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WSJ(ウォールストリートジャーナル紙)でさえ伝える欧州各国が恐れるウクライナ軍の惨状

<記事原文 寺島先生推薦>
EU officials fear Ukrainian military collapse – WSJ
報道によると、その懸念は、反転攻勢におけるウクライ側の大きな損失に起因する、という
出典:RT   2023年11月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12日6日



前線に立つウクライナ兵。© Mustafa Ciftci / Anadolu Agency via Getty Images


 EU当局者らは、ロシアとの紛争におけるウクライナの立場がこの冬に「崩れる」可能性があると懸念している、とウォール・ストリート・ジャーナルが月曜日(11月27日)に報じた。

 記事によると、この懸念は、6月初旬に開始された反転攻勢でウクライナ軍が被った多大な損害と、「汚職にまみれ」で「機能不全に陥った」徴兵制度に起因する、という。

 2022年2月にウクライナとの紛争が激化して以来、西側諸国は軍事援助を送ることでウクライナ政府を積極的に支援している。紛争が激化してから1カ月後、NATO加盟諸国は共同声明を発表し、「大規模な制裁と多大な政治的不利益がロシアに課せられた…ロシアに対する国際的かつ協調的な圧力を維持する我々の決意は変わらない」と述べた。

 9月下旬、ジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表は、EUは「必要な限りウクライナを支持する」と述べた。


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 しかし、11月中旬、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は、西側諸国からの援助物資が「減少した」と不満を述べた。ゼレンスキー大統領は先週、FOXニュースとのインタビューで、反転攻勢が計画どおりに進まなかったことを認めた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道は、ウクライナ軍の補充要員の多くは「40代の男性で、ほとんど訓練を受けずに塹壕に送り込まれることが多い」と指摘した。

 金曜日(11月24日)、国防・国家安全保障・情報に関する議会委員会のロマン・コステンコ書記はウクライナのラジオNVに対し、「現在、動員に問題があることは誰もが知っており、動員は失敗したと言えるだろう」と語り、状況が変わらなければ「非常に大きな問題」が起こるだろう、とも述べた。

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 今月初め、BBCは、内戦開始時に発令された戒厳令中の出国禁止にもかかわらず、徴兵対象となる約2万人の男性がウクライナから逃亡した、と報じた。さらに2万1000人が逃亡を図ったが当局に捕まった、という。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣によると、10月下旬の時点で、ウクライナは反撃開始以来9万人以上の死傷者を出した、とのことだ。先週の火曜日(11月21日)、ショイグ国防大臣はウクライナ軍が11月だけでさらに1万3700人以上の兵力を失ったことを示す新たな数字を発表した。
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ウクライナ「最大武器商人」が2014年のマイダン大虐殺を仕組んだ、という目撃者の証言

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine’s ‘biggest arms supplier’ orchestrated 2014 Maidan massacre, witnesses say
筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)
出典:The Gray Zone   2023年9月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月6日





 かつてゼレンスキーに「犯罪者」と糾弾された銃の運び屋セルヒイ・パシンスキーは、ウクライナへの武器供給で最大の民間業者となった。目撃者の証言によれば、パシンスキーは2014年のマイダン・クーデターを引き起こし、国を内戦に陥れた血なまぐさい偽旗作戦の立案者である、という。

 元議員のセルヒイ・パシンスキーは、キエフでトップの私的武器密売人として頭角を現す数年前、2014年に米国が支援したクーデターで重要な役割を果たし、民主的に選出されたウクライナの大統領を失脚させ、壊滅的な内戦の舞台を整えた。この悪名高い腐敗した元ウクライナ国会議員は、つい最近の2019年、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領によって「犯罪者」として非難されたが、ニューヨーク・タイムズ紙による長文の暴露記事によって、パシンスキーは現在、ウクライナ政府の「最大の民間武器供給者」であることが明らかになった。

 おそらく予想できたことだが、この記事が触れなかったのは、パシンスキーは、2014年にキエフのマイダン広場で70人の反政府デモ隊が虐殺された事件に関わっていたことに関する証拠だった。この事件は、親欧米勢力が当時のヤヌコビッチ大統領に対するクーデターを完遂するために利用したものだ。

 8月12日付のニューヨーク・タイムズ紙は、ウクライナの新たな武器調達戦略について、「絶望的状況」のせいで、ウクライナ当局はますます非道徳的な戦術を採用するしかなかった、と主張している。その報道によると、このような移行措置により、武器の輸入価格は指数関数的な割合で上昇し、パニンスキーのような非良心的な投資家らの利益にとって、「幾層にも重なる儲け口」を提供することになった、という。

 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、その手口は単純だ、という。パシンスキーが、「手榴弾、砲弾、ロケット弾を仲介業者のヨーロッパ横断経路を通じて売買」し、「それを売ってはまた買い、また売る」というのだ。

 「取引のたびに価格は上昇し、パシンスキー氏の仲間たちが手にする利益も上昇する。その最終購買者がウクライナ軍であり、そのウクライナ軍が最も高額のお金を支払うことになる」とタイムズ紙は報じ、多くの仲介業者を挟むことは法的に問題のないやり方かもしれないが、「このやり方は、利益を膨らませるために昔からよく使われてきた方法だ」とも付け加えた。

 レイセオン社やノースロップ・グラマン社のような兵器製造業者にとって、欧米の納税者から無限に供給されるように見える現金で大儲けしているのと同様に、パシンスキーのような戦争で儲ける人々にも利益がもたらされている。パシンスキーの会社であるウクライナ・アームド・テクノロジー社は、「昨年は過去最高である3億5000万ドル(約510億円)以上の売上を計上した」という。これは、戦争の前年の売上の280万ドル(約4億円)から12500%という激上がりだ。

 戦時下のウクライナで腐敗防止措置が撤廃され、利益を得ているのはパシンスキーだけではない。ニューヨーク・タイムズ紙の調査によれば、以前「軍から金をむしり取った」ために公式ブラックリストに掲載されたいくつかの供給業者が、現在は再び自由に販売できるようになっている、という。同紙はこのような現状を、残念ではあるが究極的には必要な措置だ、と軽く捉えている。

 最前線に武器を運ぶという名目で、指導者たちはウクライナの荒れた過去の人物を復活させ、元の職に戻したが、これは、これまで長年の汚職防止(原文ママ)政策のなかでの一時的な措置に過ぎない」とタイムズ紙は報じ、「パシンスキー氏のような人物を再起用した理由」のひとつには、「米・英政府が、ただ単にお金を渡すのではなく、ウクライナのために弾薬を購入することにある」とした。さらに、「欧州各国政府や米国政府が、パシンスキー氏のことを話したがらないのは、ロシア政府が流している、『ウクライナ政府は絶望的に腐敗しているので、政権交代させなければならない』という言説に乗ってしまうことを恐れてのことだ」とも報じた。

 しかし、一見批判的に見えるニューヨーク・タイムズ紙の報道でさえ、パシンスキーの不名誉な経歴の重要な側面を見落としているようだ。この報道から明らかに省かれていたのは、2014年2月下旬、キエフのマイダン広場で反政府活動家と警察官を虐殺した悪名高い事件の実行犯においてパシンスキーが果たしていた役割についての説明だった。

 米国が仕掛けた、選挙で選ばれたウクライナ政府の転覆事件における決定的瞬間は、謎の狙撃者らの手により70人が殺害され、世界中からの激しい怒りが雪崩のように生じたことが、ビクトル・ヤヌコーヴィチの追放に直接つながったときだった。こんにちでさえ、この殺害事件は未解決のままだ。

 しかし、偽旗攻撃の実行を手伝ったと主張する人物による直接の証言は、キエフで最も多量の銃を所持するこの人物が、この悲惨な事件に深く関与していたことを示唆している。

マイダン虐殺の組織者は囚人にならない

 2017年11月、イタリアの『マトリックス』というTVチャンネルが、マムカ・マムラシヴィリに抗議者の殺害を命じられたというグルジア人3人の目撃証言を報じた。その後、グルジアのミハエル・サアカシュヴィリ大統領の最高軍事補佐官だったマムラシヴィリは、後にグルジア軍団として知られる悪名高い傭兵旅団を創設し、その戦闘員たちは2022年4月、丸腰で拘束されたロシア兵を嬉々として処刑するぞっとするような動画を公開した後、広く非難された。

 ドキュメンタリー『ウクライナ:隠された真実』では、イタリア人ジャーナリストが、クーデターを指揮するために送り込まれたとされる3人のグルジア人戦闘員にインタビューしている。全員が、パシンスキーはマイダンの虐殺の主要な組織者であり実行者であったと述べ、この悪徳武器商人が武器を提供し、特定の標的を選んだとさえ主張している。また、このドキュメンタリーでは、ライフルと望遠鏡を持った銃撃犯らがデモ隊に捕まり、取り囲まれた後、パシンスキーが自ら広場から銃撃犯を避難させる映像も紹介された。

 グルジア人戦闘員の一人は、パシンスキーとその仲間2人が1月にキエフに到着したときのことを振り返り、その目的は、「警察が群衆に突撃するような挑発を仕組むため」だったと述べた。しかし、ほぼ1カ月間、「周囲には武器があまりなく」、「火炎瓶、盾、棒が最大限に使われていた」そうだ。

 これらの戦闘員らの話によると、この状況が変わったのは2月半ばのことで、マムラシヴィリが、ブライアン・クリストファー・ボイエンジャーという名の米兵を伴い、個人的にこれらの戦闘員のもとを訪れた時だった、という。第101空挺師団に所属していた元将校で狙撃手だったこの米兵が、「従わなければならない」命令を自ら下したそうだ。


イタリアの『マトリックス』チャンネルによるドキュメンタリーには、2014年のウクライナのマイダン大虐殺に米国人軍事教官が関与しているという目撃証言が含まれている。

 これらの戦闘員らによると、その後、パシンスキーは狙撃銃と弾薬とともに、マイダン広場を見下ろす建物に彼らを移動させた。という。このとき、マムアラシヴィリは、「混乱を引き起こすために、銃を撃ち始める必要がある」と主張した、という。

 つまり、これらのグルジア戦闘員たちこそが、階下の群衆に向かって、「一度に2、3発撃ち始めた」犯人だったのだ。そしてそれは、「何があっても、ベルクト(特殊警察)と警官、さらには抗議活動者ら。撃て」という命令が、降りていたからだった。殺戮行為が終わるやいなや、ボイエンジャーはドンバス前線に移動し、グルジア軍団の隊列に加わって戦った。この軍団はいまに至ってもマムアラシヴィリが指揮している軍団だ。

 一方、マイダン後にウクライナ検察総局の市民評議会を率いたウクライナのジャーナリスト、ヴォロディミル・ボイコの主張によれば、自身の役割を曖昧にするために、パシンスキーが虐殺事件の公式捜査を指揮する人物を自ら指名し、その責任者である検察官に賄賂を贈ることさえした、という。

 こうした衝撃的な主張にもかかわらず、マイダンの虐殺へのパシンスキーの関与は、処罰されることはおろか、公式に調査されたこともなく、ウクライナの司法制度に関するパシンスキーの直近の件案からも、キエフの当局者によって厳しく調査されることはなさそうだ。その件案とは、ウクライナの国会であるヴェルホヴナ・ラーダの議員だったとき、パシンスキーは交通関連の紛争で歩行者を射撃し負傷させた容疑で逮捕されたが、最終的に2021年に無罪となった件だ。

 イスラエルの複数のジャーナリストがマイダンの大虐殺における彼の役割についてパシンスキーに問いただしたとき、この武器商人は、これらのジャーナリストはイスラエルで追跡され、パシンスキーの仲間により「引き裂かれることになるだろう」と警告した。これがただの脅しでないと考えない限り、これらのジャーナリストたちが許されることはないだろう。パシンスキーの論敵が路上で悪意を持って殴られたり射殺されたりすることがあれば、それは厄介な傾向である。

ウクライナ国民は汚職を自国の大きな問題であると捉えている―世論調査の結果から

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainians believe corruption country’s main problem – poll
研究者らがウクライナ国民に「ロシアとの戦争以外で最も心配していることは何か?」と尋ねた。
出典:RT  2023年11月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月12日



ウクライナの伝統的な刺繍入りブラウス「ヴィシヴァンカ」を着てキエフの独立広場を歩く人々


 半数以上のウクライナ国民は、現在進行中の戦闘以外でウクライナ国家にとって最も差し迫った問題は、汚職問題であると考えていることが、最新の世論調査書の結果で判明した。

 キエフ社会科学国際協会(以降KIIS)の研究者らが国民に、ロシアとの戦争以外で心配している事象を3件上げるとすれば何かを問う聞き取り調査をおこなった。

 水曜日(11月1日)に発表されたその世論調査の結果によると、調査に答えたうちの63%がウクライナの直面している一番の問題は、汚職が幅広く蔓延(はびこ)っていることだ、と答えたという。給料や年金の減額だと答えたのは46%だった。この調査に参加した2007名のうち20~24%は、公共料金の高騰やウクライナからの難民が外国から帰国していないために生じている人口統計問題、失業率の高さを心配しているとも答えた。

 この調査でさらに明らかになったことは、ウクライナ国民の15%が、自国がNATO加盟の招聘をうけていないこと、8%が、EU加盟にむけたウクライナ政府の交渉が頓挫することを懸念しているという事実だった。


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 「これまで何度も指摘してきたとおり、汚職問題がウクライナ国民の心配のタネになったまま」で、国民はこの問題について当局が対策を立てることを望んでいる、とKIISのアントン・グルシェツキー代表は、この調査結果に関する声明で述べた。さらに、「注目すべきことは、国民自身の幸福の問題(年金/給料や失業、関税など)への懸念のほうが、汚職による不正の方への懸念よりも低いことです」とも述べた。

 今週はじめのタイム誌の記事では、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領は、国内の汚職問題どころか、自分の政権内の汚職問題にさえ対応できない、と報じられた。「人々はまるでもう明日が来ないかのように、盗みまくっています」と大統領上級補佐官の1人が答えた。ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防相は贈収賄の疑いによりこの9月に罷免されたが、そのことも状況を変えるには至っていないと別の情報筋が答えた、とタイム誌は報じた。

 ポリティコ紙の先月の記事によると、バイデン政権は公的に認めているよりもずっと厳しくウクライナにおける汚職問題を憂いている、という。同紙によると、同紙は米国の信頼のおける戦略文書を入手したが、その文書には、ウクライナの汚職問題のせいで、西側同盟諸国がロシアと戦争中であるウクライナ政権の支援を諦める可能性について警告を発しており、米国がウクライナに導入を求めている反贈収賄改革が遅れをとってはならないことを、この文書は強調していた、という。

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 9月、ウクライナの報道機関ゼルカロ・ネデリは、ゼレンスキー大統領がウクライナの報道関係者らに対し、ロシア・ウクライナ紛争が終わるまで報道の際に汚職問題に触れないよう命令していた、と主張した。

西側、ロシアへの譲歩に関してウクライナに探りを入れている– NBCの報道

<記事原文 寺島先生推薦>
West probing Kiev on concessions to Russia – NBC
報道によると、ウクライナ支援諸国はウクライナの「兵力不足」を懸念
出典:RT  2023年11月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月11日



2023年1月21日、ドネツク地方で軍事訓練に参加するウクライナ兵士。© Anatolii STEPANOV / AFP


 NBCニュースが土曜日(11月4日)、情報筋からの話として報じたところによると、西側当局者らはロシアとの和平交渉の可能性についてウクライナ側と水面下で協議しており、紛争を終わらせるためにウクライナがどのような譲歩に同意する可能性があるかを探ろうとしている、という。

 NBCの報道によると、この問題に詳しい複数の米国当局者は、NBCウクライナ政府を支援する50カ国以上による先月の会合で行われた議論を「慎重を要するもの」だった、と述べた。

 この報道によると、この会談が持たれたのは、ウクライナ政府とロシア政府との間の紛争が「膠着状態に達している」という西側当局者の懸念の高まりの中でのことだった、という。西側諸国が懸念しているとされているのは、ウクライナが「兵力を使い果たしている」ことと、ウクライナへの援助を継続する自国の能力についてだ。

 NBCの2名の情報筋によると、ジョー・バイデン米大統領が特にウクライナの人的資源問題に焦点を当てているとのことで、一人の当局者は、西側諸国はウクライナに武器を提供できるが、「それを使用する有能な軍隊がウクライナに存在しなければ、その武器は役に立ちません」と述べた。


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 もう一つの大きな懸念は、ハマスとイスラエルの紛争であり、これによりウクライナでの戦闘行為から注目がそらされ、新たな支援策がより困難になる可能性があることだ。

 NBCに報道によると、戦場の状況に関しては、一部の米国当局者はそれを「インチ戦争」と表現し、紛争の結果は双方が有能な常備軍をどれだけ長く維持できるかにかかっていると示唆した、という。NBCの情報筋はまた、ウクライナがあと数ヶ月もすれば、「和平交渉に関するより緊急な議論を開始せざるを得なくなるだろう」という個人的な警戒を示した。

 この報道によると、一部の西側当局者は現在、ロシアとの協議を検討する動機として、NATOがウクライナに正式な加盟を待たずに何らかの安全保障を提供する可能性を示唆した、という。

 ジョー・バイデン米大統領は、ウクライナ側が望まない限り、米国政府はウクライナ紛争に関するいかなる協議にも参加しない、と述べた。しかし、ロシア側はウクライナ側との交渉の扉を全く閉ざしてはいないが、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は昨年、旧ウクライナの4地域が圧倒的多数でロシアへの併合を支持したことを受け、ロシアとの一切の関与を禁止する法令に署名した。

 報道によると、ウクライナの軍事力の低下に対する懸念は、実質的な戦果を得ることができなかった、6月初旬に始まったキエフの反撃の最中に生じた。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は今週初め、軍隊が大きな損失を被っており「キエフ政権は負けつつある」と述べた。同大臣は以前、ウクライナ軍の死傷者数を9万人以上と見積もっていた。

ゼレンスキーは終わったのか?タイム誌の特集記事が示した、ウクライナの指導者に対する米国の態度の変化

<記事原文 寺島先生推薦>
Is Zelensky done for? A new Time Magazine cover story indicates changing American attitudes to Ukrainian leader
役者から転身したこの政治家が感じているのは、これまで2年近く自身の身勝手さを拡張してくれた西側勢力が今度は自分を追い落とそうとしている状況だ。
筆者:タリク・クリル・アマル(Tarik Cyril Amar)


ドイツ出身の歴史家。イスタンブールのコチ大学でロシア、ウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史や記憶の政治学を研究している。Xのアカウントはこちら @tarikcyrilamar
出典:RT   2023年11月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月10日


欧州政治共同体第3回会議でのウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領。2023年10月5日。スペインのグラナダにて© Thierry Monasse/Getty Images


 タイム誌が先日出した長い記事が明らかにしたのは、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領の世界と、同大統領の精神状況についての深い洞察だった。実際、その記事は同大統領に対する容赦ない激しい攻撃だった。

 読者が理解するのは、ゼレンスキーが力を失っていること、さらに悪いことに世界規模でそうなっていることを感じ取っている、という事実だ。この先これまでのような手厚い援護が得られるかどうかについては、彼自身が疑問に思っているだけではなく、外国の報道関係者たちにも伝えており、ゼレンスキーの役者じみた堂々した態度は姿を消し、かわりに鬱屈とした怒りの中、事実に向き合おうとしない態度が浮き彫りになり、ゼレンスキーには、交渉によりこの壊滅的な戦争から抜け出せる方向を見出そうとすることさえ考えられなくなっている。欠くことのできない米国からの支援も急激にしぼんでいる。先日のゼレンスキーによるワシントン訪問時の歓迎式典は、冷ややかな空気に包まれたが、ウクライナの永続する手の施しようがない腐敗問題についての話が新たな主張とともに切り出されている現状を考えれば、いたしかたない。現状、ウクライナ国内の軍当局は、大統領から受けた司令があまりに現実離れしているので、その司令の実行すらできない状況だ。

 端的にいえば、いま私たちの目にうつっているのは、自分が負けつつあることを受け入れられず、自分の国と国民を自らの権力の維持のためにさらに犠牲にし続けるつもりの孤独な指導者の姿だ。心理学的には、ゼレンスキーによる現実否定は、理解できる(許されることではないが)。ゼレンスキーには、ウクライナが極端な道を選んだことの大きな責任がある。つまりそれは、西側への一方的な依存という方向性だ。確かにこの代理戦争の失敗の責めを負うべき人々は、ウクライナ国内にも米国にもNATOにもEUにも存在することは事実だ。しかしウクライナ当局においては、ゼレンスキーこそ最も責められるべき人物である。というのも、ゼレンスキーにはこの国家的大失敗を防ぎ、終わらせる術があったのだから。


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 ゼレンスキーは自分が示した選挙公約を守ることができた(その公約は、歴史的な大勝を収めた2009年の選挙の前におこなったものだ)。それは当時ウクライナから離脱していたドネツク・ルガンスク両人民共和国と妥協し、平和を実現する、という公約だった。2015年のミンスク2合意を全面的に台無しにするのではなく、真剣に受けとることもできた。NATOに加盟するという考えを捨てることも。米国が主導する同盟がウクライナに思わせぶりな偽の期待をさせながら、実際は加盟国入りする具体的な見通しを差し出してこなかったことからすれば、ことさらそうだ。今年のリトアニアのビリュニスNATO首脳会談においてもウクライナの加盟については屈辱的な空約束に終わり、そのような状況が再度確認させられることになった。

 ゼレンスキーは西側の話に耳を傾けないという選択もできた。それは、2021年末にロシアが大きな譲歩を見せたことで戦争を回避するためにおこなった取り組みを西側がはねつけた時のことだった。ゼレンスキーは、2022年春、急いで和平を結ばないよう指示した米国に従うことも拒否できた。もちろん上記のどれひとつとっても、簡単なことではなかったし、危険なしには実現できなかったことばかりだ。しかし苦労したくないのなら大統領選に出馬しなければよかったのだ。あるいはいま退位してもいい。

 今でさえ、いつでもゼレンスキーは電話の受話器を取ってロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、とはいわないまでも、例えばブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領に電話をかけ、きちんとした仲介を依頼し、実りある対話を始めることも可能だ。本当に、膨れ上がった自分勝手さを克服し、西側のためではなく、自国のために尽くすことこそ、ゼレンスキーが果たすべき義務である。

 良心の呵責をおこなうに多くの傷を脛にもつゼレンスキーは、決して変わらないだろう。自分の犯した失態を自己認識しないといけない状況というのはつらいだろう。そうはせずにゼレンスキーは、「世界全体の運命はウクライナにかかっていて(ゼレンスキーの台詞)」、「ウクライナが勝たなければ世界規模の戦争に発展する」という自己陶酔的なお題目を唱え続けている。たとえこの戦争に公式に敗れたとしても、ゼレンスキーは亡命先での余命において、他の人々を責め、自分は裏切られたという伝説を語り継ぐことだろう。

 本当に、タイム誌のこの記事によると、ゼレンスキーはすでに自分、しかも自分だけが、ウクライナの勝利を心の底から信じている人物であると考え、自分を失望させたとして西側を責め始めていることがわかる。このような状況を、ゼレンスキーは悲しげな比喩を使ってこう表現した。すなわち彼には、ウクライナ国外からゼレンスキーを見ている観客らが、何期にもわたって上演されてきた劇に対する興味を失いつつある状況を感じとれている、と。

 タイム誌が以前は個人崇拝の対象として崇め奉っていた人物を激しく否定する記事を出した背景に何があるのかを正確に知ることはできない。ただ、以下の二つの事実は明らかだ。①ゼレンスキーに対する論調や評論は劇的に変わった。②そのような報道機関はタイム誌だけではない、という2点だ。 西側から寵愛を受け、ハリウッドから喝采を浴び、チェ・ゲバラとウィンストン・チャーチル的要素を合体させて、ジュラシックパーク風に作り出された、空想の英雄を具現化しようという、ゼレンスキーの時代は終わった。

 このような変節が起きている理由も明白だ。それは、この代理戦争は失敗に終わりつつあることと、米国政府が、イスラエルがパレスチナの人々にジェノサイド的攻撃を加え、おそらくこの先中東でさらに大きな戦争をはじめる支援をすることを優先しているからだ。ゼレンスキーは事実上、「イスラエルに対する嫉妬」的な発言までしている。イスラエルを、米国お気に入り従属国が、軍事大国で 、国家主義的風潮が強く、事実上の専制国家になれるかのお手本にできると考えてきたゼレンスキーにとっては、このような状況に苦虫を噛み潰していることも、間違いないだろう。


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 要するに、タイム誌がゼレンスキーに対する評価を低下させたことは、ゼレンスキーに反対するような土壌作りの準備を始めている兆候なのだろう。元「奇跡の人」、(南)ベトナムのゴ・ディン・ジエムのような、ゼレンスキー以前の他の代理戦争の指導者たちと同様に、このウクライナ大統領は不必要とされ、処分される可能性があるのだ。そしてその手段としては、ある程度あからさまにおこなわれる武力政変や選挙操作(あるいはその余波)などが用いられるのだろう。

 しかしおおかたの西側社会の目から逸らされている事実は、このタイム誌の記事に対するウクライナ国内の反応だ。実はこの記事はウクライナ国内の報道機関や政治的指導者層から反響を呼んでいる。強権を持つ国家安全保障・国防会議のアレクセイ・ダニロフ書記は、この記事を説得力のないことばで否定した上で、警察当局に求めたのは、そのことに関する情報を漏らした人々を特定することだった。こんな被害対策が取られたことは、驚くに値しない。

 ウクライナのソーシャル・メディア上では、ロシアを非難する声が一定数上がっている。一例をあげると、政治評論家のコスチアンティン・マトヴィエンコ氏の推測によると、タイム誌のこの記事は「西側の敵陣営(同氏の米国ネオコン風ことばを借りれば「悪の枢軸」)」が、ゼレンスキーを追い落とそうとする意図をもつ理由は、これらの陣営がゼレンスキーのもつ道徳的権威を恐れている(マトヴィエンコ氏はそう信じたがっているのだが)からだ、という。これらの敵陣営がどうやってタイム誌にたれ込んだのかについては、マトヴィエンコ氏は明らかにしていない。こんな反応は全く理解に苦しむものだが、このような主張は、作り上げられたゼレンスキーの虚像がしつこく、少なくともウクライナのある程度の知識階級に残っているという事実を反映するものだ。さらにはウクライナの国際的な影響力についての虚像についても、そうだ。国家安全保障の重要性は、ウクライナだけの独自問題では全くない。しかしウクライナの場合、このような幻想のせいで、戦争を終わらせることを難しくしている。

 それと同時に、ウクライナを観察している人々は、タイム誌が発した兆候により風向きが変化したことを指摘している。ある一人の報道関係者によると、従前のゼレンスキーの虚像というのは、タロットを使った魔術師のようであり、そのタロットカードは、強力な策略と宇宙の力を操る能力の両方に関連するカードであったが、いまやゼレンスキーは世捨て人のような雰囲気が漂う孤独でしおれた人物に成り下がってしまった、という。「救世主的」存在から、「社会に恐怖を与える存在」に変節してしまった、というのだ。架空の話のように聞こえるが、その姿は衝撃的だ。つまり、少なくとも、今回のタイム誌の記事による、ゼレンスキーという偶像が崩壊したという指摘に頷くウクライナの人々も一定数いるのだ。

 このような事例がさらに多くなる可能性がある。これらの事例も、まだ逸話的なものであることも避けられないだろう。ただし、重要なのは以下の点だ。すなわち、タイム誌によるゼレンスキーに対する攻撃が1年前に起こっていたとしたら、ウクライナは少なくとも団結し、怒りを持ってこの記事を拒絶していた、という点だ。しかし、今ならそうはならない。疑念や鬱憤が外国だけではなく、国内でもますます増大しているからだ。


READ MORE: Maidan snipers: The founding myth of ‘new’ Ukraine has been proven to be a lie. Why is the West silent?


 すぐに結論に飛びついてはいけない。米国が本当にいま、ゼレンスキーの勢力を弱めようとしているのなら、その策略の目的は何だろう?ゼレンスキーを脅すことで柔軟な姿勢を取らせようとするためなのか?ゼレンスキーから、妥協的な和平を受け入れる指導者に取り替えることで、米政府が中東とアジアに集中できるようにするため(そうすればウクライナとEUは放ったらかしになるが)か?それとも、この戦争を別の運営方針でさらに遂行し続けるためなのか?

 ゼレンスキーが、自分が窮地に立たされた怒りを感じているのなら、それは一人の政治家が自らの失政の結果を恐れて鬱屈した気持ちや妄想に苦しめられていることの反映であると言ってしまっていい、ということなのだろうか?それともゼレンスキーは国内からや国外の「同盟者たち」から得た十分な証拠に基づく真の危険を察知した上での振る舞いを見せているのだろうか?

 確かなことがひとつある。それは、これまで「西側の価値観」のために奮闘する広告塔だった人物が、霊気をなくしてしまったことだ。このことは、ゼレンスキーにとっては本質的に悪いニュースである。なぜなら、彼の台頭と支配においては、イメージの管理が現代の基準から見ても大きな役割を果たしてきたからだ。

マイダンの狙撃者の真実:ウクライナが「新生した」という主張は偽りであると証明された。なぜ西側はだんまりを決め込んでいる?

<記事原文 寺島先生推薦>
Maidan snipers: The founding myth of ‘new’ Ukraine has been proven to be a lie. Why is the West silent?
先日出された長期間開かれた裁判の判決の内容は、いまのウクライナ危機の根本に疑問をなげかけるものだった
筆者:タリク・クリル・アマル(Tarik Cyril Amar)


ドイツ出身の歴史家。イスタンブールのコチ大学でロシアやウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史や記憶の政治学を研究する。Xのアカウントはこちら @tarikcyrilamar

出典:RT  2023年10月31日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月8日



画像:2014年2月20日、ウクライナのキエフで、ウクライナ大統領と野党指導者の間で停戦が合意されたにもかかわらず、独立広場で警察と衝突を続けている反政府デモ隊© Jeff J Mitchell/Getty Images


 今月(2023年10月)初め、キエフの地方裁判所は2015年以来長引いていた事件の調査結果を発表し、かなり以前に解散していた警察組織「ベルクート」の元幹部5人に判決を下した。この元警察組織は、暴力的な「マイダン」で頂点に達した2013年から14年にかけての抗議行動で国際的に知られるようになった。

 2014年2月20日、ウクライナの首都中心部で反政府デモ隊が複数の狙撃者に銃撃された事件への関与で起訴された4人の被告人(うち3人は欠席)は有罪となり、5年から終身刑の判決を受けた。1人は無罪となった。

 政治的には、この裁判は1991年の独立以来、ウクライナで最も重要、あるいは最も重要とされるべき裁判だった。裁判所はウクライナ国家の思惑を成就させた形になった。(ただ現時点ではいくつかの控訴がおこなわれているが)。その思惑とは、「革命」とも「クーデター」とも呼ばれるウクライナの最も暗黒の瞬間を、法廷の場で折り合いを着けさせる、というものだった。そしてその瞬間とは、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ元大統領政権を転覆させた瞬間のことだ。この転覆劇は、当初は平和裏におこなわれていた抗議活動が後に暴力的なものになり、それが西側の介入を呼んだことが圧力となっておこったものだった。政権交代と地政学的な方向転換をもたらしたこの暴動は3カ月にわたって展開されたが、2月に50人近いデモ参加者が殺害されたことが決定的な転機となった。

 この件はすぐに「狙撃者による大虐殺」や「マイダン大虐殺」という名で知られるようになった。この銃撃戦の責めをヤヌコーヴィチとその政権は真正面から受けることになり、国内での妥協的解決の道は断たれ、西側やウクライナの反政府派の言い分が通り、この危機はロシア政府に取り込まれた腐敗した抑圧的な政権に対する、民主主義と自由の戦いであるとされてしまったようだ。実力以上に大きな役割を果たしていた好戦的で世論操作に長けているウクライナの極右勢力も、西側の冷酷な地政学もこのような状況を生み出した責任を問われなかった。この虐殺がおこなわれた数日後、国際的な調停の合意により、この混乱の激化の悪循環を止めようという最後の取り組みは失敗に終わり、ヤヌコーヴィチはロシアに亡命し、ロシア軍はクリミアに移動した。


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 その後、さらに事態は悪化した。ウクライナの新政府とドンバスの反抗勢力の間で紛争が勃発したのだ。当初は激しいものだったが、次第にじわじわと続く地域規模の内戦のようになり、ロシア側の干渉も限られた範囲に留まっていた。和平に至る最高の好機は2015年2月のミンスク2合意だったのだが、ウクライナ側と西側の支援諸国が全面的に妨害し、2022年2月以降、ウクライナは西側連合体によるロシアに対する代理戦争の場となってしまった。現在、ウクライナと西側はこの紛争に負けつつあり、人命と富の面で大きな犠牲を強いられることになってしまったが、その損害を受けたのはほとんどウクライナだ。国際間の緊張は極端に高まり、信頼関係は消え去り、意味のある双方のやり取りはほとんど不可能になってしまった。

 2014年2月の下旬の数日間がまったく違う方向に進んでいたなら、ウクライナも世界ももっとずっと良い場所になっていただろう。そうなれば、ウクライナ政府と反政府側との間ですでに交わされていた妥協案が取り入れられていただろう。マイダン大虐殺ほど、いつまでも広がり続ける紛争を推し進める重要なきっかけはなかった。特に、西側が圧倒的に報じていたこの殺戮に対する言説の内容が同じままで、これまでの政権だけを非難する論調ばかりで、しかもその言説に対する異論は、親ロシア派による「情報戦争だ」と非難されていたのだから。要するに完璧な筋書きがあったのだ。つまり、感情に訴えることで、ウクライナ新政府を支援させるだけではなく、無批判に支持させ、ウクライナ東部での反政府活動を否定し、妨害する行為を正当化させ、ロシア側との効果的ないかなる協力をも中傷した、ということだ。

 しかし、もしこの殺戮についての真実が私たちに伝わってなかったとしたら、どうだろう?このような重要な主張を展開したのは、ウクライナ系カナダ国民の政治学者であるイワン・カチャノフスキー氏だ。カチャノーフスキー氏(先日、元ナチス武装親衛隊員にカナダ議会が敬意を表したことに関する醜聞を暴露した人物でもある)が、長年主張し続けているのは、「マイダン大虐殺は偽旗工作であった。多くの(中略)抗議活動者と(中略)警官が殺害されたこの工作の目的は、ウクライナの国家権力を掌握するためだった。この工作には、マイダンの反政府派の財閥と極右勢力が関わっており、マイダン派の管理下にあった建物にいたマイダン派の秘密狙撃団を使っておこなわれたものだった」というものだ。

 カチャノーフスキー氏の調査が示した非常に詳細な資料についてここで再度紹介することはできないが、以下の3点のみ記載しておく:①反政府派に属していた狙撃団が警官らを標的に射撃を始めたのは、2月20日の朝のことだった。②警官、そして後にマイダン派の抗議活動者らを狙った発砲現場であったホテル・ウクライナや温室などの主要箇所は、反政府派(警察ではない)の管理下であり続けていた。③午前9時以降、抗議活動者らも反政府派狙撃団(これも警察側ではない)から射撃されていた。


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 まとめると、カチャノーフスキー氏の調査結果からは2つの出来事が発生したということがわかった。①反政府派の狙撃団ははじめに警官らに向けて発砲することで、事態の激化をねらっていた。②さらにその後、抗議活動者ら(つまりは味方側)さえも殺害した、のだ。それと同時に、カチャノーフスキー氏が排除しなかったのは、警官側も抗議活動者側を射撃した可能性だ。しかし、同氏による動画などの証拠品の綿密な分析からは、被害者の大多数は、反政府側狙撃団から標的にされていた、という事実が判明している。

 カチャノーフスキー氏がこのような結論に達したのは、長年にわたる厳格で徹底的な法的研究を通してだ。その結論は、テイラー&フランシス社が出版する学術誌「説得力のある社会科学」誌に掲載された彼の査読済み論文「ウクライナのマイダンに関する『狙撃団による大虐殺』」に要約されている。同氏のみが、このような、あるいは類似した結論に達しているわけではないが、同氏の研究が最も完璧かつ重要な外から影響を受けていない調査であるといえる。だからこそ、カチャノーフスキー氏の論文がもつ政治的影響力のせいで、同氏が「陰謀論者」であり、親クレムリン派の情報戦の戦士だという中傷を受け止めざるを得なくなった理由は明らかだ。同氏の研究は検閲を受けてきたし、同氏も激しい報復を受けてきた。その報復とは、具体的には、同氏の学界や社会的地位が疎外され、同氏の家族がウクライナで所有していた財産が擬似合法的に没収されたことだ。

 ウクライナの司法は政治から独立していない。裁判官らは、自身の観点や職業上の倫理とは関係なく、(少なくとも)ウクライナの極右勢力から、追放や暴力で脅されている中で仕事をしている。しかしそれでも、カチャノーフスキー氏の指摘どおり、先日の判決で示された100万語にわたる判決文の中に埋もれている形で、この裁判所はマイダン大虐殺に関するカチャノーフスキー氏の解釈を支持する以下のようないくつかの要素を認めた。①反政府派の狙撃団により、4名の警官が亡くなり、39名が負傷した。②狙撃団は反政府派管理下の建物から発砲した。③8人が殺害され、20人が負傷したが、それをおこなったのは警察側ではない「未知の」加害者らの手によるものである、という可能性は排除されなかった。という3点だ。



 カチャノーフスキー氏の研究や断固とした立場は尊敬に値するものだが、ここで特に重要視すべきことは、同氏の研究に対する長期にわたる反動はウクライナでも西側でも両方においてひどく悪いことが起こっている兆候である点だ。例えばウクライナ側の情報戦担当報道機関のユーロマイダン・プレス紙はいまになってもまだ、カチャノーフスキー氏に対する個人攻撃のために、読者向けに偽情報を流し、今回の判決はカチャノーフスキー氏の調査結果と食い違っている(もちろんこれはひどい誤解釈なのだが)と主張している。

 実のところは、その真逆だ。

 この件は、西側に深く根ざした偽情報および自己偽情報という文化の最新の一例にすぎない。西側の指導者層がたいてい意図的に嘘を流すいっぽうで、西側の多くの報道機関は、西側の指導者層の(あるいは西側指導者層のお気に入りや顧客や同盟者らの)嘘を信じるだけではなく、心理的な投資を裏切るほどの勢いでこれらの嘘を守ろうとさえしている。

 2016年の大統領選挙において、ヒラリー・クリントンが大敗を喫したという事実を感情的に否定した件(ロシア・ゲート)も、西側連合(及びあるいはウクライナ)がノルド・ストリームを爆破した(すなわち、「同盟諸国」と戦争行為や自然環境に対するテロ行為に加担した)件に関わる奇妙な二重思考も、イスラエルには「自衛権」があり、西側の支援のもと人道的に許されない罪を犯すことが許されている件もすべて、西側諸国が集団でわがままに振る舞っていることを示す事例だ。西側のあまりに多くの人々は、いまだに自分たちは世界の「価値」の保護者であると主張し、自らを騙し続けている。まるでそれが自分たちの生来の権利であるかのように。

 それでも、これらの嘘や堅く守られた幻想が、個人や政治を腐敗させ、社会を単極化し、国際関係をこじらせ、何よりも重要な問題であるが、人々の命を犠牲にしているのだ。何千、何万もの人々、ウクライナの場合、何十万もの人々の命が犠牲にされている。紛争というものは人間生活では日常茶飯事に起こるできことであり、ある程度は避けることができない。

 しかし、不誠実さで自らを狂気においやることは、避けられないことではない。さらにそのような行為が平和を維持する助けにならないことは明々白々だ。

ゼレンスキー、汚職について箝口令-ウクライナのメディア

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky orders reporters to keep silent about corruption – Ukrainian media
ウクライナ大統領がロシアとウクライナの紛争が終わるまで汚職について口をつぐむよう指示したと報じられている
出典:RT    2023年10月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月26日


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ウォロディミル・ゼレンスキーウクライナ大統領© Thomas COEX / AFP


ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナのジャーナリストたちに対して、汚職についての報道は避けるよう指示した、とウクライナのニュースメディアZerkalo Nedeli(「週刊鏡」)の編集長が述べた。

ウクライナ大統領は、ロシアとウクライナの紛争が終わるまで、ジャーナリストにその問題に触れないようにと指示した、とキエフの一流メディアが報じている。

「the National Media Talk 2023」で、ユリア・モストヴァヤ(Yulia Mostovaya)は、同僚たちが大統領とのオフレコ会議に出席し、このゼレンスキーの要求を知った、と語っている。

報道によれば、大統領がその要請をしたのは、ウクライナの報道機関が、国の武装部隊が支払った高額な食料価格について報道した後、とのことだ。

Zerkalo Nedeliを含むウクライナの報道機関によれば、国防省はその兵士の食料や衣類を市場価格の2倍から3倍の価格で購入していたとされている。例えば、国防省は1個の卵について最大で17フリヴニャ(0.47ドル)を支払い、1キログラムのジャガイモについては最大で22フリヴニャ(0.60ドル)を支払っていた。その一方、当時のキエフの店舗でのこれらの商品の平均価格は、それぞれ約7フリヴニャ(0.19ドル)と8フリヴニャ(0.22ドル)だった。

モストヴァヤは、ゼレンスキーがメディアの報道において腐敗の話題を避けるよう要請したことについて、もしゼレンスキーがそれを「バランスのとれた方法で」提示し、その報道がウクライナの戦闘能力に影響を及ぼす可能性を説明していたなら、ウクライナの報道機関はそれを考慮したかもしれないと述べた。

「もし大統領がこう言っていたら、私たちはこれらの条件を受け入れたでしょう:『ここに一人の人物がいます。彼の電話番号がここにあります。具体的な事実がある場合、どうかそれをこの人物に提供してください。彼はすぐに電話に出るでしょう。そして、私たちに1週間の猶予をください。1週間以内に何の反応もない場合、それを印刷に回してください。』」

しかし、ゼレンスキーはそのような提案を出さなかったとモストヴァヤは主張。代わりに大統領は報道陣に対して「勝利まで黙っているように」と指示した、とのこと。

「沈黙すれば勝利は訪れない」とZerkalo Nedeliの編集長は言った。

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ウクライナにおける汚職の問題は、国内外のジャーナリストや高官たちによって何度も取り上げられてきた。

