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アメリカ世界支配の青写真:「封じ込め」から「先制攻撃戦争」まで:1949年トルーマン・ドクトリン

<記事原文 寺島先生推薦>
America’s Blueprint for Global Domination: From “Containment” to “Pre-emptive War”. The 1948 Truman Doctrine
ANNEX: Archive of (Declassified) Top Secret Policy Planning Document drafted by George F. Kennan
付録:ジョージ・F・ケナンが起草した極秘の政策企画文書の記録(公開解除済み)
筆者:ミシェル・チョスドフスキー (Michel Chossdovsky)
出典:GR 2023年5月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月4日


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写真:ハリー・トルーマン大統領

 最初、グローバル・リサーチ(GR)によって最小限の編集が加えられ、2014年9月7日に公開された。
 この非公開解除文書は、最初にグローバル・リサーチによって2003年12月に投稿された。
 私がトルーマン・ドクトリンについて書いた2003年の記事の詳細はこちら


筆者の序文

 ジョージ・F・ケナン(1948年)の分析を読者の皆様に紹介する。これは「トルーマン・ドクトリン」外交政策の土台となった。

 これらの文書は礎を築いた。これはバイデン政権下におけるアメリカの外交政策や軍事戦略に直接に関わりがある。特に、現在アメリカが後ろ盾になっている「経済戦争」の対象であるドイツとEUに関連している。

 重要な点は、バイデン政権はドイツとEUを脅迫したが、その方式は戦後初期の「トルーマン・ドクトリン」の下で形成されたものだ。ジョージ・ケナンによれば:

 「そのような連邦(EU)を実現することは、もしドイツが分割されたり、あるいは徹底的に分権化されれば、そしてもし構成国が個別にEUに参加できるようになれば、はるかに容易になるだろう。

 西ドイツの軍事占領は長期間続く可能性がある。私たちはそれが欧州の光景の準永続的な特徴になることを覚悟しなければならないかもしれない。

 長期的には、西部および中部ヨーロッパの将来には3つの可能性しかない。一つはドイツの支配。もう一つはロシアの支配。三番目は連邦制ヨーロッパ(の支配)だ。そうなればドイツの一部がそこに吸収され、他の国々の影響力がドイツを抑制するのに十分なものになる。

 直接的な力の概念に基づいて対処しなければならない日は遠くない。理想主義的なスローガンによって邪魔されることが少なければ少ないほど、良い」(ジョージ・ケナン、強調は筆者)

 「直接的な力の概念」は、現在、米国国務省とメディアによって「ルールに基づく秩序」という言い方になっている。

参照:最近の論考
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Video: America is at War with Europe
By Prof Michel Chossudovsky, April 22, 2023

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Video: Has Germany Become a Colony of the United States?
By Prof Michel Chossudovsky, April 20, 2023



ミシェル・チョスドフスキー、2023年4月17日
***



 今日米国とNATOが資金提供する戦争は、半世紀以上にわたる軍事および外交政策の一環だ。

 この点において、2000年に策定されたネオコンの「新しいアメリカ世紀の計画」は、冷戦の初期に国務省が策定した軍事的な覇権と世界的な経済支配のための戦後課題の集大成と見なしてもいいだろう。

 これら1948年の国務省文書が明らかにするのは、冷戦時代の「封じ込め」から現在の「先制攻撃戦争」の教義への、米国の外交政策の継続性だ(詳細は下記の付録を参照)。

 新しいアメリカ世紀の計画(PNAC)は、多くの点でトルーマン・ドクトリンの継続と言える。すなわち、米国とNATOによって地球規模で戦われる覇権的な「長期戦争」だ。軍事行動は、世界の異なる地域で同時に実施されることになる(PNACで詳述されている):

複数の、同時進行的な、大きな戦域での戦争を闘い、断固として勝利せよ」

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 言うまでもなく、ハリー・トルーマンからジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ(そして現在のジョー・バイデン)まで、民主党と共和党代々の政権は、この世界的な支配のための覇権的な青写真を実行するために関与してきた。この計画をペンタゴンは「長期戦争」と呼んでいる。

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 ケナンの著作は、「私たちの国と英帝国の良好な関係に基づく、支配的な英米同盟の構築の重要性」を指摘している。現代の世界では、この同盟は主にワシントンとロンドンの間の軍事軸と特徴付けられる。この軸はヨーロッパの同盟国の利益を犠牲にしながら大きな役割をNATO内で果たしている。また、ケナンはカナダを英米同盟に含めることの重要性も指摘した。この政策は現代において(NAFTAや軍事指揮構造の統合の下で)広い範囲で実施されている。カナダはアメリカとイギリスの仲介役と見なされ、アメリカがイギリスの植民地にも影響力を行使する手段とされた。これらの植民地は後にイギリス連邦の一部となった。

 重要なのは、ケナンが、英米軸と競合する可能性のある大陸ヨーロッパの大国(たとえば、ドイツやフランス)の発展を止めることの重要性を強調していることだ:

 今日、この半世紀の始め、というより終わりにあたって、私たちの中には、アメリカの安全性がしっかりしていることに疑いを持って、ある基本的な要因に目を向けている人たちもいる。私たちが見て取れるのは、我が国の安全性が、歴史の大部分にわたって、イギリスの立場に依存してきたことだ;特に、カナダは私たちの国とイギリス帝国との良好な関係のために貴重で不可欠な人質的役割を担い続けてきた;翻って、イギリスの立場は、ヨーロッパ大陸における力の均衡が維持されていることに依存していることも見て取れる。

 したがって、イギリスにとっても私たちにとっても、大陸における大国ひとつがユーラシア大陸全体を支配しないようにすることは極めて重要なことだった。私たちの利益は、むしろ内陸の大国の間で、ある種の安定したバランスを維持することにあった。その目的としては、それらの国のいずれも他国を征服したり、海洋沿岸部を制圧したり、陸地の力に加えて海洋の力を持つ大海洋国となったり、イギリスの地位を打ち砕いたりさせないためだった。そして、ヨーロッパとアジアの内陸の膨大な資源に支えられて、私たちに対して敵対的な海外拡大(このような状況では確実にそうなる)をさせないためだった。こういったことを見れば、私たちはヨーロッパとアジアの周辺大国の繁栄と独立に利害があることが理解できる:こういった国々の視線は内陸への権力の征服ではなく、海を渡って外向きに向けられてきた。(ジョージ・F・ケナン、『アメリカ外交』、シカゴ大学出版、シカゴ、1951年)

 今日、世界は世界史上最も深刻な危機的分岐点に立っている。米国とその同盟国は人類の未来を脅かす軍事的な冒険を展開している。この世界戦争の手引きは、1948年のトルーマン・ドクトリンにその歴史的な起源を持っている。

 ウクライナや東ヨーロッパにおける最近の動向と関連して重要な点は、ケナンが彼の1948年の国務省文書で明確に指摘した「ドイツを西ヨーロッパ内へ封じ込める政策」だ。ケナンの観察が示唆するのは、米国が欧州プロジェクトを支持するのは、それが米国の覇権的な利益を支持する範囲内である限りにおいてのみであるべきだ、ということだ。

 この点に関して言えば、2003年3月の米英によるイラク侵攻の猛攻の前においては、フランスとドイツの同盟の方が、大きな優位に立っていたことを私たちは思い起こす。この侵攻にフランスとドイツの両国は反対していたのだ。

 2003年のイラク侵攻は転換点だった。親米的な政治指導者(フランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相)の選出は、国家主権の弱体化をもたらし、フランス・ドイツ同盟の崩壊につながった。

 今日、フランソワ・オランドとアンゲラ・メルケルは直接ワシントンから指示を受けている。

 さらに、現在の状況において、アメリカはドイツとフランスがロシアとの政治的・経済的関係を発展させることを止めようとしている。ワシントンからすれば、そんなことをさせれば、欧州連合(EU)におけるアメリカの覇権志向を損なうものと見られるからだ。

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「連邦化した欧州」

 アメリカ国務省が「弱体化したドイツ」に基づく欧州連合の青写真は、1940年代後半には描かれていたと思われる。

 1948年の文書において、ケナンは「連邦制のヨーロッパ」の形成を想定しており、それはイギリスとアメリカの支配的な同盟の強化、ドイツのヨーロッパの大国としての弱体化、そしてロシアの排除が基本だった。

ケナンによれば:

 長期的には、西部および中部ヨーロッパの将来には3つの可能性しかない。一つはドイツの支配。もう一つはロシアの支配。三番目は連邦制ヨーロッパ(の支配)だ。そうなればドイツの一部がそこに吸収され、他の国々の影響力がドイツを抑制するのに十分なものになる。

 もし本当のヨーロッパ連邦が存在せず、もしドイツが強力で独立した国家として復興した場合、ドイツの再度の支配的動きを私たちは想定しなければならない。もし現実的にヨーロッパ連邦が存在せず、そしてもしドイツが強力で独立した国家として復興しない場合、私たちはロシアの支配を招き入れる可能性がある。なぜなら組織化されていない西ヨーロッパは、組織化された東ヨーロッパに無制限に反対の立場を取ることはできないからだ。これらの二つの悪のうちいずれかを回避するための唯一の可能性は、西ヨーロッパと中央ヨーロッパにおける何らかの形の連邦である。

 さらに、注目すべきは、冷戦初期のアメリカがドイツの再統一に賛成していなかったということだ。正反対だった:ドイツは分割されたままであるべきだ:

 今日の私たちのジレンマは、ヨーロッパ連邦がアメリカの利益から見て間違いなく最善の解決策であるのだが、ドイツはそれに対して準備が不十分であるという事実にある。このような連邦を実現することは、もしドイツが分割されるか、もし根本的に分権化されるか、さらには、もしそのばらばらになった構成国が個別的にヨーロッパ連合に参加できるようになったら、はるかに容易になるだろう。統一されたドイツ、あるいは統一された西ドイツですら、そうした連合に参加させることは、はるかに困難になるだろう:なぜなら、そういうドイツは多くの点で他の構成国よりも重みを持ってしまうからだ。

 アジア、中国、インドを含む地域に関して、ケナンは軍事的な解決策だけでなく、アジアの人々を貧困状態に維持することの重要性についても示唆している。また、前面に押し出しているのは、分断を作り出す戦略と、アメリカの覇権的利益の阻害になるアジア諸国とソビエト連邦との関係構築を確実に止めることだ。

 「直接的な力概念に基づいて対処しなければならない日は遠くない。理想主義的なスローガンが邪魔になることが少なければ少ないほど、より良い」:

 さらに、私たちは世界の富の約50%を保有しているが、人口はわずか6.3%に過ぎない。この格差は、特に私たちとアジア民族との間で顕著だ。この状況では、私たちは嫉妬と敵意の対象となることは避けられない。来るべき時代における私たちの本当の仕事は、この格差の維持を国家安全保障に積極的な悪影響を与えることなく行うための関係のパターンを考案することだ。そのためには、感傷や妄想を一切捨てなければならず、私たちの関心は即座に国家の目標に集中されなければならない。今日、利他主義や世界への恩恵は何とかできる、などと私たちは自己を欺く必要はない。

 これらの理由から、極東地域に対する態度には大いに自制心を持つ必要がある。アジアおよび太平洋地域の人々は、私たちが何をしようとも、自分たちのやり方で政治的形態や相互関係の発展を進めていくだろう。このプロセスは自由で平和なものではない。最も大きなアジア民族である中国人とインド人は、まだ自分たちの食糧供給と出生率の関係に関わる基本的な人口問題の解決に着手していない。彼らがこの問題に何らかの解決策を見つけるまで、さらなる飢餓、苦難、そして暴力は避けられない。すべてのアジア民族は、現代技術の影響に適応するために新しい生活の形を進化させる必要があるのだ。この適応のプロセスも長期間かつ暴力的なものとなるだろう。以下のことは可能性があるだけではなく、おそらくそうなるのだ。つまり、このプロセスの中で、多くの民族が、いろいろな時期に没落してゆくということ、それもモスクワの影響のもとで。このモスクワのイデオロギーは、このような民族にとってより魅力的であり、おそらくより現実的なものでもある。私たちがそれに反対して提供できるものよりも現実的なのだ。こういったこともまた避けられないだろう;そして、そのような目的に米国民が喜んで譲歩してくれたとしても、それ以上の様々な国家的努力がなければ、これと闘うことなどできないだろう。
  
 この状況に直面して、極東に関する私たちの考え方に根付いているいくつかの概念を私たちは今すぐ手放す方が良いだろう。「好かれたい」とか高潔な国際的利他主義の守護者と見なされたいという願望を捨てるべきだ。私たちは自分たちの兄弟の守護者であろうとする立場に身を置くことをやめ、道徳的なアドバイスやイデオロギーに関して慎重になるべきだ。私たちは人権や生活水準の向上、民主化といった曖昧で、極東にとっては非現実的な目標について話すのをやめるべきだ。直接的な権力概念で対処しなければならない日が近づいている。理想主義的なスローガンが邪魔になることが少なければ少ないほど、より良い結果を得ることができるだろう。(強調は筆者)

 冷戦時代の初期から、ワシントンは国連の弱体化も狙っていた。ケナンによれば:

 アメリカの世論において国連構築への取り掛かりはたいへんな勢いだったので、繰り返し言われていることだが、私たちはこの戦後期において国連を政策の基盤にするしかないというのは真実かもしれない。時折、国連は有用な役割を果たしてきた。しかし、全体的に見れば、国連は解決よりも問題を引き起こし、外交努力の分散をもたらした。そして、主要な政治目的において国連の多数派を利用しようとする時、私たちは、いつか逆に私たちに敵対するような危険な武器を弄んでいるのだ。これは私たちにとって非常に慎重な研究と見通しを要する状況だ。(強調は筆者)

ミシェル・チョスドフスキー、2014年9月7日、2023年5月17日(2003年12月版をアップデート)
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付録
追加参照(原典参照文献も含む)
FOREIGN RELATIONS OF THE UNITED STATES 1945-1950 Emergence of the Intelligence Establishment
at http://www.state.gov/www/about_state/history/intel/
Foreign Relations Series (Kennedy through Nixon)
at http://www.state.gov/www/about_state/history/frus.html
For a list of Kennan’s writings at Princeton University library:
http://infoshare1.princeton.edu/libraries/firestone/rbsc/finding_aids/kennan/index.html
See also The United States’ Global Military Crusade (1945-2003) by Eric Waddell, Global Outlook, Issue 6, Winter 2003
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PPS/23: 米国外交政策の現状の動向概観
『アメリカ合衆国の対外関係』 1948年、第1巻、509-529ページ。政策企画室文書1
政策企画室所長(ケナン)から国務長官と次官(ラヴェット)への覚書
最高機密
PPS/23
(ワシントン、)1948年2月24日
(強調は筆者)

 エイチソン氏3が初めて私に企画室について話したとき、最も重要な機能は過去の私たちの行動から浮かび上がる外交政策の展開の軌跡を追跡し、将来に向けてそれらを予測することで、私たちがどこに向かっているのかを把握できるようにすることだと彼は述べた。

 企画室の運営の最初の数か月、私はそのような試みに踏み出すことをためらった。なぜなら、私たちの認識に真の価値を与えるために、関連する問題への十分に広い視野を持っている人間は一人もいないと感じたからだ。

 私は、外交政策の主要な問題について全般的な見解に向けたを試みに取り組んでみた。それを企画スタッフの文書として添付する。それは完全ではなく、疑いなく多くの欠点があるかもしれない;しかし、これはこの企画室の進化に、いつか役に立つと願っている統一された外交政策の概念に向けた最初の一歩なのだ。

 この文書は情報提供のみを目的としており、承認を求めるものではない。私はこの文書を国務省内で共有するための努力をしていない。なぜなら、そうすると文書の性格を変えてしまう可能性があるからだ。そのため、この文書に示された意見が国務省の行動の基礎となる場合は、関係する部署の意見を先に参考にするべきだと考えている。

 この文書には本来、ラテン・アメリカに関する章が含まれているべきだ。しかし、私はその地域の問題について詳しい知識がなく、企画室もまだそれを研究していない。バトラー4(私の不在時に私の後任となる5)は、これらの問題に長い経験を持っており、私が職務を離れたら彼とスタッフがラテン・アメリカ諸国に関する基本政策目標についての推奨事項を作成できることを期待している。

ジョージ・F・ケナン
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(付録)
政策企画室による報告書
最高機密
PPS/23

(ワシントン、)1948年2月24日。
現行の傾向に関するアメリカの外交政策の概観

I. 米国、英国、そして欧州

 西ヨーロッパが共産主義の支配から救われるという前提で、イギリスと大陸諸国の関係、一方でイギリスとアメリカ、カナダとの関係は、私たちにとって重要な長期的な政策問題となるだろう。この問題の範囲は非常に広く、その複雑さも多岐にわたるため、単純で容易な答えは存在しない。解決策は長期間にわたって一歩一歩進化していく必要がある。しかし、私たちの国益に最も適した枠組みの大まかな輪郭を考え始めるのは、今日でも遅すぎることはない。

 私の意見では、以下の事実はこの問題を考える上で基本的な要素となる。

1.もし、ヨーロッパの自由な国々がモスクワの支配下に結束する東側の国々に対抗し続けるためには、西ヨーロッパにおいて何らかの政治的、軍事的、そして経済的な連合形態が必要となるだろう。

2. もしイギリスの参加と支持がなければ、この連合が、設定された目的を果たすために、十分に強力な連合になれるかどうかは疑問だ。

3. 一方で、イギリスの長期的な経済問題は、他の西ヨーロッパ諸国とのより緊密な関係だけではほとんど解決できない。なぜなら、これらの国々はイギリスが必要とする食料や原材料の余剰をほとんど持っていないからだ。この問題は、カナダとアメリカとのより緊密な関係によってずっとうまく解決される可能性がある。

4. イギリスは含め、東ヨーロッパは除外する形でのヨーロッパ連合が経済的に健全となる唯一の方法は、東半球またはアフリカとの最も緊密な貿易関係を構築することだ。

 上記からわかるように、私たちはある種のジレンマの前に立っている。もし私たちがイギリスを米国・カナダの勢力圏に取り込むとすれば、「今こそ連合」という形式に基づいて、おそらくイギリスの長期的な経済問題を解決し、強力な自然な政治的実体を作り出すだろう。しかし、これによってイギリスは大陸諸国との緊密な政治的連携から切り離されることになるだろうし、その結果、大陸諸国がロシアの圧力により脆弱化する可能性がでてくる。一方で、イギリスが大陸隣国とのより緊密な関係に救済を求めるように背中を押される場合、イギリスやドイツの長期的な経済問題に明確な解決策はなく、欧州復興計画(ERP)の終了時には、この国(イギリス)にヨーロッパへの援助を求めることはまた危機に陥ることになるだろう。6

 このジレンマから抜け出すためには、私には2つの方法しか見えない。これらは相互に排他的ではなく、実際には互いに非常に補完的なものかもしれない。

 第一に、イギリスがヨーロッパ連合への参加計画を積極的に進めるようその背中を押すことができるだろう、そして単にイギリスだけではなく、その連合全体をこの国イギリスとカナダとのより緊密な経済的関係に結び付けることができるだろう。ただし、これが本当に効果的になるためには、経済的な関係が通貨と関税の一体化をもたらすほど密接である必要がある。また、ヨーロッパと(北米)大陸の間で個人の移動の相対的な自由も必要だ。これによって、私たちがこれらの地域がこの国からの政府援助への異常な依存を解消するために実現する必要のある私的資本と労働力の自由な移動が実現できる。ただし、ITO(国際貿易機関)憲章7の観点から、そのような計画の可能な含意にも注意を払う必要がある。私が見る限り、この憲章草案があっても、貿易協定プログラムの背後にある理論全体も同様だが、西ヨーロッパ諸国に特別な施設を広げることはむずかしいだろう。それは、私たちが他のITO参加国や貿易協定の参加国に対してしてこなかったことだ。

関連記事:トランプ大統領の誕生と迫り来る欧米間の対立

 第二の可能な解決策は、西ヨーロッパ諸国の連合がアフリカ大陸の植民地および依存地域の経済開発と利用を共同で行う取り決めである。このような計画の実現には、確かに現在の西ヨーロッパの政府の見通しや力、その指導力をはるかに超える課題ある。外部からの駆り立てと多くの忍耐が必要となるだろう。しかし、この考え自体には多くの利点がある。アフリカ大陸は比較的共産主義の圧力を受けにくく、そのほとんどが、現在、大国の対立の対象にはなっていない。西ヨーロッパの海洋国家が容易に近づけ、政治的にはその大部分を支配または影響下に置いている。その資源はまだ比較的未開発だ。アフリカは多くの人々とヨーロッパの余剰の技術と管理のエネルギーを吸収することができるだろう。最後に、それは、ここ数か月間手探りしても、誰もあまり成功しなかった西ヨーロッパ連合という考えに具体的な目標を与えるだろう。

 これがどんな風になろうと、一つははっきりしている:もし欧州復興計画(ERP)の主要目的を達成したいのであれば、私たちは心から、かつ忠実に、イギリスの西ヨーロッパ連合への取り組みを支援しなければならない。そして、この支援は、時折、公的な賛成意見を表明するだけでは駄目だ。この問題は、気持ちを込め、かつ共感的に、イギリス自身と西ヨーロッパの他の政府との間で議論されるべきだ。このような議論においては、私たち自身の政策の明確化や、ヨーロッパ人自身への健全で助けになる影響を行使する点で、多くの成果が上げられるだろう。特に、私たちが西ヨーロッパ諸国に、ドイツ人をヨーロッパの市民として扱う必要性を説得する手助けができれば、非常に大きな成果を上げることになるだろう。

 それを念頭に置いて、私は西ヨーロッパ交渉団の一人ひとりに、西ヨーロッパ連合問題の特別研究を行うことを要請したほうがいいのかもしれない。それは一般的な観点と関連する特定の国に言及して考える必要がある。また、この研究の準備過程で、各首都の知識と経験豊富な人々の意見を参考にする機会を得ることも要請したほうがいいのかもしれない。これらの研究には、基本的な問題への接近方法に関する独自の推奨事項も含まれるべきだ。国務省におけるこのような研究の要約は、問題となっているこの問題について、かなり健全で、境界をこえたバランスの取れた意見を生み出すはずだ。


II. 欧州復興計画

 現在の議会での討論の進行により、現政府がヨーロッパ支援の問題において進む方向性の輪郭をある程度の確率で見極めることが可能になっている。

1. 復興計画の運営

 浮かび上がった今回の復興プログラムの最も重要な特徴は、それが政治的な問題ではなく、技術的な業務として現政府によって実施されるということだ。私たちは現実的に直面しなければならないのは、これによって復興プログラムの潜在的な政治的影響が大幅に減少し、現政府のヨーロッパに対する政策に混乱、矛盾、そして無効化の度合いをもたらす可能性があるということだ。現政府の別個の機関によるヨーロッパ政府との関係の運営は、非常に重要な問題を巡って、長期間行われるため、それは国務省のヨーロッパ事務業務への深刻な影響をもたらし、その使命の威信、能力、そして効果を低下させることは避けられない。

 このような状況では、国務省がヨーロッパ諸国との関係の進展に対して影響を及ぼす可能性は、主にホワイトハウスを通じて国家政策に影響を与えることができるかどうかにかかってくることになる。つまり、国務省とホワイトハウス、特に国家安全保障会議との連絡手段に非常に重要な役割が与えられる必要がでてくる。

 しかし、このような回り道の経路を通じて行われる国家政策や、欧州復興計画のような新たな独立組織を含む政策が、一点の曇りもなく効果的になるなどと期待するような自己欺瞞はすべきではない。政策立案の機能が明確に政府の通常の機関に委ねられる限り、そのような政策が本当に効果的になることはないのだ。政策を実行する人々の理解を得ることがなければ、どんな政策も本当の意味で効果的になることはない。外交政策の分野における政府の政策の理解は、その分野に新たな人々が関わる場合でも、最善の意思によっても容易に獲得することはできない。これは短期間で行えるような概況説明や指導でどうこうできるものではない。それは数年を要する教育と訓練の問題なのだ。

 戦時中および戦後の臨時の機関が外交の現場で運営された経験から、新たな機関は、その身内の職員の視野や教育的な範囲を超える政策を実行する上でほとんど価値がないことが明らかになっている。また、実際には、これらの機関は自己の勢いを発展させ、最終的には国家政策を形成する傾向があり、下働きをするというより国家政策を作り上げる結果になることが分かっている。

 この援助プログラムの実施方法が、その基本的な目的が果たされないことを意味するわけではないと私は考えている。米国の援助を柔軟な政治的手段として戦術的に活用することはほとんどできないが、資金と物資自体がヨーロッパの現場において重要な要素となる。この経済支援の利用可能性そのものが、いわば西ヨーロッパの人々が政治的独立を維持するための自己の闘いにおいて、彼ら自身が支えになる新たな地形的要素を創り出すだろう。

 しかし、この法案が可決されたのだから、問題の大部分は私たちの手から離れることを認識しなければならない。欧州復興計画の運営により、国務省自体が当該期間中にヨーロッパに関連して鋭くかつ活発な政策を実施することは困難になる。もちろん、私たちは引き続きヨーロッパの情勢の発展を注意深く研究し、ヨーロッパ地域に関連する国家政策の形成にできる限り貢献する義務を果たす必要がある。しかし、それによって国務省は、世界の広範な地域の中でも、近年の戦争中に多くの場合に占めた位置に後退する。すなわち、執行機関ではなく、助言的な機関としての位置だ。

2. 時間的要素と量の問題.

 議会がこの問題に対していつまでもぐずぐずしていると、復興プログラムの成功に明確な危険をもたらす。援助が利用可能になる日とヨーロッパの予備資金が持ちこたえられる時点との間にギャップがある場合、復興計画の効果の大部分が無効化される可能性がでてくる。

 おそらく、私たちが嘆願したり強く求めたりして議会の行動を早めることはあまりできないだろう。しかし、議会に対して、私たちは関与する時間制限(国務省の経済分析者が決定する必要がある)と遅延の可能性に伴う潜在的な結果を率直に述べるべきだと私は思う。さらに、特定の時間制限を超えて付与される援助は、①現政府の行政部門の推奨に応えて考えることはできないし、②行政部門は、これらの状況下での望ましい復興計画やその効果に対する責任を負うこともできない、以上2点ははっきりさせておこう。

 もし復興プログラムが、私たちが復興目的に必要と考える最低限の金額以下に削減される場合、同じ原則が適用される。

 どちらに転んでも、私たちが議会に「指図」しようとしているとの批判が出るだろう。しかし、ここには重要な責任の問題がある;もし今、不十分で遅すぎる、またはその両方である援助プログラム(現政府はそのことを知っている)に対して責任の一部を受け入れるよう強制されることがあれば、現政府の行政部門は将来困った立場に置かれることになる。

3. 欧州連合の問題

 ハーバード演説8への最初の反応は、欧州でもここ(アメリカ)においても、援助計画の成功にとって欠かせない欧州統一の概念がいかに重要かを示した。もし復興計画が参加国をより結びつけるための実際の取り組みを行わなければ、それは確実に中心となる目的には失敗し、国際社会の目には、尊厳と重要性を備えてはいても、外国経済援助のこれまでの取り組みとは異なったものに映るだろう。

 いろいろ熟慮しているこの段階において、議会だけでなく、国務省でも、この基本的な事実が見失われるという現実の危険性がある。

 したがって、援助計画の概念におけるこの要素を強調する機会を逃さずに利用し、16ヶ国間の協力と共同責任の原則が、私たちが手掛ける運営全体で重視されるよう強く主張する必要がある。


III. ドイツ 9

 ドイツにおける(占領)軍政にとっての責任に関する今後の変化は、私たちにとってドイツに対する新たな長期的な目標の概念を発展させる適切な機会を与える。既存の政策指令の概念に頼ることはできない。これらは別の状況に対応するために設計されたものであり、また、多くの場合、それ自体が妥当であるかどうか疑問だ。

 この関連で行われる計画立案は、必然的に多面的で膨大なものとなるだろう。しかし、私たちは今日、私たちが直面する問題の主たる輪郭と、求める必要のある解決策の大まかな構図を見ることができると思う。

 長期的には、西部および中部ヨーロッパの将来には3つの可能性しかない。一つはドイツの支配。もう一つはロシアの支配。三番目は連邦制ヨーロッパ(の支配)だ。そうなればドイツの一部がそこに吸収され、他の国々の影響力がドイツを抑制するのに十分なものになる。

 もし本当のヨーロッパ連邦が存在せず、もしドイツが強力で独立した国家として復興した場合、再びドイツによる支配の試みが起こることを我々は想定しなければならない。もし本当のヨーロッパ連邦が存在せず、ドイツが強力で独立した国家として復興しない場合、私たちはロシアの支配を招きいれることになる。なぜなら組織化されていない西ヨーロッパは、組織化された東ヨーロッパに無期限に対抗することはできないからだ。これらの二つの悪のうちいずれかを回避するための合理的に期待できる唯一の可能性は、西ヨーロッパと中央ヨーロッパにおける何らかの形の連邦である。

 今日の私たちのジレンマは、ヨーロッパ連邦がアメリカの利益から見て間違いなく最善の解決策であるのだが、ドイツはそれに対して準備が不十分であるという事実にある。このような連邦を実現することは、もしドイツが分割されるか、もし根本的に分権化されるか、さらには、もしそのばらばらになった構成国家が個別的にヨーロッパ連合に参加できるようになったら、はるかに容易になるだろう。統一されたドイツを、あるいは統一された西ドイツすらそうだが、そうした連合に参加させることは、はるかに困難になるだろう:なぜなら、多くの点で他の構成国家よりも重みを持ってしまうからだ。

 もし敗戦直後に断固として迅速に実行されていたならば、ドイツ帝国の分割は可能だったかもしれない。しかし、その時は過ぎ去り、今日私たちは別の状況に直面している。現状では、ドイツ人は心理的にはドイツ帝国分解への心構えができていないだけでなく、分解に対してはっきりと好ましくないと思う心境にある。

 今後のドイツの将来に関する計画を立てる際には、これまでの占領は、ドイツ人の心理的な観点からすれば運が悪かったと思っている不快な事実を私たちは考慮しなければならない。ドイツ人が今身をもたげてきているのは、戦後期のこの位相からであり、その心理状態は不機嫌で、苦々しく、改心しない態度であり、そして旧ドイツ統一の幻想に病的に執着している、と描写すれば一番ぴったりする。ドイツ降伏以来、私たちの道徳的・政治的な影響力は進展していない。彼らは私たちの教えや模範に感銘を受けていない。彼らは私たちに指導を期待しないだろう。彼らの政治生活は、おそらく極右と極左に両極化し、私たちの観点からは敵対的で扱いづらく、私たちの価値観を軽蔑するものとなるだろう。

 私たちは、そのようなドイツが、自発的に欧州連合の枠組みに建設的に参加するようになる、という展開には頼れない。そうかと言って、ドイツ人なしでは、本当の欧州連合は考えられない。そして連合がなければ、他のヨーロッパ諸国は外部支配の新たな試みがあっても、保護を受けることはできない。

 もし私たちがロシア人とドイツの共産主義者に、私たちの分割への動きを政治的に利用する準備させない場合、私たちは住民の意思に関係なくドイツを分割し、それぞれの地域を連邦制ヨーロッパに組み込むことができるだろう。しかし、今日の状況では、ドイツ人を共産主義者の腕の中に政治的に投げ込まずにこれを行うことはできない。そして、もしそんなことが起これば、私たちのヨーロッパにおける勝利の成果は台無しになってしまうだろう。

 そのため、排除のプロセスによって、私たちのもついろいろな可能性は絞られ、ドイツの分割の問題を押し付けるのではなく、ドイツつまり西ドイツを欧州連邦に組み込もうとする政策になってくる。ただし、それを行う際にはドイツにその連邦を支配する、あるいは他の西ヨーロッパ諸国の安全保障利益を危険にさらさせることも許してはならない。そして、これはドイツ人が①自発的に自制心を持つこと、②他の西側諸国に対する十分な責任感を抱くこと、また③ドイツ国内において、他のヨーロッパ諸国における西側の価値の保護に関心を持つこと、以上3点は期待できない、という事実を前提に達成される必要がある。

 私は、この問題に対処する手段として、従来の集団安全保障の概念を信頼していない。ヨーロッパの歴史は、完全な主権国家間の多国間防衛同盟が、欧州情勢の支配を図る執拗で決意のある試み対して、あまりにも弱点があり過ぎたことを一点の曇りもなく示している。他の西ヨーロッパ諸国の人々の偏見に対応するため、いくつかの相互防衛の取り決めは必要となるだろう。彼らの考え方はこの問題においてまだ古くさく、非現実的なのだ。しかし、再びドイツ人が問題を起こすことの抑止を彼らに頼るわけにゆかない。

 こういったことがあるので、ドイツと西ヨーロッパ諸国との関係は、ドイツ国民と軍事産業の潜在的な優位性が不正な搾取に使われないよう、機械的かつ自動的な保障策が提供されるように配置されるべきなのははっきりしている。

 私たちの計画の最初の作業はそのような保障策を見つけることになるだろう

 これに関連して、ルール地域の問題には最優先の考慮を要する。ルール地域の産業における国際的な所有権または管理形態は、将来的なドイツの産業資源の攻撃的な目的への悪用に対する自動的な保護の最良手段の一つとなるだろう。他にも探求する価値のある手段があるかもしれない。

 私たちの計画の第二の方向は、ドイツの経済をヨーロッパの他の地域と最大限に結びつけることだ。これは、現在の政策をある面で転換する必要があるかもしれない。私の意見では、私たちの戦後政策の最も深刻な誤りの一つは、ドイツ人を再び極端に分離し、実質的にヨーロッパの他の人々から孤立した状態で、以前よりもさらに狭い領域に押し込めることだった。このような分離と押し込めは、必ずドイツ人の性格において最悪の反応を引き起す。ドイツ人が必要としているのは、暴力的に自己に押し込められることではない。そんなことをすればドイツ人固有の非現実主義と自己憐憫と挑戦的な民族主義を高めるだけだ。彼らが必要とするのは、集団的な自己中心主義が外へと導かれ、より広い視野で物事を見るように促され、ヨーロッパや世界の他の場所に興味を持ち、自分自身を単にドイツ人ではなく世界市民として考えることだ。

 次に、私たちはドイツ人に対する私たちの道徳的影響力の破綻を認識しなければならない。また、心理的に不適切であった私たちの行動と政策をできる限り早く終了させるための計画を立てる必要がある。第一に、私たちはドイツにおける私たちの駐留を可能な限り削減しなければならない。被征服地域に戦勝国の代表が大勢居住しているのは、特に彼らの生活水準が目立つほど異なる場合、決して有益なことではない。第二に、私たちは、ドイツ国内の問題に対して指導者や裁判官として振舞う傾向のある活動(非ナチ化、再教育、特にニュルンベルク裁判)をできるだけ早く終了しなければならない。第三に、私たちは勇気を持って、できるだけ早く(占領)軍政を廃止し、ドイツ人に再び自身の問題に対する責任を受け入れさせる必要がある。私たちが彼らの責任を引き受けている限り、彼らは自分たちの責任で動くことはない。

 西ドイツの軍事占領は長い間続けざるをえないかもしれない。私たちはそれがヨーロッパの情勢において準恒久的な要素になることを覚悟しなければならないかもしれない。しかし、軍政は別の問題だ。それが撤廃されるまで、私たちは本当の意味でより安定したヨーロッパに向けて進展することはできない。

 最後に、今後はドイツ直近の西側隣国を視野に置きながら、ドイツに対する政策を調整するための、可能なすべての努力をしなければならない。特にベネルクス諸国には、私たちの意見の実施において価値ある協力を提供することができるだろう。これらの隣国こそが、最終的に私たちが進める解決策とともに生活しなければならないのだから。西ヨーロッパの秩序を成功させるためには、彼らが十分な貢献をし、責任を果たすことが不可欠だ。彼らの支持を得るために、私たち自身の政策を調整する方が、彼らの感情に反して一方的に行動しようとするよりも良い結果をもたらすだろう。

 こういった仕事や問題が、私たちの眼前にあるため、私たちにとって重要なのは、これらの課題と問題が私たちの将来の政策に悪い影響を与えるようなことは、この過渡的な期間においては、何もしないことだ。国務省の関係部署には、彼ら自身の仕事においてこれを念頭に置くよう指示するべきだ。また、ドイツでの政策の執行において、軍当局もこれを念頭に置くべきだ。他の政府の代表との議論でも、これらの考慮事項を順守すべだ。特に、フランスとイギリスとの今後の議論にはこれが当てはまる。


IV. 地中海

 昨年の状況進展により、ソビエト連邦が西ヨーロッパの統一を崩し、その地域に政治的に進出する可能性は、北ヨーロッパでは低下している。ここでは人々の政治的な成熟が徐々に確立しているのだ。地中海沿岸の南部では(ソ連は)自国の地位を保持し、実際には増強している。ここでは、ロシア人はバルカンの衛星国に対する(狂信的な)優越主義だけでなく、ギリシャとイタリアの国民10の絶望的な弱さと疲労も資産として持っている。現在のギリシャとイタリアの状況は、恐怖を政治的手段として利用し、共産主義運動にとって基本的でなじみ深い戦術に適している。

 外国の共産主義勢力によってもたらされる国家の独立への脅威に直面するために必要な武器を、現政府が持っていないことは何回繰り返し言っても言い過ぎにはならない。このことは、抵抗が最も低い国々で共産主義者が成功を収めるのを防ぐために、現政府が取ることができる対策について、とてつもなく困難な問題を生み出す。

 企画室は、これに検討した他のいかなる個別問題よりも多くの注意を払ってきた。その結論をまとめると以下のようになる:

(1) 現地(外国)の共産主義勢力に対抗するために米国の正規軍を使用することは、一般的には危険で利益をもたらさない取り組みと考えられるため、善より害をもたらす可能性が高い。
(2) ただし、もしも継続的な共産主義活動が、アメリカの軍事力を被害地域の周辺に引き寄せる傾向があることが示され、そして、もしこれらの地域が、クレムリンが明確にアメリカの力を排除したい地域である場合、①これによってソビエト連邦の防衛安全保障利害を活用し、②ロシアが地元の共産主義勢力に抑止的影響を行使する可能性がでてくる。

 そのため、企画室は私たちにとって最も賢明な政策は、私たちの行動によってロシアにはっきりさせることだ。すなわち、共産主義勢力がギリシャやイタリアへ進展すればするほど、現政府が地中海地域における平時の軍事展開を拡大せざるを得なくなることを。

 私たちが何の疑いも抱いていないのは、もしロシア人が①ギリシャで共産主義政府を樹立すれば、リビアとクレタにアメリカの空軍基地が設立される、そして②北イタリアでの共産主義蜂起が起これば、アメリカはフォッジャ基地の再占拠をもたらす、この2つを知れば、クレムリン委員会内で、第三インターナショナルの利益とソビエト連邦の純粋な軍事安全保障の利益との間で紛争が生じだろう、ということだ。この種の紛争では、狭義のソビエト国家主義の利益が通常優位に立つ。もし今回もそれが勝利すれば、ギリシャとイタリアの共産主義者には制約がかけられることになるだろう。

 これはある程度、既に事実となっている。私が思うに、ほとんど疑いないことだが、地中海での海軍活動(これには海兵隊の追加増員も含まれる)や、ギリシャへのアメリカ軍派遣の可能性についての話が、これまで衛星国がマルコス政府を認めない要因の一部であり、おそらくクレムリンがディミトロフ(訳註:ブルガリア共産党の指導者)を叱責した要因にもなっている。私が思うに、同様に、イタリアからの最終的な軍隊撤退時に私たちが発表した声明が、春の選挙前におけるイタリアでの共産主義蜂起計画の放棄においておそらく決定的な要素となっている。

 そのため、ギリシャやイタリア、および地中海地域に関する私たちの政策は、以下の点をロシアに示すことを目指すべきだと考える:

(a) 共産主義の脅威の低減は、私たちの軍事的な撤退をもたらすことになるが、
(b) さらなる共産主義の圧力は、軍事的な意味で私たちをより深く巻き込む結果となる。


V. パレスチナと中東

 パレスチナに関する企画室の見解は、別の文書11で示してある。ここでそれを繰り返すつもりはない。しかし、パレスチナ問題と中東全体の立場について、重要な背景として考慮すべき事項が2つある。私はこの時点でそれらを強調しておきたい。

1. 中東における英国の戦略的立場

 現政府内で私たちが結論に達していることだが、中東の安全保障は私たち自身の安全保障にとって重要である。また、現在イギリスが保有している戦略的な施設を複製または引き継ぐことは望ましくないという結論にも達している。戦争の場合、これらの施設は実質的に私たちの支配下に置かれることを認識しており、イギリスから形式的にそれらを移管しようとすることは新たな無用な問題を引き起こすだけである。おそらく一般的に言っても、うまくゆくことはないだろう。

 これは、その地域におけるイギリスの戦略的地位の維持を支援するためにできる限りの努力をしなければならないということを意味する。これはすべての個別の事例で彼らを支持しなければならないということではない。彼らが自ら間違った立場に陥った場合や、私たちが過度な政治的負担を負うことになる場合には彼らを支持する必要はない。しかし、イギリスとアラブ世界の関係を緊張させ、アラブ諸国におけるイギリスの地位を低下させるような政策は、結局は私たちの首を締め、我が国の直近の戦略的利益に反する政策になるということを意味する。

2. 我が国の政策の方向性

 現政府が今直面しているのは、私たちをパレスチナにおけるユダヤ国家の維持や拡大に主要な責任を負う立場に追い込もうとする圧力だ。この方向に進めば進むほど、私たちはその地域における重要な安全保障利害に、まさに逆行する作戦行動をすることになる。そのため、パレスチナ問題における私たちの政策は、この道に追い込まれることを避ける決意によって主導されるべきだ。

 私たちは現在、このパレスチナ問題に、重くかつ不運な形で関与している。過去の約束や国内の圧力に対して、さらなる譲歩をする必要があるようだ。

 こういった譲歩は危険なものになろう;が、私たちが、自分のやっていることをきちんと自覚し、私が上で言及した責任が生じる可能性を避ける方向に全体の方向を定めるのであれば、必ずしも破滅的なものにはならないだろう。もし私たちがその方向には進まず、現在の複雑な状況の渦の中で抵抗の最小限の方向に漂流するのであれば、中東地域全体の私たち政策は疑いなく混乱し、無力化し、私たちの観点からは幸せな結末がない方向に引っ張られることになるだろう。

 もし現政府がいかなる形態でもアメリカ軍をパレスチナに派遣したり、国際的なボランティアの募集やソ連の衛星国の軍隊の派遣に同意せざるを得ないよう事態になった場合、次のことはきちんと言っておかなければならないと思う。つまり、その場合、私の意見では、地中海と中東地域のために私たちが構築してきた戦略的および政治的計画の全体構造が見直され、おそらく変更されるか、他のものに置き換えられる必要があるだろう、ということだ。

 それはつまり、これらの地域に関わる非常に重要な問題において、国益ではなく他の検討事項によって導かれることに同意したということを意味することになるからだ。この事実に直面した場合、隣接地域において国益のみに基づいた政策を続けようとすると、最終的には目的の二重性に直面し、取り組みの分散と混乱を招くことになる。私たちは、隣り合った地域で一つの目的を持ちながら、相反する目的を持って行動することはできないからだ。

 したがって、過去の約束や国連の決定、あるいはその他の考慮事項によって、中東地域の住民の大多数が反対するいかなる取り決めのパレスチナでの施行にも主導的な役割を果たす義務があると判断した場合、世界のこの地域における一般的な政策を見直すことによって、この行為の意味合いに直面する覚悟が必要である。そして、中東は、現政府が世界的な軍事および政治計画において基礎としている現在の安全保障概念にとって不可欠であるため、これはさらに、本政府の軍事および政治政策全体の見直しを意味することになるであろう。


VI. ソビエト社会主義共和国連邦

 もしロシアが今後数ヶ月において、鉄のカーテンの外にある主要な国々(ドイツ、フランス、イタリア、ギリシャ)において浸透し、政治的支配を確立するという試みでさらなる成功を収めた場合、私の意見では、彼らと協議することは不可能なままだろう。なぜなら、彼らは自らの交渉の立場が近いうちに改善されることを期待しているため、この時点でドイツの問題を私たちと解決する理由を見出さないからだ。

 他方、もし鉄のカーテンの外側の状況が改善しないならば、もしERP(欧州復興計画)の援助が適切な形で時間通りに届き、そして、もし西ヨーロッパの自信が回復すれば、その時は新たな状況が生まれ、ロシアは(ドイツ)降伏以来、初めて、ドイツやヨーロッパ全体について真剣に取引を行う準備をするだろう。彼らはこれに気づいており、自分たちの計画のなかにその可能性を考慮に入れつつある。実際、彼らはこの2つの事態のうち、これがより起こりやすいと見なしていると私は思う。

 その日が来るとき、つまりロシアが現実的に私たちと話し合う準備ができるようになるとき、私たちは真のアメリカの政治手腕の試練に直面することになる。そして、正しい解決策を見つけることは容易ではない。なぜなら、ロシアは私たちに対して、1939年にドイツと結んだものと類似した勢力圏合意を結ぶことを求めるだろうから。それができない理由を彼らに説明することが私たちの仕事になるだろう。しかし、またそれはやるだけの価値も示すことができなければならない。

(a) 私たちが大陸と地中海から全ての軍隊をなんとか撤退できるレベルまでヨーロッパと中東の他の地域での共産主義の圧力を減らすこと、;そして

(b) その後、ヨーロッパにおける長期にわたる安定に同意すること。

 もし私たちがCFM(制裁委員会)や他の公的な会議で直接的に取り組もうとするなら、私はこの課題が成功裏に達成されるのは難しいと思う。私たちとロシアとの公開の交渉は、スターリンとの最も秘密で繊細で準備的な協議が行われない限り、明確かつ満足のいく結果には至らないだろう。12私は、これらの協議は、以下の条件を満たす人物によってのみ成功裏に行われることができると考える。

(a)  その議論において、自身の成功に対して公に評価されることは当然のことながら、個人的な利益を求める意図が全くなく、全体の進行について最も厳密な沈黙を守る準備がある人;そして
(b)  私たちの政策の背景だけでなく、ソビエトの哲学や戦略、そしてソビエトの政治家がこのような議論で使用する弁証法についても徹底的に熟知しているひと。

(この人物がロシア語で会話ができれば特に望ましい。私の意見では、これはスターリンとの間で重要。)

 これらの協議は、任意の秘密の議定書や他の文書上の理解に到達することを目指すものではない。それらは、CFM(制裁委員会)のテーブルや他の場所で到達することを期待するいかなる文書上の理解の背景を明確にするために行われるべきなのだ。なぜなら、私たちは今、国際協定の言葉がロシア人にとって私たちとは異なる意味を持つことを知っているからだ。そして、私たちが到達するかもしれないさらなる文書上の合意について、実際に何を意味しているのかについて共通の理解を深めることが望ましい。

 ロシア人はおそらく選挙が終わるまで私たちと「ざっくばらんに話す」ような心構えはないだろう。しかし、もし協議が急に始まる必要がなく、事前に準備が整っている状態であれば、その時彼らと話すことはずっと容易だろう。

 最近、ロシア人は明らかに私たちの意見を引き出し、非公式の場で率直かつ現実的に彼らと話し合うことに対する私たちの関心を試す意図で、ベルリンでマーフィーに興味深い接近を行った。このような議論をさらに進めるには、ベルリンが望ましい場所だと私は思わない。他方、私たちは彼らを完全に無視すべきではないとも考えている。私たちとのより良い理解が望ましいと促すクレムリンの人々がいるかもしれない。そういった人々に失望を与えないよう、常に注意を払わなければならないのだ。

 上記の点を考慮すると、私たちは今後数ヶ月間にロシア関連の人事配置に注意を払うべきだと思う。そして、最終的にクレムリンと何らかの背景の理解に到達する可能性を考慮して、私たちは常に慎重に行動すべきだ。しかし、①この理解が必然的に限定的なものであり、②冷徹な現実に基づくものであること、③文書化することはできないし、④それが引き起こされた一般的な国際情勢のあとまで残ることは期待できない、以上の4点は心に留めておかなければならない。

 付け加えるが、私はそのような理解は主にヨーロッパと西地中海地域にしっかり限定しておく必要があると考えている。その理解を中東や極東に適用することは難しいと思う。中東や極東の状況は不安定すぎ、将来の見通しは混迷しており、さまざまな可能性は広大で予測不可能すぎるため、そのような議論の余地はない。日本と満州の間の経済的な交流は、ある種の物々交換の取り決めによって慎重に修正された形で復活する可能性がある。これは私たちの立場からしても、十分心にとめておいてよい目標である。しかし、一方、私たちは日本の政策を立案する際に、そのような議論のために、現在よりも優れた交渉力を創造することを念頭に置かなければならない。


VII. 極東

 極東における現政府の立場に関して、私の主な印象は、私たちが極東で成し遂げることができると考えていること、そしてそれを成し遂げようとしていることにおいて、私たちの考え方が全体としてあまりにも膨らみすぎている、ということだ。これは、残念ながら政府だけでなく、米国民にも当てはまる。

 アジア民族の間では、私たち自身の道徳的およびイデオロギー的力の限界があることは早急に認識する必要がある。

 私たちの政治哲学や生活のパターンは、アジアの大衆にはほとんど適用性がない。それらは、私たちには適しているかもしれない。何世紀にもわたる高度に発展した政治的伝統と、特に有利な地理的位置を持っているからだ;しかし、現在のアジアの大部分の人々にとって、それは、はっきり言って、実用的でもなければ、役にも立たない。

 そうなれば、私たちはアジアで「指導力」を発揮するという言葉を使う際に非常に注意を払わなければならない。私たちがこれらのアジアの人々を悩ませる問題に対する答えを持っているふりをすることは、自己欺瞞でもあるし、他の人を欺いていることにもなる。

 さらに、私たちは世界の富の約50%を保有しているが、人口はわずか6.3%に過ぎない。この格差は、特にアジアの人々との間で顕著だ。この状況では、私たちは嫉妬と敵意の対象となることは避けられない。私たちが今後直面する真の課題は、この格差の維持を国家安全保障に積極的な悪影響を与えることなく行うための関係のパターンを考案することだ。そのためには、感傷や妄想を一切捨てなければならず、私たちの関心は即座に国家の目標に集中されなければならない。今日、利他主義や世界への恩恵は何とかできる、などと私たちは自己を欺く必要はない。

 これらの理由から、私たちは極東地域に対する態度において非常に慎重になる必要がある。アジアと太平洋地域の人々は、私たちが何をするにせよ、自分たちのやり方で政治形態や相互関係の発展を進めていくだろう。このプロセスはリベラルでも平和的なものでもない。

 最も大きなアジアの民族である中国人とインド人は、まだ自分たちの食糧供給と出生率の関係に関わる基本的な人口問題の解決に着手していない。彼らがこの問題に何らかの解決策を見つけるまで、さらなる飢餓、苦難、そして暴力は避けられない。すべてのアジアの民族は、現代技術の影響に適応するために新しい生活の形を進化させる必要があるのだ。この適応のプロセスも長期間かつ暴力的なものとなるだろう。以下のことは可能性があるばかりでなく、おそらくそうなるのだ。つまり、このプロセスの中で、多くの民族が、いろいろな時期に没落してゆくということ、それもモスクワの影響のもとで。このモスクワのイデオロギーは、このような民族にとってより魅力的であり、おそらくより現実的なものでもある。私たちがそれに反対して提供できるものよりもそうなのだ。こういったこともまた避けられないだろう;そして、そのような目的に米国民が喜んで譲歩してくれたとしても、それ以上の様々な国家的努力がなければ、これと闘うことなどできないだろう。

 この状況に直面して、極東に関する私たちの考え方に根付いているいくつかの概念を今すぐ手放す方が良いだろう。私たちは「好かれたい」とか高潔な国際的利他主義の守護者と見なされたいという願望を捨てるべきだ。私たちは自分たちの兄弟の守護者であろうとする立場に身を置くことをやめ、道徳的なアドバイスやイデオロギーに関して慎重になるべきだ。私たちは人権や生活水準の向上、民主化といった曖昧で極東にとって非現実的な目標について話すのをやめるべきだ。直接的な権力概念で対処しなければならない日が近づいている。理想主義的なスローガンが邪魔になることが少なければ少ないほど、より良い結果を得ることができるだろう。

 今後の極東地域における私たちの影響力は、主に軍事と経済にあることを認識すべきだ。私たちは慎重に調査し、太平洋と極東の世界の中で私たちの安全保障に絶対に重要な部分がどこかを確認し、私たちが制御または頼ることのできるそれらの地域が、ずっと手中にあるように政策を集中すべきだ。私たちがこれまでに行った調査に基づいて、私の予想では、日本とフィリピンがそのような太平洋安全保障システムの基盤となると考えられる。もし私たちがこれらの地域を効果的に制御し続けることができれば、私たちの安全保障に対する東方から深刻な脅威は、私たちの目の黒いうちにはあり得ない。

 この最初の目標を確かなものにして初めて、私たちは思考や計画をより広範囲に広げるという贅沢が許される。

 もしこれらの基本的な概念が受け入れられるならば、私たちの当面の目標は以下の通り:

(a) できるだけ迅速に、中国における不安定な関わりを解消し、その国との関係において分離した立場と行動の自由を取り戻すこと。
(b) 日本に関して、共産主義の浸透や支配、そしてソ連による軍事攻撃からこれらの島々の安全を保障する政策、そして日本の経済的潜在能力が再び極東における平和と安定の利益に応える重要な力となることを許す政策を考案すること。
(c) フィリピン政府が内政において継続的な独立を保持できるようにするが、(他方)フィリピン群島をその地域におけるアメリカの安全の砦として維持するようなフィリピンとの関係を形作ること。

 このうち、日本に関連する目標は、現政府の当面の関心と当面の行動の可能性が最も高いものだ。したがって、これを今後の極東政策の焦点とするべきである。


VIII. 国際機関

 現在、アメリカの政策には、国際問題の解決における普遍的手法と特殊手法と呼ばれるものとの間に幅広い対立が存在している。

 普遍的手法は、国際問題の解決を、すべての国、または少なくとも参加する準備のあるすべての国に適用される普遍的な規則と手続きの形式を提供することによって行うことを目指している。このアプローチは、政治的な解決策(つまり、個々の民族の立場や態度における特異性に関連した解決策)を排除する傾向がある。それは、すべての国に適用可能な法的および機械的な解決策を好む。この手法は、すでに国際連合、提案されたITO憲章、ユネスコ、PICAOなどの組織や外交政策の特定の領域における普遍的な国際協力の取り組みに具体化されている。

 この普遍的手法は、米国の世論を強く惹きつけている。なぜなら、外国民族の国民的特異性や異なる政治哲学と向き合う必要性を排除するように見えるからだ;米国民の多くはこれを混乱やイライラの原因と見なしている。この意味で、それには現実逃避的な傾向がある。それが適用される限り、私たちは現実の世界と向き合う必要性から解放されるだろう。それは、もし全ての国が特定の標準的な行動規範に同意することができれば、醜い現実――権力の欲望、国家的な偏見、非合理的な憎悪と嫉妬――は受け入れられた法的な制約の後ろに後退せざるを得ず、私たちの外交政策の問題は議会手続きと多数決のおなじみの枠組みに縮小される、と仮定している。国際関係におけるやりとりのために確立された外的形式が、その中身を覆い隠すことになる。そして、伝統的な外交に固有の、下劣で複雑な政治的選択を強いられる代わりに、高尚で単純な道徳原則の上で多数決の保護のもとで決定を下すことができるようになるというわけだ。

 特殊手法は、国際問題を法的な概念に圧縮するどんな計画にも懐疑的な姿勢を持っている。それは、形式よりも内容が重要であり、内容に押し付けられたどんな形式的な構造も突破して進むと考えている。この手法では、権力への渇望がまだ多くの人々の間で優勢であるため、それを他の何よりも反対勢力によって鎮めるか制御することしかできないと考えている。同盟という考えを完全に拒否しているわけではないが、効果的な同盟を形成するには、実際の利害や見解の共同体に基づく必要がある。それは限られた政府のグループの間にしか見つからないものであり、抽象的な普遍的な国際法や国際機関の形式主義に基づくものではないと考えている。特殊化された手法では、多くの民族が「平和」という抽象的な概念のために、進んで戦争に向かったり、国民が犠牲を惜しまなくなるという点に信を置いていない。それどころか、この手法では、他の政府の近視眼的な見方と臆病さのために、アメリカが果敢かつ鋭い措置を取ることできなくなるかもしれない一連の制約があると見ている。そしてそれは世界全体の安定のために決定的に重要性を持つかもしれない国際関係の概念にとってもそうなのだ。この手法では、もし普遍的な概念が適用されるとアメリカの政策は肝心な時に無駄で厄介な国際議会主義の罠で身動きが取れなくなってしまうと考えられている。

 最後に、特殊手法は、国際機関における現代の国家主権の理論に対して不信を抱いている。攻撃的な(領土)拡張の現代的な技術は、新しいワインを古い容器に注ぎ込むという諺にぴったりあてはまる。つまり、外国の政治的意志を、表面上は独立した国に注入することなのだ。このような状況では、国際問題における議会原則は容易に歪められ、濫用される可能性がある。これは白ロシア、ウクライナ、およびロシアの衛星国の例で見られてきた。このことは大国と小国の区別の問題、そして各国は国際問題についてそれぞれ持つべき発言権のこと言っているわけではない。

 現政府は現在、これらの手法の要素を組み合わせた二重の政策を実施している。これは国務省においてその反映を見出し、方針の策定と実施、および省庁の組織の原則において、機能的(つまり普遍的)概念と地理的な(つまり特殊な)概念が競合している。

 この二重性は、私たちが現在深く関わりを持っているものだ。突然の変更を推奨する意図は私にはない。平和な世界の可能性への信念の象徴となっているものを、国内外の多くの人々が抱いている志向を、今日、急に放棄することはできない。

 しかし、私は強く思うのだが、実現可能な世界秩序の追求において、私たちは誤った方向から出発している。私たちは、まず自らの直近の地域、つまり自らの政治的・経済的伝統の領域から始めて外に向かうのではなく、逆に全体円周の周辺部から、つまり国連の普遍的な原則から出発し、内側に向かって働こうとしてきた。これは私たちの努力の大幅な分散を意味し、私たちが非常に愛着を持っていた普遍的な世界秩序の概念自体に危機が迫る状況をもたらした。将来のためにこれらの概念を保存したいのであれば、それらにかけられた負荷の一部を迅速に解消し、中心的な基盤から進む堅固な構造を築かなければならない。そうすれば、その概念が自重(じじゅう)で崩壊する前に、それらに対応できるよう押し上げることは可能だ。

 これが欧州復興計画、欧州連合という考え、そしてイギリスとカナダとのより密接な連携構築の意義だ。というのは真に安定した世界秩序は、より古く、穏やかで、より進んだ国々からしか、私たちの目が黒いうちに、生まれることはない。これらの国々は、力ではなく秩序の概念が価値と意味を持つ国々だ。もしこういった国々が、今日、政治的な偉大さと賢明な節制の組み合わせによって、成熟し落ち着いた文明だけが持つことができる真のリーダーシップの力を持っていないならば、プラトンがかつて言ったように:「・・・都市は悪から休息を得ることはないだろう――いや、人類も同じだ、と私は信じます」となるであろう。

(ここにIX,「国務省と海外奉仕」がくる。


X. 結論

 アメリカの政策全体の全体像を調査し、この国が世界との関係において進んでいる方向性を概説する試みは、自己満足感を抱くほどのものをほとんど生み出していない。

 私たちは依然として、クレムリンの人々から、私たちの全体的な安全に対する非常に深刻な脅威に直面させられている。彼らは、能力があり、抜け目のない非常に冷酷な集団であり、私たちや私たちの制度に対する尊敬心をまったく持っていない。彼らは何よりも私たちの国家力の破壊を望んでいる。彼らは類い稀な柔軟性、規律、皮肉さ、そして強さを持つ政治組織を通じて活動している。彼らは世界でも最大級の工業国と農業国の資源を自由にしている。自然の力が、私たちの政策に関係なく、この集団の努力を吸収し、最終的には打ち破ることができるかもしれない。しかし、私たちはそれに頼ることはできない。

 私たち自身の外交は、この関係において、決定的な役割がある。関連する問題は私たちにとって新しいものであり、私たちはそれに対して調整を始めたばかりだ。私たちは、少しは進歩を遂げているが、まだまだ十分ではない。私たちの外交活動は、目的意識、努力の経済性、そして統制された調整の度合いをもっとずっと高めなければならない。それによって私たちの目的を達成することが確実になるのだ。

 西ヨーロッパ地域で、共産主義は一時的な挫折を経験した;が、問題はまだどちらに転ぶかわからない状態だ。現政府は、イギリスが基本的な長期的な経済問題に対処するための確固たる計画や、ドイツを西ヨーロッパに組み込む方法について、他の西ヨーロッパ諸国の継続的な独立と繁栄を保証する持続性を提供する計画をまだ策定していない。

 地中海および中東地域では、政治的および軍事的な資源を活用した精力的で集団的な国家の取り組みによって、おそらくこの地域がソ連の影響下に陥るのを防ぎ、それを世界戦略的な位置における非常に重要な要素として保存することができる状況がある。しかし、私たちは同じ地域において、国家の安全保障とは直接関係のない状況に深く関与しており、私たちの関与の動機は過去の疑わしい知恵と国連への愛着に基づいている。もし私たちが今までの政策の傾向をかなり根本的に逆転させないならば、私たちはパレスチナのユダヤ人の保護において、アラブ世界の明確な敵意に対して軍事的責任を負う立場になるか、あるいはそれをロシアと共有し、彼らをその地域の軍事力の一つとして支援する立場になることになるだろう。いずれの場合においても、その地域における健全な国家政策の明快さと効率性は打ち砕かれることになる。

 極東において、私たちの立場は悪くない。戦略的に重要な領域のほとんどに対してまだかなり堅固な支配を保っている。しかし、現在の支配は長くは続かない一時的なものであり、それらを永続的な構造体で置き換えるための現実的な計画を私たちはまだ練っていない。この間、アメリカ国民は、この地域の私たち自身にとって重要性について、感傷主義者たちによって重大な誤解に導かれている。昔からある、論争の絶えない再教育プロセスを、私たちは始めたばかりだ。それは現実的な極東政策が、それにふさわしい人々の理解を得るために必要となるだろう。

 アメリカの世論において、国連構築への取り掛かりはたいへんな勢いだったので、頻繁に主張されるように、私たちはこの戦後期において国連を政策の基盤にするしかないというのは真実かもしれない。時折、国連は有用な役割を果たしてきたからだ。しかし、全体的に見れば、国連は解決よりも問題を引き起こし、外交努力の分散をもたらした。そして、主要な政治目的において国連の多数派を利用しようとする時、私たちは、いつか逆に私たちに敵対するような危険な武器を弄んでいるのだ。これは私たちにとって非常に慎重な研究と予見を要する状況だ。

Notes
1 Lot 64D563, files of the Policy Planning Staff of the Department of State, 1947-1953.
2 The Policy Planning Staff of the Department of State was established on May 7, 1947, to consider the development of long range policy and to draw together the views of the geographic and functional offices of the Department. With the enactment of the National Security Act of 1947, the Policy Planning Staf undertook responsibility for the preparation of the position of the Department of State on matters before the National Security Council. For additional information on the activities of the Policy Planning Staff and its Director, see George F. Kennan, Memoirs 1925-1950 (Boston: Little, Brown and Company, 1967), pp. 313-500.
3 Dean Acheson, Under Secretary of State, August 1945-June 1947.
4 George H. Butler, Deputy Director of the Policy Planning Staff.
5 On February 26, Kennan departed for Japan to consult with United States officials. Subsequent illness prevented him from returning to the Department of State until April 19.
6 For documentation on United States policy with respect to the economic situation in Europe, see vol. III, pp. 352.
7 For documentation on United States policy with respect to the proposed International Trade Organization, see pp. 802 ff.
8 For text of Secretary Marshall’s address at commencement exercises at Harvard University, June 5, 1947, see Foreign Relations, 1947, vol. III, p. 237, or Department of State Bulletin, June 15, 1947, p. 1159.
9 For documentation on United States policy with respect to the occupation and control of Germany, see vol. II, pp. 1285 ff.
10 For documentation on United States efforts in support of democratic forces in Italy, see vol. III, pp. 816 ff. Regarding United States economic and military support for Greece, see vol. IV, pp. 1 ff.
11 For the views of the Policy Planning Staff on this subject, see PPS 19, January 20, 1948, and PPS 21, February 11, 1948, in vol. V, Part 2, pp. 545 and 656 respectively.
12 Joseph Vissarionovich Stalin, Chairman of the Council of Ministers of the Soviet Union.
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トランプは、ロシアゲート「作り話」について報道したニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストに授与されたピュリッツァー賞を取り消すよう、ピュリッツァー賞委員会に要請した。

<記事原文 寺島先生推薦>
Trump calls for Pulitzer Prize Board to revoke award given to NYT & WaPo for reporting on Russiagate ‘hoax’
出典:RT 2021年10月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月30日


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© REUTERS/Dustin Chambers


 元大統領のドナルド・トランプは、ピュリッツァー賞委員会に対して、ロシアとの共謀という「ばかげた話」の報道で、2018年、ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙に授与された賞を取り消すよう要求した。

 日曜日(2021年10月3日)の声明で、トランプは、ロシアが2016年の大統領選挙に干渉し、トランプのチームと共謀したという理論について、両紙が報道した内容は、「事実として実際の証拠がない」と結論づけられたものであり、「虚偽の物語」と呼んだ。

 「広く報道されているように、その報道は政治的な動機に基づくばかげた話であり、私の選挙キャンペーンがロシアと共謀したという虚偽の物語を作り上げようとするものであり、この主張を裏付ける証拠などまったくないのです」と元大統領は、受賞の暫定管理者であるバッド・クリメットに宛てた手紙で述べている。彼は以前、2019年に受賞を取り消すよう要求していた。

同じRTの記事―「火と硫黄」:スティーブ・バノンが2024年の「壮大な」勝利のために共和党から「衝撃部隊」を出すよう要請していることに対してリベラル派は警戒心

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 トランプはまた、メディアが状況についてあやふやな知識を持つ情報源を使用することに対しても批判し、「'知識を持つ人々'、'現職および元職の高官'、'米国の一部の高官'など、だれかもわからないような個人」を引用した記事を批判した。

 彼は、マイケル・サスマンの起訴を引用して、ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙への告発の裏付けとした。サスマンは、ヒラリー・クリントンの選挙運動で働いていた弁護士であり、2016年にFBIに対してトランプの大統領選挙運動とクレムリンとの潜在的な関連を密告した際にFBIに嘘をついたことで訴追された。

 ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙は、2018年に「ロシアとの共謀」に関する報道に対して全国報道賞を受賞した。トランプは、両紙に対して、ピュリッツァー賞の受賞を「自発的に返上する」機会を与えるよう求めた。
 「ここでのように、ピュリッツァー賞受賞作品が不適切で疑わしく、明らかに虚偽な報道に基づいていることが明らかになった場合、ピュリッツァー賞委員会はそれに応じて対応しなければならない」と彼は書いている。

 元特別検察官のロバート・ミューラーの言によれば、ロシアとの共謀の疑いに関する彼の報告書は、(バイデン)大統領が主張するようにトランプを「無罪」とはしていないと述べている。しかし、この報告書は、メディアが報道したもっとセンセーショナルな話については、結局のところ、裏付けることができなかった。

 (バイデン)大統領は、ミューラーによる数年にわたる費用をかけた捜査をしばしば「魔女狩り」にしかなっていないと批判し、それが世界中で「笑われている」と述べてきた。

 「(これは)アメリカ史上最大の魔女狩り。共謀はなかった、民主党を含め、みんながそれを知っているのに、延々と(魔女狩りは)続いている。ロシアと世界は彼らが目にしている愚かさに笑っている。共和党が最終的に統制を取るべきだ!」と彼(トランプ)は2018年に(捜査は進行中)ツイートした。

FBIはトランプの捜査をすべきではなかった(報告書)

<記事原文 寺島先生推薦>
FBI should never have investigated Trump – report
Special counsel John Durham has concluded that the agency relied on biased information to spy on the former president
ジョン・ダーラム特別顧問の結論では、FBIは偏った情報に依拠して前大統領を嗅ぎ回っていた、とのことだ。
出典:RT 2023年5月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月27日



ウィスコンシン州ウォーキーショーで集会を開いたドナルド・トランプ。2022年8月5日© AP / Morry Gash


 米国司法省とFBIは、「自身が果たすべき使命を維持」できず、ドナルド・トランプ前大統領に対していわゆる「ロシア疑惑」についての捜査に着手した、とジョン・ダーラム司法省特別顧問は、長らく待たれていた報告書の中で明らかにした。

 月曜日(5月15日)に発表された300頁に及ぶ文書の中で、ダーラム特別顧問は、トランプ前大統領に関する犯罪情報を「厳密な分析なしに」取り扱い、特に政治的に偏りのある個人や組織から情報を得ていた」としてFBIを厳しく非難した。

 ダーラム特別顧問による宣告の中味は、主に「スティール文書」についての言及であるが、この文書は、前大統領についてや、彼が疑われていたロシアとの繋がりに関するでたらめな噂話をもとに書かれたものであり、元英国諜報機関の工作員が、ヒラリー・クリントンの選挙資金から支払いを受け、集めたものだった。

 この文書により、2016年、FBIはトランプ前大統領に対する諜報活動を始動させたが、その作戦名は「クロスファイア・ハリケーン」とされ、ロバート・ミュラー特別検察官の手による「ロシア疑惑」の捜査につながっていった。後にミュラー特別検査官は、トランプ前大統領の選挙運動とロシア政府の間に共謀はなかったという結論を出した。



関連記事:「ロシア疑惑」は終わったが、その結果米国政府が手にした、「ソーシャル・メディアの統制」は健在

 このスティール文書は、FBIがトランプ前大統領の選挙運動を捜査する許可を法廷から得るために利用された。FBIは、トランプ前大統領を監視する令状を申請する際に、「基本的で初歩的で深刻な間違い」を犯した、と司法省のマイケル・ホロウィッツ監察総監は2019年に明言した。

 「初動捜査において、トランプ前大統領の敵陣営が(直接または間接的に)提供した情報や、同陣営が資金を出していた情報に大きく依拠していた」とダーラム特別顧問は報告書に記載した。「司法省はこれらの情報や、これらの情報を提供した陣営の動機について十分精査し、疑問をもつこともしなかった。ほぼ同じ時期に、FBIの局長らは、このような情報とはおそらく逆の内容の情報を入手していた事実にもかかわらず、だ。」

「クロスファイア・ハリケーン作戦の報告書やそれに関連した諜報活動をもとに導き出した我々の結論は、司法省とFBIは法律上厳格に定められている使命を果たせなかった、というものだ」と同特別顧問は述べた。

 ただし、ダーラム特別顧問は、この件のように政治的に繊細な捜査の取り扱い方について、FBIが「大幅な変革」をすべきであるという助言は行っていない。



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 「クロスファイア・ハリケーン作戦」とそれに続くミュラー特別検査官による捜査は、大統領任期中のトランプ大統領に長い影を投げかけた。ミュラー特別検査官が事実を支持する証拠を見つけることができなかったことが判明した後でも、「ロシアとの共謀」疑惑が、長々と報道機関を賑わせていたからだ。ダーラム特別顧問は、2019年、当時のビル・バー司法長官により任命され、トランプが「ロシア、ロシア、ロシアについてのでっち上げ」と称していた事例の起源の調査を執り行うこととなり、特別顧問という役職を与えられ、ジョー・バイデンが大統領職に就いた後も、その任務の継続が許されていた。

 ダーラム特別顧問の調査により、3件の刑事事件が立件されたが、そのすべてはFBIの上官や司法省の役人らから反発をうけることはなかった。クリントン陣営の弁護士であったマイケル・サスマン、イゴール・ダンチェンコ(スティール文書の情報源の一人)両容疑者は、米国の法廷から、FBIに嘘をついた罪状で起訴された。また、FBIのケビン・クラインスミス弁護士は、有罪判決を受け、地域奉仕活動を行うよう命じられたが、これは、同弁護士がトランプ前大統領のカーター・ペイジ前顧問に盗聴を使った捜査をする令状を保証した件に関してのことだった。

 ダーラム特別顧問の報告書について、CNNの司会者ジェーク・タッパーは月曜日(5月15日)、この文書は「FBIを弱体化させ、ドナルド・トランプをある程度無罪放免にする」ものとなった、と述べた。

「言い換えれば、米国市民が馬鹿にされたということだ」とトランプ前大統領はソーシャル・メディアのTruth上に投稿した。

製薬業界に牛耳られて「殺人が起きる真の原因は薬物漬け」と報じないメディア

<記事原文 寺島先生推薦>
Drugged-Up and Ready to Kill
Is there a link between Psychiatric Meds and Mass Shootings?

