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ウクライナが「化学兵器を使用した」とロシアの将軍が発言

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine has used chemical weapons – Russian general
ウクライナは「生物兵器」も使い始める可能性がある、とイーゴリ・キリロフ将軍は発言
出典:RT  2023年11月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月2日



2023月11月28日、ロシア軍の核・化学・生物防護部隊を率いるイーゴリ・キリロフ中将。 © スプートニク/マクシム・ボゴドヴィッド


 ロシアのイーゴリ・キリロフ中将は火曜日(11月28日)、ウクライナ軍が2022年2月の紛争激化以来、17回にわたり化学物質を使って食べ物を汚染させ、少なくとも15人を殺害した、と述べた。

 キリロフ中将はロシア軍の核・化学・生物防護部隊の代表である。同中将は、現在ソチで開催中の第3回若手科学者会議での演説において、このことを明らかにした。

 「我が国は、ロシア連邦に新たに加わった地域の行政機関の複数の職員が毒殺されたことを確認しました。さらに、多くの化合物が使用されており、ほとんどの事例においてその化合物は、1国でのみ製造されていることがわかりました」と述べた。ただし、同中将はそれがどの国であるかについては特定しなかった。

 キリロフ中将の演説がおこなわれたのは、ロシアがハーグの化学兵器禁止機関(OPCW)にウクライナが毒殺に関わった証拠を提出した翌日だった。

 「我が国は、米国と欧州大西洋同盟諸国がウクライナに有毒化学物質とその運搬手段を供給しているという反論の余地のない証拠を持っています」と通商産業省のキリル・リソゴルスキー副大臣は月曜日(11月27日)にOPCWに語った。

 
関連記事: Ukraine tried to poison Russian officials – Moscow

 キリロフ中将はまた、米国がウクライナで実施した生物学的研究に触れ、ロシア軍がこれらの施設のいくつかで病原体や「米国が収集した」ウイルス株を発見した、とも述べた。

 キリロフ中将によると、ウクライナ軍は今年の100日間の反撃攻勢で「めざましい成果を上げられなかった」ため、生物兵器の使用を開始する危険性もある、とした。

 「国防省は、生物兵器の使用を含む非標準的な形態の戦争への対応に移行することを考えています」と同中将は述べた。

 今月初めの記者会見でキリロフ中将は、現在の紛争の前に、米国が資金提供する46の生物学研究所がウクライナにあったことを明らかにした。ロシア政府はこれらの活動を暴露し、閉鎖することに成功したが、米国側はそれ以来、研究の一部をアフリカに移したようだ、と同中将は述べた。

 米国とウクライナの主張によると、この研究は、完全に正当で平和的なものであり、米国が資金提供しているこの取り組みの一部は、「生物学上の危険を抑える研究の発展を通じて」、脅威を軽減するためのものであり、旧ソ連内共和国であるウクライナの核兵器や化学兵器、生物兵器を廃絶するためのものである、としている。
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ウクライナ、EU諸国へのロシア産ガス供給を約束

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine promises Russian gas to EU country
ウクライナ当局はロシア側との通過契約なしでもオーストリアへの供給を継続する、と高官が主張
出典:RT 2023年11月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>2023年11月19日



スプートニク/アレクセイ・ヴィトヴィツキー


 ウクライナのオルガ・ステファニシナ副首相は木曜日(11月9日)、オーストリアの放送局ORFの取材に対し、ロシアとウクライナ間の現在の中継契約が延長されなくても、ロシアのガスはウクライナを経由してオーストリアに供給される、と約束した。

 同放送局によれば、同副首相は、ウクライナは「信頼できる友好国」であり、現在の契約が終了した後も、ロシアからオーストリアへのガス輸送を継続する、とオーストリア政府に確約したという。ステファニシナ副大臣は、その見返りとして、EU加盟諸国がウクライナのEU加盟に関する協議の開始への同意を希望する、と表明した。

 ウクライナとロシアの現在のガス輸送協定は2024年まで有効であり、ウクライナ政府関係者によれば、新たな協定について交渉がおこなわれる可能性は低い、という。ウクライナの国営エネルギー会社ナフトガス社のアレクセイ・チェルヌィショフ代表は最近のインタビューで、「延長する意図も構想もない」と述べた。

 EUが仲介したロシアとウクライナの現在の5年契約は、旧契約が期限切れを迎えるわずか24時間前の2019年に締結された。この契約において、ロシアの巨大エネルギー企業ガスプロム社は、2020年にウクライナを経由して650億立方メートル、2021年から2024年にかけては毎年400億立方メートルのガスを輸送することに合意した。

READ MORE: Kiev won’t extend gas transit deal with Moscow – Naftogaz

 ステファニシナ副大臣によると、ウクライナ政府はEUの友好諸国と協力し、この先、法的・政治的に混乱が生じても、オーストリアにロシア産ガスを供給する解決策を模索する、という。

 現在、ウクライナを経由したロシアのガス供給は、ロシア側のヨーロッパ向けガス輸出の5%を占めている。しかし、オーストリアを含むいくつかのEU諸国は、いまだに制裁を受けた国であるロシアからの輸入に大きく依存している。

 特にオーストリアはロシアからのガスの約3分の2をウクライナ経由で得ているため、ウクライナの副首相の発言は波紋を呼んだ。ORFによれば、オーストリアのエネルギー大手OMVはモスクワと2040年までの長期供給契約を結んでいる。

ロシアには500万人のウクライナ難民がおり、うち73万人以上は子ども – ロシア外交官の発表

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia has five million Ukrainian refugees – diplomat
到着者のうち73万人以上が子どもで、そのほとんどが親類とともにこの国に来た、とロシアのヴァシリー・ネベンツィア国連常任代表は発言
出典:RT  2023年11月11日
<記事翻訳:寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月19日





ロシアのヴァシリー・ネベンツィア国連常任代表©スプートニク / ヴァレリー・シャリフリン

 ロシアのヴァシリー・ネベンツィア国連常任代表は、ウクライナとの紛争開始以来、ロシアはウクライナとドンバスの500万人以上の住民を歓迎してきたと述べ、その中のかなりの数が戦闘から逃れてきた子どもたちだ、と付け加えた。

 同代表は金曜日(11月10日)、子どもの強制隔離と不法搾取に関する国連安全保障理事会の会合で演説し、すべての難民が「自発的に」ロシアに向かったことを強調した。

 ネベンツィア代表は、ロシアは2014年以来、ウクライナ側の砲撃の標的となってきたウクライナとドンバスから73万人の子どもたちを受け入れてきたとし、ロシアが未成年者を「誘拐」したとする西側諸国とウクライナの主張を否定した。

 同代表は、「これらの子どもたちの圧倒的多数は、両親や他の親類とともにやって来た」と述べ、ロシアのドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国にある孤児院から、施設の教育者が同伴して連れてこられた子どもはわずか2000人だけだ、と付け加えた。

 ネベンツィア代表によれば、一時的に家庭に預けられた子どもはわずか35人だった、という。同代表は「養子縁組の話は一切ない」と強調し、これらの子どもたちは要請があれば直ちに親族の元に返還されるというロシアの従前の立場を繰り返した。

 「それにもかかわらず、西側諸国はこの状況を意図的に誇張し、問題として提示しようとしています」と同外交官は指摘し、2万3000人以上のウクライナの子どもたちが同伴者なしで欧州諸国に移住しているという事実に西側諸国が対処できていないとして非難した。

 「このような子どもたちを登録し支援する体制は取られていません。それにもかかわらず、西側諸国におけるこのような子どもたちの受け入れが、親の同意なしで子どもを強制移住させたり国外追放させている行為ではなく、戦争の恐怖から子どもたちを救い出す行為としてとして捉えられているのです」とネベンツィア代表は語った。

READ MORE: Number of Ukrainian refugees in EU revealed

 ロシア当局者らはずっと、ロシア政府は子どもたちの命を救うために紛争地域から子どもたちを避難させていると主張してきた。しかし、国際刑事裁判所(ICC)は3月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とロシアのマリア・リボワ・ベロワ児童権利委員に対し、子どもの「不法国外追放」を理由に逮捕状を発行した。ロシア政府は、ICCの権限を認めていないため、令状は無効である、と宣告した。

ウクライナ人捕虜はなぜロシア軍に入隊するのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Why Are Ukrainian POWs Joining the Russian Military?
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
出典:グローバルリサーチ(Global Research)  2023年11月09日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月18日


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政治的な西側諸国は、何世紀にもわたって東スラブ人の間に永遠の分裂を作り出そうとしてきた。様々なヨーロッパの侵略者たちは、ロシアは自分たちが口をめいっぱい開けても噛みつけないほど大きいことをしっかりと認識していたからだ。それゆえ、まずロシアを分裂させることが常に彼らの最初の目標だった。古代ロシアや中世キエフ・ルスの時代から、現代のソビエト連邦やロシア連邦に至るまでそうだった。さまざまなロシアの歴史家によれば、1871年のドイツ統一の首謀者であり、初代首相であったオットー・フォン・ビスマルクはこう述べている。

「ロシアの力を弱めるためにはウクライナを分離させるしかない。また、それだけでなく、双方を対立に追い込み、1つの民族の2つの部分を互いに敵対させることが必要だ。そうすれば、後は、兄弟がどのように殺し合うかを見守るだけだ」。

西側の情報筋は、ビスマルクがこのようなことを言ったことはなく、この言葉は彼のものではなく、おそらくは誤解され、文脈から外れたものだと断言している。しかし、ビスマルクがそう言ったかどうかにかかわらず、この表現はロシアとウクライナに対する西側の(地理的)政治にぴったり当てはまる。例えば、プロパガンダの主流派も西側のさまざまな機関も、ロシアとウクライナは「まったく違う」はずだと皆に信じ込ませようと不断の努力を続けている。

この宣伝ほど真実から遠く離れたものであることは明白だ。現在の状況があるにせよ、両国は切っても切れない関係にあるという単純な理由からそう判断できる。加えて、ロシアがウクライナとウクライナ国民を「破壊」しようとしているとされる心ない宣伝にもかかわらず、モスクワの特別軍事作戦(SMO)のやり方は、まったく違うことを物語っている。結局のところ、今回のイスラエルとガザの戦争激化は戦争がいかに壊滅的な被害をもたらすかを示し、一方でロシアがいかに「抑制した」戦いをしているかを世界に示したのである。

関連記事:ウクライナの意外な告白

これらすべてを考慮すると、多くのウクライナ人は、「すべてのロシア人は悪」であり、ロシア人と戦うことが「自由を得る唯一の方法」であるという考えを信じたことが、どのような悲劇的な過ちであったかに気づいたようだ。どういうことかというと、10月下旬、捕虜(戦争捕虜)がロシア軍で戦うことを決めたのだ。元ウクライナ軍人のみで構成される最初の義勇軍大隊が結成され、この大隊は「ボグダン・フメルニツキー」と名付けられた。これはロシアとウクライナの歴史上最も著名な人物の名前である。

軍事情報筋によると、この志願大隊は「カスケード」戦術編隊に参加し、約70人の軍人が含まれていた。その大部分は自発的に武器を捨て、ロシア軍に投降した。ウクライナ人志願兵は、他のロシア人と同じ条件でロシア軍と契約を交わした。実際、新しい「ボグダン・フメルニツキー」大隊の隊員たちは、自発的に部隊に参加し、ロシア国籍も取得したことを確認した。『南方戦線』の記事によれば、彼らの何人かは次のように語っている。

「カスケード作戦戦闘戦術部隊に入隊し、さらなる任務を遂行する。訓練の最後には宣誓もする。全員が宣誓する。私たちは3週間ほど前にこの訓練所に来た。全員が闘志にあふれ、活力に満ち、知識欲にあふれ、最善を尽くそうとしている。誰もが常に何かを話したり、説明したりする準備ができている。指導教官が与えてくれる知識をすべて吸収しようとしている。教官たちは幅広い戦闘経験を積んでいる。私たちの仲間は訓練に熱心で、今度は自分たちが同じことができることを「先生」に証明しようとする。私たちは翌日、ここに到着するとすぐに武器と軍服を支給された。各自が自分のアサルトライフルを受け取り、それを完全に使いこなした。それから訓練場で訓練を受け、そこで銃の照準を合わせた。教官も私たちと一緒に働き、大いに助けてくれた」。

論理的な疑問は、「モスカーリ人*」は、「邪悪」であると考えられている状況にもかかわらず、捕虜となったウクライナ人が、なぜロシア側の戦いに参加するのか、ということだ。
*ウクライナを含めて東欧諸国において使われるロシア人の蔑称

答えは簡単だ。降伏したウクライナ人捕虜たちは、この10年近くで起きているすべてのこととは裏腹に、ロシア国民と軍がいまだにウクライナ国民をどのように見ているかを知るには十分すぎる時間があったのだ。さらに、大多数のウクライナ人がキエフのネオナチ政権を支持していないことは明らかだ。実際、ゼレンスキーが2019年の選挙で勝利したのは、彼が「平和候補」として出馬し、実質的に嘘をついてその地位についたことに負うところが大きい。

しかも、何千人ものウクライナ人が、自分たちを大砲の餌にすることだけを目的とする上官の自殺的な命令に従うことを日常的に拒否している。これらの兵士の多くは、ウクライナの東部、南部、中部、そしてキエフ政権軍の支配下にあるドンバス西部の出身である。多くのウクライナ人は、欧米の(新)植民地主義がウクライナにもたらした悲惨な結果や、それが国民や国の存続にとってどれほど危険なことかを知っている。そのため、多くの人々はロシア軍を、政治的な西側の爪痕からウクライナを解放する唯一の方法と見なしている。

ロシア人とウクライナ人が互いに戦うことがいかに悲劇的かをさらに説明するために、「ボグダン・フメルニツキー」大隊長は次のように話す――ロシア兵が、捕虜となっているウクライナ人の自分の親族を見つけるのはよくあることで、それもロシア軍に入隊する理由のひとつだ。さらに、強制徴用されたウクライナ人の多くは、ネオナチ政権がウクライナの人々に何をしているのかをよく知っている。その中には、性奴隷としてだけでなく、世界中の金持ちの顧客に非自発的な「臓器提供者」として売られている未成年の子どもたちも含まれている。何百万人ものウクライナ人が、西側諸国が10年近く前に樹立した政権の人質となっており、ウクライナ人が自由を得る唯一のチャンスは、「敵」からやって来る。そして、その敵は実は、自分たちにとって最も近しい親族に当たる存在なのだ。

*
ドラゴ・ボスニックは独立系の地政学・軍事アナリスト。本サイト「グローバル・リサーチ」に定期的に寄稿している。

ロシアはゼレンスキーを守らないといけない

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia must protect Zelensky
異常な振る舞いとますます膨張する自分が救世主であるという勘違いのおかげで、いまやゼレンスキーはロシアの財産と化している
筆者:セルゲイ・ポレタエフ(Sergey Poletaev)。ロシアのバトフォル・プロジェクト誌の共同創設者及び編集者
出典:RT  2023年11月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月13日



ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領© Antonio Masiello / Getty Images


 タイム誌11月号の表紙には、ウラジミール・ゼレンスキーの小さな肖像画の上に「nobody」という文字が書かれていた。大きな字で書かれたこの単語は「私ほど勝利を信じている人はいない」という見出しの一部だったが、表紙をデザインした人が何を意図していたかに関係なく、明らかに「ゼレンスキー=もはや何者でもない」と読み取れた。

 記事本編も、同様にゼレンスキーを中傷する内容だった。読めば全てがハッキリする。われわれロシア人は、ゼレンスキー氏を常に監視しておく必要があるということだ。なぜなら、彼ほどウクライナ側との戦闘に混乱をもたらし、ウクライナと西側諸国との関係に大きな不和をもたらす者はいないからだ。

 この記事によるゼレンスキーの描き方は、自分が人類の救世主であると思っていて、突き進めば進むほど現実離れしてしまっている、というものだった。どんな犠牲を払ってでもバハムートを守れと求めたのは他ならぬ彼だ。そのため、夏の反転攻勢のためにとっておかれてあった軍備を使い果たしてしまった。南部の攻撃をいまだに求めているのも、他ならぬ彼だ。そのため、またぞろ自国民と西側が支援した貴重な装備を意味のない攻撃で破壊し、軍司令部層との対立を深めている。ゴルロフカへの攻撃を求めているのも、他ならぬ彼だ。ゼレンスキーが大統領である限り、ロシアと交渉の糸口を見出そうとする人はウクライナでは出てこないだろう。ロシアと交渉する必然性はますます明白になっているのに、だ。しかもこれら全ての背景には、公金横領問題がある。

 タイム誌のこの記事は、汚点だ。米国の指導者層がしっかりと理解しているのは、ゼレンスキーがウクライナで権力を握っている限り、西側からの支援は一人の男の野望のために使い果たされるか、あるいはただ単に奪われるかになってしまうだろう。いずれにせよ、ロシアにとっては都合がいい。

 米国政府は明らかに、ナポレオンになりたがっている面目潰れの人物をもっと扱いやすい人物にすげ替えたがっている。問題は、どうやるか、だ。見栄えのいいやり方が好ましい。それは、来春に任期満了となる大統領選をおこなうことで、すでにその方向に向かう動きが始まっている。過去の政界の動きが復活し、過去の英雄であったピョートル・ポロシェンコやユーリヤ・ティモシェンコ、さらにはゼレンスキーの元補佐官であるオレクシー・アレストビッチの名さえ上がっている。アレストビッチは、一年前にはウクライナがすぐにでも勝利できる、と熱く語っていたが、現在は賢明にも別馬に乗り換えて、前の上司の悲惨な指導力についての真実を明らかにし始めている。


Screenshot © time.com


 しかしゼレンスキーはこのような動きに抗い、感情の高まりを程度を変えながら、繰り返しこう語った。「選挙なんて誰も求めていない。私が人類を救おうとしているのに。選挙をしたいのなら、自前で用意しろ」などと。ウクライナ社会も選挙には反対している。(様々な世論調査の結果では、6~8割のウクライナ国民が次の選挙は戦争終了後におこなうべきだ、と答えている)。

 世論が無視されることになる(それこそ西側の民主主義に合致したものと言える)が、ゼレンスキーが選挙に出ても、勝つだろう。というのも、いまでもゼレンスキーはウクライナで最も人気のある政治家で、支持率76%あるからだ。ゼレンスキーは、他の候補者が束になってかかっても、それ以上に人気がある。それはこの2年間の軍事的宣伝効果と情報操作のたまものであり、これらの工作によりウクライナ社会が誑(たぶら)かされてきたからだろう。そうやって、ウクライナ国民は洗脳され、自国が勝ちつつある、と信じさせられてきたのだ。


関連記事:Is Zelensky done for? A new Time Magazine cover story indicates changing American attitudes to Ukrainian leader

 さらに、ゼレンスキーと陰の実力者アンドリー・イェルマーク率いるその取り巻き連中は、国内の反対分子を消し去り、伝統的な支配者層内の権力の均衡体制を破壊した。その体制の中で、財閥たちが政党の取り組みを組織し、財閥たちの言い分を聞いてくれる大統領を選出してきた。ゼレンスキーとイェルマークは、従前のウクライナの基準にはなかった、側近らからなる限られた狭い枠組みの中で直接行使できる権力体系を作り出したのだ。これはつまり、ポロシェンコ政権時代から着手された、ウクライナの各地域が持っていた伝統的特権を解体するという過程が完遂された、ということだ。そしていま、この方向性が首都キエフでも踏襲されなければならなくなっているのだ。そしてすべての金(カネ)の流れ(その金はほぼ完全に西側のものだけになってしまっている)が、首都を通り抜けてしまっている。情報分野は全く整理されてしまった。ウクライナには大統領府から独立した報道機関はもはや残っていない。

 これらすべての状況から言えることは、米国は即座に政治的な計画を立てて、ゼレンスキーを排除することはできない、ということだ。逆説的な言い方をすれば、ロシアとウクライナの戦争開始以来、 米国はウクライナ内部の動きを抑えることができなくなっていて、いまとなっては、ゼレンスキーを抑え込む方法が限られてきた、ということだ。ゼレンスキーを抑え込むことはできなさそうだ。実際、ゼレンスキーを抑制することはできていない。

 残された選択肢は二つ。それは、①米国が選んだ後継者を示すことで、ゼレンスキーを平和的に説得する、②ゼレンスキーを殺してしまうか、だ。死せる英雄の方が、生ける精神病者よりもましだからだ。

もちろん、どうころぼうが我々ロシアにとっては好都合だ。ゼレンスキーが権力を長く掌握していればいるほど、ウクライナは戦闘を長く続けることになり、ウクライナは崩壊に近づくからだ。

したがって、我が国はゼレンスキーを気遣い、できる限りのことをして、守らなければならない。

この記事の初出はProfile.ru(露語)

もはや過去の人:なぜゼレンスキーは米国から見放される危険に瀕しているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Yesterday’s man: Why Ukraine’s Zelensky is in danger of being left behind by the US
キエフとイスラエルのどちら?であればワシントンは瞬時にイスラエルを選ぶ
筆者:チェイ・ボウズ(Chay Bowes)、ジャーナリストおよび地政学アナリスト、戦略的研究修士、RT特派員
出典:RT 2023年10月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>2023年10月24日

ファイル写真:ウクライナの大統領、ウォロディミル・ゼレンスキー、2023年7月8日、トルコのイスタンブールにて。 © Cemal Yurttas/ dia images via Getty Images」

今月初め、数百人のハマス戦闘員によるイスラエルへのテロ攻撃が世界を驚かせた。これは、ユダヤ人とパレスチナ人の古い対立の新たな拡大の始まりを示すだけでなく、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーへの政治的および軍事的支援における転換点を示す可能性がある。

残忍なハマスの攻撃と聖書に描かれているようなイスラエルの過酷な反応以前、米国とそのNATOの同盟国は、ほぼウクライナにだけ焦点を当て、時折中国に不安げに目を向けていた。しかし、今、西側のメディアは過熱し、中東を注視、その焦点を中東に固定している。注目がキエフからイスラエル、パレスチナ、およびイランに移るにつれ、キエフの苦悶は増えるばかりだ。

ハマスの攻撃前、ウクライナへの支持の軌道は既に低下の兆候を示していた。数か月前、ポーランドなど、以前の堅固な同盟国が、戦争で引き裂かれた国(ウクライナ)への無条件の支援は果たして賢明なのか、とあからさまに疑問視し、ウクライナを「溺れる人」に例えることなど以前では考えられなかっただろう。これに加えて、広範なヨーロッパの戦争に対する疲労感、ウクライナの失敗した反転攻勢、西側での戦争への支持の崩壊があり、ウクライナは「パートナー」、自国民、そして最も重要なアメリカの政治的エリート層からの支持を維持するために既に厳しい戦いに直面していた。ゼレンスキーが最後に縋ったのは、ワシントンのためにロシアとの代理戦争を戦い、貴重な資源をさらに手元に引き寄せることになる中東での世界的戦火拡大だった。


Read more:How a US ‘peace plan’ brought war to Israel’s doorstep

実際、穿った見方をする人であれば、ハマスの襲撃が、アメリカがウクライナへの約束から撤退するための魅力的で、以前なら利用できなかった道を提供していると指摘するかもしれない。間近に迫ったアメリカの大統領選挙を考えると、ハマスとの「善対悪」の対立は、長年の重要な同盟国でパートナーであるイスラエルに対する存立の脅威として簡単に括ることができる。それに対して、ウクライナでの代理戦争は、政治的にも財政的にもますます問題となっており、アメリカのジョー・バイデン大統領にとってだんだん厄介になってきている。この新たな(中東での)紛争は、野蛮な残虐行為を伴っているとの報道があり、売り込むことは、はるかに容易だ。

一方で、言葉とは裏腹に、ウクライナへの軍事支援の熱は冷めている。そして、言うまでもないことだが、西側には武器製造能力が、ない。ウクライナにおける大規模地上戦にすら武器供給はできない。さらに拡大した紛争などとんでもない。

ゼレンスキーの失敗した反転攻勢の甚大なコストも切実な問題となっている。この長らく予告されてきた作戦は、ロシアを打倒するはずだったが、キエフの人材、装備、そして西側での評判を消耗させ、戦場でのどんな進展ももたらさなかった。代わりに、これは避けられないと西側で静かに感じられるようになっていたことだが、キエフがモスクワとの合意を模索し、その過程で領土を譲歩せざるを得ないという感覚を増幅させるだけになってしまった。

はっきり言えるのは、中東で紛争が起こっているのに、ウクライナの代理戦争に対する物理的および「感情的」支援ははたして継続できるのか、ということだ。これはロシアに関わりがないということではない。関りはある。ただし、これはゼレンスキーにとっては良い兆候ではない。選挙を行う圧力が高まるにつれ、彼はますます脆弱で、絶望感が物語に漏れ出ている感じがある。これは、最近の新しいイギリス国防大臣であるグラント・シャップスが、同時に「2つの戦争」を戦えるか、と尋ねられた時のありきたりの回答に微妙に示されていた。彼はこう言ったのだ。「ゼレンスキーは、私たちすべてに、この戦いを続け、プーチンに勝たせないことが非常に重要であるかを思い出させてくれるでしょう。それだけでなくより広範な問題に気を取られないようにする必要があるかもしれないことも、です」と。彼はさらに、「ヨーロッパでの戦争は、私たちの心の最前線にあります」とも述べた。こういった発言は、もちろん、表舞台では不吉なことが起こりながら、舞台裏ではその正反対のことが次第に正しくなる、という類のものにほかならない。

イスラエルが、ウクライナが必要とするような種類の軍需品を限られた量しか備蓄していないのは、(中東とウクライナでは)紛争の力学が異なるからだ。しかし、(イスラエルが)今後の長期戦のために(武器を)備蓄する前提条件は満たされるだろう。このことは、アメリカにおける広範なイスラエルの国防と政治のロビー活動が、より小さなウクライナのロビーと対立することになり、前者(イスラエル)が常に上手に立つ可能性が非常に高いだろう。イスラエルに関しては、現職または潜在的なアメリカ大統領によって、運命に放置される可能性はまったくない。例として、表面的には「永遠の戦争に反対」とされる候補者のロバート・F・ケネディ・ジュニアを挙げると、最近、彼はハマスに対するイスラエルの報復を強力に支持しながら、ゼレンスキーへの支援を続ける政治的および経済的根拠に疑念を投げかけた。


Read more:The Israel-Palestine war is Washington’s fault

西側メディアでますます問題視されるウクライナのイメージと、アメリカの多くの市民から英雄的な文明と民主主義の島と見なされているイスラエルとを比較してみたらいい。すると、イスラエルをアメリカの軍事的および財政的支援の受け手として位置付けることは、腐敗と機能不全に悩むウクライナと比べはるかに容易だ。最近のBloombergのインタビューで、チャタムハウスのCEOであるブロンウェン・マドックスは、次のように状況を簡潔にまとめた。「イスラエルとウクライナの選択肢が与えられた場合、アメリカは一瞬でイスラエルを選ぶでしょう」と述べ、ワシントンが現時点でこの決定を直面していないとしても、彼女は「ゼレンスキー大統領が、苦慮しながら、アメリカの関心を引き留めるために戦っていた理由を理解できる」と明確に述べた。

したがって、ウクライナが西側メディアで注目されなくなる中、中東の戦火拡大に関連する他のいくつかの問題も、紛争の持続に影響を及ぼす可能性がある。ロシアの軍隊は陣地を守っており、原油価格が上昇する見込みで、これは世界市場を不安定化させ、キエフへの将来の資金供給への議会賛成が難しくなっている。そしてもちろん、ウクライナに懐疑的なロベルト・フィコの党がスロバキアで最近の選挙に勝利し、欧州の政治的状況も不安定だ。これに加えて、近づいている冬や、ますます対立が激しくなっているEUにもたらす諸課題は言うまでもない。

どうやら、ウラジミール・ゼレンスキーが今見据える先には困難が待ち受けているようだ。国民の最善の利益を心に留めた経験豊かな政治家なら、これに気づいて平和を求めることを選ぶかもしれないが、ゼレンスキーはこれらすべてをひたすら無視し、スポットライトの中心に留まろうと必死になるだろう。これがすべて起こる中、キエフはロシアが中東の苦境に責任があるかのように、数少なくなった聴衆を説得しようとしている。さらに馬鹿げているのは、ロシアが西側の武器をハマスに提供することでウクライナを「陥れよう」としているとさえ口にしているのだ。

キエフのロシアに対する代理戦争が刻々と時間切れになる中、今でも明らかになっていそうなのは、2023年10月7日のイスラエルでの悲劇が1つの紛争拡大ばかりでなく、もうひとつの紛争終焉の始まりを意味するかもしれないことだ。

ウクライナで「数十万人」が徴兵逃れ、とウクライナ国防省の副大臣

<記事原文 寺島先生推薦>
‘Hundreds of thousands’ dodging draft in Ukraine – minister
ウクライナ側のいわゆる「反転大攻勢」で、6月以降、9万人の戦死者が出ている、とロシア側は発表

出典:RT 2023年10月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>2023年10月19日


2023年9月22日、バフムート南の前線陣地の第24旅団のウクライナ軍人© Wolfgang Schwan/Getty Image

 ナタリア・カルミコワ国防副大臣は、動員が続く中、数十万人のウクライナ人男性が徴兵を忌避している、と述べた。彼女は、当局が「この問題の解決に役立つ法案の作成に取り組んでいる」と付け加えた。

 カルミコワ副大臣は金曜日(10月13日)、ウクライナのテレビ局のラーダ局の取材で、「残念ながら、国民が徴兵に応じたがらず、何とか避けようとしている状況が多く見られます。徴兵は国を守るために必要なのですが・・・」と語った。同副大臣によると、徴兵忌避者の数は「数万から数十万人に上る」とのことだった。

 イーゴリ・クリメンコ内務大臣は先週、ウクライナスカヤ・プラウダ紙のインタビューで、ウクライナ政府は、兵役を避けるために国外に逃亡した人々を処罰する方法を検討している、と警告した。同内務大臣は同紙に対し、そのような徴兵逃れをする人々には行政罰金が科せられる可能性が高い、と語り、ウクライナ出国を許可するために偽造書類を使用したり、不法に確保した書類を使用したりした者は刑務所に入れられる可能性がある、と付け加えた。


関連記事:Ex-Zelensky aide backs call to conscript youth


 ここ数カ月間、ウクライナ当局は国外に逃亡した兵役年齢の男性を帰国させる可能性を模索していると伝えられている。8月下旬、ウラジミール・ゼレンスキー大統領の与党に所属するディビッド・アラハミア上級議員は、ウクライナ政府はEUから徴兵忌避者の引き渡しを求める可能性がある、と述べた。

 ドイツ、オーストリア、ハンガリー、チェコ共和国を含む複数のEU諸国は、徴兵忌避者を一斉検挙してウクライナに送り返さないことをすでに明らかにしている。

 2022年2月にロシアがウクライナで軍事作戦を開始して以来、ウクライナでは総動員が繰り返し延長されている。新兵募集担当官は定期的に公共の場やカフェ、路上での臨時徴兵をおこなっている。地元報道機関は、当局が軍への参加を拒否した人々を武力で拘束した事例を報じた。

 ゼレンスキー大統領は、6月初めに開始されたウクライナの反撃が困難に陥っていることを公に認めた。同大統領は先月、ロシアが制空権を握っていることと ウクライナを支援する西側諸国が必要な武器を送れなかったせいで反撃が遅れている、と述べた。

 西側軍関係者らも、ロシアの防衛力は予想以上に回復力があることが証明された、と述べた。

 先週、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、反攻開始以来のウクライナ軍の戦死者数を9万人と発表し、1900台近くの装甲車両と557台の戦車も破壊された、と推定した。

「激戦地バフムート」の再来:ウクライナがお馴染みの手に引っかかった顛末

<記事原文 寺島先生推薦>
The Return of the ‘Bakhmut Meat Grinder’: How Ukraine Fell Back into a Familiar Trap
出典:インターナショナリスト 360° 2023 年9月21日
筆者:ウラジスラフ・ウゴルヌイ(Vladislav Ugolny)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月25日





 ウクライナ側は、アルチョモフスク近郊の「戦略的に重要な」村をいくつか占領したと主張している。これは前線の状況にとって何を意味するのだろうか?

 ザポリージャ方面へのウクライナの反撃はここ数カ月の間、事実上停滞しているが、同国軍は前線の東部ではある程度の前進を見せている。2022年8月に始まったアルチョモフスク(バフムートという名でも知られる)の攻防は、ロシア軍が今年5月に同市を完全に解放したにもかかわらず、続いている。

 ウクライナ側が仕掛けようとしてきた4ヶ月間の反撃攻勢は戦果が得られなかったが、9月にウクライナ軍(AFU)はついに荒廃したアンドレーエフカ村とクレシチェエフカ村に入った。この2村は悪名高い「激戦地バフムート」の南東に位置する。ウクライナ側がこれらの入植地を支配下に置く必要があるのは、アルチョモフスクに向けて新たな攻撃を加え、ウクライナ側の優勢を挽回している姿を示すためだ。ウクライナ側の敗北という報道を受けたあとだからだ。
 
 しかし、ロシアの撤退について話すのはまだ時期尚早だ。この地域での戦闘は続いており、モスクワ軍はアルチョモフスク・ゴルロフカ間の鉄道線沿いの防衛線を守っている。この戦いの結果によって、ウクライナが前回の失敗を晴らすことができるかどうかが決まる。

未完の物語

 アルチョモフスク近郊におけるAFUの作戦は、主力による反撃が始まる1か月前に開始された。5月10日、戦闘がまだ激化している中、市内ではウクライナ軍がその側面に到達しようとした。ロシア軍司令部は、攻撃によって封鎖が解除され、市内への襲撃が混乱するのではないかと懸念していたが、5月20日、同市はロシア軍の完全な管理下に落ちた。

 ウクライナ当局がアルチョモフスクの損失を決して公式に認めなかったという事実はあったが、米国の「戦争研究所」は、5月23日、ウクライナ参謀本部が2022年12月以来初めて状況報告書でアルチョモフスク都市のことに触れなかった点を指摘した。

  5月末、ロシア軍の大規模な再配置が行なわれ、私設部隊と義勇兵部隊を正規軍部隊に置き換える中、ウクライナ軍は市の側面で反撃を続けた。それはロシア側の新たな防衛軍が、戦闘経験が豊富な以前の軍よりも弱く、回復力が劣っていることが判明することを期待してのことだった。

 夏の初めまでに、AFUはアルチョモフスク周辺に第3および第5強襲旅団、第80航空強襲旅団、第22および第24機械化旅団、国民軍の「リュート(激怒)」強襲旅団を含む強力な部隊を集中させた。これらの部隊は全て反撃軍の南側にあった。いっぽう北側面に集結した兵力はやや弱く、第77航空機動旅団、第57自動車旅団、第60機械旅団と第92機械旅団が含まれていた。

ウクライナの夏の反撃

 6月7日、ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は、AFUがアルチョモフスク近郊で防御戦術から攻撃戦術に切り替え、さまざまな地域で最大1100メートルを占領した、と主張した。その後も同様の報告が繰り返されたが、夏の終わりまでにウクライナ軍はまだ一つの入植地も占領できなかった。AFUはまた、夏の間はアルチョモフスクの両側面を攻撃せず、代わりに南方向に集中することを決定した。北部ではロシア軍が局地的な反撃を開始し、失なわれた陣地の一部を取り戻した。

 前線のこの部分の状況により、ロシアはドンバスでの計画の変更を余儀なくされた。マリンカ近郊の150電動ライフル師団のいくつかの部隊がアルチョモフスクに移管された。これにより、ほぼ毎日砲撃が行なわれていたドネツクからAFUを追い払うというロシア側の任務が遅れた。空挺部隊や主にサッカーとアイスホッケーのファンで構成されている「エスパニョーラ」義勇旅団などの他の部隊もアルチョモフスクに移送された。

 夏の間、AFUはセヴェルスキー・ドネツ・ドンバス運河の左岸沿いの防衛線からロシア軍を遠ざけることに成功し、反撃の前線を大幅に拡大した。AFUは当初クレシチェエフカ村に脅威を与えただけだったが、7月には戦闘がアンドレーエフカ村とクルデュモフカ村にも迫っていた。

 この地域での戦闘は南部戦線とほぼ同じくらい激しかった。ロシアは数人の指揮官を失なった。その中には、2014年春からウクライナと戦ってきたルガンスク民兵組織の部隊「プリズラク」(幽霊)大隊の1人も含まれていた。なお、この大隊は2023年にロシア軍に統合された。

 「プリズラク」大隊を含む第2軍団の第4旅団は5月にアルチョモフスクに移管され、ワグナー民間軍事会社の部隊と置き換えられた。この旅団は当時ウクライナ軍の陣地の中心だったクレシチェエフカ村近くの防御陣地を占領した。またAFUも村の周囲のいくつかの支配的な高台を占領することに成功し、この村は一種の「グレーゾーン」になった。

 9月までにロシア軍はアルチョモフスク・ゴルロフカ鉄道線の東側に防御施設を構築した。その西では、ロシア軍が鉄道線近くのウクライナ軍の配置を防ぐためにアンドレーエフカ村とクレシチェエフカ村を制圧した。

ロシアの防衛線の重要性

 この鉄道線路の東では、高地がバフムトカ川の流れによって形成された低地に変わる。ここでのウクライナ軍の目標は、アルチョモフスクに圧力をかけ、ロシア軍を市の南東に押し込むことを可能にする高台を占領することであった。

 ウクライナはアルチョモフスクの補給路に対する射撃管制を確立したと主張しているが、これが実際に実現するにはAFUはさらに東に移動する必要があるだろう。ウクライナ軍が接近したアルチョモフスク・ゴルロフカ間の高速道路は物資補給には使用されていない。ウクライナのオープンソース・インテリジェンス(OSINT)内の組織「ディープ・ステート」によると、ロシア軍はアルチョモフスク・デバルツェボ高速道路(南側)やアルチョモフスク・ポパスナヤ高速道路(アルチョモフスクとその北側)を経由して補給を受けている、という。



 もしウクライナがクレシチェエフカとアンドレーエフカ、そしてその周囲の高地の制圧を確立できれば、AFUはロシア軍の現在の防衛線に到達できるだろう。いつかそうなるかもしれないが、ロシア軍にとっては、ウクライナ軍を鉄道からできるだけ遠ざけるのが最善だ。敵が突破に成功した場合、次の防衛線はバフムトカ川東岸沿いにしか設置できなくなるからだ。

9月の戦い

 アルチョモフスク近郊で反撃を開始してから4か月後、ウクライナ軍はクレシチェエフカ村の一部を占領し、アンドレーエフカ村に迫った。この間、ロシア軍は、アルチョモフスクやその他の地域に向けてFPVドローンの使用を大幅に増加させた。9月17日夜、ウクライナのアレクサンドル・シルスキー将軍が クレシチェエフカ村を完全に掌握したと発表し、村の中心部に立つウクライナ軍の写真がネット上に掲載された。同じ夜、ウラジミール・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍が戦果を上げた可能性について発言した。

 従軍記者のアンナ・ドルガレワ記者は これらの発言に反論し、ロシア軍は村北部の陣地を維持している、と述べた。村の北部がウクライナ軍に支配されていたことを示す物証もなかった。9月18日、ロシア国防省は、クレシチェエフカ村付近でのAFUからの攻撃の撃退に成功した、と報告した。

 ロシア軍は鉄道近くの主要防衛線を維持しているが、鉄道の西側の支配地域は徐々に縮小している。ロシア軍は、AFUがクレシチェエフカ村に足がかりを築くのを阻止するために一連の反撃を開始したが、村の支配は依然として双方に分かれていた。すなわち、北部は主にロシア軍が支配し、南部はウクライナ側の支配下にあった。

 9月14日、ウクライナのマリャル国防次官は、アンドレーエフカ村がウクライナ軍に占領されたと報告する勇み足を踏んでしまい、母国で政治家や報道関係者、軍関係者らからの批判の波を引き起こした。事件後、最高議会のアレクセイ・ゴンチャレンコ副首相は国民に対し、マリャル次官が出した投稿を読まないよう勧告した。同次官はすぐに発言を撤回し、情報源の間でのやり取り不具合があった、と釈明した。その後、マリャル次官はアンドレーエフカ村で戦闘が続いていることを認め、AFUはうまく機能していると主張した。その後、アンドレーエフカ村の廃墟の中に立つウクライナ軍の映像がネット上に掲載された。

