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ウクライナ最高裁長官、300万ドルの賄賂で逮捕

<記事原文 寺島先生推薦>
Chair of Ukrainian Supreme Court arrested over $3 million bribe
Anti-corruption authorities have suggested that other judges may be implicated in the scheme
国家反汚職局は、他の裁判官もその計画に関与している可能性があると示唆している。
出典:RT 2023年5月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月6日


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© Facebook / NABU


 ウクライナの国家反汚職局(NABU)が、国の最高裁所長であるヴセヴォロド・クニャーゼフを拘束したと、現地メディアが報じている。彼は、他の公務員も関与している可能性がある計画の一部で、270万ドルの賄賂を受け取った疑いがあるとされている。

 NABUは月曜日(5月15日)の遅い時間にFacebookの投稿で、「最高裁判所における大規模な腐敗行為、具体的には指導者や裁判官が不正な利益を得るための計画が明らかになった」。と述べた。NABUは「緊急」捜査が進行中であり、詳細はやがて公表されるだろう、と付言した。

 NABUは火曜日(5月16日)に別のメッセージで、キエフの現地時間正午に、この件に関する記者会見を開催すると発表した。

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関連記事:ウクライナで野党の市長が逮捕される

 ウクライナの最高司法機関は、Facebookに投稿し、間接的にこのニュースを確認した。その投稿には、「最高裁判所のクニャーゼフ所長に関連する出来事に鑑み、2023年5月16日に最高裁判所の全員会議が開催される予定です」と記載されている。

 ZN.UA(ウクライナのメディア)は、NABUの匿名の情報源を引用し、当局は最高裁判所の他の18人の裁判官が所有する物件の捜索を行ったと報じている。

 ウクライナ大統領府の首席補佐官であるセルゲイ・レシェンコは、報道との話し合いでクニャーゼフについて言及する際、賄賂の額は300万ドルだとした。ニコラエフ州知事のヴィタリー・キムは、270万ドルという数字を示した。

 ストラーナメディアは、クニャーゼフがウクライナのオリガルヒであるコンスタンティン・ジェヴァーゴからお金を受け取ったと主張した。ジェヴァーゴは現在フランスに滞在しているが、ある銀行の破綻に関与した罪で、ウクライナ国内で指名手配されている。

 今月初め、ウクライナの高等反汚職裁判所は、2017年以来の都市の資金の不正使用の疑いにより、オデッサ市長のゲンナジー・トルハノフの逮捕を命じた。 NABUは4月にジトーミルスキー地域およびハルキウ地域の軍事管理庁で捜査を実施した。
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ゼレンスキー、自軍の最高司令官と不和―ビルト紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky at odds with top general – Bild
Commander Zaluzhny called for a withdrawal from a key city, but the president has refused, the newspaper reported
ビルト紙によると、ザルージュニー司令官は重要な都市からの撤退を要請したが、大統領はそれを拒否した。
出典:RT 2023年3月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月6日


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資料写真:ウォロディミル・ゼレンスキーとヴァレリー・ザルジュニー司令官© Ukrainian presidential office via Global Look Press


 政府筋によると、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーと武装部隊の最高司令官であるヴァレリー・ザルジュニー将軍の間で内部対立が進行中であると、月曜日(3月6日)のビルト紙が報じた。キエフの内部関係者は、このドイツのタブロイド紙に対し、数週間前に軍司令官(ヴァレリー・ザルジュニー)がドンバス地域の重要な都市からの撤退を求めたと述べた。

 ビルト紙によると、ザルージュニー将軍は、ロシア軍が制圧する脅威がある中、ウクライナではバフムートとして知られるアルチョモフスクを守り続ける代わりに、大統領にその地を放棄するよう助言した。しかし、ウクライナの指導者(ゼレンスキー)はその都市を要塞であると宣言し、部隊の引き上げを拒否した。

 ロシア軍は今年、アルチョモフスクの戦闘で注目すべき進展を遂げた。民間軍事会社ワグナーグループの責任者であるエフゲニー・プリゴージンは、先週金曜日(3月3日)に「アルチョモフスクは事実上完全に包囲されている」と述べ、避難の可能性がある唯一の道路が1本だけ残されていると語った。

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関連記事:ドンバスの主要都市を包囲─ワグナーの長官

 米国メディアによると、ワシントンはゼレンスキーにアルチョモフスクからの撤退を促し、西側から供給された武器を使用して春に大規模な反攻の準備に集中するよう求めているが、ウクライナ大統領はそのような行動が引き起こす士気の低下を恐れている。アルチョモフスクは、2014年にキエフがドンバスで戦闘を開始して以来、ウクライナが構築した70kmの防衛ラインの一部だ。米国の高官たちは、ロシアへアルモチョフスクを手渡しても、それは戦略的状況に影響を与えないと評価している。

 ビルト紙の情報筋によれば、アルチョモフスクの地上部隊は「なぜこの都市を守っているのか理解できない」と述べ、もっとずっと以前に撤退すべきだったと考えている。ゼレンスキーは最近、ウクライナ軍が「理にかなっている限り」それを守ると述べた。

 このドイツのタブロイド紙はまた、ザルージュニー将軍がロシアに対する軍事作戦を指導していることから、大統領選に出馬するかもしれない、しかも当選する可能性がある挑戦者であると指摘した。将軍は公に政治への野心を宣言していないが、この競争相手になるかもしれない人物への懸念をゼレンスキーが抱いている、という噂がウクライナでは数か月にわたり広まっている。

ウクライナ当局は、「皮肉な」番組が放送されたことを受けて謝罪を要求

<記事原文 寺島先生推薦>
Kiev demands apology after ‘cynical’ skit broadcast
A French satire show host described Ukrainian president Vladimir Zelensky's European tour as a traveling circus
フランスの風刺番組の司会者は、ウクライナのヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の欧州諸国歴訪を、サーカス巡業のようなものであると表現。
出典:RT 2023年5月17日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月2日



資料写真:パリのフランスのRTL放送局本部に出演中のコメディアンのローラン・ジェラ © STEPHANE DE SAKUTIN / AFP


 ウクライナの駐仏大使が TV放送局のRTL局に対して激しくくってかかったのは、ある番組が、ヴォロデミル・ゼレンスキー大統領の欧州歴訪をサーカス巡業になぞらえる内容を放映したからだった。ヴァディム・オメルシェンコ駐仏大使は、謝罪を要求している。

 この番組の辛辣な皮肉は、「笑えない内容で機転に欠けるものだ」と同大使は火曜日(5月24日)にツイートし、このフランスのコメディアンとこの番組の制作者には、ウクライナに対する共感が欠けており、このような番組を放映する義理もないとも付け加えた。同大使が要求したのは、RTL局がゼレンスキーやウクライナ国民に謝罪することだった。ウクライナ国民は、「自分たちの自由やあなた方フランスの人々の自由のために戦っている」と、同大使は明言し、さらには、「愉快な人生を送る」権利を求めて戦っている、ともツイートしていた。



 このウクライナ大使が問題にしている内容というのは、コメディアンでありものまね芸人でもあるローラン・ジェラが司会を務める番組の一場面で放映されたものであった。その際放映されたネタは、フランスの著名人、特に政治家たちの声色をまねて、ばかげた発言をする内容だった。その模様は、ゼレンスキー自身がかつてコメディアンだったころ行っていたネタによく似た内容であった。ゼレンスキーは自身のTV番組で、役者たちにウクライナの政治家たちを皮肉たっぷりに演じさせていたのだ。

 RTL局が放映した短いネタが笑いものにしていた対象は、ウクライナの大統領だけではなく、多くの西側の政治家たちもだった。具体的には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、ジョー・バイデン米大統領だ。客寄せ係風の語り口で、ジェラはこれらすべての人々を、「ゼレンスキーのサーカス」一座の座員のように紹介し、聴衆に夜のサーカス公演に来るよう促していた。



関連記事:人権団体のアムネスティが、ウクライナから圧力を受け謝罪

 ゼレンスキーはフランスを訪問し、日曜日(5月21日)にマクロンと面会したが、これはゼレンスキーによる欧州諸国弾丸訪問の一環だった。ゼレンスキーのこの歴訪の目的は、ロシアと対戦するための追加の軍事支援を確保するためだった。

 このウクライナ大使館の一団は、西側からゼレンスキー政権を非難する声が上がれば、それを抑えようと、ずっと声を上げ続けてきた。アンドレー・メルニク元駐ベルリン大使は、このような取り組みを行ってきた代表株だが、ウクライナの問題について十分な支援を行っていないと思われるドイツの政治家たちをしばしば攻撃する発言を行っている。 ロシアとの紛争が始まってすぐの頃、この元大使がオラフ・ショルツ首相を「迷惑なレバー・ソーセージ」と呼ぶ醜態を見せたのは、同首相がキエフ訪問に応じなかったためだった。

 今メルニク元大使は外務副大臣の職に就いている。今月同副大臣が、自身の後継者である駐ベルリン大使を叱りつけたのは、ドイツ政府に対して圧力をほとんどかけていないという理由だった。

ウクライナは訓練を施していない徴兵を「肉挽き場」と化しているドンバスに派遣(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine sent untrained conscripts into Donbass ‘meat grinder’ – WSJ
“Bakhmut will teach you,” a commander reportedly told a soldier who complained he had never held a gun before
「バフムートに行けば自然に覚えるさ」。報道によると、指揮官は、銃を手にしたことがないとこぼした兵士にこう伝えたという。
出典:RT 2023年5月25日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月1日



歩兵戦闘車に乗り込み、アルチェモフスク(バフムート)に向かうウクライナ兵© AFP / Sergey Shestak


 ウクライナ当局が、訓練を施さず、貧弱な武器しか与えていない部隊を用いて、ドンバスの戦略的に重要な都市であるアルチェモスク(ウクライナ側はバフムートと呼んでいる都市だが)での戦いにあてた(結果、敗北したのだが)のは、ウクライナが計画している反撃攻勢のためだった、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(以後WSJ)は報じた。

 火曜日(5月24日)に出された記事において、米国の報道機関である同紙が報じていたのは、ウクライナの16名からなる部隊についての記事であったが、この部隊は2月にロシア領内のドネツク人民共和国のアルチェモスクの戦いにおいて、ロシア軍に壊滅された部隊だった。

 この部隊の構成員のほとんどは、「貧困層」であり、その多くは失業中だった。これらの人々は、ウクライナ軍により北東部のハルキウ州のいくつかの村から徴集された兵士たちであった、と記事にはある。中には、兵役を既に終了していた人々や、何十年も前に兵役を終えていた人々もいたが、ほとんどの人々は実地の戦闘体験のない人だった、とも同記事には記載されていた。

 WSJによると、部隊員は基地でたった2日間過ごした後、そこでソ連製のライフルや軍の制服が渡され、その後、アルチェモスクに派遣されると伝えられたという。そこは何ヶ月もの間、ロシア軍とウクライナ軍の間で膠着状態が続いていた戦場であり、「肉を挽く」ような地域であると称される、21世紀の戦争の歴史において最大の戦場と呼べる場所だった。



関連記事:「バフムート肉挽き機」の内部: ロシアはいかにしてウクライナ人をドンバスの「要塞」であるはずのアルチョモフスクから撤退させたのか?

 徴兵されたこれらの人々の中には、正式に命令を断る文書に署名することを望むものもおり、彼らはその理由としてこの使命を遂行するための適切な訓練を受けていないからだと主張したという。一人の兵が回想して語ったところによると、これまで自分は銃を手にしたことがないので怖い、と伝えたところ、ウクライナ軍の一人の曹長が「バフムートにいけば自然に覚えるさ」とだけ語ったという。

 これらの16名の徴兵された人々はウクライナの第93機械化歩兵団の第5中隊に編入されたが、アルチェモスクで過ごした時間はたった36時間で、隊員のうち11名は戦死あるいは捕虜にされた、とWSJは生き残った兵たちや戦死した徴兵の親類からの話として報じた。この中隊の一人の兵が、同紙に語ったところによると、彼は生まれて初めてロケット推進式の手榴弾を使ったといい、他の兵たちは、ロシア軍による突撃は、「地上の地獄」のようだったと語った。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の推測によれば、ウクライナ側が、「アルチェモスクでの戦闘」に対して、「兵士や領域防衛部隊を徴兵する際、貧弱な訓練や武器しか与えないこともあったのは、西側により訓練や武器の供給を受けた旅団を、この春から開始されると広く考えられていた反撃攻勢のために温存しておくため」だったからではないか、としている。

 アルチェモスクでの戦闘においてロシア側の最前線で活躍したワグナー民間軍事会社のエフゲニー・プリゴジン代表によると、同民間軍事会社の兵たちは「ウクライナ軍の5万人の兵を壊滅させ」、さらに5万~7万人を負傷させたという。ロシア側は先週土曜日(5月21日)、ウクライナ側の重要な要塞であり兵站の要地であるアルチェモスクを完全制圧したと発表したが、ウクライナ側はまだ、同市を失ったことを正式に認めていない。

キエフ政権軍において暴動が起こる危機が迫っているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Looming Mutiny Among Kiev Regime Forces?
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
出典;Global Researh  2023年5月25日 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月1日




***

 キエフ政権とその軍との間の関係が少しも良好ではないということは、取り立てて騒ぎ立てるニュースでもない。しかし、ここ数ヶ月、両者の間の亀裂や距離が拡大し続けていて、危険な規模に到達し、ゼレンスキーやゼレンスキーの取り巻きに対して激しく反発する勢力が軍内に生まれている。現在、ウクライナ軍は、機能不全に陥った寄せ集めの状態になっている。そこには、昔のソ連時代の幹部ら、より最近の「NATO化」された将校団と特殊部隊がおり、さらにNATOから軍事訓練を施されているネオナチであることを広言している様々な部隊も加わっている。ただ、彼らの従軍体験と言えば、そのほとんどは、ドンバスの両共和国での戦闘体験なのだが。
 
 昨年の時点では、何万もの傭兵や志願兵も、この不安定な軍に加えることができるだろう。その中には作戦遂行や訓練、キエフ政権の軍の指揮にあたってきたNATOの特別部隊も含まれている。ウクライナの軍事政権の軍内で、こんなにも多くの異なる集団をまとめ、命令を出すことは本当に骨を折る仕事である。西側諸国政府がほぼ達成不可能な任務をこれらの軍関係者らに課している状況を考えれば、とりわけそうだ。そしてこれらの任務というのは、達成可能な目標を達成するための軍事的な行動ではなく、情報戦争を仕掛けようとする任務なのだ。先日のベルゴロド地方(州)のいくつかの村に対して行われた失敗した攻撃の様子を見れば、現状がよくわかる。

 キエフ政権の先頭に立っているヴォロデミル・ゼレンスキーにとっては、そのような作戦を命じるのはたやすいいことだ。というのも、ゼレンスキーは死の危機に直面する現場に送られることはないからだ。それは、西側各国政府がこれらの戦略的(さらに言えば戦術的)に意味のない「攻撃」を仕掛けて、ロシア軍を中傷しようとしているのと全く同じことだ。このことはまさに、ウクライナ軍内の先述した多くの集団がゼレンスキーやゼレンスキー政権に深い失望感を抱いている理由となっている。ウクライナに「クラウス・フォン・シュタウフェンブルグ (訳注:ヒトラーを暗殺しようとしたドイツの軍人)」や、シュタウフェンブルグに追随する「将軍らによる陰謀」がないとは言い切れないが、軍から強い反発の声が上がっていることは、すでに明らかである。このような状況は、ゼレンスキーにとって非常に危険な状況になり得るだろう。これらの集団がそれぞれの違いを乗り越えて団結することになれば、それはあり得る。

 (控えめに言っても)ゼレンスキーが嫌われているのは、ソ連時代の幹部らからだけではなく、「NATO色を帯びた」司令官たちからもだ。その中には、ペトロ・プロシェンコ元大統領と繋がる経歴をもつ最高位の高官らも含まれている。さらにそこに名を連ねている人々を数名挙げれば、ウクライナのセルヒイ・シャプタラ参謀総長や空中挺進部隊のミハイル・ザブロードスキー元司令官や海軍のオレクシー・ネイツパパ司令官やオレクサンドル・シルスキー陸軍最高指揮官らだ。これらの軍の高官らは、何十年間もかけて面倒で時間がかかる過程を経て、ソ連やNATOから軍事教育を受けてきた。したがって、これらの人々は、ゼレンスキーの取り巻きであるGUR(ウクライナ国防省情報総局)のキリーロ・ブダノフ局長が、急遽台頭した際、落胆し、嫌悪感さえ覚えたのも当然だった。

 いっぽう、ゼレンスキーに対しては、ヴァレリー・ザルジニーという最高位の司令官からあからさまに不満が表明されている。この人物は軍内でほぼ紛れもなく最高の権力を享受している人物だ。これら不満分子には、先述したすべての異なる集団が含まれているが、特筆すべきは、ゼレンスキーを持ち上げる宣伝扇動により本当の姿が見えなくさせられているネオナチ部隊も含まれている点だ。政権の先頭にいるゼレンスキーは、自身がまるで軍の司令官であるかのような姿を演出しようとしているが、実際のところは、明確な軍事作戦などほとんど持っておらず、このような状況も大多数の軍の高官らから反感をかう原因になっている。このゼレンスキーの考え方が招いている事態というのは、ゼレンスキーが本質的には自国軍の奮闘を自分が演出する劇場の出し物くらいにしか捉えられておらず、その軍の奮闘の唯一の目的は、情報戦争を仕掛けるためだけであり、その結果ウクライナ軍にとっては不必要な多くの犠牲者を出すことになってしまっているということだ。

 バフムートはこのような状況の最善の(最悪と言った方がいいかもしれないが)の例だ。ザルジニーが何度も撤退を要求してきたにも関わらず、ゼレンスキーは防衛を主張していた。その理由は、バフムートを失えば、西側からの支援や現金の流入が減じられることをゼレンスキーが恐れていたからだった。このような軍事的に不適切な決定をしたせいで、ウクライナの軍事政権は、凄惨な死亡率を出すことになってしまった。情報源により数値は大きく変わるが、最もありえそうな推定では、これまでほぼ25万人のウクライナ兵士が戦死、あるいは重傷を負っていると見られている。いっぽう、今年の2月の時点で、 トルコの報道機関が、(イスラエルの諜報機関からの情報として)詳細に報じた記事によると、ウクライナ側の取り返しのつかない損失は40万人近くに上り、うち約16万人が戦死し、それ以外の兵士は重傷を負ったという。

 キエフ政権側の恐ろしいほどの戦死者数については、数名の高官から明言されていて、その中には、ヴァディム・プリスタイコ駐英ウクライナ大使も含まれる。ザルジニー自身も、米国側のマーク・ミレーウルズラ・フォン・デア・ライエンとの対談においてさえ明言している。ただしライエンがその対談に参加していたことは、大手報道機関という宣伝扇動機関から検閲が掛けられた。その間ずっと、ゼレンスキーはウクライナ国外に多額の資本を確保しており、ゼレンスキー一族の豪華な生活様式は、何百万人ものウクライナの一般市民たちが送っている厳しい暮らしぶりと全く対照的である。このような状況は、ゼレンスキーの同胞らにも当てはまり、ヴェルホーヴナ・ラーダ (ウクライナの最高議会)のルスラン・ステファンチュク報道官(家族をポーランドに移住させた )や、オレクシー・ダニーロウ(息子のマキシムは徴兵を逃れマイアミに逃亡した)などがその例だ。

 ゼレンスキーは、自身のこのような振る舞いがウクライナ国民から総スカンを食らうことを完全に分かっているにちがいない。特に、ほぼ10年間、NATOから軍事訓練を施されてきた軍隊が隣国の軍事超大国との戦争に引きずり込まれて、好戦的な同盟自体が決してなし得なかった方法(航空優勢を完全に欠くこと)で戦争をする羽目になったのだ。ザルニジーがなぜか姿を消したことが、このような現状の全貌の説明になるだろう。ザルジニーは4月13日以降、公に姿を見せていない。ザルジニーの運命について唯一推測できること、及び多くの情報源から推測できることは、何人かが推測している通り、ザルジニーは逮捕され、支持者から遠ざけられている、というものだ。さらに、ザルジニーは殺害されたのでは、とまで述べる人々もいる。真実はどうあれ、キエフ政権内の分断の動きに拍車がかかる状況は避けられないようだ。

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「ロシアに行こうとする者は射殺すると言われた」:今年初めにウクライナから奪還された町ソレダルを見てみよう。

<記事原文 寺島先生推薦>
'They said they’d shoot anyone who wanted to go to Russia': A look at Soledar, the town captured from Ukraine earlier this year
Famed for having the largest salt deposits in the former USSR, Soledar is free from Kiev's control but fighting continues nearby
旧ソ連最大の塩鉱脈で有名なソレダルは、キエフの支配から解放されたが、近くで戦闘が続いている。
出典:RT 2023年5月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月15日


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ソレダルに残る最後の2人の住民が住む廃墟となった建物の近くに立つPMC(民間軍事会社)ワグネル戦闘員。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルの解放は、2023年におけるロシア軍の最大の成功の1つである。ドンバスの町での砲撃戦は昨年5月に始まったが、この街への最終攻撃はすぐに起こった―2023年1月に攻勢を開始したPMCワグナーの戦闘員は、1カ月も経たないうちにウクライナ軍(AFU)を撤退に追い込んだ。

関連記事:写真による報告―撤退するウクライナ軍によって荒廃したルガンスク地方の重要な都市が、どのように甦りつつあるのか

 しかし、ソレダルはまだ平和な生活に戻るにはほど遠い。この町は前線に位置し、ウクライナ側からの絶え間ない攻撃を受けている。RTのアルセニー・コトフ特派員は、少し前まで激しい戦闘の中心地だったソレダルがどのような状況なのか、最近現地に赴いた。


ソレダルへの道

 ソレダルへの道は、ルガンスク人民共和国の西郊に位置するペルボマイスクを経由する。ウクライナは2014年にこの街の支配権を失った。それ以来、3万人以上の現住者がいて多かれ少なかれ普通の生活に戻っているが、地元の人々は戦争や定期的な砲撃に慣れているのも事実だ。ソレダルから約60km(40マイル)に位置し、私はここでPMCワグナーの保安兵の出迎えを受けた。

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ペルヴォマイスク市の入り口にある古い給水塔の上にあるソ連の記念碑 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ペルヴォマイスクはウクライナの砲撃にたびたび見舞われているが、ソレダルから逃れてきた数百人の難民にとって、安全への道のりの最初の停留所であった。

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HIMARSロケットで破壊されたペルヴォマイスクのアパート © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ワグナー・グループの装甲車に乗り、ポパスナヤのこの世の終わりを表すかのような黙示録的な風景を通り過ぎた。この町は―人口2万人以上―かつて前線のすぐ近くにあり、2014年からウクライナ軍によって要塞化されていた。しかし、2022年の初めには、約4千人の住民しか残っておらず、この1年間で、その大多数も去っていった。

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ペルヴォマイスクからソレダルへ向かう途中、廃墟と化したポパスナヤの街並みを望む © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 戦争の後遺症は、都市や町だけでなく、田舎でさえもいたるところに見られる。道路には戦車や武器の残骸が散乱しており、そのほとんどがウクライナ軍の置き土産である。

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ポパスナヤからソレダルへの途上にあるウクライナ戦車の残骸 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ようやく到着した目的地は、道中と同じように荒涼とした雰囲気だった。道路がまた曲がるとき、ソレダルの住宅地が初めて見えた。ウクライナ軍は数カ月間ここに配置されていたが、撤退後もウクライナ軍はこの街の住宅街への攻撃を止めなかった。

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ソレダルの住宅地の様子 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 街の入口ですぐに気づいたのは、アパートの地下室の間に掘られた広範な塹壕の連絡網だった。AFU軍はこれらの地下室を壕として使用し、民間人は上のアパートの一部に住み続けていた。

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街の入り口にあるウクライナの塹壕 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


廃墟化した都市

 現在、ソレダルには事実上、民間人は残っていない。ほとんどの人が昨年出て行った。わずかに残った住民は、ロシア軍の入城を待ち、その後、国内の他の地域へ避難した。

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ソレダルの廃墟となったアパート © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 地元の人たちは、勇気を振り絞って兵士の到着を待つしかなかった。荒れ果てた街にも、住民への敵意が感じられる。いくつかの家の壁やフェンスには、「裏切り者用―スーツケース、鉄道駅、ロシア」と刻まれている。これは、ウクライナの民族主義者が、かつてキエフ政権に属していた土地でロシア人に向けてよく発せられる言葉の一つである。

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碑文: ソレダルの壁に描かれたウクライナ国旗と民族主義部隊「ウクライナ反乱軍」の色で描かれた「裏切り者用―スーツケース、鉄道駅、ロシア」 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ワグネルの戦闘員の一人が私に言った:「私たちがソレダルに入ったとき、驚いたことに、街にはまだ多くの市民が残っていた。ウクライナ側は、全員を避難させることを申し出たが、それは一方向だけ、ウクライナの方へだけだった。ロシア (の他の地域) に行きたい人は誰でも後ろから撃つと言っていた。だから、人々は地下室で私たちを待った。私たちは、夜にバスで避難させた。日中は危険で避難できない。撤退した後、敵が倍返しで街を攻撃してくるからだ。避難者全員に心理的支援を行い、ペルヴォマイスクやルガンスク人民共和国の他の都市に仮住まいを提供した。避難を拒否したのは2人だけだった。彼らは今もこの5階建てのアパートの4階に住んでいる」。

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ソレダルの東地区。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルは決して大きな町ではなかった。2022年の開始時点では、約1万人の人口しかいなかった。

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ソレダルの住宅街の東側からの眺め© RT/Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルの休養・娯楽施設のほとんどはソ連時代に建設された。ソリャニク競技場は1980年のモスクワオリンピックに合わせて開設された。文化施設、スポーツ、音楽学校もあった。

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ソリヤニク・サッカースタジアムでの「競技者への挨拶」の碑文 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 他の旧ウクライナ領ドンバスの都市と同様に、路上には事実上、近代的な車はない。ほとんどの車両はソビエト製のジグリ型である。

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ソレダルの民間車両の残骸 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 市内の多くの建物や家屋が修復不可能な損傷を受けており、近隣の小さな村も同じ運命をたどっている。ソレダル郊外も6ヶ月間にわたって双方から砲撃を受けたからだ。

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ソレダル東郊の破壊された村。そこにはウクライナ軍の砲兵部隊が配置されていた。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT


塩と戦争

 ソレダルは主に塩鉱床で知られている。この鉱物は19世紀末からここで採掘されてきた。1991年までは、有名なドイツの社会主義者カール・リープクネヒトにちなんで名付けられていた。地元住民のほとんどは、旧ソ連最大かつヨーロッパ最大級の鉱床であるアルテムソル塩採掘コンビナートで働いていた。

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塩鉱山の管理棟にあるアルテムソルの看板 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ここの塩の埋蔵量は13トンから160億トンと言われている。1884年、帝政時代にロシアの実業家が最初の施設を建設して以来、採掘を続けてきた。120年間で2億1800万トンの塩が抽出された。

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塩の結晶が描かれた石碑は、アルテムソル社の企業の象徴。土台は土嚢で補強されており、発砲地点として使用された。© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 塩の事業の再開について話すのは早すぎる。近隣が廃墟と化しているからだ。軍用ヘリコプターが街を飛び交い、わずか十数キロ先ではアルチョモフスク(バフムート)の戦いが繰り広げられている。24時間、大砲が頭上で鳴り響く。

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ソレダルの遺跡の上を飛ぶロシアのヘリコプター © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルでの生活は、もはや塩の採取ではなく、戦闘である。前線は、1月13日からロシアの支配下にあるソル鉄道駅からわずか5kmしか離れていない。

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ソル駅でのロシア軍の戦闘員 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 かつて塩の採掘で栄えた町は、巨大な地雷原と化した。地面には砲弾やロケット、爆弾が散乱し、爆発による窪地で荒らされている。

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ガソリンスタンド付近の空爆による窪地 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 制圧戦の際、ウクライナの大砲部隊は体育学校の近くに配置されていた。兵士たちは、鬱蒼としたモミの木の枝の下に使用済み弾薬筒を無造作に投げ込んだ。

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ソレダルの体育学校付近の使用済み弾薬筒© RT / Arseniy Kotov, special report for RT

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ソレダルの路上でグラッドロケット*の隣にいる子犬 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT
* 旧ソ連が開発したロケットの名称

 ロシア軍は地雷の問題に取り組んでいる。今のところ、撤去班が主要な道路すべてで作業をしているが、一歩脇に入れば、多くの不発弾が見つかるだろう。ここでは、自分がどこに向かっているのかを注意深く見ることが不可欠である。

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ソル駅付近の田舎道にある82mm砲の不発弾 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


ある教会の物語

 ウクライナ東部の他の都市と同様、ソレダルでは2014年以降、新しい建物は建設されていない。危険度の高い環境を恐れて、投資家や建設会社はこの地域での作業を避けた。この街のソビエト時代の建築物の中で、聖なる変容教会は唯一の新しい建築物だった。

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ソレダルの聖なる変容教会 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 この教会は、教区民や地元企業からの寄付によって建てられた。2007年に建設が始まった。激化する紛争や多くの教区民の離脱にもかかわらず、工事は続けられた。2015年、戦争のさなか、新教会のドームが立てられた。

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聖なる変容教会の鐘楼 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 「私たちが近づくにつれ、ウクライナ人は自分たちがこの街を支配し続ける見込みがないことを知った。撤退するとき、彼らは手持ちの武器すべてから発砲した。彼らは教会や文化財などの遺産を気にしなかった」と、ソレダルの襲撃に参加した戦闘員の1人は語った。

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聖なる変容教会内のロシア軍兵士 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 教会の壁は砲弾で裂けている。聖障は爆発で破壊されたが、ほとんどの聖画像は生き残り、破片で破損したのは一部だけだった。

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夕日に照らされた被災した教会の様子 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 私が話を聞いた兵士のほとんどは信者で、キリスト教正教会の神社を敬虔な気持ちで扱っている。しかし、被害を受けたため、現在は教会の礼拝や祈りは行えない。前線があまりにも近く、ウクライナ軍が定期的に街を攻撃しているため、復興は今のところ不可能である。

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教会内部の様子/砲撃で穴が開いた教会西側の壁の様子/聖コンスタンティンとエレナのイコン © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


街の新しい住人たち

 ソレダルを案内してくれたのは、かつてロシア軍に所属していた将校だった。

関連記事:写真で見るマリウポリ:ロシアの支配下に置かれた8カ月後、戦禍に見舞われた街はどう変わったか。


 「私たちは祖国を守るためにここにおり、どんな犠牲を払ってもその仕事をする。私たちは、わずか9日間でこの街を占領し、解放した。そして、プロスコヴェイエフカ、ブラゴダトノエと続き、クラマトルスクとバフムートを結ぶ道を進んだ...」。

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ソレダルの学校にいるロシア兵 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 エカテリンブルク出身のサーシャは、元囚人でありながら、国への貢献によって予備釈放を得るためにPMCワグネルに志願したと話してくれた。

 「生命を脅かす」という条文で有罪になり、あと6年刑務所に入ることになった。私は付き合っていた彼女と喧嘩をして、怒って怒鳴ったので、彼女がその件を警察に届けた。再犯だったので、あまり調べてもらえなかった。8年間のうち2年間は服役し、ワグネルグループに入った。仕事は運がよくて、軍司令部で働いている。だから、2週間後には無事に帰国して、戦後の新しい生活を始められる可能性が高いんだ。1カ月ほど休んでから、またここに戻ってくるつもりだ。ここではみんな仲間だし、仲間を放っておけないし、仕事も面白いしね」と語った。

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第266アルチョモフ小銃師団のソ連兵=解放者の記念碑のそばに立つサーシャ © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルは、ワグネルPMCの一種の軍事基地と化している。ここでは、戦闘員たちが新しい戦いの前に、使用済みの武器を試して、充電する。私は数人の軍人と一緒に郊外に行き、ウクライナのウクロップ社がアメリカ製の民間用ライフルZ-10を改良して開発した半自動狙撃銃UAR-10を試射するところを見た。

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押収したウクライナの武器を試すワグネル・グループの戦闘員 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 訓練は長くは続かなかった。AK-74ライフルから数発の挿弾子を発射し、ウクライナの武器を試した後、戦闘員たちは伝言を受け取り、作業の続きに急いだ。

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ソレダル郊外のロシア軍兵士 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ワグネルの戦闘員は、小火器に加えて、戦利品としてウクライナの装甲車も押収している。例えば、M113は1960年から使用されているアメリカ製の装甲兵員輸送車である。

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ウクライナ軍から押収したM113装甲兵員輸送車 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

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ワグネル・グループが押収したウクライナの紋章の収集物 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルのソ連時代の文化・娯楽公園の入口で、戦闘員の一人を撮影した。 彼はRecreationと刻まれた石柱の前に立っている。Recreationはロシア語で「休息」を意味し、「休息を与えよ」と読むことができる。半年間の契約後、多くの戦士が休息を取るために故郷に帰ることを夢見る。

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ソレダーの文化・娯楽公園にいるPMCワグネルの戦士 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT

 ソレダルの平和な生活への復帰を議論するのはまだ早いが、地元当局はすでに復興計画を練っている。ドネツク人民共和国のデニス・プシリン代表代行によると、ソレダルは全く新しい方法で再建され、最大の企業であるアルテムソルが操業を再開する予定だという。前線が都市からさらに遠ざかると同時に、これらすべてが可能になる。

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日没時にソレダルの中央通りを歩く一組のロシア兵 © RT / Arseniy Kotov, special report for RT


写真および報告は、独立系フォトジャーナリスト、アルセニー・コトフ。

ウクライナ軍によるドネツク市場への攻撃はテロ行為―西側メディアは完黙

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukrainian strike on Donetsk market was a terrorist act
When artillery hit a busy public space in Donetsk, it brought flashbacks of attacks in Gaza and Syria
ドネツクの賑やかな公共スペースを砲撃が襲ったとき、ガザやシリアの攻撃が思い返された。
出典:RT 2022年4月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年5月15日



エヴァ・バートレットは、カナダの独立系ジャーナリストである。中東の紛争地、特にシリアとパレスチナ(4年近く居住)に長年取材してきた。@evakbartlett


© Eva Bartlett


 木曜日(4月27日)にロケット砲を受けたドネツクの市場がキエフの支配する都市であったなら、死亡した5人の市民の名前と顔はすべての主要ニュースサイトに掲載されていただろう。しかし、それはドネツク人民共和国(DPR)の市民に対する新たなウクライナ軍の攻撃だったため、死者とさらに23人の市民負傷者はほぼ確実に報道されないだろう。それは、政権による8年間のドンバス支配と政権が攻撃したことを西側報道機関が8年間無視してきたことと同じだ。

 DPRの医療省によると、「キーロフスキー地区のテクシルシク地区での攻撃で、4人がその場で死亡した。患者1名は搬送中の救急車の中で死亡した」。

 もう一人のジャーナリストと一緒に、タクシーで爆撃された市場に向かった。私たちが到着したとき、2人の死者がまだ地面に横たわっていた。他の遺体はすでに運び出されていたが、地面には血痕が残り、近くのドアは破片で穴が開き、あたりは爆撃の瓦礫だらけだった。


© Eva Bartlett

 おそらく、救助隊員はまず負傷者に対処し、ウクライナのさらなる攻撃の可能性があるため、すべての死者を回収することを優先しなかったのだろう。私はガザでこのような経験をした。イスラエル軍は攻撃現場に人が来るのを待ち、その後再び爆撃をしたのだ。

 区の安全委員会の現地職員であるゲンナディ・アンドレヴィチによると、午前11時40分、グラッドミサイルが、遺体のあった野菜・衣料品市場と、向かいの家庭用化学品・建材市場の2カ所に落下したという。後者の方がはるかに被害が大きく、屋台は完全に焼け落ちたが、死者は出ていない。

 ゲンナディは私たちと一緒に野菜市場まで歩き、2014年以来続いているウクライナの攻撃について話してくれた。最近の砲撃は、市場外のガソリンスタンド付近、市場の向こうの住宅、そして自分の市場の管理棟を襲い、2人の同僚を殺害した。

 この時間帯なら市場は人で溢れていたはずで、ウクライナは何を撃っているのかよく分かっている、と彼は指摘した。

 「ここに市場があること、10時から13時までは人がたくさんいることを彼らは知っています」と、店の前を通りながらゲンナディは言った。

 ここは完全に民間の地域で、軍事施設はない。
動画はこちらからご覧ください。訳者)

他に誰が市場と公共区域を攻撃しているか?

