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ウクライナのメディアは、ロシアの作家の暗殺をねらった自動車爆破のあと、「次に狙うべき人物」を視聴者に「人気投票」実施。それにBBCなども協力。

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian media asks ‘who should be next’ after car bombing of Russian writer
筆者:アレクサンダー・ルビンシュタイン(Alex Rubinstein)
出典:グレー・ゾーン(The Grayzone) 2023年5月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月4日





 BBCやディア・シュピーゲルなどの西側の報道機関と提携しているウクライナのある報道機関が、読者に対する調査を実施したのだが、その中身は、自動車爆破事故の被害にあった作家のザハール・プリレーピンの次に暗殺されるべきロシアの知識人は誰か?というものであった。 バイデン政権は、ウクライナ政府によるこのようなテロ行為を承認している。

 ロシアの作家であり活動家でもあるザハール・プリレーピンが狙われた自動車爆破によりあわや命を落としそうになった事故の数時間後、ウクライナで人気のあるニュース社が読者に対してあることを問う調査を出したのだか、その中身は、「次に神殿に捧げられるべき、ロシアのクズのような扇動家は誰がふさわしいか?」というものであった。

 ロシア政府による戦争行為を支持しているロシアの知識層の人々を攻撃することが解禁された、とウクライナの通信社UNIANUは報じた。ロシアの小説家であるザハール・プリレーピンの殺害を狙ったロシアのニジニ・ノヴゴロド州での自動車爆破事故の後で、同通信社は、テレグラム上で聴衆に調査を呼びかけ、暗殺されてもよいと思われる著名なロシア人の一覧表を載せていた。

 ロシアのウラジミール・プーチン大統領に対する暗殺未遂行為が二度あったことが報じられているが、それ以外で、プリレーピンはウクライナの工作員らから狙われた三人目の著名な人物だった。プリレーピンに対する傷害事件は、ダリヤ・ドゥギナが殺害された自動車爆破事件(その爆破はダリヤの父であるロシアの哲学者アレクサンドル・ドゥギンを狙ったものだった)、公的な催しに主賓として招かれていた、テレグラム上で人気のある番組を主催しているウラドレン・タタルスキーが爆破された事件に続く事件だった。UNIAN社がテレグラム上に出した投稿には、ドゥギン、タタルスキー、プリレーピンのことがはっきりと明言されていた。

 この先に標的となる可能性のある人物一覧の中には、別のテレグラム上のチャンネルの制作者であり、RTの編集長のマルガリータ・シモニャン(この投稿においては、不遜にも「beaver eater(レズビアン)」と称されている)やロシアのTV番組の司会者のドミトリー・キセリョフとセルゲイ・マルダンらも含まれている。この記事が出された際、5万人程度のテレグラム利用者がこの調査に投票した。

 UNIAN社のホームページの会社紹介欄によれば、同社は、米国の通信社であるロイター社やブルームバーグ社と「情報の普及や交換面で提携している」とある。さらに同社の顧客には、BBCやディア・シュピーゲルなどの海外の著名な報道機関も名を連ねている。



 UNIAN社の所有者は、ウクライナの財閥イーホル・コロモイスキーが所有するテレビ局「1+1メディア・グループ」 である。コロモイスキーは、ウクライナのウォロデミル・ゼレンスキー大統領やネオナチのアゾフ大隊を長年支えてきた人物だ。このテレビ局は、TSN局の親会社でもあるが、このTSN局とは、最近、赤の広場で毎年5月9日に行われるロシアでのナチス敗北記念式典の際に、赤の広場でドローンによるテロ攻撃を起こすための賞金を出していたテレビ局だ。


 ロシアの小説家ザハール・プリレーピンの暗殺計画は、ウクライナ国内の襲撃事件と同日に行われた。その襲撃事件では、この戦争の批評家である11人が逮捕されたが、その中には米国の国籍を持つゴンザーラ・リラもいた。ウクライナの諜報機関であるSBU(保安庁) の5月4日の発表によると、「敵側のインターネットを用いた扇動者らの網状組織を新たに」逮捕したとのことだった。


 米国諜報機関と繋がる米国の報道関係者らは、オンライン上で影響力を持つ人々を標的にすることを正当化することを求めている。米国政府が資金を出している報道機関であるべリングキャットでロシア調査の代表を務めるクリスト・グローゼフは、サンクトペテルブルクのカフェで開かれた催しで実行された爆破事件を正当化し、その理由を標的が「扇動者」だったからとしていた。

 同様にサラ・アシュトン・シリロという、米国の報道関係者であり、民主党の元工作員で、ウクライナ軍に入隊し、ウクライナの諜報機関の工作員らが米国民のゴンザーラ・リラを逮捕した行為を擁護するような映像を撮影した人物もいる。SBUが公表したリラの複数の画像では、リラの顔にぼかしが入っていたが、アシュトン・シリロは、なぜかぼかしなしの検閲前の映像の撮影に成功している。

 現在バイデン政権は、ウクライナがロシア国内でテロ行為を行うことを承認している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する2度目の暗殺計画の後、アントニー・ブリンケン国務大臣は、ロシア国内でのテロ攻撃について問われた。その質問に対して、「このような行為を行うかどうかは、自国を防衛する方法の一つとしてウクライナが決めることです」とブリンケン国務大臣は答えた

 ジャック・テシェイラ州兵が漏洩し、米国の複数の最有力報道機関が、書類整理棚からゆっくりと明らかにしつつある最高機密文書というお宝情報の中には、米国がウクライナによる反撃攻勢は良くない結果に終わると予想していることを詳しく示す内容も含まれていた。 2014年以前の領土を全て取り返すという妄想を抱いているウクライナは、ロシアで最も声高にウクライナを批判している人々を標的にした暗殺作戦に躍起になっていて、ウクライナ国内に残っているそのような人々も消そうとしている。
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ゼレンスキーがクリミアに所有していた高級別荘が差し押さえられる。

<記事原文寺島先生推薦>
Zelensky’s penthouse seized in Crimea
The luxury apartment is on Russia’s list of nationalized assets
その贅沢な邸宅は、ロシアが国家資産として差し押さえる物件一覧に載せられた
出典:RT 2023年5月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月1日



クリミアのヤルタにある住居家屋。この家屋には以前ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領と妻の所有物だった部屋も含まれていた。©Sputnik/Maks Vetrov


 クリミア議会が全会一致で決めたのは、ウクライナの財閥や政治家らが、クリミア半島内に所有している資産を国有化するというものだったと、RIA ノボスチニュース社が水曜日(5月24日)に、国務院からの記者発表として伝えた。

 その資産の中には、ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領 夫人であるエレナ・ゼレンスキー所有の高級アパートも含まれていた、とクリミアのセルゲイ・アクショーノフ共和国首長がテレグラム上に投稿した。報道によると、130件以上の物件が差し押さえられたとのことであり、その中には映画館、工場、大規模商業施設、ワイン貯蔵庫、銀行施設も含まれていたという。

 昨年2月、クリミア議会はウクライナの政治家や事業家らが所有していた約500件の資産の国有化も了承した。

 ヤルタ市近郊の黒海沿岸に立つゼレンスキー夫婦の三部屋からなる高級別荘の価格は80万ドルと推定されている。この別荘は、2013年に大物起業家から買ったものであり、当時の価格は16万4000ドル以下だった。ロイター通信の報道によると、2019年4月にゼレンスキーが大統領選に勝利したのち、この別荘には市場価格の半分以下の額が支払われたという。

 この差し押さえ措置は、昨年ウクライナで制定された法律に対応したものだった。その法律は、ロシア国民やロシア諸企業の資産を何の補償もなしに差し押さえることを合法化する法律だった。8月、ウクライナ当局はウクライナ国内にあったロシア国民が所有する900件以上の資産の差し押さえを認めたが、報道によるとその価値は7億6500ドル相当だったという。



関連記事:スイスは凍結されたロシア資産の額を明らかにした。

 ウクライナでの軍事行動以来、ロシアはロシア国家やロシアの諸私企業の何百万ドルもの価値のある資産が、凍結されたり差し押さえられたりするのを目にしてきた。米国と米国の欧州の同盟諸国は、その資産をウクライナ再建費に回す方法について模索し続けている。

 クリミア半島は2014年まではウクライナ領内だったが、住民は、キエフで民主的な選挙で選ばれた政府がマイダンでのクーデターにより転覆させられたのち、クリミアのロシアへの編入を住民投票で決定した。

 ゼレンスキー所有の高級アパートを含め、国有化された資産の売り上げにより得られた利益は、ウクライナでの軍事作戦で戦死した兵士たちの家族の支援に充てられる予定だ、とクリミア議会のウラジミール・コンスタンチノフ報道官が述べたと、ロシアのタス通信社が報じている。

ウクライナ側の防空体制の現状とは:ウルフ大佐への聞き取りの取材

<記事原文 寺島先生推薦>
The Current State of Kiev’s Air Defenses: Interview with Colonel Wolf

筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年5月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月30日



ロシアの「キンジャール」超音速ミサイルが、ウクライナ側の米国製「パトリオット」防空システムを破壊


 ここ数週間、キエフ政権の防空施設についての記事が一面を飾っているが、実際に起こっている問題については報道がなされていない。西側諸国政府は、手下の大規模宣伝装置を動員して、ウクライナのネオナチ軍事政権に供給されたSAM (地対空ミサイル)システムをもてはやし、超音速ミサイルなどのロシア側の武器を撃ち落としたという馬鹿げた記事を報じた。西側じゅうでこのような嘘情報が溢れだし、それと同時に情報戦争といっていい空気が漂っていたが、好戦的な西側勢力は、有能な専門家たちにこんなトンデモ話を納得させることはできていなかった。そう言いきれる根拠の一つとして特筆すべき事実は、「撃墜された」という話の「決定的証拠」は完全に一笑にふされる話であり、ただの噂話にすぎない程度のものであるということだ。

 しかし、キエフ政権の防空体制の実情をよりきちんと理解するため、私たちは再度ウルフ大佐に話を聞くことにした。この大佐は、退役軍人であり、ユーゴスラビア(後にはセルビア)軍の防空隊の一員だった人物だ。ウルフ大佐は、軍で40年以上勤務し、職業上の経験や長年の戦闘体験(1990年代の米・NATOによるユーゴスラビア・セルビア侵攻に対する戦闘体験も含む)のおかげで、大佐は現状の詳細を理解することができている。以前私たちがウルフ大佐に行った聞き取り取材は、ちょうど一年前に記事になったのだが、その中で大佐はロシアによる特殊軍事作戦(SMO)に対する見解を示してくれていた。今回の主題は、SMOの主要な敵の動きについてであり、西側が最新の地対空ミサイル・システムを供給したことにより、戦場の状況にどう影響するかについて、だ。


 大佐、再度貴殿にお越しいただき、聞き取り取材に応じてくださり感謝しています。まずは基本的なことからお伺いします。キエフ政権軍の防空体制は今後弱まるとお考えですか? それとも、そうならないよう西側は武器の供給を続けるのでしょうか?

 まずは、皆さんと尊敬すべき読者の皆さんにお礼を言わせてください。再びみなさんと話せる機会が持てて光栄です。今回の話題は私の一番気になる話題だからなおさらです。この件に関しては、私は人生においていちばん力を入れて取り組んできたことなのです。言わせていただきたいのは、報道機関が防空体制について報じるのを聞くと、笑ってしまうことがよくあるということです。そして、防空システムをあんなにも強引に単純化して伝えているので、皆が(防空)体制というのはこんなにも重大で魔法のような効果があると考えてしまって、西側からあのような防空システムが届けば、最大限の範囲で効果を発揮して、すべてを破壊できる、と思わされている状況にも笑うしかないことがよくあります。
さらに、標的というのは様々であり、それぞれの対処法が必要だということもみなさんお分かりではないようです。例えば、弾道ミサイルを攻撃するのと、ドローンや戦闘機を標的にするのでは、やり方は全く異なります。防空システムというのはとても複雑なので、一度の聞き取り取材で語り尽くすことはできません。ですので私はなるべく簡単に、なるべく分かりやすくお話するように努めます。

 お伺いの件ですが、私が強く言いたいのは、各国の軍の様々な分野で使われている武器の相互通用性の重要性についてです。簡単に言えば、地対空ミサイル・システムの効果を最大限に発揮させるためには、防空体制内やそれ以外の軍組織において通用できる必要があるということです。この条件が満たされていなければ、通信の不具合や通信不足が生じ、誤作動が起こりやすくなり、職務上、このような不具合は命に関わる問題になります。
 これまでもウクライナ軍内部では、このような状況は比較的よく起こっていたことでした。かつてはウクライナの地対空ミサイル・システムのほとんどはソ連時代のものであり、長年使われていなかったため、使用法が忘れられていて、不始末もあったのですが、武器の相互通用性はしっかりとしていたのです。
 ウクライナ軍が自国の戦闘機やヘリコプターを撃墜した事例も少なからずありました。「自軍による誤爆事故」というものです。
 しかし、ウクライナが今NATOの防空システムをより多く手に入れたことで、このような問題は増える可能性があります。というのも、西側の防空システムとソ連時代の防空システムの間に相互通用性がない、あるいは通用性がないのに無理に通用させる場合も出てくる可能性があるからです。他の多くの武器と同様、この行為は非常に危険です。そうなってしまう主な理由は、NATOとソ連・ロシアの間には、防空に対する考え方に大きな違いがあることです。

 ロシアと西側の防空体制に対する考え方の違いについて、簡単にお話くださいますか?

 もちろんいいですよ。大きな違いは、防空をどれだけ優先しているかと、その考え方をどう進めているかの点にあります。地対空ミサイル・システムだけのことではないのです。

 NATOが主に力を入れているのは、制空権を確保することですが、ソ連(及び今のロシア)は、大規模な戦争においては、常に制空権を完全に確保しようとすることに力を注いでいるわけではありません。 その点において、西側諸国は通常防空を、軍において補助的なものとして捉えています。他方ロシア側は、防空を軍の方針の主要部として捉えています。具体的には、これらの防空能力を駆使して、大規模で複雑で十分に統合された体制がとれることを目指しているのです。そして何か問題が生じた時は、防空部だけで対応できるようにすることも目指しています。
 このようなことが、実際に戦争が起こった際や大規模な戦争が起こった際だけではなく、常時から目指されています。そのことを念頭に置けば、私が理解に苦しんだのは、西側の地対空ミサイルシステムは、ソ連時代のものよりウクライナ軍にとって役に立つものであると考える人々が存在することです。このことについては、私は今も理解できていません。

 その話についてはこの後すぐに必ず取り上げますが、その前にご意見をお伺いしたいのは、ウクライナの重要な基盤施設をロシア軍が攻撃することによる影響により、地対空ミサイルシステムの供給者という観点から、西側諸国政府の見通しがどう変わっているかという点についてです。

 そうですね。先ほど西側の防空に対する考え方について話しましたが、だからといって、西側の防空システムを過小評価してはいけません。このことは、NATOがウクライナ軍にNATOのミサイルを送ろうとしている点についても当てはまります。この先ミサイルの供給は必ず比較的安定化するでしょう。このような状況は、ロシア軍にとっては確実に脅威です。
 しかし、 ウクライナ軍の防空体制全般の能力は、 この先必ず激しく弱化するでしょう。その理由は単純、ミサイルにあります。ご存知の通り、ウクライナの地対空ミサイルシステムのほとんどはいまだにソ連時代のものであり、そのようなソ連時代のミサイルを大量生産できる国は、世界でロシアだけなので、ウクライナ軍がミサイル不足になることは避けられません。S-300PTミサイルやS-300PSミサイルなどについては、まさにそうです。そしてこれらのミサイルは、長距離地対空ミサイル・システムの中でウクライナがいちばん多く所有しているミサイルなのです。これはロシアの特殊軍事作戦の開始前の状況でしたが、これらのミサイルが大量に破壊された今も、その状況は変わっていないでしょう。
 これらの防空システムが大きく依存しているのが5V55系列ミサイルであるのは、この系列のミサイルが、ソ連軍や後のウクライナ軍の備蓄の中で一番多い型だったからです。

 ワシントン・ポスト紙ファイナンシャル・タイムズ紙など西側諸国の報道機関でさえ、このような状況を警告しています。興味深いことに、さきほど相互通用性の問題について触れられていましたよね。この問題はソ連時代の武器とNATOの武器との間の相互通用性に限られているとお考えですか?それとも、西側の様々な軍事システムについてもこの問題が拡大するとお考えですか?


 後者のように考えるのが正しい見方です。いま私たちの目の前で起こっていることは、私の良き友人が冗談めかして言っていたとおり、「戦時の武器万博」が開催されているようなものです。様々なNATOの軍事システムがウクライナ軍に送られている様子は、たしかに万博さながらです。「パトリオット」ミサイル、NASAMS(ノルウェーとアメリカが開発した中高度防空ミサイル・システム)、IRIS-T(ドイツの対空対ミサイル)、「Hawk(米国の対空対ミサイル)」など多種多様です。
 ソ連時代の様々なミサイルとこれらの「ミサイルの盛り合わせ」を合わせるということは、兵站上悪夢のようなもので、状況は悪くしかならないでしょう。
 よくしがちな間違いというのは、実際の数や様々な軍事システムを見比べるだけで、軍の実力を考えてしまうという見誤りです。しかし、兵站面や武器の操作のしやすさこそが、機械の「調子の良さ」にとって大事なことなのです。ソビエト社会主義共和国連邦の防空体制は広大な繋がりを有していて、防空面は非常に整ったものでした。その防空体制は現在でも(ウクライナ・ロシア両国で)存続しており、ロシア航空宇宙軍は、本質的には自国の防空体制と相対してしているということです。この防空体制はもう何十年も他に類を見ない優れものなのです。
 私が言い続けているのは、私の考えではNATOがこんな優れた防空体制に対抗できるわけがない、という点なのです。広大なSEAD (敵防空網制圧) という能力を有しているにせよ、です。これらの防空体制は昨年からずっと劣化の一途をたどっています。

もてはやされている米国の「パトリオット」地対空ミサイルについては、どのように評価されていますか?

 はい、書類上は、この「パトリオット」はとてもよい防空体制です。しかし、実際のところは、どんな武器も使ってみないとわからないのです。つまり、これまでのこのミサイルの実績を見てみると、そんなに褒められたものではないことがわかります。
 (湾岸戦争時の)「砂漠の嵐作戦」以来ずっと、米国は「パトリオット」に関して課題を持ち続けてきました。その課題の中には、様々なソフト面での課題が含まれていますし、さらには自国製の長距離ドローンやミサイルでさえ迎撃できないという課題もあります。
 加えて、最も基本的なミサイルであるS-300ミサイルと比べても、「パトリオット」にはいくつかの重大な欠陥があります。場所が検出されやすいこと、交戦距離の問題以外にも、「パトリオット」が迎撃できる標的の種類には限界があることもそうですし、 さらにもっと考慮すべき重要な問題があります。
 何より、S-300ミサイルのTEL(輸送起立発射機)がミサイルを発射する角度は90度ですので、このミサイルシステムを使えば、すべての地域を網羅できることになる点が重要です。他方、「パトリオット」が網羅できるのはたった120度の範囲だけなので、S-300と同範囲を網羅するためには、より多くの発射装置が必要になります。
 近年、この問題がサウジアラビアで露呈しました。 廉価で単純なドローンやミサイルが、「パトリオット」の守備範囲を乗り超える事象が生じたのです。その理由は、「パトリオット」は北・北西方向(イラン方面)を標的としていたのですが、実際の標的物が逆方向(イエメン方面)から飛来したからでした。
 もうひとつの重要な点は、「パトリオット」が持つ移動中の標的を撃墜する能力についてです。「パトリオット」のABM(弾道弾迎撃ミサイル)能力には、疑問が持たれていました。旧式のソ連型「スカッド」系統ミサイルに対しても、です。
 そしてこの場合、私たちが主に話題にしているのは、基本的な迎撃ミサイルのことですが、これらの迎撃ミサイルは進路が予測できるため、比較的簡単に動きの予測ができ、追跡もできます。
 しかし移動中の標的は、これらの予測をすべて無効化することができます。ミサイルが軌道を変えてしまえば、迎撃ミサイルの飛行通路に基づく計算がすべて使えなくなってしまい、新たに計算をし直し、ミサイルに反応する時間は減じられ、追加の迎撃ミサイルを発射しなければならなくなります。この点だけても、そのような移動中の標的に対して、このミサイル・システムの効果を大きく低下させる原因になります。   
 さらに、この状況に超音速速度という要素まで加われば、迎撃するという使命は事実上不可能になります。まさにこのような状況こそ、先日私たちが目にした状況なのです。ウクライナ軍は、ロシアの「キンジャール」ミサイルを撃墜したと発表した時のことです。
 出回っている動画を見れば、何十機ものミサイルが同時に発射されていたことがわかります。ロシア軍が本当に超音速ミサイルを使って、ウクライナ側が使用していた作動装置を攻撃したのであれば、ウクライナ軍の決定の裏にどんな状況があったかの説明になります。この日に発射された全てのミサイルが「パトリオット」からのものだったかどうか、私には確認できませんが、様々な報道が本当であれば、ウクライナ軍は、一年間に生産するミサイルの6%分をたった数分、あるいは数秒で使用したことになります。
 さらにこの件は、先述した別の問題も提起しています。 つまり、西側諸国は、ウクライナがこんなミサイルの使い方をして、供給を持続できるかという点です。したがって、この「軍事システム盛り合わせ」には、S-300系統ミサイルの際には生じなかった、費用面の問題が生じるということです。

 これら全ての状況を念頭に置けば、西側やウクライナ政権が、根拠なしにロシアの超音速武器に対する「パトリオット」ミサイルシステムの能力をもてはやしている持続不可能な裏にはどんな動機があるとお考えですか?

 はい。先述した私の友人が完璧なことばで総括したように、「戦時中万博」を開きたいという動機でしょう。大規模な戦争は全て、武器製造業者にとってみれば、自社の武器を売り込む最大の好機であり、今の危機的状況はまさにそういう状況です。実際今回の戦争はここ数十年なかった激しい戦争ですので、最も効果的であることが証明された武器システムは 、様々な業者にとって、この先長きに渡り大きな儲け口の契約を確保できることになるでしょう。「パトリオット」に特化して考えれば、情報戦争を起こせば、非常に必要とされているウクライナ軍の士気向上に繋がるだけではなく、これまで酷評されてきた「パトリオット」地対空ミサイルの評判の回復にもなるのです。そうなれば売上や株市場に貢献できます。

 ただしこの件には別の観点も存在します。ロシアの超音速武器が「標的に」されている理由は、世界からの名声や評判の問題と繋がります。
 アメリカ合衆国は、超音速武器については開発面でも配置面でもロシアによる大きく遅れをとっています。ロシア側が所有するこれらの超音速武器の評判を落とすことで、①米国はこれらのミサイルを「撃墜」する能力を有しており、②ロシアの超音速武器は「思われているほど優れたものではない」という2つの主張を支持してもらおうとしているのです。
 尊敬すべき読者の皆さんに、お考えいただきたいのは、ウクライナの防空体制はもう一年以上も稼働してきたのに、「パトリオット」ミサイルシステムが配置されるやいなや、ロシアの超音速ミサイルがやっと「撃墜された」という事実です。この件自体で、大きな疑問点が生じますし、撃墜したことを「証明」するために使われている「証拠」だけでも全く信頼の置けないものです。
 他方、「パトリオット」ミサイルシステムのまさに好敵手に当たるのが、S-300系統ミサイルなのですが、このミサイルは米国のSR-71「ブラック・バード」偵察機などが与える危険に対応するよう製造されています。その事実から、読者の皆さんによくお考えいただきたいのは、他の、特に西側の防空システムが、このS-300系統ミサイルと比べてどれほど効果があるのかという点についてです。

 大佐。,再度お越しいただき感謝いたします。ウクライナ軍の防空体制の現状について、お話を聞かせていただくという機会をくださり、ありがとうございました。

 こちらこそ、再度聞き取り取材を行ってくださり、ありがとうございました。皆さんと尊敬すべき読者の皆さんに再度お礼申し上げます。

ウクライナにとって、米国に好印象を与えるための期間は「あと5ヵ月」―FT紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine has ‘five months left’ to impress US – FT
The West cannot keep its military aid to Kiev flowing “forever,” several senior officials told the Financial Times
西側は、キエフへの軍事援助を「永遠に」続けることはできないと、何人かの政府高官がフィナンシャル・タイムズ紙に語った。
出典:RT 2023年5月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月30日


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資料写真. © Global Look Press / IMAGO / Vincenzo Circosta


 ウクライナがロシアとの紛争計画(がうまくゆくこと)をアメリカや他の西側の支援者たちに納得させるために、「進展」を示せる期限は5ヶ月だと、フィナンシャル・タイムズ紙は、木曜日(5月18日)、何人かの欧米の政府高官の話を引用して報じている。

 同紙はまた、ワシントンが選挙サイクルに入り、アメリカとその同盟国がウクライナに提供してきた大規模な軍事支援が無駄ではなかったことを示さなければならないとも述べている。

 「アメリカにとっては、この戦争を成功したものとして売り込むことが重要だ。同時に、ウクライナの進展の面で、それらの支援パッケージが成功していたことを証明する国内向けの目的もある」と、あるヨーロッパの高官がフィナンシャル・タイムズ紙に述べた。

 世論調査は、アメリカでウクライナへの国民の支持が低下していることを示しており、バイデン大統領政権はキエフへの支援に数百億ドルを費やしたことが戦線で大きな違いを生んだことを示さなければならないと、同紙は伝えている。

 フィナンシャル・タイムズ紙の情報源によると、ワシントンは次の5ヶ月が紛争の結果にとって重要だと考えている。「もし9月になってもウクライナが大きな進展を遂げていなければ、交渉に入れ!という[西側への]国際的な圧力はとてつもなく大きくなるでしょう」と、別の情報源が匿名を条件に同紙に語った。

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関連記事:ウクライナへの米国の資金が底をつく―ポリティコ

 9月には国連総会とG20首脳会議が連続して開催される。両イベントは、交戦中の当事者を交渉のテーブルに着かせるために利用される可能性がある、とフィナンシャル・タイムズ紙は伝えている。

 キエフへの西側の軍事支援も限界に近づいていると情報筋は警告している。「(キエフへの)メッセージは基本的に、支援としてはこれが精一杯、ということです。米国予算の柔軟性はもはやなく、ヨーロッパの兵器工場もフル稼働状態です」とあるとヨーロッパの高官が同紙に語った。

 アメリカは、兵器供給において、今もウクライナへの最大の支援国だ。ワシントンの同盟国は、その支援を維持する能力について懸念を抱いており、2024年のアメリカ大統領選挙にともない、支援が減少すると考えている。「我々は永遠に同じレベルの支援を続けることはできません」と、あるヨーロッパの高官は述べ、現在の支援レベルは1年または2年維持されるかもしれないが、それ以上は続かないと付け加えた。

ウクライナはお前たちが憎い、とゼレンスキーの最高位の側近がモスクワに語る。

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine hates you, Zelensky's top aide tells Moscow
Top official has pledged to “persecute” Russians “always and everywhere,” echoing murder threats by Kiev's spy chief
最高位高官が、「常にどこでも」ロシア人を「迫害する」と誓った。これはキエフのスパイ主任による殺害の脅迫発言を反映している。
出典:RT 2023年5月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月29日



資料写真: ミハイル・ポドリャク、2022年3月、キエフにて。© Emin Sansar / アナドル通信社/ゲッティイメージズ

 ウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーの最高顧問であるミハイル・ポドリャクは、彼の国はロシア国家の代表者たちを「憎んでおり」、「常にどこでも」迫害すると宣言した。彼のツイッター投稿は、キエフの軍事情報長官が彼の組織がロシア市民を標的にした暗殺を実行しているとの告白について、モスクワが国連に苦言を呈した後に行われた。

 ポドリャクは木曜日(5月18日)にTwitter上でロシアに対して怒りをこめた演説を展開した。これは、ウクライナ軍事情報部GURの長であるキリル・ブダノフ将軍が今週初めに記者に対し、彼の傘下の工作員が一部のロシアの公的人物を殺害し、そして「この世界のどこでもロシア人を殺し続ける」と誓ったことに対して、モスクワが非難したことへの反応だった。

 ロシア連邦国連大使は、ブダノフの発言を露骨なヘイト・スピーチの一例として非難した。しかしポドリャクはブダノフの発言に同意し、それに問題はないと語った。



関連記事:モスクワは、ウクライナが「ロシア人を殺害し続ける」と明言したことについて、国連に報告

 「それで? はい、ウクライナはあなたがたを憎んでいる。はい、私たちはあなたを迫害する。常にどこでも」と彼は誓った。ポドリャクはロシアを国連で「泣き言を言っている」と非難し、ロシアを「連続殺人犯の国」と呼んだ。

 「はい、ウクライナは法的にも身体的にも、あなた方一人ひとりを追い詰めます」とポドリャクは付言した。「そして、国連を利用するのをやめなさい―否定しようもない戦争犯罪者に国際法は存在しません」。

 ロシアの高官たちは、ロシア領土内でたくさんの「テロ攻撃」を企てたとキエフを非難している。例えば、クリミアの橋爆破事件、ジャーナリストのダーリャ・ドゥギナとブロガーのウラデン・タタルスキーの暗殺、作家ザハール・プリレーピンの殺害未遂などだ。

 キエフはこれらの犯罪のいずれに対しても責任を認めていない。しかし、西側メディアは、ウクライナ支援者たちがいくつかの事例についてモスクワの言っていることに同意したと報じている。ワシントン・ポストによれば、西側の高官たちはブダノフを秘かに称賛していて、「彼の大胆さは時に彼ら(ロシア)を不安にさせることがある」と述べている。

関連記事:「ロシアに関する全ては」クリミアから排除されなければならないーゼレンスキーの補佐官

 ロシア外務省の報道官であるマリア・ザハロワは、ブダノフの最新の発言は彼がテロリストを雇っていることを裏付けており、またキエフを支援する国々がこれを非難しないことで共犯となっていると主張した。

「バフムート肉挽き機」の内部: ロシアはいかにしてウクライナ人をドンバスの「要塞」であるはずのアルチョモフスクから撤退させたのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Inside the ‘Bakhmut meat grinder’: How Russia forced Ukrainians to retreat from Artyomovsk, their supposed ‘fortress’ in Donbass
Nine months of fighting for a symbolic site in Kiev's attempt to regain control of the region have ended with another triumph for Moscow's forces
キエフがドンバスの支配権を取り戻そうとする中で、象徴的な場所をめぐる9カ月間の戦闘は、モスクワ軍の新たな勝利で幕を閉じた。
出典:RT 2023年5月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月29日


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ソーシャルメディア動画からのスクリーンショット

 アルチョモフスク(ウクライナ人はバフムートと呼ぶ)の戦いは2022年8月に始まり、次第にロシアとウクライナの戦闘の震源地と化していった。戦線の他の地域が比較的安定している中、双方がこの小さな都市に積極的に軍を投入した。2022年5月、アゾフスタルで敗北し、その印象を低下させたキエフにとって、アルチョモフスクは新しいマリウポリとなった。ウクライナのプロパガンダでは「バフムート要塞」というレッテルを貼り、そこで戦う人々に英雄的な雰囲気を与えようとした。

 この都市は西へ進むための戦略的重要性がないにもかかわらず、ロシア軍はウクライナのプロパガンダが突きつけた挑戦を受け入れた。では、9カ月に及ぶ「バフムートの肉弾戦」からモスクワは何を得たのだろうか。


地方都市から軍事要塞へ

 19世紀、アルチョモフスクはロシア帝国の地方都市であり、発展途上のドンバス地方の行政の中心地であった。しかし、他の都市が発展するにつれて、その役割は小さくなっていった。2022年2月のロシア軍の攻勢開始時には、この街の人口は約70,000人だった。2023年初頭に戦闘が行われたスパークリングワイン工場など、いくつかの工業施設がある。ウクライナ当局によると、その時点ですでに街の60%が破壊されていたという。

 この街の重要性は、2022年2月のロシアの軍事作戦開始後、飛躍的に高まった。当初、ロシア軍がポパスナヤ、ゾロトエ、リシチャンスク・セベロドネツクの集積地の第一線の要塞を破ったとき、アルチョモフスクは重要な輸送拠点となった。アルチョモフスクは、ウクライナの前線と他の地域とを繋いでいたのだ。

 ロシア軍がこの防衛線を破り、キエフ軍をルガンスク人民共和国(LPR)の領土から完全に排除した後、アルチョモフスクは輸送の拠点から、バフムトカ川周辺のウクライナ第二防衛線になった。このラインは、南はゴロフカ(2014年以降、ドネツク人民共和国(DPR)が支配)の反対側にあるウクライナ軍の拠点から北はセヴェルスクまで続き、ドンバスの主要河川であるセヴェルスキー・ドネツ川にまっすぐつながっている。

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アルチョモフスクの西部にある破損した高層ビル。© Sputnik / Yevgeny Biyatov

 アルチョモフスクは、この防衛線が破られることなく、占領されることはなかった。2022年7月以来、民間軍事会社(PMC)ワグナーの戦闘員たちは、まさにそのことに集中し、都市の包囲を成功させるための地ならしを行ってきた


アルチョモフスクの攻略

 アルチョモフスクの包囲に有利な条件が整い始めたのは、ポパスナヤでのロシアの勝利後、昨年5月のことである。月末には、ウグレゴルスク火力発電所の衛星都市で、ウクライナ軍が防衛拠点としたスヴェトロダースクを占領した。この都市の占領に2カ月を要したが、発電所には大きな損害はなかった。

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 ゴロフカの北側でも戦闘が続いている。アルチョモフスク方面への進撃という主目標に加え、住民の安全を確保するために、ウクライナ軍をさらに遠ざけることが重要だった。攻勢開始以来、ゴルロフカでは101人が死亡し、360人が負傷している。2022年の夏から秋にかけて続いたセミゴリエ、コデマ、ザイツェヴォという2つの村、マヨルスク、クルジュモフカ、オザリヤノフカという集落の戦闘の間に、ウ軍を遠ざけるという、この課題は部分的に達成された。ゴロフカの安全は北と北東から確保され、脅威は西と北西からしか残らなかった。

 ウクライナの要塞は、ゴルロフカ方面や南からのロシアの攻勢を抑止するために作られたものである。しかし、東からの再度の攻勢により、これらの要塞の戦術的価値は低下し、戦線の他の区域と比較して、すぐに襲撃された。

 12月までに、ロシア軍はアルチョモフスクの南郊外に到達し、これを封鎖した。10月当時、南郊外におけるロシア軍の存在は、オピツノエで戦う先遣部隊に限られていたが、12月には市郊外の畑での「予備作業」が完全に完了した。

 その頃、敵はアルチョモフスクの戦いに完全に参加しており、メディアはマリウポリやアゾフスタルの戦いのように、ウクライナ軍優勢の象徴として仕立て上げた。ウクライナ人は「バフムート要塞」の伝説を作り上げ、降伏する気にはなれなかった。実際、彼らは絶えず援軍を送り込んでいた。したがって、ロシアの次の目標は、アルチョモフスクの南西にある重要な要塞地域であるクレシェイエフカと、市の南部を覆うオピツノエとなった。

 これらの戦術的な目標は、1月末までにしか達成できなかった。その頃には、ウクライナ軍にとって状況はかなり悪くなっていた。南方ではロシア軍の進撃によりコンスタンチノフカとアルチョモフスクの間の道路が危険にさらされ、北方ではソレダルの陥落により、この都市はすぐに包囲されることになる。1月の展開では、ウクライナ軍は6ヶ月間の防衛が有利に働き、まだ安全に都市を脱出することができた。米国も同様の戦略を提案したというが、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は最後まで戦うことを好んだようだ。


市街地での戦闘

 2月中、ウクライナ側はコンスタンチノフカ・アルチョモフスク街道でのロシアの攻勢を封じ込めようとし、ワグナーグループのシャソフ・ヤールへの到達を阻止し、クラスノエ村の主要要塞地帯を占領した。ウクライナは予備兵をこの地域に移動させたため、これらの陣地を保持することができ、ロシア軍は北側から行動を起こすことを余儀なくされた。

 クラスノエの攻略に失敗したロシア軍は、アルチョモフスクの西の郊外に移動し、ソ連航空機の記念碑で知られる旧大砲部隊の地域へ移動した(ウクライナのジャーナリスト、ボランティア、軍人にとって人気の写真スポット)。この記念碑は、戦闘中に破壊された。噂によると、ロシア軍がこの地で戦勝記念撮影をするのを阻止するために、ウクライナ側が爆破したとも言われている。

 3月、この戦線ではウクライナ軍の予備兵力がより必要となり、以前クピャンスク近郊に駐留していた第92機械化旅団の部隊が導入された。しかし、その頃にはワグナーグループはアルチョモフスクの南西部郊外に深く進出していた。クヴァドラティ地区を占領し、チャイコフスキー通りに向かって進み、この地区を封鎖した。同時に、ロシア軍は市の南部で前進し、3月29日にブデノフカ地区とソバチェフカ地区の支配を確立した。

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資料写真: アルチョモフスク近郊のワグナーグループの軍人 © Sputnik / Viktor Antonyuk

 4月中、ウクライナ側はクラスノエ村/チャイコフスキー通りの線上でロシアの攻撃を抑止し続けた。ロシア軍が工業大学群を制圧し、チャイコフスキー通りとユビレイナヤ通りの交差点に到達できたのは、4月28日のことだった。その後、アルチョモフスクの防衛は実質的に2つに分断された。ウクライナ軍は、航空機記念碑付近の高層ビルが、ウクライナ軍が補給や避難に使う村道を監視するための観測拠点として使われることを恐れて爆破を開始した。

 2022年12月、ロシア軍はクレシュチェイエフカとオピトノエの攻略に加え、同市の工業地帯まで東進することに力を注いでいた。ワグナーグループはこれまで市街地近郊のみを支配していたが、12月には工業地帯と北側の森林地帯をほぼ完全に制圧した。これによりアルチョモフスクのミヤソコンビナート地区、ザバフムートカ地区への進出が可能となり、1月のソレダルの攻略にも役立った。

 ソレダルでの勝利により、ロシアはアルチョモフスクへの圧力を倍加させることができた。ロシア軍の戦線突破を阻止するため、ウクライナ軍はさらに予備軍を投入した。しかし、これは部分的にしか役立たなかった。ロシア軍はバフムトカ川を数カ所で渡河し、クラスノポル、サッコとヴァンゼッティ、ニコラエフカを占領してセヴェルスクに対する側面を確保した。その後、ジェレズニャンスコエ村付近でスラヴィアンスクに対する防壁を設置した。

 その後、ロシア軍は南西に向かい、クラスナヤ・ゴラとパラスコヴィエフカの最後の主要要塞を占領した。ソ連時代、パラスコヴィエフカの塩鉱山の跡地には、大規模な軍事倉庫があった。ウクライナ側はこのインフラを利用して防衛線を作ることができたが、これでは戦線を安定させることはできなかった。


ウクライナ軍の撤退

 この時点で、アルチョモフスク包囲網の南側がクラスノエのウクライナ側防衛線に突き当たったことが明らかになった。この時、ワグナーグループは砲弾が不足し、砲兵の行動が制限される事態に陥った。問題が解決すると同時に、戦闘員たちはアルチョモフスクから出る最後のルートの一つであるベルクホフカに移動した。

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 2月24日にベルクホフカを占領し、ベルクホフスキー貯水池に到達したことで、ウクライナ軍はアルチョモフスクの北部地区であるストゥプキからの撤退を強いられ、アルチョモフスコエ村(クロモフ)への南西への道が開かれ、市から出る最後の比較的安全なルートとなった。

 ベルクホフカ解放の翌日、ウクライナ軍はヤゴドノエから撤退した。その後、セヴェルニ・スタフカ・ダムを爆破し、アルチョモフスク北西部の郊外からの反撃が制限された。2月はウクライナ軍にとって不運な結果となった。ロシア軍は市街から残る2本の道路を比較的安定した砲撃力で制圧し、ウクライナ軍は温暖な気候のため野原を脱出することが困難となった。

 一方、ロシア軍は東と南からアルチョモフスクの奥深くまで進軍を続けていた。市街戦は両軍の大きな戦力を拘束したが、ロシア軍の優れた大砲と突撃戦術によって勝利した。ワグナーグループのエフゲニー・プリゴジンは、この戦いの中で、「敵の兵力を押さえ込み、破壊することが主な任務である」と繰り返し強調した。

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資料写真: ドンバスでのワグナーグループの軍人 © Sputnik / Viktor Antonyuk

 3月2日、ウクライナのUAV(無人機)部隊の司令官(軍用コールサイン「マディヤル」)がビデオを撮影し、その中で、アルチョモフスクの状況を否定的に評価し、ウクライナ人はそこから脱出すべきだと述べた。また、ウクライナの若者は戦う気がないと非難した。部下の一人は、戦後、徴兵を免れた者をすべて殴り倒すと公言した。3月3日、「マディヤル」と彼の戦闘員たちは、司令官の命令を口実にアルチョモフスクから逃亡した。

 同日、プリゴジンはゼレンスキー宛てにビデオメッセージを録音し、ウクライナ軍守備隊の出口は残り1つであると述べた。彼はまた、3人のウクライナ人捕虜を映し出し、その中には職業軍人はおらず、老人1人と若者2人しかいなかった。

 3月8日には、街の東部全域がロシア軍に支配され、ウクライナ軍はバフムトカ川の西岸に押しやられた。ワグナーグループが進むにつれ、欧米メディアの論調は急速に変化した。それまでアルチョモフスクは戦略的に重要な地点と呼ばれていたが、3月6日には国防総省の長官が、この都市は戦略的価値よりも象徴的価値の方が高いと発表した。


春の戦い

 それにもかかわらず、ウクライナ軍は支配力を緩めることなく、ネオナチやウクライナ民族主義の思想で知られ、右派セクターの過激派部隊で編成された第67機械化旅団を含む追加予備軍を同市に移送した。プリゴジンによれば、これらの部隊はロシアの側面を包囲して攻撃することになっていた。

 ウクライナ予備軍は、ワグナー戦闘員との衝突でかなりの損害を被った。第67旅団の1つの大隊の司令官である有名なネオナチのドミトリー「ダヴィンチ」コツユバイロを含む何人かの将校が、ロシアの大砲によって殺害された。

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アルチョモフスクで壊れたウクライナの装甲車。© Sputnik / Sergey Averin

 しかし、キエフには、アルチョモフスクに配置された部隊と他のウクライナ軍を村道で結ぶボグダノフカ・アルチョモフスコエ区間を安定させるだけの資源が残っていた。このため、ロシア軍はスラビアンスクに向かうルートで圧力を北に移動させることになった。ドゥボボ・ヴァシレフカとザリズニャンスコはそれぞれ3月9日と3月15日に解放された。この進撃でいくつかの高台も占領され、スラビアンスク方面からの攻勢に対して北側の側面をかなり確保することができた。

 ロシア軍は、北からの襲撃を続け、アルチョモフスク金属加工工場(AZOM)の敷地を制圧することを目指した。3月10日に工場は襲撃され、3月14日には、2022年12月にゼレンスキーがウクライナ兵に表彰を行ったボストークマッシュ工場が攻略された。AZOMが完全に解放されたのは4月4日のことだった。

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*手前の兵士の首筋にある印。狼狩り用の罠をあしらったもので、ナチ党の最初のシンボル。

 その頃までには、PMCワグナーは北と南の陣地を利用し、市の中心部で大規模な攻勢を開始していた。廃墟と化した市庁舎は、4月2日までにロシア軍の支配下に置かれた。ロシア軍は市街地を完全に包囲することを断念し、敵を西に押しやることに専念した。

