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ロシアは西側の押し付ける「ルール」では動かない―プーチン

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia won’t play by ‘rules’ imposed by West – Putin
The country’s “former partners” have been “manically” destroying international law and communication channels, the Russian president has said
ロシアの「かつての友好的だった国々」は、国際法や通信手段を「無茶苦茶に」破壊してきたと、ロシア大統領が述べた。
出典:RT 2023年4月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月8日

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2023年4月28日、サンクトペテルブルクで開催されたロシア立法評議会の会合で演説するロシアのプーチン大統領。© Sputnik / Alexey Danichev


 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は金曜日(4月28日)、サンクトペテルブルクで開催されたロシア立法評議会の会合で演説を行い、「ある国々」が考案し、押し付けた「いわゆるルール」にモスクワは従わない、と述べた。

 プーチンは、ロシアは現在、西側諸国からの「経済的侵略」に耐えていると述べ、議員やその他の権力部門に対して、この時期を「待つ」のではなく、積極的に取り組むよう促した。最終的な目標は、「わが国が長期的かつ自立的に成功裏に発展するための基盤」を作ることだと強調した。

 プーチンは、国際外交の進め方が最近大きく損なわれ、代わりに「ある国々」が自分たちの「ルール」を押し付けていると指摘した。「私たちの友好国、いや、かつて友好国だった国々が、法的枠組みやお互いの意思疎通の手段を無茶苦茶に破壊し、自分たちの見解やいわゆるルールをみんなに押し付けようとしています。そのルールとは何でしょうか?・・・誰もそれを見ていません」と述べた。

 彼らは隠れて何かを書いていて、彼ら自身もそれを使って隠れて何かをやっている。私たちは彼らと一緒に隠れて何かをするつもりはありません。かといって、彼らのルールに従うつもりもありません。

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 同時に、ロシアは「孤立」を望んでおらず、「友好国」と公平に協力する用意があるとプーチンは説明する。「ユーラシア、アフリカ、ラテンアメリカの友好国とは、現実的で平等、互恵的、独占的な友好関係を拡大していきます」。

 ロシアには、米国を含む西側諸国の国々に「志を同じくする多くの人々」がいることを彼は指摘した。「それでも、エリートたちの振る舞いは違います。だが、これらの国のエリートたちが、常に自国民の最善の利益を目指した政策をとっているわけではないことは、あなたがたも私も知っています。このことは、彼らの身に降りかかってくるでしょう」と彼は警告した。
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ロシアの国会議員は、教育における英語教育の地位を低下させると提案

<記事原文 寺島先生推薦>

Russian MP proposes downgrading educational status of English

英語教育はもはや必修科目にすべきではないと、与党副党首が提案

出典:RT

2023年4月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年5月4日


FILE PHOTO © Sputnik / Dmitry Korobeinikov


 英語教育は、ロシアの学校教育においてもはや必修科目とすべきではない、と与党統一ロシア党の一人の国会議員が、月曜日(4月24日)に語った。スルタン・カムズエフ議員によるこの主張のもとには、ロシアが西側から距離を置くべきであるという考え方がある。

 同議員によると、英語が国際社会において第二言語となっている理由は、多くの国の教育課程で英語を教えることが義務化されているからだ、という。昨年、ロシア教育委員会は、学校で第二言語の学習を必須とすることを取り下げたが、 少なくとも一言語(通常英語)は、基礎学校や高等学校の教育課程では、必修科目として残っている。

 「我が国は、ロシアの教育制度において、親西側の方向性から距離を取る必要があります。このことを実現するために大事なことは、中等教育において英語を必修科目から除くことです」とカムズエフ議員はリアノーボスチ社の取材に答えた。

 「我が国はずっと子どもたちの目線を西側に向けさせてきました。しかし、米国や英国の学校の教育課程にロシア語がどこにあるというのでしょうか?」と同議員は付け加えた。生徒たちに英国学習を強制させる意味はありません。「世界には、中国やインドやアフリカ諸国やアラブ諸国やラテン・アメリカ諸国があるのですから」とは同議員の主張だ。



関連記事:ロシアの学生には、ウクライナでの紛争に関する試験問題が出されるーロシア当局の発表


 カムズエフ議員の記載によれば、ロシアの教育課程に基礎的な軍事訓練を入れることが、「困難である」のは、天文学や描画などの古典的な科目を無視できないからだ、という。学校が集中して教えないといけない科目は、生徒が肉体的や精神的に健全に成長できる科目だ。具体的には、スポーツや心理学や社会性を養うのに適した活動などだ。

 ロシアに必要なのは、「様々な分野での力強い専門家たち、特に技術面の専門家であって、英語しか解さない“他言語話者”ではありません」と同議員は最後に述べた。

 カムズエフ議員は、コーカサスのダゲスタン共和国出身で、与党統一ロシア党の国会議員だ。同議員は、安全保障と汚職問題対策委員会に所属している。同議員は、「酒呑みではないロシア」運動の代表者であるが、この運動はアルコールの消費を禁止する運動として最もよく知られているものだ。今月(4月)初旬、カムズエフ議員は、電子タバコなどの加熱式タバコの禁止を提案した。 また同議員は2021年に、国の代表チームに選ばれたが活躍できなかったサッカー選手を罰する法案を提案している。

ロシアにいる米国シンパ(第5列)といかに闘うか。

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia: A New Purge of Fifth Columnists Approaches

ロシア:第5列の新たな粛清が始まる。

筆者:マシュー・エレット(Matthew Ehret)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年3月26日

<記事翻訳グループ>

2023年3月21日


 近年、多くの人が「ディープ・ステート(闇政府)」という言葉を、米国にのみ当てはまるものとして考えるようになった。確かに、アメリカの軍事、情報、官僚、企業、メディア、学術などあらゆるレベルで第5列が存在することは明らかだが、同じ構造がユーラシア大陸の国々でどのように姿を現しているかを明確に把握している西洋人はほとんどいない。

 本報告の主題に最も関連した一例としては、(ロシアにおける)西側寄りの広大な巣を挙げることができる。その巣の住民は、1990年代のショック療法の暗黒時代に、CIAの指示のもとに台頭した、ヴァイパー(無料通信アプリ利用)、オリガルヒ(新興財閥)、リベラル・テクノクラート(技術官僚)である。もちろん、1999年にエリツィンから引き継いだウラジーミル・プーチン大統領は、ペレストロイカ時代にロシアを略奪した悪徳機関の多くを一掃し、重要な機関の統制を取り戻し、ロシアの軍事、科学、情報の力を国家の手に取り戻した。

 2021年12月9日、市民社会・人権評議会でこの戦いについて語ったプーチンは、次のように述べた。

 「2000年代初頭、私は彼らをすべて一掃しましたが、1990年代半ばには、CIAの職員が顧問として、それどころかロシア連邦政府の正式な職員として働くことさえありました。後でわかったことですが…。私たちの核兵器複合施設にアメリカの専門家が座り、彼らは朝から晩まで、そこに出勤していました。彼らはテーブルにはアメリカの旗がありました。彼らの住処はアメリカであり、アメリカのために働いていたのです。彼らには私たちの生活に干渉するための立派な道具は必要ありませんでした。なにしろ、彼らはすでにすべてを支配していたのですから」。

 プーチンはさらに、CIAが主導する非対称戦争の新戦略について説明した。その手口は、自国ロシアに組み込まれた広大な「市民社会」機構の中で、外国のNGOや狂信的な代理人(ロシアの野党党首であったナワリヌイの例を見てほしい)を利用したものだった。

 「ロシアが自国の利益を主張し始め、主権、経済、軍隊の能力を高め始めると同時に、(CIAは)ロシア国内政界に影響を与える新しい手段が必要となったのです。その手段の中には、様々な組織を装ったかなり巧妙な手段も含まれていて、そこは海外から資金提供を受けていました。

 もちろん、これらの作戦は、かつて多くの弱小国家に火をつけることには成功してきたが、CIAが資金を提供するNED(全米民主主義基金)、あるいはオープン・ソサエティ財団が使うカラー革命的な手法は、ロシアでは非常に限られた成功に終わっていた。というのもロシアでは、より健全な指導者たちがこれらの作戦の多くの資金調達を断ち切り、2015年にはソロスの組織全体を「国家の安全に対する脅威」と宣言、非合法化していたからだ。ロシアはこの問題への着手に25年遅れてしまったが、ソロスを禁止したことで特別な国家連合に仲間入りすることになった。この組織は、中国の主導のもと行動を共にしていた連合であった。中国は機転を利かせて1989年にソロスを禁止しており、ソロスのオープン・ソサエティの活動を非合法化し、その工作員 (中国共産党総書記でソロスの工作員だった並外れた才能を持つ趙紫陽を含む) を逮捕していた。

 プーチンは、政権初期に重要な戦略的権益を民間の手から奪還した後、リベラルな技術者やオリガルヒに遵守させるための新たな最後通牒を設定した。それは、プーチンが定めたルールに従うか、さもなければその通牒を受け入れるというものだった。ある者は刑務所に入り、ある者は聖域を求めてロンドンに向かった(その多くは、「テムズ川のモスクワ」と呼ばれるようになった地域に、不正に得た利益で邸宅を購入した)。また、ルールに則って行動するために残った者もいた。ある者はこの新しい現実に適応しただろうが、他の勢力は第5列として行動し続け、IMFの影響を受けたロシアの中央銀行や地方の権力中枢の金融を操作するレバー(梃子)にしっかりと爪を立てたままであった。

 プーチンが今年(2022年)3月15日に発言したのは、これらの第5列に対してであった。

 「もちろん、彼ら(西側諸国)は、いわゆる第5列に賭けるでしょう。わが国の裏切り者に。私たちと共にここロシアでお金を稼ぎながら、お金を稼ぎながら、彼(か)の地に住んでいる人たちに。彼らの住んでいるところは、地理的な意味ですらなくて、彼らの自身の考えによって決まるのです。隷属的な意識によって...このような人々の多くにとっての住処は、本質的に、精神的にはここロシアではないのです。私たちの同胞ではありません。ロシアと共にある人々ではないのです。このように考えることは、彼らの考えでは、より高い社会集団、より高い人種に属していることの証なのです。このような人々は、もし自分がこの非常に高い階層に繋がる通路に並ぶことを許されるなら、自分の母親を売る用意すらできています。...彼らが全く理解していないのは、もし自分がこのいわゆる「高い階層」に必要とされているならば、自分は自分の民族に最大の損害を与えるために使われる消耗品でしかないことです。」

 ユーラシア大陸を無視して、過去数十年にわたって国家の主権を蝕んできたアメリカやヨーロッパの第5列にのみ目を向ける近視眼的な習慣が、多くの良識ある人々に、ロシアや中国のような国家を「良い」「悪い」のレッテルが貼られた一枚岩として扱うことができると誤解させている。このような単純化された考え方は、不幸にも多くの誤った情報に影響されることになる。

 プーチンを取り巻く本物の愛国者と、欧米が主導するこの第5列との間で現在繰り広げられている戦いを無視すれば、致命的な判断ミスと現在の危機の誤診は避けられない。さらに悪いことに、主権国家に力を与えるために必要な、より広範な政策的解決策の重要な機会が失われ、この損失によって、出現しつつある全体主義的世界秩序と適切に戦う能力が破壊されることになるだろう。


チュバイスの船出

 「この最高のカーストへの通路に並ぶために自分の母親を売る」第5列の代表格の最も露骨な例のひとつが、アナトリー・チュバイスである。彼は最近、トルコにより安全な場所を求めてロシアを離れる(できれば永久に)ことを表明した。より安全な聖域に飛び込むにあたり、チュバイスは国連での「持続可能な開発目標達成のための国際機関との関係特別代表」の役割を放棄した。



 チュバイスは、現存する政治家の中で最も破壊的な役割を果たした。CIAが運営するエリツィン政権で「ソロスの若き改革者」として働いた。彼の側にはイエゴール・ガイダルや1990年代にロシアの略奪と崩壊を実行するために西側によって採用された他の西側の手先がいた。1992年から96年にかけて経済金融政策担当副首相を務めたチュバイスは、ハーバード大学のジェフリー・サックス、ローズ奨学生のストローブ・タルボットらの学者や、さらにはミハイル・ホドルコフシ、プラトン・レベデフ、ボリス・ベレゾフスキー(彼らの多くは1996年にチュバイスの「7人組」を結成した)などの(他者への共感が欠落している)社会病質者である新興財閥の仲間とともにロシア経済のすべての戦略部門の民営化を監督した。

 チュバイスとガイダルは、悪名高い「バウチャー制度*」の開拓者である。この制度は1991年に始まったブッシュ(父)のCIAがハンマー作戦と呼ぶ多段階の略奪作戦を支えた。ウィリアム・エングダールはこの民営化の密集期を厳密に記録したが、その報告によれば、1992年から1994年の間に15,000社以上が民営化されている。ベレゾフスキーのような新しい新興財閥は、飢えたロシア人から購入したこれらのバウチャーを使って、石油大手のシブネット社(30億ドル相当)をわずか1億ドルで買い、ホドルコフスキーはユーコス社(50億ドル相当)の株式の78%をわずか3億1千万ドルで購入した。ソロス自身は、この略奪時代にロシアに20億ドル以上を投下したと自画自賛している。
*1992年の国営企業民営化のスタート時にとられた手法。政府が国営企業を株式会社に改組するとともに、国民に一定金額のバウチャー(民営化小切手)を無料配布、国民はバウチャーと民営化企業の株式との交換ができることとした。ところが、実際にはバウチャーは株式には交換されず、売買もできたことから市場経済化による経済的混乱の中で多少とも現金収入を得ようとする多くの国民によって、大量のバウチャーがそのまま金融業者、企業幹部、投機的資産家などへ売却された。(複数のサイトから)
当時のチュバイス


 チュバイスはサンクトペテルブルクのペレストロイカ・クラブの初期創設者である。ガイダル(後の首相)、コーガン(後のサンクトペテルブルク銀行頭取)、クドリン(後の財務大臣)といった人物も一緒に創設に関わった。2009年にガイダルが亡くなると、チュバイスはガイダル・フォーラムの創設を主導した。それはダボスで開催される世界経済フォーラムの定年会の1週間前に開催され、シュワブ派の技術官僚(テクノクラート)とロシアにいる彼らの気の合った仲間との間のディープ・ステート(闇政府)の調整機関として機能した。

 2013年、プーチンはチュバイスとCIAにいる彼の交渉人(ハンドラー)についてこう述べた。
 「米国CIAの職員がアナトリー・チュバイスの相談役として活動していたことは、今では周知のことです。しかし、さらにおかしなことは、彼らが米国に戻った後、米国の法律に違反し、ロシア連邦の民営化の過程で違法に私腹を肥やしたとして訴追されたことです。」

 プーチンがチュバイスをCIAの情報提供者であると明確に認識していたにもかかわらず、この金融業者チュバイスは非常に強力な力により守られているという証拠が見られた。具体的には、彼はプーチン在任中に他の多くの人々のように粛清されるのを逃れただけでなく、2008年から2020年までは国営技術企業ルスナノ社の執行委員会の会長として大きな影響力を回復していた。この間、チュバイスはJPモルガン・チェースの諮問委員を務め、世界経済フォーラムの「グレート・リセット(一斉刷新)」の主要な構成要素であるグリーンな代替エネルギーによるロシアの脱炭素化計画の主導権を握っていた。

 12年間の在任中、チュバイスはルスナノ社を風車や太陽光発電の開発に資金を提供する手段として利用し、Hevek Solar(ロシア最大の太陽エネルギー企業)に4億ドルを提供、5億2000万ドルの風力エネルギー開発基金を創設した。

 2021年11月16日、ロシア財務大臣(同じ穴のムジナであるアレクセイ・ウリョカエフ)が逮捕された翌日、ルスナノ社の事務所が家宅捜索されたのだが、チュバイスの保護者は、会社にはもういられないだろうが、逮捕はされないし、新しい破壊的な試みに進むことになるだろう、と彼に保証した。チュバイスの次なる仕事とは何だったのか? その次なる仕事とは・・・

 2021年12月末までに彼は国連で持続可能な開発目標を調整するロシア大統領特使に任命されたことが発表されたのだ。この役職において、チュバイスは恥ずかしげもなく、ロシアの経済を国連の気候市場に適応させ、IMFと世界銀行の命令に完全に服従させることを求め、2022年1月8日に次のように述べていた。

 「ロシアの気候変動市場は、国際的な投資にとって非常に魅力的なものになると確信しています。そこで、ロシアの起業家が代替事業のために海外から資金を受けることを容易にする必要があります。そのためには、世界銀行、国際通貨基金、経済協力開発機構といった主要な国際機関と、この分野で創設されるロシア市場の基本ルールの調和を図ることが必要です」。

 チュバイスは、グレート・リセット行動計画(気候変動とコビド19という二重の危機をひとつにまとめたもの)にしたがって、「ロシアのエネルギーのグリーン化」の先頭に立っただけでなく、ロシアの中心部で外国資本の医薬品複合体の成長に資金提供するためにルスナノ社を利用した。最近、ロシアの巨大製薬会社でコビド19ワクチン製造社ナノレックが2020年と2021年にルスナノ社から数十億ルーブルを受け取り、タチアナ・ゴリコワとヴィクトル・フリステンコ(その息子が同社の主要株主)の夫婦コンビを豊かにしたという大きなスキャンダルも浮上した。

 ロシアの公務員や民間企業には、この他にも第5列と呼ばれる人たちがいるが、新たな粛清のにおいが漂っているのは確かである。


今、進行中の大転換

 「高位カースト」を代表する西側の強力な勢力は、ロシアとの関係を断ち、その関係喪失によって、裏切り者の心を持っているのにぐっすり眠っていた多くの人物は守られなくなってしまった。世界経済フォーラムは3月8日、ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、アマゾン、ビザ、ペイパル、マスターカード、アップル、IBM、ユニリーバ、ペプシコ(まだある)といった多数の外国WEFパートナー企業とともに関係を断絶した。

 ロシア経済をよりしっかりと統制できるようにするために国家主義勢力を強化する動きが急速に進んでいる。これはセルゲイ・グラジエフ大統領顧問が主導する、金融と長期計画に対する国家統制を強化して「中国-EAEU代替金融/通貨システム」を構築しようとする新たな事業である。長年欧米の寡頭支配層の強い影響下にあった金融部門を支配することは極めて重要である。つまり、もしロシアが来るべき嵐を乗り切るだけでなく、それから抜け出すためには、プーチンが願望する「極東と北極の文明成長の枠組み(パラダイム)」に必要な大規模事業を建設する経済主権と力を持つことが必要なのだ。

 チュバイスは、今この瞬間を選んで船から逃げ出した一匹の大ネズミに過ぎないが、他にも必ずや続く者があるだろう。しかし彼らとは違い、この危機においてロシア愛国者として歩く道を選んだ人々の心の中では、新たに神を恐れる気持ちが目覚めているのかもしれない。世界がより多極化した新しい未来に向かいつつあるからだ。

 本論の最後はプーチン大統領の言葉で締めくくるのがふさわしいだろう。「ロシア国民は、真の愛国者とクズや裏切り者を見分け、それが誤って口に入ったら、虫のように吐き出すことができるようになるでしょう。私は、このような自然で必要な社会の自浄作用こそが、私たちの国、私たちの連帯感、団結力、あらゆる課題に対応する態勢を強化する唯一のものだと確信しています」。


マシュー・エレットは、Canadian Patriot Reviewの編集長であり、モスクワのアメリカン大学のシニアフェローである。「Untold History of Canadaブックシリーズ」や「Clash of the Two Americas」の著者である。2019年、彼はモントリオールを拠点とするライジングタイド財団を共同設立した 。

ラブロフ露外相インタビュー:地政学的戦い、ウクライナ、そしてアメリカ例外主義

<記事原文 寺島先生推薦>

Geopolitical battles, Ukraine, and US exceptionalism: Highlights from Lavrov’s big interview
The Russian foreign minister sat down for a discussion on a wide range of issues

露外相、広範囲にわたる問題についての議論のテーブルに。

出典:RT

2023年2月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月21日

ラブロフ

モスクワで、ロシヤ・セゴドニャ国際メディアグループのドミトリー・キセレフ事務局長とのインタビューで話すセルゲイ・ラブロフ外相。© Sputnik/Grigory Sysoev



 モスクワはワシントンとの地政学的闘争に巻き込まれており、ウクライナ危機がその最前線にあると、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が述べた。同外相は、西側諸国は敵対関係の終結に乗り気ではないと付け加えた。

 ラブロフは、2月2日(木)日に行われたロシア国営メディアの多項目に亘るインタビューで、米国がEUの独立性の一切合切を奪っていると非難し、この発言を行った。

以下は、ラブロフ外相テレビインタビューでの主要な発言


1.ウクライナは地政学的戦いの震源地

 西側諸国は、制裁によってロシアを無力化し、「後退の10年」をもたらそうとしている、とラブロフは述べ、ウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の言葉を引用した。

 「我々は地政学的な戦いの中心にいる。それは間違いない」と外相が述べた。

 ウクライナで戦うロシア兵は「英雄」であり、「その行為は、米国の完全な覇権のための条件がまったく存在しなくなる人類の未来のためのものだ」とラブロフは付け加えた。


2.米国の例外主義的信念

 米国は欧州の政治家を「服従させ」、EUから「独立の最後の痕跡すら」奪った、とラブロフ外相は主張した。米国が主張する「民主主義」とは、「民主主義がどのようにあるべきかを他者に押し付ける権利」に他ならない、とラブロフは述べた。

 ロシア外相は、ワシントンが他国に圧力をかけて言いなりにさせ、順守しても何の利点もなく、反対者には罰を与えると脅していると主張した。彼は、このやりかたを「プラグマティズム*の頂点であると同時に、シニシズム**でもある」と呼んだ。
* ドイツ語の「pragmatisch」という言葉に由来する、実用主義、道具主義、実際主義とも訳される考え方。(ウィキペディア)
** 他人の動機に対する一般的な不信感を特徴とする態度。野心、欲望、貪欲、満足感、物質主義、目標、意見などの動機を持つ人々に対して一般的な信念や希望を抱かず、それらを虚しく、達成することのできない、究極的には無意味なものであると認識し、嘲笑や非難に値すると考える。(同上)



 ラブロフによれば、米国の外交政策の核心は、米国の例外主義とワシントンの「無謬性と優越性」に対する信念であるという。


3.ウクライナにおける西側の意図

 ウクライナ紛争が激化し続けているのは、米国を中心とする西側諸国が「自分たちの覇権に対する脅威を排除したと結論づけるまで」止めようとしないからだとラブロフは主張した。ロシアを代表する外交官であるラブロフによれば、キエフは西側諸国によって、モスクワとの和平を求めることを禁じられている。

 「ウクライナ大統領ウラジーミル・ゼレンスキーがロシアとの交渉を法律で禁止したとき、誰も異議を唱えなかった。彼が...ロシアで誰が決定し、誰と話すべきかがわからないと主張しても誰も彼を叱らなかった」。