 一日のうちで最も人通りの多い時間帯に、混雑した市場や通りを攻撃することは、西側メディアが沈黙する中、シリアのテロリストが何年も前から行ってきたことである。イスラエルもまた、地球上で最も人口密度の高い場所のひとつであるガザの住宅地や公共施設を攻撃し、長い間行ってきたことだ。

 2009年のガザ戦争では、イスラエルはモスク病院、避難民が住む建物などを空爆した。特に注目すべきは、1500人近くが避難しているジャバリヤの国連運営の学校をテルアビブが攻撃したことである。少なくとも40人が死亡した。ザイトゥーン地区では、イスラエル兵が銃でサモウニ一家100人近くを一軒の家に押し込め、その後爆撃し、一族の48人を殺害した。

 戦争中、私は救急車に乗っている衛生兵に同行し、イスラエルの戦争犯罪を記録していた。ある日、私が同行した衛生兵(アラファ・アブド・アルダイム)は、イスラエル軍が、禁止されているフレシェット(矢)弾を彼と彼がそばにいた救急車に向けて直接発射し、殺害された。翌日、イスラエルは、アラファの死を悼むために狭い場所に集まっていた親族や友人たち6人を、同様にフレシェット(矢)弾を使って殺害し、25人を負傷させたのだ。

 ダマスカスの旧市街は、曲がりくねった路地、重なり合う家々、教会、モスク、学校、混雑した屋外の飲食店、市場などが迷路のように入り組んでいる。東グータを占領しているテロ集団は、子供たちが学校に行くときや、人々が市場に行くときに最も頻繁に砲撃した。

 旧市街の東門やトーマス門に長く滞在したため、砲撃を経験し、悲しいけれども、テロリストが混雑した場所に砲撃を行ったという証言を多く得た。

 今でもダマスカス旧市街を歩けば、迫撃砲の跡を見つけることができる。そして、その路地を歩けば、普段からいかに混雑しているかがわかる。つまり、1回の迫撃砲の爆発で多くの人々が負傷し、死亡しただろう。

関連記事:マイダン分断から7年、ウクライナはドンバスへの砲撃を強化しているが、西側メディアはそれを全く報じない。

  例えば、2014年4月中旬には、小学校と幼稚園を攻撃し、1人の児童が死亡、65人の児童が負傷するなど、長年にわたって砲撃によって殺傷された無数の児童の一部に過ぎない。

 ちなみに、私がこの負傷した子供たちを見た同じ病院にBBCが来ていて、テロリストが毎日迫撃砲を撃っているとはっきり言われたことを後で書いた。その後に掲載されたBBCの記事には、こんな一節があった:「政府はまた、支配下にある地域に発射したと非難されている」。

 また、アレッポのテロ爆撃については、私が滞在していた2016年11月のある日を引き合いに出して、その日のうちに18人が死亡し、200人以上の市民が負傷したことを書いた。これらは、アレッポだけで家や公共の場へのテロ攻撃によって殺された約11,000人の市民の一部であった。

 シリアやパレスチナ、その他の場所でのテロ行為を挙げ続けることもできるが、私が言いたいのは、ウクライナが混雑した市場を爆撃するのは、意図的なテロ行為であるということである。ウクライナが過去8年間、ドンバス共和国の家々を執拗に爆撃してきたのと同じだ。

 欧米の報道機関はこれを報道せず、欧米の政治家はこれを非難せず、美徳の看板を掲げる人々はこれについて語らない。そして、あなたが実際に行ってそれを記録すると、彼らはあなたを容赦なく黙らせるだろう。


© Eva Bartlett

 市場襲撃に関する私の最初のツイートは予想どおり荒らされ、遺体は偽物だ、爆破事件は起きていない、「それを証明しろ」というような書き込みで埋め尽くされた。

 私の観察と写真、そしてゲンナディの証言だけでは十分な証拠にはならないので、私の映像には、爆撃されたときに市場にいた地元の人が撮影した、爆撃直後の様子を収めた映像も入れた。ゲンナディ自身も、携帯電話で炎を消す消防士の姿や、新たな爆弾の残骸に囲まれた負傷者や死者の姿を映した写真を見せた。

 しかし、今日、私たちは次のような状況に至っている: ウクライナは、しばしば西側から入手した武器を使って、ドンバス共和国の人通りの多い民間地域を爆撃し続け、さらに多くの民間人を殺している。西側の偽善者たちは、ロシアの戦争犯罪をしきりに非難するだけでなく(彼らは決して証明できず、しばしば矛盾を生じる)、報道機関とトロールファーム*は連携して、国民をガス抜きしてウクライナの戦争犯罪をごまかすことに取り組んでいる。
* ,トロールファクトリーとも言う。政治的意見や意思決定に干渉しようとするインターネット・トロールの制度化されたグループ。 ある調査によると、世界中の30の政府が、プロパガンダを広め、批評家を攻撃するために、そのキーボード軍に支払いをしている。なお、「トロール」の由来は、北欧神話に登場する怪物「トロール」。森や洞窟に住む邪悪な存在とされている。(ウィキペディア等)

ドネツクの市民がウクライナ軍の砲撃におびえ続ける中、現地にいる記者がその恐怖を詳しく報告

<記事原文 寺島先生推薦>
As Donetsk civilians live in constant fear of Ukrainian shelling, a reporter on the ground details the terror
Documenting Kiev’s attacks on residential areas is becoming a horrible, tragic routine
キエフの住宅地への攻撃を記録することは、恐ろしくて悲劇的な日常になりつつある。
筆者:エヴァ・バーレット(Eva Barlet)
出典:RT 2023年5月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月14日



エヴァ・バートレットは、カナダの独立系ジャーナリスト。中東の紛争地、特にシリアとパレスチナ(4年近く居住)に長年取材してきた。@evakbartlett



ロシア、ドネツク人民共和国のドネツクでウクライナの砲撃により破壊された旅客バス。© Sputnik / Taisija Voroncova


 4月28日にドネツク中心部で行われたウクライナ軍の激しい砲撃により、8歳の少女とその祖母を含む9人の市民が死亡し、少なくとも16人が負傷した。犠牲者は乗っていたミニバスに砲弾が当たり、生きたまま焼かれた。

 この攻撃は、大病院、アパート、住宅、公園、道路、および歩道も標的とした。すべて民間の地域であり、軍事目標ではない。

 JCCC(Joint Monitoring and Co-ordination Center on Ukraine’s War Crimesウクライナの戦争犯罪に関する合同監視調整センター)のドネツク人民共和国(DPR)代表事務所によると、キエフ軍は「スロバキア製でNATO諸国がウクライナに移送した」高爆発性破片ミサイルを発射した。同日の以前の砲撃について、JCCCは、米国製のHIMARSシステムが使用され、「専ら都市の住宅地、中心地区」を標的としたと指摘している。



関連記事: ウクライナによるドネツク市場への攻撃はテロ行為だった。

 私はドネツクの郊外でアルチョモフスク(別名バフムート)からの避難民にインタビューしていた時、午前11時過ぎに激しい砲撃が始まった。午前11時過ぎに始まった最初の砲撃で、私は焼け焦げたバスがまだ煙を上げ、乗客の黒焦げの死体がバスの骨組みに溶けている惨状を目の当たりにした。この悲惨な光景は、悲しいかな、一度だけの出来事ではなかった。

 他の場所では、市の職員がすでに瓦礫を撤去し、道路の損傷部分の舗装を始めていた。今年1月1日、ウクライナが市街地に25発のグラッド(訳注:ソビエトが開発したロケット)を撃ち込んだのをはじめ、ウクライナの砲撃の後にこのような光景を何度も目にしてきた。同様に2022年7月、ウクライナの砲撃で市街地の市民4人が死亡し、うち2人は同様に炎に包まれた車の中にいた。約1時間後、私が現場に到着すると、作業員が道路の被災箇所を舗装していた。

 共和国外傷センター病院の被害はすぐに片付けられたが、砲撃直後にTelegramで共有された動画には、壁の1つにぽっかりと穴が開いている様子が映っている。その部屋には、ドネツクで唯一のMRI装置があったようだ。

 ドネツク中心部の大通り、アルティオマ通りは、ウクライナの攻撃で数え切れないほど狙われており、破壊は明らかだった: 爆撃に巻き込まれた2台の車、粉々になった窓やドアを塞ぐアパートの住民、ガラスや瓦礫が吹き飛ばされる聞き慣れた音。その日最初に標的となった住宅地では、ある家の裏の巨大なくぼみに、別の家の壁や屋根がロケットの破片と混じっていた。



ウクライナの戦争犯罪はさらに続く

 2022年4月、ドネツク西部のキーロフスキー地区にある大きな市場地区が攻撃され、民間人5人が死亡、23人が負傷した。私はその余波を記録するために現地に向かったが、5人のうち2人がまだ近くの路地に横たわっているとは思っていなかった。この砲撃は昼前で、この辺りでは人通りの多い時間帯である。このような時間帯に爆撃を行うことは、より多くの市民を傷つけ、殺すための陰湿な戦術である。

 同じ地域を二重三重に叩くのも、ウクライナ軍が使う手法の一つだ。昨年のインタビューで、DPR緊急事態省消防救助隊局のセルゲイ・ネカ局長は私に、「我々の部隊が現場に到着すると、ウクライナは砲撃を開始するのです。多くの機材が損傷し、破壊されました」と語った

 同じくウクライナの攻撃を受けているドネツクのキエフスキー地区の救急部主任、アンドレイ・レフチェンコはこう語る:「彼らは私たちが到着するのを30分も待っている。私たちはそこに到着し、人々の支援を始めると、砲撃が再開される。私たちが外に出て、火を消し、人々を助けると、砲撃が再開されます」。


 私は6月中旬にドネツクに滞在していたが、その日はウクライナによる中心部への砲撃が特に激しく、少なくとも5人の市民が犠牲になった。ドネツク人民共和国(DPR)当局の報告によると、「2時間以内に、300発近いMLRSロケット弾と砲弾が発射された」そうだ。グラッドロケット1発が産科病院に命中し、屋根を切り裂いた。

 翌月、ウクライナは国際的に禁止されている「花びら」地雷を含むロケット弾を発射した。ドネツク中心部、西部、北部、その他の都市の通りには、踏むと致命傷にはならないが、グロテスクな損傷を与えるように設計された、見つけにくい地雷が散らばっていた。この地雷は、今日まで新たな犠牲者を生み続けている。前回この記事で紹介したときには、この14歳の少年を含め、104人の市民が負傷し、3人が死亡した。その後、犠牲者の数は112人に増えている。


 8月、ドネツク中心部に対するウクライナの激しい砲撃が、他のジャーナリストやカメラマン数十人とともに、私が滞在していたホテルの真横を直撃した。その日、ホテルの外にいた女性1人と子供1人を含む6人の民間人が殺された。その女性は、まもなくロシアに留学する予定の優秀なバレリーナで、祖母とともに、その日、バレエの先生も殺されたが、彼女は世界的に有名な元バレリーナであった。

 9月のわずか5日間に3回行われたウクライナ軍による市街地への砲撃で、26人の市民が死亡した。9月17日には4人が殺され、そのうちの2人は同じ中心部のアルティオマ通りで車の中で生きたまま焼かれた。その2日後、16人の市民が殺され、遺体は通りに散乱し、あるいは認識できないほどの肉の山となっていた。3日後、ウクライナは中央市場の隣を攻撃し、6人の市民を殺害した。2人はミニバスの中で、残りは路上にいた。

 その後、11月と12月にドネツクとその周辺都市を訪れ、ドネツクの市民地域と北のゴロフカ集落に対するウクライナ軍の砲撃(HIMARS使用)の余波を撮影した。11月7日のドネツク中心部への砲撃は、私がインタビューした若い母親の幼児を殺してしまう可能性があった。幸い、最初のロケット弾の音を聞いた後、彼女は息子と一緒にトイレに駆け込んだ。穏やかな気持ちが戻ると、息子のベッドに破片が落ちていた。



関連記事:西側メディアは、ウクライナがNATOの兵器を使ってドンバスで罪のない市民を殺害していることを無視し続けている。

 11月12日のゴロフカへの砲撃で、美しい歴史的文化的建造物が被害を受け、屋根の一部と中の劇場ホールが破壊された。同センターの館長によると、この建物はドネツク州で最も優れた映画館のひとつであり、この街で最も古く、最も美しく、最も愛されている建物のひとつだったそうだ。彼は、HIMARSシステムは非常に精密な兵器であるため、今回の攻撃は偶発的なものではなかったと指摘した。

砲撃は続く

 16日早朝、復活祭のミサの最中に、ウクライナ軍はドネツク中心部の聖なる変容の聖堂の近くに20発のロケット弾を発射したと、フランス人ジャーナリストのクリステル・ネアンが報告し、民間人1人が死亡、7人が負傷したと指摘した。砲撃は大聖堂のすぐ後ろにある中央市場にも及んだ。ちょうど1週間前の4月7日、この市場に対する別の砲撃で、民間人1人が死亡、13人が負傷し、市場自体にもかなりの被害が出た。

 ウクライナはドネツク西部と北部地区への砲撃を続け、ゴロフカやドネツク北部のヤシノバティア(数日前に民間人2人が死亡)にも砲撃を加えている。

 4月23日、ドネツク西部の被害が大きいペトロフスキー地区で砲撃が行われ、男性1人が死亡、5人が負傷した。同日、ドネツク北東部の村では、ロケット弾により30代の女性2人が死亡した。防犯カメラの映像には、女性たちが身を隠そうとした瞬間が映っている。彼女たちを殺した弾薬は、彼女たちが集まっていた場所のすぐ隣に命中した。

 数日後、別の都市に避難しているアルチョモフスクの難民にインタビューに行く途中、私は彼女たちが殺された小さな村の近くを通りかかった。なだらかな丘、美しい川、美しい教会など、静かで穏やかで風光明媚な地域で、何十回となく通った道だ。前線からは遠く離れている。この2人の女性の殺害は、ウクライナのさらなる戦争犯罪である。

 ここの人々は、2014年にキエフがドンバスで戦争を始めて以来、ウクライナの砲撃やその脅威によって常に恐怖にさらされている。

ポーランド軍トップが語るNATOとロシアの代理戦争に関する不評の真相

<記事原文 寺島先生推薦>
Poland’s Top Military Official Shares Unpopular Truths About the NATO-Russian Proxy War
筆者:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年4月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月14日





 ポーランド軍参謀総長ラジムンド・アンジェイチャク将軍の意図を疑ったり、彼がいわゆる「ロシアの工作員」であると疑ったりしてはならない。彼は、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争に西側が勝つことを心から望んでいるが、自分が今話した不評な真実を西側が認めなければ、キエフが敗北することになるかもしれないので、この代理戦争の負けを非常に心配しているのである。

 ポーランド軍参謀総長のラジムンド・アンジェイチャク将軍が、前回メディアの注目を集めたのは1月下旬のことで、その時はロシアがいかに手強い存在であるかを詳しく説明したが、今回は現状の具体的な評価について立論したことで再び話題になっている。ポーランドのDo Rzecy紙は、彼が最近、国家安全保障局との戦略会議に参加し、ウクライナにおけるNATOとロシア代理戦争について不人気な真実を語ったと報じた。

 アンジェイチャクは、この紛争の経済力学を考慮すると、キエフにとって状況は全く良いとは言えないとし、特に金融、インフラ問題、社会問題、技術、食糧生産などに注目している。この観点から、ロシアがその活動を抑制する構造的圧力を感じ始めるまで、あと1~2年は特殊作戦を継続できると予測している。

 それに対して、キエフは数百億ドルもの援助を受けながら、最大限の目的を達成するにはまだほど遠い状況にある。2月中旬にNATO総長が宣言した「兵站(へいたん)競争」/消耗戦を含め、ポーランドの西側友好諸国はウクライナの勝利を阻む課題を適切に評価していない、とアンジェイチャクは率直に語った。もう一つの深刻な問題は、難民がいつまでも祖国に帰りたがらないということだ。

 経済的、物流的、そして国民的な要因が重なり、「ウクライナに安全な未来を築く機会を与える」ために、これらの問題に対する認識を早急に高める必要があると彼は明言した。この動機は、彼が共有した文脈では、欧米のさらなる援助のための婉曲表現である。また、「兵士として、私は最も不利で実行が困難な場合を提示し、ウクライナを助けることができる、また助けるべきすべての人々に場を提供する義務がある」とも付け加えて、詳しく説明した。

 彼はウクライナにおけるロシアとの代理戦争に西側諸国が勝つことを心から望んでいるので、アンジェイチャクの意図を疑ったり、彼がいわゆる「ロシアの工作員」であると疑ったりするべきではない。しかし、彼は、自分が今話したような不都合な真実を西側諸国が認めなければ、ウクライナが敗北するかもしれないということも非常に心配しているのである。彼の考えでは、それを認めなければキエフが敗北することになる。しかし、ポーランドがやろうとしているように、この紛争をいつまでも長引かせることは、もっと悲惨なことになるかもしれないという議論も説得力がある。

 結局、彼が注目した3つの課題は、いずれもすぐに克服できるものではない。唯一の例外は国民の問題かもしれないが、そのためには難民の国外追放を可能にするためにEUの法律を変える必要があるが、それは起こりそうにない。経済的、物流的な要因は、ウクライナだけでなく、欧米全体に関わる体系的なものだ。紛争が長引けば、欧米のウクライナに対する多角的な援助の速度、規模、範囲を維持することは不可能である。

 アンジェイチャク自身も認めているように、「弾薬がないのだ。ウクライナに機材を送るだけでなく、枯渇しつつある在庫を補充する準備もできていない」。ポーランドがウクライナにとって英米枢軸に次ぐ3番目の重要な支援国であることを考えると、他のNATO加盟国も同じように支援の速度、規模、範囲を維持するのに苦労していることがよくわかる。

 つまり、キエフの迫りくる反攻作戦は、ロシアとの和平交渉の再開の前の「最後の砦」となる可能性が高いということである。アンジェイチャクはこの「政治的に不都合な」事実を強く認識しているようで、だからこそ、作戦終了まで代理人たちにできる限りの猶予を与え、協議再開までに比較的に有利な立場に立つことを望んでいる。

 彼と、彼と同じような考えの人々は次の2つの危険極まりない賭けをすることになる:1)今度の反攻作戦が、少なくとも地歩を固めるのに多少なりとも成功すると期待する、2)この作戦が最終的に終了すれば、ロシアが和平交渉の再開に同意すると期待する。それに対応する危険は、以下の通り明白である: 1)反攻作戦が大失敗し、ロシアがその失敗を利用して不明確な地盤を獲得する、あるいは2)キエフが要請してもモスクワが協議再開に応じない可能性がある。

 責任ある政治家であれば、これらの2つの選択肢を当然だと考えることはないだろう。それゆえ、キエフが反攻を断念し、中国の停戦提案を受け入れる方が、失敗したり、ロシアが欧米の支援がまもなく終わるかもしれないと知りながら戦い続けたりする危険性を取るよりも、間違いなく良いのである。アンジェイチャクが指摘した経済的、物流的な課題により、こうした相互に関連する最悪の筋書きの可能性は高まっており、ロシアの不手際がその確率を均衡させるだけである。

 しかし、あらゆる兆候は、それに内在する深刻な課題にもかかわらず、反攻がまもなく開始されることを示唆している。そして、この決定は、1500億ドルを超える援助が具体的な何かに使われたことを西側諸国の国民に示す必要性と政治的要因に関連しているのだ。たとえ悲惨な光景に終わったとしても、意思決定者はそのリスクを負うことを厭わない。アンジェイチャクのように、和平交渉を再開する前に最後の勝利を収めたいという必死な思いから、全力を尽くすことを望む者もいる。

駐仏中国大使ルー・シェイ、西側が震え上がるいくつかの事実を述べる―クリミア、ウクライナ、バルト三国の独立に関して

<記事原文 寺島先生推薦>
Lu Shaye States Some Facts: The West Trembles
ルー・シェイ、いくつかの事実を述べる:西側は震え上がる。
筆者:クリストファー・ブラック(Christopher Black)
https://journal-neo.org/author/christopher-black/
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年5月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月13日


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 駐仏中国大使のルー・シェイ氏は、フランスのテレビニュースチャンネルLCIのジャーナリストと世界と中国情勢について長時間、広範囲に及ぶインタビューを行った際、クリミアはウクライナの一部であるかどうかという質問に対して、「それは歴史をどう見るかによる」「クリミアは長い間ロシアで、ソ連時代にウクライナに与えられただけ」と述べている。

 そして、こう付け加えた、

 「これらの旧ソ連諸国でさえ、主権国家としての地位を具体化するための国際協定がなかったため、国際法上有効な地位を有していない」。

 この2つの発言は、欧米、特にバルト三国やウクライナで怒りの反応を引き起こし、彼の発言を非難する声明や、彼の解任を求める声が上がった。

 しかし、このような騒動の中で、西側のメディアや権力の中枢には誰も、彼の発言は正しいのか、という問いを投げかけようとする者はいなかった。彼の発言は正しいのだろうか。答えはイエスであり、西側諸国の怒りは、ヨーロッパのソ連崩壊後の秩序全体が砂の基礎の上に築かれているという認識によるものである。

 このことと、その結果を理解するためには、1991年のソ連における反革命とソ連解体時の出来事を検証する必要がある。

 ソ連の反革命とソ連邦の崩壊の歴史は長く複雑であり、このような短い論考で要約するのは難しい。しかし、ルー大使が提起した問題の核心に迫るためには、1977年のソ連憲法を検証することで、この複雑な網を突き破ることができる。

 憲法の第1条には、次のように書かれている、

「ソビエト社会主義共和国連邦は、全人民の社会主義国家であり、国内のすべての国家と民族の労働者、農民、知識人の意思と利益を表現する」。

 第72条にはこう書かれている、

「各連邦共和国は、ソビエト連邦から自由に分離独立する権利を保持する」。

 しかし、この点に関して重要なことは、第74条と第75条がソ連最高会議の優越性を確認しており、構成共和国の法律とソ連最高会議の法律との間に矛盾があった場合には、ソ連最高会議の法律が優先されたことである。

 第74条にはこうある、

「第74条 ソビエト連邦の法律は、すべての連邦共和国において同一の効力を有する。連邦共和国の法律と全ソ連の法律との間に相違がある場合には、ソ連の法律が優先される」。

 第75条には、次のように書かれている、

「第75条 ソビエト社会主義共和国連邦の領土は、単一であり、連邦共和国の領土を構成している。ソビエト社会主義共和国の主権は、その領土全体に及ぶ」。

 第72条は、共和国が分離独立するための手続きを定めていなかったが、1990年4月3日、ソ連最高会議は、共和国が分離独立するための手続きを規定する法律を採択し、その溝を埋めた」。

 本質的には、1990年にソ連最高会議で採択された分離独立法は、分離を望む共和国での国民投票の実施を要求し、有効な投票権を持つ共和国住民の2/3の賛成票を必要とした。その後、国民投票の結果をソ連最高会議に提出して承認を得る必要があり、その後、分離から生じるすべての問題とその対処方法を解決するための様々な手続きが実施された。

 最高会議が承認すると、国の最高議会である人民代議員会でも承認されなければならない。

 また、分離独立法では、モスクワの人民代議員会の承認を得て、財産などの問題を解決するための5年間の移行期間と、独立に反対して離脱を希望する人たちの再定住費用の分離独立国側への支払いも義務付けられた。

 分離独立の際に決定されるべき主要な問題の一つは、ソ連に残ることに投票した少数民族に属する人々の権利であり、彼ら自身がソ連内に留まるため、あるいは補償を得て離脱するために、今度は分離共和国から離脱する権利であった。

 バルト三国にはロシア人が相当数住んでおり、またウクライナの場合はロシア人が多数住んでいたため、この点は大きなポイントであった。ウクライナの東部では、過去も現在も国民の大半がロシア人である。

 1990年改正案は長いので、ここでは本文に含めないが、特に1990年以降のウクライナでの出来事を考慮すると、詳細に検討する価値があるため、読者はここで確認することができる。

 この点では、次のような第3条に注目しなければならない、

第3条

「自治共和国、自治州、自治管区を構造内に含む連邦共和国では、住民投票は自治組織ごとに別々に行われる。自治共和国と自治組織の国民は、ソ連内に留まるか、あるいは分離する連邦共和国内に留まるかどうかの問題を独自に決定する権利を保持し、また、自らの国家法的地位の問題を提起する問題もまた提起することができる」。

 この規定は、クリミアがウクライナの一部になるかどうかを決める際には重要な要素となる。なぜなら、クリミアは自治州であり、それゆえ、クリミアの人々は、分離するウクライナに参加するか、あるいはそのままソ連に留まるかを、独立して、住民投票を行う権利を持っていたからだ。しかし、クリミア州の市民には、そのような住民投票は許可されることはなかった。キエフがそれを許可しなかった理由は理解できる。なぜなら、もし許可されたのなら、2014年の住民投票で証明されたように、クリミア人の大多数はウクライナではなくソ連邦に残ることに投票することになっただろうから。

 しかしこの時期、西側の工作員は現在のようにバルト三国やウクライナで活発に活動しており、リトアニア人、エストニア人、ラトビア人の反革命分子は、自分たちの共和国は自発的にソ連に加わったのではなく、1940年6月にソ連に強制的に併合されたのだから、分離に関するソ連の新法は自分たちには適用されないと主張した。

 エストニアは1721年から1920年までの300年間、ロシアの一部であったことに注目しなければならない。この期間、エストニアは第一次世界大戦とロシア革命を利用してロシア帝国から離脱しようとした2年間の紛争の後、ボルシェビキが独立を認めた。ただ、これは、1940年、ドイツの脅威から自国を守るためにソ連がエストニアを再占領し、エストニアでは親共産党政権が誕生してソ連への加盟を要請したため、この独立は短期間で終わることになった。1940年からエストニアはソ連の一部となり、構成共和国としてソ連の法律に従うことになった。

 リトアニアもエストニアと同じ立場をとっていたが、当時、ゴルバチョフの報道官だったアルカディ・A・マスレンニコフは、リトアニアの現在の法的地位について問われ、バルト共和国には例外がないことを示唆した。

 「リトアニアはソビエト連邦の一部であり、共和国の国家構造に関するすべての問題とソビエト連邦へ入るかそこから出るかの問題は、たとえその根拠が誰かの意に沿わないものであっても、憲法上の根拠に基づいてのみ解決することができる」。

 ラトビアも似たようなもので、ポーランド、ドイツ、スウェーデン、ロシアの支配下に置かれた時期がある。しかし、1795年からはロシア帝国の一部となった。第一次世界大戦とロシア革命の間に、ラトビアも微妙な独立を果たしたが、これはドイツがポーランドに侵攻したことで終わった。そのときラトビアは、1940年8月5日に政権を握った新人民会議の要請で、ソ連への加盟を求め、これも認められた。

 ところが1988年から90年にかけて、バルト三国は、西側諸国とその情報機関の後押しと支援を受けて、自分たちが拘束されているソ連憲法の遵守を拒否し始め、一連の違法な措置の後、1991年にソ連からの独立を宣言した。それは、モスクワの反革命勢力に対する共産主義勢力とその一味によるクーデターが失敗した後のことだった。

 しかし、彼らの行動は、彼らが統治し服従していた憲法の下で違法であっただけではない。 彼らはソビエト連邦の大多数の市民の意思に反していた。なぜなら、1991年にもう一つの重要な進展があったことにも留意しなければならないからだ。この年、ソ連全土で国民投票が行われた。それを拒否したいくつかの共和国はあったが、そこで提起された問題は、ソ連を創設した1922年の条約に代わる、共和国間の新しい連合条約を承認するかどうかであった。多くの有権者に投げかけられた質問は次のようなものだった:

 「いかなる民族の個人の権利と自由も完全に保証される、平等な主権共和国の新たな連邦としてのソビエト社会主義共和国連邦の維持が必要だと思いますか?」

 投票率は80%で、そのうちの80%が連邦維持に投票した。

 国民統合の国民投票を拒否した政府の中には、バルト三国の他、グルジアのように国民に投票を認めない国も少数あった。その国々では、実は、ソ連の国民投票に対抗して、数日前に独自の国民投票を実施し、独立を支持する結果を出していた。しかし、これらの国民投票は1977年憲法の下では違法であり、分離独立のための国民投票はソビエト最高会議の承認を得なければならなかった。また、西側の独立勢力や権力者からのあからさまな圧力により、投票の有効性が疑われることもあった。バルト三国は、合法的に行動すれば、ソ連全土で実施された国民投票でソ連邦の維持が決定され、独立するためには、再度国民投票による分離独立が必要となることを知っていた。だから、そのような危険は冒したくなかったのだ。

 ウクライナに関しては、71%以上の人がソ連邦に残ることを支持した。クリミアやドンバスではその支持はもっと高かったと思われるが、数値は不明である。

 ウクライナでは、市民は次のような質問をされた、

 「ウクライナはソビエト主権国家連合の一部であるべきだ」という意見に賛成ですか?

