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中国はNATOのユーゴスラビアにおける「野蛮な」行為を決して忘れない―外務省

<記事原文 寺島先生推薦>
China won’t forget NATO’s ‘barbaric’ acts in Yugoslavia – Foreign Ministry
The remarks came on the anniversary of the 1999 embassy bombing that killed three Chinese journalists
この発言は、1999年の大使館爆破事件の記念日に行われた。この事件では、3人の中国のジャーナリストが亡くなった。
出典:RT 2023年5月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月19日



資料写真: 2010年11月10日、ベオグラードの廃墟と化した中国大使館の解体作業。© Andrej Isakovic / AFP Japan


 中国外務省の報道官である汪文斌(おうぶんひん)は、月曜日(5月8日)に記者団に対して、北京は1999年5月のベオグラードでの大使館爆撃を忘れたり許したりしていないと述べた。汪は、アメリカ主導連合が防衛同盟を装いながら紛争を引き起こしていると非難し、それに対して「真剣に反省」するよう求めた。

 汪は、5月7日が大使館攻撃の記念日であり、3人の中国の報道関係者が亡くなり、20人の外交職員が負傷したことを指摘した。「中国人民は、真実、公正、正義を守るために彼らが犠牲になったことを決して忘れません。また、アメリカ主導のNATOによって犯されたこの野蛮な暴行も私たちは忘れません」と彼は記者団に語った。

 汪は、「地域の防衛連合であると主張しながら、NATOは世界中のさまざまな地域で度々火種を引き起こし、紛争をもたらしてきました。ボスニア・ヘルツェゴビナからコソボ、イラクからアフガニスタン、リビアからシリアまでです」と指摘した。

 数十万人を殺し、数千万人を追い立てる戦争に参加したNATOは、現在、「アジア太平洋地域に東進し、この地域の対立を扇動し、地域の平和と安定を損ねている」と報道官は付け加えた。

 アメリカ主導のNATOは、自らが犯した罪について真剣に反省し、時代遅れの冷戦の考え方を捨て、地域での緊張を扇動することを止め、分裂と不安定を引き起こすことを止めるべきだ。

 大使館への攻撃は、コソボの民族アルバニア人の分離独立運動を支援するために行われたNATOによるユーゴスラビアへの空爆戦の開始から6週間後に発生した。5つの爆弾が施設に命中し、邵雲環、許杏虎、そして彼の妻である朱瑛(えい)が亡くなった。北京はこの爆撃を「野蛮な行為」と非難した。



関連記事:NATOのアジア進出に対して、中国は何ができるのか。

 アメリカは、セルビアの首都に関する「古い地図」を使用して、誤って大使館を攻撃したと主張した。ワシントンは、本当の標的は約500メートル(1640フィート)離れたユーゴスラビアの軍需庁であったと述べた。この攻撃はB-2ステルス爆撃機によって実行され、JDAM爆弾が使用された。これらの爆弾は目標から14メートル(46フィート)以内の精度を持っている。CIAの長官であるジョージ・テネットは後にアメリカの議会で証言し、この78日間の作戦中でCIAが計画したのはこの攻撃だけだったと述べた。報道によれば、1人のCIA工作員が解雇され、6人が厳重注意処分を受けた。

 アメリカ合衆国のビル・クリントン大統領は公に謝罪した。その後、ワシントンは中国政府に2800万ドル、犠牲者の家族に450万ドルの補償金を支払った。 かつてのユーゴスラビアに対するNATO支援の戦争犯罪法廷は、これらの事柄とCIAの処分措置を、この爆撃事件に対する捜査の開始や告発しない理由の一部として引用した。
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ソロスは中国の政権転換を要求

ソロスは中国の政権転換を要求

<記事原文 寺島先生推薦>Soros calls for regime change in China

~リベラル派に資金を出している金融家ソロスは、「世界の開かれた社会への脅威である」と習近平を名指しで批判した~

RT 2022年2月1日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年2月24日

 1月31日、リベラル派の億万長者として知られているジョージ・ソロスは、中国の習近平政権の交替を求めた。それは、2022年の北京冬期オリンピックと1936年のナチスドイツのオリンピックを比較した演説の中でのことだった。

 保守派のフーヴァー研究所の会合で行った演説の中で、ソロスは中国を「世界で最も強力な権威主義の国家」であるとし、「開かれた社会にとっての今日の最大の脅威だ」とした。

 ソロスの主張によれば、中国は「1936年のドイツと同様」、来る北京冬季オリンピックを「自国をよく見せるよう、うまく利用」し、「中国が、厳格な統制のもと優れた社会体制が取れているという宣伝に使う」だろうとのことだった。さらにソロスは、中国に自由主義経済をもたらした以前の指導者鄧小平とは違い、習近平を「共産主義を心から信じている」と批判した。そしてソロスは、習近平は「毛沢東やウラジミール・レーニンの崇拝者である」と警戒の言葉を述べた。




 演説の締めくくりで、ソロスは中国の政権交代を求めた。この要求は、習近平の統治に反対の声を上げている米国の多くの保守派の主張と共鳴するものだ。

 「習近平が、より抑圧的ではない内政と、より平和的な外交を行う政権と交替することが望まれます。」

  「そうなれば、今日直面している開かれた社会に対する脅威が取り除かれることになるでしょう。中国が望ましい方向に向かうために、できることはすべてすべきです」と億万長者のソロスは言い放った。

 ソロスは、オープン・ソサエティ財団の創設者であり団長も務めている。この財団は米国や世界中のリベラル派や左翼を支援している。具体的には、ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)運動や、プランド・ペアレントフッド(Planned Parenthood:全米家族計画連盟)や、移民改革協会(Immigration Reforms)などだ。ソロスはさらに、米国の地方検事の選挙にも関心があり、その選挙戦に何百万ドルもつぎ込んでいる。ソロスが支援していた候補者の中には、現在米国の主要都市の検察当局の長官を務めている者もいる。

 

習近平のダボス会議発言は、彼がグローバリストの手先だという証明になるのか?「その果実によって、あなたがたはそれを知ることになる」

習近平のダボス会議発言は、彼がグローバリストの手先だという証明になるのか?「その果実によって、あなたがたはそれを知ることになる」

<記事原文>
Do Xi Jinping’s Davos Remarks Prove He Is a Globalist Shill? ‘By Their Fruits Ye Shall Know Them’

マシュー・エレット

Matthew Ehret

Matthew J.L. Ehret is a journalist, lecturer and founder of the Canadian Patriot Review.

2022年1月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月11日
 

 真実は時に苦い薬となる。しかし、患者を救う苦い薬は、糖衣毒よりもつねに優れている。

 「良い木はすべて良い実を結ぶが、腐った木は悪い実を結ぶ。良い木は悪い実を結ばず、堕落した木も良い実を結ばない。良い実を結ばない木は、すべて切り倒され、火の中に投げ込まれる。だから、あなたがたはその実によってそれを知るのである」(マタイによる福音書7章20節)

 1月17日、習近平国家主席はダボス会議で演説した。ダボス会議では、ITを駆使した新しい封建主義のもと、世界をディストピアに改変しようという野望を抱く億万長者たちが集まり、数日間にわたって自己満足の演説や、野望実現に向けた各勢力との連携作りに明け暮れた。

 案の定、習近平の演説は、大西洋の向こう側の米国の多くの民族主義者からかなりのヒステリーを引き起こした。このことからも、彼ら米国の民族主義者たちが、人類の文明をリセットしようとする非常に社会病的な超国家的存在によって自国政府が乗っ取られ、生活が脅かされるという醜い事実にうまく対応していないことがよく分かる。

 歴史的に一帯一路構想(BRI)を支持してきた「LaRouche PAC」という名の独特な国家主義者たちが運営しているニュースサイトは、習近平の発言は、不快なメルトダウンにつながるものだとして、ロバート・イングラハムの1月22日付け社説で次のように報じた。
(ラルーシュ運動LPACは、物議を醸したアメリカの政治家、リンドン・ラルーシュの政治組織の一部である。LYMの「ウォー・ルーム」はバージニア州リーズバーグにあり、LPACの本部でもある。)

 「習近平の演説は非難されるべきものだった。『グローバルな協力』や『ウィン・ウィン』などという表現を使ってはいたが、彼の発言は、ベールで隠してはいるが、ドナルド・トランプに対する攻撃であり、ダボス会議の企みを明確に支持しているとしか読み取れない。彼は、『全体論的』環境主義、カーボンニュートラル、『グリーン経済への完全移行』を支持した。彼はTTP(Trans-Pacific Partnership環太平洋戦略的経済連携協定)を支持し、自由貿易を賞賛し、保護主義を非難した。COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)の計画や、WTO、WHOにも絶賛の声を上げた。中でも最も反吐が出そうだったのは、大量虐殺を目的とした政策である国連の『持続可能な開発』を(スピーチの中で2度も)強く賞賛したことだ」

 ラルーシェPACは、習近平の演説を、中国がWEFの「世界大リセット」に加担している証拠だと批判する多くの報道機関の一つに過ぎないけれども、私は習近平擁護の主張をこの組織に向けて発することにした。その理由は2つある。

 ●(習近平批判を棚に置けば)、同ニュースサイトのこの論説記事は多くの非常に良いアイディアを提供してくれていると見ることができるからだ。そのアイディアが、文明を恐怖で圧倒している業火を消すという重要な役割を果たしうると私は心から信じている……ただし、その業火が最も激しく燃えさかっているいま、愚かなポピュリズムに甘んじることによって、彼らが自己破壊的行為をしてしまわないか、という懸念はあるが。

 ●この論説の著者は、私がこれまで読んだ中で最高の歴史的研究をおこなっていて、読者の心や自分の組織、そしてもっと一般的には、真実の目的に大きな損害を与えるような、許しがたい判断ミスをしないように予防しているはずだからだ。

 以下の反論の際、私は手厳しい言葉を使うかもしれないが、それはこの論説の著者が中国の動機について誤った分析をしていることを真摯に主張するためなので、ご容赦いただきたい。

主張1:「中国は脱炭素を支持しているから、悪である」

 COP26の脱炭素目標が、実は産業文明(と現在の世界人口規模を持続させる手段)の解体を意図していることを発見したひとたちに、祝辞を捧げる。グレタ・トゥンバーグやチャールズ皇太子やビル・ゲイツが気候変動専門家であるとか、われわれの集団行動を根本的に変えて産業文明を直ちに停止させなければ、世界は12年後に地獄の竈(かまど)になって終わる、と信じてやまない洞窟から抜けだし、誤った情報を切り抜ける知的能力を身につけたのだから。

 この問題に関して洞窟から抜け出せた人々にとって、習近平の公の発言は確かに混乱を招くものだった。中国国家主席は本当に「グローバリスト」の人口削減計画を支持しているのだろうか?先進工業文明の解体を支持しているのだろうか?
 
 ダボス会議で習近平が使った単なる表面上の言葉に惑わされず、彼の行動に注目すれば、答えは明確に「ノー」である。

ユーラシアの「脱炭素」と大西洋両岸の「脱炭素」の差異

 「脱炭素」と「持続可能な発展」に対する中国のアプローチは、NATO(北大西洋条約機構)とファイブアイズ(米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの5カ国から構成され、政治的、軍事的な情報を共有する同盟)の檻の中での支配的なアプローチとは多くの面で大きく異なっている。「この先生活必需品が欠乏するので、生活水準を落とし、生産量を下げ、さらには個人の持ち物の所有権を返上しないといけない時代が来るから、それに備えよう」と言われている西側諸国民とは異なり、中国の「グリーンアジェンダ」は、天然ガス、石炭、石油、原子力を中心とした炭化水素開発(脱化石燃料の動きを支持し、将来的な再生可能エネルギーへの移行のために、エネルギー源の中心に天然ガスを据え、自国の経済成長に必要なエネルギー確保を目指すこと)に向けられている。

 中国の強力な原子力発電部門(CO2排出量ゼロ)は、溶融塩トリウムや高速増殖炉など、現存するすべての第3・第4世代の原子炉を利用している唯一の国で、実用的な商業核融合に向けた取り組みは他のどの国よりも進んでいる。

 中国は風車やソーラーパネルなどのいわゆる「再生可能」エネルギーへの投資も積極的ではあるものの、大西洋共同体とは異なり、資本集約型産業(機械化が進み、労働生産性の高い産業のこと)の基盤についてはこうした低強度で信頼性が低く高価な電力に依存させず、主に家庭用消費に「グリーン」エネルギーを利用する方向を選択している。

 また、中国が、コンクリート、鉄鋼、鉄などの鉱物を必要としている世界有数の国家であることは周知の事実であり、これらは「一帯一路」構想に象徴される大規模プロジェクトの建設に欠かせない。

主張2:「中国はTPPを支持しているから、悪である」

 
 習近平が「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)推進派」だと捉えるのは、単純すぎる。

 ペペ・エスコバールが非常にうまく説明しているように、「誰が“第二次グローバル化”のを支配することになるのか?」をめぐる戦いだと見るべきである。

 50年にわたり世界を蹂躙してきた第一次グローバリゼーションはすでに水面下では死に体であり、このグローバリゼーションは、新しいタイタニック号が暗い深淵に引きずり込まれるように、間もなく訪れる衝撃で船がバラバラになるのを待つだけである。この崩壊は、多くの人が推測しているのだが、何かのシステムが崩壊して起こるのではない。実際にはとうの昔から時限爆弾が仕掛けられていたのだ。1971年にドルが金準備制度から変動相場制に移行して以降、現在の全体的なバブル崩壊を迎えるまでずっとそうだったのだ。

 したがって、問題は「システムが崩壊するかどうか」ではなく、むしろ「誰がこの新しいシステムを形成する」のか、であり、「どのような運営システムにそのルールが基づくことになるのか」、である。

 それは創造的成長と自主的改善が可能な開放型システムなのか、それとも同質性(エントロピー)と収益の不変の法則によって定義される閉鎖型システムなのか?そのシステムはゼロサム(参加者全員が負け、勝ち分の総和がゼロになる)なのか、それとも全体が部分よりも多くなる(共に利益となるウィンウィン、両者に有利な)のか?

 オバマ時代のTPPは、2016年にトランプが正当にも破棄したが、それは中華人民共和国、とくに主権国家システム全般に対する露骨な経済攻撃以外のなにものでもなかった。この攻撃は、以下のようないくつかの要因を前提としていた。

 A) 太平洋沿岸のすべてのTPP加盟国を、ロンドンとウォール街が支配するNAFTAのようなトップダウン型のシステムに縛り付けていること。

 B)TPPが定めていた「自由貿易」のルールを破った国を直接訴える権利を企業に与えていること
(多国籍私企業が、世界経済フォーラムのような機関を通じて調整するなどして常に支配力を維持しようとするため、「自由貿易」といっても実際には自由ではなかった)

 C) 2016年以前のTPPがつねに中国を除外していたため、中国を近隣諸国から切り離していること。

 習近平が言及している「第二次TPP」は、(第一次TPPとは違い)その名の通りの「環太平洋パートナーシップ協定」だ。

 運営システムの観点から言えば、第二次TPPは、2020年に世界人口の30%を占める太平洋地域15カ国が参加する史上最大の貿易協定として発足したRCEP(地域包括的経済連携)の延長に近いように見える。

 第二次TPPは、真の意味での自由貿易を含んでいるのだろうか?答えはYESだ。第二次TPPにおける自由貿易は、貧しい国々に対する帝国主義による強姦を正当化するために使われるだろうか?答えはNOだ。

自由貿易はどのような意図で運営されるのか?