 ゼレンスキーは、欧米に支配され、操られていることを恥ずかしく思い、心理学で言う「投影」*に陥っているのだろう、とラブロフは示唆した。
* 心理学で、考え方や行動に心の内面が表現されること。自分の性質を他人の性質にしてしまうこと。投射。(デジタル大辞泉)


4.次の「反ロシア」

 ラブロフは、次に「反ロシア」になりうる国はどこか、との質問を受けた(「反ロシア」はロシア指導部が現在のウクライナを表現するのに使っている言葉である)。モルドバは、マイア・サンドゥ大統領の性格から、その役割を担わされる可能性があると述べた。

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 サンドゥは「自由や民主主義とは程遠い特殊な方法で国の舵取りをさせられている」とラブロフは評した。「彼女はルーマニアの市民権を持ち、(モルドバを)ルーマニアと合併させる準備ができており、ほとんど何でもすることができる」。さらに、サンドゥは「駆け足でNATOに加入しようとしている」とラブロフは主張した。

 ジョージアは、サーカシビリ前大統領の時代には、この表現がぴったりだったが、トビリシ*の現政権は、まずは、国益を最優先していると、ラブロフは付け加えた。
* ジョージア(旧グルジア)の首都


5.ウクライナへの支援は必要ない

 ロシアが加盟する地域防衛グループである集団安全保障条約機構(CSTO)について、ラブロフは「ウクライナへの軍事支援を同盟国に求めるつもりはなかったし、今後も求めるつもりはない」と明言した。

 「我々は特別軍事作戦の目標を達成するため、西側が(2014年の)クーデター後にキエフ政権を通して始めたこの戦争を終わらせるために必要なものをすべて持っている 」と彼は強調した。

岸田

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6.米国が設計したグローバリズムに対する中国の見解

 ラブロフは、現在のロシアと中国の関係は過去最強であるとし、「制限も限界もなく、議論に禁止されている問題もない」と言い添えた。

 モスクワも北京も、「国際貿易の既存の規範の枠内で」国家の発展を追求したいだけなのだ。

 「中国は、自国のルールのもと、自国の領域でアメリカを打ち負かす」とラブロフは評価した。ラブロフによれば、これが、アメリカが過去に世界中に広め、利益を得た経済原則を反故にする理由である。

 モスクワの目には、現在のグローバリゼーションは「もはやプラスの特徴を持っていない」とラブロフは言い、「我々が最初にパンチを食らったので、他より早くそれに気づいた」と付け加えた。

 ロシアは、米国の影響を受けた世界金融システムや、米国が現在悪用しているその他のメカニズムへは中国よりその「没入度が低い」、とラブロフは説明した。

 中国がこうしたメカニズムへの関与を減らし、自国の利益を守るための代替手段を生み出すには時間がかかるだろうが、その方向に進んでいる、とラブロフは予測した。

セルゲイ・ラブロフ露外相の記者会見:2022年ロシア外交の成果

<記事原文 寺島先生推薦>

News Conference by Foreign Minister Sergey Lavrov on the 2022 Russian Diplomacy Outcomes

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年1月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月17日

ラブロフ

2022年のロシア外交成果に関する記者会見でのセルゲイ・ラブロフ外相の発言とメディアの質問に対する回答(2023年1月18日、モスクワ)。


記者のみなさん、こんにちは。

 この記者会見は、新年の初めに集まり、昨年の成果と起きた出来事について話し合うことになっています。2022年は困難な年であり、まあ、今までにないような年でもありました。それは、10年以上にわたって醸成されてきた地政学の根深い動向と、主要国の国際的な願望を反映したものでした。

 西側諸国は、ウクライナとその周辺の情勢を主要なメディア、政治、経済の話題にすり替え、ロシア連邦がウクライナに対する「侵略」のために世界経済が混乱していると非難しようとしました。こうした主張に対し、いつまでも反論するつもりはありません。世界銀行、国際通貨基金、国連食糧農業機関(FAO)などの国際機関の統計は、特別軍事作戦の開始よりずっと前から危機が進行していたことを、説得力を持って示しています。プーチン大統領は、主に米国とその同盟国の自己中心的な立ち位置のせいで、世界経済に否定的な現象が出現していることを示す資料を繰り返し引用しました。

 今ウクライナで起きていることは、米国とその同盟国が、ロシア連邦に対する全世界的なハイブリッド戦争*の開始を準備した結果です。誰もこの事実を隠してはいません。これは、公平な西側の政治家、科学者、政治家の発言から明らかです。コロンビア大学の政治学教授であるイアン・ブレマーは、最近の論文で、「われわれはロシアと冷戦状態にあるのではない。我々はロシアと熱い戦争をしている。今は代理戦争だ。そして、NATOはロシアと直接戦っていない。ウクライナを通して戦っている」と書いています。 この事実認定は率直で、この結論は見たとおりのものです。それに反論しようとする人がいるのは不思議です。最近、クロアチアのゾラン・ミラノビッチ大統領が「これはNATOの戦争だ」と発言しました。率直で正直な発言です。数週間前、ヘンリー・キッシンジャーは(最近の論文でNATOにウクライナを受け入れるよう促す前に)、ウクライナでの出来事は衝突であり、あの領土の支配をめぐる二つの核保有国の対抗関係だとはっきり書いています。彼が言わんとしたことははっきりしています。
*正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせる戦争の形態(ウィキペディア)

 西側諸国のやり方は狡猾です。自分たちがロシアと戦っているわけではなく、「侵略」に対応し、領土の一体性を回復しようとするウクライナの手助けをしているだけ、ということを躍起になって証明しようとしているからです。彼らの支援の規模を見れば、西側諸国は対ロシア戦争に大きな賭けをしています。これは明らかです。

 ウクライナをめぐる一連の出来事は、米国が正当な手段で世界的地位を強化する試みをやめ、非合法な方法で支配力を確保しようとする暗黙の動きを浮き彫りにしています。何でもあり、です。かつてアメリカ主導の西側諸国によって作られた、尊敬されていた機構や制度は捨て去られました(私たちがウクライナで見ていることを理由にしているわけではありません)。自由市場、公正な競争、自由企業、財産の不可侵性、推定無罪、一言で言えば、西側の世界的な規範準が依拠していたものすべてが一夜にして崩壊したのです。これらの教義や仕組みに従わないロシアや、その他の異議を唱える国々に、制裁が課されました。制裁は、アメリカの命令に、自分の心を放棄して従うことを拒否するいかなる国に対して、いつでも、課すことができることは明らかです。

 欧州連合は、このアメリカの独裁体制に完全に飲み込ました(このことを長々と議論しても仕方ありません)。1月10日の「EU-NATO協力に関する共同宣言」の署名は、数年前から進められてきたこの変更過程の頂点に立つものでした。この宣言では、同盟とEUの目標は、黄金の10億人の利益のためにあらゆる政治的、経済的、軍事的手段を用いることであると明確に述べられています。これはまさに、NATOとEU諸国の住民10億人の利益のために、と言っているのです。ジョゼップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表の言葉を借りれば、それ以外の世界は「庭」の発展を阻害する「ジャングル」であり、したがって、自分たちの必要性に合わせて再形成し、新しい形態の植民地にして、新しい方法で彼らから冷酷に資源を吸い上げなければならないのです。これらの方法は、悪魔化、恐喝、制裁、武力による威嚇、などなど、あまりにもよく知られたものです。西側は、さまざまな地域の歴史的な友好関係国の間の伝統的な結びつきを破壊し、それらをバラバラにし、不安定化させるという方針をとっています。バルカン半島やソビエト崩壊後にできた「余白」的な国々、特に米国とその「子分」、「調停人」が中央アジアや南コーカサスで行っていることをよく見てみると、このことがよくわかります。

 ウクライナの周りで起こっていることはすべて、長い間に、作り続けられてきたものです。最初のマイダン抗議デモは2004年に行われ、そのとき初めてヨーロッパの当局者が、ウクライナは西側かロシアか、どちら側につくか決めなければならないと宣言しました。それ以来、このどちらか一方を選ばせるという手口は、この地域における西側の政策において一貫して推進されてきました。間違った側を選んだ者、あるいは歴史的、家族的なつながり、伝統や宗教的な信念によって(ウクライナに住んでいても)ロシア連邦と結びついていると信じていた者は、最初は多少穏やかに、そしてその後は情け容赦なくに、虐待され、政治場面から排除され、そして刑事的に告発されたのです。彼らは妥協しない報道家や政治家を殺害し、政府見解を報道しないメディアを閉鎖しました。ナチス警察国家づくりが本格化したのです。実際、それは、西側の祝福を受けて行われました。彼らは「西側につくのか、ロシアにつくのか」という選択肢を使って、西側に反対する人々を特定し、厳しく罰してゆきました。

 NATO-EU宣言に話を戻します。これは興味深い文書です。NATOとEUは、世界的な対立構造の中で、独裁国家に反対す民主主義国家として提示されます。専売特許である対立課題が、世界の耳に入るよう宣言されてきたのです。欧州はその独立性を放棄しています。共同宣言は、欧州をNATOに直接従属させるものです。また、ロシアと中国を地政学的に封じ込めるという問題において、米国の利益に貢献するという約束が含まれています。彼らの宣言した目標は、以前から誰もが知っていたことですが、今では白黒をつけ、米国主導の同盟が世界的な優位性を達成できるようにすることなのです。

 NATOは、欧州大陸の生活を組織することにとどまりません。2022年6月、NATOのマドリード・サミットは、軍事的勢力圏であるNATOが世界規模の取り組みを行う、特にインド太平洋地域と呼ぶアジア太平洋地域との関係で、その取り組みを進めることを宣言しました。 インドとの関係でさらなる問題を引き起こすために、インドを説得しようとしていることは明らかです。彼らの鬨(とき)の声は、「大西洋とインド太平洋地域の安全保障は切り離せない!」です。単なる言葉遊びでしかありません。1990年代以降、安全保障の不可分性という原則に対する同じ取り組みが、欧州安全保障会議(OSCE)とロシア・NATO理事会によって宣言されました。この言葉は、すべての国家にとって平等な安全保障であり、他国を犠牲にして自国の安全保障を強化しない義務という意味で使われていました。今、この言葉はその文脈から切り離され、NATOとインド太平洋地域の利害の不可分性という新たな意味を与えられています。その差は歴然としています。

 いわゆる「インド太平洋地域」において、欧米はロシアや中国に対抗するための勢力圏を作ろうとしています。この目的のために、彼らは、平等、合意、利害の均衡に基づいてASEANを中心に作られた数十年にわたる協力の仕組みと形式を着実に破壊してきました(このことについては黙っていたいのでしょうが)。その代わりとなる軍事的勢力圏を形成しているのです。その典型的な例が、米国、英国、オーストラリアを含むアジアにおけるアングロサクソン勢力圏、AUKUSです。日本もこれに参加するよう圧力を受けています。岸田文雄首相の最近のワシントン訪問で、この方針を確認することになりました。日本は再び軍国主義に走っています。私の理解では、日本は前のめりになって、この動きの邪魔になる憲法の条文を変えようとしています。その過程は進行中です。

 他の地政学的な領域における西側の行動については、今は話しません。米国と西側諸国全体の政策が、今日あらゆる領域で困難を生み出している主要な問題であると私たちはみなしています。要するにこういうことです。ワシントンの国際問題における独裁政策とは、まさに、アメリカ人が地球の反対側であろうと、どこでも好きなことができるということです。自分たちが必要だと思うことをする。他のすべての国は、アメリカの承認なしには何もできない。たとえ、自国の国境でアメリカが作り出す直接的な安全保障上の脅威に対応するためであっても、です。

 ロシア帝国に対して欧州のほぼ全土を動員したナポレオンや、欧州諸国の大半を占領してそれをソ連に振り向けたヒトラーのように、アメリカはNATOとEUのほぼすべての欧州加盟国による連合体を作り、「ユダヤ人問題」の最終的解決を目指したヒトラーのように、「ロシア問題 」を解決するという昔からの目的のためにウクライナを使ってロシアとの代理戦争を行っているのです。

 西側の政治家たちは、――バルト三国やポーランドだけでなく、もっと理性的な国々からも――ロシアに戦略的敗北を与えなければならないと言っています。政治評論家の中には、ロシアの脱植民地化について、ロシアは大きすぎて「邪魔 」になると書いている人もいます。先日読んだザ・テレグラフ紙は、アブハジア、南オセチア、トランスニストリアを解放し、カレリア、ケーニヒスベルク、千島列島は交渉にまわそうというものでした。もちろん、ザ・テレグラフ紙はタブロイド紙ではありますが、三流紙も、時には、第一面の見出しになるような記事を報道するので読まなければなりません。

 このような発言は、我が国の、組織に属さない反対派を含めて、かなりの数にのぼります。西側の政治家は誰もそれらに反論していません。フランスのマクロン大統領は、ロシアとベラルーシを除くすべての欧州諸国を招待する形で、欧州政治共同体の創設を提案しましたが、欧州諸国会議の開催も提案しています。EU加盟国、東方の友好的諸国(グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン)に加え、モルドバ、ウクライナにも門戸を開くべきだと提案したのです。ベラルーシが招待されることはないでしょう。EU諸国と東方の友好的諸国、それにロシアからの政治的に活発な移住者が参加する可能性があります。欧州との関係を維持しようとするロシア地域も招待される可能性があると言われています(マクロン大統領の発表ではなく、その後に出された意見においてです)。私は、すべてがはっきりしていると思います。これは白か黒かの問題ではありません。西側が主張するのとは反対です。これは彼らの世界支配と、処罰を伴う無条件の国家弾圧の戦略なのです。

 西側の政治家たちは、制裁のことばかり言っています。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は最近ダボス会議で、ロシアとベラルーシに新たな制裁を科すと発言しました。これが彼らの狙いです。彼らは自分たちの本性を現しました。国連安全保障理事会の国々が、国際法やその義務に違反した国に対する制裁について議論してきたのは今に始まったことではありません。そして、そのような措置を取った西側諸国は、毎回、制裁は国民を傷つけるものではなく、「政権」を対象とするものであると約束しました。その約束はどうなったのでしょうか。

 彼らは、対ロシア制裁は国民を煽り立て、現在の指導者たちを打倒するための革命を起こさせるためのものだ、と公然と言っています。もはや礼儀もへったくれもありません、礼儀を守ろうともしません。西側は、何としてでも、どんな不正な手段を使ってでも、米国と米国政府がすでに屈服させた西側諸国の支配を、なりふり構わず確保しようします。彼らのいろいろなやり口から分かるのは、歴史的に見ても、多極化する世界の台頭を阻止しようとすることによって、客観的な出来事の流れに抗して行動していることです。このような変化は、米国政府や他の国の政府高官からの命令で起こるのではありません。当然な理由があります。

 各国は経済的に発展しています。中国やインド(私たちの戦略的相棒です)、トルコ、ブラジル、アルゼンチン、エジプト、そして多くのアフリカ諸国を見てください。その膨大な天然資源を考えれば、発展可能性は計り知れません。経済成長の新たな中心が生まれつつあるのです。西側は、自らが作り上げた全世界的統合の枠組みの中で、自らの利益を図るために作られた仕組みを利用し、その発展の邪魔をしようとしています。この点で、基軸通貨としてのドルの役割は決して無視できません。だからこそ、SCO(上海協力機構)、BRICS、CIS(独立国家共同体)、EAEU(ユーラシア経済連合)を通じた接触や、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの提携国との協力において、私たちは西側とその新植民地主義的手法(これは今や隠しようもなくなっている)への依存を避けるために、新しい交流形態を作り出すためにできる限りのことをしているのです。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、このことについて率直かつ明確に語っています。新植民地主義的手法は、昨今の新しい状況において、世界の他の国々から富を奪うというあからさまな目的のために用いられています。信頼できる友人や友好国との取引において、私たち全員に利益をもたらす協力の形態を私たちは発展させているのです。全世界を服従させようとする者たちに発言権はありません、と。

 以上はこの1年を振り返っての感想です。要は、昨日今日始まったことではなく、何年も前から起きていることなのです。このプロセスはまだ続くでしょう。多極化した世界を作り、民主主義と正義の勝利のために、そしてすべての国家の主権的平等の尊重という国連憲章の原則を遵守するために必要な関係を完成させるには、時間がかかるのです。国連憲章は良い基礎となるものです。採択された当時、それは革命的な文書でした。残念ながら、西側はその正しい原則をすべて歪めてしまいました。国家主権の平等性、内政不干渉、紛争の平和的解決という原則を尊重しなかったのです。米国は国連設立以来、何百回となく海外で軍隊を使用しました。その大半は、国連憲章を粗暴に踏みにじったものです。

 多極化した世界秩序を作るには、長い時間がかかるでしょう。これは、歴史的な一時代をまるまる必要とします。私たちは今、この進行過程の真只中にいます。このような大きな出来事に直接参加している人は、すぐにはその全体像を見ることができないことがあります。だからこそ、私たちは常に連絡を取り合い、お互いの意見や感想を共有することを非常に大切にしています。私は、海外の友人だけでなく、ここにいらっしゃるメディアの皆さんのことも念頭に置いています。皆さんからいただくご意見やご質問は、私たちにとって有益なものです。

質問:ロシアと米国を中心とする西側主要国との間で、今年中にウクライナに関する協議が行われる可能性について、あなたはどのように考えていますか? ウクライナ問題解決の文脈で、ロシアはどのような安全保障問題をテーブルに乗せたいのでしょうか? 活発な敵対行動を今年中に止める可能性はあると思いますか?

セルゲイ・ラブロフ:活発な敵対行動に関して、ロシアの軍部は複数回、説明しています。プーチン大統領が再度個人的に確認したのは、特別軍事作戦の目標は現実的なものであり、藪から棒に出したものではない、ロシア連邦の基本的かつ正当な利益、そして主には我が国と国境を直に接している国々との国際的位置関係から決定した、という2点です。

 ロシア連邦に隣接する他の領土と同様、我が国に直接的な脅威を与える軍事施設は一切あってはなりませんし、ウクライナの同胞に対する差別、迫害もあってはなりません。運命のいたずらか、彼らはウクライナ国家の市民となりました。しかし、彼らはウクライナ憲法に完全に則って、自分たちの言語、文化、伝統を守り、その伝統の中で子供たちを育てたいと願っています。その憲法は、他の少数民族の言語の自由な使用と保護を保証しるのです。そこではロシア語が強調されています。この憲法は現在も有効なのです。

 私たちはメディア各社に資料を送付しましたが、それには、憲法の条文と国際条約に基づきウクライナが守るべき具体的な義務、そして憲法やウクライナ国家が守るべき国際的義務に違反して採択された法律の拡大リストが掲載されています。2022年10月のゼレンスキー大統領のZDFとのインタビューには驚きました。彼は、もしロシアの勝利が許されるなら、他の大国も「勝てる」と判断するだろう、と主張したのです。 そして、そのような国はユーラシア以外の大陸にもしっかり存在しています。したがって、彼の言い方では大国は小国を「絞め殺し」、他はみんな自分たちで分割することになります。ウラジミール・ゼレンスキーが協調したのは、彼は異なる筋書きで動くということです。つまり地球上のすべての人は、どこに住んでいようと、世界の他の人と同じように同じ権利を持ち、保護されていることを知るだろうが、それとは異なるシナリオということです。これは、2021年11月(1年前)に、ウクライナ東部には人ではなく「種」が住んでいると発言した人物が述べたものです。さらに前の2021年8月、ゼレンスキーは、ウクライナの市民のうち、ロシア的な感じ方をし、ロシア的な考え方し、ロシア人であり続けたいと思う人がいるならば、自分の子や孫の未来のために、ロシアに向けてさっさと退去すべきだと言っています。この同一人物が、今「すべての人が平等で、思い通りに生きられる日を私は夢見ている」と宣言しているのです。この「美しい」言葉は、西側の利益のために発せられていることは明らかです。だが、こういった発言はすべて現政権の本質を鮮やかに描きだしています。私たちが特別軍事作戦の中核となる目標を手放せない理由は明らかです。

 会談の見通しについては、何十回となく議論され、検討されてきたことです。明白な事実を繰り返すつもりはありません。2021年3月から、私たちはウクライナの協議要請を支持しました。しかも、ウクライナが提案した和解協定案をまとめ上げました。しかし、ウクライナは誰かに叱られて、時期尚早だと言いました。その後、2022年の春以降、夏の間、そして秋口まで、西側の高官たちは、いろいろな言い方で「交渉開始は早すぎる」と繰り返し言ってきました。より強い姿勢で交渉を始められるよう、ウクライナにはもっと武器を持たせる必要があるのです。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は先日、「ウクライナを武装させることが平和への道だ」とあからさまに発言しています。ゼレンスキー自身は、食料、エネルギー、生物の安全保障、ロシア軍の撤退、ロシア連邦の懺悔、法廷での有罪判決など、すべてをごちゃまぜにしたまったく馬鹿げた10項目の計画を打ち出しました。

 ゼレンスキーとの交渉は問題外です。彼はロシア政府との会談を禁止する法律を採択しているからです。西側が言う「西側は話し合う用意があるが、ロシアはそうではない」というのは、言い逃れ以外の何物でもありません。

 ウクライナに関するロシアと西側との協議の見通しについてお尋ねがありました。私たちは、真剣な提案であれば検討し、次にどうするかを決める用意があります。今のところ、そのような提案はありません。西側諸国政府からは、「ウクライナ抜きでウクライナの話はするな」というマントラ*のような主張が聞こえてきます。それはナンセンスです。実際のところ、西側がウクライナに代わってこの間いろいろな決断をしているのです。西側は、2022年3月下旬、合意が完全に正式決定された時点で、ゼレンスキーにロシアと何も合意するな、とも言いました。つまり、西側が電話をかけてウクライナに指図しているのです。西側はウクライナ抜きで、ウクライナのために、今は時期が悪いと判断したのです。今、彼らが口を揃えて言っているのは、「ウクライナに更なる武器を!そして、ロシア連邦に恥辱を!」です。
*サンスクリット語で、本来的には「文字」「言葉」を意味する。真言と漢訳され、大乗仏教、特に密教では仏に対する讃歌や祈りを象徴的に表現した短い言葉を指す。(ウィキペディア)

彼らの中で誰が軍事計画を立てているのかはわかりません。CIAのウィリアム・バーンズ長官は、対外情報機関のセルゲイ・ナリシキン長官と会談しました。バイデン大統領がこの会談の開催を提案し、プーチン大統領も同意しました。会談は行われましたが、何の打開策もありませんでした。

 散発的に、それも稀ですが、西側との接触は行われています。ですが西側は公の声明で述べている以上のことは何も言いません。真相について私たちがどういう立ち位置を取っているかは、周知の通りです。ウクライナについて、西側とだけ話すのは無意味です。西側はウクライナを利用して、これまで長年にわたって欧州大西洋地域に存在していた安全保障制度を破壊しようとしています。この安全保障制度は、不可分の安全保障と対話と協力を通じて問題に対処するという原則に依存してきたものです。OSCE(欧州安全保障協力機構)は、西側が現在せっせと葬り去ろうとしている理想を体現していました。(同じ理想を持った)欧州評議会については事実上葬り去ってしまいました。対話と合意と妥協の探求のために設立されたこれらの組織は、今や、すべての点で、あらゆる場所で、米国(とその金魚の糞となっている他の西側諸国)の完全支配という同じ政策を推進するために利用されています。ウクライナについて「何か考えよう」と言えば、他はすべて彼らの思い通りになるのでしょうか? いや、それはありません。腰を据えて率直な議論が必要となるでしょう。

 西側が自ら閉ざした領域で私たちが主導権をとる必要は今の段階ではないと思うのです。それにはみんなが誇りに思っていた欧州評議会で行われていたことも含まれます。さらに、欧州評議会には、欧州評議会に加盟していなくても参加できる協議会が数十もあります。西側は、ここでもロシアを排除し、欧州評議会の非加盟国にも開かれているこれらの協議会の関連団体の業務に、私たちの代表が参加することに差別的な障害を築くことを決めました。このような状況において、彼らは私たちの代表が報告会に参加することに対して、受け入れがたい条件を提示しているのです。このような状況下に置かれれば、私たちの忍耐は限度を超えるでしょう。最近、私たちは、まさにこういった理由で、汚職防止協議会から脱退しました。これは、私たちがもう汚職と戦わないという意味ではありません。手続き上の権利さえ制限されている状況で、関係機関の会議の際にひじ掛けのない粗末な椅子に座らされ、西側の講義を聞くようなことはしたくないということです。その種の例を挙げればきりがありません。

質問:ロシアが敵対行為を開始したとき、ロシアは自分をよく見せようとしなかった、アメリカなど他の帝国主義諸国と同じことをしている、と多くのヨーロッパ人は考えています。アメリカは地球の半分近くを爆撃し、国際法を犯して領土を奪っているのです。こうした批判的な発言は、この政策の犠牲となったギリシャ、キプロス、バルカン半島で出ています。この問題については、おそらくあなたがだれよりも一番よくご存じでしょう。エーゲ海でトルコがギリシャに脅威を与えているという噂があります。この見方に対して、あなたはどのような反論をしますか?