 投票結果は88.7パーセントが賛成であった。

 この国民投票と同時に、ソビエト連邦に代わって、すべての共和国が属する独立国家共同体に関する新しい条約が作成されたため、事態はさらに複雑化した。しかし、1990年8月20日に予定されていたロシア共和国の調印式は、その前日にモスクワでソ連をそのまま維持しようとする者たちによるクーデターが発生したため、結局行われることはなかった。これにより、ソ連は無傷のままだった。

 最後の違法行為は、1991年12月8日、この出来事が起こった場所から取られた名前であるベロスフシャ協定と呼ばれるものに調印したことである。ロシア、ウクライナ、ベラルーシの各共和国の指導者、すなわち、ロシアはボリス・エリツィン、ウクライナはレオニード・クラフチュク、ベラルーシはスタニスラス・シュシュケビッチが、ソ連憲法に違反して、ソ連を解体して独立国家共同体を設立するという法令を単独で決定した。ソ連国民の大多数の意思に反するこの行為は、ソ連を救おうとする者たちによるクーデターが失敗したという口実で行われた。

 言い換えれば、彼らは、国民の意思表示に反し、ソ連共和国の大多数の意思に反し、憲法に反し、勝手に行動したのだ。それは、西側とソ連国内の西側資産以外の誰の利益にもならないように思える。

 ミハイル・ゴルバチョフは2000年の回顧録の中で、次のように述べている、

 「多国籍国家の運命は、3つの共和国の指導者の意思で決めることはできない。この問題は、すべての主権国家が参加し、すべての国民の意思を考慮した上で、憲法上の手段によってのみ決定されるべきである。連邦全体の法規範が効力を失うという記述も違法かつ危険であり、社会の混乱と無秩序を悪化させるだけである。この文書が急遽作成されたことも、深刻な懸念材料だ。この文書は、住民の間でも、署名された共和国のソビエト最高会議でも議論されていない。さらに悪いことには、ソ連国務院が起草した主権国家連合条約の草案が、各共和国の議会で議論されているときに、この文書が現れたことだ。

 しかし、エリツィン、クラフチュク、シュシケビッチによる違法行為を克服するための代替案がないように思われたため、この既成事実化によって他の共和国もすぐに追随するようになった。

 クリミアに関しては、ウクライナのソビエト連邦からの分離独立は違法かつ無効であり、法的効力を持たないため、したがって国民国家としての地位は疑問であり、したがってクリミアに対する主張も疑問であると主張することができる。しかし、これで問題が終わったわけではない。クリミアはエカテリーナ2世の時代からロシアの一部であり、1954年にフルシチョフ首相がクリミアをウクライナ・ソビエト社会主義共和国に譲渡したのは、あくまで行政上の理由であり、それは、ウクライナがソ連邦内のソビエト共和国であり続けるという条件にすぎない。

 1954年の政令にはこう記されている、

 「経済の一体的性格、領土の近接性、クリミア州とウクライナ・ソビエト連邦の密接な経済的・文化的関係を考慮し、ソビエト連邦最高会議常任委員会は、次のように決議する:

 「クリミア州のロシア連邦からウクライナ・ソビエト連邦への移管に関するロシア連邦最高会議とウクライナ・ソビエト連邦最高会議の共同発表を承認すること」。

 現在、ロシアの法学者の中には、この行為は当時のソ連法では違法であったという立場をとる者もいる。 しかし、いずれにせよ、クリミアのウクライナへの移管は、ウクライナ・ソビエト連邦の一部としてソ連に残ることが明確な条件であり、主に当時の管理のしやすさのために行われたことは事実である。クリミアは、ウクライナがソ連から離脱することを選択した場合に、永久的に贈与されることを意図したものではなかった。クリミア人がウクライナとソビエト連邦のどちらに留まることを望んでいるかという問題についてのクリミアでの住民投票の実施をウクライナが拒否したこと、ウクライナのソビエト連邦からの違法な分離独立、クリミアはソビエト連邦から離れた場合ウクライナの支配下に置かれることを意図していなかったという事実と合わせて、クリミアに対してウクライナは何ら正当な主張を持っていないということができる。

 したがって、ルー大使の発言は完全に正しく、旧ソビエト連邦の共和国の法的地位全体が問題であり、実際、ソビエト連邦の解体自体がソ連法上違法であり、法的には行われなかったのだから、1977年憲法によればソ連はまだ存在していると指摘したのである。ロシアではよく「ソ連を懐かしまない者には心がないが、ソ連を再建しようとする者には頭がない」と言われることがある。しかし、ソ連がきちんと解体されたことはない、と答えることもできる。

 しかし、歴史は進み、事実上、これらの国家は現在存在し、内部的にも外部的にも承認され、法、協定、条約の組織を構築し、現状を固める関係を確立することで、その存在を固めてきた。しかし、それは砂の上に築かれたとみなすことができる現状であり、1991年以来、いくつかの旧ソ連諸国で目撃されてきたように、違法性は常に結果をもたらすからである。

 ルー大使のパリでの発言に対する欧米の怒りは、欧米自身の不安と弱さを反映している。彼らは彼が正しいことを知っている。彼らの怒りと反応は、彼の発言を闇に葬り去ろうとするものであり、検証や考察をすることはできない。ルー大使は事実を述べたが、その事実は彼らを震え上がらせた。なぜなら、自分たちが建てた建物全体が崩れ落ちることを恐れているからだ。


元ロシア大統領、「キエフ政権」の「完全な」解体を求める

<記事原文 寺島先生推薦>
Ex-Russian president calls for ‘complete’ dismantling of ‘Kiev regime’
Only a crushing military defeat will “calm down” the Ukrainian leadership, Dmitry Medvedev has said
軍事的な圧勝だけがウクライナの指導者を「落ち着かせる」とドミトリー・メドベージェフは語った。
出典:RT 2023年4月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月13日


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資料写真.© Sputnik / Yekaterina Shtukina


 ロシアのドミトリー・メドベージェフ元大統領は、「キエフ政権」の「完全な解体」と、同国の軍人や 兵器に「大量破壊」を与えることを求めた。

 現在、ロシアの国家安全保障会議副議長を務めるメドベージェフは、金曜日(4月28日)のテレグラムの投稿で、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領が最近、北欧の複数のメディアに対して行ったインタビューについて言及し た。ゼレンスキー大統領の発言は、キエフの西側支援者からさらなる武器を要求し、クリミアへの攻撃を含む反撃の成功を約束するものであると要約し、同時に紛争が「数十年」も長引く可能性があると警告している。

 インタビューは「矛盾」と「妄想」に見えるが、そのような発言でも過小評価してはいけないとメドベージェフは警告した。

 妄言も甘く見てはいけない。これは、ナチスのエリートを固め、軍隊の士気を維持し、支援国からさらなる支援を受けようとするキエフ政権のヒステリックな宣言である。

 キエフの計画をきちんと頓挫させるためには、ロシアは、大々的に宣伝されているウクライナの反攻作戦において「人員と軍備の大量破壊」を行い、キエフの軍隊に「最大の軍事的敗北」をもたらさなければならないとメドベージェフは述べた。最終的には、「キエフのナチス政権」を「完全に解体」し、「旧ウクライナ」の全領域を非武装化しなければならないと、彼は付け加えた。

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関連記事:ゼレンスキー、ロシアとの紛争は「数百年続く可能性がある」と警告


 それとは別に、ロシアは逃走した人々を追跡し、「ナチス政権の重要人物」に対して、場所や時効に関係なく「報復」を求めなければならない、とメドベージェフは強調する。これだけでは不十分だと、同氏は考えている。

 「そうしなければ、彼らは静まらないし、薬物中毒の戯言が現実になり、戦争が長く引きずることになりかねない。わが国にはそんなことは不要だ」と、メドベージェフは語った。

 クリミア半島は、2014年のマイダンクーデター後にウクライナから分離し、住民投票で圧倒的な支持を得た後にロシアに加盟した半島で、元大統領はキエフがそれを奪取しようとする試みに対して繰り返し警告している。

 先月、メドベージェフはキエフに核警告を発し、半島を標的とした「深刻な攻撃」の試みは、「核抑止力のドクトリンの基本に規定されているものを含む、あらゆる保護手段の使用の根拠となる」と警告した。

ゼレンスキー、2ヵ月地下壕で過ごす―タイムズ紙

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky spent two months in bunker – The Times
出典:RT 2023年2月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年5月10日


ウクライナ大統領シェルター内の閣僚や側近は、秘密保持契約への署名を求められたと新聞報道


資料写真:ウクライナ大統領ウラジミール・ゼレンスキー© AFP / Stefan Rousseau


 ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領とその関係者は、ロシアとの紛争勃発後、予定されていた2週間ではなく、約2ヶ月間地下壕で過ごし、大変な苦難を経験したとタイムズ紙が報じた。

 2022年2月24日にロシアの軍事作戦が開始された際、ウクライナ政府はキエフ中心部のバンコバヤ通りにある大統領府の下の安全なシェルターに「直ちに」降りたと、同紙が土曜日(2月18日)に報じた。

 地下壕の機密性は非常に高く、国家元首(ゼレンスキー)に同行した者は、特別な秘密保持契約書に署名しなければならなかった。その文書によると、彼らは地下壕の設計、場所、設備、そして与えられた食事についての詳細を明かすことを禁じられた。

 ロシア軍がキエフ近郊に陣取ったとき、ゼレンスキーの閣僚や補佐官にとってはトラウマと恐怖の期間であったと同紙は述べている。ウクライナのニコライ・ソルスキー農政・食糧相は、戦闘が始まった数週間を思い出すよう求められたとき、「もうその話はあまりしませんよ」と答えた。



関連記事:プーチンはゼレンスキーを殺さないと約束した(イスラエル元首相)

 政府関係者は、地下壕にこもることは「太陽も見えず、時間もわからない」という過酷な状況であったとタイムズ紙に語っている。

 同紙によると、ゼレンスキーの一団は、iPhoneを通じてその葛藤を体験したという。彼らは常に慌しく、睡眠は「掠め取られ、しばしば妨害される」状態だったと、同紙は付け加えている。

ウクライナ政府関係者の中には「地下壕での暮らしに嫌気がさしてきた」者もおり、そのうちの1人はレストランで食事をするために壕を抜け出したことがあると告白していると同紙は書いている。

 キエフがロシア軍に陥落する恐れがあったため、同国指導部の地下壕滞在は長引いたと、政府筋がタイムズ紙に語っている。

 同紙によると、ゼレンスキーが時々地下壕から出たのは、「自分が逃げていないことを国民に安心させるために」ビデオメッセージを撮るためだけだったという。

 今月初め、当時モスクワとキエフの接触を仲介していたイスラエルのナフタリ・ベネット元首相が、ゼレンスキーが演説活動を始めたのは、ロシアのプーチン大統領に彼を抹殺する計画がないことが確認された後であったことを明らかにした。

関連記事: ロシアの春季攻勢はすでに始まっている(ゼレンスキー)

 ベネットは、ロシアの首都での会談でプーチンからそのような約束を取り付けたと述べ、クレムリンを出た後、すぐにゼレンスキーに電話をかけた。その2時間後、ウクライナの指導者(ゼレンスキー)はキエフの事務所からビデオを投稿し、自分は「隠れていない」「誰も恐れていない」旨、釈明したという。

キエフ体制の最後の攻撃

<記事原文 寺島先生推薦>
The Last Offensive of the Kiev Regime
筆者:ダボール・スロボダノビッチ・ブヤチク(Davor Slobodanovich Vuyachich
出典:Strategic Culture  2023年4月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月10日

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ウクライナ軍政は、欧米諸国がこれまで投資してきた1580億ドル以上の資金が、絶対に使う価値があったことを証明するよう、支援国から強い圧力を受けている。

 犯罪者であるキエフ政権の支配下にある軍隊による、長い間予告されていた大攻勢は避けられない。もはや誰もそれを疑うべきでなく、この圧倒的規模の作戦が始まるのは、本当に数日の問題である。しかし、キエフがこの悲惨な冒険を急ぐのは、アメリカ軍欧州司令部のクリストファー・カボリ将軍が4月26日に楽観的に述べたように、攻勢に対する準備が完全に整っているからではない。一般のウクライナ人兵士の死闘への大きな熱意を活かすべき時機がついに来た、という訳ではないのははっきりしている。

 ウクライナの市民になりたくないロシア人だけが住んでいる地域を暴力的に占領するという考えは、最も硬直したウクライナのナチスにしか通用しない。ウクライナ兵の隊列は、その熱意がまったくない。それどころか、前線にいる兵士たちは非常に疲弊しており、ニューヨーク・タイムズ紙などの欧米の主要報道機関でさえ報じているように、ヴォロディミル・ゼレンスキーがウクライナ人兵士の命を犠牲にし、弾薬を浪費する頑固な態度に疑問を持ち始めている。確かに、これらの戦意喪失した部隊は、この大規模な軍事作戦の遂行を任されるウクライナ軍とは言えない。

 攻勢をもはや延期できない本当の理由は、ウクライナ軍事政権が出資国から強い圧力を受け、西側諸国がこれまでに投資した1580億ドル以上の資金が、絶対に使う価値があったことを最終的に証明しなければならないからである。ロシア帝国とソビエト連邦の不可分の一部であったウクライナのすべてを、恥ずべき形で覆したこの怪物的なナチス擬似国家が、今度の攻撃で本当に重要かつ具体的な軍事的成功を収めることができなければ、欧米の軍事・財政援助が徐々に終了することになる可能性は非常に高い。キエフの支配者一味は、外国からの援助に依存するようになり、その援助によってここ数ヶ月、豊かで贅沢で放蕩的な生活を送ってきたのだから、今回の危機は彼らを破滅へと追い込み、それが事実であるかどうかにかかわらず、自分たちには準備ができていると信じなければならない攻勢の始まりとなる。

 モスクワでは、このことをすべて承知しており、だからこそ、ロシア特殊軍事作戦の目標達成をついに手の届くところにもたらすことができる大団円を待ち焦がれているのである。信じられないことに、ウクライナの攻勢は、予想外に早くロシアが勝利するための大きな好機になる。ロシアは確かに、まだ始まっていない戦争に負けるわけにはいかない。ウクライナが1年以上前から戦争をしているとしても、ロシアに同じことは言えない。もし戦場で失敗すれば、クレムリンは、極めて限定的な軍事介入を実施する試みとしての特別軍事作戦の形式を放棄することになり、ロシアを愛する誰もが長年願ってきた、その強大な軍事力をすべて解き放つことになりかねないからだ。

 一方、ナチス・ウクライナは、巨大な隣国を奇跡的に殺すことができるかもしれないというむなしい希望を持って、最後の弾丸を発射する。キエフ政権は、国民を大変恐ろしい現実に追い込んだ。それは自らの目的のために「愚かなスラブ人」を犠牲にする用意のある西側各国の悪意ある利己的な助言に従ったものだ。そのことは、ウクライナの将来について決定を下す人々に冷静さを与えるはずだが、残念ながら、彼らはキエフではなく、ワシントンにいるのである。ウクライナのナチスは、ソビエト連邦の遺産、特にナチス・ドイツに対する勝利に対する病的で強迫的な憎悪を抱いているため、天候が良ければ、攻勢の開始は、モスクワで戦勝記念日を祝う伝統がある5月9日の前になる可能性が非常に高い。

 エフゲニー・プリゴジンは、ウクライナの大規模な攻勢と大規模流血戦が待ち受けていることを全く疑っていないが、ナチスはこの祝典を台無しにしようとするかもしれないと、控えめな注意をもって述べた。モスクワ戦勝記念日パレードを危険にさらすことに関連したウクライナ(テロ)特殊部隊の脅威については、今年、ロシアは前例のない、非常に厳格な警備態勢をとっている。また、万が一、事件が発生した場合のロシアの対応については考えない方がよいだろう。いずれにせよ、ウクライナの攻勢が予想通り5月9日までに行われない場合、地面が十分に乾き次第、開始されることは間違いない。

 他の大規模な軍事作戦と同様に、ウクライナ攻防戦にも独自の政治的・宣伝的な目的があるだろう。欧米では、欧州文明の最前線で「民主主義」、「自由主義」、そして「LGBT」の価値観のために無私の血を流し、命を捧げるウクライナの「英雄」に対する熱意が、ロシアの特殊軍事作戦の開始以来、徐々に低下しているが、これは予想されたことだった。欧米の一般市民がウクライナへの関心を失ったのは、一般市民が抱える大きな経済問題に圧迫され、その間に、不本意ながら対ロシア戦争に資金を提供しているから、自分たちの生活が苦しくなっていることに気づいたからである。

 このように、「邪悪なロシアの怪物」を退治するウクライナの「スーパーヒーロー」に対する当初の熱狂は、時間の経過とともに薄れている。ウクライナ勝利への信頼は今や揺らぎ、欧米人が直面した生活水準の低下、物価上昇、社会不安は残り、欧米の一般市民がそれを払拭できるかどうかが大きな問題になっている。だからこそ、キエフ政権の最も重要な目標のひとつは、昨年失った欧米の一般市民の支持を取り戻すことなのだ。しかし、その実現は容易ではないだろう。多くの欧米人は、ゼレンスキーがテレビ局を占拠し、自分たちは貧困とますます厳しくなる緊縮財政に直面しているのに、いつも、もっと金をよこせと騒ぐことに辟易している。結局のところ、今や地球上で最も裕福な男の一人である、邪悪で緑のウクライナ人麻薬中毒者の道化師を、自分の子供よりも本当に愛せる人がいるだろうか?

 もちろん、ウクライナ大攻勢の目標は、ロシア軍に人員や装備の面で最大限の損失を与え、戦略的に重要な領土を占領することにあるのは確かだが、キエフが達成したいのは決してそれだけではない。ウクライナ指導部、彼らが率いる軍隊、そして特殊心理作戦のための軍の過去の行動から、ロシア、特にその新しい領土に混乱、敗北主義、抗議、暴動、そして混乱を引き起こすことが最も重要な目標の1つになることは間違いないだろう。

 ウクライナの理想的な筋書きでは、巨大な革命が起こり、ロシア連邦が暴力的に解体されることになる。ヒトラーのナチスも、恐怖と脅迫という非常によく似た戦術で、ロシア精神の破壊に成功すると考えたが、そんなことにはならず、彼らは100万人のソ連軍の熱狂的かつ完全に正当な怒りに直面し、ソ連軍は容赦なく彼らを打ち砕き、ベルリンまで追いかけ、最終的にベルリンを壊滅させた。今のところ、ウクライナ人はかなり慎重にロシアの忍耐力を試している。しかし、ひとたび目に見えない一線を越えてしまえば(それはおそらくすぐに起こるだろう)、彼らの思想的先達や偶像に慈悲が与えられなかったように、彼らに慈悲が与えられることはないだろう。

 プロパガンダ戦争の一端は、西側とウクライナの報道機関が、白、灰色、黒のプロパガンダを組み合わせて、つまり、正確、部分的に正確、完全に事実と異なる情報を同時に発表して、ロシアの政治・軍事支配者層、ロシアの堅い情報機関、専門家を長い間欺こうとしてきたことである。一部のロシア政府関係者が、西側やウクライナの報道機関で、これらの疑惑について表沙汰にするようなことがあっても、それは彼らなりの専門的な方法で、敵の偽情報にロシアの偽情報で対抗しようとしながら、多かれ少なかれ、巧妙に素朴さと無知を装っているのだ。実際、ロシアの政治・軍事支配者層や有能な役人は、西側やウクライナの宣伝機関のそうした多大な努力を完全に無視し、何ら重要視していない。

 ロシアの諜報機関は、現場で検証された情報数値と、情報源は異なるが同様に信頼できる情報数値によってのみ導かれる。そうでないと考えるのは、非常に甘い考えだ。今この瞬間、ロシアの情報機関は、報道機関で大騒ぎしているにもかかわらず、ウクライナ軍が十分な弾薬を確保しているかどうか、どのような種類と量を確保しているかを間違いなく知っている。残念ながらウクライナ軍がすでに受け取っている劣化ウラン弾については、もし英国の供給者がもう少し賢明であれば、ロシアの複数回にわたる非常に深刻な警告に続いて、同様に陰湿で残酷な報復が行われる可能性があると想定できたはずである。しかし残念ながら、英国の政治家たちの傲慢な頭脳は、常に自分たちの脆弱性と死に対する慎重な認識を欠いていたため、彼らは全歴史の中で最大の間違いを犯すことを決めたのだ。

 ロシアの情報機関が、ウクライナが今度の攻勢にまったく新しい、非常によく訓練された部隊を投入し、4月初めにエフゲニー・プリゴズニが言ったように、その数は40万人に達するかもしれないという情報を持っていることが示唆されている。もし、これより多いという情報があれば、経験豊富なプリゴジンはそれを黙っているのが賢明だろう。しかし、デイリー・メール紙などの欧米報道機関は、ウクライナが集めた兵士は10万人、つまり12から18の戦闘旅団に過ぎないという偽情報を流そうとしているが、これは確かに事実とは違う。ウクライナの特別突撃旅団は、歩兵と装甲の複合部隊で、前線を突破して深く前進し、攻略した戦略地点を確保するために訓練されているという情報は、多かれ少なかれ公開されているものである。

 例えば、かつての悪名高いナチスの大隊「アゾフ」は、昨年のロシアのマリウポリ解放の際に事実上壊滅したが、その後に死から蘇り、よく訓練された戦闘員で隊列を埋め、「アゾフ突撃旅団」に成長したのである。つまり、「アゾフ」はこれまで以上に数が増え、6,000人を下回ることはないだろう。ロシアの情報機関は、NATO諸国からの外国人「志願兵」の数について、西側メディアに登場する意図的なごまかしの数値よりもはるかに正確な情報を確実に持っている。

 これらの志願兵は、実際には、よく訓練されたNATO軍人で、ウクライナの制服を着ているだけで、キエフが描いているように、自発的にではなく、仕事上の任務でウクライナにいる。彼らはポーランドから来ることが多くなり、その数は絶えず増えている。ロシア連邦外務省のマリア・ザハロワ情報報道局長が最近推定したところでは、NATO軍兵士と他国からの志願兵の合計数は約8000人だが、すぐにもっと多くなる可能性がある。

 西側報道機関は、ウクライナ軍の攻撃には約400台の戦車、1600台の装甲車、300台の大砲が参加すると「推定」しているが、これもロシア軍を欺き、実際に遭遇する事態に備えさせないための試みであることは確かである。NATO軍の戦車は600〜800両で、その乗員はウクライナ人ではなく、よく訓練された職業NATO軍兵士であると予想するのが現実的であろう。装甲車や大砲ももっと多い数が予想される。同様に、NATOのパイロットが操縦する多数のF-16やF-15がウクライナやノボロシヤの上空に「突然」現れることも間違いないだろう。

 西側報道機関は、ウクライナ軍に大量の対戦車兵器が提供されたことを喜んで自慢するが、彼らがキエフに提供したもっと殺傷力の高い兵器については、何もわからないようにするためにあらゆる手を尽くすだろう。もちろん、ロシアの情報機関が望ましい情報を何も入手しなかったという意味ではない。欧米のウクライナへの軍事援助に関する過去の情報から、戦車、装甲車、大砲を中心としたロシア軍の装備に対する大量のドローン攻撃、軍事目標だけでなくロシア民間人の士気を落とすためのロケット攻撃などがあると考えるのが現実的であろう。

 ウクライナのナチス流儀はアングロ・サクソンの影響を受けて作られたものであり、ウクライナ攻勢と並行して、軍や政治の高官の暗殺を含むテロ攻撃の波がノボルシア、さらにはロシアで起こることが予想される。しかし、テロ行為の主な対象は、ロシアの政治指導部や軍隊が民間人を守れないことを証明するために、民間人となろう。全体として、ウクライナの攻撃は、ほとんどの場合、北大西洋同盟による一種の偽旗作戦であろう。ウクライナの大攻勢は、実際には、ロシアに対するNATOの大攻勢となる。装甲車、戦車、航空機の大砲の弾と標識だけがウクライナ製になるだろう。

 しかし、欧米やウクライナの情報機関が、ロシアの情報機関を出し抜き、彼らを欺いたと考えるなら、それは大きな間違いである。ロシアは人工衛星をはじめ、夜間や至近距離も含めた精密な電子・視覚偵察の手段を持っているだけでなく、地上の「目と耳」を持っている。だからこそ、ロシア軍のトップはすでにウクライナ軍の移動、配備、および隠蔽された部隊の動向を詳細に把握していることは間違いない。

 これに基づき、ロシア軍将兵は可能な進撃方向と、攻撃的侵入の際に異なるウクライナ軍を統合する試みを予測することができ、これが起こることは絶対確実だ。すなわち、侵入に必要な兵力の蓄積をロシア情報機関に隠すことは不可能であるため、ウクライナとNATOの将軍は必要な追加兵力を後方から非常に高速で戦場に投入しなければならない。つまり、大規模な攻撃を開始する直前には、ヘリコプターによる兵員輸送に大きく依存することになるのはほぼ間違いない。

 ウクライナの望む方向性を予測することは非常に困難であり、ありがたくないことではあるが、絶対に間違いないのは、クリミア橋が、より長い期間機能を停止させる意図で、再び攻撃されることである。同様に、ロシアの黒海艦隊はNATOにとって厄介な存在であり、だからこそ、間違いなく大規模な攻撃が行われる。いずれの場合も、従来通りNATOは間接的にこの攻撃に参加することになるが、今回は、より衝撃的かつ効果的にするために、これまで適用されていない方法でこの攻撃が行われることになる。ロシア軍とウクライナ軍の分離線に近接するロシアの空軍基地も標的となり、ロシアの弾薬庫や燃料庫も標的となる。

 クリミアを本土から切り離すことが、今回のウクライナ軍の攻勢の主目的であることは、すべての専門家やジャーナリストが認めている。現場からの数値だけでなく、他の情報数値も持っているロシア軍指導部は、ウクライナとNATOがどのような方法でこれを行おうとするのか、おそらく明確に把握しているだろう。クリミアに、直接空と海からの大量上陸は十二分に可能だが、それはクリミアの防衛力(主に防空力)が完全に破壊された後である。このことから、ウクライナ指導部がすでに発表しているように、クリミアへの激しいミサイル攻撃が行われるという結論に達する。少なくとも攻撃の第一段階では、集落から遠く離れ、ウクライナ側が支配したいと思っているクリミアと本土を結ぶ帯状の土地に十分に近い地点へ、低空飛行の輸送ヘリコプターによる集団上陸が行われることは間違いない。第2段階では、海軍による上陸やパラシュートによる上陸もあり得る。

 ザポリージャとヘルソン地方のロシア防衛線を突破するのは非常に困難であり、おそらくウクライナとその西側司令官や 顧問団はこのことを十分に承知しているだろうが、これらの地域のロシア軍を足止めするために、これらの防衛線は必ず攻撃される。ドニエプル川を渡ろうとすれば、大規模で、極めて多くの犠牲者を出すことになり、同時に、ロシア軍に非常に有利な反撃の機会を与えることになる。そのため、クリミアだけでなく、へルソンやザポリージャ地方でも、低空飛行のヘリコプターによるロシア軍後方への大量空輸が試みられる可能性がある。

 ウクライナの大攻勢を実際に設計したのはNATOの将軍たちであるため、その核となる考え方を予測することは容易であろう。「衝撃と畏怖」の原則は、間違いなく作戦全体にとって不可欠な戦略思想である。つまり、ウクライナ軍は、攻撃軍に必要な計画的侵入地帯において、人員と技術で3:1以上の絶対的優位に立つだけでなく、ロシア軍を完全に麻痺させるほどの火力も獲得しようと努力するということである。第二に、アメリカの将軍たちはノルマンディー上陸作戦の神話で育ったので、ドニエプル川を渡ってクリミアに直接上陸するボート上陸作戦の試みを鼓舞することであろう。第三に、ロシアの防衛線は非常に強固であるため、第二次世界大戦のマーケット・ガーデン作戦*を何とか再現しようとする試みがなされるであろう。モンゴメリーが指揮したこの作戦は失敗に終わったが、戦闘の中で機甲部隊と空挺部隊を組み合わせて迅速な浸透を図るという優れた先例である。
* 第二次世界大戦中の1944年9月に行われた連合国軍の作戦。 連合軍がドイツ国内へ進撃する上で大きな障害となるオランダ国内の複数の河川を越えるために、空挺部隊を使用して同時に多くの橋を奪取する作戦であった。( ウィキペディア)

 キエフのナチス政権が十分に認識していないのは、これが、今や公式にロシア連邦の不可侵の一部となっている領土に対する最初の大規模なウクライナ軍の攻撃であり、これは、ロシア人に対するこれまでのすべての攻撃と比較して大きな違いを意味するということだ。おそらく、手遅れになる前に、ウクライナの指導者は、ロシアの政治・軍事指導部がロシア連邦に対する外国の侵略の際に実施することが義務付けられている手続きに関するロシアの法律を徹底的に読むべきで、ウクライナの攻撃はまさにそれに当たることになるだろう。

 ドネツク人民共和国、ルハンスク人民共和国、ザポリージャ州、へルソン州、そして特にクリミアは、ロシア嫌いのナチス・ウクライナの一部には二度とならないだろう。ウクライナがこれらの地域の支配権を取り戻すことを阻止するために、ロシア国家はどんな代償でも払うだろう。キエフの犯罪政権がノボロシヤのロシア人の運命を二度と決められないようにするために、ロシア連邦はどんな手段でも使う用意がある。もし極端なウクライナの民族排外主義者が、ユーロマイダンとして知られるCIAとMI6の指示によるクーデターによってキエフで権力を握らなかったら、ロシアとウクライナは今日でも平和と調和の中で生活していただろう。そして、それがアメリカの計画の中に含まれることは一度もなかった。

 多くの血が流された今、双方が全力で戦うと、間違いなく、ウクライナが負ける。今度のウクライナの攻勢がより大きな成功を収めれば、ロシアは間違いなく総動員体制が敷かれ、戦争状態が宣言される。歴史的な経験から、それは確実にロシア国内の強固な統合をもたらし、幸福な国民統合の感覚さえも生み出すだろう。このようなことは、すでに戦争で完全に疲弊しているウクライナにとっては、確実に死刑宣告を意味する。

 なぜなら、ロシアは第二次世界大戦のソ連の教訓から、自国の犠牲者をできるだけ減らすために、自国防衛を主体にウクライナ側の攻撃を「すりつぶす」ことを選択し、(ウクライナは)ロシアの7~8倍の犠牲者を出してきたからである。ロシアが限定的な攻勢に出たのは、戦場の一部でウクライナ側の防御が完全に崩壊したときだけである。しかし、だからといって、ロシアが、いざという時、つまり、ウクライナ軍が完全に破壊されたことが明らかになったとき、壮大な規模の攻勢を考えていないわけではない。

 ロシアの反攻の目標は、第一段階として、旧ウクライナを通るドニエプル川の全長にわたって左岸を占拠することであろう。ロシアは、キエフ、ハリコフ、そして例えばポルタヴァの東部を、ロシアの皇帝ピョートル大帝がヨーロッパの大国から守り、ウクライナのヘットマン、イワン・ステパノヴィッチ・マゼパが裏切った場所として、正当な権利を主張する。ああ、歴史は繰り返される!このままでは、ウクライナは海への経路を完全に失うだけでなく、国家として完全に存在しなくなる可能性もある。

 歴史上、ロシアの敵が犯した最大の過ちは常に同じであり、同様に致命的であった:1.) ロシア人が何かを知らないと仮定することは非常に危険な過ちであり、クルスクの戦いとその結果を思い出そう。2.) ロシア人が何か(大事なもの)を十分に持っていないと仮定するのは非常に危険な間違いである:人員、弾薬、ミサイル、ドローン、戦車、飛行機、あるいは、威力を高めた滑空航空サーモバリック爆弾などである。3.) 例えば、ソ連を攻撃した当時のナチスが、ロシアが恐ろしいT-34戦車を持っていることを知らなかったように、すでに存在する優れた品質のロシアの兵器について全く情報を持たないことは非常に危険である。4.)

