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サウジアラビアはウクライナの紛争に対する立場を変えないと表明

<記事原文 寺島先生推薦>
Saudi Arabia refuses to change stance on Ukraine conflict
The kingdom has said it will maintain a policy of “positive neutrality” towards the Ukraine conflict
同王国は、ウクライナ紛争に対しては「前向きな中立」政策を維持すると主張
出典:RT 2023年5月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月2日



ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領を出迎えるサウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(左) 。2023年5月19日、サウジアラビア・ジッダ市内でのアラブ連盟首脳会議にて © SPA / AFP


 サウジアラビアの王子であるファイサル・ビン・ファルハーン外務大臣は、サウジアラビア政府や他のアラブ諸国は、ウクライナとロシア間の紛争において中立の立場を取り、両国とのつながりを維持したいとの考えを表明した。同外務大臣は、金曜日(5月19日)ジッダ市で行われたアラブ連盟首脳会議の結論としてこう語った。なおこの会議には、ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領も出席していた。

 「この危機が始まって以来、アラブ諸国は前向きな中立の立場を取っており、ロシア・ウクライナ両側との対話を自由に持とうと、両国との関係を維持してきました」と同大使は述べ、さらに、「ロシアとウクライナ間の紛争の両側から言い分を聞く準備はいつでもできています」とも付け加えた。

 ウクライナの指導者であるゼレンスキー大統領は、国名を挙げることなしに、アラブ諸国の中には、ロシアによる「不当な領土併合行為」に対して目を向けようとしていない国々があると主張した。

 サウジアラビアは、ロシアに対する西側による制裁措置に加わることには後ろ向きの立場を示しており、ロシアへのエネルギー輸出を減じる措置も取っていない。サウジアラビア政府は、石油輸出国連合であるOPEC+を通して、ロシアと協力関係を維持しているが、そのことが米国政府からの批判を呼んでいる。



関連記事:ゼレンスキーはアラブ諸国の指導者を非難

 サウジアラビア政府は、この紛争の解決策の仲介をしたいという希望を表明し、ロシア・ウクライナ両側との貿易関係や外交関係の繋がりを維持する意向を明言している。

 金曜日(5月19日)の午前にゼレンスキーと面会した後、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は、「我が王国はロシアとウクライナを仲介する努力を続ける準備がある」ことについて話した。同皇太子は、「この危機を政治的に解決することを目指した国際的な努力を支援し、安全保障の実現に貢献する」つもりがあると述べた。

 サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外務大臣は、2022年に高官段階で話し合うため、ロシアとウクライナ両国を訪問したが、後に語ったところによると、昨年9月、ビン・サルマーン皇太子は両側の捕虜交換の交渉に加わった際、このような取り組みは「人道的突破口である」と評価した、という。
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環境改変技術(ENMOD)とトルコ‐シリア地震:専門的調査が必要

<記事原文 寺島先生推薦>

Environmental Modification Techniques (ENMOD) and the Turkey-Syria Earthquake: An Expert Investigation is Required

筆者:ミシェル・チョスドフスキー教授

出典:Global Research

2023年4月4日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月13日




 破壊、社会的荒廃、そして人命の喪失。私たちは、トルコとシリアの人々に思いを寄せている。


はじめに

 最新の報告によると、トルコとシリアでの死者は5万人を大きく超え、50万人以上が負傷し、数万人が行方不明になっているとのことである。社会の荒廃と破壊は筆舌に尽くしがたいものがある。2023年2月6日にトルコ南部のカフラマンマラス県で発生した1回目と2回目の地震は、それぞれマグニチュード7.6と7.8(リヒタースケール*)である。
*地震で放出されたエネルギーを、10を底とする対数値 で表すもの(英辞郎)

 2月20日には3回目の地震(マグニチュード6.3)を記録した。

 トルコでは、約53万人が被災地から避難している。トルコ政府は、「これまでに173,000棟の建物が倒壊、または大きな被害を受けたと記録されており、190万人以上が一時避難所やホテル、公共施設に避難している」と説明している。

 レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の言葉を借りれば、「私たちは、歴史上最も苦しい日々を過ごしている」。

 シリアでは、トルコとの国境に近いアレッポラタキア、そしてハマの各都市で地震が発生し、大きな被害が出ている。シリアの最新の死者数は5,914人、被災者数は880万人と発表されている。

 バチャー・アル・アサド大統領が強調したのは、US-NATOとシリアは、約12年間、戦争状態にあるが、「シリアは約2世紀半の間、地震地域ではなかった」ことだ。

 本稿の第I部では、トルコの地震活動の歴史に焦点を当てる。そして2023年2月6日の地震以前には、南アナトリアで「大地震」活動が一切なかった、という最近の証拠や歴史的記録を強調する。

 第II部では、環境改変技術(ENMOD)の概要を解説する。

 第III部では、1977年に国連総会で批准された「環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的な使用の禁止に関する条約」を取り上げる。

 トルコ・シリア地震災害に関して重要なのは、1977年の国連条約(上記)に、「締約国」が被った「破壊、損害または傷害」について、国連の「専門家諮問委員会」の下で調査を実施する規定があることだ。

 また、この条約には「締約国」に代わって国連安全保障理事会に付託する規定もある。これらの問題については、第IV部で概説する。


第Ⅰ部
トルコにおける地震活動の歴史


 トルコに関しては、地質学的分析から以下のことが言える:

地震活動は、主に「東のアラビアプレートがユーラシアプレートにぶつかって、西に圧迫されている、小さなくさび形の地殻変動プレートであるアナトリアプレートで」起きている。(強調は筆者)

トルコの地震活動で特徴的なものは:

 「1939年に始まった北アナトリア断層に沿った一連の活動で、60年間に、東から西へと徐々に移動する大地震が発生した」。



 ガジアンテプとカフラマンマラシュに近接するパザルジク(7.8)とエキノズ(7.5)をそれぞれ震源とする2023年2月6日の地震は、最近の歴史上最大の「大地震」だ。( 付属資料の表、下のグラフ参照 ) 。

 2月6日、現地時間の午前4時15分頃、トルコとシリアの国境付近のトルコ中南部でマグニチュード7.8の地震が発生した。そのわずか11分後、マグニチュード6.7の余震が発生した。その9時間後にはマグニチュード7.5の地震が発生した。(USGS-国立地震情報センター)

 下の地図は、2023年2月6日に発生した地震の震源地を示したもので、シリアの北西部国境に近い南部に位置している。



エキノズ、パザルジク地震震源地(2023年2月6日)


最近の「大地震」

 歴史的に見ると、トルコで最も大きな地震は、イスタンブール近郊の北西アナトリア、西アナトリア、北東部に震源がある。

北アナトリア断層

 北アナトリア断層沿いで1939年から1999年の間に発生した7つの大規模(MS)7.0地震。上記地図参照

 これらの地震は、断層を東から西へ徐々に破断させた。以下は、北アナトリア断層を徐々に破断させた7つの大地震のデータである:
 1939年12月26日。マグニチュード (MS) 7.9 - 8.0。死者30,000人。断層の長さ約360km。北アナトリア断層における有感地震の東方移動を開始した。(北アナトリア、1939年エルジンジャン地震と呼ばれる)。
 1942年12月20日 マグニチュード(MS)7.1。断層の長さは約50km。(北アナトリア、1942年エルバア地震と呼ばれる)。
 1943年11月26日 マグニチュード(MS)7.6。断層長約280km。(北アナトリア、1943年トシヤ地震と呼ばれる)。
 1944年2月01日。マグニチュード(MS)7.3。断層の長さ約165km。(北アナトリア、1944年ボル・ゲレデ地震と呼ばれる)。
 1957年5月26日。マグニチュード(MS)7。断層の長さ約30km。(北アナトリア、1957年アバント地震と呼ばれる)。
 1967年6月22日。マグニチュード(MS)7.1。断層の長さ約80km。(北アナトリア、1967年ムドルヌ谷地震と呼ばれる)。
 1999年8月17日。イズミト。マグニチュード(MS)7.8;MW7.4-7.5)北西アナトリア

 以下は、1950年以降5つの大地震の報告である。すべて北アナトリア断層沿いで発生している。

ビンゴル:マグニチュード6.9で、1971年5月22日にトルコの東部都市で発生した。

イズミト市: 1999年8月17日、イスタンブールの南東90km、マグニチュード7.6。この地震はイスタンブール、サカリヤ、ゴルチュク、ダリカ、そしてデリンチェの工業化され、人口密度の高い都市部で発生した。

デュズジェ地震、1999年11月12日、アダパザリの東70km、アンカラの北西170kmでマグニチュード7.2の大地震が発生した。

ヴァン市。 2011年10月23日 イランとの国境に近い北東部の都市で、マグニチュード7.1の地震が発生。

イズミル:2020年10月30日。ギリシャのサモス島の北東約14kmを震源とするマグニチュード7.0の地震



北西アナトリアにおけるイズミト‐ゴルクク地震の震源地

 注意!:これらの大地震(1939-1999)は、南アナトリアでは一切起きていない。

長い歴史で見たトルコにおける地震(342 AD -1999)

 「大地震」の歴史は342 ADから記録されている。そのデータはUSGS – National Earthquake Information Centerにまとめられている(付属資料の表を参照)

13世紀には、1268年にアダナ(南アナトリア)で「大地震」(死者6万人)が記録されている。さらに15世紀以降、「大地震」はすべて北西部、西部、そして北東部アナトリアで発生している。(付属資料参照)


南トルコ地震

 ロイターは、今回の初発大地震(2023年2月6日)を「この地域で少なくともこの1世紀で最も強力な地震」と分類している。それは控えめな表現である。南アナトリアに関しては、ここ7世紀以上、こんな大地震は起きていない。(1268年のアダナ、付属資料の表を参照)

 トルコ南部の記録としては、1998年6月27日に発生したセイハン‐アダナ地震があり、マグニチュード6.3。セイハン市とアダナ市に影響を与えた。ただし、セイハン地震は「大地震」には分類されていない。

 上に概括したように、トルコにおける大地震は北アナトリア断層に沿って起こっている。

2023年2月6日以前

 700年以上もの間、南アナトリアでは一度も「大地震」が起きていない: それは、トルコ南部で「大地震」が発生する「確率」や「可能性」について、「何かを物語っている」ことにはならないのだろうか。

地震「予知」

 地震予知は、当たり前に行われている。地震は数ヶ月先まで予知することができる。しかし、「予知」と「地震学的予測」を混同してはいけない:
 オランダの太陽系幾何学調査所(SSGS)で働くオランダの地震学者フランク・ホーガービーツは、トルコでの地震を発生3日前の2023年2月3日に予測した

テロ攻撃であるという確たる証拠は皆無

 政治的なレベルでの疑念はあるかもしれないが、現段階では、これがテロ攻撃であるという確たる証拠はない。公開されている情報(機密情報ではなく)に基づくと、トルコとシリアに対して「環境改変技術」が使用されたという具体的な証拠はゼロだ。

 しかし、重要なのは、トルコ宇宙庁の長官セルダール・フセインがロシアのテレビのインタビューで語った非公式な発言(まだ確認されていない)があったことだ。硬いチタン合金の棒が、強力なエネルギービームを地球に送り込むことに、彼は言及した。それも地中深くまで。

 以下は、彼のインタビューの翻訳。

音声起こし(翻訳)

 トルコ宇宙庁の長官セルダール・フセイン、地震を起こせる兵器について:

 街角にある電柱をご存知でしょうか。あれもこの柱と同じようなもので、高さは8~10メートルくらい。金属の棒です。

 棒の中には爆薬も何も入っていません。硬いチタン合金素材でできた金属製の棒なんです。

 それを人工衛星に搭載するのです。そして、地球に狙いを定めて発射するのです。それはまるで尖った棒のようなものです。例えば、そんなことあってほしくはありませんが、どこかに落下した場合、今は災害想定図を伏せますが、地上に落下すると同時に、地球の深部5kmまで貫通するのです

 これは、あっという間にマグニチュード7‐8の地震を起こします。

 その衝撃の結果、そこにあるものはすべて破壊されるのです。いいですか、ここには武器も、爆薬も、爆弾も、そんなものはありません。単なる杖(棒)です。しかし、宇宙からやってくるたいへんな力があり、それは見えません、止められません、あるいは、それから身を守ることもできません」。 (強調は筆者)
映像はこちら


第 II 部
環境改変技術


 軍事利用のための気象改変技術に関する膨大な文献があり、その多くは機密扱いになっている。米国とロシアは、記録に記載されている。彼らは高度なENMOD技術を持って いる。

 米軍は気象を操作できる。これは、米空軍の文書「Weather as a Force Multiplier:2025年に気象を我が物にする」ではっきりしている。

 世界的に著名な科学者である故ロザリー・バーテル博士は、「米軍の科学者は、潜在的な兵器として気象体系の研究に取り組んでいる」ことを明らかにした。 すでに1970年代、元国家安全保障顧問のズビグニュー・ブレジンスキーは、著書『二世代の間で』の中で次のように予測していた:

 「技術によって、主要国の指導者は、最小限の治安維持部隊だけが知っていればよい、極秘の戦争を行うための技術を利用できるようになる...」。

 科学者のニコラス・ベギッチ博士は、HAARP(高周波活性オーロラ調査プログラム)の反対運動に積極的に参加し、HAARPを次のように表現している:

 「ビームを集束させて、加熱することにより、電離層(大気圏の上層)を持ち上げる超強力な電波照射技術。電磁波は地球に跳ね返ってきて、あらゆるものを貫通する。命あるものも死者も」。

 元フランス軍将校のマルク・フィルターマンは、電波を使った「非通常兵器」について、いくつかの種類に分けて概説している。彼は「気象戦争」に言及し、指摘しているのは次のこと:

「米国とソ連は、1980年代初頭にはすでに、突然の気候変動(ハリケーンや干ばつ)を引き起こすのに必要な技術をすでに習得していた」。

 2008年5月22日にThe Ecologistに掲載された「気候戦争」と題する私の記事は、軍事利用のための環境改変(ENMOD)技術について、私が以前に書いたいくつかの詳細な記事の要約である:

・ 地球規模の気候変動に関する議論ではほとんど認識されていないが、世界の気候は現在、新世代の高度な電磁波兵器の一部として変更することが可能である。米国とロシアは、軍事利用を目的に気候を操作する能力を開発している。

・ 環境改変の技術は、半世紀以上前から米軍に応用されてきた。米国の数学者ジョン・フォン・ノイマンは、米国国防総省と連絡を取りながら、冷戦の真っ只中の1940年代後半に気象改変の研究を始め、「まだ想像もつかない気候戦争の形態」を予見していた。

・ベトナム戦争では、1967年の「ポパイ計画」を皮切りに、モンスーンの季節を長引かせ、ホーチミンルートの敵の補給路を遮断することを目的に、人工雨の技術が使われた。

・米軍は、気候変動を選択的に変化させることができる高度な能力を開発した。高周波活性オーロラ研究プログラム(HAARP)[2014年に閉鎖され、正式にアラスカ大学に移管]の下で完成されたこの技術は、戦略的防衛構想-「スター・ウォーズ」の付属物である。軍事的な観点から見ると、HAARPは大気圏外から作動する大量破壊兵器であり、世界中の農業や生態系を不安定にすることが可能だ。

・1992年、アラスカ州ゴコナに設立されたHAARPは、高周波の電波を通して電離層(大気圏の上層)に大量のエネルギーを送る高出力アンテナの配列である。その建設には、アメリカ空軍、アメリカ海軍、国防高等研究計画局(DARPA)が資金を提供した。

・HAARPは、空軍研究所と海軍研究所の共同運営で、「電離層の制御された局所的な変化」を作り出すことができる強力なアンテナのシステムである。

・国際公衆衛生研究所(International Institute of Concern for Public Health)のロザリー・バーテル所長は、HAARPは「電離層に大きな崩壊を引き起こし、致死的な放射線を地球に浴びせないようにする保護層に、穴だけでなく長い切り傷を作ることができる巨大なヒーター」として作動すると言う。

・物理学者のバーナード・イーストランド博士は、「これまでに作られた中で最大の電離層ヒーター」と呼んでいる。

 HAARPはアメリカ空軍の研究計画として発表されているが、軍事文書によると、その主な目的は、気象パターンを変え、通信やレーダーを妨害することを目的とした「電離層の変調を誘発する」ことである。
全文はこちら

HAARPについてのCBCドキュメンタリー

 重要なのは、CBCテレビの報道(1996年)で、米空軍が支援するアラスカのHAARP施設が、台風、地震、洪水、そして干ばつを誘発する能力があることを認めていることだ:

  「指向性エネルギーは、電離層を加熱して気象を戦争の武器に変えることができるほど強力な技術です。洪水を使って都市を破壊したり、竜巻を使って砂漠で迫り来る軍隊を壊滅させたりすることを想像してください。軍は、戦闘環境の構想として、気象改変に膨大な時間を費やしてきました。電磁パルスが都市の上空で発生したら、基本的に家の中の電子的なものは、すべて瞬く間に消えてしまい、永久に破壊されるでしょう」。

CBCのテレビ報告(1996)



 ここで注意すべきことは、アラスカ州ガコナを拠点とするHAARPプログラムは2014年に閉鎖(アラスカ大学に移管)されたが、それでもHAARPプロジェクトを管理する米空軍は、軍事利用のためのENMOD技術は継続する予定である、と認めたことである:

 「私たちは、さらに進んで、電離層を管理する他の方法考えています。HAARPは、本当は、これを行うために作られたのです」と彼は言った。

 「電離層にエネルギーを注入して、実際に操作できるようにすること。その作業は完了しました」。

「フォースマルチプライヤー*:気象を我が物にする」
*戦力を倍増させる航空機(早期警戒管制機や空中給油機など)(英辞郎)

 軍事的な観点から見て、その根底にある目的は、「気象を我が物にする」ことだ。この米空軍調査が依頼された1996年当時、HAARPプログラムは、CBCドキュメンタリーにあるように、すでに完全に稼働していた。

CBSドキュメンタリーで報告された目的は、以下のとおり:

この論文では、気象改変を適切に応用することで、これまで想像もしなかった程度の戦場支配を実現できることを示す。将来、このような作戦は空と宇宙の優位性を高め、戦域形成と戦域認識のための新たな選択肢を提供し、私たちがすべてをひとまとめにするのを待っている。「2025 年には、私たちは「気象を我が物にする」ことができるだろう。(米空軍委託文書 AF 2025 Final Report, (公開文書))

 米空軍の報告書によると、気象改変は「敵対者を打ち負かす、あるいは威圧するための幅広い選択肢を戦士に提供する」もので、その能力は洪水、ハリケーン、干ばつ、そして地震の誘発にまで及ぶとしている:

 気象改変は国内および国際的な安全保障の一部となり、一方的に行われるようになるだろう・・・攻撃的および防衛的な応用が可能で、抑止の目的で使用されることさえある。地上に降水、霧、嵐を発生させる能力、宇宙気象を修正する能力・・・そして人工気象の作成はすべて、統合された一連の(軍事)技術の一部である」。

 US Air Force document AF 2025 Final Report, (空軍文書の原本へのリンクはもうできない)

 米空軍の委託文書参照

 自然の気象パターンを小規模に調整することで味方の作戦を強化したり、敵の作戦を妨害したりすることから、グローバルな通信や対空間制御を完全に支配することまで、気象改変は戦争戦士に、敵対者を打ち負かしたり、威圧したりするための幅広い選択肢を提供する。気象改変システムが戦時中の最高司令官(CINC)に提供できる潜在的な能力のいくつかを表 1 に挙げる。(強調は筆者)

 地震の誘発はHAARP技術に不可欠な要素であるが、上記の米空軍の文書には、地震という用語は、明確には記載されていない。報告書の付録AとBは、最大使用可能周波数(MUF)に関連する電離層の特徴を指摘している。

ENMODにおけるCIAの関わり

 2013年7月、MSNニュースは、地球工学と気候操作に焦点を当てた米国科学アカデミー(NAS)のプロジェクトの資金援助にCIAが関与していると報じた。この報道は、これらの技術を認識していただけでなく、米国の諜報機関が、気候操作の問題に取り組むことに、日常的に関与していることを裏付けたものであった:

 「CIAが支援するNASの研究の目的は、NASのウェブサイトによると、「限定された数の提案された地球工学技術の技術評価」を行うことです。科学者たちは、どの地球工学技術が実現可能かを判断し、それぞれの影響とリスク(「国家安全保障上の懸念」を含む)を評価しようとする」 (2013年7月、 Slate参照)

 「CIAが研究資金を援助しているのは、NASが「世界のどこかで展開されている地球工学技術に関連する(かもしれない)国家安全保障上の懸念」を評価する計画もあるからだ」と、NASの報道官であるカーニーは述べた。


第 III 部
1977年国連条約
環境改変技術の使用について


 1977年、国連総会で「広範囲、長期的または深刻な影響を有する環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的使用」を禁止する国際条約が批准された。

 ENMODの技術は、地震にも当てはまる:
.
「環境改変技術」とは、「自然のプロセスを意図的に操作することによって、生物相、岩石圏、水圏、そして大気圏を含む地球、あるいは宇宙空間の力学、組成、構造を変化させるあらゆる技術」と定義されている。(強調は筆者)

 国連総会で批准された1977年の歴史的な条約。「広範囲、長期的、または深刻な影響を持つ環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的使用 を禁止」



・・・この条約の各締約国は、他の締約国に対する破壊、損害又は傷害の手段として、広範かつ長期にわたる又は深刻な影響を有する環境改変技術の軍事・・・使用に関与しないことを約束する。(環境改変技術の軍事的又はその他の敵対的使用の禁止に関する条約、1977年5月18日、国際連合、ジュネーブ。発効:1978年10月5日、付属資料の条約全文参照)

 国連条約の全文はこちら

 条約を、批准ないし署名した国のリスト

 2022年現在、シリア、トルコ、イラク、イラン、米国、ロシア連邦を含む78カ国が批准または同意している。イスラエルは同条約を批准していない。

 国連公式文書

欧州議会委員会の決議動議

 また、1998年2月、欧州議会の外交・安全保障・防衛政策委員会が、ブリュッセルでHAARP計画に関する公聴会を開催したことも注目される。欧州議会に提出された同委員会の「決議動議」:
「HAARPは・・・環境に対するその広範囲な影響により、世界的な関心事であると考え、その法的、生態学的、そして倫理的な意味を国際的な独立機関によって検討することを求める・・・; [委員会は] 米国政府が・・・HAARPプログラムの環境と公共のリスクに関する公聴会で・・・証拠を出すことを繰り返し拒否したことを残念に思う」。 (強調は筆者)


第 IV 部
「ENMODの敵対的使用」への「専門的調査」


 トルコ・シリア地震の重大性、人命の損失、壊滅的な社会的・経済的影響に鑑み、「環境改変技術の軍事的またはその他の敵対的使用」を禁止する1977年の国際条約を前提とした「専門家調査」が実施されるべきである。

 なお、上記で引用した1977年の国連条約の批准以降、軍事利用のためのENMODの技術は、ますます巧妙になっていることを申し添えておく。

 国連は信頼できるか?トルコとシリアという2つの「締約国」は、国連の支援による専門家調査の実施に先立ち、協力して独自の内部調査を行うべきである。

 この調査の職務権限は、国連条約の協定条項に記載されている。

 専門家調査の本質について明らかにした第1条、第2条、第5条(抜粋)を参照させていただく。(強調は筆者)。全条文は、こちら

第Ⅰ条 1.
この条約の各締約国は、他の締約国に対する破壊、損害又は傷害の手段として、広範囲、長期的又は深刻な影響を有する環境改変技術の軍事的又はその他の敵対的使用に関与しないことを確約する。

 第II条は、地震を含むENMOD技術に言及している

II条
 
第I条で使用される「環境改変技術」とは、生物相、岩石圏、水圏及び大気を含む地球又は宇宙空間の動態、組成又は構造を、自然過程の意図的な操作により変更する技術をいう。

V条
1. この条約の締約国は、互いに協議し、この条約の目的又は規定の適用に関連して生ずるあらゆる問題の解決について協力することを約束する。この条に基づく協議及び協力は、国際連合の枠内において、その憲章に従い、適当な国際手続を通じて行うこともできる。これらの国際的手続には、本条第2項に規定する専門家諮問委員会のほか、適当な国際機関の業務をも含めることができる。

2. 本条第1項に規定する目的のため、寄託者は、この条約のいずれかの締約国から要請を受けた後1箇月以内に、専門家諮問委員会を招集するものとする。...

3. この条約の締約国は、他の締約国がこの条約の規定から生ずる義務に違反して行動していると信じるに足りる理由を有するときは、国際連合の安全保障理事会に訴えを提起することができる。このような告発には、すべての関連する情報及びその正当性を裏付ける、すべてのあり得る証拠を含まなければならない。

4. この条約の各締約国は、国際連合憲章の規定に従い、安全保障理事会が受理した訴えに基づき開始することができる調査の実施に協力することを約束する。安全保障理事会は、調査の結果を締約国に通知する。

 条約の本文の附属書には、次のものがある:
1. 専門家諮問委員会は、委員会の招集を要求する締約国がこの条約の第V条第1項に従って提起した問題に関連する適切な事実認定を行い、専門家の意見を提供することを引き受けるものとする。
強調は筆者


まとめ

 私たちは、トルコとシリアの人々と連帯しています。

 現段階で、単純な結論を出すのは賢明ではなく、時期尚早でしょう。

 禁断の真実というものがあります。私は、分析と理解の枠組みを提供することを試みました。

 今回の被害や人命の損失は筆舌に尽くしがたいものがあります:1977年に締結された「環境改変技術の軍事的その他の敵対的使用」を禁止する国際条約を参考に、この問題を分析し、対話し、議論する必要があります。

 「締約国」であるトルコとシリアは、国連専門家諮問委員会および/または国連安全保障理事会に付託する前に、第一段階として、独自の内部調査を実施しなければなりません。


Annex
Source: This Information was provided by USGS – National Earthquake Information Center
Earthquakes in Turkey that caused 10,000 or more deaths (342 AD- 1999)

The following are the sources and footnotes
ISK: Earthquake catalog of Kandilli Observatory, Bogazici University, Istanbul, supplied by NOAA/NGDC (Meyers and Von Hake), Boulder CO, 1985.
ITU: K. Ergin, U. Guclu and Z. Uz, A Catalog of Earthquakes for Turkey and Surrounding Area (11 AD to 1964 AD), Technical University of Istanbul, Faculty of Mining Engineering, 1967.
AFAD: Earthquake Risk Map by AFAD, Department of Disasters and Emergency Management, 2018.
NG(n): R. Ganse and J. Nelson, Catalog of Significant Earthquakes 2000 BC – 1979 Including Quantitative Casualties and Damage, NOAA/NGDC Report SE-27, Boulder CO, 1981. The number in parentheses is from their references table, as listed below:
2: Lomnitz, Global Tectonics and Earthquake Risk, 1974.
3: Bath, Introduction to Seismology, 1978.
5b: (there is no source 5b — probably should be 55?).
7: Meyers and von Hake, Earthquake data file summary, 1976.
51: Munchener Ruckversicherungs-Gesellschaft, World Map of Natural Hazards, 1978.
55: Milne, Catalogue of Destructive Earthquakes, 1911.
73: U.S. Congress, Great Earthquakes, 1888.
99: Karnik, Seismicity of the European Area, 1971.
120: Alsinawi and Galih, Historical Seismicity of Iraq, 1978.
138: Ambraseys, Middle East A Reappraisal of Seismicity, 1978.

The original source of this article is Global Research
Copyright © Prof Michel Chossudovsky, Global Research, 2023

トルコ—シリア地震:これはテロか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Turkey-Syria Earthquake: Is This An Act of Terror?

筆者:ピーター・ケー二ッヒ (Peter Koenig)

出典:Global Research

2023年3月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月12日




***

筆者が今考えていること

 本論の末尾に書かせてもらった「ここまで証拠なし」という結論は、この恐ろしい地震がENMOD(Environmental Modification Techniques環境改変技術)によって操作された災害の結果であるという強い疑いに言及したものであった。今日までのところ、48,000人以上が死亡し、50万人以上が負傷し、数万人が行方不明になっている。

 一体正義はあるのだろうか?

 犯人と目される人間たちは裁判にかけられるのだろうか?

 特に、トルコ宇宙庁のセルダール・フセイン長官がロシアのテレビで話しているのを聞くと、「証拠がない」という発言はますます色あせていくような気がする。

 彼が、硬いチタン合金材料が地球に向けて発射されることについて話す時は、誇張された象徴的な話し方をする。彼の話によれば、チタン合金の棒を使って、この殺傷力のある超強力なエネルギーを地球に送り込み、地中深くに地震を引き起こすというのだ:

転写(翻訳)

トルコ宇宙庁のセルダール・フセイン・ユルディリム長官が、地震を起こすことができる兵器について:

 街角にある電柱をご存知でしょう。この柱と同じようなもので、高さは8~10メートルくらいです。金属の棒です。

 棒の中には爆薬も何も入っていませんが、硬いチタン合金素材でできた金属棒です。 

 衛星に入れるのです。ある一定の量をね。そして、地球に狙いを定めて発射する。尖った棒のようなものです。例えば、そんなことがあってはならないが、どこかに落ちる(今はどの災害なのかは伏せる)。地上に落ちたとたん、それは最大で5kmも地中深くまで貫通する。

 これが非常に迅速に起こり、マグニチュード7~8の地震が発生する。

 衝撃の結果、そこにあるものはすべて破壊される。いいですか、ここには武器も、爆薬も、爆弾も、そんなものはありません。単なる棒(ロッド)です。しかし、宇宙からやってくるため、強大な力があり、それを目で見ることも、止めることも、身を守ることもできないのです。

映像はこちらから

 セルダール・フセインの発言はまだ検証されていない。

ピーター・ケー二ッヒ,2023年2月22日

 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領によると、「トルコの壊滅的な地震により、1300万人以上の人々が影響を受けている」。(2023年2月7日付タス紙より引用):

「地震は甚大な被害をもたらしました。我が国の歴史上だけでなく、全世界の歴史上、史上最大の災難です。

 私たちは、歴史上最も辛い日々を過ごしています。ガジアンテプ市に近いカフラマンマラス州のパザルジクとエルビスタンを震源とする2つの強い地震は、10県に大規模な被害をもたらしました。これらの地域では、約1350万人(トルコ人口8500万人のうち)の国民が被災しています」。

 2023年2月6日(月)早朝4時頃、トルコ南東部とシリアを震源とするマグニチュード7.8の巨大地震が発生した。米国地質調査所によると、震源地はシリア国境から100km離れた主要都市で州都のガジアンテプ(人口210万人)から約30kmの地域を襲った。地震の震源は深さ約18km。

 その後、約10分後にマグニチュード6.7の強い余震が発生した。詳しくはこちら。また、NY Postのドローンによる一部被災地の映像もある。



 この地震による死者は今のところ5,400人を超え、負傷者は約32,000人となっている。これは2日目以降だけのことで、多くの破壊と瓦礫の中から生存者や遺体を探し出すことはまだできていない。

 この地震はシリア北部でも発生し、これまでに少なくとも1,200人が死亡、数千人が負傷している。(左の2つのグーグルマップを参照) *訳註:原文に地図はない

 これに比べ、1960年にサンティアゴ周辺を襲ったチリ地震は、死者約1700人、それに伴う津波で死者2000~2500人、負傷者数万人であり、今回の地震は近年の歴史上最も大きな地震の一つであるといえる。

▪ 巨大なテロ行為?

 もしエルドアン大統領が正しいのであれば、これは世界最大の災難のひとつであるが、実際その通りであるようだ。いろいろな戦争が世界で起こっているにもかかわらず、これはテロ行為となるのだろうか?

 トルコは、このような破壊的な反応を引き出すために、何をしたのだろうか。実行者は?

 USのA?その司令部と言えば、ワシントンと国防総省ということになるNATO?

 NATOの主要メンバーであり、東西の間に位置する戦略的な地理的優位性を持つトルコが最近行ったいくつかの取り組みは、NATOの同盟国の怒りを買ったかもしれない。

 以下は、必ずしも優先順位が高い順にはなっていない:
1. トルコはロシアと同盟を結んだが、これはNATO加盟国にとっては「敵と寝る」 (Michel Chossudovsky)ようなものだ。こちらこちらを参照。NATOの敵国とのこのような提携は、西側諸国にとって絶対に許されないことだ。

2. NATO同盟の下、トルコは米国のパトリオット・システムではなく、ロシアのS-400防空システムを購入することを決定した。パトリオット・システムはNATO加盟国、特にトルコのような重要な国にとっては望ましいシステムである。パトリオット(Phased Array Tracking Radar for Intercept on Target標的迎撃用指向性レーダーの略)は地対空ミサイル・対弾道ミサイルシステムそれはNATOの防空システムである。パトリオットの代わりに、トルコがより洗練され、より正確で効果的なロシアのS-400を選択したことは、ロシアとトルコの同盟関係にとって強力な屋台骨となる。

3. エルドアン大統領は2017年、プーチン大統領とS-400について25億米ドルの契約を調停した。S-400ミサイル砲台の最初の納品は2019年に到着した。

4. S-400システムは、NATO同盟だけでなく、アメリカで最も高価な兵器であるF-35にも脅威をもたらすと言われている。トルコは、当時、トランプ大統領によって厳しい制裁を受け、特に外国が操作したトルコ・リラの通貨切り下げによって、トルコ経済は壊滅的な影響を被った。ワシントンがNATO加盟国の振る舞いを「罰する」というのは異例中の異例で、ほとんど前例がない。

5. 米軍艦USS Nitze、トルコの支配するボスポラス海峡から黒海への進入を禁じられる。USNI Newsによると、2023年2月上旬、黒海付近で活動する米軍駆逐艦USS Nitzeが目撃された。プーチンのウクライナ侵攻が始まって以来、米軍艦がロシアに最も近づいたと言われる。

6. 2月3日、トルコに寄港する途中、ボスポラス海峡の南端でNitzeが目撃された。同海峡を通過した最後の米軍艦は、2021年12月15日に黒海を出港したUSSアーレイ・バーク(DDG-51)である。以下のGoogleマップを参照。次に、USS Nitzeに関する動画を参照。





7. 2022年2月、トルコは地中海から黒海へのボスポラス海峡を、黒海に母港を持たないすべての船舶に対して閉鎖した。つまり、米国の軍艦は地中海からボスポラス海峡を通って黒海に渡ることができなくなったということだ。ロシアは、黒海から例えばUSS Nitzeのような米国の駆逐艦を巡航ミサイルで攻撃される可能性がある中でのことだ。一方、Nitzeはマルマラ海のギョルク海軍基地への寄港を予定している(上のグーグルマップを参照)。

8. トルコはNATOの主要国で、東西の間にあり、重要なボスポラス海峡を境界線としているが、そのトルコがNATOの同盟国-NATO司令官に対して、重要な戦略的通路を閉鎖する(アメリカの敵であるロシアを守る)ことは、ワシントンにとって喜ばしいことではないであろう。

9. トルコとシリアの和解は、確かにワシントンの望むところではない。アラブ・センター・ワシントンDCが報じたように、これは、この地域の驚きの最新動向であるーこれを参照。

10. トルコのエルドアン大統領がシリアのアサド大統領との和解に関心を示していることは、国内と地域の微妙な均衡を取るための新たな一歩であり、エルドアンの友人や敵、特に米国は、この進展が彼らにどのような影響を与えるかについて頭を悩ませている。和解が成功すれば、シリア北部の国内・地域力学はさらに複雑になり、エルドアンにとって、おそらく次期トルコ選挙を超える明確な利益を確保することはないだろう。

11. シリアにおけるロシアの関与を覚えているだろうか? アメリカがシリアから追い出されたときのことである。バッシャール・アル=アサド大統領の要請で、2015年9月から2017年末までのロシア軍、主に空軍の干渉は、ワシントンがシリアから完全ではないにせよ、大幅に撤退したことに大きな役割を果たした。2017年、「任務完了」と同時にロシアの戦闘部隊は撤退したが、ロシアはシリア北部に名目上の軍事警察を駐留させている。

12. トルコの爆弾的行動、つまり、数日前、スウェーデンのNATO加盟を拒否したことは、わらの最後の一本が、ラクダの背中を折ることわざのようなものだったかもしれない。新しい国がNATO加盟国になるには、すべてのNATO諸国がその新しい候補国を承認しなければならないのだ。

13. スウェーデンは、トルコの条件のいくつかを自国には満たすことができないと言っている。その中には、スウェーデンがエルドアンの宿敵であるクルド人労働党(PKK)のメンバーを支援しているというトルコの非難がある。

14. トルコの危機管理団によると、1984年以降、PKKとトルコ政府との間の戦闘で、約3万人から4万人が死亡したと推定されている。

15. トルコがスウェーデンのNATO加盟を拒否したのも、ロシアの利害が絡んでいたのかもしれない。1809年以来、スウェーデンとロシアの間には平和が続いてきたが、他の隣国との状況とは異なり、両国が親密な関係を実現することはなかった。特に現在のスウェーデン政府はそうである。

▪2023年5月14日のトルコの総選挙

 もし地震の時期が計画の一部であったとしたら、来る2023年5月14日の総選挙に完全に合致することになる。エルドアン大統領とその率いる公正発展党(AK党)は、現在、支持率調査でうまくいっていない。

 震災への対応次第では、首相と党の支持率は上がるかもしれないし、下がるかもしれない。通常、「自然」災害は、責任の有無にかかわらず、政権にとっては良い結果をもたらさない。

 いずれにせよ、新たな選挙は新たな「機会」をもたらすものだ。一方、ほとんどの専門家にとって明らかなのは、真に「民主的」な選挙は存在しないということである。つまり、決定的な票、決定的な影響力がアングロサクソン西側帝国に影響されない選挙は、世界にはまさに存在しないのである。

 エルドアンを米国の手先と交代させれば、トルコは、NATOに従順で、ロシアとの同盟もなく、「敵と寝る」こともない、望ましい国として戻ってくるかもしれない。

 トルコがスウェーデンのNATO加盟候補を拒否した数日後、トルコで巨大な、死者を出す、すべてを破壊する地震が発生し、シリアに深刻な影響を与え、キプロスやレバノンにも影響を与えたのは偶然だろうか?

