちを爆撃する際にはもっと優しくしろと言います。実際にはこれはすべて見せかけです。

アメリカは、「我々は同盟国を援助するためにそこにいるだけだ」と主張しています。世界中が気づいていますが、アメリカは今、地中海の中近東岸のすぐそばに2隻の空母を有し、ペルシャ湾近くには原子力潜水艦を配置しています。

バイデン大統領と議会は、アメリカ軍がガザでハマスと戦うことはないと言っています。関与しない、と。では、軍が関与しないなら、なぜ空母と潜水艦はそこにいるのでしょうか?

アメリカの飛行機が何をしているかはわかっています。昨日、その飛行機でシリアのさらにもう一つの空港と燃料基地を空爆しました。シリアを空爆しています。イスラエルを守るためではなく、イランと戦うためであることは明らかです。

何度も何度も、アメリカのどの新聞も、ハマスについて語るとき、ハマスはイランのために行動していると言います。ヒズボラの話をすると、レバノンから北イスラエルへの介入があるのか、ヒズボラはイランの操り人形だと言います。

彼らが中近東の指導者について話すときはいつも、これらの指導者はすべてイランの操り人形であり、ウクライナや中欧と同じように、ハンガリーや他の国はすべてロシアのプーチンの操り人形であると話しています。

彼らの焦点は実際には――アメリカはウクライナを守るために戦っているのではありません。彼らは、ロシアの軍事力を消耗させることを期待して、最後のウクライナ人が疲弊するまで戦っています。しかし、それはうまくいっていません。

まさに同じことがイスラエルでも起きています。もしアメリカがイスラエルとネタニヤフに対してエスカレートしろ、エスカレートしろ、エスカレートしろと圧力をかけて、ナスララ*が「もう我慢できない」と言わせようとするなら、彼らは言うだろう。「我々は介入して、ガザの人々や西岸の救出を手助けする。そこでは特に戦闘が激しいからだ。だから我々は介入する。」と。
*ナスララ・・・ハサン・ナスララは、レバノンのシーア派イスラム主義組織、ヒズボラの第3代現書記長であり、レバノン南部に多いシーア派信徒らの指導者的存在。(ウィキペディア)

そうなれば、その時にはアメリカは、レバノンだけでなく、シリア、イラクを経てイランにまで進軍する自由を感じるでしょう。

今日、ガザやヨルダン川西岸でわれわれが目にしているのは、ネオコンが「イランを征服するのに今以上のチャンスはない」と言っていることのきっかけ、引き金にすぎません。

ここが対決点です。もし、アメリカが中近東の石油を支配し、中近東の石油を支配することで、それをアメリカの支配下に置ければ、世界の大部分のエネルギー輸入を支配することができるのです。

したがって、これによりアメリカの外交官には、石油やガスの供給を中断し、米国の単極的な支配に抵抗しようとする国、多極化しようとする国に対して制裁を課す権限が与えられます。

BN:ええ、マイケル、あなたは本当に重要なポイントを指摘していると思います。それは、ここが世界で最も地政学的な地域の一つであることです。特に炭化水素に関しては。

世界経済全体は依然として石油とガスに大きく依存しており、特にアメリカがOPECに加盟していないこと、そしてOPECが実質的にOPEC+に拡大し、現在ではロシアも加盟していることを考えると、なおさらです。

これは、サウジアラビアとロシアが実質的には世界の石油価格をコントロールする手助けをすることができる、ということを意味しています。実際、過去数年間には、アメリカで消費者物価の上昇という形でこれが実証されています。

バイデン政権は、特に中間選挙に向けてガソリン価格を懸念していることがわかりました。そして、バイデン政権は、米国の戦略石油備蓄から多くの石油を放出しています。

そして、特にブッシュ政権に戻って見てみると、次のような発言がありました。ブッシュ政権やいわゆる「対テロ戦争」の関係者の中には、米国がこの地域を支配することがいかに重要であるかを公然と語った人が数多くいます。

2007年に米軍の最高司令官でNATOのウェズリー・クラーク司令官が、ブッシュ政権が5年間で7カ国を転覆させる計画を立てていたことを明らかにしたことは有名です。北アフリカと西アジアの国々です。

彼は具体的に、ジャーナリストのエイミー・グッドマンとのDemocracy Nowでのインタビューで、ワシントンの計画はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最終的にイランの政府を転覆させることであると明かしました。

ウェズリー・クラーク(以下WC):9/11から約10日後、私はペンタゴンを通り、ラムズフェルド国防長官とウォルフォウィッツ副国防長官を見かけました。私はただ、以前私の部下であった合同参謀本部のスタッフの中に挨拶しに行くために階下に降りました。

そして、ある将軍が私に声をかけ、「お願いです、ちょっとだけお話しさせてください」と言いました。

「君は忙しすぎるだろう」と私は言いました。彼曰く、「いいえ、そんなことはありません。私たちは決定をしました。イラクとの戦争です」と彼は言うのです。

これは9月20日か、その辺のことでした。私は「イラクとの戦争だって。理由は?」と言いました。彼は「わかりません。上層部は他の選択肢はないと考えていると思うのです」と言いました。

そこで私は言いました。「それじゃ、上はサダムとアルカイーダを繋ぐ情報を何か得たということか?」と私は言いました。「いいえ。その線での新しい情報は何もありません。上層部はイラクとの戦争をただ決定しただけです」と彼は答えました。

彼曰く、「テロリストについて私たち軍部は何もわかっていないと思います。ですが、装備は十分で政府を崩壊させることはできます」。

そして彼は言うのです、「もし私たちの手にしている道具がハンマーだけなら、すべての問題は釘みたいなものになります」と。

そこで数週間後私は彼に会いに戻りました。そしてそのころにはアフガニスタンの爆撃は行なわれていました。

私は言いました、「さらにイラクとの戦争になるのかね?」そして彼は言いました「ええ、もっとひどいことになります」と。

彼はそう言って、デスクの上に手を伸ばし、一枚の紙を拾い上げました。「これはさっき上から(今日は国防長官の事務所ということになります)もらったものです」。それから彼は言いました「これはイラクから始まり、次にシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランまで、5年で7つの国を攻撃する計画を示したメモです」と。

「これは極秘文書かね?」と私は言いました。「はい、そうです」と彼は言いました。「だったら私に見せてはいけない」。

そして1年後かそこいらに彼と会いました。「例のもの、覚えているかね?」と私は言いました。「申し訳ありません。あのメモを私はあなたにお見せしていません!お見せしてはいないのです!」と彼は言いました。

エイミー・グッドマン(以下AG):すみません。彼の名前を何と言いましたか?(笑)

WC:彼の名前はお教えしませんよ。(笑)

AG:それでは国の名前をもう一度お願いします。

WC:イラクから始まり、次にシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランです。

BN:それ以降、もちろんイラクとの戦争がありました。シリアにおける代理戦争が、もちろんあり、それはいろいろな面で今でも続いています。アメリカはシリア国土の三分の一(石油の豊富な地域を含む)を占領しています。

そしてドナルド・トランプ大統領は、2020年のFOXニュースのホストであるローラ・イングラハムとのインタビューで、石油を奪うために米軍を残すつもりだ、と自慢げに語っていました。

ドナルド・トランプ(以下DT):そして彼らは言っています。「かれはシリアに軍隊を残した」と。私が何をしたかわかりますか? 私は石油を奪うために軍隊を残したのです。私配下の軍だけが石油を奪っています。彼らは現地の石油を守っているのです

ローラ・イングラハム(以下LI):私たちは石油を奪っているわけではありませんよ。奪っているわけではありません。

DT:まあ、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

LI:軍は施設を守っているのです。

DT:わからないが、石油を奪うことになるだろうな。現に、我々は今現在その石油を手にしているのだ。

だからみんな言っている、「トランプはシリアに軍隊を残した」と。いや、私は、軍隊は全部引き上げるよ。ただし石油を守る軍隊は別だ。その石油は我々のものなのだから。

BN:アメリカはレバノンに制裁を課すこともあり、これがレバノン経済のハイパーインフレーションと崩壊につながりました。その主な理由は、ヒズボラが政府の一部であるためであり、アメリカはレバノン政府に対してヒズボラを排除した新しい政府を作るよう圧力をかけていました。

もちろん、NATOが2011年にリビア国家を破壊したことも見てきました。ソマリアもまた破綻国家です。そして、スーダンが大きく分断されたのは、米国とイスラエルが、宗教的セクト主義を利用して、民族と宗教の境界線上で南スーダンの分離運動を支援したことが少なからず影響しています。

2006年にウェズリー・クラークが挙げた国のリストを見ると、彼が言及した7つの国は、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、最終的にイランでした。アメリカによって完全には破壊されていない、国家としての安泰を維持できている唯一の国は、イランです。

もちろん、5年以上かかりましたが、アメリカはかなり成功しました。そしてもちろん、イスラエルは、この地域の政府を不安定化させるという米国の目標において重要な役割を果たしてきました。

MH:では、これがどのように行われたかを見てみましょう。9/11にアメリカが攻撃された後、ホワイトハウスで会議がありましたが、パイロットがサウジアラビア人であることは誰もが知っていました。パイロットの何人かは、アメリカのロサンゼルスにあるサウジアラビア大使館に滞在していたと思います。

しかし、9/11の後、閣僚会議が開かれ、ラムズフェルドはそこにいる人々に対して、「どんなにわずかな関連性でも、サウジアラビアを忘れてイラクに結びつけろ。問題ない、イラクが鍵だ」と言いました。そして、彼はそれを見つけるように指示し、9/11はサウジアラビアではなくイラクを攻撃する口実となり、その線で事態は進行しました。

リビアでは、おそらく首都ではなく郊外の都市のひとつにいる原理主義者が問題を引き起こしていると言われていました。そして、無実の人々を[ムアンマル・カダフィ]から守る必要があり、そのためにリビア国内に入り、すべての正貨(金)準備、彼らのお金を押収し、フランスの石油独占権に代わって石油を掌握することになります。

さて、こんな風に今日のガザでの戦闘が行なわれています。ネタニヤフのガザとの戦いは、アメリカがそこに軍艦を移動させ、潜水艦を移動させ、イスラエルとともにシリアの空港を爆撃し、シリア人が武器やいかなる種類の軍事支援も西のレバノンや東のイランに移動できないようにするための口実として利用されています。

これまでの情報から明らかですが、今見ているすべての情報は、まるで私たちはかつての9/11のためにイラクに侵攻しなければならなかったように、今度はついにイランの石油精製所や科学研究所、原子力研究を行っている可能性のあるどんな実験室も攻撃して取り除かなければならないという事実に対して、一般の意見を柔らかくするためのようです。

イランはこれに気づいています。先週、イランのプレスTVは、イランに対する攻撃があれば、それがイスラエルによるものであろうと、あるいは他の誰かによるものであろうと、アメリカとその外国の基地が激しく攻撃されるだろうと、彼らの国防大臣が述べたと報じました。

イラン、ロシア、中国は、ガザの状況をイスラエルの行動としてではなく、アメリカの行動と見ています。この三国はすべて、それがすべてイランに関係していると正確に見ています。アメリカの報道では、ガザやハマス、ヒズボラなどのグループについて話すとき、常にイランの道具等々としか言いません。

イランに対して行われているのは、ネオコンがロシアを悪魔化してアメリカが宣戦布告なしの宣戦布告の準備をしてきたのと同じ手法です。そして、彼らは実際に戦争を宣言する可能性さえあります。

昨夜、11月8日に、共和党はトランプを除いて大統領候補討論会を行いました。ニッキ・ヘイリーは、「イランと戦わなければならない、征服しなければならない」と述べ、フロリダ州知事のデサンティスは、「そうだ、彼らを全て殺せ」と言いました。彼は具体的な対象を言及しませんでした。それがハマスなのか、ガザに住む全ての人なのか、中東のアラブ全てなのかは不明です。

そして、私たちは本当に十字軍のようなものをここで見ています。誰がエネルギーをコントロールするのかは本当の戦いです。なぜなら、繰り返しになりますが、これが鍵です。世界のエネルギーの流れをコントロールすることができれば、昨年アメリカがドイツにノルドストリームのパイプラインを爆破したことを全世界に行なうことができるからです。

もしその国々がアメリカの一極支配に同意しないならば、アメリカはその国の化学産業、製鉄産業、つまりどんなエネルギー集約型産業でも停滞させることができます。そのためアメリカはこれらの地域を支配しようとしているのです。

まあ、ここのワイルドカードはサウジアラビアですね。2日後にイランの大統領がサウジアラビアを訪れる予定で、今後何が起こるかを見守ることになります。

サウジアラビアは、その役割が重要である一方で、サウジアラビアは単に「私たちは中東からアメリカが撤退するまでもう石油を輸出しない」ときっぱり言うことはできるでしょう。しかし、そうは言っても、サウジアラビアのほぼすべての財政的な蓄えはアメリカに投資されているのです。

米国は、石油、ガス、エネルギーを支配するだけでなく、金融を支配することによって、世界を人質にしています。マフィアの銀行やBankman-Fried*の仮想通貨投資信託にお金を預けているようなものです。彼らはそれを使って何でもすることができます。
*Bankman-Fried・・・サム・バンクマン=フリードはアメリカ合衆国の起業家、投資家、そして元ビリオネアである。SBFというイニシャルでも知られる。バンクマン=フリードは、暗号通貨取引所FTXと暗号通貨取引会社アラメダ・リサーチの創設者兼CEOであった。(ウィキペディア)

だから、何が起こるかというと、アメリカがサウジアラビアを人質にすることになるので、サウジアラビアが表向きアメリカと決別する可能性は非常に低いと思います。

でも、私が考えるに、サウジアラビアがすることは、1960年代以来、イランで同様の問題が発生して以来、ずっと話されてきたことでしょう。そして、イランの切り札は、いつでもホルムズ海峡で船を沈めることができるということです。そこは非常に狭い海峡で、そこでタンカーまたは軍艦を沈めれば、サウジアラビアとのすべての海上貿易が遮断されることになります。

もちろん、それによって、まず、サウジアラビアは次のように言って肩の荷を下ろすでしょう。「どうしようもないのです。もちろん、私たちは石油を輸出したいですが、アメリカがイランを攻撃したから、イランは自衛のために船を沈めたのです。航路はすべて封鎖されています。だから、アメリカはイランを攻撃するために航空母艦や潜水艦を送ることができません」。十中八九はこんな流れになるでしょう。

しかしアメリカは世界危機の原因となっています。

まあ、明らかに、米国はそれが起こることを知っています。なぜなら、それは文字通り50年間議論されてきたからです。私はハドソン研究所で国家安全保障の仕事をして以来、イランがホルムズ海峡で船を沈めたときにどうするかが議論されていました。

アメリカは、まあ、石油価格は上がるだろうと考えています。そして、イランがこの方法で反撃すれば、我々は2022年にドイツに対して行なった(ノルドストリームのパイプライン爆破)ように世界に対して同様の行動を取る力を持つことになります。ただし、この場合、アメリカは責任を負うことはしません。

サウジとアラブの石油取引を遮断したのは、私たちではなくイランだとアメリカは言うでしょう。だから、イランを爆撃するのです、と。それができると前提しています。

それは緊急時対応策だと思います。アメリカはまさにそのような危機管理計画を持っていて、9/11のような機会を待っていたように、彼らはきっかけを必要としていて、ネタニヤフはそのきっかけを提供しました。だからこそ、アメリカはネタニヤフを支持しているのです。

もちろん、イランは「我々にはイスラエルを完全に消滅させる能力がある」と言っています。そして、議会では、ミリー将軍や他の関係者たちが皆、「イランがイスラエルを消滅させる可能性があることを我々は知っている。だからこそ、イランを攻撃しなければならない」と述べています。

イランを攻撃すれば、そのミサイルがイスラエルに向けられ、再びイスラエルがウクライナ中東版になる可能性があります。こんな計画だろうと私は考えています。多くのイスラエル人たちはこれを認識し、心配しており、ネタニヤフを批判し、イスラエルが抵抗できない一連の軍事的な交戦を引き起こさないようにしようとしています。

そして、イランに対しては、おそらくいくつかの場所を爆撃できるでしょうが、今ではロシア、中国がすべて上海協力機構を通じてイランを支持しているので、線引きが非常に明確になっています。

このシナリオは不可避のようですね。ミアシャイマー*(Mearsheimer)は指摘しましたが、イスラエルとパレスチナの間に交渉による解決策や合意を持つことは不可能です。彼は、パレスチナ国がアメリカのインディアン居留地のように、あらゆる方面から切り離され孤立したものになるため、二国家解決は実現不可能だと述べています。
*ミアシャイマー・・・ジョン・ジョゼフ・ミアシャイマーは、アメリカの国際政治学者、空軍軍人。シカゴ大学教授。国家が他国に対してパワーの拡大を試みる行為主体だと想定して安全保障を研究する攻撃的現実主義の代表的論者。(ウィキペディア)

そして、単一の国を持つことはできません。単一の国は神権政治の国のようなものです。繰り返しになりますが、それは19世紀のアメリカの西部での状況のようです。

そして、これを大局的視点で捉えるための方法は、今日私たちが世界を分裂させようとしているものは、言い換えれば、まさに12世紀と13世紀の十字軍と同様であることを認識することです。

BN:ええ、マイケル、あなたはとても重要なポイントをたくさん挙げていますね。そして、あなたが十字軍と歴史的な類似性についてさらに話したいのは知っています。そして、あなたはアメリカ帝国が新しい十字軍として立っていることについて、本当に良い指摘をしたと思います。

より現代的な政治議論から離れる前に、私はあなたが強調した非常に重要な2つの点に焦点を当てたいと思いました。

ひとつは中東の炭化水素埋蔵量のことがあります。これは世界経済にとっても、米国が石油およびガス供給、特にエネルギー価格の制御を試みる上でとても重要です。

2024年には選挙が控えており、アメリカはガソリン価格とインフレを心配しています。もちろん、エネルギー価格はインフレの重要な要因の一つです。

しかしさらに、この地域は貿易ルートがあるため戦略的でもあります。世界経済フォーラムのデータによれば、世界の輸送コンテナ量の30%がスエズ運河を通過し、世界貿易の12%がスエズ運河を通過する商品で占められています。

そしてこれは2021年に大きなメディアのスキャンダルがあった時にも起きました。アメリカの船がスエズ運河で立ち往生した時のことです。そして、これはもちろん、世界がパンデミックから抜け出しつつあり、サプライチェーン・ショックがあった時期にも起こりました。

私たちは、世界経済がグローバルなサプライチェーンの小さな問題に対してどれほど敏感であるかを見ることができます。そして、船舶の航路について話すとき、私たちはスエズ運河だけでなく、南方の紅海にも言及しています。

バブ・アルマンダブもありますね。これはイエメン沖の非常に重要な海峡です。2014年と2015年に始まったイエメン戦争では、この戦争における米国の反撃の多くは南部のバブ・アルマンダブ沖で行われました。なぜなら、この海峡は毎日何百万バレルもの石油が通る重要な海峡だからです。

そして、これはまた、マイケル、あなたが歴史的背景について話していたことを思い出させてくれました。1956年にはイスラエルがエジプトに侵攻しました。そして、それはなぜだったのでしょうか? イスラエルがエジプトに侵攻したのは、エジプトの左派大統領ナセルがスエズ運河を国有化したからです。

その時、非常に興味深かったのは、イギリスとフランスがエジプトに対するこの戦争でイスラエルを強く支持していたことでした。なぜなら、彼らはナセルによるスエズ運河の国有化に懸念を抱いていたからです。その当時、アメリカはさほどイスラエルに強く賛成していたわけではありません。

もちろん、1967年の六日戦争では、イスラエルは隣接するアラブ諸国に攻撃を仕掛け、エジプトの一部であるシナイ半島を占領し、その後、ガザ地区も占領しました。イスラエルはシリアのゴラン高原も占領し、それは今もなお違法に占拠されたシリア領土です。そして、イスラエルは西岸も占領しました。今日、我々が「西岸地区」と呼んでいる地域です。

しかし、1967年の戦争の後、イスラエルはますますアメリカの同盟国となりました。

イスラエルの指導者の第一世代の多くはヨーロッパ人でしたが、イスラエルの次世代は本当のアメリカ人でした。

つまり、ネタニヤフのような人物はアメリカ人であるということです。彼はアメリカで育ちました。彼はフィラデルフィアで高校に通い、ちなみにレジー・ジャクソン*と一緒に高校に通っていました。彼の最大の人格形成期はアメリカで過ごしました。彼はMITで大学に通いました。
*レジー・ジャクソン・・・レジナルド・ション・ジャクソンは、アメリカ合衆国のプロバスケットボール選手。イタリアのポルデノーネ出身。NBAのデンバー・ナゲッツに所属している。ポジションはポイントカード。( ウィキペディア)

その後、彼はボストンで働き、ミット・ロムニーやドナルド・トランプのような多くの共和党員と友達になりました。そして、彼がイスラエルに戻った際、彼は外交官としてアメリカ合衆国へ派遣されました。

ですから新しい世代のイスラエル指導層は以前の世代に比べはるかにアメリカ的なのです。本質的にそうです。

イランに関して言及されたもう一つの重要な詳細は、1979年のイラン革命まで、つまりシャー時代のアメリカ支援の君主制のイランがその地域で非常に重要な同盟国であったことです。

実際、サウジアラビアとイランは「2つの柱」と呼ばれたことは有名です。サウジアラビアが西の柱であり、イランが東の柱でした。かつて、アメリカはこの地域を支配しようとし、もちろんイスラエルの支援も受けていました。

さて、1979年のイラン革命で、米国はその重要な東の柱を失いました。これは、米国帝国主義の観点から、イスラエルがこの地域の支配を維持するためにさらに重要になったことを意味します。

ここで、バブ・アルマンダブ海峡やスエズ運河のような交易路戦略的な重要性について詳しく触れてみたいと思いました。また、イラン革命がアメリカの政策に根本的な変化をもたらし、アメリカ帝国主義の観点からイスラエルをますます重要にした事実もあります。

今、アメリカは、あなたがおっしゃったように、サウジアラビアでも制御を失いつつあります。したがって、ワシントンがイスラエルを支持し続けるのは、アメリカが2つの柱を失いつつあるためです。この状況においてアメリカはなりふり構わずイスラエルを支えようとしています。イスラエルが現在実施している入植植民地主義的政策や民族浄化政策(世界中がその様子を注視している)に中東全体が反対しているという事実などどこ吹く風です。

MH:アメリカの外交官にとって、いわゆる「イスラエルへの支援」と呼ぶものは実際には「アメリカが中近東の他の地域を軍事的に制御できるよう支援する」ということです。

全ては石油のことです。アメリカがイスラエルにこれほどのお金を与えるのは、単にイスラエルを愛しているからではなく、イスラエルはアメリカがシリア、イラク、イラン、およびレバノンを攻撃するための軍事基地だからです。つまり、それは軍事基地なのです。

そしてもちろん、親イスラエル、親ユダヤの政策という観点からこれを組み立てることができますが、これは国務省の広報のためのものにすぎません。

アメリカの戦略が中近東のエネルギーに基礎を置くなら、イスラエルは単なる手段であり、目的ではありません。それは単なる手段であるため、アメリカは攻撃的なイスラエル政府を必要としました。

ネタニヤフは、ある意味でアメリカの操り人形と見なすことができます。ゼレンスキーもまったく同様です。彼らの立場は、アメリカに依存することで自国の大多数の国民に対抗しようとするのです。

あなたはアメリカのイスラエル支援についてずっと話しています。しかし、アメリカはイスラエルへの支援などまったくしていません。アメリカはイスラエル軍を支援しているのであって、イスラエルの社会や文化を支援しているわけではありません。ユダヤ教とは無関係です。これは純粋な軍事政治であり、軍や国家安全保障関係者たちの間でそういった話が常にされてきたのを私は耳にしています。

だから、カバーストーリーに惑わされないように注意が必要です。

もう一つの制御手段を申し上げたいと思います。それは、過去1か月ほどでアメリカからのさまざまな発言があり、ロシアがウクライナを征服し支配を確立すると、アメリカは即座にロシアに対して戦争犯罪、人道に対する罪状を追及するだろう、というものです。

アメリカは歪んだ裁判制度を利用しようとしています。国際刑事裁判所は国務省のペンタゴンの支部で、いわゆるカンガルー法廷(いかさま法廷)です。要は、カンガルー法廷を尊重する人々のどこに行ってもプーチンは逮捕されると宣言したように、カンガルー法廷は何らかの形でアメリカにプーチンに不利な判決を与えることができ、他の場所ではロシアの財産に対するあらゆる種類の制裁を与えることができるということです。

彼らは、ロシアに対する戦争犯罪の主張をいったいどのように正当化するつもりなのでしょうか? 今現在イスラエルとガザの間で起こっている出来事を見ても、そして実際、ガザに対して使用されている兵器や爆弾はアメリカのものです。アメリカが火に油を注ぐようなことをしているのです。

アメリカは、自らがロシアを非難しようとしていることを基準にして、なぜ自国を戦争犯罪で告発できないのだろうか? アメリカが実際イランを爆撃できるかどうかに関わらず、世界が分裂する一環として、並行裁判所の設立と、アメリカだけでなくヨーロッパが孤立する状況が見られるでしょう。

基本的に、現在は世界を支配するための争いがあり、だからこそ私は十字軍に言及しました。

私は金融政策の進化に関する歴史を書いています。すでに2巻完成しており、1巻は青銅器時代の近東に焦点を当て、『…そして彼らの債務を許し、(…and forgive them their debts)』と題されています。もう1巻は古代の崩壊に焦点を当て、『古代の崩壊(The Collapse of Antiquity)』と題されています。現在、第3巻に取り組んでおり、これは十字軍から第一次世界大戦までを扱っています。

経済力がほとんどなかったローマが、キリスト教の5つの司教区をすべて乗っ取ろうとしたのです。コンスタンティノープルは本当に新しいローマでした。それがキリスト教正統派の最高権威となりました。

コンスタンティノープルの皇帝は、キリスト教世界全体の皇帝でした。アンティオキア、アレクサンドリア、そして最後にエルサレムがその後に続きました。

「第一回十字軍」は実際には11世紀に始まりました。彼らが中近東を攻撃する以前のことでした。最終的にローマはフランスの一部を手中に収め、イタリアに進出していたノルマン軍によって攻撃されました。

ローマ教皇はノルマン戦争の軍団と取引をし、こう言った。「私たちはあなたに統治の神聖な権利を与え、あなたをキリスト教の王と認め、あなたの敵を全て破門しますが、あなたは私たちに封建的な忠誠を誓い、私たちが司教を任命し、教会を支配し、あなたの土地の大部分を管理することができるようにしなければなりません。そして、私たちに貢納金を支払わなければなりません」。

10世紀のローマ教皇は、ローマ周辺の貴族の小グループによって支配されていました。彼らはローマ教皇を、都市の地方政治市長や地方行政官と同じように扱っていました。

この教会は家族によって運営されているだけで、キリスト教の宗教とはまったく関係ありませんでした。単に、これは教会の所有物であり、私たちの親戚の一人を常に教皇として置いておく、というだけのことでした。

さて、11世紀末、教皇たちは軍隊を持っていませんでした。そのため、ノルマン人との取引によって軍隊を得ることになりました。そして、彼らは理想を掲げ、十字軍を起こすことを決定しました。そして、「異教徒」であるイスラム教徒からエルサレムを救出することを目指しました。

問題は、エルサレムが救援を必要としていなかったことです。中世の世界全体、イスラム全体を通じて、統治階級の宗教が何であれ、宗教的な寛容がありました。それはオスマン帝国の下で何百年も続きました。

ただひとつ不寛容なグループがありました。それはローマ人で「イタリア貴族の一族が再び支配するのを防ぐためには、キリスト教をすべて支配しなければならない」と言ったのです。

彼らは十字軍を起こし、名目上はエルサレムに対してでしたが、結局コンスタンティノープルを略奪し、2世紀後の1291年には、キリスト教徒はアッコで敗北しました。

中近東への十字軍はすべて失敗した。

これから私が素描することとの類似点を見ることができるでしょう。

ですから、大半の十字軍遠征はイスラムと闘ったわけではないのです。イスラムは強大すぎました。

十字軍は他のキリスト教徒と戦ったのです。また、ローマのキリスト教の戦いは、過去10世紀にわたって存在していた原キリスト教に対して行われました。

そう、今日、同じようなことが起こっています。ローマがノルマン人たちを任命して封建制度の支配者、シチリアのウィリアム征服王として任命したように、アメリカはゼレンスキーを任命し、ネタニヤフを支持し、ロシアのクライアント寡頭政治家を支持し、ラテンアメリカの独裁者を支持しています。

つまり、アメリカの世界観は一極的であるだけでなく、一極的なアメリカの世界支配を得るためには、アメリカは外国の国家や外国の大統領を封建的な農奴として扱わなければならないし、基本的には、彼らはアメリカのスポンサーに封建的な忠誠を負っているということです。

そして、独立した南フランスや独立したイタリア、スペインのアラブ科学に対抗してローマへの服従を強制するため12世紀に異端審問所が形成されたように、今日アメリカは国家民主主義基金(NED)を使用し、ビクトリア・ヌーランドがクッキーを使ってコントロールする組織を通じて支援しています。

さあ、これがローマの乗っ取り戦略の全体像です。どのように他の国を乗っ取ろうとしていたのか、どのように他の国がローマから独立するのを防ごうとしていたのか、の全体像です。どのように他の国を支配するかに関するアメリカの国家安全保障報告書のほぼ一文一文が、これに対応しています。そして、それが現実に私たちの眼前で展開している戦いなのです。

それに対して、他の国々、つまり世界の多数派の戦いがあります。ただし、1204年にコンスタンティノープルが略奪され、第四回十字軍によって破壊されたのに対して、ロシア、中国、イランなどの他の国々は略奪されていません。

現在、アメリカができる唯一のことは、イランへの軍事計画の構築です。例えば、インドの役割は何でしょうか? イランへの攻撃や石油への攻撃は、同時に中国主導の一帯一路構想、すなわち相互の成長、相互の利益、相互の貿易のための世界の多数派による輸送の制御への攻撃でもあります。

アメリカは、これに代わる計画を立てようとしています。その計画は主にインドを経由し、イスラエルを通り抜け、大まかにはガザ地区を横切り、現在議論されている大きな問題の一つである、イスラエルのガザ制御地域を通過し、その先に広がる沖合の石油やガスを制御することになります。

つまり、アメリカの計画には複数のワイルドカードがあります。インドやサウジアラビア、そしてトルコです。トルコもこの地域の石油とガスにも関心を持っているからです。イスラム諸国が本当に攻撃を受けていると判断し、キリスト教西側によるイスラムに対する攻撃が本当に死闘であると判断した場合、トルコはサウジアラビアや他のすべての国、シーア派、スンニ派、アラウィー派と一緒になって、自分たちの共通点はイスラム宗教であると言うでしょう。

これは現実的にアメリカの対中・対ロシアの戦いへと実質的に拡大するでしょう。

そろそろまとめようと思います。私たちが実際に見ているのは、ロシアとの戦いでウクライナ人は最後の一人まで戦わせ、イランとの戦いでは最後のイスラエル人まで戦えと脅しています。アメリカは台湾に武器を送り、台湾人は最後の一人まで中国と戦ったらどうですか?と言っている、ということです。そしてこれがアメリカの世界中での戦略なのです。

アメリカは自らの支配のために他国に戦争をけしかけようとしています。それはローマがノルマン軍を使い、南イタリア、イングランド、ユーゴスラビアを征服した方法と同じです。

イスラエルとガザでの攻撃に関するニュースは、単なる開戦の初動であり、この戦争のきっかけにすぎません。サラエボでの射撃が第一次世界大戦を引き起こしたように、セルビアでの出来事がすべての始まりとなったこととまったく同じです。

BN:マイケル、あなたは非常に多くの興味深い指摘をしてくれました。あなたの分析は非常に新鮮でユニークで、非常に洞察力に富んでいると思います。これらのトピックについてもう少し時間があればいいのですが、すでに1時間ほど話しています。

ということで、ここで終わりにしようと思います。でも、マイケル、参加してくれてありがとう。もちろん、すぐに戻ってきてもっと詳細な分析をしましょう。

興味がある方のために、申し上げます。最近、私は古典古代やローマ、ギリシャに関するインタビューを彼におこないました。彼はまた、彼の著書『…そして彼らの債務を許し、(…and forgive them their debts)』でキリスト教の創設までの借金の歴史についても書いています。そして現在は、十字軍の政治的、経済的、唯物史に関する著作に取り組んでいます。

MH:1980年代にこの本の執筆を始めたとき、私はローマ教皇庁がどれほど重要であり、今日の国務省やCIAやばか者たちが世界征服の計画にどれほど類似しているかを理解していませんでした。

BN:そうですね、今後、その研究について議論する機会がたくさんあると思います。もちろん、マイケルの非常に重要な分析をもっと知りたい人は、彼がこのサイトで友人のラディカ・デサイと共同司会をしている番組、「地政学経済アワー」をチェックしてみてください。

もしも当社のウェブサイト、geopoliticaleconomy.com にアクセスするか、または当社のYouTubeチャンネルを訪れると、Geopolitical Economy Hourの異なるエピソードをすべて収めたプレイリストが見つかります。ですので、再度ありがとうございます、マイケル。そして、近いうちにぜひまたお戻りいただければと思います。

MH:こちらこそありがとう。

地下からのジハード:イスラエルはハマスが有する利点であるこの秘密要塞に対応できるか?


Jihad from the deep: Can Israel handle this secret advantage of Hamas?