同じ罠にはまってしまう

 アルチョモフスク近郊で新たな反撃を開始することは、ウクライナにとって名誉挽回になる。というのも、報道機関にチヤホヤされていた「バフムート要塞」が陥落したあとのことだったからだ。バフムートを奪回できれば先日の痛ましい敗北をなかったことにできる可能性があり、そのためゼレンスキーは最高の将軍の一人であるシルスキー将軍と、第3強襲旅団や第80空挺強襲旅団などの精鋭部隊をアルチョモフスクに移したのだ。

 西側の専門家や当局者らは、アルチョモフスク地域で続く「肉弾戦」の戦いを批判してきた。春には、これら西側勢力は、ウクライナ当局に対し、消耗しつつあったバフムートの防衛を放棄し、その代わりにザポリージャ地方での反撃の準備をするよう繰り返し勧告していた。

 ゼレンスキー大統領がこの助言に従おうとしなかったことが、反撃が遅れた理由の一つであり、メリトポリ方面とブレメフスキー突出地域への進展がこれほど遅かった理由の一つでもあった。夏になっても西側の専門家らはウクライナの戦略を批判し続け、アルチョモフスク以南の反撃を放棄し、代わりに前線の南部に兵力を移すよう促していた。

 総体的に言って、アルチョモフスクと南部での反撃の過程でウクライナ軍が直面する問題は似ている。AFUはロシアの防衛を突破するのに十分な兵力と手段を持っていない。その結果、戦闘は装甲車両、大砲、そしてロシアの場合は航空によって遠くから支援された歩兵部隊同士の「血で血を洗う激戦地」と化した。アルチョモフスク近郊へのAFUの進軍は、同市を占領した際のロシア軍の進軍よりもはるかに遅い。それでも、ロシアが完全な支配を確立するまでに10か月かかった。現在、ウクライナの反撃は開始以来、既に4か月以上が経過している。

 ウクライナ軍司令部は、ロシア軍を粉砕して重大な変化を達成できるような迅速な勝利を期待することはできない。また、もしウクライナ軍が前進を止めればロシア軍が主導権を握ることになるため、アルチョモフスク付近の部隊を別の方向に移動させることもできない。戦術的に見ると、このような状況は既にベルホフカ付近で起こっている。そのときも、AFUは北側面への前進を拒否し、南方向に集中していた。

 むしろ、アルチョモフスク付近で前進することはウクライナ軍に損害を与えるだけだ。この方向へ前進する代償は日に日に増大しているが、本当の成功を収める可能性は依然として最小限にとどまっている。しかしウクライナ側は、最初の「激戦地バフムート」での失敗から学ぶどころか、同じ罠にはまり続けている。

ロシア、ウクライナの劣化ウラン倉庫を攻撃

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia strikes Kiev’s depleted uranium stocks – MOD
出典:RT 2023年9月18日
国防省は、高精度の夜間攻撃は英国製ストームシャドウ・ミサイルを保管した倉庫も標的にした、と発表した。
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月24日



資料写真: 発射試験中に発射されたロシアのミサイル© スプートニク / ロシア国防省


 ロシア国防省は、ロシア軍が長距離ミサイルや劣化ウラン弾など西側供給の兵器を保管するウクライナの倉庫を長距離攻撃した、と発表した。

 同省は月曜日(9月17日)の声明で、軍が空中発射兵器とドローンを使用してウクライナの施設に対して夜間の高精度攻撃を実施した、と発表した。声明によると、今回の攻撃は「ストームシャドウ巡航ミサイルや劣化ウラン弾を保管するキエフ政権の施設」が標的となった、という。

 同省は、この集中砲火と無人機による爆撃では、ウクライナの信号諜報センターや破壊工作組織を訓練する施設も攻撃した、と付け加えた。さらに「この攻撃の目的は達成された。すべての施設が被害を受けた」とも発表した。

 これに先立ち、ウクライナ当局は西部フメリニツキー州で複数の爆発が発生し、生産施設が被害を受けた、と発表していた。地元報道機関は、オデッサ地方南部の港湾都市イズマイールでも爆発があった、と報じた。


関連記事: Pentagon reveals when Ukraine will receive depleted uranium shells

 ウクライナは射程が250km以上あるストームシャドウ長距離巡航ミサイルを今年初旬に英国から受け取り、ロシアのクリミア半島やドンバスの一般市民や生活基盤組織に対する攻撃に使用する予定であった、と地元当局は述べていた。

 ウクライナに劣化ウラン弾を供給する決定は、英米両国により下された。この武器は徹甲弾として高い能力を有し、英国製チャレンジャー戦車や米国製M1エイブラムス戦車から発射されるものとされている。

 ロシアは、劣化ウラン弾の供給を強く非難しており、劣化ウラン弾を使用することにより、一般市民の健康が大きく損なわれる危険が生じ、この戦争の激化を呼ぶことになる、と主張してきた。2022年の国連環境計画の報告は、「一般的な爆発物内部の劣化ウランや有害物質は、皮膚炎や肝不全、さらにはガンになる危険性を高める原因になりうる」と警告している。

 ロシアとウクライナ間の戦争が始まった2022年2月以来、ロシアは西側がウクライナに武器を供給することを非難し続けており、そのような行為は戦争を長引かせるだけで、状況を変えることにはならない、と主張し続けている。

Strategic Culture 論説:米国が主導するNATOはウクライナを血の海に沈める

<記事原文 寺島先生推薦>
EDITORIAL
U.S.-Led NATO Drowns Ukraine in a Bloodbath

出典:Strategic Culture  2023年8月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月14日


最新記事


この血の海はわいせつであり、とてつもない帝国の犯罪だ。アメリカとヨーロッパの指導者たちは和平を求めようとする努力を一切していない。

 新たな数字が示すところによれば、ウクライナ軍の死者数は紛争が始まってから500日後で、少なくとも40万人に達している。実際の数字は50万人を超える可能性がある。これは以前の推定よりもはるかに大きい数字だ。その数字すら身の毛もよだつものだった。それなのに、ワシントンは、前後の脈絡もないまま、失敗した反転攻勢を「(たとえ)ウクライナ人が最後のひとりとなろうとも!」へと追いやっている。

 この血の海はわいせつであり、とてつもない帝国の犯罪だ。アメリカとヨーロッパの指導者たちは和平を求めようとする努力は一切していない。荒っぽい言い方をすれば、戦争は商売であり、戦争屋たちは大儲けをしている。

 驚くには値しないが、キエフ政権の軍隊が実際に被った死傷者数は、厳重に秘密にされている。NATO支援国も、この恐ろしい損失に関しては口を固く閉ざしている。なぜなら、口を開けばロシアに対する彼らの代理戦争が深刻な失敗であることを認めることになり、それによって西側の一般大衆から強力な政治的反発を招くことになるからだ。ここに悪魔的な八方塞がりが存在している。

 しかし、この大虐殺をなんとか隠そうとしても、一部の独立した観察者は、2022年2月24日に紛争が勃発して以来最近まで、ウクライナ軍の死者数を約25万人から30万人と推定していた。ロシア軍の死傷者数は、ウクライナ側のそれの約10%とされている。

 だが、今週の新しい基礎資料によると、NATOが支援するキエフ政権の損失規模ははるかに大きい。

 インテル・リパブリックのテレグラムチャンネルが引用した衛星画像によると、ウクライナの領土内に新しく掘られた墓地は、少なくとも40万人の軍人がロシア軍との戦闘で死亡したことを示している。これらの墓は個々の遺体が埋葬されたものと思われる。さらに、戦場でその存在を抹殺されたり、キエフ政権司令官たちによって腐敗させられた無数の死者は記録されていない。

 別の指標は、今週のアメリカの通信社で報じられた陰鬱な報告から集められている。それによると、ドイツの製造業者から供給された義肢の数に基づいて、ウクライナ兵の中には5万人の四肢喪失者がいるとされる。この死傷者数から推測すると、戦死者数ははるかに多くなる。

 その結果、四肢喪失者数の観点から、アメリカの通信社さえも第一次世界大戦中の消耗戦のレベルと比較している。第一次世界大戦は、恐ろしいほど無意味な大量死者数で知られている。この比較は正しいが、アメリカの通信社はそれについて深く考察せず、本来あるべきはずの暴力に対する強烈な嫌悪感を、不思議なことに素通りしている。

 もしウクライナにおける戦闘が以前「肉粉砕機」と呼ばれていたなら、同国は「血の海」と呼ばれるのがより正確だろう。

 これをますます犯罪的で卑劣にするのは、この紛争と死者は回避可能であったということだ。ワシントンとそのヨーロッパNATO同盟国は、ロシアからの政治的解決への交渉要請をすべて無視し、NATOの東方拡大とキエフ政権の武装化に関するモスクワの長年の戦略的安全上の懸念を無視した。モスクワの外交努力は、敵対行動が激化する前の2021年12月に拒絶された。

 それ以前、ウクライナ政権の武装化は、CIAが2014年に民主的に選出された大統領に対するクーデターを支援した後、8年間続いた。(ちなみに、この事実を踏まえると、今週、西アフリカのニジェールでの軍事クーデターに対するアメリカとヨーロッパの非難は何なの?ということになる。「合法性」は自分の都合のいいようにコロコロ変わる!)

 ウクライナでの紛争が昨年2月に勃発して以来、ロシアが死活的な利益を守るために介入した際、NATO連合は執拗な武器供給によって故意に暴力を拡大させてきた。ワシントンはキエフ政権への軍事支援として500億ドル(7兆円)も送った。イギリス、ドイツ、フランス、その他のNATO加盟国も同様に、戦車から巡航ミサイルまでさまざまな種類の武器を絶え間なく供給してきた。

 さらに、ジョー・バイデン大統領のアメリカ政権は、ロシアとの紛争の終結に向けた交渉の提案をはねつけている。ヨーロッパの指導者たちは、ワシントンの狂気と犯罪性に盲従し、外交的な解決策を頓挫させている。

 世論調査で多くのアメリカ人やヨーロッパ市民がキエフ政権への武器供給の継続に反対していることを示しているにもかかわらず、こういった流れは続いている。西側や世界中の多くの人々は、この虐殺と流血の事態が、核大国間の全面戦争にまで拡大する危険について恐れているのは真っ当だ。世界規模での壊滅的な事態となるだろうことは疑いないからだ。

 アメリカとヨーロッパの通信社は、ウクライナの戦争を体系的な嘘と誤情報で誇張している。いわゆるニュース情報は、自称ピューリッツァー賞受賞機関による露骨な戦争宣伝活動になっている。紛争の起源は歪曲され、キエフ政権のナチス的性格を隠すことは、根気強く続いている。

 ウクライナは、はるかに優勢なロシア軍に対して勝利の可能性は皆無だった。しかし、最初から、西側通信社はNATOが「ロシアの侵略から民主主義を守っている」という妄想にふけり(恥ずかしげもなく現実を逆転させて)、NATO側が最終的に勝利するだろうと主張した。そして、その後、西側通信社は「潮流を変える反転攻勢」という次の幻想を宣伝した。

 明らかなことは、NATOが、6月初旬、戦争を煽るように説いた反転攻勢が、完全で全く無意味な失敗に終わったことだ。新たに獲得したドンバス地域とザポリージャ地域周辺のロシアの防御は、攻撃の波が次から次へと押し寄せても無敵だった。過去2か月間だけでも、ウクライナ軍の戦死者は約43,000人に上ると推定されている。

 アメリカとNATO同盟国は、キエフ政権に対して自殺的な反撃を開始させるよう圧力をかけている。空中支援もなく、びっしりと地雷で埋められた地形に対して歩兵の攻撃に頼る中、ウクライナ軍は砲弾のように戦闘に投げ込まれている。

 さらに許しがたいのは、アメリカとヨーロッパの指導者たちは、ウクライナの反撃が成功しないことを知っていた。ニューヨーク・タイムズ紙や他の通信社の報道では、口ごもりながら、そのことを認めていた。

 NATOに迫っている惨事は途轍もないものだ。この災厄は、ちょうど2年前の8月、NATOがアフガニスタンでの敗北で経験した惨敗を振り返れば、ピクニックのように思えるほどだ。

 バイデン大統領は来年の再選を目指しているが、目をそむけられない事実は、ウクライナでの野蛮行為で彼の手が血まみれであるということだ。この圧倒的な恐怖(ロシアとの核戦争の危険を、何も考えず、冒している)は、とんでもない機密情報として存在し、ワシントンとそのヨーロッパ従属国にとって、政治、軍事、そして道徳面で唾棄すべきものとして存在する。

 今週、ハンガリーの外務大臣ピーター・シージャルトは、欧州連合国が冷酷にも、ウクライナの戦争がさらに4年続く可能性を計算していることを明らかにした。さらに4年!そして、これらのヨーロッパの指導者たちは、ワシントンの帝国主義的な目標に対するおべっか使いから、キエフ政権を最大200億ユーロ(3兆2000億円)の追加資金で支援し続ける意志を示している。これらの目標は、モスクワと対峙し、衰退しつつあるアメリカの覇権を支えることに関するものだ。彼らの非合理的なロシア恐怖症も質の悪い役割を果たしている。

 自国民に責任を問われることのない西側の政権は、ウクライナでの歴史的な犯罪的戦争の責任を負っている。バイデンと彼のヨーロッパの共犯者たちは、自作の悪魔的板挟みに嵌っている。彼らは破壊と死の敗北を認めることができず、前後の脈絡もないまま、血の海により深く入るようウクライナにけしかけ続けているのだ。

 もし正義があるならば、バイデンは、直近の選挙に臨むべきではない。彼と彼の西側の手下たち(おなじみの通信社を含む)は、戦争犯罪訴追に直面することになるだろう。

ワグナー代表が、ヴィクトリア・ヌーランドに「喜び」を表明

<記事原文 寺島先生推薦>
Wagner boss expresses 'joy' over Victoria Nuland
出典:RT 2023年8月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月12日



ワーグナー民間軍事会社の創設者エフゲニー・プリゴジン代表、撮影はエレナ・コピロワ


 エフゲニー・プリゴジン代表は、米国政府がワグナーについて言及するだけでも、同政府がニジェールにおける新政府の承認を検討するようになったと表明

 ワグナーのエフゲニー・プリゴジン代表は、配下のワグナー民間軍事会社の構成員を誇りに思う、と述べた。それは、その民間軍事会社の名を口にするだけでも、米国政府は自らの立場の再検討を強いられる可能性が出てくるためだ、という。米国のビクトリア・ヌーランド国務次官は先日、ニジェールの新軍事政権に対し、ロシアの請負業者である同民間軍事会社の協力を求めないよう要請した。

 プリゴジン代表は火曜日(8月8日)に電話で記者団から、ヌーランド国務次官のニジェールを個人的に訪問する予定があることと、ワグナー民間軍事会社といかなる取引も結ばないようニジェール新政府に助言したことについて発言を求められた。

 「ワグナーの子ども達を誇りに思います」とプリゴジン代表は答えた。「あの子たちのことを考えただけで、ISISとアルカイダでさえ、小さく、従順で、軟弱な少年のように思えるのですから。そして米国は、ワグナー民間軍事会社の構成員と会うことを避けさせるためだけに、昨日は承認していなかった新政府を承認したのです。」

 「これは嬉しいですね、ヌーランドさん」と同代表は冗談めかして言った。

 報道によると、ニジェールの新しい軍事政権の構成員の一人であるサリフー・ムーディ将軍は、権力を守るためにワグナーに援助を求めたという。武力政変による政権指導者らは現在、追放されたモハメド・バズム大統領を政権の座に復帰させるか、近隣諸国による軍事介入の可能性に直面するかの選択を迫られている。

 月曜日(8月7日)、2014年にウクライナで起こった西側諸国が支援する武力政変劇に関与したヌーランド国務次官は、ニジェールのムサ・バルモウ現国防総司令官および他の3人の上級司令官と以前に個人的に会い、ニジェール国内で憲法秩序を回復するよう促したことを明らかにした。


READ MORE:Maidan ‘midwife’ warns Niger against courting Wagner

 ヌーランド国務次官はまた、バルモウ氏に対しロシアの民間軍事会社の協力を求めないよう警告したと主張し、プリゴジン代表配下のワグナーが「存在する国々に対する脅威」であることを示唆した。

 しかし、ニジェールの新しい指導者らは、明らかにこの問題に関していかなる確約も控えているようだ。

 一方、ロシア政府は、ニジェール情勢に対する外国の介入には反対しており、状況を好転させることはできない可能性が高い、と主張している。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、混乱したニジェールがすぐに「憲法上正常な状態」に戻ることへの期待を表明した。

モスクワ、反攻作戦中のウクライナ軍犠牲者数について最新情報を発表

<記事原文 寺島先生推薦>
Moscow issues update on estimated Ukrainian casualties during counteroffensive
出典:RT 2023年8月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月5日


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ドネツク地方の前線近くの道路で戦車を運転するウクライナ軍兵士。Anatolii STEPANOV / AFPBB News


ロシア国防省は、ウクライナが6月から7月にかけてロシア軍への反攻を試みた結果、4万3,000人以上の兵士を失ったと推定している。

 国防省は、キエフが6月にロシア軍陣地への攻撃を開始して以来、43,000人以上の兵士を失ったと報告した。

 金曜日(8月4日)に発表された概要によると、死傷数は、ウクライナの兵器が大量に破壊されたことにも反映されている。

 同時期に破壊された重火器は4900両を超え、ドイツ製レオパルド主力戦車25両、フランス製AMX-10RC「装輪戦車」7両、米国製ブラッドレー歩兵戦闘車21両が破壊されたとしている。

 ウクライナの損失には747門の大砲と迫撃砲が含まれ、その中にはアメリカ、ポーランド、フランス、ドイツから供与された数十門も含まれている、と同省は付け加えた。この最新情報は、モスクワによる前線状況に関する定期的な概要報告の一部である。

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 関連記事:ウクライナ反攻を阻む「雑草」―英軍

 キエフの外国の支援者は、ロシアに奪われた領土を取り戻す好機だとマスコミに宣伝された夏の反攻に、戦車を含む装甲車数十台を提供した。2ヵ月後、欧米の政府高官やメディアは、ウクライナがわずかな戦利しか得られず、そのために大きな代償を払ったことを認めた。

 ウクライナの指導部は、欧米の支援国が必要な軍事支援を十分に迅速に送れなかったことが、期待外れの結果につながったと非難している。もっと迅速に武器を供給していれば、ロシア軍が布陣する前にキエフが作戦を開始できたはずだと主張する政府関係者もいる。

 モスクワは、アメリカとその同盟国はウクライナ兵の命など気にしておらず、キエフを「最後のウクライナ人まで」ロシアとの戦いに駆り立てるつもりだったと主張している。ロシア政府は、ウクライナ紛争は、米国が世界の大国として有していた覇権が衰退しつつある現状を守るために始めた、より大きな代理戦争の一部だと考えている。

ウクライナから地雷を撤去するには757年かかる―ワシントン・ポスト紙の報道

<記事原文 寺島先生推薦>
Demining Ukraine will take 757 years-WaPo
出典:RT 2023年7月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月5日



資料写真 © Global Look Press / Nina Liashonok


米国製クラスター弾を使っても、状況を悪化させることにしかならない、との同紙の報道

 ロシアとの紛争により、ウクライナは世界で「最も設置されている地雷が多い国」になってしまった、とワシントン・ポスト紙は日曜日(7月23日)、ウクライナ政府といくつかの非政府の人道的地雷除去組織が調べた数値を引用して報じた。

 ウクライナ領内のほぼ3分の1が、激しい戦闘の影響を受けてきたため、大規模な地雷除去作業必要となるだろう、と同紙は報じ、さらに、6万7千平方マイル(17万3529平方キロメートル)が、不発弾におかされている、というスロバキアを本拠地とする頭脳集団GLOBSECの報告を報じている。この面積は、フロリダ州よりも広く、ウルグアイとほぼ同じだ。

 「ウクライナに設置されている地雷の数は、この30年間でまったく前例のないものです。こんな例はありません」と英国の非政府組織である「地雷助言団(Mines Advisory Group)」のグレッグ・クラウザーがワシントン・ポスト紙に語った。



 関連記事:ウクライナの広大な牧草地が地雷とクラスター弾で覆われているー国連の報告

 国連が出した数値によると、2022年2月から2023年7月のあいだに22人の子どもを含むほぼ300人の市民が、不発弾に関わる事故により、ウクライナで亡くなっている、とワシントン・ポスト紙は報じた。さらに、地雷や不発弾のせいで、同時期に632人の市民が負傷した、とも同紙は報じている。

 紛争の両側が作戦において積極的に地雷を使用している、と同紙は報じた。さらに同紙は、米国がウクライナ政府に供給している155mm砲弾は技術的に子弾が自爆する砲弾であるため一時的な地雷原を作り出すことになり、ウクライナ領土を地雷まみれにすることに貢献している、とも報じた。ウクライナに運ばれた米国製のもうひとつの軍備品は、M21対戦車地雷であり、こちらは自爆しない、とも同紙は報じた。



 関連記事:ロシアは黒海の「地雷危機」を警告

 ウクライナ側に米国製「クラスター弾」を供給するという米国政府の決定は、危険をふやすだけだ、というのも、このクラスター弾は、爆発しそこなった不発弾をまき散らすことで知られているからだ、と同紙は報じた。

 いくつかの推定によれば、500の除去団が取りかかっても、ウクライナじゅうに撒かれた不発弾を全て除去するには757年かかる可能性がある、とワシントン・ポスト紙は報じた。世界銀行の推定によると、これらの作業に必要なのは、次の十年間だけでも、374億ドル(約5兆3千億円)に達する、という。

 米国政府はこれまで、約9500万ドル(約135億円)をかけて、ウクライナでの地雷除去を行っている、と2023年の国務省報告にはある。

 金曜日(7月21日)、ローズマリー・ディカルロ 国連政治平和構築事務次長は、国連安全保障委員会に対して、ウクライナ領内の広大な牧草地が地雷やクラスター弾に覆われてしまっており、このような状況は、「この先何年も、市民に危険を与え続けるでしょう」と警告した。

 今週初め、ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は、ウクライナを使用済み武器の「埋葬地」にしている、と米国政府を激しく非難した。

ドンバスに対するウクライナの攻撃により数名が死亡―当局の発表

<記事原文 寺島先生推薦>
Several dead in Ukrainian attack on Donbass – authorities
出典:RT 2023年7月31日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月5日


写真提供: Telegram / kulemzin_donetsk

この砲撃により、ドンバスのバスや車の火事も発生した、とドンバス当局が発表

 ドネツク市へのウクライナの攻撃により少なくとも3名が亡くなり、10名が負傷した、と停戦管理調整合同センター(JCCC)が月曜日(7月31日)に発表し、近隣の町でもう1名が亡くなったと付け加えた。

 ウクライナ側によるドンバスへの度重なる砲撃を追跡しているJCCCの声明が出されたのは、ロシア連邦内ドネツク人民共和国(DPR)デニス・プシーリン首長代行が、市の中心に位置する2地区全体が砲撃を受けた、と述べたことを受けてのことで、首長代行によると、数名が死亡し、バスが破壊された、とのことだった。さらに同首長代行は、二人が怪我をし、現在治療を受けている、とも付言した。

 このDPR首長代行はさらに、ウクライナ軍はドローン機による攻撃をしかけ、ドネツク州ヤシノバタヤ町の水処理施設を破壊した、とも述べた。

 JCCCによると、ウクライナ軍はさらに、ドネツク市の北にあるホルリウカを砲撃し、さらに1名の市民を殺害した、という。

 ドネツクのアレクセイ・クレムジン市長は、同市の中心地のヴォロシロフスキー地区でも自動車2台が火事になった述べ、砲弾が着弾したのは、結婚届提出場近くだった、とも付け加えた。後に同市長は、この砲撃により建物数軒が被害を受け、電力供給線が遮断された、と語った。



 同市長は、現場で数台の車両が灰となった様子を写し出す写真をネット上にあげたが、その写真には消火活動に当たっている消防士らや割れた窓のある複数の建物も写っていた。

 その日の午前中、JCCCは少なくとも6回、同市をめがけた大砲やミサイルによる攻撃があったと認定したが、その攻撃のほとんどは155m弾や152m弾が使われていた。



 クレムジン市長によると、この攻撃はウクライナ側が、日曜日夕方から月曜日朝にかけて行った72発の砲撃に続くものであり、砲撃の標的は、ドネツクとその周辺地域を狙ったものだった、という。同市長は、これらの攻撃により31歳の男性1名が亡くなり、もう1名が負傷、さらには同地域の建物数軒が被害を受けた、と述べた。

 ドネツクなどドンバス内の都市は、ウクライナからの攻撃に常にさらされており、2014年以来多くの市民が亡くなってきたとされている。2014年というのは、西側諸国が支援する非合法手段による政権転覆工作がウクライナの首都で起こったことを受けて、同地域がウクライナ政権からの分離を主張した年である。 

 3月上旬のJCCCの推定によると、ロシア政府とウクライナ政府の間で紛争が勃発した、2022年2月以降、ウクライナの攻撃によりロシア連邦ドネツク人民共和国で合計4453名の市民が亡くなっている、という。同局の別の推定では、同時期、ロシア連邦内ルガンスク人民共和国では900名以上が亡くなっている、という。

ロシアとウクライナの紛争は「膠着状態にある」 – 国防総省当局者

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia-Ukraine conflict ‘at a stalemate’ – Pentagon official
出典:RT  2023年7月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年8月5日



2023年7月4日、ロシア、ドネツク地方、バフムート/アルチョモフスク近くの前線の塹壕に座るウクライナ兵士。© AP


西側兵器はウクライナ側に決定的な優位性を与えるには十分ではない、と米国防情報局のジョン・キルヒホーファー首席補佐官が警告

 米国防情報局のジョン・キルヒホーファー首席補佐官は木曜日(7月20日)、ワシントンでの会見で、ウクライナでの戦闘は「やや膠着状態」に達していると語った。ウクライナの可能性についての同氏の評価は、他のバイデン政権当局者の評価に比べてかなり暗い。

 ブルームバーグ紙の報道によると、キルヒホーファー補佐官は、「確かに我々はやや膠着状態にある、と感じています。ロシアの指導部の考えのひとつには、自国が西側諸国の支援を上回ることができるということです」と述べた、という。

 ウクライナ軍は6月初旬以来、ヘルソンからドネツクに至るロシアの防衛に対する反撃で泥沼にはまり、ロシア軍に対して目立った領土獲得を達成できていない。ロシア国防省の最新の統計によると、この攻撃によりウクライナは兵力2万6000名と軍事兵器類3000点以上を失った、という。

 ウクライナのゼレンスキー大統領とその政権の高官らは、西側諸国が長距離ミサイルや戦闘機など、攻撃の成功を保証するのに十分な兵器を提供できなかったことを公に非難している。



 関連記事:ウクライナの武器の20%がわずか2週間で破壊 – ニューヨーク・タイムズ紙

 しかし、キルヒホーファー補佐官は、いかなる兵器体系もウクライナ側の運命を変えることはできない、と警告した。米国が供給したHIMARSロケット砲やクラスター爆弾も、英国の巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」も、これまでのところ戦場の状況をウクライナに有利に傾けていない、と同補佐官は指摘した。

 「残念ながら、これらはどれも、ウクライナ人が求めている突破を可能にする切り札にはなっていません」と同報道官は語った。

 最近の報道によると、ウクライナ政権の後援者である米国と欧州諸国がウクライナの反撃の速度に不満を抱いていることが示唆されているが、ワシントン当局者は公式には、すべて順調だと主張している。マーク・ミリー統合参謀本部議長は先月、ウクライナ軍は「着実に前進」しているが、その前進は遅く、 「非常に血なまぐさい」ものになるだろうと述べた。

 ホワイトハウス国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は先月、CNNに対し、ウクライナ人の多大な死傷者は「予想される」が、ゼレンスキー大統領は「米国だけでなく他の50カ国から必要な支援」を受け続けるだろう、と述べた。

 ジョー・バイデン米国大統領とアントニー・ブリンケン国務長官は、ウクライナがロシアと和平交渉に入るという考えを繰り返し拒否してきた。両者とも、いつ交渉に臨むかはウクライナが決めると主張しているが、ウクライナ側の反撃が失敗し続けた場合にこの立場が変わるかどうかについてはどちらも触れていない。

 ロシアは、西側の武器供与は最終的な結果を変えることなく、紛争を長引かせるだけだ、と主張している。

モスクワは記者死亡を受けて、キエフの「テロ行為」を非難

<記事原文 寺島先生推薦英文>
Moscow slams Kiev’s ‘practice of terror’ following journalist’s death
出典:RT 2023年7月22日 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年8月1日


男性記者と負傷した同僚は、キエフのクラスター爆弾使用に関する報告書を作成するために情報を収集していた、とロシアは発表した。

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ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官 © Sputnik / Aleksey Danichev


 ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は土曜日(7月22日)、ウクライナの砲撃でロシア人ジャーナリストが死亡し、数人が負傷したのは偶然ではないと述べた。同日未明、ロシアの通信社RIAノーボスチの特派員ロスチスラフ・ジュラヴレフ氏がザポロージェ州での砲撃で死亡した。

 その特派員は、この空爆で負傷した同僚とともに、同地域の居住地に対するウクライナ軍のクラスター爆弾攻撃に関する情報を収集していた、とザハロワ報道官は説明した。また同報道官はテレグラムの声明で、「キエフ政権は犯罪的なテロ行為を続けている」と述べた。

 ザハロワ報道官はまた、キエフの西側支援者がこれらの行為を黙認していると非難した。アメリカ、イギリス、フランスはジャーナリストの安全について「言葉だけで」懸念を表明している、と述べた。モスクワはまた、「関連する国際機関」に関しても「幻想を抱いていない」とザハロワは付け加え、彼らは「この凶悪犯罪に目をつぶる」可能性が高いと訴えた。


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 関連記事:ウクライナの砲撃でロシア人記者が死亡

 このことは、これらの組織の「政治的偏見と機能不全」を示しているに過ぎないとザハロワ報道官は言い、彼らの沈黙は「キエフのテロリスト暴挙の共犯者」になると付け加えた。同報道官は、ロシア人ジャーナリストを殺害した者には「相応の処罰」があり、ウクライナ軍にクラスター爆弾を供給している者は、彼の死に対して「全責任を負うことになる」と述べた。

 今月(7月)初め、ジョー・バイデン米大統領政権はキエフにクラスター弾を提供することを決定した。この動きは、カナダ、ドイツ、イギリスなど、ワシントンのNATO同盟国からも批判が巻き起こった。

 ロシアのプーチン大統領は7月、クラスター爆弾の使用は戦争犯罪とみなすべきだと述べた。これらの兵器は、民間人に甚大な危険をもたらすため、2008年の国連条約で110カ国以上が使用を禁止している。クラスター爆弾は、広範囲に散らばる小さな弾丸を放出し、何年も不発のまま残る可能性があり、事実上地雷として機能する。

マイダン虐殺裁判と捜査から明らかになった事実:それがウクライナ・ロシア戦争にとって意味するもの

<記事原文 寺島先生推薦>
The Maidan Massacre Trial and Investigation Revelations: Implications for the Ukraine-Russia War and Relations
筆者:イワン・カチャノフスキー(オタワ大学)
出典:BRILL 2023年6月21日
The Maidan Massacre Trial and Investigation Revelations: Implications for the Ukraine-Russia War and Relations
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月1日


<訳注> 下記URLの論文は、同じ著者の同趣旨の論文ですが、この論文よりも簡潔で、また末尾には豊かな画像と生々しい動画が付けられています。時間があれば是非ご覧ください。もっと早くにこの論考があることに気づくべきでした。どうかお許しください。
The Maidan Massacre in Ukraine: Revelations from Trials and Investigations - NYU Jordan Center
https://jordanrussiacenter.org/news/the-maidan-massacre-in-ukraine-revelations-from-trials-and-investigation/



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約50人のデモ参加者が虐殺される前のキエフのマイダン・ネザレジノスティ(独立広場)での集会(2014年2月20日)。写真:Mykola Vasylechko/Wikimedia Commons。


概要

 本研究は、2014年2月20日にキエフで起こった大量殺戮に関するウクライナの裁判と捜査から明らかになったことを分析する。このマイダンでのデモ隊と警官隊の虐殺は、ヤヌコビッチ政権の転覆、ひいてはロシアによるクリミア併合、内戦とドンバスへのロシアの軍事介入、そしてロシアが2022年にウクライナに不法に侵攻したことで激化したウクライナ対ロシアの紛争、そして西側対ロシアの紛争へとつながった。負傷したマイダンのデモ隊の絶対多数、100人近い検察側と弁護側の証人、同期した動画、政府の専門家による医学的・弾道学的検査は、マイダンのデモ参加者がマイダン[デモ隊]支配下の建物に配置された狙撃手によって虐殺されたという事実を明確に指摘している。しかし、これらの発見と隠蔽が政治的に微妙な問題であるため、今日に至るまで、この虐殺で有罪判決を受けた者はいない。本稿では、ウクライナ・ロシア戦争とロシア・ウクライナ関係の将来に対するこれらの事実の影響について論じている。

<キーワード> 政治的暴力;紛争;ウクライナ;マイダン;ユーロマイダン;ロシア;虐殺;ウクライナ・ロシア戦争;正義

 殺すことは禁じられている。したがって、すべての殺人者は、大勢でラッパを鳴らして殺さない限り罰せられる。それがルールだ。1   ヴォルテール
...

 事実は頑固なものであり、われわれの願望や傾向や情熱の指示がどうであろうと、事実と証拠の状態を変えることはできない。2  ボストン大虐殺裁判でのジョン・アダムズ

 2014年2月20日にウクライナで起きた大規模抗議デモ「ユーロマイダン」でのデモ隊と警官隊の双方の虐殺は、ウクライナ紛争、ウクライナ・ロシア紛争、西側諸国・ロシア紛争の転換点となった3。この大量殺戮によってウクライナのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領政権は転覆し、ロシアによるクリミア併合や内戦、ドンバスへのロシア軍の介入など、紛争の激化の連鎖が始まった4。ロシアは2022年2月24日、違法な侵攻とウクライナとの戦争によってこれらの紛争を激化させ、西側諸国との代理戦争となった5

 マイダンの虐殺は、政治的暴力の重大な事例であるだけでなく、人権、民主主義、法の支配、紛争解決の観点からも重要である。本研究では、マイダン虐殺の裁判とウクライナ政府の調査によって明らかになった証拠を分析する。研究課題は以下のとおりである:裁判と政府調査によって公開された証拠から、この大量殺戮にどの紛争当事者が関与していたのかについて何が明らかになるのか?

 ウクライナと西側諸国の支配的な説明は、マイダンでのデモ参加者虐殺をヤヌコビッチ政権によるものとし、警官たちが殺害されたことをほとんど無視している6。一部の例外を除き、西側諸国とウクライナのメディアも、マイダン[デモ隊]支配下の建物における狙撃兵に関するマイダン虐殺裁判と調査で明らかになったことを報道しなかった。

 ウクライナ検察総局による公式捜査は、ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領とウクライナ治安局および内務省の責任者の命令により、2月20日にマイダンのデモ隊を虐殺したとして、ベルクート警察を起訴した。ウクライナ検察総局は、ヤヌコビッチの命令により、2月20日にマイダンのデモ参加者49人のうち48人を殺害し、157人の負傷者のうち80人を殺害しようとしたテロ容疑で、ベルクート警察の指揮官2人とこの警察部隊の隊員3人を逮捕・起訴した。2019年、ウクライナ検事総長はマイダン虐殺事件の捜査が完了したと発表した。

 その後、ヤヌコビッチは内務省、内戦部隊、ウクライナ保安庁の長官、ベルクート司令官とともに、マイダンでのデモ隊虐殺を命令したとして欠席裁判で起訴されたが、そのような命令は明らかにされなかった。ヤヌコビッチ、閣僚、ベルクート司令官らは、虐殺を命令したことを否定し、デモ隊と警察官はマイダンの狙撃兵に撃たれたと述べた。しかし、彼らの主張を裏付ける具体的な証拠を彼らは示さなかった。

 西側メディアの支配的な説明とは対照的に、ドイツのテレビ局ARDは、狙撃手がホテル・ウクライナを拠点にしていたこと、政府の調査は操作されたものであることを示す証拠を提示した7。BBCの調査報告書も同様の証拠を提示し、音楽院から警察を狙撃したマイダン狙撃兵の一人の自供を紹介した8。その後、極右に連なるマイダン組織の他の数人のデモ参加者が、ウクライナのメディアやソーシャル・メディアで、警察を狙撃し殺害したことを認めた。

 その後、アメリカ、イタリア、イスラエル、マケドニア、ロシアのメディアのインタビューに応じた7人のグルジア人自称マイダン狙撃手団の構成員は、自分たちやグルジア、バルト三国の他の狙撃手団、ウクライナの極右系狙撃手団は、ヤヌコビッチと反政府の指導者たちによる和平協定の調印を阻止するために、反政府の指導者たちやグルジアの元政府指導者たちの特定の構成員から、デモ隊と警察の両方を銃撃するよう命令を受け、武器、支払いを支給されたと証言した。彼らは、音楽院とホテル・ウクライナから狙撃手が警察とデモ参加者を狙撃したと述べている9

 ウクライナ検察総局、マイダン犠牲者の弁護団、自称「真実点検」ウェブサイト、そして稀な例外を除いて、ウクライナのメディアは、これらのグルジア人は偽物か役者であると主張した10。彼らの証言を裏付けるために、これらのグルジア人のほとんどは、名前、パスポート番号、入国印、航空券の写し、グルジア軍の写真、彼らの一人がオデッサの虐殺の際に労働組合会館ビルで撮影した動画を提供した。彼らは、「ユーロマイダン」の際、偽造パスポートで偽名を使ってウクライナに入国し、国境で止められなかったと述べた。グルジア国防省の身分証明書の綴り間違いのため、身元と証言が偽物と見なされているグルジア人の一人が、同省の顧問を務めていたことを、グルジア軍団の長が事実上確認した11

 ウクライナと世界の紛争にとって重要であるにもかかわらず、マイダンの虐殺を分析した学術研究はわずかである。ほとんどの研究が発見したことは、マイダン虐殺は、「ユーロマイダン」中の非対称紛争に勝利し、ウクライナの権力を掌握するために、マイダンの指導部と極右の分子によって組織され、秘密裏に行われた「偽旗作戦」であったことだ。同期された動画、目撃者、銃弾の跡や傷の位置を分析した結果、警官もデモ参加者も、マイダン[デモ隊]が支配する建物から銃撃されていたことがわかった12。これらのマイダン虐殺の研究は、他の100以上の研究で、圧倒的に好意的に引用されている。

 セルヒー・クデリアは、二次資料に基づき、暴力は極右のマイダン・デモ隊によって開始され、彼らは多くの警官を殺傷し、ベルクート警察はその後、非武装のデモ隊を今度は虐殺したと主張している14。他の少なくとも2つの研究も、デモでの暴力に極右が大きく関与していることを発見しているが、マイダン虐殺を具体的には検証していない15

 いくつかの研究は、この虐殺をベルクート暴動対策警察、あるいはウクライナ治安局や国内軍の狙撃兵によるものだとしている。しかし、これらの研究は虐殺を具体的に調査したわけではなく、この虐殺の実行犯や組織者に関するマイダンの政治家や同情的なウクライナや西側のメディアによる主張に無批判に依拠している。いくつかの研究は、ニューヨークの建築会社によって行われた殺害の3D演算再構成に依存していた17。しかしこの演算は、犯罪科学報告書に明記された傷の位置、ひいては狙撃者の位置を誤って伝えていた18 。SITU調査部長は、「......結局のところ、第三者が行動していたというのが共通理解だ」、「犯罪科学的証拠から、人々が背後から撃たれたのは明らかだ」、「誰かが屋上から撃っていた」と述べている19

 最も重要なことは、これまでの研究は、マイダンの虐殺の裁判と捜査によって明らかになった証拠を包括的に検証していないことである。


1 データと方法論

 私の分析では、マイダン虐殺裁判、ヤヌコビッチ反逆罪裁判の約1000時間に及ぶ公式録画映像と、ウクライナの公式オンライン判決データベースにある2500以上の判決に含まれるこの虐殺事件の捜査に関する情報を調べた20

 私の研究はまた、負傷したデモ参加者や検察側証人、弁護側証人など、裁判や捜査における証人の証言も分析している。また、公判で提示された動画、犯罪科学的弾道検査と医学的検査の結果、政府の専門家が捜査と公判のために行った捜査実験についても検証している。2本のオンラインの編集物には、公判と捜査における負傷したデモ参加者と検察側証人の証言のうち、関連する短い部分が含まれている(付録動画AとB)21