精神科薬物と無差別射撃事件の関連性はあるのか?
筆者:マイク・ホイットニー (Mike Whitney)
出典:Global Research 2023年5月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月27日




***

 「精神医療と精神薬は、発砲事件や他の暴力行為の増加の共通要因であり、それは精神薬の処方箋の急増とともに急増している」。サイト、「精神薬を服用している殺人者たち」の記事から

 ここにアメリカ人なら誰でも答えられるような質問がある:アメリカ全土で無差別射撃事件を起こした殺人者のうち、何パーセントが強力な精神医薬品を服用していたのか?

a—1%
b—25%
c—50%
d—75% or more

 なぜこの質問の答えを知らないのか? アメリカは世界で最も多くの無差別射撃事件が発生している国ではないのか?

 そう、その通り。
 
 これらの射撃事件は、大きな苦しみと不安の源ではないのか?

 そう、その通り。

 そして、これらの孤独な犯人たちが、なぜ無関係な人々を殺すことに追い込まれるのか、真剣に知りたいと思っている人が大半なのではないか?

 そう、その通り。

 では、なぜ私たちは知らないか?これらの流血事件が始まってから20年以上経った今でも、次の、たった一つの簡単な質問について、確定的で徹底的に研究された答えを、なぜ私たちは持っていないのか:これらの精神的に不安定な殺人者の中で、どれくらいの人が危険な精神医薬品を服用していたのか?

 その代わり、報道機関は射撃手の行動について何の決定的な情報も明らかにしないような探索を次々と行っている。(大事なのは次のような問いだ)もし「白人至上主義」や「ナチス思想」がテキサスでの致命的な射撃事件に影響を与えたのであれば、なぜ彼は黒人街の公共施設やユダヤ教のシナゴーグ(教会)を標的にしなかったのか? そうした方が、彼の主張する思想により一致していたのではないのか?

 そう、そうなのだ。それは彼が掲げている思想が彼の行動を駆動する主要な要因ではなく、むしろそれは彼の脆弱な精神状態の症状であることを示唆している。これらの人々が狂ったような殺戮行為に走るのは、彼らが「傷ついた存在」であるためであり、ある思想を信奉する人間だからではない。そこには大きな違いがある。

 では、なぜ報道機関は「白人至上主義」や「ナチス的思想」によって射撃手の行動が影響を受けたというばかげた考えをくどくどと言い続けるのか? 実際のところ、射撃手自体は白人ではなく、彼の犠牲者も人種的に標的にされたわけではなかった。犠牲者は単に大規模商業施設を歩く無作為な通行人に過ぎなかった。つまり、報道機関が作り上げた事例を支持する証拠はない。つまり、ここが要だが、報道機関は証拠に興味がないのだ。なぜなら報道機関の真の目的は、暴力的な狂信的行動を人種に基づく極端な国家主義に結びつける政治的な課題を推進することだからだ。彼らがやろうとしているのは、冷酷な殺人者の不安定な行動と多くのトランプ支持者の心からの愛国心との間に潜在的な関連性を作り出すことなのだ。報道機関はこれと同じ主題について6年以上もコツコツ取り組み、1月6日の詐欺事件(訳注:2021年連邦議会襲撃事件)で頂点に達した。これは同じ退屈で政治的な心理作戦の最新版に過ぎないのだ。

 もし報道関係員たちがこの最新の流血事件の調査に真剣に取り組むつもりであるなら、彼らは犯行が行われる前にこの殺人者がFBIの監視対象になっていたかどうかを調査するはずだ(過去に多くの大量殺人犯がそうであったように)。そうだったのだろうか?(今月テキサス州の商業施設で乱射事件を起こした)マウリシオ・ガルシアはFBIが編纂した潜在的な「国内テロリスト」の一覧表に載っていたのか?

 おそらく私たちは永遠にそれを知ることはないだろう。なぜならそれは国内最高の法執行機関の内部の仕組みを暴露し、かなりの困惑を引き起こすことになるからだ。それ故、FBIはしっかり防戦体制を固め、それが起こらないようにする。つまり、この事件に関する真実の大部分はおそらく永遠に隠されたままになるだろう。さらに悪いことに、メディアは「ガルシアは非白人の白人至上主義者」だという、頭のネジが外れたような理論を相変わらず前面に押し出してくることが予想される。そんな主張はまったく意味をなさないのに、だ。ここで、分析家のマイケル・トレーシーは、皮肉を込めて、次のように要約した:

もしある非白人が「白人至上主義者」であるとすれば、それは自分の人種が先天的に劣っていることを彼が信じている、ということになるのだろうか?@mtracey

 理屈に合わないのに、聖杯のように報道機関が固執するミーム*の愚かさを暴露することはトレーシーに任せておこう。この種の商業主義的な言葉をだれでも真面目に受け止めてしまうことがあるのは実際、衝撃的だ。事実として、「非白人の白人至上主義者」という言い方のどこをとっても、これ以上愚にもつかないでっち上げの言葉はない。たわ言としか言いようがない。
*遺伝子によらず、模倣によって人から人へと伝えらえる情報の単位(英辞郎)

 では、どこで答えを見つけるべきなのか? これら散発的に起こる暴力行為の合理的な説明はどこで見つけることができるのか?

 私たちが目にできる唯一の場所は、犯人の精神状態だ。そこから始めなければならない。もし私たちが学校や大規模商業施設で無差別に人々を殺す男性の動機を理解したいのなら、犯人の心理について何かを知る必要がある。幸いにも、この主題については尊敬すべき専門家によって多くの書物が書かれ、研究が行われ、データが分析され、彼ら自身の知識に基づいた結論が得られている。以下を参照:

約17%のアメリカ人が、攻撃的な行動、怒り、暴力的な行動、危険な衝動を伴う副作用を持つ精神科の薬を服用している・・・

 抗精神病薬は、次のような副作用があるときはほとんど助けにならない悪化するうつ病、新たなまたは悪化する不安、興奮や落ち着きのなさ、パニック発作、新たなまたは悪化するイライラ、攻撃的な行動、行動、活動や話す量の極端な増加(躁病)、そしてその他の異常な行動や気分の変化、などだ。

 「個人を助けるどころか、抗精神病薬は彼らを孤立させ、ますます潜在的に危険な行動に追い込んでしまう」とフロリダ支部のCCHR(市民の精神的人権委員会)の会長であるダイアン・スタインは述べている。

 この状況は非常に酷いものだったので、2004年には米国食品医薬品局(FDA)が「ブラックボックス」の包装紙に警告を発行した。この警告は、特定の抗うつ薬の使用が思春期の重度のうつ病を治療する際に自殺、殺人、および他の暴力行為の危険性を増加させる可能性があることを示している。

 他人への暴力行為と関連する処方薬という題名の研究は・・・言明していた・・・報告期間69ヶ月で、薬物484種が特定され、それは総計78万169件の深刻な有害事象報告(すべての種類)に該当する薬だった・・・ 暴力の事例には、387件の殺人報告、404件の身体的暴力行為、27件の身体虐待を示す事例、896件の殺人的思考報告、および223件の暴力に関連する症状を示す事例が含まれている。」“精神科薬と副作用-アメリカにおける暴力の背後にある見えざる手”、人権に関する市民委員会


テキサス大規模商業施設銃撃の犠牲者たち

関連記事:銃と薬物を組み合わせてはいけない。向精神薬と暴力行為


 これは非常に深刻な状況ではないだろうか。規制当局がこれらの潜在的に致命的な薬物に対して規制を強化するために認識すべき内容だ。また、製薬業界は新聞からこれらの薬物とその引き起こす混乱との関連性を隠そうとするだろう。要するに、真実は権力と利益のために隠蔽されている。他に新しい情報は? 以下は別の記事から引用した背景情報:

精神科薬物の影響下にあるか、または薬物の離脱状態にある個人によって、増え続けている学校での銃乱射事件や他の銃乱射事件が引き起こされている。これらの薬物は躁病、精神病、暴力、そして殺人を引き起こすことで知られている。過去10数年で起きた13件の大量虐殺事件を考慮されたい。これらの事件では54人が死亡し、105人が負傷した。しかもこれは精神科薬物が関与しているとわかっている事件に限った数だ。他の事例では、医療記録が封印されたり、解剖報告が公開されなかったり、場合によっては毒物検査が精神科薬物を検査するために行われなかったり、一般には公開されなかったりし・・・

精神科薬物を服用していた射撃事件の犯人のリストが増え続けていること、22の国際的な薬物規制機関がこれらの薬物が暴力、躁病、精神病、自殺、そして殺人を引き起こす可能性があると警告していること、そして最近行われた主要な研究がこれらの薬物が人々をより暴力的にする危険性を高めることを確認していることを考慮して、CCHRインターナショナルは次のように主張している。「これら(精神科)薬物をさらに多くの人々、特に子供たちに投与するという、より多くの精神的健康『治療』に対するどんな推奨も、単なる過失ではない。起こり得る影響を考えると犯罪的でもある」。(「コロンバインの真の教訓:精神科薬物は暴力を引き起こす」)

 そこで、問題の核心に取り組もうではないか。 ダラス近郊の大規模商業施設での銃乱射事件の犯人は精神的に不安定であり、おそらく心理相談や治療の経歴があった可能性があり、強力な精神科薬を服用していた可能性があるというのは疑いない。もしもあなたがプロの報道関係者なら、孤立したソーシャルメディアの投稿にあるナチの記念品に基づいた過剰な理論を編み上げるよりも、そこが調査を始める場所ではないか?

 私たちは報道機関や有識者から「銃が問題である」と何度も聞かされているが、強力な精神科薬に反対する議論は同様に説得力がないだろうか? 重要なことは、銃自体は自動的に発砲されるわけではなく、通常、銃は不安定で狂気じみた人々によって大勢の人々に向けて発砲されることはないのだ。彼らの多くは診断を受け、心理相談や治療を受けた精神的な経歴がある。私たちが知りたいのは、彼らに処方された薬物の種類だ。それによって公衆の安全を守るためにその使用状況をより良く監視できるからだ。残念ながら、報道機関はこの情報を提供することに消極的だ。なぜなら、彼らには根本的な利益相反があるからだ。彼らは薬品会社から報酬を受け取っているからなのだ。アメリカ精神医学会の記事がさらにある:

最近の研究において、いくつかの種類の精神科薬と他者への暴力的な行動との関連が文献化されている・・・

2010年12月15日に発表された研究では、研究期間中に484種類の薬について78万169件の重大な有害事象が報告され、その中で1937件が暴力行為であったことがわかった。暴力行為とは、殺人、身体的な攻撃、身体的虐待、殺人的思考、または暴力に関連する症状のいずれかが含まれる事例報告である、と定義された・・・

「さらに、抗うつ薬は、抗精神病薬や気分安定剤と比較しても一貫して高い危険性を示した・・・」

 暴力行動の研究の専門家であり、APA(American Psychiatric Association)の前会長であるポール・フィンク博士はこう発言した。「長い間精神科医として仕事をしてきた私としては、[ヴァレニクリンと抗うつ薬]が他者への暴力と関連していることを知りませんでした・・・ 精神科医や精神医療の専門家は、この関連性を認識する必要があります」と述べた。この研究には外部から資金提供はなかった。関連記事と「暴力行為と関連付けられるいくつかの薬物」



 忘れてはならない。幸せな結婚生活を送り、ちゃんと職に就いている普通の、心の安定した男性は、無作為な殺人的な暴力行為を犯さないことを。それは深刻な心理的問題を抱えている人々であり、専門の助けを求めたり、(しばしば)さまざまな精神科の薬を処方された人々なのだ。

 これらの薬は、多くの人にとって有益だが、一部の利用者には過剰な暴力行為を引き起こす可能性がある。一般の人々は、公共の安全への危険性と利益との均衡を取るために、これらの薬について知る必要がある。これまで、これらの危険性が存在することさえ認められていない。代わりに、すべての非難が銃に向けられており、それによって報道機関や政治的な権力への不信感が高まっている。実際、今ではほとんどの銃所有者は、政治家たちが公共の安全に関心がなく、自分たちの狭い利益を促進するための場としてそれを利用していると信じている。表面的に見れば、その利益には今や第二修正条項の撤廃とアメリカ人の武装解除が含まれている。それが目標であり、ほとんどの銃所有者はそれが目標であることを知っている。ここに、ダグ・デールによる「精神科薬物は暴力の背後にある」と題された編集者への手紙の最後の一節がある:

議会が、武装警備員、金属探知機、チェーンリンクの柵、準軍事部隊に囲まれながら、市民個人の憲法上の銃所持権に関する侵害を議論しているのですが、そろそろこれらの大量殺人の根本原因に、本気で取り組むべきではないでしょうか?

 こういった事件は、数十年前にFDAがより多くの精神科薬を承認し始めるまで聞いたことがありませんでした。2004年から2009年まで、FDAの有害事象報告システムから情報を得た研究者たちは、31種類の異なる精神科薬に関連して1537件の暴力事件が報告されたことを明らかにしています。

 他の専門的な研究は、患者はこれらの薬を服用した後まで殺人的な思考を持っていなかったとの結論を出しています。1992年から2017年までの間に、37件の学校での銃乱射事件がこれらの薬と関連付けられています。2014年に上院に提出された報告書では、学校での銃乱射事件の犯人のうち90%が抗うつ薬を使用していると推定されています。明らかに、この暴力の原因は個人の精神的健康ではなく、薬物にあるのです。

 製薬業界の政治に圧力をかける勢力は、連邦法を制定する議会の議員らに数億ドルを寄付しています。これらの薬物が大量殺人の根本原因であると認めない人は誰でしょうか? 銃規制というエリキシル剤*に酔っている教養のない政治的ミーハー族、製薬業界の政治に圧力をかける勢力から選挙運動資金の寄付を受ける政治家、製薬業界やこの有害物質を一般の人々に売り込む医師。もしそうなら、なぜ?・・・
*《医》甘味と香りを付けたアルコール水溶液で、薬剤を飲みやすくするために用いられる。(英辞郎)

 2001年に、ある薬品製造業者は31人の死亡と関連しているとされるコレステロール薬を市場から撤退させました。大量殺人の件数は、その数を遥かに超えています。

 議会は、これらの薬物が処方されている人々からの銃の所持を禁止する必要があります。さらに、少なくとも新たな処方箋を書くことを連邦犯罪とするべきです。それ以外の対応をすると、議会がどれだけの副次的被害を引き起こしても構わないと考えているとしか結論できません。



 無差別射撃を止めたいのであれば、それらを引き起こしている精神科薬物厳しく規制する必要がある。

*

マイケル・ホイットニーは、ワシントン州を拠点とする著名な地政学および社会分析者です。彼は2002年に独立した市民報道関係者としての経歴を開始し、誠実な報道、社会的正義、世界平和への取り組みを持っています。 彼はグローバリゼーション研究センター(CRG)の研究員でもあります。 この記事のすべての画像はTURから提供されたものです。

月面着陸が行われた「証拠なし」―元ロシアの宇宙開発首脳の発言

<記事原文 寺島先生推薦>
'No proof' US landed on moon – Ex-Russian space boss
Dmitry Rogozin says that while many in Roscosmos defended Washington’s version of events, no one could produce irrefutable proof
ドミトリー・ロゴージンによると、ロシアの国営宇宙開発社のロスコスモス社には米国側の主張を擁護しようとするものは多いが、反論の余地のない証拠を示せる人は皆無だったという。
出典:RT  2023年5月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年5月16日


ミトリー・ロゴージン© Sputnik/Sergey Mamontov


 ロシア国営宇宙開発社ロスコスモスの元首脳であるドミトリー・ロゴージンは、1969年に米のアポロ11号が本当に月面着陸したのかについて疑念を表明し、自身はまだその事実を示す反論の余地のない証拠を見てはいない、と述べた。

 日曜日(5月7日)、自身のテレグラムに投稿した内容によると、ロゴージンがこの件の真偽についての調査に着手したのは「10年ほど前」のことであり、当時ロゴージンはまだロシア政権内で働いており、米国が本当に月面に足を踏み入れたかどうかの真偽に関する疑念を深めるようになったのは、ソ連の宇宙飛行士たちが宇宙飛行から戻ってきた際に疲労困憊した姿を見せていたのと比べて、アポロ11号の乗組員たちは疲れた様子を見せていなかった事実からだとのことだった。

 ロゴージンによると、当時彼はロスコスモス社に証拠を示す要請書を送付したという。その要請書に対してロゴージンが受け取ったのは、ソ連の宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフが書いた本だけだったという。その本は、米国側の宇宙飛行士たちとどんな話をし、彼らから月面着陸時の様子を聞いた話について書かれていた。

 ロゴージンの記載によると、彼はその取り組みを続け、2018年にロスコスモス社の首脳と面会する約束を取り付けたという。しかしロゴージンによると、その面会の際、なんの証拠も示されなかったとのことだ。逆にロゴージンは、数名の科学者から、「我々とNASAの神聖な協力関係に」ケチをつけたと怒りに満ちた非難を受けたという。

 さらにロスコスモス社の元首脳であるロゴージンによると、「最高位段階の当局者から怒りに満ちた電話」が掛かり、米露間の国家関係を複雑にする行為になる、とロゴージンは叱責されたという。



関連記事:月面着陸作戦は「不時着」

 ロゴージンは最後に、彼自身いまだに米国があのような偉業を達成できたとは信じれらないと述べた。というのも、月面着陸という偉業は、1960年後半当時よりも信じられないほど技術が進歩した今でも、不可能なものだからだ。

 しかしロゴージンは、米当局は、「(ロシア)政権内に工作員たちを」配しているという事実を発見したと主張している。

 アポロ11号は、月への初めての有人宇宙飛行計画であり、ネイル・アームストロングとバズ・オルドリンの2名が、人類で初めて月面を歩いた人物として歴史に名を残した。

 この飛行は、月探検に道筋をつけたソ連による無人宇宙飛行であるルナ2計画に続くものだった。

 昨年の4月、ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアによる月計画の再開を誓約した。

CIAはJFK暗殺に関与―ロバート・ケネディJr.

<記事原文 寺島先生推薦>
CIA involved in JFK’s murder – Robert Kennedy Jr
US presidential candidate said the agency’s culpability in his uncle's murder was “beyond a reasonable doubt”
米大統領候補ロバート・ケネディJrは、叔父であるJFKの殺害に対するCIAの罪責は 「合理的疑いの余地なし」と発言した
出典:RT 2023年5月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月15日



© Getty Images / Alessandro Bremec


 民主党の大統領候補ロバート・F・ケネディ・Jrは、1963年に叔父のジョン・F・ケネディ・ジュニア米大統領が暗殺された背景にはCIAがあり、1968年に射殺された父親のロバート・F・ケネディ米司法長官殺害にも関与した可能性が高いと主張した。

 ロバート・F・ケネディ・Jrは、日曜日(5月7日)にWABCラジオの司会者、ジョン・カティマティディスとのインタビューの中で、「CIAが(JFKの)殺害に関与したという圧倒的な証拠がある」と述べ、「現時点では合理的疑いの余地はない」と述べた。

 「CIAがこの殺人とその隠蔽に関与したという証拠はあまりにも多い」と大統領候補者であるロバート・F・ケネディ・Jrは続け、この説を否定する取り組みを「60年にわたる隠蔽」と表現した。彼は、暗殺とCIAの疑惑の役割について書かれた著作は、数百はなくとも数十はあるが、このテーマに関する証拠を最もよくまとめたものとして、ジェームズ・ダグラスの著書『JFK and the Unspeakable』を挙げた。



関連記事:大統領候補ケネディ、米国の重大な間違いについてロシアと意見を共有

 1963年11月22日、ダラスを通過中の大統領を射殺したのは、米海兵隊の退役軍人リー・ハーヴェイ・オズワルド一人だったというのが、翌年ウォーレン委員会の報告書として発表された米国政府の公式見解である。

  オズワルドは裁判を受ける前に殺害されたことは有名だが、逮捕後すぐにジャーナリストたちに、彼は「ただのカモだ」と語った。単独犯とされたオズワルドは、ダラス警察本部から郡刑務所に移送される途中、ナイトクラブのオーナー、ジャック・ルビー(本名ジェイコブ・ルビンシュタイン)に射殺された。

  ロバート・F・ケネディ・Jrは、1968年の父である司法長官兼大統領候補ロバート・F・ケネディの暗殺にCIAが関与していたことを「非常に説得力のある状況証拠がある」とし、カティマティディスとの対談を行った。彼は、パレスチナの馬の手入れをするサーハン・サーハンの仕業とされる暗殺の公式見解を物理的に不可能とし、軍事請負会社ロッキードに兼務していたホテルの警備員、セイン・ユージン・シーザーが実際にケネディを殺害する発砲を行ったと主張した。

  JFK殺害から4年後、アメリカ国民の半数近くが、オズワルドの単独犯行を信じていなかった。CIAはこの事実を十分に懸念し、1967年にウォーレン委員会の結論に疑問を呈するいわゆる「陰謀論者」の信用を失墜させる方法について指令を出している。「陰謀論者」という言葉が蔑称として使われるようになったのは、この1967年の報告に端を発している。

エプスタイン関連文書から、エプスタインと上流階級の人々との繋がりが明らかになったとの報道

<記事原文 寺島先生推薦>
Epstein papers expose his elite contacts – media
報道によると、文書から明らかになったことは、性斡旋を行っていたエプスタインがその後CIAの長官になった人物やオバマ政権の補佐官やロスチャイルド家の銀行家と会談していたことだ。
出典:RT 2023年4月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月10日



2019年7月、ニューヨーク市の連邦裁判所前で、児童売春斡旋者であったジェフリー・エプスタインの写真を掲げる抗議活動者© Getty Images / Stephanie Keith


 後にCIAの長官となったウィリアム・バーンズ、アリアンヌ・ドゥ・ロチルド、バラク・オバマ米大統領の元補佐官が、エプスタインが児童売春を斡旋していたことが公式に記録された後で、この金融業者と会う約束をしていた著名人の中に入っていたことが、故エプスタインが残した文書から新たに見つかった重要情報から明らかになった。

 これまで公表されてこなかったこの文書には、2013年から2017年のあいだのメールや予定について書かれた数千頁に及ぶ文書も含まれており、これらの文書により明らかになったことは、エプスタインが、多数の著名人との面会を予定していたことだった。 その中には、米国諜報機関のウィリアム・バーンズ長官、元大統領顧問で後にゴールドマン・サックス・グループの首席弁護士に転じたキャスリン・ルームラー もいたと、ウォール・ストリート・ジャーナル(以降WSJ)が日曜日(4月30日)に報じた。これらの人々の面会はすべて、エプスタインが10代の少女を売春のためにフロリダで調達した罪により服役した後に予定されていた。

 当時オバマ政権で国務副長官をしていたバーンズが初めてエプスタインに面会したのは、2014年のワシントンで、その後マンハッタンにあるエプスタインの別邸で二度会った、とその文書には記されている。 タミー・クッパーマン・ソープがWSJに語ったところによると、バーンズはこの悪名高い金融屋については、「金融業界の専門家の一人であると紹介されただけで、民間業者への移行について一般的な助言を受けただけだ」だったという。



関連記事:JPモルガンはエプスタインの小児性愛について吹聴ー起訴状から

 ルームラーはエプスタインと職業上の繋がりがあり、ルームラーにマイクロソフト社の共同設立者の一人であるビル・ゲイツなど今後弁護士業の顧客となりそうな人々を紹介したのがエプスタインだった、とゴールドマン・サックス銀行の報道官がWSJに語った。「ジェフリー・エプスタインと知り合いだったことを後悔しています」とルームラーは述べた。

  WSJの報道によると、この文書により示唆されたことは、エプスタインが自身の交渉相手のことを熟知していた可能性だった。 例えば、エプスタインは、ルームラーとの面会時に、助手にアボガドの巻寿司を忘れずに出すよう依頼していた。エプスタインや彼の職員らが話していた内容には、ルームラーは、エプスタインの別邸に若い女性たちがいることを不快に感じている、というものもあった。訪問客の一人であった人類学者のヘレン・フィッシャーによると、2016年、別邸で昼食を取った後で、エプスタインはフィッシャーを職員らと話すよう誘ったが、その部屋には6人の魅力的な若い女性がいたという。

 ルームラーは、エプスタインと長年何度も面会を持ってきたのだが、ルームラーはこの小児性愛者であるエプスタインから、アリアンヌ・ドゥ・ロチルドを紹介されたことがこの文書から明らかになった。紹介された後、アリアンヌ・ドゥ・ロチルド所有のスイスの民間銀行が、ルームラーの法律会社を雇用し、米国の規制問題の支援を依頼した。

 2013年、エプスタインはアリアンヌ・ドゥ・ロチルドに、新しい助手を見つける手助けを依頼した。それは、「女性で、複数言語が話せて、整理ができる人」だった。アリアンヌ・ドゥ・ロチルドは、「探してみます」と応じていた。エプスタインはアリアンヌ・ドゥ・ロチルドと10回以上面会しており、 彼女に贅沢な服飾品や事業取引の依頼を行っていた。



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 エプスタインが2019年に、未成年の少女らを使った性斡旋をした罪状で逮捕されたあと、銀行グループのエドマンド・ドゥ・ロスチャイルド社は、アリアンヌ・ドゥ・ロチルドは金融家であるエプスタインと面会したこともなく、仕事上の繋がりもないと主張した。同銀行がWSJに語ったところによると、以前の同銀行の主張は誤りで、ドゥ・ロチルドは通常業務の一環として面会したことがあったが、その際ドゥ・ロチルドはエプスタインに対して法的手続きが取られていたことや、エプスタインの行為に疑惑が生じていたことは知らなかったとのことだった。

 以前エプスタインがフロリダで行ったとされた疑惑行為については、主要報道機関が取り上げ、この金融家に寄付金を返上する政治家も何人か出た。レズリー・ウェックスナーなどの小売業の億万長者ら、エプスタインと事業取引をしていた人々の中にも、エプスタインとの繋がりを絶ったものもいた。「このような否定的な報道がある中でも、エプスタインは毎日、朝から晩まで著名人たちとの面会を行っていた」とWSJは報じている。

 以前報じられていたエプスタイン関連文書によると、エプスタインはゲイツやビル・クリントン元大統領や英国のアンドリュー王子など著名人らと繋がりを持っていたことがわかった。 エプスタインは2019年にニューヨーク市内の刑務所で亡くなったが、自殺だとされている。エプスタインの死後、「エプスタインは自殺ではなかった」という書き込みが拡散されたことから、エプスタインの死は、エプスタインが関わりを持っていた権力者たちが証拠隠滅を狙ったためのものだという憶測を呼んだ。

関連記事:イーロン・マスクはエプスタインの顧客一覧に対して支配者層が沈黙していることに疑問を呈した

 WSJが明らかにした文書により分かったことは、エプスタインがイスラエルのイュード・バラク元首相、バード大学のレオン・ボットシュタイン学長、作家のノーム・チョムスキー、映画監督のウッディ・アレン、ヘンリー・キッシンジャー所有の事業相談会社の代表取締役の一人であったジョシュア・クーパー・ラモとの面会を予定していた、という事実だった。

バイデンは前回の選挙を盗んだのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Did Biden Steal the Election?
筆者:ロン・ポール議員
出典:Global Research  2023年4月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月9日



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 ウォーターゲートには脇にどいてもらおう。2020年10月17日頃、当時のバイデン陣営の幹部アントニー・ブリンケンは、元CIA長官代理のマイク・モレルを呼び出し、ある依頼をした:彼は、遅れているバイデンの選挙戦を大規模な不祥事から救うために、元アメリカ情報機関の高官にアメリカ国民に嘘をついてもらう必要があった。

 問題は、ジョー・バイデンの息子、ハンターが自分のパソコン(ラップトップ)を修理店に捨ててしまい、その爆発的な中身が外に漏れてしまったことだった。バイデン家の明らかな腐敗と前副大統領の息子の放蕩の詳細はニューヨーク・ポスト紙が報じており、選挙まで1カ月を切った時点で、バイデン陣営はこの話を潰す必要があった。

関連記事:2020年大統領選を盗んだのは誰か?

 そこで、新たに公開された下院司法委員会でのモレルの証言記録によると、ブリンケンはモレルを「引き金」にして、ノートパソコン<の話には「ロシアの偽情報作戦の特徴がすべてある」と主張するために、政府の高官である役職名を用いて、約50人の情報機関の高官が署名する手紙をまとめさせたのだ。

 要するに、バイデン陣営の指示で、モレルはアメリカ国民に対する秘密作戦を開始し、2020年の選挙の信頼性を台無しにしたのである。元CIA、DIA、NSAの高官数十人が署名した書簡は、バイデンのラップトップ・スクープ話を葬り去るのに十分な重みを持つことは間違いない。それは成功した。ソーシャルメディアはノートパソコンに関する報道を一切掲載しないようにし、主流報道機関はこの話を単なる 「ロシアのプロパガンダ」として簡単に無視することができた。

 最近、司法委員会のジム・ジョーダン委員長(共和党_オハイオ)から、なぜ偽の署名状の作成に同意したのかと尋ねられたモレルは、「バイデン副大統領を助けたい・・・選挙に勝ってほしい」と思ったから、と証言している。モレルはまた、バイデン大統領から、その時が来たら、CIAのトップに指名されることを期待していたようだ。

 民主党と主流報道機関は、2021年1月6日の米連邦議会議事堂内の騒動は、トランプ大統領が選挙結果を覆すために起こしたものだ、という嘘を執拗に押し通した。何百人もの「不法侵入者」が逮捕され、裁判なしで独房に収容され、選挙を盗む陰謀が行われていたという嘘の筋書きを補強した。

 選挙を盗もうとする陰謀が本当にあったことは判明したが、それは報道された内容とは正反対だった。「スティール文書」は、ロシア人がトランプのために糸を引いているという嘘を植え付けるための民主党の隠密行動だった。まったく同じように、「ロシア情報操作作戦」の書簡は、選挙戦の終盤にバイデン一族が汚職した可能性について調査をそらすための嘘だった。

 バイデン陣営の偽情報作戦は、彼に有利なように選挙を操作するのに役立ったのか? 世論調査では、アメリカの有権者がハンター・バイデンのノートパソコンに何が入っていたかを知らされていたら、バイデンは当選しなかっただろうといわれている。だから、そう、彼らは選挙で不正を働いたのだ。

 しかし、民主党と主流報道機関はまだやっている。彼らは今、バイデンのノートパソコンの話をどうやって消したか、という話を消そうとしている。この醜聞は、昔なら辞任、弾劾、および/または長期の懲役刑で終わっていたはずのものだ。もし彼らがこの話をうまく葬り去ったら、言いたくはないが、アメリカはバナナ共和国*と化してしまい、もう法の支配はないのである。
* バナナなどの第一次産品の輸出に頼り、主にアメリカ合衆国などの外国資本によって支配統治される政情不安定な小国を指す政治学上の用語。 特に、大多数の貧困労働者層と政治・経済・軍部を包括する少数の支配者層という社会の階層化による格差を拡大させる。( ウィキペディア)

マスク氏、Twitter本社の家主が自分のホームレス避難所計画を却下したと主張

<記事原文 寺島先生推薦>

Musk claims Twitter HQ landlord rejected homeless shelter plan
The property owners torpedoed the idea to use vacant office space to house vagrants, the billionaire claims

不動産(Twitter本社)所有者は、会社の空き空間を利用して浮浪者を収容するという自分の提案を頓挫させたと、億万長者のマスク氏は主張する

2023年4月12日 

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月30日

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© Getty Images / Justin Sullivan

 イーロン・マスク氏が所有するソーシャルメディア企業Twitterの本社はサンフランシスコにあるが、彼にはその本社ビルの空きスペースを同市の野宿生活者による危機を緩和するために利用するという考えがあった。ところがその計画をビルの家主は認めなかった。マスク氏はその家主を非難している。

 マスク氏は、火曜日(4月11日)の夜、BBCニュースのインタビューで「私たちは、この場所を野宿生活者の避難所にしようと思った。でも彼ら(本社ビルの家主)はそれを認めてくれない」と述べ、さらに「私たちは建物の1部しか使っていないので、残りの場所はホームレス用の避難所にすることができる。私たちは今すぐにでもそれを実現したい。ビルの所有者が許可してくれれば、やりますよ」とも。

 昨年10月に440億ドルでのTwitter社の買収を完了して以来、マスク氏は同社の従業員を80%以上削減し、約1500人にした。この人件費削減措置のおかげで、本社内の46万3000平方フィート(約4万3000平方メートル)が利用者のいない空間となった。この物件は、ショーレンスタイン不動産LPの関連会社でJP モルガンチェイス& Co.の傘下にあるSRI ナイン・マーケット・スクエアLLCが所有している。SRIは1月に家賃滞納の疑いでTwitter社を提訴している。


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関連記事:マスク、Twitter社の名前をふざけた名前に変身させる

 マスク氏は、本社にあるTwitterの看板から「w」を取り除き、「Titter*」に改名する計画をめぐっても、家主と衝突している。マスク氏はBBCの取材に対し、所有者が「w」の削除を拒否したため、「w」を白いペンキで隠すことにしたと語った。
* 「くすくす笑う」「女好き男」という意味がある。

 提案された野宿生活者避難所はどのように運営されるのかと尋ねられたマスクは、「わからない。ただ、そこに人を泊めることもできる。いいじゃないですか......。荷物を持ってきてもいいし、テントを持ってきてもいい。何でもいいんだ」。彼は昨年、Twitterを買収する前に、従業員はいずれにしても出社してこないからと言って、この考えについて自身のツイッターのフォロワーに意向調査を取っていた。

 サンフランシスコには約8,000人の野宿生活者がおり、犯罪の増加や、路上での排便や麻薬の注射針の数千件の報告にもつながっている。Twitter社が浮浪者と職場空間を共有することをどのように管理するかは明らかではない。ホールフーズ社*は火曜日、サンフランシスコの販売拠点となっていた中心店舗の閉鎖を発表した。この地域の犯罪が従業員を危険にさらしているとの懸念があるためだ。11月に使用済みの注射器やパイプが床から発見された後、店長は同店のトイレの使用を制限せざるを得なかったと報じられている。
* 有機にこだわった食材を揃え、化粧品や美容商品は天然成分で作られた自然系の商品を数多く取り扱っている。

関連記事:カリフォルニア市長、薬物や路上排泄物に対処するため非常事態を宣言

 マスク氏はBBCの取材に対し、Twitter社の年間売上は買収前の45億ドルから30億ドルに減少し、必要経費は45億ドルから60億ドルに跳ね上がっていると語った。コスト削減や資本注入がなければ、あと4ヶ月間営業を続けられるだけの現金しかなかった。キャッシュフロー(現金流量)*は「現時点ではほぼ収支トントン」だという。
* 現金の流れを意味し、主に企業活動や財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことをいう。欧米では古くからこの会計にもとづく計算書の作成が、企業に義務付けられている。日本では、1999年度から上場企業は財務諸表の一つとしてこの計算書を作成することが、法律で義務付けられるようになった。(ウィキペディア)

アメリカの子どもたちは前例のない疫病に直面している! アメリカの若い世代の54%が慢性病

<記事原文 寺島先生推薦>

America’s Children Are Facing Unprecedented Epidemics! 54% of US Youth Are Chronically Ill.

筆者:子どもの健康を守る(Children’s Health Defense

出典:Global Research

2023年4月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月29日

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子どもの慢性的な健康状態

 概要: 2010年にJAMA(Journal of the American Medical Association)に掲載された全米規模の調査で、子どもたちの健康状態の経年劣化が最悪になったことが明らかになった。1988年から2006年にかけて、4種類の慢性疾患(肥満、喘息、行動・学習問題、「その他の」身体疾患)の有病率が倍増し、アメリカの子供や若者の12.8%から26.6%に上昇したのだ。

 2011年の小児科学会(Academic Pediatrics)の研究では、「米国の子どもの43%(3200万人)が現在、20の慢性的な健康状態のうち少なくとも1つを有していると推定され、太りすぎや肥満、発達の遅れの危険性があることを含めると54.1%に増加する」とされている。また小児の自己免疫疾患も増加傾向にある。自閉症、ADHD、喘息、アレルギーは当時から倍増しており、現在、米国の一部の地域では、自閉症は子どもの30人に1人の割合で発生している。

 「2020-21年、障害者教育法(IDEA)に基づく特別教育の提供を受けた3歳から21歳の生徒の数は720万人で、公立学校の全生徒の15パーセントに相当する。特別教育の措置を受けている生徒のうち、最も多い障害の項目は、特定の学習障害(33%)だった」。

 重金属、殺虫剤、そして除草剤などの環境毒素が主な原因であることを示す証拠が増えつつある一方、ワクチンや有害なワクチン成分が、発作、神経発達障害、そして乳児死亡など、さまざまな健康上の悪影響と関連する研究結果が発表されている。医学界、公衆衛生界、そして政府関係者が、これらの有害物質の汚染による社会的・経済的影響について沈黙を守る中、アメリカの子供たちはかつてないほど病んでいる。

*

十代の10人のうち4人はうつ病

 うつ病になった子どもは、悲しみや絶望感、イライラが続き、無価値感や無用感、あるいは罪悪感を感じることがある。自傷行為や自己破壊的な行動も見られ、自殺を考えたり自殺を計画したりすることもある。

子ども5人のうち1人は肥満

 肥満の子どもたちは、心臓病、呼吸困難、そして2型糖尿病など、他の深刻な健康問題を引き起こす可能性が高くなる。また、不安やうつ病、そして自尊心の低下にも悩まされる可能性が高くなる。

十代5人のうち1人は自殺を真剣に考えたことがある

 自殺は、10~34歳の10代と若年成人の死因の第2位を占めている。自殺や自殺未遂は、精神的、肉体的、経済的に深刻な影響を及ぼす。自殺を試みて生き延びた人は、健康に長期的な影響を与えるような深刻な傷害を経験する可能性がある。また、うつ病やその他の精神衛生上の問題を経験することもある。人が自殺で亡くなった場合、残された家族や友人は、ショック、怒り、罪悪感、うつ病や不安の症状を経験し、自分自身も自殺を考える可能性もある。

2歳から8歳の子ども6人のうち1人は発達障害

 発達障害のある人は、記憶、知覚、注意、言語、問題解決、または社会的相互作用に機能障害が生じることがある。発達障害は、学習の妨げになることがある。発達障害は、通常、幼児期に始まり、日常生活に影響を及ぼし、生涯にわたって続く可能性がある。

子どもたち10人のうち1人は不安症

 不安は、心身の健康に影響を及ぼす可能性がある。免疫系、循環器系、泌尿器系、消化器系、そして呼吸器系に影響を及ぼし、感染症のリスクを高める可能性がある。不安障害は、自分が他の人と同じように生活できないことを恥ずかしく思うようになることがある。その結果、社会的孤立を深め、さらに引きこもってしまうこともある。

子ども10人のうち1人はADHD

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、何百万人もの子どもたちが罹患し、しばしば成人期まで続く慢性疾患だ。ADHDは、注意を持続することが難しい、多動性、衝動的な行動など、持続的な問題が複合的に含まれている。また、ADHDの子どもたちは、自尊心の低下、人間関係のトラブル、学校での成績不振に悩まされることもある。

子ども12人のうち1人は喘息

 喘息は、ゼーゼー、呼吸困難、そして咳を引き起こす深刻な病気だ。生涯にわたり、肺に永久的な損傷を与える可能性がある。毎年、喘息の子どもの6人に1人が救急外来を受診し、喘息の子どもの約20人に1人が喘息のために入院している。

子ども13人のうち1人は食物アレルギー

 米国では食物アレルギーを持つ子どもの40%以上が救急外来で治療を受けている。食物アレルギーを発症すると、突然の激しいアレルギー反応で死に至ることもある「アナフィラキシー」のように、体の免疫反応が激しくなることがある。

子ども44人のうち1人は自閉症

 自閉症スペクトラム障害(ASD)は発達障害のひとつだ。ASDの人は、通常とは言えないやり方で行動し、コミュニケーションをとり、交流し、そして学習することがある。ASDは3歳以前に始まり、生涯を通じて続く可能性がある。

子ども285人のうち1人は20歳までにがんと診断される

 がんは、アメリカの子どもたちの病気による死因の第1位。アメリカでは、がんにかかった子どもの6人に1人が、5年間生存できない。子供ががんと診断された場合、その影響は広範囲に及ぶ。治療や通院のための交通費、学校を休むことへの対応、兄弟の世話、保険や経済的な問題など、親が仕事を辞めなければならないことも少なくない。

* 

関連記事:COVIDの世界的流行を見る視点:誰かがしらじらしい嘘をついている。

オーウェル的 RESTRICT 法案は、『1984年』の背筋も凍る再現であり、アメリカの自由の崩壊でもある。

<記事原文 寺島先生推薦>

The Orwellian RESTRICT Act is a chilling echo of ‘1984’ and an erosion of American freedom
Far beyond cracking down on TikTok, the bill envisages frightening powers to control citizens’ access to ‘unwanted’ information.

TikTokの取り締まりをはるかに超えて、この法案は、市民の「不必要な」情報の入手経路を制限する恐ろしい権限を想定している。

筆者:イアン・マイルズ・チョン (Ian Miles Cheong)

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イアン・マイルズ・チョンは、政治・文化評論家。彼の仕事はThe Rebel、Penthouse、Human Events、The Post Millennialで紹介された。

出典:RT

2023年4月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月28日

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2023年3月22日、ワシントンDCの米国連邦議会議事堂前で記者会見するTikTokの支持者たち。© 写真:Alex Wong/Getty Images


 ジョージ・オーウェルの「1984年」を彷彿とさせるような不気味な雰囲気の中、「情報通信技術を危険にさらす安全性への脅威の出現を制限する法律」(RESTRICT法)が、アメリカの自由を脅かす暗雲として迫ってきている。

 この法律は、単なる「TikTok禁止令」ではなく、連邦政府があらゆる国を「外敵」として指定し、その国の管轄下にある企業が間接的に支配するオンラインサービスや製品を禁止し、その国とほとんどすべての取引を行う米国人を厳しく罰することができるようにする、広範囲にわたる権限を有している。

 マーク・ウォーナ上院議員(民主党、バージニア州選出)が提唱するRESTRICT法は、中国と繋がったTikTokという情報拡散基盤商品を対象とするだけでなく、アメリカの自由の基盤そのものを解体する可能性を持っている。政府の監視と統制が蔓延するオーウェルの反理想郷的小説の傑作と比較せずにいられない。恐ろしいことに、この法案は、そのような悪夢のような架空話を厳然たる現実にしてしまうかもしれないのだ。


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関連記事:TikTok、子供のデータを悪用したとして罰金刑


 RESTRICT法の背筋が凍るような規定は、同法に違反する取引を行った個人に対し、商務長官が最高25万ドルの民事罰を科すというもの。法案の取引の定義は極めて広範で、取得、輸入、データ送信、ソフトウェアの更新、修理、データ保持業務、および法律の適用を回避または回避するために設計されたその他の取引などの活動を含んでいる。

 しかし、『1984年』の弾圧的な世界のように、25万ドルの罰金は始まりに過ぎない。この法律に違反していることが判明したアメリカ市民は、最高100万ドルの刑事罰と最高20年の懲役刑に処される可能性がある。

 RESTRICT法が本質的に管理と処罰の道具として機能するように、オーウェルの観点との類似性は顕著である。外国からの安全保障の名の下に、政府の無制限な権力を許せば、この法案は、国民を待ち受ける反理想郷的な運命をはっきりと思い起こさせるものである。

 さらに、この法案では、連邦政府が、電話やパソコン、インターネット中継点、電子商取引技術や業務、暗号通貨、さらには量子コンピュータやポスト量子暗号、高度ロボット工学、生物技術工学などの先端技術など、アメリカ国民の所有するさまざまな機器や業務に入り込み押収できるようになる。

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関連記事:米国によるTikTok禁止への取り組みは、世界最大のスパイ組織による純粋な投影である

 
 さらに、この法案の施行に関連する情報公開法(FOIA)の要求を制限することで、政府は国民の監視から免れることを認められている。この点で、RESTRICT法は、World Wide Web*のかなりの部分から国民を隔離する中国の「グレートファイアウォール(防火長城)」のアメリカ版といえる。
* ネットワーク上のコンテンツを相互に閲覧するために規格化された仕組みのこと

 しかし、中国とは異なり(そこではVPN*の利用が自動的に投獄につながることはなく、また多くの国民がVPNを利用して人気のアプリやビデオゲームへの入手経路を手にしてもお咎めなしなのだが)、RESTRICT法はその規定に違反した者にはるかに厳しい処罰を課している。
* Virtual Private Network”の略称。「仮想専用通信網」。

 すでに保守派はこの法案の危険性に警鐘を鳴らしており、タッカー・カールソンは、この法案が政府に「アメリカ市民を罰し、インターネットでの通信手段を規制する」能力を提供することになると警告する独白をしている

 ドナルド・トランプJr.はTwitterにこう書いた:「何事も見かけとは全然違う。一党独裁を狙う影の勢力は、私たちが何をし、何を見るかを管理するために、さらなる権力を欲している。そして今、私たちは、バイデン派のチンピラたちに、私たちがこの狂気に違反していると判断されたら、私たちを20年間刑務所に入れる能力を与えようとしている? ご免だね」。

 米国下院金融委員会は、RESTRICT法が 「IEEPA*以来最大の行政権拡大のための煙幕としてTikTokを使っている」とし、他の共和党議員に法案を拒否するよう警告を発した
*国際緊急経済権限法。1977年10月28日より施行されたアメリカ合衆国の法律。合衆国法典第50編第35章§§1701-1707により規定されている。( ウィキペディア)

 RESTRICT法の批准が進めば、アメリカ人は地平線の向こうに広がる反理想郷的な現実に目を覚ますことができるのか、まだわからない。彼らのために、そして他のすべての人のために、そうであることを祈ろう。

元CIA長官が暴露―2020年選挙におけるバイデン陣営による情報操作の取り組み

<記事原文 寺島先生推薦>

Former CIA head reveals efforts to help Biden win 2020 election
Dozens of former intelligence officials penned a letter falsely claiming the Hunter Biden laptop story was likely “Russian disinformation”

数十人の元情報当局者が、ハンター・バイデンのノートパソコンの話は「ロシアの偽情報」の可能性が高いと虚偽の書簡を書いた。

2023年4月21日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月24日

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2016年4月13日、バージニア州ラングレーのCIA本部。中央情報局(CIA)の印章が見える。© AP / キャロライン・カスター


 元CIA長官代理のマイク・モレルの証言によると、2020年の米国選挙に向けてのジョー・バイデンの大統領選挙運動が、ある公開書簡の作成に一役買っていたとのことだ。この書簡は、大統領の息子に関する正当な報道を信用させないことを目的としたもので、51人の元諜報関係者が署名している。

 公聴会を知る共和党議員によると、下院司法委員会での最近の非公開の証言で、モレルは、2020年10月にニューヨーク・ポスト紙に載ったハンター・バイデンによる海外ビジネス取引に関する批判報道について、アントニー・ブリンケン(現国務長官、当時バイデンの上級選挙運動員)が彼に接触してきたことを認めた。

 USA Today紙にFBIがハンター・バイデンの記事が「偽情報キャンペーン」の一部であるかどうかを調査していると主張しているものがあるが、ブリンケンはその記事をモレルにメールしたと言われている。

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関連記事:ハンター・バイデン、「地獄のラップトップ」修理店を提訴


 モレルは、この議論をきっかけに、ハンター・バイデンの報道には「ロシアの情報操作の典型的な特徴」があるとする情報当局者の公開書簡を作成したと述べた。その後の調査で、この報道はバイデンの息子のノートパソコンから入手した本物の文書に基づいていたことが判明するが、この書簡は、5人の元CIA長官やその他多数の元高官によって支持され、2020年の大統領選を前に大きな影響力を持つこととなった。

 モレルは、ブリンケンと接触する前には書簡をまとめる計画がなかったことを認めたが、「バイデン副大統領を助けたい...選挙に勝ってほしいからだ」と付け加えた。この書簡が掲載のためにポリティコに渡された後、バイデン陣営のスティーブ・リチェッティ委員長はモレルに電話をかけ、手紙を作成したことに感謝したと元職員は続ける。

 バイデンはその後、2020年10月22日に行われたドナルド・トランプ大統領(当時)との討論会でこの公開書簡を引用し、息子が海外で政治的な影響力の売買に関与しているという正当な主張を退けるのに役立てた。

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関連記事:バイデン一家のもう一人(義理の娘)も外国の現金を持ち出していた―報告書


 共和党の議員たちは、モレルの証言を受けて回答を求めており、下院司法委員会のジム・ジョーダン委員長と下院情報委員会のマイク・ターナー委員長は、ブリンケンにさらなる情報を求める書簡を書き送った。

 「バイデン陣営が公開書簡の情報源に積極的な役割を果たしたことは明らかであり、ハンター・バイデンの実際の行動を示す情報を封印し、アメリカ市民が2020年の大統領選挙中に十分な情報に基づいた判断をすることを妨げる効果があった」と彼らは声明で述べている。

 複数のソーシャルメディアは、ハンター・バイデンのラップトップに関する話が出ないように前例のない措置をとり、ツイッターは、ユーザーがダイレクトメッセージで関連内容を共有することを禁止するまでになった。ジョー・バイデンの選挙運動は当時、Twitterやその他のプラットフォームと密接に連絡を取り合い、いくつかの投稿に削除のフラグを立てていたが、ラップトップの話を葬るよう明確に各サイトに促したかどうかは不明である。

「閲覧注意の警告」がついたアメリカの古典的な小説

<記事原文 寺島先生推薦>

Classic American novel slapped with ‘trigger warning’

‘Gone with the Wind’ now begins with a cautionary note and a lengthy condemnation of “white supremacy”

『風と共に去りぬ』には、注意書きと長文の「白人至上主義」批判が添えられる

出典:RT

2023年4月2日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月22日

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「風と共に去りぬ」の1場面に登場する女優のヴィヴィアン・リーとハティ・マクダニエル(1939年) © Flickr


 日曜日(4月2日)のテレグラフ紙の報道によると、『風と共に去りぬ』の最新の復刻版は、出版社から「問題あり」「有害」と決めつけられている。この出版社は、文章そのものを編集するのではなく、知識人を雇い、この古典的恋愛小説に、人種差別の悪に関する但し書きを前置きしたのだ。

 1936年にマーガレット・ミッチェルによって書かれた『風と共に去りぬ』は、ジョージア州の農園主の娘であるスカーレット・オハラと、社交的で、南軍兵士としては消極的なレット・バトラー大佐のラブ・ストーリーを、ヤンキー(北部人)による南部征服という背景のもとで描いている。


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 この本とそれに続くハリウッドでの映画化は、奴隷を所有していた南部の大義を、甘美的に表現していると長い間非難されており、HBO Maxは2020年にこの映画を視聴可能作品群から撤去した。また、この小説の最新の再版は、出版社のパン・マクミラン社によって原文のままで出版されたが、代わりに「閲覧注意」という警告文が表紙に添えられている、とテレグラフ紙は報じている。

 その警告文には、 「この小説が書かれた当時に流行していた、この小説の時代背景を忠実に再現した、人を傷つける、あるいは実際に有害な表現・用語があるかもしれないことを読者に警告したい」とあり、出版社がこのような差別的な表現を削除しないことは「このような表現を推奨する意図があるという意味ではない」とも書き添えられている。

 このような表現を但し書きとして使用するのは、ロアルド・ダールの童話から "fat "や "ugly "といった軽度の攻撃的な言葉を削除したパフィン・ブックス(Puffin Book)社のように、強引な編集や書き換えに頼らずに古典作品を再発行しようとする出版社の典型である。イアン・フレミングのジェームズ・ボンド小説の出版社は、今月の再販に先立ち、「n*****r」のような人種的中傷用語は削除し、女性や同性愛者に対する不快な描写はそのまま残すという中間の立場をとった。


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関連記事:アガサ・クリスティーの小説、「感性読者」に切り刻まれる(テレグラフ紙)


 しかし、パン・マクミラン社は閲覧注意警告よりさらに踏み込んだ。 『風と共に去りぬ』では、警告の後に、イギリスの小説家フィリッパ・グレゴリーの文章が加わり、この物語は「人種差別を擁護」し「白人至上主義を美化している」と断定している。

 「この小説は、アフリカの人々は白人と同じ種族ではない、ということを明確に語っている」とグレゴリーは付け加える。

 グレゴリーは白人でイギリス人だ。パン・マクミラン社は、彼女がこの文章の執筆に選ばれた理由を、「少数派の背景を持つ作家が、多数派を教育する責任を負うという人々の感情に訴えるような文章を書くという労苦を求められることがあってはならない、と考えたからです」と述べている。

 『風と共に去りぬ』は、その主題や表現に何十年も手を焼いてきたにもかかわらず、世界中で3千万部以上売れた、史上最も人気のある本のひとつだ。

CIAはノルド・ストリームについて同盟国に事前の警告を出していた(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA issued advance Nord Stream warning to allies – WSJ

出典:RT

2023年3月9日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月5日


(CIAの)通知には、親ウクライナ派がパイプラインの破壊を企てているとの警告が含まれていたとされる。



資料写真:バルチック海におけるノルド・ストリーム2パイプラインの敷設(2021年9月)© Nord Stream 2 AG / AFP


 CIAは、親ウクライナ派によるガスパイプライン「ノルド・ストリーム」への攻撃の可能性について、EUの同盟国に警告したと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が情報当局者の話を引用して、3月8日(水)、報じた。

 それによると、昨年6月から7月にかけて、CIAはドイツの連邦情報局(BND)など欧州の機関に、ウクライナ人3人がパイプラインを狙うために、スウェーデンなどバルト海周辺の国々で船を借りようとしていたことを伝えた。その攻撃は結局9月に行われた。

 CIAのバーンズ長官とホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障顧問は、爆破事件から1ヵ月後には、キエフがロシアのガスをドイツに送るために作られたパイプラインの破壊工作を指揮した可能性を検討していたと言われている。

 この報道は、ニューヨーク・タイムズ紙が3月7日(火)に米政府関係者の話を引用し、正体不明の「親ウクライナ派」が爆破を実行した可能性があるとしたことを受けて行われた。WSJは、米情報当局によるこの評価は「決定的なものではない」とし、犯人とされる人物がウクライナ政府と関係があることを「示すものはない」と主張したと述べた。




関連記事:米国の諜報員によると、「親ウクライナ勢力」がノルド・ストリームを爆破したという。(ニューヨーク・タイムズの報道)


 ドイツの報道機関は今週、捜査当局が、ウクライナ人2人が所有する「らしい」ポーランドの会社が運営するヨットを、破壊工作との関連の可能性で調べていると報じた。その後、ドイツ当局は1月に同船舶を捜索したことを確認したが、押収品の詳細については明らかにしなかった。

 ウクライナの関与が疑われる新たな報道は、ベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュが先月行った調査と矛盾するもので、ハーシュはある情報源を引用して、爆撃はノルウェーの助けを借りて米国が行ったと主張している。米国とウクライナはともに関与を否定しており、ホワイトハウスはハーシュ氏の主張を「全くの虚偽」と断じた。

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は水曜日、ウクライナとの関連についての報道は、真の犯人から注意をそらし、NATO諸国を免責しようとするものであると示唆した。「明らかに、これはメディアによる協調的なデマキャンペーンだ」とペスコフは述べた。

 モスクワは、西側諸国は事件の包括的な国際調査にあまり関心がないと主張している。

数十の米銀がSVBの破綻劇を繰り返す危険性 (研究論文による警鐘)

<記事原文 寺島先生推薦>

Dozens of US banks at risk of repeating SVB collapse – study

出典:RT

2023年3月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月30日


Pgiam / Getty Images


他の多くの金融機関も金利の急速な引き上げにより、前例のない規模の損失から逃れられずにいる

 200近い米国の銀行が、破綻と倒産に追い込まれたシリコン・バレー銀行(SVB)のようになる危険があるという報告書が、オンライン上の研究発表機関である「社会科学研究ネットワーク」に今週(3月第3週)掲載された。米国の大手金融業者であるSVBは、科学技術分野や新規事業立ち上げ分野への投資に力を入れてきた銀行だったが、先週、大規模な預金流出が生じたことを受け、規制当局により閉鎖された。

 この報告書においては、著名な米国の大学の経済学者4人が、最近の金利の高騰により米国の銀行が保持している資産がどれほどの市場価値の損失を出すかの推論が行われている。

 2022年3月7日から2023年3月6日の間に、フェデラル・ファンド・レート(米国の市中銀行が連邦準備銀行に預けている資金の金利)は、0.08%から4.57%にまで急騰した。そしてこの急騰に対応して量的引き締め*策が取られた。その結果、 賃借対照表**に記載されている銀行の資産同様、銀行の長期資産の価値も同時期に大きく下落している」とその報告書にはある。
* 中央銀行が保有する資産を圧縮することで、市場に出回る金の量を減らしていくこと
** 一定時点の財政状況が記載されているもの


 金利が高くなれば、高い利率での貸付が可能となるため、銀行にとって利益が出るが、米国の銀行の多くは余剰金の大部分を米国債の買い付けに当てている。この買い付けは金利がほぼゼロの時になされたものだ。いまやこれらの国債の価値は、利率の高騰のせいで大きく下落している。投資家たちは高い利率のある新たに発行された国債を買えば済むようになったからだ。銀行が所有する資産の価値は下落しているのに、その実感が伴っていないということは、有価証券の価値が下がっているのに、その損失はまだ「書類上」でしかないということになる。

 問題が生じるのは、取り付け騒ぎ*が起こり、銀行が自行所有の有価証券を売らざるを得なくなった時だ。これは深刻な損失になるが、預金者に預金を返すためには、そうせざるを得ない。極端な場合、そのせいで銀行は支払不能状態になることもある。あるいはSVBの場合と同じように、銀行に対する信頼が失われて、取り付け騒ぎが発生する可能性もある。
* 預金者が殺到して預金を銀行から引き出すこと

 この報告書の執筆者たちは、米国の金融業者が、無保険預金として所有している資本額を調査している:その割合が高いほど、取り付け騒ぎが起こる見通しは高くなる。例えば、SVBにおいては、預金者の92.5%が無保険預金であり、たった2日間の預金流出により破綻に追い込まれた。この報告書の執筆者たちの見積もりでは、無保険預金の半分が引き出されれば、全ての預金者に預金支払いを行えなくなる銀行が米国に186行あるという。




関連記事:米国の銀行危機が西側の金融体制の崩壊に繋がる過程


 「私たちの推論から示唆されることは、これらの銀行には、取り付け騒ぎが生じる危険が確実に存在しているということだ。それを防ぐには、政府が介入や資本注入を行わないといけないだろう。(中略)。結局のところ、これらの推論から示唆されるのは、銀行の所有資産の価値の大幅な下落により、米国の銀行体制の脆弱化が加速され、無保険預金に対する取り付け騒ぎの発生が危惧されるという点だ」とこれらの経済学者は結論づけ、危険な状態にある銀行の数は、ずっと「深刻な数」になる可能性があるとした。そしてそれは、「取り付け騒ぎによる銀行の持ち株の投げ売りが小規模でおさまったとしても同じだ」という。

 SVBの破綻は、米国の銀行業界全体に波紋を投げかけ、シグニチャー銀行という別の銀行の閉鎖にも繋がった。他の多くの金融機関においても、株価が下落し、ウォール街の六大銀行は、時価総額で1650億ドルほどの損失を出している。これは各行の複合資産の13%程度になる。今週(3月第3週)はじめの格付け会社であるムーディーズは、米国の銀行体制の評価を「安定した状態」から「良くない状態」に下げたが、その理由は「運営状況が急速に悪化しているため」としていた。

「嘘の帝国」の反撃:ノルド・ストリーム破壊に対する尋常でない隠蔽工作

<記事原文 寺島先生推薦>

The Empire of Lies Strikes Back… Extraordinary Cover-Up of Nord Stream Terrorism

出典:Strategic Culture

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月25日

嘘の帝国


欧米の報道機関は、ジャーナリズムの頂点に立ち、公共の利益と民主主義の擁護者であると威張り散らしている。彼らは、ワシントン(嘘の帝国)のプロパガンダ省に過ぎないのである。

 ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米のニュースメディアは、今週、的外れで、露骨な話題そらしの主張を展開したが、結局は、ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」を爆破した米国の罪について、さらに注目を集めることにしかならなかった。
 ジョー・バイデン米大統領の政権が、この犯罪行為でさらに起訴に値することになっただけではない。今週行われた不条理な隠蔽工作は、西側メディアがジャーナリズムを装ったプロパガンダの省に過ぎないことも暴露した。

 4週間前、米国の著名な独立系ジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、バイデン大統領とホワイトハウスの上級スタッフが、ロシアとバルト海とドイツを経由して欧州連合を結ぶ天然ガスパイプライン(ノルド・ストリーム)の爆破を指示した経緯を明らかにする超大型調査報告書を発表した。伝説的なハーシュは、1968年にベトナムで米軍が犯したミライの大虐殺から、アメリカ占領下のイラクにおけるアブグレイブ刑務所での拷問、ダマスカスの政権交代を目指すワシントンの代理戦争に参戦するために、リビアからシリアに武器と傭兵を流すためのラットライン(秘密の経路)の運用まで、非の打ち所のない画期的な記事を残してきた。

 ノルド・ストリームの破壊工作に関する彼の重要な報告書において、ハーシュはワシントンの内部情報源に頼った。彼は、米国が昨年夏、BALTOPS 22として知られるNATOの戦争演習を隠れ蓑に、米海軍のダイバーチームを用いて秘密裏に作戦を実行したという主張を発表した。2022年6月に行われた演習では、海底に爆発物が仕掛けられ、その後ノルウェー軍機の助けを借りて9月26日に爆発させたという。

 ハーシュ報告書に説得力があるのは、単に作戦の詳細が信用できるというだけでなく、多くの独立系観測筋が、妨害工作を行う動機と手段を持つ人物について、強力な状況証拠からすでに結論付けていたことを裏付けている点である。なお、米国が犯人とされる背景については、本誌Strategic Cultureの最近の論説を参照されたい。

 さて、ここで不思議なことがある。ハーシュの報告書は世界中に衝撃を与えたが、欧米の政府や主要メディアは彼の報告書を無視することを選んだ。奇妙な異世界にでもいるかのように、彼らはハーシュの衝撃的な暴露を存在しないことにしたのだ。

 ハーシュの世界的なスクープに対する評判、そして彼の最新報告書が、大規模な民間インフラ事業(ノルド・ストリーム)がどのように破壊されたかについて、確固たる信憑性を持った説明を明らかにしたこと、さらにこの報告書の含意が、米国とその大統領とその上級スタッフがテロ行為を命令したという罪状であることを考えると、おそらく、まあ、推測でしかないが、欧米のメディアにすれば、この件は絶対何らかの形で報道しなければならないと思うだろう。とんでもない。何の異論もなしに、黙殺したのだ。ある意味、これは非常にショッキングであり、茶番である。

 この奇妙な沈黙は、今週ニューヨーク・タイムズ紙が、ノルド・ストリームの爆破に関する、代わりの説明を主張する記事を発表するまで、1ヶ月間維持された。その後、まるで合図があったかのように、他の西側メディアも同じような記事を、手を変え、品を変え、次々と報道した。

 お笑い草だが、ニューヨーク・タイムズ紙は、この報道を「ノルド・ストリームに対する攻撃の犯人について、知られている最初の重要な手がかり」であると言い張ったのである。これは、ハーシュの、人の心をつかんだ記事を1ヶ月間無視し、世間の目に触れないように、効果的に検閲した後のことである。

 今週の「報道」(と呼んでいいのなら)は、この破壊工作は「親ウクライナ派」によって行われ、ウクライナ人またはロシア人が関与していたかもしれないという内容であった。この主張の情報源は、「新たな情報機関」と称する匿名の米国当局者である。また、ウクライナ人が所有する個人所有のヨットが使用され、攻撃が起こる数ヶ月前、この差し迫った攻撃についてCIAがドイツ情報機関に通報していたとも主張されている。

 報道された情報は、検証不可能なほど曖昧で、率直に言って、信用に値するものですらない。バルト海の海底で行われた高度な技術を要する軍事作戦が、無名の準軍事組織によって実行されたと、私たちは信じ込まされている。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米のメディアは、自分たちの体面からすれば突拍子もないような記事を掲載した。これではゴシップ誌になってしまう。

 しかも、この報告書は、ハーシュ報告書をきちんと内容を確認することもなく、ハーシュ報告書に対してする反論として作成されていることが、その作成方法から明らかである。このように、米国は犯罪行為への関与を否定しているのは、あるものをないと、何とか言いくるめているからだ。この二重思考は、それ自体が「嘘の帝国」の罪深さを示している。

 西側のプロパガンダの売り手にとって問題なのは、あり得ないということに加えて、キエフ政権のアリバイを提供しなければならないというさらなる重荷である。米国とそのNATO同盟国は、明らかな犯人であるワシントンから目をそらす必要があるが、NATOが支援するキエフ軍事政権に対する欧米国民の反感を煽りかねないため、キエフ政権を巻き込むことも許されない。このため、ニューヨーク・タイムズ紙は、ノルド・ストリーム爆破事件をウクライナの武装勢力になすりつけつつ、この大胆不敵な武装勢力がウラジーミル・ゼレンスキー大統領とその一味に知られることなく爆破を成し遂げたと主張しながら、複雑なバランスを取っているようだ。これでは、二重に馬鹿げた話になってしまう。

 このような欧米メディアのごまかしには、タイミング(それを起こす時期の設定)という重要な要素もある。先週、ドイツのオラフ・ショルツ首相は3月3日、ホワイトハウスでジョー・バイデンに接待され、不自然なほどプライベートな会談を行った。密室での二人の会話は公開されなかった。両首脳は、その話し合いについて、記者団に口を閉ざした。ショルツがバイデンに政治的な援護を求めたのは、ウクライナとロシアをめぐるアメリカの政策が経済的にもたらす影響について、ドイツ国民の間で怒りが高まっていたからだと推測される。ドイツの産業と輸出主導の経済は、ロシアの伝統的な天然ガス供給の喪失によって壊滅的な打撃を受けている。ショルツと彼の政府は、ドイツ経済に対するアメリカの破壊行為と思われる行為に付き合うことで、裏切り行為をしていると見られている。ハーシュ報告書に何の回答もしないことは、ベルリン政府に大きな圧力となっている。それゆえ今週は、ノルド・ストリームを爆破したとされる人物について、西側メディアの総力を挙げたキャンペーンで国民の関心を逸らそうとする試みが見られた。その目的は、ワシントンとその手先であるベルリンを免責することである。

 もう一つのタイミング(時期設定)の問題は、先週3月2日にロシアのブリャンスク地方でテロを実行したウクライナとロシアのファシスト司令部が突然現れたことである。大人2人が死亡し、少年1人が重傷を負ったこの事件は、理由のない残虐行為であり、国際的な見出しを飾った。しかし、その大胆な襲撃は、国際的な活動の中で一匹狼として行動するように見える親ウクライナの過激派の存在を世間に知らしめることになった。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米メディアが、ノルド・ストリーム破壊工作の犯人としたのは、まさにこのような人物像である。ここで次の疑問が当然出てくる:ブリャンスクのテロは、ノルド・ストリームに関するメディアの情報操作を促進するために、西側の軍事情報機関によって行われたのではないだろうか?