セルゲイ・ラブロフ:私は議論するのではなく、単に私の見解を述べるだけです。あなたは、ロシアが特別軍事作戦を開始したとき、自分をよく見せようとはしなかった、と言いました。これは興味深い表現です。

 プーチン大統領が何度も指摘したように、私たちはソ連が解体した後、「自分をよく」を見せました。2001年、大統領に就任して最初に行った外遊のひとつがドイツです。ドイツ連邦議会においてドイツ語であいさつをしました。そうすることで、プーチン大統領はドイツとロシアの歴史的和解に率先して関わったのです。この和解は、ベルリンの壁が崩壊し、ドイツが再統一された1980年代後半から1990年代前半に行われました。国家の段階、官僚の段階で行われました。その露独間の歴史的な和解に、プーチンは個人的に貢献したのです。ドイツ統一が実現したのは、まずソ連のおかげであることを忘れてはなりません。他の戦勝国は、控えめに言っても、ドイツ統一に乗り気ではなかったからです。

 国際法を尊重し、欧州と人類全体に利益をもたらすような解決策を模索するという点で、私たちは自分をよく見せることをいとわず、それを繰り返し行ってきました。欧州当局が「ウクライナは欧州とロシアのどちらかを選ばなければならない」と発言した、ウクライナの最初のマイダン抗議デモ(2004年)の例を私は挙げました。プーチンのミュンヘン演説の3年前の出来事です。その時、私たちが期待したのは、①理性が勝利を収めること、②嘘ばかりついて、約束に反してNATOをさらに東に移動させ続けるべきでないこと欧州が理解するようになること、この2点でした。こんなことが許されないのは、そういう口頭の約束があったからというだけではありません。誰も他国を犠牲にして自国の安全を強化してはならず、OSCE加盟国のいかなる組織も支配を主張してはならないことがOSCEの文書にも義務条項としてきちんと書かれているからです。その約束は文書化され、ギリシャ、米国、そしてロシアの指導者が部分的に署名しています。また、最高指導者が署名したロシア・NATO協議会の文書にも、欧州における支配を主張する者があってはならないという規定が盛り込まれています。

 私たちが公式に抗議しているのに、NATOが無謀な前進をしたことを、義務の遵守と解釈できるのであれば、私たちと西側の間に理解は絶対生まれないでしょう。質問されたあなたはそう考えず、この問題を明確に理解していると確信しています。質問されたあなたは、私たちが他の帝国諸国と同じように行動していると言いましたね。そうです、私たちは再び帝国と評されるようになりました。この問題については有識者や専門家にお任せしたいと思います。

 ロシアは膨大な数の民族、300近くの言語、世界のほぼすべての宗教を網羅し、これらすべての民族の民族的伝統が尊重されている国です。ロシアは何百年もの間、多民族・多宗教国家として発展してきました。西側の植民地主義とは異なり、ロシア帝国に参加した国々を弾圧したり、破壊したり、アメリカ人のように自己や統合性を失って皆同じになってしまうような溶鉱炉(メルティングポット)に放り込むようなことは決してしなかったのです。今やアメリカ人の失敗は一目瞭然です。ロシア帝国に参加したすべての国々は、自分たちの価値観、伝統、独自性、習慣、言語を捨てませんでした。

 領土を奪うことに関して、そして私たちも西側帝国と同じ「本能」を持っているのですが、米国は約300回、他国の領土に侵攻しています。ほとんどの場合、中米やカリブ海で常に起こっているように、誰かがアメリカを怒らせたから、あるいは平和と安全に対する脅威を排除するために行ったのです。例えば、サダム・フセインが大量破壊兵器を保有しているとされましたが、これは後に嘘であることが判明しています。リビアでは、ムアンマル・カダフィを民主主義者ではなく、独裁者だと考えて排除しようとしました。彼らは、イラク、リビアなど、社会的・経済的生活水準がかなり高かった豊かな国々をめちゃめちゃにしました。ユーゴスラビアでは、彼らはバルカン半島を壊滅させようとしました。ドイツの利益のためというのが一因でした。ドイツはEUが共通の路線を調整するのを待たず、クロアチアとスロベニア(の独立)を承認したのです。このため、この動きは後戻りができなくなり、バルカン半島諸国が連合体や他の形で統一される可能性が封じられました。セルビアはバルカン半島の西側への従属に反対して立ち上がりました。西側はそれに対して何をしたのか? ジョー・バイデン上院議員は、NATOのセルビア侵略の1年前の1998年に、ベオグラードを爆撃することに賛成だと述べ、アメリカの飛行士を派遣してドリナ川にかかるすべての橋を爆撃し、セルビアに埋蔵する石油を没収することを提案しました。ご記憶の通り、バイデン上院議員の要求は1年後の1999年に実行されました。 その時の『タイム』誌の表紙にはこう書かれています:    「セルビア人を屈服させる。大規模な爆撃が平和への扉を開く 」 誰もそれに反応しませんでした。法廷も提案されませんでした。誰もそれについて考えることさえしなかったのです。

 同様に、アメリカが正当な理由もなくシリアに侵攻し、シリアの都市を破壊し始めたときも、誰ひとり法廷設置を提案しませんでした。例えば、ラッカは瓦礫と化したのです。何十、何百もの死体が何カ月も放置されたままでした。そう、国際社会、国境なき医師団、そして国境なき記者団は声を上げましたが、誰も法廷設置には言及しませんでした。国際刑事裁判所(ICC)が、アフガニスタンでアメリカ人が犯した戦争犯罪を調査すると決めたとき、アメリカはICCに複数の制裁措置を叩きつけ、アメリカの銀行に保管されている裁判所の資金を差し押さえると脅したのです。そして、この国際的に高い権威を持つ国際刑事裁判所(ICC)は口を閉ざしました。もちろん、いろいろ比較することは可能です。

 しかし、私たちはロシアの安全保障を守りました。ウクライナはロシアを攻撃するための橋頭堡にされ、私たちの利益を棄損しようとしました。何よりも、アゾフ海にはアングロサクソン系の海軍基地が建設される予定でした。これは深刻な問題です。

 第二に、ウクライナ憲法で権利が保証されているロシア人を屈辱的に扱うことは、彼らが私たちの同胞であるため、容認できません。彼らは、ウクライナ憲法で保証されている自分たちの正当な利益を守るために、私たちに期待しているのです。2014年の政権転覆は西側が火付け役だったのですが、そのあとウクライナで国民対話を開始する動きは一切ありませんでした。西側は明確に政権の側に立ち、ドネツクとルガンスクを爆撃して反ロシアの目標とナチスの理論と実践に取り組むことを即座に宣言しました。誰もこれらの犯罪を調査していません。法廷も設置されず、それを検討することすらしませんでした。政権転覆を認めない人々に対して開始された戦争の動きが止められたとき、ミンスク協定が結ばれました。ご存知のように、これらの協定に署名したドイツ、フランス、そしてポロシェンコ(プーチン大統領は入っていません)は、最近、ウクライナに多くの武器を送り、戦争の次の段階への準備を整える時間を得るために行ったと述べています。これはどういうことなのでしょうか?

 この件に関しても、私たちは自分をよく見せなかったとお考えですか? ロシアだけがミンスク協定の履行を迫りました。他はすべて、アメリカの助言に従って行動したペテン師だったのです。

 ギリシャとキプロスの苦しみについてです。彼らの更なる苦しみが何であるのか、私にはわかりません。私たちは、ギリシャ人、キプロス人と常に良い友人であり続けてきました。私たちは、両国の指導者に起こった変化に注目しています。

 私たちに対してハイブリッド戦争を仕掛けるために、どのように軍が構築されたかは誰もが知っています。ロシアと何世紀にもわたる歴史的な関係を持つ国は言わずもがなですが、ヨーロッパ諸国の首相や大統領が事実を知らない、あるいは分析できないとは考えられません。ギリシャやキプロスを含むヨーロッパ諸国の立場から私が導き出した結論は、彼らはアメリカの独断に服従することを強いられたか、自発的に同意したということです。アメリカはヨーロッパを屈服させたのです。ヨーロッパは、もはや 「戦略的自治」を考えることは許されないでしょう。1年前にヨーロッパへの米軍増派が議論されたとき、ロイド・オースティン米国防長官は、この部隊は暫定的に配備されるのか、それとも恒久的に配備されるのか、との質問がありました。彼は、この問題はワシントンで決定されると答えました。誰もヨーロッパの意見を聞くことはないでしょう。

 私たちは、このことから結論を導き出しました。そして、ロシアに対する侵略を、押っ取り刀で、従順に支持した人々に関しても、結論を導き出すことになるでしょう。

 この戦争はいずれ終わります。私たちは、いずれにせよ、自分たちの真実を守り抜くでしょう。しかし、その後、私たちがどのように生きていくかはわかりません。すべてはヨーロッパで出される結論にかかっています。

質問:ウクライナでの特別軍事作戦の開始後、実はこれはロシア+ロシア以外の一部の国に対する欧米の集団的な対立であることを、私たち全員が注目しています。ジョージアを含むこの地域の小国は、困難な状況に置かれています。アメリカが支配する政治団体やメディアによる過激な攻撃が絶えません。その所有者であるアメリカ人は、不道徳で倒錯した価値観や、西洋の行動規範を押し付けようとしているのです。これは、私たちの文化や独自性とは相容れないものです。したがって、西側は小国の文化的主権を破壊し、支配権を得ようとしていることになります。世界一体化主義者(グローバリスト)が追求するこの冷笑的な政策の最終的な目標は、これらの小国を自分たちの政治的利益のために犠牲にすることです。ウクライナは、遺憾ながら、その悲しい事例です。ジョージアやその他の地域の小国も同じ脅威にさらされています。このような状況下で、ロシアは西側の破壊的な文化的拡張に対して明確な戦略を持っているのか、それは保守的な価値を守る問題において自然な同盟者となりうる国々との協力を意味するのか、それを私たちは知りたいと思っています。

セルゲイ・ラブロフ:これは途轍もなく大きな問題です。今、ウクライナについて話をしました。昨日、国連安全保障理事会はロシアの主導で特別会合を開き、キエフ政権の宗教的権利や少数民族を含む人権に関する政策がもたらす国際平和と安全への脅威について議論しました。

 文化的な存在感や、伝統的な価値を守ることを通し、否定的な傾向に対抗することは、宗教とロシア正教会やジョージア正教会による活動に直接関係しています。ウクライナでは、(ロシア正教会は)ロシアの影響を与える道具ではありません。むしろ、伝統と歴史を守り、それを世代から世代へと受け継いでいくための機関なのです。 しかし、教会は破壊され、禁止され、司祭は逮捕され、市民権を剥奪されています。こんなやり方で、西側は自らの価値を主張するために戦争を仕掛けているのです。

 海外の聴衆に真実を伝えることのできるロシアで人気のある記者や、政治家、政治学者が制裁に直面した場合、私たちは同じやり方で報復しなければなりません。私たちは報復しなければなりません。しかし、報復は私たちの選択ではありません。冷戦時代においてすら、ソ連とアメリカの研究者たちは定期的に集まり、その時の最新の諸問題を議論していました。 今は、そのような機会はほとんどありません。時折、西側の政治思想のある代表者が、全く非公式な伝達経路で、「あなた方」と「われわれ」の側の人間が参加するかもしれない体験型講座(ワークショップ)を中立の場で共同開催できないか、とおずおずと声をかけてきました。ちょっと前までは、誰もそんなことを尋ねませんでした。昔はある研究所同士で合意していたものです。しかし、このような交流に参加していた西側の研究所は、今ではすっかり怯えています。彼らはかなり強い嫌がらせを受けているのです。

 この価値観を守るジョージア正教の姿勢には、大いに敬意を表します。一般的に、私たちはジョージアの人々と何の問題も起こしたことがありません。

 2008年の時の話です。4月にブカレストで開催された首脳会議で、ジョージアとウクライナがNATOに加盟するとの宣言が承認されたのですが、そこでNATOが一役買っています。アメリカのコンドリーザ・ライス国務長官も、ミヘイル・サアカシビリ(ウクライナ改革執行委員会議長)がツヒンバルと平和維持軍の陣地に砲撃を命ずる1ヶ月前にジョージアに来ています。証拠は出揃っていますが、サアカシビリは興奮のあまり、やることなすこと、みんな自分へのご機嫌取りだと結論づけています。

 ブカレストに発した動きがウクライナの人々の心に届くには、少し時間がかかりました。しかし、結局彼らは、自分たちの土地からすべてのロシア的なものを追い払うようになりました。私たちは、アブハジアと南オセチアがジョージアと関係を結ぶことに賛成です。そこには対話の仕組みがあり、私たちも参加しています。ジョージアが信頼を築くために、共同経済事業を実施することを提案して以来、かなり長い時間が経過しています。 これらはすべて有益なものです。しかし、現在、ジョージア、アブハジア、南オセチアの間のジュネーブ協議の西側参加者(EU、国連、OSCE、米国)は、この形式さえもウクライナ周辺で起こっていることの人質にしようとしています。 こんなことは上品なやり方ではありませんし、専門家らしくもありません。そして、それは、この特定の地域における彼らの目的を、彼ら自身の政治的不満と気まぐれに依存させることを意味します。

 ジョージアとの人的交流が進展していることをうれしく思います。2022年、ジョージアのGDPは10%成長しました。これは、ロシア連邦との観光と貿易関係によるところが大きいです。近いうちに直行便の運航を再開できることを期待しています。

 ジョージアをはじめとするすべての国が、対ロシア制裁に参加するよう公然と促す西側の圧力にさらされているのを私たちは目の当たりにしています。小国とその政府が、自分たちの国益と経済の利益が大事だ、と言う勇気を持っているという事実は尊敬に値します。

質問:先ほど、西側は仮面を脱ぎ捨てたとおっしゃいました。フィンランドのニーニスト大統領が新年のスピーチで、ロシア連邦はナチスのように残忍であるとかなり率直に述べました。それについてどのように思われますか。

 ソ連時代には、「帝国主義」や「植民地主義」という言葉は政治的な表現技法の一部でしたが、今日もまた頻繁に耳にするようになりました。新自由主義、グローバリズムという新しい言葉も出てきました。ゲンナジー・ジュガーノフやロシア共産党が過去30年間使ってきた言葉です。今や、あなたやロシア大統領も使っていますね。今日、ロシアに反対している人たちをあなたはどのように理解しているのでしょうか? これらの思考概念は今日的なものなのでしょうか、それとも過去のものなのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ:ニーニスト大統領の新年の声明と最近の別の会見についてですが、ギリシャやキプロスと同様に、我々はフィンランドを国家間の友好関係の典型例として見てきました。「異なる社会政治機構を持つ国々の共存」という言葉を使ったときからずっと、です。そのフィンランドが(スウェーデンもですが)、これほど早く言い方を逆転させたことにびっくりしています。どうやら、その背景には実行手法の変化があったのでしょう。あるいは、こういった反ロシア的なものはずっとありました。ヨーロッパ共通の家の必要性やヘルシンキ宣言の原則尊重といった美しい言葉でうまく偽装してきたのです。2025年にヘルシンキでOSCE75周年記念サミットを開催する可能性まで言及しています。わかりません。そういった発言に、はっきり言って、私は度肝を抜かされています。

 サーリ・ニーニストは、ヨシフ・スターリンのフィンランド攻撃とウラジーミル・プーチンのウクライナでの行動を直接比較し、プーチンはフィンランドでのスターリンのように負けるだろうと述べました。正直言って、かなり粗野な物言いでした。しかし、ナチス・ドイツへの言及は、果たして彼の本心を反映しているのかどうか、疑問を抱かざるを得ません。フィンランド人は、第二次世界大戦の前後で起こった経緯の中で、(実は)罪のない犠牲者ではなかったという事実を含め、自分たちの歴史についてもっと認識してほしいと思います。フィンランドが主導的な役割を果たしながら、多くの点で)ヨーロッパが以前に作り上げたものを、(主にフィンランドの奮闘で)いま解体しつつあることは残念なことです。しかし、私たちはまだ隣人です。これは変えようがありません。フィンランドは、NATOへの加盟が自国の安全を保証してくれると信じ、喜び勇んで(そして必死になって)加盟を望んでいます。しかし、私たちが述べたように、フィンランドとスウェーデンがNATO加盟(もし実現すれば、ですが)すれば、私たち自身の結論を出さなければなりません。私たちの国境で適切な軍事技術的措置を講じることになるでしょう。

 私は「新帝国主義 」とは言いませんでした。質問者のあなたの隣に座っている人が、ロシアは他の帝国主義国と同じように振舞っていると言ったのでした。それは好みの問題です。植民地時代の慣習については、プーチン大統領が言及しました。西側がやろうとしていることの事実に即した評価です。植民地主義とは、ある国を掌握し、その犠牲の上に生活することを指します。しかし、それにはさまざまな方法があります。17世紀には、奴隷を船で連れ去りました。もう一つの方法は、国や組織を、その計画や事業も含めて、植民者の意のままに従わせることです。それは、今、アメリカがEUに対して行っていることです。アイスランドはEUに加盟していません。幸運でしたね。EUは今や完全に独立性を失い、本質的にNATOの付属品となっています。EUでは、時折、差別されているという公式声明が出ます。フランスのブルーノ・ル・メール経済大臣は、欧州の産業界にガスを国内企業への4倍の価格で販売するのではなく、欧州の利益に配慮するよう同盟国であるアメリカを説得する必要性に言及しました。

 一般に、液化天然ガスへの長期移行は、現在のような価格変動があるにせよ、欧州の生産コストの深刻な上昇を意味します。面白いことに、何年も前に欧州はロシアに長期契約からスポット価格への移行を主張しました。今、ウクライナの事件を背景に、ヨーロッパはカタールと交渉し、新しいエネルギー源を見つけようとしています。カタールは、「喜んで」と、最低でも15年契約を提示しました。欧州は米国との交渉に戻りました。昨日読んだ記事によると、アメリカはよりさらに手頃な価格を提示することに同意しましたが、それは長期契約の場合に限られるとのことです。信頼性と持続可能な展望を持つことは、証券取引所の日々の値動きを追うことよりも重要です。しかし、ヨーロッパの産業はすでに米国に移転し始めています。欧米を含むある政治学者は、ウクライナ周辺で起きている一連の出来事の目的の一つは、欧州の競争力を低下させることだと言っています。これは、中国やその他の競争相手を世界市場において同様に競争力を低下させるための一歩です。

 植民地主義は、発展途上国との関係において顕著に表れています。アメリカの投資がどこに向かっているか見てください。そして、それぞれの投資取引には、必ず何らかの政治的要求か米軍の配備が含まれています。私は(その2つに)大きな違いを感じません。多くの学者が、この現象、つまり新条件における植民地主義をすでに研究していることは知っています。それは最も純粋な形の植民地主義であり、その目標と目的を考えると、それは征服し、その資源を自分たち(植民地主義者)に有利に利用することなのです。

質問:外交には、多くの実行方法があります。主なものが言葉です。2022年の外交界で最も悲劇的だった言葉は何だと思いますか? この1年で希望を与えた言葉、そしていま世界中が必要としている言葉は何でしょうか?