1.1 動画、写真、音声記録

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キエフのマイダン広場と周辺の建物の地図

 検察側は、特定のデモ参加者がベルクート警官に銃撃された証拠として、ベルクート警官と特定のマイダン・デモ参加者のさまざまな動画や写真を提出した。検察側は、約24名のベルクート特殊部隊の構成員が、ゾフトネヴィイ宮殿付近で警察が短時間前進している間にデモ隊を虐殺し、その後、インスティトゥツカ通りの2つのバリケードの背後からデモ隊を虐殺したと告発している。

 ウクライナ検察総局が資金源となり、ジャス・タリオニス・グループが匿名で制作し、ベルクート警察がデモ隊を虐殺した証拠として裁判で提出されたシンクロビデオ集は、しかし、ベルクート警察による銃撃の時間や方向が、マイダン・デモ隊が殺害された時間と一致していないことを示している22

 さらに、公判中に提出された同期された動画やその他の証拠により、ベルクート特殊部隊が最初に登場して銃撃を開始する前から、3人のデモ参加者がインスティトゥツカ通りで殺害されていたことが確認された。

 これに対し、ベルクート警官の弁護団は、動画や写真に写っているデモ参加者が猟銃で発砲した時間と方向が、ベルクート警官が殺害された時間と、政府の犯罪科学専門家が割り出した発砲の方向と一致していることを示した。彼らはマイダンの狙撃犯を特定したが、その男性は起訴されなかった。

 裁判で検証されたいくつかの動画には、マイダンの狙撃手、特にホテル・ウクライナにいた司令官と極右関連企業の構成員が映っていた。極右政党スボボダは虐殺の前に、ホテル・ウクライナを自分たちの支配下に置き、警備していると述べている(写真付録1)23。動画には、スボボダの代議士や活動家がホテルの入り口を警備し、極右に連なるマイダン企業の狙撃兵に同行して建物に入り、虐殺の最中にホテルを厳重に調べる様子が映っている24。エスプレッソTVの生放送の録画には、警察とのにらみ合いの最中、マイダンの活動範囲の前のマイダン・バリケードで、マイダン抗議者がカラシニコフ型の銃器を別の抗議者に渡す様子や、別の抗議者が猟銃から警察に向かって発砲する様子が映っている。

 ベルギーのテレビ局VRTが作成した動画の未放送部分が裁判で実演され、2人のマイダン抗議者が、銃撃される直前にマイダンの抗議者団のひとつを誘い出し、前進させたことが示された。この映像には、ある抗議者が、ホテル・ウクライナの狙撃兵が抗議者全員を撃っているので、この団他の抗議者たちに前進するなと叫んでいる様子が写っている。そして、その抗議者がそこから銃弾の閃光を見たことが映っている。その後、VRTの映像には、弾丸がこの抗議者団の方向にあった樹木に命中しているところが映し出され、この団の抗議者たちが引き返し、ホテルを指さして、そこにいる狙撃兵に撃つな、と叫ぶ様子が映っている25。セリー・トラぺズン(Serhii Trapezun)とセリー・ティティク(Serhii Tityk)を含む、この団の負傷した抗議者たちの大多数は、自分たちや自分たちのグループが、このホテルやその近くの他のマイダン支配下の建物から銃撃されたこと、そこで狙撃手を目撃したこと、あるいは他の抗議者たちからそのことを聞かされたことを証言している(付録動画A)。

 ウクライナ治安部隊のアルファの狙撃手と指揮官は、裁判で検察側証人として、彼らが傍受した無線通信の録音は選択的に編集されたもので、虐殺がほぼ終わった後、マイダンが支配するホテル・ウクライナやその他の建物にいる狙撃手の居場所を突き止めるために閣僚ビルに配備されたときに作られたものだと証言した(付録動画B)。これらの音声記録は、マイダンの虐殺後、政府の狙撃兵がマイダン・デモ参加者を虐殺した証拠として、ウクライナのメディアで広く公表された。

1.2 目撃者の証言

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マイダン虐殺裁判で、マイダン支配下のホテル・ウクライナでの狙撃について証言する負傷したマイダン抗議者。研究「ウクライナのマイダン虐殺」より: イワン・カチャノフスキ著『ウクライナのマイダン虐殺:裁判と捜査から明らかになった事実』より。2021年8月3~8日に開催された第10回国際中東欧研究評議会世界大会で発表。

 負傷したマイダン抗議者72人のうち51人について、彼らを2月20日に銃撃したとしてベルクート警察が起訴され、その反政府抗議者たちの証言も明らかにされている。その負傷したマイダン抗議者は、裁判や調査で、マイダンが支配する建物や場所から狙撃された、そこで狙撃者を目撃した、あるいは他のマイダン抗議者からそのような狙撃者について聞いたと証言している。これらの負傷した抗議者のうち31人は、公判および/または捜査において、ホテル・ウクライナ、アルカダ銀行、ジョフトネヴィ宮殿、ムゼイニイ通りおよびホロデツキー通りの建物、あるいは他のマイダン支配下の建物や場所から狙撃されたと証言した。少なくとも33人の負傷した抗議者は、そこで狙撃兵を目撃した、および/または、他の抗議者から、これらのマイダン支配地域(主にホテル・ウクライナ)に狙撃兵がいることを聞かされたと証言した。(動画付録A)。

 負傷した抗議者の絶対多数は、公判および調査において、ホテル・ウクライナから狙撃されたか、そこで狙撃兵を目撃したと証言している。他の抗議者たちは裁判で、ホテル・ウクライナで抗議者たちを虐殺した狙撃兵はマイダンの狙撃兵だったと証言した。ある抗議者は、ホテルからの狙撃兵が自分たちを撃っているのを目撃した後、他の抗議者やBBCの記者たちとともに逃げ惑う姿をBBCに撮影されたが、そのとき他の抗議者たちから、これは 「我々の味方の狙撃兵 」だと言われたと明かした。彼は、この銃撃の後、ホテル・ウクライナの別の階にいた狙撃兵が、ホテル内の狙撃兵の存在を明らかにしないよう、デモ参加者に視覚的な合図を出したのを目撃した。(付録動画B、2:33)。ウクライナ検察総局の調査により、極右スボダダの指導者の一人が虐殺当時そのホテルの部屋に住んでいたことが明らかになった。別のデモ参加者は、大虐殺の最中に他のデモ参加者がホテル・ウクライナに狙撃兵がいることを話し、なぜ「自分たちの仲間が自分たちを撃つのか」不思議がっていたと証言した。(付録動画B、1:41)。彼は『ウィンター・オン・ファイア』というドキュメンタリーに登場したが、この暴露はアカデミー賞大賞候補に挙げられたそのドキュメンタリーでは紹介されなかった。

 多数の西側メディアにおいて、マイダンで負傷したと報道されたマイダンの女性衛生兵は、裁判では負傷者としてではなく証人として証言した。彼女はウクライナのジャーナリストとのインタビューで、自分は負傷していないことを認めた。このジャーナリストが報告したことは、このマイダンの衛生兵の負傷はマイダン[デモ隊]の自衛隊指導部によって演出されたものであり、彼女が虐殺の直前に受けた手術は新しい傷である、と事実を曲げて伝えられたということだ26

 別の抗議者は、郵便局本館の屋上から狙撃兵が狙撃し、この女性衛生兵の隣で撃たれたビクトル・スモレンスキーに似た人物を殺害するのを目撃したと証言した。この建物は当時、右翼セクターの本部だった。(付録動画B、16:29)。

 負傷したデモ参加者の絶対多数の証言は、これらの建物で狙撃兵が撮影した動画や、デモ参加者が勾配の急な方向から側面や背後から撃たれたという犯罪科学的検査の所見と概ね一致している。また、このような狙撃手に関するソーシャル・メディア上の数百人の目撃証言とも一致している。マイダンの政治家や活動家たちは、少数独裁政党や極右組織の特定の反政府指導者たちが虐殺や狙撃手の隠蔽に関与しているのを目撃したと証言した。何十人もの反政府勢力の抗議者、ウクライナ人や外国人ジャーナリストが、ホテル・ウクライナや他のマイダン支配下の建物で狙撃兵を目撃したと証言した28

 裁判では、マイダンの狙撃手団の一員であると告白したグルジア人の一人の証言を認め、証拠として示した29。ウクライナの国境警備隊は彼の身元を確認し、彼がユーロマイダン開始直前にキエフを訪れていたことを認めた。彼と他の2人のグルジア人は、ベルクート警官の弁護団による訴えを受け、ウクライナ検察総局の要請でベラルーシ検察総局において証言した。自称グルジア人狙撃手3人も、裁判のために供述書を提出し、ビデオリンクを通じて証言することを申し出た。アルメニア、ベラルーシ、そして前述のようにウクライナ当局はすべて、これらのグルジア人の身元を確認した。

 彼らの証言と、負傷したデモ参加者の大多数による、マイダンが支配する場所での狙撃に関する証言は、数十人の検察側証人や殺害された人々の親族の証言と一致している。これらの検察側証人は、検察側を支持する証言をすることになっていたが、その代わりに、マイダン支配下の建物や場所に狙撃手が存在し、デモ参加者や警察を虐殺したと証言した。(付録動画B)。

 [ヤヌコビッチ政権側の]アルファ、オメガ、UDOの狙撃兵部隊の指揮官は、政府軍の狙撃兵が配備されたのは虐殺が始まってからであり、警察やデモ隊を撃っている狙撃手の居場所を突き止める命令を受けていたと証言した。彼らはまた、マイダン支配下の建物に狙撃兵が配置され、それらの狙撃兵が抗議者だけでなく、警察や自分たちの部隊の狙撃兵も撃っていたことを認めた。(付録動画B)。数十人の弁護側証人も、マイダン支配下の建物や場所にいたマイダン狙撃兵や狙撃手が、特に警察やデモ隊を撃っていたと証言している。

 対照的に、虐殺容疑で逮捕・起訴されたベルクート警官と2人のオメガ軍人は、デモ隊を銃撃したことを否定した。負傷したデモ参加者の証言の絶対多数は、現場でベルクート警察に撃たれた、あるいは政府支配下の建物の狙撃兵に撃たれたというもので、動画や犯罪科学的検査、その他の証拠によって裏付けられたものではない。残りの事例でも、彼らの関与を示す証拠はないか、あるいは矛盾している。

 政府の調査やその後の裁判でも、当時のヤヌコビッチ大統領や、内務省部隊、警察、ウクライナ治安部隊の指揮官がデモ隊に発砲するよう命令したという証拠は何一つ明らかにされていない。ヤヌコビッチ政権が雇った「ティトゥシキ」や「第三勢力」についても同様である。ウクライナ検事総長と同検察のマイダン虐殺捜査担当部長は、マイダン虐殺にロシア政府とロシア人狙撃手が関与している証拠はないと述べている 。30

 国家反逆罪に問われたヤヌコビッチの裁判では、彼がキエフから、そして後にはウクライナから逃亡したのは、(検察側が主張したように)虐殺を命じたからではなく、命を狙われる暗殺未遂事件が多発したからであることを示唆する証言や証拠が明らかになった。彼の裁判の証人は、マイダン虐殺の直後、大統領の車列が極右の右派セクターとスボボダの活動家が配置された検問所で発砲されたと証言している。これは、銃弾の跡が見える大統領の車の写真によって裏付けられた。また、彼の元ボディーガードは、ハリコフでの会議中に彼を暗殺するというスボボダの活動家の計画について、彼の警備部隊が情報を持っていたと証言している31。大虐殺の後、ヤヌコビッチを現地に送ったヘリコプターの操縦士は、管制官から、軍用機による撃墜の恐れがあるためヤヌコビッチを乗せたヘリコプターを着陸させるようにとのマイダン指導者からの命令が伝えられたと証言した。ウクライナの初代大統領レオニード・クラフチュクはこの裁判の中で、マイダン虐殺の直前に、ヤヌコビッチを暗殺する「チャウシェスク」というコードネームの陰謀に関する情報を受け取ったことを明らかにした32。ルーマニア最後の共産主義指導者チャウシェスクは、偽旗作戦で反政府デモ隊を狙撃手が虐殺した直後に暗殺された。ルーマニアの元大統領、首相、そして「革命」の他の多くの指導者たちは、1989年に権力を掌握した直後に自分たちの支持者の殺害を画策したとして、2018年と2019年にルーマニア検察によって人道に対する罪で起訴された33

1.3 犯罪科学的検査の結果

 検察側のために政府の専門家が行った犯罪科学的検査の結果は、マイダンの虐殺裁判の中で初めて公表され、デモ参加者の絶対多数は横や後ろから、上から下に撃たれたことが明らかになった。しかし、ほとんどの動画や写真が示していたことは、死傷者の絶対的多数はベルクート警察の正面と地面の高さに位置していたのに対し、マイダン支配下の建物は一般に背後と左右に位置していたことである。

 犯罪科学的検査によると、死亡した48人のデモ参加者のうち40人は高い角度から撃たれている。そのうち少なくとも36人は、ベルクート警官隊が現場で撮影されているときに殺された。ただ一人、水平に出入りした弾丸で殺された抗議者がいたが、彼は横から撃たれていた。死亡した抗議者7人のうち、傷に関する犯罪科学的情報がない4人は、ベルクート特殊部隊がマイダンに現れる前に狩猟用の小球で撃たれていた。

 負傷したデモ参加者51人のうち48人は急勾配の差入創の傷跡があり、マイダン支配下の建物、あるいはその屋上にいた狙撃兵に撃たれたという説と一致している。

 裁判に提出された犯罪科学的弾道検査によると、2月20日、19人のデモ参加者が、AKMカラシニコフ突撃銃だけでなく、狩猟用カラシニコフやその他の武器の口径と一致する弾丸によって殺害されたことが判明した。イワン・ブリオクがカラシニコフ機関銃の狩猟用バージョンで殺されたことがわかった34 。動画には、虐殺の間、ホテル・ウクライナで狩猟用銃器を持ったデモ参加者が映っていた。4人のデモ参加者は狩猟で使用されるペレット弾で殺され、2人はベルクート警官隊が使用したものとは口径が異なる拡張狩猟弾で殺された35

 政府の専門家が自動コンピュータベースのIBIS-TAISシステムを使用して実施した犯罪科学的弾道検査では、殺害されたデモ参加者、樹木、ホテル・ウクライナの部屋から抽出された弾丸は、配備されたベルクート特別部隊を含むキエフ・ベルクート連隊全体の隊員のカラシニコフ突撃銃の警察データベースと一致しなかった36

 その代わりに、政府の弾道鑑定専門家は、ホテル・ウクライナと他のマイダン支配下の建物や場所から、マイダンの抗議者6人が殺害され、少なくとも10人が負傷したことを発見した。検察は、マイダンのデモ参加者の絶対多数を撃った銃弾の弾道と狙撃者の位置を特定するために、犯罪科学弾道学の専門家を使用しなかった。また、捜査当局は、デモ参加者のほぼ半数(157人中77人)が、ベルクート警察が配置されていない区域で負傷したと、彼らの証言、実地捜査、犯罪科学的検査に基づいて判断し、これらの銃撃で誰も起訴しなかった37。デモ参加者がマイダン支配地域で狙撃手によって負傷したことを確認するこの証拠は公表されなかった。

 政府の犯罪科学報告書で確認された弾痕は、ベルクート警察が一般的にデモ参加者の上方、ホテル・ウクライナの2階とその上方、電柱、樹木を撃っていることを示していた。政府調査官による犯罪科学的検査では、デモ隊の高さに位置するホテルの1階には銃弾の穴は一つも報告されていない。


2 隠蔽工作の証拠

 驚くべきことに、歴史上最もよく記録された大量殺人事件のひとつから9年以上たった今でも、マイダンでのデモ隊と警官隊の虐殺で有罪判決を受けた者が一人もいない、あるいは逮捕されていない。前述したように、2月20日に77人のデモ参加者、つまり負傷者全体のほぼ半数を負傷させたことについて、ベルクート警官隊の拠点からではなく他の場所から撃たれたと捜査で確定した後、検察は誰も起訴しなかった。同様に、グルジアの前大統領ミヘイル・サアカシュヴィリの政党に所属するグルジア人デモ参加者の殺害についても、誰も起訴されなかった。彼の死亡状況は明らかにされていない。彼の遺体は虐殺の直後にマイダン支配地域で発見されたと伝えられている。

 その理由として考えられるのは、スボボダ党と人民戦線党の政治家か、ポロシェンコ大統領とゼレンスキー大統領の側近のどちらかが検察総局を率いていることだ。スボボダ党や人民戦線党の主要構成員が検察総局の長に選ばれたという事実は、これらの党が他のマイダン活動家やマイダン狙撃団の自称グルジア人構成員から虐殺に直接関与していたと非難されているにもかかわらず、隠蔽工作と妨害工作があったことを示唆している。自身もマイダン活動家であったマイダン被害者の弁護士たちは、当初に批判を受け、政府の捜査と訴追を支持した。

 マイダン後、ウクライナ検察総局の市民評議会の議長を務めたあるウクライナ人ジャーナリストが述べたことは、マイダン虐殺の検察総局の調査の責任者をマイダン指導者の一人が選んだということだ38。彼は2月18日、警察とデモ隊の銃撃戦が始まったとき、スコープ付きライフルを持ったマイダンのデモ隊を避難させているところをウクライナのテレビに撮影された。彼を助けた人物は、「ユーロマイダン」後すぐに内務大臣補佐官になった39

 同様に、親マイダン派の主要政党は、ペトロ・ポロシェンコ大統領の任期中に、マイダンの虐殺に関する議会委員会の設置を阻止した40。2014年2月21日にウクライナ議会で採択された恩赦法は、殺人、テロ、権力掌握を含むさまざまな重大犯罪について、デモ参加者の訴追を全面的に免除することを認めた。同法はまた、そうした犯罪についてデモ参加者を捜査することを禁止し、すでに収集された証拠はすべて破棄しなければならないと規定した。

 大虐殺で起訴されたベルクート中隊の指揮官が、刑務所から自宅軟禁となりウクライナから逃亡したことは、隠蔽説と一致している。2014年に検察総局の市民評議会を率いていたウクライナのジャーナリストは、ウクライナ内務大臣がこのベルクート特殊中隊指揮官のウクライナからロシアへの移送に関与していたと述べている41。ゼレンスキー大統領の命令により、マイダン虐殺の罪で裁かれたベルクート警官5人全員が、2019年に予想される判決から数カ月以内にドンバス分離主義者と引き換えに釈放された。この決定によってマイダン虐殺裁判は中断されたが、このうち2人のベルクートの構成員が無実を証明するために分離主義者が支配するドンバスから自主的に帰還した後にのみ再開された。

 裁判では、ベルクート警察がマイダンのデモ隊を虐殺したとは考えられないことを示唆する証拠が提出されたにもかかわらず、2023年秋に予想される裁判所の最終判決で公平な判断を下すことは難しいだろう。ウクライナの裁判所は独立性に欠け、特に注目度が高く政治色の強い事件では、大統領府の指示に基づいて判決を下すことが多い。特に、マイダンの虐殺事件でキエフの裁判所に欠席裁判で裁かれている交換されたベルクート警官3人は、ウクライナとロシアの戦争中にロシアに併合されたドンバスにいるため、公平性は難しいだろう。加えて、裁判は極右活動家たちからも繰り返し攻撃や脅迫を受け、裁判長は親マイダン活動家に殴られた。

 検察総局の捜査官は、マイダンが支配する建物に狙撃手がいたことを事前に否定しただけで、捜査はしなかった。同様に、8人の異なるマイダンの政治家や活動家、数人の自称グルジア人狙撃手による、マイダンの狙撃手やマイダンの指導者が虐殺に関与したという公式声明の調査はされなかった。犠牲者はすぐに「天の百人」と呼ばれたが、西側政府の代表が虐殺の前に、抗議者の死傷者が100人に達した場合、西側政府はヤヌコーヴィチに矛先を向けると伝えていたとするスボボダの構成員二人の供述も調査されなかった42

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2014年にマイダン広場で亡くなった「天の百人」

 検察総局は当初、2014年3月に、狙撃手とその位置を特定し、武器まで押収したと述べていた。2014年4月に検察総局は、デモ参加者がホテル・ウクライナからシモノフ製の「狙撃銃」で撃たれたとの声明を発表した44。しかし、すぐ後に、検察総局、ウクライナ治安当局、内務省の長官は、ホテル・ウクライナに関する調査結果を覆し、代わりにベルクートの特殊部隊がマイダンのデモ参加者を虐殺したと主張した。

 2015年、欧州評議会の国際諮問委員会は、公式発表とは異なり、ウクライナの公式調査では、ホテル・ウクライナまたは音楽院からの射撃で少なくとも三人のマイダンの抗議者が殺害された証拠があり、少なくとも他の10人の抗議者が近くの屋上からの狙撃兵によって殺害されたと報告した。報告書はまた、特に内務省と検察総局による捜査が行き詰っていると主張した45。検察総局は、少なくとも三人の抗議者がホテル・ウクライナで殺害され、他の10人もかなりの高さから殺害されたという以前の捜査結果を何の説明もなく覆し、これらの抗議者全員の殺害についてベルクート警官を起訴した。検察総局は当初、抗議者のうち10人を殺害したとしてベルクート警察の警察官を起訴していなかった。

 また、特にこれらの弾道がマイダンの支配下にある建物からのものであるかどうかを判断するために、マイダン虐殺の裁判判事がそのような調査を命じた後でも、犯罪科学弾道専門家による弾道の究明をその調査では行うことができなかった。ベルクートの弁護士が述べたことは、政府の犯罪科学専門家が、最初の数人のマイダン抗議者がマイダンの支配するホテル・ウクライナと音楽院から撃たれたと究明した後、これらの裁判で命じられた捜査実験は中止されたと述べた46

 政府の犯罪科学専門家はこの裁判で、捜査官がレーザーを使って狙撃者の位置を特定するのを目撃したことを明らかにしたが、検察側はこの重要な証拠を除外した。捜査は、一部の例外を除き、弾道学の専門家の代わりに、医療専門家による複雑な犯罪科学的検査を使って、現場視察も測定も説明もなしに、発砲箇所を決定した。犯罪科学医療専門家は、彼らの経験上初めて、弾道の専門家ではなく、彼らが狙撃者の位置を特定するためにこのような検査を行うよう依頼されたと証言した。裁判官は、彼らの報告書の所見に疑問さえ呈した。特に、彼ら自身の犯罪科学医療検査や、マイダンが支配する建物や地域から発砲されたとする負傷したデモ参加者の証言を覆したことに疑問を呈した47

 ニューヨークの建築会社がマイダン犠牲者の弁護団48のために作成した、マイダン抗議者3名の殺害を再現したSITUの3D演算は、マイダン抗議者がベルクート警察によって虐殺された決定的な証拠として、これらの弁護団、ウクライナ検察総局、メディア、特にニューヨーク・タイムズ紙によって引用された49

 しかし、この3D演算では、マイダンで殺害された3人のデモ参加者の傷の位置が、政府の犯罪科学による遺体や衣服の検視で示された出入り口の傷の位置と一致していない。この演算は、犯罪科学医療検査で正確な位置、高さ、方向が特定されている急角度の傷跡をほぼ水平に変更し、殺された3人の抗議者の前にあるベルクート警察のバリケードの位置と一致させるために、その傷跡を遺体の側面や背面から前面に移動させた。そのSITU演算はマイダン虐殺裁判では証拠として認められなかった。

 裁判での負傷したデモ参加者の証言が、捜査中の証言と何度も逆転していることも、もみ消しか証拠の隠蔽を示唆している。弾丸の犯罪科学的検査が、検察が法廷に採決を乞う数週間前に、そして2019年に再び覆ったことも、同様にもみ消しか証拠の隠蔽を示唆している。ベルクート警察のカラシニコフから発射された銃弾がデモ隊を殺害したという新たな発見は、過去40件近くの犯罪科学的弾道検査の結果を、説明なしに覆した。この検査には、同じ専門家が同じ方法で実施し、自動コンピュータベースのIBIS-TAISシステムによって実施されたものも含まれていた。

 ベルクート警察とそのような殺傷されたデモ参加者数名の映像の同期化された内容分析によれば、そして犯罪科学的検査における傷の位置と方向、マイダンのデモ参加者の目撃者の証言、政府の弾道専門家による現場での調査実験によれば、マイダンのデモ参加者はマイダン支配下の建物から撃たれており、新たな弾丸検査の所見に反してベルクートの陣地から物理的に撃たれた可能性はなかった。これは特に、虐殺で起訴されているベルクート警官に関わることである。

 マイダン虐殺裁判では、証拠改ざんの例も明らかになった。殺傷されたデモ参加者のものとされる銃弾が、一連の保管文書なしに現れたり、消失したり、大きさや形や包装が変わったりした。例えば、マクシム・シムコの検死報告書には、3つの灰色の弾丸片と1つの黄色の弾丸片が記載されていたが、犯罪科学的弾道検査では、灰色の弾丸片に代わって、はるかに大きい黄色の弾丸片が新たに記載されていた。この新しい弾丸片は、何の説明もなく、これまでの複数の犯罪科学的検査を覆し、ベルクート警察のカラシニコフと照合され一致した。この新発見の銃弾は、ドンバス分離主義者と交換されて欠席裁判にかけられているベルクート警察官と銃撃事件とを結びつける唯一の証拠となった50。一方、犯罪科学的検査は、このデモ参加者は急角度から撃たれたことを示していた。

 ドイツの国営テレビ(ARD)が撮影した長時間の動画が、マイダンの犠牲者側の弁護団によって裁判で紹介されたが、虐殺の最も重要な部分の音声がなかった51。あるウクライナのジャーナリストがソーシャル・メディアに書き込んだところによると、彼はARDのためにこの動画を撮影し、裁判で上映された動画は削除されたという。映像の内容も彼の発言も、この映像がドイツのテレビ局ZDFが借りた同じホテル・ウクライナの部屋から撮影され、極右に連なるマイダン部隊の狙撃手がマイダンのデモ隊を銃撃する様子が撮影されたことを示している。この動画には、デモ参加者の殺傷とベルクート警察の位置が同時に映っていたため、見当たらない動画が見られるならば、特定のデモ参加者が銃撃された特定の時刻が、このマイダン支配下のホテルからの大きな銃声と一致し、バリケードからのベルクート警察の銃声のような遠くの音と一致しなかったことを証明できたかもしれない。

 マイダンの虐殺裁判は2016年に再開されたが、ゼレンスキー大統領による5人のベルクート警官と分離主義者の交換の後、1年間中断された。ネオナチのC14や他の極右組織による数回の攻撃は、裁判を混乱させ、脅かした。ヤヌコビッチ政府指導部とベルクート警察による組織的隠蔽工作のような証拠はない。結局、マイダンの虐殺容疑で数年間逮捕され裁判にかけられたベルクート警官5人のうち2人は、特定のデモ参加者を殺傷したという証拠がないため、2019年に釈放された。

 さらに、2014年2月20日の大虐殺の重要な証拠の断片は、マイダン反対派やマイダン政府の管理下にあったり、検察総局が所持していたりする間に、消えてしまった。これには、死傷したデモ参加者の盾やヘルメット(弾痕があれば、狙撃者の位置を特定できたはずだ)、デモ参加者や警官の遺体から抜き取られた数発の銃弾、マイダンの建物の木や土、フラワーボックスから抜き取られた数発の銃弾が含まれている。弾丸や弾痕のある樹木の一部は、検察側の要請もあって伐採された。2月20日早朝のマイダンのオンライン・ストリームやウェブカメラの録画の多くも、ホテル・ウクライナ、アルカダ銀行、その他のマイダン支配下の建物の防犯カメラの録画とともに、虐殺の直後に消えた。

 ホテル・ウクライナで発見された、マイダン自衛隊のアンドリー・パルビイ代表が報告した狙撃位置の証拠も、ホテル・ウクライナの調査中にスボボダの活動家がガーディアン紙のジャーナリストに見せたカラシニコフの弾丸箱も行方不明になっている52

 ゼレンスキー大統領によって任命されたウクライナの初代検事総長、ルスラン・リャボシャプカは、マイダンの虐殺とその他のマイダン犯罪の捜査が妨害され、証拠のかなりの部分が事前の捜査で消えてしまったことを認めた53

 警官隊とデモ隊の虐殺の捜査は、同じ日、同じ場所で起こったにもかかわらず、別々に行われた。警官隊とデモ隊が同じ狙撃団によって撃たれたというさまざまな証拠があるにもかかわらず、警官隊とデモ隊の遺体から摘出された銃弾の犯罪科学的検査による比較は行われなかった。複数の狙撃手がメディアやソーシャル・メディアで自白し、犯罪科学的弾道検査で確認されたにもかかわらず、警察を殺傷した犯人として有罪判決を受けた者も逮捕された者もいない。

 極右に連なるマイダン部隊の指揮官は、彼の部隊の数人の構成員とともに、音楽院から警察を狙撃したことをメディアのインタビューで公に認め、抗議者虐殺の際にホテル・ウクライナで彼の部隊の狙撃手とともに撮影されたにもかかわらず、検察総局の取り調べさえ受けなかった。彼はマイダンの舞台から、マイダンの虐殺をヤヌコビッチになすりつけることで、武器を使ってヤヌコビッチを打倒すると脅し、また、彼の部隊がウクライナ議会の議員に、ヤヌコビッチとその政府を政権から解任し、代わりにマイダンの野党指導者を選出するための投票に参加するよう強制したことを認めた54

 ベルクート警察の弁護団は、この裁判を通じて、また最終弁論においても、虐殺で起訴されたベルクート警官が特定のマイダン抗議者を虐殺したという証拠はないと述べている。弁護団が述べたことは、負傷したマイダンの抗議者数十人の証言、弁護側と検察側の証人、動画、現場での調査実験、医学的・弾道学的な犯罪科学的検査に基づいて、ホテル・ウクライナや他のマイダン支配下の建物や地域にいた狙撃兵が警察と抗議者の両方を狙撃したということだ。ベルクート弁護団が示唆したところによれば、銃弾や、最後の数回の犯罪科学的弾道検査といった重要な証拠が改ざんされた。55。その数回の犯罪科学的弾道検査は、過去約40回の犯罪科学的弾道検査の結果を覆した検査だった。

 政府によって提案されたマイダン虐殺記念館は、その景観と街路を完全に変えてしまうだろう。虐殺の跡地は公園となり、新たなマイダン虐殺記念館が建設される予定だ。この記念館の建設によって、残された証拠はすべて消去され、銃弾の弾道を特定するための現場での調査実験は物理的に不可能になる56

 マイダンの虐殺と同様に、「ユーロマイダン」期間中に起きた3つの関連事件についても、ウクライナ政府の調査によって、これらの関連事件は偽旗作戦として演出された証拠が発見されたが、これらの発見を隠蔽し、責任者を訴追することができなかった。ウクライナ警察は2020年、「ユーロマイダン」時のオートマイダン(訳注)指導者の一人であったドミトロ・ブラトフの誘拐、拷問、磔刑に関する捜査を打ち切った。その理由は、他のオートマイダン指導者の証言と犯罪科学的検査に基づいて、この犯罪は「存在しなかったの」であり、「演出」された可能性があると判断したからである57。 リヴィウの軍事検察庁が、弾丸の弾道に関する犯罪科学的検査に基づき、発見したことは、フメルニツキーで高齢の女性デモ参加者が殺害され、数人のデモ参加者が負傷したのは、当時マイダンのデモ参加者によって占拠されていたウクライナ治安局の地方本部から、別のマイダンのデモ参加者によってであるということだった。しかし、検察総局はこの捜査を政治的に不適切だとして取り消し、デモ隊を銃撃した特別警備隊SBUアルファ将校を起訴した。政府の捜査はまた、犯罪科学的検査に基づき、2014年1月に最初の3人のマイダン抗議者がマイダン支配地域で数メートルの距離から殺害されたのに対し、警察の隊列はマイダンの陣地から数十メートル離れていたと断定した。これらの犯罪科学的検査の結果もまた、何の説明もなく覆され、彼らの殺害で起訴された者は誰もいない58
(訳注)オートマイダンは、ユーロマイダンの出現の中で2013年後半にキエフで最初に始まった抗議の手段としての自動車やトラックの使用を伴う親欧州ウクライナの社会政治運動である。(英語版ウィキペディア)


3 結論

 マイダン虐殺の裁判と捜査の過程で明らかになった公開証拠を注意深く分析すれば、4人の殺害された警官と数十人の負傷した警官、そして49人の殺害されたマイダン抗議者と157人の負傷したマイダン抗議者のほぼ全員が、マイダン支配下の建物や地域にいた狙撃手によって撃たれたことは、合理的で疑いの余地がない。ウクライナ検察総局の捜査でさえ、マイダン抗議者の約半数がベルクート警察陣地以外からの銃撃で負傷させられたと判断し、殺人未遂では誰も起訴しなかった。ウクライナ検察総局の調査も当初は、ホテル・ウクライナの狙撃手がデモ隊を虐殺したと認定していた。このホテルは当時、極右政党スボボダが支配しており、虐殺の前にスボボダはこのホテルを支配下に置き、警備していたと述べている。

 負傷したマイダンのデモ参加者の絶対多数は、ベルクート警官がそのデモ参加者を銃撃したとして起訴され、そのデモ参加者の証言が裁判で明らかになったが、裁判と捜査で、ホテル・ウクライナや他のマイダン支配下の建物から狙撃された、あるいは狙撃を目撃したと彼らは証言している。また、検察側証人数十人を含む200人近くの証人が、マイダン支配下のこれらの場所で、特に警察やデモ隊を虐殺した狙撃手について証言している。

 公判で提出された同期された動画によれば、ベルクート警官による発砲の時間と方向は、特定の抗議者が殺害された時間と方向とは一致していない。他の動画では、マイダンの抗議者たちがホテル・ウクライナのようなマイダン支配下の建物から狙撃兵に狙われる位置に誘い込まれている様子が映っていた。

 政府の専門家による犯罪科学的医療検査では、デモ参加者の大半は急角度で側面や背後から撃たれたと究明された。これは、マイダンが管理する建物の位置と一致しており、地上のベルクート警察の位置とは矛盾している。また、最初の弾道検査では、死傷者の体から抽出された弾丸とベルクート警察が使用したカラシニコフ・ライフルは一致しなかった。

 また、裁判や捜査の結果、ヤヌコビッチ大統領やその法執行機関の大臣や司令官がその虐殺を命じたという証拠も発見されなかった。政府の専門家による弾痕の犯罪科学的検査と、彼らが提出した動画によれば、ベルクート警官隊は主にマイダンのデモ参加者の上方、特にホテル・ウクライナに向けて狙撃していた。ホテル・ウクライナは狙撃手たちが主にいた場所だった。

 ベルクート警官隊が発射した跳ね返った銃弾によって、あるいはマイダンが支配する建物内の狙撃手との銃撃戦によって、少数のデモ参加者を偶発的に殺傷したことは、完全に排除することはできない。というのは、公開されているデータが不足していたり、矛盾するデータがあったりするからだ。しかし、他のデモ参加者とともに殺傷されたことから、彼らもマイダンの狙撃手に撃たれた可能性が高い。

 重要な証拠が隠蔽され、隠蔽されたことを示すさまざまな兆候がある。注目すべきは、マイダン支配下の建物や地域から発砲された銃弾により、13人以上のデモ参加者が死亡し、少なくとも77人が負傷したという政府独自の最初の調査結果にもかかわらず、マイダン支配下の建物に狙撃兵がいたことを否定したことである。政府の弾道学専門家とレーザーによる現場調査実験で、多くのマイダン抗議者がホテル・ウクライナや他のマイダン支配下の建物から撃たれたことが判明すると、この結果は隠蔽され、弾道学専門家はもはや使われなかった。検察総局は、裁判官と陪審員から命じられた後も、弾道と狙撃者の位置を決定するために弾道学の専門家を使用しなかった。

 ベルクート警察のカラシニコフの弾丸がマイダンのデモ参加者の遺体から出た弾丸と一致しないことを示したコンピューターによる鑑定を含む、約40の犯罪科学的弾道検査の結果の説明のつかない破棄も、もみ消しと証拠改ざんを示唆している。ベルクート警察と殺傷されたデモ参加者の映像の同期化された内容分析、犯罪科学的検査における傷の位置と方向、マイダン・デモ参加者の目撃者の証言、政府の弾道専門家による現場での調査実験は、マイダン・デモ参加者がベルクート陣地から物理的に撃たれるはずがなかったことを示している。

 マイダンの虐殺は、歴史上最もよく記録されている大量殺人事件のひとつであり、独立ウクライナにおける最も重大な人権侵害のひとつであるにもかかわらず、9年以上にわたる捜査と裁判の結果、有罪判決を受けた者も、現在逮捕されている者も一人もいない。この大量殺人と、それに続くヤヌコビッチ大統領に対する暗殺未遂事件は、ウクライナ政府の暴力的転覆をもたらした。この「偽旗」大量殺人は、この暴力的で非民主的なウクライナ政府転覆の重要な一部と見なされなければならない。

 これらの発見は、「ユーロマイダン」を理解する上で、そしてウクライナでの暴力的紛争、そしてロシアとウクライナ、ロシアと西側の対立の起源を理解する上で大きな意味を持つ。この偽旗の大虐殺は、事実上、西側が支援したウクライナ政府の暴力的転覆につながり、ロシアによるクリミア併合、内戦、ドンバスへのロシアの軍事介入へと飛び火した。

 裁判と捜査によって明らかになったことは、ヤヌコビッチ政権転覆の決め手となったのは、民衆による「ユーロマイダン」抗議ではなく、演出された大量殺戮とヤヌコビッチに対する暗殺未遂であったということだ。これらは、ウクライナや西側諸国における支配的な説明に反して、「ユーロマイダン」の最中の政治的移行が非民主的であったことを示している。このデモ参加者と警官隊の大量殺戮は、ウクライナ独立史上、最も重大な政治犯罪と人権侵害のひとつでもあった。

 マイダン虐殺事件でウクライナの法執行機関と司法制度が適切な公正さを提供できなかったことは、法の支配とウクライナ社会内の和解の見通しを損なった。この社会は、マイダン抗議行動への支持という点で、また「ユーロマイダン」の最中とその後における他の多くの政治的問題という点で、さまざまな程度で、主に地域的な線に沿って分裂していた。マイダンの虐殺裁判の評決は、特にウクライナとロシアの戦争時に、この事件が政治化され、司法府の独立性が欠如しているため、正義が確保される可能性は低い。国際刑事裁判所、欧州評議会、国連安全保障理事会などの国際機関が、この重要な事件で正義を確保できなかったことも同様である。

 極右がマイダンの警官隊とデモ参加者の虐殺に関与し、この大量殺人に対する極右の捜査、訴追、処罰が行われなかった結果、極右はウクライナの政治に大きな影響力を持つようになり、他の暴力や暴力の脅威に対する事実上の免罪符を得ることになった。

 マイダンの虐殺、この大量殺戮に関与したオリガルヒ的・極右的要素、そしてこの重大な政治的暴力事件における正義の欠如は、ウクライナとウクライナ国民に直接的・間接的に重大な悪影響をもたらした。つまり、それが引き起こした紛争の激化という結果がもたらされた。これは、ロシア併合の結果、ウクライナが主に親ロシア派のクリミアを失い、2014年8月と2015年1月に分離主義者の反乱とロシアの軍事介入の結果、ドンバスの大部分を失った間接的な要因の一つであった。マイダンの虐殺を理解し、その犯人を裁くことは、ウクライナの紛争とウクライナ・ロシアの紛争を平和的に解決し、ウクライナ・ロシア戦争を防ぐのに役立ったかもしれない。

 マイダン虐殺と、この大量殺戮に関与した者たちが紛争スパイラルを引き起こし、紛争の激化を防げなかったことで正義を実現できなかったことも、間接的にウクライナ・ロシア戦争につながった。この戦争で、ウクライナとウクライナ人に多大な人的・経済的犠牲をもたらし、併合されたドンバスとウクライナの他の東部・南部地域の一部を永久に失う可能性がある60。ウクライナは、この戦争への西側の直接的な参加なしには、ロシアを打ち破れそうにない。

 マイダン虐殺の裁判と調査では、この決定的な大量殺戮にロシアや西側政府が関与した証拠は明らかにされなかった。マイダンの虐殺とヤヌコビッチ大統領の暗殺未遂によって、ウクライナで民主的に選出された比較的親ロシア的な政府は暴力的に倒された。このことを西側諸国が事実上支持したことは、クリミアとドンバスにおける紛争、ロシアとウクライナ、ロシアと西側諸国との間の紛争を引き起こす一因となった。それが今やウクライナ・ロシア戦争、ウクライナにおける西側諸国とロシアとの代理戦争へと激化した。そしてウクライナは「ユーロマイダン」後に米国のお得意様国家となった。

 したがって、マイダン大虐殺と正義を確保できなかったことは、最終的には間接的に世界的に重大な影響を及ぼす。この影響は、可能性は低いが除外することもできない事例として、ウクライナをめぐる核戦争の危険を伴うNATOとロシアの直接戦争にさらに拡大する可能性がある。西側諸国によるマイダン虐殺の不可解不正確な説明と、この事件における正義を確立できなかったことについては、さらなる研究が必要である。

 マイダンの虐殺とウクライナの政権交代をめぐるさまざまな物語は、クリミアとドンバスの紛争、ウクライナとロシア、西側諸国とロシアの紛争の平和的解決を複雑にし、ロシアとウクライナの関係を害している。また、それは欧米とロシアのウクライナをめぐる代理戦争にもなっているため、戦後もウクライナとロシアの関係を長く複雑化させる可能性が高い。ウクライナのマイダン虐殺の実行犯を裁くことは、困難ではあるが、こうした危険な対立を解決するために必要な一歩である。

1
Complete works of Voltaire: Philosophical Dictionary, (Paris: Chez Th. Desoer, 1817): 788.
2
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3
Earlier versions of this study were presented at the 22nd Annual World Convention of the Association for the Study of Nationalities in Columbia University, New York, May 4-6, 2017; the Annual Meeting of the American Political Science Association in Boston, August 29-September 2, 2018; the Regimes and Societies in Conflict: Eastern Europe and Russia since 1956 conference by Institute for Russian and Eurasian Studies at Uppsala University and British Association for Slavonic and East European Studies in Uppsala, Sweden, September 13-14, 2018; the Virtual 52nd Annual Convention of the Association for Slavic, East European, and Eurasian Studies, November 5-8 and 14-15, 2020; and the virtual 10th World Congress of the International Council for Central and East European Studies, August 3-8, 2021.
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11
“Four Inaccuracies.”
12
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13
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23
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24
Katchanovski, “The ‘Snipers’;” Katchanovski, “The far right”.
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26
“Zhurnalist poobshhalsja s devushkoj-medikom, jakoby « ranennoj v sheju » snajperom vo vremja Evromajdana. Okazalos’, ranenie moglo byt’ inscenirovkoj”, tk.media, 3 February 2020, https://tk.media/news/zhurnalist-razoblachil-devushku-medika-yakoby-ranennuyu-v-sheyu-snayperom-vo-vremya-evromaydana-okazalos-ranenie-bylo-instse nirovkoy-2020-02-03 (accessed 26 January 2022).
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28
Ibid.
29
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30
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31
See, for example, “Eks-okhoronets’ Yanukovycha: Pershyi napad buv 19 liutoho 2014 roku”, 4 May 2018, Ukrainska Pravda, https://www.pravda.com.ua/news/2018/05/4/7179458 (accessed 16 May 2022).
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37
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40
“Syroid dopuskaet prichastnost’ predstavitelej segodnjashnej vlasti k sobytijam, proishodivshim na Evromaidane”, 112 Ukraina, 18 February 18, 2017, http://112.ua/politika/syroid-dopuskaet-prichastnost-predstaviteley-segodnyashney-vlasti-k-sobytiyam-proishodivshim-na-evromaydane-372879.html (accessed 12 January 2020) and personal communication, 10 May, 2017.
41
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42
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“Prikaz rasstrelivat’ mitinguiushhih otdaval Yanukovich – GPU”. UNIAN, 2 April 2014, https://www.unian.net/politics/903462-prikaz-rasstrelivat-mitinguyuschih-otdaval-yanukovich-gpu.html. The Simonov rifle is not a sniper rifle but a semi-automatic carbine of the same caliber bullets as the AKM; the Simonov was generally removed from military and police service in Ukraine and was available as a hunting rifle.
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50
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51
“Nove video rozstriliv na Maidani”, TyzhdenUA, 2017, https://www.youtube.com/watch?v=gquj-Gf7cVQ (accessed 16 January 2018).
52
Ian Traynor and Harriet Salem, “Snipers stalk protesters in Ukraine as Kiev hotel becomes makeshift morgue”, Guardian, https://www.theguardian.com/world/2014/feb/20/ukraine-snipers-kiev-hotel-makeshift-morgue (accessed 1 March 2023).
53
“Chastyna materialiv znykla, ne xotily vyjty na zamovnykiv, – Ryaboshapka pro spravy Maidanu,” 24 kanal, 30 January 30 2020, https://24tv.ua/chastina_materialiv_znikla_ne_hotili_viyti_na_zamovnikiv__ryaboshapka_pro_spravi_maydanu_n1272252 (accessed 30 January 2020).
54
Oksana Kovalenko, “Sotnyk, yakyj perelomyv khid istoriyi: Treba bulo dotyskaty,” Ukrainska pravda, 24 February, 2014, http://www.pravda.com.ua/articles/2014/02/24/7016048 (accessed 30 January 2020).
55
See, for example, “Zasidannia vid 18.10.2022,” https://www.youtube.com/watch?v=csHxh6BYqzg (accessed 15 January 2023); “Zasidannya vid 14.11.2022;” https://www.youtube.com/watch?v=gX3bGBx0o9c (accessed 15 January 2023).
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57
Anatolii Sharij, “Skrepy Maidana. Raspiatyi malchik”, 11 April 2020, https://youtu.be/02ML-MzAy0M (accessed July 1, 2021).
58
Katchanovski, The Far-Right.
59
See, for example, Katchanovski, The Far-Right; Katchanovski, The Russia-Ukraine.
60
Ivan Katchanovski, “The hidden origin of the escalating Ukraine-Russia conflict”, Canadian Dimension, 22 January 2022, https://canadiandimension.com/articles/view/the-hidden-origin-of-the-escalating-ukraine-russia-conflict (accessed 23 March, 2023).