 本題に入ろう。西側メディアの情報操作キャンペーンは下品なジョークである。米国とそのNATO同盟国は、欧州の企業や政府に対する国際テロ行為を行い、少なくとも200億ドルの建設費がかかる1,200キロのノルド・ストリーム・パイプラインの主要所有者であるロシアに対する戦争行為を行ったという明白な事実から目をそらすことはできない。その犯罪行為が、アメリカの大統領とそのホワイトハウス側近によって命じられた可能性は高い。地政学的な動機は明々白々であり、バイデンとその側近がこの忌まわしい出来事の前後に、天に唾するような告白をしたことも同様である。

 西側メディアによる今週の隠蔽工作は、米国とそのNATOの犯罪協力者をさらに罪に陥れるものでしかない。さらに、西側メディアは、戦争犯罪の宣伝に加担していることが、これまで以上に露呈している。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする欧米の報道機関は、ジャーナリズムの頂点に立ち、公共の利益と民主主義の擁護者であると偉そうに主張している。しかし、彼らはワシントン(嘘の帝国)の宣伝部に他ならない。

テロ攻撃を画策していた米国のネオナチ勢力がウクライナのファシスト集団と繋がっていることを報道機関は無視

<記事原文 寺島先生推薦>

Neo-Nazi brotherhood: How American friends of Ukrainian fascists plotted a terror attack in the US and the media ignored the story. In normal circumstances, the Atomwaffen’s plot in Baltimore should have been headline news

ネオナチの兄弟組織:ウクライナのファシスト集団と繋がる米国の組織が米国内でテロ攻撃を仕掛けようとしたが、報道機関はこの事件を無視。通常であれば、バルチモアでネオナチ集団のアトムヴァッフェンが計画していた陰謀は、新聞の見出しを飾るはずだった。

筆者:フェリックス・リブシッツ(Felix Livshitz)

出典:RT

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月22日


© Social network


 米国の極右過激派―ウクライナのアゾフ大隊とつながりがある―が、メリーランド州ボルチモア市で、テロ攻撃を陰謀したとして起訴された。しかし米国の報道機関は、この事件を報じる際に、この組織とアゾフ大隊とのつながりについては触れなかった。

 付言すれば、この未遂テロ攻撃はアゾフ大隊の隊員たちとその外国の友好組織とが、西側諸国に与える脅威のほんの始まりに過ぎないのかもしれない。


未遂計画

 2月上旬、米国司法省は、ネオナチ組織の構成員であるサラー・べス・クレンダニエルとブランドン・クリント・ラッセルの2名が、ボルチモア市内の複数の変電所の破壊を画策していたとして起訴されたと発表した。当局は両名の計画を、「人種差別に基づく憎悪思想に駆り立てられた」ものであるとした。有罪が確定すれば、最大20年の禁固刑が言い渡される。



関連記事:戦争の惨禍:ウクライナの紛争が欧州の別の国に広がりそうになる可能性の理由とは。


 2022年6月、あるいはもっと早い可能性もあるが、両名は変電所に対する一連の攻撃計画を準備し始めた。その手口は、気球とライフル銃を使うものであり、その目的は、変圧器を不足させることで、何千人もの住民の明かりと暖房を止めることにあった。この両名がこの工作の実行時期と目していたのは「電力が一番必要とされる時期」であり、エネルギー需要が最も高い時期だった。

 ラッセルは目星としていた標的の地図をクレンダニエルと共有し、変電所に対する小規模な攻撃でも、ボルチモア全体に「連鎖的停電」被害を与えられる計画の概要を説明した。それは複数の箇所を同時に攻撃することで、被害を最大限にするという作戦だった。クレンダニエルは、この計画により、「ボルチモア市を永久に完全破壊された状態にできる」と考えていたことが、暗号化されたメッセージアプリでのやり取りからわかっている。


刑務所へ逆戻り

 ラッセルはテロ組織アトムヴァッフェン・ディビジョンの創設者であり、国家社会主義抵抗戦線という国際的なネオナチのテロリスト集団網の一員としても知られている。2018年1月、ラッセルは未登録の破壊装置と爆発物を不当に所持していたため投獄された。FBIの爆弾技術者の主張によれば、ラッセルが所有していた原料があれば、航空機一機を完全に破壊できるとのことであり、検察側の主張では、ラッセルはその装置を使ったテロ攻撃を画策しており、その標的は、全米の市民や核施設やユダヤ教の礼拝堂だったという。


ボルチモア地域の複数の変電所の破壊を画策していたとして、連邦当局に逮捕されたサラー・ベス・グレンダニエル

 獄中でラッセルは支持者に向けた動画を公表したが、その動画は支持者の「不滅の忠誠心と勇気」に感謝し、自分が投獄されたことで、アトムヴァッヘンの使命が中断されることはないことを約束する内容だった。ラッセルはさらに、支持者に爆弾の製作方法も伝えていた。

 ラッセルは「この世界に臆病者たちが存在できる余地はない」と宣告し、アドルフ・ヒトラーの以下のことばを引用していた。「剣は抜かれた。もう後戻りはできない」と。



関連記事:スターリン没後70年:西側の喧伝によるこのソ連の独裁者の描き方は、当初悪者、その後英雄、そしてまた悪者に逆戻りした。


 ラッセルがこれらの発言をしたにも関わらず、そして米国内外のアトムヴァッヘンの支持者たちは、ラッセルが獄につながれている間に、ますます多くの重大な犯罪—複数の殺人行為もあった—を実行していた事実があったにも関わらず、ラッセルは刑期よりも早く出獄を許された。さらに、ラッセルが自身のネオナチ組織団の団員たちと連絡を取り合うことを禁じる措置は取られなかった。

 同様に注目すべきは、国内でのテロ画策行為が連邦政府により摘発され、その首謀者たちが或る組織の指導者をつとめていて、これらの首謀者たちが市民の安全に明らかに大きな脅威をもたらしているというのに、この事件については、大手報道機関も政治家たちも概して完全にダンマリを決めている点だ。これまでジョー・バイデン政権は、極右や人種差別的な動機のもとで動いている過激派が巻き起こす脅威について、激しく広報してきたにもかかわらず、である。さらに当局は、ソーシャル・メディア上での秘密の魔女狩り工作までしてきた。その対象は白人の保守派層だった。その白人の保守派層が、脅威となっている証拠―捏造された場合もある―を特定しようとしてきたのだ。


 では、グレンダニエルとラッセルの起訴に関して、このような沈黙が保たれている理由は何か? 普通に考えれば、今回の事件はホワイト・ハウスやリベラル派の専門家や記者たちにとって、格好のネタになったはずだ。その理由に対する答えは、アトムヴァッヘンが持つ国際的な繋がりにあるのかもしれない。実名をあげれば、ウクライナの悪名高く、荒々しいアゾフ大隊との繋がりだ。もうひとつは、それに伴い、西側が長年訓練を施し、資金を出してきた東欧諸国の極右勢力のことが明らかになることが避けられなくなるからだろう。


秘密とはいえ、公然の秘密

 米国陸軍士官学校のテロリスト対策センターが2020年に行った調査結果によると、ウクライナは長年、「白人至上主義者的な思想の持ち主や活動家や野心家たちのような人々の関心を引き寄せる」国であったという。

 2014年の米国内が主導したマイダンのクーデターに関わっていた国粋主義の団体がいくつも存在している状況が、「欧州や米国やそれ以外の地域の極右の人々や組織の気分を高揚させた」とその調査記録にはある。世界中のネオナチたちがウクライナに集結し始め、彼らの目には、ウクライナが新たなファシスト国家が形成されつつある国だと映っていた。 中でも関心を集めていたのが、アゾフ大隊であり、この記録によると、「人権侵害行為を行っていたことを示す文書があったにも拘わらず、当時のペトロ・ポリシェンコ大統領や保安隊からの支援を受けた」組織であると捉えられていたという。


ブランドン・クリント・ラッセル@Pinellas County Sheriff's Office via AP

 こんなことは、第二次世界大戦後の欧州で初めてだった。つまり、ネオナチの一派―「祝福され、公に組織され、政府高官と友好関係を結んでいる」―が、国家から歓迎され、資金も提供されているという状況のことだ。キエフに到着したネオナチたちの中の相当数は、アゾフ大隊に加入したり、同大隊の戦士たちから指導や訓練を受けたりした。

 これらのネオナチたちの中に、アトムヴァッヘンの代表者たちもいて、それ以来、この2つの組織の間の関係は強められ、正式なものになった。アトムヴァッヘンの欧州組織は、アゾフ大隊による訓練合宿に参加しており、米国を拠点としている団員たちも数名加わっていた。これらの米国内の団員たちは、その後暴虐な攻撃や記者たちに対する脅迫行為を画策していたとして投獄された。



関連記事:「欧州で最も急進的な右翼過激派のひとつ」:ウクライナによる今週のロシアのブリャンスク地方への攻撃の背後にいたネオナチは誰か?


 大手報道機関が、マイダン後、長年アゾフ大隊が持つファシスト的要素を認識し、あからさまに非難してきたにもかかわらず、これらの組織に対する取材は現在事実上なくなってしまっている。ロシアによる軍事作戦が昨年開始されてから、(アゾフ大隊はファシスト集団であるという)議論の余地のない真実は無視されるか、大きく歪曲されてきた。また、アゾフ大隊に対する政治的姿勢も同様に変化してきた。かつては米国政府からの支援を受けることは法律で禁じられていたこの大隊は、今では隊員たちが、英雄的な自由の戦士であるともてはやされ、ワシントンに招待され 、戦意を鼓舞するような発言をさせてもらっている。


ネオナチがさらなる問題を引き起こす兆しはあるのだろうか?

 報道機関がアトムヴァッヘンの創設者であるラッセルとアゾフ大隊との繋がりに対する関心が不足している状況については懸念されるが、この状況の分かりやすい説明は、バイデン政権とバイデン政権によるキエフ政権への支援を助けるためであると言えるだろう。つまり、もし国民に十分な情報を与えてしまえば、十分に反露だとは見られていないアメリカ国民を脅威に晒す過激派集団へのアメリカ国民の支持をずっと保つのは困難となるからだ。ただし、アゾフ大隊がネオナチに訓練を施していることに関しては、考慮すべき問題―報道機関が両者の繋がりを無視している状況と同じくらい重要となる可能性がある問題が他にもある。

 2022年7月、欧州刑事警察機構(ユーロポール)は、今回の戦争を原因として、「確立された密輸経路やオンライン・プラットフォーム上のやり取りを通じて欧州内で売買される銃器や弾薬が増加する」との見通しを示し、さらに「この戦争が終結した後でも、そのような売買が増加する危険が高くなる可能性がある」と警告していた。それ以来、キエフに送られた武器が、武器の闇市場に出回って、犯罪組織により使用されているという複数の記事がある。

 ウクライナに運ばれた大量の兵器(その多くは行方不明)は、アゾフ大隊に加入したり、アゾフ大隊との訓練を受けた過激派勢力とともに、米国や欧州諸国にとっての警告になっているはずだ。アトムヴァッヘンがボルチモアで画策したことは、ただの始まりにすぎないかもしれない。

米国はノルド・ストリームを破壊したと公に認めている(ロシア外相)

<記事原文 寺島先生推薦>

US openly admits it blew up Nord Stream – Russian FM
The pipelines were sabotaged because Washington saw Russian-German cooperation as a threat, Sergey Lavrov has claimed

ノルド・ストリームが破壊されたのは、ワシントンが露・独協力を脅威と考えたからだと、セルゲイ・ラブロフ露外相は主張

出典:RT

2023年2月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月13日


バルト海のノルド・ストリーム2から噴出するガス© AFP / エアバスDS 2022


 米国高官が基本的に認めているのは、モスクワとベルリンを和解させないために行われたノルド・ストリーム破壊工作の背後に米国がいたことだ、とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は述べている。

 「米国は、我々(ロシア)が、過去20年、30年にわたり、ドイツに対して協力し過ぎている、と判断したのです。いや、ドイツがロシアに対して協力し過ぎていると言うべきでしょうか」と、ラブロフは日曜日(2月12日)外務省サイトに公表したインタビューで述べている。

 ロシアのエネルギー資源とドイツの技術に基づく「強力な同盟」は、「多くのアメリカ企業の独占的な地位を脅かし始めました」とラブロフは説明する。

 そこで、ワシントンはモスクワとベルリンのこの同盟を破壊することを決め、ロシアのガスをドイツを通じてヨーロッパに送るために建設されたパイプラインを攻撃することで「実際に」それを実行したと、彼は付け加えた。

 「アメリカ政府は、ノルド・ストリーム1と2で起きた爆破が自分たちの仕業であることを基本的に認めています。しかも、そのことを嬉しそうに話しています」と外相は述べた。



関連記事:米国高官がノルド・ストリーム2爆破事件を歓迎

 
 ラブロフは、1月下旬に上院の公聴会でヴィクトリア・ヌーランド米国務次官(政治担当)が行った告白を言及しているのだろう。「ノルド・ストリーム2が今や...海の底の金属の塊になっていることを知り、私は、そして政権も非常に喜んでいると思います」と、彼女はそのとき語った。

 「西側の政治家の卑劣さは周知のことです」とラブロフは続けた。そして、「ウクライナを“扇動”してロシアに敵対させる。そして今度はウクライナを手段にして西側全体がロシアに戦争を挑むという現在実行されている計画は、ドイツとロシアの関係改善を阻止することが大きな目的です」と遠回しに語った。

 ロシアのトップ外交官であるラブロフのコメントは、米国の代表的な調査ジャーナリストであるシーモア・ハーシュが、昨年ノルド・ストリーム・パイプラインの破壊工作の実行者はワシントンだ、とする爆弾的な報告書を発表した数日後に発表された。

 ハーシュに語った情報筋によると、2022年6月、NATOの演習を隠れ蓑にして米海軍のダイバーが、バルト海に敷設されているノルド・ストリームの複数個所に爆発物を仕掛けたという。9月下旬に爆破され、ヨーロッパの重要なエネルギーインフラが使用不能になった。

 米国家安全保障会議のアドリアン・ワトソン報道官は、ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストであるシーモア・ハーシュの記事を「全くの虚偽、完全なフィクション」と言って否定した。アメリカの高官たちの誰一人、このハーシュの告発についてコメントした者はいない。

関連記事:ノルド・ストリーム爆発事件に関する報告について中国が声明を発表

 数ヶ月前からロシア当局が指摘しているのは、ノルド・ストリームが破壊されたことで利益を得たのは米国だけであり、米国は爆破以来、欧州への高価な液化天然ガスの供給が大幅に増加したことだ。

シーモア・ハーシュ、匿名情報を使ったとの声に反論、大手メディアの御用機関化を批判

<記事原文 寺島先生推薦>

Nord Stream blast story was ‘not hard to find’ – author
Media outlets like the NYT and WaPo “don’t seem to have anyone inside” among their sources, Seymour Hersh claims

ノルド・ストリーム破壊の真相を見つけるのは「難しくなかった」 (筆者)
ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙のようなメディアでは、彼らの情報源の中に 「内部の者は1人もいないようだ」 とシーモア・ハーシュは主張している。

出典:RT

2023年2月13日

<記事翻訳グループ>

2023年3月13日

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シーモア・ハーシュ© Bernard Weil / Toronto Star via Getty Images

 伝説的な調査ジャーナリストであるシーモア・ハーシュは土曜日(2月11日)、9月のノルド・ストリーム・パイプラインの破壊にCIAが関与していたとする最新の爆弾報告書について、その真相を見つけるのは難しくなかったと述べた。この問題については、大半のメディアが報じている以上のことがあることは明らかだ、とハーシュは語った。

 先週水曜日(2月8日)、Substack*に記事を掲載して以来、初めてのインタビューに応じたピューリッツァー賞受賞ジャーナリストであるシーモア・ハーシュは、Radio War Nerd から、まだ匿名のままである記事の情報源についてコメントするよう求められた。
*購読予約で読めるアメリカ発の情報配信オンラインサイト

 ハーシュは、誰に話を聞いたかについて詳細を明かすことを拒否し、情報源を保護し、記事が公開されたときに批判に耐えることが自分の仕事であると述べた。しかし、匿名の情報源を使ったことを批判するメディア関係者は、「もう少しメディアという仕事を理解した方がいいのです」とハーシュは指摘した。

 「問題は、メディアという仕事が安っぽいものにされてしまっていることです。ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙は、無名の情報源は、メディア関係者や報道官が横で何かを囁くものだと考えているからです。私にはわからないが、この2紙の情報源には内部の情報を知るものは誰も入っていないようです」とハーシュは言った。

 また彼は、モスクワとキエフの間で進行中の紛争について、主要報道機関が十分な報道をしていないことにも言及した。「私が知っている戦争は、あなた方が(新聞などを通して)読んでいる戦争ではありません」とハーシュは述べた。

関連記事: 米国、ノルド・ストリームを爆破したことを公然と認める(ロシア外相)

 「私には驚きなんです、同業のみなさん、なんで横並びになるのですか?」と彼は言葉を続けニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、CNN、そしてMSNなど多くの報道機関が、ホワイトハウスやバイデン政権の広報機関になってしまっていると嘆いた。

 ノルド・ストリーム爆破を暴露したことに関して、その話は「簡単に見つけられた」し、ある特定のNATO加盟国が絡んでいることは、バイデン大統領を含む米国の首脳が明確な脅威を発したことも含めてはっきりしている、とハーシュは主張する。彼らは2022年2月にモスクワがウクライナに軍隊を派遣することを選択した場合、ロシアとドイツの共同事業はいずれにしても」止められるだろうと警告していたのだ。

 ハーシュはまた、国際的なパイプライン業界全体が 「誰が何をしたのか」を知っているが、現実には「誰もそれについて考えようとしない」と指摘した。「しかし、私は考えてみた。話はこれで終わりです」と彼は締めくくった。

 ホワイトハウスをはじめ、CIAや国務省の関係者は、ハーシュの報告書が発表されて以来、いずれも猛烈に拒絶している。一方、モスクワは、この攻撃について公開の国際調査を要求している。「犯人を見つけ、罰することなしにこれを放置することは不可能である」と述べている。

「ノルド・ストーム爆弾報告には、まだまだ続きがある」(シーモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦>

More Nord Stream ‘bombshells’ to come – Seymour Hersh

ノルド・ストリームについての「爆弾的ニュース」は、まだまだ続く(シーモア・ハーシュ)

出典:RT

2023年2月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月13日


バルト海でのノルド・ストリームパイプラインの破壊に伴い、漏れ出すガスを撮影したスウェーデン沿岸警備隊の写真(2022年9月27日) © AP / Coast Guard of Sweden

 ジャーナリストのシーモア・ハーシュは、米国とノルド・ストリーム・ガスパイプラインの破壊を結びつける決定的な情報をさらに明らかにすることを約束した。ジョー・バイデン大統領は、ドイツが安価なロシア産ガスの購入を再開するのを阻止するために、パイプラインの破壊を命じたと彼は主張する。

 ハーシュは水曜日(2月15日)に自身のSubstack*のページに投稿し、主要メディア(特にニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙)を非難し、パイプラインに関する記事を「一言も掲載」しようとせず、ロシアと中国が国際調査を求めるのも無視したと述べた。
*定期購入形式で使えるアメリカ発の情報配信オンラインサイト

 両紙は、ベトナムにおける米軍の戦争犯罪に関する彼の暴露記事を掲載したが、現在は「国家安全保障や戦争と平和の問題」に関心がないように見えると彼は言う。




関連記事:ノルド・ストリーム爆発の情報源を「見つけることは困難」ではなかった(シーモア・ハーシュ)


 バルト海底を通ってロシアとドイツを結ぶノルド・ストリーム1と2は、昨年9月に一連の海底爆発で被害を受けた。ピューリッツァー賞受賞のジャーナリストであるハーシュは先週、この攻撃の原因を米国に求め、バイデン政権とCIAがどのように作戦を計画したかを詳細に記した報告書を発表した。ホワイトハウスは、この疑惑を「全くの虚偽であり、完全なフィクション」であると断じた。 

 この記事は、アメリカがロシアとドイツとの和解を阻止し、より高価なアメリカの液化天然ガスに、ベルリンを依存させるために攻撃を行ったという、モスクワが繰り返し主張していることを裏付けるものであった。

 ドイツは、ロシア軍がウクライナに進駐する数日前にノルド・ストリーム2の認可を停止した。そして、EU制裁が発動されたため、夏の終わりからノルド・ストリーム1を通るガスは、必要な修理をさせずに、その流れを止めた。しかし、ハーシュは、ドイツのベルリーナー・ツァイトゥング(Berliner Zeitung)紙に、バイデン政権は、ベルリンがこれらの制裁を解除し、冬に気温が下がるにつれてガス輸送を再開することを恐れている、と語った。

 「米国大統領は、ドイツが凍結するほうが、ウクライナ支援をストップされるよりはまし、と思っている」と断言した。

 「この冬の安いガスの不足についてドイツ政府が考え直すのを防ぐためのジョー・バイデンの決断について、もっと知るべきことがあるかもしれない」とハーシュは水曜日(2月15日)に書いている。「乞うご期待。野球で言えば私たちはまだ一塁にいるに過ぎない...」と彼は言った。

2003年の米イラク侵攻を止めようとした経過とそれが失敗した理由

<記事原文 寺島先生推薦>

How I tried to prevent the 2003 US invasion of Iraq, and why I failed

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)


スコット・リッター元米海兵隊情報将校。著書に『ペレストロイカの時代の軍縮。Arms Control and the End of the Soviet Union(ペレストロイカの時代の軍縮:軍備管理とソ連の終焉)」の著者である。ソ連ではINF条約を実施する査察官として、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍のスタッフとして、1991年から1998年までは国連兵器査察官として勤務した。
@RealScottRitter@ScottRitter


出典:RT

2023年1月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月12日


2003年3月18日、クウェートとイラクの国境付近での軍事攻撃に備えて、3-7歩兵に所属する米陸軍第11工兵が所定の位置に移動する。© Scott Nelson / Getty Images


 どんな真実も、大統領の嘘を燃料とする世界で最も強力な戦争マシンを止めることはできない。

 憲法に定められた厳粛な義務の締めとして、2003年1月28日、第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは、合衆国議会の議場の壇上に立ち、アメリカ国民に語りかけた。

 「議長、チェイニー副大統領、連邦議会議員、著名な市民、そして同胞の皆さん、毎年、法律と慣習により、我々はここに集まり、一般教書を検討することになっています。今年は、」と大統領は口火を切った。「私たちはこの議場に、これから待ち受ける決定的な日々を深く意識しながら集っています」と、重々しく宣言した。ブッシュが語った「決定的な日々」とは、イラクの指導者サダム・フセインを権力から排除する目的で、国際法に違反してイラクに侵攻するという、ブッシュがすでに下した決断のことである。

 43代大統領ブッシュの父、41代大統領ブッシュ(ジョージ・H・W・ブッシュ)がサダム・フセインをアドルフ・ヒトラーと比較し、クウェート侵攻の罪に対してニュルンベルクのような裁きを要求して以来、政権交代は米国の対イラク政策の基本となってきたのである。「ヒトラーの再来だ」と父ブッシュはテキサス州ダラスで開かれた共和党の資金調達パーティーで観衆に語りかけた。「しかし、忘れてはなりません。ヒトラーの戦争が終結したら、ニュルンベルク裁判があったのです。」

 アメリカの政治家、特に自国を戦争に駆り立てようとする大統領は、このような発言を簡単に撤回することはできない。1991年2月、イラク軍をクウェートから追い出した後も、ブッシュはサダム・フセインが権力を握っている限り、休むわけにはいかなかったのである。中東のアドルフ・ヒトラーは退場しなければならなかった。



関連記事:これが悪でなければ、悪という言葉は存在しなくなるだろう。この象徴的な演説により、米国は死と破壊の道へと舵を切った


 第41代大統領ブッシュ政権は、国連が支援するイラク制裁を実施し、イラクの経済を疲弊させ、内部からの政権交代を促進することを目的としていた。この制裁は、長距離ミサイルや化学・生物・核兵器計画などの大量破壊兵器の武装解除をイラクに義務付けるものであった。イラクが国連の兵器査察団から武装解除を認定されるまでは、制裁は継続されることになっていた。しかし、ブッシュ政権のベーカー国務長官が明言したように、サダム・フセインが政権から追放されない限り、この制裁は決して解除されることはない。ベーカーは1991年5月20日、「サダム・フセインが権力を握っている限り、制裁の緩和を見ることに興味はない」と述べた。

 制裁にもかかわらず、サダム・フセインは父ブッシュ政権より長生きした。ブッシュの後継者であるビル・クリントンは、イラクへの制裁政策を継続し、サダム・フセインを弱体化させるために、国連の武器査察と組み合わせた。1996年6月、クリントン政権は、国連の武器査察プロセスを隠れ蓑にして、サダムに対するクーデターを起こそうとした。この試みは失敗したが、政策は失敗ではなかった。1998年、クリントンはイラク解放法に署名し、イラクにおける政権交代を米国の公式政策とした。

 サダムはクリントン政権よりも長生きした。2001年、父ブッシュの息子、ジョージ・W・ブッシュが大統領に選出されたとき、サダムの運命は決まったのだ。クリントンはサダム・フセインを政権から追い出すことはできなかったが、イラクの武装解除を監督する国連の査察活動を停止させることに成功し、米国はイラクが武装解除の義務を果たしていないと主張し続け、経済制裁の継続を正当化することができるようになった。

 ここで問題は私個人に関わることになる。1991年から1998年まで、私はイラクで上級国連兵器査察官の1人として、イラクの武装解除を監督していた。1996年6月、CIAがサダムに対するクーデターを起こすために利用しようとしたのが私の査察団であり、私の査察団の活動にアメリカが干渉し続けたことが、1998年8月に私が国連を辞職するきっかけとなった。私が辞職した数ヵ月後、クリントン政権は国連兵器査察団をイラクから退去させ、空爆作戦「デザート・フォックス(砂漠のキツネ)」を開始した。



国連武器査察団の団長で元米海兵隊少佐のスコット・リッター(左から3番目)は、バグダッドの国連本部前で、チームのメンバーやイラク兵と歩く(1月13日)。© Karim Sahib / AFP


 私は2003年に出版した著書『フロンティア・ジャスティス』の中で、「デザート・フォックス作戦で爆撃された目標のほとんどは、兵器製造とは何の関係もない」と書いている。「72時間の作戦の間に97の「戦略的」目標が攻撃され、86はサダム・フセインの身の安全に関わるものだけで、宮殿、軍の兵舎、警備施設、情報学校、そして司令部などだった。これらの拠点は、例外なくUNSCOM(国連大量破壊兵器破棄特別委員会)の査察官(そのほとんどは私が指揮を執っていた)の査察を受けており、その活動はよく知られており、UNSCOMとは無関係であることが証明されていた。」

 私は最後に、「砂漠の狐作戦の目的は、これらの現場を知る者にとっては明らかだった。イラクの大量破壊兵器ではなく、サダム・フセインが標的だったのだ」と指摘した。この空爆の後、イラクは国連査察団を永久に追放した。

 もちろん、これはずっとアメリカの目標だった。新政権が誕生し、アメリカは、イラクの大量破壊兵器開発状況の不透明さを、アメリカ国民、そして世界に対する影響力として利用し、サダム・フセインを権力から完全に排除するためにイラクへの侵攻を正当化しようとしていた。2002年の秋には、我が国が戦争に向かう国であることは明らかだった。

 私はこれを個人的に受け止め、それを防ぐために行動を起こすことにした。私は議会に行き、上院情報委員会と外交委員会に、イラクに関する真っ当な公聴会を開かせようとした。しかし、彼らは拒否した。侵攻を阻止する唯一の方法は、査察官をイラクに戻し、イラクが戦争に値する脅威ではないことを証明することだった。しかし、イラク側はあまりにも多くの前提条件をつけてくるので、それが実現することはなかった。



関連記事:台湾での流血事件は、米国による決定事項にピッタリと適合している


 そこで私は、私人として介入することにした。南アフリカでサダムの顧問で元外相のタリク・アジズに会い、イラクの国民議会で、私の言葉を編集したり吟味したりすることなく、公に話す必要があると告げた。それが、査察団を復帰させる唯一の方法だった。アジズは最初、私のことを「正気じゃない」と言った。しかし、2日間の話し合いの末、彼は同意した。

 私はイラク国民議会で演説した。それだけでも、人々は私の背信を非難した。私はイラク人を手加減せず、彼らが犯した罪の責任を追及したのに、だ。私は、イラクが侵略されようとしていることを警告し、査察団を戻すことが唯一の選択肢であると警告した。

 それが放送されたことで、イラク政府は私に対応せざるを得なくなった。私は、副大統領、外務大臣、石油大臣、そして大統領の科学顧問と会談した。そして5日後、サダム・フセインを説得し、前提条件なしに兵器査察団をイラクに戻すことができた。私はこれを私の人生のハイライトのひとつに数えている。

 しかし、残念なことにそうはならなかった。国連の査察団は戻ってきたが、その成果を否定しようとする米国によって、その活動はことごとく妨害されたのである。そして、2003年1月28日の運命の夜、大統領は、イラクと所在不明の大量破壊兵器がもたらす脅威を戦争の根拠として示すという使命を果たすために、一歩を踏み出した。

 これは目新しい議論ではなかった。実際、1998年12月にアメリカが国連兵器査察団をイラクから撤退させて以来、私はこの種の議論を否定しようとしてきた。2000年6月には、上院外交委員会の重要メンバーであるジョン・ケリー上院議員(マサチューセッツ州選出)の要請で、私は自分の主張を文章にまとめ、Arms Control Today誌に長文の記事を掲載し、それを全議員に配布した。2001年、私はドキュメンタリー映画『In Shifting Sands』を制作し、イラクの大量破壊兵器に関する真実、その武装解除の状況、そして米国の戦争根拠の不十分さを米国民に訴えようとした。

 それにもかかわらず、アメリカ大統領は、議会への報告という憲法上の義務を利用し、嘘の上に嘘を積み重ね、戦争賛成の意見を広めてしまったのである。

 ブッシュは次のように宣言した:「ほぼ3カ月前、国連安全保障理事会はサダム・フセインに武装解除の最後のチャンスを与えた(注:これは私がイラクに国連の武器査察官の無条件帰還を認めるよう説得した後)。フセインは、武装解除などはせず、国連と世界の意見をまったく軽んじていることを示した」。 ブッシュは、イラクが国連の兵器査察団に協力しなかったことを指摘し、「イラクは、禁止された兵器をどこに隠しているかを正確に示し、それらの兵器を世界の人々に見えるように並べ、指示通りに破壊することが求められていた。このようなことは何も起こっていない」と述べた。



関連記事:20年前、米国は「悪の枢軸」という新語を発明した。それ以来1番邪悪な国とはどこだろう?


 イラクは大量破壊兵器は残っていないと宣言していたため、存在しない兵器をどこに隠しているのか、誰にも示すことができない状態だった。実際、国連の兵器査察団は、イラク政府と完全に協力し、イラクが約束を履行していないと主張する米国が提供した情報を否定していた。米国は、1991年5月にベーカーが「サダム・フセインが政権から退くまで制裁は解除しない」と宣言したことを原則に行動していたのだ。

 大統領はさらに、未確認の炭疽菌とボツリヌス毒素の生物学的製剤について、具体的な主張を展開した。また、化学兵器であるサリン、マスタード、VXについても同様の主張をしている。「国際原子力機関(IAEA)は1990年代、サダム・フセインが高度な核兵器開発計画を持ち、核兵器の設計図を持ち、爆弾用のウランを濃縮する5種類の方法に取り組んでいたことを確認した」と大統領は述べた。

 これはほんとうだ。私は、イラクの核兵器開発を追跡する中心的な役割を担っていた査察官の一人である。しかし、大統領はさらに16の単語からなる次の言葉を発し、それは恥ずべき言葉として後々まで語り継がれることになる:
 「英国政府が得た情報によると、サダム・フセインは最近、アフリカから大量のウランを調達した」。

 CIAのジョージ・テネット長官は、後に議会で「この16の言葉は、大統領のために書かれた文章に含まれるべきではなかった」と認めざるを得なくなった。テネットが後に述べたように、英国諜報機関の存在に関する主張は正しかったが、CIA自身はこの報告書を信頼していなかった。「これ(英国発の情報の存在)は、大統領演説に求められるべき確実性のレベルには達していなかった。CIAはこれを確実に削除すべきだった 」テネットは述べている。



2003年1月28日、ワシントンDCの連邦議会議事堂で、連邦議会合同会議で一般教書演説を行うジョージ・W・ブッシュ米大統領。© Tim Sloan / AFP


 事実として、ブッシュ大統領がイラクについて語ったことはすべて嘘であり、CIAは大統領がその嘘を広めるのを助けることに加担していた。この嘘の唯一の目的は、イラク、特にその指導者であるサダム・フセインが戦争に値する脅威であるという恐怖を議会とアメリカ国民に植え付けることだった。

 ブッシュは、「サダム・フセインは、大量破壊兵器を製造し、保持するために、毎年、あの手この手を使い、巨額の費用をかけ、大きな危険を冒してきました」と強調する。しかし、なぜなのか?ブッシュは自分の質問に答える形で、「大量破壊兵器の用途は、支配、威嚇、あるいは攻撃しか考えられません」と言った。

 核兵器や化学・生物兵器があれば、サダム・フセインは中東での征服の野望を再開し、同地域に致命的な大混乱をもたらすことができるでしょう。

 そして、この議会と米国民は、もう一つの脅威を認識しなければなりません。情報源からの証拠、秘密の通信、現在拘束されている人物の供述から、サダム・フセインがアルカイダのメンバーを含むテロリストを援助し保護していることが明らかになりました。密かに、指紋もなく、彼はテロリストに自分の隠し持つ兵器の一つを提供したり、彼らが自分たちの兵器を開発するのを手伝ったりすることができるでしょう。

 9月11日以前、世界の多くの人々はサダム・フセインを封じ込めることができると信じていました。しかし、化学物質、致死性のウイルス、そして影のテロネットワークは簡単に封じ込めることはできません。

 あの19人のハイジャック犯が、今度はサダム・フセインによって武装され、別の武器と別の計画を持っていると想像してください。1本の小瓶、1つの容器、1つの木箱がこの国に持ち込まれただけで、これまでにない恐怖の日がやってくるのです。

 そんな日が来ないように、私たちは全力を尽くします。」

 そして大統領は、イラクに関するプレゼンテーションの核心に触れた。「米国は、2月5日(2003年)に国連安全保障理事会を招集し、イラクが世界に反抗し続けている事実を検討するよう要請する予定です。パウエル国務長官は、イラクの違法な兵器開発計画、査察団からそれらの兵器を隠そうとする試み、テロ集団とのつながりに関する伝聞と情報を発表するでしょう。」

 大統領はカメラを正面から見据え、アメリカ国民に直接語りかけた。「私たちは協議します。しかし、誤解のないようにしてほしいのです。もしサダム・フセインが国民の安全、そして世界の平和のために完全武装解除しないのであれば、私たちは連合軍を率いて武装解除に向かうでしょう」。

 テレビ画面を見つめ直した。胃がむかついた。大統領の演説は嘘で構成されていた。すべてが嘘だ。

 私は、この嘘を覆すためにあらゆるエネルギーを費やしてきたが、無駄だった。私の国は、私には嘘だとわかっている言葉によって戦争に突入しようとしていたのである。

コロンビア大学教授ジェフリー・サックス、米国のノルド・ストリーム破壊を非難した後、電波から外される

<記事原文 寺島先生推薦>

Columbia professor Jeffrey Sachs yanked off air after accusing US of sabotaging Nord Stream pipeline

筆者:アレックス・ブレア(Alex Blair)

出典:New York Post

2022年10月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月10日

 コロンビア大学の教授が、米国がバルト海のパイプライン「ノルド・ストリーム」の破壊工作をしたと非難すると、テレビの司会者は急いで彼の発言を打ち切ろうとした。

 ジェフリー・サックス教授はブルームバーグの取材に応じ、ここ数週間、世界的な「犯人捜し」ドラマの中心となっているパイプラインは、プーチンの軍隊ではなく米国が経済制裁以上のダメージをロシアに与える手段のための攻撃だ、という考えを披瀝した。

 「ノルド・ストリーム」パイプラインは、ロシアからドイツに天然ガスを直接供給するもので、ヨーロッパ全域に電気を供給するために不可欠なものだ。




世界的に有名な経済学者であるサックスの意見は、ロシア当局の主張のオウム返しだ、と批判された。(ブルームバーグ)


 しかし、爆発源は謎のまま。モスクワとワシントンは双方ともその責任を否定している。

 欧米のアナリストたちの大半は、今のところ、破壊工作の責任はロシアにあると指摘している。

 世界的に著名な経済学者であり、コロンビア大学持続可能な開発センター長であるサックスの意見は、ロシア当局の主張のオウム返しだと批判された。



  「世界の多くの人々が、この出来事を恐怖の目で見ています」とサックスは言った。

  「世界の多くの人々はこれをロシアとアメリカと背筋が凍るほど恐ろしい衝突と見ています。彼らは、私たちのメディアが伝えるような、これをロシアによるウクライナへのいわれのない攻撃だとは思っていません。」

 「世界の大半の人々は、私たちが説明するようには見ていないのです。世界の大半の人々は、率直に言って、今、ただ恐怖を感じているのです。」

 「(爆破は)米国の行動、おそらく米国とポーランドの行動であることは間違いないでしょう」と彼は述べた。

 ブルームバーグの司会者であるトム・キーンはすぐに口を挟み、サックスにその主張の根拠を示すように求めた。



ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の漏えいから発せられるガスの放出.Airbus DS 2022/AFP via Getty Ima


 「ジェフ、お話はそこまで。なぜ、あれがアメリカの行動だと感じるのですか? その証拠はあるのですか?」と司会者は言った。

 レーダーで米軍ヘリを検知したことと、ホワイトハウスがロシアの欧州エネルギー供給への締め付けに関する重要な声明を発表したこと、この2つが、今回の結論につながった、とサックスは述べた。

 「まず、通常(ポーランドの)グダニスクに駐留している米軍のヘリコプターが、この上空を旋回していたというレーダーの直接証拠があります」とサックスは言った。

 「いずれにせよノルド・ストリームを終わらせる」という(バイデン大統領の)脅しも今年に入ってからありました。

 「先週金曜日の記者会見で、国務長官(アントニー・ブリンケン)の『これもまた、とてつもないチャンスだ』という注目すべき発言もありました。




サックスが非難したのは、ドイツがロシアからの海底パイプラインに対する明らかな「破壊工作」を調査するため、デンマークおよびスウェーデンと合同調査部門を設立すると発表したときだ。(ブルームバーグ)


 「重要な意味を持つ国際インフラ(=ノルド・ストリーム)への海賊行為を心配するのであれば、ブリンケンの発言は奇妙な言い方だ」。



関連記事:ロシアの天然ガス輸送官ノルド・ストリームの崩壊が破壊活動であったという疑惑


 バイデンは、ロシアがウクライナに侵攻する数週間前の2月に、ロシアが国境を越えた場合、米国は天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2を終わらせる」だろう、と請け合った

 「もしロシアが侵攻してきたら、つまり戦車や軍隊がウクライナの国境を越えてきたら、ノルド・ストリーム2はなくなるのです。私たちはそれに終止符を打つでしょう」と、バイデンは、その時、述べている。

 サックスは、自分の考えが米国における「我々のシナリオに反する」ことを認め、そしてアメリカのメディアはこの問題を無視していると非難した。

 「今、私が言ったことは、我が国が考えているストーリーに反していることは承知しています。欧米ではこういうことを言うことは許されません。しかし、事実として、世界中の人々と話すと、それはアメリカがやったことだと彼らは思っているのです」と彼は言った。

 「関係するアメリカの新聞の記者ですら、「’もちろん’(米国がやった)」と言います。しかしアメリカのメディアではそんなことは表に出て来ません」。

 サックスが非難の声をあげたのは、ドイツが、ロシアからの海底パイプラインに対する明らかな「破壊工作」を調査するため、デンマーク、スウェーデンと共同で調査団を結成すると発表した時だ。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相は、デンマーク首相、スウェーデン首相とのビデオ通話で、ドイツ政府はこの事件の「共同調査を支持する」と述べた。



バイデン大統領は、ロシアがウクライナに侵攻する数週間前の2月に、ロシアが国境を越えた場合、米国は天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」に「終止符を打つ」と請け合った。(ロイター通信)


 ナンシー・フェーザー(ドイツ)内相は、ビルト・アム・ゾンターク紙に対し、3カ国(ドイツ、デンマーク、スエーデン)のスタッフによる「EU法に基づく合同捜査チーム」が作業を行うことを、内相同士で合意したと語った。

 「すべての状況を勘案すると、ノルド・ストリームパイプラインに対する破壊行為はあった」というのが、彼女の発言だ。さらに、このチームには「海軍、警察、そして諜報機関」の専門家を集める予定だと付け加えた。

 当局は、ドイツのエネルギーインフラを守るために「警戒を強め」ているが、「ドイツ側に対する具体的な脅威の兆候はない---今のところ」と述べている。

 フェーザーは、日刊紙「スエード・ドイッチェ・ツァイトゥング」の取材に対し、爆破後、ドイツ警察は近隣諸国と協力して「利用できるすべての力」で北海とバルト海をパトロールしていると語った。

 スウェーデン当局はその後、破壊工作と思しき事件の調査を行っている間、ノルド・ストリーム・パイプラインの周辺を封鎖している。

 スウェーデン検察庁は声明で、「悪質な破壊工作」の捜査を進めるため、担当検察官が「犯罪現場調査を行うために、その地域を封鎖する」ことを決定したと発表した。

 「捜査は続いており、集中的な段階にある...世間の関心がかなり高いことは理解しているが、予備調査の初期段階であり、したがって、どの捜査手段をとっているのか、詳細についてはコメントできない。」

米国は「国内分裂」に向かっている(共和党女性議員の発言)

<記事原文 寺島先生推薦>

US heading for ‘national divorce’ – congresswoman
Marjorie Taylor Greene says “real Americans” feel disconnected from Washington

マージョリー・テイラー・グリーン議員は、「本当の米国民」はワシントン当局から疎外されていると感じていると発言

出典:RT

2023年2月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月9日


2023年2月7日、ワシントンDCの米国議会議事堂でのバイデン大統領の一般教書演説中のマージョリー・テイラー・グリーン© Getty Images / Win McNamee/Getty Images

 論争の火付け役的役割を果たすことの多い共和党のマージョリー・テイラー・グリーン議員が先日の発言で強調していたのは、同議員は、米国内の赤の州(共和党支持州)と青の州(民主党支持州)の対立による「国内分裂」が進行中だと考えているという点だった。ただし、同議員は政界における分裂や、それに伴い生じるかもしれない内戦を望んでいないとも語っていた。

 ジョージア州選出の共和党員であるテイラー・グリーン議員は、「米国第一主義」と「MAGA(Make America Great Again米国を再び偉大な国に)」を表明しているドナルド・トランプの主要な同盟者であるが、その彼女が「(ジョージ)ワシントン誕生日」である2月20日、政治的な思想に基づいて米国は分裂すべきであると主張した。同議員が不満を呈したのは、「私たちの喉元に病的で吐き気のするようなウォーク(人種や性的差別などに対する高すぎる意識のこと)文化が突きつけられていて、民主党(原文ママ)が唱える国民に対する裏切りのような「米国を最後まで後回しにする」政策が幅をきかせているなか、我が国は終わってしまっている」という点だった。

 この発言に対する非難を受けて、テイラー・グリーン議員は、日曜日(2月26日)に出した声明を強調し、ワシントン当局と政界は「真の米国民や米国民の考えや米国民の感情からは完全に疎外していて、米国民は米国を嫌悪しています。私が正しければ」とツイートしていた。

 「好むと好まざるに関わらず、我が国は国内分裂に向かっています。でも私は内戦を望んではいません。そんなことは決して起こるべきではありません。」

 テイラー・グリーン議員の最近の発言が、ワシントン当局内の厳しい対立を激化させることになることは確実で、この対立は、2021年1月6日に生じた親トランプ派による暴動事件の余波がまだ残存していることを感じさせるものだ。


関連記事:ゼレンスキーは米軍に司令を出している-女性国会議員の発言

 同女性議員が指摘した赤の州と青の州の間の政治的な決裂は、世論調査の結果からも窺えるようだ。世論調査員であるジェレミー・ゾグビ氏が保守系の報道機関であるワシントン・イグザミナーに語ったところによると、青の州と赤の州の間の分裂を示唆する状況は、「全面的に」見られるとのことだ。

 政策検討会社であるジョン・ゾグビ戦略会社の代表社員である、ジェレミー氏の父であるジョン・ゾグビ氏も、以下のように語っている。「我が社が行った世論調査の結果、この状況と相容れない状況は存在しなかった」と。この状況とは、テイラー・グリーン議員から見た米国政界の地形図のことである。

 テイラー・グリーン議員によると、いわゆる「国内分裂」状態になれば、国防総省がすべきことは、「米国の国境線を守ること」となり、ロシアや中国との敵対関係に焦点を置いたり、「何よりもウクライナを守る」ことに関心をもつことなどは後回しにすべきだ、とのことだ。

 同国会議員は、米国内の左派と右派の間には「相容れないほどの差異」が生じており、内戦を招くのではなく、必要なことは「考え方や政治的な不一致が食い違うことを法的に同意することであり、我が国の法的な統一は保たれるべきだ」とした。

 しかし、テイラー・グリーン議員の主張に対する批判が、議会の両側から出されている。ロビン・パタスン大統領報道官は、同議員の分裂論は、「病的で分断的で不安をあおるものだ」とした。またミット・ロムニー元共和党大統領候補は、グリーン議員の主張は、「狂気の沙汰」だと語った。

 「我が国が分断することはありません」とロムニー元大統領候補は語った。「団結してこそ我が国は成り立っているのであって、分裂すれば我が国は崩壊します。」

 テイラー・グリーン議員は、常々ジョー・バイデン大統領政権を批判しており、今月(2月)上旬にも、バイデン大統領が年次一般教書演説を行った際に、バイデン大統領を激しく攻撃する発言を行い、見出しを飾っている。

いかにしてアメリカは「ノルド・ストリーム・パイプライン」を破壊したか(セイモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦>

How America Took Out The Nord Stream Pipeline

The New York Times called it a “mystery,” but the United States executed a covert sea operation that was kept secret—until now

ニューヨーク・タイムズはこの事件は「謎である」と報じているが、米国は秘密の海中作戦を実行した。そしてその秘密は守られてきた。今に至るまで。

筆者:セイモア・ハーシュ(Seymour Hersh)

出典:サブスタック(Substack)

2023年2月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月3日




 米海軍の「潜水・救援センター」は、その名と同様、設置場所もあまり馴染みがないところにある。かつては田舎町だったフロリダ州パナマ市内の田舎道だった通りに位置している。今パナマ市は、フロリダ州の東南部のパンハンドル(各州の領域のなかで他州との境がフライパンの取っ手のように突出した地域)にあるアラバマ州との州境から70マイル南に位置する新しい保養地として脚光を浴びている。

 そしてこのセンターの本部の建物は、その所在地と同様ごく普通だ。その建物は、第二次世界大戦後に建てられたくすんだコンクリート製の建物で、一見シカゴの西側にある専門高校にようなたたずまいだ。コインランドリーとダンス教室が、今は片側2車線ある通りを挟んだ向かい側にある。

 このセンターでは何十年もの間、高い技術をもった深水にもぐる潜水士たちに訓練を施してきた。これらの潜水士たちは、世界中の米軍部隊での任務を果たしてきた人々であり、高い潜水技術を有し、善をなすことができる能力がある人々だ。たとえばC4爆弾を使用して、港や海岸からがれきや不発弾を除去するような行為だ。ただし悪事を働くことも可能だ。例えば、外国の石油採掘装置を爆破したり、海中発電所の吸入バルブを詰まらせたり、重要な運河の閘 (こう)門を破壊する行為などだ。パナマ市センターは、米国で2番目に大きなプールを所持していることを自慢しているが、もっとも優秀で、口が固く、潜水士の学校の卒業生である人々を採用するのにもっとも適した施設だった。そしてこのセンターから採用された人々が、昨年夏に成功裏にことを成し遂げたのだった。その任務とは、バルト海の海面下260フィート(約80メートル)で行われたあの作戦だった。

 昨年6月、海軍の潜水士たちは、「BALTOP22」演習という名で知られているNATOの夏季の軍事演習を隠れ蓑として工作活動を行ったのだ。その際彼らは、遠隔装置により発弾できる爆弾をしかけていたのだ。そしてその爆発は、3か月後に実行された。その爆発により、4本あるノルド・ストリームというパイプラインのうち3本が破壊されたことを、この工作の計画を直接知る情報筋が明らかにしている。

 4本のうちの2本は、2本合わせてノルド・ストリーム1という名で知られているが、このパイプラインは、ドイツと他の多くの西欧諸国に安価なロシアの天然ガスをもう10年以上供給してきたものである。のこり2本のパイプラインは、ノルド・ストリーム2という名で呼ばれていて、その当時は建築中で、稼働は始まっていなかった。当時は、ロシア軍が大規模な軍をウクライナ国境に送り込み、1945年以来欧州で最も血なまぐさい戦争が勃発しそうになっている状況下であり、ジョセフ・バイデン大統領には、これらのパイプラインは、ウラジミール・プーチンが、天然ガスを武器として用い、自身の政治的及び領土的野心を満たす手段であるかのように映っていた。

 コメントを求められたエイドリアン・ワトソン大統領報道官はメールでこう回答している。「(米国がパイプライン爆破を行ったという)こんな話は間違いで、架空の話です」と。CIAのタミー・ソース報道官も、同様にこう記している。「こんな主張は全くの間違いです。」

 バイデンがこれらのパイプラインを破壊することを決めたのは、9ヶ月以上に及ぶワシントンの国家安全保障会議内での行ったり来たりの議論を経てのことだった。その目的を達成する最善策が練られていたのだ。当時の議論のほとんどは、その任務をするかしないかではなく、どうすれば誰が実行したのかの手がかりを残すことなくやってのけるかについてだった。

 パナマ市にあるこの潜水士学校を出た、高い技術を有する卒業生たちにこの任務を委託することには、重要な官僚的理由があった。それは、この潜水士たちが皆、海軍に所属していて、米軍特殊作戦司令部所属ではなかったことだ。後者であれば、その秘密作戦は議会に報告し、上院と下院の高い地位にある人々(いわゆる八人衆)に予め知らせなければならない。バイデン政権は、2021年下旬から2022年初旬にかけて練られていたこの計画が漏洩しないよう、細心の注意を払っていた。

 バイデン大統領とその外交政策検討団であるジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官、トニー・ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌーランド国務次官(政治担当)は、この2本のパイプラインに対する敵意をずっと声にしていた。このパイプラインは、バルト海海中750マイル(約1200km)の長さがあり、エストニアとの国境付近にあるロシア北東部の2箇所の港にそれぞれ端を発し、デンマークのボーンホルム島を通って、ドイツ北部にまで連なっている。

 このロシアからの直接経路があることで、ウクライナを経由しなくて済み、ドイツ経済は恩恵を受け、ロシアの安価な天然ガスを豊富に入手することで自国の諸工場を運営し、各家庭の暖房を賄い、余剰分を西側諸国に売ることでドイツは大きな利益を得ている。であるので、この破壊工作に米国政府が関わった手がかりを残してしまうと、「ロシアとの対立を最小限に抑える」という米国がドイツと交わした約束に背くことになってしまう。機密を守ることが重要たる所以だ。

 完成当初から、ノルド・ストリーム1は、ワシントンや反ロシアの立場を取っている他のNATO諸国からは、西側による世界支配を脅かす存在であると捉えられてきた。ノルド・ストリームを支える持株会社は、ノルド・ストリームAG社であるが、この会社は、2005年にスイスでガスプロム社と提携関係を結んだ。このガスプロム社は、ロシア政府公認のロシアのガス貿易業社であり、株主たちに巨額の利益を齎(もたら)している会社だ。この会社を支配しているのは、プーチンの配下にあることで知られている新興財閥たちだ。ガスプロム社はこの会社の51%の株を所有しており、残りの41%は、欧州の4企業(フランスの1社、オランダの1社、ドイツの2社)と共有していて、安価な天然ガスをドイツや西欧諸国の分配業社へ販売する権利を持っている。ガスプロム社が得る利益はロシア政府と共有されていて、天然ガスや石油で得られる利益が、ロシアの年間予算の45%をも占める年も何年かあった。

 米国の政治的な恐怖は現実的となった。プーチンにとっては、切望していた付加的な収入源を得ることになり、ドイツやその他の西欧諸国もロシアが供給する低価格の天然ガスに依存するようなり、欧州諸国の米国への依存が消えてしまうと考えられていた。実際、まさにその通りになったのだ。ドイツ人の多くはノルド・ストリーム1を、ヴィリー・ブラント元西独首相が唱えていた「東方外交政策(Ostpolitik theory)」の努力の成果の一つだとみていた。様々な取り組みの中でも、この東方外交政策こそが、第二次大戦後、破壊されていたドイツや他の欧州諸国の復興を可能にさせた政策だったのだ。つまり、安価なロシアの天然ガスを使うことで、西欧市場や貿易経済を繁栄させるという構想だ。

 NATOやワシントンの視点からすれば、ノルド・ストリーム1は非常に危険なものであったが、2021年9月に建築が完成されたノルド・ストリーム2は、ドイツ当局が承認すれば、ドイツや西欧諸国に提供される天然ガスの量を二倍にすると考えられていた。さらにこの2つめのパイプラインができれば、ドイツの天然ガス消費量の5割以上を賄えるようになると考えられていた。ロシアとNATO間の緊張関係は、バイデン政権の侵略的な外交政策に裏打ちされて、悪化の一途をたどっていた。

 ノルド・ストリーム2を阻止しようという動きは、2021年1月にバイデンが大統領職に就いたすぐ後から燃えさかった。当時、テキサス州選出テッド・クルーズ議員が率いる共和党上院議員団が、ブリンケン国務長官に対する公聴会でロシアの安価な天然ガスについて繰り返し警告を発していた。そのときまでには、上院議員の一団がある法案の通過に成功した。その法案は、クルーズ議員がブリンケン国務長官に言った言葉を借りれば、「(パイプラインを)軌道内で阻止した」法案だった。このことについては、当時アンゲラ・メルケル首相下のドイツ政府から、二つ目のパイプラインを稼働させるべく政治的および経済的な強力な圧力がかかることが予想された。

 バイデンはドイツを抑えることができるだろうか? ブリンケンは、「できる」としたが、次期大統領のバイデンがこの件についてどう考えているかについての話し合いを持てていないとも語った。「バイデン次期大統領は、このことは良くないと捉えていることは認識しています。ノルド・ストリーム2のことです。」とブリンケンは語っていた。「私の認識では、バイデン次期大統領は使えるすべての手段を用いて、このパイプラインを利用することに前向きにならないよう、友好諸国を説き伏せる意図を持っておられるようです。」

 その数ヶ月後、二つ目のパイプラインが完成に近づく中、バイデンは急に目を開いた。その5月、驚くべき方向転換だったのだが、バイデン政権はノルド・ストリームAG社への制裁を解除し、国務省当局は、制裁と外交によりパイプラインを止めようとしてきたことが、「実現の望みが常にもてない取り組みであった」ことを認めた。報道によると、行政当局者たちは、密かにロシアからの侵略を受ける危険に直面していたウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領に、米国によるこの動きを批判しないよう促していた。

 この動きに対してすぐに反応があった。クルーズ議員が率いている共和党員の一団が、バイデンが決めた外交政策担当者をすべて否認し、防衛費の年間予算案の通過を秋下旬まで遅延させたのだ。後日、ポリティコ誌は、バイデンによるロシアの二つ目のパイプラインに対するこの急展開は、「アフガニスタンからの米軍撤兵という混乱状態よりもさらにひどい決定であるといえる。この決定によりバイデン政権の政策運営は大きな損害を受けることになった」と報じた。

 11月中旬に、ドイツのエネルギー規制当局がノルド・ストリーム2の承認を保留にしたことにより、この危機は緩和されつつあったが、バイデン政権は危機を迎えていた。天然ガスの価格は数日のうちに8%急上昇した。それはドイツや欧州諸国がパイプラインからの供給が保留になることや、ロシアとウクライナ間の戦争が勃発することで、誰も望んでいない冷たい冬を迎えねばならなくなることを懸念してのことだった。ワシントンからは、オラフ・ショルツ独新首相がどんな立ち位置をとるのかが不明瞭だった。その数ヶ月前、アフガニスタンから米軍が引き上げた後、シュルツはフランスのエマニュエル・マクロン大統領の呼びかけに応じていた。マクロンは、プラハでの演説で、欧州諸国がもっと自発的な態度を取るように呼びかけていたのだ。それははっきりと、米国当局や、米国の気まぐれな動きに対する依存から距離を取るよう示唆する内容だった。

 これら全ての状況の中で、ロシア軍はウクライナ国境付近に確実に、そして不気味に軍を配置しており、12月下旬には、10万以上の兵がベラルーシやクリミアから攻撃できる態勢が取られていた。ワシントンからの警戒はどんどん強められ、ブリンケンからは、兵の数は「すぐにでも倍増される」可能性があるとの見通しが出されていた。

 米国政府の関心は再びノルド・ストリームに集まった。欧州諸国が安価な天然ガスを供給するパイプラインへの依存を続ければ、ドイツなどの国々がウクライナに、ロシアを敗北させるために必要な資金や武器の提供に後ろ向きになるのでは、という危惧をワシントンは持っていた。

 まさにこの不安定な時期に、バイデン政権は、ジェイク・サリバンに省庁間の対策部隊を招集し、一つの計画を立てることを認可したのだ。

 すべての選択肢が話し合いのまな板に置かれていたが、浮上した計画はたった一つだった。


計画段階

 2021年12月、ロシアの戦車が初めてウクライナに潜入する2ヶ月前に、ジェイク・サリバンは新たに設置された対策委員会を招集した。この対策委員会には、統合参謀本部、CIA、国務省、財務省からの男女が参加していた。そしてこの委員会は、差し迫っていたプーチンによる侵略にどう対応するかについての提言を行うことが求められていた。

 この会議はこれ以降続けられた一連の極秘会議の最初の会議と目されており、ホワイトハウスに隣接している 旧行政府ビルの最上階の安全な一室で開かれた。なおこのビルには、大統領情報諮問委員会 (PFIAB)の本部も置かれている。いつものたわいのないやりとりの後で、最終的には非常に重要な問題にぶち当たった。それは「この対策委員会が大統領に対して出す提言は、取り返しがつくような行為(例えば制裁や現在取られている制裁を強化するなど)でいいのか、それとも、取り返しがつかないもの、つまり元に戻せないような動的な行為が求められているのか?」という点だった。

 この作戦の過程に直接関わっていた情報源によれば、出席者たちにとって明らかになったことは、サリバンがこの対策委員会に求めていたのは、2つのノルド・ストリームの破壊計画を思いつくことだったという事実と、サリバンが、大統領の意図を受けていたという事実だった。


主要人物たち。左からビクトリア・ヌーランド、アンソニー・ブリンケン、ジェイク・サリバン

 その後の数回の会議で出席者たちが話し合ったのは、攻撃する方法についての選択肢についてだった。海軍の提案は、新たに発注された潜水艦を使って、 パイプラインを直接破壊することだった。空軍の案では遠隔操作できる遅延ヒューズを用いた爆弾を投下することだった。 CIAの主張は、やり方はどうあれ、すべては隠密に進めるべきだというものだった。関わっていた全ての人々がことの重大さを認識していた。「これは児戯ではありません」とこの情報源は語っていた。この攻撃の発生源が米国であることが突き止められれば、「戦争行為と見なされます。」

 当時、CIAの長官はウイリアム・バーンズだった。この人物は元駐ロシア大使である穏健派で、オバマ政権下では国務副長官をつとめていた。バーンズはすぐにCIA関係委員会の参加を承認したのだが、その委員会の特別委員の中に、たまたま、パナマ市の海軍の深水潜水士たちがもつ能力に詳しい人がいた。その後の数週間かけて、CIAのこの関係委員会がとある秘密作戦の考察を開始し、深水潜水士たちを使ってパイプライン沿いで爆発を起こさせる計画を練ったのだ。

 このような作戦は以前にも行われていた。1971年、米国諜報機関が未だに明らかにされていない情報源から、ロシア海軍の2つの重要な部隊が、ロシアの極東にあるオホーツク海中に埋められた海中ケーブルを通じて情報のやりとりをしているという事実を知らされた。このケーブルは、当該地域の海軍の司令官とウラジオストックのロシア本土の本部とを結ぶものだった。

 CIAとNSA(国家安全保障局)の工作員たちから精選された一団が、ワシントン州内のある箇所に極秘裏に集められ、海軍の潜水士たち、改造潜水艦、深海救難艇を使ったある計画に取り組み、試行錯誤の末、そのロシアのケーブの居場所を特定することに成功した。潜水士たちは、優れた盗聴器をケーブルに取り付け、ロシア側の交信の傍受や、その交信の録音に成功したのだ。

 NSAは、ロシア海軍の高官たちが 、自国の通信連携を過信していて、仲間たちと暗号を使わずにやりとりしていた事実を突き止めた。録音装置とテープは、毎月交換され、この作戦は10年間悠々と続けられていたが、ロシア語が堪能だった44歳のNSAのロナルド・ペルトンという名の一般人技術者により遮断された。1985年、ペルトンはロシアからの亡命者に密告され、刑務所に入れられた。ペルトンは、米国によるこの作戦をあきらかにしたことに対して、ロシア側からたった5000ドルしか支払われなかった。さらに彼はロシアに運用データを提供したことで3万5千ドルを受け取っているが、そのデータについては全く公表されていない。

 アイビー・ベルズ(Ivy Bells)というコードネームで呼ばれていたこの作戦の成功は、革新的で同時に危険でもあったが、ロシア海軍の意図や計画に関する非常に貴重な情報を得ることにつながるものであった。

 しかし、各機関を跨ぐこの対策部隊は、CIAが熱意をもって提案していた深海攻撃作戦には当初懐疑的であった。答えのない問題が山積していたからだ。バルト海は、ロシア海軍が頻繁に巡回しており、潜水作戦の隠れ蓑に使えそうな油田掘削装置もなかった。潜水士たちは、エストニアで、この使命の訓練をしなければならないのだろうか? エストニアと言えば、国境を挟んで、ロシアでこのパイプラインに天然ガスが搬入される箇所の真向かいにあるのだ。「こんな馬鹿げた作戦があるか!」とCIAは非難された。

 この情報源によれば、「この作戦の考案過程においてCIAや国務省の関係職員たちの中には、こう語っていた者もいました。「そんなことをしてはダメだ。馬鹿げているし、もしバレてしまったら政治的には悪夢だ」と。