 突撃隊*の活躍にもかかわらず、ウクライナ軍による「ブロック分解」攻撃の危険は常にあった。この脅威を排除するため、ロシア軍の正規部隊の追加部隊がこの地域に移送された。4月の大半の間、ロシア軍はウクライナ最後の要塞地帯である市西部の高層ビル群、チェレマ地区とノヴィ地区への到達を試みた。
* 原文では storm troops 。「勇猛で知られるドイツのSturmtruppenを英語化した”storm troops”という言葉があってそれを連想させるように語を選んでいる」「ワグナーの中で更に勇猛な部隊による攻撃の恐ろしさを強調している」とのご指摘を読者の No Title さんからいただきました。

 突撃隊は東部、市の行政区、北部から攻勢を開始せざるを得ず、ポショロク住宅地区とバラの小路のそばでウクライナの防衛を突破した。バフムート2駅付近の鉄道が防衛線として機能した。

 4月22日、ウクライナ側の深刻な抵抗と幾度もの反撃にもかかわらず、この重要な場所をロシア軍が奪取した。これにより、東側から高層ビルが立ち並ぶ地区への進路が確保された。北側はクライナヤ通りに到達し、その南側にはソ連軍の大規模な基地がある。

 同時に、チャソフ・ヤールとアルチョモフスクの間の道路付近でも戦闘が激化した。この道路はロシア軍が定期的に攻撃していたが、ロシア軍が直接支配していたわけではない。ウクライナの要塞地帯がここを通り、南側の道路を覆い、アルチョモフスクからの残りの脱出ルートに対する視覚的な支配を制限していた。

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資料写真:ドンバスでのワグナーグループの軍人 © Sputnik / Viktor Antonyuk

 この2.5平方キロメートルを超える要塞地帯の攻略は、アルチョモフスクの長い戦いの最終章であった。5月初旬、プリゴジンは、弾薬の不足と新兵の確保が困難なため、自軍の攻撃力がほぼ枯渇していると発表した。彼は、ウクライナの反攻が迫っていることを警告し、部下に弾薬が必要であること、都市の北と南の陣地をロシア軍でカバーする必要があることを再度強調した。その頃、ワグナー軍の前進は1日平均150~200メートルで、ウクライナ守備隊を救うことができるのは、外からの包囲網を破る試みしか考えられなかった。


最後の一押し

 5月10日、ウクライナ軍はチャソフ・ヤールから南はクレシェイエフカ方面、北はベルホフスコエ貯水池方面の2方向への攻勢を開始した。その頃、アルチョモフスク周辺の側面を強化するために派遣されたロシア軍第9機動小銃連隊、第4、72、200旅団、第106空挺師団は、これらの地域に防御陣地を構えていた。

 当時、アルチョモフスクの北西と南西にあるロシアの前線陣地は、セヴェルスキー・ドネツ・ドンバス運河の西岸の足場を含め、脆弱と見られていた。ウクライナ軍のクラスノエ防衛により、ロシア軍は包囲網を完成させることができず、2つのロシア軍前哨基地はウクライナ軍の攻撃目標となった。

 ロシア軍は効果的な防御を行うため、前進陣地を前方防御線に変更した。ウクライナの反攻が始まると撤退し、攻めてくる敵に大砲を浴びせ、小競り合いを強いる。この戦略には、いくつかの弱点があった: 特に、アルチョモフスクの西にある、同市を包囲するために重要な高台の陣地が放棄されたことである。

 ウクライナ軍守備隊は安堵のため息をついて再編成しようとしていたが、その時、ワグナー部隊が市西部に残る3つの要塞地帯に対して最後の攻勢をかけたのである:グネズド、コンストラクター、ドミノである。激戦の末、5月18日にドミノを最後に陥落させることに成功した。それ以降、ウクライナ側が制圧したのは、クラスノエに向かう道路沿いにあるサモレ要塞の低層住宅地とわずかな高層ビルだけだった。ロシア軍は時間との戦いに事実上勝利し、ウクライナ軍がロシアの側面を突破する前にアルチョモフスクの支配権を獲得した。

 5月20日、ウクライナ軍は市内に残っていた要塞を失った。ワグナー兵は彼らをサモレットの拠点から追い出し、勝利を祝うとともに「バクムート肉弾戦」の終結を宣言した。


結論

 プリゴジンによれば、アルチョモフスクの戦いの重要性は、ロシアがウクライナの予備兵力を削り、キエフをアルチョモフスクに集中させ、戦線の他の地域、特にメリトポリ方面でのウクライナの攻勢を妨害できたという事実にある。2022年10月8日、セルゲイ・スロヴィキン陸軍大将とともに、ウラジーミル・ゼレンスキーを刺激してバフムートを保持するためにできるだけ多くの軍を投入させるために、バフムート村への攻撃「バフムート肉挽き」作戦を開始することを決定した。バフムートでは、ウクライナ軍を粉砕したので、『バフムート肉挽き』という名前になりました」とプリゴジンは語った。

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資料写真: アルチョモフスクのワグナーグループ軍人 © Sputnik / Yevgeny Biyatov

 いずれにせよ、アルチョモフスクでの9カ月以上にわたる戦闘は、紛争の認識を永久に変え、ウクライナとロシアの双方が、急ピッチの軍事作戦や大規模な打開策という考え方を放棄せざるを得なくなった。

 本稿で取り上げる戦闘は、前線から30キロメートルほど離れた場所で行われたものである。夏の暑さ、秋の泥濘、冬の霜という条件下で、それは第一次世界大戦に酷似していた。プリゴジンの予想では、ドネツク人民共和国の全領土の解放には、あと1年半から2年かかるという。

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 今後、ロシア軍はさらに西に進軍することになる。その途中には、2014年のロシアの攻勢が始まったスラビアンスク市や、クリボイ・トレツ沿いにあるウクライナの第三防衛線があるはずだ。セヴェルスクのウクライナ軍陣地も北側で対処する必要がある。

 一方、多くの軍事専門家は、ワグナー部隊は今後、他の重要な地域に配置転換されるだろうと示唆した。ウグレドールの町を襲撃するか、ウクライナ軍の反撃の可能性を撃退するためである。プリゴジンは、アルチョモフスクでの長い戦闘の後、部隊の回復と戦闘能力の回復のために25日間の休止を要求している。

 5月20日にアルチョモフスクの完全攻略を発表したビデオの中で、プリゴジンは、5月25日以降、ワグナー部隊は休息と再編成のために後方に出発すると述べている。

 しかし、5月の反攻の間に多くの陣地を奪ったウクライナ軍の大部分は、アルチョモフスクの西にまだ残っている。彼らはチャソフ・ヤールに足場を築き、クラスノエとミンコフカの間の線を保持しているため、ロシア軍がセヴェルスキー・ドネツ=ドンバス運河沿いの戦線を安定させるのを妨げている。アルチョモフスクにロシア国旗が掲げられ、ロシア兵が戦場を完全に掌握した今、最優先すべきことは、反攻のために集結したウクライナ軍に最大の損害を与え、運河西岸に追い出すことである。

筆者は、ウラジスラフ・ウゴルニ。ドネツク生まれのロシア人ジャーナリスト。

ウクライナにおける軍事状況―ジャック・ボー(2022年5月初出)

<記事原文 寺島先生推薦>
The Military Situation In The Ukraine. Jacques Baud
筆者:ジャック・ボー (Jacques Baud)
出典:Global Research   2023年5月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月29日




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本記事は 2022年5月初出


第1部 戦争への道

 数年間、マリからアフガニスタンまで、私は平和のために働き、命をかけてきた。したがって、戦争を正当化することではなく、何が私たちを戦争に導くのかを理解することが問題なのだ。[・・・.]

 ウクライナの紛争の起源を考察してみよう。それは、過去8年間にわたって「ドンバスの分離主義者」や「独立主義者」と称されてきた人々から始まる。これは誤った呼称。2014年5月にドネツクとルハーンスクの2つの自称共和国で行われた住民投票は、「独立」(независимость)ではなく、「自決」や「自治」(самостоятельность)のための投票だった。無節操な報道関係者が主張するような「独立」のための住民投票ではなかったのだ。また、「親露」という修飾語は、ロシアが紛争の当事者であったかのような印象を与えるが、実際にはそうではなかった。「ロシア語話者」という表現の方がより正確なのだ。さらに、これらの住民投票はウラジーミル・プーチンの忠告に反して実施されている。

 実際、これらの共和国はウクライナから分離することを求めていたのではなく、ロシア語の公用語としての使用を保証された自治地域の地位を求めていた。なぜなら、アメリカの支援による(民主的に選出された)ヤヌコビッチ大統領の打倒によって生まれた新政府の最初の立法行為は、2012年のキヴァロフ・コレスニチェンコ法を廃止するものであり、これによってロシア語はウクライナの公用語ではなくなった。まるでドイツ語話者のクーデター派が、スイスでフランス語とイタリア語は公用語ではないと決定するようなもの。

 この決定はロシア語話者の人々の間で激しい反発を引き起こした。その結果、2014年2月以降、オデッサ、ドニプロペトロウシク、ハルキウ、ルハーンスク、そしてドネツクなどのロシア語話者地域に対して激しい弾圧が行われ、状況は軍事化され、ロシア人に対する恐ろしい虐殺(特にオデッサとマリウポリでもっとも顕著)が行われた。

 この段階では、ウクライナの参謀本部は作戦行動を取るにあたって、きわめて厳格で教条的なやり方に没頭し、敵を抑え込むことに成功したが、全面的な勝利というわけにはいかなかった。自治主義者による戦争は、軽量な手段で行われる非常に機動的な作戦・・・(で構成されていた)。より柔軟で教条的でないやり方を駆使することで、反乱軍はウクライナ軍の無気力を利用し、彼らを繰り返し「罠」にかけることができた。

 2014年、私がNATOにいた当時、私は小火器の拡散に対する戦いを担当しており、我々はロシアの反乱軍への武器供与を見つけ出そうとし、モスクワが関与しているかどうかを確認しようとしていた。当時、私たちが受け取った情報はほとんどがポーランドの情報機関からのものであり、欧州安全保障協力機構(OSCE)からの情報とは「整合性」が取れていなかった。そして、かなり乱暴な主張はあったが、ロシアからの武器や軍事装備の供給は一切なかった

 反乱軍は、ロシア語話者のウクライナ部隊が反乱軍へ寝返ったことによって武装化された。ウクライナの失敗が続くなか、戦車、砲兵、そして対空部隊が自治主義者の勢力を増大させた。これがウクライナをミンスク合意に取り組ませた要因だった。

 しかし、ミンスク1合意に署名した直後、ウクライナの大統領ペトロ・ポロシェンコはドンバス地域に対して大規模な「反テロ作戦」(ATO/Антитерористична операція)を開始した。NATOの将校たちのまずい助言もあり、ウクライナはデバルツェボで壊滅的な敗北を喫し、それで彼らはミンスク2合意への関与を余儀された。

 ここで重要なのは、ミンスク1合意(2014年9月)およびミンスク2合意(2015年2月)は、共和国の分離や独立を提供していないことを思い起こすことだ。そうではなく、ウクライナの枠組みの中での自治が提案されているのだ。これらの合意を実際に読んだ人は(実際に読んだ人は非常に少ない)、共和国の地位はキエフと共和国の代表者との間で協議され、ウクライナ内の内部的な解決策となることが記されていることに気付くだろう。

 そのため、2014年以来、ロシアはミンスク合意の履行を体系的に要求している一方で、交渉に参加することを拒否している。それはウクライナの内部問題だからだ。一方、フランスを中心とする西側は、常に「ノルマンディー・フォーマット」という形式でミンスク合意を置き換えようと試みた。これにより、ロシア人とウクライナ人が直接対峙することになったのだ。しかし、私たちは忘れてはならない。2022年2月23日から24日まで、ドンバスには一度もロシア軍が存在していないことを。さらに、それ以前にはドンバスにおいてロシア部隊のわずかな痕跡もOSCE(欧州安全保障協力機構)の監視員たちは観察していない。たとえば、2021年12月3日にワシントン・ポストが公開したアメリカの情報地図には、ドンバスにロシア軍がいるとは記されていない。

 2015年10月、ウクライナ安全保障庁(SBU)の長であるヴァシール・フリツァクは、ドンバス地域でわずか56人のロシア兵が確認されたと告白した。これは、1990年代に週末にボスニアで戦うために行ったスイス人や、現在ウクライナで戦うために行くフランス人とまったく同じだ。

 その時点で、ウクライナ軍は惨めな状態にあった。2018年10月、4年間の戦争の後、ウクライナの軍事検察総長であるアナトリー・マティオスは、ウクライナがドンバス地域で2700人の死者を出したと述べた。そのうち、891人が病気により、318人が交通事故で、177人がその他の事故で、175人が中毒(アルコール、薬物)により、172人が武器の不注意な取り扱いで、101人が安全規則の違反で、228人が殺人により、そして615人が自殺により死んだ。

 実際、ウクライナ軍は幹部の腐敗によって揺らぎ、人々の支持はなくなっていた。イギリス内務省の報告書によると、2014年3月/4月の予備役の呼び出しでは、最初の集会には70%が現れず、2回目には80%、3回目には90%、4回目には95%が現れなかった。2017年10月/11月の「2017年秋季」の予備役呼び出しでは、徴集された者の70%が現れなかった。これには自殺脱走(自治主義者の側に移ることが多い)は含まれておらず、ATO地域の労働力の約30%に達することもあった。若いウクライナ人はドンバスでの戦闘に行くことを拒み、移民を選ぶ傾向があった。これは、少なくとも部分的にはウクライナの人口不足の説明になっている。

 その後、ウクライナ国防省は自国の軍隊をより「魅力的」にするためにNATOに協力を求めた。私はすでに国連の枠組みで同様の計画に取り組んでいたため、NATOからウクライナ軍の印象を回復する計画に参加するよう求められた。しかし、これは長期的なプロセスであり、ウクライナ人は事を速く進めたいと考えていた。

 そこで、兵士の不足を補うため、ウクライナ政府は準軍事組織に頼ることにした・・・2020年時点で、これらの組織はウクライナ軍の約40%を占め、ロイターによれば約10万2000人の兵士がいた。彼らはアメリカ、イギリス、カナダ、そしてフランスによって武装化、資金援助、そして訓練されていた。参加している人々の国籍は19以上あった。

 これらの準軍事組織は、2014年以降、西側の支援を受けてドンバス地域で活動していた。「ナチ」という言葉については議論の余地があるかもしれないが、事実は、これらの組織が暴力的で嫌悪すべき思想を伝え、激しく反ユダヤ主義的であるということだ・・・[そして、]彼らは狂信的で残忍な個人から成っている。最もよく知られているのはアゾフ連隊で、その紋章は1943年にソ連からハルキウを解放し、その後1944年にフランスのオラドゥール=シュル=グラヌで大量虐殺を行った第2SS装甲師団ダス・ライヒを連想させるものだ・・・

 ウクライナの準軍事組織を「ナチス」または「新ナチス」と表現することは、ロシアのプロパガンダと見なされている。しかし、それはイスラエルのタイムズウェストポイントのテロ対策センターの見解ではない。2014年には、ニューズウィーク誌がそれらをむしろ「イスラム国」と結びつけるような記事を掲載していた。選ぶのはあなた次第!

 そのため、西側は2014年以来、民間人に対する多くの犯罪行為(強姦、拷問、大量虐殺など)を行って準軍事組織を支援し、武器を与え続けた・・・

 これらの準軍事組織をウクライナ国家警備隊に統合しても、「非ナチ化」には全くならなかった。そう主張する人もいる

多くの例の中でも、アゾフ連隊の紋章は示唆に富んでいる:



 2022年において、非常に図式的に言えば、ウクライナのロシアの攻勢に対抗するために戦ったウクライナ軍は、次のように編成されていた:

 ■ 陸軍は国防省に所属しており、3つの軍団に組織され、機動部隊(戦車、重砲、ミサイルなど)で構成されている。

 ■ 国家警備隊は内務省に所属し、5つの地域司令部に組織されている。

 したがって、国家警備隊はウクライナ軍に属さない地域防衛部隊だ。それには「義勇大隊」(добровольчі батальйоні)と呼ばれる準軍事組織、または「報復大隊」という刺激的な別名で知られる歩兵部隊が含まれている。彼らは主に都市戦闘の訓練を受けており、現在はハルキウ、マリウポリ、オデッサ、キエフなどの都市を防衛している。


第2部 戦争

 スイスの戦略情報部隊の元分析責任者として、私は悲しみはあっても、驚きはしないが、私たちの情報機関はもはやウクライナの軍事状況を理解することができなくなっている、と私は見ている。私たちのテレビ画面に現れる自称「専門家」たちは、ロシアやウラジーミル・プーチンは無分別だとの主張を変調させながら、同じ情報を倦むことなく流し続けているからだ。一歩引いて考えてみよう。

1.戦争の勃発

 2021年11月以来、アメリカは絶えずロシアがウクライナに侵攻する恐れがあると言っていた。しかし、最初の段階ではウクライナ人は同意しないようだった。なぜか?

 2021年3月24日に遡る必要がある。その日、ヴォロディミル・ゼレンスキーはクリミアの奪還のための布告を発し、国の南部に部隊を展開し始めた。同時に、黒海とバルト海の間ではいくつかのNATOの演習が行われ、ロシアの国境沿いでの偵察飛行の回数も増えていた。その後、ロシアはいくつかの演習を実施し、自国の部隊の作戦的な準備状況を確認し、状況の進展に注意を払っていることを明らかにした。

 事態は10月から11月にかけてZAPAD 21演習が終了するまで落ち着きを見せた。この演習における軍隊の動きは、ウクライナへの攻撃のための増強と解釈された。しかし、当のウクライナ当局は、ロシアが戦争の準備をしているという考えを否定し、ウクライナの国防大臣であるオレクシー・レズニコフは、春以来国境に変化はまったくなかったと述べている。

 ミンスク合意に違反して、ウクライナはドローンを使用したドンバスでの空中作戦を行っており、2021年10月にはドネツクの燃料貯蔵庫に対して少なくとも1回の攻撃が行われた。アメリカの報道はこれに注目したが、ヨーロッパは報道しなかった;これらの違反行為を非難する声は皆無だった。

 2022年2月、事態は山場を迎えた。2月7日、エマニュエル・マクロンはモスクワ訪問中にウラジーミル・プーチンに対し、ミンスク合意への約束を再確認し、翌日にはヴォロディミル・ゼレンスキーとの会談後にも同様の約束を繰り返した。しかし、2月11日にはベルリンで開催された「ノルマンディー・フォーマット」協議の指導者の政治顧問の会議が9時間にわたる作業の末、具体的な結果なしに終了した。ウクライナ側は依然としてミンスク合意の適用を拒否した。それはおそらくはアメリカの圧力。ウラジーミル・プーチンは、マクロンが空虚な約束をしたと指摘し、西側が合意を履行する準備ができていない(解決策に反対するのは8年間変わっていない)ことを指摘した。

 ウクライナの接触地帯での準備は続いていた。ロシア議会は懸念を抱き、2月15日にウラジーミル・プーチンに対し、共和国の独立を承認するよう求めたが、彼は最初これを拒否した。

 2023年2月17日、ジョー・バイデン大統領はロシアが数日以内にウクライナを攻撃すると発表した。彼がこれをどのように知ったのかは謎。しかし、2月16日以降、ドンバス地域の住民への砲撃が劇的に増加し、OSCE(欧州安全保障協力機構)の観察員日報によっても、それは明らかだった。当然ながら、メディアや欧州連合、NATO、そして他の西側諸国政府は反応せず、介入しなかった。後にこれはロシアの誤情報だと言われることになる。実際には、欧州連合と一部の国々はドンバス地域の住民の虐殺を意図的に黙認し、これがロシアの介入を引き起こすことは知っていたようだ。

 同時に、ドンバス地域での破壊活動に関する報告もあった。1月18日、ドンバスの戦闘員たちは、ポーランド語を話し、西側の装備を持った破壊工作員を捕らえた。彼らはゴルリウカ化学的な事件を引き起こすことを企てていた。彼らはCIAの傭兵である可能性があり、アメリカ人によって指導または「助言」を受けており、ウクライナ人やヨーロッパ人の戦闘員で構成されていた可能性がある。彼らはドンバス地域での破壊活動を行うために派遣されたのだ。

 実際、2022年2月16日には、ジョー・バイデンはウクライナがドンバス地域の民間人を激しく砲撃し始めたことを知っていた。これにより、ウラジーミル・プーチンは難しい選択を迫られた:ドンバス地域を軍事的に支援し、国際問題を引き起こすか、それともドンバスのロシア語話者が粉砕されるのを、一歩身を引いてただ見ているのか、という選択だ。

 もしプーチンが介入を決断した場合、彼は「保護責任(R2P)」という国際的な義務を行使することもできた。しかし、それがどのような性質や規模であっても、介入は制裁の嵐を引き起こすことを彼は知っていた。したがって、ロシアの介入がドンバス地域に限定されるか、ウクライナの立場を巡って西側への圧力を高めることになるのか、いずれにしても支払うべき対価は同じだった。彼はこれを2022年2月21日の演説で説明した。その日、彼はドゥーマ(ロシア連邦議会下院)の要請に応じ、ドンバス地域の2つの共和国の独立を認め、同時に両国との友好・援助条約に署名した。

 ウクライナ軍のドンバス地域住民への砲撃は続き、2月23日、2つの共和国はロシアに軍事支援を求めた。2月24日、ウラジーミル・プーチンは国際連合憲章の第51条を行使し、防衛同盟の枠組みでの相互の軍事支援を宣言した。

 ロシアの介入を一般大衆の目に完全に違法に見せるために、西側の大国は戦争が実際には2月16日に始まったことを意図的に隠した。ウクライナ軍は2021年からドンバス攻撃の準備をしており、ロシアやヨーロッパの一部の情報機関もこれについて十分に把握していた。

 2022年2月24日の演説で、ウラジーミル・プーチンは彼の作戦の二つの目的を述べた。「ウクライナの非武装化」と「ナチズムの排除」。したがって、ウクライナの占拠という問題ではなかった。まして(おそらく)占領することでもない。そしてもちろん破壊することでないことははっきりしていた。

 それ以降、作戦の進行に関する情報は限られている。ロシア側はその作戦に対して優れた安全保障対策(OPSEC)を持っており、計画の詳細は知られていない。しかし、比較的早い段階で作戦の進行状況が明らかになり、戦略的な目標が作戦レベルでどのように展開されたかが理解できるようになった。

非武装化
■ ウクライナの航空機、防空システム、偵察資産の地上破壊。
■ 指揮・情報構造(C3I)および主要な後方物流経路の無力化。
■ 国土の奥深くにおける大半のウクライナ軍を包囲すること。

ナチズムの排除
■ オデッサ、ハルキウ、そしてマリウポリの都市および領土内のさまざまな施設で活動している義勇軍の破壊または無力化。


2.非武装化

 ロシアの攻勢は非常に「古典的」な手法で行われた。最初は、イスラエルが1967年に行ったように、最初の数時間で地上の空軍を破壊した。その後、「流れる水」の原則に従って、複数の軸に沿って(作戦は)同時進行していった:抵抗が弱い場所ではどこでも前進し、都市(兵力面で非常に要求の高い地域)は後回しにされた。北部では、破壊工作を防ぐためにチェルノブイリ原子力発電所が直ちに占拠された。ウクライナとロシアの兵士が一緒に発電所を守っている映像はもちろん放映されない。

 ロシアが首都キエフを占拠し、ゼレンスキーを排除しようとしているという考えは、典型的には西側から出てきている・・・しかし、ウラジーミル・プーチンは決してゼレンスキーを撃つことや転覆させることは考えていなかった。そうではなく、ロシアは彼を権力に留めることで、彼を交渉の場に就かせ、キエフを包囲することを目指している。ロシアはウクライナの中立を獲得したいのだ。

 西側の評論家の多くは、ロシアが軍事作戦を行いながら交渉解決を追求し続けることに驚いていた。その説明は、ソビエト時代からのロシアの戦略的見方にある。西側にとって、政治が終わると戦争が始まるのだが、ロシアの進め方はクラウゼヴィッツの影響を受けている。戦争は政治の延長であり、戦闘中でさえも柔軟に立場を移行できるという考え方だ。これにより、相手に圧力をかけて交渉を促すことができるのだ。

 作戦の観点から見ると、ロシアの攻勢は以前の軍事行動と計画の一例だった:わずか6日間で、ロシアはイギリスと同じ広さの領土を占拠し、進撃の速さは1940年にヴェルマッハト(ドイツ国防軍)が達成したものよりも速かった。

 ウクライナ軍の主力は、ドンバスに対する大規模な作戦の準備のため、国の南部で展開されていた。このため、ロシア軍は3月初めからスラヴャンスク、クラマトルスク、そしてセヴェロドネツクの「包囲の釜」でそれを包囲することができた。また、ハルキウから東部からの突撃と、クリミアから南部からのもう一つの突撃が行われた。ドネツク(DPR)とルガンスク(LPR)の共和国の部隊は東部からの突撃でロシア軍を補完している。

 この段階において、ロシア軍は徐々に包囲網を狭めているが、時間的な焦りや実行計画の制約はもはやない。彼らの軍事的な非武装化の目標はほぼ達成され、残されたウクライナ軍はもはや作戦および戦略的な指揮構造を持っていない。

 「専門家」たちが物資の不足が原因だとする「停滞」は、目標の達成による結果に過ぎない。ロシアはウクライナ全土の占領を望んでいるわけではない。実際、ロシアは進撃をウクライナの言語的な境界に制限しようとしているように思われる。

 報道機関は、特にハルキウでの市民への無差別な爆撃について報じ、恐ろしい映像が広く放映している。しかし、ラテンアメリカの特派員であり現地に住むゴンザロ・リラは、3月10日11日の平穏な街の様子を私たちに伝えている。確かに、ハルキウは大都市であり、私たちはすべてを見ているわけではないが、ゴンザロ・リラの報道は、テレビ画面で繰り返し見せられるような全面戦争に今私たちが置かれているわけではないことを示唆しているようだ。ドンバス共和国に関しては、彼らは自分たちの領土を「解放」し、戦闘は今マリウポリ市で継続中だ。


3.ナチズムの排除

 ハルキウ、マリウポリ、そしてオデッサなどの都市では、ウクライナの防衛は準軍事民兵によって行われている。彼らは、「ナチズムの排除」という目標が主に彼らに向けられていることを知っている。都市化された地域を攻撃する側にとって、市民は問題だ。そのため、ロシアは人道的な通路を作り出し、市民を避難させて準軍事民兵だけを残し、より容易に戦うことを探っている。

 逆に、これらの準軍事民兵は、市民が避難することを邪魔し、ロシア軍がそこで戦うことを思いとどまらせようとする。そのため、彼らはこれらの通路を使うことに消極的であり、ロシアの努力が失敗するようにあらゆる手段を講じる。彼らは市民を「人間の盾」として利用する。マリウポリから脱出しようとする市民がアゾフ連隊の戦闘員によって暴行を受ける様子を捉えた動画は、もちろん西側の報道機関によって注意深く検閲される。

 Facebookでは、アゾフ集団はイスラム国(ISIS)と同じ枠に分類され、Facebookの「危険な個人や組織に関するポリシー」の対象となっていた。そのため、その活動を称賛することは禁止され、それに好意的な投稿は一貫して禁止されていた。しかし、2021年2月24日、Facebookはその指針を変更し、民兵団に対する有利な投稿を許可した。同じ精神で、2021年3月には、Facebookは旧東欧諸国で、ロシア兵士や指導者の殺害を呼びかける投稿を許可した。私たちの指導者たちを奮い立たせるような価値観はもう十分だ。

 私たちの報道機関は、ウクライナの人々による大衆的抵抗運動という感情的な印象を広めている。この印象が、欧州連合が市民に武器を配布することを資金提供する理由となった。私は国連の平和維持活動の責任者として、市民の保護に関する問題に取り組んできた。私たちは、市民に対する暴力が非常に特定の文脈で発生することを発見している。特に、武器が豊富で指揮統制構造が存在しない場合にそういうことが起こる。

 これらの指揮統制構造こそが軍隊の本質:その機能というのは、力の使用をある目的に向けることだ。現在のように無秩序に市民に武器を提供することで、欧州連合は彼らを戦闘員に変え、それによって彼らを潜在的な標的にしてしまった。さらに、指揮統制がなく、作戦目標がない状態では、武器の配布は必然的に個人の私闘や強盗行為、非効果的で致死的な行動へとつながる。戦争は感情の問題となり、力は暴力となる。これは、2011年8月11日から13日にかけて、リビアのタワルガで起きたことだ。そこでは、フランスが(違法に)空中投下した武器により、3万人の黒人アフリカ人が虐殺された。ちなみに、イギリスの王立戦略研究所(RUSI)は、このフランスの武器供与に付加価値を見出していない

 さらに、戦争中の国に武器を供与することで、その国は交戦国と見なされる危険にさらされる。2022年3月13日のロシアによるミコライウ空軍基地への攻撃は、武器輸送すれば敵対的な標的として扱われるというロシアの警告の後に行われた。

 EUはベルリンの戦いの最終段階で第三帝国がやった悲惨な経験を繰り返している。戦争は軍に任せるべきであり、片方が敗北した場合は認めるべきなのだ。そして、もし抵抗があるなら、それは指導され組織立てられるべき。しかし、私たちはまったく逆のことをしている―市民に戦いをけしかけ、同時にFacebookはロシアの兵士や指導者の殺害を呼びかけることを許可している。私たちを奮い立たせるような価値観はもう十分だ。

 一部の情報機関は、この無責任な決定を、ウクライナの人々を戦争における砲弾のように利用し、ウラジーミル・プーチンのロシアと戦わせる手段と見ている・・・ 市民の安全に対する保証を得るために交渉に入る方が、火に油を注ぐよりも良かっただろう。他人の血で戦意を高めるのは簡単なことだ。


4.マリウポリの産科病院

 事前に理解しておくことが重要だが、マリウポリを守っているのはウクライナ軍ではなく、外国人傭兵で構成されたアゾフ民兵だ。

 2022年3月7日の状況報告書において、国連ロシア政府代表は「住民の証言によると、ウクライナ軍がマリウポリ市の第1産科病院の職員を追放し、施設内に射撃場所を設置した」とニューヨークで述べている。また、2022年3月8日、独立系のロシア報道機関Lenta.ruは、マリウポリの市民の証言を掲載した。それによると、産科病院はアゾフ連隊の民兵によって占拠され、市民の住民は武器で脅されて立ち退かされたと証言している。彼らは、数時間前に行われたロシア政府代表の発言が正しいことを確認している。

 マリウポリの病院は、対戦車兵器の設置や観測に非常に適した優位な位置を占めている。3月9日、ロシア軍はその建物を攻撃した。CNNによれば、17人が負傷したと報じられているが、映像には建物内での死傷者は見られず、被害者がこの攻撃と関連しているという証拠もない。子供たちについて話が出ているが、実際には何もない。それにもかかわらず、EUの指導者たちはこれを戦争犯罪と見なしている。そして、ゼレンスキーはウクライナ上空の飛行禁止区域を要求している。

 実際には、正確に何が起こったのか、私たちにはわからない。しかし、一連の流れを見ると、ロシア軍がアゾフ連隊がいる場所を攻撃したこと、そして、そのとき産婦人科病棟に市民はだれもいなかったことは確かなようだ。

 問題なのは、都市を守る準軍事組織が、戦争のルールは尊重しなくてもいいと国際社会から後押しされていることだ。ウクライナ人が1990年のクウェート市の産婦人科病院の事例を再演したように見える。それは、Hill & Knowlton社が1070万ドルで完全に演出し、国際連合安全保障理事会にイラクへの介入を説得するために行われた「砂漠の盾/嵐作戦」のことだ。

 西側の政治家たちは、ウクライナ政府に対していかなる制裁措置も講じずに、ドンバスでの市民への攻撃を8年間認めてきた。それ以降、私たちはずっと、西側の政治家がロシアを弱体化させるという目標に向けて国際法を犠牲にすることに同意しているという動的世界に入っている。


第3部 結論

 元情報機関の専門家として、まず私に印象的なのは、過去1年間における西側情報機関の完全な不在だ・・・ 実際、西側諸国の情報機関は政治家に圧倒されてしまっているようだ。問題は、意思決定者が耳を貸さない限り、たとえ世界最高の情報機関であってもそれは意味がないということだ。これが、今回の危機の中で起こっていること。

 とは言え、一部の情報機関は非常に正確かつ合理的な状況把握をしていた。しかし、他の一部情報機関は明らかに報道機関が広める情報と同じ(規模の)情報しか持っていなかった・・・ 問題は、経験から言えば、彼ら分析で非常に質が悪いことだ。彼らは教條主義であり、軍事的な「質」で状況を評価するために必要な知的・政治的な独立性が欠けている。

 第二に、一部のヨーロッパの国々では、政治家たちが意図的に思想に基づいて状況に対応しているようなのだ。それが、この危機を最初から非理性的なものにしている理由だ。この危機の間、公に提示されたすべての文書は、商業的な情報源に基づいて政治家たちによって提示されたことを忘れてはならない。

 一部の西側の政治家は明らかに紛争を望んでいた。アメリカでは、アンソニー・ブリンケンが国連安全保障理事会に提示した攻撃の筋書きは、彼のために働いていたタイガーチームの想像の産物でしかなかった。彼は2002年にドナルド・ラムズフェルドが行ったように、CIAや他の情報機関を「迂回」し、イラクの化学兵器についてはっきりしないと主張していた情報機関を無視した。

私たちが今目撃している劇的な展開には、私たちが知っていたが見ようとしなかった複数の原因がある:

■ 戦略段階では、NATOの拡大(ここでは取り扱っていない);
■ 政治段階では、西側のミンスク合意の実施を拒否したこと; そして、
■ 作戦段階では、過去数年間にわたるドンバスの市民への継続的かつ繰り返される攻撃と、2022年2月下旬の劇的攻撃増加。

 言い換えると、ロシアの攻撃を当然ながら遺憾に思い、非難することはできる。しかし、私たち(すなわち、アメリカ、フランス、そして主導する欧州連合)が紛争勃発の条件を作り出しだのだ。私たちはウクライナの人々や200万人の難民に同情の気持ちを示す。それは結構だ。しかし、自国政府によって虐殺され、8年間にわたってロシアに避難を求めた同じ数のウクライナの難民に対して、少しでも同情心を持っていれば、おそらく今回の出来事はまったく起こらなかっただろう。

[・・・]

 ドンバスの人々が受けた虐待に「ジェノサイド」という用語が適用されるかどうかは、議論の余地がある。一般的に、その用語はより大規模な事件(ホロコーストなど)に使用される。しかし、ジェノサイド条約で定義されている内容は、おそらくこの事例にも適用できるほど幅広いものだ。

 明らかに、この紛争は私たちを混乱状態に陥れた。制裁は外交政策の好まれる手段となっているようだ。もし私たちがウクライナに対してミンスク合意を順守させるよう強く主張していたなら、それは私たちが交渉し承認した合意であるのだから、今回の事態は起こらなかっただろう。ウラジーミル・プーチンの非難は私たち自身のものでもある。後から嘆いても意味はない―早く行動すべきだったのだ。ただし、エマニュエル・マクロン(保証人であり国連安全保障理事会のメンバー)、オラフ・ショルツ、ヴォロディミル・ゼレンスキーのいずれも、自分たちの約束を守らなかった。結局、真の敗者は声を持たない人々になってしまった。

 欧州連合はミンスク合意の実施を前に進めることができなかった。それどころか、ウクライナがドンバスで自国の人々を爆撃している際に何の反応もしなかった。もし反応をしていれば、ウラジーミル・プーチンも反応する必要はなかっただろう。外交面で不在だった欧州連合は、むしろ紛争を煽ることで自らを際立たせたのだ。ウクライナ政府は2022年2月27日にロシアとの交渉に入ることに同意した。しかし数時間後、欧州連合はウクライナに武器を供給するための4億5000万ユーロの予算を可決し、火に油を注いだ。それ以降、ウクライナ人は合意に達する必要がないと感じた。マリウポリのアゾフ民兵の抵抗は、さらに5億ユーロの武器供給をもたらした。

 ウクライナでは、西側諸国の祝福のもと、交渉を支持する者たちが排除されている。ウクライナの交渉代表の一人であるデニス・キレーエフは、ロシアに対してあまりにも好意的で、裏切り者と見なされたため、ウクライナの秘密情報機関(SBU)によって3月5日に暗殺された。同じ運命をたどったのは、ウクライナのキエフとその周辺地域のSBU主任副局長で、ロシアとの合意にあまりにも好意的だったため、2022年3月10日に「平和創造者(Mirotvorets)」と呼ばれる民兵によって射殺された。この民兵は、「ウクライナの敵」の個人情報、住所、電話番号を一覧表にして嫌がらせや暗殺の対象とするMirotvoretsウェブサイトに関連しており、これは多くの国では処罰される行為だが、ウクライナでは処罰されない。国連と一部のヨーロッパ諸国は、このサイトの閉鎖を要求したが、ウクライナ議会(ラーダ)はその要求を拒否した。

 結果的に、その代償は高くなるだろうが、ウラジーミル・プーチンはおそらく自身が設定した目標を達成するだろう。私たちは彼を中国の腕の中に追いやった。彼と北京との結びつきは強固になっている。中国は紛争の仲介役として台頭している・・・アメリカは石油に関してベネズエラやイランに頼らざるを得ず、エネルギーの行き詰まりから抜け出すために、アメリカは敵国に課した制裁を哀れな様子で撤回するしかない。

 ロシア経済を崩壊させ、ロシア人民を苦しめることを求めたり、さらにはプーチンの暗殺を呼びかける西側の閣僚たちは(言葉の一部は形を逆転させたかもしれないが、中身は変わらない!)、私たちが憎む相手と何ら変わらないことを示している―ロシアのパラリンピック選手やロシアの芸術家に制裁を科すことは、プーチンと戦うことと何の関係もない。

[・・・]

 ウクライナの紛争を他のイラク、アフガニスタン、リビアでの戦争よりも非難すべき要素は何だろうか? 国際社会に対して不正な、正当性のない、殺戮を伴う戦争を行うために故意に嘘をついた人々に対して、私たちはどんな制裁を課したのか?・・・イエメンの紛争に武器を供給している国々、企業、あるいは政治家たちに対して、私たちは一つでも制裁を課したのか?イエメンは「世界で最も深刻な人道的災害」と考えられているのだ。

 その問いを発することは、それに答えることだ・・・そしてその答えは美しくはない。

*

フランス情報研究センター(CFRR)
文献資料第27号 / 2022年3月
ウクライナの軍事情勢について
CFRRに感謝を表します。

ジャック・ボーは、スイス戦略情報の元メンバーであり、東欧諸国の専門家です。彼はアメリカとイギリスの情報機関で訓練を受けた。彼は国連平和維持活動の政策担当者として務めた経験もある。法の支配と安全保障機関の国連専門家として、彼はスーダンで初の多次元国連情報部隊を設計し指導した。彼はアフリカ連合で働き、NATOで小火器の拡散に対する闘いを5年間担当した。彼はソビエト連邦の崩壊直後に最高位のロシア軍および情報当局との協議に参加した。NATO内では、2014年のウクライナ危機を追跡し、後にウクライナ支援計画に参加した。彼は情報、戦争、テロに関する数冊の著書を執筆しており、特にSIGESTから出版された『Le Détournement』、『Gouverner par les fake news』、『L’affaire Navalny』などがある。彼の最新の著書はMax Miloから出版された『Poutine, maître du jeu?』である。 特集画像はTURから提供されている。


ウクライナ:ロシアは英国が提供した劣化ウラン弾を消し去ったのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine: Did Russia Obliterate Depleted Uranium Munitions Delivered by the UK?
出典:INTERNATIONALIST 360°
2023年5月16日
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月27日





 5月13日、ロシア航空宇宙軍(VKS)は、大規模な全面的攻撃をキエフ政権の支配下にある多くの標的に向けて行った。中でも特筆すべきは、VKSが西ウクライナの複数の主要な弾薬貯蔵所を攻撃したことだ。その中には、テルノーピリ市内の貯蔵所も含まれていた。ロシア国防省(MoD)の5月14日の公式発表によると、ウクライナのネオナチ軍事政権軍の少なくとも1カ所の貯蔵施設が、フメリニツキー市のごく近くで破壊されたという。キエフ政権のエネルギー省も明言しているのだが、「ロシアによる大規模な集中砲火により、5月13日の早朝に同市のエネルギー施設が被害を受けた」という。

 同省の発表によれば、当該地域の電力供給がVKSの攻撃により影響を受けたとのことであり、標的とされた「エネルギー施設」が軍使用施設であったことを事実上認めていた。フメリニツキー市の軍当局も同様の内容を発表しており、「複数のドローン機がAFU(ウクライナ軍)の重要な基盤施設を標的にした」ともしていた。いっぽう、いつもの宣伝扇動的な見方を繰り返すよう指示を受けた、同市のオレクサンドル・シムチュシン市長は、「学校、住居家屋、産業施設が被害を受けた」と述べ、自身の発言が、「多くの一般市民を負傷させたテロ攻撃であった」と思わせるような内容の発言をした。

 このような根拠のない主張が行われることは予想通りだった。というのも、ロシアを悪魔化し、侮辱することが目的の情報戦争が、ほぼ10年にわたって続けられているからだ。この情報戦は、NATOの欧州内での侵略行為に対するロシアの反撃が起こる前から開始されていた。しかし、軍事当局がついつい認めてしまった事実は、一般市民はロシア軍の標的にはおそらくなってこなかったという事実だった。ロシアの特殊軍事作戦(SMO)の大部分は、1年以上たった今でもその基本線を守っている。ただし、弾薬貯蔵所がロシア軍にとって最優先となる標的であり、何の躊躇もなく攻撃対象とされて当然である。

 先述のとおり、同日(5月13日)、VKSの長距離ミサイル攻撃により、 フメリニツキー市の100キロ以上西に位置するテルノーピリ市内の弾薬貯蔵施設が破壊された。公式の情報においては、まだこの事件の真偽や、爆発が起こった箇所については明らかにされていない中ではあるが、両爆発の模様を表す動画は拡散されている。中国のテレビ局であるCCTVのものであると思われる動画によると、この爆発が同市内の施設を破壊した様子が映し出されている。この大規模な爆発は明らかに弾薬貯蔵所でおこったと示唆されるものであった。というのも、通常兵器の破壊ではこのような被害は出ず、今回起こった後続爆発は、貯蔵されていた砲弾により引き起こされた二次爆発であったと考えられる。

 動画で示されている爆発の程度については、ウクライナ国内の報道機関(特にウクライナ国内のテレグラムの番組上)で憶測を呼んでいる。その憶測とは、ロシアのVKSが戦略的核弾頭を用いて、貯蔵施設を破壊したのでは、というものだ。このような主張がさらに声高に叫ばれているのは、同地域での放射能検出器による放射能値が急増したという報道があったからだ。ただし多くの軍事専門家は、はっきりと口を揃えてこのような噂話を否定している。しかし放射能の数値が上がっているという報道が真実ならば、標的とされた貯蔵施設には英国が供給した劣化ウラン弾が保管されていた可能性を示唆させる。

 遡ること3月、英国当局は、ウクライナ軍が使用することになる「チャレンジャー2」主要戦車(MBTs)用として劣化ウラン弾を供給することを公式発表していた。報道によると、これらの14機のMBTsがすでにウクライナのネオナチ軍事政権に送致されているということだが、現在の状況は不明である。劣化ウラン弾は、徹甲弾(AP)力が強力なことで知られている武器であり、事実上どんな種類の武器でも貫通できるとされているが、その理由は、この爆弾がもつ強密度のためである。しかし、放射能物質を含む構造物により製造されているため、投下された地域のすべての生物や生態系の健康面に深刻な危険を生じさせる武器であるとされている。