▪ 今回の地震はテロ攻撃だったのか? 証拠はない

 人工地震は以前にも発生したことがある。例えば、2010年1月12日にハイチの首都ポルトープランス沖で発生した地震は、カリブ海の沿岸に多く埋蔵されている巨大な石油を地表に近づけて利用しやすくするために、水中/地下爆発によって引き起こされたと疑われている。ウィリアム・エングダールの「ハイチにおける石油の戦略的否定か」は、この方向性を明確に示している。

 F. ウィリアム・エングダールによると、ハイチの沖合に大量の石油や鉱物が埋蔵されている可能性があることは地球物理学的に指摘されている。2010年1月30日の9分間の動画を参照。



▪米空軍の気象戦

 気象改変は、米空軍の文書AF 2025 Final Reportによると、「戦士に、敵対者を打ち負かす、あるいは強要するための可能な幅広い選択肢を提供する」:

 「気象改変は国内および国際的な安全保障の一部となり、一方的に行うことができる...攻撃的および防衛的な応用が可能で、抑止目的に使用することもできるだろう。地上に降水、霧、そして嵐を発生させる能力、宇宙気象を修正する能力...そして人工気象の生成はすべて、統合された一連の(軍事)技術の一部である。」

 米空軍から委託された研究: 軍事力増強要因としての気象、2025年における気象の保有、1996年8月

▪高周波活性オーロラ研究計画(HAARP)


 アメリカ空軍の「気象戦」は、1990年代初頭に開発された「高周波活性オーロラ研究計画(HAARP)」に関連している。

 HAARPに関する科学報告書(HAL Id: hal-01082992)(2011, 2014)は、電離層の変調HF加熱によって発生する高出力ELF放射が、地震やサイクロン、局所的な加熱を引き起こすと説明している。フラン・デ・アキノ・マランハオによる論文は、その科学的知見を次のように要約している::

 「HAARPは現在[2014年]、[アラスカ州ガコナで計画が終了し、2014年に移管]、電離層に極低周波(ELF)電磁波を発生させるために用いられる最も重要な施設だ。このELF放射を発生させるために、HAARPの送信機はELFで変調された高周波(HF)の強いビームを放射している

 この高周波加熱は、D領域電離層の電子の温度を変調させ、変調された導電率と時間変化する電流をもたらし、変調周波数で放射される。最近、HAARPの高周波送信機は、2.5Hzの周波数で変調された3.6GWの有効放射電力で作動した。現在のHAARP加熱器のようなHF電離層加熱器から発生する高出力ELF放射は、地震、サイクロン、強い局所加熱を引き起こす可能性があることが示されている。」

 HAARPプログラムの開発に使用された特許は、レイセオン社がE-Systems社の子会社を通じて所有している。

 なお、2014年にアラスカ州ガコナの高周波活性オーロラ研究プログラム(HAARP)計画が別の場所へ移動して閉鎖されたことにより、ペンタゴンの国防高等研究計画局(DARPA)はENMOD研究に活発に取り組んでおり、そのほとんどは機密扱いになっている。こちら参照

 本稿執筆時点では、トルコ・シリア地震が環境改変技術に起因するテロ行為であるとの疑いはあるが、具体的な証拠はない。

 上記の記述については、引き続き十分な検証が必要である。


 ピーター・ケーニッヒは、地政学的分析家であり、元世界銀行と世界保健機関(WHO)の上級経済学者として、30年以上にわたって世界中で活躍した。米国、欧州、南米の大学で講義を行う。オンラインジャーナルに定期的に執筆している。著書に『Implosion - An Economic Thriller about War, Environmental Destruction and Corporate Greed』、Cynthia McKinneyの著書『When China Sneezes』の共著者である: From the Coronavirus Lockdown to the Global Politico-Economic Crisis" (Clarity Press - November 1, 2020) がある。グローバル化研究センター(CRG)特別研究員。また、北京人民大学重陽研究所の非居住上級研究員でもある。

世界一汚い男性が数十年ぶりに入浴した後、亡くなった

<記事原文 寺島先生推薦>

‘World’s dirtiest man’ dies after taking first bath in decades
The 94-year-old Iranian allegedly went over half a century without washing

94歳のイラン人男性は、半世紀以上もの間、身体を洗ってこなかったという。

出典:RT

2022年10月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月24日


アモウ・ハジさん© AFP

 イラン人の隠者で、世界で「最も汚い男性」と呼ばれていた男性が、イランのディガ村で94歳で亡くなった、と日曜日(10月24日)にイラン国営メディアが報じた。報道によると、あだ名が「ハジおじさん」であるこの男性は、67年間ほど身体を洗わず、腐った食べ物だけを食してきたという。

 IRNA通信社の報道によると、ハジさんが身体を洗ってこなかったのは、身体を洗うと病気になることを心配していたからだという。 入浴しないというハイジさんの決意は非常に固く、地元の村人たちが、ハイジさんを川に連れて行って水浴びさせようとした際は、車から飛び出して逃げたこともあった、と同通信社は伝えている。

 石鹸を使うことや水を浴びることを嫌っていただけではなく、ハジさんは新鮮な食物を食べたり、新鮮な水を飲んだりすることも嫌がっていて、大好きな食べ物は、腐ったヤマアラシなど、路上で死んでいる動物だと語っていた。ハジさんが常時飲んでいたのは、近くの溝の水で、それを錆びた油差しを使って飲んでいたそうだ。ハジさんの家は、開けっぴろげのレンガでできた小屋で、タバコは吸わず、古いパイプで動物の糞の煙を吸うのが好きだったそうだ。


関連記事: 妊娠中の女性にVAPE(電子タバコ)を無料配布

 異常な衛生習慣とは裏腹に、ハジさんの健康状態は非常によかったそうだ。今年初旬にテヘラン公共医療大学の医師団がハジさんに一連の検査を行ったが、結果は、バクテリアや寄生虫への感染は見つからず、旋毛虫症に感染していることだけがわかった。この病気は、生肉を食べる人によく起こる感染症だ。ただし、ハジさんには、症状は見られなかった。

 医師団の結論によると、ハジさんが健康を維持できていた理由は、常に厳しい生活状況に置かれているため、尋常ではないくらい強い免疫系を体内に確立しているからだ、とのことだった。

 しかし伝えられるところによると、数ヶ月前、ついに村人たちがこの隠者を説得して、入浴させることに成功したという。それは半世紀以上もの間で初めての入浴だった。

 地方当局者がIRNA通信社に語ったところによると、その後すぐにハジさんは病気になり、10月23日に亡くなったという。

石油をめぐって悪化したサウジ・米国関係だが、問題はもっと深い

<記事原文 寺島先生推薦>

Saudi-US relations deteriorate over oil, but the issue is much deeper

バイデンは米国中間選挙を前に、サウジの石油減産を阻止しようとしたが失敗して、サウジアラビアに対して人権に関する空虚な警告を再び発した。

筆者:ロバート・インラケシュ(Robert Inlakesh )


政治分析家、ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画制作者。パレスチナ自治区で取材・生活し、現在はQuds Newsに所属している「Steal of the Century: Trump's Palestine-Israel Catastrophe」」の監督。

出典:RT

2022年10月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月28日


画像:サウジアラビア・ジッダのアルサラーム王宮で、ジョー・バイデン米大統領(左)とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(右)が会談した。© サウジアラビア王宮 / アナドル・エージェンシー 、ゲッティが画像を提供

 ジョー・バイデン米大統領は、リヤドによる原油減産の決定についてその「影響」を警告したが、結果は民主党党首バイデンを困惑させるものとなった。しかし、サウジアラビアの反抗的な動きは、見た目よりもずっと複雑なのかもしれない。

 中東における米国の長年の友好国であるサウジアラビア王国が、今年10月初めに開かれたOPEC+の会合で原油の減産を推し進めて以来、米国は強く反対の声を上げている。バイデンは11月の中間選挙に向けて党を率いているが、原油価格は下がらず、選挙で共和党を打ち負かすという希望を損なうことになった。民主党の有力者たちは、サウジの動きが選挙結果に影響することに憤慨し、サウジを激しく非難するようになった。

 今月初めにOPEC+が2020年以来の低水準への減産を決定したことは、ワシントンでは即座に、サウジアラビアが欧米よりもロシアの味方をした、と評された。バイデンにとってさらに悪いことに、リヤドは現在南アフリカ、ブラジル、ロシア、インド、中国からなるBRICS経済連合への参加に関心を示していると報じられている。

 サウジアラビアは、ロシア側につくために何らかの決定を下したことは否定しており、特にサウジがウクライナに対抗する姿勢を示しているという主張に対しては「驚愕している」と述べている。


<関連記事> サウジアラビア、石油減産をめぐる米国の圧力を明らかにする

 サウジアラビアの減産の決定は、特にヨーロッパがエネルギー不足に苦しむ中、西側諸国にとって打撃であることは間違いないが、この動きはNATOが支援するウクライナとロシアとの紛争に対する政治的な意図でなされたものではないだろう。どちらかといえば、反米というより、反民主党の立場をとっていると解釈できる。

 ワシントンでは、バイデン政権発足当初の立場を反映し、現在は人権侵害やサウジの独裁的な国家体質に焦点を当てた言い方に変化しているが、その真意は、純粋な懸念ではない。リヤドによれば、バイデンはサウジ政府に対し、原油減産の発効を選挙後にするよう譲歩を求めたとさえ伝えられている。しかし、OPEC+の決定を延期する試みは徒労に終わり、米国大統領は11月8日の予備選挙で、この問題で減るかもしれない民主党の票を失わないために原油価格の問題を取り上げざるを得なくなったのである。

 ドナルド・トランプ前大統領が就任後初の外遊先としてサウジアラビアを選んだように、共和党がサウジ自身の地域政策に好意的であることは明らかである。現在も共和党に大きな影響力を持つトランプ氏は、在任中、サウジとアラブ首長国連邦の双方にとって大きな味方であった。共和党へのロビー活動などを通じて、リヤドやアブダビは自分たちが得た結果に満足しているようだった。特筆すべきは、トランプ政権の非公式補佐官を務めたトーマス・バラックが、首長国政府の外国人工作員であると非難されたことだ。それはバラックが、外交政策の主要問題で前大統領に影響を与え、サウジとUAEが湾岸地域で影響力を高める方向性を大きく変えた可能性があったからだった。

 次に問題になったのは、バイデン政権の偽善的な取り組み方である。米国大統領バイデンは、政権の外交政策課題に関する最初の演説で、リヤドの人権侵害の責任を追及し、イエメンでの戦争を終結させるために努力すると主張した。しかしバイデンは、サウジアラビアへの攻撃用武器やその他の関連武器売却を中止すると表明しながら、同年末には武器売却を承認したのである。

 7月の外遊では、アラブ首脳会議にオブザーバーとして参加し、大統領は中東から「離れない」ことを誓った。この外遊は、米国の世界的・地域的課題にとって何ら具体的な利益をもたらすものではなかったが、米国はサウジアラビアへの攻撃用兵器の売却を再び検討する用意があるとの情報も入っていた。実際、OPEC+による減産の1週間前には、米国の投資家にサウジアラビアへの訪問を奨励する報道がなされ、サウジと米国の関係は新たな高みに達している。それは、サウジアラビアがロシアとウクライナの囚人交換に関与した後のことでもある。

 民主党の複数の有力議員から関係断絶を求める声が上がる中、サウジのアデル・アルジュベイル外相はCNNのインタビューで、米国とサウジの関係を結びつける要素を以下のように列挙した。


<関連記事> アメリカ人は、米国が中東の同盟国に圧力をかけたかどうか分かるべきだ --- 下院議員

 「サウジアラビアには、約8万人のアメリカ人が住み、働いています。我々は非常に強力な貿易・投資関係を持っています。イエメンに平和をもたらすこと、イスラエルとアラブの間に平和をもたらすこと、アフガニスタンを安定させること、イラクをアラブに復帰させること、アフリカの角に安定をもたらすこと、リビアやサヘル地域*のG5諸国の安定と平和をもたらすこと、そして過激主義やテロとの戦いにおいても、我々の共通の利益を守るために我々は非常に緊密に働いています。それらの利益は永久に続くものであり、それらの利益はとてつもなく大きなものです。」
 [訳注]*サヘル地域----中央アフリカ北部、セネガルからエチオピアに至るサハラ砂漠の南に接する半乾燥地域

 この発言が注目される理由は、米国がリヤドとの関係を通じて活用できる力を明確に示しているからである。両者は1938年の石油発見以来、一心同体の関係であり、1979年のイラン王国の没落後、この関係は大きく改善されてきた。しかし、サウジアラビアは米国にただ利用されることを黙って見てはいなかった。米国の石油市場の主要部分を自ら買い占め、地域情勢への影響力を確保し、単なる国際的ガソリンスタンドではなく、地域の主要プレーヤーとしての役割を確固たるものにしているのである。

 サウジアラビアが国内外で行っている人権侵害は忌まわしいものであるが、バイデン政権は明らかにそれらに関心を抱いていない。だからこそ、原油価格と党派的な選挙問題が絡む今になって米国とサウジの関係が悪化し、ホワイトハウスにとってまた新たな困惑が浮き彫りになっているのである。バイデン大統領のサウジアラビア訪問の際、大統領はワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件を持ち出そうとしたと伝えられている。サウジアラビアの説明によると、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、イスラエルによるパレスチナ系アメリカ人ジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレの殺害と、米軍によるイラクのアブグレイブ刑務所での拘禁者拷問を指摘してバイデン氏に対抗したという。「自分を偽るな」と、サルマン皇太子は言いたかったのだ。しかし、米国とサウジアラビアの関係は、米国が再び政権転覆戦争を引き起こさない限り、今後も続くだろう。

西側は新疆問題だけ取り立てて厳しく批判するが、パレスチナ人に対する虐殺には全く目を向けない

<記事原文 寺島先生推薦>
The West pushes the Xinjiang issue hard and selectively, while ignoring the sustained slaughter of Palestinians

トム・ファウディ(Tom Fowdy)著

is a British writer and analyst of politics and international relations with a primary focus on East Asia.

 
Russia Today 論説面

 2021年5月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年6月8日



 「中国でイスラム教徒はひどい扱いを受けているらしい。ひどい人権侵害行為だ。やめさせなくては」
「でもガザでも、イスラム教徒は爆撃を受け、殺害され、家から追い出されているよ?」
「いやいや、彼らは反イスラエルのテロリストなのだ」

 ガザが燃やされ続けている。そしてパレスチナ人たちの家が墓場になっている。西側諸国のイスラム教徒に対する偽善の二面性は、いつまでも汚いままだ。


ALSO ON RT. COM

Israeli settlers attack Palestinians, steal land with impunity. Imagine outrage & calls for sanctions if any other state did it

 驚くことではないが、死者数はうなぎ登りに上がっているのに、イスラエルの軍事行動に対する西側からの糾弾の声は全く上がってこない。米国はこの件に関して国連安保理決議に反対し、アントニー・ジョン・ブリンケン米国務長官は、何のためらいもなく、イスラム教の祝祭である「イード祭」を祝福するツイートを残している。

 イスラエルに対しては糾弾がない中で、5月13日、大手メディアや、米国関連の機関がこぞってあからさまに中国の新疆自治区の問題を取り上げていた。

 いくつかの記事が意図的に発表された。具体的には、「全米民主主義基金に支援されたウイグル族人権プロジェクト」という機関が、イスラム教の指導者を投獄したというでっち上げ事件で中国を非難したり、米国と軍事産業が支援している「オーストラリア戦略政策協会」が、モスクを破壊したとして、中国を非難した。それと同時に、米国とその同盟国は、国連で、中国に非難の声を浴びせ、ブリンケン国務大臣は、新疆のことを「屋外刑務所」呼ばわりしていた。

 西側は、新疆問題を厳しく、とりたてて取り上げている。その一方で、パレスチナに関する長期にわたる残虐行為については無視したままだ。西側は、なぜ多くのイスラム教の国々が、この件に関して中国政府に支援の手を差し出し、西側の言い分を聞こうとしないかについて不思議に思っている。その答えは、イスラエルとパレスチナ間の紛争が(パレスチナの周囲で起こっている西側が支援しているほかの紛争でも同じ事だが)、イスラム世界と、米国とその同盟国の間で、いつの間にか、地政学上の不信感を生んできた主要な楔(くさび)になっているからだ。

 これらイスラム世界の国々には、米国が行う人権に関する言説を真剣に聞き入れる理由が全くない。というのも、米国は中東において破壊行為を行ってきたからであり、中国とは外部の干渉から「自国の主権」を守るという共通の利益を共有できるからだ。

 西側は自国民に対しては、博愛や真摯な善意として自分たちのイメージを植え付けている。そうでもしないと、帝国主義の長い歴史を隠したり、書き直したりできないからだが、とにかく、西側は世界を良くし、世界の正義のために力を尽くしているというイメージを市民に植え付けている。西側の理論では、「道徳的に正しい」とされることが、「政治的な真実」を構成するものと重なり合わされている。 そのため、人権という概念が、政治的意図や、よこしまな企みや、経済力や、有害な意思によってもたらされた可能性のある考えによって、利用されていることに疑念を持つ市民はほとんどいない。この偽善にまっすぐ向き合えば、「冒涜者」という烙印が押される。こうして、「普遍的な人権」とされているものが、全く普遍的ではないという状況が起こるのだ。

 


 グローバル・サウス、特に中東の国々はこの偽善を認識している。経験から、人権という概念は、西側諸国が自分たちを支配するための戦略や、軍の目的を前に進める口実に使っていることを、これらの国々はわかっている。それは、これらの国々の人々の自由や、生活の質の向上に向かって本当に努力するということとは逆の方向だ。従って、西側にとって都合が悪ければは、イスラエルとパレスチナ間の紛争のような、イスラム世界にひどい苦痛を与える問題も普通に無視される。これが1948年の第一次中東戦争以来、中東の国々が西側に対して反感をもつ意識や考え方の基盤になっている。
 
 この地域では、西側による介入がこれまで何度もあった。そのほとんどは、1991年から2012年の間に行われた。その理由に使われたのが「人権」だった。介入が行われたのは、イラクと、リビアと、シリアだ。シリアのことについていえば、西側はバサール・アル・アサド大統領が、10年間の内戦で、市民を殺害したことを糾弾し、アサド大統領の退陣を要求してきた。しかし一方で、西側はイスラエルによるパレスチナ人の長年にわたる殺害については、承認し続け、イスラエルが占領地域において領土を拡張しようという政策や、多くの近隣諸国に対してもとどまることを知らない拡張欲を示すことを可能にしている。そして西側は、70年間にわたるイスラエルと中東諸国との衝突を解決できずにいる。

 さあ、あなたがイスラム教国家だとしたら、米国とその同盟国を信じるだろうか?突然彼らが、「残虐行為だ!!」、「大虐殺だ!!」と騒ぎ立て、「新疆のイスラム教徒の少数民族の権利を守るために立ち上がろう」などと言い始めたとしても。こんなことを心から信じるイスラム教国家など存在するだろうか?

 戦争や爆撃で中東の国々を破壊してきたまさにその国々が、穏健な言い方でさえイスラエルを批判することを拒んできたまさにその国々が、今になって「イスラム教徒の保護者」ヅラをするというのか?イスラム教諸国家が、西側諸国の「中国非難合唱団」に参加せず、中国の政策を支持することに何の不思議もない。イスラム教諸国が、中国が無神論政策を取っていることや、共産主義国家であることに反対していたとしても、新疆問題に関して、共通の利益となる非常に重要な点がひとつある。 それは、「国家主権を守ること」だ。
 


 新疆で何が起こっているかについてどう考えているかに関わらず、イスラム教諸国の多くは、かつて列強の植民地であった国々であり、過去も今もずっと西側からの介入に苦しんでいる。だからこそ、中国政府が基本としている政策である「内政不干渉」主義や、「西側の介入から自国の主権を守る」ことを重視した政策は、これらのイスラム教諸国には、魅力的で筋が通った解決法に映るのだ。 そんなイスラム教諸国が、「新疆問題追求車両」に乗り込んで、「西側は人権問題を口実にして他国を非難しても許される」などと主張するわけがない。そんなことをしてなんの意味があろうか?

 イスラム教諸国が新疆問題に関して中国を支持することには無数の理由があるが、逆に西側を信頼する理由など全くないし、米国や、英国などの国々が、この件に関する非難の声を上げているのは、政治的な目的に過ぎず、イスラム教徒たちのより良い方向を真摯に心配しているからでは全くないことを彼らは分かっている。

ALSO ON RT.COM

The accusation of Uighur genocide is Pompeo’s last-gasp attempt to morally nuke China, but he’s unlikely to find many backers

 
 ガザの建物が破壊され、人々が殺戮されている。この現状に対して沈黙することや、無関心を貫くことは、西側が「人権」についての懸念を大声で叫ぶことばよりも実は雄弁だ。最後にわかりやすいまとめでこの記事を終えたい。

「パレスチナ問題については、イスラム教諸国が怒っているが、西側の支配者たちは無視している。新疆問題については、米国が率いる同盟諸国が怒っていて、イスラム教徒たちにも西側の言い分を支持し、一緒に怒って欲しいと必死に思っている。でもその気持ちはイスラム教徒には無視されている」

 





シリアでの目的は、ロシア政府とシリア政府が、テロリストを倒すことを「困難」にすることであると、アメリカ政府は公然と認めている

<記事原文 寺島先生推薦>
US now openly admits its goal in Syria is to make it 'difficult' for Moscow and Damascus to defeat terrorists

RT Open-ed 2020年3月10日

ネボジャ・マリック
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<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年4月7日

  国務省のシリア特使は、米国がイドリブのジハード主義の過激派を「ロシアの侵略」から守ることを目的としていることを認め、国防総省の裏の思惑が健在であることを再度証明した。
  ロシアとシリア政府は「シリア全土での軍事的勝利を得るために軍を出している」、とジェームズ・ジェフリー大使は火曜日の合同電話インタビューでブリュッセルから記者団に語った。
  
   私たちの目的は、外交、軍事、その他のさまざまな行動によって、彼らがそれを行うことを非常に困難にすることです。


  どんな行動をとるかの一つの例として、ジェフリーは、いかなる化学兵器による攻撃に対しても、米国は「非常に激しい軍事的」攻撃を行うことを挙げた。ジェフリーは、その化学兵器による攻撃を「優位に立とうとするとき、シリア政権がするお気に入りの戦術」と述べた。彼の言っていることは、事実無根だ。というのも、化学兵器によるものとされた攻撃は常にシリア軍の勝利の後に起こっていて、それは、米国が介入する口実に使われているのだから。

  ジェフリーは、また、「シリアの複数の地域に米軍と連合軍がいる」とも語った。それは公式には、イスラム国家(IS、以前はISIS)と戦うためなのだが、実際のところは、油田を「守って」いる。米軍と連合軍の駐留はシリア政府を「混乱させるため」という彼の言葉遣いはいわくありげだ。

Also on RT. Com 5e679c782030273b35183c8d.jpg
 US exploring NATO aid for Turkey in Idlib, says sanctions could be applied if Russia or Syria violate ceasefire – reports



  ジェフリーとトルコの米国大使であるデビッド・サッターフィールドは、ブリュッセルで会談した。それに先だってトルコのレセプス・タイップ・エルドアン大統領がこの地を訪問している。会談の中身は、米国とNATOは、トルコ政府が、最後に残った要塞(シリアのイドリブ地方)にいる手飼いの過激派たちをどう保護するかについてだった。
しかし、サッタ-フィールドは、イドリブが「300万人以上の罪のない一般市民を擁し、その大部分は女性と子供達だ」と言い、住民たちを追放しようとする「ロシアの侵略」を非難する一方、ジェフリーは、状況を説明するのにどんな言い方を選んだのかに耳を傾けてほしい。その発言は、CNNの記者の、「NATOは地上部隊の派遣を検討しているのか?」という質問に対するものだった。

      地上部隊のことは考えなくていいと思います。トルコは、うまくやっています。トルコと、反政府勢力が、他からの助けを借りずとも地上を制圧できる能力くらい持っていますよ。

  この発言は、恐ろしい無知からくるか、まったくの妄想かのどちらかだ。というのも、シリア軍は、トルコに支援された過激派を包囲することに成功したのだから。トルコ政府が先週モスクワで合意した停戦がその証だ。



  この発言で露わになった真実は、過激派がトルコの「反政府派である」という言葉遣いだ。この発言を、反ISIS連合の軍事部隊のスポークスマンであるマイルス・キャギンス大佐のわずか3週間前の言葉と比べてみてほしい。
  「イドリブ地方は、複数のテロ集団を引きつける磁場のようだ。特に、イドリブ地方は、いろいろな意味で、統治されていないからだ」。キャギンスは、スカイニュースに答えた。「イドリブ地方には、種々雑多な集団がいる。みな、何十万人もの市民にとって、厄介者で邪魔者で脅威でしかない。何十万もの市民たちは、ただ冬をやり過ごそうとしているだけなのに。

READ MORE5e4ed7982030273ce42f2b6b.jpg

Idlib is a ‘magnet for terrorist groups’, says US military spokesman — contradicting MSM narrative on Syria

  ジェフリーが反IS同盟の米国特使を兼任していることを忘れないでほしい。ISという組織はあの評判の悪い「シュレーディンガーの猫」ではないが、もはや存在していない。トランプ大統領はISでカリフを自称するアル・バガディに対する勝利宣言を準備している。ISが華々しい復活を目前にし、それを阻止するために米軍の駐留が永久に必要だということもない。もっともそれは国務省やペンタゴンが望んでいることではあるが。
  言うまでもないことだが、この昔からの主張はトランプの、中東における「終わりのない戦闘」から米軍を引き上げる、という公約とは相いれない。
  
  ジェフリーもサッターフィールドも、彼らに質問した記者のだれも一度たりとも言及しなかったのは、タハリール・アル=シャームの存在だ。それは、悪名高いアル・ヌスラの最新の生まれ変わりだ。そして、アル・ヌスラとは、アルカイダ傘下であり、アル・ヌスラの戦士たちはイドリブ地方の過激派の中で、高い地位を占めている。ジェフリーたちの話を聞いていたら、そんな戦闘集団は存在しないかのように思えてしまう!
  
  ジェフリーもサッターフィールドも、公に認めたのだ。シリアがこれらのテロリストに勝利することは、「国際社会」を拒絶することになるということを。(国際社会というのは彼らにとっては米国と同盟国のことだが)。つまりは、シリアの政権転覆への梃入れだ。なんという皮肉だろうか。もし、米国がシリアに軍を派遣することが(それは、国際法上あからさまな違反行為なのだが)、あの組織と戦うために議会で承認されたことだとしたら。そう、アルカイダだ。

OPCWの内部告発者攻撃は、自らの組織の信頼性失墜にしかならない

<記事原文 寺島先生推薦>OPCW attack on whistleblowers only proves its own credibility is shot 
RT-Oped 2020年2月7日 ネボイサ・マリック


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Nebojsa Malic
is a Serbian-American journalist, blogger and translator, who wrote a regular column for Antiwar.com from 2000 to 2015, and is now senior writer at RT. Follow him on Twitter @NebojsaMalic https://twitter.com/NebojsaMalic
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ 2020年3月3日>
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OPCW(化学兵器禁止機関)は、シリアでの化学兵器攻撃に関する報告書に疑問を投げかけた内部告発者の信用を失墜させようと試みたが、結果的にリークされた文書に信憑性があること、リークに関わった人物たちの専門知識がきちんとしていること、そしてOPCWの組織そのものが腐敗していることを確認することになった。

数カ月前、「アレックス」という人物と以前専門家だったイアン・ヘンダーソンという二人の内部告発者が証言し、シリア政府軍が化学兵器を使用した可能性を示唆する2018年4月ドゥーマで起こった事件に関する最終報告書が改ざんされたものであることを示す文書を提出した。その最終報告書は、シリア政府軍が化学兵器を使用した可能性に言及し、それ故アメリカ、イギリス、そしてフランスによるシリアに対するミサイル攻撃には正当性があった、としている。ただし、この攻撃はOPCW調査団が現地に到着する以前に行われていた。

木曜日、OPCWは、この二人は本当の内部告発者ではなく、専門知識も、すべての証拠へのアクセス権もない守秘義務違反を犯した出来の悪い職員に過ぎないと主張し、彼らの信用を落とそうとした。

ALSO ON RT.COM OPCW responds to Douma leaks... by arguing whistleblowers are not credible & calling for tighter internal security measures


木曜日のこの発表は、根拠のない宣伝活動を中心的に行う一群(Bellingcat、あんたたちのことだよ!)にとっては、自分たちは正当であり、内部告発者たちは信用ならない、そしてドゥーマの報告は100%正しいと宣言するのに十分だった。

彼らはOPCWのちょっとした意味論演習をわざわざ読むことはしなかったに違いない。なぜなら、OPCWは実際には――うっかりしていたのだろうが――リークされた文書が本物であり、二人の内部告発者は彼らが問題にしている証拠へのアクセス権があったことを確認したからである。

例えば、内部告発者の一人はドゥーマの事実調査ミッション(FFM)の「メンバーではなか」ったとOPCWは言っているが、彼はFFMと「行動を共に」し、FFMを「アシスト」し、その後、公開が憚れる証拠の「一覧表を作る任務」が与えられたとも述べている。





こんな困った事態に陥ったのも、元々はOPCWの身から出たさびでしかない。結局のところ、シリアが化学兵器研究所を解体し、病原体は米国と英国に引き渡し、廃棄してもらったことをOPCWは2013年に遡って確認した。そのプロセスを監督し、施設を査察した上でのことだ。が、OPCWのそういった動きは西側諸国と彼らが支援するジハード戦士たちに利用されることになった。――つまり、シリア政府の「政権交代」を実行する作戦の中で。

遡ること2012年、オバマ政権はシリアに対してリビア式の「軍事行動開始」の「レッド・ライン」は化学兵器の使用だとした。シリアが武装解除したことを確認したロシアは、その外交イニシアチブを使ってこの計画を阻止した。しかし、アル・カーイダ系列組織アル・ヌスラなどの「穏健派反乱勢力」が、バッシャール・アサド大統領政府に非難の矛先を転嫁させる可能性のある事件を引き起こすことは止めなかった。彼らの目論むところは、一に、外部勢力の介入を誘い出し、その戦争に勝利を収めることだった。

この「化学兵器攻撃」の問題は、「反乱勢力」が負けていて、シリア軍が何の問題もなく進撃している時に必ず起こるということだ。このことは、シリア政府がいかなる理由であれ、軍事的にも政治的にも化学兵器を使用する必要が全くないことを意味している。ただ、「反乱勢力」は別だ。彼らは自分達の反乱の大義を保つために、こういった偽旗作戦を絶対に必要としている。

ALSO ON RT.COM OPCW report on 2018 Syria chemical ‘attack’ politicized, new probe may be needed – Russian envoy


削除やほのめかしに満ちたドゥーマに関する報告書を公表することで、OPCWは、事実上これらのテロリストたちの味方をしたことになる。同様に国際法を公然と無視してシリアへの攻撃を一方的に開始した国々の側にも立つことになった。

そして、内部告発者を攻撃することで、イラクの大量破壊兵器以来最大の嘘に共謀しているという批判に対処することにした。危険な武器の拡散から世界を守るはずの組織にとって、それは単に外見が悪いという問題ではない。その信頼性を根本から損なうものだ。


イランは謝罪した。しかしトランプや歴代のアメリカ大統領は中東での自国の振る舞いを謝罪することは絶対ないだろう


〈記事原文 寺島先生推薦 〉Iran apologized, but Trump & other US presidents will never say sorry for what they've done to Middle East

Finian Cunningham

RT Op-ed 2020年 1月11日

〈記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ 2020年2月11日 〉

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非難してどうする。イランは旅客機を撃墜し、搭乗していた176人全員を殺害したことを謝罪したのだ。自らも立ち直れないほどの打撃を受け、今回の無惨な人命喪失への責任を表明したことは誠実な振る舞い以外の何物でもない。

ところで、イラン以外の国々も同じような謙虚な態度で、結果的に死が不可避となるような不安定な情況を作り出したことを認めるのだろうか?具体的には、米国のトランプ大統領は、自分の政権がイランに対して猛烈な敵意を持っていることが紛争を激化させ、最終的には罪のない人々の命を奪っていることを認識できるのだろうか。

752便の撃墜は、さまざまな国籍の数え切れない家族にとって悲痛な悲劇だった。死者のほとんどがイラン人だったことも、国の痛みを増している。しかし、少なくとも真実を明らかにすることで、イラン当局は、悲嘆にくれる犠牲者を、何が起こったのか分からないという長く続くかもしれなかった苦悩から救った。

敵の巡航ミサイルと誤認し、旅客機を撃墜したという重大なミスをイランが速やかに認めたことは、イランの批判者たちを驚かせた。飛行機が墜落した2日後、西側の指導者とメディアは、それを引き起こしたのはイランのミサイルだと主張した。イランの航空当局は当初、これはエンジン故障などの機上の技術的な問題だと考えていると述べ、否定していた。

イランの批判者たちは、「政権」は真実を覆い隠し、何が起こったのかについて曖昧にしてしまうだろうと言っていた。最初イランが関与を否定したのは悪意からではない。混乱と災難の中で何が起こったのか分からない事件だったのだ。イランがミサイルを発射したのは自国の防空部隊の一つであることを真っ先に自ら認めた時、イランには過ちを認める誠実さと謙虚さがあった。

https://www.rt.com/news/478031-rouhani-apologizes-plane-iran-ukraine/

今回の惨事に対するイランの成熟した対応は、1988年にペルシャ湾で起きたイラン航空655便撃墜事件とは対照的だ。乗員290人全員が死亡したのは、米ミサイル巡洋艦ヴィンセンネスが、敵の戦闘機と間違え、対空弾頭を発射したためだ。しかし、アメリカからは、全員死に至らしめたことについての公式な謝罪は何もなかった。
長年の論争の末、米国は1996年に国際司法裁判所の判決の下でイランに6000万ドル以上の賠償金を支払った。その時でさえ、ワシントンは責任を認めなかった。「私は決して謝りません」とブッシュ元大統領は述べた。

655便のケースでは、米ミサイル巡洋艦ヴィンセンネスの艦長が無謀で攻撃的であり、撃墜は偶然ではないという証拠もある。同艦長ウィリアム・C・ロジャース大尉と彼の乗組員は後に、軍の名誉勲章を授与された。

ALSO ON RT.COM Plane Wrong Blame Game: How attacks on Iranian & Russian airliners are forgotten


今週の752便の場合、そのわずか数時間前にイランがイラクにある二つの米軍基地をミサイル攻撃した後のことであり、予想される米国の攻撃に備えてイランは厳戒態勢にあった。この攻撃は、1月3日にバグダッドで米軍無人機がイラン軍最高司令官カセム・ソレイマニ少将を暗殺したことに対する報復であり、イランは、米軍基地へのミサイル攻撃の後、イランの防空部隊の間で敵機の侵入が疑われるいくつかの報告があったと主張している。イランが旅客機を撃ち落とすという致命的なミスを犯したのは、この緊迫した、いつ戦争になるか分からない緊張の中でであった。

確かに、イランが通常の商業飛行の時間帯に領空を閉鎖する予防措置を取らなかったことはばかげているようだ。このようなやっかいな状況を考えると、イランがそういった措置を取らなかったことは非難されるべきだ。
それにもかかわらず、この悲しい出来事を完全に理解するためには、客観的でより大きな全体像が必要である。過ちを犯すこととそれを非難することの間には決して無視できない区別がある。この恐ろしい悲劇を引き起こしたのはイラン側だ。

引き金を引いたのはイランだ。しかし、最終的に誰が悪いのかについてはほとんど疑いがない。

ALSO ON RT.COM ‘I wish I was dead’: Senior IRGC commander accepts responsibility for downing Ukrainian jet, says it was mistaken for missile


トランプ大統領は、イランに対する敵意に満ちた「最大圧力」キャンペーンで中東に火種を作った。核合意を破棄し、壊滅的な経済制裁を復活させ、イランを「テロ国家」と非難する容赦ない好戦的な発言で、中東を全面戦争の瀬戸際に立たせた。トランプは何度もイランを完全に破壊すると脅してきたことを思い出してほしい。「完全に破壊する」というのは核兵器を使うということも躊躇しないということなのだ。

核搭載可能なB-52爆撃機を含む米軍のペルシャ湾への増強は、想定されるイランの攻撃から「米国の利益を守る」という根拠薄弱な主張の下で、この一年間行われてきた。こういった言い分を浮かれ調子で全面的に展開しながら、誰が本当の攻撃者なのかということに関して、現実を真逆にひっくり返している。

カセム・ソレイマニの殺害は、米国の挑発が激化する中で、イランの国家安全保障に対する最も重大な攻撃だった。ソレマニが中東の米軍や外交官に対して「差し迫った攻撃」を計画していたというトランプの主張を裏付ける証拠はない。アメリカは、イランが支援する民兵の仕業として、イラクの基地への攻撃で先月、米国の請負業者が死亡したことを指摘している。その攻撃を誰が実行したかはまったく明らかではない。一部の報道によると、それはイスラム国(IS=旧ISIS/ISIL)とつながりのあるジハード主義テロ組織だったという。いずれにせよ、アメリカの反応はバランスを欠いており、請負業者の死がイランへの攻撃を強化する口実として使われたことも臭わせている。

12月27日、米国の戦闘機がイラクとシリアで、イランが支援する民兵の少なくとも25人を殺害した。これを受けて、1月1日にはバグダッドのアメリカ大使館で激しい抗議行動が起こり、トランプらはすぐにソレイマニがこの抗議行動を組織したと非難した。そしてその2日後、イランでアヤトラ・ハメネイに次ぐ地位にある象徴的な軍事指導者ソレイマニが、トランプ自ら命じた米軍の空爆で粉砕された。

アメリカからの次のような中傷は不愉快で根拠のないものだった。トランプはソレイマニを「世界一のテロリスト」と呼び、「私たちは彼を止めた。完璧だ」と言って喜んだ。ソレイマニがISテロの組織網を壊滅させたイラクとシリアにおけるもっとも有能な軍事戦略家だと仮定すれば、トランプや国務長官マイク・ポンペオの胸が悪くなるような事実わい曲もその意図がはっきりする。実際、ソレイマニの死はイスラム国残党にとっては喜ばしいことだった。

今回の民間航空機の撃墜についてイランには重大な責任がある。イラン当局が表明した慚愧と悔恨の気持ちは明白である。彼ら自身の同胞たちと他の数カ国の人たちの死に対する心からの後悔がある。

READ MORE: Now Iran & Iraq BOTH want the US to leave the Middle East, but it never will

しかし、この恐ろしい出来事の責任は、ワシントン、そして特にトランプ政権にある。イランに対する容赦ない悪魔化と敵意、制裁から露骨な軍事的脅威に至るまで無数の形態の違法な侵略、そして国民的英雄ソレイマニを冷血に殺したことが、火薬庫を作った。752便の撃墜はその結果だ。驚くべきことだろうか?米国政府が引き起こした無謀で破壊的な力の行使を考えると、それはほぼ避けられないことだ。たとえ全面戦争が起こらなくても、このような悲劇や罪のない人々の死がさらに増えることを私たちは恐れることになるのかもしれない。

一つ確からしいことがある。米国が謝罪したり、和解したりすることはないだろうし、謙虚さと責任感は米国の傲慢さには受け入れられないものだ。


ウクライナ機撃墜への抗議行動をイラン政府転覆に利用しようとするアメリカ支配層。懲りずに。

<記事原文>寺島先生推薦 Regime change is in the air': US establishment seeks to capitalize on Iranian protests… again

RT Home News 2020年1月12日 

<記事翻訳>寺島メソッド翻訳グループ 2020年2月7日

ふ

ウクライナ旅客機撃墜への関与をイラン政府が認めたことに対するイランでの抗議行動は、米国政府からあふれんばかりの支持に包まれた。しかし、アメリカの支持はイラン人のことを考えてのことなのだろうか、それとも本音は政権交代なのか?