世界はウクライナ紛争にうんざりしている – ブラジルのルーラ大統領の主張

<記事原文 寺島先生推薦>
World is getting tired of Ukraine conflict – Brazil’s Lula
出典:RT  2023年7月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月29日


ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、モスクワとキエフの間で和平協定を仲介するよう改めて求めた。



ブラジル大統領ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ © Getty Images


 ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は水曜日(7月19日)、記者団に対し、世界中の国々がモスクワとキエフの間で続く軍事紛争にうんざりし始めていると語った。

 「世界はうんざりし始めています。世界の各国が、です」とブリュッセルでの2日間にわたるEUとラテンアメリカの指導者らの会合後に同大統領は述べた、とブルームバーグ紙は報じた。

 このブラジル大統領は、最終的にはウクライナに平和が訪れる瞬間が来るとは思うが、そのためにはいくつかの国々がロシア・ウクライナ両国と対話できるようにする必要があると主張した

 ロシアとウクライナの和平合意を推進してきたルーラ大統領は、ロシアだけが紛争の原因であると非難することにも反対してきた。同大統領は、ウクライナのウォロデミル・ゼレンスキー大統領と米国のジョー・バイデン大統領にも責任がある、としてきた。それは、両者にも、紛争を阻止するためのロシアのウラジーミル・プーチン大統領との交渉に失敗した責任は同様にあるからだという。

 今週のEUと南米カリブ海諸国共同体(CELAC)との首脳会議で、欧州当局者らはウクライナにおけるロシアの行為を明確に非難する内容の最終声明に参加諸国が署名することを期待していた。しかし、ブラジルやニカラグアを含む多くの国が文書にロシアに対して強い表現を盛り込むことに反対したため、EU指導者らは、中南米諸国のすべてを説得することができなかった。



  関連記事:ウクライナに平和をもたらすことができるのは中立国だけ - ブラジルの主張

 最終宣言には投資の約束といくつかの協定が含まれていたが、最終的にはニカラグアを除く全ての首脳会議参加国が署名した。ニカラグアが反対したのは、この宣言の中にウクライナ紛争に関する文章が一文でもあることを許さなかったためだ。

 NATOは「必要な限り」ウクライナと協力すると約束していたにもかわらず、多くの西側当局者は最近、長引く紛争で「戦争疲労」が始まるにつれ、ウクライナ政府への支持が間もなく失われ始める可能性があると予測し始めている。

 先週、チェコのペトル・パーヴェル大統領は、ウクライナは2024年の米大統領選挙までに可能な限り多くの領土を取り戻すことを目指すべきだと述べ、その成果により米国のウクライナ支持者らはウクライナへの軍事援助額を再考する可能性がある、とした。

 3月にはスロバキアのズザナ・カプトワ大統領も、ウクライナ政府への軍事援助は無制限ではないと警告し、ウクライナに対する国民からの支持は「枯渇しつつある」と主張した。

ウクライナの工作員ゼレンスキー。まさに、西側によって演出された人形劇

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine’s Agent Zelensky… a Puppet Show Produced by the West
出典:ストラテジック・カルチャー(Strategic Culture)  2023年7月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月27日





 ウクライナは、西側資本に大きな借りを残した植民地として、この先何十年も西側に隷属される国になった。

 今週スコット・リッターが発表した2部構成のドキュメンタリーは、ウォロデミル・ゼレンスキーに幻想を抱いている人なら誰でも、何としても見るべきものだ。ゼレンスキーのことだけではなく、NATがけしかけているウクライナでのロシアとの間の戦争についても語られている。

 この報告が全体として解説しているのは、一人の喜劇俳優が一国の政治指導者となり、自国をロシアとの消耗戦という血なまぐさい戦争に引き摺りこんだ人物の話だ。

 既にずっと前から、ゼレンスキーの不誠実な役割に気づいている人々にとってさえも、リッターによる極めて詳細で、地政学全体を俯瞰したこの調査には感銘を受けることだろう。独自の調査だけではなく、ウクライナ元高官や敬意を表すべき西側の分析家らからの聴き取りをもとにし、リッターは「工作員ゼレンスキー」という激しい非難を加えている。

 この報告では、①裏切りと②汚職と③西側の人々に対する大胆な情報操作についての驚くべき内容が明らかにされている。

 リッターは、元米海兵隊情報本部の職員で、後に世界中から尊敬を集める独立系分析家となった人物だが、このリッターがゼレンスキーについて隅から隅まで調べ尽くし、さらにはゼレンスキーが英・米の諜報機関から手を回され、細かく監視されてきたせいで、ウクライナが西側の地政学上の利益のための植民地にされてきた経緯を明らかにしている。

 この「ウクライナ作戦」が始められたのは、ソ連解体後の1991年のウクライナ独立以来のことだが、ゼレンスキー政権下において、その総仕上げが行われてきたのだ。

 西側社会において、大手報道機関、ハリウッド、さらにはバチカンのローマ教会さえ、ゼレンスキーは、ウクライナの民主主義を守り、「ロシアによる侵略」に対してウクライナを擁護しているとして、彼を褒め讃えてきた。

 ゼレンスキーの仮の姿は、CNN(主要な宣伝機関だ)などの西側報道機関が繰り出す記事により、慎重に作り上げられてきた。高価な衣装をまとったゼレンスキーの妻は、ファッション雑誌の表紙を飾るが、彼女の夫は、すり切れた作業服を着た姿で登場した。この陳腐な画像こそ、ゼレンスキーを操る西側諜報機関が繰り出す人形劇や心理作戦を象徴するものだ。

 残念なことに、西側のあまりに多くの人々は、この連ドラに浸りきってしまっている。ただし、この連ドラの筋書きが通用しなくなっている兆候は見られる。何度も再演され、同じ決まり文句ばかり使っているからだ。

 リッターはこの茶番劇のカーテンを開け、その裏にある邪悪な陰謀とこの劇の制作者を明らかにしている。こんな安物の劇場の舞台に上がれるのは、コカイン漬けの役者だけだろう。批判的な目で見れば、ゼレンスキーがほぼ常に、空にあがる凧のように高揚した気分のなかで、CIAやMI6が西側の人々向けに書いた茶番劇の脚本を演じている、という事実は疑いようがない。

 大統領になる前、ゼレンスキーは「国民の僕(しもべ)」というコメディで主演を演じていた。ウクライナで大当たりしたこの喜劇は、一介の市民が政治家に転じ、既得権力の汚職を非難することで、一国の指導者にまで上り詰めるという架空の話だった。

 国政選挙がある2019年の前年、現実社会においても、「国民の僕」という政党があらたに立ち上げられ、ゼレンスキーがその党から大統領候補に立候補したのだが、その路線は、汚職に反対し、ウクライナに平和をもたらすことを誓約する、という方向性だった。

 これはCIAが支援したキエフのマイダンでのクーデターが起こった5年後のことだった。このクーデターにより、過激派が権力を握り、ロシア語話者の多い地域であるドンバス地方(現在はロシア領となっている)に対する内戦を起こしていた。

 ゼレンスキーが演じていたこの方向性こそ、西側による操作が行われていたことを物語るものだ。

 73%の得票率(人々が平和を求めていたはっきりとした証だ)で選ばれたゼレンスキーは、 即座に方向性を変えた。反ロシア政策に舵を切り、その中には、ウクライナの人口の3分の1の人々が第一言語として使用していたロシア語を根絶させようとするものもあった。しかもゼレンスキー自身、ロシア語話者だった。

 ゼレンスキーによるこの裏切り行為が明らかに示したことは、工作員たるゼレンスキーが、初めからずっと米国政府と英国政府が任命した西側諜報機関の僕にすぎなかったという事実だった。ゼレンスキーという操り人形の操り主である西側の究極の目的は、ウクライナをロシアに対する代理戦争の戦場として利用し、ウクライナ国民が最後の一人になるまで戦わせることだった。ゼレンスキーは、生け贄の子羊のように屠殺へと導かれた同胞の血をもってその任務を果たしてきたのだ。
 
 「卓越した長所の持ち主」として振る舞ってきたこの4年間、ゼレンスキーは西側のご主人様たちのために多くの使命を果たしてきた。

・ロシア語、ロシア文学、ロシア文化を排除した。

・ウクライナ正教会を分裂させ抑圧することで、ロシアとの歴史的なつながりが封じられ、一般のウクライナ市民の多くを混乱させた。

・歴史を削除したり、書き換えることにより、第2次世界大戦時のソ連軍によるウクライナの解放を侮辱した。そのいっぽうで、ナチの第3帝国に協力したウクライナの国粋主義者たちを賞賛したが、これらの国粋主義者たちの中には、ホロコーストやスラブ民族、ポーランド人などの民族に対する大量殺害を実行した際に手助けをした人々もいた。ゼレンスキーがユダヤ人の血を引いているという事実が、ゼレンスキーによるこの非常に怪しげな裏切り行為を西側の市民からわかりにくくするために利用されている。

・ゼレンスキーは、反対派の報道機関や記者、野党を排除し、ウクライナが西側の管理下に置かれて、さらにはロシアに対する代理戦争の道具扱いにされるという状況を急速に招いていた。「西側と価値観が共有できている」という一点で、米国や欧州の指導者たちはゼレンスキーを褒め称えた。

・ウクライナの広大な農地が、米国の農産業界に売り渡された。このような売却行為は、外国人が所有者になることを禁じているウクライナの憲法から完全に外れた行為であった。

・ウクライナを米国の生物兵器の実験場、および西側の軍事兵器の試験場にした。

・2022年3月にドンバス地域に対する軍事攻撃を、NATOの軍師支援のもとでウクライナに準備させた。同年2月、ロシアはこの攻撃に先立ち、軍事介入を行った。

 上記の使命一覧は、工作員ゼレンスキーがそれ以外のおぞましい使命とともに成し遂げられている。そのすべてが詳細に実証された。その結果として、ウクライナは、西側資本に大きな借りを残した植民地として、この先何十年も西側に隷属される国になった、ということだ。

 喜劇俳優から大統領に転じたゼレンスキーは、言語道断の裏切り行為により、報酬を受けてきた。ゼレンスキーは外国に数軒の贅沢な土地を所有しており、政治家を引退した後そこで生活しようと思っていることは間違いない。

 しかし、リッターは大きな疑念を投げかけている。それは、45歳のゼレンスキーが、静かな隠退生活を送ることを許してもらえるか、ということだ。というのも、ゼレンスキーの操り主である西側勢力が繰り出してきた汚い手の内を、ゼレンスキーは知りすぎてしまったからだ。

 これまで米・英政府に利用された多くの外国の指導者たちと同様に、この先ゼレンスキーが使い捨ての縫いぐるみのような扱いを受けることになる可能性は十分ある。

 現在、何万人ものウクライナ国民が、ロシアとの代理戦争の中で殺され、傷を負わされ、自国が破壊され、汚職漬けにされ、ナチの暗殺隊に集(たか)られている。
 
 この現状がすべて、米・英政府がロシアの弱体化を狙って繰り出してきた悪名高い長期にわたる帝国主義的計画の中身なのだ。そのいっぽうで、欧州各国を米・英資本に従属させようともしている。

 この計画が思ったようにうまくいっていないのは、ロシアが強力な軍事力と地政学的戦術を使って西側の目論見を頓挫させ、彼らの茶番劇を一蹴しているからだ。

 しかし、ウクライナで展開されている人形劇において、真に蔑(さげす)むべき内容は、西側の人形劇制作者らが、陰謀や裏面工作を駆使して、世界をロシアとの全面戦争の危機に追い込もうとしていることだ。そうなれば核による最終戦争になる可能性まである。この人形劇が抑制のきかない状況にまで進展してしまえば、の話だが。

 スコット・リッターがウクライナにおけるゼレンスキーや西側勢力の目論見を明らかにしたこのドキュメンタリーは、西側の全ての人々が目にすべきものだ。このドキュメンタリーは、西側の支配者たちに対する激しい告発であり、この代理戦争が一体どんなものであるかを明らかにするものである。

キエフ政権の「無能」さがオデッサ大聖堂の破壊を招いた―ロシア側の主張

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev’s ‘incompetence’ to blame for damage to Odessa cathedral – Moscow
The largest Orthodox church in the city was likely hit by a Ukrainian missile, the Russian military has said
オデッサ市内最大の正教会がウクライナのミサイルで攻撃された可能性があるとロシア軍が発表
出典:RT    2023年7月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月27日



オデッサ地方行政局/テレグラム


 港湾都市オデッサにある最大の正教大聖堂がロシアのミサイル攻撃で深刻な被害を受けたというウクライナ側の主張は全くの誤りである、とモスクワ国防省は述べ、ウクライナ側の防空体系が攻撃した可能性が高いと付け加えた。

 同省は日曜(7月23日)の声明で、「オデッサ市の救世主顕栄大聖堂が(ロシアの)高精密兵器による攻撃を受けたというキエフ政権が広めた情報は現実と一致していない」と述べた。さらに、ロシアの攻撃が成功したのは、すべて当該地域の軍事施設への攻撃であり、「寺院群から安全な距離にある」ところだった、と付言した。

 当局者らはまた、「キエフ政権の軍やテロリストの基盤施設に対しての攻撃計画は、慎重に精査され確認された情報に基づいて実行され」ており、民間人や文化施設への攻撃は回避されている点を強調した。


オデッサ地方行政局/テレグラム

 同省はさらに、現場の映像から示唆されることは、「(この大聖堂の)破壊の原因として最も考えられるのは、ウクライナの対空誘導ミサイルの投下」であるともした。この事故の原因として考えられることは、ウクライナの防空体系を運営している職員らの「無能な対応」であり、その防空体系はキエフ当局が意図的に市民の居住地に配置している、とも付言した。



 同省によると、ロシアの攻撃は一夜にして、オデッサ付近のウクライナの海軍施設の爆撃に成功したという。この施設は、「海上ドローン機を含む、ロシアに対するテロ攻撃の準備のために使用されていた」とのことだ。同省はさらに、キエフ当局のために戦っている外国人傭兵たちの収容施設にも攻撃を加えたことを伝えた。

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 ソーシャルメディア上で出回っている写真を見ると、大聖堂の外観が広範囲に損傷しており、豪華な装飾が施された建物内部の床には瓦礫が散乱している。写真には、粉々に砕かれた祭壇や粉々になった天井壁画も写っている。

 救世主顕栄大聖堂は、1794 年に設立され、1936 年にソ連によって破壊されるまでこの地域全体の主教会であった。ソ連崩壊後、2010年にロシア正教会の首長であるキリル総主教によって修復され、献堂された。

 国防省によると、ロシア軍はここ数日、オデッサ地域で造船所、燃料貯蔵所、武器備蓄基地を標的とした攻撃を強化している。この攻撃は、今月初めにウクライナの海上ドローンがクリミア橋を襲撃し、道路の一部が損傷し、ロシアから来た夫婦の命を奪い、10代の娘に怪我を負わせたことへの報復として行われた。

現代ウクライナ史の裏にある大きな嘘:なぜウクライナ政府は謎に包まれた2014年の 「マイダンの虐殺」 の適切な調査を拒否するのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
The big lie behind modern Ukraine: Why does Kiev refuse to properly investigate the mysterious 2014 ‘Maidan massacre’? — RT Russia & Former Soviet Union
For almost ten years officials have refused to find the culprits, despite plenty of eyewitness accounts and evidence
多くの目撃証言や証拠にもかかわらず、10年近く当局は犯人の特定を拒否してきた。
筆者:クリスティーナ・シゾヴァ(Christina Sizova)
出典:RT   2023年7月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月25日





 ウクライナにおける戦闘の活発な段階は500日以上続いている。この間、数万人、おそらく数十万人が死亡した。

 一方、西側諸国は戦争を支援するために数十億ドルを費やしており、ロシアでは核兵器使用の可能性について活発な議論が始まっている。

 ウクライナ出身のカナダ人研究者であるイワン・カチャノフスキーは、一連のドミノが最初に倒されたのは約10年前で、後に 「ユーロマイダン」 として知られる大規模な抗議運動がウクライナの首都で発生した時だと考えている。

 キエフではある日、反政府デモ隊と警察を合わせて100人以上が死亡した。ウクライナ指導部、西側の政治家、メディアはベルクト特殊警察(訳注)を非難したが、多くの事実は、反政府デモ隊がその仲間によって撃たれた可能性を示唆している。
(訳注)2014年まで存在していたウクライナ内務省管轄の民警(ミリーツィヤ)に属する特殊部隊(Weblio)



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 カチャノフスキーは「マイダン虐殺裁判と捜査から分かったこと:ウクライナ・ロシア戦争と関連事項への示唆」という記事の中で、10年前の犯罪を適切に捜査できなかったことが、国際関係を現在の状態に導いたことを示している。


マイダンの虐殺:調査結果

 ウクライナ政府が欧州連合 (EU) との連合協定締結の準備を中断した2013年11月21日から、関連する事件が始まった。同日午後10時頃、当時の主要野党指導者の支援を受けた最初の抗議行動がキエフのメイン広場で発生した。

 当初はそれほど多くの人が集まらなかった。初日には1000人から1500人の活動家が参加した。しかし、数日後、好機だと感じた急進派が、マイダンにテントの設営をした。最終的にはいくつかの行政機関の建物を占拠し、武装した「自衛軍」を組織し、警察と直接衝突することになる。

 2014年の2月18日から20日にかけて、正体不明の狙撃兵がマイダンの上層階から発砲し、事件は最高潮に達した。その結果、デモ隊抗議者とウクライナ内務省管轄のベルクト特別警察隊の警官を含む100人以上が死亡した。検察庁によると、ユーロマイダンで2442人が負傷した。誰かが虐殺の責任を問われなければならず、クーデターの後に権力を握った者たちはすぐに「犯人」と思われる人物を見つけ出した。

 国外逃亡したヴィクトル・ヤヌコーヴィチ元大統領に対する刑事訴訟が開始された。彼は民間人の大量殺人で起訴された。また、ベルクト特殊警察部隊は、市民に対する武器の発砲を含むマイダンの犯罪で告発された。


2014年2月23日にキエフの独立広場で起きた警察との衝突で死亡した反政府デモ隊の慰霊碑に献花し、追悼する人々。
© Brendan Hoffman / Getty Images



生贄(いけにえ)

 2015年2月、検察は25人のベルクト警察官とその他の身元不明の個人が反政府デモ隊の射殺に関与したと主張した。その2年後、セルゲイ・ゴルバチュク検察庁特別捜査部長も、ベルクトの隊員が反政府デモ隊に対して武力を行使したとして、3000から5000グリブナ(当時337ドルと562ドル)のボーナスを違法に受け取ったと主張した。



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 元警察官の起訴が全国で始まり、多くのベルクト警察官がロシアに移住した。2014年2月のマイダン殺害がベルクトによるものであることを暗示するこの物語は、ウクライナ政府関係者や西側の支援者によって疑問視されたことはない。

 しかし、現在も捜査は続いている。昨年2月、イリーナ・ヴェネディクトヴァ検事総長は、ウクライナの裁判所がマイダン事件に関連した犯罪で50人に判決を下したと述べた。また、518人が告発され、248人の起訴状が提出され、372人が有罪判決を受けたと述べた

 しかし、多くの疑問が残されている。最初のマイダン 「活動家」 の殺人事件は未解決のままである。前述の「狙撃事件」も未解決のままであり、反政府デモ隊や警察官たちを撃った者は起訴されていない。警察に対する犯罪は捜査すらされていないが、検察庁によると、ユーロマイダンの事件で721人が負傷したという。

 「ウクライナや西側諸国では、反政府デモ隊のマイダンでの虐殺はヤヌコーヴィチ政権によるものだとする見方が支配的で、警察の殺害はほとんど無視されている。一部の例外を除いて、西側とウクライナのメディアもまた、マイダンでの虐殺の裁判と、マイダンが管理する建物内の狙撃兵に関する調査結果を報道しませんでした」 と、イワン・カチャノフスキーは述べている。


いったい本当は何が起こったのか

 この事件においては、ベルクト警察が常に傍証を欠いていたと主張する声も上がっている。2019年、弁護士のアレクサンドル・ゴロシンスキーがロシア情報通信のRIAノーボスチ通信社に対し語ったことは、2014年2月20日の朝、39人の警察官と軍人が負傷し、四人が死亡したということだった。同日夕方までに63人が負傷した。

「誰かが整然とベルクト警察と国内軍の兵士と将校に向けて発砲した」 と彼は主張した

 2014年4月、ドイツ国営放送ARD/Das Erste TVチャンネルは報道調査を行い、ウクライナ検察局が承認した内容に矛盾があると結論付けた。ジャーナリストのステファン・シュチュリクは、デモ参加者が自分の仲間によって背後から撃たれたという証拠を提示した。



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 「いくつかの重要な疑問が残されている。その一つは、2月20日に本当に反政府デモ隊が背後から撃たれたのかということである。これが重要なのは、彼らのすぐ後ろに反政府デモ隊が支配するウクライナホテルがあったからだ。これは仲間から銃撃された可能性を意味する。この件について、目撃者、射撃の専門家、弾道学の専門家に話を聞いた。彼らは確かに背後から撃たれたと主張している」と記者は述べた

 BBCの調査では、反政府デモ隊が警察に発砲したことで虐殺が始まった可能性も指摘されている。セルゲイという男は、別の男と一緒に、当時デモ隊の支配下にあった建物から警察に向けて発砲したとイギリス国営放送に語った。彼によると、彼がベルクト警官に向けて撃った銃弾は警察を後退させた。

 米国のSITU Researchも、「背後から銃撃されたことは法医学的証拠から明らかである」「誰かが屋上から銃撃していた」と指摘している。

 これらの報告は、過激派のイワン・ブベンチックによって確認された。2016年、ウラジミール・ティヒー監督のドキュメンタリー映画 「Brantsi」(囚人)で、彼は機関銃で内務省の警察官を撃ったことを認めた。「後頭部を撃ち抜いて殺したと言われていますが、それは事実です。彼らは私に背を向けて立っていた。彼らが振り向くのを待つ機会がなかった。私は3階の柱の後ろの、マイダンから最も遠い窓から発砲した。そこからは、石碑のそばに盾を持った警官が配置されているのがはっきり見えた。」とブベンチックは述べた。


2014年2月20日にキエフでウクライナ大統領と野党指導者の間で停戦が合意されたにもかかわらず、独立広場で警察との衝突が続く中、反政府デモ隊が負傷者を運んでいる。© Jeff J Mitchell/Getty Images


1000時間のビデオ映像、数十人の目撃者

 これらは、マイダン殺人事件で公に利用可能な目撃証言の一部にすぎない。カチャノフスキーは、マイダン虐殺、ヤヌコビッチ裁判、そして公式オンラインデータベースで利用可能な2500以上の判決におけるこれらの事件の調査の約1000時間の公式ビデオ映像に基づいて調査した。

 カチャノフスキーは、ベルクト警察が反政府デモ隊を銃撃する映像が裁判で提示されたと述べている。しかし、映像の中の銃撃の時間と方向は、マイダンの銃撃の時間と一致していなかった。彼は、裁判中に提出された動画やその他の証拠によって、警察が到着して発砲する前に反政府デモ隊の3人が (インスティトゥツカヤ通りで) 殺されたことが確認されたと考えている。



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 同時に、ベルクト警察の弁護団が指摘したのは、反政府デモ隊の一人が猟銃から撃った発砲の時間と方向 (動画と写真で見られるように) は、国家の法医学専門家によって確立された特殊部隊の警官を殺害した発砲の時間と方向と一致するということだった。

 カチャノフスキーは、マイダンの銃撃犯は特定されたが、起訴されなかったと主張している。

 ベルギーのテレビ局VRTが録画した未公開映像も裁判で上映された。映像には、ウクライナホテル内に配置された狙撃兵が反政府デモ隊を撃っていたため、デモ参加者が他の参加者に前進しないよう警告している様子と、彼が発砲による閃光を見ていたことが映っている。VRTの動画には、デモ隊の方向で木に命中した弾丸も映っている。彼らは振り向いて、ホテルを指差し、狙撃手に向かって「撃つな」と叫ぶ。

 2月20日にベルクト警察により襲撃されたとされ、証言が公開された負傷した72人のマイダンの反政府デモ隊のうち約51人は、捜査と裁判で、マイダンの活動家が支配する建物や領域から狙撃兵に撃たれたと主張した。彼らは狙撃手を個人的に見たり、他のデモ隊の抗議者から聞いたと証言した。計31人の負傷した反政府デモ隊の者たちは、ウクライナ・ホテル、アルカダ銀行、10月宮殿、ムセイニー・レーンとゴロデツキー通りの建物から攻撃を受けたと述べたが、これらはすべて、当時は反政府デモ隊が支配していた建物と領域だった。


グルジアの狙撃兵

 ある説によると、反政府デモ隊を撃ったのはウクライナ市民ではなく、ジョージア人を含む外国人の傭兵だったという。これを最初に述べたのは、グルジアの精鋭部隊 「アヴァザ」 の元司令官トリスタン・ツィテラシュヴィリ将軍で、彼はグルジア人がマイダンの事件に参加していたことを知っていたと主張した。


2014年2月19日、キエフの 「マイダン」 と呼ばれる独立広場周辺で、がれきや炎の中を歩く反政府デモ隊 © Brendan Hoffman / Getty Images

  2018年2月、複数のグルジア市民がRIAノーボスチ通信社とのインタビューで、反政府デモ隊を撃ったことを認めた。ジョージア陸軍の元軍人コバ・ネルガゼ氏によると、狙撃手たちはミヘイル・サアカシュヴィリ元大統領の元顧問マムカ・マムラシヴィリの助けを借りてキエフに来たという。ネルガゼと彼の一団は、1万ドルを与えられ、キエフから戻った後、さらに5万ドルを約束された。彼らは偽造パスポートでウクライナに入国した。キエフではウシンスキー通りを拠点とし、毎日マイダンの催しに参加した。



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 捜査の過程において、カチャノフスキーはこう語った。すなわち、米・伊・イスラエル・マケドニア・露の報道機関とのインタビューにおけるジョージアの狙撃手たちの主張によると、彼らはバルト諸国から来た狙撃手団や極右勢力と関係のあるウクライナの狙撃手団とともに、両側の抗議活動者を射撃するよう命令を受けていたというのだ。そしてその目的は、ヤヌコヴィチとユーロマイダンの指導者たちの間で和平協定を結ばせないことにあった。


誰も告訴されず

 多数の事実、証拠の調査、ビデオ録画、目撃者の証言にもかかわらず、警察官の殺人や傷害で有罪判決を受けたり逮捕されたりした者がいないことに、カチャノフスキーはショックを受ける。

 彼は、検察庁が、2013-2014年の事件に直接参加した極右政党のスボボダ党(訳注)と人民戦線党の政治家か、あるいはその後のペトル・ポロシェンコ大統領とウラジーミル・ゼレンスキー大統領の側近によって率いられていたためだと考えている。
(訳注)ウクライナのネオナチ・民族主義政党(ウィキペディア)

 「スボボダと人民戦線の主要構成員が検察庁を率いるように選ばれた。他のマイダン活動家やマイダン狙撃団のジョージア人構成員の告白によって、これらの政党が虐殺に直接関与したと非難されたにもかかわらずに、である。この事実は、隠蔽と妨害を示唆している」とカチャノフスキーは言う。

 また、裁判で証拠改ざんの事例が明らかになったことも彼は指摘した。死傷者が出たとされる反政府デモ参加者の銃弾は、大きさや形、包装が変わっただけでなく、何の書類もなく現れたり消えたりした。例えば、マクシム・シャイムコの検死報告書には、黄色の弾丸片が1つ、灰色の弾丸片が3つ記載されていたが、法医弾道学的検査では、灰色の弾丸片が、新しく発見されたはるかに大きなサイズの黄色の弾丸片に置き換えられた。その後、この新しい弾丸の破片はベルクト特殊警察のカラシニコフ銃と照合され、何の説明もなく、これまでの多くの法医学検査を覆した。


2014年2月22日にキエフで起きた警察との衝突で死亡した反政府デモ隊に残された花の横で悲しむ男性 
© Jeff J Mitchell / Getty Images



次は何か?

 カチャノフスキーによれば、これらの結論は、ウクライナにおける紛争の原因であるユーロマイダンを理解するために重要であり、ロシアとウクライナ、ロシアと西側の間の紛争についても同様である。彼の主張によると、偽旗虐殺は西側の支援を受けた事実上の暴力的なウクライナ政府の転覆を招き、その結果クリミアはロシア領となり、ウクライナにおける武力紛争と2022年2月のロシアによる攻撃を引き起こした、という。

 「裁判と捜査で明らかになったことは、人気のあった 「ユーロマイダン」 の抗議行動ではなく、このヤヌコヴィチに対する演出された大量殺戮と暗殺の試みが、ヤヌコヴィチ政権の打倒において決定的であったことを示している。これらは、ウクライナと西側諸国で支配的な物語に反して、ユーロマイダンの間の政治的移行が非民主的であったことを示している。この反政府デモ隊と警察官の大量殺害は、独立したウクライナの歴史において最も重大な政治犯罪と人権侵害の一つでもあった。」とカチャノフスキーは書いている。



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 彼は、ウクライナの法執行機関と司法制度がユーロマイダンの事件の適切な解決を保証できなかったことが、ウクライナ社会における法の支配と和解の見通しを損なったと考えている。ウクライナ社会は、ユーロマイダンの最中とその後の他の政治問題と同様に、マイダンの抗議行動に対する支持という点で分裂した。

 いっぽう、特にロシアとウクライナの間で続いている戦闘の間は、事件が政治問題化し、ウクライナの司法制度に独立性が欠如しているため、マイダン虐殺の裁判所判決が正義をもたらす可能性は低い。

 さまざまなマイダン虐殺の物語は、西側とロシアの対立だけでなく、クリミアとドンバスの状況の平和的解決を複雑にし、ロシアとウクライナの関係を悪化させた。

 「ウクライナにおけるマイダン虐殺の実際の加害者を裁判にかけることは、これらの危険な紛争を解決する上で困難ではあるが必要な一歩である」と著者であるカチャノフスキーは結論付けている。

 他の多くの人々と同様に、カチャノフスキーが十分に認識していることは、マイダン虐殺を利用してウクライナで民主的に選出された政府を暴力的に転覆し、そのことを西側が事実上支持したことが、クリミアやドンバスでの紛争、ロシアとウクライナの紛争、ロシアと西側の紛争につながったことである。「ユーロマイダン」 の結果、ウクライナはアメリカのお得意様国家になったとカチャノフスキーは書いている。彼はまた、これが最終的にウクライナとロシアの対立、そしてウクライナにおける西側とロシアの代理戦争につながったと指摘している。

 マイダン虐殺とウクライナが公正な調査を保証しなかったことは、世界的な影響を及ぼした。最終的にNATOとロシアの直接戦争に発展し、それが核戦争に発展する可能性さえある。

クリスティーナ・シゾヴァ著 モスクワを拠点に政治・社会・国際関係を専門とする記者

時系列で見るウクライナ紛争

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine Timeline Tells the Story
筆者:ジョー・ローリア(Joe Lauria)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年7月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月23日


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2015年5月18日:ウクライナ陸軍による砲撃後の、ドネツク国際空港近くにある東方正教会の破壊跡。東ウクライナ (Mstyslav Chernov. CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons)


 歴史的な文脈がなければ、企業メディアに埋められたウクライナを理解することは不可能だ。ウクライナ戦争を理解させないためには、その歴史を抑えつければよい。時系列に並べると、明らかに、西側のロシアに対する攻撃的な意図が見えてくる。もしNATOがウクライナの加入を許可しなければ、もしミンスク協定が実施されていれば、そしてもしアメリカとNATOがロシアの安全保障上の懸念を考慮に入れた新しいヨーロッパの安全保障体制を交渉していれば、この悲劇は回避されただろうことが見えてくる。


時系列で見たウクライナ

 第二次世界大戦――ステパン・バンデラ率いるウクライナの国家ファシストたちは、最初はドイツのナチスと同盟を結び、10万以上のユダヤ人とポーランド人を虐殺。

 1950年代から1990年まで。C.I.A.はウクライナのファシストたちをアメリカに連れてきて、ソビエト連邦をウクライナで弱体化させるために彼らと協力、破壊工作とプロパガンダ活動を行った。ウクライナのファシスト指導者であるミコラ・レベドはニューヨークに連れてこられ、少なくとも1960年代までC.I.A.と共に働き、1991年、ウクライナが独立した年までC.I.A.にとって役立つ存在だった。その証拠は、アメリカ政府の報告では82ページからその記載がある。かくしてウクライナは、約80年間、モスクワを弱体化し脅迫するための拠点だった。

 1990年11月:ベルリンの壁崩壊から1年後、アメリカ、ヨーロッパ、そしてソビエト連邦によって「新しいヨーロッパのためのパリ憲章」(または「パリ憲章」としても知られる)が採択される。この憲章はヘルシンキ協定に基づいており、1999年の「欧州安全保障のための憲章」で更新されている。これらの文書は欧州安全保障協力機構(OSCE)の基盤となっている。OSCEの憲章には、どの国または地域も他国の犠牲によって自国の安全を保つことはできないと記されている。

 1991年12月25日:ソビエト連邦が崩壊。ウォールストリートとワシントンのカーペットバッガー(南北戦争後に南部にやって来て詐欺、いんちき行為などをした北部人_英辞郎)のような詐欺師たちが、続く10年間に、以前国有財産だったものを剥奪し、私腹を肥やし、オリガルヒの振興を促し、ロシア、ウクライナ、および他の元ソビエト人を貧困に陥れた。

 1990年代:アメリカはソ連の最後の指導者ゴルバチョフとの、統一ドイツの代償としてNATOを東ヨーロッパに拡大しない約束を反故にする。アメリカ政府のソ連関係専門家であるジョージ・ケナンは拡大に反対。一方、NATOの拡大を支持する上院議員ジョー・バイデンは、ロシアがそれに敵対的に反応すると予測している

 1997年:ロシアの「激しい敵対的な」反応を引き起こす唯一の要因は、不必要なNATOの極東への拡大であり、ロシアの国境まで拡大することだろう―上院議員ジョー・バイデン pic.twitter.com/hRW47hLL5y

— Rishi Bagree (@rishibagree) June 17, 2022

 1997年:元アメリカ合衆国国家安全保障担当顧問であるズビグネフ・ブレジンスキーは、1997年の著書『The Grand Chessboard: American Primacy and Its Geostrategic Imperatives』において、次のように記述している:

「ウクライナは、ユーラシアのチェスボード上で新しく重要な領域であり、地政学的には軸心となる存在だ。独立国として存在することによって、ウクライナはロシアを変革する要因となる。ウクライナがなければ、ロシアはユーラシア帝国ではなくなる。ウクライナなしのロシアは依然として帝国の地位を追求することはできるが、それは主にアジアの帝国となるだろう」。