先週、欧州委員会の元委員長であるジャン=クロード・ユンカーは、ウクライナが「社会のあらゆるレベルで腐敗している」ため、近い将来にはEUに加盟することが難しいだろうと述べた。彼はまた、既に「苦境に立たされている」ウクライナの人々に対して、ブリュッセル(欧州委員会本部)は「虚偽の約束をしないように」と促した。

ウクライナは長年にわたり、ヨーロッパで最も腐敗した国の一つと見なされ、2022年のTransparency Internationalの腐敗認識指数では180カ国中116位にランクされた。

キエフの未就学児のうちウクライナ語を「積極的に話す」のはわずか15%―NGO

<記事原文 寺島先生推薦>
Only 15% of Kiev preschoolers ‘actively speak’ Ukrainian – NGO
また、20%はウクライナ語を全く話さず、首都の子供たちの間では依然としてロシア語が支配的である。
出典:RT   2023年10月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月26日


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ウクライナの国旗を持った少女がキエフ中心部で展示されているロシア製とされる破壊された装甲車の前を走っている。© Getty Images / SOPA Images / LightRocket / Aleksandr Gusev


キエフの就学前児童のうち、ウクライナ語を「積極的に使用している」のはわずか15%程度であることが、「言語状況を研究し、変える」ことを宣言目標とするNGO団体スピルノモワ(Spilnomova)の調査で明らかになった。

この調査結果は、スピルノモワの創設者であるアンドレイ・コヴァリョフ氏が、火曜日(10月10日)に掲載されたTexty.org.uaのインタビューで明らかにした。約20%の園児がウクライナ語を全く話さず、日常生活ではロシア語を使うことが判明した。

残りの園児はロシア語とウクライナ語を混ぜて使っているとのことである。ただ、コヴァリョフ氏は、調査結果に至る正確な方法論については触れていない。

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ウクライナ語の状況は、その幼稚園が積極的にウクライナ語化に取り組んでいるかどうかや、保護者の努力によって、幼稚園によって異なるようだ。しかし、ロシアとウクライナの紛争が始まって以来、子どもに話しかけるときにウクライナ語を使う保護者が増えたとコヴァリョフ氏は言う。

「このことを保護者に常に言い聞かせている幼稚園があります。そして、ウクライナ語を使う子どもの割合も増えています。しかし、残念ながらそのような幼稚園は少数派です。ほとんどの幼稚園は、この問題について何の方針も持っていません。何もしないのが普通です。

この活動家コヴァリョフ氏によれば、ウクライナ語の使用に関する状況は、十代の子どもの間でも決してよくはなく、どうやらさらに悪いようだ。市内の学校では子どもたちにウクライナ語を教えているが、その言語政策が実際の使用にはほとんど影響を及ぼしていないようだ、と同氏は語る。

「つまり、非常に特殊な状況なのです。就学前の子どもたちがロシア語の環境に身を置いているのを見かけるのですが、一方で学校の言語環境が変わる兆しはありません」。

「例えば、キエフに住んでいる十代の子どもが使うミーム(頻繁に使われて受け継がれていく言葉)のうち、ウクライナ語はわずか10%で、90%はロシア語か英語です。ここで疑問が生じます。それは、子どもは、自分にとって支配的でない言語で創造性を発揮できるのだろうかという疑問です」。

コヴァリョフ氏によれば、ウクライナの学校では公用語の普及に努めているにもかかわらず、現在のところ、子どもたちがウクライナ語を「受動的」にしか学べない、同国では言語問題が 「高度に政治化」されていることを考えると、教育当局者は実際に何かをすることを恐れているようであり、「何らかの形で解決される」まで待つことを選択している、ということだ。

元EU委員長いわく「ウクライナは腐敗の極致で加盟は不可能」

<記事原文 寺島先生推薦>
Ex-EU boss says Ukraine too corrupt to join
https://www.rt.com/news/584082-jean-claude-juncker-ukraine-corrupt-eu-membership/
欧州委員会の元委員長、加盟交渉の行方が報じられる中、キエフとの非現実的な約束に警鐘を鳴らす
出典:RT   2023年10月 5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月10日


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ジャン=クロード・ユンカー前欧州委員会委員長。Andreas Arnold/picture alliance via Getty


元欧州委員会委員長のジャン=クロード・ユンカー氏は、根深く蔓延する汚職は、ウクライナがすぐに欧州連合(EU)に加盟できないことを意味すると述べた。さらに今週(10月第1週)初め、『ポリティコ』紙は、アメリカ政府がキエフに対し、より効果的に汚職を撲滅するよう圧力をかけていると報じた。

木曜日(10月5日)に掲載されたドイツのAugsburger Allgemeine紙とのインタビューの中で、ユンカー氏は、ブリュッセルは「苦しみに首まで浸かっているウクライナの人々に偽りの約束をしてはならない」と警告した。そして、「ウクライナ人にすぐに加盟国になれると信じ込ませている」EU内の人々を批判した。この元委員長によれば、そのようなシナリオはEUにとってもウクライナにとっても不利になるという。

「ウクライナと付き合いのある人たちは、この国が社会のあらゆる階層で腐敗していることを知っている」とユンカー氏は告発した。同氏は、この東欧の国はまず「大規模な」改革を行なう必要があると指摘した。

ユンカー前欧州委員会委員長は、「部分的加盟」に賛成する考えを示した。この考えは、欧州統合を目指す国々が改革の道を歩むことを条件に、欧州統合の恩恵の一部を享受できるようにするものである。

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ユンカー氏の警告は、『ポリティコ』が匿名の複数の外交官からの話として、現職のEU指導部が早ければ12月にもウクライナとの加盟交渉開始を正式に発表すると報じた直後のことだった。

一方、今週初め、同誌は米国務省のウクライナに関する「国別統合戦略」の「取扱要注意だが国家機密ではない」文書を見たと主張した。その中でアメリカ政府高官は、キエフの指導者たちに「かなり酷い汚職にまみれているという認識」「ウクライナ国民と外国の指導者たちからの戦時政府に対する信頼を損なう」可能性があると警告したとされている。

ポリティコの情報筋によると、ジョー・バイデン米大統領はウクライナに対し、既存の汚職撲滅活動を強化するよう迫っているが、汚職の懸念からキエフへのアメリカからの援助を差し控えたいと考えている共和党議員に政治的な弾薬を渡すことを避けるため、秘密裏にそれを行なっている、という。

バイデン政権は、将来の経済援助は「ウクライナを民間投資にとってより魅力的な場所にする」改革と結びつけることができると明らかにしたと伝えられている。

月曜日(10月2日)、ウクライナのヤロスラフ・ゼレズニャク議員は、自国がアメリカから汚職の「イエローカード」を出されたと主張した。

ウクライナは長年、ヨーロッパで最も腐敗した国のひとつと見なされている。「トランスペアレンシー・インターナショナル」の腐敗認識指数によると、2022年現在、ウクライナは180カ国中116位である。

一斉に降伏するウクライナ軍―TASS通信の報道

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian troops surrendering en masse – TASS
出典:RT  2023年9月27日
ここ数週間でウクライナ軍1万人以上が、ロシア軍と連絡を取るための特別な周波数を使った無線を使用して、降参を選んだ、との報道
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月3日



資料写真。ウクライナの軍人。© ゲッティイメージズ/アナドルエージェンシー/ヴォルフガングシュヴァン


 ここ数週間で、降参して武器を置くこと選択する兵士たちのために用意された特別な周波数の無線を使用し、ロシア軍に降伏するウクライナ軍人が多く出ている、とTASS通信が報じた。

 呼び出し符号が周波数149.200である「ヴォルガ」という無線がロシア側から設置されたのは、夏のことだった。これまでのところ、1万人以上のウクライナ兵がその無線を利用し、その後ロシア側に拘留された、とTASS通信が報じた状況を把握している情報筋が述べたという。さらにその情報筋は、その無線周波数は前線全体で利用可能である、とも伝えた。

 「一万人以上のウクライナ兵が生きるという道を選択をし、「ヴォルガ」の149.200の周波数を使用して降伏しました。捕虜たちは十分な栄養を与えられ、必要なすべての医療を受けています」とその情報筋は述べた。


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 「ウクライナ兵の降伏が最近、増加の気配にあるのは、ウクライナ兵が個人としてではなく、団体で降伏しているからであり、特にその動きがラボティノ村周辺で顕著である」とTASS通信の情報筋は述べている。ザポリージャ地方にあるこの村は、ここ数週間、ロシア軍とウクライナ軍の間の激しい戦闘の舞台となっている。

 ラボティノ村は依然として紛争の主要な発火点の1つであり、この地域は6月初旬に開始された長い間予告されていたウクライナの反撃中に繰り返し攻撃にさらされている。これまでのところ、この反撃は具体的な戦果をもたらすことができておらず、逆にウクライナ軍は、その過程で大量の人員と物資の損失を被っている、という報告が出されている。

 ロシア側の最新の推計によれば、ウクライナ側は今月だけでも1万7千人以上の軍人を失なった、という。ロシア軍によると、反撃が始まって以来、殺されたウクライナ軍の総数は現在8万3千人を超えており、戦闘用重装備も1万個以上破壊されている、とのことだ。

囚人を発電のために利用する – ウクライナ国会議員の提案

<記事原文 寺島先生推薦>
Use prisoners for electricity – Ukrainian MP
出典:RT 2023年9月19日
セルゲイ・グリフコ議員は議会での検討のためにこの考えを提案し、受刑者の刑期が短縮される可能性があることを示唆した。
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>2023年9月24日



資料写真。ウクライナのキエフにあるルキャニフスカ刑務所。© セルゲイ・スピンスキー/AFP


 ウクライナのセルゲイ・グリフコ議員は、国内の刑務所にいる受刑者らを電力源として利用することを提案した。与党「国民の僕」の国会議員であるグリフコ議員によると、受刑者たちは自転車発電機の使用と引き換えに、刑期が短縮できることになる、という。

 タス通信が火曜日(9月19日)に報じたところによると、グリフコ議員はフェイスブックへの投稿で、同国の議会での審議のために「私の創造的な法案の1つ」を提案していることを明らかにした。同議員は、「5万人の受刑者に自転車発電機を使って発電するよう促す」ことを目標にしている、と説明した。

 同議員は、囚人への報酬は1年につき1か月ずつの刑期の短縮であることを提案した。
 
 この型破りな計画は、「国の電力供給を維持する」別の方法が存在することをウクライナ社会に証明することになる、と同議員は主張した。グリフコ議員はまた、トレーニングジムも発電施設として機能する可能性がある、と示唆した。
     
 先月、ウクライナ国営のウクレネルゴ電力会社のウラジミール・クドリツキー社長は、ロシアとの紛争で損傷したすべての設備を寒波到来前に修復するのは不可能だ、と警告した。同社長は、ロシアの空爆により国内の発電施設の3分の1から半分が破壊された、と推定した。

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 ウクライナの報道機関は、エネルギー部門の代表者らが、たとえロシアによる新たな攻撃がなかったとしても、来冬には大規模な停電が起こると予測している、と報じた。さらに報道によると、国内の送電網がすでにボロボロであり、昨年よりもさらに悪い状態で寒い季節を迎えることになる、という。

ロシア当局、ウクライナへのミサイル攻撃の詳細を明らかに

<記事原文 寺島先生推薦>
Moscow provides details of missile strikes on Ukraine
ロシア国防省は、数回の連続した長距離攻撃によりウクライナの情報収集能力と兵站能力が損なわれた、と発表した。
出典:RT   2023年9月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月19日



ロシア国防省が公開した資料映像で映されている、2022年10月14日にロシアの軍艦からミサイルが発射されている様子。© Sputnik


 ロシア国防省は、ロシア軍がこの1週間にわたり、破壊工作や裏切り行為のための訓練を提供する施設など、ウクライナの軍事力を支える幅広い施設を攻撃した、と報告した。

 同省は土曜日(9月9日)の声明で、9月2日から9日までの間、ロシア軍が海・空両方の軍装備と無人機を使用して、ウクライナの標的に対して高精度の長距離集団攻撃を計6回実施した、と発表した。

 同省は、攻撃はウクライナの通信諜報施設、港湾基盤施設、海上ドローン生産施設、軍事倉庫、燃料貯蔵所を標的にしたと述べ、さらに「ウクライナの破壊工作組織やいわゆる『ロシア義勇軍』のテロリストの訓練基地も攻撃した」と付け加えた。


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 後者の部隊はネオナチ的な思想を好み、ウクライナのために戦うロシア人で構成されており、ここ数カ月間ロシア地域への一連の侵攻をおこない、その一部では民間人に死傷者が出ている。

 同省はさらに、長距離攻撃によりウクライナの戦略諜報活動が妨害され、ロシアのヘルソン地域とザポリージャ地域で戦闘中のキエフ軍への後方支援が損なわれた、と付け加えた。

 ロシア国防当局者はまた、ケルチ海峡付近で活動していた黒海艦隊の艦船が、クリミア橋を攻撃しようとしたウクライナの無人ボート3隻を探知し、撃沈した、と指摘した。ウクライナ側はすでに7月中旬に戦略的基盤施設に損害を与えるためにこの種の兵器を使用していた。その際、爆発により道路の一部が崩壊し、ロシア人夫婦が死亡、10代の娘が負傷した。

 同省はまた、この一週間でロシア海軍機がクリミア西方の最大50人の特殊作戦部隊からなるウクライナ攻撃部隊を乗せた高速船4隻を破壊したと発表した。

「激戦区」と化しているラボティノ:なぜロシアとウクライナは南部前線にあるこの小さな集落をめぐってこんなにも激しく闘っているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>The Rabotino ‘meat grinder’: Why are Russia and Ukraine fighting so fiercely over a tiny village on the southern front?
ウクライナ側が占領したと主張するザポリージャ地方の小さな村落で何が起きているのか?
筆者:ウラジスラフ・ウゴルヌイ(Vladislav Ugolny)
出典:RT  2023年9月9日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月19日



© RT/ RT


 8月中旬以来、ウクライナ統治下の都市オレホフとロシア統治下のトクマクの間にあるザポリージャ地方に位置する小さな村ラボティノが激しい戦闘の場となっている。

 ウクライナ側にとって、この田舎は、反撃を測る上で残念かつ予想外の尺度となった。8月末、ウクライナの報道機関は国防省の報告を引用し、同村の完全な支配を確立したと報じた。フランス訪問中、ドミトリー・クレバ外務大臣は、この「戦略的に重要な入植地」の「英雄的な占領」について語り、側面の制圧を確立すれば、ウクライナ軍が「メリトポリとクリミア国境」に到達する道が開かれる、と主張した。

 しかし、ウクライナ側の勝利宣言は時期尚早だった。この間、ロシア国防省は戦闘が続いているこの村落の喪失に関する報道を否定していた。戦闘の激しさにより、両国はウクライナ国軍第82旅団(AFU)やロシア軍第76師団などの精鋭空挺部隊をラボティノに移送せざるを得なくなった。

 この村は「グレーゾーン(どちら側が抑えたかを明確にできない地域)」に位置しており、ロシア軍とウクライナ軍がそれぞれ村の南と北の郊外に配置されている。

ラボティノの位置

 ラボティノは、ウクライナ軍の基地となっているオレホフから12km離れたところにある。2022年春、AFU(ウクライナ軍)はなんとかこの地で戦線を安定させ、今年6月に始まった反攻のための兵力を蓄積し始めた。


©RT/RT

 ロシア軍の基地であるトクマク市は、ラボティノから22kmの距離にある。一見この距離は短く見えるが、軍にとって防御するのは困難だ:2本の防衛線、地雷原、準備された砲兵陣地、その他の防御手段が、トクマクと現在の戦闘現場の間に存在するからだ。さらにトクマクは、敵が他の戦線を突破した場合に全方位からの警備が必要となる要塞なのだ。

ラボティノの重要性

 ラボティノは、ウクライナが計画しているトクマク攻撃を目指すための最初の入植地であり、ロシアの第一線の防衛線に先行する。理論的には、ウクライナ軍がもっとうまく行動していれば、すぐにラボティノを占領でき、ロシア軍は第一線の防衛に集中することになっていただろう。


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 しかし、ウクライナの反撃はこの地域で行き詰まり、AFUは主力をヴレメフスキー地区(ザポリージャ州とドネツク人民共和国の分岐点)の方向に移そうとさえした。ラボティノは長期にわたる戦闘の場となり、双方に死傷者が発生し、ウクライナ側は多くの西側装備を失なった。その結果、前回の国勢調査が行なわれた2001年には人口わずか480人しかいなかったこの村が、報道機関で大きく取り上げられるようになった。現在、ラボティノの存在は、ウクライナ戦争の情勢を見守る人々に広く知られるようになった。

ウクライナ側の損失

 9月5日のロシア国防大臣セルゲイ・ショイグの声明によると、ウクライナは反撃開始以来推定6万6000人の兵士を失なったという。さらに、ラボティノ付近ではわずか1日で170人が殺害された、と伝えられている。死傷者は日に日に増加している。9月7日のロシア当局からの報告によると、わずか24時間以内にロシア軍はラボティノでのAFUによる14回の突破の試みを撃退し、その結果ウクライナ側は戦闘員110名を失なった、とのことだ。

 人員の損失や負傷者数や死者数については、はっきりと確認することは不可能だが、破壊された装備を数えるのははるかに簡単だ。ラボティノでは、AFUは NATO諸国から受け取った新しい装備を使用した (まだ納入されていない米国のM1エイブラムス戦車を除く) が、その多くを失なった。

 公開情報調査(OSINT)をおこなっているロスト・アーマーというサイトの調べによると、AFUはすでにドイツ製レオパルド戦車を2両、米国製M2ブラッドリー歩兵戦闘車を38両、 ストライカー装輪装甲車を4両失なっている。この一覧に加えられる最新戦車は、英国製チャレンジャー2戦車だ。この戦車は世界でもっとも近代的な戦車のひとつだ。この戦車が英軍で使用されてきたのは、1994年からのことで、「無敵の」戦車という評判を得てきた。これまで、この戦車が戦闘中に敵の攻撃により失なわれたことはなかった。例外は2003年のイラク戦争で「味方からの誤射」により失なわれたものだけだった。テレグラム上のチャンネルである「ロシアの春の戦争通信」によると、破壊することは不可能だとされていた英国製のこの戦車が、ロシアの「コルネット対戦車ミサイル」による砲撃を直接受けて、砲塔より下の部分が爆破した、という。
(動画は原文サイトからご覧下さい。訳者)

 上記の数字は目視確認に基づいており、航空によって破壊された装甲車両は考慮されていない。したがって、この数値は「信頼できる最小値」と見るべきだ。

補強合戦

 ラボティノでの戦闘が長引くにつれ、両軍とも予備兵力を移送し、緊急に戦闘に引き込む必要があった。ウクライナ軍は当初、数旅団のみ投入していたが、徐々に第116、第117、第118機械化旅団を投入し、8月中旬には切り札である第82航空強襲旅団を投入した。当初、この旅団はロシアの第一線の防衛線を突破した後にのみ戦闘に参加することになっていた。

 実際には、戦況は計画どおりに進まず、第82連隊の空挺部隊がラボティノを襲撃することになった。この「先鋭」(報道機関による)部隊が戦場に存在したことで、ロシア軍はより高価な西側装備を破壊することができた。

 ロシア側からいうと、以前にラボティノで戦っていた第42自動車化ライフル師団を救援するため、第7および第76航空攻撃師団を移管した。これらの部隊が現在、防衛の基盤を担っている。

ラボティノを今、支配しているのは?

 ラボティノの大部分は「グレーゾーン」状態にある。ウクライナ軍は入植地の北と北東の郊外に配置されている。いっぽうロシア軍は、主力部隊を同村の西と南に維持し、南郊外においては支配権を維持している。


©RT/RT

 ときどき、双方が敵を村から追い出そうとしている。AFUは入植地を完全に占領し、南方への攻撃の踏み台として利用するつもりだ。ロシア軍はラボティノの中心部で掃討作戦を行なうことがあるが、その目的は、ウクライナ側が入植するのを防ぎ、ウクライナ軍を高台の陣地まで撤退させるためだ。

ラボティノー新たな激戦区?

 ウクライナ側がラボティノのために戦い続けるという状況は、ロシア側にとって非常に都合がよい。というのも、ウクライナ側がラボティノに集中しているおかげで、ロシア作戦司令部は敵が予測不可能な決定を下すことを想定せずにすみ、この地域の防衛に集中することができるからだ。


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 同時に、たとえウクライナ人が入植地の制圧に成功したとしても、この村はウクライナ当局者が言うほど「戦略的に重要」ではないため、前線の状況は変わらないだろう。

 ラボティノとその東側にある平野は、ウクライナ軍がロシアの第一次防衛線の郊外に進出し、ヴェルボヴォエ地域の第一線の防衛線に到達することができた場所であるが、戦術的には不便な低地に位置している。いっぽうロシア軍は、第一線が建設されている高台を制圧しているため、容易に戦場を監視することができる。そのため、AFUがより深く進軍して補給路と避難路を伸ばそうとした際には、反撃を開始することができる。

 ラボティノの戦いに関して総じて述べれば、この小さな村を支配下におくことは、両側の損失の均衡から見ればさして重要ではない:つまり予備兵力の導入と移転の問題から見れば、だ。さらにウクライナ軍の残りの攻撃力がどれほどあるか、についてから見ても、この村の攻防はそれほど重要ではない。


筆者ウラジスラフ・ウゴルヌイはドンバス出身のロシア人ジャーナリスト。

ウクライナ、徴兵制度を変更へ

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine to change conscription rules
ウクライナ当局は、特定の病状に苦しむ国民を、限られた兵役のみに適していると認める措置を廃止する計画を立てている
出典:RT  2023年9月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月19日



2023年9月8日、キエフの第二次世界大戦ウクライナ国立歴史博物館で宣誓式を待つウクライナ人士官候補生たち。© Roman PILIPEY / AFP


 ウクライナの人権オンブズマン、ドミトリー・ルビネッツ氏によると、ウクライナは徴兵法を改正し、これまで健康上の問題により限られた兵役にしか適していないとされてきた国民の徴兵を可能にする計画だ、という。ただしウクライナ当局は、前線で戦うことができない人々は後方で任務に就くことを明言した。
 
 この動きは、ウクライナ側のたどたどしい反撃がロシア政府の言う「壊滅的な」損失に耐えてきた中で行なわれた。

 ルビネッツ氏は土曜日(9月9日)の国営テレビで、「限定的な兵役にのみ適している」層を廃止するよう国家安全保障会議に提案したと述べ、政府高官らが同氏に同意したと付け加えた。
 
 同氏は、「ウクライナ国民は兵役に適格か、不適格かのどちらかに2分しなければなりません」と説明し、積極的な戦闘に参加できない健康状態を抱えた潜在的な徴兵であっても、司令部やミサイル部隊、サイバー部隊に勤務することで防衛活動に貢献できる、と付け加えた。

 ルビネッツ氏はまた、徴兵候補者に賄賂を渡し、完全に健康であるにもかかわらず兵役に不適格として登録させることがまかり通っているいっぽうで、重い病気を長年患っている人々に限定的な任務とはいえ、兵役に就くよう告げられている事例を当局は数多く目撃している、と指摘した。「この問題についての対処をおこなうべきです」と同氏は強調した。


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 ロシア・ウクライナ間の紛争中、ウクライナの徴兵制度は汚職が蔓延しているとして繰り返し批判されてきた。フィナンシャル・タイムズ紙は先月、一部の男性ウクライナ人が前線に送られることを避けるために最大1万ドルの賄賂を支払っていた、と報じた。
   
 同じ頃、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領は一連の汚職醜聞を受けて地域の徴兵職員を全員解雇した。この粛清を受けて、ウクライナ当局はまた、ロシアとの紛争開始後に発行されたすべての徴兵免除を見直す、と述べた。

 しかしゼレンスキー大統領は、軍最高司令官らからより多くの人材を徴兵するよう求められた、と述べた。ウクライナ国防省は今月初め、肝炎、症状のないHIV感染者、臨床治療を受けた結核などの重篤な症状を持つ人々の徴兵を許可する法令を出した。

 徴兵規模拡大の推進は3か月以上続いているが、目立った進展が見られないウクライナの反撃のさなかにおこなわれた。ロシア側によれば、ウクライナ側は攻撃開始以来、約6万6000人の兵力を失なった、という。

ウクライナの徴兵将校が膨大な死傷者数を明らかに

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian conscription officer reveals huge casualty rate
出典:RT  2023年9月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月18日



資料写真。© NurPhoto / NurPhoto via Getty Images


昨秋ポルタヴァ地方で徴兵された兵士のうち、まだロシアと戦っているのはわずか10~20%に過ぎない、とヴィタリー・ベレジニー氏は述べた、という。


 地元報道機関によると、昨年入隊したウクライナ軍徴兵10人中最大9人が戦闘中に死亡または負傷していると、同国のポルタヴァ地方の上級徴兵将校が金曜日(9月15日)に発表した、という。

 ポルタヴァ市議会の会議で、地元の徴兵・社会支援センターの所長代理を務めるヴィタリー・ベレジニー中佐は、地方自治体が徴兵計画の実現に苦労しており、徴兵の13%しか履行できておらず、同市が集めた徴兵数はこの地域の最下位であることを認めた。

 地元報道機関のポルタフシーナ社によると、ベレジニー所長代理は「昨年秋に部隊に加わった100人のうち、残っているのは10~20人であり、残りは死亡、負傷、障害者となっています」として、軍は緊急に増援を必要としている、と述べた。

同所長代理は「徴兵の存在を確立する」ために徴兵を促す通知を広報することを提案した。さらに同所長代理は、この地域では大規模な機械化歩兵団の創設も計画していると付け加え、地元議員らにその取り組みを支援するよう促した。


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 ウクライナは2022年2月のロシア軍事作戦開始直後に総動員法を発表し、18歳から60歳までのほとんどの男性の出国を禁止した。8月、アレクセイ・レズニコフ元ウクライナ国防大臣は、ウクライナ政府は既存の動員計画をまだ達成していないと述べ、新たな徴兵計画の必要性はないと示唆した。

 しかし、ウクライナ国防省は今月初め、肝炎、症状のないHIV感染者、臨床治療中の結核などの重篤な症状を持つ人々の徴兵を許可する法令を出した。同時に、ウクライナ当局は同国の徴兵制度における汚職に対する大規模な取り組みに乗り出し、最近ウラジーミル・ゼレンスキー大統領が地域の徴兵職員全員を解雇した。

 ウクライナの惨状を認めるベレジニー所長代理の発言は、ウクライナの反撃が3カ月以上続いているものの、大きな勢力を伸ばすことができていない中で行なわれた。今週初め、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナの兵力損失を7万1000人以上と見積もった。同大統領はまた、ウクライナは、ロシアの攻撃を防御するために投入する資源が枯渇しそうになった場合にのみロシアと交渉に入る可能性がある、と示唆したが、ウクライナがそうした交渉を必要とするのは、打ちのめされた軍事力を回復するためだけだと結論付けた。

スコット・リッター:ウクライナの完全な敗北のみがロシアとの紛争での唯一可能な結末だ

<記事原文 寺島先生推薦>
Scott Ritter: A comprehensive Ukrainian defeat is the only possible outcome of its conflict with Russia
筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)
出典:RT   2023年9月3日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月13日

スコット・リッターは、元米国海兵隊情報将校であり、『ペレストロイカ時代の軍縮:軍備管理とソビエト連邦の崩壊』の著者。彼はソビエト連邦でINF条約を実施する検査官として勤務し、湾岸戦争中にシュワルツコフ将軍のスタッフで働き、1991年から1998年まで国連の武器検査官として勤務した。


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キエフで行われたウクライナ独立記念日を記念する式典におけるウクライナ大統領ウラジミール・ゼレンスキー © Handout / ウクライナ大統領広報サービス / AFP


キエフには以前から和平が提案されていたが、西側にけしかけられて戦争を選択した。そう、今となっては、その運命はもう変えられないのだ。

 9月2日は、東京湾の米軍艦ミズーリ号における第二次世界大戦降伏調印式の78周年にあたる。この瞬間、日本はアメリカとその同盟国に正式に無条件降伏し、その紛争を終結させた。日本側から見ると、この紛争は1937年7月7日の、日中戦争の発端となったマルコポーロ橋(盧溝橋)事件からずっと続いていたものだ。

 交渉は一切なく、日本政府高官(複数)が無条件で文書に署名する単純な降伏式のみがおこなわれた。

 敗北とはそんなものだ。

 歴史は、過去からの教訓を引き出し、それが現在に関連する可能性があるものとして研究されるべきだ。アメリカの哲学者ジョージ・サンタヤナは、「過去を覚えていない者は、それを繰り返す運命にある」と指摘した。キエフのウクライナ政府は、現在のロシアとの対立を考えるとき、日本の無条件降伏によってもたらされた歴史的な前例とサンタヤナの忠告の両方を熟考することが賢明だろう。

 何をおいても、ウクライナはこの紛争の原因について、そして戦闘の責任はどちらにあるのかについて誠実に思いを馳せるべきだ。ロシア政府がその公式の目標の1つとして使用している「非ナチ化」という用語がある。ウラジミール・プーチン大統領は、ナチス・ドイツの同志であったステパン・バンデラの忌まわしい遺産について何度も言及している。彼は、現代のウクライナ民族主義者によって英雄とされ、国の創始者とほぼみなされている、悪名高い大量殺人犯だ。

 今日のウクライナがバンデラのような人物をそのような地位にまで高めていることは、キエフの主張が根本で腐敗していること、そして今日のウクライナには道徳的骨格が欠けていることを十分に物語っている。現代のナチ協力者の憎悪心に満ちた国粋主義の信奉者たちが、ロシアによる軍事作戦の発端となった主要な出来事を拡散したのだ。その役割は、無視することも軽視することもできない。2014年2月にウクライナの前大統領ヴィクトル・ヤヌコビッチを職から追い出すために暴力を用いたのは、長い間CIAやモスクワに敵対的な他国の情報機関との関係を持っているバンデラ派だ。

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 この不法な政治化された暴力行為から、民族および文化的な虐殺の力が主流となり、現代のバンデラ派の形で現れ、東ウクライナでの暴力と抑圧が始まった。今度は、これが引き金となり、クリミアでのロシアの行動およびドンバスの市民の行動が引き起こされた。彼らは、バンデラと結びついたウクライナ民族主義者の暴れ回る行為に対抗するために組織化した。その後、(2つの)ミンスク協定があり、この協定が示していた平和への潜在的な道を閉ざすというキエフとその西側同盟国の裏切りが続いた。

 ウクライナは、現代のバンデラ主義者が現実を形作る過程で果たした役割から自分自身を切り離すことはできない。この点で、キエフは帝国日本の軍国主義者たちと瓜二つだ。帝国日本の軍国主義者たちは、17世紀の日本の武士にさかのぼる伝統的な「武士道」である武士道の教えに盲目的な忠誠心を示し、それが国を国際紛争に導くことになった。日本が降伏した際の義務のひとつは、社会から軍国主義者の影響を一掃し、侵略戦争とそれを戦うために必要な軍事力を憲法で非合法化することだった。

 バンデラ主義は、どんな表現形態をとるにせよ、ウクライナ社会から根絶しなければならない。これは、武士道に影響を受けた軍国主義が日本から排除されたのと同じ方法で行なわれるべきであり、新しい憲法を作成し、この一掃を法律として確立するべきだ。これをしなければ、バンデラ主義のがんが生き残ることになり、戦後ウクライナの敗北した体内で潜在的に蔓延し、将来的に再び害をもたらすための時を待つことになる。

 これは、ちょうどこの7月に行われたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、プーチンが第二次世界大戦中のバンデラ主義者たちの犯罪のビデオを公開したときに送られたメッセージと同じ内容だ。「どうしてそれと闘わないことができるのか?」とプーチンは言った。「そして、これを現在表面化している新ナチズムだと言わなければ、それは何ですか?」と彼は尋ねた。「どう考えてもウクライナの非ナチ化が、私たちが取りかかった大事な任務のひとつなのです」と、ロシアの大統領は宣言した。

 西側の主要メディアがウクライナの最終的な軍事的敗北の範囲と規模について理解し始めるにつれて(そして、それに伴ってロシアの決定的な軍事的勝利の現実を考慮に入れるにつれて)、米国や、NATO、欧州連合などの政治的監督者たちはこの戦争の終盤をどんなふうにしようか、と必死になっている。ロシアとウクライナの対立をNATOの存続そのものがかかっている戦いだとはっきり言っているので、これらの西側の政治家たちの今の仕事は、公的な認識を形成することだ。それも、欺かれた有権者の意味のある持続的な政治的反発を和らげるものでなければならない。有権者たちは騙されて、国庫から何十億ドルもの資金や、兵器庫から何十億ドルもの武器を、恥辱にまみれた失われた大義に送り込むことを許したのだ。

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 この認識操作の重要な側面は、交渉に基づく解決の考え方であり、この過程はウクライナが紛争の終結の頃合いと性質について発言権を持っていることを意味している。しかし、実際のところ、キエフは昨春、そのNATOの主導者である当時の英国首相ボリス・ジョンソンを通じて伝えられた要請にしたがい、その交渉代表団とロシアの交渉代表団との間で仲介された平和協定から離れたときに、この発言権を失なった。紛争を長引かせる決定は、キエフに何十億ドルもの軍事装備と支援を提供するという条件に基づいて行われた。当局たちは十分に大規模な動員を行い、ウクライナ軍はロシア軍を数においてはるかに圧倒した。

 新しくNATOの訓練を受け、装備を固めたキエフの部隊は、秋の攻勢中にめざましい領土拡大を達成した。これに対するロシアの反応は、前線を安定化させ、最初から割り当てられた使命である「非ナチ化と非武装化」を達成するために、予備役の一部を動員して十分な兵力を蓄積することだった。非ナチ化は政治的な問題だが、非武装化はそうではない。これをウクライナにあてはめると、それはウクライナがロシアに対抗するための武力衝突を行なう能力を実質的に破壊することを意味する。この目的は、ウクライナからすべてのNATOの軍事的インフラや、装備、資材など取り除く必要性も含んでいると思われる。

 部分動員の開始以来、ロシアはウクライナの武装部隊の非武装化を成功裏に進めている。ウクライナが西側から提供される装備も、ロシアによって持続不能な速さで破壊されている。一方、ロシアの防衛産業は全力で稼働し、十分以上の現代兵器と弾薬を供給している。

 厳しい現実は、ウクライナもその西側の同盟国も、ロシアとの紛争がもたらす兵力と装備の運用上の損失を支え切ることができないということだ。一方、ロシアは、多くの志願兵が軍に採用され、兵器生産も高い割合でおこなわれているため、損失を吸収し、時間の経過とともにその力を増強できるだけの能力を持っている。将来のあまり遠くない時点で、ロシアとウクライナの作戦場面における力の均衡が崩れ、キエフが接触線沿いの防御が十分できなくなり、新たな予備軍を活用できるロシアが触手を伸ばすことになる防衛線に隙間を作ってしまうだろう。これにより、ウクライナの部隊間の結束が崩れ、おそらくドニエプル川の西に設営されるより防御的な陣地へ背水の陣的な撤退をすることになるだろう。

 ウクライナは、2014年の作戦によってクリミアを失なった。また、2022年の選択によってドンバスやザポロージェ、ヘルソンなどを失なった。そして、キエフがこの紛争を引き延ばし、自衛が物理的に不可能になるまで持続させると、オデッサやハルキウを含むさらに多くの領土を失う危険を冒すことになる。

 ロシアはウクライナの領土を奪取する意図でこの紛争に臨んだわけではない。しかし、2022年3月、キエフは平和協定の草案(最初はあらかじめ承認していた)を拒絶した。そして、この平和を避け戦争を選ぶ決定が、ロシアがドンバスやザポロージェ、そしてヘルソンなどを吸収する結果となったのだ。

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 モスクワとの平和交渉を開始するための条件の一つとして、キエフはロシアが現在支配しているすべての以前のウクライナの領土(クリミアを含む)の返還を要求した。しかし、このような結果を実現させるためには、ウクライナはロシアを軍事的および/または政治的に打倒してしたがわせる能力を持っている必要がある。現時点では、これは不可能だ。

 ウクライナとその西側同盟国がまだ理解していないらしいことは、ロシアの指導部が単なる交渉のための交渉をするつもりはないという事実だ。プーチンは、この紛争に関してその目標と目的を列挙しており、それは①非ナチ化、②非武装化、および③ウクライナのNATO加盟禁止だ。

 これが今の現実だ。ロシアは言明した目標と目的を達成するために動いている。現時点では、ウクライナやその仲間である米国や、NATO、そしてEUなど(いわゆる「西側集団」)がこれらの目標の達成を妨げるためにできることはほとんどない。今後の予定はカレンダーにそったものではなく、むしろ結果によって決まる。キエフとその西側の友好国がこの紛争を引き延ばすほど、ウクライナに生じる被害はますます大きくなるだろう。

 ウクライナとその西側友好国は、もう平和と復興への道に進むべきだ。しかし、これはウクライナが降伏し、現実を受け入れるときにのみ実現できる。

ウクライナ軍とロシア軍の戦力は? 秋の戦いが近づく

<記事原文 寺島先生推薦>
Assessment of the Ukraine and Russian Armies as Fall Battles Approach
筆者:ヴラディスラヴ・ウゴルニイ (Vladislav Ugolny)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年9月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月11日


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 過去3ヶ月にわたり、世界中のメディアは、鳴り物入りのウクライナ反転攻勢を注視してきた。しかし、特筆すべき出来事は何も起こらなかった。キエフの武装部隊は、ロシアの防衛線に到達すると、甚大な死傷者と西側から供与された装備を破壊されることを代償に、戦略的にまったく価値のないいくつかの村を占拠できた。ロシアと言えば、この期間、防御戦術を優先した。しかし、ある方面では積極的攻撃もおこなっていた。

 この夏、前線で何が起こったのか、そしてどちらの側も大きな成功を収めることができなかったのはなぜか? また、秋の作戦が近づくにつれ、両軍はどのような状況にあるのか?