米国当局者や政府関係者が、イラン軍によるウクライナ機撃墜に抗議したイラン人の「勇気」にどれほど賞賛の気持ちを持っているかということをわざわざ表明する努力を惜しまなかったことは確かだ。このウクライナ機には多くのイラン人が搭乗していたし、それがイラン軍によって誤って撃墜されたという事実への怒りの気持ちを発散させるためイランの人々は街頭に繰り出していた。イラン政府といえば、墜落の調査が公表される前に、自ら今回の出来事への関与を認めていた。


ALSO ON RT.COM ‘Your courage is inspiring!’ Trump tweets in FARSI, backing Iranian protesters against Tehran govt


しかし、米国政府は、明白にこう判断した。176人の命を奪ったこの悲劇を願ってもない理由付けにして、イランの人々が「抑圧的」と思われる政権のせいでいかに「苦しみ」の渦中にいるか、を彼らに想起させることを。イランの人々はすでに悲しみに打ちひしがれているのに、だ。その政権が、中東におけるアメリカの最強のライバルだというのは、なんと都合のいい偶然だろうか。

ドナルド・トランプ大統領はこの数日間、英語とペルシャ語の両方で、デモ隊への賛辞とテヘランへの警告をツイートした。日曜日、彼はテヘランに「偉大なイラン人を殺すのをやめよ」と要求した。警察が興奮した群衆に対して催涙ガスと放水砲を何度か配置しなければならなかったにもかかわらず、ウクライナ機撃墜を巡る抗議行動中の死亡報告例はない。

これに先立ち、トランプ大統領は、「自分が大統領に就任した最初からずっとイラン国民の側に立っている」という念押しまでしてのけた。同じ彼が、数日前にイランとの間に何かあれば、著名な文化遺産を含むイラン国内の52の標的を壊滅すると誓ったばかりなのに。

他の米当局者も、ほとんど時を置かず、イランのデモ隊への応援コーラスに加わった。ウッディ・ジョンソン駐英米国大使は、日曜日にソーシャルメディアでデモ隊を賞賛し、「残酷なハメネイ政権を非難した」。一方、米国防総省のマーク・エスパー長官は、ウクライナ機撃墜で引き起こされた抗議行動を、米国政府がどのように見ているかをほのめかした。同氏はCBSの番組「Face the Nation」で、「イランの人々が立ち上がって、自分たちの権利やより良い政府―異なる政権―への願望を主張しているのです」と語った。

米国の悪名高い超タカ派であり、イランとの戦争を始めるという考えの大ファンであるジョン・ボルトン前国家安全保障担当大統領補佐官は、「政権交代の兆しが見えている」「イランの人々はそれが見えている」と、取り付く島もないようなあけすけな言い方をした。

しかし、最初に「イラン国民の声」を自分なりの言い方で伝えようとしたのは、元CIA長官のマイク・ポンペオ国務長官で、土曜日、イランの政権交代を公に要求することが、口先にまで出かかった。

確かにイランは、痛ましいウクライナ国際航空752便の墜落事故で、いまだ動揺している。政府の行動に対する国民の抗議が高まる中、苦悩するイラン人たちが2日目の街頭行動に繰り出している。

しかし、米国の敵対国となると、どんな抗議の兆しも米国政府に強い関心を呼び起こす。さりながら、今回の関心の理由は人道的なものではないようだ。燃料費の高騰が引き金となったイランでの前回の抗議行動で、ポンペオはイラン国民に警察の弾圧のビデオを送るよう要請したが、それはワシントンの「民主主義の擁護者」がイランにさらなる制裁を科すことができるようにするためだった。

ALSO ON RT.COM Pompeo urges Iranian protesters to send him videos so that US can ‘expose & sanction’ Tehran for alleged abuses

Facebookの「思想警察」が、「米国の制裁を遵守するために」親イラン投稿を検閲している…トランプがテヘランに検閲を警告しているさなかに

<記事原文>寺島先生推薦 Facebook ‘thought police’ censors pro-Iran posts ‘to comply with US sanctions’… as Trump warns Tehran against censorship
RT USA News 2020年1月12日

<記事翻訳>寺島メソッド翻訳グループ 2020年2月7日




トランプ大統領が偽善的に言論の自由を擁護し、テヘランに検閲するなと警告しているさなかに、Facebookは殺害されたソレイマニ将軍に関するイラン政府を支持するようなInstagramの投稿を取り立てて検閲していることを認めた。
Instagramは、カッセム・ソレイマニを支持する投稿を削除していることを認めた。Facebookのスポークスマンは、米国の制裁を遵守するために検閲が完全に正当化されると主張している。 Instagramは、イランでブロックされていない数少ないソーシャルメディアプラットフォームの1つであり、先週イラクで起こった、アメリカの暗殺に対する怒りを激化させたのは、Instagram上でのことだ。
 
ベン・ノートンのTwitter
   
「本当に腹が立つ。Instagramは、イランでとても人気がある。Instagram上では、ソレイマニを支持する人が82%もいる。あの巨大SNSであるInstagramが「イラン人には、言論の自由がない」と言っているのだ。アメリカ政府からの制裁を口実にして。アメリカ帝国の切り札(トランプ)は言論の自由じゃないのか」


国際ジャーナリスト連盟は、そのような検閲を「ソーシャルネットワークの歴史上、前例のないものであり、メディアが、本来あるべき姿とは相容れない」と非難した。Instagramに書いた手紙の中で、イランジャーナリスト協会はこう記している。「最近、多数のイラン政府のアカウントが停止され、15人のジャーナリストが検閲された。これは言論の自由の原則に反している」。と。

「これらの巨大SNSは、米国政府の「思考警察」である。FacebookとInstagramは、イランの最強将軍ソレイマニへの支持を表明する投稿を削除している」とジャーナリストのベン・ノートンはツイートした。 「彼らは米国による制裁を遵守するためだと言っているが、ソレイマニ将軍を支持する投稿が、制裁にどう違反しているというのか?」

Also on RT.com ISIS praises US murder of Iranian general Soleimani as ‘divine intervention’ that will help them rise again

米国政府は、昨年、イスラム革命防衛隊(IRGC)を外国のテロ組織に指定した。それは、主権国家の軍隊に対して、前例のないことである。 ソレイマニ率いるイスラム角栄防衛隊のエリートコッズ軍は、シリアにいるイスラム国家(IS、以前のISIS)のテロリストに対する闘いの潮流を変えた軍隊の1つだった。 しかし、ワシントンが、ソレイマニをテロリストと見なしていることを、Facebookは米国が犯した超法規的暗殺に対する批判的な投稿を検閲するいい口実にしている。

   ジェニファー・ブリーリーのTwitter

   ソレイマニを支持する投稿は、FacebookやInstagramで例外なく削除されるのに、トランプは「世界が見ているから、イランはインターネットを排除すべきではない」などとツイートできている。自分のツイートの意味がわかっているのか?言論の自由を守りながら検閲するって!

Facebookが米国政府に代わって「思考警察」として行動している間、ワシントンは言論の自由を擁護し、イラン政府が国民のインターネットアクセスを制限することに対してテヘランに警告している。 ドナルド・トランプ米国大統領はTwitterの個人アカウントで、イランの反政府抗議者に話しかけた-なんと、ペルシア語で-「あなた方をこれから先も、しっかり支援する」。と。



Also on RT.com ‘Your courage is inspiring!’ Trump tweets in FARSI, backing Iranian protesters against Tehran govt
 
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瀕死の帝国、アメリカ:中東から追い出される

<記事原文>America, An Empire on its Last Leg: To be Kicked Out from the Middle East?

 ミシェル・チョスドフスキー

グローバル・リサーチ 2020年1月7日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ;新見明 2020年1月30日)


アメリカの中東での軍事覇権計画は危険な地点に達している。

1月3日アメリカ大統領の命令でなされたIRGC将軍ソレイマニの暗殺は、イランに対する戦争行為に等しいものである。

ドナルド・トランプ大統領はソレイマニを「危急の、邪悪な攻撃」を図ったとして非難した。「我々は昨夜、戦争を阻止するため行動を起こした。我々は戦争を始めた訳ではない・・・ 我々は彼の行動を阻止し、彼を葬り去ったのだ。」

米国防長官マーク・T・エスパーはそれを「決定的防衛行動」と言った。POTUS(アメリカ合衆国大統領)よって命令された作戦はペンタゴンによって実行された。「ゲームは変化したのだ」とエスパーは述べた。

メディアが認識していないのは、イラクでもシリアでも、ソレイマニ将軍がISIS-ダーイシュの掃討に中心的役割を果たしたことだった。

ソレイマニ将軍の指揮下イラン革命防衛隊コッズ部隊(IRGC)はISIS-ダーイシュ傭兵に対して真の反テロリズム作戦を展開していたのだ。傭兵たちは、アメリカやその同盟国によって資金援助され、訓練され、リクルートされていたのだ。

トランプの「戦争阻止」行動計画は、アメリカのISISやアルカイダ系の歩兵を「守る」ことであった。

アメリカの違法な暗殺

ソレイマニ将軍の暗殺はトランプ大統領側の犯罪行為である。しかし、違法なアメリカの外国政治家暗殺活動については、長い歴史がある。

過去の違法な殺害とソレイマニ将軍の暗殺との違いは、アメリカ大統領が公式に彼の殺害命令を下したことである。

これは危険な前例を残すことになる。これは「秘密」というより「公然」と行われたものである。つまり、CIAもしくは、アメリカによる秘密作戦は、ワシントンの代わりに行動するアルカイダ系を支援していたということである。

重要なのは、実際、大統領命令による違法な暗殺行為を定式化(「合法化」)したのは、トランプではなくオバマであったことである。

    そしてもし、[オバマ]大統領が誰かを、アメリカ市民を含めて、法的な
    手続きなしで殺すことができるとしたら、彼はどんな権力を持っている
    のだろう。民主主義と大統領独裁の間の公式的区別は全くなくなって
    しまう。(ジョセフ・キショア, wsws.org, October 31, 2012)

トランプの反応:さらなる軍隊を中東へ

ペンタゴンは「中東へ数千の増派をしている」と発表したが、イラク議会の投票は、全会一致で直ちに全米軍の撤退を求めることになったのだ。

その立法は、イラク政府にイラク領土における外国勢力の存在を終わらせ、イラクの空、陸、海の使用を阻止ことを求めるものである。


Note: Death to America: refers to the US Government, Not the American People
(注:アメリカに死を:はアメリカ政府に対してであり、アメリカ市民に対してではない)

逆流:逸脱、オバマの空襲(2014年~2017年)

現在イラク議会はオバマ政権との2014年の腐敗した合意を見合わせている。その合意はアメリカにイスラム国(ISIS・ダーイシュ)に対する偽の反テロリズム作戦を行わせるためにアメリカをイラクに引き入れたのだ。イスラム国は、米・NATOとサウジアラビアがUAEの支援を得て資金援助され、訓練され、リクルートされた外国人傭兵集団からなっているのだ。

イラク議会の決定はこの点で重要である。この作戦は、イラク戦争(1991年、2003年、2014年)の第3局面を正当化する口実としてオバマ政権によって用いられた。反テロリズム作戦を偽装してオバマによって2014年6月開始され、殺害と破壊の新たな局面が開始されたのだ。

なぜアメリカ空軍はイスラム国を一掃できなかったのか。イスラム国は、最初から最先端のトヨタのピックアップトラックは言うまでもなく、通常小火器を装備されていていた。


F-15E Strike Eagle.jpg

最初から、ノーベル平和賞受賞者オバマの空爆は、ISISを狙っていなかった。イスラム国が標的ではなかったという証拠がある。全く逆であった。空爆はイラクやシリアの経済的インフラを破壊することがねらいであった。

イスラム国の車両隊が、ピックアップトラックでシリアからイラクへ入るのをあらわした次の画像をご覧なさい。二つの国にまたがる200kmに渡る広い砂漠を横切っている。

この車両隊は2014年6月イラクに入った。


何の効果的な対空能力もないISISの車両隊を一掃するために、軍事的な見地から言っても何が必要とされるというのか。

軍事的知識がなくっても、常識でわかる。


もしアメリカ空軍がイスラム国旅団を一掃したかったのなら、彼らは、2014年6月シリアから砂漠を横切る時、トヨタのピックアップトラックの自動車隊を「絨毯爆撃」したはずだ。

シリア・アラビア砂漠は、何の障害もない土地である(右の地図参照)。最新の戦闘機(F15,F22Raptor,F16)で、軍事的な観点からも、直ちに、効果的な外科手術で「粉々に」なったはずで、数時間内にイスラム国の自動車隊は一掃されたはずである。

しかし、もしそうなっていたら、米空軍は3年にわたる(2014年~2017年)「守る責任」(P2R)空爆作戦を実行することができなかったであろう。

その代わりに我々が見たものは、無慈悲な空襲と爆撃だったのだ。それは、米軍主導の連合軍によるいわゆるモスル解放(2017年2月)とラッカ(1917年10月)解放で頂点に達したのだ。

だからイスラム国は優位に立ち、強力な米主導の19カ国の軍事連合によっては打ち負かされなかったと、我々は考えざるを得なかった。

イラクやシリアの人民が標的であった。オバマの爆撃はイラクやシリアの民間インフラを破壊することがねらいであった。

ISIS・ダーイシュはアメリカ侵略の標的では決してなかった。全く逆であった。彼らは欧米軍事同盟によって守られていたのだ。

米軍撤退:ヤンキー・ゴー・ホーム(2020年)

大きな米軍撤退は近い将来あり得ないが、「アメリカのテロに対する戦争」は危機に瀕している。アメリカがテロリストを追跡しているとは誰も信じていないのだ。

イラクやシリアでは、すべてのアルカイダ系、ISIS・ダーイシュ系の存在が米・NATO軍に支援されていることは誰もが知っていることなのだ。

READ MORE:A Major Conventional War Against Iran Is an Impossibility. Crisis within the US Command Structure

「ヤンキー・ゴー・ホーム」の過程が開始された。アメリカはイラクやシリアから追い出されるだけでなく、広く中東におけるその戦略的存在が脅かされている。そしてこれら二つの過程が密接に関連しているのだ。

今度は、トルコ、クエート、オマーン、エジプトを含むいくつかのアメリカの元同盟国が、イランとの関係を正常化したのだ。

トランプの懲罰的爆撃。それらは実行されるだろうか。

最近、トランプは警告した。もしテヘランがソレイマニ暗殺に反撃するなら、「イランの52カ所を攻撃する」と。それは「非常に素早く、かつ厳しいもの」となるだろう、と。



ドナルド・トランプは反撃したがっている。しかし彼には、彼も気づいてさえいない深刻な兵站の問題がある。

普通、イランに対するこの種の懲罰的作戦は、カタールのアル=ウデイド空軍基地に位置するアメリカ中央軍(USCENTCOM)の中東前線司令部の任務である。

    「CENTCOM(中央軍)は、中東や一部中央アジアを拠点にするアフ
    ガニスタンやイラクのような国々の米軍を管理している。その主要な
    司令部はフロリダのタンパにあるが、日々の戦闘作戦はアル=ウデイ
    ド空軍基地から行われている。」

11,000人の軍人を擁し、ドーハに近いアル=ウデイド空軍基地は「最も恒久的で、最も戦略的に配備された地球作戦部隊の一つである」(ワシントン・タイムズ)。それはアフガニスタン(2001年)、イラク(2003年)を含むいくつかの主要な中東戦争を指揮し、調整してきた。そこにはもちろんシリアも含まれていた。



しかし問題が一つある。アル=ウデイド空軍基地のアメリカ中央軍の前線基地は、カタールにあることである。2017年6月以来、カタールは「敵との休戦状態」である。カタールはイランの堅固な同盟国になったのだ。

メディアも外交政策や軍事の評論家も認識していないことは、アル=ウデイド軍事基地の米中央軍(USCENTCOM)の前線基地本部は、事実上「敵の領土の中にある」ことである。そしてPOTUS(アメリカ大統領)はこの状況に全く気づいていないのだ。

やっと2・3ヶ月前に(2019年10月)、ペンタゴンはアル=ウデイドの米中央軍前線基地を中東の別のところに移動させない決定をしたのだ。
    
    「カタールはいつもすぐれたパートナーであった。我々が作戦指令を
    するこの基地は、巨大な基地であり、米中央軍(CENTCOM)はどこに
    も移転する意思はない」と中央軍の副司令官チャンス・サルツマンが
    述べた。

いい加減な情報、欠陥軍事計画なのか?カタールは「すぐれたパートナー」ではない。2017年6月以来、カタールは事実上イランの同盟国になったのだ。

さらに最近、両国はイラン・カタール軍事同盟を構築する議論をしているのだ。



 (敵領土に位置する)アル-ウデイドが中東の別の地域に移動できないことを決定したので、その時ペンタゴンは、アル=ウデイド空軍・宇宙作戦部隊を南カロライナへ移動するシナリオを構想した。「7,000マイル離れた南カロライナへだ」。それはシミュレーションに過ぎなかった。「一時的転換」は24時間続いただけだった。

教訓:中東での「前線基地」なしには中東で「戦争を効果的に行う」ことはできない。「南カロライナ試験」は、お笑いぐさに近い。

アメリカの軍事計画者はやけになっているのか。

湾岸協力機構(GCC)が崩壊した2017年5月以来、ペンタゴンはアメリカ中央軍基地(その空軍爆撃能力を含む)を敵陣営(カタール)から、より広い中東地域にある「友好地域」(つまりサウジアラビアやイスラエル)へ移動できなかった。



軍事評論家がいま認めるところでは、イランとの紛争の際に、アル=ウデイドは直接の標的になってしまうことだ。「基地」の防衛システムは低空クルーズ・ミサイルやドローンに対して防衛装備が悪いと言われている。

大統領閣下:イランに近い同盟国の領土から、イランの懲罰的爆撃を一体どうやって始めるのか。
戦略的観点からそれは全く意味をなさない。そしてこれは氷山の一角にすぎない。

爆撃やミサイル攻撃が、デイゴ・ガルシアや米航空母艦、潜水艦などと同様、中東の他の米軍基地(下図参照)から発射され得るが、アル=ウデイドの地域米中央軍(USCENTCOM)(フロリダ、タンパ)前線基地は、ネブラスカのオファット空軍基地の米戦略司令部(USSTRATCOM)本部と連携して指令構造で重要な役割を演じているのだ。


資料:スタティスタ

カタールとアメリカは、アル=ウデイド空軍基地に関して長期的な相互協力条約を結んでいるが、カタールはイランだけではなく、米軍「敵」でアル=ハマスやヒズボラとも軍事協力合意を持っている。

   ワシントンにとって問題点は、アル=ウデイドのあるカタールが、ガザ
    を基盤とするイスラム抵抗運動(ハマス)とも親しいが、それはヒズボ
    ラの指導者とも親しい・・・[カタールも]イランとも親しい関係にあるこ
    とだ。実際、もしカタールが中東にアメリカ最大の軍事基地を持ってい
    なかったら、これらの行為の多くを阻止するアメリカから圧力が加えら
    れたであろう。

そして締めくくりとして、カタールはロシアとも友人であることだ。2017年6月サウジアラビアとの断絶の後すぐに、航空防衛に関して軍事技術協力合意がモスクワで調印された。

トルコのインジルリク空軍基地

「敵との休眠状態」が、1950年に米空軍によって建設されたインジルリク空軍基地に関しても広がっている。インジルリク空軍基地は、中東における米・NATOが主導するすべての作戦で戦略的役割を演じてきた。

約5000人の空軍兵士を抱えたアメリカ空軍は、今ロシアやイラン両国と同盟関係にある国(つまりトルコ)に駐留しているのだ。トルコとイランは隣国であり、親しい関係にある。対照的に、反乱軍を支援するアメリカとトルコは、北シリアでお互いに戦っているのだ。

2019年12月中旬、トルコ外相メヴリュット・チャヴシュオールは爆弾発言をした。トルコがロシアのS-400ミサイル防衛システムを購入したことでアメリカがかなりの制裁を加えたので、アメリカは二つの戦略的空軍基地(インジルリクとキュレジク)が使えなくなることをほのめかしたのだ。

アメリカの通常戦争能力

いくつかの理由から、中東でのアメリカの覇権は、進展する軍事同盟構造の結果、部分的に弱まってきた。

アメリカの指令能力は弱まった。二つのこの地域の最大の戦略空軍基地、つまりインジルリクとアル=ウデイド(カタール)は、もはやペンタゴンの指令下にはない。

イランに対する戦争が、ペンタゴンで計画されているが、現在の状態で、陸、海、空軍を同時に含む全面的電撃戦(通常戦争)は不可能である。 

アメリカはそのような作戦を実行する能力を持っていないが、様々な形の「限定戦争」が、ミサイル攻撃、いわゆる「鼻血作戦」(戦術核兵器の使用を含む)を含めて考慮されている。同時に政治的不安定化工作やカラー革命(それはすでに進行中)、そして経済制裁と同様、金融市場の操作、新自由主義マクロ経済改革(IMFや世銀を通して課される)が考慮されている。

イランに対する核兵器オプション

そして通常戦争の範囲において核兵器オプションが構想されているが、それはまさにアメリカの弱さのためである。そのような選択は、必ずエスカレートせざるを得ないのだ。

無知と愚かさが、作戦決定の要素である。外交政策評論家エドワード・カティンによれば、「狂った人々は狂ったことをする」という。

政策決定の主要な立場にいる狂った人々とは誰なのか。

トランプ外交政策アドバイザー:マイク・ポンペオ国務長官、国家安全保障会議アドバイザー、ロバート・オ・ブライアン、ブライアン・フック、(イランの特別代表でアドバイザーのポンペオ)らがトランプ大統領にイランに対して戦術核兵器(B61バンカー・バスター)を使用する「鼻血作戦」を提言することができる。それをペンタゴンは「爆発は地下であるので一般市民には無害である」と類別しているのだ。

ペンタゴンが称する「鼻血作戦」は、(低量で、「使いかってのよい」戦術核兵器を使う)軍事作戦の考え方をあらわしている。それは最小限の被害であるとされている。しかしそれは嘘である。戦術核兵器は、広島原爆の3分の1から12倍の爆発力があるのだ。

原子力科学者会報(2019年7月)による
    
    アメリカとイラン間の緊張は、アメリカが核兵器使用の可能性がある
    軍事的衝突に向けて急旋回している。イランの様々な不均衡な戦闘
    能力は、すべてアメリカに対して効果的なように作られ,そのような
    対決に備えて作られている。現在のアメリカの核に対する姿勢は、
    トランプ政権に少なくとも通常戦において戦術的核兵器使用を公言
    させていることだ。現政権の何人かは、ペルシャ湾岸の石油ハブで
    決定的で、素早い勝利を収めることが、アメリカの利益であると考え
    ている。だから核兵器を使うことによって勝利するのだと。

    アメリカ・イラン戦争戦争が核攻撃をする可能性が高まっていると我々
    は考える・・・

重要なことは戦術核兵器の使用が、最高司令官の承認を必要としないことだ。その承認はただいわゆる戦術核兵器次第である。

原子力科学者会報の警告にもかかわらず、現在の状況はアメリカの「鼻血」戦術核兵器作戦に有利には働いていない。

アメリカ空軍の戦術核兵器倉庫は、ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、トルコを含む非核保有国に、国家管理の軍事基地で貯蔵され、配備されている。



ハンス・クリステンセンとマット・コルダ(2019年、原子力科学者会報)によれば、アメリカは230の戦略核兵器を持っているとされている。その中で、ヨーロッパの非核保有国が約18の戦術核兵器を配備している。核弾頭のついた約50のB61バンカー・バスター爆弾は、トルコ司法権下にあるインジルリク空軍基地に貯蔵され、配備されている(上図参照)。

結論
◾アメリカ大統領は戦争犯罪を犯した。
◾失敗した「テロ戦争」物語
◾弱体化した軍事司令部構造
◾弱体化する同盟
◾敵との休戦
◾予想できない外交政策評論家
◾欺瞞と失敗

この重大事に、アメリカの最も強力な武器は、ドル化政策、ネオリベラル経済改革、金融市場を操作する能力である。

The original source of this article is Global Research

Copyright © Prof Michel Chossudovsky, Global Research, 2020

アメリカは、イラクの永続的な占領を計画している

記事原文 US Plans Permanent Occupation of Iraq
ステファン・レンドマン

Global Research 2020年1月12日

記事翻訳<寺島メソッド翻訳グループN.-S. 2020年1月20日>



米国は、アフガニスタン、シリア、イラク、および先制攻撃した他の国々を含む世界中の多くの国々の永続的な占領を計画している。

米国の占領を終わらせるかどうかは、これらの国の当局者と、大衆の抵抗運動にかかっている。

米国防総省の軍事基地は、駐留国や近隣諸国に対するものを含め、終わりのない戦争のための前線基地だ。

いわゆる軍の地位協定(SOFA)は、米国軍が海外で活動する枠組みを確立し、占領国とその国民を犠牲にしてアメリカの利益のみに貢献するものだ。

チャーマーズ・ジョンソンは、SOFAについて次のように説明している。「アメリカ軍の外国にある飛び地は、構造的、法的、概念的に植民地とは異なるが、占領国の管轄権を完全に超えているという点で、それ自体は小植民地のようなものだ。」そして、こう付け加えている。「米国は絶えず、表面上は独立した「駐留」国と「地位協定」(SOFA)を実質的に結ぶ」

それらは、19世紀の中国の「治外法権」協定の現代版だ。それらは、犯罪で起訴された米国の占領軍に、アメリカの国内法の下でアメリカの政府によって裁かれる「権利」を与える。それは、駐留国の法律にてらせば厳しい罪になるレイプや殺人のような重大な犯罪であっても、無罪や軽い罪ですむことが常だ。米国の犯罪者は通常、犯罪を犯した国から引き揚げさせられる。ほとんどの地位協定(SOFA)は秘密であり、160を超える駐留国の総数は公開されていない。 チャルマーズ・ジョンソンは、「駐留国に、どんな、民主的(または他の形態の)政府の機関があったとしても、彼らはそれらを不正に歪め、なし崩しにする」と説明した。

海外の米国占領軍は、殺人、強姦、盗難、飲酒運転、およびその他の犯罪を含むトラブルを必ず引き起こす。それ以外にも、基地がある地域の人々は、耐えられない騒音、汚染、環境破壊、公有地の取り上げでも、またその地域の法律や慣習や市民の人権を気にとめない米国軍人を受け入れざるを得ない。その地域住民は生活や福祉に対する管理権を失う。彼らには発言権がなく、事実上、彼らに危害を加える犯罪をただす機会はない。

海外のほとんどの米軍基地は、恒久的な占領を計画しており、去る気はない。大規模および中規模のものには、広範なインフラ、指揮統制センター、戦闘のない地域の家族向けの宿泊施設、病院、学校、レクリエーション施設や、その他アメリカ本国にある事実上すべてのものがある。アナリストのニック・タースは、国防総省の情報から、アメリカ軍基地は、世界164か国で800程度あると見積もっている。「基地国家:海外の米軍基地がアメリカと世界にいかに害を与えているか」の著者であるデヴィッド・ヴァインは、さらに、世界には秘密にされている100以上の基地がさらにあると考えている。

164 “Peace-Keeping” Military Bases Worldwide: US Bases in Iraq Advance Its Regional Imperium

「文書化されていない基地は、一般の人々や議会からさえ監視されることはない」とヴァインは説明し、次のように付け加えた。「基地は、米国の外交および軍事政策を表す構造物である。だから、公にされていない基地は、公の議論なしに政策を決定し、しばしば数億または数十億ドルを費やし、国民のほとんどが知らない紛争や戦争にアメリカを引きずり込む」。「海外の米国の基地は、建設と維持に年間500億ドル以上の費用がかかる。このお金があれば、アメリカ国内で差し迫っている教育、医療、住宅、およびインフラ整備に使えるはずだ」。タースによると、外国の軍事基地の約95%は米国の基地だそうだ。

イラクにどれくらい基地があるかは、公表されていないが、タースによれば、ブッシュとチェイニーの強欲の結果、少なくとも「500以上は下らない」そうだ。そして、さらにこう付け加えた。「それぞれの基地の数はもちろん、戦争地帯にいるアメリカ軍の正確な人数」を掴むのは難しい、と。「衛星画像で、位置や広さを特定し、部隊の規模を推定できるのに、米国国防省はこの情報を秘密にしている。」

世界中の米国の基地が明らかにされたとしても、何百もの公にされていない基地に関する情報は公開されていない。イラク・アル・スマリアのテレビによると、マフディ首相はポンペオに米国の代表者をバグダッドに送るように要求し、国防総省軍を撤退させるプロセスを開始するよう求めた。AMN Newsは、政府の許可なしに米軍とその武器がイラクの領土に侵入し続けていると伝えた。マフディとイラクの国会議員は、米軍と米国の同盟国の軍が退去することを望んでいるのだ。

イランのIRGC(イスラム革命防衛隊)は、報復の相手として「イランイスラム共和国に対する攻撃の起点となる、米国に基地を提供するあらゆる同盟国が標的となる」と警告した。イラクのアサイブ・アル・アル・ハク党首カイス・カザリは、PMUの副首長アブ・マフディ・アル・ ムハンディスを暗殺したことに対して米国に対して報復することを誓った。金曜日、国務省のスポークスマン、 モーガン・オルタガスは現実を無視し、米国を「中東の善のための力」と呼び、次のように付け加えた。イラクの米軍は「ISISとの闘いを続ける」-彼女が説明しそこなったのは、ISISはアメリカが作り出し、支えてきたという点だ。

木曜日に、マハディ首相は電話でポンぺオに、軍の撤退を開始するよう求めた。米国防総省によると、米国はイラクを含めて中東に約60,000人の部隊を擁している。民間軍事請負業者や中央アジアと北アフリカの数千の米軍も含めると、この数字の少なくとも2倍になるだろう。オルタガスはこう言った。「イラクに派遣された米国代表団は、我々の戦略的パートナーシップ(原文ママ)として再編入する最善の方法について重点的に話し合う」と。さらに、「軍を引き上げることではなくて、私たちの権利である中東における適切な軍の配置(原文ママ)について話し合うだろう」と付け加えた。

さらに、金曜日、こう付け加えた。「NATOの代表団は国務省でイラクでのNATOの役割の増加について議論する」-イラク政府、議員、大多数の国民が、敵対的な米軍に、もうこれ以上いてほしくないと思っているにもかかわらず。

彼らの要求はただ一つだ。しかしトランプ政権の要求は違う。歓迎も容認もできないアメリカの占領の代価をイラクに払わせることを望んでいるのだ。トランプ政権の一員であるエスパー米陸軍長官は言った。

「政策は変更されていない。私たちはイラクを去らない。」トランプ大統領は、今は「適切な時期ではない」と発言し、米軍が不必要で、追放された場合、イラクに対する厳しい制裁を課すと脅している。

金曜日、イラクのアリー・スィースターニーは、国民に、外国占領(米国とNATOの同盟国を指す)に反対する連帯を求め、こう付け加えた。

「最近のイラクの主権に対する深刻な攻撃と度重なる侵犯は、国とその国民を保護する関係当局の明らかな弱さにより発生し、関係当局のひ弱さは、現在の危機の反映でもあるのだ。」

ファタハ同盟長・バード組織事務総長ハディ・アル・アメリは、イラクからの米軍の追放を求めた。

著名な聖職者ムクタダ・アル・サドルも同様に撤退を求めた。米軍がいま居座り続けるが、いつまでこの問題は解決されないのだろう。

駐留国から望まれず、去るように求められるのである限り、米軍の存在は国際法に違反する敵対的な占領軍だ。


新年のソレイマニ暗殺で、「ロシアゲート」の嘘も吹き飛ぶ

Trump's New Year killing of Soleimani finally blows up the fake Russiagate narrative
<記事原文>寺島先生推薦 

Neil Clark

RT Op-ed 2020年1月3日

Rt. op-ed 2020年1月3日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo.n. 2020年1月9日)



トランプが革命防衛隊のエリート部隊コッズ軍の司令官カセム・ソレイマニ将軍の暗殺を命令したことは、イランとの危険な緊張の高まりを意味するだけでなく、ロシアがトランプをコントロールしていたというフィクションも終わらせた。

想像してみてほしい.....もしイランのロウハニ大統領が、カナダの空港まで車で送られてきた米統合参謀本部議長マーク・ミルリー将軍への新年無人機攻撃を承認していたとしたらどうか。

その攻撃を 「正当防衛」などと、言う人間がいるだろうか? しかしそのことこそ、まさにカセム・ソレイマニの殺害に関して私たちが騙されている点なのだ。

ALSO ON RT.COM Killing of Iran's Quds Force chief Soleimani by US 'MOST LIKELY violates international law' – UN Rapporteur

紛れもない真実はこうだ。 ソレイマニは死後この世で最も邪悪な男としてネオコンから悪魔化されているにも拘わらず、この銀髪のソレイマニ将軍こそ、野蛮で死を崇拝するイスラム国 (ISIS) やその他の中東のアルカイダ系列組織の打倒に重要な役割を果たしてきたのだ。彼は、陰で世俗の人々やクリスチャンの保護に手を貸した。世界で最も力のある一部の国々が、暴力的な 「政権交代」 を達成しようとシリアに激しく襲いかかっていた。その逆境からシリアを生き残らせる画策に彼は手を貸した。それらの強国は略号だらけのジハード主義者の代理人や死の部隊を解き放ったのだ。9・11テロでの米国市民と、2015年にチュニジアを訪れた英国人観光客を含む世界中の西側市民を標的にしたグループと戦ったことのソレイマニへの報酬は、2020年のまさに年明けに砲弾で吹き飛ばされることだった。前にも言ったが、ここでは一体誰がテロリストなんだ?

テレビではイランとの戦争の可能性が取りざたされているが、実際にはすでにいろいろな敵対的動きは始まっていた。トランプは挑発的にイランの核取引から手を引き、彼のイランに対する新たな制裁は 「一国に課せられた史上最大のもの」 であると自慢し、今回はイランで最も力を持っていると多くの人に見られている人物の殺害を命じた。ソレイマニはイラクの米軍を脅したと我々は聞かされているが、それは自己正当化の言い方にすぎない。ところで、そもそも米軍はイラクで何をしているのだろうか。米軍が実際には存在しないイラクの大量破壊兵器を排除することを目的として、2003年の不法な侵略軍の先頭に立ってイラクにやって来たという事実を、我々は意図的に忘れさせられようとしている。17年前、米国とその同盟国はイラクを侵略する権利があったのだろうか?国際法上ではそんな権利は皆無だ。しかし、イラクの大量破壊兵器だけが唯一の欺瞞ではなかった。 まだまだある。

ここ数年、ドナルド・トランプがプーチンの支配下にあると言われてきた。 トランプは事実上ロシアのスパイだと。モスクワの操り人形だと。(ウンザリ)
 
少なくとも今は、地球という惑星の最も信じやすい住人でさえ、そんなことは信じないだろう。イランは、重要な戦略的パートナーであるロシアの重要な中東同盟国である。トランプは、ソレイマニを暗殺し、我々をテヘランとの軍事衝突に追い込むことで、イスラム共和国を脅かしているだけでなく、ロシアというクマの胸や背中や顔をつついている。今日の出来事で、まさかと思っていた人にも、アメリカの政治に最も大きな影響を与えている外国は、ロシアではなくイスラエルであることがはっきりした(イスラエルの後に続くのはサウジアラビア)。

ALSO ON RT.COM Soleimani assassination by US ‘an adventurous move’ that will flare up tensions in Middle East – Moscow


ソレイマニの殺害と、米国の標的に対するイランの報復の可能性は、米国の観点からは意味がないが、イスラエルの観点からは十分理にかなっている。ソレイマニ将軍は、イスラエル政府から長い間要注意人物とされていた。エルサレム・ポスト紙は、コッズ軍最高司令官ソレイマニは、「2006年のイスラエルとの戦争中、イランがヒズボラを支援する上で重要だった」と記している。ソレイマニはまた、イランがパレスチナ人を引き続き支援していることを強調していた。

もしあなたがゴリゴリのシオニストなら、ソレイマニ以上に排除したい人はいないだろう。しかし、ここに重大な真実がある。これは、米国の公の談話や、実際に英国で語られることはほとんどない。イスラエルの優先事項(「イラン-シリア-ヒズボラ」枢軸を打ち破り、これらの国や運動の指導的人物を排除すること)は、実際には、イスラム過激派テログループとのより広範な戦いを弱体化させことだ。「テロとの戦い」 が実際に行われているのであれば、ISISとアルカイダを打倒するために最大の貢献があった者たちを攻撃するだろうか? しかし、それがドナルド・トランプのやっていることだ。 米国内リベラル派が、ありもしない 「ロシアの干渉」 を巡ってカリカリ怒っている間中ずっと、イスラエルとそのロビー団体は、ISISとアルカイダにとって最大の敵であるイランに対して、より強硬な行動をとるよう圧力をかけていた。
2011年11月、トランプはツイッターで、もしオバマ大統領なら再選を目指してイランと戦争を始めるだろうと 「予言」 した。

しかしオバマは戦争をしなかった。それだけでなく、オバマ政権は2度にわたり、イスラエルがソレイマニ殺害の計画を進める機会があったにもかかわらず、それを思いとどまらせた。トランプは間違いなく、米国史上最もイスラエル寄りの大統領だ。つまり、2020年に戦争が発生する危険性は非常に高まっているということだ。 中東戦争は終わらせる、という選挙向けの言い方はしているが。 

カセム・ソレイマニ将軍暗殺は
アメリカの身勝手

The US unwittingly helped create Qassem Soleimani. Then they killed him.

Rt. op-ed 2020年1月3日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo.n. 2020年1月9日)

<記事原文>寺島先生推薦 ‘Journalism is dying’: US govt ‘has its tentacles’ in every part of media, reporter who quit over ‘suppressed’ OPCW story warns 

Scott Ritter

スコット・リッター
元米海兵隊諜報部員。ソ連ではINF条約の監視員として、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍の参謀として、1991年から1998年までは国連の武器監視員として勤務した。

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米国は、カセム・ソレイマニを暗殺したが、それがどういう結末をもたらすのかについての準備は何もできていない。 米国は、自分が殺戮した男の現実の姿について何も分かっていないし、彼の死がイランや中東に与える影響をきちんと評価する能力もない、という点だけでもそう言える。

カセム・ソレイマニは、イスラム革命防衛隊コッズ軍として知られる準軍事組織の司令官。 イランを中東における近代的強国にまで高めるのに力があった。 彼は、米国大統領ドナルド・トランプの命令で2020年1月3日に暗殺された。米国の共和、民主二大政党の政治指導者たちは、ソレイマニを邪悪な人物と表現することで一致しているが、ソレイマニの死が今後どんな結果をもたらすのかは現時点ではまったくわからないままだ。

ALSO ON RT.COM VIDEO shows US strike that killed Iranian General Soleimani in Baghdad


しかし、ソレイマニが死んだことを喜ぶのは、彼が主導して作り上げた出来事や行動がまるで分かっていないからだし、彼が手を加えた世界の輪郭がきちんと描けていないからだ。アメリカは、ソレイマニを中東におけるイランの悪意の副産物と見なしているが、現実はそんな柔なものではない。 :ソレイマニはアメリカの無責任な攻撃的政策の直接の結果である。因果関係によって定義される世界で、ソレイマニと米国の関係は否定できない。

イランの英雄を出現させることに

ソレイマニが、イランで頭角を現したのは、イラン革命や8年におよぶイラクとの戦争期間中だ。 その指導力、勇気、決断力は当時のアリ・ハメネイ大統領を含むイランの指導者たちの注目を集めた。この間、ソレイマニは後にイスラム革命防衛隊コッズ軍の指導者として役立つことになる一連のスキルを開発した。 コッズ軍とはイラン・イラク戦争後、彼がその創設に加わった準軍事組織のこと。

コッズ軍の設立意図は、非公然の手段を通してイランの影響力を広めることだ。 ソレイマニとコッズ軍が1998年に初めて衆目を集めるようになったのは、アフガニスタン北部の都市マザリ・シャリフの攻略後タリバンによって数百人のシーア派と9人のイラン人(8人の外交官と1人のジャーナリスト)が殺害された後だ。

イラン軍の上層部がアフガニスタン西部への大規模な懲罰的遠征を提唱したのに対し、ソレイマニは、クッズ軍がタリバンに対抗する北部同盟に訓練と物資支援を提供するなど、より限定的な対応を提案した。ソレイマニはこの提案を自ら指揮し、北部同盟を効果的な戦闘部隊に変貌させた。

「9・11」同時多発テロの後、米国は北部同盟を利用してアフガニスタンに足掛かりを築き、タリバンを駆逐した。ソレイマニは、作戦面や情報面での支援を含め、米国と北部同盟のパートナーシップを実現するために陰で大きな役割を果たした。

米国とイランの協力は短命に終わった。ブッシュ大統領がイランを「悪の枢軸」に指定したことで、イランは米国に対する協力を打ち切った。

イラク反米抵抗組織の訓練

2003年の米国のイラク侵攻は、イラン系アメリカ人の協力という新たな機会を生み出したが、米国はあっという間にその好機を逸した。イランは中東における米国の軍事的プレゼンスを高めることを望んでいなかったが、米国とは、最大の敵であるサダム・フセインを権力の座から引きずり下ろすという共通の大義があった。

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しかし、米国は、サダム後のイラク、特に多数派のシーア派住民がイラクの統治について大きな役割を要求するであろうという現実に対処する準備ができていなかった。米国がシーア派に銃を向け始めた時、ソレイマニと彼が率いるコッズ軍が先頭に立ってイラクで反米抵抗運動を組織し、衝突が激化してアメリカ人の死傷者が続出した。

今日、イラクでアメリカが行った戦争について、退役軍人の多くが考えているのは、ソレイマニのコッズ軍によって訓練され装備されたイラク民兵の戦術によって何百人もの米兵が命を落としたが、それはソレイマニに個人的な責任がある、ということだ。


イラン政府の中東支配計画の全体図?

