<記事原文 寺島先生推薦>
Canada’s Legacy Press Smears Assange to Deny the Public’s Right to Know筆者:ピーター・ビースターフェルト (Peter Biesterfeld)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2023年4月6日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年4月23日
映画「イタカ」(@IthakaMovie)。オンタリオ州トロントでの「イタカ」上映後カメラに納まる、「ジュリアン・アサンジを解放しろ!」の唱道者たちとシプトン夫妻。 「死の連鎖」は今日のカナダの既成ジャーナリズムの状況を適切に表現している。今日のカナダの既成ジャーナリズムは、国際情勢についてカナダのニュース消費者に誤った情報を与え、グローバルな主体としてのカナダの真の役割について信頼できる洞察と理解をもたらすことができていないのだから。
伝達者の殺害
「もし嘘が戦争を始めることができるのなら、真実は平和を始めることができる」。 ジュリアン・アサンジ
ウィキリークス発行人のジュリアン・アサンジは、2011年にロンドンのトラファルガー広場で行われた戦争阻止連合のデモで演説し、イラク戦争とアフガン戦争における報道の共謀について辛らつな発言をした。
「戦争犯罪者は誰なのか?」とアサンジは問いかけた。「指導者だけでなく、メディアもそうだ。加担しているメディアに問おう、各ジャーナリストの平均死者数は?」
それから10年以上が経ち、既存のジャーナリストたちは、ウクライナでの戦争の激化を助長することに、足並みを揃えて、加担している。
カナダの報道機関が、ジャーナリズムの危機に瀕していることを示す唾棄すべき証拠は、現代の報道の自由に関する事例についての報道がほとんどないことだ。
ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジは、「強欲な権力」について、不都合で気持ちを落ち着かせない真実を公表した。そのために迫害されたことは、カナダの報道機関ではほとんど注目されなかった。
これまで報道されたわずかな記事から、明らかになったことは、「最も信頼できる」有名通信社で働くカナダのジャーナリストや編集者が、きわめてお粗末な情報しか持たず、アサンジとウィキリークスに対して、梃子でも動かない偏見を抱いていること、だ。
2019年秋のアサンジの身柄引き渡しの予備審問の後、本記事の筆者(私)はカナダメディアの報道の少なさについて、注目に値するある報道機関に論説を送った。編集者は、私の原稿に変更を加えるよう指示を出した。それは、この編集者(女性)の偏見だけでなく、無知も裏付けるものだった:
「アサンジは多くの点で共感できる人物ではない 」と彼女は電子メールで書いている。「彼は(スウェーデンで)性的暴行とレイプの容疑を受けている。米国の選挙へのロシアの干渉への関与や民主主義との関連、それはこの論説の中で取り上げられる必要があると思う。 カナダ(や他の国)の主要ニュースが引き渡し公聴会を、記事として取り上げないのは、それ(アサンジの「不祥事」)が有力な理由として考えられるのは確かだ」。
国際人権弁護士ニルス・メルツァーは、350ページにわたる調査報告書『ジュリアン・アサンジの裁判:迫害物語』(2022)の中で、スウェーデンと英国がアサンジに対して仕掛けた法制度の詳細を明らかにしている:
「スウェーデン当局は、無罪となる証拠となるものを意図的に隠すことで、スウェーデンの司法手続法に定められた、アサンジの手続上の権利を侵害しただけでなく、レイプ疑惑を積極的に広めたことと合わせて、冤罪という犯罪行為さえ行ったかもしれない」。
レイプの容疑はなかったし、アサンジが「ロシアの干渉」に関与しているという証拠もなかった。後者は、独立した報道機関によって論破された主流メディアの作り話である。