 ロシア側は英国によるこの戦争激化行為に対して迅速に対応した。その中には、ロシアの戦略核兵器をベラルーシに公式に配置する措置も含まれていた。ただし、この措置は、ポーランドが米国の核兵器をポーランド国内に配置するよう主張したことと直接繋がるものであった。しかし、ロシア外務省が何度も警告を発してきたのは、劣化ウランを含む武器は健康上恐ろしい影響を与え、そのような影響をうけた地域を管理したり、被害の状況を正確に把握することさえ不可能になるであろう、という点だった。しかし、英国は全く意に介さない態度を取り続け、英国当局は、劣化ウラン弾が今後利用されることになってもその責任を負うつもりはないと公式に発表した。

 西側連合がこんな無責任な態度を取る(あるいはただ単にウクライナの人々にどんなことが起こるのかの想像力が欠如しているだけなのかもしれないが)中で、好戦的な態度を取ってきた西側にとっては、こんなことは初めてのことではない。 不幸な国ウクライナは、 「生物研究」の実地試験場として利用されてきたことは、ビクトリア・ヌーランドが遠回しではあるが認めたとおりだ。いっぽう、最近の発表で分かったことは、「機密扱いされている米国の原子力技術」でさえ、 ウクライナ国内のいくつかの原子力発電所で利用されてきたという事実だ。さらに悪いことには、米国と米国の手下であるNATO諸国が、原子力を使った偽旗作戦を準備し、その責任をロシアに擦り付けようとしているという報告もある。 この中には、米国の指示のもと、ウクライナ中に放射能測定装置を設置する動きも含まれている。

「放射能のキノコ雲」が西側を恐れ戦(おのの)かせているーロシア安全保障会議書記の警告

<記事原文 寺島先生推薦>
‘Radioactive cloud’ threatening western Europe – Russian security chief
The hazard was produced by depleted uranium munitions destroyed in Ukraine, Nikolay Patrushev has claimed
この危機は、ウクライナで劣化ウラン弾が破壊されたことにより生じた、とロシアのニコライ・パトルシェフ連邦安全保障会議書記が主張
出典:RT 2023年5月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月25日



ロシア連邦安全保障会議書記ニコライ・パトルシェフ氏。© スプートニク/セルゲイ・グネエフ


 ウクライナでの劣化ウラン弾破壊により、放射能のキノコ雲が生じ、風に乗り西欧までその放射能が流されている、とロシア連邦安全保障会議書記ニコライ・パトルシェフ氏が主張した。英国はこの種の軍需品を、英国製のチャレンジャー戦車から発射できるよう、ウクライナに供給していた。

 同書記が、上記の警告を明らかにしたのは、金曜日(5月19日)の政府会議でのことであり、その中で同書記は米国を非難し、同盟諸国を操って他諸国を「援助」の手を差し伸べさせることが、結果的に被援助諸国に害を与えることになっている、と述べた。

 「米国やその同盟諸国は、このようなやり方で、ウクライナを「援助」し、衛星諸国に圧力をかけ、劣化ウラン弾を供給させました。そしてこれらの劣化ウラン弾が破壊された結果、放射能のキノコ雲が西欧にまで届くこととなりました。ポーランドで放射能の数値が増加していることが検出されています」とパトルシェフ書記は述べた。

 未確定の報道が、ウクライナ国内で拡散されているが、それは先週の土曜日(5月13日)にロシアが行った攻撃の対象物についてのことだった。このことに関して、ロシア側はフメリニツキー市内の弾薬補給処を破壊したと表明している。ロシア側の主張によると、この軍事施設は英国が供給した劣化ウラン弾の保管庫として使用されていたという。保管されていた劣化ウラン弾の原料が、貯蔵庫に対する激しい攻撃により、塵と化したと推定されている。



関連記事:米国はウクライナ国内に放射能測定器を設置―報道から

 ロシアが以前から警告していたのは、劣化ウラン弾を使用すれば、長期にわたる環境上や公共医療上の危険を生じることになる、という点だった。その根拠には、かつて劣化ウラン弾が使用されたことがあるセルビアやイラクなどの国々で行われた研究がある。英国側は、そのような危険性を否定している。

 放射能はそれほど高くない劣化ウラン弾だが、主に健康面において劣化ウラン弾の危険性が懸念されているのは、この物質の原料が毒性のある重金属であるからだ。爆発によりウランや酸化ウランの粒子が生じれば、被爆した人々がそれを吸い込んだり、環境汚染が起こる可能性がある。

 ポーランド当局は、月曜日(5月15日)に東部ルブリン市で放射能値が急激に上がったという主張を否定している。

 フメリニツキー市内で起こった爆発についての情報は、ウクライナ軍の巡回部隊が動員されたという報道からも支持された。その巡回部隊は同市内や周辺で標本を集めていたという。その近辺に原子力発電所はあるが、報道によるとウクライナ軍の巡回部隊が通常監視しているのは、その原子力発電所周辺の状況であり、今回は、通常の巡回経路から離れた部分の巡回をおこなっていたことが目撃されている。

ロシアが国際刑事裁判所(ICC)の検察官の逮捕を命じる。

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia orders arrest of ICC prosecutor
The British lawyer who charged President Vladimir Putin with “war crimes” is now facing charges himself
「戦争犯罪」でウラジミール・プーチン大統領を告発したイギリスの弁護士が、現在自ら告発されている。
出典:RT  2023年5月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月25日



国際刑事裁判所(ICC)の検察官、カリム・アサド・アフマド・カーン© Ebrahim HAMID / AFP


 ロシア内務省は金曜日(5月19日)、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)の現職最高検察官であるイギリスの弁護士、カリム・アサド・アフマド・カーンに対する逮捕状を発行した。

 3月に、カーンはロシアのウラジミール・プーチン大統領と児童権利委員のマリア・ルヴァ・ベロワに対し、「ウクライナの占領地域」からロシアへの「違法な追放と移送」に関する戦争犯罪の容疑で逮捕を請求した。

 ICCは、ロシアがウクライナ軍の攻撃下にある民間地域からの子供の避難させたことは強制的な人口移転とみなされ、それは第四次ジュネーブ条約における犯罪と定義されるというキエフ政府の主張に基づき行動した。



関連記事:クレムリンはプーチンに対するICCの逮捕状には無関心―報道官

 カーンの発表から3日後の3月20日、ロシア捜査委員会は彼のほか、彼の逮捕状を承認したICCの3人の判事、赤根智子、ロサリオ・サルバトーレ・アイタラ、そしてセルヒオ・ヘラルド・ウガルデ・ゴディネスに対して捜査を開始した。この調査は、ロシア刑法の299条および360条、つまり明らかに無実であると知られている人物に対する犯罪容疑の提起と、国際的な保護を受けている外国の代表者への攻撃の準備によって国際関係を複雑化させることに焦点を当てている。

 モスクワは、ロシアがこの裁判所の設立に関わるローマ規程の締約国ではないため、プーチン大統領とルヴァ・ベロワに対するICCの逮捕状を無効として退けた。同様に、アメリカ、中国、インド、および数十の他の国も締約国ではない。

ウクライナが、米国に好印象を持たせるために残された時間は「5ヵ月」—FT紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine has ‘five months left’ to impress US – FT
The West cannot keep its military aid to Kiev flowing “forever,” several senior officials told the Financial Times
複数の高官がフィナンシャル・タイムズ紙(FT)に対して、「西側はキエフへの軍事援助を永遠に続けることはできない」と述べた。
出典:RT 2023年5月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月25日



FILE PHOTO. © Global Look Press / IMAGO / Vincenzo Circosta


 ウクライナは、5か月以内に何らかの「進展」をアメリカや他の支援国に示す必要がある。それはロシアとの紛争に関する計画をそれらの国々に説得するためだ、とFT紙は木曜日(5月18日)、欧州とアメリカの複数の高官の話を引用して報じた。

 「ワシントンは選挙運動期間に入り、アメリカとその同盟国がウクライナに提供してきた大規模な軍事支援が無駄ではなかったことを示さなければならない」ということも、FT紙の記事は記している。

 「アメリカにとっては、この戦争を成功したものとして売り込むことが重要です。また、国内向け目的としても、それらの一連の援助がウクライナの進展に成功したことを証明する必要があります」と、ある欧州の高官がFT紙に語った。

 同紙は、「世論調査によれば、アメリカ国民のウクライナへの支持は低下しており、バイデン大統領の政権は、キエフへの支援に数百億ドルを費やしたことが、前線で大きな違いを生んだことを示さなければならない」と述べている。

 FTの情報源によると、ワシントンは次の5か月が今回の紛争の結果にとって重要だと考えている。「もし9月になってもウクライナが大きな進展を遂げていない場合、(西側諸国)に対する国際的な圧力は非常に大きくなるでしょう」と、別の情報源がFTに匿名で語った。



関連記事:ウクライナへ送る米国の資金は枯渇ーポリティコ誌の報道

  9月には、国連総会とG20首脳会議が次々に開催される。どちらの会合も、戦闘中の当事者たちを交渉卓に座らせるために活用される可能性があると、FT紙は述べている。

 複数の情報源は、キエフへの西側の軍事支援も限界に近づいていると警告している。「(キエフに対して)伝えたいことは、基本的に、現状がウクライナの手にできる最善のものだということです。アメリカの予算にはもはや柔軟性がなく、支払いのための小切手を書き続ける余裕がなく、またヨーロッパの軍需工場も全力で稼働しています」と、ある欧州の高官が同紙に語った。

 アメリカは、ウクライナにおける武器供給において最大の支援国であり続けている。ワシントンの同盟国は、その支援を維持する能力について懸念を抱いており、2024年の米国大統領選挙によりその支援が減少することを予想している。「私たちは永遠に同じ規模の支援を続けることはできません」と、ある欧州の関係者は述べた。また、現在の支援水準は1年または2年間維持されるかもしれないが、それ以上は続かないとも付け加えた。

米国はウクライナ紛争を「凍結」したいと思っている―Politico

<記事原文 寺島先生推薦>
US wants to ‘freeze’ Ukraine conflict – Politico
Officials believe that a division much like that in Korea would cost Washington less money and political capital, the outlet claims
高官たちは、朝鮮半島のような分割がワシントンにとって費用と政治的資本の面でより負担が少ないと信じている、というのがPolitico*の論点だ。
出典:RT 2023年5月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月25日

* 政治に特化した米国のニュースメディアである。主にワシントンD.C.の議会やホワイトハウス、ロビー活動や報道機関の動向を取材し、テレビやインターネット、フリーペーパー、ラジオ、ポッドキャストなどの自社媒体を通じてコンテンツを配信している。( ウィキペディア)


資料写真。ウクライナの兵士たち© Vincenzo Circosta / Anadolu Agency via Getty Images


 木曜日(5月18日)にPoliticoが引用した情報源によれば、アメリカ大統領ジョー・バイデン政権は、ウクライナの勝利を追求するのではなく、将来の見通しにおいてウクライナの紛争を「凍結」することを検討している。

 アメリカの3人の現職、そして1人の元高官が、現在ホワイトハウスでは「長期的な低強度の膠着状態」について議論が行われているとPoliticoに語った。

 元高官は、あり得る筋書きとして、1950年代初頭の朝鮮戦争が休戦協定終結した事例をなぞらえた。公式の平和協定はまったくなかった。ただ、平壌とソウルの両者が朝鮮半島全体の主権を主張し、非武装地帯が両地域を隔てていた。

 「朝鮮式の停戦は、政府内外の専門家や分析家たちによって確かに議論されているものです。それは考えられる筋書きです。なぜなら、両者とも新たな国境を認識する必要はなく、合意すべき唯一のことは、ある線に沿っての射撃停止だけだからです」と元高官は述べた。

 凍結状態の紛争は西側諸国にとってより費用がかからず、公衆の注目も集めず、その結果、キエフへの支援に対する圧力も少なくなるとPoliticoは説明している。



関連記事:クレムリンは朝鮮半島型のウクライナ分割案についての「でっち上げ話」を全面的否定

 ウクライナは依然としてワシントンと同盟関係を維持し、いつかはNATOに加盟することを目指して軍事をNATO基準に切り替え続けるだろう。

 ウクライナにおける「朝鮮戦争的な筋書き」は、1月に報道機関の注目を浴びた。モスクワは最高位の高官を欧州各国に派遣し、その筋書きを推進しようとしている、とウクライナの国家安全保障会議書記であるアレクセイ・ダニロフが語った後のことだ。

 クレムリンはこの報道を否定し、ダニロフがウクライナの政治家であるカザクと、ロシア政府の同名の人物を混同した可能性があると主張。つまりダニロフは(ウクライナの)カザクを(ロシアの)カザクとしたのだ。

 ロシア安全保障会議の副議長であるドミトリー・メドヴェージェフは、ダニロフの発言は「国内向け」であり、ウクライナ政府がそれに対する公衆の反応を測定するためのものだと主張した。メドヴェージェフは、ウクライナにとっては「分裂することが最善の筋書き」と述べ、現状況下での理想的な状態であると考えた。

 モスクワは、NATOのヨーロッパにおける拡大と、ウクライナを正式な手続きなしにじわじわと手中にしていることを、隣国ウクライナへ軍隊を派遣する主要な理由の一つとして挙げた。ロシアは、この紛争がアメリカによるロシアへの代理戦争の一環であり、ウクライナ人が砲弾の生け贄として利用されていると主張し続けている。

西側の武器は十分でないかもしれない、とウクライナ軍がNYT紙に語る

<記事原文 寺島先生推薦>
Western arms may not be enough, Ukrainian troops tell NYT
Russia has the battlefield advantage despite Kiev’s foreign backing, soldiers on the frontline have told the newspaper
NYT紙によれば、最前線の兵士たちは、キエフへの外国からの支援にもかかわらず、ロシアが戦場で有利な立場にあると述べている。
出典:RT 2023年4月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日


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資料写真.ロシアの黒海艦隊の海兵隊員。©スプートニク/アレクセイ・マイシェフ


 ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、紛争最前線にいるウクライナの部隊は、キエフの支援者が送った大規模な軍事支援にもかかわらず、ロシア軍がまだ優位に立っていることに懸念を抱いていると報じている。

 「ロシアがどこからそんなに多くの砲弾を手に入れているのか、分からない」と、ドンバス地域のウグレダル市周辺に配置された43歳のウクライナ人私設部隊の兵士であるパヴェルは、NYT紙に語った。

 「それにタンクやヘリコプター、ジェット機もあります。兵士たちは激しい砲撃の中で陣地に入ることも、出ることもできません。ライフルだけでは彼らに立ち向かえません。私たちは陸上での重火器と空中支援が必要です」と彼は不満を述べた。

 キエフは、西側から提供された戦車、装甲車両、および他の重火器を利用して、数週間以内にロシアに対する反攻を開始する予定だ。ウクライナの国防相アレクセイ・レズニコフは金曜日(4月28日)に、部隊が攻撃命令に備えて準備ができていると述べた。

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関連記事:ウクライナ軍、反攻に「おおむね準備」(大臣)

 「ドルフィン」というコールサインを使用する中隊長は、彼の部下たちの士気が高く、数的に不利であっても攻撃に出たがっている、とNYT紙に語った。

 「私たちは最も優れた人材を失いました――亡くなった人々と、負傷のために戦闘から離脱した人々を含めて」と彼は部隊が最近ロシア軍との戦闘で経験したことについて述べた。

 「しかし、しかしです。彼らは、数は多いですが、私たちのほうが強力です」と彼は付け加えた。

 もう一人の戦士で、23歳の軍曹であるマイケルは、西側武器の操作訓練の不足を説明した。彼は彼の中隊で唯一、正しくアメリカ製小火器のMk-19 グレネードランチャーを使用する方法を知っている、とこのNYT紙の記事に記されている。

 「この武器がウクライナ軍に導入された当時、それを操作する方法を説明できる指導者はいませんでした。マニュアルは英語のみであり、ウクライナ軍では英語を話す者はほとんどいません」と彼は述べた。

 マイケルは、NYT紙によれば、この小火器グレネードランチャーの使用経験を5年持ち、それを他の人と共有しているところだ。

関連記事:ロシア、フランス人傭兵の犯罪疑惑を調査へ
 
モスクワは、ウクライナへのNATOの徐々の拡大とそれに伴うロシア国家安全保障への増大する脅威を、2022年2月に軍事作戦を開始した主要な理由の一つとして挙げている。

ウクライナに供給されたイタリア製武器は、戦闘用になっていない(FT紙)

<記事原文 寺島先生推薦>
Italian weapons supplied to Ukraine not battle-ready – FT
The paper, citing an unnamed official in Kiev, claims that none of the 20 howitzers provided earlier this year were operable
フィナンシャル・タイムズ紙は、キエフの匿名の高官の話を引用し、今年早く提供された20門の榴弾砲のいずれも稼働可能ではないと書いている。
出典:RT 2023年4月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日


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資料写真 © Chris McGrath/Getty Images


 FTは、今年早々、イタリアからウクライナに提供された軍事装備の一部は戦闘に即した状態ではなっていないと土曜日(4月29日)に報じた。匿名のウクライナ国防省顧問の話を引用し、同紙はローマがキエフに提供した20台の自走榴弾砲のいずれも即座に使用するには適していないと報じた。

 今週初め、ウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーの最高顧問の一人が、予想される反攻を成功させるためにはさらに多くの武器が必要であることを明らかにした。

 同紙はまた、キエフがアメリカに対してより長射程のミサイルやF-16戦闘機の供給を説得しようとした試みが、現時点ではうまくいっていない、とも指摘している。

 その記事によれば、もしウクライナの反攻が西側の期待に応えられない場合、アメリカや他の国の批判者たちはさらなる軍事支援の実現可能性に疑問を呈することになるだろう。西側各国政府は最終的にはキエフに、交渉による解決を受け入れさせることを決定するかもしれないと、同紙は記している。

 同紙は、ロシア軍に対して大規模な領土獲得を確保することは、おそらくキエフにとっては非常に困難な任務であると結論づけた。

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関連記事:西側の武器では不十分かもしれない、ウクライナ軍がNYT紙に伝える

 水曜日(4月26日)、ゼレンスキー大統領の上級補佐官であるミハイル・ポドリャクは、ウクライナがまだ武器や装備を必要としていると主張し、NATOのヨーロッパ軍司令官であるクリストファー・カヴォリ将軍と話が食い違っている。カヴォリ将軍は、ウクライナへの約束された戦闘車両の98%が既に提供されたと、下院軍事委員会で述べていた。

 先週、Foreign Policy誌は、8つの国からウクライナに提供されたドイツ製のLeopard戦車がキエフの軍事にとって物流上の課題となる可能性があると報じた。その戦車は、異なる種類の弾薬を使用しており、ウクライナは大量の弾薬をまとめて調達することができない、とのことだ。

 ワシントンが今年早々、キエフに提供することを約束したAbrams戦車は、実際に戦場に到着するまで数ヶ月かかる可能性がある。

ドイツの戦車はウクライナに問題を引き起こしている(米オンライン紙 Foreign Policy)

<記事原文 寺島先生推薦>
German tanks pose problems for Ukraine – Foreign Policy
The hardware donated by eight countries reportedly fires different rounds, making it impossible for Kiev to buy munitions in bulk
報道によれば、8つの国が寄付した武器は異なる弾薬を使用するため、キエフが弾薬をまとめ買いすることは不可能となっている。
出典:RT 2023年4月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日


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レオパルド2戦車で訓練するポーランドとウクライナの兵士(2023年2月13日、ポーランド・スウィエトスゾフ軍事基地)© AFP / Wojtek RADWANSKI / AFP


 米国オンライン日刊紙『外交政策(Foreign Policy)』によると、ウクライナが西側の支援国から供給されるドイツ製Leopard戦車は、単一の種類ではなく、さまざまな弾薬を調達しなければならない可能性がある、とのことだ。

 木曜日(4月20日)、同紙は、8つの国からキエフに提供された戦車が、発射する弾丸の点では統一性がないと記している。また、この記事は、既に供給された防空手段の不十分さも指摘している。

 Foreign Policy紙は、「8つの異なる国からやってくるLeopard戦車は、異なる弾薬を使用している。そのためウクライナ人は新たに装備された地上軍のために大量の弾薬をまとめ買いすることはできない」と記している。

 さらに同紙は、アメリカが寄付する予定のAbrams戦車について、実際に戦場に到着するまで数ヶ月かかる可能性があると指摘した。

関連記事:西側諸国、ウクライナへの供給で「不足」(NYT紙)

 この記事によると、ウクライナは現代的な防空システムの深刻な不足に直面している。国内にはわずか数都市をカバーするだけのシステムがあるだけだとされている。さらに悪いことに、ワシントンが提供したホークミサイルシステムは、レーダーなしで出荷されている、とForeign Policyは報じている。

 報道によれば、これらの不手際がキエフの計画している春の反攻を遅らせ、ウクライナの指導者たちの不満を引き起こしているようだ。

 同紙は、ウクライナのゼレンスキー大統領が先月末に西側諸国に対して軍事支援を強化するよう呼びかけたことを記している。

 その考えに同調する形で、ウクライナ国家安全保障・国防会議の秘書であるアレクセイ・ダニロフは、今週の早い段階に、AP社に対して、ウクライナの支援国の中には「約束とはまったく別のことをする」人々もいると嘆いた。アレクセイ・ダニロフはまた、計画されている反攻に言及しながら「誰も、何の準備のないまま、何かを始めることはない」と明確に述べた。

 Foreign Policy紙に引用されたウクライナの国会議員は、この攻勢は元々4月に計画されていたが、それを実行するために必要な武器の不足のために無期限に延期されなければならなかったと語っている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は金曜日(4月21日)の報道で、2月末現在、キエフは、アメリカの軍関係者が成功する反攻に十分と考えた253両の戦車のうち、わずか200両しか保有していない、と書いている。この記事は、ペンタゴンから漏洩した文書を引用し、多くの武器がソビエト設計であることを指摘している。

 ニューヨーク・タイムズ紙はまた、アメリカとその同盟国がウクライナの砲弾需要に追いつくことに困難を抱えていると記述している。

NATOメンバー国がウクライナの重要軍事問題について分析

<記事原文 寺島先生推薦>
NATO member theorizes on Ukraine military’s key problem
Western-supplied weapons turn into “warehouse goods” due to lack of ammo, Czech President Petr Pavel says
チェコ共和国の大統領、ペトル・パヴェルは、弾薬不足のため、西側供給の武器は「倉庫の商品」となると述べている。
出典:RT 2023年5月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日


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ウクライナの大統領、ヴォロディミル・ゼレンスキーがキエフでの会談中にチェコ共和国のペトル・パヴェルと握手を交わしている。©Twitter/Petr Pavel


 チェコ共和国のペトル・パヴェル大統領は、弾薬の不足がウクライナのロシア軍に対する自衛能力を制限するか、計画中の反攻を成功させることを妨げていると述べた。

 パヴェルは、ウクライナへの3日間の訪問から帰国した後、日曜日(4月30日)にメディアと話し合った。その訪問中に、彼はウクライナの大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーやキエフの他の関係者と会談した。モスクワとキエフの紛争の勃発から1年以上経過して、彼は東部の都市ドニプロ(Dnepr)への外国の首脳の最初の訪問者となった。

 パヴェル大統領は、「ウクライナの多くの関係者との議論から明らかになったのは、現在ウクライナが防衛を成功させるために最も必要としているのは弾薬です」と述べた。

 「もちろん、装備も不足していますが、弾薬の深刻な不足は、ウクライナの効果的な自衛能力を制限するだけでなく、成功的反攻を行う能力も、ある程度、限られてしまっています」と彼はチェコのメディアであるCeske Novinyに語った。

関連記事:ウクライナの弾薬列車を破壊(ロシア国防省)

 情報部門の経験を持ち、2015年から2018年までNATO軍事委員会の議長を務めたパヴェルによれば、ロシア軍は弾薬の質と量の両方で優位に立っており、ウクライナ軍よりも1日に4〜5倍の弾薬を発射することができる、と述べている。

 キエフの西側支援者は、ドイツ製のLeopard 2やイギリスのChallengerなどの主力戦車を含む「効果的な装備」をウクライナに供給しているが、共に提供される弾薬の数は限られていると彼は述べた。

 ウクライナ軍は、これらの武器をわずか数日間しか現場で展開できず、その後は弾薬がないため、「基本的には倉庫の商品となる」と大統領は述べた。さらに、大統領はこの状況は「実際にはあまり意味がありません」と付け加えた。

 パヴェルによれば、プラハ(チェコ政府)は自らの供給源を通じてウクライナ軍への弾薬供給を増やすために、「創造的な方法」を模索し続け、同盟国との協力も行うだろう、とのことだ。

 ゼレンスキー大統領は金曜日(4月28日)、Nordicメディアとのインタビューで、彼は「反攻が行われる」と明言し、それが成功することを期待していると述べた。しかし、Politicoの先週の報道によると、ウクライナの主要な支援国であるアメリカは、大いに宣伝された反攻の影響が期待に達しない可能性に懸念を抱いている、とのこと。

関連記事:ロシアの防衛力から考えると、ウクライナの反攻は難しいとの見方(CNN)

 現在はロシアの安全保障会議の副議長を務めている、元ロシア大統領のドミートリー・メドヴェージェフは、もし反攻が本当に行われるならば、ロシア軍がそれを鎮圧し、ウクライナ軍に「最大限の軍事的敗北」を与えると強調している。

 モスクワは、西側の軍事物資がキエフに供給されることは紛争を長引かせると主張している。クレムリンはまた、NATOに対して、より高度なシステムをウクライナに提供することは、ウクライナが紛争により深く関与し、それによってロシアとの直接的な対立を生じさせる可能性があると繰り返し警告している。

英国が供給したストーム・シャドー・ミサイルが撃墜されたーロシア当局の発表

<記事原文 寺島先生推薦>
Seven UK-supplied Storm Shadow missiles shot down – Moscow
Other Western-made munitions and 22 drones have also been intercepted, Russia’s Defense Ministry claims
新たに別の西側製の武器と22機のドローンが迎撃されたとロシア国防省は主張
出典:RT  2023年5月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月21日



資料写真:ドバイの航空機見本市でのシャドー巡航ミサイル © AFP / Rabih Moghra


 最近英国からウクライナに供給されたストーム・シャドー・ミサイルの何機かが、この24時間以内にロシア防空システムにより撃墜された、とロシア国防省は発表した。

 「7機の長距離ストーム・シャドー・巡航ミサイルと、3機のHARM対レーダーミサイルと、7機のHIMARS多連装ロケット砲が迎撃された」と同省の報道官、イゴール・コナシェンコフ中尉は、火曜日(5月16日)の記者会見で明らかにした。同中尉は迎撃が行われた場所については言及しなかった。

 コナシェンコフ中尉によると、ウクライナの22機のドローンも、ロシアが新たに併合した地域の上空で破壊されたという。具体的には、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポリージャ州、ヘルソン州の上空だ。

 同中尉によると、ロシアによる夜を徹したウクライナの軍事施設や、西側が供給した武器や装置の貯蔵庫に対するミサイル集中砲火は、「目的を達した。意図されていた全ての標的に着弾した」とのことだ。

 これらの標的の中には、米国が供給したパトリオット・ミサイル・システムも含まれており、このシステムがキエフで、キンジャール超音速ミサイルにより破壊された、とコナシェンコフ報道官は述べた。



関連記事:ロシア側は英国製長距離発射台を迎撃したと主張

 ロシアが初めてストーム・シャドー・ミサイルを撃墜したと発表したのは、月曜日(5月15日)のことであり、そのようなミサイルを一機迎撃したとしていた。ルガンスク市当局の以前の主張によると、ここ数日間で、ウクライナは英国の武器を使って、ルガンスク市を攻撃しているとのことであり、住居家屋が損害を受けたという。

 英国は先週ウクライナにストーム・シャドー空中発射巡航ミサイルを送致したと明言している。CNNの以前の報道によると、ウクライナ当局は公式発表がある前からこれらの武器を受け取っていたという。300キロ(200マイル)までの距離に対応できるストーム・シャドー・ミサイルは、西側の支援諸国がこれまでウクライナに供給した武器の中で、最も長距離に対応した武器となった。英国のベン・ウォーレス国防大臣の主張によれば、これらのミサイルがあれば、「ウクライナはウクライナが領域主権を持つ地域において、ロシアに反撃を加えることが可能となる」としていた。

 ロシア当局によると、ウクライナにストーム・シャドー・ミサイルを供給するという決定は、ロシアに対する英国の「非常に非友好的な態度である」とし、今回の戦争において、英国が「これまでにない規模で介入」することになったとした。 英国によるこの動きは、ウクライナでの戦況を「激化」させることになる、とロシア国防省は警告し、ロシアには、新たな武器により講じられた「脅威を、いかなる手段を用いても無力化する権利がある」とも付け加えた。

関連記事:巡航ミサイルの件に関して、ロシアは英国に警告

 一年以上継続しているこの戦闘の間、ロシア当局が何度も指摘してきたのは米・英・その同盟諸国が、ウクライナにより洗練された武器を送ることは、「超えてはいけない一線」を越えてしまうかもしれないということだ。 ロシア当局は、武器や弾薬の供給、さらには戦時情報の共有、ウクライナ軍に対する軍事訓練の実施を行っている時点で、既に西側諸国は事実上この戦争に加担している、と主張している。

ロシアの「キンジャール」超音速ミサイルがウクライナの米国製「パトリオット」防空システムを破壊

<記事原文 寺島先生推薦>
Russian ‘Kinzhal’ Hypersonic Missile Destroys Kiev’s US-Made ‘Patriot’ Air Defense System
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年5月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月21日





 今月はほとんど毎日、大手報道機関という宣伝扇動機は、何度も何度も同じ話をオウム返しに報じ続けている。つまり、ロシアの9-A-7660「キンジャール」 超音速ミサイルが、米国製の「パトリオット」SAM(地対空ミサイル)防空システムに撃ち落とされたという話だ。しかし、西側諸国政府から示されたその「決定的な」証拠というものは、一笑に付されるべき程度のものであるのに、武器というものが実際どう作動するのかの知識がない人々を納得させるには十分なようだ。その人々の中には、世界のほとんどの市民たちも含まれている。ロシア側は西側からのこの主張に対して声明を出していない。いや、より正確に言えば、5月16日の午前中までには、という意味だ。 実はこの時、「直接言及しない」方法で、ロシア側は反応したのだ。

 ロシア航空宇宙防衛軍(VKS)は、ウクライナ側に対して、SEAD (敵防空網制圧)作戦を構じ、その中には2機の「キンジャール」超音速ミサイルを擁する作戦も含まれていた。 このミサイルは「パトリオット」SAM(地対空ミサイル)防空システムの少なくともひとつの砲兵隊を無効にする為に使用された。両側とも破壊された米国製防空システムがどんなものであったかについて声明を出していないが、動画による証拠が残っており、それによると、最新型のひとつであるPAC-3 MSE(ミサイル部分能力向上型)であったようだ。このシステムには、広くもてはやされているCRI (Cost Reduction Initiative:費用削減作戦)ミサイルも搭載されている。 CRIミサイル一機分の現状価格はほぼ530万ドルであるので、ウクライナ政権側が32機の迎撃ミサイルを発射したということは 1億7000万ドル近い費用がかかった計算になる。




 このような大量の迎撃ミサイルをもってしても、ロシアの超音速兵器を止めるのには全く効果がなかった。ただし、ウクライナのネオナチ軍事政権の発表では、ロシア航空宇宙防衛軍が発射したミサイルほとんどを迎撃したとしており、6機の「キンジャール」ミサイルを無力化したとも主張している。ただし、ロシア軍は今回の攻撃においては、たった2機のミサイルしか発射しなかったという事実がある。ロシア側はミサイルを何機発射したかについて公式見解を出してはいないが、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣が出した声明から実情は伝わった。ウクライナ当局が出した偽情報に対して、ショイグ国防大臣は手短にこう語っている:
「ウクライナ側が示すロシアのミサイルに対して行った迎撃についての数値は、(たいてい)実際に我が軍が使用した(武器の)3倍高い数値になっている」

 数名の軍事専門家の推定によると、ロシア航空宇宙防衛軍は、様々な種類のおとり攻撃を行い、キエフ市内及び周辺の防空を惑わそうとしていたという。そのことから、ウクライナの地元当局が、ロシアの攻撃は、「とんでもなく密集した」攻撃だったと証言していることの説明が着く。ウクライナのネオナチ軍事政権当局は、ロシアによる攻撃には、巡航ミサイルやドローンも含まれていたとしていた。地元防空軍は18機のミサイルと9機のドローンを撃ち落とし、その中に6機の「キンジャール」ミサイルも含まれていた、としていた。この主張は軍事専門家たちやテレグラム上の多くの投稿で嘲笑の的となっており、何十人ものテレグラム利用者や書込み者たちから、書き込みや悪ふざけの投稿がなされている。

 首都キエフの軍当局の長であるセルゲイ・ポプコ氏はこう述べた。「この集中攻撃は集中度という面において尋常ではない規模であり、最短の時間内で撃てる最大数のミサイルが発射された。ただしキエフ市内上空でほとんど大多数の敵標的は検出され、破壊された。」

 大手報道機関の宣伝扇動機の騎手たるCNNは、即座に事後処理的記事を出し、「パトリオット」の評判を守ろうとした。その内容は、「パトリオット」がウクライナに到着したのは先月であり、実際に稼働し始めたのはつい最近のことで、「米国製「パトリオット」は被害を受けたようだが、破壊はされていないようだ、この被害は、現地時間火曜日(5月16日)の朝に、ロシア軍がキエフ市内及び周辺に対して行ったミサイル攻撃の結果により出たものである」というものであり、米国当局関係者からの話として報じた。さらにこの記事によると、「米国はこのシステムの被害状況の規模を調査中である」とし、「その調査が済み次第、この防空システムを完全に取り替えなければならないのか、あるいはウクライナ軍による一部の修理で済むのかが決定される」とのことだった。さらにこの記事の記載によれば、「米国国家安全保障会議の報道官はCNNに対して、ウクライナ政府からの声明を求めているところだと語った」という。

 米国政府からのこのような助言があったことから推察される事実は、米国当局でさえウクライナのネオナチ軍事政権によるこのような馬鹿げた主張と関わりを持ちたがっていないということだ。明らかに問題となっているのは、このような一笑に付すべき宣伝扇動に全く根拠がないという事実だけではなく、米国自体も世界から笑いものになってしまうという事実だ。米国でそれほど宣伝扇動に与していない報道機関の報道に目をやれば、特にこのような状況が浮き彫りとなるだろう。一例をあげると、ザ・ナショナル・インタレスト誌(TNI)だ。TNIに最近分析記事を出した一人であるジェフ・ラミア記者は、「パトリオット・ミサイルはウクライナを守れない」とし、以下のように解説している:
「パトリオット防空システムの効果は、主要な軍事施設の中での一点集中的な防衛に限られており、より高いあるいはより低い高度において標的を捉える防空システムと連携している前提で配置されている。そのような補佐がなければ、「パトリオット」を配置するには、危険が多すぎ、穴だらけの防衛体制しか取れずに、軍事資産は守れず、迎撃ミサイルがなくなれば、パトリオットの防衛力は急激に下がる。さらに、「パトリオット」防空システム自体が、脆弱なシステムなのだ。「パトリオット」のレーダー・システムを用いれば、パトリオットの配置場所が特定されてしまい、ロシア側はから自由に狙われる対象となる。つまり、「パトリオット」はウクライナの軍事施設やウクライナ国民の保護を一手に引き受けられるようなシステムではない、ということだ。」

 確かに「パトリオット」は、長距離防空システムなど他の種類の防空システムや迎撃ミサイルも含めた、米国防空・ABM(弾道弾迎撃ミサイル)構想の中の一部門に過ぎない。しかし、防空体制の契約が大きな利益を産むことを考えれば、 西側政府はこのもてはやされてきた防空システムの破壊についての情報を出すことに制限をかけようとすることはまちがいないだろう。そのうえで、ロシアの超音速武器がまさにこの地対空ミサイルに撃墜されたなどという馬鹿げた話をオウム返ししているのだ。このような推測が行われているのは、米国当局の首脳でさえ、繰り返し超音速で操縦されている標的に対して、防御できる術はない、と繰り返し主張しているにも関わらずのことだ。ジョー・バイデン大統領自身も、昨年、「キンジャール」ミサイルを止めることできない、と発言している。

キエフ、鍵となるドンバス市で前進と主張

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev claims progress in key Donbass city
Ukrainian troops have gained ground in Artyomovsk, according to the deputy defense minister
ウクライナ副国防相によれば、ウクライナ軍はアルチョーモフスクで地盤を拡大している。
出典:RT 2023年5月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月21日



資料写真: BMP-3軍用車両に乗るウクライナ兵。© Vincenzo Circosta / Anadolu Agency via Getty Images


 キエフの高官によれば、ウクライナ軍は戦闘中のドンバスの都市アルチョーモフスク、またはバフムートとしても知られる地域で2キロメートル進撃したと主張している。ただしそれよりも前に、ロシア軍は戦線の状況は安定していると述べ、ウクライナの進展の報道を否定した。

 ウクライナの副国防相であるアンナ・マリヤールが金曜日(5月12日)に述べたところによれば、キエフの部隊は今週、アルチョーモフスクで領土を一切譲っておらず、実際には前進していると述べた。彼女はさらに、ロシアの軍隊が大きな損害を受けていると主張した。

 「敵はまた、武器の不足についての誤情報を流しており、おそらく実際の状況を言い訳するためのものだと思われます」とマリヤールは述べた。

 マリヤール副国防相の発言は、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの責任者であるエフゲニー・プリゴジンが行った矛盾する発言を指しているようだ。彼は先週、弾薬の不足を訴えたが、後にロシア軍から新たな補給が約束されたと述べた。キエフは、プリゴジンがワグネルの実力に関して誤解を抱かせようとした、と非難している。



関連記事: ロシア軍、ウクライナの前線状況を明らかにする

 アルチョーモフスクの前線において大きな存在感を保っているプリゴジンは、また、一部のロシア軍部隊が陣地から退くことでワグネル部隊を遺棄したと非難した。

 先行報道によると、キエフは長らく予想されていた反攻を開始し、アルチョーモフスクを含む一部の進展を達成したとされている。

 ロシア国防省は最新の情報でこれらの主張を否定し、前線は安定していると報告した。それによれば、突撃部隊は航空部隊と砲兵の支援を受けながら「アルチョーモフスクの西部の解放」を継続していると述べた。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、今週、西側の報道関係員たちに対して、自国の軍隊がロシアに対抗する準備を整えるためにはまだ時間が必要だと述べた。

ウクライナの「反攻」―神話か真実か?