 しかし、2022年の初旬に、このCIAの担当団は、サリバン指揮下の各機関を跨いだ対策委員会に再度以下のような報告を行っていた。「パイプラインを吹き飛ばす方法はある」と。

 その次に起こったことは衝撃的だった。2月7日、それは避けることができないと思われていたロシアによるウクライナ侵攻まで3週間もない時期だったが、バイデンはホワイトハウスで、ドイツのオラフ・ショルツ首相と面会した。同首相は、躊躇いを見せていた時期もしばらくあったが、当時は既に米国と強固な関係を築いていた。面会後の記者会見において、バイデンは挑戦的な態度でこう言い放った。「ロシアが侵攻すれば、ノルド・ストリーム2はもはやなくなるだろう。我々かその終止符を打つつもりだ」と。

 その20日前、ヌーランド国務次官も、バイデンと本質的に同じ声明を国務省の記者会見で出していたが、そのことはほとんど報じられなかった。これはある質問に対して彼女が答えたものだった。「今日皆さんにはっきりと申し上げます。ロシアがウクライナに侵攻すれば、何としてでもノルド・ストリーム2の稼働は止められることになるでしょう。



 このパイプライン破壊工作に関わっていた人々のうちの数名は両者の発言に狼狽した。というのも、この攻撃については間接的な言い回しをすべきであると考えられていたからだ。

 「東京に原子爆弾を仕掛けておいて、我々はその爆弾を爆発させるつもりであると日本側に伝えるのと同じようなものでした」とその情報源は語っていた。「この計画は、ロシアによる侵攻の後で行われる選択肢とされていて、公的に広報されてはいませんでした。それなのにバイデンはそのことを分かっていなかったか、わかっていたのにわざと無視をしてこんな発言をしたのです。」

 バイデンやヌーランドの失言がもし本当に失言であったとしたならば、計画を立てていた人々をイライラさせたかも知れない。しかし、彼らの発言は好機ともなったのだ。この情報源によれば、CIAの高官の中には、パイプラインの爆破が、「もはや機密作戦ではなくなったと言える。というのも大統領が、その爆破方法を知っていると公言したのだから」と考える人々もいた。

 このノルド・ストリーム1および2の破壊計画は突然格下げになり、議会に通知する必要がある機密作戦から 米軍の支援のもとの極秘諜報作戦へと返還された。この情報源の説明によれば、法律上、「議会に報告する法的な必要性がなくなったのです。しなければいけないことは、ただ実行することのみになったのです。しかしこの作戦が秘密裏におこなわれるという条件は続いていました。ロシア側はバルト海において強力な監視体制を取っているからです。」

 CIAの対策部隊の部員たちにはホワイトハウスとの直接接触することがなかったため、大統領の発言が本心である、つまりこの作戦にゴーサインが出されたのかどうかを確かめようと躍起になっていた。この情報源はこう回顧していた。「ビル・バーンが戻ってきて、こう言ったのです。”さあ、やるぞ”、と。」


ノルウェー海軍は早急に適切な場所を見つけ出した。それは、デンマークのボーンホルム島から数マイル離れた浅瀬に位置していた。


実行段階

 ノルウェーは、この作戦の基地として完璧な場所だった。

 ここ数年間の東西危機の間に、米軍はノルウェー国内で基地を広げていた。ノルウェーは北太平洋沿いにロシアの西側と1400マイル国境を接しており、さらにロシアと北極圏を分け合っている。米国防総省は、地域との軋轢もある中で、高給の仕事や契約をノルウェー国内で作り出し、数億ドルを投資して、ノルウェー国内の米海軍と米陸軍の施設の改良と拡大に取り組んできた。最も重要なことは、その新しい仕事に遙か北の情報を入手する最新式の合成開口レーダーが含まれていた点だ。このレーダーは、ロシア国内の奥深いところまで侵入できるものだ。このレーダーの設置は、米国諜報機関が中国国内にある一連の長距離傍聴施設を喪失したのと同時期に行われた。

 何年もの間建築中であった米国の潜水艦基地があらたに改修され、より実用化されるとともに、ますます多くの米国の潜水艦がノルウェーの軍人たちとともに活動し、250マイル東にあるロシアのコラ半島にある核兵器の要塞の監視や調査ができるようになった。さらに米国は、ノルウェー北部にあるノルウェー空軍の一基地を拡大し、ノルウェー空軍にボーイング製P8ポセイドン偵察機団を提供し、ロシア側のすべての情報の長距離からの傍受行動を強化した。

 これらの米国の動きの反発として、昨年11月の議会において、ノルウェー政府はリベラル派や穏健派から怒りを買うことになった。それは政府が米国との間での補足防衛協力協定 (SDCA)を議会で通したことをうけてのことだった。新しい協定においては、特定のノルウェー北部の「合意地域」において、基地外で犯罪行為を犯した米軍兵士や、米軍基地の活動を妨害したと告発された、あるいは妨害したと見なされたノルウェー国民に対して米国の法律が適応されることが認められることになる。

 ノルウェーは、1949年のNATO発足当初からの加盟国の一つであった。当時は冷戦が始まって間もない時機だった。今NATOの事務総長はイェンス・ストルテンベルグであるが、反共産主義を自認している人物であり、ノルウェーの首相を8年間つとめたのち、2014年に米国の支援でNATOの最高職に上り詰めた。同事務総長は、プーチンやロシアに関するすべてのことに強硬姿勢をとっており、ベトナム戦争時は、米国の諜報機関と協力したこともある。それ以来米国から厚い信頼を得ているのだ。「米国の手にすっぽり合う手袋のような人物だ」とこの情報源は語っている。

 いっぽうワシントンでは、計画立案者たちは、自分たちがノルウェーに行く必要があることを認識していた。「連中はロシアを毛嫌いしていましたし、ノルウェー海軍には優秀な船乗りや潜水士がごろごろいました。彼らは何十年間もの経験があり、深海での石油や天然ガスの爆破を行うにはぴったりの適性を持っていました」とこの情報源は語っている。さらにこのノルウェー海軍の猛者たちは秘密を守るという点においても信頼できる人々だった。 (ノルウェー側にも別の関心があった。それは米国の手引きにより、ノルド・ストリームが破壊されれば、ノルウェーの天然ガスを欧州諸国に売れるという魂胆だった。)

 3月のある時点で、この対策委員会の数名の委員が空路ノルウェー入りし、ノルウェーの秘密情報機関や海軍の人々と面会した。最重要課題の一つは、バルト海のどの箇所が、爆弾を埋め込むのに最適な場所であるかという物であった。ノルド・ストリーム1と2は、それぞれ二つのパイプラインで構成されていて、その二つのパイプラインは、ほとんどの部分において1マイル以上離れていない。そして最終的には、ドイツの北西部にあるグライフスヴァルト港まで流れ込んでいる。

 ノルウェー海軍はすぐに適切な場所を見つけ出した。それは、デンマークのボーンホルム島から数マイル離れた沖の浅瀬だった。これらのパイプラインは、1マイル以上離れた状態で、たった260フィートの深さしかない海床沿いに伸びている。それならば潜水士たちが十分潜れる範囲内だ。これらの潜水士たちはノルウェーのアルタ級掃海艇出身で、酸素と窒素とヘリウムが排出される空気ボンベを着けて潜水し、加工されたC4爆弾を4本のパイプラインに付着させ、コンクリートの保護膜をかぶせる作業をやってのけるくらいのことはできる潜水士たちだった。この作業は、冗長で消耗性の高い危険な作業になるであろうが、ボーンホルム島にはもうひとつの利点があった。それは大きな海流が流れていないことだ。それがあると、潜水作業はより困難な作業になっただろう。




 少しの調査活動を行っただけで、米国側はクタクタになった。

 この時、パナマ市内にあるあまり有名ではない、米海軍の深水潜水団が再び脚光を浴びることになったのだ。パナマ市内にある潜水士学校の訓練士たちは先述のアイビー・ベル作戦に関わっていたのだ。しかしこの事実は、アナポリスの海軍兵学校の優秀な卒業生達には、消したい過去であると映っていた。というのも通常これらの卒業生たちが望んでいるのは、海軍特殊部隊(SEAL)や戦闘機の操縦士や潜水艦乗組員の任をえることだからだ。「地味な任務(black shoe)」、例えば水上艦の司令部員の一員というあまりみなが望まない任以外にも、少なくとも駆逐艦や巡洋艦や水陸両用艦での任務も常にあるのだから。そんな任務の中で一番格好よくないのが、潜水して爆弾を仕掛けるという任務なのだ。この任務についた潜水士たちがハリウッド映画の主題になることも、人気雑誌の表紙を飾ることもないだろうからだ。

 「深海を潜水する能力を有した潜水士たちの間の結束は固く、その潜水士たちの中で最も優秀な潜水士たちだけがこの工作に採用され、ワシントンにあるCIAからの召喚に応じるよう伝えられたのです」とこの情報源は語っていた。

 実行箇所と実行方法を確定したノルウェー側と米国側にはもう一つの懸念事項があった。それは、ボーンホルム島沖の海中下で尋常ではない行動が行われれば、スウェーデンやデンマークの海軍がそのことに気づき、各政権に報告する可能性があることだった。

 デンマークも、NATO発足当初からの加盟国であり、英国と特別なつながりがある諜報機関を有する国のひとつとして知られている。またスウェーデンは、NATO加盟に向けて手を挙げており、 水中下での音波センサーや磁気センサー体系において重要な技術を有しており、その技術を使ってロシアの潜水艦の追跡に成功したこともある。ロシアの潜水艦はスウェーデン領内にある離島諸島に出没することがあったが、スウェーデンのこの技術のために、水面に姿を現さざるを得なくなることもあった。

 ノルウェー側は米国側と歩調を合わせ、デンマークやスウェーデンの高官と接触し、 この地域で行われる可能性のあるこの潜水計画についてのあらましを伝えておくべきだと主張した。そうすれば、高い地位にある当局者が介入することで、海中で異常があった報告を指揮系統網から除外することが予想された。そんな報告が通ってしまえば、このパイプライ破壊計画が水の泡になってしまうからだ。「デンマークやスウェーデンの関係者たちに伝えられたことと、実際にこれらの関係者が把握していたことの間には、わざと食い違いがあるようにされていました」とこの情報源は私に語っている。(この件についてノルウェー大使館に問い合わせたが、反応はない。)

 ノルウェー側は、ほかの障害を解決する重要な役目を果たしていた。ロシア海軍は、海中の爆弾を検出し、爆発を起こさせることができる高い監視技術を有しているとして知られていた。そのため、ロシアの監視体制が、米国の爆破装置を自然現象と捉えられるような欺瞞を講じる必要があった。そのためには、海中の特定の塩分濃度に対応する必要があった。その細工はノルウェー側が行った。

 さらにノルウェー側は、この工作の実行時期はいつかという最重要課題の解決の鍵も握っていた。実は、この21年間、毎年6月に米国の第6艦隊が主催するNATOの大規模な演習がバルト海で行われていた。この第6艦隊の旗艦は、イタリアのローマの南にあるガエータに駐留しているのだが、この演習にはバルト海沿岸の多くの同盟諸国の戦艦も参加している。6月に行われた今回の演習は、バルト海作戦22(Baltic Operations 22)や、BALTOPS22という名称で知られている。ノルウェー側の提案は、爆弾を仕掛けるこの工作の理想的な隠れ蓑としてこの演習が使えるのでは、というものだった。

 いっぽう米国側は或る一つの重要なことを提供した。それは、第6艦隊の計画立案者たちを説得して、この演習に、パイプライン爆破工作に関わる調査と演習を加えることだった。 海軍が明らかにしている演習内容には、第6艦隊が海軍の「研究および戦争センター」と共同して行う演習が含まれていた。この海中での演習は、ボーンホルム島の海岸沖で行われるものとされていて、この演習には爆弾を埋め込むためのNATOの潜水士たちも関わっており、最新の水中技術を駆使して、パイプライを検出し破壊する一団と協働することになっていた。

 この演習は、効果的な演習になるとともに、巧妙な隠れ蓑にも使えるものだった。 そして、パナマ市で訓練していた潜水士たちがその任務を果たし、BALTOP22演習の最後に、48時間後に爆発する時限爆弾のついたC4爆弾が取り付けられることになっていた。つまり、米国側もノルウェー側のすべての関係者は、その最初の爆発が起こる前に既に現地から姿を消している状態になっていたのだ。

 実行日のカウントダウンが始まっていた。「時計がカチカチとなっていて、私たちはこの使命の完遂が近づいていることを実感していました」と同情報源は語っていた。

 そんな時、ワシントンが考え直したのだ。爆弾がBALTOP演習中に取り付けられる決定は変わっていなかったが、 ホワイトハウスが懸念したのは、爆発の二日前に演習が終わるという日程では、米国がこの工作に関わったことが明白な事実になってしまうことだった。

 代案として、ホワイトハウスは新しい要求を出した。それは、「現地の実行者たちが、命令が出された後でパイプラインを爆破する方法をおもいつくこと」だった。

 計画立案団の団員の中には、大統領のこの優柔不断な態度に憤慨し、立腹しているものもいた。パナマ市からきた潜水士たちは、既に何度も パイプラインにC4爆弾を仕掛ける演習を済ませていた。そしてその実行はBALTOP演習中に行う予定だった。そんな中で、ノルウェー側はバイデンの要求を満たすような方法を思いつくよう求められたのだ。つまり、バイデンが指定した時間にうまく爆破を実行できるような方法のことだ。

 使命を果たす際に、思いつきの、実行直前での変更が命じられる状況への対応にはCIAは慣れていた。しかし今回の場合、新たな懸念が生じ、この工作自体の必要性と正当性に対して疑念を呈する関係者もいた。

 大統領からのこの秘密の命令により、CIAはベトナム戦争時に追い込まれた窮地の記憶がよみがえった。当時のジョンソン大統領は、反ベトナム戦争の風潮が高まる 中で、CIAに規定違反の行為を行うような命令を下したのだ。その規定とは、米国内部でCIAが工作を行うことに関する規定だった。ジョンソン大統領が出した指令は、春までに反戦活動指導者たちが、ロシアの共産主義勢力の影響を受けていないかを探るというものだった。

 最終的にCIAはこの指令に従い、1970年代じゅうずっとCIAがこの指令の遂行に嬉々として取り組んでいたことが明らかになった。その後、ウォーターゲート事件を受けた新聞報道により、CIAが米国市民の身辺調査活動を行っていたこと、外国の指導者たちの暗殺に関わっていたこと、チリのサルバドール・アジェンデ下の社会主義政権の弱体化を密かに工作していたことが明らかにされた。

 これらの暴露により、1970年代中旬、アイダホ州選出のフランク・チャーチが議長であった上院の一連の公聴会にCIAが呼び出されるという劇的な状況が展開され、その場で当時CIAの長官であったリチャード・ヘルムズが明らかにした事実は、その行為が法律違反であったとしても、CIAは大統領が求めていることを実行する義務があるということだった。

 公にされていない非公開の証言において、ヘルムズは後悔の色を見せながら、こう語っていた。大統領から秘密の指令を受けた場合は、「 ほとんど無原罪懐胎*(Immaculate Conception)を受けたかのように、使命をはたすことができるのだ」と。さらに、「そのような無原罪懐胎を与えられることが正しいのか、間違っているのかは別にして、 (CIAは)政府の他のどの組織とも違う規則や勤務規則のもとで動いている」とも語っていた。実際上院での公聴会において、ヘルムズはCIAの長官として働いてきたのは、憲法のためではなく、大統領(Crown)のためだったと証言している。
* 聖母マリアが神からの保護により何の汚れも受けないままでイエスを懐胎したことを指す。

 ノルウェーで仕事をしていた米国の関係者たちは、同様の状況下で工作に取り組んでいて、責任感を持ってこの新たな問題の対応に当たり始めていた。つまり、どうやってバイデンの指令を受けて、遠隔操作によるC4爆弾を爆発させるかという問題についてだ。この工作は、ワシントンが考えているよりもずっと難しい仕事だった。ノルウェーの工作団には、大統領がいつ実行ボタンを押すのかを知る由などなかった。数週間後のことなのか? それとも半年以上、いや、もっと後になるのか?

 パイプラインに仕掛けられたC4爆弾の爆発は、航空機からソノブイ*が投下された直後に引き起こされることになっていた。しかしその工作の実行過程には、最新の信号加工技術が必要とされた。いつかどこかで、実行時間を遅延させる装置が、4本のパイプラインのどれかに据え付けられれば、事故的に爆発が引き起こされる可能性があった。その原因は、交通量の多いバルト海内では、複雑に絡み合う雑音が生じているからだ。例えば、付近や遠くを航海する船舶、水中下の採掘、地震の発生、波、あるいは海中生物などが発する雑音だ。このような雑音が爆発を誘発しないように、ソノブイがひとたび投下された際に、独特な低さを持つ周波数を持つ音波が、そのソノブイから発せられるようにしなければならない。そう、フルートやピアノが奏でるような周波数の音波だ。爆発を遅延させる装置がそのような音波を認識できるようにし、事前に決められていた実行時間を遅らせることで、爆発の誘発を遅らせようという作戦だ。 (バイデンが出した遅延命令のせいで起こったノルウェーの工作団が直面していた問題について、「ほかの信号では爆発を誘発しないくらいの強い信号が必要だ」と、MIT(マサチューセッツ工科大学)の科学・技術・国家安全保障政策の名誉博士であるセオドル・ポストル氏が私に教えてくれた。同氏は、米国防総省海上作戦部長の科学顧問もつとめている。さらに、「海中の爆発が起こるまでの時間が長くなればなるほど、危険度は高くなるだろう。というのも、海中には爆発を誘発するような信号が無作為に存在しているからだ」とも。)
* 水中聴音または反響定位のため、航空機から水中に投下して使用する小型のソナー(水中を伝播する音波を用いて、水中・水底の物体に関する情報を得るための装置

 2022年9月26日、ノルウェー海軍のP8偵察機が通常の運航であると装って、ソノブイを投下した。その信号が海中に広がり、まずノルド・ストリーム2、その後ノルド・ストリーム1に伝わった。その数時間後、高い爆破力を持つC4爆弾の爆発が誘発され、4本のパイプラインのうち3本が稼働できなくなった。数分後、閉ざされたパイプラインに残っていたメタンガスが海面上で広がっている様子が目撃され、なにか取り返しのつかないことが起こっていることが世界中に知れ渡ることになった。


結末

 パイプラインの爆破直後は、米国の報道機関はこの事件を未解決の謎であるという報じ方をしていた。考えられる犯人として、ロシアが何度も言及されていたが、それはホワイトハウスから意図的に漏洩された情報によるところが大きかった。しかし、ロシアがなんの得にもならないこんな自傷行為を行ったかの動機については、はっきりとされないままだった。数ヶ月後、ロシア当局がこのパイプラインの補修費用の見積もりを静かに公表した際、ニューヨーク・タイムズ紙はこのニュースを、この事件の「裏に誰がいるかについては様々な仮説が出されている」と報じていた。米国のどの主要新聞もバイデンやヌーランド国務次官が発していた警告について深く取材しようとはしなかった。

 自国にとって大きな儲け口となるこのパイプラインをロシアが自ら破壊した理由が明らかにされることは決してない中、大統領が行った行為であると考える方が合理的であると考えさせるような発言が、ブリンケン国務長官の口から発せられた。

 昨年9月の記者会見で、西欧諸国のエネルギー危機が悪化することについて問われたブリンケン国務長官は、今は良い状況にあると述べていた。

 「今は、ロシアへのエネルギー依存から脱せられる千載一遇の好機を迎えています。そうなれば、ウラジミール・プーチンが、エネルギーを武器として利用し、野望を前進させる手段を失わせることになるのです。今回の事件は非常に重要であり、この先何年も有効となる戦略を持ち出せる好機なのです。ただ現在、我が国がどんな手段を使っても取り組もうとしている課題は、今回の事件の発生に我が国の国民が誰一人関わっていなかった、さらには、世界の誰も関わっていなかったという事実を明らかにすることなのです。」

 もっと最近のことになるが、ビクトリア・ヌーランドは最新のパイプラインの活動が止められたこと満足感を示していた。上院外交委員会での公聴会での発言において、ヌーランドはテッド・クルーズ上院議員にこう語っていた。「貴殿と同じように、私も、行政府もそうだと思いますが、ノルド・ストリーム2の現状に満足しています。こういう言い方がお気に召すかと思いますが、いまノルド・ストリーム2は、海底に沈むただの鉄の塊になっているのです。」

 この情報源は、冬が近づく中で行われた、ガスプロム社所有の1500マイルの長さを持つパイプライン破壊工作の決定について、ブリンケンやヌーランドよりもずっと洗練された見方を示していた。彼は大統領について、こう語っていた。「そうですね・・・。あの人が2つのボールを持っていたことは認めないといけないですね。最終的に大統領は実行する方のボールを投げることを決めて、実行したんです。」

 ロシア側がこの工作に対応できなかった理由を聞かれたこの情報源は、冷たくこう言い放った。「多分ロシア側は、米国がしたのと同じことができる能力を欲していたのではないでしょうか」と。

 さらにこの情報源は言葉を続け、「よくできた巧妙な隠蔽作戦でした。この機密作戦の裏には、この分野の専門家たちが配置され、秘密の信号を使った工作に必要な装置が準備されていました」と述べた。

 「実行の決定に至るまでの過程が唯一の落ち度でした。」

ノルドストーム破壊は米国が究極の戦争犯罪国家であることを示した。

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Nord Stream Sabotage Backfires With Historic Demolition of U.S. Image and Lies Over Ukraine War

ノルドストームの破壊工作は、米国のイメージの歴史的崩壊とウクライナ戦争をめぐる数々の嘘によって、思わぬ面倒を招いている。

出典:Strategic Culture Foundation  

2023年2月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月22日

ノルドストームの破壊工作


米国は究極の戦争犯罪国家であり、ヨーロッパの売国奴と共謀している

 ハーシュの報道は、米国とNATOの国際テロリズムと西側メディアの共謀を暴露するすばらしい記事だ。その報道が暴露しているのは、米国政府の無法ぶり、いわゆるヨーロッパの同盟国に対するワシントンの完全な無視、ヨーロッパ政府、特にドイツの腰抜けぶり、ウクライナ戦争の背後にある本当の地政学的理由、そしてそれに続いて、驚くべき犯罪行為を取り上げようとしない西側メディアの衝撃的な奴隷根性である。

 これは、いろいろな意味で、また、現段階ではおそらく計算できないほど多くの意味で、議論を紛糾させる記事である。発表からわずか1週間で、その反響はさらに大きくなり続けている。欧米のジャーナリズムは危うく情けないものなので、ハーシュは、主要メディアが触れないことを承知の上で、自分の情報発信源でこの記事を発表せざるを得なかった。組織的にメディアが検閲されていること、メディアがプロパガンダの機能を果たしていることが暴露されたことそのものが、巨大なスキャンダルであり、それはさらに拡大するだろう。ロシアのメディアはハーシュの暴露によって正当性を証明された一方で、西側メディアが面目を失った。それにもかかわらず、この間、欧州連合はロシアのメディアを制裁しアクセスを禁止していた。     

 2022年9月26日、ノルドストリーム・パイプラインが爆破された。その後、欧州各国は、控えめな報道ではあるが、そのことを認めている。ロシア側としては、当初から西側諸国をテロ行為で非難してきた。米国は当初、ロシアがヨーロッパへの復讐のためにテロを行ったという、とんでもない主張を展開した。そして、西側メディアはその馬鹿げた言い分に同調した。

 被害が意図的な破壊工作であることに異論はない。全長1,222キロの海底民間インフラは、ロシア、ドイツ、フランス、オランダの企業連合が参加した世界最大のものであった。建設には10年以上を要し、その費用は120億ユーロ以上と推定されている。この爆発による天然ガス量の膨大な損失も、数十億ユーロという単位で貨幣化することができる。


国家が仕組んだテロ

 つまり、この破壊工作は、具体的な責任を問うまでもなく、国際法に違反する言語道断の国家的なテロ行為である。しかし、欧米のメディアは、「見ざる、聞かざる、言わざる」の猿のように行動してきた。

 この壮大な事件が起こったとき、多くの批判的な観察者たちは直ちに不正行為を疑った。9月30日付の我々の「戦略文化財団(Strategic Culture Foundation)」の週一度の社説では、見出しにこうある。「ノルドストリームの破壊行為で誰が得をするかは明白である」と。

 我々は事件発生からわずか数日後に、その原因として米国とNATOの同盟国による「意図的な破壊工作」がもっともらしいと推測していた。

 「もしそうであれば、民間のインフラに対するテロ行為であり、ロシアの国益に対する痛烈な打撃となる。戦争犯罪行為と解釈される可能性もある」と書いた。

 この社説では、バイデン米大統領が2022年2月7日にホワイトハウスで行った記者会見で発した警告の言葉を引用している。バイデン氏は記者団に対して、ロシアがウクライナに軍事介入した場合、ノルドストリームは「終焉を迎えるだろう」と、用意された台本を逸脱して謎めかして主張したようだ。その2週間後の2月24日にロシアは軍事介入している(NATOの致命的な挑発の結果として、ということは付け加えるべきだが)。

 「彼(バイデン氏)の謎めいた主張は、欧州各国政府を差し置いて、ノルドストリームを破壊するための緊急時対策がすでに認可されていたことを示唆している。そして、どうやら今週、その極悪非道な行動が正式に実行されたようだ」と書いた。

 (私たちは、この客観的な見識の高さを誇りに思っている。それなのに、この我々のオンライン・ジャーナルは、ロシアのプロパガンダの道具として、米国やヨーロッパ政府から中傷され、アクセスを禁止されている。)

 先週発表されたシーモア・ハーシュの調査報道は、多くの観察者が早い段階で疑っていたことを裏付けている。反論の余地のない事実として、ノルドストリームのガスパイプラインは米軍によって爆破された。それだけでなく、米軍はNATO加盟国のノルウェー、そしておそらくポーランド、デンマーク、イギリスを含む他のNATO加盟国によって援助され、けしかけられたのである。

 これは世界を揺るがすスキャンダルである。波紋はどんどん広がっていくだろう。ハーシュは、次の記事でさらに詳細な情報を提供することを約束している。他のジャーナリストは、昨年6月にバルト海で行われたNATOの軍事訓練を隠れ蓑にして、米海軍のダイバーが爆発物を仕掛けたという彼の詳細な報道について、現在裏付けをとっている。ハーシュは、C4爆弾のいくつかは計画通りには爆発しなかったと主張している。つまり、海底にはまだ米国が関与した決定的な証拠が残っている可能性があるということである。

 そして、爆発直後の現場を視察したスウェーデン人ダイバーによる先行報告もあった。彼らは現場をきれいにしようとしたのだろうか? スウェーデン当局は、その報告書の内容を明らかにすることを拒んでいる。デンマーク、ノルウェー、英国、そして何より米国は、この問題に答えなければならない。

 ロシアは、シーモア・ハーシュの最新の調査報道に基づいて、この問題に関して国連安全保障理事会を来週招集するよう要求した。中国もまた、この問題を調査するための独立した国際委員会の設置を要求している。

 また、ドイツ政府がこの破壊工作について何を知っていたのか、早急に質疑が行われる必要がある。本誌コラムニストのマーティン・ジェイが今週指摘したように、バイデンがノルドストリームを破壊するという不器用な脅しをかけた昨年2月7日には、オラフ・ショルツ首相がホワイトハウスにいた。つまり、ショルツ首相は爆破計画を事前に知っていたということになる。


欧米のメディアは沈黙している

 私たちはここで、複数の不正行為と重大な犯罪について話している。テロリズム、国家財産の破壊、侵略と戦争の扇動、反逆罪、そして欧米のジャーナリズムの砦とされるメディアによる組織的な隠蔽工作である。ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは、今のところハーシュの報告書を無視している。欧米のメディアは、この緊急のニュースを調査することをかたくなに拒んでいるのだ。なんという邪なことだ。

 国際的に有名な法律専門家であるフランシス・ボイル教授は、国際刑事裁判所の支援のもとで、ノルドストリーム事件に関して米国を起訴することが可能だと評価している(我々「戦略文化財団(SCF)」との電子メールのやり取りで)。米国は必須のローマ規程*の締約国ではないが、事件は締約国である欧州諸国の領土で発生した。このような訴追が進められるかどうか、そして今週末に国連安全保障理事会が行動を起こすかどうかは、現実的には意味のないことであるが、少なくともこのスキャンダルは国際世論の審判に大きな衝撃を与えている。

* 国際刑事裁判所(International Criminal Court: ICC)(www.icc-cpi.int)は独立した、常設の裁判所で、国際社会全体の関心事であるもっとも重大な犯罪、すなわち集団殺害犯罪、人道に対する罪、戦争犯罪に問われる個人を訴追する。また、2017年に締約国が行う決定によっては、侵略犯罪に対しても管轄権を持つことになる。刑事裁判所は、1998年7月17日、ローマで開かれた全権大使会議で採択された「国際刑事裁判所ローマ規程」(https://www.icc-cpi.int/)によって設立された。ローマ規程は2002年7月1日に発効した。2016年11月現在、締約国は124カ国である。
(出典:国際刑事裁判所 | 国連広報センター)


 シーモア・ハーシュ氏(現在85歳)のジャーナリストとしての功績は称えられるべきだろう。彼のレポートの細部については、いささか異論があるかもしれない。彼は関係者全員の全容を把握したのだろうか? そうではないかもしれない。彼のレポートは地政学的な分析ではないし、彼の前提のいくつかは、ウクライナ戦争への米国やNATOの関与に批判的でないことを示唆している。このような留保は、実際に何が起こったのかを理解するという彼の主旨からすれば、比較的些細なことである。

  しかし、これらの注意点はさておき、ハーシュの報道は超大型爆弾であると言える。彼のライフワークは非の打ちどころがない。1968年にベトナムで起きたミライ虐殺事件では、米軍によって数百人の男女や子供が無差別に殺害されたことを明らかにした。また、2004年にはイラクの悪名高いアブグレイブ刑務所での米軍による拷問を暴露している。


歴史的な影響

 ハーシュの過去の報道は、歴史的な影響を与えた。東南アジアや中東での米国の戦争の悪質な本質について、人々の理解と世論を結集した。

 多くの分析家や我々の「戦略文化財団(SCF)」の週間社説が繰り返し指摘してきたように、ウクライナ戦争は、「ロシアの侵略からウクライナと西側の自由を守る」という西側政府やニュースメディアが出す不条理なストーリーよりも、大きな地政学的原因がある。私たちは一貫して、NATOの拡大、ウクライナを潜在的な武器にすること、そして現在の紛争は、すべてアメリカ帝国主義の覇権支配の野望であると分析してきた。ヨーロッパとロシアの正常な関係を破壊すること、とりわけ戦略的に重要なエネルギー貿易を破壊することは、すべてその目的の一部である。この目的を追求することによって、核爆発にエスカレートしかねない最も危険な戦争を引き起こすことになった。

 米国の著名な評論家、ジェフリー・サックスが指摘するように、ノルドストリームの爆破に関する米国の犯罪行為は、第二次世界大戦以来何十年にもわたって行われてきた米国の犯罪行為のまさに特徴である。今と違うことは、この犯罪行為がより多くの人々の生活に直接影響を及ぼしていることだ。それは、破滅的な戦争の危険性から、米国の無謀な侵略によって引き起こされる経済的な惨状にまで及ぶ。

 ハーシュの記事は、西側メディアが恥ずかしいほどそれを無視し、それによって米国のテロリズムに自分たちが犯罪的に加担していることを暴露したかどうかにかかわらず、米国というならず者国家とその資本主義、帝国主義の力学について、世界にこれまで以上に認識させることになった。

 米国は、ヨーロッパで戦争を引き起こし、前例のない攻撃で核保有国のロシアと敵対し、ヨーロッパの市民に大量の貧困と苦難を与え、プロパガンダ・メディアを通じて常に嘘をついている。米国は究極の戦争犯罪国家であり、ヨーロッパの売国奴と共謀している。

 ロシアのプーチン大統領が数週間前に発言したように、歴史的状況は革命的である。

ペトロダラーに発せられた警告

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Warning issued for petrodollar

世界中の石油の支払いに米ドルを使用しないことは、米国経済を弱体化させる可能性があると、ホワイトハウスの元高官が指摘した。

出典:RT

2023年1月31日

<翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2023年2月18日

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© Getty Images/Comstock

 元ホワイトハウス高官ポール・クレイグ・ロバーツ氏によると、エネルギー取引において世界各国がドル離れを起こしているため、米国は深刻な経済リスクに直面しているという。

 レーガン政権下で経済政策担当の財務次官補を務めたロバーツ氏は、月曜日(1月30日 )に発表した論文で、ペトロダラーの終焉は、ドルの価値、そして米国のインフレと金利に深刻な悪影響を及ぼすと警告している。

 ロバーツ氏は、サウジアラビアが最近、石油の代金をドル以外の通貨で受け取ることに前向きであると発表したことを指摘した。ロバーツ氏によれば、そうなれば、ドルの需要も通貨価値も低下する。サウジは石油の代金をドルで請求することで、世界中の米ドルの需要を保証しているのだ、とロバーツ氏は説明する。「これはワシントン権力にとっても、米銀行の財政権力にとっても大きな脅威である」、と経済学者であるロバーツ氏は付け加えた。

 ロバーツ氏は、半世紀にわたってペトロダラーがドルの価値を支え、アメリカの大幅な財政赤字と貿易赤字の資金を確保してきたと指摘する。「1971年にニクソン大統領が金への兌換(だかん)を停止し、第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制を事実上終了させた後も、米ドルが基軸通貨としての役割を果たし、ペトロダラーが世界通貨としてのドルの役割を支え続けてきたのだ」。

 しかし、ロバーツ氏によると、近年、米国は制裁や資産差し押さえによってドルの基軸通貨としての役割を乱用しているので、多くの国が貿易不均衡を自国通貨で解決したいと望んでいるという。「自国の利益になるように、彼らを脅し、罰することができる米国から逃れるため」 である。

関連記事: サウジアラビア、貿易でドル離れの用意(サウジ財務相)

 この記事では、もしサウジアラビアがペトロダラーを捨てれば、アメリカ人は厳しいインフレとアメリカの財政赤字を埋め合わせるために高金利に直面することになると述べている。その場合、通貨インフレに加え、外国からのドル需要の減少によるドルの為替価値の下落によるインフレが発生する。「このような事態になれば、米国は大幅な緊縮財政に陥ることになる」とロバーツ氏は警告した。

ケネディ・ニクソン・トランプ。厄介な大統領たちは排除されてきた。

<記事原文 寺島先生推薦>

How Troublesome Presidents Are Disposed of

出典:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)のブログ

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2023年1月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月31日

 タッカー・カールソンは、優れた12分間のニュース記事を出してくれた。内容は、CIAがケネディ大統領とニクソン大統領を排除した手口についてだった。読者の皆さんには、この動画を、2~3度見ることをお勧めする。そうすれば、中身がぐっとよくわかり、すべての友人や親戚に伝えられるようになると思うからだ。この12分の動画ほど、しっかりとしていて、重要な情報を教えてくれるものはどこにも存在しないだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=MgXq8S02NJc

 カールソンは、バイデンはもはや支配者層からは役立たずだと思われていて、現在排除される方向にあると考えているようだ。

 私はもう何十年も前から、ケネディとニクソンという両大統領の大統領職からの追放劇について書いてきた。だからこそ、私はわくわくした気持ちになったのだ。というのも、これらの事件から半世紀も経ったいま、タッカー・カールソンが、私が説明してきたことと同じ内容をこんな多数の視聴者に向かって説明してくれたのだから。米国民が目を覚まし、深くこの事件について目を向けるのであれば、我が国と米国民の自由を救うことはまだ不可能ではないだろう。

 ジョン・F.ケネディ大統領は米国統合参謀本部により殺害されたのだが、それはケネディが、自分が長をつとめている政府は真の政府ではないことに気づいてしまったからだった。ケネディの前職のアイゼンハワー大統領は、軍の元帥をつとめていたのだが、そのアイゼンハワーはこんな警告をしていた。それは民主主義のもとでの政府という存在が、軍産複合体により脅(おびやか)されているというものだった。ケネディ大統領はその状況に関して何らかの手を打つ意図を持っていた。当時は、大統領にはまだ権力があったからだ。しかしケネディは、様々なことを起こす前に倒されてしまい、CIAのアレン・ダレス長官と米国統合参謀本部議長のライマン・レムニッツアー大将を更迭することしかできなかった。しかもケネディ大統領は、レムニッツァー大将を排除しきることはできず、同大将はNATOの連合軍最高司令官に転任した。このダレスとレムニッツァーは両者とも、ケネディ殺害工作を指揮したと考えられている。

 米国史上において、ニクソン大統領ほど博識で、また他の国々から尊敬された大統領はいないだろう。同大統領は、他国の指導者たちとよく連絡を取り、歴史上の事実や現在起こっていることについての見識が深かった。しかしニクソン大統領も、ケネディやトランプ同様、大統領が持つ権力を高く見積もりすぎていた。ニクソンも軍産複合体から怒りを買ってしまったのだ。それはニクソンがソ連と軍縮で同意し、中国との国交を開いたからだ。私が1月19日の以下の拙論で再度触れた通りだ。https://www.paulcraigroberts.org/2023/01/19/washington-has-resurrected-the-threat-of-nuclear-armageddon/

 ケネディ大統領の暗殺は内部犯行であったのに、CIAの手先である各報道機関やウォーレン委員会が隠蔽したことがあまりに明白であったので、CIAはニクソンの際は、大統領を殺害するという手段には出られなかった。そのかわりに使った手口は、ワシントンポスト紙の記者に大統領抹殺工作の一翼を担わせるというものだった。ワシントンポストといえば、長年CIAの手先をしてきた新聞社だ。この記者が「ウォーターゲート」事件に関してニクソン大統領が捜査を受けたことを初めて報じ、この事件は、ニクソンを大統領府から追い出す口実に使われた。ニクソン大統領は、その前の大統領選挙において、米国史上最大の得票率をとっていたのにも関わらず。

 不動産業界の大物であるドナルド・トランプは、ワシントン当局のことや、当局の真の支配者について何も知らなかった。トランプは、ロシアとの関係の正常化を主張していたのだが、その主張がCIAと米国の影の支配層を敵に回すことになるとは思っていなかったようだ。そうして再び、報道機関が、トランプ追放の手先に利用されたのだ。それが、「ロシアゲート」であり、トランプに対する二度の弾劾訴追であり、「1月6日の議会議事堂襲撃事件」であり、現在渦中にある「ドキュメント・ゲート(機密文書持ち出し疑惑)」だ。

 大統領は、大統領警護部隊からも守られてはいない。観光客が撮影した動画にはっきりと映っているとおり、ダラスでケネディ大統領が乗っていた屋根のないリムジンの脇にいた大統領警護部隊は、上司から呼び出され、その場から離れた。この動画に、一人の警護人がその命令に抵抗していた様子が映っていた。そして、この動画を見れば、警護部隊が排除されたすぐ後に、ケネディが前方からの狙撃により、その銃弾が頭を通過し、殺害されたことがわかる。さらにこの動画によると、ケネディ婦人がリムジンの後ろから手を伸ばし、ケネディが撃たれた頭の後ろをつかもうとしていた。

 こんな否定できないはっきりとした証拠があるのにもかかわらず、ウォーレン委員会は、ケネディはオスワルドにより後方から撃たれたという判断を出した。そしてこのオスワルドとは、CIAが大統領殺害の責任を一身に背負わせるべく用意した偽の下手人だった。そしてそのオスワルドは、証言を行い、尋問を受ける前に、オスワルドは警察により収監中に、ジャック・ルビィ(ジャコブ・レオン・ルーベンザイン)により殺害された。このルビィは現在所在不明であり、彼は、警察により銃を所持した上でオスワルドの隣にいることを許されていた。

 お人好しな米国民のほとんどは、こんなありえない説明にまんまとひっかかってしまったのだが、知識階級の人々にはそうはいかなかった。だからこそCIAは、ニクソンに対してはケネディに行ったような物理的な殺人は犯さなかったのだ。CIAの手口は、配下のワシントン・ポスト紙を使って、ニクソンを政治的に抹殺することだった。それと同じやり方を、連中はドナルド・トランプを排除するときにも使っていた。

 米国民が、「自分は民主主義国家で生活している」と考えるのであれば、それはどうかしている。米国民はこれまで何度も簡単に騙され続けてきた。そんな国民だからこそ、自国と自由と希望を失ってしまったのだ。米国において、この3つは世界に誇れるものだったのに。

 いったいどれだけの米国民が、もはや自分たちが自由な国に住んでおらず、正体さえわからない人々に支配された下僕に成り下がっていることを理解できているのだろうか? 選挙など、見せかけの欺瞞に過ぎない。国民が選びたいと思っている人は決して大統領府には入れない。そして、大方の予想にたがえて大統領府に入った者(例えばトランプ)がいたとしても、排除されてしまう。

 米国市民の自由を創設してくれたトーマス・ジェファーソンは、自由は200年以上生きながらえることはできず、永続させるためには、流血の革命による再生が必要だと私たちに警告していた。

 私がこれまで生きてきた人生の中で、「自由」の意味はすっかり変わってしまった。米国創設の父たちが言っていた自由はもはや存在しない。これらの創設の父たちは、いまや「人種差別主義者だ」と非難されているありさまだ。彼らが言っていた自由とは、抑圧的な政府に対抗できるような自制力であり自由だった。今の自由は、黒人が商店から商品を略奪しても罰せられない自由であり、政府とその手下である報道機関が、真実や表現の自由や結集の自由を検閲し抑制できる自由であり、政府が自由権を行使した市民を、「暴動者」として、逮捕し投獄できる自由であり、政府とその手下である報道機関が、真実を語るものたちは「民主主義の脅威」であり、「偽情報」を拡散したとして有罪にできる自由であり、巨大製薬会社が定めた治療手順に反する治療法を使って患者を治療しようとする医師の免許を取り消すことができる自由になってしまった。

 ここ数十年のうちに生まれた人々には、今の米国がどれだけ崖っぷちに追いやられた状況なのかはわからないだろう。しかし、まだ本当の米国が存在した時代を生きた人々にとっては、そう映っている。 そして私たちの世代が死に絶えれば、かつての米国の姿を知る生存者は誰もいなくなってしまうだろう。

ウクライナ紛争の「戦犯」バイデンを弾劾せよ(米民主党ケンタッキー州知事候補)

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Impeach ‘war criminal’ Biden over Ukraine – US Democrat
Kentucky gubernatorial candidate Geoffrey Young has accused the president of perpetuating an “illegal proxy war”

ケンタッキー州知事候補のジェフリー・ヤング氏は、大統領が「違法な代理戦争」を永続させていると非難している。

2023年1月15日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月24日

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先月、ウクライナ大統領ウラジミール・ゼレンスキー氏がワシントンを訪問した際、ホワイトハウスに迎え入れるジョー・バイデン米国大統領。© Getty Images / Drew Angerer


 米国ケンタッキー州の知事選に立候補しているジェフリー・ヤング氏(Geoffrey Young)は、ジョー・バイデン氏がウクライナや他の国々で戦争犯罪を犯していると非難し、旧ソ連共和国(=ウクライナ)でロシアに対する違法な代理戦争を行ったとして大統領を弾劾すべきであると述べた。

 ヤング氏はツイッターの投稿で「ジョー・バイデン(民主党の戦争犯罪人)はウクライナ、イエメン、シリア、イラクなどでの戦争犯罪のために直ちに弾劾されるべきだ。」 と述べた。そしてさらに「もちろん、ウクライナでロシアに対する違法な代理戦争を続けていることに対してもだ。1945年以降のすべての米大統領(トランプを含む)も全員、戦争犯罪人だ」と付け加えた。

 MIT(マサチューセッツ工科大学)で学んだ経済学者で、州政府の環境エンジニアとして働いてきたヤング氏は、昨年、ケンタッキー州議会第6区で民主党の指名を受け、波紋を広げた。彼は選挙期間中、モスクワとの「合理的な」和平案を追求することで、ロシアとの核戦争防止に貢献すると公約した。また、キエフ政権を「ナチスの傀儡政権」と呼び、CIAは排除されるべき「今日の世界で最悪のテロ組織」であると述べた。

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関連記事:米国は「最後のウクライナ人まで」ロシアと戦わせるつもりだ(モスクワ発)


 ヤング氏は5月にケンタッキー州の民主党予備選挙で勝利した後、11月の中間選挙で現職の共和党下院議員アンディ・バーに挑戦するため立候補した。しかし民主党は氏に対する支持を拒否した。氏が、バイデン大統領は無謀にも中国を挑発し、シリアとイラクに違法に軍隊を配備し、ウクライナと一緒になってロシアに対する「共同交戦国」となっていると非難したからである。このような行為はアメリカをロシアによる「攻撃対象国*」にしかねないとヤング氏が批判したので、それが民主党幹部を遠ざけたのであった。
*co-belligerent 正式の同盟条約を結んでいない共同戦争参加国

 先の2022年中間選挙から1週間も経たないうちに、66歳のヤング氏は、自らを「平和民主党」と称し、2023年のケンタッキー州知事選への出馬を表明した。現職の民主党知事であるアンディ・ベシア(Andy Beshear)を「まだ起訴されていない重罪人」だと非難し、落選させることを狙っている。

 ヤング氏はウクライナ紛争を米国とNATOの「勝つ見込みのない戦い」と呼び、2021年12月にモスクワからの和平提案を拒否したバイデン政権を非難している。「ロシアがこの戦争に負けることはありえないし、ウクライナとNATOがそれに勝つこともありえない」と彼は先週述べている。


私のまとめ:ウクライナ&NATOはまだ決定的に負けていて、ロシアはまだ決定的に勝っている。これは2022年3月の始めから今日までずっとそうである。ロシアがこの戦争に負けることはありえないし、ウクライナ&NATOが勝つこともありえない。

あの悪名高いヒラリー・クリントンがコロンビア大学教授に!!

<記事原文 寺島先生推薦>

Hillary Clinton gets new job
The former top US diplomat said she is “thrilled” to be able to influence the “next generation of policy leaders” at a prestigious university

ヒラリー・クリントンが得た新しい職業
元米国政府の首脳であった彼女は、由緒ある大学で、「政治的指導者を目指す次世代の人たち」に影響を与えられる機会を得られて、「ワクワクしている」と語っている。

出典:RT

2023年1月6日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月10日


画像:2022年11月28日、ニューヨークでの催しで発言中のヒラリー・クリントン元国務長官©  AP / Seth Wenig

 元国務長官で、落選した大統領候補だったヒラリー・クリントンが、ニューヨークのコロンビア大学の教授として採用された。そしてヒラリーは同学で、長年の実績を活かし、広報と国際政治について学生に指導するという。

 1月5日(木)、同学のリー・C.ボリンガー学長は、この決定事項を発表し、2月初めから、元政治家であるヒラリーをコロンビア大学国際公共政策大学院で「実務家教授」として採用することを内定したと述べた。

 ヒラリーが担当する予定の内容は、「様々な主要な問題についてであり、特に国際政治や政策や女性の指導者たちを支援することに焦点が置かれるでしょう」とボリンガー学長は述べ、さらに、「コロンビア大学世界計画(Columbia World Projects )」の特別代表研究員として、「新しい民主主義や女性や若者が効果的に参画できる取り組みの前進」に焦点を当てた活動に従事するとも付け加えた。

 クリントン自身はその後、ソーシャルメディア上でこの採用に関する投稿を行い、「最も緊急に取り組むべき世界的な課題に取り組む手助けをして」おり、「政策作成を行う次世代の指導者たちへの教育に携わろうとしている」と同大学を賞賛していた。

 「この大学に参画できることにワクワクしています」とヒラリーは記載していた。


 当時のバラク・オバマ大統領政権下で、2009年から2013年まで国務長官を勤めたクリントンは、かつてニューヨーク選出の上院議員であり、1990年代には、ビル・クリントン大統領の大統領婦人だった。長年の民主党員として、国務長官在任中、ヒラリーは多くの好戦的な政策をとったが、その中には2011年に、リビアの指導者であったムアンマル・ガタフィー失脚を強く主張したことも含まれる。ガダフィーは、米国が支援する反乱軍の助けにより、殺害されたが、その死のため、リビアは混乱と暴力の支配する国となり、その状態は今も続いている。

 2016年の大統領選でドナルド・トランプに敗れたのち、クリントンは、疑わしい「ロシアゲート」陰謀説の最も積極的な支持者であった。 この陰謀説によれば、ロシア政府がトランプと共謀して、「偽ニュース」やソーシャルメディアでの偽りの投稿を使って、選挙を盗んだとしていた。ヒラリーはいまだにトランプ前大統領を激しく非難しており、2016年の大統領選は、盗まれたものだと主張し続けている。

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イーロン・マスクの「ツイッター・ファイル」によって、民主党の検閲行為が明らかになる

<記事原文 寺島先生推薦>

Elon Musk’s ‘Twitter files’ make it impossible for Democrats to deny their censorship practices

ツイッターの新CEOは、情報弾圧の取り組みについて自由に議論することを可能にした。

筆者:イアン・マイルズ・チョン(Ian Miles Cheong)


@stillgray@CultureWarRoom

イアン・マイルズ・チョン(Ian Miles Cheong)は、政治・文化評論家。彼の記事は、The Rebel、Penthouse、Human Events、The Post Millennialで紹介されている。


出典:RT

2022年12月3日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年12月24日




ジョー・バイデン米大統領と息子のハンター・バイデン © Nicholas Kamm / AFP=時事

 金曜日(12月2日)の夜、イーロン・マスクが「ツイッター・ファイル」を公表したことで、ドナルト・トランプや多くの保守派がずっと疑っていたが、証明できなかったことを確認できたのだ。つまり、バイデン陣営がソーシャル・メディア企業と結託し、ハンター・バイデンのノートパソコンの中身に関する報道を、父親であるジョー・バイデン現大統領を困惑させるものとして、遮断したことである。

 ノートパソコンには、ハンター・バイデンのコカイン乱用や売春婦との逢瀬を詳述した屈辱的な写真や動画に加え、2015年に、当時副大統領だった父ジョー・バイデンが、若いバイデンをウクライナのエネルギー会社の幹部に紹介するメールが含まれていた。その1年後、ジョーはウクライナの政府高官に圧力をかけ、この会社の調査を開始した検察官を解雇させたとされるが、米上院の調査は結局、息子の事業が動機であったことを証明することができなかった。

 この話が明るみに出たのは、選挙戦終盤の2020年10月、ニューヨーク・ポスト紙がハンター・バイデンの所有するノートパソコンのことを報道したときだった。デラウェア州の修理工場の所有者が所持していたこのノートパソコンには、父親が米国副大統領だった時代に、ハンターが、地位悪用の不祥事やペイ・フォー・プレイ*のもくろみに関与していたことを示唆するメールやその他の文書が含まれていた。
[訳注]ペイフォープレイ(ペイツープレイまたはP2P)は、お金がサービスまたは特定の活動に従事する特権と交換されるさまざまな状況に使用されるフレーズ。贈収賄の違法行為を指す場合もある。

 この記事は爆発的な影響を与える可能性があったにもかかわらず、民主党系のメディアはほとんど無視することを選び、代わりにトランプ大統領の再選に損害を与える可能性のある記事に焦点を当てることを選んだ。

 このハンター・バイデンのノートパソコンに関する報道を抑圧することには、いくつかの理由で懸念されることである。1つは、メディアの偏向報道に対する疑念と、報道機関が自分たちの支持する候補者を守るためにどこまでやるのかという疑念をかき立てるからである。


<関連記事> マスク氏、ツイッターの言論の自由に対する弾圧を暴露

 この件を報道しないようとする動きがあまりに露骨だったため、ニューヨークタイムズやワシントンポストは、この暴露から2年後にようやくラップトップとその中身が本物であることを認めたが、両紙はジョー・バイデンをさらに援護するばかりであった。

 両紙はノートパソコンに関する報道を抑えようとする動きに加わっていたのだ。その防衛策の一つは、その出所を疑う元情報当局者数十人を引き合いに出して、「ロシアの偽情報」であるとごまかすことだった。

 このようなメディアの意思決定は、将来の選挙にとって危険な前例となることが懸念される。もしメディアが、意義とか重要性に関係なく、ある話を無視することを決定できるなら、他の同様の重要な話も報道されない可能性があるからだ。

 ここでイーロン・マスクの登場である。マスクは、報告書の抑圧に参加したプラットフォーム(情報網構築機関)であるツイッター社を買収し、同社の新たな所有者となった。そして彼は、ハンターのノートパソコン報告書が発見されたときに、サンフランシスコに拠点を置くこのソーシャルメディア企業の舞台裏で何が起こったかを明らかにすると公表した。

 独立系ジャーナリストのマット・タイビが、イーロン・マスクから提供された資料を用いた一連のツイートを行った。そのツイートでは、2020年の大統領選挙を控えた時期に、ニューヨーク・ポスト紙による衝撃的な報道を検閲する決定を、同紙がどのように「自主的に行った」かを詳しく述べている。

 (発見されたファイル上の)電子メールは、この報道が出た直後のツイッター社内で、どれほど混沌とした混乱が支配していたかを明らかにしている。ツイッター社の最上位の幹部が、この記事をどのように抑えるかについて議論し、最終的には2016年のドナルド・トランプ氏の大統領選勝利を受けて作成され、2018年に制定された方策を使って、記事を閉め出すことを決定した。タイビによると、この決定は当時のCEO(最高責任者)であるジャック・ドーシー(Jack Dorsey)の知らないところで行われたとのことである。

 「この記事を削除した根拠は、ハッキングされた資料をもとにした記事であったからとされていた。しかし、議論されているように、この措置は急にとられたもので、事実は不明のまめである」と、ツイッターの「信頼と安全」の元責任者ヨエル・ロス(Yoel Roth)は、ツイッターの元総括弁護士ビジャヤ・ガッデ(Vijaya Gadde)との私信で書いている。「ここでの“重大な”危険と2016年の教訓を考えて、我々は警告を出すなどして、この内容が拡散されるのを防ぐ側に回ってしまった。」


<関連記事>マスクのツイッター・ファイル。ハンター・バイデンのノートパソコンの話から何がわかったのか?

 この動きに対しては、別の幹部である元グローバル・コミュニケーション担当副社長ブランドン・ボーマンからも疑問の声があげられていたほどであった。その疑問とは、「この記事が、我社が方針として禁止している(ハッキングされた資料)の一部であると本当に主張できるのか?」 というものだった。ハンター・バイデンのノートパソコンに関するニューヨーク・ポスト紙自身の報道でもわかるように、資料がハッキングされたという証拠はない。

 また、バイデン陣営と民主党全国委員会(DNC)から、このノートパソコンの件に関してツイッターに投稿された内容を遮断する要請があったことも、同社がこの記事を遮断する決定を行ったひとつの材料となっていた。

 「もっとバイデン陣営の側に立って審査するように」と、名を明かされていないツイッター社の1人の幹部が、別の幹部に、問題になりそうないくつかのツイートのリンクを送っていた。そして、受けとったほうの幹部は「これらのリンクを削除した」と返信していた。

 保守派俳優のジェームズ・ウッズのような有名人でさえ、DNCによって審査され、ツィッター社はその要求に応じて、彼のツイートを削除していた。2020年にデイリー・ワイアー(Daily Wire)が報じたある事例では、DNCは、ウッズがDNCのことを誤って伝えているという話をツイートをしたと訴え、ツイッター社は、このツイートは「誤情報拡散作戦」のひとつであり、「ボーター・スプレッション(選挙戦において敵陣営の不利になる情報を流すことで、有権者の投票意欲を削ぐ行為)」にあたるものと判断し、このツイートを削除した。

 いっぽう、民主党の組織「メイダス・タッチ(MeidasTouch)」や反トランプ派の「リンカーン計画(Lincoln Project)」などが同じような投稿を行っていたにもかかわらず、これらのツイートは、プラットフォーム上に残ることが許されており、ツイッター社は「内容を穏当化」する際に、不公平な対応を取っていることが明らかになった。

 今のところ、巨大IT企業であるツィッター社によるニューヨーク・ポストの報道弾圧に関わったすべての関係者に対して、どのような法的措置が取れるかは不明である。しかし、マスク氏は、「ツイッター社が自発的に言論の自由を抑圧したのであれば、(表現の自由を定めた)憲法修正第1条違反にはならないが、政府からの命令で行動して、司法審査の段階も踏まずに、言論の自由を抑圧したのであれば、憲法違反に値する」 と述べている。

 マスク氏は問いかけた。「これが憲法修正第1条違反にならないなら、何が憲法違反なのか?」

 今回、この件の一部が暴露されたことは、この話をよく追っている人にとっては必ずしも目新しいニュースではなかったとしても、この電子メールの内容は、多くの人が疑っていたが、これまで証明できなかったことを証明してくれているのだ。

 極めて重要なのは、イーロン・マスクの下で打ち出されたツイッター社の新しい方向性によれば、アメリカ政府と結びついた行為者、政治団体、メディアが行っている情報弾圧や情報操作について、検閲を恐れず自由に論議できるようになったということだ。

嘘の帝国が「新世界秩序」の名付け親(II部):「アメリカは例外」が意味するのは世界支配

<記事原文 寺島先生推薦>

Empire of Lies Christens the New World Order. Part II: American Exceptionalism Means Global Domination

筆者:ロン・リデヌール(Ron Ridenour)

出典:Strategic Culture

2022年9月21日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月8日

(II部では、ロシア/ソビエト以外の民族に対する戦争を合理化するために、アメリカ・NATO・EUがつくった嘘に焦点をあてる。最後、ロシアとウクライナの衝突の最新状況の紹介)

 以下は、米国の200年にわたるジンゴイズム(好戦的愛国主義)的で違法な戦争、大量虐殺、そして人類と地球に対するその他の犯罪の素描に過ぎない。米国は何のためにそんなことをしてきたのか?際限のない富を求めた遠征。そして、米国以前の奴隷商人・植民地主義諸国は、5つの大陸だけを支配したが、米国は世界の支配を目的としている。


§アメリカインディアンとの戦争

 2019年の科学的根拠に基づく報告書によると、コロンブスがアメリカ大陸に侵入した日(最初はドミニカ共和国に上陸)からちょうど1600年まで、ヨーロッパの奴隷商人・植民地主義者がアメリカ先住民の90%、つまり5600万人の人間を絶滅させたことが明らかになった。 Earth system impacts of the European arrival and Great Dying in the Americas after 1492 – ScienceDirect

 「17世紀から19世紀後半にかけて、北米では欧州各国政府や植民者たち、後にはアメリカ合衆国やカナダ政府、アメリカやカナダの入植者たちが、主に土地の奪取を目的として、様々なアメリカインディアンや先住民族と戦争を繰り広げた。」 American Indian Wars – Wikipedia

 1778年から1871年の間に、アメリカ政府は北米のさまざまな先住民と368の条約を結び、少なくとも100の条約を破棄したと、さまざまな連邦裁判判例にある。これらの条約は、それぞれの部族が独立した国家であり、自決権を持つという基本的な考えに基づいていた。 How Many American Indian Treaties Were Broken? – HISTORY そして List of some broken native American treaty agreements. – Indigenous Peoples Opportunity Network


§アフリカ人を奴隷化

 中世以降、ヨーロッパの白人政府はアメリカ大陸に兵士/船員と入植者を送り込んだ。18世紀だけで600万から700万人のアフリカ人が「新世界」に移送されたと推定する歴史家もいる。U.S. Slavery: Timeline, Figures & Abolition – HISTORY

 同数のアフリカ人が拘束される際、そして船で搬送される際、死んでいる。 DEATH TOLL FROM THE SLAVE TRADE (worldfuturefund.org)

 「アメリカにおける人種差別軍事帝国」(以降U.S.-ARMEと表記)は、未だに強力な存在だ。だから警察、FBI、そして多くの白人民間人が、肌の色が違うというだけでアフリカ系アメリカ人を殺しても何ら処罰されない。


§アメリカ例外主義/自明の宿命説*/モンロー主義*
自明の宿命説*・・・(19世紀)アメリカの移植者には、西部を開拓して領土を拡張する使命が与えられているとする、当時広く信じられた考え方(英辞郎)
モンロー主義*・・・モンロー米大統領(James Monroe)が宣言(1823年)。欧州諸国による米大陸への干渉を拒否する宣言。後で西半球での米帝国主義を正当化するのに使われた(英辞郎)


 それは、各時代のアメリカ政府と多くの白人が賞賛し、実践してきた正真正銘の「優越宗教」である。アメリカ国旗とイエス・キリストの十字架を掲げながらアメリカは、メキシコの半分を奪った(1846-8)---現在の州で言えば次の通り:カリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州、そしてワイオミング州、コロラド州、ネブラスカ州、オクラホマ州の一部。


§スペイン-アメリカ戦争にまつわる嘘

 キューバの第三次独立戦争は、1895年2月24日、「祖国の父」と呼ばれる詩人・知識人のホセ・マルティ(José Martí)に率いられて始まった。cuba history .org – Independence War (1895-1898).

 キューバ国民はスペインに対する解放戦争に勝利していたので、アメリカはキューバの主権を阻むため、内政干渉する嘘を見つけなければならなかった。セオドア・ルーズベルトのような政治家とハースト(Hearst)に率いられた主流メディアは、スペインが1898年2月15日にハバナ港でアメリカ船を爆破して241人の船員が死亡したという嘘をでっちあげたのだ。メイン号を忘れるな!