筆者(私)が編集者に、このことを説明すると、彼女は「でも、アサンジはジャーナリストではありませんよ。彼はハッカーなんです」。ウィキリークスとアサンジが長年にわたって受賞したジャーナリズム賞の長いリストを彼女に説明すると、どうやら彼女の懐疑は払拭されたようで、私の投稿は論説から編集者への手紙に格下げされたものの、掲載された。
ニルス・メルツァーは、拷問に関する国連報告者としての立場にあったとき、2018年にアサンジの弁護士から、英国当局の手によるアサンジの扱いを調査するよう、初めて依頼された。メルツァーは、アサンジに関する公式の説明を耳にして、窮地に立たされたウィキリークスに関していい意見は持てなかった。そのため、依頼は拒否した。
「ここ数年、ほとんど無意識に吸収していた主流メディアの見出しの数々に、私はまだ影響を受けていました: スウェーデン当局への出頭を拒む臆病な強姦魔アサンジ。ハッカーでありスパイであるアサンジは、エクアドル大使館で司法から逃れている。冷酷なナルシストであり、裏切り者であり、ろくでなしであるアサンジ。などなど」。
『ジュリアン・アサンジの裁判』でメルツァーが書いていること:
「私は、偏見によって自分の認識がいかに歪んでいたかに、後になって気づいた。多くの人がそうであるように、私も彼についての真実を知っていると確信していた。しかし、その知識がどこから来たのかよく覚えていなかった。公式見解は、私を含む世論を、いいように振り回したのだ」。
「アサンジ-ウィキリークス」ファイルについての、公式見解やメディアの繰り返し報道に何年もさらされた後、カナダの主流メディアの記者たちは、クリス・ヘッジスが「死の連鎖」と呼ぶジャーナリズムを生み出している。主要な報道の多くが虚偽、誤導、あるいは証拠なしであることが公の記録で示されているにもかかわらず、そのどれもが撤回されたり訂正されたりしていない。
故クリスティー・ブラッチフォードが2019年4月16日にナショナルポスト紙に発表した「ジュリアン・アサンジはジャーナリストではない、そして彼は適正な法的手続きを受けている。それは十分すぎるほどだ」というタイトルの、事実無根のアサンジ中傷は、今もポストの意見欄で読める。 ブラッチフォードは、あるガーディアンのジャーナリストを引用して、まるで「あの世から」のように、アサンジをめぐって不気味に宣告している:「アサンジはサイコパス(反社会性パーソナリティ障害者)たちに喜んで死のリストを送った」。
ブラッチフォードを取り上げた理由は、3年後、トロント・スター紙のコラムニスト、ロージー・ディマンノが、ジュリアン・アサンジについて、ブラッチ(彼女の同僚は彼女をこう呼んでいた)からインスピレーションを得て、同様に正気を失った意見を書いたようだからだ。
見出しは「ジュリアン・アサンジは、データにきちんとした配慮をしないだけで、英雄ではない」となっており、ディマンノの意見はジャーナリズムというより中傷に近い:
「ひどいナルシスト・・・人の命を軽んじ、友人をひどく失望させ、かつての仲間を遠ざけている。自己顕示欲が強く、道徳心がない」。
ディマンノは、お決まりのアサンジの中傷を繰り返し、国が承認した、しかし全く誤った主張を鸚鵡返しにして、我々の世代で最も重大な報道の自由の事例について、彼女の無知を暴露するだけでなく、スター編集委員会の無知もさらけ出している。どうやら、「どうしてこれが真実だとわかるのか」と問うことを考えた論説委員はいなかったようだ。
ディマンノは書いている:
「戦闘戦略を暴露したデータに対する彼の不見識は、米国とその同盟国に命がけで情報を提供した何千人もの軍隊と何百人もの脆弱な外国人の命を危険にさらした・・・彼らの名前は暴露した資料から決して削除されることはなかったのだ」。
8年前のガーディアン紙は、イラク戦争のファイルをウィキリークスに流した内部告発者ブラッドリー・マニング(当時)の軍法会議について、まったく逆の報道をした:
「国防総省を代表して、ウィキリークスの情報公開の影響を調査する情報審査特別部隊を率いる防諜上級将校のロバート・カー准将は、メリーランド州フォートミードの法廷で、インターネットでの情報公開後の報復で、命を落とした人の具体例を発見していないことを明らかにした」。
ウィキリークスの発表に取り組んだジャーナリストを含む専門家証人は、2020年秋のアサンジの身柄引き渡し公聴会で、実際にアサンジは「データに関して無思慮な扱い」はしていなかった、と証言している。
2010年にウィキリークスが公開した文書のメディア内協力者であるデア・シュピーゲル誌で働くアメリカ人ジャーナリストのジョン・ゲッツは、ウィキリークスが先頭に立って 「非常に厳格な編集作業」を行った、と証言している。ゲッツは、アサンジが「この膨大な文書の中から(特定の)名前を見つけようとする技術的な側面に無関心ではなかった」と法廷で語り、「私たちがその名前を修正して、公表されないようにし、彼らが傷つくことがないようにした」と述べた。
アサンジの身柄引き渡しの公聴会について、カナダの主要報道番組でバランスの取れた報道を見つけるのは困難だった。見つかったとしても、中傷が含まれ、米国政府の国家安全保障部門CIA、FBI、司法省、国務長官、国土安全保障省といった、一連の組織が提示する話から逸脱する内容はほとんどなかった。
ジョン・ピルジャーは、アサンジの公聴会に対するメディアの無関心は世界的なものだという:
「アサンジ裁判が世紀の政治裁判であるならば(私はそうだと思う)、その結果は、自分の仕事をしたジャーナリスト(アサンジ)の運命を封じるだけでなく、自由なジャーナリズムと言論の自由の原則そのものを脅かすことになるだろう。この裁判について主流メディアが真剣な報道をしないことは、どう少なく見積もっても、自滅的である」。
日刊紙「イル ファット クオティディアーノ(日々の事実)」のイタリア人ジャーナリストであるステファニア・マウリツィは、メディア内協力者として、ウィキリークスのすべての公表に取り組んだ。マウリツィはアサンジの公聴会で、イラク戦争記録について、ウィキリークスは米国政府よりも多くの編集を行い、被害を最小限に抑えるために15000の文書を差し控えていたと証言している。
13年にわたるアサンジ事件の調査研究の末、マウリツィは、彼の著書 『秘密の権力:ウィキリークスとその敵対勢力』 (2022年)において、情報の自由への、彼女なりの取り組みの結果をまとめた。これは「アサンジの迫害に関する最も詳細な記述」である。
マウリツィは、また、スウェーデン、英国、米国、そしてオーストラリアとの間で、情報の個人的自由の戦争を戦ってきた。アサンジに対する性的暴行疑惑がなぜ予備段階で長く引き延ばされたのか、その真相に迫ろうとしたのだ。彼は同書で、4カ国の検察当局間の捜査資料や書簡に基づき、英国検察庁(CPS)とスウェーデン検察が結託してアサンジの迫害と投獄を長引かせたことを明らかにしている。
このマウリツィの著書は、非の打ち所がないほど研究された資料であり、主流メディアで働く記者によって報道されることのなかった現代の法廷闘争を政治的に告発するものである。マウリツィは、アサンジとウィキリークスに対する既存の報道について、あまり良いことは言っていない。
マウリツィはベルリンの月刊誌「エクスバーライナー」に、「アサンジの件を取材する記者たちは、当局の申告を鵜呑みにすることしか考えていなかった。どのメディアも、彼に関する文書一式に接触しようとはしていない。これはジャーナリズムの信じられない失敗である」と語った。
証明されていない主張を無批判に報道し、アサンジについて公式情報源が行った中傷を反復することは、ジャーナリズムがよくやる詐欺行為だ。カナダのジャーナリストの一部は、それを後悔し始めている。