セルゲイ・ラブロフ :非常に詩的な質問ですね。私たちの思考は、ほとんどの場合、具体的な事柄を巡ってです。私たちが何をやっているか、を語っていただいたほうがいいのではないですか。

 でも、1番目のご質問にお答えします。それは「戦争」です。今の進行している事態は私たちの対応です。(プーチン)大統領も言っているように、もう少し早く対応すべきでした。これは、私たちに対して仕掛けられたハイブリッド戦争に対する対応です(対応が遅れたということはありません)。西側は今日、手を変え、品を変え、その行動計画を推し進めています。希望を与える言葉は「勝利」です。そして、あなたが質問された3つ目の(私たちが必要としている)言葉が 「勝利」 だと思います。残念ながら、「交渉」 という言葉を聞きたがる人たちは、自分たちではそれを望んでいるわけではありません。彼らは、対ロシア戦争をできるだけ長く引き延ばすために、この言葉をさまざまに操作しているのです。

質問:ロシアの外交政策において、アラブ諸国はどのような位置を占めているのでしょうか。この分野の優先順位は2022年に改定されたのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ:アラブ人は私たちの長年の忠実な友人です。私たちは、アラブ連盟や湾岸協力会議を通じて、二国間チャンネルで定期的に連絡を取り合っています。昨日、私はアラブ連盟加盟国の全大使と定例会議を行いました。2022年5月、私はカイロにあるアラブ連盟本部を訪問しました。その全加盟国の前で発言しました。

 私たちの立場を理解してくれたようです。これはウクライナの問題ではまったくありません。新しい世界秩序を作り出すことを巡っての問題なのです。それは、アメリカとその同盟国の、支配を意味する彼らの「規則」に完全に従属させるべきだと考える人々と、世界秩序を民主化することを望む人々との間の戦いなのです。

 私はこのことを何度も言ってきました。西側は常に誰に対しても民主主義を要求していますが、彼らが口にするのは、この国家、あの国家、(つまり自国以外の国家)の内部制度のことだけです。それでいて、誰もアメリカの民主主義について質問する権利さえないのです。最新の(アメリカの)選挙に関する研究があります:死んだ人が当選した、ある下院議員は選挙区の登録有権者の2倍の票を得た、郵便による投票があった、その他いろいろ、です。こんなことは許されません。国際関係における民主主義について話し始めると、すぐに彼らは席を立ちます。彼らは民主主義を望んでいません。彼らが必要としているのは世界における「規則」です。ただし、すべての国に民主主義と主権の平等を保証する国際法ではなく、彼らがすべてを決定することを可能にする「規則」を必要としているのです。NATO-EU宣言にはこうあります。「10億人の市民の利益のために」、このジャングルは保護され、植民地的に利用されなければならない、というのです。

 西側からの、前例のない、極めて厳しい、無慈悲で、そして卑屈さを強いる圧力にもかかわらず、アラブ諸国は一国として制裁に加わらなかったのです。私がアラブ連盟を訪問した際、同連盟事務総長が私の演説の前に話してくれたのは、私の到着3日前に西側の大使団が訪れ、私の演説を中止させるように要求した、とのことです。

 アラブ連盟はロシアと友好関係にあるのですから、そんなことはできません、という丁重な返事を西側にしました。その後、西側が要求したのは、私が発言したら、すべてのアラブ連盟加盟国はロシアの侵略を非難する発言をするように、ということでした。ここでも、各国にはそれぞれの立場があり、それをどのように定義するかは自由であるとの丁重な返事を西側は与えられました。3つ目は、西側にすれば、こんな卑屈なことも言わなければいけないのか!という要求だったと思います。その要求とは「ラブロフと一緒の写真に納まってはいけない!」。冗談を言っているわけではありません。

 その後、事務局の人がこれらを紙面化し、各大使館に、この措置について知らせました。別に自慢して言うわけではありませんが、1時間以上にわたる発表の後、大使のみなさんから一緒の写真を撮らせてほしい、との要請がありました。記録として残しておくことは重要でしょう。些細なことかもしれませんが、他の多くの国、特にヨーロッパでは、こんなことでも政治的な勇気が必要とするでしょう。

 アラブ世界との関係には、前向きな勢いがあります。もちろん、違法な制裁があります。国際通貨・金融制度を管理する国々の苦悩が現前の事実としてあります。それらは私たちの貿易・経済関係に織り込まれなければなりません。私たちは、植民地主義者からは隔絶された新しい供給網を構築しています。また、自国通貨での決済に切り替えることも増えています。私たちは多くの世界規模の事業を抱えています。エジプトでは、ロシアは原子力発電所を建設し、工業地帯の建設に参画しています。アルジェリアでも多くの事業があります。モロッコでも有望な計画があります。実際、こういった事業はほとんどすべてのアフリカ諸国にあります。アラブ諸国との貿易・経済協力のための政府間委員会は懸命な取り組みを行っています。また、外務省段階で運営されているロシア・アラブ協力フォーラム(公開討論会)もあります。パンデミックにより、ここ2、3年はひざを突き合わせて会うことができませんでした。現在、この地域のいずれかの国で、定期的な閣僚会議を開催することを、アラブ連盟本部と話し合っています。どこでやるかは友好国の裁量で決められます。一つの選択肢として、ロシア連邦はいつでも会議を主催する用意があります。

 アラブ世界といえば、欧米がパレスチナ問題で何もせずに、毎日ウクライナについて何かを要求しているという事実に対して、私たちの仲間たちが明らかに不満を持っていることに触れないわけにはゆきません。私たちが深く失望しているのは、西側がその国土を破壊した後のパレスチナやリビアの問題解決について、ほとんど進展が見られない事実です。イラクに関する問題もまだ残っています。ロシアを疲弊させ、戦略的に打ち負かすことに比べれば、これらの問題やその他の地域的課題は、西側にとって二次的、時には三次的問題なのです。

 私たちの同胞国は、私たちが異なる立場を持っていることを理解しており、私たちはこれを高く評価しています。私たちは、パレスチナ問題、シリア問題、そしてリビア問題の解決について、絶え間ない努力を続けてきました。イラクに関しては、イラクの同僚と緊密な連携を取るつもりです。これらの紛争について忘れてはいけません。特に、パレスチナ問題は、世界で最も古い未解決の紛争です。国連事務総長は、国際調停機関である「カルテット(国連、米、EU、ロシア)」構成国の一員として、この課題をより積極的に推進することができた可能性があります。

質問:あなたは、ラッカと、この都市を廃墟にした米国による略奪的で攻撃的な政策について言及しました。シリア国民に対する違法、不公正、一方的な制裁、そしてシリアの土地の一部が占領下にあるという事実、これらすべてがシリアの危機を長引かせ、シリア国民の生活状況を悪化させる結果になっています。米国とその同盟国によるシリア・アラブ共和国に対する国際法・人道法の違反や、難民が歴史的な土地に戻ることを禁止しようとする取り組みについて、どのような意見をお持ちですか?

セルゲイ・ラブロフ:この件に関しては、多くのことが言えます。制裁は容認できません。これは、西側による彼らの制裁は一般市民に影響を与えないという言い方が嘘であることを示す、もう一つの例です。制裁の目的は、人々の生活を悪化させ、自国政府に対して反旗を翻させることなのです。こう言ったほうがはっきりしているし、むしろ分かりやすい。

 人道的な分野ではいろいろな批判があります。シリアに届く人道支援物資の量を見てください。シリアが受け取っているのは、国連が必要だと考えている量の約半分です。これは、すべての人道支援事業にとって最悪の数値のひとつです。

 西側は、難民がシリアに戻ることをほんとうは望んでいません。国連難民高等弁務官事務所が、レバノンのシリア難民キャンプで特別調査用紙を配布したのですが、あろうことか、それには、シリアは難民にとって良くない、レバノンにいた方が良い、ということがあけすけに書かれていました。私たちはこの問題に黙ってはいませんでした。彼らは私たちに謝罪し、この質問調査を取り下げました。こういったことを見てもわかるように、いわゆる国際社会が難民をどのように扱っているか、です。

 これはすべて政治的な理由によるものです。実際、国連安保理決議2254号は、シリア国民全体の参加による選挙を行うことなどを定めています。ところが、いざこの選挙になると、シリア・アラブ共和国はすでに欧米の干渉を受けずに独自に選挙を行ったにもかかわらず、西側はどうしても難民も投票できるようなある種の総括的な選挙を押し付けたいのです。西側は難民キャンプにいる人たちを、西側が育成した野党に投票させる方法を知っているのです。これは隠しようもありません。相当な恥知らずです。

 アメリカは、ベネズエラのためにフアン・グアイド*を育て上げることは無意味であり、国民によって力を与えられた人々と協力することが必要であると悟ったのです。同様の傾向は、現在、バッシャール・アル・アサドに関しても表面化しています。アメリカとシリアは、戦争捕虜について水面下で連絡を取り合っています。トルコを含む他の国々は、ダマスカスとの関係を正常化することを提案しています。トルコのエルドアン大統領は、シリアのアサド大統領と会談する用意があると述べました。彼らは私たちに支援を求めてきました。トルコとシリアの国防相がロシアの協力を得て会談し、外相同士の会談も実現しつつあります。一部のアラブ諸国はシリアを離れず、そこに大使館を置いたままです。他のアラブ諸国は、大使館を再開しました。例えば、アラブ首長国連邦は仲介の経験が豊富な国ですが、大使館を前向きに利用することが多くなっています。私たちはこれを高く評価しています。生命力が、現実としっかり手を取り合って、こういった問題をすべて見直すよう双方に迫ることになるでしょう。どこかの国が描いた地政学的な概念の完璧な絵などは論外です。
*大統領ウゴ・チャベスやニコラス・マドゥロの反米左翼政権に対峙させるために、アメリカが育て上げたアメリカの傀儡政治家。

 しかし、イドリブ*は主要な問題の1つです。そこにテロリストの派遣を認めないという合意事項を完璧に守る必要があります。また、シリア北東部のクルド人と政府との連絡も必要です。私たちと意を同じくするトルコの人々がこの問題に懸念を抱いていること、そして米国がクルド人を利用してシリア東部に準国家を作り、クルド人にワシントンの指示に従って行動することを強制し、常にある種の地域不安定要素を作ろうとしていることに苛立ちを覚えていることを、私たちは認識しています。
*シリア北西部のイドリブ県の県都。トルコ国境の南にあり、60km東にある大都市アレッポの経済的影響下にある。人口はおよそ55,000人。スンナ派アラブ人が多数を占めるが、キリスト教徒やクルド人も多く住む。(ウィキペディア)

 私と意を同じくするトルコのメヴルト・カヴソグル外相は、2019年にロシアとトルコが覚書に調印したことを思い起こしました。その文書において、クルド人の協力を確実に得ること、クルド人にはトルコの国境から一定の距離を置いて確実に撤退してもらうこと、この2つを私たちは誓約しました。この選択は、1998年のトルコとシリアの安全保障に関するアダナ協定に近いものでしょう。私のよき友であるメヴルト・カヴソグルは、ロシアは、これまでのところ、その義務を完全には果たしていない、と述べています。彼の言うとおりで、これは複雑な問題です。しかし、ロシアとトルコは、北東部以外にも合意に達しています。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、イドリブに関する議定書に署名したのです。この文書のもと、トルコ共和国に協力する反対派をジャバト・アル・ヌスラやそのほかの同種のテロ組織から切り離し、テロリストが自由を感じないようにすることを誓約しました。2020年には、ロシアとトルコの部隊がアレッポへのM4道路を共同で警備することに合意しました。これまでのところ、この課題を達成することはできていません。したがって、これらの課題を達成するために粘り強く取り組むことが必要です。これらの重要性は依然変わっていません。

 シリアの経済復興に関する問題が重要な役割を果たしています。西側は、トルコ国境を経由し、ダマスカス(シリア政府)の支配下にないイドリブに人道支援を供給する経路を、有無を言わさず保持しようとしています。私たちが、現在、保有している地点は1つしかありません。それも、国際法に基づいて人道支援を届けるための具体的な合法的方法(つまり、シリア・アラブ共和国政府経由)が拡大する、早期復興プロジェクトに融資する機会が開かれている、この2つの条件下においてのみです。食糧や医薬品以外にも、病院や学校の改修、水や電気の供給が必要です。単に約束しただけでなく、国連安全保障理事会に属する国々も関連決議を行いました。米国も積極的に支援しました。過去1年以上、進展はほとんど見られていません。国連はもっと積極的にこの課題にも取り組むべきでしょう。

質問:現在、ロシアとアメリカの関係は最良の状態とは言えません。ロシアは、事態の改善のためにワシントンが取るべき手段は何だと考えていますか。イエメン、シリア、リビア、そしてイランなど、他の危機に対処する際、この緊迫した米ロ関係はどの程度の弊害があるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ:強力な2つの国が協力せず、まず、お互いに話すことさえしない場合、この状態は常に、共同の努力を必要とする国際問題の解決に協力する能力に影響を与えます。これは客観的にそうです。この関係を正常化するために必要なことは何でしょうか。規範はひとつのヒントになります。ただ、過去の規範が将来の規範なることは絶対にないでしょう。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は最近、ロシアはNATOや西側諸国と過去と同じ関係を持つことは絶対ないだろう、と述べています。

 ずいぶん前に、相手が嘘をつき、文書に署名しても、それを遵守しようとしない状況はもう許さない、と私たちは言いました。次のような文書です。ロシア・NATO理事会の宣言、のイスタンブール宣言、2010年のアスタナ・サミットで採択されたOSCE(欧州安全保障協力機構)の宣言、2014年2月のウクライナ危機解決協定(ドイツ、 フランス、ポーランドが署名しただけではなく国連安保理の全会一致で承認したミンスク協定)、といったものです。西側は、それらの合意を履行するつもりはありませんでした。大統領や首相の段階でこれらの義務が厳粛に署名されたのに、私たちは単に嘘をつかれただけなのです。だから、私たちはずいぶん前に、言葉を額面通りに受け取ることをやめました。

 なぜ、私たちは言葉を軽く見てしまうのでしょう? ロシアでは、商人が契約を交わすとき、書類に署名せず、ただ握手をする習慣でした。そうだったのです。もし、約束を守らなかったら、誰もあなたを尊敬しないでしょう。NATOを拡大しないと約束した後、私たちはこの習慣に囚われなくてもよくなりました。それから、政治的な文書、さらには法的拘束力のある文書に署名するようになったのです。ミンスク合意に関する安全保障理事会の決議は、法的拘束力のある文書です。ところで、国連憲章には、すべての国連加盟国は安全保障理事会の決議に従わなければならないと記されているのですが、今、私たちはウクライナから引き上げ、国連憲章に完全に従えと言われています。国連安保理のウクライナに関する決議は妨害され、紛争解決の努力は失敗に終わりました。もし妨害工作がなければ、現在の状況におけるさらなる苦しみは防ぐことができたはずです。そのことは私にとっては明々白々のことです。

 しばらく前、西側の「友人」たちは、国連安全保障理事会で拒否権が発動されるたびに、総会を10日以内に招集し、拒否権の発動動機を聴取することを国連総会で決定するよう働きかけました。私たちは同意しました。私たちは何も隠すことはないのです。私たちはすでにすべての投票と決定について説明しています。

 しかし、私は別の問題を提起したい。拒否権を行使せずに採択された決議について、国連総会はなぜ熟議せず、それ以降の遵守が一切行われていないことを見ないのでしょうか? パレスチナ入植に関する決議がその一例です。それらは確かに国連安全保障理事会で採択され、中には全会一致で採択されたものもありました。ところが、それらは忘れ去られてしまいました。パレスチナのことが話題になると、総会は決議が履行されていないことを嘆きます。しかし、ウクライナに関するミンスク合意を採択した決議がなぜ履行されなかったのかを議論するために特別総会を召集することは、誰も思いつかなかったのです。つまり、一部の人には思い当たる節があっても、誰も関心を示さないのです。その代わりに、法廷やロシア連邦が賠償金を支払うという空想的な考えを議論しているのです。まあ、彼らにとっては何でもいいのでしょう。ウクライナ人とその管理者が法廷を必要とするのは、彼らが拳を突き上げる特別席を必要とするのと同じようなものです。ことはそれくらい単純です。

 私たちが米国との関係を破壊したわけではありません。2021年6月にジュネーブで行われたジョー・バイデン米大統領とプーチン露大統領の会談で、「核戦争に勝者はない。決して戦ってはならない」とするゴルバチョフ=レーガン公式を再確認した後、その流れを積極的に推進しました。アメリカも同意しました。公平な言い方をすれば、トランプ政権と違ってバイデン政権はその考えをすぐに支持しました。その結果、2022年1月にロシアが主導する形で、核保有5カ国の首脳が「核戦争は容認できない」と同様の声明を出したのです。彼らとの2つ目の合意は、2026年初めに失効する戦略的攻撃兵器に関する新START条約に代わるものについて、戦略的対話を開始したことです。私たちは、外交官、軍関係者、そして安全保障担当を通じて、対話を開始しました。2021年7月と9月の2回、会談が行われました。私たちは、どのように前進するかについて多かれ少なかれ明確な考えを持ち、さらなる会談の形式について議論していましたが、これも重要なことです。ところが突然、2021年9月以降、アメリカは戦略的対話を打ち切りました。今ごろになって、彼らは対話を再開すべきだと言っています。私たちが対話を打ち切ったのではありません。私たちは、双方の接触や協力の一つの分野でも、私たちの方からそれを終わらせたことはありません。米国がやったのです。私たちは、米国の尻を追いかけて、再び友人になることを申し出るつもりはありません。ロシア国民は真面目であり、真面目な動きには真面目な対応があることを彼らは知っています。ジョー・バイデン米大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、セルゲイ・ナリシキン対外情報庁長官がウィリアム・J・バーンズCIA長官と必ず会談するように要請しました。会談は行われました。打開策はありませんでしたが、真剣で有益な会談でした。ああもされた、こうもされたと非難するのではなく、真剣で相互に尊重し合う対話は常に有益です。ですから、対話のテニスボールは、今は、私たちのコートにはないということです。

質問:対米関係の質問の続きですが、新しい米国大使がいつロシアに来るかご存知でしょうか。ロシア人へのビザ発給に関する大使館業務の再開の見込みはありますか。外務省はこの件に関して米国との対話を促進する用意がありますか?

セルゲイ・ラブロフ:リン・トレーシー新大使がいつ来るかはわかりません。すでに聴聞会は開かれ、手続きは終わっています。米国側が決定することです。彼女は着任同意書を受け取っています。私たちの側には、彼女の到着を妨げるものは何もありません。

 大使館が機能する状況についてですが、先ほどの質問と同様に、外交官の仕事を妨害するような行動は一切とっていません。今、私たちが目にしているのは、ノーベル平和賞受賞者のバラク・オバマが2016年12月、ドナルド・トランプ就任の3週間前に始めたことです。バラク・オバマはホワイトハウスを去る際、後継者にひどい仕打ちをしようとでも思ったのでしょうか、私たちの財産を持ち出し、外交官を追放しました。アメリカ大統領と呼ばれた人物らしからぬ、小心者の行為でした。

 ドナルド・トランプの代理人が後で電話をかけてきて、トランプはまだ大統領ではないが、(アメリカの行為は)間違っていると考えていると言いました。アメリカ側は、私たちが報復することを確信し、ドナルド・トランプが大統領になるのを待ってくれと言い、問題が解決するよう努力すると言ったのです。私たちは一旦、動きを止めました。半年が経過し、トランプは解決したくても、解決策は何ひとつ許可されませんでした。私たちは、外交官を解任し、アメリカ人がモスクワに所有する数件の不動産に特別体制を敷くことで対応せざるを得なくなりました。アメリカは、私たちが何の理由もなく外交官を解任したと腹を立てました。理由はありました。バラク・オバマがその手始めでした。これは単なる連鎖反応です。

 今のところ、その数が同じということはありません。米国の外交官の方が数は多いです。外交官の総数は両国とも同じですが、その中にはロシア国連代表部の職員も含まれていますが、彼らはロシアとアメリカの二国間関係とは何の関係もありません。彼らは米露関係とは無関係です。他の場合であれば、アメリカは外交官同数という数に国連代表部職員を入れることはしないでしょう。しかし、アメリカは今回はその数に入れました。140人です。ですから、アメリカのやり方は私たちよりずっとしたたかです。ビザを発給する人員が足りないと文句を言っても、信じてはいけません。私たちは140人足りないが、ビザの発行を止めたことはありません。アメリカ人に、ベネズエラ、キューバ、あるいはニカラグアでロシアのビザを申請させたことはありません。しかし、(その気になれば)私たちはそうすることはできました。しかし、私たちはそこまで心が狭くはありません。私たちは真面目な人間であろうとしているのです。

質問:中国は最近、平和についてよく話しています。私たちの世界には平和が必要であり、非対立、非同盟の政策も必要であると。それなのに、西側はロシアと中国の同盟について話し続け、時にはそれで世界を脅かそうとさえしている、と。自分たちの気に入らないことは何でも破壊する、いかにも西側らしいやり方です。西側は今日、例えばサイバー攻撃や機密情報の公開など、アメリカ人が得意とすることを通して、ロシアと中国の間に揉めごとを起こそうとしているとロシアは見ていますか?

セルゲイ・ラブロフ:中華人民共和国との関係は、史上最高水準にあります。これは、露中の指導者である、ウラジーミル・プーチン大統領と習近平国家主席が言ったことです。これは共同文書にも記されており、最新のものは2022年2月4日 、ロシア大統領が中国を訪問した際に採択されたものです。それは「新時代に入った国際関係と世界の持続可能な発展に関するロシア連邦と中華人民共和国の共同声明」と題されたものです。なんと力強い文書でしょう。両国の連帯の観点から、今日の世界の重要な事柄がすべて網羅されています。かつて、中国の友人たちは、私たちの関係は同盟関係以上のものであり、より強いものであると言っていました。私たちは、双方の利害関係の根本を見据え、現実的で、信頼に基づいた、相互に尊重し合う関係を共有しています。これは、国連憲章に定められた原則に根ざした、いかなる国との関係をも推進するための理想的な設定です。

 ロシアと中国の貿易統計が過去最高を記録しました。2022年には、ほぼ2000億ドルに到達しました。あ、そう、私は米ドルで数え続けていますが、そろそろルーブルと人民元に切り替えてもいい頃です。おそらく近々、この移行が行われるでしょう。

 モスクワは国連を含む国際舞台で北京と緊密に協力し、両国はSCO(上海協力機構)やBRICSの中で新たな挑戦や脅威との戦いに協力しています。EAEU(ユーラシア経済連合)は、ユーラシア統合を中国の「一帯一路構想」と調和させるために中国と協力しています。軍事、軍事技術協力、そして合同演習もあります。これらすべてが私たちの戦略的友好関係を強化し、西側もそのことを視野に入れています。

 あなたは、日米関係に不和をもたらそうとする西側の企てについて、何か情報を持っているかどうか、と尋ねました。この情報は目に見える形で、すぐそこにあります。米国は国家安全保障ドクトリンなどの戦略やNATO・EU協力宣言を起草し、その中にロシアや中国を記載しています。しかし、そこにはちょっとした差異があります:彼らはロシアを今すぐ対処しなければならない脅威と見なし、一方で中国を、主要で、長期的、深刻な、体制全体に関わる課題と捉えています。西側は、中国の脅威への対処には時間がかかると考えているのです。

 多くの独立した観察者たちは、アメリカとヨーロッパがロシアと中国の両方を同時に封じ込めようとしているのは間違いであると書きました。米欧はおそらく、米欧が組めばそれが可能だと考えているのでしょう。(しかし)米国が単独でこれを行うことはなかったでしょう。それに疑問の余地はないはずです。

 彼らが欧州を奴隷にし、支配の戦略に奉仕させたのは偶然ではなく、その目的以外の何ものでもありません。彼らは今、日本に対して同じことをしています。彼らはおそらく、アングロサクソン5カ国をすべて囲い込むために、ニュージーランドとカナダをAUKUSのような同盟に引き込もうとすることでしょう。また、韓国に手を伸ばそうとする動きもあります。

 アメリカは、ロシアと中国を抑圧することを主眼とした支配政策を、自分たちだけでは実行できません。そのために、西側陣営の総動員を必要としているのです。部分的な動員では、もはや十分ではありません。そして、これが今、彼らが行っていることなのです。このことは、多極化する世界秩序の出現という客観的な歴史的趨勢に対抗しようとするアメリカの試みが、ほとんど息切れ状態であることを改めて示しています。

 西側がモスクワと北京に対する二重の封じ込め戦略に固執しつつ、私たちの関係に不和をもたらそうとしていることを、ロシアも中国も見抜いています。彼らは、我々を敗北させ、その後、ロシアを説得して西側の友好国にさせ、西側が慈悲を示し、制裁を解除できるようにしたいのです。そうすれば、ロシアは欧米の友好国となり、少なくとも中国を封じ込めようとする欧米の努力の邪魔をしなくなるし、理想的にはそうした試みに貢献することさえできるだろう、と。西側のどんな批評家がこの種の理論を考案しているのかわかりませんが、これは明らかに現実離れしています。

 中国とロシアは、このようなゲームについて明確な認識を持っています。中国が現在進行中の世界一体化への進行過程に、より大きく組み込まれていることは理解しています。中国の経済規模や西側通貨建ての外貨準備高は、(ロシアのそれより)はるかに大きいのです。欧米への依存を解消することは、中国にとって、ロシアよりもはるかに複雑です。一定程度ですが、ロシアに対してなされている雪崩を打ったような制裁措置は、この点で私たちの手助けになっています。一定程度ですが、私たちを彼らの経済体制に誘い込もうとする人々を信用することはできない、という結論に達することができました。まして彼らに依存することなど論外です。

 昨日、プーチン大統領は政府関係者と会談し、私たちの政策の優先順位を改めて確認しました。中国もこの脅威を感じていることは間違いないでしょう。西側はすでに中国に対する制裁を開始しました。中国の極小電子回路(マイクロプロセッサー)や半導体の製造能力に関連するあらゆるものが制裁の対象となっています。また、何事も中国に依存してはいけないと、誰の耳にも入るように語られています。何でも自国内で生産する必要があり、米国はその生産能力を自国に戻そうとしています。今後、北京に対してこのような制裁がさらに行われるでしょう。

 実務的な関係を損ねたり、経済運営担当者を困らせるような行動は慎みつつ、中国とともに、西側が使っている方法や信頼できない相手への依存を減らす方向に徐々に進んでいます。人民元とルーブルは、私たちの貿易のほぼ2分の1を占めています。この割合は増え続けており、今後さらに増えるでしょう。

 中国は、「ロシアから始めて中国を後にする」という西側の原則がまったく冗談ではないこと、そして西側が、歌の歌詞にもあるように、「歩ける限りずっと」、この未来像の実現に固執することを十分理解しています。西側はすでに台湾に対する立場を表明していますが、これは中国にとっても、国際法の観点からも、全く受け入れがたいものです。チベット、新疆ウイグル自治区、そして香港について、中国を刺激する新たな機会をうかがっているのです。

 北京は、西側体制の中にとどまり、西側に全面的に依存することの危険性をよく理解しています。これは、中国の重要な国益の観点から、深刻な危険をはらんでいるからです。

質問:昨年12月に、今年の重要な外交成果として、「交渉できる相手と信用できない相手がようやく明確になった」とおっしゃっていました。「西側集団」が何であるかが明らかになった一方で、アジア全体には何を期待できるのでしょうか。 外務省のアジア部門おける優先順位は?