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine’s ‘Counteroffensive’ – Myth or Reality?
筆者:スコット・リッタ―(Scott Ritter)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年5月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月20日





 5月中旬に近づくにつれて、皆が頭に抱える疑問は「大規模なウクライナの反攻はどこにあるのか?」だ。

 この大々的に宣伝されている出来事は、2022年の秋に始まり、ウクライナ軍の指導者であるヴァレリ・ザルージニーが、ドイツのラムシュタインで行われた米国とNATO主導のウクライナ防衛問題調整委員会の会議で、ウクライナがロシア軍をウクライナ領土から駆逐するために必要な軍事装備の一覧を伝えたことから、西側の主要報道機関やソーシャルメディアで広まっている。それ以来、西側諸国は時間をかけてこの物資支援の大部分を準備するだけではなく、ウクライナ軍が標準的なNATO合同兵器攻撃作戦および戦術教義を用いてこれらの軍事物資を使用できるための必要な訓練を提供してきた。

 NATOの事務総長であるイェンス・ストルテンベルグは、2023年4月末に、NATOが昨年の秋にウクライナに約束した装備のうち、98%以上を提供したことを発表した。これには1550台以上の装甲車、230両の戦車、そして「膨大な量」の弾薬が含まれている。また、議論の的となっているが、英国のチャレンジャー2主力戦車に使用される劣化ウラン弾薬や、英国供給の「ストーム・シャドウ」空中発射巡航ミサイルも含まれている。ストルテンベルグによれば、NATOはまた、3万人以上の兵士に対して訓練を行い、ウクライナがロシア軍に対して打撃を与える能力を持つ9つの新たな戦闘旅団を編成することが可能となった。

 ただしすぐにことは進まない。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領によると、ウクライナ軍はロシアに対する反攻を実施するために十分な訓練を受けた兵士を持っているが、これらの兵士が必要とする一部の装備はまだウクライナに到着していない。ゼレンスキー大統領は、大規模な攻撃作戦を実施するためにはウクライナにはもう少し時間が必要だと述べている。現在、ウクライナ大統領はヨーロッパを訪れており、NATOの同盟国に対してさらなる軍事支援を要請している。アメリカ、ドイツ、フランスはすべて、ウクライナへの軍事支援を増やすことを約束している。残る問題は、ウクライナが成功する攻撃作戦を実施するために十分な軍力を持つと考える時期はいつ来るか、ということだ。答えはおそらく、十中八九そんな時期は「絶対に来ない」だろう。

 ウクライナによる攻撃が成功するか失敗に終わるかを測るために使用される基準は非現実的に高い――たとえば、2022年9月のハルコフ攻勢。ここでは、ウクライナは不適切に配置され、十分に準備されず、意味のある防衛深度を持たないロシア軍の防御陣地を利用することができた。土地と引き換えに命を守る選択をしたロシア軍は撤退し、宣伝戦においてウクライナは大きな勝利を収めた一方で、軍事的な成果はなかった。ウクライナはヘルソンの右岸でも同様に成功した作戦を実施し、ロシアは防御が困難な領土を守ることを選択すれば、多数の戦死者が発生するため、約3万人の兵士を撤退させた。

 NATOが訓練と装備支援を行った9つのウクライナ旅団は、ハルコフやヘルソンで使用されたNATO訓練を受けた部隊よりも能力が高いと言える。しかし、これに対峙しているロシア軍も同様。ハルコフとヘルソンの作戦の成功後、ロシアは部分徴兵により約30万人の兵士を動員し、志願兵の動員とあわせて、ロシア軍の指揮下にある兵力を約70万人に増やした。これらの兵士は大部分が訓練を終え、すでに前線に投入されているか、将来の軍事作戦のために予備に保持されている。ロシアの防御陣地は、接触線の密度、十分な火力支援の提供、そして潜在的なウクライナの突破を阻止するための第2および第3戦線の防御の準備など、ロシアの方針に従って準備されている。要するに、ウクライナが攻撃を行った場合、ウクライナは2022年秋に直面したものとは大きく異なる鉄壁に突き当たることになるだろう。

 さらに、ロシアは現代の戦場の現実に適応している。ウクライナが使用するアメリカ提供の火砲システム、特にHIMARS(高機動火砲ロケットシステム)は、改善されたロシアの作戦戦術によってほとんど無力化されている。この戦術はHIMARSの潜在的な標的を減らすために設計されており、GPS信号を妨害するための電子戦能力の活用や、ウクライナが発射するHIMARSロケットの大部分を撃墜する改良された防空能力など、新たな戦術行動が含まれている。

 ロシアは同様に、「神風」ドローンの使用を改善しており、特に「ランセット」システムを使用してウクライナの重要な軍事機器や指揮統制能力を追跡し、破壊している。また、ロシアは自身の新技術も取り入れており、ウクライナの兵力集中地に対して壊滅的な効果を持つ精密誘導「滑空爆弾」を使用している。さらに、ロシア空軍と海軍は長距離ドローンと精密誘導ミサイルを使用して、ウクライナの後方にある兵器や物資の集積地に対して効果的な攻撃を行っており、ウクライナが意味のある、かつ持続的な軍事攻撃を実施するために必要な弾薬や燃料の蓄積を破壊している。これに加えて、ウクライナが火砲弾や防空システムの不足に直面している現状を考慮すると、現時点でウクライナがロシア軍に対して成功する攻撃を行うことは難しいだろう。

 ウクライナ紛争は、その激しさと死者数に関して、アメリカとNATOにとっては寝耳に水だった。結局のところは、これらは経済的、物質的、そして人命的にはこれまでのような近代戦を戦うのと同じ損害になっていた。損害は相互的である、つまりロシアもまた膨大な人的および経済的損失を被っていると言えるが、最終的な問題は西側全体の痛みの限界がどこにあるか、だ。1年前にアメリカの国防長官ロイド・オースティンは、アメリカのウクライナにおける目標はロシアに対して激しい苦痛を与え、将来のロシアの「侵略」行為を抑止するものであると述べたが、現在ではアメリカ自身が苦境に立たされつつあることが明らかになっている。それは、①ウクライナへの継続的な支援がアメリカの軍事準備に与える影響、そして②ウクライナの戦争継続能力を支えるための高い費用(現在は1300億ドル以上で増加傾向にある)という2点で、アメリカは苦境に立たされている。

 ジョー・バイデン大統領が再選を目指すにあたり、ウクライナで続く「凍結」した紛争がアメリカの軍事と経済資源を消耗し続けることで、国内政治的な結果が政治的な負債となるだろう。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は反攻の準備を完全に整えるためにさらなる時間を求めているが、ウクライナの最大の支援国であるアメリカにとって時間は味方となっていない。結局のところ、ウクライナはアメリカから決定的な打撃を与えるように圧力を受けているが、それはウクライナが達成できないものだ。ウクライナが慎重に集めた3万人の兵士は、何を送り込んでも十分に対処できる能力を持っているロシア軍との戦闘で失われるだろう。これは、ウクライナが一時的な戦術的優位性を一部の戦場で得ることができない、またはロシアが損失を被らないということを意味しない。そんなことではなく、結局のところ、ウクライナの反攻が起こるにしても、いつ起こるにしても、その結果に対処する準備は、ロシアの方がウクライナとNATOよりも、はるかに整っているということなのだ。

ウクライナの銀行家がロシアでのドローン・テロに現金を提供

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian banker offers cash for drone terror in Russia
筆者:アレキサンダー・ルビンシュタイン(Alexander Rubinstein)
出典:the grayzone   2023年5月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月20日





 プーチンを標的にしたドローン暗殺計画が失敗する数日前、ウクライナの銀行王ヴォロディミール・ヤツェンコは、迫っているモスクワの戦勝記念パレードの期間中にドローンを赤の広場に着陸させることができる武器製造業者に対して、50万ドルの懸賞金を提示した。

 4月23日、ウクライナのドローンがカナダ製のC4爆薬30個を積んでモスクワのルドネヴォ工業公園付近に墜落した。ウクライナ拠点の操作員たちは、ロシアのプーチン大統領を暗殺するために37LB兵器を使用しようと試みたが、失敗に終わった。その日、プーチン大統領はルドネヴォを訪問する予定だった。

 そのドローンは最終的に目標に命中することはなく、予定地からおよそ12マイル離れた場所に墜落した。ロシアの報道機関によると、当局は周辺地域で同様の無人機を3機発見したと報じている。カナダ製の爆弾がモスクワに到着した時点で、カナダ政府はウクライナのロシアとの軍事戦に支援を提供するために約60億ドル相当の援助をキエフ政府に提供していた。


 ウクライナのUJ-22ドローンの飛行は同国のハルキウ地域から出ている。キエフの情報機関と密接な関係を持つ政策立案機関の共同創設者であるユーリイ・ロマネンコは、ウクライナの秘密情報機関(SBU)が暗殺未遂を指揮したと述べた。ロマネンコはTwitterで次のように書いている:

「先週、我々の情報部門はプーチンがルドネヴォの工業公園への訪問に関する情報を入手した・・・ そのため、我々は特攻ドローンを発射し、それはロシア連邦の全ての防空システムを飛び越え、工業公園からそれほど遠くない場所に墜落した」。


 「プーチンよ、一歩近づいたぞ」とロマネンコは警告した。

 そのドローンは、カナダ、アメリカ、イギリスなど、いくつかの国で使用されているM112爆発物を搭載していた。ロシアのメディアによれば、失敗した攻撃から回収された爆発物はカナダ製であったとのこと。

 プーチンの命を狙った未遂事件は、最近数か月間にわたる一連のロシア領空へのドローン侵入の波の中で起こった。4月23日の攻撃が失敗した翌日、ロシアの報道機関であるSHOTは、ベルゴロド国境地域で10件のドローン攻撃を記録した。その中にはフランス製のLU-213破片手榴弾やアメリカ製のスイッチブレードドローンも含まれていた。スイッチブレードは以前にもこの地域への空爆に使用されている。

 ロシア領内でのドローン攻撃の増加は、キエフ政権が2022年7月に「ドローン軍」作戦を開始した後のことだ。この作戦は、ウクライナが外国製の無人機の調達を支援するために、「ドローネーションdro-nations」(訳注:donation「寄付」)という名前の資金調達の公式な取り組みとなっている。


サイト訪問者に対して彼らの目的に「ドロネート」するよう促すウクライナ世界会議ウェブサイトのスクリーンショット


 この資金調達作戦は、西側が支援するオンライン上でトロール行為(迷惑行為)を行う組織であるNAFOとウクライナ世界会議を正式な提携先としており、著名な『スター・ウォーズ』俳優のマーク・ハミルを、その顔として起用している。


『スター・ウォーズ』俳優のマーク・ハミルが、ウクライナの「ドローン軍」の資金調達作戦の公式代表となっている


 「ドローン軍の大使として任命され、可能な限りの方法でゼレンスキー大統領とウクライナの人々を支援できることを光栄に思います」とハミルは2022年9月にツイートし、自身がウクライナ大統領とビデオ通話をしている写真を添付した。


 ウクライナがロシア領内で行ったドローン攻撃は秘密に行われているので、それを公式な基準で評価することは困難だ。英国が出資するBBCの記者は、キエフの関係者にそのようなデータを提供するよう求めたが、無駄だった。しかし、彼はキエフの郊外の秘密の場所で行われた「最新のドローン操縦士のための講習会」には参加している。BBCは、ウクライナの「ドローン軍」の中心地からの記事を、ロシア大統領へのSBU指導の空中暗殺未遂とされる事件からわずか2日後の4月25日に報道した。

 BBCによれば、ウクライナの「ドローネーション」作戦を主導しているのは、デジタル変革担当大臣のミハイロ・フェドロだ。彼は「兵士や戦車などの標的に突撃するために設計されたこれらのドローンの致死的な性質を隠そうとはしません」とBBCは述べている。

 「しかし、ウクライナ政府内の他の人々と同様に、彼はロシア領内での最近のドローン攻撃について話すことは拒否している」とBBCは続けた。

 一方、非政府の関係者は、それほど口は堅くない。実際、ウクライナのテレビは、4月23日のプーチンの命を狙った空中攻撃の数日前に、将来のロシア領内でのドローン攻撃を促す私的な構想を打ち出した。


(上記の動画については原文サイトからご覧下さい。訳者)


ウクライナの横領容疑者が、ロシア内でのドローン・テロに対する懸賞金を提示

 2023年4月6日、ウクライナの財政と武器産業の大立者であるヴォロディミール・ヤツェンコが、キエフに拠点を置くTSNネットワークに出演し、近づくロシア戦勝記念日祝典期間中にドローンをモスクワの赤の広場に着陸させることに成功した国内の武器製造業者に対して、約54万9000ドル相当の現金提供を申し出た。

 毎年行われるロシアの戦勝記念日は、ナチス・ドイツが1945年にソビエト連邦の赤軍に降伏した記念日。毎年5月9日、数百万人のロシア市民が国中で行進を行い、ファシズムに対する国家の勝利を称える。モスクワでは、市民と政府関係者が赤の広場に集まり、ロシアの国家軍楽隊による音楽演奏や国の部隊や軍事装備の派手なパレードを楽しむ。式典には通常、ロシア大統領とロシア軍司令官による演説も含まれる。

 今年の初めから国境地域でのドローン活動が急増したことを受けて、モスクワは今年4月の戦勝記念日パレードを国境地域では中止することを発表した。

 2023年5月2日、ザ・ガーディアン紙は、ロシアでのウクライナのテロ暴力の脅威を軽視し、次のように述べている。「戦勝記念日の軍事パレード中の赤の広場でのウクライナのドローン攻撃はプーチンにとって屈辱的なものになろう」。しかし、彼の政府が戦勝記念日の行進を中止するのは、「公共の安全を心配して」ではなく、「市民が現在の戦争について声明をするために集会を乗っ取る」という「偏執的な妄想」があるためである、と。

 ザ・ガーディアン紙は、プーチンを非合理的な行動者として描くための証拠を提供しなかった。さらに、イギリス中道左派の新聞であるザ・ガーディアン紙は、ウクライナの「ドローン軍」作戦や、強力なウクライナの寡頭政治家であるヤツェンコが赤の広場の催しへの空中攻撃に賞金を提供しているという事実に触れることをしなかった。

 4月6日のTSNへのインタビューで、ヤツェンコは、赤の広場の近づく祝典を「非常に正当な」軍事標的と表現し、自身の兵器会社であるドヴブシュが既にその催しのために「準備を進めている」と明らかにした。彼はさらに、3月28日にモスクワ近くの鉄道で発見されたドローンをドヴブシュが操作していたと述べた。当時、ウクライナの報道機関は、そのドローンにキエフのナチ時代の戦闘の叫び声である「栄光あれウクライナ」が刻まれている、と報じていた


ウクライナの財政および武器の大立者であるヴォロディミール・ヤツェンコは、今年3月にロシアのニューモスクワで発見されたドローンの操作は自分がしたことを自慢げに主張している。

 ヤツェンコは、3月の飛行を戦勝記念日のための試運転と説明し、もしドヴブシュが5月9日にドローンを赤の広場に着陸させたとしても、「規約に従い、私自身には賞金を支払うことはない」と主張した。

 「ヨーロッパで最も腐敗が進んでいる国」とされるウクライナ国内の金融規制にヤツェンコが従わない可能性についての懸念は根拠のないものではなかった。この銀行業界の大立者は、1991年のソビエト連邦の崩壊後に設立されたウクライナの金融機関であるプライヴァト銀行で自らの地位を築いた。ウクライナのマイダン政府は2016年にこの銀行を国有化したが、その前に55億ドルが謎のように消えてしまった。ある投資銀行家は、後に、ヤツェンコを告発し、米国支援のラジオ・フリー・ヨーロッパ局に対し、彼は「プライヴァト銀行の国有化に関連する問題において非常に重要な存在であり、企業向け融資の指導的立場にあった」と述べた。この情報源であるセルゲイ・フルサは、ヤツェンコをプライヴァト銀行の所有者であるウクライナの寡頭政治家イゴール・コロモイスキーに現金を流し込んだと非難した。コロモイスキーはウクライナの大統領ゼレンスキーとネオナチのアゾフ大隊の悪名高い後援者だ

 「朝には、一般のウクライナ人がプライヴァト銀行にお金を持ち込み、夜にはイゴール・コロモイスキーがその同じお金を使いジュネーブでシャンパンを飲んでいました。ヤツェンコが、この預金者のお金がコロモイスキーに流れるようにする責任を負っていました」とフルサは述べた。

 後にウクライナの国家反汚職局は、ヤツェンコが2016年にプライヴァト銀行の国有化の前夜に「銀行からほとんどの資金を引き出した」と申し立てた。それを彼は妻と娘に転送したのだ。ヤツェンコの娘ハンナに移された資産の中には、農業会社が所有していた「23の不動産、500の土地、17台の車」が含まれていた。2021年2月、ウィーンへ向かう途中、ヤツェンコを乗せた不定期便はウクライナ上空で「方向転換され、強制着陸させられた」。ウクライナ当局はすぐにヤツェンコを逮捕し、プライヴァト銀行での役割に起因する横領と横領の罪で告訴した。ウクライナの反汚職検察官事務所は、彼の事件に関し、2022年9月に手続きを進める予定だ。

 モスクワで予定されている5月9日の戦勝記念パレードに向けて、ヤツェンコはドローン攻撃大会を発表する際、優勝機は赤の広場に着陸するだけでなく、ウクライナのものとして認識可能でなければならないと宣言した。

 「『ウクライナ万歳』のようなウクライナのスローガンが書かれている必要があります」と、この銀行業界の重鎮は主張し、キエフ政権のナチスのスローガンを引き合いに出した。

 「彼らのために『祝日』を作りましょう」とヤツェンコは言葉を締めくくり、エアクォート*で「祝日」という言葉を強調するために手を上げた。
*人の言葉や発言を引用して話す際に、両手の人さし指と中指を出して目の高さに挙げて、2回折り曲げるジェスチャー。英語の引用句をかたどっている。皮肉やからかいを込めて言葉を引用する際に使われることがある。(英辞郎)


新興財閥のヴォロディミール・ヤツェンコは、エアクォートを使って、ウクライナのドローン製造業者が、今後の5月9日の勝利記念日の祝祭の際にロシア人に対して「祝日」を作るべきだと強調

 第二次世界大戦におけるソビエト連邦の勝利、ロシアでは「大祖国戦争」として知られているものは、現在でも国家の誇りの源泉となっている。一方、西側からの支援を受けたキエフ政府は、ネオナチの大隊を軍に取り入れ、ウクライナの第二次世界大戦時のナチ協力者を公式の国家栄誉で讃えてきた。

 キエフのモスクワに対する戦場での勝利の見込みがか細くなる中、その指導者層は公然とロシア連邦内での空中テロ戦略を推進している。ナチス・ドイツの敗北を祝う催しは、彼らにとって最も自然な標的かもしれない。

ウクライナ軍からの反撃を待ちながら

<記事原文 寺島先生推薦>
Waiting for Counteroffensives in Ukraine
筆者:ゴードン・M.ハーン(Gordon M. Hahn)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年5月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月20日





 ロシア当局の主張や明らかな意図やほとんど全ての専門家(私も含めて)の意見にもかかわらず、ロシアによる冬の攻撃は一度も起こらなかった。ずっと遅延されたままだ。なぜだろう? その答えは、今はウクライナ側の反撃が予測されている時期だからであり、もっとありきたりの戦争上の理由として、兵站や気候の問題があげられる。

 最も論理的な説明としては、ロシア側の文官や軍の幹部が軍の準備が十分ではないと判断していたことだと言える。さらには、ウクライナの春季に訪れる「泥濘期」という名で知られている時期に泥で溢れている現状にもある。この時期に効果的な攻撃を加えることは見込めず、こんな時期にそのような攻撃を起こす合理的な理由がないからだ。またそんな中でも、敵側のウクライナは、バフムートやあちこちから攻撃を仕掛け続けているからだ。泥濘期の規模は、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣が南部戦線を訪問した際の動画から窺い知れる。そこでは何百もの戦車や何百もの戦闘車両が膝の高さまである泥の中で配列している様子が映し出されていた。 この南部戦線訪問は、ワグネル社のエフゲニー・プリゴジン代表が、ロシアのショイグ国防大臣とゲンナージ・ゲラシモフ参謀総長に対して、バフムート攻撃に十分な武器の安定供給を怠ったことを非難する発言をしたことを受けてのことだった。ショイグ国防大臣がこの動画に託した伝言は、再度計画されている春から初夏にかけて行われるより大規模な反撃のほうを優先したいというものだった。ただし、プーチン大統領は両者の中に入り、事態を沈静化させようとしていたようだ。具体的には、プーチン大統領はワグネル社に対してバフムート制圧に必要な軍事供給を増やすよう指示を出したのだ。この事件に先立って、1ヶ月余り前に、プーチン大統領はロシア軍の兵站の司令官を罷免していた。このことから示唆されるのは、ロシア軍内においてこの件はまだ問題が残っているということだ。

 ウクライナ側は何としてもバフムートを守ろうと事実上の攻撃をかけ、大部分がほとんど訓練を受けていない防衛兵たちをワグネル社との戦闘に次から次へと投入している。バフムートは陥落し、ロシア側が領土の98%を抑え、ウクライナ側は徐々に撤退し、殺害され、包囲され、少数ではあるが降伏したものも出ている。11月以降のバフムート付近や市内でのウクライナ軍の死傷者数は優に20万人を超え、負傷者のほとんどは戦場に戻ることはないだろう。普通は防衛側に対して攻撃側が3~4倍の死傷者を出すものだが、今回の場合、真逆の現象が起こっている。それはロシアの大砲や航空戦力が尋常ではない規模だからだ。ウクライナ側の頑強で勇しい、ただし愚かで失敗しているバフムート防衛戦を続けるよう、ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領は主張しているが、将校らからは疑問の声が上がっていた。しかしこの防衛戦はもう終わっている。

 両側がバフムート攻防戦に過度に力を注ぎながらも、それぞれが攻撃を起こせる準備もしていた。ウクライナやウクライナを支援する西側諸国は常々ウクライナ側の反撃が差し迫っていることを宣告し続けてはいるが、泥濘期が反撃の機会に待ったを掛けているのは、ロシア側だけではなく、 大袈裟に宣告を繰り返しているウクライナ側についてもそうなのだ。それでなくても、ウクライナ側は防空体制や空軍力(ドローン機や今やロシア側のあちこちに向けられたHIMARS*は例外として)や不十分な装甲や訓練を受けた兵の不足に悩まされるだろうからだ。ウクライナや、西側の報道機関、政府当局からの反撃に対する期待は萎みつつある。というのも、ウクライナ側は空軍力の強化が見込めなかったからだ。特に攻撃に必要なF-16機や地上軍事設備の量が確保できなかったのだ。ウクライナの参謀本部の警告によれば、このような攻撃は危険度が高く、「良くない方向」に状況が進む、ということだった。敵側のロシアといえば、防御の構えがしっかりと取られている様子が見受けられ、ウクライナ側がどんな攻撃を加えたにせよ、南部のバフムートやメリトポリ、マリウポリで、クリミアと地続きにさせることを阻止しようとしてロシア軍が成し遂げてきた戦果が繰り返されることが予想される。クリミア奪還をいま本気で語っているのは、煽られて冷静さを欠いているウクライナと西側の喧伝家たちだけだ。ウクライナ側は先手をとって、ケルチ橋(クリミア大橋)を電光石火の如く破壊することに成功したことで、今回の反撃も上手くいくと思っているようだ。クリミア大橋の破壊により、ロシア軍が混乱し、クリミアからとっとと撤退してくれるものと思っていたのだ。そうなれば、ロシア軍は軽率で脆弱な防衛体制しか取れなくなると踏んでいたのだ。広報と強がりが好きなゼレンスキーならば、反撃の命を出すのは5月9日のように思われる。それはロシアの戦勝記念日だ。ロシアの偉大な愛国軍が大祖国戦争に勝利したことを記念する日だ。この時ロシアは、西側と同盟関係にあった。今となってははるか昔のことだが。
* 高機動ロケット砲システム

 ロシア側からすると、南部の守りを固める構えを取っているようだ。その後すぐに、東においてはザポリージャ地方、北においてはクラマトルスク市からセヴェルスク市までとリマン市の方面での大規模な反撃を、40万のしっかりと訓練を受けた追加兵、何万ものドローン機やミサイル、何千もの戦車を繰り出して展開するだろう。ロシアは航空戦においては完全に優位であり、黒海艦隊の強力なミサイル集中砲火能力は勝利への決定的要因となろう。そして今年の夏は、ロシア側が完全勝利を収め、ドニエプル川超えという警告のもと、交渉が強行されることになるか、膠着状態が続くにせよ、来年の新年までには両側が交渉の席につかざるを得なくなる状況が生まれるだろう。この「望ましい」方向性が確保されるには、外部からの軍事干渉により、戦闘が長引かされ、激化されないことが条件となる。そちらの方向に進んでしまえば、何十万人ものさらなる戦死者を生み、死傷者総数はおそらく数百万となるだろう。 そしてこの方向性には、第三次世界大戦か核戦争、あるいはその両方がおこる可能性も含まれているのだ。

ワグネルは「必要なだけの武器」入手予定―プリゴジン

<記事原文 寺島先生推薦>
Wagner to get ‘as much ammo as we need’ – Prigozhin
The private military company had recently said it would fall back from Artyomovsk due to munitions shortages
民間軍事会社ワグネルは最近、弾薬不足のためにアルチョーモフスクから後退すると発表していた。
出典:RT 2023年5月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月20日



ロシアの民間軍事会社ワグネルグループの軍務員。© スプートニク/ヴィクトル・アントニュク


 ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループの責任者、エフゲニー・プリゴジンは、日曜日(5月7日)、ドンバスのアルチョーモフスク(バフムート)でウクライナ軍と戦っている同社に、戦闘を継続するために十分な弾薬が約束されたと述べた。

 この発言は、プリゴジンがロシアの国防省による弾薬不足の解消がなければ、彼の戦闘員が5月10日に市から撤退せざるを得ないと警告した後に行われた。

 プリゴジンは、自身のテレグラムチャンネルに投稿した音声メッセージで、「私たちには継続的な活動をするために必要なだけの弾薬と武器が約束された」と述べた。

 「アルチョーモフスクで、私たちが必要と思う活動を行うことができると告げられた」と、プリゴジンは語った。



関連記事:前線突破:ウクライナが待ち望んだ「反攻」が失敗に終わる可能性がある理由

 また、彼はロシアのウクライナにおける軍事作戦の副司令官であるセルゲイ・スロビキン陸軍大将には、「ワグネルPMCの軍事活動に関連するすべての決定を、国防省との調整を行いながら進める」という任務が課されていると述べた。

 先週金曜日(5月5日)、プリゴジンは、ワグネルの人員が弾薬の不足率が70%であるため、重大な損失を被っていると述べた。後に彼は、ワグネルが占拠している拠点をロシア連邦内チェチェン共和国の先鋭部隊であるアフマト特殊部隊に引き渡すことを発表した。

 ウクライナ人にはバフムートとして知られる鉱業都市アルチョーモフスクでの激しい戦闘が数ヶ月にわたって続いている。プリゴジンは、彼の部隊がほぼ全市を制圧したと主張しており、ウクライナ軍は西部の小地域で持ちこたえている。

 重要な物流拠点であるアルチョーモフスクを占拠することによって、ロシア軍はドンバス地域でさらなる進撃を行うことが可能となるだろう。

ベラドンナ作戦:ウクライナ民族主義へのCIAの関与

<記事原文 寺島先生推薦>
Operation Belladonna: CIA Involvement in Ukranian Nationalism
出典:INTERNATIONALIST 360°2023年1月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月18日

レット・ストリート・メディア・コレクティブ


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ベラドンナ作戦

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【注意】CIAの用語と暗号名を解読するには、研究支援を使用のこと。

 もし私たちが中央情報局(CIA)公開された非機密文書を分析するなら、アメリカ合衆国とウクライナ民族主義の歴史的発展におけるCIAの役割に関して多くのことを学ぶことができる。2022年2月のロシアとウクライナの紛争を、それだけ取り出して見ることは間違いだ。

 CIAの機密解除された文書には「ベラドンナ作戦」の詳細が示されており、ソビエト連邦に対抗してアメリカと提携したいと熱望していたウクライナ民族主義者と、アメリカ合衆国は既に接触していたことが分かる。アメリカは、主に、ウクライナ最高解放評議会(UHVR)の発展に影響を与えることを通じて、連携を図っていた。この文書で議論されているテーマは、ソビエト連邦および国内外でのソビエトの活動に関する情報収集のために利用された。

 
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 文書の後半では、CIAが認識していたUHVRの所属関係が明示されており、具体的にはウクライナ民族主義者組織(OUN)のバンデラ派とメルニク派、さらにはウクライナ蜂起軍(UPA)が挙げられている。文書では、UHVRの組織の規模も詳細に説明されており、そのメンバーが駐在する国の数や提案された報告の範囲が明記されている。

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 CIAがウクライナでの活動を拡大するにつれて、追加のプロジェクトが明らかになった。特に注目すべきは、1949年から1970年まで運営されたプロジェクトAERODYNAMIC(以前はCARTEL、ANDROGEN、AECARTHAGEとして知られていた)であり、1970年にプロジェクトQRDYNAMICとして再分類され、その後1974年にPDDYNAMICとなり、最終的には1991年まで運営されたQRDYNAMIC/QRPLUMB(以前はAEBEEHIVE)となる。

これらのプロジェクト名や関連する活動に関する機密情報を含む文書は数千ある。これらはアメリカ合衆国の歴史の宝庫であり、主流メディアの注目からは逃れたようだ。1950年の機密解除された文書には、CARTELの初期のプロジェクト概要の一部が記載されている。

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ここに書かれているとおり、1950年代までには既に、CIAはウクライナの地下ナショナリストとの対諜報ネットワークを成功裏に確立していた。プロジェクトCARTELの下では、各文書がCartel-1、Cartel-2などという名前の対象リストを参照していることに注目する価値がある。

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1010-8 (前) (1)

 研究支援を参照すれば、いくつかのコードネームを解読して、この事業の初期にCIAが誰と協力し、彼らの暗号名が何であったかを理解することができる。

 イヴァン・フリニオフミコラ・レベドなどは、CARTEL内で重要な役割を果たしているいくつかの対象者だ。この特定の文書では、彼らの関与が記述されており、CARTELの他のメンバーと共に通信チャンネルの設立や武器の調達に関与している。この文書では、CARTELの異なるメンバーのための供給リストも記載されており、項目名と関連する費用が明示されている。

 1966年の機密解除された文書には、当時のAERODYNAMICの目標が記載されている。それによると、基本的な目標はソビエト連邦全域、特にウクライナでの「民族主義者の再燃」となっている。この文書では、反ソ連の亡命者をZP/UHVRと協力して利用し、目標達成を図ることが明示されている。また、イヴァン・フリニオフとミコラ・レベドも再登場しているが、この文書では異なる暗号名で言及されている。

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1010-8 (後) (2)

この文書の興味深い情報の一つは、ZP/UHVRがニューヨークのProlog Research and Publishing Association, Incを通じて秘密裏に活動していたことを認めていることだ。AECASSOWARY-2(別名、ミコラ・レべド)がPrologの社長に任命され、Project AERODYNAMICの主要な代理人となった。

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 その作戦は単にニューヨークに限定されているわけではなかった。別の機密解除された文書によると、プロジェクトAERODYNAMICの追加目標のいくつかは、ギリシャのアテネにあるKUBARK(CIAの暗号名)ラジオ局で利用可能な放送時間を活用することだ。この作戦は、ウクライナの反乱軍(UPA)や先住民族の構成員など、複数の団体に対して通信を送達し、国家意識を維持し、彼らの文化の伝統と個性に誇りを持つことを促すことを目的としていた。

 民族主義的傾向を煽ることに加えて、その文書はウクライナの軍人たちに対してソ連に対する不満を生み出す明確な意図も明らかにしている。

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 もし、CIAのウクライナのナショナリズムへの関与と発展に関するさらなる疑問がある場合、私たちには1958年の文書以上のものはない。以下は引用:

 私は、私たちがAECASSOWARYの支援を行う主な理論的根拠は、ウクライナの民族主義の全体において足場を確立し、それを世界のさまざまな地域で利用し、当然のことながらウクライナSSR(ソビエト社会主義共和国)を最終的な標的とすることであることを強調した。

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 重要なことは、プロジェクトAERODYNAMICと並行して多くの事業が運営されていることだ。その中の一つがCAPELINである。CAPELINの作戦地域はドイツのミュンヘンであり、最初に主な目的とされていたのはCASSOWARIESおよびCAVATINAS関連の対諜報情報だ。私たちの研究支援資料を参照すれば、これらの対象が誰であるのかわかるが、その中にはStefan Banderaの暗号名が含まれている。

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1010-13 の後

 この文書には、事業の対象の一つであるCAPELINが1946年に早くも募集されたことが示されている。文書はさらに、事業の見積もり費用や特殊装備、隠れ家などの複雑な詳細を明らかにしている。

 この事業の主要な工作員は、反諜報/対諜報の情報提供者として注目されており、彼らは多くの異なる国のウクライナ移民組織、個人、情報機関に関する貴重な情報を提供していると述べている。この文書の興味深い部分は、民族主義的傾向を利用する意図を再び認めていることだ。

 彼のSB(ウクライナの国家保安機関)への浸透は、CE部門にとって特に価値があった。彼はZCh/OUN(ウクライナの民族主義活動に関する情報だけでなく、場合によってはそれらの活動を直接的に指導または影響する機会を提供したのだ。

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 この記事はCIAの機密解除された文書のごく一部しかカバーしていないが、重要なことは、これらの事業がウクライナの民族主義への半世紀にわたる支援を明示しており、まだ数千もの文書が分析されるべきだ、ということだ。

 アメリカ合衆国がウクライナの民族主義の歴史的発展に果たした役割と、それに伴う醜悪な副次的影響については、注意深く検討されるべきだ。インターネットの大規模な共同の取り組みによって、この歴史についてより多くの光が当たるだろう。

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ニューヨーク・タイムズ紙(2022年2月24日)の一面


ウクライナ侵攻

 2022年2月下旬、ロシア連邦はウクライナに対して軍事作戦を発表し、その目的はウクライナの完全な「非武装化」と「ナチの排除」だった。ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン大統領は、軍事作戦の発表と共に、ルハンスク人民共和国ドネツク人民共和国の独立を承認した。

 軍事作戦の直後、西側メディアはすぐに、プーチン大統領が述べた「ナチの排除」に関する主張に反論しようとする意見記事や記事の嵐を掲載し始めた。

 一連の記事は、プーチン大統領がウクライナのナショナリズムが新ナチ思想を煽っているという主張は誇張だ、と描かれた。もし2022年にウクライナという国について初めて知ったのであれば、この情報の嵐をそのまま受け入れるのは容易だろう。

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ワシントンポスト、ポリティコ、NPR、そしてMSNBCの見出しのスクリーンショット


侵攻以前

 ウクライナ侵攻前、西側メディアはウクライナの一般市民の新ナチズムや民族主義の傾向に関して完全に逆の視点を持っているように見えた。2022年2月以前、主流メディアはウクライナの白人至上主義と民族主義の問題について十分に認識しているようだった。例えば、タイム誌は極右の白人至上主義民兵がソーシャルメディアを利用して訓練やメンバーの募集を行っていることを報じている。また、別の記事では、ザ・ネイション誌が2019年以来、この地域での新ナチズムの台頭を報じている。

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 実際、ウクライナにおける新ナチズム民兵の突出した存在は、西側メディアで広く報じられた話題であり、彼らに対して風刺的なミーム*が大量に作成され、急激な物語の変化をからかう対象となった。もちろん、ロシア人自身もザ・ガーディアンが報じたようにその楽しみに参加した
* 遺伝子によらず、模倣によって人から人へと伝えらえる情報の単位。イギリスのオックスフォード大学の動物行動学者リチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)が1976年に著した『利己的な遺伝子』(The Selfish Gene) で提唱した言葉で、ギリシャ語のmimeme(模倣する)とgene(遺伝子)掛け合わせている。(英辞郎)

ロシア外務省の広報担当者であるマリア・ザハロワは、外国メディアをからかうことが好きであり、「アメリカとイギリスの大手誤情報メディアであるブルームバーグ通信、ニューヨーク・タイムズ紙、ザ・サン紙などに対して、私たちの『侵略』のスケジュールを来年のために発表してください。私は休暇を計画したいので」という要請を認(したた)めた。

前日に彼女は次のように書いていた。「2022年2月15日は、西側の戦争プロパガンダの失敗として歴史に残るでしょう。一発も撃たずに恥をかき、破滅した日です。」出典:The Guardian紙


アゾフ大隊

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 ウクライナは、国家警備隊や国家保安庁(SBU)内に多数の大隊を保有している。ウクライナのネオナチに関する話題の中心には、アゾフ大隊がある。アゾフ大隊ウクライナ国家警備隊の正式な部隊であり、2014年のマイダン抗議活動以来、メディアの論争の中心になっている。西側、主にアメリカ、カナダ、イギリスは、ロシアの軍事作戦中にウクライナを支援していることは明白だ。この支援はどこまで及んでいるのだろうか?

 2014年、当時の上院議員であるジョン・マケインはウクライナを訪れ、ウクライナへのアメリカ合衆国の支持を再確認した。アメリカ合衆国はウクライナの貴重な支持者であり、その隣国であるカナダもウクライナのネオナチの訓練支援を提供している。The Nationの記者であるジェームズ・カーデンが2016年に書いているように、アメリカ合衆国政府は年末支出法案からネオナチへの資金提供禁止を撤回した。


矛盾

 民族主義の拡大が引き続き高揚していることに火をつけられて、ウクライナにおいてネオナチの残虐行為があるというのはプーチン大統領による誇張や嘘である、とする話を西側メディアは作り上げようとしていた。結果として、西側はウクライナにおけるネオナチの台頭を全く知らないと主張したり、完全に否定したりする一方で、同じメディアは過去にウクライナにおけるネオナチの台頭について詳細に報道してきたという矛盾が生じている。

 過去10年間見るだけでも、西側はウクライナの民族主義を支援してきたし、現在も支援し続けていることがわかる。さらに遡ると、この過去10年間は、アメリカをはじめとする支援とその後に続いた数々の残虐行為が続いてきた半世紀に比べてほんの一部に過ぎないことが見えてくる。
















NATO諸国の情報機関が入手した動画、ブチャでの民間人殺害の責任がウクライナ軍にあることを暴露。

<記事原文 寺島先生推薦>
Videos Obtained by a NATO Nation’s Intelligence Agency Allegedly Expose Ukrainian Military as Responsible for Killing of Civilians at Bucha
筆者:ラッセル・ベントレー(Russell Bentley)
出典:Posted by INTERNATIONALIST 360° 2022年9月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月17日



ブチャの衛星映像 2022年3月19日 [出典: bbc.com]

 動画には、ウクライナのBDU(戦闘服)*を着た軍人が、非武装の地元住民を射殺し、遺体を地面に置いている様子が映っています。
 *BDU=battle dress uniform(戦闘服)

 以下の書簡は、最近、ウクライナ/NATOの支配下にないドンバスの地域で活動している主な国際ジャーナリストたちに、電子メールで広く配布されました。

 以下は、その手紙と、それに対する私の意見です。

 この文章をよく読んでください。広く報道するためには、報道関係者の助けが必要です。

 今年(2022年)の4月、私は法医学専門家として国際的な専門家団に加わりました。キエフ近郊のウクライナの町ブチャで活動するためです。この地域は、2月下旬からウクライナ軍とロシア軍の激しい戦闘に見舞われています。

 私は、市民が処刑された現場で活動していました。この悲劇は、私たち誰もが言葉を失うほどでした。当時、この犯罪がロシア人によるものであることを疑う人は誰もいませんでした。今でも、多くの人がロシア兵が加害者だと信じています。しかし、私は調査の過程で、NATO諸国の諜報機関がブチャ事件の動画を入手していることを発見しました。

 これらの動画は、民間人殺害の責任がウクライナ軍にあることを完全に暴露し、ウクライナ軍がロシア側に罪を着せるために偽の証拠動画を作ったことが確認できました。それらは、民間人への超法規的処刑を記録しています。ウクライナのBDU(戦闘服)の制服を着た軍人たちは、非武装の地元の人々を射殺し、その後、地面に遺体を配置していきました。これらの映像は現在、機密扱いとなっています。当局も公表する気はないようです。

 確かに、これはウクライナの同盟国に損害を与えかねませんが、私個人としては、捏造や挑発に加担することは不可能であると考えます。私は皆さんに、この情報を広めるためにできる限りのことをするよう呼びかけます。ジャーナリストはこの問題を調査し、人々に真実を伝えなければなりません。どうぞ、関係する政府や国連に正式な要請をしてください。キエフをかばうようなことはさせないでください。残念ながら、私は安全上の理由から名前を明かせず、堂々と行動することができません。


 まず第一に、この手紙の情報は全く新しい情報ではないということです。ブチャで市民を殺害したのはウクライナ・ナチスであるという反論の余地のない証拠は、世界中の責任あるジャーナリストによって、すでに何ヶ月も前に発表されています。[ブチャに関するCAMの記事はこちら]。

 私も、ウクライナ兵や宣伝担当者がブチャの大通りで殺されたばかりの死体を配置している動画や画像を見たし、裏通りでロシアの人道支援食糧小包を所持していたという「罪」でウクライナ兵に殺された一般人の写真も見たことがあります。


[出典:写真提供:ウクライナ政府]

 上記の写真をよく見ると、ブチャで殺害された市民は、ロシア軍とその支持者が身に着けている白い腕章を着けていることがわかります。これらの殺害された市民はまた、ロシア軍の食糧配給の箱を持っています。どうしてロシア軍が、自分たちの支持者に食料を与え、そして彼らを殺すのでしょうか?

 衛星写真も、最後のロシア兵が去った数日後に遺体が置かれたことを証明しており、誰がこの恐ろしい犯罪と明らかな偽旗に関与したのか、有能な人なら疑う余地はありません。

 ゼレンスキーの調査団は、少なくとも1つの愚かな過ちを犯しました。ウクライナ大統領府のトップであるアンドレイ・イェルマクは、ハリコフ地方の大量墓地の写真を公開しました(下図)。彼は(ウクライナや西側の大手報道機関の宣伝家全般と同様に)ロシア軍を「拷問と殺人」で非難しています。


[出典:写真提供:ウクライナ政府]

 墓標のプレートには死亡日―3月9日が記載されていますが、ロシア軍がイジュム*の支配権を確立したのは4月1日のことでした。ウクライナ軍は3月以前もこの地域を支配していました。では、家族全員もろともこの地域の人々を「拷問して殺した」のは誰でしょうか? 間違いなく、それはウクライナです。
*ブチャはキエフ西北部、イジュムはキエフ東部、ハリコフ南部で相当離れている。

 では、ブチャでのナチスの大虐殺から数ヶ月経った今、なぜこの手紙が脚光を浴びているのでしょうか。それは、同じことが、最近ロシア軍と共和国軍が避難させたハリコフ地区でもすでに起こり始めているからです。

 すでに、ハリコフ州の多くの町、バラクリア、イジウム、クピアンスクから、市民への報復や殺人の報告、動画、写真が届いています。これらの犯罪は、ウクライナ・ナチスとその西側の宣伝担当者たちによって、まもなく「ロシア軍と共和国軍によって行われた」と発表されるでしょう。

 彼らは嘘つきです。


ハリコフでの戦争犯罪の調査 [出典: wsj.com]

 またしても、ブチャと同じように、洗脳された無脳な人々によってのみ信じられる、皮肉で明白な偽旗です。戦争犯罪と残虐行為を犯しているのはどちら側か、そうでないのはどちら側か、有能な人ならもう疑う余地もなく明らかでしょう。

 一方は意図的に学校や病院、民間地域を重砲(しかも違法な重砲)で狙い、もう一方はそうはしません。一方は違法な「花びら」地雷やクラスター弾を民間地域に投下し、もう一方はそうはしません。


ウクライナが投下した花びら地雷。[出典: dw.com]

 一方は捕虜を拷問し殺害し、それを行っている動画や写真を作って公表していますが、もう一方はそうではありません。一方は鉤十字の入れ墨や旗を身につけ、「スラバ・バンデラ(バンデラに栄光を!)」や「ハイル・ヒトラー」といったナチスの掛け声を叫んでいますが、他方はそうではありません。


ウクライナの極右の脅威 - POLITICO
アゾフ旗はナチスの旗にさえ似ている。[出典:politico.eu]


 一方は、21世紀のナチス、南米からシリア、レバノンからリビア、そしてその間のあらゆる地点でテロ攻撃を行う国家支援者によって支持されています。もう一方は、それらに対抗する立場にあります。

 どちらが正しいか、疑う余地はないでしょう?

 ナチスは単なる嘘つきではなく、病的な嘘つきであり、自分たちの言うことが文字どおりすべて嘘であるばかりか、真実とは180度正反対であることを何度も何度も証明してきました。

 そして、チンパンジーも騙せないような嘘をつき続けています。なぜなら、彼らは、愚かで臆病で嘘つきな人たちが、少なくともそれを信じるふりをすることを知っているからです。

 最悪の愚か者は、真実を知ろうともしないし、最悪の臆病者は、真実を知るために必要な何かをする責任を恐れるし、最悪の嘘つきは、自分自身に嘘をつくからです。そして、自分自身に嘘をつくことを厭わない人たちは、ナチスたちの嘘に加担しているのであり、したがって、彼らの犯罪にも加担しているのです。なぜなら、人間はホモ・サピエンスであり、「サピエンス」とは「賢い」という意味です。そして、真実を見ようとしなければ、賢くなることは不可能です。

 ハリコフ地方では今、すでに「(民族)浄化」が行われています。ロシア軍との「協力」という罪で、人々は連れ去られ、家の外や中でさえも即刻処刑されています。ロシア軍はこの地域を数ヶ月間支配しましたが、その間、残虐行為の信頼できる報告は全くありませんでした。もし突然、ウクライナや西側諸国の宣伝担当者が、殺害された民間人(実際はウクライナ側が殺害したのだ)のことを報じ、これらの殺害はロシア人がやったのだ、と言われたら、彼らの見え透いた嘘を信じるほど愚かな人がいるのでしょうか。


人道支援を行うロシア人兵士-西側報道機関ではほとんど紹介されない写真だ。[出典: tass.com].