イスラエル当局は、ガザにあるハマスが有するこのトンネルを空にさせようと計画しているが、この計画は「ミッション・インポッシブル」になるかもしれない
筆者:エリザベス・ブレイド(Elizabeth Blade)
出典:RT  2023年11月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月24日



© RT / RT


 ガザを支配しているイスラム組織であるハマスは、500キロメートルの長さのトンネン網を所持している、と考えられている。そのトンネル内には、複数の司令室や訓練所、会議室があり、洗練された換気装置もあり、水や電気の供給も安定している。

 イスラエルがハマスを消滅させることを目的とした「鉄拳」作戦を繰り出してから50日以上たつ。この作戦は、ハマスがイスラエル南部の居住地区に加えた激しい攻撃を受けたものだ。なお、ハマスによるこの攻撃により、1400人以上の人命が奪われ何千もの負傷者を出した、とされている。

 ガザの議会や裁判所、警察本部などを含む重要な地域は、すでにIDF(イスラエル国防軍)が掌握している。ガザ市内の主病院であり最大の病院であるシファ病院もIDFの手に落ちた。イスラエル側は、この医療複合施設が誇りにしている洗練されたトンネル体系を有しており、その中には集会所や地下壕があり、そこに人質の何名かが匿われている、と見ている。
 しかし、イスラエルが掴んでいる情報によると、シファ病院はパズルの一片に過ぎない、という。報告によると、ガザ市内には1300個ほどのトンネルがあり、その全長は500キロ規模ある、という。これはロンドンの地下鉄体系よりも100キロ長い計算になる。


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 地下75メートルに位置するこのトンネル網には、秘密の弾薬庫や司令室、中央管理室があるとされ、さらには訓練所や会議室も複数ある、という。この「地下鉄」にはさらに、換気装置もあり、水や電気の供給は安定している。

 「これまでわかっていることは、ガザ地区には様々なトンネルが存在する、ということです」と中東の専門家でIDFの元諜報官であるアビ・メラルド氏は述べた。

 「いわゆる密輸トンネル(シナイ半島から商品や武器、戦士らの密輸に利用される、の意[編者註])は複数存在します。攻撃用に使われるトンネルもあり、それはイスラエル領内まで続いています。ハマスが内部の軍事目的用に建設したトンネルも複数あります。」

 報道によると、これらのトンネルの建築には長い年月がかけられ、着手されたのは2007年のことだった。この年、ハマスがこの飛び地を支配下に置いたことで、イスラエルがこの地域を封鎖することになった。イスラエルはこのトンネル網の建築をよく承知しており、それを妨害しようとして、コンクリートや鉄鋼などの建築素材のガザへの搬入を制限したり禁止したりしてきた。しかしハマス側は、非軍事的目的の建築素材を軍事用に転用する術を探り当ててきた。ハマスはさらに、多額の金銭提供(主にカタールから)を受け、この巨大計画の資金に充ててきた、と言われている。


ガザ市シュジャヤ地区のトンネルに配置されているハマスの武装組織イズ・アッディン・アル・カッサム旅団。Mustafa Hassona / Anadolu Agency / Getty Images

「我が国の諜報機関は、これらのトンネルのことを知っていましたが、それを破壊する意図はありませんでした」とイスラエルの国内総保安庁「シン・ベット」の一員だったアミット・アサ氏は述べた。この機関は、長年ハマス問題に対応してきた組織だ。

「(破壊はせずに)、イスラエル側は地下の障壁や技術を開発することで、侵入を防ごうとしてきました。我が国は(ハマスへの資金提供の流れを断つよう)外交努力を講じ、パレスチナを繁栄させ、経済的機会を与えれば、パレスチナは計画を実行し、我が国を破壊しようとするだろう、と考えていました。」


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 アサ氏が使った「経済的機会」ということばは、近年イスラエル政府がパレスチナに与えてきた多くの恩恵的行為を指している。これらの恩恵的行為のなかには、何千人ものガザの人々を雇用者としてイスラエルに入国させてきたことやパレスチナ側の漁猟域を拡大させてきたこと、商品の輸入を認めてきたことなどがあげられる。

 しかしアサ氏の主張によると、イスラエルは、このような譲歩的手法は基本的に間違いであることを実感し始め、だからこそ今イスラエル国家は、アサ氏のことばを借りれば、「反撃する」ことを決意した、とのことだ。

 以前イスラエルが反撃を加えようとしてこなかった、というわけではない。長年にわたって、イスラエルはハマスの軍事力の弱体化を狙った作戦を無数に繰り出してきた。トンネル網もその対象のひとつであり、これまでにこのトンネル網を損壊させ、一部は破壊してきたが、ハマス側はこれまでなんとかその攻撃に耐え続けてきた。しかしアサ氏は状況が全く変わってしまったことを確信している。

 IDFの見立てによると、イスラエル側は10月7日の戦闘開始以来、400のトンネルの中間軸を破壊したという。さらにハマス民兵とパレスチナ・イスラム・ジハード民兵数千人が戦死したという。


ハマスが運営する青年のための夏合宿での軍事訓練に使われるトンネル内部を歩くパレスチナの人々 © MOHAMMED ABED / AFP

 専門家らが確信していることは、イスラエルがガザ北部のトンネル問題に取り組むのであれば、そこから南に移動することになるだろうが、南部には別のトンネル網が張り巡らされているということで、メラルド氏の説明によれば、そうなればIDFはこれらのトンネル建設のアキレス腱を突くことになる、という。

 「これらのトンネル内部で作戦をおこない、内部に留まるには酸素の安定した供給が必要になり、そのためには酸素発生機や燃料が必要となります」とメラルド氏は説明した。


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 「ですので、我が国が取れる対策のひとつに、トンネルへ供給する酸素の流れを切断することで、相手側を窒息させる、というものがあります。別の方法として、トンネルの出入口についての情報を十分に収集し、そこを封鎖することで、ハマスのテロリストたちを中に閉じ込める、という手もあります。」

 しかしこれらの作戦はミッション・インポッシブル(遂行不可能な作戦)になってしまう可能性がある。ハマスやパレスチナの他の諸組織は200人以上の人質を確保しており、少なくともその人質のうちの何名かが、トンネル内に隠されている、と考えられているからだ。これらのトンネルを封鎖したり、酸素供給を切断してしまえば、これらの人質の命が奪われることになるのは確実で、イスラエル側はそのような危険を冒す行為を取らないだろう、と広く考えられている。

 アサ氏の考えによると、もうひとつの難点があるという。それは「時間」だ。テロの恐怖を消そうとしているイスラエル側は、同時に民間の生活基盤施設への砲撃を続けており、その対象にはモスクや学校、病院、住居家屋も含まれている。これまで1万4千人以上のパレスチナの人々が亡くなっているが、その多くは一般市民だ。さらに3万6千人以上が負傷している。

 イスラエルへの圧力が高まり始めており、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、イスラエルは女性や子どもたちを標的にすべきではない、と発言した。同じような訴えが、カナダのジャスティン・トルドー首相など他の世界各国の指導者らからもあがっており、エルサレム当局側も、もう数週間もすれば、このような批判の声がさらに大きくなる、と考えている。

 「(イスラエルの行動に関する)ストップ・ウォッチがいつまで動くのかは常に懸念されていることです」とアサ氏は自身の考えを述べた。「しかし今回、イスラエルは他からの助言を聞き入れる構えはありません。ハマスやパレスチナのイスラム教ジハード勢力を本気で排除したいのであれば、この戦争で寛容さを見せるべきではないのです。最後までやり遂げる必要があるのです。我が国の同盟諸国がどんなことを言ってきても、です」とアサ氏は結語した。

「大イスラエル」:中東に対するシオニストの計画

<記事原文 寺島先生推薦>
悪名高い「オーディド・イーノン計画」。ミシェル・チョスドフスキーによる序文
“Greater Israel”: The Zionist Plan for the Middle East
The Infamous "Oded Yinon Plan". Introduction by Michel Chossudovsky

筆者:イスラエル・シャハク(Israel Shahak) & ミシェル・チョスドフスキー(Michel Chossudovsky)
出典:Global Research  2023年11月15日
Association of Arab-American University Graduates, Inc.  2013年3月
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月22日


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本記事の初出は2023年3月1日

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更新記事と分析

2023年10月7日、ハマスが軍最高責任者モハメド・ダイフ率いる「アル・アクサの嵐作戦」を開始した。 同日、ネタニヤフ首相はいわゆる「戦争準備態勢」を確認した。イスラエルは今(2023年10月7日)、パレスチナの人々に対する長い戦争の新たな段階を公式に宣言した

「軍事作戦は必ず事前に計画される(下記のネタニヤフ首相の2023年1月の声明を参照)。アル・アクサの嵐作戦」は「奇襲攻撃」だったのか?

アメリカ情報部は、ハマスの攻撃が差し迫っているとは知らなかったと言う。

ネタニヤフ首相と彼の巨大な軍事・諜報組織(モサドなど)は、ハマスの攻撃を予見していたのだろうか?

ハマスが「アル・アクサの嵐作戦」を開始する前に、パレスチナ人に対して全面戦争を仕掛けるという入念に練られたイスラエルの計画は想定されていたのだろうか?メディアはそう伝えているが、これはイスラエル諜報部の手落ちではない。正反対だ。

ハマスの行動をネタニヤフ政権が予見していたことを示す証拠と証言がある。「彼らはそれを黙認したのだ」

10月7日の「アル・アクサの嵐」作戦の後、イスラエルの国防相はパレスチナ人を「人間の動物」と表現し、「それに従って行動する」と宣言した。同時に戦闘機がガザ地区への大規模な爆撃を行なった」。(Middle East Eye)。

ガザ地区の完全封鎖は2023年10月9日に開始された。230万人のパレスチナ人に対する食糧や水、燃料、そして必需品の輸入を阻止し、妨害するもの。これは人道に対する明白な犯罪だ

「アル・アクサの嵐作戦」は「奇襲攻撃」だったのか? 偽旗作戦だったのか?


ネタニヤフのパレスチナに対する「長い戦争」の「新しい段階」

ネタニヤフ首相の掲げる目的は、パレスチナの人々に対する75年前の戦争(1948年のナクバ以来、下記参照)の新たな段階を構成するものであり、もはや「アパルトヘイト」や「分離」が前提ではない。この新たな段階は、平和を望むイスラエル人に対しても向けられているが、パレスチナの人々を祖国から完全に排除するだけでなく、「全面的な横領」によって成り立っている。

現ネタニヤフ政権が全力で取り組んでいるのは、「大イスラエル」と「約束の地」、すなわち聖書に書かれたユダヤ人の祖国だ。

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<画像中の英文和訳>
ネタニヤフ首相、イスラエル人に「パレスチナ人射殺へ青信号」を与える
イスラエル首相は、イスラエル人に対する銃の所持許可を早めるという計画を発表した。
パレスチナ人にさらなる暴力を加えることになる、とアナリストは言う。


ベンヤミン・ネタニヤフは、「イスラエルの植民地計画」、すなわちパレスチナ全土の横領を正式に決定するために邁進している。

2023年10月7日の「戦争準備態勢」の数ヶ月前に彼の立場は以下のように明示された。それは完全な横領と同時に、パレスチナ人を彼らの故郷から完全に排除することを含んでいる。

「これらは、私が率いる国民政府の基本路線である: ユダヤ民族は、イスラエルの土地のすべての地域に対する排他的で疑う余地のない権利を有する。政府は、ガリラヤ、ネゲブ、ゴラン、ユダヤ、サマリアなど、イスラエルの土地のあらゆる場所での入植を促進し、発展させる」。 (2023年1月)



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<画像中の英文和訳>
イスラエルは「戦争準備態勢」を宣言
ハマスがガザ地区からの大規模なロケット攻撃を行なったと主張した後で


イスラエル軍は、ハマス軍事集団がイスラエルに対する新たな作戦を発表した後、空襲警報が鳴り響く中、ガザ地区の標的を攻撃していると発表した。


歴史:モサドとハマスの間の関係

モサドとハマスとの関係は何なのか?ハマスは「情報機関」なのか?古い歴史がある。

ハマス(Harakat al-Muqawama al-Islamiyya)(イスラム抵抗運動)は、シェイク・アーメド・ヤシン(Sheik Ahmed Yassin)によって1987年に創設された。パレスチナ自治政府を弱体化させる手段として、当初はイスラエル情報機関の支援を受けていた:

「モサド(イスラエルの「諜報・特殊任務研究所」)のおかげで、ハマスには占領地での存在感を強めることが許された。一方、アラファトのファタハ民族解放運動とパレスチナ左派は、最も残忍な弾圧と脅迫にさらされた。

忘れてはならないのは、ハマスがイスラエルによって作られたという事実だ。エルサレム・ヘブライ大学の歴史学者ジーブ・スターネル(Zeev Stternell)によれば、「イスラエルは、パレスチナ解放機構(PLO)に対してイスラム主義者を押し出すための賢い策略だと考えた」のだという。(L'Humanité、フランス語からの翻訳)



ハマスとモサドや米国諜報機関とのつながりが、ロン・ポール議員の米国議会での声明で認められた: 「ハマスはイスラエルが始めた」?

「ハマスの歴史を見ればわかるが、ハマスがイスラエルによってテコ入れされ、実際に始められたのは、ヤーセル・アラファトに対抗するためにハマスが必要だった・・・。(ロン・ポール議員、2011)

この発言が意味するのは、「ハマス内の派閥」が「諜報機関」、すなわち「諜報機関の利益に奉仕する機関」を構成しているということだ。

WSJも参照(2009年1月24日)「イスラエルはどのようにハマスの誕生を助けたか」

コーエン氏によれば、イスラエルは当初からガザのイスラム主義者を抑制しようとするのではなく、パレスチナ解放機構とその支配的な派閥であるヤーセル・アラファトのファタハの世俗的な民族主義者に対抗するものとして、長年彼らを容認し、場合によってはテコ入れしてきた。(WSJ、強調は筆者)

1799 画像3の次
<画像中の英文和訳>
イスラエルはどのようにハマスを誕生させたか
アンドリュー・ヒギンズ(Andrew Higgins)
2009年1月24日 12:01東部標準時



ナクバ

2023年5月13日の記念日: ナクバ。75年前の1948年5月13日。パレスチナの惨状は至る所に。2018年の報告書で、国連はガザが「住めない」状態になったと述べた:

経済が自由落下し、若者の失業率が70%に達し、飲料水が広く汚染され、医療制度が崩壊したガザ。パレスチナ自治区の人権に関する特別報告者によれば、ガザは(2018年に)「住めない」状態になった。



上記の国連の評価は2018年にさかのぼる。ネタニヤフ首相の下、イスラエルは現在、パレスチナ領土の大部分を併合する計画を進めている。「一方、パレスチナ住民は深刻な収奪と孤立の状況に置かれている」

極度の貧困と経済破綻の状況を作り出すことは、パレスチナ人を祖国から追放し、脱出させるための手段である。 それは併合過程の一部である。

「この作戦が成功すれば、イスラエルは1967年の戦争で征服したすべての領土(ゴラン高原とエルサレム、パレスチナ自治区の大部分、最高の水源と農地を含む)を手に入れることになる。

ヨルダン川西岸地区は、外界から遮断され、敵対するイスラエル軍とイスラエル入植地に囲まれた、ガザ地区と同じ状況に陥るだろう」。(South Front)

人権はパレスチナ国境で終わったのだ。買収され、金で雇われたアメリカ議会は、これでもかというほどの平身低頭だった:

「2023年7月19日、アメリカ議会はイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領のために特別合同会議を開いた。民主・共和両党は29回も拍手を送った」。


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「パレスチナの消滅を見ながら」ポール・クレイグ・ロバーツ博士、2023年9月12日

「大イスラエルは多くの代理国家を生み出すだろう。レバノンやヨルダン、シリア、シナイ半島の一部、そしてイラクとサウジアラビアの一部を含むだろう」。

「パレスチナは消滅した!消滅した!パレスチナの苦境は残酷なまでに痛々しく、その痛みは、欧米列強がその痛みを不可解なまでに無下にし、消し去っていることによって、さらに増している」リマ・ナジャール(Rima Najjar)、グローバル・リサーチ、2020年6月7日号

ミシェル・チョスドフスキー、2021年6月10日、2023年10月11日、2023年11月1日

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「大イスラエル計画」への序文
ミシェル・チョスドフスキー


「大イスラエル」の形成に関する以下の文書は、ネタニヤフ現政権、リクード党、イスラエル軍および情報機関の強力なシオニスト派閥の礎石となっている。

ドナルド・トランプ大統領は2017年1月、イスラエルの違法入植地(ヨルダン川西岸地区におけるイスラエル入植地の違法性に関する国連安全保障理事会決議2334への反対を含む)を支持することを確認した。トランプ政権は、ゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めると表明した。そして今、ヨルダン川西岸地区全体がイスラエルに併合されようとしている。

バイデン政権下では、政治的言説の修辞的転換はあるが、ヨルダン川流域全体とヨルダン川西岸の違法入植地を併合するイスラエルの計画を、ワシントンは依然として支持している。

心に留めておいてほしい: 大イスラエル構想は、厳密にはシオニストの中東計画ではなく、アメリカの外交政策に不可欠なものであり、その戦略的目的は、アメリカの覇権を拡大し、中東を分断し、バルカン化することにある。

この点で、ワシントンの戦略は、トルコやイランを含む中東地域の経済大国を不安定化させ、弱体化させることにある。この政策は大イスラエル主義に合致しているが、政治的分断のプロセスを伴っている。

湾岸戦争(1991年)以来、国防総省はイラクやシリア、そしてイランの一部とトルコの併合を含む「自由クルディスタン」の創設を考えてきた。

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「新しい中東」:ラルフ・ピーターズ中佐による米陸軍士官学校非公式地図

シオニズムの創始者セオドア・ヘルツル(Theodore Herzl)によれば、「ユダヤ国家の領域はエジプトの小川からユーフラテス川まで広がっている: 「エジプトの小川からユーフラテス川まで」。 ラビ・フィシュマンによれば、「約束の地はエジプトの川からユーフラテス川まで広がり、シリアとレバノンの一部を含む」。

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ガザ包囲を含む現在の文脈で見れば、シオニストの中東計画は、2003年のイラク侵攻や2006年のレバノン戦争、2011年のリビア戦争、現在進行中のシリア、イラク、イエメン戦争、そして言うまでもなく、サウジアラビアの政治危機と密接な関係がある。

「大イスラエル」計画は、アメリカ・イスラエルの拡張主義計画の一環として、近隣のアラブ諸国を弱体化させ、最終的には分裂させることで成り立っている。それはNATOとサウジアラビアの支援を得てなされる。この点で、ネタニヤフ首相の視点に立てば、サウジとイスラエルの和解は、中東におけるイスラエルの勢力圏を拡大する手段であり、イランと対峙する手段でもある。言うまでもないが、「大イスラエル」計画はアメリカの帝国主義的設計と一致している。

「大イスラエル」とは、ナイル渓谷からユーフラテス川までの地域を指す。スティーブン・レンドマン(Stephen Lendman)によれば、
     「100年近く前、世界シオニスト機構のユダヤ人国家建設計画には、次のようなものが含まれていた:
- 歴史的パレスチナ;
- シドンとリタニ川までの南レバノン;
- シリアのゴラン高原、ハウラン平原、デラ、そして
- デラからヨルダンのアンマンまでのヒジャーズ鉄道とアカバ湾の支配。

シオニストの中には、さらに西のナイル川から東のユーフラテス川まで、パレスチナ、レバノン、シリア西部、トルコ南部の土地を求める者もいた。

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シオニスト・プロジェクトは、ユダヤ人入植運動を支援してきた。より広義には、パレスチナからパレスチナ人を排除し、ヨルダン川西岸とガザをイスラエルに併合する政策である。

「大イスラエル」計画は、レバノンやヨルダン、シリア、シナイ半島の一部、そしてイラクとサウジアラビアの一部を含むいくつかの代理国家を作ることである。(地図参照)。

2011年のGlobal Researchマハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ(Mahdi Darius Nazemroaya) の記事によれば、イーノン・プランは中東におけるイギリスの植民地支配の継続であった:

「イーノン・プランは)イスラエルの地域的優位性を確保するための戦略的プランである。イスラエルは、周辺のアラブ諸国をより小さく弱い国家にバルカン化することによって、その地政学的環境を再構成しなければならないと主張し、規定している。

イスラエルの戦略家たちは、イラクをアラブ国家からの最大の戦略的挑戦とみなしていた。イラクが中東とアラブ世界のバルカン化の目玉として概説されたのはこのためである。イラクでは、イーノン・プランの考え方に基づき、イスラエルの戦略家たちはイラクをクルド人国家と、シーア派イスラム教徒とスンニ派イスラム教徒の2つのアラブ国家に分割することを求めた。これを確立するための第一歩はイラクとイランの戦争であり、イーノン・プランはこれを論じている。

2008年の「アトランティック(The Atlantic)」誌と2006年の米軍「アーメッド・フォース・ジャーナル(Armed Forces Journal)」誌は、いずれもイーノン・プランの素描に忠実な地図を広く流布した。バイデン・プランも求めているイラクの分割はさておき、イーノン・プランはレバノンやエジプト、そしてシリアの分割を求めている。イランや、トルコ、ソマリア、そしてパキスタンの分割も、すべてこれらの見解に沿ったものである。イーノン・プランはまた、北アフリカでの分割を求め、エジプトから始まり、スーダンやリビア、そしてその他の地域に波及すると予測している。

「大イスラエル」は、既存のアラブ諸国を小国に分割を求めることになるだろう。

「この計画は2つの本質的な前提に基づいている。イスラエルが生き残るためには
1)帝国的な地域大国になること。
2)現存するアラブ諸国をすべて解体し、地域全体を小国に分割すること。

ここでの小国は、それぞれの国家の民族や宗派の構成に左右される。その結果、シオニストが望むのは、宗派を基盤とする国家がイスラエルの衛星国となり、皮肉なことに、イスラエルの道徳的正当性の源泉となることである・・・これは新しい考えではなく、シオニストの戦略的思考において初めて浮上したものでもない。実際、すべてのアラブ国家をより小さな単位に分断することは、繰り返し語られてきたテーマである。(イーノン・プラン、下記参照)



この文脈で見れば、米国とNATOが主導するシリアとイラクへの戦争は、イスラエルの領土拡張過程の一部である。

この点で、ロシアやイラン、そしてヒズボラの支援を受けたシリア軍が米国の支援するテロリスト(ISIS、アル・ヌスラ)を敗北させたことは、イスラエルにとって大きな後退となる。

ミシェル・チョスドフスキー、グローバル・リサーチ(2015年9月6日、2019年9月13日更新)

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シオニストの中東計画
翻訳と編集
イスラエル・シャハク

セオドア・ヘルツル(1904)とラビ・フィシュマン(1947)のイスラエル

シオニズムの創始者であるセオドア・ヘルツルは、『日記全集』第2巻711頁の中で、ユダヤ国家の領域は「エジプトの小川からユーフラテス川まで」と述べている

1947年7月9日、国連特別調査委員会の証言の中で、パレスチナ問題ユダヤ機関のラビ・フィッシュマンはこう宣言した: 「約束の地はエジプト川からユーフラテス川まで広がっており、シリアとレバノンの一部も含まれている」。

オーディド・イーノンの
『イスラエル1980年戦略』

発行
アラブ系アメリカ人大学卒業生協会発行
マサチューセッツ州ベルモント、1982年発行
特別資料No.1 (ISBN 0-937694-56-8)
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序文
ハリル・ナフリ(Khalil Nakhleh)博士


アラブ系アメリカ人大学卒業生協会は、世界シオニスト機構情報部の機関誌『Kivunim(方向性)』に掲載されたオデッド・イーノンの記事を、新しい出版物シリーズ『Special Documents』の創刊記事として掲載すること已む無し、と考えている。オデッド・イーノンはイスラエルのジャーナリストで、以前はイスラエル外務省に所属していた。私たちの知る限り、この文書は、中東におけるシオニストの戦略について、これまでで最も明確で詳細かつ明白な声明である。さらに、ベギンやシャロン、そしてエイタンのシオニスト政権が現在支配している中東全体に対する「ビジョン」を正確に表している。したがって、その重要性は歴史的価値ではなく、それが提示する悪夢にある。

イーノン・プランは、2つの本質的な前提に基づいている。イスラエルが生き残るためには、1)帝国的な地域大国になること、2)現存するアラブ諸国をすべて解体して、この地域全体を小国に分割すること、である。ここでの小国とは、各州の民族や宗派の構成による。その結果、シオニストが望むのは、宗派を基盤とする国家がイスラエルの衛星となり、皮肉なことに、イスラエルの道徳的正当性の源泉となることである。

これは新しいアイデアではないし、シオニストの戦略的思考に初めて浮上したものでもない。実際、すべてのアラブ国家をより小さな単位に分断することは、繰り返し語られてきたテーマである。このテーマは、リヴィア・ロカッチ(Livia Rokach)によるAAUGの出版物『イスラエルの聖なるテロリズム』(1980年)に、たいへん控えめに記録されている。元イスラエル首相モシェ・シャレットの回想録に基づくロカチの研究は、レバノンに適用されるシオニストの計画、そしてそれが50年代半ばに準備されたものであることを、説得力のある詳細さで記録している。

1978年の最初の大規模なイスラエルによるレバノン侵攻は、この計画を細部に至るまで具体化したものだった。1982年6月6日の2回目の、より野蛮で包括的なイスラエルによるレバノン侵攻は、レバノンだけでなくシリアとヨルダンも断片化することを望むこの計画のある部分を実現することを目的としている。このことは、強力で独立したレバノン中央政府を望むというイスラエルの公の主張などどこ吹く風といったやり方である。より正確には、イスラエルは、彼らと和平条約を結ぶことによって、彼らに対する地域帝国主義的意向を制裁するレバノンの中央政府を望んでいる、と言っている。彼らはまた、シリアやイラク、ヨルダン、そしてその他のアラブ諸国政府やパレスチナ人民が、自分たちの計画に同意することを求めている。彼らが望んでいるのは、そして彼らが計画しているのは、アラブ世界ではなく、イスラエルの覇権に屈する覚悟のできたアラブの細分化された世界なのだ。それゆえ、オデッド・イーノンはそのエッセイ『1980年代のイスラエル戦略』の中で、「イスラエルを取り巻く(非常に)荒れ狂う状況」によってもたらされる「1967年以来、初めての遠大なチャンス」について語っている。

パレスチナ人をパレスチナから追い出すというシオニストの政策は、非常に積極的な政策であるが、1947年から1948年の戦争や1967年の戦争のような紛争時には、より強力に追求される。本書には、過去のシオニストによるパレスチナ人の故郷からの追放を示し、また、今回紹介する主なシオニストの文書以外にも、パレスチナの非パレスチナ化のためのシオニストの計画を示すために、『イスラエルは新たな脱出を語る』と題する付録が含まれている。

1982年2月に発表された機関誌『Kivunim(方向性)』から明らかなように、シオニストの戦略家たちが考えてきた「遠大な機会」とは、彼らが世界を説得しようとしている「機会」であり、1982年6月の侵攻によってもたらされたと彼らが主張する「機会」と同じものである。また、パレスチナ人がシオニストの計画の唯一の標的であったことは決してないが、民族として存続し、独立した彼らの存在は、シオニスト国家の本質を否定するものであるため、優先的な標的であったことは明らかである。しかし、どのアラブ国家も、特に結束力のある明確な民族主義的方向性を持つ国家は、遅かれ早かれ真の標的となる。

この文書で解明された詳細かつ明確なシオニストの戦略と対照的に、アラブとパレスチナの戦略は、残念ながらあいまいさと支離滅裂さに苦しんでいる。アラブの戦略家たちが、シオニストの計画をその全容を内面化した形跡はない。それどころか、シオニストの計画の新たな段階が展開されるたびに、彼らは信じられないという思いと動揺をもって反応する。これは、イスラエルのベイルート包囲に対するアラブの反応を見れば明らかだ。悲しいことに、シオニストの中東戦略が真剣に受け止められていない限り、今後他のアラブの首都が包囲されたとしても、アラブの反応は同じだろう。
Khalil Nakhleh, July 23, 1982
ハリル・ナフリ、1982年7月23日
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はじめに
イスラエル・シャハク


以下の小論は、(シャロンとエイタンの)シオニスト現体制による中東に関する正確かつ詳細な計画であり、その計画はこの地域全体を小国に分割し、既存のアラブ諸国をすべて解体することに基づいている、と私は考えている。この計画の軍事的側面については、結論で述べたい。ここでは、いくつかの重要な点に読者の注意を喚起したい:

1. イスラエルの戦略的思考には、すべてのアラブ国家をイスラエルによって小さな単位に分解すべきだという考えが何度も登場する。たとえば、ハアレッツ紙の軍事特派員ゼエヴ・シフ(Ze’ev Schiff)(この話題に関して、おそらくイスラエルで最も詳しい)は、イラクにおけるイスラエルの利益にとって起こりうる「最善」についてこう書いている: 「イラクをシーア派国家とスンニ派国家に解体し、クルド人部分を分離すること」(ハアレッツ6/2/1982)。計画のこの側面は、実は、非常に昔からある。

2. 特に著者の注には、アメリカの新保守主義(ネオコン)思想との強い結びつきが顕著に表れている。しかし、ソビエトの力からの「西側の防衛」という考え方にリップサービスが払われている一方で、著者、そして現在のイスラエル政権の真の狙いは明確である。言い換えれば、シャロンの目的は、他のすべての人々を欺いた後に、アメリカ人を欺くことなのだ。

3. 明らかに、メモや本文における多くの関連データは、イスラエルへのアメリカの財政支援など、歪められているか欠落しているようだ。その多くはまったくの空想だ。しかし、この計画は影響力がないわけではなく、また短期間に実現不可能なものとは見なすことはできない。この計画は、1890年から1933年のドイツで広まった地政学的な考えを忠実に追っており、これらの考えはヒトラーやナチス運動に完全に取り込まれ、彼らの東欧における目標を決定した。これらの目標、特に既存の国家の分割は、1939年から1941年にかけて実現され、一時的にそれらの固定化を阻止するためには世界規模の同盟が必要だった。

見出し下の本文に続き著者の注釈

混乱を避けるため、私自身の注釈は加えず、その内容をこの「まえがき」と巻末の「結語」に記した。ただし、本文の一部を強調した。

イスラエル・シャハク、1982年6月13日
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1980年代イスラエル戦略
オーディド・イーノン


この文章は元々、ヘブライ語で書かれ、キヴニームKIVUNIMU(方針)というジャーナルに掲載された。発行番号は14号で、冬季号(5742年2月)。編集者はヨラム・ベックで、編集委員はエリ・エヤル、ヨラム・ベック、アムノン・ハダリ、ヨハナン・マノール、エリエゼル・シュワイド。発行元は広報部/世界ユダヤ人機構(エルサレム)。

1980年代初頭、イスラエルは、国内外における自らの位置や目的、そして国家目標について、新たな視点を必要としていた。この必要性は、この国やこの地域、そして世界が直面している多くの中心的なプロセスのために、いっそう重要になっている。私たちは今日、人類史における新たな時代の初期段階に生きている。この時代は、以前の時代とはまったく似て非なるものであり、その特徴は、これまで私たちが知っていたものとはまったく異なっている。だからこそ私たちは、この歴史的エポックを代表する中心的なプロセスを理解する必要があり、他方では、新たな状況に応じた世界観と作戦戦略を必要としているのである。ユダヤ国家の存続や繁栄、そして安定は、内政と外交に新たな枠組みを採用できるかどうかにかかっている。

この時代には、すでに診断できるいくつかの特徴があり、現在のライフスタイルにおける真の革命を象徴している。その最たるものは、ルネサンス以来の西洋文明の生活と業績を支えてきた合理主義的、人文主義的な考え方の崩壊である。この基盤から生まれた政治的、社会的、経済的見解は、現在失われつつあるいくつかの「真理」に基づいていた。例えば、個人としての人間は宇宙の中心であり、すべては彼の基本的な物質的欲求を満たすために存在するという見解である。この立場は、宇宙の資源量が人間の要求、経済的ニーズ、人口学的制約を満たしていないことが明らかになった現在、無効となりつつある。人類が40億人存在し、経済資源とエネルギー資源が人類のニーズに比例して成長しない世界では、西欧社会の主要な要求1、すなわち無限の消費への願望と熱望を満たすことを期待するのは非現実的である。人間の進む方向を決めるのに倫理は関係なく、むしろ物質的な欲求が関係するという考え方は、ほとんどすべての価値観が失われつつある世界を目の当たりにしている今日、広まりつつある。特に、何が善で何が悪かという単純な問題に関わるとき、私たちは最も単純なことを評価する能力を失いつつある。

世界秩序の崩壊を目の当たりにすると、人間の無限の願望と能力というビジョンは、人生の悲しい事実を前にして縮小してしまう。人類に自由と自由を約束する見方は、人類の4分の3が全体主義体制の下で暮らしているという悲しい事実を鑑みると、不条理に思える。平等と社会正義に関する見解は、社会主義、特に共産主義によって笑いものに変えられてしまった。この2つの考え方が真実であることに議論の余地はないが、それらが適切に実践されていないことは明らかであり、人類の大多数は自由、平等と正義のための自由と機会を失っている。私たちが30年間、比較的平和に暮らしている(今も)この核の世界では、ソ連のような超大国が、マルクス主義の目的を達成するために核戦争は可能であり、必要であるだけでなく、核戦争後も生き残ることは可能であり、核戦争で勝利することは言うまでもない、というような軍事的・政治的教義を掲げているとき、国家間の平和と共存という概念は意味を持たない。2

人類社会の本質的な概念、特に西側の概念は、政治的、軍事的、そして経済的な変容によって変化しつつある。ソ連の核兵器と通常兵器の威力は、終わりを告げたばかりの時代を、多次元的な世界規模の戦争で世界の大部分を破壊する大冒険物語の前の最後の休息へと変えた。核兵器と通常兵器の威力、その量、精度、質は、数年以内に世界の大半をひっくり返すだろう。そして我々はイスラエルにおけるその事態に備えるために結束しなければならない。これは、私たちの存在と西側世界の存在に対する主要な脅威である。3 3つ脅威(①世界の資源を巡る戦い、②アラブが石油の独占を持っていること、そして③西側が第三世界からほとんどの原材料を輸入する必要があること)は、我々が知っている世界を変えている。ソビエト連邦の主要な目標の一つが、ペルシャ湾およびアフリカ南部の巨大な資源を掌握することによって西側を打倒することであることを考えればそうだ。これらの地域に将来的に私たちが直面することになる世界的な対立の規模を想像することができる。

ゴルシコフ(Gorshkov)ドクトリンは、第三世界の海洋と鉱物資源の豊富な地域をソ連が支配することを求めている。核戦争を管理し、勝利し、生き残ることは可能であるとする現在のソ連の核ドクトリンとともに、その過程で西側の軍隊は破壊され、住民はマルクス・レーニン主義に奉仕する奴隷にされるかもしれない。1967年以来、ソビエトは、クラウゼヴィッツの訓示を「戦争とは、核兵器による政策の継続である」と変え、彼らのすべての政策を導く標語とした。今日すでに、ソビエトはわが国の地域や世界中でその目的の遂行に忙殺されており、ソビエトと対峙する必要性は、わが国の安全保障政策の主要な要素となり、もちろん他の自由世界の安全保障政策の主要な要素にもなっている。それこそが、わが国の外交上の大きな課題なのである。4

したがって、アラブ・イスラム教世界は、その軍事力の増大によってイスラエルに対する主要な脅威となっているにもかかわらず、80年代にわれわれが直面する主要な戦略的問題ではない。この世界は、少数民族や派閥、そして内部危機などを抱え、レバノンや非アラブのイラン、そして現在のシリアに見られるように、驚くほど自滅的である。長い目で見れば、この世界は、真の革命的変化を経なければ、現在の枠組みで私たちの周りの地域に存在することはできないだろう。アラブ・イスラム教世界は、外国人(1920年代のフランスとイギリス)によって、住民の希望や願望を考慮することなく、仮設のトランプハウスのように建てられた。恣意的に19の国家に分割され、そのすべてが互いに敵対する少数民族と民族の組み合わせで構成されているため、現在ではどのアラブ・イスラム教国家も内部からの民族的社会的破壊に直面しており、すでに内戦が激化している国家もある。5 アラブ人の大部分、1億7000万人のうち1億1800万人はアフリカ、そのほとんどがエジプトに住んでいる(現在4500万人)。

エジプトを除けば、マグレブ諸国はすべてアラブ人と非アラブ人のベルベル人の混血で構成されている。アルジェリアではすでにカビレ山脈で、国内の2つの国の間で内戦が激化している。モロッコとアルジェリアは、それぞれの国内闘争に加えて、スペイン領サハラをめぐって互いに戦争状態にある。イスラム過激派はチュニジアの完全性を危うくし、カダフィはアラブから見て破壊的な戦争を組織している。だからこそカダフィは、エジプトやシリアのような真の国家との統一を試みてきたのだ。スーダンは現在、アラブ・イスラム教世界で最も引き裂かれた国家であり、互いに敵対する4つのグループ、アラブ・イスラムのスンニ派少数派が大多数の非アラブ系アフリカ人、異教徒、キリスト教徒を支配することで成り立っている。エジプトでは、スンニ派イスラムが多数派を占め、上エジプトを支配する少数派のキリスト教徒(約700万人)と対峙している。5月8日の演説でサダトでさえ、彼らが自分たちの国家、エジプトにおける「第二の」キリスト教徒レバノンのようなものを欲しがるのではないかという懸念を表明した。

イスラエル以東のアラブ諸国はすべて、マグレブ諸国以上に内紛に巻き込まれ、分裂している。シリアは、強力な軍事政権が支配しているという点を除けば、基本的にはレバノンと変わらない。しかし、現在、多数派のスンニ派と少数派のシーア派アラウィー派(人口のわずか12%)との間で起きている内戦は、国内問題の深刻さを物語っている。

イラクはシーア派が多数を占め、少数派のスンニ派が支配しているが、本質的には隣接諸国と何ら変わりはない。人口の65%は政治に口を出さず、20%のエリートが権力を握っている。さらに北部にはクルド人の少数派が多く、支配体制の強さや軍隊、そして石油収入などがなければ、イラクの将来はかつてのレバノンや現在のシリアと変わらないだろう。内紛と内戦の種は、今日すでに明らかになっている。特に、イラクのシーア派が当然の指導者とみなすホメイニがイランで権力を握った後ではなおさらだ。

湾岸諸侯とサウジアラビアはすべて、石油しかない微妙な砂上の楼閣の上に成り立っている。クウェートでは、クウェート人は人口の4分の1しかいない。バーレーンではシーア派が多数派だが、権力を奪われている。UAEではシーア派が再び多数を占めるが、スンニ派が権力を握っている。オマーンや北イエメンも同様だ。マルクス主義の南イエメンでさえ、かなりのシーア派少数派がいる。サウジアラビアでは人口の半分が外国人、エジプト人、イエメン人だが、サウジアラビアの少数派が権力を握っている。

ヨルダンの実態はパレスチナ人であり、少数民族のヨルダン系ベドウィンが支配しているが、軍隊や官僚機構のほとんどはパレスチナ人である。実際のところ、アンマンはナブルスと同じくらいパレスチナ人だ。これらの国はすべて、比較的強力な軍隊を持っている。しかし、そこにも問題がある。現在のシリア軍はほとんどがスンニ派で、アラウィー派の将校団を擁しており、イラク軍はシーア派でスンニ派の指揮官を擁している。このことは長期的には大きな意味を持つ。だからこそ、唯一の共通項があるところ以外では、軍隊の忠誠心を長期間維持することはできないだろう: イスラエルに対する敵意、そして今日それさえも不十分である。

分断されたアラブと並んで、他のイスラム諸国も同じような苦境に立たされている。イランの人口の半分はペルシャ語を話す集団で、残り半分はトルコ系民族である。トルコの人口は、トルコ系スンニ派イスラム教徒が約50%を占め、1200万人のシーア派アラウィー教徒と600万人のスンニ派クルド人という2つの大きな少数派で構成されている。アフガニスタンには人口の3分の1を占める500万人のシーア派がいる。スンニ派のパキスタンには、国家の存続を危うくする1500万人のシーア派がいる。

モロッコからインドまで、ソマリアからトルコまで広がるこの民族的少数派の姿は、この地域全体が安定を欠き、急速に衰退していることを示している。この図式に経済的な図式が加わると、この地域全体がトランプの家のようになり、深刻な問題に耐えられなくなっていることがわかる。