 真相は機関室での誤射。メイン号船長の言 Remember The Maine | History| Smithsonian Magazine

 その事実がわかっても、U.S.-ARMEは1898年6月、キューバ人が主権を持つことを阻むための侵攻を止めなかった。スペインは降伏した。キューバ人は条件を設定することを許されなかった。アメリカは、グアンタナモ州の一部(海軍基地のために)、またニッケルが豊富な土地を押収した。以降キューバ人民やキューバ政府の意向は完全に無視されている。ヤンキーは今日もこの基地を利用して人々を拷問している。

 ペンタゴンは何千回も侵略/内政干渉をしている。CIAのクーデターや諜報活動も数千回に及ぶ。ロシアと中国を直接狙ったもの以外の代表的なものを以下に挙げる。

1953年イラン。CIAと親シャ-派のイラン軍が、民主的に選ばれたモハンマド・モサデク(Mohammad Mosaddeq)首相を打倒し、残忍な独裁者シャー・モハンマド・レザー・パーレビ(Shah Mohammad Reza Pahlevi)を再登場させた。

1954年グアテマラ。CIAは民主的に選ばれたハコボ・アルベンツ(Jacobo Árbenz)大統領を打倒し、独裁者カルロス・カスティロ・アルマス(Carlos Castillo Armas)を据えた。そして、左派、特にマヤ・インディアンに対する恐怖支配が始まり、数十万人が殺された。

1973年9月11日、チリ。ニクソン-キッシンジャー-CIAは、民主的に選出されたサルバドール・アジェンデ(Salvador Allende)を打倒し、独裁者アウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)を据え、数万人のチリ人を殺害した。



 「無責任な国民のせいで共産主義化する国を黙って見ている理由はない」。ヘンリー・キッシンジャー国務長官は、1970年6月27日、9月4日の選挙で社会主義者アジェンデが勝利する前に、こう言い放った。

§§1976年10月6日 :CIA長官ジョージ・H・W・ブッシュの監視下、CIAのスパイ部隊はハバナへ向かうバルバドス上空のキューバ・アビエイション455便を爆破した。キューバのジュニア・フェンシング・チーム全員を含む73人の民間人の乗客と乗員全員が死亡した。

 私はそのフライトに主席スチュワーで搭乗するはずだったイグナシオ・ロドリゲス・メナ・カストリョンと知り合いになった。彼の妻、メルセデス・エレロも来る予定だった。二人ともキューバの諜報機関の覆面捜査官だった。CIAに潜入していたのだ。二人は手違いでその便に乗れなかったので、イグナシオの親友が代わりに乗った。

 グナシオが私に語るには、数日後、マドリードでCIAのスパイ担当者ニコラスに会ったとき、イグナシオは彼を殴り、彼の体を揺すったのだという。その諜報員はイグナシオに大胆にも次のことを言ったからだ:「もしお前が搭乗する飛行機がまた標的になるなら、そのことはお前に事前に知らされることになる」。(彼の証言参照。Backfire: The CIA’s Biggest Burn: Ridenour, Ron: 9780962497513: Amazon.com: Books, 第2章「ディーン」)

 犯人は2人のキューバ人亡命CIAスパイ部隊、ルイス・ポサダ・カリレス(Luis Posada Carriles)とオルランド・ボッシュ(Orlando Bosch)、それにベネズエラ人のフレディ・ルゴ(Freddy Lugo)とエルナン・リカルド・ロサノ(Hernan Ricardo Lozano)であった。トリニダッド警察とガイアナ外相は、爆破犯の身元を明らかにした。近々行われる裁判の裁判官は、証拠の書類があると述べた。その書類は消えてなくなった。4人の共犯者全員が、あろうことか、ベネズエラの右翼メディアに、自分たちの「反共産主義」破壊工作を自慢していた。メディアに流されたイラン・コントラゲート文書によると、ロナルド・レーガン大統領の主要な組織者であるオリバー・ノース(Oliver North)大佐は、イラン兵器販売からの利益を、1985年にベネズエラの刑務所からポサダを逃がすために使っている。 CIA terrorist Posada Carriles dead at 90 – World Socialist Web Site (wsws.org)


§1976-83 コンドル作戦

 CIAは、南米のほぼ全域で軍事政権が権力を握るように仕向けた。何十万人もの独裁体制反体派が拷問され、殺害された。

ひとつの例:グレナダ
 グレナダは、米国と国境を接していない(しかしウクライナはロシアと国境を接している)。「世界一の民主主義国」から4,377キロも離れているのだが、米国政府はとにかく脅威を感じていたという。1983年、グレナダの人口は96,020人だった。

 統治側に立つ左翼勢力に内紛が起きたとき、レーガン大統領は帝国を拡大するチャンスと考えた。レーガン大統領は、グレナダ島に留学している600人の米国人医学生が危険にさらされていると主張したが、援助を求める医学生は一人もいなかったのだ。しかし、レーガンは、キューバの干渉を防ぎたかった。グレナダには784人のキューバ人がいた。636人が英国の建設労働者とともに空港を建設していた。英国とキューバの共同事業だった。レーガンは、英国の投資事業に目もくれなかった。

 1983年10月25日、アメリカ陸軍、空軍、海軍、海兵隊からなる7,600人の侵攻軍は、グレナダの抵抗を数日で打ち破った。その後、米国は傀儡政権を樹立し、すべてのキューバ人と少数のロシア人外交官・顧問を追い出した。

 アメリカに対する制裁はなかった。国際裁判も開かれなかった。グレナダやキューバの死者に対して欧米が涙を流すことは一切なかった。(私はコペンハーゲンで、「死の大使館」の正面の大きな窓を2つ、石ころで壊し、短期間刑務所に入った。私は1万ドルの損害賠償の支払いを拒否したのだ。面白いことに、外務省はこの問題を取り下げた)。

 アメリカによる戦争、軍事介入、政権交代は何千回とあるが、「制裁」されたのは、国際司法裁判所によるものだけである。1986年6月27日、国際司法裁判所は、貿易を阻止する目的でマナグアの港に機雷を仕掛け、民間人などを殺害したとして、米国を有罪にしたのである。

 米国は、国際司法裁判所(ICJ)の時もそうだったが、いかなる国際的な法廷にも出廷しようとはしない。また、損害賠償は一切行っていない。 Judgment of the International Court of Justice of 27 June 1986 concerning military and paramilitary activities in and against Nicaragua :

1980年代を通じて、レーガンはエルサルバドルの軍事独裁政権を援助しているが、この軍事政権は大司教オスカル・ロメロ(Oscar Romero)や多くの司祭、修道女を含む一般市民を無慈悲に殺害している。ニカラグアでは、レーガンは非常に残忍な「自由の戦士」であるコントラに、度を超した援助をしている。彼は、それらの拷問者に武器を提供する場合、議会に諮らなければいけないという手続きすら省略している。レーガンは、米国の同盟国イラク(サダム・フセイン率いる)と戦争状態にあった米国の敵、イラン・イスラム国に武器を売った。コントラへ武器を提供する資金調達のためだった。

1990年代、クリントン/NATOはユーゴスラビアに戦争を仕掛け、5つの国に分割し、アルバニアからコソボを切り離した。アルバニアにおける米/NATOと同盟関係にあったのはコソボ解放軍で、これは麻薬密輸、臓器売買、そして武器密輸で米国とEUのテロリスト名簿に載っている集団だった。

 「ギャング国家」を率いたのは、コソボのKLA(コソボ解放軍)指導者で首相のハシム・サチ(Hashim Thaci)である。2010年、欧州評議会の調査は、KLAがセルビア人の囚人を殺害し、その腎臓を売っていたと報告した。この報告書はFBIの情報源まで引用している。 Kosovo PM is head of human organ and arms ring, Council of Europe reports | Kosovo | The Guardian

 いずれにしても、CIAはテロリストのKLAに資金を提供し、武装させた。彼らは78日間で5千から1万8千人のセルビア人を殺害し、1万5千人を負傷させ、2万5千の家屋と数十の学校と教会を破壊した。アメリカはそのテロリストたちを新しい「国家」コソボの新政府とし、その最大の基地の一つであるボンドステル基地を手に入れた。

 クリントン/NATOは、セルビア・ユーゴスラビア大統領スロボダン・ミロシェビッチを国際裁判所に逮捕させた。西側勢力に手足を縛られた状態の裁判所は、心臓が弱かったミロシェビッチを心臓専門医に診せることを拒否した。代わりに看守が、本人にそのことを知らせないまま錠剤を飲ませ、「心臓発作」で死亡したのが2006年3月11日。10年後の2016年3月24日、ユーゴスラビアに関する国際刑事裁判所(ICTY)は、ミロシェビッチの告発された罪状については無罪であることを突き止めた。しかし、この経緯について2,590ページに及ぶ判決文の1,303ページに埋もれるように記載されているだけだ。Trial of Slobodan Milošević – Wikipedia


§1990 イラクに対する湾岸戦争


U.S. war crimes in Iraq | Mary Scully Reports

 米英は1991年から長年にわたり、イラク上空で「飛行禁止区域」を実施した。彼らは「目標」を自由に空爆した。1995年までに、50万人のイラクの子どもたちがこれら侵略者たちによって殺された。1996年5月12日、マドレーン・オルブライト(Madeleine Albright)国連大使は、CBSの番組「60 Minutes 」で、「その犠牲は相応の価値のあることだった」と語った。クリントンは彼女を国務長官に昇格させた。 (574) Madeleine Albright – The deaths of 500,000 Iraqi children was worth it for Iraq’s non existent WMD’s – YouTube

 U.S.-ARMEが主導した3回のイラク戦争(湾岸戦争、有志連合によるイラク戦争、イラク戦争)のせいで、100万人以上が死亡し、(メソポタミア)文明の発祥地から最高の財宝が破壊され、略奪されることになった。米国の納税者が負担した費用は、様々な情報源から2兆ドルから3兆ドルと見積もられている。Iraq War – Wikipedia

 イラクが元に戻ることは決してないだろう。今日、イラクは絶え間ない政治的抗争で荒廃している。4,450万人の人口の半分以上が貧困にあえいでいる。2021–2022 Iraqi political crisis – Wikipedia Iraq Poverty Rate 2006-2022 | MacroTrends


私たちの未来は、長期間、分裂と戦争が繰り返される世界となるだろう。

 ほぼすべての主流派ジャーナリストたちは、現在、反ロシアの集団思考的プロパガンダになだれ込んでいる。彼らは、米国-ARMEの嘘をオウム返しにするだけだ。このことは功を奏し、ウクライナにおける彼らの代理戦争のための支援を、ほぼすべての西側資本主義世界から取り付けることになった。ウォール街・欧州の兵器産業は莫大な利益を享受している。彼らは皆、戦争をロシアのせいにしている。しかしロシアは、十分に装備された主権国家が主権を守るために行うようなことを行っているのだ。プーチン大統領は、エリツィンとは違う。エリツィンは、世界のいじめっ子警察(アメリカ)がロシアをほぼ支配下に置くことを許した。

 この戦争を文脈的に捉えるためには、多くの情報が必要である。例えば、親ファシストのヴォロディミル・ゼレンスキーの役割などである。彼は、ユダヤ人、特にドイツのナチスとウクライナのファシストによって殺された何百万人もの人々を裏切っている。当時のウクライナ・ファシストたちの子孫が、今日先駆けとして動いているのだ。

 大統領になっても、ゼレンスキーは税金を払いたがらない。英国支配者層を代弁するThe Guardian 紙ですら、彼が富を海外に隠していることを記事にした。この2021年10月の記事は、ロシア軍がウクライナの国境から200キロ離れたところで演習を行っていたときに掲載された。この演習について西側は、口を極めて不満の声をあげた---西側諸国は、まるでロシアを標的に軍事演習をしたことがないとでもいうような言い草だ。Revealed: ‘anti-oligarch’ Ukrainian president’s offshore connections | Volodymyr Zelenskiy | The Guardian

 NATOへ加盟して核兵器を保有したい、と公言したゼレンスキー。2022年2月19日、彼はミュンヘンで、5分以内にモスクワを攻撃できる核兵器を配備すると脅迫した。これに対して、プーチン大統領は、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の主権的独立をついに承認した。2月24日、プーチン大統領は「特別軍事作戦」を開始した。こういった一連の行動で、彼はゼレンスキーの核武装誓約に触れた:「彼の言葉は空威張りとして片づけられない。」

 もしロシアがこの声明の前に「特別軍事作戦」を、実際、計画していたなら、歴代の財務大臣たちが愚かにも西側の金融センターに置いてしまった金と外貨の半分を取り戻せただろう。そう、西側はロシアの富を盗んだのだ。ロシアは、嘘の帝国に「言って聞かせる」には他に方法がないと真っ当な感じ方をした。プーチン大統領が、ついに、アメリカを名指しで、その本質を非難したのはそういうことだ。Dumbshit Russians? | (paulcraigroberts.org)

 欧米の政治家や主流メディアは、大統領が「特別軍事作戦」を開始する2カ月前2021年12月17日に、プーチン政府が平和条約を提示したことを告知しない。Treaty between The United States of America and the Russian Federation on security guarantees – Министерство иностранных дел Российской Федерации (mid.ru)

 重要点。 第1条 「締約国は、不可分、平等及び完全な安全保障の原則に基づき協力し、これらの目的のために:他の締約国の安全保障に影響を与える行動をとり、又は活動に参加し、若しくはこれを支援してはならない。」

 第3条 「締約国は、相手国に対する武力攻撃の準備又は実行その他の相手国の安全保障上の中核的利益に影響を及ぼす行為を目的として、相手国の領土を使用してはならない。」

 第4条 「アメリカ合衆国は、北大西洋条約機構の更なる東方への拡張を防止し、旧ソビエト社会主義共和国連邦の国々が同盟に加入することを拒否することを約束するものとする。」

 第5条 「締約国は、その軍隊及び軍備を、国際機関、軍事同盟又は同盟の枠内を含め、相手国がその国の安全に対する脅威と認識し得る区域に展開することを、締約国の自然的領域内におけるその展開を除き、慎まなければならない。」

 米国、NATO、ウクライナがこの真の和平提案を無視し、嘲笑さえした後、プーチン大統領はロシアの存在に対する米国・NATO・ウクライナの侵略を防ぐために軍隊を送り込んだ。

 ダニエル・コバリク(Daniel Kovalik)は、国連憲章第51条が「一方的な戦争行為」に反対しているだけでなく、国家の主権が危うくなった場合の自衛についても規定しているとの主張をする国際法学者の一人である。

コバリクからの引用:
    「ロシアが、米国、NATO、そしてウクライナにおける過激派の代理人たちによる具体的な不安定化工作によって、かなり深刻な形で脅かされていることは間違いない。ロシアは丸8年間、そのような脅威にさらされてきた。そしてロシアがその間目撃してきたのは、イラクからアフガニスタン、シリア、リビアに至るまで、そうした不安定化工作が他の国々にとって何を意味するか、だ。つまり、機能している国民国家としての国がほぼ完全に消滅させられる事態を目撃してきたのだ。

    「国家を防衛するために行動する必要性について、これほど切迫したケースはないだろう。国連憲章は一方的な戦争行為を禁じているが、同時に第51条で「この憲章のいかなる規定も、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない・・・」。そして、この自衛権は、実際の武力攻撃だけでなく、差し迫った攻撃の脅威に対しても、各国が対応することを認めると解釈されてきた。

    「以上のことから、この権利は即座に発動され、ロシアは自衛のために、米国とNATOの代理として、ウクライナ内のロシア民族だけでなく、ロシアそのものへの攻撃となったウクライナに介入する権利があったと私は判断している。これと反対の結論は、ロシアが直面している悲惨な現実を単に無視することになる。」

Why Russia’s Intervention in Ukraine is Legal Under International Law | Algora Blog

 コバリクは、ロシアの自衛権に関する別の記事を書いている。 Russia’s Invasion Signifies The End Of An Era Of Unipolar American Power – PopularResistance.Org

    「フランシス・A・ボイル教授のような国際法の専門家は、ウクライナ軍がロシアとウクライナに住むロシア系住民(その多くはロシア国民である)にとって現実的かつ差し迫った脅威であることから、ロシアはウクライナ作戦を通じて国連憲章51条の自衛規定内で行動したとコメントしている。(ところで、ボイルは、ウクライナにある米国の生物研究所は間違いなく生物兵器施設であり、生物兵器禁止条約の起草を手伝った自分は知っていて当然だ、とも主張している)」。

 ロイターと国連人権高等弁務官によると、8月までにおそらく3万人が殺害され、その約半数はロシア人である。それにもかかわらず、ゼレンスキーは「プーチンは戦犯だ」「アドルフ・ヒトラーよりも悪い」(ヒトラーのせいで亡くなった死者数は、およそ8500万人いるのだが)と主張している。Explainer: Blood, treasure and chaos – the cost of Russia’s war in Ukraine | Reuters

 ロシアがウクライナへ防衛的に兵を進めて以来、米国とその属国はウクライナのために2000億ドルから3000億ドルの現金を使い、さらにポーランドを通じて、ウクライナの手元には既に数十億ドル相当の武器が送られている。新しい兵器は製造中である。欧米はさらに数十億ドルを、約七百万人のウクライナ難民の収容と食料調達のために費やしている。個人的な寄付もメディアを視聴している人々によって集められている。

 寄付金の一部は個人の手に渡り、それ以外の多くはすぐに使われてしまう。ゼレンスキーはN.Y.証券取引所に投資を依頼したばかりだ。つまり、「自分の国を略奪し、市民の労働権を粉砕していることになる。」Zelensky rings New York Stock Exchange bell as Euro dips below dollar – The Grayzone

 このため、欧米諸国はロシアに制裁を加える分野をさらに増やすことになるだろう。米国傘下の少なくとも40カ国は、すでに数百の制裁を行っている:①ロシアとの貿易をほぼゼロに、②ロシアの国際的金融資産に罰則を科す、③ロシアからドイツ、そしてその先のヨーロッパまで、1224kmのパイプを通して天然ガスを流すロシア・ドイツ間のノルドストリームIIを妨害する。これはロシアにとって、まず110億ドルの損失である。また、「自由な市場競争」にも反している。

 それにもかかわらず、欧米諸国はロシアが主戦論者たちに天然ガスを送り続けることを期待している。ロシアは供給を減らしてはいるが、もしロシアがこれら攻撃者たちに相応の対応をするならば、彼らへの燃料をすべて断つべきだろう。

 北欧は平和な民主主義国家ではなく、バーニー・サンダースが唱える程度の社会主義にさえ近いわけでもない。

 ロシアに対する自主的な制裁措置があまりにも広範囲に及んでいるため、制裁をしている側はかえって「しっぺ返し」状態になっている。ガス、石油、電気の料金は時間単位で通常の2倍から11倍に高騰している。私の住むデンマークでは、学校の教室の暖房温度を下げたり、夜間の街灯を消したりしている市町村もある。これはロシアの天然ガスを減らすためで、「ウクライナと連帯するため」だと政治家は言う。一部の市民は、暗い町並みは泥棒や強姦魔を助長すると憤慨している。

 ドイツとイギリスでは、汚い石炭の採掘量が増えている。ドイツとスウェーデンでは原子力発電所が再開されつつある。化石燃料の中で最も汚染をもたらすものの一つである頁岩の破砕は、アメリカではビッグビジネスとなっており、その液体ガスをヨーロッパに輸送している。イギリスも液体ガス輸送禁止を解除している。 Fracking – Fuel for Human Safety (wordpress.com)

 化石燃料や電気料金の大幅な値上げに伴い、食料品の価格も上昇。インフレが加速している。金持ちはさらに金持ちになる。世界最大の海運会社であるモラー・マースク(Møller-Mærsk)などの大資本家は、記録的な利益をすくい上げている。デンマークの海運会社やその他の大資本家は溢れるほどの利益を手にしているが、政府は彼らに追加課税をしない。それどころか、現在の選挙運動では、一部の政党が金持ちへの減税を訴えている。

 医療従事者によると、不安やストレス、将来への不安は健康上の大きな問題だという。最近の調査では、10代の少女の半数が自分のことが好きではない、という結果が出ている。心理的な援助を受けるには、1年から2年の待ち時間が必要。福祉制度は縮小された。保健師や教師になるための勉強を希望する若者は、以前より少なくなっている。保健制度は資金不足で崩壊し、過剰労働の看護師や医師は疲労困憊状態だ。こういったことすべて、世界の半数の政府が、世界の警察官であろうとする狂信的U.S.-ARMEを支援することが最善と考えていることが理由だ。

 デンマークの社会民主党政権は、ロシアがいつかは自国の主権を守るために戦うかもしれないことを予見していたようだ。プーチン大統領が、ウクライナのNATO加盟と核武装を阻止すると発表する2週間前、メッテ・フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相は、外国軍隊を停泊させないという国の長年の方針を覆し、大半のデンマーク国民は寝耳に水と感じた。政府は米軍に対して、デンマークに軍隊と巨大な兵器を恒久的に派遣するよう要請した、つまり、米軍からそう言われたのだ。そのためには、西デンマークのエスビエル港を拡張して、巨大な軍艦を停泊させる必要がある。さらに数百万ドルが流出することになる。

 同時にデンマークは、デンマークの武装傭兵がポーランド経由でウクライナに入国することを許可している。デンマークはウクライナに数百万ドルの現金を送り、船舶を破壊するミサイルなどの武器を倉庫に保管した。自国の軍事予算を倍増させ、NATO予算を国民総生産の2パーセントに増やし、70億ドルを投じて自国の戦艦を「超大国の海軍」に作り直す準備を進めている。

 制御不能な自由市場価格の上昇の埋め合わせとして、政府はエネルギー企業に対して120億ドルの銀行融資保証を提示した。メディアはエネルギー企業の利益がかつてないほど大きかったと言っているのに、これは何だ!

 さらに何百万ドルもかけて、政府は「ロシアの侵略からバルト三国とポーランドを守る」ために、戦闘機2機と戦車を含む大量の兵器、そして千人の軍隊を送り込んだ。ロシアが、愚かにも、NATO加盟国一国にでも侵攻するようなことがあれば、他の30カ国のNATO加盟国は報復に出るだろう。そんなことを政治家や主要メディアは考えもしない。そのような状況になれば、一国が徹底的に潰されることになるだろう。

 これだけの無駄遣いをしながら、政府は八十代のバイキング女王マルグレーテ(Margrethe)の年俸を1250万ドルから1300万ドルに増やし、彼女の家族も同様に400万ドルに増やしている。さらに、女王は多くの城や荘園、自家用飛行機、国営船、そしてどこへ行くにも有給旅行を利用することができる。

 デンマークの分析家たちの中には、社会民主党が、より好戦的なブルジョア政党(Venstre)の上を行っているのは昔からだ、と考えている人もいる。その元首相アンデルス・フォグ・ラズムッセン(Anders Fogh Rasmussen)は、イラクが大規模な破壊兵器を持っているという嘘でイラクと戦争した後、NATOのトップに昇格した。彼の2期目の後、同じスカンジナビア諸国の首相であるノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)がその役職に就いたが、彼は平和的解決を見出すためのロシアの提案をすべて拒否したという栄誉に浴している。

 デンマークの旧植民地で、33万人が軍隊を持たずに平和に暮らしているアイスランドでさえ、ゼレンスキー版ウクライナを受け入れているのである。5月6日、ゼレンスキーはアイスランド議会で演説し、いつものように資金援助と軍事援助の強化を求めた。8月までにアイスランドは850万ドルの援助を送り、スロベニアからウクライナに軍備を輸送するための貨物船を送っている。

 アイスランドで唯一の反NATO政党は左翼緑の党で、その党首は現首相のカトリン・ヤコブスドッティル(Katrin Jakobsdóttir)である。ゼレンスキーの演説に続く賛辞の中で、彼女はこう言った:

 「ウクライナとアイスランドは バイキングの時代にまで遡る共通の歴史がある」。 どうやら彼女は、ノルウェーのバイキングが(多くの国の中から)アイルランドを侵略し、多くの人を殺害し、富を略奪し、その人々の一部を奴隷にし、一部を無人島であるアイスランドに航海させたことを忘れているか、受け入れているかのどちらかであるようだ。874年、彼らは現在レイキャヴィーク(Reykavik)となっている町を作り始めた。Could Icelanders Herald Path to Economic Equality with Prosperity and Peace? – CovertAction Magazine


19世紀に描かれたピーター・ラードシグの絵で、アイルランド人奴隷を指揮するインゴルフ・アルナーソン。

 長い間中立だったスカンジナビア諸国のスウェーデンとフィンランドについて、NATO加盟が進行中である。ヒステリックなプロパガンダが、ついに両国民の大多数を戦争屋NATOに加わることを説得させたからだ。フィンランドは第二次世界大戦中、3年間ロシア国内でドイツのナチスと肩を並べて戦った。ロシアと1300キロの国境を接しており、ロシアにとって大きな脅威となるだろう。

 欧米(そして日本と韓国)がロシア国民に大規模な制裁を加えているにもかかわらず、彼らの生活環境は極端には悪化していない。

 9月7日、ウラジオストク経済フォーラムで、ウラジーミル・プーチン大統領は楽観的な発言をした。以下はロイターの翻訳。 Putin speaks at forum in Russia’s Far East region (yahoo.com)

    「私たちは何も失っていないし、これからも失うことはない。私たちが得たものという点では、主な収穫は我々の主権の強化であると言えるでしょう。」

    「もちろん、世界でも国内でも、ある種の二極化が起こっていますが、これはプラスに作用するだけでしょう。不必要なもの、有害なもの、そして私たちの前進を妨げるものはすべて拒絶されるからです。」

    「ロシアは、この問題を平和的に解決する試みは何回もやってきました。しかし、今、私たちは潜んでいる敵対者(アメリカ)と同じように、報復的な対応をすることにしました。...私たちのすべての行動は、ドンバスに住む人々を支援することを目的としています。これは私たちの義務であり、最後までやり遂げる。これは最終的に、我が国を内部から強化し、その外交政策の立場を強化するものです。」

    「パンデミックに代わって、全世界を脅かすグローバルな課題が出現しています。欧米の、熱に浮かれたような一連の制裁措置のことです。恥知らずにも他国に行動モデルを強引に押し付け、主権を奪い、自分の意のままに従わせようとします。これは何も今に始まったことではありません。これは、西側諸国が何十年にもわたって、一丸となって追求してきた政策なのです。」

    「欧米諸国は、自分たちにだけ有利な旧世界秩序を維持しようと必死です。自分たちが勝手にでっち上げておいて、自分では守ろうとしない悪名高いルール、その時の状況に合わせて自分たちの都合のいいようにいつも変えてしまうルール。そんなルールをすべての人に強制しているのです。」

 「春には、多くの外国企業が、ロシアは他国よりも被害を受けるだろうと信じ込み、ロシアからの撤退を急ぎました。しかし、今、私たちは、ヨーロッパでの生産と雇用が次々と閉鎖されていく様を目の当たりにしています。その大きな理由の1つは、もちろんロシアとのビジネス関係の断絶です。EU当局が自ら、利用可能な原材料、エネルギー資源、そして販売市場を奪っているため、欧州企業の競争力が低下しているのです。」

 「(エネルギー燃料)契約と矛盾するような政治的決断はあるのでしょうか?そう、私たちはその契約をただ遂行しないというだけなのです。私たちの利益に反するものであれば、一切供給することはありません。ガスも、石油も、石炭も、暖房用オイルも、です。何ひとつ供給することはありません」。

 「ドイツでは、ノルドストリーム 2の稼働を要求するデモが行われています。私たちは、ドイツの消費者の要求を共有しています。明日にでも実行する準備はできている、ボタンを押すだけでいいのです。さて、私たちはノルドストリーム2に対して制裁を課してはいません。彼らがやったのです。それもアメリカからの圧力で。」



結論

 ウクライナは、3月にロシアが占拠したザポリージャ原子力発電所(ZAPP)を砲撃していた。それを叩くミサイルは、以前も今も、米国/NATOから供給されたものだ。同原発では、いくつかの小さな火災が起こり、それは消火された。プーチン大統領が国連の原子力監督機関IAESに調査を依頼してからかなり時間が経った9月9日の時点で、4基の原子炉のうち3基が閉鎖され、最後の1基もまもなく停止する見込み。その結果、ウクライナの電力の5分の1が断たれることになる。

 「砲撃により、原発を運営するスタッフが住む市内の電力インフラが破壊され、原子力施設にも脅威を与える完全な停電が発生している。砲撃が増加し、継続していることから、この原子力発電所へ外部から信頼できる電力を再確立する可能性はほとんどない」とIAESのラファエル・マリアーノ・グロッシ(Rafael Mariano Grossi)は、報告した。Ukraine: Shelling in nearby city putting Zaporizhzhya nuclear plant at risk | | UN News

 米/ウクライナは、そこを警備し、そこに住んでいるロシア人に責任があると主張している。発電所にいるロシア人たちが自殺するというのは、完全にねじ曲がった論理だ。もしザポリージャ原発が爆発すれば、大河ドニエプル川と近くの黒海が汚染される。ヨーロッパはもちろん、それ以外の地域も放射能で壊滅的に汚染されるだろう。

 「私たちは占拠地を管理し、ロシアの軍人がそこに配置されています。私たちは自分自身を撃っているというのですか、何なのですか?まったくナンセンスです」Putin speaks at forum in Russia’s Far East region (yahoo.com)

 国連は弱い。米国を非難する勇気もない。アントニオ・グテーレス事務総長は、現在の戦争は自殺行為であると警告しているが、誰が悪いのかに言及することはない。グテーレス事務総長は、「世界は核兵器による滅亡の一歩手前だ」と言えるだけ、と感じているのだ。

 新世界秩序には、いくつかの前向きな進展がある。世界のより多くの人々が、米国が病んでおり、道徳的に崩壊していることに気づいている。その多くの理由のうちの4つが以下:
① 毎日2件の大量殺人(4人以上死亡)がある、
② 学校での銃乱射事件が毎週起きている、
③ 人口は世界の4パーセントなのに囚人の数は世界の4分の1、
④ 最大の死因は処方薬と違法薬物/オピオイド。

 ラテンアメリカでは、最近の大統領選挙でいくつかの進歩的な社会主義政党が勝利している。ホンジュラス、チリ、ボリビア、ペルー。ボリビアは再び勝利した。ボリビアのエボ・モラレス元大統領は、ロシアの自衛権を支持し、NATOを排除するための世界的なキャンペーンを呼びかけている。Evo Morales supports Vladimir Putin and calls for mobilization against NATO — MercoPress

 6月のマドリッドサミットで、NATOに反対する25,000人強のデモ隊は、NATOの終焉を訴えた。元支配者層にいた政治家や諜報部員の何人かは、ウクライナへの武器供給を中止し、交渉を行うことを要求している。

ヤンキー、ゴー・ホーム!ヤンキーは自分の家から外へ出るな!

ロシア連邦は、まさにその主権を守るために、なぜウクライナとの軍事衝突を余儀なくされたのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

Empire of Lies Christens the New World Order. Part I of II: Overthrow Russia

嘘の帝国が「新世界秩序」の名付け親(I部)_ロシアの転覆

筆者:ロン・リドヌール(Ron Ridenour)

出典:Strategic Culture

2022年9月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月30日

 この小論では、ロシア連邦が、まさにその主権を守るために、なぜウクライナとの軍事衝突を余儀なくされたのかを説明する。



 この小論は、なぜロシア連邦が、まさにその主権を守るために、ウクライナとの軍事衝突に追い込まれたのかを説明している。新世界秩序はその結果である。世界は今、2つの勢力に分かれ、激しい対立がどれほど続くかわからない。この論考は、著者が受けたラジオインタビューを元に書き上げたものである。(920) Ron Ridenour & Sam Husseini - YouTube.
 
 アメリカ合衆国人種差別的軍事帝国(以降U.S.-ARME)は、70カ国以上で約800の軍事基地を管理し、さらに90カ国で「軍事施設」に占領軍隊を配置している。アメリカは、軍隊を持つことができるいくつかの国の50の軍事基地に資金を提供している。これらの国の多くは、中米とコロンビアにある。米国は世界の外国基地の95%を所有している。また、いつでも発射できる核兵器を搭載して世界中を航行する数十隻の船も持っている。米国は自国内に、数カ国を合わせたよりもはるかに多くの軍事基地を有している:50州に4,154、準州に114の基地がある。(デイヴィッド・ヴァインのBasic Nation Official Book Website参照)

 ロシアは旧ソ連を中心とした9カ国に9つの軍事基地と2つのレーダー・通信施設を有している。これらの基地には約5万人の軍人が駐留しており、その半数がクリミアの海軍基地セヴァストポリに駐留している。

 U.S.-ARMEの支配者たちは、ロシア、そしてそれ以前はソ連を、世界平和に対する脅威であり、外国の領土を併合し、他国、「地球上でもっとも偉大な民主主義国」に対しても干渉していると厚かましくも非難している。これは古典的な心理的投影である。
 彼らの嘘:
ウラジミール・プーチン大統領は、ヒラリー・クリントンが大統領選で負け、彼の「友人」ドナルド・トランプが勝つように、2016年の米国選挙に干渉した。
ヒラリー・クリントンは我々のメッセンジャーであるジュリアン・アサンジを憎んでおり、真実を公表した彼をドローンで暗殺するよう呼びかけたのだ。彼女はロシアの最高指導者プーチンを憎むあまり、彼を新しいヒトラー的戦争犯罪者と呼んでいる。

 民主党上層部、ワシントンDC警察、CIAは、ジュリアン・アサンジとウラジミール・プーチンが民主党全国委員会(以降DNC)のファイルのハッキングをグルになって行ったという嘘がばれないように、DNCのコンピュータに対する科学捜査の調査を認めなかった。

 DNCの選挙不正と不正操作の情報が明らかになったとき、主流メディア(MSM)と政府はDNCの犯罪を認めようとしなかった。これは、ジュリアン・アサンジを「国家安全保障」に対する犯罪として告発する際に国家が用いる戦術と同じである。アサンジ(ウィキリークス)が行ったのは、2014年のウクライナでの戦争のような多くの戦争やクーデターにおける、国家の人道に対する犯罪の文書を明らかにしただけなのに。


関連記事:Giant Mobile Billboard Campaign for Julian Assange Goes Viral and Will Keep On Truckin’ Round the Nation’s Capital – CovertAction Magazine


§1917-8 10月のロシア革命は、「平和、土地、パン」のためだった。
 10月のロシア革命の勝利は、ほんの一握りの犠牲者で済んだ。ロシアを荒廃させ、数百万人の死者を出したのは、革命ではない。欧米・日本の侵攻が原因だ。ロシア貴族派の白軍はこの侵攻に支えられ、アレクサンドル・ケレンスキー(Alexander Kerensky)の臨時政府軍の一部に支援されていた。

 欧米の政治家とその主流メディアの宣伝担当者は、同盟国がまだドイツと戦争していた1918年の夏に、20-30万の軍隊をロシアに侵攻させたのが、U.S.-ARMEとその同盟国であったことを隠している。ウッドロウ・ウィルソン大統領は議会に、「ボルシェビキ革命の影響を相殺する」ために1万3千人の軍隊を派遣すると述べた。

 同時に、ウィルソン大統領はスパイ活動法を制定した。このスパイ活動法は、見せかけの「報道の自由」と「言論の自由」のすべてを終わらせる目的で、民衆の使者であるジュリアン・アサンジを殺すために現在使われている。

 1918年、すべての軍隊の状況は悲惨であり、アメリカ人を含む多くの欧米諸国の兵士たちは戦争にうんざりし、戦意を喪失していた。1920年4月1日、最後の米軍がロシアを離れた。米軍の424人がさまざまな原因で死亡したが、そのほとんどが戦死だった。全部合わせると、内戦と外部からの干渉で、死傷者は民間人を中心に700万から1200万人だった。

 「アメリカ遠征軍」を指揮したウィリアム・グレイブス(William Graves)少将は、「アメリカが軍事介入によって何を達成しようとしていたのかわからない」と回顧録に書いている。

 ロシアに関する3冊の本を書いた小説家、ギャザー・スチュワート(Gather Stewart)は、また、拙著『ロシア平和への脅威:厳戒態勢のペンタゴン(The Russian Peace Threat: Pentagon on Alert)』に序文を寄せてくれた。 (The Russian Peace Threat: Pentagon on Alert: Ridenour, Ron: 9780996487061: Amazon.com: Books)

 次は、欧米諸国のロシアに対する関心が、昔も今も変わらないというスチュワートの評価である。

 「欧米全般、特にアメリカはロシアを妬んでいる。ロシアの自然の富の多くは、ウラル山脈の向こうの土の中に埋もれている。なぜロシアがその富を独り占めするのか?それがアメリカの態度であり、ロシアを服従させ、小国に分割する大陰謀を正当化する理由の一部となっている。」THE CHARACTER OF RUSSIAN COMMUNISM – The Greanville Post

 ロシアを小国家に分割する(アメリカとNATOはユーゴスラビアをそうした)ことが、今日、U.S.-ARMEの目標になっている。

関連記事:Ukraine: The CIA’s 75-year-old Proxy – CovertAction Magazine

 1920年に敗退した米国はロシアを苛め、破壊し、包囲し、転覆させるためにあらゆることを行ってきた。ソ連、ロシア、中国、キューバ、ベトナム、北朝鮮、あるいは米国が国民を飢えさせ内乱を引き起こすことを望んで、制裁かボイコットのいずれか、あるいは両方をしかける40の国のいずれも、米国を侵略したり破壊したりしたことはないのである。

 U.S.-ARMEが地球を支配するために戦争をし、戦争の脅しをかけているにもかかわらず、世界大戦と核兵器の使用を防止してきたのはロシア人である。ミハイル・ゴルバチョフ、ボリス・エリツィン、ウラジミール・プーチンの3人のソ連・ロシア大統領は、それぞれアメリカ大統領に、NATO加入許可の許しを乞い、お互いへの戦争行為が起こらないように要請した。しかしその交渉はすべて不成立!

§ 1930年代 スメドリー・バトラー(Smedley Butler)将軍が暴露したルーズベルト大統領転覆の陰謀的取引

 資本家の多くは、肌の色に関係なく、困っているすべての人に仕事と社会的・文化的利益を提供するニューディールを掲げたフランクリン・D・ルーズベルトを嫌っていた。大実業家たちは、人種差別主義者で、反組合主義者で、ファシスト的な解決策を好んでいた。彼らは、失業した白人の退役軍人を利用することで、自分たちに有利になると考えた。彼らは、大統領を転覆させ、場合によっては暗殺しようと企てた。



バトラー将軍は、史上最も多くの勲章を受けた海兵隊員であり、大統領を守った

 陰謀的取引(別名:ホワイトハウス・クーデター、ファシストの陰謀)とは、1933年から4年にかけての政治的陰謀である。スメドリー・ダーリントン・バトラー(Smedley Darlington Butler) 海兵隊退役少将に、J.P.モルガンに指導される超富裕実業家たちを代表するマクガイア(MacGuire)将軍が近づいた。彼は、ルーズベルト大統領打倒目的の、50万人の海兵隊員と兵士によるクーデターを組織するため、国民に人気のあったバトラー将軍を利用しようとしたのである。(New York Times, November 21, 1934, "Gen. Butler Bares ‘Fascist Plot’ To Seize Government by Force”.)"参照)。

 バトラー将軍は、この考えに賛同するふりをしながら、ルーズベルト大統領にクーデター派の陰湿な本質を明かした。公の場に出た彼は、自分が軍歴の中でやってきたことを説明した:
 
「私は33年と4ヶ月の間、現役の軍人として過ごし、その間、ほとんどの時間をビッグビジネス、ウォール街と銀行家のための高級筋肉マンとして過ごした。要するに、私は資本主義のためのゆすり屋であり、ギャングだったのだ。 War is a Racket by Smedley D. Butler | Goodreads

「私は1914年にメキシコ、特にタンピコをアメリカの石油利権にとって安全な場所にするのを手伝った。私はハイチとキューバを、ナショナルシティ銀行関連の人物たちが収入を得るための適切な場所にするのを手伝った。私は、ウォール街の利益のために、中米の6つの共和国を強奪するのを手伝った。私は1902年から1912年にかけて、ブラウン・ブラザーズ国際銀行家のためにニカラグアを浄化するのを手伝った。1916年、アメリカの砂糖利権者のためにドミニカ共和国を占領する光をともした。私は、1903年にアメリカの果物会社のためにホンジュラスを真っ当にする手助けをした。1927年には中国で、スタンダード・オイルが妨害を受けずに操業できているかどうかの確認する手助けをした。今にして思えば、アル・カポネにいくつかヒントを与えたかもしれない。彼がゆすりを操業したのは、せいぜい(シカゴ市の)3つの地区だけだ。私の操業範囲は3つの大陸になる。」

 ルーズベルトはこの企業クーデターを企んだ人物たちと妥協した。ニューディールの邪魔をしなければ、裁判も懲役刑もない、という内容だ。それはうまくいったようで、少なくとも彼らはルーズベルトを打倒することをあきらめた。それでも、彼らは戦争に必要な資材を販売したり、貸し付けたり、寄付したりして、ヨーロッパのファシズムを支援し続けた。


 ヘンリー・フォードの75歳の誕生日に、1938年7月30日、ミシガン州のフォード工場でナチス領事がヒトラーの大十字架勲章を授与。


 ヘンリー・フォードは、ナチス・ドイツが外国人に与えることのできる最高の勲章「ドイツ鷲大十字章」を授与された。 1938年7月30日。 Henry Ford: American Icon, Businessman, And Staunch Nazi Sympathizer (allthatsinteresting.com)

 1937年6月、IBMの創業者トーマス・ジョン・ワトソン(Thomas John Watson)がドイツ鷲勲章(2等)を受章する。1938年、ゼネラルモーター社のジェームス・ムーニー(James Mooney)最高経営責任者がアドルフ・ヒトラーからドイツ鷲勲章(1等)」を授与される。J.P.モルガン銀行の代理人、グレイソン・マーフィ(Grayson Murphy)は、ファシスト政権下のイタリアにモルガン銀行の融資を提供した功績により、ムッソリーニから「イタル王冠勲章」を授与されている。

 グレイソン・マーフィーは、金持ちの大物たちが「急進主義と戦い、個人と財産の権利の尊重を教え、自由な民間企業を育成する」ために立ち上げたばかりのアメリカ自由連盟の最初の財政担当だった。アメリカ自由連盟は上述のクーデター計画を支援していた。

 連盟の創設者の一人は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマン銀行と友好関係にあったプレスコット・ブッシュ(Prescott Bush)上院議員である。ブッシュは、ヒトラーともビジネス上のつながりがあった。彼は、ドイツの鉄鋼王フリッツ・ティッセン(Fritz Thyssen)の資産と企業の決済機関として運営されていた投資銀行、ユニオン・バンキング・コーポレーションの7人の取締役のうちの一人であった。1942年10月、アメリカは「敵国取引法」に基づいて、このファシストの戦争営利目的の銀行を押収したが、終戦までその資産を保有するにとどまった。プレスコット・ブッシュは、後に大統領となった二人の父親である。どちらもロシアの富と主権を抑えるために行動した。


§ 第二次世界大戦


 「戦争に負けていたら、戦犯として裁かれていただろう。幸いなことに、私たちは勝者の側にいたのだ」。1945年の東京大空襲をはじめ、日本各地での空爆を指揮したカーティス・ル・メイ(Curtis Le May)将軍はそう語った。

 「任務は成功した。米国戦略爆撃調査団は、「6時間の間に東京で火災によって命を失った人の数は、おそらく人類の歴史上最も多い」と推定している。 The General and World War III | The New Yorker

 ル・メイやダグラス・マッカーサー(Douglass MacArthur)元帥は、広島・長崎への原爆使用は不要と反対したが、ハリー・トルーマンは「主敵」であるソ連に警告を発したいと思っていた。

 戦争による死者は7000万から8500万人(世界人口の3%)、重傷者は数え切れないほどである。ソ連と中国の国民が死者の半分を占めた。中国の死者は1,500万~2,000万人で、人口の3~4%にあたる。ソ連は民間人1600-1800万人、兵士900-1100万人(人口比14%)を失った。重傷者の数もほぼ同数だった。さらに7万の村、1,710の町、470万の家屋を失った。ソ連邦15カ国のうち、ロシアは人口の12.7%を失った。その数は1400万人。うち半数強が民間人であった。ウクライナは700万人近くを失い、500万人以上が民間人で、合計で人口の16.3%を失った。アメリカは民間人12,000人、軍人407,300人(人口の1パーセントの1/3に当たる)を失っただけであった。 World War II casualties – Wikipedia

 ウクライナでは、ヒトラー・ナチスとウクライナのファシストであるステパン・バンデラ(Stepan Bandera)は、特に民間人のユダヤ人、ポーランド人、ロシア人を狙ったので、他の国より多くの民間人が殺された。バンデラは、ウクライナ民族主義者組織の指導者としてドイツのナチスと手を組んで戦った。その後、彼はドイツ軍から離れ、ロシア人とユダヤ人の殺害を続けた。バンデラは、よく知られたアゾフ大隊を含むウクライナ・ファシスト勢力の国家的英雄である。


§ 1945-6 チャーチル-トルーマンは、いわゆる「鉄のカーテン」に核兵器で侵入する作戦をいくつか計画していた:アンシンカブル作戦、ピンチャー作戦、ドロップショット作戦......。

 50年代初頭、400発の核ミサイルがソ連に投下されるべく製造されていた。マンハッタン計画の勇敢な内部告発者クラウス・フックス(Klaus Fuchs)とテッド・ホール(Ted Hall)(その他)は、世界が核兵器の均衡を保つためにと、重要な情報をソ連に提供し、この終末的な侵略を防いだのである。(調査報道ジャーナリストで共同プロデューサーであるデイブ・リンドルフ(Dave Lindorff)が着手したドキュメンタリー映画「A Compassionate Spy(心優しいスパイ)」は必見。‘A Compassionate Spy’ Review: A Nuanced Steve James Documentary – The Hollywood Reporter) そして United States war plans (1945–1950) – Wikipedia)


§ 1947 トルーマンは、スパイ活動や「秘密工作」を行うために中央情報局を設立。

 CIAは何人もの政治指導者を暗殺し、何十もの政府を転覆させてきた。何百万人もの人々を殺してきた。The CIA’s Cult of Death | Dissident Voice

 1974年、トルーマンは伝記作家のメルル・ミラーにCIAについてこう語っている:「間違いだったと思う・・・こんな風になることが分かっていたら、CIAなんか絶対に作らなかっただろう・・・つまり・・・CIAは、完全に独立独歩の、すべてが秘密の政府みたいになってしまった。彼らは誰にも説明する必要がないのだ。」Plain Speaking: An Oral Biography of Harry S. Truman: Miller, Merle: 9780425026649: Amazon.com: Books

 トルーマンは免責事項としているが、冷戦時代の「トルーマン・ドクトリン」の下、彼はロシア移民を含むCIA諜報員をソ連に潜入させた:その目的は
① さまざまな暗殺の遂行、
② 列車、橋、発電所、武器工場の破壊、
③ 文書の持ち出し、
④ 西側工作員の逃亡幇助、
⑤ 共産党と政府内の政治闘争の促進、
である。トルーマンはディープ・ステート(闇の国家)を作り上げた。


§ 1949-54 トルーマン・アイゼンハワーがソビエト連邦打倒のためにNATOを創設。

 1949年8月 米国主導の北大西洋条約機構に12カ国が調印。ベルギー、カナダ、デンマーク(自治州も含む)、フランス、アイスランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、イギリス、アメリカ。 Member states of NATO – Wikipedia

 そして、ル・メイ将軍は、「30日間にソ連の70都市を133個の原爆で破壊し、270万人の死者と400万人の犠牲者を出す」という原爆侵攻作戦を提案した。アメリカの空軍戦略家は、ル・メイが提案した攻撃をこう呼んでいた:「国家の殺戮」。 The General and World War III | The New Yorker

 「カーティス・ル・メイは、ソ連との関係を独自に、秘密裏に、そして超法規的に、高い要求水準に上げ始めていたようだ。ソ連への偵察飛行は、1950年には始まっていた。ル・メイはこれらの飛行を電子的、写真的な情報収集のためだけでなく、ソ連の防空を探るために利用した。 戦争を誘発することになるかもしれないと知りながら、彼はそうしていたのだ。」

 「1954年、ル・メイが一晩でソ連の標的に750個の原爆を投下するノックアウトが可能だと計算した時、国防省兵器システム評価グループは、ソ連とソ連圏の犠牲者は負傷1700万人、死亡6000万人と推定した」。

 ソ連は、この年、東欧を友好国にしたワルシャワ条約を結ぶまで、強硬な対応はしていなかった。ル・メイの戦略空軍によるソ連領内のスパイ飛行の多くは、日本の米軍基地から離陸していた。U.S.ARMEがひどく前のめりに狂気の状態にいた時、私はこれらの軍用レーダー基地のひとつで直接の訓練を受けていた。ル・メイが私の父の崇拝対象であることも私は知った。

 1956年にハンガリーで危機が起こったとき、空軍の軍務将校だった父と私はラジオでそれを聞いていた。そして17歳の私は、高校を中退し、「共産主義と戦う 」ために米空軍に入隊した。日本の米軍レーダー基地で、「偵察飛行」に参加したのだ。ソ連がアメリカやその占領地の上空で同じようなスパイ活動をしたら、それを撃墜するようにという指示だった。私たちの軍務報告では、常にロシア人を人間以下の存在として悪魔化していた。

 ソ連は対話、相互抑制を求めた。ソ連は、同時に、自衛能力を持っていることを示す必要があった。1960年の、メーデーにぴったりのタイミングで、CIAのスパイ機を撃墜した。

 「1960年5月、ソ連社会主義共和国連邦(USSR)がアメリカの偵察機U-2をソ連領空で撃墜し、パイロットのフランシス・ゲーリー・パワーズ(1929-77)を拘束するという国際外交危機が勃発した。アイゼンハワー大統領(1890-1969)は、自国のスパイ活動の証拠を突きつけられ、米国中央情報局(CIA)が数年前からソ連上空でスパイ活動を行っていたことをソ連側に認めざるを得なくなった。ソ連はパワーズをスパイ容疑で有罪とし、10年の禁固刑を宣告した」[2年後、囚人交換で釈放] U-2 Spy Incident – HISTORY


§ 1949中国革命;1950-53,「朝鮮軍事行動」

 1949年10月1日、中国共産党の革命的勝利により、アメリカは世界最大の人口を持つ新たな敵を手に入れた。敗れたアメリカの同盟者、蒋介石(Chung kai Shek)と軍隊は台湾に逃れた。台湾は蒋介石が統治する真の中国であると主張し、現地住民に有無を言わせなかった。アメリカは中国の機能を停止させようとした。「朝鮮軍事行動」は、アメリカ支配対中国、ソ連の社会主義成功の可能性をめぐる代理戦争となった。

 第二次世界大戦後、朝鮮半島は冷戦の最初の軍事衝突となった。1950年、アメリカは北朝鮮が38度線を越えて韓国に侵入したと主張し、トルーマンはより大きな戦争を始めるための口実を得た。

 「日本が降伏するわずか5日前、アメリカのディーン・ラスク(Dean Rusk)とチャールズ・ボネスティール(Charles Bonesteel)は、東アジアにおけるアメリカの占領区域を画定する仕事を与えられた。朝鮮人にはだれひとり相談することなく、朝鮮半島最大の都市ソウルがアメリカ側に位置するように、朝鮮半島を緯度38度線に沿ってほぼ半分に切断することを、恣意的に決めた。ラスクとボネスティールの選択は、戦後の日本統治の指針である「一般命令第1号」に明記された。朝鮮半島北部の日本軍はソビエトに降伏し、南部の日本軍はアメリカに降伏した。」 Why Is Korea Split Into North and South Korea? (thoughtco.com)

 米国が北朝鮮のほぼすべての都市を破壊した後、恣意的に線引きされた38度線はまだ決着がついていない。少なくとも300万人が死亡、その大半は民間人であった。軍人の死者:北朝鮮軍30万人(人口1000万人の12-15%が死亡)、中国軍18万3000人、韓国軍13万8000人、米軍3万3700人である。Korean War – Wikipedia
 ル・メイは、「3年ほどの間に、我々は(北)朝鮮の人口の- 何と!-20パーセントを殺した・・・」と言った。 The General and World War III | The New Yorker


§ 1954-1975,アメリカの対ベトナム-カンボジア-ラオス戦争

 東南アジア戦争はソ連、中国も巻き込んだ。数百万人が死亡。東南アジアはソ連と中国の援助を受け、1975年メーデーの日にアメリカを撃退。

 1954年、アイゼンハワー・ニクソン政権はディエン・ビエン・フーで敗れた南ベトナムをフランスから引き継いだ。フランスはアメリカの核兵器提供の申し出を拒否した。1954年ジュネーブ条約により、2年間南北ベトナムに分割され、1956年に選挙が行われた。

 「東南アジアフランス植民地帝国が崩壊し、ベトナム民主共和国(北ベトナム)、ベトナム国(後のベトナム共和国、南ベトナム)、カンボジア王国、そしてラオス王国などの国家が形成された。南朝鮮北朝鮮中華人民共和国(PRC)、ソビエト社会主義共和国連邦、そしてアメリカ合衆国(U.S.)の外交官たちが、ジュネーブ協定の朝鮮問題に対応した。インドシナ問題については、フランスベトミン、ソ連、中国、アメリカ、イギリス、そして将来仏領インドシナから作られる諸国家との間で協定が結ばれた。この協定により、ベトナムは一時的に2つの地帯に分けられ、北部はベトミンが統治し、南部は当時のバオ・ダイ(Bảo Đại).元皇帝が率いるベトナム国が統治することになった。」1954 Geneva Conference – Wikipedia

 南ベトナムの臨時政権は、選挙に反対していた。第二次世界大戦の元大将で、当時大統領だったドワイト・D・アイゼンハワーは、1956年の選挙実施を拒否した。回顧録『変革への委任、1953-1956』:ホワイトハウス時代』(1963年)372ページに向こう見ずな意見を述べている:

 「私はインドシナ事情に詳しい人と話し、通信のやりとりをしたことがある。彼らの中で、もし、戦闘時に選挙が行われていたら、おそらく国民の80%がバオ・ダイ国家主席ではなく、共産主義者のホー・チ・ミンに投票しただろう、ということに同意しない人物は一人もいなかった。[民主主義なんて、そんなものだ!]


§ 1961年4月、ロシアのユーリ・ガガーリン(Yuri Gagarin)が地球を周回し、アメリカがキューバに侵攻する。

 1961年4月12日、ソ連が27歳の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンを時速2万7千キロで地球軌道に乗せ、新世界を切り開いた日、ジョン・F・ケネディ大統領は記者会見を行った。

 「まず言っておきたいのは、いかなる状況下でも米軍によるキューバへの介入はありえないということです。」「キューバの基本的な問題は、米国とキューバの間の問題ではありません。キューバの基本的な問題は、米国とキューバの間の問題ではなく、キューバ人自身の間の問題である。そして、私はこの原則を遵守することを確認するつもりです。」 (1)

 翌日4月13日、グアテマラからCIA作戦40が発動された。キューバ人亡命者を中心とした1400人の準軍人と一握りのCIA軍人が、キューバ侵攻のために出航したのである。


ユーリ・ガガーリン、平和の鳩を手に世界ツアー

 大気圏に再突入したとき、ユーリは重大な技術的問題に直面し、カプセルから脱出しなければ死に至る可能性があった。高度7,000mで再突入し、ガガーリンは数キロメートル自由落下した後、パラシュートを開いて地上に降り立った。その後、彼は世界一周の旅に出て、地球の素晴らしさを熱く語った。

 2年かけて30カ国で行ったユーリのメッセージ。「軌道上で地球を一周し、私はこの惑星の美しさに驚嘆しました。遠く離れた親愛なる地球に浮かぶ雲とその光の影...地球の豊かな色のスペクトルを楽しみました。水色の光輪に包まれた地球は、次第に暗くなり、青緑色、ダークブルー、すみれ色、そして漆黒へと変化してゆきます。世界の皆さん。この美しさを破壊するのではなく、守り、高めてゆこうではありませんか!」 Russian cosmonaut Yuri Gagarin (inyourpocket.com)

 キューバの農民民兵と新革命軍の一部の部隊は、アメリカの「民主化」のための侵略をわずか3日で鎮圧したのである。それ以来、CIAは数々のテロ作戦、フィデル・カストロ大統領の殺害計画、化学・生物兵器による人間、動物、農作物の殺戮と破壊を企んできた。CIAとペンタゴンの極悪マフィアによる最も陰湿な提案は、偽旗計画「オペレーション・ノースウッズ」だった。Operation Northwoods – Wikipedia

 この計画のために、違法なグアンタナモ海軍基地の数人の職員を、CIAが配置した秘密工作員が殺害する必要があった。一部の犠牲者は、アメリカ人やアメリカに入国しようとしているキューバの亡命者ということになっただろう。非難はフィデル・カストロに向けられただろうし、その後、ペンタゴン-CIA軍は政権交代のための本当の戦争という段取りに移れる。ケネディ大統領はその計画を拒否した。この拒否によって、ケネディ大統領は自らの死刑執行令状にサインしたのである。


§1962年キューバミサイル危機
 
 

 ピッグス湾侵攻後、キューバとソ連政府は、ペンタゴン-CIAの不気味な脅威、おそらく核兵器でキューバを石器時代に戻すという脅迫に対する防衛策として、キューバに核兵器を設置することを決定した。The Cuban Missile Crisis: A Timeline – HISTORY

ヴァシリ・アルキポフ大尉が、おそらく世界を核兵器による終末から救っている。

 1962年10月、アメリカの察機がキューバに核ミサイルが設置されているのを確認した。ペンタゴンとCIAは、核兵器でキューバとソ連を侵略することを望んでいた。米国領土に近い核兵器は許されない。ケネディ大統領が「何人のアメリカ人が死ぬことになるのか」と尋ねると、軍国主義者たちは100万人といういい加減な数値をあげた。ケネディはそれ以上の犠牲が出ることがわかっていた。核による対応の代わり、彼はキューバの海上封鎖を命じ、ニキータ・フルシチョフ(Nikita Khrushchev)首相にすべてのミサイルを撤去するよう要求した。交渉中、核ミサイルを1発ずつ積んだロシアの潜水艦4隻がキューバへ向かっていた。これらの潜水艦は、多くのアメリカ海軍の艦艇によって追跡された。1隻のロシア潜水艦K-19には、深海爆雷が投下された。彼らの通信は遮断された。大尉たちは戦争が始まったと思い、ミサイルを発射することを話し合った。ヴァシリ・アルキポフ大尉は、ミサイルを発射しないよう周囲を説得し、彼らはロシアに帰還した。2週間にわたる交渉の末、ロシアはミサイルを撤去することになった。アメリカは、キューバへの再侵略をしないこと、トルコから核ミサイルを撤去することを約束した。

 翌年の11月22日、世界平和を希求するケネディがCIAによって白昼堂々殺害された。その5カ月前の6月10日、ケネディはアメリカン大学で講演を行っていた。


「私はCIAを粉々に粉砕し、風の中に吹き流してしまうだろう。」

 「私が考える平和、私たちが求める平和とはどんなものでしょう?アメリカの戦争兵器によって世界に強制されるパックス・アメリカーナではありません。墓場が支えている平和や奴隷制度の維持の上で成り立つ平和でもありません。私は真の平和について話しているのです。地球上の生命を生きがいのあるものにするような平和、人と国が成長し、希望を持ち、子供たちのためによりよい生活を築くことができるような平和、単にアメリカ人のための平和ではなく、すべての男性と女性のための平和、単に現代における平和ではなく、すべての時代の平和についてなのです。」

 「私が平和について語るのは、戦争がこれまでにない様相を示しているからです。全面戦争は全く意味をなしません。というのも、今は大国が、大規模で、他国に倒されることのない核戦力を維持できているからです。そのため、軍に頼らなくても、降伏することを拒否できる時代なのです。」Speec on peace delivered by President John F. Kennedy – Peace Corps Worldwide

 ケネディの副大統領リンドン・ベインズ・ジョンソン(Lyndon Baines Johnson)は、その流れを理解した。大統領になったジョンソンは、あまり乗り気でないアール・ウォーレン(Earl Warren)最高裁判事に調査委員会の長を命じた。調査委員会の主任にはアレン・ダレス(Allen Dulles)が任命された。ケネディは、ピッグス湾事件での失態を理由に彼をクビにしていた。ダレスはケネディを嫌っていた。

 リー・ハーヴェイ・オズワルド(Lee Harvey Oswald)という一人の男が一発の「魔法の弾丸」で大統領を殺害したという政府の嘘を、騙されやすい米国民でさえ信じていないのである。1976年の世論調査で、陰謀であったと考える人の割合は81%と、最も高かった。オズワルドの殺害50年後でも、61%が複数の人物が関与していたと考えている。犯人はマフィアか連邦政府かCIAか、あるいはその三者のうちの二者、あるいは三者全てによる共謀だ、などという意見もあった。 Majority in U.S. Still Believe JFK Killed in a Conspiracy (gallup.com)

 内部犯行である証拠は山ほどある。The One Paragraph from the JFK Assassination Files that Reveals Everything – Page 3 of 3 – Truth And Action

 オリバー・ストーン監督の2作品:「JFK」と「JFK再検討」。CIAの幹部、ハワード・ハント(Howard Hunt)が共犯者の名前を挙げている。 Who Killed JFK? The Last Confession of E. Howard Hunt – Rolling Stone。関係したマフィアのボスの一人、サム・ジャンカナ(Sam Giancana)も共犯者の名前を挙げている。
Amazon.com: Double Cross: The Explosive Inside Story of the Mobster Who Controlled America: 9781510711242: Giancana, Sam, Giancana, Chuck, Giancana, Bettina, Newark, Tim: Books
 CIAは、キューバ人に対する破壊工作と秘密戦争を続けている。生物化学兵器を使って、人間、豚、鶏、植物に致命的な病気を引き起こしたことさえあるのだ。この歴史をここで説明する余裕はない。参照:Backfire: The CIA’s Biggest Burn: Ridenour, Ron: 9780962497513: Amazon.com: Books,第4章「細菌戦士」。

§1964 トンキン湾の嘘がベトナム、カンボジア、そしてラオスでの全面戦争へ

 ケネディの晩年、彼はキューバとベトナムの指導者に静かに近づいた。彼らとの戦争から手を引くため、彼らからどんな支援が可能かを探るためだった。彼らが自分たちの主権を維持できるように、というのが目的だった。兵器産業、ウォール街、国防総省、CIAは、このような「裏切り」を許さないだろう。

 ジョン・ケネディが暗殺された後、リンドン・ジョンソンは、アメリカ軍の船が北ベトナムかその近くで攻撃を受けたという嘘をついた。この嘘によって、議会は「トンキン湾決議」を可決し、全面的な戦争権限を認めることになった。The Gulf Of Tonkin Incident: The Lie That Sparked The Vietnam War (allthatsinteresting.com)

 ベトナム国民は、1975年のメーデーに、米軍とその代理人である南ベトナム政権を打ち破り、解放を勝ち取った。何百万人ものまともなアメリカ人が、長年にわたってアメリカの無謀な侵略に抗議してきた。同時に、世界の多くの国々で何百万という人々の抗議があった。ダニエル・エルズバーグ(Daniel Ellsberg)は、戦争屋世界の人間だったが、我々の側に立ち、ペンタゴン・ペーパーズの偉大な内部告発者となったのである。Pentagon Papers | National Archives そして The Pentagon Papers: Secrets, lies and leaks – Reveal (revealnews.org)

 ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)はエルズバーグ同様の道を歩いている。エルズバーグは、12年前に戦争メーカー体制がジュリアンを初めて逮捕して以来、ずっと彼の支援活動をしてきた。エルズバーグは、アメリカの戦争に抗議して何度も逮捕されている。私たち反戦活動家は刑務所を満杯にし、もっと早く戦争から撤退するよう米国政府を説き伏せる補助をした。結局、350万から500万人もの人々が亡くなった。そのうち米軍の死者はわずか58,000人。CIAのフェニックス計画で、1965年から1972年の間に約4万人のベトナム人愛国者たちとその家族を一人ずつ選びだして暗殺した。アメリカは戦争期間中、ベトナム/東南アジアに860万人の軍人を送り込んだ。Vietnam War casualties – Wikipedia

(ゴルバチョフ、レーガン、そしてブッシュが関係する期間の歴史については省略)


§アフガニスタン/ソビエト/アメリカの戦争 1978-89年


 私は2017年、ロシアの駐デンマーク大使、ミクヤイル・ヴァーニン(Mikjail Vanin)にインタビューした。彼は私に次のように語った。「ロシアのアフガニスタン戦争は、イデオロギーと拡張主義に基づくものでした。大きな間違いだったのです!ロシアはこの国の本当の歴史と文化を知らずに、アフガニスタンの地に足を踏み入れたのです。この国はあまりに封建的であったため、社会主義社会への転換は不可能です。実際それは無理です。マルクスの分析にも合っていません。」

 「しかし、ロシアは侵攻しませんでした。私たちはアフガニスタン政府から、テロリズムに資金を提供し武装させた外国勢力(米国)の支援を受けた反革命的な家父長制に対抗する支援を何度か要請されました。私たちは恐ろしい代償を払いました。今でも恐ろしい代償だったと感じています。この紛争で、ロシア国民の生命とロシア経済などに数々の損失を被ったために、国内の反対運動が起こりました。私たちは経済的な安定を失いました。この戦争で我々はほぼ破滅し、ソ連の崩壊に影響を与えたのです。」

 1978年4月27日~28日、共産主義者率いるアフガニスタン人民民主党(PDPA)がサウル革命を起こした。モハメド・ダウド・ハーン(Mohammed Daoud Khan)政府が転覆された。この政府は1973年にクーデターを起こし、伝統的な家父長制に基づく独裁的な一党独裁体制を確立していた。Saur Revolution – Wikipedia.

 社会主義路線を開始すると、10月令で「男女平等」が認められ、家父長制のムジャヒディンの武装騒動が始まった。CIAは、資金、武器、訓練で介入した。CIAとそのパキスタン側同伴者である総合情報局(Inter-Services Intelligence)(ISI)は、ジハード主義の若者がタリバン(知識を求める学生という意味)を始めるのを助けた。中国もまた、彼らに資金援助した。9/11の後、アメリカはタリバン政府を打倒した。米国はまた、サウジアラビアの富豪オサマ・ビン・ラディン(Osama bin Laden)を支援し、彼は後にアルカイダを結成して、彼を指導した人々を恐怖に陥れた。

 父ブッシュ時代のCIA長官、子ブッシュ時代の国防長官であったロバート・ゲイツ(Robert Gates)は、米国の関与をこう説明する。1979 年 3 月、「CIA はアフガニスタンに関するいくつかの諜報活動の選択肢を米国国家安全保障会議の SCC(特別調整委員会)に送った」。3月30日の会議で、米国防総省のウォルター・B・スロコンベ(Walter B. Slocombe)代表は「アフガニスタンの反乱を継続させ、『ソビエトをベトナムの泥沼に吸い込む』ことに価値があるのか」と質問した。 From the Shadows: The Ultimate Insider’s Story of Five Presidents and How They Won the Cold War: Gates, Robert M.: 9781416543367: Amazon.com: Books

 ソ連がアフガニスタン政府の要請を却下してから、新しい世俗的な国家を守るためにしぶしぶ軍隊を派遣するまで、20ヶ月もかかったことは重要な点である。アメリカは、平等な権利よりもジハードや家父長制を優先した。米国の戦争メーカーは、アフガニスタンでの出来事を喜んでいた。ちょうど今日のウクライナとロシアの戦争を喜んでいるように。しかし、今回の戦争は「ソ連・ベトナムの泥沼」にはならないだろう。むしろ世界勢力の分裂が生じており、第三次世界大戦の火柱が次から次へと立ち上るのではないか、と私は心配している。フィンランドも、今、挑発的にそのような動きをしている。

 1980年にロナルド・レーガン(Ronald Reagan)が当選すると、レーガン・ドクトリン(トルーマン・ドクトリンのようなもの)を制定し、世界中の反共勢力を支援した。ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)がソ連首相に就任すると(1985年3月~1991年12月25日)、彼はアフガニスタン戦争の終結を目指し、イラン・イラク戦争の解決に望みをつないだ。ソ連はイランを支持し、アメリカはイラクを支持した。レーガンはと言えば、無慈悲なニカラグアの反政府勢力に資金を提供するために、アメリカの敵であるイランに武器を売るという不誠実で、違法なイラン・コントラ取引を行った。
Iran-Contra Affair – HISTORY

 ゴルバチョフは、アフガニスタンの占領を「血が止まらない傷」と呼んだ。1989年2月に最後のソ連軍が退去したが、戦火は1992年まで続いた。アフガニスタンとソ連の戦争では、62万人のソ連軍が従軍し、14,453人が死亡、53,753人が何らかの傷を負った。アフガニスタンの死者はムジャヒディン、政府軍、非戦闘員合わせて約150万人。非戦闘員を中心に約300万人の重軽傷者が出た。ロシアの日刊紙「ロシア・ビヨンド」(Russkaya Semoyorka)は、2017年に、この戦争で年間20~30億ドルの費用がかかったと書いた。つまり総計180億ドルから270億ドルということになる。

 これらの戦争にもかかわらず、ゴルバチョフはレーガンを説得し、双方がすべての核兵器を廃棄し、ソ連がNATOに加盟すれば、すべての人がより安全になることを伝えようとした。ウォール街とペンタゴン/CIAは、そのような平和な状態を容認することはなかった。それでも、ゴルバチョフはレーガンを説得し、1987年に中距離核条約を締結させた。INF条約は、両国が保有する陸上弾道ミサイル、巡航ミサイル、射程500~1000キロの短中距離ミサイル、1000~5500キロの中距離ミサイル発射機をすべて禁止したのだ。この条約は、空や海から発射されるミサイルには適用されなかった。次の共和党ドナルド・トランプ大統領は、2019年に、この条約をほごにした。Intermediate-Range Nuclear Forces Treaty – Wikipedia.

 レーガンはまた、戦略兵器削減条約にも同意し、ジョージ・H・W・ブッシュは1991年に署名した。この条約が完全に実施されると、当時存在していた戦略核兵器の約80%が撤去されることになった。この条約により、米国は約8,556発、ソ連は約6,449発の核弾頭に制限された。米国とロシア連邦は2026年2月4日まで条約を延長することに合意している。Strategic Arms Reduction Treaty of 1991 (U.S. National Park Service) (nps.gov)


§グラスノスチ―ペレストロイカ

(以下は拙著『ロシア平和への脅威:厳戒態勢のペンタゴン』12章からの引用)

 ゴルバチョフは、ロシア社会は開放と福祉の充実が必要であると気づいた。アフガニスタン戦争やイラン・イラク戦争、そしてアメリカの兵器増強に対応するには途方もない費用がかかるからだ。ゴルバチョフは、地方、地域、共和国の統制を強化し、メディアの報道を許可し、公務員官僚主義や行政府の腐敗を減らすことによって、国の経営をより透明化し、過剰に支配していた官僚たちの支配の輪を回避しようとしたのである。

 ロシアのメディアは、これまで報道されなかった問題、すなわち、貧弱な住宅事情、食糧不足、アルコール中毒、公害の蔓延、忍び寄る高死亡率、多くの女性が低い地位に置かれていること、さらに国民に対する国家犯罪を暴露し始めた。しかし、このことは、国民の幻滅を助長し、国民はアメリカやヨーロッパの文化・政治に対する好奇心をより強くもつことになった。ペレストロイカは、省庁の独立性を高め、企業の独立採算を認め、いくつかの市場的改革を行った。しかし、ペレストロイカの目的は、中央集権体制を終わらせることではなく、社会主義をより効率的に機能させ、市民のニーズをよりよく満たすことにあった。

 ロシアや他の社会主義国、例えば私が8年間住んだキューバでは、多くの共産主義者が、これらの改革は遅すぎるし、崩壊を促進すると考えていた。崩壊は、実際に起こった。

 ゴルバチョフの当初の目標であった、共産党の部分的支配を維持したままのソビエト連邦の改革は失敗していた。根本的な問題を解決しない改革は、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、チェコスロバキアを中心とするいくつかのワルシャワ条約加盟国でも不和と暴力につながった。1990年3月、ハンガリーは複数政党制を合法化した。東ドイツ、ブルガリア、ルーマニア、チェコスロバキアがこれに続いた。

 アゼルバイジャン、ジョージア、そしてウズベキスタンを構成国とする共和国で内紛が拡大。リトアニアは独立を模索した。1989年から90年にかけて、ゴルバチョフは中央アジアのいくつかの共和国で血なまぐさい民族間抗争を軍事力で抑えたが、共和国の合法的な分離独立を規定する仕組みを導入した。

 1990年、ゴルバチョフは、党から選挙で選ばれた政府機関への権力移譲を加速させた。3月15日、人民代議員会議がゴルバチョフを、広範な行政権を持つソ連大統領(新たに創設された役職)選出した。議会は、憲法で保障された共産党の政治権力独占を廃止し、他の政党を合法化する道を開いた。1990年、「和平の過程における主導的役割」が評価され、ノーベル平和賞を受賞した。


§米国/NATOのゴルバチョフへの約束-ソビエト連邦を解体するための新たな嘘

 この激動の時代に、米国と西ドイツの首脳は、NATOがソ連に接近しない可能性をゴルバチョフと議論し、ゴルバチョフのNATO加盟案が検討された。

 「ベーカー米国務長官はNATOの拡大について「1インチたりとも東進しない」という有名な約束をした。1990年2月9日にソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領と会談した際のことだった。それは1990年のドイツ統一の過程から1991年にかけて、西側指導者がゴルバチョフと他のソ連高官に与えたソ連の安全に関する確約の数々の一部である 。」

 2017年12月12日、ジョージ・ワシントン大学に拠点を置く国家安全保障文書館が、米国、ソ連、ドイツ、イギリス、フランスの機密解除文書を含むこの情報を掲載した。NATO Expansion: What Gorbachev Heard | National Security Archive (gwu.edu)

 「ブッシュ大統領は、1989年12月のマルタ会談で、東欧の革命が起きているが、アメリカはそれに乗じてソビエトの利益を損ねるようなことはしない(「私はベルリンの壁の上で小躍りして跳ね回ったことはない」)、とゴルバチョフに太鼓判を押した。しかし、その時点ではブッシュもゴルバチョフも(あるいはこの問題については、西ドイツのヘルムート・コール首相も)、東ドイツの崩壊やドイツ統一の速度がそれほど早くなるとは思っていなかったのだ。」

 「この文書は、1990年初頭から1991年にかけて、複数の国の指導者が中・東欧のNATO加盟を検討し、そして受け入れない流れになっていたことを示すものである。[また]、①1990年のドイツ統一交渉の文脈におけるNATOの議論は、東ドイツの領土の状況に狭く限定されていたわけで全くなかったこと、そして②その後のNATOの拡大が間違った方向に向いているというソ連とロシアの不満は、最高レベルの同時代の談話メモや通話メモに書かれていたことが根拠となっている。この2点もこの文書には示されている。」


1990年5月31日、ワシントン・サミット開催後、ホワイトハウスの芝生で盛大にセレモニーが行われ、ブッシュ大統領からミハイル・ゴルバチョフへの正式な挨拶が行われた。(出典:ジョージ・H・W・ブッシュ大統領図書館 P13298-18)

 「西側諸国の指導者によるNATOに関する最初の具体的な保証は、1990年1月31日、西ドイツのハンス・ディートリッヒ・ゲンシャー(Hans-Dietrich Genscher)外相は、バイエルン州のツツィングにおける重要な公開演説で、ドイツ統一に関する論議の口火を切った。ボンの米国大使館(資料1参照)は、ゲンシャーが「東欧の変化とドイツ統一プロセスが『ソ連の安全保障上の利益の減損』につながることがあってはならない」と明言したことをワシントンに伝えた。したがって、NATOは「東方への領土拡大、すなわちソ連国境に近づけること」を排除すべきである」。ボンの電報は、また、ゲンシャーの提案として、NATOに統一されたドイツにおいても、東ドイツ領をNATOの軍事機構から除外することに言及していた。

 「ドイツ民主共和国領土の特別な地位という後者の考え方は、1990年9月12日に2プラス4(両独と戦勝4カ国)外相によって署名された最終的なドイツ統一条約に成文化されたものである。前者の「ソ連国境に近づく」という考え方は、条約ではなく、ソ連と西側の最高レベルの対話者(ゲンシャー、コール、ベーカー、ゲイツ、ブッシュ、ミッテラン、サッチャー、メジャー、ヴォルナーなど)が1990年から91年にかけて保証を与えた複数の会話メモに書き記されている。[これらの会談や覚書が保証しているのは]ソ連の安全保障上の利益保護と、ソ連をヨーロッパの新しい安全保障構造に組み込むことであった。この2つの問題は関連していたが、同じではなかった。その後の分析では、この2つを混同し、議論はヨーロッパ全体を包み込んだものではなかったと主張されることもあった。(しかし)以下に公表された文書は、それがヨーロッパ全体を包み込んだものであったことを明確に示している。」 (2)

 1991年3月17日、ロシア政府は、ソ連史上初の国民投票を実施した。それは、ソ連邦を継続するか否かを問うものであった。

 「アルメニア、エストニア、ジョージア(ただし、アブハジアは98%以上の賛成、南オセチア、ラトビア、リトアニア、モルドバ(トランスニストラ、ガガウジアは除く)は当局が投票をボイコットしたが、ソ連の他の地域では投票率が80%であった。国民投票の問いは、参加した他の9つの共和国すべてで80%近くの有権者に承認された)。1991 Soviet Union referendum – Wikipedia.