 偽旗の残虐行為は、世界の世論に影響を与えるために意図的かつ明確に行われます。「嘘は、真実がまだ靴を履いている間に、世界の半分を旅することができる」と言われているとおりです。戦争犯罪に関する明らかな偽情報を批判的な目で見て声高に糾弾することは、こうした犯罪を暴くだけでなく、予防するためにも欠かせないことです。

 人々の命がかかっているのです。これらの皆さん、そしてすべての善良な皆さん、明白な嘘から真実を見分ける知恵を持ち、それを伝えることは、あなた方にかかっています。そして何よりも、私たちがこれらの嘘を食い止めない限り、それは簡単に、そしていつの日か、彼らの代わりにあなた方が被害者になる可能性があることを理解し、記憶にとどめておいてください。「明日は我が身(There but for the Grace of God go I)」なのですから。

ラッセル・「テキサス」・ベントレー
ドネツク人民共和国
2022年9月15日

EUのトップ外交官:「ウクライナ紛争を『直ちに』止める方法を知っている」

<記事原文 寺島先生推薦>
EU’s top diplomat says he knows how to stop Ukraine conflict ‘immediately’
Kiev will have to surrender in “days” as soon as the West stops supplying weapons, Josep Borrell has predicted
キエフは、「数日」以内に、降伏せざるを得ないだろう、それは西側が武器供給を停止するとすぐだ、とジョゼップ・ボレルは予測している。
出典:RT  2023年5月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月17日



資料写真:EUのトップ外交官ジョゼップ・ボレル © Global Look Press / dpa / Philipp von Ditfurth


 ロシアとウクライナの間の紛争は、EUの外交政策担当者であるジョゼップ・ボレルが水曜日(5月10 日)にスペインの放送局La Sextaに語ったところによれば、わずか数日で終結する可能性があると主張した。すべてはキエフへの西側の軍事支援にかかっていると彼は主張した。

 「私は即座に戦争を終結させる方法を知っています」とボレルはLa Sextaの番組El Intermedioに語った。「ウクライナへの軍事援助を停止すれば、ウクライナは数日以内に降伏せざるを得なくなります。それだけで、戦争は終わります」とEUのトップ外交官は主張した。

 ボレルは、それがEUや他の西側諸国が望む結果ではないことを認めた。EUの外交政策担当者であるボレルは、このような条件での即時の紛争終結は、ウクライナが「占拠され」そして「傀儡国家」となり、「自由を奪われた」状態になるだろうと主張した。

 「こんな風に私たちはこの戦争を終わらせたいのでしょうか?」とボレルは修辞的な問いかけをした。ボレルはその後、持続する敵対行為をモスクワのせいにし、ロシアは軍事作戦の目標をすべて達成するまで停止しないと繰り返し主張していると述べた。また、中国やブラジルによる平和努力を批判し、それらは現実離れしていると主張した。



関連記事:国連、中国がウクライナ紛争終結に協力することに懐疑的

 「平和を望むと言う人は、『ロシアがウクライナから撤退することを望む』と言うべきだ」とEUの外交政策担当者ボレルは主張し、そうでないと言う人の気持ちがわからない、と付け加えた。「平和を望み、それを実現するためにヨーロッパがウクライナへの支援を停止すべきだと言う人々は・・・正直言って、彼らがどんな世界に生きているのか、私にはわかりません」と述べた。

 キエフはボレルの発言に即座に反応し、彼の演説に「誤った強調」があると非難した。ウラジミール・ゼレンスキー大統領の補佐官であるミハイル・ポドリャクは、西側の軍事援助の撤回は「紛争を即座に終結させることはできない」とTwitterで述べた。彼は具体的には説明しなかったが、これにより敵対行為が「他の領土」に広がり、さらなる激化が起こるだろうと主張した。



関連記事:クレムリン、紛争終結のためのキエフとの接触を支持

 ボレルの発言は、国連事務総長アントニオ・グテーレスがブラジルと中国の平和努力についても懐疑的な意見を表明したわずか1日後になされた。彼は火曜日(5月9日)のスペインのEl Paisに対して、「紛争当事者の両方が依然として戦闘に「完全に関与している」ため、現時点ではどんな仲介努力も無駄だろう」と述べた。

 クレムリンは4月末に、紛争の平和的な解決を目指す国際的な取り組みを支持していると述べたが、今回の作戦目標を達成しなければならないと主張した。

 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、2022年2月にウクライナ軍に対するロシアの作戦を開始する理由として、ドンバスの人々を保護する必要性と、キエフが2014年から2015年にかけてのミンスク平和合意を履行しなかったことを挙げた。彼はまた、ロシアはウクライナの「非武装化」と「ナチス化の解消」を目指していると述べた。

 モスクワはまた、ウクライナがロシアに対し、最新の2022年秋の住民投票を含む、住民投票によって参加したすべての地域を放棄するよう要求しているため、いかなる交渉の可能性も無意味な状態にしていると非難した。

プーチンはゼレンスキーを殺さないことを約束―イスラエルの元首相の発言

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin promised not to kill Zelensky – former Israeli PM
The Ukrainian leader sought assurance before posting a video declaring he wasn’t “afraid of anyone,” Naftali Bennett claims
ウクライナの指導者ゼレンスキーは、自分は「誰のことも怖くない」と宣言する動画を投稿する前に、身の安全の保証を求めていた、とナフタリ・ベネットは主張
出典:RT 2023年2月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月17日



2021年10月22日、ロシアのソチでの面会で会話中のナフタリ・ベネットとウラジーミル・プーチン© AP / Evgeny Biyatov


 ナフタリ・ベネット元イスラエル首相が、イスラエルの報道機関に明らかにしたところによると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を暗殺する気はないことをベネット元首相に伝えていたという。ベネット元首相はゼレンスキーの要請を受けてモスクワ入りしたのだが、ゼレンスキー大統領が、自分は「誰のことも怖くない」と宣言したのは、プーチン大統領がゼレンスキー大統領の身の安全を保証する発言をした後になってのことだった、という。

 昨年3月、ベネット元首相がイスラエル首相としてモスクワ入りしたのは、(結果的には失敗に終わったのだが )ロシアとウクライナ間の早期の停戦に向けた仲介に入るためだった、元首相は2月5日(日)、イスラエルの「チャンネル12」という番組で語った。

 報じられたところによると、ロシア軍がキエフを包囲するなか、ゼレンスキー大統領はベネット元首相との面会を非公開の場所で行ったという。ベネット元首相が同番組で述べたところによると、ウクライナの指導者であるゼレンスキー大統領が、ベネット元首相に託したのは、プーチン大統領からゼレンスキー大統領の身の安全を保証するという言質をとることであったという。つまり、プーチン大統領はゼレンスキー大統領を暗殺の対象としていないという言質だ。

 「ゼレンスキー大統領を殺すおつもりですか?」とベネット元首相はプーチン大統領に尋ねた。これに対してロシアのプーチン大統領は、そのつもりはないと答えた。その後、ベネット元首相は、ウクライナの大統領を殺害させる気はないのか念を押した。それに対してプーチン大統領は、そうであると確約した、とベネット元首相は語った。



関連記事:マクロンがプーチンに電話をかけた裏にはゼレンスキーがいたーパリからの報告

 ベネット元首相によると、元首相はクレムリンを後にした直後にゼレンスキー大統領に電話をかけ、同大統領に「プーチン大統領には貴殿を殺す気はありません」と伝えたという。そして、確約を求めてきたゼレンスキー大統領に対しベネット元首相は、「100パーセント」、プーチン大統領がゼレンスキー大統領を消す気はないことを確信している、と語ったという。

 その2時間後、ゼレンスキー大統領はキエフの大統領事務所からの動画を投稿したのだが、その動画の中で語った内容は、自身が「逃げ隠れもせず」、「誰のことも怖くない」というものだった。この動画でのゼレンスキー大統領の発言を、「堂々とした態度である」と西側報道機関は報じたが、今になって初めて分かったことは、実はゼレンスキー大統領が(ベネット元首相を通じて)プーチン大統領の許しを乞うた後で自身の居場所を明らかにし、声明を出したという事実だ。

 ベネット元首相はプーチン大統領を評して、「賢明で鋭い人物」で、ユダヤ人の支援者であると語った。しかし元首相によると、ロシアの指導者であるプーチン大統領の態度は、ゼレンスキー大統領とウクライナ当局についての話になると冷淡になり、プーチン大統領はウクライナ側を「ナチ」や「戦争亡者」であると述べたという。

 強硬保守派であるベンジャミン・ネタニヤフ首相が、昨年12月に政権を奪還するまでの間、首相退任後もヤイル・ラピド首相のもと政権の座に着いていたベネット元首相は、こう述べた。すなわち、自身のモスクワ訪問時に行った「全てのこと」は「米・独・仏と連携が取られて」いた、と。

 ベネット元首相の聞き取り取材が行われたのは、フランスのアン=クレア・ルジョンドル外務省報道官が声明を出した翌日のことだった。 同報道官が明言したのは、ゼレンスキー大統領の要請を受けたエマニュエル・マクロン大統領が、プーチン大統領と電話会談を行ったということだった。フランスやイスラエルの指導者に自身の伝言をプーチン大統領に伝えさせているにも拘わらず、ゼレンスキー大統領自身はプーチン大統領とは決して話をしないと公言しており、ウクライナ当局者らに対しても、プーチン大統領といかなる交渉も持たないよう指示している。

ウクライナ、世界中でロシア人の殺害を続けると誓う。

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine vows to continue killing Russians worldwide
Spy chief Kirill Budanov suggested that his military intelligence unit was responsible for the murder of Darya Dugina in Moscow
モスクワで起きたダリヤ・ドゥギナ殺害事件で、スパイ部長キリル・ブダノフが自身の軍事情報部門に責任があると示唆した。
出典:RT 2023年5月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月17日



資料写真: ロシア・サンクトペテルブルクで爆弾テロに遭い死亡したロシア人軍事ブロガー、ウラドレン・タタルスキーの追悼式で花を手向ける男性(2023年4月2日) © AFP / Olga Maltseva


 ウクライナの情報機関GURのトップであるキリル・ブダノフ将軍は、Yahoo Newsに対して、彼の組織はロシア人に対するテロ活動を「この世界のどこでも」継続すると述べた。クレムリンは、そのような攻撃には「無策ではいない」と誓った。

 ブダノフは、ウクライナ国防省の情報総局を率いており、先月、モスクワの裁判所からテロ容疑で起訴された。ロシア当局は、彼を一連の破壊工作や暗殺作戦に関連付け、最近ではクリミアでのロシア最高級官僚を殺害する未遂に終わった陰謀事件と結びつけている。

 先月に行われたが、今週早くに公開されたYahoo Newsのインタビューで、ブダノフは、ロシアが「テロリズム」と呼ぶものは我々にとっては解放」だと宣言した。ロシアのジャーナリストで政治活動家のダリヤ・ドゥギナが昨年モスクワで殺害された事件について、GURが責任を持っているのかと尋ねられた際、彼は意味深長な回答をした。

 「その話題はやめてください」と彼は言った。「私が言えるのは、私たちはロシア人を殺しており、ウクライナの完全な勝利が訪れるまで、この世界のどこでもロシア人を殺し続けるでしょう、ということだけです」と述べた。



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 ブダノフの自慢にも関わらず、ワシントンはGURを厳しく監視しているようだ。最近漏洩したペンタゴンの文書によれば、ブダノフが2月に部下に対して「大規模な攻撃の準備をするように」と命じた際、彼の通信を監視していたアメリカのスパイが介入し、作戦を中止させたとの内容がある。

 ブダノフがYahooに話した後、クレムリン上空で2つの爆発物搭載ドローンが撃墜され、ロシアの記者兼活動家であるザハール・プリレーピンは車爆弾によって重傷を負った。プリレーピンへの爆撃事件の容疑者は、ロシアの法執行機関に対して、彼が不特定のウクライナの情報機関から雇われたことを認めている。一方、モスクワはこれらの事件について、アメリカが最終的な責任を負うべきだと述べている。

 「我々は、こうしたテロ行為を実行する決定はキエフではなくワシントンでなされていることを非常によく知っている」と、クレムリン報道官のデミトリ・ペスコフはプーチン大統領の事務所への攻撃について述べた。「このような犯罪行為は報復なしには置かれない」とロシア外務省は声明で述べ、さらに「キエフ政権」は「厳格かつ避けられない罰」に直面するだろうと付け加えた。

ロシア軍、ウクライナ前線の状況を明らかにする。

<記事原文 寺島先生推薦>
Russian military clarifies frontline situation in Ukraine
Moscow has denied earlier social media reports of advances by Kiev
モスクワは、以前のソーシャルメディアの報道によるキエフの前進行動についての情報を否定した。
出典:RT 2023年5月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月17日



資料写真:アルチョーモフスク(バフムート)のウクライナ陣地への砲撃(2023年4月24日)© Sputnik


 ロシア国防省は、大規模なウクライナの反攻の噂を否定した。木曜日(5月11日)の声明で、最前線の大部分が比較的穏やかであり、激しい戦闘がアルチョーモフスク(バフムートとも呼ばれる)およびその周辺でのみ行われていると述べた。

 「一部のTelegramチャンネルの報告によると、接触線のいくつかの場所で『防御の突破』があったという報道は正確ではありません」と、同省はモスクワ時間の午後11時頃に述べた。「特別軍事作戦地域の総合的な状況は制御されています。」

 ロシア軍によると、アルチョーモフスクの最後の残りの部分は、航空部隊と砲兵支援を受けて急襲されていた。また、市の北西に位置するマロ・イリンコフカ方面でウクライナ部隊の攻撃を撃退するための「継続的な戦闘」が行われており、「多数の敵の死傷者と装備の損失」が報告されている、とのこと。

 ロシア軍は、ドネツク戦線では8回のウクライナの攻撃と3回の偵察試行を撃退したと述べた。ロシア軍は引き続きマリンカの全域を制圧し、アフデーエフカを包囲するための努力を行っている。



関連記事: ウクライナの反攻が始まった―メディア

 ウクライナ軍はクレメンナヤ方向に2度攻撃を試みたが撃退され、さらに北のクピャンスク近くで3つの偵察部隊が敗北した。ロシア国防省はまた、ヘルソン戦線でのウクライナ軍の損失一覧表を公表し、HIMARSロケット12発とSu-25地上攻撃機1機を撃墜したと報告した。

 その日の早い段階で、複数の軍事特派員がウクライナの反攻が始まった可能性があると報じ、アルチョーモフスク近くでの「突破口」と前線に沿った複数の攻撃が行われたと伝えた。また、ある記者は軍事情報源を引用して、ウクライナ軍がザポリージェ戦線の一部でも化学兵器を使用したと主張した。

 キエフは、木曜日(5月11日)の動きについてはまだ声明を出していない。その日の早い段階で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、長い間待った春の反攻に先立ち、軍はまだ準備に時間を要すると述べた。

ウクライナ:第四帝国の建設「白人ヨーロッパが我々の目標」

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine: Constructing the Fourth Reich “White Europe is Our Goal”
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年1月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月16日

原典:レッド・ストリート・メディア


アゾフ大隊

西側マスコミが紹介するウクライナで展示されているナチズムの概要

 2022年2月にロシア連邦が特殊軍事作戦を開始した後の西側マスコミの最大の虚構の一つは、ウクライナにはナチスが存在するという主張はロシア連邦によって誇張されたものだ、というものである。


ワシントンポスト、ポリティコ、NPR、MSNBCのヘッドラインの画面写真

  以下は、2022年2月以前の西側報道機関による報道



 西側報道機関の偽善については、別の記事で以前にも触れており、その詳細は以下の記事で読める。この記事では、ウクライナの国粋主義の台頭と、その台頭が旧ソ連内の不満を煽るために中央情報局(CIA)の影響を受けていたことを深く掘り下げている。


マリウポリでのアゾフ連隊の軍事パレード 2016.06.12


現代のヒトラー・ユーゲントキャンプ

 数年前から、ウクライナは現代のヒトラー・ユーゲント・キャンプの本拠地となり、子供たちにウクライナ民族主義のバンデラ的思想を教え込み、次世代のウクライナ・ナチスを育てる繋ぎ役として機能している。

 典型的な西側のやり方で、主要報道機関はこの問題を認識しており、特別軍事作戦の何年も前にこのキャンプを取材している。

 上の2つの動画では、子供たちがライフルの使い方を教わったり、ステファン・バンデラ支持者の視点からウクライナの歴史について講義を受けたりしているのがわかる。反LGBTQの表現も目立ち、ロシア文明を破壊するような呼びかけもある。

 AP通信は、2018年にこれらのキャンプについて行った取材で、この国粋主義の表現を観察している。施設の講師の中には、これらの子どもたちがどのような主題を教えられているのかを垣間見せてくれる人もいた。

 チェルカシンは、ウクライナ東部の親ロシア派分離主義者との戦いで負傷し、その後、スヴォボダ党の青年団であるソキル(ファルコン)を率いるようになった退役軍人である。プーチン率いるロシアや、ヨーロッパ文明を「完全に破壊しかねない課題」と戦うために、若者たちに国粋主義の思想を植え付けることが重要だと彼は言う。

 その課題のひとつ: 講師たちが西側の退廃の象徴として非難するLGBTの諸権利。



 「そのすべてを意識する必要がある」と講師のルスラン・アンドレイコは言った。「性のことは、現代のボルシェビキの倒錯した人間すべてだ。それはヨーロッパで権力を持ち、今ではゲイたちによるプライド・パレード*など、LGBTのことをすべての教育課程に組み込もうとしている」。
* 元々、差別、偏見、嫌がらせに暴力に曝され日陰者意識の強かった同性愛者の人々が、”恥ずかしがることじゃない、胸を張れ、誇りを持て”と集まって始めたデモンストレーション。それが同性愛者から幅が広がってLGBTQが参加するレインボー・パレードというお祭り的なものに発展した。

 講義中、居眠りをしている若者もいれば、真剣に聞いている若者もいる。明らかに、受容的な人もいた。

 訓練の合間に、10代の若者がギターで民族主義的な行進曲を演奏した。そのギターには、モスクを襲う白い爆弾のステッカーが貼られ、標語が書かれていた、

「白人のヨーロッパが我々の目標だ。」









 特別軍事作戦が開始された後も、欧米のマスコミはナチス問題を時折、それとなく報道している。



国粋主義者たちの紋章

 東ウクライナで起きている紛争で、ナチスの紋章の影響を軽視するあり得ない試みが行われている。ソーシャル・メディア上では、ウクライナの支持者たちは、ナチス・ドイツで使われていたものとは違うという名目で、これらの紋章の使用を擁護している。もちろん、これは簡単に反証できる。




 アゾフ大隊の紋章を取り上げれば、注意深く分析することができる。


ウクライナの戦争犯罪



 欧米の報道では、ウクライナは邪悪なロシア人に対する西側民主主義の防衛という枠組みで報道されている。しかし現実には、ウクライナ軍は少なくとも2014年から残虐行為を行っている。

 国連は、ウクライナのドンバス地方の人々に対する残虐行為の規模を示すいくつかの研究をすでに発表している。

 現在進行中の紛争において、ウクライナは捕虜に対する残虐行為を行っていることが何度も確認されている。以下の映像は非常に生々しいものであることを、読者に警告しておく必要がある。

 この動画が投稿された直後、ウクライナ支持者はインターネット上でこの動画もロシアのプロパガンダの一例であると主張した。

 また、ヒューマン・ライツ・ウォッチという団体も、この動画が本物だとわかったら戦争犯罪になると指摘した。ニューヨーク・タイムズ紙は結局、この映像が本物であることを認めた。

 ソーシャル・メディア上でよく見かけるのは、戦争の残虐性を喜ぶ親ウクライナ支持者の姿だ。20万人以上のフォロワーを持つ認証済みのTwitterユーザーが、悪い「普通のロシア人」を良いロシア人(死んだロシア人)に変えることを嬉々として自慢しているのが、その蛮行を物語っている。


取り繕うのは止めよ

 ウクライナのナチズムを軽視しようとする試みは無責任であり、国粋主義者たちが野放しにされることで、不必要な死と破壊を引き起こす。

 私たちの報道機関であるレッド・ストリートが欧米の情報源を使う理由のひとつは、私たちの仕事をロシアのプロパガンダと決めつけようとする動きに反論するためだ。この戦略的な報道方法は、地政学的な利害関係によって話がどのように変化するのか、読者に考えてもらうためだ。

スフミは永遠に失われるのか? ジョージアの若者達よ、目を覚ませ。

<記事原文 寺島先生推薦>

Farewell, Sukhumi
Georgian protesters unwittingly imperil their nation's survival

さらば、スフミ
ジョージアのデモ隊は、知らず知らずのうちに国家の存続を危うくしている。

筆者:スコット・リター(Scott RITTER)

出典:ScottRitterExtra.com

2023年3月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月20日

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ジョージア人、外国人代理人登録法案に抗議(2023年3月)


 「ソクミ!」「ソクミ!」「 ソクミ!」

 ジョージアの首都トビリシの国会議事堂前のルスタベリ広場に集まったジョージアの若者たちの群衆から、その叫び声が響き渡る。スフミ(ソクミはジョージア語の発音)はアブハジア共和国の首都で、1年にわたる戦争の末にジョージアから分離した地域である。その戦争では双方で数千人の死者を出し、数十万人のジョージア人が家を失っている。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「 ソクミ!」

 この言葉は、他のアメリカ人よりも私の心に響いた。私の妻はソクミで生まれ育った。1991年の夏、私は妻に結婚を申し込むためにソクミを訪れ、成功した。

 スフミは、妻の両親が出会い、結婚し、一緒に人生を歩んできた場所であり、家族を育てながら地元の大学で教える仕事を続けてきた場所だった。

 妻の父、ビジナは、スフミの亜熱帯農学研究所の他の男性教員とともに、62歳でジョージア軍に徴兵され、都市から南に向かう戦略的橋の警備を任務とする部隊に所属した。彼は、仲間とともに橋を守り抜いたが、そのときに大砲攻撃で耳が聞こえなくなり、最後には空爆で背中に傷を負った。

 1993年9月下旬、ビジナはジョージア防衛軍から街を奪取したアブハジア反乱軍の殺人的な怒りから逃れるために、難民の最後の一波が橋を開けるのを、負傷していたにもかかわらず、仲間の学者たちを助けて最後まで橋を守り抜いた。彼は弾薬を使い果たした後になってやっと自分の持ち場から退き、残骸のような人々の列に加わった。そして山々を越えて安全な場所へと逃げる長い道のりを歩いた。

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1993年9月27日、アブハジア軍に降伏したジョージア軍と、同日中に処刑された後の彼らの遺体。

 妻の実家は、殺されたり、命からがら逃げ出したりした何十万人もの人たちとともに、戦勝国のアブハジア軍に占領されてしまった。

 ビジナは、戦時中の体験をほとんど語らなかった。一度だけ、スフミ撤退時のことを話してもらったことがある。女や子供たちが夜着のまま逃げ惑い、避難した山々を覆う新雪の中で命を落としたことだった。

 ビジナは、凍えた母親が子供を抱きしめて、すでに命のない体に温もりを与えようと必死になっている姿に出くわしたこと、孤児になったばかりの幼児を腕に抱えていたこと、そして、一人では抱えきれないほどの数の幼児に出くわしたことを話した。ある人を救うためには、ある人を為す術なく運命に任せなければならないという、言葉では語れない苦痛を彼の目の中に見たことは当時も今も私を苦しめる。

 彼が孫娘たちを抱きしめたのには理由がある...。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」

 この言葉を唱えた人たち以上に、私はあの街、そしてアブハジア全体が失われたことによる苦しみを知っている。なぜなら、何十年もの間、戻ることを許さない敵によって、妻の家族が自分たちの人生のために働いてきたものが見捨てられたという事実を知り、苦しんでいるのを見てきたからだ。ビジナとその妻ラマラは、自分たちの祖国アブハジアから何千マイルも離れた場所で亡くなり、自分たちを受け入れてくれたことに感謝しながらも、祖国ではない、そして決してそうはなれない国の異国ジョージアの土の下に埋葬されることを宣告された。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」

 この怒れるジョージア人の若者たちが、政府に対して「征服されていない」ジョージアを自国の支配下に戻すよう行動を起こすよう要求しているのを見て、私の目の前で展開されている光景は何かおかしいと思った。彼らの感情が混ぜ合わされたスープには見えない成分があったからだ。そして、その成分は私の国であるアメリカ合衆国であった。



 国会議事堂の前で怒れるジョージアの若者たちを集めたデモは、スフミの解放に関する行動の呼びかけから始まったのではなく、外国から20%以上の資金を得ているメディアや非政府組織に対して、外国の影響力を持つ代理人としての登録を義務付けるという法律案に抗議するためだった。この法律は、1938年に制定された米国の外国代理人登録法(FARA)をモデルとしており、外国政府や政治団体のために米国内でロビー活動を行う場合には、その旨を公表することを義務付けている。

 この法律が成立すれば、ジョージアのNATOやEUへの加盟という目標が妨げられることになると、この法律の批判者たちは断言した。

 外国人工作員法案の現実的な結果は、ジョージアの政治と統治が外国の資金と影響力でどの程度蹂躙されているかを明らかにすることであった。しかし、脅威はロシアからではなく、むしろアメリカからだった。アメリカは、国際開発庁(USAID)を通じて毎年送られてくる4000万ドルの援助金を使って、ジョージアの現政権を、ジョージアではなくアメリカの目標や目的(ロシアに対する「第二戦線」の確立を含む)に従順な政府に置き換えるための「ソフトクーデター」なるものを行っているのである。

 USAIDの監督責任者であるサマンサ・パワーによれば、これらすべては「表現の自由、報道の自由、欧州大西洋統合への道を持つ国」を作るために行われるものだという。

 しかし、彼女が本当に言いたいのは、反対意見を「偽情報」として弾圧し、メディアを国家主導のプロパガンダとして利用し、ジョージアが米国主導のNATO勢力圏に吸収されるのを邪魔するような政治家や政党を権力から排除する国である。

 ジョージアの首相であるイラクリ・ガリバシヴィリは、ロシアとの戦争の拡大を望んでおらず、特にジョージアを紛争に巻き込むような戦争は望んでいない。

 そのため、サマンサ・パワーとUSAIDの手下たちは、ジョージアの首相を解任し、アメリカが支援するジョージアの大統領、サロメ・ズラビシヴィリと同じ親米派から作られた反ロシア(つまり戦争推進)指導者に交代させる必要があると考えている。

 これを達成するために、USAIDは、草の根段階の「多様性」に力を与え、「偽情報に対する社会の耐性」を築くという名目で反対意見を抑圧し、選挙過程を掌握することによって、ジョージアの社会と政治を「下意上達」で変革することを目的とした事業計画に資金を提供し、地方選挙、ひいては全国選挙で米国の支配する「多様性」運動が優位に立てるようにするのだ。

 ジョージアの外国人工作員法案は、これらのUSAIDが資金提供した事業計画や、その他の関連する米国やEUが資金提供した活動が、ジョージア社会にどの程度浸透しているかを暴露することになっただろう。そのため、米国は有償の活動家を動員して街頭に立ち、ジョージアの首相に公共の安全のためにこの法案を撤回するよう迫った。

 元最高裁判事のルイス・ブランデイスは、「日光は最高の消毒剤であると言われている」という有名な言葉を残しているが、これは、民主主義は完全な透明性のある雰囲気の中で繁栄することを意味している。

 サマンサ・パワーとUSAIDが、自分たちの活動がジョージアの主権をどれほど堕落させたかについて、日光が当たることを望まないという事実は、アメリカが資金提供する「ソフトパワー」という病気が、ジョージアの国家にどれほど感染したかを証明するものである。

 ジョージア国民は、アメリカ病感染に対する抗体を作っていると思われる。というのも、ジョージア国民は、2008年8月、短時間ではあるがロシアとの激しい戦争を経験したからだ。この戦争は、NATO加盟の前提条件としてロシアと軍事的に対決せよというアメリカの呼びかけにより始められたものであった。ロシアと対決せよという司令は、2008年7月9日にライス国務長官(当時)がジョージアを訪問した際に、サーカシュヴィリ前大統領に伝えられたものである。この訪問の目的は、ジョージアのNATO加盟の見通しについて話し合うことであったが、その際、米国の上級外交官は、ジョージアの「領土保全」を支持することを公言した。

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詳しくはこちらをご覧ください。

 2008年7月のライス長官の訪問まで、サアカシュヴィリはロシアのメドベージェフ大統領と定期的に会談し、アブハジアと南オセチアの分離独立地域をジョージアの主権に戻すという問題について、交渉による解決の可能性を話し合っていた。ところが彼はライスとの会談の直後、メドベージェフとの連絡をすべて打ち切った。

 ライスがサアカシュヴィリにロシアとの軍事衝突をどの程度促したかは、議論の余地がある。米国務省は、ライスがサアカシュヴィリに対して、ロシアに対して早まった行動を取らないように注意したと主張し、この、ジョージア元大統領は、ライスが行動を起こす許可を与えたと主張している。

 しかし、8月7日の朝、サアカシュヴィリがジョージア軍を南オセチアに投入したとき、アメリカはライスの指示を軍事力で裏付けることはしなかった。ジョージア軍の侵攻とロシアの反応の後、ホワイトハウスの状況報告室で開かれた緊急会議では、ジョージア軍の支援活動を行うよう米軍に求める参加者もいた。具体的には、南オセチアと北オセチアをつなぐロキ・トンネルの爆撃することなどだ。このトンネルを通じて、ロシアは反撃を支援するための兵員と物資を送っていたのだ。しかし、当時のスティーブ・ハドリー国家安全保障顧問は「我々はジョージアを巡ってロシアと戦争する準備ができているか」という直截な質問で部屋を沈黙させている。

 その答えは「No」だった。

 ジョージアにとってこれは飲み込み難い苦い薬だった。すでにジョージア側は、9-11後のイラクやアフガニスタンの戦争でアメリカを支援し、アメリカへの忠誠のための血の代償として、35人の死者と300人の負傷者を出していたからだ。

 これに今、180人の死亡した兵士とさらに1,174人の負傷者を加えなければならなくなったのだ。ロシア軍は、ジョージア側をたった5日間で敗北させ、即座にジョージア人を南オセチアからジョージア本土に押し込み、首都トビリシのすぐ外で停止した。

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トビリシへの道を行くロシア軍戦車(2008年8月)


 アメリカには、自国の目的のためにジョージア人を死なせる心づもりが十分ある。ジョージアから見れば何の脅威にもならないはるか遠くの大地で死のうが、アメリカの地政学的野心を追求するためにジョージアの土地で死のうが、そんなことはお構い無しだ。

 しかし、ジョージアを守るために、アメリカ人の命を一人でも犠牲にするつもりは微塵もない。

 サマンサ・パワーやコンドリーザ・ライスのようなアメリカの高官たちの頭の中では、ジョージアはアメリカの主人の言いなりになるためだけに存在しているのだ、ということだ。

 ジョージアの若者たちは、トビリシのルスタベリ広場で夕暮れ時に「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」と叫んでいるが、彼らは自分たちとアメリカ人の間にある種の友愛の絆が存在するという誤解の下で頑張っているのだ。

 彼らは、これ以上ないほど間違っている。

 アメリカ人がジョージアとジョージアの文化について知っている範囲では、かれらの「知識」はジョージア料理と踊りの表面的理解に限られている。それは、私が「5つのK」と呼んでいるものに要約できる。Khinkali(ヒンカリ)、Khachapouri(ハチャプーリ)、Khvanchkara(フヴァンチカラ)、Kartuli(カルトゥーリ)、Khoroumi(ホロウミ)である。

 ヒンカリ(ジョージア風餃子)は、ロシアやジョージアのレストランの主食で、ねじった生地にひき肉(伝統的には羊肉だが、牛や豚も混じる)、タマネギ、チリペッパー、塩、クミンを詰めて作る人気の前菜である。火を通していない肉を生地に包んでから煮るため、煮ると香ばしい出汁が出る。ヒンカリの愛好家は、生地からスープを上手に吸い取る方法を心得ていて、中のスープがバラバラにならないように食べ、ねじれた結び目を皿に残すことで、正しい食し方を征服できた証としている。(そこだけは食べることができないからだ*)。
*ねじれた結び目は厚くて火が通っていないことが多い。

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キンカリー(左)とアジャリアン・ハチャプーリ(右)

 ハチャプーリとは、ジョージアの美味しいチーズパンのことで、ジョージアのどこで作られているかによって、様々な種類がある。アジャリアン・ハチャプーリは、厚い舟形のパンにチーズを挟み、その上に卵を乗せたもので、とても人気がある。妻の実家では、イメルリ・ハチャプリという、2枚の薄い生地の間にチーズを挟み、ピザのような皮の中にバターとチーズの風味を閉じ込めた、食べると旨味が溢れ出すようなピザにこだわる。このように、さまざまな変化形がある。

 そして、ヒンカリとハチャプリというジョージアの高級料理を洗い流すには、ジョージアの半甘口の赤ワイン、フヴァンチカラの瓶が最適だ。ワイン製造所のある村にちなんで名付けられたフヴァンチカラ・ワインは、1880年代にジョージアの貴族だったドミトリー・キピアニが完成させた製法に由来する。彼は1907年に、当時「キピアニ・ワイン」と呼ばれていたワインをヨーロッパのワイン祭りに出品し、金賞を獲得した。1927年、キピアニのワイナリーは新しい経営者に引き継がれた(当時はソ連時代で、貴族は公然と嫌われる時代だった)。新しいワイン製造所は「フヴァンチカラ社」と名付けられ、キピアニの伝統を受け継ぎ、名前以外はすべて前任者のものと同じワインを生産した。

 キピアニ・ワインは、若いゼミ生から革命家に転身したイオゼブ・ジュガシヴィリ(後にヨシフ・スターリンの名でよく知られている)の目に留まり、フヴァンチカラとして再登場すると、スターリン(それから3年後にはソ連指導者になっていた)はお気に入りのワインとして、あらゆる食事や行事にこのワインを提供した。現在、フヴァンチカラは、受賞歴のあるワインとしてよりも、かつてこのワインを飲んだ人物の名声によって知られている。

 ジョージア国立バレエ団(旧ジョージア国立舞踊団、1945年にイリコ・スキシヴィリとニノ・ラミシヴィリによって結成された)は、ジョージアの伝統的な舞踊を世界に輸出する主要な輸出者として機能している。公演に参加するほとんどのジョージア人以外の人々の心の中で、特に2つのダンスが際立っている。まず、伝統的なジョージアの結婚式の踊りは、カルトゥーリという名で知られている。ジョージアの女性と男性それぞれを特徴づける優雅さと騎士道の組み合わせが公演全体を通して表現され、演技者は舞台を滑るように移動し、見る人すべてを魅了する。

 しかし、最も魅了されるのは、ジョージアの武術の伝統から生まれた伝統的な踊りであるホロウミ・ホロウミ、とりわけ、劇的な締めくくりの剣の踊りである。また、グルジア国家の悲惨な現実を読み解くことができるのも、ホロウミの起源からである。

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ジョージア国立バレエ団による「ホロウミ」公演

 ホロウミは、アナトリア北東部に位置する紀元前8世紀の部族連合であるディアオクと、ギリシャ神話でジェイソンとアルゴノーツが目ざした場所として知られ、メデアとゴールデン・フリース(金羊毛)の故郷であるコルキスの歴史に由来している。古代ディアオクは現在のアルメニアの前身であるウラル人に敗れ、コルキスはペルシャ人、アルメニア人、ローマ人の相次ぐ侵略に屈している。

 歴史は、古代グルジア(ジョージア)人に、ホロウミの決定的な瞬間となった勝利の剣の踊りを踊る機会を多く与えなかったというのが現実である。

 興味深いのは、ジョージア国立バレエ団で人気のあるホロウミの形が、アジャリア、ラズ、グリアで人気のある踊りから引き出された融合物であることだ。

 アジャリアは、トルコと国境を接するジョージアのイスラム教徒が多い地域で、黒海沿岸のジョージアの主要な港町であるバトゥミがあるところだ。かつてオスマン帝国領であったアジャリアは、1876年から1878年のトルコとの戦争の後、ロシアに奪われ、1918年にオスマン帝国に奪還され(その後1921年にトルコに奪還)、その後、カルス条約によりグルジア(ジョージア)・ソビエト社会主義共和国に編入されたが、その第6条には、トルコがアジャリアの自治を保証することが書かれている(現代のジョージア民族主義者はこのことを心に留めておくべきだ)。

 ラズ族は、コルキスに起源を持ち、現在のトルコのトラブゾン地方に定住したジョージア系民族で構成されている。ビザンティンの下で適度な自治権を与えられたラズ族は、最終的に断続的に続いていたジョージアの公国や王国に吸収され、その間にジョージアの文化的特異性を刷り込まれたが、それは17世紀にオスマン帝国に占領される前のことである。その後200年間、ラズ族はオスマン帝国の支配に抵抗し、ジョージアの遺産を守るために戦い、19世紀半ばにようやく鎮圧された。現在、ラズ族は主にトルコに居住しており、彼らの言語と文化的独自性は、絶滅の危機に瀕している。

 アジャリアの北には、ジョージアのグリア地方があり、何世紀にもわたって、多くの試練と困難があったことが知られている。17世紀には、グリアの王子たちは、オスマントルコの主人に56人の若い女の子と男の子を毎年貢ぐことを余儀なくされた。そして、1876年から1878年にかけてのロシアとオスマントルコの戦争では、グリアは最前線として機能し、廃墟と化した。グリアは、ジョージア全土の中で最も民族的に均質な地域とされ、強い民族意識につながったが、それが破滅的な結果を招いた。

 グリアの農民は、1902年にロシアの貴族に対して反乱を起こし、1905年にも反乱を起こしたが、ツァーリによって派遣されたコサックによって虐殺され、屈服させられた。1918年から1921年まで、グリアは再び主導的な役割を果たし、短命であったグルジア民主共和国の創設に貢献したが、赤軍によって粉砕され、グルジア・ソビエト社会主義共和国へと変貌した。

 グリア人は、北に2つの他のグルジア民族であるスヴァン族とミングレリア族に隣接している。スヴァン族は、ジョージア北部の山岳地帯に定住し、ミングレリア族は、グリア北部の谷と平野を占領している。スヴァネッティとミングレリアは、グリアと同様に、グルジア民族主義の温床と考えられている。1989年の夏、ゼモ・スヴァネティの山岳地帯から上半身裸で現れ、少数民族アブハジア人の不安を抑え込むためにスフミに向かって行進したのがスヴァン人だったことはよく知られている。

 そして、ジョージア民族主義の父と言われ、1991年のソ連からの独立後、ジョージアの初代大統領を務めたのが、ミングレリア人の学者、ズヴィアド・ガムサフルディアである。ソビエト連邦崩壊後、ジョージアの主権と領土保全のために南オセチアの独立を暴力的に抑圧しようとしたのは、ガムサフルディアの指導下であり、2008年にジョージアがロシアと短期間で悲劇的な戦争をするきっかけとなった。

 今日、トビリシには若いジョージア人の群衆が集まり、「ソクミ」「ソクミ」「ソクミ」と叫んでいるが、その行動は、ジョージア政府が武力でアブハジアを奪還し、それによってロシアとの第二戦線を開くというNATO主導の大きな目的を達成するように誘うものだ。しかし、歴史を見てみると、それは彼らがグルジアの民族主義的軍事力に対する懐古に浸りすぎないように、すべてが見かけどおりになるとは限らないことをはっきりと思い出させてくれる。

 1993年9月、スフミの命運がかかっていたとき、ジョージアのアブハジアへの援軍を運ぶ列車を封鎖して武装解除し、スフミ守備隊と彼らが守る民間人を敗北に追い込んだのは、ガムサフルディア派のロティ・コバリアが率いるミングレリア民兵である。

 1993年10月、スフミの陥落後、命からがら逃げていた何万人ものジョージア難民は、ゼモ・スヴァネティの山々を進まければならなかった。そこでは、かつてのスヴァン同盟者の武装ギャングが道路封鎖を行い、ジョージア人が必死で何とか持ってきたあらゆる財産を奪い、雪に覆われたコドリ峡谷へと彼らを送り出し、多くの女性、子供、高齢者が寒さや飢餓のために命を落とした。

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アブハジア軍から逃れ、山を越えるスフミのジョージア人難民(1993年10月)

 私の妻が生まれ育ったアブハジアの首都スフミは、もはやジョージアの支配下にはない。そう、ロシア、チェチェン人、アルメニア人、その他の北コーカサス民族の支援を受けたアブハジア民兵が、何千人ものジョージア市民の虐殺と、私の妻やその弟、両親を含む20万人以上の民族浄化につながる攻撃を実行したのである。

 確かに言えることは、ミハイル・アンドレイエヴィチ・ススロフのようなソ連の思想家たちの政策が、アブハジアや他の北コーカサス民族の分離主義的な想像力を育んで成長させ、新生ジョージアの民族主義に対抗するものにしたことだ。

 しかし、1992年から93年にかけてのアブハジア紛争の起源は、ジョージア人の民族主義の行き過ぎにも行き着くことができる。具体的には、ジャバ・イオセリアニの準軍事組織ムケドリオニ(「ホースメン」)という犯罪組織である。1992年8月、エドゥアルド・シェバルドナゼはその組織をスフミ市に解き放った。その結果、ジョージアとそのアブハジア少数民族の間の政治論争だったものが内戦に変化し、最後はジョージアの敗北で終わった。

 私の目には、ジョージア人がジョージア人を裏切るというのが主題のように映る。1993年にジョージアがスフミ市を含むアブハジア領を失った時もそうだったし、いまジョージアが必死に努力して、ロシアを挑発し、勝てることのない戦争への道をレミング*のように行進しているように見えることもそうだ。そんな戦争が起こってしまえば、ジョージアは真っ当な近代国家として生き残れないだろう。
*ネズミに似た、小型の齧歯類の総称。繁殖が極に達すると海に向かって「集団自殺行進」をすると言われる。

 ジョージアの勇敢な息子や娘たちよ、スローガンを唱え、ヒンカリやハチャプーリを食べ、クフヴァンチカラを飲み、女性がカルトゥーリを踊るのを見て、ホロウミの男らしいドラマに酔いしれろ、というわけである。

 しかし、ホロウミは、栄光への野望が、常に、そして必然的に、より大きな隣人の力によって打ち砕かれた敗北した人々の踊りであることを心に留めておいてほしい。

 ロシアはより大きな隣人である。



スコット・リッターは、「査察官に聞く」の第53話で、この記事について議論し、視聴者の質問に答えます。

 ジョージアの若者たちは、次のことを考えたほうがいいだろう:ジョージアの生活におけるヒンカリとハチャプーリの役割や、フヴァンチカラに凝縮されているジョージアのワイン製造の歴史、カルトゥーリの社会の複雑さ、そしてホロウミの背後にある辛い歴史を理解できるアメリカ人は、かりにいたとしても、ほんの少数だ。

 多くのアメリカ人にとって、それは単なる食事とワイン、そして面白いダンスに過ぎない。

 これが、あなた方ジョージア人が未来を賭けている社会の現実であり、アメリカはあなた方のことなど気にかけていない。

 アメリカ人は、あなたのことが好きでもない。私たちアメリカ人は、貴国の食べ物やワインをかろうじて許容し、貴国の文化を単なる好奇心として見ているだけだ。

 歴史を見ても、我が国民が貴国のために死ぬことは絶対にないことが明らかだ。

 あなた方は、我が国の地政学的な大きな目標や目的のためにのみ存在する。

 あなた方は、米国がロシアの周辺に設置しようとしている「不安定な地域」の一部に過ぎない。

 ジョージアにおけるアメリカの目的は、地域の不安定さを生み出すことだ。その代償を払うのは誰なのか。

 アメリカではない。

 ジョージアだ。

 ジョージアはウクライナの縮小版であり、アメリカの「不安定な地域」のもう一つの歯車なのだ。

 そのことを念頭においてほしい。あなた方がロシアに対して第 2 戦線を開くというアメリカ主導の目標に向けて行動するときには。

 ウクライナの運命に思いを馳せてください。

 何十万人ものウクライナ人の死者について考えてみてください。

 数千万人のウクライナ人が家を失い、ホームレスになっていることに思いを馳せてください。

 ウクライナの生活基盤が受けた1兆ドル以上の損害について考えてみてください。

 ウクライナの領土が永久に失われたことを忘れないでください。

 ウクライナは、その前のアフガニスタン(その前の南ベトナム)と同様、最終的には、良き「友人」であるアメリカ人によってその運命に見放されることになるという事実を覚えておいてください。

 そして、ロシアが1年でウクライナに行ったことは、ジョージアに対してなら1ヶ月以内に達成できることを理解したほうがいい。

 ジョージアはアブハジアと南オセチアを永久に失うだろう―永遠に。ロシアは、ゴリやクタイシと一緒に、念のためにポチを取るかもしれない。当然だろう。ジョージアがロシアにとって恒久的な軍事的脅威となることを望むなら、ロシアはその脅威を恒久的に除去しようとせざるを得なくなるからだ。

 ジョージアが解体され始めると、トルコはアジャリアを手に入れるかもしれない。これはいい加減な推測ではない。トルコのエルドアン大統領は、歴史的に見てトルコにはバトゥミの領有権があると発言しているからだ。その根拠となっているのは、1920年のアッタチュルクの「国民契約」(ミサク・イ・ミリ)、つまりオスマン帝国後のトルコ共和国建国の条件を定めた条項だ。

 ジョージアの分割が始まれば、米国、欧州連合(EU)、NATOのいずれもが、それに対してできること、することはない。

 ジョージアは、存続可能な近代国家として存在しなくなる。

 これは間違いない。

 なぜなのか? もう一度、ジョージアの人々に言っておくが、アメリカは君たちを嫌っている。

 我が国は友人ではない。

 我が国は君たちを利用しているのだ。

 利用し終わったら、見捨てる。

 これを読んでいるジョージア人の皆さんには、次のようなことを考えてもらいたい:

 ロシア人女性が、ヒンカリを作る生地をこねるという忍耐力のいる作業をジョージア人女性と同じようにできるのは、ロシア人女性には、ジョージア人の友人や親類がいるからだ。その人たちと一緒にヒンカリを作って大人になったからだ。ロシアとジョージアの間にそんな社会的繋がりがあったからこそだ。

 ロシア人女性が、さまざまな種類のハチャプリの複雑な作り方を理解できるのは、ジョージアで休暇を過ごしたことがあるからだ。地域によって異なるジョージア料理の愉快な変種をたくさん知っているからだ。