 アダム・スミスが1776年に悪名高い『国富論』を書いて以来、多くの悪が「自由貿易」という隠れ蓑のもとでおこなわれてきたことは明白な事実にちがいない。

 アヘン戦争、ジャガイモ飢饉(19世紀のアイルランド島で主要食物のジャガイモが疫病により枯死したことで起こった大飢饉)、度重なるインドでの大虐殺、そして現代のグローバリゼーションの下での略奪に至るまで、英国が提唱する「自由貿易」はしばしば、対象国に安全装置のスイッチを切らせているすきに、その国民を丸裸にするまで搾取し尽くす手段として使われてきたのである。

 中国式自由貿易と英米式の自由貿易の違いは、その目的にある。

 英米式が国家の発展を破壊するために設計されたのに対し、中国式(あるいはそれ以前の米国のハミルトン方式)は、参加するすべての国の産業向上と表裏一体となって設計されている。一方が分割、征服、破壊を意図しているのに対し、他方は団結、協力、創造を意図しているのだ。大きな違いだ。

 ここで、ある人は叫ぶかもしれない。「意図なんてどうやって見極められるのか?」

 その答えについては、かつてイエスが問いに答えたように、「あなたがたはその果実によってそれを知るであろう」だ。唯物論者にはどう処理したらいいかわからないだろうが、世界の歴史を見れば、政治の世界では、自分の意図が透けて見えるような言葉を使うと、ほぼ必ず目的が台無しになることがすぐにわかるだろう。私たちはジョン・F・ケネディの強靭な率直さを愛しているが、その率直さ故に、就任してわずか1000日で殺害され、彼の持つ偉大な良さが花開くことがないままになってしまった。ベンジャミン・フランクリンのようなもっと賢明で精通した政治家がいたなら、そんな事態が起こることは決して許さなかったであろうが。

 悪いことをしようとする悪人が良い言葉を使い、良いことをしようとする善人が悪い言葉を使うことがある。その意図や善意をどうやって知ることができるのだろうか。言葉ではなく、その果実で知るしかないのだ。

中国のハミルトン的果実

 一極集中の帝国主義が数十年にわたる飢餓、貧困、戦争を生み出しただけであるのに対し、中国は8億人以上の人々を絶望的な貧困から救い出したことが証明されている。中国は、国有銀行を通じて何兆ドルもの生産的な長期信用を立ち上げ、その資金を債務の投機ではなく、実際のインフラの建設に結びつけた。

 西側の金融システムは、投機的・架空的資本の誇張された上昇率に完全に依存しているが、中国の金融システムは物理的な生産と価値のシステムを前提としている。エバーグランデ(中国恒大集団Evergrande Groupは、中華人民共和国広東省深圳市に本拠を置く不動産開発会社)のバブル崩壊は、西側なら原子爆弾のような破壊力をもつことになっただろうが、中国では十分に抑制可能な異常事態なのである。

 もし習近平を攻撃しているラルーシュPAC(LPAC)系の著者が、経済学者アレクサンダー・ハミルトンの原著の趣旨をきちんと読み解けていたのなら(その著者は読んだと公言してはいるが)、著者が信奉するアメリカのシステムは、本質的に自由貿易に反対ではなく、またつねに保護主義的でないこともわかるはずなのだ。

(ハミルトン:合州国憲法の実際の起草者。合州国憲法コメンタリーの古典『ザ・フェデラリスト』の主執筆者。統一された中央政府を有する必要があると考え、近代的な資本主義の基盤は、連邦政府によって成し遂げられるものとした。これは連邦主義といわれる。)

ハミルトンは何を創造したのか?

 ハミルトンが1791年の議会への報告で指摘したのは、破産した未成熟状態の新生国家は悲惨な内部分裂と混沌に追いやられるだけだということであった。最初の7年間、アメリカは大英帝国に奪還されるのを待つ財政破綻国であった。各州は経済の優先順位や通貨発行を自州内で管理し、13州のうちどの州も相互の自由貿易さえおこなわず、連合というにはほど遠い状態であった。

 このように、初期の連合体には統一性がなかったため、共通の行動をとることは不可能であった。共通の行動力を持たなければ、ロンドン中心部に集中していた高度に中央集権化された世界規模の金融寡頭政治と戦うに足る強力な武器は存在しえなかったのである。

 ハミルトンが行ったのは、アメリカ独立戦争中に発生した多くの局所的で返済不能な州債務を連邦が肩代わりし、それらを新しい国家銀行システムの資産に転換することだった。その資産が包括的な国家インフラ目標のために信用供与を開始することになり、亡国の危機を解決したのである。各州は「やりたい放題」にできる自由を失ったが、貿易障壁は取り除かれ、国家通貨が発行され、この飛躍的な進歩によって、若い国家は生き残るどころか、繁栄することさえできたのである。ハミルトンのもとでは、借金はもはやインフレを引き起こす装置などではなく、国民全体の利益に貢献する自己清算可能な「国家の恵み」であった。この点に関して、中国が国営放送の報道でハミルトンをよく引き合いに出すのも、偶然ではないだろう。

 ハミルトン計画の最初の数十年間で、アメリカの人口は4倍に増え、技術的知識、産業生産性、相互接続性、発明は飛躍的に成長し、やがてアメリカは世界最大の帝国への道に挑戦するようになった。

 (習近平批判の記事を書いたサイトのラルーシュPACの)イングラハム氏は、ハミルトンが独断的な関税支持者(つまり保護主義者)ではなく、自由貿易を支持していたことを知ったら驚くかもしれない。ただしその条件は、その自由貿易が、或る統一目的に従って形成されている場合に限られる。そしてその統一目的とは、その自由貿易により、全体の多くの部分の産業と創造が最大限に発展できるようにしようという目的だ。この目的は、米国憲法の重要な第1条第8節を含む「公共の福祉」条項の本質的な目的に繋がるものである。

 ハミルトンの後進であるフリードリヒ・リスト(1828年に「アメリカ政治経済システム」という言葉を作った)は、このシステムを用いて、バラバラだったドイツを、歴史上初めて、地域的に分裂していた国家間の自由貿易を推進する「ゾルフェライン」(別名:関税同盟)の下に統一した。リストの計画のもと、国内改善(鉄道、運河、新産業、純粋科学)と結びついた国家の信用が、ドイツを近代時代へと導いたのである。

 このシステムが適用された地域(19世紀のロシアを含む)ではどこでも、人口が量的にも質的にも増加し、国内の各地域間の調和的な関係が改善され、寡頭制はその支配力を失い、創造的な変化が生まれたおかげで、終わりのない成長をどんどん実現できるようになっていった。

 これは良い果実であったと言っていい。

 英国の自由貿易は、「第一次グローバリゼーション」のように、いつも耳あたりの良い言葉を使うが、本質は腐った果実を実らせるものであった。

 どこに適用されようとも、英国式の自由貿易は経済主権国家を破壊し、長期計画を不能にし、民間資本の規制を解体し、つねに「分断して征服せよ」政策に利用されたのである。

 英米のアイビーリーグの大学で教え込まれたこのシステムの信奉者たちは、知らず知らずのうちに、金の亡者の悪党の一員に成り下がり、ますます近視眼的な見方しかできなくなり、局所的で利己的な自己認識の先にある全体像が見えなくなってしまった……それこそまさに、悪夢のビデオゲームのようなシステムを動かしている寡頭エリートがつねに望んでいた姿だったのだ。

主張3:「習近平はWTOを賛美したので、悪である」

 世界貿易機関(WTO)には、国連憲章と同様に、多くの立派な言葉や経済行動のルールが埋め込まれている。このルールと言葉に従えば、どちらの組織も誰にも害を与えることはなく、むしろ多くの利益をもたらすかもしれない。

 「健全な競争」、「公正さ」、「取引の自由を促進する」、という素敵な言葉がちりばめられたルールが問題なのではない。

 問題は、これらのルールの多くを、それを破ることを意図して書いた勢力の意向にあるのだ。

 WTOのルールは、19世紀にこの小さな島を世界の大部分に対して支配的なアルファ位(αの位置、炭素原子の位置)に保つために、各国国家が自由貿易に服従することを求めた英国の要求とよく似ていて、欺されやすい犠牲者には信じやすい書き方になっていたものの、グレートゲームを形成する支配者層の人々にとっては、つねに植民地主義や奴隷制度の単なる道具だと理解されていた。


 この意味で、1999年のWTOは、アダム・スミスの1776年の『国富論』と多くの共通点をもっている。

 アダム・スミスは悪の美徳を賞賛し、はたまた、弱者を支配する覇権主義者の権利を促進するような書き方をしていただろうか。

 そんなことはない。

 アダム・スミスの著書を読めば、素晴らしい言葉がちりばめられていることが分かるし、もし世界が本当に、国際的に拡大した金融寡頭政治のない、生活の質の向上を目指して共に暮らす国々の平等な場であったなら、何も悪いことは見つからないだろう。

 問題は、ベンジャミン・フランクリンやハミルトン、そして最も有力な建国の父たちの多くが(あるいはフリードリヒ・リストが後に)理解していたように、アダム・スミスはただの雇われ政治専門家で、スミス自身、自分が書いた文言を信じてはいなかったというところにある。歴史家のアントン・チェイトキンが『Who We Are: America's Fight for Universal Progress, from Franklin to Kennedy』の第1巻で指摘しているように、アダム・スミスは大英帝国の上層部と直接結びついており、『国富論』を(偶然にもアメリカ独立宣言と同じ年に)出版するまで、第2代シェルバーン伯(米国の独立に反対していた17世紀の英国の政治家。首相や内務大臣を歴任)によって何年も教育されていた。



 アダム・スミスとロンドンの寡頭制の主人たちがつねに理解していたのは、自分たちが彼の「見えざる手(市場原理の万能性を説明する際にアダム・スミスが使用したことば)」の真の所有者だということだった。その「見えざる手」ということばこそ、規制のない市場を支配する「魔法の秩序原則」なのだ、と彼らが犠牲者たちに信じこませたいと願っていたことばなのである。

 ここ7年間で適用されたBRI(一帯一路構想)指向の自由貿易圏は、すべての参加国間で実際に測定可能なインフラと産業力を構築するという意図によって形成されている。アフリカ-中国自由貿易協定、中国-パキスタン経済回廊、中国のRCEP(アールセップ、東アジア地域包括的経済連携)、中国-EU取引、中国-南米自由貿易協定などを見ていると、大英帝国の暗黒時代やJFK後の米帝国資本の時代におこなわれたこととは正反対であることがわかる。これらの条約が適用された地域では、略奪や債務奴隷が蔓延するのではなく、産業成長、大規模インフラ、製造業、教育が爆発的に発展している。その意図は、第一次グローバリゼーションの時代に見られたものとは全く異なっている。

 中国がわかっているのは、もし国連憲章とWTOの規則が、3兆ドル以上のBRI(一帯一路構想)が追い求める意図のもとで施行されうるならば、第二次グローバリゼーションは、基本的に反独裁的、人口増加的、国民国家的、協力的、反人口削減的な規則に支配されることになる、ということである。

 これはなんと良き果実だろうか。

主張4:「習近平はWHOや、COVID協力体制を賞賛したから、悪である」


 最後に言っておかなければならないのは、習近平の「世界保健機関・パンデミック対応」に関する発言について、である。

 この話をすると嫌がる人々もいるだろうが、あえて述べることにする。

 今日に至るまで中国は、ソロスの諜報員である趙紫陽(ちょうしよう、党中央委員会副主席、国務院総理、党総書記などを歴任)治世下の1980年代に動き出したトランスヒューマニスト志向の西側寄り第5列(諜報活動家)を、まだ完全に粛清しきれていない。

(トランスヒューマニスト:超人間トランスヒューマンは、遺伝的な生物学と、デジタル技術や遺伝子組み換え技術を組み合わせたもの。ヒトゲノムの改変は、様々なナノテクノロジーを挿入することでサポートされ、自然界と非自然界の融合によって変化した生命のほとんどは、現在急速に進行中のAIの管理下に置かれることになる。)

 趙が中国政府に影響を及ぼしていた時期、トランスヒューマニスト(超人間主義者)、マネタリスト(通貨主義者)、テクノクラート(技術部門出身の官僚)が大量に流入し、現代の中国のディープ・ステートを形成していた。これら寄生虫らの多くが、1989年に始まり、1997年に再びおこなわれ、そして2012年の習近平体制の発足とともに始まった最近の粛正で、段階的に駆除されたことは喜ばしいことである。今日まで150万人以上の官僚が汚職容疑により粛正されている。

(マネタリスト:通貨供給や金利操作などの金融政策の重要性を主張する経済学者。主唱者は経済学者ミルトン・フリードマンらで、マネタリストの考え方は「新貨幣数量説」とも呼ばれる。ケインズ学派とは立場を異にし、1980年代の金融政策に大きく影響を与えた。通貨主義者)

(テクノクラート:技術部門出身の官僚、権力者。大衆国家において、国家行政が経済統計や社会計画を含む段階に至ると、従来の法律・組織・宣伝等の技術以外の社会工学的な高度の専門技術の保持者が官僚・行政官・管理者として重用され、支配者集団に入っていくことから生まれた)


 こうした粛正にもかかわらず、中国国内における世界経済フォーラムや英米の存在は、特定の方面でまだ感じられる。それが最も明確に表れているのは、江沢民(こうたくみん)元国家主席を中心とする「上海閥」や、ジャック・マー(アリババグループの創業者)など欧米寄りの億万長者たちが、何度も中国の経済主権を覆そうと様々な試みをおこなってきたことである。

 ロシアもまた、ゴルバチョフ-エリツィン時代に構築された独自のディープ・ステート問題に苦しめられている。

 銀行の国家管理を維持してきた中国とは異なり、モスクワのテクノクラート的なディープ・ステートは、ケインズ主義に侵された自由主義の中央銀行システムにおける絶大な影響力を依然として享受している。さらに中央銀行システムはロシアの大手製薬会社と密接に結びついている。(多くの例の一つとして、ズベルバンクを参照のこと)。

(ズベルバンク:ロシア貯蓄銀行は、ほぼ太陽の沈まない帝国といわれるロシア最大の商業銀行。もともとは帝政ロシア時代1841年に設立、社会主義のソ連時代に「貯蓄信用金庫」として国民に身近となり、それが市場経済導入に伴い商業銀行に改組され、現在でもロシアの銀行界では圧倒的なシェアを誇る。日本のゆうちょ銀行に近い存在。ロシア最大のIT企業であり、新型コロナワクチンの開発・生産もおこなっている。)