セルゲイ・ラブロフ:このテーマについては、私も取り上げたことがあります。西側は、世界の他の地域に(自分たちの)陣営として動くことを押し付けようとしており、アジアに白羽の矢が立ちました。「インド・太平洋戦略」は、インドと中国の関係にできるだけ楔を打ち込み、インドを欧米の策略に巻き込もうとするもので、その手法は明白です。

 西側は、オーストラリアへの潜水艦の供給計画に関してAUKUS*という枠組みを作りましたが、それはフランスに屈辱を与えることになりました。その潜水艦製造を自分たちでやると発表したのです。彼らの現在の方針は、この「枠組み」の形式を拡大することなのです。数日前、日米首脳会談が行われました。日本がより軍国主義化し、軍事費を増強することが明らかになりました。ニュージーランドと韓国は、この過程におけるアメリカの予備部品です。
*「豪(A)英(UK)米(US)」という安全保障協力の枠組み。

これがどうなるかは誰にもわかりません。これらの国の政府の判断次第です。この計画は、何十年もかけてアジアの安全保障構造を構築してきた組織を崩壊させるものです。この構造とは主にASEAN(東南アジア諸国連合)を指しており、ASEANは経済、安全保障、政治対話、そして人道的協力における協調の核であると一般に認識されていました。その結果、さまざまな仕組みが生まれました。具体的に挙げると、ASEANと一部の友好国との対話形式、東アジアサミット(ASEAN10カ国と9つの対話友好国(露、中、豪、印、加、NZ、韓国、米、日)が参加)、ASEANの友好国とその他多くの招待者による安全保障を議論するASEAN地域フォーラム、対話友好国の防衛大臣を含むASEAN防衛大臣会議、さらに経済問題や災害管理、人道的協力などを検討できる多くの機構、などです。できる多くの機構、などです。学識経験者も会合を行いました。形式的には、まだすべてが机上のものです。しかし、この地域の発展の方向性を決めるのは、関係諸国すべてが合意することを基本にするのではなく、AUKUSのような狭いブロックの組織に権限を与える方針が打ち出されました。将来、この組織は、新しい参加国を加えて、あらゆる面で強化されることになるでしょう。

 アメリカ人は、ASEAN10カ国のうち5カ国は「自分たち」に続く資格があり、残りの国はまだ十分に「成熟」していないと口にして恥じることはありません。これは、ASEANを分裂させようというあからさまなやり口にほかなりません。そして、これは一定の成功を収めつつあります。ASEANの内部では、摩擦や軋轢が大きくなっています。ミャンマーはASEANの歴史上初めて、加盟国としての資格が停止され、首脳会議への出席を禁止されました。

 私たちは、友人たちと一緒に行動しています。インドネシアは現在、ASEANの議長国です。私は、カンボジアでの東アジアサミット(2022年11月13日)とバリでのG20サミット(2022年11月15日~16日)に出席しました。この地域の仲間たちは、現在の情勢に懸念を抱いています。彼らの中国との関係には問題がなかったわけではありませんが、互いに受け入れ可能な解決策を見出すための対話に長い間取り組んできました。今、西側がやっていることは、とりわけ、この対話を破壊することを目的としています。かつてはOSCE(欧州安全保障協力機構)も合意に基づき、承諾や利害の均衡を求めていました。西側は、この原則をほとんどつぶしてしまったのです。2022年、議長国ポーランドはこの点で特に前のめりでした。

 アジア太平洋地域では、合意、調和、そして妥協の探求に基づく基本的な構造の「アンサンブル(合奏)」を弱め、明らかに軍事的な枠組みに基づく原則に基づいて作られた組織を前面に押し出そうとする試みが進行中です。

質問:中央アジアについて質問です。ウズベキスタンに1カ月ほど出張しました。タシケントを歩きましたが、ロシア企業のウズベキスタンへの関心が高まっているのがわかりました。そこをパッケージツアーではなく、個人で旅行する人も多いです。欧州の産業が良くも悪くも逃げ出した中央アジアの旧ソ連諸国とロシアの関係は、制裁の中でどのように展開されているのでしょうか? また、ロシアとEAEU(ユーラシア経済連合)諸国との協力関係について、欧州はどのような姿勢で臨んでいるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ:中央アジア諸国との関係は活発に発展しています。二国間関係だけでなく、経済、軍事技術、人道などに関する政府間委員会など、法的枠組みや多くの手段に基づいて、いくつかの集団形式があります。私たちはこれらの形式を利用して、中央アジアの近隣諸国と緊密に連携しています。最も重要なものは、CIS(独立国家共同体*)、SCO(上海協力機構)、そしてカザフスタンとキルギスについて言えば、EAEU(ユーラシア経済連合)とCSTO(集団安全保障条約機構**)であり、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの中央アジア3カ国が正会員となっています。
*ソビエト連邦の崩壊時に、ソビエト連邦構成共和国が独立した15か国のうちバルト三国を除く12か国(発足当初は10か国)によって結成された国家連合体。(ウィキペディア)
** 1992年5月15日に旧ソビエト連邦の構成共和国6か国が調印した集団安全保障および集団的自衛権に関する軍事同盟。2022年時点でロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6か国が加盟している。(同上)


 ここ数年、私たちはさらに「5プラス1(中央アジア5カ国+ロシア)」の協力形態を発展させてきました。過去2年間、我々の外相間で数回の会合が開かれました。すべての友好国がこの形式を支持しています。2022年秋、アスタナ(カザフスタン首都)イベントの傍ら、大統領級の初のロシア・中央アジア首脳会議が開催されました。この地域の主な開発分野でその形式の協力を推進するための文書を採択しました。今後もこの協力関係を発展させていきます。

 中央アジアの他の友好国については、その数は増え続けています。EU、米国、日本、インド、中国、トルコ、イラン、韓国など、主要な国々がこの地域に関心を示していました。中央アジアは、ほぼすべての国と5プラス1方式で協力関係を維持しています。中央アジアの友好国との接触や報道から得られる情報によると、中央アジアにおける私たちの仲間の仕事には、差別がないとは言い切れないものがあります。例えば、CIS、EAEU、CSTO、SCO、あるいは中央アジアの仲間との会合で、「ある国とは協力しない方がいい、なぜなら "私たちは力を合わせ彼らに敵対しなければならない "からだ」と私たちが言うことはありません。私たちは決してそんな言い方はしません。米国、EU、そして日本は、そんな言い方をします。彼らは中央アジアの仲間との会談で、西側との戦争に負けるロシアに頼るべきではない(彼らは我々が戦っているのはウクライナではなく西側だということを隠していない)、勝ち組に賭けるべきだと公然と言うのです。これがまさに西側の言い方なのです。西側の礼儀や精神構造を改めて見せつけられた思いです。その言葉の意味を広くとらえれば、ですが。

 彼らは口先だけの議論ではなく、本気で圧力をかけ、私たちの友好国に市場の喪失や経済への潜在的な投資を引き上げると脅します。脅された側は、ロシアが制裁を逃れるための手助けはしないと強く主張します。中央アジアやその他の友好国は、世界中に事業計画を持つ一部の企業の中には、制裁の完全な遵守を拒否する可能性がある企業も存在することを念頭に置く必要があります。その準備態勢に入っている企業もあります。

 私たちは、友好国の経済運営担当者に、反ロシア制裁に反対する!と言って朝の仕事を始めよ、などとは言いません。どの国も制裁に参加せず、他の地域の友好国と同じように彼らと緊密に協力し、西側の気まぐれや空想に左右されない新しい仕組みや協力手段を模索しています。私たちにとってはそれだけで十分なのです。

質問:ゼレンスキー大統領は、イタリアのジョルジア・メローニ首相が間もなくキエフを訪問すること、そしてイタリアの立ち位置、ウクライナへの支持を高く評価していること、この2点を語りました。同時に、イタリアのアントニオ・タヤーニ外相は、イタリアは外交的解決と国連と中国の仲介を強く支持していると述べています。イタリアの立場を一般的に、そしてもちろんその結果、ロシアとイタリアの関係をどのように評価することになりますか?

セルゲイ・ラブロフ:私たちにとって、イタリアは、すでにお話したギリシャやキプロスの立場に近いものです。

過去数年間、これらの国々は我々にとって最も友好的な国の一つでした。文化的、教育的な共同イベントを数多く開催しました。また、経済面でも、私たちの共通の利益に貢献しました。私たちがちょっとびっくりしたのは、あれよ、あれよという間にイタリアが制裁に署名した国のひとつとなり、(少なくとも前政権下では)反ロシアの行動や発言の指導者にさえなったことです。

 私はイタリアの人々が大好きです。彼らの伝統や人生観は、たとえばロシア連邦のコーカサス地方の多くの民族のそれと非常によく似ているのです。モスクワやサンクトペテルブルクでは、イタリア人の人生観を心から愛している人たちがいます。

 今回の事態に対するイタリアの対応は、イタリア国民の利益というよりも、ヨーロッパに指示された攻撃的な対立の道筋を反映していると、私はあえて言いたいのです。イタリア国民が、新たな障壁を作り、双方のつながりや交通網を遮断し、全般的に自らを囲い込み、新たな壁を作ることに関心を持つとは思えません。

 そこには連帯があるのです。最近、シルヴィオ・ベルルスコーニが何度か講演し、ロシアとNATOの関係構築への貢献度を評価したと聞いています。1997年のロシア・NATO設立法に基づいて開催された2002年のプラティカ・ディ・マーレでの首脳会談を主導したのは彼でした。そこでは、ロシアとNATOの約束に関して以下2つ希望がありました(文書にそう書かれていることを再度強調したい)。他者の安全保障を犠牲にして自国の安全保障を強化せず、ヨーロッパの安全保障の分野でいかなる組織にも支配されない、この2つです。誰がこの約束に違反したのか、説明する必要はないと思います。

 会談の呼びかけについて。最近は結構みんな、会談を呼びかけています。そして、米国のジェイク・サリバン大統領国家安全保障顧問はと言えば、記者会見で(時折するように)、今は会談の時ではない、ウクライナの戦場での地位向上を助ける必要がある、と言うのです。西側には、平和的解決策を見出すための共通の接近法がありません。彼らが、自分たちは和平調停に賛成であると言うのは、すべてテレビや新聞向けです。一方、プーチン大統領は和平調停を望んでいないとされます。彼らがなぜこのようなことをするのか、私たちには分かっています。

質問:現在のロシアと中南米諸国の関係について、どのようにお考えですか?

セルゲイ・ラブロフ:世界のほぼすべての発展途上地域と同様に、私たちとラテンアメリカとの関係も向上していると思います。私たちは、ロシア連邦とラテンアメリカーカリブ海諸国共同体(CELAC)間の対話方法を調和させるための閣僚機構を作りました。ロシアとCELACの4カ国が参加する形式で、何度か召集されました。COVID-19関連の制約で中断せざるを得ませんでしたが、近いうちに協力を再開する予定です。

 もちろん、主にキューバ、ベネズエラ、そしてニカラグアなど、この地域の他の国々と比べて、より長く、より深く、より集中的に協力している国もあります。私たちは、ほとんどの国際政治問題において、私たちの関係の歴史と連帯を高く評価しています。私たちは、国連総会での投票の際、常にお互いを支え合っています。

 ご存知のように、キューバはキューバ革命以来、米国の違法かつ一方的な制裁下にあります。この制裁を維持することに賛成しているのはアメリカだけです。時には、他の島国(複数)もそれに同調します。しかし、国連加盟国全体の圧倒的多数が、この違法な封鎖を直ちに解除することに票を投じているのです。

 先ほど申し上げた長年の友好国との関係を前進させるとともに、他のラテンアメリカ諸国も私たちの優先事項に入れたいと思います。私たちは、モンロー主義*を追求しているのではありません。私たちがある地域に足を運ぶのは、特定の国を私たちの軌道の中に入れ、特定の政治勢力を権力の座に就かせるためではありません。そんな危険や脅威を持ち込むことはありません。
*アメリカ合衆国がヨーロッパ諸国に対して、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸間の相互不干渉を提唱したことを指す。(ウィキペディア)

 この20年間、直近の選挙で左傾化した国、右傾化した国にかかわらず、この地域のすべての国と良好な関係を築いてきました。私たちは、これからも関係を広げていきます。

 つい先日、ブラジルの新大統領、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバが就任しました。プーチン大統領は彼と電話会談を行い、またジャイル・ボルソナロ前大統領とも話し、協力に感謝しました。私は、在露ブラジル大使館関係者と連絡を取りました。昨日、モスクワのブラジル大使館に行き、偉大なサッカー選手でブラジル国籍のペレへの哀悼の意を込めて記帳しました。ロドリゴ・バエナ・ソアレス駐ロシアブラジル大使と現在のいろいろな計画について話をしました。

 アルゼンチン、メキシコ、ボリビア ペルー 。これで抜け落ちた国はないと思います。私たちは、これらすべての国との互恵的な協力に関心があります。また、ラテンアメリカが「ラテンアメリカーカリブ」諸国連合の結束を強めることを望んでいます。

 ブラジルがCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)に再加盟するとのことで、この汎地域連合がまもなく活動を再開することになると思います。私たちは、CELACが、私たちの言う多極化した世界が形成される過程で生じる重要な問題に対処する過程で、その声を上げることを期待しています。

 ブラジルはBRICSの構成員です。アルゼンチンも加盟を表明しています。私の知る限り、他の中南米諸国もいくつか加盟を予定しているようです。
 
 現時点で私たちは、BRICS+の形態で協力する用意があります。この点では、5つのBRICSメンバー国は私たちと意見が一致しています。私たちは中国と協力して、他の国がBRICSに参加を希望する場合の基準を承認しました。おそらく、ラテンアメリカ地域の利益を考えれば、CELACがBRICSの課題について熟慮するのは理にかなっています。また、BRICSの活動に参加しているラテンアメリカ諸国がBRICSに自分たちの利益を代弁することで、他のCELAC諸国も利益を得ることができるのでしょう。ロシアは中米統合機構(CAIS)の傍聴者資格を持っています。また、中米議会とも連絡を取り合っています。また、カリブ海諸国連合の傍聴者資格も有しています。南米南部共同市場(メルコスール)、アンデス共同体、ALBA(アルバ)とも定期的に連絡を取り合っています。こういったことは、私の理解では第二の風を探す途上にいるということで、とても歓迎すべき進展です。

 バハマを除く中南米・カリブ海諸国が一国も反ロシア制裁に参加しなかったことを評価します。

 その結果、ロシアのラテンアメリカ向け輸出は昨年、ほぼ10%増加しました。私たちの文化的、人道的な結びつきはますます強くなっています。少し前に、モスクワ、サンクトペテルブルグなどロシアのいくつかの都市で、マヤ文字を解読したことで知られる優れた科学者ユーリー・クノロゾフの生誕100周年が行われました。マヤ文字の解読で彼はメキシコやその他の地域の国々から高く評価されています。数千人のラテンアメリカの学生(主にキューバ人)がロシアの大学で学んでいます。キューバやベネズエラなど、リゾート地として人気の高い国への小旅行が人気を集めています。ラテンアメリカそしてカリブ海諸国33カ国のうち27カ国がビザなし渡航が可能で、このことが様々なレベルでの人々の交流や交際に拍車をかけています。

質問:国連憲章の尊重についてお話になりました。2月24日にウクライナに軍隊を派遣したとき、国際法にどんな敬意を払われたのですか。

セルゲイ・ラブロフ:国連憲章の尊重という問題は、あなたの単純な質問が示すよりもはるかに広い範囲にわたります。米国の一般人には安売りされるのかもしれませんが、真剣な聴衆の前では、説明方法は多少違ってくるはずです。

 この記者会見の冒頭で、私は国連憲章の重要な原則である国家の主権的平等について言及しました。これは国連という組織の核心にあるものです。よくよく調べてみれば、米国がいかに主権的平等の原則を毎日、毎時間、踏みにじっているか、本やインターネットで証拠を見つけるのに、それほど時間はかからないでしょう。

 ロシアはこの事態が始まったとき、ウクライナでの行動の背景を説明しました。米国とその同盟国はロシアを非難しました。国家の主権的平等を尊重し、この平等を尊重することが義務であるならば、ロシアを理解するかしないか、ロシアを支持するか米国を支持するか、他の人々に自分自身で判断させることによって、民主主義の原則に従うことになります。しかし、誰もこのような進め方を許しません。大勢の大使や特殊部隊を持つ米国は、毎日世界中を走り回り、誰もがロシアを非難するよう要求することで、自らを貶めているのです。これが国家の主権的平等なのでしょうか。彼らは脅迫します。アメリカ人は、もしこれらの国々がロシアを非難しないなら、チェース・マンハッタン銀行の口座に金があるし、彼らの子供たちはスタンフォード大に通っていることを忘れるな、と言います。こんな言い方をアメリカはするのです。大国として、なんと似つかわしくない、恥ずべき言動でしょう。

 国連憲章はそんなに長文ではありません。興味のある方は読んでみてください。国家の主権的平等と国家の自決を掲げており、文中ではそれが国家の領土保全と並んで大原則として最初に出てきます。この自決と国家の領土保全という2つの原則を、憲章は同じ重要性があるものとして言及しています。国連創設当初から、憲章が承認され、批准され、発効すると同時に、どちらが先か、優先されるかという問題はありました。特別な手順が設けられ、すべての国連加盟国は、憲章の解釈に関する他の事項とともに、この問題を数年間かけて議論しました。

 そして、1970年に「国際連合憲章に基づく国家間の友好関係及び協力に関する国際法の原則に関する宣言」が採択され、現在も効力を持ち続けています。つまり、領土の保全は、政府が自決の原則を遵守し、当該領土に居住するすべての人民の利益を代表する国と取引をする際に、誰もが尊重しなければならない原則なのです。この憲章のもとで、私たちは自国民全体を代表する国家の領土保全を尊重しなければならないのです。

 2014年にウクライナでビクトリア・ヌーランド国務次官がテロリストにクッキーを配ったあと、政府に対するクーデターが起こり、アメリカはその政権転覆を組織した側を瞬時に承認しました。しかし、ヨーロッパはどうでしょう?アメリカは、ヨーロッパへの配慮は爪の垢ほどもありませんでした。ウクライナ大統領との合意で保証人として行動したのがヨーロッパであったことなど完全無視です。ビクトリア・ヌーランドが駐ウクライナ米国大使ジェフリー・パイアットに、EUとの接し方について何を言ったか覚えていますか?彼女は、彼らがEUをどう考えているかを表現するために、英語で4文字の単語(F***)を使ったのです。

 政権を握ったクーデター支持者たちは、クリミアからロシア人を追い出すと言いました。クリミアとウクライナ東部が、血なまぐさいクーデターを起こして違法に権力を握った人々に従うことを拒否したとき、クーデター組織者たちは彼らに対して宣戦布告をしました。彼らは自国民に対して戦争を仕掛けたのです。彼らはオデッサの労働組合会館で48人を生きたまま焼き殺しました。誰でも見られる証拠映像があります。裁判を起こす必要さえありません。映像を見て、有罪の評決を下すだけでいいのです。窓から飛び降り自殺を図ろうとした市民に銃を発砲した人たちの姓名があります。全部揃っています。あろうことか、ウクライナ当局は火事で死んだ人たちを刑事事件として立件しました。そして、国際社会のすべての進歩的な人々は、この状況全体から目をそらすことによって、アメリカの規則に従っています。そこでの出来事の多くは、りっぱな戦争犯罪です。

 (クーデターで)政権を握った者たちを、国境内にいるウクライナ人全体の利益を代表する政府だと、どうして言えるのでしょうか。ポロシェンコ政権は、ドンバスで1週間以内に和平を実現するという約束して大統領になったのに、その舌の根もかわかぬうちに、ドンバスの人々を殺す、自分たちの子どもは学校や幼稚園に行くがドンバスの子どもたちは地下室に引きこもらせる、と主張し始めました。これはドンバスが属している国の大統領が言ったことです。彼は、彼が侮辱した人々の利益を代表していたのでしょう?