ポッドキャスト「Short Cuts」のエピソード#291で、CANADALANDの出版社ジェシー・ブラウンが、共同ホストのジェン・ガーソンとアサンジの件について議論していた。「技術ジャーナリストとしてMacleansに書いていた時や、Search Engineという番組で、私はアサンジを壮大なロバと呼んだ。彼がロシアの国営放送スプートニクの番組に出ていたとき、私は彼を名声娼婦と呼んだ。衛生状態の悪いアルビノ*の遊牧民と呼んだよ。クリスティー・ブラッチフォードと一緒にね」。
* 先天性白皮症 ガーソンは、資料の不透明な理解とともに、自分の偏った考えを漏らしている。「彼がロシアの宣伝機関を運営していたことも認識しよう。そのことは、当時彼が受けた個人的な攻撃よりも、今日の問題により適切であると私には思える」。
Googleで2回クリックするだけで、アサンジがロシア・トゥデイ(RT)のインタビュー番組「The World Tomorrow」を独自に制作し、RTから放送の許諾を得ていることがわかる。
ブラウンとガーソンの最後のやりとりは、言わば茶番劇のようなものだ。
ジェシー・ブラウン:では、我々は彼を仲間だと言うのか? 彼が本質的に政治犯であれば、我々は彼のために立ち上がるのだろうか? チェルシー・マニングのような情報源があれば、どんな主流メディアの記者でもしたであろうことに対して、政府は彼を追いかけているのです。彼が引き起こした困惑と、同じことをする可能性のある人への警告として、彼を追いかけているのです。私はここで、自分自身の後悔の念から自分を掘り起こそうとしています。彼を個人的に非難する動きがあったことは知っていますし、それが私に影響を与え、私の取材に影響を与えたのだと思います。
ジェン・ガーソン:彼の人格に焦点を当てたキャンペーンは不適切だったと思います。しかし、彼を自分たちの仲間だと主張するかどうかという質問については、おそらく枠組みが違っているのでしょう。政府はスパイ防止法の下で身柄を引き渡そうとしている、と言うのが妥当でしょう。ジャーナリストとしての我々の義務は権力に真実を語ることだ、と言うのも一つの考え方ですが、権力に真実を語ることで、別の権力に奉仕しているに過ぎないのであれば、それは空虚なものになり始めます。アサンジは、ここからが本当に複雑なんです。個人攻撃ではなく、アメリカの国家安全保障を脅かすという明確な意図のもと、ロシアと協調して行動していた度合いについてです。それは、ほとんどのジャーナリストが自分たちと関わりを持とうとする範囲をはるかに超えています。
アサンジと他のウィキリークス・ジャーナリストが、自分たちの問題としてやったのは、権力者の腐敗した人々がどのように秘密のビジネスを行い、なぜそうなるのかを一般に知らしめた、真実の情報を開示する驚くべき完璧な記録の作成だった。
ガーソンやブラウンのようなジャーナリストが、真実とかけ離れた言説をまき散らしているのに、誰がプロパガンダなど必要とするのだろうか? アサンジ/ウィキリークスの件でカナダのニュース消費者がもっと必要としているのは、緑の党の指導者候補(2020年)ディミトリ・ラスカリスのような独立した著名なジャーナリストの声だ:
「ジュリアン・アサンジのケースは、正義と民主主義の目的にとって本物のジャーナリズムが根源的に重要であることを思い起こさせます。ジュリアン・アサンジが世界で最も強力な資本家と帝国主義者によって迫害されているのは、まさに、彼が彼らの犯罪を、恐れずに暴露したからです」。
アサンジとウィキリークスに関するプロパガンダや誤報を払拭することが、24日にトロントの Hot Docs Cinemaで上映された2021年のドキュメンタリー映画「Ithaka」の目的である。ベン・ローレンスが監督し、アサンジの弟ジュリアン・シプトンが製作したこの作品は、「マスメディアによって形成されたアサンジの描写を正すために、たゆまぬ努力を続けている」とPOV誌のレビューでパット・マレンが書いている。