 北米やヨーロッパとは異なり、中国はつねに代替のコロナ救済策を提供してきた。単にワクチンに固執したり、コンピュータモデルに基づいて経済を停止させたりしない。中国がヒドロキシクロロキンに亜鉛を組み合わせた治療法だけでなくさまざまな東洋医学の治療法を使用して、当初から大きな効果を上げ、結果的に、コロナによる死亡率はアメリカの0.6%に収まっている。

 中国が明言しているのは、①コロナが国防総省とつながりのある200以上のバイオラボの1つから生まれたものなのか、②2000年のPNAC(アメリカ新世紀プロジェクト)文書『アメリカの防衛を再建する』で血も凍るような詳細が説明されたごとく、将来的に遺伝子を標的とした創造物が中国社会に放出されたものなのかが、まったくわからないのだということだ。

 はっきりしているのは、2020年1月以来、中国は起こりうる戦争のシナリオであるかのごとくコロナ対応を行っているということだ。

PNAC(Project for the New American Centuryアメリカ新世紀プロジェクト、1997年設立のネオコン系シンクタンク。20世紀を「アメリカの世紀」となぞらえることにあやかって、21世紀を「アメリカ新世紀」と謳っており、防衛再建計画では、サイバースペースや宇宙のような情報空間や物理空間をアメリカがコントロールすることを主張して、「完全支配」と呼ばれるフル・スペクトラム・ドミナンスの確立を目指した。)

 ロシアと同じように、中国でもワクチン接種の義務化をめぐって、さまざまな地域勢力と連邦政府との間で、何度も衝突が起きているのだ。

 連邦政府が(地域・州政府の抵抗に対して)専制的なワクチン接種の主要な執行者となっているほとんどの西側の政府とは異なり、ロシアと中国には逆のパターンが見られる。

 これらのユーラシア大陸の国家では、主に連邦政府が、地方当局が市民達に対して行っている専制的で行き過ぎた追い込みに対して介入してきたのである。

 ロシアと中国の指導者たちは、自分たちの文明の存続のためだけでなく、自分たちよりもはるかに大きなもののために戦っているのだ。しかも、彼らはこの戦いから生還するだけでなく、システムが崩壊し、第二次グローバリゼーションが実行に移されている中で、支配的なポジションに立つことを意図している。

 アメリカ人の中には、自分たちの愛する共和国がファシストのクーデターに取り込まれているという事実を受け入れることができない人もいる。ドナルド・トランプがこの件に関して何かできる道徳的・知的能力を持っていなさそうなことも受け入れがたいし、ユーラシアの国々によって外部から強制される広範なグローバルな変化なしでは、今の米国は自らを変える不屈の精神が持てていないことも、受け入れがたいようだ。

 真実は時に苦い薬である。しかし、患者を救う苦い薬は、糖衣毒よりもつねに優れている。

中露は米国による国際金融支配を終わらせようとしている

中露は米国による国際金融支配を終わらせようとしている
<記事原文 寺島先生推薦>

China & Russia are ready to end US dominance of global finance

Russian President Vladimir Putin held extensive talks with his Chinese counterpart, Xi Jinping, earlier this week, with the two world leaders agreeing on plans to establish a new shared international financial framework.
RT 2021年12月19日
グレン・ディーセン

By Glenn Diesen, Professor at the University of South-Eastern Norway and an editor at the Russia in Global Affairs journal. Follow him on Twitter @glenn_diesen.

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年1月15日



 中国とロシアは新たな国際金融の骨組を樹立しようという動きを徐々に見せ始めている。それは、2008年の世界規模で起こった金融危機(訳注:別名リーマンショック)により、米国への依存過多は危険であることが判明したからだ。両国に対する米国による経済制裁が続く中、その制裁が逆に、両国が国際金融の別の骨組みを必死に模索しようとする要因となっているようだ。

米国支配下での世界の銀行取引

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 米国を中心とした金融構造は巨大な力を生み出す源だ。国際間の貿易のほとんどがドル建てで行われており、支払いはSWIFT(国際銀行間金融通信協会)と呼ばれる取引団体を通じて行われている。このSWIFTという協会において米国は巨大な影響力を有している。そして資金調達については、主に米国の投資銀行から出された資金が使われ、借金利子は米国の格付機関により決定されている。さらに世界の主要なクレジットカード会社までもが米国企業だ。このような経済構造から生まれる力のおかげで、米国は帝国を維持できている。そうやって米国は多額の貿易赤字でも持ちこたえ、敵諸国のデータを集め、同盟諸国には好意的な扱いをし、敵諸国には制裁で衝撃を与えることが可能なのだ。

 しかし、米国を中心とした金融構造はもはや持続可能ではない。ホワイトハウスは、改善すべき貿易不均衡を統制する術を失っている。借金は抑制が効かないほど増え続け、あちこちで見られているインフレのせいで貨幣の流通は破壊されている。さらに米国政府がその経済構造を外交政策に利用して、敵諸国に制裁を課していることが状況を悪化させている。米国の防衛戦略によると、中露2カ国は米国が照準を合わせている主要敵国であるとはっきり伝えている。そのことにより、中露両国が米国の金融構造から脱して、別の金融構造を樹立することを余儀なくさせているのだ。

ドル体制からの脱却

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 ドル体制からの脱却、すなわち準備通貨や、取引通貨としてドルに依存する体制からの脱却が、いま盛んに試みられている。USドルの支配的役割は、75年以上も国際間の金融システムにおいて続けられてきた。ドルが強い通貨のままで持続できている理由として以下の3つの要因が挙げられる。①米国経済が巨大であること②インフレ率を低く抑えることにより、ドルの威力を維持できていること③金融市場が、自由で流動的であること。の3点だ。米国経済が比較的低迷している中、抑制が効かないほどのインフレ状態が生じ、さらに米国金融市場が武器として利用されている。ドルの強い役割を支えてきた基盤が急速に終息に向かっているのだ。

 世界最大のエネルギー輸入国である中国と、世界最大のエネルギー輸出国であるロシアの間の金融提携は、ペトロダラーの力を弱らせる決定的な要因となった。2015年に、ロシアと中国の間の貿易のほぼ9割はドル建てで行われていたが、2020年には、ユーラシアの2大国家である両国のドル建て貿易は、約半数の46%までに減少している。さらにロシアは外貨におけるドルの割合を減らす方向で進んでいる。中露貿易におけるドル体制からの脱却の潮流は、中露以外の国々との貿易でドルを使わない潮流をも生み出している。そのような潮流が進んでいるのは、ラテンアメリカ諸国や、トルコや、イランや、インドなどだ。ここ何十年もの間、米国は世界全体に向けてドルを送り出してきたが、そろそろその波の方向が変わり、価値を失ったドルの波が自国に戻ってくる時が来ているのかもしれない。

金融制裁

 世界中の銀行間の金融取引におけるSWIFT体制は、これまで国際間の支払いにおける世界で一つしかない体制だった。しかしSWIFTが果たしてきた中心的な役割が崩れ始めたのだ。それは米国がSWIFTを政治の道具に使い始めたからだ。米国はまず、イランと北朝鮮をSWIFT体制から締め出した。そして2014年には、米国はロシアに対しても締め出すことを警告し始めた。ここ数週間は、SWIFTという武器を使ったロシアに対する警告が激しさを増している。

 これに対して中国はCIPS(訳注:中華人民共和国の人民元の国際銀行間決済システム)、ロシアはSPFS(訳注:ロシアの金融メッセージ転送システム)という体制を開発した。両体制ともSWIFT体制の代替となるものだ。SWIFT体制の代替としてこれらの体制と契約したヨーロッパの国々もいくつか出てきている。その目的は、米国による越権行為的な妨害を逃れ、イランとの貿易を継続するためだ。中露が新たな国際金融構造を樹立するためには、CIPSとSPFSの結合は避けられないだろう。そして両者の結合は両国以外の世界各国に広がっていくだろう。米国がロシアを閉め出せば、世界各国のSWIFT体制から脱却は加速することになるだろう。

複数の開発銀行

 米国が主導しているIMF、世界銀行、アジア開発銀行は、米国が繰り出す経済政策を支える著名な機関だ。中国主導によるアジアインフラ投資銀行 (AIIB)が2015年に設立されたことは、世界の金融構造を変える大きな分岐点となった。というのも、米国の主要な同盟諸国(日本を除く)が米国からの警告を拒否して、この銀行と契約を結んだからだ。かつてBRICS開発銀行とも呼ばれた「新開発銀行」の設立は、米国主導による開発諸銀行からさらにもう一歩脱却する動きだった。「ユーラシア開発銀行」や、この先設立されるであろう「SCO(上海協力機構)開発銀行」は、米国の統制下にある開発諸銀行を終止符に向かわせるさらなるきっかけとなるだろう。

相乗効果

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 さらに中露は自前の格付機関を開発し、これまで両国で支配的な地位を占めていたVISAやマスターカードの価値を下落させた。この新たな金融構造の樹立には、エネルギーの提携や、技術の提携が補完的役割を果たすことになる。第四次産業革命に向かう中、中国もロシアも米国のハイテク産業に依存する気はないからだ。さらに中露は米国支配下の通商路を使用しない方法を模索している。中国は一帯一路構想に数兆ドルを投資し、新たな大陸間通商路や海洋通商路の構築に努めている。いっぽうロシアは、似てはいるが、より控えめな通商路構想を練っている。その中には、中国と連携して、北極圏を海洋通商路にしようという構想も含まれている。これらハイテクを駆使した計画や、通商路構想に資金を出し、運営を進めていけば、望ましい相乗効果が得られ、新たな国際金融構造の樹立に向けたさらなる発展が望まれるだろう。

 米国はさらなる制裁を課し、多極体制に基づく国際金融構造の樹立を妨げようとするだろう。しかし強硬な対外経済政策を維持しても、世界各国が米国から脱却しようとする流れしか作れないだろう。制裁を課しても、対象諸国はなんとか制裁から逃れようと、意地悪な権力に頼らずに生き抜く方法を学んでいくことになるだろう。敵諸国を弱化させ、孤立させようと始めた制裁措置が、結局は米国を孤立させてしまうことになるのだ。

 

1989天安門事件の背景。中国のゴルバチョフは如何に育成され、そして排除されたか。

中国のゴルバチョフは如何に育成され、そして1989年に排除されたか。

<記事原文 寺島先生推薦>

How China’s Gorbachev Was Flushed in 1989

ニュースサイト South Front 2021年8月2日

マシュー・エーレット(Matthew Ehret)著

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年10月23日


 今日に至るまで、とある人物が果たした悪名高い役割について、多くの人々はよく分かっていないようだ。その人物は、ハンガリー出身で、ある時は投資家、ある時は慈善家の顔を持つ人物だ。彼の名はジョージ・ソロス。彼こそ、ここ40年間、世界各地での「カラー革命」において重要な役割を果たしてきた人物だ。悲しいかな、この年老いた社会的病質者傾向をもつジョージ・ソロスが系統的に行った大虐殺のことに気づいた人たちの多くは、この大虐殺について以下のいずれかの見当違いをしている。その見当違いとは、(1)「世界の国々を手中に入れるためのこれらの陰謀は、ジョージ・ソロス一人で行ったのだ」と考えるか、(2)「ジョージ・ソロスは、邪悪な中国共産党の手下であり、その中国共産党はキリスト教をもとにした西側による世界秩序を壊そうとしている」という見当違いだ。

 私は最近、トランプを熱狂的に支持している実業家のマイク・リンデルが開催した、中国など外国が大統領選挙の集計装置に関与した疑惑を追求するサイバーセキュリティのシンポジウムの様子を伝える短い動画を見たのだが、それを見れば中国共産党とジョージ・ソロスの関係に対する見当違いが凝り固まってしまっていて、しかもほぼ全ての保守系のマスコミがその見当違いを増幅して伝えているように思えた。このような見当違いが、様々な形態で広く伝えられているため、西側諸国の一定の保守支持層は、中国がいま行おうとしている世界規模の一帯一路構想に従えば、これまで何千年もの間、正しいと認められてきた伝統的な価値観が根本から覆されることを恐れる傾向が出てきているのだ。

 国民国家を破壊し、世界の大多数の人々を奴隷にしてしまおうという陰謀の実在を認識している人々にとって問題になるのは、そう考える人々が被害妄想に取り憑かれていることではないし、米国内でもカラー革命が仕掛けられていることでもない。それなのに英国の諜報組織のいつもの手口から目をそらされることで、彼らは見誤っているのだ。その英国の諜報機関といったら、米国が建国された1776年から今までずっと、米国による「主な歴史的事件の解釈の書き換え」のほとんどすべてに関して中心的な役割を果たしてきているというのに。そして、中国はソロスから得た資金を使って、西側のディープ・ステートが支配する世界を影から支配しようとしている超悪者だと見なされている。さらに中国は、世界覇権を追求し、「キリスト教をもとにした価値観」を転覆させようとしている、と思われているのだ。

 実際のところは、中国はソロス一族の邪悪さを見抜き、その陰謀を追い出した世界で最初の国家である。一方、世界の残りの国々は、ここ30年以上も前からソロス一族が仕掛けている、今の「国民国家を元にした世界」の後に来る世界に、催眠術にかけられたように誘導されている。そんな中でも中国は、「協調関係に基づいた新しい世界建設」に向けた、非常に価値のある道すじを示し続けている国なのだ。そのような新世界とは、西側諸国も必ず加入すべき世界のはずだ。いずれやってくる暗黒時代から逃れる方法はそれしかない。

 要点をもう一度整理しよう。他の国々が、ソロス一族の無敵艦隊である「オープン・ソサエティ財団」に骨の髄から浸食されているままにされているのをよそに、中国は賢明にも、ソロス一族の正体と、その邪悪な企みを見抜いたのだ。それは天安門広場で、ソロス一族によるカラー革命が仕掛けられたときのことだ。そのカラー革命の先駆けは、新時代の名の下に行われたソ連の解体であり、西側の代議制民主主義の破壊であった。それでも中国の反応は素早く、中国におけるソロス一族の右腕だった人物を失脚させたのだった。その人物とは、中国共産党中央委員会総書記の座にまで上り詰め、年老いた鄧小平の後継者になると確実視されていた人物だった。

 ソロス一族の手下であったその人物の名前は、趙紫陽だ。そして1980年代を通じて、西側メディアは趙紫陽のことを、「中国のゴルバチョフ」と親しみを込めて呼んでいた。

 1984年には、趙紫陽はレーガンから賞賛されていた。こちらの動画を参照。

                   