 NATOがソ連を脅かさないことを保証したこと、そしてワルシャワ条約加盟国の多くが不満で結束が取れず、生産性も損なっていたため、ゴルバチョフは1991年7月1日にワルシャワ条約を解除した。この時、共産党政権の一部の強硬派は動揺し、政権を奪おうとした。クーデター未遂は1991年8月19日から21日のわずか2日間であった。1991年6月12日に行われた大統領選の最初の人気投票で選ばれたロシアの新大統領、ボリス・エリツィンが率いる市民の抵抗運動が効果的にこれを鎮圧したのである。エリツィンはゴルバチョフの盟友であると同時に批判者でもあった。クーデターは崩壊し、ゴルバチョフが政権に復帰したものの、この事件はソ連を不安定にし、その崩壊の一因となった。

 1991年のクリスマスの日、ゴルバチョフは友人のブッシュ大統領に電話をかけた。

ゴルバチョフ:約2時間後、私はモスクワのテレビで、私の決断について短い声明を発表します。...最初は副大統領として、次に米国大統領としてのあなたと一緒に仕事をしたことを非常に高く評価していることを、あなたに申し上げたい。私は、連邦のすべての指導者、そして何よりもロシアが、米ソ2国の指導者たちの間にあって、あなたと私がどのような財産が生み出してきたかを理解してくれることを願っています。この重要な資本の源泉を維持し、拡大する責任を指導者たちに理解してほしいのです。どのような国家を創設するかについての我々の連邦における議論は、私が正しいと思っていたこととは異なる方向に進みました。しかし、私は、この新しい連邦が効果的なものとなるよう、自分の政治的権限と役割を果たすと申し上げておきます。

ブッシュ:ミハイル、まず、この電話にどれだけ感謝しているかを言わせていただきたい...私たちの関係は変わらないでしょう。特に、この冬に問題が深刻化する可能性のあるロシア共和国とはそうです。あなたが森に隠れるようなことをせず、政治的に積極的であることをうれしく思います。それが新しい連邦のためになると、私は全幅の信頼を寄せています。」

 翌日、ソビエト連邦は解体された。11の共和国が独立した:アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、カザフスタン、キルギスタン、モルドバ、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタンである。バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は再び独立した。ソ連の他の地域はロシアとなった。アルバニアとユーゴスラビアは共産主義国家でなくなった(1990~1992年)。同時期、アメリカ/NATOはユーゴスラビアを5つの国に分割した:ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、マケドニア、スロベニア、ユーゴスラビア連邦共和国(セルビア・モンテネグロ)である。


§ 1991-1999 エリツィン-クリントン ロシアの主権を弱体化させる。NATOは東進しないとの約束を破った

 ボリス・エリツィンは直ちに、古典的な新自由主義資本主義経済をモデルとした反革命を開始した。まず、ロシア国内の共産党の活動を禁止した。アメリカは小躍りした。ブッシュ大統領に続き、クリントン大統領も経済と政治のトップ補佐官を送り込んできた。かつては強大な独立国であったこの国に、アメリカ企業が群がった。

 エリツィンは、ソ連が多くの国々に与えていた援助のほとんどをカットした。当時私が住んでいたキューバは、「平時の特別期間」に突入した。キューバは一夜にして輸出の85%と、ソ連諸国からあった食料供給の63%を失った。政府は一部の統制された市場経済対策に門戸を開いた。米国の対キューバ封鎖にあえて逆らう非米国人資本家には、外国投資が許可された。米国は、キューバと取引する外国資本主義企業に罰金まで課している。彼らは、アメリカと取引を続けるために、金を払い、キューバとの取引を止めなければならないのだ。

 何千人ものキューバ人が栄養失調で視力の一部を失った。ラテンアメリカの国々や他の地域で多く見られるように、誰も飢えることはなかったが、空腹のまま寝ることもしばしばだった。多くの社会事業は削減されなければならなかったが、無料の教育や医療は、薬の数は減ったとはいえ、削減されることはなかった。

 ロシアでは、経済の総転換により、国民の財産と富の多くが少数の人々の手に渡った。その多くはかつて共産主義者であった。大富豪、億万長者のオリガルヒたちは、自分たちを19世紀の強盗男爵になぞらえている。

 1993年4月、クリントン・エリツィンは最初の会談を持った。全部で18回行われた会談の最初だった。その直後、憲法危機が発生した。すでに何千万人を貧困に陥れた混沌とした経済に対して、大半の国会議員がてんやわんやだった。

 10月には、兵士と市民が街頭でデモを行い、衝突した。エリツィン派のデモ隊は、国会周辺の警察線条網を撤去し、市長室を占拠し、オスタンキノ・テレビセンターに突入しようとした。当初、陸軍のほとんどは中立を宣言していた。しかし、その一部は国会を支持した。しかし、ほとんどの将兵たちは危険な橋を渡ることは望まなかった。10月4日朝、エリツィンの命令で、将軍たちは兵士たちに最高会議ビル(ホワイトハウス)への突入を指示した。正午までに軍隊はホワイトハウスを占拠し、抵抗する議員たちのリーダーを逮捕した。「第二次十月革命」とも呼ばれるこの革命は、1917年10月よりもはるかに多くの流血を伴うものであった。政府の推計では、死者187人、負傷者437人である。政府以外の発表では、死者数は2,000人にものぼるという。議員を含む多くの死者は、エリツィンが議会の爆撃を命じた時に発生した。

 欧米の政治指導者とそのマスメディアは、この死者数を「民主主義のために必要なこと」として拍手喝采せんばかりだった。小国ながら疑いなく忠実な属国であるデンマーク(著者は現在ここに住んでいる)でさえ、エリツィンの勝利を歓迎した。デンマーク外相ニールス・ヘルビック・ペーターゼン(Niels Helvig Petersen)は、エリツィンは「我々の希望だ。彼は民主主義の発展を保証してくれる」と述べた。

 ジョージ・H・W・ブッシュ(父)は、東進しないという約束を密かに取り消し、クリントンに汚れた行為を始めさせた。1999年、クリントンはチェコ共和国、ハンガリー、ポーランドを追加した。ジョージ・W・ブッシュ(子)はブルガリア、ルーマニア、エストニア、ラトビア、リトアニアに加え、スロバキアとスロベニアを追加した。(3)

 ゴルバチョフは愚かにも、クリントンの側近と米国企業にロシア経済の大半を支配させた。米国のアグリビジネスは、かつては自給自足の国であったロシアに食料を輸出した。その結果、1998年までにロシアの農場の8割が倒産した。まだロシアの手元にある経済の一部は、新しい資本主義のオリガルヒが所有することになった。エリツィンは彼らにほとんど税金を払わせなかった。

 1998年7月25日、エリツィンはプーチンをロシア連邦の主要な情報・治安組織であり、KGBを引き継いだ連邦保安局(FSB)の局長に任命した。プーチンはKGBの中佐を務めていた。クーデター未遂に抗議して辞職した。

 1999年8月9日、プーチンは首相代行に任命された。エリツィンもプーチンを後継者に指名する意向であることを表明した。同日、プーチンは大統領選への出馬に同意した。プーチンは正式にはどの政党にも属していなかったが、1999年12月の下院選挙で第2位の得票率(23.3%)を獲得した新党「統一党」への支持を表明した。「統一党」はプーチンを支持した。

 1999年12月31日、エリツィンは突然辞任をした。プーチンが大統領代行に就任した。2000年3月26日、第一回目の投票で4000万票(53%)を獲得した。共産党のゲンナジー・ジュガーノフ(Gennady Zyuganov)が2200万票(30%)、社会自由党ヤブロコの候補者グリゴリー・ヤブロインスキー(Grigory Yavloinsky)が440万票(6%)だった。

 エリツィンの失政が終わるまでに、平均寿命は5年(69歳から64歳まで)縮まった。ロシア人の貧困率は、ソ連末期の1.5%から43.4%に激増した。(プーチン大統領は国家の主権を取り戻し、これを劇的に変化させた。2020年、貧困率は2.9%だった) Russia Poverty Rate 1997-2022 | MacroTrends


§アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)2000プロジェクトと9/11

 PNACは、「衝撃と畏怖」を利用した世界征服のための共和党極右の青写真であった。25人の署名者は、米国に対する巨大な危機、この青写真の執筆者たちが提示した、たぶん「真珠湾攻撃のような出来事」なしには、それが国民の支持を得られず、達成不可能かもしれないことを理解していた。The Twenty Year Shadow of 9/11: U.S. Complicity in the Terror Spectacle and the Urgent Need to End It – Global ResearchGlobal Research – Centre for Research on Globalization

 PNACを支持するジョージ・W・ブッシュ(子)候補が大統領に就任してわずか8ヶ月後、9.11テロが発生した。ブッシュはPNACの執筆者たちの多く要職につけていた。その一人がリチャード・パール(Richard Perle)だった。

 真のジャーナリスト、ジョン・ピルジャー(John Pilger)は、パールがレーガン大統領の顧問をしていた時にインタビューしたことがある。ピルジャーはこう書いている:

「パールが『全面戦争』について語ったとき、こいつは狂人だ、とほっておいた。しかし、それは間違いだった。彼は最近、アメリカの『テロとの戦い』を説明するときに、再びこの言葉を使ったのだ。「段階は踏まない。これは全面戦争だ。我々は様々な敵と戦っている。たくさんの敵がいる。まずアフガニスタンをやる、次にイラクをやる......というのは、まったく間違ったやり方だ。もし、私たちが抱いている世界ビジョンをただ前面に押し出し、そしてそれを完全に受け入れ、そして小賢しい民主主義をつなぎ合わせることはせず、ただ全面戦争を行うのであれば......今後何年も経ってから、我々の子供たちは我々について素晴らしい歌を歌うだろう。」New Statesman – John Pilger reveals the American plan (archive.org)

 19人の外国人-サウジアラビアから15人、アラブ首長国連邦、エジプト、レバノンから4人-が、世界で最高の軍隊を持ち、監視が行き届いた国の4か所でどのように攻撃を成功させたか、まさに信じがたいことである。 Our Mission – 911Truth.Org, そして World Trade Center Building 7 Demolished on 9/11? | AE911Truth

 あの謎の爆破の後、アメリカが望むどんな戦争も、西側諸国の政府と国民は受け入れることができた。この20年間、ブッシュのアメリカ例外主義者のスローガンは現存している:

「あなたは我々の側につくのか?それともテロリストの側につくのか?」

§2001-2022 アメリカのアフガン戦争とプーチン大統領の方針

 西側の政治家とその主流メディアは、プーチン大統領がどれだけ米国やNATOとパートナーになりたがっていたか、2022年2月24日までどれだけ努力したか、を伝えようとしない。米帝がその指導者たちが望んでいたもの、つまり「テロとの全面戦争」を開始することを可能にした9/11という新たな真珠湾攻撃を手に入れたとき、プーチン大統領はブッシュ大統領に電話をかけ、私はと妻と、殺された人々のために祈っていると言った。そして、タリバンとの戦いへの援助を申し出た-これはひどい間違いだ。

 米国がロシアに対して破壊工作を行った経緯があるにもかかわらず、新大統領プーチンは子ブッシュに、タリバンに関する情報を提供し、アフガニスタン戦争用だったソ連2つの軍事基地の使用を申し出た。

 プーチン大統領は、両国は「敵ではない」と語り、NATO加盟を要請した。「我々は良い同盟国になれる。」 プーチンはブッシュに、CIAがロシアの影響下にある地域で、反政府テロリスト集団を武装させ、訓練し、資金を提供するのを止めることだけを望んだ。

 プーチン大統領は、ジョージ・W・ブッシュ大統領と何度か会談し、二人はお互いを友人と呼び合っている。2001年6月16日、スロベニアで行われた最初の会談で、ブッシュはこう言った。「私は彼の目を見て、彼の魂を感じた。私は彼を信頼することができた。」しかし、プーチンはブッシュを信用できたのだろうか?


 ブッシュはCIAの動きを止めることができなかったし、止めようともしなかった。CIAはロシアの情報機関に書簡を送り、CIAは望むことを続けるだろうと述べた。ブッシュ/ペンタゴン/CIAはまた、ロシアのNATO加盟の申し出を拒否した。NATO加盟の申し出は、U.S.-ARMEとの軍事衝突を終わらせようと3代のロシア大統領が継続的に続けた努力だった。ブッシュ政権は、共和党右派のリチャード・ニクソンとソ連が1972年に署名した重要な対弾道ミサイル条約さえ破棄した。

 エリツィンそしてプーチン両大統領は、NATOが国境を越えて拡張していることに苦言を呈している。「ワルシャワ条約が解かれた後、西側のパートナーたちが提示した確約はどうなったのか。その宣言は今どこにあるのか?」プーチンは2007年のミュンヘン安全保障会議でこう述べている。

 「それを誰一人覚えていないのです。しかし、何が語られたのか、私はみなさまに思い出していただこうと思います。1990年5月17日、ブリュッセルでのヴェルナーNATO事務総長の演説を引用したいと思います。彼は当時、次のように言っています:
ドイツ領土の外にNATO軍を配置しない態勢であるという事実は、ソ連に確固たる安全保障を与えます。
この保証は今どこにあるのでしょうか?」 TRANSCRIPT: 2007 Putin Speech and the Following Discussion at the Munich Conference on Security Policy – Johnson’s Russia List


§ 2008-16バラク・オバマは、ブッシュのアフガニスタンとイラクに対する戦争をすぐに拡大し、さらに5つの戦争を追加した。一度に7つの戦争、これはどの米国大統領よりも多い数である。

 「平和の候補者」バラク・オバマは、多くの進歩的でかつての過激な米国民から支持されていた。しかし、彼はすぐに金持ちの白人の最高のアンクル・トムになった。オバマはブッシュのアフガニスタンとイラクに対する戦争を拡大し、パキスタンの半分、貧困も不平等もない生活をしていた世俗的国家リビア、イエメン、ソマリア、世俗的国家シリアを追加した。(参照: Ron Ridenour: Obama: The Worst President Ever そして Obama And His Seven Wars – Shadowproof, さらにこのCNNも Countries bombed by the U.S. under Obama administration | CNN Politics)

 ロシアの援助がなければ、正統性のあるシリア政府は、アメリカ、ヨーロッパの同盟国、イスラエル、湾岸諸国、トルコによって不法に転覆させられていたことだろう。この寄せ集めの同盟国は、時に最も過激で残忍なイスラム国のテロリスト、アルカイダ、アルヌルサなどを時には支援し、時には戦った。アメリカは今も世俗国家シリアに対して戦争を仕掛け、その石油を盗んでいる。

 プーチン大統領は、アサド大統領に、所有する神経ガスを、化学生物兵器を大量に保有し、それを使用している世界第一のテロ国家(アメリカ)に引き渡すよう説得した。同じ時期に、プーチン大統領はイランに原子力兵器を作らないよう説得した。イラン、米国、フランス、ドイツ、中国、ロシアとの「包括的共同行動計画」は、当初プーチン大統領の仕事であった。この「計画」に従い、イランの核エネルギープログラムの制限と引き換えに、西側のイランに対する経済制裁を解除した。それを止めたのがドナルド・トランプだ。


§ ウクライナはオバマの8つ目の戦争遂行となった

 オバマはあまりに多くの戦争を抱え込んでいたので、ウクライナを副大統領のジョー・バイデンに委ねた。その使命は、米国・EUとロシアの両方と友好的で取引しようとしたヴィクトル・ヤヌコビッチ(Victor Yanukovych)大統領を排除することだった。帝国主義者たちはロシアとの友好的な取引を許さなかった。ヤヌコビッチは去らねばならなかった。

 ブッシュのNATO大使だったビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)は、オバマが連れてきた多くのブッシュによって任命された人間の一人に過ぎない。彼は彼女をヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補にし、バイデンに引き継いだ。その使命は、親ファシストや他の極右勢力、例えばステパン・バンデラを英雄と仰ぐ右派セクターやスヴォボダ-社会国民党とバイデンとのトップの連絡役になることだった。この極右勢力は多くのデモでバンデラを称えている。ヌーランドは、ジェフリー・パイアット(Geoffrey Pyatt)米国大使と協力して、クーデターを準備した。

 2014年2月4日、クーデターの3週間前、彼らは来るべきクーデター政権の座につくべき人物について電話会談を行った。幸運にも、この会話は盗聴され、世界中に送信された。U.S.-ARMEのもとで、誰が次の知事になったのか、必聴。 (927) Nuland-Pyatt leaked phone conversation _COMPLETE with SUBTITLES – YouTube

 ヌーランド-パイアットのクーデター計画決定後、2月後半にユーロマイダンデモが発生し、暴力的になった。主に狙撃手によって100人以上が殺害された。ファシストたちはヤヌコビッチ大統領を殺害しようとした。大統領は逃亡を余儀なくされた。2月22日、アメリカは念願の「政権交代」を果たした。

 「チョコレートオリガルヒ」ペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)は、最右翼で米国に友好的と判断され、大統領に就任した。2015年にまだ大統領である彼は、クーデターによって大統領になったことを認めている。

 「ウクライナのポロシェンコ大統領、ヤヌコビッチ打倒はクーデターだったと発言」 -Global Research - Centre for Research on Globalization

 「ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領が、ウクライナ最高裁判所に対し、前任者のヴィクトル・ヤヌコビッチが違法な作戦によって転覆されたと宣言することを要請:つまりそれは、ポロシェンコ自身の大統領職を含むポストヤヌコヴィッチ政権がそうだということになる。」Ukraine’s President Poroshenko Says Overthrow of Yanukovych Was a Coup – Global ResearchGlobal Research – Centre for Research on Globalization

 ヌーランドの部下の一人で、社会国民会議の共同創設者であるアンドリー・ビレツキー(Andriy Biletsky)は、その後間もなく合体することになったいくつかのファシスト大隊の一つである「アゾフ大隊」を創設した。アゾフはクーデターの過程で多くの警察官を殺害した。その後、彼らはドンバス地方でロシア人に対する戦争を開始した。14,000人以上が殺害された。プーチン大統領は、民族ロシア人からの嘆願にもかかわらず、今年になるまでロシアへの編入を認めなかった。


この「黒い太陽」はアゾフのシンボルのひとつにすぎない。ナチスドイツも使っていた。

 アメリカの軍向けラジオFree Europe/Radio Libertyもアゾフのルーツはファシストと認めている。In Ukraine, Ultranationalist Militia Strikes Fear In Some Quarters (rferl.org)

 クーデター政権の初期、バイデンは生活費を稼ぐために息子のハンターをウクライナに送り込んだ。彼はウクライナの民間エネルギー企業の一つであるブリスマ(Burisma)社の「アドバイザー」としての仕事を与えられた。給与は月給83,000ドル。 Hunter Biden: What was he doing in China and Ukraine? – BBC News.

 親ファシスト政府は、露土戦争の間にロシアが建設したセヴァストポリのクリミア海軍基地(1772-83年)の米国による乗っ取りを承認したのである。もしロシアがグアンタナモ海軍基地の買収に動いたり、メキシコとアメリカの国境に基地を建設したりしたらどうなるか想像してみてほしい。

 2月23日、クーデター派のヤヌコビッチ大統領に逮捕状が出された日、親ロシア派のクリミア人がクリミアの首都シンフェロポリにある政府庁舎を占拠した。3月11日、クリミアのウクライナからの独立を議会が宣言。分離に賛成78票、反対22票の投票を受けてのことだった。3月16日有権者数1,274,096人(投票予定者の83%)の住民投票の結果:1,233,002人がロシア連邦への統合を支持(96.8%)、32,000人がウクライナに残留を支持(2.5%)。

 不正投票の告発はなかった。3月17日 クリミア議会がこの結果を認め、ロシア連邦内の独立国家になることを申請。プーチン大統領は申請を受理し、議会とセルゲイ・アクショノフ(Sergey Aksyonov)の首相就任を承認した。

 住民投票から1年後、資本主義の立場に立つフォーブス誌はこう書いた:

「米国とEUはクリミア人を彼らのために救いたいと考えているかもしれない。しかし、クリミア人は今のままで幸せなのだ。黒海のウクライナ半島の併合から1年、世論調査によると、そこの地元民は、ウクライナ人、ロシア民族、タタール人など、ほとんど全員が一致している。ロシアとの生活の方がウクライナとの生活より良い、と。」One Year After Russia Annexed Crimea, Locals Prefer Moscow To Kiev (forbes.com).

 同時にガーディアン紙の見出し Welcome to Ukraine, the most corrupt nation in Europe | Ukraine | (欧州で最も腐敗した国ウクライナへようこそ)The Guardian

 2018年、私はプーチン大統領の駐デンマーク大使ミクジャイル・ヴァニン(Mikjail Vanin)にインタビューした。拙著『ロシア平和への脅威:厳戒態勢のペンタゴン』の取材のためだった。ヴァニン大使は、米国を「我々の友好国」と呼んだ。私が「米国はロシアを友好国として望んでいないのですが」と指摘すると、ヴァニン氏はクスッと笑った。「まあ、我が国の大統領はまだ希望を持っていますよ 。」これは米国が計画したウクライナのクーデターから4年後の発言である。


(1) “The President’s News Conference of April 12, 1961,” John F. Kennedy, The Public Papers of the Presidents, 1961. (Washington: United States Government Printing Office, 1962, page 259). And “Text of Secretary Rusk’s News Conference, Including Observations on Cuba,” New York Times, 18 April 1961.
(2) “From the Shadows: The Ultimate Insider’s Story of Five Presidents and How They Won the Cold War”, Simon & Schuster, 2007.
(3) Barak Obama added Albania and Croatia. Donald Trump added Montenegro and North Macedonia. Joe Biden is adding Sweden and Finland, which will encircle Russia as much as seas can allow with the exceptions of Georgia and Ukraine, which is why the CIA has been endeavoring to annex those two through terrorist actions and coup attempts. See part two for more of Clinton’s imperial crimes.

米国はウクライナへの武器提供が枯渇(CNNの報道)

<記事原文 寺島先生推薦>

US running low on arms to give to Ukraine – CNN

The Pentagon is reportedly concerned about its stockpiles of artillery shells, as well as air defense and anti-tank missiles

報道によると、国防総省は、砲弾や防空ミサイル、対戦車ミサイルの備蓄を懸念しているという。

出典:RT

2022年11月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月27日



2022年10月11日、英国内での5週間の戦闘訓練期間中に、ジャベリン対戦車兵器を手にするウクライナの補充兵©  Daniel LEAL / AFP


 米国政府内で、ロシアと紛争中のウクライナに、最先端の武器と砲弾を供給し続けられなくなるという懸念が広がっている、とCNNは木曜日(11月17日)に報じた。CNNがインタビューした3名の米当局関係者の話によると、米国がウクライナへの支援に関して直面している問題の中には、武器の備蓄の「減少」していることや、防衛関連業者が国からの要求に応じられない状況がある、という。1人の当局関係者がCNNの取材で語ったところによると、ワシントン当局がキエフ当局に送ることができる余剰備蓄には、「限りがある」とのことだ。

 ワシントン当局が特に懸念しているのは、使用可能な155ミリ砲弾とスティンガー防空ミサイル備蓄である、とCNNは報じている。さらに、武器の生産について懸念している当局者もいる。具体的には、HARMs対レーダーミサイル、GMLRS(誘導型多連装ロケット発射システム)の地対地ミサイル、ジャベリン対戦車システムといった武器だ。

 ただし、CNNの情報筋が断言した内容によると、備蓄の減少により、米国の安全保障が低下することはない、ということだ。それは、ウクライナには、国防総省が不測の事態に備えて米国が保管している武器とは別のものを供給しているからだ。さらに一人の高官はCNNの取材に答え、米国は武器が「枯渇している」と考えるのは主観的な捉え方だとも言っている。そしてそれは、武器が枯渇しているかどうかは、国防総省がどのくらいの危険に対して準備しているかにより決まるからだ、とのことだ。


関連記事: Ukraine asks US for Patriot missiles

 主要な懸念のひとつは、米国の防衛産業が、政府からの要請に応えることに苦労していることだ。いっぽう、欧州各国は、ウクライナに軍事関連機器を送ったために生じた、自国の備蓄武器の不足の補填を完全には成し遂げられていない、と複数の当局関係者は語っている。ただし、状況の改善のために、米国は特定の種類の武器の生産の増加につとめている、とのことだ。

 今年の2月下旬にウクライナでのロシアの特殊軍事作戦が開始されて以来、米国と米国の西側同盟諸国は、軍事安全保障支援として、キエフ当局の何十億ドル相当の武器を供給してきた。いっぽうモスクワ当局は、そのような武器の供給は、紛争を長引かせることにしかならない、と繰り返し主張してきた。

 米国国防総省によると、11月初旬時点で、ワシントン当局は、キエフ当局に1400機以上のスティンガー・ミサイルと、8500機のジャベリン・ミサイル、142機の155ミリ榴弾砲、90万3千発の銃弾を供給しているとのことだ。

米国は同盟国にポーランドのミサイル事故について警告―ポリティコ社の報道

<記事原文 寺島先生推薦>
US warns allies over Poland missile incident – Politico

Officials in Europe were reportedly told to refrain from definitive statements until an investigation is complete

報道によると、欧州の各国政府は、捜査が完了するまでは、明確な声明を出さないよう指示を受けたという。

出典:RT

2022年11月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月27日



2022年11月16日、ポーランドのプシェボドフ村でのミサイル着弾の現場に到着した警察の車両 © AP Photo / Evgeniy Maloletka

 東欧での緊張が高まる中、報道によると、米国当局は同盟諸国に早まった行為を取らないよう求めた。それは今週起こった、ポーランドでのミサイル着弾による死亡事件に関する発言の中でのことだった。これは、ニュースメディアのポリティコ社の報道によるもので、その報道はさらに、同じ伝令がウクライナ政府にも伝えられたと報じていた。

 ポリティコ社がインタビューを行った西側の3名の政府関係者の話によると、ここ数日間、米国が欧州内の同盟諸国、及びウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領府に依頼したのは、このミサイル着弾の原因について話すときは、注意すべきである、という点だった。

 報道によると、さらに米国当局は、緊急の電話を各国政府に入れ、その電話では、米国のNATO同盟諸国に、事件の捜査が実行されるまでは、明確な声明を出さないように求めていた、ということだ。

 米国によるこのような努力がなされたのは、西側各国政府やウクライナ当局が、ウクライナ国境近くにある、ポーランドのプシェボドフ村での爆発事件の責任者は誰であるかについて、論議が重ねられていた中でのことだ。なおこの事件では、2名の方が亡くなっている。西側各国政府当局は、この爆発はおそらく、ウクライナのミサイルによるものだと見ているが、キエフ当局は、ミサイルの出所はロシアである、と主張している。


関連記事: Zelensky aide brushes off fake missile claims

 ポリティコ社によると、これらの声明は、今年2月に、ロシアが近隣国のウクライナに対して起こした軍事行動が起こって以来、「ワシントン当局とキエフ当局の間で、初めて大きな意見の相違がみられた事例だ」という。米国当局は、この亀裂を大きくしないよう努力しているが、ワシントン当局とキエフ当局の間で新たに起こったこの亀裂は、意見の相違が続くならば、表面化する可能性がある、とポリティコ社は報じている。

 元国務相職員のヘザー・コンリー氏によると、ポーランドのミサイル事件にかかわる「混乱」は、米国とNATOとウクライナにとっての、「重要な試金石」になるとのことだ。「私の考えでは、私たちはこの件で非常に貴重なことを学べたと思います。この事件の真相がわかるまでは、何かを表明すべきではありません。というのも、今は非常に危険度が高いからです」と、同氏はポリティコ社の取材に答えている。

 火曜日(11月15日)の着弾事件を受け、ゼレンスキーは、その責めをロシアに帰し、この事件は、「非常に重要な状況の激化だ」と語り、この攻撃はNATOに対する攻撃だとし、反撃を求めていた。ただし、その後、同大統領は主張を弱め、この事件の真相については、「100%わかっているわけではない」と認めた。

 ロシア国防相は、この事件に関する関与を完全に否定し、ロシアの軍専門家現場の写真を分析したところ、ミサイルの破片は、ウクライナが使用したS-300防空システムの一部であると断定した、と述べた。

英米は中央アジアで秘密の生物学的研究を継続中

<記事原文 寺島先生推薦>

The United States and Britain continue secret biological research in Central Asia.

英米は中央アジアで秘密の生物学的研究を継続している。

筆者:ウラジミール・プラトフ(Vladimir Platov)

出典:New Eastern Outlook

2022年10月19日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月24日



 ソ連崩壊後、米国の秘密生物学研究所における軍事研究について多くの出版物があり、その活動を厳格な国際管理下に置くよう様々な要求はあるが、残念ながらこの問題における状況の質的向上は見られない。したがって、先日の第22回SCO(上海協力機構)首脳会議において、中国の国家主席が「生物兵器などの非軍事武器に対する安全保障領域における課題に効果的に対応する」必要性について、ことさらSCO加盟国の注意を喚起したことは驚くには当たらない。2022年のサマルカンド宣言の一環として、SCO諸国は生物兵器禁止条約を厳格に遵守し、効果的な検証の仕組みを提供する同条約の議定書を採択するよう促された。

 ロシアがウクライナの非ナチ化作戦を開始し、同時に、米国の秘密生物研究所での違法な生物兵器開発活動を暴露した後、米国防総省はウクライナで完成しなかった計画をできるだけ早く旧ソビエト地域の他の国々に移そうと考えた。特に、中央アジア(CA)と東欧の国々の領土に関連する地域だ。

 最近、ロシア・トゥデイ(RT)のジャーナリストたちは、米国がキルギスタンの生物研究所で致死性の炭疽菌を研究することを決定したことを突き止めた。この関連で、米国保健福祉省はこの作業に資金を提供し、この目的のために約25万ドルを割り当てることを計画している。米国政府の調達ポータルサイトに公表された入札によると、キルギスタン共和国南部のオシュ市にある地域病院がこの試験の拠点となる予定。同時に、RTは、キルギスタンと米国が、カザフスタン共和国における米国の生物学的研究所の分野で、両国間の新しい協定を交渉していることを思い起こさせた。しかし、(交渉の結果)将来この文書にどんな意味合いや論点が込められるのかに関しては、国民には隠されている。

 この点に関して非常に不穏な情報が最近ウズベキスタンからもたらされた。テレグラム・チャンネルによると、同国に強力な軍事・生物集団を作るために米国の代表が積極的に動いていることが確認されたのだ。特に、米国国際開発庁(USAID)と米国国防脅威削減局(DTRA)の側で、近年ウズベキスタンでの「仕事」が増えていることがそれを物語っている。この問題に関して、本誌はウズベキスタンにおける米国の軍事生物学的活動に関する解説画像を作成した。それはホワイトハウスの主要な政治的敵対者である中央アジア諸国、ロシア連邦、そして中国の安全保障に損害を与える可能性を明確に示したものだ。

 また、米国と英国は、アルマトイにあるカザフスタン中央参考実験室(CRL)で共同研究を続けているという情報もある。2022年初頭、英国は英国の海運会社WN Shippingを通じて、多くのウイルス株のサンプル、実験装置、診断機器などを2022年上半期に出荷している。

 カザフスタンのアルマトイにあるCRLは国防総省の資金で建設され、この施設の敷地内には特に危険な感染性物質の保管場所があり、ペスト、コレラ、人獣共通感染症細菌、そして自然ウイルス病巣感染症の専門研究所の職員によって検査されており、生物学的な危険度は第3レベルである。カザフスタンの公式情報によると、CRLでは米軍の専門家(生物学者、ウイルス学者)は働いていないとされており、2020年1月1日現在、カザフスタンの予算のみで全額が賄われ、所有されている。しかし、実際には、この施設は米国から直接資金提供を受けていないとはいえ、米国の助成金制度を通じて、つまり、国防総省のある計画のもと、米国の利益のために研究が行われているのである。そして、この「協力」は、どうやら、今も停止しているわけではない。

 このことが特に裏付けられるのは、2021年11月5日、カザフスタン産業・インフラ開発省が、とある公開討論の取り組みを開始していたという事実だ。その公開討論の中身は、BSL-4(Biosafety Level 4)の実験室を建築する件についてだった。その実験室では、特に危険な菌株を扱い、地下貯蔵施設も設置されることになっていた。その地下貯蔵施設は、非常に危険なウイルス株の収集のために利用されることになっていた。そしてその実験室は、ジャンビル地域のグバルジェイスキー村に、2025年に建築されることになっていた。この実験室の生物学的安全基準が、BSL-4(Biosafety Level 4)にあるという事実だけでも、この施設が研究対象のウイルスの、人と社会に対する危険度が高いことを示している。つまり、そのウイルスの大半は、取り扱うことが土台無理なウイルスなのだ。

 この計画に対して、キルギス国民はすでに非常に批判的な反応を示している。米国大使館の前には抗議者が集まり、研究所がキルギスタンとの国境近く、ビシュケクからわずか90キロのところに建設されることに憤慨しているのだ。キルギスの専門家たちは、国際生物学研究統制協会とともに、この夏、カザフスタンのカシム・ジョマルト・トカエフ大統領に書簡を送り、国境地帯での生物学研究所の建設を中止するよう要請した。

 明らかに、ワシントンは中央アジアの国々を軍事的な生物学的研究の実験場として確保しておきたい、と強く望んでいる。それゆえ、アメリカはウズベキスタン、キルギスタン、カザフスタン、そしてタジキスタンで同様の計画を展開しようと努力しているのである。同時にワシントンは、タシケント(ウズベキスタン)とアルマアタ(カザフスタン)への関心を高めている。この2カ国は、他の中央アジア諸国と比較してインフラが整備され、有能な人材も多いからである。また、ウズベキスタンに対する米国の関心が高まっているのは、同国がCSTO*に加盟していないため、ワシントンがより自由に行動できるからだ。
CSTO*・・・集団安全保障条約は、1992年5月15日に旧ソビエト連邦の構成共和国6か国が調印した集団安全保障および集団的自衛権に関する軍事同盟である。3か国の新規加盟、3か国の条約延長拒否を経て、2022年時点でロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6か国が加盟している。(ウィキペディア)

Vladimir Platov, an expert on the Middle East, exclusively for the online journal “New Eastern Outlook”.

米国の主要二郡で投票機の不具合があったとの報道

<記事原文 寺島先生推薦>

 Two major US counties report voting machine problems

State capital regions in Arizona and New Jersey had “technical issues” on midterm election day

アリゾナ州とニュージャージー州の州都を含む郡で、中間選挙投票日に「技術的な問題」が発生

出典:RT

2022年11月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月21日


アリゾナ州フェニックス市内のビルトモア・ファッション・パークで、投票を待っている有権者たち。
2022年11月8日撮影©  Kevin Dietsch / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / Getty Images via AFP

 11月8日(火)、アリゾナ州とニュージャージー州の州都を持つ2つの郡で、投票機に不具合が生じたことが報じられ、主に共和党派の有権者から怒りを買っている。報道によると、アリゾナ州のマリコパ郡では、「技術的な問題」が生じたため、集計装置が作動しなくなったという。またニュージャージー州のマーサー郡では、「システムが停止した」と報じられている。両郡とも、使用されていたのはドミニオン社の機械だった。

 「マーサー郡で、郡全体規模でのシステム停止が発生し、現在郡の全地域で投票機が止まっています」と
関係役員が11月8日(火)に述べた、とABC傘下の地元メディアWPVI-TVが報じた。報道によると、マーサー郡は、「ドミニオン社と協力しながら」、この問題の解決にあたっているという。

 マーサー郡には、ニュージャージー州の州都のトレントン市がある。システムが停止になった詳しい原因については明らかにされておらず、「投票機のソフトの問題」であるとのみ報じられていた。

 アリゾナ州マーサー郡の選挙管理委員会によると、223の投票所にある集計機の約5台に1台が、投票を受け付けられなくなっており、有権者に投票用紙を提出しても、集計が遅れる旨の呼び掛けを行っていた。投票機が停止した理由は、パスワードを何度も入力したためだと、東郡選挙監視委員のビル・ゲイツ氏は語っている。 「投票権を剥奪された人は誰もいませんし、このような事態のうらに、不正などがあったわけでは全くありません。ただの技術的な問題です」とゲイツ氏は記者たちに答えていた。

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 共和党アリゾナ州支部代表のケリー・ウォード氏は、こんなにも多くの投票所がこのような事態になっていることは、「馬鹿げている」と述べた。この「技術的な問題」の影響を受けているのは、共和党に投票した有権者に偏っていることが、アリゾナ州当局が出している数値から明らかになっている。マリコパ郡の場合は、郵送で投票せずに、投票日に投票所で投票した人のうち、共和党に投票した人と民主党に投票した人の割合は、4対1だった。 

 マリコパ郡は、アリゾナ州全体の人口の62%を占め、マリコパ郡には州都であるフェニックス市もある。同郡は7月にドミニオン社から新しい投票機を注文したが、これは、同州州務長官であるケイティ・ホッブス氏が、2020年の選挙時に使われていたのと同じ投票機を使った選挙は、認定しないと発言したからだった。この発言は共和党によって行われた監査結果を受けたものだった。なおホッブス氏は、アリゾナ州知事選に民主党員として出馬中だ。

 11月8日(火)に行われた中間選挙により、米国下院全議員435議席、上院35議席、及び米国全50州のうち35州の州知事の議席が改選される。

米国民の意識調査―大半が「米国は制御不能」「状況は悪化する」と回答

<記事原文 寺島先生推薦>

Most Americans think US is ‘out of control’ – poll
A survey finds that 73% of respondents believe things are “going badly” for the country

ほとんどの米国人が、米国は「制御不能の状態」にあると思っている―世論調査
73%の回答者が自国の状況は「悪い方向」に進んでいると考えていることが調査で判明

2022年10月31日

出典:RT

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月21日


© Getty Images / Ariel Skelley

 日曜日(10月30日)発表された世論調査によると、来月の中間選挙に向け、10人中8人近くのアメリカ人が、政府は自国の統制が取れていないと考えているようだ。

 CBS News-YouGovの調査によると、回答者の79%が現在の状況を「制御不能」と見ており、21%がそう思わないと回答した。一方、有権者の73%がアメリカの状況は「やや」または「非常に」悪いと見ており、楽観的な見方を示しているのは26%に過ぎない。

 ジョー・バイデン氏が米国大統領として行っている仕事については、56%の米国人が不支持であり、44%が肯定的な見方をしている。

 また、世論調査では有権者の優先順位が分かれていることも明らかになり、民主党支持者の63%が強い経済よりも民主主義が機能していることの方が心配だと考え、共和党支持者の70%が、経済がより緊急の関心事だと考えていることがわかった。


関連記事:米国の民主主義は破綻している―世論調査

 11月8日の中間選挙が近づく中、世論調査は共和党が下院で過半数を獲得する「良い位置」にいると結論づけ、共和党が合計228議席を獲得する一方、民主党は現在の220議席から207議席に減少すると予測している。

 共和党が勝利した場合、有権者の半数以上が共和党は、米国のエネルギー生産を増加させ、バイデンを弾劾し、中絶を禁止し、選挙での民主党の勝利を覆すと予想している。一方、民主党が下院の過半数を維持した場合、回答者は、民主党は中絶の国家的権利を保証する法案を通そうとする、メキシコとの国境を開く、警察資金を削減する、社会保障を増強する、などの行動をとると予想している。

 この調査は、与党民主党に対する不満が高まっている時期に行われた。多くの有権者が、記録的な高インフレ、ガソリン価格の高騰、不法移民、犯罪率の上昇などに対処できていないとして非難している。今月初め、ブルームバーグ社は独自の経済モデルを引用し、米国経済が今後12カ月で景気後退に入ることは100%確実だと結論づけた。

 CBS News-YouGovの世論調査は、登録有権者2,119人を対象に、10月26日から28日の間に実施された。

「キューバ危機」から60年

<記事原文 寺島先生推薦>

60 years since the Cuban Missile Crisis: How cool heads prevented a Soviet-US naval encounter sparking a nuclear war

キューバミサイル危機から60年:冷静な頭脳が、核戦争の口火となる米ソ海軍衝突を防いだ経過
世界が危険なほど核ハルマゲドンに近づいた時

筆者:フェリックス・リヴシッツ(Felix Livshitz)

出典:RT

2022年10月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月19日


© RT

 今年の10月は、「海中」版キューバ危機から60年目にあたる。これは、数週間後、モスクワとワシントンの間で悪名高い膠着状態を引き起こし、同様に世界を核破壊の瀬戸際に追いやった異常なエピソードである。ウクライナ紛争でクレムリンが核兵器の使用を準備しているという西側の逆上的な非難があり、クレムリン側からは、それに対して気迫を込めて否定する動きがある現在、「キューバ危機」を見直すことが、今ほど重要になったことはない。


高まる緊張
 1962年10月1日、核魚雷を搭載したソ連の潜水艦4隻が、キューバへ向けてバレンツ海のコラ湾を出港した。この小艦隊は、キューバとその周辺に存在する広大なソ連軍を秘密裏に強化し、CIAの「ピッグス湾作戦」(アメリカの支援を受けた反乱勢力がハバナを急襲し、国民に人気のあったフィデル・カストロ共産党政権を転覆させようとした事件)の後、キューバ政府が(モスクワに)要求した防衛ミサイル基地の建設を保護することを目的としていた。


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 潜水艦B-59の副艦長であったヴァシリー・アルキポフ(Vasily Arkhipov)の私的な記録(「キューバ危機」を記念して米国国家安全保障アーカイブが今回初めて公開したもの)によると、移動中の天候は、長時間にわたる潜航が「全般的に外部に知られなくしてくれるようなものだった」。つまり「荒天、低雲、低視界、突風降雪、雨」だったという。

 潜航途中、この小艦隊は「対潜水艦航空機の測位局の活動が、短時間間隔で活発になっている」ことを発見した。しかし、10月18日、ソ連情報部が「フランスのラジオ局からの、ソ連の潜水艦が大西洋に入り、アメリカの海岸に移動しているという通信を傍受」するまで、ソ連の潜水艦秘密小艦隊が外部に気づかれることはなかった。

 「アメリカがどうやって潜水艦小艦隊を発見したのかはよくわかりません・・・しかし、航空機のレーダーで発見されたのではないということは、確信を持って言えます」とアルキポフは主張する。

 その4日後、アメリカのケネディ大統領はキューバ封鎖を発表し、多数のアメリカ海軍の艦船と航空機をキューバ沿岸と大西洋近くに配備し、この地域に接近する外国の潜水艦は識別のために浮上せよとの明確な命令を出した。アメリカ軍の艦艇司令官は、この命令を拒否した艦艇を攻撃するよう命じられた。10月23日、アメリカの潜水艦は、まだ発見されていない艦船を確認するため、付近の偵察を開始した。


FILE PHOTO. John F. Kennedy and Nikita Khrushchev. © Universal History Archive/Universal Images Group via Getty Images

 その結果、「ソ連の指揮官は...完全な警戒態勢をとり、秘密裏に潜航を続けるよう命じられた」とアルキポフは振り返る。

 10月24日、ソ連の潜水艦はキューバ近海の「指定区域」に到着した。ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフ(Nikita Khrushchev)がモスクワのワシントン高官に対し、「もしアメリカ船が公海上でソ連商船を捜索し始めたら、それは海賊行為とみなされ、ソ連潜水艦に妨害するアメリカ船の破壊命令を出すだろう」と言ったまさにその日である。


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 それは途轍もなく緊張した状況だった。そして3日後にはB-59が充電のために浮上することになった。アルキポフの証言によると、浮上したB-59は次のようなことを発見したという:
 「空母1隻、駆逐艦9隻、ネプチューン機4機、トレッカー3機を沿岸警備隊の3つの同心円で包囲・・・潜水艦の展望塔からわずか20~30mの上空での飛行機による偵察飛行、強力なサーチライト使用、自動砲(300発以上)の射撃、水中爆雷投下、駆逐艦による危険な(近)距離での5潜水艦前割り込み航行、潜水艦への標的砲、拡声器を通しエンジン停止を怒号で命令。」

 それは、明らかに仰天するような武器を次々と使用した敵対行動の連続だった。アルキポフの言葉を借りれば、「米軍のあらゆる挑発行為」がB-59の乗組員を待ち受けていた」のである。潜水艦の司令官ヴァレンティン・サヴィツキー(Valentin Savitsky)は、遭遇した反応の大きさに衝撃を受け、目がくらんだ。このような状況では、敵に向けて核弾頭を発射する準備として「緊急潜航」を実行することが規定されていた。

「航行中、武器は戦闘可能な状態にしておくこと。海軍総司令官の通常兵器の使用命令、または潜水艦への武力攻撃があった場合に備えて。」と、当時のソ連の戦闘指示書は説明している。


関連記事:’Jiving today,accused of treason tomorrow’:How Russian jazz survived communist repression to clebrate 100 years

 危うくそうなるところだった。多数の乗組員がその後何年にもわたって証言しているが、サヴィツキーは、パニック状態になり、自分たちが攻撃されていると信じ込んで、潜航を命じ、第三次世界大戦への引き金になる、命取りの魚雷発射を求めた。しかし、現実にはそうならなかった。なぜか?


(司令官より)冷静な頭脳が勝(まさ)った
 「潜航した後だったので、飛行機が潜水艦を撃っていたのか、その周りを撃っていたのか、という疑問は誰の頭にも浮かばなかっただろう。それが戦争だ。しかし、飛行機は展望塔の上を飛んでいて、発射の1~3秒前に強力なサーチライトを点灯し、甲板にいた人たちの目が痛くなるほどだった。衝撃だった」とアルキポフは振り返る。「(ザヴィツキー)司令官といえば・・・・何が起こっているのかまったく理解できなかったのだ。」

 世界にとって幸運だったのは、司令官ザヴィツキーが世界滅亡を招く命令を発した時、アルキポフはまだ展望塔にいたのだ。彼がもしその時展望塔にいなかったら、この地球が今のまま存在している可能性は薄かったろう。アメリカ側が、実際は潜水艦に警告信号を発し、攻撃していないことを確認したアルキポフは、そんな事情ではだれでもパニックになるのは無理なからぬサヴィツキーをなだめ、彼の命令が潜水艦の魚雷担当の士官に伝わらないようにし、アメリカ側に挑発行為をすべてやめるよう明確なメッセージを送り返したのだ。


資料写真.「赤い命令軍旗」を甲板に掲げてソ連のどこかの基地に停泊する3隻のソ連潜水艦© Getty Images/Bettmann

 このことは、その後の米軍戦闘機による12回にわたる上空飛行も「それほど心配することはない」ことを意味し、米公共放送局の「断続的な無線傍受」を聞けば、「状況は緊迫して(戦争寸前)」いるものの、まだ明白な戦争にはなっていない、という内容がはっきりしている。事態はうまく収拾し、翌日には完全充電されたB-59が警告なしに潜航し、基地に戻ってきた。そこで、ソ連の軍事会議の幹部が乗組員に言った:
「我々は君たちが生きて帰ってくるとはまったく思っていなかった」。


関連記事: Will Lebanon and Israel go to war over their maritime border dispute?

 アメリカ国民は、この事件とソビエトが核弾頭発射にどれだけ近づいていたかを、何十年も経つまで知る由もなかった。この事実の公表は、当時、衝撃的であったが、数年後には忘れ去られてしまった。が、このエピソードは国際政治における絶望的で危険な状況が、(司令官よりも)冷静な頭脳をもった現場兵士によって解決されることがあることを示す好例となっている。

 キューバ危機として知られるようになったミサイル配備をめぐる対立の解決は、同時にまた、健全で成熟した賢明な外交によって促進され、その中で米ソ双方が大きな譲歩をしたのである。フルシチョフはキューバから核施設を撤去することに同意し、その見返りとしてケネディは二度とキューバを侵略しないことを約束し、トルコからはソ連を狙ったジュピター・ミサイルが撤去された。

 また、モスクワとワシントンの間に「ホットライン」が開設され、2つの超大国の間に直接的で迅速なコミュニケーションが確保されるようになった。その後、両国の平和とデタント(緊張緩和)がしばらく続いたが、1980年代にワシントンが核兵器を拡大し始めると、再び緊張が高まった。このため、軍備管理条約が作成されたが、トランプ大統領の下で破棄されることになった。

 この話の最新版として、今年2月24日に先立つ数カ月前、クレムリンは、破棄された以前の協定の条項の多くを含む、より包括的な新しい欧州安全保障秩序の草稿を提案した。

 こういった努力も馬の耳に念仏だった。

CIA、NATO、そしてヘロイン大クーデター。マイアミはいかにして国際ファシズムの中心地となり、ケネディ大統領を殺害したのか。

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA, NATO and the Great Heroin Coup: How Miami Became the Center of International Fascism and the Murder of President Kennedy

筆者:シンシア・チョン(Cynthia Chung)

出典:ストラテジック・カルチャー

2022年5月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月19日

 ノースウッズ作戦の論理は、グラディオ作戦と同じ筋書きだった。参謀たちは予め作成済みの暴力に傾いたが、それは国家が得る利益の方が個人に対する不正よりも大きいと考えたからである。


 これは5部構成のシリーズの第4部。[第1部第2部では、第二次世界大戦後のウクライナの民族主義運動がいかにCIAによって買収されたかを解説。第3部は、NATOの「グラディオ作戦」の重要な要素について述べており、本稿の前に必読である]。


暗黒街作戦と海軍情報局(ONI)

 チャールズ・"ラッキー"・ルチアーノ(1897-1962)は、アメリカ史上、最も強力で成功したギャングだった。1931年に闇組織「Commision職務遂行」を設立したことから、米国における近代組織犯罪の父とみなされている。
 ルチアーノは1936年、売春の強要と売春組織の運営で有罪判決を受けた。30年から50年の禁固刑を言い渡されたが、第二次世界大戦中、米海軍の海軍情報局(ONI)が彼にある提案をした。

 ルチアーノは、南イタリアのマフィアをムッソリーニに対抗する連合国側の第5列として引き渡せば、最終的に自由になれると約束されたのである。
 これが、南イタリアの強力なマフィアファミリーを生み出す種となった。こうしてアメリカは、イタリアのマフィアに、待機米軍の中で傭兵として活動するよう命じた。

 ルチアーノとONIの連絡役となったのが、ユダヤ系マフィアのボス、マイヤー・ランスキーで、かくして、「暗黒街作戦」が誕生した。
 ルチアーノは部下に命じ、ランスキーの指示に従うよう命じ、ランスキーは実質的にイタリア系アメリカ人マフィアの大部分を統括するようになった。

 トーマス・デューイ(当時のニューヨーク州知事)は、ルチアーノを刑務所に入れた責任はあったものの、連合国への貢献により1946年に恩赦を与え、ルチアーノは手下の数人とともにイタリアに送還された。が、これは、彼がOSS(戦略諜報局)の諜報員と会って、その指示に合意したからこそ実現したことである。

 ルモンド紙は、1973年6月、アメリカ側の諜報機関とマフィアのつながりを詳述している。
「ラッキー・ルチアーノは、自分(ルチアーノ)自身がアメリカの諜報機関と協力した経験から、ベイルートからアンカラやマルセイユを経由してモロッコのタンジールに至るまで、そこらに散らばっている著名な組織員たちに、自分がしたように活動するよう勧めたものだった。
 このようにして、麻薬の売人や運び屋は、[イギリスの]MI5、[アメリカの]CIA、[フランスの]SDECE、[西ドイツの]Gehlen組織、さらにはイタリアのSIFFARの情報提供者となった。(1)

 マフィアとこれらの情報機関との間のこの特別な関係は、数十年にわたり強固なものとなり、今日に至っている。


マイヤー・ランスキーのキューバ帝国

 マイヤー・ランスキー(1902-1983)は、ラッキー・ルチアーノとともに、略称「連合(シンジケート)」と呼ばれる「全国犯罪連合」を創設した。ランスキーは、1947年頃から「連合」の財務の魔術師であり、会長を務めていた。
 彼は50年代初頭、ハバナに本部を置く「キューバ帝国」を築き始めた。ランスキーは文字通り、キューバの独裁者フルヘンシオ・バティスタの頭越しに、キューバを統治した。
 親友であるキューバの独裁者フルヘンシオ・バティスタが、1944年に、自由選挙によって政権から追われると、ランスキーもキューバを離れ、サント・シニアが率いるトラフィカンテの一族にマフィアの帝国を託した(かくして、サント・トラフィカンテは、キューバのルチアーノ・ネットワークの後継者となった)。

 ランスキーとバティスタは、マイアミのすぐ北にあるフロリダ州ハリウッドに居を構えた。まもなく、ランスキーは東海岸で違法なカジノ帝国を経営し、ラッキー・ルチアーノが創設した麻薬取引を拡大させた。
 古くからのマフィアは麻薬取引をタブー視していたため、ランスキーの「シンジケート」はトラフィカンテの長男サントJr.がヘロインの流通を管理し、市場を独占していた。
 サント・シニアが1954年に亡くなると、サント・ジュニア・トラフィカンテはランスキーの右腕となり、ランスキーのキューバでの利益を管理するようになった。

 フロリダにあったランスキーの違法カジノが、1950年、閉鎖されると、ランスキーはキューバで独裁者バティスタの政権復帰を推進した。
 こうして、1940年から1944年までキューバ大統領だったフルヘンシオ・バティスタは、1952年に、アメリカの支援を受けて、再び軍事独裁者としてキューバに戻った。そして、1959年に、フィデル・カストロ率いるキューバ革命によって、独裁政権は倒された。

 カストロがキューバを支配する中、ランスキーとトラフィカンテは窮地に立たされた。彼らはカストロから、キューバ王国ではもう歓迎されないという明確なメッセージを受け取っていたのである。ランスキーとトラフィカンテとともに、50万人のキューバ人がキューバを離れ、25万人がトラフィカンテの新本拠地であるフロリダに新居を構えた。

 キューバから追い出され、フロリダでカジノを閉鎖したランスキーは、バハマのナッソーに同様のギャンブル天国を作り上げた。
 ギャンブルの儲け以外に、コルシカ人の分も含めたアメリカの麻薬取引で得た驚くべき大金の大部分は、ランスキーのマイアミ・ナショナル銀行で洗浄されて、バハマのナッソー、スイス、レバノンの番号付き口座に移された。(2)
 ランスキーはやがて世界の無冠の麻薬王となった。彼の決断は、フランスやイタリアの大物たちを含むすべての麻薬人に影響を与えた。ランスキーの麻薬流通ルートは、ラスベガス、ローマ、マルセイユ、ベイルート、ジュネーブなどに跨がっていた。


マイアミを国際ファシストたちの新たな拠点に

 DEA(麻薬取締局)マイアミ事務所のアラン・プリングルは、1980年初め、Associate Pressの記者に対し、マイアミの銀行が麻薬取引人たちの「ウォール街」を構成していると語った。(3)

 このことを最初に暴露したのは、1980年にヘンリク・クルーガーが出版した「ヘロインの大クーデター」という素晴らしい研究書である。
 この本では、マイアミが「偉大なるヘロイン・クーデター」の結果として、この国際的なファシズムの新しい中心地であることが明らかにされたのである。

 しかし、クルーガーが示した重要なポイントは、高級ヘロインの主要生産者と売人として、フランス領コルシカ島のマフィア(トルコとレバノンが原料生産者)が、イタリア領シチリアのマフィアに取って代わられたということである。その支配地は東南アジアと南米をも含んでいた。
 この移行は、DEA(麻薬取締局)を支配するCIAによって支援され、実施された。
 ニクソンの「麻薬戦争」は、ヘロインの特定の生産者と流通経路を閉鎖したが、最終的にはアメリカの厳しい管理下に置かれる新しい生産者と流通経路を開拓するためのものであった。
 ベトナムと同様、フランスはアメリカによってあらゆる権力から押し出され、今後はこの新しいジャングルの王に従属することになった。

 ランスキーのシンジケートは、この移行をCIAとその同盟する諜報機関の手に安全に導くのに貢献した。これらの 諜報機関が、NATOの「グラディオ作戦」に大きく関わっていた。
 マイアミは、メイヤー・ランスキーだけでなく、CIAにとっても、あらゆるヘロインとキューバにおける作戦の中心地となった。

 ヘンリク・クルーガーはこう書いている。
「国際的ファシスト組織は、50年代にCIAのために働いていたナチスの故オットー・スコルツェニが、マドリッドで長年にわたって計画してきた成果である。
 その名簿には、元SS(ナチス親衛隊Schutzstaffel)の隊員、OAS(フランスの秘密軍事組織)のテロリスト、ポルトガルの恐ろしい秘密警察(PIDE)の手下、スペインのフエルサ・ヌエバのテロリスト、アルゼンチンとイタリアのファシスト、キューバの亡命者、SAC(フランス民間行動隊)のギャング、そして[CIAの]オペレーション40、グアテマラ、ブラジル、アルゼンチンでのテロ作戦で鍛えられた元CIAエージェントが載っている。
 国際ファシスタの過激派には、キューバ人亡命組織CORUの他に、ポルトガル解放軍(ELP)とイヴ・ゲラン=セラック率いるアジンテール・プレス部隊、サルバトーレ・フランチャ率いるイタリアのオルディネ・ヌオーヴォ、ピエルルイジ・コンキュテッリが様々な時期に名を連ねていた。 スペインのGuerillas of Christ the King、Associacion Anticommunista Iberica、Alianza Anticommunista Apostolica(AAA)も名簿に載っている。ただし最後のAAAを、アルゼンチンのAAAと混同してはいけない。後者は、国際的ファシスト組織 Internacional Fascistaや聖騎士団Paladinグループのなかに、すでに名を連ねている。」
[註1:OAS(Organisation de l'armée secrète秘密軍事組織)は、フランスの極右民族主義者の武装地下組織]
[註2:SAC(Service d'action civique市民行動サービス)とは、かつてフランスにあった民兵(私兵)組織。民間行動隊、市民運動の義務などとも訳される。
[註3:CORU(Coordinacion de Organisaciones Revolucionarias Unidas)は、キューバ人亡命者の統括組織。本部はマイアミにあった]。


 国際的なファシズムの網の目のような世界におけるマイアミの重要性は、アメリカでもよく知られた秘密の一つである。
 その糸は大西洋を越えて、もともとリスボンにあった偽装通信社アギンタの活動や、武器密輸の網の中心であるマドリッドにひっそりと座っている元ナチス親衛隊中佐スコルツェニにまで伸びていた。
 クルーガーにとって、マイアミ-リスボン-マドリッド-ローマという軸は、ナチスの高官と同盟を結んだCIAの記録の論理的延長であった。
 ネオ・ファシストの聖騎士団(Paladin Group )とスペインの情報機関であるDGS(La Dirección General de Seguridad 保安総局)は、共にナチスの戦犯オットー・スコルツェニ大佐(Colonel Otto Skorzeny)によって運営されていた。

 マイアミは、CIAの巨大な利益を生む麻薬密売組織と、国際テロリズムを含むその他多くの組織のための国際的な接合点と万能の情報センターであった。https://en.wikipedia.org/wiki/JMWAVE
 マイアミのCIAの秘密作戦本部JM/WAVEは、1961年から1968年まで活動していた米国の主要な秘密作戦・情報収集局である。キューバを戦略的標的とする一連の奇襲攻撃を企て、「ピッグス湾作戦」そのものよりも多くの人員と経費を費やした。300人の工作員と4600人のキューバ人亡命者がJM/Waveの作戦に参加した。
 クルーガーは書いている。「後に明らかになったように、その最後の作戦の一つは中止になった。航空機で米国へ麻薬を密輸しようとして捕まったからだ。JM/Waveの時代には、中国(国民党)ロビー-=ラフィカント=キューバ人亡命者=CIAのつながりが大きく拡大した。」

 さらにクルーガーはこう書いている。
 「秘密戦争の開始とともに、この新しい局はCIAにとって最大のものとなり、世界中の対カストロ作戦の司令塔となった。年間予算は5,000万ドルから1億ドルで、300人の工作員の活動に資金を供給していた。CIAの各主要局には、少なくとも1人の作戦要員がキューバ作戦を担当し、最終的にマイアミに報告することになっていた。ヨーロッパでは、すべてのキューバ問題はフランクフルト支局(ドイツ)を経由して、JM/Waveに報告された。

 1963年には、ホンジュラスで、次にドミニカ共和国で、そして3番目はグアテマラで、政権転覆を企てた。
 1964年には、ブラジルでブランコ将軍の軍事クーデターを支援した。
 1965年、特殊部隊は海兵隊とともにドミニカ共和国の内戦を鎮圧し、1966年にはアルゼンチンでオンガニア大佐の軍事クーデターを幇助した。
 1966年には、CIAがアルゼンチンのオンガニア大佐の軍事クーデターを支援した。
 同じ頃、マイアミのリトル・ハバナでは、キューバ人亡命者の活動組織が生まれた。アルファ66やオメガ7のようなテロ集団が生まれ、その悪名高いリーダーはCIAに訓練されていた。
 JM/Waveが解体された時、シャックリと彼のスタッフは、組織犯罪と米国の極右の強力な要素と結びついた6000人の狂信的反共主義キューバ人の高度な訓練を受けた軍隊を残して、マイアミからラオスに向かった...」[強調は筆者]。

 JM/Waveは、世界のどこであろうと、キューバに関するあらゆることを取り仕切った。CIAは最大の秘密作戦組織JM/WAVEを維持し、活気あるネットワークを構築していた。たとえば準軍事的な訓練基地や隠れ家などの運営だ。

1. ハワード・ハントとビル・ハーヴェイの二人はJM/WAVEで働いていたが、この二人については後ほど紹介する。

 マイアミのキューバ人は、グアテマラの偽装通信社アギンター・プレスのテロリストに区わった。フロリダに住む100人のキューバ人は、スペインでアギンター・プレス社=ELPファシスト軍に加わり、テロ行為に関与した。
 [注:偽装通信社アギンタープレスは、主にNATOのグラディオのために働いていたOASのフランス・ファシスト準軍隊の訓練・流通拠点である、第3部参照]。

 ここまでで我々は、NATO/CIA/イタリア系アメリカ人マフィア/キューバの亡命者/ナチスを含むファシストがすべて同じ組織のために働き、本質的に同じ目標、すなわち民主的に選ばれた指導者を打倒し、独裁者とファシスト右翼政権に置き換えるという実態を見たはずである。
 麻薬取引の利益は、グラディオをモデルにした世界規模の右翼テロ活動の資金として使われる。ヘンリック・クルーガーが暴露した「ヘロイン大クーデター」は、まさにこの目的のために、ヘロインの利益を完全に支配することだった。


ニクソンのホワイトハウスの配管工と 「麻薬戦争」

 ニクソンのウォーターゲート事件への関与の歴史は、彼の個人的な麻薬取締りへの関与の歴史と絡み合っている。
 ニクソンは1971年6月にヘロインとの戦いを公言し、直ちに国際的な麻薬取引に対抗するため、「ホワイトハウスの配管工」、キューバからの亡命者、さらには「殺し屋集団」まで集めるに至った。
 [註:White House Plumbers「ホワイトハウスの配管工」は、本来、ニクソン政権の情報漏洩に対処するために組織された秘密工作グループ]

 クルーガーはこう書いている。
「1972年7月17日、ジェームズ・マッコード、フランク・スタージス、バーナード・バーカー、エウゲニオ・ロランド・マルティネス、ヴァージリオ・ゴンザレスは、[E・ハワード]ハントと[G・ゴードン]リディに率いられて、ワシントンの民主党のウォーターゲート事務所に押し入った。
 この7人のうち、4人はマイアミ出身で、4人は現役または元CIAの工作員、4人はピッグス湾侵攻に関わったことがあり、3人はキューバの麻薬マフィアと密接なつながりがあった。」
[源注:フランク・スタージス(本名フランク・フィオリーニ)は、トラフィカンテのCIA連絡先の1人だった。1960年代後半、スタージスはマイアミを拠点とする国際反共旅団(IACB)を運営し、メイヤー・ランスキー・シンジケートの資金援助を受けていたと言われている。(4)]