このドキュメンタリーの徹底した上映予定と、映画上映後の地元の観客との討論や情報交換は、キャンペーンの成功に不可欠なものである。『Ithaka』の25回の上映を終え、後半25回の上映を控えたジョン、ガブリエル・シプトン夫妻は、HotDocsでの講演の前日、カナダ・ファイルズの取材に応じ、このドキュメンタリー・ツアーが、アサンジの苦境だけでなく、公共の利益のためのジャーナリズムに対する差し迫った脅威に対する認識を高めるための大きなキャンペーンの一部であることについて話した。イギリス、フランス、ドイツ、そしてオーストラリアに続き、シプトン夫妻は北米で 『Ithaka』 を上映する。カナダはトロントだけになる。
「昨夜はマサチューセッツで上映会を行いましたが、100人以上の観客が集まり、前夜は200人以上でした」とガブリエルは語る。「今、観客が集まっているのを見ると、勢いを感じるし、この問題やジュリアンの事件で、実際に何が問題になっているのかについてもっと聞きたい、という人々の真の渇望を見ることができます。そして、その認知度は高まっていると思います」。
ジョン・シプトンは、ヨーロッパの聴衆がアサンジの身柄引き渡し事件における人権侵害や適正手続きの欠如、法律違反に最も関心を寄せているのに対し、アメリカ人はアサンジがスパイ防止法に基づき有罪判決を受けることで、修正第1条の終焉と権利の喪失を意味すること懸念している、と述べた。
ジュリアン・アサンジと米国の安全保障国家との長年にわたる戦いの結果をカナダ人が懸念すべき理由を尋ねられたジョン・シプトンは、次のように答えた:
「私たちが若かった頃、世界を安全に回るには、リュックにメイプルリーフ*を縫い付けておくことだったんです。でも、それはもうない。アメリカとは違うカナダという国の良さを感じていただけに、残念でなりません。ワシントンが不機嫌な夜に作った考えの奴隷になるのは、カナダにとって本当に良くないことです。ワシントンはそれをカナダに送りつけてきます。私たちはそれを防御することはできません。
* カナダの国旗のこと。その中央にサトウカエデの葉があしらわれている。 私たちは、家族が一緒になってメンバーを守る能力、そして地域社会や家族、国家がまともな理解を持つ能力を、原則として、擁護します。そして、私たちはアサンジについても、国家の知性の集合体が、その国家の独立のため、その欲求を満たすための戦略的資産であることを理解しています。例えば、トラック運転手の支援とその感性、トラック運転手に共感すること、カナダで現在行われている調査によって、政府の弾圧のために緊急事態法が歪められたことが明らかになったこと、そういった事情を理解している人々が、アサンジの件に影響していくのだろうと、私は想像しています」。
ガブリエル・シプトンは、カナダの聴衆に次のことを思い起こさせている:
「本当に危機に瀕しているのは、米国から発信される機密情報を使って国家安全保障を報道するジャーナリストの能力です。また、米国の同盟国やどの国のジャーナリストも、前例のないスパイ防止法の訴追により無期限で刑務所に入れられるという、地域的な要素もあるのです。カナダのジャーナリストや出版社がこのようなことから安全であることはなく、ジュリアンについて言われていることは、世界中の誰にでも適用できる、ということです」。
「Ithaka」を巡回上映することは、啓発活動に弾みをつけることだと、彼は言っている:
「この映画は、ジュリアンの迫害をめぐる事実にあまり関わってこなかった人々にとって、本当に良い入り口だと思う。ほとんどの人は、ジュリアンの迫害について理解していないのです。このような中傷を広めることに取り組んでいるジャーナリストたちがいるのですから。一般的に、ほとんどの人は、この問題に関心を持ち、事実とこの事件で何が問題になっているのかを理解し、私たちの側につくと思うんです。そのためには、重要な情報を人々に伝える必要があるのです。この映画とツアーは、そのための一つの方法なのです」。