 趙紫陽に関して

 趙紫陽は1934年から1935年に起こった「長征」の頃にはまだ10代だった。しかしすぐに頭角を現し、1951年には中国共産党の広州代表の地位に選ばれ、1958年から61年かけて起こった大飢饉の間に食料をため込んでいた農民を弾劾する政策を行った。当時、影響力をもっていた勢力が趙紫陽のこのような政策を評価したこともあり、趙紫陽の幸運の星はさらに輝きを増し、彼は広州の共産党第一書記になった。しかし数年後の「文化大革命」の中で、趙紫陽の幸運の星は輝きを失し、彼は紅衛兵からの攻撃の対象となり、江南労働改造所での4年間の勤務を余儀なくされた。しかしそこから1972年に驚くような地位回復を見せ、趙紫陽は再び幸運の星をつかみはじめ、1973年には広州の第一書記および中国革命委員会議長に選出された。1975年には四川省第一書記に選ばれた。そこで趙紫陽は、経済の自由化や、市場原理の導入政策を押し出し、鄧小平統治下の改革開放政策の初期における農業政策の革新に寄与した。
 
 趙紫陽の幸運の星は,この時期に信じられないくらいの素早い輝きを見せた。1977年までには中国共産党中央政治局の一員となり、1980年から1987年まで国務院総理をつとめ、その後1989年に地位が剥奪され失脚するまで、中国共産党総書記をつとめた。

 今日、人間を「超人間(transhuman)」化する話をよく耳にするようになった。それが、クラウス・シュワブなど特権階級にいるものたちが大手を振って賞賛している「第4次産業革命」の中身だ。その産業革命が目指しているのは、人間と機械を一体化させることだ。人工知能が発達すれば、人間の思考は人工知能にとってかわられ、労働は自動化されることが「余儀なくされ」、今のあまり役に立たない労働者は「使えない人々」と見なされてしまうようになるようだ。ただしこのような考え方は新しいものではなく、既に趙紫陽の頭の中でもくっきりと見えていたものだった。趙紫陽は、アルビン・トフラー(Alvin Toffler:『第3の波』の著者)のような、「超人間主義者(transhumanist」*」たちから深い影響を受けていた。そしてこれらの「超人間主義者」たちが描いていた新しい産業革命後の世界が、いま進行中である「グレート・リセット(Great Reset)」という企みのバイブルとして重宝されているのだ。

     *訳注:トランスヒューマニズムは,新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を向上させようという思想。トランスヒューマニストはその思想をもつ人。

 1983年10月9日に北京で開かれた会議で趙紫陽はこう語っていた。

 「名前は“第4次産業革命”であれ“第三の波”であれ、[これらの著者の著者たちが]考えていることは、1950年代と1960年代にかけて高度な産業化が達成された西側諸国は、今は「情報社会」へと移行している、ということです。今世紀の終わりから来世紀の初めにかけて、あるいはここ数10年の間に、世界は新しい状況になるでしょう。新しい技術により社会は躍進するでしょう。そして今起こっている、そしてこれから先起こるであろう、その新しい技術革新は、生産や社会のために利用されることでしょう。そうなれば社会における生産性は飛躍的に増進され、それに伴い社会生活は新しく変革されていくでしょう。このような潮流のことは、注視しておくべきですし、私たちの実生活にもとにして、慎重に研究されなければなりません。そうすることで、この先10年後、あるいは20年後にむけた長期的な計画を決めることができるのです。私たちにとっても、4つの近代化にとっても、このような潮流は好機であり、挑戦でもあるのです。」
 
 
「4つの近代化」に向けての闘い

 上記で趙紫陽が語っていた「4つの近代化」という名で知られている政策は、中国建国の父である周恩来が1963年に初めて導入したものだ。その政策は、新世紀に向かう中国の緊急事態を乗り越えるために作られた数十年先を見通した指針だった。周恩来のその計画が立脚していたのは、経済と産業全体を通した以下の4点における革新だった。それは、1) 工業の生産性、2) 農業の生産性、3) 防衛力、4) 科学技術の進歩、の4点だ。

 毛沢東の後を追うように周恩来が亡くなった1976年までに完全に明らかになっていたことは、1966年から1976年までに、これまでの中国数千年の歴史を覆そうとしていた「四人組」が長期に渡り権力の座にとどまることはないだろう、という見通しだった。さらに周恩来の計画が、長期を見通した中国の発展戦略をますます前進させていくことになることも見通せていた。周恩来の側近であった鄧小平が1978年に中国共産党の指導者の地位を獲得した。(それは四人組を投獄した後のことだった)。そして、4つの近代化を実現するために招集された中国共産党の中央委員会で、鄧小平は以下のように語っていた。

 「私たちは、科学や技術分野において、もっとも優秀な人員を数千人規模で選出し、そのような専門家たちが研究に専念できるような環境を創設するべきなのです。金銭面で問題がある人々には、手当や補助金を出すべきです。共産党の内部で、知識を大事にする雰囲気を作り出さなければいけませんし、専門家を育てることを大事にする雰囲気も作り出さなければいけません。知識階級を軽んじるという間違った態度は改めなければなりません。知識を得るという行為も労働なのです。精神的な仕事であれ、手作業であれ、労働は労働ととらえましょう。」

1963年の鄧小平と周恩来


 鄧小平がマルクス主義的概念を単なる物資的な労働だけにとどめずに、知識を使った創造的な労働にまで拡げたことは、素晴らしいことであった。さらにこの考え方の転換は、中国を新しく、画期的な方向に向かわせるものであり、アジアの巨人である中国をこの先数十年で、経済先進国に押し上げる力になるものであった。しかし、科学における創造性や、将来に向けて非線形的な発展を求めることを議論する際において、そのような発展を実現させるためには、「どのような哲学や、どのような道すじを建てるのが最善か」、を見極めるための論議をする余地が生まれることが多い。そこで登場したのが、新マルサス主義(訳注:出産制限により人口を抑制することを唱えた考え方)だ。西側世界の中で潜んでいたこの新マルサス主義が生き返り、活動を開始したのだ。「封鎖政策」でいくのか、「開放政策」でいくのか、その間での生死をかけた闘いが始まった。


中国を奴隷労働市場とみていたキッシンジャー

 中国を解放しようというヘンリー・キッシンジャーの計画は1971年に本格的に開始された。当時は文化大革命の波が頂点に達していたのだが、彼の計画は、「国民国家体制を元にした社会秩序で保たれている世界」の後にくる世界を前提としているものだった。

 キッシンジャーの思惑では(及び彼の同胞である[日・米・欧]三極委員会の委員も。この委員たちはJFKやJFKの弟の死骸を乗り越えて近代米国の舵手となり、米国の政策を取り仕切っていた)、1971年の時点ではおおむね「第1次産業革命(農業従事者が工業従事者に移行している段階)」の段階にあった中国国民を、そのままの状態にとどめ、安い労働力の供給源にすべきだということだった。そして中国の労働者たちによる生産物は西側の消費市場に輸出するためだけのものにするべきだ、と考えていた。そのような西側の消費市場では、かつて西側諸国内で行っていた第一次産業を自国内で必要としていなかった。キッシンジャーの計画では、そのような第一次産業は他国に輸出されるべきだ、とされていたのだ。というのは、西側諸国の成長はすでに「成長の限界」の域に達していると考えられていたからだ。それは(未来派であるアルビン・トフラーが「第二の波」と呼んだ)産業の発展状態にあるということだった。「脱工業化社会」という新しい時代(トフラーの『第三の波』からの引用)のもとで、人類は情報産業を主体とした社会に「進化」しつつあると期待されていた。

 1978年の自身の論文を解説する際に、トフラーが語ったのは「第三の波」の出現と、工業文明の衰退についてだった。

 「いま時代は声をあげて発展をやめようとしています。工業文明は、もはや最終段階に到達したという危機に直面しています。そして新しく、まったく異なる文明が、世界規模で出現しようとしているのです。私たちは急速に、新しく、より洗練された世界に進化しようとしています。その発展を支えるのはいま知られている知識よりもさらに進んだ、さらに適切な技術です。歴史上新しい場面へ飛躍しようというこの状況は、以下のような変化とともに出現しているのです。それは、①エネルギー革新、②新しい地政学的勢力関係、③新しい社会制度、④新しい伝達手段や情報網、⑤新しい信念体系や、象徴や、文化的先入観などの変化です。それに従い、全く新しい政治体制や政治の進め方が生み出されなければいけないのです。私たちが技術革新や、社会革新や、情報革新や、道徳や性に対する認識の変化などを如何に成し遂げるかについては、私にはまだわかりません。そういう意味でも、私たちも見たことのある政権(その政権とは人民を代表する政府のことです)の崩壊は、たいていこのような産業の衰退の結果の必然として起こっているのです。簡単に言えば、工業時代における政治体制は、この先私たちのまわりで形成されつつある新しい文明下では、適切な体制ではなくなってしまう、ということです。今の政治体制は廃れつつあるのです。」

 キッシンジャーが、新マルサス主義者の一員として動いていたという事実は、周知の事実だった。それは、1974年に出された、キッシンジャーの悪名高い『National Security Study Memorandum 200 (NSSM-200:国家安全保障覚書200)』において、すでに米国の外交政策は、「発展に向けたもの」から「人口削減に向けたもの」に移行していたことから明白だったからだ。その政策を支えていたものの一つに、ローマ・クラブ(訳注:スイスに拠点を置く民間のシンクタンク)が出した『成長の限界(1972)』があった。ただしこの著書の指摘には、真実も散見されたが、全体的に見れば、独創的な主張も技術的な進歩も欠けていたのである。


 人口増加の主要な抑制策としてNSSM-200が挙げていたのは、出産制限措置と、食料生産の抑制措置だった。キッシンジャーは以下のように問いかけていた。「米国は、食料配給制度を受け入れる準備ができているだろうか?そうすることで自分では人口増加を抑制することができない人々の助けになるのに。」

 キッシンジャーのこの報告は、きれいごとなしのずけずけとした語り口だった。「この先米国経済は、外国からの原料輸入に大きく頼り、その量もますます増加していくだろう。それは特に発展途上国からの輸入だ。ということは、政治面でも、経済面でも、社会の安定に関しても、米国が利益を得るように、そのような原料供給国に対して働きかけなければならない。出生率を減らすことにより人口を削減するよう圧力をかければ、米国の利益獲得は安定するという見通しは強まるので、人口抑制政策は原料の供給や、米国の経済利益につながってくる。もちろん人口を削減するよう圧力をかけることだけが、米国の利益を高める要因ではないが、(西側諸国のように)人口の増加がゼロであったり、緩慢である状況下では、このような人口を抑制しなければいけないといういらだちはほとんどない。

 キッシンジャーやトフラーなど、ローマ・クラブを支持する者たちを中国で見つけられなくなる心配はなかった。というのも、鄧小平統治下の中国では、新しい政治的手腕をもとめる新勢力が出現しつつあったからだ。このような新マルサス主義者たちが好んで行っていた手法は、数学や、コンピューター演算を使って人間を見ようとする手法であり、これらの新マルサス主義者たちは、中華人民共和国国務院内で可能な限り大勢の人々に影響を与えようという動きを即座に見せ、「4つの近代化」を人類の真の発展とは相容れない方向で完遂させようという取り組みを企てていた。

トフラーの『第三の波』が中国に押し寄せてきた

 これらすべての人物たちが、巨大な力を有する趙紫陽の周りを取り囲んでいたのだった。趙紫陽は1980年代を通してずっと彼らの保護者であり、協力者であり続けたのだ。
 
 中国の「一人っ子政策」を打ち立てる際に大きな影響を与えた科学者の一人であり、趙紫陽の密接な協力者であった人物が宋健だ。彼はミサイル科学者であり、ノーバート・ウィーナー(1894-1964、米国の数学者)のhttps://www.washingtontimes.com/news/2012/may/21/chinas-population-control-holocaust/、1950年代のロシア留学中に叩き込まれた。1979年にフィンランドで開催された国際自動制御連盟の第7回の世界大会に出席した後、宋健はローマ・クラブの『成長の限界』を紹介された。米国の航空宇宙技術者のロバート・ズブリンによると、宋健は、原著者名をあきらかにすることなしに、その著書をすぐに中国語に翻訳した。さらに、その著書が主張していた「線型モデル」を使って、人口や、汚染や、原料の喪失がこの先数年間規模でどうなるかをコンピューター演算ではじき出し、中国の理想的な国内人口(言い換えれば受け入れ許容人口)を結論づけた。その数は6億5千万人から7億人としていた。(その人口は、当時の中国総人口より3億人少ない数だった)。ローマ・クラブが提唱するこのような考え方は野火のようにひろがり、すぐに中国の政策に取り入れられた。その結果、史上最悪の「幼児殺し政策」が何十年にもわたって続けられることになり、それから40年後の今になっても、人口増加率の再上昇はおこっていない。(賢明にも2016年には一人っ子政策が取り払われ、今年になってからはさらに子どもの数を二人までとする制限も取り払われているのだが)。

 ケンブリッジ大学の研究者であるジュリアン・ゲワーツ(Julian Gewertz)の2019年の論文「北京の未来派(Futurists of Beijing)」によると、中国の国家科学技術院の院長として、宋健は趙紫陽と密に連携をとり、中国の科学技術の考え方をローマ・クラブの考え方と結びつけ続けるよう取り組んでいたという。[1]

 アルビン・トフラーの考え方を中国に持ち込む手助けをしていたもう一人の人物は、中国社会科学院の上級研究者であった董乐山(Dong Leshan)という名前の人物であった。彼は米国に何ヶ月間も滞在し、1981年に米国で「未来派」であるトフラーと出会っている。董乐山はこう記していた。「私が出会い、米国の知識階級の潮流について議論を交わしたすべての人々は、[トフラー]の著書『第三の波』について話していた」と。

 董乐山はすぐに「未来派の学習を行う中国の会」というものを立ち上げ、何ヶ月後かには、トフラーを初めて公式に中国に招いたが、その際トフラーは董乐山に以下のような書簡を送っていた。「貴国の指導者の方々とお会いし、長期的な計画について話をすることになるでしょう」。その指導者たちの中の筆頭に趙紫陽がいた。

 1983年3月、中国の出版社である三聯社は、トフラーの『第三の波』の中国語版を初めて出版したが、すぐに問題が発生した。というのも、その著書の主張は、どの点においてもマルクス主義と明らかに真逆の主張だったからだ。トフラーが概観していた社会革命に関する尋常ならぬ主張は、優生学を焼き直したものに過ぎなかったのだ。ただ「超人間主義」という仮面に変えられただけだった。その主張には、思考や意図が込められてはおらず、盲目的で、非道徳的な力で人類の文明を動かし、状況をより複雑にするにすぎない主張だった。このような盲目的な運命論にもとづく「力」には、人間の意図が抜け落ちており、発展の波の中に、我々人類の進歩をおさえこんでしまおうという主張だった。そして、社会や政治の発展を見る際に、トフラーの主張した「三つの波」を強引にあてはめてしまう傾向も色濃く見られた。(例えば「第一の波」とは「農業/ 封建主義 /国民国家前夜の社会体制」、「第二の波」とは、「工業/ 民主主義 / 国民国家体制」、「第三の波」とは、「情報 / 特権階級による封建制度 / 脱国民国家体制」と単純化されている)。