この巨大で分断された世界には、少数の富裕層と大量の貧困層が存在する。アラブ人の大半の平均年収は300ドルである。エジプト、リビアを除くほとんどのマグレブ諸国、そしてイラクがそうだ。レバノンは引き裂かれ、経済はバラバラになりつつある。レバノンには中央集権的な権力はなく、事実上5つの主権当局(北部はシリア人の支援を受けフランジエ一族の支配下にあるキリスト教徒、東部はシリアが直接征服した地域、中央部はファランギストが支配するキリスト教徒の飛び地、南部とリタニ川までの大部分はPLOが支配するパレスチナ人地域、そしてキリスト教徒と50万人のシーア派からなるハダド少佐の国家があるだけだ。シリアはさらに深刻な状況にあり、リビアとの統合後に将来得られるであろう援助でさえ、存続と大規模な軍隊の維持という基本的な問題に対処するには十分ではない。エジプトは最悪の状況にある:数百万人が飢餓に瀕し、労働人口の半数が失業し、世界で最も人口密度の高いこの地域では住宅が不足している。軍隊を除いて、効率的に運営されている部署はひとつもなく、国家は恒常的な破産状態にあり、和平以来供与されているアメリカの対外援助に全面的に依存している。6

湾岸諸国やサウジアラビア、リビア、そしてエジプトには、世界最大の資金と石油が蓄積されているが、それを享受しているのは、いかなる軍隊も保証することのできない、幅広い支持基盤も自信も欠いている極小のエリートたちである。7 あらゆる装備を備えていてもサウジ軍は、国内外における真の危険から政権を守ることはできない。1980年にメッカで起きたことは、その一例にすぎない。イスラエルを取り囲む悲しく非常に荒々しい状況は、イスラエルに挑戦や問題、リスク、そして1967年以来初めてとなる遠大なチャンスをも生み出している。当時は逃したチャンスも、80年代には、現在では想像もできないような範囲や次元で実現可能になる可能性がある。

「和平」政策と領土返還は、米国への依存を通じて、われわれのために創造された新たな選択肢の実現を妨げる。1967年以来、イスラエルのすべての政府は、一方では狭い政治的ニーズに我々の国家目標を縛り付け、他方では、国内外での我々の能力を無力化する国内の破壊的な意見に縛り付けた。強制された戦争の過程で獲得した新領土のアラブ系住民に対する措置を講じなかったことは、6日間戦争の翌朝、イスラエルが犯した大きな戦略的過ちである。もしヨルダン川以西に住むパレスチナ人にヨルダンを与えていれば、それ以来の辛く危険な紛争を避けることができただろう。そうすることで、今日私たちが直面しているパレスチナ問題を無力化することができたはずであり、そのために私たちは、領土的妥協や自治といった、実際にはまったく解決策にならない解決策を見つけてきた。8 今日、私たちは突然、状況を徹底的に変革する絶好の機会に直面している。そしてこれが、私たちが今後10年間でやらなければならないことであり、それをしなければ、私たちは国として存続することはないだろう。

1980年代、イスラエルは、この新しい時代の世界的、地域的な挑戦に立ち向かうために、外交政策の根本的な変化とともに、国内の政治的、経済的体制において、広範囲に及ぶ変化を遂げなければならなくなる。スエズ運河油田を失い、地形学的にこの地域の豊かな産油国と同じであるシナイ半島の石油、ガス、その他の天然資源の莫大な潜在力を失うことは、近い将来エネルギーの枯渇を招き、国内経済を破壊することになる。現在のGNPの4分の1と予算の3分の1が石油の購入に充てられているのだ。9ネゲブや沿岸部での原料探しは、近い将来、この現状を変える役には立たないだろう。

シナイ半島の現在および潜在的な資源(を取り戻すこと)は、それゆえキャンプ・デービッド協定や和平協定によって妨害されている政治的優先事項である。その責任はもちろん、現イスラエル政府と、領土妥協政策への道を開いた1967年以降の連携政府にある。エジプト人は、シナイ半島返還後は平和条約を守る必要がなくなり、支援と軍事援助を得るために、アラブ世界とソ連に復帰するために全力を尽くすだろう。アメリカの援助が保証されるのはしばらくの間だけである。和平の条件と国内外でのアメリカの弱体化が、援助の縮小をもたらすからだ。石油と石油からの収入がなければ、現在の莫大な支出では、1982年を乗り切ることはできない。1979年3月にサダトがシナイを訪問し、サダトと誤った和平協定が結ばれる以前のシナイの状況に戻すために、われわれは行動しなければならない。10

イスラエルには、この目的を実現するために、直接的な方法と間接的な方法の2つの主要ルートがある。直接的な選択肢は、あまり現実的でない選択肢である。理由1)イスラエルの政権と政府の性格、そして理由2)1973年の戦争に次ぐ政権獲得以来の大きな功績であるシナイ半島からの撤退を実現させたサダトの知恵。経済的、政治的によほど追い詰められ、エジプトがイスラエルにシナイ半島を取り戻す口実を与えるようなことがない限り、イスラエルが一方的に条約を破棄することはないだろう。したがって、残された選択肢は間接的なものだ。エジプトの経済状況や政権の体質、そして汎アラブ政策は、1982年4月以降、イスラエルが長期的な戦略的や経済的、そしてエネルギー備蓄としてのシナイ半島の支配権を取り戻すために、直接的または間接的に行動せざるを得ない状況をもたらすだろう。エジプトは、その内部対立のために軍事戦略上の問題を構成しておらず、一日もかからずに1967年戦争後の状況に追い込まれる可能性がある。11

エジプトがアラブ世界の強力なリーダーであるという神話は1956年に崩れ去り、1967年は間違いなく生き残れなかったが、シナイ返還のような我々の政策は、神話を「事実」に変える役割を果たした。しかし現実には、1967年以降、イスラエルのみならずアラブ世界の他の国々と比べても、エジプトの国力は50%ほど低下している。エジプトはもはやアラブ世界をリードする政治勢力ではなく、経済的にも危機に瀕している。外国からの援助がなければ、危機は明日にでも訪れるだろう。12 短期的には、シナイ半島の返還により、エジプトはわれわれの負担でいくつかの利点を得るだろうが、それは1982年までの短期的なものであり、パワーバランスを有利に変えることはできず、おそらくは没落をもたらすだろう。現在のエジプトの国内政治は、死に体(しにたい)状態だ。イスラム教とキリスト教の対立が激化していることを考慮すれば、なおさらである。エジプトを領土的に明確な地域に分割することは、1980年代のイスラエルが西部戦線で目指した政治的目的である。

エジプトは病んだ多くの権威に分断され、引き裂かれている。もしエジプトが崩壊すれば、リビアやスーダン、あるいはもっと遠い国のような国々は、現在の形で存在し続けることはできず、エジプトの没落と解体に加わることになるだろう。今日まで中央集権的な政府を持たず、非常に局所的な権力を持つ数多くの弱小国家と並んで、上エジプトにキリスト教のコプト国家が存在するという構想は、和平合意によって後退させられただけで、長期的には避けられないと思われる歴史的発展の鍵である。13

表面的には問題が多いように見える西部戦線は、実は東部戦線よりも複雑ではない。レバノンの5つの州への完全な解体は、エジプトやシリア、イラク、そしてアラビア半島を含むアラブ世界全体の予兆であり、すでにその軌道をたどっている。シリアとイラクが後にレバノンのような民族的、宗教的に統一されていない地域に解体されることは、長期的には東部戦線におけるイスラエルの主要な目標であり、短期的にはこれらの国家の軍事力の解体が主要な目標である。シリアは、その民族的・宗教的構造に従って、現在のレバノンのようにいくつかの国家に分裂し、海岸沿いにはシーア派のアラウィー国家が、アレッポ周辺にはスンニ派国家が、ダマスカスには北隣国と敵対する別のスンニ派国家が、そしてドゥルーズ派はゴランやハウラン、ヨルダン北部にも国家を樹立するだろう。このような状態は、長期的にはこの地域の平和と安全を保証するものであり、その目標は今日すでに手の届くところにある。14

一方では石油が豊富で、他方では内部分裂しているイラクは、イスラエルの標的候補となることは確実だ。イラクの崩壊は、シリア以上に我々にとって重要である。イラクはシリアよりも強い。短期的には、イスラエルにとって最大の脅威となるのはイラクの力である。イラクとイランの戦争は、イラクを引き裂き、イラクがわれわれに対して広範な戦線で闘争を組織できるようになる前に、イラクの国内での没落を引き起こすだろう。あらゆる種類のアラブ間の対立は、短期的にはわれわれを助け、シリアやレバノンのようにイラクを宗派に分割するという、より重要な目的への道を縮めるだろう。イラクでは、オスマン帝国時代のシリアのように、民族・宗教に沿った州への分割が可能だ。つまり、3大都市を中心に3つ(あるいはそれ以上)の国家が存在することになる: バスラやバグダッド、そしてモースルの3大都市周辺には3つ(あるいはそれ以上)の国家が存在し、南部のシーア派地域はスンニ派とクルド人の北部から分離する。現在のイランとイラクの対立は、この二極化をさらに深める可能性がある。15

アラビア半島全体が、内外の圧力によって解体するのは自然な成り行きであり、特にサウジアラビアでは避けられない問題である。石油に基づく経済力が無傷のまま維持されるか、長期的に低下するかはともかく、現在の政治構造に照らせば、内部の亀裂と崩壊は明らかであり、自然な成り行きである。16

ヨルダンは、短期的には当面の戦略目標になるが、長期的にはそうではない。短期的には、ヨルダンが解体し、フセイン国王の長期にわたる支配が終わり、パレスチナ人に権力が移譲されても、長期的には真の脅威にはならないからだ。

イスラエルの政策は、戦争においても平和においても、現体制下のヨルダンを清算し、パレスチナ人多数派に権力を移譲することに向けられるべきである。ヨルダン川以東の体制を変えることは、ヨルダン川以西のアラブ人が密集する地域の問題を終結させることにもなる。戦争中であろうと平和な状況下であろうと、領土からの移住と領土における経済的な人口凍結は、ヨルダン川の両岸における来るべき変化を保証するものであり、私たちは、近い将来このプロセスを加速させるために積極的に行動すべきである。PLOの計画やイスラエル・アラブ人自身の計画(1980年9月のシェファアムル計画)を考えると、ヨルダン側にいるアラブ人とヨルダン川以西にいるユダヤ人の2つの国家を分離することなしに、この国に住み続けることは現状では不可能である。ヨルダンと海の間にユダヤ人の支配がなければ、自分たちの存在も安全もないことをアラブ人が理解したときにのみ、真の共存と平和がこの地に支配することになる。彼ら自身の国家と安全は、ヨルダンにおいてのみ彼らのものとなる。17

イスラエル国内では、67年の地域とその先の48年の地域との区別は、アラブ人にとっては常に無意味なものであり、今日ではもはや何の意味も持たない。この問題は、67年当時のような分け隔てなく、全体として捉えるべきである。将来、どのような政治状況や軍事体制になったとしても、土着のアラブ人の問題の解決は、ヨルダン川まで、そしてそれ以遠の安全な国境におけるイスラエルの存在を、この困難な時代、間もなく到来する核の時代における私たちの存立条件として、彼らが認めたときにのみもたらされることは明らかであろう。核時代には非常に危険な密集した海岸線に、ユダヤ人の4分の3を住まわせておくことは、もはや不可能である。

したがって、人口を分散させることは、最高度の国内戦略目標である。そうでなければ、われわれはいかなる国境においても存在しなくなる。ユダヤやサマリア、そしてガリラヤは、われわれの国家存続の唯一の保証であり、もしわれわれが山岳地帯で多数派にならなければ、われわれはこの国を支配することはできず、十字軍のように、もともと外国人であり、自分たちのものではなかったこの国を失うことになる。人口的、戦略的、そして経済的に国のバランスを取り戻すことが、今日の最高かつ中心的な目標である。ベエルシェバからガリラヤ上流に至る山岳地帯の分水嶺を掌握することは、今日ユダヤ人が誰もいないこの国の山岳地帯に定住するという主要な戦略的検討によって生み出された国家目標である。l8

東部戦線におけるわれわれの目標の実現は、まずこの内部戦略目標の実現にかかっている。この戦略目標を実現するための政治・経済構造の変革が、変革全体を達成する鍵である。政府が大きく関与する中央集権的な経済から、開放的で自由な市場へと転換し、米国の税金に依存する経済から、自らの手で真の生産的経済基盤を発展させる経済へと転換する必要がある。もし私たちがこの変化を自由かつ自発的に行うことができなければ、世界の発展、特に経済やエネルギー、政治の分野での発展、そしてイスラエルがますます孤絶することによって、この変化を押し進めるしかないだろう。l9

軍事的・戦略的な観点から見ると、米国を中心とする西側諸国は、ソ連の世界的な圧力に世界中で耐えることができず、イスラエルはそれゆえ、80年代には、軍事的・経済的ないかなる外国の援助も受けずに、単独で立ち向かわなければならないのであり、これは今日、われわれの能力の範囲内にあり、一切の妥協はない。20 世界の急激な変化は、世界のユダヤ人の状況にも変化をもたらし、イスラエルは最後の頼みの綱となるだけでなく、唯一の存続の選択肢となるだろう。米国のユダヤ人も、ヨーロッパやラテンアメリカの共同体も、将来も現在の形で存在し続けるとは考えられない。21

この国での我々の存在そのものは確かなものであり、武力でも裏切り(サダトの方法)でも、ここから我々を排除できる力はどこにもない。誤った「和平」政策とイスラエル・アラブ人および領土の問題の難しさはあるが、私たちは当面、これらの問題に効果的に対処することができる。
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最終所見
イスラエル・シャハク

このシオニストの中東計画が実現する可能性を理解するためには、3つの重要な点を明らかにしなければならない。

この計画の軍事的背景

この計画の軍事的条件については上に掲げたイーノンの論考では述べられていないが、イスラエル支配者層に対する非公開の会合で、この計画によく似たことが「説明」される機会が多く、この点が明らかにされている。イスラエルの軍隊は、そのあらゆる部門において、上述のような広い領土の実際の占領作業には不十分であると想定されている。実際、ヨルダン川西岸でパレスチナ人がひどく「不穏な状態」にあるときでさえ、イスラエル軍の兵力分布はあまりにも広がりすぎている。それに対する答えが、「ハダド部隊」や「村落協会」(「村落連盟」とも呼ばれる)によって統治する方法である。住民から完全に切り離された「指導者」の下にあるこれらの地方部隊は、封建的な組織や党の組織(たとえばファランヘ党*
のような組織)さえ持たない。イーノンが提案する「国家」とは、「ハダドランド」と「村社会」であり、その軍隊は間違いなく、よく似たものになるだろう。加えて、このような状況におけるイスラエルの軍事的優位は、現在よりもはるかに大きくなり、反乱のいかなる動きも、ヨルダン川西岸地区やガザ地区のように集団的屈辱によって、あるいは現在(1982年6月)のレバノンのように都市への砲撃と抹殺によって、あるいはその両方によって「処罰」されることになる。これを確実にするために、口頭で説明されたように、この計画では、必要な機動破壊力を備えたイスラエルの守備隊を、ミニ国家間の要所に設置することを求めている。実際、私たちはハダドランドでこのようなものを目にしてきたし、南レバノンでもレバノン全土でも、このシステムが機能する最初の例を間もなく目にすることになるだろう。
ファランヘ党*・・・レバノンにおけるキリスト教マロン派系の極右政党・民兵組織。正式名称はレバノン社会民主党である。現在の党首はサミー・ジュマイエル。 党名の「ファランヘ」は、スペインのファランヘ党と同様、ギリシャ語で大隊を意味するファランクスから採られたものである。アラビア語読みでカターイブ党と表記する。(ウィキペディア)

上記の軍事的前提や計画全体も、アラブ人が今以上に分裂し続け、彼らの間に真に進歩的な大衆運動が存在しないことに依存していることは明らかである。この2つの条件が取り除かれるのは、計画が十分に進んでからかもしれないし、予見できない結果を伴うかもしれない。

イスラエルでこの文書を公刊することが必要な理由

公刊の理由は、イスラエル・ユダヤ人社会の二面性にある: 自由と民主主義、とりわけユダヤ人のための自由と民主主義が、拡大主義と人種差別主義という二重構造になっているのだ。このような状況では、イスラエル系ユダヤ人のエリート(大衆はテレビやベギンの演説に従う)を説得しなければならない。上記のように、説得の第一歩は口頭で行われるが、それが不都合になる時が来る。より愚かな「説得者」や「説明者」(例えば中級将校で、通常、著しく愚かである)のために、文書資料を作成しなければならない。そして彼らは、多かれ少なかれ「それを学び」、他の人々に説教する。イスラエルは、そして20年代からのイシューブ(訳注:イスラエル建国前のパレスチナ地域におけるユダヤ人の共同体_ウィキペディア)さえも、常にこのように機能してきた。私自身、(「反対派」になる前の)1956年の戦争の1年前に、戦争の必要性が私や他の人々に説明され、1965年から67年にかけては、「機会があれば西パレスチナの残りの地域」を征服する必要性が説明されたことをよく覚えている。

そのような計画を公刊しても外部からの特別な危険は一切ないと仮定した理由は?

このようなリスクは、イスラエル国内の信念をもった反対勢力が非常に弱い限り(レバノン戦争の結果、状況は変わるかもしれない)、2つの情報源からもたらされる可能性がある: パレスチナ人を含むアラブ世界と米国である。アラブ世界はこれまで、イスラエル・ユダヤ人社会を詳細かつ合理的に分析する能力がまったくないことを示してきた。このような状況では、イスラエルの膨張主義(それは十分に現実的である)の危険性を叫ぶ人々でさえ、事実に基づいた詳細な知識のためではなく、神話を信じているためにそうしているのだ。その格好の例は、イスラエル国会の壁にあるとされる聖書の節に関する存在しない文字に対する非常に頑固な信念だ。もう1つの例は、何人かの重要なアラブの指導者によって行われたが完全に誤った宣言で、イスラエルの旗の青い2本のストライプがナイル川とユーフラテス川を象徴していると言うのだが、実際にはユダヤ教の祈りのショール(タリート)のストライプから取られている。イスラエルの専門家は、全体として、アラブ人は将来に関する真剣な議論に注意を払わないだろうと仮定しており、レバノン戦争はそれを証明した。なぜ彼らは他のイスラエル人を説得するための古い方法を続けないのだろうか?

アメリカでも、少なくともこれまでは、よく似た状況が存在していた。多少なりともまじめな論者は、イスラエルに関する情報や意見の多くを2つの情報源から得ている。ひとつは、「リベラル」なアメリカの新聞に掲載された記事で、ほとんどすべてがユダヤ人のイスラエル賛美者によって書かれたものである。(実際、彼らの中で「反スターリン主義者」とも主張する人々は、現実にはスターリンよりもスターリン主義者であり、イスラエルはまだ失敗していない彼らの神である)。このような批判的な崇拝の枠組みでは、イスラエルは常に「善意」を持ち、「過ちを犯す」だけであり、したがってそのような計画は議論の対象にはならない。もうひとつの情報源であるエルサレム・ポスト紙も同様の方針である。したがって、イスラエルが世界に対して本当に「閉ざされた社会」であるという状況が存在する限り、世界は目を閉じようとしているのだから、このような計画を発表し、実現し始めることさえ現実的であり、可能なのである。

イスラエル・シャハク、1982年6月17日 エルサレム

翻訳者について

イスラエル・シャハク(Israel Shahak)はエルサレムのヘブライ大学で有機化学を教える教授であり、イスラエル人権連盟の会長でもある。ヘブライ語新聞の主要記事を集めた『シャハク・ペーパーズ』を出版し、『ユダヤ国家の非ユダヤ人』など数多くの記事や著書がある。最新刊は『イスラエルの世界的役割』: 1982年にAAUGより出版。イスラエル・シャハク:(1933-2001)

原注
1. アメリカの大学フィールドスタッフ レポートNo.33、1979年 この調査によると、世界の人口は2000年には60億人になるという。現在の世界人口の内訳は以下の通りである: 中国は9億5800万人、インドは6億3500万人、ソ連は2億6100万人、アメリカは2億1800万人、インドネシアは1億4000万人、ブラジルと日本はそれぞれ1億1000万人である。国連人口基金が1980年に発表した数字によれば、2000年には人口500万人以上の都市が50になるという。その時、第三世界の人口は世界人口の80%を占めることになる。米国国勢調査局のジャスティン・ブラックウェルダー局長によれば、世界人口は飢餓のために60億人に達しないという。

2. ソ連の核政策は、2人のアメリカ人ソビエト学者によってよくまとめられている: ジョセフ・D・ダグラスとアモレッタ・M・ホーバー『ソ連の核戦争戦略』(スタンフォード、カリフォルニア州、フーバー研究所出版局、1979年)である。ソ連では、核戦争に関するソ連のドクトリンを詳述した記事や書籍が毎年何十、何百と出版されており、英語に翻訳され、米空軍によって出版された文書も大量にある: 米空軍:戦争と陸軍に関するマルクス・レーニン主義:ソビエトの見解」モスクワ、1972年、;米空軍:ソビエト国家の軍隊」モスクワ、1975年、A.グレチコ元帥著。この問題に対するソ連の基本的な考え方は、1962年にモスクワで出版されたソコロフスキー元帥の著書に示されている: V. D. ソコロフスキー元帥『軍事戦略、ソ連のドクトリンと概念』(ニューヨーク、プレーガー、1963 年)。

3. 世界のさまざまな地域におけるソ連の意図は、ダグラスとヘーバーの著書(同書)から描くことができる。その他の資料としては マイケル・モーガン、『将来における戦略兵器としてのソ連の鉱物』、国防と外交、ワシントンD.C. 1979年12月。

4. セルゲイ・ゴルシコフ艦隊提督『シーパワーと国家』ロンドン、1979年。Morgan, loc. cit. ジョージ・S・ブラウン大将(米空軍)空軍大将(C-JCS)、1979年度の米国の防衛態勢に関する議会への声明、103頁;国家安全保障会議、非燃料鉱物政策の見直し、(ワシントンD.C.、1979年);ドリュー・ミドルトン、ニューヨーク・タイムズ、(9/15/79);タイム、9/21/80。

5. エリー・ケドゥーリ『オスマン帝国の終焉』(『現代史研究』第3巻第4号、1968年)。

6. Al-Thawra, Syria 12/20/79, Al-Ahram, 12/30/79, Al Ba'ath, Syria, 5/6/79. アラブ人の55%が20歳以下、70%がアフリカ在住、15歳以下のアラブ人の55%が失業中、33%が都市部在住、オデッド・イノン「エジプトの人口問題」『季刊エルサレム』第15号、1980年春。

7. E. Kanovsky『アラブの持てる者と持たざる者』季刊エルサレム第1号、1976年秋、シリア、アル・バース、79年5月6日。

8. イツハク・ラビン元首相はその著書の中で、67年6月以降の中東におけるアメリカの政策設計はイスラエル政府に責任があると述べている。なぜなら、イスラエル政府は領土の将来について優柔不断であり、決議242号の背景を作り、その12年後にはキャンプ・デービッド合意やエジプトとの和平条約を結んで以来、その立場には一貫性がなかったからである。ラビンによれば、1967年6月19日、ジョンソン大統領はエシュコル首相に書簡を送り、その中で新領土からの撤退については何も触れていなかったが、まさに同日、政府は和平と引き換えに領土を返還することを決議したという。ハルツームでのアラブ決議(67年9月1日)の後、政府は立場を変更したが、6月19日の決定に反して米国には通知せず、米国はイスラエルが領土を返還する用意があるという以前の理解に基づいて、安保理で242を支持し続けた。この時点ですでに、米国の立場とイスラエルの政策を変えるには遅すぎた。ここから、後にキャンプ・デービッドで合意されたように、242条に基づく和平協定への道が開かれたのである。イツハク・ラビンを参照。Pinkas Sherut, (Ma'ariv 1979) pp.

9. 外交・防衛委員会委員長のモシェ・アレンス教授は、インタビュー(Ma'arriv,10/3/80)で、イスラエル政府はキャンプ・デービッド合意前に経済計画を準備することができず、合意の代償に驚いたと主張した。

前財務大臣のイーガル・ホルヴィッツ氏は、油田からの撤退がなければ、イスラエルは国際収支がプラスになっていたと述べた(80年9月17日)。その同じ人物が、その2年前に、(自分が撤退した)イスラエル政府が自分の首に縄をかけたと言ったのだ。彼はキャンプ・デービッド協定に言及していた(Ha'aretz, 11/3/78)。和平交渉の全過程において、専門家も経済アドバイザーも相談に乗らず、経済学の知識も専門知識もない首相自身が、誤った主導権によって、われわれへの尊敬と米国のわれわれに対する尊敬を維持したいという希望から、われわれに無償ではなく融資を行うよう米国に要請した。Ha’aretz79年5月1日号参照。Jerusalem Post, 9/7/79. 財務省の上級コンサルタントだったアサフ・ラジン教授は、交渉の進め方を強く批判した(Ha'aretz, 5/5/79. Ma'ariv, 9/7/79. 油田とイスラエルのエネルギー危機に関する問題については、これらの問題に関する政府顧問エイタン・アイゼンバーグ氏とのインタビュー(Ma'arrive Weekly, 12/12/78)を参照。キャンプ・デービッド協定とスデ・アルマの避難に自ら署名したエネルギー相は、それ以来、石油供給の観点から見たわが国の状況の深刻さを何度も強調している(Yediot Ahronot, 7/20/79参照)。モダイ・エネルギー相は、キャンプ・デービッドとブレア・ハウスの交渉中、政府は石油の問題についてモダイにまったく相談しなかったとさえ認めている。Ha'aretz, 8/22/79.

10. 多くの情報源は、エジプトにおける軍備予算の増大と、和平が得られたとされる国内需要よりも平和時代の予算で軍を優先させる意図について報告している。マムドゥ・サラーム元首相の77年12月18日のインタビュー、アブド・エル・サイエ財務相の78年7月25日のインタビュー、和平にもかかわらず軍事予算が最優先されることを明確に強調した78年12月2日付のアル・アクバル紙を参照のこと。これは、ムスタファ・ハリル元首相が78年11月25日に国会に提出した内閣のプログラム文書の中で述べていることである。英訳、ICA, FBIS, Nov. 27. 1978, pp.

これらの情報源によると、エジプトの軍事予算は1977年度から1978年度にかけて10%増加し、そのプロセスは現在も続いている。サウジアラビアの情報筋によると、エジプトは今後2年間で軍事予算を100%増やす計画だという。

11. ほとんどの経済予測は、1982年までにエジプトが経済再建を果たせるかどうかに疑問を投げかけていた。経済情報ユニット(Economic Intelligence Unit)1978年補遺「エジプト・アラブ共和国」参照; エドワード・カノフスキー(E. Kanovsky)「中東における最近の経済動向」(Occasional Papers, The Shiloah Institution, June 1977); カノフスキー「60年代半ば以降のエジプト経済、ミクロ部門」(Occasional Papers, June 1978); ロバート・マクナマラ(Robert McNamara)世界銀行総裁(Times, London, 1/24/78.

12. ロンドンの戦略研究所の研究者による比較参照。この研究はテルアビブ大学戦略研究センターで発表されたもの。および英国の科学者デニス・チャンプリンによる研究(Military Review, Nov. 1979, ISS: The Military Balance 1979-1980, CSS; Security Arrangements in Sinai...by Brig. Gen. (Res.) A Shalev, No.3.0 CSS; The Military Balance and the Military Options after the Peace Treaty with Egypt, by Brig. Gen. (Res.) Y. Raviv, No.4、 1978年12月、およびEl Hawadeth, London, 3/7/80; El Watan El Arabi, Paris, 12/14/79を含む多くの報道なども参照のこと。

13. エジプトにおける宗教的混乱とコプト教徒とイスラム教徒の関係については、クウェート紙El Qabas(80年9月15日付)に掲載された一連の記事を参照のこと。イギリス人作家アイリーン・ビーソン(IreneBeeson)は、イスラムとコプトの間の軋轢について報告している: Irene Beeson, Guardian, London, 6/24/80, and Desmond Stewart, Middle East Internmational, London 6/6/80. その他の報道については、Pamela Ann Smith, Guardian, London, 12/24/79; The Christian Science Monitor 12/27/79; Al Dustour, London, 10/15/79; El Kefah El Arabi, 10/15/79を参照のこと。

14. Arab Press Service, Beirut, 8/6-13/80. The New Republic, 8/16/80, Der Spiegel as cited by Ha’aretz, 3/21/80, and 4/30-5/5/80; The Economist, 3/22/80; Robert Fisk, Times, London, 3/26/80; Ellsworth Jones, Sunday Times, 3/30/80.

15. J.P. Peroncell Hugoz, Le Monde, Paris 4/28/80; Dr. Abbas Kelidar, Middle East Review, Summer 1979;
Conflict Studies, ISS, July 1975; Andreas Kolschitter, Der Zeit, (Ha’aretz, 9/21/79) Economist Foreign Report, 10/10/79, Afro-Asian Affairs, London, July 1979.

16. Arnold Hottinger, “The Rich Arab States in Trouble,” The New York Review of Books, 5/15/80; Arab Press Service, Beirut, 6/25-7/2/80; U.S. News and World Report, 11/5/79 as well as El Ahram, 11/9/79; El Nahar El Arabi Wal Duwali, Paris 9/7/79; El Hawadeth, 11/9/79; David Hakham, Monthly Review, IDF, Jan.-Feb. 79.

17. As for Jordan’s policies and problems see El Nahar El Arabi Wal Duwali, 4/30/79, 7/2/79; Prof. Elie Kedouri, Ma’ariv 6/8/79; Prof. Tanter, Davar 7/12/79; A. Safdi, Jerusalem Post, 5/31/79; El Watan El Arabi 11/28/79; El Qabas, 11/19/79. As for PLO positions see: The resolutions of the Fatah Fourth Congress, Damascus, August 1980. The Shefa’amr program of the Israeli Arabs was published in Ha’aretz, 9/24/80, and by Arab Press Report 6/18/80. For facts and figures on immigration of Arabs to Jordan, see Amos Ben Vered, Ha’aretz, 2/16/77; Yossef Zuriel, Ma’ariv 1/12/80. As to the PLO’s position towards Israel see Shlomo Gazit, Monthly Review; July 1980; Hani El Hasan in an interview, Al Rai Al’Am, Kuwait 4/15/80; Avi Plaskov, “The Palestinian Problem,” Survival, ISS, London Jan. Feb. 78; David Gutrnann, “The Palestinian Myth,” Commentary, Oct. 75; Bernard Lewis, “The Palestinians and the PLO,” Commentary Jan. 75; Monday Morning, Beirut, 8/18-21/80; Journal of Palestine Studies, Winter 1980.

18. Prof. Yuval Neeman, “Samaria–The Basis for Israel’s Security,” Ma’arakhot 272-273, May/June 1980; Ya’akov Hasdai, “Peace, the Way and the Right to Know,” Dvar Hashavua, 2/23/80. Aharon Yariv, “Strategic Depth–An Israeli Perspective,” Ma’arakhot 270-271, October 1979; Yitzhak Rabin, “Israel’s Defense Problems in the Eighties,” Ma’arakhot October 1979.

19. Ezra Zohar, In the Regime’s Pliers (Shikmona, 1974); Motti Heinrich, Do We have a Chance Israel, Truth Versus Legend (Reshafim, 1981).

20. Henry Kissinger, “The Lessons of the Past,” The Washington Review Vol 1, Jan. 1978; Arthur Ross, “OPEC’s Challenge to the West,” The Washington Quarterly, Winter, 1980; Walter Levy, “Oil and the Decline of the West,” Foreign Affairs, Summer 1980; Special Report–“Our Armed Forees-Ready or Not?” U.S. News and World Report 10/10/77; Stanley Hoffman, “Reflections on the Present Danger,” The New York Review of Books 3/6/80; Time 4/3/80; Leopold Lavedez “The illusions of SALT” Commentary Sept. 79; Norman Podhoretz, “The Present Danger,” Commentary March 1980; Robert Tucker, “Oil and American Power Six Years Later,” Commentary Sept. 1979; Norman Podhoretz, “The Abandonment of Israel,” Commentary July 1976; Elie Kedourie, “Misreading the Middle East,” Commentary July 1979.