ソレイマニという人物は何もないところから現れたのではない。 それは他国の行動によってもたらされる外的脅威に対するイランの論理的な反応の現れなのだ。 レバノンにおけるイランの役割は、1982年にイスラエルがレバノン南部に侵攻し占拠することを決定したことで明確になった; レバノンのヒズボラ運動が生まれたのはその後のことだ。

イランのシリアへの介入も、シリアのアサド大統領を権力の座から引きずり下ろすため、米国、トルコ、サウジアラビアなどの外部勢力が大規模な介入を行った直後だった。シリアで親アサド・シーア派民兵を組織するようコッズ軍に指示したソレイマニの行動は、単にシリアの主権問題に対する外国の介入に対して反応したものだった。

同様に、2014年イスラム国(IS)が突如出現した際、イラク政府の招待を受けたソレイマニは、人民動員軍(PMF)傘下の様々なシーア派民兵組織の編成と装備を支援した。ソレイマニは、一連の血なまぐさい戦闘でPMFを指揮し、米国が戦闘に決定的に関与するずっと前にISとの戦いの流れを変えるのに貢献した。「9・11」の余波の中で、ソレイマニは中東の形成に決定的な役割を果たした。 つまり、イランを唯一の大国ではないにしても、中東の大国のひとつにまで高めたのだ。

しかし、この結果を達成するためのソレイマニの行動は、中東地域支配を目指すイラン全体計画の流れの中にあったのではなく、むしろ、中東地域において米国とその同盟国が攻た。撃的政策を実施する上で犯す諸々の過ちに効果的にイランが対応できるという本質を示している。

米国が2018年にイラン核合意からの脱退を表明し、その後、米国が進めるいわゆる「最大圧力」と呼ばれる経済制裁と政治的封じ込め作戦の実施を受けて、ソレイマニはトランプ大統領に対して対立への道を歩み始めることを警告した。

ALSO ON RT.COM All bets are off: Trump brings conflict with Iran to unprecedented level, just a step short of all-out war


ソレイマニは2018年夏の演説で、「あなたは、中東地域における我々の力と能力はよく分かっています。 非対称戦での我々の力も分かっています。」と述べた。

ソレイマニの声明は予言的だった;米国がイラン産石油の販売を阻止した後、ソレイマニのコッズ軍は、ホルムズ海峡の石油タンカーへの一連のはっきりしない攻撃を組織した。 そしてイエメンのフーシ派を代理者として利用し、武装ドローンを使ったサウジアラビアの戦略的石油生産施設への破壊的な攻撃を仕掛けた。

ソレイマニは、イラクにおける米国の立場の脆弱性を認識し、イラク国内における米軍の駐留を終わらせるようイラク政府に圧力をかけ始めた。このような活動は、米国が先週日曜日にイラクの民兵部隊(PMF)を爆撃する前から行われており、ソレイマニの暗殺に至った事件の発端となっ

ソレイマニの死で世界はより安全になるのか?

現実はこうなっている。 カセム・ソレイマニが生きている世界よりも米国にとって危険なのは、カセム・ソレイマニが死んだ世界以外にない。 その彼は米国大統領の命令によって殺されたのだ。

次は彼が生きていればの話だ。 ソレイマニは、中東地域における米国、サウジアラビア、イスラエルの政策に対抗するために、より積極的な姿勢をとるようイランの防衛組織のより好戦的なメンバーからますます圧力をかけられているイランの指導部に、忍耐と注意深さを納得のいくよう助言することができるだろう。

実際は殺害された。 そのソレイマニは殉教者ヒーローとなる。 彼の功績に倣って、敵アメリカ人へ歯向かおうとする人々は元気づくことになるだろう。 なにせ、このアメリカ人ときたら、経験から生み出される類いの自己抑制も知恵もないのだから。 

トランプ大統領によるカセム・ソレイマニの事態を急変させる暗殺は、中東や世界をより安全な生活と仕事の場にするどころではない。「9・11」以降の米国の行き過ぎた行動がもたらした悲劇的な結果の苦しみを、さらに次の世代にも強制することになったのだ。

誰がイスラエルの味方をしようが、我々は反対だ。
エルドアンは、パレスチナ人殺害でネタニアフとアメリカを非難する

‘Whoever’s on Israel’s side, we’re against’: Erdogan slams Netanyahu & US over Palestinian killings

RT / Home/ World News/ 2019年7月30日

(翻訳:新見明 2019年年8月27日)

<記事原文>
https://www.rt.com/news/465342-turkey-slams-israel-us-palestine/


© Reuters / Sputnik / Pool

トルコ大統領レジェップ・エルドアンは、パレスチナにおける国家テロに関してイスラエルとその同盟国を非難した。「誰がイスラエルに味方しようが、我々は彼らに反対であることをみなに知らせよう」と述べた。

「イスラエルがパレスチナで行っている国家テロに関して、我々は沈黙することを認めない」とエルドアンは日曜日に、アンカラの公正発展党の上級地方委員会の演説で述べた。イラン・プレスTVによる。


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(さらに読む)「スキャンダルに悩まされるネタニアフは、最も長いイスラエル首相のベン・グリオンを凌ぐ


エルドアンは、イスラエル首相ベンジャミン・ネタニアフと彼の政府への厳しい批判者であり、ネタニアフは、現在数多くの腐敗と収賄調査に陥っており、「イスラエルを率いる盗人であり、今年初め7歳のパレスチナの子ども達を殺した暴君」であると非難した。

イスラエルが、議論になっている「ユダヤ人国家」法を採択したとき、エルドアンはその動きを、「イスラエル政府高官の中に再び頭をもたげてきたヒットラー精神」だとした。

しかし彼の最近のコメントは、ワシントンへの嫌みとも解釈され得る。アメリカが、トルコのF-35戦闘機購入計画を中断したからだ。またトルコのロシア製S-400ミサイル・システム購入をNATO安全保障への裏切りだと、アメリカが非難したからだ。 

アンカラがロシア製武器を捨てるなら、高額な計画に再加入することができるとトランプ政権は明らかにしたが、エルドアンは逆に、トルコはアメリカ製武器市場からさらに距離を置く準備をしており、100機の「高額なボーイング製飛行機」注文をキャンセルすることを考慮していると公表した。


Also on rt.com Turkey might ‘rethink’ Boeing plane orders if US proceeds with more sanctions – Erdogan
(さらに読む)「アメリカがさらなる制裁を進めるなら、トルコはボーイング製飛行機注文を“再考”するかもしれない


2018年の「デモ、衝突、捜索、逮捕作戦の過程で」、イスラエル軍は、56人のパレスチナの子ども達を殺し、約2700人の負傷者を出した。その前に行われた多くの国連事実確認任務と同様、金曜日に発表された国連報告は、イスラエルに「過度の武力使用を止めるように」促した。それからイスラエルがガザに対して一方的戦争を仕掛けた2014年以来、殺された子ども達の数は最も多い。

国連安全保障理事会は、先週イェルサレムのワジ・フムス地区で10棟のパレスティナ人アパートを破壊したことを非難しよう試みた。そして「2国家解決」と「公正で永続する平和計画」の可能性を葬り去ったという決議を起草したが、アメリカだけがその動きに拒否権を行使した。

「リバティ号事件(1967年)」再考

The USS Liberty Revisited

エイリアス・デイビッズソン

グローバル・リサーチ 2019年6月20日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年8月21日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/uss-liberty-revisited/5680251



ご記憶かもしれないが、リバティ号は1967年の「六日戦争」の最中にイスラエルによって攻撃された。 リバティ号はシナイ半島沖の公海上を5ノットで航行していた。 この攻撃で乗員294人の内、34人が死亡、171人が負傷した[1]。 イスラエル政府の主張は、一貫して、イスラエル軍がリバティ号をエジプトの補給船エル・クセイル号(以前は馬の輸送船)と混同したため、の一点張りだ。 

イスラエル政府はこの「悲劇的な誤り」を謝罪し、補償金を支払うことに同意した。 イスラエルの「誤り」とする説明を、アメリカ政府は額面どおり受け入れた[2]。 しかし、生存した乗組員の一貫した主張は、攻撃の照準はリバティ号に向けられ、リバティ号を沈没させ、目撃者を全員抹殺する意図があった、というものだ。 生存者の一人であるジェームズ・M・エネスJr.は1979年に、この事件に関する最初の本『リバティ号への攻撃』を出版した。 この本は次の二点を、合理的な疑いを差し挟む余地なく、実証した。 

    ① イスラエルはリバティ号を意図的に沈没させようとしたが、それは
       リバティ号がアメリカ船だと分かっていてやったこと。
     ② リンドン・Bジョンソン大統領を中心とするアメリカ政府は、この事実
       を隠蔽しようとした。

この相反する見方は決して両立しない。 リバティ号に関する大半の著作はこの点に焦点が当てられている。
そんな中、2003年、イギリスの調査ジャーナリスト、ピーター・ホウナムが書いた『シアン化物作戦: リバティ号が第三次世界大戦を起こしかねなかった理由』と、それに添えられたBBCのドキュメンタリー映像「リバティ号:真相は何処に?」(2002)が、議論の枠組みを変えてしまった。 

この本の中でホウナムは、
    (a) リバティ号はエジプト船と間違えられて攻撃されたという風説を
        一蹴している。 
    (b) イスラエル、アメリカの両政府が共謀して、次の2つの事実の隠蔽
       工作をしていることを具体的に述べている。
    (c) 事実1:両政府は隠蔽工作のひとつの手段として嘘とぼかしを使った。
    (d) 事実2:リバティ号の本当の使命が何であったのかは、決して開示さ
        れない。 事件以降開示された文書を読めば、ホウナムの新たな見
       解が正しいことがわかるだけはない。 ホワイトハウスがリバティ号
       を攻撃し、乗組員を殺害する意図を持っていたことも想定される。

2018年、ジョアン・メレンがリバティ号に関するもう一冊の本を出版した。『血塗られた海域:アメリカ-イスラエル共謀のリバティ号奇襲作戦』だ。 著者のジョアン・メレンはホウナムの調査結果の多くを裏付け、新たな証言でその信憑性を高めている。 彼女の結論は、ホウナムと同様、リバティ号攻撃はアメリカ-イスラエル共同の偽旗作戦で、エジプトのナセル体制を転覆させようとしたものだ、としている。

元米軍指導層も含め、現在、ほぼすべての人が受け入れている事実は[3]、リバティ号は間違って攻撃されたのでは全くない。 イスラエルが入念に準備をしてリバティ号を沈没させようとしたというものだ。 しかし、疑問が残る。
    ① なぜリバティ号が戦争地域に派遣され、さらに、警護の要請
      さえ拒否されたのか?
    ② リバティ号攻撃の目的は何だったのか?
    ③ どうしてこの問題が、今日までかくも厚い秘密のベールに包ま
       れているのか? 私はこの論考で、こういった疑問に光を当て
       ようと思う。



イスラエルがリバティ号撃沈させようとしたことに、最初、二つの動機が提示された:

① イスラエルは、イスラエル軍がシナイ半島で犯している戦争犯罪の目撃者たち(=リバティ号)を殲滅したいと思っていた。

バティ号はこういった戦争犯罪に関するイスラエルの交信を傍受していると考えられていた。 それ故、殲滅する必要があった。 この説明の基礎となっているのは次の3つの仮定だが、根拠は薄弱だ。1)イスラエル軍はイスラエルの戦争犯罪行為について無線で議論するだろう。 2)リバティ号は傍受した交信をワシントンに即座に転送することはないだろう。 3)同盟国アメリカは、イスラエルがエジプトに対して戦争犯罪を犯せば、深い憂慮の念を抱くだろう。

いずれにせよ、後に述べるが、リバティ号の任務にイスラエルの交信傍受は入っていなかった。

② イスラエルを今回の行動に駆り立てたものとして述べられたもう一つの動機は、イスラエルはアメリカにシリア攻撃の計画を知られたくなかった、ということである。 例えば、トーマス・モーラー提督はTheLink誌の1997年7・8月号に書いている:

イスラエルはゴラン高原をシリアから略奪する準備をしていた。 そういった動きにジョンソン大統領が反対していたことはよく知られている。  そして私が強く思っていることは、(イスラエル国防大臣の)モシェ・ダヤンの結論として、イスラエルの計画をワシントンに気づかせないためには、まず最初に、その情報を入手する存在、つまりリバティ号を破壊することになった、ということだ[4]。 

事実を言えば、イスラエルは、シリア攻撃の計画を隠そうともしていなかった。 アメリカ政府高官達の報告:
     ① 在イスラエルアメリカ大使ウォルワース・バーバー:自分は「報告
     にあるようなイスラエルの(ゴラン高原)攻撃があっても、実際攻
     撃が行われたとしても、驚くようなことは絶対にないでしょう」[5] 

     ② イスラエルの諜報部長官アーロン・ヤリフはその時イスラエルを
    訪問していたホワイトハウス上級補佐官であるハリー・マクファー
     ソンに語っている:「シリア問題はまだ残したままですから、シリア
     に一撃を与えることは必要だろうと思われます」[6] 

そのような憶測が出てきたのはリバティ号の傍受があったからというのではなく、アメリカとイスラエルが直接コンタクトを取っていたからだ。 いずれにしてもリバティ号だけがイスラエルの交信を傍受できる立場にいたわけではない。 そういった傍受が効果的にできるとすればそれはキプロス側からだ。[7] そしてリバティ号の任務にイスラエルの交信傍受は含まれていなかった。 

元在米イスラエル大使だったマイケル・B・オーレンが「ユダヤ仮想図書館」に投稿した記事によれば、「公文書のどこにも、イスラエルがリバティ号を問題視する記述はない。 まして、どこを押したら攻撃対象だ、などという考えが出てくるのか」[8]

イスラエルはその戦争作戦についてアメリカに知らせまいとした、と仮定しても、ひとつすっきりしないのは、イスラエルがその主要な同盟国であり、中心的な後ろ盾であるアメリカの諜報船を攻撃し、290人以上の乗組員に死者が出るような行動をしただろうか、ということだ。 しかし、アメリカ指導層との連携があれば、話は別だ。 イスラエル政府は、そんな取るに足らない利益のために、桁外れのリスクを犯すことなどするだろうか?

アメリカの演技派達は、リンドン・ジョンソン大統領とロバート・マクナマラ国務長官が、イスラエルロビーに屈服し、イスラエルは誤ってリバティ号を攻撃したという作り話を受け入れた、と非難する猿芝居を演じた。 彼らの理屈で言えば、アメリカがリバティ号攻撃の正当性を認めたのはイスラエルの歓心を買うためだけだった、ということになる。 後で触れるが、そんな軽々しい理由でアメリカがイスラエルの説明を受け入れたわけでは全くない。 しかし、まずは基本的な事実から。 

1. 軽武装のリバティ号は、何の護衛もつけられず、戦域に派遣された

リバティ号の諜報活動は国家安全保障局(NSA)の管轄下で行われた。 しかし、それが地中海で安全に航行することの責任はウィリアム・I・マーチン副提督にあった。

リバティ号が受けていた命令は、入港していたコート・ダジュールのアビジャンから出航し、最初はスペインのロタ[9]、そしてシナイ半島沿岸へ向かうことだった。 リバティ号を中東に派遣するという決定がなされたのは、「六日戦争」が勃発する1967年6月5日[10]以前のことだった。 

6月5日の朝、リバティ号はすでに「ほぼ最速の13ノットで航行しており、ロタとシナイ半島沿岸の中間にいた。」[11] 船と乗組員の安全に不安を感じたデイブ・ルイス艦長はマーチン副提督に、駆逐艦をリバティ号の護衛につけてくれるよう要請している。 

リバティ号は基本的に無防備だった。 戦艦ではないのだ。 マーチンはリバティ号の要請を拒否した。 イスラエルとエジプトの戦争が、その間、開始されているという事実があるにも関わらず、である。 リバティ号は戦域に向かって、何の護衛もつけられないまま、向かうことになった。 マーチンの公式説明はこうだ。リバティ号は「明確なアメリカ標識をつけた船で、公海上を航行して」おり、「いかなる国からも攻撃されるような理由は存在しない。」 さらに、「あり得ないが、たとえ想定外の攻撃があっても、第六艦隊空母からジェット機が発進し、10分もかからず現場上空に到着できる」との説明もあった。 [12] (しかし)リバティ号が攻撃された時、同艦の救助に向かったジェット戦闘機は一機もなかった。

リバティ号の護衛が拒否された理由が明白になったのは、後になってからである。

2.リバティ号が中東に派遣されたのは仕組まれた任務

リバティ号が攻撃された直後、海軍の情報公開室は次の新聞発表を行った:
「『技術調査船』と呼ばれるリバティ号は、①中東におけるアメリカ政府官職間の交信を確実なものにするため、そして②アラブ-イスラエル戦争地域から、アメリカ人で自力では動けない人やアメリカ人以外の市民を避難させることに関する情報の連携を支えるため、派遣された。」[13]

この新聞発表は、一般人を欺くためでしかなかった。 イスラエル、ロシア、そしてエジプト海軍を欺くことは不可能だ。 この三国は、リバティ号がアメリカの最新鋭スパイ船であり、人々の安全確保のようなちまちました任務で戦争地域に派遣されることはまずない、ということを知っていたからである。 

別の話がAP社にリークされた。 1967年6月9日のAP電で、 空母アメリカ艦上からボブ・ホートンが発信。 匿名の士官が語った話として次のことを伝えている:

    「率直に言いますと、(リバティ号の)そこでの任務はアメリカのた
    めのスパイ活動です。 ロシアも同じことをしています。 エジプト
    とイスラエルの交信をモニターするために、(戦域に)接近しました。 
    やむを得ないことです。 事態の進行情報を分単位で取得しなけ
    ればならないからです」[14]

「信頼できる情報筋」の体裁を取って公開されたその話も作り話だ。 というのも、いろいろな調査や証言で隠せなくなっているのは、リバティ号には、イスラエルの交信をモニターできるヘブライ語を話せる士官もヘブライ語専門家も、乗船していなかったことだ。[15] ジョアン・メレンが引用するアメリカ海兵隊ブライス・ロックウッドの話によれば、リバティ号の交信傍受担当のデイビッド・ルイスから直に言われたのは、イスラエルの交信を傍受しても、それは破棄せよ、というものだった。 同盟国イスラエルの交信を傍受することは彼らの任務ではなかったのだ。[16] リバティ号に乗艦していたアラビア語専門家達は、実質的に仕事は何もなかった。 6月8日にはすでに、エジプト軍はイスラエルに敗北していたし、 モニターすべきエジプトの戦闘交信はゼロだったからだ。 

ロバート・L・ウィルソン(乗艦していたアラビア語専門家の一人)が後年語ったこと:

    「その時エジプトから発せられる交信はそれほど多くはありません
    でした。[17] 私たちが任務に就くと、エジプトは死んだも同然の
    状態でした。 傍受できる音声による交信は皆無でしたし、聞こえ
    るのはイスラエルの交信だけでした。」[18]

リバティ号が目標地点に近づいた時の乗員ロイド・ペインターのコメント:

    「『六日戦争』の監視のために6千マイルを航行してきたが、到着
    時点で戦争はまさに終結段階に入っている。」

同じく乗艦していたフィリップ・アームストロングのコメント:

    「到着が遅れたことを喜んでもいい。 あの海域で孤立していれば、
    簡単に攻撃されてしまう。 考えたくもないが、戦争が勃発した時、
    ガザ地区沖に停泊していたら今頃どうなっていたかわからない。」[19]

彼らには、何が自分達を待ち受けているかについての情報はゼロだったのだ。

3.リバティ号救出の動きを止めたのはホワイトハウス?

リバティ号乗員の話によれば、最初のSOSが発信されたのは、イスラエル時間の午後1時58分と2時09分。 攻撃の時間についての推定はまちまちだが、午後3時15分まで攻撃は続いたと思われる。 最初は航空機、それから魚雷艇による一連の攻撃があった。 


ジョー・タリーは空母サラトガ(第六艦隊空母のひとつ)の船長だった。 ピーター・ホウナムの記述によれば、タリーは空母サラトガの航海日誌などの記録を個人的に持っていて、次の事実があったことをはっきり確認している。 つまり、その時、12機の戦闘爆撃機と4機の空中給油機が空母サラトガを発進し、リバティ号から無線のあった地点に向かった、と。[20] その1分後、海軍少将ローレンス・ガイス(第六艦隊運送部門司令官)から、タリーに無線があり、飛行機の帰還を命ぜられている。 [21]

90分後に、また、救援機を発進させられる、とタリーはガイスに言われた。 しかし、その救援機もまた帰還させられた。[22] タリーは、ワシントンがリバティ号を救出しなかったことを死ぬまで憤慨していた。 しかし、なぜ救援機の帰還命令が出たのかの理由は分からずじまいだった。[23]

タリーが驚いたのは、彼も空母アメリカ船長ドナルド・エンゲンも、この点についての質問は全くされなかったことだ。[24] デイブ・マクフェガンはリバティ号生存者だが、同艦での自分の役割について語ることは今でも口が重い。 その彼に対する質問:第六艦隊旗艦司令官の副提督マーチンはリバティ号攻撃を予知していたのか? 「もちろん、副提督は知っていましたよ」[25] このことは、リバティ号生存者たちの大半が思っていることだ。

交信を担当していたリバティ号生存者のデイビッド・E・ルイス海軍少佐は、入院中ガイス提督から報告するよう指示されたと言っている。[26] リバティ号防衛のため、ガイスが2回航空機の発進を命令していたことをルイスは知ることになった。 発進させるたびに、ホワイトハウスは、すでに飛行中の飛行機を帰還させるよう命令した。 さらにルイスは証言した。

    「最初の帰還命令がロバート・マクナマラによって下された時、ガ
    イスが思ったのは、発進した飛行機の中に核兵器を搭載している
    飛行機があるのではないか、とマクナマラが心配したかもしれない、
    ということだった。 ガイスはすぐに機体編成を変更し、核兵器を
    搭載できない飛行機で再度発進させ、その旨ホワイトハウスに知ら
    せた。 マクナマラは、それでも、飛行機の帰還を命じてきた。 それ
    からガイスは、この命令の再確認を要請。 すると最高司令官のリン
    ドン・ジョンソンが(電話口に)出て、飛行機の帰還を命令した。 『ア
    メリカの同盟国を困らせる訳にはいかない』との言葉も添えられた。 
    次の点はまちがいない、とガイスは発言している。『この件について
    外部に漏れることは許されないし、我々の会話は極秘扱いとなるだ
    ろう。 大統領はこう言うと、今回のことは機密扱いにしてくれ、と私
    に要請をした。 しかし、大統領としては第六艦隊への助力の努力は
    したことを、誰かには話す必要がある(と語った。)』」

ホウナムの記述によれば、ルイスはこの話を、20年後ガイスが死亡するまで表には出さなかった。[27]

ルイスのこうした動きはジュリアン・「トニー」・ハートが裏付けている。 彼はシディ・ヤヒア(モロッコ)の米通信センターに配属されていた。 ハートの発言によると、リバティ号が攻撃されているというSOS信号を送信したとき、彼はそれをワシントンに中継した。 10分後、リバティ号からの発信に間違いないことが確認されると、再度SOS信号が送られた。 同時にハートは第六艦隊のある空母からの「緊急メッセージ」を傍受した。 それは、「即応機」(つまり核搭載機)を発進させたという内容のものだ。[28] ハートの発言:

    「3、4分も経たないうちに-まったくあっという間のことでした。ワシ
    ントンから第六艦隊司令官に飛行機の帰還を指示する緊急メッセ
    ージがあったのです。 逆に、第六艦隊は飛行機再発進の権限を
    求めるメッセージを送りました。 それから、恐らく、10分から15分の
    時間がありました。 ワシントンとの音声回線がつながりました。 
    電話口で、国務長官マクナマラを名乗る人物が、第六艦隊司令官
    (ガイス海軍少将)と話がしたい、と言ってきました。 ガイスはマク
    ナマラと話をし、飛行機再発進の許可を求めました。 マクナマラの
    答はノーで、飛行機は一機たりとも発進させてはならない、というも
    のでした。[29] 40分か、45分後、二度目の音声通話がワシントンか
    ら第六艦隊司令官にありました。 電話口の人物は再度自分をマク
    ナマラと名乗り、提督は自分が電話口に出ていることを告げました。
    マクナマラを名乗る人物は30分、ないし25分後に調査飛行を派遣す
    ると語りました。 [30] そんな時間がなぜ必要かについての説明は
    ありませんでした。 

4.イスラエルの任務はリバティ号を沈没させ、乗員全員の抹殺だったのか?

リバティ号救援が遅れたことは、スティーブという仮名でならピーター・ホウナムに話すことを同意した人物によって、説明が与えられたかもしれない。 この人物は、1967年ネブラスカ州オマハのオファット空軍基地に配属され、空軍戦略指令本部内の高度の機密が保たれた地下室で勤務していた、と語っている。 彼は国家安全保障局(NSA)や他の部局が傍受した最も機密性の高い信号を読み取ったり、操作する権限が与えられていた。 彼は、2002年4月に自分が知り得た情報を開示する決心をし、リバティ号の乗員だったジム・エンネスと連絡を取った。[31] スティーブの話によれば、イスラエル軍はリバティ号を即座に沈没できないことに苛立っていた:

    イスラエルの地上司令部は、リバティ号を即座に沈没させることは
    至上命令だと、繰り返し語っていました。 その間ずっと、この司令
    部は、攻撃に時間がかかりすぎることに苛立ちの気持ちを隠しま
    せんでした。 リバティ号がまだ沈没していないこと、それだけを司
    令部は気にしていました。[32]

もう一人の人物、ジェームズ・ロナルド・ゴッチャー三世は2003年、偽証すれば罰せられるという条件の下で次のことを断言している。 彼は米空軍軍曹としてベトナムのダ・ナンの6924警備飛行中隊に配属されていたが、リバティ号がイスラエル航空機に攻撃されているという内容の「重要情報」メッセージを、1967年6月8日、彼の部隊が受け取ったのだと言う。 また、パイロットと管制官との間の会話記録を読んだという鮮明な記憶がある、とも。 それを読んではっきりしているのは次の2点。
    (a) 「イスラエル機はリバティ号を発見し、沈没させるという、あらか
     じめ計画された使命を果たすために飛行していた」
    (b) 「イスラエル軍のパイロットはあらゆる手段を講じてリバティ号を
     沈没させようとしていたが、それがうまくいかず、非常に苛立っていた」

彼の証言は続く:

    それからおよそ10日、ないし2週間後、私たちの部隊はNSAの内
    部レポートを入手しました。 その文面はきわめて明確なもので、
    リバティ号攻撃は事前に計画され、入念に実行された、という内
    容でした。 その使命はリバティ号を沈没させることでした。 数日
    後、別の通達が文書管理担当官を通して届きました。 傍受した
    通信の下書きや清書稿、さらにはその後作成された報告をすべて
    集め、破棄せよ、というのです。 それらの文書を破棄した後、私は
    この問題について目にするものは何もありませんでした。[33]

下士官ロイド・ペインターは、イスラエルの任務がリバティ号を沈没させることだけなく、乗員すべてを抹殺することだったことは確実だと証言している。 リバティ号の救命ボートに空気が入れられ、船外に下ろされた後、これらのボートも攻撃されているのだ:

    私は船体後部を見ていました。 魚雷艇の一隻が、海面に浮か
    べられた救命ボートの一つを入念に機銃掃射していました。 もし
    そこに誰かが乗り込んでいたら、全員殺されることは確実でした。 
    あまりに急な出来事で、とても現実のこととは思えませんでした。
    [・・・] 訳が分かりませんでした。 なぜそんな攻撃をされるのか、
    理解不能でした。 ほんとうに、その時点で、何一つ分からなかっ
    たのです。[34]

ボブ・ファーレイを含め、何人かのリバティ号乗員[35]が証言しているのは、彼らの交信は、早い段階からイスラエル軍によって妨害電波が送られ、交信できない状態だった[36]、ということ。 リバティ号から救援要請をさせないためだった。 しかし、リバティ号の無線担当者たちが、明らかな妨害電波があったとの報告をした時、彼らの証言は「極秘扱い」となり、そのことについてアメリカ当局者は何のフォロ-もしていない。[37] これこそ、リバティ号はアメリカの情報収集艦であることが分かっていて攻撃されたのであり、アメリカ当局者はその事実を何とか隠蔽しようとしたことの有力な証拠となる。

(さらに読む)「イスラエルによるリバティ号攻撃(1967年)」


ホウナムが、退任して長い年月を経過した元国防長官ロバート・マクナマラにBBCのドキュメンタリー番組でインタビューし、リバティ号事件についての意見を求めている。 マクナマラ:「リバティ号について申し上げることは何もありません。 記憶にないのですが、あらゆること・・・ええと、これ以上は止めましょう。 リバティ号について申し上げることはありません。」[38] ホウナムが、リバティ号の生存者たちはリバティ号攻撃事件を議会で調査するよう求めていますよ、と水を向けると、マクナマラは苛立ちながら次のように語った:

    リバティ号について申し上げることは何もありません。 それだけ
    です。 その理由はですね、・・・。 あなたの言い方はフェアでは
    ありませんね。 このこと、つまりリバティ号についてテープに録音
    することはやめてください。 と言うのも、 一体全体何が起こった
    のか、私は知らないし、それを探り出す時間もないからです。いろ
    いろなクレームがあります。 我々が飛行機を送ったとか、飛行機
    は発進したが、我々がそれを帰還させたとか、我々が意図的にイ
    スラエル軍にリバティ号の撃沈を許したとか。 私はまったく何も知
    りません。 当時私は知らなかった、という言い方はしたくありませ
    ん。 言えるのは、今日、私はそのことについての知識はゼロだと
    いうことです。[39]

リバティ号機関長だったジョージ・ゴールデンは、破損したリバティ号がマルタに到着した時、次のことを知らされた:

    「我々はモルモットなのだ、という話が耳に入っていました。 メチャ
    メチャに銃撃され、それをエジプトがやったように見せかける。 ア
    メリカが介入できるようにするためです。 [・・・] 我々が聞かされ
    たのは、この攻撃はエジプトの仕業と見せかけること。 そうすれ
    ば、イスラエルを支援する目的で、アメリカには介入できる口実が
    できるからです。」[40] 

モルモットと言われ、どう感じたか質問されると、ゴールデンは答えた:

    「泣きそうでしたよ。 だって、そんなことがあるなんて信じられま
    すか? 自分達の政府がそんなことをするなんて思ってもいませ
    んでしたよ。」[41]

マクナマラとジョンソン(大統領)はそのことを知っていたこと、リバティ号の救援はしないという命令は大統領直々の命令だったこと、この二点を聞かされていたかどうか、について彼は「はい」と答えた。さらに:

    我々がマルタに入港した時、政府から何人かの担当官がやって
    来ました。 二人はたまたま顔見知りでした。 その一人はリバ
    ティ号が再就航したときも一緒でした。・・・その彼が私に言うの
    です、「ねえ、ジョージ、やったのは本当にあいつらだよ」「何の
    話?」 そして彼の言葉です:「お前らはモルモットにされたとい
    うことさ」 それ以上の言葉はありませんでした。[42]

リバティ号船長マッゴーネイグルから、彼が死亡する2,3年前に、打ち明け話があったとゴールデンが語っている。 リバティ号をアフリカからはるばる(中東に)派遣したのは大統領とマクナマラだった、と。 「この事件を引き起こすために」[43] マッゴーネイグルはリバティ号の本当の任務について自分が知っていることを公にすることは一貫して拒否していた。 アメリカがリバティ号事件で果たした役割について、自分が知っていることの記録を、彼は一切残していないようだ[44]。 

5.「シアン化物作戦」とは何だったのか?

複数の証人の言によれば、リバティ号はアメリカ潜水艦を含む秘密プロジェクトに深い関わりを持っていた、という。 潜水艦がこの戦域を航行していたことは、公式に認められたことは一度もない。


Israeli Motor Torpedo Boats (MTBs) in formation, c. 1967. These were the MTBs that attacked USS Liberty. (CC BY-SA 3.0)

こういった潜水艦がどういう性格のものかは、まだはっきりしていないが、二隻の潜水艦が問題となった:アンバージャックSS522号と核兵器搭載艦ポラリス型潜水艦アンドリュー・ジャクソン号だ。[45] アンバージャック号の船長オーガスティン・ハボールは、自分の潜水艦がリバティ号に接近して何をしていたかの話をすることは死ぬまでなかった。[46] 潜水艦がその時間、その場所にいたことを絶対に認めないのはアメリカ政府だけではない。 同艦に乗船していたことを認める証人たちも自分たちの潜水艦の正確な任務については明らかにしなかった。 リバティ号生存者の一人チャールズ・「チャック」・ローリーは、同じリバティ号に乗船していたジム・エンネスに、「コード名『シアン化物』の秘密潜水艦プロジェクト」の情報は与えられていた、と打ち明けている。[47]

リバティ号を追尾していた潜水艦がいた可能性は、ジェ-ムズ・M・エンネスの本で繰り返し言及されている。 リバティ号の誰かが、同艦の共同作業図に不可解な接触地点Xの印をつけた。 「正体不明の物体が何日も確認された後、それはリバティ号の航跡と一つになった。 すると突然、不可解な接触地点Xの印は消失した」とエンネスは書いている。 彼の本によれば、彼は同じリバティ号に乗艦していたジム・オコーナーに「Xは何を表しているのか?」と質問している。 ジムは秘密情報に接近できる権限を持っていたのだ。 オコーナーは「知らない」と言った。 誰が接触地点Xの印をつけたのか、誰がそのXの意味を知っているのか、 それに対する答は、いずれも公にされることはなかった。 エンネスの推測では、そのXはリバティ号と合流する潜水艦だ。[48] エンネスの本に書かれていることだが、この潜水艦の乗員(匿名)は、リバティ号事件の数週間後、ポーツマスの海軍病院のカフェで、あることを口走っている。 それは、この潜水艦の司令官が「潜望鏡を稼働させ、リバティ号が攻撃されているところをフィルムに撮影した」というのだ。 エンネスはさらに筆を進め、「事情を知る立場にいる3人の人間が、潜水艦がリバティ号の近くで作戦行動をしていたという話は本当だと証言している」と書いている。[49]

1967年4月10日(「リバティ号攻撃」の前)付けの秘密性の高い文書がある。 ジム・エンネスがオースチン(テキサス州)のリンドン・B・ジョンソン図書館で発見した。 いろいろな文書に混じってリバティ号に関する文書があった。 この文書には1967年4月7日に「303委員会」と呼ばれるグループが開いた会議の議事録からひとつの議題だけ記されている。[50]当時CIA長官だったリチャード・ヘルムズが退任35年後にこの委員会の役割を説明している。 ピーター・ホウナムへの説明:
    「秘密作戦を実行するときにはいつでも設置される類いのもので
    す。 大統領に代わって判断を下します。 もし作戦が失敗した時、
    大統領がにっちもさっちもいかない立場に追い込まれないように
    するためです」 

「303委員会」、この日の議長はウォールト・ロストウ。 ジョンソン政権の国家安全保障担当補佐官だった人物だ。 ラルフ・D・スティークリイ将軍がこの委員会に席を連ね、「フロントレット615」と呼ばれる非常に機密性の高い軍事プロジェクトの要旨を報告している。 その文書では、この軍事プロジェクトの項目にペンで○がつけられ、次の手書きのメモがある:
    「UAR海域内の潜水艦」[51] [UAR=アラブ連合共和国。この時エ
    ジプトは自国をそう称していた] つまり、上記の文書は、ホワイト
    ハウスが認可したトップシークレットのプロジェクトの存在を示し
    ていることになる。 そのプロジェクトには将来エジプト海域へ潜
    水艦を配置することが含まれている。 615という数字は6月15日
    ということなのだろうか? エジプトへの戦争は、当初、この日に
    設定されていた。 

Image below: Commander W.L. McGonagle in his damaged cabin after the attack (Source: Public Domain)


アメリカがその同盟国イスラエルに、軍事プロジェクト「フロントレット615」ないし「シアン化物作戦」、そしてリバティ号のこの海域での動きについて、当然報告するだろうと仮定すれば、イスラエルが蚊帳の外に置かれ、誤ってリバティ号を攻撃したなどという話を信じる根拠はどこにもない。

実際、リバティ号生存者の中には、アメリカの同盟国であるイスラエルがその海域にリバティ号がいることは当然知らされていた、と証言する者もいる。 

リバティ号に掲げられたアメリカ国旗は、微風にはためき、はっきり目視できた。 それにリバティ号の位置情報は確認されていた。 リバティ号を他の船舶と見誤ることなどあり得ない。 その時間帯、リバティ号以外の船舶は一隻もこの海域にはいなかった。 どういうわけか、リバティ号の船長マッゴーネイグルは、イスラエル機が繰り返し同艦に飛来してきたことを第六艦隊に報告することをためらった。[52] 彼は、後になって、イスラエルの攻撃はたいしたことがなかった、と見せかけようとした。 そのことは、リバティ号生存者から「事件の隠蔽に加担することだ」と批判された。 死の直前になって、彼はリバティ号乗員を裏切っていたことを認めた。

ピーター・ホウナムが、1967年イスラエル・シークレットサービスの長だったラフィ・エイタンに、1967年の「シアン化物作戦」について聞いたことはないか、と尋ねた。 Eitan:「『シアン化物作戦』? それについて聞いていたかって? 聞いていたよ。 それで?」 ホウナムは、さらに、その作戦は何なのか、と質問した。 Eitanは少し間を置いて、「このインタビューはここでやめにしよう」と言った。 その後の言葉はほぼ絶叫調:「何を言ってるんだ! なぜそれが知りたいんだ!」 ホウナム:「その作戦が何なのかを知りたいだけです。 『シアン化物作戦』について語れない理由は? 34年前のことですよ。」 長い沈黙の後、エイタンは力を込めて「サインしたからだよ」と答えた。 「秘密工作員法」にサインをする仕草をしながら。 「それから母国への忠誠心だな」[53]

6.カイロ攻撃に向かったアメリカの爆撃機は、飛行中に帰還命令を受けた

「シアン化物作戦」と「フロントレット615」は、アメリカのカイロ爆撃とナセル体制転覆計画に関わりがあった。 その動かぬ証拠は、その時、アメリカ在エジプト代理大使だったデイビッド・ネスの発言だ。 6月8日の午後、彼は一通のメッセージを受け取った。 米艦サラトガ号が爆撃機を、彼が在任しているエジプトに向けて発進させた、というのだ。[54] ネスは退任後、ピーター・ホウナムに語っている:

    「私たちは一通の『緊急』メッセージを受け取りました。 海軍の船
    リバティ号が攻撃された。 恐らくはエジプト機が実行したもの。 
    報復攻撃に着手している、という内容でした。 [・・・] しかし、すぐ
    に、また『緊急』電が届いたのです。 (リバティ号への)攻撃はイス
    ラエル軍によるものと判明、という内容でした。 それで終わりで
    す。」[55]

電文の正確な言葉使いは注目してもいい。 ネスが言ったのは、爆撃機は彼の任地カイロに向かっている、というものだった。 その際、リバティ号はエジプト機によって攻撃されたとの仮定がある。 しかし、アメリカ軍が何の確証もなくそんな仮定をし、分刻みの時間で爆撃機を主権国家に発進させることなどは考えられない。 事前の計画も、ホワイトハウスの認可もなしに、だ。

航空母艦サラトガ号に乗艦していた数名の目撃者は、発進した飛行機は核兵器を搭載していたようだ、と証言している。 この時の目撃者は、若いパイロットだったブラッド・ニッカボッカ[56]、中央甲板カタパルト(射出機)操作員だったマイク・ラティガン[57]、アメリカ人新聞記者ジェイ・ゴラルスキ[58]、そしてUPI特派員のb[59]、等だ。

リバティ号生存者チャールズ・「チャック」・ロ-リイの証言:空母アメリカのパイロットから聞いた話。 彼はその日核兵器を搭載した飛行機を操縦し、カイロへ向かう命令を受けていた、とのこと[60] 同様にリバティ号生存者ジョー・ミーダーズの証言:怪我の治療入院に向かう途中クレタ島に到着していた。 その時、地上整備員の数名から話を聞いた。 彼らの話によれば、戦闘機1機に燃料を補給したが、驚いたことに、その機体には原子爆弾が装着されていた、とのこと。[61] これらの目撃者たちが、話をでっち上げるはっきりとした理由は何もない。