 リチャード・ゾルゲやキム・フィルビー、ケンブリッジ・ファイブのように、ロシアのトップの諜報部員が最も打撃を与えられる場所にいることに気づかないのは非常に危険だ。このような警告は、実はたくさんある。ロシアに対して偽情報戦を仕掛けることは、非常に危険な行為でもある。なぜなら、ロシアは常に軍事的欺瞞の世界最大の達人であるからだ。ロシア人が発明した「マスチロフカ」というゲームでロシア人を打ち負かそうとするのも非常に傲慢であり、これこそまさにウクライナ人が攻撃準備の一環として行おうとしていることである。ウクライナ人やNATOの衛星にはロシアの迷彩戦車に見えても、木枠と板金でできた模型だろうし、まったく戦車に見えないものが本物の戦車であっても、決して脅威として認識されることはない。

 すべてが活気に満ちている大規模なロシア軍陣地のように見えるのは、ほとんどの場合、陣地なんかではなく、ロシア軍陣地はすでに必要な場所に配置されている。滑走路にあるロシア軍の飛行機もほとんどが模型で、本物のジェット機は安全な格納庫や敵の上空にある。ロシア軍は最近、戦車を特殊な素材で覆うようになり、肉眼での光学的視認が難しくなり、赤外線カメラやレーダーでは完全に見えなくなった。すでに、赤外線カメラで兵士自身を見えなくするロシア軍の軍服もある。

 要約すると、ロシアの将軍たちは、避けられないウクライナの攻勢の可能性を完全に過小評価していたわけではなく、この作戦がNATOに対する直接的かつ全面的な戦争に発展しうることを十二分に認識しており、その場合のあらゆる可能な選択肢を準備しているのである。絶対に確実なのは、ロシアが特別軍事作戦の本来の目的であるウクライナの脱ナチス化と非武装化を決してあきらめないということである。キエフの現政権の代表との和平交渉はほとんど不可能である。主にワシントンがそれを許さないからである。

 このことは、ロシアに紛争の平和的終結に真摯に取り組んでいることを証明するために、平和交渉を原則的に受け入れる機会を与えることになる。ゼレンスキーたちに関しては、多くの人が、なぜロシアは今までウクライナの指導部を清算しようとしなかったのか、それはわずか数機のキンジャール*があれば解決できる問題である。まず、ロシアはその指導部の能力について酷評しており、当面は今のままでいることが彼らにとっては好都合なのだ。もちろん、だからといって、ロシア軍がこれまでのように、ウクライナ軍の司令部、特にNATOの将校が座っているところを、どんなに地下深くても狙って破壊することはないだろうが。
* Kh-47M2 キンジャールは、ロシア連邦軍の極超音速空対地ミサイル。最大速度はマッハ10とされ、核弾頭も搭載可能である。北大西洋条約機構の用いるNATOコードネームでは、AS-24「キルジョイ」と呼ばれる。( ウィキペディア)

 犯罪的なウクライナ指導者の頭上にもたらされるのは、ロシアの司法の長い腕ではないだろう。ウクライナ人の暴力的で残忍な動員、合法的かつ正統的に認められたウクライナ正教会の信者と聖職者、そしてロシア語を母語とするウクライナ人への迫害は、シオニストであるゼレンスキーとその一団の売国奴に災厄をもたらし、ウクライナ人自身の手で確実に滅びることになるだろう。その仕事ができる何千人ものウクライナ人が、すでにロシア軍に自発的に降伏しており、彼らから多くの有益なことを学んでいる。

 ロシア軍に協力するウクライナの抵抗運動の輪郭は、すでに見えている。それは以下のような構成になるだろう: 1.) ゼレンスキーが「民主主義の偉大な擁護者」として、ひたすら禁止した政党の指導者層にいたウクライナの政治家たち。2.) ロシアの支配下にあり、ロシア人を兄弟同然に見ているウクライナ人。3.) ゼレンスキーやアメリカ人のために戦い、死ぬことを望まず、自発的に降伏したウクライナ人捕虜たち。4.) その任務に参加する意思を示した捕虜のウクライナ兵の一部と、5.) ロシア人とウクライナ人が同じ民族であるという単純な事実を知っているロシア連邦に生まれ住んでいるウクライナ人、だ。

 栄光の赤軍の戦士の息子や孫である本物のウクライナ人の運動は、近い将来、ロシア軍とともにキエフに進軍し、腐敗したナチス政権を打倒し、米国、英国、EU、NATOがすべての責任を負っているこの血生臭い戦争を最終的に終わらせるだろう。今度のウクライナ攻撃は、ナチス・ウクライナがロシア連邦に向けた最初の大規模な軍事作戦であるだけでなく、コカイン中毒の道化師の最後の冒険でもある。有権者を欺き、和解と平和を約束して政権を取った簒奪者は、西欧諸国の工作員として同胞愛紛争に有権者を巻き込み、それによって自分、家族、そして友人たちが一晩で億万長者になった。

ゼレンスキー、銃を所持する理由を説明

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky explains why he carries a gun
出典:RT 2023年4月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月9日


 ウクライナ大統領(ゼレンスキー)は、自分が捕虜になることは許さなかっただろうと言っている。



喜劇テレビシリーズ「国民の下僕」からのスクリーンショット © YouTube / Kvartal 95 Studio


 ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領は、地元テレビ局に対し、紛争初期にロシア軍がキエフ本部に侵入した場合、自分や職員は捕虜になるのではなく、戦って死んでいただろうと語った。

 「私は撃ち方を知っている」とゼレンスキーは、ウクライナの1+1チャンネルが土曜日(4月29日)に放映した聞き取り取材の中で語った。ゼレンスキーは拳銃を携帯していると述べたが、捕まるよりも自殺するために拳銃を使ったのではないかという記者の指摘は否定した。

 「いいえ、いいえ、いいえ。自分を撃つためではありません。撃ち返すためです。もちろん」とゼレンスキーは語った。

 ゼレンスキーは、紛争の初期段階を指して、もし自分がロシア軍に捕虜にされていたら「恥」だったと説明した。2022年2月にモスクワが軍事作戦を開始した後、ウクライナ当局は、ロシアの特殊部隊がキエフに潜入し、バンコバ通りの大統領府への侵入を試みたと主張した。

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関連記事:ゼレンスキー、地下壕で2カ月過ごす (タイムズ紙)

 「もし、彼らが大統領府内部に侵入していたら、私たちはここにいないだろうと思います。我々は非常に真剣な防御を準備していたので、誰も捕虜にならなかったでしょう・・・我々は最後までそこに踏みとどまったでしょう」とゼレンスキーは聞き取り取材の中で語った。

 ゼレンスキーは、欧米の協力者の中にはキエフからの脱出を勧める者もいたが、首都防衛のために米国の脱出飛行を断った、とされる。

 しかし、タイムズ紙によると、ゼレンスキーとその関係者は、紛争勃発後、予定されていた2週間ではなく、ほぼ2ヶ月間、壕の中で過ごしたとされている。タイムズ紙によると、地下壕の機密性は非常に厳しく、国家元首ゼレンスキーに同行した者は特別な秘密保持契約に署名しなければならず、壕の設計、場所、設備、そして与えられた食事についてさえも詳細を明かすことを禁じられたという。



関連記事:プーチンはゼレンスキーを殺さないと約束した(イスラエル元首相)


 紛争の初期、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、イスラエルのナフタリ・ベネット首相(当時)に対し、「キエフの占領やゼレンスキーの殺害を目的としていない」と述べたとされる。クレムリンはプーチン大統領がそう述べたというベネットの主張を肯定も否定もしていない。

 ベネットは、2022年3月にモスクワで行ったプーチンとの会談について、「ゼレンスキーが地下壕の中で脅威にさらされていることは知っていた」と語った。彼は、ロシア大統領がゼレンスキーは標的ではないと断言したと主張した。

 ベネットはその後、「すぐに」ゼレンスキーに電話をかけ、「プーチンはあなたを殺すつもりはない」と安心させたとされる。ベネットによると、ちょうど「2時間後、ゼレンスキーは事務室に行き、自撮りをした」といい、その動画の中でウクライナ大統領は 「I'm not afraid(私は怖くはない)」 と宣言した。

ゼレンスキー政権の命運は尽きた

<記事原文 寺島先生推薦>
Zelensky Regime’s Fate is Sealed
筆者:M.K.バドラクマール (Bhadrakumar)
出典:INTERNATIONALIST 360°2023年5月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月9日


モスクワのクレムリン

 ウラジーミル・プーチン大統領暗殺の失敗に関するクレムリンの声明を疑う西側の不可解な、あるいはあざとい発言がある。そんな発言をしても、モスクワがこのような重大な疑惑をでっち上げる理由がこの世に存在しないという事実を覆すことはできない。そんなことをすれば、5月9日の戦勝記念日の意義を損ねてしまう。戦勝記念日はロシア史すべてのなかで勝利の時なのだ。特に今は、ヨーロッパの政治状況において、ナチス的観念の復活をロシア単独で阻止している時なのだ。

 アントニー・ブリンケン米国務長官がクレムリンの主張をあっさり否定したことで、おそらくは勝負がついた。このような決定的な瞬間に逃げるのは、ネオコンのDNAである。とはいえ、予想通り、ブリンケンは今回のクレムリン攻撃をバイデン政権とは切り離した。

 先に、マークス・ミレー統合参謀本部議長も、フォーリン・アフェアーズ誌の聞き取り取材で、今度のウクライナの「反攻」に対する責任を事前に放棄して、同様のことを行っている。これは、バイデン政権の新しい常套句である「悪を聞かず、悪を語らず」である。「何が何でも」キエフを支援する(バイデンは口が酸っぱくなるほど言っていた)という話も、もうない。

 問題の核心は、キエフが大いに宣伝している「反攻」が、西側諸国の予言によれば、失敗に終わるとされている中で、苦境に立たされているということである。実際、今週のフォーリン・アフェアーズ誌のポッドキャストでミレー元帥が語っていたのは、結果に対する彼の自信のなさであった。ミレーは、キエフが「反攻」を開始するかどうかさえ断定することを拒んだ!

 ロシアの敗北という西側の筋書きが嘘八百であることが明らかになり、同時に、超大国のはるかに優れた軍事力を相手にするキエフの軍事力、という神話が消え去った今、大きな混乱に陥っている。ウクライナ軍は組織的に粉砕されつつある。現実には、ウクライナは開いた傷口から急速に 壊疽(えそ)を起こし、傷口を焼灼(しょうしゃく)するための時間はほとんど残されていない。

 しかし、キエフの政権は派閥主義が蔓延している。モスクワが降伏しない限り、ロシアとの和平交渉を嫌がり、代わりに欧米列強の関与を維持するために事態の激化を望む強力な徒党が存在する。そして、ボリス・ジョンソンの退任後も、西側諸国には彼らの支持者がいる。

 キエフの権力機構に定着している軍事集団が、ロシアの報復を誘発する下心を持って、クレムリンに向けられたこの危険な挑発行為の実行犯であった可能性は十分にある。

 ブリンケンの虚ろな発言から、ビクトリア・ヌーランド率いるバイデン政権のネオコンも、キエフの異端児を制止する気にはなれないようである。ヨーロッパもまた、その声を失ってしまった。

 これはおそらく、欧州の指導力の歴史的失敗として歴史の教科書に載るだろうし、その核心には、ウクライナ戦争で米国とより緊密に連携し、欧州内の「対立の時代」を招く危険性があるのは、フランスではなくドイツ政府であるという逆説がある。

 フランスやイタリアでは政治的な中間層がすでに縮小しており、ドイツではパンデミック、戦争、そしてインフレの結果、政治的な中間層がかなり弱体化している。中央の衰退とヨーロッパの非工業化は密接に関連しており、中央を支えてきた社会的基盤が崩れてきているからだ。

 ヨーロッパの強国であるドイツは、これまで比較的幸運だった。東欧からの安い労働力とロシアからの安いガスの恩恵を受けてきた。しかし、それももう終わり、ドイツの産業が衰退していくのは目に見えている。社会が分断されれば、政治体制も分断され、そのような国を統治するためには、次第に大きな努力が必要になる。ドイツとイタリアは3党連立、オランダは4党連立、ベルギーは7党連立である。

 今のところ、キエフ政権の強硬派が事件の流れを作り、ヨーロッパ諸国はおとなしくそれに従うだろう。ホラー映画『羊たちの沈黙』で、アンソニー・ホプキンスが一瞬にしてハンニバル・レクターに変身したときのジュディ・フォスターの言葉を借りれば、「部屋には寒気が漂っている」のである。

 間違いなく、これは転換点である。プーチンの命を狙った不手際は、万華鏡を認識できないほど揺さぶった。唯一の救いは、クレムリンの指導者が感情に流されないということだ。クレムリンの反応は、アナトリー・アントノフ駐米ロシア大使の発言から読み取ることができる:

 「ドローンがホワイトハウス、国会議事堂、あるいはペンタゴンを直撃したら、アメリカ人はどう反応するだろうか?その答えは、政治家にとっても一般市民にとっても明らかだ:処罰は厳しく、避けられないだろう」。

 大使はさらに、結論を述べた:「ロシアは、この不埒で僭越なテロ攻撃に対応する。必要だと判断すれば、応じる。キエフがわが国の指導者に与えた脅威の評価に従い、応えることになるであろう」。

 膝反射的なワンパターンの反応は期待すべきでない。しかし、赤の広場での戦勝記念日の規模を縮小するなどということは、到底できない決断だろう。5月9日の戦勝記念日は、ロシアで最も重要な祝日であり、国民と国家が一体となって愛国的な祝典を行い、ナチズムを倒すために命を捧げた家族を追悼する行事なのだ。

 パレードや歌、記念行事など、この日の特徴の多くはソ連時代にまで遡る。戦勝記念日は、ソビエト連邦崩壊後のロシアに移行した唯一の主要な祝祭日である。ソビエト連邦の崩壊により、多くの偶像や英雄的業績を失ったロシアにおいて、ナチズムに対する勝利は、集団と個人の大きな誇りの源泉であり続けている。

 しかし、プーチンの支配権は、国が激怒して報復を要求する時以上に制限されている。「今日のテロ攻撃の後、ゼレンスキーとその一派を物理的に排除する以外に選択肢はない」というロシアの元大統領で現ロシア安全保障会議副議長のドミトリー・メドヴェージェフの発言からも、それは明らかである。

 ゼレンスキーは、キエフからヘルシンキに向かい、その後ハーグに向かい、5月13日までにベルリンに到着し、国賓として訪問することになったが、おそらく危険を感じているのだろう。実際、ゼレンスキー政権の運命は尽きたようだ。ゼレンスキーは、十字架にかけられたイエスを愚弄し、再臨まで地上を歩くように呪われた、神話「さまよえるユダヤ人」を思い起こさせる。

シーモア・ハーシュの爆弾報告:ゼレンスキーが、米からウクライナへの支援金4億ドルを横領

<記事原文 寺島先生推薦>
Seymour Hersh on his bombshell report of Zelensky embezzling $400 million from us aid to Ukraine
出典:RT 2023年4月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月6日

今回の Going Underground の特別エピソードでは、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領とその側近が、燃料購入のために割り当てられた米国の援助から4億ドルを横領し、ロシアからディーゼルを購入していたという彼の新しい報告についてピューリッツァー賞受賞ジャーナリストのシーモア・ハーシュに話を伺います。また、CIAがこの汚職を把握していたこと、ゼレンスキーがCIA長官ウィリアム・バーンズに叱責され、数十人の将官や官僚の解雇につながったとされることについても触れています。ハーシュはまた、報告書の情報源を明らかにしないことへの主流メディアによる攻撃、戦争の危険が高まる中、ウクライナの国境に米軍の最精鋭部隊がいること、さらに、主流メディアが、ペンタゴンからの文書漏洩で告発されている米国政府の標的ジャック・テシェイラを暴露し助けていること、その他多くのことについて述べています。

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シーモア・ハーシュの爆弾報道:ゼレンスキーが米国のウクライナ支援から4億ドルを横領 29:44 min (訳者:原文サイトでご視聴ください。)

ウクライナ司令塔が攻撃を受けた(ロシア政府の発表)

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukrainian command center destroyed – Moscow
The facility was targeted by a salvo of sea-launched cruise missiles, according to the Russian Defense Ministry

この司令塔のへの攻撃は、海上発射された巡航ミサイルの一斉射撃によるものであったとロシア国防省は発表

出典:RT

2023年4月29日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年5月4日



ウクライナ国内の標的に向けて、ロシア軍が発射した巡航ミサイル© Sputnik / The Russian Defense Ministry


 土曜日(4月29日)のロシア国防省の発表によると、ロシア軍はウクライナの主要司令塔を破壊したという。海上から発射された巡航ミサイルが、その司令塔の攻撃に利用されたと、国防省報道官のイゴール・コナシェンコフ中尉が、報道機関による記者会見で明らかにした。

 「今年の4月28日の夜、ロシア軍は海上から長距離精密兵器による一斉攻撃を行いましたが、その攻撃は、ウクライナ側の連合部隊“ヘルソン”の司令官たちを攻撃対象にしたものでした」とコナシェンコフ中尉は述べ、さらにこの攻撃の目的は、「達せられました」とも付け加えた。同中尉はウクライナ側の推定戦死者数については言及しなかった。

 この攻撃が行われたのは、2022年2月から開始されたこの紛争において、両国側の攻撃が長距離攻撃にも及んでいる兆候を見せる中でのことだった。 今週(4月最終週)はじめ、ロシアはウクライナの予備兵団を攻撃対象にした一連の巡航ミサイルによる一斉攻撃を行った。この攻撃により、これらの予備兵団の前線への再配置を防げた、ロシア軍は発表している。



関連記事:イスカンダルへの攻撃により数十人の外国人傭兵が戦死―ロシア側の発表


 この攻撃の結果、ウクライナのチェルカースィ州の中央に位置するウマン市内の高層住宅建築のひとつが損害を受けた。この建物を攻撃したのは何だったのかが、すぐには判明しなかったのは、ウクライナ側の防空ミサイルがウクライナ国内の非軍事施設に着弾したり、それ以上の攻撃を加えた事例が多く見受けられてきたからだ。しかしウクライナ当局は、この攻撃の責任はロシア側にあると真っ向から主張し、20名以上の市民が亡くなったという地元当局からの報告を伝えた。

 現在ウクライナ軍は、ロシアのドネツク市内の居住地への攻撃を強めているようであり、この紛争中ほぼ毎日、この都市への攻撃を続けている。金曜日(4月28日)、ドネツク市とその近郊地域が激しい砲撃の対象となり、少なくとも9名の市民が亡くなり、10名以上が負傷を負った。この攻撃により複数の住宅家屋が破壊され、地元の病院も被害を受けた。ウクライナ軍はさらに、乗客が乗っていたバスへも直接攻撃を加え、乗り合わせていた全ての人が亡くなった。

 ロシア側の攻撃が強められているのは、予想されているウクライナ側の反撃に先行しようとするためだ。この反撃については、ウクライナの高官らがずっと予告してきた。金曜日(4月28日)、ヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領は、この反撃は「うまくいく」ことを期待していると述べ、ここ数週間幾つかの報道機関が報じた、ウクライナの戦闘能力に対する西側からの懸念を否定した。

 「反撃は行われます。その準備をしているところです。私はこの反撃が成功し、奪われた領土を取り返せると強く信じています」とゼレンスキーは北欧のいくつかの報道機関の聞き取り取材に対して答えた。

モスクワ、ウクライナの和平要求の概要を示す

<記事原文 寺島先生推薦>

Moscow outlines Ukraine peace demands

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月19日

ロシアの外務副大臣は、キエフが敵対行為を終わらせるために取るべき措置を列挙した。

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ロシア外務省(モスクワ)© Joel Saget / AFP


 ロシアのミハイル・ガルージン外務副大臣は、敵対行為を停止させるためにキエフ政府が取るべき10項目の措置を提示した。ガルージンは水曜日(3月29日)のインタビューで、ウクライナの将来は、キエフとその西側支援者がどれだけ早く現実を把握するかにかかっていると述べた。

 ウクライナが平和をもたらすためには、その軍隊は撤退しなければならず、西側諸国はキエフへの武器の納入をすべて停止しなければならないと、ガルージンはRTVIで語った。

 ウクライナの非武装化と「非ナチス化」、EUやNATOへの不参加、キエフの非核状態の確認など、彼が挙げた他のいくつかの条件は、2022年2月に敵対関係が激化して以来、検討されてきたものだ。さらに、2022年10月には、「新たな領土の現実」(一般的には、へルソン、ザポリージャ、ドネツク、ルガンスクの各共和国がロシアへの加盟を決定したことを意味する)を承認することが追加された。

 ロシア語の保護とロシア語を話す市民、そしてウクライナの他のすべての民族の権利の確保も、ガルージンが挙げた項目の中にあった。さらにウクライナは、ロシアとの国境を再び開き、2014年に米国が支援したクーデター後に破棄したモスクワや他の旧ソビエト共和国との関係の法的枠組みを回復する必要があると述べた。

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関連記事:クレムリンはウクライナ紛争の軍事的解決しか考えていない。


 モスクワは初めて、すべての反ロシア制裁の解除と、「ロシア、その個人および法人に対する請求の撤回と訴追の終了」を要求した。この中には、プーチン大統領と子どもの権利委員会のマリア・ルボヴァ=ベロヴァに対する最近の国際刑事裁判所(ICC)の令状が含まれていると推定される。

 ガルージンが挙げた項目の中の最後の要求は、2014年以降ウクライナ軍が破壊した民間生活基盤組織の再建費用を欧米が負担することだった。

 ウクライナの平和な未来は、ロシア系住民の権利を尊重し、すべての近隣諸国との友好関係を回復し、1990年の独立宣言に謳われた中立・非軍事同盟加盟という建国の原則に立ち返ることにあるとガルージンは述べた。

 「現在のウクライナの領土の将来は、この国の住民自身が決めるべきだ」とガルージンはRTVIに語り、その中には 「ウクライナ人、ロシア人、ユダヤ人、ハンガリー人、モルドバ人、ブルガリア人、ローマ人、ポーランド人、そしてギリシャ人」が含まれていると指摘した。

 「国境がどこであろうと、公然と反ロシア的な国家」を隣国としてモスクワは容認しない、とガルージンは言う。「ロシアも、他のどの国も、安全保障の観点から、そんな国家を受け入れることはないだろう」。

 キエフ政府が採択した「和平綱領」には、ウクライナが自国と主張するすべての領土からのロシアの全面撤退、賠償金の支払い、そして、モスクワの軍および政治指導者を軍事犯罪法廷で裁くことが含まれている。

ロシア側の捜査によれば、ウクライナは戦争捕虜の体内器官を採取している

<記事原文 寺島先生推薦>

Russia probes claim Ukrainians harvested POWs’ organs

出典:RT

2023年4月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月17日



当該動画からのスクリーンショット。その動画は現在ロシア側が捜査中©ソーシャル・ネットワーク


自称戦場外科医の男性が、ロシアの捕虜囚人から採取した目を販売していると語っている動画が出現


 ロシア側は現在1本の動画についての捜査を行っているが、その動画の中では、ウクライナ軍の外科医であると自称する人物が、ロシア側の戦争捕虜の身体から器官を取り出す行為に関わっていたことを示唆している。その自称外科医はさらに、それらの器官を闇市場で販売したとも語っている。

 ロシア連邦捜査委員会のアレクサンドル・バストリキン委員長は、この動画について捜査するよう命じたが、この動画は今週(4月第2週)にロシア国内のソーシャル・メディア上で広く拡散された、と同委員会は木曜日(4月13日)に声明を出している。

 ほぼ1分間の長さのあるこの動画では、(SNSの)テレリンク上で激しくやり取りをしていると思われる様子が映されている。やり取りをしているのは、「ウラジミール・バシリエビチ」という自称ウクライナ側の戦場医師と、この医師が「ラッシストのブロガー」としている人物であった。なおこのラッシストとは、この医師がロシア人に対する蔑称として使っている言葉である。

 この動画は部分的に編集されているが、「ウラジミール」の対話者が、ウラジミールを挑発し、その後この自称戦場外科医が主張を行っている場面であり、おそらく相手にウクライナ兵の脚を切断したかどうかを問いただしているところだと考えられる。

 「俺が主に切断したのは、お前たちの仲間の豚どもの脚だけど、腕も目も切ってやったさ。ドイツのおばあちゃんたちが(目に)いくら出すか分かるか?」とウラジミールは答えていた。

 「お前たちの仲間の27歳の [編集されていて聞き取れず] から目や腎臓や切り取ったよ」とウラジミールは嘲(あざけ)るような口調でがなり立てていた。

 さらに「ウラジミール」は、ロシア兵に措置を加える際は、上司の指示に従わず、麻酔をしていなかったとも語っていた。「奴らの目を切り取ってやったさ....楽しかったよ」とウラジミールは語気を強めて語っていた。



関連記事:「戦争捕虜の去勢」発言をしたウクライナの医師からの声明


 ウラジミールの身元はまだ未特定のままだ。いくつかの情報によれば、イヴァーノ=フランキーウシク州出身のウクライナ国民であり、2014年から2015年まで、国家警備隊員を勤めていたという。 ウラジミールが自分で語っていた通りの罪を犯したかについての信ぴょう性は、まだ明らかではない。

 2022年3月、ゲナディル・ドゥルジェンカという人物が加担していた同様の事件が発生した。この人物は、憲法学者であったが、 ウクライナの前線の戦場医師となった人物だ。国営テレビでの聞き取り取材において、ドゥルジェンカが述べたのは、配下の医療団が治療していた全てのロシア側の戦争捕虜に対して去勢手術を施す命令を出していたという事実だった。そしてその理由は、「ロシア人はゴキブリであって人間ではないから」としていた。

 後にドゥルジェンカは、自身のこの問題の多い発言を取り消し、このことは事実ではなく、感情の高まりに任せてつい口走ってしまったと断言した。

 ウクライナ当局は、国際的な義務を遵守し、戦争に関する規則を尊重すると誓約している。ロシア国防省の主張によると、戦争捕虜に対する虐待行為や正当な手続きを踏まない処刑までもが、ウクライナ軍で蔓延っているという。

前ロシア大統領メドベージェフ氏、EU「平和維持軍」についての見解

<記事原文 寺島先生推薦>

Ex-Russian president comments on EU ‘peacekeepers’

出典:RT

2023年3月31日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月15日


この「羊の皮をかぶった狼」たちは戦闘員となり、死体袋に入って戻ってくる、とドミトリー・メドベージェフは言う。

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ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長 © Sputnik / Ekaterina Shtukina


 ウクライナに派遣されるEUの「平和維持軍」は、紛争に直接関与する敵性戦闘員とみなされ、相応の扱いを受けることになると、ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領が金曜日(3月31日)に警告した。

 この日、ハンガリーのオルバン首相はラジオのインタビューで、欧州連合(EU)がウクライナのために「ある種の平和維持軍」(おそらくNATOの支援下)を議論していると述べた。これに対し、クレムリンは「極めて危険な考えだ」と反論した。

 ロシア安全保障会議の副議長であるメドベージェフは、この考えを皮肉話の極みと呼んだ。米国主導の勢力は、「キエフ政権に武器や戦車などの軍備を与え続けている」と彼はテレグラムに書いている。だから、彼らが平和を望んでいるなどと想像することは困難だ。

 「彼らの真意は明らかだ。接触線上の強者の立場から、彼らにとって有利な平和を確立することだ。機関銃や戦車を持ち、黄色い星のついた青いヘルメットをかぶった彼らの『平和維持』部隊をウクライナに導入することだ」とメドベージェフは書いている。

画像 ラブロフ

関連記事:NATOはキエフの側で戦っている―ラヴロフ露外相

 
 「いわゆるNATOの平和維持軍が、我々の敵の側で紛争に参入しようとしているだけであることは明らかだ 」と彼は言った。「平和維持者」と呼ばれる人たちが、我々の直接の敵であることも明らかだ。羊の皮をかぶった狼だ。彼らがロシアの同意なしに前線に立たされ、武器を手にし、私たちを直接脅かすようになれば、私たちの軍隊の正当な標的になる。そして、この「平和を作る者」たちは、無慈悲に破壊されなければならない。彼らは敵の兵士である。彼らは戦闘員なのだ」。

 ロシアは、米国とその同盟国に対し、ウクライナに武器を送ることは紛争を長引かせ、核武装した国同士の直接対決を招く恐れがあるため、やめるよう繰り返し警告している。NATOは、キエフに戦車や戦闘機など1,000億ドル以上の軍事支援を送っているが、その一方で、NATOはこの紛争に関与していないと主張している。

 しかし、欧米の複数の高官が、ロシアの「戦略的敗北」が目的であると発言しており、モスクワによれば、米国は最近、ウクライナでの停戦に反対したとのことだ。停戦はキエフが決定することであり、それはこれまで米国が主張していたことを裏切るものだ。

どんなウクライナを私たちは支援するのか?

<記事原文 寺島先生推薦>

What Kind of Ukraine Do We Support?

筆者:パトリック・パシン(Patrick Pasin)

出典:RT

2023年4月1日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月14日

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  「ウクライナ支援」という掛け声が相変わらず花盛りだ。それを推進する人たちは、ウクライナ人がこの戦争以前、殉教者の数が一番多かったことを知っているのだろうか。西側諸国がこよなく愛する人物・・・ゼレンスキー大統領のせいで、だ。

 要約すると、報道機関が私たちに隠していることで、私たちがウクライナの人々への誠実で友好的な支援について考えなければならないことは以下のとおり。


赤ん坊のいない国

 2021年、死亡者数は出生者数を44万2279人上回った[1]。これは人口約4100万人の中では驚異的な数字で、この年、人口の1%以上がまさに消滅したことを意味する。移住がもたらした影響は言うまでもない。

 特別作戦前の前月である2022年1月には、状況はさらに悪化し、死者は約5万7000人、出生者はわずか1万8000人と、死者は出生者の3倍以上となった。

 これまでの年月、死者と出生者の格差は小さくなっているが、2014年のマイダン革命以前から、6桁単位の人口減であったことは変わらない。このままでは、特に難民や移民の多くは、ウクライナが終戦時にどのような形になっても戻ってこないので、1~2世代でウクライナ国民はいなくなる。

 それに加えて、現在進行中の惨事が加わる。この惨事のなかで、20万人以上の男性が働き盛りの時期に死亡し、もう子供を持つことができないのだ。さらに、10代の若者が前線に送られるなど、虐殺はとどまるところを知らない。ウクライナの人々の存在そのものが、中長期的にどのような影響を受けるか、誰が想像できるだろうか。


米国の戦争実験所

 WHOや医師会などの現地当局の数値によると、HIV/AIDS、結核、B型肝炎、そしてC型肝炎の感染率は、ヨーロッパをはじめ世界でも最高水準にある。結核は、薬に強い耐性を持つ独特の形で現地ウクライナに広がっている。[2]

 ウクライナは、また、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、麻疹の激しい流行に見舞われているばかりか、豚インフルエンザ、ボツリヌス菌、レプトスピラ症、ジフテリアなど[3]、他国では例を見ない割合で、激しい感染に晒されている。

 ロシア側が数千人のウクライナ人捕虜に対して行った医療検査では、3分の1がA型肝炎に、4%以上が腎臓症候群に、20%が西ナイル熱に感染していた。[4]

 報道機関の軽率な結論は、ウクライナ人は(ロシア人によって)何年もの間、生物学的実験を受けたから、ということになるのだろうか?

 現実は反対だ。

 米国防総省は2022年6月9日、ウクライナの46の研究所と「協力関係」を築いている(もちろん平和目的であると言っている・・・)[5]。 実際には、米国防総省は「協力」ではなく、1972年の生物兵器条約に違反し、2014年から直接ウクライナの生物兵器研究所を運営していた。このことは2014年のマイダン以降、例えばウクライナの情報機関SBUの元工作員による報告書で、「被験者の死はその行為の一部として許可されていた」ことが明らかになるなど、文書化されている[6]。 この場合、「被験者」は実験用ネズミではなく、ウクライナ人である。

 この極めて危険な研究は、ペスト、炭疽、野兎病、コレラなどの致死的な病気の病原性を高めることを目的としていたことも判明している[7]。優先的に特定されたのは、コウモリから人間に感染しうる細菌性およびウイルス性の病原体の研究であり、ペスト、レプトスピラ症、ブルセラ症、そしてコロナウイルスなどの病原体が挙げられる・・・コウモリのコロナウイルス? 何か思い当たることはないか? 「Covid-19」と名付けられた軍事作戦が、2019年11月に資金調達されたことを付け加えておこう。WHOが(報道機関の)見出しに載る3ヵ月前のことだ。[8] 単純な偶然だろうか?

 いずれにせよ、ウクライナの市民と兵士が、キエフの共犯のもと、米軍によって、何年もモルモットとして利用されてきたことは間違いない。さらに、これらの生物兵器は私たちに直接的な脅威を与えている。これらの致死的なウイルスが国境線で停止するなんて、誰が保証できるだろうか? こういった脅威から私たちを守るために、欧州委員会や私たちの政府は何をしているのだろうか?


ネオ‐ナチの国

 ロイターの推定では、「主流派国粋主義者」あるいはネオナチと呼ばれる人たちは10万人以上いると言われている。彼らがアゾフ(Azov)、アイダール(Aidar)、C14などと名乗ろうとも、2014年以来、ウクライナ人の生活を苦しめており、ロシア語を話す人々だけでなく、マジャール人、ユダヤ人、ロマ、LGBTなどの少数派たちもだ...[9]。

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 特に、彼らはドンバスにおいて数千人が殺害される事態に関与しており、これは1948年12月9日の大量虐殺の罪の防止及び処罰に関する条約で言われている大量虐殺の特徴を備えている。さらに、これらの死の大隊には、分離主義者の殺害や捕縛に対して最高1万ドルの報酬が支払われていたことが証言で明らかになっている。[10] 民主的で進歩的な価値を、常に我々に売りつけている国での良い金儲けである。

 彼らは、また、裁判官を脅すために武装して法廷に入ることも、市長や知事を強要するために行政に立ち入ることも躊躇しない。市民の安全を確保するために、一部の自治体には民兵として給与を支払うよう強要することさえある。ウクライナは正義のない国でもあるので、後述するように、彼らは殺人、強姦、拷問、強盗、ゆすりなど、何でもする権利を持っている。もちろん、警察との共謀の上で。

2022年を振り返って:ウクライナとその後の話
 
 そして、2016年に当局によってアイダール大隊が解散させられたとき、その隊員はキエフの大通りを塞ぎ、内務省を襲撃しようとした[11]。 こうした行為の後、厳しい刑期が待っていると想像される・・・ そうではない! 解散命令は取り消され、彼らはミンスク合意後の他のネオナチ大隊と同様にウクライナ軍に統合され、ドンバスに送られ、犯罪を犯したのだ。

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 その結果、彼らは我々の・・・同盟国になる。西側諸国は生死をかけてウクライナと同盟を結んだのだから(特にウクライナ人側の生死をかけてだった。少なくとも最初は・・・)。


汚職の国

 ウクライナでは汚職が蔓延しているため、この点については1章まるまる必要となる。2015年、CNNは国家予算が約100億ドルかかったと報じた[12]。この現実に騙される国際機関はいない。例えば、欧州監査院は2016年の報告書で、ウクライナに最後に送られた110億ユーロの使途について全く把握していないと述べている[13]。 その一方で、『新旧財閥が引き起こす危険度は依然として高い』とも述べている。汚職などという言葉を使わなくても、その事実はここにはっきり述べている。

 それにもかかわらず、EU、米国、IMFなどから、何十億もの資金が流れ込み続けている。変な話じゃないか?