 1999年大晦日:米国とウォールストリートの支配が8年続いた後、ウラジミール・プーチンがロシアの大統領に就任。2000年にプーチンがNATOへの加盟を求めた際、ビル・クリントンはこれを拒絶。

 プーチンは西側の干渉者たちに対して扉を閉ざし、ロシアの主権を回復。結果としてワシントンとウォールストリートを怒らせた。一方、ウクライナではこのようなプロセスは進まず、ウクライナの人々は西側の搾取と貧困の対象となり続けている。

 2007年2月10日:プーチンはミュンヘン安全保障会議で演説を行い、米国の攻撃的一国主義義を非難。2003年のイラク侵攻やNATOの東方への拡大などを違法として批判した。

 彼は言った:「私たちは尋ねる権利があります:この(NATOの)拡大は誰に対して意図されているのですか?そして、ワルシャワ条約の解消後に私たちの西側のパートナーがした保証はどうなったのでしょうか?それらの宣言は今どこにあるのですか?誰ひとりそれらを覚えてすらいません」。



 3年後、バルト諸国、すなわちロシアに接する元ソビエト共和国が西側同盟に加盟した後のプーチン演説。西側はプーチンとロシアの正当な懸念を無視し、彼らを侮辱。彼の演説から1年後、NATOはウクライナとジョージアが加盟すると発表。2009年には他の4つの元ワルシャワ条約機構加盟国もNATO加盟。

 2004年から2005年:オレンジ革命。選挙結果が覆され、米国と同盟を結んだヴィクトル・ユシチェンコがヴィクトル・ヤヌコビッチに勝利して大統領就任。ユシチェンコはファシストの指導者バンデラを「ウクライナの英雄」とする。

 2008年4月3日:ブカレストで開催されたNATO会議で、首脳会談宣言は「ウクライナとジョージアのユーロ・アトランティックな加盟への希望をNATOは歓迎。これらの国々がNATOのメンバーとなることを本日私たちは合意しました」と述べる。ロシアは強く反対。当時のロシア駐在米国大使で現在のCIA長官であるウィリアム・バーンズは、ウィキリークスによって明らかにされたワシントンへの電報ケーブルで警告:

「ラブロフ外相および他の高官は強い反対の立場を繰り返し述べており、ロシアはさらなる東方への拡張を潜在的な軍事的脅威と見なすだろうと強調している。特にウクライナへのNATOの拡大はロシアにとって『感情的で神経に触る』問題であり、戦略的な政策考慮もウクライナとジョージアのNATO加盟に対する強い反対の背後にある。ウクライナでは、この問題が国内を分断する可能性があり、暴力や一部の主張によれば内戦に発展することを恐れており、それによってロシアは介入するかどうかを決定せざるを得なくなるだろう・・・ラブロフは、東方へのさらなるNATO拡大、特にウクライナとジョージアへの拡大を(ロシアへの)潜在的な軍事的脅威として見る必要があると強調した。」

 4ヶ月後、ジョージアで危機が勃発し、ロシアとの一時的な戦争に発展。この戦争に対して欧州連合はジョージアの挑発が原因と非難

 2009年11月:ロシアが欧州に新たな安全保障体制を求める。モスクワは、NATOや欧州安全保障協力機構(OSCE)などの時代遅れの機関を代替すべきだというクレムリンの主張に基づいて、新しい欧州安全保障構造草案を公表。

 この文書は、ドミートリー・メドヴェージェフ大統領による初めての正式な提案から1年以上後の、11月29日にクレムリンのウェブサイトに掲載された。2008年6月にベルリンでの演説の中で、メドヴェージェフ大統領は、冷戦時代の安全保障体制を最終的に更新するために、新しい協定が必要だと述べていた。

 「ヨーロッパの問題は、ロシアを含むすべての統合的な部分の有機的な統一が確立されるまで解決されないと私は確信しています」とメドヴェージェフは述べた。

 2010年:OSCEによれば、ヴィクトル・ヤヌコビッチが自由で公正な選挙でウクライナの大統領に選出される。

 2013年:ヤヌコビッチは、欧州連合との連合協定ではなく、ロシアからの経済パッケージを選択。これは、ウクライナの西側の利権者やウクライナのコンプラドール(買弁)政治指導者、オリガルヒたちにとって脅威となる。

 2014年2月:ヤヌコビッチは、米国の支援を受けた暴力的なクーデターによって追放される(これはニューランド・パイアットの傍受によって予測されていた)。ライトセクターのようなウクライナの極右団体が主導的な役割を果す。ウクライナのファシストたちは、バンデラの肖像画を掲げ、松明を灯したパレードを各都市で実施。

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キエフで警官隊と衝突するデモ隊。2014年2月(Wikimedia Commons)

 2014年3月16日:クーデターや非憲法的な手段による親ロシア政権のキエフ樹立に対する拒否として、クリミアの住民は、国民投票において、97%の賛成票(投票率89%)でロシアに加わることを選ぶ。クリミアを支援するためにワグナー民間軍事組織が創設された。この事件は、西側メディアが誤って「クリミアへのロシアの侵攻」と描写するが、事実上銃撃ほとんどなし。死傷者はゼロ。

 2014年4月12日:キエフのクーデター政権がドンバスの反クーデター、民主主義支持の分離主義者に対して戦争を開始。ネオナチのアゾフ大隊がキエフの戦闘で公然と重要な役割を果たす。ワグナー部隊がドンバスの民兵を支援するために到着。米国は再びこれをロシアの「侵略」と大げさに主張。「21世紀になっても、19世紀のように虚偽の口実をもとに別の国に侵攻する行為は許されない」と、当時の上院議員だった米国務長官ジョン・ケリーが述べる。彼自身は2003年に完全に根拠のない口実でイラクへの米国の侵攻に賛成票を投じていた。

 2014年5月2日:数十人のロシア系抗議者が、ネオナチの暴漢によってオデッサの建物内で焼殺される。その5日後、ルハンスクとドネツクは独立を宣言し、ウクライナからの離脱の投票。

 2014年9月5日:最初のミンスク協定がベラルーシのミンスクでロシア、ウクライナ、OSCE、および離脱したドンバス共和国の指導者たちによって、ドイツとフランスの仲介で、ノルマンディーフォーマット*で署名される。しかし、紛争解決には至らず。
*ドンバス戦争およびより広範なロシア・ウクライナ戦争を解決するために集まった国々のグループ。このグループを構成する4つの国、すなわちドイツ、ロシア、ウクライナ、フランスは、最初に2014年にフランスのノルマンディーでD-Dayの70周年記念式典の際に非公式に会合。(ウィキペディア)

 2015年2月12日:ベラルーシでミンスク協定II(Minsk II)署名。これにより戦闘が終結し、共和国に自治権が与えられる一方で、ウクライナの一部として残ることに。この協定は2月15日に国連安全保障理事会によって全会一致で承認。しかし、2022年12月、元ドイツ首相アンゲラ・メルケルは、西側がミンスク協定の実施意図がなかったことを認める。実際にはそれをNATOがウクライナ軍に武器供与や訓練を行う時間を稼ぐための策略として利用していたと発言。

 2016年:「ロシアゲート」として知られる作り話が、アメリカ合衆国の民主党とそれに協力するメディアを覆う。この作り話では、ロシアが2016年のアメリカ大統領選挙に介入してドナルド・トランプの当選を手助けしたと虚偽の主張がなされている。このでっち上げのスキャンダルは、アメリカでロシアをさらに悪魔化し、核保有国間の緊張を高めることで、ロシアとの戦争へ民心を高める一助になった。

 2016年5月12日:米国がルーマニアにミサイルシステムを配置、ロシアを怒らせる。アメリカはそれが純粋に防御用であると主張。モスクワはそのシステムが攻撃にも使用され、ロシアの首都への攻撃時間が10から12分に短縮されると指摘。

 2016年6月6日:象徴的にノルマンディー上陸の記念日に、NATOがロシアに対して攻撃的な演習を開始。31,000人の軍隊を使い、ロシアの国境近くで軍事演習。冷戦終結以来、東ヨーロッパで最大の演習となる。また、75年ぶりにドイツの軍隊がポーランドを横断し、ナチスによるソ連侵攻の足跡を辿る。

 ドイツの外務大臣フランク・ヴァルター・シュタインマイヤーは(これらの動きに)反対している。「今、これはやってはいけないのです。軍事力を誇示し、戦争を煽ることは状況にさらに火を注ぐだけです。同盟国の東の境界で象徴的な戦車パレードすることが安全保障をもたらすと考える人は誤っています」と彼はビルド・アム・ゾンターク紙に驚くべき発言をしている。

 代わりに、シュタインマイヤーはモスクワとの対話を呼びかけている。「私たちは古い対立を再燃させる口実を作らないことが賢明なのです」と彼は警告し、さらに「軍事的な解決策と抑止政策のみを追求することは致命的だろう」と付言している。

 2021年12月:ロシアはアメリカとNATOに対し、2009年に失敗した試みを復活させ、ヨーロッパにおける新たな安全保障体制を提案する条約案を提示。これらの条約案にはルーマニアのミサイルシステムの廃止と東ヨーロッパからのNATO軍の展開の撤退が盛り込まれている。ロシアはこれらの条約案について真剣な交渉が行われない場合は「技術的・軍事的な」対応をすると述べている。しかし、アメリカとNATOはこれらの提案を、基本的に即座に拒絶。

 2022年2月:ロシアはウクライナ内戦が継続中の中で、最初にルハーンシクとドネツィクの独立を承認した後、ドンバスへの軍事介入を開始。

 介入が行われる前、OSCE(欧州安全保障協力機構)の地図によれば、ウクライナから分離主義共和国への砲撃が著しく増加しており、2014年以降10,000人以上が死亡している。

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ドンバス地域におけるウクライナ軍。2015年3月。(ウクライナへのOSCE特別監視ミッション、CC BY 2.0、ウィキメディア・コモンズ)

 2022年3月-4月:ロシアとウクライナは戦争を終結させる枠組に合意。その中にはウクライナがNATOに加盟しないことの約束も含まれている。しかし、アメリカとイギリスは反対。ボリス・ジョンソン首相はキエフに飛び、ウクライナのゼレンスキー大統領に対してロシアとの交渉を止めるように伝える。ロシアはドンバスの多くを制圧し、戦争は継続。

 2022年3月26日:バイデン大統領がワルシャワでの演説で、アメリカがロシアに対する代理戦争を通じてプーチン政府を転覆しようとしていることを認める

 2022年9月:ドンバス共和国および他の2つの地域、ヘルソン州とザポリージャ州はロシア連邦への加盟投票。

 2023年5月:ウクライナはロシアによって支配されている領土を取り戻すための反転攻勢を開始。この年の早い段階に漏洩した文書によれば、アメリカの情報機関は、攻撃が始まる前に反転攻勢は失敗すると結論付けている。

 2023年6月:ワグナーグループによる36時間の反乱が失敗し、その指導者であるエヴゲニー・プリゴージンはベラルーシへ亡命取引をする。ロシア国防省によって資金提供と武装が行われていたワグナー私設軍はロシア軍に吸収。


以上の時系列を見ると、西側のロシアに対する攻撃的な意図ははっきりしており、もしNATOがウクライナの加盟を許可しなかったなら、もしミンスク合意が実施されていたなら、そしてもしアメリカとNATOがロシアの安全保障上の懸念を考慮してヨーロッパにおける新たな安全保障体制を交渉していたなら、今回の悲劇が回避されたであろうこともはっきりしている。

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ジョー・ローリア氏はコンソーシアム・ニュースの編集長であり、かつてウォール・ストリート・ジャーナル、ボストン・グローブ、モントリオール・ガゼット、ジョハネスバーグのスターなど、数多くの新聞社で国連特派員を務めた経歴を持っています。また、ロンドンのサンデー・タイムズの調査報道記者やブルームバーグ・ニュースの財務報道記者としても活動し、19歳の若さでニューヨーク・タイムズの特派員としてキャリアをスタートしました。彼は2冊の著書を執筆しており、セン・マイク・グレイヴェル氏との共著『A Political Odyssey』(ダニエル・エルスバーグ氏による前書き付き)と、ジュリアン・アサンジ氏による前書き付きの『How I Lost By Hillary Clinton』です。ジョー・ローリア氏にはjoelauria@consortiumnews.comで連絡が取れ、Twitterで@unjoeをフォローすることができます。

ベラルーシ軍がワグナーの訓練を受ける

<記事原文 寺島先生推薦>
Belarusian troops receive Wagner training
Fighters from the PMC are sharing their experience from the Ukraine conflict with local territorial defense units, according to Minsk
ベラルーシ当局によると、同PMC(民間軍事会社)の戦闘員は、ウクライナ紛争での経験を地元の領土防衛部隊と共有している。
出典:RT   2023年7月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年7月22日


訳者:動画はこちらからご覧ください。


 ベラルーシ国防省によると、ロシアで短期間の反乱を起こしてから1か月も経たないうちに、ワグナー民間軍事会社の社員らはベラルーシ軍を訓練し、ウクライナ紛争で得た戦場での経験を共有しているという。

 同省は金曜日(7月14日)の声明で、ワグナー指導部と協力して軍事訓練と経験共有のための「道路地図」を作成したと述べた。

 また同省は、ワグナー軍が同国中部のオシポヴィチ町近くでベラルーシ領土防衛軍に演習を指導していることも指摘した。声明によると、訓練は主に戦場での戦術的な動きのほか、銃器、工学、応急処置の訓練に焦点を当てたという。


© ベラルーシ国防省

 ベラルーシ国防省傘下の放送局であるボイエンTVは、通常国境や戦略的施設の防衛を任務とする領土防衛軍が参加する演習の映像を共有した。同チャンネルが話を聞いた何人かの匿名の兵士は、ワグナー団の戦場での経験を称賛した。


© ベラルーシ国防省

 「ワグナー団員の話を聞くのは、もちろんとても興味深いです。実際の戦争現場を見ており、この経験はベラルーシ軍にとって非常に役に立ちます。アフガニスタン戦争の終結以来、我々は戦闘行為に参加していないのですから」と、 1979年から1989年まで続いたソ連時代の紛争に言及しながらこの兵士は語った。

 関連記事: プーチン大統領、反乱後ワグナー代表と会談 – クレムリン

 6月下旬、ワグナー党首エフゲニー・プリゴジンはロシア国防省がPMC陣営の1つに致命的なミサイル攻撃を仕掛けたと非難し、報復を誓い、モスクワへの「正義の行進」を宣言した。プリゴジンは後に、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が仲介した取引の一環として、ロシアの首都への進軍を中止することに同意した。

 ワグナー部隊には民間生活に戻るか、ロシア国防省と契約を結ぶか、ベラルーシに移住するかの選択肢が与えられた。今月初め、ルカシェンコ大統領は国家防衛のためにPMCの戦闘員を活用できる可能性を示唆し、ワグナー団を自国で抱えることについて「心配していない」とも付言した。

ウクライナのテロ攻撃の標的となったクリミア橋-モスクワ

<記事原文 寺島先生推薦>
Crimean Bridge targeted by Ukrainian terrorist attack – Moscow
The raid has killed two people and injured one child, damaging the structure’s road section, the National Antiterrorist Committee said
ロシア国家対テロ委員会によれば、その襲撃で2人が死亡し、1人の子供が負傷し、建物の道路部分が損傷を受けた。
出典:RT 2023年7月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月21日



ロシア調査委員会提供


 クリミア橋がウクライナのテロリストによるドローン攻撃の標的にされたとロシア国家対テロ委員会(NAK)は、月曜日(7月17日)、発表した。

 声明の中で、NAKはクリミア半島とロシア本土を結ぶ重要な橋が、現地時間午前3時頃、2台のウクライナ無人水上艇によって攻撃されたと述べている。

 「このテロ事件により、クリミア橋の道路部分に損傷が発生した。2人の大人が死亡し、1人の子供が負傷した」と声明は述べ、また、法執行機関がこの事件を調査していると付言した。

 このNAKの声明は、複数のウクライナのメディアがこの攻撃を同国の治安部隊と海軍による「特別作戦」として報道した後に発表された。公には、ウクライナ高官たちは直接の責任を認めることは避けているが、この事件を歓迎する姿勢を示している。




 関連記事:キエフがクリミア橋に対する新たな攻撃の裏にいるーウクライナの報道機関


 死傷者を最初に報告したのはヴャチェスラフ・グラドコフ・ベルゴロド州知事だった。知事は、亡くなったのは同州出身の夫婦であり、その娘も負傷していると述べた。

 襲撃事件の後、ロシア当局は橋の通行を止めたが、数時間後には被害を受けていない区間での鉄道運行は再開された。

 過去にもウクライナはこの橋を攻撃しようと試みている。先週、キエフ軍は橋の重要箇所にミサイルを発射したが、モスクワの国防省によれば、ロシアの防空システムを突破することはできなかった。

 2022年10月、この橋はウクライナの情報機関によって企てられた(とロシアは言っている)死者をともなうトラック爆破事件で損傷を受けた。その時、モスクワはウクライナのエネルギーおよび軍事インフラに対するミサイル攻撃を強化して対応した。


 関連記事:地元テレビ局が提示した被害を受けたクリミア橋の様子

クラスター弾をウクライナに送らないよう米国に警告(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)

<記事原文 寺島先生推薦>
Human Rights Watch warns US against sending cluster munitions to Ukraine
This “would inevitably cause long-term suffering for civilians,” the NGO says
クラスター弾は「民間人に長期的な苦痛を与えることは避けられない」、とNGOが指摘
出典:RT  2023年7月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月21日



Narciso Contreras/Anadolu Agency via Getty Images


 ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、100カ国以上で使用が禁止されているクラスター弾をウクライナに供給しないよう米国に警告した。

 HRWは木曜日(7月6日)に発表された声明の中で、アメリカ政府が、キエフが数ヶ月前から要求しているこの致命的な兵器の納入を承認するかどうかを検討しているというメディアの報道に対して警鐘を鳴らした。ニューヨーク・タイムズ紙は木曜日、ホワイトハウスの高官筋の話として、アメリカ政府はこの動きを承認する見込みだと報じた。CBSは水曜日に、アメリカは早ければ今週中に決定を下す可能性があると伝えた。

 NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)の記者はツイッターで、早ければ木曜日にも決定される可能性があると書いた。

 HRWは、「これらの兵器を移送することは、必然的に市民に長期的な苦しみをもたらし、その使用に対する国際的な非難を傷つけることになるだろう」と述べた。



 関連記事:米国、ウクライナへのクラスター爆弾供与を承認へ - CBSニュース


 クラスター爆弾は、爆発すると広範囲に小さな弾丸をばらまくため、100カ国以上で使用が禁止されている。クラスター爆弾の中には衝撃で爆発しないものもあり、戦闘が終わった後も何年にもわたって市民に深刻な危険をもたらす。アメリカは禁止措置には加わっていないが、不発率が1%を超えるこの弾薬の輸出を禁止している。この制限は、ジョー・バイデン米大統領の免除によって解除される可能性がある。

 クラスター弾の人道的影響に対する懸念が広がっているにもかかわらず、6月下旬、アメリカのローラ・クーパー国防副次官補は、強力なロシアの防衛陣地に対して「役に立つだろう」と述べた。

 同月のPoliticoの報道によると、この評価は多くのアメリカ政府関係者にも共有されており、これらの武器は、ウクライナの現在進行中の反転攻勢(何の領土も得ることができなかったとモスクワは言っている)をより成功させるだろうと考えている。

 3月下旬、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務副大臣は、物議を醸している軍需品をキエフに供給しようという呼びかけを危険なものだとし、その出荷はウクライナ紛争の激化につながるかもしれないと警告した。

ウクライナによるRT編集長暗殺計画、阻止される - ロシア連邦保安庁

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian plot to assassinate RT editor-in-chief thwarted – FSB
Detained ‘neo-Nazis’ also planned to kill Ksenia Sobchak, another prominent female journalist
また、拘束された「ネオナチ」は、もう一人の著名な女性ジャーナリスト、クセニア・ソブチャクの殺害も計画していた。
出典:RT  2023年7月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月21日


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RT編集長マルガリータ・シモニャン


 ロシア連邦保安庁(FSB)は、ウクライナの情報機関によって準備されていたRT編集長マルガリータ・シモニャンとジャーナリストのクセニア・ソブチャクを標的とした暗殺計画を阻止したと発表した。

 土曜日(7月15日)の声明で、連邦保安庁は内務省や国家調査委員会と共同で、その数ははっきりしないが「パラグラフ88グループのネオナチ(シモニャンとソブチャックの職場や自宅の住所についての情報を収集していた)」を逮捕したと発表した。

 FSBによると、拘束された者たちは金曜日(7月14日)にモスクワとリャザン地方で偵察を行っていたところを捕まった。

 FSBによれば、この作戦の間、警察当局はカラシニコフ・アソルトライフル1丁、カートリッジ90本、ゴムホース、ナイフ、ブラスナックル、手錠などを押収したという。また、「犯罪の意図が確認できる情報を持つコンピューター」も発見されたという。


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ロシア連邦保安庁


 ロシア連邦保安庁の職員はまた、シェブロンや旗、ナチスの道具や文献、通信機器も押収した。


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ロシア連邦保安庁


 「拘束された者たちは、ウクライナ保安庁の指示で暗殺の準備をしており、その報酬は殺人1件につき150万ルーブル(231万円)であることを確認した」と声明は述べている。

 シモニャンは2005年のRT創設以来、編集長を務めている。南部の都市クラスノダールで生まれ育ち、結婚して3人の子供がいる。

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関連記事:ウラドレン・タタルスキー暗殺の新容疑者が浮上


 ソブチャクはロシアではよく知られたセレブ(名士)で、元大統領候補である。元サンクトペテルブルク市長の娘である彼女は、幼少期からウラジーミル・プーチン大統領を知っている。リベラル派として知られ、現在はYouTubeの人気チャンネルを主催している。結婚しており、子供が一人いる。

 4月、ロシアの著名なジャーナリスト、ウラジーミル・ソロビヨフの暗殺を準備した疑いで、禁止されているテロリスト集団「国家社会主義/ホワイト・パワー」のメンバーとされる6人が逮捕されたと報じられた。捜査当局は、逮捕された者たちもSBUのために行動していたと主張している。

 同月、ロシアの軍事ブロガー、マキシム・フォミン(ヴラデン・タタルスキー)がサンクトペテルブルクで爆弾テロに遭い殺害された。地元の活動家ダリヤ・トレポヴァがこの犯行で逮捕され、ウクライナ情報機関とつながりのある男にスカウトされたことを認めたと報じられている。

 昨年、同じくロシア人ジャーナリストのダリヤ・ドゥギナがモスクワ郊外で自動車爆弾によって暗殺された。FSBは、この殺害の背後にはウクライナの特殊部隊が関与していると主張した。ニューヨーク・タイムズ紙は、アメリカ政府高官もキエフの犯行だと考えていると報じた。

米国、ウクライナに「決定的な突破口を開け」と迫る – ワシントン・ポスト紙

<記事原文 寺島先生推薦>
US pressuring Ukraine for ‘decisive breakthrough’ – WaPo
Washington fears Kiev’s counteroffensive may not be able to deliver as powerful a blow as previously expected, the outlet claims
ワシントンはキエフの反転攻勢が、以前に予想されていたような強力な一撃を与えられないかもしれないことを恐れているとWaPoは報じている。
出典:RT 2023年7月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月21日



資料写真 © AP / Efrem Lukatsky


 米国高官(複数)が、広くもてはやされた反転攻勢でウクライナは十分な成果を上げていないことを懸念している、と、火曜日(7月18日)、ワシントン・ポスト紙が匿名の情報源を引用して報じた。

 同紙によれば、ワシントンはウクライナに対して、ウクライナの指揮官たちが西側顧問団から学んだ大規模な攻撃戦術を採用し、決定的な突破口を開くよう強く促している。

 ある匿名の米国高官は同紙に対して、西側はウクライナ軍に統合的な攻撃戦術の訓練を施し、地雷処理装置を提供したことを説明し、そしてキエフの部隊がこれらの能力を迅速に活用してロシアの防御を突破するのは「非常に重要」であることを強調した。

 西側高官たちがウクライナ軍隊を批判していると報道されているのは、ロシアの陣地の後方にある指揮、輸送、そして物流の施設に対して砲撃やミサイル攻撃を行うことを主体とした減衰(消耗戦)に基づく戦略を取って、西側方式の「統合兵力」作戦(戦車、装甲車両、歩兵、砲兵、そして航空戦力を活用した大規模な機動作戦)が行なわれていない、という点だ。



 関連記事:米国は、西側戦闘機はウクライナの助けにはならないと考えている

 戦争研究所の分析家たちの指摘では、ウクライナの指揮官たちは、兵士の数を維持するために、15〜50人の兵士集団を活用することで、より地道な前進作戦を重視することを選んだとのことだ。WaPoは、また、現在の作戦でキエフがこれまでに「12の訓練された旅団のうち4旅団を現在の作戦に」投入しているだけだ、と指摘している。

 キエフがロシアの防御を突破しようと試みたところ、これまでに「圧倒的な火砲、対戦車ミサイル、滞空兵器、そしてヘリコプターの攻撃」により、重大な損失が生じている。ロシアは広範囲なドローン攻撃もしており、「近年の戦闘経験を持つアメリカの軍隊ですら、これほどの規模で直面したことのない」攻撃であるとワシントン・ポスト紙は述べている。

 専門家たちは、歩兵による前進はウクライナ軍の消耗を減らす可能性が高いと述べているが、このような戦術は遅々としており、迅速な突破の機会を提供する可能性が低いと語っている。

 ウクライナ高官たちはと言えば、西側高官たちが対応策を急ぐよう求めていることを非難し、無駄な損失を避ける必要性を強調し、空からの支援の不足について不満を述べている。

 キエフは繰り返し、西側支援者たちに懇願しているのは米国製のF-16戦闘機の提供だ。彼らはこれらの戦闘機がロシアの航空戦力に対抗する上で重要な役割を果たすと主張している。

 しかし、西側高官たちは、報道によれば、その戦闘機は「ゲーム・チェンジャー(状況を劇的に変える要素)」にはならないと主張。一方、ロシアはその航空機がウクライナにある他の外国製軍事装備品と同様に破壊されるだろう、と応じている。

弾薬庫火災のためクリミアで強制避難

<記事原文 寺島先生推薦>
Ammo depot fire forces evacuation in Crimea
Some 2,200 people have been told to temporarily relocate, according to local authorities
地元当局によると、約2,200人が一時的に移動するよう指示された。
出典:RT 2023年7月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月21日


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2023年7月19日、クリミアの軍事訓練場の近くで火災が発生© RIA Novosti


 クリミア当局は、半島の東部にある弾薬庫が、水曜日(7月19日)朝、「火災を起こした」として、主要な高速道路を閉鎖し、周辺に位置する4つの集落の避難を命じた。

 クリミアの指導者セルゲイ・アクショノフは、現地時間の午前7時15分頃、「4つの集落の住民を一時的に避難させる」計画を発表した。近くの軍事訓練場で大規模な火災が原因でタヴリダ高速道路の一部が閉鎖されたと発表した直後のことだった。

 その後、セルゲイ・アクショノフは避難命令により約2,200人が影響を受け、彼らに必要な全ての支援が提供されることになると報告した。また、この事件でけが人はいなかったと、彼は付言した。

 セルゲイ・アクショノフは、原因はまだ捜査員によって確定されていないと述べた。一方で、ウクライナからは、キエフがこの事件の背後にいるかどうかについて矛盾する情報が寄せられている。

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関連記事:米国、ウクライナに「決定的な突破口」を迫る - WaPo紙

 ウクライナの軍事情報部長であるキリル・ブダノフが発したとされるメッセージがメディアで報道された:「火災は自分の担当部署と通常のウクライナ軍による共同作戦の結果だ」。しかし、数時間後には、軍事情報部の報道官がその報道内容を否定。そのメディアが引用したソーシャルメディアチャンネルの発信した情報の真偽はまだ確認されていない、と述べた。

 いくつかの人気のあるTelegramチャンネルは、火災を示すとされる動画を掲載している。

 クリミア地方議会の議長であるウラジミール・コンスタンティノフは、民間インフラへの被害の報告はなかったと述べた。彼は避難した人々が1日か2日後に安全に自宅に戻ることが予想されると述べている。

 この事件は、火曜日(7月18日)の朝、クリミア半島全土を標的にした最低28機のウクライナ製ドローンをロシア軍が迎撃したと報道された一日後に起きている。 月曜日(7月17日)には、キエフが2機の無人海上水上ドローンを使ってクリミア橋を攻撃した。モスクワはこの事件をテロ攻撃と非難し、2人の市民が死亡し1人の子供が負傷したと述べた。タヴリダは、橋から半島内に続く250キロの幹線高速道路。

ラブロフは、バイデン大統領とゼレンスキー大統領の核に関する発言を「乱れた意識の流れ」と非難

<記事翻訳 寺島先生推薦>
Lavrov slams Biden's, Zelensky's nuclear remarks 'turbulent stream of consciousness’
Statements by US President and his Ukrainian counterpart on nuclear threat emanating from Russia not worth comment, Russian Foreign Minister Sergey Lavrov said
ロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフは、核の脅威はロシアから発せられているという米国大統領とウクライナ大統領の発言にはコメントする価値もない、と述べた。
出典:TASS    2023年6月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月15日
 

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セルゲイ・ラブロフ外相 ロシア外務省報道部/タス通信


 モスクワ、6月25日/TASS通信――ロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフは、米国のジョー・バイデン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領による、ロシア発とされる核の脅威に関する発言を、「乱れた意識の流れ」と評し、コメントする価値はないと述べた。

 「最近の米国大統領の発言についてコメントするのは難しいです。彼の発言全体をどのように解釈すべきか悩んでいる、この問題に関心を持って見ているみなさんと同じです。現時点では事実に基づかない言葉遊びにあまり重きを置かない方がよいと思います」と、トップのロシア外交官(ラブロフ)は、「Moscow.Kremlin.Putin」というテレビ番組でのインタビューで述べた。この情報はジャーナリストのパヴェル・ザルービンのテレグラム・チャンネルに日曜日(6月25日)掲載されたある専門家の意見に依ったもの。

 ラブロフは、ゼレンスキー大統領の発言の方が「さらにひどい乱れた意識の流れ」と評した。「私は医学的な背景を持っていません。(欧州委員会の委員長)ウルズラ・フォン・デア・ライエンは医学の学位を持っています。私は、繰り返し、毎日毎日、自らの不適切さを証明する人々の心理状態に責任を持つことはできません」とラブロフは付言した。

 バイデン大統領は、もっと早い時期に、カリフォルニアでのスピーチで、ロシアの指導者であるウラジミール・プーチンが戦術核兵器を使用するという脅威は現実的だと思う、と述べている。

ウクライナは領土をロシアから取り戻すのに117年かかるだろう―シーモア・ハーシュ

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine will need 117 years to take territories from Russia – Seymour Hersh
The $150 billion spent by the US in Ukraine is a “very bad investment,” the Pulitzer Prize-winning reporter claimed
アメリカがウクライナに費やした1500億ドル(21兆6000億円)は、ピューリツァー賞を受賞した記者(ハーシュ)によれば、「投資としては大失敗」。
出典:RT   2023年6月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年7月15日



ウクライナの陣地に向かってギャツィント-S自走榴弾砲を発射しているロシア軍兵士©スプートニク


 「キエフがロシアの防衛ラインを突破できないことは、ワシントンにとっての「目覚まし」とすべきである、とベテラン・ジャーナリストのシーモア・ハーシュが木曜日(6月29日)に警告した。

 匿名の情報源から得られた戦場統計を引用し、ハーシュは、ウクライナ軍が戦闘の過去10日間でロシアが支配する土地をわずか2平方マイルしか奪取できていないと主張した。さらに、その前の2週間では、ウクライナ軍はわずか44平方マイルの領土を占領したが、その多くはロシアの複数の防御ラインの最初のラインの前にある空き地だった、と続けた。

 ロシアがウクライナの一部であった4万平方マイルの土地に関しては、ある「情報通の高官」は、その領土を再びキエフの支配下に置くためには、「ゼレンスキー大統領の軍は117年かかるだろう」とハーシュに述べた。




関連記事:ウクライナは一度の攻撃で「壊滅的な」損失を被ったーフォーブズ誌


 アメリカ大統領ジョー・バイデンにとって、「これまでのところ、政権がウクライナに提供した推定1,500億ドル以上の投資は大失敗だったことが判明した」と認める時が来た、とベテラン・ジャーナリスト(ハーシュ)は結論づけ、さらにキエフに数十億ドルを渡すつもりの米国議員にとって「ウクライナで迫りくる惨事は・・・起こらない奇跡を待ちたいという気持ちの目覚ましとすべきである」と付言した。

 ウクライナは6月初旬に長らく待ち望まれていた反転攻勢を開始し、ドネツクからヘルソンにかけての前線において、ドイツ製のレオパルト2戦車やアメリカ供給のブラッドリー歩兵戦闘車などの西側製の装備を使用してロシアの陣地を攻撃した。

 ウクライナの反転攻勢の犠牲は甚大で、ロシアの安全保障会議によると、先週時点でのウクライナ兵の戦死者数は13,000人と推定されている。モスクワによれば、地雷原を突破し、航空支援もない状況で攻撃を行ない、ウクライナ軍は昨年以来ロシアが築いた多層の塹壕、障害物、装甲陣地のネットワークを突破することができなかった。

関連記事:ウクライナは、西側からの期待に憤慨ーエコノミスト紙

 アメリカウクライナ、そしてNATOの高官たちは、反転攻勢が予想よりも遅れて進行していることを認めている。西側の支援は、ロシア軍を確実に押し戻せるかどうかにかかっていることから、キエフの高官たちは、十分な武器を提供しない西側を非難したり、これまでの攻勢は今後の大規模作戦の「リハーサル」と約束したりして、右往左往状態だ。

ウクライナの将軍たちがロシアの攻撃で死亡―ロシア国防省

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian generals killed in Russian strike – MOD
Moscow had earlier reported hitting a temporary brigade base in the Donbass city of Kramatorsk
モスクワは、これに先んじて、ドンバスの都市クラマトルスクにある臨時旅団基地を攻撃したと報告していた。
出典:RT   2023年6月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月15日



資料写真. © Sputnik


 ウクライナの将軍2人が、火曜日(6月27日)、ロシアの高精度攻撃によりドンバスの都市クラマトルスクで死亡した、とモスクワの国防省は木曜日(6月29日)、「最新データ」を引用して語った。

 国防省の、攻撃に先立つ以前の主張は、この攻撃はウクライナ武装軍の第56自動車化歩兵旅団の臨時基地を標的にした、となっている。その後、同省は基地が数十人のウクライナ将校と外国の顧問を含む「幕僚会議」を開催していたことを付言した。

 この攻撃により「2人の将軍、ウクライナ武装軍の最大50人の将校、さらに最大20人の外国傭兵および軍事顧問が死亡した」とロシア国防省の日報で報告されている。

 このニュースは、ロシア軍がザポリージャ州およびドンバスでの防御的な陣地攻撃を撃退し続けている最中に発表された。ロシア国防省によれば、過去24時間で、ウクライナは各戦線での攻撃で約800人の軍人を失った、ということだ。さらに、ロシア軍は榴弾砲、装甲車両、戦車を含むウクライナの重機材数十台を破壊したと付言した。




関連記事:ロシアがピザ店を攻撃したと主張するキエフに対するモスクワの反応


 今週早々、キエフはモスクワを非難し、クラマトルスクのレストランに対して民間人が満席だった攻撃を行い、少なくとも2人の子供を含む11人が死亡し、60人以上が負傷したと述べた。

 ウクライナの治安機関であるSBUは、この攻撃の前にロシアに情報を漏らした疑いのある地元住民を拘束したと述べた。また、SBUは攻撃の目的が民間人を殺すことであったとも主張している。

 ロシアはこの非難を否定、軍事目標のみを攻撃していると主張した。

 これらの展開は、いくつかの西側メディアが報じたとおり、ウクライナが鳴り物入りの反転攻勢で大きな損失を被ったことと連動している。一部の同盟国は、これまでのところ(反転攻勢は)失敗と評価している、と言われている。木曜日(6月29日)、Forbes誌はウクライナの損失を「壊滅的」と表現し、キエフが地雷原を越えようとしたところで、25以上の戦車や歩兵戦闘車両を失ったと主張した。

 同日のフィナンシャル・タイムズ紙の記事によれば、キエフの西側支援者たちは、追加の資金援助や支援は現在の攻勢の結果次第、と警告。NATOのヨーロッパ最高司令官であるクリストファー・カヴォリ将軍は先週、ロシアがまだ「大量の優位性」を享受していると述べたと報じられている。

ウクライナはたった一回の攻勢で「壊滅的な」損失を被った-フォーブス誌

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine suffered ‘disastrous’ losses in single offensive – Forbes
Kiev reportedly lost over 25 tanks and IFVs trying to cross a minefield in Zaporozhye
報道によれば、キエフはザポリージャで地雷原を越えようとし、25以上の戦車とIFV(歩兵戦闘車)を失ったとされている。
出典:RT  2023年6月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年7月15日



© ロシア連邦国防省


 ウクライナは、各方面から期待されていた反転攻勢において、キエフの軍勢が大量の装甲戦力を失い、その中には西側から供給された数十台の戦車や歩兵戦闘車両も含まれていると、フォーブス誌は火曜日(6月27日)に報じた。

 同誌によれば、分析家たちがまちがいないと思っているのは、ウクライナ軍の第47強襲旅団と第33機械化旅団が6月8日にロシアのザポリージャ地域のマラヤ・トクマチカ近くの地雷原を越えようとした試みが、以前に考えられていたよりも「さらに壊滅的」だったことだ。

 フィンランドから寄贈された何台かのLeopard 2Rおよびドイツ製のWisentを含む除雷除去車両を投入したにもかかわらず、ウクライナの戦闘グループは地雷原を通過するための道を確保できなかったようだ。Wisentおよび3台のLeopard 2Rは地雷に触れ、またアメリカから供給された何台かのM-2ブラッドリーも同様だった。この間、この旅団はロシアの砲兵と空からの攻撃にさらされた。

 専門家は、数時間にわたる悪戦苦闘の結果、少なくとも25台のウクライナ車両が破壊されたと推定している。これには、M-2が17台、Leopard 2A6戦車が4台、Leopard 2Rが3台、Wisentが1台含まれる。

 フォーブス誌は、ウクライナ陸軍が数十台のWisentを保有しているため、1台のWisentの喪失はたいしたことはないが、他の損失はより影響が大きいことが判明した、と指摘している。同誌は、第47-33旅団戦闘グループがウクライナ所有するM-2の約5分の1、Leopard 2A6の約5分の1、およびLeopard 2Rの半分を失ったと述べており、キエフが1回の失敗した攻撃でまるまる一個大隊相当の損失を被ったと指摘している。

 ワシントンは6月8日のキエフの損失を補うために、さらにM-2車両を提供することを既に約束しているが、ウクライナの欧州の同盟国はLeopard 2A6をさらに提供することに同意しておらず、送ることができるLeopard 2Rはもはや存在しない、と同誌は述べている。



関連記事:反転攻勢は、「困難な任務である」ーウクライナ当局首脳


 一方、キエフは、多くの称賛を受けていた反転攻勢が期待どおりには進んでいないことを認めた。ウクライナの国家安全保障・国防会議のトップであるアレクセイ・ダニロフは水曜日(6月28日)にウクライナのメディアに対し、ロシア軍が強固な抵抗を示しており、ロシア軍が設置した巨大な地雷原が困難な障害となっていることを認めた。

 ロシア国防省はまた、キエフの大規模な攻撃が現在までに結果を出せていないと報告している。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナの損失を「壊滅的」と表現し、進撃の開始以来、キエフが259両の戦車と780両の装甲車両を失ったと火曜日(6月27日)に主張した。

対決の時代:ロシア安全保障会議副議長、ドミトリー・メドベーチェフ

<記事原文 寺島先生推薦>
The Age of Confrontation: Deputy Chairman of the Russian Security Council, Dmitry Medvedev
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年7月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月10日





ロシア安全保障会議の副議長であるドミトリー・メドベーチェフは、ロシアの新聞「ロシイスカヤ・ガゼータ」のインタビューで、現在の地殻変動的な文明的亀裂がどのように解決できるのか、解決すべきなのかについて考えを述べた。

要約
▪️ AFU(ウクライナ軍)の反転攻勢の展開は、西側キエフ支援国にとって予想外のことだった。西側のキエフ支援国は「無限の資金の全能性」を信じていたのだ。アルチョモフスク方面でのAFUの敗北は当然の結果だった。

▪️ ロシアを離れたヨーロッパの企業は「肘を噛んで(訳注:ロシア語の慣用句。「失敗した!」との後悔の気持ち)」嘆き、失った収益を悔やんでいる。彼らはロシア市場を永久に失ったのだ;(ロシアが必要としていたヨーロッパ)商品は他のものに置き換えられた。ロシアの生産性向上は「ヨーロッパよりもはるかに高く」、年末のインフレ率はユーロ圏よりも低くなるだろう;

▪️ ロシアは自国の主権と数百万人の人々を守るために特別軍事作戦を行うことを余儀なくされた。キエフ政権はファシストとして廃絶され、禁止されることになるだろう。

▪️ ウクライナの状況は地域的な紛争ではなく、西側集団と他の国々との全面的な対立だ。西側と他の国々との対立は数十年にわたる可能性がある。

▪️ 現在の西側と他の国々との対立は、世界を第三次世界大戦の瀬戸際に追い込んでいる。第三次世界大戦が起きた場合、勝者はいないだろう。 核の冬、流行病、そして地球規模の飢餓が起こることになる。

▪️ ロシアと西側の間の全面対立の結果は、ヘルシンキ宣言*のような形で、新しい文書として正式に記入されるべきだ。
*ヘルシンキ宣言またはヘルシンキ合意は、1975年7~8月、フィンランドのヘルシンキにおいて開催された「全欧安全保障協力会議」で採択された最終の合意文書のこと。 この全欧安全保障協力会議にはアルバニアを除きソ連を含めたヨーロッパ33ヵ国、アメリカ、カナダの計35ヵ国の首脳が参加した。(ウィキペディア)




  西側では再び「ホワイト・ノイズ」(訳注:テレビ放送終了後の砂嵐状態や、ラジオなどの「シャー」という音色のない雑音のこと)が巻き起こり、あらゆる勢力がロシアに対して非難を浴びせています。米国上院の重度のロシア嫌悪老人から、ホワイトハウスの腰の据わらない高齢者まで、誰もが奮闘しています。何から何まで、昔から言われてきたことですし、昔から行われてきたことのようです。なぜ、西側の政治家たちは、改めて、キエフ保護国の北大西洋条約機構(NATO)への参加について「強力な信号」の必要性を持ち出すのでしょう?なぜ彼らはウクライナの平和をナチのキエフ政権という条件下のみで叫び続けるのでしょうか?SVO(特別軍事作戦)からほぼ1年半経過しているこの時点で、なぜ、そんな憤りを顕わにするのでしょうか?