リバティ号勤務から退役し、現在マリエッタ(ジョージア州)に住んでいるモウ・シェイファがホウナムに語った話:
    他の負傷兵とは異なり、彼はリバティ号から空母デイビスにヘリ
    コプター移送された。 翌朝マーチン副提督がやって来て、彼の
    寝台に腰を下ろした。 その場には2,3名の負傷兵がいた。 
    マーチンは次の3つのことを話した。

    ① 4機の飛行機は核兵器を搭載し、カイロに向かっていた
② 3分後にはエジプトを爆撃するところだった
③ 飛行機は、核兵器を搭載しているため、空母には着艦でき
ず、アテネに着陸するしかなかった」[62]

シェイファが作り話をする理由はまったくない。

明白なのは、リバティ号攻撃から1分も経たずに、カイロ爆撃のために飛行機を発進させたのは、リバティ号攻撃に対してとっさに考え出された反応ではなかった、ということだ。 リバティ号攻撃を口実に事前に計画された作戦だった。 だから、イスラエルがリバティ号とその乗員を殲滅できなかったことがはっきりした時点で、飛行機は当然帰還させる必要があった。 

7. リバティ号の乗員は、この出来事を誰にも話さないよう警告されていた

イスラエル当局者は、リバティ号は「誤って」攻撃されたと言い張り、アメリカ政府はこの説明を受け入れた。 が、アメリカ国防省と海軍はリバティ号乗員などに、「リバティ号攻撃」についてどんなことがあっても他言しないよう、厳しく警告していた。 刑務所行きか、もっとひどい処置もある、と脅迫されていた。 隠蔽工作は、攻撃で破損したリバティ号が港に到着する以前からすでに始まっていた。 アイザック・キッド提督は、よれよれの状態で航行していたリバティ号に乗船し、公式調査を開始した。[63] フィリップ・トーニィ下士官の回想:

    「キッド提督の命令でした。 私が見たことは見ていない(ママ)こ
    とにするのだ。 さもないと劣悪な刑務所に身を置くことになるぞ、
    と。 私は、それは自分が殺されることだ、と思いました。」

CTロナルド・グランツキィの回想:

    「当局者達にどんな圧力がかかっていたかは知りませんが、私た
    ちは繰り返し、繰り返し言われました。 リバティ号の件について
    人には絶対話すな。 この件に時効は絶対ないと思え。 実際そ
    れはないのだから、と。 とても怖かったです。」

ロバート・「ブッダ」・シュネルもキッド提督から事情聴取を受けた。 他言はしないこと、特に報道機関には注意を払い、近づかないこと、などを言われた。 彼の言葉:「1968年に海軍を離れたとき事情聴取を受けた時、

    私の身辺調査は続くと言われました。 また『リバティ号攻撃事件』
    のことがあるから、10年間はアメリカから外へ出ることはできない」
    とも言われた。

リチャード・「ラリィ」・ウィーバーは、重傷を負ったリバティ号生存者だが、病院の車椅子に座って、三つ星(四つ星?)の提督と対面した。

    「彼は襟からその星を取って、言いました。『リチャード、君は何か
    知っているかな? 知っていることを全部話してくれ』
 
知っていることを全部話した後、提督が言いました。

    『いいだろう、リチャード』と星を襟に戻すと、彼は言いました:『君
    がこのことを万が一誰かに漏らすようなことがあれば、君は刑務
    所行きになるし、そんなことを覚えてくれる人間もいなくなるだろう
    な。』[64]

ウィリアム・ルメイもリバティ号攻撃でひどい傷を負った。 病院で目が覚めると腕にタグが貼ってあり、名前はスミスとなっていた。 ルメイはそれを訂正してくれ、と言った。 それに対して言われた言葉:

    「当分それが君の名前だ。 それから君はリバティ号で一度も勤
    務したことはない」[65]

当局が認可していない外部との接触を防止するため、警備員がリバティ号乗員を収容した病棟のそれぞれのドアに配置された、とジェームズ・M・エンネスがその著作に書いている。[66]

リバティ号生存者ケン・エッカーが、次の声明をリバティ号退役軍人ウェブサイトに投稿している:

    「リバティ号攻撃」直後から、私がもしこの事件を報道機関や他の
    誰かに話せば、軍法会議だと、脅されていました。 警告の一つ
    として、直近の家族や友人に話すことも含まれていました。 私の
    場合、こういった警告は配置転換ごとに繰り返されました。 私に
    は秘密情報取り扱い許可についての標準的な報告義務があった
    のです。 同時に、定期的に呼び出され、最初に言われた軍法会
    議のことも念を押されました。 それは配置転換がないときにも行
    われました。[67]

リバティ号機関長だったジョージ・ゴールデンは、定期的な恫喝を受けていましたし、CIAから派遣されたと彼が考えていた人物たちの訪問も受けていました。 彼らは元機関長が持っている文書を渡せ、と要求していました。 そんな話を彼はピーター・ホウナムに語っています。 当局者は今でも彼を黙らせようとしていると思うか、との質問に、「そう、思う」と彼はきっぱり言い切りました。「そう思わせる電話が何回かあったからです」[68]

もうひとりの人物。 彼も身の安全を考え、「リバティ号攻撃」について自分が知ることを話したがらなかった。 リバティ号を退役したCT デイビッド・マックフェーガンである。 ピーター・ホウナムは彼がシカゴで税理士として働いているのを突き止めた。 デイビッド・マックフェーガンはピーター・ホウナムと直接会うことは断ったが、電話で「非常に用心深く」ピーター・ホウナムと電話で話をした。 なぜそんなに口を固くしなければならないか、理解してもらえないと思うが、話せば身に危険が及ぶ可能性は今でもある、と彼はホウナムに語った。[69] デイビッド・マックフェーガンnの心配のひとつは、たとえ彼が自由に話したとしても、彼の話を支持してくれる信頼できる人物が誰もいないことだ: 

    「私の話を支持してくれていたジム・オコーナーもディック・ブルー
    (まま)は、二人とも故人です。」

「シアン化物作戦」について質問した時、「それについては何一つ答えられない」と彼は言った。「事件の記憶が私の心の深いところに影響を与えているので、精神的にダウンしてしまい、赤ん坊のように泣き声をあげてしまう」とデイビッド・マックフェーガンは語った。[70]

パトリシャ・ブルーの発言。 彼女は「リバティ号事件」で死亡したアレン・ブルー(国家安全保障局=NSA職員)の妻。 事件後メリーランドに本部のあるNSA職員の車に乗せられ、自宅に連れて行かれた、と語る:

    「あの人たち(NSA職員)は6週間ずっと私の家にいました。 あの
    人たちが電話に応対しました。 私が新聞記者と話してほしくなかっ
    たからです。 [・・・] 私に発言してほしくなかったのです・・・そして、
    私は一言も発言はしませんでした。[71]

リバティ号下士官ロナルド・グランツキィの言葉:

    「NSA職員にどんな圧力がかかっていたかは知りません。 繰り
    返し言われたのは、事件のことは絶対に話すな、ということです。 
    絶対に。 それから、このことに時効は絶対ないと思え、とも言わ
    れました。 そんなことはないからだ、だそうです。 怖かったで
    す。」[72]

リバティ号生存者たちの口止めを組織的に行うことと平行して、職員たちは真実から目を逸らす作り話もでっち上げようとしていました。 リバティ号の上等兵曹ジョゼフ・A・ベンカートはジェイムズ M. エネスに、自分がそんなでっち上げ工作に使われた事情を語っている。

ベンカートが最初上官から告げられたのは、新聞のインタビューを受けるのであれば、そうしてもいい、ということだった。 しかし、ベンカートはそれを望まなかった。 率直に何の制限もなく自由に話せるのであれば、事情は別だが。 そんな訳で、ノーフォーク市(バージニア州)にあるVirginian-Pilotの新聞記者クリフォード・ハバードが彼にコンタクトを取った時、彼はインタビューの要請を丁重に断った。 しかし、すぐに司令官デイビッド・M・クーニィから電話があり、大西洋司令艦隊長官本部での「記者会見の報告を早急にするよう」との命令を受けた。 この記者会見以前に、レンケン准将が同席する中、リバティ号とリバティ号が受けた攻撃について想定されるすべての質問がベンカートになされた。 そして念を押されたのは、リバティ号の使命や、マーチン副提督が救援機の発進を約束したことも、救援が現場に到着しなかったことも記者会見で触れてはならない、ということだった。 救命ボートが機銃掃射されたこと、攻撃にナパーム弾が使用されたこと、いずれも言及することは許されなかった。 アメリカ旗がはためいていたこと、風が吹いていたことに言及することは許可されなかった。 彼の記者会見は、クーニィ司令官、レンケン提督、そしてベンカートの見知らぬ海軍高官などの「お目付役」同席の下、行われた。記者会見の内容が公開された後、ベンカートは語った:
    「あの人らが、どこから引用を引っ張ってきたのか、私は知りませ
    ん。 私の言葉ではありません。 あの人らは私の言葉を使ってい
    ません。 私が口にしていないことをでっち上げたのです。 少なく
    とも公開された内容の90%はクソです。」[73]

8.リバティ号攻撃にアメリカ人は含まれていたのか?

リバティ号機関長だったジョージ・ゴールデンがピーター・ホウナムに明かした内容: 何とか自力航行ができる状態のリバティ号に乗船してマルタ港に到着後、彼はあるアメリカ人「海軍大佐」に会った。 驚いたことに、リバティ号が攻撃されている間、彼はテルアビブのイスラエル作戦司令室にいた、という話を聞いたということだった。

    「名前は覚えていません。 大柄で、太った人物でした。 イスラエル
    人は、ある時間帯、みんな作戦司令室から退室していました。 彼は
    この部屋に残りました。 イスラエル人が戻ると、リバティ号は飛行機
    と艦船の攻撃を受けていました。 そんなことがとても印象深く私に残
    ったのは、イスラエルはリバティ号を丸ごと沈めなきゃいけなかったよ
    な、イスラエルにはその力があった、そして、リバティ号はその場を動
    かしてはいけなかった、と彼が言ったからです。 彼の言っていること
    は、まるでアメリカ以外の国の人間の言葉でした。 アメリカの船が射
    撃されているのに、です。」

この「海軍大佐」が誰であったのか、リバティ号が攻撃されている間、彼がイスラエル作戦司令室でどんな役割を果たしていたのか、まったく不明だ。

9.リバティ号が攻撃された理由

アメリカが「六日戦争」の立案と遂行に深く関わっていたことの証拠は、作家ピーター・ホウナムがインタビューした数名の証言で明らかになっている。 そのひとり、ジョー・ソレルズがフロリダ州ナポリに居住していて、ゴルフレジャー・リゾートの成功した経営していることを彼は突き止めた。 ソレルスはホウナムにリバティ号問題に新たな視点を与えるかもしれない話を明かしている。 彼の証言は、リバティ号を攻撃する主導権はイスラエルではなく、アメリカにあった、という見方を後押しするものだ。



ソレルズは、自分のミッションは「シアン化物作戦」と呼ばれていると語った。 ソレルスがホウナムに語ったところによれば、この作戦は「イスラエルとアメリカの軍事諜報部が共同して計画したもの。 エジプトとの戦争を画策し、その指導者ガマール・アブドゥール=ナセルを権力の座から放逐しようとした。 アメリカはナセルをモスクワの操り人形と信じていたのだ」[74] と ホウナムは認めているが、彼は当初この証言の信頼性に疑いを持っていた:

[ソレルズは]本当のことを言っていたのだろうか? 彼が15ヶ月に亘って、4回の電話で私に語ってくれた途轍もない話が、たとえでっち上げだったとしても、彼がそうする動機を突き止めることは困難だ。 彼は何の報酬も求めなかったし、面と向かって会うことは望まなかった。 詳細に関して自分から多くを語ろうとはしなかった。 しかし、憶測と自分が直に体験して知ったことの区別はきちんとしていた。 さらに、彼が明らかにしたことは他の証拠と合致している。[75] 

ソレルズの言葉によると、彼は、1966年8月、秘密裏にイスラエル陸軍の顧問として派遣された。 赴任して分かったのは、彼はオーストラリアやイギリスからも派遣されたいわゆる「顧問団」の一員であるということ。 アメリカからは上級将校が任務にあたった:

「週一のペースでブリーフィングを持ちました。 毎週のレポートはある個人向けに作ったものです。 しかし、それが誰かは言えません。 彼はまだ[アメリカ諜報部と]まだ繋がりがあるからです。 彼らは一様に口が堅かったです。[・・・] それは来たるべき戦争にイギリスが絡むということか、と私は尋ねました。 私はそう読んでいました」と彼は言った。[76]

ホウナムの言葉:

「ソレルスの見方では、イスラエルがナセルを抹殺するよう、アメリカから圧力をかけられていました。 イスラエルが中心になって行動を起こしたわけではなさそうです。」[77]

ホウナムがソレルスに「シアン化物作戦」が成立した事情を尋ねると、ソレルスの言葉は、曖昧になった。 ソレルスの言葉:
「私が分かっていたのは、まだ達成されていない事柄が議論の対象となっていたことです。 私の階級は下っ端で、そんなことには関われませんでした。・・・私たちがその時やっていたのは他でもなく・・・私たちはイスラエルに対して、同盟関係、可能性、任務などについてペテン的な動きをしていました。

アメリカはナセルを排除し、戦闘を画策していたのか、とホウナムは尋ねた。

「そりゃ、そうだろうよ。 相手を刺激したり、けしかけたり、いろいろやった。 どこがその指令を出したのか、正確なところは絶対に分からないだろう。」[78]

ソレルズが繰り返し言ったのは、「シアン化物作戦」は秘密計画でエジプトとの戦争を始めるものだったこと。 彼の言葉によれば、イスラエルの動機は、領土を自分のものとすることだけ、それしかない。 イスラエルをエジプトとの戦争に追いやったのは、アメリカ国内の一部の政治グル-プだとのことだった。[79]

ソレルズの指摘では、アメリカだけでなくイギリスも1967年の「六日戦争」に秘密裏に関わっており、エジプトの体制転覆を狙っていた。 ホウナムの提出した証拠は、ソレルスの見方とは別に、このことが真実を突いていることを窺わせる。[80]

多くの識者同様、ピーター・ホウナムも釈然としなかったのは、イスラエルはどうして突然リバティ号への攻撃を中止したのか、という点だ。 ホウナムはリバティ号生存者デイビッド・マクフェガンの言葉だ:

    「だれかは言えない。 モシェ・ダヤンの名前だけは挙げておく。 
    [・・・] ダヤンはイスラエル最大の愛国者で、イスラエル国家建設
    の最大の救世主だ。」

マクフェガンのこの発言はホウナムを戸惑わせた。 彼はそれ以上語ろうとはしなかった。 アメリカは、リバティ号がエジプトに攻撃された、というでっち上げの前提でカイロを核攻撃する爆撃機を発進させていた。 ダヤンはこの情報をぎりぎりのところで知らされていたのだろうか? ダヤンに、ソ連がイスラエルを報復爆撃する可能性の不安はなかったのか? ダヤン自身がリバティ号攻撃中止の命令をしたのか? そんなことがマクフェガンの胸中を過ぎったのかもしれない。[81] イスラエルがリバティ号攻撃を中止した理由は不明だ。 これからも明らかにされることは絶対にないかもしれない。 その中心にいた人物は死亡しているか、 自分が知っていることを、決して、決して明かそうとしないだろう。 

まとめとして

リバティ号事件の真相は、政治的、軍事的指導者たちがいかに無慈悲になり得るかをはっきり示している。 「我々の指導者なのだから、我々にそんなことはしないだろう」という広く浸透している考えはウソなのだ。 アメリカの指導者たちが、外国人と言わず、自国民と言わず、兵士、民間人お構いなしに、無慈悲になり得ることに気づけば、政治的、軍事的指導者たちのモラルに関して、アメリカ人がその幻想を払拭する一助になるだろう。

指導者たちがこれほど無慈悲になれることを気づけば、それは9/11大量殺人の真相を暴露する役に立つかもしれない。 そう結論づけたからといって、イスラエルの民間指導者と軍事指導者たちを無罪放免することにはならない。 彼らは自らをアメリカに雇われた銃にして、無防備なアメリカ人を殺戮することに同意したのだ。 。 1967年の「六日戦争」から数日で、アメリカはイスラエルとファントムF-4戦闘機納入の協議を開始した。[82]

1989年8月、イスラエルはこの協議に基づき、最初のF-4戦闘機を受け取った。[83] ジェイムズ・M・エネスが対話したアメリカ国務省高官たちは、この軍事的支援とリバティ号攻撃事件とは何の関係もないと言った。[84] だが、この1967年こそ、フランスに代わってアメリカがイスラエルへの軍事品の納入を始めた年だ。 

リバティ号事件にまつわる話でもうひとつ有益な視点は、アメリカとイスラエルについて広く行き渡っている神話の真相を暴く。

「イスラエルロビーがアメリカ外交を牛耳っている」とする議論が流行している。 だから、リバティ号の退役軍人や善意に満ちた共感者たちは、アメリカ政府がリバティ号事件を隠蔽しようとするのはイスラエルの立場をなくしてしまうと、アメリカのユダヤ人票が失われることを恐れているからだ、という議論を執拗に展開する。 この論考で示したように、リバティ号事件からこんな議論を導き出すことはできない。 この論考で示した証拠は、リバティ号生存者の一部が疑っている事実を裏付けている:

    彼らはアメリカ-イスラエル共同偽旗作戦で死ぬために、アメリカ
    政府によって計画的に派遣されたのではないか、という疑いだ。

しかし、イスラエルとそのロビー活動家たちがアメリカ外交を牛耳っているという見方は、アメリカ政府を支配する少数独裁グループが自分たちの犯罪活動の数々から人々の視線を逸らせる有益な手段として使える。 イスラエルに関して言えば、この見方に従えば、イスラエルへの尊敬と恐怖をイスラエルが手中に収めることになるのは明らか。 アメリカに対して政策の方向をイスラエルは決めることができる、という神話を手放さなければいいのだ。 [85]

*

エイリアス・デイビッズソンはドイツ在住のアイスランド市民。彼は作家であり、人権と平和活動家である。また9・11や偽旗作戦テロリズムに関する著書がいくつかある。

Notes
Where an end note is followed by a number preceded by the sign #, that source can be consulted on the internet address www.aldeilis.net/liberty/####.pdf (replace the #### by the number).

1.There is a wealth of literature on the case of the USS Liberty. A good starting point is the Wikipedia entry 13 on the Attack on the USS Liberty.
2.“U.S. military officials said Saturday that they were satisfied Israel’s attack Thursday on the U.S. communications ship Liberty was one of the tragic mistakes of warfare.” (UPI dispatch, June 10, 1967, cited in James M. Ennes, Assault on the Liberty, p. 155)
3.See Testimony by Rep. John Conyers, House of Representatives, Congressional Record, p. E1886-7, 11 October 2004, #2793; also Memorandum by Admiral Thomas H. Moorer, “Attack on the USS Liberty”, 8 June 1997, http://www.ussliberty.org/moorer3.htm
4.Cited by Michael B. Oren, The USS Liberty Incident: “The USS Liberty: Case Closed”, Jewish Virtual Library, https://www.jewishvirtuallibrary.org/quot-the-uss-liberty-case-closed-quot
5.LBJ, National Security File, Box 104/107, Middle East Crisis: Jerusalem to the Secretary of State, June 8, 1967; Barbour to Department, June 8, 1967; Joint Embassy Memorandum, June 8, 1967 (cited by Michael Oren, The USS Liberty Incident: “The USS Liberty: Case Closed”, Jewish Virtual Library, https:// www.jewishvirtuallibrary.org/quot-the-uss-liberty-case-closed-quot)
6.Ibid
7.Peter Hounam, Operation Cyanide – Why the Bombing of the USS Liberty Nearly Caused World War II, Satin Publications, London, 2003, p. 110
8.Michael B. Oren, op. cit.
9.Operation Cyanide, p. 189
10.From a Press Statement issued by the White House on the day of the attack, cited in Operation Cyanide, p. 104
11.Operation Cyanide, p. 171
12.Ibid
13.Memorandum for the Record by Louis W. Tordella, Deputy Director of the NSA, 8 June 1967, #2786
14.Associated Press wire on the USS Liberty, 9 June 1967, #2780
15.Questions by General Carroll, Director, DIA, and Answers by G Group, 27 June 1967, #2787
16.Joan Mellen, Blood in the Water: How the U.S. and Israel conspired to ambush the USS Liberty, Prometheus Books, 2018, p. 118
17.Oral History Interview with Robert L. Wilson of the G Group, Doc. NSA-OH-15-80, 6 May 1980, p. 7, #2789
18.Ibid, p. 10
19.James M. Ennes, Jr., Assault on the Liberty, Ivy Books, 1979, p. 47-48
20.Operation Cyanide, p. 91
21.Ibid
22.Ibid
23.Operation Cyanide, p. 91
24.Operation Cyanide, p. 174
25.Joan Mellen, Blood in the Water, p. 223
26.Operation Cyanide, p. 175
27.Ibid
28.Operation Cyanide, p. 176; Assault on the Liberty, p. 89-90
29.Ibid
30.Operation Cyanide, p. 177
31.Operation Cyanide, p. 159
32.Operation Cyanide, p. 161
33.Declaration by James Ronald Gotcher III, 2 September 2003, www.aldeilis.net/liberty/gotcher.pdf
34.Operation Cyanide, p. 37; BBC Documentary “Dead in the Water”, minute 29’40”
35.Oral History Interview, Document NSA-OH-25-80 of June 13, 1980
36.Oral History. Interview of Henry L. Wilson, Document NSA-OH-15-80 of May 6, 1980
37.Assault on the Liberty, p. 184
38.Operation Cyanide, p. 237; BBC Documentary “Dead in the Water”, minute 28’40”
39.Operation Cyanide, p. 237-238
40.Operation Cyanide, p. 240
41.Operation Cyanide, p. 241
42.Ibid
43.Operation Cyanide, p. 242
44.Operation Cyanide, p. 246
45.Operation Cyanide, p. 124, 128
46.Joan Mellen, Blood in the Water, p. 115
47.Operation Cyanide, p. 113-114
48.James M. Ennes, Jr., Assault on the Liberty, p. 46-47
49.Ibid, p. 73-74
50.Operation Cyanide, p. 115; BBC Documentary “Dead in the Water”, minute 46’30”
51.Ibid
52.James M. Ennes, Assault on the Liberty, p. 63
53.Operation Cyanide, p. 224-225; and BBC Documentary “Dead in the Water”, minute 48:30”
54.Operation Cyanide, p. 184
55.Operation Cyanide, p. 185
56.Operation Cyanide, p 180-181, 184
57.Operation Cyanide, p 181-182
58.Operation Cyanide, p 182
59.Operation Cyanide, p 182-183
60.Operation Cyanide, p 183
61.Operation Cyanide, p 183
62.Operation Cyanide, p. 221
63.BBC Documentary “Dead in the Water”, minute 39’20”
64.Operation Cyanide, p. 46
65.Operation Cyanide, p. 47
66.James M. Ennes, Assault on the Liberty, p. 167
67.http://www.ussliberty.org/ecker.htm
68.Operation Cyanide, p. 243
69.Operation Cyanide, p. 192
70.Operation Cyanide, p. 193
71.Operation Cyanide, p. 43
72.Operation Cyanide, p. 46
73.James M. Ennes, Assault on the Liberty, p. 205-206
74.Operation Cyanide, p. 196
75.Operation Cyanide, p. 196-7
76.Operation Cyanide, p. 197
77.Operation Cyanide, p. 199
78.Operation Cyanide, p. 200
79.Operation Cyanide, p. 201
80.Operation Cyanide, p. 201-210
81.Operation Cyanide, p. 268-269
82.The New York Times, December 19, 1967
83.The New York Times, September 7, 1969
84.James M. Ennes, Assault on the Liberty, p. 241
85.Israel’s military power is highly exaggerated. As described by experts, even a non-state entity such as the Hezbollah (Lebanon) was able to challenge Israel’s military power. See, inter alia, Mark Perry and Alastair Crooke, “How Hezbollah Defeated Israel: II. Winning the Ground War”, Conflicts Forum, 27 October 2006

アメリカが軍事力を増強するとき、
イランは地域外交で指導性を発揮する

As US ramps up military force, Iran shows leadership with regional diplomacy

フィニアン・カニンガム

フィニアン・カニンガムは、受賞ジャーナリストで、国際関係について専門に書いてきた。

RT Home/Op-ed/ 2019年5月28日
(翻訳:新見明 2019年7月18日)
<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/460447-iran-diplomacy-us-tensions/


米航空母艦エブラハム・リンカーンの飛行甲板© U.S. Navy/Handout via REUTERS
ギャレット・ラバージ:イラン外相モハンマド・ジャバード・ザリーフは、イラク外相モハメド・アリ・アルハキムと握手する© REUTERS/Khalid Al-Mousily

現在のペルシャ湾での米・イランの膠着状態を書くとき、未来の学者はこう書くかもしれない。近隣諸国への責任ある外交によって、全面戦争から救ったのは、テヘランだったと。

今週いつもの無価値なアメリカの動揺を見た。つまり、米軍は中東にさらなる軍事力を配備して、すでに7万人に達したのだ。

トランプ大統領は、さらに戦闘機や戦艦やミサイルの大隊を派遣した。かれはそれを、イランの脅威に対する「防衛」のためだという。彼はまたサウジアラビアに「緊急事態」と称して、70億ドルの武器売買のサインを済ませた。テヘランは最近の米軍増強を「高度に危険な事態だ」と非難した。

同時にそれと対照的に、イランの外交官は地域を回り、あらゆる国に相互安全保障を継続することを呼びかけた。イラン外相モハンマド・ジャバード・ザリーフはイラク訪問中、全ペルシャ湾岸諸国に反侵略条約を結ぶように促した。それより以前に、ザリーフはパキスタンにメッセージを送った。一方、イラン副外相アバース・アラーグチーは今週クエートを訪問し、同様の協約を申し出た。


(更に読む)Also on rt.com Washington sanctions threaten Middle East security – Iranian Deputy FM

「ワシントンの制裁は、中東の安全を脅かす----- イラン副外相」


イランからの外交交渉の開始は、分岐点となり得る。かつて、イランと2国間関係を持った国々は、スンニ派、シーア派のゆがめられた宗派対立を脇に置き、地域の平和構築に協力できるのか。

もしそれらが危機に対応できるなら、その連帯は、中東におけるワシントンの支配に打撃を与えるだろう。底ではアメリカがイランを近隣諸国と切り離そうと、並々ならぬ根拠のないイランやシーア派代理勢力が「侵略」したという主張を根拠なく繰り返している。つまり、本質的には分割し統治施与の戦術なのだ。

新しい地域協力の兆候は週末のザリーフのイラク訪問の間に見られた。イラク首相アデル・アブドル・マハディはきっぱりと言った。イラクは米軍の威嚇を前にしても、イランと共にある。先週バグダッドは警告した。米軍が、イラン攻撃で我が領土を使うことを許さないと。

イラクの指導者はこうも強調した。ワシントンのイラン制裁はイラク経済にも損害を与えた。さらに、二つの近隣諸国の経済的発展は、欠くことのできないものであり、バグダットをテヘランから引き離そうとする米国の圧力によっては止めることはできないと。

イラクはシーア派イスラム教を信仰していることで、イランと密接な関係がある。しかし文化的・政治的結びつきは宗教より更に大きいものである。2014年にもどって、イランはイラクを助け、アルカイダ・テログループからの国家的安全保障の脅威を和らげた。これらの民兵は、イラクの比較的回復された安全保障状態にとって欠くべからざるものとなった。他の国々も、イランがどのようにイラクを混乱から救ったかに気付いている。その混乱とは、2003年からアメリカの侵略と10年にわたる国の支配がもたらした混乱である。

Pakistan offers to be mediator between US and Iran as threat of large-scale conflict flares up
(さらに読む)
「大規模な紛争の脅威が高まるとき、パキスタンはアメリカとイランの仲介者を申し出る」


イランは、近隣諸国と千年にわたる歴史的絆がある。スンニ・シーアの宗派対立は7世紀イスラムの初期に戻る。しかし分離が血なまぐさい暴力を伴った、有害な宗派対立になったのは比較的最近になってからである。多くのイスラム教徒にとって、宗派対立は嘆かわしく、非難されるべきことである。形式的にスンニ派とシーア派があるにもかかわらず、全てのイスラム教徒は兄弟、姉妹である。中東オブザーバー紙はこう指摘する。有害な宗派対立は、1979年のイラン革命に続いてエスカレートした。米軍がワシントンの傀儡独裁者シャーとともに、イランを追放されたときだ。イラン革命を逆転させる方法として、ワシントンとサウジアラビアのスンニ強行派政権が、シーア派イスラム教徒への緊張と反感を扇動したのだ。サウジ支配者が庇護するイスラム教ワッハーブ派は、他のスンニ派と異なり、シーア派を殺すべき邪宗として中傷している。それが部分的には、なぜアメリカがイランに対するプロパガンダ戦争において、サウジ独裁者を有効な道具として見ているかという理由である。

しかし、イランを「テロ支援国家」として悪魔化するアメリカ主導の絶えざるプロパガンダにもかかわらず、地域関係は修復が聞かないほど毒されてはいない。たとえば、イランはクエートやオマーンやカタールとかなり良好な関係を維持してきた。イランの商業や家族的なつながりはペルシャ湾社会を長く調和させてきた。ところがサウジアラビアは著しい例外として、原理主義支配者や彼らのワッハーブ派の信仰は、イランをネメシス(天敵)と見ている。

カタールに対するサウジ主導の湾岸諸国による封鎖は、2017年に始まり、有効性がなく衰えているにもかかわらず、継続しているが、それはサウジアラビア独裁君主による「ドーハはイランに近すぎる」という主張のためである。トランプ政権は最初、イランに敵対する反射的神経でカタールに向けたサウジ主導の敵対行為を全面支援した。しかし、ホワイトハウスは、それ以来、静かに湾岸諸国の関係改善を支持してきた。それはサウジ主導のカタール封鎖の経済的影響が、多くの分裂を引き起こし、逆効果であることがわかってきたからである。

それが、どのようにイランに対するアメリカとサウジの暴走が、地域経済や地域関係を阻害し、地域の実際の利益になっていないという典型的な例である。

(さらに読む)FM Zarif arrives in India as US-Iran tensions flare up in Gulf FM Zarif arrives in India as US-Iran tensions flare up in Gulf
「アメリカイランの緊張が湾岸で高まるとき、ザリーフ外相はインドに到着する」


古代の歴史的知恵のある中東地域は、何世紀にもわたる共通のイスラム遺産があるのだから、わからなければいけない。企まれたスンニ派・シーア派分裂にもとづくこの何十年もの宗派紛争が乗り越えられなければならないことを。それは、利己的、地政学的理由で焚きつけられているのだ。その地域の国々は、もうわからなくてはいけない。不安定化のペテン師は千年の穏やかな影響を及ぼしてきたイランではなく、ワシントンであることを。

ワシントンが中東に与えてきた荒廃とトラウマは、そこでは誰でもわかることだ。ワシントンの不法な戦争や侵略から宗派対立を燃え上がらせ、政権転覆の手先としてテロリスト宗派を支援支援してきたのだ。ワシントンが、パレスチナ人の権利を卑劣にも抑圧していることは、何十年もの軍事支援と欺瞞的な政治的拝跪で不法占拠をするイスラエルを支援してきたことから言うまでもない。

シリアは、他宗教、多文化国家であるが、アメリカとその共謀する宗派によってほとんど破壊されてきた。切迫した運命からシリアを救うために介入したのは、ロシアと共にイランであった。イランは同様の任務をイラクで達成した。

だから今、イランの、スンニ派、シーア派にこだわらず、全ての国による地域協力と連帯の呼びかけが、アメリカとの現在の危険な膠着状態から抜け出すきっかけとなるかもしれない。もし、かなりの国々が、今週出現したイラク・イラン反戦基軸に加わるなら、その時アメリカの紛争を引き起こす野望は決定的に阻止されるかもしれない。

イラクとイランは1980年代に戦争をしたが、それは主に、イラン革命を打ち破ろうとするアメリカの陰謀によって引き起こされた。しかし今、二つの国は中東における新たな連帯の可能性を示している。

さらに宗派的提携によるのではなく、近隣の共通利害による新たな地域連帯が、長く中東を傷つけてきた有害なアメリカの介入から離脱できる可能性を秘めている。

アメリカがイランとの戦争をするのに好都合な「タンカー攻撃」

Convenient “Tanker Attacks” as US Seeks War with Iran

トニー・カタルッチ

グローバルリサーチ 2019年6月13日

ニュー・イースタン・アウトルック
(翻訳:新見明 2019年7月13日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/convenient-tanker-attacks-as-us-seeks-war-with-iran/5680510


– Brookings Institution, “Which Path to Persia?” 2009

    「・・・、もしアメリカが攻撃前に、空爆を正当化するためにイランの挑発
    を非難できたらさらに好都合だろう。イランの行動が、明らかに非道で
あればあるほど、致命的であればあるほど、そして正当な理由がない
    ほど、アメリカにとっては好都合だ。もちろん世界の他の国々が、世界
    を破滅に導くこのたなくらみを認めかったら、アメリカはイランをそのよう
    な挑発に駆り立てることはきわめて難しいことだろう。」(強調あり)
      ブルッキングス研究所「ペルシャへはどちらの道を?」2009年

アメリカが一方的にいわゆる核合意から離脱してから、二度目のホルムズ海峡近くの石油タンカー「攻撃」とされるものを、欧米の報道はイランと結びつけようとしていた。

ロンドン・ガーディアンの「2隻のタンカーがオマーン湾で攻撃される」という記事では、次のように主張されている。

    2隻のタンカーが、オマーン湾で攻撃されたとされている。乗組員は
    避難した。1ヶ月前、同様の事件として4隻のタンカーがその地域で
    攻撃された。

その記事はまた主張した。

    アメリカが、テヘランに「最大限の経済的圧力」を加えて、湾岸の緊張
    は、この数週間沸点に近づいていた。それはテヘランに2015年核合意
    交渉を再開させるための圧力だが、アメリカは去年、自分の方から離
    脱したのだ。

    イランは繰り返し、その事件にはまったく関与していないし、いかなる代
    理勢力にも湾岸の船やサウジの石油施設を攻撃する指示を出していな
    いと述べた。

ガーディアンが認めたところでは、5月の攻撃のUAEによる調査では、「精巧な魚雷」が使用されていたが、イランが犯人であることを示すには不十分であるとのことだった。

その記事はまた、ジョン・ボルトン米国家安全保障アドバイザーが、何の証拠もなしに、イランが「ほぼ確実にかかわっている」と主張している、と書いている。

全てがあまりにも好都合だ

ホルムズ海峡近くの石油タンカー「攻撃」のニュースは、アメリカによってイランが非難され、イラン経済に圧力を掛け、さらにはイランの政権を転覆しようとするワシントンが、さらなる追加制裁をするのにあまりにも好都合である。

アメリカは最近、イラン石油を買う諸国の猶予期間を終わらせたばかりだ。日本、韓国、トルコ、中国、インドなどの国々は、イラン石油を輸入し続ければ、アメリカの制裁に直面することになる。

時を同じくして、今週「攻撃された」船の一つが「日本向けの積み荷」を運んでいたと、ガーディアンは報道した。

また好都合なことに、アメリカはイラン革命防衛隊(IRGC)をテロ指定したすぐ後に、イランのせいにされるこの一連の挑発が起こってくれたのだ。

2019年5月のAPの記事「トランプ大統領は湾岸で破壊された石油タンカーで、イランに警告を与える」の中で、次のように主張している。

    中東に停泊していた4隻の石油タンカーは、湾岸当局によれば、破壊
    活動によって損傷を受けたということだ。しかし、火曜日のAP通信によ
    る衛星画像では、船体に大きな損傷は見られなかった。

2隻のタンカーはサウジ船籍で、1隻の船はUAE船籍で、もう一つはノルウェー船籍とされる。記事はまた主張している。

    ワシントンのアメリカ当局は、何の証拠も示さず、APに語った。米軍の
    最初の評価は、イランもしくはその同盟者が爆発物を使用して、船体に
    穴を開けたのだと。

そして、

    アメリカは既に、「イランとその代理勢力」が、その地域で海上交通を
    狙っていると船に警告してきた。アメリカは、テヘランからの脅威とされ、
    未だ特定されない脅威に対抗するために、航空母艦やB-52爆撃機を
    ペルシャ湾に派遣した。

これに続く最近のさらなる事件は、その地域で米軍の増強を続けるために、さらにアメリカによって利用されるだろう。そしてイランに圧力をかけ、全世界をイランとの戦争に向けて動かすことになる。

アメリカは、イランとその同盟軍に対する進行中の代理戦争を支援するために、既に中東に勢力を配備し、テヘランとの通常戦争を準備している。

これらのこと全ては、ワシントン支援勢力は決定的に敗北したシリアにおける代理戦争の数年後に、アメリカとイランのさらなる直接対決に向かうことになる。

それは又、10年前から行われ、どの大統領も実行してきたイランに関する長期的アメリカ外交政策の継続でもある。

ワシントンの長期計画

制裁の継続と猶予期間の消滅は、ワシントンの包括的共同作業計画(JCPOA)、又は「イラン核合意」からの一方的離脱の一部である。この合意は2015年に調印され、2018年にアメリカが離脱した。

その決定はバラク・オバマ元大統領とドナルド・トランプ現大統領の政治姿勢の違いとして描かれているが、実際は、計画の提案、調印、それからアメリカによる離脱は、長く追求されてきたイランとの戦争を正当化する手段として、2009年から詳細に計画されてきたことだ。

「ペルシャへの道:イランに向けたアメリカの戦略の選択肢」という2009年の論文で、企業支援のブルッキングス研究所は、アメリカ主導のイラン軍事侵略の陰謀を最初に認めている。

    ・・・イランに対するどのような軍事作戦も、世界ではきわめて不人気
    で、適切な国際的文脈、つまり作戦が必要とする兵站支援を確保し、
    その反動を最小限化することが求められだろう。

それからその論文は、どのようにアメリカが世界に対して平和構築者として現れるか、そして「きわめてよい取り引き」をイランが裏切ったか、だから米軍がしぶしぶ行動したという言い訳としてどのように描くかを展開している。

    国際的非難を最小化し、支持を最大化する最良の方法は(たとえ不承
    不承であろうと、秘密裏にであろうと)、イラン人が、素晴らしい提案を与
    えてもらったのに、拒否したという認識が広まったときにのみ攻撃するこ
    とだ。つまりその提案は、とても素晴らしく、一つの体制のみが核兵器を
    得て、それらを間違った理由で取得することを決めたのだが、それを拒
    否したのだ。これらの状況下で、アメリカ(もしくはイスラエル)は、その
    作戦を悲しみに浸り、怒りではなく、少なくとも国際社会のいくつかが、
    イランはとてもいい取り引きを「自ら拒否したのだ」と結論するだろう
    と考えている。

そして2009年以降ずっと、これは正にアメリカが成し遂げようとしてきたことだ。

まず2015年のオバマ大統領の核合意調印からトランプ大統領の離脱の試みまでが、イランは合意を遵守しなかったという、ねつ造された主張に基づいていた。

2009年の政策論文はまた、イランを戦争に駆り立てることを論じて、次のように主張した(強調あり)。

    挑発によって、(イラン)侵略の国際的かつ国内の政治的必要条件は
    緩和されるだろう。そしてイランの挑発がひどければひどいほど(そして
    アメリカがイランを刺激するのが少なければ少ないほど)、これらの非
    難は減少するだろう。かなり恐ろしい挑発がないと、これらの必要条件
    を満たすことは難しいだろう。