 当時、トフラーやトフラーの支持者であった中国の人々の考え方は、概して「中国(や、その他の発展途上国)は、汚れた工業化である“第二の波”を通り越して、“第一の波”からいきなり“第三の波”に昇華すべきだ」というものであった。

 1983年に、趙紫陽は以下のように語っていた。「トフラーの“第三の波”には同調できるところがあります。トフラーの考えでは、今日の第三世界の国々は、“第二の波”の発展を通り抜けてこなかった可能性もあるという。これらの国々は、“第三の波の文明”を成し遂げられるような、まったく新しい進路を取ることもできるという。」

 当時の中国が要求していたのは、海岸沿いに「経済特区」を設置することだけだった。その特区において、海外から生の原料や、少し手を加えた原料を輸入することが目的だった。そこで、程度の低い技術を使った工場で、低賃金の労働者たちがそのような原料を完成品に組み立て、第一世界の国々に送り返す、という寸法だった。そしてこのような手段を使って得られたカネを、「第三の波」の科学計画に投資する、という魂胆だった。その計画が力を入れていた分野は、①遺伝子操作であり、②人工知能であり、③情報システムだったのだ。これら3分野が、趙紫陽が将来の中国を見据えて、優先的に取り組んでいた分野であった。大規模な取り組みや、具体的な目標に基づいて大規模な発展を思案し、科学で優先的に取り組む分野を決めていくことは、「ボトムアップ的思考である」として禁じられていたのだ。趙紫陽や、キッシンジャーや、トフラーが促進していた「自由市場理論」とは相容れなかったからだ。

 歴史研究家であるマイケル・ビリングトンの記述によれば、1981年に三極委員会は北京で直接会議を開き、中国をこの封建制度の中に閉じ込めておこうとしていたと書かれていた。ビリングトンの記述にはこうある。

 「1981年5月、ディビッド・ロックフェラーは、北京で開かれた三極委員会の国際会議で議長を務めた。その会議において、チェース・マンハッタン銀行の頭取ウイリアム・C・ブッチャ-が新華通信社に語ったところによると、中国の再建が成功できる唯一の道は、労働者中心の生産を優先した大規模産業や巨大開発プロジェクトなどをやめることしかない、とのことだった。ブッチャ-によると、重工業やインフラ整備に力を入れれば、『二つの重要なものを消費していまいます。ひとつはエネルギーで、もうひとつはお金です。その両者とも中国には豊富にないものです』とのことだった。」

 トフラーの主張が異端とみなされ、1984年の彼の著書の出版が禁じられたもう一つの理由には、トフラーの主張が「政治は経済に隷属すべし」という主張であった点だった。トフラーの神秘的な世界観においては、技術の進歩を進める「力」は、人間の意図によってしか止められないような進歩であった。つまり、政治的な計画や、道義的熟考に基づいて、人間が口出しをしなければ止められないような進歩であったのだ。趙紫陽は長い年月をかけて、中国共産党中央政治局で議論を重ね、「経済を政治から切り離す」ことを主張してきたのだ。そのせいで趙紫陽は、政界の長老たちからの怒りを買い、「趙紫陽は中国に邪悪な企みを注入しようとしている」と思われてしまったのだ。

中国にフリードマンが踏み込んできた

 ミルトン・フリードマンは、1979年に開催された中国の支配者層との会合に招かれ後援を行った西側諸国の一団に加わっていた。その後も中国訪問時は、必ず趙紫陽と繰り返し会っていた。1988年に中国を訪問し、趙紫陽と2時間の会談をもった後に、フリードマンはこんな発言をしていた。「趙紫陽氏の人柄と慧眼に感銘を受けました。趙紫陽氏は経済問題に関して深い知識を有しており、中国の市場規模の拡大を決心されています。趙紫陽氏は、他の人々からの意見や提案に耳を傾け、学び、受け入れる準備が常にできている人物です」

 フリードマンは、以下の3項目を前進させるためにはファシズムさえ厭わないような人物だった。つまり①給料削減、②民営化、③「市場を重視した」経済再建策の3点だ。これら3項目は、社会主義体制を乗り越えた自由を国民に受け入れさせるために必要となるものだった (このような手法は、フリードマンがチリのピノチェト政権を支援した際にも見受けられたものだ)。さらにフリードマンが指摘したのは、強力な中央集権体制としての中国共産党体制は、必ず維持されるべきだ、という点であった。彼はこう語っていた。「同時に、可能な限り趙紫陽氏がなすべきことは 共産党が持つ圧倒的な権力を守りぬくことです。 それを成し遂げるには、熟練した手腕が必要とされるでしょうが。」

 著者がここでどうしても指摘しておきたいことがある。西側諸国の住民たちにとっては非常に重要なことがらであり、理解しておいて欲しいことなのだ。それは、フリードマンや、ソロスや、キッシンジャーといった社会病質者が、折に触れ中国共産党に支援の手をさしのべてきたのは、趙紫陽のような操り人形の指導者に誘導させることにより、中国共産党を「反人類」「反国民国家」を標榜する国家運営に導こうとしていたからだ、という事実だ。というのも、中国共産党による中央集権国家体制が、哲学的に優れた統治者により執られたとしたなら、つまり孔子のいう「天命思想」に基づいた統治者により統治されたなら、西側社会の世界を我が物顔で支配したがっている「ユートピア・グローバリスト」たちにとっては悪夢になってしまうからだ。



ジョージ・ソロスと趙紫陽

 1986年に、趙紫陽は中国で初となる、ソロス一族が運営する2つのシンクタンクに資金を出した。その資金は 「中国の解放と再建を実現するための資金団体」から捻出された。その資金団体は、投資家たちから集めた何百万ドルもの助成金や、「経済構造改革協会(Institute for Economic and Structural Reform)により支えられていた。この協会は、趙紫陽の側近である陈一咨(Chen Yizi)が共同経営者として名を連ねていた。さらにこの協会は、「全米民主主義基金”the National Endowment for the Democracy”(つまりはCIA)」とのつながりが強く、全米民主主義基金は、1988年に中国国内に2つの事務所を設置した。

 死後に出版された自伝の中で、趙紫陽が記していたのは、当時、趙紫陽氏には以下のような願望があった、ということだった。つまり、「中国が採用すべきなのは、①自由な報道機関であり、②結社の自由であり、 ③司法の独立であり、④複数政党制の下でも民主主義だ」という願望だった。さらに、ソ連が採用したグラスノスチとペレストロイカを行うべきだ、とも書いていた。しかしこの二つの政策は、ロシア経済を前史状態にまで切り裂く主導力になったものなのだが。さらに趙紫陽の記述によると、彼が求めていたのは、「国営企業の民営化であり、共産党や国家体制の分離であり、市場経済に基づく経済の再建」だった。

 1989年に行われたインタビューにおいてソロスは、ゴルバチョフの偉大さを賞賛した上で、一点だけゴルバチョフの経済政策の不手際を批判したコメントを残している。「ソ連と比べて、中国には、中国共産党趙紫陽総書記という完全なる経済重視主義者が存在し、彼の指示下にある、多くの優秀な若い頭脳からなるシンクタンクも存在しています。」

  1988年から1989年が、ソロスや、フリードマンや、トフラーにとって至福の時期であったことには理由がある。それまで何十年もの間の痛みの後に、ついに成功の果実が実を結ぼうとしていたのだ。それは、それまで西側諸国が苦しめられた来た工業の発展を重視した政治家たちをほぼ追い出すことができていたからだ。それまでの政治家たちは、「脱国民国家主義」の「新しい世界秩序(New World Order)」の考え方にはずっと反対してきたのだ。反マルサス主義者であったドイツ銀行頭取アルフレート・ヘルハウゼンや、米国の経済学者であるリンドン・ラルーシェなどが、依然として西側諸国の人々にとってはやっかいものではあったが、この両名を排除する対策がすぐに執られ、キッシンジャーの悩みは解消された。 (2)

 西側諸国が、超国家支配者層により牛耳られていただけではなく、「鉄のカーテン」の向こう側にあった共産主義国家も、これらの超国家支配者層が唱える「新世界秩序」の名の下に、経済的に破壊されていたのだ。ベルリンの壁は揺るぎ、ソ連は崩壊し始めていた。

 これらのすべての「成功例」とはちがい、アジア内部では、或る動きが起ころうとしていた。それは「第四次産業革命」に抗う政治指導者たちによるものであった。そして彼らにより、「何か」が抜歯される必要があったのだ。

天安門広場でのカラー革命の失敗

 ここで登場したのが、CIAのジェームズ・リリー(彼は中国大使でもあった)であり、全米民主主義基金であり、ジョージ・ソロスだった。彼らはすべての資源を使って1989年6月4日のカラー革命を大躍進させたのだった。その結果、天安門広場に集まっていた学生たちが暴徒化したのだ。

 その手口として、まずは、近代のカラー革命を理論的に支える米国の経済学者ジーン・シャープを登場させた。彼は天安門広場での抗議活動の際、北京に9日間滞在していた。また、ラジオ局の「ラジオ・フリー・アメリカ」のアジア支所から、CIAが手を加えたプロパガンダを山のように流させた。さらには学生抗議者たち中の過激派に対して訓練や、資金や、武器さえ与えていた。武器とは具体的には、火焔瓶や銃だった。そうすることにより、混乱を招くような工作を行ったのだ。もともとこの抗議活動は、ただの平和的な抗議活動であったのにである。中国におけるCIA支所が用意したものは多かったが、その中には、過激派の無政府主義者の学生たちも含まれていた。これら無政府主義者の学生たちが先導して中国人民解放軍の軍人を数十名殺害することになったのだ。これらの軍人たちの燃やされた死骸は30年後の今でも人々の心を苦しませている。クーデターが失敗に終わり、工作により政府主導の大虐殺を引き起こし損なったため、グローバリストたちができたことは、「これは”ホロコースト”と同じく、中国政府が行った虐殺行為だ」という嘘話を、今日に至るまで人々に知らしめることだけだったのだ。

  血の海を起こさせることに失敗し、たった200人~300人の死者しかで出なかった(しかもそのほとんどは人民解放軍の死者だった)たため、 この計画は頓挫し、ソロス一族から恩恵を受けていた最も過激だった工作員たちは、米国やカナダなどの安全な地に逃れた。MI6とCIAによるこの工作のコードネームは「イエローバード作戦」だった。香港の犯罪結社である「三合会」から大きな支援を受けたこれらの無政府主義者たちは、中国から追放された後、その多くは高額の報酬や、米国アイビーリーグの大学での学位を手にしていた。ワシントン・ポスト紙のギャビン・ヒューイット記者は、「亡命した民主主義の中核をなすものたちだ」と彼らを賞賛していた。

 1989年の天安門事件の真実について書かれたものは無数にある。この事件に関して、正しい認識をもちたいとお考えの真摯な人々には、こちら、こちらや、こちらの記事を参照いただきたい。そして、この事件については、さらなる詳しい研究が待たれている。

 ソロスは排除され、周恩来が打ち出した方向が維持された


 多くの点において、天安門事件は中国にとっては不幸中の幸いだったと言える。というのも、この事件のおかげで真の悪をあぶり出すことができたからだ。それが趙紫陽であり、ソロスであり、マルサス主義の信奉者たちであったのだ。中国の権力構造に影響を及ぼしてきた彼らの姿が衆目に晒されたからだ。趙紫陽に、「平和的な抗議活動をしていた学生たちを排斥しようとしていた中国政府に反対する人民のための人物」という「英雄的な役割」を負わせようという魂胆は思惑通りには進まなかった。趙紫陽を操っていたものたちの思惑であった、「自由のために闘う戦士として賞賛される」のではなく、この抗議活動はほんの少しの流血事件として幕を閉じ、逆に中国を搾取しようという趙紫陽の思惑が明らかになる顛末を迎えたのだ。

 中国共産党は、即時にすべてのソロスの「工作事務所」を撤去し、工作員であった趙紫陽を生涯追放処分にし、趙紫陽を政権のすべての地位から遠ざけた。趙紫陽は、2005年に亡くなるまで自宅軟禁処分となった。趙紫陽の側近であった陈一咨(チェン・イグアン)も、なんとか逮捕されることからは逃れて、米国に逃げ込み、ソロス一族の手下として長期間役割を果たし、天安門事件以外の多くの工作や反逆行為に関わっていた。

 趙紫陽と、ソロスの手の者であった陈一咨が天安門広場で学生たちにむかって演説をしている。

 こんにち、中国は世界の発展の牽引力となっている。中国が、国民国家の主権を守っている。そしてその国家主権こそが「拡大ユーラシア協力体制(the Greater Eurasian Partnership)」の基礎となっており、国連憲章の前提の中での拡大された多極体制による世界秩序を支えるものだ。①自国の経済主権を守り、②強力な中央集権体制のもとでのトップダウンでの計画設定能力を維持し、③投資家たちに対抗できる国立銀行制度や、銀行の分割体制を維持できているおかげで、中国は成長戦略を創造し続けることができているのだ。そしてそのような成長が行き着こうとしている未来は、トフラーや、ソロスや、シュワブや、キッシンジャーや、ローマ・クラブの人々が決めつけていた「人類の未来像」とはまったく違うものだ。いま中国は、「第三の波」で示されていた主張にのっとった未来像とはまったく違う姿を見せている。その主張によれば、中国は「脱工業文明」システムを採用し、意思を持たない人工知能や、遺伝子操作された人間たちによって運営される国になるだろう、ということだった。その社会とは、一般市民には、ただの横並びの民主主義だけが与えられ、上位階級である科学知識をもつ支配者層が、「科学による封建制度」により下々を支配するような社会だ。いま 「一帯一路/新シルクロード」政策が示しているのは、 道徳的で、知的な主張であり、中国の若き心を最善の形で実現するような、長期に渡る道すじを生み出すものである。この発展を支える機動力は、理にかなった創造力であり、安定した科学の進歩であり、正しい道徳だ。それらが「天命思想」の根幹をなすものであり、周恩来が唱えた「4つの近代化」路線に乗っ取った「一帯一路政策」を完全に実現する機動力となるのだ。

 誤解のないように付け加えるが、「第四次産業革命」や「第三の波」という考え方を活気づける人口頭脳という閉じたシステムと、中国の「新シルクロード」政策という開いたシステムの考え方には共通点が多いのは確かだ。

 両者とも、「システムの構築」が主眼であり、強力な中央集権体制を基礎としている。さらに両者とも、政治的な経済についての「科学に基づいた計画」により進められているものだ。

 「人間の意図」や、「道徳性」や、「創造性」といった視座をもつことだけが、この両者の決定的な違いを見極めることができる術だ。

 「貧者たちを貧困から抜け出させることを求める」という孔子時代からの伝統に従えば、両者両得の協力関係が促進され、人権はより尊重され、創造的な表現が強化された、「脱ソロス」後の社会が形成されうる。 このような要因は、マルサス主義という閉じたシステムにおいてはまったく欠けているものだ。マルサス主義の主張が押しつけているのは、無理矢理な平等であり、数学ではじき出された均衡であり、人類に対する完全な支配しかない。