21. Ya'akov Karoz, Yediot Ahronot, 10/17/80 が発表した数字によると、1979年に世界で記録された反ユダヤ主義的事件の総計は、1978年に記録された金額の2倍であった。ドイツ、フランス、イギリスでは、この年の反ユダヤ主義事件の数はその何倍もあった。アメリカでも、この記事で報告された反ユダヤ主義事件が急増している。新しい反ユダヤ主義については、L. Talmon, "The New Anti-Semitism," The New Republic, 9/18/1976; Barbara Tuchman, 『彼らが井戸に毒を入れた(They poisoned the Wells』 Newsweek 2/3/75 を参照。

アル・シファ病院、ハマスのトンネル、イスラエルのプロパガンダ

<記事原文 寺島先生推薦>
AL-SHIFA HOSPITAL, HAMAS’S TUNNELS, AND ISRAELI PROPAGANDA
イスラエルがアル・シファ病院をめぐるプロパガンダ戦争を展開する一方で、また新たな医療施設を包囲攻撃している。
筆者:ジェレミー・スケイヒル (Jeremy Scahill)
出典:インターセプト   2023年11月21日
<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月17日


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2023年11月3日、ガザ市のアル・シファ病院入り口へのイスラエル軍の攻撃後、路上に横たわる死傷者たち。写真 Ali Jadallah/Anadolu via Getty Images


ガザでの死者が、5,500人以上の子どもを含む13,000人を超える中で、イスラエル国防軍のプロパガンダ機械は、アル・シファ病院を、不当行為を正当化するための主要な見世物として利用しようとしている。もしイスラエル国防軍が、ハマスがこの病院を軍事作戦の拠点として使用したと世界に納得させることができれば、難民キャンプ、学校、病院への攻撃といった絨毯爆撃のすべてが、テロリストの敵に対する正当な戦争行為として見なされるようになるという信念が、イスラエルの戦略の中心にあることは明らかだ。

イスラエルもホワイトハウスも、ジョー・バイデン大統領個人も含めて、アル・シファ病院の地下に巨大な決定的証拠が眠っているという主張の信憑性に賭けている。米国は、自らの主張の裏付けをイスラエルだけに頼っているわけではないと公言した。米国もイスラエルも、ガザ地区と同じくらい長い間、敵対勢力の犯罪疑惑について嘘をついてきた実績があるという事実はさておき、重要な問題は、アル・シファの地下にトンネルや部屋が存在するかどうかではなく、米国やイスラエルが主張しているように、それらがハマスによる明確な軍事的・戦闘的目的のために使用されていたかどうかである。

ハマスが主導した10月7日のイスラエル空襲で、845人以上のイスラエル市民と約350人の兵士・警察官が死亡し、240人以上が人質に取られて以来、イスラエル国防軍はハマスの地下インフラに強い関心を寄せてきた。ハマスの大本営が広大なアル・シファ病院の敷地内またはその地下にあるというイスラエルの主張は目新しいものではない。しかし、この熱烈な焦点化は、イスラエルが、ガザにおける民間人の死と破壊の無差別攻撃に対する批判を押し返すために、この問題を中心的な争点にしようとしていることの表れである。イスラエルは、アル・シファ病院をそのプロパガンダ戦争におけるロールシャッハ・テストにしようとしており、ジャーナリスト、国連、医師、看護師を、ハマスがこの病院を軍事司令部として使用していることを世界から隠すための陰謀の一端を担っていると非難している。

現在に至るまで、この宣伝キャンペーンはうまくいっていない。

イスラエル国防軍は当初、アル・シファ病院は事実上ハマスのペンタゴン(国防総省)である(それは、バイデン政権によって公に支持されたものである)と主張して、第一弾の証拠とされるものを発表した。それは、少しの自動小銃や、その一部はMRI(磁気共鳴画像法)装置の後ろに置かれたが、そして都合よくハマスのロゴ入りの戦闘用ベストぐらいからなっていた。彼らは、アル・シファ病院がハマスの現在の活動にとって重要であるという大々的な主張を広めたが、イスラエルの最も熱心な支持者を除いて、ほとんど誰も納得させなかったようだ。結局のところ、イスラエル国防軍はすでに、ハマスが使用する高度な地下指揮統制施設の描写と称する、巧妙な3Dビデオモデルを一般に公開していたが、イスラエルの最初の売り込みは失敗に終わった。

イスラエルが病院にハマスの重要な基地がある証拠だと主張するビデオを作ろうとした他のいくつかの努力も、パレスチナ人に対するイスラエルの作戦に関するイスラエル軍の主張を歴史的に事実として報道してきた欧米のメディアを含め、広く嘲笑と懐疑の目で見られてきた。IDF(イスラエル国防軍)のビデオはソーシャル・メディア上で嘲笑され、ジェラルド・リベラがアル・カポネの地下金庫に隠された秘密を明らかにすると約束し、1986年に全国放送された特番の失敗の類いだとされた。

アル・シファのスタッフや、そこで何年も働いていたヨーロッパ人医師は、この病院がハマスによって軍事目的で使われていることを強く否定している。ハマスもそれを否定している。

日曜日にイスラエルは、アル・シファの地下10メートルにある55メートルの要塞化されたトンネルを記録していると主張する2つの新しいビデオを公開した。おそらく遠隔操縦車を使って撮影されたと思われるこのカメラの映像の最後には、ハマスの指揮統制センターとされる場所を突破しようとした場合、ハマスがイスラエル国防軍を攻撃できるよう、爆破防止扉と銃撃孔が備え付けられているとイスラエルは述べている。「この調査結果は、病院群の建物がハマスのテロ組織、テロ活動のためのインフラとして使われていることを疑う余地なく証明している。これは、ハマス・テロ組織がガザ地区の住民を、その殺人テロ活動のための人間の盾として利用していることのさらなる証拠である」とイスラエル軍は声明(statement)で述べた。

ガザに大規模な地下トンネルがあることは周知の事実だ。過去20年間、イスラエルは地下トンネル網の一部を破壊することを目的とした作戦を繰り返し実施し、その成果をしばしば自慢してきた。ガザ南部からエジプトに伸びるトンネルは、長年にわたって密輸路として機能してきた。イスラエルは、その主な目的は武器の移動だと主張したが、他のオブザーバーは、封鎖されたガザの住民に食料やその他の物資を密輸するための生命線だと表現した。どちらの主張も真実である可能性が高い。近年、イスラエルもエジプトも、自国の領土に侵入したトンネルを封鎖したり、水没させたりする措置をとってきた。イスラエルは、ハマスや他の武装勢力がイスラエルに侵入して作戦を行うのを阻止するため、ガザとの国境周辺に地下コンクリート壁や地中センサーを設置したと伝えられている。2006年、ハマスの工作員はこのようなトンネルを使い、イスラエル国防軍の兵士ギラッド・シャリットを拘束した後、ガザに連れてきた。シャリットは2011年に捕虜交換の一部として解放された。

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2008年12月5日、ラファのエジプト・ガザ国境下のトンネルを通って羊をガザ地区に密輸するパレスチナ人。写真: サイード・ハティブ(Said Khatib)/AFP via Getty Images


アル・シファ病院のトンネルはイスラエルによって建設された

アル・シファ病院の地下にトンネルと部屋があることもよく知られている。イスラエルが1980年代初頭に建設したことを認めているからだ。イスラエル・メディアの報道によれば、地下施設はテルアビブの建築家ガーション・ジッポーとベンジャミン・イデルソンによって設計された。「イスラエルは病院施設をアメリカの支援のもとで修復し、拡大した。その計画には地下のコンクリートの床の掘削も含まれていた」、とイスラエル建築アーカイブの創設者であるズヴィ・エルヒヤニ氏は、イスラエルの『Ynetnews』に書いている。

地下の施設建設は、イスラエルの公共事業局から依頼されたアル・シファ病院の近代化と拡張工事の一部であった。イスラエルの新聞『ハアレツ(Haaretz)』の報道によれば、「領土内のイスラエル民政局は、病院の洗濯場や様々な管理サービスを収容する大きなセメントの地下を持つ病院複合体の建物番号2を建設した」。アル・シファの地下の部屋とトンネルは1983年に完成したと伝えられている。タブレット誌はその空間を「安全な地下手術室とトンネル網」と表現した。

1990年代から父親の建築事務所で働き始めたジッポーの息子バラクは、1980年代のアル・シファ病院の建設中、イスラエルの建設業者は建築現場への攻撃を防ぐための警備員としてハマスを雇っていたと語った。

「数十年前、私たちはこの場所を運営していました。ですから、私たちは彼らを助けました。数十年前、何十年か前、おそらく40年前ですが、私たちは彼らがこの限られた敷地の中で病院のもっと広いスペースを確保するために、これらの地下施設建設を手伝ったのです」と、イスラエルの元首相エフード・バラクは、CNNの司会者クリスティアン・アマンプールに語った。

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2023年11月7日、イスラエルの攻撃32日目、ガザのデイル・アル・バラで、マスラ家の建物を空爆が直撃した後、市民防衛チームと市民が捜索・救助活動を続けている。(写真:Ashraf Amra/Anadolu via Getty Images)

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2006年にハマスがガザで権力を掌握した後、アル・シファの地下にあるイスラエルが建設した施設をハマスが引き継ぎ、近代化・拡張して本格的な指揮統制施設にしたと、イスラエルは主張してきた。この間、一部の国際ジャーナリストは、病院の敷地内でハマス幹部との会合に呼ばれたことを証言しており、イスラエルは長い間、ここを重要なハマス本部と呼んできた。2014年のガザ紛争中、ワシントン・ポスト紙のウィリアム・ブース記者は、アル・シファ病院は「ハマスの指導者たちの事実上の司令部となっており、廊下や事務所で彼らを見かけることができる」、と主張した。これらの主張が真実だと仮定すれば、イスラエルがジャーナリストを組織的に暗殺するキャンペーンを展開しているときに、ハマスが民間病院でジャーナリストと会うことを選ぶのは恥ずべきことであり、論理的なことでもある。しかし、それは恥ずべきことかもしれないが、これは病院の地下にある秘密施設を軍の指揮統制センターとして使用することとはまったく異なる。

イスラエルがアル・シファの地下にトンネルや部屋を作ったという事実は何の証明にもならない。特に紛争地域では、イスラエルの病院を含め、多くの近代的な病院は、地下に生活基盤施設(インフラ)を持っている。ハマスのメンバーが病院内で目撃されたという過去の報告もない。イスラエルはもっと説得力のある証拠を提示する必要がある。特に、この特定の戦争中にこの場所が軍事的、作戦的に非常に重要であったという主張を裏付けるものだ。

そのような証拠の基準は、特にイスラエルの作戦によって引き起こされた民間人の死と苦しみの程度から、極めて高いものであるはずだ。バイデン政権は、イスラエルがアル・シファ病院を急襲するのに先制的援護の申し立てを行なった。しかし、その具体的な主張を裏付ける反論の余地のない明確な証拠を提出する責任がバイデン政権にはある。

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2023年11月9日、ガザのガザ市で34日目にイスラエルが攻撃した後、アル・シファ病院近くのナシール通りで目撃された死体。(Photo by Ali Jadallah/Anadolu via Getty Images) 写真 アリ・ジャダラ(Ali Jadallah)/アナドル(Anadolu) via Getty Images


プロパガンダvs国際法

イスラエルは、アル・シファ病院をめぐるプロパガンダ戦争を展開する一方で、ガザ北部に残る唯一の医療施設であるインドネシア病院を包囲している。地元当局者によれば、イスラエル国防軍の砲撃によって、この病院では少なくとも12人が死亡したという。インドネシアのレトノ・マルスディ外相は、イスラエルが国際法に違反していると非難した。「すべての国、特にイスラエルと密接な関係にある国は、イスラエルにその残虐行為をやめるよう、あらゆる影響力と能力を行使しなければならない」、と彼女は月曜日(11月20日)に述べた。

国際人道法は、病院が紛争の当事者として「敵に有害な行為を行う」ために使用されているかどうか疑わしい場合でも、その病院は保護される場所であることを明確にしている。仮に病院の保護的地位が悪用されたという明確な証拠があったとしても、病院に対する軍事行動にはさまざまな規則があり、民間人の患者は保護された個人であることに変わりはない。

「たとえ建物が特別な保護を失ったとしても、中にいる人たちは全員、保護されなければならない」、とラトガース・ロー・スクールのジョン・O・ニューマン判事はワシントン・ポスト紙のインタビューで語った。

「たとえ戦闘員が潜伏している事務所が建物のどこかにあったとしても、攻撃軍は病院の人道的機能を継続させる義務がある。

関連記事:バイデンは、ガザで死んだ子どもたちに永遠につきまとわれるはずだ。

アル・シファ病院の職員は、イスラエルによる包囲の結果、電力が著しく制限され、保育器が使えなくなった新生児集中治療室の赤ちゃん数人を含め、病院の民間人の死を引き起こしたのはイスラエルだとあからさまに非難している。11月18日、世界保健機関(WHO)率いる国連人道支援チームがアル・シファ病院を訪れた。WHOによると、訪問団のスタッフはこの病院を「死の地帯」と表現し、声明で「砲撃や銃撃の跡が見られた。チームは病院の入り口にある集団墓地を目撃し、80人以上がそこに埋葬されていると聞いた」と述べた。

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イスラエルと過激派組織ハマスの戦闘が続く中、ガザ市のアル・シファ病院から避難した未熟児を、ガザ地区南部のラファにある病院からエジプトに移送する準備をするパレスチナの医療関係者(2023年11月20日撮影)。写真: サイード・カティブ/AFP via Getty Images

イスラエルはまた、10月7日にハマスがイスラエルに突入した直後に記録されたアル・シファ病院内のCCTV映像を公開した。その映像には、武装した戦闘員がタイ人とネパール人の2人の人質を連れて病院に入っていく様子が映っているという。映像には、負傷して担架に乗せられた人質の一人が映っている。

この映像が本物で、武装したハマスの過激派が負傷した人質を治療のために連れてきたとすると、イスラエルはこの場合、病院のスタッフはどうすべきだったと考えているのだろうか?医師はすべての負傷者を治療する倫理的義務があり、警察や諜報機関としての役割を果たすのが仕事ではない。

「イスラエル占領軍が報告したことを考えれば、保健省の病院は、性別や人種に関係なく、医療サービスを受けるべきすべての人に医療サービスを提供していることが確認された」と、ガザ保健省はビデオ公開後の声明で述べた。同省はさらに、動画が本物であるかどうかを確認することはできないと付け加えた。

ハマスのイザット・アル=リシュク報道官は、ハマスが10月7日に負傷した人質をアル=シファ病院に連れて行ったことは以前から認めていたと述べた。「我々はそのすべての映像を公開したのに、(イスラエル国防軍の)報道官は何か信じられないものを発見したかのように振る舞っている」と語った。リシュク報道官はまた、ハマスがアル・シファ病院に連れて行った人質の何人かはイスラエルの攻撃で負傷したと主張した。イスラエルはまた、人質の何人かは病院の敷地内でハマスに殺害されたと証拠もなしに主張しているが、イスラエル国防軍自身の地図によれば、彼らの遺体はアル・シファ病院の敷地外で発見されたものである。

イスラエル政府とバイデン政権の責任者には、ハマスがアル・シファ病院を利用したという大げさな主張を証明する責任がある。この証拠は、アル・シファ病院の患者、医師、看護師に加えられたすべての苦痛と死が、比例*と道徳の基本原則だけでなく、法の下でも正当化されないほどほど強力なものでなければならない。このような結論は、イスラエルによる病院包囲によって引き起こされた民間人の苦しみという文脈に置き換えれば、理解できないものである。
*比例(原則):達成されるべき目的とそのために取られる手段としての権利・利益の制約との間に均衡を要求する原則。「雀を撃つのに大砲を使ってはならない」という言葉でしばしば説明される。

もしハマスが意図的に病院の保護された地位を悪用し、実際に病院の地下に隠された司令部を積極的に運営していたことが決定的に証明されれば、そうしたことで戦争犯罪の罪に問われるべきだ。罪のない民間人ではなく、ハマスがこれらの行動の責任を問われるべきだ。

同時に、イスラエルが、ガザで最も重要な病院をハマスの秘密軍事拠点と見せかける執拗なキャンペーンで詐欺を働いたことが証明されれば、世界はイスラエル政府高官に、この重大かつ致命的なプロパガンダの責任を問うべきだ。バイデン政権(大統領自身を含む)もまた、米国の役割に責任を負わなければならない。

イスラエルは、ハマスが市民の間に隠れ、市民を盾にしているという非難によって、ガザにおける産業レベルの市民殺害を正当化しようとしている。しかし、イスラエルを代表する人権団体ベツェレム(B'Tselem)は、イスラエル国防軍がこのような活動を何十年にもわたって行なってきたことを記録している。「1967年の占領開始以来、イスラエル治安部隊はヨルダン川西岸地区とガザ地区のパレスチナ人を人間の盾として繰り返し利用し、住民の命にかかわる軍事行動を命じてきた」と2017年の報告書は述べている。

大局的に見れば、ハマスとアル・シファ病院をめぐる論争は、イスラエルのガザに対する戦争に関する包括的で議論の余地のない事実から目をそらす役割を果たしている。つまり、米国の武器や、資金援助、政治的支援を利用して、イスラエルはガザの市民に対して暴力的な集団懲罰の軍事行動を行なったのである。

「文明の衝突」のためのチェス盤準備:「新中東」を分割し、征服し、そして支配せよ

<記事原文 寺島先生推薦>
Preparing the Chessboard for the “Clash of Civilizations”: Divide, Conquer and Rule the “New Middle East”
筆者:マフディー・ダリウス・ナゼムロアヤ(Mahdi Darius Nazemroaya)
出典:Global Research  2023年11月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月14日





マフディー・ナゼムロアヤによるこの入念に調査された記事は最初、2011年11月にGlobal Researchによって発表された。**


「アラブの春」という言葉は、ワシントンやロンドン、パリ、およびブリュッセルなどの遠隔のオフィスで考案されたキャッチフレーズであり、この地域について一部の表面的な知識以外、アラブについてほとんど知らない個人やグループによって作り出された。アラブ民族の間で展開しているのは、当然ながら、いろいろなものの混合体。反乱もあれば、日和見主義もある。革命があれば、反革命も常に存在する。

アラブ世界における騒乱は、アラブの「目覚め」でもない。そのような言葉を使えば、独裁と不正義が彼らを取り巻いている間、アラブは常に眠っていたということになってしまう。

実際のアラブ世界は、トルコ・アラブ・イラン世界というより広範な世界の一部であり、そこで頻繁に発生する反乱はアラブの独裁者たちによって、アメリカやイギリス、そしてフランスなどの国々との協調によって鎮圧されてきた。これらの大国の干渉が常に民主主義に対する対抗勢力として機能しており、今後もそのような状況が続くだろう。



分割して支配せよ:最初の「アラブの春」はどのように操られたか

中東の再編成計画は、第一次世界大戦の数年前から始まっていた。しかし、こうした植民地支配の計画が目に見える形で現れたのは、第一次世界大戦中のオスマン帝国に対する「アラブの大反乱」によってであった。

イギリスやフランス、そしてイタリアは、アルジェリアやリビア、エジプト、そしてスーダンのような国々でアラブ人が自由を享受するのを妨げてきた植民地大国であったにもかかわらず、これらの植民地大国は自らをアラブ解放の友であり同盟者であるかのように装っていた。

「アラブの大反乱」の間、イギリスとフランスはアラブ人を実際に足軽として使い、オスマン帝国に対抗し、自分たちの地政学的陰謀を推し進めるために利用した。ロンドンとパリの間で交わされたサイクス=ピコ秘密協定がその例だ。フランスとイギリスは、オスマン・トルコのいわゆる「抑圧」からのアラブ解放という構想を売り込むことで、アラブ人を利用し、操ることに成功したにすぎない。

実際のところ、オスマン帝国は多民族帝国だった。すべての民族に地域的・文化的な自治権を与えていた。しかし、それは操作されてトルコ的な存在になる方向に向けられた。

オスマン帝国のアナトリアで起こったアルメニア人大量虐殺も、イラクでキリスト教徒が標的にされている現代と同じ文脈で分析しなければならない。アルメニア人大量虐殺はオスマン帝国やアナトリア、そしてオスマン帝国の市民を分断するために外部の行為者が仕組んだものだったのだ。

オスマン帝国の崩壊後、アラブ人の自由を否定し、アラブ民族の間に不和の種をまいたのはロンドンとパリだった。地元の腐敗したアラブの指導者たちもまた、このプロジェクトのパートナーであり、彼らの多くは英仏の顧客となることに喜びを感じていた。同じ意味で、「アラブの春」は今日(こんにち)も操作の対象となっている。アメリカやイギリス、フランス、そしてその他の国々は、腐敗したアラブの指導者や人物の助けを借りて、アラブ世界とアフリカを再編成しようとしているのだ。


イーノン・プラン:混沌からの秩序・・・

イーノン・プランは、中東におけるイギリスの策略を引き継いだもので、イスラエルの地域的優位を確保するためにイスラエルが仕組んでいる戦略である。イスラエルが主張し、操作しているのは、周辺のアラブ諸国をより小さく弱い国家にバルカン化することによって、その地政学的環境を是が非でも再構成しようとしていることだ。

イスラエルの戦略家たちは、イラクをアラブ国家からの最大の戦略的問題と見ていた。イラクを中東とアラブ世界のバルカン化の目玉として考えたのはこのためである。イラクでは、イーノン・プランの概念に基づき、イスラエルの戦略家たちはイラクをクルド人国家と、シーア派イスラム教徒とスンニ派イスラム教徒の2つのアラブ国家に分割することを求めた。これを確立するための第一歩はイラクとイランの戦争であり、イーノン・プランで言われているのはこれだ。

2008年のアトランティック誌(The Atlantic)と2006年の米軍アームド・フォース・ジャーナル誌(Armed Forces Journal)は、いずれもイーノン・プランの骨子に忠実な地図を広く流布した。バイデン・プランも求めているイラクの分割はさておき、イーノン・プランはレバノンやエジプト、そしてシリアの分割を求めている。イランやトルコ、ソマリア、そしてパキスタンの分割も、すべてこれらの見解に沿ったものである。イーノン・プランはまた、北アフリカでの分割を求め、エジプトから始まり、スーダン、リビア、その他の地域に波及すると予測している。


この領域の確保:アラブ世界の再定義

微調整はされたものの、イーノン・プランは動き出し、「クリーン・ブレイク(Clean Break)」の下で息を吹き返しつつある。これは、1996年にリチャード・パール(Richard Perle)と「2000年に向けたイスラエルの新戦略」研究グループが、当時のイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフに向けて書いた政策文書によるものである。

パールは当時、ロナルド・レーガンの元国防次官で、後にジョージ・W・ブッシュ・ジュニアとホワイトハウスの米軍事顧問になった。

2000年に向けたイスラエルの新戦略」研究会の会員には、パールのほか、ジェームズ・コルバート(ユダヤ国家安全保障問題研究所)、チャールズ・フェアバンクス・ジュニア(ジョンズ・ホプキンス大学)、ダグラス・フェイス(フェイス&ゼル・アソシエーツ)、ロバート・ローウェンバーグ(高等戦略政治研究所)、ジョナサン・トロップ(ワシントン近東政策研究所)、デビッド・ウルマー(高等戦略政治研究所)、メイラヴ・ウルマー(ジョンズ・ホプキンス大学)が名を連ねている。

「クリーン・ブレイク:領域確保のための新戦略」が、この1996年のイスラエルの政策文書の完全な名称だ。

多くの点で、米国は「領域」を確保するというテルアビブの1996年の政策文書に概説された目標を実行している。さらに、「領域」という言葉は、著者たちの戦略的精神を暗示している。

「領域」は、君主によって統治される領土または君主の支配下にあるが、物理的には彼らの制御下になく、臣下に支配させている領土を指す言葉だ。この文脈では、「領域」という言葉は中東をテルアビブ王国と見なしている。ペンタゴンのキャリア官僚であるパールがイスラエルの文書の執筆に関与した事実からも、概念上の支配者がイスラエル、アメリカ、またはその両方であるかどうかを問わなければならなくなる。


領域の確保:ダマスカスを不安定化させるイスラエルの青写真

1996年のイスラエルの文書は、2000年前後かそれ以降に、シリア人をレバノンから追い出し、ヨルダンとトルコの助けを借りてシリア・アラブ共和国を不安定化させることによって、「シリアを後退させる」ことを求めている。これはそれぞれ2005年と2011年に起こったことだ。

1996年文書の内容。

「イスラエルはトルコやヨルダンと協力して、シリアを弱体化させ、封じ込め、さらには後退させることで、戦略的環境を形成することができる。この努力は、シリアの地域的野心を阻止する手段として、それ自体がイスラエルの重要な戦略目標であるイラクのサダム・フセインを権力から排除することに焦点を当てることもある。[1]





イスラエルが支配する「新中東」を作り上げ、シリアを包囲するための第一歩として、1996年のこの文書は、バグダッドのサダム・フセイン大統領を権力の座から引きずり下ろすことを求め、イラクのバルカン化と、スンニ派イスラム教徒の「中央イラク」を含む、ダマスカスに対する戦略的地域同盟の構築を暗示している。著者はこう書いている。

「しかし、シリアはこの紛争において潜在的な弱点を抱えている:ダマスカスは脅威となっている新たな地域的均衡への対処で頭がいっぱいであり、レバノン側への干渉を許容する余裕がない。また、ダマスカスはイスラエルとの「自然な連携」が一方にあり、中央イラクとトルコがもう一方にあり、中央にヨルダンが位置していることで、シリアがサウジアラビア半島から圧迫され、切り離されることを懸念している。

シリアにとって、これはシリアの領土の完全性を脅かす中東の地図の引き直しの序曲になるかもしれない」。[2]

パールと「2000年に向けたイスラエルの新戦略」研究会は、シリア人をレバノンから追い出し、レバノンの反体制派を利用してシリアを不安定化させることも求めている。文書にはこうある。

「レバノンの反対勢力を利用して、シリアのレバノン支配を不安定化させ、シリアの注意を[イスラエルはそらさなければならない]」。[3] これは、ラフィーク・ハリーリー前首相暗殺事件の後、2005年に起こったことであり、いわゆる「杉の革命」を引き起こし、腐敗したサード・ハリーリーが支配する度外れな反シリア「3月14日同盟」の結成につながった。


この文書はまた、テルアビブに対し、「シリア政権の本質を世界に思い起こさせる(機会を得る)」よう求めている。[4]

これは明らかに、パブリック・リレーションズ(PR)キャンペーンを使って敵対勢力を悪者にするイスラエルの戦略に当てはまる。2009年、イスラエルのニュースメディアは、テルアビブが大使館や在外公館を通じて、メディアキャンペーンやイラン大使館前での抗議行動を通じて、イラン大統領選挙が実施される前に、その信用を失墜させる世界的なキャンペーンを展開したことを公然と認めた。[5]

この文書には、現在シリアで起きていることと似たようなことも書かれている。こうだ。

「最も重要なことは、イスラエルが、シリア領内に侵入し、シリアの支配エリートに敵対するアラブ部族との部族間同盟を確保するなど、トルコやヨルダンの対シリア行動を外交的、軍事的、作戦的に支援することに関心を持っていることは理解できる」。[6]


2011年のシリア動乱で、反政府勢力の移動とヨルダン・トルコ国境を通した武器の密輸がダマスカスにとって大きな問題となった。

この文脈において、アリエル・シャロンとイスラエルが、英米のイラク侵攻後にシリア、リビア、イランを攻撃するようワシントンに指示したことは驚きではない。[7] 最後に、このイスラエルの文書が、イスラエルの地政学的環境を形成し、「新中東」を切り開くために先制戦争を提唱したことも知っておく価値がある。これは2001年に米国も採用することになった政策である。


中東におけるキリスト教社会の撲滅

エジプトのキリスト教徒が南スーダンの国民投票と同時期に、そしてリビアの危機の前に攻撃されたのは偶然ではない。

世界最古のキリスト教共同体のひとつであるイラクのキリスト教徒が、先祖伝来の故郷をイラクに残して亡命を余儀なくされているのも、偶然の一致でもない。

米英軍の監視下で起きたイラク人キリスト教徒の流出と時を同じくして、バグダッドの近隣地域はシーア派イスラム教徒とスンニ派イスラム教徒が暴力と決死隊によって宗派間の飛び地を形成することを余儀なくされ、宗派間の対立が激化した。これはすべて、イーノン・プランと、より広範な目的の一部としての地域の再構成に結びついている。

イランでは、イスラエルはイランのユダヤ人社会に退去してもらおうと無駄な努力を続けてきた。

イランのユダヤ人人口は、実際は、中東で2番目に多く、間違いなく世界で最も古い、平穏なユダヤ人社会である。

イラン系ユダヤ人は、イスラム教徒やキリスト教徒であるイラン人と同様に、自分たちをイランを祖国とするイラン人とみなしており、彼らにとって、ユダヤ人だからイスラエルに移住する必要があるという考え方は馬鹿げている。

レバノンでは、イスラエルがキリスト教やイスラム教の諸宗派、そしてドゥルーズ派共同体*の間の宗派対立を悪化させるよう働きかけている。
ドゥルーズ派共同体*・・・民族的にはアラブ人で、中東全域でおよそ100万人が存在するとされる。北アメリカ・南アメリカ・ヨーロッパなどにも海外共同体が存在する。(ウィキペディア)

レバノンはシリアへの跳躍台であり、レバノンをいくつかの国家に分割することは、シリアをいくつかの小さな宗派のアラブ国家にバルカン化する手段とも考えられている。

イーノン・プランの目的は、レバノンとシリアを、スンニ派イスラム教徒やシーア派イスラム教徒、キリスト教徒、そしてドルーズ派の宗教的・宗派的アイデンティティに基づいていくつかの国家に分割することである。また、シリアでキリスト教徒を脱出させることにも目的があるかもしれない。

東方カトリックの自治教会の中で最大規模を誇るアンティオキア・マロン派カトリック・シリア教会の新代表が、レバントと中東におけるアラブ系キリスト教徒の追放について懸念を表明した。

マル・ベチャラ・ブトロス・アル・ライ総主教をはじめ、レバノンとシリアの多くのキリスト教指導者たちは、シリアにおけるイスラム同胞団による乗っ取りを恐れている。イラクと同様、謎の集団が今、シリアのキリスト教共同体を攻撃している。エルサレム東方正教会総主教を含むキリスト教東方正教会の指導者たちも、みな重大な懸念を公に表明している。キリスト教アラブ人は別として、こうした懸念はキリスト教徒が大半を占めるアッシリアやアルメニアの共同体も共有している。



マル・ベチャラ・ブトロス・アル・ライ総主教は最近パリでニコラ・サルコジ大統領に会った。マロン派の総主教とサルコジ大統領はシリアについて意見の相違があり、サルコジ大統領はシリアの政権は崩壊するだろうと発言したと伝えられている。アル=ライ総主教の立場は、シリアは放っておいて改革を許すべきだというものだった。

マロン派総主教(マル・ベチャラ・ブトロス・アル・ライ)はまた、フランスが合法的にヒズボラの武装解除を望むのであれば、イスラエルを脅威として扱う必要があるとサルコジに語った。

アル=ライはフランスで自分の立場を明確にしたので、レバノンを訪れたシリア・アラブ共和国のキリスト教徒とイスラム教徒の宗教指導者たちから即座に感謝された。

ヒズボラとそのレバノンの政治的な同盟者(レバノン国会の大部分のキリスト教の議員も含まれる)も後に南レバノンを訪れたマロン派大主教(アル=ライ)を称賛した。

アル=ライ総主教は現在、ハリリ率いる「3月14日同盟」によって政治的に攻撃されている。その理由は、ヒズボラに対する彼の姿勢とシリア政権打倒を支持しないことにある。実際にハリリによって、アル=ライ総主教とマロン派教会の姿勢に反対するキリスト教関係者の会議が計画されている。アル=ライ総主教が自らの立場を表明して以来、レバノンとシリアの両方で活動するタハリール党も彼を標的にして批判を始めている。また、ヒズボラやシリアに対する彼の立場に不快感を示すため、米国の高官もマロン派総主教との会談をキャンセルしたと報じられている。

ハリリ率いるレバノンの「3月14日同盟」は、(議会で多数派を占めていたときでさえ)常に少数派であったが、アメリカやイスラエル、サウジアラビア、ヨルダン、そしてシリアで暴力とテロリズムを行使しているグループと手を取り合ってきた。シリアのイスラム同胞団やその他のいわゆるサラフィスト・グループは、ハリリや3月14日同盟のキリスト教政党と調整し、秘密会談を行なってきた。これが、ハリリとその同盟者がアル=ライ枢機卿に敵意を示した理由である。ファタハ・アルイスラムをレバノンに呼び込んだのもハリリと「3月14日同盟」であり、そのメンバーの何人かがシリアで戦うために逃亡するのを手助けしたのもハリリと「3月14日同盟」である。

混乱と内戦を引き起こす目的で、シリアの市民とシリア軍を標的にしている未知の狙撃手がいる。シリアのキリスト教社会もまた、未知のグループによって標的にされている。攻撃者たちは、米国やフランス、ヨルダン、イスラエル、トルコ、サウジアラビア、そしてハリジ(湾岸)アラブ勢力の連合体であり、内部にシリア人がいる可能性が高い。

ワシントンやテルアビブ、そしてブリュッセルによって、キリスト教徒の中東脱出が計画されている。大主教アル=ライはパリで、ニコラ・サルコジ大統領から、レバントと中東のキリスト教社会は欧州連合(EU)に再定住することができると言われたと報道されている。これはありがたい申し出ではない。

これは、中東の古くからのキリスト教共同体を根絶やしにするための条件を意図的に作り出してきた同じ勢力による、平手打ちである。その狙いは、キリスト教共同体をこの地域の外に再定住させるか、あるいは彼らを飛び地へと区分けすることにあるようだ。どちらの目的もあり得る。

このプロジェクトは、アラブ諸国をイスラム教国だけという線引きで区切ることを意図しており、イーノン・プランとユーラシア大陸を支配するというアメリカの地政学的目標の両方に合致している。大きな戦争が起こるかもしれない。アラブのキリスト教徒は今や、肌の黒いアラブ人と多くの共通点を持っている。


アフリカの再分割化:イーノン・プランは決して死んではいない。稼働中・・・

アフリカに関して、テルアビブはアフリカを確保することは、より広範な周辺地域につながるとみなしている。この広範な、いわゆる「新周辺地域」は、1979年以降、テルアビブにとって地理戦略の基礎となった。パフラヴィー朝時代にイスラエルの最も親密な同盟国の一つであったイランを含むアラブ諸国に対する「旧周辺地域」が、1979年のイラン革命によって腰折れし、崩壊したからである。この文脈で、イスラエルの「新周辺地域」は、アラブ諸国とイラン・イスラム共和国に対して、エチオピアやウガンダ、そしてケニアといった国々を含むものとして概念化された。イスラエルがスーダンのバルカン化に深く関与してきた理由もここにある。

中東における宗派間の分裂と同じ文脈で、イスラエルはアフリカを再構成する計画をまとめた。イーノン・プランは、(1)民族言語、(2)肌の色、そして最後に(3)宗教という3つの側面に基づいてアフリカを区分けしようとするものだ。この領域を確保するために、パールを擁するイスラエルのシンクタンク、高等戦略政治研究所(IASPS)もまた、米国防総省のアフリカ司令部(AFRICOM)の設立を後押しした。

アラブとアフリカのアイデンティティの融合点を切り離そうとする試みが進行中だ。いわゆる「黒人アフリカ」と「非黒人」とされる北アフリカとの間にアフリカに分断線を引こうとしているのだ。これは、アフリカに「アラブ人」といわゆる「黒人」間の分裂を作り出そうという企みの一環である。

「アフリカ系南スーダン」と「アラブ系北スーダン」という馬鹿げたアイデンティティが育まれ推進されてきたのは、このためである。肌の黒いリビア人がリビアの「皮膚浄化」キャンペーンの標的にされているのもこのためだ。北アフリカにおけるアラブのアイデンティティは、アフリカのアイデンティティから切り離されようとしている。同時に、「黒い肌のアラブ人」の大集団を根絶やしにし、「黒人アフリカ」と新しい「非黒人」北アフリカとの間に明確な境界線を作ろうとしている。その結果、この地域は残りのアラブ人とベルベル人*との戦いの場となるだろう。
ベルベル人*・・・北アフリカの広い地域に古くから住み、アフロ・アジア語族のベルベル諸語を母語とする人々の総称。北アフリカ諸国でアラブ人が多数を占めるようになった現在も一定の人口をもち、文化的な独自性を維持する先住民族である。(ウィキペディア)

同じ文脈で、アフリカのスーダンやナイジェリアなどでは、イスラム教徒とキリスト教徒の間で緊張が煽られ、境界線と分断点をさらに作り出している。肌の色や宗教、民族、そして言語などに基づいてこうした分裂を煽ることは、アフリカの解離と亀裂を煽ることを意図している。これはすべて、北アフリカをアフリカ大陸の他の地域から切り離すという、より広範なアフリカ戦略の一環なのだ。


「文明の衝突」のためのチェス盤準備

まさにこの点において、すべての駒を集め、すべての点を繋ぐ必要が出てくる。

チェス盤は「文明の衝突」のために用意され、すべての駒はそれぞれの位置に置かれようとしている。

アラブ世界は封鎖される過程にあり、鋭利な境界線が作られつつある。

このような線引きは、異なる民族言語や肌の色、そして宗教集団の間の継ぎ目のない移行線などに取って代わりつつある。

この図式の下では、もはや社会と国の間の融和的な移行はありえない。中東や北アフリカのキリスト教徒、たとえばコプト教徒が標的にされているのはこのためだ。また、北アフリカでアラブ系黒人やベルベル系黒人、その他の黒人の人口集団が大量虐殺に直面している理由もここにある。

イラク、エジプトに続き、社会主義人民リビア・アラブ国とシリア・アラブ共和国は、それぞれ北アフリカと東南アジアにおける地域不安定化の重要なポイントである。リビアで起こることはアフリカに波及し、シリアで起こることは東南アジアやそれ以外の地域に波及する。イラクもエジプトも、イーノン・プランが述べていることに関連して、これらアラブ両国の不安定化の雷管となっている。

着々と実行されているのは、シーア派とスンニ派の争いで混乱することになる排他的「イスラム中東」地域(イスラエルを除く)の創造である。同様のシナリオは、アラブ人とベルベル人の対立を特徴とする「非黒人の北アフリカ」地域でも展開されている。それに加えて、「文明の衝突」モデルのもと、中東と北アフリカは、いわゆる「西側」と「黒いアフリカ」との対立状態に同時に入ってゆくことになる。

だからこそ、フランスのニコラ・サルコジもイギリスのデビッド・キャメロンも、リビア紛争が始まっている最中に、それぞれの西欧社会で多文化主義は死んだと相次いで宣言したのだ。[9] 真の多文化主義は、NATOの戦争遂行の正当性を脅かす。それはまた、米国の外交政策の根幹をなす「文明の衝突」の実行を妨げるものでもある。



この点に関して、ズビグニュー・ブレジンスキー元米国国家安全保障顧問は、多文化主義がワシントンとその同盟国にとって脅威である理由を説明している。

「アメリカがますます多文化社会となるにつれ、真に巨大で広く認識されている直接的な外的脅威がある場合を除き、外交政策上の問題(例えば、アラブ世界や中国、イラン、ロシア、そして旧ソ連との戦争)について合意を形成することが難しくなる可能性がある。

このような合意は、第二次世界大戦中も、冷戦時代も、一般的に存在していた[そして現在は、「世界規模のテロとの戦い」のために存在している]」。[10]


ブレジンスキーの次の文は、国民が戦争に反対したり支持したりする理由を述べている。

「しかし、[この合意は]、国民が脅威にさらされていると感じていた民主主義的価値観を深く共有することに根ざしたものであっただけでなく、敵対的全体主義の圧倒的犠牲者だったヨーロッパ人に対する文化的・民族的親近感にも根ざしていた」。[11]


冗長になる恐れがあるが、中東・北アフリカ(MENA)地域と、いわゆる「西側世界」やサハラ以南のアフリカとの間のこうした文化的親和性を断ち切る意図があるから、キリスト教徒や肌の黒い人々が標的にされていることを、もう一度述べておかなければならない。


民族中心主義とイデオロギー: 今日の「正義の戦争」を正当化する

かつて西欧の植民地支配国は、国民を教化した。彼らの目的は、植民地征服に対する民衆の支持を得ることだった。これは、武装した商人や植民地軍隊の支援を得て、キリスト教を広め、キリスト教の価値観を広めるという形をとった。

同時に、人種差別的イデオロギーが打ち出された。植民地化された土地の人々は、「人間以下」や「劣等」、そして「魂のない」存在として描かれた。最後に、いわゆる「世界の未開の人々」を文明化する使命を担うという「白人の重荷」が用いられた。この粘着性のあるイデオロギーの枠組みは、植民地主義を「大義名分」として描くために使われた。そして後者は、外国の土地を征服し「文明化」する手段として「正義の戦争」を行う正当性を与えるために使われた。

今日、アメリカやイギリス、フランス、そしてドイツなどの帝国主義的意図は変わっていない。変わったのは、新植民地主義による征服戦争を行う口実と正当化である。植民地時代には、戦争を行うための物語や正当化は、イギリスやフランスといった植民地支配国の世論に受け入れられていた。今日の「正義の戦争」や「大義名分」は、女性の権利や人権、人道主義、そして民主主義という旗印のもとに行われている。


マハディ・ダリウス・ナゼムロアヤはカナダ、オタワ出身の受賞歴のある作家。モントリオールのグローバル化研究センター(CRG)の社会学者兼研究員。北アフリカにおける「アラブの春」の目撃者。NATOによる空爆作戦中のリビアでは、カリフォルニア州バークレーから放送されているKPFAのシンジケート調査番組『Flashpoints』の特派員を務めた。

NOTES
[1] Richard Perle et al., A Clean Break: A New Strategy for Securing the Realm (Washington, D.C. and Tel Aviv: Institute for Advanced Strategic and Political Studies), 1996.
[2] Ibid.
[3] Ibid.
[4] Ibid.
[5] Barak Ravid, “Israeli diplomats told to take offensive in PR war against Iran,” Haaretz, June 1, 2009.
[6] Perle et al., Clean Break, op. cit.
[7] Aluf Benn, “Sharon says U.S. should also disarm Iran, Libya and Syria,” Haaretz, September 30, 2009.
[8] Richard Perle et al., Clean Break, op. cit.
[9] Robert Marquand, “Why Europe is turning away from multiculturalism,” Christian Science Monitor, March 4, 2011.
[10] Zbigniew Brzezinski, The Grand Chessboard: American Primacy and Its Geostrategic Imperatives (New York: Basic Books October 1997), p.211.
[11] Ibid.