反転攻勢戦術の方向転換

 ウクライナのザポロージャ州とドネツク人民共和国(DPR)での反転攻勢は、現在2か月半以上続いている。この期間に、キエフの軍隊は、現在の戦闘が焦点としているラボティーノ村の東側にある狭い地域で、ロシアの3つの防衛線の最初の防衛線に到達することができた。ウクライナはこの前進を達成するためにほぼすべての作戦的および戦略的な予備力動員を余儀なくされた。

 6月に数々の損失を被った後、ウクライナ指導部は大規模な機械化部隊を前進させる戦術を放棄することを決定した。代わりに、歩兵の突撃作戦を展開し、装甲車両と砲兵がそれを支援した。これはアルテモフスク(バフムート)でロシア軍が使った戦略に似ている。

 このウクライナの決定は、反撃のペースを大幅に遅らせ、アゾフ海に到達するという戦略的目標を葬り去ることになった。しかし、この戦略により、徐々に南方および南東方向に前進し続けることが可能になった。

 その結果、8月中旬までに、ウクライナ軍はラボティ―ノに進入(市街戦となった)し、ヴレメフスキ台地にある2つの村、スタロマイオルスコエとウロジャイノエを占拠した。ラボティーノの東においても、ウクライナ軍はロシアの最初の防衛線に到達することができた。

専門家の議論

 この進攻の遅さに西側とウクライナの専門家たちは失望した。そして勝利で終わるはずだった反転攻勢の失敗の責任を追及し始めた。支配的な意見は、ロシア軍が昨秋の逆境から回復し、地雷原や、頑強な歩兵、砲兵、航空、ヘリコプターなどを備えた効果的な防衛線を構築しており、それが過小評価されていたというものだ。
しかし、ウクライナの失敗に関しては、箸にも棒にも掛からないような理由もいくつか取り沙汰された。たとえば、イギリスの情報機関は、ウクライナ軍の不運を低木と雑草のせいにしたり、ウクライナの国防次官アンナ・マリャールは、82旅団の損失について書いたジャーナリストたちを攻撃したりした。

 さらに、双方の非難合戦もあった。西側の専門家たちは、ウクライナ軍の部隊の効果的な運用統制ができていないと非難した。ウクライナ側は、提供された支援が不十分で遅すぎると指摘した。あるとき、軍の最高司令官であるヴァレリー・ザルージニーは、アメリカ人は①現在の戦争の本質を理解していない、②自分たちの経験を現在の戦争にあてはめようとしている、ということすら口にした。ザルージニー自身は、今回の作戦は1943年のクルスク戦の方が似ていると主張した

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ロボティーノを目指す戦い

 時間の経過とともに、ウクライナ陸軍はラボティーノでの戦闘にますます多くの新部隊をつぎ込んでいった。最初は46空挺旅団と47機械化旅団が反撃を行なっていたが、最終的にウクライナは116、117、118機械化旅団、国家警備隊の部隊、71イエーガー旅団、1戦車旅団を動員し、マリン特殊作戦センターの特殊部隊を含む多くの分遣隊も投入せざるを得なくなった。最後に、8月中旬にウクライナは、切り札として、アメリカ製のストライカー装甲戦闘車、ドイツ製のマルダー歩兵戦闘車、イギリス製のチャレンジャー戦車を装備した82空挺旅団を導入した。

 当初、ウクライナがロシアの第一防衛線を突破した後、さらなる成果を挙げるために82空挺旅団が戦闘に参加する予定だった。しかし、キエフの失敗により、この旅団は当初の計画より早く投入され、最初の損失を被ることになった。それにもかかわらず、ウクライナ陸軍はラボティーノに到達し、ロシア軍を村の南の郊外に押しやり、またラボティーノの南東に進攻し、ロシアの側面に脅威をもたらした。

 ウクライナの独立記念日である8月24日までに、ウクライナのジャーナリストや軍事ブロガーは、その村がウクライナ陸軍の完全な支配下にあると宣言したが、公式の発表はない。2023年8月26日現在、戦闘は継続しており、両側が損失を被り、追加の部隊を動員している。

ヴァシレフカ戦線

 6月に、ウクライナ軍はロシアが支配するヴァシレフカ方向に進軍しようとした。ヴァシレフカは、カホフカ貯水池近くに位置している。ウクライナ軍は第128山岳突撃旅団と第65機械化旅団を動員し、ロシア軍をロブコヴォエとピャーチカトキという村から追い出した。しかし、相当な損失を被った後、ウクライナは積極的な突撃作戦を行なわず、示威的攻撃にとどまった。

 この(ウクライナ側の)成功があったのでかえって、ロシア軍はこの方向に配置されている一部の部隊を動員して、ラボティーノ地域の防衛を強化することができた。

ヴレメフスキ台地

 ウクライナ軍は、その海兵隊を完全にこの方向に集中させた。砲兵を強化した4つの旅団が含まれており、その中には第23および第31機械化旅団、第1および第4戦車旅団の部隊、そして地域防衛部隊と航空部隊も含まれている。


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ロシア軍によって破壊されたウクライナのレオパルド2戦車とブラッドレー戦闘車両© Telegram / ロシア国防省

 レヴァドノエ-ラヴノポル-マカロフカをつなぐ線を占拠した後、ウクライナ軍は1か月半にわたり、スタロマヨルスキーとウロジャイノエの側面に沿って野原を前進した。最終的に、この前進によりキエフはロシア軍をその地域から撃退し、スタロムリノフカに脅威をもたらした。

 ウクライナのメディアは、この村の戦略的重要性を誇張し、それをこの地域におけるロシアの防衛の主要拠点と呼んでいる。しかし、ロシア軍の第一防衛線がスタロムリノフカのかなり南にある「運用深度」に位置しているという事実を無視している。この村は確かにいくつかの重要な通路の交差点に位置しているが、ロシア軍はこの地域にいくつかの補給路を持っている。

ウクライナ反転攻勢の結果

 OSINT*のLostarmourによれば、ウクライナ軍は夏の反転攻勢の過程で、約46両のマクスプロ装甲戦闘車両や37両のブラドレー戦車、8両のレオパルド戦車、および3両のストライカー工兵型装甲車などを失なったとされている。これらは西側の装甲車両の視覚的に確認されたものだけに過ぎない。ラボティーノ地区にはいくつかの戦車の墓地があり、その数は増え続けている。スタロマヨルスキーでは、31両のウクライナの装甲車両が燃え上がり破壊されたと報告されている。これには近隣の戦闘の過程での損失には含まれていない。
*Open Source Intelligence。合法的に入手できる資料を調べて突き合わせる手法である。オープン・ソース・インベスティゲーションと呼ばれる事もある。 1980年代から諜報・諜報活動で用いられるようになってきた。 (ウィキペディア)

 ウクライナ軍における武器の統一不足とそれにともなう供給、保守、損傷した装備の修復に関連する問題があるので、機甲部隊の数は減少している。(ウクライナ)軍は現在、西側の同盟国からの装甲車両や装備の供給に完全に依存している。唯一の代替手段は、民間車両を軍事化することだ。

 ウクライナ軍ですら、自分たちの「反転攻勢守備隊」が経験する装甲車両の不足を口にしている「スティール・コードン旅団・・・2番目の事例として、この旅団は7キロ歩いて突撃作戦を実行する。それは歩いて7キロだ。そして、完全に疲れ果ててほぼ目的地に到着すると、彼らは全力で戦えと言い始めるのだ」。

 さらに、夏の戦闘の過程で、ウクライナ軍は戦術的および作戦的な段階で部隊を効果的に管理できていない。ウクライナ軍内で最大の部隊はまだ旅団(2,000〜4,000人)であり、一方、ロシアは師団(4,000〜20,000人)と合同兵力(40,000人以上)を持っており、ウクライナは異なる戦闘能力を持つ別々の旅団を統合することでのみ対抗できる状況だ。

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ロシアの戦略計画

 クリミアへの陸路の防衛の準備として、ロシアの指導部は将来の戦闘地域を防衛線で強化し、またクピャンスクとクラスヌイ・リマン方向に大規模な軍隊を引き寄せた。

 オスコル川方向へロシアが攻勢をかけるかもしれないということは、ウクライナにとって脅威だった。2022年10月にキエフが制圧した重要な拠点を喪失するかもしれないからだ。これにより、ウクライナ軍は新たに編成された旅団をその地域に転送せざるを得なくなった。このようにして、88旅団や41旅団、32旅団、43旅団、44旅団、42旅団、および21旅団などの機械化旅団が南からここに引き寄せられた。また、8旅団と13イエーガー旅団がクピャンスク方向に向かっている可能性もある。

 今年の7月から8月にかけて、ロシア軍はボロヴァヤとクピャンスクの方向にいくつかの示威攻撃を仕掛けた。数十平方キロメートルを占拠し、ウクライナにこの方向に予備軍を転送させ、アレクサンダー・シルスキー将軍の注意をアルテモフスク近くの戦闘から逸らせた。

将来の見通し

 ウクライナ第46旅団の戦闘員がメリトポリ方面をどのように評価しているかは次のとおり:「次はノヴォプロコポフカで、それがおそらく最後になるだろう。その先はロシア軍の主要な防衛線だ。さらに、ラボティーノ地域での深いくさびは、コパンとノヴォフェドロフカの地域から私たちを側面から攻撃する侵略者の機会となるだろう。その場合、ネステリャンカ-コパンとベロゴリエ方面に前線を拡大しなければならないか、あるいは私たちはバフムートで経験したことと類似した状況になるだろう — 側面包囲に巻き込まれることを意味する」。 これは、ウクライナがこの地域でロシアの段階的な防衛線を突破することは考えていないことを意味する。

 夏の作戦は終わりに近づいている。おそらく、9月は温かく乾燥していたので、流血事態はやや延びるだろうが、10月には雨がステップ地帯を巨大な泥の池に変えるだろう。これは特にNATOの重装甲車両にとって危険なことになる。
両軍は夏の戦闘で疲弊しており、天候が悪化すると傷の手当てを始め、将来の戦闘の準備をする可能性がもっとも高い。この時期、ウクライナは第二次反転攻勢のために航空機を入手しようとするだろうが、まずは機械化旅団を補充したほうがいい。

 ロシア軍に関しては、防御を固め続け、戦術的な位置を向上させるために一連の反撃を行なうか、あるいはそうしないで、アルテモフスクやクピャンスク方面に焦点を移すかもしれない。また、秋から冬にかけて、ロシアの軍事産業は砲弾や装甲車両、対砲撃戦用のより長射程の弾薬などを軍に供給する問題に今後も取り組み続けることになるだろう。

ロシア、ドンバス、そしてウクライナでの戦争の真実

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia, Donbass and the Reality of Conflict in Ukraine
筆者:ダニエル・コバリク(Daniel Kovalik )
出典:グローバル・リサーチ(Global Research)2023年8月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月6日





 ロシアへの3度目の旅、それとドンバス(今はドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国、両共和国を合わせた地域になったが)への2度目の旅から帰国したばかりだ。なおこの旅は約8ヶ月かかった。今回、私は飛行機でエストニアの愛すべき都市タリンに入り、そこからバスでサンクトペテルブルクに約6時間で着くはずだった。しかし最終的に、12時間の旅程となったのは、ロシア国境の税関で長時間待たされたからだった。

 戦時中に米国のパスポートを持って敵国であるNATO加盟国の国境からロシア入りしようとした私は、即座に尋問を受ける対象となった。 その後、ロシア外務省から記者として認められる資格を手にしていなかったため、私が所持しておくべき書類をすべて持っていないことが判明し、私は国境警備隊員に報道の仕事のための渡航であることを説明しなければならなくなった。私への扱いはとても丁寧だったが、長時間待たされたせいで、そこまで乗ってきたバスが私を残して先に出発してしまう羽目になったのは仕方がなかった。

 しかし一見不便な遠回りをさせられたと思ったときに好機が訪れることもたまにあり、今回もそれにあたった。この遠回りのおかげで、多くのウクライナ国民を目にすることができた。そのウクライナ国民の中には、家族総出の人々もいたが、国境を越え、ロシアへ入国しようとしている人々もいた。これは本当の話だが、尋問や申請手続きで入国待ちをしていた人々のパスポートは、(私の米国のものを除けば )たった一種類、ウクライナの青のパスポートだった。これはロシアがウクライナの侵略者であると描きたがっている西側の言説にとって不都合な真実の証だ。実際、多くのウクライナ国民はロシアに対する親近感を持っていて、自発的に今後ロシアで長期間住むという道を選んでいる。

 2014年—ウクライナ政府がドンバスの自国民に対して砲撃を始めた、今回の戦争が真に始まった年—からロシアによる軍事干渉が始まった2022年2月のあいだに、既に約100万人のウクライナ国民がロシアに移住していた。ウクライナ国民がロシアに移住しようとしていた事実については、当時大手報道機関が報じており、BBCは2014年9月、何名かの難民についての記事を出しており、「東部ドネツク州とルガンスク州分離主義者らが、ロシアがウクライナからクリミアを併合した後に、独立を宣言した」と報じた。


ドネツクの旗を掲げる支持者ら [画像元: envoicesevas.ru]

 「暴力行為が開始されてから、亡くなった人は2600人ほど、けが人は数千人以上にのぼった。ルガンスク市はこの数ヶ月間、ウクライナ政府軍に包囲され、食料や水の適切な供給が途絶えている」と同記事にはあった。 そしてこの戦争による死者は、その後2022年2月、つまりロシアによる特別軍事作戦(SMO)が開始される前までに、1万4000人に達することになった。

 さらに130万人のウクライナ国民が、SMO開始後の2022年2月以来ロシアに移住している。私が自分の席に着いていたロシアの国境警備係の一人(キリルという名前の人だった)に、積み重ねられたウクライナのパスポートのことで話しかけたところ、キリルが私に語ってくれた内容は、入国してくるウクライナ国民らを、ロシア側は「人間として」扱っている、ということだった。サンクトペテルブルクの私の知人であるボリスが、新しく入手した私の記者としての資格証明書の画像を送ってくれて、それをキリルにわたすと、握手をして送り出してくれ、次のサンクトペテルブルク行きのバスに、ほぼ即座に乗り込むことができた。

 サンクトペテルブルクに入るや、私はボリスの家で短い休憩をとったのち、車でロストフ・ナ・ドヌに向かった。この都市は、ドネツクに入るまでの最後のロシア領内の都市である。私は親切なロシアの起業家であるウラジーミルという人に、黒のレクサスに乗せてもらったが、一人のドイツ人も同乗していた。この人は「レニングラード・ボランティア」という名で知られている人道支援団体の創設者だった。この車には、ドンバスに向かう人道支援の人々が乗り込んでいた。短い自己紹介と、私の「テキサスから来たレクサスです」という親父ギャグののち、時速約110キロという素早い速度での20時間の旅行が幕を開けた。

 私たちは夕方にロストフに着き、ショーロホフ・ロフト・ホテルにチェックインした。このホテルの名称は、「静かなドン」という大作を書いたロストフ市の自慢の息子たるミハイル・ショーロフから取られたものだ。聞かされた話によると、つい最近までワグナー軍団の代表をつとめていたエフゲニー・プリゴジンの写真が、ホテルのロビーの壁に飾られていた、という。ワグナー軍団の構成員らがロストフに進撃し、多くの住民を恐怖に陥れる事件があったのち、プリゴジンの写真は外されたそうだ。現在このホテルの壁には、ハリウッドの映画スターの写真のみ、飾られている。

 次の日の昼下がり、ロシアのクラスノダール出身である私の通訳のサーシャが到着した。クラスノダールはロストフから電車で7時間のところにある。22歳のサーシャは、髪の毛の赤い小柄な女性であったが、すぐに今回の旅行中でもっとも興味が引かれる人物の一人だとわかった。

 サーシャが私に説明してくれたのは、サーシャは12歳のときからドンバスで人道支援の活動をしてきた、ということだった。サーシャの話では、この仕事に興味をもつようになったのは、サーシャを育ててくれた祖母が、ソビエト社会主義連邦共和国に対する「深い愛国心」をもっていたことからだそうだ。サーシャの説明によると、両親は仕事が忙しく、サーシャの面倒を見ることが全くできなかったという。ロシア本土出身のサーシャは、ドネツク大学に籍をおき、2014年以来砲撃を受けてきた人々との連帯の中で生活している。

 22歳にして、前線を旅行しているときでさえ、足の見えるサンダルを履くようなサーシャは、私がこれまで会った人の中で最も勇敢な人物のひとりであり、私がドンバスに足を踏み入れるという勇気のいる行動をとれたのは、たしかに彼女のおかげだった。しかし言うまでもないことだが、グレアム・グリーン(英国の作家)が書いたように、「帰りの切符を手にした勇気など、知的訓練に過ぎない」のだ。

 私たちはすぐにドネツク市に向かう約3~4時間の行程に出発したが、途中、現在ロシア連邦当局が運営しているパスポート管理所に立ち寄った。ロシア当局の運営となったのは、2022年9月の住民投票で、ドネツクとそれ以外の3地域の人々がロシア編入を決めたことを受けてのことだった。

 私は再度この管理所の係員らから尋問を受けたが、15分くらいのものだった。戦時中に米国民である自分がロシア領内を移動する困難は受け止めるしかなかったので、何らかの尋問を受けることなく国境を越えることなどできないことはわかっていた。しかし、尋問の声の調子は常に友好的だった。

 私たちは、カルミウス川沿いにある、小さいが愛すべき都市、ドネツク市に、無事到着した。最初に立ち寄ったのは、レニングラード・ボランティアの倉庫であったが、そこで私たちが運んできた支援物資を下ろし、地元のボランティアの人たちと面会した。これらのボランティアの人々のほとんど全ては、生まれてからずっとドネツクに住んでいる人々であり、ほとんど全ての人々は軍服を着て、何年もの間、ドネツク民兵隊の一員としてウクライナ軍と戦ってきた人々であり、その多くは2014年の戦争開始からずっとそうしてきた。


ドンバスでの戦闘におけるウクライナ側の捕虜を連行しているドネツク民兵の兵たち。この民兵隊は、2014年に戦争が始まって以来、米国が支援するウクライナ軍と戦ってきた。[画像元はmedium.com]

 この辺の事情を私は読者の方々に十分お伝えすることができない。私たちが何度も聞かされてきた話は、ドンバスのこれらの兵たちはロシア人か「ロシアの代理勢力」である、というものだったが、それはあきらかに真実ではない。戦士たちの圧倒的多数は、様々な年代層に属する地元の人たちであり、かなり高齢の方々もいるし、2014年から自分たちの家と家族と生存を守るために戦ってきた人たちである。

 これらの兵たちを支援してきたロシアや世界各国からのボランティアの人々—1930年代のスペインの共和主義者らの支援のために世界各国からボランティアが集まってきた際と全く同じだ―がいる一方、ここでのボランティアのほとんどは地元の人たちだ。

 もちろん、ロシアが特別軍事作戦SMOを始めた2022年2月以降このような状況は変わっている。ただし、ドネツクの地元の人たちが戦い続けるいっぽうで、今はロシア軍も支援に入っている。

 「ロシアの代理勢力」が2014年以降ドンバスで戦っているという嘘は、西側報道機関が垂れ流している小さな嘘の一つだといえる。というのも、この主張によれば、少なくとも、そのような戦争が存在してきたことを承認することになるからだ。もちろん、大手報道機関は、そのような戦争は全く存在せず、2022年2月に開始されたロシアによるSMOは、完全なる「いわれなき戦争」だということを我々に納得させようとしてきたのだ。こちらのほうは大嘘で、西側の人々がウクライナへ軍事支援を与えることを西側の人々に同意させるためのものだ。

 さらに無視されている事実は、この戦争がSMO開始以前から大規模に激化しており、この戦況の激化により、SMOが引き起こされた、という事実だ。米国をはじめ多くの西側諸国からなる57カ国で構成されている 欧州安全保障協力機構(OSCE) によると、SMOが始まった2022年2月24日の直前の週末に、ドンバスでは約2000件の休戦協定違反行為があった、という。

 報道機関に真摯な態度が見られた希有な事例をあげると、ロイター通信は2022年2月19日に以下のように報じた。

(以下は記事からの引用)

 OSCEの監視により、土曜日(2月12日)、東ウクライナにおいて、ほぼ2000件にのぼる休戦協定違反行為が確認された、と日曜日(2月20日)に外交筋がロイター通信に語った。ウクライナ政府と分離主義者の軍は、2014年以来、東ウクライナで戦闘を続けている。

 スイスの諜報および安全保障の専門家であり、元NATO軍事分析家であるジャック・ボーは、さらに詳しくSMOの原因となった諸事象について以下のように説明している:「早くも2月16日の時点で、ジョー・バイデンはウクライナ側がドンバスの一般市民に対して砲撃を既に開始していたことを把握しており、ウラジミール・プーチンに意図的に難しい選択を迫ったのだ:つまり、ドンバスを軍事支援することにより国際問題を引き起こさせるか、ドンバスのロシア語話者の人々が砲撃されるのを座して待つかの選択だ…そのことをプーチンは、2月21日に行った演説でも述べていた。

 その日、プーチンは議会からの要請に応じ、ドンバスの2共和国の独立を承認し、同時に、その両国との友好・支援同盟を結ぶことに署名した。

 ウクライナによるドンバス市民に対する爆撃は続き、2月23日に、この2共和国はロシアからの軍事支援を求めた。2月24日、ウラジミール・プーチンは、国連憲章第51条を発動した。この条文では、防衛同盟の枠組みの中での相互軍事援助を規定したものだ。

 人々の目からは、ロシアによる軍事干渉を完全に不当なものに映るよう、私たちはこの戦争は2月16日に開始されたものだという事実を意図的に隠した。ウクライナ軍は、早くも2021年からドンバスへの攻撃の準備をしていたことは、ロシア側の諜報機関も欧州側の諜報機関も気づいていた。そのことについては法が裁きを出すだろう」
(記事からの引用はここまで)

 もちろん、これらのどの事象も、私がドネツクで会った人々にとってはニュースでもなんでもなかった。というのもドネツクの人々はもう何年もそのような現実の中で生活してきたからだ。例えば、ドネツクの若い住民であるディミトリは2014年から両親とともに参戦してきたのだが、このディミトリが私に熱く語ってくれたのは、自分の背中に背負っている武器と弾薬を指さしながら、「なんのためにこんなものを背負っているというんだ。2014年からずっと持ち歩いているんだ。それはこの戦争がそのときから始まっていたっていう証拠だろ」というものだった。

 戦争が始まったとき大学で学んでいたディミトリはもはや戦うことはできない。戦争中に怪我をしてしまったからだ。耳もやられていることは、補聴器を付けていることからわかる。ディミトリは大学に戻れることを望んでいる。

 私がドネツクに着いたほんの2~3日前、ディミトリのアパートがある建物がウクライナ軍により砲撃されたが、2016年にも同じようなことが起こっていた。ドネツク在住の多くの人々と同様に、ディミトリは建物の損傷をすぐに修理し、生活を続けることには慣れっこだ。

 ディミトリは私をドネツク空港やロシア正教の教会近くや修道院に案内してくれた。これらの建物は、遡ること2014年から2015年のあいだに、ウクライナ軍とドネツク民兵隊との間の戦争により破壊されたものだった。ディミトリは当時、この地域での戦争に従軍していたが、彼の説明によると、当時、この地域は世界で最も激しい戦闘が戦われていた地域だった、という。しかし、大手報道機関からこのニュースを聞くことはなかった。2022年2月以前の戦争のことは、おおいに無視されてきたからだ。


2015年にドネツク民兵隊がウクライナ軍や戦車の通過を防ぐために破壊した、ドネツク空港近くの橋 [画像元: Photo courtesy of Dan Kovalik]

 私がドネツクで最初に話を聞いた人のうちの一人は、丸顔で童顔の36歳のビタリーだった。野球帽をかぶり、鎌と槌のついた赤いソ連の旗を手にしていた。三人の子どもの父親であるビタリーは、ドネツク出身で、この地でもう4年間戦ってきたが、その中には、2022年夏のマリウポリ製鉄所内での本当に激しい戦闘にも加わっていた。ビタリーが武器を取ることを決心したのは、自分の友人たちがウクライナ軍に殺害されたからだった。その中には、ファシスト勢力から生きたまま焼かれて殺された友人たちもいた―それはまさに、私たちは存在しないと聞かされてきた軍に、だ。西側の大手報道機関のことについて語ったビタリーは、笑いながらこういった。「連中の言い分は、まるで俺たちが9年間自分たちを自爆してきたみたいに聞こえるぜ」と。

 ビタリーは個人的にナチの紋章をつけた兵たちと戦ってきたし、ビタリー自身はっきりとわかっていることは、自分がファシズムと戦っているということだ。実際私が、帽子に付けたソ連の旗のことについて聞いたとき、ビタリーはソ連がナチズムを敗北させたからだとし、彼の望みは再び同じことが起こることだ、と語った。

 ビタリーにロシアは2022年2月よりも前から兵士を送って戦争に介入してきたと主張している人々がいることを伝えると、彼は断固としてこの主張を否定したが、それは私がドネツクで話を聞いた人すべてがそうだった。しかし、ビタリーが目撃したのは、戦争開始以来、ポーランドと英国の兵士がウクライナ軍とともに戦っている姿だった。ビタリーの考えでは、この9年間に起こったことから考えれば、ドンバスがウクライナに戻ることはないと考えているし、そうなることも全く望んでいない、とのことだった。ビタリーが私に断固として伝えたのは、自分が生きている間に平和が実現することを目にすることはないと考えている、ということだった。

 ドネツク滞在中、私が11月に初めてドンバスを訪問した際に通訳をしてくれたアナスタシアと二度夕食をともにした。アナスタシアはドネツク大学の教員だ。アナスタシアは、極東を含むロシアをあちこち回っていて、2014年以来ドンバスで起こったことを伝えている。というのも、ロシア在住の多くの人々が、何が起こっているかを完全には理解できていないからだ。彼女が私に言ったのは、自分が何かを話すとき、9年間の戦争からくる自分の中のトラウマが頭を持ち上げ、圧倒される気分になることだ。

 アナスタシアの両親と13歳の弟はドネツク人民共和国内の前線の近くに住んでいて、アナスタシアは家族のことをとても心配している。アナスタシアはロシアが戦争に介入したことを喜んでいて、私がロシアのSMOを「侵略」と言ってしまった際は、私に訂正をもとめ、私にロシアは侵略していない、と語った。 むしろロシア軍は、招かれて、歓迎されているとのことだった。私が言える範囲では、この見方がドネツクで一般的に普及している見方のようだ。

 私の5日間のドネツク滞在中、紛争地域内にある2つの都市に連れて行ってもらった。ヤシノバタヤとゴルロフカだ。この旅行中、私は防弾服とヘルメットを身につけるよう求められたが、シートベルト着用は顰蹙を買わないのであれば、義務ではなかった。

 これまで確かに砲撃を受けてきたドネツク市内は、おおよそ被害は見えなく、交通量も多く、レストランやカフェは活発に営業されている様子が見えたが、街を出るとすぐに様子は激変した。

 ヤシノバタヤは激しく破壊されたあとが見え、聞いた話では、このような状況は遡ること2014年からのことだ、という。そんなにも前から始まっていた破壊の対象となったものには、機械工場も含まれており、そこは現在、ドネツク軍の作戦基地として利用されており、隣接する管理棟は見たところ、砲撃される前はオペラハウスだったようだ。

 ゴルロフカの中心地は路上生活が送られていた様子はほとんど伺えず、ソ連時代の遺産であるにちがいない古い路面電車が街の中心部を走っていた。しかしゴルロフカの郊外には明らかに戦争中である様子が見えた。両市においては、遠くから砲撃の音がしばしば聞こえた。

 ゴルロフカで、私たちはニコリと出会った。あだ名は「ヘビー」。ニコリはギリシャの神のような風貌をしていて、身長はおそらく195センチほどで筋肉隆々だ。彼の横に立ったとき、こんな冗談を言った。「ロッキー4のイワン・ドラゴの横にいるみたい」と。ニコリはその冗談にウケて、笑った。体格は大きいが、とてもいい人で、道徳心もしっかりと持った人物のようだった。

 ニコリは私たちを、前は学校だったが今はドネツク民兵隊の基地になっているところの食堂内にあるロシア正教の仮拵えの礼拝所に案内してくれた。ニコリの話によると、SMOか始まったあとである現在でも、ゴルロフカの軍の約9割は地元ドネツクの兵たちであり、残りの1割ほどがロシア兵だという。繰り返しになるが、このような状況については、大手報道機関からはほとんど聞こえてこない。

 ニコリは仮拵えの礼拝所の前に腰を下ろし、こう語った。「自分はウクライナ人だと思っている(だってウクライナで生まれたのだから)が、ドネツクは二度とウクライナに戻ることはないだろう、というのもウクライナは、ドンバスの自国民を砲撃し始めるという『神に逆らう』行為をしてしまったのだから」と。 ニコリは、最後まで戦い抜き、ドネツクの人々が必ず生き残ることができるようにしたい、とはっきりと述べたが、私にはニコリのことばに嘘偽りがないことに疑念をもたなかった。

 私の要望に応じて、ロシア連邦共産党(CPRF)ドネツク支部第一書記であるボリス・リトビィノフに会うことができた。ドネツク議会の議員もつとめているボリスの話では、彼が率いる共産党は、2014年の住民投票の際は指導者及び先導的立場をとっていた勢力の一つだった、という。この住民投票においては、ドネツクが自治共和国となりウクライナから離脱することが決められた。

 ボリスによると、CPRFドネツク支部の100人以上の党員が今回の戦争の前線で従軍している、という。ボリスが言うとおり、CPRFはロシアのSMOを支持しており、SMOは2014年から始められるべきだった、とさえ捉えている。ボリスは、ウクライナでの戦争はまさにロシアの存亡に関わる問題(資本主義者であるか社会主義者であるかに関係なく)であり、ロシアはロシアを破壊しようとしている西側連合と戦っている、ということをはっきりと認識している。

 ボリスはドンバスの戦いと、1930年代のスペインでのファシストと戦っていた共和派による戦いを比較した。今ドンバスには世界中(例えば米国、イスラエル、スペイン、コロンビア)から人々が集まり、ドンバスの人々とともにファシストとの戦争を戦ってくれていることにふれ、それは当時スペインを支援した世界中の戦士たちと同じだ、と述べた。

 私が話を聞いた最後の人物も、私が話をしたいという要望を出して実現したのだが、オルガ・テセルスカヤだ。この女性は、ドネツク人民共和国女性連盟の代表補佐であり母親連合組織の第一書記だ。この母親連合にはドネツク共和国内に6千人ほどの組合員がおり2014年以来の戦争で子どもたちを亡くした母親に対する社会福祉を提言し、社会福祉の提供も行なっている。

 私がわくわくしたのは、オルガが、ピッツバーグ出身の人と話ができてうれしい、という話で対話を始めてくれたことだ。というのも、ピッツバーグとドネツク市はかつて姉妹都市だったからだ。

 私はオルガに、ロシア軍がドネツクに駐留していることについてどう思うかを聞くと、オルガは、ロシア軍がドネツクに駐留することを支持しており、ロシア軍は市民たちによくしてくれていると思っている、と明言した。そして、この戦争の初期に、ロシア人が大量の強姦事件を起こしたという主張に対しては断固否定した。

 言うまでもないが、注意すべきことは、ウクライナ国会の人権対策委員長であるリュドミラ・デニソワが、この強姦事件について主張を始めた人物だが、最終的には職を解かれた、という事実だ。その理由は、彼女の主張は、未検証で、裏付けもとれていなかったからだった。しかし西側報道機関は再び、この事実についてはほとんど報じていない。

 オルガに、ロシアはドンバスから軍を引くべきだと主張する、英国の「戦争中止同盟」などの西側の平和団体に同意するか尋ねたところ、「同意しない」と答え、もしロシア軍が撤退すれば、ドンバスの人々がどんな目に遭うかを考えるだけでもつらくなる、と語った。

 私は、以下の事実こそ、西側の人々がしっかりと把握すべきことだと思う;つまりウクライナ政府はドンバスの自国民たちに激しい暴力を加えてきたのだから、ドンバスの人々にはウクライナから離脱し、ロシアに編入する権利は十二分にあった、という事実だ。西側の人々がこの現実を理解するのであれば、ウクライナと「共に立ち」、ウクライナに武器を供給し続けることを考え直すことになるだろう。

ウクライナのマイダン虐殺: 裁判と捜査から暴露されたこと

<記事原文 寺島先生推薦>
The Maidan Massacre in Ukraine: Revelations from Trials and Investigations - NYU Jordan Center (jordanrussiacenter.org)
筆者:イヴァン・カチャノフスキー(Ivan Katchanovski) 
オタワ大学政治学部で教鞭をとる。
出典:NYU Jordan Center  2021年12月8日
<記事翻訳:寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月5日


 先日モントリオールで開催された国際中東欧研究評議会第10回世界会議で発表した私の論文と数本のビデオは、ウクライナのマイダン大虐殺に関する現在進行中の裁判と政府の調査によって明らかになった証拠について考察したものである。2014年2月20日に行われたユーロマイダン大規模抗議行動におけるデモ隊と警官隊の虐殺は、重大な犯罪と人権侵害を構成するだけでなく、一連の出来事を連鎖させる一因ともなった。これらには、ウクライナ政府の転覆、ドンバスでの内戦の開始、クリミアとドンバスへのロシアの軍事介入、クリミアのロシアによる併合、そして最終的には、ウクライナとロシア、ロシアと西側諸国との間の大規模かつ長期的な紛争が含まれる。マイダンの虐殺の裁判と捜査は、マイダン派のデモ参加者が、当時の政府の狙撃兵やベルクート警官ではなく、マイダン派が支配する建物にいた狙撃兵によって虐殺されたという圧倒的な証拠を提示した。にもかかわらず、当時の政府の狙撃兵やベルクート警官はその殺人の罪で起訴された。

 その証拠に含まれているものは、ビデオ、負傷した100人以上のデモ参加者の証言、数十人の検察側証人、政府の専門家による弾道検査や医学的検査などである。一部の例外を除き、これらの暴露はウクライナや西側のメディアでは報道されなかった。メディアは当初から、当時のヤヌコビッチ大統領の命令でマイダンのデモ参加者を殺害したとして、当時の政府の狙撃手やベルク-ト警察を非難していた。私の研究では、YouTubeで配信されている数百時間のマイダン虐殺裁判のビデオ録画を分析した。

 その結果、裁判で公開されたビデオは、抗議者の絶対多数の特定の発砲時間が、ベルクートによる発砲時間や発砲の方向と一致していないという、私の以前の研究結果が確認された。この視覚的証拠だけでも、ベルクート警察が少なくとも死傷したマイダン抗議者の絶対多数を虐殺したわけではないことがわかる。同期化され、時刻表示されたビデオで確認できたことは、少なくとも3人の抗議者が、虐殺で起訴されているベルクート警察の特別部隊がマイダンに配備される前に殺されていたことだ。

 マイダンの虐殺に関する最も有名なビデオの未公開部分には、銃撃が始まる少し前に、マイダンの2人の抗議者が他の抗議者のグループを虐殺エリアに誘い込む様子が映っていた。一人のデモ参加者は、当時マイダン派が支配していたホテル・ウクライナから狙撃手がデモ隊を撃っていたため、他の者たちにその二人について行くなと叫んでおり、そのホテルからの銃撃の閃光を見たと付け加えた。このベルギーのVRTテレビのビデオは、公判で明らかにされ、VRTから筆者に提供されたものだ。このビデオが示していたのは、この抗議者グループの背後の木に銃弾が命中し、その後、彼らはホテル・ウクライナの方を指差し、狙撃兵に自分たちを撃たないよう懇願していたことだ。

マイダン 1
マイダン派支配のホテル・ウクライナの方向から銃撃を受けた後、デモ参加者たちがウクライナ・ホテルにいる狙撃手に(撃たないように懇願して)叫んでいるところ。
出典:付属ビデオC

 ベルクート警察官が殺人未遂で起訴されているにもかかわらず、負傷したデモ参加者の絶対多数(72人中47人)は、マイダン派支配下の建物から狙撃兵に撃たれた、あるいはそのような狙撃兵を目撃したと証言している。少なくとも28人の負傷したデモ参加者は、ホテル・ウクライナや他のマイダン派支配下の建物や地域の方向から狙撃されたと証言している。少なくとも30人の負傷した抗議者たちは、そこで狙撃兵を目撃した、および/または、虐殺の最中に、他の抗議者たちから、これらのマイダン派支配地域の狙撃兵について聞かされたと証言した。

出典:付属ビデオD

負傷したマイダン派デモ参加者が、マイダン派が支配していたウクライナ・ホテルにいた狙撃手について証言をしている。

 政府の調査でさえ、彼らの証言と調査実験に基づき、157人のデモ参加者のうちほぼ半数の77人はベルクート警察の位置からの銃撃で負傷したのではないと判断し、彼らの銃撃で誰も起訴しなかった。その証拠が示唆したのは、彼らはマイダン派支配地域から撃たれたということだった。実際、ビデオと政府軍の狙撃手部隊と対狙撃手部隊の指揮官による証言の両方で明らかになったことは、犠牲者のほぼ全員がすでに殺害された後に政府軍の狙撃手が到着したことであった。負傷したデモ参加者のうち少数の者は、裁判や捜査において、政府の狙撃兵やベルクート警察に撃たれたと証言している。しかし、これらの証言のほとんどは、法医学的検査での傷の方向やビデオでの位置と一致していない。

 検察、そして最近ではマイダンの虐殺裁判では、ベルクート警官の裁判でマイダン派の女性衛生兵を被害者に分類することを拒否した。彼女は、マイダンで血まみれの服を着て救急車に駆け込む姿を撮影された直後に、自分が死にそうだとツイートしたことから、マイダンの「象徴」に仕立て上げられた。彼女はこの裁判の証人として、首の出入り口の傷の報告に基づき、マイダン派が支配するホテル・ウクライナの方向からの銃撃で負傷したと証言した。

 しかし、彼女はウクライナのジャーナリストとのインタビューで、負傷していないことを認めた。このウクライナ人ジャーナリストは、マイダン活動家が、この衛生兵の負傷はマイダン自衛官指導部による自作自演であり、彼女は最近受けた手術の傷を抗議活動中に負った傷と偽っていたことを明かしたと報告した。6年後、ウクライナ警察の捜査は、仲間の活動家の自白と法医学専門家の所見に基づき、彼女の「大きな苦難」と「ひどい苦痛」の傷はマイダンとは無関係な状態で作られたと断定した。これらの調査官はまた、大々的に報道された別のマイダン活動家の誘拐と大きな苦難がでっち上げられたものであることも突き止めた。

 この裁判では、当時の政府の狙撃部隊の隊員や指揮官ら数十人が検察側の証人として証言した。しかし、彼らの証言によれば、彼らの部隊は、マイダン近くの当時の政府支配地域に配備され、狙撃兵の居場所を突き止め、無力化するよう命じられたとのことだった。彼らは、到着後、銃撃戦は事実上止んだが、マイダン派支配下の建物から銃撃を受けたと証言した。

 政府の調査は先に、ヤヌコビッチ政府の狙撃兵は、マイダン派のデモ参加者一人の死亡にのみ責任があると判断していた。一方、そのデモ参加者の一人の殺害時に近くにいた他の2人のデモ参加者は、彼もまたマイダン派支配下の建物から撃たれたと証言した。政府の専門家による写真と法医学的検査は、彼が当時の政府陣地に向かっていたとき、急角度から腐食した弾丸によって背中を撃たれたことを明らかにした。

 しかし、圧倒的な証拠にもかかわらず、捜査当局は結局、マイダン派支配下の建物に狙撃手がいたことを否定した。歴史上最も文書化された大量殺人事件のひとつから8年近くが経とうとしているにもかかわらず、マイダンの大虐殺で有罪判決を受けた者も逮捕された者もいないのは驚くべきことである。

漏洩文書は、ゼレンスキーの更迭が近いことを示している

<記事原文 寺島先生推薦>Leaked Documents Indicate Zelensky About to be Replaced
筆者:ルーカス・リロズ・ドゥ・アルメイダ(Lucas Leiroz de Almeida)
出典:グローバル・リサーチ(Global Research) 2023年8月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月31日





 ますます明らかになっているのは、西側がゼレンスキーを排除しようとしたがっている事実だ。ウクライナ大統領が権力から疎外されるだろうという専門家らからの予想に加えて、さらに明らかになってきたことは、以前流出した国防総省の複数の文書から、キエフ市のビタリ・クリチコ市長を新しい国家元首にする計画が漏洩した、というものだ。

 これらの文書が流出したのは数ヶ月前のことで、米国務省のいくつかの機密文書がジャック・テスクエアラという21歳の兵士により漏洩したものだった。この 兵士は第102諜報マサチューセッツ航空団で勤務していた。諜報技術分野で雇用されていたテスクエアは、いくつかの政府機密文書を見ることができ、その多くを漏洩させた。4月、テスクエアは逮捕され、10年の禁固刑が言い渡される見通しだ。

 今になって初めてわかった事実は、これらの文書の中に、国防総省の役人が書いた書簡があったことだ。その手紙には、その役人がゼレンスキーよりも有能な人物にウクライナの大統領職につかせることに対する関心が記されていた。さらにビクトリア・ヌーランド国務次官も、この計画に明らかに関わっており、同国務次官が、ビタリ・クリチコ市長を大統領に据えたいという個人的な要望を持っていることが示されていた。この書簡内の文書の一部には、ビタリ市長を2024年に大統領に選出する「状況作り」が求められていると明言されている。

 「2023年2月22日の日付がついたその書簡には、米国国務省の指導者や国防省の指導者がウクライナのゼレンスキー大統領に不満がある旨が記されており、ウクライナ大統領職を、2024年にゼレンスキーから元ボクサーのビタリ・クリチコ市長に交代させる計画を立てている...この書簡によると、国防総省の指導者は、ビクトリア・ヌーランド国務次官の意見に賛同していることがわかった。同国務次官の意見は、ゼレンスキー大統領は『政治的能力を急速に使い果たしつつある』というものだった。この書簡の記載内容から判断すれば、国務省も国防省も元ボクサーで、2014年のマイダンでの武力政変に積極的に関わっていたピタリ・クリチコ現キエフ市長をウクライナの次期大統領に据える意向のようだ」とオランダのソーニャ・バン・デン・エンデ記者は書いた。

 元ボクサーであり、ネオ・ナチ政権の支持者としても有名なビタリ・クリチコ市長は、2014年の武力政変以来、キエフ市長の座についている。同市長が世界の報道機関から悪評を得ているのは、ロシアによる特別軍事作戦の開始以後、「愛国主義精神」を見せているからだ。同市長は当時、同胞であるウォロデミル(ゼレンスキー)とともに武器を取り、ウクライナの首都を守り、ロシアによる「侵略」を撃退する、と主張していた。西側の様々な新聞社から、「勇敢」で「英雄」 だと報じられたクリチコ市長は、西側の多くの人々から共感を受けており、そのことが同市長を新たな国家主席に推す声がいくつかあがっていることの説明になるだろう。

 ただしクリチコ市長だけが、ゼレンスキー大統領の代役候補一覧にあがっているわけではない。ウクライナ大統領候補になる可能性のある人々が他にもあることを指摘するいくつかの記事も出ている。例えば、オレクサンドル・シルスキー陸軍司令官やキリーロ・ブダノフ国防省情報総局長、ヴァレリー・ザルジニー総司令官が、ゼレンスキー後の大統領候補者になる可能性がある、と報じられてきた。もっと最近のことになるが、西側報道諸機関は、ウクライナの現大統領が排除されることを示唆する内容を報じたが、それによると、大統領に取って代わるのは個人の国家主席ではなく、ルスラン・ステファンチューク議長を長とする役員らからなる一団になる、という。

 明らかに、ウクライナの新大統領に誰がなるかについての共通理解はまだ得られていない。 ただしゼレンスキー大統領を排除することについては、西側での共通理解が確かに成立しているようだ。西側各国当局や報道諸機関にとっては、ゼレンスキーは既に問題の多い 好感が持てない人物という烙印が押されている。これらの文書に記載されているとおり、現ウクライナ大統領は、「政治的能力を急速に使い果たしつつある」のだ。そうなっているのは、ゼレンスキー大統領がNATO諸国に対して、常に不当な「物乞い」をしている姿を見せているからであり、さらには軍事作戦にも失敗し続け、領土も失ない続けているからだ。

 ゼレンスキーの行動を宣伝の力だけで正当化しようとする手口はもはや使い尽くされつつあり、だからこそゼレンスキー大統領は排除されようとしているのだ。この意味において、ビタリ・クリチコ市長が、世界のウクライナ支援諸国には興味深く捉えられているようなのだ。同市長のイメージの方が、ゼレンスキー大統領のイメージよりも世論の受けが良く、各国の市民たちがウクライナへの軍事支援の継続を正当化しやすくなっているようだ。言い換えれば、ロシアに対する代理戦争の遂行を継続するためには、西側にはゼレンスキー大統領よりも有能で、批判を受けることが少ない指導者が必要なのだ。

 ゼレンスキー大統領がどのように排除されるかについては、まだ見えない。戒厳令下の独裁政権であるため、選挙や民主主義に則った方法で変化を起こすのは困難だ。先日、ポリティコ紙が出した記事が示唆していたのは、ゼレンスキー大統領が暗殺された場合に従うべき「秘密計画」さえ何名かの高官が所有している、という内容だった。この動きは、偽旗作戦に対する世論作りを準備しようとするもののようにうつる。具体的には、ゼレンスキー大統領の暗殺についてロシアに濡れ衣を着せ、新たに戦況が激化することを正当化させようという偽旗作戦だ。

 ゼレンスキー大統領を排除しようとする計画が、漏洩した文書が明らかにしたように、少なくとも2月から始められていて、報道機関は既に暗殺が起こる可能性について報じていることを考えれば、そうとしか思えない。

ウクライナは「無条件降伏」する – スコット・リッター

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine will ‘capitulate unconditionally’ – Scott Ritter
出典:RT  2023年8月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年8月29日



キエフでのクリミア・プラットフォーム・サミットの開会後の記者会見でのウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領© AFP / オレグ・ペトラシュク


ウラジミール・ゼレンスキー大統領は日本にとって第二次世界大戦がどのように終わったかを思い返すべきだ、と元米国情報将校が語る

 元米国諜報員で国連兵器査察官のスコット・リッター氏によると、ロシアとウクライナの紛争はウクライナ側の無条件降伏で終結する、という。

 水曜日(8月23日)、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領はX(旧ツイッター)への投稿で、「ウクライナは領土を取引には使いません。そんなことをすれは、国民を取引に使うことになりますから」と主張した。