 科学や技術面において、国家を非線形的な発展に導く意図をもって、コンピューター演算が使用されれば、我々の成長能力に対して「成長への限界」論が持ち出される。マルサス主義体制においては、国家が打ち出す計画はすべて、コンピューター演算という檻の中に閉じ込められ、「成長には限界がある」とされて終わってしまうようだ。

 マルサス主義システムがもつ特徴は、「安定性」が第一で、その次に来るのが「変化」だと言える。一方今の中国が取り入れている政策の特徴は、「創造的な変化」が第一で、その次に来るのが「安定性」だといえる。

 習近平は自分自身のことばで、この過程を以下のように表現した。「発展を調整するという考え方は、均衡のとれた発展と、不均衡な発展をうまくつなぎ合わせる、ということです。均衡のとれた発展の後に、不均衡な発展が生まれ、その後調整が行われる。これが発展の道すじといえるものです。均衡と不均衡は絶対条件の関係にあります。発展をうまく配置することに力を入れることは、平等主義を追い求めることと同意ではありません。もっと重要なのは、機会を平等に与えることであり、その機会の基となる材料をうまく配置することなのです。」

 以前行った演説の中で、習近平はトフラーの「第三の波」の主張を否定し、自身の考えを以下のようにさらに発展させていた。

  「私たちは、革新こそが成長の主要な源になると考えなければいけないのです。革新こそが成長を成し遂げる核心です。さらに人的資源こそ、発展を支える主要な源であると考えなければいけないのです。私たちは理論面でも、システム面でも、科学面でも、技術面でも、文化面でも、革新を促進していくべきなのです。党や、政府や、社会における日常生活において、この「革新」を、最大の課題とすべきなのです。16世紀以降、人類はこれまでなかったような大きな革新期に入りました。ここ5世紀の間に、科学技術の革新がなしとげたものは、それ以前の何千年間もの発展をすべてあわせたものを凌駕するものでした。科学革命や、産業革命が起こるたびに、世界の発展の概観と様式は大きく塗り替えられてきました。第二次産業革命以来ずっと、米国が世界覇権を維持してきました。それは、米国が常に指導的立場に立ち、科学や産業の進歩において大きな利益を受け続けることができていたからです。」

 従って、「中国のせいで我々に問題が生じている」などという考えに再度ふけってしまったのであれば、すこし立ち止まって考え直して欲しい。そしてこう自問して欲しい。「なぜソロスは中国に入り込むことを許されていないのだろうか?我々の国にはズカズカと入り込んできているのに。」


脚注

 (1) 注意しておくべきことは、ソロスや趙紫陽に従っていた西側の技術主義者や、拝金主義者などのゾンビたちが追い出された後の1990年代に、宋健は、マルサス主義的な思考を再構築して、より理にかない、良心的な考え方に変え、人口抑制政策ではなく、大規模な経済発展による人口問題という爆弾問題の解決に取り組んでいた。宋健は1996年に北京で開催された「ユーラシア・ランドブリッジ」会議で中心的な役割を果たし、 「新シルクロード構想」と呼ばれる新しい戦略を明らかにした。その後この構想が2013年には国家的政策に採用されたことを考えると、宋健はいい方向に考えを改めたといえるだろう。

 (2) ヘルハウゼンは1989年に暗殺されたが、その数ヶ月前、ラルーシェは牢獄に入れられ、ラルーシェの国際機関はロバート・ミューラーの働きにより閉鎖された。このロバートミューラーは、その30年後に「ロシアゲート」事件の捜査官をつとめた。


Matthew Ehret is the Editor-in-Chief of the Canadian Patriot Review , and Senior Fellow at the American University in Moscow. He is author of the‘Untold History of Canada’ book series and Clash of the Two Americas. In 2019 he co-founded the Montreal-based Rising Tide Foundation . Consider helping this process by making a donation to the RTF or becoming a Patreon supporter to the Canadian Patriot Review

 

 

核戦争=世界大戦の危険につながりかねない「対中」日米同盟、NATOとの合同演習


世界大戦の危険につながる「対中」日米同盟
<記事原文 寺島先生推薦>
The US-Japanese Alliance Against China Risks World War 

クリストファー・ブラック 

Asia-Pacific Research, 2021年8月5日  
New Eastern Outlook 2021年8月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年8月13日

 

 2003年、私を含む数人の弁護士が北朝鮮の社会主義について学ぶために北朝鮮を訪れた際、1950年に共産党軍がソウルを制圧して米軍司令部を占拠した際に入手した米軍の文書を見せられた。その文書によると、北を侵略したのはアメリカとその傀儡である韓国で、その逆ではなかった。その目的は現地の共産主義勢力を潰して中国を攻撃することだった。彼らの計画は失敗し、アメリカの敗北に終わった。しかし、私が驚いたのは、1945年に終結した日米戦争の末期に韓国に残っていた日本陸軍の将校が、アメリカ人に助けと助言を与えていたことを示す文書があったことだ。二つの成長しつつある帝国アメリカと日本が太平洋で互いに戦争をした。しかし最終的には、敗れて占領された日本は、世界支配を目指すアメリカ帝国にすぐに合流した。朝鮮はアメリカへの日本の忠誠心を示す最初の証拠となった。この忠誠心は、日本が敗れたからというだけでなく、アメリカの資本と日本の資本が、中国の征服と搾取という同じ利益を持っているからこそ、日本から容認されたのだ。

 7月6日、日本の麻生太郎副総理は自民党の会合で、台湾は中国の不可欠の部分であることから、その権利があるからと言って、中国が台湾を支配しようとする行動をとった場合、中国のそのような行動は「日本の存立危機事態」であるため、日本は台湾を防衛すると述べた。

 「もし大事件が起こったとしたら、それは日本の存続を脅かす事態に関連していると言ってもいいでしょう。そうであれば、日本とアメリカは一緒に台湾を守らなければなりません」。

 なぜ、それが「日本の存立危機事態」になるのか、彼は説明しなかった。

 彼が日本の首相の意図を代弁したことは明らかである。台湾における中国の行動に干渉することは、中国への侵略であり、自衛隊が攻撃的な行動をとることを禁じた日本国憲法に違反し、国連憲章にも違反することは明らかである。

 これに対して中国は、中国が台湾を掌握したときに日米両国が干渉しようとすれば、これを打ち破る用意があると何度も表明している。そして、アメリカや台湾のすべての行動は、中国がそのことをするよう挑発している。アメリカは、この地域で単独で干渉するには十分な力がないことを認識しており、イギリス、フランス、ドイツ、そして常に熱心なオーストラリアを誘って、アメリカと日本の計画を支援するために南シナ海に海軍を派遣している。第二次世界大戦で大日本帝国と敵対した4カ国が、日本と結託して再び中国を攻撃し、第二次世界大戦で日本の同盟国であったドイツが再び世界に力を行使しようとしているのは、何とも皮肉なことだ。中国人は、1930年代から40年代にかけて日本に侵略され、占領されたという長く苦い記憶を持っているが、韓国人も同じように日本に占領されたという苦い記憶を持っている。 

 1945年にドイツと日本でファシストと軍国主義者が敗北したのだが、それは、ファシストと軍国主義者の最終的な敗北ではなかったことを今、私たちは理解している。というのも、この2つの国と戦った幾つかの政府の内部には、ナチスがソ連で共産主義を潰し、日本が中国で同じことをすることを望んでいたファシスト分子がいたからである。それどころか、ファシズムを支持または容認し、利益を増やすために帝国主義に依存していた世界の資本家分子は、すぐに再編成され、ワシントンの極右派に導かれて、NATO軍事同盟を作り、ソ連への攻撃を続け、現在はロシア、中国、その他の独立国への攻撃を続けている。彼らは今、違う服を着ているが、ナチスや日本の軍国主義者と同じ嘘とプロパガンダのテクニックを使い、中国やロシアに対する次の戦争の準備をしている。

 7月30日、中国政府は英国政府と英国の新型空母「クイーン・エリザベス」を中心とする海軍機動部隊に対して、我が国の領海から離れなければ、報いを受けるだろうということを、警告しなければならなかった。しかし、その一方で、アメリカとフランスは、ハワイ近郊で数十機のアメリカのF22とフランスのラファールによる軍事演習を行い、フランスはタヒチで軍備を強化している。一方、アメリカはF35を含む爆撃機や戦闘機の艦隊を、グアムの大きな基地から小さな基地に分散させた。というのは、グアムであれば、それらの艦隊を中国が迅速に破壊できるからだ。その分散によって、中国はそれらの航空機を破壊することが、より困難になる。このような分散は、通常、戦争が進行中または差し迫っている場合に見られるものだ。

  同時に、ドイツはアメリカと日本を支援するために南シナ海にフリゲート艦を派遣することを発表し、アメリカは今週、台湾海峡にさらに多くの船を派遣した。このようなすべての状況を、軍事力をひけらかすことだと思う人もいるかもしれない。しかし、それは非常に多くの軍事力であり、軍事力をひけらかす以上のことを彼らはしているのだ。

 ドイツの映画監督であるハンス・ルディガー・ミノフは『ドイツ外交政策』という本の中でこう述べている。

 「西側の軍事演習が強化され、戦闘任務の集中が見られているという今の状況が示している現実は、近い将来に米中戦争が起こりうると予測している米軍高官の予測と一致している。例えば、最近、NATOの前欧州連合軍最高司令官(SACEUR)のジェームズ・G・スタブリディス退役軍人の予測によれば、「我々の技術、同盟国のネットワーク、地域の基地は、まだ中国を凌駕している」が、「早ければ10年後には」、少なくとも「南シナ海」では、中国は「米国に挑戦できる立場になるだろう」とのことだ)。スタブリディスは最近、2034年にアメリカと中国の間で起こる架空の戦争を描いた小説を出版した。その一方で、彼は「この戦いに備えるために2034年までもたないかもしれない、もっと早く来るかもしれない」と考えている。彼の軍の同僚の中には、「2034年のことではなく、もっと早く、もしかしたら "2024年か2026年 "にも大きな戦争が起こるかもしれない」と予測している人もいるようである。

 (ルディガー・ミノフの記述はここまで)

 しかし、戦争を求めているのは中国ではない。では、誰がこの狂気を後押ししているのか?西洋のプロパガンダ機関は、軍産複合体の一部であり、その数は膨大である。しかし、最悪のもののひとつは、ハドソン研究所だ。ハドソン研究所は、ランド研究所出身のハーマン・カーンが1961年に設立したもので、彼は核戦争ゲームをしたり、戦争で核兵器を使用する可能性について理論的に説明したりしたことで有名だ。ハドソン研究所の現在の指導者と会員には、マイク・ポンペオやセス・クロプシーなどのファシストや、さまざまなアメリカ政府の政権や米軍機構に勤務していた多くの人々が含まれている。

 セス・クロプシーの経歴にはこうある。

 「米国国防総省でキャスパー・ワインバーガー国防長官の補佐官としてキャリアをスタートさせ、その後、ロナルド・レーガン政権とジョージ・H・W・ブッシュ政権で海軍副次官を務めた。海軍で彼が携わったのは、国防総省の再編成、海洋戦略の策定、海軍の学術機関、海軍の特殊作戦、NATO同盟国との負担分担に関する内容であった。ブッシュ政権下では、国防長官室(OSD)に移り、特殊作戦・低強度紛争担当の国防副次官補の代理を務めた。1985年から2004年までは海軍士官として勤務していた」。

 「1982年から1984年にかけて、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)誌でポーランドの連帯運動やソ連の反体制派への対応などに関する編集方針を指揮した。2002年には米国政府の国際放送局の局長として外交に戻り、同局を監督してイスラム圏へのラジオ・テレビ放送の拡大に成功した」。

 (クロプシーの経歴はここまで)

 つまり、彼は長年にわたる反社会主義者のプロパガンダであり、戦争犯罪者なのである。

 クロプシーは、ワシントンの出来事を伝える米国の右翼誌「ザ・ヒル」に掲載された「Japan Signals An Opening for US in Countering China(日本は中国に反撃を始めることを米国に合図した)」という記事の中で、中国が台湾を支配しようと行動した場合、日本は台湾を支援するという麻生太郎氏の発言を称賛し、中国は「世界支配」を目指していると主張し、近い将来、米国との戦争が起こると予測している。

 さらに、日本の外交・軍事政策が「決定的に変化した」とし、日本の攻撃的行動を禁ずる日本の憲法を否定し、中国に「対抗」するために日本が軍事力と支援を強化するよう彼は求めている。 

 彼は以下のように書いている。

 「台湾を守るのは難しい提案だ。中国人民解放軍は、“第一列島線“において最も強力であり、特に台湾周辺には海・空・ミサイル部隊が集中している。台湾を防衛するためには、米国とその同盟国は、中国のミサイル射程内で活動しなければならず、米国の戦闘力が依存する高価値の資本資産である兵器を危険にさらすことになる」。

 「しかし、日本とアメリカはともに重要な潜水艦艦隊を守備につけている。日本の小型で静かなバッテリー駆動の潜水艦は、アメリカの大型の原子力攻撃潜水艦の有効な相手役だ。潜水艦は、中国が台湾の制海権・制空権を獲得するために使用するミサイルの影響を受けない。高速艇による十分な機雷攻撃と、移動式の地上発射対艦・対空ミサイルの強固なネットワークに支えられれば、日米の潜水艦の増派は、中国人民軍の台湾侵攻を撃退することができるし、少なくとも中国が期待する既成事実を妨げることができる。

  このような戦略的現実を踏まえれば」。

  彼は、「戦争に備える 」ために、アメリカと日本、フランス、イギリスなどの同盟国との間で、より多くの軍事演習を行うことを求めている。そして、彼は「戦争を抑止するためには、戦争の準備が不可欠」という嘘を付け加える。彼が本当に意味していることは、戦争をするために戦争への準備をしているということだ。

 世界の平和と理性の力は、これらの戦争準備を全世界にとっての危険として糾弾しなければならない。中国への戦争は、ロシアやその他の国々を巻き込み、世界大戦、核戦争、そして人類の終焉へとつながるからだ。私たちはこれらの犯罪者を糾弾し、国際刑事裁判所の検察官にアメリカに警告する行動を取るよう要求し、裁判所の裁判権の及ぶアメリカの同盟国の指導者を、セス・クロプシーのような宣伝者を、そして侵略、最高の戦争犯罪、狂気の最終行為を犯すことを共謀している残りのすべての人々を起訴しなければならない。なぜなら、中国との戦争は人間ドラマの最終行為になると私には思えるからだ。急激な気候変動によって私たちが終焉するのを待たなくとも。

 しかし、国際司法裁判所はこれらのことについて何も言わず、国連安全保障理事会は無力化されている。では、犯罪者とその戦争に異議を唱え、もう十分だと言うことができるのは、私たち民衆以外に誰がいるのか。しかし、私たち民衆には何ができるのか?抗議したり、嘆願したり、手紙を書いたり、叫んだり、泣いたり、私が所属するカナダ平和会議のような平和団体に参加したり、できることは何でもして下さい、ボブ・マーリーが呼びかけたように立ち上がり、そしてジョン・レノンが求めたように、「平和にチャンスを与えて下さい」。

 クリストファー・ブラックは、トロントを拠点とする国際刑事弁護士。注目を集めた多くの戦争犯罪事件の訴訟で知られ、最近では小説「Beneath the Clouds」を出版した。また、国際法、政治、世界の出来事に関するエッセイをオンラインマガジン「Ne w Eastern Outlook」を中心に執筆している。 


中国・パキスタン経済回廊(CPEC)により、中国とインドとの関係が緊迫化?