 この限りなく寛大な資金の流れを絶やさないために、ウクライナ憲法裁判所(CCU)は、2020年10月27日の劇的な判決で、汚職の問題を決定的に解決した。それは、政府、高官、そして裁判官の資産の虚偽申告に対する責任を免除するものであった。[14]

 その結果、キエフの質素な家の所有だけを申告していた裁判官が、フランスのリビエラに豪華な別荘を所有していることが発覚しても、法律で保護されることになった。少なくとも、裁判所の決定はより迅速に行われるようになる:その決定は、支払われる封筒の厚さだけに応じて、ということになるだろう。政治家や公務員にも同じことが言える。汚職の国は、正義のない国にもなっている。そしてその逆の、正義のない国が汚職の国になったこともまた然りである。

 それ以来、もちろんウクライナには何十億もの資金が流れ込み続けている。実際、「受け取っている」のはウクライナの指導者たちだけと、我々は確信しているのか?この巨額の資金が、目の届かないところで、西側と山分けされていることは、まったくないのか?西側は、この資金を、ゼレンスキーランドと化したダーナイドの樽(底なし樽)に送り込んでいるのだ。

 いずれにせよ、私たちが拠出するこの数百億が、ウクライナの人々や平和のためになっていないことは確かだ。


労働法がない国

 戦争が始まると、政府の方針に従わない野党や報道機関はすぐに禁止された。疑いないのは、欧州委員会を喜ばせるための民主的価値の誇示・・・同じくらい心配なことに、当局は2022年8月17日にゼレンスキー大統領が批准した法律5371で、従業員250人未満、すなわち人口の3分の2以上の企業における労働基準法を廃止することを決めたのだ。[15]

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 これからは、雇用主と「自由に」交渉できる契約しかなく、雇用主は例えば週50時間や60時間、それ以上の労働時間を課すことができる。従業員にはもはや法的保護がなく、労働組合には行動手段がない。ウクライナは、法律上、悪徳社長の楽園と化している。

 もちろん、労働者はそのような契約を拒否することはできる。が、すべての企業(多国籍企業は別)がこの例外的な制度の適用を受けているため、この適用のない別の仕事を見つけることなどできるのだろうか。

 戒厳令が続く限り、この法律は効力を持ち続ける、という事実が土壇場で追加されたことに注目すべきだ。労働市場を「流動化」させるためだけならまだしも、この法律がもはや効力を持たなくなることを誰が保証できるだろうか。EUの危機が迫っている今、同種の法律が、もちろん被雇用者の利益のために、今後課されないと、誰が保証できるだろうか?


人身売買の国

 上記のことは、緩やかに次のことにつながる。しかし、その程度はひどくなる:ウクライナが子供を売る国であることは、数多くの報告書が証明しているのである。例えば、米国務省が発行した「2021年人身売買報告書」(米国務省が発行したものだから、反ウクライナに偏っている疑いは、ほとんどないのだが)は、次のように報告している:

人身売買の情報 [16]

 「過去5年間報道されてきたように、人身売買業者はウクライナ国内の被害者を搾取し、人身売買業者は海外のウクライナ人被害者を搾取している。ウクライナ人被害者は、ウクライナ国内だけでなく、ロシア、ポーランド、ドイツなどの欧州地域、中国、カザフスタン、そして中東などで、性売買や強制労働で搾取されている。ウクライナ被害者がEU加盟国で搾取される事例も増えている。[17]

 欧州委員会は、その人権価値についてすぐに自慢するが、この惨劇と闘うために何をしているのだろうかと疑問に思う・・・報告書は次のように続く。

 「国営の孤児院に預けられた約10万4千人の子どもたちは、特に人身売買の危険にさらされている。いくつかの国営の養護施設や孤児院の職員が、保護されている少女や少年の性売買や労働に加担したり、 故意に放置したりしたことが報告されている」。

 たとえその言葉が明記されていなくとも、それはペドクリミナル(小児犯罪)である。「世界の人身売買の被害児童の10人に1人はウクライナからやってくる」。アルテで放送されたこの映画[18]では、「40人ほどの10代の子どもたちが性的目的で地元の政治家に売られている」という事実も知ることができる。この裁判には、マスコミも一般市民も立ち入らないようにされていた。もちろん、何も起こらず、その後、ウクライナの支配者層に美徳が降りてきたと誰が信じられるだろうか。

 しかし、ウルスラ・フォン・デア・ライエン、シャルル・ミシェル、ジョゼップ・ボレル、エマニュエル・マクロン、オラフ・ショルツ、ボリス・ジョンソン・・・がこれらの許されない人権侵害を非難するのを誰が聞いただろうか?

 では、西側報道機関が日夜喧伝するゼレンスキー大統領とNATOの夢の国をまだ支持したい人はいるのだろうか。彼らのウクライナは、私たちの支援、ましてや私たちが払う犠牲に値するのだろうか?

 ウクライナの人々を助け、すでに社会に影響を及ぼしている破局を回避するためには、平和という選択肢しかない。

 したがって、戦争に必要な武器や資金を送るのをやめることが急務だ。戦争は、戦闘員の不足ではなく、武器の不足のためにやめなければならない。さらに、指導者たちの狂気を止めない限り、私たちもそこで終わる危険性がある。

*

フランス語からの翻訳:ヤニス・V・ズブローク(Yannis V. Zbroek)

パトリック・パシン(『ウクライナ戦争: 欧米の犯罪的責任-危機を止めるための我々の選択肢』<仏語>の著者兼出版者)

Notes
[1]. 714,263 deaths versus 271,964 births. Source: National Statistics Service of Ukraine.
[2]. Hacker group says US biological labs active in Ukraine, Tass, August 25, 2017.
[3]. EXCLUSIVE: Hunter Biden Bio Firm Partnered With Ukrainian Researchers ‘Isolating Deadly Pathogens’ Using Funds From Obama’s Defense Department, Natalie Winters et Raheem J. Kassam, The National Pulse, March 24, 2022.
[4]. Bioterrorisme américain : Le Pentagone n’a pas eu le temps de détruire les preuves à Severodonetsk, Alexandre Rostovtsev, Polit Navigator, traduction Réseau International, July 20, 2022.
[5]. Fact Sheet on WMD Threat Reduction Efforts with Ukraine, Russia and Other Former Soviet Union Countries, U.S. Department of Defense, June 2022.
[6]. Weapon in a Test Tube – How the United States turned Ukraine into a biological testing ground, Donbass Insider, December 8, 2020.
[7]. Statement by Permanent Representative Vassily Nebenzia at UNSC briefing on biological laboratories in Ukraine, March 11, 2022.
[8]. U.S. Department of Defense awarded a contract for ‘COVID-19 Research’ in Ukraine 3 months before Covid was known to even exist, The Exposé, April 13, 2022.
[9]. Joint Letter to Ukraine’s Minister of Interior Affairs and Prosecutor General Concerning Radical Groups, Human Rights Watch, June 2018.
[10]. https://fr.wikipedia.org/wiki/Ihor_Kolomo%C3%AFsky and Le massacre d’Odessa organisé au sommet de l’État ukrainien, Réseau Voltaire, May 16, 2014.
[11]. La Gestapo ukrainienne… Le bataillon Aïdar fait peur même aux autorités ukrainiennes, Histoire et Société, May 11, 2022.
[12]. George Soros: I may invest $1 billion in Ukraine, CNN Business, March 30, 2015.
[13]. L’UE se demande où sont passées les aides à l’Ukraine, Georgi Gotev, Euractiv.com, December 7, 2016 / Rapport spécial n° 32/2016 : L´aide de l´UE en faveur de l´Ukraine, European Court of Auditors.
[14]. Constitutional Court of Ukraine has struck a blow to anti-corruption reform – NABU statement, National Anti-corruption Bureau of Ukraine (Nabu), October 29, 2020.
[15]. Ukraine’s anti-worker law comes into effect, Open Democracy, August 25, 2022.
[16]. https://www.state.gov/reports/2021-trafficking-in-persons-report/
[17]. Underlined by me.
[18]. Trafic d’enfants au cœur de l’Europe, documentaire réalisé par Sylvia Nagel et Sonya Winterberg, 2019 (ARTE is a French-German TV).
Featured image is from Alexey Fedorenko/Shutterstock
The original source of this article is Global Research
Copyright © Patrick Pasin, Global Research, 2023

ウクライナにおけるEU軍の話は「極めて危険」 ―クレムリン

<記事原文 寺島先生推薦>

Talk of EU troops in Ukraine 'extremely dangerous' – Kremlin
Moscow has raised concerns over Hungarian PM’s claims that bloc is set to discuss sending ‘some kind of force’

モスクワは、ハンガリー首相が、欧州連合が「ある種の軍隊」の派遣を協議するとしていることに懸念を示した。

出典:RT

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月15日

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© Getty Images / Soltan Frédéric

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相が金曜日(3月31日)に行ったコメントに対し、EU軍のウクライナへの派遣の可能性があるという考えは、とても大きな危険性があると警告した。

 「もし、ある種の真剣な交渉の話をしているのであれば、これは極めて危険な議論になる可能性があります。世界の慣行では、このような戦力は、原則として、両当事者の同意がある場合にのみ使用されます。この場合、それはとても危険な話になる可能性があります」とペスコフは記者団に語った。

 オルバンの発言は、ロシアからの反発が予想されるにもかかわらず、加盟国がウクライナに「ある種の平和維持軍」を派遣できるかどうか、あるいは派遣すべきかどうかについて、EU首脳が「正式な」議論を行うところまで来ていることを明らかにした後のことだ。

 オルバン首相は、ウクライナ紛争はますます血なまぐさくなっていると警告し、EUの指導者たちはなぜ、キエフに殺傷能力の高い手段を提供し敵対関係を煽るのではなく、外交手段によって平和を達成しようとすることに集中しないのかと疑問を呈した。

 「もしこの状態が続けば、世界大戦の危険は、文学的な誇張では済まなくなります」と同首相は語った。

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関連記事:ウクライナ和平構想についてクレムリンからコメント

 
 ロシアが昨年ウクライナで軍事作戦を開始して以来、ブダペストは一貫してロシアのエネルギー資源に対する制裁に反対し、ハンガリー自身の軍隊を維持し装備する必要があるとして、キエフ軍への軍事援助を拒否している。

 一方、ロシアのアレクセイ・チェパ議員は、EUがウクライナに平和維持軍を派遣することを決めた場合、それは確実に紛争に直接関与し、ロシアとNATOの戦争を誘発しようとするものと解釈されるだろう、と示唆した。

 チェパ議員は、この場合、ロシアはベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギス、そしてタジキスタンを含む集団安全保障条約機構の同盟国に助けを求めることを余儀なくされるかもしれないと述べた。

ウクライナ軍は「ほぼ壊滅状態」―ワグネル社代表の声明

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukrainian army ‘almost destroyed’ – Wagner chief

ドンバスのアルチョモフスク市の防衛に固執すれば、ウクライナは大きな被害を受け、この戦争の運命を決することになる可能性があると、エフゲニー・プリゴジン代表は主張

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月4日


 
ロシアによるウクライナでの軍事作戦が継続されるなか、道路を歩行中のロシアの民間軍事会社ワグネル・グループ所属の一兵。ドネツク人民共和国バフムト市近郊にて© Sputnik/Viktor Antonyuk


 ワグネル・グループ民間軍事会社(PMC)のエフゲニー・プリゴジン代表によると、アルチョモフスクでの戦いにおけるウクライナ側の損失はウクライナ全軍にとって致命的な規模であるという。さらに同氏は、ロシアのためにこの戦団が払った犠牲が報われた、とも付け加えた。

 「今日の時点で、バフムトの戦いによりウクライナ軍はほぼ壊滅しました」とプリゴジン代表は水曜日(3月29日)、ウクライナ側のその都市の呼称を使った声明を出した。さらに自身の戦団も「深刻な打撃」を受けたことを明言した。

 同代表はこの戦いを、ワグネル社の戦団がウクライナ軍および「ウクライナ軍に編入された外国人部隊」と相対する全ての紛争の「総まとめ」であるとした。そして、ワグネル社による勝利は、「転機」になり、歴史的な出来事になるだろうとプリゴジン代表は予見した。

 さらに同代表は、「チェス盤に残されるのはロシア軍だけになり、それ以外の要素はすべて取り除かれるでしょう。ワグネル民間軍事会社がバフムト(ママ)で挽肉のように潰されたとしても、その時はウクライナ軍ももろともに潰します…つまり、われわれが歴史的使命を達成することになるということです。」




関連記事:ゼレンスキーが、ドンバスの主要都市から撤退しない理由を説明


 アルチョモフスクの戦いは、ウクライナでの軍事衝突においてもっとも激しく、もっとも血なまぐさい戦いが行なわれた地域のひとつであり、両軍とも多くの戦死者を出していると報じられている。西側諸国政府の主張では、この都市には軍事戦略面での価値はないとのことだが、ウクライナのヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領は、この都市を可能な限り守り抜くと宣告しており、この都市は要塞であるとしている。

 同大統領が今週初めにAP通信に対して行った説明によると、ロシアがアルチョモフスクの占領に成功することになれば、ウクライナ政権は、世界各国や国内からの圧力を受け、ロシアとの和平交渉を模索せざるを得なくなるとのことだった。「我が国の社会は疲弊感に苛まれ、ロシア側に妥協するよう社会から圧力がかかることになるでしょう」と同大統領はAP通信に語っている。

米国の高官軍人はウクライナの将来に懐疑的

<記事原文 寺島先生推薦>

Top US general skeptical of Ukraine's prospects

マーク・ミリー米統合参謀本部議長は、ウクライナの主要な軍事目的が達成できることは「非常に困難」になるであろうと発言

出典:RT

2023年3月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月4日



© Andrew Caballero-Reynolds / Pool via AP


 ロシア側のすべての「侵略者」を退去させるというウクライナは、公表している軍事目的を今年達成することはできないだろう、とマーク・ミリー米統合参謀本部長は、金曜日(3月30日)のインタビューで述べた。同本部長のこの発言は、ウクライナ側が春に大攻勢をかけると発表し、同時にその攻撃に必要な武器を全ては持てていないことに対する不満を表明したことを受けてのことだった。

 ヴォロデミール・ゼレンスキー大統領によると、ウクライナ側の目的は、「すべてのロシア人を、ロシアがウクライナ領内で占領している地域から追い出す」ことであると、ミリー統合参謀本部長は、通信社であるディフェンス・ワン社にこう語っている。さらに、「これは重要な軍事使命です。本当に非常に難しい軍事使命です」とも語った。

 さらにミリー統合参謀本部長は、「不可能であるとは言っていません。今年中という短期間で達成できることはなさそうだということです」と付け加えた。

 同参謀本部長はこの発言に付け加え、ウクライナ側には「そうする権利が間違いなくあり」、「道徳上優位な立場に」立っているとも述べた。さらにミリー統合参謀本部長は、ロシアは戦略的にも戦術的にも「失敗した」と主張した。

 ミリー統合参謀本部長が、ウクライナが軍事的に勝利を収めることに対して疑問の声をあげたのはこれが最初ではない。11月の記者会見において同本部長は、ウクライナがクリミアを取り返すことに対して、「すぐに達成できる可能性は高くない」と語っていた。

 今週はじめ、ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防大臣は、ウクライナ軍が新たに届いたドイツのレオパルド戦車を用いて、4月か5月初めに多方面に攻撃を仕掛けると語った。

 ゼレンスキー大統領自身はそのことについて明言せず、ウクライナは西側諸国からより多くの武器や弾薬が届くのを待っている状況であり、前線の現状は「好ましい状況にはない」と語っていた。




関連記事:ウクライナ外相は「反撃」の重要性を軽視


 ウクライナのドミトル・クレバ外相が米国や米国の同盟諸国に促したのは、たとえウクライナ側の攻撃により、ウクライナ側の目的が100%達成されなくなったとしても、ウクライナへの武器や資金の送付を継続することだった。いっぽう、アンドレ・メルニク副外相がドイツの通信社フランクフルター ・アルゲマイネ・ツァイトゥングフランクフルテル社に語ったところによると、春の攻撃の準備はまだできていないとのことだった。

 同副外相は、「準備ができるまでは反撃をしたくはありません。いま我が国には約50~60台の戦車がありますが、ロシア側は1日で10台の戦車を製造することができます。つまり、我が国が戦場で決定的に優位に立てるまでには、長い時間がかかるということになります。」




関連記事:EUの軍をウクライナに派遣することについて話し合うことは「非常に危険」―クレムリン当局の警告


 メルニク副外相の発言には、ウクライナがより多くの武器を求めているという文脈のもとでのことだが、同副外相の主張は、西側はウクライナに戦闘機を供給することに「禁止線」を引くべきではないというものだ。

 2022年末の時点で、米国と米国の同盟諸国は、1000億ドル相当の武器、弾薬、装置をウクライナに送付してきた、とロシア国防省は発表している。ミリー統合参謀本部長がディフェンス・ワン社に語ったところによると、米国の軍事産業が「おそらく数年かけ」ないと、在庫武器を補充し、国防総省の要請に応じることはできないだろうとのことだった。さらに付け加えて、「魔法のように一晩で達成できるわけはなく」、しかも「非常にお金がかかる」ことになると述べた。

イタリア、米国ドローン墜落後の戦況の激化に警告

<記事原文 寺島先生推薦>

Italy warns of escalation after US drone crash

出典:RT

2023年3月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月3日

アントニオ・タヤーニ外務大臣は、人為的なミスや一個人による攻撃的な動きが、ロシアと西側諸国の対立を引き起こす可能性があると警告した



2023年1月22日、カイロで行われたエジプト側との記者会見でヘッドホンを装着するイタリアのアントニオ・タヤーニ外務大臣(Antonio Tajani)。© Khaled DESOUKI / AFP


 イタリアのアントニオ・タヤーニ外務大臣は、黒海での米国の無人機墜落事故では、モスクワとワシントンの関係に大きな緊張が走ると3月15日(水)に述べた。また、欧米とロシアが直接衝突するのを避けるため、警戒するよう強く要請した。

 3月14日(火)、米国は、クリミア沖で偵察飛行をしていたMQ-9リーパー無人機をロシアが撃墜したと非難した。ワシントンは、同機が国際空域で通常の任務を行っていたところ、ロシアのSu-27の2機に迎撃され、燃料をドローンに投下され、1機がこのドローンのプロペラに衝突したと訴えた。

 しかしロシアは、自国の戦闘機がアメリカの無人機に接触したわけでも、銃撃することもなかったと主張し、MQ-9は 「制御不能な飛行に入り」、「激しい操縦の結果」墜落したと付け加えた。

 タヤーニは、テレビ局「スカイTG24」の取材に応じ、今回の事件で米国とロシアはそれぞれ厳しい姿勢を示したが、「この事件を開戦のきっかけしない」ようにしていた、と指摘した。「毅然とした態度で臨んでいるが、緊張を激化させようとは思っていない」と述べた。

 しかし、現在の状況では、「人為的なミスや個人の攻撃的な行動によって」事態が拡大する可能性があると、大臣は警告している。



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 最悪の筋書きを回避するためには、「欧州とNATOの国境に関わる人々の慎重さが必要だ」とタヤーニは説いた。

 ジョン・カービー米国家安全保障会議調整官(戦略的コミュニケーション担当)が3月14日(火)、CNNに語ったところによると、ワシントンは確かにウクライナ紛争が「ウクライナ国民に対しすでになされた以上に激化する」ことを望んでいない、とのことである。しかし、ロイド・オースティン米国防長官は、今回の事件にもかかわらず、米国は 「国際法が許す限り、飛行を続け、活動する」と明言した。

 また、火曜日、アナトリー・アントノフ駐米ロシア大使は、今回の事件を「挑発」と非難しながらも、ロシアはワシントンとの「対立を望んでいない」ことを伝えた。

 水曜日、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ドローン墜落事故について、モスクワはワシントンと高官級の接触はなかったと述べた。また、モスクワとワシントンの関係は現在「嘆かわしい状態」にあるが、ロシアは「建設的な対話を一度も拒否していない」と付け加えた。

米空軍、墜落したドローンの現在の状態を明らかにする

<記事原文 寺島先生推薦>

US Air Force reveals status of downed drone

出典:RT

2023年3月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月3日

報道官、米軍がまだ瓦礫を発見していないことを認める



資料写真:飛行を行うゼネラル・アトミクス無人航空機ドローンMQ-9リーパー© AFP / Ludovic Marin


 3月14日(火)、ロシアのクリミアに近い黒海で墜落した米国の無人機MQ-9 Reaperはまだ回収されていない。しかし、回収することが軍の最優先課題であると在欧米空軍(USAFE)は述べている。

 「我々はこの機体の保護と回収を非常に重要視しているが、現時点では機体は回収されていない」とUSAFE報道官は3月16日(木)、The Hill放送局への声明で述べた。

 報道官は、捜索活動の具体的な詳細については明らかにしなかったが、3200万ドルのUAV(無人航空機)の残骸を見つけることは、ワシントンにとって引き続き「優先事項」であると述べた。

 3月16日(木)、ロシアとしては、アメリカの無人機を回収しようとするかどうか尋ねられたクレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシア軍が 「我々の利益と安全のために必要だと判断すれば...そうすることになる」と述べた。

 ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は、モスクワが黒海の海底からUAVを持ち上げることを「必ず試みる」と述べていた。パトルシェフは、それを成功させるのはかなり難しいことだと認めた上で、それでも成功することを望んでいると付け加えた。



関連記事:国防総省はロシアのジェット機により追跡され撃墜されたドローン機の動画を公表


 The Hill放送局は、MQ-9リーパーがクリミア付近に落下したため、ロシアは米国よりも「簡単に」捜索できると指摘する一方、「モスクワによる無人機の回収は、ワシントンにとって深刻な情報面での懸念をもたらす可能性がある」と警告した。

 米国統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍は、3月15日(水)の記者会見で、ロシアが無人機から情報を収集する能力を最小限に抑えるため、米軍がいかなる「対策」を講じたかを明らかにした。「我々は、以前価値のあったものが何であれ、今はもう価値のないものであると確信している」と述べた。

 また、ミリーは、UAVが水深5,000フィート(約1.5km)程度の海域で沈没し、「おそらく分解した」、つまり、どのみちそこから回収できるデータは多くないことを示唆した。

 ペンタゴンは、ロシアのSu-27戦闘機による危険な迎撃の結果、MQ-9リーパーが黒海に墜落したと主張している。戦闘機は何度もUAVに接近して燃料を投下し、最終的にSu-27の1機がUAVの尾翼プロペラに衝突して損傷したという。

 ロシア国防省は、パイロットがプロとして行動し、米国の無人機は危険な操縦を行った後に失速したと述べ、衝突があったことを否定した。ウクライナで進行中のロシアの軍事作戦のため、立ち入り禁止とされた区域にUAVが侵入したため、事故が起きただけだとモスクワは述べている。

ワシントンの墜落したドローンと広がるウクライナの軍事的劣化の認知

<記事原文 寺島先生推薦>

Washington’s Downed Drone & Growing Admissions of Ukraine’s Military Deterioration

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月3日



ウクライナにおけるロシアの軍事作戦の最新版(2023年3月16日)


–ロシアの戦闘機が、クリミア付近で偵察を行っていた米国のMQ-9ドローンを迎撃し、プロペラを破損させたようだ;

– 米国にはドローンを回収する手段がないが、ロシアには回収の機会があるかもしれない;

–米国によれば、無人機は国際空域で運用されていたが、進行中の敵対関係の中で、紛争の当事者としてウクライナに代わって情報を収集していたため、ロシアの国家安全保障を脅かすことになっている;

–バフムートへの包囲網は続いている;

–西側メディアは、ロシアの破壊戦略の重圧によるウクライナ軍の厳しい劣化を認め始めている;

–ウクライナは、過去8~9年間NATOが訓練した部隊の大半を失っている;

–現在行われているNATOの訓練は急ごしらえで、ロシアの訓練された人員の蓄積には対応できないし、それを上回ることもできない;

–弾薬や武器も不足していることは確かで、ウクライナは来るべき春季攻勢のための備蓄をバフムートでの戦闘に振り向けているのかもしれないし、そうでないかもしれない;

–バフムート周辺で反撃の可能性があれば、ウクライナの戦力がいかに悪化しているかを示すことになるかもしれない;

参照:
The Duran – MQ-9 Reaper drone, military tries to de-escalate. Neocons want to escalate: • MQ-9 Reaper drone…
Garland Nixon – WESTERN MEDIA SLOWLY ACKNOWLEDGES UKRAINE CATASTROPHE: https://www.youtube.com/live/9den3V3i…
US Department of Defense – Secretary of Defense Lloyd J. Austin III and Chairman of the Joint Chiefs of Staff Army General Mark A. Milley Hold a Press Conference Following Ukraine Defense Contact Group Virtual Meeting (March 15, 2023): https://www.defense.gov/News/Transcri…
War on the Rocks – How to Think About Bakhmut and a Ukrainian Spring Offensive (March 14, 2023): https://warontherocks.com/2023/03/how…
Politico – Technology concerns imperil Gray Eagle drone transfer to Ukraine (2022): https://www.politico.com/news/2022/08…
Politico – ‘Ukraine doesn’t have any time to waste’: U.S. races to prepare Kyiv for spring offensive (March 15, 2023): https://www.politico.com/news/2023/03…
Washington Post – Ukraine short of skilled troops and munitions as losses, pessimism grow (March 13, 2023): https://www.washingtonpost.com/world/…

米国のMQ-9ドローンを攻撃目標にするのは合法だった。

<記事原文 寺島先生推薦>

The US MQ-9 Drone Was a Legitimate Target

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月2日


MQ-9 リーパー無人航空機


MQ-9ドローン事件:バイデンによる危険な戦闘行為拡大

 米国の偵察機ドローンが、ロシアの戦闘機と遭遇してクリミア沖に墜落した。この事件から、ウクライナ戦争の現状と、ロシアとアメリカの今後について何が言えるだろうか。

 2015年、米国はウクライナ西部のヤボリブに、対ロシア戦闘のためのウクライナ兵を訓練することを明確な目的とした常設訓練施設を設立した。

 当時、ウクライナの紛争は、ウクライナ軍と、米国の支援を受けたクーデターに反発したロシア系民族のウクライナ人とが対立する内戦だった。このクーデターは2014年2月、憲法で選ばれたヤヌコビッチ大統領政権を親米政権に置き換えたのだ。

 米国が選んだこのウクライナ新政府は、ステパン・バンデラや、第二次世界大戦中にナチス・ドイツと戦い、その組織員が数十万人の市民を殺害したウクライナ民族主義組織(OUN)の思想につながる過激な超民族主義が、根本まで吹き込まれていた。

 米軍によって訓練されるウクライナ人の多くはネオナチの「アゾフ大隊」に所属していた。この組織は、当時の米国議会の多くの議員が非常に嫌悪感を抱いていたため、「アゾフ大隊」の隊員の訓練に米国の税金を使うことを禁止する国防権限法の修正案が可決された。

 こうした議会の制約を別にしても、米国のウクライナでの訓練任務の目的が、ウクライナ軍がロシアと戦争するための準備であったことに疑いの余地はないだろう。米国の訓練は、ウクライナ軍に近代的な複合兵器による機動戦を指導するだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)の軍隊の訓練に用いられるのと同じ水準にウクライナ軍を引き上げようとするものだ。これはウクライナとその権利を奪われたロシア民族(ロシアも入る)の間の将来の紛争が、2地域の隣国同士の単なる対立ではなく、ロシアと米国およびNATO、いわゆる「西側集団」の間の大きな戦争になり、ウクライナを代理として使うことになる最初の兆候となっていた。

 この現実は、米国とNATOによる先進的な対戦車ミサイルシステムなどの殺傷力の高い軍事支援によって、さらに増幅された。

 ロシアが特別軍事作戦を開始する以前から、2022年2月、米国、英国、そしてNATOは、最高段階でのウクライナ軍との情報共有作戦を開始した。ロシア軍が国境を越えて移動すると、この情報関係の性質は、差し迫った攻撃の兆候や警告の提供から、ロシア軍の配置、能力、意図に関する作戦・戦術情報の提供へと変化し、ウクライナがロシア軍を標的とするために利用された。

 米国とそのNATO同盟国は、このような情報の性質やその情報源について当然ながら口を閉ざしているが、時間の経過とともに、あらゆる情報収集手段が、特別軍事作戦を支援するロシアの軍事行動に関する関連データを収集するために使用されていることが明らかになっている。

 また、これらの情報は、米軍/NATO軍/ウクライナ軍で構成される統合作戦計画室で即時に目標を策定し、ウクライナ軍に伝達されていることもはっきりしている。

 ウクライナを支援するために米国が採用した、より広範囲に及ぶ情報資源の1つがMQ-9リーパーである。MQ-9は、空軍が運用する大型の無人航空機(UAV)である。MQ-9と衛星回線で結ばれた地上管制局から、2人1組のチームで遠隔操作する。このチームには、機体の操縦を担当する有資格のパイロットと、MQ-9が搭載するセンサーや武器の操作を担当する下士官の隊員がいる。

 MQ-9は翼幅66フィート、長さ36フィート、高さ12フィート、重量約4,900ポンドとなっている。高度50,000フィートまで飛行可能で、航続距離は約1,400マイルだ。さまざまな武器や情報収集ポッドを搭載することができる。MQ-9の価格は1機あたり約3200万ドル。黒海上空を飛行するMQ-9リーパーは、カンピア・トゥルジイのルーマニア空軍基地から、米空軍の第31遠征作戦群第1分隊の隊員によって操縦される。

 2023年3月14日、カンピア・トゥルジイを拠点とするMQ-9リーパーが、クリミア西方の黒海上空で国際空域を飛行していた。これはMQ-9リーパーの標準的な飛行形態であり、ロシアの機密軍事施設に近いことから、ロシア側が懸念していたものである。

 ウクライナは、クリミアのロシア軍に対して空中・水中ドローンを使った作戦を展開した経緯があり、MQ-9リーパーが収集した情報がこうした攻撃の支援に使われる可能性は非常に高かった。そのため、ロシア軍はクリミア沿岸の特定地域を立ち入り禁止と宣言していた。

 しかし、米国は、クリミアや、2022年9月の住民投票によって連邦に加わったへルソン、ザポリージェ、ドネツク、そしてルガンスクの4つの新領土に対するロシアの主張を認めず、そのため、ロシアによるウクライナへの軍事作戦を支援する飛行禁止区域の設定に関する主張も認めないとしている。MQ-9リーパーの飛行を決定したのは、ロシアが反対すること、あるいはそれ以上のことを承知で行われた。

 実際、ロシアはMQ-9リーパーを迎撃するためにSu-27戦闘機の2機を派遣した。Su-27はリーパーに19回接近した後、MQ-9リーパーを退去させるか、あるいは墜落させるために、攻撃的としか思えない操縦を行った。ひとつの注目すべき出来事(1機または複数のSu-27がリーパーに燃料を投棄した、あるいはそうでないかもしれない)の後、MQ-9は制止できなくなり、クリミア沿岸の国際水域に墜落した。

 クリミアから派遣されたロシア軍は、機体の左翼下に搭載されていた極秘情報収集ポッド(壷状の容器)を含む残骸を、すべてではないにせよ、ほとんど回収したと考えられている。もしこれが事実なら、米国の重要な情報収集能力が損なわれ、ロシアは墜落したMQ-9リーパーに搭載されていたようなセンサーから自らを守ることができるようになったことになる。

 米国国務省は、米国が国際空域での飛行を継続すると宣言したが、在欧米軍司令官クリストファー・カボリ将軍は、事件の検証および最善の方法の決定まで、すべてのMQ-9リーパーの飛行を停止するよう命じた。

 米国がMQ-9リーパーを使用してウクライナ軍を直接支援していることから、同機は紛争に直接参加しており、ロシアにとって合法的に攻撃できる標的である。ロシアがMQ-9を撃墜せず、むしろ米軍機が離脱して紛争空域から離れる機会を何度も提供したのは、紛争の不必要な激化、特に米軍とロシア軍が直接戦闘を行う可能性を避けたいというロシアの意思を示すものである。

 米国が考えられる選択肢の1つは、米国の戦闘機を護衛につけてMQ-9を飛行させることである。しかし、これにはロシアが対抗し、双方に死傷者が出るような空中戦が発生する可能性があり、戦争が激化する可能性がある。結局、米国はMQ-9リーパーを、ロシアが宣言した飛行禁止区域に近づきつつも違反しない行程で飛行させることを目指すと思われ、その後、クリミア沿岸でのMQ-9リーパーの飛行は中止されると考えられる。

 MQ-9リーパーが収集する情報は、米軍の軍事資産を危険にさらすことなく、米露間の軍事的な激化の可能性を与えない他の方法がある 。

 このような決定は、ロシアを対象とした情報収集に関して、米国がこれまでとってきた対決姿勢とは大きく異なるものである。しかし、ウクライナの軍事情勢が悪化し、ウクライナ軍がバフムートでの決定的な敗北に直面し、一般的に、MQ-9機墜落のような任務を遂行する決断に伴う危険性と利益の分析は変化している。ウクライナ軍の勝利の可能性がほとんど見えない中、米国はウクライナ紛争への関与を拡大させるのではなく、縮小させる方法を模索することになるであろう。