直接言及しなかったが、イランを戦争に駆り立てるワシントンの方法は、明らかにアメリカが単に「イランの挑発」自体をねつ造することだろう。

アメリカがベトナムでトンキン湾事件に続いてしたように、または、イラクが「大量破壊兵器」をもっているとアメリカがねつ造したように、ワシントンは挑発を挑発するだけでなく、それ自体を実行してきた経歴がある。しかしブルッキングズ論文でさえ認めているが、イランがワシントンの罠に引っかかることはありそうもないと、次のように述べている。

    ・・・確かに、もしワシントンがそのような挑発を追求するなら、テヘランが
    そうせざるを得ないように、さらなる行動をとるだろう(このことについて、
    あまりにも明白である事が、挑発を無効化するかもしれないが)。しかし、
    挑発的動きをするかどうかは、イラン次第で、イランは過去に何度もそれ
    らの挑発にうんざりしてるので、アメリカは、いつイランが挑発してくるか、
    決してわからないだろう。

5月のUAE沖での石油タンカー破壊とされるものや、今度は今月のさらなる「攻撃」は、一連の計画された挑発の始まりであり得る。それは、最近IRGCをテロリストリストに加えて更にてこ入れすることを狙ったものだ。そしてアメリカ自体がイラン合意から離脱した後、制裁の再開して、さらなる経済的圧力を増大させることであった。

戦争への共同作業

アメリカはイランをさらに追い詰めるために、「イランの破壊」という5月の主張にてこ入れしようとした。ワシントンが望むのは、戦争か、あるいは少なくとも差し迫った戦争への脅威が、有害な経済制裁と共に、イラン内部の政治的・武力反乱を支援して、イランの政治的秩序を分断し、破壊をする共同作業をつくり出すということだ。

より広い地域的文脈でアメリカは、特にイラクでイランの影響が増していて、軍事的にはシリアで、イランやロシアが永続的・実質的足場を築き政治的敗北を経験してきた。

その後退にもかかわらず、ワシントンのテヘランに対する計画が成功するかどうかは、未だ政治的、経済的刺激を与えるアメリカの能力にかかっている。それはイランを孤立化させるために、同盟国や敵も同様に恐怖を伴って効果的に行われる。

これが成功するかどうかは疑問が残る。代理戦争とともに何十年にもわたるアメリカの制裁が、秘密裏であれ、公然とであれ、侵略はイランを粘り強いものにし、その地域でかつてよりさらに影響力をもつようになった。しかしその地域のイラン分断、破壊の種をまくワシントンの能力は、過小評価されるべきではない。

中東における米軍の圧力の意図的な増強やイランをねらった経済制裁は、アメリカの政策立案者が、イランを分断し、傷つけようとしていることを示してる。それは地政学的ねらいが達成されるまで、又は、新しい国際秩序が、中東でつくり出されるまで続くだろう。そして世界経済を通じて、イランに対する体制転覆がなされるまで続くだろう。

トニー・カタルッチはバンコクを基盤にする地政学研究者であり、著述家である。特にオン・ライン雑誌「New Eastern Outlook」に書いている。彼はグローバル・リサーチの常連寄稿者でもある。

(更に読む)「アメリカはイランを脅す。「政策の見直し」計画と新体制が権力に就くまでの取り引き」


この記事の出典はNew Eastern Outlookである。

トランプはイランの核を非難するが、一方、
サウジは原爆を獲得しようとする危機

Trump accuses Iran over nukes, all the while risking Saudi regime acquiring the bomb

RT Home/Op-ed/ 2019年6月13日

(翻訳:新見明 2019年7月7日)

<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/461797-saudi-iran-nuclear-weapons/

フィニアン・カニンガムは受賞ジャーナリストで、国際問題を専門に執筆している。


© Getty Images / Richard Newstead

トランプ政権は、サウジアラビアに機密核技術を与える無謀な道を歩もうとしているようだ。それは、この悪名高い体制が大量破壊兵器を手に入れることにつながる。

これは、トランプ大統領が、テヘランは密かに核兵器を開発しようとしていると、イランの軍事的脅威を激しく非難しているときにだ。

この二枚舌には唖然とさせられる。トランプ政権は、核拡散を阻止する中東の警察官のふりをしている。ところが実際は、核兵器競争を焚きつけ、戦争の危機を高めているのだ。

明らかにサウジアラビアは、石油の将来が戦略的挑戦を受けたとき、民間エネルギーや水需要を調節するために、原発建設の野心を持っていることは明かである。アメリカとロシア、韓国を含む他の数カ国は、これら数十億ドルもする原発建設の契約を争っている。 

トランプ政権は機密技術をサウジに与えるため、原子力会社に許可を与えるように推し進めていることがいま明らかになっている。警戒すべきは、ホワイトハウスが秘密裏にそれを行っていることである。それは国家安全保障規定に基づく議会の監督を無視するものである。


さらなる懸念の元は、トランプ政権がサウジに核兵器技術のノウハウを与えているらしいことだ。彼らは、市民のエネルギー利用が核兵器計画とは厳密に区別されているという主張を押し通している。気がかりなことは、トランプ政権が、その曖昧性を気に掛けていないように思えることだ。アメリカ政府はサウジの核技術承認を推し進めている。

サウジアラビアの血気にはやるモハメド・ビン・サルマン王子(MbS)は去年アメリカメディアに語った。「もし」イランがそうすることになったら、我が国は核兵器獲得競争に参加するだろう。MbSが、トランプ政権やイランを宿敵と考えるイスラエルに近いとするなら、テヘランが秘密裏に核兵器計画を推し進めていると、サウジの支配者たちがすでに考えていると想定される。

イランは、核兵器製造の訴えを絶えず否定してきた。イランが、核兵器への応用を禁止する2015年国際核合意を遵守していることは、IAEAの一ダース以上の国連調査報告からも証明されている。

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Also on rt.com If Iran wanted nukes 'America couldn't do anything about it' – Ayatollah Khamenei
(さらに読む)たとえイランが核を望んでも、アメリカは何も言う資格がない


しかし、それでもイスラエルやトランプ政権は、絶えずイランが核開発をしていると主張するのを止めなかった。代わりにそれは、サウジの支配者が原子爆弾を製造する決定をしたことを意味している。

他にもいくつか、核兵器競争が中東の道を阻害することを恐れる理由がある。

トランプのホワイトハウスは、サウジアラビアのおびただしい人権侵害批判にもかかわらず、機密核技術をサウジアラビアに与えることを可能にしている。その人権侵害の記録は絶えず悪名高くひどいものである。トランプ政権では、新たな深みに陥っている。

恐ろしいサウジのイエメン空爆や市民の死者数のために、アメリカ議会は武器販売を禁止するように促した。しかし、ちょうど先月、トランプはその制限を迂回して、数十万ドルの兵器販売を宣言した。それはイランからの地域安全保障の脅威から、「非常事態」のためと称して行われた。

さらにいらだたしい報告は、ジャマル・カショギが去年10月イスタンブールのサウジ領事館で残忍に殺害された数週間か数ヶ月後、ホワイトハウスが核技術移転を承認したことである。それは、アメリカのCIAも、MbS王子が殺害にかかわっているという結論しているにもかかわらずだ。

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Also on rt.com CIA says MBS ordered Khashoggi hit, but don’t expect Saudi-US relations to change – John Kiriakou
(さらに読む)CIAは言う。MbSがカショギ殺害を命令した。しかし、サウジ・アメリカ関係が変わることを期待してはいけない。---- ジョン・キリアコウ


もしこれらの痛ましい懸念のいずれも、トランプ政権のサウジ体制への甘やかしを止めることがないのなら、サウジは、核兵器を含めてしたいことは何でもできる白紙手形をもっていると考えられる。

トランプ大統領が原子爆弾をサウジに持たせることは、もちろん、不法行為に満ちあふれている。それは、原発の核兵器転用を禁止している1970年の核不拡散条約の全面的違反である。

またアメリカの法律の問題もある。トランプ政権は、サウジとの怪しい取引で議会に不意打ちを食らわせているようだ。それは、大統領が議員に国際的核協力の情報を知らせるように命令する原子力法に違反している。

しかしトランプが核拡散や武器管理を軽率に扱ったことは、別段驚くべきことではない。トランプ政権は、去年一方的にイラン核合意を破棄した。そして1987年にロシアとの中距離核兵器禁止条約から撤退した。ロシア大統領プーチンは、先週述べた。「トランプ政権はまた第二の主要な兵器制限条約を考えているようだ。新しいSTARTだって。もう崩壊しているのに。」

だからトランプが、世界規模で、核兵器を取り除こうと表明しても、武器競争を刺激することにまったく無関心である事を、あらゆる指標は示唆している。

サウジアラビアは核兵器を取得しつつあることに、アメリカの両党の議員が根拠ある警告を発している。最近の報告では、サウジは中国から技術移転され、弾道弾ミサイル能力を増強した。もしそれが確立されたら、次のステップはこれらのミサイルに核弾頭をつけることである。トランプ政権は、サウジがそれを達成する道を切り開いているようだ。


Also on rt.com Saudi arms sales may be at center of the next showdown between Trump and Congress
(さらに読む)サウジの武器売買は、トランプと議会の次の山場となるかもしれない。


トランプ大統領のサウジ王朝へのどうしようもない叩頭は、彼が大統領職を終えた後を見据えて、中東におけるトランプ・ファミリーの商業帝国を拡大しようとしているのではないかという疑念をもたらした。

他にも二つの動機の可能性がある。トランプと彼の義理の息子ジャレッド・クシュナーは、イスラエル・パレスティナ紛争をまとめた「世紀の取り引き」で歴史に残りたがっている。過大評価されて、待つこと久しい「取り引き」は、パレスティナ人権の汚い売り渡しとみられている。広いアラブ世界で受け入れられるために、トランプとクシュナーは、サウジに承認の印を与えることが必要だ。それがトランプのホワイトハウスが、サウジに「大きな原爆賞」をせがむ一つの要素になり得る。

もう一つの動機は、トランプが、サウジとシーア派イランへの骨肉の憎しみを、「究極の圧力道具」として使うことである。もしイラン人が、ワッハービ実力者が核兵器を獲得するとわかれば、トランプは、それがイランを交渉のテーブルに引き出し、戦略的譲歩をさせると計算しているかもしれない。トランプがずっと推し進めてきたように。

ここで再び、イランは別の道を行くかもしれない。核兵器の長期的拒否をやめるかもしれない。そしてサウジ体制からの実存的脅威を避けるために原爆を作るしか選択肢がないと決意するかもしれない。

いずれにしろ、それはすべてトランプのホワイトハウスが、地域の平和と安全保障のためだというのを嘲笑するものだ。この政権は犯罪的に破滅的な戦争の可能性を煽っている。

イスラエルによる「リバティ-号攻撃」(1967年)
の真相とそこから学ぶべき教訓

Israel’s Attack on The USS Liberty: An Act of War, A False Flag, A Gross Betrayal
What We Should Have Learned from the Attack on USS Liberty


クレイグ・マッキー 

グローバル・リサーチ(2019年6月9日)

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年7月6日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/what-we-should-have-learned-israels-attack-uss-liberty/5680016



これは大半のアメリカ人が、実際は大半の世界中の人が、一度も耳にしたことがない最大の虚偽のひとつだ。 そしてこの虚偽は、アメリカとアメリカの「一番親密な同盟国」のひとつであるイスラエルとの間のほんとうの関係はどうなのか、について多くのことを暴露している。

これはれっきとした戦争行為だった。 偽旗作戦攻撃あり、大量処刑あり、戦争犯罪あり、おぞましい裏切り行為あり、さらには今日まで続く欺瞞とプロパンダ作戦の始まりでもあった。

50年前に遡る。 イスラエルはアメリカの情報収集艦リバティ-号に驚くべき野蛮な攻撃を仕掛けた。 リバティ-号はシナイ半島とガザ沿岸の公海上を航行していた。 この50年、アメリカとイスラエルの両政府は、主要メディアも同様だが、醜悪で見え見えの隠蔽工作を行い、この出来事はたんに「悲劇的な事故」で、「相手を取り違えた」ケースにあたるという嘘を支持してきた。 

しかし、生存者たちはそれが事故なんかではないことを知っている。

1967年6月8日の午後、空には雲ひとつなかった。 ほぼ2時間に亘り、イスラエル軍はあらゆる手立てを講じ、リバティ-号を撃沈させ、294人の乗員(うち3名は民間人)を皆殺しにしようとした。 この作戦は成功しなかった。 しかし攻撃終了時には34名の乗員が死亡し、171名から174名(情報源によって差がある)の負傷者が出た。 イスラエル機は、午前6時にはリバティ-号を、確実にアメリカ船と認識していた。 その8時間後攻撃が始まった。

リバティ-号は大きなアメリカの旗(生存した乗員全員が確認している)と船体には非戦闘艦であることを示すはっきりとした標識があった。 このリバティ-号が攻撃されたのは、イスラエルがエジプト、ヨルダン、そしてシリアへ仕掛けた「六日戦争」の4日目である。 米国防総省のスパイ船であるリバティ-号は、ありとあらゆる最新式監視機器を装備しているので、この海域でそれ以外の船と見られることはなかった。

リバティ-号の任務は地中海へ航行し、アラブ・イスラエル紛争に関する情報をモニターすることだった(ただし、その正確な使命が何であったかは今も極秘)。 午後2時、高速で飛行する複数のジェット戦闘機から発射されたロケット弾がリバティ-号に命中した。 悪夢は始まったばかりだった。 

複数のロケット弾、機銃射撃、そしてナパーム弾までリバティ-号に撃ち込まれた。 8名の船員がこの最初の攻撃で死亡した。 リバティ-号は第六艦隊に救援の連絡を取ることができなかった。 緊急事態用周波数は妨害されていたし、通信機器はひどく破損したか、完全に破壊されていたからだ。 しかし、少し時間を置いて、一人の勇敢な乗員が命の危険を冒し、応急処置を行った。 その結果、SOSが同じ海域にいた米軍艦サラトガ号とアメリカ号に発信された。

飛行機が即座に派遣され、リバティ-号の救援に向かった。 パイロットはその時点で、リバティ-号を攻撃した飛行機と船を破壊してもよい、との許可を得ていた。 しかし、現場に到着することもできていないのに、帰還せよとの新たな命令が下された。 イスラエル機によるリバティ-号への攻撃は継続中だったにもかかわらず。 

飛行機による攻撃が約35分続いた後、3隻のイスラエル艦が現場に到着し、魚雷を撃ち始めた。 一つがリバティ-号に命中。 新たに26名の乗員が死亡。 約40フィート(120センチ)の穴が船体に空いた。 加えて、機銃掃射が消火活動をしていた乗員と負傷者をストレッチャーに載せて運んでいた救助隊員に向けられた。 イスラエル艦からは、瀕死の重傷を負った乗員を救助すべく水面に下ろされた救命ゴムボートにまで、銃弾が撃ち込まれた。 船を離れよ、との命令は撤回せざるをえなかった。

2005年、「リバティ-号退役軍人協会」は一つのレポートを陸軍大臣に送った。 「報告:1967年6月8日にアメリカ軍人に対して犯された戦争犯罪について」がその表題だ。 このレポートを読めば、リバティ-号が沈没する前に、なぜ攻撃が終結したのかの経緯がわかる。

「第六艦隊が派遣した救援機に交戦規定を送信した直後、イスラエルの魚雷艇は突如攻撃を打ち切り、リバティ-号が救援を必要としているかどうかを問い合わせるメッセージを転送した。 同時に、イスラエルの海軍将校が在テルアビブアメリカ大使館付き海軍武官に、イスラエル軍が誤ってアメリカ海軍の船を攻撃したことを告知し、謝罪した。 この海軍武官は合衆国第六艦隊に通知。 救援機は攻撃現場に到着する前に帰還を指示された。」P.8

大半のアメリカ人は、同盟国であるイスラエルが同じ同盟国のアメリカに対して今回行った戦争行為について、完全に蚊帳の外に置かれている。 アメリカのメディアがこの事件についてほぼ完璧に口を閉ざしていることが主な理由だ。 階級の高い軍人やエリート官僚がいろいろ発言をしているのに、それは実質的にどこからも注目されない。 研究者のアリソン・ウィアが「If Americans Knew」というネットサイトに記事を一本載せている。 「メディアの沈黙」についてだが、一読に値する。 ちなみにアリソンはパレスチナとイスラエルの歴史について幅広い著作がある。 

「理由はどうあれ、アメリカのニュースメディアが良心に目覚め、イスラエルについて真っ当な報道をしない限り、(中東という)世界で最も不安定な、悲劇的な、そして破滅的な結果にもなり得る紛争地域の一つについてアメリカ人が得る情報は、これまでと同様、どうしようもないほど誤ったものであるだろう。」

2015年2月からのWashington’s Blog上の記事は、自分達がアメリカの船を攻撃していることをイスラエルは十分すぎるほど知っていたという証拠をまとめ上げている。

「最近機密解除されたイスラエルの攻撃隊と地上管制との無線交信記録に依れば、イスラエル機のパイロットは船がアメリカ船であることを最低3回確認し、本当に攻撃していいか地上管制に聞いている。 地上管制は、『そうだ、その船を攻撃せよ』と答えている。」

また、この記事に依れば、イスラエルがこうした攻撃を行った目的は、エジプトがやったことと見せかけ、できればアメリカをこの戦争に引きずり込もうとする一連の流れがあった。 

一般のメディアはこのテーマについて報道していないが、ひとつ例外がある。 それは2007年のボルチモア・サンの記事だ。 それは攻撃しているのがアメリカの船であることをイスラエル機が知るにいたった経過と、それを機密解除された政府文書で確認していった経過をかなり詳細に論じている。 

「(この機密解除文書を読むと)米国家安全保障局が、攻撃したイスラエル機のパイロットの交信をなぜ一度も傍受しなかったのか、についての疑問が強まる。 この交信記録に目を通した記憶のある人によれば、自分達がアメリカ海軍の艦船を攻撃していることをイスラエル機のパイロットが分かっていることを示す交信記録である。 

「この文書が同時に言外に語っているのは、アメリカ政府はこの事件を、重大な欠陥を含んだ駆け足的調査(この調査に参加した人の中にも、そんな調査だった、と現在言っている人がいる)をもって終結させた、ということだ。 アメリカ政府としてはどうしてもイスラエルの評判を守りたかったし、同盟関係を維持したかったのだ。

ワシントンで改ざんされた調査結果

1967年、イスラエルの米艦リバティ号への攻撃

米海軍査問会議が、リバティ-号事件直後招集されたが、事件査定のために与えられた時間はたった1週間だった。 37年間 この査問会議の上級法律顧問だったウォード・ボストンJr大佐はこの事件と性急な調査についての自分の気持ちを他へ漏らさなかった。 しかし、政府の隠蔽を支持するジェイ・クリストル著『リバティ-号事件』が書かれると、ボストンはどうしても発言しなければ、と感じた。

ボストン大佐が暴露したのは、ジョン・S・マケイン提督(前大統領候補ジョン・マケインの父)は、欧州におけるアメリカ海軍総司令官だったにも関わらず、彼と査問会議議長だったアイザック・C・キッドの、リバティ-号攻撃に関与した人物の尋問のためにイスラエルに行くことを許可して欲しい要請を拒絶したことだった。 負傷して審問に出席できないリバティ-号乗員の尋問ができないか、という要請も拒絶された。  

2004年1月の声明においてボストンはいくつかの信じがたい告発をしている。 その中には、査問会議の最終報告がワシントンで変更された点も含まれている。 イスラエルを免責するためだ。 

「証拠ははっきりしていました。 キッド提督と私の信念は確固たるものでした。 34名のアメリカ水兵を殺害し、他172名を負傷させた「リバティ-号事件」は意図的にアメリカ船を沈没させ、乗員全員を殺害するたくらみがあったのです。

攻撃を遂行したイスラエル人パイロットも、攻撃を命令した上官もリバティ-号がアメリカの船であることを十分知っていたことに私は何の疑いも持っていません。 

私の怒りが収まらないのは、イスラエルを擁護しようとして、この攻撃は「誤認」によるものだ、などと言う輩がこのアメリカにいることです。 

キッド提督が私に言いました。 ワシントンに戻るとホワイトハウスと国防総省から派遣された文官と同席し、査問会議の調査結果の一部を書き換えるよう命令を受けた、とのことです。

キッド提督は、リバティ-号攻撃に関するすべてのことに「蓋をする」よう命令を受けた、とも言いました。 私たちはこの事件に関して口にすることは絶対に許されませんでした。 また、他の関係者全員にも二度とそのことを口にできない、という警告をしなければなりませんでした。

2004年の私の声明が正しいことを疑う理由を私は持っていません。 一般に公開した査問会議の記録は、私が間違いないと確認し、ワシントンに送付したものと同じではないことを私は知っているからです。」

ボストンの結論:

「政府の隠蔽工作を支持する著作を発行したジェイ・クリストルや他の連中が提示しているデマ情報とは反対に、アメリカ人が真実を知ることは重要です。 はっきりしているのはイスラエルに責任があって、意図的にアメリカ船を攻撃し、アメリカ人の船員を殺害しました。 残された同僚の船員はこういったとんでもない結論を押しつけられて何年も生きてきたのです」

忘れてならないのは、この件を実際に非難している何人かの著名人がいることである。 たとえば、国務長官のディーン・ラスクとトーマス・H・モーラーだ。 モーラーはリバティ-号攻撃の直後、統合参謀本部議長に指名されている。 

1967年6月10日の外交文書で、ラスクはイスラエル大使に書簡を送っている:

イスラエルの魚雷艇が引き続き攻撃を行ったのは、イスラエル軍がリバティ-号の所属を確認、あるいは当然確認したであろう直後と言ってもいいタイミングでした。 これが同じく重大な人命無視であることははっきりしています。 ….リバティ-号は平和的な任務に就いていました。 魚雷艇にいかなる脅威を示すこともありませんでした。 戦闘能力を与える武器を何一つ積んでいなかったこともはっきりしています。 そのことは魚雷攻撃をする前に、視覚的に、近距離で精査することはできましたし、そうすべきだったでしょう」

モーラーは2004年に亡くなったが、1997年に次の声明を公表している:

「イスラエルはリバティ-号がアメリカの船であることを熟知していました。 何と言っても、リバティ-号に掲げられたアメリカの国旗と標識は、同艦の上空を8回飛行したイスラエル機には完全にはっきりと見えていたのです。 その飛行を約8時間以上も継続した後、攻撃が行われました。 これは確信を持って言えますが、イスラエルは進行中の『六日戦争』の当事国や潜在的当事国からの無線通信をリバティ-号が傍受できることを知っており、今回のことは戦争開始から4日目に起きています。 そのイスラエルはゴラン高原をシリアから強奪する準備をしていました。 ジョンソン大統領がそのような動きに反対していたことは知られていました。 私の考えではイスラエルにはわかっていたのです。 もしアメリカが事前に彼らの計画を知っていれば、テルアビブとワシントンの間の交渉が、途轍もないものになることを。

「モーシェ・ダヤン将軍が次のように結論づけたというは私の確信です。 イスラエルの計画をワシントンに気づかれないためには、この情報を真っ先に入手するリバティ-号を破壊することだ、と。 結果的に卑劣で残虐な攻撃となり、34名のアメリカ人水夫が死亡し、171名が瀕死の重傷を負いました。 背筋が凍り、血の気が引いてしまうのは、イスラエルが秘密裏に34名ものアメリカ人を殺害することができたことであることは言うまでもありません。 国民がどんな抗議の声を上げようとアメリカ政府はその沈静化に協力するだろう、という自信がイスラエルにはあったのです。」

故意の殺人

モーラーは、生前、「イスラエルによるリバティ-号攻撃、攻撃中に派遣された軍救援機の呼び戻し、そしてそれに続くアメリカ政府の隠蔽工作」を調査する「独立査問会議」に参加していた。 その日の出来事を精査するために立ち上げた学識経験者から成る会議だ。 他のメンバーとしてはレイモンド・G・デイビス将軍、メルリン・ステアリング海軍少将、そしてジェイムズ・エイキンズ大使(元在サウジアラビア米大使)がいた。

最も衝撃的な会議の調査結果:

①  イスラエルの攻撃は米国船を破壊し、乗組員全員を殺害する意図的な攻撃だったという有力な証拠がある。

②  リバティ-号攻撃でイスラエルはアメリカ軍人を殺害し、アメリカに対する戦争行為を行ったことになる。 

③ イスラエルとの摩擦を恐れ、ホワイトハウスは米海軍がリバティ-号防衛に向かうのを意図的に止めた。 リバティ-号が攻撃されている最中、第六艦隊が軍事的支援に向かうのを呼び戻したのだ。 

④ リバティ-号がほぼ完全な破壊から救われたのは、同艦の大佐ウィリアム・マゴナーグル(衛生隊員)と彼の配下の勇敢な隊員たちの英雄的な奮闘のお陰だが、生き残った隊員達は、後に、もし真実を暴露すれば「軍法会議、刑務所行きあるいはそれ以上のことを覚悟しろ」との脅しを受けた。 そしてわが国の政府は彼らを見捨てたのだ。 

⑤ アメリカにおけるイスラエルの強力な支持者達の影響力で、ホワイトハウスは意図的にこの攻撃の事実をアメリカ国民の前から隠蔽した。 

⑥ アメリカで活動する親イスラエルロビーの継続する圧力で、この攻撃だけが議会による徹底調査のない海軍の重大事故となっている。 今日に至るまで、生存乗組員は公式の場で、この攻撃について公の場で証言することは許されていない。

⑦ アメリカ海軍の歴史の中で前例のない政府サイドの隠蔽工作となっている。 そういった隠蔽工作があることは、海軍少将(退役)で元海軍法務総監のメルリン・ステアリング、そして海軍大佐(退役)で1967年に立ち上げられた査問会議の主席法律顧問だったウォード・ボストンの声明で現在裏付けされている。 

⑧ イスラエルの攻撃とその後のホワイトハウスの隠蔽工作についての真実は、今日に至るまで、公式には、アメリカ国民には隠されたままである。 それはアメリカという国の名誉を損ねることになる。

⑨ 国民が選出した役人や政治家がアメリカの利益よりも外国の利益を進んで優先させたりする時、わが国の安全に対する危機はいつも存在する。 両国の利益が合致しないが、イスラエルの利益に反対できないときは特にそうだ。 

前述した「リバティ-号退役軍人協会」のレポートは一連の出来事を生存者の観点からまとめている。 とても説得力のある内容となっている。 その結論:

「アメリカ政府がイスラエルのリバティ-号攻撃について完全な調査をしなかったことは、結果的に、生存者をたいへん傷つけることになった。 そして全ての乗組員の家族も同様である。

同様に軽視できないのは、この不作為が結果的にアメリカ合衆国の名誉に消しがたい染みをつけてしまったことである。 アメリカの軍務に服する男女に、自分達の幸福よりは外国の利益が常に優先されるというシグナルを送ってしまったことになる。 この不作為について考えられる唯一の理由は、イスラエルの利益をアメリカの軍人、従業員、そして退役軍人のそれより優先するという政治的な決定があったからだ。」(P.32)

このレポートにはまた、リバティ-号に乗務していた退役軍人達が、イスラエルとその支持者達から悪意のある攻撃を受けていた様子が書かれている。 20ページには、その攻撃の犠牲者達が今日に至るまで不当な扱いを受けている様子の記述がある。 

「イスラエルの意向を受けたPRキャンペーンの結果、リバティ-号の生存者達は、攻撃が意図的なものだったと言明していること、彼らが正義を求める動きをしていることに対して中傷の対象となっている。 「ネオナチ」、「反イスラエル」、あるいは「陰謀理論信奉者」などというレッテルが張られている。 彼らが望んでいるのはリバティ-号と自分達に向けられた攻撃の嘘偽りのない、オープンな調査に他ならないのに。」

生存者と死亡した乗組員の家族には金銭的な補償が支払われた。 しかし、攻撃に参加したイスラエル軍兵士は誰一人処分されていない。 

The Jewish Virtual Library[ユダヤの真の解放]というウェブサイトが、イスラエルは事前に周到な計画を立てこの攻撃を遂行したという、高まる疑問をまとめた論文を掲載している。 この論文には証拠についての相当公明正大な評価が書かれていると思うが、こんな記述も出てくる:

「浮かび上がってくる図柄は犯罪に関わるものでは全くない。 いわんや刑事過失なんかでもない。 アメリカとイスラエルの双方において、①情報伝達がうまくいかなかったこと、②人為的なミス、③不運な巡り合わせ、そして④装備の故障、などが連動したということだ。 戦争のどさくさの中ではよくあることだが、悲劇的で愚かしい誤謬の類いだ。

イスラエルの「リバティ-号攻撃」への査問法廷は、政府サイドの隠蔽の域を超えていなかった。 その結論は、リバティ-号は所属を示す旗をまったく掲げていなかった、というものだ。 しかし、リバティ-号に乗船していた乗員は全員、「最初5×8フィートの旗を掲げていたが、攻撃で、それは破損され、二番目に大きな旗と差し替えられた」と証言している。 査問法廷のもう一つの結論は、どこかの戦艦がシナイ半島のイスラエル陣地を砲撃していたことが混乱と一連の誤りに繫がった、というものだ。 

私たちは何を学んだか?

この論文をお読みの多くの方々は、「リバティ-号事件」が何を意味するか、うすうすお分かりになっただろうと思う。 これが恐らく「リバティー号事件」の全容なのだが、それに目を通され、①地政学について、②偽旗作戦について、③どのように権力が嘘とプロパガンダの霧の中でいかに行使されるかについて、ご理解を深められたことと思う。 イスラエルとシオニズムの歴史、そして、パレスチナ人に対して過去70年間どんなことがなされてきたか、についてもご存知かもしれない。

しかし、こういったことが心底お分かりになる人は、それだけで極少数派の人間ということになる。 大半の人はここで述べた野蛮極まりない行為を耳にすることはまったくない。 だから、それが意味することにも皆目見当がつかない。 それにも関わらず、「リバティー号事件」から私たち全員が学ぶべき、軽視できない教訓がいくつかある。(読者の方はきっとさらに多くの教訓を提示していただけると思う)
  
①  イスラエルは、「シオニズム運動」の課題を前進させるためであれば、同盟国を、アメリカでさえ攻撃することができる。 「9/11」ついては、どうしてもこの観点から考えざるを得ない。

②  イスラエルは嘘をつき、偽りの大義名分の下、アメリカを戦争に引きずり込む。 またイスラエルはエジプトの
ような第三国に対して、やってもいない残虐行為を非難するのに何の疑念も抱かない。 
③  イスラエルがアメリカの権力サークルに十分な力を発揮するので、アメリカ政府はイスラエルを困らせないよう気を遣い、自国民を守ることは二の次になる。 

④  アメリカのメディアは、アメリカに対する戦争行為の隠蔽を進んで行い、イスラエルを指弾することはしない。

⑤  イスラエルがリバティ-号生存者達に向ける攻撃は、各国政府と主流メディアが「陰謀論者」を無視するやり    口と同じだ。 

⑥  イスラエルはまた、「リバティ-号事件」で犠牲になったり、事情説明を求め続けるアメリカ軍人に対して、「反イスラム」や「ネオナチ」のカードを切る。 

⑦  半世紀が経過してもなお、アメリカ政府はこの嘘を守り続け、生存者への迫害はそのままにして置く。

⑧ イスラエルは、絶えざる威嚇の下で自分達が犠牲になった国であり、国民だというイメージを育て上げている。  しかし、今回の驚愕すべき出来事が真に明らかにしているのは、イスラエルは人であれ、国であれ、たとえ「友人」と考えられる人でも、自分達の政治的目的に邪魔であれば脅迫する、ということだ。

一部の観測筋の主張に依れば、「リバティ-号攻撃」は偽旗作戦であり、エジプトを巻き込み、後ろ向きのアメリカを戦争に引きずり込む意図があった。 確かなことは、イスラエルのリバティ-号を撃沈し、乗員全員を殺害する腹積もりを前提にすれば、この考えは成立する。 別の観測筋の見方だが、イスラエルが恐れていたのは、リバティ-号のことについてあれこれ調査されると、イスラエルがヨルダン、あるいはシリアとの敵対行動を始める計画を持っていることがアメリカ人にわかってしまうことだ。 そのことはリンドン・ジョンソンが強く諫めていた。 恐らく二つ観測筋はそれぞれ真実を突いている。

石油支配をめぐるイエメンの大虐殺

Yemen Genocide About Oil Control

F.ウィリアム・エングダール
グローバル・リサーチ 2018年11月20日

(翻訳:新見明 2018年12月11日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/yemen-genocide-oil-control/5660415


Featured image is from NEO

イエメン共和国で進行中の事実上の大虐殺は、戦争の最も激しい局面が2015年に始まった。しかしその大虐殺は、7最近まで欧米主流メディアでは全く無視されてきた。無視されたこと事の中には、アメリカに支援されたサウジが戦争を開始するが、その開戦理由も無視された。表面的にはスンニ派ワッハーブ教徒のサウジアラビアによるシーア派教徒フーシ派に対する戦争と見られている。


イエメンは、戦略的に重要な紅海の接続ポイントとして、地政学的に鍵となるところである。紅海はインド洋やスエズ運河を経由して地中海につながっている。バブ・エル・マンデブ海峡は、世界で最も重要な石油輸送難所の一つである。その海峡はアフリカの角ジブチから18マイルしか離れていない狭い通路で、アメリカ・エネルギー省の石油輸送にとって難所の一つとなっている。アメリカ・エネルギー省によれば、毎日4.700万バレルの石油が双方向でバブ・エル・マンデブ海峡を通る。それには中国向けの石油も含まれている。

2015年3月イエメンで、フーシ派として知られるグループと新たな内戦が勃発した。フーシ派とは、イスラム教ザイード派のフセイン・バドルッディーン・アル=フーシ師の名前をとって付けられた。ザイード派地域は伝統的に女性の平等を大切にする穏やかな集団であり、サウジのワッハーブ派とは相容れないものである。ザイード派はイエメンを1962年まで100年以上支配してきた。
  
フーシ派運動は、アリー・アブドッラー・サーレハ大統領を2011年莫大な汚職の罪で追放した。彼の後をサーレハの副大統領であったアブド・ラッボ・マンスール・ハーディーが引き継いだ。当時サーレハもハーディーもサウジ影響下の傀儡大統領であった。

事態が変わり始めたのは、ハーディーが任期が切れても退任を拒否したときであった。2015年早々、ハーディーは燃料価格補助削減の決定と同様、改革合意を拒否したので、フーシ派運動による彼の逮捕に到ったのであった。彼はその後2015年3月25日にサウジアラビアへどうにか逃亡できた。彼の逃亡と同じ日に、サウジの防衛大臣モハメッド・ビン・サルマンはイエメンとフーシ派に対して爆撃攻撃を開始した。攻撃は今も続いている。

2015年末までにビン・サルマン王子と彼の同盟者たちは奇妙な名前の「決定的な嵐作戦」(湾岸戦争の「砂漠の嵐作戦」を思い出す)がイエメンの一般市民に残虐行為を与えたのだ。無慈悲なサウジ主導の爆撃が6ヶ月続くうちに、国連はイエメンに「レベル3」という最も高い緊急事態を宣言した。爆撃は、重要な市民生活のインフラや健康施設を破壊した。そしてサウジは、2000万人とされるイエメン人に不可欠の緊急に必要な食料や水や医療支援を封鎖した。それは国際法に違反であった。約250万人のイエメン市民が難民化した。飢餓とコレラがはびこっている。つまり集団殺戮である。

チェイニーの石油戦争

現在サウジ主導の湾岸同盟国と戦っているイエメン戦争の根源は、2001年9月11日後のブッシュ・チェイニー政権と、その「テロとの戦争」宣言と言われるものに遡ることが出来る。

2003年のイラク侵略は石油をめぐっての戦争であった。ポール・ウォルフォウィッツを含めアメリカ政府高官は、当時そう認めた。

「石油があるところに行かなければならない。私は、それ(政治的不安定化)についてはあまり考えない。」

どう見ても、ブッシュ・ジュニア政権の副大統領チェイニーが、国防長官ドン・ラムズフェルドの「5年以内に7カ国をやっつける」という米軍事作戦を設計した。ウィズリー・クラーク将軍は、数年後そのことを報告した。これらの7カ国は全て、中国、EU、世界経済に流れる巨大な中東石油を支配するためにはきわめて重要な国々である。

2004年チェイニー・ブッシュの「テロとの戦争」が、当時の大統領サーレハを支援するためイエメンに及んだとき、サウジのイエメン支配には問題がなかった。アメリカとイギリス勢力は、少数派フーシの蜂起に対してサーレハを支援した。その蜂起は、サーレハがザイード派宗教指導者フセイン・バドルッディーン・アル=フーシを逮捕しようとした後に始まった。
     
2015年までにそのアメリカの代理戦争は変化し、ペンタゴンとオバマ政権は密かにイエメンに対するサウジの大規模な壊滅的軍事攻撃を支援した。

イエメンにおけるアメリカやサウジの利害とは何か。石油支配が簡単な答えであるが、多分いつもの意味ではあるまい。

2005年11月イエメン共和国は、米国ハント石油会社とエクソンモビルからマリブ・ジャウフ・ブロックという石油地域を没収した。その没収はいらだたせるものだったが、形勢を一変させるものではなかった。一変させたのは、2014年サウジに支援されたハーディ大統領に対してフーシ派の反乱が勝利し、戦争が新たな形勢を帯びたときだった。2015年までにはフーシ派主導の最高革命委員会は、サナアとイエメン政府を奪取し、アデンに進軍した後、ハーディを倒すために総動員令を宣言した。

未発見油田の可能性

イエメンを誰が支配するか、特に今フーシ派が支配している地域では、二つの戦略的側面がある。一つは、先にも述べたアフリカの角バブ・エル・マンデブを通る石油流通の地政学的支配である。2番目は、イエメンのほとんど未発掘の石油の支配である。

2002年アメリカ地質調査(USGS)による公式発表で結論されたのは、「未発見の可能性が既存の埋蔵に加わるとき、マリビ・アムラン/キシン広域石油システムの全石油産出は9.8 BBOE(98億バーレル?)に上昇し、そのときイエメンは石油資源の埋蔵量でアメリカを除いて51番目になる。」

今、100億バレルの原油は、サウジの2660億バレルの貯蔵量のと比べて大きくないかもしれない。しかしここで1988年のCIA報告は興味深いものになっている。南イエメンの「石油埋蔵量報告:富のキメラ」はかなり編集されて機密解除されているが、イエメン・サウジアラビア間の係争中の国境での潜在的石油埋蔵量に関する秘密のメモがある。CIAは冷戦時代に北イエメンと南イエメン間の中立地域にある石油ガス埋蔵に注目している。

テキサスのハント石油会社は、1982年以来アリフ油田に常駐し、1984年にそこで石油を発見した。アリフ油田は、サウジアラビア・イエメン間の未確定国境近くのフーシ派支配地域の北イエメンにある。著者は20年ほど前にアメリカ政府関係の人とのインタビューで、最大石油埋蔵量と石油地政学について討論する機会があった。そのときその人は討論の中で、未発表のアメリカ航空地理調査によると、サウジアラビアとイエメン間の未確定砂漠地帯には、サウジアラビアをしのぐような石油埋蔵量の可能性があると教えてくれた。

その発言が正確かどうか、独自に確認することは不可能だ。はっきりしていることは、イエメンとソマリアを含むペルシャ湾と紅海によって囲まれた地域は、地球で構造上最も活性地域の一つ、つまり炭化水素発見の前提条件があるということだ。イエメンにおいて巨大な石油・ガス埋蔵量があることは、フーシ派からイエメン支配を取り戻そうとするサウジの残忍な努力を、なぜペンタゴンが積極的に支援してきたかの理由をよく物語っている。