2023年3月24日、映画上映後の質疑応答の後、100人を超えるHotDocsの観客は散会し、シプトン夫妻は、質問者や地元の「アサンジを解放せよ」擁護者と気軽に交流した。CBCや米国領事館の歩道に、何年も前から「報道の自由」と「アサンジを解放せよ」のメッセージをチョークで書いているシャーロット・シースビー=コールマンは、この夜を振り返った:
「ジュリアン擁護を支持しつつも、この事件の概要しか知らない、私の3人の友人を招待したのですが、事実を知った彼らの、信じられない!という反応は、この映画が一般の人々を教育し、意識を高めるための重要な武器であることを物語っています。できれば、より多くのメディア関係者にも広めたい」。
シースビー・コールマンのアサンジ支援グループは、アサンジがロンドンのベルマーシュ厳重警備刑務所に収監されてから4周年を迎える4月11日に開催される世界的な行動日に参加する予定だ。
ジャーナリズムの指標 「ウィキリークスは、世界で最も迫害されている文書を集めた巨大な図書館です。私たちはこれらの文書に保護を与え、分析し、宣伝し、もっと資料を入手するのです。」 ―ジュリアン・アサンジ、シュピーゲル誌のインタビュー
ウィキリークスは、2007年以来、公益報道を大量に提供してきた。そのほとんどは、政府の嘘、そして、政府、機関、国際企業などによって行われた虐待や犯罪に関するものである。CBCのアーカイブからの一例だ:
「カナダが2003年の米国主導のイラク侵攻への参加を公式に拒否した同じ日、カナダの高官は、激しく物議を醸したこの作戦への秘密軍事支援を米国に密約していた」と、ウィキリークスが公開した外交メモに基づき、CBCのある記事で 2011年、グレッグ・ウェストンが報告している。
グレッグ・ウェストンの情報源は、マニングがウィキリークスに流出させた1966年から2010年までの外交公電251,287件のウィキリークス・ライブラリーである。独立系ニュースのactivismMunichは最近、The Public Library of US Diplomacy(米国外交の公的図書館)に収められた一連の電報を掲載し、米国とヨーロッパの同盟国が10年以上前にウクライナでの紛争の可能性をどの程度知っていたかを示している。
ジョージ・ブッシュの駐ロシア大使、現CIA長官のウィリアム・バーンズは、2008年2月1日付でこんな予言的な要約を書いている:
「ブカレスト・サミット(参考A)でウクライナがNATO加盟行動計画(MAP)を求める意向を示したことに対し、最初の反応は穏やかだったが、ラブロフ外相と他の高官は強い反対を繰り返し、ロシアはさらなる東方拡大を潜在的軍事脅威とみなすと強調した。NATOの拡大、特にウクライナへの拡大は、ロシアにとって「感情を揺さぶる、神経を逆なでする」問題であるが、ウクライナとジョージアのNATO加盟に強く反対する背景には、戦略的な政策的配慮がある。ウクライナでは、この問題が国を二分し、暴力や内戦に発展する可能性があり、そうなればロシアは介入するかどうかを決めなければならなくなるとの懸念がある」。
ブッシュ政権下の米国国連大使で、後にドナルド・トランプのウクライナ担当特別代表となったカート・フォルカーは、「フォルカー、NATOについてカナダ人と相談」と題した外交メモ(2008年6月9日)に、オタワ訪問の概要を書いている。一部抜粋して紹介する:
・ オタワは、ロシアのさまざまな「挑戦」に立ち向かう努力において米国と協力し、ウクライナとジョージアにMAPを提供し、NATOの政策を「役に立たない」方向に誘導しようとするドイツの努力に対抗することを望んでいる。
・ (カナダ首相)ハーパーは、イタリア、ドイツ、フランス、そしてイギリスの担当者に、ウクライナとジョージアへのMAP(NATO加盟行動計画)の早期延長を迫ったと、(外交・防衛政策顧問代理)シンクレアが述べた。カナダの結論は、MAPは「ウクライナにとって必須であるが、ジョージアも同様である」ということである。