 このことばは第3回クリミア・プラットフォーム・サミットに捧げられたもので、その会議ではウクライナがクリミア半島の「占領を解除」する方法について話し合われた。クリミア半島は、同年初めにキエフで発生した米国の支援を受けたマイダン・クーデターをきっかけとした住民投票を受けて2014年にロシアに再編入された。

 リッター氏はゼレンスキー大統領の投稿に、「取引を提案したのはNATOの方ですよ。ロシアは何の取引もしようとはていません」とのコメントを投稿した。

 元米国諜報員であるリッター氏は明らかに、NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグの首席補佐官スティアン・イェンセンの8月中旬の発言に言及している。同首席補佐官は、ウクライナは「(ロシアに)領土を放棄すれば、その見返りとしてNATO加盟を得ることができる」と述べた。イェンセン氏によると、この考え方は米国主導の軍事同盟であるNATO内で活発に議論されていたという。

 イェンセン氏は後に自身の発言について 「間違いだった」と謝罪した。


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 この提案はウクライナ側で激怒を引き起こし、ミハイル・ポドリアク大統領補佐官は、「ばかばかしい」と非難した。そのような動きは「民主主義の敗北を意図的に選択し、戦争を次世代に引き継ぐことになります」と同補佐官は主張した。

 ウクライナ国家安全保障会議のアレクセイ・ダニロフ委員長は、ウクライナはロシアのウラジーミル・プーチン大統領とは決して交渉しないと繰り返し、「ロシアは現代のカルタゴのように破壊されなければなりません」と主張した。

 リッター氏は、「ウクライナが無条件降伏した場合、ロシア軍はどこで待機するのか」を含め、ウクライナとの紛争に関してロシアは「現実に対処している 」と主張した。

 「1945 年9月2日の東京湾のことを思い起こしてください。それがあなた方の未来です。せいぜい楽しんでください」とリッター氏はゼレンスキー大統領に宛てて投稿した。



 その日、大日本帝国の代表者らは戦艦ミズーリ上で連合国に対する無条件降伏に署名し、日本の第二次世界大戦への参戦が終了した。

 この協定に沿って、日本は本土以外のすべての領土の喪失、完全な武装解除、連合国による占領、戦争犯罪人を裁くための法廷の開廷に同意した。


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 ゼレンスキー大統領は水曜日(8月23日)、6月初旬に始まったロシア軍に対するウクライナの反撃は「非常に困難」であることが判明したと認めた。しかし、同大統領はまた、作戦は「ゆっくりではあるが、正しい方向に」進んでいる、とも主張した。

 今週初め、ワシントン・ポスト紙は、ウクライナの反撃が「失速の兆し」を見せていると報じた。同紙は、「(ウクライナ軍が)戦場で決定的な成功を収めることができないことで、紛争が膠着化し、国際的な支援が損なわれる可能性があるとの懸念が高まっている」と警告した。

 プーチン大統領は水曜日、キエフ当局がウクライナ兵士に対してどれほど無関心であるかを見るのは「驚くべきことです」と主張した。このロシアの指導者は「キエフ当局、まるで自国民ではないかのように、私たちの砲撃の下、(ウクライナ国民たちを)地雷原に投げ込んでいます」とも 語った。

 ロシア政府の推計によると、ウクライナは反撃開始以来目立った戦果を上げていないが、4万3000人以上の兵力と5000近い重装備を失った。ウクライナ側はこれまでにいくつかの村を占領したと主張しているが、これらはロシアの主要な防衛線からはある程度離れているようだ。

ゼレンスキーが権力の座に就いたのは、西側諜報諸機関により慎重に計画されたなかでのことだった、と元米国外交官は発言

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian President Volodymyr Zelensky Came to Power in Carefully Planned Operation Coordinated by Western Intelligence Services, Says Former U.S. Diplomat
Secret Meeting with British MI-6 Head Richard Moore Points to the Likelihood That Zelensky Is a British Intelligence Agent
英国リチャード・ムーアMI6長官との密会から、ゼレンスキーは英国諜報機関の工作員であることが伺える
筆者:ジェレミー・クズマロフ(Jeremy Kuzmarov)
出典:グローバル・リサーチ(Global Research)  2023年8月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年8月28日





 2020年8月、ロンドンを訪問中だったウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は、英国の諜報機関MI6の長官であるリチャード・ムーア卿と面会した。

 通常の外交儀礼にのっとれば、訪問先では当該国の首長、この場合はボリス・ジョンソン首相が面会相手になるはずだっただろう。

 ウクライナ外務省の元職員のアンドレー・ミシンによると、この二人の面会は、ゼレンスキーがプロの諜報員であり、ムーア長官が直接の操り手であったことを物語るものだった、という。

リチャード・ムーア卿(ウィキペディアより)


 ウクライナでの特殊軍事作戦開始以来、ゼレンスキーは英国(ウクライナではない)の警備員らに取り囲まれている。ウクライナ国旗が上下反対に縫い込まれた制服を着たこれらの警備員らの姿を映した写真があるが、普通ならばこのような警備員は射撃されるだろう。

 2023年5月にバチカンを訪問した際、ゼレンスキーは悪魔の絵のついた工芸品を渡すことでフランシス教皇を鼻であしらったいっぽうで、英国のポール・ギャラガー司教と最も長い時間を過ごした。その面会の際に同席していたいのが、リチャード・ムーア卿、ゼレンスキーの操り手だとされる人物だ。


工作員ゼレンスキー

 元国連武器捜査官のスコット・リッターは、「工作員ゼレンスキー」というドキュメント番組を制作したが、この番組ではゼレンスキーとムーア卿やMI6との関係が詳述されている。

 このドキュメンタリーの第1部には、サウジアラビアのリヤドの米国大使館で働いていた国務省の元職員J・マイケル・スプリングマンに対する聞き取り取材が含まれている。この人物によると、ゼレンスキーがウクライナで台頭して権力を握ったのは「西側諜報諸機関による慎重に計画された工作」の結果だ、という。

 2019年の大統領選での勝利の後、ゼレンスキーは西側の命令を効果的に実行した。具体的には、ロシアとの戦争を引き起こし、砲弾除けとしてウクライナを利用し、ベトナム戦争時のベトナムのような泥沼にのめりこませることで、ロシア経済とロシア政府の弱体化をねらうというものだった。

 ゼレンスキーは西側の工作員であるという自身の役割を以下のような行為によりさらに完遂した。あ)ロシア人を差別する法案を通過させた。い)外国人によるウクライナの土地の乗っ取りを可能にした。う)ウォール街の金融会社であるブラックロック社にウクライナの経済政策を決めさせることを許可した。

リッターによると、ゼレンスキーはウクライナを米国や西側の新兵器システム、ネオナチ傭兵、軍事関連の生物研究所などの「実験場」に変えてしまった、という。この生物研究所の存在については、国務省の最高位高官でビクトリア・ヌーランドが認めた。

 ニューズ・ウィーク誌の最近の記事の指摘によると、CIAがウクライナに武器を送り込む際は、商用機という「グレー・フリート*」を使って中欧や東欧をあちこち移動し、秘密の使命のために人員をウクライナに派遣し、新たな武器でウクライナを支援するいっぽうで、ポーランドを秘密の重点中継点にして、ウクライナ国内での作戦を練っているという。
*個人所有の交通手段を使って事業をおこなうこと

 さらにCIAは、ウクライナの諜報機関(SBU)とも密接に協力しているが、このSBUは、ゼレンスキーが12の野党を禁止したことに続き、かつてのベトナムでのフェニックス作戦さながらの作戦をロシア国内にまでまたがって実行し、その中でゼレンスキーの政敵らは、投獄され、虐待され、暗殺さえされる場合もあった。


分離主義を主張したとしてSBUにより逮捕されているオレグ・ノビコフ。ウクライナの多くの政治犯の一人だ。(写真は thegrayzone.comから)

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 ソ連崩壊以来の米英の目的は、両国が一体となってロシアを打ち負かして弱体化させることと、西側の権力を中央アジアにまで伸ばすことだった。中央アジアを抑えることが、世界支配にとって重要なカギであると長年考えられてきたからだ。

 ドンバス地方に特別な自治権を与えることで、ウクライナ・ロシア間の戦争の解決を模索するためのミンスク和平合意についての話し合いの際にゼレンスキーは、合意に賛同したウラジミール・プーチンの顔を嘲笑うような表情で見ていた。

 それ以来、ゼレンスキーは厚かましくも西側諸国の首都を歴訪し、ロシアとの戦争で使用する武器がもっともっと欲しい、と要求し続けている。この戦争のせいで自国民が非常な苦しみをうけ、何万もの人々が死んでいることなど、おかまいなしのように。


国民の僕(しもべ)

 リッターのドキュメンタリーが強調していたのは、ゼレンスキーは事実上、小説『影なき狙撃者*』の登場人物のように、ハリウッド映画を彷彿させるかのように、真に力をもつ人々が書いた筋書きに従って権力の座に就いた点であった。
*朝鮮戦争で捕虜となり、敵側に洗脳され、暗殺者として暗躍する米兵を取り上げた小説

 2015年から2019年まで、ゼレンスキーはウクライナのテレビドラマ『国民の僕(しもべ)』で主演していた。劇中、ゼレンスキーはヴァシリ・ペトロヴィッチ・ゴロボロジコという名の高校教師を演じ、その教師の汚職に対する独白が、ゼレンスキーを有名にし、その後ウクライナ大統領に押し上げる力となった。

 ゼレンスキーの中では、ウクライナ国民はゴロボロジコのクローンを大統領に選んだ、と考えていた。

 しかしながら、当時ウクライナ国民の多くは、ゼレンスキーがウクライナの新興財閥であるイーホル・コロモイスキーと密接につながっていたことを知らなかった。この人物は、ウクライナ最大の石油・ガス会社と銀行を所有し、ゼレンスキーが政治権力を得る見返りに、自身が刑務所に入らずに済むよう手を回した、ということだ。

 ゼレンスキーがコロモイスキーと共に詐欺的な金融計画に関わっていたことは、パンドラ文書により初めて明らかになった。 この文書により、ゼレンスキーは4100万ドル(約60億円)を所有する海外の2会社に送金していたことが、明らかになった。

 この海外の資産により、ゼレンスキーはマイアミの3400万ドル(約50億円)の邸宅、イスラエルの両親のための海辺の家、ロンドンのシャーロック・ホームズ記念館の向かいにある380万ドル(約5億5千万円)の家、更にはグルジアとクリミアの海辺のリゾート邸を購入できたとされる。

 2019年の大統領選挙運動中、ゼレンスキーは7万ドル(約1千万円)を支払い、米国の広報会社シグナル・グループ社に、自らが演じたドラマ「国民の僕」の役柄に自分を似せるよう磨きをかけさせた。

 ゼレンスキーの選挙運動を運営していたのは、米国の広報活動の3人の専門家、アンドリュー・マック、オバマ大統領の演説の脚本を書いていたステファン・クルピン、シャイ・フランクリンだった。

 ゼレンスキーの選挙運動と慎重に装飾された2008年のオバマの選挙運動には類似点があった。オバマも操り主の手により、オバマは既得権者からはみ出していて、政治を真っ当なものに戻してくれる候補者として売り出された。

 ゼレンスキー同様、オバマの実像は、自身の家族について詐称した、中身のない詐欺師であり、米国の諜報機関と深い繋がりがあり、選挙中に訴えていた公約を裏切った。具体的には、ブッシュによるテロとの戦いを拡大させたり、大手諸銀行や金融諸機関に対して忠誠を示すなどしたのだ。

 ゼレンスキーは選挙運動中、ウクライナの汚職と戦うと主張していたが、それが出まかせだとわかったのは、自身の政権がCovidの補助金やがん研究のための基金を無駄な大規模道路建築のために吸い取っていたときだ。

 ミコラ・アザロフ元ウクライナ首相はこう語った。「(ゼレンスキーの前任者)ポロシェンコ大統領下の汚職ほど酷いものはないと思っていましたが、ゼレンスキーはそれを超えてました。今はもう基準などあったものではなく、(さらに現政権には)原則なども皆無です」と。
 
 2019年の選挙運動期間中、ゼレンスキーはドンバスでの戦闘の休戦を求めていた。当時ドンバスは2014年のマイダンでの武力政変ののち、5年間砲撃をうけていた。しかしゼレンスキーはそのような誓約をも踏みにじり、ロシアとの戦争を引き起こし、ウクライナのNATO加入への熱望を表明した。

 リッターによると、ゼレンスキーか大統領職に就いたことは、米・英の何十年もの計画が頂点に達したと言える、とのことだ。その目的は、ウクライナを嫌ロシア社会に書き換え、ロシアを弱体化させ、破壊するための道具として利用することだという。

 リッターのドキュメンタリー「工作員ゼレンスキー」には、ビクトリア・ヌーランドが、米国はソ連崩壊以来、ウクライナに50億ドル(約7300億円)を投じてきたことを自慢する映像が出てくる。さらに、米国が支援したカラー革命の後に権力者の座に就いたヴィクトル・ユシチェンコ元大統領の話題も取り上げられており、同元大統領が、米国人女性のカテリナ(後に彼の妻となったのだが)に誑(たぶら)かされたことにも触れられている。

 ユシチェンコ大統領時代の主な特徴は、ウクライナ民族主義者組織(OUN)を再興させたことだった。この組織は、第二次世界大戦時、ナチスと共同してソ連に対抗し、CIAから支援されていた。

 ユシチェンコはステファン・バンデラやロマン・シュヘーヴィチといった国粋主義者たちを、英雄視した。なおゼレンスキーもこれらの国粋主義者たちを賞賛している。


ステファン・バンデラ(左)やロマン・シュヘーヴィチ(右)[写真はkresy.plから]

 2010年ユシチェンコはヴィクトル・ヤヌコーヴィチに選挙で敗れたが、ヤヌコーヴィチはロシアとウクライナを同盟させ、英雄とされていたバンデラやシュヘーヴィチの地位を剥奪した。

 そのためヤヌコーヴィチは米国による政権転覆工作の対象となり、その結果2014年のマイダンでの武力政変と、ドネツク・ルガンスク両州の人々が自治を求める住民投票をしたあとの東ウクライナでの戦争を引き起こすことになった。

 武力政変後政権の残忍さの一例となったのが、いかなる反抗も暴力的に踏み潰すという態度であり、オデッサでの労働組合員らの大虐殺であった。この件については、当時ゼレンスキーは沈黙を保っていた。

 リッターの指摘によると、2014年のマイダンでの武力政変のあと、ウクライナの政界と軍部の指導者層の中のかなりの割合の人々が、C. マーシャル欧州安全保障研究センターで訓練を受けたという。そしてこの訓練により、これらの支配者層は少しずつ嫌露的な視点を身につけるようになった、という。

 SBU(ウクライナ保安庁)はCIAの下部組織へと姿を変え、CIAはSBU本部のひとつの階をまるまる占めている。


キエフのSBU本部。CIAがそのひとつの階をまるま所有している 。[写真はsott.netから]

 CIAは英国のMI-6とともに、ゼレンスキーを英雄とする虚像を西側で作り上げる手助けをしてきた。その目的を強化するため、ゼレンスキーと妻のオレーナにヴォーグ誌の表紙を飾らせた。

 リッターによると、CIAとMI-6はさらに、ブチャの大虐殺のでっち上げ工作の際、ゼレンスキーの手助けをしたという。 この虐殺についてはロシアが非難されているが、どうやら主にこのような行為を実行したのは、ウクライナのネオナチのアゾフ大隊のようである。

 ブチャのことは、ゼレンスキーの政治支配の実情がただの幻想に過ぎないことを表すよい象徴だ。人々は、ゼレンスキーの全体像が、ドラマ「国民の僕」で培われた虚像と同じであると思わされていた。しかしゼレンスキーの実像は、名声を欲しがる野心家で、自国の人々を外国勢力に奉仕する地獄に陥れようとしてきた人物だ。



1. ゼレンスキーはウクライナ民族主義組織(OUN)の紋章のついたシャツも着ていた。この組織は、第二次世界大戦時、ナチスと共同してソ連と戦っていた組織だ。

工作員ゼレンスキー:ウクライナ・オン・セール

<記事原文 寺島先生推薦>
Agent Zelensky: Ukraine on Sale
筆者:マンリオ・ディヌッチ(Manlio Dinucci)
出典:グローバル・リサーチ(Global Research)  2023年8月12日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年8月25日





 「ゼレンスキーは汚職に対する戦争を再始動させている。汚職や戦争で富を成す人々は絶対に許さない」:この見出しは、イタリアの日刊紙ラベニール(L’Avvenire)が出した記事の題名だ。この題名からは、何の特権も受けず、汚職と戦う質素で正直な大統領であるという印象をもつ。

 この姿こそが、大手の政治関連報道機関全体が伝えている姿なのだが、それをスコット・リッターのドキュメンタリー「工作員ゼレンスキー」は打ち砕いている。


 諜報活動の専門家として米国海軍での従軍体験があるスコット・リッターは、1991年~1998年にイラクで国連の捜査官の主任を務めていた際、知的な誠実さと勇気の持ち主であることを証明した人物である。当時リッターは、イラクは大量破壊兵器を所有していない、と結論付け、2003年のイラク戦争に対する反対意見を公表した。

 リッターの調査ドキュメンタリー映像によると、ゼレンスキーと関係者らが海外のタックスヘブン(租税回避地)で複数の会社を設立したが、その費用は、「ゼレンスキーの操り主が提供した準備金を利用した」ものであり、その頭金は4100万ドル(約60億円)だった、という。



 このドキュメンタリー動画が示していた、ゼレンスキーが所有している贅沢な別荘があるのは、マイアミ(建物だけで3400万ドル(約50億円))、イスラエル、(イタリアの) フォルテ・デイ・マルミ、ロンドン、グルジア、ギリシャ、そしてクリミア(この別荘だけは正しくない投資だ。すでにゼレンスキーの所有物ではないので)だ。

 さらにスコット・リッターのこの調査により否定された偽情報は、ロシアがウクライナの穀物を破壊したため、アフリカ諸国が飢饉に苦しめられているというものだ。本当のところは、カーギル社などの農産業多国籍企業がウクライナのもっともよい土地を手に入れ、そこで生産された穀物を、商業戦略に利用しているのだ。米国の計画は、欧州の食の安定供給を減じることで同盟諸国をより強く管理し、これらの多国籍企業の枠組みの中にとりこもう、というものだ。



 このドキュメンタリーが明らかにしたことは、ウクライナは土地を奪われ、ゼレンスキーやゼレンスキーの多国籍の関係者らにより買い叩かれているだけではなく、借金がどんどん増えている、という現状だ。ウクライナが米国や主要欧州諸国から受け取っている膨大な軍事支援は贈り物ではなく、付け払いだ。したがってウクライナは、すでに多額の外国からの借金が積み重なっており、その支払いには何世紀もかかることになるだろう。この借金は、ゼレンスキーが世界最大の投資会社である米国のブラック・ロック社に任せた「再建」によりさらに膨らんでいくだろう。

キエフには、ゼレンスキーが暗殺された場合の秘密計画がある―Politico

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev has secret plan if Zelensky is killed – Politico
出典:RT  2023年8月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年8月22日


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NATOサミットのビリニュスで、ドイツの首相との会談中に文書を読むウクライナ大統領ウラジミール・ゼレンスキー© Odd ANDERSEN / AFP


ウクライナはおそらく各省の影響下、統治評議会によって運営されるだろう、と通信社Politicoは伝えている。

 ウクライナ大統領ウラジミール・ゼレンスキーが暗殺された場合、彼の後任は政府高官から選ばれた集団によって選ばれ、法的後継者が名目的な存在として行動する可能性がある、とPoliticoは、月曜日(7月31日)、情報筋の話として報じた。

 ウクライナ憲法は明確だ。もし大統領が職務を果たせない場合、ウクライナ議会の議長―現在の場合はルスラン・ステファンチュク ―が引き継ぐことになる。しかし、Politicoによると、ルスラン・ステファンチュクはウクライナの一般市民にはあまり人気がない。彼の支持率は約40%程度だ。

 Politicoがインタビューしたウクライナ高官と分析家たちによれば、このことはゼレンスキーに不測の事態が起きた場合、国は統治評議会によって指導されることを意味する。ステファンチュクはその形式的な最高責任者となるが、他の成員も含まれる。これには大統領府長官のアンドレイ・エルマク、外相のドミトリー・クレバ、そして国防相のアレクセイ・レズニコフが含まれる、とPoliticoは述べている。

 現在ウクライナの軍を率いているヴァレリー・ザルーシュニイは、引き続きその職に留まることが予想される、とPoliticoは報じている。

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READ MORE:Zelensky explains why he carries a gun


 大西洋評議会の非常駐上級特別研究員であるアドリアン・カラトニュキは、Politicoに対して、キエフには「強力な指導集団」があり、「政府は集団指導体制となるだろう」と述べた。彼はまた、「何か恐ろしいことがゼレンスキーに起こったとしても、それほど決定的なことではないだろう」と付言した。

 しかしながら、また、(ゼレンスキー暗殺という)結果は、ウクライナ大統領と国民の強い一体感についてはいろいろな意見があるため、国内での影響は限られる可能性があるのだが、西側ではゼレンスキーは広く抵抗の象徴と見なされているため、ゼレンスキーが暗殺されることにでもなれば、彼ら支援者たちに衝撃を与えることになるだろう、とPoliticoは警告している。

 2022年5月、ウクライナ大統領自身がキエフにおいて自身の死亡の可能性を考慮した「Plan B」を持っていると述べ、最悪の事態が起こった場合にウクライナが無防備にならないよう、国の内閣を2つに分割していると付言した。

 2022年3月、ゼレンスキーの上級補佐官であるミハイル・ポドリアクは、ゼレンスキー大統領が数十の暗殺未遂生き延びてきたし、いくつかの西側メディアもモスクワがウクライナ大統領を暗殺する意図があると推測していた、と述べた。

 しかしながら、同じ年の4月に、クレムリン報道官のドミトリー・ペスコフは、ロシアがそのような計画を持っていたことは一度もない、との考えを示した。

戦争の混乱のさなか、ウクライナの赤ちゃん工場が記録的な大もうけ

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine’s baby factories rake in record profits amid chaos of war
筆者:ジャレミー・ロッフレード(Jeremy Loffredo)
出典:グレー・ゾーン(The GRAYZONE) 2023年7月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年8月20日





 一般のウクライナ国民が、NATOによる対露代理戦争に苦しめられているいっぽうで、代理母出産事業が大盛況になっている。この事業に必要なのは、健康的であるが金銭面で困っている女性が安定して存在している状況だ。これらの女性たちが、裕福な外国人たちのために子宮を貸しているのだ。代理母らは、「顧客よりも貧困な階級出身者であるにちがいない」とキエフ最大の「赤ちゃん工場」の医療部長は説明した。


2022年のバイオ・テックス・コム社(Bio TexCom)のサイト上の紹介動画に映っている同社の空爆避難所のウクライナの代理母たち

 スイスに拠点を置くバイオ・テックス・コム社のイホール・ペコノハ氏によると、同氏はこの事業戦略の助けを借り、世界で最も利益の上がる代理母業社のひとつを立ち上げることができたのは、搾取でしかなかった、という。「我が社は元ソ連共和諸国から女性たちを探しています。というのも、論理的に考えて、(そのような女性たちは)我が社の顧客層よりも貧困な階級出身であるにちがいないからです。」

 となれば驚くことではないが、バイオ・テックス・コム社は、若い女性たちをほぼ際限なく手に入れることができるウクライナに目を向けているのだ。彼女たちは喜んで自分の子宮を売ることで、金銭的苦境を和らげようとしている。NATO諸国とロシアの間の代理戦争勃発後の8年間、ウクライナは経済的苦境に追いやられてきた。ウクライナの市民たちが貧困に沈む中、ウクライナは急速に、代理出産業社にとっての世界的な中心地となり、現在のところ世界市場の少なくとも4分の1を占めている。 急激に発展しているこの産業の台頭に伴い、患者いじめと腐敗でまみれた医療界の醜い裏の姿も根を張りつつある。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とその一団は、戦争で疲弊した自国から略奪するよう西側を積極的に励ましており、国際的な資産運用会社であるブラックロック社と投資友好関係を結び、労働者から労働保護権を奪い、国有会社を私企業に売り渡した。

 しかし、ウクライナの代理出産業にはあまり注意が払われてこなかった。この業界は2018年だけでも、ウクライナに150億ドル(約2兆2千億円)をもたらした。それ以来、代理出産の世界市場は2倍以上に膨れ上がっている。この業界は昨年140億ドル(約2兆円)以上の規模があり、毎年順調に約25%成長し続けている、と世界市場眼(Global Market Insights)社は分析している。

 代理出産業から撤退する国が増えている中、西側各国政府は、虐待をもとにしたこの事業が、規制が緩和され政治的に不安定なウクライナで繁盛していることに目をつぶっているようだ。

 エマ・ランバートンは、ピッツバーグ大学国際発展学部の主席教員で、プリンストン大学の「公共および国際関係学部」紀要に論文を発表し、ウクライナの女性が同国の代理出産業社に参加する際に直面する危険性を詳述した。

 「ウクライナ領内で声を上げている人々の主要な心配の種は、法律制定組織や複数の通信社がこの件を人権侵害だと考えていない点です」とランバートン氏は当グレー・ゾーンに語った。

 「政府はこの件を児童虐待のように規制すればいいだけのものであるとは考えていません。政府は『子どもたちを打ちのめしていいのは水曜日だけです』などとは決して言いません。そんなことは信じられないくらい馬鹿げているからです。しかも、ウクライナで声を上げている人々の目からすれば、これは虐待問題であるため、規制されるべきではなく、法律により禁じられるべきだ、ということです」と同氏は説明した。

 2022年上旬に戦争が激化するずっと前から、怪しげな人々や業社にとってウクライナは絶望したウクライナ女性たちを対象にしたおいしい狩り場であることは知られていた。

 この件に関して規制が緩く、貧困層が多い、インドやタイ、ネパールなどのアジア諸国も、代理出産市場の供給源となっている。しかし、これらの国々の政府は、このような人権侵害行為が業界大手の業者の手により積み重ねられることに黙っておらず、最終的には代理母を探している裕福な外国人に対する門戸を閉じた。

 これらの国々が代理出産市場に制限を加えるなかで、世界はウクライナにその市場を求めるようになり、代理出産業界の中で競争が始まった。代理出産で利益を得る業社は、貧しい国々から別の貧しい国への事業の移行を効果的におこなってきた。その国は、近隣国との通常戦で苦しんでいるさなかにある国だ。

 「この戦争のために、代理出産問題について統一した国際的な規制が必要である状況が生まれました。というのも、代理出産は戦争地域に留まるべきなのか、あるいは代理出産を法的に認めていない近隣諸国にも移行すべきなのかを決めざるを得なくなっているからです」とランバートン氏は当グレー・ゾーンに語った。同氏は、「いかなる人道的危機と同じですが、臓器移植のほうがずっと危険度は高いですし、代理出産と人権侵害に関する国際的な同意が、ウクライナの脆弱な女性たちや子どもたちを守るために必要なのです」と述べた。


 「人間扱いではない」:貧しい母親たちが赤ちゃん農場で人質に取られている

 バイオ・テックス・コム社の出産センターは、国際的な代理出産業界で他を遙かにしのぐ最大手だ。この「出産技術事業」の所有者が2018年に主張したところによると、同社はウクライナ国内の代理出産業の7割という大きな割合を占め、世界市場でも25%を占めている、という。

 バイオ・テックス・コム社のサイトには自慢げに、同社が「親になる喜び」を世界中の何千組もの夫婦に与えてきたとあるが、実際のところ、この会社が実践してきた歴史を振り返れば、虐待行為、秘密の行為、違法行為、さらには臓器売買の疑いのある行為にまで手を染めていたことがわかる。

 2018年にアルジャジーラ通信社から取材を受けたアリーナという女性は、バイオ・テックス・コム社と妊娠契約同意に至った状況を説明してくれた。

 「ウクライナで収入のいい仕事を見つけるのは難しいです…私は息子の大学の学費のための蓄えがほしかったんです。大学の学費はとても高いので」とアリーナさんは答えた。

 バイオ・テックス・コム社から代理母になることを委託され、米国夫婦の子どもを代理した別の女性がスペインのエル・パイス紙の取材に答えたところによると、この女性が自分の子宮を売ったのは、金銭状況のためだった、という。「私は家なしで育ちました。私にとっては、自分のアパートを持つことが大事なんです。(代理母になることが)私がアパートを持てる唯一の方法なのです」。

 バイオ・テックス・コム社のイホール・ペチェノハ医療部長は、スペインの調査誌ラ・マレーアの取材で公式に認めたのは、同部長の会社が貧しい地域の女性たちを狙っている事実と、「代理母の仕事をする人々がそうするのは、金銭的に困難な状況にあるから」という事実だった。

 「我が社は旧ソ連共和諸国の女性たちを探しています。というのも、論理的に考えて、(これらの女性たちは)我が社の顧客層よりも貧しい階級出身であるにちがいないからです」とペチェノハ医療部長は説明した。

 最後に同部長はこう付け加えた、「私は良い経済状況にあり、自分には子どもが十分いるし、子どもをほしがっている誰かを助けたいからという親切心から代理母になろうと決めた女性に会ったことは一度もありません」と。

 「代理母になるのは、家を買うお金や、子どもたちの教育費がほしいからです。欧州でいい暮らしができているなら、そんなことはしないでしょうから」とペチェノハ医療部長は最後に付言した。

 自分の子宮を外国人に売った一人のウクライナ女性はバイオ・テックス・コム社の部長の発言を裏付けるような内容をガーディアン紙に語った。「私が代理母になることに同意した唯一の理由は、金銭的な利益のためだけです」と。

 「それと、夫が前線に出ていますので、4人の子どもを支える術(すべ)が必要なのです」とこの女性は付け加えた。

 バイオ・テックス・コム社から代理母の委託を受けたもう一人の女性が2019年、こう語った。「代理母はいわば歩く保育器です。人間扱いはされていません」と。

 2020年にプリンストン大学の公共・国際関係学部紀要に掲載された論文には、外国人による搾取がウクライナの代理出産業界の繁盛の原動力になっている、とある。

 「代理出産の支持者たちは、女性たちには代理母になることを自由に選んでいる、と主張しているが、脆弱な女性たちは選択肢をわざと間違って提示されることがよくある。代理母になる可能性のある女性たちは、自分の家族に対する道徳心に背くかもしれない行為をおこなうのか、あるいはその行為により自分の家族にお金が入る行為をおこなうのかという二択を選ばされている。

 ウクライナのオクサナ・ビロジル国会議員は、外国人がウクライナ女性の子宮を借りる行為を禁じる法案を提出したが、同議員が豪州放送会社(ABC)にこう語った。「ウクライナの代理母は二種類に分けられます。お金のために代理母になる人たちと、すでにお金を持っているのに代理母になる人たちです」と。同議員がABCに主張したところによると、代理出産業によりウクライナは非常に多額の経済価値を手にしているため、この行為を法律で禁止するのは不可能だろう、という。

 ビロジル議員が嘆いたのは、腐敗した財閥勢力がウクライナ政府に強い影響力をもっているため、代理出産業界との法的な闘いが効果的に妨害されている点についてだった。

 「本当に、業界と残念にも議会に出席しているその圧力団体と大闘争をしているところです。代理出産業は、我が国の法律ではただの事業としてしか書かれませんでした」と同議員は述べた。

 ウクライナの代理出産業界についての論文執筆者であるエマ・ランバートン氏の記載によると、バイオ・テックス・コム社は、実はウクライナ国内で事業を行っている外国の会社である、という。同社のサイト上の文書からわかることは、この会社はスイスで登録された会社のようだ。

 裕福な銀行がひしめくスイスとバイオ・テックス・コム社が繋がっており、同社の紹介動画が代理母たちに対して最先端の施設や贅沢な住居空間を用意している様子を示しているにもかかわらず、多くの報告からは、代理母たちの居住地区の住居環境が、四つ星ホテルというよりは、刑務所にずっと近いことがわかる。

 一人の代理母の説明によるとバイオ・テックス・コム社の依頼により妊娠していた間、確かに同社は約束どおりアパートに入れてくれたが、4人の別の妊婦と同室させられ、妊娠期間中の32週間ずっと寝床も共有だった、という。

 内部から同社のやり口を目にした人々の証言によると、同社は代理母の経済的苦境を利用して、居住地から抜け出させないようにしているという。

「4時までに帰宅しないと、100ユーロ(約1万六千円)の罰金が課される可能性があります」とバイオ・テックス・コム社の元代理母がロンドンを拠点とした無所属の記者であるマデリン・ロッシュ氏に答えた。

 代理母への月ごとの報酬は、平均200~350ユーロ(約3万2千円~5万6千円)だ。言い換えれば、バイオ・テックス・コム社の代理母が居住地から離れれば、月ごとの報酬が半額になる、ということだ。

 「さらに私たちは会社を大っぴらに批判したり、赤ちゃんの本当の親と直接に連絡を取れば、罰金を取る、と脅されていました。私たちは家畜のような扱いを受けていましたし、医師たちからもあざ笑われていました」とこの代理母経験者は語った。

 この人によると、この程度の金銭的な補償では、自分の決心にまったく割が合わなかった、という:「二度と代理母になる気はありません。酷い経験でした。」

 出産後、多くの赤ちゃんは、引取人が到着するまで、防空施設で守られたホテルで厳重に守られている。以下はガーディアン紙の2020年の記事だ:「これらの生まれたばかりの赤ちゃんたちは産婦人科病院の育児室ではなく、キーウ郊外にあるホテル・ベニスという相応しくない名前のホテルの大きな応接室二室に一列に並べられ、外壁と有刺鉄線で保護されている。」

 現在、ウクライナの高官らの話によると、この虐待的企業には、米国政府内に強力な保護者たちがいる、とのことだ。


西側報道機関がビオン・テックス・コム社の宣伝を展開する中、米国は同社を守っていると非難される

 ユーリイ・ルツェンコ氏はウクライナの元州検察官だったが、不正や臓器売買の疑いがあるとされたバイオ・テックス・コム社に対する一連の犯罪捜査を監督した。2018年、同検察官は、バイオ・テックス・コム社の創設者のドイツ国籍を持つアルバート・トチロフスキーという名の人物に2カ月間の自宅軟禁処分を課した。

 しかし、ルツェンコ州検察官は2020年にその職を解かれた。解任後、同氏はザ・ヒル紙の取材において、自分は駐キエフ大使のマリア・ヨヴァノヴィッチから「手を出してはいけない人物一覧」を手渡されていた、と述べた。これは、米国政府が、検察官が捜査や起訴をおこなうことを禁じている人々の一覧だった。一覧に掲載された正確な名前は不明だが、ルツェンコ氏は後にガーディアン紙に対し、解任の「結果としてバイオ・テックス・テックス社の捜査が行き詰まったと思っています」と語っている。

 ウクライナの元検察官が、ビオン・テックス・コム社の創設者を保護したことで米国を非難するいっぽうで、西側の主要な通信諸社は、この会社について、宣伝をするかのような好意的な報じ方をし、産科病棟のカーテン裏に潜んでいる虐待行為や搾取行為については、目隠しをした。

 2022年10月、ニューヨーク・タイムズ紙は1本の記事を出したが、その記事はバイオ・テックス・コム社の宣伝資料からそのまま持ってきたかのような記事だった。ニューヨーク・タイムズ紙は、ロシアとの戦争のさなかに、バイオ・テックス・コム社が代理出産業を再開したことを、愛国的な反抗精神のもとでの勇敢な行為であり、この出産業は「子どもがいないたくさんの人々のための拠り所」であると報じた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、バイオ・テックス・コム社の医療部長の事業形態が経済的理由でそうせざるを得ない貧しい女性たちに依存していることや、これらの女性たちが酷い扱いを受けている報告があがっていることを批判するのではなく、ペチェノハ医療部長に、代理出産市場の現状についてのどうでもいい質問をするにとどまっている。

 「この戦争によって、心の底から赤ちゃんが欲しいと思っている夫婦たちのための代理出産を求める声がなくなったわけではありません」というのも、同社の顧客たちは「急いでいるからです」と同医療部長は説明した。

 「我社は全ての代理母を占領や爆撃の発生から守られたところに搬送しています」と最後にペチェノハ医療部長は自慢げに話した。


防空施設内にある赤ちゃん農場

 ウクライナでの代理戦争が始まるなか、貧しいウクライナの女性たちの犠牲にして外国の女性たちに赤ちゃんを与える収益性の高い事業は軍事的な体制を敷いた。

 アトランティック誌によると、同社は敷地内に防空施設を確保し、爆撃があっても、新生児たちの出産が妨げられることなく継続できるようにしている、という。 2022年上旬に、バイオ・テックス・コム社が発表した動画には、寝床や赤ちゃん用寝床や寝袋だけではなく、ガスマスクまで装備された典型的な防空施設の様子が映っている。

 一日のうちで最も視聴者数が多い時間帯を狙ってABC放送局が出した宣伝報道では、ロシアからの爆撃にも耐えうる同社の赤ちゃん工場のことを褒めちぎっていた。「患者たちの安全を守るためには何でもするウクライナの代理出産業者」というのが、その特集報道の題名だった。この報道特集は、ABCのデイビッド・ミュアー司会者からの以下のような褒め言葉で幕を開けていた。すなわち、「ウクライナ最大の代理出産業者」は、「患者や赤ちゃんたちの安全を確保するために取れる措置は全て取っています」と。

 さらにこの特集では、バイオ・テックス・コム社の医療部長に対する取るに足らない取材の中で、同部長は、ためらうことなく、同社の医療環境の質は「とても高い」と主張していた。 その後、ミューア司会者は、この部長のことを、「勇気があって勇敢」で、このような「素晴らしい」会社で働いていることを褒め讃えた。

 バイオ・テックス・コム社が、人間として最も恐るべき挑戦を金儲けの好機として捉えようとしていることは明らかだ。戦争もそうだし、迫り来る人口減少についてもそうだ。


代理出産の次の展開:胎児の体外人工保育

 同社による自社推進記事に付けられた文書の中でビオン・テックス・コム社が強調していたのは、発展途上国における出生率が低下している危機についてであり、同社の「人工授精技術」が「人類存続の好機になる」の主張していることだ。

 「この先50年で、世界のほとんどの国の人口は半分に減るでしょう」とこの文書にはある。

 ビオン・テックス・コム社の所有者であるドイツ国民のトチロフスキー氏の主張によると、自社がより広い生物技術産業の最先端の地位を維持できるのであれば、この先の生殖工学において革命を成し遂げることを約束する、とのことだ。その生殖工学においては、赤ちゃんたちが人工子宮内で生まれ、遺伝子はコンピューター編集されるという。

 ウクライナの新聞社であるデロ紙の取材において、トチロフスキー氏は「生殖工学業界」におけるデジタル化について話した。

 同氏は、不妊率の増加や、技術業界の億万長者イーロン・マスク氏や中国の実業家であるジャック・マー氏が普及させた「人口崩壊論」を引き合いに出して、人類全体が生物工学により救われるだろう、と主張した。

 「生殖医療は人類の希望です」とトチロフスキー氏は述べた。

 「最も重要なことは、体外出産、つまり胎児を人体外の人口子宮内で育てる技術です。私たちが映画『マトリックス』で見た工場のようなものです。あと5~7年で、対外出産が可能になると思います」。トチロフスキー氏によると、バイオ・テックス・コム社は「その方向に向けて取り組んでいる」という。

 ウクライナの記者から、バイオ・テックス・コム社は赤ちゃん工場という技術と組織に関わる法的な問題や倫理面についてどう解決する計画なのか、と問われた同最高責任者は、その答えは簡単だ、と述べた:外からの監視を排除することだ、と。

 「最も重要なことは、法執行機関に我が社の研究の邪魔をさせないことです」とトチロフスキー氏は主張した。

人体が「レゴ・ブロック」のように分解される―ウクライナでの臓器販売調査報告(第2部)

<記事原文 寺島先生推薦>
Human Beings Disassembled “Like Legos”
筆者:デボラ・L.アームストロング(Deborah L. Armstrong) 2023年1月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年6月30日



画像はbakadesuyo.comから


 この連載の第1部では、シリアの医学生の話が取り上げられていた。この医学生によると、ウクライナの兵士たちや市民たちから人体の器官を収集したとのことだった。さらにその器官を入手する際は、必ずしも提供者から許可をもらっている訳でもなく、提供者が生命の危険を伴うような傷害を負っていない場合もあったとのことだった。さらに第1部では、ウクライナ保安庁(SBU)の元役員が、「闇臓器移植業者」を保護する任務を与えられていたことにも触れた。この業者は、戦争で疲弊した町から町を渡り、人体の器官を収集していたという。さらに、第1部では、一人の男性についての映像が示されていたが、その映像で、「臓器市場」の医師のように見えるその男性は、顧客になるであろう人物に対して、その人物の息子に移植する骨髄の価格について話をしていた。

 第1部で取り上げられていた3本の動画は、すべてロシア語音声であり、ロシアの報道機関による報道が、その記事のすべての情報源となっていた。この記事を信じるか、ただの宣伝として片付けるかは、あなた次第だ。ともあれ、以下の内容も考慮して損はないだろう。

 戦争で疲弊しているドンバス地域を定期的に報じている、オランダの報道関係者であるソニヤ・ヴァン・デン・エンデ氏(女性)も、ウクライナでの臓器収集について幅広く報じている。同氏の直近の記事は、今年1月9日にディベンド・オンラインというサイトから発信されたが、それは私が書いた記事のたった三日後のことだった。その題名は、「ウクライナの前線兵士たちなのか、それとも西側にとってのモルモットなのか?」だ。


ソニヤ・ヴァン・デン・エンデ氏:画像は Devend Onlineから

 同氏はオランダ人医師について触れているが、その医師は、私が「エリザベス・ドゥ・ブリュック」という記事で名指しで取り上げた医師だった。この記事はロシア語の複数の記事をもとに書いたものだったため、私が英語に翻訳した際、綴りをまちがっていた。ヴァン・デン・エンデ氏は、この医師(女性)の名前を、「エリサベス、あるいはエリザベス、リズベット・ドゥ・ブルーイン、ロシアではドゥ・ブルーと呼ばれている。非オランダ語話者には、発音しにくい名前だ」としていた。