イスラエルは戦争でハマスには勝てない。ではこの先どうなる?

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel can’t defeat Hamas in battle, so what’s next?
ガザの戦争が引き起こすことは、民間人の惨状だけ。その状況を米国はいつでも止めることが可能なのに・・・
筆者:ロバート・インラケシュ(Robert Inlakesh)
政治分析家、ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督。パレスチナ自治区での取材・滞在経験を持ち、現在はクッズ・ニュースに所属。YouTube上のドキュメンタリー番組「Steal of the Century:Trump's Palestine-Israel Catastrophe」の監督。ツイッターは @falasteen47
出典:RT  2023年12月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月10日



2023年11月16日、イスラエル軍が公開した資料写真。イスラエルとパレスチナの過激派組織ハマスとの戦闘が続く中、ガザ地区での軍事作戦中の部隊の様子。@イスラエル軍 / AFP


 イスラエルとガザのパレスチナ武装勢力との間の戦争が7日間小康状態を保った後、敵対行為の再開が米国政府から再び許可された。同盟国のイスラエルを軍事的勝利に導けなかった米国は、戦況の危険な激化を容認し、これ以上の市民の被害を防ぐ平和的解決策を拒否している。

 アントニー・ブリンケン米国務長官がパレスチナ/イスラエルから去ったわずか数分後、ガザでの戦争が再開され、パレスチナの民間生活基盤施設に対する大規模な空爆が行われ、200人近い民間人が死亡した。ホワイトハウスのジョン・カービー報道官は、イスラエルの「ハマスの後を追う権利と責任」を引き続き支持すると発表したが、その目的は不明だ。エフード・バラック元イスラエル首相も、ハマスの崩壊は程遠いことを認めている。ではいったい、この戦争をおこなう意味はどこにあるというのだろうか?

 パレスチナ人2万人以上が死亡したと思われる6週間の戦争の後、イスラエル軍は、包囲された沿岸の飛び地にいるハマスと他のパレスチナ武装集団の軍事力に大きな打撃を与えたという証拠を何一つ提示できていない。イスラエルは、ハマスがガザ北部の主要な病院を基地や指揮統制センターとして使用していると主張し、その病院への侵入を強行したが、イスラエル国防軍(IDF)が提出した証拠は、こうした主張を裏付けるものではなかった。米国政府は、シファ病院に司令塔が存在するという考えを支持し、イスラエル軍が病院敷地内に入った際には、そこで発見したとする武器と空洞のトンネルを提示した。一般に公開されたこのような画像はイスラエル軍によって管理・編集されたものだが、もし独自に検証されれば、武装勢力の存在を示す証拠となりうる。が、指揮統制センターや指令拠点があったという証拠はまだ示されていない。他の病院でも気をつけるべきものはほとんど発見されておらず、イスラエルの主張を裏付ける確かな情報を持っているというアメリカの主張は、ジョー・バイデン米大統領が「テロリストが子どもの首をはねている写真を確認した」と発言し、ホワイトハウスが後に撤回したことを考えれば、疑わしいものである。


関連記事:Tara Reade: How long will Western warmongers keep feeding human lives to their narrative?

 この戦争が始まったとき、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「ハマス粉砕」を宣言したし、米国も公式にその目的を支持した。しかし、ハマスがイスラエルに対して史上最大の打撃を与えただけでなく、イスラエル軍の攻撃からガザを防衛した無数の成功事例が文書として残っている。いまや全世界でパレスチナ国家の樹立について語られている。パレスチナ国家の樹立に関しては、アラブ諸国とイスラエルとの間の無条件の国交正常化協定が優先され、戦前は完全に放棄されていた構想だ。これに加えて、イスラエルによるガザ侵攻戦争の結果生じた状況のひとつとして考えられることは、占領地全域でハマスへの支持が飛躍的に高まったことだ。さらに、中東やイスラム世界では、ハマスの過激派は英雄視されていて、今回の行動は、勇敢な民族的抵抗として広く見られている。

 バイデン政権が中東政策の柱としていたサウジとイスラエルの国交正常化交渉は、サウジアラビア政府がイラン政府に接近している現在、水泡に帰している。イスラエルの世論調査の数値によれば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエル国民の4%からしか信頼されておらず、最も信頼されている人物はイスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官である、という。しかし、イスラエル国民から信頼されているハガリ報道官は、「リストの男」と揶揄され、ネットをざわつかせる人物に成り下がってしまった。それは同報道官が示した動画の中で、(病院の壁に貼られてあった)アラビア語で書かれたありふれたカレンダーを「テロリストのリスト」だと主張したからだ。同報道官が「リスト」だと言い張ったカレンダーを映した動画は、ハマスがランティシ小児病院で人質をとっている証拠を示すものになるはずだった。

 少なくとも10カ国がイスラエルから大使を引き揚げるか、イスラエルとの関係を停止した。ロンドンやワシントンDCのような首都では、これまで欧米で起きたことのない大規模な親パレスチナデモが続いている。このような状況は、ジョー・バイデンへの支持率の大幅な低下と相まって、米国が支援するガザでの戦争に災いをもたらすものだ。

 ホワイトハウスは、ガザ南部への侵攻を計画するイスラエル軍に一定の制限を加えていると主張するが、同時にイスラエルの行動を無条件で支持している。米国政府は、10月7日以降に起こったことに対していかなる責任も取らず、自分たちがついた嘘に対する謝罪もなく、戦略の変更もなく、ハマスの攻撃を容易にしたガザの状況を作り上げた米国側の責任も認めていない。

 今、本当に問われているのは以下のことだ。これから私たちはどこへ向かうのか?イスラエルはガザで無目的に戦い、何千人ものパレスチナ市民を殺し続け、ハマス敗北の兆しは見えず、国連のマーティン・グリフィス救援総長が「過去最悪」と評する人道状況はさらに悪化している。これらの要素をすべて深刻に受け止める一方で、イスラエルによるガザ攻撃が激化した場合、地域戦争が勃発する恐れもある。レバノンのヒズボラは現在、レバノン国境沿いで頻繁に戦闘を繰り広げており、イスラエルの軍事目標への攻撃範囲を拡大している。


関連記事:The Gaza truce is a sign that Hamas can’t be defeated

 イスラエルとハマスの間で行われた捕虜交換は、このパレスチナ組織と外交的な話し合いができる証となった。この交換はまた、イスラエルが何の罪もない女性や子どもたちを拘束していることを世界に知らしめることにもなった。解放されたイスラエルの民間人捕虜の大半は、解放時にハマスの戦闘員と笑顔で握手し、感謝の言葉を述べているところを撮影されているが、その体験について報道機関に直接語ることは封じられている。一方、パレスチナの女性や子どもたちは、イスラエルの獄吏の手によって受けた虐待、拷問、屈辱を語った。このような状況はイスラエル政府にとって、自国がハマスよりも罪が重く見せてしまうという、新たな広報上の大失敗となった。

 米国政府は戦争の運転席に座っている。いつでも紛争を終結させる力を持ちながら、この惨事を長引かせ続けている。戦闘行為の7日間の一時停止中、イスラエルの勝利を可能にするような有利な変化は何もなかった。ガザでの戦争に軍事的解決はあり得ない。米国は、パレスチナの人々に正義と自由が与えられるまで、この紛争は決して終わらないことを認識しなければならない。75年間、西側諸国の政府はパレスチナ人の苦しみを無視してきた。西側諸国は決して客観的な平和の仲介者ではなかった。暴力は暴力を生み、憎しみは憎しみを生む。パレスチナ人を単に殺害して服従させることは不可能だ。仮にハマスが敗北したとしても、彼らの仇を討ち、国家樹立のために戦う組織が今後さらに現れるだろう。国際社会が団結すれば、この連鎖を断ち切ることは可能だが、それには勇気が必要だ。

私はイスラエル・ガザ間の戦争を2度体験したが、今回の戦争は最悪だ

<記事原文 寺島先生推薦>
“I Lived Through Two Israel-Gaza Wars. This One is the Worst.”
筆者:エバ・バートレット(Eva Bartlett)
出典:INTERNATIONALIST 360°   2023年12月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月10日




 
 イスラエルによるガザ全域への執拗な空爆が7週間続いた結果、11月23日時点(人道的停戦が発効する直前)の国連の控えめな推計によれば、ガザの飛び地で1万4800人以上が死亡し、その中には約6000人の子どもと4000人の女性が含まれていた、といいます。

 今回のイスラエルによるガザ攻撃は、イスラエルが2カ月足らずの間に4万トンもの爆薬を投下したという報告もあり、これまでで断トツにひどいものですが、イスラエルが過去15年にわたって、ガザのパレスチナ人に対して繰り返し攻撃を加えてきたことを今一度思い起こすことには価値があると言えます。

 2008年末から2013年3月までの数年間、ガザに住んでいた私は、イスラエルによる2度の大規模な攻撃(そして数年にわたる無数の小規模な攻撃)を目撃してきました。この記事において、私が目にし、記録したことを紹介し、ガザで起きているイスラエルによる恐ろしい戦争犯罪は、今に始まったことではないことを示したいと思います。

 2008年12月27日、イスラエルは「キャスト・リード」作戦の最初の数分間で、ガザに100発の爆弾を投下しました。シファ病院(ガザの中核病院)は、死者と負傷者を止むことなく受け入れていました。集中治療室の病床は埋め尽くされ、医師たちは、一人の患者が死ぬとすぐに、次の患者が空いた病床に入るという状況が続いている、と私に話してくれました。

 私は、ガザにいた国際的に活動する何人かの人々とともに、パレスチナの衛生兵と一緒に救急車に乗り、負傷者を探して病院に運ぶ活動への参加を決めました。私たちはそうしました。イスラエルがガザへのジャーナリストの立ち入りを禁止していることをよく知っていましたし、過去には、衛生兵や救急車がイスラエル軍の標的になったこともわかっていました。

 そのような光景は乗車直後に現れました。私が乗っていた救急車がイスラエル軍の狙撃兵に狙われ、少なくとも14発の銃弾のうちの1発が車の後部に命中して、1人の衛生兵が脚を負傷しました。



 この事件が起こったのは、2009年1月7日の「人道的停戦」の時間帯のことでした。ジュネーブ条約には、「負傷者を捜索、収容、搬送、治療する医療関係者は、いかなる状況においても保護され、尊重されるべきである」と明記されています。

 その数日前、イスラエル軍の砲撃で、私の知り合いで同行していた衛生兵のアラファ・アブド・アルダイムが亡くなりました。アラファは負傷したパレスチナ人を救助中で、救急車の後部に立っていましたが、フレシェット弾を含んだ砲弾を受けたのです。フレシェット弾は、何千もの小さな金属矢を広い弧を描くように噴射するように設計されており、負傷したり死亡したりする可能性が高くなる武器です。金属矢の鋭利な頭部は離脱するように設計されており、その矢を受けた人の体の内部の損傷が大きくなります。ボランティアの21歳の衛生兵も負傷し、足を裂傷しました。

 アラファが殺害された翌日、イスラエル軍は、家族や近隣住民が弔問に集まっていたこの地域に、2分以内に3回の砲撃をおこないました。この砲撃はまたもやフレシェット弾によるもので、妊娠中の若い母親を含むさらに6人の市民が死亡し、25人が負傷しました。

 イスラエル軍の地上侵攻が始まった1月3日の夜、当時私が拠点としていたジャバリヤの東にある赤新月社の派遣所に、砲弾が危険なほど近くまで飛んできました。そのとき私はその派遣所にいました。救急車の中ではありませんでした。翌朝まで危険すぎて立ち寄れなかったのですが、攻撃が終わる前に、戻って確認すると、救急車は機関銃の弾痕だらけで、砲撃で吹き飛ばされていました。

 救急車とその医療機器は、私が見た中でも最も貧弱なもので、供給されるものもイスラエルによる長期のガザ包囲と封鎖によって枯渇していました。衛生兵たちは、でこぼこ道を素早く走り、困っている人たちのところへ行き、ほとんど時間をかけずに人々を車に乗せ、イスラエル軍の標的にされるのを避けるために、逃げるように病院に向かいました。

 イスラエル軍はガザ侵攻第3週目にテル・アル・ハワ地区に侵攻した後、クッズ病院を繰り返し爆撃し、イスラエル軍の狙撃兵らは住宅地から逃げ惑うパレスチナ人を狙いました。私は、病院から市民を避難させ、シファ病院(空きはなかったのですが)に運ぶ救急車に同乗し、パレスチナ市民を救うために何度も行き来し、そのたびにイスラエル兵らに撃たれる危険にさらされました。

 2009年の戦争が終わるまでに、イスラエル軍は23人の衛生兵を殺害し、57人を負傷させ、少なくとも9台の救急車を破壊し、16台を損壊させました。私が知っているジャーナリストや衛生兵は、私を含めて誰も防護服を持っていませんでした。でも、イスラエルが私たちに投下していた大量の爆弾を考えれば、防護服があってもなくてもほとんど違いはなかったでしょう。

 ある晩、それまで目にしてきたことについてRTのインタビューに答えた直後のことでした。そのとき私はガザ北部の非常に危険な地域を走る救急車に乗っていました。救急車を降りて、ある建物に入った時、イスラエルが少なくとも7回、その建物を砲撃しました。私たちは、10段の階段を駆け降りて、ありがたいことに無傷ですみました。ちなみに、2021年には、イスラエルの空爆によって、同じ建物と別の建物が破壊されたのですが、その時は合わせて20の報道機関がその建物に入っていました。

 2008年から2009年にかけての戦争中、そして戦後、私は、自分の子どもたちがイスラエル兵に故意に殺されたというパレスチナ人の親たちの証言を数え切れないほど集めました。至近距離から撃たれた子どもたち、停戦期間中なのにドローンによる爆撃を受けた子どもたち、狙撃兵に撃たれた子どもたち。また、シファ病院では、切断された生存者の方々に会いましたが、この人たちは、自宅が白リン弾の砲撃を受け、家族6人が殺され、その中には生きたまま焼かれた乳児もいたそうです。私はその後も、この方々の話を追いかけ、さらに冷酷な詳細を知り、爆撃で破壊されたこの方々の家もこの目で見ました。イスラエル兵が壁に残したと思われる落書きには、憎悪あふれることばや、「次はもっと痛めつけるぞ」といった脅迫のことばも書かれていました。(その閲覧注意の画像はこちら

 この2ヶ月間、イスラエルは、安全な避難場所を求める避難民パレスチナ人を収容する国連が運営する学校を含む複数の学校を繰り返し空爆してきました。イスラエルは2009年1月にも同じことを繰り返しており、今回の戦争でも被害を受けたファフーラ学校を含む多くの国連が運営する学校を空爆しました。

 この3週間のイスラエル軍の空爆、そして2012年11月のイスラエル軍の作戦(私はガザ中心部のデイル・アル・バラの病院を拠点にしていた)で私が見聞きしたことについては、残念ながら何ページでも書き足すことができますが、少しでも簡潔にするためにここで止めますが、止まらなかったのは、2009年も2012年も、停戦直後のイスラエルによる爆撃と銃撃でした。

 しかし、イスラエルによる空爆作戦と同じくらい残酷なのが、16年以上にわたるガザ包囲網です。このことについてはこれまで長年、書いてきましたが、要約すると、貧困、食糧難、栄養失調、貧血、発育不良、糖尿病、治療可能な病気が治療されないまま放置され、95%が飲めない水(すでに2014年当時からそうでした)といった問題が生じてきました。

 今年11月24日、4日間の停戦が実施されました。この停戦は、イスラエルに収監されているパレスチナ人とハマスの人質との交換を可能にするためであり、また、ガザの人口240万人が数週間にわたって奪われていた食糧、水、燃料、医療援助の配送が切実に必要とされていたためです。しかし、当然のことですが、停戦が破られ、狙撃手らがパレスチナ市民に発砲したとの報告もありました。

 ガザ保健省によれば、停戦終了後の最初の1日で、100人以上のパレスチナ人が死亡したそうです。イスラエルが、約束どおりの「最強の一撃」を加え始めたからです。そして表向きは、その対象はハマスの民兵隊だとされていました。

 この2週間でガザに加えられた恐怖の全てのことの概要をここで全て述べることは不可能ですし、その必要もないでしょう。というのも、ソーシャルメディアやテレグラム・チャンネルには、そんなおぞましい光景で埋め尽くされているのですから。避難民が暮らす学校が再び爆撃を受け、難民キャンプの全区画が爆撃を受け、何万人もの避難民が暮らす病院や教会が爆撃を受け、住宅密集地に再び白リン弾が降り注がれている様子など、枚挙にきりがありません。

 私が強調したいのは、イスラエルがガザで戦争犯罪を犯していることは、私の心の中にも、また現地の状況を直接見てきた他の多くの国際的な記者やオブザーバーたちの心の中にも間違いないひとつの答えしかない、ということです。それはイスラエルがガザで戦争犯罪をおかしているということ、そしてその意図は、現実にはそうなっていないにせよ、大虐殺を起こすことにある、ということです。

 イスラエルがジェノサイドの定義を犯すのを、私たちは世界中で見守ってきました。「国家、民族、人種、宗教などの集団の全部または一部を破壊する意図がある」。大虐殺の専門家であるラズ・シーガルさんは、イスラエルの砲撃が始まってからわずか1週間後にこう書きました。イスラエルは無数の凶行を犯してきたのですから、そう取られても当然です。

 10月下旬、国連ニューヨーク事務所の国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)のクレイグ・モヒバー前事務局長が辞任したのは、抗議と嫌悪の意をあらわすためでした。モヒバーさんはこう語りました。「再びこのような虐殺行為が私たちの目の前で展開されることになるとは。そしてそのような行為を私たちが勤めている組織は止める力を持っていないようなのです。1980年代からパレスチナの人権を調査し、1990年代には国連人権助言者としてガザに滞在し、それ以前にもそれ以降にもガザへの人権改善を目指して活動してきたのですから、私個人にとってこの問題は、とても深い問題なのです。」

 モヒバーさんは、イスラエルによる「パレスチナ人民の大規模な虐殺......イスラエル政府および軍の指導者たちによる明確な意思表明と相まって、今回の件はまさに大虐殺の事例であることに疑いの余地はありません」と明言しました。

イスラエルによる「10月7日」侵攻の口実に使われた子どもはイスラエル軍の戦車に殺されたと、目撃者が明かす

<記事原文 寺島先生推薦>
Israeli October 7 posterchild was killed by Israeli tank, eyewitnesses reveal
筆者:マックス・ブルメンタール(Max Blumentahl)
出典:GRAYZONE 2023年11月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年12月9日


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キブツ・ベエリで10月7日に起きた人質立てこもり事件の目撃者が、イスラエルが12歳のリエル・ヘッツローニとその家族、そして隣人の殺害について世界を欺いていることを暴露した。

更新:エレクトロニック・インディファーダ(Electronic Intifada)のためにデービッド・シーンが翻訳したヤスミン・ポラトの証言ビデオは、この記事の後に続く。

イスラエル政府は、国際的な同情を得ようと必死で、10月7日にハマスが主導したイスラエル南部への攻撃で、12歳の少女が殺害されたことへの怒りを煽ろうとしている。

「この少女の遺体はひどく焼かれ、法医学考古学者が身元を確認するのに6週間以上かかった」と、イスラエル外務省は公式Twitter/Xアカウントで発表した。「12歳のリエル・ヘッツローニちゃんの遺体は灰と骨片だけです。彼女の思い出に祝福がありますように。」

イスラエル国連代表部の元スピーチライターで、イスラエルでトップクラスの英語ソーシャルメディア宣伝担当者であるアビバ・クロンパスは、Twitter/Xで、「テロリストは(ヘッツローニ家を)全員虐殺し、その後ビルに放火した」と主張した。

ナフタリ・ベネット前イスラエル首相は、「キブツ・ベエリのリエル・ヘッツローニがハマスの怪物によって自宅で殺害された......我々は最も公正な戦争を戦っている。このことが再び起こらないようにするために。」

リエル・ヘッツローニは、キブツ・ベエリで殺害された非戦闘員の一人である。イスラエル南部の小さなコミュニティが、捕虜交換を進めるために捕虜を探していたハマスの過激派に一時的に占領されたときのことだった。膠着状態が続く中、彼女は双子の兄、大叔母、ベエリの他の住民数人とともに即死した。

しかし、12歳のヘッツローニはハマスに殺されたのではなかった。少女の死を目撃したイスラエル人による新たな証言によれば、彼女は近隣住民数人とともにイスラエル軍の戦車砲弾によって殺されたという。

ヘッツローニが友軍射撃によって死亡したことが明らかになったのは、イスラエル紙『ハーレツ』の報道が、急速に拡散した『Grayzone』による調査を裏付けるものだったからだ。その調査は、イスラエルのヘリコプター・パイロットや治安当局者が、運命の日の間、友軍の砲撃を指示したこと明らかにした重大ニュースだった。

そのひとつは、キブツ・ベエリの警備チームのメンバーからのもので、彼はハーレツ紙に、「現場の指揮官たちは、人質とともにテロリストを排除するために、居住している家屋に砲撃を加えるなど、難しい決断を下した」と語った。

ある戦車大隊の司令官は、現場に到着したときにも同じ命令を受けたと回想しており、「私はバラク・ヒラム准将に会うためにベエリに到着したが、彼が最初に私に求めたことは、(ハマスのメンバーが避難している)民家に砲弾を撃ち込むことだった」とビデオ・インタビューで答えている。

ベエリの小さな家に重火器を使うという決断は、結果的に多くのイスラエル人の命を奪った。その中には、イスラエルのガザに対する残忍な攻撃を正当化するために、その死が攻撃の口実とされた少女も含まれている。そして初めて、この攻撃の目撃者が、殺害についてのおぞましい真実を語った。

「2発の砲弾が命中したとき、(リエルは)叫ぶのをやめた」

ヤスミン・ポラトは、10月7日にベエリでハマスの武装勢力に人質に取られたイスラエル人の一人だった。過激派が到着したとき、彼女はノヴァ電子音楽祭から逃げ出し、コミュニティに避難していた。11月15日のイスラエル国営放送『Kan News』とのインタビューで、ポラトは膠着状態の詳細を語った。それは政府の公式説明を切り崩すものだった。

イスラエル軍に包囲されていると勘違いしたハマスの武装集団は、その時イスラエル軍は実際にはあまり居なかったのに、人質を家の外に出し、イスラエル警察に電話をかけ、自分たちの退去を交渉しようとした。

「誘拐はほとんど午前中、10時、11時、12時に起きている。「(午後の)3時までには、(イスラエルの)市民は皆、軍隊はもう至る所にいると思っていた。(ハマスの武装勢力は)私たちを10回、(ガザに)連れ出して戻ることができた。しかし、彼らはそのような状況だとは思っていなかったので、警察を要請したのです」と、ポラトは言った。

イスラエルの特殊部隊がようやく現場に到着したとき、ハマスとイスラエル軍の間で「停戦」が起こり、彼女を捕まえた人は投降を決めた、とポラトは語った。自分の安全を確保するため、彼は裸になり、彼女を人間の盾にしてイスラエル兵に向かっていった。

ポラトが解放され、彼女を捕まえた人が投降した後も、39人のハマス戦闘員に警備されて、14人のイスラエル人が人質として残された、と彼女は言った。その中には双子のリエルとヤナイ・ヘッツローニ、そして大叔母で保護者のアヤラ・ヘッツローニも含まれていたという。

「私は部隊の指揮官と一緒にそこに座り、家の形、テロリストのいる場所、人質のいる場所を説明した。見てください、芝生の上に4人の人質がこのように横たわっています。芝生の上に4人の人質がいて、テラスの下に2人倒れている。そしてリビングには、このように横たわっている1人の女性と、このように横たわっているもう1人の女性がいます」とポラトは語った。

ポラトは「双子(ヤナイとリエル・ヘッツローニ)と大叔母(アヤラ)のことを(イスラエル軍司令官に)話したのですが、私は彼女らを見ていませんでした」と説明した。いいですか、私が去るとき、彼女らを私は見ていなかったが、リエルの声はずっと聞こえていたから、彼らがそこにいたことは確かです。(司令官)には、台所の近くから悲鳴が聞こえたと説明したんです。私は人質全員の居場所を説明しようとしました。」

ポラトは、10月7日のハマスの作戦を可能にしたイスラエルの諜報活動の粗雑さを強調し、兵士たちは、これほど多くの武装勢力が一つの家の中にいることも、これほど大規模な部隊が、イスラエルがガザの周囲に築いたハイテク包囲壁を突破することも信じられなかったと語った。「最初に(イスラエルの特殊部隊に)40人ほどのテロリストがいると話したとき、彼らは『そんなはずはない』『大げさに言っているんだろう』と言われました。彼らは信じませんでした! 我が軍もまだ未熟だと思いました。」

午後4時には、家の中にいた武装勢力と、通りの向かいに駐留していたイスラエルの特殊部隊との間で銃撃戦が始まった。ハマスの戦闘員を追い払うことができなかったため、イスラエル軍は午後7時半に戦車を要請した。

ポラトは、戦車が小さなコミュニティに入ってくるのを見て、パニックに陥ったと語った。 「なぜ戦車の砲弾を家の中に撃ち込むのだろう?」そして私は私のそばにいた人に「なぜ戦車の砲弾を家の中に撃ち込んでいるのですか?」と聞いた。すると彼らは、「家を浄化するために壁を壊すのだ」と説明した。

通りの向こうから、ポラトは大きな爆発音を2回聞いた。戦車が家に砲弾を数発撃ち込んだのだ。家の外に横たわっていたのは、彼女の夫のタル、もう一人同じ名前のタルという男、そしてこの家の持ち主であるアディとハダス・ダガン夫妻だった。12歳の双子のリエルとヤナイ・ヘッツローニ、そして大叔母もいた。

粉塵が晴れたとき、ハダス・ダガンだけが生きて家から出てきた。

ヤスミン・ポラトによると、ダガンは後にこう言ったという。「ヤスミン、大きな音が2回鳴ったとき、私は宙を舞ったような気がした。完全に麻痺していた。目を開けると、私のアディ(・ダガン)が死んでいるのが見えた......あなたのタルもその時点で動かなくなった」。

ダガンは、戦車の砲弾がリエル・ヘッツローニを殺したことを確認した。彼女はポラトにリエルのことを言った。「彼女は叫び声を止めなかった......しかし、2発の砲弾が命中したとき、(リエルは)叫び声を止めた。静寂が訪れたのです」。

ポラトはこう締めくくった。「非常に大規模な事件、つまり2発の砲弾で幕を閉じた銃撃戦の後、ほとんどの人が死んだのです」。

ダガンはポラトに、人質の誰もハマスの戦闘員によって故意に殺されたのではないと強調した。「処刑も何もなかった。少なくとも、彼女と一緒にいた人たちがやったのではありません。」

10月15日の別のインタビューで、ポラトはパレスチナの武装勢力は「私たちを虐待していない。彼らは私たちをとても人道的に扱いました」、と断言した。

ダガン宅でのイスラエル軍とハマス軍のにらみ合いが、流血なしに解決できたかどうかはわからない。しかし、戦車で砲撃するというイスラエルの決断が、イスラエルの国際的な反ハマス・プロパガンダ・キャンペーンの目玉となった子供を含め、家の中にいたほとんど全員を殺す結果となったことは明らかである。イスラエル人が残したものは、「死体だらけの家」だけだった、とポラトは語った。


米国がガザでのこの戦争を必要としている理由とは?

<記事原文 寺島先生推薦>
Why the US needs this war in Gaza
米国政府がガザでのこの戦争でイランに勝たねばならぬのは、ウクライナでロシアに勝てなかったからだ
筆者:ぺぺ・エスコバル
出典:The Cradle  2023年11月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月5日





 グローバル・サウスは、新たなアラブの真実の夜明けを期待していた。

 結局のところ、アラブ社会は、たとえ自国で抑圧を受けていたとしても、ガザ地区におけるイスラエルによる大規模な虐殺に対するやるせない怒りで、抗議したい気持ちでいっぱいなのだ。

 アラブの指導者たちはイスラエルとの外交関係を一時停止する以上の措置をとらざるをえなくなり、イスラム協力機構(OIC)の特別首脳会談の開催を求め、現在進行中のイスラエルによるパレスチナの子どもたちに対する戦争について話し合うことになった。

 57カ国のイスラム教国家の代表らが、11月11日、リヤドに集まり、この大虐殺の実行者やその虐殺を可能にしている支援国に対して、決定的かつ実用的な打撃を与えた。しかし最終的には、何の提案もなされず、癒やしさえも提供できなかった。

 OICによる最終報告は「臆病者の金ピカ城」にずっと祀られることになるような代物だった。安物の口先だけの見世物の見せ場は以下のとおり。「イスラエルの『自衛行為』には反対する。ガザに対する攻撃を厳しく非難する。イスラエルに武器を売らないことを依頼する(え、誰に?)。イカサマ師のようなICC(国際刑事裁判所)に戦争犯罪を『捜査』するよう求める。イスラエルを非難する国連決議を求める」だ。

 言っておくが、この21世紀の大虐殺に対して、イスラム教徒が多数を占める57カ国が打ち出した最善策がこれだ。

 たとえ勝者により記された歴史であっても、歴史は、臆病者を許さない、という傾向がある。

 今回の臆病者代表四人衆は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦、バーレーンとモロッコだ。後者3カ国は、米国の手引きにより、2020年にイスラエルとの関係を正常化していた。これらの国々こそ、OICの首脳会談で、厳しい措置の採択を常に妨害してきた国々だ。例えばアルジェリアは、その措置として、イスラエルへの石油供給を止め、加えてアラブ諸国の飛行場を使った、この占領国への武器の輸送を禁じる措置を提案していた。

 長年米帝国に従属してきたエジプトとヨルダンも、見て見ぬふりだったし、内戦の真っ只中のスーダンもだ。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン皇帝も、再び「口だけで動かない」姿を見せた。この新オスマン皇帝は、カーボーイの帽子だけ被って、牛の扱いもできないテキサスっ子になったようだ。

BRICSかIMEC(インド・中東回廊)か?

 この代表四人衆に、もう少し吟味を加えよう。バーレーンは、米国の基地を有する帝国の下っ端従属国だ。モロッコはイスラエル政府と緊密な関係を持っている。イスラエルが西サハラ問題に関して、モロッコの主権を認めたとき、モロッコは簡単にイスラエルの手に落ちたのだ。さらにモロッコは、観光業に大きく依存しているが、その主な顧客は西側連合だ。

 続いて2匹の大型犬、サウジアラビアとアラブ首長国連邦に目を向けよう。両国とも、米国の兵器でがんじがらめにされていて、バーレーン同様、米軍基地を有している。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン(MbS)王子と彼の昔からの仲間であるアラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザーイド (MbZ)王子は、王としての支配力をカラー革命を起こしてズタズタにする、と帝国に脅され、帝国に言われたことからかけ離れた行為をしすぎないよう自重している。

 しかし2024年1月1日からの数週間で、ロシア主導のもと、サウジアラビアもアラブ首長国連邦も、それぞれの限界を拡げることになる。そう、BRICS 11に正式加盟するのだ。

 サウジアラビアとアラブ首長国連邦が拡大されたBRICSの加盟を認めた唯一の理由は、露中の戦略的友好関係による地政学上及び地経学上の慎重な計算があったからだ。

 露中両国と戦略的友好関係を築いているイランとともに、サウジアラビアもアラブ首長国連邦もBRICS圏内のエネルギー面での影響力を強化する役目を果たす重要な国になり、脱ドルの動きにさらなる拍車がかかることが期待されている。そして脱ドルの最終目標は、ペトロ・ダラーの迂回だ。

 ただし同時に気をつけるべきことは、サウジアラビアもアラブ首長国連邦も、1963年に立てられたある計画からも大きな利益を得られる、という点だ。その計画とは、別に秘密にされているわけではない、ベン・グリオン運河建設計画のことだ。この運河は、アカバ湾から東地中海を結ぶもので、その到着点は、なんという偶然か、現在激しい攻撃が加えられている北ガザ地区の近くになる。

 この運河ができれば、イスラエルはエネルギー輸送上の重要な中継地点となり、エジプトのスエズ運河の代替となる。そうなれば、イスラエルが果たすべき役割は、経済回廊を巡る戦争の最新章の事実上重要な中継ぎとなることになる。その回廊とは、米国発案の「インド・中東回廊(IMEC)」だ。

 IMECとは、かなりひねくれた略語だ。というのも、この素敵な名前の回廊の裏に潜む論理というのは、国際法破りのイスラエルを、ヨーロッパ、アラブ世界の一部、そしてインドを結ぶ重要な貿易中継地点、さらにはエネルギー供給源として位置づけることにあるからである。

 それは、9月にイスラエルのネタニヤフ首相が国連で見せた茶番劇の背後にある論理でもあった。同首相は「国際社会」全体に、パレスチナが完全に消去された「新しい中東」の地図をちらつかせたのだ。

 上記のすべては、IMECとベングリオン運河が建設されることを前提としている。だがこんなことは、現実的な標準からすれば当たり前のことではない。

 OICでの投票に話を戻すと、米国の手先であるエジプトとヨルダン(それぞれイスラエルの西と東の国境に位置する2カ国)は、最も厳しい立場に立たされた。占領国イスラエルは、約450万人のパレスチナ人を永久に自国の国境外に追いやりたがっていた。しかし、エジプト政府やヨルダン政府もまた、米国からの武器に溢れ、これらのパレスチナ人を引き受ければ財政的に破綻するし、容認されない程度までに親パレスチナの方向に傾けば課されるであろう米国の制裁に耐えることはできないだろう。

 結局のところ、自国の国益を考えるという非常に狭く、現実的な方向に進み、正義よりも屈辱を選ぶイスラム諸国が多くなりすぎてしまった、ということだ。

 地政学は情け容赦ない。各国の資源と市場が全てなのだ。片方がなければ、もう片方が必要で、両方ともなければ、米国という覇権国家が、何を持てばいいかを命じるのだ。

 アラブ界隈やイスラム教徒界隈、さらにはグローバル・マジョリティ(世界情勢の大多数)がガッカリしているのも当然だ。これらアラブ諸国の「指導者たち」が、迫り来る多極化世界において、イスラム世界を真に力を持つ一極にする心づもりを見せないのだから。

 それ以外のことは起こりえない。主要アラブ諸国の多くは、自国の主権を失ってしまったのだ。みな身動きできなくされて、従属国的な考え方にとらわれてしまっている。この先迫り来る歴史の転換点に対する心づもりができていないのだ。悲しいことに、これらの国々は、いまだに、自身の「屈辱の世紀」から抜け出せずにいる。

 屈辱的な一撃を喰らわしたのは、他でもないイスラエル政府の狂信的な大虐殺欲によるものだった。イスラエルは、すべてのアラブ諸国に対して、黙らなければ何をするか分からない、と脅したのだ。その脅しは、もう既に実行されているのだ。

 もちろん、主要アラブ諸国の中にも、勇敢な心を持った国々は存在する。イラン、シリア、パレスチナ、イラク、レバノン、イエメンだ。これらの国々はまったく主流派ではないが、これらの抵抗勢力ほど、アラブ界隈の人々の感情を忠実に再現している勢力はない。日に日にイスラエルによる攻撃が激しさを増すなか、これらの抵抗勢力の宗教上の影響力や世界的な影響力は計り知れないほど、増大しつつある。そう、米帝国による他の地域でのすべての戦争に対する反応とまったく同じことが起こっているのだ

ゆりかごの中で息吹を上げつつある新世紀の到来を封じること

 ウクライナ作戦の壊滅的な失敗と手に余る西アジアでの戦争の再来は深く繋がりあっている。

 米国政府が見せる、イスラエルによる大虐殺という凶行に対する見せかけの「心配」という煙の裏にある残酷な事実は、我々はいま、BRICS11との戦争の真っ只中にある、という事実だ。

 米帝国は何ら戦略を講じていない。やっていることといえば、せいぜい戦略的事業計画を思いつきで繰り出している程度だ。現在取り掛かっているその場しのぎ的な対策は2つ。①東地中海への米軍の配置。ただしこれは、抵抗勢力の二大枢軸であるイランとヒズボラを脅迫することにはなっていない無駄な努力だ、②アルゼンチンの大統領選でミレイ候補が勝つ可能性があり、同候補が掲げているブラジル・アルゼンチン間の関係断絶という公約をしていること、だ。

 つまりこの2つは、BRICS11に対する2つの同時戦争の前線だ、ということになる。西アジアと南米での、だ。BRICS11がOPECプラスに近づけないようにする努力を米国は惜しまないだろう。大事な目的は、サウジアラビア政府とアラブ首長国連邦政府に恐怖を注入することにある。ペルシャ湾の複数の情報源がそのことを確認している。

 OICの見世物に参加した米国従属諸国の指導者たちでさえ、我々が今、『帝国の逆襲』の奥深くにいることを認識していただろう。だからこそ、これらの国々の指導者たちは臆病さを見せているのだ。