 MQ9リーパー事件がこの種の事件について、上からの見直しになるのかどうか。例えば、バイデン政権が、中国の気球の「脅威」に対応する米国のやり方、すなわち気球を撃ち落としておいて、他方では、国境にある本物の軍事脅威に対応するロシアの、より抑制されたやり方を非難するという偽善を反省することになるかどうかは、まだわからない。ロシア嫌いが蔓延している現在の政治情勢を考えると、このような180°方向転換する対応はありえないだろう。

 米国がロシアの戦略的敗北を目指す戦時政策を実施している限り、米国側で合理的で論理的な政策立案・実施の可能性はほとんどないというのが現実である。

 米露関係正常化の最短距離は、ロシアがウクライナと西側諸国に対して、可能な限り短期間で決定的な勝利を収めることにある。そうなれば、米国とNATOの同盟国は、そのような結果から生じる新たな現実を踏まえて、ロシアに対する姿勢を見直す必要に迫られるだろう。

ウクライナにおける人身売買:違法な臓器狩り

<記事原文 寺島先生推薦>

Human Trafficking in Ukraine: Illegal Organ Harvest

筆者:デボラ・L・アームストロング(Deborah L.Armstrong)

https://medium.com/@deborahlarmstrong

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年1月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月2日

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ルガンスク警察のヴィタリー・キセレフ大佐は、バフムートでの闇臓器狩りについてメディアの取材に語る。写真: Voice of Sevastopol


「毎日私たちはフランケンシュタインの奴隷のように働いていました。」

 人身売買ほど恐ろしいものは、この世界にはない。人身売買は世界的な問題だが、一部の報道によると、ウクライナは性売買や違法な臓器狩りのために人々を拉致・誘拐する最悪の温床の1つだという。米国国務省でさえ、「ウクライナ政府は人身売買撤廃のための最低基準を十分には満たしていない」と認めている。もっとも、キエフは「そのための、相当な努力はしている」と主張してはいるが。
 
 ウィキペディアには、「ウクライナは、商業的性的搾取や強制労働を目的として国際的に取引される男性や女性、そして子供の供給源、通過国、そして目的地である」とまで書かれているが、闇市場の臓器狩りの恐ろしい世界については掘り下げられていない。

 しかし、この話題はロシアのメディアでは深く取り上げられており、少なくとも2014年以降、いわゆる「闇移植医」の活動、つまり、致命傷を負ったウクライナ兵や、同意を得たかどうかわからない一般市民から臓器を摘出する外国人医師について報じられている。

 マイダン・クーデター以前には、ウクライナでの違法な臓器狩りのニュースは西側の主流メディアに流れたが、近年はこの恐怖を「ロシアの偽情報」として片付け、主流メディアはこの問題に関してほとんど沈黙をしたままだ。ただ、主流メディアもウクライナ女性の性売買についてはしっかり報道している。しかし、その責任はウクライナへのロシア侵攻に、巧妙に押し付けられている

 この一連の調査報道では、ウクライナの人身売買についてロシアのメディアが何を報道したかを探ることになるが、それが真実なのか、あるいは西側メディアが主張するような単なる「プロパガンダ」なのか、は読者自身で判断いただきたい。


ウクライナにおける臓器狩り---「命の贈り物*」なのか、それとも一攫千金策なのか?
*訳注:臓器移植の別称

 2022年12月初旬、ルガンスク人民共和国(LPR)ルガンスク警察のヴィタリー・キセレフ大佐がが、ロシアのマスコミに対して語ったところによると、激しい戦闘が続いているウクライナのバフムート地方にEUからの闇取引内臓摘出人が到着した。バフムートは激戦地域であり、それゆえ、致命傷を負った兵士たちがいたのだ。

 キセレフはGazeta.ruに対し次のように語った:LPRの調査によると、これら内臓摘出人のうち少なくとも1人、エリザベス・デ・ブリュックというオランダ人医師は、彼女配下のメンバーと一緒に、以前ウクライナで、2014年と2015年に、ウクライナ兵と民間人から同意なしに臓器を摘出している。

 キセレフのGazeta.ruへの発言は、私のYouTubeチャンネルで英語字幕付きで見ることができる:

 キセレフによると、デ・ブリュックを含む複数の人物の名前は、2015年の告白で、元ウクライナ治安維持局(SBU)上級職員から当局に伝えられたという。この身元不明の元SBU男性上級職員は、デ・ブリュックとそのグループが、兵士だけでなく、命に別状がない傷の民間人からも同意なしに臓器を摘出するのを目撃したと語っている。彼が口にした他の名前には、ジョン・ウェスレー、ヘンリー・ローゼルフェルド、そしてウクライナのPMC「モーツァルト」グループの創設者とされるアンドリュー・ミルバーンが含まれている。

 告白自体は字幕なしのロシア語なので、その要約をここにしておく。映像からの引用の翻訳も加えておく。

 身元不明の元SBU上級職員の発言:
2014年11月、彼と他の2人のSBUメンバーは「対テロ作戦地域」(ATO)に派遣され、「緊急チーム」と呼ばれる特殊医療グループで活動した。彼と同僚たちは、当時のウクライナ東部、ドネツク州北部の都市、クラマトルスク(当時は東ウクライナだったところ)で特別な医療訓練を受けた。訓練後、SBU上級職員たちは医療グループに加わり、近代的な装備や武器が与えられた。

 身元不明の元SBU上級職員の発言:
ミシェンコ大佐が医療グループの指示者だった。大佐の指示は、死にかけた兵士が家族を経済的に助けるために臓器を提供したいと言った場合、執刀する医師たちを助け、保護するのが彼らの任務であり、これは世界中で受け入れられているやり方だ、という内容だった。

 身元不明の元SBU上級職員の発言:
「私たちの同僚であるゲンナジー(ゲットマン)は、重傷者から臓器を摘出するための同意を得る役割を担っていたのです。彼らを保護するのが私の役目でした。私は1人当たり170米ドルを受け取りました。まず、負傷者をクラマトルスクとセベロドネツクに作られた特別な医療センターに送りました。目、皮膚、骨など、すべての臓器が摘出されました。すべて外国に送りました。彼らの家族にいくら支払われたのか、あるいは一体支払われたのかどうか、まったくわかりません」。

 2015年1月、身元不明のSBU上級職員は、エリザベス・デ・ブリュックというプロの「移植学者」がオランダからやってきて一緒に働くことになったと言う。彼は彼女の書類を調べ、それで彼女の本名を知ったのだと言っている。そのオランダ人女性は、兵士の同意の有無にかかわらず、臓器摘出を医師に指示し、彼らの作業方式を完全に変えたという。臓器を取り出し、梱包し、クラマトルスクに送るまで、わずか7~10分しかかからなかったという。

まあ、ファシストというのは、常に自分の仕事効率性を誇りにしてきたのではあるが・・・。

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臓器が摘出された遺体の写真(匿名の情報源から提供されたもの)。非常に生々しいため、画像にぼかしが入っている。原写真: Daynr.com


 元SBU上級職員はさらに、キエフの民族主義的民兵と、家族や隣人を守るために戦ういわゆる「ロシアの分離主義者」との間で戦闘が激しくなったデバルツェボでは、特に仕事が大変だった、と言葉を続けた。ある日には、脾臓や肝臓とともに23組の腎臓が摘出されたほど、戦闘は激しかった。匿名のこの上級職員によれば、死傷した兵士のほとんどは第128山岳突撃旅団から来たものだったという。臓器が摘出された遺体は、別の特殊部隊によってアルテモフスク(ウクライナ語ではバフムートと呼ばれる)方面の埋葬地に運ばれた。臓器の多くは「デバルツェボの大釜」*から来たもので、彼のチームはもちろん、将軍たちもしっかり稼いでいたという。
*訳注:最激戦地になったところ

 2015年2月23日、身元不明のSBU元上級職員とそのチームは、クラマトルスクに戻った。彼は英語ができ、エリザベス(「イライザ」または「エルザ」とも呼ばれる)が、彼女を褒め、仕事の質を上げるよう求めていた「上司」と話しているのを耳にしたと彼は言う。

 彼女は「はい、サンドラ」と答えた。無名の、取次業者は、「サンドラ」がジョージアの元大統領でウクライナの行政改革委員会のトップであるミヘイル・サアカシヴィリの妻(サンドラ・ローロフス、オランダ出身)であり、彼女がこの任務のリーダーでまとめ役だったと考えている。

 元SBU上級職員は、ミヘイル・サアカシュヴィリがATOを視察してから「すべてが変わった」と言う。彼はジョージア元指導者に同行することになり、この作戦を賞賛し、「商品」と呼ぶ臓器の量と質を増やせば、もっと支払うと言ったという。サアカシュヴィリは、臓器は亡くなった人の家族や、ヨーロッパやアメリカで緊急に移植を待っている人たちを助けている、と話したようだ。

 しかし、元SBU上級職員によれば、その後すべてが地獄だったという。埋葬された兵士は「行方不明」とされ、その家族もお金を受け取っていなかった。そして、停戦が宣言された後は、死者もそれほど多くはなくなってしまった。しかし、サンドラは電話をかけ続け、さらなる臓器を要求した。

 ウクライナがルガンスク地方の都市ポパスナヤ(ウクライナ語ではポパスナという)を砲撃していたとき、意識を失った男性とその12歳の娘から腎臓と脾臓を摘出したと彼は言っている。男のコートのポケットにあったパスポートによると、その名字はリャシェンコだった。母親は足に傷を負っていたが、病院に運ばれた時、臓器が摘出された。彼は、3人とも砲撃の際に死亡したと公式に発表されているが、それが 「助ける」立場にいる人間たちによる殺人であることを知った。

 これ以上耐えられないので、2015年6月4日に除隊願を提出した。ミシェンコ大佐は、まず成し遂げるべき特別任務があり、それが終われば、その元SBU上級職員には休暇が与えられ、昇給して少佐に昇進することになると言った。その「特別任務」とは、バフムートでの遺体の掘り起こしであることが判明した。彼は、あるグループと協力して132体の遺体を掘り起こしたという。死体がどこに運ばれたかは知らない。6月11日、彼はアレクサンダー・ラデツキー将軍に呼び出され、将軍の執務室を出た後、逮捕された。

 「将軍のオフィスを出たとたん、私は拘束され、階下に連れて行かれました。彼らは文書偽造で私を逮捕する命令書を持っていて、精神病院での治療コースのための令状に署名しなければ刑務所に送るのだ、と言いました。私は、明日この手続きに来ると言って、その場で300米ドルと1600UAH(ウクライナ・フリヴニャ)で買収し、翌日さらに1人1000ドル支払うことを約束しました。彼らは私を家に連れて行ったので、私は同じ日にそれぞれ1000ドル余分に支払いました。」

 お金を払った後、逃げて隠れたと、この正体不明の男は言っている。彼はドンバス人民共和国の当局に情報とビデオ記録を提供した。ビデオには、臓器摘出、手術室、掘り起こしの映像が含まれていた。また、ポーランド民主共和国のチャソフ・ヤールでは、97人が埋葬され、そのうち20人は子どもを含む民間人だったという埋葬地を見せられたという。そして、ウグレゴルスクでは、30人のAFU兵士が埋葬された。ウクライナでの違法な臓器狩り、ウクライナ政府の関与、そしてサアカシュヴィリ夫妻の行動については、ウィキリークスに連絡して伝えたこともあると言っている。

 「私が罰に値することは分かっています。しかし、私は引き下がらず、戦い続けます。この事件は終わっていません。私の同僚であるゲンナジー・ゲットマン(同意書の責任者)は特別医療班の班長に任命されましたが、殺人はまだ続いています。彼らを止めるために力を貸してください!」と彼は話を締めくくった。

 ウクライナで違法な臓器狩りを目撃したと主張するのは、この元SBU上級職員だけではない。シリア出身の医学生は、自分も海外から現地に派遣された臓器摘出チームの一員だったと言っている。

 同じく姓名が伏せられたこのシリア出身の医学生は、2009年に医学を学ぶために米国に渡ったところから話を始めたという。2013年に学部を卒業した後、医学部への入学を計画したが、医学部入学前試験に失敗した。当時、シリアでは情勢不安が高まっており、彼の両親は経済的に彼を支えることができなくなった。そこで、就職しようとしたのだが、就労ビザがなかったため、さらなる問題にぶつかった。もし就労ビザを取得できなければ、学生ビザが切れる2013年末には米国を離れざるを得なくなる。

 彼の証言はここで聞くことができる。ひどく訛った英語で、ウクライナ語の字幕付きだ。同様に、以下に要約しておく。

 2013年8月、このシリア人留学生は、就職と就労ビザの取得を手伝ってくれるという男性に声をかけられたという。二人は公園へ散歩に行き、話をした。その男性は、他国に行く「平和維持軍」があり、移植外科医を含む医師を必要としているのだ、と言った。

 医学部進学のための研修を終えたばかりということもあり、始めは断った。しかし、これは「政府の内部命令」であり、協力すれば、必要な書類のコピーと3カ月間の研修が受けられ、海外から帰国すれば、就労ビザも与えられ、銀行口座にお金も振り込まれると告げられた。

 自分で学費を払えるという期待に誘われて、2013年、ウクライナに行く「平和維持軍」に参加することにした。シリアの学校時代にロシア語を学んでいたこともあり、理にかなった選択と思えた。

 家族は、彼が普通の医者として「平和維持軍」の一員としてウクライナに行ったと思っていたし、ニュースでも同じようなことが伝えられた。当時から臓器移植がすでにごく普通の手術であること、世界的にドナー臓器の不足が深刻であることは知っていたという。約束通り、彼は特別な研修コースと、「ジャーナリスト」であることを示す記者証のような書類を与えられた。ウクライナでの滞在は1年だけで、その後はアメリカへ戻って勉強を続ける予定だった。

 彼と「平和維持軍」の他のメンバーは、キエフの米国大使館近くのアパートに住まいを与えられた。週に1度、ウクライナ語と英語を話す私服の「見知らぬ」人たちが訪ねてきた。彼らは、「近々、重病人の治療のために臓器を摘出する手術をすることになる。その人たちは兵士かもしれないし、民間人かもしれない。ここにいる医師たちの手助けが必要で、それは人命救助のためだ」と言われた。

 毎週、彼らはキエフの郊外にある小さな診療所に連れて行かれた。看板もなく、警備員が建物の中に案内してくれた。すべてが緑色に塗られていたと、このシリア人医学生は言った。彼らはそこで交代で手術を行い、時にはそこで寝た。「安宿のような部屋、兵士が使う二段ベッドのような」部屋が与えられた。

 2014年5月1日、早朝に起こされ、2つの部隊に分かれ、荷物をまとめるように言われるまでは、こんな感じだった。「緊急連絡」があり、それに対応する必要があると知らされ、その日の夕方にキエフを出発し、日暮れにはオデッサに到着した。

 天災や戦争が起きたときのような緊急作戦を行うために、2つの移動式複合施設が設置されていた。彼の所属する医師団は郊外に、別の医師団は街の中心部に配置された。オデッサの街は平穏で静かで、災難に備える理由もなさそうなので、彼は不思議に思った。

 そして5月2日、全員が再び早朝に起こされ、臓器を受け取り、どこかで移植するための準備をするように言われた。彼のグループは、オデッサの市街地で最初のグループから箱を受け取り、輸送の準備をするように指示された。

 シリア医学生の発言:その日、自分たちは機関銃の照準が当てられ、軍人たちの叫び声の下で、「過酷な労働者」のように働いた。「私たちは、初めて命の危険を感じ、現実に起こっていることに重大な疑念を抱いたのです。私は、1日で、これまで私が受けた外科手術の訓練を全部合わせても追いつかないほど多くの臓器を見たのです。」

 もちろん、この日、ウクライナの「ライト・セクトール(右派セクター)」グループの暴徒化したオルトライト民族主義者とハリコフの狂ったサッカーファンが、ロシア語を話すウクライナ人を中心とした数十人を労働組合ビル内に閉じ込めた大虐殺について、今では知っています。そのうちの少なくとも48人が死亡し、300人以上が負傷しました。ビルに火が放たれた後、生きたまま焼かれた人もいれば、炎から逃れようとしたときに撃たれたり殴られたりした人もいます。さらに他の人々は、建物の中でレイプされ、殺されました。
 
 しかし、その日いた場所からでは、このシリアの医学生は、臓器がどこから来るのか、なぜこんなにたくさんあるのか、理解できなかった。ここいた医師たちは作業中、ニュースを見ることができなかった。しかし、昼過ぎになると、同僚の1人が「町で大虐殺があった」と言ったのだ。戦争か?彼にはわからなかった。医師たちは、臓器を処理することに集中した。臓器を適切に取り出し、移植や輸送の準備をするのだ。

 彼らは急かされ、常に(そして文字通り)銃口を向けられてのことだった。なぜ皆が急いでいたかは明らかだったという。臓器摘出には決まった手順があることも知っていた。腎臓は、臨床的な死がはっきりしてから30分経過しなければ摘出できないことになっている。しかし、腎臓の摘出は早ければ早いほど移植に役立つ上、まだ生きている遺体から摘出した腎臓が最高の成功確率を持つ。

 手術室が用意された。患者の乳房、腹部、鼠径部にヨウ素を塗った。そして、ドナーの腹部を十字に切開し、予定通り臓器を摘出した。

 オデッサでの悪夢のような出来事の後、このシリア人医学生は、すべてが自分の考えていたのとはまったく違うことに気づき始めた。彼や同僚たちは、現場で医師として働くと聞かされていたが、そうではなく、病理学者として、死んだ兵士や民間人の死体を解剖していたのだ。

 彼は、軍の重要人物であるナリヴァイチェンコの名を思い出す。兵士たちが臓器の入った箱を車に積んでいたとき、2人の兵士が誤ってカートを落としてしまったという。ひとりの将校が彼らを蹴飛ばし、「1箱でもダメにしたら、お前たちの腎臓をナリヴァイチェンコその人に渡すことになるぞ!」と怒鳴った。

 悪夢はオデッサのあとも続いた。5月3日の朝、彼のグループは別の大きな集落に到着し、3台の車列は夜も都市間を移動し続けた。スラビャンスク、クラマトルスク。そして毎日、同じことを繰り返していた。

 「毎日、私たちはフランケンシュタインの奴隷のように働き、臓器を切ったり、取り出したりしました。それは兵士の死体でした。町や村の路上にあったものです。毎日、血にまみれた手。現実には焼けつくような世界でした。朝から晩まで、切り刻まれた死体、男女の顔には、恐怖にひきつった苦しみの表情が浮かんでいました」とシリア人医学生は語っている。

 しかし、それは兵士の死体だけではなかったと彼は回想する。きれいに手入れされた遺体が届くこともあった。一般市民だ。一度だけ撃たれていることが多い。頭部を。

 「これは医者が目にする最悪の光景だと思いました。しかし、この先には本当の悪夢が待っていたのです。私たちは、人間の臓器を採取して運ぶベルト・コンベアー状態に置かれていたのです」とシリア人医学生は続けた。

 ドネツクに来て、自分が巨大な機械の1つの歯車に過ぎないことを彼は悟った。「もう、「計画」を遂行するしかなかったのです。毎日、燃え盛る街路上で見つけなければならないもののリストが渡されました。このリストの中には、子供や妊婦も含まれていました。「計画」を果たすことを拒否した者は殴られました。言うとおりにしなければ、自分がドナーになるだけだ、と脅されました」。

 もう1つのグループでは、1週間の間に2人が行方不明になった。2人は街から戻って来なかった。あるいは、そう聞かされた。

 「ドネツクでは「生体臓器移植のための研究所」に連れてゆかれた。実際は、20平方メートルの怖い部屋だった。どこかの建物の地下にあった。アンモニアの機械や、調剤や器具の入った鉄の棚を見せられた。地下室は日当たりが悪く、湿度が高く、そして寒かった。私たちは、汚れた水がしみ込んだ板の上を歩いた。私たちが自由に使える木製の手術台は3台あった。私たちが到着する前に作られたことは明らかだった。手術は普通のランプの明かりの下で行った。機材は何もない。ディーゼル発電機がずっと煙を上げながら、うなり声をあげていた。重機が「研究所」の地下の窓から絶えず入ってきたり、銃声や爆発音が聞こえてきた。私たちは機関銃を持った4人の男たちに守られていた。私たちの地下室は、生きた臓器を集めた本物の生物学的な貯蔵庫であった。私たちは夏の間、その地下室で生活していた」。

 生活は焦点のないものになった。医師たちはらは軍からの訪問の合間を縫って働き、眠った。戦場から遺体を回収する任務にも駆り出された。軍から秘密にされている任務にも駆り出された。

 そして、2014年8月、「なんとかこの地獄から脱出することができました」。新しい臓器を手に入れるために、村から市内に戻ってきました。私たちの車には5人が乗っていました。運転手、警備員2人、そして私たち医師2人です」。車内には臓器が入った12個の箱もあった。「車で検問所まで行きました。少し前まで、この検問所は「私たちのもの」だったのです」。

 しかし、この検問所は、ウクライナ民兵と戦う反政府軍部隊、いわゆる「ロシア分離主義者」によって占拠されていたのだ。

「私たちがそれに気づいたのは、車が私たちに向かって出てきて、ライトを点滅させ始めたときでした。私たちの運転手はいち早く事態を把握し、道路を右折しようとしました」。

 兵士たちは銃撃を開始し、彼らの車を損傷させた。彼らは森の近くで車を止め、逃げようとしたが、2人のSBUの警備員は12個の箱をすべて持ってくるよう要求した。

 「オデッサで感じた脅威を再び感じました。臓器が届かなければ、自分たちがすべての臓器のドナーになるという恐怖。ナリヴァイチェンコとその傭兵は1時間以内に私たちを見つけ、逃げようとすればその場で殺されるという恐怖です」。

 兵士たちはどうにか12個の箱のすべてを確保し、茂みの中に逃げ込んだ。シリア人医学生はその後のことをよく覚えていないという。銃撃戦があり、近くで爆発があったため、意識を失ったようでした。「そして正気に戻ったときにはもう暗くなっていました。私はひと箱も持っていませんでした。私は両手を上げて道路に出ました。手にはジャーナリストの書類を持っていました。雇用主が、これがあれば外国での安全を保証される、と言っていたものです」とシリア人医学生は語っている。

 他に選択肢はない、と彼は感じた。彼は、「ジャーナリスト」という資格があれば何とか無傷で通れると思い、検問所に向かって歩いた。すると、彼らは彼を尋問し、身柄を拘束した。制服に記章がなかったため、彼らが何者なのか、未だにわからないという。しかし、彼らは彼をドネツクに送り、2日間尋問した後、他のジャーナリストと一緒の房に入れた。「彼は本物のジャーナリストであるということになり、ドネツクに1カ月滞在していた」。

 3日後、このシリア人医学生とジャーナリストの同房者は、国際機関に引き渡された。その後、彼は帰国の途に就いた。

 今、彼は次のように語っている:「私は安全な場所にいます。私と一緒に仕事をした多くの仲間もそうであることを願っています。しかし、私たちは皆、この戦争を忘れないでしょう。非人間的で残忍な戦争です。私たちの人生を永遠に変えてしまったものです。」

 もう一つ、2022年12月14日に最初に投稿された短い動画があるが、これは匿名の情報筋が撮影したとされるもので、ニコラエフの死体安置所の「臓器販売」に行き、息子のために骨髄を探していると伝えたところ、主任医師(おそらく動画で話している男性)が価格表について「問題なく」話し合い、こうした注文に関する特殊性を説明したと伝えている。

 私のチャンネルで、ロシア語、英語字幕付きで見ることができる。



 カメラの後ろの人は、どんなオプションがあるのか聞いている。

 「さて、いいですか。さまざまな価格があります。その中で一番喜ばれるのは、60,000ドルくらいです」と、もう一人の、画面には顔を出していない男が答えている。

 その男はUSドルでの価格を提示している。30,000ドルや25,000ドルという選択肢もあるが、「すべては、いわばドナー自身がどんな状態かで決まります」。

 「どうして、そんな大きな差が出るのだ?」とカメラの後ろの男が尋ねている。

 「まあ、言ったように、すべてドナーがどんな状態か、なのです。その損傷状態にかかっているのです」と、もう一人の男が答えている。

 戦闘によるダメージかな、たぶん?「さらに、運搬中の臓器は、言ってみれば破損し易いので、輸送中に価格が変わる可能性があります」と彼は続ける。

 カメラマンが尋ねる、「どんな種類の損傷?」

 「まあ、たいしたものではありません。おそらく音響的な衝撃です」ともう一人の男が答える。手榴弾や大砲の爆発のようなものか? 「お見せしよう」と彼は言うが、映像は終わってしまった。

 この映像の続きがどこかにあるのかどうか、私は知らない。しかし、この映像がニコラエフにいる医師の実際の記録であるとすれば、他の2人の匿名情報源が自白で語ったことの多くを裏付け、ウクライナで違法な臓器狩りが続いていることを明らかにするものである。

 こんな動画は信用できるのか? それは、ご自身で判断するしかない。しかし、これは氷山の一角に過ぎず、この調査シリーズの第2部では、さらに多くのことが明らかにされることになっている。

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2007年、闇市場における臓器価格の内訳。写真 :ACAMS Today

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翻訳にご協力いただいたLilya Takumbetova氏に感謝します。

デボラ・アームストロングは現在、ロシアを中心とした地政学について執筆している。以前は米国の地方テレビニュースに携わり、2つの地方エミー賞を受賞した。1990年代前半には、ソビエト連邦の末期に滞在し、レニングラードテレビでテレビコンサルタントとして活躍した。

「厳密に」調査されたマイダンでの大虐殺暴露記事が世界有数の学術誌から抑圧を受けた。

<記事原文 寺島先生推薦>

‘Rigorous’ Maidan Massacre Exposé Suppressed by Leading Academic Journal

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:INTERNATIONALIST 360°
 
2023年3月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月30日




 査読を受けた論文が、当初は、とある著名な学術誌に掲載を約束され、賞賛を受けていたのに、突然説明なしに掲載が取り消された。この論文の筆者は、ウクライナ関連問題における世界有数の学者であり、驚くべき数の証拠を積み上げ、マイダンの抗議活動者たちが殺害されたのは、親クーデター派の狙撃手たちの手による、という結論を出していた。

 反政府活動家の狙撃手たちと警官たちにより引き起こされた2014年2月下旬のキエフのマイダン広場でのこの大虐殺は、選挙で選ばれたウクライナ政府が米国の手により転覆された決定的瞬間だった。70名の抗議活動者たちが亡くなったことにより、世界中からの怒りが雪崩のように引き起こされ、 ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を事実上の退陣に追い込んだ。しかしこんにちでも、これらの殺害事件の真相は明らかになっていない

 オタワ大学政治学者であるウクライナ系カナダ人イワン・カチャノーフスキー氏の話を聞こう。カチャノーフスキー氏が長年驚くべき数の証拠を積み上げて示してきたのは、この狙撃手たちはヤヌコビッチ政権とは関係がなく、親マイダン派の工作員たちが、抗議活動者たちの占拠していた建物から発射した事実だった。

 カチャノーフスキー氏による画期的な指摘は、大手報道機関からは意図的に無視され、2015年9月2021年8月に同氏により提示されたこの虐殺に対する綿密な調査報告は、2016年と2020年にそれぞれ出版され、学者や専門家から100回以上引用されてきた。この報告書やほかの研究論文が発表された結果、同氏はウクライナ関連において世界で最も引用された政治学者の一人となっている。

 2022年の後半、カチャノーフスキー氏はマイダンの大虐殺に関する新しい調査報告を著名な社会科学誌に提出した。十分な査読を受けた後に少しだけ手が入れられたこの論文は、当初掲載が許され、この学術誌の編集者から多大なる賞賛を受け、この編集者が自身のSNS上でこの論文に対する長いコメントを残していた位であった。その記述によれば、この論文は、「多くの点において他に例を見」ず、この論文の結論を支持する「強固な」証拠が示されているとされていた。査読を行った人々の主張も、この編集者の判断と一致していた。



 ところが、この論文は掲載されなかった。このことをカチャノーフスキー氏は「政治的決定」であると考えている。同氏は裁判を起こしたが、敗訴した。



 カチャノーフスキー氏の訴えを好意的に支持した人々の中には、著名な米国の科学者のジェフリー・サックス氏もいた。「この論文は、非常に重要で、綿密に調査されており、真実を伝えるものです。徹底的な調査のもとで書かれています。非常に重要な話題についての論文です」という言葉をサックス氏はカチャノーフスキー氏に書き送っていた。「貴殿の論文は、非常に優れており、その理由で掲載されるべきです。学術誌は重要で素晴らしい論文を掲載することによってのみ恩恵を享受できるものです。そのような論文により、学術的理解が深まり、近代史に関する非常に重要な議論を広げることができるからです」。


学術界は共謀して沈黙している

 カチャノーフスキー氏は、問題の学術誌の名前を挙げることはせず、社会科学界で「最重要」的立場にある学術誌であるとしていた。同氏の考えでは、この学術誌が同氏の論文の掲載を拒んだことは、「異常」ではあるが、「学術論文の発表や学界におけるずっと大きな問題」を表す象徴的な事例であるとも語っていた。

 「私の論文を受諾した編集者が、私の論文が掲載されない事実を知ったのは、私がこの件に関して行ったツイートを見てのことだった。こんなことはまことに異例で、政治的だ。学会においてウクライナに関する事柄に対しての政治的な検閲がますます増えてきて、「自主検閲」を行っている兆候も見られる」とカチャノーフスキー氏は、ニュースサイトの「グレー・ゾーン」に語っている。「多くの学者が恐れているのは、証拠をもとにした研究を行っても、その研究結果が西側の固執している主張と相容れないことが起こる場合のことだ。具体的には、マイダンやロシア・ウクライナ戦争などの問題に関する研究のことだ。これらの問題は2014年のクーデター以降にウクライナやキエフで起こっている紛争に関連したものだ」

 同氏によると、逆に「露骨かつ無批判に西側の主張をオウム返し」したがる研究については、その研究の主張が、「事実に基づかない」作り話だとしても賞賛され、そのような論文が掲載される際は何の障害も受けないとのことだ。 カチャノーフスキー氏は、ウクライナの件に関して学会で起こっている検閲について発言するのにぴったりの人物である。同氏の論文を受け入れた学術誌はほかに3誌あった。これらの学術誌も「専門家」の査読を得ることに成功していたのだが、最終的には掲載が拒否された。

 その一例をあげると、2023年1月、別の学術誌がカチャノーフスキー氏による論文の掲載を拒否したが、それは「同様の政治的な理由」のためだった。この論文は、ドンバスの内戦に参戦した極右勢力と、2014年にオデッサで大虐殺を起こした極右勢力について調べたものだった。この大虐殺は、超国家主義者たちが、連邦派で親露派の活動家たちを同市の労働者会館に押し込み、その建物に火を放ち、何十人もの死亡者とそれよりずっと多数の負傷者を出した事件だ。この極悪犯罪の罪を問われて法廷にかけられたものは誰もいない。

 カチャノーフスキー氏の主張によると、この学術誌の編集者は、いくつもの言い訳を重ねて、同氏の査読済みの論文を掲載しなかった理由を並び立てたという。同氏によると、その学術誌の発行日が近づいたころ、この編集者は、この論文がカチャノーフスキー氏の筆によるマイダンでの大虐殺に関する全貌をまとめた以前の論文と酷似しているという間違った主張を行っていたという。しかし論文の盗作を検査するアワリジナル(Ouriginal)というサイトの点検によれば、カチャノーフスキー氏が提出した論文は、同氏が以前書いた論文との類似性はないことが確証された。その編集者がさらに不満をもらしていたのは、カチャノーフスキー氏はドンバスでの8年間の紛争を「内戦」だと分類していた点だった。この紛争は当初ウクライナの極右勢力により引き起こされたものだった。

 この論文は数ヶ月前に別の学術誌からも掲載を拒否されていたが、その理由も同様に、カチャノーフスキー氏がドンバスでの戦争を「ロシア軍が介入した内戦」であるとしていたからだった。ドンバスの戦争を内戦と捉えないことが、この紛争に関する「学術論文の大多数」で共通の認識である、と同氏はグレー・ゾーンに答えている。

 これらの極右勢力がオデッサの大虐殺に中心的に関わっていたことは、大量の動画映像により確実視されており、ほぼ議論の余地はない。どうしてこの動かしがたい事実が、学術誌において議論の余地が広く残っているとされているのかの理由は不明なままだが、カチャノーフスキー氏のマイダンの大虐殺に関する調査論文が抑圧されている根拠から考えれば、自明の事実だ。

「論文が掲載されなかったことには政治的理由がある。大手報道機関が追随するのは自国政府であって、事実ではない。西側の記者たちはマイダンの大虐殺のことを大きく歪曲して伝えている」とカチャノーフスキー氏は語っている。「いくつかの例外はあるが、記者たちはマイダンを支持していた狙撃手たちや狙撃手たちが発言している動画を報じようとはしなかったし、これらの狙撃手たちを目撃した負傷したマイダンの抗議活動者たちや何千もの目撃者の証言も報じようとはしなかった。」


米国当局者たちと犠牲者総数について話し合った極右勢力

 カチャノーフスキー氏が収集した情報源が明らかにしている証拠から見れば、同氏の結論は十分支持できる。カチャノーフスキー氏はこの大虐殺は、「成功した偽旗工作であり、組織し、実行したのはマイダンの指導者勢力と狙撃手たちの秘密集団であり、目的は政権を転覆させ、ウクライナで権力を握るためだった」と記述していた。