<記事原文 寺島先生推薦>
The China-Pakistan Economic Corridor (CPEC). Strained Relations with India?

Shahbazz Afzal著

グローバルリサーチ、2021年1月25日

 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年2月21日

 

 2013年9月、東南アジア諸国連合サミットで、中国の習近平国家主席は、「一帯一路構想」(BRI)の構想と計画を発表した。これは、中国にとって、野心的で、広大で、入り組んだ貿易・商業網だ。そして、より広い世界への、商品、サービス、資本、人々の巨大化した相互交流である。

 間違いなく、「一帯一路構想」(BRI)は、21世紀に古代のシルクロードを復活・展開させるものだ。中国製品の交易路を再編成し、エネルギー豊かな国の天然資源への道筋を確保する。そして、これらの国々を巨大なインフラ計画と数十億ドルの投資で、根本的に変革することを目指している。アメリカのマーシャル・プランと第二次世界大戦後の西ヨーロッパの再建にある程度匹敵するが、「一帯一路構想」(BRI)は規模と構想力において、それを上回っている。構想の範囲は歴史上比類のないものだ、とも言われている。最近の報告によると、「一帯一路構想」(BRI)は90か国以上と40億人に影響を与える。

 中国・パキスタン経済回廊(CPEC)という「一帯一路構想」(BRI)旗艦計画(中国のカシュガルからパキスタンの深海港であるグワダルまで続く3000キロメートルの回廊)により、パキスタンに600億ドルを超える助成金とソフトローン投資が提供される。完成のあかつきには、中国がインド洋に到達できるようになる。パキスタンと国境を接する中国の遠隔西部地域の新疆ウイグル自治区を世界の他地域に開くだけでなく、中国を他のアジアやヨーロッパにつなぐことになる。つまり、洋上で、ヨーロッパ、アフリカ、他のアジア地域につながることになり、シンガポールやメラカ海峡を経由する海上輸送への依存を減らすことになる。

 間違いなく、パキスタンは中国「一帯一路構想」(BRI)の全体的な成功に不可欠であり、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)が失敗した場合、「一帯一路構想」(BRI)の潜在能力が十分に実現されない可能性がある。アンドリュー・スモールは、彼の見事で洞察に満ちた研究「中国・パキスタン枢軸」の中で、「パキスタンは、中国が地域大国から世界大国へと移行する上で、中心的な部分である」とさえ主張している。

 中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の開始から将来計画までの両国の長期的な関与は、これまでの中国とパキスタンの強固な関係基盤の上に作られている。

 1950年、パキスタンは中華人民共和国を認めた最初の国の1つであった。 1972年のニクソン大統領の中国訪問を促し、同様に中国と西側の正式な関係を再構築することから、イスラム世界への主要な仲介者としての役割まで、パキスタンは、中国から重要な戦略的パートナーとしてだけでなく、「鉄の兄弟」と見なされている。この友情は、壮大なカラコルム幹線道路(1959年に建築が始まり、1979年に完成)の建設によって強化された。この幹線道路は、パキスタンと中国の新疆ウイグル自治区を結ぶ「中国・パキスタン友好幹線道路」としても知られている。

 1950年以来、パキスタンは、広範な軍事および経済計画で、中国と協力してきた。中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は、これらの計画の最新のものと見なされている。中国は、核兵器開発の原料をパキスタンに提供してきた。-そして今日、パキスタンは、核ミサイルを持つ唯一のイスラム教国である。中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は、インドとパキスタンの関係に影響を及ぼしている。インドは、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)を、直接の挑戦と脅威と見ている。それは、経済主導を装っているが、真の意図は、カシミール地域をめぐる、インドに対して起こり得る2方面からの正面軍事攻撃のための軍事協力だ、と見ている。さらに、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は、中国のパキスタンへの地上アクセスを容易にし、経済発展というよりもむしろ、より大きな政治的および戦略的目標をもつものである、とも見ている


 2020年12月、「ヒンズー紙」の報道によると、中国外務省報道官は、記者会見で、最近の中国とパキスタンによる合同空軍演習は、「ニューデリーにメッセージ」を送ることを意図したものか、と問われ、訓練は両国間の「日常的な取り決め」の一部だ、と答えた。ラダックでの中国軍とインド軍の軍事対立の最中での演習であり、その懸念はもっともだ。この最近の「日常的な」合同演習は20日間続いた。中国の日刊紙「環球時報」によれば、「両国からの空軍は大規模な衝突に焦点を当てており、大規模な空中戦や大量および接近戦での軍隊の使用を含んでいる。」

 一部の観測者の議論では、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は、インドに、外交政策の目的、安全保障戦略、貿易政策の見直しを強いている、とのことだ。そして、中国に対する地域的、世界的な経済競争相手としてのインドの驚異的な台頭、インドのカシミール政策が、中国とパキスタンをさらに近づけた可能性がある、と。

 中国とパキスタンの両国は、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)計画を弱体化させ、頓挫させようと、真剣な試みがなされている、との認識を共有している。パキスタン国内でのテロ攻撃は、数千人の命を奪い、不安定さを生み出してきた。 2020年11月、パキスタンの新聞「The Express Tribune」の報道によると、パキスタン当局は「書類を公開したが、そこには、パキスタンでのテロ行為に対するインドの支援について、議論の余地がない証拠を含んでおり」、「インドは中国・パキスタン経済回廊(CPEC)を妨害しようとしていた」とのことだ。 インドは、インドが支配するカシミール内で、パキスタンが不安をかき立てるテロリストと過激派をかくまい、支援していると非難している。

 進行する非難とその応酬は、パキスタンとインドの関係を緊張させ、不安定にしている。中国はパキスタンを最高レベルで支援し続けている。 2020年5月、インドの新聞「The Economic Times」で報道されたように、中国外務省スポークスマンの趙立堅は「我々は、いかなる時も戦略的協力パートナーである。過去69年間、この関係は変化する国際情勢の試練に耐え、岩のように堅固であった。」

 インドは、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)が頓挫することを望んでいるかもしれない。インドの多くの報道機関は、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)をめぐって、パキスタンと中国の不仲や不一致を伝えている。しかし、中国によると、パキスタンとの関係はますます強固になっている。パキスタンへの新しい中国大使である農融(ノン・ロン)は、最近、次のように述べている。「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は、2つの兄弟国の構想の産物である。その構想とは、数十年にわたる強力な二国間協力の絆を反映し、従来の商取引を超えたもので、全ての人にとってお互いに有利な状況となる目標を共有しているものである。」

 カシミール問題は、パキスタンとインド、中国とインドの大部分の問題の中心となってきた。この地域は3ヵ国によって分割、管理されており、パキスタンとインドはすでにカシミール地域をめぐって3度、戦争を行ってきた。

 カシミール地域を覆う絶え間ない戦争の脅威(3つの核保有国間の潜在的な軍事的発火点)にもかかわらず、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は、2021年、急速に進展している、というのが多く専門家たちによる観測である。
 

Shahbazz Afzalは、独立作家であり、政治活動家である。

 

米国は、チベットで中国を標的にする


<記事原文 寺島先生推薦>
US Targets China over Tibet

US Targets China over Tibet

2021‎‎ ‎年1月25日
ジャーナルNEO

著者:‎‎ブライアン・ベレティック‎



 米国議会は最近、いわゆる「チベット政策支援法(TPSA)」を可決したが、それはCOVID-19救済一括法案と、1.4兆ドルの政府支出法案に滑り込ませてであった。米国務省が出資するボイス・オブ・アメリカが「米国議会はチベットを支援する画期的な法案を可決する」という記事で伝えた。‎

‎ その記事は次のように述べている。‎

米国議会は月曜日、中国がダライ・ラマの後継者を任命しようとした場合、中国当局者に制裁を加えるなど、主要分野におけるチベットへの米国支援を増加させる法案を可決した。‎


‎ VOAはまた、次のことを報告している。‎

 
これは米国政府が、ダライ・ラマ継承を妨害する中国当局者に対して、経済制裁とビザの制裁を行うことになり、チベット自治区の首都であるラサに米国領事館を設立できないかぎり、中国政府がこれ以上米国に領事館を開設することを認めないことを、中国に要求している。‎


 VOAは、米国の動きを讃えた亡命「中央チベット政府」(CTA)の言葉を引用した。しかし、この亡命政治運動は、中国のチベット自治区内に住む実際の人々を代表できないし、そして代表していないので、この米国の支援がどれほど問題であるかについてはほとんど言及されていなかった。‎

 この法案は、米国による露骨な中国内政干渉の行為である。そして特にこのようなチベットにおける米国の干渉は半世紀以上続いてきたのだ。‎

ワシントンのチベット介入の長い歴史

 ワシントンによるこの最新の動きは、チベット介入の長く、卑劣な歴史を増大させる。‎

‎ 米国務省独自の歴史課には、1968年の文書「303委員会の覚書」がオンライン・コレクションに含まれており、「チベット作戦に関する状況報告」というタイトルで書かれている。‎

 そこでは、「政治行動、プロパガンダ、準軍事活動、情報活動」を含む「CIAのチベット計画(その一部は1956年に開始された)」について議論されている。この文書は、ダライ・ラマについてと、米国中央情報局(CIA)が彼に対して行った関わりについて言及している。‎

 また、「新しい若い指導者の核」と「チベットの大義への広範な同情」についても議論している。‎それはすべて米国政府によって意図的に設計されたチベット分離主義への幅広い投資の結果であった。

 この文書はまた、チベット独立を全面的に推進する完全なプロパガンダ・キャンペーンであることを認めている。‎

 この文書は次のように述べている。‎

 
政治活動とプロパガンダ分野において、チベット計画は、中国の政権の影響力と能力を軽減することを目的としている。それは、ダライ・ラマの指導の下、チベット人や諸外国の支援を通じて、チベット自治の概念のもとに、チベット内の政治的進展に対抗する抵抗力の創造に向けて行われる。それは、中国共産党の拡大の封じ込め-NSC 5913/1.2(秘密解除されていない資料編の6行)の最初に述べられた米国の政策目標である。‎


 そして、それはまさに米国政府が何十年も前から行ってきたことであり、最近では「チベット政策と支援法」の形で現れている。‎

 「米国民主主義のための国家基金(NED)」は、1980年代に米国政府によって創設され、毎年米国議会によって資金提供され、米国議会と米国務省が共同で監督し、チベットに関する少なくとも17のプログラムがリストアップされている。

 その中には、「国際チベット独立運動」や「自由チベットの学生たち」など、中国チベット自治区に関する分離主義を公然と推進する2つの組織が含まれている。‎

 その他の計画として、「新世代のチベット人指導者育成」や「組織活動やリーダーシップ訓練」などは、米国務省歴史課の文書に記載された計画の直接的な継続であり、1950年代と1960年代にCIAによって実施されたものである。‎

 チベットに関して以前CIAが行ってきたことを、今は米国NEDが行っているという事実は、ウィリアム・ブルムのような米国政府の外交政策の批評家による主張に対してさらなる信頼性を与える。彼は、NEDの全目的は「CIAが何十年もひそかにやってきたことを、やや公然と行うこと」であり、そしてCIAの秘密活動に関連する汚名を濯ごうとしているのです、と指摘した。

 チベットにおける米国の干渉は、アメリカ政府による中国領土内及び周辺での封じ込め、挑発、包囲、弱体化に関わるはるかに広範な戦略の一部に過ぎない。‎

 中国西部地域の新疆に関するワシントンの反中国プロパガンダ・キャンペーンは続いており、また香港での秩序回復の試みが実施されるように中国に圧力をかけようとしている。‎

 米国が支援する様々なカラー革命は、東南アジアを含む中国の緊密な同盟国の国境内、特にタイのような国々で醸成され続けている。ここ数週間、バンコクの通りの「民主化」の抗議者は、香港の反体制派グループと公然と結びつき、チベットと新疆ウイグル過激派双方の分離主義者の旗をいつも掲げ、ますます反中国的性格を帯びるようになっていた。‎

 米国上院は、タイの反政府デモ隊を公然と支持する決議を可決した。そのデモは、米国のNEDが資金援助する組織の支援を受けていて、その一部は反政府運動の中核的指導層を構成している。‎

 すべてを結びつけるのは、実際にチベットに源を発する東南アジアのメコン川沿い諸国への米国務省の介入である。VOAの記事では、次のように述べてさえいる。

・・・・TPSA(チベット支援法案)は、チベットの人権問題、環境権、宗教の自由、そして亡命民主的チベット政府の問題に取り組んでいる。またTPSAは、大規模な中国の水力発電プロジェクトが水を転用し、地域の生態系を脅かしているという、環境活動家や近隣諸国からの長年の懸念を受けて、水安全保障問題に対する地域的枠組みを求めている。‎‎

 したがって、ワシントンの反中キャンペーンの規模と様々な性格は、チベットだけに圧力をかけることに限定されていない。チベットは、中国に対する多くの相互につながった米国の圧力の一つに過ぎない。中国が反発しているように、米国とその依然として大規模で有力なメディア網は、この反応を「侵略」、さらには「領土拡張」とさえ描写しているが、ワシントンの当初の挑発とそれに続く挑発については言及をはぶいている。‎

 何世紀にもわたって断続的に統治してきたチベットに対する中国の支配は、今ほど強くはなかった。前例のないほど社会的・経済的に地域を発展させる中国の推進力によって、ワシントン政界やワシントンDCに拠点を置く分離主義チベット組織に絡みついているチベットの「独立」という概念が、消えゆくフィクションに過ぎないことがほぼ完全に明かである。‎

 ワシントンが失敗した外交政策を追い続けることに固執することは、その規模が大規模であるにもかかわらず、世界の舞台での信頼性をさらに損ない、政治的、そしておそらく経済的にさえ孤立させることになるだろう。チベットに関して中国に新たな「制裁」を実施しようとして、さらに中国との紛争の脅威をエスカレートさせるリスクさえある。‎

 問題は、アメリカ政府のハード面、ソフト面での政治力が、中国の国際関係のブランドと真に競争できるかどうかである。中国ブランドは、経済貿易、インフラプロジェクト、軍事ハードウェアの販売に基づいており、ビジネスのために必要とされるワシントンからの政治的従属がないのだ。‎