 これらの国々の指導者たちは、覇権国家である米帝国にとって多極化は「混沌」、一極化は「秩序」、悪意ある主体は「独裁者」であることを理解している。そしてその悪意のある主体とは、ロシア・中国・イランという新たな「悪の枢軸」や「ルールに基づく国際秩序」に反対する国々のことであり、これまで米国の属国だった国々が裏切った場合は、特にそう捉えられることが分かっている。

 そういう状況下で、2つの戦争の停戦の話が出てきているのだ。何千万人ものグローバル・マジョリティが疑問に思っているのは、なぜ覇権国家米帝国が、ウクライナでは停戦を熱望しているのに、パレスチナでの停戦は頑として受け付けようとしていないのか、という点だ。

 ウクライナ計画を凍結すれば、亡霊のような覇権国家も少しは生き長らえられる。ロシア政府がこの餌に飛びつく(そうなることは考えにくいが)としよう。ただし、欧州でのウクライナ作戦を凍結するのであれば、米帝国はガザでイスラエルが勝つ必要が生じるのだ。おそらくどんな代価を払っても、だ。そうしないと、この覇権国家の過去の栄光の面影さえ消し去られかねないからだ。

 だが、イスラエルは、ウクライナよりもましな戦果を得られるだろうか?イスラエル政府は10月7日の時点で既に敗戦したと言えるかもしれない。無敵を誇ったイスラエル軍の強さを取り戻すことができなさそうだからだ。さらにこの戦争が地域戦争に発展して、それにイスラエルが敗れるとなれば、米国は一夜にしてアラブ従属諸国を失うことになろう。そしてこれらの国々の前には、中露という選択肢が翼を拡げて待っているのだから。

 アラブ界隈からの叫び声はどんどん大きくなっている。その声が求めているのは、いまやイスラエル当局と共謀しているバイデン政権に、世界戦争に繋がるようなイスラエルによる大虐殺を止めさせることだ。だが、米国政府はその声には応じないだろう。欧州と西アジアでの戦争は米国にとって妨害できる最後の好機かもしれない。つまり繁栄し、互いにつながり合う、平和なユーラシアの世紀の到来を妨害する好機だということだ(ただしおそらく上手くはいかないだろうが)。

イスラエル、経済崩壊の危機

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel is in danger of economic collapse
著者:ビクトル・ミクヒン(Viktor Mikhin)
出典:New Eastern Outlook   2023年11月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月4日





 10月7日にハマスが行なったアル・アクサ・フラッド作戦の余波により、イスラエル企業は壊滅的な打撃を受け、入植者たちは、政府からの資金注入や彼らへの援助がないという前例のない、不慣れな状況に直面している。ハマスの作戦が始まって1カ月以上が経過し、ガザでの戦争はイスラエルの企業活動に壊滅的な影響を及ぼし、何百もの企業が倒産の危機に瀕している。経済学者や金融関係者は、テルアビブにとってガザ戦争の初期費用は510億ドル(約7兆5千億円)、イスラエルのGDPの約10%に相当すると見積もっている。

 イスラエル労働省の報告によると、イスラエル人約76万5000人(労働人口の18%)が仕事をやめ、ガザ地区でパレスチナの抵抗勢力と戦うために予備役として徴兵されている、という。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、この戦争がイスラエル政権の経済活動に壊滅的な影響を及ぼしている証拠がすでに積み重なっているという。しかし、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とベザレル・スモトリッチ財務相が発表した財政措置は、経済界から非難を浴びている。高まる経済不安を和らげようと、イスラエル軍事政権は新たな規制を発表したが、専門家たちは、その規制はこの国の経済状況を悪化させるだけだ、と考えている。

 これに関連して、イスラエルの著名な経済学者300人からなる一団が、ネタニヤフ首相とスモトリッチ首相に「正気に戻る」よう求めた。「イスラエルに与えられた深刻な打撃は、国家の優先順位の根本的な転換と、戦争による被害を修復し、犠牲者を支援し、経済を再建するための資金の大規模な再配分を必要としている」とこの公開書簡にはある。フィナンシャル・タイムズ紙は、シンクタンク「スタートアップ・ネイション・ポリシー・インスティテュート」の会長で、書簡に署名した経済学者の一人であるユージン・カンデル氏の、イスラエル政府は「まだ事態の深刻さを理解していることを示していない」という発言を報じた。

 これらの経済の専門家たちは、ネタニヤフ首相が約束した倒産する危険度の高い企業への金融支援策も、政権の経済見通しが悪化し続ければ、十分なものにはならないだろうという深刻な懸念を表明した。どう考えても、イスラエル経済は最終的に崩壊するまで悪化するだろう、とのことだ。フィナンシャル・タイムズ紙は、支援策には公共支出の優先順位の全面的な見直しが伴わなければならないという意見もある、と報じた。

 ネタニヤフ政権と連立を組んでいる超正統派政党や入植者政党は、学生の宗教的遵守を奨励する計画など、戦時経済にはふさわしくないと批判されている取り組みに巨額の資金を投入し続けている。その結果、何百もの企業が首相の約束した財政支援を受けられていない。フォーリン・ポリシー誌によれば、イスラエルの戦時経済はいつまでも持ちこたえることはできず、間もなく不況に陥る可能性があるとし、その理由は、イスラエル政権による大規模な軍事動員によって深刻な景気後退が起こる可能性があるからだ、と報じた。

 ガザ地区での戦争が長期化した場合に打撃を受ける部門の筆頭は、石油・ガス、観光、医療、小売、そして近代的な技術の開発部門である。イスラエル経済は、2000億ドル(約32兆円)の予備資金と140億ドル(約290兆円)の米国からの軍事援助資金をもとに戦争に突入した、と推定されている。しかし専門家によれば、現在も続くガザでの戦争はイスラエル経済に数十億ドル以上の損害を与え、回復にはこれまでの実績よりもはるかに長い時間がかかるという。実際、経済学者や分析家らによれば、ガザでの戦争は短期的にも長期的にも政権経済に深刻な損害を与えると予想されている。

 フィッチ・レーティングス社、S&P社、ムーディーズ・インベスターズ・サービシズ社といった世界的な格付け会社は、戦争がさらに激化すれば、イスラエル政権の国債格付けの引き下げにつながる、と警告している。S&P社はすでに、イスラエルの信用格付けの見通しは低下傾向にあるとしており、その理由としてガザでの戦争が拡大し、経済への悪影響がより顕著になる危険性がある点を挙げている。同格付け会社は、「信用格付けの見通しが低下しているのは、......戦争がより広範囲に拡大したり、我々が予想するよりもイスラエルの信用度の指標に負の影響を与えたりする危険性を反映している」と指摘した。

 フォーリン・ポリシー誌は政治分析家らの話として、過去2回の戦争(2006年夏のイスラエルによる対レバノン戦争と2014年の対ガザ地区戦争)の費用はGDPの0.5%にも上ったが、そのほとんどの影響を受けたのが観光業だった、と報じた。しかし今回は、今年の最終四半期に「年間規模で15%」まで落ち込むと推定されている。それは、航空会社の多くがイスラエルと占領下のパレスチナ自治区の両方への飛行を中止しているからだ。飛行の取りやめは、イスラエルの経済、特に政権がその収入に大きく依存している観光産業にさらなる損害を与えるだろう。この飛行中止は、戦争や、連日包囲されたガザ地区からパレスチナ抵抗勢力が打ち込むロケット発射から逃れようと、国外に出ようとする何十万人もの不安なイスラエル人にとっても問題になっている。

 このロケット攻撃は終わるようには見えない。ハマスの作戦が始まってから30日間で、何十万人ものイスラエル人が避難したり、ガザ地区周辺の入植地から逃げ出したりしている。イスラエル観光省によると、ホテルの部屋は外国人観光客ではなく、亡命を求め、パレスチナ占領地を離れる計画を立てているイスラエル人入植者がほとんどを占めているという。すでに多くの人が海路でイスラエルを離れ、少なくとも一隻の米国船がハイファ港からイスラエル人を避難させたという。出国を計画するイスラエル人はますます増えており、すべてのイスラエル人がガザ近郊の入植地やその他の地域から永久に出国する意向であることを強調するオンライン・キャンペーンも現れ始めている。

 ネタニヤフ首相が1月上旬に政権に復帰して以来、すでに不満を抱いていたイスラエル国民の間では知識人の移住が当たり前となり、その多くは新政権にただただ激怒していた。ロケット弾が連日のように飛び交い、ネタニヤフ首相とその内閣に対する怒りが高まっている今、優秀なイスラエル人の移住はさらに増えている。

 政権が最も困難な時期を迎えている今、ある住民はイスラエルの報道機関にこう語った。「土曜日にサイレンがなった直後に、私たちはキプロスに逃げました。私たちの家族には、両親と4人の子どもがいます。私は直感で、これはただの攻撃ではないと分かりましたし、ここ10ヶ月間、私の神経はピリピリしていました。この国が気の狂ったようになっていたからです。午前10時にチケットを買い、午後5時にはキプロスのパフォスに着いていました。ここキプロスで、落ち着いた新しい生活を始めようとしています」と。

 ガザでの戦争が長引くなか、多くのイスラエル人が、その家族とともに、占領下のパレスチナ全域から、さらにはイスラエル本土から、すでに海外に渡航しているか、あるいはその意思を表明している。人々の最大の懸念は、ガザ地区に対する近代史上最大規模の戦争が国境を越えて拡大する危険性があるため、もはや安全が確保されていないことだ。人々は命の危険を感じ、イスラエルに来たことを後悔している。

ガザ:嵐の前の一時休止

<記事原文 寺島先生推薦>
Gaza: a pause before the storm
米国とその同盟国は、イスラエルによるガザへの戦争を、一時停戦後も支援し続けるだろう。しかし、「大量虐殺」だという非難が強まるにつれ、新たな多極化勢力は、旧来の覇権国家とその「ルールに基づく混乱」に立ち向かわなければならなくなるだろう。
筆者:ぺぺ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:The Cradle   2023年11月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月4日





 世界中が「イスラエルによる大虐殺」と叫ぶ一方で、バイデンのホワイトハウスは、自らが仲介したガザ停戦について、あたかも「最大の外交的勝利」を「目前に控えている」かのように大喜びしている。

 自画自賛的な言説の裏で、米政権は「ネタニヤフ首相の終末策を警戒している」どころではなく、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ大統領とジョー・「ミイラ」・バイデンを操るものたちとの9月20日の会談で、「アル=アクサ・フラッド」の攻撃が起こる3週間弱前にホワイトハウスで合意されたとおり、大量虐殺を含め、イスラエルを全面的に支持しているのだ。

 米国とカタールの仲介で今週発効することになっている「停戦」は、停戦ではない。 数十人の捕虜の解放を確保することで、イスラエルの大量虐殺を和らげ、士気を高めるためのPRである。さらに、イスラエルが決して停戦を尊重しないことは、これまでの記録からも明らかだ。

 実際、米政権が本当に心配しているのは、停戦による「予期せぬ結果」である。「ジャーナリストがガザに広く近づくことができるようになり、ガザの惨状をさらに明らかにし、世論の矛先がイスラエルに向かう機会が増える」からだ。

 10月7日以来、ガザでは24時間体制で本物のジャーナリストたちが活動している。「国境なき 記者団」が「過去100年で最悪の犠牲者数」と言っているように、イスラエル軍によって何十人ものジャーナリストが殺されている。

 これらのジャーナリストたちは、「惨状を明らかにする」ために努力を惜しまない。「惨状」とは、現在進行中の大量虐殺の婉曲表現であり、全世界の人々が見ることができるように、その陰惨な詳細をすべて示している。

 国連パレスチナ救済事業機関(UNRWA)も、イスラエルから執拗に攻撃されている中でも、やや大人しい口調ではあるが、今回の攻撃は「1948年以来最大の追放劇」であり、パレスチナ人の「流出」であり、若い世代は「先祖や両親のトラウマを引きずって生きることを余儀なくされている」としている。

 グローバル・サウス/グローバル・マジョリティ全体の世論としては、シオニストの過激主義にはとっくの昔に「背を向け」ている。そして今、グローバル・マイノリティ(西側の集団の住民)も、たった6週間のうちにソーシャルメディアが何十年も主流報道機関が隠してきたことを暴露してしまった事実に愕然とし、苦々しく思っている。もう後戻りはできない。

旧アパルトヘイト国家が先頭を行く

 南アフリカ共和国が道を築き、おこなわれている大量虐殺(ジェノサイド)に対する適切な対応を見せた。議会がイスラエル大使館の閉鎖、イスラエル大使の追放、イスラエル政府との国交断絶を決議したのだ。アパルトヘイトについてなら、南アフリカはある程度は知っている。

 イスラエルを批判する他の人々と同様、南アフリカ共和国の人々も今後の展開には特に用心した方がいい。あらゆることが予想される。外国情報機関による「テロだ、テロだ、テロだ」という偽旗工作、人為的に引き起こされる気象災害、偽の「人権侵害」容疑、南アフリカの通貨であるランドの崩壊、法律を悪用した武力を使わない戦争、大西洋主義者が繰り出す無理難題の詰め合わせ、エネルギー基盤組織破壊工作など、枚挙にいとまがない。

 現時点で既に「ジェノサイド条約」に訴える国がいくつかあってもおかしくはない。というのも、イスラエルの政治家や政府高官らが、ガザを破壊し、パレスチナ人を包囲し、飢餓に陥れ、殺し、大量移送することを公然と自慢しているのだから。それなのにこれまでのところ、地政学的上、力を持つ国々は、どこもその勇気を見せていない。

 南アフリカ共和国は、ほとんどのイスラム諸国やアラブ諸国が踏み込まないところに勇気をもって踏み込んだ。現状では、アラブ世界の多く、特に米国の従属諸国は、まだ口先だけの綺麗ごとを並べるに留まっている。

 カタールの仲介による「停戦」は、米国政府にとってまさに絶好の時機で実現した。ガザでの完全停戦に加え、パレスチナの独立国家樹立に向けた交渉も推進するため、イスラム・アラブ諸国の外相代表団が特定の国々の首都を視察しているところに当たっていた脚光を奪う形になったのだ。

 サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、トルコ、インドネシア、ナイジェリア、パレスチナで構成されるこの「ガザ・コンタクトグループ」は、最初に北京に立ち寄り、中国の王毅外相と会談した後、モスクワに移動し、セルゲイ・ラブロフ外相と会談した。このことは、2024年1月1日にロシアが議長国となってBRICS11が始動する以前から、BRICS11が行動を起こした実例となった。

 モスクワでのラブロフ大統領との会談は、南アフリカの現議長が招集したパレスチナに関するBRICS臨時オンライン会合と同時に行われた。イランのエブラーヒーム・ライースィー大統領は、この地域の抵抗枢軸を率い、イスラエルとのいかなる関係も拒否しているが、南アフリカ主導の取り組みを支持し、BRICS加盟国に対し、あらゆる政治的・経済的手段を用いてイスラエル政府に圧力をかけるよう呼びかけた。

 中国の習近平国家首席自ら、「パレスチナ問題の正当な解決なくして中東の安全保障はありえない」と語ったことも重要だった。

 習近平は、「2国家解決」、「パレスチナの正当な民族的権利の回復」、「パレスチナの独立国家の樹立」の必要性を改めて強調した。これらはすべて、国際会議を介して開始されるべき取り組みである。

 今回の一時的停戦も、将来の交渉の約束も、現段階ではどれも十分ではない。米政権自身、世界からの予期せぬ反発に苦しんでおり、イスラエル政府と腕相撲をして大量虐殺に短い「一時停止」を与えることで精一杯だ。結局、短い停戦の数日後には、虐殺が継続される、ということだ。

 もしこの停戦が実際の「停戦」であり、すべての敵対行為が停止し、イスラエルの軍事機構がガザ地区から完全に撤退していたとしても、その先の選択肢はかなり悲惨なものになるだろう。「レアル・ポリティーク(現実政治派)」を地で行くジョン・ミアシャイマーも、一言でこう言ってる。「イスラエルとパレスチナ間の交渉は不可能だ」と。

 現在の世界情勢をざっと見ただけでも、中・露からアラブ世界の多くまでが提唱している2国家間解決策がいかに破綻しているかがよくわかる。孤立したバントゥースタン*の集まりが国家としてまとまることはありえない。
*かつて南アフリカ共和国に存在した自治区

ガザのガスを丸ごと掴んでしまおう

 各方面で雷鳴のごとく鳴り響いている話は、ペトロ・人民元の出現がますます近づいているいま、米国が心底求めているのは、ドル建てで売買される東地中海のエネルギーだ、というものだ。その中に、ガザ沖に埋蔵されている莫大な天然ガスも含まれている。

 米政権のエネルギー安全保障顧問らがイスラエルに派遣され、「未開発の海底天然ガス田を中心としたガザの経済活性化計画について話し合う」という。なんて素敵な遠回しの表現なのだろう!

 しかし、ガザのガスは確かに重要な目的ではあるが、ガザという領土は迷惑な存在だ。イスラエル政府にとって本当に重要なのは、パレスチナのガス埋蔵量をすべて没収し、今後、優遇顧客になるであろうEUに割り当てることだ。

 インド・中東回廊(IMEC)--具体的にはEU・イスラエル・サウジアラビア・アラブ首長国連邦・インド回廊--は、米国政府が構想したものであるが、その構想においては、イスラエルがエネルギー経路の交差点の役割を果たすことになる。IMECは、米国とイスラエルが友好関係のもと、米ドルでエネルギー取引をおこない、同時にこれまでロシアからEUの送られてきたエネルギーの代替ともなり、考えられていたイランからヨーロッパへのエネルギー輸出の増加を食い止めることを狙っている。

 さあ、ここでも21世紀の二大勢力の戦いが繰り広げられる。覇権主義とBRICSの対決だ。

 中国政府はこれまでイスラエルのハイテク産業やインフラに多額の投資を行い、イスラエル政府とは安定した関係を築いてきた。しかし、イスラエルによるガザ侵攻は、その構図を変えるかもしれない。真の主権国家であれば、真の大虐殺を許す訳にはいかないからだ。

 これと並行して、覇権国(米国)がBRICS、中国、そしてその数兆ドル規模の「一帯一路構想(BRI)」に対する、さまざまなハイブリッド戦争や熱戦に向かう筋書きを打ち出そうとも、中国政府の合理的かつ戦略的に策定された軌道が変わることはない。

 エリック・リーによるこの分析は、この先に何が待ち受けているのかを知るために必要なものばかりだ。中国政府は2035年までの5カ年計画で、関連するすべての技術的な道筋を描いている。この枠組みのもとでは、一帯一路構想はG7抜きの地理経済学上の国際連合の一種と考えるべきだろう。一帯一路構想外にいるということは、旧来の企業体系や指導者層に関わることであり、グローバル・サウス/グローバル・マジョリティから孤立している、ということになる。

 では、このガザでの「一時停止」のあと、何が残るのだろうか? 来週までには、西側諸国の支援を受けた臆病者たちは、女性や子どもたちに対する大量虐殺を再開するだろうし、その虐殺行為は、今回はずっと長い期間になりそうだ。しかし、パレスチナの抵抗者と、ガザ北部に住む80万人のパレスチナ市民は、イスラエル軍と装甲車に四方を囲まれているが、パレスチナのためだけでなく、良心を持つすべての人のために、イスラエルの抑圧者と戦う重荷を背負う意思と能力があることを証明することになるだろう。

 どれほどひどい代償を血で払っても、最終的には報われることになろう。その報いとは、ゆっくりではあるが、確実に西アジアに置ける帝国支配体制が崩壊することだ。

 大手報道機関が繰り出すどんな言説も、虐殺を和らげようとするPR活動も、「イスラエルに反旗を翻す世論」を封じ込めようとすることも、イスラエルとその同盟諸国がガザで犯した連続的な戦争犯罪を覆い隠すことはできない。おそらくこれは、the Doctor*(形而上学的であれ何であれ)が人類に命じたことなのだろう。つまり、避けられない悲劇を全人類に目撃させることで、世界を変える、という命だ。
*英国放送協会 (BBC) のテレビドラマ『ドクター・フー』の登場人物であり、同作の主人公。(ウィキペディア)

ネタニヤフ首相はハマスを守っていた―ワシントン・ポスト紙の報道

<記事原文 寺島先生推薦>
Netanyahu was protecting Hamas – WaPo
イスラエル首相は、このパレスチナ武装勢力をガザから排除するあらゆる試みを中止してきた、と歴史家が新聞に語った
出典:RT  2023年11月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月2日



イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフ© Global Look Press / Chris Kleponis


 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエル首相を務めた数十年間、ガザを統治してきたパレスチナ過激派組織ハマスと「奇妙な共生関係」を築いてきた、とワシントン・ポスト紙が日曜(11月25日)、多数のイスラエル専門家の話として報じた。

 同紙は、同首相はハマスがイスラエル・パレスチナ和平過程を遅らせ、パレスチナ国家の樹立を妨害するのに役立つと考えた、と報じている。

 2009年から2020年まで途切れることなくイスラエル政府を率い、2022年12月に政権に復帰したネタニヤフ首相は、在任中ハマスを壊滅させると繰り返し公約してきたが、実際はハマスのガザ地区での支配力を維持するのに役立つ政策を追求していた、と同米メディアは報じた。

 ワシントン・ポスト紙の報道によると、同首相内閣は、カタールからの現金輸送を承認したが、この資金は、ガザ地区での公務員給与の支払いや同地区の生活基盤施設の改善、さらにはハマスの活動資金にも使用されていた、という。さらに、ネタニヤフ政権下のイスラエル政府は、定期的に捕虜釈放を承認していたが、この措置によりハマスは恩恵を受けてきた、とも報じた。


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 「過去10年間、ネタニヤフ首相はガザ地区のハマスを壊滅させようとするいかなる試みも阻止しようと努めてきた」と同首相とこの過激派組織との関係を研究してきたイスラエルの歴史家アダム・ラズ氏はワシントン・ポスト紙に語り、これは「奇妙な同盟」であり、そのような関係が、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃とそれに続くイスラエルのガザ軍事作戦で終結したのかもしれない、とも述べた。

 ネタニヤフ首相の政策目標は、パレスチナ人を分断し、ハマスにガザ支配を任せ、パレスチナ自治政府内の敵対勢力にヨルダン川西岸を支配させることであった、と言われている。両勢力間の紛争のために、「2国家解決」の交渉を不可能にした、とワシントン・ポスト紙は報じ、同首相がパレスチナ問題を完全に放棄することも可能になった、と付け加えた。


関連記事:Short ceasefire, long fight – Israel

 イスラエルの世論調査員で政治分析家のダリア・シャインドリン氏は、「パレスチナに統一された指導者層が存在しなくなったおかげで、(ネタニヤフ首相が)『和平交渉を進めることはできない』と言えるようになった」と述べた。また同紙は、ネタニヤフ首相の伝記作家アンシェル・フェファー氏の言葉を引用し、「そのおかげで彼は『話す相手がいない』と言えるようになった」と述べ、その代わりに同首相はイスラエルとイランの対立と自国の経済発展に焦点を当てることが可能になった、と付け加えた。

 「ネタニヤフ首相は、パレスチナ紛争がイスラエル国内で意見が分かれている問題からの目逸らしとして利用できる、と常々感じていた」とフェファー氏は同紙に語った。同紙は、同首相が2018年にハマスとパレスチナ自治政府が和解する傾向が見られた際、両勢力の和解を阻止しようとした、と報じたが、この問題の詳細については触れていない。

 首相官邸は同米紙に対し声明を出すことを拒否したが、あるイスラエル当局者は匿名を条件にネタニヤフ首相が「史上どの首相よりもハマスを厳しく攻撃した」と語った。首相はこれまではこの組織を壊滅させはしなかったが、10月7日以降の首相の「戦時内閣」がやっていることはそのこと(ハマスを壊滅させること)だと当局者は付け加えた。

 イスラエルはネタニヤフ首相の指導の下、2012年、2014年、2021年の3回にわたってガザで大規模な軍事作戦を行なった。いずれも最終的には交渉による停戦に終わり、この飛び地の支配権はこの組織ハマスに残された。

ガザの逆襲。それは、もうひとつの9.11か真珠湾攻撃だが、実際には誰が誰に何をしたのか? 「これは偽旗作戦の可能性がある」

<記事原文 寺島先生推薦>
Gaza Strikes Back. It’s Another 9/11 or Pearl Harbor but Who Actually Did What to Whom? “This Was More Likely a False Flag Operation”
「元現場諜報員の私は、今回の反撃がおこなわれた原因は、イスラエル側の組織的な失敗というよりは、偽旗作戦に近いものであった、と確信している」
筆者:フィリップ・ジラルディ(Philip Giraldi)
出典:グローバル・リサーチ 2023年11月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年12月1日





この記事の初出は2023年10月16日

 米国の思想統制された報道機関は、複数の解釈が可能な国際的事件が起きると、ほとんど即座にぴったりの言説を思いつくことができるのは驚くべきことだ。

 1948年以来、イスラエルは何十万人ものパレスチナ人を故郷から追放してきた、

 パレスチナが歴史的に領有してきた地域のほぼ全域を占領し、自軍に何千人もの地元住民を殺害する権限を与えてきた。

 さらに最近では、パレスチナ・アラブ人がユダヤ人と同じ人間であることさえ否定するアパルトヘイト体制を確立した。

 ネタニヤフ政権の大臣の一人であるアイェレット・シャクドが、彼らが「小さな蛇」と呼んだパレスチナの子どもたちだけでなく、その子どもたちを産んだ母親もすべて抹殺すよう要求したことは記憶に新しい。

 しかし、アラブ人が、限られた軍備で、自分たちに向けられた憎悪に対して反撃すれば、イスラエル側は被害者として描かれるが、パレスチナ人は人間扱いされず、「テロリスト」として描かれる。

 米国や欧州の報道機関は、手ごわいイスラエル国境防衛線を突破したハマスの攻撃を「イスラエルの9.11」、あるいは「イスラエルの真珠湾攻撃」とも表現し、イスラエルが残酷で無慈悲な敵による「いわれのない」攻撃を受けたという文脈を定着させようとした。

 イスラエルはこの攻撃に対し、ガザへの激しい砲撃で病院や学校などの生活基盤施設を破壊し、食料供給や水、電気を遮断した。

 ガザ北部の住民110万人全員に対し、地上攻撃に備えて避難するよう要求しているが、すべての国境が閉鎖されているため行き場がなく、国連は「壊滅的な人道的結果」をもたらす要求だと指摘している。ジャーナリストのピーター・ベイナートは「これはとんでもない犯罪だ。しかもこの行為は、アメリカの支援を得て、平然と行われている」と述べた。

 そして、米国政府は実に典型的にイスラエルと同じ立場にある。ジョー・バイデン大統領は、ユダヤ人の赤ん坊が死んだという捏造された話を引き合いに出し、イスラエルには自国を守る「義務」がある一方、パレスチナ人には自国を守る権利などまったくなく、ましてや自由を求めて迫害者に立ち向かう権利などない、と語っている。

さらに米国政府は、この紛争に直接関与することを躊躇なく選択し、完全にこのユダヤ人国家の側に立ち、「イスラエルには自衛権がある」と繰り返し主張し、イスラエルに「われわれはあなた方の味方だ」と伝える一方で、空母2隻を戦闘現場に派遣し、第101空挺団をヨルダンに派遣し、クウェートに駐留する海兵隊の即応態勢を強化した。

 ホワイトハウスは、停戦と協議を促すためにもっと積極的な措置を取ることもできたはずだが、その代わりに、包囲されたパレスチナ市民を脱出させるという口先だけの呼びかけを行う一方で、イスラエル軍の壊滅的な対応を支持することを選んだ。


イスラエルのネタニヤフ首相と会談するアントニー・ブリンケン米国務長官(2023年10月12日、テルアビブにて)。画像は、アントニー・ブリンケン国務長官のX投稿記事から。

 イスラエルはまた、役立たずで、まるで脳死状態にあるかのようなロイド・オースティン国防長官を出迎える。この国防長官は、ハマスは「邪悪」で「ISISよりたちが悪い」という捉え方で、ネタニヤフに助言しようとしているのだ。いっぽう、アントニー・ブリンケン国務長官はすでにエルサレムに滞在しており、「米国が存在する限り」、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の統一政権を支持すると発表したが、その前に、「私があなた方のところに馳せ参じたのは、米国国務長官としてだけではなく、一介のユダヤ人として、です」とも語っていた。

 ブリンケンが、自身の個人的な宗教と米国の役人としての公的な役目を明らかに一緒くたにしたことから分かることは、なぜブリンケンがイスラエル入りしたのかの一番の理由が、彼自身がユダヤ人であることにあった、ということだ。おそらく彼は、イスラエルを含む政策決定から身を退くべきだ。彼が「ユダヤ人」であることはアメリカの国益にそぐわないし、現在の進行状況に対して、不合理な反応を生じがちになるからである。 

 これらのことすべてがウクライナでの状況とよく似ている、とお感じになるのももっともだ。ただし、ウクライナで、米国が欧州諸国と共に戦っている相手のロシアは、ウクライナの正当な領地とされる地域を占領したと言われ、悪者にされているが、パレスチナでは、まがうことなき真の占領者であるイスラエルが支持されている、という点が相違点なのだが。

 おかしなことだが、「偽善」ということばが、即座に頭に浮かぶ。ただし結果的には、私は各種報道機関が報じている、ハマスによる攻撃は、9-11に何となく似ている、というのと同意見だ。ただし、私の捉え方が、CNNのジェイク・タッパーが捉えている世界からは受け入れられない異質なものでいることは間違いない。

 私の考えは、イスラエルはその広範なスパイ網によって、米国の9-11を事前に知っていた、というものだ。知っていた上で、その情報を米国に伝えなかった。その方が自分たちに利がある、と考えていたからだ。

 実際、ご満悦のネタニヤフ首相は数年後、「9-11は、米国を我々の戦いに参加させたのだから、いいことだった」とさえ述べている。

 9-11の攻撃により3000人ほどの米国民が亡くなったが、そんなことはイスラエル政府には重要なことではなかったのだ。というのも、1967年、米海軍の情報収集船USSリバティ号への攻撃で34人の船員が犠牲になったのを皮切りに、イスラエルは米国民を殺すことで利益を得てきた長い歴史があるからだ。

 今回のガザの件でも、ネタニヤフ首相は予期せぬ展開を奨励し、9-11のような事態を引き起こして、イスラエル人が言うところの「草刈り」をアラブ・パレスチナの残りの地域でおこなおうと考えたのかもしれない。

 そして、念頭に置いていただきたいことは、蜂起の引き金となった実際の事件は、イスラム教で3番目に神聖な場所であるアル・アクサ・モスクとその周辺で、少なくとも800人のイスラエル人入植者が暴れまわり、巡礼者を殴打し、パレスチナ人の商店を破壊したことだった。暴動は明らかに政府によって許可され、奨励さえされていた。

 元現場諜報員としての経験から、イスラエル側の組織的な失敗というよりは、偽旗作戦に近いものであった可能性が高いと私は確信している。

 イスラエルは、兵士と兵器に支えられた大規模な電子的・物理的な壁で、陸側のガザを完全に取り囲んでいた。あまりに強固な守りだったため、ネズミ一匹でも入り込めない、と考えられていた。

 ガザの地中海側もイスラエル海軍によって厳重に管理され、ガザを行き来する船は完全に封鎖された。


 エジプトはシナイ半島と国境を接するガザ南部を厳重に管理していた。つまり、ガザは24時間365日、常に完全な監視と統制下にあったのだ。イスラエル軍情報部もまた、ガザ内部で訓練や動きを報告する情報提供者の情報網を持っていたのは確かだ。飢えに苦しむ人々に近づき、彼らが見聞きした情報を提供するためだけで、断れないような申し出をさせることができるのであれば、それは簡単なことだ。

 ハマスの攻撃の10日前には、エジプト政府からイスラエルへの警告があった。エジプトの情報大臣アッバス・カメル将軍が自らネタニヤフ首相に電話をかけ、ガザの人々が、「異常で、恐ろしい作戦」を行う可能性があることを示唆する情報を共有していた。他の報道機関の証言によれば、ハマスがどのように訓練し、公に作戦を練っていたかが明らかになっている。また、米国の情報機関による評価もあり、それはイスラエルと共有されており、何かが起こる前触れがあることが共有されていた。つまり、すべての証拠を踏まえると、ハマスの攻撃を予測し、それに対抗するための諜報活動の失敗はなかった可能性が高い。むしろ、何が起こるかを知っていた。イスラエル政府が政治的決断を下し、「ハマスの全構成員を死人にする」と誓い、ガザを破壊する口実を得るために攻撃を続行させることを選んだのだろう。そして「その先」にあるのは、レバノン、シリア、イランかもしれない。特にイランは、今のところ何の証拠もないまま、ハマスの攻撃に関与した当事者として、いつもの容疑者たちからすでに非難されている。このような言説が流布されるときにはよくあるいつもの手なのだが。


今年1月3日、アル=アクサー・モスクを訪問中のイスラエルのイタマル・ベン-グヴィル国家安全保障大臣(画像はソーシャル・メディアから)

 イスラエルは政治的に右傾化しており、その本気度を示すために、小規模の民族浄化はありがたがるかもしれない。ネタニヤフ首相をはじめとする政府高官たちは最近、パレスチナの町や難民キャンプに対する軍の襲撃強化を正当化するために、国内の「治安情勢が悪化している」という言葉を口にしている。イスラエルの新政権はまた、国家安全保障大臣として、超国家主義者のユダヤ勢力党イタマル・ベン・グヴィル党首の管理下に警察を置いた。同大臣はその立場を利用して、特にガザのハマス壊滅のための戦争を呼びかけ、実際に戦争が勃発している。ガザはハマスという武装した組織的抵抗勢力の本拠地であり、ベン=グヴィルや他の人々にとって特に興味深い場所であるが、奇妙にも、このハマスはイスラエル側の支援により創設されたものだ。その意図は、パレスチナの政治運動を、ヨルダン川西岸のファタハとガザのハマスという2つに分断することにあった。

 今回の戦闘に関して、答えが知りたくなるもうひとつの疑問点は、いったいハマスがどうやって武器を手に入れたのか、という点だ。

 明らかにほかの部品やくずから製造されたものもあるが、洗練されたものもある。しかしガザは四方を封鎖されているため、密輸入は普通にはできない。イランなどから供給されてトンネル経由で持ち込まれたという説もあるが、トンネルの2本はイスラエルに、3本目はエジプトにつながっているものだ。4本目のトンネルは地中海とつながっている。とすれば、これらの武器はどのようにして到着したのだろうか?三重、あるいは四重に経路が用意されていて、そのあいだで、さまざまな関係者が互いに嘘をつきあっている、ということはありえないだろうか?そして、米国の艦隊がガザ沖に到着した後、ネタニヤフ首相が仕組んだ何らかの偽旗事件が起こり、米国が直接戦闘に巻き込まれるのではないかという心配をしても、心配のし過ぎでないのではないかもしれない。

 さらに、少なくとも名目上は人権が尊重されている米国、そして一般的な言い方をすれば「西側世界」のすべての人々にとって懸念すべき問題も存在する。

 ほとんどすべての西側諸国政府から伝わってくることは、イスラエルは、それが大規模な強制移住や大量虐殺を含む戦争犯罪を伴う場合であっても、好きなことをする白紙委任状を持っているというものである。この場合、イスラエルをあらゆる批判から守ることを目的とした政府と報道機関の協調的な対応が、ほとんど即座に残虐行為の捏造話を流し始め、同時に言論と結社の自由にも打撃を与えた。危機を和らげようとするはずのバイデン大統領は、ハマスについて「純粋に、混ぜ物のない悪が、地球上に解き放たれた!」と発言し、かえって火に油を注いでいる。

 フロリダ州では、シオニストの手先であるロン・デサンティス知事がユダヤ教指導者たちとシナゴーグ(ユダヤ教の教会)で会談し、イランと何らかの関係を持つ企業への制裁を含む、イランに対する強硬措置を発表した。デサンティス知事はまた、「ハマス撲滅」を訴えた。同知事の執念深さは、同時に、ガザの難民は「反ユダヤ主義者」であるため、米国は難民を受け入れるべきではないと述べるほどであることが明らかになった。

 リンゼー・グラム上院議員(男性と呼ぶべきか、女性と呼ぶべきかは置いておく)が、米国のイラン攻撃を呼びかけるとともに、ハマスに対する「宗教戦争」を宣告し、イスラエル軍がガザを攻めるようけしかけ、「その土地を更地にするくらい」、「しなければならないことはすべてやり尽くさなければならない」とも語った。

 そしてヨーロッパ諸国も同様に、イスラエルに対する忠誠心で腰が砕けている。イスラエル大統領は「ガザに罪のない市民はいない」と宣言し、それから間もなく欧州連合(EU)の代表が大統領と会談し、無条件の支持を表明した。一方フランスでは、エマニュエル・マクロン政権が、パレスチナの権利を支持する集会を非合法化しようとしている。

 英国では、スエラ・ブラヴァマン内務大臣が、イスラエルの行動に対する抗議やパレスチナを支持するあらゆるものを犯罪とし、パレスチナの国旗を公に掲げることを禁止することまで提案している。同内務大臣は、そのような行為を「英国内に住むユダヤの人々に対する犯罪行為である」としていた。