 これらの重要な証拠の中には、マイダンの抗議活動者が占拠していた建物に巣くっている狙撃手たちを映した14本の動画もある。うち10本は、狙撃手たちがホテル・ウクライナに居座っていた極右勢力とはっきりとつながっていることを示すものであり、狙撃手たちが標的にしていたのは階下にいた抗議者たちの群れであり、射撃していた対象は政府の警官たちだった。

 現在、同様の内容の複数の動画が明らかにしている事実は、政府の治安維持部隊が発砲した銃弾についてのことだ。この治安維持部隊が当初、大虐殺を起こしたとして起訴されていたのだが、この弾丸は抗議者たちを殺害したものではなかったことがわかったのだ。警官が発砲したのは警告のためであり、狙ったのは街頭や木や地面など人がいない対象物であり、目的は暴徒化していた群衆を静めるためだった。警官たちは壁や窓にも発砲していたが、それは、マイダン派の占拠していたホテル・ウクライナにいた狙撃手たちの部屋の壁や窓に向けてであり、そこに居座っていた狙撃手たちを狙ったものだった。

マイダンの大虐殺に関する裁判の最終判断が出るのは今年の秋だと見られている。目撃者は何百人もおり、その中には発砲が行われていた時に負傷した51名の抗議活動者たちも含まれているが、彼らの証言によれば、この発砲はマイダン派が占拠していた建物や地域から発せられたものだという。その建物の中に狙撃手たちがいたことを目撃したと語っている人々もいる。この説は 政府の射撃学専門家による調査からも支持されている。何より、マイダンの射撃団に入っていたことを自認している14名は、大虐殺においてマイダンの射撃手たちと指導者たちを巻き込んでいたことを証言している

 これが偽旗工作であったことを示す証拠が多数挙げられているにも関わらず、カチャノーフスキー氏はこの裁判を信頼しておらず、真実につながる判決を出すとは考えていないし、この判決が、訴訟の手続きに伴い蓄積された大罪の有罪証拠に基づいて行われるとも考えていない。  

 「検察はそのような狙撃者が存在したことを否定しており、狙撃者たちの捜査を行わなかった。ウクライナの法廷は、権力から自立しているとは言いがたく、裁判所の判断が、注目度が高かったり、深く政治と関わる件に関しては特に、大統領からの指示に従うことが多い。このような状況は、裁判官や陪審員たちにとっては困難な状況だ。極右勢力からの警官たちを無罪放免にしないようにとの圧力もある」。

 判決が真実を問わないものになると思われる他の理由もある。ひとつは、この事件の裏にある真実が暴かれれば、この虐殺に米国当局者たちが直接関わっていたことを示唆することになる可能性があることだ。もっと広く、マイダンのクーデター自体への米国の関与も明らかになってしまうという危惧だ。西側の大手報道機関は、ワシントン当局が、この動乱に全く関与していなかったという事実を心の底から信じている。そうではないことを示す確固たる証拠は山ほどあるのに、だ。

 極右のスボバダ党で指導者的立場にあり、長期に渡り党首もつとめているオレグ・チャニボク氏と副党首のルスラン・コシュリンスキー氏の主張では、マイダンでの狙撃手たちによる虐殺事件には米国が緊密に繋がっていたという。チャニボク氏の証言では、最初4人の抗議活動者が殺害されたあとで彼が驚いたのは、世界からの抗議の声が少なすぎたことだという。

 「なぜ反応がないのか?これでは足りないということか」と当時嘆いていた、とチャニボク氏は語っている。

 続いてコシュリンスキー氏が語った内容は、いったい何人の死者が出ればワシントン当局とその下僕たちがヤヌコビッチ大統領の退陣を求める声を大きく上げてくれるかについてだった:

 「米国側は最初の死者数について話していた―5人、20人....100人? いつになれば現政権を非難の的にできるだろうか? 最終的には、100人がいいということになった。圧力をかけてくることもなかったし、制裁をかけてくることもなかった。米国はただ、大虐殺が起こるのを待っていた。ウクライナ国内で大虐殺が生じれば、政権を責めることができる。そうなれば、一線を踏み越えたことになるからだ。政権が大虐殺を防ぎきれなかったということになるからだ。」


キット・クラレンバーグは、綿密に調査を行う記者であり、政治や世論を形成するという諜報機関の役割を詳しく取材している。

ウクライナにおける人身/臓器の売買についての調査報告(第3部)

<記事原文 寺島先生推薦>

“When You See It, You Won’t Forgive”: Part III of an Investigative Report on Human Trafficking in Ukraine

「それを見れば、だれも許さないだろう」:ウクライナにおける人身売買についての調査報告(第3部)

筆者:デボラ・L・アームストロング(Deborah・ L・Armstrong)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年2月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月29日


写真:New Eastern Outlook

 年が明けて間もない2023年1月14日、ウクライナの首都キエフで行われた大規模な抗議活動の動画がSNSで拡散され始めた。抗議者の大半は女性だが、中には男性の姿も確認できる。女性たちは、ウクライナ軍第24師団の未亡人や妻たちであることが確認されている。

 キエフにおける抗議者たちが、愛する者の遺体返却を求めている

 抗議者たちは、埋葬するために兵士の遺骨を返せ!と要求している。主に英語で書かれたプラカードを持っている。いくつかのプラカードには、民族主義的なウクライナのシンボルであるガリシア獅子(第2次世界大戦中のSSのシンボル)も描かれている。デモ隊は「スラバ・ウクライナ!スラバ・ゲロヤム!」 と叫ぶ。これは、「ウクライナに栄光あれ!英雄に栄光あれ!」という意味だ。

 ウクライナ国旗の色をした黄色と青の煙が放出され、唱和するデモ隊の上を漂い、10万人のユダヤ人、ポーランド人、そしてロシア人を虐殺した大量殺人者ステパン・バンデラの指示の下、第2次世界大戦でナチスと協力したウクライナ反乱軍OUN-Bの旗を象徴する赤と黒の煙と混ざり合っている。



愛する者の遺品返却を求めるキエフの女性たち。写真:Ruptly/zpnews.ru

 他の動画では、女性たちが行方不明の夫、息子、父親、兄弟の写真を掲げている。なぜ、この人たちはみんな行方不明なのだろう? 戦死したのか、ロシア軍の捕虜にされたのか。彼女たちは、ロシアに愛する人の遺体を返すよう要求しているのだろうか? もしそうなら、なぜ彼女たちのプラカードは英語なのだろう? なぜロシアについては何も言われないのだろうか...?

 それとも、デモ隊は、すべて愛国心という前提条件で注意深い枠組みを作りながらも、(実際は)自分たちのウクライナ政府に対して、声明を出しているのだろうか?

 ウクライナにおける人身売買に関する私の調査報告書第1部第2部をお読みいただいた方は、必ずしも同意していないウクライナ兵や民間人からの臓器摘出を目撃した、あるいは参加したと主張する人々の証言をすでにお読みになっているはずだ。

 戦場での臓器狩りが、少なくとも1990年代後半から行われていたことは、2009年の欧州評議会(PACE)のディック・マーティ副議長による「コソボにおける人々に対する非人道的な扱いと違法な臓器売買」報告書で、すでにお読みいただいた通りだ。そして、戦場での臓器狩りは少なくとも1990年代後半から行われていたことは、ロシア内務大臣顧問のウラジミール・オフチンスキー博士によれば、コソボで移植プログラムの先頭に立った同じ人たちが、現在ウクライナで移植作業を指揮していると言われていることも、お読みいただいた通りだ。

 ウクライナでこのような事業がより円滑に行われるためには、何が必要なのだろうか。第1部の証言者によると、ドナーの体から臓器を取り出して搬送するまでの時間は最短で7分、外科医は、実質的にはベルトコンベアのように遺体を処理しなければならないので、スピードが重視されるとのことだ。

 おそらく、ウクライナの法律を改正すれば、この手順をより効率化し、本人がすでに亡くなっている場合の同意の必要性など、お役所仕事の一部を切り捨てることができるだろう。ロシアがウクライナ国境を越え、2022年2月24日に特別軍事作戦(SMO)を開始するわずか2カ月前の2021年12月16日、まさにそのようなことが起こっていた。



ヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナ国会)写真: Spzh.news

 ヴェルホーヴナ・ラーダ(ウクライナ国会)の305人の議員が投票し、法案No.5831を可決、ゼレンスキー大統領が署名し、翌日から施行された。同法案の全文(ウクライナ語)「人体解剖学的材料の移植を規制するウクライナの特定の立法行為の改正について」、同法案の要約は、ウクライナ国会のウェブサイトから閲覧できる。

 2021年の法律では、書面による同意がない場合でも、故人から臓器を摘出することができ、故人の場合は同意が義務づけられなくなった。さらに、書面による同意には、認証や公証人の署名が不要となった。ドナーは権限を与えられた移植コーディネーターに同意を与えることができ、同意は電子的な形式で行うことができる。

 故人の同意がない場合、移植コーディネーター(取次人)は、故人の配偶者、または両親、兄弟、子供などの近親者から同意を得ることになっている。家族が見つからない場合、コーディネーターは故人を埋葬した人から同意を得ることができる。故人となった軍人の場合、部隊長が兵士の臓器摘出に同意することができる。

 この法律は、また、内縁の配偶者は、故人の臓器摘出を妨げることができないことを明確にし、内縁の配偶者や代理家族などに同意を与えるための、親族に属さないひとに権威を与える人物の権利を奪っている。

 ウクライナの国民健康・医療・健康保険委員会の委員長であるミハイロ・ラドゥツキーによると、死後の臓器提供の同意は、 Diia事業として知られるアプリを介して電子的に行うこともできるようになった。

 ラドゥツキーは2021年にTelegram*で、この法律が「ドナーと受容者の適正を照合するアルゴリズムを改善し、臓器摘出の意思決定ができる人の範囲を拡大し、試験的移植事業から医療保証事業による2023年からの資金提供への移行を確立する」と書いた。さらに、2019年にはウクライナで78件の臓器移植が行われ、2021年末までに250件の手術が計画されていると指摘した。
* ロシア人技術者が2013年に開発し、現在はTelegram Messenger LLPが運営しているインスタントメッセージアプリケーションである。 スマートフォンのモバイルアプリケーションとして無料で利用できる。(ウィキペディア)



国民保健・医療・健康保険委員会委員長のミハイロ・ラドゥツキー。写真:ヴェルホーヴナ・ラーダ


 つまり、この法律は、条文を読めばわかるように、故人の同意なしに、簡単に臓器を摘出することができる。戦闘が激しく混乱し、近親者の所在が不明な戦場において、それがどのように機能するかは、想像に難くない。特に、ある情報筋によれば、戦場では遺体は150ドルから200ドルで売られ、たった1つの遺体から採取された臓器の総額は1000万ドルに達することもあるそうだ。

 さらに、ロシアのメディアやロシアのブログなどで、ウクライナ東部の人々が臓器をすべて摘出されて大量に埋葬されたとの報道が多数なされている。このような話は西側では嘲笑され、「ロシアの偽情報」として退けられるが、びっくりするほど多くの報道がある。

 セルゲイ・ペレホドというブロガーは、国籍は不明だが(おそらくロシア人かウクライナ人)、2014年だけで起こった悲惨な発見のリストをまとめている。以下は、彼が指摘した残虐行為の一部である:

 1. 9月24日、ドネツク人民共和国(DPR)の民兵は、ロウアー・クリンカとコムナールの集落で墓を発見し、そのうちの2つの墓には撃たれた男女の遺体が、3つ目には内臓のない40人の遺体があったことにショックを受けた。実際、アメリカ資本の『モスクワ・タイムズ』でさえ、このことを報道したほどである。

 2. 5月5日、ウクライナでは「兵士の臓器が大量に摘出されている 」という噂が飛び交った。公式発表では、死者5名、負傷者12名と発表されたが、救急車の出入りが激しく、犠牲者はその2~3倍は、いたのではないかと思われるほどだった。実際、少なくとも48人が労働組合ビルに追い込まれ、生きたまま焼かれたり、撃たれたり、殴り殺されたりしたオデッサ大虐殺は、そのわずか3日前の5月2日に起きており、この連載の第1部に登場する目撃者の一人は、この大虐殺後に多くの臓器を採取した、と言っている。

 3. 5月20日、カラチュンの丘付近で夜間偵察活動中の民兵が、「腹が引き裂かれた」ウクライナ国家警備隊兵士180人の遺体を発見した。少し離れたトロイツク墓地付近では、さらに300体の遺体が発見され、埋葬されず、臓器が取り除かれていた。地元の人々は、赤十字の車や専門的な機器を持った外国人医師を見たと報告している。ウクライナのメディアはその日、カラチュンの丘で激しい戦闘があったことを報じたが、ロシアのメディア以外ではほとんど確認できない。

 4. 6月28日、対テロ作戦地域(ATO)の情報筋は、ルガンスク地方のルビズネ近郊で内臓のない人々の墓を発見したと報じた。情報筋は、ウクライナ東部で「特殊集団」が活動しており、人間の臓器の売買に従事していると指摘した。

 その最後の日に発見された集団墓地についての裏付けとなる記事は見つからなかった。しかし、2021年、ドンバス在住のラッセル・ベントレーは、ルガンスクのその同じ地域で200体の遺体が掘り起こされたときに立ち会い、彼らは2014年の夏、戦闘が激しくなったときに殺害されてそこに埋められたと書いている。




2021年、ドネツク郊外で発見された集団墓地の現場にいるDPRの民兵隊員。[出典:RT.com]


 ラッセル・ベントレーを信じるべき? そのブロガーの言葉を信じるべきか? どんなブロガーでも信じるべきなのだろうか? 主流メディアが日常的にだまし誤導をし、本当のニュースから私たちの注意をそらす今日、おそらく誰も信じることはできないだろう。

チップ・ボックの漫画: Yahoo news

 いずれにせよ、ウクライナの集団墓地には、内臓を切り取られた兵士や民間人の遺体があるという恐ろしい話が、インターネット上に溢れている。そして、これらの話の1つでも、何か真実に基づいているのであれば、深く調べる価値がある。

 2022年12月、Telegramに、そしてRumble(無料動画サイト)に、ロシア語を話す正体不明の男性が、ウクライナのハリコフ州の都市イジュームで目撃した残虐行為を説明する動画が登場した。彼は20代後半から30代前半に見え、尋ねる人によっては、ロシア空挺部隊、あるいはスペツナズと思われる空色のベレー帽を被っている。ベレー帽にはソ連の赤い星が付いていることから、彼はロシアの正規軍ではなく、ドンバス離脱人民共和国の民兵の一人ではないかと思われる:
彼のことはココ(英語字幕付き)で見られる。

ロシア軍がウクライナ人の子どもの臓器狩り作戦を暴く
ウクライナで起こっている恐怖の実録。子どもからアドレノクロム*や臓器を摘出することは・・・

* アドレナリンの酸化によって生成される分子式C₉H₉NO₃の化合物。誘導体のカルバゾクロムは止血薬として用いられる。化学名は類似しているがクロムとは無関係である。 (ウィキペディア)

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イジュームで子どもの臓器狩りが行われていると語るロシア語話者の男性


 「その集団は、わかったのですが、イジューム周辺に子供たちを集めていたんです」と、ロシア側が発見したことに言及して彼は語っている。「2歳から6、7歳の小さな子供たちを、あの...特別な場所に連れてきました」。ここで兵士は、本当に恐ろしいことを思い出したときのように、少し間を置いた。彼は深くため息をついてから、こう続けた。「子供たちは1階で服を脱がされました。そして2階で...」

 彼は再び言葉を止め、その目には呪われたような表情を浮かべる。「2回目は...切り刻まれました」と、彼は静かに言う。映像は一旦中断され、おそらく男性が回復するための時間が設けられたのだろう。映像は再開され、彼はカメラに映らないときに聞かれたかもしれない別の質問に答える。「廃棄物のように、穴に入れられたり、どこかへ持ち出されて埋められたりするんだ。あいつらは、まるで子豚やウサギのような家畜を屠殺するかのように、彼ら(子どもたち)のことを話していたんだ。まるでどこかの農場のように、「おー、運んできたぞ」という感じだったんです。わかりますか?」

 この兵士はかなり震えているようだ。彼は続けて言う。「話には聞いていたが、信じられなかった。この目で見るまでは、理解できないだろう。しかし、それを見たら、だれだって許せなくなりますよ」。

 臓器が摘出された遺体が発見されたという報道の多くはロシア側から発信されているように見えるが、ウクライナでの臓器狩りについては、2000年代から世界中で多くの記事が発表されている。ロシアのSMO(特別軍事作戦)が始まるまでは、このような記事は簡単に見つけることができた。そして突然、西側の主流メディアは、このような記事を「ロシアの偽情報 」と呼ぶようになった。




ミハイル・ジス博士。写真: Ynetnews.com


 例えば、2003年、米国国立医学図書館は、臓器売買ネットワークが「エストニア、ブルガリア、トルコ、グルジア、ロシア、ルーマニア、モルドバ、そしてウクライナなどの貧しいヨーロッパ諸国を標的にしており、人々は圧力をかけられてわずか2500ドルで自分の腎臓を売らされている 」と述べた欧州評議会の議会からの報告書を引用した

 2010年、エルサレム・ポスト紙は、ウクライナと他の旧ソ連諸国での臓器売買のために12人のイスラエル人が逮捕されたと報じた。彼らは、主に肝臓をイスラエル人や他の国の国民に、体の一部につき1万ドルで売っていたとして告発された。移植は主にキエフ、アゼルバイジャン、そしてエクアドルで行われていた。

 2011年、ウクライナ・ウィーク紙は、ウクライナで闇臓器売買が盛んであるとの記事を掲載した。記事では、キエフの「闇移植医」グループが2010年に26人の遺体から解剖中に眼球を取り出し、臓器は移植のためにキエフの病院に移されたことを詳述している。記事はまた、2007年にイスラエル人のミハイル・ジスがドネツクで逮捕されたことにも触れている。イスラエルでの医師免許が取り消されたため、闇取引のお金を稼ぐためにウクライナに移住していた。そこでモルドバ人とウクライナ人が1万ドルで臓器を売ることに合意し、ジスは手術をするたびに13万5千ドルを受け取り、そのお金はアメリカの銀行口座に振り込まれたとされている。

 また、2011年、ブルームバーグは、イスラエル人や東欧人が運営する犯罪組織が、身寄りのない人々に腎臓などの臓器を売るよう強制していたことが、5大陸の調査員によって、大規模で絡み合ったネットワークとして明らかになったことを報じた

 WHOは2012年、①人間の臓器が1時間に1個の割合で、闇市場で売られていること、②健康で若い臓器を必要とする富裕層が、中国、インド、パキスタンの犯罪組織から入手した腎臓に15万ドル以上を支払っていること、そして③この犯罪組織は、たった3、500ドルでも、喉から手が出るほどお金を必要としている人から、臓器を採取していると警告した

 また、2012年には、オーストラリアの新聞が、ウクライナで「骨やその他の人体組織が、薄汚れた白いミニバスの中でクーラーに詰め込まれている」という悲惨な発見を報じた。当局が押収した文書によると、遺体は、フロリダに本社を置く米国の医療製品会社「RTI Biologics」の子会社が所有するドイツの工場に向かう途中であったことが明らかになった。




「肋骨2本、アキレス腱2本、肘2本、鼓膜2本、歯2本、などなど...」 ウクライナの家宅捜索で遺体の一部が発見されたOleksandr Frolovの写真を手にする親族。写真 シドニー・モーニング・ヘラルド紙


 2016年、ワシントンDCのシンクタンクであるアトランティック・カウンシルは、「ウクライナは人身売買との戦いにもっと力を入れるべき」と題した記事を掲載し、ウクライナ出身の16万人以上の男性、女性、子供が 「労働、セックス、強制物乞い、そして臓器摘出のために搾取されている」と述べている。

 この記事は、ウクライナの問題の多くが「ロシアの侵略」であるとしながらも、米国国務省と欧州評議会の人身売買対策専門家グループ(GRETA)によると、「国家レベルでの連携が不十分」であったと、ウクライナ当局を批判している。

 2014年に発表されたGRETAの報告書では、「政府省庁間の連携が悪い」とし、ウクライナの人身売買に関する統治評議会が5年間開催されていなかった、と述べられている。




「人体は売り物ではない」と書かれたウクライナの看板(2016年、キエフにて)には、人身売買の被害者が電話できるホットラインが記載されている。写真: アトランティック・カウンシル


 また、ジュネーブ安全保障セクター・ガバナンスセンター(DCAF)が2015年に発表したもう一つ調査では、ウクライナは臓器狩りを含む人身売買の「発地、通過そして到達国」であると結論付けている。報告書の全文はこちらのリンクから読める。

 ロシアのSMOが始まった後、西側のニュースはウクライナでの違法な臓器狩りの報道はほぼしなくなった。しかし、2022年3月、BBCは、数千人のウクライナの子どもたちが行方不明になっており、人身売買業者の手に落ちた恐れがあると報じた

 2022年2月、ドイツの国防大臣クリスティーネ・ランブレヒトは、ウクライナが移動式火葬場を完備した野戦病院を受け取ることになると述べた。ウクライナに武器を送ることに反対していたランブレヒトは、「ウクライナ戦争への、ベルリンの対応をめぐる監視の目が厳しくなる中で」今年1月に辞任した。

 野戦病院と火葬場のニュースは、ウクライナ軍に深刻な動揺をもたらしたと報道されたが、やがて西側の主要メディアは、火葬場はロシアが運営し、ロシア軍の犠牲者数を隠すために使われたと主張する記事で、もちきりになった。

 ただでさえ希少で、しばしば虚偽と見分けるのが難しい真実は、新聞の束の中の針に喩えられるようになった。



ジョエル・ペットの漫画/The Week


ブラック移植とグレー移植

 ドナーやその家族の同意なしに行われる違法な臓器移植は、「ブラック移植」と呼ばれている。しかし、同時に「グレー移植」もある。これは、ドナーの生活が絶望的かつあるいは貧困であることが多く、強引に臓器を売らされるものだ。

 腎臓や肝臓の一部は数千ドルで売れるが、その健康リスクは甚大だ。手術そのものに関する直接的なリスクに加え、高血圧、痛み、神経損傷、ヘルニア、腸閉塞、そして慢性疾患の可能性の増加といった長期的な健康リスクもある。また、障害保険や生命保険に加入しにくくなるなど、さまざまなリスクがある。

 2022年10月、アジアニュースネットワークは、外国人ドナーとの移植を仲介する東京のNPO法人を通じて、経済的に苦しいウクライナ人が腎臓を売買される臓器提供者として確認されたという記事を掲載した。

 この記事は、ウクライナ語のウェブサイトで、腎臓を売りたい人にお金を提供する書き込みが出現していることが触れられている。このような投稿は、2020年のCovid19以降、4倍の頻度で出現するようになったと記事は述べている。投稿には、売買したい臓器の年齢、血液型、種類、そして価格が記載されている。「完璧に健康な20歳!」などと、臓器の 「質」も記載されている。また、電話番号や住所などの連絡先も記載されている。

 この記事によると、これらの投稿は、ロシアのSMOが始まった後も、途切れることなく表示され続けたという。神経科医を名乗る人物のある投稿には、「経済的苦境に陥っているのなら、あなたの腎臓を買います」と書かれていた。彼は、アメリカやインドだけでなく、「日本にも拠点がある」とも付け加えていた。

 「家が買える!」と謳った投稿もあった。記事によると、あるウクライナ人女性は、58歳の日本人女性に提供された腎臓の対価として15,000ドルを受け取ったという。ひとりのトルコ国籍の人物は臓器の売買に関与したとして、ウクライナ当局に逮捕された。

 一方、正式なルートで移植を申請した法遵守主義のウクライナ市民は、待ち続けなければならない。


腎臓移植を待っている透析中のウクライナ女性。写真 :アジアニュース


 臓器提供を直接迫ることはほとんどの国で違法だが、臓器提供の動機付けをすることについては、世界中で関心が高まっている。2月には、マサチューセッツ州の議員が、刑務所の受刑者が刑期を短縮するために臓器や骨髄を提供することを認める法案を提出した。

 このような法律の倫理性にはまだ疑問が残るが、法案の民主党提案者であるジュディス・ガルシア州下院議員は記者団に対し、「黒人や茶色人種社会に対する不当な収監や 過剰取り締まりの悪循環」を解消するのに役立つかもしれない、と述べた。

 ガルシアは、黒人とヒスパニック系は特有の健康状態により臓器移植の必要性が高いが、差別的な投獄率により黒人の待機期間が長くなり、適合する(臓器の)数が制限されると説いた。

 この法案には、すでに多くの批判がある。ワシントンDCに拠点を置く刑事司法改革擁護団体『強制最小化に反対する家族たち』のケビン・リング会長は、この法案について、「ディストピア小説に出てくるような内容だ」と述べている。彼は記者団に対し、「臓器提供の促進は良いことだ。過剰な懲役刑の軽減も良いことだ。ただ、この2つを結びつけるのは倒錯的だ」と述べた。

 法案で提案された制度は、臓器や骨髄の提供と引き換えに、囚人に60日から1年までの減刑を与えるというもので、各囚人の減刑幅を決定する委員会が置かれることになっている。

 現在、米国では受刑者の臓器提供を禁止する法律はないが、受刑者の感染症のリスクが高いことから、移植学会では1990年代から受刑者の臓器提供を控えてきた。

 連邦刑務所の囚人は臓器を提供することはできるが、家族にだけだ。


結論

 この3回にわたる詳細な報告を終えて、女性や子どもの性的搾取や奴隷貿易など、世界各地で違法化されているにもかかわらず一部で続いている人身売買については、まだその表面すら触れていないことを実感している。ウクライナは、商業的な性的搾取や奴隷の供給源、通過国、そして目的地として、すでによく知られている国である。

 これらのテーマは、それ自体が詳細な調査報告に値するものだ。後日、さらに問題を掘り下げるつもりである。

 ウクライナの人身売買に関する調査シリーズの第3部は、これで終わる。第1部はこちら、第2部はこちらでお読みください。


デボラ・アームストロングは現在、ロシアに力点を置いた地政学について執筆している。以前は米国の地方テレビニュースに携わり、2つの地方エミー賞を受賞した。1990年代前半には、ソビエト連邦の末期に滞在し、レニングラード・テレビでテレビコンサルタントとして働いた。

ウクライナは米国にクラスター弾の供給を要請(ロイター通信の報道)

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine asks US for cluster munitions – Reuters

出典:RT

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月28日



アルチョモフスク(ハバムト)市近郊でドローンを飛ばしているウクライナ兵。2023年3月5日Aris Messinis / AFP


 報道によると、キエフ当局はMK-20クラスター弾を求めているという。この武器は100カ国以上で禁じられている武器だ。

 ロイター通信の3月6日(月)の報道によると、「ウクライナは自国からの要求を一段と強め、問題の多いクラスター弾の提供を求めており、この武器を使ったドローンによるロシア軍を標的にした攻撃を行いたいと考えている」と複数の米国会議員が語ったという。

 このクラスター弾が100カ国以上の国々で禁止されているのは、一般市民に大きな危険を与える可能性があるためである。ただし、ロシアやウクライナ、米国では禁止されていない。

 米国のジャスコン・クロー、アダム・スミス両下院議員は、下院軍事委員会の委員であるが、この両議員によると、キエフ当局は、ジョー・バイデン大統領政権にこれらのクラスター弾の輸送を承認するよう米国議会に要請したという。

 米国はこのような武器の輸出を法律で禁じており、今のところ大統領府からこの動きを支持する意図は表明されていない。

 ウクライナが特に求めているのは、MK-20クラスター弾であるが、この爆弾はドローンから投下でき、既にキエフ当局が要請している155ミリクラスター砲弾に続くものである、と両議員はロイター通信に答えている。両議員によると、この要請が出されたのは先月(2月)のミュンヘン安全保障会議の場であったという。

クラスター爆弾

関連記事:NATO加盟国の一つが、禁止されているクラスター弾をウクライナに供給しようとしている。(メディア報道より)

 
 MK-20クラスター弾は、戦闘機から投下され、240発以上の子弾を空中から発射できるものだ。スミス議員によると、ウクライナ軍は、これらの武器は、従来使用してきた武器よりも、「装甲を貫通させる性能」を強く持っていると考えているという

 クラスター弾に問題があると考えられている理由は、多数の子弾を広範囲にまき散らす力があり、それは何らかの力が加わらないと爆発しないままじっとしているからだ。この武器は、2008年の「クラスター弾に関する条約(CCM)」において禁止されたのだが、この条約には100カ国以上が署名している。ただし、世界規模で採択されている条約ではない。

 ウクライナがロシアと戦うためのクラスター弾を米国に要求してきたのは、少なくとも昨年秋からのことであると「外交政策誌」は報じている。しかしワシントン当局はこの要求には乗り気ではなく、安全保障委員会のジョン・カービー報道官は12月、「我が国の政策からすれば、このような種類の爆弾の使用には懸念がある」と語っていた。

 キエフ当局がソ連時代のクラスター武器を住宅街で使用してきたという事例は多数報じられているが、それはモスクワ当局がウクライナに軍を侵攻させた前も後も行われてきたという。もっとも注目を浴びた攻撃は昨年3月のもので、当時クラスター弾を搭載したトチカUミサイルにより、ドネツクで20人以上がなくなり、それ以外にも数十人もの負傷者が出ている。キエフ当局は、この攻撃に対する責任を否定している。人権団体である「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の昨年5月の声明によると、この事例は確認できなかったということだ。

英国の劣化ウラン弾の計画は欧州全域に脅威をもたらす

<記事原文 寺島先生推薦>

UK’s depleted uranium plan threatens all of Europe – Moscow

ウクライナでの紛争が、「欧州人が最後の一人になるまで」の戦いに変質する可能性につながると、ロシア国家院議長が警告

出典:RT

2023年3月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月28日


ヴャチェスラフ・ヴォロージン露国家院議長© Sputnik/Vladimir Fedorenko


 劣化ウラン弾をキエフ当局に供給するという英国政府の決定は、危険な潮流のひとつであり、ウクライナでの紛争を欧州全土に拡大させる危険を招きかねない、とロシアのヴャチェスラフ・ヴォロージン国家院議長が警告した。

 「“ウクライナ国民が最後の一人になるまで”という戦争が、“欧州人が最後の一人になるまで”という戦争に変わってしまうかもしれない」と同国家院議長は、ソーシャル・メディア上に投稿した。

 多くのロシア政府当局者が警告した内容は、キエフ当局を支援している西側諸国は、地政学的な利益のために全てのウクライナ国民を犠牲にする覚悟はあるのかという点だった。

 ヴォロージン国家院議長の主張によると、キエフ当局が劣化ウラン弾を手にすれば、戦場が放射能で汚染され、この先何世代もの人々に危険な健康状態を生じさせる可能性があるとのことだ。そしてこの劣化ウラン弾を足掛かりとして、もっと危険な武器が投入される可能性についても触れた。次の段階は、「キエフ政権が汚い爆弾(放射性物質散布装置)を使用する、あるいは戦略的核兵器を配備することになる可能性がある」とヴォロージン国家院議長は付け加えた。



関連記事:プーチンはウクライナに劣化ウラン弾を供給しようとする英国に警告


 ウラジミール・プーチン大統領は今週、英国によるこの決定に懸念を表明し、ロシアは「断固としてこの決定に対応し、西側諸国連合が核物質を持つ武器の使用を既に始めていると解釈する」と警告を発した。

 ロシア軍の昨年10月の主張では、ウクライナ国内のふたつの施設において、いわゆる「汚い爆弾」の製造方法が伝達されたとのことだった。その爆弾の材料として使用されたのは、キエフ当局がソ連領だった時期からずっと使える状態にあった物質だった。以前ロシア国防省は、ウクライナ国内で核燃料や核廃棄物を保管している箇所の一覧を表示していた。

 汚い爆弾は、従来の爆発物を放射性物質で包んだ構造になっており、爆発すれば、深刻な放射能汚染を引き起こす爆弾だ。キエフ当局はこの爆弾に関する疑惑を否認し、国連の核に関する査察機関である国際原子力機関(IAEA)を招聘し、ウクライナ国内のいくつかの原子力施設の調査を依頼した。その中には、ドニプロペトロフシク州の東部鉱物濃縮工場とウクライナの首都にある核研究施設が含まれていた。

関連記事:ウクライナは核保有国?ロシアが脅威であるとされる「懸念」の中で、世界は真の危機を見落としている。

 ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長 の11月の報告によると、この査察により、この2箇所及び3つ目の箇所であるドニエプル市内のロケット建設工場において、未申告の行為が行われた証拠は見いだせなかったとのことだ。

 英国政府の月曜日(3月19日)の発表によると、英国はウクライナに、劣化ウラン弾を含む徹甲弾を送る方針だという。これは既に約束しているチャレンジャー2主力戦車の供給に付随するものだ。

ウクライナでは徴兵のやり方に対する反発が高まっている。

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine: The Growing Backlash against the Methods of Conscription

筆者:ペトロ・ラブレーニン(Petr Lavrenin)