 2022年12月14日、ヴァン・デン・エンデ氏が報じたのは、「Anarchist Kombatants(非政府主義者の戦闘員)」という名で知られている、ロシアのハッカー集団が、ウクライナの軍司令官のウェブサイトに侵入し、「『行方不明』とされた3万5382人のウクライナ軍人一覧表を入手することに成功した」という内容だった。その後、ロシアの報道機関が報じたのは、ウクライナ兵の少なくとも3分の1が、「従軍中に行方不明(MIA)になった」のは、ウクライナ軍が、戦闘中に亡くなった死者をきちんと収集し、その人たちが戦闘中になくなったという記録を残すことができない、あるいはそのつもりがないためである、というものだった。さらに報じられた内容は、ウクライナ側は死体を戦場で頻繁に火葬している、というものだった。となると、実際の戦死者数は隠蔽されたままで、近親者への補償が遅れたり、完全に支払われなくなったりしている可能性がある。そしてその補償金が、役員や軍の高官らで山分けされている可能性もある。

 瀕死、ないしは死後まもない何千ものウクライナ兵がきちんと把握されていない状況というのは、いわゆる「闇臓器売買業者」にとっては格好の機会だ。だからこれらの業者は欧州中から群れを成して集まり、臓器などの人体の部位を不法に入手しようとしている、と言われている。結局、心臓や腎臓など必須の体内器官を心底求めている患者というのは、どこからそのような器官を手に入れたかなどは、気に留めないだろうから、だ。

 ヴァン・デン・エンデ氏の記事によると、これらの屠殺業者団(先述のエリザベス・ドゥ・ブルーインが経営しているとされるものがその一例だが)は、まさに戦争の最前線で仕事をしており、「分解」できそうな死亡兵や負傷兵の体を、150ドルから200ドルの価格で買い取っているという。前線での医療施設だけではなく、当該地域の中心都市にある病院も、このような仕事のために使われているという。

 今年の1月5日、アンティセミティズム(反ユダヤ主義).orgというサイトの記事によれば、ウクライナは、「囚人たちから臓器を集め、それらをイスラエルに送っている」とのことだ。この記事では、ロシアの内務大臣の補佐官であるウラジミール・オブチンスキー博士からの聞き取りを取り上げていた。オブチンスキー博士は、かつて、ロシアの国際刑事警察機構の高官を勤めた経歴があり、そこでは少将まで登り詰めた。さらに組織犯罪への対策に関する著書も記している。ただし、このアンティセミティズムの記事の筆者は、オブチンスキー博士の発言の中の最も重要な箇所に触れていなかった。以下、その箇所について要約する。


ウラジミール・オブチンスキー博士。画像はAntisemitism.org

 この聞き取り取材の原版で、オブチンスキー博士はロシアの通信社モスコフスキー・コムソモレッツにこう語っていた。「2022年2月以来、人体の臓器を運ぶ容器を含む、大量の医療機器がAFU(ウクライナ軍)の諸部隊に届けられているという情報が、常時ウクライナから入っています。同時に、『闇臓器売買業者』が死人や負傷者、健康な人からさえ、臓器を取り出すことが横行してるとのことです。健康な人々(つまり臓器提供者のこと)とは、ロシアの囚人やウクライナ国民であり、たまたま運悪く、その時その場に居合わせた人々のようです。」

 ウクライナはその体をどうするのか、という問いに対して、オブチンスキー博士はこう答えた。「燃やすのです。アウシュヴィッツやダッハウ強制収容所で起こったことをなかったことにすることは不可能です。バンデラ信奉者たちは、ヒトラーの直系の後継者たちなのですから。臓器を取り去られた人々の死体を処理するための移動式火葬所が使われている、という情報もあります」と。


イスラエル製の移動式火葬所。画像はベテランズ・トゥデイから

 ベテラン・トゥデイは、イスラエルから運ばれたこれらの移動式火葬所についての記事を2022年2月に出しており、この火葬所のせいで、ドンバスの二共和国沿いに駐留しているウクライナ軍の諸部隊の中で、「混乱」の波が生じている、と報じた。「司令官たちは秘密にしているが、兵士たちの脱走と自殺の事例は山積し始めていた。ただし、兵たちの恐怖心は2014年に端を発する本当の話に基づくものだ」と記事にはあった。

 さらにその話は、2014年よりもさらに前までさかのぼるが、そのことについては後述する。

 オブチンスキー博士の話はさらに続く。「国際的な人道的組織という仮面をかぶった闇臓器売買業者の繋がりが、ウクライナで蔓延していると考えられる理由はいくらでもあります。SBU(ウクライナ保安庁)やウクライナ軍が隠蔽している中で、人体の臓器を不法に入手しているという事実は、2014年にドンバスで市民と軍の間で起こった衝突の際にもあった、という文書が残されています。」

 実際、この調査連載記事の第1部に目を通していただければ、シリア出身の医学生が、5月2日にオデッサにあった人体から臓器を入手した、と主張していたことがわかる。その5月2日というのは、何千人ものネオナチと怒り狂ったサッカーファンたちが、オデッサに赴き、 労働組合会館の外で集まっていた、ほとんどがロシア語話者の活動家である一団を攻撃したまさにその日だ。これらの活動家たちは、彼らがクーデターであると考えていた同年に起こったマイダンでの暴動に反対するために集結していた。

 抗議活動者らは、その会館に押し込まれた。そして、その会館は集会の輪の外から投げ込まれた火炎瓶により、火をつけられた。ユーチューブやその他のソーシャル・メディア上には、その瞬間の模様を伝える数え切れないほどの動画が投稿されたが、これらの動画には、会館に閉じ込められた人々が炎から逃れようと、窓から飛び降りようとしたが、外にいた人々に銃で撃ち落とされたり、叩かれたりしている様子が映し出されていた。 その日、48人が亡くなり、300人以上の人々が負傷した。 警察に「連行された」人々もいた。


労働組合会館での犠牲者の追悼式。画像はTASS/MRonlineから

 第1部に登場したシリア人学生によると、「闇臓器売買業者ら」はこれらの人体を待ち構えていた、という。それは、彼らの雇い主が、そのような人体が発生する状況を把握していたからだ。そして前もって、取られるべき全ての法的措置が準備されていた、とオブチンスキー博士は述べた。

 「ウクライナ当局は『闇臓器売買業者ら』が仕事ができるよう全て手を打っていました。具体的には、これらの業者がウクライナ領内で、よく知られている非政府の医療組織を隠れ蓑にして仕事ができるようにしていたのです。闇業者らは、ウクライナ領内で妨げられることなく仕事ができるために、必要かつ適切な規制や法が用意されています。もちろん、これらの業者の仕事は、全て真っ当なものであるかのように見せていたのです。」

 オブチンスキー博士の考えでは、戦場で臓器を収集するという闇の仕事は、少なくとも1990年代後半から続けられてきた、という。具体的にはコソボ紛争からであり、当時そのような行為が、政府の諸組織やいくつかの世界最大の人道的組織の鼻先で行われていた、というのだ。同博士は、ディック・マーティ欧州評議会(PACE)副議長執筆の「コソボでの人々に対する非人道的行為と不法な人体臓器売買」という2009年の報告書を引用した。


ディック・マーティ副議長。写真はPACEから。

 この報告書の要約は以下のとおり。「フシャ・クルヤ近郊のアルバニア領内の病院で、何名かの戦争捕虜から臓器が取り出され、臓器移植のために、外国に輸送された。1990年代初頭から、既にそのような臓器売買が行われていたという具体的な証拠はあるが、当地域を管轄している国際機関は、このような状況を精査する必要はないと捉えており、実際に行われた捜査も、不完全で表面的なものに過ぎなかった。」

 さらにこの報告書に記載されていたことは、臓器収集を行っていたのは、「コソボ解放軍(KLA)の隊員たちであった。この民兵隊は、紛争末期にコソボに留まっていたセルビア人を標的にし、これらのセルビア人は捕虜として捕えられていた」 というものだった。さらに、捜査官らによると、「コソボに在留していた何名かのセルビア人やアルバニア人が、アルバニア北部にあったKLA管理下の秘密の拘留所で囚われていて、非人道的で酷い扱いを受けていたが、その後その拘留所は完全に消滅した、という事実を支える具体的かつ集中した証拠が、明白にある」とのことだった。

 さらに同報告書にはこうある。「人道的視点から見て、残された最も鋭く繊細な疑問は、行方不明になった人々はどうなったか、という疑問だ。赤十字国際委員会が明らかにした文書では、6千人以上の人々が行方不明となったことが分かったが、うち約1400人の生存が確認され、約2500の死体が発見され、身元が特定された。そのほとんどが、コソボ在住のアルバニア人被害者で、セルビア人支配地域やコソボにある集団墓地で見つかったものだ。」

 となれば、2千人以上の消息がわかっていないことになる。そして注目すべきは、この地域に関わっていた様々な国際組織と、コソボ当局やアルバニア当局の間の協力関係が、「不十分だったと思われる」とその報告書に書かれていたことだ。報告書にはこうあった。「セルビア側は最終的に協力したが、コソボ領内で墓を掘り起こすことは本当に困難で、不可能であることが判明した。コソボ当局は、この紛争終結後公的には行方不明となっている約500人の探索に関して著しくその協力態勢を欠いている。


 自身の報告書において、マーティ副議長が最後に触れたのは、「コソボ紛争に関わっていた西側諸国」の国際組織や政府は、戦争犯罪を処罰する際に、依怙贔屓をしており、セルビア側の戦争犯罪のみ集中して取り上げ、「KLAによる戦争犯罪には目をつぶり、その代わりに戦況を短期だが、ある程度安定させることを重視している」という点だった。

 声明の最後に、マーティ副議長はこう記述していた。「我々が行った捜査から浮かび上がった全体像は、コソボ紛争に関する一般的な通説とは、いくつかの点において劇的に異なる」と。同副議長は、コソボ紛争の詳細な状況を描写したが、それによると、セルビア人だけではなく、米国が支援していたコソボの反乱勢力も戦争犯罪を起こしているのに、そのほとんどの場合において、セルビア人による戦争犯罪のみが、法廷にかけられていた、ということだった。

 「コソボ在住の人々はみな、何が起こり、現状がどうなっているかを認識している」とマーティ副議長は記載した。「しかし、人々はそのことについては話さない。話すとしたら個人的な会話でのみだ。人々はずっと真実が明らかになることを待ち続けている。公式説明ではない、本当の真実を。それが明らかにされることを待ち望んでいる。こんにちの我々の唯一の目的は、コソボ出身の男性や女性の代弁者となることである。さらには、セルビアやアルバニア出身の人々についても、だ。これらの人々は、民族や宗教的な背景に関係なく、ただただ真実を知りたがっているだけなのだ。そして、明らかに罪を犯しているのに不問にされている状況をなくしたいのだ。そして、平和に生活を送ることができること以上の願いはもっていないのだ。」


アルバニア人用拘留所の地図。KLAはこの拘留所を使って、人々に対して非人道的な扱いを行い、人体の臓器の不法売買を行っている。図は、 PACEから

 2018年、ワシントン・ポスト紙は、イスラエルのモシェ・ハレル医師が逮捕された記事を報じた。この医師は、コソボ郊外の「メディカス」という名で知られる病院で闇の臓器収集に関わったとされ、2008年にキプロスで逮捕された。ワシントン・ポスト紙の記事によると、その病院が捜索を受け、「臓器移植が多数行われたことを示す詳しい記録が見つかり、不法に収集された臓器を求めて、カナダ、ドイツ、ポーランドなど世界各国から多くの患者が来院した」ことが明らかになった。


逮捕されたモシェ・ハレル容疑者。画像はワシントン・ポストから。

 ガーディアン紙の報道によると、「メディカス」を運営していたのは、コソボの著名なルトフィ・デルビシという名の泌尿器科学者と息子のアルバンだという。さらにこの記事では、ユサフ・エルチン・ソンメズという名のトルコの外科医が起訴されたことについても触れていた。この医師は、「ハゲタカ医師」という名で知られており、自国で医療行為を禁じられていたのに、この病院で移植手術を行った、とされた。

 「メディカスは、ソンメズやハレルなどが操業していた一連の病院の一つだった。アゼルバイジャンなどの地域で病院を見つけた。南アフリカにも1つあると考えている」と、コソボで「欧州連合・法の支配ミッション」のジョナサン・ラテル執行官が、2013年に語った。

 オブチンスキー博士の聞き取り取材の話に戻ろう。セルビアの報道機関の記事によると、ロシアの補佐官である同氏は、「アルバニア人指導者」が「ベルナール・クシュネルの後ろ盾を受け」る中で、臓器売買に加担していた、とも主張したという。


元フランス 外務・ヨーロッパ担当相のベルナール・クシュネル医師。画像はWikipediaから

 クシュネルは、フランス生まれの医師であり、2007年から2010年まで外務・ヨーロッパ担当相もつとめた外交官である。同医師は1999年7月に国連のコフィー・アナン事務総長により、国際連合コソボ暫定行政ミッションの初代特使長に任命され、同地にて同医師はコソボ内の行政組織に加わった。

 興味深いことに、2015年3月、このベルナール・クシュネル医師 が、「ウクライナ近代化庁」の設立に関わっていた。この組織で、同医師は一団を率い、ウクライナの医療の近代化計画の活動を行っていた。
 
 オブチンスキー博士は、まさに当時、ウクライナで「闇臓器移植業者」が暗躍する好機が生まれた時だったと考えている。その数年後にCovid-19の大流行が始まり、世界の臓器移植の数が急激に少なくなっていったのだから、なおさらだ、というのだ。臓器提供者を求める必要性がこれほど高まったことはかつてなく、米国では臓器を待っている人が1日21人の割合で亡くなっていた。

 ここ10年間の医療科学の急激な進歩により、ほとんどすべての臓器の移植が可能になった。具体的には、肝臓、腎臓、膵臓、肺、腸、角膜、中耳、皮膚、骨、骨髄、心臓弁、結合組織だ。多重構造の移植も行われている。具体的には、肌、子宮、骨、筋肉、血管、神経、結合組織だ。


2017年米国での臓器移植の数と価格。図はFortuneから

 オブチンスキー博士はこう述べた。「実際、新しい技術のおかげで、人体を完全に分解できるようになりました。まるで、レゴ・ブロックのように。さらに、解体された人体は、無傷の人体一体を手に入れるよりも費用がかかります。唯一の問題は、これらの部分をどこで手に入れ、組み立て工場がどこにあるかだけです」と。

 オブチンスキー博士によると、最も強力で成功している「作業所」は、トルコ、イスラエル、韓国にあるという。実際この事実は、「クリニック・オン・コール」や「メディグロバス」といったサイトで出されていた記事とつながるものだ。これらのサイトでは、世界の移植施設を格付けしている。それによると、オブチンスキー博士が言及した国々は、ドイツとともに世界で最も優れた国とされている。

 オブチンスキー博士の考えでは、自身が言及した国々は、臓器移植が最も発展しているドイツやスイスを上回っており、これらの国々では、ある臓器を別の臓器に代用して移植する技術が特に発達している、という。この技術があれば、移植可能な特定の臓器を長々と待たなくてもよくなる。

 加えて、人体の臓器移植を革命的に進化させたのは、米国のトランスメディックという名の会社だ。臓器を氷の上で保管すれば、受領者が受け取ることができるまでの時間に制限が生じ、臓器の提供者から受領者までの距離にも制限が生じる。しかし氷の上に載せるのではなく、臓器を適度な温度に熱することにより、臓器自身が、もとの主人から離れたことを「認識しない」状態を保つことができる。この業者を用いれば、 提供者から臓器が取り出された時から、外科医が受領者に移植する時まで、臓器は何事もなかったかのように機能し続けることができる。

 オブチンスキー博士はこう述べた。「ちょっと想像してください。移植を待っている心臓は鼓動し、腎臓が尿を生産し、肝臓が胆汁!を出すのです。そして暖かい血管が、これらの臓器を巡っているのです。こんな状態を体外で保つことが可能なのです。これがいわゆるブロックチェーン技術です」と。

 さらに、カナダのトロントで、研究者らはドローン機を使えばもっと素早く臓器を運輸できることを示した。ドローン機を使えば、交通渋滞やそれ以外の予見できない遅延に悩まされなくてすみ、ヘリコプター発着場のない病院へも届けられるからだ。


カナダのトロントで、肺を輸送しているドローン機。画像はグローバル・ニュースから。

 しかし生命を救うためのこの技術は、世界に善をなすことができるものなのだが、暗部もある。オブチンスキー博士の考えでは、その暗部が、かつてはコソボ紛争の際に、今はウクライナで現れている、という。「移植取引に関わる資金洗浄の仕組みは、薬物や武器の取引で見られるものと全く同じです。ブロックチェーン技術という、工程を分散できる技術のおかげで、各分野に分配された繋がりの中で、数値や記録を同期でき、国境や各国の法的規制を『乗り越えて』、作業できるようになりました。『闇移植』や人体の臓器の輸送が事実上、前もって準備されていた規制に関係なく実行可能になったのです。」

 オブチンスキー博士は、ウクライナのナチスが権力を掌握することになれば、政府に反対する人々のための強制収容所を作り、その収容所で、ナチス・ドイツが行ったように、ガスで囚人を燃やすのではなく、 臓器や組織を入手するために、人々の体が組織的に分解されるのでは、と予見する。


ソ連軍に解放された後に撮影された、ポーランド・マイダネク強制収容所の火葬場と遺構。画像はホロコースト・エンサイクロペディアから。

 「さらに、米国や欧州にいる資金提供者らは、この事業をできる限りの手を尽くして援助しようとするでしょう。技師面でも、情報面でも、です。個人で行っているのではありません。事業なのです」とオブチンスキー博士は述べた。

 上記はオブチンスキー博士が出した結論であって、もちろん、ご自分の結論は、各自お持ちになってかまわない。ただし、ここで押さえておくべきことは、同博士からの聞き取り取材の内容は、本記事やそれ以外の記事から検証可能である、という点だ。

 ここまで見てきた状況から言えることは、戦争は闇臓器売買業者たちにとって宝の山を得る格好の機会になるだけではなく、戦争の犠牲者たちから臓器を収集することは、もう何十年も前から行われてきた行為であり、戦争で疲弊した地域で、大規模な臓器収集に加担している医師たちの医療技術が発達し、瞬時に臓器を取り出し、袋詰めし、驚くべき短時間で人体を解体できるようになっているようだ、ということだ。

さらに、臓器収集に直接関わっているのは、一兵卒が上官の許可なしに、さらに秘密裡に動いているのではないことが、この記事にある証言内容からすれば十分考えられる。収集活動を行っているのは、紛争が生じれば、外国からハゲタカのように集まってくる勢力のようなのだ。

 そう考えれば納得がいく。結局、戦争というのは、金のために起こるのだ。「自由」や「民主主義」のためなどではない。権威者らが戦意を高揚させようと、どれだけ愛国心に訴えたとしても、だ。武器製造業者や軍の契約業者は、戦争で何十億ドルもこっそり儲けているのだから。そんな中で、医療業者や、少なくともその配下にある秘密の闇組織も、利益を得ようとしないわけがないだろう。

 ウクライナでの臓器売買をとりあげたこの調査連載記事の第2部はここまで。第1部はこちら。第3部は現在執筆中だ。

(訳者:「寺島メソッド翻訳ニュース」では、ウクライナにおける人身売買:違法な臓器狩り(第1部)ウクライナにおける人身/臓器の売買についての調査報告(第3部)の翻訳記事を公開しています。)

筆者について:デボラ・アームストロングは、現在ロシアを中心にした地政学に関する記事を執筆中。かつて米国の地方テレビ局で勤務体験があり、地方段階のエミー賞を2度受賞。1990年代前半には、解体直前のソ連で生活し、レニングラード・テレビ局で顧問として活動。

ウクライナ最高裁長官、300万ドルの賄賂で逮捕

<記事原文 寺島先生推薦>
Chair of Ukrainian Supreme Court arrested over $3 million bribe
Anti-corruption authorities have suggested that other judges may be implicated in the scheme
国家反汚職局は、他の裁判官もその計画に関与している可能性があると示唆している。
出典:RT 2023年5月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月6日


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© Facebook / NABU


 ウクライナの国家反汚職局(NABU)が、国の最高裁所長であるヴセヴォロド・クニャーゼフを拘束したと、現地メディアが報じている。彼は、他の公務員も関与している可能性がある計画の一部で、270万ドルの賄賂を受け取った疑いがあるとされている。

 NABUは月曜日(5月15日)の遅い時間にFacebookの投稿で、「最高裁判所における大規模な腐敗行為、具体的には指導者や裁判官が不正な利益を得るための計画が明らかになった」。と述べた。NABUは「緊急」捜査が進行中であり、詳細はやがて公表されるだろう、と付言した。

 NABUは火曜日(5月16日)に別のメッセージで、キエフの現地時間正午に、この件に関する記者会見を開催すると発表した。

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関連記事:ウクライナで野党の市長が逮捕される

 ウクライナの最高司法機関は、Facebookに投稿し、間接的にこのニュースを確認した。その投稿には、「最高裁判所のクニャーゼフ所長に関連する出来事に鑑み、2023年5月16日に最高裁判所の全員会議が開催される予定です」と記載されている。

 ZN.UA(ウクライナのメディア)は、NABUの匿名の情報源を引用し、当局は最高裁判所の他の18人の裁判官が所有する物件の捜索を行ったと報じている。

 ウクライナ大統領府の首席補佐官であるセルゲイ・レシェンコは、報道との話し合いでクニャーゼフについて言及する際、賄賂の額は300万ドルだとした。ニコラエフ州知事のヴィタリー・キムは、270万ドルという数字を示した。

 ストラーナメディアは、クニャーゼフがウクライナのオリガルヒであるコンスタンティン・ジェヴァーゴからお金を受け取ったと主張した。ジェヴァーゴは現在フランスに滞在しているが、ある銀行の破綻に関与した罪で、ウクライナ国内で指名手配されている。

 今月初め、ウクライナの高等反汚職裁判所は、2017年以来の都市の資金の不正使用の疑いにより、オデッサ市長のゲンナジー・トルハノフの逮捕を命じた。 NABUは4月にジトーミルスキー地域およびハルキウ地域の軍事管理庁で捜査を実施した。

ゼレンスキー、自軍の最高司令官と不和―ビルト紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky at odds with top general – Bild
Commander Zaluzhny called for a withdrawal from a key city, but the president has refused, the newspaper reported
ビルト紙によると、ザルージュニー司令官は重要な都市からの撤退を要請したが、大統領はそれを拒否した。
出典:RT 2023年3月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月6日


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資料写真:ウォロディミル・ゼレンスキーとヴァレリー・ザルジュニー司令官© Ukrainian presidential office via Global Look Press


 政府筋によると、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーと武装部隊の最高司令官であるヴァレリー・ザルジュニー将軍の間で内部対立が進行中であると、月曜日(3月6日)のビルト紙が報じた。キエフの内部関係者は、このドイツのタブロイド紙に対し、数週間前に軍司令官(ヴァレリー・ザルジュニー)がドンバス地域の重要な都市からの撤退を求めたと述べた。

 ビルト紙によると、ザルージュニー将軍は、ロシア軍が制圧する脅威がある中、ウクライナではバフムートとして知られるアルチョモフスクを守り続ける代わりに、大統領にその地を放棄するよう助言した。しかし、ウクライナの指導者(ゼレンスキー)はその都市を要塞であると宣言し、部隊の引き上げを拒否した。

 ロシア軍は今年、アルチョモフスクの戦闘で注目すべき進展を遂げた。民間軍事会社ワグナーグループの責任者であるエフゲニー・プリゴージンは、先週金曜日(3月3日)に「アルチョモフスクは事実上完全に包囲されている」と述べ、避難の可能性がある唯一の道路が1本だけ残されていると語った。

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関連記事:ドンバスの主要都市を包囲─ワグナーの長官

 米国メディアによると、ワシントンはゼレンスキーにアルチョモフスクからの撤退を促し、西側から供給された武器を使用して春に大規模な反攻の準備に集中するよう求めているが、ウクライナ大統領はそのような行動が引き起こす士気の低下を恐れている。アルチョモフスクは、2014年にキエフがドンバスで戦闘を開始して以来、ウクライナが構築した70kmの防衛ラインの一部だ。米国の高官たちは、ロシアへアルモチョフスクを手渡しても、それは戦略的状況に影響を与えないと評価している。

 ビルト紙の情報筋によれば、アルチョモフスクの地上部隊は「なぜこの都市を守っているのか理解できない」と述べ、もっとずっと以前に撤退すべきだったと考えている。ゼレンスキーは最近、ウクライナ軍が「理にかなっている限り」それを守ると述べた。

 このドイツのタブロイド紙はまた、ザルージュニー将軍がロシアに対する軍事作戦を指導していることから、大統領選に出馬するかもしれない、しかも当選する可能性がある挑戦者であると指摘した。将軍は公に政治への野心を宣言していないが、この競争相手になるかもしれない人物への懸念をゼレンスキーが抱いている、という噂がウクライナでは数か月にわたり広まっている。

ウクライナ当局は、「皮肉な」番組が放送されたことを受けて謝罪を要求

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev demands apology after ‘cynical’ skit broadcast
A French satire show host described Ukrainian president Vladimir Zelensky's European tour as a traveling circus
フランスの風刺番組の司会者は、ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の欧州諸国歴訪を、サーカス巡業のようなものであると表現。
出典:RT 2023年5月17日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月2日



資料写真:パリのフランスのRTL放送局本部に出演中のコメディアンのローラン・ジェラ © STEPHANE DE SAKUTIN / AFP


 ウクライナの駐仏大使が TV放送局のRTL局に対して激しくくってかかったのは、ある番組が、ヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の欧州歴訪をサーカス巡業になぞらえる内容を放映したからだった。ヴァディム・オメルシェンコ駐仏大使は、謝罪を要求している。

 この番組の辛辣な皮肉は、「笑えない内容で機転に欠けるものだ」と同大使は火曜日(5月24日)にツイートし、このフランスのコメディアンとこの番組の制作者には、ウクライナに対する共感が欠けており、このような番組を放映する義理もないとも付け加えた。同大使が要求したのは、RTL局がゼレンスキーやウクライナ国民に謝罪することだった。ウクライナ国民は、「自分たちの自由やあなた方フランスの人々の自由のために戦っている」と、同大使は明言し、さらには、「愉快な人生を送る」権利を求めて戦っている、ともツイートしていた。



 このウクライナ大使が問題にしている内容というのは、コメディアンでありものまね芸人でもあるローラン・ジェラが司会を務める番組の一場面で放映されたものであった。その際放映されたネタは、フランスの著名人、特に政治家たちの声色をまねて、ばかげた発言をする内容だった。その模様は、ゼレンスキー自身がかつてコメディアンだったころ行っていたネタによく似た内容であった。ゼレンスキーは自身のTV番組で、役者たちにウクライナの政治家たちを皮肉たっぷりに演じさせていたのだ。

 RTL局が放映した短いネタが笑いものにしていた対象は、ウクライナの大統領だけではなく、多くの西側の政治家たちもだった。具体的には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、ジョー・バイデン米大統領だ。客寄せ係風の語り口で、ジェラはこれらすべての人々を、「ゼレンスキーのサーカス」一座の座員のように紹介し、聴衆に夜のサーカス公演に来るよう促していた。



関連記事:人権団体のアムネスティが、ウクライナから圧力を受け謝罪

 ゼレンスキーはフランスを訪問し、日曜日(5月21日)にマクロンと面会したが、これはゼレンスキーによる欧州諸国弾丸訪問の一環だった。ゼレンスキーのこの歴訪の目的は、ロシアと対戦するための追加の軍事支援を確保するためだった。

 このウクライナ大使館の一団は、西側からゼレンスキー政権を非難する声が上がれば、それを抑えようと、ずっと声を上げ続けてきた。アンドレー・メルニク元駐ベルリン大使は、このような取り組みを行ってきた代表株だが、ウクライナの問題について十分な支援を行っていないと思われるドイツの政治家たちをしばしば攻撃する発言を行っている。 ロシアとの紛争が始まってすぐの頃、この元大使がオラフ・ショルツ首相を「迷惑なレバー・ソーセージ」と呼ぶ醜態を見せたのは、同首相がキエフ訪問に応じなかったためだった。

 今メルニク元大使は外務副大臣の職に就いている。今月同副大臣が、自身の後継者である駐ベルリン大使を叱りつけたのは、ドイツ政府に対して圧力をほとんどかけていないという理由だった。

ウクライナは訓練を施していない徴兵を「肉挽き場」と化しているドンバスに派遣(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine sent untrained conscripts into Donbass ‘meat grinder’ – WSJ
“Bakhmut will teach you,” a commander reportedly told a soldier who complained he had never held a gun before
「バフムートに行けば自然に覚えるさ」。報道によると、指揮官は、銃を手にしたことがないとこぼした兵士にこう伝えたという。
出典:RT 2023年5月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月1日



歩兵戦闘車に乗り込み、アルチェモフスク(バフムート)に向かうウクライナ兵© AFP / Sergey Shestak


 ウクライナ当局が、訓練を施さず、貧弱な武器しか与えていない部隊を用いて、ドンバスの戦略的に重要な都市であるアルチェモスク(ウクライナ側はバフムートと呼んでいる都市だが)での戦いにあてた(結果、敗北したのだが)のは、ウクライナが計画している反撃攻勢のためだった、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(以後WSJ)は報じた。

 火曜日(5月24日)に出された記事において、米国の報道機関である同紙が報じていたのは、ウクライナの16名からなる部隊についての記事であったが、この部隊は2月にロシア領内のドネツク人民共和国のアルチェモスクの戦いにおいて、ロシア軍に壊滅された部隊だった。

 この部隊の構成員のほとんどは、「貧困層」であり、その多くは失業中だった。これらの人々は、ウクライナ軍により北東部のハルキウ州のいくつかの村から徴集された兵士たちであった、と記事にはある。中には、兵役を既に終了していた人々や、何十年も前に兵役を終えていた人々もいたが、ほとんどの人々は実地の戦闘体験のない人だった、とも同記事には記載されていた。

 WSJによると、部隊員は基地でたった2日間過ごした後、そこでソ連製のライフルや軍の制服が渡され、その後、アルチェモスクに派遣されると伝えられたという。そこは何ヶ月もの間、ロシア軍とウクライナ軍の間で膠着状態が続いていた戦場であり、「肉を挽く」ような地域であると称される、21世紀の戦争の歴史において最大の戦場と呼べる場所だった。



関連記事:「バフムート肉挽き機」の内部: ロシアはいかにしてウクライナ人をドンバスの「要塞」であるはずのアルチョモフスクから撤退させたのか?

 徴兵されたこれらの人々の中には、正式に命令を断る文書に署名することを望むものもおり、彼らはその理由としてこの使命を遂行するための適切な訓練を受けていないからだと主張したという。一人の兵が回想して語ったところによると、これまで自分は銃を手にしたことがないので怖い、と伝えたところ、ウクライナ軍の一人の曹長が「バフムートにいけば自然に覚えるさ」とだけ語ったという。

 これらの16名の徴兵された人々はウクライナの第93機械化歩兵団の第5中隊に編入されたが、アルチェモスクで過ごした時間はたった36時間で、隊員のうち11名は戦死あるいは捕虜にされた、とWSJは生き残った兵たちや戦死した徴兵の親類からの話として報じた。この中隊の一人の兵が、同紙に語ったところによると、彼は生まれて初めてロケット推進式の手榴弾を使ったといい、他の兵たちは、ロシア軍による突撃は、「地上の地獄」のようだったと語った。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の推測によれば、ウクライナ側が、「アルチェモスクでの戦闘」に対して、「兵士や領域防衛部隊を徴兵する際、貧弱な訓練や武器しか与えないこともあったのは、西側により訓練や武器の供給を受けた旅団を、この春から開始されると広く考えられていた反撃攻勢のために温存しておくため」だったからではないか、としている。

 アルチェモスクでの戦闘においてロシア側の最前線で活躍したワグナー民間軍事会社のエフゲニー・プリゴジン代表によると、同民間軍事会社の兵たちは「ウクライナ軍の5万人の兵を壊滅させ」、さらに5万~7万人を負傷させたという。ロシア側は先週土曜日(5月21日)、ウクライナ側の重要な要塞であり兵站の要地であるアルチェモスクを完全制圧したと発表したが、ウクライナ側はまだ、同市を失ったことを正式に認めていない。

キエフ政権軍において暴動が起こる危機が迫っているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Looming Mutiny Among Kiev Regime Forces?
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
出典;Global Researh  2023年5月25日 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月1日




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 キエフ政権とその軍との間の関係が少しも良好ではないということは、取り立てて騒ぎ立てるニュースでもない。しかし、ここ数ヶ月、両者の間の亀裂や距離が拡大し続けていて、危険な規模に到達し、ゼレンスキーやゼレンスキーの取り巻きに対して激しく反発する勢力が軍内に生まれている。現在、ウクライナ軍は、機能不全に陥った寄せ集めの状態になっている。そこには、昔のソ連時代の幹部ら、より最近の「NATO化」された将校団と特殊部隊がおり、さらにNATOから軍事訓練を施されているネオナチであることを広言している様々な部隊も加わっている。ただ、彼らの従軍体験と言えば、そのほとんどは、ドンバスの両共和国での戦闘体験なのだが。
 
 昨年の時点では、何万もの傭兵や志願兵も、この不安定な軍に加えることができるだろう。その中には作戦遂行や訓練、キエフ政権の軍の指揮にあたってきたNATOの特別部隊も含まれている。ウクライナの軍事政権の軍内で、こんなにも多くの異なる集団をまとめ、命令を出すことは本当に骨を折る仕事である。西側諸国政府がほぼ達成不可能な任務をこれらの軍関係者らに課している状況を考えれば、とりわけそうだ。そしてこれらの任務というのは、達成可能な目標を達成するための軍事的な行動ではなく、情報戦争を仕掛けようとする任務なのだ。先日のベルゴロド地方(州)のいくつかの村に対して行われた失敗した攻撃の様子を見れば、現状がよくわかる。

 キエフ政権の先頭に立っているヴォロデミル・ゼレンスキーにとっては、そのような作戦を命じるのはたやすいいことだ。というのも、ゼレンスキーは死の危機に直面する現場に送られることはないからだ。それは、西側各国政府がこれらの戦略的(さらに言えば戦術的)に意味のない「攻撃」を仕掛けて、ロシア軍を中傷しようとしているのと全く同じことだ。このことはまさに、ウクライナ軍内の先述した多くの集団がゼレンスキーやゼレンスキー政権に深い失望感を抱いている理由となっている。ウクライナに「クラウス・フォン・シュタウフェンブルグ (訳注:ヒトラーを暗殺しようとしたドイツの軍人)」や、シュタウフェンブルグに追随する「将軍らによる陰謀」がないとは言い切れないが、軍から強い反発の声が上がっていることは、すでに明らかである。このような状況は、ゼレンスキーにとって非常に危険な状況になり得るだろう。これらの集団がそれぞれの違いを乗り越えて団結することになれば、それはあり得る。

 (控えめに言っても)ゼレンスキーが嫌われているのは、ソ連時代の幹部らからだけではなく、「NATO色を帯びた」司令官たちからもだ。その中には、ペトロ・プロシェンコ元大統領と繋がる経歴をもつ最高位の高官らも含まれている。さらにそこに名を連ねている人々を数名挙げれば、ウクライナのセルヒイ・シャプタラ参謀総長や空中挺進部隊のミハイル・ザブロードスキー元司令官や海軍のオレクシー・ネイツパパ司令官やオレクサンドル・シルスキー陸軍最高指揮官らだ。これらの軍の高官らは、何十年間もかけて面倒で時間がかかる過程を経て、ソ連やNATOから軍事教育を受けてきた。したがって、これらの人々は、ゼレンスキーの取り巻きであるGUR(ウクライナ国防省情報総局)のキリーロ・ブダノフ局長が、急遽台頭した際、落胆し、嫌悪感さえ覚えたのも当然だった。

 いっぽう、ゼレンスキーに対しては、ヴァレリー・ザルジニーという最高位の司令官からあからさまに不満が表明されている。この人物は軍内でほぼ紛れもなく最高の権力を享受している人物だ。これら不満分子には、先述したすべての異なる集団が含まれているが、特筆すべきは、ゼレンスキーを持ち上げる宣伝扇動により本当の姿が見えなくさせられているネオナチ部隊も含まれている点だ。政権の先頭にいるゼレンスキーは、自身がまるで軍の司令官であるかのような姿を演出しようとしているが、実際のところは、明確な軍事作戦などほとんど持っておらず、このような状況も大多数の軍の高官らから反感をかう原因になっている。このゼレンスキーの考え方が招いている事態というのは、ゼレンスキーが本質的には自国軍の奮闘を自分が演出する劇場の出し物くらいにしか捉えられておらず、その軍の奮闘の唯一の目的は、情報戦争を仕掛けるためだけであり、その結果ウクライナ軍にとっては不必要な多くの犠牲者を出すことになってしまっているということだ。

 バフムートはこのような状況の最善の(最悪と言った方がいいかもしれないが)の例だ。ザルジニーが何度も撤退を要求してきたにも関わらず、ゼレンスキーは防衛を主張していた。その理由は、バフムートを失えば、西側からの支援や現金の流入が減じられることをゼレンスキーが恐れていたからだった。このような軍事的に不適切な決定をしたせいで、ウクライナの軍事政権は、凄惨な死亡率を出すことになってしまった。情報源により数値は大きく変わるが、最もありえそうな推定では、これまでほぼ25万人のウクライナ兵士が戦死、あるいは重傷を負っていると見られている。いっぽう、今年の2月の時点で、 トルコの報道機関が、(イスラエルの諜報機関からの情報として)詳細に報じた記事によると、ウクライナ側の取り返しのつかない損失は40万人近くに上り、うち約16万人が戦死し、それ以外の兵士は重傷を負ったという。

 キエフ政権側の恐ろしいほどの戦死者数については、数名の高官から明言されていて、その中には、ヴァディム・プリスタイコ駐英ウクライナ大使も含まれる。ザルジニー自身も、米国側のマーク・ミレーウルズラ・フォン・デア・ライエンとの対談においてさえ明言している。ただしライエンがその対談に参加していたことは、大手報道機関という宣伝扇動機関から検閲が掛けられた。その間ずっと、ゼレンスキーはウクライナ国外に多額の資本を確保しており、ゼレンスキー一族の豪華な生活様式は、何百万人ものウクライナの一般市民たちが送っている厳しい暮らしぶりと全く対照的である。このような状況は、ゼレンスキーの同胞らにも当てはまり、ヴェルホーヴナ・ラーダ (ウクライナの最高議会)のルスラン・ステファンチュク報道官(家族をポーランドに移住させた )や、オレクシー・ダニーロウ(息子のマキシムは徴兵を逃れマイアミに逃亡した)などがその例だ。

 ゼレンスキーは、自身のこのような振る舞いがウクライナ国民から総スカンを食らうことを完全に分かっているにちがいない。特に、ほぼ10年間、NATOから軍事訓練を施されてきた軍隊が隣国の軍事超大国との戦争に引きずり込まれて、好戦的な同盟自体が決してなし得なかった方法(航空優勢を完全に欠くこと)で戦争をする羽目になったのだ。ザルニジーがなぜか姿を消したことが、このような現状の全貌の説明になるだろう。ザルジニーは4月13日以降、公に姿を見せていない。ザルジニーの運命について唯一推測できること、及び多くの情報源から推測できることは、何人かが推測している通り、ザルジニーは逮捕され、支持者から遠ざけられている、というものだ。さらに、ザルジニーは殺害されたのでは、とまで述べる人々もいる。真実はどうあれ、キエフ政権内の分断の動きに拍車がかかる状況は避けられないようだ。

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「ロシアに行こうとする者は射殺すると言われた」:今年初めにウクライナから奪還された町ソレダルを見てみよう。

<記事原文 寺島先生推薦>
'They said they’d shoot anyone who wanted to go to Russia': A look at Soledar, the town captured from Ukraine earlier this year
Famed for having the largest salt deposits in the former USSR, Soledar is free from Kiev's control but fighting continues nearby
旧ソ連最大の塩鉱脈で有名なソレダルは、キエフの支配から解放されたが、近くで戦闘が続いている。
出典:RT 2023年5月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月15日


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ソレダルに残る最後の2人の住民が住む廃墟となった建物の近くに立つPMC(民間軍事会社)ワグネル戦闘員。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルの解放は、2023年におけるロシア軍の最大の成功の1つである。ドンバスの町での砲撃戦は昨年5月に始まったが、この街への最終攻撃はすぐに起こった―2023年1月に攻勢を開始したPMCワグナーの戦闘員は、1カ月も経たないうちにウクライナ軍(AFU)を撤退に追い込んだ。

関連記事:写真による報告―撤退するウクライナ軍によって荒廃したルガンスク地方の重要な都市が、どのように甦りつつあるのか

 しかし、ソレダルはまだ平和な生活に戻るにはほど遠い。この町は前線に位置し、ウクライナ側からの絶え間ない攻撃を受けている。RTのアルセニー・コトフ特派員は、少し前まで激しい戦闘の中心地だったソレダルがどのような状況なのか、最近現地に赴いた。


ソレダルへの道

 ソレダルへの道は、ルガンスク人民共和国の西郊に位置するペルボマイスクを経由する。ウクライナは2014年にこの街の支配権を失った。それ以来、3万人以上の現住者がいて多かれ少なかれ普通の生活に戻っているが、地元の人々は戦争や定期的な砲撃に慣れているのも事実だ。ソレダルから約60km(40マイル)に位置し、私はここでPMCワグナーの保安兵の出迎えを受けた。

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ペルヴォマイスク市の入り口にある古い給水塔の上にあるソ連の記念碑 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ペルヴォマイスクはウクライナの砲撃にたびたび見舞われているが、ソレダルから逃れてきた数百人の難民にとって、安全への道のりの最初の停留所であった。

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HIMARSロケットで破壊されたペルヴォマイスクのアパート © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ワグナー・グループの装甲車に乗り、ポパスナヤのこの世の終わりを表すかのような黙示録的な風景を通り過ぎた。この町は―人口2万人以上―かつて前線のすぐ近くにあり、2014年からウクライナ軍によって要塞化されていた。しかし、2022年の初めには、約4千人の住民しか残っておらず、この1年間で、その大多数も去っていった。