 そして、もしワシントンの外交政策が対抗できないという答えであれば、ワシントンの力が世界的に衰退し続け、中国の力がその空隙を埋め続ける中で、ワシントンは次にどのような措置を取るのだろうか。‎


ブライアン・ベレティックは、バンコクを拠点とする地政学的研究者であり、作家であり、特にオンラインマガジン‎‎「‎‎ニュー・イースタン・オマーチ」に関わっている‎‎。‎

 



 

トランプが歴史的なチベット法を承認することによって、中国とインドとの緊張が急激に高まる可能性が

<記事原文 寺島先生推薦> Tensions between China and India may soon rise as Trump approves historic Tibet Act

インフォービックス 

2020年12月29日火曜日

ウリエル・アラウホ著、国際紛争と民族紛争に関する研究者

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年2月5日

 ドナルド・トランプ米大統領は日曜日に歴史的なチベット法案に署名した。米国議会は12月21日にこの法案を可決した。このチベット政策支援法(TPSA)は、主要分野でチベットを支援するものだ。そして、もし中国当局自身が次期ダライ・ラマを指名しようとし、その任命がただチベット仏教徒共同体によって実行されるように、国際連携の構築を求めた場合には、中国当局に対する制裁措置の可能性さえ含んでいる。この法案は超党派の支持を得ており、チベットの首都ラサにワシントン領事館設立を許可することを要求している。最後に、この法案は、資金提供の規定の他に、チベットの環境についての安全規定があり、この問題を監視するためにより広い国際協力を求めている。

 同法はまた、インドに住むチベット人に600万ドル、チベット統治に300万ドル、奨学生交換プログラムに57万5000ドル、奨学金制度に67万5000ドル、チベットの米国特別コーディネーターに毎年100万ドルを割り当てている。この法律は台湾(この地域のもう1つのホット・トピック)にも適用され、台湾の国連機関への参加を支援している。

 中国はそのような動きを内政干渉と見なしており、米国当局に対してビザ発給禁止を課す可能性があると声明を出し、対抗した。

 1995年、中国政府は、ゲンドゥン・チューキー・ニマ(当時6歳)を逮捕した。ゲンドゥン・チューキー・ニマは、ダライ・ラマに次ぐ、チベット仏教で2番目に重要な人物であるパンチェン・ラマの生まれ変わりだと、ダライ・ラマ自身によって認められていた。ゲンドゥン・チューキー・ニマは、1995年以来、北京に拘留されたままで、彼の家族とともに非公開の場所に住んでいる。この事件に関連して、次期ダライ・ラマの選出が懸念される。現在のダライ・ラマ14世、テンジン・ギャツォは今85歳だ。中国の立場は、チベットは国内問題であり、現在のダライ・ラマ14世(インドに亡命中)は分離主義者である。ダライ・ラマは、チベット仏教徒の精神的指導者であることに加えて、インドのダラムサラに拠点を置く中央チベット亡命政権の国家元首である。

 外務省のスポークスマン、汪文潭は先週、アメリカ議会がその法案を可決した後、そのような「中国への内政干渉」は、ワシントンと北京間の「協力と二国間関係」に害を及ぼす可能性があると警告した。いっぽう、ロブサン・センゲ(中央チベット亡命政権の大統領)は、この法律はチベット人に「正義と希望」の「強力なメッセージ」を送るものだと述べた。

 現在、亡命チベット人の8万人以上がインドに居住しており、他の15万人が他国、特に米国とヨーロッパに住んでいる。

 11月23日、チベット亡命政府の長であるロブサン・センゲが、60年ぶりにホワイトハウスを訪れた。 10月、米国はロバート・デストロをチベットの人権特使に任命した。そのポストは2017年から空席であった。

  法案の環境規定は、明らかに中国のチベット地域でのプロジェクトを対象としている。引退したインド当局者のアミタブ・マトゥールは、トランプが法案に署名した今、採鉱などで環境被害を起こしている企業名をブラックリストに載せるという訴訟に、「インドも追随する時が来た」と述べた。

 チベット問題は、中国とインドの緊張を高める可能性がある。特にラダック(訳注 中国軍とインド軍の衝突がインド北部カシミール地方ラダックで深刻化している)の膠着状態後では。緊張はすでに高まっている。 12月14日、インド国防長官のビピン・ラワット将軍は、チベットで中国の開発作業が進められているが、心配の種とはならない。なぜなら、インドは「いかなる不慮の事態にも用意がある」からだ、とコメントした。

 実際、中国は、バングラデシュとインドも通過するヤルン・ツァンボ川流域のチベットに、歴史的な水力発電プロジェクトの建設を計画している。そこでの中国の活動が生態系に影響を与えるのではないか、とニューデリーは懸念している。中国によって支配されているチベット自治区の一部は、インドによって主権を主張されている。それは、カシミール地域の一部であるアクサイチン地域だ。インドは、チベット問題を交渉カードとして使ってきたと、北京からしばしば非難されてきた。

 2013年以来、北京は中国・パキスタン経済回廊インフラ・プロジェクトをすすめており、チベットは中国がパキスタン(伝統的なインドのライバル)にアクセスするためにも重要である。中国・パキスタン経済回廊は、新疆、チベット、青海を含むいわゆる西部開発計画を補完する。いくつかの点で、チベット問題は印中関係の緊張の中心にあると言うことができる。

 ジョー・バイデン次期大統領は、新BECA米印防衛協定の後、強大な米印同盟を夢見ている。そして今、そのような夢は、より現実に近づいているかもしれない。チベットに関するこの新たな展開は、チベットをより強力に支援するように、インドが圧力を受ける立場に置き、中国とインドの緊張をさらに高める可能性がある。今、インドはいわば手を括られた状態だ。もし今、ニューデリーがチベットに関して明確な立場をとれば、中国は必ず報復するだろう。しかし、万が一、QUADグループ(米国、インド、日本、オーストラリア)が、実際にアジア版NATO、またはそれに似たものになった場合、(中国はそれを恐れているのだが)、インドは近い将来、チベットに関して強力な支援を行うのに十分な権能を与えられた、と感じるのではないか?

 北京にとって、チベット(南シナ海と同様に)の権益は不可欠だ。万が一、ニューデリーが干渉した場合、北京は報復するであろう。そうすれば、緊張が高まり、おそらく新しい中印戦争にさえつながる可能性がある。運命のいたずらのごとく、1962年戦争と同じく国境問題をめぐってだ。

  バイデンは、中国とロシアの両方に、一種の「二重の封じ込め」政策を続けると予想される。しかし、バイデン政権下の米国は、主にロシアを敵対視し、ロシアを一種のならず者国家としてヨーロッパから隔離しようとしている。一方、中国に対しては、より「誠意をもって」いわば競争相手として扱っている。ただし「対抗」するインドや他の中国のライバル国とより緊密な繋がりをとりながらだが。そうだとすれば、バイデンはチベットに関して、トランプの政策から撤退することが予想されるかもしれない。しかし、議会での法案に対する超党派の支持は、「人権」と「環境配慮」の名のもとに、バイデンに後退しないように圧力をかけるであろう。したがって、トランプによるモロッコ支持(これは、トランプが後継者に贈った「別れの贈り物」と言われているものだが)と同様、バイデンはまたある意味で、彼の手が絡められていると、気付くかもしれない。

 またぞろ、米国の動きは緊張を高め、関係するすべての当事者にジレンマを生み出したかもしれない。

 

中国周辺の米軍配備図

<記事原文 寺島先生推薦>

A Map Of US Military Presence Near China


タイラー・ダーデン

ゼロ・ヘッジ
2020年12月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年1月16日

 最近のメディアの報道によると、パラオ共和国は米国に、フィリピン、インドネシア、マレーシア、そしてもちろん中国にも戦略的に近接したこの島パラオに、共同利用施設(基地、港、飛行場)を建設するよう要請した。これは、バンク・オブ・アメリカが大げさに指摘しているように、「太平洋における米国のアクセスを改善するだろう」。

 伝えられるところによると、この申し出は、9月初旬に国防長官のマーク・エスパーがこの島国を訪れた際に行われた。パラオ共和国は340の島(180平方マイル)で構成され、西太平洋に位置している。

 米国がパラオのこの申し出を取り上げるかどうかはまだ分からないが、とりあえず、バンク・オブ・アメリカ(B of A)の作成した太平洋、特に中国の近くにある米軍基地と軍配備地図を見てみよう。中国が米国大陸のすぐ近くに12以上の軍事的接点を持っていたら、米国市民はどのように感じるだろうか。
 
us military in pacific

アメリカ軍事産業への中国の新たな制裁は、米軍に大きな損害を与える可能性がある

<記事原文 寺島先生推薦>
  China’s new sanctions against American defence companies have the potential to cause major damage to the US military

RT 論説面 2020年10月26日

英国の作家であり、東アジアを中心とした政治と国際関係のアナリストであるトム・フォウディによる。
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>2020年12月15日



 米国の台湾への武器販売について、北京は新たな制裁措置で警告した。今のところ、この動きは象徴的だが、中国が強硬な対処を望めば、制裁を受ける企業はサプライチェーンに大打撃を受ける可能性がある。

 月曜日の午後、台湾への武器販売をめぐって、中国外務省は多くの米国企業および関係者に制裁を課すと発表した。ワシントンは先週、台湾に対して約50億ドル相当の記録的な武器販売を承認していた。

 一覧表に載せられた企業には、ロッキード・マーティン社、ボーイング・ディフェンス社、レイテオン社が含まれ、「アメリカ軍事産業複合体」としばしば称される企業の中核に及んでいる。ただし、具体的な対策は何か、どうように実施されるのか、影響はどのようなものかについては明らかではない。

 一見、これらの制裁はみせかけのように見える。それらの軍事企業は中国でのビジネスを求めてはいないため、アメリカ市場への影響はない。例外は、ボーイング社の民間部門だが、電子メールで、ボーイング社は中国市場に依然として関与していると述べている。

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A Russia-China military alliance would be a bulwark against America’s global imperialism. Is it time for Washington to panic?A Russia-China military alliance would be a bulwark against America’s global imperialism. Is it time for Washington to panic?


 他方、そのような制裁が戦略的な意味を持たないということではない。第一に、中国は米国の国防兵器製造に必要な「レア・アース」資材で圧倒的な優位性を持っており、これらの制裁が実際に行われると、兵器製造のサプライチェーンは大きな影響を受ける可能性がある。

 第二に、今回の措置がみせかけにすぎないとしても、米国の将来の行動に対して報復する可能性がある、という北京からの警告になる。

 「レア・アース」とは何か?なぜそれらが重要なのか?レア・アースは、主に電子機器、車両、そしてもちろん軍事機器を含むあらゆる種類の製造に優先的に使用される17の物資を指す。

 当然、これらの資源は、世界中の多くのサプライチェーンの基盤を形成している。中国はこの業界をほぼ完全に独占している。ある調査によると、中国は「世界のレア・アース酸化物の約85%、レア・アース金属、合金、永久磁石の約90%を生産している」とのことだ。 2018年には、アメリカのレア・アース輸入の80%までが中国からのものであった。ワシントンはこれを承知しており、不測の事態に懸命に備えようとしている。

 これの戦略的意味は非常に明確だ。米軍は、中国から輸入した材料に大きく依存して、軍事機器を製造している。北京が望めば、これらの制裁は影響を受ける企業のサプライチェーンに大打撃を与える可能性がある。

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US’ latest targeting of Chinese media to ‘curb propaganda’ is, in fact, propaganda in its purest form

 しかし、ワシントンがこの動きを大きなエスカレーションととらえ、ファーウェイ(Huawei)などの中国企業に対する厳しい報復を行うことを考慮すれば、北京が実際にそれを行うかどうかは、政治的意思の問題となる。このような動きは、特に選挙の準備段階では明らかに良い考えではなく、おそらく戦争に結びつくようなシナリオの最後の手段にすぎないであろう。そうであれば、この動きは中国が行う可能性があることについての「警告」、つまり中国は米国企業に対してより厳しく対応する準備ができているという証明、と理解する方がより正確かもしれない。

 1か月前、中国は独自の「統一リスト」を公開した。これは、輸出企業のブラックリストだ。そのブラックリストに載せられている企業との貿易や輸出が禁止される可能性がある。その企業とは、中国の国家安全保障に対する脅威であると見なされた企業だ。中国のこの動きは、米国商務省が中国企業に対して以前行ったことを意図的に反映している。このリスト設定の目的は、中国企業を差別する国、あるいは中国企業の利益を損なう国に対して、自国市場を活用することだ。

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 これが、ボーイング・ディフェンス社をブラックリストの載せることの意味だ。その制裁措置は、商用航空機を供給し、中国で巨大なビジネスを行っているボーイング社の民間部門を慎重に回避している。しかし、ボーイング社が不可侵ではないという明確な警告だ。北京はCOMACC-919を含む独自の商用航空機を開発しようとしているため、さらに強行的になる可能性がある。

 これらすべてを考慮すると、今回の米国兵器産業に対する中国の制裁は、実際には政策までに至っていないが、今後本格的に行うことも視野に入れているという表明である。北京はまだアメリカがレア・アースに依存している現状を利用するまでに至ってないが、中国が適切であると考えるとき、米国企業に対して制裁措置をとる準備があることを明確に示している。

 一つには、台湾は、中国政府にとって大きなレッド・ラインだ。中国がその軍事演習で示したように、台湾が中国に対抗して前進しようとするならば、中国はいくつかの明確な結末を示さなければならない。しかし、極端に不安定になる手段に頼ることはない。

 北京はツールキット(工具セット)を準備しており、特に必要な場合には、それを使う用意があることを我々に知らせたいと考えている。これらの陳列された制裁は、さまざまな方法で本物の牙となる可能性がある。我々は今後注視する必要がある。

「イラク侵略後の世界では、米国が中国について語る話を信じるのは狂気の沙汰だ」ケイトリン・ジョンストン

<記事原文寺島先生推薦>
Caitlin Johnstone: In post-Iraq invasion world, it’s absolutely insane to blindly believe the US narrative on China


RT 論説面


ケイトリン・ジョンストン
メルボルンを本拠地とする独立ジャーナリスト。彼女のウェブサイトはこちら。ツイッターはこちら


<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年9月5日


私のソーシャルメディアからのお知らせがここ数日間チカチ光り続けている。それは毒のある中国に対する醜聞を煽るものたちが動画を共有しようとしてくるからだ。その動画はウイグル族のイスラム教徒が、電車に乗せられて収容所に送り込まれるところを映していることを非難する動画だ。
 
 その動画は実は古い動画で去年出回っていたものだ。しかし2020年になって魔法仕掛けのように再び登場し、みなを驚かせる新着動画のように出回っている。西側の反中国主義者たちは公的に発作的混乱状態に足を踏み入れ始めたようだ。この動きはまさに米国が南シナ海での緊張を高めている中で、ここ数年でもっとも危険で挑発的な軍事演習を実施した時期と重なる。

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