 ロシア人男性がヒンカリのてっぺんを食べ残せたり、一切れのハチャプリをがっつくのは、ジョージアの料理を食べることは、彼らにとって後天的に身につけた習慣のようなものだからだ。ずっとそうしてきたからだ。ジョージア料理は、彼らにとって外国料理ではなく、自国料理なのだ。なぜなら、ロシアの有名な都市にはどこにも、少なくとも1つのジョージア料理レストランがあるからだ。そして、ロシア人男性たちができることは、ジョージア料理を前に、フヴァンチカラを啜り、料理の香ばしい一口を逃さないよう注意しながら、スターリンの遺産について微に入り細にわたって熱く語り合うことだ。そんなことができるのは、ロシア人とジョージア人は、共有する遺産の中で育ってきたからだ。

 ジョージア人とロシア人は、大祖国戦争で共に血を流した。

 ジョージア人とロシア人は、収容所で共に苦しんだ。

 ジョージア人とロシア人は、同じ大学で共に学んだ。

 ジョージア人とロシア人は、結婚し、共に家庭を築いた。

 ロシア人はカルトゥーリやホロウミを鑑賞し、同様にジョージア人は白鳥の湖やくるみ割り人形組曲を鑑賞してきた。そうやって、両者はお互いの、文化的、歴史的重要性と関連性を持ってきたのだ。足の動きや立ち振る舞い、舞台での動きの中でそれらを感じてきたのだ。それは両者にとっての共有文化だったのだ。

 1829年、ロシアの詩人アレクサンドル・セルゲイビッチ・プーシキンは、プロポーズを断られた後、「ジョージアの丘の上で」を書いた。ロシア軍に入隊し、ジョージアに派遣された彼は、コーカサス山脈南部の麓、アラグヴィ川のほとりで、叶わぬ恋を歌ったこの名詩を書き上げた。

  ジョージアの丘に暗黒が降り注ぐ、

  アラグヴァの咆哮が聞こえる。

  悲しくて軽い、私の悲しみは―透明だ、

  私の悲しみは、あなたで満たされている、

  あなたと、あなただけと―私の憂鬱は

  手付かずの状態で残っている、

  そして、もう一度、私の心は燃え上がり、愛する

  そうすることしかできないからだ。

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ジョージア・トビリシにあるアレクサンドル・プーシキン(左)とミハイル・レルモントフ(右)の銅像

 プーシキンは、ジョージアを知り、理解していた。彼は、ジョージアの詩人ショタ・ルスタベリを読んだことがあり、その詩人を基盤にして、グルジアの美しさの中にある、悔いなき愛についての詩を書くことができたのだ。そして同時に、その詩は、多くの人によってロシアの真の魂を表していると認められるようになったひとりの男によって語られたものなのだ。

 プーシキンの言葉は、同じくジョージアに滞在したロシア人将校で、「コーカサスの詩人」と呼ばれるようになったミハイル・ユーリエヴィチ・レルモントフなど、他のロシアの作家にも霊感を与えた。

 私が言いたいのは、ロシア人はジョージアを知っているということだ。ロシア人はジョージアを理解している。ロシア人はジョージアを愛している。

 ロシアとジョージアの間には様々な困難があるが、ロシアはジョージアにとってアメリカよりも良い友人であり、今後もそうであろう。

 「ソクミ!」「ソクミ!」「ソクミ!」

 ジョージアの人々は、アメリカの友好という幻想に誘惑され、スフミへの道はワシントンDCとブリュッセルを通ると信じ込んでしまったのだ。

 私は、ジョージアの愚かな若者たちが、自分たちの知らない、そして自分たちの愚かな行動のために、これからも知ることのない都市の名前を唱えるのを悲しみながら見ている。そして、彼らの愚かな言葉を聞きながら、ジョージアが方針を変えない限り、私と家族は、ジョージア全土とともに、私たちが知っていて愛している街に別れを告げなければならないことを理解している。なぜなら、ジョージアがロシアに対して第二戦線を開くならば、スフミは永遠に私たちから失われることになるからだ。

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アブハジア反乱軍とその同盟軍によるスフミの陥落(1993年9月27日)

ロシア外交指針の改定について: 大事な点

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia’s revised foreign policy doctrine: Key points

出典:RT

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月12日


モスクワは、西側支配の残骸から、勃興しつつある多極化した世界秩序を守ることを目指している。


資料写真 © Global Look Press / Sergey Petrov

 ロシアは、国境を越えた、自国の戦略的優先順位を明らかにするため、最新の外交政策指針を発表した。この指針は、プーチン大統領によって金曜日(3月31日)に署名され、効力を持つことになった。世界の主要な国々との関係に大きな影響を与えるこの文書は、今後数週間にわたって精査されることは間違いないであろう。

 この外交指針を見直す必要が生じたのは、国際情勢の「劇的な変化」によるものだと、プーチンは説明した。その中には、モスクワのウクライナでの行動をめぐって西側諸国がロシアに対して行っている「ハイブリッド戦争」の進行と表現しているものも含まれる。


1. 世界平和に対する「大きな脅威」

 見直された外交政策指針では、米国とその同盟国の「攻撃的な反ロシア政策」は、ロシアの安全保障だけでなく、国際平和と人類の「公正で均衡のとれた」未来の発展に対する大きな脅威である、とされている。

 ロシアは、ワシントンとその同盟国が、今の世界秩序の崩壊を防ぎ止めようとしている、と考えている。その世界秩序とは、非西側諸国の資源を搾取し、非西側諸国を犠牲にすることで 、高度な経済成長が可能になっているものだ。西側諸国は「多極化する世界の現実を認めようとせず」、軍事・経済競争を排除し、反対意見を取り締まることを目指している、とこの文書は主張している。

 特にアメリカは、ロシアの自立した政策を「西側の覇権」に対する脅威と見なしており、アメリカとその同盟国はモスクワに対して、「可能なあらゆる方法で」ロシアの弱体化を目指す「ハイブリッド戦争」を開始した、と新指針は謳っている。

 モスクワは、外圧に直面しているすべての国の協力を強化することを求めている。そして、力と利益の均衡に基づく国際社会全体の共同努力のみが、「現代の数多くの問題」の解決策を提供することができる、としている。


2. 西側との関係

 モスクワは、米国とその同盟国の政策がもたらす脅威を認識しながらも、敵対国として扱わない、と新しい構想は強調している。また、「ロシアは自らを西側の敵とは考えておらず、西側から孤立しているわけでもなく、西側に対して敵対的な意図を持っているわけでもない」とも述べている。

 モスクワは、西側諸国がもつ敵意、対立、そして覇権主義的野心という政策に未来がないことを理解し、最終的には相互尊重を理由にロシアとの「実際的な協力」を再開することを望んでいる。ロシアは「そのような基盤の上で対話と協力の準備ができている」と、見直された外交政策指針には書かれている。


3. すべての国にとっての平等性

 ロシアは、国の大きさ、地理的位置、あるいは軍事力に関係なく、信頼できる安全保障とすべての国のための平等な機会に基づく国際関係体制を構築しようとしている、というのが新しい外交指針だ。モスクワは、国際問題における覇権主義を否定し、他国の内政問題への干渉を避けるべきだと主張している。また、新植民地主義的な野心も捨てなければならない、としている。

 モスクワは、世界的な軍事支配を目指す国家や軍事同盟の試みを無力化するための「広範な協力」を求めている。また、国際条約を通じた国際的な戦略的安定性、軍備管理、そして不拡散体制の強化により、世界的な戦争や核兵器、その他の大量破壊兵器を使用する危険性を回避するための措置をとるよう、すべての国に求めている。


4. 主要な同盟

 モスクワは、中国やインドといった「主権を持つ世界の権力中心」との協力関係を深めることが、外交政策上、重要な意味を持つとみている。特に、ロシアは北京とはあらゆる分野で「包括的友好関係と戦略的協力」を、ニューデリーとは「特権的戦略的友好関係」を目指すという。

 これらの国々との協力は、貿易や安全保障だけでなく、「投資と技術の関係」にも及び、「非友好的な国家の破壊的な行動」に対抗する能力を互いに強化することも含まれる。モスクワは、ユーラシア大陸を平和、安定、信頼、そして繁栄の大陸に変えようと努力している。


5. 世界的協力と地域的協力

 モスクワは、世界中に友人や信頼できる友好国を見つけることができると信じている、と更新された方針は述べている。ロシアは特にイスラム文明を「友好的」と考え、イスラム世界には「大きな展望」があり、多元的な世界において独立した影響力のある大国になることができると信じている。イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプトなど、地域の主要な勢力すべてとの協力関係を発展させることを求めている。

 ロシアはまた、世界の中でより重要な位置を占め、「一部の先進国の新植民地政策 」によって引き起こされた不平等を解消したいというアフリカの願いに連帯する立場に立っている。モスクワは、貿易や投資だけでなく、安全保障上の支援も含め、アフリカ諸国の主権と独立を支援する用意があると、新しい戦略文書には書かれている。

 中南米では、ブラジル、キューバ、そしてベネズエラなどとの友好関係を強化するとともに、「現実的、非イデオロギー的、概念的、そして互恵的」な関係を構築することを目指している。また、ロシアとの関係において建設的であろうとする他の国々との協力にも前向きである。

ICCによるプーチンへの逮捕状は米国務省が資金提供した研究所の虚偽の報告書に基づいている。

<記事原文 寺島先生推薦>

ICC’s Putin arrest warrant based on State Dept-funded report that debunked itself

ICC(国際刑事裁判所)が出したプーチン大統領への逮捕状は、米国務省が資金提供した報告書に基づくものだが、それは虚偽である。

筆者:ジェレミー・ロフレド、マックス・ブルメンタール
(Jeremy Loffredo and Max Blumenthal)

出典:グレーゾーン(GRAYZONE)

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月12日

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1.国際刑事裁判所(ICC)は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、ウクライナの子どもたちをロシア国内の収容所ネットワークに「強制移送」したとして、逮捕状を発行した。この逮捕状は、米国国務省の資金援助を受けている「イェール大学人道研究所(HRL*)」の報告書に基づくものである。
* Humanitarian Research Lab

2.米国人ジャーナリストのジェレミー・ロフレド氏は、問題となっているロシア政府主催のキャンプのひとつを訪れた。モスクワ郊外にある「The Donbas Express(ドンバス急行)*」で、ロフレド氏は紛争地域の若者たちに会った。彼らは無料の音楽指導を受け、安全な環境にあることに感謝しながら、生き生きと過ごしていた。本記事では、彼の独占映像レポートを掲載する。
* 「ドンバス急行」は、ウクライナ、ドンバス地域の青少年を集めて、音楽など文化教育を行う施設。

3.「イェール大学人道研究所」の報告書に関する当サイト「Grayzone」による論評記事では、報告書の内容が、ICC(国際刑事裁判所)の令状に含まれる多くの主張と矛盾していることが判明した。また、イェール大人道研究所の所長ナサニエル・レイモンドがメディアに登場した際に発した扇動的な発言の虚偽も裏付けられた。

4.ロフレド氏とのインタビューで、イェール大学人道研究所のレイモンド所長は、ロシアで進行中の大規模な「人質事件」について、CNNのインタビューでの誘拐の主張をさらに否定し、彼が調査したキャンプのほとんどは「テディ・ベア」*のような文化プログラムだったことを認めた。また、米国情報機関との協力関係も明らかにした。
* テディベア(熊のぬいぐるみ)と名付けられた音楽教育プログラム。ドンバス地域の青少年のためのもの。


 3月17日、国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン検事総長は、ロシアのプーチン大統領とマリア・ルロヴァ=ベロヴァ「子どもの権利担当委員」に対する逮捕状を提出した。この逮捕状は、プーチンとロルヴァ=ベロヴァがウクライナの子どもたちをロシア連邦内の「収容所ネットワーク」に「不法送還」したことを非難するもので、欧米では煽情的な論評が相次いだ。

 米国議会で最も積極的にロシアとの戦争を応援していると思われるリンゼイ・グラハム上院議員は、こう宣言した。「プーチンは、少なくとも16,000人のウクライナの子どもたちを家族から誘拐し、ロシアに送った。これはまさに第二次世界大戦でヒトラーがやったことだ。」

 CNNのファリード・ザカリアはグラハム上院議員と同じ意見で、ICCの令状はプーチンが「実際にヒトラーの脚本にそって行動している部分がある」ことを明らかにしたと述べた。

 ICCの検察官は、イェール大学の人道研究所(HRL)が作成した研究に基づいて逮捕状を取ったようだ。イェール大学人道研究所の研究は、バイデン政権が2022年5月に設立したロシア高官の訴追を進めるための組織である国務省の「紛争・安定化作戦局」から資金提供と指導を受けている。

 イェール大学人道研究所のナサニエル・レイモンド所長は、CNNのアンダーソン・クーパーとのインタビューで、自身の報告書が「数千人の子どもたちが人質状態にある」という証拠になると主張した。彼はホロコーストを引き合いに出して、「私たちは21世紀に見られる最大の子ども収容所のネットワークのことを問題にしているのだ」と主張した。

 しかし、この報告書の共著者であるジェレミー・ロフレドとのインタビューや、イェール大学人道研究所の自身の論文の中で、レイモンド所長は、子供の人質についてメディアに対して行った大げさな主張の多くを否定している。共著者ロフレドとの電話会談でレイモンド所長は、彼のチームが調査したキャンプの「大部分」が「主に文化教育―言うなれば、テディベア文化・音楽教育のようなもの」であったことを認めた。

 イェール大学人道研究所の報告書も同様に、調査したキャンプのほとんどが、恵まれない青少年のために無料のレクリエーション・プログラムを提供しており、その親たちは「継続する紛争から子供を守る」「住んでいる場所では手に入らないような栄養のある食べ物を確保する」ことを求めていたことを認めている。同報告書によると、ほぼすべてのキャンプ参加者は、両親の同意のもとに参加した後、適時に帰宅していたそうだ。国務省が資金提供した報告書はさらに、「子供の虐待を示す文書はなかった」と認めている。

 イェール大学人道研究所の調査はすべて、マクサー(米国宇宙技術会社)の衛星データ、テレグラムの投稿、ロシアメディアの報道に基づいて行われ、その解釈はグーグル翻訳に頼り、時には引用記事を誤認していた。国務省が資金を提供したこの調査団は、論文のために現地調査を行わなかったことを認め、「現地での調査は行わないので、収容所での取材は要求していない」と述べている。

 ICCの逮捕状のきっかけとなったイェール大学の調査員とは異なり、(ジャーナリストの)ロフレド氏はモスクワにあるロシア政府のキャンプを自由に取材することができた。そこはまさにイェール大学人道研究所つまりはICC―がウクライナの子ども人質の「再教育キャンプ」として描いてきたような場所だったが、彼が発見したのは、一流の講師から母国語のロシア語で無料のクラシック音楽のレッスンを受ける幸せな参加者でいっぱいのホテルだった。レイモンド氏はその若者達を「テディベア」と呼んでいた。

 モスクワ郊外にある音楽キャンプ「The Donbas Express」で、若者たちはロフレド氏に、ウクライナ軍による長年にわたる砲撃と包囲のキャンペーンから避難できたことに感謝している、と語った。ドンバスの戦争から逃れることで、子どもたちは、イェールHRLとICCがほとんど関心を示さない悪夢のような軍事衝突から逃れたのだ。




無料の音楽レッスン、「精神的な豊かさ」、戦争からの安全、そして米国の非難:「the Donbas Express」への訪問記

 私ジェレミー・ロフレドが2022年11月にロシアの青少年音楽キャンプを訪れたとき、私は、私が目撃したような利他的なプログラムを、米国政府が政治的戦争を進めるためにすぐに利用することになるとは思いもしなかった。

 当時、私は前職の「Rebel News(抵抗ニュース)社」の仕事でモスクワに滞在し、街中の一般人に街頭インタビューを行っていた。

 私はロシアの音楽界に影響力のある奥さんを持つ人に会った後、モスクワの南西45マイルにある、米国国務省が資金援助した研究者が「再教育キャンプ」と表現しているプログラムを見学するように誘われた。ポクロフスコエという町にあるソ連時代のホテルで、私はプーチンに対するICCの逮捕状の中心となっている、いわゆる施設のひとつに入ることになった。

 私が訪れた時には、ロシア政府はこのホテルを、ドネツクとルガンスクの分離独立共和国出身の子どもたちのための臨時宿泊施設に作り替えていた。私が訪れたthe Donbas Expressと呼ばれるセンターは、音楽芸術に興味を持つ子どもたちにクラシックのためのトレーニングを提供することに重点を置いていた。この企画に本国の紛争から家族を守りたいという親たちが自分の子どもたちを参加させていた。

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 プロのバイオリニストであり、the Donbas Expressの講師でもあるピーター・ルンドストレム氏は、「国家大統領基金の支援のおかげで、ドネツクとルガンスク地方から80人の子どもたちを連れて来ることができました。彼らは才能ある若い音楽家で、12日間ここに滞在しています。彼らはここで生活し、優れた音楽教師からレッスンを受けます。コンサートを開催することもあります。そして教育を受けるのです」。

 米国務省が資金提供したイェール大学人道研究所の報告書は、重大な欠陥があり、現場での裏付けを求めなかったにもかかわらず、the Donbas Expressに登録された子供たちの経験について、1つだけ正しいことを述べている。彼らはこの企画に参加していることを秘密にする可能性があることだ。ウクライナ当局の目には、たとえ無料の音楽レッスンのためであっても、ロシアに旅行するという単純な行為は、敵に協力することに等しいと映るのだ。

 報告書にもあるように、「ウクライナの多くの家族は、自分たちが(ウクライナから)ロシアへの協力者と見られることを恐れて、(キャンプや学校の)体験を公にしたがらない」と言う。

 The Donbas Expressに関わった学生たちについて、ルンドストレムは、「ウクライナでこのような子供たちに何が行われているかを理解してもらうために(そのことを話すと)...ロシア人やロシア国家から何らかの援助を受けた子供たちは...単に殺されてしまうでしょう」と述べている。

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The Donbas Expressでのコンサートの様子

 この若者たちは、人生の大半を、日常的に死の脅威と隣り合わせで生きてきた。ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻するまでの8年間、ドンバスのロシア系住民は、米国が支援するキエフの民族主義政府の手による定期的な砲撃に耐えてきた。2022年2月以前にも、この内戦によって、私がthe Donbas Expressで出会った子どもたちを含む何千人もの市民が命を落としている。

 「もちろん、(the Donbas Expressに在籍する若者の)多くは、この紛争によって大きな被害を受けました」と、ルンドストレムは言う。「彼らの多くは家を失いました。親族や友人を失った人もいます。紛争地では、実際、彼らは音楽の専門的な勉強を続けることができません。ドネツクでは、フィルハーモニーや一般教育機関が機能していないのです」。

 国務省が資金提供したイェール大学人道研究所の報告書は、the Donbas Expressのような合宿所を開放するロシアの動きが戦争犯罪に相当するとアメリカ人に思わせるだろうが、私がそこで出会った学生たちはそこを去りたがらなかったのだ。

 「もちろん、彼らは皆、このプログラムの継続を望んでいます。もちろん、彼らはこのプログラムが続くことを望んでいます。しかし、私たちができるのは、このような小さなことだけです。私たちは将来、またこのようなことをするかもしれません」とルンドシュトレムは私に語った。

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 私は、the Donbas Expressの学生2人とカメラで話をした。この学生はどちらもこのプログラムへの感謝の言葉を口にしていた。

 ドネツクの学生は「私は招待されて、寛大な招待を受けてここにいます。モスクワに来れるなんて思ってもみませんでした。私は、精神的な豊かさや魂の浄化に役立つコンサートに出演するために、お手伝いをしてきました。そして、音楽演奏の技能を高めるためにここに来ました」。

 「ここで、周囲に何があっても音楽の勉強を続けるのは、それが私たちに安らぎを与えてくれるからです」と、もうひとりのドンバス出身の若者は私に言った。

 このプログラムに参加する他の生徒と同様、音楽家を目指す彼らが育ったのは、ロシア正教の宗教宗派を禁止し、ロシア語の禁止を求め、国内のロシア系住民を激しく攻撃したウクライナ政府に対して公然と反抗する地域であった。

 講師によれば、the Donbas Expressに在籍する学生の全員ではないにせよ、そのほとんどがロシア国家を意識しているそうだ。「彼らはこの(愛国的な)歌を持っています。<祖国が帰ってくる>という歌です」とルンドシュトレムは述べている。「この80人の子供たちは、みんなこの歌を叫んでいました。ただこの歌を叫んでいるだけなのです」。

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 しかし、先生は「私たちは政治的な理由で(the Donbas Expressを)組織しているわけではありません」と強調した。「例えば、『ロシアよ永遠に!』と言うためにここにいるのではないのです。私たちは子どもたちを助けるためにここにいます。でももちろん、私たちはロシア人です」。

ウクライナ東部からthe Donbas Expressのようなプログラムに参加した子供たちの政治的共感とロシア人であるという民族的背景については、国務省出資のイェール大学人道研究所報告書では、ほんの少ししか言及されていない。

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イェール大学人道研究所の報告書の内容はICCの逮捕状と矛盾する

 国務省が後援するイェール大学人道研究所所長、ナサニエル・レイモンドは2023年2月16日、CNNのアンダーソン・クーパー360に出演し、「ウクライナの子どもたちのためのアンバー・アラート*」と称する発表を行った。
*AMBER Alert 児童(未成年者)誘拐事件及び行方不明事件が発生した際、テレビやラジオなどの公衆メディアを通じて発令される緊急事態宣言(警報)の一種(ウィキペディア)

 レイモンド所長は、ホロコーストを連想させるように、彼と彼のチームが「21世紀に見られた最大の数の収容所」を発見したと主張し、この発見は「大量殺戮の証拠」となり得るとした。

 レイモンド所長は「彼らは彼らをロシア人に仕立て上げようとしている」と語り、「ロシア当局は、ウクライナの子どもたちを家族から強制的に引き離し、強制的な軍事訓練を施している」と主張した。

 「何千人もの子供たちが人質になっている」と、国務省の支援を受けたイェール大学の研究者は宣言した。

 CNNのクーパーは憤懣やるかたない表情で、「これは本当に気持ち悪い」とつぶやいた。これは病気だ」と。

 しかし、レイモンド所長が国務省を代表して指示した2023年2月14日の調査の実際の内容は、彼の主張する「人質事件」と相反するものだった。

 レイモンド所長が多くの青少年キャンプ内の状況について無知であることは、彼や彼の同僚がキャンプを訪れようとしなかったことに起因しているかもしれない。また、キャンプに参加した子どもたちやその親、スタッフに連絡を取ろうともしなかった。

 「イェール研は、目撃者や被害者へのインタビューは行わず、オープンソース*で入手できる特定の情報のみを収集する」と報告書に記されている。研究者が、ある子どもが家に戻ったかどうかに関する公開情報を特定できない場合、その子どもの現在の状況を把握することは困難となる。同様に、イェール大学人道研究所は現地での調査を行わないため、キャンプへの直接取材は要求していない。
* コンピュータプログラムの著作権の一部を放棄し、ソースコードの自由な利用および頒布を万人に許可するソフトウェア開発モデル(ウィキペディア)

 つまり、ICCのプーチンへの逮捕状を伝えた研究者は、現地調査を行わず、子どもたちの状況に関する具体的な情報を得ることができなかったことを認めている。

 実際、論文では「キャンプに参加した子どもたちの多くは、予定通り家族のもとに戻っているようだ」と認めている。

 また、報告書の中に埋もれているのは、次のような開示である。「キャンプに連れて行かれた多くの子どもたちは、親の同意を得て数日から数週間の合意された期間だけ送られ、当初の予定通り親のもとに戻される」。

 「これらの親の多くは低所得者であり、子供のために無料の旅行を利用したかった」と、イェール大学人道研究所/国務省の論文は続けている。さらに「ある者は、進行中の戦闘から子供を守りたい、衛生状態の良い場所に行かせたい、住んでいる場所では手に入らないような栄養価の高い食べ物を食べさせたい、と考えていた。また、単に自分の子供が休暇を取れるようにと願う親もいた」とも。

 では、子供たちが自発的にキャンプに参加し、ほとんどが期限内に戻され、ほとんどの親が「意味のある」同意をして、子供たちが健康な食べ物で安全な場所にいられることに感謝していたとしたら、レイモンドがCNN出演時に主張した「大量虐殺の証拠」はどこにあったのか。

 イェール大学人道研究所/国務省の論文によると、「この報告書で参照されたキャンプの中には、性的・身体的暴力を含む子どもの虐待を示す文書はない」という。

 報告書の引用には、ロシアのマガダンという町で行われた2週間のサマー・キャンプ(夏季合宿)に関するRIA Novosti*の記事へのリンクが含まれている。この記事で引用された子ども、ポリーナ・ツヴェトコワは、Donbas Expressの参加者が提供したものと同じような、はっきりとした肯定的な感想を語っている:
* リアノーボスチ。かつて存在したロシアの国有通信社で、現在はRTのロシア国内向放送局(ウィキペディア)

 「空港から車で移動している間、私たちは地元の風景にとても感動しました。私は野原を歩き、花を摘むのが好きです。自然を見るのはとても面白いんです。あらゆる種類の美しい景色を見ることができます。車を走らせていると、山から小さな川が流れているのが見えました。とても美しい、景色がとにかく素敵なんです」。

 イェール大学人道研究所/国務省の論文は、引用したRIA Novostiの記事にあるサマーキャンプの参加者の喜びの声を省略している。その代わりに、「子供たちはバス、列車、民間航空機、そして少なくとも1つのケースではロシアの航空宇宙軍によって(キャンプに)運ばれてきた」と主張するために、この記事を利用したのである。

 CNNに出演したときと同様、レイモンド所長の国務省後援の報告書は、「何千人もの(ウクライナの)子どもたちが人質状態にある」という彼の主張全体を崩壊させる一つの事実を覆い隠している。それは、イェール人道研究所/国務省の報告書で言及された子どもたちのほぼ全員が、キエフの民族主義政権との対立でロシア側についた家庭や地域出身のロシア民族であるということだ。

 RIA Novostiの記事で言及されたキャンプに参加した若者たちは、2014年にウクライナから分離し、2022年に正式に独立を宣言したドネツク共和国の町、ジュダノフカ出身だった。しかし、ICCと他のすべての公式西側情報源は、これらの若者を単に「ウクライナ人」と呼び、あたかも彼らがロシア軍に占領された親キエフ派の地域から強制的に引き出され、ロシアの収容所内で洗脳を受けたかのように言及した。

 イェール大学人道研究所/国務省は、若者対象の合宿参加者の政治的・民族的背景については一点だけ言及している。「ウクライナの多くの家族は、ロシアへの協力者と見られることを恐れて、(キャンプでの)経験を公にしたがらない」という指摘である。

 イェール大学人道研究所/国務省の論文の著者たちは、これらの家族の安全に対する関心が全くないことを示しただけでなく、ウクライナ政府によって拷問されたり殺されたりする可能性のある紛争地帯に即座に帰還させるよう呼びかけるきっかけを作った。

 2022年2月、ウクライナ軍が分離主義共和国への攻撃を激化させたタイミングでドネツクから500人の孤児が避難したことについて、著者はこう書いている。「当時ロシア政府が公にした理由は、いわゆるドネツク人民共和国(DPR)とルハンスク人民共和国(LPR)に対するウクライナ軍による攻撃の脅威のためであるとされていた」。

 この主張を裏付けるために提供された引用は、ドンバス・インサイダーによる報告で、2022年2月19日にウクライナ軍がドネツクの民間地域への砲撃を強化し、住宅、養鶏場、変電所を破壊し、800人の住民が電気の使えない状態になったことを詳細に伝えている。ドネツク人民共和国でのウクライナによる43回目の停戦違反であった。その5日後、ロシア軍はウクライナに侵攻し、「非武装化」の使命を発表した。


 では、ドネツクの紛争地域からロシア連邦内の安全な場所に孤児を脱出させることは、レイモンド所長が主張するように「誘拐」という犯罪になるのだろうか。

 イェール大学人道研究所/国務省の研究者は、この用語の定義を極めて緩やかにしているようだ。2020年、レイモンド所長は、トランプ政権(バイデン政権も継続)の移民親から未成年者を引き離す政策を非難するワシントン・ポスト紙の社説を承認するツイートをしている。「言葉を濁すのはやめよう。トランプ政権は子どもたちを誘拐したのだ」、と。

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「テディベア」合宿:インタビューでイェール大学人道研究所所長が「人質事件」の主張に反論、米情報機関との関係も公開

 ナサニエル・レイモンド所長は、オックスファム*からハーバード大学のシグナル・プロジェクトまで、さまざまな国際NGOや大学で働いてきた技術者であり、ICC(国際刑事裁判所)の技術顧問チームを務めていたと主張している。イェール大学公衆衛生大学院の講師になる前は、スーダンのダルフール地方の窮状を有名にしたハリウッドの有名人、ジョージ・クルーニーの下で働いていた。クルーニーは、親イスラエル団体や、ダルフールに米軍を派遣すると脅したブッシュ大統領と一緒にキャンペーン活動した。
* オックスファム・インターナショナルは20の組織から編成される貧困と不正を根絶するための持続的な支援活動を90カ国移譲で展開している。(ウィキペディア)

 2012年、レイモンド所長はガーディアン紙に「ジョージ・クルーニーのために宇宙から戦車を数えた」と軽口を叩き、人権侵害の疑いを記録するためにマクサー(米国の宇宙技術会社)の衛星技術を先駆的に利用したことについて触れた。

 私ジェレミー・ロフレドは、レイモンド所長のイェール大学人道研究所がthe Donbas Expressのようなロシア政府の青少年プログラムに関する報告書を発行したことを知り、2022年11月にこれらのキャンプのひとつに行ったことがあると彼にメールで報告した。私は、自分の経験を彼と共有することに前向きであることを伝えた。彼は、電話で話すことに同意してくれた。

 レイモンド所長は、2021年にイェール大学人道研究所に来たとき、アフガニスタン政府による少数民族ハザラ人に対する虐待を記録する国務省後援のプロジェクトを指揮していた、と説明してくれた。しかし、米国情報機関がロシアのウクライナ侵攻が迫っていることを警告し始めたため、ミッションはすぐに変更された。

 レイモンド所長は、「私たちの最初の作戦構想は、実はアフガニスタンに関してだった。そして、ウクライナに迂回させられた。つまり、ハザラ人を監視するつもりだったが、この作戦に参加することになったんだ。そして、侵攻の2週間前に、待機して部隊を編成するように言われ、春には、良いことが起きることがわかった」と述べた。

 レイモンド所長は、米国国家情報会議(NIC)がイェール大学人道研究所の彼のチームに対して、ウクライナ東部からロシア連邦に市民を移動させるロシア政府の作戦を記録するよう「多くの圧力」をかけてきたと付け加えた。

 「私たちは、”よし、ではどうやってやるんだ?"という感じでした」と振り返る。「そして、夏から秋口にかけて、作戦構想を練り上げようとしました。そして、10月(2022年)になって初めて、その方法を理解したのです。そして、私たちがそれを実行したとき、ロシアのVPN*ネットワークに入り込み、まるでロシア市民が地元の市長のVK(ロシアのソーシャルメディア)アカウントを見ているように見えたのです」。
* VPN(Virtual Private Network)、仮想プライべート・ネットワークとも言う。公衆回線を用いてデータを暗号化し、通信の内容が漏れることを防ぐ接続方法。

 レイモンド所長は、彼のチームは、ペンタゴンの米国インド太平洋司令部に頼って、「シベリアと東部の陣営を得るために、太平洋司令部の衛星アクセスを拡大した」と述べた。

 研究チームがthe Donbas Expressのようなロシア国内のプログラムを訪問しようとしなかった理由を尋ねると、レイモンド所長は「私たちはペルソナ・ノン・グラータ*だ」と答えた。ロシアでは、私たちは米国諜報機関の延長線上にあると思われているのです」。
* 好ましからざる人物

 米国情報機関や国務省と緊密に連携していることは認めたものの、レイモンド所長は、イェール大学人道研究所がウクライナによる残虐行為は除いて、ロシアによるとされる残虐行為に焦点を当てたのは、米国政府が資金提供しているからだという指摘を否定した。「ウクライナの残虐行為とされるものは、我々の手段ではおそらく見ることができない」と彼は主張した。「多くは捕虜を使った小部隊の事件だからだ。例えば、彼らは何人も膝を撃ち抜いたと言われている」、と。

 レイモンド所長は、「ウクライナのでたらめ」の典型例として、ウクライナの穀物サイロに対するロシアの攻撃を記録した部隊の記録を挙げた。「ウクライナ人がやっていたと思われることは、彼らがサイロの下にリン酸アンモニウムの研究所があり、軍需品を製造していたことだ」と述べた。

 彼は、「あの(爆)穴を作ることができるのは、基本的に爆弾工場だけだ」と言ったものの、レイモンドは、その疑いを確かめることは不可能だと主張した。

 彼は、イェール大学人道研究所がロシア政府を追い詰めることだけに集中していた理由を、交通違反の比喩を使って説明した:「武力紛争法の観点からは、バス停留所での駐車違反になる。一方、ロシア軍はショッピングモールを16輪車で走り抜け、飲酒運転をしている」。

 レイモンド所長は、ウクライナ軍が無防備な捕虜を射殺したり、軍事施設を隠すために民間インフラを利用したりすることが記録されるのを最小限に抑える一方で、ロシアの文化プログラムに民族的にロシア系の子供たちを連れてくる政策に焦点を当て、モスクワが「ロシア化」という犯罪的プロセスをとっていると非難した。

 イェール大学人道研究所が調査したプログラムに参加した子どもたちのほとんどが、すでに自分たちをロシア人だと思っており、ウクライナの米国が支援する政府によって暴力の対象となっているロシア民族の分離主義地域の出身であり、紛争で破壊されて帰る家がない者もいるという事実について尋ねると、レイモンド所長は否定的な態度を示した。

 「仮にそれが事実だとしても、戦争犯罪だ」とレイモンド所長は主張する。「ジュネーブ条約では、武力紛争の一方の当事国は、いかなる場合であっても、他方の当事国の子どもを養子にしたり、移したりすることはできない」、と。

 レイモンド所長は、子どもたちの権利が侵害されているかどうかを判断する際に、子どもたちの民族的・政治的背景を考慮することはないが、イェール大学人道研究所の彼のチームが調査したキャンプの大半は、the Donbas Expressのように、「主に文化教育であり、言ってみればテディベア(若者)対象の教育」であることは率直に認めている。

ハルマゲドン将軍をゲラシモフ将軍に交代させたロシア:戦いはもう終わった。

<記事原文 寺島先生推薦>

General Armageddon Makes Way

Russia’s decision to replace General Armageddon with the even more formidable General Valery Gerasimov, should be a cause of concern for Clown Prince Zelensky and his over-dressed wife.

ハルマゲドン将軍をさらに空恐ろしいヴァレリー・ゲラシモフ将軍に交代させるロシアの決断は、道化王子ゼレンスキーと着飾り過ぎた彼の妻にとっては心配の種となるだろう。

筆者:デクラン・ヘイエス(Declan Hayes)

出典:Strategic Culture

2023年1月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月1日

アルマゲドン


 ロシアは、ハルマゲドン将軍の後任に、現在ロシア参謀本部長を務めるさらに空恐ろしいヴァレリー・ゲラシモフ将軍を選んだが、道化王子ゼレンスキーとその着飾りすぎた妻にとっては、心配の種になるだろう。セルゲイ・スロヴィキン陸軍大将がいなくなったわけではない。とんでもない! ゲラシモフ将軍の副官として「ハルマゲドン将軍」セルゲイ・スロヴィキン陸軍大将が続投するのだから、ゼレンスキーと彼のペテン師内閣全体にとってはさらに悪いニュースとなる。

 ゼレンスキーは、私やロシアの言葉を鵜呑みにする必要はない。彼は、キエフの最高司令官であるヴァレリー・ザルジニーに聞いてみればいい。ザルジニーは、NATOべったりのタイム誌に、「ゲラシモフから学んだ」「ゲラシモフは最も賢い男であり、彼への期待は非常に大きかった」と語った記録が残っているのだから。

 しかし、これはウクライナの弟子がロシアの大師匠より優れているとか、パットン*が資金不足なのに戦線をどんどん拡大したロンメルの著作を読んでロンメル**に勝てると思った、とかいう問題ではない。これはザルジニーとその残党軍がロシアの流れを止めようとしているのだ。彼らは勝つことができない。不可能なのだ。
* アメリカの陸軍軍人。モットーは「大胆不敵であれ!(Be audacious!)」。(ウィキペディア)
** ドイツの軍人。第二次世界大戦のフランスや北アフリカでの戦闘指揮において驚異的な戦果を挙げた、傑出した指揮官として知られる。(同上)


 ワグネル軍団は、ゲラシモフ戦術に手袋のようにすっと適合し、ソレダールを占領し、それによって、バフムートの目前の解放とザルフニーのドネツク戦線全体の崩壊への道を開いたのだ。ハルマゲドン将軍の容赦ない作戦により、ウクライナの大部分は無力化され、窮地に追い込まれた。ゲラシモフ将軍は、オーケストラの指揮者のように、ロシアのバラバラな弦を束ねることを得意とし、特にロシア空軍の金管と打楽器セクションはハルマゲドン将軍の有能な手に委ねられていることを知っている。

 ゲラシモフ将軍が着任すると、ゼレンスキー帝国の残党は、彼らの最悪の悪夢でも想像されなかったような形で、ロシア当局の視線にすべて晒されることになる。彼の着任は、ロシア国防省がやんわりと言うように、「軍隊の様々な部門や支部の間でより緊密な調整が行われる」ことを意味する。ゼレンスキーは自分の船のハッチを閉じるのが一番だ。なぜなら、悪い知らせが彼の帝国の残党の行く手にもたらされ、彼はその嵐の目の真ん中にいるのだから。

 ゲラシモフ戦略は、私の理解では、ロシアが戦争に勝つために必要なハードパワーとソフトパワーをすべて投入する、一種の総力戦を意味するものである。ベトナム戦争を雛形とするならば、ロシアは、十分な民衆の支持を得られない傀儡政権を樹立するというアメリカの失敗を犯さないだろうし、またベトコンのテト攻勢の失敗も犯さないはずだ。その戦いでは、ベトナムに対する情報戦としては大勝利だったが、軍事的には大失敗した。彼らが冷戦型のガチンコ勝負でアメリカと戦ったためだ。この戦いはアメリカ軍が適切な訓練を受けて戦った唯一の戦争だった。

 英雄的なシリア・アラブ軍は、NATOの代理軍に対して、当初、後手に回っていたとき、同じような失敗を犯していた。イランとロシアが専門知識を提供する前は、訓練を受けていない戦争を戦っていた。ヒズボラの勇敢な戦士たちが、彼ら自身の豊富な専門知識を生かして、カラムーン丘陵を確保して初めて、シリア軍は前進することができたのである。そして、イランについては、さらにどれだけの悪魔的無人機をゲラシモフ将軍に与えるために隠し持っているか、神のみぞ知る、である。将軍は手直しされたゼレンスキー帝国に最後の締めを与えることになる。

  ゲラシモフはそのすべてから学んだだけでなく、ロシア当局の全面的、明確かつ積極的な支持を得ており、非常に有能な副官たちもいるのである。彼が任命されたということは、ロシアが、今、全力で、事態に対処していることを示している。ゲラシモフは、盾を持って意気揚々と勝利の帰還をするか、あるいは盾に乗り遺体となってロシアに戻ってくる、そのどちらかになる。しかし、ウクライナは今、全ロシアに喧嘩を売っているが、そのどちらのシナリオも、兵士たちの若い命を犠牲にしているウクライナのヴァレリー・ザルジニー将軍と、卑劣なギャングたちにとって、良い兆候とはならないだろう。

 ザルジニーの当面の仕事は、ゲラシモフを学習することはやめ、救えるものを救うことだ。第一に、ゼレンスキーとその酔狂な取り巻き連中は去らなければならない。第二に、ウクライナの西部地域をルーマニアとポーランドに割譲すること、第三に、ウクライナ軍を東部から避難させ、彼らの命を救うことである。

 そして最後に、ウクライナ人は自分たちで新しい図書館を作らなければならない。ゲラシモフの著作集がどうであれ、本当に本を燃やさなければならないのなら、ナチスの過去を美化し、来るべき輝かしい日々をうそぶくNATOの出版物をすべて処分すべきだ。同時に、ゼレンスキーと彼の仲間の詐欺師たちは、この12ヶ月間に兄弟、息子、夫たちをレミングみたいにたくさん死なせている。それも彼らの愛する者のために新しく掘った墓地の前で延々と祈り続けるために、だけだ。

 NATOべったりのメディア、The GuardianAl Jazeeraなどは、奇妙なことに、戦場での損失と挫折のためにスロヴィキンを交代させたと、この件に関して違う見方を示している。しかし、これはロシアの監督が勝利の組み合わせを得るために選手を入れ替えるような、無害なサッカーの試合とは訳が違う。これは、ゼレンスキーと彼のペテン師内閣にとって、非常に悪いニュースである。私やロシアの言葉を鵜呑みにする必要はない。彼は、キエフの最高司令官であるヴァレリー・ザルジニーに尋ねればよい。彼は、残された部下とともに、ゲラシモフが「最も賢い男」であるだけでなく、人員と物資の面で圧倒的な優位に立ち、NATOが進んで認めているように、同時に勝利する軍事戦略術も持っていることを知ることになるだろう。

 ゲラシモフが懸案とする地上作戦は、高度に機械化された60万の地上軍と、ハルマゲドン将軍の航空作戦、ワグネル軍団、チェチェン人、黒海に潜むロシア船団の支援により、この無用な戦争には一つの可能性しかないことが、ザルジニーには、クラウゼヴィッツならずとも、わかっているのだ。また、ヒトラーの野戦司令官ワルター・モデルのようになる必要もない。彼はB軍を解散させ、ミツバチの大群、副官テオドール・ピリング大佐、そして最後の一人まで戦えというアドルフ・ヒトラーの狂った叫びが無線で流れている中、何も持たず誰も相手にしてくれず、自分の頭を吹き飛ばしたのだ。

 戦争は終わったのだ。ザルジニーはそれを受け入れ、ゼレンスキー一味、仲間のギャングたち、外国の傭兵、ナチの執行者を一網打尽にし、自分の部下や家族のために、ゲラシモフ、ラブロフ、そしてプーチンにどんな条件であれ和平を求めるべきだ。それ以外の選択肢はない。

検閲されるマイダン虐殺(2014年キエフ政権転覆の要)の研究:隠される外部勢力の関与

<記事原文 寺島先生推薦記事>

The Maidan sniper killings were pivotal for the 2014 Kiev coup – why is research into the massacre being censored in the West?
Evidence that external forces were involved has been suppressed for ‘political reasons’

マイダン狙撃事件は、2014年のキエフ・クーデターにとって極めて重要なものだった―なぜ欧米では、この虐殺事件の研究が検閲されているのだろうか?
2023年2月27日マイダンに外部勢力が関与した証拠は、「政治的理由」で隠されている。

筆者:フェリックス・リブシッツ(Felix Livshitz)

出典:RT

2023年2月6日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳NEWSグループ>

2014年1月27日

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警察との衝突中に火炎瓶を投げる反政府デモ参加者。ウクライナのキエフで、ディナモスタジアム近くのフルシェフスコホ通りで。© Brendan Hoffman / Getty Images


 政治学者のイワン・カチャノフスキー(オタワ大学)は、2014年2月の狙撃によるウクライナのデモ隊の虐殺の証拠をまとめた論文を、「政治的理由」で学術誌に掲載されなかったことを明かにした。その虐殺が、欧米が支援するマイダンのクーデターの決定的瞬間であったからだ。


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関連記事:「ここに神はいない」:正教会とソ連の対立は、現代ロシアを定義する上でいかに役だったか