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ペルヴォマイスクからソレダルへ向かう途中、廃墟と化したポパスナヤの街並みを望む © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 戦争の後遺症は、都市や町だけでなく、田舎でさえもいたるところに見られる。道路には戦車や武器の残骸が散乱しており、そのほとんどがウクライナ軍の置き土産である。

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ポパスナヤからソレダルへの途上にあるウクライナ戦車の残骸 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ようやく到着した目的地は、道中と同じように荒涼とした雰囲気だった。道路がまた曲がるとき、ソレダルの住宅地が初めて見えた。ウクライナ軍は数カ月間ここに配置されていたが、撤退後もウクライナ軍はこの街の住宅街への攻撃を止めなかった。

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ソレダルの住宅地の様子 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 街の入口ですぐに気づいたのは、アパートの地下室の間に掘られた広範な塹壕の連絡網だった。AFU軍はこれらの地下室を壕として使用し、民間人は上のアパートの一部に住み続けていた。

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街の入り口にあるウクライナの塹壕 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


廃墟化した都市

 現在、ソレダルには事実上、民間人は残っていない。ほとんどの人が昨年出て行った。わずかに残った住民は、ロシア軍の入城を待ち、その後、国内の他の地域へ避難した。

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ソレダルの廃墟となったアパート © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 地元の人たちは、勇気を振り絞って兵士の到着を待つしかなかった。荒れ果てた街にも、住民への敵意が感じられる。いくつかの家の壁やフェンスには、「裏切り者用―スーツケース、鉄道駅、ロシア」と刻まれている。これは、ウクライナの民族主義者が、かつてキエフ政権に属していた土地でロシア人に向けてよく発せられる言葉の一つである。

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碑文: ソレダルの壁に描かれたウクライナ国旗と民族主義部隊「ウクライナ反乱軍」の色で描かれた「裏切り者用―スーツケース、鉄道駅、ロシア」 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ワグネルの戦闘員の一人が私に言った:「私たちがソレダルに入ったとき、驚いたことに、街にはまだ多くの市民が残っていた。ウクライナ側は、全員を避難させることを申し出たが、それは一方向だけ、ウクライナの方へだけだった。ロシア (の他の地域) に行きたい人は誰でも後ろから撃つと言っていた。だから、人々は地下室で私たちを待った。私たちは、夜にバスで避難させた。日中は危険で避難できない。撤退した後、敵が倍返しで街を攻撃してくるからだ。避難者全員に心理的支援を行い、ペルヴォマイスクやルガンスク人民共和国の他の都市に仮住まいを提供した。避難を拒否したのは2人だけだった。彼らは今もこの5階建てのアパートの4階に住んでいる」。

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ソレダルの東地区。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルは決して大きな町ではなかった。2022年の開始時点では、約1万人の人口しかいなかった。

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ソレダルの住宅街の東側からの眺め© RT/Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルの休養・娯楽施設のほとんどはソ連時代に建設された。ソリャニク競技場は1980年のモスクワオリンピックに合わせて開設された。文化施設、スポーツ、音楽学校もあった。

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ソリヤニク・サッカースタジアムでの「競技者への挨拶」の碑文 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 他の旧ウクライナ領ドンバスの都市と同様に、路上には事実上、近代的な車はない。ほとんどの車両はソビエト製のジグリ型である。

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ソレダルの民間車両の残骸 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 市内の多くの建物や家屋が修復不可能な損傷を受けており、近隣の小さな村も同じ運命をたどっている。ソレダル郊外も6ヶ月間にわたって双方から砲撃を受けたからだ。

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ソレダル東郊の破壊された村。そこにはウクライナ軍の砲兵部隊が配置されていた。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT


塩と戦争

 ソレダルは主に塩鉱床で知られている。この鉱物は19世紀末からここで採掘されてきた。1991年までは、有名なドイツの社会主義者カール・リープクネヒトにちなんで名付けられていた。地元住民のほとんどは、旧ソ連最大かつヨーロッパ最大級の鉱床であるアルテムソル塩採掘コンビナートで働いていた。

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塩鉱山の管理棟にあるアルテムソルの看板 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ここの塩の埋蔵量は13トンから160億トンと言われている。1884年、帝政時代にロシアの実業家が最初の施設を建設して以来、採掘を続けてきた。120年間で2億1800万トンの塩が抽出された。

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塩の結晶が描かれた石碑は、アルテムソル社の企業の象徴。土台は土嚢で補強されており、発砲地点として使用された。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 塩の事業の再開について話すのは早すぎる。近隣が廃墟と化しているからだ。軍用ヘリコプターが街を飛び交い、わずか十数キロ先ではアルチョモフスク(バフムート)の戦いが繰り広げられている。24時間、大砲が頭上で鳴り響く。

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ソレダルの遺跡の上を飛ぶロシアのヘリコプター © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルでの生活は、もはや塩の採取ではなく、戦闘である。前線は、1月13日からロシアの支配下にあるソル鉄道駅からわずか5kmしか離れていない。

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ソル駅でのロシア軍の戦闘員 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 かつて塩の採掘で栄えた町は、巨大な地雷原と化した。地面には砲弾やロケット、爆弾が散乱し、爆発による窪地で荒らされている。

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ガソリンスタンド付近の空爆による窪地 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 制圧戦の際、ウクライナの大砲部隊は体育学校の近くに配置されていた。兵士たちは、鬱蒼としたモミの木の枝の下に使用済み弾薬筒を無造作に投げ込んだ。

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ソレダルの体育学校付近の使用済み弾薬筒© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

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ソレダルの路上でグラッドロケット*の隣にいる子犬 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT
* 旧ソ連が開発したロケットの名称

 ロシア軍は地雷の問題に取り組んでいる。今のところ、撤去班が主要な道路すべてで作業をしているが、一歩脇に入れば、多くの不発弾が見つかるだろう。ここでは、自分がどこに向かっているのかを注意深く見ることが不可欠である。

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ソル駅付近の田舎道にある82mm砲の不発弾 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


ある教会の物語

 ウクライナ東部の他の都市と同様、ソレダルでは2014年以降、新しい建物は建設されていない。危険度の高い環境を恐れて、投資家や建設会社はこの地域での作業を避けた。この街のソビエト時代の建築物の中で、聖なる変容教会は唯一の新しい建築物だった。

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ソレダルの聖なる変容教会 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 この教会は、教区民や地元企業からの寄付によって建てられた。2007年に建設が始まった。激化する紛争や多くの教区民の離脱にもかかわらず、工事は続けられた。2015年、戦争のさなか、新教会のドームが立てられた。

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聖なる変容教会の鐘楼 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 「私たちが近づくにつれ、ウクライナ人は自分たちがこの街を支配し続ける見込みがないことを知った。撤退するとき、彼らは手持ちの武器すべてから発砲した。彼らは教会や文化財などの遺産を気にしなかった」と、ソレダルの襲撃に参加した戦闘員の1人は語った。

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聖なる変容教会内のロシア軍兵士 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 教会の壁は砲弾で裂けている。聖障は爆発で破壊されたが、ほとんどの聖画像は生き残り、破片で破損したのは一部だけだった。

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夕日に照らされた被災した教会の様子 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 私が話を聞いた兵士のほとんどは信者で、キリスト教正教会の神社を敬虔な気持ちで扱っている。しかし、被害を受けたため、現在は教会の礼拝や祈りは行えない。前線があまりにも近く、ウクライナ軍が定期的に街を攻撃しているため、復興は今のところ不可能である。

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教会内部の様子/砲撃で穴が開いた教会西側の壁の様子/聖コンスタンティンとエレナのイコン © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


街の新しい住人たち

 ソレダルを案内してくれたのは、かつてロシア軍に所属していた将校だった。

関連記事:写真で見るマリウポリ:ロシアの支配下に置かれた8カ月後、戦禍に見舞われた街はどう変わったか。


 「私たちは祖国を守るためにここにおり、どんな犠牲を払ってもその仕事をする。私たちは、わずか9日間でこの街を占領し、解放した。そして、プロスコヴェイエフカ、ブラゴダトノエと続き、クラマトルスクとバフムートを結ぶ道を進んだ...」。

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ソレダルの学校にいるロシア兵 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 エカテリンブルク出身のサーシャは、元囚人でありながら、国への貢献によって予備釈放を得るためにPMCワグネルに志願したと話してくれた。

 「生命を脅かす」という条文で有罪になり、あと6年刑務所に入ることになった。私は付き合っていた彼女と喧嘩をして、怒って怒鳴ったので、彼女がその件を警察に届けた。再犯だったので、あまり調べてもらえなかった。8年間のうち2年間は服役し、ワグネルグループに入った。仕事は運がよくて、軍司令部で働いている。だから、2週間後には無事に帰国して、戦後の新しい生活を始められる可能性が高いんだ。1カ月ほど休んでから、またここに戻ってくるつもりだ。ここではみんな仲間だし、仲間を放っておけないし、仕事も面白いしね」と語った。

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第266アルチョモフ小銃師団のソ連兵=解放者の記念碑のそばに立つサーシャ © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルは、ワグネルPMCの一種の軍事基地と化している。ここでは、戦闘員たちが新しい戦いの前に、使用済みの武器を試して、充電する。私は数人の軍人と一緒に郊外に行き、ウクライナのウクロップ社がアメリカ製の民間用ライフルZ-10を改良して開発した半自動狙撃銃UAR-10を試射するところを見た。

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押収したウクライナの武器を試すワグネル・グループの戦闘員 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 訓練は長くは続かなかった。AK-74ライフルから数発の挿弾子を発射し、ウクライナの武器を試した後、戦闘員たちは伝言を受け取り、作業の続きに急いだ。

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ソレダル郊外のロシア軍兵士 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ワグネルの戦闘員は、小火器に加えて、戦利品としてウクライナの装甲車も押収している。例えば、M113は1960年から使用されているアメリカ製の装甲兵員輸送車である。

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ウクライナ軍から押収したM113装甲兵員輸送車 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

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ワグネル・グループが押収したウクライナの紋章の収集物 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルのソ連時代の文化・娯楽公園の入口で、戦闘員の一人を撮影した。 彼はRecreationと刻まれた石柱の前に立っている。Recreationはロシア語で「休息」を意味し、「休息を与えよ」と読むことができる。半年間の契約後、多くの戦士が休息を取るために故郷に帰ることを夢見る。

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ソレダーの文化・娯楽公園にいるPMCワグネルの戦士 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルの平和な生活への復帰を議論するのはまだ早いが、地元当局はすでに復興計画を練っている。ドネツク人民共和国のデニス・プシリン代表代行によると、ソレダルは全く新しい方法で再建され、最大の企業であるアルテムソルが操業を再開する予定だという。前線が都市からさらに遠ざかると同時に、これらすべてが可能になる。

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日没時にソレダルの中央通りを歩く一組のロシア兵 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


写真および報告は、独立系フォトジャーナリスト、アルセニー・コトフ。

ウクライナ軍によるドネツク市場への攻撃はテロ行為―西側メディアは完黙

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian strike on Donetsk market was a terrorist act
When artillery hit a busy public space in Donetsk, it brought flashbacks of attacks in Gaza and Syria
ドネツクの賑やかな公共スペースを砲撃が襲ったとき、ガザやシリアの攻撃が思い返された。
筆者:エヴァ・バーレット(Eva Barlet)
出典:RT 2022年4月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年5月15日



エヴァ・バートレットは、カナダの独立系ジャーナリストである。中東の紛争地、特にシリアとパレスチナ(4年近く居住)に長年取材してきた。@evakbartlett


© Eva Bartlett


 木曜日(4月27日)にロケット砲を受けたドネツクの市場がキエフの支配する都市であったなら、死亡した5人の市民の名前と顔はすべての主要ニュースサイトに掲載されていただろう。しかし、それはドネツク人民共和国(DPR)の市民に対する新たなウクライナ軍の攻撃だったため、死者とさらに23人の市民負傷者はほぼ確実に報道されないだろう。それは、政権による8年間のドンバス支配と政権が攻撃したことを西側報道機関が8年間無視してきたことと同じだ。

 DPRの医療省によると、「キーロフスキー地区のテクシルシク地区での攻撃で、4人がその場で死亡した。患者1名は搬送中の救急車の中で死亡した」。

 もう一人のジャーナリストと一緒に、タクシーで爆撃された市場に向かった。私たちが到着したとき、2人の死者がまだ地面に横たわっていた。他の遺体はすでに運び出されていたが、地面には血痕が残り、近くのドアは破片で穴が開き、あたりは爆撃の瓦礫だらけだった。


© Eva Bartlett

 おそらく、救助隊員はまず負傷者に対処し、ウクライナのさらなる攻撃の可能性があるため、すべての死者を回収することを優先しなかったのだろう。私はガザでこのような経験をした。イスラエル軍は攻撃現場に人が来るのを待ち、その後再び爆撃をしたのだ。

 区の安全委員会の現地職員であるゲンナディ・アンドレヴィチによると、午前11時40分、グラッドミサイルが、遺体のあった野菜・衣料品市場と、向かいの家庭用化学品・建材市場の2カ所に落下したという。後者の方がはるかに被害が大きく、屋台は完全に焼け落ちたが、死者は出ていない。

 ゲンナディは私たちと一緒に野菜市場まで歩き、2014年以来続いているウクライナの攻撃について話してくれた。最近の砲撃は、市場外のガソリンスタンド付近、市場の向こうの住宅、そして自分の市場の管理棟を襲い、2人の同僚を殺害した。

 この時間帯なら市場は人で溢れていたはずで、ウクライナは何を撃っているのかよく分かっている、と彼は指摘した。

 「ここに市場があること、10時から13時までは人がたくさんいることを彼らは知っています」と、店の前を通りながらゲンナディは言った。

 ここは完全に民間の地域で、軍事施設はない。
動画はこちらからご覧ください。訳者)

他に誰が市場と公共区域を攻撃しているか?

 一日のうちで最も人通りの多い時間帯に、混雑した市場や通りを攻撃することは、西側メディアが沈黙する中、シリアのテロリストが何年も前から行ってきたことである。イスラエルもまた、地球上で最も人口密度の高い場所のひとつであるガザの住宅地や公共施設を攻撃し、長い間行ってきたことだ。

 2009年のガザ戦争では、イスラエルはモスク病院、避難民が住む建物などを空爆した。特に注目すべきは、1500人近くが避難しているジャバリヤの国連運営の学校をテルアビブが攻撃したことである。少なくとも40人が死亡した。ザイトゥーン地区では、イスラエル兵が銃でサモウニ一家100人近くを一軒の家に押し込め、その後爆撃し、一族の48人を殺害した。

 戦争中、私は救急車に乗っている衛生兵に同行し、イスラエルの戦争犯罪を記録していた。ある日、私が同行した衛生兵(アラファ・アブド・アルダイム)は、イスラエル軍が、禁止されているフレシェット(矢)弾を彼と彼がそばにいた救急車に向けて直接発射し、殺害された。翌日、イスラエルは、アラファの死を悼むために狭い場所に集まっていた親族や友人たち6人を、同様にフレシェット(矢)弾を使って殺害し、25人を負傷させたのだ。

 ダマスカスの旧市街は、曲がりくねった路地、重なり合う家々、教会、モスク、学校、混雑した屋外の飲食店、市場などが迷路のように入り組んでいる。東グータを占領しているテロ集団は、子供たちが学校に行くときや、人々が市場に行くときに最も頻繁に砲撃した。

 旧市街の東門やトーマス門に長く滞在したため、砲撃を経験し、悲しいけれども、テロリストが混雑した場所に砲撃を行ったという証言を多く得た。

 今でもダマスカス旧市街を歩けば、迫撃砲の跡を見つけることができる。そして、その路地を歩けば、普段からいかに混雑しているかがわかる。つまり、1回の迫撃砲の爆発で多くの人々が負傷し、死亡しただろう。

関連記事:マイダン分断から7年、ウクライナはドンバスへの砲撃を強化しているが、西側メディアはそれを全く報じない。

  例えば、2014年4月中旬には、小学校と幼稚園を攻撃し、1人の児童が死亡、65人の児童が負傷するなど、長年にわたって砲撃によって殺傷された無数の児童の一部に過ぎない。

 ちなみに、私がこの負傷した子供たちを見た同じ病院にBBCが来ていて、テロリストが毎日迫撃砲を撃っているとはっきり言われたことを後で書いた。その後に掲載されたBBCの記事には、こんな一節があった:「政府はまた、支配下にある地域に発射したと非難されている」。

 また、アレッポのテロ爆撃については、私が滞在していた2016年11月のある日を引き合いに出して、その日のうちに18人が死亡し、200人以上の市民が負傷したことを書いた。これらは、アレッポだけで家や公共の場へのテロ攻撃によって殺された約11,000人の市民の一部であった。

 シリアやパレスチナ、その他の場所でのテロ行為を挙げ続けることもできるが、私が言いたいのは、ウクライナが混雑した市場を爆撃するのは、意図的なテロ行為であるということである。ウクライナが過去8年間、ドンバス共和国の家々を執拗に爆撃してきたのと同じだ。

 欧米の報道機関はこれを報道せず、欧米の政治家はこれを非難せず、美徳の看板を掲げる人々はこれについて語らない。そして、あなたが実際に行ってそれを記録すると、彼らはあなたを容赦なく黙らせるだろう。


© Eva Bartlett

 市場襲撃に関する私の最初のツイートは予想どおり荒らされ、遺体は偽物だ、爆破事件は起きていない、「それを証明しろ」というような書き込みで埋め尽くされた。

 私の観察と写真、そしてゲンナディの証言だけでは十分な証拠にはならないので、私の映像には、爆撃されたときに市場にいた地元の人が撮影した、爆撃直後の様子を収めた映像も入れた。ゲンナディ自身も、携帯電話で炎を消す消防士の姿や、新たな爆弾の残骸に囲まれた負傷者や死者の姿を映した写真を見せた。

 しかし、今日、私たちは次のような状況に至っている: ウクライナは、しばしば西側から入手した武器を使って、ドンバス共和国の人通りの多い民間地域を爆撃し続け、さらに多くの民間人を殺している。西側の偽善者たちは、ロシアの戦争犯罪をしきりに非難するだけでなく(彼らは決して証明できず、しばしば矛盾を生じる)、報道機関とトロールファーム*は連携して、国民をガス抜きしてウクライナの戦争犯罪をごまかすことに取り組んでいる。
* ,トロールファクトリーとも言う。政治的意見や意思決定に干渉しようとするインターネット・トロールの制度化されたグループ。 ある調査によると、世界中の30の政府が、プロパガンダを広め、批評家を攻撃するために、そのキーボード軍に支払いをしている。なお、「トロール」の由来は、北欧神話に登場する怪物「トロール」。森や洞窟に住む邪悪な存在とされている。(ウィキペディア等)

ドネツクの市民がウクライナ軍の砲撃におびえ続ける中、現地にいる記者がその恐怖を詳しく報告

<記事原文 寺島先生推薦>
As Donetsk civilians live in constant fear of Ukrainian shelling, a reporter on the ground details the terror
Documenting Kiev’s attacks on residential areas is becoming a horrible, tragic routine
キエフの住宅地への攻撃を記録することは、恐ろしくて悲劇的な日常になりつつある。
筆者:エヴァ・バーレット(Eva Barlet)
出典:RT 2023年5月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月14日



エヴァ・バートレットは、カナダの独立系ジャーナリスト。中東の紛争地、特にシリアとパレスチナ(4年近く居住)に長年取材してきた。@evakbartlett



ロシア、ドネツク人民共和国のドネツクでウクライナの砲撃により破壊された旅客バス。© Sputnik / Taisija Voroncova


 4月28日にドネツク中心部で行われたウクライナ軍の激しい砲撃により、8歳の少女とその祖母を含む9人の市民が死亡し、少なくとも16人が負傷した。犠牲者は乗っていたミニバスに砲弾が当たり、生きたまま焼かれた。

 この攻撃は、大病院、アパート、住宅、公園、道路、および歩道も標的とした。すべて民間の地域であり、軍事目標ではない。

 JCCC(Joint Monitoring and Co-ordination Center on Ukraine’s War Crimesウクライナの戦争犯罪に関する合同監視調整センター)のドネツク人民共和国(DPR)代表事務所によると、キエフ軍は「スロバキア製でNATO諸国がウクライナに移送した」高爆発性破片ミサイルを発射した。同日の以前の砲撃について、JCCCは、米国製のHIMARSシステムが使用され、「専ら都市の住宅地、中心地区」を標的としたと指摘している。



関連記事: ウクライナによるドネツク市場への攻撃はテロ行為だった。

 私はドネツクの郊外でアルチョモフスク(別名バフムート)からの避難民にインタビューしていた時、午前11時過ぎに激しい砲撃が始まった。午前11時過ぎに始まった最初の砲撃で、私は焼け焦げたバスがまだ煙を上げ、乗客の黒焦げの死体がバスの骨組みに溶けている惨状を目の当たりにした。この悲惨な光景は、悲しいかな、一度だけの出来事ではなかった。

 他の場所では、市の職員がすでに瓦礫を撤去し、道路の損傷部分の舗装を始めていた。今年1月1日、ウクライナが市街地に25発のグラッド(訳注:ソビエトが開発したロケット)を撃ち込んだのをはじめ、ウクライナの砲撃の後にこのような光景を何度も目にしてきた。同様に2022年7月、ウクライナの砲撃で市街地の市民4人が死亡し、うち2人は同様に炎に包まれた車の中にいた。約1時間後、私が現場に到着すると、作業員が道路の被災箇所を舗装していた。

 共和国外傷センター病院の被害はすぐに片付けられたが、砲撃直後にTelegramで共有された動画には、壁の1つにぽっかりと穴が開いている様子が映っている。その部屋には、ドネツクで唯一のMRI装置があったようだ。

 ドネツク中心部の大通り、アルティオマ通りは、ウクライナの攻撃で数え切れないほど狙われており、破壊は明らかだった: 爆撃に巻き込まれた2台の車、粉々になった窓やドアを塞ぐアパートの住民、ガラスや瓦礫が吹き飛ばされる聞き慣れた音。その日最初に標的となった住宅地では、ある家の裏の巨大なくぼみに、別の家の壁や屋根がロケットの破片と混じっていた。



ウクライナの戦争犯罪はさらに続く

 2022年4月、ドネツク西部のキーロフスキー地区にある大きな市場地区が攻撃され、民間人5人が死亡、23人が負傷した。私はその余波を記録するために現地に向かったが、5人のうち2人がまだ近くの路地に横たわっているとは思っていなかった。この砲撃は昼前で、この辺りでは人通りの多い時間帯である。このような時間帯に爆撃を行うことは、より多くの市民を傷つけ、殺すための陰湿な戦術である。

 同じ地域を二重三重に叩くのも、ウクライナ軍が使う手法の一つだ。昨年のインタビューで、DPR緊急事態省消防救助隊局のセルゲイ・ネカ局長は私に、「我々の部隊が現場に到着すると、ウクライナは砲撃を開始するのです。多くの機材が損傷し、破壊されました」と語った

 同じくウクライナの攻撃を受けているドネツクのキエフスキー地区の救急部主任、アンドレイ・レフチェンコはこう語る:「彼らは私たちが到着するのを30分も待っている。私たちはそこに到着し、人々の支援を始めると、砲撃が再開される。私たちが外に出て、火を消し、人々を助けると、砲撃が再開されます」。


 私は6月中旬にドネツクに滞在していたが、その日はウクライナによる中心部への砲撃が特に激しく、少なくとも5人の市民が犠牲になった。ドネツク人民共和国(DPR)当局の報告によると、「2時間以内に、300発近いMLRSロケット弾と砲弾が発射された」そうだ。グラッドロケット1発が産科病院に命中し、屋根を切り裂いた。

 翌月、ウクライナは国際的に禁止されている「花びら」地雷を含むロケット弾を発射した。ドネツク中心部、西部、北部、その他の都市の通りには、踏むと致命傷にはならないが、グロテスクな損傷を与えるように設計された、見つけにくい地雷が散らばっていた。この地雷は、今日まで新たな犠牲者を生み続けている。前回この記事で紹介したときには、この14歳の少年を含め、104人の市民が負傷し、3人が死亡した。その後、犠牲者の数は112人に増えている。


 8月、ドネツク中心部に対するウクライナの激しい砲撃が、他のジャーナリストやカメラマン数十人とともに、私が滞在していたホテルの真横を直撃した。その日、ホテルの外にいた女性1人と子供1人を含む6人の民間人が殺された。その女性は、まもなくロシアに留学する予定の優秀なバレリーナで、祖母とともに、その日、バレエの先生も殺されたが、彼女は世界的に有名な元バレリーナであった。

 9月のわずか5日間に3回行われたウクライナ軍による市街地への砲撃で、26人の市民が死亡した。9月17日には4人が殺され、そのうちの2人は同じ中心部のアルティオマ通りで車の中で生きたまま焼かれた。その2日後、16人の市民が殺され、遺体は通りに散乱し、あるいは認識できないほどの肉の山となっていた。3日後、ウクライナは中央市場の隣を攻撃し、6人の市民を殺害した。2人はミニバスの中で、残りは路上にいた。

 その後、11月と12月にドネツクとその周辺都市を訪れ、ドネツクの市民地域と北のゴロフカ集落に対するウクライナ軍の砲撃(HIMARS使用)の余波を撮影した。11月7日のドネツク中心部への砲撃は、私がインタビューした若い母親の幼児を殺してしまう可能性があった。幸い、最初のロケット弾の音を聞いた後、彼女は息子と一緒にトイレに駆け込んだ。穏やかな気持ちが戻ると、息子のベッドに破片が落ちていた。



関連記事:西側メディアは、ウクライナがNATOの兵器を使ってドンバスで罪のない市民を殺害していることを無視し続けている。

 11月12日のゴロフカへの砲撃で、美しい歴史的文化的建造物が被害を受け、屋根の一部と中の劇場ホールが破壊された。同センターの館長によると、この建物はドネツク州で最も優れた映画館のひとつであり、この街で最も古く、最も美しく、最も愛されている建物のひとつだったそうだ。彼は、HIMARSシステムは非常に精密な兵器であるため、今回の攻撃は偶発的なものではなかったと指摘した。

砲撃は続く

 16日早朝、復活祭のミサの最中に、ウクライナ軍はドネツク中心部の聖なる変容の聖堂の近くに20発のロケット弾を発射したと、フランス人ジャーナリストのクリステル・ネアンが報告し、民間人1人が死亡、7人が負傷したと指摘した。砲撃は大聖堂のすぐ後ろにある中央市場にも及んだ。ちょうど1週間前の4月7日、この市場に対する別の砲撃で、民間人1人が死亡、13人が負傷し、市場自体にもかなりの被害が出た。

 ウクライナはドネツク西部と北部地区への砲撃を続け、ゴロフカやドネツク北部のヤシノバティア(数日前に民間人2人が死亡)にも砲撃を加えている。

 4月23日、ドネツク西部の被害が大きいペトロフスキー地区で砲撃が行われ、男性1人が死亡、5人が負傷した。同日、ドネツク北東部の村では、ロケット弾により30代の女性2人が死亡した。防犯カメラの映像には、女性たちが身を隠そうとした瞬間が映っている。彼女たちを殺した弾薬は、彼女たちが集まっていた場所のすぐ隣に命中した。

 数日後、別の都市に避難しているアルチョモフスクの難民にインタビューに行く途中、私は彼女たちが殺された小さな村の近くを通りかかった。なだらかな丘、美しい川、美しい教会など、静かで穏やかで風光明媚な地域で、何十回となく通った道だ。前線からは遠く離れている。この2人の女性の殺害は、ウクライナのさらなる戦争犯罪である。

 ここの人々は、2014年にキエフがドンバスで戦争を始めて以来、ウクライナの砲撃やその脅威によって常に恐怖にさらされている。

ポーランド軍トップが語るNATOとロシアの代理戦争に関する不評の真相

<記事原文 寺島先生推薦>
Poland’s Top Military Official Shares Unpopular Truths About the NATO-Russian Proxy War
筆者:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年4月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月14日





 ポーランド軍参謀総長ラジムンド・アンジェイチャク将軍の意図を疑ったり、彼がいわゆる「ロシアの工作員」であると疑ったりしてはならない。彼は、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争に西側が勝つことを心から望んでいるが、自分が今話した不評な真実を西側が認めなければ、キエフが敗北することになるかもしれないので、この代理戦争の負けを非常に心配しているのである。

 ポーランド軍参謀総長のラジムンド・アンジェイチャク将軍が、前回メディアの注目を集めたのは1月下旬のことで、その時はロシアがいかに手強い存在であるかを詳しく説明したが、今回は現状の具体的な評価について立論したことで再び話題になっている。ポーランドのDo Rzecy紙は、彼が最近、国家安全保障局との戦略会議に参加し、ウクライナにおけるNATOとロシア代理戦争について不人気な真実を語ったと報じた。

 アンジェイチャクは、この紛争の経済力学を考慮すると、キエフにとって状況は全く良いとは言えないとし、特に金融、インフラ問題、社会問題、技術、食糧生産などに注目している。この観点から、ロシアがその活動を抑制する構造的圧力を感じ始めるまで、あと1~2年は特殊作戦を継続できると予測している。

 それに対して、キエフは数百億ドルもの援助を受けながら、最大限の目的を達成するにはまだほど遠い状況にある。2月中旬にNATO総長が宣言した「兵站(へいたん)競争」/消耗戦を含め、ポーランドの西側友好諸国はウクライナの勝利を阻む課題を適切に評価していない、とアンジェイチャクは率直に語った。もう一つの深刻な問題は、難民がいつまでも祖国に帰りたがらないということだ。

 経済的、物流的、そして国民的な要因が重なり、「ウクライナに安全な未来を築く機会を与える」ために、これらの問題に対する認識を早急に高める必要があると彼は明言した。この動機は、彼が共有した文脈では、欧米のさらなる援助のための婉曲表現である。また、「兵士として、私は最も不利で実行が困難な場合を提示し、ウクライナを助けることができる、また助けるべきすべての人々に場を提供する義務がある」とも付け加えて、詳しく説明した。

 彼はウクライナにおけるロシアとの代理戦争に西側諸国が勝つことを心から望んでいるので、アンジェイチャクの意図を疑ったり、彼がいわゆる「ロシアの工作員」であると疑ったりするべきではない。しかし、彼は、自分が今話したような不都合な真実を西側諸国が認めなければ、ウクライナが敗北するかもしれないということも非常に心配しているのである。彼の考えでは、それを認めなければキエフが敗北することになる。しかし、ポーランドがやろうとしているように、この紛争をいつまでも長引かせることは、もっと悲惨なことになるかもしれないという議論も説得力がある。

 結局、彼が注目した3つの課題は、いずれもすぐに克服できるものではない。唯一の例外は国民の問題かもしれないが、そのためには難民の国外追放を可能にするためにEUの法律を変える必要があるが、それは起こりそうにない。経済的、物流的な要因は、ウクライナだけでなく、欧米全体に関わる体系的なものだ。紛争が長引けば、欧米のウクライナに対する多角的な援助の速度、規模、範囲を維持することは不可能である。

 アンジェイチャク自身も認めているように、「弾薬がないのだ。ウクライナに機材を送るだけでなく、枯渇しつつある在庫を補充する準備もできていない」。ポーランドがウクライナにとって英米枢軸に次ぐ3番目の重要な支援国であることを考えると、他のNATO加盟国も同じように支援の速度、規模、範囲を維持するのに苦労していることがよくわかる。

 つまり、キエフの迫りくる反攻作戦は、ロシアとの和平交渉の再開の前の「最後の砦」となる可能性が高いということである。アンジェイチャクはこの「政治的に不都合な」事実を強く認識しているようで、だからこそ、作戦終了まで代理人たちにできる限りの猶予を与え、協議再開までに比較的に有利な立場に立つことを望んでいる。

 彼と、彼と同じような考えの人々は次の2つの危険極まりない賭けをすることになる:1)今度の反攻作戦が、少なくとも地歩を固めるのに多少なりとも成功すると期待する、2)この作戦が最終的に終了すれば、ロシアが和平交渉の再開に同意すると期待する。それに対応する危険は、以下の通り明白である: 1)反攻作戦が大失敗し、ロシアがその失敗を利用して不明確な地盤を獲得する、あるいは2)キエフが要請してもモスクワが協議再開に応じない可能性がある。

 責任ある政治家であれば、これらの2つの選択肢を当然だと考えることはないだろう。それゆえ、キエフが反攻を断念し、中国の停戦提案を受け入れる方が、失敗したり、ロシアが欧米の支援がまもなく終わるかもしれないと知りながら戦い続けたりする危険性を取るよりも、間違いなく良いのである。アンジェイチャクが指摘した経済的、物流的な課題により、こうした相互に関連する最悪の筋書きの可能性は高まっており、ロシアの不手際がその確率を均衡させるだけである。

 しかし、あらゆる兆候は、それに内在する深刻な課題にもかかわらず、反攻がまもなく開始されることを示唆している。そして、この決定は、1500億ドルを超える援助が具体的な何かに使われたことを西側諸国の国民に示す必要性と政治的要因に関連しているのだ。たとえ悲惨な光景に終わったとしても、意思決定者はそのリスクを負うことを厭わない。アンジェイチャクのように、和平交渉を再開する前に最後の勝利を収めたいという必死な思いから、全力を尽くすことを望む者もいる。

駐仏中国大使ルー・シェイ、西側が震え上がるいくつかの事実を述べる―クリミア、ウクライナ、バルト三国の独立に関して

<記事原文 寺島先生推薦>
Lu Shaye States Some Facts: The West Trembles
ルー・シェイ、いくつかの事実を述べる:西側は震え上がる。
筆者:クリストファー・ブラック(Christopher Black)
https://journal-neo.org/author/christopher-black/
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年5月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月13日


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 駐仏中国大使のルー・シェイ氏は、フランスのテレビニュースチャンネルLCIのジャーナリストと世界と中国情勢について長時間、広範囲に及ぶインタビューを行った際、クリミアはウクライナの一部であるかどうかという質問に対して、「それは歴史をどう見るかによる」「クリミアは長い間ロシアで、ソ連時代にウクライナに与えられただけ」と述べている。

 そして、こう付け加えた、

 「これらの旧ソ連諸国でさえ、主権国家としての地位を具体化するための国際協定がなかったため、国際法上有効な地位を有していない」。

 この2つの発言は、欧米、特にバルト三国やウクライナで怒りの反応を引き起こし、彼の発言を非難する声明や、彼の解任を求める声が上がった。

 しかし、このような騒動の中で、西側のメディアや権力の中枢には誰も、彼の発言は正しいのか、という問いを投げかけようとする者はいなかった。彼の発言は正しいのだろうか。答えはイエスであり、西側諸国の怒りは、ヨーロッパのソ連崩壊後の秩序全体が砂の基礎の上に築かれているという認識によるものである。

 このことと、その結果を理解するためには、1991年のソ連における反革命とソ連解体時の出来事を検証する必要がある。

 ソ連の反革命とソ連邦の崩壊の歴史は長く複雑であり、このような短い論考で要約するのは難しい。しかし、ルー大使が提起した問題の核心に迫るためには、1977年のソ連憲法を検証することで、この複雑な網を突き破ることができる。

 憲法の第1条には、次のように書かれている、

「ソビエト社会主義共和国連邦は、全人民の社会主義国家であり、国内のすべての国家と民族の労働者、農民、知識人の意思と利益を表現する」。

 第72条にはこう書かれている、

「各連邦共和国は、ソビエト連邦から自由に分離独立する権利を保持する」。

 しかし、この点に関して重要なことは、第74条と第75条がソ連最高会議の優越性を確認しており、構成共和国の法律とソ連最高会議の法律との間に矛盾があった場合には、ソ連最高会議の法律が優先されたことである。

 第74条にはこうある、

「第74条 ソビエト連邦の法律は、すべての連邦共和国において同一の効力を有する。連邦共和国の法律と全ソ連の法律との間に相違がある場合には、ソ連の法律が優先される」。

 第75条には、次のように書かれている、

「第75条 ソビエト社会主義共和国連邦の領土は、単一であり、連邦共和国の領土を構成している。ソビエト社会主義共和国の主権は、その領土全体に及ぶ」。

 第72条は、共和国が分離独立するための手続きを定めていなかったが、1990年4月3日、ソ連最高会議は、共和国が分離独立するための手続きを規定する法律を採択し、その溝を埋めた」。

 本質的には、1990年にソ連最高会議で採択された分離独立法は、分離を望む共和国での国民投票の実施を要求し、有効な投票権を持つ共和国住民の2/3の賛成票を必要とした。その後、国民投票の結果をソ連最高会議に提出して承認を得る必要があり、その後、分離から生じるすべての問題とその対処方法を解決するための様々な手続きが実施された。

 最高会議が承認すると、国の最高議会である人民代議員会でも承認されなければならない。

 また、分離独立法では、モスクワの人民代議員会の承認を得て、財産などの問題を解決するための5年間の移行期間と、独立に反対して離脱を希望する人たちの再定住費用の分離独立国側への支払いも義務付けられた。

 分離独立の際に決定されるべき主要な問題の一つは、ソ連に残ることに投票した少数民族に属する人々の権利であり、彼ら自身がソ連内に留まるため、あるいは補償を得て離脱するために、今度は分離共和国から離脱する権利であった。

 バルト三国にはロシア人が相当数住んでおり、またウクライナの場合はロシア人が多数住んでいたため、この点は大きなポイントであった。ウクライナの東部では、過去も現在も国民の大半がロシア人である。

 1990年改正案は長いので、ここでは本文に含めないが、特に1990年以降のウクライナでの出来事を考慮すると、詳細に検討する価値があるため、読者はここで確認することができる。

 この点では、次のような第3条に注目しなければならない、

第3条

「自治共和国、自治州、自治管区を構造内に含む連邦共和国では、住民投票は自治組織ごとに別々に行われる。自治共和国と自治組織の国民は、ソ連内に留まるか、あるいは分離する連邦共和国内に留まるかどうかの問題を独自に決定する権利を保持し、また、自らの国家法的地位の問題を提起する問題もまた提起することができる」。

 この規定は、クリミアがウクライナの一部になるかどうかを決める際には重要な要素となる。なぜなら、クリミアは自治州であり、それゆえ、クリミアの人々は、分離するウクライナに参加するか、あるいはそのままソ連に留まるかを、独立して、住民投票を行う権利を持っていたからだ。しかし、クリミア州の市民には、そのような住民投票は許可されることはなかった。キエフがそれを許可しなかった理由は理解できる。なぜなら、もし許可されたのなら、2014年の住民投票で証明されたように、クリミア人の大多数はウクライナではなくソ連邦に残ることに投票することになっただろうから。

 しかしこの時期、西側の工作員は現在のようにバルト三国やウクライナで活発に活動しており、リトアニア人、エストニア人、ラトビア人の反革命分子は、自分たちの共和国は自発的にソ連に加わったのではなく、1940年6月にソ連に強制的に併合されたのだから、分離に関するソ連の新法は自分たちには適用されないと主張した。

 エストニアは1721年から1920年までの300年間、ロシアの一部であったことに注目しなければならない。この期間、エストニアは第一次世界大戦とロシア革命を利用してロシア帝国から離脱しようとした2年間の紛争の後、ボルシェビキが独立を認めた。ただ、これは、1940年、ドイツの脅威から自国を守るためにソ連がエストニアを再占領し、エストニアでは親共産党政権が誕生してソ連への加盟を要請したため、この独立は短期間で終わることになった。1940年からエストニアはソ連の一部となり、構成共和国としてソ連の法律に従うことになった。

 リトアニアもエストニアと同じ立場をとっていたが、当時、ゴルバチョフの報道官だったアルカディ・A・マスレンニコフは、リトアニアの現在の法的地位について問われ、バルト共和国には例外がないことを示唆した。

 「リトアニアはソビエト連邦の一部であり、共和国の国家構造に関するすべての問題とソビエト連邦へ入るかそこから出るかの問題は、たとえその根拠が誰かの意に沿わないものであっても、憲法上の根拠に基づいてのみ解決することができる」。

 ラトビアも似たようなもので、ポーランド、ドイツ、スウェーデン、ロシアの支配下に置かれた時期がある。しかし、1795年からはロシア帝国の一部となった。第一次世界大戦とロシア革命の間に、ラトビアも微妙な独立を果たしたが、これはドイツがポーランドに侵攻したことで終わった。そのときラトビアは、1940年8月5日に政権を握った新人民会議の要請で、ソ連への加盟を求め、これも認められた。

 ところが1988年から90年にかけて、バルト三国は、西側諸国とその情報機関の後押しと支援を受けて、自分たちが拘束されているソ連憲法の遵守を拒否し始め、一連の違法な措置の後、1991年にソ連からの独立を宣言した。それは、モスクワの反革命勢力に対する共産主義勢力とその一味によるクーデターが失敗した後のことだった。

 しかし、彼らの行動は、彼らが統治し服従していた憲法の下で違法であっただけではない。 彼らはソビエト連邦の大多数の市民の意思に反していた。なぜなら、1991年にもう一つの重要な進展があったことにも留意しなければならないからだ。この年、ソ連全土で国民投票が行われた。それを拒否したいくつかの共和国はあったが、そこで提起された問題は、ソ連を創設した1922年の条約に代わる、共和国間の新しい連合条約を承認するかどうかであった。多くの有権者に投げかけられた質問は次のようなものだった:

 「いかなる民族の個人の権利と自由も完全に保証される、平等な主権共和国の新たな連邦としてのソビエト社会主義共和国連邦の維持が必要だと思いますか?」

 投票率は80%で、そのうちの80%が連邦維持に投票した。

 国民統合の国民投票を拒否した政府の中には、バルト三国の他、グルジアのように国民に投票を認めない国も少数あった。その国々では、実は、ソ連の国民投票に対抗して、数日前に独自の国民投票を実施し、独立を支持する結果を出していた。しかし、これらの国民投票は1977年憲法の下では違法であり、分離独立のための国民投票はソビエト最高会議の承認を得なければならなかった。また、西側の独立勢力や権力者からのあからさまな圧力により、投票の有効性が疑われることもあった。バルト三国は、合法的に行動すれば、ソ連全土で実施された国民投票でソ連邦の維持が決定され、独立するためには、再度国民投票による分離独立が必要となることを知っていた。だから、そのような危険は冒したくなかったのだ。

 ウクライナに関しては、71%以上の人がソ連邦に残ることを支持した。クリミアやドンバスではその支持はもっと高かったと思われるが、数値は不明である。

 ウクライナでは、市民は次のような質問をされた、

 「ウクライナはソビエト主権国家連合の一部であるべきだ」という意見に賛成ですか?