それはシーア派対ワッハーブ派の衝突とはほとんど関係がない。むしろそれは世界エネルギーの戦略的支配と関係している。サナアがサウジの代理人の手にある限り、サーレハであろうがハーディであろうが、それはワシントンにとっては二次的問題だった。石油は「安全」であった。たとえイエメン政府がアメリカ石油会社の資産を没収しようとも。しかしいったん確固として独立したフーシ派ザイードがイエメンを、あるいは大部分を支配したら、驚異は十分深刻で、やる気十分な新サウジ防衛大臣モハメド・ビン・サルマン皇太子に戦争開始の青信号を与えるのだ。フーシ派支配のイエメンは、潜在的にロシアか中国の石油会社のお得意さまで、本格的な埋蔵探索を開始するだろう。それはフーシ派がまたイランと親しい関係を持つこととも結びついて、明らかにオバマ政権に赤信号を灯した。

驚くなかれサルマンが主張したのは、それはサウジ主導の「自由を愛する」スンニ派勢力に対するイラン主導の「帝国主義者」との戦いだということだ。中国は今、イエメンを渡ったジブチに海外最初の軍事基地をもっている。その隣にアメリカはアフリカで最大の恒久的軍事基地をキャンプ・レモニエにもっている。元植民地支配者フランスもそこにいる。イエメンには語られているよりはるかに大きな危険な状態があるのだ。

*

F・ウィリアム・エングダールは戦略的危機コンサルタント及び講師である。彼はプリンストン大学で政治学の学位をとり、石油と地政学に関するベストセラー作家である。もっぱらオンライン・マガジン「New Eastern Outlook」の寄稿者である。この記事もそこで発表された。かれはグローバル・リサーチの常連寄稿者でもある。

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EU、ロシア、中国は、イラン石油制裁を避ける計画する。新しい銀行システムが米ドル貿易を回避する

The EU, Russia, China Plan to Avert Iran Oil Sanctions: New Banking Architecture, Bypass US Dollar Trade

F.ウィリアム・エングダール
グローバル・リサーチ 2018年10月24日
(翻訳:新見明 2018年11月6日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/eu-russia-china-plan-avert-iran-oil-sanctions/5657865

フェデリカ・モゲリーニは、イタリアの政治家。現欧州委員会副委員長兼欧州連合外務・安全保障政策上級代表。

トランプ政権の一方的な解体政治が、意図したものとは反対の結果をもたらしているのも当然だ。ワシントンがイラン核合意を破棄し、11月4日時点でイランと石油取引をする国々に厳しい制裁を加える決定は、EU、ロシア、中国、イラン、その他を協力させる新たな道を作っている。合法的に米ドル石油取引を避けて、アメリカの制裁を避けるために特別目的事業体(SPV)を創設すると、ブリュッセル官僚が近ごろ宣言したことは、世界経済でドル支配体制の終焉の始まりを意味しているかもしれない。

10月17日テヘランで行われたドイツ・イラン2国間協議の報告によると、イランに石油輸出させ続けるいわゆる特別目的事業体の仕組みは、その翌日に実行され始めるということだ。9月末にEU外交政策主任のフェデリカ・モゲリーニは、そのような独立した貿易ルートを作る計画を正式に認め、次のように述べた。

「どの主権国家も組織も、他国の誰かが貿易を許可するなどということを受け入れられない。」

特別目的事業体(SPV)計画は、冷戦時代アメリカの経済制裁を回避するために用いられたソ連のバーター(物々交換)システムをモデルとしていると言われている。つまりイラン石油は、お金を使わないで他の商品と交換するという方法でなされるだろう。この特別目的事業体(SPV)合意には、EU、イラン、中国、ロシアが加わると言われている。

EUから出た様々な報告によれば、新しい特別目的事業体(SPV)計画は、アメリカ財務省制裁を避けることができる複雑なバーター(物々交換)システムを含んでいる。例えば、イランは原油をフランス企業に出荷し、SPVを通して銀行のようにクレジットを集めることができる。それからそのクレジットは、逆方向に出荷された製品のイタリア製造業者に、イタリアの人手や通常の銀行システムを通した資金を使わずに、支払うこともできます。多国間のヨーロッパ諸国に支援された金融媒体が、イランとの取引に興味がある企業や、イランの取引相手との取引を扱うために設立されるだろう。どのような取引もアメリカにはわからない。そしてドルよりもユーロやイギリスポンドが用いられるだろう。

それは、ワシントンがイランへの全面的な経済戦争と呼んだものに対する並々ならぬ返答だ。その経済戦争とは、もし11月4日以降イランとの取引を継続するなら、ヨーロッパ中央銀行やブリュッセル基盤のSWIFT銀行間支払いネットワークに制裁を課すと脅しているものだ。1945年以降の西欧とワシントン間の関係では、そのような攻撃的な手段は見られなかった。アメリカの経済制裁があって、EU政策グループは大きな見直しを迫られている。

新しい銀行組織

その謎めいた発案の素地は、6月に「ヨーロッパ、イラン、その経済主権:アメリカの制裁に応える新たな銀行組織」と題するレポートで提出されていた。そのレポートの著者は、イラン人エコノミストのエスファンダール・バトマンケリジ とアクセル・ヘルマンというロンドン基盤のシンク・タンクELN(ヨーロッパ指導者ネットワーク)の政策フェローである。

その報告は、新たな組織は二つの重要な要素を持つべきだと提案している。まず、特別目的事業体(SPV)と結びついたイランやEUの商業銀行間の媒介として指定されている「ゲートウェイ・バンク」*に基づくということだ。二つ目の要素として、外国資産管理EU事務所(EU-OFAC)によって監督されているということだ。それは、同じアメリカ財務省をモデルとしているが、EU・イラン貿易を阻止せず、合法的に便宜を与えるのに使える。他の機能の中で提案されたEU-OFACは、そのような貿易をする企業にしかるべき努力をする証明メカニズムを作り出すことを試みるだろう。そして「EUのイラン貿易や投資に取り組む企業の法的保護を強めるだろう。」 
*[訳注]ゲートウェイ・バンク
      ゲートウェイ【gateway】とは2つ以上のネットワークやデータベ
      ースをつなぐコンピューターのこと。ゲートウェイ・バンクとはそ
     れらを用いたオンライン銀行のことか。

SPV(特別目的事業体)は、この指定されたゲートウェイ・バンクを使う計画に基づいている。つまりゲートウェイ・バンクは、アメリカでのビジネスをしておらず、イランとのビジネスに焦点を当てているので、ワシントンの「二次制裁」によって影響されないEUの銀行のことである。それらには、選定された国有ドイツ・ランデスバンクスや一定のスイス民間銀行を含む。例えば、イランとの金融取引を行う事のみに設立されたヨーロッパ・イラン・ハンデスバンク(EIH)のような銀行である。さらにEU官僚と結びついた一定のイランの銀行が加わる。

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EUは、どのようにイランがアメリカの制裁を回避するのを助けているか。対抗する金融組織の設立


最終結果がどうなろうとも、イランに対するトランプ政権の好戦的な行動は、主要国家を究極的に協力させている。それは、負債にふくれあがったアメリカ政府が、事実上の世界の暴君として他国を犠牲にして融資させてきたドル支配権の崩壊を究極的に意味する。

EU、ロシア、中国・・・

最近ニューヨークの国連総会中に、フェデリカ・モゲリーニは、SPV(特別目的事業体)は石油を含むイランの輸出に関連した支払いを容易にするように計画されたと述べた。もちろん関連会社がEU法の下で正当なビジネスを実行するかぎりだが。中国とロシアもSPVに含まれている。トルコ、インド、その他の国々もこれから加わる可能性がある。

予想されたようにワシントンは直ちに反応した。国連でアメリカ国務大臣で元CIA長官のマイク・ポンペオは、イランの反対会合に対して、EUの計画に邪魔され、実に落胆させられたと述べた。とりわけ彼は次のように述べた。

「これは地域や世界の平和と安全にとって最も反生産的な手段の一つである」と。

はたしてイランに対するワシントンの経済戦争計画は、地域や世界の平和や安全を促進するために計画されたのだろうか?

アメリカ抜きのSWIFT(国際銀行間通信協会)

アメリカ財務省金融戦争の最も残忍な武器の一つは、ブリュッセル基盤のSWIFT民間銀行をイランが使用できないようにする力である。それは2012年にワシントンがEUにSWIFTに従うように圧力をかけて、破壊的な結果をもたらした。それは世界中に警告を与えた重大な先例である。
  [訳注]核合意成立前の2012年、アメリカはイランへの締め付けを
     一層徹底するためにSWIFTに対して「イランを追放しろ」と
     圧力をかけています。 ... まずEUもアメリカに同調するこ
       とが必要だと主張しています。
      https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1602G_W2A310C1MM0000/

米ドルが国際貿易と金融取引の圧倒的な支配通貨であるという事実は、世界の残りの銀行や企業にたいしてワシントンに巨大な権力を与えている。それは金融上の中性子爆弾に匹敵するものである。それはまだ決まってはいないが、まさに変化しようとしているかもしれない。

2015年に中国は、CIPS(クロスボーダー・インターバンク決済システム、または中国国際決済システム)を公表した。CIPSは元々SWIFTに変わる将来中国基盤の代替物とみなされていた。それはクロスボーダーRBM決済や貿易における参加者に、手形交換や支払いを提供するものになる。残念ながら中国の株式市場危機が、北京に計画を縮小させた。インフラの骨格がそこにあるにもかかわらず。

他の地域では、2017年後半以降ロシアと中国はドルを回避する二国間の支払いシステムの可能性を議論した。中国のユニオンペイ・システムや、カルタ・ミールとして知られるロシアの国内決済システムは直接結びつけられるだろう。

ごく最近主要EU政策立案サークルは、1944年以降には前例がないそのような考えに共鳴している。8月、イランとの石油や他の貿易を阻止する一方的なアメリカの行動に言及して、次のように述べた。

ヨーロッパは、アメリカが我々の頭越しに、我々を犠牲にして活動することを許すべきではない。そのため我々が、アメリカから独立した決済チャンネルを打ち立てて、ヨーロッパの自治を強めることが肝心である。それはヨーロッパ金融ファンドや独立したSWIFTシステムをつくることだ。

ドル帝国のひび割れ

EUがワシントンに、イランとの貿易問題でどれほど挑戦するかはまだはっきりしていない。考えられることはワシントンがNSAや他の手段を用いて、EU・イラン・ロシア・中国SPV(特別目的事業体)貿易を暴露することができることである。

ドイツ外相の最近の声明に加えて、フランスは、EU経済を二次制裁のような不当な治外法権的制裁から絶縁する手段を作り出すため、イランSPV(特別目的事業体)拡大を議論している。二次制裁は、EU企業にドルを使わせず、アメリカでビジネスが出来ないようにすることである。フランス外務省のスポークスマン、アグネス・フォン・デア・ムフルは、イランとの貿易を企業が継続できるようにすることに加えて、SPVは「このケースに限らずEUのための経済的自治の道具を作り出すだろう」と述べた。それはヨーロッパ企業を将来、不当な治外法権的制裁の影響から守る長期的な計画である。

もしこれがEUの新生SPVの場合だったら、それはドル帝国に大きな裂け目を作り出すことになる。イラン核合意交渉に関わったことのある元オバマ政権国務省官僚ジャレット・ブランは、SPVやその実施に言及して次のように述べた。

「決済メカニズムの動きが、アメリカ制裁力を長期的に劣化させる扉を開けることになる。」

現在EUは、ロシアに対する制裁のように、アメリカの一方的経済戦争や治外法権的制裁に対して感情をあらわにした言辞や不平を大声で言い立てた。しかし今日まで本物の代替物を作り出す有力な決意は不透明である。それは中国やロシアに関しても同様である。信じられないほどひどいイランに対するアメリカの制裁は、最終的に1945年ブレトンウッズ以来保たれてきた世界経済のドル支配の終焉の始まりを意味するのだろうか。

私自身の感覚では、どのような形であれSPVが、あるブロックチェーンや分散型台帳技術*の著しい技術的利点を利用しない限り(それはアメリカ基盤のXRPやリップルに似ており、日々の国際決済を安全に、しかも瞬時に世界的に行う事が出来る)、たいしたことはできない。ヨーロッパのITプログラマーがそのようなものを開発する専門技術がないわけではない。もちろんロシアもそうである。とうとう主要なブロックチェーン企業の一つが、ビタリク・ブテリンという名のロシア生まれのカナダ人によって作られた。ロシア議会はデジタル通貨に関する新しい法律を作っているところだ。ロシア銀行が未だ頑強に反対しているにもかかわらず。中国人民銀行は、国家暗号通貨チャイナコインを急速に開発し、試験している。ブロックチェーン技術はよく誤解されている。それが新たな「南海泡沫事件」*とはほど遠いと見るべきだが、ロシア中央銀行のような政府サークルでさえ誤解している。国境を越えて価値を移動する国家管理の決済システムの可能性が、全面的に暗号化され、安全であり、国家間のさらなる文明化した秩序ができるまでの、一方的な制裁や金融戦争に対抗する短期的な妥当な答えである。
[訳注]南海泡沫事件(英語: South Sea Bubble)は、1720年に
      グレートブリテン王国(イギリス)で起こった投機ブーム
       による株価の急騰と暴落、およびそれに続く混乱を指
       すが、主に損害を蒙ったのはフランスであった。ロバート
       ・ウォルポールがこの混乱を収拾、政治家として名をあ
       げる契機となった。バブル経済の語源になった事件で
       ある。 (ウィキペディアより)
[訳注]ブロックチェーンと分散型台帳技術
     Distributed Ledger Technology(DLT)は、Blockchain技
      術を含む分散台帳を実現するための技術の総称。
       Distributed Ledger(分散台帳,共有台帳とも呼ばれます)
      は、中央管理者も集中型データストレージも存在しない分
      散型台帳のこと。分散手帳を構成するにはP2Pネットワー
      クと、ノード間の複製が確実に行われるコンセンサスアル
      ゴリズム*1が必要となる。このような台帳は公開また
      は非公開のブロックチェーンシステムで実装することがで
      きる。しかし、すべての分散台帳がブロックチェーンという
      わけではない。ブロックチェーンは、分散台帳の要件をみ
      たす技術のうちの一タイプにすぎない。
       DLTは国際決算において、2016年ごろから試験的に導入
      してみる銀行が増えてきている
(Hatena Blogより)

ウィリアム・エングダールは戦略リスク・コンサルタントであり、講演者である。彼はプリンストン大学で政治学の学位を得て、石油や地政学のベストセラー本の著者でもある。オンライン誌New Eastern Outlookにもっぱら寄稿し、この記事もそこで書かれたものである。彼はグローバル・リサーチの常連寄稿者でもある。

「シリアの子どもたちを助けてほしい!」ーある母親の血の叫びー

White Helmets stealing children for 'chemical attack' theater in Idlib
ベネッサ・ビーリー
RT Op-Ed   2018年9月17日
(翻訳: 寺島メソッド翻訳グループ 2018年9月28日)
<記事原文> https://www.rt.com/op-ed/438645-children-kidnapped-idlib-syria/


ベネッサ・ビーリーは独立調査ジャーナリスト・写真家
である。彼女は21su Century Wireの副編集長である。


誘拐されたシリア人少年の家族:ワハア、モハメッド・イブラヒム、ロットフェ、ハムザ© Vanessa Beeley

「子どもたちに平和を!子どもたちに遊びを!シリアの子どもたちを『もてあそぶ』のはやめなさい!」これは自分の子どもをテロ集団とホワイト・ヘルメットに奪われ、シリア北西部の都市イドリブに監禁されているある母親の言葉だ。

私がワファに会ったのは彼女の自宅で、夫のモハメド・イブラヒムと二人の息子ハムザ(9歳)、ロットフェ(14歳)も一緒だった。ワファとモハメドは二人とも弁護士で、出会いは同じ大学だった。ワファはしっかりした語り口で、その表情も拉致された11歳の息子アーメドを不安に思う気持ちを振り払うかのように、希望に満ち、楽天的だ。

「アーメドは生まれた時から言葉が不自由だったのです」と彼女は私に語った。「それで拉致されたのだと思っています。抗議も抵抗もできないからです。」

アーメドは1年前自宅からほんの200メートルのところでテロ集団に拉致された。その自宅がどこにあるかは彼女と彼女の家族の安全を守るため、ここで明示することはしない。アーメドが他の子どもたちと一緒にイドリブで拘束されていることはわかっている。その居場所が定期的に変更されるという情報は、未だにイドリブから出られない友人たちや家族からもたらされた。


家族から提供されたアフメドのコラージュ写真© Vanessa Beeley

2018年8月30日、シリア政府の外務大臣ワリード・ムアレム声明を発表した。アメリカの連合軍から資金援助されたホワイト・ヘルメットが44人の子どもたちを拉致し、イドリブにおける化学兵器を使った攻撃の映像を作成するために、その「小道具」として使おうとしている、というものだ。ホワイト・ヘルメットは、仏英米のシリア侵略を早めるためのシナリオを作り出してきた歴史がある。

2018年4月、ドゥーマが化学兵器で攻撃されたという彼らの最新の作り話は化学兵器禁止機関(OPCW)の中間報告によって信頼性に欠けるとされた。シリア政府が、人殺しジャイシュ・アル・イスラム狂信者集団からドゥーマを解放する最後の瞬間にサリンを使用したという扇情主義者たちの言説は、この中間報告の調査結果によって斥けられた。OPCWが採取したサンプルで見つかった塩素成分は家庭で使われるどんな製品からでも抽出できるもので、シリア政府が塩素を使用したという結論にはまったくならなかった。西側メディアと各国政府はOPCWのこの調査結果を無視し、イドリブにおける「化学攻撃」があったとする偽旗をまたもや準備している。そうすればシリア政府がイドリブのテロ掃討作戦中に、シリアに対してさらなる違法な攻撃を仕掛けることができるからだ。   


ドゥーマ神経ガス攻撃に関するOPCW(化学兵器禁止機関)の報告:欧米イデオローグにとっておぞましい見解

ワッファがいちばん恐れるのは、息子のアーメドが他の拘束された子どもたちと一緒に、「化学攻撃」映像の出演者として利用される可能性があることだ。

ワッファの言葉:「アーメドが拉致された時、私は仕事を辞めました。6ヶ月ほど前、友人がトルコからイドリブに来ました。シリアとトルコの国境を越える時、友人は車を止め休憩しました。彼らの息子はアーメドをよく知っています。アーメドの意思伝達の方法は特別です。自分を知っている人ならとても認識しやすい音を出します。友人の息子はアーメドがこの音を出すのを耳にしたのです。彼はアーメドが近くにいるよ、と両親に告げました。」

アーメドのこの存否に関わる話を語る時、ワッファの声は震えた。少なくとも彼は生きている。ワッファとその家族がこの情報を告げられた直後、イドリブ市の東にあるサラキブで、塩素ガス攻撃疑惑が起こった。 

この攻撃疑惑についてOPCWが最近公表した報告の結論はこうだ:
    
「塩素は、機械的な衝撃を与えて円筒から放出されるのだが、それは2018年2月サラキ
    ブのアルタリル近郊で化学兵器として使われた可能性が高い。」


しかし、「現地調査委員会(FFM)」はサラキブに入れないでいる。 この地域を占拠している「穏健的」狂信派に処刑されたり、拉致される危険性があるためだ。 その代わり彼らが全面的に依拠したのは、ホワイト・ヘルメットなどのような信憑性に乏しいニュースソースによってもたらされる「オープンソース[勝手に偽造できる]」の証言や証拠だった。

「サラキブで化学攻撃があったという複数の情報が伝わった直後、アーメドを拘束しているグループから電話がありました。電話口の男が言うには、アーメドを拉致した理由がなくなった、たぶん近々帰宅させるだろう、というものでした」とワッファが私に告げた。

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イドリブの孤児を使って「化学兵器攻撃」の映像を作るホワイト・ヘルメット ― ロシア軍


アーメドを拘束している人間を知っているのか、と私は彼女に訊いた。

「サラキブの事件の直後、何とかイドリブを脱出した数名の女性が私のところへ来ました。彼女たちの話によると、『アル-ナスラ・フロント(シリア駐留のアルカイダ)』が子どもたちを担当しており、ホワイト・ヘルメットが手を貸しているという。私がこのことを報告すると、ホワイト・ヘルメットは私を「シャビーハ[亡霊]」と糾弾しました。「シャビーハ」と言われることは武装グループに捕まれば、死刑宣告も同然です。」 

ワッファにはもうひとり妹がイドリブにいて、その妹が彼女に直接か、ロシアとシリアの間にある人道的回廊地帯を経由してイドリブを離れる人に情報を伝えることができる。この回廊地帯を使ってイドリブ解放の地上戦が始まる前に民間人を避難させることになっている。

「アブアルドゥフール回廊は再び開通するでしょう。しかし、わかっていますが、テロ集団はこの回廊を使ってイドリブを脱出する市民に300,000シリアドル(600$)を請求しています。みんな着の身着のままで脱出するのです。それなのに、この怪物たちは『自由』と『民主主義』をもたらすのだ、と言います。」 

ワッファはイドリブを占拠する外国人戦闘員をこんな風に描写した:
    
「イドリブにいる大半の人は外国人戦闘員を避けます。彼らは非常に過激で危険だか
らです。妹が私に話してくれたのですが、数日前彼女は自分の地区でウイグルの子ど
もたち前を歩いたのだそうです。子どもたちは妹のスカートの裾が高すぎるとなじ
り始めました。ホワイト・ヘルメットも同じだと人々は見ています。彼らは外国
人です。そしていい報酬を得ています。 外国人過激派のように金があります。イ
ドリブの人たちはほとんど子どもたちを学校に行かせていません。ホワイト・ヘル
メットに拉致されることを恐れているからです。」
  

ワッファの説明ではホワイト・ヘルメットは子どもたちを無事帰還させるのに金は要求しないということだった。彼女の家族の話によれば、金を要求することは紛争初期の武装グループのやり方だったそうだ。

「どうして金を要求しないのか? 子どもたちを別の目的で使いたいからです。彼らは自分たちを疑問視する人間を『シャビーハ[亡霊]』と呼びます。西側には自分たちのイメージをクリーンにしておきたいからです。彼らは『人道主義者』ではありません。制服を来たテロリストです。それしか言いようがありません。」

ワッファがひどく恐れているのは、これらのホワイト・ヘルメットを含むアメリカと連携している代理人たちが、事前に映像化しておいた毒ガス攻撃と報道されている出来事にアーメドがもう使われているかもしれない、ということだ。その目的は、シリア政府軍のイドリブ解放作戦が本当に始まったらすぐに、シリア政府とその同盟国を犯罪者扱いにすることにある。 

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「他の」オムラン:アレッポの市民が大手メディアの嘘や子供略取を暴く


「10日前、ある女性が私に会いに来ました。イドリブから到着したばかりでした。 彼女はアーメドが写った1枚の写真を私に見せてくれました。彼はまだ生きていて他の多くの子どもたちと一緒に拘束されているわ、とはっきり言いました。彼女の言葉によれば、攻撃の映像をどの場所で撮影するかによって、ホワイト・ヘルメットは子どもたちをあちこち移動させるのだそうです。子どもたちの拘置場所は常に刑務所です。息子が病気になってないか、怖がっていないか、とても心配です。息子は言葉が話せないのです。まちがいなくアーメドの顔は彼らが作成したビデオ映像や報告のひとつに映しだされるでしょう」とワッファは語った。

私たちがアーメドについて話をしていると、彼の弟のハムザがひどく衝撃を受け、だんだん興奮状態になってきた。

「アーメドの話をするといつもこうなんです。兄がいなくなって、彼の心の中はめちゃくちゃになっています」とワッファは説明した。「今までは、こういったことがあったので、アーメドのことばかり気遣ってきました。でも、これからハムザをもっと守ってあげるつもりです。」

インタビューの間、ワッファは取り乱すこともなく言葉使いにも説得力があった。彼女はあれこれの事実を、熟慮しながら、客観的に語ってくれた。彼女の息子は拉致された。シリアでもっとも残虐な過激派のいくつかのグループに拘束されている。ワッファは気丈でどっしりと構え、恐怖や同情などの感情を一切寄せつけなかった。終始誇り高く、物腰も柔軟だった。アーメドの父親のモハンメド・イブラヒムはさらに物静かで控えめだった。しかし夫婦や子どもたちとの強い絆があるのは明らかだった。この家族は、アーメドがこの試練を切り抜け、自分たちのところに絶対戻ってくるという希望と決意でひとつになっているのだ。 

「イドリブが解放されれば、政府軍は必ずアーメドを私たちのもとに連れてきてくれるでしょう。政府軍は息子を救出してくれます」。ワッファが初めて怒りとイライラの表情を見せたのは、私がこんな要請をした時だった。あなたの祖国は「穏やかな」占領状態にあるのだけれど、実際はどうなのか西側の人たちに詳しく話してみてほしい、と。

「私たちは声を出せません。私たちは忘却されたシリアの民です。誰も耳を傾けてくれません。あの怪物たちは私たちを殺しています。子どもたちを殺しています。私たちの命を盗み、私たちの祖国を破壊しています。そんなことを世界に向かって私たちが語っても誰も耳を傾けてくれません。「穏健派」は自由も民主主義ももたらしません。彼らがもたらすのは流血と恐怖と喪失感だけです。イドリブから彼らの存在をきれいさっぱり無くしてほしい。西側の国々は自分たちが送り込んだテロリストたちを私たちの国から外へ連れ出してほしい。こんな仕打ちを受けるような悪事を私たちは何もしていません。なんで息子が苦しまなければいけないのですか、何のために?お願いですから、こんなことは終わりにして!2011年以前の平和な生活に私たちを戻して!」

この家族に別れを告げようとする直前、私は、ワッファがこのインタビューの中でもっとも力強いメッセージを発したところを映像に収めた。

    
「子どもたちに平和を! 子どもたちに遊びを! シリアの子どもたちを『もてあそぶ』のはやめなさい!」


シリアでは、ますます多くの子どもたちが確実に死に追いやられる戦争に利用されている。こんなことは狂気じみている。ワッファが要求しているのは、西側の人たちがこの事実を認識し、西側諸国の手先となっている狂信派やホワイト・ヘルメット手にかかってシリアの子どもたちがこれ以上苦しまないよう、できることはみんなやってほしい、ということだ。私たちは彼女の心からの要請に耳を傾けるべきだし、その要請に沿った行動を起こすべきだ。私たちが何もしなければ、アーメドや彼と同じ苦しみの道を辿らせてしまう可能性のある他の子どもに、とき遅しとなってしまう。 

サウジアラビアがイエメンで遂行する汚れた戦争と西欧の共謀

'As crimes pile up, they become invisible': Western complicity in Saudi Arabia's dirty war in Yemen

RT 2018年6月16日

<記事原文>https://www.rt.com/op-ed/429962-saudi-arabia-yemen-west/
(翻訳:大手山茂、新見明 2018年8月4日)


ジョン・ワイトは様々な新聞やウェブサイトに寄稿している。インディペンダント、モーニング・スター、ハフィントン・ポスト、カウンターパンチ、ロンドン・プログレスィブ・ジャーナル、フォーリン・ポリシー・ジャーナルなど。


サウジ主導のイエメン空爆で破壊された家を見つめるイエメン女性たち。2018年6月6日イエメン© Hani Al-Ansi / Global Look Press •

西側諸国が共犯となってイエメンに山のような苦難の数々をもたらしている。その姿はサウジアラビアの残虐の実行代理人であることを満天下に曝している。

3年間の過酷な紛争の連続で人口2,740万人のうち2,220万人が人道的支援を必要としている。1,700万人が食料不安、1,480万人が基礎的な医療が受けられていない、450万人の子どもたちが栄養失調で苦しんでいる。また290万人の人が国内での居場所をなくしている。死者は約1万人、負傷者は約5万人に上っている。

紛争の結果、イエメンは同時に「確認されたケースとしては現代における最大のコレラ感染」に直面している。このコレラ感染はサウジアラビアがイエメン西部にあるコレラ治療センターを爆撃したことによる他考えられない。フランスのNGO「国境なき医師団」がこの施設での作業を引き上げたからだ。

だが、この途方もないスケールの人的災害にもかかわらず、サウジアラビアに率いられたスンニ派連合の戦争はただ継続しているだけではない。攻撃が強化され、空、陸、海からの大規模な攻勢がとどまることなくフーシ派が支配する紅海の港湾都市ホデイダを襲っている。このホデイダ市は食料、医薬品、そして他の欠くことのできない人道的支援を周囲から遮断されたイエメンに搬入する残された最後の拠点のひとつなのだ。
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サウジ主導の連合軍が、イエメンで国境なき医師団の新たに建設された施設を爆撃する。

アムネスティ・インターナショナルによれば、
    「ホデイダ港は基礎的な必要品の80%を輸入に頼っている国にとっては命綱だ。この命綱的な供給を断ち切ることはすでに世界最悪の人道的危機状態になっているイエメンをさらに劣悪な状況に追い込むことになるだろう」 かくして「ホデイダ港への攻撃は何十万という市民へ壊滅的打撃を持つ可能性がある。それはホデイダ市にとどまらず、イエメン全土に及ぶものだ。」

アラビア半島の南端に位置するイエメンは中東の最貧国で、1人当たりGDPは紛争前でもたった1,400ドルしかなかった。

アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領がイエメンの国際的に承認された政府の元首となっている。 しかしながら、合法的な指導者にはよくあることだが、ハーディーは現在亡命生活を送っている。
ハーディ大統領は、前任者アリー・アブドッラー・サーレハの後を受け、2011年の大統領選で単独候補して大統領に選出された。サーレハは「アラブの春」のとどまることを知らない抗議運動の高まりの前に自ら権力を放棄したのだった。サーレハは1978年から北イエメンの指導者だったが、その後1990年に南北イエメンが統一されるとイエメン共和国大統領職に就いた。

前大統領サーレハの統治は汚職や国有資産の不正運用疑惑にまみれていた。彼自身は少数派のフーシ派と連携したが、このフーシ派こそ前述した「アラブの春」の抗議運動の中で彼を追放する役割を演じた。その後2015年にハーディ政権へのフーシ派の反乱が始まった。

フーシ派反乱の理由は、ハーディが大統領職に就くにあたって少数のシーア派が自治権を拡大することを容認しなかったからだった。サーレハがフーシ派に殺されたのは2017年末で、サーレハが反乱軍との関係を絶ち、イエメンの将来についてサウジアラビアと対話することの意欲を言明した後だった。
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何十万にが死の危機に。人道援助グループがサウジ連合軍に、イエメン市民を救うように懇請する
我々がイエメンで抱えている問題は、ご覧の通り、アラブの基準で言っても容易ならざる危機だ。

イエメンは長い間、サウジアラビアによる抑圧的なアラビア半島支配に痛めつけられてきた。この支配は、リヤドの原理主義的なワッハーブ派イデオロギーを奉じており、フーシ派反乱を焚きつけている面もある。ハーディ大統領は、サウジアラビアの操り人形だからだ。

フーシ派反乱はイエメン国民の大っぴらで広範な支持は受けていないにしても、それなりの共感を得ているという話もある。それはイエメンの首都サナアやホデイダのような港湾都市を含め他の都市中心部をうまく支配できていることから推し量れる。

もっと視野を広げると、この紛争は現在も進行中であるイランとサウジアラビア間の地域代理戦争の一部とも考えられる。2015年のフーシ派反乱の発端からリヤドの主張はこうだ、「フーシ派はイランの代理人であり、そのことで自分達の行動の正当性を得ているのだ」と。 しかし、2015年ベテランの中東特派員パトリック・コクバーンの記事によると、このリヤドの主張は「広く見ればプロパガンダないし誇張」ということになる。

3年後の現在2018年、イラン軍の関与は確実だ。フーシ派に武器を提供し、複数の情報によると軍事顧問も派遣している。かくしてサウジアラビアが2015年イランの関与があると虚偽の主張をしてイエメンへ武力介入したことが逆にその虚偽の主張を現実化させてしまったことになる。

西側諸国が共犯となってイエメン国民を大量虐殺し、苦しみを押しつけている話に戻ると、これほどあからさまで民主主義の仮面を装った偽善の例は過去に例がない。実際、アメリカ、イギリス、サウジアラビアが長く同盟関係を結んでいるということは、人権と民主主義の守護者を自認するアメリカ、イギリス両政府が嫌というほど繰り返す自慢話にもメスが入ることになる。
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US senators urge Pentagon to fully disclose its role in Saudi-led war in Yemen
オバマ政権に始まり、トランプ政権下で強化されたこの野蛮な紛争へのアメリカの関与は、①アメリカ軍による空襲(アメリカ政府によれば、標的はアルカイダとイスラム国)、②兵糧、情報など戦闘に関係しない支援が反フーシ派とサウジアラビア主導の連合軍に提供されたこと、などだ。もちろんサウジアラビアへアメリカの武器が販売されていることも忘れているわけではない。それはアメリカ武器輸出の50%以上を占めている。

この間、ペンタゴンの正式発表(2017)によればアメリカの地上軍はイエメンにも駐留し、再度その正当性の根拠を対アルカイダと対イスラム国(IS、旧ISIS)作戦従事に置いている。

イエメンにおけるサウジアラビアの戦争遂行努力を支えるイギリス政府の役割について、イギリスの武器販売はリヤド政府が周辺地域へ強大な力を示せるかどうかの鍵となっている。 その金額は2015年以降だけで46億ポンド(=60億米ドル)に上る。アメリカの場合と同様サウジアラビアはイギリス武器販売の最大市場であり、長年その状態が続いている。

2017年運動家達はイギリス政府を相手取ってイギリスが武器をサウジアラビアに売却するのは違法だとの訴訟を起こした。売却した武器の一部がイエメン市民を殺傷するために使用されているというのが主張だ。2017年、紛争におけるイギリスの役割が武器販売に限定されないことが明らかになった。デイリー・メ-ル紙に掲載された話は、「クロスウェイ作戦」というこれまで秘密にされてきた軍事作戦の詳細を語っている。その作戦では、50人のイギリス軍事顧問が紛争に派遣予定のサウジ軍を訓練していることも書かれている。

この驚くべき事実の発覚に応えてイギリス保守党議員であり前国際開発大臣だったアンドリュー・ミッチェルが激しく非難し、それはイエメンの人々の苦難にイギリスが「恥ずべき加担」をしている証拠だと語った。この苦難の規模を考えるなら、まっとうな考えをもった人ならだれも、ミッチェルの意見に同意すると思われる。

イエメンにおける戦争は汚れた戦争だ。それは西側諸国に支えられ、聖職者独裁を標榜はしているがその実サウジアラビアの泥棒政権によって遂行されている。劇作家ベルトルト・ブレヒトの語ったことは正しい。「犯罪は積み重なると見えなくなる。」

拷問、飢餓、処刑: 東グータの市民がテロリスト支配下の生活を語る

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Torture, starvation, executions: Eastern Ghouta civilians talk of life under terrorist rule
エバ・バートレット
2018.6.10

エバ・バートレットはガザ地区やシリアでの経験が豊かなフリーランスのジャーナリストで、人権活動家でもある。彼女の著作はブログ"Gaza"で読むことができる。


先週私が書いたのは、、化学兵器でグータ市民を攻撃したというのは証拠のない主張であると、グータ市民が私に話してくれたことです。そして彼らはテロリストによる犯罪やホワイト・ヘルメットの役割についても話してくれました。

サラフィー主義テロリストグループ、ジャイシュ・アル=イスラムは、企業メディアのよって親切にも「反逆者」と呼ばれていますが、シリアで自由や人権のために戦ってはいない。東グータをそれ以前に支配していた他のテロリストグループとも違う。

(さらに読む「爆心地のシリア市民は、化学兵器のでっち上げを暴露する」)

ジャイシュ・アル=イスラムは、爆撃に対してシリア市民を人間の盾として利用し、檻に閉じ込め、拘束したのであった。ジャイシュ・アル=イスラムは市民をミサイルや迫撃砲で攻撃し、1万人以上を殺したテロリストグループの仲間だった。

その地域を占拠しているファイラク・アル=ラーマンと他のテロリスト派閥は、恐怖政治で人々を支配し、男や女を斬首し、人々を餓死させた。

ジャイシュ・アル=イスララム:餓死と刀による処刑

私が東グータとダマスカスのすぐ南のホルジレ難民センター(今はほとんどがグータからの人々)を訪れた時、私はジャイシュ・アル=イスラムやその他の勢力下の生活や、なぜ市民が飢えに苦しまねばならなかったのかについて最初に尋ねた。答えは、私や他の人が東アレッポやマダヤやアル=ワエルで聞いたように、テロリストたちが援助物資を盗み、食料全てを管理していたからだ。そして普通の人々では買えないような不当な値段で売っていた。

サバ・アル=ムシュレフは、ハンムリエやザマルカのテロリストが子供達に対して非情であり、彼女の子供達が、食料が豊富なテロリスト指導者のゴミから腐肉をあさっていたことを話してくれた。

ホルジレ難民キャンプで、ジャイシュ・アル=イスララムの残虐さを語るサバ・アル=ムシュレフ

「私はザマルカに住んでいました。子供達は飢えでほとんど死にかけていました。私の娘は栄養失調で、皮膚は黄色くなりました」とサバは私に話してくれました。「私は娘を診療所へ連れて行きましたが、そこでは薬がないと言うのです。『娘は死にかけています。どうしたらいいですか』と私が言うと、診療所はドゥーマ市民だけのものだと言うのです。私はザマルカの代表者のところに行って頼みました。『どうか子供達のために何かしてください。子供達は飢えていて、二日間何も食べていないんです』。彼は『ここにあるものは、ザマルカ市民用だけです。あなたはマージ・アル=スルタンから来ました。』あなた方の代表者のところに行きなさい。ここにはあなた方のための援助物資はありません」と言われたことを私に話してくれました。

私がサバと話していたとき、彼女は東グータ地区から来た他の3人と一緒にいました。彼らの証言は止めどなく、みんなが体験した恐怖についてありったけを話してくれた。

28歳のドゥーマ出身マームード・スーリマン・キャレドは、ジャイシュ・アル=イスラムによる拘束や拷問について話した。

ホルジレでマームード・スーリマン・キャレドは拘束や拷問について話てくれた。

「私が夜に買い物に出かけたとき、彼らは私を尋問しました。彼らは私が政府軍の手伝いをしていて、体制のために働いていると疑ったのです。彼らは私をアル=タウバー刑務所に連れて行きました。そこで彼らは私を拷問したのです。彼らは私を椅子に縛り付け、手やつま先に電気ショックを与えたのです。彼らは2本の線を私のつま先に結びつけ、それからもう一方の端をインバーターに結びつけ、私に電気ショックを与えたのです。彼らは何か白状するまでそれを続けました。私は白状しませんでした。私は自白することなど何もありませんから、自白しませんでした。彼らは2日間わたしを拷問しました。彼らがしたことは、私をひどい近視にしたことです。わたしの目に電気が走ったように感じました。」

キャレドは、ドゥーマで見た処刑のことを話してくれました。「彼らはトラックで23ミリマシーンガン(対空)を持ってきて、頭を吹き飛ばしたのです。そのあと彼らはシリア軍が彼を殺したと非難しました」。携帯の写真は、椅子に座っている頭部のない男でした。銃撃の残骸さえなかった。

「ジャイシュ・アル=イスララムは食料を安く売ったために、彼の頭を吹き飛ばしたのです。彼らは高値で売りつけたかったからです。だから人々は貧しいままで、彼らのためにトンネルを掘ったり、彼らの戦闘に参加させられるのです。」

今年5月2日カフル・バトナでは、通りは日常の生活で賑わっていて、清掃作業をしていたり、電気工事作業員が町の電力を復旧させていました。シャワルマ*を売る店の外で、ムータズ・アル=アフダルは、お米を売ったかどでジャイシュ・アル=イスララムに15日間拘留されたことを話してくれました。
(*訳注:肉を、鉄串に突き刺した状態で直火で焼き、薄く切ったものを生地で包んだレパントの食べ物)
カフル・バトナでムータズ・アル=アフダル

「彼らは我々の商品を没収して、我々を投獄したのです。彼らの統制下でしか誰も仕事をすることが許されません。」
刀で処刑することや、子供や大人の誘拐のことや、臓器をなくして戻ってきたものもいることを彼は話してくれました。