「証拠は確かなものだ」

 1月6日に投稿されたツイッターの長文スレッドで、カチャノフスキーはまず、自分の論文が却下された経緯と、その論文に含まれる爆弾のような証拠を明らかにした。この論文は当初、査読後に若干の修正を加えて受理され、同誌の編集者は彼の研究を高く評価し、こう書いている。

 「この論文が、多くの点で優れていることは疑う余地がない。2014年のウクライナにおける政権交代に関する主流の筋書きに反する証拠を提供しているからだ。... 2014年2月18日から20日にかけてウクライナで起きた”ユーロマイダン”の大規模抗議デモの際に、デモ隊と警察を虐殺したのは誰かという解釈に対して、この研究が生み出す証拠は確かなものだと思われる。これについては、2人の評者の間でも同意が得られている。」

 編集者が指摘するように、この虐殺は「政治的に決定的な進展」であり、自由選挙で選ばれたヴィクトル・ヤヌコーヴィチから、元保安庁(SBU)長官のアレクサンドル・トゥルチノフによる違法で狂信的な民族主義政権への「権力移行」につながったのである。この事件は、ウクライナ政府(ヤヌコービッチ政権)の残忍さの象徴として、西側メディアで延々と引用され続けている。それは、民主主義と自由しか求めておらず、無実の親西欧マイダン派抗議者に対する不当な攻撃として利用されているのだ。)

 この殺害は、偽旗作戦であるという噂が、すぐに流れ始めた。それは、マイダンを埋め尽くしている膨大な群衆の緊張を煽り、当局に対する暴力を誘発するためのものであった。

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2014年2月20日、ウクライナのキエフで、ウクライナ大統領と野党指導者の間で合意された停戦にもかかわらず、独立広場で警察と衝突を続ける反政府デモ参加者たち。© Jeff J Mitchell / Getty Images


 西側メディアでは、何が起きたのかの本格的な調査は行われず、狙撃が反政府側内部の犯行であるという主張は、すべてクレムリンの 「偽情報」 として退けられた。しかし、NATOの大西洋理事会付属機関でさえ、2020年にこの大虐殺が未解決であることを認め、これが 「ウクライナに暗い影を落としている」 と述べている。

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関連記事: 「この紛争はロシアを根本的に変えるだろう」。ウクライナとの戦いに志願した理由を説明する若きモスクワっ子


目撃者に聞け

 しかし、運命の日に現場にいた警官たちの裁判が進行中であるので、未解決のままではいられないかもしれない。この裁判は1年以上前から行われているが、ウクライナ国外では全くと言っていいほど報道されていない。カチャノフスキーは、掲載を阻止された論文の中で、裁判の過程で出てきた目撃者の証言や映像の証拠をたくさん出している。

 たとえば、事件で負傷した51人のデモ参加者は、裁判で、マイダン支配下の建物から狙撃された、また/あるいはそこで狙撃手を目撃したと証言している。多くは、マイダンの抗議者たちが支配する建物にいる狙撃手が警察を撃っていると話した。これは、カチャノフスキーが集めた他の証拠とも一致している。たとえば、デモ隊が管理する建物で狙撃手がいることを示す14の別々のビデオ、そのうちの10は、ホテル・ウクライナの極右武装集団が下の群衆を狙う様子をはっきりと映し出している。

 全部で300人の目撃者が、ほとんど同じことを語っている。同期化されたビデオによれば、警察が発砲した特定の時間と方向は、特定のマイダン抗議者の殺害と一致しないばかりか、当局は単に群衆を分散させるために、壁、木、街灯、そして地面さえも狙っていたのである。

 マイダン派と思われる狙撃手に狙われたのは、ドイツのARDのジャーナリストたちだった。ただ、当時、街にいた西側の報道局は彼らだけではなく、ベルギーの記者もいたのだが、彼らはマイダンのデモ参加者がホテル・ウクライナに向かって狙撃手に撃たないでくれと叫ぶ様子を撮影しただけでなく、参加者が積極的に殺害現場へ誘い込まれていく様子も撮影していた。しかし、この衝撃的な映像は放送されなかった。

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2014年2月19日、ウクライナのキエフにある独立広場で、反政府デモ隊に石を投げつけるベルクート機動隊員。デモ隊はその石を投げ返していた。© Brendan Hoffman / Getty Images


 CNNも同様に、極右勢力がマイダンのバリケードの後ろから警察に発砲し、その後、ホテル・ウクライナの11階から射撃する位置を探す様子を撮影した。その数分後に、BBCが極右議員の宿泊する部屋からデモ隊を撃つ狙撃手を撮影した。しかしそのとき、放送局はこのことを報道しなかった。 

 純粋にビデオ映像だけに頼る必要はない。カチャノフスキーは、裁判の過程で、14人以上のマイダン狙撃手集団の一員が、明確に虐殺の命令を受けたと証言したと主張している。一方、現場にいた警察官で、非武装のデモ参加者の殺害を指示されたと証言した者はおらず、そのような計画を内部告発した大臣もおらず、ヤヌコーヴィチが殺害を承認した証拠も出てきていない。

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関連記事:「ラストエンペラー」に最後のお辞儀を。ロシアMMAの巨人、最後の戦いに備える。


 裁判とは別に、極右政党スヴォボダの指導者たちは、西側政府の代表が虐殺の前に、デモ参加者の死傷者が一定数に達したらヤヌコーヴィチの退陣を求めると明確に伝えてきたと公言している。この数字は、5人で十分なのか、20人で十分なのか、100人で十分なのか、といった具合に、両者で活発に議論された。最終的に報告されたのは最後の数字で、実際にウクライナ政府の退陣を求める声が上がった。

***

 カチャノフスキーは2021年にマイダンの虐殺に関する画期的な研究を発表しており、その研究は学者や専門家によって100回以上参照され、Google Scholarによれば、すでにウクライナ専門の政治学者として最も引用されている一人となっている。

 この爆弾論文に加えられた政治的圧力は検閲に繋がったが、その政治的圧力の性質と源が何であれ、この動きは、ストライサンド効果*で、大きく裏目に出る可能性がある。実際、あの忌まわしい日に起こったことの真実が明らかになり、殺人の責任者が裁かれる一助となるかもしれない。
*ある情報を隠蔽したり除去しようとしたりする努力が、かえってその情報を広い範囲に拡散させてしまう結果をもたらす現象を意味する。

 また、マイダン広場の抗議行動の本質と、マイダンが生み出した政府について、広く再考を促すことにもなるはずだ。野党の禁止、正教会への攻撃、反体制的なメディアの閉鎖、ロシアの文化と言語に対する戦争は、すべてこの結果なのである。

ロシア外務大臣、「次のウクライナ」を警告

<記事原文 寺島先生推薦>

Russian foreign minister warns about 'next Ukraine'
Sergey Lavrov says the West is pushing the ex-Soviet republic of Moldova to align with NATO.

セルゲイ・ラブロフの発言によると、「西側は旧ソビエト共和国モルドバにNATOと提携するよう後押ししている」。

出典:RT

2023年2月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月19日

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モスクワで、ロシヤ・セゴドニャ国際メディアグループのドミトリー・キセレフ事務局長とのインタビューで話すセルゲイ・ラブロフ外相。© Sputnik/Grigory Sysoev


 モスクワのセルゲイ・ラブロフ外相は、ロシアメディアのインタビューで、モルドバがウクライナの次に、新たな「反ロシア」国になる可能性があることを示唆した。同外相は、西側諸国がキシナウ(モルドバの首都)に大統領を就任させ、この旧ソビエト連邦共和国を米国主導の側に引き入れようと躍起になっていると主張した。

 ロシアのメディアRIA NovostiとRossiya 24は2日(木)、ラブロフのインタビューを掲載した。彼は、ウクライナと同じ道を歩み、「反ロシア」になる可能性のある国はどこだと思うか、という質問を受けた。

 これに対してラブロフ外相は、西側諸国は「現在、モルドバにこの役割を果たさせることを検討中だ」と主張した。モルドバが選ばれたのは、西側が「自由や民主主義とは程遠い、非常に特殊な方法」で、従順な大統領を据えることに成功したことが主な理由だという。

 (モルドバ大統領)マイア・サンドゥ(女性)は「駆け足でNATO陣営に入ろうとしている」そして(彼女は)「ルーマニアの市民権を持っている」とラブロフは指摘した。

 モルドバの国家元首(マイア・サンドゥ)は隣国のルーマニアと合併する準備ができており、「実質的に何でもする」ことができる、とラブロフ外相は結論づけた。


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関連記事:NATOの代理戦争で危機に瀕する欧州国家の中立性 (モルドバの元大統領)


 ラブロフによると、西側諸国とモルドバの指導者は、5+2方式によるトランスニストリア*離脱地域に関する正常化プロセスを事実上停止させたという。これは、米国とロシア、国連、欧州安全保障協力機構、モルドバとトランスニストリアが関与するものである。モルドバ新政権はこのプロセスにもはや関心がなく、武力による奪還とロシアの平和維持軍をトランスニストリアから追い出すことを検討していると主張した。
*沿ドニエストル、公式には沿ドニエストル・モルドバ共和国は、東ヨーロッパにある事実上の独立国家。モルドバ東部を流れるドニエストル川と、モルドバとウクライナの陸上国境とに挟まれた南北に細長い地域に位置する。首都はティラスポリ。ロシア連邦の支援を受けているものの、国際的にはほとんど承認されておらず、モルドバの一地域として広く認識されている。本記事では原則として、事実上の独立国家については「沿ドニエストル(共和国)」、地理的な範囲については「トランスニストリア」と呼ぶこととする。(ウィキペディ)

 先月末、サンドゥ大統領は、「自衛能力について、自分たちでできるのか、より大きな同盟の一部になるべきなのか、真剣な議論」がキシナウで進行中と語った。

 サンドゥ大統領は同盟の相手として直接NATOを特定することはしなかったが、2020年に就任して以来、彼女は一貫して親西側の政策を追求してきた。

 モルドバは昨年、EUの加盟候補国として承認された。また、近年はNATOとの協力も積極的に行っており、NATOのコソボ駐留軍に軍隊を派遣している。

 モルドバ大統領は2021年9月にニューヨークでNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長と会談し、同国の外相は昨年12月にルーマニアで開催されたNATOの会合に出席している。

 しかし、トランスニストリアの未解決の問題は、モルドバが米国主導の機構の加盟国になることを妨げている。NATOが加入を希望するどの国にも、加入に先立ってその国の領土および民族紛争を全て解決することを要求しているからである。

プーチン、スターリングラード戦勝式典で西側に警告

<記事原文 寺島先生推薦>

Putin issues warning to West at Stalingrad event
The Russian president has condemned Western tank deliveries to Ukraine, promising a response that goes beyond armored vehicles.

ロシア大統領、西側のウクライナへのタンク納入を非難し、それへの対応は装甲車両にとどまらないだろう、と述べる。

出典:RT

2023年2月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月17日


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ロシア大統領ウラジミール・プーチン© RT


 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナへの欧米製戦車の納入が迫っていることに反発し、この脅威に対するモスクワの対応は、装甲部隊の使用にとどまらないだろうと警告した。プーチン大統領は、スターリングラードの戦いの勝利から80周年を記念する式典で、このようなコメントを発表した。

 「信じられないが、事実だ。我々は再び、車輛に鉤十字をつけたドイツのレオパルト戦車に脅かされている。そして、ヒトラーの信奉者であるバンデラ派の助けを借りて、再びウクライナでロシアと戦おうとしているのだ」とプーチンは言った。

 「戦場でロシアを打ち負かそうとする輩は、ロシアとの近代戦争が彼らにとって全く異なるものになることを理解していないようだ。我々は、彼らの国境に戦車を送り込むわけではない。しかし、われわれには対応するものがあり、それは装甲車の使用のみに限定されないだろう、誰もがそれを認識しなければならない」とも述べた。

 先週、ベルリンはキエフに近代的な装甲車を供給する姿勢を変え、レオパルト2戦車14両の納入を約束し、欧州各国が自国の在庫からドイツ製車両を再輸出できるようにした。ウクライナに提供される予定のレオパルトは約112両にのぼる。また、米国はエイブラムス戦車31両の供与を約束したが、供与は早くても2023年後半になる見込みである。

 モスクワは、西側諸国に対して、ウクライナに近代的な兵器を「供給」するのをやめるよう繰り返し要求しており、現在行われている軍事支援は、紛争の最終的な結果を変えるどころか、敵対関係を長引かせ、一般のウクライナ人にさらなる苦しみを与えるだけだと警告している。

「ノルド・ストリーム」破壊工作の影に米国あり (伝説のNYT紙記者シーモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦記事>

US behind Nord Stream sabotage – legendary NYT journalist
Washington “took out” the Russian gas pipelines, Seymour Hersh has claimed

ワシントンがロシアのガスパイプラインを「破壊した」と、シーモア・ハーシュは主張している。

出典:RT

2023年2月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月13日

海面

2022年9月28日、バルト海のアットシーで発生したガスパイプライン「ノルドストリーム2」の漏泄によるガスの噴出。© Swedish Coast Guard via Getty Images


 ノルドストリームのパイプラインは昨年9月、米国による秘密作戦で破壊されたと、ピューリッツァー賞受賞の調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが主張している。この伝説的な記者は、水曜日(2月8日)にパーソナル・メディア「サブスタック」に新しく開設したブログに投稿した記事で、この爆弾発言をした。

 ハーシュ氏は、2022年6月、NATOの演習BALTOPS 22(バルト海作戦2022)を口実として、米海軍のダイバーがパイプラインに爆発物を設置したと、作戦計画を直接知る関係者を引用して報告した。

 同記者は、ホワイトハウスとCIAにコメントを求めたが、米国がパイプラインを「破壊した」という主張は「全くの虚偽だ」と断固拒否されたと述べている。

 報告書によれば、爆弾は3カ月後の9月26日、ソナーブイ*から送られた遠隔信号で爆発させられた。このブイはノルウェー海軍のP8偵察機によってノルドストリーム・パイプラインの近くに投下されたという。
*水中音響信号を受信して電波で送信する航空機投下式のブイ

 この作戦は、ホワイトハウス、CIA、軍部の間で数カ月に及ぶやりとりを経て実現したもので、当局者はいかにして米国の攻撃への関与の痕跡を残さないかに注力していた。この計画は2021年12月に始まり、ジェイク・サリバン米国国家安全保障顧問の直接参加により特別任務部隊が創設された。

 「海軍は、新たに就役した潜水艦を使ってパイプラインを直接に襲撃することを提案した。空軍は、遠隔操作で起動できる遅延信管付きの爆弾の投下を検討した。CIAは、何をするにしても、秘密裏に行わなければならないと主張した。関係者はみな、それが危険性をともなう賭けであることを理解していた」と報告書には書かれている。


関連記事
関連記事:ロシアがノルドストリーム破壊工作に関係している証拠はない。(ドイツの検察官)


 この情報源はハーシュに、関係者の誰もが、この作戦が「子供だまし」ではなく、実際に「戦争行為」であることを理解していたと語った。この「すべての計画」の間、ある当局者はホワイトハウスにこの考えを完全にやめるように促した。CIAや国務省のある職員たちは、「こんなことはするな。バカバカしいし、表に出れば政治的な悪夢になる、と言っていた」という。

 当初、爆発物は48時間のタイマー付きで、BALTOPS22の終了までに仕掛ける予定であったと、ハーシュは同じ情報筋を引用して報じた。しかし、ホワイトハウスは、この2日間では訓練終了に近すぎると判断し、特別部隊にオンデマンド(要求があり次第の方式)で爆発させる方法を考え出すよう命じたという。これが最終的にソナーブイを利用するという形になった。

 バイデン政権は、ノルドストリーム・パイプラインを危険にさらすことにその力を「集中」させてきた。最初は制裁措置で、最終的には直接破壊工作で、当時迫りつつあったウクライナ紛争の中で、ヨーロッパを米国の狙いの方向に動かす鍵になると考えていた、とハーシュは指摘する。

 「ワシントンが恐れていたのは、ヨーロッパが安価な天然ガスのパイプラインに依存している限り、ドイツのような国がウクライナにロシアを打ち負かすために必要な資金や武器を供給することを躊躇することだった」とハーシュは書いている。

 モスクワは、爆発事件の直後、同様の見解を示して「テロ攻撃」と断定し、ヨーロッパがロシアのガスから離脱する試みを加速させることによって、最も恩恵を受けたのはアメリカであると述べた。

 ハーシュはその職歴を通じて、米軍による戦争犯罪や注目される政治スキャンダルなど、数々の爆弾記事を報道してきた。ベトナムで起きた米軍によるミライ(ソンミ村)虐殺事件を暴き、1970年にピューリッツァー賞を受賞した。その他、ウォーターゲート事件、CIAの違法な国内スパイ行為、イラクのアブグレイブ刑務所での米軍による拷問や被拘束者への虐待などについても報道している。

(原文にはニュースビデオの動画があります。)

ウクライナで起きていることを無視するわけにはいかなかった。(プーチン)

<記事原文 寺島先生推薦>

We couldn’t ignore what was happening in Ukraine – Putin
The Russian president explained what led to the ongoing military conflict.

ロシア大統領は、現在進行中の軍事衝突に至った原因を説明した。

出典:RT

2023年1月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月13日


プーチン

ロシアのプーチン大統領は、ロシアのサンクトペテルブルクにあるレニングラード防衛・包囲の国立記念博物館で、第二次世界大戦の退役軍人、包囲されたレニングラードの住民、そして愛国的市民団体の代表と会談した。© Sputnik / Ilya Pitalev



 ウラジーミル・プーチン大統領は水曜日(1月18日)、ウクライナで行われているモスクワの軍事作戦の理由の説明として、キエフがロシアの文化、言語、そして伝統と切り離せない人々を排除し始めたとき、ロシアは黙って見ているわけにはいかなかった、と述べた。

 プーチン大統領は、レニングラード封鎖解除80周年記念行事で、ドネツク、ルガンスク両地域はロシアの「歴史的領土」であり、8年にわたるドンバスでの戦争を終わらせ、ドンバスの人々を守るために、最終的に軍事作戦を開始する決断をしたと述べた。

 「我々は長期間耐え、長い時間をかけて合意達成を目指しました。しかし、現状はどうなっていますか、我々はいいようにあしらわれ、だまされたのです」と大統領はさらに言葉を続けた。これは、明らかにドイツのアンゲラ・メルケル元首相とウクライナのピョートル・ポロシェンコ元大統領の発言をさしている。この二人は、ドンバスに平和をもたらすために作られた2014年と2015年のミンスク協定は、キエフが軍備増強のための時間稼ぎであった、と認めている。

関連記事
関連記事:ロシア、ウクライナ紛争終結の時期を示唆

 「こんなことは今回が初めてではありません」とプーチンは認め、ロシアは平和的手段で事態を解決しようと最善を尽くしてきた、と述べた。「しかし、はっきり言って、それが不可能であったことは、今や、火を見るよりも明らかです。敵は、今回の紛争を重大な熱い戦争に転移させる準備をしていたのです。我々としては今やっていること以外の選択肢はありませんでした」とプーチンは説明した。

 これに先立ち、ロシアのラブロフ外相は、モスクワに直接の脅威となる軍事インフラが残っていない場合、ロシアはウクライナにおける目的を果たしたとみなすと述べた。また、紛争を終結させるためには、キエフがロシア語話者に対する嫌がらせや差別を止める必要があるとも述べた。

エフゲニー・プリゴージン:アメリカは私のワグネル組織を恐れている。私たちが彼らをこてんぱんに痛めつけることを知っているからだ。

<記事原文 寺島先生推薦>

Yevgeny Prigozhin: The Americans fear my Wagner organization, because they know we can kick their asses
The founder of the Russian PMC replies to a US decision to include his company in a list of transnational criminal organizations

ロシアの民間軍事会社の創設者が、国際犯罪組織のリストに自分の会社を含めるという米国の決定に対して返答している。

筆者:エフゲニー・プリゴージン(Yevgeny Prigozhin)
    ワグネルPMC(軍事会社)の創設者

出典:RT

2023年1月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月11日


画像

実業家エフゲニー・プリゴージン。© AP Photo/Alexander Zemlianichenko


 米国政府がワグネルPMCを国際犯罪組織のリストに正式に加えたのは、同組織がソレダルの戦場で成功を収めたわずか数日後のことだった。これは、米国が数年前からワグネル社に対して様々な非難を浴びせてきた内容とは相容れない。RTは、民間軍事会社の創設者であるエフゲニー・プリゴージンに、米国のこうした最新の動きについてどう考えるか尋ねた。以下が彼の答えである。

 この世界では、善は常に悪と戦っています。ワグネルPMCは力です。それはロシアの軍事力の一部です。そして、この力は常に善の側にある。

 もちろん、哲学的に考えれば、ワグネルPMCは善であるという人もいれば、悪であるという人もいるわけです。しかし、敵にとっては悪なのです。アメリカとロシアは不倶戴天の敵であり、これはあなたの見解がどうであれ、確立された事実です。

 アメリカは、ロシアを細かく分割したのち、中国やその他のライバルと争おうとしています。自国が地球上で最も大きく強力な国であり続けるためにです。これはすべて、多極化する世界か一極化する世界かをめぐる議論の一部である。そして、これまでのところ、米国は非常にうまくやっています。旧ソ連を例にとってみればおわかりでしょう。

 ワグネルPMCは何も犯罪を犯していません。ところが、世界の様々な場所で様々な犯罪を我々になすりつけようと日々を過ごしている人たちがいます。しかし、アメリカの準軍事組織とは異なり、ワグネルPMCは平和の敵だけを排除し、犯罪は犯していません。もちろん、二重基準を採用すれば、誰にでも汚点を掘り起こすことができますが。


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関連記事:「町中が死体だらけ」:ロシアの執拗な攻撃で、ウクライナはどのようにしてソレダルで屈辱的な敗北を喫したか。


 しかし、それならこんな質問をしてみるのもいいでしょう。自分たちには正当な理由がないのに広島と長崎に原爆を投下したのは誰なのか? 韓国、ベトナム、アフガニスタン、リビア、シリア、モザンビーク、中央アフリカなどでの戦争や革命を手配したのは誰なのだろうか? これらの国のいくつかは、後にワグネルPMCを頼り、鉄拳でこれらの戦争に終止符を打っています。つまり、ワグネルPMCを犯罪組織と言うならば、アメリカは全世界の金で生きている強力な犯罪組織結合(シンジケート)なのです。したがって、この犯罪組織に比べれば、ワグネルPMCは警察の代理組織のようなものです。

 私は、アメリカ人にとって非常に腹立たしい秘密をたくさん知っています。CIA職員がオサマ・ビン・ラディンを訓練し、シリアや他の国のISISに金や武器の入ったバッグを持ち込んだことを覚えている目撃者がいます。彼らは、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、南米など、どこでも紛争が起こるように、世界中で無法者やテロリストを準備していたのです。そしてアメリカという夢のような青い島だけは平和が保たれる算段でした。

 ほとんどの世界の大国は、アメリカと衝突しないように努めています。反撃に出た政権は、たいてい反民主主義、次に犯罪者、そしてテロリストと断定されます。PMCワグネルは国でも政権でもなく、むしろ若く奔放な力であり、それゆえにアメリカから恐れられているのです。彼らは2018年のデイル・エズゾール(シリア東部の最大都市)でこの力を破壊しようとしました。しかし、PMCワグネルはその精神を取り戻し、世界悪の体現者の目を恐れることなく見ることができるようになったのです。

 非常に重要なことは、わたしたちがアメリカ人に対して攻撃的に振る舞ったことは一度もないが、それにもかかわらず、彼らからの無礼を受け入れたことはない、ということです。わたしたちは、ワグネルPMCに危害を加えたり、暗殺を企てようとした武装集団やアメリカの諜報部員を捕まえたことが何度もあります。そのたびに、私たちは彼らを罰した後は 、穏やかに帰国させ(映像はたくさんある)、帰す前には昼食と夕食までふるまっています。

 だからアメリカ人は当惑するのです。我々は彼らに手を出さないが、彼らに振り回されることもないのです。だから、アメリカ人は怒っているのです。彼らのものはいらないが、我々のものは譲らない。いやはや、こんなことを言うと、彼らは本当に神経を逆なでされるでしょうね。まあこれで、質問にはすべて答えたと思います。

写真で見るマリウポリ:ロシアの支配下に置かれ、8ヶ月が経過した戦禍の街はどう変わったか。

<記事原文 寺島先生推薦>

MARIUPOL IN PHOTOS: How the battle-scarred city has changed after eight months under Russian control
These images were taken half a year apart, in summer and in winter, and show efforts to restore the Azov sea pearl

これらの画像は、夏と、それから、半年空けて冬に撮影したもので、アゾフの海の真珠を復元するための努力の様子が映し出されている。

筆者:アルセーニ・コトフ(Arseniy Kotov)
独立系の写真報道家

出典:RT

2023年1月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月6日


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マリウポリのアゾフスタル製鉄所の工場風景 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 ドネツク人民共和国第2の都市マリウポリが、ネオナチのアゾフ連隊を含むウクライナ軍から解放されてから、8カ月以上が経過した。この街はロシアの軍事作戦の象徴のひとつであり、ここでの勝利がこれまでの主な勝利であったことは間違いないだろう。

 戦闘終了後、地元の人々は、今やロシアの街で平和な生活を取り戻そうとしている。写真報道家のアルセーニ・コトフは、2022年の夏と冬の2回、この地を訪れた。彼の写真には、この街の直近の歴史と現在進行中の復興が映し出されている。その復興はモスクワの最優先課題のひとつである、

 関連記事:ウクライナ語がわからないから撃たれそうになった」マリウポリ住民、戦争の恐怖と街の復興を語る。




 私が初めてマリウポリを訪れたのは夏だった。ヒッチハイクで行った。ウクライナを代表する詩人、シェフチェンコにちなんで名付けられた街の中心街、シェフチェンコ大通りで運転手に降ろしてもらった。丘の上にあるその建物は、周囲を見下ろすようにそびえ立っていた。もっとよく見ようと、2階に上がり、ドアがなく、壁も傷んでいるアパートのバルコニーに出た。そこからは、戦闘のために世界中に知られるようになったアゾフスタル製鉄所の工場がよく見えた。


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シェフチェンコ大通りにある16階建てのビルから見たアゾフスタル工場 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 街の西側まで歩いていくと、倒壊した9階建てのアパートの周りを歩き回っている30代の男女に会った。彼らは流行の先端を行く格好をしていたが、廃墟でゴミを集めていた。彼らは自分たちの写真を撮らないよう私に頼んだ。

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クプリナ通りのアパート跡 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 街には、ロシア軍到着後に書き込まれた落書きがたくさんあった。キエフ当局に対する地元の人々の態度などを示すものもあれば、生存に直接関わるようなものも書かれていた。特に多かったのは「ここには人が住んでいます」である。掃討の際に軍が投げる手榴弾から住民の命を守るためのものだった。

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写真の説明:(左)地元の車庫に刻まれた碑文「ウクライナよ、恥を知れ」。(中)家の門に刻まれた碑文「人と子供がここに住んでいる」、(右)メタウルゴフ通りの家屋に刻まれた碑文「戦争は終わった」「アリーナとレラはセクシー」© RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 6月頃には、ほとんどの通りからゴミがなくなっていた。しかし、焼け落ちた車がまだ庭に積まれ、かつての戦いの痕跡が街のあちこちに残っていた。

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ミラ通り123番地にあるアパートの庭にある燃えた車 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 これらの廃墟から少し歩いたところに、街の中央広場がある。かつてはレーニン広場と呼ばれ、中央にはソ連建国者の記念碑があった。2014年のウクライナでのクーデター後、記念碑は撤去され、自由広場と呼ばれるようになった。2022年6月、元の名称に戻されたが、記念碑はまだ取り替えられていなかった。

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レーニン広場(旧自由の広場)の鳩の彫刻 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 レーニン広場の近くには地元の演劇用劇場がある。市内で激化する戦闘の最中、ネオナチのアゾフ連隊は地元住民をこの劇場に「避難」させることを約束した。この建物は防空壕としても使用されていた。3月16日、中に多くの人がいるのに、ウクライナの民族主義者によって爆破されたと言われている。正確な犠牲者数は現在も不明だ。


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破壊された演劇用劇場 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 郊外では、アゾフ海最大の港町の日常生活を見ることができる。昨年4月13日、ロシア軍とドネツク人民共和国の合同軍がマリウポリの港を解放した。施設内と船内にいた人質全員が解放された。港自体には大きな被害はなく、現在は貨物輸送に使われている。

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マリウポリ港 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 この鉄道駅には、過去8年間、廃車になった電気列車が置かれている。マリウポリと地域の中心地ドネツクを結ぶために使われていた。2022年の激しい戦闘で客車は破壊された。

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「マリウポリ」鉄道駅 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 昨年の6月、街はまだ廃墟のようだったが、人々はすでに浜辺に集まり始めていた。左岸のビーチでは地雷の爆発がまだ起きていたが、それでも地元の人たちは海辺で楽しむことを止めなかった。

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マリウポリ市内の浜辺 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 マリウポリ入り口の路面電車No.2は、戦闘で大破した。2022年3月2日、車両の運行を停止した。現在、一部の市内路線の再建が検討されている。

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マリウポリの路面電車車両基地 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 左岸地区の大部分と同様に、ビクトリー通りも戦闘の影響を大きく受けた。夏には、この地区からほとんど生命が失われたように見えた。

ドネツク 1
ヴィクトリー通りの家々 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 アゾフスタルに近づくにつれ、被害は大きくなっている。この家は工場の敷地からほんの数区画のところに建っている。この辺りの建物は損傷しているが、まだ修理が可能である。北側のブロックはすでに取り壊された。

ドネツク 2
ヴォイノフ・オスヴォボディテリ通りのアパート © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 この建物は、砲撃や空爆により全壊し、上部に残った小さなパネルがアーチのような形をしている。11月までに撤去された。

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「アーチ」のある家 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 この写真は夏に撮影されたもので、アゾフスタル工場に近い左岸地区の被害状況を示している。私がここに戻ってきた秋には、廃墟と化した建物のほとんどが取り壊されていた。跡地には新しい住宅地が建設される予定だ。


夕焼け
マリウポリ左岸地区の夕焼け © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 6月、爆発音があちこちで聞こえるようになった。戦闘は収まったが、工場跡地や市内のあちこちで採掘が行われていた。土木作業員が街のいたるところで働いていた。


地雷除去
アゾフスタル製鉄所の工場跡で行われている地雷除去作業 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 アゾフスタル製鉄所は、1933年から稼働している巨大な冶金工場である。その敷地は11平方キロメートル(4平方マイル)に及ぶ。41の工場、80の大型施設、6つの巨大な溶鉱炉がある。工場は包囲戦で大きな被害を受けた。2022年春、アゾフスタルはアゾフ・ネオナチを含むウクライナ軍によって占拠された。戦闘は3月18日から5月17日まで続いた。

 同様の被害は、この地域の至る所で見られる。現在の都市開発計画によると、工場は取り壊され、跡地には公園が建設される予定である。しかし、取り壊し作業はまだ始まっていない。


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アゾフスタル鉄鋼所の工場 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 市内の屋根付き市場は、戦闘中に大きな被害を受けた。ドームは数発の砲弾にやられ、作業場は榴散弾にまみれた。夏にこの建造物を通過する際には、野良犬の大群を追い払わなければならない。かつては商人たちが餌を与えていたが、今は痩せて飢えた様子だ。


ドーム
マリウポリの市場のドーム © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 夏になっても、街の大部分には水もガスも電気もなかった。滞在を決めた地元住民は、ロシア軍やボランティア、人道支援団体から支援を受けた。


朝食
砲弾が直撃した建物のバルコニーで朝食を作る地元住民 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT




 2022年12月、マリウポリは巨大な建設現場のようだった。ロシア全土、さらには他の旧ソビエト共和国からも建設労働者が集まり、街を再建している。


アパート建設
シェフチェンコ大通りのアパートでの建設作業 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 シェフチェンコ大通りの大部分は被害をうけなかった。その結果、今では街の中で最も賑やかな場所となっている。ここの市場は活況を呈している。スーパーマーケットや主要な店舗がすべて略奪され、破壊されたため、地元の人々は、技術製品から近隣の村の果物や野菜まで、あらゆる種類の商品を買うためにここに集まってくる。


市場
シェフチェンコ大通りの市場 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 メタウルゴフ通りの奥にある多くの建物は大きな被害を免れた。被害を受けたいくつかの建物は、ロシアからの建設労働者によって修復されている。


メタウルゴ
メタウルゴフ通りで修理されている建物 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 専門家はマリウポリのすべての建物を評価し、再建可能かどうかを判断している。可能であれば、損傷は修復される。残りの建造物*は取り壊されている。
* 原文はstrictures となっているが、structures の誤植だと思われる。


アーキップ 工事
アーキップ・クインジ通りの住宅用建物の建設現場での工事 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 レンガ造りの建物は、コンクリートブロックでできたいわゆるパネルビルに比べて、修理が簡単だ。パネルが破損した場合、それを取り外してレンガか新しいパネルに交換しなければならない。しかし、レンガ造りの建物の場合は、砲撃による穴はレンガですぐに補修することができるからだ。


ミラ通り
ミラ通りにある建物の再建 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 完全に無傷の建物でも、基幹的設備の修理が必要である。屋根、配管、空冷式熱交換器、窓は、そのほとんどを交換することになる。費用はロシア政府によって負担される。


新しい屋根
市内17番目の小地区に設置された新しい屋根 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 中央区では、教会や礼拝堂など、行政や住居の建物のほぼすべてが戦闘で被害を受けた。


チャペル
マリウポリのプリアゾフスク国立工科大学の礼拝堂©RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 解体作業のほとんどは、掘削機や遠隔操作機などの建設機械で行われる。パネルの建物はすぐに取り壊される。9階建ての建物を取り壊すのに約1週間かかる。


クレーン
アーキップ・クインジ通りの廃墟となった複数階建てのアパートの解体 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 ボイラー室(手前にパイプが見える)は、暖房の季節に間に合うように、秋に着手された。12月上旬には、近隣の建物の屋根の取り替えも行われた。


アパート 煙
バフチバンジ通りの5階建ての住宅 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 マリウポリのこれらの家屋は、最初に再建された家屋の一つである。12月までに内装の大部分を終え、窓を交換し、外装の改修もほぼ完了した。


アパート 明かり
模範的な24番目の小地区 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


 「マリウポリはロシア、それでいい」という名前の移動カフェチェーンが昨年秋、街の通りに出現した。(ロシアのファストフードチェーン「美味しい、それでいい」の名前をもじっている。)私はまだ試していないが、このカフェは地元の人々や労働者に人気があるという。

美味しい
移動カフェ「マリウポリはロシア、それでいい」©RT / Arseniy Kotov, special report for RT


写真および文章は、独立系の写真報道家アルセーニ・コトフ(Arseniy Kotov)によるもの。

ウィキリークスの公表した公電(複数):「NATOの意図は、ロシアが設定したレッドラインをすべて越えることだった。」

<記事原文 寺島先生推薦>

WikiLeaks Cables Reveal NATO Intended to Cross All Russian Red Lines

筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)

INTERNATIONALIST 360

2023年1月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月31日

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「ウクライナはロシア包囲網を完成させる最後の砦」

 この1年近く、西側メディアの巨大なプロパガンダ・マシンは、「ロシアのウクライナにおけるいわれのない侵略」というシナリオを信じるように視聴者を操作してきた。その「報道」を大まかにまとめると、次のようになる。「2月24日、血に飢えたクレムリンの独裁者プーチンは朝から機嫌が悪く、これから夜明けを迎えようとしているキエフの自由と民主主義を攻撃することにした」。これは事実上すべての西側主流メディアが語らなければならないことであり、これに疑問を投げかけようと少しでも考えれば、即座に「取り消し」となる。「専門家」を装った宣伝マンたちは、数十年にわたる容赦ないNATOの拡張をロシアの反応とは無関係なものとして提示する任務を負って、政治トークショーに殺到した。表記

 ウィキリークスは、創設者ジュリアン・アサンジへのひどい仕打ちを含め、アメリカが10年以上にわたって閉鎖しようとしてきた組織だが、西側マスメディアが言っていることが現実からかけ離れているわけではないことを示す秘密公電(複数)を公開した。データによると、アメリカの高官はNATOの拡大がモスクワに与えた不満に気付いていただけでなく、それがロシアの反応につながるとさえ直接言っていた。アメリカはしばしば、現在の危機はプーチンの「ロシア帝国再建」の欲望の結果だと主張するが、ウィキリークスは、ワシントンDCに自滅的に従ったことで悪名高い彼の前任者ボリス・エリツィンでさえ、NATO拡大に警告したことを明らかにしている。

 約30年間、米国の歴代政権は、ウクライナのNATO加盟がモスクワにとって最後の藁となることを明確に警告してきた。数多くのロシア政府高官が、この深く分裂した旧ソ連の国を不安定にすると警告し続けた。こうした警告は公私ともに行われ、他のNATO加盟国や地政学の専門家、ロシアの野党指導者、さらにはモスクワの米国大使を含む一部の米国外交官からも繰り返し聞かれた。エリツィンはかつて、ビル・クリントン元大統領に、NATOの拡大は「もしそんなことをすれば、ロシアにとって屈辱以外の何物でもないのですよ」と語ったことがある。ユーゴスラビアへの侵略で悪名高いクリントンはこの警告を無視し、「東には一歩も行かない」約束してから10年も経たない1999年には、東欧の大半がNATOに加盟していたのである。

 このような侵攻にもかかわらず、プーチンは西側諸国との政治的関係を緊密にしようとし、START IIを批准し、NATOへの加盟を申し出さえしている。これに対してアメリカは、主要な軍縮条約からの一方的な離脱と、モスクワの地政学的裏庭となる国でのカラー革命で対抗した。2000年代半ばには、ロシアはその南と西の国境に、アメリカが支援する二つの敵対的な政権(ジョージアとウクライナ)に挟まれるようになった。NATOの主要加盟国であるドイツやフランスは、こんなことをすればモスクワの反応が必ずある、と警告していた。2005年9月のWikiLeaksが公開した公電にはこうある

 「フランス大統領顧問のモーリス]・グルドーモンターニュは、ウクライナのNATO加盟問題はモスクワにとって極めて敏感な問題であると警告し、ヨーロッパで戦争の原因となりうるものが残されているとすれば、それはウクライナであると結論づけた。ロシア政権の中には、我々が彼らの中核的な関心領域でやりすぎていると感じているものもいる。そのため、ロシアが1968年にプラハで見せたような動きを開始し、西側が何をするか見るかもしれないと考える向きもあった 」とある。

 WikiLeaksはさらに、ドイツ政府高官がNATOのジョージアとウクライナへの進出に対するロシアの反応、特に後者について同様の懸念を繰り返していたことを明らかにしており、外交官ロルフ・ナイケル(Rolf Nikel)は次のように述べている

 ジョージアは「熊の皮の上の虫」に過ぎないが、ウクライナは988年のキエフ大公国のウラジーミルに1世にまで遡る、ロシアとは切っても切れない関係にある。2008年1月付けの別の公電では、「イタリアはNATO拡大の強力な擁護者」だが、「ジョージアの統合を急ぐことでロシアを刺激することを懸念している」と書かれている。ノルウェーのヨナス・ガール・ストーレ首相も同様の発言をしたと、2008年4月の公電に書かれている。ロシアはNATOに発言権を持つべきではないと考えているにもかかわらず、「NATO拡大に対するロシアの反対を理解し、同盟はロシアとの関係を正常化するために努力する必要がある」と発言した。

 米国では、政府高官の中にもほぼ同じ評価を下す者がいた。ウィキリークスは、こうした警告をワシントンDCに提示したのは、他ならぬ元駐ロシア米国大使と現CIA長官であったウィリアム・バーンズだったことを明らかにしている。2007年3月の公電によると、バーンズはこう述べている:

 「NATOの拡大とアメリカのミサイル防衛は、ロシアが包囲されることへの古典的な恐怖を煽るものだ」。その数ヶ月後、彼はこう述べた。「ウクライナとジョージアの(NATO)加盟はロシアにとって「考えられない」苦境を意味し、モスクワはジョージアで十分な問題を引き起こし、ウクライナでNATO加盟を阻止するための政治的混乱を継続させるだろう 」。興味深いことに、バーンズはまた、ロシアと中国が以前より緊密な関係になったのは、大部分が「米国の『悪い』政策の副産物」であり、そういう中露関係は「継続するNATOの拡大が、中露をさらに接近させなければ」ずっと維持できなかったと述べている。

 2008年2月のバーンズの言葉

 「専門家によれば、ロシアはNATO加盟をめぐるウクライナの強い分裂を特に懸念しており、ロシア系住民の多くが加盟に反対している。そうなれば、ロシアは介入するかどうかを決めなければならない。その決断は、ロシアが向き合いたがっていない決断である」。

 2008年3月の別の公電では、「NATOのウクライナとジョージアの拡大に反対することは、ロシアの政策立案者、専門家、情報通の人々の間でほぼ完全に合意が得られている数少ない安全保障分野の1つである」と記されていた。ある国防専門家は、「ウクライナはロシアの包囲網を完成させる最後の砦」であり、「ウクライナのNATO加盟を、ロシアの政治エリートたちはすべて非友好的行為と捉えられていた」と述べている。他の数十の公電でも、NATOの侵攻が続けばロシアの外交政策が激変すると、ほぼ同じ評価をしている。

 しかし、大多数の米政府関係者は、政権に関係なく、すべての警告をただ否定し、「よく耳にする、古くさい、新しいものはない、大体予想がつく、おなじみの羅列、焼き直しで新しい内容はほとんどない」と繰り返し述べていた。驚くべきことに、前述した、モスクワの異議に対するノルウェーの理解に対してさえ、「ロシアの言い分を鸚鵡返ししたもの」とのレッテル貼りをした。多くのドイツ政府関係者の警告が、①ウクライナ国内の東西分裂は(ウクライナを)NATOに加盟させようと考えただけでも「危険」なことになるし、②「ウクライナを分裂させる」可能性がある、だった。一方アメリカ政府関係者は、これは一時的なもので、時間とともに変化していくと主張した。

 そして実際、政治的な西側諸国は、ウクライナを熱烈なロシア嫌いの国にするために数千億ドルを投資し、事実上、モスクワに照準を合わせた巨大な軍事的踏み台にしたのである。NATOは定期的に演習を行い、軍を広範囲に配置した。ロシアが反攻を開始した当時、同国に少なくとも複数の陸軍・海軍基地を建設中で、それを恒久化する計画さえあった。2019年、米国防総省が出資する有名なシンクタンク、ランド・コーポレーションは、ロシアに過度の負担をかける戦略の考案に焦点を当てた報告書を発表した。その一部を紹介する:

 「ロシアへの直接的な軍事攻撃に対するクレムリンの不安は非常に現実的で、その指導者を軽率で自滅的な決断に駆り立てる可能性がある・・・・ウクライナにさらに米国の軍事装備と助言を提供すれば、モスクワは新たな攻撃を仕掛け、さらにウクライナの領土を奪うことによって反応することになりかねない」。

 ウクライナ危機は包括的な対ロシア侵略の一区分であるというモスクワの主張を退けるのは、政治的な西側諸国から資金提供を受けている機関そのものが、現在の出来事は何年も、あるいは何十年も前に計画されていたと公然と認めている以上、かなり困難であると言えるだろう。そして、万が一、あり得ないことが起こり、ユーラシアの巨人(ロシア)が降伏し、西側の圧力に屈することになったら、アメリカ主導の世界に対する侵略はどこで止まるのだろうか。さらに悪い事態は、どれほどの時間をかければ、大惨事が発生してアメリカ主導の世界侵略を止めることになるのだろうか、ということだ。

ウクライナ側の防衛線:これらの防衛線が破られればどうなるだろうか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukranian Defense Lines: What Happens When They Are Breached

筆者:アラバマの月(Moon of Albama)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年1月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月28日