 投票結果は88.7パーセントが賛成であった。

 この国民投票と同時に、ソビエト連邦に代わって、すべての共和国が属する独立国家共同体に関する新しい条約が作成されたため、事態はさらに複雑化した。しかし、1990年8月20日に予定されていたロシア共和国の調印式は、その前日にモスクワでソ連をそのまま維持しようとする者たちによるクーデターが発生したため、結局行われることはなかった。これにより、ソ連は無傷のままだった。

 最後の違法行為は、1991年12月8日、この出来事が起こった場所から取られた名前であるベロスフシャ協定と呼ばれるものに調印したことである。ロシア、ウクライナ、ベラルーシの各共和国の指導者、すなわち、ロシアはボリス・エリツィン、ウクライナはレオニード・クラフチュク、ベラルーシはスタニスラス・シュシュケビッチが、ソ連憲法に違反して、ソ連を解体して独立国家共同体を設立するという法令を単独で決定した。ソ連国民の大多数の意思に反するこの行為は、ソ連を救おうとする者たちによるクーデターが失敗したという口実で行われた。

 言い換えれば、彼らは、国民の意思表示に反し、ソ連共和国の大多数の意思に反し、憲法に反し、勝手に行動したのだ。それは、西側とソ連国内の西側資産以外の誰の利益にもならないように思える。

 ミハイル・ゴルバチョフは2000年の回顧録の中で、次のように述べている、

 「多国籍国家の運命は、3つの共和国の指導者の意思で決めることはできない。この問題は、すべての主権国家が参加し、すべての国民の意思を考慮した上で、憲法上の手段によってのみ決定されるべきである。連邦全体の法規範が効力を失うという記述も違法かつ危険であり、社会の混乱と無秩序を悪化させるだけである。この文書が急遽作成されたことも、深刻な懸念材料だ。この文書は、住民の間でも、署名された共和国のソビエト最高会議でも議論されていない。さらに悪いことには、ソ連国務院が起草した主権国家連合条約の草案が、各共和国の議会で議論されているときに、この文書が現れたことだ。

 しかし、エリツィン、クラフチュク、シュシケビッチによる違法行為を克服するための代替案がないように思われたため、この既成事実化によって他の共和国もすぐに追随するようになった。

 クリミアに関しては、ウクライナのソビエト連邦からの分離独立は違法かつ無効であり、法的効力を持たないため、したがって国民国家としての地位は疑問であり、したがってクリミアに対する主張も疑問であると主張することができる。しかし、これで問題が終わったわけではない。クリミアはエカテリーナ2世の時代からロシアの一部であり、1954年にフルシチョフ首相がクリミアをウクライナ・ソビエト社会主義共和国に譲渡したのは、あくまで行政上の理由であり、それは、ウクライナがソ連邦内のソビエト共和国であり続けるという条件にすぎない。

 1954年の政令にはこう記されている、

 「経済の一体的性格、領土の近接性、クリミア州とウクライナ・ソビエト連邦の密接な経済的・文化的関係を考慮し、ソビエト連邦最高会議常任委員会は、次のように決議する:

 「クリミア州のロシア連邦からウクライナ・ソビエト連邦への移管に関するロシア連邦最高会議とウクライナ・ソビエト連邦最高会議の共同発表を承認すること」。

 現在、ロシアの法学者の中には、この行為は当時のソ連法では違法であったという立場をとる者もいる。 しかし、いずれにせよ、クリミアのウクライナへの移管は、ウクライナ・ソビエト連邦の一部としてソ連に残ることが明確な条件であり、主に当時の管理のしやすさのために行われたことは事実である。クリミアは、ウクライナがソ連から離脱することを選択した場合に、永久的に贈与されることを意図したものではなかった。クリミア人がウクライナとソビエト連邦のどちらに留まることを望んでいるかという問題についてのクリミアでの住民投票の実施をウクライナが拒否したこと、ウクライナのソビエト連邦からの違法な分離独立、クリミアはソビエト連邦から離れた場合ウクライナの支配下に置かれることを意図していなかったという事実と合わせて、クリミアに対してウクライナは何ら正当な主張を持っていないということができる。

 したがって、ルー大使の発言は完全に正しく、旧ソビエト連邦の共和国の法的地位全体が問題であり、実際、ソビエト連邦の解体自体がソ連法上違法であり、法的には行われなかったのだから、1977年憲法によればソ連はまだ存在していると指摘したのである。ロシアではよく「ソ連を懐かしまない者には心がないが、ソ連を再建しようとする者には頭がない」と言われることがある。しかし、ソ連がきちんと解体されたことはない、と答えることもできる。

 しかし、歴史は進み、事実上、これらの国家は現在存在し、内部的にも外部的にも承認され、法、協定、条約の組織を構築し、現状を固める関係を確立することで、その存在を固めてきた。しかし、それは砂の上に築かれたとみなすことができる現状であり、1991年以来、いくつかの旧ソ連諸国で目撃されてきたように、違法性は常に結果をもたらすからである。

 ルー大使のパリでの発言に対する欧米の怒りは、欧米自身の不安と弱さを反映している。彼らは彼が正しいことを知っている。彼らの怒りと反応は、彼の発言を闇に葬り去ろうとするものであり、検証や考察をすることはできない。ルー大使は事実を述べたが、その事実は彼らを震え上がらせた。なぜなら、自分たちが建てた建物全体が崩れ落ちることを恐れているからだ。


元ロシア大統領、「キエフ政権」の「完全な」解体を求める

<記事原文 寺島先生推薦>
Ex-Russian president calls for ‘complete’ dismantling of ‘Kiev regime’
Only a crushing military defeat will “calm down” the Ukrainian leadership, Dmitry Medvedev has said
軍事的な圧勝だけがウクライナの指導者を「落ち着かせる」とドミトリー・メドベージェフは語った。
出典:RT 2023年4月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月13日


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資料写真.© Sputnik / Yekaterina Shtukina


 ロシアのドミトリー・メドベージェフ元大統領は、「キエフ政権」の「完全な解体」と、同国の軍人や 兵器に「大量破壊」を与えることを求めた。

 現在、ロシアの国家安全保障会議副議長を務めるメドベージェフは、金曜日(4月28日)のテレグラムの投稿で、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領が最近、北欧の複数のメディアに対して行ったインタビューについて言及し た。ゼレンスキー大統領の発言は、キエフの西側支援者からさらなる武器を要求し、クリミアへの攻撃を含む反撃の成功を約束するものであると要約し、同時に紛争が「数十年」も長引く可能性があると警告している。

 インタビューは「矛盾」と「妄想」に見えるが、そのような発言でも過小評価してはいけないとメドベージェフは警告した。

 妄言も甘く見てはいけない。これは、ナチスのエリートを固め、軍隊の士気を維持し、支援国からさらなる支援を受けようとするキエフ政権のヒステリックな宣言である。

 キエフの計画をきちんと頓挫させるためには、ロシアは、大々的に宣伝されているウクライナの反攻作戦において「人員と軍備の大量破壊」を行い、キエフの軍隊に「最大の軍事的敗北」をもたらさなければならないとメドベージェフは述べた。最終的には、「キエフのナチス政権」を「完全に解体」し、「旧ウクライナ」の全領域を非武装化しなければならないと、彼は付け加えた。

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関連記事:ゼレンスキー、ロシアとの紛争は「数百年続く可能性がある」と警告


 それとは別に、ロシアは逃走した人々を追跡し、「ナチス政権の重要人物」に対して、場所や時効に関係なく「報復」を求めなければならない、とメドベージェフは強調する。これだけでは不十分だと、同氏は考えている。

 「そうしなければ、彼らは静まらないし、薬物中毒の戯言が現実になり、戦争が長く引きずることになりかねない。わが国にはそんなことは不要だ」と、メドベージェフは語った。

 クリミア半島は、2014年のマイダンクーデター後にウクライナから分離し、住民投票で圧倒的な支持を得た後にロシアに加盟した半島で、元大統領はキエフがそれを奪取しようとする試みに対して繰り返し警告している。

 先月、メドベージェフはキエフに核警告を発し、半島を標的とした「深刻な攻撃」の試みは、「核抑止力のドクトリンの基本に規定されているものを含む、あらゆる保護手段の使用の根拠となる」と警告した。

ゼレンスキー、2ヵ月地下壕で過ごす―タイムズ紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky spent two months in bunker – The Times
出典:RT 2023年2月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年5月10日


ウクライナ大統領シェルター内の閣僚や側近は、秘密保持契約への署名を求められたと新聞報道


資料写真:ウクライナ大統領ウラジミール・ゼレンスキー© AFP / Stefan Rousseau


 ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領とその関係者は、ロシアとの紛争勃発後、予定されていた2週間ではなく、約2ヶ月間地下壕で過ごし、大変な苦難を経験したとタイムズ紙が報じた。

 2022年2月24日にロシアの軍事作戦が開始された際、ウクライナ政府はキエフ中心部のバンコバヤ通りにある大統領府の下の安全なシェルターに「直ちに」降りたと、同紙が土曜日(2月18日)に報じた。

 地下壕の機密性は非常に高く、国家元首(ゼレンスキー)に同行した者は、特別な秘密保持契約書に署名しなければならなかった。その文書によると、彼らは地下壕の設計、場所、設備、そして与えられた食事についての詳細を明かすことを禁じられた。

 ロシア軍がキエフ近郊に陣取ったとき、ゼレンスキーの閣僚や補佐官にとってはトラウマと恐怖の期間であったと同紙は述べている。ウクライナのニコライ・ソルスキー農政・食糧相は、戦闘が始まった数週間を思い出すよう求められたとき、「もうその話はあまりしませんよ」と答えた。



関連記事:プーチンはゼレンスキーを殺さないと約束した(イスラエル元首相)

 政府関係者は、地下壕にこもることは「太陽も見えず、時間もわからない」という過酷な状況であったとタイムズ紙に語っている。

 同紙によると、ゼレンスキーの一団は、iPhoneを通じてその葛藤を体験したという。彼らは常に慌しく、睡眠は「掠め取られ、しばしば妨害される」状態だったと、同紙は付け加えている。

ウクライナ政府関係者の中には「地下壕での暮らしに嫌気がさしてきた」者もおり、そのうちの1人はレストランで食事をするために壕を抜け出したことがあると告白していると同紙は書いている。

 キエフがロシア軍に陥落する恐れがあったため、同国指導部の地下壕滞在は長引いたと、政府筋がタイムズ紙に語っている。

 同紙によると、ゼレンスキーが時々地下壕から出たのは、「自分が逃げていないことを国民に安心させるために」ビデオメッセージを撮るためだけだったという。

 今月初め、当時モスクワとキエフの接触を仲介していたイスラエルのナフタリ・ベネット元首相が、ゼレンスキーが演説活動を始めたのは、ロシアのプーチン大統領に彼を抹殺する計画がないことが確認された後であったことを明らかにした。

関連記事: ロシアの春季攻勢はすでに始まっている(ゼレンスキー)

 ベネットは、ロシアの首都での会談でプーチンからそのような約束を取り付けたと述べ、クレムリンを出た後、すぐにゼレンスキーに電話をかけた。その2時間後、ウクライナの指導者(ゼレンスキー)はキエフの事務所からビデオを投稿し、自分は「隠れていない」「誰も恐れていない」旨、釈明したという。

キエフ体制の最後の攻撃

<記事原文 寺島先生推薦>
The Last Offensive of the Kiev Regime
筆者:ダボール・スロボダノビッチ・ブヤチク(Davor Slobodanovich Vuyachich
出典:Strategic Culture  2023年4月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月10日

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ウクライナ軍政は、欧米諸国がこれまで投資してきた1580億ドル以上の資金が、絶対に使う価値があったことを証明するよう、支援国から強い圧力を受けている。

 犯罪者であるキエフ政権の支配下にある軍隊による、長い間予告されていた大攻勢は避けられない。もはや誰もそれを疑うべきでなく、この圧倒的規模の作戦が始まるのは、本当に数日の問題である。しかし、キエフがこの悲惨な冒険を急ぐのは、アメリカ軍欧州司令部のクリストファー・カボリ将軍が4月26日に楽観的に述べたように、攻勢に対する準備が完全に整っているからではない。一般のウクライナ人兵士の死闘への大きな熱意を活かすべき時機がついに来た、という訳ではないのははっきりしている。

 ウクライナの市民になりたくないロシア人だけが住んでいる地域を暴力的に占領するという考えは、最も硬直したウクライナのナチスにしか通用しない。ウクライナ兵の隊列は、その熱意がまったくない。それどころか、前線にいる兵士たちは非常に疲弊しており、ニューヨーク・タイムズ紙などの欧米の主要報道機関でさえ報じているように、ヴォロディミル・ゼレンスキーがウクライナ人兵士の命を犠牲にし、弾薬を浪費する頑固な態度に疑問を持ち始めている。確かに、これらの戦意喪失した部隊は、この大規模な軍事作戦の遂行を任されるウクライナ軍とは言えない。

 攻勢をもはや延期できない本当の理由は、ウクライナ軍事政権が出資国から強い圧力を受け、西側諸国がこれまでに投資した1580億ドル以上の資金が、絶対に使う価値があったことを最終的に証明しなければならないからである。ロシア帝国とソビエト連邦の不可分の一部であったウクライナのすべてを、恥ずべき形で覆したこの怪物的なナチス擬似国家が、今度の攻撃で本当に重要かつ具体的な軍事的成功を収めることができなければ、欧米の軍事・財政援助が徐々に終了することになる可能性は非常に高い。キエフの支配者一味は、外国からの援助に依存するようになり、その援助によってここ数ヶ月、豊かで贅沢で放蕩的な生活を送ってきたのだから、今回の危機は彼らを破滅へと追い込み、それが事実であるかどうかにかかわらず、自分たちには準備ができていると信じなければならない攻勢の始まりとなる。

 モスクワでは、このことをすべて承知しており、だからこそ、ロシア特殊軍事作戦の目標達成をついに手の届くところにもたらすことができる大団円を待ち焦がれているのである。信じられないことに、ウクライナの攻勢は、予想外に早くロシアが勝利するための大きな好機になる。ロシアは確かに、まだ始まっていない戦争に負けるわけにはいかない。ウクライナが1年以上前から戦争をしているとしても、ロシアに同じことは言えない。もし戦場で失敗すれば、クレムリンは、極めて限定的な軍事介入を実施する試みとしての特別軍事作戦の形式を放棄することになり、ロシアを愛する誰もが長年願ってきた、その強大な軍事力をすべて解き放つことになりかねないからだ。

 一方、ナチス・ウクライナは、巨大な隣国を奇跡的に殺すことができるかもしれないというむなしい希望を持って、最後の弾丸を発射する。キエフ政権は、国民を大変恐ろしい現実に追い込んだ。それは自らの目的のために「愚かなスラブ人」を犠牲にする用意のある西側各国の悪意ある利己的な助言に従ったものだ。そのことは、ウクライナの将来について決定を下す人々に冷静さを与えるはずだが、残念ながら、彼らはキエフではなく、ワシントンにいるのである。ウクライナのナチスは、ソビエト連邦の遺産、特にナチス・ドイツに対する勝利に対する病的で強迫的な憎悪を抱いているため、天候が良ければ、攻勢の開始は、モスクワで戦勝記念日を祝う伝統がある5月9日の前になる可能性が非常に高い。

 エフゲニー・プリゴジンは、ウクライナの大規模な攻勢と大規模流血戦が待ち受けていることを全く疑っていないが、ナチスはこの祝典を台無しにしようとするかもしれないと、控えめな注意をもって述べた。モスクワ戦勝記念日パレードを危険にさらすことに関連したウクライナ(テロ)特殊部隊の脅威については、今年、ロシアは前例のない、非常に厳格な警備態勢をとっている。また、万が一、事件が発生した場合のロシアの対応については考えない方がよいだろう。いずれにせよ、ウクライナの攻勢が予想通り5月9日までに行われない場合、地面が十分に乾き次第、開始されることは間違いない。

 他の大規模な軍事作戦と同様に、ウクライナ攻防戦にも独自の政治的・宣伝的な目的があるだろう。欧米では、欧州文明の最前線で「民主主義」、「自由主義」、そして「LGBT」の価値観のために無私の血を流し、命を捧げるウクライナの「英雄」に対する熱意が、ロシアの特殊軍事作戦の開始以来、徐々に低下しているが、これは予想されたことだった。欧米の一般市民がウクライナへの関心を失ったのは、一般市民が抱える大きな経済問題に圧迫され、その間に、不本意ながら対ロシア戦争に資金を提供しているから、自分たちの生活が苦しくなっていることに気づいたからである。

 このように、「邪悪なロシアの怪物」を退治するウクライナの「スーパーヒーロー」に対する当初の熱狂は、時間の経過とともに薄れている。ウクライナ勝利への信頼は今や揺らぎ、欧米人が直面した生活水準の低下、物価上昇、社会不安は残り、欧米の一般市民がそれを払拭できるかどうかが大きな問題になっている。だからこそ、キエフ政権の最も重要な目標のひとつは、昨年失った欧米の一般市民の支持を取り戻すことなのだ。しかし、その実現は容易ではないだろう。多くの欧米人は、ゼレンスキーがテレビ局を占拠し、自分たちは貧困とますます厳しくなる緊縮財政に直面しているのに、いつも、もっと金をよこせと騒ぐことに辟易している。結局のところ、今や地球上で最も裕福な男の一人である、邪悪で緑のウクライナ人麻薬中毒者の道化師を、自分の子供よりも本当に愛せる人がいるだろうか?

 もちろん、ウクライナ大攻勢の目標は、ロシア軍に人員や装備の面で最大限の損失を与え、戦略的に重要な領土を占領することにあるのは確かだが、キエフが達成したいのは決してそれだけではない。ウクライナ指導部、彼らが率いる軍隊、そして特殊心理作戦のための軍の過去の行動から、ロシア、特にその新しい領土に混乱、敗北主義、抗議、暴動、そして混乱を引き起こすことが最も重要な目標の1つになることは間違いないだろう。

 ウクライナの理想的な筋書きでは、巨大な革命が起こり、ロシア連邦が暴力的に解体されることになる。ヒトラーのナチスも、恐怖と脅迫という非常によく似た戦術で、ロシア精神の破壊に成功すると考えたが、そんなことにはならず、彼らは100万人のソ連軍の熱狂的かつ完全に正当な怒りに直面し、ソ連軍は容赦なく彼らを打ち砕き、ベルリンまで追いかけ、最終的にベルリンを壊滅させた。今のところ、ウクライナ人はかなり慎重にロシアの忍耐力を試している。しかし、ひとたび目に見えない一線を越えてしまえば(それはおそらくすぐに起こるだろう)、彼らの思想的先達や偶像に慈悲が与えられなかったように、彼らに慈悲が与えられることはないだろう。

 プロパガンダ戦争の一端は、西側とウクライナの報道機関が、白、灰色、黒のプロパガンダを組み合わせて、つまり、正確、部分的に正確、完全に事実と異なる情報を同時に発表して、ロシアの政治・軍事支配者層、ロシアの堅い情報機関、専門家を長い間欺こうとしてきたことである。一部のロシア政府関係者が、西側やウクライナの報道機関で、これらの疑惑について表沙汰にするようなことがあっても、それは彼らなりの専門的な方法で、敵の偽情報にロシアの偽情報で対抗しようとしながら、多かれ少なかれ、巧妙に素朴さと無知を装っているのだ。実際、ロシアの政治・軍事支配者層や有能な役人は、西側やウクライナの宣伝機関のそうした多大な努力を完全に無視し、何ら重要視していない。

 ロシアの諜報機関は、現場で検証された情報数値と、情報源は異なるが同様に信頼できる情報数値によってのみ導かれる。そうでないと考えるのは、非常に甘い考えだ。今この瞬間、ロシアの情報機関は、報道機関で大騒ぎしているにもかかわらず、ウクライナ軍が十分な弾薬を確保しているかどうか、どのような種類と量を確保しているかを間違いなく知っている。残念ながらウクライナ軍がすでに受け取っている劣化ウラン弾については、もし英国の供給者がもう少し賢明であれば、ロシアの複数回にわたる非常に深刻な警告に続いて、同様に陰湿で残酷な報復が行われる可能性があると想定できたはずである。しかし残念ながら、英国の政治家たちの傲慢な頭脳は、常に自分たちの脆弱性と死に対する慎重な認識を欠いていたため、彼らは全歴史の中で最大の間違いを犯すことを決めたのだ。

 ロシアの情報機関が、ウクライナが今度の攻勢にまったく新しい、非常によく訓練された部隊を投入し、4月初めにエフゲニー・プリゴズニが言ったように、その数は40万人に達するかもしれないという情報を持っていることが示唆されている。もし、これより多いという情報があれば、経験豊富なプリゴジンはそれを黙っているのが賢明だろう。しかし、デイリー・メール紙などの欧米報道機関は、ウクライナが集めた兵士は10万人、つまり12から18の戦闘旅団に過ぎないという偽情報を流そうとしているが、これは確かに事実とは違う。ウクライナの特別突撃旅団は、歩兵と装甲の複合部隊で、前線を突破して深く前進し、攻略した戦略地点を確保するために訓練されているという情報は、多かれ少なかれ公開されているものである。

 例えば、かつての悪名高いナチスの大隊「アゾフ」は、昨年のロシアのマリウポリ解放の際に事実上壊滅したが、その後に死から蘇り、よく訓練された戦闘員で隊列を埋め、「アゾフ突撃旅団」に成長したのである。つまり、「アゾフ」はこれまで以上に数が増え、6,000人を下回ることはないだろう。ロシアの情報機関は、NATO諸国からの外国人「志願兵」の数について、西側メディアに登場する意図的なごまかしの数値よりもはるかに正確な情報を確実に持っている。

 これらの志願兵は、実際には、よく訓練されたNATO軍人で、ウクライナの制服を着ているだけで、キエフが描いているように、自発的にではなく、仕事上の任務でウクライナにいる。彼らはポーランドから来ることが多くなり、その数は絶えず増えている。ロシア連邦外務省のマリア・ザハロワ情報報道局長が最近推定したところでは、NATO軍兵士と他国からの志願兵の合計数は約8000人だが、すぐにもっと多くなる可能性がある。

 西側報道機関は、ウクライナ軍の攻撃には約400台の戦車、1600台の装甲車、300台の大砲が参加すると「推定」しているが、これもロシア軍を欺き、実際に遭遇する事態に備えさせないための試みであることは確かである。NATO軍の戦車は600〜800両で、その乗員はウクライナ人ではなく、よく訓練された職業NATO軍兵士であると予想するのが現実的であろう。装甲車や大砲ももっと多い数が予想される。同様に、NATOのパイロットが操縦する多数のF-16やF-15がウクライナやノボロシヤの上空に「突然」現れることも間違いないだろう。

 西側報道機関は、ウクライナ軍に大量の対戦車兵器が提供されたことを喜んで自慢するが、彼らがキエフに提供したもっと殺傷力の高い兵器については、何もわからないようにするためにあらゆる手を尽くすだろう。もちろん、ロシアの情報機関が望ましい情報を何も入手しなかったという意味ではない。欧米のウクライナへの軍事援助に関する過去の情報から、戦車、装甲車、大砲を中心としたロシア軍の装備に対する大量のドローン攻撃、軍事目標だけでなくロシア民間人の士気を落とすためのロケット攻撃などがあると考えるのが現実的であろう。

 ウクライナのナチス流儀はアングロ・サクソンの影響を受けて作られたものであり、ウクライナ攻勢と並行して、軍や政治の高官の暗殺を含むテロ攻撃の波がノボルシア、さらにはロシアで起こることが予想される。しかし、テロ行為の主な対象は、ロシアの政治指導部や軍隊が民間人を守れないことを証明するために、民間人となろう。全体として、ウクライナの攻撃は、ほとんどの場合、北大西洋同盟による一種の偽旗作戦であろう。ウクライナの大攻勢は、実際には、ロシアに対するNATOの大攻勢となる。装甲車、戦車、航空機の大砲の弾と標識だけがウクライナ製になるだろう。

 しかし、欧米やウクライナの情報機関が、ロシアの情報機関を出し抜き、彼らを欺いたと考えるなら、それは大きな間違いである。ロシアは人工衛星をはじめ、夜間や至近距離も含めた精密な電子・視覚偵察の手段を持っているだけでなく、地上の「目と耳」を持っている。だからこそ、ロシア軍のトップはすでにウクライナ軍の移動、配備、および隠蔽された部隊の動向を詳細に把握していることは間違いない。

 これに基づき、ロシア軍将兵は可能な進撃方向と、攻撃的侵入の際に異なるウクライナ軍を統合する試みを予測することができ、これが起こることは絶対確実だ。すなわち、侵入に必要な兵力の蓄積をロシア情報機関に隠すことは不可能であるため、ウクライナとNATOの将軍は必要な追加兵力を後方から非常に高速で戦場に投入しなければならない。つまり、大規模な攻撃を開始する直前には、ヘリコプターによる兵員輸送に大きく依存することになるのはほぼ間違いない。

 ウクライナの望む方向性を予測することは非常に困難であり、ありがたくないことではあるが、絶対に間違いないのは、クリミア橋が、より長い期間機能を停止させる意図で、再び攻撃されることである。同様に、ロシアの黒海艦隊はNATOにとって厄介な存在であり、だからこそ、間違いなく大規模な攻撃が行われる。いずれの場合も、従来通りNATOは間接的にこの攻撃に参加することになるが、今回は、より衝撃的かつ効果的にするために、これまで適用されていない方法でこの攻撃が行われることになる。ロシア軍とウクライナ軍の分離線に近接するロシアの空軍基地も標的となり、ロシアの弾薬庫や燃料庫も標的となる。

 クリミアを本土から切り離すことが、今回のウクライナ軍の攻勢の主目的であることは、すべての専門家やジャーナリストが認めている。現場からの数値だけでなく、他の情報数値も持っているロシア軍指導部は、ウクライナとNATOがどのような方法でこれを行おうとするのか、おそらく明確に把握しているだろう。クリミアに、直接空と海からの大量上陸は十二分に可能だが、それはクリミアの防衛力(主に防空力)が完全に破壊された後である。このことから、ウクライナ指導部がすでに発表しているように、クリミアへの激しいミサイル攻撃が行われるという結論に達する。少なくとも攻撃の第一段階では、集落から遠く離れ、ウクライナ側が支配したいと思っているクリミアと本土を結ぶ帯状の土地に十分に近い地点へ、低空飛行の輸送ヘリコプターによる集団上陸が行われることは間違いない。第2段階では、海軍による上陸やパラシュートによる上陸もあり得る。

 ザポリージャとヘルソン地方のロシア防衛線を突破するのは非常に困難であり、おそらくウクライナとその西側司令官や 顧問団はこのことを十分に承知しているだろうが、これらの地域のロシア軍を足止めするために、これらの防衛線は必ず攻撃される。ドニエプル川を渡ろうとすれば、大規模で、極めて多くの犠牲者を出すことになり、同時に、ロシア軍に非常に有利な反撃の機会を与えることになる。そのため、クリミアだけでなく、へルソンやザポリージャ地方でも、低空飛行のヘリコプターによるロシア軍後方への大量空輸が試みられる可能性がある。

 ウクライナの大攻勢を実際に設計したのはNATOの将軍たちであるため、その核となる考え方を予測することは容易であろう。「衝撃と畏怖」の原則は、間違いなく作戦全体にとって不可欠な戦略思想である。つまり、ウクライナ軍は、攻撃軍に必要な計画的侵入地帯において、人員と技術で3:1以上の絶対的優位に立つだけでなく、ロシア軍を完全に麻痺させるほどの火力も獲得しようと努力するということである。第二に、アメリカの将軍たちはノルマンディー上陸作戦の神話で育ったので、ドニエプル川を渡ってクリミアに直接上陸するボート上陸作戦の試みを鼓舞することであろう。第三に、ロシアの防衛線は非常に強固であるため、第二次世界大戦のマーケット・ガーデン作戦*を何とか再現しようとする試みがなされるであろう。モンゴメリーが指揮したこの作戦は失敗に終わったが、戦闘の中で機甲部隊と空挺部隊を組み合わせて迅速な浸透を図るという優れた先例である。
* 第二次世界大戦中の1944年9月に行われた連合国軍の作戦。 連合軍がドイツ国内へ進撃する上で大きな障害となるオランダ国内の複数の河川を越えるために、空挺部隊を使用して同時に多くの橋を奪取する作戦であった。( ウィキペディア)

 キエフのナチス政権が十分に認識していないのは、これが、今や公式にロシア連邦の不可侵の一部となっている領土に対する最初の大規模なウクライナ軍の攻撃であり、これは、ロシア人に対するこれまでのすべての攻撃と比較して大きな違いを意味するということだ。おそらく、手遅れになる前に、ウクライナの指導者は、ロシアの政治・軍事指導部がロシア連邦に対する外国の侵略の際に実施することが義務付けられている手続きに関するロシアの法律を徹底的に読むべきで、ウクライナの攻撃はまさにそれに当たることになるだろう。

 ドネツク人民共和国、ルハンスク人民共和国、ザポリージャ州、へルソン州、そして特にクリミアは、ロシア嫌いのナチス・ウクライナの一部には二度とならないだろう。ウクライナがこれらの地域の支配権を取り戻すことを阻止するために、ロシア国家はどんな代償でも払うだろう。キエフの犯罪政権がノボロシヤのロシア人の運命を二度と決められないようにするために、ロシア連邦はどんな手段でも使う用意がある。もし極端なウクライナの民族排外主義者が、ユーロマイダンとして知られるCIAとMI6の指示によるクーデターによってキエフで権力を握らなかったら、ロシアとウクライナは今日でも平和と調和の中で生活していただろう。そして、それがアメリカの計画の中に含まれることは一度もなかった。

 多くの血が流された今、双方が全力で戦うと、間違いなく、ウクライナが負ける。今度のウクライナの攻勢がより大きな成功を収めれば、ロシアは間違いなく総動員体制が敷かれ、戦争状態が宣言される。歴史的な経験から、それは確実にロシア国内の強固な統合をもたらし、幸福な国民統合の感覚さえも生み出すだろう。このようなことは、すでに戦争で完全に疲弊しているウクライナにとっては、確実に死刑宣告を意味する。

 なぜなら、ロシアは第二次世界大戦のソ連の教訓から、自国の犠牲者をできるだけ減らすために、自国防衛を主体にウクライナ側の攻撃を「すりつぶす」ことを選択し、(ウクライナは)ロシアの7~8倍の犠牲者を出してきたからである。ロシアが限定的な攻勢に出たのは、戦場の一部でウクライナ側の防御が完全に崩壊したときだけである。しかし、だからといって、ロシアが、いざという時、つまり、ウクライナ軍が完全に破壊されたことが明らかになったとき、壮大な規模の攻勢を考えていないわけではない。

 ロシアの反攻の目標は、第一段階として、旧ウクライナを通るドニエプル川の全長にわたって左岸を占拠することであろう。ロシアは、キエフ、ハリコフ、そして例えばポルタヴァの東部を、ロシアの皇帝ピョートル大帝がヨーロッパの大国から守り、ウクライナのヘットマン、イワン・ステパノヴィッチ・マゼパが裏切った場所として、正当な権利を主張する。ああ、歴史は繰り返される!このままでは、ウクライナは海への経路を完全に失うだけでなく、国家として完全に存在しなくなる可能性もある。

 歴史上、ロシアの敵が犯した最大の過ちは常に同じであり、同様に致命的であった:1.) ロシア人が何かを知らないと仮定することは非常に危険な過ちであり、クルスクの戦いとその結果を思い出そう。2.) ロシア人が何か(大事なもの)を十分に持っていないと仮定するのは非常に危険な間違いである:人員、弾薬、ミサイル、ドローン、戦車、飛行機、あるいは、威力を高めた滑空航空サーモバリック爆弾などである。3.) 例えば、ソ連を攻撃した当時のナチスが、ロシアが恐ろしいT-34戦車を持っていることを知らなかったように、すでに存在する優れた品質のロシアの兵器について全く情報を持たないことは非常に危険である。4.)

 リチャード・ゾルゲやキム・フィルビー、ケンブリッジ・ファイブのように、ロシアのトップの諜報部員が最も打撃を与えられる場所にいることに気づかないのは非常に危険だ。このような警告は、実はたくさんある。ロシアに対して偽情報戦を仕掛けることは、非常に危険な行為でもある。なぜなら、ロシアは常に軍事的欺瞞の世界最大の達人であるからだ。ロシア人が発明した「マスチロフカ」というゲームでロシア人を打ち負かそうとするのも非常に傲慢であり、これこそまさにウクライナ人が攻撃準備の一環として行おうとしていることである。ウクライナ人やNATOの衛星にはロシアの迷彩戦車に見えても、木枠と板金でできた模型だろうし、まったく戦車に見えないものが本物の戦車であっても、決して脅威として認識されることはない。

 すべてが活気に満ちている大規模なロシア軍陣地のように見えるのは、ほとんどの場合、陣地なんかではなく、ロシア軍陣地はすでに必要な場所に配置されている。滑走路にあるロシア軍の飛行機もほとんどが模型で、本物のジェット機は安全な格納庫や敵の上空にある。ロシア軍は最近、戦車を特殊な素材で覆うようになり、肉眼での光学的視認が難しくなり、赤外線カメラやレーダーでは完全に見えなくなった。すでに、赤外線カメラで兵士自身を見えなくするロシア軍の軍服もある。

 要約すると、ロシアの将軍たちは、避けられないウクライナの攻勢の可能性を完全に過小評価していたわけではなく、この作戦がNATOに対する直接的かつ全面的な戦争に発展しうることを十二分に認識しており、その場合のあらゆる可能な選択肢を準備しているのである。絶対に確実なのは、ロシアが特別軍事作戦の本来の目的であるウクライナの脱ナチス化と非武装化を決してあきらめないということである。キエフの現政権の代表との和平交渉はほとんど不可能である。主にワシントンがそれを許さないからである。

 このことは、ロシアに紛争の平和的終結に真摯に取り組んでいることを証明するために、平和交渉を原則的に受け入れる機会を与えることになる。ゼレンスキーたちに関しては、多くの人が、なぜロシアは今までウクライナの指導部を清算しようとしなかったのか、それはわずか数機のキンジャール*があれば解決できる問題である。まず、ロシアはその指導部の能力について酷評しており、当面は今のままでいることが彼らにとっては好都合なのだ。もちろん、だからといって、ロシア軍がこれまでのように、ウクライナ軍の司令部、特にNATOの将校が座っているところを、どんなに地下深くても狙って破壊することはないだろうが。
* Kh-47M2 キンジャールは、ロシア連邦軍の極超音速空対地ミサイル。最大速度はマッハ10とされ、核弾頭も搭載可能である。北大西洋条約機構の用いるNATOコードネームでは、AS-24「キルジョイ」と呼ばれる。( ウィキペディア)

 犯罪的なウクライナ指導者の頭上にもたらされるのは、ロシアの司法の長い腕ではないだろう。ウクライナ人の暴力的で残忍な動員、合法的かつ正統的に認められたウクライナ正教会の信者と聖職者、そしてロシア語を母語とするウクライナ人への迫害は、シオニストであるゼレンスキーとその一団の売国奴に災厄をもたらし、ウクライナ人自身の手で確実に滅びることになるだろう。その仕事ができる何千人ものウクライナ人が、すでにロシア軍に自発的に降伏しており、彼らから多くの有益なことを学んでいる。

 ロシア軍に協力するウクライナの抵抗運動の輪郭は、すでに見えている。それは以下のような構成になるだろう: 1.) ゼレンスキーが「民主主義の偉大な擁護者」として、ひたすら禁止した政党の指導者層にいたウクライナの政治家たち。2.) ロシアの支配下にあり、ロシア人を兄弟同然に見ているウクライナ人。3.) ゼレンスキーやアメリカ人のために戦い、死ぬことを望まず、自発的に降伏したウクライナ人捕虜たち。4.) その任務に参加する意思を示した捕虜のウクライナ兵の一部と、5.) ロシア人とウクライナ人が同じ民族であるという単純な事実を知っているロシア連邦に生まれ住んでいるウクライナ人、だ。

 栄光の赤軍の戦士の息子や孫である本物のウクライナ人の運動は、近い将来、ロシア軍とともにキエフに進軍し、腐敗したナチス政権を打倒し、米国、英国、EU、NATOがすべての責任を負っているこの血生臭い戦争を最終的に終わらせるだろう。今度のウクライナ攻撃は、ナチス・ウクライナがロシア連邦に向けた最初の大規模な軍事作戦であるだけでなく、コカイン中毒の道化師の最後の冒険でもある。有権者を欺き、和解と平和を約束して政権を取った簒奪者は、西欧諸国の工作員として同胞愛紛争に有権者を巻き込み、それによって自分、家族、そして友人たちが一晩で億万長者になった。

ゼレンスキー、銃を所持する理由を説明

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky explains why he carries a gun
出典:RT 2023年4月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月9日


 ウクライナ大統領(ゼレンスキー)は、自分が捕虜になることは許さなかっただろうと言っている。



喜劇テレビシリーズ「国民の下僕」からのスクリーンショット © YouTube / Kvartal 95 Studio


 ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は、地元テレビ局に対し、紛争初期にロシア軍がキエフ本部に侵入した場合、自分や職員は捕虜になるのではなく、戦って死んでいただろうと語った。

 「私は撃ち方を知っている」とゼレンスキーは、ウクライナの1+1チャンネルが土曜日(4月29日)に放映した聞き取り取材の中で語った。ゼレンスキーは拳銃を携帯していると述べたが、捕まるよりも自殺するために拳銃を使ったのではないかという記者の指摘は否定した。

 「いいえ、いいえ、いいえ。自分を撃つためではありません。撃ち返すためです。もちろん」とゼレンスキーは語った。

 ゼレンスキーは、紛争の初期段階を指して、もし自分がロシア軍に捕虜にされていたら「恥」だったと説明した。2022年2月にモスクワが軍事作戦を開始した後、ウクライナ当局は、ロシアの特殊部隊がキエフに潜入し、バンコバ通りの大統領府への侵入を試みたと主張した。

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関連記事:ゼレンスキー、地下壕で2カ月過ごす (タイムズ紙)

 「もし、彼らが大統領府内部に侵入していたら、私たちはここにいないだろうと思います。我々は非常に真剣な防御を準備していたので、誰も捕虜にならなかったでしょう・・・我々は最後までそこに踏みとどまったでしょう」とゼレンスキーは聞き取り取材の中で語った。

 ゼレンスキーは、欧米の協力者の中にはキエフからの脱出を勧める者もいたが、首都防衛のために米国の脱出飛行を断った、とされる。

 しかし、タイムズ紙によると、ゼレンスキーとその関係者は、紛争勃発後、予定されていた2週間ではなく、ほぼ2ヶ月間、壕の中で過ごしたとされている。タイムズ紙によると、地下壕の機密性は非常に厳しく、国家元首ゼレンスキーに同行した者は特別な秘密保持契約に署名しなければならず、壕の設計、場所、設備、そして与えられた食事についてさえも詳細を明かすことを禁じられたという。



関連記事:プーチンはゼレンスキーを殺さないと約束した(イスラエル元首相)


 紛争の初期、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、イスラエルのナフタリ・ベネット首相(当時)に対し、「キエフの占領やゼレンスキーの殺害を目的としていない」と述べたとされる。クレムリンはプーチン大統領がそう述べたというベネットの主張を肯定も否定もしていない。

 ベネットは、2022年3月にモスクワで行ったプーチンとの会談について、「ゼレンスキーが地下壕の中で脅威にさらされていることは知っていた」と語った。彼は、ロシア大統領がゼレンスキーは標的ではないと断言したと主張した。

 ベネットはその後、「すぐに」ゼレンスキーに電話をかけ、「プーチンはあなたを殺すつもりはない」と安心させたとされる。ベネットによると、ちょうど「2時間後、ゼレンスキーは事務室に行き、自撮りをした」といい、その動画の中でウクライナ大統領は 「I'm not afraid(私は怖くはない)」 と宣言した。

ゼレンスキー政権の命運は尽きた

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky Regime’s Fate is Sealed
筆者:M.K.バドラクマール (Bhadrakumar)
出典:INTERNATIONALIST 360°2023年5月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月9日


モスクワのクレムリン

 ウラジーミル・プーチン大統領暗殺の失敗に関するクレムリンの声明を疑う西側の不可解な、あるいはあざとい発言がある。そんな発言をしても、モスクワがこのような重大な疑惑をでっち上げる理由がこの世に存在しないという事実を覆すことはできない。そんなことをすれば、5月9日の戦勝記念日の意義を損ねてしまう。戦勝記念日はロシア史すべてのなかで勝利の時なのだ。特に今は、ヨーロッパの政治状況において、ナチス的観念の復活をロシア単独で阻止している時なのだ。

 アントニー・ブリンケン米国務長官がクレムリンの主張をあっさり否定したことで、おそらくは勝負がついた。このような決定的な瞬間に逃げるのは、ネオコンのDNAである。とはいえ、予想通り、ブリンケンは今回のクレムリン攻撃をバイデン政権とは切り離した。

 先に、マークス・ミレー統合参謀本部議長も、フォーリン・アフェアーズ誌の聞き取り取材で、今度のウクライナの「反攻」に対する責任を事前に放棄して、同様のことを行っている。これは、バイデン政権の新しい常套句である「悪を聞かず、悪を語らず」である。「何が何でも」キエフを支援する(バイデンは口が酸っぱくなるほど言っていた)という話も、もうない。

 問題の核心は、キエフが大いに宣伝している「反攻」が、西側諸国の予言によれば、失敗に終わるとされている中で、苦境に立たされているということである。実際、今週のフォーリン・アフェアーズ誌のポッドキャストでミレー元帥が語っていたのは、結果に対する彼の自信のなさであった。ミレーは、キエフが「反攻」を開始するかどうかさえ断定することを拒んだ!