 ウラジミール・ゼレンスキーがいれば、すべてが変わると期待する人もいました。また、彼は「平和の大統領」として政権に就き、オリガルヒを追放して一般人のために行動するテレビシリーズ「人民の奉仕者」が、大統領の鞭を渡されたら実践する自分の理想を反映していると、あらゆる方法でほのめかしていました。しかし、2021年11月の会見(すでに引用しました)では、ドンバスに住む人々について問われ、「人と動物がいる」と答えています。それ以前の2021年8月には、ウクライナに住んでいて自分をロシア人だと考える人たちは、子や孫のために全員ロシアに行くべきだと提案しています。

 もしあなたが今、こうした見解と彼の行動全般をもって、ウラジミール・ゼレンスキーが1991年に設定された国境内に望むウクライナの全人口の利益を代表していると言うなら、おそらくこの話を続けることにあまり意味はないでしょう。しかし、自決権と領土保全の尊重の関係について、国際法廷が認めた解釈はたったひとつです。

 ユーゴスラビアへの侵略について、アメリカの報道家はどう考えているのか、聞きたいものです。当時、タイム誌は「セルビア人を屈服させる。大規模な爆撃が平和への扉を開く」と表紙に書きました。イラク戦争、リビア戦争、シリアやアフガニスタンへの侵攻に関するアメリカのメディアの報道をアーカイブで見ることができるでしょう。アメリカが侵攻した国では、誰かがちょっとでも動けば、クラスター爆弾で攻撃されました。どれだけの結婚式が消されたのでしょうか? 比較すると面白いでしょう。

 私は、国際法の観点から、私たちの行動を正当化する理由を述べました。ドネツクとルガンスクの人民共和国は、自分たちを公然とテロリスト、野蛮人、人間以下と宣言し、自分たちの幼稚園や学校を毎日爆撃する政府の下では存続することは不可能でしょう。

 つい最近、ドニエプロペトロフスクで事件がありました。あるウクライナの「専門家」は、そのときの様子をこう語っています。誰しも気づいていたことですが、ウクライナの対空防衛は、住宅地に設置されていました。それはあらゆる戦争規則や国際人道法が禁じているにもかかわらず、です、と。そのような対空装置の1つが作動した結果、ミサイルが住宅地の建物に落下したのです。キエフがドンバスで自国民を侵略した8年間、同じような事件が大量に発生しました。ロシアの記者や軍事通信員たちは現地で即時に真実を伝えました。ミンスク合意以前ですら同じことをしていました。そして特にミンスク合意後は、ドネツク共和国とルガンスク共和国側に身を置き、接触線で毎日活動し、ウクライナのネオナチの爆弾が住宅地を破壊し、人々を殺し、幼稚園やカフェテリア、学校を破壊する様を紹介したのです。しかし、西側からは定期的な取材はありませんでした。BBCが時々やってきては、かなり真実味のある報道撮影をしていました。しかし、彼らはすぐに、自分たちの撮影したものが、最終的どう報道されたかに気づきました:ウクライナ側では民間の生活基盤施設への被害がはるかに少なかったのです。DPR(ドネツク人民共和国)とLPR(ルガンスク人民共和国)は砲撃に対応しただけでした。OSCEはこれを事実として記録しました。時間はかかったのですが。私たちは1年以上前から、OSCEの報告書に、破壊された民間インフラ施設や死亡した民間人の数を記載するだけでなく、接触線のどちらがどの程度の被害と犠牲者を出したのかを明記するよう求めてきました。

 報告書の公開に成功した途端、ドネツクやルガンスク側の被害が、攻撃に応じて砲撃を受けただけのキエフ政権側の5倍もあることが明らかになったのです。

 彼らは、ウクライナ政権に生じたいかなる損害の写真を見ても、激怒します。しかし同じ市民が、ウクライナのネオナチが民間人、子ども、高齢者、女性にした痛ましい写真については、ただ黙っているのです。

 もちろん、正義が果たされることは歴史が証明してくれるでしょうが、国際法を無視することは許されません。

マリア・ザハロワ(司会者):大言壮語について言えば、もしクリミアやドンバスの報道家のみなさんが、この8年間、今ここでアングロサクソンのメディアのみなさんがしているような質問をすることができたなら、同じように感情的になられるだろうと思います。しかしクリミアやドンバスの報道家のみなさんは、8年間それを許されませんでした。西側で行われた今回と同じような記者会見に参加するためのビザや認証評価は発行されなかったのです。ちなみに、ロシアの公認記者もまた、質問することも、そのような記者会見に参加することさえ拒否されました。

質問:明日、ミンスクを訪問されるとのことですが、どのようなことを期待しますか? この訪問で何を期待しますか? 国際的な舞台におけるロシアとベラルーシの協力の度合いをどのように評価しますか? なぜ、CIS、EAEU、CSTOの友好国は、国際組織での投票において、常にベラルーシとロシアを支持するわけではないのですか?

セルゲイ・ラブロフ:私の期待についてですが、私はいつもミンスクを訪問するのを楽しみにしています。このような訪問は私の仕事柄有益ですし、いつも楽しんでいます。私はミンスクが大好きで、どこへ行っても伝統的なもてなしをしていただけます。

 ロシアとベラルーシの外務省合議体は、大臣間の訪問交流に加え、毎年2回合同で開催しています。

 2022年12月に予定されていた次の合議体が明日開催されます。ベラルーシのウラジミール・マケイ外相の早すぎる死去のために延期されていました。

 その議題には、私たちが今まさに議論している問題、すなわち新しい世界秩序とNATO、EU、欧州評議会、OSCEとの関係も含まれています。これらの組織は急速に統合され、主人である米国の命令に従って行動する単一の組織となりつつあります。OSCEにもその兆候が見られます。

 国連の各機関で投票に移された決議案など、私たちの外交努力の具体的な分野や、外交政策の調整について、信頼に基づいた議論を行います。CISとCSTOでの共同外交活動、例えばCSTOで起草される共同声明や、程度の差はあれCISで起草される共同声明などが予定されています。合意形成が困難な場合もあります。CSTOの友好国は、西側との関係や西側の圧力によって生じる問題を抱えているのです。また、経済的な問題も抱えています。私たちは、ベラルーシの友人たちと共同で、非常に分かりやすい路線を推進しています。誰も友人との関係が人為的に制限されることを望んでいません。主従関係ではなく、利害の均衡に基づいた対等な2国間の関係を望んでいるのです。事業計画の話し合いは、二国間以上であれば、双方または複数の友好国に利益をもたらすものでなければなりません。CSTO加盟国間の貿易、投資、文化・教育関係の取り組みの規模については、西側諸国がポスト・ソビエトの国々で行っているよりはるかに大きいものです。

 ロシア、ベラルーシなど数カ国が一致して投票し、他の国は棄権する場合もあります。NATOとは異なり、「鞭の規律」は用いません。NATOでは、承認された範囲からの逸脱はタブー視されます。ウクライナ危機におけるNATOの攻撃的な路線には、柔軟性に欠け、創造性に欠けるとして、反対を表明する国もあります。批判はそれほど多くありませんが、あることはあります。それでも、彼らは言われるままに投票しています。私は、このような強引な規律は有害だと考えています。

 私たちは、同盟組織の枠組みの中で絶対的な連帯を実現したいと思います。私たちはそれに取り組んでいます。そのためには、説明と、個々の具体的な状況に応じた実行方法が必要です。

 アルメニア情勢に関連した問題を抱えていることは秘密でも何でもありません。アルメニアの友人たちは、アゼルバイジャンとの国境における安定を確保するために、CSTO(集団安全保障条約機構)の代表団を派遣するという考えを推進しています。私たちは、エレバンでの首脳会議において、そのような代表団の規定条件に関する文書を調整しました。しかし、アルメニア代表がアゼルバイジャンを非難する条項を追加するよう主張したため、採択に至りませんでした。私たちは、誰でも非難し、美辞麗句を並べ、そして自分の立場を前面に押し出すことはできると説明しました。しかし、もし私たちがCSTO代表団を派遣したいのであれば、この決定は「外部指標」や棘のある表現を基礎におくことはないでしょう。

 私たちが、アルメニアとアゼルバイジャンの国境にCSTOの交渉団を派遣する用意があることに変わりはありません。しかし、私たちは同盟国であり、交渉団も創設されたものの、アルメニア側は、そこに長期的に文民監視団を派遣することについてEUと交渉することを選んだのです。

 アルメニアにはその権利があります。しかし、この問題はアゼルバイジャンとの国境に関わるものであることを忘れてはなりません。その承認なしに交渉団がそこに配置されれば、逆効果になります。国境での信頼が強まるどころか、さらなる苛立ちを生むかもしれません。これが客観的な状況なのです。

 CSTOのすべての地域、つまり中央アジアと南コーカサスに対して創造的な対処方法をとり、各加盟国の開発の枠組みの中で発生する問題の複雑さを徹底的に理解する必要があります。彼らは圧力をかけられています。 多くの外部友好国が中央アジアと特別な関係を築きたいと考えていることを私たちは指摘しました。彼らの中には、協力計画に安全保障の問題を加えることに関心を持つ人もいます。私たちの友好国はすべて、CSTOの中で自分たちの義務に矛盾があってはならないことをよく理解しています。アルメニアの友人たちも、このことを認識していると断言しています。

 エレバンで行われたCSTO首脳会議のように、大統領同士の自由で正直な対話が必要です。それに先立って、外相・有識者段階での話し合いが行われました。私たちは、すべての立場の人々の懸念や問題について、心を開いて話をしなければなりません。遠慮無く話せば、必ず共同の解決策を見出すことができます。

質問:日本の軍国主義化について、何度も言及されていますね。軍事力の増強は日露交流にどのような影響を与えるのでしょうか。日露間の交流や協力のチャンネルについて話すことは今でも可能でしょうか?

 ミハイル・ガルージンは、2022年11月で駐日ロシア大使を退任しました。後任人事はありますか?

 アルメニア人として、ラチン回廊*の問題を飛ばすことはできません。私たちはどのような立場で解決に臨むのでしょうか。
*アルメニアとナゴルノ・カラバフを結ぶ回廊地帯。法的にはアゼルバイジャン領内であるが、ナゴルノ・カラバフ戦争の結果、現在はアルツァフ共和国が実効支配している。 (ウィキペディア)

セルゲイ・ラブロフ:日本については、3番目の質問が最も重要です。

 私たちの関係は続いています。私たちは日本に大使館を持っています。日本もロシアに大使館があります。ミハイル・ガルージンの後任がまもなく東京に向かいます。私たちはこの進行を中断させるつもりはありません。私たちは、常に相手の言い分を聞き、私たちの懸念を伝える機会を持つことが重要だと考えています。東京とモスクワのそれぞれの大使館間の接触以外には、思いつきません。制裁に積極的に参加した他の国々と同じように、日本はすべての接触を凍結し、かなり傲慢で好戦的な口調に先祖返りしました。私たちは、彼らの話に耳を傾けています。北欧におけるNATOの強化への対応と同様に、日本列島付近の安全保障上の利益をそれに応じて確保するよう努力します。

質問:日本の軍備増強についてもお聞きしました。それについてどうお考えですか?

セルゲイ・ラブロフ:先ほど、日本が軍事力を増強していることは、肯定的な展開とは言い難いと申し上げました。日本は北朝鮮を意識していると言っています。しかし、彼らがロシアや中華人民共和国を念頭に置いていることは、誰もが知っていることです。アメリカは公然と日本に軍事的な設備と能力を強化するよう勧めています。憲法を改正し、日本の軍隊が平和主義者の面影を失い、海外で軍事作戦を行えるようにするという案が浮上しています。

 これが、ロシア連邦との関係を正常化させるに際しての日本の利害と一致することはまずありません。

 数年前、日露の平和条約締結に向けた作業が行われていたとき、わが国の大統領と日本の首相が定期会合で文言や草案を検討し、その合間に大臣、副大臣、有識者が作業を進めました。ある時、日本側は、私たちが提示する「大きな」平和条約は必要ない、と言い出しました。ロシアの立場は、戦後の慣例として行われる平和条約を結ぶというものでした。おそらく、これは降伏文書ということになるのでしょう。ここに国境があります。これからは平和に暮らしましょう。しかし、それから数十年が経過しました。そのような紙切れに署名することは、現在の日露関係の到達点を軽視することになります。そこで私たちは、相互尊重、相互利益、隣人愛に基づいた協力の原則を示す拡大平和条約に署名することを提案しました。この平和条約には、経済、投資、人道的な協力の分野も含まれるはずでした。そうすれば、上記のような国境線が引けるはずだったのです。しかし、日本側は「冗長で高邁な言葉で書かれた条約ではなく、具体的な文書が必要だ」と言って、私たちの提案を断りました。

 日本国内での話し合いは、非常に簡潔でわかりやすいものでした。日本は、まず2島を手に入れ、それから平和条約を締結することを望みました。わが国の大統領と日本の首相は、1956年のモスクワ協定で規定されたように、逆の順序で進め、まず平和条約を締結することで合意していたにもかかわらず、です。

 しかし、私が言いたいのは、それとは別のことです。私が今言ったことはすべて昔のことです。日本人は、まず2つの島を返してもらい、そこから始めることを頑なに主張したのです。余談になりますが、私は大臣として日本との付き合いが長いのですが、日本研究家ではありません。私は、この国の古参の専門家に、今の状況について考えを聞いてみました。彼は、首相はロシアとの関係促進に関心があり、定期的な接触もあり、文化的行事も続いているが、ある日突然、日本人がこの4島は取り戻さないと決めたら、ロシア連邦を最も過激に中傷する者の仲間入りをすることになるだろう、と言いました。私は彼の言ったことを引用しただけです。それについては何も付け加えることはありません。

 2022年、国連総会では例年通り、ロシアの決議案 「ナチズム、ネオナチズム、および現代的な形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容をあおる一因となるその他の慣習の美化と闘う」 について投票が行われていました。日本、ドイツ、イタリアは史上初めて反対票を投じました。以前は、棄権でした。理論上ではなく、現実の生活のあらゆる領域に入り込んでいるナチズムを賛美するウクライナを見るにつけ、旧枢軸国の3カ国によるこの投票は象徴的な響きをもちました。

 ラチン回廊といえば、昨日、アゼルバイジャンの外務大臣と話をしました。2020年11月9日に3カ国の首脳が合意した内容では、ラチン回廊は双方向で自由に物資、市民、車両の通行ができるようにすること、となっています。もちろん、このルートは軍事貨物の輸送に使ってはいけないという趣旨のことが別途述べられています。アゼルバイジャン側は、アルメニア側がこの回廊経由で地雷を運搬し、三者間協定に反してアゼルバイジャンの陣地付近の地雷に使用したという資料を提供しました(わが国の軍事専門家が調査中)。相互非難がさかんに行われています。

 私たちは単刀直入な提案をしました。三者間協定に基づき、ロシア平和維持隊には交通規制を行い、禁止貨物、非人道的貨物、非民間的貨物の車両を点検する権限が付与されているのです。

 先日、アゼルバイジャン代表とナゴルノ・カラバフ代表が、シア派遣軍司令官の参加の下で会談を行いました。

 この問題はじきに解決すると思います。

質問:アフリカのことは一言も語られていません。本日未明、南アフリカ外相はRIAノーボスチ*との会見で、米国議会が検討を予定していた反ロシア法案を取り下げるよう呼びかけました。この法案は、ロシアに協力し続けるアフリカ諸国を米国が罰することを定めたものです。南アフリカ外相(女性)は、西側の植民地政策は容認できないこと、わが国に対する一方的な制裁はありえないこと、について、詳細に語ってくれました。今回のアメリカのアフリカでのロシアの活動に反対する法案について、モスクワはどのように考えているのでしょうか。その地域の国々とのロシアの協力関係にどのような影響を与えるのでしょうか?
*かつて存在したロシアの国有通信社で、現在はRussiaTodayのロシア国内向けのブランド。ソビエト連邦時代のソビエト情報局をルーツとし、1961年に「ノーボスチ」の名称を使用するようになった。( ウィキペディア)

セルゲイ・ラブロフ:この法案に対する私の見解は、南アフリカのナレディ・パンドール外務大臣と同じです。アフリカとの関係にどのような影響を与えるかについては、彼女の発言にすでに答えがあるように思います。

 すべてのアフリカの国が、南アフリカのように公式代表を通して自分の立場を明確に表現できるわけではないでしょう。場合によっては、個人の資質による主観的な要素が影響するでしょう。アフリカの仲間たちの中には、あまり原則的でない立場を打ち出す人もいるかもしれません。

 しかし、このようなアメリカの挑発に発言しない人たちも、心の中では、この法案が、主にアフリカ人にとって有害だと考えていることは間違いないでしょう。

 第一に、アフリカは対等だと見なされていません。これは明らかに新次元の植民地精神です。第二に、マイク・ポンペオがトランプ政権の国務長官だったとき、彼はアフリカを訪れ、公的な行事や記者会見で、ロシアや中国との貿易を中止するように皆に促しました。ロシアや中国は、アフリカの利益を犠牲に利益を得ようとしているらしいが、アメリカはもっぱらアフリカ諸国が発展し民主化を築くために貿易をしているのですから、と。へそで茶を沸かすような話です! このような主張は、アフリカを含め、世界のどこでも当然のように受け入れられています。

 ロシアとアフリカは、2023年7月23日から26日にかけて、サンクトペテルブルクで第2回ロシア・アフリカ首脳会議(サミット)を開催することを計画しています。私たちはこの首脳会議のために、ビジネスフォーラムを含む一連の行事を準備中です。私たちは、あなたが今回の米国の法案に関連して言及した制裁と脅威の環境下で、協力体制を作り変えるための文書を起草しています。新しい貿易・投資協力の方法、物流網、決済の取り決めなどが行われる予定です。自国通貨での取引への変更も進んでいます。この実行過程は急速なものではありませんが、進行中であり、勢いを増しています。

Video with English Translation: ロシア連邦外務省



フョドール・ルキャーノフ(Fyodor Lukyanov):「サウジアラビアがBRICSに参加する可能性がある。それは世界の西側支配から離脱する動きが止まらないことを示している」

<記事原文 寺島先生推薦>

Fyodor Lukyanov: The possibility of Saudi Arabia joining the BRICS shows the world is moving on from Western dominance

(BRICSが)市場戦略として誕生してから20年、その構想は思いもよらない好転を遂げた。

著者: フョードル・ルキャーノフ

出典:RT

2022年10月21日

By Fyodor Lukyanov, the editor-in-chief of Russia in Global Affairs, chairman of the Presidium of the Council on Foreign and Defense Policy, and research director of the Valdai International Discussion Club.


<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月12日


FILE PHOTO. ©  Host Photo Agency/Pool /Anadolu Agency/Getty Images

 南アフリカのシリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領は今週初め、リヤドから帰国し、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子が自国のBRICS加盟の意思を表明したとのニュースをもたらした。

 アルゼンチンやイランも春に同じことを発表しており、それほど驚くことではない。このままでは、この拡大する組織体のために、もっともっと複雑な略語を考える必要がありそうだが、そんなことはどうでもいい。

 BRICSをめぐる盛り上がりは、今、世界で起きている変化のひとつの兆候だ。

 BRICS(もともとはBRICと呼ばれていた)、ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール(Jim O’Neill)が、今世紀初め、実際的な用途のために考案した人為的な組織体である。投資家は新興国を「売る」必要があったため、成功実績のあるマーケティング戦略を用いたのである(「ブロックを積み重ねる」とはうまい言葉遊だ)。オニールのやり方もあり、BRICSは長い間、主に経済という角度から見られていた。

 しかし、この認識は、最終的には関係国の、真の友好関係樹立を意味する言葉ではなかった。彼らは非常に異なっており、互いに遠く離れており、経済協力を強化するための共通の枠組みを必要とせず、すべては二国間レベルで行うことができたからだ。また、BRICSを結びつける最初の理由であった成長率も変化した。予想されたことではあるが、さまざまなタイプの上昇と下降があった。


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 BRICSという構想は、そのイメージが再構成されなかったなら、後からの面白い思いつきというレベルを超えることはなかっただろう。2006年以来、BRIC/BRICSは閣僚レベル、そして元首レベルの定例会議の定番となっている。政治的共同体という特質が表面化するにつれ(強調しておかなければならないのは、これはあくまでも非公式)、基準が自然に形成された。BRICSは完全な主権を持つ、すなわち完全に独立した政策を追求できる国の集まりであるということである。

 これは、政治的な自律性(外部の意見に左右されない)だけでなく、この目標を実現するための経済的な潜在力があることも意味している。これが達成できる国はそう多くない。

 西側諸国では、今日、米国だけがそのような権利を持っているように見える。他の諸国は、どんなに経済的に発展した国であっても、同盟に参加することによって、自らの政治的主権を自主的に制限している。

 しかし、技術的な「主権者連合」というだけで、新しい枠組みが生まれたわけではない。BRICSの中で経済的な結びつきを強めようという試みは、大きな熱狂をもって迎えられることはなかった。また、BRICSをG7への対抗勢力として位置づけようという動きも、すべての参加国が欧米とのつながりを最重要と考えているため、共感を得られなかった。

 しかし、この状況は一変した。モスクワが引き起こした2022年の出来事によって、世界は明らかに、ロシアに対して結集する西側部分と、様子見の部分とに分かれた。西側諸国は、モスクワを罰し、不服従がどのように罰せられるかを示すために、あらゆる圧力を意のままに駆使した。

 結果は極めて予想外であった。他のすべての国、特にBRICSの大国や自国の役割を主張する国々は、欧米のキャンペーンに参加しないばかりか、そうした姿勢が米国とその同盟国から反発を受ける危険性があるにもかかわらず、全面的に拒否したのである。

 もちろん、これはロシアの行動を支持するということではなく、外圧の形態を拒否するということである。そして、それは本質的にシステム的なものであり、世界秩序の特殊性に関連しているため、それに対抗する方法は、世界秩序の特殊性を変える必要がある。

 そこで明らかになったのは、BRICSには大きな可能性があるということだ。かなり曖昧なグループ分けかもしれないが、代替的な国際秩序の枠組みに関心を持つ人々にとっては、BRICSは何より備えとなるものである。前述した完全主権(政治的、経済的)は、これらの選択肢を選ぶ前提条件である。


関連記事:Dmitry Trenin:Putin has proclaimed a new national idea for Russia as it abaondons the dream of Greater Europe

 したがって、BRICSへの参加は、確固とした欧米の支配を抜け出そうとする世界に属していることの証となる。必ずしも対立する必要はない。

 西側の諸制度を迂回し、それとやりとりする危険性を低減できることの方が、はるかに価値がある。例えば、米国やEUが管理する手段に頼らず、金融、経済、貿易関係を行う同様な方法を構築することである。

 リヤド(サウジアラビア政府)はその参加意欲を隠そうともしない。もちろん、重要な物質資源を支配し、世界の価格を規制する能力を持つ国サウジアラビアは、独立した行動をとる余裕があり、交流に何だかんだと条件を課さない快適な相手国を選択することができる。

 覇権国家が主導する中央集権的な国際システムは、いずれにせよ終焉を迎えることになる。ウクライナ紛争がどのように終結しようとも、そうなるのである。従って、多様な定式が強く求められるようになる。現在進行中の新しい情勢は、BRICSの展望を切り開くだろう。