 E. ハワード・ハントの経歴は第二次世界大戦まで遡り、OSS(Office of Strategic Services戦略情報局)に所属しながら中国雲南省の昆明に駐在していた。
 OSSは蒋介石と国民党軍を支援していた。彼らはファシストの日本と戦うと同時に、毛沢東率いる中国共産党と内戦を戦っていた考えられている。
 蒋介石の支配下にあった雲南は(OSSの監督する一団と共に)中国アヘン栽培の中心となり、昆明は米軍陸軍航空隊将校クレア・シェノーの第14空軍やOSS(戦略情報局=CIAの前身)202分遣隊などによる、軍事作戦の温床となったのである。
 [国民党とCIAなどとの世界的なヘロイン取引に関する提携については、次稿で詳しく紹介する]。

 ハントはここで、フランス外人部隊の隊長でOSS工作員に転身したルシアン・コニーヌと出会った。
 クルーガーは書いている。
「E. ハワード・ハントは明らかに中国/キューバ/ラテンアメリカ・ロビーの手先であった。
 ハントの20年来の親友であり、彼の子供たちの名付け親でもあるウィリアム・F・バックリーがWACL(World Anti-Communist League世界反共連盟)のアメリカでのトップ・サポーターであったことからも、ハントもWACLと関係があることがうかがえる。
 また、ルシアン・コネインや国務省の元情報部長のレイ・S・クラインも同じロビー団体と関係があり、彼は台湾WACLの拠点に頻繁に出入りし続けている。
「ハントとコネインは、ホワイトハウスのヘロイン大クーデターを支える重要な力であった。
 またハントはキューバ人亡命者に必要な足場を確保した...」。

 ここではっきりさせておきたいのは、クルーガーが中国/キューバ/ラテンアメリカ・ロビーとして言及しているのは、共産主義の指導者ではなく、むしろファシストの指導者、蒋介石、バチスタ、ラテンアメリカのファシスト独裁者についてである、という点だ。

 インドシナは第二次世界大戦後もコネインの活動拠点であり、ハントと同様、彼はOSSからその後継組織であるCIAに移籍していた。そして、南ベトナム、北ベトナム、カンボジア、ビルマで活動し、この地域とアヘン密輸のコルシカ・マフィアに関する米国の最高専門家となった。

 ピーター・デールスコットは、クルーガーの「ヘロイン大クーデター」の序文でこう書いている。
「E. ハワード・ハントは、明らかに中国/キューバ/ラテンアメリカ・ロビーの手先であった。
 ハントの20年来の親友であり、彼の子供たちの名付け親でもあるウィリアム・F・バックリーが、WACL(世界反共連盟)の米国におけるトップ支援者の一人であったことからも、彼がWACLとも関係があることがうかがえる。
 また、ルシアン・コネインや国務省の元情報部長のレイ・S・クラインも同じロビー団体と関係があり、台湾WACLの本拠地には今も頻繁に出入りしている。

 しかし、中国に古くからいる人脈のある者たちは、新生DEAに移籍し始めた。ハントはOSS-クミングの旧友ルシアン・コニンのために、最終的にDEA(Drug Enforcement Administration麻薬取締局)となるポストを確保し、コニンは今度はインディアナ州ディーコンにあるCIAキューバ人支部から自分の仲間を採用し、そのうちの少なくとも一人は、CIAの報告によれば、すでに死の部隊作戦に参加した。
 最近明らかになったことは...偽装通信社アジンタと亡命キューバ人組織CORUの関係者が、ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に関連していることだ。
 レテリエ事件(チリのアジェンデ大統領政権下で外交官だったオルランド・レテリエルを自動車爆弾で暗殺)で著名な少なくとも3人のキューバ人は、ケネディ暗殺下院特別委員会の最近の発表によって、1963年の亡命キューバ人組織と連携していたことが明らかになった。この特別委員会は、ケネディ暗殺事件の「徹底した調査」を保証する、と請け負った。
 リー・ハーヴェイ・オズワルドはニューオリンズでの活動によって、CORUが資金的に支援する反カストロ・グループや、将来のアジンター社や、おそらくOAS(Organisation de l'armée secrète、フランス秘密軍事組織)とつながりのあるアメリカ人と接触することになった。
 そして1963年11月23日、OASのテロリストで将来、偽装通信社アジンターの工作員となるジャン・レネ・スエトルは、最近、機密解除されたCIAの報告書によれば、「(ケネディ)暗殺の18時間後に、米国ダラス/フォートワース空港から追放された
。」 [強調は筆者]

 クルーガーはこう書いている。
「ルシアン・コネインは、DEA(Drug Enforcement Administration麻薬取締局)の特殊作戦部門の責任者になると、ワシントンのコネチカット通りにある偽装会社BRフォックス社と建物を使って、DEASOG(the DEA’s Special Operations Group:DEAの特殊作戦グループ)を立ち上げた後、暗殺計画を実行したとされる。
 DEASOGの12人のメンバー、いわゆるDirty Dozen(汚い12人)は、決意が固く経験豊富なラテン系CIA工作員が、この機会を利用して、DEA麻薬取締局に移籍してきた。
 コネインはDEASOGを立ち上げる前に、インディアナ州ディーコンで、DEA麻薬取締局の「諜報」活動を立ち上げ、CIA訓練所出身のキューバ人亡命者を採用した。彼らは30人のキューバ人(全員が元CIAの秘密情報部)に監督されていた...。
 DEAの出現は、ヘロイン・クーデターの最終局面を準備するものだった。ハントとコネインが率いるCIA職員は、DEAの情報収集と作戦実行に移行した...」[強調は筆者]。

 グアテマラのアルベンス大統領は、1952年、大規模な土地改革法案を議会で可決し、それを強力に実行した。それは、国内の農地面積の70%を、人口の2%にすぎない地主の手から取り上げて、それを民衆に再分配することを目的としたものだった。
 その2%の地主の中には、ユナイテッド・フルーツ社が含まれていた。その会社は、ワシントンDCやCIAと多くのつながりを持っていた。たとえば、アルベンス大統領を追放するクーデターの後に役員になったウォルター・ベデル・スミス(元CIA長官)、キャボット家のヘンリー・キャボット・ロッジ、アレンとフォスター・ダレス法律事務所のサリバン&クロムウェルなどだ。(5)

 CIAはユナイテッド・フルーツ社のためにクーデターを画策した。E・ハワード・ハントは、1954年にグアテマラのアルベンス大統領の政権を転覆させるためのCIAの政治活動責任者であった。(6)

 クルーガーはこう書いている。

 「事実上、手を携えた政権転覆活動の全領域に重なる人物もいた。その中には、ハワード・ハントと、ユナイテッド・フルーツの汚れ仕事を取り仕切る「トミー・コーコラン社」がいた。
 ユナイテッド・フルーツ社はマイアミにある石油請負業ダブル・チェック社の顧客であり、ピッグス湾侵攻のために飛行機を供給したCIAの隠れ蓑でもあった。
 コーコランはチェノー将軍の未亡人アンナ・チェノーのワシントンでの護衛だった。チェノーはかつて中国(国民党)ロビーのトップで、東南アジアのアヘンの鍵を握っていた」。

 CIAの新しい公式の麻薬政策とともに、非公式のものも登場した。後者の汚い仕事は、DEAの中の大きな部門によって行われた。彼らは、キューバ人亡命テロリストの大規模で独立した軍事組織(CIAによって訓練された)を容認し、その部門は、ラテンアメリカで、独裁者の要求に応じて行動することを奨励していた。たとえ全面的にではないにしても、
 しかし、これは10年近く前に起こっていたはずのことである。

 1964年6月2日付のニューヨークタイムズの記事によれば、「リチャード・M・ニクソン前副大統領は、次のように言っている。

 「リチャード・M・ニクソン元副大統領は、キューバのピッグス湾への侵攻を1960年11月8日の国民選挙の前に行うことを望んでいた
 ニクソンは、アイゼンハワー政権が大統領選挙の終盤にフィデル・カストロを破壊すれば、選挙で楽勝することは確実だったので、11月8日より前に侵攻することを望んでいたのだ。

 ニクソンは1953年1月から1961年までの8年間、アイゼンハワーの副大統領を務めていた。ニクソンは次期大統領になるはずで、誰もがそれを知っていた。
 しかしケネディは、この秘密の侵略計画を知っていたので、カストロに対する計算ずくの強硬姿勢と、公開討論でキューバの反乱者を支援すると表明したおかげで、ニクソンの鼻先から選挙を取ることができた。
 一方、ニクソンは、そんなことに賛成すれば実際の計画を損なうと考え、それに反対する振りをすることが最善であると考えた。

 こうして、何十年にもわたる計画が水の泡となり、ニクソンが去り、ケネディが登場したのだった。


ノースウッド作戦、ピッグス湾への侵攻作戦、さらに「照明弾による抹殺」作戦

[註:“Elimination by Illumination照明弾による排除”は、空軍准将エドワード・ランズデールが考え出したカストロ暗殺計画」

 連中の計画を潰したのはケネディだけではなかった。フィデル・カストロによる1959年の、バティスタの打倒とヘロイン取引を含むマイヤー・ランスキーのキューバ帝国の追放は、こうした長期計画にとって、控えめに言っても問題であった。

 フィデル・カストロは、ドゴール同様、暗殺計画やクーデターを阻止する名手であった。カストロは、1959年から2011年までキューバを統治することになる。

 カストロのキューバは、米国「ビジネス」のあり方の現状を覆すという非常にわかりやすい理由で、受け入れがたい存在とされた。ランスキーのシンジケートだけでなく、ユナイテッド・フルーツ社、U.S.スチール、デュポン、スタンダード・オイルなど、フォーチュン500に名を連ねる企業が、カストロ政権の登場によって多くの金が失われた。(7)

 こうして、カストロは去らねばならなくなった。だからCIAと国防総省が救出に乗り出した。少なくとも、そのような脚本になるはずだった。

 1961年1月20日、ケネディが大統領に就任した。ケネディ大統領は、国家と国民の福祉の責任を引き継ぐと同時に、CIAが仕切る共産主義キューバとの秘密戦争も引き継ぐことになった。

 失敗した「ピッグス湾」作戦は、1961年4月17日から20日にかけておこなわれた。この事件は、CIA長官アレン・ダレス、CIA計画担当副長官リチャード・M・ビッセルJr、CIA副長官チャールズ・カベルの解雇につながった(この件に関する詳細はこちらを参照)。

 クルーガーはこう書いている。

「ピッグス湾侵攻軍の創設、資金調達、訓練のために集められた陰謀家たちほど、驚くべき、狂信的な集団はかつて存在したことがない。
 CIAの中心人物は、エドワード・ランズデール(特殊作戦担当の国防次官補) の部下ナポレオン・ヴァレリアーノ、謎の男フランク・ベンダー、そしてE・ハワード・ハントだった。ハント自身もフィデル・カストロの命を狙った少なくとも一件に関与している人物であった。彼らは、マイアミにある4つの偽装会社から集まったCIA工作員の小部隊に支援されていた。

ピーター・デール・スコットは、クルーガーの『ヘロイン大クーデター』の序文でこう書いている。

「CIAはピッグス湾作戦のために、昔のグアテマラ・チーム(キューバ人の勧誘を監督していたハントを含む)を再結集させた。
 ピッグス湾の失敗で、キューバはアメリカにとって、フランスにとってのアルジェリアのような存在になった。
 爆発的な政治的論争は、何千人ものキューバ人亡命者(その多くはハバナの武装集団の経歴を持つ)が、アメリカによってゲリラやテロリストとして訓練され、その後、政治的には迷惑な存在になったことを意味した...
 ピッグス湾作戦の中心である「作戦40」から生まれた少なくとも一つのCIA計画は、メンバーの麻薬活動があまりにも厄介になり、終了せざるを得なくなった。
 1973年、日刊紙Newsdayは、『1500人のピッグス湾侵攻軍の少なくとも8パーセントが、その後、麻薬取引で調査されたり逮捕されたりした』と報じた。」[強調は筆者]

 さらに言えば、ピッグス湾作戦は、実際、失敗することが運命づけられていた。それは単にキューバへの直接の軍事侵攻を求める世論をかき立てるためのものだったからだ。
 CIAのリチャード・ビッセル計画担当副長官、統合参謀本部議長のライマン・レムニッツァー、海軍大将のバーク提督が、ケネディ大統領にキューバへの直接軍事攻撃を承認させようとする会議(あるいは「作戦への介入」と表現する方が適切かも)が公文書に記載されている。
 バーク提督はすでに、キューバ沖の海軍駆逐艦に海兵隊の2個大隊を勝手に配置し、「失敗した侵攻をやり直すために米軍がキューバに出動することを想定」していたからだ(これについては、こちらを参照)。

 その後もカストロ暗殺やクーデターの試みが繰り返された。
 サイゴン軍事ミッションのチーフでレムニッツァー将軍の部下であり、秘密作戦の専門家エドワード・ランズデールは、潜水艦をハバナ郊外の海岸に送り、「光の地獄」を作り出そうと考えていたのだ。
 ランズデールによれば、作戦部隊の上陸と同時に、キューバにいる工作員に、照明弾を使って「キリストの再臨とフィデル・カストロに対する救世主の嫌悪」を演出させる計画であった。
 この計画は 「イルミネーションによる抹殺」"Elimination by Illumination "と呼ばれたが、最終的には棚上げされた。(8)

 このような計画が紙の上にとどまっていれば面白かったのだが、この男たちは、現実になった計画のために、数え切れないほどの人々を拷問し、死に至らしめたのである。

 レムニッツァー将軍は1959年、陸軍参謀総長に就任するとすぐに、ランズデールを特殊作戦担当の国防次官補として任命し、ペンタゴン(国防総省)のギルパトリック国防副長官の執務室に勤務させた。
 ランスデールはレムニッツァーの直属の部下として「マングース作戦」の責任者となり、政治的暗殺を禁止する連邦法に反して、カストロを排除することを主目的とした活動に入った。
 「マングース作戦」は、CIAによる民間人へのテロ攻撃を実行する秘密作戦の大規模な展開であり、マイアミのJM/Waveから実行された。
 こうして、さらにランスデールは、キューバをはじめ、中南米全域の襲撃や爆破など、多くの秘密作戦に参加することになる。

[註:JMWAVE、JM/WAVE、またはJM WAVEは、1961 年から 1968 年までCIAによって運営されていた、放送局をはじめとする米国の主要な秘密工作および情報収集ステーションのコードネーム。その飛行船基地は、マイアミ大学のメイン キャンパスの約 12 マイル南にあり、現在のマイアミの大学のサウス キャンパスにあった。]


 1962年3月、ライマン・L・レムニッツァー将軍は、元CIA長官ダレス、元CIA副長官ビッセル、CIA長官キャベルに起こったこと[ピッグス湾作戦]をヒントにせず、「ノースウッズ作戦」をケネディ大統領に提案し、承認を得ることが良い考えだと判断した。

 ノースウッズ作戦は、アメリカ市民に対する偽旗作戦で、CIAの工作員がアメリカの軍人と民間人を標的にテロ行為を行い、その後、キューバに対する戦争を正当化するためにキューバ政府を非難するというもので、演出と実行の両方を行うことが提案されていた。
 この計画はレムニッツァー将軍によって具体的に立案され、NATOのグラディオ作戦(第3回参照)と著しい類似性を持っている。
 ノースウッズの論理はグラディオの筋書きであった。参謀本部がプレハブ暴力に傾いたのは、国家が得る利益は個人に対する不正よりも重要だと考えたからである。唯一の重要な基準は目的に到達することであり、その目的は右翼政権をキューバにつくることであった。



ノースウッズ作戦の覚書 1962年3月13日

 ノースウッズのマニュアルには、あからさまな合衆国憲法への反逆罪とならない項目は一つもなかった。しかし、ペンタゴン幹部は「最高機密:キューバへの米軍介入の正当化」をロバート・マクナマラ国防長官の机に直送し、ケネディ大統領に伝達したのである。

 言うまでもなくケネディ大統領はこの提案を拒否し、数ヵ月後、1960年10月1日から1962年9月30日まで務めたレムニッツァー将軍の統合参謀本部議長としての任期は更新されなかった。

 しかし、NATO は、1962 年 11 月にレムニッツァーを米欧軍司令官と NATO の欧州連合最高司令官に任命し、後者には 1963 年 1 月 1 日から 1969 年 7 月 1 日まで在任することになった。

 レムニッツァーは、ヨーロッパにおける大陸を背棄権する席巻した「グラディオ作戦」を監督するのにうってつけの人物であった。レムニッツァーは、1952年にカリフォルニア州フォート・ブラッグに特殊部隊グループを設立する原動力となった。
 ここでは、ソ連のヨーロッパ侵攻を想定したゲリラ反乱作戦の訓練を受けた特殊部隊が配備されていた。独特のグリーンベレー帽を誇らしげにかぶった彼らは、やがてヨーロッパ各国の軍隊と慎重に協力し、直接的な軍事作戦に参加するようになったが、その中には極めて機密性が高く、合法性が極めて疑わしいものもあった。
 この合法性の疑わしい作戦の一つに、少なくとも二度にわたる「ドゴール大統領暗殺計画」を支援したNATO-CIA連合がある。
 これに対してドゴールは、NATO本部をフランスから追い出し、フランスをNATOから脱退させ、レムニッツァー将軍にNATOからの撤退を略式命令した(第3部参照)。
 偽装持ち株会社パーミンデックスと世界貿易センター(WTC)も、このドゴール暗殺未遂事件にかかわっていたので、ドゴールの命令でスイス本社を閉鎖せざるを得なくなった。が、これについては後ほど詳しく述べる。
 もしドゴール大統領の命令が否定されたなら、彼はこれらの問題で戦争をする用意があっただろうから、こうして多少のNATO改造はおこなわれた。が、基本的にはゲームはそのまま継続されたのである。
 CIAとペンタゴンにとって、ケネディは中国にいる牛のような存在だった。彼はペンタゴンの政策に、ことごとく逆らったからだ。
 たとえば、ケネディは、フランスとの異例の戦争を内々で解決することにこだわり、米ソのミサイル危機では手を引き、トルコから最前線のミサイルを撤去した。また、ベトナム戦争から徐々に手を引き、それを終わらせようと考えた。
 また亡命キューバ人による秘密作戦を混乱させ、ペンタゴンがソ連と中国の脅威はかつてなく大きいと考えていたことが完全に明白だったときに、アメリカを平時に逆戻りさせようとした。
 そして究極の侮辱は、CIAのゴッドファーザーであるアレン・ダレスと第一参謀総長レムニッツァー将軍の解雇したことだった。こうしてレムニッツァーを亡命へと、すなわちNATO軍司令官へと追いやった。

 CIA、国防総省、NATOは一致していた。かくしてケネディはこの世から去らねばならなかった。

 偽旗作戦グラディオ、偽装会社パーミンデックス、ローマのWTC世界貿易センター、フランスの右翼武装組織OAS(Organisation Armée Secrèt)は、アメリカという「殺人会社MURDER INC.」の道具なのだ。

 フェレンツ・ナギ(Ferenc Nagy)は、共産党が1947年5月に政権を取り、彼を首相から追い出すまで、ハンガリーの首相を短期間務めていた。
 ナギはアメリカから亡命を認められ、1948年にワシントンDCに移住し、そこでFBIに就職した。その後、彼はCIAの副長官フランク・ウィズナーの親友となった。ウィズナは、CIA長官アレン・ダレスの右腕となり、CIAのならず者的作戦を実行した人物だ。

 ハンガリー動乱前夜の1956年、ナギを会長としてスイスのバーゼルに設立されたのが、CIAの偽装会社であるパーミンデックス(Permanent Industrial Expositions)である。ナギはローマのWTC世界貿易センター(別名CMC、Centro Mondiale Commerciale)の支配人でもあり、そのアメリカ理事会の会長でもあった。

 リチャード・コットレルは著書『作戦グラディオ:ヨーロッパの心臓に刺さったNATOの短剣』の中で次のように書いている。

 両組織(パーミンデックスとCMC)は、武器や麻薬の売買、資金の洗浄、グラディオに近い過激派組織の潤滑油、ヨーロッパのギャングとの取引など、CIAの秘密裏に世界中で行われる商業活動のためのパイプ役であった」。
 パーミンデックスはイタリアに支社を持ち、P2(Propaganda Due)の黒幕リチオ・ゲリが取締役に名を連ねていた。
 JFK暗殺事件で逮捕、尋問されたニューオリンズの実業家クレイ・ショーは、一時期パーミンデックスのアメリカの役員を務めていた。ショーについては、イタリアの左翼紙「パエーゼ・セーラ」が60年代にローマWTCの活動を詳細に調査していた。

[註:P2(Propaganda Due(イタリア語発音:[propaˈː])は、1877年に設立されたイタリアのグランドオリエント傘下の秘密結社フリーメイソン支部ロッジ。1976年に認可が取り消され、秘密結社を禁じたイタリア憲法第18条に反して活動する犯罪的、秘密的、反共産的、反ソ連的、反左翼的、疑似メイソン、急進右派の組織に変貌を遂げた。]

 またイタリアの左翼紙Paese Sera(パエーゼ・セーラ)は、フェレンツ・ナギーが世界貿易センター(WTC)と偽装会社パーミンデックスを通してフランスの右翼武装組織OASに資金を提供し、パーミンデックスはCIAから資金をもらっていたとも言っている。これらの企業はいずれも、目に見える商業活動をしていないようだった。

 ジム・ギャリソンは1962年から1973年までニューオーリンズの地方検事で、ケネディ大統領暗殺に関する裁判を起こした唯一の検事であった。その捜査の過程で、ギャリソンは多くの人脈に遭遇したが、当時はまだすべての点をつなげるだけの知識はなかった。

 重要な点の一つは、元シカゴFBI支局長でニューオーリンズ警察副長官でもあったガイ・バニスターであある。彼は、第二次世界大戦中に海軍情報局(ONI)でキャリアをスタートさせた。
 バニスターは、「引退後」自分の小さな探偵事務所を設立し、それは通りを隔てて、ONIと大統領警護事務所の真向かいという便利な場所にあった。さらに、ラファイエット公園を越え、セントチャールズ通りを少し歩いたところにCIAの本部があった。

 ギャリソンは『暗殺者の追跡』の中でこう書いている。

「ニューオーリンズ警察副長官バニスターの作戦には、この街を通過する反カストロの訓練生の調査・取り扱いも含まれていた。
 亡命者の多くは、ニューオーリンズ州ポンチャートレイン湖の北にあるキャンプでゲリラ訓練を受けるために西側からやってきた新兵だった。
 また、CIAがフロリダで行っている同様の訓練に参加するため、フロリダに送られた者もいた。時折、フロリダでの訓練プログラムの卒業生が、ダラス近郊の自宅に戻る途中、宿泊と食事の手配をするために、バニスターの店に立ち寄ることがあった...」。

 ギャリソンは、ダラス-ニューオリンズ-マイアミという供給ラインの一部であるバニスター機関を発見した。これらの供給品は、カストロのキューバに対して使用する武器と爆発物から成っていた。
 デイヴィッド・フェリーは元OSS(戦略情報局の一員)で、ガイ・バニスターとクレイ・ショー(これも元OSS)の下で働いていた。フェリーは地元のキューバ革命戦線のリーダーの一人であった。

 ギャリソンは調査の結果、元シカゴFBI支局長でニューオーリンズ警察副長官でもあったバニスターが、キューバ国内での準軍事行動のための特殊部隊の訓練と装備に携わっていたことを発見する。

 John F Kennedyを暗殺したとされるオズワルドは、ジャック・ルビーに射殺されたが、そのルビーはFBIのダラス支局と特別な関係にあった。1959年、ルビーはFBIダラス支局の捜査官の一人と少なくとも9回会っている。
 この時、彼はマイク付き腕時計、盗聴器付きネクタイ・クリップ、電話盗聴器、盗聴器付きアタッシュケースも購入した。これらの事実は、ジャック・ルビーが地元FBI支局の常連情報提供者であった可能性を示唆している。(9)

 ギャリソンはこう続ける。

 アリソン・G・フォルソムJr中佐の証言を検討すると、彼はオズワルドの訓練記録を朗読していた。彼は、オズワルドがソ連に亡命する直前の1966年に、カリフォルニア州のエルトロ海兵隊基地で受けたロシア語試験の成績について述べている...
 「私はまだ軍務についており、今では少佐になっていたが、これまで一人の兵士もロシア語をどれだけ学んだかを示すことを求められた記憶がない... リー・オズワルドは-少なくとも1959年には-情報訓練を受けていた。海兵隊の情報活動が海軍情報局(ONI)によって指導されていることは、軍歴のある人なら誰でも知っていることだ。

 ...1963年の夏。オズワルドは、いくつかのパンフレット配布事件に参加しているのが目撃されていた。...ウォーレン委員会は、これと他の証拠から、オズワルドはフィデル・カストロを支援するためにキューバ公正行動委員会に参加していた熱心な共産主義者であると結論付けていた。

 オズワルドはキャンプ544の住所に足を踏み入れていた...私はその場所を直接見てみたかったのだ...」。

 ギャリソンは、キャンプ544とラファイエット531番地(バニスター探偵事務所の住所)の両方が同じ場所に通じていることを発見する。
 こうして、ウォーレン委員会が親カストロの共産主義者というレッテルを簡単に貼ったオズワルドを、ギャリソンは、オズワルドの亡命キューバ人の活動とバニスターとを接結びつける糸口を見いだしたのである。

 ギャリソンはまた、ジョージ・ド・モーレンスチャイルドがオズワルドの「子守り=お目付役」(10)であったことを発見する。ド・モーレンスシルトは第二次世界大戦中、フランスの諜報機関で働き、彼の親友にはCIAと密接な関係を持つシュランバーガー社の社長ジャン・ド・メニルがいた。(11)

 ギャリソンはこう書いている。

「シュランバーガー社はフランスが所有する巨大企業で、爆発物や地質測定器を使って世界中の石油生産者にサービスを提供していた。
 1950年代後半から1960年代前半にかけて、北アフリカのアルジェリアを解放したシャルル・ド・ゴール大統領を何度も暗殺しようとしたフランスの反革命秘密軍組織(OAS)の支援者でもあった。CIAもフランスOASの将軍たちを支援しており、シュランバーガー社に対人用爆弾を供給していた......。

 ギャリソンは続ける。

「クレイ・ショーも取締役を務めていたパーミンデックス社は、ドゴール大統領のアルジェリア独立支持に反対するフランス秘密軍事組織(OAS)に秘密裏に資金を提供し、ドゴール暗殺未遂をおこしたと言われていることもイタリアの新聞で明らかにされた。
 この事実を1967年に私たちが知っていれば、ルイジアナ州フーマの飛行船基地まで戻って返し、先にCIAが暗殺を目的としたO.A.Sに渡していた軍需品を奪還していたであろう。
 それは、民間機のパイロットだったデイヴィッド・フェリーと元FBIガイ・バニスターの作戦に参加した者たちが、シュランバーガー社の貯蔵庫から再入手したものだった。
 しかし、残念ながら、限られた人員と資金、そして多くの手がかりのために、私たちの調査はこの重要な背景情報を最も必要とするときに発見することができなかった」。

 1967年にフランスのパエサ・セラ紙(Paesa Sera)が発表した記事によると、イタリアWTC世界貿易センター理事会のメンバーには、イタリアの王子でサボイ家(the House of Savoy)の一員であるグティエレス・ディ・スパダフォロ(Gutierrez di Spadaforo)がいた。
 彼は、ベニート・ムッソリーニ総統の内閣農務次官であった。スパダフォロは、その娘婿を通じて、ドイツのナチス財務大臣ハルマー・シャハトと関係があった。
 イタリアWTC世界貿易センター理事会の、もう一人役員はギゼッピ・ジジオッティ(Guiseppi Zigiotti)で、彼はファシスト全国武器協会の会長でもあった。そして先に述べたように、元ハンガリー首相フェレンツ・ナギ(Ferenc Nagy Nagy)はアメリカWTC理事会の会長であった。

 カナダのモントリーオールに拠点を置くフランス語紙Le Devoirは、1967年の初めに、「Nagy元首相は...CIAと密接な関係を保ち、それが彼をマイアミのキューバ人共同体と結びつけた」と書いている。ナギーはその後、アメリカに移住し、テキサス州ダラスに居を構えた。(12)

さらにフランスのパエサ・セラ紙(Paesa Sera)は次のように報じている。

「イタリアWTC(世界貿易センター)がCIAと関わっている可能性の中には(それは極右の組織に深くコミットしている人物が指導的地位にいることによって裏付けられている)、そのセンターががCIAの創造物であり、不法な政治スパイ活動のために、イタリアでCIA資金を送金するための隠れ蓑として設定されたということがある。
 しかし、クレイ・ショーとOSS(戦略情報局)の元少佐ブルームフィールドが、イアタリアWTCの理事会にいたことを明らかにすることがまだ残っている。

 ギャリソンによれば、地質学者ジョージ・ド・モーレンスシルト(George de Mohrenschildt)は、おそらくこの先何が待ち受けているかは知らされていなかったが、彼がCIAの工作員として事件に深く関わっていたことは、今ではほとんど疑いの余地はない。

 デ・モーレンスシルト(de Mohrenschildt)はオズワルドにダラスに移るよう説得し、オズワルドは元FBI職員かつ元ニューオーリンズ警察副署長ガイ・バニスター(Guy Banister)の好意でニューオーリンズに派遣された。そして羊飼い(親カストロの共産主義者に見せかけること)にさせられた。
 さらにオズワルドは、デ・モーレンスシルトを通じてルース・ペインに紹介される。ペインはオズワルドがテキサス教科書倉庫で仕事を得るのを手助けした人物である。(13)

 ジョージ・ド・モーレンスシルトは1977年3月29日、下院暗殺特別委員会の調査官と会う約束をしたわずか数時間後に「自殺」したとされている。

* * *

 E. ハワード・ハントは、ウォーターゲート事件で捕まったニクソンの「ホワイトハウスの配管工」の一人として悪名高く、その後33ヶ月の服役をしたが、彼自身と彼の家族の人生を台無しにしたことは確かである。
 ハントは、自分が死に瀕していると思ったとき、セイント・ジョン(Saint John)と名付けた別居中の長男に、ケネディ殺害の秘密を知っていると告白している。
 しかし、彼はその後4年も生き伸びたとき、再び息子に背を向け、何の役にも立たない人生だと息子を批判し、息子セイントに渡したJFKのメモをすべて返せと要求した。
 このままでは父と一緒に埋もれてしまうと思ったセイントは、生前に父からできるだけ多くの情報を聞き出そうとし、その一部はローリングストーン誌のインタビューに掲載された。

 E・ハワード・ハントがケネディ殺害に関与していると述べた人物の中に、ビル・ハーヴェイ(Bill Harvey)がいた。

 ハーヴェイは1947年にCIAに入局し(まさに創設時)、1950年代にはCIAのベルリン支局を運営していた。ドイツにいる間、ハーヴェイは元ナチスドイツの情報将校ラインハルト・ゲーレン(Reinhard Gehlen)の悪名高い組織、いわゆる「ゲーレン機関」と密接に働き、ゲーレンはハーヴェイを「非常に尊敬すべき(そして)本当に信頼できる友人」と考えるようになった。(14)
 
 元CIAベルリン支局長ハーヴェイは、1961年11月、コードネームZR/RIFLEと呼ばれるカストロ殺害のためのCIA極秘作戦の責任者に任命された。(15)
 彼はマフィアの大使であるジョニー・ロセリ(Johnny Rosselli)と直接に仕事をするようになった。E・ハワード・ハントも一緒に仕事をしていた。

 デビッド・タルボットは著書『悪魔のチェス盤』の中でこう書いている。

「後のCIA長官ヘルムズ(Richard Helms,)は、「引退した」ダレスに取って代わって、CIA職員アングルトン(James Jesus Angleton)と共にハーヴェイの主たる擁護者となっていた。
 そして1962年に、CIAのタフガイとしてビル・ハーヴェイを昇進させ、CIAの全キューバ作戦、タスクフォースWの責任者に指名した。
 ヘルムズとハーヴェイは、カストロに対する暗殺計画を含む作戦の多くを、ケネディ大統領に秘密にしていた...。

 ビル・ハーヴェイは、キューバ危機の後、CIAローマ支局長として、イタリアでのグラディオ作戦を監督する立場にあった。
 ハーヴェイは、サルデーニャ島のグラディオ本部で行われた会議にマーク・ワイアット(Mark Wyatt 、イタリア駐在のもう一人のCIAエージェント)とともに出席していたとき、ケネディ大統領が撃たれたという知らせを聞いたとされる。(16)

 しかし、ワイアットが、フランスの調査ジャーナリスト、ファブリツィオ・カルヴィ(Fabrizio Calvi)に、グラディオ作戦についてインタビューで語ったところによれば、ビル・ハーヴェイは1963年11月にダラスにいたという。(17)

 下院暗殺委員会の調査官であるダン・ハードウェイ(Dan Hardway)は、同委員会からJFK殺害にCIAが関係している可能性を調査するように命じられ、数年後に次のような事実を認めている。(18)

「我々は、ハーヴェイを最初から第一容疑者の一人と考えていた。彼は、組織犯罪、カストロに対する陰謀が行われたマイアミのCIA基地など、すべてに重要なコネクションを持っていた...
 我々はハーヴェイの旅行券と公安関係のファイルをCIAから入手しようとしたが、彼らはいつも我々を妨害した。しかし、暗殺までの数ヶ月間、彼がよく旅行していたことを示唆するメモをたくさん見つけた。」

 タルボットはこう書いている。

 「ハントは息子に自分の話をしながらも、自分自身の計画への関与についてはあいまいなままであった。
 結局、彼(ハント)は、ケネディ殺害の周辺的な「補欠選手」「ベンチの暖め役」の役割を果たしたに過ぎないと言った。ハントによれば、「攻撃の司令塔」「クォーター・バック」はビル・ハーヴェイだった...
 カストロ暗殺チームを編成する間、ハーヴェイは、(後のCIA長官ヘルムスの許可を得て)様々な裏社会の専門家に接触していた。その中にはCIAが雇った悪名高いヨーロッパの暗殺者、コードネームQJ-WINと呼ばれる人物もいた。その男がコンゴ独立運動の指導者パトリス・ルムンバ(Patrice Lumumba)を殺したのだった。
 だからハーヴェイは、CIAローマ支局長として、再びヨーロッパの裏社会を探り、ダラスの殺人チームを作るのにうってつけの立場にあった」。

 このように、1963年11月にダラスに集結した奇妙な殺人鬼の中に、ドゴール大統領暗殺計画に関係していたジャン・スエトル(Jean Souetre)という悪名高いフランスOAS特殊部隊員がいたことは驚くにはあたらない。スエトルはケネディ暗殺後、ダラスで逮捕され、メキシコに追放された。(19)
 このシリーズの第3回で、OAS(Organisation Armée Secrète)が元フランス軍と情報機関の将校からなる主要なファシスト・テロ部隊であり、ヨーロッパ、南米、その他の地域での「グラディオ作戦」で主役を演じていることを思い出してほしい。

 クルーガーはこう結論付けている。

 「CIAの新しい公式の政策に加えて、いやむしろその背後には、非公式の政策がある。
 それは、以前はCIAの汚れ仕事であったことを実行するためにDEAを操作したり、独裁者の要請に応じてラテンアメリカで活動できるキューバ人亡命テロリストの大規模な独立軍を、奨励はしないまでも容認していることなどに表れている。...
 もちろん、この非公式な政策が、実際にはCIAから粛清されたか、より穏健な路線に抗議して去った、元工作員によって実行されているという可能性を否定することはできない。
 しかし、それはCIAの反乱分子が独立した秘密情報機関を運営していることを意味する...」。

[第5回は、このシリーズの締めくくりとして、今日のウクライナの状況を位置づける予定である。著者の連絡先はcynthiachung.substack.comである]。


NOTES

(1) Le Monde, 17-18 June, 1973, p. 11.
(2) Henrik Kruger. (1980) The Great Heroin Coup: Drugs, Intelligence & International Fascism. South End Press: pg. 89
(3) Ibid. pg. 203
(4) Ibid. pg. 145
(5) David Talbot. (2015) The Devil’s Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America’s Secret Government. Harper New York: pg. 279
(6) Henrik Kruger. (1980) The Great Heroin Coup: Drugs, Intelligence & International Fascism. South End Press: pg. 130
(7) David Talbot. (2015) The Devil’s Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America’s Secret Government. Harper New York: pg. 459
(8) Henrik Kruger. (1980) The Great Heroin Coup: Drugs, Intelligence & International Fascism. South End Press: pg. 143
(9) Jim Garrison. (1991) On the Trail of the Assassins. Warner Books: pg. 254
(10) A “baby sitter” is a term used by American intelligence agencies to describe an agent assigned to protect or otherwise see to the general welfare of a particular individual.
(11) Jim Garrison. (1991) On the Trail of the Assassins. Warner Books: pg. 61
(12) Ibid. pg. 102
(13) Ibid. pg. 72
(14) David Talbot. (2015) The Devil’s Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America’s Secret Government. Harper New York: pg. 470
(15) Ibid. pg. 471
(16) Ibid. pg. 476
(17) Ibid. pg. 477
(18) Ibid. pg. 477
(19) Ibid. pg. 502

米政権がマスコミを使って、ウクライナ支援を支持する世論を醸成しようとした手口

<記事原文 寺島先生推薦>

How the US government attempts to control public perception of its aid to Ukraine
A recent media expose on the US effort to arm Ukraine looks as if it’s been curated by the Biden administration to shape public perception
 
 米国政府が、ウクライナへの支援に対する米国の国民感情を抑制しようとしている手口とは 
 先日の報道により明らかになったのは、米国によるウクライナへの軍事支援に対する世論形成に、バイデン政権が関わっていたという事実だった。

筆者:スコット・リッター(Scot Ritter)


Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector.  
@RealScottRitter@ScottRitter

出典:RT

2022年11月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月19日
 

米国製FIM-92スティンガー・ミサイルを運搬中のウクライナ軍兵士たち©  Sergei SUPINSKY / AFP

 NBCニュースが出した記事によると、 この出来事をよく知っている4人の関係者からの話として、米国のジョー・バイデン大統領と、通話相手であったウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の電話会談が、怒りの電話になったという事件があったようだ。そしてその理由は、ゼレンスキーがバイデンにさらなる援助を要求したからだったという。

 6月15日、バイデンはゼレンスキーに電話をかけ、ゼレンスキーに10億ドルほどの支援(その中には米国防省の武器庫にある3億5000万ドル相当の武器や設備の譲渡や、米国防省「ウクライナ安全保障支援構想」のもとでの6億5000万ドルの追加支援も含まれていた)をウクライナに送ることになったことを伝えた。このような両大統領間での電話のやり取りが普通に行われるようになったのは、2022年2月にロシアがウクライナへの派兵を決めてからのことで、その電話では、バイデンがゼレンスキーに、支援計画における主要な支援があるごとに報告を行っていた。その計画では、6月15日時点で、米国による軍事支援として、56億ドルがウクライナに送られることになっていた。

 ただし今回の電話において、ゼレンスキーは、これまで行ってきたように、米国大統領に賛辞を送るのではなく、一歩踏み込んで、さらなる支援を要求し、6月時点での支援内容には含まれていなかったある特定の設備を要求したのだった。NBCの情報筋によると、バイデンが怒りを示したのは、その時点だったという。以下はNBCの記事からだ。「米国民はずっとかなり気前よくウクライナに支援してきたし、米政権や米軍もウクライナを助けようと必死に努力してきた、とバイデンは声を荒らげ、ゼレンスキーはもっとそのことに対する感謝の意を示せるだろう、と語った。」

 NBCの報道によると、バイデンが怒った理由は、ゼレンスキーが米国に対する感謝の気持ちが欠けていたためだという。(NBCによると、両指導者はそれ以降はお互い歩み寄ったとのことだ)。しかし、バイデン大統領府からすれば、段々と大きくなっている実感があったのだ。その実感とは、ウクライナでの戦争支援に白紙小切手を出し続けることに対して、国会の両党派からの支持が薄れてきたことだ。来たる中間選挙において、共和党が下院での過半数支配を取り返すことが期待されていて、上院での過半数支配も窺っているなか、バイデン政権は、選挙後から現職議員の任期がきれる来年1月までの、いわゆるレームダック*期間に、さらにウクライナへの支援として400~600億ドルを捻出する構えをとるようだ。この新しい支援計画については、共和党からの激しい反発が予想されていて、共和党の過半数支配下にある新たな議会が開かれるまで、その議案に対する回答を先送りする作戦に出ると見られている。
  *lame-duck 「足を引きずったカモ(アヒル)」から「再選に落ちて最後の任期を務めている落選議員(のいる期間)」の意。


関連記事: US troops on the ground in Ukraine – media

 NBCニュースが、バイデン・ゼレンスキー間の電話についての人騒がせな報道をする直前に、ザ・ニューヨーカー誌は、米・ウクライナ間の軍事協力の現状についての一際目立つ論説記事を出した。その記事の題名は、「ウクライナを軍事化させる米国の努力の内側」というもので、著者は同誌の寄稿者であるジョシュア・ヤファ氏だった。ヤファ氏は、広範に及びながら、詳細な視点で、米・ウクライナ間の複雑なやり取りをまとめ、軍装備の点だけではなく、米・ウクライナ間の軍や諜報機関の活発な協力体制についても触れている。具体的には、両国の軍や諜報機関が、今回のロシア・ウクライナ間の紛争で実際に行っている行動に関する記述もあり、米国がミサイル発射装置を提供した事実を裏付ける数値も示している。ミサイル発射装置の例をあげると、M777榴弾砲や、M142 高機動ロケット砲システムなどだ。

 この事実から以下の主要な2点を要約することができる。ひとつ目は、米国の兵器がウクライナがロシアに対抗する助けとなることで、世界に対して、「プーチンは打倒できる相手だ」ということを示せるという点だ。2つ目は、米国は、超えてはいけない線を踏み外して、戦争が激化し、モスクワ当局との直接対決にならないように細心の注意を払っている、という点だ。

 長年モスクワを拠点に活動していた体験のあるヤファ氏は、ロシア事情に関して経験豊富な記者だ。彼の筆による最新のこの記事を書くにあたり、ヤファ氏が利用している情報源は、幅広く規模も大きく、米・ウクライナ両国の抑えておくべき要人の公人たちを網羅している。名を明かしている情報源も、匿名の情報源もみな、ヤファ氏に内部情報のようなものを伝えるのに適した要職についている人々だ。そのおかげで、彼の記事は魅力的で、得られる情報も多く、読み応えもある。

 ウクライナ側でヤファ氏が取材したのは、アレクセイ・レズニコフ国防相、 ミハイル・ポドリャク大統領主席補佐官、アレクセイ・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記、「ウクライナ軍の高官」である、ヴァレリー・ザルジニー軍総司令官の側近だ。ウクライナの高官が西側の記者たちと関わることはよくあることで、その目的は現在進行中のロシアとの紛争についての言説を形成する取り組みの一つだ。ヤファ氏がこれらの人物たちにインタビューできたことが、驚きではない。むしろ、これらの高官たちが、これまでは不明瞭だった、この紛争で実際に取られている、米国とウクライナ間の緻密な協力関係についての詳細を明らかにしたことが、驚きだった。

 米国は他諸国との秘密の協力関係を明らかすることについては、非常に気をつけている。このような問題に関して沈黙を貫くことは、米国側の関係者たちだけにとどまらず、この秘密活動に関わっている外国側の人々にも課されている。端的に言うと、上記のウクライナ側の3名の高官たちが、ヤファ氏の前に座って、このような米・ウクライナ間の協力体制について話をすることに同意するなど、普通はありえないのだ。
それが可能になるのは、事前にバイデン政権がこれらの高官たちに、取材を受けることを承認していた場合のみだ。

 これらのウクライナ側の高官たちが、この件に関するヤファ氏の取材に対して協力することを決めた際に、バイデン政権がどれだけ絡んでいたかは、この記事の取材に応じた匿名の情報筋について詳しく調べれば明らかになる。「対ウクライナ政策に関わっていたバイデン政権内の役人」、「国防省の高官」、「バイデンの大統領府内でのウクライナ問題に関する議論の内容を知っている人物」、「行政官」、統合参謀本部議長ミリー将軍に近い「米国の高官」、「バイデン政権内の高官」、そして「米国諜報機関の高官」などの多くの人々が、ヤファ氏のインタビューに応じていた。


関連記事: Moscow issues update on frontline reinforcements

 情報が漏れないように細心の注意が払われている国家安全保障関連の活動に触れた経験がある人なら誰でも承知していることだが、このような活動に関しては2つの厳しい壁がある。ひとつは、このような活動は厳しく機密が守られていて、しかも全体像が見えにくいよう細分化されているという壁で、もうひとつは、 このような活動について、権威からの許可なしに、活動の内容を外に漏らすことは、重大な法律違反行為とされ、情報をメディアに渡したものは誰でも、処罰や投獄の対象となる、という壁だ。

 そうであるので、ヤファ氏が利用したすべての情報筋は、集団自殺をすると言われているネズミ科のレミングのような欲求に即座に囚われて、目に見えない崖から飛び込もうと、自身の経歴を失い、牢屋に入れられることも辞さずに、ニューヨーカー誌の若きヤファ記者が、一世一代のスクープを書きあげる手助けをした、ということになる。 あるいは、ヤファ氏の記事は、バイデン政権の情報戦の一環で、その記事を出させる目的は、米・ウクライナ間の軍事協力関係について肯定的な世論を形成するためだとも考えられる。つまり、大手メディアを使ってウクライナの件を世間の討論の場に持ち込むという、中間選挙に向けた世論形成を行おうという、政権側の各所に手を回した努力、の表れ、と取ることもできるのだ。

 私なら後者に賭ける。

 良質な報道とはすべて、「下から上に向かう」記事だ。記者が或るネタを嗅ぎつけ、現場に向かい、関係者から話を聞こうと走り回る記事だ。速記記事とは、情報筋が、自分の口元に差し出してきた匙の中にあるネタを書く記事のことだ。その情報筋の狙いは、とある企みに資することだ。事実に基づく真実を追い求めることが目的では全くない。重要案件についての世論形成が、その目的だ。

 ヤファ氏の「ウクライナを軍事化する米国の努力の内側」という記事は、政府が監督した狡猾で秀逸な速記記事だ。こんな記事を、報道とは呼べない。すべての読者は、そのことを心して読むべきだ。

30名の民主党員が、バイデン大統領に、ロシアとの交渉を求める書簡を送ったが、すぐに引っ込めた。ロシアと交渉しようとするだけでも許されない、ということだ。 

<記事原文 寺島先生推薦>

30 Democrats walk into the White House demanding diplomacy with Russia. Yes, this is a joke

A group of US representatives appealed to President Joe Biden to pursue diplomacy with Russia, only to retract their letter shortly thereafter, proving that not even the suggestion of talking to Russia is tolerated 

30名の民主党員が、ホワイトハウスに乗り込み、ロシアとの交渉を要求したが、それはただの冗談に過ぎなかった。
米国の国会議員の一団が、ジョー・バイデンにロシアとの交渉を行うよう求めたが、すぐにその書簡を引っ込めた。このことからわかることは、ロシアと話し合いをもつことを提案することさえ許されない、という事実だ。
  
 
筆者:ロバート・ブリッジ(Robert Bridge)
Robert Bridge is an American writer and journalist. He is the author of 'Midnight in the American Empire,' How Corporations and Their Political Servants are Destroying the American Dream.
@Robert_Bridge

出典:RT

2022年10月26日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月17日

 
米国国会議事堂案内所で、国会議員による株取引を禁止する件に関する記者会見時の民主党国会議員3人。左からアレクサンドリア・オカシオーコルテス(ニューヨーク州選出)議員。プラミラ・ジャヤパール(ワシントン州選出)議員。ジョー・ネグズ(コロラド州選出)議員© Tom Williams/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images

 今週(10月最終週)、30人からなる民主党国会議員団が、モスクワ当局との交渉を要求した。その動機は、核の冬を避けたいというよりは、明らかに11月の中間選挙での大敗北を避けたいがためだった。しかし数時間後に、彼らはその「過激すぎる」立場を即座に撤回した。

 老齢の帝王、ジョー・バイデンに宛てた仰々しい書簡の中で、これらの議員団が求めていたのは、「積極的な外交努力や、休戦に向けた現実的な骨組みを模索する努力の加速」という内容に過ぎなかった。このような要求は、イーロン・マスク氏が先日提案していた和平計画の内容とは、ほど遠いものであった。マスク氏がとりわけ求めていたのは、クリミアをロシア領にとどめるべきだという主張(クリミアは1783年以来ずっとロシア領だった。フルシチョフ書記長が、間違ってウクライナに割譲してしまうまでのことだが)と、ウクライナは中立国であるべきだ、という主張だった。しかし、物乞いには選り好みは許されない*、のだ。
     *米国支配体制が示す範囲内でしか行動できない民主党議員を「物乞い」に喩えている。

 「核兵器が使用される危険性が、冷戦時代の対立が最も激しかった時期以来、これまでになく高まっています」、とこの民主党員の一団は、書簡に記し、ウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領を不用意に煽ることがないよう求めていた。ゼレンスキー大統領は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と話をする気は全くない、と言っているからだ。「この理由のため、大統領に緊急に取り組んでいただきたいのは、米国がこれまでウクライナに対して行ってきた軍事的支援や経済的支援を、積極的な外交努力と結びつけ、休戦に向けた真の骨組みを模索する努力を加速することなのです。」


関連記事: バイデン氏に和平追求を促す書簡を撤回する議員たち

 この皮肉はナイフで薄切りできる(ほど緊迫感に満ちている)。なぜなら、核戦争による被害が差し迫っているという誇大宣伝は、すべてワシントン当局が出所になっているからだ。先日、バイデンは、聴衆に以下のような発言をして、民主党の資金源の人たちを驚かせたところだ。「私たちは今、ケネディとキューバのミサイル危機以来のアルマゲドンが発生する危険に直面しているという事実に向き合えていません・・・。(プーチンは)冗談で、戦略的核兵器や生物兵器や化学兵器を使う可能性がある、と言っているのではありません。というのも、今ロシア軍は思ったような戦果を上げられていないからです」、と。民主党が理解し損ねているのは、モスクワ当局はウクライナでもどこでも、大量破壊兵器を使用するなどと脅したことはない、という事実だ。

 このように自分の言い分だけを信じ込んで、民主党はうっかり眠れる巨人を起こしてしまったのだ。その巨人とは、反戦活動だ。この運動が大規模に見られたのは、2003年のイラク侵略時以来のことだ。アレクサンドリ・オカシオ-コルテス(以降AOC)は、5月にウクライナへ400億ドルの軍事支援を送る議案に賛成票を投じていた。そのAOCは、今月(10月)の質疑応答会で、数名の反戦活動家という希有な存在と記憶に残る面会を果たしていた。

 「あなたは、当初、はみ出しものとして出馬されていましたよね。それなのに、あなたは今回のウクライナでの戦争を始める議案に賛成票を投じ続けていますね」。聴衆の中にいた一人の青年男性の声が、AOCの耳にとまった。「あなたはロシアや中国との第三次世界大戦を始めようという議案に賛成票を投じていることになります。あなたはなぜ、米国市民たちの命をおもちゃにするようなことをしているのですか?」
 
 さらにもうひとりの反戦活動家は、AOCに民主党を離党するよう懇願していた。その活動家は、トゥルシー・ギャバード元下院議員が、離党する意思を発表したことをひきあいに出していた。ギャバード元議員は、民主党のことをこう批判していた。「臆病なウォーク(人種差別などに対する意識が高すぎること)に引きずられている、戦争亡者である支配者層たちの陰謀団」、だと。

 言うまでもないことだが、ギャバード元議員が言っていたような姿は、民主党が中間選挙の直前に有権者に植え付けたい印象ではない。特に、「戦争亡者」であることが米国の国家予算では到底支払えないような代償を伴う場合はなおさらである。もう少し穏健な言い方をすれば、ジョージ・ソロスのような人々から選挙運動の資金援助を受けているAOCが、おまえは偽善者だと罵られたということだ。国会に出馬した際、AOCは何百万人もの民主党員に対して、自身は「環境活動家・社会主義者・平和運動家」であり、普通の男性・女性・トランスジェンダー・絶滅危惧種たちを、企業の暴走から守るという姿で売っていた。しかし一瞬にして、AOCは巨大企業にとっての、ただの画面映りのいい、太鼓持ちになりさがってしまった。その巨大企業の例をあげると、レイセオン・テクノロジーズ社だ。同社は169億5千万ドルという巨大な利益をあげている。その理由の大部分は、現在進行中のウクライナでの紛争のおかげで、ミサイルや防衛装置の契約が増えたからだ。


関連記事:アレクサンドリア・オカシオ・コルテス、公会堂で抗議者をあざ笑う

 米国経済が大不況に向かって歩を進めている現在、多くの米国民は、ウクライナの大統領に、彼が必要とするものを、ずっと指図され続けている現状に嫌気がさしている。結局のところ、これは意外かもしれないが、ウクライナのことは、米国民たちにとって最重要課題ではないのだ。世論調査の結果が出るたびにあきらかになっているのは、ほとんどの米国民にとっても最優先課題は、止めどなく進行するインフレだ、という事実だ。結局、米国民の9割が地図のどこにあるかを言えないような、そんなはるか遠い国でおこっていることなど、誰も気にしていないのだ。そんなことより、月末にお金がなくて、家賃や暖房費が払えないことのほうが切実だ。しかしゼレンスキーは、そんなことは気にしていないし、ゼレンスキーを操っている貪欲な勢力もそうだ。自己資産が推定2000万ドルあって、豪邸に住み、各種不動産も所持しているゼレンスキーなら、インフレ問題など、2の次どころか3の次の問題とさえ思えるだろう。

 民主党員、少なくとも党員のうちの何名かは、米国民が、ゼレンスキー政権に白紙小切手を渡すという政策に辟易していることにやっと気づいたようだ。いっぽう共和党は、11月の中間選挙で勝利すれば、キエフ当局への資金提供を終わらせる警告を出しているが、その共和党が票を伸ばしている理由は、国家支出を抑え、国境を封鎖する政策を立てているからだ。国境を封鎖することについては、特に多くの共和党員にとっては重要な点だ。多くの共和党員が、こんな質問をしている。「なぜ民主党員が、ウクライナがロシアとの国境を補強することにこんなにも関心があるのだろうか? その一方で、米国とメキシコ間の国境が、ひろく開放されていて、あらゆる種類の犯罪の種が入り込んでいる問題には目も向けないのに。」

 悲しいかな、民主党員はウクライナ国民を使ったロシアとの代理戦争に完全に加担していて、ウクライナ国民は使い捨ての砲弾の餌食にされている。ウクライナ国民は、他の点においては知的な国民だったが、中立国という立場を維持する絶好の機会を逃してしまった。NATOからの圧力に耐えかね、巨大な隣人に対する無益な戦いでダビデ像を演じたからだ。しかし、現代の筋書きにおいては、巨人を倒せるような魔法の石は存在しない。ウクライナにとって悲劇の運命となったのは、いつものあの連中が、モスクワ当局が12月に出していた和平計画を拒絶し、その代わりに、モスクワがウクライナに対して特殊軍事作戦を行うと発表するしかないように追い込むのを選んだことだ。ウクライナ国民の何人が、以下の簡単な質問を自問したことだろう? それは、「中立国であるという状況が、国家に損害を与えることなどあるのだろうか?」という問いだ。中立国であることで、スイスは苦しんでいるだろうか?そんなことはほとんどない。スイスは欧州で最も裕福な国の一つで、資産家たちがスイスの諸銀行に列を成している。中立国であることで、フィランドは被害を受けただろうか? いや、そんなことはない。フィンランドは、CEOWORLD誌が2021年の記事で出した、「2021年、世界で最も生活の質の高い国」で一位に選ばれているのだから。


関連記事: ウクライナの銀行が2セントで買収される可能性

 そして今、民主党員の一団は、今回の選挙運動期に、ロシアとの対話を求めている。たとえ彼らがすぐにそれを撤回しなかったとしても、これは「些細なことだ、手遅れだ」と言うことはかなり控えめな表現になるだろう。というのも、これらの民主党員たちが、心の底から反戦の立場を示していたのであれば、何十億万ドル相当の武器がウクライナに垂れ流される前に、平和の声を大声で叫んでいたはずだ。だからこそ、いま平和を実現するということは、ほぼ不可能な夢なのだ。

 残念なことに、モスクワ当局も同様の結論を出さざるを得なくなっている。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が先日発表したところによると、ロシアは西側への外交努力から撤退する可能性がある、という。その際、同外相が触れていたのは、西側各国政府の対ロシア外交が、ますますあからさまに敵意を表している、という事実だった。

「ロシアは、ほとんど人間扱いされない状況で活動しています」、とラブロフ外相は語り、さらに、「問題や脅威が常に継続している」とした。同外相はさらに付け加えて、外交における存在感をこれまでと同程度に維持することには、「意味がない」とした。

 言い換えれば、今私たちは人類史上最も不吉な時代を迎えているということである。というのも、世界の二大核保有国間で、外交努力を行う機会が事実上消滅してしまっているからだ。近年、世界がこのような状況に置かれたことはない。冷戦時、最も激しい対立があったときでさえそんなことはなかった。残念ながらワシントン当局は、このような危険な状況を迎えてしまった責めを負わなければいけない。そして今、このような状況を止められるのは、ウクライナ国民だけだ。ウクライナ国民が、自国の指導者たちに要求して、ロシアとの紛争に縛られることから抜けだし、ウクライナが中立国であるべきという条件を飲むことしかない。この惑星の将来は、本当にこの点にかかっている。

次回の大統領選挙ではバイデン氏の出馬を望まない――世論調査

<記事原文 寺島先生推薦>

US voters don’t want Biden to run for re-election – poll

The majority does not think the current president should seek a second term, a new survey shows

米国有権者の大多数は、現職大統領が二期目の出馬をすべきでないと考えていることが、新たな世論調査で判明

出典:RT

2022年11月9日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月12日


2022年11月7日、米国メリーランド州ブーイ市での選挙関連行事で語るジョー・バイデン大統領 © Nathan Howard / Getty Images / AFP

 米国の衆議院議員選挙の有権者のうち3分の2以上が、2024年、ジョー・バイデン大統領が2期目に出馬すべきではない、と考えていることが、 エディソン研究所が実施し、CNNが報じた出口調査の初期結果から分かった。

 民主党に投票した有権者の6割弱が、バイデン大統領は2期目も出馬すべき、と答えた。いっぽう、共和党に投票した有権者のほぼ9割と、無党派層の7割以上が、バイデン大統領の2期目の出馬を望んでいない、と答えた。

 バイデン大統領の支持率は、6月に大統領在職中最も低い値である36%にまで下降した。なお、ロイター通信とイプソス社が共同で行った世論調査の結果によると、中間選挙の前日の11月7日(月)の時点での支持率は39%だった。

 バイデン氏が大統領に選ばれたのは、2020年のことで、現職だったドナルド・トランプ氏を破っての勝利だった。バイデン大統領の業績評価は、低迷しているが、 これは高いインフレ率と天然ガス価格の急騰、などの問題が原因となっている。

関連記事:Republicans favored to retake US House as Senate up for grabs

 共和党員の中には、バイデン大統領が、ウクライナでのロシアとの紛争において、ウクライナに、「白紙小切手」を手渡していることを非難している人々もおり、バイデン大統領に対して、ウクライナの件よりも、経済など自国の内政に焦点を当てるよう強く促している。

ヒトラー・ナチスの手本は、米国の黒人差別法と先住民の強制収容所だった。

<記事原文 寺島先生推薦>

The US-Nazi Connection Since World War II: From Inspiring the Third Reich to Supporting the Neo-Nazis of Ukraine - Global ResearchGlobal Research - Centre for Research on Globalization

第二次世界大戦以降の米国とナチスのつながり:第三帝国への鼓吹からウクライナのネオナチへの支援まで

筆者:ティモシー・アレクサンダー・グズマン(Timothy Alexander Guzman)

出典:Global Research

2022年10月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月10日



 ワシントン、ロンドン、ブリュッセル、テルアビブのマフィアは、彼らの「一極世界秩序」という計画を維持するためには何でもする。実際、彼らは最悪の敵と協力してでも、残された力を保持することに必死になっている。古来からの有名な諺に「敵の敵は味方」というのがあるが、今日もその言葉が当てはまるのだろう。なぜなら、ワシントン、CIA、軍産複合体、モサド、NATOは、イスラム国(ISIS)、アルカイダ、その他のグループを含む有名なテロリストを支援して自分たちが認めていない政府、とりわけ中東の政府を、転覆させてきたからだ。

 しかし、彼らがかつて敵であったテロリストを支援したのは、シリアやリビアに対する政権交代戦争から始まったのではない。敵を支援するという発想は第二次世界大戦中と戦後に、アメリカ政府が新しい敵であるソ連に対抗するためにウクライナのナチスを採用したことから始まっている。戦時中、アメリカやヨーロッパの同盟国と共にナチスと戦ったソビエトが新たな脅威と見なされたことを考えると、何とも奇妙な展開である。ワシントンとマフィアの仲間たちは、当時はナチスを利用し、今度は聖戦テロリストを世界支配のための戦争に利用している。長期的にどんな犠牲があっても彼らはそうするのだ。

 では、ナチスとはそもそも、いったい何者で、なぜワシントンは彼らを勧誘することに関心を持ったのだろうか? まず第一に、ナチスの構成員はアメリカ政府が興味を持ついくつかの科学技術分野に関与していたからだ。それは、後にあらゆる戦争兵器の製造や将来の軍事作戦のための心理作戦に活用することになるのだが、詳細については後で述べることにする。

 しかし、ナチスは極右のファシズム思想に従っていた。それは超国家主義の原則と一致する権威主義的な思想であり、無政府主義、共産主義、民主主義、共和主義、社会主義など、自分たちの権力の上昇を脅かすと見なされる政治形態を否定する。そして、これは正気の沙汰とは思えないが、ナチスは科学的人種主義、あるいは優生学と呼べるものを用いた。人間の遺伝子プール(給源)を操作して、ある集団を劣等とみなされる人々と優位とみなされる人々の間に分けたのだ。それから、第三帝国内に蔓延していた反ユダヤ主義という要素もある。ナチズムは、超国家主義者という人物像に合致しない人に対して大量虐殺、拷問、強制不妊手術、反対派の投獄、国外追放、その他の残虐行為を行った。とりわけ、彼らが要求するような人種的資質を備えていない場合はそういった被害を被った。

 ファシズムの歴史を振り返ると、そのルーツはヨーロッパにある。ルイ・ナポレオン・ボナパルト(別名ナポレオン3世)が1848年から1852年まで鉄拳でフランスを支配したとき、フランスはファシスト/ナチの国家としての要素を備えていた。


アメリカによる赤い野蛮人退治はアドルフ・ヒトラーにヒントに与えていた

 1933年1月30日、ドイツの首相に就任したアドルフ・ヒトラーは、ファシズム政策を率先して実行に移したが、そのときはヒトラーの同盟国であるイタリアのムッソリーニや日本の裕仁も、同様の政策をとっていた。

 では、このようなイデオロギーは何からヒントを得たのだろうか。ナチスはどこからその着想を思いついたのだろうか。

 アドルフ・ヒトラーが、アメリカの短い歴史の中で採用した特定の集団に対する対処法を賞賛していたことは周知の事実である。その対処法とは、アフリカ系アメリカ人に対するジム・クロウ法から、アメリカ・インディアン戦争で先住民が送られた捕虜収容所である。

 ジョン・トーランドの「アドルフ・ヒトラー:決定版伝記」には次のように書かれている。

(以下引用)
 「ヒトラーの強制収容所の概念と大量殺戮の実用性は、イギリスとアメリカの歴史の研究に負うところが大きかったと、ヒトラーは主張している」「彼は南アフリカのボーア人の囚人の収容所と米国西部の原住民の収容所を賞賛した。そしてしばしば側近に、アメリカが捕虜にしても手懐けることができなかった赤い野蛮人を絶滅させた効率性―それは飢餓と一方的な戦闘によるものだったが―を賞賛していた」
(引用はここまで)

 では、「強制収容所」という考え方はいつから施行されたのだろうか。それは、アメリカ大統領で民主党だったアンドリュー・ジャクソンの時代である。彼は1830年にできたインディアン移送法の一環として「移民収容所」を導入した。何万人もの先住民が強制的に「収容所」と呼ばれる場所に入れられた。それには、セミノール族、チェロキー族、チョクトー族、マスコギー族などの部族が含まれていた。主にアメリカ南部の部族国家で、アラバマ州やテネシー州が含まれていた。

 米国の統治モデルがナチスドイツに影響を与えたもう一つの要素は、ジム・クロウ法である。 法律学者で『ヒトラーが手本にしたアメリカ的手法:米国とナチ人種法の成立』の著者であるジェイムズ・Q・ホイットマンは、ナチスがアメリカの人種法をどのように見ていたかについて、紹介文を書いている。

(以下引用)
 冒頭、グルトナー法務大臣はアメリカの人種法に関するメモを提示した。これはこの会合のために同省の職員が入念に作成したものだった。参加者は議論の過程で何度もアメリカの人種差別法制のモデルに立ち返った。とりわけ驚くべきことだったのは、出席していた最も急進的なナチスがアメリカの方法は自分たちにとって最も役立つ教訓だと熱烈に支持していたことだった。後述するように、ナチがアメリカの人種法に関わっていた記録は、この記録だけではない。1920 年代後半から 1930 年代前半にかけて、多くのナチス、とりわけヒトラー自身は、アメリカの人種差別的立法を真摯に受け止めていた。実際、ヒトラーは『我が闘争』の中で、アメリカを、ニュルンベルク法が意図したような健全な人種差別秩序の構築に向けて前進した「一つの国家」にほかならない、と賞賛している。

 私の目的は、ニュルンベルク法制定時にナチがアメリカの人種法からヒントを得ようとした、この無視された歴史を記録し、それがナチスドイツについて、人種差別の現代史について、そして特にアメリカについて何を語っているかを問うことである。
(引用はここまで)

 アメリカから着想を得た人種法は、1935年9月15日に成立したニュルンベルク法によってドイツ社会に押しつけられた。ナチスは、アメリカの人種法を、最終的に非市民となったユダヤ人など、さまざまな集団に対して実施できる適切な政策であると考えた。というのも、その人種法は、アメリカ先住民、フィリピン人、アフリカ系アメリカ人などが、たとえアメリカやその植民地地域に住んでいたとしても、彼らを非市民とみなしたからだ。また、アメリカの人種法の中でナチスが関心を持った箇所がある。それは、アメリカの約30の州で異人種間の結婚を禁止する混血禁止法で、アメリカでこの法律を破ったものは厳しい刑事罰を受けることになっていた。


ペーパークリップ作戦:第二次大戦後、米国政府はなぜナチスを起用したのか?