• 2008年6月6日付の別の電報では、ドイツの外交官ノーマン・ヴァルターとロルフ・ニケルが、米国のデイヴィッド・メルケルに「NATO加盟の問題で世論が激しく分かれているウクライナでMAPがあまりにも早く進めば、国が不安定になり『分裂』する恐れがある」という懸念を示した。
ウィキリークスの公開資料は、一次資料の宝庫であり、記者や学者が今後何年も採掘することになる公共情報サービスである。
「ウィキリークスは、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストといった名だたる新聞社が成し遂げたことをはるかに凌駕している」とジョン・ピルジャーは書いている。「アサンジと(NSA*の内部告発者)スノーデンが開示した権力の秘密と嘘に迫る新聞は存在しない。二人が国外に逃亡していることは、自由民主主義国が自由と正義の原則から後退していることを示している。なぜウィキリークスがジャーナリズムの画期的な存在なのか? その暴露情報は、世界の多くがどのように、そしてなぜ分断され、運営されているかを100%の正確さで教えてくれたからだ。」―ジョン・ピルジャー:『新冷戦&迫り来る脅威』、インド「フロントライン」(2018年12月21日)
* 米国国家安全保障局死の連鎖 「ひとたび事実が意見と交換可能になり、ひとたび真実がどうでもよくなり、ひとたび人々が聞きたいことだけを聞かされるようになれば、ジャーナリズムはジャーナリズムでなくなり、プロパガンダになる」。 クリス・ヘッジス
元ニューヨーク・タイムズ記者のクリス・ヘッジスは、ドナルド・トランプの当選を助ける目的でロシアとウィキリークスが2016年の米国選挙に干渉したとされるスキャンダル、いわゆる「ロシアゲート」報道の分析において、「米国ジャーナリズムの死の連鎖」に言及している。
ヘッジスは、TwitterのCEOであるイーロン・マスクが、2022年10月にTwitterを440億ドルで買収した後、公開した内部文書「Twitter Files」に基づいて、不気味な主張をしている。ジャーナリストのマット・タイビとバリ・ワイスが、Twitterの一連のスレッドとして文書の詳細の公開を共同で調整している、というのだ。
2019年にアーロン・メイトによって初めて論破されたロシアゲートは、「タイタニック詐欺」であることが確認された。Fox Newsの司会者タッカー・カールソンのような影響力のある保守的なジャーナリストたちでさえ、ロシアゲートの「報道」が、ウクライナ紛争に至ったロシア嫌いの風潮に少なからず関連があることを報告している。
タイビなどが、これまでツイッターファイルでさらけ出したのは、「説明責任を果たさない情報当局や 政党系の工作員が、ソーシャルメディア上で一般の人々が見たり閲覧したりすることができるものに影響を与える上で、きわめて大きな役割を果たしている」ことだ。
タイビは9日に行われた下院司法委員会での証言で、次のように述べている:
「インターネットの最初の期待は、世界的な情報交換を民主化することでした。自由なインターネットは、情報の流れを管理しようとするあらゆる試みを圧倒し、その存在そのものが、どこでも反民主的な形態の政府にとって脅威となるのです。
私たちが『ファイル』で見つけたのは、その期待を覆し、機械学習やその他の手段を使って、インターネットを検閲や社会統制の道具に変えようとする徹底した取り組みでした。残念ながら、我々の政府はその主役を演じているように見えます」。
カナダのマスコミは、外交問題やジュリアン・アサンジに関する報道の多くで、ロシアゲートのシナリオに大きく依存し続けているため、今日までツイッターファイルの事後の分析は行われていない。実際、カナダの主流メディアを利用するニュース消費者は、ツイッターファイルやロシアゲートについて触れることは難しく、ましてや「不確かなゴシップを事実として報道されてきた4年間」に対する悔恨の念を抱くことはないだろう。