 BRICSの略号を考案したイギリス人(ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジム・オニール)は、20年前にはこのようなシナリオを想像していなかっただろう。しかし、人生は時として、その発端がどんなにたわいもないと思われるような事業にも寛大に対応してくれることがある。

プーチンを「厄介者のウラジーミル」にしておけば、「悪質な外敵」を求める米国軍産複合体にはおあつらえ向き

プーチンを「厄介者のウラジーミル」にしておけば 、「悪質な外敵」を求める米国軍産共同体にはおあつらえ向き

<記事原文 寺島先生推薦>

“Vladimir the Terrible” Fits the Needs of the U.S. Military-Industrial Complex for an “Evil Foreign Enemy”

But the Real Putin Is Well-Regarded by Many Russians for Standing Up to U.S. Imperialism and Reviving the Russian Economy

Global Research 2021年11月29日

ダニー・ショー(Danny Shaw)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年2月20日



 プーチンが脅威であると考えている理由は、プーチンがロシアの主権を取り戻し、ボリス・エリツィン時代の屈辱を消し去り、ロシアの国家利益を擁護したからだ。しかしそのような行為は、米国の支配者層には耐え難いことだった。

 米国の軍産複合体が敵を欲するのは、肺が酸素を欲するのと同じことだ。敵がなければ、作り出さずにはおれないのだ。

 ソ連が崩壊した際、国防総省の政策立案者たちは新しい悪の標的を見つけ出さなければならなくなった。そうしないと7780億ドルというとんでもない額の軍事予算を正当化できなくなったからだ。もちろんその軍事予算は、米国経済に壊滅的な悪影響を及ぼすことになっているのだが。パナマのマニュエル・ノリエガ(長年CIAに利用されてきた人物だったのだが)を「米国に脅威をもたらすであろう」狂犬扱いにするようなプロパガンダを広めることで、1989年のパナマ侵攻を正当化しようとしたことも、その一例だ。

 あるいはCIAに利用されていた他の人物たち、例えばサダム・フセインや、ウサーマ・ビン・ラーディンも、米国民主主義の脅威であるように描かれ、アフガニスタン侵攻や、イラク侵攻を正当化するために利用され、数え切れないくらいのアフガニスタンやイラク国民の命を奪った。さらに言うまでもないことだが、何千もの無垢な米国軍人たちが、弾除けにされ、命を奪われてしまった。これもその一例だ。

 しかしそのような敵がいなくなれば、すぐに新たな敵が必要となった。その時タイミングよく、1999年に強い主権国家としてのロシアが再興し、敵にとって新たなまたとない候補が登場したのだ。そしてその新生ロシアが、新しい冷戦の火蓋を切る完全な口実になった。その新冷戦が、新型兵器導入の口実に使われて、かつてないほど大規模な軍事支出が正当化された。それは軍産複合体がホワイトハウスの政治家たちや、国会議員を買収して要求し続けてきたことだった。

壊滅国家から主権国家に再生したことにより、ロシアは最も新しい「米国民主主義の敵」となった

 1990年代というのは、ロシアにとって屈辱の時代だった。西側からのいいなりで、堕落し、アル中だったボリス・エリツィン大統領のもと、ロシアは事実上西側帝国主義勢力の新たな植民地と化していた。しかし1999年にエリツィンが退陣し、後継者であるウラジーミル・プーチン副大統領が後を継いだ(翌年2000年に正式に大統領に選出された)とき、新時代の幕開けの兆候が見えたのだ。それはロシアと西側諸国との関係において、新時代の幕開けでもあった。

 メディアの見出しや印象操作的な報道では常にロシア(中国、イラン、北朝鮮、キューバ、ベネズエラなど米国帝国主義による権力統制の外側にあえて存在している国々も同様だが)は、「我々の」国家安全保障上危険な外敵というように描かれてきた。しかし、米国民たちはロシアという国の社会や外交政策について、真に理解しているのだろうか?

 ロシア連邦の特性は、正しくはどこにあるのだろうか?なぜバイデン政権は、ロシアに対して新しい制裁措置を取り続けたり、外交官を追放したりし続けているのだろうか?「ロシア嫌い」という国家宗教を新たにしつらえ直した背後に何があるのか?これらの疑問に対する言及から、この記事を書き始めよう。

誇り高く、力強いロシアの再興

 現在、ロシアは資本主義社会において中庸の地位を占めている。GDP順でいえば11位で、10位の韓国と、12位のブラジルの間に位置している。一方米国は、ロシアの20倍の生産能力を有している。これが、西欧諸国の力に屈してきた屈辱の4分の1世紀を耐えた後で、自国の利益を主張しようとしているロシアの現実だ。

 オリガルヒ(新興財閥)と資本家が、今日のロシア経済1兆4600億ドルの中心にいる。ロシアとロシアの複数の小隣国との関係を悪化させてきた社会主義体制は、資本家たちの利益に取って代わられた。そしてロシアの国家的な排外主義がいま広まっている。

 ウラジミール・プーチンは、ロシアのブルジョアの国家主義的な部分の代表となっている。ボリス・エリツィンや、その仲間たちとのプーチンの大きな違いは、プーチンの主目的は、国際社会において、強く、誇り高きロシアを再興させることにある。元KGBの工作員であり、敵を暗殺し、ソ連時代をほうふつとさせる強硬な手法をとることで、批判を受けてきたプーチンだが、それでも自身の出身地での評判は、前任者と比してすこぶる良い。


2000年の就任式でのプーチンとエリツィン

 この20年間、プーチン政権が外交政策の主目的に置いてきたのは、地政学上、息継ぎ的な時期を作り出すことによって、ロシアが以前の国力を挽回し、国際政治における主要な地位を取り戻し、西側諸国に追いつけることができるようにすることだった。

 ジョージ・ワシントン大学の欧州・ロシア・ユーラシア研究所長マレーネ・ラリュエル(Marlene Laruelle)の説明によれば、プーチンやロシアに、「ファシスト」や、「専制政治」というレッテルを貼ることは、学術的理由ではなく、ロシアに対する信頼を失墜させようという政治的な意図にある、とのことだ。そうすることにより人口1億4400万人のロシアという国を、国際社会において一目置かれる存在にしなくてすむからだ。

 ニコライ・N・ペトロ教授(米国ロードアイランド大学の平和と非暴力学の代表であるシルビア・チャンドリー教授)も同様の見解を示し、プーチンの指揮のもと、多くの良い改革が進んでいると指摘し、ロシアの犯罪者に対する裁判制度を劇的に変えたこともその一例だとしている。

 これらの研究者たちからは、プーチンは好評だ。それはプーチンが支配者層や、オリガルヒや、公務員たちなどロシア社会の強力な勢力にある程度の安定を保証したからだ。さらに多くの一般のロシア国民たちも、エリツィン時代の経済崩壊を覚えていて、それ以降起こった経済の好転をプーチンと結びつけて考えている。もちろんある程度の困難はまだ残存してはいるのだが。


1992年ロストフ・ナ・ドンの蚤の市で

 ラリュエルの論文の結論によれば、ロシア国家は無数のイデオロギーの吹き溜まりになっている、とのことだ。具体的には、社会保守主義や、ソ連時代への郷愁、リベラル、ロシア正教会、ロシア国家主義だ。ラリュエルは自身の著書『ロシアはファシストか?西側や、東側諸国のプロパガンダの謎解き』において、以下のように説明している。「包括的なイデオロギーの流れをひとつあげるとすれば、それは脱リベラル主義でしょう。リベラル主義 [資本主義、帝国主義、西側覇権主義といった言葉をラリュエルは著書の中で決して使用していないが]は今や「時代遅れ」で、「本来の目的から外れている」と否定されています。そのことについては2019年にプーチンが宣言していました。国家主権を取り戻そうというイデオロギーへの回帰が今の潮流です。つまり国家や、経済や、文化・道徳に関する主権を取り戻そうという流れです」。[1]

プーチン勝利による揺り戻し

 ソ連の平等主義や社会や経済において保障されていた国民の権利、さらには歴史上最も強力な米国という帝国と地政学上で対等に渡り合ってきたことに長年慣れ親しんできた人々にとっては、ロシアが西側諸国の従属国に戻ってしまった1990年代という時代には、ショックを受けたであろう。

 フランスの経済学者トーマス・ピケティ(Thomas Piketty)の研究が示したところによると、所得の不平等や、ロシアが「オリガルヒが公共資産を大量に横領するような社会」にまで落ち込んでしまっていたことがわかる。[2]。国の資産が最高値で売りさばかれる中、1991年~1995年に実施された民営化バウチャー方式(訳注:国営企業が株式会社に変異するに伴って、政府は国民に民営化された企業の株式と交換できるバウチャー(民営化証券)を配布した方式のこと)を実施したため、富が億万長者たちの手に集中した。IMFや世界銀行の西側の助言者達は金融体制を監視し、相続税や累進税を導入することには完全に反対していた。

 共産主義後のロシアでは、国民全員に対して同じ税率が課された。果物の売り子であろうが、ガス会社の大物であろうが関係なく、一律13%だったのだ。タックスヘイブン下での企業の横行のため、必要な多くの社会資本が奪われることも普通だった。ピケッティの著書『資本とイデオロギー』の結論によると、ロシアの経済の枠組みは、レーガンやサッチャーの手中におかれ、西側が超資本主義を試す実験台にされていた。

 だからこそエリツィン大統領が、西側諸国から寵愛されていたのだ。エリツィンはタイム誌の表紙を何回も飾ったが、型にはまらず、革命的で、ビル・クリントンの同士という描かれ方だった。

 ロシアの専門家ジェレミー・クズマロフ(Jeremy Kuzmarov)は、エリツィンとプーチンの指導力の決定的な違いについてこう記している。

 「プーチンが誹謗中傷を受けている主な原因は、プーチンが前任のボリス・エリツィンと比べてより国家的な政策を推進しているからだ。エリツィンは、ショック療法士たち(ハーバード大学の助言者たち)にロシアを明け渡していた。そして、その助言者たちはよく練られていないままで民営化を進めようとしていたのだ。その結果記録的な貧困と崩壊を1990年代のロシアにもたらすことになったのだ。1500億ドル以上の資産がたった6年でロシアからなくなってしまった。その大部分は西側や外国の銀行に貯蓄された。飢えを凌ぐためになすすべもなく、ロシアは民営化バウチャーを売りさばいた。ロシアが借金のせいで破産し、ルーブルが価値を失ったとき、何百万人もの人が貯金を失い、男性の平均寿命は7歳縮まった。」[3]


民営化バウチャー

なぜプーチンは人気があるのか?

 ドイツの世論調査会社によると、プーチンに対する支持率はずっと75%以上を維持しているとのことだ。その理由は、その調査結果にも書かれているのだが、ロシア経済が1990年代の低迷を乗り越え、プーチン政権下において劇的に改善したことだ。そしてロシアが世界の地政学における存在価値を取り戻したことだ。


 西側の支配者層が、プーチンに対して持っている怒りを理解するには、ロシアの昨今の歴史を振り返る必要がある。「帝国のファイル」という番組の「ソ連後のロシア。米国の植民地から第一敵国への変遷」というタイトルの長編のインタビューにおいて、マーク・エーメズ(Mark Ames)記者がその基盤を提示してくれている。具体的には、なぜプーチンの指導力が或る勢力にとって、耐えられなくなっているかだ。その勢力とは、世界で最も戦略的に重要で、裕福な地域にあるロシアの支配者になるつもりにしていた勢力のことだ。

 エーメズは、エリツィン時代にも、プーチン時代にもロシアで暮らしていた。エーメズが語ったのは、ロシア社会が感じている心の傷についてだった。地球上で最も平等だった国が、ほぼ一夜にして世界で最も金権に支配される国になってしまったのだから。世界で最も豊富な天然ガス資源を持つ国の一つであり、世界の四分の一のニッケル埋蔵量を持つ国が、オークションにかけられ、売りさばかれたのだから。

 1998年に、ロシアの株式市場は95%下落し、ルーブルが貨幣価値を失い、食糧不足が発生し、国は崩壊し、教員には給料が支払われず、ロシアの3分の1が自給自足農民に戻ってしまった。1990年代の終盤には、西側メディアが西側諸国の新植民地であるロシアを褒めちぎる中、ロシア国民は実験台にされることにあきあきしていた。エーメズの視点では、1999年に起こったユーゴスラビア/セルビア軍を標的にした米国のコソボ単独爆撃にロシアが同盟国として関わったことが、ロシア人の堪忍袋の最後の緒だった、とのことだ。この事件が国家主義的な感傷につながったのだ。「共産主義は正しかった。(次にまな板にのせられるのは)俺たちの番だ」という感傷だ。

 クズマロフの著書『米国にとっての新しい戦場:ロシア制裁と新しい冷戦』を読めば、プーチンの指導力が一般のロシア国民にとってどんな意味があるのかがよく分かる。

 「有名なロシアの作家であるアレクサンダー・ソルジェニーツィン(Александр Солженицын)はこう語っている。「プーチンが引き継いだのは、ぐちゃぐちゃにされ、混乱した状態のロシアだった。プーチンはできることからまず手をつけた。それは緩慢で、段階的な復興という方法だった。」

 「プーチンがこの目的を成し遂げられた理由のひとつは、オリガルヒに税金を支払うことを命じたことだ。その方法は、エリツィン政権時に、エクソン社などの西側石油会社に買い取られていた天然ガス産業や石油資金に対して以前のように国が圧力をかけられるようにしたことだ。さらに、インフラや、生活水準を改善するような政策を採ったことにより、汚職や犯罪の減少につながったことだ。それに伴い、インフレや失業率や貧困率が低下し、給料は改善し、10倍の経済発展を成し遂げた。プーチンは、ロシア国家が抱えていた借金を減らし、ロシアの富の海外への流出を止め、年給制度の改善にも成功した。」[4]

 1世紀前のボルシェビキと同様に、世界の巨人に対して、負け犬が立ち上がったのだ。

 追い詰められたロシア国民たちは別の方法を模索していた。このことがプーチンの台頭の原動力となった。プーチンは酒飲みではなかった。プーチンはまじめだった。さらに、元KGBの諜報員だった。

米国単極支配への挑戦

 オバマ政権の財務長官であったジャック・ルー(Jack Lew)は経済制裁についてこう語っていた。「米国にとっての新しい戦場であり、私たちを害しようとしているもの達に対して、軍を送らずに害を与えられる方法です。」

 『制裁に対するロシアの反応。西側経済の国政術によりロシアの政治と経済の再構築が進んでいる』という著書において、バーミンガム大学のリチャード・コノリー(Richard Connolly)教授が評価していたのは、ロシア政府は、米国が敵対している中国や、イランや、ベネズエラとの交易を増やすことで、世界の多極化を構築しようとしている点についてだった。

 10月15日、ロシアとベネズエラの代表者が「第15回政府間会議及び第2回ビジネスフォーラム」に集まり、そこで各戦略部門における協力を維持することに同意した。具体的には農業や、漁業や、文化部門などだ。米国がイランに対して軍・経済両面から攻撃を加えたため、イランは、上海協力機構を通して中露両国に近づくことになった。このことは米国や、イスラエルや、アラブ首長国連邦のシンクタンクにとって警告となっている。

 イランが見せたこのような新しい同盟を作る動きにより、世界の独裁者たる米国の行為が狂気じみてきており、他国の外交官や貿易大使を投獄することまでしている。有名な例をあげると、米国からの支配を逃れ、迂回しようとしたアレックス・サーブ(Alex Saab、ベネズエラのマドゥロ大統領の同士であるコロンビアの商人)が逮捕された事件だ。米国が世界人口の4分の1の人々に対して越権的な行為を行い、制裁を課すことにより、逆に対象国同士が貿易によりつながりを深めている現象が起きている。

ロシア左翼からの批判

 プーチンがこれまでの経歴に闇の部分があることは間違いがない。そのため、ロシア国内の政敵から正当な批判を浴びている。

 ロシア共産党のゲンナディー・アンドレエービッチ(Геннадий Андреевич)党首が批判しているのは、力によって反対意見を抑えようというやり方や、国家所有の企業を敵対的買収(買収対象となる企業の経営陣や筆頭株主の合意を事前に得ることなく、株式公開買付を実施すること)していることや、「非情で激しい年金制度の再建」の手法をとっていることだ。ロシア共産党は、アレクセイ・ナワリヌイのサイトを封じ、ナワリヌイからの反論を制限したことを批判している。

 このような見方からすれば、ロシア議会内の他の主要4政党は、政権与党である統一ロシア党に忠実であり、その党が反対の姿勢を見せたとしても、それは統制されたものに過ぎず、ロシアの民主主義は見掛け倒しでしかない、ということになる。

 「立場を維持する」というユーチューブチャンネルは、ロシアの共産主義者バシリー・エレメイェフ(Васи́лий Еремейев )が運営している。エレメイェフはソ連時代には議会議員を選ぶ際には、民主主義に則り正当な手続がとられていたのに、今は国会議員の席は資本主義のもとお金で買えることになったことを対照的に指摘している。 さらにこのユーチューブチャンネルでは、医療や教育の民営化や、オリガルヒに対する課税の少なさを批判している。 今日のロシア国内の不平等の状況は、米国よりもひどい。

Russia Today (RT)について

 以前Russia Todayという名前だったRTは、ロシア政府と民間メディア会社の合弁巨大メディアだ。スプートニク・ラジオ局や、いくつかの多言語版RTニュースや、メディアである「レッドフィッシュ・ドキュメンタリー」などのメディアや企画を傘下に収めている。RTのプロデューサーたちは、番組の司会者を選び、記事を編集し、ゲストを招く仕事を行っているが、イデオロギーをきちんと整理していなければ、様々なイデオロギーがごちゃ混ぜになり、混乱をきたすところだろう。

 ロシアの若い革命家たちの指摘によれば、RT (Russia Today)と下部のメディア組織が帝国主義を批判する左翼のゲストや、左翼の取り組みを紹介することがあるのは、ロシア政府の本当のイデオロギーを隠すためだ、とのことだ。ロシア国家と民間企業の合弁会社であるRTが右翼のゲストを呼ぶことがあるのも、左翼のゲストを招くのと同じ意図があり、西側社会の矛盾を深く取り上げるためだ、とのことだ。リベラル系メディアや、主流メディアには呼ばれることのない左翼や右翼にも発言の機会を与えることによって、RTは西側社会の社会矛盾を強調しようという意図がある。RTが意識しているのは、いわゆる「二色同盟」であろう。つまり左翼と右翼が、グローバリズムの動きに反対するため手を取り合っている状況だ。

 RT は移民問題や、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル(Viktor Orbán )首相や、フランスの右翼を支持する記事を頻繁に取り上げている。プーチンは自身が反進歩主義者であり、反ウォーク主義者(訳注:ウォーク主義とは、様々な差別の撤廃を強く求めている考え方を持つ人々)であることを自負している。プーチンは最近ソチで演説を行ったが、その演説の内容からは、プーチンは米国の白人至上主義や、女性蔑視や、同性愛者に対する差別の歴史については冷ややかに捉えていて、誤解していることが窺えた。プーチンの言動とトランプの言動に類似性があることがここでも分かる。

 RTには、世界の諸勢力の力の均衡を保ち、権威が偏らないような働きがある。タイム誌が出したRTの暴露記事がある。タイトルは、「プーチンの息のかかったメディアの内側で」だ。この記事で明らかにされている事実は、RTの読者数が何百万人という記録的な数字に上っており、BBCやVICEやABCなど、西側のグローバリストの代弁者である世界の主流メディアと肩を並べつつあるという事実だ。自誌や、西側メディアを投影するような形で、タイム誌はRTを「クレムリンの代弁者」だと報じている。

 このようなタイム誌の報道は、CNNやニューヨーク・タイムズが激しく、しかもかなり大げさにロシアのことを悪く取り上げてきたことに続く一つの反応だと言える。CNNやニューヨーク・タイムズは、「ロシアが2016年の大統領選挙に介入し、トランプを大統領にする手助けをした」と主張してきた。このような批判から見れば、RTは外国の搾取に対して左派に反論の機会を提供しているふりをして、実のところは反リベラル体制を支え、ロシア国内の真の左翼に狙いを定め、破壊する意図があると言える。これはイラン国家が取っている立場と似ている。イラン国家は基本的には社会主義ではないのに、世界の反帝国主義勢力の主張と共鳴している。

 さらにロシア国家の支配者層は、「白人至上主義」を再生させようとしている。さらには、ツァーリ制や君主制を信奉し、ボリシェビキや赤軍には反感を持つという動きも出ている。先述のラリュエルは、プーチンが(帝政ロシア時代の)白人将校たちや、亡命者たちに敬意を表していることを記述している。プーチンは(ナチス占領下で)敵国に協力したとされてきた人々の名誉回復に関して、映画や記念碑などの費用を出しているが、レーニンの遺体が眠る霊廟は2005年から「建築中」のまま置かれている。

 2021年5月9日の第二次世界大戦戦勝記念行進で、これまで使われていたソ連旗がロシア旗に置き換えられた。さらにこれまではナチスを打ち破った英雄として「赤軍」や「ソ連国民」という言葉が使われてきたが、その表現が「私たちの先人たち」という曖昧な表現に変わった。ウクライナにおける右翼主導のクーデター先導者達との情報戦においては、ロシアの指導者たるプーチンは、その右翼のファシスト的要素を常に指摘してきた。目撃者が恐れているのは、反ウクライナ感情が、(ウクライナから分離独立した親露派の)ドネツク人民共和国や、ルハンスク人民共和国における、国を超えた動きと同調するのではないか、ということだ。

 米国の支配者層の間にはロシアに対する見方に決定的な違いがある。プーチンは左翼ではなく、保守的な国家主義者であるので、メディアのフォックス社や、ブライトバート社や、ニュースマックス社は、プーチンを好意的に報じる傾向がある。

 代替メディアは至る所に存在している。例えば「デモクラシー・ナウ」のようなメディアは大手メディアと呼応して、マーシャ・ゲッセン(Masha Gessen)のような反プーチン派のゲストを呼んでいる。バーニー・サンダース(Bernie Sanders)や、アレクサンドリア・オカシオーコルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)や、マキシン・ウォーターズ(Maxine Waters)などは、「進歩的な民主党員」とされているが、彼らもロシア嫌いを広めることに一役買っている。トランプも当初は、ロシアとの関係を深めようとしていたが、最終的にはロシアとの対抗的な姿勢を維持し、制裁を拡大し、中距離核戦略(INF)のような軍縮交渉は決裂に終わっている。トランプの当初の政策は、米国の真の支配者層からは受け入れがたいものであり、とうの前に、トランプは「大統領にふさわしくない」という烙印を押されていた。

 RTに対してこのような真っ当な批判をもつことにより、ある重要な疑問が浮かび上がる。それは、「反帝国主義者であるなら、RTや、プレスTVやヒスパンTV(両者とも、RTにあたるイランのTV局)の報道をもとに、世界を正しく捉え、分析してもいいのだろうか?」という問いだ。さらに、「反帝国主義者であろうとするならば、これらのメディアを活用して、米国がホンジュラスや、ウクライナや、ハイチで犯している罪を暴露していいのだろうか?」という問いだ。この問いは、世界の帝国主義の中心地である米国における、急進的な世界改革を希求している勢力や、マルクス・レーニン主義を信奉する政党にとって、自身の立ち位置を確認するために、本当に興味深い問いだ。組織化は、純粋に同質な環境で発生するというよりは、常に矛盾や挫折を抱えながら前に進むものだ。 社会的・経済的矛盾を抱えてはいるが、ロシアを資本主義や、白人至上主義と闘う同士として見ることは可能なのだろうか?