 もちろん、最近の武装蜂起の結果に、ロシア内外の敵はほとんど喜ぶことはありませんでした。ロシア政府はその強さと安定性を納得させる形で証明し、国民は祖国を守るために最高司令官ウラジミール・プーチンを中心に結集する準備があることを示したのです。他方、私たちの敵対者は、ついにアルチョモフスク(バフムートとも呼ばれる)が占拠されたことについてあまり動揺はしているようにはみえません。ウクライナ軍のこの戦線での敗北は当然の結果でした。また、反転攻勢の開始が、西側の政治的能無し連中にとって予期しないものであったことは、別の問題です。彼らが固く信じて疑わなかったのは、キエフ顧問団の天才性、無限のお金の全能性、そしてご自慢のNATOの装備力です。

 しかしながら、あちらこちらで、西側高官たちや、それと勝るとも劣らない不快な人間たちが口にしています:「ロシアは既に負けた、私たちは勝った」と。彼らはなぜ突然、そんな大げさな歌を歌い始めたのでしょうか?事実はどっしりしたものであり、幻想の余地はありません。まず、彼らの主張を見てみましょう。

 将来をどう理解するのか、において世界のいろいろな地域で形成された地殻変動的な亀裂が改善することはないでしょう。対立は非常に長期にわたるものとなるでしょう。

1. 「ロシアは孤立している」。そんなことはまったくありません。アジア、アフリカ、ラテンアメリカとの政治的な接触は活発に進展しています。これらの市場は開放されており、制裁にもかかわらず、この地域の企業は私たちのために一生懸命働いています。ドル全能時代の終焉が迫っています。国内通貨やデジタル通貨への移行が課題となっています。

 はい、ヨーロッパとの関係は大幅に縮小しました(しかし、厳密に言えば消えたわけではありません)。しかし、グローバル・サウスとそれに引けを取らないグローバル・イーストとの関係は大幅に拡大しました。必要なヨーロッパからの商品は他のもので置き換えられました。ヨーロッパは長い間、私たちの市場を失い、彼らの投資したものは無に帰しましたが、生産力自体は残りました。無料またははるかに安価でロシア企業の所有となったいろいろな生産能力に感謝しています。ヨーロッパの企業は、耄碌老人よろしく、失敗の臍を噛み、損失を賃借対照表から削除してあります。しかし、これには例の悪名高い「政治的公正」が根本にあります。そして表には出しませんが、海の向こうの大権力者(アメリカ)を怖がり、彼らは何も言えず、失われた収入を悔やむ涙を飲み込んでいるのです。

2. 「ロシア経済は崩壊している」。そんなことは全くありません。生産性向上はヨーロッパよりもはるかに高いです。ロイター通信社さえも認めているように、2023年4月にはロシアの製造業部門の活動が12か月連続で成長を示しました。同時に、私たちのインフレ率は多くの西側諸国よりも大幅に低いです。それは歴史的な最低水準である2.9パーセントに近い水準です。年末までには5パーセントを上回ることはありません。一方、欧州委員会の予測によれば、2023年のユーロ圏のインフレ率は約6パーセントに近づくでしょう。ロシアの失業率は、歴史上最低の水準で、3.3パーセントです。

 経済のすべての部門で成長しています。ロスタットによれば、今年3月には昨年の同月に比べて産業生産が1.2パーセント増加しました。4月にはその成長率は既に5.2パーセントとなりました。建設分野でも目覚ましい進展があります。2022年だけでも建設作業の量は5.2パーセント増加しました。農業生産の成長率も過去1年間で10パーセント以上でした。農業部門のすべての商品について、実際、国内需要を満たしており、今は積極的に輸出に取り組んでいます。ちなみに、ロシア産の農産物や食品への依存はどこでも認識されており、そのため穀物取引に関する絶え間ない儀式があります。ただし、現行の形態ではそのような喧騒は必要ではなく、必ず終了させる必要があることはすでに誰にでも明らかです。私たちは、ともかく、同盟国を支援できるでしょうが、肥満顔のヨーロッパ市民たちを養うことは私たちの任務ではありません。彼らを養ってくれるには、古くて味気ない「レバー・ソーセージ(訳注:昨年、ウクライナのドイツ大使が、ウクライナ訪問を断ったドイツのショルツ首相を「拗ねたソーセージ」呼ばわりした事象を揶揄しているようだ )」があります。また、ヨーロッパ経済を見事に統治している非常に多くの高学歴の産婦人科医(訳注:婦人科医の免許を持ち、それ以外に公衆衛生学や経済学などを学んだ 欧州委員会委員長のフオン・デア・ライエンを揶揄している)たちもいます。

3. 「ロシアはNATOを封じ込めようと願い、NATOはスウェーデンとフィンランドを犠牲の上に拡大した」。これは真っ赤な嘘。私たちはNATOを封じ込めようとしたことは一度もありません。私たちにはそんな力も能力もありません。この二国は既にNATOと同盟と関係を持っていました。私たちは常にただ一つのことを求めてきました。 私たちの懸念を考慮に入れ、私たちの国の一部であった地域をNATOに引き入れないでほしい。特にロシアと領土紛争のある国は。したがって、私たちの目標は簡単です。つまり、ウクライナのNATO加盟脅威を排除することです。そして、それはやり遂げます。どのような方法を使ってでも。今日の、精神状態が麻薬や酒でふらふらになっているようなキエフ政権指導者たちでさえ、紛争状態ではバンデロクライナ(その腐敗した名残の名称)がNATOに加わることはないと認めています。したがって、非常に単純で悲しい結論が導かれます:紛争当事国がNATOの加盟を受け入れないならば、紛争は永遠に続くでしょう。なぜなら、それはロシアの存在の問題だからです。

 そのため、彼らの憤りの理由は明らかです。ロシアを打ち破ることはできず、反ロシアの戦線は失敗しました。それは政治や戦略、さらには戦術の問題ではありません。ただ、終局が非常に近いというだけです。時の鐘は打たれました。私たちの永遠のイデオロギー的対立者は、彼らが最も価値を置いているものを失う一歩手前にいます。第一に、何世紀にもわたって彼らの暮らしぶりを支えてきた彼らの世界支配です。それが西側の政治家が恐怖を作り出そうとしている理由です。しかし現実には、オーウェルの小説に出てくる家畜たち、図々しい英国の豚やその他の従属的な家畜たちは、自らの動物的な恐怖に取り憑かれています。彼らはいつものように世界に自分たちの力を示そうとしています。しかし今回、彼らは自らの無力さに署名するだけです。彼らは雑音的情報を作り出していますが、ほとんど中身はありません。明らかです:彼らの時代は終わりました。彼らは「今日」すら、所有していません。「明日」を所有していないことは、言うまでもありません。

 最終的には英米世界が認識すべき三つのことを、次に述べます。

第一に、西側集団との対立状態は世界的なものとなりました。

 2022年から2023年は、21世紀における人類の存在の危機の頂点として、最も強力な文明的な亀裂の時代として歴史に刻まれるでしょう。その直接的な結果として、ウクライナで特別な軍事作戦が開始されました。

 ロシアは、主権と領土の統合性、そして何百万もの市民の安全を守るために、その作戦を行うことを余儀なくされました。私たちの国ロシアは、国連憲章の第51条に基づいて、自衛の権利を行使してきたことはご存知の通りです。

 ウクライナとドンバスで現在起こっていることは単なる「地域的な紛争」ではありません。まったく異なるものです。これは、条件付き西側連合とその他の国々との全面対立です。それは、人類発展に対する対照的な意見の直接的な対立によって引き起こされています。一方には、世界が根本的に変わり、支配力を失いたくない西側諸国がいます。彼らが現在私たちと戦っているハイブリッド戦争は、彼らにとって有利な現状維持の最後の好機であり、弱体化した力と影響力を失わないためのものです。他方には、ロシアだけでなく、グローバル・イーストとグローバル・サウスがいます。これらの地域は世界人口のほぼ3分の2になります。これらは、植民地時代の経済的および政治的諸結果を徐々に克服しながら力をつけている国々です。彼らはすべての国の平等な発展を主張しています。手を取り合う国々には上も下もありません。歴史的に発展国と発展途上国があるなどという不真面目な区分けはしません。「真の民主主義」と「独裁政権」という区別(これはもちろん西側の見方)はありません。

 彼らの独立への欲求は、元植民地主義者たちには非常に嫌われています。元植民地主義者たち力の限り過去に固執しています。新しい紛争は、以前の冷戦よりも桁違いに緊張を引き起こし、非常に否定的な結果をもたらしました。実際、それは世界を第三次世界大戦の瀬戸際に追いやりました。さらに、ウクライナでの紛争の開始とともに、再び「二重基準」の完全なパッケージがアメリカの扇動によって発動されました。何も新しいことはありません、すべてが次のように従来通りです:独立と領土の完全性は、西側の立場では、それを許される者だけが守ることができます。他の者は従属させ、抑圧し、できれば、その領土に血糊を塗りつけるほうが好ましいと考えています。ロシアはこの論理を受け入れたくありませんでした。ロシアは他者の意思に従属することはしませんでした。そして、力強く、きっぱりと反撃しました。

 さて、西側の政治家の新しい退廃した世代は、自分たちが何をしているのか、何を呼びかけているのかを明確に理解していないようです。そして、もし挑発が行き過ぎた場合の、私たちの反応を忘れてしまったようです。幸いなことに、昨年降った雪ではありませんが、彼らの頭にまだ常識が残っている人々はいます。常識が完全に溶けてしまわないことを神に願います、なぜなら完全に溶けてしまえば、本当に終わりだからです。

第二に、この対立は非常に長くなるでしょう。そして、頑固者(つまり、私たち)を今から手なずけるわけにはいかないのです。

 将来をどう理解するのか、において世界のいろいろな地域で形成された地殻変動的な亀裂が改善することはないでしょう。予知者にならずとも、この対立局面は非常に長期間にわたることがわかっています。この対立は数十年にわたり続くでしょう。その解決策の一つは第三次世界大戦です。しかし明らかにそれは良くありません。なぜなら、勝利者といえども将来の繁栄が保証されていないからです。前回の世界大戦後もそうでした。万が一にも、勝者は存在しません。なぜなら、核の冬が訪れ、数百万人の住民が住む都市が廃墟と化し、過剰な電磁パルスにより電力が失われ、衝撃波や光線放射、浸透放射線、そして放射能汚染により多くの人々が亡くなる世界を勝利と考えることはできないからです。そこでは恐ろしい流行病と飢饉が支配します。

 原則として、反ロシアはもはや存在すべきではありません。そうでなければ、いずれかならず非常に悪い結果に終わるでしょう。キエフのナチス政権は絶滅すべきです。

 そして、ここで、あらゆる政治家たちが認めたがらない一つのことを指摘します:そのような終末は単に可能性があるだけでなく、きわめて現実性があります。なぜでしょうか?少なくとも2つの理由があります。

 第一に、世界はカリブ危機(訳注「キューバ危機」)の時よりもはるかに悪い状況にあります。なぜなら、私たちの対立相手たちは、最大の核大国であるロシアを本当に打ち負かすことを決意したからです。彼らは間違いなく馬鹿者ですが、それが彼らの意図です。そして、第二の理由は詩の香りもありません。核兵器はもう至る所で、だれもが使用しているため、タブーが存在しない!ということです。この完全な矛盾を解決する第二の方法は、長い年月をかけ決して安易とは言えないも妥協点を見つけることです。全ての国々の利益のバランスに基づいた新たな尊敬される世界秩序の形成です。そして、これはもちろん、例の悪名高い「ルールに基づく秩序」なんかではありません。そんなものは、アメリカに依存しないどの国にも咽頭反射(むせ返り)を引き起こすだけです。はい、多くのコミュニケーションが必要であり、忍耐が必要であり、節制を示す必要があり、交渉のテーブルを離れ、またそこに戻り、最終的には21世紀の平等で安全な世界の国際的な輪郭を作り出す必要があります。これには数年、おそらく数十年かかるでしょう。しかし、終末の日に、私たち全員が一緒に死ぬよりは間違いなく良い選択です。

そして、第三の方法です。私たちが全面対立の局面から脱するためにどんな覚悟をもつべきか。

 確かに、私たちは合理的な妥協を求める覚悟があります。それはロシアの大統領が何度も述べている通りです。妥協は可能ですが、いくつかの基本的な点を理解する必要があります。第一に、私たちの利益はできるだけ考慮されるべきです。原則として反ロシアはもはや存在すべきではありません。そうでなければ、いずれ必ず非常に悪い結果となるでしょう。キエフのナチ政権は壊滅させられるべきです。それは文明ヨーロッパにおいて、法的にはファシストとして禁止されています。腐ったベーコンのように歴史のゴミ箱に捨てられるべきです。それを置き換えるものや、かつての「方陣」がどんな形で残るのかもわかりません。しかし、もし西側が私たちの不完全な文明の終末的な終わりを望まないのであれば、このことは受け入れる必要があるでしょう。

 第二に、この全面対立によってきちんと結果になっていない事柄は、ヘルシンキ宣言(あの有名な1975年の会議が最後となった)のような新たな文書で整理しておくべきです。残念ながら、ヘルシンキという言葉だけは明らかな理由からふさわしいものではないのですが。私たちにとって、フィンランドは敵対的な国であり、かつてレーニンの無思慮さによって作られ、現在はNATOに参加しています。フィンランドや同様の国々(ポーランド、バルト諸国、そしてもちろんイギリス)、このような国々とは、外交関係を一時的に中断するか、少なくとも当面は外交関係のレベルを下げることが望ましいでしょう。

 第三に、おそらく国連や他の国際機関の慎重な再編成が必要になるでしょう。これは安全保障理事会の常任理事国の権利を完全に尊重することでのみ実現可能です。そうでなければ、それが機能することは完全になくなるでしょう。そして、国連は自由な人々の期待に応えることができなかった機関として忘れ去られるでしょう。現在の奇形的国際機関、例えば国際刑事裁判所や欧州評議会、OSCE(欧州安全保障協力機構)などの運命については言及しません。それらは既に世界の発展の腐ったゴミ捨て場にあるのです。

 私たちが妥協点に達することができるかどうかはわかりません。確信がありません。現時点では、完全に退廃した西側の政治層が、血に飢えた道化師たちの恐怖感を増幅させようとしています。持続的な認知症の状態で、私たちの小さな世界を第三次世界大戦に突き進ませています。正気でないキエフ政権を戦争へと駆り立て、最後のウクライナ人まで戦わせようとしています。

 言い換えれば、私は楽観的ではありません。アントン・パヴロヴィチが、かつて「人生は、実際は、とても単純なものだ。そして、それを台無しにするためには、人は四苦八苦しなければならない」と述べたのも当然のことです。

 しかし、希望は常にあります。

原文: RGRU
英訳: Global South

プーチン大統領とロシアの安全保障常任メンバーとの会合

<記事原文 寺島先生推薦>
Meeting with permanent members of the Security Council
出典:president of Russia   2023年6月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年7月10日



ウラジーミル・プーチンは、ビデオ会議を通じて安全保障会議の常任メンバーとの状況説明会議を開催した。


***
この会議には、連邦議会上院議長のヴァレンティーナ・マトヴィエンコ、国会議長のヴャチェスラフ・ヴォロジン、安全保障会議副議長のドミートリー・メドヴェージェフ、大統領執務室の首席補佐官のアントン・ヴァイノ、安全保障会議書記のニコライ・パトルシェフ、外務大臣のセルゲイ・ラブロフ、国防大臣のセルゲイ・ショイグ、連邦保安庁長官のアレクサンダー・ボルトニコフ、外国情報機関長のセルゲイ・ナリシキン、環境保護、生態学、交通のための特別大統領代表のセルゲイ・イワノフが出席した。

ロシア大統領ウラジーミル・プーチン:同僚諸君、こんにちは。

 本日は、CSTO(集団安全保障機構)およびEAEU(ユーラシア経済連合)内の主要な友好諸国との協力効果を高めるための対策に関する問題について議論します。最近、様々な出来事が起こりました。いろいろなやり方で、私たちは、全員、仲間や同盟国との会議に参加し、関係を発展させるための方策を立ててきました。

 今日はこういったことについて討論したいと思います。

これもご覧ください。
Security Council News


 しかしながら、まずは他のどの問題よりも重要な現在の課題である特別軍事作戦地域の状況から始めたいと思います。

 ショイグさん、戦闘地域における状況はどうですか?

ショイグ国防相:ありがとうございます、大統領。

 本日現在、状況は以下のようになっています。約16日間の積極的な戦闘作戦の結果、敵は大きな損失を被り、以前ほど攻撃力はありません。現在、壊滅した部隊を再編成しています。後で攻勢をかける可能性のある部隊は、さまざまな部隊や大隊から引き抜かれています。これが1つの区域での状況です。

 他の区域では、当然のことながら、敵は相当な装備や人員の損失にもかかわらず、さらなる攻勢作戦に向けた部隊を保有しています。

 それとは別に、敵はある区域で破壊されたまたは損傷した装備を撤去しようとしています。全ての区域で成功しているわけではありませんが、このような試みは続いています。

 もちろん、さらなる攻撃に向けて準備はすすんでいます。わが軍も同様です。

ウラジーミル・プーチン:わかりました。ありがとう。

 パトルシェフさん、私は異なる機関の同僚と連絡を保つようにお願いしました。それは、特別軍事作戦に関与するさまざまな機関が、何が起こっているか、そしてそれがどのように評価されているかについて客観的な情報を得るためです。明らかに、責任の中心は国防省にありますが、他の機関でも情報が集積されます。あなたがこの仕事のご担当でした。

 この点での要約データはどうですか?

安全保障会議書記ニコライ・パトルシェフ:ありがとうございます、大統領。

 実際、私たちはあなたの指示に従って、相手の喪失した装備を把握し、国防省、連邦保安庁の国境警備隊、連邦保安庁の軍事対諜報部門、およびロシア国家警備隊から情報を受け取っています。私たちはこれらのデータを比較し、共通の基準に絞り込んでいます。具体的には、ウクライナ軍が攻勢を開始したと発表した6月4日以降、私たちはこの情報により大きな注意を払っています。

 今日現在の統計データは以下の通りです。6月4日から21日までの間に、246両の戦車(うち13両は西側の戦車)を撃破し、また595両の装甲戦闘車両と装甲車両を破壊しました。その中には、152両の歩兵戦闘車両(うち59両は西側製)と443両の他の装甲戦闘車両が含まれています。また、279門の野戦砲兵システムと迫撃砲(うち48門は西側のシステム)を破壊しました。さらに、42基の多連装ロケットシステム、2基の地対空ミサイルシステム、10機の戦術戦闘機、4機のヘリコプター、264機のドローン、および424台の自動車も破壊しました。

 今後も大統領のご指示に従って任務を継続します。

 ありがとうございます。

ウラジーミル・プーチン:兵士の状況はどうなっていますか?

ニコライ・パトルシェフ:兵士に関する情報は断片的なものが多いと考えていますが、総計で1万3000人以上となっています。

ウラジーミル・プーチン:これは総合的なデータですね。

ニコライ・パトルシェフ:はい、これは総合的なデータです。私たちの機関からの報告によれば、総計で1万3000人以上です。

ウラジーミル・プーチン:なるほど。

 ショイグさん、敵が西側の追加装備を受け取る予定であることを私たちは知っています。国防省はこの関連でどのように脅威を考えていますか?

 セルゲイ・ショイグ:現在のおよび計画中の軍事装備の配備に関して、2023年を通じて約250両の戦車を供給する予定があります。その中には約120両のレオパルト戦車や31両のエイブラムス戦車も含まれています。また、世界中から引き続き95両のT-72戦車を手に入れています。これが計画されている供給についての情報です。

 2023年を通じて、983両の装甲戦闘車両の配備が計画されています。そのうち822両の車両、つまり出荷の大部分は第3四半期および第4四半期に到着する予定であり、その中には740両の西側製が含まれています。

 実際には、ソビエト連邦と旧社会主義諸国が蓄積したすべての兵器はほぼ枯渇した状態です。同様の状況がウクライナの以前の兵器にも言えます。

 2023年を通じて、273門の155mm砲システムを配備する予定です。これはこれまでに配備された数の半分以下です。

 パトルシェフ氏が挙げた損失を考慮し、また以前の展開を考慮すると、2023年を通じて配備される予定の量や既に配備された武器は、戦闘の進行には大きな影響を与えないことがわかっています。さらに、ほとんどの装甲車両や戦闘車両は前の世代、あるいはそれよりも前の世代のものです。一方で、彼らの装甲は現代の装備と比較して脆弱で、効果的ではありません。大統領、私たちはここに脅威を見出していません。なおかつ、私たちは積極的に予備の装備を増やし兵員を増強しています。

 あなたのご指示通り、契約により勤務する兵員を募集して予備役を形成しようとしています。今朝現在、私たちは11万4000人を契約兵として採用し、さらに5万2000人を志願兵として採用したことをご報告します。志願兵の場合、適切な訓練を受ける必要があることのことでした。私はそれを念頭においています。

 大統領、まず何より、これらの志願兵は非常にやる気があります。彼らは戦闘に参加することを熱望していますが、我々は彼らを戦闘に送ることはできません。主に、緊急の必要性がないからです。さらに、彼らは本格的な訓練を受ける必要があり、実際に現在8つの訓練施設で訓練を受けています。

 645人の教官が関与しており、すべてが実戦経験を持っています。さらに、私たちの軍事アカデミーの卒業生もこれらの志願兵と一緒に働いています。現在、彼らは十分に訓練された軍事部隊を形成しているため、もはや単なる志願兵と呼ぶことはできません。

 私たちは陸軍軍団内でも予備役を増やしています。さらに、第1および第20戦車軍に5つの連隊を追加しました。すべてが計画通りに進行しています。6月末までに、予備軍を作る取り組みを完了し、軍団形成構想も近い将来に完了する予定です。5つの連隊は、兵力と装備の両面を含めて、すでに60%の準備が整っています。

 大統領、敵が入手した軍事装備、西側諸国からも含めて、一覧にまとめました。私たちはこれらの2つの軍および1つの軍団を作るために、3786台の装備品を供給しました。そして、これは1つの軍、軍団、第1および第20軍の5つの連隊のためだけのものです。

 大統領、明確な状況をお伝えするために、私たちは平均して1日に1336人の契約兵を募集しています。これは基本的には新しい連隊を24時間ごとに作っていることを意味します。軍事装備に関しては、平均して1日に約112台の装備品を受け取っています。これには品質向上されたものや新しい装備品も含まれています。これは私たちが相当な勢いを集積しており、この予備軍を作る我々の取り組みに邪魔が入ることなど考えられない、ということです。

ウラジーミル・プーチン:わかりました。

 ショイグさん、6月4日以降に破壊された装備のうち、西側の装備の割合はおおよそ何パーセントですか?パトルシェフさんが先ほど一般化されたデータを報告されました。概数です。

セルゲイ・ショイグ:破壊の程度ですか?

ウラジーミル・プーチン:はい、破壊された装備の数です。

セルゲイ・ショイグ:大統領、破壊された戦車のうち、246台のうち13台が西側製品です。同時に、納入された装備、特に戦車について、81台の西側製戦車が納入されていることに留意すべきです。81台の西側戦車のうち、13台が破壊されました。

 装甲戦闘車両については、59台の西側製品が破壊されました。現在までに、西側諸国はウクライナにおおよそ109台のブラッドリー装甲戦闘車両を供給しています。109台のBFV(ブラッドリー戦闘車)のうち、18台が破壊されました。全体として、西側製の装甲車両59台が破壊されました。

 野戦砲と銃に関しては、こちらでは即座に見積もることができます。破壊された48台のうち、おおよそ30%が西側製品であると推定できます。

ウラジーミル・プーチン:なるほど。

 私は、これが予備的なデータであることを理解しています。なぜなら、戦場でのすべての詳細を即座に把握することは不可能だからですが、一般的な概要はつかめました。

 敵兵の戦死者数を確認していますか?

セルゲイ・ショイグ:はい、そのデータは確認しています。さらに、それらの大部分は傍受された情報から得られました。ウクライナの部隊指揮官による衛生的な損失や回復不能な損失に関する報告です。

ウラジーミル・プーチン
:なるほど。

 これから私たちは、彼らは確かに追加の装備を送ることができるが、兵士動員予備軍は無限ではないと結論づけることができます。そして、ウクライナの西側の同盟国は、本当に、ウクライナ人の最後の一人までロシアと戦う決意を持っているように見えます。

 同時に、敵の攻撃力はまだ尽きていないことを前提とする必要があります。彼らはまだ使用されていない戦略的な予備力を持っているかもしれませんので、戦略を立てる際にはこれを念頭に置いてください。現実に基づいて進める必要があります。

 ありがとう。

 主要な議題に移ることにしましょう。

ロシア国会議員、ワグナー部隊反乱の理由を挙げる。

<記事原文 寺島先生推薦>
Russian MP gives reason for Wagner mutiny
ワグナー部隊のリーダーであるエフゲニー・プリゴジンは、モスクワが資金援助を打ち切る可能性を恐れていたと、アンドレイ・カルタポロフは主張。
出典:RT  2023年6月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月2日


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ワグナー私設軍事会社の創設者、エフゲニー・プリゴジン© スプートニク/エレナ・コピロワ


 ワグナー部隊は、先週ロシア国防省との契約に署名しなかった唯一の軍事組織であり、その直後反乱があった、とロシアの上級議員であるアンドレイ・カルタポロフは木曜日(6月29日)に述べた。

 報道陣との会見で、ロシア国会国防委員会の責任者であるカルタポロフは、ワグナー部隊の反乱の数日前に、ロシア国防省が全ての軍事グループに対して契約締結を求め、その政策を「完全に正しいもの」と表現したと説明した。

 「ワグナー部隊以外の全ての人々は・・・従いました。この紳士(プリゴジン)だけは署名を拒否しました」とカルタポロフ議員は述べた。

 この署名拒否に直面して、ロシア当局はワグナー部隊に対してウクライナの軍事作戦にはもはや関与することはないと伝えた、とカルタポロフは述べた。「これはつまり、もはやお金がないこと、財務的または物質的な資源補給がないことを意味します。そして、プリゴジン氏にとって、お金は要素であり、重要な要素であり、おそらく決定的な要素です」。

 結果的に、資金援助打ち切りの脅し、「過剰で愚かな野心」、そして感情的に「興奮した状態」が、「国家への反逆と(プリゴジンの)武装する同志への欺瞞」につながったと、カルタポロフ議員は述べた。

 カルタポロフは2016年12月から2017年3月まで、シリアにおけるロシア遠征軍を指揮し、パルミラの再解放を監督した。彼は2021年に4つ星将官の階級で引退し、議会選挙に出馬した。


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関連記事:ルカシェンコ、プーチンとの会談と反乱終結の調停について詳述
 
 ワグナー部隊リーダー(プリゴジン)は先週金曜日(6月23日)に反乱を起こし、ロシア国防省がワグナー部隊の宿営地に対して死者を出すミサイル攻撃を仕掛けたと非難、報復を誓った。国防省はこれらの主張を否定した。

 その後の数時間で、ワグナー部隊はロシア南部の都市、ロストフ・ナ・ドヌに入り、モスクワへの進軍を開始した。しかし、プリゴジンは土曜日(6月24日)に反乱を中止し、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が仲介した取引の一環として、ロシア政府からの「安全保証」を得た。

 クーデターの直前、ロシア国防省は、ウクライナとの戦闘に関与している20以上のロシアのボランティア団体が契約に署名したことを発表した。しかし、プリゴジンはこれには続かず、彼の部隊は「非常に効率的な組織」であり、「全体のシステムに有機的に統合されている」と主張した。

 火曜日(6月27日)、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ワグナー部隊が国の資金援助に完全に依存しており、またプリゴジン自身は軍とのケータリング契約で数十億ルーブルを稼いでいたことを明らかにした。

 プーチン大統領は、ロシアの軍事および治安機関を効果的に「内戦を止めた」と称賛した。彼はこの反乱を「個人的利益」が動機になっているとし、「ロシア国民や戦線で戦っている戦友たちへの裏切りである」と表現した。

プリゴジンの巧みな一手:何と呼ぼうとそれは国家への反逆

<記事原文 寺島先生推薦>
Prigozhin’s Gambit: Treason by Any Other Name
筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)
出典:INTERNATIONALIST 360°2023年6月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月2日


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 1997年のディズニーのアニメーションミュージカルファンタジー映画『ヘラクレス』には、特に耳に残る曲「ゼロからヒーロー」がある。この曲は、映画の主人公が何もできない少年から強く能力のある男性に成長する様子を描いている。ワグナー部隊の公の顔であるエヴゲニー・プリゴジンがロシアの民間軍事会社であり、露軍情報機関と不可解なつながりを持つ存在であるワグナー部隊の台本を、24時間もかからず、一変させた。この組織は、印象的な戦闘力によってロシアの愛国心と力の象徴となっていたが、今や信用を失った不満な裏切り者の集団と化した。ロシア憲法政府を暴力的に転覆しようとし、ロシアを戦略的に敗北させ、最終的な破壊を目指す国々の代理となって。

 もしディズニーが今日プリゴジンとワグナー部隊についての曲を作るなら、それは「ヒーローからゼロへ」というタイトルになるだろう。

 疑いを持つ余地は誰にもない—エヴゲニー・プリゴジンは、ウクライナと西側全体の諜報機関の工作員となった。それと知って。そして、ワグナー部隊内には、欺瞞と陰謀によって無意識にこの重大な反逆行為に引き込まれた人々がいるかもしれないが、ロシア大統領ウラジミール・プーチンが6月24日に国民に向けた演説とエヴゲニー・プリゴジンの無思慮な返答の後、この闘争には憲法的正統性の側と違法な反逆と扇動の側という2つの側面しかないことは疑いようがない。プリゴジンのクーデターに参加し続ける者は、法の誤った側に立ち、自らが無法者となることになる。



 ワグナー部隊がこの不運な道へ導かれたことを考えると、その危険な行動を引き起こす動機(明言されたものやそれ以外のもの)を検証する必要がある。まず最も重要なことは、プリゴジンの一手を、そのまま、見る必要があることだ。それはやぶれかぶれの行為だ。卓越した軍事力があるとはいえ、ワグナー部隊の戦闘力はロシア国防省の物流支援なしでは持続不可能だ。ワグナー部隊の車両を動かす燃料、武器に殺傷力を与える弾薬、戦闘員を養う食料など、すべてプリゴジンが狙った組織(ロシア国家)から供給されている。この現実は、(彼の目的を)達成するためには、プリゴジンが自分の一手を維持するだけでなく、ロシア国防省とロシア連邦が持つ相当な力を相殺するだけの、自分の大義を裏打ちする充分な支持を結集する必要があることを意味する。もしロシア国防省とロシア連邦がそのままであれば、大規模戦闘において、ワグナー部隊は赤子の手をひねるように易々と打ち砕かれてしまうだろう。

 要するに、プリゴジンはいわゆる「モスクワ・マイダン」を創り出すことを目指しているのだ。2014年初頭のキエフで行われた事件の成功を再現せんとするものである。この事件は、ウクライナの民族主義者たちが米国と欧州の支援を受けて組織した暴力と意志の力によって、ヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領の合法的に選出された政府権力が転覆した出来事だ。 「モスクワ・マイダン」の幻想は、一連の西側諸国とそのウクライナ代理人の戦略の中心にあった。ロシアの弱い大統領は完全に腐敗した寡頭政治層によって支えられているということを前提にして、2022年2月24日特殊軍事作戦(SMO)開始後、西側が課した制裁措置は、例の(不思議の国のアリスの)「カードの家」のようにプーチン政権を倒す十分な内部不安を引き起こすことが主な目標だった。しかし、制裁がそのような結果を生み出さなかったことから、西側は、やむを得ず、ロシア政府を崩壊させるという考えに再度賭けなければならなくなった。今度は軍事的な解決策を用いて。イギリスの首相(ボリス・ジョンソン)は、2022年4月1日にイスタンブールで署名される予定だった紛争の交渉解決を放棄し、代わりに数十億ドル相当の軍事的・金融的支援によって、ロシアとの戦争を継続するようウクライナ大統領(ゼレンスキー)に圧力をかけた。この支援は、ロシアへの軍事的損失を与え、国内不安を引き起こすためのものであり、その結果として理想的な「モスクワ・マイダン」を実現しようとしていた。

 この試みも同じように失敗した。

 ロシアに対する外部からの圧力によって、プーチンやウクライナ紛争への国内支持を潰す条件づくりができなかったため、西側連合は、内部に不和の種をまくことでロシアを崩壊させるための状況を作ることに取り組み始めた。この戦略は次の2つの詭弁的な情報戦略に基づいていた:
 ① ロシア政府の公式な立場を支えている言説を抑制し、同時に
 ② ロシアの一般市民に影響力を持つと考えられるソーシャルメディアの中で、影響力を持つ秘密の影響力を持つ工作員を育成する。
 これらの回路を利用して、情報戦の視点からウクライナ支持者たちは、ロシア政府の失敗と特にSMOに関わるプーチン大統領に近い人物の問題点を強調する言説を広め始めた。これらの回路が「SMOの失敗」として強調していることに焦点を当てることで、情報戦の実践者たちは「愛国心」の旗印に身を包み、ただ「母なるロシア」の最善の利益を求めているだけだと主張し、同時に(ロシア)憲法政府の性格を貶めたのだ。

 情報戦の専門家たちが、プーチン・ロシアへの攻撃の基礎として使用してはいるいくつかの感動的な言説があった。その中でも、より人気のあるものの一つは、「2014年」とドンバス地域の民族ロシア人に対して文化的・言語的な大量虐殺政策を押し付けようとしたウクライナの民族主義者たちに対する初期の抵抗という神話の中にその基礎はあった。疑いの余地はない―ドンバス紛争の初期の数ヶ月や数年にわたって行われた戦闘は困難で血みどろであり、ドンバス地域の民族ロシア人のために立ち上がった人々の、危険な敵に立ち向かいながらの勇気と忍耐力は最大の称賛に値する。しかしこの抵抗運動は、初期の指導者や参加者の間で一種の権利意識を育み、しばしばロシアとその大統領であるウラジミール・プーチンに対する憤怒を抱かせるものとなった。彼らはドンバス地域の市民を自らの運命に委ねたロシアを非難した。SMOの開始後、この「元祖」たちは、ロシア政府の不十分な介入とロシア軍の無能さを咎め、憤怒は敵意へと変わっていった。イゴール・ギルキン(通称ストレルコフ)やラッセル・「テキサス」・ベントレーなどの人物は、「愛国的な」批判の技法を習得した。意図的であったかどうかは別として、これらの批判はロシアの敵によって利用され、プーチン政権の「腐敗」と「無能さ」に関心を持つ「真の」ロシア愛国者が、「ロシア政府は介入に弱い」という考えを進めるために使われた。ウクライナ支持の情報戦のメディアは、TelegramやYouTubeチャンネルを使用して彼らのメッセージを拡散することで、これらの「愛国的な」反対意見を大きくするのに役立てた。

 「裏切られた愛国者」というテーマの一つの展開は、ワグナー部隊自体に関連しており、現在の問題にもつながりがある。民間軍事契約会社であるワグナー部隊の起源ははっきりしない。しかしドンバス地域の2014年の出来事と、ロシア政府がドンバス地域の民族ロシア人抵抗運動に対して、関連する軍事的専門知識と物資を提供することと関連があるようだ。物資搬送にワグナー部隊を使えば、ロシア陸軍正規兵士の外国への展開禁止が謳われているロシア憲法との衝突を避けることができる。ワグナー部隊は創設時からロシア軍情報部(GRU)の付属機関であり、ロシア参謀本部の命令に従う存在だった。これにより、ワグナー部隊は政府の公式な代理人としての立場と、独自に資金提供される民間軍事契約会社の立場という曖昧な位置に身を置いていた。

 SMOの開始後、ワグナー部隊がドンバス紛争で果たした役割は拡大し、顧問的な立場から主要な戦闘者へと移行した。ワグナー部隊は存在感を拡大することで、重武装化された軍団規模の組織に成長し、装甲車両や火砲を含む重火器、また固定翼戦闘機を装備した。また、ソレダルとバフムートという2つの塩鉱町はウクライナ軍によって堅固な要塞化が行われており、ワグナー部隊はこれらの町を含む戦線の一部の責任を担当した。ソレダル-バフムート複合施設での流血の戦闘は、「肉挽き機」という渾名で知られるようになり、それによってワグナー部隊は多くのロシア人の心の中で伝説的な戦闘部隊に変貌し、プリゴジンの注目度も大幅に高められた。

 ワグナー部隊は、ロシア軍の息の詰まるような官僚制度から解放されたことにより、その功績にふさわしい軍事的評判を築いた。そのため、ワグナー部隊はベテランの戦闘員の経験と技能を最大限に活用し、指揮統制や戦術的な意思決定を簡素化して、作戦主導権を握り、戦場を支配することができた。ワグナー部隊は運用上の独立性を持っていたが、運用任務はロシア参謀本部から与えられ、また、武器、弾薬、燃料、その他の物資補給も同様に提供された。これらはワグナー部隊に割り当てられた任務を遂行するために必要なものだった。

 ワグナー部隊の法的地位は、その活動領域がロシア国内ではない限りは確保されていた。しかし、2022年9月の住民投票の結果、ドンバスは独立体からロシアの一部となった。ワグナー部隊はドンバスの政治的な移行が完全にロシアの憲法的統制下に置かれるまでは、その特異な地位を維持することができたが、この移行が2023年初頭に完了した後、現実が浮き彫りになった。かつてはドンバスへの一般的な支援の一環として承認され、特別な要求として扱われていた物流要請が、ロシア国防省の通常の物流体制の一部としては扱われなくなった。実際的な観点から言えば、これは特に砲弾の量に関して、軍事形態の類似した部隊を支援するための「基準」に基づいて削減されたことを意味した。しかし、ワグナー部隊の戦術は、圧倒的な火力支援によって作戦を支援することに依存していた。以前受け取っていた砲弾の数量が制限されたため、ワグナー部隊の突撃部隊は多くの犠牲者を出すようになり、それによってプリゴジンはショイグとゲラシモフ二人と公然の諍いを引き起こした。彼ら二人の無能と腐敗を非難した。