ヘッジスは、「何千もの虚偽の記事や報道を作り出した主要な報道機関は、真剣な事後調査を拒否している」と書いている」。
「死の連鎖」は、今日のカナダの既成ジャーナリズムの状況を適切に表現するものである。それは、国際情勢についてカナダのニュース消費者に誤った情報を与え、世界的な行動者としてのカナダの真の役割について信頼できる洞察と理解をもたらすことができないジャーナリズムである。
ジョン・ピルジャーは、半世紀にわたる経歴の中で、自らの軌跡を振り返り、公的機関としてのジャーナリズムの衰退を説明しようとした:
「私がジャーナリストとして、特に海外特派員として活動を始めた頃、英国の報道は現在と同様、保守的で強力な体制勢力に所有されていた。しかし、今と違うのは、権威ある既成の「知恵」に異を唱える独立したジャーナリズムの余地があったということだ。その余地は今やすべて閉ざされ、独立したジャーナリストはインターネットや、いわば地下に潜るようになった。」 ジョン・ピルジャー「真のジャーナリストは権力ではなく人々の代理人として行動する」 デイリー・スター紙(バングラデシュ) (2019/1/16)
世界の平和は、カナダを含む好戦的な米国と連携する「集団的西側」に包囲されつつある。カナダの外交政策は、米国と同じ命題、すなわち無限の資本成長とグローバリゼーションによって導かれている。そして、カナダの報道機関は、資本主義-帝国主義のレンズを通して、それに従って報道している。
I.F.ストーンの反戦ジャーナリズムの原則は、カナダのジャーナリストによって放棄されている。かつては支持されることがあったにしても。その原則は、次のような形で、何回でも繰り返し語られている: 「見たままの真実を書くこと、強者から弱者を守ること、正義のために戦うこと、人間の恐ろしい憎しみや恐怖に癒しの視点をもたらすこと、そしていつの日か、人間がそのために殺し合うのではなく、人間の庭の違いを楽しむ世界を実現することを願っている」。
ストーンの今日のヘッドラインにおける問題の予見は、不気味なほどであり、国家の問題について、真実を知る国民の権利のためのジャーナリズムと、国家権力3権との間の闘いにあまり変化がないことを示すものである。
ストーンは1966年にこう書いている: 「国家安全保障の名の下に真実を抑圧することは、我々が守ろうとしているものを損なう最も確実な方法である。ラテン語の法格言に「Justitia fiat, ruat coelum」というのがある: 天が降ってきても正義が行われるように。私はこれを新聞記者のために言い換えて、こう言いたい:我々が見るままに、真実に語らせよう。政府高官たちが、そんなことをすれば、天が我々の頭上に落ちてくるぞ、と言ったとしても。
カナダの国家安全保障が約50年後にどのように脅かされているのかを知るには、CSIS*が主導する中国系カナダ人政治家に対する最新のメディアによる中傷は必見だ。
* 戦略国際問題研究所。Center for Strategic and International Studies。米国ワシントンD.C.に本部を置くシンクタンク。 カナダのグローバル問題や外交政策の記者によるジャーナリズムの不正行為に関するこのシリーズの次回は、中国系カナダ人の政治家が中国から指示を受けてカナダの選挙に介入しているというCSISの疑惑を、カナダの既成メディアがどのように報道しているかを分析する。
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ピーター・ビースターフェルドがThe Canada Filesに寄稿したシリーズの第3弾:事実には破壊的な力がある。反戦・反帝国主義ジャーナリズムの事例。カナダの主要メディアが、外交政策報道で、いかにカナダ人を失望させているか、に焦点を当てている。