 ソレダルはロシア軍の手に落ちた。バフムト (アルチョモフスク) もすぐにそうなるだろう。

 本記事は、ドネツク州とリシチャンシク州という2州の中に引かれているウクライナ側の2つめの防衛線が破られたことを伝える記事だ。以下の地図を使って説明しよう。

 一つ目の地図が示しているのは、2022年4月1日までにロシア軍が占領した地域だ。(キエフ地方のものは入っていない)。

 ロシアは、ドネツク・ルガンスク両人民共和国からの5万人の兵の支援を受け、10万人程度という小規模の軍により侵攻した。対するウクライナ側の正規軍は25万規模であり、その数はすぐに45万人に達し、さらには65万人となった。これらの兵は、予備軍とウクライナ領土防衛隊から動員された。最初の数週間、ロシア軍は巨大な土地を占領したが、そこを維持するための兵士の数は十分とは言えなかった。

 その時点で、ロシアはまだトルコで開かれたウクライナとの交渉が、いい方向に向かうことに希望を託していた。その希望がかなうことを確信していたロシア軍は、すでにキエフ周辺から兵を引き始めていた。しかし、英国のボリス・ジョンソン首相から電話が入り、その後訪問を受けたウクライナ政府は、交渉を中止し、ロシアが決して同意しないような要求を突然突きつけてきた。キエフから撤退したロシア軍はそのまま撤退し、ウクライナ東部に移動。そこでウクライナ軍側の最初の防衛線(黄色)への攻撃を開始した。

2022年4月1日


 この最初の防衛線は、のちに作られた防衛線と同様に、主要都市を結ぶ鉄路や通信経路に沿って伸びていた。上の地図で、最初の防衛線を形成している諸都市は北から南に、セヴェロドネツィク市、リシチャンシク市、ポパスナ市、スビトロダルスク市だ。2022年7月1日、最初のウクライナ側の防衛線がロシア軍により破られ、ウクライナ軍は2番目の防衛線まで敗走した。ただ、最初の防衛線では、ロシアの特別軍事作戦は小規模な軍によって行われていたため、ロシア側にも犠牲者が出ていた。

2022年7月1日


 ウクライナ側の2番目の防衛線は、北から南に、シヴェルシク市、ソレダル市、バフムト市、ニューヨーク地区を通り、ドネツク人民共和国内のかつての休戦ラインに至る。

 このウクライナ側の2番目の防衛線においては、ロシア軍は損害を避けるため直接的な攻撃は行わないようにしていた。ロシア側は、北(地図で言うと灰色の部分)からウクライナ側の2番目の防衛線の後ろにあるドネツク地方を攻撃する作戦に出た。イジューム市とリマン市で行われた戦闘の理由は、そこだった。しかし、東西の向きに流れているシベルスキー・ドネツ川と同じ方向に広がっている北側の森林地帯や川そのものを超えるのは困難であることが判明した。重要な部隊にそこを越えさせようとする挑戦は何度か行われたが、失敗に終わっている。
 
 2022年8月の終わりに、疲れ果てたロシア軍は、防衛に重きを置いた体制を取り、「経済的な軍の使用」作戦に転じた。ドネツク州の北にあるハルキウ地方を抑えていた部隊の数は減らされた。残りの軍は、東の前線に移動され、その前線でのロシア側の防衛線の強化に充てられた。

 当時ウクライナ側は、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方への攻撃を公表し、準備も行っていた。そしてその最終目標は、ドニエプル川を渡ってクリミアまで進軍することだった。これに対するロシア側の対応は、ハルキウ地方の北部にいた部隊の数を数千人規模にまで激減させ、残りの部隊を使ってヘルソン地方周辺の南部の陣を強化することだった。

 秋には、ヘルソン地方におけるウクライナ側の攻撃はすべて失敗し、多くの犠牲を払うことになった。しかし、米国の諜報機関は、ウクライナの司令官に、ロシア軍が抑えていたハルキウ地方を守るロシア軍が手薄であると助言したのだ。そのためウクライナの司令官は攻撃方向を北に変え、ハルキウ地方に進軍することに成功した。いっぽうそこに駐在していたロシア軍は、ずっと東に後退することになった。

 ウクライナ側のこの作戦は首尾良く進み、成功したように見えた。しかしこれほど早く進軍できたということは、ウクライナ側の砲兵隊の援護が、ほとんど存在しないほど薄くなってしまったということにもなる。この機会を利用して、退却しつつあったロシア軍は、あらかじめ計画されていた攻撃作戦に則って、自軍の砲兵隊を使って、ウクライナ側の前線部隊を攻撃した。ウクライナ側の攻撃部隊は、西から東に70キロメートルほど素早く進軍した後、多くの損害を出し、戦意を喪失した。ウクライナ側の攻撃部隊はロシア側の新しい防衛線(以下の地図上で、赤で示している)まで到達した。この防衛線には、2本の川が含まれており、突破するのは困難だ。いっぽう、ハルキウ地方の前線では、膠着状態が続いている。

2023年1月1日


 ハルキウ地方におけるウクライナ側の「勝利」により、ロシア政府は追加兵の動員に対して必要だった国民の支持を得ることができた。30万人程度の予備兵が招集された。7万人程度の人が志願兵として軍に参加した。軍事民間会社であるワグナー社は、5万人程度まで規模を増やした。2022年の最後の3ヶ月で、これらの新しく参加したすべての兵たちには、必要な武器や防具が供給され、戦争に向けた短期研修を受講した。

 この間、セルゲイ・スロヴィキン将軍が、ロシアの新しい司令官の座に着いた。同将軍は即座に、自身がいくつかの難しい決断をしなければならなくなることを警告していた。同将軍が言及していたのは、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方の状況についてのことだった。川を渡ろうとするときに、米国が供給したミサイルの攻撃を常時受けていたことで、物資の輸送が非常に困難になっていた。同司令官は川の後ろまでの退却を決した。この作戦は非常にうまくいった。1万人を超える一般市民と、2万5千人程度の武装兵が、その地点から移動したが、損失はほとんどなかった。



 昨年の終わりに、前線が短くなったことと、新しい兵力が導入されたことで、ロシア軍は主導権を取り返した。ロシア軍は、ウクライナ側の2番目の防衛線に対して激しい攻撃を加え始めた。

 ソレダル市を占領することに成功したことで、この防衛戦は破られた。そのため、シヴェルシク市、ソレダル市、バフムト市、それとソレダル市の南部の状況は非常に厳しいものになった。現在、ウクライナ部隊も、物資も、この防衛線上にあった道路や鉄路を通れなくなっている。この防衛戦が破られたことで、ロシア軍はこの防衛線の西側に進軍できるようになり、北や南に進軍し、その防衛線の内部に、別の地域を抑えるための釜状の陣が取れるようになる。「防衛線を包み込む」という表現が、この過程を表すいい表現だろう。

 ウクライナ側の兵の数が大幅に少なくなる中、ウクライナは二番目の防衛線を放棄し、その西に3番目の防衛線を作らなければならなくなるだろう。



 ウクライナ側の3番目の防衛線は、北のスラビャンスクからクラマトルスク、ドルジュキウカ 、コンスタンチニフカを通り、ニューヨーク地区に至る線になるだろう。私の予想では、ウクライナ側の2番目の防衛線の敗北と消滅は3月の終わりになるだろう。

 ウクライナ側の3番目の防衛線が陥落するのは、おそらく今年の中旬になるだろう。その時点で残されたウクライナ軍はその後、3番目の西側にある小さな町々を繋いだ線に沿った4番目の防衛線を保持しようとするだろう。




 この4番目の防衛線が、ドネツク州におけるウクライナ側の最後の防衛線となるだろう。その防衛線は、9月の終わりには落ちているだろう。

 3番目と4番目の防衛線に対するロシア側の動きは、南からの援軍に支援されるだろう。南では、ザポリージャ地方やドネツク地方の未解放の地域がいずれ解放されるだろうからだ。

 これらの作戦とは別に、ロシアの司令官の手元には十分な数の部隊が存在しており、別の大きな攻撃を仕掛けることが可能だ。例えば、北からハルキウ地方に入り、現在は遙か東にあるロシア側の防衛線を攻撃している、ウクライナ軍を背後から襲うことも可能だ。

 ウクライナ駐留中のロシア軍の使命は、ロシアが独立国家であると承認している国々(ドネツク・ルガンスク両人民共和国)を解放することだった。さらに自分たちの居住地がロシア領であることに賛成票を投じた地域(ザポリージャ地方とヘルソン地方)の解放も含まれていた。
 
 ドネツク地方におけるウクライナ側の4つの防衛線がすべて破られれば、その使命は果たされたことになる。ただし、ドニエプル川の北にあるヘルソン地方の一部については別だ。この地域については、この地域だけに通用する別の作戦が必要となる。ロシアの司令官は、ウクライナ側の防衛線を保持しようとしてさらに多くのウクライナ側の部隊が破壊されるまで、この作戦の遂行を待つ気のようだ。

 今回の特別軍事作戦のもう一つの使命は、ウクライナを「非武装化」し、「非ナチ化」することだった。主要な諸都市を結んで引かれた防衛線をなんとしてでも保持しようとするウクライナ側の作戦は、大きな犠牲を生むことになった。ロシア側の砲撃力がウクライナ側よりも優れている理由は、枚挙にいとまがない。ロシア軍はその砲撃力を駆使して、防衛線を保持しようとするウクライナ軍を破壊しようとするだろうが、自軍側の損失はほとんど出ないだろう。

 今日(2023年1月11日)のウォール・ストリート・ジャーナル紙には、ついにこんな記事が出た。「ウクライナの戦い方では勝利はできない」と。

 西側(そしてウクライナ側の何名か)の当局者、兵士、専門家たちが、懸念を深めているのは、ウクライナ政府がバフムト戦においてロシア側に有利にことを進められていることだ。戦略的意義の薄い町にウクライナが頑なにしがみついているうちに、春に行う計画にしていた攻撃に必要な兵が奪われることになるかもしれない状況なのだ。バフムトの西の高台に新しい防衛線を引いて、そこまで退却した方がいいのではないかという声もある。その意図は、そのような撤退をしても、統率の取れた形で軍を組織でき、ウクライナ軍の戦闘能力を保持できるからだ。「私が言っているのではないですよ。“自軍にとって都合の良い場所に陣取っている敵と戦うべきだ”と考えたのはレオニダス1世なんです。」とバフムトで参戦中の一人のウクライナ側の司令官が、テルモピュレの闘いでペルシャ軍と闘ったスパルタの王を引き合いに出して述べている。 「今のところ、ロシア側とウクライナ側の損失を見比べれば、ロシア側が勝っています。このような状況が続けば、我が軍の兵は枯渇してしまうでしょう。

 このウクライナ兵が言っていることは正しい。しかし、戦い方を変えることになれば、動員に遅延が生じ、退却の手間もかかることになり、そこから局地的な反撃を開始することになる。そのためには多くの武器、戦車、歩兵戦闘車両が必要となるが、そのようなものはもはやウクライナ側にはない。さらにそのような戦い方の変更をすれば、そのような戦い方の訓練を受けた部隊や編隊が必要となる。ウクライナが実施した9度目の徴兵措置で召集された60歳くらいの年老いた郵便配達員が、たった2週間の訓練期間でそんな戦い方を会得するのは不可能だろう。

 もし、この戦争が始まる前に撤退した正規ウクライナ軍が、防衛線上の都市から撤退することを許され、機動的な複合兵器戦術を使って遅延-後退-反撃を行っていたなら、ことはうまく進んでいたことだろう。しかし、今ウクライナ軍はロシアの砲撃に破壊される一方になっている。それはウクライナ当局が何としてでも都市や防衛線を保持する戦術に固執しているからだ。米国は今になってやっと、ウクライナ軍に対して、複合兵器使用法と共同演習の訓練を開始する。ただ、今の状況への対処としては、全く不十分で、かつ遅すぎる措置だ。

 現在報じられている記事のことを言えば、今日NBCから以下のような偽ニュースの見出しが出た。

プーチンはたった3ヶ月で、ロシアによるウクライナで戦争の司令官の首を取り替えた!」

 ワレリー・ゲラシモフが、セルゲイ・スロヴィキンの任を引き継いだ。スロヴィキンは今後、ゲラシモフの副官の一人となる、とロシア国防相が1月11日(水)に伝えた。

 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナでの戦争を主導する司令官を、任命後たった3ヶ月で入れ替えた。ワレリー・ゲラシモフ将軍が、セルゲイ・スロヴィキンの後任をつとめることになる、とロシア国防相が、1月11日(水)にテレグラム上で発表した。この動きは、ウクライナ当局が、これまでの戦場での敗北を逆転するような、ロシアに対して新たな大攻撃を計画していると警告したことを受けてのものだった。

 上の記事は誤報だ。官位の呼び方が変わっただけだ。

Russians With Attitude @RWApodcast – 16:09 UTC · Jan 11, 2023 私の理解では、1から2に代わっただけだ。



 スロヴィキンが更迭や降格されたわけではなく、ゲラシモフが昇進したわけでもない。スロヴィキンはウクライナの戦場での指揮を執り続けることになる。今回の人事異動は、司令官が果たすべき責任を変えたわけではなく、特別軍事作戦全体の重要性を高め、この作戦を軍司令官の最優先課題に据えたということだ。

ポーランドの元将軍がウクライナ難民の「動員」を提案

<記事原文 寺島先生推薦>

Polish general proposes ‘mobilizing’ Ukrainian refugees
Even 100 Western-made tanks would not help Kiev defeat Moscow’s forces, the former Land Forces commander believes

西側製の戦車が100台あったとしても、ウクライナ軍がロシア軍を倒すことはできないであろう、とこの元陸軍司令官は考えている。

出典:RT

2023年1月19日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月26日



2022年12月20日、アルチョモフスク市内のウクライナ兵たち© Global Look Press / Cover Images


 西側諸国は、ロシアとの戦争から国外に逃れたウクライナの難民を「動員」し、訓練を施し、前線に送るべきだと、ポーランドの退官将軍であるヴァルデマール・スクルジプチャク氏が木曜日(1月19日)に述べた。ただし、ウクライナが勝利を手に入れるために西側にできることがあるかどうか、ポーランド陸軍の元司令官である同氏が疑念を表明した。

 NATO は、ウクライナ「軍」をポーランド、ドイツ、フランスで結成することを始めるべきであると、スクルジプチャク氏はポーランドの報道機関である「Wポリティチェ社」に語り、西側はウクライナに戦う気があるかどうかを問うことさえもすべきではない、とも付け加えた。「動員し、徴兵し、軍に入れる。それだけだ」と同氏は語った。

 しかし、ポーランド国防省顧問や国防副大臣をつとめた経歴のある同将軍は、ウクライナがこの先迎えるであろう厳しい状況について語った。



関連記事:ワグナー軍事民間会社がドンバスで重大な戦果を挙げたと発表


 「ウクライナ側にはこの戦争に勝てる軍事的な機会はありません」と同氏は述べ、ロシアに勝てる唯一の方法は、政治的や経済的にロシアを「窒息」させるしかないとも語った。スクルジプチャク氏は、近代的な西側製の戦車を供給したとしても、戦場ではほとんど効果がないという考えを示した。

 「100台の戦車があっても状況は変わらない。ロシアはウクライナに対して何倍も有利な状況を構築している。ウクライナ側に100台のレオパルト戦車があったとしても、ロシアには勝てないだろう」と同将軍は述べた。




関連記事:米国はウクライナからの武器の要求をほぼ受け入れずーポリティコ誌の報道


 ポーランドとフィンランドは、ドイツ製レオパルド2の戦車をウクライナに送ることを考えていた。英国もチャレンジャー2戦車10台を送ると約束していた。ドイツは、このような考えにはずっと抵抗しており、ドイツの同意なしに、ドイツ製の軍事装置をウクライナに送ることは不当であると警告していた。

 スクルジプチャク氏の捉え方によると、ドンバス地方に関してはロシアがしっかりと抑えており、この地域を失えば、ウクライナは「農業国」に陥ってしまう、とのことだ。さらに同氏は、ロシアがウクライナ全土を手中に入れる計画をたてているという考え方には疑念を表明し、実行不可能だとした。

 西側による軍事支援はウクライナ側を、「戦えるが勝てない」状況に追いやるのみだ、と同将軍は述べ、「すべてのウクライナ国民を戦場で死なせる」つもりか、と疑問を呈した。

 ロシアは昨年2月にウクライナへの軍事作戦を開始したが、その理由はドンバス地域の人々を守るためであり、さらにウクライナが2014年から15年に定められたミンスク合意を履行しないからだとしていた。いっぽうウクライナは、ロシアによる攻撃は完全に謂われのないものだと主張している。

 ロシアが何度も西側に対して警告してきたのは、ウクライナに武器を送ることは、戦争を長引かせ、ロシアとNATOが直接に戦火を交える危険を増やすことにしかならないという点だ。

ロシアは、ドニエプルのミサイル爆発でウクライナを非難

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia blames Ukraine for deadly Dnepr missile blast
The tragedy would never have happened if Ukraine had not illegally stationed air defenses in a residential area, Moscow's UN envoy said.

ウクライナが住宅地に防空手段を不法に設置しなければ悲劇は起こらなかった、とモスクワの国連特使は述べた。

出典:RT

2023年1月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月25日


ロシア連邦のワシーリー・ネベンジャ国連特使© Spencer Platt / Getty Images / AFP


 ウクライナによる国際人道法を無視した行為により、南東部に位置するドニエプル市のミサイル爆発が恐ろしい結果をもたらすことになった、とロシアのワシーリー・ネベンジャ国連常任特使は火曜日(1月15日)に述べた。

 国連安全保障理事会でのウクライナでの人権問題についての記者会見で発言したネベンジャ特使は、先週住宅で起こったミサイル事件について触れ、少なくとも45名が亡くなり、79名が怪我をしたと述べた。さらに同特使は、西側は「この事件の真の背景、つまりこの事件が、ウクライナ当局によって起こされたものである」ことについては一切口をつぐんでいる、と述べた。

 ネベンジャ特使の説明によると、「エネルギー基盤施設を狙ったロシアのミサイルが、ウクライナの航空防衛設備により撃ち落とされた」とのことだ。さらに、この航空防衛設備が「国際人道法上の規範に反して住宅地に設置されていた」ため、「このミサイルは住宅に落下した」と同特使は付け加えた。

 ウクライナ当局が国際法を遵守していたのであれば、「こんな悲劇は決して起こらなかっただろう」とネベンジャ特使は主張した。さらに、ウクライナ当局が、「ロシアの特別軍事作戦が実行された原因について触れるような、現実的な条件で交渉する用意があったならば、ロシアがウクライナの基盤施設を標的にする必要はなかっただろう」とも述べた。



関連記事:ゼレンスキーの主席顧問が、住宅地へのミサイル落下事件についての発言を理由に辞任


 さらに同特使は、「ドネツク地方の諸都市で、ウクライナ空軍による空爆がほとんどやむことなく続けられ、数え切れない犠牲者を出していることについて、何の非難の声も上げて」いないとして、西側諸国を非難した。

 「このミサイル事件に関しては、キエフ政権は、意図的に軍事施設が存在しない住宅地を標的にしていた」とネベンジャ特使は述べた。

 1月14日、ロシアはミサイル攻撃を行ったが、これは、「ウクライナの軍事指揮統制部や関連するエネルギー施設」を標的にしたものだったと、ロシアの国防相は述べている。同日、一発のミサイルがドニエプル市内の住宅地に着弾した。

 この事件を受けて、ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の顧問を務めていたオレクシイ・アレストビッチ氏は、その発射体が住宅建築に落下したのは、ウクライナの航空防衛設備が撃ち落としたためだと述べた。この発言が多くのウクライナ当局者からの怒りを買い、アレストビッチ前顧問は辞任に追い込まれた。元顧問はさらに、自身の発言が、「重大な間違いだった」と謝罪した。

 ロシア当局は10月上旬、ウクライナ側の生活基盤施設への爆撃を強化したが、その理由は、ウクライナ側が戦略的に重要なクリミア橋爆撃行為などのロシア領内での破壊工作を繰り返し行っているためだとしていた。

 「ロシア軍は、住宅や社会基盤施設を標的にはしていない。攻撃目標は軍事施設に限定されている」と、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は記者団に語った。

ウクライナ、原子力発電所に武器を貯蔵―ロシアの主張

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine storing weapons at nuclear plants – Russia
Kiev is using the facilities as cover for stockpiles of Western-made munitions, Moscow's foreign intelligence chief says

ウクライナ当局は原子力発電所を、欧米製軍需品を備蓄する隠し場所として使用している、とロシアの対外情報庁長官が発言

出典:RT

2023年1月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月25日


ウクライナのロブノ原子力発電所© Wikimedia

 ウクライナ軍は西側が供給したミサイルや大砲の砲弾を原子力発電所内で備蓄している、とロシアのセルゲイ・ナルイシキン対外情報庁長官が月曜日(1月23日)に述べた。同長官によると、ウクライナは原子力発電所を軍需品備蓄の隠し場所として使っているとのことだ。

 「ウクライナ軍は、西側が供給した武器や弾薬を原子力発電所の敷地内で保管しているという信頼できる情報がある」とナルイシキン長官は、同対外情報庁のウェブサイトに投稿した。さらに同長官よると、その武器の中には、対外防空体系で使用される米国製のHIMARS(M142 高機動ロケット砲システム )発射機用のロケットとミサイル、そして「大口径砲」もあるとのことだ。

 ナルイシキン長官によると、12月最終週だけでも、「強力な武器」を積んだ数台の自動車が、鉄路でロブノ原子力発電所に届けられていたという。「ウクライナ側は、原発事故の危険性がわかっているため、ロシア軍は原子力発電所には攻撃してこないという計算に基づいて行動している」と同情報庁長官は語った。

ウクライナの対空ミサイルが「進路を外す」事件が再度起きてしまえば、その備蓄された武器が激しく爆発し、原子力発電所が破壊されることになるが、その悲劇の責任をロシア側に押しつけるということは常に考えられることだ。

 昨年2月のロシア・ウクライナ間の紛争勃発以来、ロシア側もウクライナ側も、原子力発電所の安全について懸念を表明している。国際原子力機関(IAEA)は先週、ロブノ原子力発電所を監視下に置き、ウクライナ国内の他施設の専門家たちを常駐させることを確約している。

関連記事:国連の核監視組織がウクライナでの作業計画を発表

 ロシアは、欧州最大規模の原子力発電所であるザポリージャ原子力発電所を砲撃したとしてウクライナ軍を非難している。同原子力発電所は、同名のザポリージャ地方に位置しており、その地方は以前ウクライナ領であった三地方とともに、9月の住民投票の結果、ロシアへの編入が決まった地方である。

 ウクライナ当局はその原子力発電所を標的にしたことは否定し、ロシアがその原子力発電所を軍事基地として利用し、兵たちを隠していると主張していた。ロシア当局は、重装武器が同原子力発電所に配備されたことはないが、その原発が戦争の前線に位置していることから、少数の武装した警備員が同原子力発電所の安全を維持している、としている。


ドイツ外相、法律の「穴」がロシアを保護していると発言

<記事原文 寺島先生推薦>

German FM says ‘hole’ in law protects Russia

Annalena Baerbock wants rules changed so the West can judge Moscow for Ukraine “aggression”
アンナレナ・バーボック独外相は、西側諸国がモスクワのウクライナ「侵略」を裁けるよう、規則の変更を望んでいる

出典:RT

2023年1月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月25日



アンナレナ・バーボック独外相© Andreas Gora - Pool/Getty Images


 現行の国際法には抜かりがあり、西側がウクライナに「侵攻」したロシアを罰することができないため、「新しい法体制」が必要である、とアンナレナ・バーボック独外相は、月曜日(1月16日)に述べた。これは同外相が、ハーグにある国際刑事裁判所(ICC)での演説の中で述べたもので、オランダを訪問中のことだった。

「私たちは、ウクライナや他の同盟諸国と協力して、ウクライナに対する侵攻を犯罪行為として審議する法廷を設置することについて話し合いました」とバーボック外相が述べた、とドイツ国営放送のドイチェ・ヴェレ(DW)が報じた。

 このような法廷は、ウクライナ国内法に基づいて設置されることになるが、国際的な要素を採り入れることができる。「ウクライナ国外の友好諸国からの資金面での支援や検察官や裁判官の派遣が可能になり、公平性や正当性が保てる」とのことだ。

 バーボック外相によると、既に先週、この考えについてウクライナのドミトリー・クレバ外相とも話し合っており、このような提案は、「私から見ても理想的な形ではない」としながらも、「現行の国際法には穴がある」ため、そのような手続きが必要となっていると述べた。



関連記事: 「有権者の思いがどうあれ」ドイツは、ウクライナを支援する―ドイツ外相の発言


 バーボック独外相は、この演説について、先週のツイートではさらに踏み込んで、国際法には、「説明責任という観点から、侵略という犯罪行為に対する記述が欠けている」と述べた。この投稿において同外相は、ローマ規程(ICC設立時に決められた規程)を書き換え、侵略行為が犯罪と認められるのは、その侵略の被害を受けた国が、ICC の管轄内にあるという条件だけで可能な形にできるよう求めていた。

 ICCが、ウクライナで行われたとされる残虐行為を捜査し、刑を執行することは可能だが、これまでロシア側もウクライナ側も、それらの行為がローマ規程違反に当たるとして、裁判を起こす構えは見せていない。ウクライナは、ICCに対して「特別免除」を付与し、ウクライナ領内で行われた戦争犯罪をICCが裁けるような体制をとっている、とDWは報じている。

 キエフ当局は、ロシアの政権指導部を戦争犯罪の裁判にかけることを前提のひとつとしなければ、和平交渉に応じない姿勢を示している。ロシア側はこのような要求は、「意味がない」と斥け、このような裁判は全く不当なものである、と主張している。

 ICCは、旧ユーゴスラビアで行われた戦争犯罪を裁いた特別裁判 (ICTY)を手本にして設立された。この特別裁判は、NATO諸国の資金援助のもと、捜査や裁判が行われ、判決が下された。2002年、ローマ規程が施行される前に、米国議会は、米国民がICCに協力したり、米国市民がICCの裁判にかけられることを禁止する法案を可決していた。さらにこの米国軍人保護法(ハーグ侵略法という名でも知られている)の規定によれば、「必要かつ適切な全ての手段を駆使して」、拘束されたいかなる米国民(同盟諸国民も含めて)をICCから解放するとされている。

ロシア国内での破壊工作はCIAの仕業。彼らはロシアの特別軍事作戦のずっと前から露国内で「緊張の戦略」を企んできた。

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA’s Deadly “Strategy of Tension” to Destroy Russia
The USG planned subversion operations inside Russia well before Putin’s SMO.

ロシアを破壊するCIAの致命的な「緊張の戦略」
米国政府はプーチンの特別軍事作戦よりずっと前からロシア国内での破壊工作を計画していた。

筆者:カート・ニモ(Kurt Nimmo)

出典:Global Research

2022年12月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月19日


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 月曜日(12月26日)、ウクライナから約400マイル離れたサラトフ地方にあるロシア連邦エンゲルス空軍基地が、ロシアの特別軍事作戦の開始以来2度目の攻撃を受けた。

  「ロシア国防省は、事件は月曜日の未明に起こり、エンゲルス空軍基地で3人の軍人が破片により死亡した。その基地には10ヶ月に及ぶ戦争でウクライナへの攻撃開始に関与してきたTu-95とTu-160核搭載戦略爆撃機を収容されていたと発表した」との報道がAP通信からあった。

 ロシア国内では、エンゲルスのほか、クルスク、ブリャンスク市、ベルゴロド州スタラヤ・ネリドフカ村、リャザン州ディアギレヴォの軍事飛行場などでも多くの攻撃を受けている。



 ガス供給施設への攻撃は、ロシアがヤマル-ヨーロッパ給油管を通じてアゼルバイジャンへの供給を再開すると発表する前に発生した。

 企業に支配されている戦時偽情報拡散メディアは、この攻撃をウクライナによるものとしている。しかし、デイリー・エクスプレス紙によると、元「米軍特殊作戦要員」とされるジャック・マーフィー氏は先週、次のように述べたという。

 NATOとアメリカの情報機関がロシア国内で諜報員を動かしており、「混乱」を作り出すために重要な基板施設を標的にするよう指示しているという。ここ数ヶ月の間にロシア全土で、ショッピングセンター、ガス輸送管、燃料貯蔵所などが被害に遭っているが、これをマーフィー氏はCIAが指示した秘密の「破壊工作」であると指摘している。

 マーフィー氏は自身のウェブサイトで、「この作戦には、同盟国のスパイ組織が、モスクワのウクライナ侵攻を妨害するために、ロシア戦線の背後で秘密戦を展開しており、これには長年にわたってロシア国内で活動してきた潜伏工作員が関与している」と書いている

 元情報機関職員二名と元軍職員によれば、ロシアの現場におけるこれらの任務の遂行には、アメリカ人職員こそ関与していないが、諜報機関の準軍事士官が作戦を指揮・統制しているという。準軍事職員はCIAの特別活動センターに所属するが、実際はCIAの欧州指令遂行センターに配属されていると、2人の元情報当局者は述べている。元米国特殊作戦関係者によると、同盟国の情報機関を利用すれば、CIAが直接に関与していることが否定できるので、この方法は、ジョー・バイデン米大統領が空爆を承認する決定を下す上で不可欠な要素であったという。

 CIAが長い間、まさにこの種の破壊工作に関与してきたことを示す証拠はたくさんある。国家安全保障とCIAが設立される前、その前身である戦略遂行局(OSS)は1944年に破壊工作の手引き書を作成している。

 この手引き書の序文には「妨害工作には、綿密な計画と特別な訓練を受けた工作員を必要とする高度に技術的な政権転覆行為から、普通の市民である妨害者個人が行うことができる無数の単純な行為まである」と書かれている。

関連記事:「ロシアでの相次ぐ爆発の背後にはCIAがいる」。米陸軍特殊作戦を行ったことがある退役軍人は、情報機関とNATOの同盟国が妨害工作を行っていると主張する。

 それ以来、CIAは破壊工作の実行方法を磨いてきた。当時、国家安全保障会議に所属していた元米空軍長官のトーマス・C・リードは、彼の著書『奈落の底で:部内者が語る冷戦期の歴史(At the Abyss: An Insider's History of the Cold War)』の中で、CIAは、その悪名高い実権者、ウィリアム・ケイシーのもと、1982年に低迷するソ連経済を麻痺させることを狙った天然ガス輸送管爆発に責任があったと書いている。

 「ソ連のガス供給と西側からの外貨収入、そしてロシア国内経済を混乱させるために、ポンプ、タービン、バルブを動かすための輸送管制御プログラムを操作して、適切な間隔をおいて、ポンプの回転数とバルブの設定を初期状態に戻し、輸送管の接合部や溶接部が許容できる圧力をはるかに超える圧力を発生させるようにしていた」とリード氏は書いている。

 米国の国家安全保障アーカイブにも、CIAの破壊工作を詳述した文書が大量にある。その紹介文から。

 中央情報局(CIA)の秘密工作は、米国の外交政策における権力の前衛の一要素である。しかし、CIAは、自ら責任を負って酒場を銃撃するような、孤独な奇襲部隊員ではない。米国政府内の上級省庁をつなぐ集団が秘密戦争の最高司令部として機能しているのである。

 マーフィーは次のように指摘する。「米政府機関が行う秘密行動はいずれも、大統領令によって承認されなければならない」。したがって、バイデン大統領がロシア国内の破壊工作に署名したと考えて間違いないだろう。さらに、オバマ大統領はロシアの特別軍事作戦よりもずっと以前に、「ロシアに対する秘密行動のための所見」に署名しており、それは、「オバマ大統領が大統領職を辞める前のこと」であり、その所見には「元CIA職員によれば、破壊工作に関する文言が含まれていた」とのことだった。

 つまり、アメリカ政府は特別軍事作戦のかなり前からロシア国内の破壊工作を計画しており、実のところは、数十年にわたって、ソ連とその崩壊後のロシア連邦を標的とした破壊工作と秘密工作を継続していたのである。

 キエフでアメリカ政府が組織した政権転覆の後、「同盟国の諜報活動」がロシアで休眠していた諜報員を動かし始めた。その活動の「広範な組織網」には、そのような裏の活動を支援する基板組織として設立された偽装企業も含まれており、その多くは少なくとも20年前に設立されている。このことから明らかなのは、妨害工作は、少なくとも20年はロシアの特別軍事作戦に先行していたということだ。

 CIAは「待機軍」を編成し、表向きは、起こりそうもないソ連によるヨーロッパ侵略に対抗していたが、実際のところは、社会主義、共産主義、その他の左翼政党への投票から人々を遠ざけるためにテロ行為に関与していた。

 CIAの秘密部門である政策調整室は、フランク・ウィズナーの指揮の下、ヨーロッパの待機軍を設立した。CIAがグラディオ作戦と名付けられた準軍隊を立ち上げたのは、フランス(「プランブルー」)、イタリア、オランダ、オーストリア、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェー、ドイツ(元SS隊員のハンス・オットーが指揮)、ポルトガル、ギリシャ、スペイン、トルコといった国々だが、そこではあまねく、ロシアに対して課せられる「異例な戦い」についてNATOから訓練を受けたようである。

 冷戦時代、CIAはウクライナのネオナチや移民集団と密接に連携していた。プロジェクトAERODYNAMIC(エアロダイナミック:CARTEL、ANDROGEN、AECARTHAGEと呼ばれたこともある。1949年から1970年の間に行われた作戦)は反ソ連作戦に集中し、主な活動はプロパガンダの拡散に限定されたものであった。この作戦は、ウクライナにおけるロシア系民族の殺害という一つの目標を持っていた超国家主義者と密接に協力することを意味していた。


 1949年の時点で、CIAはウクライナ、さらにはベラルーシ、ポーランド、バルト海沿岸諸国をソ連を弱体化させるための作戦拠点として利用していた。ポリティコ紙によれば、レッドソックス作戦の目的は、「東ヨーロッパにおけるモスクワの計画について前例のないほど深い洞察を得ること、そして可能であれば、ソビエト帝国そのものを解体する手助けをすること」であったという。さらに、CIAは「ウクライナやバルカン半島の新興の民族主義運動を煽っていた」という。

 ヨーロッパの他の場所では、CIAは右翼過激派を勧誘してさまざまなテロ攻撃を行わせていたことが、イタリアのファシスト、ヴィンチェンツォ・ヴィンチグエッラの裁判で明らかになった。彼は極右の文化・議会外政治・準軍事組織であるOrdine Nuovo(「新秩序」)の一員であり、ナチスのヴァッフェン親衛隊と政治的信条を共有していた。

 新秩序運動は、左翼に罪を被せるテロ攻撃を行った。この攻撃には、1969年のミラノのフォンタナ広場爆破事件(16人死亡)、1970年のローマ-メッシーナ間列車爆破事件(6人死亡、100人負傷)が含まれる。これらのテロは、「緊張の戦略」と呼ばれていた。

 今回のCIA-NATOの破壊工作は、プーチンとロシア連邦を弱体化させ、倒そうとするこうした試みの一つに過ぎないとマーフィーは説明する。

 「2人の元米国特殊作戦関係者によれば、CIAが監督するNATOの同盟国の作戦は、西側諸国がロシアで行っているいくつかの秘密作戦の一つに過ぎないということだ。また別の元米軍関係者によると、2月のロシアの侵攻により警告を受けた他のヨーロッパの情報機関は、自国に長く眠っていた抵抗組織網[グラディオ作戦]を起動させ、今回はCIAの助けなしに、ロシア国内での工作を実行し続け、混乱を引き起こそうとしているという。さらに、広く報道されているように、ウクライナの諜報機関や特殊作戦部隊も、ロシア戦線の背後で独自の作戦を展開している。」

 要するに、ロシアを内部から攻撃しようとする多国籍の協調的な取り組みがあり、ロシアは間違いなくその取り組みを国家安全保障に対する脅威と考えている。プーチンは何度か、ロシアは実存的な脅威には戦術核兵器で対応すると発言している。

 プーチンと彼の将軍たちは、ウクライナでの戦闘をさらに激化させていくだろう。というのも、CIAとその破壊工作員がロシア内部の奥深くにある民間人と軍事標的を攻撃目標にしているからだ。「プーチン大統領は、ますます不安定になっている世界においてある種の安定性を保とうと実際に行動している。なぜなら、今の世界は、アメリカが世界の終わりにつながるような陰謀を駆使して、衰退しつつある自国による世界覇権を維持しようとしていることで混乱状況に追い込まれているからだ」とアンドリュー・コリブコはオリエンタル・レビュー誌に寄稿している。

 ロシアのウクライナにおける特別軍事作戦は、とりわけロシアの、もう少し広く言えば、この地域における国家安全保障のレッドライン(限界点)の整合性を維持するために最後の手段として開始されたものだった。アメリカ主導の西側諸国は、自分たちの一極覇権を回復しようとする壮大な戦略を追求する中で、その限界点を超えようとしていたのだ。

 この戦略は、アメリカ政府とそのいわゆる友好国にとって必須であり、ロシアと中国を潰すためにあらゆる手を尽くすことだ。なぜなら、この2大敵対勢力は、多極化した世界を確立しようとしているからだ。その多極化世界においては、強制的であり、しばしば人々を死に追いやるような新自由主義的な秩序のもとでの政治はなく、そのような政治を執り行うものも存在しない。具体的には、アメリカ政府の国家安全保障機関、CIA、国防総省、国内ではFBI、DHS(国土安全保障省)、さらにシリコンバレーの、異端者を破門し、国家が永遠に流し続ける戦争についての嘘の情報を拡散する巨大な情報産業企業が存在しない世界なのだ。

 米国政府が指揮するウクライナのロシア系民族に対する戦争は、2014年に民主的に選出されたロシア寄りの政府に対して組織された政権転覆に端を発するものだが、この戦争は、アフガニスタンでの戦争と同様に、行き詰まりと敗北が頑なに避けられないものとして現実に現れ、撤退(そんなふうに報じられることはないが)の決断が下されるまで続くだろう。そしてその後には、数十億ドルの価値の軍事機器が残り、戦争に協力してきた地元の人々の生活は見捨てられるのだ。

 不確定な未来のために、CIAはネオナチと同好の士による地下軍団を育て、ロシアが「(国民投票により)併合」したクリミア、ルハンスク、ドネツク、そしてまもなく(圧倒的多数でロシアへ「編入」された地域である)マリウポリ、ザポリージャ、クリビイ・リ、オデッサにおいて低強度のゲリラ戦に挑もうとするのだろう。

 ただしこうなるのは、この戦争の次の段階である。それは、物乞いのゼレンスキーと負債を抱えた彼の後援者であるアメリカ政府が、国境での闘いでロシアに勝つには、モスクワめがけていくつかの熱核兵器を投げ込まない限り不可能であると分かるときである。

 プーチンが核兵器の使用を決心したのは、戦争偽情報メディアが「彼は窮地に追い込まれた」と(事実を誤認して)勝ち誇って宣言したからではない。その一方で、アメリカ政府に関して言えば、貧困を誘発する新自由主義を拒否して世界が多極化することにより窮地に追い込まれれば、核兵器を暴発させ、地球上の生命を絶滅させる道を選ばないという保証はどこにもないのだ。

プーチン大統領、異例の新年あいさつ

<記事原文 寺島先生推薦>

Putin gives unusual New Year address
Russia’s president has broken years-long tradition, addressing the nation from a military HQ

プーチン、新年のあいさつを異例な形で行う。
ロシア大統領は長年の伝統を破って、軍本部から国民へあいさつした。

出典:RT

2022年12月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月18日

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 ロシアのプーチン大統領は12月31日(土)、伝統的な年頭の挨拶を行い、この一年で国が直面した課題と達成した成果について国民に語りかけた。演説会場は、従来のクレムリン中庭での大統領の立ち姿とは大きく異なり、今年のプーチンは南部軍管区本部で年次メッセージを収録した。今回の訪問では、軍幹部との会談や、優秀な兵士への国家表彰も行われた。

 異例の長さの演説は、主に2月下旬に勃発した大規模な紛争であるウクライナで進行中の特別軍事作戦を中心に展開された。この劇的な出来事によって、ロシアは「私たちの多民族国家は、困難な時にいつもそうであるように、勇気と尊厳を示した」と述べ、ロシア軍人と一般市民を賞賛した。

 「ロシアの兵士、民兵、ボランティアは、祖国のため、真実と正義のため、ロシアの平和と安全を確保するために戦っています。彼らすべて私たちのヒーローです。彼らの背負っている重荷が今日ほど重かったことはありません。心から、特別軍事作戦の参加者全員に新年のお祝いを申し上げます」と大統領は述べた。

 関連記事:英国の問題は新年になっても「無くならない」とスナク首相は語る。

 今年1年は「いろいろな心配と不安ばかりの年」であり、多くの「厳しい、しかし必要な決断」がなされたが、「ロシアの完全な主権の実現と社会の重要な統合に向けた重要なステップ」を踏み出したと、大統領は述べた。

 「今年は、私たちの共通の未来と真の独立の礎となる、極めて重要で運命的な出来事があった年でした。まさにそのために、私たちは今日、戦っています。私たちは、歴史的な土地、ロシア連邦の新しい構成地域で、私たちの国民を守っています」と大統領は述べ、9月の住民投票の後、ロシアに編入された旧ウクライナの4つの地域に言及した。

 ロシアだけでなく、全世界がこの1年で「大きな変化」を経験したとプーチン大統領は述べ、現在進行中の紛争でウクライナを支援している西側諸国によるロシアへの危害工作は、ほとんど失敗したと付け加えた。大統領は、この紛争は「公平で多極化した世界を目指す他の国々を奮い立たせる」ものだったと指摘した。

 「ロシアは2014年のクリミアでの出来事以来、制裁の下で生活してきました。さらに今年、私たちに対して全面的な制裁戦争が宣言されたのです。その背後にいる黒幕たちは、我々の産業、金融、輸送部門が崩壊することを期待しました。これは起こりませんでした」とプーチンは強調した。

(動画は原サイトからご覧ください。)

ロシア経済の見通しが大幅に改善された

<記事原文 寺島先生推薦>

Russian economic forecast sharply improves
GDP is now expected to contract 2.9% in 2022, versus 4.2% projected earlier

(ロシア経済の見通しが大幅に改善された
当初4.2%と予見されていたGDPの縮小率が、2.9%に修正された)

出典:RT

2022年9月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月3日


© Getty Images/Jon Hicks


 ロシアのGDPの縮小率が予想よりも大幅に低くなると見込まれる、とロシアのマキシム・レシェトニコフ経済相が9月21日水曜日に述べた。

 改善された見通しをもとに、同経済相は、今年のGDP縮小率は2.9%で、2023年は0.8%になると見ている、とした。

 8月に同経済相は、2022年のGDPの縮小率は4.2%で、2023年は2.7%であると見ていた。

 レシェトニコフ経済相によると、2024年から2025年にかけては2.6%の増加が見込まれる、とのことだ。これは、今年と来年については西側による制裁のために低下している、国内消費と国内投機の増加が見込まれているためだ、という。

 同経済相はさらに、2022年末における失業率は
4.5%で、インフレ率は12.4%になる見通しである、と語った。またロシア国民の手取り給は2022年には2%低下するが、 早くも来年には2%の増加に転じる、とも述べた。

 4月の世界銀行の発表では、2022年のロシア経済の縮小率は11.2%にものぼる、としていた。

関連記事:Sanctions offer Russia ‘pleasant surprise’ – analysts

 レシェトニコフ経済相は、制裁が行われたことによるエネルギー価格の高騰に合わせて、政府がとった緊急支援措置が、ロシア経済の安定に繋がった、と強調した。
 
 ロシア政府高官はかねてより、西側による制裁に直面する中でも、ロシア経済は予想よりも持ちこたえている、と語っていた。

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