 プリゴジンの奇行は、ソーシャルメディア上で詳細に報告され、ウクライナ支持の情報戦の専門家の注目を集めた。彼らは、政治経験のない元囚人であるプリゴジンがロシアの指導的立場に立っているという言説を流し始めた。プリゴジン自身もこの考えに乗っているように見えた。彼は公にはそのような野心を否定しながら、ショイグとゲラシモフを公然と批判し続けた。その憎悪は激化し、プーチンはショイグとゲラシモフをクレムリンに招集し、怒り狂って厳しく叱責した。断固として中止するか、その結果に対処するよう命じた。また、この時点でプーチンはショイグをワグナー部隊の物流支援の監督から退かせ、代わりにSMOの航空部門を監督しているシニア軍司令官であるセルゲイ・スロビキン将軍にその任務を委ねた。

 振り返ってみれば、これは間違いだった。なぜなら、プリゴジンの心には、彼が大きな騒ぎを起こせば、プーチンが彼の望みに屈するだろうという考えがますます強くなったからだ。

 ある時点で、プリゴジンは完全に道を踏み外したようだ。大統領の介入にもかかわらず、プリゴジンはショイグとゲラシモフとの公然の争いを続け、一時はバフムートからワグナー部隊を撤退させると脅した。プリゴジンは前線指揮官としての自分を宣伝しようと、頻繁に戦闘中のワグナー戦闘員を訪れ、しばしば銃火の中にいる様子をTelegramに公開した。そして、これをプリゴジンが指摘するように、ショイグとゲラシモフのおとなしい振る舞いと対比させ、彼らは戦闘地域から遠く離れた地下壕の安全な場所からSMOを管理していると嘲笑した。

 ある時点で、プリゴジンの行動はウクライナの情報機関やイギリス、アメリカの情報機関の注意を引いた。彼にはナルシスト的な人の注目を引きたいという欲求あるので、誇大な自尊感情とも相俟って、敵対的な外国情報機関による勧誘の理想的な候補となった。この行動モデルには、基本的な欲望である金銭的な要素も追加される。また、ショイグ国防相は、弾薬の配給を通じてワグナー部隊を国防省の作戦統制下に引き入れようとした他に、ワグナー部隊は戦闘部隊としての任務を続けるために、ロシア国防相との法的に拘束力のある契約に署名する必要があると発表した。そうする理由は、ロシアの土地での私設軍事会社の活動を禁じる憲法上の規定があるからだ。ロシア政府は、バフムートに激しい戦闘がある間はこの法的な問題を見逃すことに同意していた。しかし、一度「肉挽き機」が停止し、ワグナー部隊が戦線から撤退して十分な休息と再装備の期間が与えられると、国防省はワグナー部隊が戦闘活動を再開する前に(プリゴジンはワグナー部隊が8月5日頃に戦闘に復帰すると示唆している)、戦闘員と指揮官が契約に署名しなければならないと発表した。契約の署名期限は7月1日とされた。

 プリゴジンによれば、ワグナー部隊の実際の指導者である軍事評議会の指揮官たちは、これらの契約に署名することを拒否した。この時期、ワグナー部隊はバフムートでの血みどろの戦闘で獲得したロシア人の好意を基礎に発展していた。ワグナー部隊は、戦闘員たちが享受する英雄的な地位をロシア人に印象づけることを目的とした前例のない広報活動に従事しており、同時に新たな戦闘員を募集しようとしていた。この広報活動の成功は、プリゴジンの心に、彼とワグナー部隊はショイグ、ゲラシモフ、およびロシア国防省よりもロシア人の間でより人気がある、という考えをしっかり植え付けた。

 プリゴジンとウクライナとの結託は、現時点では証明されていないが、振り返ってみると明らかだ。その一つの重要な指標は、ウクライナが「反プーチン」のロシア部隊をロシアのベルゴロド地域に送るという決定であり、これによりロシアの無力さと無能さの印象が作られた。これはプリゴジン自身大いに喜んで自分のTelegramチャンネルでそれを拡散していた。このメッセージは、ウクライナが管理するTelegramチャンネル、特に「ロシアの愛国者」を装ったチャンネルでさらに広まりまった。

 まもなく、プリゴジンと表向き「親ロシア」ソーシャルメディアアカウントの両者は、ロシア内戦の可能性やプーチン政権の崩壊について言及し始めた。彼らは、1917年にロシア軍で経験した崩壊と同様に、プーチン政権の崩壊とツァーリ制の倒壊が起こる可能性を強調した。実際、情報に詳しい観察者たちは、武装蜂起の一環としてプリゴジンと共にロシアに入国したワグナー戦闘員の多くが、ウクライナに忠実な勢力による将来のロシアへの侵攻に備え、国境地域を守るために派遣されていると信じていたようだ、述べている。

 もしプリゴジンの目標がプーチン政権の崩壊であった場合、それは惨めな失敗に終わったようだ。政治指導者も部隊の軍事指導者も、富豪たちも、誰もプリゴジンの呼びかけに応じていない。ロシアは明らかにプーチン大統領を固く支持し、この蜂起を必要な手段を使って終結させるという彼の宣言した目標を支持している。プリゴジンはモスクワへの進軍に2万5,000人の兵士を集めたと主張したが、実際に関与したワグナー部隊兵士の総数はその半分以下だ。

 ワグナー部隊は実質的な支援を受けなければ、この侵攻部隊はすぐに持続性の問題に直面する。燃料、弾薬、食料の供給が問題となるだろう。さらに、ロシア軍がワグナー部隊と直接対立し始めると、実際の戦闘員たちにとっては、腐敗した無能な政権からロシアを守るどころか、ワグナー部隊自体がロシアののけ者となり、ロシア人の心には国家の存亡に大きな危険が迫る時にロシアを裏切った反逆者として永遠に残るだろう。要するに、ワグナー部隊はヒーローからゼロに転落することになるだろう。

 プリゴジンと彼の支持者、ワグナーの指導部および隊員、そしてソーシャルメディアの世界での共犯者が行った、ロシア憲法政府への攻撃は、まさに裏切り行為だ。もし次の一両日で何か極端なことが起こらなければ、ワグナー部隊が敗北するのは避けようがない。歴史の教科書は、ワグナー部隊の存在を、ロシアに対して裏切りを犯した組織として常に記録するだろう。しかし、ここで重要な点は、ワグナー部隊の反逆的な行動ではなく、ロシアの敵である特に英国およびアメリカの情報機関が、核保有国の政府を権力から排除するために具体的な武装蜂起を容認したという事実だ。ひとつ考えてみてほしい。もしロシアの情報機関がブラックウォーターのような組織を、バイデン大統領を権力から排除する目的でワシントンD.C.に進軍するよう積極的に共謀させたら、議会の中庭やホワイトハウスの内部で示される正義の怒りはどれほどのものだろう。

 それは、戦争行為となる、と言う人もいるかもしれない。

 ロシアの核戦略では、ロシア国家の存続に対する存在的な脅威に直面した場合、核兵器の使用が許容されている。

 もしCIAとMI-6がワグナー部隊のモスクワ進軍を容易にするためにプリゴジンを自分たちの陣営に勧誘したのであれば、それはロシアにとって実存的な脅威となる行動に直接関与していたことになる。

 ロシアは、その教義の下、核兵器を使った応答のあらゆる権利を持つことになるだろう。

 今朝、プリゴジンを応援している人々は、朝食を噛みしめながら、それを深く考えてみたらいい。

 なぜなら、もしプリゴジンが成功するようなことがあれば、明日はないのかもしれないのだから。


スコット・リッターは、 Scenes from the Evolutionのエピソード42(予定)で日曜日(6月25日)午後1時(米国東部時間)にこの記事について話し、また、Ask the Inspectorのエピソード77では、火曜日(6月27日)午後3時(米国東部時間)に視聴者の質問にも答えます。

国際原子力機関(IAEA)は、欧州最大の原子力発電所に関するウクライナの主張は虚偽であると明らかにした。

<記事原文 寺島先生推薦>
IAEA debunks Ukrainian claim about Europe’s largest nuclear plant
There are no mines at the cooling pond of the Zaporozhye NPP, the UN watchdog has said「ザポロージェ原子力発電所の冷却水用池には地雷はありません」と国連の監視団は述べている。
出典:RT 2023年6月22日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年7月1日



資料写真。IAEA(国際原子力機関)事務局長のラファエル・マリアーノ・グロッシが2022年9月1日にザポリージャ原子力発電所(ZNPP)を訪問© Sputnik/Konstantin Mihalchevskiy



 国際原子力機関(IAEA)の事務局長であるラファエル・マリアーノ・グロッシは、火曜日(6月20日)にウクライナ政府が主張したザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の冷却用水池に爆発物が仕掛けられたという主張を否定した。

 「IAEAは、冷却用水池の近くに地雷が設置されたとの報告は把握しています。今回の訪問中、冷却池を含む現地で地雷はまったく観察されませんでした」とグロッシはヨーロッパ最大の原子力施設(ZNPP)の状況に関する報告書で述べた。

 周辺地域の外側や「特定の場所の内側に」地雷はあった。が、それは防御のためだ、とザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の警備員が説明していた、とIAEAのトップ(グロッシ)は述べた。

 「それらの爆発物が配置されていたことに関する私たちは、ひとつでも爆発物が存在すれば、安全であるという評価しませんが、今回の調査の結果、この施設の主要な安全機能に重大な影響はないだろう、と判断しました」とグロッシは付言した。

 彼の報告書は、ウォロディミル・ゼレンスキーウクライナ大統領と彼の補佐官であるミハイル・ポドリアクが、ロシアは2022年3月以来支配している施設に対して「テロ攻撃」を準備していたと主張した後に出されている。




関連記事:ゼレンスキーからの「核テロを行った」との糾弾をモスクワは拒絶


 ウクライナの情報機関は、ロシアが「放射能漏れを伴うテロ攻撃」を計画しているとの情報を入手したと、ゼレンスキーは、木曜日(6月22日)の朝、ツイートで述べた。さらに、「世界は警告されており、世界は行動することができ、そして行動しなければならない」と付言した。

 ポドリャクの主張では、ロシアは「ウクライナの反転攻勢を止め、人の住まない衛生的な灰色地帯を作るために、ザポリージャ原子力発電所で大規模なテロ攻撃を考えており」、冷却水用池に地雷を仕掛けている、となっている。そして「世界全体」は「明日ではなく、今日」、その結果がどうなるかを告知すべきだと要求した。

 クレムリンの報道官であるドミトリー・ペスコフは、木曜日(6月22日)、ゼレンスキーの主張は「もう1つの嘘」と述べ、ロシアがIAEAと完全に協力していると述べた。モスクワは今月初めにカフコフカ湖ダムの破壊事件はキエフが関与していたと主張している。そして、これはザポリージャ原子力発電所の冷却水供給に対する潜在的な脅威となる、とIAEAは説明した。

 ロシアによれば、ウクライナは再三にわたりザポリージャ原子力発電所への攻撃を行っており、IAEAの視察団が現地へ向かう途中の2022年9月には奇襲攻撃未遂があった。直近の攻撃は6月9日で、ロシアの防空システムは発電所に向かっていた3機のドローンを撃墜したと報告している。

 ザポリージャ原子力発電所は6基の原子炉を有し、ドニエプル川の右岸に位置するエネルゴダルにある。現在、ロスアトム(訳注:ロシア国営企業)が待機モードで運転している。周辺地域は昨年9月に正式にロシアの一部となった。

ゼレンスキー、ロシアの書籍を禁止に

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky bans Russian books
The Ukrainian president has signed a controversial bill outlawing the import of Russian and Belarusian publications
ウクライナ大統領は、ロシアおよびベラルーシの出版物の輸入を禁止するという議論の多い法案に署名した。
出典:RT 2023年6月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月30日



ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキー © Getty Images / Carl Court


 ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーは、木曜日(6月22日)に、ウクライナにおけるロシア語とベラルーシ語の製品の輸入および流通を違法とする法律に署名したと発表した。ただし、一部のウクライナの政府関係者は、この措置がキエフのEU加盟計画に支障をきたす可能性があると指摘している。

 この措置は、ウクライナの市民が今年の5月に公式な大統領のウェブサイトでオンライン請願を登録し、禁止を求めたことに続いて行われた。その請願は、国家元首によって正式に検討されるために必要な2万5000票を超えていた。

 請願の起草者は、ウクライナ議会が既に2022年6月19日にその法律を承認したが、ゼレンスキー大統領がその法案に署名しなかったと指摘している。その結果、ロシアの書籍はウクライナで引き続き販売されており、「国家の情報安全保障とウクライナの出版業の経済基盤を損なっている」と請願では述べられている。

 「私はその法律を正しいと考えています」とゼレンスキーはテレグラムの投稿で述べ、ついにその法律に署名したことを発表した。

 しかし、彼は、この法律はEU機関に送られ、ウクライナのEU加盟申請の文脈で、キエフの少数民族の権利、特に言語の権利を保護する義務に違反する可能性があるかどうかの「追加査定」が行われていた、と語った。



関連記事:ウクライナは報道機関に「適切な用語」指針を送付

 先月の請願への書面での回答で、ゼレンスキーは、法律が採択されなかった理由として「いくつかの留保」があったことを説明した。

 (ゼレンスキー)大統領は、ウクライナの司法省が法案に拒否権を適用することを提案し、ロシアの出版物の輸入と流通を完全に禁止することは、ウクライナ憲法のいくつかの条項と矛盾すると主張していたと述べた。

 さらに、ゼレンスキーは、この法律の本質には賛成しているものの、ウクライナ外務省も法案に拒否権を行使するよう勧告していたと述べた。外務省は、この法案が現行ままだと「EUの人権、意見の自由、国民的少数派の権利保護、言語に基づく差別の禁止など、人権分野でのEUの規範や基準に合致していないため、ウクライナのEU加盟の交渉過程を複雑化する可能性がある」と警告していた。

NATOの訓練指導者たちの、ロシアに対する今月の反転攻勢で、ウクライナ軍を故意に死地に送った手口

<記事原文 寺島先生推薦>
Here's how NATO trainers knowingly sent Ukrainian troops to their deaths in this month's counteroffensive against Russia
Western computer-assisted battle simulations should have predicted Kiev’s huge losses
西側のコンピュータ支援戦闘模擬演習は、キエフの大損失を予測していたはず。
筆者:スコット・リッター(Scotto Ritter)
出典:RT    2023年6月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>    2023年6月27日



スコット・リッターは元アメリカ海兵隊情報将校であり、『ペレストロイカ時代の軍備制限: 軍縮とソビエト連邦の終焉』の著者です。彼はソビエト連邦でINF条約の実施に携わる査察官として勤務し、湾岸戦争中のシュワルツコフ将軍のスタッフであり、1991年から1998年まで国連の兵器査察官として勤務しました。
@RealScottRitter@ScottRitter


2023年3月13日、スペインのサン・グレゴリオで、ドイツ製のレオパルト2戦車で訓練を行うウクライナ軍の兵士たち©オスカー・デル・ポゾ / AFP


 ウクライナは、ロシア軍が支配する地域を奪還するため、待望の反転攻勢の一環として、今月はじめに最も優れた旅団の一つを戦闘に派遣した。

 ザポリージャ州のオレホフ近くで先陣を切ったのは、NATOの装備を備えた第47機械化旅団だ。そしていちばん重要なことは、この旅団は米国主導の連合軍の統合戦闘方針と戦術を使用していたことだ。この旅団は、作戦前数か月間、複合兵器戦術の「西側のノウハウ」を学ぶためにドイツの基地で過ごしていた。

 彼らの直前の戦闘への備えを支援したのは、KORAだ。KORAは、ドイツ製のNATOコンピュータ上の模擬演習体系で、将校や下士官が戦場の状況を忠実に再現し、それによって指定された敵であるロシアに対して最適な行動計画をより良く展開することを可能にするよう設計されている。

 ウクライナが、NATOの代理軍として特別に訓練した部隊がロシアの敵に対してどのように戦うかを示す典型的な例があるとすれば、第47旅団は理想的な事例研究だった。しかし、攻撃を開始して数日で、この部隊は文字通り壊滅状態になった。100台以上のアメリカ製M-2ブラッドリー歩兵戦闘車のうち10%以上が破壊または戦場で放棄され、旅団の兵士2000人中数百人が死傷した。ドイツ製のレオパルト2戦車や地雷除去車もオレホフの西の野原に残骸となり、ロシアの第一防衛前線を突破できなかった。この敗北の理由は、KORAが第47旅団の将校や兵士に誤った自信を与える役割を果たしたことに帰結する。ウクライナ人と彼らを訓練したNATOの訓練担当者たちにはわかっていたことだが、残念ながら、コンピュータ模擬演習でうまくいくことが必ずしも戦場での成功を意味するわけではない。



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 KORAは、ドイツ陸軍が開発した高度なコンピュータベースの合成戦争演習体系であり、旅団段階までの幕僚将校のための行動分析と計画を基にした実験を支援するために使用される。これは、米国陸軍のグラーフェンヴェーア訓練施設で行われる実地訓練を支援するため、NATOのコンピュータ上の戦争模擬演習に組み込まれた。グラーフェンヴェーアは、2023年1月から5月まで第47旅団を受け入れた。KORAは、架空の敵に対する戦闘模擬演習のための一般的な地形地図を生成することができるが、実際の地形と実際の戦力配備を使用して、実際の戦闘計画の準備を支援ために調整することも可能だ。

 間違いなく、KORAは47旅団の訓練に使用される際に、オレホフ地域のデジタル化された地図に、42機械化ライフル師団の部隊である291機械化ライフル連隊と70機械化ライフル連隊が占拠するロシアの防衛陣地を重ねて使用された。ウクライナ第47旅団の将校たちは、NATOの訓練担当者たちの支援を受けながら、ゲーム終了となる複数の現実の計画を予測したのだろう。その計画において、ウクライナ側はロシアの戦闘力と、戦場の結果を予測し、ロシアの防衛陣地を突破することが可能な最適な進撃軸を決定することができた。

 KORAが想定できるすべての軍事演習訓練の中で、要塞化された防御ラインの突破は最も困難だ。米国陸軍の教義では、突破攻撃の基本を教える際にSOSRA(抑制suppress、曖昧化obscure、確保secure、破壊reduce、攻撃assault)という覚えやすい語句を用いる。これらの各要素は、それぞれ別々のKORA下位形態を必要とし、それぞれの任務要件を模擬演習するよう特別に設計されているはずだ。しかし、実際には、ウクライナ軍がこれらの任務を遂行するために必要な資源が不足していたため、SOSRAの基本的な訓練を適切に行うことはできなかった。

 たとえば、「抑圧」を取り上げよう。米国陸軍によれば、「抑圧は、敵の人員、武器、または装備に対して直接または間接の火力または電子攻撃を行い、敵の射撃と友軍の観測を防止または低下させるために使用される戦術的任務」とされている。KORAは、適切な制圧モデルを作成するために、主な模擬演習を支持するために少なくとも4つの下位形態を使用する必要がある。これには、航空妨害、対空防御、電子戦、そして砲撃などが含まれる。しかし、ウクライナは攻撃的な航空能力を持っておらず、ロシアによる敵の対空防衛(SEAD)作戦の体制化のため、第47旅団などの部隊が組織化および運用される前方運用地域は、ロシアの航空力に対してほぼ無防備の状態に置かれた。モスクワの砲兵および電子戦の優位性は、同様に、ウクライナがこれらの資源を使用することで想定していた戦術的な優位性を無効にした。突破作戦中の抑圧の目的は、障害物を削減し、機動する任務を帯びた部隊を保護することだ。米国陸軍の教義文書によれば、「抑圧は、突破作戦中に実施される任務成否に関わる極めて大事な要素だ。抑圧は通常、障害物に向かう他の行動の引き金となる」。要するに、適切な抑圧がなければ、攻撃全体は失敗するということだ。



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 論理的に見れば、KORA模擬演習体系の責任ある使用によって、47旅団の攻撃失敗は予測されていただろう。ワシントンポスト紙の記事によると、47旅団の将校たちは「攻撃を計画し、それから[KORA]プログラムが結果を示すのを待った。具体的には、ロシアという敵がどのように反応するか、どこで突破口を作り、どこで損失を受けるか、についてだ」と書かれている。KORA模擬演習によって、ウクライナの将校たちは自分たちの行動を調整し、「戦場でどういう共同行動ができるかの(事前)試験」が可能だった。ウクライナの軍事力は抑圧という任務成否に関わる重大な要素を遂行するには十分ではなかったため、ウクライナ軍は突破作戦における実際の攻撃要件、つまり突破すべき障害物の反対側にいる敵軍の破壊を達成することなど土台無理だった。それにも関わらず、ウクライナ軍はKORAの演習経験から、オレホフおよびその周辺のロシアの防御を打破することができる勝利の計画を練り上げたと自信を持っていたのだ。

 KORAベースの模擬演習の構造を検証すると、このシステムは模擬演習全体を定義するのにさまざまな入力に完全に依存していることがはっきりする。模擬演習がどんな展開になるかは、すべて、訓練担当者が入力する変数によるのだ。訓練担当者が専門的な誠実さを持って模擬演習を実施することを期待するしかない。ただし、NATOの訓練担当者と訓練を受けるウクライナ将校たち双方にレミング自殺志願があれば話は別だ。ウクライナ軍を攻撃に同意させるためには、重要なデータポイントの大幅な修正と変更が必要であったはずだ。

 攻撃側の力は、往々にして誇張されることもあるが、実際の能力をある程度は反映しているだろう。そうでなければ、ウクライナ軍が完全に妄想的であったと言わなければならなくなる。訓練中の彼らの「学習曲線」を見れば、妄想的にはなっていない。しかし、KORAのプログラミングに使用される決定的に重要な要素の1つは、個々の部隊の行動ルールを確立するために使われる「行動因子」(KORAの設計者がそう呼んでいる)だ。NATO訓練者たちが訓練を受けるウクライナ軍将校たちに対して最も失敗した可能性は、おそらくここにある。

 オレホフ進撃軸は、ロシア第42自動車化狙撃師団の291自動車化狙撃連隊と70自動車化狙撃連隊の間の隙間を利用するために設計された。NATO訓練者たちによってプログラムされた「行動因子」は、ロシア兵、特に70連隊の兵士を、訓練不足で指導力に欠け、装備も不十分で意欲も低いと扱っているようだ。つまり、ウクライナが最も基本的な抑圧任務を遂行するのとは程遠い部隊しか編成できていない、という現実を補うために、NATO訓練者たちは抵抗するロシア兵たちの意志はきっと崩れ去るだろうと予測することで対処したのだ。NATOが強調する「行動因子」は、モンティ・パイソンの映画『聖杯を探せ』での円卓の騎士団と「殺人ウサギ」との有名な遭遇から派生しているように見える。「逃げろ!逃げろ!」しかし、現実のロシアの防衛側の反応はまったく逆だった。戦争研究所によると、ロシア軍は「ウクライナの攻撃に対してふさわしくない(ママ)程度の一貫性を持って応答し」、オレホフの南西でウクライナの攻撃を撃退する際に「彼らの正式な戦術防御教義」を実行した。

 実際は、ウクライナ軍はオレホフ周辺のロシアの防衛陣地に接近することさえできず、それらを突破するなど夢のまた夢だった。この失敗の原因は多岐にわたる。第47旅団が使用していた西側の装備に不慣れであったこと、戦術計画の不備、そして何よりも重要なのは、ウクライナ軍がロシアの砲撃、電子戦能力、および航空力の抑圧に失敗したことだ。これにより、特に密集した地雷原を含むロシアの障害物帯の戦術的な突破は不可能となった。これらの失敗は予測可能であり、それらを訓練段階で克服するには、NATO訓練者たちは望ましい結果を得るために、熟慮してKORAシステムを操作する必要があった。

 要塞化された陣地に対する攻撃の準備におけるコンピュータ上の模擬演習の役割について、私はある程度の権威を持って話すことができる。1990年10月、私は海兵隊本部からの指示により、新たに調達されたJANUS戦闘および戦術構築模擬演習システムを使用して、サウジアラビアに展開している海兵隊作戦計画立案者を支援するためにコンピュータ上の模擬演習を実施する任務を与えられた。その任務は、クウェートとイラクの国境におけるイラクの防御陣地を突破するというものだった。海兵隊は陸軍のノーマン・シュワルツコフ将軍からの命令で、イラクの防御陣地に対して二師団規模の正面攻撃を行うことになっていた。この攻撃は、「確定行動」として計画され、バグダッドが主要な攻撃に対応して部隊を転用することを防ぐために行われるものだった。アメリカ陸軍が主にイラクの西側を攻撃することになっていた。

 ペルシャ湾の海兵隊司令官であるウォルト・ブーマー将軍は、バージニア州クアンティコにある海兵隊戦闘訓練センターの所長であるマシュー・コールフィールド中将に、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を使用してイラクの防御陣地の中で海兵隊の突破攻撃作戦に最も有利なセクターを選ぶための支援を求めた。1990年9月、私は上陸戦闘学校から抜擢され、海兵隊総司令官であるアル・グレイ将軍によって編成された臨時のチームの計画支援を担当した。このチームは、シュワルツコフ将軍が推進していた正面攻撃に代わる選択肢を設計するために組織された。この取り組みの結果、アル・ファウ半島に対する陸軍規模の上陸攻撃が提案され、グレイ将軍に承認されたが、最終的にはシュワルツコフ将軍によって拒否された。これ、海兵隊は密集したイラクの防御陣地に対する自殺的な攻撃をどこで行うか、という問題に立ち戻ることとなった。



関連記事:私が2003年の米国内によるイラク侵攻をどう阻止しようとした方法と、なぜそれがうまくいかなかったかの理由

 私はアル・ファウ計画の主要な策定者の一人として、クアンティコの空気感の希薄な環境の中で、特に、私が大尉という若手だったこともあり、かなり注目を浴びていた。コールフィールド少将は私に、JANUSシステムを使用して、ブーマー将軍の海兵隊がイラクの防御陣地を突破するために使用できるさまざまな選択肢を模擬演習するように命じた。私自身はJANUSやコンピュータ化された模擬演習について何も知らなかった。幸運なことに、私にはJANUSを使った訓練を受けた経験豊富な下士官のチームがおり、彼らはコマンド・スタッフ大学の学生たちを訓練するためにJANUSを使用していたのだ。それでも、JANUSは海兵隊にとってまだ新しいものだった。

 私のチームがJANUSにプログラムするために必要なさまざまな入力についての簡単な説明を行った後、私はCIAから詳細な航空写真の収集を開始した。これにより、海兵隊が突破する予定の防衛施設の正確な地形図を作成することができた。また、NSAに依頼して、防衛施設を占拠する部隊の詳細な戦力状況や戦闘の経歴、成果、そして指導者に関する情報を入手した。私は海兵隊の突撃を指揮する予定の部隊についても同様のデータを収集するように部下の海兵隊員に指示した。その後、慎重にJANUSコンピュータにプログラムを組み込み、「エンター」キーを押した。

 結果は惨憺たるものだった。海兵隊はイラクの防衛施設に到達する前に殲滅されたのだ。

 私は部下の海兵隊員たちとひざを突き合わせ、データを分析した。2つのことが明らかになった。まず、私たちはイラクの能力を過大評価し、海兵隊の抑制行動を過小評価していた。しかし、私はシステムを単なる「操作」にすることは認めなかった。私は海兵隊員たちと協力して、イラクの能力を低下させるために必要な行動と、海兵隊が抑制しながら突破任務を遂行するために必要な資源をはっきりさせた。1か月以上にわたり、私たちのチームは繰り返し模擬演習を実行し、学んだ教訓を評価するために一時停止し、JANUSシステムにデータを適切にプログラムする手間のかかる作業に着手した。最終的に、11月初旬にうまく機能する解決策が得られた。マシュー・コールフィールド少将は最終的なJANUS模擬演習の「概念的証拠」全体に目を通した。その後、彼は私に報告書の準備を命じ、それをブーマー将軍に送った。

 私の軍歴で最も誇りに思っていることの一つは、私と私のチームが行ったJANUS模擬演習によって、「砂漠の嵐」作戦で海兵隊の突破攻撃作戦がほぼ予測通りに展開したという事実だ。戦後、マシュー・コールフィールド少将は私たちチームと私を成功した海兵隊の攻撃の設計に大いに貢献したと認め、その過程で数百人の海兵隊員の命を救ったと評価した。私たちは、拙速を拒否し、望ましい結果を達成するために時間の経過に応じて適切な軍事的戦闘力を適用することについて現実的な考え方を持つことで、この結果を達成した。

 せめてNATOの訓練担当者たちが、私が上で述べた基準を守っていたならば・・・。彼らはウクライナ第47機械化旅団や他の多くのウクライナ旅団の兵士たちを、わかっていて、死地(しち)に送り出したのだ。彼らはウクライナとロシアの軍事力の格差を考慮すれば、克服不可能な防衛線を突破しようとする無駄な試みにウクライナ兵士たちを送り込んだのだ。彼らがちゃんとやることをやっていたなら、亡くなった夫や父親を悼むウクライナの未亡人や孤児となった子供たちの数ははるかに少なくなっているだろう。これは、KORAとJANUSが歌うバラードから得られる第一の教訓だ。NATOもアメリカ合衆国も、戦争という恐怖の技術を訓練することを引き受けたウクライナ人の命について、まったく無頓着なのだ。

 共和党の上院議員リンジー・グラハムが、ウクライナとロシアの紛争についてキエフが兵站物資の尽きるまで続けることを望むのは、明らかに彼だけではない。今月初めのオレホフの結果から判断すると、「最後のウクライナ人まで」というのがNATO全体の戦闘の叫びのように思える。

放射性同位体の密輸犯を摘発―ロシア連邦保安庁

<記事原文 寺島先生推薦>
Smugglers of radioactive isotope busted – FSB
A group allegedly offered $3.5 million for a kilogram of Cesium-137, which the buyers wanted to use to later frame Russia in Ukraine
あるグループは、情報によると、後々、ウクライナでロシアを陥れるために使用するセシウム-137の1キログラムに対して350万ドルを提供していた。
出典:RT 2023年6月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月26日

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* 訳者:動画は原サイトでご覧下さい。

 ロシア連邦保安庁(FSB)は、放射性同位体セシウム-137の密売人グループを逮捕したと報告した。この作戦が成功していた場合、この危険な物質がウクライナの紛争地域でロシアに対する挑発的な事件に使用される可能性があると同庁は主張している。

 声明によると、ロシア連邦保安庁(FSB)は内務省の職員の支援を受けて、5人を拘束した。グループは「ウクライナ市民の協力のもとに行動しており」、1キログラムの製品に対して350万ドルを喜んで支払おうとした。

 ロシア連邦保安庁(FSB)が公開した映像には、その場面が映っている。買い手たちは重い箱(車のトランクに入れるのに4人の男が必要)と一緒に映っている。その後、職員たちが逮捕に乗り込んだ。映像の一部は関係者の顔を隠すためにぼかされている。

 ロシアでセシウム-137を調達しようとしたこの外国人グループは、「大量破壊兵器の使用を演出することで、国際的にロシアの信用を失墜させる情報・プロパガンダキャンペーンを実施するために使用するつもりだった」と声明は述べている。

 セシウム-137は、原子炉や核爆発を含む核分裂反応でのみ生成される。その人為的な性質と広範囲にわたる容易な拡散能力を利用して、科学者はその放射性崩壊生成物を調べ、原子力時代以前の物体の正確な年代を特定することができる。また、セシウム-137は放射線治療やガンマ線センサーの調整にも使用される。

 この同位体は比較的長い30年という半減期で、セシウム-137塩は水に容易に溶解するため、深刻な汚染リスクとなる。

プーチン、ウクライナ反転攻勢の損失を明示

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin reveals Ukrainian counteroffensive losses
Kiev has almost run out of its own war materiel and is heavily reliant on deliveries from abroad, the Russian president has said
キエフは自国の戦争資材をほぼ使い果たし、外国からの供給に大きく依存していると、ロシアの大統領は述べた。
出典:RT   2023年6月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年6月25日


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ウクライナのザポロージェ州でロシア軍によって破壊されたウクライナのレオパルド2戦車と何両かのブラッドリー戦闘車両 © ロシア国防省


 ウクライナは、ロシア軍に対する反転攻勢作戦中に、既に600以上の装甲車両(その中には186台の戦車も含まれている)を失っていると、ウラジミール・プーチン大統領は金曜日(6月16日)に開催されたサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)で述べた。

 「彼らの損失は甚大です。ロシア軍に比べて10倍以上です。それは事実です。装備に関しては、毎日、次のような機材の損失が増加しています。現時点で、ウクライナ軍は戦車186両と装甲車418両を失っています」とプーチンは、現在のウクライナ軍の作戦に言及しながら語った。

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関連記事:ウクライナの襲撃、1日で10回撃退 - モスクワ

 プーチンによると、キエフは反転攻勢のために戦略資材を投入しているが、いかなる目標も達成できていない。ウクライナ独自の戦争資材の急速な枯渇しているので、ウクライナは外国からの供給に完全に依存する必要があるとプーチンは示唆した。

 「そのような状況で長く戦争を継続することはできません。反面、我々の防衛産業は日々成長しています」と彼は付言した。

 ウクライナは6月4日に大規模な反転攻勢に乗り出した。その前にキエフとその西側支援者たちは、数ヶ月にわたってこの作戦をさんざん宣伝していた。モスクワはこの作戦によりウクライナ軍に大きな損失が生じ、わずかな戦術的利益しか得られていないと主張している。キエフは、大方は、口をつぐんでおり、ロシア軍は「非常に厳しい抵抗を示している」とウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーが認めているだけだ。

ウクライナの反転攻勢の2週目は失敗

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian Counteroffensive’s Second Week Ends in Failure
筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年6月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月24日


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 長い間待ち望まれ、大いに宣伝されたウクライナの反転攻勢が2週目に入っている。戦闘は続き、しばらくは激しい戦闘となるだろうが、いくつかの結論は導き出すことができる。

 まず第一に、反転攻勢戦略は失敗した。ウクライナ軍にはまだかなりの戦闘力が残っている。その中には、過去8ヶ月間にウクライナが徴集しNATOが訓練、そしてNATOの装備を着用した6万人以上の兵隊たちの75%以上が含まれる。しかし、ウクライナとそのNATOの同盟国が勝利を期待し、その基礎となる力の質についての根本的に誤った仮定は白日の下に晒された。要するに、ウクライナにはロシアの防御を克服するための軍事的な能力が不足しているということだ。

 ウクライナ最高の特殊部隊は、最新の西側軍事技術を装備していたが、ロシアの防御戦略による「カバー」と呼ばれる防御ラインを突破することに失敗した。この防御ラインは攻撃してくる部隊が防御の「正面」ラインに到達する前にその攻撃の流れを変え、妨害するために設けられた緩衝区域だ。

 ウクライナ側の損害はとてつもなく大きく、ロシア兵士の戦死者数は(ウクライナと比べて)10分の1だ。これは、ウクライナ側から見て、持続不可能な状況だ。ウクライナの失敗の原因は根本的なものであり、現状では克服することができない。そのため、ウクライナ軍はどれだけ攻撃を続けても成功の見込みは全くない。

 真っ先に指摘すべきなのは、ロシア側の防御の質の高さだ。特に、障壁ネットワーク(地雷原、障害物、塹壕)が挙げられる。ロシア防御陣営の頑強さ、ロシアが火力支援(砲兵および航空)の面で圧倒的な優位を持っていること、この2つが組み合わされば、ウクライナ軍がロシアの防御の「カバー」層を超えて進撃するなどとてもできない。ウクライナの装備と戦術では、ロシアの障害物を意味ある方法で突破することはできない。攻撃部隊はロシアの砲兵および航空攻撃、さらにはロシア特殊部隊による現地での反攻によってバラバラに破壊される運命にある。

 拙い戦術と装備の不足に加えて(そう、Leopard戦車やBradley戦闘車は、ウクライナと西側支援者たち誇大宣伝したほどの奇跡の兵器ではない)、ウクライナはもう何週間も続いている、ロシアによる鮮やかな敵防空制圧(SEAD)作戦の代償を支払っている。ロシアは前線をはるかに超えたウクライナ側の戦略目標を無力化したばかりでなく、実際の紛争地域に意味ある防空能力を展開する能力をも無力化している。これに加えて、実質的な航空戦力も欠如しているので、攻撃するウクライナ陸軍は空からロシアの全面攻撃に晒される結果となっている。

 ロシアの固定翼機は、ウクライナが攻撃部隊を戦場に送る前に集結させる地点に対し、致死的な効果を持つ精密誘導兵器を搬送することができている。推定では、ウクライナの死傷者の25〜30%がこれらの攻撃から発生しているとされている。ロシアのヘリコプターは、接触地域で活動するウクライナ軍に対して対戦車誘導ミサイル(ATGM)を使用し、ウクライナ兵士を死亡させている。ロシアの徘徊兵器(いわゆる「神風ドローン」)もウクライナ軍に多大な被害をもたらしている。ウクライナが戦場の後方地域および前線において、ある程度の防空能力を再び発揮し、ロシアの航空優位に挑むことができる航空戦力を展開しなければ、ウクライナ陸軍の勇気と戦術的革新がいくらあっても、現在の戦争に蔓延している致死的な結石を変えることはないだろう。

 ウクライナとロシアの紛争が続く中での多くの悲劇の一つは、ウクライナが戦場で行う多くの行動が軍事的必要性ではなく政治的な要請によって決定されているという事実だ。最近終結した数ヶ月にわたるアルテモフスク(バフムート)の戦いはその一例だ。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ほとんどの軍事専門家が最小限の戦略的軍事価値しか持たないと考えていた町の戦いに大量の人員と装備を注ぎ込むと言い張った。しかし、戦闘の範囲と規模を決定したのは地理的な要因ではなく、ウクライナ軍は粘り強く防御できるとの思い込みだった。その結果、6万〜7.5万のウクライナ兵士が、敗北とわかっている戦闘で命を落とした。

 同様に、ウクライナ軍は、上で詳述したように、ウクライナの敗北が決まりきった状況で、準備の整ったロシアの防御に対して自殺攻撃を行うよう求められている。今回の罪人は、ウクライナのNATOの同盟国だ。彼らは年次サミットの前夜であり、彼らがウクライナ軍に共同で何十億ドルもの投資をしてきたことが、たとえ基本的配当金しかもたらさないとしても、その微かな兆候でも見えないかと必死だ。そのため、NATOはウクライナに敗北を倍増させるような圧力をかけ続けるだろう。そして、ロシアに対しても攻撃的な圧力をかけるのだが、そうやって得られる獲得物は、たとえ実際に得られるとしても、それは割に合わないものであり、長期的には持続可能なものではないだろう。

 現実には、NATOが7月11日にヴィリニュスで集まる時、ロシア側はNATOによって構築された第三のウクライナ軍を破壊する過程がかなり進んでいるだろう。最初のウクライナ軍は、2015年から2022年までのミンスク協定による外交的「ごまかし」で与えられた緩衝地帯の中で編成された。この26万強の軍は、2022年6月までにほとんど壊滅した。2番目の軍は、数千の外国傭兵に支えられた新たに訓練・装備されたウクライナ兵8万人で構成されており、これはNATOによって提供された数百億ドルの軍事援助で出来上がった部隊だ。この軍は2022年秋ウクライナの反攻で成功を収めた。しかし、その後の陣地戦(バフムートの虐殺を含む)でほぼ殲滅されている。

 現在、6万人の12個旅団から成るウクライナの反攻部隊―繰り返しになるが、これも数百億ドルの軍事装備(現代的な西側の戦車、砲兵、歩兵戦闘車を含む)の結果だ―は、ロシアに対して行動を起こしているが、おそらくNATOのサミットが開催される頃には破壊されているか、破壊の危機に瀕しているだろう。NATOが直面している第一の問題はこうだ:「NATOは第四のウクライナ軍を編成するための政治的、経済的、軍事的な能力を持っているのか?それが消滅した後、第五、第六、さらにその先を編成することができるのか?」

 NATOはロシアとの代理戦争を「ウクライナ人兵士が最後の一人になっても」戦い抜くことを政治的に約束している。この悲劇的な現実が意味するのは、ウクライナの戦場の現実に関係なく、NATOが単純に政治的な面目を国内外で失うことをよしとしないため、ウクライナに対してその兵士たちを犠牲にすることを継続的に要求している、ということなのだ。