ロシアは帝国主義なのか?

 ロシアは、非難を受けるべき多くのひどい行為を行ってきたかもしれないが、ロシアを帝国主義呼ばわりするのは、明らかにやり過ぎで、科学的ではない。

 実は、ソ連崩壊以降25年間、ロシアが、米国が次々に引き起こした各国に対する戦争を止めようと動いたことはほとんどなかった。エリツィン政権下では、ロシア政府は完全に米国の従属国だった。2013年に新自由主義者によるウクライナ危機が起こるまでは、ロシア政府の願いは、ラテンアメリカや、中東や、アジアや、ロシア国境でロシアがアメリカを刺激しないことだった。その代わり米国に、ロシアが強国になることを許容してもらうことだった。実際、ロシアという戦略的敵国が不在だったため、米国主導の単極的世界秩序が幅をきかし、多くの死や破壊を生んできたのだ。

 ロシアは2011年のリビアでのNATO/米国同盟軍の戦争においてどちらかといえば、受動的な態度を示したことで、西側の帝国主義者たちの手によって、それまで深い関係を結んできたリビアが空爆を受けることになった。そのことは批判されて当然だ。ロシアが国連のインチキ決議から距離を取ったことで、西側の同盟国は力を得て、リビアの政権転覆につながったのだ。その際ロシアは拒否権を発動しなかった。さらに決定的な行為として、ロシアはリビア政府に対する武器販売を全面禁止するという決議も飲んだのだ。

 2015年に、ロシアは初めて一線を画し、軍事同盟を結んでいた中東の或る国を支えようとした。それがシリアだ。ロシアが介入したのは、ロシアが中東において大きな勢力を得ようとしていたためではない。ロシアにはシリア近辺に軍や経済拠点をもっていなかったのに、このような介入に踏み切ったのだ。ロシアが直接戦争に介入したのは、4年間だった。そして介入した理由は、オバマ政権内部に矛盾が生じ、介入する機会が生まれたので、リビアでの失敗を繰り返したくないという思いがあったからだ。米国が関わったこれまでの内戦とはちがい、シリア政府は、ISISやISISを外から支援する勢力に対して、ロシア軍が軍事支援することをあからさまに歓迎していた。

 シリア国民や、世界中の反帝国主義者たちの立場からすると、ロシア政府がシリア政府に強力な軍事支援の手をさしのべたことと、反空爆装置を配置したことは、米国がシリア政府を直接爆撃することを未然に防ぐ行為に映った。

 西側を最も怒らせたロシアの二つの行為(シリアとクリミア)は、いずれも全く正当な行為だ。それはロシアが所持している不凍港を守るためだけに取られた行為だからだ。その港とは、クリミアのセヴァストポリ港と、シリアのタルトゥース港だ。両港ともがロシアにとって重要なのは、ロシアが国内に持っている主要7港(ノヴォローシースク港、サンクトペテルブルク港、ウラジオストック港など)は、冬になると凍結し、冬期の貿易量が深刻に減少するからだ。

 ロシアの援軍を得たという戦況の変化のため、シリア政府は奇跡的に持ちこたえ、米国の単極支配の時代において、ロシアは米国にこれまでにない煮え湯を飲ませることになった。

 つまり、シリアや東ウクライナで、ロシアが米国帝国主義による侵略を回避させたことは、国家の利益に基づく慎重な行為だったのだ。ロシアは侵略者ではなかった。

 米国の軍事費は7780億ドルにのぼり、ロシアの年間軍事予算617億ドルのはるか上を行く。米国の軍事費は、米国の次に軍事費が高い下位11カ国の総額を合わせた額よりも多い。こんなにも社会は金を必要としている中、米国国防総省が7780億ドルの予算をどうやって正当化できるというのだろう?この金額は、バイデン政権が掲げる「よりよき復興」法案が社会投資費として要求している年間3500億ドルの二倍以上の額だ。


  旧約聖書でダビデ王が圧倒的な力を持っていた巨人ゴリアテを恐れなかったのと同様に、米はロシアの国境付近でNATO同盟国に行動を起こさせている。ロシアが抵抗し、国境を守ろうとすれば、NATO加盟国は、条約第5条に則って行動することになる。その条項にはこうある。「一つの加盟国に対する攻撃は、全加盟国に対する攻撃と捉える。」

 今年(2021年)6月、NATOと、米第6艦隊と、黒海周辺国は「シーブリーズ21」という軍事演習を、「加盟国間の相互運用性を強化するため」という名目のもとロシア国境付近で行った。参加したのは、32カ国ほど(ほとんどのNATO加盟国及びエジプト、韓国、アラブ首長国連邦など米国の従属国)だった。

 もちろん、単極的ではなく多極的な世界であったとしても、それが帝国主義であるなら、その先にあるのは同じような未来だ。だからこそそのような相手とも真剣に闘っていかなければならない。貧しい人々や、労働者階級が求めている世界は、資本主義や帝国主義とは全く相容れないものだ。しかしだからといって、ロシアを米国と同一視してしまうことは、歴史からみれば根拠のないことであり、ロシアの外交政策を見誤っていることになるだろう。

 ロシアを帝国主義国家であると見做してしまえば、国際政治における力関係や、ロシアによるクリミアとシリアへの介入の本質を見誤ってしまう。中立的な立場から見れば、ロシアの介入により、かつて植民地だった主権国家であるシリアが—これはベトナム戦争以降ではじめてのことになるが—米帝国の侵略にすんでの所で耐えることができたのだ

ロシアの地政学上における利益

 ロシアがどんな意図をもち、どんな役割を果たすつもりでシリアに介入したかをはっきりさせることは重要なことだ。

  ロシアがアサド政権を支援したのは、イデオロギーの問題ではなかった。実用的な理由があったからだった。その一例をあげれば、西側諸国や、湾岸の君主制諸国の代理人たちによってアサド政権が転覆させられれば、シリアはそれらの国々の従属国になってしまい、ロシアによる不凍港タルトゥース港の使用を阻害されることになりそうだという理由だ。さらにアサド政権が転覆させられれば、中国の一帯一路構想の重要な部分が封鎖されることにもなるからだ。シリアは地中海と繋がっているので、米国が支配しているスエズ運河の代替通商路になるからだ。

 シリアにおける政権交代が成功すれば、米国防総省は同地域の次の標的にたやすく手が出せることになっていただろう。それはおそらくイランだ。そうなれば米国はもっと本気で、ロシア本国を包囲していただろう。ロシアがどのような外交政策を取るかの理由のほとんどは米国への恐怖心からだ。米国は他国の主権などはほとんど尊重せず、最終的にはロシア本国での政権転覆を狙うことになるのは避けられないという恐怖心だ。ある意味でこのような取り組みは既に始まっている。西側は、自身のイデオロギーなど放り投げて、新リベラル主義で反プーチンの旗頭であるアレクセイ・ナバリヌイを支援している。

 10月20日、EUはサハロフ賞の「良心と思想の自由部門」にナバリヌイを選出した。この賞は、人権を尊重した人に与えられる最大の賞である。これは西側帝国主義国家が転覆したいと思っている国の政府に異論を唱えている人々に毎年授与されることになっている。

 シリアにおいてロシアは、自国の利益を守ると同時に、シリアの独立を帝国主義者たちによる政権転覆の働きかけから守ろうとしていた。さらにこの働きかけには、サウジアラビアや米国の支援を受けたサラフィー主義者たちによる社会的・文化的な反革命運動も加わっていた。

  ロシアは確実に、シリアのタルトゥースにある不凍港への経路を守りきった。ロシアはタルトゥース港をロシア海軍の軍施設として借りている。ロシアが、シリアに介入したことで得られる経済的利益はほとんどなかったのだが。

 ロシアが世界規模の闘争の舞台に再登場したことは、単極支配を続けてきた支配者たちにとっては大きな警告となった。トルコ米国が警告しているのは、ロシア政府の管理下にあるロシアの民間軍事会社ワグナー・グループがリビアやシリアや中央アフリカ共和国や東ウクライナの戦闘に加わっていることだ。

  戦略国際問題研究所のような米国のシンクタンクは「ロシアの黒海沿岸地域」を、帝国主義に敵対する社会的勢力に力を与え、地域抗争のバランスを崩す可能性のある地域だと考えている。CIAは何十億ドルもの資金を使って、新植民地主義に甘んじたくない国々を弱体化させようとしているのだが、米国の支配者層は米国による秩序から逃れようとしている世界の他の勢力とのやりとりには慣れていない。ジェレミー・クズモロフの『ロシアの再来』という著書を読めば、今の新冷戦におけるプロパガンダ抗争の重要な振り返りができるだろう。 [5]

 しかし本当のところは、ロシアがソ連の元領土の外に有している軍事基地はたった一つしかない。それはシリア北部のラタキア市(ロシアの南の国境から約500マイル離れたところ)近郊にある。米国が知られているだけでも800以上の軍事基地や施設と、何十万人もの米兵を世界140の「主権」国家に派遣している状況とを比べていただきたい。


いじめられ、制裁を受け、経済封鎖され、包囲されているロシア

 2013年、EUと米国政府はウクライナのメイデンでの反革命運動画策に手を貸した。この反革命運動は、元ソ連共和国であったウクライナでの右翼によるクーデターだった。NATO勢力が軍事演習を行うのは、たいていロシアを牽制するためだ。例えば、英国は800人の兵をエストニアのロシア国境に送った。NATOは帝国主義を推進する最も戦略的な機能を持っているだけではなく、反ロシア同盟形成にも効果的な役割を果たしている。

 米国はロシアをNATOには招聘しなかった。米露の協力関係が最も近接していたエリツィン時代でもそうはしなかった。米国の政策考案者たちは、「いつかはロシアが勢力を回復し、フランスやドイツと協力することにより、NATOを米国が主導することができなくなる可能性がある」と考えていたようだ。NATOには招聘しない代わりに、米国はNATOをこれ以上東進させて、ソ連の元領土内には入り込まないことを約束していた。しかし米国は何度も何度もこの約束を破ってきた。

 逆の立場で考えてみて欲しい。ロシアが米国のすぐ近くに軍を配置して、戦闘を始めたとしたらどうなるだろう?ロシアがメキシコ(シリアのこと)の代理戦争に資金を出し、カナダ(ウクライナのこと)でのクーデターを画策しプエルトリコ(エストニアのこと)の兵を招集したとしても、米国が黙っていると考える人がいるだろうか?

  現状を表す以下のを見れば、米国とNATOがロシアを包囲しているさまがよく分かるだろう。 


  トランプ政権が、ロシアと何らかの取引を行うのでは?という見方もあった。それは二国間の関係の緩和についての取引だ。その条件は、ロシアがシリアから手を引き、イランを孤立させることに同意することだった。さらに「トランプの目的は中国を犠牲にしてロシアと協調することだ」とういう憶測が企業メディアで報じられたこともあった。

 米国が起こしたシリアでの代理戦争というのは、正しくは、抑圧された国々が自国の権利を守る自己防衛のための戦争であり、帝国主義者たちによる政権転覆工作を完全に拒絶しようとした戦争であった。シリア内戦というのは、シリアのブルジョア階級に属する国家主義者たちの非宗教政権を転覆させようというサーフィー主義者達による動きだ。もちろん、現政権が多くの問題や矛盾を抱えていることは事実だが、この転覆作戦がうまくいったとしてもシリア国民や、中東にとっては大きな後退にしかならないだろう。社会的にみればこの反革命運動は、シリア国家を破壊することにしかならないだろう。

 だからといって、今のアサド政権のもとでのシリアの政治体制を歓迎したり、支持しているとは思わないでいただきたい。今の政権は、アサドというバアシズム(訳注:アラブの統一と自由・社会主義を掲げる思想)を奉じる個人に指導力が集中した政体だ。それよりも現状の戦争の危険性を認識する方が肝要だ。残念ながら、ここ10年間、生死をかけた戦闘が繰り広げられているシリアで、社会主義に基づく左翼的な方向に進もうという議論は全く見られていない。

最後に

 ここまで深い分析を行えば、米国の軍産複合体や、外交政策立案者たちが人々に知られたくない一つの決定的な問いが浮かび上がる。米国支配層の代弁者たる企業メディアは既得権を行使して、ロシアは悪者で、米国「民主主義」はその被害者だという報道をしている。それに伴って、「ロシア嫌悪」という米国の国家的なイデオロギーの植え付けが、ニューヨーク・タイムズ紙の記事の全文や、TV番組の司会者レイチェル・マドーが読み上げるプロンプターの文章に刷り込まれことにより、この巨大で複雑な国ロシアに対する何百万もの米国民の世論が形成されている。

  予想通りの結果だが、ロシアに好意を持っている米国民はたったの22%だ。ロシアが米国の大統領選挙に介入したことや、ハッキングに関わっていることを批判する報道が常に報じられ、感情が煽られ、政治問題化され、反ロシア感情が激しさを増している。全く検証されることもないまま、仮説だけが流されている。しかし考えて欲しいのは、米国がどれだけ他国の選挙に干渉してきたか、第二次世界大戦後どれだけ他国の軍事クーデターに関与してきたか、米国の諜報機関が東南アジア、中東、南アメリカ、そしてロシア本国で、どれだけ画策をおこなってきたのか?ということだ。

 絶体絶命の危機にある革命家であるなら、今のロシア国家を労働者国家ソビエトの再来であるなどと考えるべきではない。以前のソビエトは、世界における階級闘争における、世界各国の自由を求める闘いとしばしば共闘していた。この闘争を西側は婉曲的に「冷戦」と呼んでいたのだが。

 しかし真の進歩主義者であるなら、以下のようなことも考慮に入れるべきだ。すなわち、経済封鎖を受け、包囲されているベネズエラや、シリアや、ジンバブエや、キューバや、イランの人々や、抑圧されている世界中の人々が、プーチンを恐れ知らずのすごい奴だと考え、抑圧された国々の主権を守ってくれる国として、ロシアを米帝国に立ち向かう同士だと考えている理由についてだ。

引用文献

1
Marlene Laruelle, Is Russia Fascist? Unraveling Propaganda East and West (Ithaca, N.Y.: Cornell University Press, 2021). 

2
Thomas Piketty, Capital and Ideology (Cambridge, Mass.: Harvard University Press 2020).

3
Jeremy Kuzmarov, “A New Battlefield for the United States: Russia Sanctions and the New Cold War,” Socialism and Democracy, August, 2020. 

4
Kuzmarov, “A New Battlefield for the United States.” 

5
Jeremy Kuzmarov and John Marciano, The Russians are Coming, Again: The First Cold War as Tragedy, the Second as Farce (New York: Monthly Review Press, 2018). 







ロシアは戦争の火蓋が切って落とされる前に正しい身の処し方を学ぶだろうか?

ロシアは戦争の火蓋が切って落とされる前に正しい身の処し方を学ぶだろうか?

<記事原文 寺島先生推薦>
https://www.globalresearch.ca/will-russia-learn-in-time-before-war-is-upon-us/5765349
Global Research


2021年12月23日

ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)博士

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年1月10日


 ソ連崩壊後初めてのことになるが、ロシア政府はついに一歩を踏み出した。そのメッセージは、「ウクライナやジョージアにNATOは入るな。以上。」だ。

 私はこうなることを予測していた。ロシア政府は、永年の屈辱や、挑発にさらに耐え続けるだろう。ただしそれは、自国の存在が危ぶまれるまでの話だ、と。

 この踏み出された一歩を、傲慢で自信過剰な米国政府は気づけるだろうか?

 ロシアメディアがロシアに対する不公平な扱いに泣き言を言い続けたところで米国政府には届かないだろう。今はロシアメディアは、WTO(世界貿易機関)の規定を満たしていないと責められ、この国際的な金銭支払システムからの締め出しを脅されていることを非難しているが、そんなことをしても米国政府には効かない。

  巨大な権力は泣き言など言わないものだ。巨大な権力が危険な意思表示をすれば、他国から嫌われることはなくなるものだ。しかしロシアはそういうやり方はずっととってこなかった。ロシア外相はいつもフェアプレーを重んじた善良な意志や意図のもとで動いている。そのような動きを米国政府がわかってくれると思っているかのように。しかし、米国政府はそんな動きにはお構いなしなのだ。

 米国政府は、ロシアを米国政府の権力と覇権の障害だと捉えている。米国政府が唯一興味を持っているのは、ロシアを弱体化させることだけだ。米国政府がロシアと交渉する気になるのは、ロシアに降伏するつもりがある時だけだ。

 ロシア政府や、ロシアメディアはヌーランドのことを気づいているだろうか?彼女は、オバマ政権で国務次官補を務め、選挙で正式に選ばれたウクライナ政府を米国が転覆させ、ロシアに敵対する米国の操り人形のような政府が樹立したのを影から指示していた人物だ。そのヌーランドが今バイデン政権で国務次官に就任している。

 米国政府は常に、ロシアを苦しませようとする勢力は後押しして、そうしない勢力は排除しようとする。トランプ大統領は、ロシアとの関係を正常化したがっていたが、3年間にわたる「ロシアゲート」に直面させられ、「盗まれた選挙」により、大統領官邸から追い出された。トランプは、米国の軍(防衛)産複合体を、敵国のない形で残そうとしたのだが、それは許されない選択だったのだ。

 ロシアが平和を望んでいるのは分かる。私も同じ気持ちだ。しかし平和を手にするためには、侮辱や挑発を受け入れないという姿勢を示すことが必要なのだ。ラブノフ外相がいつも言う「西側諸国の皆さんと交渉する準備はいつでもできています」という姿勢ではだめなのだ。米国政府には、善良な意志は弱さにとられる。そうなることで挑発がエスカレートし、結果、戦争になってしまう。

 ラブノフ外相はこう言うべきだった。「ロシアは敵国からの侮辱は受け入れません」と。米国政府がロシアと交渉する気になるのは、ロシアに降伏する意思がある時だけだ。米国政府の言い分はこうだ。「ロシアが西側諸国の一員になるには、操り人形のような国になれば可能だ。フランスや、ドイツや、英国など他の全ての西側諸国のように」

 ロシアが善良な意思ではなく、強さや、危険な面を出していたのなら、西側諸国はロシアに交渉の手を差し出していただろう。ロシアは米国政府と意味のある交渉などできはしないだろう。米国政府がロシアを恐れない限りは。政府の中枢やメディアが、自国が不公平に扱われているなどと泣き言をいっているだけの国であるなら、米国政府はそんな国と真剣に交渉しようなどと夢にも思わないだろう。

ボリス・エリツィンは何百人ものCIAの工作員に取り囲まれていた。そしてエリツィンは彼らのいいなりだった


<記事原文 寺島先生推薦>Boris Yeltsin had entourage of ‘hundreds’ of CIA agents who instructed him how to run Russia, claims former parliamentary speaker

Russia Today ワールドニュース

2021年6月12日



ジョニー・ティックル(Jonny Tickle)著

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年6月30日

 ロシアの初代大統領であったボリス・エリツィン元大統領は、「何百人もの」CIAの工作員に取り囲まれ、指導者としての任期中ずっと指図を受けていた。これはルスラン・ハズブラートフ元ロシア国会議長の話だ。

 ラジオ番組「ガバリート・モスクワ(Говорит Москва)」で、ハズラートフ元議長は、エリツィンの側近は米国人で満たされていたと語った。1996年に、エリツィンは米国政府の助けを借りて大統領に選ばれた。しかし米国政府が、エリツィンの在職中にどの程度までエリツィンに対して影響力を持っていたかについては議論されてきたが、いまだにはっきりとはわかっていない。

 「(CIAの工作員が)100人いたことは間違いありません」とハズラートフ元議長は語った。また元議長は、「これらの工作員がすべてを決めていました」とも語った。さらに付け加えて、「大統領選挙に勝利した後、エリツィンは米国に安全保障当局者と部局長を派遣し、米国政府がそれらの当局者や部局長の“精査”を行い、“結論”を出していました」とのことだった。

ALSO ON RT.COM

Putin’s secret kill list REVEALED! If you’re ready to believe anonymous & erratic ‘spy’ sources beloved by Western media, that is…

 ハズラートフ元議長の発言は、アレクサンドル・ルツコイ元ロシア副大統領がロシアのオンラインメディアサイトの「レンタ」の取材で語ったことをうけてのものだった。その内容によると、CIAの12名の常勤工作員が、エリツィン元大統領とガイダル(訳注:ロシア創成期に経済政策で中心的な役割を果たした政治家)が行った市場再建策の実行に手を貸し、中央経済計画を体系的に崩壊させ、「ショック療法」と呼ばれる資本主義政策にロシアを導くことになった、とのことだった。ルツコイ元副大統領がさらに述べたところによると、ある重要な場面で、エリツィン元大統領が外国なまりのある或る見知らぬ男と話しているところを耳にしたことがあったそうだ。

 しかしハズラートフ元議長によれば、ルツコイ元副大統領が米国とつながっていたことは周知の事実であり、米国政府の役人たちさえエリツィン元大統領に対して影響力を持っており、エリツィン元大統領が指名した人物の起用を取り下げたことは何度もあったとのことだ。

 「ルツコイ元副大統領が言っていることは、ほぼ正しいことです。エリツィン元大統領は外国人から助言を受けていました」とハズラートフ元議長は続けた。「秘密でもなんでもありませんし、多数の人がこのことを知っています。盗聴が行われているなどといった探偵小説に出てきそうなエピソードは知りませんが、総じてこのことはよく知られていることなのです。エリツィン元大統領は、外国の代表者たちとすべての人事問題について密に話し合いをしていました」

 エリツィン元大統領が大統領職を去ったのは1999年のことだが、強力な大統領制を敷くことも、敵対する議会から権力を奪うことも、三権分立を排除することも成し遂げられなかった。これらの動きには、米国政府の支持があったのだが、その意図は新しく建国されたロシアという国において、共産党に権力を持たせないでおくことだった。

 今、エリツィン元大統領の遺産に対する評価には賛否両論ある。多くのロシア人はエリツィン元大統領のことを、「ロシアを西洋資本主義に売り渡した飲んだくれ」だと考えている。一方海外では、エリツィン元大統領は、南アフリカのネルソン・マンデラや、ポーランドのレフ・ワレサや、チェコの初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルのような革命的な政治家と同列で捉えられている。ビル・クリントン元米国大統領に至っては、エリツィン元大統領のことをアブラハム・リンカーンになぞらえてさえいる。

 

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