 ロシアがウクライナに侵攻して以来、核戦争の噂は以前にも増して広まっている。ウクライナの俳優、失礼、つまり大統領のヴォロディミル・ゼレンスキーは、ロシアが核兵器を使うのを阻止するために「予防攻撃」を呼びかけたが、その後すぐにその主張を撤回した。しかし彼は、予防措置のために西側がロシアに核兵器をぶつけることを呼びかけた。ただ、彼の口から出たその言葉も極めて危険な言辞だった。核兵器といえば、そもそも弾道ミサイルに核爆弾を搭載することを提案したのは誰だったかご存じか? それは、第二次世界大戦中にアメリカ政府に雇われたナチスのロケット科学者から生まれた考えだった。当初の計画は、「ウラン計画」(Uranprojekt)と呼ばれていた。兵器や原子炉を製造するための核技術を開発する目的だったからだ。



 第二次世界大戦末期、アメリカの情報機関と軍産複合体は、ロケット科学、航空力学、化学兵器、医学など様々な分野の専門家である1600人以上のナチスの科学者とその家族をドイツから密かに移送し、ペーパークリップ作戦と呼ばれるものを行った。米軍のために働くナチスもいて、ソビエトが世界を征服するのではないかという恐怖とパニックを引き起こす情報概要を作成したが、これは誇張されすぎていた。しかし、アメリカ政府が最も恐れていたのは「オソアビアヒム*作戦」であった。その作戦は、ソ連が、ドイツ・ソ連占領地区(SBZ)とベルリンのソ連支配地区で2,500人以上の元ナチスの科学者や技術者を募集することで、兵器開発などの分野でアメリカ政府より一歩先に進もうという作戦だった。
*「防衛と航空化学建設への援助のための協会」 ロシア語。

 アメリカのナチス科学者に関する重要な歴史的事実の一つは、ナチス党員であり、ナチスドイツの準軍事部隊の主要部門であるアルゲマイネSS(一般親衛隊)の一員であったヴェルナー・フォン・ブラウン(フルネーム:ヴェルナー・マグヌス・マクシミリアン・フォンブラウン男爵)が採用されたことである。フォン・ブラウンは、ロケット技術開発の責任者でもあり、アメリカにおけるロケットと宇宙技術の先駆者とみなされている。彼はアポロ宇宙船を月へ打ち上げるのに役立ったとされる超大型ロケット「サターンV」の設計責任者でもあった。

 その中にはサリンガスや、VX(神経ガス)、そしてもちろんベトナム戦争で最も使用された生物兵器であるエージェント・オレンジ(枯れ葉剤)などの危険な戦争兵器が含まれている。つまり、アメリカ政府はナチスの科学者を雇い、大量破壊兵器を作る知識を得て、それ以来、世界中のさまざまな人々に被害を与えてきたのだ。ベトナム戦争の間、アメリカ軍はエージェント・オレンジをベトナムの人々に撒き散らし、300万人以上に先天性欠損症やその他の健康関連の問題を今日まで引き起こしている。ナチスの科学者たちは、戦争のための高度な兵器を開発することに関しては、まさに邪悪な天才であり、それは米軍と情報機関がもっぱら関心を寄せていたもので、それは昔も今も怖いことだ。


アメリカの創り出したフランケンシュタイン:ウクライナのネオナチ

 歴史の貴重な教訓から分かるように、アメリカ政府とCIAは1946年以来ウクライナのナチを支援し訓練してきた。CIAは東ヨーロッパなどでOUN-B(ネオナチのウクライナ民族主義者組織)と共に「背後から攻める(Stay Behind)」作戦を組織した。ウクライナ民族主義者を支援し、ソ連領ウクライナを不安定にするために派遣した。そしてそこで、特殊部隊を使ってソ連高官の暗殺、インフラの破壊、テロ行為などの作戦を密かに行ってきた。

 アメリカ政府とCIAの工作員の歴史を見ると、ウクライナの戦犯ステファン・バンデラを支援してソ連領ウクライナを不安定にするウクライナ地下運動を進めたので、CIAとその政策調整室(OPC)と特殊作戦室(OSO)はOUN-Bと秘密作戦を計画して、ソ連勢力圏内の心理戦のために反ソ連のウクライナ反乱軍(UPA)に支援を提供したのである。 CIAは、冷戦時代にナチスに協力したウクライナ民族主義者との関わりについて歴史的な記録を公表している。ケビン・C・ラフナー著「冷戦期の盟友:CIAとウクライナ民族主義者の関係の起源」では、「CIAがどのようにウクライナ人やその他の人々との接触を再び確立し拡大したか、そして彼らをどのように共産主義者に対して秘密行動をさせたり、あるいは赤軍戦線の背後でゲリラ、破壊活動、レジスタンス指導者として働かせる戦時資産として活用したか」を詳述している。歴史的な説明はさらに進んで、「多くの移民グループによる、時に残忍な面もある、戦争の記録は、彼らがCIAにとってより重要になるにつれて曖昧になった」と述べている。

 それからずっと後になるが、2013年11月には、ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が、EUとの自由貿易協定を拒否し、政治的・経済的関係を持つ代わりに、ロシアやユーラシア経済連合との関係を緊密にすることを決定したことに対して、ユーロマイダンと呼ばれる大規模な抗議デモが行われた。そして2014年2月、ウクライナの首都キエフでマイダン革命と呼ばれるデモ隊と政府の治安部隊との激しい衝突が起こり、民主的に選ばれた大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチに対するクーデターが発生した。その後すぐにロシア・ウクライナ戦争が始まり、ネオナチに影響を受けたアゾフ大隊が誕生し、彼らはロシアのあらゆるものに対する抵抗勢力となったのである。

 今年1月22日、主流メディアの一角を占めるYahoo Newsは、「CIAが訓練したウクライナの準軍事組織は、ロシアが侵攻した場合に中心的役割を担うかもしれない」と題する記事を掲載し、CIAが2015年からウクライナ軍を密かに訓練していたことを基本的に認めた。

 秘密訓練プログラムはオバマ政権によって立案された。ロシアが2014年にクリミアへ進攻し、併合した後のことだった。その訓練は、CIAの地上支部―現在は地上部として正式に知られている―で働く準軍人によって執り行われた。その後、トランプ政権下で拡大し、バイデン政権でさらに増強されたと、政府の同僚と連絡を取っている元諜報部高官は述べている。

 Yahoo Newsによると、その匿名の元情報機関高官は「もしロシアが侵攻してきたら、彼ら(CIA訓練プログラムの卒業生)はあなた方の民兵、反乱軍のリーダーになる」「我々は彼らをこれまで8年間も訓練してきたのだから、実に優秀な戦士だ。このCIAプログラムが重要な影響を与える可能性があるのはそのところだ」と述べている。したがって、過激化したネオナチと呼べる人々が実際はどれほどいたのかについては疑問を持たざるを得ない。

 2018年、ロイター通信社はジョシュ・コーエンによる解説「ウクライナのネオナチ問題」を掲載し、ナチが国家民兵の隊列を埋めているウクライナの問題を解説した。コーエンによれば、1月28日にキエフで行われた、いわゆる「国民民兵」の隊員600人によるデモは、新しく結成された超民族主義勢力が「秩序を確立するために武力を行使する」と誓うものだったが、このことは、ネオナチの脅威を物語っている、ということだ。コーエンは、国民民兵はナチス系のアゾフ大隊から隊員を集めていると付け加えた。

(以下引用)
 国民民兵の隊員の多くは、30余りの民間資金による「ボランティア大隊」の一つであるアゾフ運動出身者である。彼らは戦争初期にロシアの代理人である分離主義者からウクライナの領土を守るために正規軍を助けている。アゾフはナチス時代の象徴を使い、ネオナチを隊員に勧誘しているが、フォーリン・アフェアーズ誌の最近の記事では、アゾフは他のボランティア民兵と同様にウクライナ軍に統合されて「抑制」されていると指摘して、この勢力がもたらすかもしれない危険性を軽視している。民兵がもはや戦場を支配していないのは事実だが、キエフが今心配しなければならないのは国内戦線である。
(引用はここまで)

 「プーチンがクリミアを占領した」というコーエンの文章は、明らかに主流メディアの言説に従っている。実際には、ロシア語を話すクリミアの人々が、ロシア連邦との再統合を住民投票で決めたのだ。しかし、コーエンの功績は、アゾフ大隊と右翼団体がロシアに支援された分離主義者と戦ったので、高い評価を受けたという事実に触れていることである。コーエンはアゾフ大隊が子供たちの訓練所を持っていたことについても言及している。

(以下引用)
 4年前にロシアのプーチン大統領がクリミアを占領し、ウクライナ軍の老朽化が露呈したとき、アゾフや右翼民兵がその隙間に入り、ロシアが支援する分離主義者を撃退し、その間にウクライナの正規軍は再編成された。その結果、多くのウクライナ人は民兵を感謝と賞賛の念を持って見守り続けているが、民兵の中でもより過激な勢力は、不寛容で非自由なイデオロギーを推進し、長期的にはウクライナを危険にさらすことになる。クリミア危機以降、民兵はウクライナ軍に正式に統合されたが、完全統合に抵抗するものもいる。例えば、アゾフは独自の子供向け訓練キャンプを運営しており、その人事部門は正規軍からアゾフへの転属を希望する新兵を指導している。
(引用はここまで)

 コーエンの主張はウクライナにネオナチがいることを暴露しているが、西側体制と主流メディアの筋書にしたがって、「ウクライナはファシストの巣窟だというクレムリンの主張は嘘だ。ウクライナの前回の議会選挙では極右政党の選挙結果が悪く、キエフでの国民民兵のデモにウクライナ人は警戒感を持っている」と述べている。しかしこれはすべて嘘である。コーエンの発言は嘘で、かつ矛盾している。彼は記事の冒頭で「国民民兵の隊員はアゾフ運動から集められた」と書きながら、一方で「アゾフはウクライナ軍に統合されることで『抑制』されたので心配ない」とも書いている。彼の間違った情報源はまず『Foreign Affairs』誌あたりだろう。これはアメリカの政治体制のお気に入りである外交問題評議会が所有している出版物である。

 では、アメリカ政府、軍産複合体、CIAは、現在進行中の対ロシア戦争でウクライナのネオナチを支援しているのだろうか? その答えはもう明らかだ。


Timothy Alexander Guzmanは自身のブログサイト、Silent Crow Newsで執筆しており、この記事の原文はここに掲載されている。彼はGlobal Researchに定期的に寄稿している。

民主党の次世代スターだったトゥルシー・ギャバードが表舞台から去った訳は?

<記事原文 寺島先生推薦>

Tulsi Gabbard dares to challenge Washington’s war machine
The former presidential candidate has shown that opposing regime-change policies is the one taboo that the ruling class won’t tolerate

トゥルシー・ギャバードは、果敢にも米国戦争機構に挑戦
元大統領候補の彼女が示したのは、他国の政権を転覆しようとする政策に反対することは、支配者層が決して許さない禁忌事項であるという事実

筆者:トニー・コックス(Tony Cox)

米国の記者。ブリームバーグ紙やいくつかの大手日刊紙で記事執筆や編集活動を行ってきた経歴を持つ

出典:RT

2022年10月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月6日


Tulsi Gabbard. ©  AP Photo/Charlie Neibergall

 民主党の押しも押されぬ新しいスターだったトゥルシー・ギャバードが突然、悪者にされてのけ者扱いを受けた(ギャバードは今週民主党を離党する決意を示した)事象は、 ワシントンで強力な権力をにぎる全てのものが同意するあるひとつの考え方を示している。それは、「戦争は是である」とする考え方だ。

 本当にこの考え方は、米政界で権力を有し、 長期にわたり立派な経歴を持ちたいと願うのであれば、誰でも同意しなければならない考え方なのだ。そうしないものたちは、よくて端っこに追いやられるだろう。世間に対して効果的な発言をするものであれば、裏切り者の烙印を押される。元国会議員のロン・ポールやロンの息子のランド・ポール上院議員が実証した通り、そんな人々はまともな大統領候補として扱われることは決してなく、どれだけ多くの論争に勝利したとしても、出馬することは許されないだろう。

 ギャバードほど、この現実をはっきりと体現させた人物はいない。彼女が2013年に国会議員となったとき、どれだけ民主党に貢献したかを思い起こしてほしい。ギャバードは次世代の大物として本当に名を売っていた。それなのにギャバードが、ほんの僅かの時間で破門状態に追いやられてしまった様を見てほしい。ギャバードの名声の没落は、驚くべきほどはやく、目を引くものだった。

 当時まだ31歳だったギャバードは、最も信頼のおける民主党支持地域である「青の州」のハワイ出身で、彼女は、ハワイ選出で過去最年少の国会議員となった。

 ギャバードは非白人だ。ギャバードは、民主党が心から愛しているアイデンティティ政策に合致する要素で、2つチェックがつく。彼女は、初のヒンドゥー教徒、さらに初のサモア系米国民の国会議員だったからだ。彼女は軍人としての長年の経歴もある。はっきりとした性格で、自分の言っていることばに強い信念を持っていると思わせる人柄の持ち主だ。


関連記事: Tulsi Gabbard quits ‘warmongering’ Democrats

 端的に言えば、ギャバードはカマラ・ハリス副大統領より数段優秀だ、ということだ。現副大統領が、もっと若くて、賢くて、好感が持てて、一本筋が通っていると想像してみてほしい。さらにおまけの特典で、従軍体験があり、人間味もある人物を思い浮かべてほしい。何より、最も不適切な場面で、制御できないほど笑ってしまわない人物を思い浮かべてほしい。トゥルシー・ギャバードなら、そんな人物にぴったりだ。

 民主党の指導者たちが、ギャバードの潜在能力に気づくことは困難なことではなかった。2012年の初めての予備選挙で、彼女が勝利したからだ。バラク・オバマ大統領は、ギャバードを推し、当時のナンシー・ペロシ下院少数党院内総務も、ギャバードを招き、民主党全国大会で演説させた。 2013年の連邦議会が開催されてすぐに、ギャバードは民主党全国委員会の副議長に選出された。

 それに合わせて、CNNなどの旧来メディアがギャバードを褒めそやし始め、「次世代のスーパースター」や「目を離せない人物」だと持ち上げた。MSNBC局は、「ハリウッドはギャバードを題材にした映画を作るべきだ」とまで提案していたし、CNNの評論家アナ・ナヴァッロはこんな冗談を飛ばしていた。「よく分からないけど、戦争の時は、彼女を自分の陣にいれたいわね」と。

 しかしその後、突然と言っていいほどに、メディアの語り手たちは、ギャバードを自陣に入れたがらなくなってしまった。ドナルド・トランプが2016年の大統領選で衝撃的な勝利を収めたのち、ギャバードは果敢にも、新しく選ばれた大統領と面会したのだ。本当に問題とされたのは、ギャバードが「オレンジ顔の悪党」と面会した事実ではなかった。許されなかったのは、ギャバードがトランプと話し合った内容だったのだ。 それは、米国によるシリアでの政権転覆工作についてだった。

 「私が重要だと感じたのは、新しく選ばれた大統領と面会する機会を持てたことです。ネオコンたちが叩く軍靴の足音の高まりにより、戦争が激化され、シリアの政権転覆が目指される前に、です」と、当時ギャバードは語っていた。その数週間後、ギャバードはシリアを訪問し、現地の酷い状況を目にし、さらにシリアのバシャール・アル・アサド大統領と面会した。


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 ギャバードが2020年の大統領選に出馬したとき、予備選挙の討論会で反戦の態度を主張し、刑事司法の観点からみれば、 ハリスは偽善者である、と非難していた。一度目の討論会の後で、ギャバードはネット上で最も検索された候補者となったが、グーグルはギャバードの選挙公報用のアカウントを一時的に停止した。つまり、ギャバードは、投票者からの関心の急増を利用できなくなったということだ。ギャバードは、その後の重要な討論会に自身を参加させず、そうするために規則を変えることも一度あったと、民主党全国委員会を非難した。そしてギャバードは、その後すぐに選挙戦から降りた。

 メディアはギャバードを反LGBTQ主義者の頑固者で、「ロシアのまわし者」であると報じ、ギャバードは国会議員としての経歴も失った。ギャバードが選んだ道は、再選を求めないことであったし、国会でのトランプ糾弾に一票を投じなかった唯一の民主党員になった。

 しかしギャバードは反戦争中毒の声を上げ続けていた。2月にロシアがウクライナに特殊作戦を開始してからは、特にそうだった。そのことが、民主党員からも共和党員からも同様に非難を浴びたのだ。ギャバードが、政治家として関わってはいけない人物としての扱いを受けたのは、 バイデンが進めているロシアに対する代理戦争により、米国が核戦争による壊滅に近づいている、と警告したからだった。ギャバードが、米国が資金援助していたウクライナの生物研究所に関する懸念を表明した際、ミット・ロムニー上院議員は、ギャバードが、「反逆的な嘘」をばらまいていると、非難していた。

 ギャバードが10月11日(火)に民主党を離党すると発表したとき、「臆病なウォーク(アイデンティティに対する高すぎる意識)」という発言があった。
 つまり、人種による分断や、信念を持つ人々に対する敵意や、政敵を法律という武器で倒すことを批判していたのだ。しかし最も重要な点で、決して妥協できない違いは、戦争についての考え方だった。「私は今の民主党に留まることはもはやできません。いまの民主党は、戦争亡者である支配者層の陰謀団に完全に牛耳られているからです」とギャバードは語っている。

 悲しいことだが、もしギャバードが共和党員だったとしても、同じようなことを言っていただろう。経済学者で政策分析家のジェフリー・サックスが、10月10日(月)にあるインタビューでこう指摘していた。「この国の支配者層の最上位の人々は戦争を求めています」と。さらに「我が国は警備国家です。我が国には、我が国の外交と軍事政策のほとんどを運営している秘密の国家機関が存在しているのです」とも語った。


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 人種問題や性別問題などのでっち上げられた社会問題についての全ての駆け引きは、ただの政治的な見世物にすぎない。ワシントン当局にとって本当に問題になるのは、戦争のことであり、ギャバードが持つ効果的な雄弁さのせいで、ギャバードは戦争機構にとって危険な存在となってしまった。ギャバードが明らかにしたのは、米国の政策は、米国民にとっての真の安全保障や利益とは全く関係のないものである、という事実だった。

 「ワシントン当局内には、戦争亡者が有り余るほどいます。彼ら戦争亡者たちは、軍産複合体に従順で、自分たちだけの利己的な利益と、自分たちの主人の利益を優先します。自分たちが決めたことが米国民にどんな損害や被害を与えるなど、気にも留めていません」とギャバードは、10月12日(火)、フォックス・ニュースで語った。

 「今のバイデン大統領や、議会の指導者たちを見れば、まさにそうです。彼らが決めることのせいで、私たちは核戦争による破壊の瀬戸際に追いやられています。彼らには、核戦争が起こっても、安全に身を隠す場所があるかもしれませんが、私たち米国民には、そんな避難所などありませんし、行くところもありませんし、隠れる場所もありません。ただ人類全てと、私たちが知っているこの世界の崩壊に直面するしかないのです」。

内憂の米国、中間選挙後にウクライナへの支援を終了する可能性

<記事原文 寺島先生推薦>

US may end aid to Ukraine after midterms – Axios — RT World News
The Biden administration says it’ll keep working with Congress to support Kiev regardless of the outcome of November’s vote

米国、中間選挙後にウクライナへの支援を終了する可能性 ― アクシオス
バイデン政権は、11月の投票結果にかかわらず、キエフを支援するために議会と協力し続けるとしている。

出典:RT

2022年10月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月1日


写真: ウラジーミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領と会談するロイド・オースティン米国防長官(左)、アントニー・ブリンケン国務長官(右) © AFP / US Department of Defense
 
 11月8日の中間選挙で共和党が議会を支配した場合、ロシアとの紛争の中でワシントンがウクライナに提供している大規模な援助が削減される可能性があると、アクシオス・インターネット放送局は報じている。

 共和党の中で最も厳しいプーチン批判者でさえ、キエフへの援助について「かつての幅広い超党派の常識から顕著な移行」があったことを認めていると、同放送局は水曜日(10月15日)に報じた。

 同局は、ケビン・マッカーシー下院少数党院内総務が今週初めにパンチボール・ニュースに語ったことを引用している。「人々は不景気にあえぎ、ウクライナに白紙小切手を出すことはないだろう」「ウクライナは重要かもしれないが、それが米政権の唯一の議題であるはずがない」と彼は主張した。

 共和党のドン・ベーコン下院議員も、ウクライナへの支持が下がっていることに「気づいている」といい、「ソーシャルメディアや一部の議員に見られるようになった」と述べた。



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 ベーコン氏の同僚ケリー・アームストロング氏は、この潮流の変化は議員が有権者から採った意識調査の結果であろうとアクシオス局に語った。「食料品の価格が13%上昇し、エネルギーや光熱費が2倍になった...国境沿いの地域が、移民やフェンタニル*中毒者であふれかえっているとき、ウクライナは頭の中から最も遠い存在になる」と指摘した。
*麻酔や鎮痛剤として使われる薬剤。ヘロインよりも30倍強力だと言われる。

 同局はまた、下院の共和党幹部の話を引用し、「(5月の支援策で)400億ドルを支払った後、多くの共和党員が "ウクライナの資金援助を支持するのはこれが最後だ "と言っていた」と主張している。

 共和党調査委員会(RSC)の委員長を務めるジム・バンクス下院議員は、アクシオス局へのコメントで、中間選挙後は国内問題に注力すると指摘している。「RSCは、国内がこれほど弱っているのに、海外を指導することなどできないと考えている。選挙後に多数派となるであろう我々共和党の課題は、自国の国境を確保し、燃料費高騰とインフレに対処して、アメリカを立ち直らせることである」とこの議員は説明した。



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 ホワイトハウスの広報担当者カリーヌ・ジャンピエールは、ウクライナへの援助削減発言をしたマッカーシーの発言についてコメントを求められ、バイデン政権は「過去数カ月間と同様に、これらの取り組みについて議会と協力し続け、必要な限りウクライナを支援する」と主張した。この広報担当者の発言は、これがジョー・バイデンがウラジミール・ゼレンスキー・ウクライナ大統領にした「約束」であると念を押した。

 ホワイトハウスの側近が水曜日(10月15日)にポリティコ*に語ったところによると、バイデン政権は、選挙後に共和党が議会の少なくとも一院を支配した場合、アメリカの援助が終了する可能性についてキエフに警告していなかったという。しかし、キエフの当局者はこのような事態が起こりうることを認識しているという。
*政治に特化したニュースを配信している米国の報道機関のひとつ

 米国は、2月末のロシアとの紛争勃発以来、キエフの最大の支援者であり、HIMARS多連装ロケット発射機、M777榴弾砲、戦闘ドローンなどの高性能武器を含む168億ドル以上の軍事援助をキエフに提供している。

 モスクワは、これらの武器供与について、戦闘を長引かせ、ロシアとNATOの直接対決の危険性を高めるだけだと非難している。

CIAが、幻覚剤LSDの人体実験において、アフリカ系アメリカ人たちを重点的に被験者にしていた

<記事原文 寺島先生推薦>

How the CIA Illegally Used African Americans for Experimental Drug Research

CIAが、アフリカ系アメリカ人たちを試薬実験に使った不法な手口

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年8月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10日31日


 
 今は、MKウルトラ作戦のことをご存知の方は多いだろう。何十年もの間、CIAは、非常に非道徳的な人体実験を行い、洗脳やマインドコントロールや拷問術の完成をめざしていた。おそらくこの作戦で最も悪名高い行為は、向精神薬、特にLSDを対象者たちに大量投与させたことだろう。これらの物質が、1948年にラングレーに拠点を置くCIAに関心を向けさせたのは、リヒャルト・クーンによる。クーンは、第二次世界大戦後のペーパークリップ作戦を通じて、密かに米国に連行された1600名のナチの研究者のうちの一人だった。これらの研究者たちの中には、その5年後にMKウルトラ作戦が正式に打ち立てられたとき、その作戦に関して直接相談をうけた人々もいた。

 それがLSDとは知らなかった米国民に、LSDを投与させた行為は、恥ずべき行為だ。実はCIAの工作員たち自身が、その接種を行ったこともあった。ただし、CIAが、目的を果たすために、精神病患者や囚人や薬物依存症の人たち(匿名のCIA工作員の言葉を借りると「反撃してこれなかった人たち」)を実験台にしていたという事実は、ほとんど知られていない。

 オタワ大学の文化・精神医療格差研究所(Culture and Mental Health Disparities Lab )が出した学術論文により、MKウルトラ作戦のよく知られていない中身に新しい光が当てられ、さらにこれまで全く知られていなかったこの作戦のある側面が、浮き彫りにされた。 つまり、有色人種、特にアフリカ系アメリカ人たちが、この作戦においてCIAにより、全く不均衡な割合で標的とされていた事実が、明らかになったのだ。

動物実験のように語られ、動物のような扱いを受けた

 1973年、CIAの秘密活動が、ウォーターゲート事件をきっかけに、公的に明るみにされる可能性を恐れ、当時のリチャード・ヘルムズCIA長官が、MKウルトラ作戦に関するすべての文書を破棄する命令を下した。

 しかし、何万もの書類がその措置から逃れることができた。さらに都合のよいことに、この作戦内で行われた人体実験についての論文や、査読済みの科学的な記事の重要な部分は、自由に閲覧できる形で公表されている。この人体実験は、80を超える公立や私立大学、刑務所、病院で行われていた。被験者が承知していたかどうかは別として、CIAのために精神的な薬物の人体実験がそれらの場所で行われていたのだ。その薬物の中で、もっとも関心が高く、頻繁に使用されていた物質がLSDだったが、DMT(ジメチルトリプタミン)やメスカリンやシロシビンやTHC(テトラヒドロカンナビノール)といった幻覚剤の効果についての調査も、幅広く行われていた。

 中でも、オタワ大学の研究団が、1950年代から1970年代にかけて書かれたこれらの論文のうちの49件について分析を行っている。これらの人体実験のうち4割は、CIAが直接運営する、ケンタッキー州の依存症研究センターで行われた。

 このセンターの敷地内には、「麻薬および向精神薬取締法」違反で起訴された囚人を収容する刑務所も置かれていた。その刑務所は、薬物研究の「特別病棟」であり、意図的に「中毒者」にされた囚人が収容されていた。
 
 研究者たちは、公然とこのセンターを利用して、以前薬物使用者だった人々や、現在薬物使用者である人々を対象に、好んで人体実験を実施していた。というのも、これらの人々は、違法薬物が持つ効果に対する「経験が豊富」であるので、薬物に手を染めないような禁欲的な人々よりも、安易にインフォームド・コンセント(ある医療を行う際の、医師と患者の間の合意)を行えると考えられていたからだ。実際、CIAにモルモットとして使われた被験者たちは、自分が何を投与されているか不明なことが頻繁にあった。

 利用可能な文献の分析を行った際、研究者たちは、公にされた被験者たちの人種や民族、被験者を集める戦略、実験の手法、被験者たちの身に危険が生じる可能性などについて調査した。それによると、これらすべての実験の被験者たちは、捕まえられたり、刑務所に収容された人々で、実験への参加は強制的で、危険な水準の注入量が使われていて、実験の結果得られる科学的な利点については、疑問が持たれるものであった。

 ほぼ9割の事例において、少なくとも一件の倫理違反が検出され、4分の3を超える事例において、現代の指針では認められない程度の非常に危険な量の注入が行われる日程が取られていて、15%の事例で精神障害をもつ被験者が使われた。ほぼ3割の事例で、有色人種の人々が被験者にされていた。

 多くの研究において、被験者の人種や民族は記録されていなかったが、オタワ大学の研究者たちによるさらなる調査により、実験が行われた被験者集合所には、過剰な数の黒人の米国民が来場していたことが明らかになった。MKウルトラ作戦において、迫害を受けた有色人種の実際の被験者数がずっと多かったという事実は、避けられない事実だ。例えば、当依存症研究センターで実験が行われた際、有色人種の割合は、ケンタッキー州の人口の約7%に過ぎなかったのに、実験に参加した囚人の66%が、黒人やメキシコ系の米国民だった。



オタワ大学文化・精神医療格差研究所

 CIAのよく知られたこのMKウルトラ作戦において、どの事例においても、有色人種の人々は白人の被験者よりもずっと苦しめられていたという事実は、この実験に関する身の毛のよだつような話の詳細から、完全に明らかになっている。例えば、1957年の実験記録によると、数多くの脆弱な人々が精神的にも肉体的にも拷問をうけていたことがわかる。とくに研究者が記載していたある一人の黒人の被験者は、まるで動物であるかのように扱われていた。

 LSDを投与されたこの人は、「野生動物のようにおびえた表情」を示し、「自分の恐怖を和らげる薬」を求めた、とある。その人に対する対応は、彼を縛り、他の被験者たちよりもずっと高い注入量で混合薬を投与させることだった。そしてその人の意思に反して、そうし続けたのだ。

 その前年も同様に、或る実験が黒人の被験者に対して行われた。その際、85日間、毎日180ミリのLSDが投与されていた。一方白人の被験者は、たった8日間、毎日75ミリのLSDが投与されただけだった。或る一人の黒人の被験者は、その投与により、「非常に深刻な」反応を示し、症状が回復したときに、その実験から抜けるよう懇願していた。 しかし、「かなりの努力を伴う説得」の結果、実験の継続に同意した、という。

 この実験を分析した研究者たちが特定したのは、被験者を確保するための不適切な圧力が、しばしばかけられていた、という事実だ。被験者になることを強制させるさまざまな技術が頻繁に取り入れられることにより、残忍で、時には命にも関わる実験に被験者が誘導され、実験が維持されていた

 例えば、依存症研究センターの囚人たちには、被験者に志願する見返りに、刑期の短縮が申し出られたり、 ヘロインなどの薬物が渡されたりしていた。これらの薬物は、実験が終了した時点で手渡されたり、後の「退所」時の「銀行口座」に預金される場合もあった。ほぼすべての事例において、実験の被験者たちは刑務所から早く退所するよりも、依存欲を持続させる方を選んでいた。


「X先生、これは深刻な話です」

 被験者たちが受けた実験の設定も、被験者の人種により大きく変えられていた。それは、同一の実験においても、だった。1960年に行われたLSDの効果を調べる実験では、薬物使用で有罪判決を受け、刑務所内の研究病室で薬物を投与された「黒人」の男性の一団と、調査団長の自宅という居心地のよい環境の中で、志願して、投与を受けた仕事持ちの白人の米国民からなる一団が、横並びで調査されていた。後者は、「不安を取り除かれた社会状況」での実験が意図されていた。

 このような事例から、この実験の目的は、白人と黒人の被験者の間で、向精神薬に対する反応がどう違うかを測定することだったように考えられる。そうとなれば、ある疑問が浮かぶ。それは、CIAはある特定の薬物が、一般市民全般と比べて、有色人種の人々に効果的なのかについて、明確に、(あるいは、大きな)関心を持っていたのだろうか、という疑問だ。


カリフォルニア州ビェジャスの模範囚労働者収容所
LSD研究計画に参加する志願者。1966年9月6日 Photo | AP

 オタワ大学の研究団を率いるダナ・ストラウス氏は、MKウルトラ作戦で、黒人の被験者の割合が不釣り合いに高かったことは、大きな人種差別に当たる行為だが、それはCIAが実験対象にしていた機関内の人種構成に偏りがあったからだけだ、と主張している。ただし、ストラウス氏は、CIAの研究者たちが、意のままに利用できる囚人を容易に集めることができなかったとしても、有色人種の人々を実験対象に選んだであろうことは確実だ、と考えている。それはアラバマ州タスキーギーでの梅毒実験事件の時と同じ手口だ。

 ストラウス氏はミントプレス社の取材にこう答えている。

 「囚人たちは既に黒人でいっぱいだった。実験者たちは、自由市民を被験者にすることもできたが、自由市民たちであれば、このような実験から逃れることも可能だった。当時、囚人の被験者のような社会的に脆弱な人々を保護する術はなかった。そのためそのような実験は、基本的に実験する側の思うがままであった。このような人たちが、これらの危険な研究の標的にされたのは、彼らが黒人で、囚人で、人間としての価値が低いと思われていたからだった」

 ナチの強制収容所の閉じられた環境で、ジョセフ・メンゲレのような怪物じみた人物が、健康や安全などは考慮に入れず、非情で恐ろしい人体実験をしていたのと同じように、刑務所か収容施設のいずれか、あるいは両方に入れられていた有色人種の人々が、「反抗できない人々」とされ、CIAによって途切れることなく被験者にされ、CIAの思いのままに、搾取され、権利を侵された。そしてCIAは、その行為に対して精査を受けたり、責任が追求されることはなかった。

 ストラウス氏によると、実験の過程において、研究者たちは、ギリギリの量までの向精神薬を投与して、人体の反応を調べていた、という。MKウルトラ作戦に関わっていた研究者たちが、アウシュビッツで展開されたような邪悪さ野蛮さに匹敵しなかったとしても、少なくとも私たちが分かる範囲で、アウシュビッツでの実験と同程度の被験者に対する軽蔑の念があったことは、いくつかの研究で明らかになっている。そのような蔑視があったことが、ある特定の実験において気ままで過剰な特性が見られた理由の説明になるだろう。 そのような実験では、実験目的が不明確で、実験の結果得られる科学的価値が全く見いだせないものだった。

 1955年、ある研究団が、スプリング・グローブ州立病院に入院中だった4人の統合失調症患者を被験者にした実験を行った。その病院があるのはメリーランド州のバルチモア市で、今は住民の大多数が黒人である市だ。被験者たちは、大量のLSDを、過剰な期間、投与された。 はじめは1日100ミリを2週間、その後1日の投与量をさらに100ミリ増やされ、どの程度まで量をあげても許容できるかについて調べられた。比較のために書き添えるが、現在の向精神薬研究の指針では、LSDの投与量の最大許容投与量は200ミリとされていて、さらに、投与期間を長くすることは危険である、と警告されている。

 投与行為とともに、研究者たちは配慮なしに被験者たちを監視することもしていた。そこには被験者に対する軽蔑と非人間的扱いがあった。この実験の結果をまとめた報告書に見られる客観的な表現から、この実験の堕落性が浮き彫りになる。研究者たちの卑劣な盗撮行為は過剰で、「トイレの回数」や「性欲」の観察までに及んでいた。その実験報告には、この4人の被験者たちが、どれくらいの頻度で、「尿を漏らし」、「便で汚す」かも書かれていた。さらには、どのくらいの頻度で、「自慰行為や性的な会話をする」かまで記載されていた。そして、1人の被験者が、自分たちが受けている酷い仕打ちについて、絶望的にこう語っていたことも記録されている。「X先生。これな深刻な問題です。私たちは惨めです。私たちをおもちゃにしないでください。」

「明らかな不法行為のもとでの研究」

 ストラウス氏からすれば、これだけ全貌が明らかなはずのMKウルトラ作戦の人種差別的中身が、世間から認識されておらず、長い間隠されていたという事実は、「我々がいったいどんな社会に住んでいるかの答えになるだろう」と記述している。

 CIAの研究者たちが、黒人の米国民や囚人たちの命を軽視していたのと同様に、学会の立場はそれ以来変わっていない。しかもその自覚さえない場合もある。ストラウス氏の記述によると、現在の学者たちも非白人の精神病治療についての関心は非常に薄い、という。ストラウス氏は、最近の幻覚剤を使った研究の8割以上は、非ヒスパニック系の白人であったという、最近の研究結果を指摘している。

 ストラウス氏はミントプレス紙の取材にこう答えている。「全体的に、幻覚剤の研究や、心理学や、学術研究機関は、今でも白人が支配的な分野だ。2015年、米国の85%以上の心理学者が白人で、黒人は、5%以下でした。黒人の心理学者である、モニカ・ウィリアムス博士は、MKウルトラ作戦で行われていた虐待と、道徳上許されない行為について調査した最初の研究者でした。私の考えでは、本当の疑問は、なぜウィリアムス博士以外に、これらの明らかに不法な研究について、調べた人がいなかったのか、というものです。」

 さらに衝撃的な事実は、科学者や医学教授は、非人道的で不法なナチの研究を持ち出し、その道徳性について熱く議論が交わされ続けている一方で、ストラウス氏や彼女の研究団が調査した、非常に非道徳的で、人種差別に基づいていたMKウルトラ作戦における研究に関しては、明らかにそのような懸念の声が上がっていないことだ。MKウルトラ作戦については、今でも合法的な学術的研究として引用され続けている。


幻覚誘発剤に関する1966年3月の裁判での証言において、LSDの標本を見せている科学者のセシル・ハイダー氏。Walter Zeboski | AP


 ストラウス氏の希望は、これらの研究論文がきっかけとなり、より幅広い議論が展開されることだ。その議論の中身は、研究による虐待が、有色人種の人々にどう影響を与えてきたか、そして今でもどう影響を与え続けているかについてと、精神医療研究が、どうすればより社会的責任や文化的発展を果たせるかについて、だ。

 より一般的な話をすれば、MKウルトラ作戦の真実照合委員会を立ち上げることが明らかに喫緊の課題である、ということだ。CIAの役員たちも、この研究に参加していた人々も責任を問われることもなければ、罰を受けることもなかった。彼らにはCIAの庇護のもとで行われた、人類に対する数え切れないほどの罪状がある。さらにこの計画の全貌は未だに不透明で、謎が多いままだ。この事例はずっと闇に包まれてきたのではあるが、もっと邪悪な秘密計画があったことも分かっている。その中には、MKウルトラ作戦の海外版といえるMKデルタ作戦も含まれる。

 2021年12月、CIAが、何十年もの間、身体に負担のかかる実験をデンマークの子どもたちにおこなっていた事実が明らかになった。その子どもたちの多くは孤児で、インフォームド・コンセントも受けていなかった。その後、成人した一人の被害者が、地域の機関で保存されていたこの研究を、残忍にも黙認していたことを示す文書を閲覧しようとした際、関係当局はその文書をシュレッダーにかけた。ヨーロッパの他の地域でも、CIAが同様の研究を行っていた可能性について、大きな疑問が浮かび上がる。

 明らかに、この隠蔽工作は継続されている。このような圧力がかかっている理由は、過去の歴史的犯罪行為に蓋をしたいという反射的な欲求のためという理由だけではなく、このような記録が明らかにされれば、CIAによる現在進行中の活動の曝露に繋がる可能性があるという理由もあることは確かだ。

 ミントプレス紙が4月に出した記事の通り、MKウルトラ作戦が公式に実在していた期間に研ぎ澄まされた、拷問器具や精神操作の技術が、 グアンタナモ湾収容施設の囚人たちのために使われ、大きな効果を出している。そのような技術が、今はどこでも使われていない、あるいはこの先使われることはない、と考えられる保証はない。

 リチャード・ヘルムズが恐れていた、MKウルトラ作戦に関する議会による調査は、最終的には1977年に採択された。その調査において証言者となった一人に、エドワード・M・フラワーズさんがいた。フラワーズさんは、CIAによるマインド・コントロールの実験の被験者とされた生き残っていた囚人の中で、唯一居場所が突き止められた人物だった。フラワーズさんは、1950年代に囚人施設に収容されていた時、依存性センターで幻覚剤の実験の被験者となっていた。国会の公聴会に出たことで、フラワーズさんは、科学という名のもとに、自分の身になされたことに関する
不穏な事実を新たに知ることになったのだが、そのことで何かが変わったわけではない。

 「公聴会に参加した時の第一印象の直感で、私は裏に何かあることに気づきました。このこと全ての後ろに、CIAの影がある、と感じました。奴らは、私を利用して、利を得ようとしていたのです」と、フラワーズさんは、何年も経った後で、回顧していた。「私が国会の証言台に2回目に上がった時です。私の近くには数名の人が座っていました。その人たちは、補償金についてしなければいけないことの話をしていました。でも補償金のことを聞いたのはその時限りでした。」

 これとは対称的な事例だが、1966年11月、CIAがカリフォルニア州でクロック・コカインの販売に手を貸していた疑いについて、人々からの怒りの声が強まっていた。CIAはそれで得られた資金をニカラグアでの秘密工作の資金に利用しようとしていた。これを受けて、当時のジョン・ドイッチCIA長官が、ロサンゼルス住民からの厄介な質問に対処させられることになった。質問の中身は、報道されたこの陰謀に関することで、この会議には前例のない規模の数の市民が参加していた。

 オタワ大学の研究団によるこの発見によって引き起こされた人々からの怒りに関して、CIAの代表者たちが、CIAについての説明を公表するよう再び圧力をかけられない、という道理はない。CIAにはそうすべき理由がいくらでもある。

米国が中国の人権侵害問題議案を国連に提出したが、これは天に唾する行為

 <記事原文 寺島先生推薦>

US-led human rights resolution against China could backfire
Washington’s resolution against China at the UN’s rights body is bound to be embarrassing

(米国が主導した対中国の人権問題に関する議案提出は逆効果になるだろう。
  米当局は国連の人権団体に中国に対する議案を提出したが、この行為は恥でしかない。)

筆者:ブラッドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)



 ブラッドリー・ブランケンシップは、米国の記者で、コラム執筆者で、政治専門家。中国CGTVで、他社との共同コラムに執筆中で、中国国営メディアの新華社を含む国際的なニュースメディアでフリーの記者活動を行っている。

出典:RT

2022年10月4日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月21日



©  AP Photo/Cliff Owen

 米国は9月26日、国連人権理事会(以後UNHRC)に中国が新疆ウイグル自治区で人権侵害行為を行ったとされる件に関して、話し合いを持つよう求めた。ワシントン当局によるこの要求は、先日国連が、中国領内で人権侵害行為に当たる犯罪行為が行なわれている可能性を警告したことを受けてのことだった。

 米国が提出したこの議案には、英国、カナダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェーも支持していた。UNHRC加盟47ヶ国が、今週この決議の是非に投票を行うことになっているが、西側諸国は、この議案はおそらく否決される、と見ている。この議案が通過すれば、2月に開かれる次回のUNHRCの会合で議題として議論されることになるからだ。実際のところ、UNHRCの第51回会合で、パキスタンが、68ヶ国の代表として、共同声明を提出しているが、その声明によると、人権問題に関しては、西側諸国が二重基準を使っていることを非難し、新疆や香港やチベットに関する問題は、中国の内政問題である、と強調していた。

  現在の同理事会の加盟国の顔ぶれからすると、中国が西側よりも多く支持を集めそうだ、とひと目でわかる。さらにこの中には、先述の共同声明に参加している諸国が16ヶ国ある。したがって、米国の議案が否決される可能性は極めて高い。 さらに特筆すべきは、米国当局の反応が非常に柔和な点だ。それは、「話し合い」を持つ以上の議案が成し遂げられる可能性が全くないことを、米国当局がわかっているからだろう。

訳者より:筆者の予見通り、この議案は10日6日に否決されている。


関連記事: UN report accuses China of ‘crimes against humanity’
 
 この議案が通らないことが、米国にとっては既にじゅうぶん恥ずかしいことで、世界の勢力関係が津波のように動いている様を表すできごとなのであるが、実は、この事実がかすんで見えるくらい恥ずかしい事象がある。それは、人権に関する議論を始めてしまうことは、アンクルサム(米国の別称)にとってよい前兆ではないことだ。 

 新疆に関して中国に向けられているいつもの非難の声を検討してみよう。国連の報告書には、「強制労働」や「強制連行」などの人権侵害の事例が起こっていることが懸念される、と記載されている。ただしこんな人権侵害は、米国でよく目にするものだ。
 
 「宗教や、文化や、言語のアイデンティティや表現」に対する人権侵害のことから話を始めると、米国は、人類史上最悪のジェノサイド(民族大虐殺)を行った国なので、口をつぐんでおいた方がよさそうだ。ただし念頭においておくべきことは、米国当局が先住民たちに対して行ったジェノサイドと、先住民たちのアイデンティティに対する抑圧行為は、現在も進行中だ、という点だ。
  
 一例をあげると、広く報じられたネイティブアメリカンのダレル・ハウスさんに関する事件だ。ハウスさんは、自分の民族が先祖代々保有している土地で、祈りを捧げていたとき、連邦政府の関係者により、銃口をつきつけられたのだ。もちろん、このときの公園管理事務所の職員は事件について、「今は調査中です」と語っている。しかし、このような事例は常に起こっている。実際、ネイティブアメリカンの人々は、彼らの宗教上の行為に関して、何度も何度も、憲法上の議論の対象となっている。
 
 「プライバシーの権利と移動の自由」の話に移っても、米国が常にこれらの権利を阻害している姿を目にする。国家安全保障局(NSA)の内部告発者であるエドワード・スノーデンが明らかにした漏洩文書からわかったことだが、米国は世界規模で世界最大のスパイ活動網をはりめぐらせ、当人の同意を得ぬまま、自国民の大量の個人情報を収集している。

 
関連記事:China rebukes US as ‘world’s biggest human rights violator’

 移動の自由に関して言えば、人権問題が専門のスティーブン・ドンジガー弁護士の事例が、特筆される。ドンジガー弁護士は、巨大石油会社シェブロン社が、エクアドル国土を汚染しているとして、エクアドル国民たちの弁護を引き受けた裁判で勝訴した。その後、シェブロン社はその判決を不服とし、1セントの賠償金も払わないまま、連邦政府に圧力をかけ、ゆすり行為をおこなったとでっち上げて、ドンジガー弁護士を裁判にかけた。ドンジガー弁護士は、2年以上もの間、自宅軟禁状態に置かれていた。
 
 「生殖に関する権利」について、米国中で大きく報じられているが、これは最高裁がロー対ウェイド判決を棄却したことをうけてのことだ。この判決は、女性が中絶する権利を憲法上認めたものだった。現在女性の権利は、全国規模で深刻な危機に置かれている。というのも、諸州が、中絶を禁止する刑罰法規を設置し始めたからだ。
 
 「雇用と労働問題」について考えるのも興味深い。というのも、よく知られている通り、昨年の時点で、米国のフルタイム労働の最低賃金の7ドル25セントでは、米国のどこでも家賃をはらえなくなっている事実があるからだ。職場環境も極端に健全ではないことは、Covid-19が、米国でこれだけ蔓延した事実からもよくわかる。何よりも現在進行中の危機は、健全な労働環境の確保問題であり、連邦政府は、労働者たちの安全を確保する働きかけをしようとしている雇用者たちからの声に答えることが求められている。
 
 もちろん、囚人たちよりも搾取されている人々は存在しない。というのも、米国は未だに懲罰という形の奴隷労働を、憲法で認めているからだ。アメリカ自由人権協会(ACLU)が6月に出した報告によると、米国内の投獄労働者たちの平均給与は時給13セントから52セントだ、という。そして、これらの囚人労働により、年間110億ドル以上相当の商品生産や業務をまかなっている、という。 


関連記事: China, India and Brazil abstain in vote on US resolution, Russia vetoes
 
 もちろん、こんな給与は最低賃金を遙かに下回る賃金だ。さらに国家は、そのなけなしの給与の8割分まで、部屋代や食事代や裁判費用や損害賠償などの手数料を取ることができるようになっている。さらに皮肉なことに、そのお金は、刑務所の維持費や建設費にも回されているという。調査に回答したほぼ7割の受刑者は、生活必需品すら買うことができない、と答えており、いまいましいことに、76%の回答者が、「労働をしなければ、独房に監禁されるなど追加の懲罰が加えられたり、刑期を短縮する機会を拒否されたり、家族との面会ができなくさせられたりする」と答えている。
 
「家族の別離と報復問題」については、多くの人々がご存知の、不正入国者拘留所の「檻の中の子どもたち」の話がある。 米国は、国境で移民の家族を引き離ている。さらに米国のネットメディアのイーターセプトの記事によると、米国の連邦政府の工作員たちが、移民受入派の活動家に対する報復について、少なくとも議論は行っていた、という。
 
 「強制連行」の件については、米国政府はキューバ島内にあるグアンタナモ湾で運営している有名な軍事基地のことが、ピッタリ当てはまる。ここでは2002年以来、780名の囚人が収容されてきたが、その多くは正式な刑事訴訟の手続きを踏んでいない。この地で行われている虐待行為には、精神的虐待や、収容者の家族に害を与えることを脅しに使うことも含まれていて、このような行為は確実に「脅迫、恫喝、報復行為」に相当する。

 つまり国連の報告書が指摘している全ての人権侵害行為を米国は行っている、ということだ。この事実から分かることは、米国がUNHRCで人権問題に関する話し合いを始めようと決めれば、西側が人権問題についてどれだけ偽善者なのかがハッキリする、ということだ。ほんの少しの努力があれば、中国やほかの国々により、アンクル・サムが道徳に対して持っている優越感など粉々に砕かれてしまうことが、わかるだろう。

9/11攻撃の21周年は、アメリカの新しい現実の1周年

<記事原文 寺島先生推薦>

The 21st anniversary of the 9/11 attacks is the 1st anniversary of America’s new reality

(副題)9.11テロ事件から20周年を迎えた米国は、世界唯一の超大国としての地位を維持するために苦闘している。

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:RT

2022年9月11日



Scott Ritter 元米海兵隊情報将校。「ペレストロイカ時代の軍縮:武器の支配とソ連邦の終焉 (Disarmament in the Time of Perestroika:Arms Control and the End of the Soviet Union) 』の著者。ソ連ではINF条約(中距離核戦力全廃条約)実施監察官、湾岸戦争ではシュワルツコフ将軍の幕僚、1991年から1998年までは国連兵器査察官として勤務した。

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月2日


ファイル写真. ペンタゴン(ワシントンDC)の9.11記念式典で花輪を捧げるジョー・バイデン米国副大統領。© AFP / SAUL LOEB

 今年は、2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件から21年目にあたる。21年というのは、伝統的に注目される記念日にはならない。人々は、カレンダーの上でのキリのいい数字の魅力に基づいて年月の経過を記録するのが好きなのであって、その事件と現実との関連性にはさほど関心を持たない。1年目の記念日は重要だが、2年目の記念日はそれほどでもない。10年目の記念日は重要だが、11年目の記念日はそうでもない。

 昨年、米国と世界は9.11テロ事件から20周年を迎えた。この日が単なる時間の経過以上に重要だったのは、その関連性である。2021年にアメリカが「世界テロ戦争」として知られるようになる事態に突入したのは、アメリカがアフガニスタンから不名誉な撤退をしてから1カ月もたたない時期であった。2021年8月のカブール撤退は、20年にわたるドラマの最終幕だった。9.11の恐怖を世界支配のきっかけにしようと、アメリカの新保守主義エリートが唱えた「新しいアメリカの世紀」というビジョンが、地政学的な現実の浅瀬で座礁し、転覆し、最終的には自ら作り出した国家的傲慢さの嵐の中に沈んでいったのである。

 20年にわたる「テロとの戦い」(いくつかのはっきりした紛争から成る。アフガニスタン、そして、おそらく最も注目すべきはイラク)という政策の大失敗から(その実像が見えてきた)アメリカは、懲罰と屈辱は受けたが、負けを認めることも、謙虚になることもなかった。ここには①アメリカが現在置かれた地政学的現実と②米国のエリート指導層の自己陶酔的傲慢さ、との間の二項対立がある:

① アメリカはこの20年間世界を見向きもせず、中東の砂漠や山々で国家の血と財と評判を浪費してきた。
② 米国のエリート指導層は米国企業に自分たちが与えた損害を認識できない、及びあるいは、認識しようとしないため、復興のための外交、経済、セキュリティ戦略を構築する上での米国企業の集団的有用性を無効にしている。

 「20年+1年」を迎える9/11はこの新しい現実の初年度


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 結婚記念日の場合、新郎新婦は最初の結婚記念日とその後の結婚記念日がどう繋がっているのかが、よくわかっている。しかし、アメリカを全体として見た場合、つまり具体的にはアメリカ国民、その指導者、そして主流メディアは、9・11の20周年に自分たちがどこにいて、どのようにしてそこに至り、どこへ向かっているのかについて、事実に基づいて、感情的にならずに考察することができない。つまり、今のアメリカは今年が「ポスト9/11」の1周年を迎えていることを理解していない。アメリカ人の大半はそのことが分かっていないのだ。

 中東と中央アジアという地政学的な荒野を20年間さまよった末に、アメリカは軍事的にも経済的にも外交的にも、はるかに弱い国として姿を現した。この衰退をさらに深刻なものにしているのは、アメリカが20年にわたる自滅行為に従事している間、世界の他の国々は無為に過ごすことはなく、むしろ前進し、自国の能力を高め、必ずしもアメリカと対決することを目的としていないものの、その時が来ればはるかに有利な立場に立つ、という事実だ。

 イラン、中国、ロシアなどの国々は、アメリカが亡霊を追って力を使い果たすのを見ながら、アメリカの軍事力、経済の脆弱性、外交的欠点について知らず知らずのうちに与えられた教訓を心に留めていた。これらの教訓は、民主主義の学校であるはずの米国の混沌とした状況によって、さらに拡大された。この20年間で世界は、内戦のような抗争をくりひろげてきたアメリカの二大政党制から生じる政策と原則の乱脈な揺らぎを証言することになった。ジョージ・W・ブッシュによる8年間の新保守主義的な侵略に続いて、バラク・オバマによる8年間の新自由主義的な欺瞞があった。トランプ政権の4年間の思い上がりによる混乱は、今度はバイデン政権による2年間の誤った無能な復権主義に取って代わられた。バイデン政権の前提は、何十年にもわたるアメリカの政策の失敗から生じたダメージは、それが無くなれとただ強く思えば元に戻せる、ということだ。

 アメリカの民主主義は、「丘の上の輝く街」として、世界の人々に「私たちのようになりたい」と思わせることで、私たちの先導に従わせるはずだったが、高級住宅地を装ったゲットーに過ぎないポチョムキン村*であることが露呈してしまった。世界はこの変形の一部始終をじかに目撃することができた。その一方で、アメリカ人は、自由な消費主義という偽りの約束によって服従させられ、何もわからないというおめでたい状態に甘んじている。

ポチョムキン村*・・・主に政治的な文脈で使われる語で、貧しい実態や不利となる実態を訪問者の目から隠すために作られた、見せかけだけの施設などのことを指す。「見せかけだけのもの」とは、物理的に存在するものであることもあるし、あるいは資料や統計など比喩的なものであることもある。(ウィキペディア)


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 しかし、借金はいずれ返さなければならない。「9.11の20+1周年」は、国内外の多くの負債が返済期限を迎えたという現実を反映している。

 「9.11の20+1周年」で、アメリカは政治的な内戦状態にあり、その結果、南北戦争以来見られなかった範囲と規模の、党派主導の暴力に爆発する恐れがある。アメリカが、各国による主権的な経済政策の決定に干渉してくることにうんざりした世界市場が、地域通貨「バスケット」を支持して、米ドルを下落させていることから、世界の基軸通貨としての米ドルの優位性は、非常に疑わしいものとなっている。ロシアを「国家を装ったガソリンスタンド」に過ぎないと非難した後、米国とその同盟諸国は、荒野の中の高速道路で立ち往生している運転手の立場に置かれている。燃料タンクは空っぽ。ガソリンスタンドも見えない。旅に出る前にすべてのガソリンスタンドを閉鎖してしまったことが主な理由だ。西側諸国によるロシアへの経済制裁は、ヨーロッパの経済が崩壊し、アメリカが救うことができない、及びあるいは、救う気がないという自傷行為と化している。

 アメリカが世界の指導者たる地位を維持してきたのは、アメリカの民主的統治モデルが、アメリカが頼りにしている社会的、経済的、軍事的強さを生み出すのに役立ち、世界の悪の勢力と立ち向かえるという前提のもとに成り立っていた。

 このモデルはもはや存在しない。その理由は、9.11テロ後の最初の20年間、アメリカがどのように振舞ったかに負うところが大きい。

 「9.11の20+1周年」で米国は、ウクライナ、太平洋、中東、アフリカ、アジア......そして国内において、自分たちが引き起こしたことの現実に直面しつつある。聖書には、「風を蒔き、つむじ風を刈り取る」(ホセア書8:7)とある。

訳注:この言葉の意味は、自分がどんな種を撒くかによって、その結果生じる収穫の中身が決まるというもの。自業自得の意。

米国で若年層による犯罪が増えている二つの要因とは?

<記事原文  寺島先生推薦>

 What’s behind the surge in America’s youth crime?

Bereft of two crucial authority figures ? their fathers and the police, youngsters struggle to find their place
(米国での若年層による犯罪の急増の背後にあるものは何か?
父親と警察という2つの権威を失う中で、若者たちは自分たちの居場所を見つけようと格闘している)

筆者:ロバート・ブリッジ(Robert Bridge)

出典:RT

2022年8月18日



ロバート・ブリッジは、米国の作家であり、記者。著書に『米帝国の深夜』『企業とその従者である政府がアメリカン・ドリームを破壊している』がある。ツイッターはこちら。@Robert_Bridge

<記事翻訳  寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月1日


cGetty Images/Riou


 米国では、嫌な潮流が起こっている。それは凶悪犯罪が、社会の最も幼い年代層により引き起こされていることだ。しかし、政治による国民の分断のせいで我が国がバラバラにされている中、この現象の原因を解明することは、たやすいことではない。

 フィラデルフィア市は、「兄弟愛の街(訳注:古代ギリシャ語のフィロス〔愛〕・アデルオス〔兄弟〕に由来する)」としてよく知られているが、殺人件数の統計結果からは、そんなイメージからは程遠い。

 2020年から2021年にかけて1年の学校年度において、人口150万のペンシルベニア州のこの都市で、公立学校に通う753人の生徒が自分の級友に銃で撃たれ亡くなっている。警察の統計によると、9月から11月中旬までに、銃撃事件でなくなった31人が18歳以下だった。この数は、2020年の年間の死者数を上回り、2015年の年間死亡者数の3倍である。それと同時に2021年、18歳以下の30人が殺人の罪で逮捕された。この数は、2019年の年間逮捕者数の6倍だ。

 子どもたちが凶悪犯罪の被害者になっていることは、痛ましいことだが、子どもたち自身が深い残忍性をもつ凶悪犯罪を犯したとして非難されている状況も、同様に心を落ち着かなくさせられるものだ。

 6月、フィラデルフィアの若者たちの一団が、73歳の男性のジェームス・ランバート・ジュニアさんを、道路に置いてある三角コーンで打ちのめしている姿が映像に残された。 ランバートさんはその怪我のせいで、病院で亡くなった。警察によると、14歳の2名が第3種殺人と共謀の罪で起訴されたという。そしておそらく、10歳の少年が、就寝時間をずっと過ぎた時間に外出して、その恐ろしい殺害の模様を自分の携帯電話で撮影していたという。

 自動車乗っ取りも、米国の各都心の若者たちの遊びのひとつになっている。ワシントンDCのロバート・J.コンティⅢ警視総監は記者会見で、これらの犯罪を行っている人の多くは、「子どもたち」である、と述べた。

 「プリンスジョージ郡[メリーランド州]とワシントンDCで、200名以上の若者たちが自動車乗っ取り事件を起こしているという事実に胸が突き刺されます」と同警視総監は語っていた。


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 米国の大都市圏はこれまでずっと犯罪者たちが集まる場所になっていて、それ故、子どもたちがそのような犯罪組織に入らないように守られていると見られていた。つまり超えてはいけない線が、確かに存在していたのだ。しかし今はその線が存在しなくなり、社会で最も幼い層である若者たち自身が、その札付きの犯罪者集団の一員になっている状況が生まれている。いったい何が間違っていたのだろうか?

 米国で若年層による犯罪が蔓延している原因については、米国の典型的な家族構成を調べれば答えが出るかもしれない。若年層による犯罪の蔓延と、米国が地球上のどの国の人々よりも家族構成が片親である割合が高いという事実は、ただの偶然の一致と言えるだろうか? 相関関係を調べてみる価値はある。

 早くも1996年には、すでに米国民が、自分たちの社会が奈落の底に落ちようとしている理由についての調査に着手していた。社会学者のデビット・ポプヌーは、子どもたちが抱えている悪い状況(摂食障害、うつ病、10代の自殺、アルコールや薬物の乱用、ほかにもたくさんあるが)の背後には、ある大きな原因があるという考えを示していた。

 ポプヌーによると、悪性のガンのように米国をむしばんでいるこれらの傾向の理由として、「子どもたちの生活から父親がいなくなったことが、最も重要な原因の一つ」だ、という。

 さらにポプヌーは、1990年代の驚くべき統計結果を示した。その統計結果は現在もほぼ変わっていない。それは、「米国民の強姦犯罪者の6割、思春期の青年の殺人犯罪者のうち72%、長期間服役している囚人の7割が、父親がいない家庭出身だ」というものだった。1996年以降、明らかにこの統計結果からほとんど改善はしていない。 このような数値からわかることは、ただの偶然の一致以上の何かがそこにはある、ということだ。


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 何千年もの間、父親は家庭における権威者として認識されてきた。そして研究の結果わかっていることは、男性の方が女性より子どもたちにたいして厳しくしつけを行っている、という事実だ。 同時に、父親は息子たちにとって決定的な手本としての役割を果たす。現在、離婚率の上昇により、伝統的な核家族が崩壊していて、多くの子どもたちが自分の手本を家庭以外の場所で見つけなければならなくなっている。その手本を、自分と同じように途方に暮れた街の仲間たちの中から見つけることが多くなっている。このような状況に貧困が組み合わされると、このような崩壊した家庭出身の子どもたちは 、犯罪に手を染めがちになる。そのような犯罪は、毎日身近で起こっているからだ。特に、そんな犯罪行為を行っても、それに応じて罰を受けることがないことを目にしたのであれば、なおさらだ。 そのような現実がますます顕著になっているのは、警察や裁判官がこれらの青年たちを適切に罰する手段が欠けているからだ。

 若年層による犯罪行為が増えてきたのは、2020年にジョージ・フロイドさんが、警察の手により殺害された事件よりも前からのことだったのだが、市民たちによる不法行為が起こる中、この社会現象に対する態度が大きく変わってしまった。 多くの米国市民は、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動をなだめようとして、警察への予算だけではなく、警察官の人数も削減し始めた。今こそ、警察官が一番必要とされるときになっているにもかかわらずである。

 抗議運動が最高潮をむかえていたとき、シアトル市では、アンティファ*やBLMの抗議活動者たちに警察がいない自警地域を作り出すことを許すことまでしていた。これが当初「キャピトルヒル自治抗議運動(CHOP)」、後には「キャピトルヒル自治区 (CHAZ)」という名で知られているものだ。そして警備のない数時間、大騒ぎする若者たちが町に出て、騒々しい宴やダンスなど繰り広げていた。しかしそのパーティは長くは続かなかった。実際に起こったことは、その抗議運動者たち自身が、そのような実験的な無政府状態を放棄し、日が沈んだ後に銃撃事件が勃発したのだ。CHAZに関係する射撃事件のせいでなくなった被害者のうち一番若かったのは、14歳だった。さらにこんな決定的な教訓を得たにもかかわらず、警察なしで大都市を維持し「平和を守る」という考え方が、米国中の都市で根付いてしまった。その結果、米国の若年層は人生における二つの重要な権威を失ってしまったのだ。つまり、父親と警察だ。
訳注:*アンティファ(Antifa)----1960~70年代のドイツに始まり、アメリカ合衆国など他国へも広がった反ファシズム、反人種差別運動の自称および他称。攻撃・批判対象への物理的暴力も厭わないため、極左運動とも呼ばれる。


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 こんな状況になってしまったことには、もう一つ決定的な要因がある。それは、企業メディアがこれらの暴動を、「大多数は平和的な抗議活動である」といういいわけのような記事を報じたことや、 ハリウッドの有名人たちが積極的に若い犯罪者の保釈金を肩代わりしたことだ。これらの若い犯罪者の多くは、警察署だけではなく、連邦政府の施設を攻撃したことで起訴されていた。同時に、株式会社米国が予算を捻出して、BLM運動や同様の組織に多額の税金を投じていた。つまり米国中の都市が炎に包まれていたまさにそのときに、民主党の指導者たちはこれらの運動に屈していたということだ。その時の罪が今でもまだはっきりと問われていないとしたら、BLMの活動家は、シカゴの若い人々が店を略奪することをとがめず、「そのような行為は賠償金のようなものだ。取りたいものは何でも取ってしまえばいい。店の人たちは保険に入っているだろうから」などと言ったのだろう。このようなことがすべて、米国の若年層に間違ったメッセージを伝えてしまい、良識ある態度を取ることをせず、自分が犯罪行為を行っても罰せられないと考えるようになってしまったのだ。

 さて、最も幼いときに基本的なしつけを受けてきた子どもたちが、今はそうなっていない状況の中、この先どんな希望をもてばいいというのだろうか? 残念ながら、この問いは難しすぎて、今すぐには、はっきりとした答えは出せない。しかし生活の中に父親など権威的な存在がいないのであれば、米国の子どもたちは手探りの状態で人生の進むべき道を探さざるをえなくなっているだろう。すべての国において、その国の将来は若者たちにかかっているのだから、今のような状況が米国にとってよい前兆とはいえない。

ホームレスという呼び名を変えたとて、ロサンゼルス郡の野宿者の現状は悪化の一途

<記事原文 寺島先生推薦>

City tries to cancel use of the term ‘homeless’
Public officials in Los Angeles have called for instead using such labels as “people living outside”
(地方行政当局は、“ホームレス”という呼び方を排除しようとしている。
ロサンゼルス郡行政当局は、代わりに“屋外で居住する人々”という名称を使うように要求。)

出典:RT

2022年8月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月19日


ロサンゼルスのドヤ街で、寝床用のダンボールを準備しているホームレスの男性。2019年9月撮影© Getty Images / Mario Tama

 米国で最も人口の多い郡であるロサンゼルス郡は、ホームレス問題を解決する暗号を未だ解読できていないが、ロサンゼルス地方行政当局はこの危機の名称を変えるという方法を思いついたようだ。そう。「ホームレス」という呼び名を排除することだ。

 ロサンゼルスホームレスサービス局(LAHSA) がツイッターで呼びかけたのは、「ホームレス」や「ホームレスの人々」という呼び名は、より「包摂的な」表現に置き換えるべきで、「屋外で居住する人々」や、「家を持っていない人々」などに変える必要があるということだった。この考え方は、ホームレスに纏わる「負の汚名」を排除し、「住処の有無に関わらず人間の人格を重んじる」ためだ、と同局はツイートしていた。

 「私たちの郡内の、家を持たない同胞の人々も人間ですし、その考えを言葉にも反映させるべきです」ともLAHSAは訴えていた。「時代遅れで、他人行儀で、人格を否定するような言葉遣いはやめませんか。人間中心の表現に変えましょう」 とも。

 このような表現に変える考え方の根本のひとつは、「個人の個性をしっかりと認識するためです」と同局は訴えているが、はっきりとしないのは、どうすれば「家を持たない人々」が、「ホームレスの人々」よりも個性が持てるか、という点だ。

 「私は敬意を持って路上生活者の方々に声をかけています」と、映画製作者のグレン・ダンツワイラー(Glen Dunzweiler )さんはツイートした。「路上生活者の方々は遠回しな言い方を嫌います。目を見て話してくれること、尊厳を持った応対をしてくれることが、彼らが好むことです。言葉のサラダで着飾っても、喜ぶのは、家がある人々だけでしょう」


 ホームレスという呼び名で呼ばれようが、呼ばれまいが、ロサンゼルス郡は小さな都市なら満杯になるほどの路上生活者を抱えている。同郡のホームレス人口は 2020年の初旬で6万6436人で、前年より13%増加した。それ以降、LAHSAはホームレス人口を数えるのを中止している。


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 LAHSAは、新しい数値を5月か6月までに発表する予定だったが、その発表は9月まで 延期された。ホームレス人口についての新しい数値はさらに大きな増加が見込まれている。というのも、家賃の高騰やその他のインフレが進行しているため、路上生活をせざるを得ない人々が増えているからだ。

 報道によると、ロサンゼルス郡のホームレス人口は、全米の2割を占めおり、1日平均5名の野宿者が亡くなっているという。大きなテント村の建設が、都市部の通り沿いや公共の公園内に広がっている。市当局は、次の住処を提供することなしに強制的に野営地を排除し、住民たちを立ち退かせることでずっと批判を受け続けている。また今月(8月)初旬、ロサンゼルス市議会は、学校やディケア施設仮500フィート以内にホームレスの人々のためのキャンプ地を設置することを禁じた。

 LAHSAの推定では、地方行政当局や州政府や連邦政府は、 年間8億ドルをホームレス事業に割いているとのことだ。今年の初旬にLAHSAの局長を退いたハイジ・マーストン(Heidi Marston)さんは、ロサンゼルス郡で1日平均205人のホームレスが住処を見つけているが、逆に1日平均225人が新たに家を失っているという状況を嘆いている。彼女はこう語っている。「ホームレス危機を作り出したのは私たちの社会です。しっかりとした意思を持たない限り、この危機を無くすことはできません」

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