 さらに同内務大臣は、「私は警察にこの歌を検討するように働きかけたい。『川から海まで、パレスチナは自由だ』といった歌を合唱することが、イスラエルが世界から抹殺されることを望む暴力的な願望の表現と理解されるべきかどうかについて、また、ある特定の状況で、そのような歌を歌うことが、人種差別として公序良俗法第5節の違反にあたるかどうかについてである」、とも述べた。ドイツ検察庁も、このような歌を歌うことを「犯罪行為」と分類している。西側の政治的指導者層のほとんどが、イスラエルとその卑劣な指導者たちの血なまぐさい復讐への願望に何の疑問も挟まないどころか、熱狂的に賛同までしている様子は、実に衝撃的だが、驚くにはあたらない。

 国家統一政権の結成に伴う不安定要素を抱えていたネタニヤフには、ガザの問題だけでなく、別の利点があることを指摘するイスラエル国内の声もある。今回の騒ぎにより、ネタニヤフが提案していた法改正に対する大きな抗議運動を止めることになったからだ。今後数週間のうちに、このすべてが政治的にまとまれば、「ユダヤ民族はイスラエルの土地のすべてに対して排他的かつ不可分の権利を有する」というネタニヤフ首相の主張に沿った、かつて見られたようなパレスチナの完全な民族浄化へと発展する第一歩を見ることになるかもしれない。つまり、かつてのパレスチナの地はすべてユダヤ人の土地として定義されることになるのだ。ユダヤ人が完全な支配権を持ち、何ら異議を唱えることなく自由に好きなことができる土地となり、イスラエル政府が「完全に自治権を有する」土地になるのだ。そしてこれら全てのことは、現在、ガザで展開されている状況によって実現されたのである。

国連憲章51条から見ると、ロシアとイスラエルの軍事行動はどう異なるのか(スコット・リッター)

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia, Israel, and the Law of War Regarding Civilians
著者:スコット・リッター(Scott Ritter)
出典:スプートニク  2023年11月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月29日





 10月7日にハマスがガザ周辺のイスラエル軍基地や入植地を攻撃した後、正当防衛の問題や、その攻撃に対するイスラエルの武力行使をめぐる合法性に関する議論が盛んに行われた。

 必然的にこの議論は、ロシアの特別軍事作戦における行動と、ガザに関するイスラエルのこれまでの行動を比較しようとする議論につながる。特にマリウポリの例は、現在進行中のイスラエルのガザ作戦との比較対象としてしばしば取り上げられる。この2つの戦闘を直接比較するのは時期尚早だが、ロシアとイスラエルがそれぞれの軍事作戦を正当化する際に拠り所とした国際法の基盤を検証することはできる。悲しいかな、イスラエルの場合、その基盤は不十分である。


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 ロシアは軍事行動開始の正当化理由として、憲章第51条に明記されている個別的・集団的自衛権を挙げている。

 憲章第51条の条文は以下のとおり:
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全を維持するために必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を損なうものではない。この自衛権の行使において加盟国がとる措置は、直ちに安全保障理事会に報告されるものとし、かつ、この憲章の下で、安全保障理事会が国際の平和及び安全を維持し又は回復するために必要と認める措置をいつでもとる権限及び責任に何ら影響を及ぼすものではない。

 ロシアのプーチン大統領は特別作戦の開始を発表する演説で、NATOの東方拡大がロシアにもたらす脅威と、ウクライナがドンバスのロシア語を話す人々に対して続けている軍事作戦について詳述し、先制攻撃の根拠を示した。

 NATOとウクライナは、「われわれ(ロシア)に、ロシアとわれわれの国民を守るために、今日われわれが使わざるを得ない以外の選択肢を残さなかった。このような状況では、大胆かつ迅速な行動を取らなければならない。ドンバスの両人民共和国はロシアに助けを求めている。この文脈において、国連憲章第51条に従い、ロシア連邦理事会の許可を得て、2月22日に連邦議会が批准したドネツク人民共和国およびルガンスク人民共和国との友好・相互援助条約を履行するため、私は特別軍事作戦の実施を決定した」とプーチンは宣言した。


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 ロシア大統領は、第51条に適用される予見可能な集団的自衛権の原則に基づき、ドンバスのロシア語を話す住民にとって、数千人が死亡した8年間にわたる残忍な砲撃による継続的で差し迫った脅威があるとして、認知可能な主張を示した。

 イスラエルは、ガザでの軍事行動を正当化する際、自衛権の存在を繰り返し強調してきた。しかし、ロシアのワシーリー・ネベンジャ国連大使はこの主張を否定し、「占領国であるイスラエルにはそのような権利はない」と断言した。

 ネベンジャの主張は、国際司法裁判所が2004年に発表した勧告的意見に基づくものである。「憲章第51条は、ある国が他の国に対して武力攻撃を行なった場合の固有の自衛権の存在を認めている。しかしイスラエルは、自国に対する攻撃が外国によるものだとは主張していない。

 ICJ(国際司法裁判所)は、「イスラエルは、その民間人に対する多数の無差別かつ致命的な暴力行為に直面しなければならない」とは述べず、イスラエルには「国民の生命を守るために対応する権利があり、実際にその義務がある」と付け加えた。しかし、国際司法裁判所は、イスラエルがとるいかなる措置も「適用される国際法に合致したもの」でなければならないと判断した。そのため、ガザや現在イスラエルの領土となっている土地の多くが国際法上「占領地」と見なされる限り、また、イスラエルが対応している脅威がこの占領地の外ではなく中から生じていることに注目する限り、イスラエルは国連憲章第51条に基づき、パレスチナ領土の占領の不当性を排除するために、「必要な状態」という主張に基づいて自衛権を発動することはできない。

 ネベンジャ大使は、イスラエルの安全保障に対する権利は、「よく知られているように、国連安全保障理事会の決議に基づいてパレスチナ問題が公正に解決された場合にのみ、完全に保証される。また、イスラエルがテロと戦うことを私たちは否定していない」とした。さらに同大使は、「しかし、戦うべき相手はテロリストであって、民間人ではない」とも述べた。

 ロシアはウクライナとの紛争において、国連憲章第51条に定められた自衛の要件を守ることで国際法に合致した行動をとっており、イスラエルは国際法に真っ向から反して活動する占領国であるため、その行動を正当化する理由として第51条の正当な自衛を挙げることができないことを確認した上で、問題は次に、ロシアとイスラエルがそれぞれの軍事任務を国際人道法に定められた基準に合致した方法で遂行しているかどうかという問題に移る。

 正当な戦争行為と戦争犯罪を区別する重要な考慮事項は、「軍事的必要性」の概念である。軍事的必要性の定義によれば、「正当な軍事目的を達成するために実際に必要であり、国際人道法で禁止されていない措置を認めるものである。武力紛争の場合、唯一の合法的な軍事目的は、紛争当事国の軍事力を弱めることである」となる。

 「軍事的必要性」の問題を論じる際には、「区別」の問題が最も重要になる。「区別」という概念は、武力紛争の当事国が「常に、文民と戦闘員、文民の所有物と軍事目標とを区別し、それに応じて軍事目標に対してのみ作戦を指揮しなければならない」ことを保証するものである。この区別は、絨毯爆撃や特定の軍事的目的を欠く砲撃のような「無差別攻撃や無差別な戦争手段・方法の使用」を禁止するものである。

 「軍事的必要性」と「区別」は、国際社会が戦争犯罪を構成する具体的な行為を国際刑事裁判所ローマ規程、特に第8条(戦争犯罪)という形で体系化する際の中核となる原則である。具体的には以下のような内容だ:

・民間人そのもの、または敵対行為に直接参加していない個々の民間人に対する意図的な攻撃の指示

・意図的に民間人の所有物、つまり軍事目標ではないものに攻撃を向けること

・武力紛争国際法の下で文民または文民の所有物に与えられる保護を受ける権利があるという条件のもとで、国際連合憲章に基づき、人道支援または平和維持活動に関与する要員、施設、物資、部隊または車両に対し意図的に攻撃を向けること。

・攻撃によって民間人の生命や負傷、または民間人の所有物への損害が偶発的に発生することを承知の上で、意図的に攻撃を仕掛けること。

 マリウポリとガザをめぐるそれぞれの戦いについて、ロシアとイスラエルはともに、上記のすべての行為に違反する行為を行なっている、と非難されている。しかし、この点でロシアとイスラエルを区別する主な点は、ロシアの原理が上記の行為を明確に禁じていることだ。イスラエルの原理は、文書でも口頭でも、それを受け入れている。

 2006年のレバノン戦争で、イスラエル国防軍北部司令官ガディ・アイゼンコットは、市民地域を占領するために必要な困難で危険な地上戦を行うよりも、市民地域全体を標的にして破壊しようとする軍事戦略を実施した。この戦略の目的は、単にイスラエルの死傷者を減らすこと以上に、ヒズボラ戦闘員の行動に対して民間人全体に責任を負わせることにあった。アイゼンコットは、軍事目標と民間目標を区別するという国際法上の要件を取り払った。この新しい考え方は、ベイルート西部のダヒヤ地区で初めて使用され、この考え方の名前はこの場所に由来する「ダヒヤ」ドクトリンとなった。

 マリウポリでの戦闘におけるロシア軍の行動に関する事実が明らかになるにつれ、ロシア軍兵士が模範的な行動をとり、自らを危険にさらして、国際法の精神と文言の範囲内で、区別と軍事的必要性の原則が自由に適用されるようにしたことが明らかになった。

 「ダヒヤ・ドクトリン」が執拗に実行されているイスラエル国防軍とガザについて、同じような主張をすることはできない。

イスラエルが最も恐れるもの:「大イスラエル」への侵食?

<記事原文 寺島先生推薦>
What Israel Fears Most: An Encroachment to “Greater Israel”?
筆者:ステファン・レンドマン(Stephen Lendman)
出典:グローバル・リサーチ  2017年12月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月28日


 この鋭い分析記事の初出は、2016年12月27日

 イスラエルは米国主導の西側諸国から強い支持を受けている。安保理決議2334号は入植地の違法性を確認したが、現地では何も変わらなかったし、この先も、予測可能な限りはそうなることはないだろう。


 1967年6月以前の国境線に基づく最終的なパレスチナ人の自決は、まったく別の問題である。それがいつ実現するかは、イスラエルが最も懸念していることだ。

 長年の国家政策は、アラブ人を最小限に抑えて最大の土地を確保することを求めている。ユダヤ人による排他的な開発のために、超法規的に土地を取り上げ、ブルドーザーで一軒ずつパレスチナ人の家を破壊し、長期的にはコミュニティ全体を消滅させ、奪われた土地で入植地の拡大を止めずに続けることで目標を達成する。

 100年近く前、世界シオニスト機構が打ち出したこのユダヤ人国家の土地領有計画には、次のようなものがあった:

・パレスチナの歴史的な領地

・シドンとリタニ川までの南レバノン

・シリアのゴラン高原、ハウラン平原、デラア

・デラアからヨルダンのアンマンまでのヒジャーズ鉄道とアカバ湾の支配。

 シオニストの中にはもっと多くを求めている人々もいる。つまり、西のナイル川から東のユーフラテス川まで、パレスチナ、レバノン、シリア西部、トルコ南部の土地である。



 強硬派のゼエブ・ジャボチンスキーは、アラブ人との平和共存は実現不可能だと反対した。「(優れた)ユダヤ人の軍事力による鉄の壁」を主張する彼の考えは、イスラエルを破壊するというアラブの希望を阻止することであり、その後にイスラエルが指示した条件に基づく交渉による和解を行うことだった。

 イスラエルの元首相ベン・グリオンはジャボチンスキーと同意見だった。イスラエルの独立戦争は続き、パレスチナの歴史的領地の78%を手に入れた後、残りの領地は1967年6月に占領した。

 未解決の紛争は意図的に続いている。平和と安定は、イスラエルの長期的な目標を打ち砕く。中東専門家のジョセフ・マサドはかつてこう言った:
 その論理は次のようなものだ:イスラエルはパレスチナの土地を占領し、アパルトヘイトの壁に囲まれたバントゥスタンで(その)住民を包囲し、住民を飢餓に陥れ、燃料や電気を遮断し、樹木や作物を根こそぎにし、定期的な空襲や、彼らや彼らが選んだ指導者に対する標的を絞った暗殺を行う権利がある。そして、(もし抵抗があれば、イスラエルには)、彼らを大虐殺する権利がある。

 アラブ人は劣った存在であり、権利を有するに値しないと考えられており、イスラエルにはアラブ人を抑圧し、かつ自衛する権利があるが、イスラエルの抑圧に対して(アラブ人が)自衛するとしたら、そのアラブ人の正当な防衛に対しては、イスラエルは戦争法や人道的配慮を自制も配慮もせずに、自衛する権利がある、と考えられているのだ。

 イスラエルは交渉しない。要求し、力ずくで意思を押し付ける。何十年もの間、パレスチナ人は冷酷な占領の過酷さ、ゆっくりと進行する大量虐殺に耐え、救済の見通しが立たないまま、ひどい犠牲者を出してきた。米国の二大政党のどちらが政権を握ろうとも、変わりはなかった。

 ベン・ローズ副国家安全保障顧問は、ジョン・ケリー国務長官が20日に退任する前に、紛争解決のための「包括的な視座を示す」つもりだと述べた。

 1月15日には、数十カ国の外相が参加するフランスの和平会議が予定されている。予定どおり進めば、1月20日にオバマ大統領が退任する前に、紛争解決案が4カ国協議と安全保障理事会で採択されることになる。

 イスラエルは、抑圧的な現状を維持するために、他の国々が自分たちの独断で条件を決めることに冷静さを欠く様子を見せている。

 匿名のイスラエル政府高官によれば、「いまの努力は、パリ会議でこのような動きをいかに阻止するかということだ」とのことだ。

 超国家主義者のアビグドール・リーベルマン国防相は大げさに、計画されていることを「(19世紀の)ドレフュス裁判*の現代版であり、今回は全イスラエル国民とイスラエル国家丸ごとが被告席に座らせられることになる」と述べた。
*フランス第三共和政下での反ユダヤ主義による陰謀事件。1894年、ユダヤ系軍人がドイツのスパイとして告発されたが、無罪を主張。裁判で背後の軍部・教会の反ユダヤ主義が批判され、結局1906年に無罪となった。(サイト、「世界史の窓」より)

 フランスのジャン=マルク・エロー外相は、フランスは「イスラエルとパレスチナの2国家による解決の必要性を再確認するために(会議を)開催する決意だ」と述べた。

 数年前までならばこのような解決法も可能だった。しかし、イスラエルがヨルダン川西岸の土地の6割以上を支配し、エルサレムはイスラエルのためだけの首都であると主張し、盗んだパレスチナの土地に入植地の拡張を止めずに続けている現状では、もはや不可能だ。

 1月にパリで何が発表されようとも、現地では何も変わらないだろう。特に、間もなくオバマのあとを受けるトランプは、最も「親イスラエル的な大統領」になるつもりなのだから。


スティーブン・レンドマンはシカゴ在住。連絡先はlendmanstephen@sbcglobal.net。
編集者・寄稿者としての新著のタイトルは『Flashpoint in Ukraine: How the US Drive for Hegemony Risks WW III(ウクライナの一触即発:覇権を狙う米国はいかに第三次世界大戦のリスクを冒すか)』http://www.claritypress.com/LendmanIII.html。
彼のブログサイトはsjlendman.blogspot.com。

ナクバ2.0がネオコン戦争を復活させる

<記事原文 寺島先生推薦>
Nakba 2.0 Revives the Neocon Wars
筆者:ぺぺ・エスコバール(Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture Foundation  2023年10月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月27日


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© Photo: AP


イスラエル対アラブの子どもたちの戦争は完全に制御不能になりつつある、とペペ・エスコバルは書いている。

「イスラエル対アラブの子どもたち」の戦争は、「覇権国 対 抵抗勢力枢軸」の戦争として機能しており、「NATO対ロシア」、「NATO対中国」の戦争の一部となっている。状況は完全に制御不能になりつつある。

中国が西アジア全域の和平を仲介し、ロシアと中国がBRICS 11に全力で取り組み、米ドルを使わないエネルギー貿易の決済を促進することで、帝国の逆襲は完全に予測できる。

               西アジアに火をつけよう

シュトラウス派ネオコン精神病者とそのワシントンDCの当面の目標は、シリア、レバノン、そして最終的にはイランを狙うことだ。

そのため、中央・東地中海に少なくとも73隻の米/NATO軍の艦隊が存在する。その中には、2つの米空母群を含め、イタリア沖で開催中のダイナミック・マリナーの軍事演習に参加するNATO14加盟国の30隻以上の艦船が存在する。

これは、1970年代以来最大の米/NATO軍艦の結集である。

この艦隊が、ナクバ2.0をガザに押し付けるというイスラエルの最終解決計画を「支援」するために編成されていると信じる者は、ルイス・キャロルを読まなければならない。すでに行われている影の戦争は、シリア、レバノン、イラクにあるすべての抵抗枢軸の粉砕を目的としている。その頂点にあるのがイランだ。

通常以上のIQを持つ軍事アナリストなら誰でも、高価なアメリカの鉄製バスタブ(空母群)はすべて、海底のサンゴ礁のデザインになる運命にあることを知っている。特に超音速ミサイルに見舞われたときはそうである。

もちろん、これはすべてアメリカの戦力展開能力/抑止力ショーにすぎないかもしれない。主役であるイランとロシアは動じていない。偽のカラシニコフを持った山羊飼いの一団がアフガニスタンでNATOに何をしたかを、肩越しにチラリと見ているだけだ。

さらに、覇権国がイランに対して戦争を仕掛けようと考えるなら、地上の基地の本格的なネットワークに頼る必要がある。カタール、クウェート、イラク、さらにはヨルダンの基地をアメリカが使用することを、西アジアのどの国も許さないだろう。バグダッドはすでにかなり長い間、すべての米軍基地の撤去に取り組んでいる。

               私の新しい「真珠湾攻撃」はどこだ?

プランBは何かといえば、また新たな「真珠湾攻撃」を設定することだ(テルアビブによれば、最後の「真珠湾攻撃」はほんの数週間前のことだ)。結局のところ、内海での砲艦外交のような派手な演出は、格好のカモとなるだけだ。

数十億ドルもするバスタブ(空母)のひとつがイランのミサイルによって沈められるという、無限の屈辱を覇権国家に与える可能性を、国防総省長官ロイド・オースティンが考慮するのを期待することは無駄なことだ。そうなれば、彼らは文字どおり核に頼るだろう。

情報分析に精通するアラステア・クルークは、警告している。そうすれば、すべての紛争地域が一度に爆発し、米国の「同盟システム」全体が破壊される可能性がある、と。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、ガザが破壊されれば、その結果生じる大惨事は「何世紀とは言わないまでも、何十年も続くだろう」と述べ、いつものように釘を刺した。

ガザで始まったサイコロの一振りは、今や西アジア全域に拡大し、その後、必然的にヨーロッパ、アフリカ、アジアへと広がっていく。

誰もが、現在の扇動的な戦争状況の前段階を覚えているだろう。ロシアの天然資源からヨーロッパを切り離すために、ウクライナで行われたブレジンスキーの策略のことだ。

これは1939年以来最大の世界危機へと悪化している。ワシントンのネオコンたちは、どう手を引けばいいのか見当もつかない。だから現状では、絡み合った両戦争の平和的解決の望みはゼロ以下だ。

以前にも強調したように、ロシア、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェートといった主要産油国の指導者たちは、一挙に世界の石油生産のほぼ半分を断ち切ることができ、発砲することなくEUとアメリカの経済全体を崩壊させることができる。外交筋は、これが真剣に検討されていると断言している。

現在ヨーロッパにいる古参のディープ・ステート(闇の国家)筋が私に語ったところによれば、真剣なプレーヤーたちは、このメッセージをワシントン周辺に送って、「制御できない戦争に火をつけることを、米国に考え直させるために」、積極的に関与しているとのことだ。「彼らがウォール・ストリートへ行ってデリバティブ・イクスポージャー(リスク管理)をチェックするとき、資料は既にブラックロックのラリー・フィンクやマイケル・ブルームバーグのような連中に文書が送られているのだから、そのことを考え直す時間がすでにあったはずだ」、という。

これと並行して、「新たな悪の枢軸」(ロシア、中国、イラン)の情報機関では、イスラムの統一させる必要性について真剣な議論が展開されている。

ロシアや中国といった基軸国が、グローバル・サウス/グローバル・マジョリティ全体の共通の敵を明確に認識したとしても、見通しはよくない。エルドアン政権下のトルコは、ポーズをとっているだけだ。サウジアラビアは、何があってもパレスチナの擁護/保護には乗り出さないだろう。西アジアにおけるアメリカの顧客/同盟国は、ただ怯えているだけだ。残るはイランと抵抗勢力だけだ。

               迷ったらヤハウェ(旧約聖書の神)を思い出せ

その一方で、復讐心に燃え、ナルシストで、政治的欺瞞と道徳的免罪符の達人である征服者たちは、ナクバ2.0を固めようとしている。ナクバ2.0は、ガザ沖のガスを違法に食い尽くすための完璧な解決策でもある。

230万人のパレスチナ人に影響を及ぼすイスラエル情報省の強制退去指令は、極めて明確だ。それは10月13日に同省によって公式に承認されている。

それは、ガザ北部からすべてのパレスチナ人を追放することから始まり、連続的な「陸上作戦」、ラファのエジプト国境を越えるルートを空けること、シナイ北部に「テント村」を設立すること、そしてその後エジプトに「パレスチナ人を再定住させる」ための新しい都市を設立することである。

人道法・政策コンサルタントのイタイ・エプシュテインは、「今のところ、同省の指令を支持する議題や政府決定を見つけることはできていない。もしそれが本当に発表され、承認されたとしても、公の場には出てこないだろう」と述べている。

テルアビブの過激派の何人かは、暴言の中でそのとおりのことを言っている。

より広範な戦争については、すでに書かれている。ずっと前にね。そして彼らは、アメリカのキリスト教シオコン(シオニスト+ネオコン)と連携して、それに忠実に従おうとしている。

ウェズリー・クラーク将軍が9.11の2ヵ月後に国防総省に行き、5年間で7カ国を破壊の対象とするネオコン/キリスト教シオコン計画を知ったことを誰もが覚えている:

イラク、リビア、レバノン、シリア、ソマリア、スーダン、そしてイランである。

それらすべてが不安定化され、破壊され、混乱に陥った。

リストの最後の1つはイランである。

さて、申命記7:1-2, 24に戻ってみよう:

「ヤハウェはイスラエルに、『あなたたちよりも大きく、強い七つの国』(強調は筆者)を特定し、『滅びの呪いをかけなければならない』と告げ、『憐れみを示してはならない』と告げた。彼らの王たちについては、『天からその名を消し去るのだ』。」

イスラエルの大量虐殺を支援するカナダとアメリカの動機の背後にあるベングリオン運河

<記事原文 寺島先生推薦>
Ben Gurion Canal Behind Canada-US Motive for Backing Israel’s Genocide
筆者:トゥルースボム・メディア(Truthbomb Media)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年11月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月25日





 米国、イスラエル、カナダ、そしてその同盟国は、利害の一致を考慮し、停戦を許さないという強い意志を持っている。ガザ地区での意図的な共同攻撃は、継続的な空爆と地上攻撃を特徴とする長期的な戦略計画の明確な表れである。悲惨なことに、多数の子どもを含む1万人以上のパレスチナ人の命を奪ったこの協力関係は、単なる偶然ではない。これらの国々が経済的、地政学的な目標を共有することによって、軍事戦略がうまく調整された結果なのだ。



 この暴力的な軍事作戦を支援することで、2つの動機が明らかになる。ひとつは、沖合の海洋LNG資源を利用すること、もうひとつは、占領下のパレスチナを通る重要な回廊を開拓することだ。パレスチナ人を追い出し、殺害することで、曲がりくねった迂回路のない直通路を実現し、通過期間を大幅に短縮し、何十億という大幅な財政節約につながる可能性がある。



どんな運河なのか?

 ベン・グリオン運河と呼ばれるこの運河の案は、イスラエル建国の父の一人であり、初代首相の名前にちなんで名付けられたもので、エジプトのスエズ運河の代替運河となる。この水路は約300km、スエズ運河の約3分の1の長さだ。イスラエルの運河建設の見積もりは、160億ドルから550億ドルに及ぶ。出発点は、イスラエルがヨルダンと共有する国境に近いアカバ湾の北端にあるエイラート近郊である。その後、アラバ渓谷を横断し、西のネゲブ山脈と東のヨルダン高地の間を約100キロ走る。その後、ルートは西に向きを変え、海抜マイナス1412フィート(約400メートル)の死海に到達する。死海からはネゲヴ山脈の谷を通り、ガザ地区をかすめながら北上し、最終的に地中海に接続する。



歴史

 1956年、スエズ危機の最中、イスラエル、イギリス、フランスは、ガマル・アブデル・ナセル大統領によって国有化されたスエズ運河の支配権を取り戻すため、エジプトへの侵攻を開始した。この出来事は、イスラエルとその同盟国が、重要な貿易・石油輸送経路であるスエズ運河に依存していることを浮き彫りにした。

 1960年代、イスラエルはスエズ運河を迂回するため、南部地域に独自の運河建設を提案した。当時、この計画は、ヨルダン川の迂回によって引き起こされた死海の減少と塩害に対処することを目的としていた。提案されている運河は、海水を死海に導き、大規模な貯水池を形成して水力発電を行い、灌漑や消費に淡水化した水を供給するものである。

 この計画は、イスラエルの政治家、科学者、技術者たちの熱意と支持を得て、運河の実現可能性と利益を研究する委員会が結成された。しかし、計画は多くの課題や論争にも直面した。最終的に計画の進行を妨げた主な検討事項は以下のとおりである:

 運河が環境に与える影響は甚大で、この地域の生態系、気候、地質学に影響を及ぼし、不可逆的なものになる可能性がある。運河は、多様で独特な動植物や考古学的・歴史的遺跡のあるネゲブ砂漠とアラバ渓谷を切り開く必要がある。運河はまた、地球上で最も低い地点にあり、世界の自然の驚異のひとつである死海の塩分濃度、温度、生物多様性を変化させる。海水と淡水の混合は、化学反応、爆発、有毒物質の排出を引き起こし、外来種や病気の蔓延を引き起こす可能性がある。運河は地震、地滑り、洪水を引き起こし、干ばつや砂漠化の危険度を高める危険性もある。

 運河の政治的・外交的影響は複雑で、この地域のいくつかの国や当事者の利益や権利に関わる論争になるだろう。運河はイスラエル、ヨルダン、エジプトの国境を越え、パレスチナ人が領有権を主張するガザ地区とヨルダン川西岸地区の紛争地域も通過する。運河はまた、イスラエル、ヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナが共有するヨルダン川流域の水資源とその配分に影響を与えるだろう。運河建設には、欧米の影響を直接受けた結果、数十年にわたって対立と緊張関係にあるこれらの国や団体の同意と協力が必要となる。

 エジプトと国際社会にとって重要かつ戦略的な資産であるスエズ運河の地位と役割に挑戦することは、エジプトや他のアラブ諸国、イスラム諸国の敵意と憤りを引き起こす可能性がある。これらの国々は、自国の主権と安全保障を脅かしているとしてイスラエルを敵視している。運河はまた、越境水路や重要な大洋間運河の使用と管理を規制する国際法や条約に違反する可能性もある。

 この計画は、1960年代以降、イスラエルや世界のさまざまな機関や専門家によって何度も研究され、見直されてきた。彼らは運河のさまざまな経路、設計、方法を提案してきた。なかでも最も物議を醸し、衝撃的だったのは、1963年に米エネルギー省とローレンス・リバモア国立研究所が提案したもので、ネゲブ砂漠の丘陵地帯を掘削する際に、520発の埋設核爆発物を利用することを提案するものだった。



 この提案は「プラウシェア作戦」と呼ばれる大規模な計画の一環で、採掘、建設、工学などの「平和目的」に核兵器を使用することを目的としていた。

 この提案は1993年まで機密扱いだったが、機密扱いが解除され、一般に公開された。しかしイスラエル政府から待ったをかけられた。というのも、イスラエル政府は、この地域で核兵器を使用することによる環境的・政治的影響を恐れていたからだ。



米国

 イスラエルがおこなった環境への配慮は、米国にとって決して障害とは見なされなかった。中東、特にイスラエルのインフラ整備に関する米国の戦略的視座は、世界的に重要な意味を持つ、はるかに広範な地政学的目標を示している。米国は何十年もの間、イスラエル国内の戦略的運河構想にしっかりと参画する意志を示しており、中国の「一帯一路構想」の影響力に挑戦する貿易回廊の構築を目指している。このような開発は、欧米中心の経済回廊を強化し、急成長する中国の経済支配に対抗する役割を果たそうというものでもある。

 さらに、アダニ・グループの投資によって推進されるハイファ港の近代化は、世界の海上貿易の状況に変化をもたらす可能性を示している。その目的は、ハイファを貿易、特にインドとヨーロッパ間の貿易の中心地に変貌させ、従来のスエズ運河経路に代わる経路を提示することである。この戦略的な動きは、中国の海洋における優位性に挑戦すると同時に、現在スエズ運河を支配しているアラブ諸国の地政学的影響力を低下させることを意図している。

カナダ

 カナダが停戦要請に消極的なのは、いくつかの重要な要因から生じている可能性がある。第一に、中東・北アフリカ(MENA)地域の重要な友好国であるイスラエルに対するカナダの経済的利益と投資が重要な役割を果たしている。両国は多面的な関係を共有しており、カナダ・イスラエル自由貿易協定はカナダ企業のイスラエル市場参入を後押ししている。両国の協力関係は、産業研究、エネルギー、安全保障などの分野にも及んでいる。

 イスラエルの主要同盟国である米国とカナダが緊密に連携していることも要因のひとつだ。世界最大の貿易相手国であるカナダと米国の関係では、カナダは米国の外交政策、特に中東政策をしばしば反映している。カナダは一貫して、パレスチナ人が何人死のうと「平和と安全」を求めるイスラエルの権利を支持している。

 イスラエルのベン・グリオン運河計画からカナダが得る可能性のある利益は、この野蛮な大量虐殺を阻止する姿勢に影響を与える。運河は石油とガスの輸送に新たな経路を提供し、ホルムズ海峡のような地政学的に敏感な地域への依存を減らすだろう。主要なエネルギー生産国であり消費国でもあるカナダは、エネルギー取引経路の多様化と、イスラエルやこの地域との貿易機会の拡大から恩恵を受けるだろう。この計画を支援することは、米国/カナダ/より広い西側諸国が、特に中東や、米国が脅威とみなす「一帯一路構想」を通じて影響力を強める中国を押し返そうとする狙いに合致する。

 ベングリオン運河計画の恩恵を受けるカナダ企業には、以下のようなものがある:

SNCラバラン社:カルメル・トンネル、テルアビブ軽便鉄道、アシュドッド海水淡水化工場など、イスラエルのさまざまな生活基盤施設計画に携わってきた大手工学・建設会社。SNCラバラン社は、運河計画の設計、建設、運営に参加する可能性があるほか、業務に関する助言や管理事業も提供する。

ボンバルディア社:イスラエル鉄道に鉄道車両や信号体系を、イスラエルの顧客にビジネスジェット機やターボプロップ機を供給してきた世界的な運輸業者。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告書によると、カナダは2014年から2018年にかけてイスラエルに武器を供給した上位10国のうちの1国にあたり、その総額は2800万米ドル(約42億円)だった。

 政府所有のイスラエル鉄道は2015年8月、ボンバルディア社に電気機関車62両の供給契約を発注した。この契約には、32両の機関車を追加購入する選択肢も含まれており、契約総額は10億シェケル(2億6000万米ド、約400億円以上)となった。この動きは、インドとサウジアラビア間の海上輸送から始まり、サウジアラビアとアラブ首長国連邦を経由する鉄道輸送、ヨルダンまで延びる可能性のある鉄道輸送、そしてトルコまでの海上輸送、それに続く鉄道接続という輸送網を構想する、より広範な西側戦略の一環であると思われる。

 エンブリッジ社をはじめとする大手石油・ガス会社:世界最長の原油・液体輸送システム、天然ガスパイプライン、処理工場、再生可能エネルギー発電施設を運営する大手エネルギー・インフラ企業。エンブリッジ社をはじめとする石油・ガス企業は、エネルギー輸出入の経路や選択肢が増えるだけでなく、沖合天然ガス田や再生可能エネルギー計画を開発するイスラエルのエネルギー企業への投資や提携によって、運河計画から利益を得る可能性がある。

経済上の機密計画

 検証されたイスラエル人の人質に対するイスラエル国防軍の配慮のなさにもかかわらず、表面的には、米国とその同盟国によるこの地域での軍事行動は、テロ対策あるいは「人質奪還」作戦として正当化されている。

 イスラエルが軍事的対応を正当化するために報告した犠牲者数については、政府による公式情報が不足しており、国葬をおこなうために正式な認定が期待される軍の犠牲者数も特に子どもの犠牲が多い民間人の犠牲者数も不明なままだ。さらに、捕虜となった人質の数が239人と発表されているが、これが正しいという主張を立証する証拠もない。このような主張は、「人質救出」作戦のためと称する「ハント&キル」リーパー無人偵察機の配備など、米軍の激しい行動とは不釣り合いに見える。

 毎日のドローンによる攻撃に加えて、ガザのノルデンドの建物の地下空間を狙った強力な弾薬による爆撃が頻繁に行われており、これは米国の支援によるものだと伝えられている。ジュネーブ条約によれば、これらの強力な弾薬は「自衛のための極端な状況」でしか使用できず、民間人の多い地域での使用は禁止されているにもかかわらず、継続的に使用されている。

 ガザの破壊と取り壊しの裏には、ガザの地形を改造しようという計画の初期段階が隠されている可能性が高く、今後、野心的な事業が始まることを暗示している。

 この地政学的計画があるからこそ、暴力的な攻撃を停止しようとすることに消極的なのだ。その計画が進めば進むほど、経済活動への影響が明らかになるだろう。だが、そのときまでには、取り返しのつかない甚大な被害が生み出され、無数の人命と家屋が破壊されていることだろう。


地政学的に見て、サウジアラビア・イラン間の友好関係は実現する

<記事原文 寺島先生推薦>
Arab-Iran Amity is a Geopolitical Reality
筆者:M.K.バドラクマール(M. K. Bhadrakumar)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年11月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月23日



ガザ北部のジャバリア難民キャンプで、イスラエル軍の空爆の標的となった建物の残骸の中で作業するパレスチナ人(2023年11月1日)



 11月13日に予定されているイランのエブラーヒーム・ライースィー大統領のサウジアラビア初訪問は、3月に中国が仲介した両国間の和解の一里塚となる。両国関係は、パレスチナ・イスラエル紛争を背景に、急速に質的に新しい連帯の段階に入りつつある。

 このことは、この地域の政治に地盤が変化していることをあらわしている。これまでこの地域の政治は、長らく米国が支配してきたのだが、いまはそうはなっていない、ということだ。月曜日(11月6日)、ガザ停戦を推進するための中国とUAEが出した最新の提案が、ニューヨークの国連本部で、両国の特使が報道機関に向けて共同声明を読み上げるという、外交上異常な光景で締めくくられた。米国の姿はどこにもなかった。



 10月7日以降の出来事を見れば、イスラエルをイスラム近隣諸国に統合しようとする米国の試みが夢物語であることは明らかだ。イスラエルが剣を鍬に持ちかえないかぎりは。「人獣」であるガザの人々に対するイスラエルの復讐攻撃の獰猛さは、人種差別とジェノサイドの臭いがする。

 イランはシオニスト政権の獣性をずっと知っていた。サウジアラビアもまた、何よりもまずこの地域で生きることの意味を学ばなければならないという警鐘を受け、気を引き締めたに違いない。

 ライースィー大統領がサウジアラビアに近づこうとする背景には、勢力関係が歴史的に変化していることがある。サウジアラビアのサルマーン国王は、自身が主催したリヤドで開催されるアラブ諸国の特別首脳会議で、ガザのパレスチナ人に対するイスラエルの犯罪について話すようライースィー大統領を招待した。これは、サウジが米国の説得のもとでアブラハム合意*に関与しようとしたことでさえ、アラブの人々を疎外してきたことをサウジが深く認識したことを意味する。
*2020年8月13日にアラブ首長国連邦とイスラエルの間で締結された外交合意(Wikipediaより)

 西側諸国の言説における誤ちは、西アジアは、ロシア・中国・イランの枢軸関係で成り立っている、と認識している点だ。これは無意味な誤解だ。イランが1979年のイスラム革命以来一貫して追求してきた対外政策には3つの原則がある。①戦略的自主権は神聖なものであること、②この地域の国々は自分たちの手で運命を切り開き、域外の大国を巻き込むことなく地域の問題を自分たちで解決しなければならないこと、③その道のりがいかに長く曲がりくねったものであっても、イスラム教徒の団結を育むことである。

 この原則は、状況によって、つまり主として米国が追求した「分断して統治せよ」という植民地政策によってもたらされた状況によって、厳しい制約を受けることになった。例えばイラク・イラン戦争では、アメリカはイスラム革命の萌芽を阻止するため、イランへの侵略を開始するサダム・フセインと協力するよう地域諸国を奨励した。

 もうひとつの痛ましい歴史は、シリア紛争である。そこでもまた、米国はシリアの政権交代を地域諸国に対して積極的に働きかけ、その最終目的はイランを標的にすることであり、米国政府が占領下のイラクで育てたテロリスト集団を利用する、という手口だった。