 ロシアの敗北という西側の筋書きが嘘八百であることが明らかになり、同時に、超大国のはるかに優れた軍事力を相手にするキエフの軍事力、という神話が消え去った今、大きな混乱に陥っている。ウクライナ軍は組織的に粉砕されつつある。現実には、ウクライナは開いた傷口から急速に 壊疽(えそ)を起こし、傷口を焼灼(しょうしゃく)するための時間はほとんど残されていない。

 しかし、キエフの政権は派閥主義が蔓延している。モスクワが降伏しない限り、ロシアとの和平交渉を嫌がり、代わりに欧米列強の関与を維持するために事態の激化を望む強力な徒党が存在する。そして、ボリス・ジョンソンの退任後も、西側諸国には彼らの支持者がいる。

 キエフの権力機構に定着している軍事集団が、ロシアの報復を誘発する下心を持って、クレムリンに向けられたこの危険な挑発行為の実行犯であった可能性は十分にある。

 ブリンケンの虚ろな発言から、ビクトリア・ヌーランド率いるバイデン政権のネオコンも、キエフの異端児を制止する気にはなれないようである。ヨーロッパもまた、その声を失ってしまった。

 これはおそらく、欧州の指導力の歴史的失敗として歴史の教科書に載るだろうし、その核心には、ウクライナ戦争で米国とより緊密に連携し、欧州内の「対立の時代」を招く危険性があるのは、フランスではなくドイツ政府であるという逆説がある。

 フランスやイタリアでは政治的な中間層がすでに縮小しており、ドイツではパンデミック、戦争、そしてインフレの結果、政治的な中間層がかなり弱体化している。中央の衰退とヨーロッパの非工業化は密接に関連しており、中央を支えてきた社会的基盤が崩れてきているからだ。

 ヨーロッパの強国であるドイツは、これまで比較的幸運だった。東欧からの安い労働力とロシアからの安いガスの恩恵を受けてきた。しかし、それももう終わり、ドイツの産業が衰退していくのは目に見えている。社会が分断されれば、政治体制も分断され、そのような国を統治するためには、次第に大きな努力が必要になる。ドイツとイタリアは3党連立、オランダは4党連立、ベルギーは7党連立である。

 今のところ、キエフ政権の強硬派が事件の流れを作り、ヨーロッパ諸国はおとなしくそれに従うだろう。ホラー映画『羊たちの沈黙』で、アンソニー・ホプキンスが一瞬にしてハンニバル・レクターに変身したときのジュディ・フォスターの言葉を借りれば、「部屋には寒気が漂っている」のである。

 間違いなく、これは転換点である。プーチンの命を狙った不手際は、万華鏡を認識できないほど揺さぶった。唯一の救いは、クレムリンの指導者が感情に流されないということだ。クレムリンの反応は、アナトリー・アントノフ駐米ロシア大使の発言から読み取ることができる:

 「ドローンがホワイトハウス、国会議事堂、あるいはペンタゴンを直撃したら、アメリカ人はどう反応するだろうか?その答えは、政治家にとっても一般市民にとっても明らかだ:処罰は厳しく、避けられないだろう」。

 大使はさらに、結論を述べた:「ロシアは、この不埒で僭越なテロ攻撃に対応する。必要だと判断すれば、応じる。キエフがわが国の指導者に与えた脅威の評価に従い、応えることになるであろう」。

 膝反射的なワンパターンの反応は期待すべきでない。しかし、赤の広場での戦勝記念日の規模を縮小するなどということは、到底できない決断だろう。5月9日の戦勝記念日は、ロシアで最も重要な祝日であり、国民と国家が一体となって愛国的な祝典を行い、ナチズムを倒すために命を捧げた家族を追悼する行事なのだ。

 パレードや歌、記念行事など、この日の特徴の多くはソ連時代にまで遡る。戦勝記念日は、ソビエト連邦崩壊後のロシアに移行した唯一の主要な祝祭日である。ソビエト連邦の崩壊により、多くの偶像や英雄的業績を失ったロシアにおいて、ナチズムに対する勝利は、集団と個人の大きな誇りの源泉であり続けている。

 しかし、プーチンの支配権は、国が激怒して報復を要求する時以上に制限されている。「今日のテロ攻撃の後、ゼレンスキーとその一派を物理的に排除する以外に選択肢はない」というロシアの元大統領で現ロシア安全保障会議副議長のドミトリー・メドヴェージェフの発言からも、それは明らかである。

 ゼレンスキーは、キエフからヘルシンキに向かい、その後ハーグに向かい、5月13日までにベルリンに到着し、国賓として訪問することになったが、おそらく危険を感じているのだろう。実際、ゼレンスキー政権の運命は尽きたようだ。ゼレンスキーは、十字架にかけられたイエスを愚弄し、再臨まで地上を歩くように呪われた、神話「さまよえるユダヤ人」を思い起こさせる。

シーモア・ハーシュの爆弾報告:ゼレンスキーが、米からウクライナへの支援金4億ドルを横領

<記事原文 寺島先生推薦>
Seymour Hersh on his bombshell report of Zelensky embezzling $400 million from us aid to Ukraine
出典:RT 2023年4月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月6日

今回の Going Underground の特別エピソードでは、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領とその側近が、燃料購入のために割り当てられた米国の援助から4億ドルを横領し、ロシアからディーゼルを購入していたという彼の新しい報告についてピューリッツァー賞受賞ジャーナリストのシーモア・ハーシュに話を伺います。また、CIAがこの汚職を把握していたこと、ゼレンスキーがCIA長官ウィリアム・バーンズに叱責され、数十人の将官や官僚の解雇につながったとされることについても触れています。ハーシュはまた、報告書の情報源を明らかにしないことへの主流メディアによる攻撃、戦争の危険が高まる中、ウクライナの国境に米軍の最精鋭部隊がいること、さらに、主流メディアが、ペンタゴンからの文書漏洩で告発されている米国政府の標的ジャック・テシェイラを暴露し助けていること、その他多くのことについて述べています。

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シーモア・ハーシュの爆弾報道:ゼレンスキーが米国のウクライナ支援から4億ドルを横領 29:44 min (訳者:原文サイトでご視聴ください。)

ウクライナ司令塔が攻撃を受けた(ロシア政府の発表)

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukrainian command center destroyed – Moscow
The facility was targeted by a salvo of sea-launched cruise missiles, according to the Russian Defense Ministry

この司令塔のへの攻撃は、海上発射された巡航ミサイルの一斉射撃によるものであったとロシア国防省は発表

出典:RT

2023年4月29日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年5月4日



ウクライナ国内の標的に向けて、ロシア軍が発射した巡航ミサイル© Sputnik / The Russian Defense Ministry


 土曜日(4月29日)のロシア国防省の発表によると、ロシア軍はウクライナの主要司令塔を破壊したという。海上から発射された巡航ミサイルが、その司令塔の攻撃に利用されたと、国防省報道官のイゴール・コナシェンコフ中尉が、報道機関による記者会見で明らかにした。

 「今年の4月28日の夜、ロシア軍は海上から長距離精密兵器による一斉攻撃を行いましたが、その攻撃は、ウクライナ側の連合部隊“ヘルソン”の司令官たちを攻撃対象にしたものでした」とコナシェンコフ中尉は述べ、さらにこの攻撃の目的は、「達せられました」とも付け加えた。同中尉はウクライナ側の推定戦死者数については言及しなかった。

 この攻撃が行われたのは、2022年2月から開始されたこの紛争において、両国側の攻撃が長距離攻撃にも及んでいる兆候を見せる中でのことだった。 今週(4月最終週)はじめ、ロシアはウクライナの予備兵団を攻撃対象にした一連の巡航ミサイルによる一斉攻撃を行った。この攻撃により、これらの予備兵団の前線への再配置を防げた、ロシア軍は発表している。



関連記事:イスカンダルへの攻撃により数十人の外国人傭兵が戦死―ロシア側の発表


 この攻撃の結果、ウクライナのチェルカースィ州の中央に位置するウマン市内の高層住宅建築のひとつが損害を受けた。この建物を攻撃したのは何だったのかが、すぐには判明しなかったのは、ウクライナ側の防空ミサイルがウクライナ国内の非軍事施設に着弾したり、それ以上の攻撃を加えた事例が多く見受けられてきたからだ。しかしウクライナ当局は、この攻撃の責任はロシア側にあると真っ向から主張し、20名以上の市民が亡くなったという地元当局からの報告を伝えた。

 現在ウクライナ軍は、ロシアのドネツク市内の居住地への攻撃を強めているようであり、この紛争中ほぼ毎日、この都市への攻撃を続けている。金曜日(4月28日)、ドネツク市とその近郊地域が激しい砲撃の対象となり、少なくとも9名の市民が亡くなり、10名以上が負傷を負った。この攻撃により複数の住宅家屋が破壊され、地元の病院も被害を受けた。ウクライナ軍はさらに、乗客が乗っていたバスへも直接攻撃を加え、乗り合わせていた全ての人が亡くなった。

 ロシア側の攻撃が強められているのは、予想されているウクライナ側の反撃に先行しようとするためだ。この反撃については、ウクライナの高官らがずっと予告してきた。金曜日(4月28日)、ヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領は、この反撃は「うまくいく」ことを期待していると述べ、ここ数週間幾つかの報道機関が報じた、ウクライナの戦闘能力に対する西側からの懸念を否定した。

 「反撃は行われます。その準備をしているところです。私はこの反撃が成功し、奪われた領土を取り返せると強く信じています」とゼレンスキーは北欧のいくつかの報道機関の聞き取り取材に対して答えた。

モスクワ、ウクライナの和平要求の概要を示す

<記事原文 寺島先生推薦>

Moscow outlines Ukraine peace demands

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月19日

ロシアの外務副大臣は、キエフが敵対行為を終わらせるために取るべき措置を列挙した。

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ロシア外務省(モスクワ)© Joel Saget / AFP


 ロシアのミハイル・ガルージン外務副大臣は、敵対行為を停止させるためにキエフ政府が取るべき10項目の措置を提示した。ガルージンは水曜日(3月29日)のインタビューで、ウクライナの将来は、キエフとその西側支援者がどれだけ早く現実を把握するかにかかっていると述べた。

 ウクライナが平和をもたらすためには、その軍隊は撤退しなければならず、西側諸国はキエフへの武器の納入をすべて停止しなければならないと、ガルージンはRTVIで語った。

 ウクライナの非武装化と「非ナチス化」、EUやNATOへの不参加、キエフの非核状態の確認など、彼が挙げた他のいくつかの条件は、2022年2月に敵対関係が激化して以来、検討されてきたものだ。さらに、2022年10月には、「新たな領土の現実」(一般的には、へルソン、ザポリージャ、ドネツク、ルガンスクの各共和国がロシアへの加盟を決定したことを意味する)を承認することが追加された。

 ロシア語の保護とロシア語を話す市民、そしてウクライナの他のすべての民族の権利の確保も、ガルージンが挙げた項目の中にあった。さらにウクライナは、ロシアとの国境を再び開き、2014年に米国が支援したクーデター後に破棄したモスクワや他の旧ソビエト共和国との関係の法的枠組みを回復する必要があると述べた。

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関連記事:クレムリンはウクライナ紛争の軍事的解決しか考えていない。


 モスクワは初めて、すべての反ロシア制裁の解除と、「ロシア、その個人および法人に対する請求の撤回と訴追の終了」を要求した。この中には、プーチン大統領と子どもの権利委員会のマリア・ルボヴァ=ベロヴァに対する最近の国際刑事裁判所(ICC)の令状が含まれていると推定される。

 ガルージンが挙げた項目の中の最後の要求は、2014年以降ウクライナ軍が破壊した民間生活基盤組織の再建費用を欧米が負担することだった。

 ウクライナの平和な未来は、ロシア系住民の権利を尊重し、すべての近隣諸国との友好関係を回復し、1990年の独立宣言に謳われた中立・非軍事同盟加盟という建国の原則に立ち返ることにあるとガルージンは述べた。

 「現在のウクライナの領土の将来は、この国の住民自身が決めるべきだ」とガルージンはRTVIに語り、その中には 「ウクライナ人、ロシア人、ユダヤ人、ハンガリー人、モルドバ人、ブルガリア人、ローマ人、ポーランド人、そしてギリシャ人」が含まれていると指摘した。

 「国境がどこであろうと、公然と反ロシア的な国家」を隣国としてモスクワは容認しない、とガルージンは言う。「ロシアも、他のどの国も、安全保障の観点から、そんな国家を受け入れることはないだろう」。

 キエフ政府が採択した「和平綱領」には、ウクライナが自国と主張するすべての領土からのロシアの全面撤退、賠償金の支払い、そして、モスクワの軍および政治指導者を軍事犯罪法廷で裁くことが含まれている。

ロシア側の捜査によれば、ウクライナは戦争捕虜の体内器官を採取している

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia probes claim Ukrainians harvested POWs’ organs

出典:RT

2023年4月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月17日



当該動画からのスクリーンショット。その動画は現在ロシア側が捜査中©ソーシャル・ネットワーク


自称戦場外科医の男性が、ロシアの捕虜囚人から採取した目を販売していると語っている動画が出現


 ロシア側は現在1本の動画についての捜査を行っているが、その動画の中では、ウクライナ軍の外科医であると自称する人物が、ロシア側の戦争捕虜の身体から器官を取り出す行為に関わっていたことを示唆している。その自称外科医はさらに、それらの器官を闇市場で販売したとも語っている。

 ロシア連邦捜査委員会のアレクサンドル・バストリキン委員長は、この動画について捜査するよう命じたが、この動画は今週(4月第2週)にロシア国内のソーシャル・メディア上で広く拡散された、と同委員会は木曜日(4月13日)に声明を出している。

 ほぼ1分間の長さのあるこの動画では、(SNSの)テレリンク上で激しくやり取りをしていると思われる様子が映されている。やり取りをしているのは、「ウラジミール・バシリエビチ」という自称ウクライナ側の戦場医師と、この医師が「ラッシストのブロガー」としている人物であった。なおこのラッシストとは、この医師がロシア人に対する蔑称として使っている言葉である。

 この動画は部分的に編集されているが、「ウラジミール」の対話者が、ウラジミールを挑発し、その後この自称戦場外科医が主張を行っている場面であり、おそらく相手にウクライナ兵の脚を切断したかどうかを問いただしているところだと考えられる。

 「俺が主に切断したのは、お前たちの仲間の豚どもの脚だけど、腕も目も切ってやったさ。ドイツのおばあちゃんたちが(目に)いくら出すか分かるか?」とウラジミールは答えていた。

 「お前たちの仲間の27歳の [編集されていて聞き取れず] から目や腎臓や切り取ったよ」とウラジミールは嘲(あざけ)るような口調でがなり立てていた。

 さらに「ウラジミール」は、ロシア兵に措置を加える際は、上司の指示に従わず、麻酔をしていなかったとも語っていた。「奴らの目を切り取ってやったさ....楽しかったよ」とウラジミールは語気を強めて語っていた。



関連記事:「戦争捕虜の去勢」発言をしたウクライナの医師からの声明


 ウラジミールの身元はまだ未特定のままだ。いくつかの情報によれば、イヴァーノ=フランキーウシク州出身のウクライナ国民であり、2014年から2015年まで、国家警備隊員を勤めていたという。 ウラジミールが自分で語っていた通りの罪を犯したかについての信ぴょう性は、まだ明らかではない。

 2022年3月、ゲナディル・ドゥルジェンカという人物が加担していた同様の事件が発生した。この人物は、憲法学者であったが、 ウクライナの前線の戦場医師となった人物だ。国営テレビでの聞き取り取材において、ドゥルジェンカが述べたのは、配下の医療団が治療していた全てのロシア側の戦争捕虜に対して去勢手術を施す命令を出していたという事実だった。そしてその理由は、「ロシア人はゴキブリであって人間ではないから」としていた。

 後にドゥルジェンカは、自身のこの問題の多い発言を取り消し、このことは事実ではなく、感情の高まりに任せてつい口走ってしまったと断言した。

 ウクライナ当局は、国際的な義務を遵守し、戦争に関する規則を尊重すると誓約している。ロシア国防省の主張によると、戦争捕虜に対する虐待行為や正当な手続きを踏まない処刑までもが、ウクライナ軍で蔓延っているという。

前ロシア大統領メドベージェフ氏、EU「平和維持軍」についての見解

<記事原文 寺島先生推薦>

Ex-Russian president comments on EU ‘peacekeepers’

出典:RT

2023年3月31日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月15日


この「羊の皮をかぶった狼」たちは戦闘員となり、死体袋に入って戻ってくる、とドミトリー・メドベージェフは言う。

画像 メドベ

ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長 © Sputnik / Ekaterina Shtukina


 ウクライナに派遣されるEUの「平和維持軍」は、紛争に直接関与する敵性戦闘員とみなされ、相応の扱いを受けることになると、ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領が金曜日(3月31日)に警告した。

 この日、ハンガリーのオルバン首相はラジオのインタビューで、欧州連合(EU)がウクライナのために「ある種の平和維持軍」(おそらくNATOの支援下)を議論していると述べた。これに対し、クレムリンは「極めて危険な考えだ」と反論した。

 ロシア安全保障会議の副議長であるメドベージェフは、この考えを皮肉話の極みと呼んだ。米国主導の勢力は、「キエフ政権に武器や戦車などの軍備を与え続けている」と彼はテレグラムに書いている。だから、彼らが平和を望んでいるなどと想像することは困難だ。

 「彼らの真意は明らかだ。接触線上の強者の立場から、彼らにとって有利な平和を確立することだ。機関銃や戦車を持ち、黄色い星のついた青いヘルメットをかぶった彼らの『平和維持』部隊をウクライナに導入することだ」とメドベージェフは書いている。

画像 ラブロフ

関連記事:NATOはキエフの側で戦っている―ラヴロフ露外相

 
 「いわゆるNATOの平和維持軍が、我々の敵の側で紛争に参入しようとしているだけであることは明らかだ 」と彼は言った。「平和維持者」と呼ばれる人たちが、我々の直接の敵であることも明らかだ。羊の皮をかぶった狼だ。彼らがロシアの同意なしに前線に立たされ、武器を手にし、私たちを直接脅かすようになれば、私たちの軍隊の正当な標的になる。そして、この「平和を作る者」たちは、無慈悲に破壊されなければならない。彼らは敵の兵士である。彼らは戦闘員なのだ」。

 ロシアは、米国とその同盟国に対し、ウクライナに武器を送ることは紛争を長引かせ、核武装した国同士の直接対決を招く恐れがあるため、やめるよう繰り返し警告している。NATOは、キエフに戦車や戦闘機など1,000億ドル以上の軍事支援を送っているが、その一方で、NATOはこの紛争に関与していないと主張している。

 しかし、欧米の複数の高官が、ロシアの「戦略的敗北」が目的であると発言しており、モスクワによれば、米国は最近、ウクライナでの停戦に反対したとのことだ。停戦はキエフが決定することであり、それはこれまで米国が主張していたことを裏切るものだ。

どんなウクライナを私たちは支援するのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

What Kind of Ukraine Do We Support?

筆者:パトリック・パシン(Patrick Pasin)

出典:RT

2023年4月1日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月14日

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  「ウクライナ支援」という掛け声が相変わらず花盛りだ。それを推進する人たちは、ウクライナ人がこの戦争以前、殉教者の数が一番多かったことを知っているのだろうか。西側諸国がこよなく愛する人物・・・ゼレンスキー大統領のせいで、だ。

 要約すると、報道機関が私たちに隠していることで、私たちがウクライナの人々への誠実で友好的な支援について考えなければならないことは以下のとおり。


赤ん坊のいない国

 2021年、死亡者数は出生者数を44万2279人上回った[1]。これは人口約4100万人の中では驚異的な数字で、この年、人口の1%以上がまさに消滅したことを意味する。移住がもたらした影響は言うまでもない。

 特別作戦前の前月である2022年1月には、状況はさらに悪化し、死者は約5万7000人、出生者はわずか1万8000人と、死者は出生者の3倍以上となった。

 これまでの年月、死者と出生者の格差は小さくなっているが、2014年のマイダン革命以前から、6桁単位の人口減であったことは変わらない。このままでは、特に難民や移民の多くは、ウクライナが終戦時にどのような形になっても戻ってこないので、1~2世代でウクライナ国民はいなくなる。

 それに加えて、現在進行中の惨事が加わる。この惨事のなかで、20万人以上の男性が働き盛りの時期に死亡し、もう子供を持つことができないのだ。さらに、10代の若者が前線に送られるなど、虐殺はとどまるところを知らない。ウクライナの人々の存在そのものが、中長期的にどのような影響を受けるか、誰が想像できるだろうか。


米国の戦争実験所

 WHOや医師会などの現地当局の数値によると、HIV/AIDS、結核、B型肝炎、そしてC型肝炎の感染率は、ヨーロッパをはじめ世界でも最高水準にある。結核は、薬に強い耐性を持つ独特の形で現地ウクライナに広がっている。[2]

 ウクライナは、また、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、麻疹の激しい流行に見舞われているばかりか、豚インフルエンザ、ボツリヌス菌、レプトスピラ症、ジフテリアなど[3]、他国では例を見ない割合で、激しい感染に晒されている。

 ロシア側が数千人のウクライナ人捕虜に対して行った医療検査では、3分の1がA型肝炎に、4%以上が腎臓症候群に、20%が西ナイル熱に感染していた。[4]

 報道機関の軽率な結論は、ウクライナ人は(ロシア人によって)何年もの間、生物学的実験を受けたから、ということになるのだろうか?

 現実は反対だ。

 米国防総省は2022年6月9日、ウクライナの46の研究所と「協力関係」を築いている(もちろん平和目的であると言っている・・・)[5]。 実際には、米国防総省は「協力」ではなく、1972年の生物兵器条約に違反し、2014年から直接ウクライナの生物兵器研究所を運営していた。このことは2014年のマイダン以降、例えばウクライナの情報機関SBUの元工作員による報告書で、「被験者の死はその行為の一部として許可されていた」ことが明らかになるなど、文書化されている[6]。 この場合、「被験者」は実験用ネズミではなく、ウクライナ人である。

 この極めて危険な研究は、ペスト、炭疽、野兎病、コレラなどの致死的な病気の病原性を高めることを目的としていたことも判明している[7]。優先的に特定されたのは、コウモリから人間に感染しうる細菌性およびウイルス性の病原体の研究であり、ペスト、レプトスピラ症、ブルセラ症、そしてコロナウイルスなどの病原体が挙げられる・・・コウモリのコロナウイルス? 何か思い当たることはないか? 「Covid-19」と名付けられた軍事作戦が、2019年11月に資金調達されたことを付け加えておこう。WHOが(報道機関の)見出しに載る3ヵ月前のことだ。[8] 単純な偶然だろうか?

 いずれにせよ、ウクライナの市民と兵士が、キエフの共犯のもと、米軍によって、何年もモルモットとして利用されてきたことは間違いない。さらに、これらの生物兵器は私たちに直接的な脅威を与えている。これらの致死的なウイルスが国境線で停止するなんて、誰が保証できるだろうか? こういった脅威から私たちを守るために、欧州委員会や私たちの政府は何をしているのだろうか?


ネオ‐ナチの国

 ロイターの推定では、「主流派国粋主義者」あるいはネオナチと呼ばれる人たちは10万人以上いると言われている。彼らがアゾフ(Azov)、アイダール(Aidar)、C14などと名乗ろうとも、2014年以来、ウクライナ人の生活を苦しめており、ロシア語を話す人々だけでなく、マジャール人、ユダヤ人、ロマ、LGBTなどの少数派たちもだ...[9]。

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 特に、彼らはドンバスにおいて数千人が殺害される事態に関与しており、これは1948年12月9日の大量虐殺の罪の防止及び処罰に関する条約で言われている大量虐殺の特徴を備えている。さらに、これらの死の大隊には、分離主義者の殺害や捕縛に対して最高1万ドルの報酬が支払われていたことが証言で明らかになっている。[10] 民主的で進歩的な価値を、常に我々に売りつけている国での良い金儲けである。

 彼らは、また、裁判官を脅すために武装して法廷に入ることも、市長や知事を強要するために行政に立ち入ることも躊躇しない。市民の安全を確保するために、一部の自治体には民兵として給与を支払うよう強要することさえある。ウクライナは正義のない国でもあるので、後述するように、彼らは殺人、強姦、拷問、強盗、ゆすりなど、何でもする権利を持っている。もちろん、警察との共謀の上で。

2022年を振り返って:ウクライナとその後の話
 
 そして、2016年に当局によってアイダール大隊が解散させられたとき、その隊員はキエフの大通りを塞ぎ、内務省を襲撃しようとした[11]。 こうした行為の後、厳しい刑期が待っていると想像される・・・ そうではない! 解散命令は取り消され、彼らはミンスク合意後の他のネオナチ大隊と同様にウクライナ軍に統合され、ドンバスに送られ、犯罪を犯したのだ。

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 その結果、彼らは我々の・・・同盟国になる。西側諸国は生死をかけてウクライナと同盟を結んだのだから(特にウクライナ人側の生死をかけてだった。少なくとも最初は・・・)。


汚職の国

 ウクライナでは汚職が蔓延しているため、この点については1章まるまる必要となる。2015年、CNNは国家予算が約100億ドルかかったと報じた[12]。この現実に騙される国際機関はいない。例えば、欧州監査院は2016年の報告書で、ウクライナに最後に送られた110億ユーロの使途について全く把握していないと述べている[13]。 その一方で、『新旧財閥が引き起こす危険度は依然として高い』とも述べている。汚職などという言葉を使わなくても、その事実はここにはっきり述べている。

 それにもかかわらず、EU、米国、IMFなどから、何十億もの資金が流れ込み続けている。変な話じゃないか?

 この限りなく寛大な資金の流れを絶やさないために、ウクライナ憲法裁判所(CCU)は、2020年10月27日の劇的な判決で、汚職の問題を決定的に解決した。それは、政府、高官、そして裁判官の資産の虚偽申告に対する責任を免除するものであった。[14]

 その結果、キエフの質素な家の所有だけを申告していた裁判官が、フランスのリビエラに豪華な別荘を所有していることが発覚しても、法律で保護されることになった。少なくとも、裁判所の決定はより迅速に行われるようになる:その決定は、支払われる封筒の厚さだけに応じて、ということになるだろう。政治家や公務員にも同じことが言える。汚職の国は、正義のない国にもなっている。そしてその逆の、正義のない国が汚職の国になったこともまた然りである。

 それ以来、もちろんウクライナには何十億もの資金が流れ込み続けている。実際、「受け取っている」のはウクライナの指導者たちだけと、我々は確信しているのか?この巨額の資金が、目の届かないところで、西側と山分けされていることは、まったくないのか?西側は、この資金を、ゼレンスキーランドと化したダーナイドの樽(底なし樽)に送り込んでいるのだ。

 いずれにせよ、私たちが拠出するこの数百億が、ウクライナの人々や平和のためになっていないことは確かだ。


労働法がない国

 戦争が始まると、政府の方針に従わない野党や報道機関はすぐに禁止された。疑いないのは、欧州委員会を喜ばせるための民主的価値の誇示・・・同じくらい心配なことに、当局は2022年8月17日にゼレンスキー大統領が批准した法律5371で、従業員250人未満、すなわち人口の3分の2以上の企業における労働基準法を廃止することを決めたのだ。[15]

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 これからは、雇用主と「自由に」交渉できる契約しかなく、雇用主は例えば週50時間や60時間、それ以上の労働時間を課すことができる。従業員にはもはや法的保護がなく、労働組合には行動手段がない。ウクライナは、法律上、悪徳社長の楽園と化している。

 もちろん、労働者はそのような契約を拒否することはできる。が、すべての企業(多国籍企業は別)がこの例外的な制度の適用を受けているため、この適用のない別の仕事を見つけることなどできるのだろうか。

 戒厳令が続く限り、この法律は効力を持ち続ける、という事実が土壇場で追加されたことに注目すべきだ。労働市場を「流動化」させるためだけならまだしも、この法律がもはや効力を持たなくなることを誰が保証できるだろうか。EUの危機が迫っている今、同種の法律が、もちろん被雇用者の利益のために、今後課されないと、誰が保証できるだろうか?


人身売買の国

 上記のことは、緩やかに次のことにつながる。しかし、その程度はひどくなる:ウクライナが子供を売る国であることは、数多くの報告書が証明しているのである。例えば、米国務省が発行した「2021年人身売買報告書」(米国務省が発行したものだから、反ウクライナに偏っている疑いは、ほとんどないのだが)は、次のように報告している:

人身売買の情報 [16]

 「過去5年間報道されてきたように、人身売買業者はウクライナ国内の被害者を搾取し、人身売買業者は海外のウクライナ人被害者を搾取している。ウクライナ人被害者は、ウクライナ国内だけでなく、ロシア、ポーランド、ドイツなどの欧州地域、中国、カザフスタン、そして中東などで、性売買や強制労働で搾取されている。ウクライナ被害者がEU加盟国で搾取される事例も増えている。[17]

 欧州委員会は、その人権価値についてすぐに自慢するが、この惨劇と闘うために何をしているのだろうかと疑問に思う・・・報告書は次のように続く。

 「国営の孤児院に預けられた約10万4千人の子どもたちは、特に人身売買の危険にさらされている。いくつかの国営の養護施設や孤児院の職員が、保護されている少女や少年の性売買や労働に加担したり、 故意に放置したりしたことが報告されている」。

 たとえその言葉が明記されていなくとも、それはペドクリミナル(小児犯罪)である。「世界の人身売買の被害児童の10人に1人はウクライナからやってくる」。アルテで放送されたこの映画[18]では、「40人ほどの10代の子どもたちが性的目的で地元の政治家に売られている」という事実も知ることができる。この裁判には、マスコミも一般市民も立ち入らないようにされていた。もちろん、何も起こらず、その後、ウクライナの支配者層に美徳が降りてきたと誰が信じられるだろうか。

 しかし、ウルスラ・フォン・デア・ライエン、シャルル・ミシェル、ジョゼップ・ボレル、エマニュエル・マクロン、オラフ・ショルツ、ボリス・ジョンソン・・・がこれらの許されない人権侵害を非難するのを誰が聞いただろうか?

 では、西側報道機関が日夜喧伝するゼレンスキー大統領とNATOの夢の国をまだ支持したい人はいるのだろうか。彼らのウクライナは、私たちの支援、ましてや私たちが払う犠牲に値するのだろうか?

 ウクライナの人々を助け、すでに社会に影響を及ぼしている破局を回避するためには、平和という選択肢しかない。

 したがって、戦争に必要な武器や資金を送るのをやめることが急務だ。戦争は、戦闘員の不足ではなく、武器の不足のためにやめなければならない。さらに、指導者たちの狂気を止めない限り、私たちもそこで終わる危険性がある。

*

フランス語からの翻訳:ヤニス・V・ズブローク(Yannis V. Zbroek)

パトリック・パシン(『ウクライナ戦争: 欧米の犯罪的責任-危機を止めるための我々の選択肢』<仏語>の著者兼出版者)

Notes
[1]. 714,263 deaths versus 271,964 births. Source: National Statistics Service of Ukraine.
[2]. Hacker group says US biological labs active in Ukraine, Tass, August 25, 2017.
[3]. EXCLUSIVE: Hunter Biden Bio Firm Partnered With Ukrainian Researchers ‘Isolating Deadly Pathogens’ Using Funds From Obama’s Defense Department, Natalie Winters et Raheem J. Kassam, The National Pulse, March 24, 2022.
[4]. Bioterrorisme américain : Le Pentagone n’a pas eu le temps de détruire les preuves à Severodonetsk, Alexandre Rostovtsev, Polit Navigator, traduction Réseau International, July 20, 2022.
[5]. Fact Sheet on WMD Threat Reduction Efforts with Ukraine, Russia and Other Former Soviet Union Countries, U.S. Department of Defense, June 2022.
[6]. Weapon in a Test Tube – How the United States turned Ukraine into a biological testing ground, Donbass Insider, December 8, 2020.
[7]. Statement by Permanent Representative Vassily Nebenzia at UNSC briefing on biological laboratories in Ukraine, March 11, 2022.
[8]. U.S. Department of Defense awarded a contract for ‘COVID-19 Research’ in Ukraine 3 months before Covid was known to even exist, The Exposé, April 13, 2022.
[9]. Joint Letter to Ukraine’s Minister of Interior Affairs and Prosecutor General Concerning Radical Groups, Human Rights Watch, June 2018.
[10]. https://fr.wikipedia.org/wiki/Ihor_Kolomo%C3%AFsky and Le massacre d’Odessa organisé au sommet de l’État ukrainien, Réseau Voltaire, May 16, 2014.
[11]. La Gestapo ukrainienne… Le bataillon Aïdar fait peur même aux autorités ukrainiennes, Histoire et Société, May 11, 2022.
[12]. George Soros: I may invest $1 billion in Ukraine, CNN Business, March 30, 2015.
[13]. L’UE se demande où sont passées les aides à l’Ukraine, Georgi Gotev, Euractiv.com, December 7, 2016 / Rapport spécial n° 32/2016 : L´aide de l´UE en faveur de l´Ukraine, European Court of Auditors.
[14]. Constitutional Court of Ukraine has struck a blow to anti-corruption reform – NABU statement, National Anti-corruption Bureau of Ukraine (Nabu), October 29, 2020.
[15]. Ukraine’s anti-worker law comes into effect, Open Democracy, August 25, 2022.
[16]. https://www.state.gov/reports/2021-trafficking-in-persons-report/
[17]. Underlined by me.
[18]. Trafic d’enfants au cœur de l’Europe, documentaire réalisé par Sylvia Nagel et Sonya Winterberg, 2019 (ARTE is a French-German TV).
Featured image is from Alexey Fedorenko/Shutterstock
The original source of this article is Global Research
Copyright © Patrick Pasin, Global Research, 2023

ウクライナにおけるEU軍の話は「極めて危険」 ―クレムリン

<記事原文 寺島先生推薦>

Talk of EU troops in Ukraine 'extremely dangerous' – Kremlin
Moscow has raised concerns over Hungarian PM’s claims that bloc is set to discuss sending ‘some kind of force’

モスクワは、ハンガリー首相が、欧州連合が「ある種の軍隊」の派遣を協議するとしていることに懸念を示した。

出典:RT

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月15日

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© Getty Images / Soltan Frédéric

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相が金曜日(3月31日)に行ったコメントに対し、EU軍のウクライナへの派遣の可能性があるという考えは、とても大きな危険性があると警告した。

 「もし、ある種の真剣な交渉の話をしているのであれば、これは極めて危険な議論になる可能性があります。世界の慣行では、このような戦力は、原則として、両当事者の同意がある場合にのみ使用されます。この場合、それはとても危険な話になる可能性があります」とペスコフは記者団に語った。

 オルバンの発言は、ロシアからの反発が予想されるにもかかわらず、加盟国がウクライナに「ある種の平和維持軍」を派遣できるかどうか、あるいは派遣すべきかどうかについて、EU首脳が「正式な」議論を行うところまで来ていることを明らかにした後のことだ。

 オルバン首相は、ウクライナ紛争はますます血なまぐさくなっていると警告し、EUの指導者たちはなぜ、キエフに殺傷能力の高い手段を提供し敵対関係を煽るのではなく、外交手段によって平和を達成しようとすることに集中しないのかと疑問を呈した。

 「もしこの状態が続けば、世界大戦の危険は、文学的な誇張では済まなくなります」と同首相は語った。

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関連記事:ウクライナ和平構想についてクレムリンからコメント

 
 ロシアが昨年ウクライナで軍事作戦を開始して以来、ブダペストは一貫してロシアのエネルギー資源に対する制裁に反対し、ハンガリー自身の軍隊を維持し装備する必要があるとして、キエフ軍への軍事援助を拒否している。

 一方、ロシアのアレクセイ・チェパ議員は、EUがウクライナに平和維持軍を派遣することを決めた場合、それは確実に紛争に直接関与し、ロシアとNATOの戦争を誘発しようとするものと解釈されるだろう、と示唆した。

 チェパ議員は、この場合、ロシアはベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギス、そしてタジキスタンを含む集団安全保障条約機構の同盟国に助けを求めることを余儀なくされるかもしれないと述べた。

ウクライナ軍は「ほぼ壊滅状態」―ワグネル社代表の声明

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukrainian army ‘almost destroyed’ – Wagner chief

ドンバスのアルチョモフスク市の防衛に固執すれば、ウクライナは大きな被害を受け、この戦争の運命を決することになる可能性があると、エフゲニー・プリゴジン代表は主張

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月4日


 
ロシアによるウクライナでの軍事作戦が継続されるなか、道路を歩行中のロシアの民間軍事会社ワグネル・グループ所属の一兵。ドネツク人民共和国バフムト市近郊にて© Sputnik/Viktor Antonyuk


 ワグネル・グループ民間軍事会社(PMC)のエフゲニー・プリゴジン代表によると、アルチョモフスクでの戦いにおけるウクライナ側の損失はウクライナ全軍にとって致命的な規模であるという。さらに同氏は、ロシアのためにこの戦団が払った犠牲が報われた、とも付け加えた。

 「今日の時点で、バフムトの戦いによりウクライナ軍はほぼ壊滅しました」とプリゴジン代表は水曜日(3月29日)、ウクライナ側のその都市の呼称を使った声明を出した。さらに自身の戦団も「深刻な打撃」を受けたことを明言した。

 同代表はこの戦いを、ワグネル社の戦団がウクライナ軍および「ウクライナ軍に編入された外国人部隊」と相対する全ての紛争の「総まとめ」であるとした。そして、ワグネル社による勝利は、「転機」になり、歴史的な出来事になるだろうとプリゴジン代表は予見した。

 さらに同代表は、「チェス盤に残されるのはロシア軍だけになり、それ以外の要素はすべて取り除かれるでしょう。ワグネル民間軍事会社がバフムト(ママ)で挽肉のように潰されたとしても、その時はウクライナ軍ももろともに潰します…つまり、われわれが歴史的使命を達成することになるということです。」




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 アルチョモフスクの戦いは、ウクライナでの軍事衝突においてもっとも激しく、もっとも血なまぐさい戦いが行なわれた地域のひとつであり、両軍とも多くの戦死者を出していると報じられている。西側諸国政府の主張では、この都市には軍事戦略面での価値はないとのことだが、ウクライナのヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領は、この都市を可能な限り守り抜くと宣告しており、この都市は要塞であるとしている。

 同大統領が今週初めにAP通信に対して行った説明によると、ロシアがアルチョモフスクの占領に成功することになれば、ウクライナ政権は、世界各国や国内からの圧力を受け、ロシアとの和平交渉を模索せざるを得なくなるとのことだった。「我が国の社会は疲弊感に苛まれ、ロシア側に妥協するよう社会から圧力がかかることになるでしょう」と同大統領はAP通信に語っている。

米国の高官軍人はウクライナの将来に懐疑的

<記事原文 寺島先生推薦>

Top US general skeptical of Ukraine's prospects

マーク・ミリー米統合参謀本部議長は、ウクライナの主要な軍事目的が達成できることは「非常に困難」になるであろうと発言

出典:RT

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月4日



© Andrew Caballero-Reynolds / Pool via AP


 ロシア側のすべての「侵略者」を退去させるというウクライナは、公表している軍事目的を今年達成することはできないだろう、とマーク・ミリー米統合参謀本部長は、金曜日(3月30日)のインタビューで述べた。同本部長のこの発言は、ウクライナ側が春に大攻勢をかけると発表し、同時にその攻撃に必要な武器を全ては持てていないことに対する不満を表明したことを受けてのことだった。

 ヴォロデミール・ゼレンスキー大統領によると、ウクライナ側の目的は、「すべてのロシア人を、ロシアがウクライナ領内で占領している地域から追い出す」ことであると、ミリー統合参謀本部長は、通信社であるディフェンス・ワン社にこう語っている。さらに、「これは重要な軍事使命です。本当に非常に難しい軍事使命です」とも語った。

 さらにミリー統合参謀本部長は、「不可能であるとは言っていません。今年中という短期間で達成できることはなさそうだということです」と付け加えた。

 同参謀本部長はこの発言に付け加え、ウクライナ側には「そうする権利が間違いなくあり」、「道徳上優位な立場に」立っているとも述べた。さらにミリー統合参謀本部長は、ロシアは戦略的にも戦術的にも「失敗した」と主張した。

 ミリー統合参謀本部長が、ウクライナが軍事的に勝利を収めることに対して疑問の声をあげたのはこれが最初ではない。11月の記者会見において同本部長は、ウクライナがクリミアを取り返すことに対して、「すぐに達成できる可能性は高くない」と語っていた。

 今週はじめ、ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防大臣は、ウクライナ軍が新たに届いたドイツのレオパルド戦車を用いて、4月か5月初めに多方面に攻撃を仕掛けると語った。

 ゼレンスキー大統領自身はそのことについて明言せず、ウクライナは西側諸国からより多くの武器や弾薬が届くのを待っている状況であり、前線の現状は「好ましい状況にはない」と語っていた。




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 ウクライナのドミトル・クレバ外相が米国や米国の同盟諸国に促したのは、たとえウクライナ側の攻撃により、ウクライナ側の目的が100%達成されなくなったとしても、ウクライナへの武器や資金の送付を継続することだった。いっぽう、アンドレ・メルニク副外相がドイツの通信社フランクフルター ・アルゲマイネ・ツァイトゥングフランクフルテル社に語ったところによると、春の攻撃の準備はまだできていないとのことだった。

 同副外相は、「準備ができるまでは反撃をしたくはありません。いま我が国には約50~60台の戦車がありますが、ロシア側は1日で10台の戦車を製造することができます。つまり、我が国が戦場で決定的に優位に立てるまでには、長い時間がかかるということになります。」




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 メルニク副外相の発言には、ウクライナがより多くの武器を求めているという文脈のもとでのことだが、同副外相の主張は、西側はウクライナに戦闘機を供給することに「禁止線」を引くべきではないというものだ。

 2022年末の時点で、米国と米国の同盟諸国は、1000億ドル相当の武器、弾薬、装置をウクライナに送付してきた、とロシア国防省は発表している。ミリー統合参謀本部長がディフェンス・ワン社に語ったところによると、米国の軍事産業が「おそらく数年かけ」ないと、在庫武器を補充し、国防総省の要請に応じることはできないだろうとのことだった。さらに付け加えて、「魔法のように一晩で達成できるわけはなく」、しかも「非常にお金がかかる」ことになると述べた。

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