「私たちは小さな町に住んでいます。人々は話し始めました。一人の子供がここで誘拐されました。もう一人がそこで・・・。誘拐された人たちの中には、彼らの臓器が取り去られていた人もいたのです。一人の子供は埋められ、納屋でわらに覆われて死んでいました。彼はまだ生きているのに、縛られ、わらで覆われていました。誰がやったかわかりません」とグータから来たほかの市民は臓器泥棒のことを話してくれました。

さらに私はムハンマド・シェイカーに出会いました。彼は中央のロータリーを指して、そこでテロリストの処刑が行われたことを話してくれました。

テロリストが市民を処刑したカフル・バトナ広場を示すムハンマド・シェイカー

「彼らはよく人々をここに連行してきて処刑したのです。ときどき刀で、また銃で。彼らにとってはごくありふれたことでした。今シリア軍がここに来てからは、人々は歩き回ったり、自由に移動することができます。しかし以前は、道路には誰も見かけることはありませんでした。」

広場近くのアイスクリーム店で、アブダラ・ダルボウもそんな処刑を見かけたと言いました。彼は抗議行動のことも話してくれました。

「私たちは何度もテロリストに抗議しました。私たちは飢えていて、彼らは我々を殺していたからです。抗議しているとき、ときどき彼らは我々を銃撃しました。彼らは私たちを殺しました。彼らは私たちを本当に殺したのです」。シリア政府は我々にそんなことはしませんでした。軍隊がここに入ってきたとき、彼らは私たちにパンを配ってくれました。それより前には、私たちは写真でしかパンを見たことがなかったのです。

4月9日私はドゥーマを歩いていると、手押し車でオレンジを売っているヤーヤ・ムハンマド・ハモに会いました。私がジャイシュ・アル=イスラム支配下の生活はどうでしたかと尋ねると、彼は答えてくれました。「飢え、飢え、飢えだ。もし彼らに宗教があるなら、そんな宗教などくそくらえ。宗教はみんなを飢えさせはしない。」

テロリストは自分たちを餓死させると、ドゥーマのヤーヤ・モハメド・ハーモは語った

青果売りの男たちに化学兵器について尋ねたところ、一斉にノーの答えが返ってきた。そしてドゥーマに送られてくる援助物資についても話してくれた。年配の男の人が語気を強めて語ったことは、ドゥーマにはたくさんの食料があり、5年は十分暮らせるが、それをテロリストたちは奪ってしまったのだという。

私がドゥーマに入るとき見た農場についても聞いてみた。その答えは、ジャイシュ・アル=イスラムが農地も家畜もすべてを支配したという。一人の若者が私に語ってくれたことは、テロリストがバスでドゥーマを離れる前に、動物はすべて撃ち殺したという。

男たちは、のどをかき切るジェスチャーをしながら処刑について話してくれた。一人の若者は、別の殺害について説明してくれた。処刑者は人の口にピストルを当てて、引き金を引いたという。

「テロリズムとは、文字通り恐怖政治のことなのだ」と屋台売りのトウフィク・ザーラは話してくれた。

ホワイト・ヘルメットは好意的どころか、テロリストと共謀していた。

ホワイト・ヘルメットは人々を助けていたかどうかという私の質問に、ザーラは答えてくれた。

「市民防衛はテロリストグループのためだけ、ただ彼らのためだけ、ジャイシュ・アル=イスラムのためだけに活動した」。これは通りの店で働いているマフムド・マフムド・アル=ハムリが繰り返し言ったことでした。「ホワイト・ヘルメットは市民防衛と呼ばれています。彼らは市民のためと言われていますが、それは逆です。彼らはジャイシュ・アル=イスラムのために活動していたのです」と言った。

カフル・バトナでシャワルマ露天商のムータズ・アル=アフダルは、「ジャイシュ・アル=イスラムは、ある日ホワイト・ヘルメットをかぶって私たちを攻撃してきました。翌日ヘルメットが残っていました」と話してくれました。アイスクリーム売りの若者アブダラは、一般市民がホワイト・ヘルメットに近づくことができないので、何も知らないと答えました。

カフル・バトナのムタズ・アル=アグダール

それ自体奇妙なことだ。ホワイト・ヘルメットの狙いが、市民を救済することとされていて、またホワイト・ヘルメットのセンターがドゥーマやザマルカやサクバにあるのだから。

ホルジレ難民センターのマルワ-ン・クレイシェは、ホワイト・ヘルメットについてたくさん語ってくれた。

ホルジレ難民センターのマルワーン・クレイシェは、ホワイト・ヘルメットの攻撃について語ってくれた。

「3・4年前グータにやってきた最初の市民防衛メンバーは外国からやってきました。彼らはアラブ人ではなく、アラビア語も話しませんでした。彼らはテロリストの防衛隊でした。彼らはしばしばテロを行いました。彼らはたくさんのお金を持っており、市民防衛隊に加わって、人々を攻撃するのにそのお金を使いました。

ホワイト・ヘルメットがどこかへ行きたいと思ったとき、テロリストはよく彼らと行動を共にして、彼らのために道を開けさせました。彼らが偽旗攻撃をする場所に到着した瞬間、彼らは10個の発煙弾を投げ、ひどい煙を出して、何も見えなくしました。彼らはしばしば人々を射撃しました。そして煙がなくなったあとで、彼らは撮影を始めます。彼らは銃弾が空になるまで撃ちまくって人々を殺すので、一言もしゃべることはできませんでした。

サクバのホワイト・ヘルメットセンター

もし誰かの腕の血管が切れたら、彼らは直ちに切断して、傷口を縫います。その間に撮影するのです。もし誰かの足が弾丸やガラスなどで傷ついたら、最初の治療は切断でした。」

クレイシェの切断に関する話は、サクバから来たハナディ・シャクルの話とも一致した。彼女は、ジャイシュ・アル=イスラムに加わった夫が彼女を辞めさせるまで1年間看護婦として働いていた。

サクバの兵器工場

「ややひどい怪我の場合はいつでも、この人は切断しなければならないと彼らはよく言いました。我々は薬の供給が不足している、だから切断が一番よい選択だとよく言いました。彼らは人々を治療しなかったのです。ほんの少しの治療ですむ人でさえ、彼らはよく切断するだけだったのです。」

医薬品の欠如という主張は、東アレッポの時のように嘘であることがわかりました。サクバの地下病院だけでも、医薬品や盗まれた医療機器がいっぱいある部屋を私は見ました。シリアのジャーナリストは、東グータの他の場所でもそのような貯蔵庫があることを報告していました。

ハナディ・シャクルによれば、「運び込まれる医療食料援助は、すべて消えてしまいます。彼らはそれを売り、お金にするのです。すべてはテロリスト指導者の懐に入ってしまった」ということです。

東グータが解放されていた時、企業メディアは虐殺の偽情報を掻き立てるのに忙しかった。ちょうど企業メディアがアレッポが解放される時も偽情報を流していたように。彼らはテロリスト支援者から流される話を作り出し、いつもシリア政府を飢餓のかどで責めるのだ。そして東グータを占拠していた過激派グループの犯罪やテロリズムをごまかそうとしてしていたのだ。

実際、逮捕者の犯罪やシリア軍に解放された時の開放感について、グータ市民は言うことはたくさんあった。しかし企業メディアはそれには興味を示さず、そんな話は彼らの政権転覆にはふさわしくないのだ。
(翻訳:新見明)
<記事原文>https://www.rt.com/op-ed/429349-syrians-tell-terrorists-white-helmets/

<新見コメント>------------------------
東グータで化学兵器が使われたという偽情報のことを、何度かこのブログでも紹介してきた。そしてホワイトヘルメットが欧米・反政府勢力の偽の情報発信源になっていることも明らかになっている。
「テロリストの実行可能性が、東グータ化学兵器工場で明らかになる」
 http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-39.html

しかし欧米メディアでは、未だにアサド政権が化学兵器を使って、シリア住民を虐殺しているという情報が、ホワイトヘルメットを使って流されている。そしてホワイトヘルメットはアメリカNED(全米民主主義基金)から税金を使って資金援助されているという情報もある。

櫻井ジャーナル2018.06.16
 「アル・カイダ系集団と一心同体の白ヘルに米政権は660万ドルを払い続けると宣言」
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201806160001/

この翻訳記事は、著者が実際に解放された東グータに入り、住民から聞き取った情報ということで、生々しく、しかも真実味がある。

支援物資が全てテロリスト指導者に渡ってしまって、しかもその支援物資を高く売りつけてもうける。医薬品はたくさんあるのに、すぐ切断するだけの治療であったりする。極めつけは偽情報がどう作られるかも具体的に語られている。

「彼らが・・到着した瞬間、10個の発煙弾を投げ、ひどい煙を出して、何も見えなくししました。・・・そして煙がなくなった後で、彼らは撮影を始めます」と偽情報が作成場面が語られています。

日本のメディアが、現場から直接取材しておらず、欧米情報の受け売りであることは、この記事をよむとよくわかる。

なお登場するアラビア語の氏名については、できるだけ調べたり、アラビア語を勉強していた後輩に聞いたりしたが、まだ不正確な点があることをご容赦願いたい。

元ピンクフロイドのメンバー、コンサートで「ホワイト・ヘルメット」を批判



元ピンクフロイドのメンバー、イギリス人歌手ロジャー・ウォーターズは、今はソロシンガーとして活動している。その彼が、問題のシリア人グループ「ホワイト・ヘルメット」をバルセロナのコンサートで批判した。「彼らはジハード主義者やテロリストのための宣伝活動をしているにすぎない」と。

この批判スピーチはウォーターズ自身が、金曜日バルセロナのコンサートでしたものだ。それはちょうど米英仏が「ホワイト・ヘルメット」の情報のみに依拠してシリアへの攻撃を準備していたときだ。この1週間前、「ホワイト・ヘルメット」は、シリア政府の科学兵器攻撃直後のものだとする写真や映像を公表した。その写真や映像に出てくるダマスカス近郊のドゥーマの町は、「イスラム軍」と呼ばれる武装グループに占領されていた。

コンサートの聴衆に向かって「ドゥーマや化学兵器攻撃疑惑についてステージで話してくれとの要請があった」とウォーターズは語った。ウォーターズは「この要請者と自分との間には、シリア情勢について大きな意見の違いがある」と述べた。

「ホワイト・ヘルメットは、ジハード主義者やテロリストのためのプロパガンダを作るだけのフェイク(偽)組織だ。それが私の考えだ。私たちの考えは違っている」と彼は説明した。拍手する聴衆がビデオからもわかる。

ウォーターズは、ホワイト・ヘルメットの「大義」をなぜ支持できないかを説明した。「もし我々がホワイト・ヘルメットやその周辺の宣伝に耳を傾けるようなことがあれば、自分達の政府がやろうとしているシリア人民への爆弾投下の後押しを奨励することになる。これは人類として、私たちがとんでもない誤りを犯すことにつながる」と彼は述べた。

さらに、「我々がすべきなのは、人々の頭上に爆弾を落としに行くようなことを止めるよう、自分達の政府に説得しに行くことだ。そして少なくとも必要な調査を全部やり終え、本当に何が起こっているのか、きちんとした理解ができるまで爆撃はやめるように説得すべきだ。何故なら今は、プロパガンダの方が本当の現実より重要視されるような世界だからだ」と彼は続けた。

ウォーターズは会場の人々に、「国境を越え、宗教を越え、国籍を越え」共に手を携えて、地球をもっといい場所にしよう、と呼びかけた。

「ホワイト・ヘルメット」はシリアの各地で活動し、「民間防衛組織」を自称している。彼らは種々の武装グループの指揮下にあり、その中にはシリア中央政府に対立する筋金入りイスラム主義者も含まれる。そしてアメリカやイギリスなどいくつかの西欧諸国からも資金を得ている。このグループは、西側メディアから広く賞賛され、彼らを扱ったドキュメンタリーはアカデミー賞さえ受賞した。

公開処刑の手助けをしたり、偽の救出作戦を実行するなど,ホワイト・ヘルメットに雇われた者たちによる疑念を呼ぶ行為が、これまでにも何度か発覚してきた。彼らのいわゆる「救出作戦」は本当の目的を隠蔽するためのものにすぎないと批判されるゆえんである。つまり「彼らの行為は、シリア政府に敵対する勢力に有利となるような写真や映像を捏造し、シリア政府軍に敵対する軍事行動に正当性を与えようとするものだ」と言う批判である。政府軍が「聖戦士」たちから奪還した地域の住民も、そのような批判を支持している。
    (翻訳:大手山茂、新見明)

<記事原文>
https://www.rt.com/uk/424247-roger-waters-white-helmets/

<新見コメント>ーーーーーーーーーーーーーーーー
元ピンク・フロイドのメンバー、ロジャー・ウォーターズが、公演で堂々と「ホワイト・ヘルメット」を批判する姿は、我が日本の芸能界ではなかなか見られないことです。イギリスが、アメリカやフランスと共に、「化学兵器」を口実にシリア爆撃に参加している時に、このような発言ができるイギリス人歌手がいることともに、このような記事を載せるRT(Russia Today)にも感心させられます。

なおピンク・フロイドに関しては寺島隆吉『国際理解の歩き方』(pp.27-29)にも書かれていることを、寺島先生から指摘していただき、読み直してみました。1990年に寺島先生がヨーロッパHOBO(浮浪者)の旅をしていたとき、ちょうどベルリンの壁崩壊が1989年11月9日のことですから、壁崩壊後にベルリンでピンク・フロイドの公演に出会ったことになります。

この翻訳は、大手山茂が最初に翻訳し、私が見直してから載せたものです。その際、寺島隆吉先生からも助言をいただき修正を加えました。このように新たな翻訳者が加わることによって、このサイトもさらに充実してくるのではないかと思います。

テロリストの実行可能性が、東グータ化学兵器工場で明らかになる

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シャーマイン・ナルワニ


シャーマイン・ナルワニは中東地政学のコメンテーターであり分析家です。彼女は元オックスフォード大学アントニー校の上級研究員です。またコロンビア大学国際関係論の修士号をとっています。シャーマインは、多くの出版物に寄稿しています。アル・アクバル英語版、ニューヨークタイムズ、ガーディアン、アジア・タイムズonline、Salon.com、USA Today、ハフィントン・ポスト、アルジャジーラ英語版、BTICS Postその他。彼女のツイッターは@snarwaniでフォローできます。

RT 2018年3月16日

(@Sharmine Narwani)

シリアにおける化学兵器使用をめぐる論争は、何年にもわたって悪意に満ちていて、激しくなっている。しかし今週、東グータで発見された化学兵器工場は、この議論を根本的に変えるものだ。

去年の12月、ワシントンDCの米軍格納庫でニッキ・ヘイリー国連大使は,イェメンのフーシ派反乱軍とイランの軍事的共謀の証拠として、大きな金属パイプを展示しました。その写真は全欧米メディアの一面を飾りました。そしてアメリカが演出した大きなパイプは、何も証明していないという反対意見をかき消した。

今週シリア・アラブ軍(SAA)はシフォウニエとドゥーマ間の東グータの農地を解放した。そこでサウジ支援のイスラムテロリストが運営する優れた化学兵器工場を発見した。その工場の調査を明らかにした欧米報道は一つだけではなかった。

© Sharmine Narwani

しかしメディアの無関心は不思議である。たとえアメリカ当局が、化学兵器使用を口実にシリアへの軍事攻撃に青信号を出しているとしてもだ。アメリカの非難は証明されておらず、かなり議論のあるところだ。他のグループは、反政府軍がシリアに米軍介入を引き入れるために化学兵器を利用しているとするのと主張している。

だから恐らく、シリアの主要戦闘震源地域のすぐそばで発見された化学兵器工場は、特に不思議なことではないので、一方の側によって無視されたのだろう。結局一方だけがシリアで化学兵器を使っているということになる。だから一方がこの工場が発見されたとき沈黙を守ったということだ。

化学兵器工場は、現在の前戦から数十メートル離れているだけで、ついこの間の月曜日に解放されたばかりだ。工場は農地に囲まれ、この隠れ家は最も見つけにくいものだった。欧米メディアが「飢餓の包囲攻撃」と呼ぶ戦場に散在するのは、小麦、グリーピース、ソラマメ、ヒヨコマメの畑である。建物自体には砲弾の跡があり、残骸が散らばっている。私がシフォウニエを通り過ぎて見た数多くの建物や、戦争が荒れ狂っている東グータの他の町も同様に荒れ果てている。
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SAA(シリア・アラブ軍)によれば、化学兵器工場のいくつかの区域で、これらの塩素容器が壁に沿って並べられている(写真右)。化学物質の棚が工場の二階に点在している(写真左)。(© Sharmine Narwani )

しかし内部の光景は驚くべきものである。二階の部屋は、電気機器がぎっしりと、地下は大型ボイラーが整備され、棚には化学薬品があふれ、隅には青や黒の容器が積み上げられ(塩素が入っていると言われる)、化学図表、本、ビーカー、ガラス瓶、試験管など普通の理科系学生にはおなじみのももある。また別の片隅には、たくさんのパイプ型のロケット弾、つまり明らかにある種の軍事兵器が置かれている。

工場の二階には一つの際だったものがある。それは真新しい外観で、正面に"Hill-rom Medaes Medplus Air Plant"と書かれている。ざっとグーグルを検索すると、すぐいくつかの興味深い事実が出てくる。それはある種の空気またはガスのコンプレッサーである。それはアメリカ製の製品で、2015年この機械がサウジアラビアから提供されたものである。


工場の主要階にあるアメリカ製のヒル・ロム空気・ガスコンプレッサー機械
(© Sharmine Narwani )

壁に貼られた数字のリストと電話延長コードは、この地域と工場がサウジが支援するテロリストグループ、ジャイシュ・アル・イスラムによって管理されていたことが確認できる。ジャイシュ・アル・イスラムの政治指導者モハンマド・アロウシュはかつて国連のジュネーブ会談に反政府派交渉団の代表として招かれた。

サウジは、シリアの戦場へ装備や兵器を流していることを、この紛争中に何度も現場を押さえられてきた。つまり、サウジの末端使用者だけが使うことを意図した売買である。ヒル-ロム・コンプレッサーはほとんどの欧米化学装備と同様、厳格な制裁法によってシリアに売られることが禁止されてきた。たとえ軍事目的でなかったとしても、そのような多くの製品は、アメリカ当局では「両義的使用」技術と考えられている。

兵器工場を視察したシリア係官は、その施設で、明らかに問題となる製品を指摘しただけである。彼らはそこに24時間居ただけで、その意図がまだ十分解明されていなかった。彼らは青と黒の金属容器を調べ、塩素を発見した。つまりシリアの戦場で、少しずつ繰り返し使われ、広く国際的非難を引き起こした物質である。

これは化学兵器工場なのか。それとも爆発物のように戦争で使われた物質を作る化学工場にすぎないのか。

たとえこの工場で禁止されていない化学兵器が作られたとしても、その発見は化学兵器の非難合戦で形勢を逆転させるものだ。欧米が支援し、湾岸諸国が財政支援するイスラム戦闘員が、戦場で化学兵器を作る能力を持っていることは今や反論の余地がない。それは欧米メディアが言うような簡易施設ではない。この工場は戦闘員が外国製の設備を集め、生産ラインを作り出し、入手困難な成分を作っていることを証明している。

戦闘員が、化学兵器を生産する能力や連携や技術設備を欠いているとはもはや言えない。

工場地下のボイラーは上の階にパイプを通して加圧・圧縮装置とつながっている。

テロリストと化学兵器

テロリストがイラクやシリアの戦場で、低レベルで簡単な化学兵器を使っているという証拠はたくさんある。

イラク反乱軍による即席爆発装置(IED)でサリン神経ガスが使用されたことは、2004年以来メディアで、さらに詳しくはCIAによって実証されてきた。

また同じ年に、塩素即席爆発装置(IED)がイラクで最初に使われた。しかし2007年になって、攻撃的な化学兵器戦争がアンバール州やイラクのその他の地域でアルカイダによって開始された。そのときの自爆攻撃で塩素爆弾が使われた。

はるか10年前かそこらである。2016年イギリス情報分析IHS紛争調査会社の報告によると、イスラム国(それはイラクのアルカイダから進化したもの)は塩素や硫黄マスタードガスを含む化学兵器を使用したという。シリアやイラク両方で、少なくとも52回使用された。

シリアでは紛争が2012年に始まった。それはアルカイダ系のアルヌスラ戦線がその国の唯一の塩素生産工場を奪取したときだ。それはサウジとのベンチャービジネス工場で、アレッポの東に位置していた。ダマスカスは国連に直ちに警告を発した。「テロリストグループはシリア人に対して化学兵器を使用する可能性がある。・・・有毒な塩素工場を支配したので。」

多くのロケット弾/工場の兵器は、製造された物質が戦争で使われるために作られたことを示している。(© Sharmine Narwani)

3カ月後シリア紛争で最初の化学兵器事件として考えられるのは、26人(その大部分がシリア兵士で、16人)が、アレッポのカーン・アサル村で塩素攻撃とされるものによって殺された事件だ。翌日シリア政府は、国連にその攻撃の調査を要求した。2・3日後ダマスカスの北東のアドラでもう一つの化学兵器とされる事件があった。それはサラケブの攻撃とその後の8月のグータへと続く。それらは、ほとんど米軍攻撃を引き起こした化学兵器事件である。グータでヨルダンの現場リポーターがインタビューした証人は、サウジが戦闘員に化学兵器を与え、いくつかがたまたま爆発させられたと語った。

2013年5月、トルコ当局は、4.5リブラ[=ポンド]のサリンガスを所持していた12人のヌスラ戦線兵士を逮捕した。トルコメディアはテロリストの目標について様々な報道を行った。それらの一つは、そのグループがその物質をヌスラの本拠地シリアに戻す計画をしていたというものだ。

6月にアルカイダ細胞メンバーはイラク当局に逮捕された。彼らはサリンやマスタードガスを研究し、製造するために使われていた二つのバグダッド工場を襲撃した。当局が語るところでは、アルカイダ兵士は、致死性化学兵器の製造に必要な前駆物質や製造方法を持っているという。

等々いろいろあるが、東グータの工場の話に戻ろう。

工場の所有者であるサウジ支援のジャイシュ・アル・イスラムは、2016年アレッポ近くのシェイク・マクスードで、クルド人に対する迫撃砲攻撃で有毒ガスを使用したことを認めた。「衝突の間にジャイシュ・アル・イスラム団の一人が、この種の衝突で禁じられている兵器を使用した」とそのグループは化学兵器攻撃に関する声明で述べた。その中で犯人には責任があると主張した。

その声明は一面では正しい。それはそのグループが化学兵器を所有していることを確認できるからだ。

(さらに読む)
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(© Nawrouz Uthman) シリアのイスラミスト・グループ、ジャイシュ・アル・イスラムはアレッポでクルド人に対して禁止された兵器の使用を認める。


誰が化学兵器で得をするのか?

2012年半ば、シリア政府は化学兵器を持っていることを認めた。しかしこれらは「外敵の侵略」に対してのみ使用され、決してシリア人には使用されない、と述べられた。

この声明はジャイシュ・アルイスラムの声明と同じ懐疑論と見られるが、一つの点で違いがある。どう考えても化学兵器は、政治的にも軍事的にも、この7年間の戦争でシリア政府を利するものではないということだ。だからシリア政府は一方的に化学兵器計画を認め、アメリカ・ロシアの監視の下ですすんで放棄することにしたのだ。

シリアの戦場で使われた化学兵器の量は、戦争の範囲や暴力性と比較して,取るに足らないものである。なぜ数ダースの人間を殺すだけのために非常に挑発的な兵器を使用するのか。もっと無害な仕事ができる伝統兵器を使うことができるのに。

そしてなぜ国際社会すべての怒りを買ってまで、またさらなる孤立を招いてまでして、リスクを冒す必要があるのか。あなたが一番望むことが、わずかな日数であなた方の軍事基地を壊滅できる外国の介入を避けることであるときにだ。

手がかりになるのは、シリア紛争を通して「大虐殺」や「化学兵器攻撃」が、兵士達が後退したり、膠着状態に陥ったときにほとんど行われているということだ。または国連安保理会議のような重要な出来事が起こるときだ。

体がけいれんして、呼吸をしようとあえいでいる子どもたちの恐ろしい場面によって、国際社会を刺激して、非難させ、制裁させ、敵に爆撃させる絶好の機会になってしまう。
アル・シホウニエ農場の化学兵器工場で何が発見されようが実は問題ではない。工場の占有者がアルヌスラであろうが、ジャイシュ・アルイスラムであろうが、ISであろうが、それらの二つが現在東グータで軍事行動を行っている。彼らが化学兵器使用の推理小説に最後の手がかりを与えてくれた。彼らは絶えずシリアで化学兵器を使う動機をもっている。そして今や我々は、彼らが化学兵器の手段や能力も持っていることを見ることができるのだ。
(翻訳 新見明)
<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/421515-ghouta-syria-chemical-weapons/

<新見コメント>ーーーーーーーーーーーーーーーーー

前回の二つの記事(イギリス、シリア)に続いて、今回も再度シリア情勢を扱ったRTの記事を「寺島メソッド翻訳NEWS」に載せました。
シャーマイン・ナルワニ「テロリストの実行可能性が東グータ化学兵器工場で明らかになる」

欧米メディアのシリア政府犯行説に反論する記事をたくさん読みましたが、その中でも、この記事は反政府軍の化学兵器工場が発見されたことを伝えくれていて、重要であるので翻訳しました。

記事の中で次の点が強調されていました。
      (1)東グータの反政府派の拠点で化学兵器工場が発見されたこと。
    (2)工場の中のコンプレッサーはアメリカ製で、2015年サウジアラビアから提
      供 されたものである。
     (3)イスラム戦闘員は、欧米が支援し、湾岸諸国が財政支援していて、戦場
       で化学兵器を作る能力がある。
     (4)イギリスの情報分析調査会社IHSによると、イスラム国は、塩素や硫黄
      マスタードガスを含む化学兵器を、少なくとも52回シリアやイラクで使用
        した。
     (5)2012年半ば、シリア政府は化学兵器を持っていることを自ら認めた。し
      かし、政治的にも軍事的にも役に立たないとして、アメリカ・ロシアの監視の
      下に進んで放棄することにした。
     (6)「大虐殺」や「化学兵器攻撃」は、兵士達が後退させられたり、膠着状態
      に陥ったときにほとんど使われる。

だから、東グータを政府軍がほとんど制圧しようとしているときに、国際社会の非難を浴びる「化学兵器攻撃」を政府軍がする必要があるのか。それはイスラム国が崩壊し、クルドとの連携も微妙になってきた欧米勢力が、再攻撃するためのプロパガンダと考える方が筋が通っている。

4月14日未明の米英仏のミサイル攻撃について、「櫻井ジャーナル2018.4.17」を見てみよう。アメリカ国防省発表によると105発すべてが命中したとしている。
    バルザール化学兵器研究開発センター(76機)
    ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設   (22機)
     ヒム・シンシャー化学兵器(?)        (7機)

しかし、これらの化学兵器施設はアメリカ・ロシアの監視下で撤去され、アメリカに運び去られたではないのか。

一方、ロシア国防省発表では次のようになる。
    ダマスカス国際空港   (4機、全て撃墜)
     アル・ドゥマイル軍用空港(12機、全て撃墜)
    パリー軍用空港     (18機、全て撃墜)
    サヤラト軍用空港    (12機、全て撃墜)
     メゼー軍用空港     (9機、うち5機を撃墜)
     ホムス軍用空港     (16機、うち13機を撃墜)
    バザーやザラマニ地域  (30機、うち7機を撃墜)

しかもこれら105機のうち71機をシリア政府軍が打ち落とした可能性が高いという。「今日程度の攻撃なら、シリア軍だけで対抗できることを示した」と櫻井ジャーナルは書いている。

ロシアは攻撃があれば、発射した戦艦などに攻撃を加えると警告していた。そのような自体になれば米ロの全面戦争になる。そうならなかったことに一安心するが、アルカイダ系武装集団ジャイシュ・アル・イスラムの幹部モハマド・アルーシュは「失望した」と表明している。今後も米英仏はこの「失敗」にあきらめることなく次の手を考えてくるだろう。

安倍晋三は、シリア攻撃の後すぐにアメリカ支持表明をした。2013年、イラクで大量破壊兵器があると言って米軍の侵略戦争にいち早く支持表明をしたのは小泉純一郎だった。そして自衛隊を戦闘地域ではないとしてサマワに派遣し、アメリカの侵略戦争に荷担していった。

今回も戦争が激化すれば、日本も参加を求められるだろう。安倍晋三は国内の支持率低下を食い止めるためにも、喜んで自衛隊を参加させるだろう。これが「積極的平和主義」の本質だ。

ジョージ・オーウェルの言葉を思いだそう。
    
    War is peace.        戦争は平和である。
    Freedom is slavery.   自由は隷従である。
    Ignorance is strength. 無知は力である。

                              『1984年』より




攻撃されたとされるドゥーマ地区で、化学兵器の痕跡なし---ロシア軍

RT  Home/World News/

 2018年4月9日


(URLより)
子どもを洗浄している写真。4月7日東グータのドゥーマで化学兵器攻撃がなされたと、ホワイト・ヘルメットとシリア反政府グループが主張している。写真は偽装されたものだとロシア軍は言う。

ロシア軍は、「攻撃」の標的とされたと言われるシリアのドゥーマを捜索した後、化学兵器使用の痕跡を見つけられなかった。そしてホワイト/ヘルメットによって投稿された犠牲者の写真はフェイクであるとロシア防衛省は語った。

化学兵器攻撃が起こなわれたとされる東グータ地区ドゥーマを、放射線、化学、細菌戦の専門家は、医師等と共に、月曜日に詳しく調べた、とシリアのためのロシア和解センターは声明で述べた。

(さらに読む)
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資料写真:シリア、東グータ地区、反乱軍地域ドゥーマで見られるシリア兵たち、2018年3月28日。
アマール・サファジャラニ・モスクワは、ドゥーマの化学兵器攻撃は「フェイク・ニュース」だと、シリアに対する介入を警告している。


専門家達はその地域を調査した後、「化学物質使用の痕跡は見つからなかった」と声明を出した。医療専門家達は地域の病院も訪れたが、化学兵器中毒の兆候を示す患者を見つけられなかった。「これらすべての事実が示していることは、・・・ホワイト・ヘルメットの主張とは異なり,化学兵器はドゥーマの町では使われなかった」ということだ。そして攻撃について最初に報道した問題の「市民防衛」グループにも言及した。

「ホワイト・ヘルメットによってなされたすべての非難は、化学兵器攻撃の犠牲者を示すとされる写真と同様、もう一つのフェイク・ニュースにすぎず、停戦を中断させる企てである」と和解センターは語った。

土曜日、ホワイト・ヘルメットを含む反乱軍系のグループは、シリア政府が東グータのドゥーマで化学兵器攻撃を実行し、何十人もの市民を襲ったと非難した。報道は西欧ですでに怒りの渦を引き起こしている。アメリカとEUは、事件をダマスカスとモスクワの責任にして猛烈に非難した。ドナルド・トランプ大統領は慌ただしく、その攻撃を「心ない」残虐行為であり、理由なき人道的大惨事で、「大きな代償が払われることになる」と警告した。

(さらに読む)


、ドゥーマ避難前に、兵士やその家族を運ぶバスの近くに立っているシリア軍兵士。2018年3月25日、シリア、ダマスカス、ジョバール郊外のハラスタ高速道路で。© Omar Sanadiki
「トランプが撤退を考えているとき、シリアは自国民にガス攻撃を加えるのか?」、とジャーナリストはドゥーマの化学兵器攻撃を疑問視する。


シリアとロシアは、その非難を退け、その報道をフェイク・ニュースと呼び、過激派を支援し、シリア軍に対する攻撃を正当化することを狙いとする報道だと非難した。月曜日の早朝、イスラエルの戦闘機はホムス州のシリアT-4空軍基地を攻撃した、とロシア防衛省は述べた。イスラエルはその攻撃についてコメントを出していない。この攻撃前に、多くのイスラエル政府高官が、化学兵器攻撃に対抗してシリアを攻撃するためアメリカを訪れていた。

トランプは、24~48時間以内に可能なシリア攻撃を決定すると約束した。まだ何も「棚上げになっている」わけではない。これより前にも、アメリカ国防長官ジェームズ・マティスは、アメリカはダマスカスに対して軍事攻撃の可能性を排除しないと述べていた。

ホワイト・ヘルメットは、戦争に巻き込まれたシリア人を救う最初のボランディア団体であると主張している。彼らは欧米メディアで注目を集め、2016年アレッポの戦いで有名になった。ホワイト・ヘルメットはもっぱら都市の反政府軍支配地域で活動して、西欧で最も広く使われる情報や視覚資料源の一つとなっている。

しかしアレッポの地元の人々が、RTのムラド・ガズディエフに語ったところでは、ホワイト・ヘルメットは反乱軍と密接な関係を保っていて、「自分たちだけののため」に活動していると言う。地元の目撃者たちはまた、「活動家たち」が人道援助を略奪すると非難した。そしてその援助は市に入ってくると、住民にカメラの前で偽の反政府声明を読ませ、代わりに食料をもらえることになっていると言う。
                                                 (翻訳:新見 明)
<記事原文>
https://www.rt.com/news/423627-russian-military-checks-chemical-douma/

<新見コメント>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ついに米英仏、化学兵器を口実にシリアを攻撃

「攻撃されたとされるドゥーマ地区で、化学兵器の痕跡なし---ロシア軍」
                   RT  2018年4月9日
「未確認:スクリパル事件で使われた神経剤がロシアで作られたかどうか、ポートン・ダウンの科学者は確認できない」     RT 2018年4月3日

上記二つのRTの記事をブログ「寺島メソッド翻訳NEWS」に連続でアップしました。
新聞やテレビのニュースを見ているだけでは決して知ることができない記事です。

先日の朝日新聞のデジタル記事(2018.4.8)では「アサド政権が東グータ地区で化学兵器使用?呼吸困難で11人死亡。救助組織が疑い指摘」という大見出しのあと、小さく「政権側は”偽情報”として否定」と書かれている。しかし「人権監視団によると・・・シリアでの化学兵器の使用をめぐっては、国連が2016年に、アサド政権が14年と15年の過去2回、化学兵器を使ったと結論づける調査報告書を発表。その後も、東グータ地区での政権軍による塩素ガスなどの化学兵器使用の疑いが浮上している」(下線は筆者)と一方の側の主張は大きく取り上げられているが、否定しているシリア政府・ロシア側の主張は一切載せられていない。

また東京(中日)新聞(2018.4.11朝刊)では、「七年に及ぶシリア内戦はアサド政権の軍事的優位が確定し、化学兵器に頼る必然性は低い」としながらも、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチを引用しながら「2013年8月~18年2月に化学兵器による攻撃が85件発生し、50件以上にアサド政権が関与したという。東グータでは2月下旬にも塩素ガス弾が使用された疑いがあるが、政権側は一貫して否定、反体制派の”自作自演”と主張する」(下線は筆者)と、両論併記のように見えて、実はヒューマン・ライツ・ウォッチの発表が大きく取り上げられている。

これらの記事を読んだ読者は、どちらか結論を下していないが、シリア政府やロシアの犯罪行為が人権監視団やヒューマン・ライツ・ウォッチを引用して大きく書かれていて、ロシア・シリア政府悪者説に流されてしまう。巧妙な情報操作だ。それらの情報源はいつもホワイト・ヘルメットや国際人権団体など、欧米メディアがいつも利用する偏った情報源で満ちあふれている。シリア政府やロシア側の主張は「否定している」としか書かれていない。

朝日、中日(東京)新聞は、国内問題で「森友学園、加計学園」問題を鋭く批判していても、こと海外ニュースになると欧米通信社の受け売りか、欧米メディアを読んで書いているとしか思われないニュースばかりだ。

cui bono(誰が得をするのか)の視点から、これらの事件を見ると、プーチンが大統領選挙で76%の得票で信任を得ているときに、どうして元二重スパイを殺す必要があるのだろうか。またシリアの東グータでほとんど政府軍が制圧しようとしているときに、どうして世界から批判を浴びてまで化学兵器を使う必要があるのだろうか。どちらもシリア政府、ロシアを悪者にするのに都合のいい偽旗作戦(フェイク・ニュース)ではないか。私たちは常に新聞を批判的に読む力を身につけなければならない。

前回オリンピックがアメリカのNBSの放映権に牛耳られている記事をこのブログに載せましたが、平昌オリンピックでロシアが国家ぐるみのドーピングということで証拠もなしに参加を認められませんでした。これはリオ・オリンピックでもあったことであり、さらにこれから行われるFIFAのロシア大会でもこの大会を握りつぶす動きがあると、下記サイトで書かれている。
https://www.rt.com/op-ed/422796-world-cup-russia-boycott/

そして全体の結論はロシアやシリアのアサド政権を悪魔化して、戦争を仕掛ける口実にしているわけだ。これまでのアメリカ・NATOは、イラクに大量破壊兵器があると偽情報を流し侵略した。ウクライナにおいても合法的に選ばれたヤヌコービッチ大統領をネオナチのクーデターで政権転覆させ、95%以上の賛成住民投票でロシア編入をしたのにロシア侵略説を流している。リビアでは、アフリカ・ディナール金貨を流通させようとしてドル支配体制への脅威となった。だから米・NATOはアルカイダ系勢力を使い、カダフィを殺し、アフリカで最も豊かな国を壊滅状態にしたのだ。また前回このブログに載せた北朝鮮問題などすべてを総合すると、アメリカのロシア・中国包囲網の一環としてメディアを使ってプロパガンダしている構図を見なければならない。 

また「櫻井ジャーナル2018.4.12」によると、昨年4月、化学兵器使用を口実にアメリカ海軍の2駆逐艦(ポーターとロス)から59機の巡航ミサイル(トマホーク)をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射している。今年になってさらに駆逐艦ドナルト・クックをロシア海軍基地近くのシリア沖に移動させ、さらに駆逐艦ポーターも同じ海域に配備されると言われている。哨戒機のP-8Aポセイドンや原子力潜水艦がシリア沖へ向かい、5月には空母ハリー・S・トルーマンを中心とする艦隊がシリア沖に到着する予定だ。

それに対して、ロシア海軍はシリア沖で4月11日から艦隊演習を実施すると伝えられている。つまり米ロ衝突の危機は目前に迫っているということだ。

米ロ衝突がシリアで始まるかもしれないと言うときに、日本人は、欧米メディアのプロパガンダに洗脳されていては、アメリカの「民主主義」の戦いに動員されてしまう可能性があるのです。現に北朝鮮危機を契機に自衛隊は米軍と共同行動をとり、戦争の準備態勢に入っているのだから。

安倍政権にとっては憲法改正のチャンスと受け取っているだろう。しかし私たちは、「集団的自衛権」か「自主防衛」かの対立でなく、非戦、反戦の立場から憲法改正の動きを止めていかなければいけない。アメリカの一極支配に与しないという立場を鮮明にしなければ、真の平和への道はないだろう。

シリア空爆 RT

専門家が科学的調査をするために米国の攻撃を受けたシリア空軍基地に派遣さなければならない ーロシア防衛省

Russian Today News 2017年4月8日
http://blog-imgs-106.fc2.com/t/m/m/tmmethod/20170429041019168.htm

シリアでの戦争に邁進するアメリカ、その背後には何があるのか。

What's really behind America's rush to war in Syria?
John Wight
Published time: 7 Apr, 2017 15:15

http://blog-imgs-102.fc2.com/t/m/m/tmmethod/201704272305156c5.htm

ジョン・ワイトは世界中の新聞やウェブサイトに寄稿している。その中にはインディペンダント、モーニング・スター、ハフィントン・ポスト、ロンドンプログレッシブ・ジャーナル、外交政策ジャーナルがある。彼はまたRTやBBCラジオのレギュラーコメンテーターでもある。ジョンは最近「アラブの春」における欧米の役割を調査した本を書いている。Twitter@JohnWight1でツイートできる。

投稿:2017.4.7 15:15

編集:2017.4.8 9:58

続きを読む»

オバマが知られたくないイスラム国についての26項目

http://blog-imgs-102.fc2.com/t/m/m/tmmethod/201703300009405a4.htm

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