 ただし、この政治的な意思は、経済的または軍事的な目標を自動的に持ち続けられることになるというわけではない。

 合同参謀本部議長であるアメリカのマーク・ミリー将軍の最近の声明によれば、アメリカとNATOの訓練「パイプライン」に数万人のウクライナ兵士が参加しており、これらの兵士に装備するのに十分な装備品を集めている。しかし、これらの兵士が戦闘に参加できるようになるのは数ヶ月後であり、そのはるか以前に第三のウクライナ軍はすでに戦場で運命を迎えていることになる。

 ミリーは、ウクライナへの新しい防空システムについて語った。また、他のNATOの高官たちもウクライナに(古い)F-16戦闘機を提供する可能性について言及している。しかし、新しい防空システムそれだけでは、ロシアが戦略的な敵防空制圧(SEAD)による勝利を通して、ウクライナに課した軍事的現実を変えることはできない。ウクライナは単にロシアの航空優位に対して敗北を続けることになる。同様に、ウクライナに提供される可能性のあるF-16戦闘機も同様だ。それは機数が少なすぎるし、手遅れであり、また、意味ある戦場での結果を達成することはできない。

 ヴィリニュスでは、NATOはウクライナにおけるロシアへの対抗において、軍事同盟としての無力さの現実と直面することになるだろう。現時点では、どのような有能な軍事アナリストであっても、ウクライナが単純にロシアに勝利することは不可能であることを知っているはずだ。さらに、NATOがウクライナを無限に武装させようという狂気じみた欲望を駆り立てる「凍結紛争」という幻想は、ロシアの経済力とその潜在力、ロシアの軍事的熟練度、そしてロシア人民のこの紛争を続ける意志に関して、根本的に誤った評価によって引き起こされている。

 NATOがウクライナで戦略的に失敗した根本的な原因は、現在のロシアの現実についての完全な無理解だ。ロシアは、軍事技術の観点からNATOを上回る生産能力を持つことができるだろう。それはNATO加盟国が戦時経済に完全に移行するまでのことだ。しかしながら、NATO加盟国にはそうするために必要な政治的意志も経済的手段もない。

 ロシア軍は、特殊軍事作戦の初期段階で悩まされた不備をほとんど克服しており、特殊軍事作戦地域に集結するロシア軍は、高度な訓練を受け、適切な装備を備え、割り当てられた任務のための訓練が適切に施されている。さらに、ロシア国民は、ロシアのウクライナに対するNATOの代理戦争が実存的なもの(=生きるか死ぬか)であり、そのような意味でロシアは、負けることのできない戦いであるという信念のもと、ロシア大統領ウラジミール・プーチンの指導の下、圧倒的な団結を誇っている。

 ヴィリニュスサミットの直後ということもあって、NATOは今までのやり方を変えることはないだろう。ウクライナの現在の軌道を実質的に変えることは、政治的な勢いが強すぎるために不可能だ。だからと言って、NATOはウクライナで勝利の処方箋を生み出すこともないだろう。むしろ、NATOはこれまで掲げてきた課題の変形に過ぎないものを追求し続けるだろう。つまり、ウクライナが戦いを続ける限り戦闘を維持できるようにウクライナを武装させる、というものだ。

 NATOは、ロシアに対する地政学的な立場の弱体化を救うために、何らかの面目を保つ仕組みを急いで構築することになるだろう。それがどのようなものになるかは現時点では分からない。しかし、ひとつだけは確かだ。つまり、NATOは今日のウクライナ紛争から出口道へ出ることを考えようとはしないため、明日のウクライナに未来はないということ。NATOの政治的プライドが、ウクライナの国家、軍事力、そして国民を滅ぼし、破壊することになるだろう。これは確かだ。

ロシア軍がウクライナの「意思決定センター」を攻撃 – ロシア国防省

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia strikes Ukrainian 'decision-making center' – MOD
The attack was a success, and the intended facility was hit, Russia’s Defense Ministry says
攻撃は成功し、目標施設に命中―ロシア国防省
出典:RT  2023年6月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月24日


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資料写真:ロシア軍艦がウクライナの武装施設向けてカリブル巡航ミサイルを発射© スプートニク / ロシア国防省

(訳者註:動画は原サイトからご覧下さい。)

 金曜日(6月16日)に行われたロシアのミサイル攻撃がウクライナ軍の司令センターを直撃した、とロシア国防省が発表。

 ロシア軍は「海上および空中の遠距離精密兵器を使用し、ウクライナ武装部隊の意思決定施設の一つを攻撃した」とロシア国防省は土曜日(6月17日)の声明で述べた。

 「この攻撃の目的は達成されました。目標とした施設に命中しました」とだけで詳細は何もない。

 ロシア国防省は、ウクライナの「意思決定センター」への攻撃として、戦艦からミサイルが発射される様子を撮った短い映像を公開した。

 ロシア軍は以前、2023年5月末にウクライナの「意思決定センター」に対する攻撃を報告している。それはモスクワで大規模なドローン攻撃があり、数軒の住宅が被害を受け、2人が軽傷を負った直後のことだった。国防省は当時、「西側の情報機関の専門家の指導のもと、ロシア領土へのテロ攻撃が計画されている」ウクライナの施設を攻撃したと述べた。

 そして、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、標的とされた建物の1つがウクライナ軍の主要情報局(GUR)の本部であることを確認した。「私たちは『意思決定センター』を攻撃する可能性について話し合ってきました。もちろん、ウクライナ軍事情報本部はそのようなカテゴリーに該当し、2、3日前に攻撃しました」と彼は述べた。

プーチンは、ウクライナの中立性に関する草案条約の詳細を明らかにした。

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin reveals details of draft treaty on Ukrainian neutrality
The Russian president has shown the documents from the failed peace negotiations with Kiev
(プーチン)ロシア大統領は、キエフとの失敗に終わった和平交渉の文書を提示した。
出典:RT  2023年6月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月24日


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ロシア大統領ウラジミール・プーチンが2023年6月17日にサンクトペテルブルクでのイベントで文書を示す様子。© パベル・ベドニャコフ/スプートニク


 2022年3月の和平交渉でモスクワとキエフが安全保障とウクライナの中立性の一般的な条件で合意したが、キエフがその後、代表団が既に署名した文書を突然破棄した、とロシアのプーチン大統領は、土曜日(6月17日)、語った。

 サンクトペテルブルクでのアフリカの指導者グループとの会議中、プーチンは、ロシアとウクライナの使節が1年以上前にトルコで議論していた草案文書を初めて公開した。

 プーチンによると、ウクライナの代表団が署名したとされる「ウクライナの永久中立性と安全保証に関する条約」と題された文書が存在する。

 草案では、ウクライナは「永久的な中立性」を憲法に明記しなければならないと取り決められている。ロシア、アメリカ、イギリス、中国、そしてフランスが保証国として記載されている。




 プーチンが示した草案の附則では、平時のウクライナの常備軍の規模や装備について、ロシアとウクライナ双方の提案が、詳述されている。モスクワは軍人の数を85,000人、国家警備隊の人数を15,000人に制限することを提案。一方、キエフは自国の武装部隊を最大で250,000人にすることを提案した。

 モスクワは、ウクライナが342輌の戦車、1,029輌の装甲車両、96基の多連装ロケット発射機、50機の戦闘機、および52機の「補助」航空機を保有することを提案。一方、キエフは800輌の戦車、2,400輌の装甲車両、600基の多連装ロケット発射機、74機の戦闘機、および86機の「補助」航空機を保有するという意見だった。

関連記事:ウクライナ紛争に関するプーチン大統領とアフリカ諸国首脳との会談の要点

 双方は、ウクライナの迫撃砲、対戦車兵器、対空ミサイルシステムなどの装備についても制限を設ける提案を交換した。

 交渉は2022年の春に実質的に決裂。その直前、ウクライナ当局はロシア軍がキエフ周辺のいくつかの小都市で市民を殺害したと非難している。この告発は、当時クレムリンが「善意の印」としてウクライナ首都周辺の地域からロシア兵が撤退した直後になされた。モスクワはその後、ウクライナでの残虐行為を繰り返し否定している。

 土曜日(6月17日)の発言でプーチンは、ウクライナが交渉を破綻させた責任があると述べた。「私たちが、約束通り、キエフから兵士を引き揚げた後、キエフ当局は・・・(彼らの約束を)歴史のゴミ箱に捨てました。彼らはすべてを捨て去りました」と彼は語った。

 「彼らが将来の合意から逃げないという保証はどこへ行ったのか?しかし、そのような状況でも私たちは交渉を拒否したことは一度もありません」とプーチンは語った。

 南アフリカ、セネガル、そしてザンビアの大統領およびエジプトの首相を含むアフリカ代表団は、金曜日(6月16日)にキエフでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談の後、モスクワに到着した。南アフリカのサイラムポサ大統領は、敵対行為を終結させるための、9点からなるロードマップを提示し、両国に緊張緩和を呼びかけた。

 一方、ゼレンスキーは、交渉はモスクワが2014年にロシアに加入したクリミアと、2022年9月の住民投票により同様の決定を下した他の4つの地域を放棄することで始めることができる、とのキエフの立場を繰り返した。一方、プーチンは土曜日(6月17日)に、ロシアが領土を獲得したことは「国際法と国連憲章の観点から見て完璧だ」と主張した。彼はまた、2014年のキエフのクーデターに反対したドンバスの人々を保護するために介入する権利をロシアは持っていると付言した。

 ウクライナは昨年、中立の可能性に関するすべての議論を放棄し、その後正式にNATOへの加盟を申請した。

ウクライナが古い墓を掘り起こし、現在の戦死者を埋葬している – NYT紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine exhuming old graves to bury today's dead soldiers – NYT
Russia insists the West is conducting a proxy war “to the last Ukrainian”
ロシアの主張では、西側は「最後のウクライナ人まで」の代理戦争を展開している。
出典:RT  2023年6月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月24日


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資料写真:リヴィウにおける軍隊葬© Pavlo Palamarchuk / Anadolu Agency via Getty Images


 ウクライナの墓地は、戦線で死亡した兵士たちの遺体で埋まりつつあり、そのために当局は時には古い墓を掘り起こして新たに亡くなった人々のための墓地を確保しなければならない、とニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は報じている。ロシアは、キエフに武器を供給することで、西側諸国がウクライナ人への戦争の被害を増大させていると警告している。

 月曜日(6月19日)、NYT紙は、ウクライナ西部の都市リヴィウで「一見数え切れないほどの葬儀」が行われている、と報じた。墓地に新たな墓が増えるごとに、戦線での損失の大きさを、地域社会は感じている、とも。

 ある墓地の管理人は、昨年2月の戦闘行為の開始以来、彼女が管理している軍の埋葬地の数がほんの少しから約500に増えたと同紙に語った。新たに亡くなった人々のための墓地を確保するために、第一次世界大戦の記名のない墓の掘り起こしを管理部門が決定したと、彼女は付言した。

 今週の別の例では、ウクライナ西部の地域都市であるイヴァノ=フランキウシクの市長は、市の墓地を訪れる人々が自転車や電動スクーターを借りることができると発表した。ルスラン・マルツィンキウ市長は、このサービスは、急速に拡大する墓地内での移動が困難な遺族からの苦情に対する市政府の対応策であると述べた。


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 ウクライナとロシアの両国は、自国の前線での損害を公表せず、お互いに相手方の被害が報告されている以上のものであると主張している。キエフは現在、西側諸国から供給された戦車やその他の軍事装備を使い、ロシアの防御陣地に対する反攻を展開している。しかし、この攻勢は、報道によれば、大きな犠牲を伴い、重要な領土の獲得は達成されていない。

 モスクワは、アメリカとその同盟国がNATOの生産基盤施設をウクライナに移動し、ロシアの国家安全保障を脅かしたことにより、最初にこの武力紛争を引き起こした、と非難している。

 モスクワの政府関係者は、キエフに武器を供給しているとされる西側諸国が、紛争の最初の数か月に和平協定を締結することを阻止し、ロシアに対して「最後のウクライナ人まで」の代理戦争を展開していると主張している。ロシア政府は、どんな犠牲を払っても自国を守る決意を持っていると述べた。

ウクライナの宣伝マシーンはゼレンスキーにとって最重要:それはどのように機能してきたか

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine's propaganda machine is vital for Zelensky: Here is how it works
Kiev is waging an extensive information war against Russia and it began long before the military conflict
キエフはロシアに対して広範な情報戦を展開しており、それは今回の軍事紛争よりもずっと前から始まっていた。
筆者:ピーター・ラブレニン (Peter Lavrenin)
出典:RT  2023年6月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月24日


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欧州評議会サミットの大型スクリーンに映し出されているウォロディミル・ゼレンスキーウクライナ大統領© Getty Images


 ロシアとウクライナの紛争は、戦場での軍事力の衝突だけでない。情報と心理、認識と意味論の分野でも前例のないほどの対立が繰り広げられてきた。

 キエフは、地上での成功よりも情報戦の面でより多くの成果を上げてきたことはほぼ確実だ。そこにおいて「戦士たち」は単なるジャーナリストや情報・心理戦の専門家だけでなく、コンテンツ制作者やPRの専門家でもある。一般の人々の心理、考え方、そして感情に影響を与えることは重要な課題となっており、西側の世論形成はウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキー政権にとって最重要事項だ。

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戦争の象徴

 広告やPRに精通している人なら誰でも、製品をカラフルで記憶に残るシンボルやスローガンと結びつけることが、人気を高めることを知っている。とくに注意力が長く続かない時代において、そうだ。戦時中には、広告や選挙キャンペーンと同じ戦略がニュースにも効果的だ。

 今回の紛争では、ウクライナはシンボルを作り出すことに非常に長けている。メディアは即座に人気のあるシンボルを取り上げ、それを利用して普通のウクライナ人の心構えに影響を与えるようにしている。

 以下は最近の例だ。5月、ウクライナ武装軍(AFU)のアルテモフスク(バフムート)での非常に困難な状況や、複数の解説者(とくに元ゼレンスキーの顧問であるアレクセイ・アレストヴィッチなど)の発言:「軍はまもなく撤退する可能性がある(結局、撤退することになった)」があったにも関わらず、ウクライナ社会は全く心配せず、AFUが市内の制圧能力を完全に保持できるという信念を持っていた。

 実際に、市民の戦いに対する態度は主にメディアによって形成された。例えば、年初にロックバンド「Antytila」(アンチボディ)が「Bakhmut Fortress」という曲の映像をリリースした。数か月後、それは感染のように広まった。以降、ウクライナ人はソーシャルネットワーク上に数え切れないほどの自作のビデオを投稿し、バフムートの不可侵の要塞という神話に賛同した。

 そのようなシンボルは、戦闘が続いている間だけでなく、AFUの明らかな作戦失敗の後にも作成される。例えば、2月末に、アルテムソルの塩生産企業は、ソレダールを巡る激しい戦闘(1月にロシア軍の勝利で終わった)が始まるまえに20トンの塩を採取したことを発表した。その塩は、「ウクライナの頑丈な力」という象徴的な文字が記された100,000個のパッケージに詰められた。各パッケージは500フリヴニャ(約13.50ドル)で販売された。募金活動の主催者によれば、収益のほとんどはAFUの特攻ドローンに使われた。


「ウクライナの頑丈な力」という塩のパッケージ

 このような象徴的なキャンペーンはウクライナで定期的に行われており、人々を奮い立たせるために考えられる。昨年の11月、ロシア軍がヘルソン地域の西岸から撤退し、ウクライナ軍が同名の州都(ヘルソン)に進出した際には、国内のソーシャルメディア運動が、その利用者に対してプロフィール写真にスイカ(ヘルソンで栽培される)の画像を掲載するよう呼びかけた。

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 ヘルソンはその歴史において多くのことが知られてきた。例えば、ロシア帝国やソビエト連邦時代の造船業などだ。しかし、なぜかウクライナのプロパガンダ作成者はそれをスイカと結び付けることに決め、そのイメージは社会から好意的に受け入れられた。勝利の陶酔状態にある人々は、地域での頻繁な停電や継続する戦闘を忘れてしまった。

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 探知犬パトロン(「カートリッジ(弾薬筒)」のウクライナ語)は、もう一つの有名なウクライナのシンボルとなった。パトロンはチェルニゴフのエンジニアたちが地雷を除去する手助けをした。パトロンはメディアにも登場し、ゼレンスキー大統領に会うことも許された。犬の写真が描かれたポスターでは、爆発物を発見した場合の対処方法が説明されており、キエフや他の都市でもまだ見ることができる。パトロンのおもちゃのバージョンも子供用品店の棚に現れ、それと一緒に(ソビエト設計の)ムリヤ航空機、(トルコの)バイラクター・ドローン、(アメリカの)HIMARS車両のミニチュアモデルもあった。

 切手―ウクライナの国営郵便サービスであるウクルポシュタが発行する―は、別の道具となっている。ゼレンスキー大統領は、ウクライナが先月のクレムリンへのドローン攻撃に関与していないと主張しているが、ウクライナはこの攻撃を描いた切手を発行することを決定した。ウクルポシュタのトップであるイゴール・スメリャンスキーは、「新しい切手はしばしば「ポジティブな出来事」の前触れとなる」とコメントしている。

 1年以上にわたる敵対関係の中で、キエフ政府は象徴やミーム*を利用して士気を高め、物語を整備する手段を驚くほど洗練させてきた。2022年のウクライナのGoogle検索の上位ランキングを見れば一目瞭然だ。例えば、「人物」カテゴリでは、ウクライナ人は「アレクセイ・アレストヴィッチ」を一番多く検索し、「キエフの幽霊」という伝説に興味を示した。これは、ウォールストリートジャーナル紙が認めたように、士気を高めるための偽の軍事プロパガンダであり、架空の英雄パイロットのことだ。「今年の購入」カテゴリでは、「ロシア船」という切手が最も人気のある検索項目の一つだった。これは、架空の話なのだが、スネーク島の兵士たちを称えて発行された切手であり、彼らはロシア船の乗組員から降伏を迫る申し出に罵倒の言葉で応じ、最後まで戦い抜いたとされている。これらの国境警備隊員たちは「追悼」の形でウクライナ英雄勲章を授与されたが、後に彼ら全員が自発的に降伏し、生存していたことが明らかになった。
*遺伝子によらず、模倣によって人から人へと伝えらえる情報の単位。イギリスのオックスフォード大学の動物行動学者リチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)が1976年に著した『利己的な遺伝子』(The Selfish Gene) で提唱した言葉で、ギリシャ語のmimeme(模倣する)とgene(遺伝子)掛け合わせている。(英辞郎)

 これらの象徴が偽物であることが確認された後も長く残り続けているのは、ウクライナ社会と西側の多くを巻き込んでいる情報洪水の結果だ。反対派メディアが遮断されてから1年半が経過し、政府が支配するメディアがウクライナ人の情報源となっていることが多い。

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「ウクライナの幽霊」が描かれたTシャツ© Getty Images


目に見えない前線

 「現在、情報戦争はどんな戦争の中でも核となる構造です。戦闘に巻き込まれた社会に影響力を持つことは非常に重要です。さらに、我々の行動の正当性を世界の人々に説得することは、追加の支援を受けるために不可欠です。この情報戦争には、権限を持つ者だけでなく、自己の判断で「戦う」一般市民も参加することができます」とウクライナの副国防相アンナ・マリヤールは2月に述べた。

 情報戦と心理作戦(IPsO)は、人々を洗脳し、世論を形成することを意図しており、ロシアとの紛争におけるキエフの最も重要な戦略の一部だ。戦闘状況下では、これらの作戦は主に敵の前線と後方の士気を下げ、混乱させ、絶望的な運命を充満させる雰囲気を醸し出すことを目指す。通常、これらの作戦の主な目的は、軍事的および政治的指導部を信用失墜させ、敗北と失敗を強調することだ。

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 2019年12月、国内外のマスメディアやインターネット情報源へのアクセス権を持つIPsOセンターのネットワークがウクライナに配置された。ウクライナ武装軍(AFU)では、情報と心理作戦は特殊作戦部隊の管轄下に置かれている。これは、彼らの活動と人員が最高機密とされていることを意味する。しかし、最近一部の情報が明らかにされた

 国家レベルでは、サイバーセキュリティと情報操作の調整と総合管理はウクライナ国家安全保障・国防会議(NSDC)によって行われている。ウクライナ国立サイバーセキュリティ調整センターは、NSDCの作業機関として2016年6月に設立された。この組織には、ウクライナの国家保安局、国防省、そして重要情報局など、10の政府機関の責任者が含まれている。

 サイバー作戦と情報キャンペーンは、ウクライナ武装軍の特殊作戦部隊に属する特別なIPsOセンターによって直接実行される。現在、以下の4つのセンターが存在する:第16センター(軍事部隊A1182、ジトーミル州グィーヴァ)、第72センター(軍事部隊A4398、キエフ州ブロヴァリ)、第74センター(軍事部隊A1277、リヴィウ)、および第83センター(軍事部隊A2455、オデッサ)。

 対諜報活動に加えて、彼らはインターネットやテレビでのプロパガンダ運動を組織し、偽情報を作成・公開し、SBU(ウクライナ国家保安庁)と共にハッカーグループ、ボランティア情報共有コミュニティ、そして他のインターネット情報源の活動を調整している。実際の敵対行動を始める前、これらのセンターは約500〜550人の人員を抱えていると推定されており、一部の情報源では1,000人以上いたという話もある

 これらの部隊は独立して行動し、同様の外国の組織と協力している。外国のセンターや情報部隊は彼らに大規模な商業リソースへのアクセスを提供している。活動家や有名人もこのプロセスに関与している。「2月24日以来、私たちは皆、情報戦線の兵士となりました」と、Detector Mediaのプログラムディレクターであるヴァディム・ミスキーは述べている

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ヴァディム・ミスキー、Detector Mediaのプログラムディレクター© Wikipedia

 ウクライナサイバー同盟は2016年以来、ウクライナ国内で活動している。これは、異なるウクライナの都市および海外からのサイバー活動家の集合体だ。この集合体はサイバー攻撃を行い、ウェブページや電子メールをハッキングする。

 2020年2月、ウクライナ軍の持続的な改革と組織再編の一環として、通信およびサイバーセキュリティ部隊の特別指揮部が形成された。この計画は、NATOの基準に合わせて、NATOのサイバーセンターと同様の部隊を創設することだった。ウクライナの他の政府機関にも、ウクライナ国家保安庁や内務省には専門のセンターが存在しており、国家サイバー保護センターもその中にある。

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関連記事:黒海穀物協定は貧困層ではなく富裕層の利益のために機能してきた。果たしてロシアは脱退する権利があるだろうか。

 ウクライナがNATOの組織に統合される過程で、アメリカや他の西側諸国の特殊部隊の教官たちがIPsOセンターの人員の訓練に参加している。具体的には、アメリカ陸軍の第4心理作戦群(以前は第4軍事情報支援群と呼ばれていた)やイギリスの77旅団(イギリス軍の情報、心理、サイバー作戦の特殊部隊)の専門家だ。IPsOの専門家たちはまた、アメリカの軍事基地で定期的な訓練も受けている


デマと宣伝

 ウクライナの情報および心理作戦センターは、公式メディアだけでなく、情報やニュースサイト、ソーシャルネットワーク、協調したソーシャルメディアグループなど、数千のインターネット情報源に依存している

 ロシアの軍事作戦が始まる前から、特定のウクライナのボランティアインターネット情報源はIPsOセンターによって制御されていた。これには、ボランティアコミュニティのInformNapalm(informnapalm.org)、Peacemaker(psb4ukr.org)、Information Resistance(sprotyv.info)や、商業サイト(seebreeze.org.ua、petrimazepa.com、podvodka.info、metelyk.org、mfaua.org、burkonews.info、euromaidanpress.com、peopleproject.comなど)が含まれていた。これらは情報キャンペーンや「社会工学」技術の実験に使用されていた。特に、IPsOの役人たちはしばしば「ボランティア」や擬似ブロガーの姿を装って活動していることが指摘されていた。

 ウクライナの役人、兵士、ボランティアは、世界の先進基準に基づいた情報および心理作戦の技術を学んでいる。アレストヴィッチは、情報戦に関するアメリカの教科書を引用した。「情報および心理作戦の仕組みを知っていますか? アメリカの情報および心理戦の教科書の第1ページ、第1章には、引用しますが次のように述べられています:情報および心理作戦の主な任務は、意図を先取りすることです。それだけです。その後はリラックスして何もしなくても良い」と述べた。

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アレクセイ・アレストヴィッチ、ウラジミール・ゼレンスキー大統領の元アドバイザー© Wikipedia

 ウクライナは、ウェブサイト、ソーシャルネットワーク、そしてボットなど、さまざまなツールを使用してデマを広めている。4月には、RaHDitなどのグループのハッカーが、おそらくSBUによって監視されているとされるウクライナのテレグラムチャンネルを公開した。これらのチャンネルは親ロシアを装っていた。調査の過程で、5〜6百万人の視聴者を持つこのようなチャンネルのネットワーク全体が発見された。リストには、Operation Z、Novorossiya 2.0などのチャンネルが含まれている。

 ハッカーたちは、これらのチャンネルのほとんどが以前は根本的に異なるコンテンツを持っていたと言っている。また、彼らはロシア軍の必需品のための偽募金活動も行っていた。管理者のほとんどはウクライナ市民であり、偽のチャンネルの多くを担当している主要な関係者の一人はルカ・イルチュクだ。

 これらのチャンネルはどのように機能していたのだろうか?非常に単純だ。疑似愛国的なチャンネルは普通のニュース記事を公開し、徐々により多くの視聴者にアピールし、それからウクライナ側が自分たちの考え挟み込んだのだ。例えば、アルチョモフスク(バフムート)でPMCワグナー戦闘員が多数の市民を射殺したとされる捜査に関する話があった。つまり、これらのチャンネルはパニックを引き起こし、憤りを生み出し、デマを広めるために設計されていた。

 心理戦の専門家であるポール・ラインバーガーは、戦争は常に実戦の開始よりもずっと前から始まり、停戦後も一定の期間続くと考えていた。従来の戦争とは異なり、心理戦は戦いに対してほとんど抵抗できない何百万人もの市民に対して行われる。

 現在、情報戦は確かに総合的な紛争および前線の状況に影響を与える主要な要素の一つだ。現代の戦闘は武器だけでなく、大衆の支持が得られて勝利できる。キエフはこれをよく理解している。結局、この紛争がウクライナ内外でどのように受け止められるかによって多くが左右されるからだ。

筆者は、ペトル・ラヴレーニン。オデッサ出身の政治ジャーナリストで、ウクライナと旧ソビエト連邦についての専門家である。

F-16をウクライナへ供与しても事態は何も変わらないだろう―ブルームバーグ紙

<記事原文 寺島先生推薦>
F-16s for Ukraine won’t be a game changer – Bloomberg
Western fighters will run high risks when facing off against Russian defenses, veteran pilots believe
西側の戦闘機が、ロシアの防衛態勢に立ち向かえば大きな危険を伴うとベテランのパイロットたちは考えている。
出典:RT 2023年5月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月23日



2022年10月12日、中央ポーランドのラスクに近い空軍基地で、F-16戦闘機がNATOの防空演習に参加© RADOSLAW JOZWIAK / AFP


 西側からウクライナに供給される可能性のある米国製のF-16戦闘機はキエフの戦闘能力を向上させる一助にはなるだろうが、ロシアとの紛争において「今の事態を変えるもの」にはならないだろう、とF-16を操縦したことのある何人かのパイロットの話を引用して、ブルームバーグは日曜日(5月28日)に報じた。

 同紙によると、ウクライナに送られる可能性のあるF-16は、ロシアの現代の航空機や防空システムと比べて、「一段と劣るレーダーと射程の短いミサイル」を持っている、とのこと。このことは、F-16が防御的に展開されるか、または高リスクな作戦の一部として使用されることを意味している。

 機体の飛行想定を設計したブリン・タネヒルは、ウクライナのパイロットがソ連時代の航空機からF-16に乗り換えることは、「ボタンを押すくらい簡単なこと」だが、「物理法則を克服することはできません」と彼女は語った。

 元米空軍のF-16パイロットであるジョン・ベナブルによれば、ウクライナ人が前線付近で飛行すると、彼らは自分たちが目標に攻撃を行うはるか以前に、ロシアのレーダーによって検知されたことを知ることになるだろう。

 彼はさらに、ウクライナのパイロットは、目標に接近する際に検知されることを避けるために丘陵地帯を利用―そして破壊活動―するかもしれないが、彼らは急角度ですばやく上昇し、攻撃を行い、その後再び身を隠さなければならないだろうと付言した。しかし、そのような戦術はF-16が「何かを攻撃することにはならないだろう」ということを意味する、とベナブルは述べた。



関連記事:モスクワは「火遊びをしている」として西側を糾弾

 さらに、別のベテラン戦闘パイロットであるダン・ハンプトンによれば、F-16を使用してロシアの巡航ミサイルを撃墜することも実際的ではない。なぜなら、発射と検知の後、目標に到達する前にはわずかな時間しかないからだ。このような状況でF-16を配置しても、適切な瞬間を待つために数時間も空中に留まる必要がある、と彼は説明した。

 パイロットたちの評価は、アメリカ空軍長官フランク・ケンダルが今月初めに述べた声明と一致している。ケンダルは、空中力が現段階の戦闘行為において重要な役割を果たしていないため、F-16の供給はウクライナ紛争の転機とはならないと述べている。

 しかし、ウクライナ空軍司令部の広報担当であるユーリ・イグナトは、ウクライナが近代的な西側の戦闘機を受け取れば「この戦争に勝つ」と主張している。

 ウクライナへのF-16の供給について発言する形で、ロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフは、そのような行動は紛争の「受け入れがたい激化」を引き起こすと警告した。

ウクライナの反転攻勢は数週間で終わるだろう―ロシア国会議員

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian counteroffensive to end in weeks – Russian MP
Moscow’s troops are likely to repel Kiev’s offensive in July and launch an attack of their own, Andrey Kartapolov has claimed
モスクワの部隊は7月にキエフの反転攻勢を撃退し、(今度は)こちら側から攻撃を開始する可能性が高いとアンドレイ・カルタポロフは語った。
出典:RT   2023年6月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年6月23日



資料写真© Sputnik / Sergey Averin


 ロシア国会国防委員会の責任者、アンドレイ・カルタポロフは、火曜日(6月20日)に述べたところによれば、もし現在のウクライナの戦死傷者数がそのまま続くならば、キエフの部隊は7月にその攻撃能力は底をつくだろうと述べた。

 ウクライナの部隊はこの24時間だけで約900人の兵士を死傷させている、カルタポロフ大将は語った。彼によれば、同じ時間帯にウクライナ側は9両の戦車と数十台の装甲車を失っている。「このペースが続くならば、私たちは3週間で反転攻勢を撃退し、(今度は)こちら側から大規模な行動に移行すると予想しています」と、「ソロヴィヨフ・ライブ」という番組に出演したカルタポロフは述べた。

 カルタポロフ議員は、ウクライナが今回の反転攻勢のために訓練したと報告された4万から5万人の兵士のうち、既に約2万人を失ったと語った。彼は情報源を明示しなかったが、待望されたウクライナの反転攻勢作戦は、大部分、失敗に終わったと述べた。



関連記事:キエフは戦場の戦況が進展しないことについての説明を提供

 「彼らが使用してきた戦術はこれまで一つも効果がなかった」とカルタポロフ議員は述べた。キエフの部隊は、ロシアの前方防衛地域の安全区域を超えず、さらに最初の防衛ラインに到達することもなかった、と同議員は付言した。

 ロシア国防省によると、キエフの部隊がロシアの陣地に攻撃を続けた結果、この24時間で600人以上のウクライナ軍人が死亡した。ウクライナ軍は、数十台の装甲車両および少なくとも3台のアメリカ製M777榴弾砲を含む12門の大砲を失ったことも、ロシア国防省による火曜日(6月20日)の定例記者発表で明らかにされた。

 キエフの大規模な攻勢は6月4日に始まった。ロシア国防省によれば、ウクライナの部隊は攻撃において大きな損失を被り、その攻撃はロシア軍によって撃退された。

 先週(6月第3週)、ロシア国防省はキエフの前線部隊のうち7500人が戦死または負傷したと発表した。また、ロシアのウラジミール・プーチン大統領も先週、キエフが西側から供給された重機材の30%を失ったと述べた。

キエフはロシア軍からの「厳しい抵抗に遭っている」―ゼレンスキー

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev ‘facing tough resistance’ from Russian troops – Zelensky
The Ukrainian president claimed that Moscow believes the current fighting will be decisive
(ゼレンスキー)ウクライナ大統領は、モスクワは現在の戦闘で決着がつくだろうとの考えを持っていると主張した。
出典:RT 2023年6月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月21日



2023年6月2日、ウクライナ大統領ヴォロディミル・ゼレンスキーと、エストニア大統領アラル・カリスとの共同記者会見の様子© Sergei SUPINSKY / AFP


 ウクライナの、長らく期待されていた反転攻勢に対して、ロシア軍は激しく応戦していると、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が木曜日(6月15日)に放映されたインタビューで認めた。

 NBCニュースに対してゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍が「非常に厳しい抵抗に直面している」と述べ、また、「ロシアがウクライナに対するこの戦いで敗北することは、・・・実質的にこの戦争で(ロシアが)敗北することを意味する」と主張した。

 いろいろな困難はありながら、ゼレンスキー大統領は戦場の状況に楽観的な見方を示そうと試み、前線からのニュースを「概して良好ですが、非常に困難です」と語った。

 ゼレンスキー大統領は、キエフへのF-16戦闘機供与再び求め、その配備が官僚主義によって妨げられていると述べた。

 「私たちは時間を失っているし、人命を失っているし、最も重要なことは、優位な立場を失っています」とゼレンスキーは述べた。そして、ウクライナに西側の近代的航空機が提供されない限り、「ロシアが制空権を握ったままです」と主張した。



関連記事:米国は、ウクライナの反転攻勢の迅速で良好な結果を要求―ポリティコ紙

 ゼレンスキー大統領の発言は、ワシントン・ポスト紙がキエフ高官たちの話として、ウクライナはロシアへの攻撃の先送りには消極的だと報じたときのものだった。同紙によれば、ウクライナは冬が来る前に戦果をきちんと示したいと望んでいる。それは西側の支援者たちに勝利できることを納得させるため、とのこと。

 しかし、このキエフ高官たちは、攻撃行動が人員や装備の大きな損失をもたらすことを警告した。彼らは、前線から遠く離れたロシアの目標を攻撃するために必要な西側製の航空機や長距離砲火の不足は損失を増大させるだろうと主張した。

 ウクライナ軍は6月4日に大規模な攻勢を開始し、複数の前線でロシア軍の陣地を繰り返し突破しようとした。しかし、ロシア国防省によれば、それはうまくいっていない。水曜日(6月14日)、モスクワは、攻勢開始以来のウクライナの前線部隊の損失を7500人の死傷兵と見積もった。

 火曜日(6月13日)に、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナが「重大な損失を被っている」と主張し、その損失はロシアの10倍以上であると述べた。彼は、キエフが陣地をひとつも取れずに西側から供給された装備の30%まで失ったと主張した。

戦果なきキエフによるモスクワ・ドローン攻撃 vs 中枢部を破壊した露軍ミサイル攻撃

<記事原文 寺島先生推薦>
Drones Strikes In Moscow - Missile Strikes In Ukraine
出典:Moon of Alabama 2023年5月30日

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<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月19日


 本日、ロシア政府は「特別軍事作戦」に関するいくつかの数値と情報を公開した。

 本日のロシア国防省の「報告書」には、次のような内容が記載されている(機械翻訳):

本日、ロシア連邦軍は、長距離高精度の航空発射兵器を使用して、ロシア領内でテロ行為が西側情報機関の専門家の指導のもとで計画されている中央の意思決定地点に対して、一斉攻撃を行った。

 全ての指定された目標が命中した。

 「中央の意思決定地点」とは、省庁や主要な本部を指す。これらはこれまで標的にされていなかった。詳細は以下。

 ショイグ国防相は軍の指導部との電話会議を行い、以下のように述べた:

 「ロシア軍は敵に対して効果的な火力攻撃を与え続けています。今月だけで、敵の損失は合計で1万6000人以上の兵士、16機の航空機、5機のヘリコプター、466機のドローン、400両以上の戦車や装甲戦闘車両、238門の野戦砲および迫撃砲となりました」とショイグは会議の中で述べた。

 彼は、この見直し期間中に196発のHIMARSロケット、16発のHARMロケット、および29発のストームシャドウ長距離巡航ミサイルを迎撃し、破壊したと付言した。

 報告された数字は、ストームシャドウの撃墜を除いて、私の集計表の中の日々の「報告書」とほぼ一致している。ただし、過去1か月間に報告されたストームシャドウの撃墜は17件しか私は把握していない。ショイグの29件はどこから来ているのかはわからない。

 ショイグはまた、最近のウクライナにおけるドローン攻撃の標的についても述べた(機械翻訳):

 「ウクライナへの装備や武器の供給は増加しています。私たちは供給の量と経路を監視し、特定された場合には攻撃を行います。

 最近の数日間で、ハメルニツキー、テルノピリ、ニコラエフにある大規模な西側の武器倉庫を破壊し、キエフのアメリカ製パトリオット対空ミサイルシステムを攻撃しました。

 ウクライナへの軍事支援は、敵対行動を先延ばしするだけであり、特別軍事作戦の結果には影響を与えることはできません」と、ショイグの確信は揺るがない。

 今日のモスクワにおけるドローン攻撃について彼は言った(機械翻訳):

 「今朝、キエフ政権はモスクワでテロ攻撃を行いました。言っておきますが、民間施設への攻撃です。

 それには、8機の航空機型無人航空機が関与していました。

 8機は全て驚いた結果になりました。

 モスクワでは、3つのドローンが電子戦によって抑制され、制御を失い、予定された標的から逸脱しました。
        
 さらに5機のドローンがモスクワ地域でパンツィール対空ミサイルおよび砲システムによって撃墜されました。ドローンは、20機はあったと主張する人もいました。しかし、実際にはほとんどの被害はなく、負傷者の報告もありませんでした」とショイグ国防大臣は語った。

 今日もまた、24時間以内にキエフへの3回目の大規模なドローンおよびミサイル攻撃があった。2023年5月には合計で17回のキエフへの攻撃があった。ウクライナがミサイルとドローンを全て撃墜したと主張することは、どのような観点から見ても理屈に合わないと私は思う。キエフが話題にしたくない場所で多くの被害が出るだろう。キエフや他の地域の防空システムは疲弊し、まもなくミサイルが枯渇する可能性がある。それはロシアの攻撃の効果を確実に高めることになるだろう。

 プーチン大統領は、本日の「中央の意思決定地点」への攻撃は、キエフの軍事情報本部への攻撃になったことを確信しているようだった:

マーク・スレボダ @MarkSleboda1 - 2023年5月30日 13:28 UTC

 プーチンは、最近のロシアのミサイル攻撃がブダノフ*の指揮下にあるキエフ政権の軍事情報部に対して行われたことを確認した。その部署は、最近のいくつかの暗殺やロシアの市民に対するテロ爆弾事件は自分たちの犯行であることを認めていた。
*キリーロ・オレクシヨヴィッチ・ブダノフは、ウクライナの軍人。2020年8月5日からウクライナ国防省情報総局長を務めている。 (ウィキペディア)

 ブダノフは糞野郎だ。ヤフーとの最近のインタビューで彼の脅迫は明らかに法的な枠組みの中にはなかった

 それによれば、ブダノフの情報機関であるウクライナの頭字語HUR(ハール)は、ロシア領内で向こう見ずな、命を狙った連続攻撃を行っていたとされている。また、これらの攻撃はクレムリンがロシアの領土と見なしている地域に対するものだ。具体的な例としては、モスクワ中心部で行われたロシアの悪名高い極右思想家アレクサンドル・ドゥギンの娘ダリア・ドゥギナへの8月の車爆弾暗殺事件や、10月のキエフ橋の一部破壊を引き起こしたとされるトラック爆破事件が含まれる。キエフ橋はロシアの唯一の黒海から占領されたクリミアへ直接つながっている。

 アメリカの情報機関は、ドゥギナの殺害をウクライナ政府のやったこととしているが、具体的にHURがやったとは言っていない。この主張について尋ねられたブダノフは、「その話題はもういいでしょう。私の意見としては、私たちはロシア人を殺し続けてきたし、ウクライナの完全な勝利が得られるまで、この世界のどこでもロシア人を殺し続けるでしょう、ということだけです」と述べた。

 ブダノフは、古い戦士の言い伝えが次のように更新されたことを知るべきだ:「剣で生きよ、ダガーミサイルで死ね」。

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