 シリアでは、アメリカは見事に地域諸国を対立させることに成功し、その結果は、かつてイスラム文明の中心地であった場所の廃墟を見れば一目瞭然である。紛争の最盛期には、西側のいくつかの諜報機関がシリアで自由に活動し、テロ集団がシリアで暴虐の限りを尽くすのを支援したが、西側の最大の罪は、イランに対するのと同様に、自国の戦略的自律性と独立した外交政策を優先してきた点にある。これは冷戦時や冷戦後に取ってきた政策と似通ったものだった。

 敢えて言うなら、米国とイスラエルは、中東イスラム諸国を分断させることに大成功したのだ。その手口は、いくつかの湾岸諸国を怯えさせ、説得するというものだった。これらの諸国にイランの代理勢力から直接脅威を与えられる、あるいは攻撃されるという恐怖を感じさせたのだ。イランの息がかかったとされた反政府勢力も恐怖の対象とされることもあった。

 もちろん米国は資金を提供して、多数の武器を売ったのだが、さらに重要なことは、西側金融の柱としてペトロ・ダラーを上手く利用したことだった。イスラエルにとっては、イランを悪者扱いすることにより、直接に利をえることができた。というのも、パレスチナ問題からの目逸らしに使えたからだ。パレスチナ問題こそ、中東の中心課題であり続けていたからだ。

 敢えて言うなら、イラン・サウジ・中国間の合意は、サウジアラビア政府とイラン政府の間にここ数十年間存在した敵対関係を縮小させた、ということだ。両国は、不干渉の約束に関して、北京での秘密会談の成功によって生み出された勢いに乗ろうとした。しかし、湾岸アラブ諸国とイランの関係は、この2年間ですでに大きく改善していたことに留意しなければならない。

 欧米の専門家たちが見落としているのは、湾岸諸国の富裕層が、米国の片棒を担ぐような従属的な生活にうんざりしているということだ。これらの国がいま自国の国民生活において優先させたいことは、自分たちや自分たちに敬意を払ってくれる友好諸国とで方向性を決める、ということだ。双方の損得が相殺するというやり方は避けたいのだ。そんな冷戦時代のような、各国の政治色や力関係で決まるやり方は避けたいのだ。

 だからこそ、バイデン政権が受け入れようとしていないのは、サウジアラビアがOPECプラスの枠組みでロシアと協力し、自主的な原油供給削減の約束を交わすことなのだ。そのいっぽうで、サウジアラビアは米国と核技術について交渉し、同時に中国との外交関係を駆使して、1カ月前にレバント(東部地中海沿岸地域)で燃え上がった火を消し、他の西アジアの地域に戦火が拡大しないように手を打っている。

 明らかに、サウジはもはや米国とイランの対立を喜んだりはしていない。他方、サウジとイランは、地域の安定と安全が確保されない限り、開発優先の新しい考え方は消滅してしまうという共通の懸念を抱いている。

 したがって、米国側がヒズボラ・ハマス・イランを同一集団と捉えるのは児戯に等しい。ブリンケン国務長官は、月曜日(11月6日)にテルアビブに訪問した際、そのような発言をしたのだが・・・。 さらに、この地域の残りの国々を十把一絡げに捉えることも、そうだ。ヒズボラやハマスが「テロ」活動組織的であるという虚言は崩れつつある。真実があきらかにされれば、ハマスやヒズボラは、歴史的に見ればIRA(アイルランド共和軍)と関連のあるシン・フェイン党とそれほど変わらない組織であることが分かるだろう。

 このような子どもじみた考えのもとで創設された、米・イスラエル・インド(・UAE)連合による西アジアでのクアッド2(I2U2)など、いまでは笑止千万だし、先日のG20首脳会議においてニュー・デリーで発案された奇妙な取り決めによる、サウジアラビアをインド・中東・欧州回廊の中継地にしようという妄想もあり、その虫のいい見通しでは、イスラエルを「組み込ん」で、イスラエルのハイファ港での事業を生み出し、イランやトルコを孤立させ、ロシアが主導する国際南北輸送回廊を台無しにし、中国の一帯一路構想に挑戦状を送り付けるつもりだったようだが、現実は厳しい。

 すべてを考慮に入れれば、先週末にアントニー・ブリンケン米国務大臣がイスラエルを訪問し、アンマンでアラブ諸国の限られた首脳陣と話し合いをもったことは、今回のガザ危機における決定的瞬間になった、といえる。

 アラブ諸国の外相たちは、ユダヤ人の権益を守ろうとする悪意あるブリンケンの提案には一切耳を貸さなかった。その提案とは、①停戦ではなく「人道的休戦」、②イスラエルによる残忍で恐ろしい攻撃から逃れてきたガザの人々のための難民キャンプの費用はアラブ諸国が出すことになるが、その資金は最終的にはガザのユダヤ人居住者に回される、③戦後の取り決めの輪郭として、ガザの瓦礫はパレスチナ自治政府が処理し、再建費用はアラブ諸国が捻出するが、イスラエルは重要な安全保障分野で優位を保つ、④米国がきっかけを作ったイスラエル激戦区にいるヒズボラやハマスにイランが救いの手を差し伸べるのを阻止する、というものだった。

 偽善もいいところだ。アラブの外相たちは声をそろえて、ブリンケンの提案に対する対抗案、すなわち即時停戦を明言した。バイデン大統領は、ただならぬ前兆を理解したようだ。しかし、本質的には、かつて誰かが呼んだように、バイデン大統領は世界一のシオニストであり続けている。そして彼の動機は主に、2024年に迫った大統領選で自分が政治的に生き残れるかどうか、から来ている。

 それはともかく、国際社会がイスラエルのアパルトヘイト国家を阻止しようと主張するのは、もはや時間の問題だろう。イスラム諸国が団結すれば、多極化しつつある世界秩序の中で主導権を握ることができるからだ。パレスチナ問題の解決にこれ以上の遅れは許されないという彼らの要求は、西半球も含めて共鳴を得ている。

ガザ住民の強制移住:イスラエルの秘密計画を暴く

<記事原文 寺島先生推薦>
Gaza’s Forced Exodus: Unveiling Israel’s Secret Plan
筆者:ジェシカ・ブクスバウム(Jessica Buxbaum)
出典: INTERNATIONALIST 360°  2023年11月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月20日





 先週末、イスラエルの新聞『Local Call』は、イスラエル政府の公式文書をリークした。その内容は、イスラエルがガザに対する戦争で既に実行しようとしているとパレスチナ人が言っていること、つまり、ガザの230万人のパレスチナ人をエジプトのシナイ半島に強制移住させることを推奨しているものである。

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務局は、情報省の提案が存在することを認めた。しかし、『タイムズ・オブ・イスラエル』紙に寄せた声明では、それを「コンセプト・ペーパー(研究のための草稿)に過ぎず、政府や安全保障機関のどこでも準備されているものだ」と否定している。

 しかし、イスラエルの行動や、流布している情報や、国際的な支援は、すべてこの紙の上の政策が急速に現場の政策に移行しつつあることを示している。

政策草案から現実へ

 10月13日付の文書では、イスラエルが「(ガザの)民間人をシナイ半島に避難させる」ために、まずテント村を設置し、次にシナイ北部に新しい町を建設することを求めている。同文書は、移住後「エジプト国内に数キロの不毛地帯を作り、住民がイスラエル国境付近に戻って活動したり、居住したりすることを認めない」ことを推奨している。

 ネタニヤフ首相はすでにこの計画を実行に移そうとしている。『フィナンシャル・タイムズ紙』によると、イスラエル首相は先週、エジプトに圧力をかけてガザからの難民を受け入れるよう、ヨーロッパの指導者たちを説得しようとした。しかし、フランス、ドイツ、イギリスの外交官は、エジプトがガザからのパレスチナ人の移住を強く拒否していることを理由に、この案を却下した。

 その手段が失敗したため、ネタニヤフ首相は現在、世界銀行を通じてエジプトの債務の大部分を帳消しにし、エジプトにガザの住民を受け入れる誘因を与えるという提案していると報じられている。

 「この文書に書かれていることは、私たちがいま目にしていること全てです」、と国際人権弁護士ダイアナ・ブトゥは『ミントプレス・ニュース』に語った。

 計画の第一段階では、イスラエルによるガザ地区北部への空爆と、100万人を超える住民の南部への移動が詳述されている。第二段階の概要は、イスラエルによる地上攻撃であり、北部から始まり、全地域を占領する。

 「パレスチナ人をどんどん小さな地域に圧縮していくことは、最終的にこれら紙上の計画を実現するための最初の一歩に過ぎないかもしれません」と、人権団体「Democracy for the Arab World Now(DAWN)」のイスラエル/パレスチナ担当部長アダム・シャピロは『ミントプレス・ニュース』に語った。

 物議を醸している情報省の文書が、230万人のガザ住民のエジプトへの強制移送を推奨する唯一の政策文書ではない。イスラエルの安全保障シンクタンクMisgav(国家安全保障とシオニスト戦略研究所)は10月17日、Misgavの研究者アミール・ワイトマンが執筆した論文「ガザの全住民のエジプトへの再定住と最終的な復興計画:経済的側面」を発表した。ワイトマンはネタニヤフ首相率いるリクード党の活動家で、ギラ・ガムリエル情報相の側近と伝えられている。

 報告書は、「イスラエルは...(中略)できるだけ多くのガザ住民を他国に移住させるべきである。したがって、ガザの住民はシナイ砂漠に移され、避難民は他国で吸収されるべきだ」、と呼びかけている。



 Misgavはこの論文をX(旧ツイッター)で発表し、論文の主要な論点をまとめたツイートも掲載した。しかし広範な反発を受け、この投稿は削除された。

 元のツイートはこうだ。

現在、エジプト政府と協調してガザ地区全体を避難させる[ママ]またとない貴重な機会がある。イスラエル、エジプト、アメリカ、サウジアラビアの経済的・地政学的利益に合致していて、ガザ地区のアラブ系住民全体の再定住と人道的復興のための、即時かつ現実的で持続可能な計画が必要だ。

 • 2017年、エジプトには約1,000万戸の空き家があると報告されたが、そのうち約半分が建設されていて、あと半分が建設中である。
 例えば、カイロの2大近郊都市では......政府と民間が所有する膨大な量の建設済みアパートと空きアパートがあり、約600万人の住民が住むのに十分な建設区域がある。

 • 上記の2つの都市のうち1つで、5.14人からなる平均的なガザの家族が住む、面積95平方メートルの3部屋アパートの平均価格は約1万9000ドルである。現在わかっているガザ地区の全人口(約140万人から約220万人)を考慮すると、プロジェクトの資金調達に必要なエジプトへの送金額は、総額50億~80億ドル規模になると推定できる。

 • このような規模の刺激剤をエジプト経済に即座に注入することは、アル=シシ政権にとてつもなく大きな利益を即座にもたらすだろう。イスラエル経済との関係で言えば、この金額はごくわずかだ。この難題を解決するために数十億ドル(たとえ200億ドルでも300億ドルでも)を投資することは、革新的で安価かつ持続可能な解決策である。

 • この計画を実現するためには、多くの条件が同時に存在しなければならないことは間違いない。現在のところ、これらの条件は最適であり、このような機会が再び訪れるとしても、いつになるかわからない。

 続いてMisgavは、特別研究員のイシャイ・アルモニが10月19日に書いた「ハマス、ガザ住民の間で広範な支持を享受」と題するガザ関連の別の論文を発表した。

 この論文でアルモニは、ハマスが住民からかなりの支持を得ていることを詳述し、次のように書いている。

 「ガザ市民の大多数が和平を望み、ハマスに捕らわれていると主張されているが、過去20年間に収集されたデータや証拠は一貫して反対のことを示している。ハマスがガザの市民の間で広く支持されているのだ」。

 そして、「ガザ住民の大多数とハマスとの間に、明確なイデオロギー的・政治的区別が存在するという主張は、まったく根拠のないものである」と結論付けている。

 アルモニは、市民とハマスの過激派を混同しないよう明言しているが、ガザ住民の間でのハマスの人気は、「軍事作戦に関する決定や、ガザ地区における戦後の取り決めに関して」 考慮されるべきであると指摘している。

 これらのポジション・ペーパー(意見表明書)に関するコメントを『ミントプレス・ニュース』は求めたが、Misgav研究所から、回答は得られなかった。

 イスラエルの法律顧問であるイタイ・エプシュテイン(Itay Epshtain)は、Misgavの最近の文書に概説されている見解がすでに行動に移されていることをソーシャルメディアで説明した。



 イスラエル軍からガザ北部に投下されたビラによれば、南部に避難しない者はだれでもハマスの関係者とみなされる可能性があるという。

 さらに、Misgavの幹部はすでに政府の法案作成に欠かせない存在となっているようだ。Misgavは、イスラエルの安全保障分野で影響力のある人物であり、イスラエルとUAE、バーレーン、モロッコとの国交正常化取引の立役者の一人でもある、元ネタニヤフ首相国家安全保障顧問のミール・ベン・シャバトが率いている。Misgavはまた、現イスラエル政府の司法改革計画の背後にいることで悪名高いコヘレト政策フォーラム( Kohelet Policy Forum)からも資金提供を受けている。

 研究所の創設者や前理事長もイスラエル政府と関係がある。ヨアズ・ヘンデル前会長はイスラエルの通信大臣を務めた。モシェ・ヤアロンはネタニヤフ首相の下で国防相を務めた。モシェ・アレンスもイスラエルの国防大臣と外務大臣を務めた。ナタン・シャランスキーは内務大臣と副首相を務めた。

アメリカは「加担」している

 情報省の文書で重要なポイントのひとつは、追放計画に対する国際的な支援の必要性を強調していることだ。批評家は、西側の同盟国が既に行なっているものだと主張している。

 10月20日、ホワイトハウスはイスラエル、ガザ、ウクライナへの援助のために140億ドルの資金要求を議会に送った。この書簡の文言は、ガザ住民の他国への強制移住を示唆しているとして批判を浴びている。

 書簡にはこうある。

 「これらの資金は、ガザやヨルダン川西岸地区のパレスチナ難民を含む、避難民や紛争の影響を受けた市民を支援し、近隣諸国に逃れたガザ住民の潜在的なニーズに対応するものである。この危機は、国境を越えた避難民や、地域のより重要な人道的ニーズをもたらす可能性があり、資金はガザ以外での発展的なプログラム要件を満たすために使われるかもしれない。」

 DAWN(現代アラブ世界のための民主主義)は、ホワイトハウスの要求の文言を非難し、議会に対し、補正予算法案を否決するよう求めた。

 「バイデン政権は、単に民族浄化にゴーサインを出しただけでなく、それを資金援助しているのです」とDAWNのサラ・リア・ウィットソン事務局長は声明で述べた。「『人道支援』という名目で、アメリカ人を平然とだまし、イスラエルが長年温めてきたガザ過疎化計画を促進させることは、残酷で奇怪なでたらめです」。

 ホワイトハウスの要請は、戦争中にガザ住民が追放される可能性を認めたが、ジョー・バイデン米大統領は以前、この強制移住に反対することを主張していた。ホワイトハウスは、『ミントプレス・ニュース』が援助法案についてコメントを求めたのに、回答はなかった。

 「アメリカはイスラエルを支援し、人道的見地から破滅的な状況を作り出している」とDAWNのシャピロは『ミントプレス・ニュース』に語った。

 これまでアメリカは、イスラエルによるガザ攻撃の停戦要求を繰り返し拒否してきた。しかし、バイデンは最近、ハマスが拘束しているアメリカ人捕虜の解放を確保するための「一時停止」を提唱した。米国はまた、ガザへの地上侵攻についてイスラエル軍に助言するために軍幹部を派遣し、中東や東地中海地域での武器や兵力を増強してきた。その中には、装甲ジープや最新兵器のイスラエルへの輸送も含まれている。







 ネット上に出回っている映像には、イスラエルのガザ攻撃で使用された、白リン弾を含む米国製の武器も映っている。これらの砲弾は、白リン弾の供給で知られるアーカンソー州の化学兵器メーカー、パインブラフ・アーセナル社製だ。





 「世界の大多数はガザ攻撃に反対している。しかし、西ヨーロッパ、アメリカ、カナダはそうではない。」

 ブトゥは、アメリカがイスラエルによるガザのパレスチナ人強制移住に 「完全に加担している」と評し、こう言った。「これはイスラエルの計画であり、アメリカ、カナダ、ヨーロッパなども賛成することになる。」

 ガザの民族浄化を推進するイスラエルの政策文書は、この戦争が始まって以来、多くのイスラエルの政治家やメディアの識者が表明してきたことをそのまま反映している。

 イスラエルの国会議員であるアリエル・カルナーは、1948年のイスラエル建国時におこなわれたパレスチナ人の民族浄化(アラビア語で「ナクバ」または「カタストロフィ」として知られる)を、より大規模な形で繰り返すことを求めた。

 「現在、ひとつの目標がある! 1948年のナクバを上回るようなナクバを」とカルナーはXに書いている。

 イスラエルの元イタリア大使ドロール・アイダーは、イタリアのチャンネル『レテ4』とのライブ・インタビューで、ガザの完全破壊を呼びかけた。

 「私たちには、ガザを破壊し、絶対悪を滅ぼすという目的がある」、と彼は述べた。

 イスラエルがガザを絨毯爆撃し続けている時、そして、包囲されたガザに一片の人道支援さえも入り込ますまいとしているいま、もうひとつのナクバが、いや、間違いなくこの大量虐殺シリーズのもうひとつの章が、急速に実行されようとしている。

 「これは48年から続いていることなんだ。人々を立ち去らせるために、このようにゆっくりと滴り落ちている。そしてある時は、ゆっくりではなく、かなり急速に行なわれるのだ」、とブトゥは述べた。


この記事の筆者ジェシカ・ブクスバウムは、エルサレムを拠点にパレスチナ、イスラエル、シリアを取材する『ミントプレス・ニュース』のジャーナリスト。『Middle East Eye』、『The New Arab』、『Gulf News』などに寄稿。

イスラエルは「ガザ内のハマス以外のすべて」を爆撃している―ジャクソン・ヒンクル

<記事原文 寺島先生推薦>
Israel bombing ‘everything but Hamas in Gaza’ – Jackson Hinkle
この作戦の真の目的は、パレスチナ人を飛び地から追い出すことだと、政治アナリストはRTに語った
筆者:ジャクソン・ヒンクル
出典:RT  2023年10月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月17日


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イスラエルの攻撃による破壊の航空写真、ガザのハン・ユニス© Getty Images / Mohammed Fayq; Anadolu


「ハマス排除のためだけにガザを空爆している」というイスラエルの主張は「狂気のさた」だと、政治アナリストのジャクソン・ヒンクルは木曜日(10月26日)のRTのインタビューで語った。彼は、イスラエル軍は現在進行中の作戦で、ガザの民間人を標的にしているようだと主張した。

『The Dive with Jackson Hinkle』の司会者であるジャクソン・ヒンクル氏は、「彼らはガザ内のハマス以外のすべてを爆撃している」と述べ、イスラエルが病院、学校、国連や赤新月社の施設、モスク、教会、住宅、さらには避難民の輸送車など、さまざまな民間インフラを標的にしていると非難した。

このアナリストは、イスラエルがパレスチナ国家を望んでいないためであり、ガザでの作戦の真の目的は、ハマスの敗北ではなく、むしろパレスチナ人を強制退去させ、「きっぱりと」この飛び地を乗っ取ることだと述べた。

「なぜこんなことをするのかといえば、ハマスに勝てないことを知っているからだ。だからガザに攻め込まない。もし参戦すれば、多くのアラブ諸国、そしておそらくイランからも反撃を受けるだろう。その規模の戦争では勝てないことを知っているのだ」とヒンケル氏は主張する。

イスラエル当局は、ハマスがイスラム国(IS、旧ISIS)と同盟関係にあるか、あるいはそれに類する存在であるかのように見せかけようとしているが、イスラエル自身のガザでの行動は、テロリストの戦術に酷似しているようだ、と彼は主張した。

ワシントンがイスラエルとともに「永遠に立ち上がる」と発表し、ジョー・バイデン大統領がこのユダヤ国家に140億ドルの軍事援助パッケージを提案したことについて、ヒンクル氏は、「イスラエルに資金援助停止を!」「ウクライナにも資金援助停止を!」と呼びかけた。

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<関連記事> ネタニヤフ首相、ガザ侵攻計画を延期 - NYT

「なぜアメリカの税金がこんな国に使われるのか? もっと重要なことは、このような恐ろしい戦争犯罪を日常的に犯している国に対しての支援であることなのだ」とヒンケル氏は疑問を呈した。彼はまた、「米国は現在、自国の南国境で危機を経験しており、50万人以上のホームレスに対処している。そのうち6万人は退役軍人である」とも訴えた。

「私たちがこんな状態なのに、ジョー・バイデンはイスラエルに約900人の米海兵隊員を送ったばかりというのは、私には意味がわからない」とヒンクルは言い、「私たちは非常に大きな戦争に遭遇しようとしている」と付け加えた。

イスラエル国防軍(IDF)は、1400人の命を奪った10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃の後、ほぼ3週間にわたってガザを執拗に砲撃している。ガザ保健省は、イスラエルの攻撃によって7000人以上が死亡したと報告している。金曜日(10月27日)、同省は、イスラエル国防軍によって殺害されたとして、2,665人の子どもを含む6,747人の名前を公表した。同省は、多くの遺体が身元不明または行方不明のままであるため、リストは不完全であると指摘している。

イスラエル-パレスチナ問題でロシアは「中立」のバレエを踊る

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia’s Neutrality Ballet on Israel-Palestine
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典: INTERNATIONALIST 360°  2023年10月18日
<記事飜訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年10月29日


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イスラエルを敵対国家に仕立て直そうとするロシアの大物たちがいる一方で、クレムリンは立場を変えそうにない。むしろ、モスクワは西アジアへの影響力を最大化するために「中立」を維持し、アラブやイスラム世界との距離を縮めようとしている。

博愛主義者であるロシアのプーチン大統領は、イスラエルに対する地政学的評価をゆっくりと、しかし確実に見直しているのだろうか? これをモスクワの権力回廊における重要な謎と呼ぶのは、実は控えめな表現である。

少なくとも、難解なイスラエルとパレスチナのドラマに関して、公式には「中立」であるロシアの立場に関して言えば、そのような激変の表立った兆候はない。

先週の金曜日(10月13日)にビシュケク(キルギス首都)で開催された独立国家共同体(CIS)首脳会議で、プーチンがイスラエルのガザ封鎖の「残酷な方法」を非難し、それを「第二次世界大戦中のレニングラード包囲」になぞらえた。

「それは容認できない」とロシア大統領は宣言し、ガザの220万人の市民全員が「女性や子どもも含めて苦しまなければならないとき、誰もこれに同意することは難しい。」

プーチンのコメントは、苛立たしいほど不透明なロシアとイスラエルの関係において、進行中の変化を示すひとつのヒントだったのかもしれない。その次が、先週金曜日にクレムリンに近い安全保障戦略サイト『ブズグリャド(Vzglyad)』に掲載された非常に重要な記事である。

わずか6ヶ月前、ロシアの情報機関のほぼ一致するところを反映するように、『ブズグリャド(Vzglyad)』の編集者たちは、アラブ・イスラム世界にとっての第一の問題を支援することにモスクワの政治的比重を移すよう呼びかけていたことに注目する必要がある。

同記事は、プーチンがビシュケクで発言した重要な点に言及している:交渉に代わるものはない。テルアビブは残忍な攻撃を受けたので自衛する権利がある。真の和解は東エルサレムに首都を置くパレスチナの独立国家の建設を通じてのみ可能である、と。

ロシア大統領は、国連本来の「2国家」解決策を支持し、パレスチナ国家は「平和的手段によって」樹立されるべきだと考えている。しかし、今回の紛争が「中東におけるアメリカの失敗した政策の直接的な結果」であるのと同様に、プーチンはガザでの地上作戦を開始するというテルアビブの計画を拒絶している。

この的確な両賭けは、プーチンが参謀本部、いくつかの情報機関のシロビキ*、国防省がほぼ共通理解している方向性に振れている証拠ではないことは確かだ。 彼らは、イスラエルはウクライナ、アメリカ、NATOと同盟を結んだロシア連邦の事実上の敵かもしれないと考えている。
*シロビキは、ロシアの治安・国防関係省庁の職員とその出身者を指す。

お金を追って

テルアビブはウクライナでロシアと正面から敵対しないよう極めて慎重であり、これはプーチンとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との間の悪名高い友好関係の直接的な結果かもしれない。

しかし、地政学的なチェス盤においてイスラエルよりもはるかに重要なのは、モスクワとアラブ諸国、特にOPEC+に共に加盟しているサウジアラビアとの関係である。

また、シリアやコーカサスで利益を得ているイランとの戦略的友好関係も、ロシアの地域政策の中心的存在であり、米国の拡張主義を封じ込めるのに役立っている。最後に、ユーラシア大陸におけるロシアの経済的・地政学的野心にとって、モスクワとアンカラの複雑で多層的なやり取りは極めて重要である。

西アジアの3つの大国はいずれもイスラム教徒が多数を占める国家であり、自国にもかなりの数のイスラム教徒を抱える多民族国家ロシアにとって重要な関係である。

そして、これら3つの地域主体にとって、どの国にとっても、現在のガザへの集団的懲罰は、ありとあらゆるレッドラインを越えている。

イスラエルもまた、モスクワの経済的配慮からすれば、もはやそれほど重要な存在ではない。1990年代以降、膨大な量のロシア資金がイスラエルに流れていたが、今ではかなりの部分がロシアに戻っている。

億万長者ミハイル・フリードマンの悪名高い事例は、この新しい現実をよく物語っている。このオリガルヒは、アル・アクサ・フラッド作戦が開始される1週間前にイギリスの自宅を引き払ってイスラエルに移り住んだ。

フリードマンは、電気通信、銀行、小売、保険で大きな権益を持つアルファ・グループを率い、1998年の金融危機を生き延びた大富豪である。彼は、キエフの敵対政権に1億5000万ドルもの「献金」をしている疑いをロシア側からかけられている。

ヴャチェスラフ・ヴォロディン下院議長の反応は極めて激しく、この件に関するイスラエルの心情を少しも憂慮していない。

「国を離れ、ロシア領内での銃撃を祝ったり、ナチス・キエフ政権への勝利を願ったりと、非難されるべき行為に及んだ者は、ここで歓迎されないだけでなく、もし戻ってきたとしても、マガダン(スターリン時代の収容所への悪名高い中継港)が彼らを待っていることを理解すべきである」、と。

ロシア恐怖症と集団処罰

西側諸国集団が「今や我々はみなイスラエル人だ」という偏執狂に走ったので、クレムリンの戦略は、アラブ・イスラム世界だけでなく、グローバル・サウス/グローバル多数派のためにも、この紛争の仲介役として自らを目に見える形で位置づけることである。

今週、国連安保理でロシアが提出したガザ停戦を求める決議案の目的はそこにあった。

安保理の常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランスの3カ国と、その新植民地である日本が反対票を投じたのだ。世界の他の国々には、この反対票を投じた三国はまさに理不尽な西側のロシア恐怖症と、イスラエルの民間人密集地ガザへの大量虐殺的砲撃を正当化するアメリカの傀儡国家のように映った。

オフレコだが、情報アナリストたちは、ロシア参謀本部、情報機関、国防省が、イスラエルの行き過ぎた侵略に対する世界的な感情にいかに組織的に同調しているかを指摘している。

問題は、ネタニヤフが右派のイタマール・ベン=グビル国家安全保障相やベザレル・スモトリッチ財務相とともに、精神病的な暴力の扇動を繰り返していることに対するロシアの公式・公的な批判が存在しないことである。

モスクワの内部関係者が主張するところでは、クレムリンの公式な「中立」の立場は、イスラエルがシリアでのロシア人殺害に直接関与したことを決して忘れない防衛・安全保障機関(特にロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)とロシア対外情報庁(SVR))と正面から衝突しているという。

2018年9月、イスラエル空軍が、イリューシン20M電子偵察機をシリアのミサイルに対する援護機として使用し、シリアの防空ミサイルに誤って撃墜させ、搭乗していた15人のロシア人全員が殺害されて以来、その見方は強まっている。

権力の中枢におけるこの沈黙は、公共空間における沈黙と鏡のように同じである。イスラエルとパレスチナに関するロシアの立場について、議会で議論されたことはない。安全保障理事会での議論も10月初旬以来ない。

しかし、ロシア正教会の指導者であるキリル総主教は、「平和的共存」には「宗教的次元」があり、「公正な平和」が必要だと強調した。これは、ガザで発表された「人獣」(イスラエル国防省の言葉)の民族浄化とは全く一致しない。

ロシアがウクライナと取引する代わりに、アメリカがイスラエルと取引するという、モスクワとワシントンの複雑な影絵芝居の噂が、権力周辺の一部で憂慮されている。

これは、西側諸国がキエフの汗臭いスウェットシャツの俳優(ゼレンスキー)を降板させるという、すでに進行中の過程を封印することになるだろうが、クレムリンはアメリカのいかなる取引も信用しそうになく、戦略的な西アジアにおけるロシアの影響力を疎外するような取引は絶対に信用しないだろう。

この2国家解決策は死んだ

ロシアの「中立」のバレエは続くだろう。モスクワはテルアビブに対し、イランとの戦略的友好関係の枠内であっても、イスラエルを脅かす可能性のある武器、つまりヒズボラやハマスに行き着くような武器は輸出されないという考えを強調している。この取り決めの見返りは、イスラエルもキエフにロシアの脅威となるものを売らないことだ。

しかし、アメリカやイギリスとは異なり、ロシアはハマスにテロ組織としての指定はしない。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、この問題について非常に率直に語っている。 モスクワはパレスチナ側ともイスラエル側とも接触を保ち、「最優先事項」は「パレスチナとイスラエルの両方に住むロシア国民の利益」であり、ロシアは「和解プロセスに参加する可能性のある当事者」であり続ける。

もちろん、中立は行き詰まるかもしれない。クレムリンが積極的に働きかけているアラブ諸国やイスラム諸国にとっては、シオニスト主導の入植者植民地主義の解体が「最優先事項」であるべきだからだ。

これは、2国家による解決は、現実的な目的から言えば、完全に死んで葬り去られたことを意味する。しかし、誰も、少なくともモスクワは、それを認める準備ができている証拠はない。

中露はパレスチナでの大虐殺と民族浄化を防がなければならない

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia and China Must Prevent Genocide and Ethnic Cleansing in Palestine
出典:INTERNATIONALIST 360°   2023年10月18日
著者:カイ・アレクサンダー・シュレヴォート(Kai-Alexander Schlevogt)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月26日





 この新たな多中心的な世界秩序において、正義が初めて勝つのだろうか? 中東の被害を抑えるための小さな手引書

 人類は軍事面と道徳面において非常に危険な絶壁の縁に立たされている。人類は、世界が認め、広く賞賛さえされている、記録に残っている中でも大規模なジェノサイド(大虐殺:ひとつの民族の破壊)と過激な民族浄化(ひとつの民族の強制追放)が起こってしまうかもしれない危機に直面している。さらに悪いことは、戦争犯罪がひとつの国家主体(イスラエル)によりおこなわれていることだ。そしてその国が、自国を「民主主義である」とし、権利を剥奪された人々(パレスチナ人)に対するこの戦いをダビデとゴリアテの戦いになぞらえているのだが、このたとえはもとの聖書の中の話とは筋書きが変えられている、と言えるだろう。

 2023年10月7日、ハマスの戦闘員の一団がイスラエルに洗練された攻撃を加えたが、この攻撃が世界に示したのは、脱近代敵反乱戦争という文脈で電撃戦をおこなう方法についてだった。イスラエルの軍事施設だけてはなく、この一団は無実の一般市民たちも殺害しただ―このような行為は言うまでもないが、決して正当化できるものではない。驚くことではないが、被害妄想癖のある西側の専門家たちは、 この攻撃の実行日がロシアのウラジーミル・プーチン大統領の誕生日と同日だったことに隠された繋がりがあることを即座に疑った。さらに、警備の専門家らは、このビックリさせられるような攻撃は、イスラエルの諜報機関と軍事的準備の失敗のせいで起こった、と解釈した。

 この束の間の侵略行為後すぐに、西側世界の指導者たちは、この攻撃を最も強い調子で非難した。西側の指導者らは、イスラエルに「何が何でも」軍事支援をすることを約束し、このユダヤ人国家に、パレスチナ人に対してイスラエルが望むことなら何をしてもいい許可を与えたのだ—その行為がどれだけ罪深く、どれだけ残忍であってしても、だ。米国のジョー・バイデン大統領は、ハマスによるこの攻撃を「全くの悪(sheer evil)」と断じたが、このことばは、ナチズムを非難する際に使われたことば(「完全なる悪」absolute evil) を反映させたものだった。

 アンソニー・ブリンケン米国務大臣がイスラエルの暴走を抑えることを求め、一般市民らに被害をもたらさないよう、「最高水準」を求めた後、同じような内容の主張をおこなった米国務省が出したSNSの投稿は、直ぐに削除された。西側各国の指導者たちへ、イスラエルを無条件に支援することを正当化しているが、その際、イスラエルには「自衛の」権利があることを指摘している。たしかに一国家には国境と国民を守る権利(と義務)があるのだが、その国家が享受できるままに振る舞えるような白紙委任状を与えられるべきでは決してない。国際法を軽視してはいけないのだ。しかし今回イスラエルは、この危機に対してそのような振る舞いを取ることを決めてしまった。「本気の」やりかたを使って、このユダヤ人国家は本当に見境がつかなくなり、ここほんの数日間だけでも、長時間にわたる、あらゆる種類の戦争犯罪をおかしまくっている。この征服政権は特に、集団処罰や復讐殺人に乗り出しているが、これらの行為は国際人道法により禁止された行為だ。

 たとえば、イスラエルは最も近代的な戦闘機(ハマス側がしばしば使用する自製武器と比べればとてつもなく近代的だ)を使用し、ガザ地区の人口密集地域を粉砕したが、これはパレスチナがこれまで経験したことのない規模の攻撃だった。事実上の無差別攻撃を展開したイスラエル側は、2000人の一般市民の命を奪ったと報じられている。これらの一般市民には全く罪は無いのに。

 このような戦略が第二次世界大戦中に取られていたと聞けば、いまの人々は驚愕するだろう。当時、進駐軍がゲリラ組織による攻撃の報復として非武装の村人たちを殺害することは、常に起こっていた。しかしイスラエルの今回の行動―しかもかなり大規模なものだ―に対して、西側各国の指導者層や大手報道機関の記者たちからは、道徳的な躊躇が引き起されていない。

 エコノミスト誌などの西側報道機関は、ハマスの攻撃は「大虐殺」であると報じたが、イスラエル側の攻撃については「報復のための攻撃をおこなった」と報じる。そして、イスラエル国民については、「殺害された」と報じるのに、パレスチナ人のことはただ「亡くなった」と報じる。

 イスラエル防衛軍の発表によると、たったの一日間(2023年10月11日)で、「ハマス側の標的」に対し、2400件の攻撃を加えた、という。衛星写真による攻撃前と攻撃後の画像(画像1を参照)を見ると、焦土作戦が取られた結果、街全体がめちゃくちゃに破壊されたことが分かる。 このような攻撃は戦争犯罪とされて然るべきだ。目撃者の証言によると、ガザ地区には被害を受けていない道路は全くない、という。(RT, 2023b)


[画像はreddit.com]

 すでに現時点で、ガザ地区は生命が危機にさらされる状況に置かれている。(BBC, 2023a)。ひとりのパレスチナ人医師が、自身が働いている病院内で生じている人道的大惨事を以下のように描写している:「死体がバラバラになった状態で運ばれてきます。わたしは外科医ですが、人が死んでいるこのような場面には全く耐えられません」と。同医師によると、パレスチナ人たちの住居は、中に人がいる状態で破壊され、家族全員が亡くなる状況や重傷を負った人が一人か二人取り残されている状況が生じている、とのことだ (BBC, 2023d)。これら全ての出来事が電光石火のように起こっている:国連によると、イスラエルはたった4日間で、1万8000人のパレスチナ人を野宿生活者に変えてしまった、という。

 さらにこのユダヤ人国家は、公式発表をおこない、ガザ地区に対して、中世に見られたような完全包囲戦略を迅速に取った。200万人のパレスチナ人が生活しているガザ地区に対して、だ。鉄とセメントと土でパレスチナ人の生活空間への経路を塞いだ(BBC, 2023b)のち、イスラエルはパレスチナの人々を―同じ人間なのに―水や食糧、薬、燃料、電気と通信施設、さらには救援物資から遮断しようとしている。パレスチナの人々を事実上、生き埋めにするかのごとく、イスラエルは何十万もの無実の一般市民を意図的に殺害し、想像できる中で最も野蛮な拷問を加えているのだ。餓死やけがの治療を受けない中で死なせるという恐ろしい拷問を。

 標的を絞ったイスラエル側の攻撃の性質からすれば、その結果生じた死を「巻き添え事故による被害」と婉曲的に表現することなどできない。この死は意図的な殺害行為の結果おこったものだからだ。ファシスト的な