出典: INTERNATIONALIST 360°

2023年3月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月19日



最近戦死した同僚兵士の墓に花を供えるウクライナ兵。ウクライナのハルキウでの国防記念日に。© AP Photo/Francisco Seco

 ウクライナの総動員の方法が醜聞にまみれているが、その背景にはウクライナ当局にとって新兵の徴兵がますます困難になっている状況がある。

 昨年度、軍への徴兵がロシアでもウクライナでも問題になっていた。ただ、両国でのその困難の規模は完全に違っていた。ロシアでは、徴兵は部分的で、徴兵に要した期間はほぼ1ヶ月強で済み、国民の30万人程度に関わるものであったことが公式発表でわかる。さらにその徴兵された人々の多くは従軍経験があった。いっぽうウクライナでは全く異なる様相を見せていた。

 キエフ当局の主張によれば、一般的な徴兵は1年以上かけて行われているという。この期間に軍に集められた人々の正確な数ははっきりとはわからないが、この徴兵方法にはいろいろと醜聞があった。

 徴兵を知らせるチラシを配布するときに、警察官が力づくで人々を不法に徴兵局に連れ込んだ事例が複数回あり、国民からの不満の声が上がっている。しかしウクライナ当局には徴兵を中断する意図は明らかにない。というのも、戦争の前線が非常に厳しい状況に置かれている箇所がいくつかあるからだ。

 ウクライナ軍 (AFU)は アルテーミウシク(バフムト)周辺の要塞の支配権を失いつつあり、大量の戦死者を出しているとガーディアン紙などの報道機関が報じている。一方でウクライナ側は、現在も兵の召集を続けており、適切な訓練も与えないままで人々を戦場に送り込んでいる。


徴兵方法の許容範囲

 ウクライナの国内法によれば、もし召喚状が渡される個人の情報が特定されているならば、軍役への召喚は路上においてのみ認められている。さらに軍の徴兵関係者が民間人を引き留めることも違法とされている。その理由は徴兵関係者が警察ではなく、徴集兵は犯罪者ではないからだ。しかし、現在ウクライナで行われている徴兵方法は、まさにそのようなやり方なのだ。

 徴兵年齢にある男性たちが捕らえられ、軍の徴兵係が必死に召喚状を配る動画、中には力ずくで召喚状を渡している場面もある動画がソーシャル・メディア上で常に出回っている。

 中でもオデッサはこの点で特に目立つ地域だ。例えば、軍徴兵係が救急車に乗って街中を移動している姿が目撃された。軍人として適齢期にある男性たちに出くわすと、救急車を止め、召喚状を手渡し、救急車に乗せていた。その模様がソーシャル・メディア上に上がったことで、当該地方の徴兵係は状況説明せざるを得なくなり、救急車をあてがわれたので徴兵の仕事に利用したと主張した。



 オデッサ在住の男性たちが路上で拘束され、むりやり徴兵局に連行されることも複数回あった。中には徴兵召喚状を渡されていないことまであった。

 これまでかなりの長期にわたり、ウクライナ軍の南部司令官は、軍の徴兵係が法律を無視した強制的な手段を取っていることを黙認してきた。しかし2月14日、軍の徴兵局の職員が力ずくで1人の男性を確保する動画が発表された。そこで軍は、醜聞の拡散を避けるために素早く対応し、国民に対して、この件に関係していた職員は「不適切な」振る舞いのため懲罰を受けることになり、さらにこの件の捜査が行われることになると明言した。

 オデッサでのこれらの出来事は、ウクライナ国内で行われている徴兵方法についてより大きな問題を浮き彫りにし、当局が取っているこの方法に疑念を投げかけている。力ずくであったり、詐欺のような手口であったりすることが普通になってきている。例えば、召喚状が公的機関の職員により配布されることも頻発しており、市内の住民たちが自宅の郵便受けの中で召喚状を見つけることもある。これらの行為も法律違反だ。しかし軍の徴兵係は、このようなやり方は正当であると考えている。

 そのような現状になっていることは理解できる。ウクライナ軍の国中の予備兵の数と徴兵局の数の不足は深刻で、ウクライナ軍は何としてでもその補填を成し遂げようとしている様子がうかがえるからだ。しかし、そのような徴兵方法に対する国民からの不満の声が高まっているため、徴兵すること自体が危機にあるだけではなく、ウクライナ当局に対する国民からの信頼も揺るぎ始めている。

 ボグダン・ポティトさん事件が特に世間からの注目を集めた。テルノポル在住の33歳のポティトさんは、1月の終わりにバス停で召喚状を手渡され、軍事訓練を全く受けずにアルチェモフスクの前線に送られ、そのほんの数日後に戦死した。


急展開

 この事件を受け、国民からの不満の声は高まり続け、政府当局や国防省がすぐに声明を出さざるを得なくなった。そして、評判の悪いオデッサの徴兵係たちは、自分たちの仕事の様子を動画に収めざるを得なくなった。 南部作戦司令部共同調整報道部のナタリア・グメニュク部長はこう明言しなければならなくなった。「徴兵係のグループにはどこにも[カメラが]装着されています。そのような取り組みをしています。これは強制的な措置ではありませんが、徴兵方法が不法なものになる可能性に懸念して、カメラを装備させることにしたのです」と。



 同時に、議員たちがウクライナ軍の徴兵担当の代表者たちを呼び出し、国民から懸念の声が上がっていた事象について調査するよう命じた。 特筆すべき点は、国会議員たちがこのような状況にやっと気づいたのは、国会議員の1人が街中で召喚状を手渡された事象が起きた後だったということだ。この事例を受けて、国会内の国家安全保障・防衛・情報委員会のヒョードル・ベレニスラフスキー委員は議会で、現在のいくつかの徴兵方法については、「遺憾である」と述べた

 同議員がこの発言後に約束したのは、まだ実行はされていないが、今後「徴兵局員ができることとできないことを明記したはっきりとした基準が作られるような提言」が行わるというものだった。アナ・マルヤー国防省副長官が自身のテレグラム・チャンネルにこんな投稿をしている。すなわち、国民からの不満の声を受けて、国防省も軍徴兵局の活動を改善する意図がある、と。

 現在「国民の僕(しもべ)」党のゲオロギー・マズラーシュ副党首は、或る法案を提案している。その法律は、従軍経験のない新兵に対して少なくとも3ヶ月間の訓練期間を保障するものだ。

 しかしこの法案の草案の成立がうまく進むかどうか、そしてもっと重要なことは、一般のウクライナ国民がこの法案をどう見るかは不明であり、この先何か良好な変化が起こるかどうかは不透明だ。


徴兵活動は激しさを増している

 政府の公式説明とは違い、ウクライナの徴兵活動は激しさを増しており、必要が生じれば、より多くの国民の動員が促進される可能性があるとウクライナ国防省の顧問ユリー・サック氏がブルームバーグ紙の取材に答えている。「我が国には十分な予備兵がいます。言うまでもないことですが、必要とあれば、もっと多くの動員を行う用意があります」と同氏は「ウクライナには戦争を継続する十分な兵士があるか?」という問いにえた。

 同時に、徴兵適齢にある男性たちが前線に行かずにすむことはほとんどない。ウクライナ国防省が最近明らかにした、徴兵から逃れられる正当な理由の一覧は以下の通りだ。それは、独力で移動できないような病気がある人、病気の親戚の介護をする人、刑事訴訟中の人、近しい親類が亡くなった人だ。自分が兵役を免れられることを証明したい人は、関連文書を提出しないといけない。軍の徴兵局に出頭しない人は、行政責任、そして(場合によっては)刑事責任が問われることすらある。



 徴兵を回避する別の法的手段は、徴兵の一次猶予措置を受けることだ。しかし、ここ数ヶ月、多くの起業家が不平を述べている内容は、この一次猶予措置には欠点があるという点だ。専門的な職業人が、兵役の延期を許可されることはますます困難になっている。一覧表に挙げられた全ての人が猶予措置を受けられるわけではなく、それ以外の労働者たちも召喚状を手渡される危険がある。起業家たちが恐れているのは、雇用者の個人情報を軍に提供させられることだ。さらに多くの組織は、「戦略的な」基準から外れているとされて、自社の職員たちの徴兵への猶予を受けることができなくなっている。

 春に十分な労働者を確保するために、農産業の起業家たちは、農業専門家たちの徴兵の猶予措置を受けようと既に動いている。健常者のほとんどが徴兵されてしまえば、農産業に従事する労働者は不足してしまう。そのため、起業家たちは不測の事態に備えようと、前もって準備しているのだ。特に、地方に住む多くの人々にとっては、予備的な猶予期間が切れつつある。この微妙な問題を巡っては官僚や当該職員の警戒心があるので、猶予リストが農業事業者の首脳部の手に渡るのは、何とか秋ごろまでに、ということになるのかもしれない。秋は穀物の収穫作業があるからだ。今のところ、春に、誰が種まきをするのかについてはわからないままだ。

 ウクライナの農民たちにとっては、この件は大きな闘いだ。ウクライナ農民および民間地主協会のビクトル・ゴンチャレンコ協会長によると、農民たちが懸念しているのは、だれがトラクターや複式刈り取り機を動かすのかという点だという。というのも、小規模農家は徴兵適齢期にある男性を多く雇用しているからだ。「これ以上徴兵の猶予措置は求めません。これまで前線に送られた運転手は一人だけです。召喚状に関する問題はありませんでした。我が社が問題を起こすようなことはしたくないのです」とガソリンスタンドの所有者であるドミトリー・リューシキンさんは語っていた。ガソリンスタンドというのは、燃料とエネルギー部門であるため、特権があり、必要な業務員の5割以上について、軍からの徴兵猶予措置を要求することができる。しかしこのガソリンスタンドの所有者は、徴兵猶予措置を要求しない方を選んでいる。

 ますます多くの業界が同じような方法を選び、公的な猶予措置者の一覧に記載されることを拒んでいる。チェルカースィ地方の或る企業の社長が、ウクライナのオンライン報道機関Stra.na社に、匿名を条件に以下のような話をしている。「隣接する業界でよく見られていることなのですが、従業員の半数が徴兵からの猶予措置を受け取り、残りの従業員が徴兵召喚状を受け取っています。それは、猶予の決定が知らされる前か、知らされた直後です。猶予措置が受けられなかった人たちは、即座に召喚状を受け取りました。そのため、私たちは口をつぐんで、猶予措置を求める一覧を出さないことにしたのです。」と。



 徴兵猶予に関わる問題については、ウクライナもロシアも徴兵に関してもっていた共通の課題だった。ロシアが部分的動員に着手した際、報道機関が繰り返し報じていた醜聞は、徴兵される対象ではない人々も徴兵されていた件についてだった。

 しかし間違いを正す努力も為されていた。例えば、セントペテルブルクの二人の息子の保護者であるシングルファザーが動員された話については、ロシアじゅうで広く話題になった。さらにロシア市民たちは、猶予の条件があったにも関わらず動員されることも多かった。しかしそのような事例の大多数については、当該地方の知事たちがそのような問題の解決に当たった結果、不法な動員は取り消された。


心理面での支援

 ウクライナは徴兵をひどく必要としているが、徴兵適齢期にある人々の熱意が減退していることは当局も承知している。グメニュク氏は、召喚状を受け取ってしまうと、すぐに前線に送られるという言説を「喧伝行為を行う情報源」が世界に対して拡散していると非難した。「これは完全に真実ではありません」と彼女は主張している。

 国民を安心させるために呼びかけられた同氏の言葉だけでは、ウクライナ国民の感情を鎮め、徴兵に対する反発が起こっている現状を抑えることは到底できないだろう。戦況の悪化や徴兵に関する醜聞の蔓延を背景として、ウクライナ社会は不安が高まっている。2月中旬、世界保健機関(WHO)の欧州事務局が出した推定値によれば、960万人のウクライナ国民が中程度あるいは重傷の精神異常に苦しむ可能性があるとしていた。

 この報告書は、WHOが世界を対象に調査した推定値によると、この10年間で戦闘地域に住んでいた人の22%が、軽い鬱や軽い不安状態から精神病まで、何らかの精神異常を発症したことを記している。さらに、ほぼ10人に1人(9%)が中程度あるいは重傷の精神異常に苦しんでいるという。

「これらの数値をウクライナ国民の人口に当てはめれば、既に960万人が精神障害を発症していることになります。うち390万人の症状は中程度か重い症状でしょう」とWHOは発表している。この情報をもとに、WHOは、戦時中および戦後のウクライナ国民に対する心理的支援活動計画の開発を支援した。

 これらの統計結果からは、戦争がウクライナ社会に及ぼしている被害がいかほどのものかや、戦闘行為が終結した後ウクライナ社会はどうなるかについて疑念が生じる。戦争が終われば、社会の団結は弱まり、その後の数ヶ月間、あるいは数年間、感情的なストレス状態が続くから、だ。

 2022年8月、保健省は、戦争後に精神障害に苦しむウクライナ国民の推定概数を発表した。当時のビクトル・リャーシコ保健相の予見では、1500万人の国民が影響を受けるだろうとのことだった。「私たちは既にこの戦争の結果生じる精神障害に苦しむ人々の総数を予見しています。それは1500万人強になるでしょう。この数は少なくとも心理的な支援が必要な人の数です」と同省は述べていた。



 軽い鬱症状については、他人に対する危険にはならず、患者自身の問題ですむが、さらに深刻な状況を生む精神障害も存在する。心的外傷後ストレス障害(PTSD)についていえば、国際機関の調べでは元従軍兵の5割から8割が発症しているとのことであるが、このPTSDは自傷行為や他人を傷つける行為の原因となる可能性がある。さらに、職場や人間関係における問題の原因となる可能性があり、攻撃的な態度を取ることもしばしばある。

 PTSDの事例が、武器の使い方を知っている兵たちの間で広がっていることやウクライナの「闇市場」で武器が広く出回っていることから考えれば、戦争とその後始末の問題が、社会にとって深刻な危険となっているといえる。そして、戦闘に参加した従軍兵の5割がPTSDを発症している事実から考えれば、この戦争が終わる頃には、少なくとも25万人のウクライナ国民がPTSDを発症している状況が考えられる。しかもこの数は過小に見積もられた数値であると十分考えられる。

 もちろんこの問題はロシアにとっても同じことだ。12月にウラジミール・プーチン大統領が指摘していたのは、ロシア国内の15%の人々に心理的な支援が必要であり、若年層においてはその数値は35%に上るということだった。3月、同大統領が政府に、国民、特に難民と従軍者たち対する心理的支援の提供を改善するよう指示を出している。

 未だに不明なのは、ウクライナ軍は近い将来どれくらいの人々を徴兵する計画を立てているかだ。しかしここ2ヶ月で、約3万人の兵士が訓練のために西欧に派遣されている。これらの人々のほとんどは、以前従軍経験のない人々で、西側の軍事装置の訓練を受ける必要がある。これら訓練を受ける人々に加えて、前線での戦死者を緊急に補填する兵たちや実際の戦闘地域外で補助作業をする人員も必要とされるので、徴兵数は劇的に多くなる可能性もある。

 今のところ、市民からの突き上げによってウクライナの総動員の方法に何らかの変化が起こる兆候はない。ここまで約100万人の男性が徴兵されてきたウクライナで、武器を取ることを望んでいない国民たちが、軍の徴兵係たちが行っている不法行為をソーシャル・メディア上で強調したり、当局を批判したりすること以外の動きは見せていない。しかし、より温暖な季節が始まるにつれ、双方の戦闘が急進化することは避けられず、そうなれば戦死者も増え、必要となる兵士の数も増えるだろう。ウクライナがやむを得ず徴兵対象者の枠を広げ、これまでは対象外だった健康に問題がある人々の徴兵や、職業上の理由や家族環境の困難さによる徴兵の猶予なども考慮されなくなるのは時間の問題だ。もちろん、同様のことが最終的にはロシアでも起こることはあり得るのだが。


筆者のペトロ・ラフレーニンは、オデッサ出身の政治記者。専門はウクライナと旧ソ連。

ウクライナの敗戦が見えてきた。

<記事原文 寺島先生推薦>

The Foreseeable End of Ukraine

筆者:カール・リヒター(Karl Richter)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月10日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月16日

軍人


カール・リヒター氏が断言するところによると、ウクライナの敗北は差し迫っているという。その理由は、現在進行中の戦闘において、ロシアが支配的に勝利を収めていること、西側からの軍事支援や経済支援が脆弱であること、ウクライナ国内で国粋主義がはびこっていることにあるという。そして同氏はその主張の裏付けとして、西側の数名の経済専門家の視点を引用し、西側諸国の政府が自国の対ウクライナ政策が完全な間違いであったことを認めざるを得なくなる日も近いと予見している。



 ウクライナを支援してきた国々が浮かぬ顔になってきた。実際、いま非常に興味深い状況になりつつある。
 この先数ヶ月で、西側の政治家たちがついてきた嘘の中核が爆発するだろう。そう。ウクライナ戦が終わりを迎えるのだ。
 そうなれば何十億ドルものカネがキエフの沼地に吸い込まれることもなくなるだろう。そして、確実に言えるのは、西側の戦車をいくら投入しても(万が一到着すれば、の話だが)、状況にさほどの変化は与えないだろう。
 ロシアが支配的立場に立っていて、 この戦争を思いのままに激化できる全ての手段を有している。
 いっぽう西側の立場は、経済的にも軍事的にも、追い詰められており、道義的な意味合いでは更に窮地に立たされている。


 その道に詳しい少なくとも4人の西側軍事専門家が、大手報道機関がここ数週間報じてきた内容と相容れない主張を行っていて、この先数週間が、ウクライナが生き残れるかどうかの決定的な時期になると見ている。
 その中の1人がオーストリアのマーカス・ライスナー大佐である。同大佐は、筋金入りの親ウクライナ派だ。
 最近出した見解のなかで、ライスナー大佐が指摘したのは、ロシアの資源力を考慮し、その力を認めるべきだという点だった。
 ライスナー大佐は「ウクライナは何ラウンドかは勝てるかもしれないが、KOを食らわせたことは今まで一度もない」と語っている。
 同大佐によれば、ロシア側には自由に使える砲弾が少なくとも1000万発残っていて、さらに340万発の新しい砲弾が毎年生産されているという。「だからロシアはまだまだ長く戦争を持ちこたえられる立場に立っていて」、キエフ政権側にとってはますます厳しい状況になっている、と彼は主張している。


 元准将でアンゲラ・メルケル前独首相の顧問だったエーリヒ・ヴァッド氏はもっとはっきりとした主張を行っている。
 ヴァット氏の目には、ロシアが「明らかに優位」であると映っていて、その点では米国のマーク・ミリー統合参謀本部議長(!)と同じ意見だ。
 ミリー統合参謀本部議長は、「ウクライナが軍事的に勝利を収めることは期待できない」としていた。
 さて、ヴァット氏は以下のことに驚愕していた。それは、「報道機関の同調圧力が非常に強く、このような状況はドイツ連邦軍共和国建国以来のことだ。これでは他論が出なくなってしまう」という点だった。
 ただし同大佐のこの主張については、「(そんなことに今さら気づくなんて)この誇り高き元将軍はこの10年間、どんな世界で暮らしてきたのだろうか?」と訝(いぶか)る声も上がっている。


 ウクライナの劣勢を主張している4人目の人物が、元国防総省顧問で元米軍大佐のダグラス・マクレガー氏だ。
 最近行われたいくつかのインタビュー(その中には米国の独立系オンライン情報機関リダクティッドによるインタビューもあった)において、マクレガー氏は、ウクライナ側の損失の大きさ(もともとの大隊の戦力の7割が失われたこともあった)について言及しただけではなく、ウクライナの国内諜報機関であるSBU(ウクライナ保安庁)に対する国民からの非難の声が蔓延していることについても触れ、これは終末が近いことを示していると語っていた。
 キエフ政権の指導者層がすぐに交渉に応じようとしないのであれば、ウクライナが失わずに済むのは、ドニエプル川西側の小さな州くらいになってしまうだろうとマクレガー氏は語っている。
 同氏はウクライナ国内で、今の軍事政権に対してクーデターの動きが起こる可能性を否定しなかった。 前線で酷い損失が出ている状況にあるからだ。
 もしクーデターが起こらなかったとすれば、モスクワ当局は、「この仕事」を自身の手で終結させ、ゼレンスキー政権を片付ようとせざるを得なくなるだろう。
 その後の新ウクライナ政権は、おそらく慎重な立場をとり、和平交渉に応じようとするだろう。ロシアにとって最も望ましい展開は、そうなることでロシアの開戦理由であったウクライナの「非ナチ化」も達成できることだろう。


 大手報道機関であるドイツの日刊紙ディ・ヴェルト(Die Welt)紙でさえ、先日(1月30日)の記事で認めていたのは、この先予見できる未来として、ロシアが軍事的にも政治的にもこの戦争の勝者となりうることだった。そしていっぽうのウクライナ側は目的を何一つ達成できないまま終わってしまうということだった。
 つまり、ウクライナは掲げた目標を何ひとつ達成することはないだろう。クリミアの奪還など論外だ。そしてロシアは、今後避けられない交渉による解決策として、ウクライナのNATO加盟は「近い将来排除する」を強く打ち出してくるだろう。この条件こそが、ほぼ1年前にモスクワ当局がこの戦争に踏み切った唯一の理由だったのだ。そして「結果的に、ずたずたにされたウクライナが残る」ということになる。
 西側各国政府が自国の対ウクライナ政策が完全な失策だったことを自国民に対して認める日が近いことを心待ちにしている向きもある。ウクライナが勝つことも、ロシアが「破壊される」こともないだろう。


 そのような見誤った目的を、アンナレーナ・ベアボック独外相が、独政府の政策の目的であると主張している。ウクライナが終わりを迎えることになれば、西側各国政府はキエフ当局に流し込んできた何十億もの大金を、どぶに捨てることになるだけではなく、ロシアとの関係が永久的に悪化したままになってしまうだろう。そうなれば、自国のエネルギー供給が破壊され、自国の軍備もなくなってしまう。
 こんな失策はこれまでに例を見ないもので、国民に対する明らかな反逆としてしかとってもらえないだろう。
 このような状況は何よりも欧州の人々に被害を与えるものだ。「通常時」においては、各国の責任者には説明責任があるとされてきた。この法則は今でも生きているはずだ。
 ドイツだけではないが、現在の各国指導者層はすべて跡形もなく別の勢力に取って代わられるしかないのだ。そうでもないと、たとえ中途半端な真摯な態度であったとしても、ロシアと交渉できる状態にもどすことはできないだろう。


 私たちが知っているようなウクライナは余命いくばくも無い。遅かれ早かれ、ウクライナは領土を大きく狭められた残りかす国家としてどうでもいい存在に落ちぶれてしまうだろう。
 ウクライナの悲劇は、自国が西側の道具にされるがままになったところにある。その西側の頂点にいるのがワシントン政権であり、ウクライナは自国のためではない目的のために、ほとんど自殺行為と言っていい振る舞いを見せてきた。
 米国政権の言う「ウクライナ国民が最後の一人になるまで」戦うという言い方が、さもありなんと言える状況になってきた。

 最後になるが、ウクライナは自国の国粋主義者の被害者になってしまったということだ。
 ソ連時代には、この国粋主義は一時的に現れる表面的な勢力に過ぎなかったが、1991年直後に、米国の諸機関により強く煽られた。それは当初から反ロシアの傾向があった。
 こんにち、ウクライナは国粋主義に蝕まれた疑似国家であり、現在の政体では持ちこたえられない状況に置かれている。
 歴史上同様の例を見いだそうとするならば、第二次世界大戦前のチェコスロバキアやポーランドの状況に似ていることが思い起こされるだろう。
 両国は、自国内の少数民族との共存を賢明な方法を使って解決することができず、その結果として、自国内の国粋主義と西側勢力による扇動を呼ぶことになってしまったのだ。現在のキエフ当局が自国の政策で苦しんでいる状況は、1938年のチェコスロバキアや1939年のポーランドと似た状況になっているのだ。


 ポーランドに関しては、歴史的に苦い皮肉を味わうことになるかも知れない。それはポーランドが、ウクライナ問題解決に際して、元の領地であるガリシア地区を取り戻すことになれば、の話だ。
 ただしそのような状況に対する備えはもう何ヶ月間も着々と進められている。そして十分興味深いことに、ポーランドは、そのことに対する同意を頭のいかれたキエフ当局と結んでいるのだ。その状況についてはそんなに苦労しなくても調べることができる。
 モスクワ当局がその裏でずっと関わってきた可能性は排除できない。この状況にほくそ笑んでいるのはクレムリンかもしれない。ポーランドとウクライナ両国の国粋主義者たちがこの先のことでぶつかり合っているのが見えるのだから。
 1943年と1944年に起こったヴォルィーニ大虐殺事件の際、ドイツの手引きの下で、ウクライナ側は30万人のポーランド農夫を虐殺した。その記憶をポーランド側は忘れていない。
 すぐにでもEUは、領内で新たなやっかいごとを抱え、何十億もの金をふいにすることになるかもしれない。ロシアにとってこんなおいしい状況はない。


カール・リヒター氏。1962年ミュンヘン生まれ。兵役を終えた後、歴史と民話とサンスクリット語と音楽理論をミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学で学ぶ。2014年から2019年まで、欧州議会議員の事務局長。2008年から2020年まで、ミュンヘン市議をつとめた。

ベネット元イスラエル首相、ロシア・ウクライナ和平交渉の試みを米国に「妨害された」と発言

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Former Israeli PM Bennett says US ‘blocked’ his attempts at a Russia-Ukraine peace deal - The Grayzone

出典:The GRAYZONE

2023年2月6日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月10日



ベネット、米国と西側同盟国は「プーチンを叩き続ける」ことを決め、交渉はしないと発言

 これは、Antiwar.com「反戦.com」に掲載された記事である。

 イスラエルのナフタリ・ベネット元首相は、土曜日に自身のYouTubeチャンネルに投稿したインタビューで、戦争初期にロシアとウクライナを仲介して戦争を終結させようとした努力を、米国とその西側同盟国が「阻止した」と語った

 2022年3月5日、ベネットはロシアを訪れ、ウラジーミル・プーチン大統領と会談した。インタビューでは、当時のプーチンとウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領との仲介について詳述し、米国、フランス、ドイツ、英国との調整を行ったと述べた。

 ベネットは、彼の調停努力の中で、双方が大きな譲歩に合意したと述べた。ロシア側は、停戦の条件である「非ナチ化」を取り下げたという。ベネットは「非ナチ化」をゼレンスキーの排除と定義した。モスクワでプーチンと会談した際、プーチンはゼレンスキーの殺害は試みないことを保証した、とベネットは語っている。



 ベネットによれば、ロシアがもう一つ譲歩したのは、ウクライナの武装解除を求めないということである。ウクライナ側にとっては、ゼレンスキーがNATO加盟を目指すことを「放棄」したということになる。ベネットは、ウクライナのNATO加盟の動きがロシアの侵攻の「理由」だと指摘した。

 当時の報道では、ベネットのコメントを反映し、ロシアとウクライナが立場を軟化させているとされた。3月8日に「アクシオス」[米国のニュースウエッブサイト]は、複数のイスラエル政府関係者の言葉を引用し、プーチンの「提案はゼレンスキーにとって受け入れがたいものだが、彼らが予想したほど極端ではない」ということを報じた。このウエッブサイトは、この提案にはキエフの政権交代は含まれておらず、ウクライナが主権を維持することを認めていると述べている。

 ベネットは、西側諸国の指導者が自分の調停努力についてどう感じたかについて考察して、当時のボリス・ジョンソン英国首相は 「攻撃的な路線」をとり、エマニュエル・マクロン仏大統領とオラフ・ショルツ独首相は 「実利的」だったと述べた。ベネットは、バイデン大統領が 「両方の」立場を採ったと述べた。

 しかし最終的に、欧米のリーダーたちはベネットの努力に反対した。「このことを広義で言わせてもらう。西側諸国がプーチンを叩き続け、(交渉は)しないという決定は元々あったのだと思う」とベネットは述べた。

 西側諸国が調停努力を「妨害」したのかと問われたベネットは、「基本的には、そうだ。彼らは妨害した、そして私は彼らが間違っていると思った」と述べた。

 ベネットは、調停に踏み切った理由を、イスラエルがシリアで頻繁に空爆していることを引き合いに出し、戦争でどちらに付くかを決めないことがイスラエルの国益にかなうと述べた。ベネットは、ロシアはシリアにS-300防空ミサイルを保有しており、「彼らがボタンを押せば、イスラエルのパイロットは撃墜される」と述べた。

 ロシアとウクライナの交渉は、ベネットの努力だけでは終わらなかった。その後、3月にロシアとウクライナの当局者がトルコのイスタンブールで会談し、その後、実質的な話し合いが行われた。フォーリン・アフェアーズに語った米国の元高官の説明によると、双方は暫定的な取引の枠組みで合意したという。プーチンを含むロシア政府関係者は、イスタンブールでの協議後、[平和]協定が間近に迫っていたと公言している。

 しかし、欧米のさらなる圧力により、結局交渉は失敗に終わった。ボリス・ジョンソンは2022年4月にキエフを訪れ、ゼレンスキーにロシアと交渉しないよう促した。「ウクラインスカ・プラウダ」[ウクライナの一般向けのネットニュース]の報道によると、たとえウクライナがロシアと協定を結ぶ準備ができていたとしても、キエフの西側支援者はそうではないとボリス・ジョンソンは述べたという。

 4月下旬、トルコのメヴルト・カヴソグル外相は、ウクライナでの戦争を長引かせようとするNATO加盟国が一部存在すると述べた。「イスタンブールでの会談後、戦争がこれほど長く続くとは思わなかった...しかし、NATO外相会議の後、...NATO加盟国の中には、戦争を続けさせ、戦争を継続させ、ロシアを弱体化させたい人々がいるという印象があった。彼らはウクライナがどんな事態になろうとあまり気にしていない」とカヴソグルは語った。

 カヴソグルの発言から数日後、ロイド・オースティン[米国]国防長官は、ウクライナ支援における米国の目標の1つは、ロシアの "弱体化 "であることを認めた。

「ドンバスの要衝都市バフムートは包囲された」(ワグネル軍事会社代表からの声明)

<記事原文 寺島先生推薦>

Key Donbass city surrounded – Wagner chief
Yevgeny Prigozhin has called on Ukrainian President Vladimir Zelensky to allow Kiev’s forces retreat from Artyomovsk

エフゲニー・プリゴジン氏は、ウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領にウクライナ軍のアルチョモスクからの撤退を許可するよう要求した。

出典:RT

2023年3月3日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月9日


ワグネル民間軍事会社のエフゲニー・プリゴジン代表

 「ワグナー軍事民間会社は、事実上アルチョモスク(ウクライナではバフムートと呼ばれている)という戦略上重要な都市を完全に包囲している」と同軍事民間会社のエフゲニー・プリゴジン代表が金曜日(3月3日)に発表した。

 先日同市の郊外で撮られたと思われる動画内で、このワグネル社の代表はウクライナのヴォロデミール・ゼレンスキー大統領を名指しで言及し、ドンバス内にあるこの都市は包囲され、この都市と外につながっている道路が今はたった一つしか存在しないと、同大統領に告げた。

 「はさみの刃が固く閉じつつあるのです」とプリゴジン氏は声明を出した。同氏はさらに、ワグネル社はウクライナの正式軍と戦闘を続けていたが、いま戦っている相手は、老人や子どもたちにどんどんと変わっている状況についてもあきらかにした。「戦闘は続いていますが、バフムート市の命運はつきています。もってあと1~2日でしょう」とプリゴジン氏は述べた。

 同ワグネル代表がウクライナの大統領に促したのは、兵士たちにこの都市の防衛を放棄させることだった。その際、カメラは拿捕(だほ)されたと思われるウクライナ兵たちの姿を映し出していた。その中には長い灰色のあごひげをした男性と2名の若く見える男性がいた。

 さらにこの捕虜たちは、自分たちが母国の家族や愛する人々のもとに戻ることを許してもらうことと、この要求を無視しないことをゼレンスキー大統領に懇願していた。


関連記事: ゼレンスキーの大統領顧問が、要衝都市から撤退する可能性を示唆

 アルチョモスク市は、ロシアの軍事作戦において最も激しい戦闘が繰り広げられてきた地域のひとつで、ウクライナが引いている70キロに及ぶ防衛線の一部を占めている。なおこの防衛線は、2014年にキエフ当局がドンバスでの戦闘を開始した以来構築されたものだ。

 1ヶ月に及ぶ作戦において、ワグネル社の兵士たちが大多数を占めるロシア軍は、体系的な同市の占領に成功しており、北と南と東においてアルチョモスク市を包囲している。

 ゼレンスキーは戦略的に重要なこの都市が包囲された状況にはないとずっと主張してきたが、最近その見方を変えたようだ。キエフ側の軍がこの都市の防衛において厳しい損失を出したことを受けて、先日ゼレンスキーは、アルチョモスク市を持ちこたえさせるのは、そうすることに「合理性が存在し続ける」限りのことであると表明した。キエフ当局を支援している西側諸国も、ウクライナの指導者であるゼレンスキー大統領に、損失を出すことをやめ、この都市からの撤退を促している。

この紛争では、どちら側にも軍事的勝利はありそうにない(米軍最高司令官)

<記事原文 寺島先生推薦>

No military winner likely in Ukraine conflict – top US general
Mark Milley talked to the FT after traveling to Brussels to coordinate NATO efforts on shoring up Kiev’s firepower.

マーク・ミリー米軍司令官は、キエフの戦力を強化するためのNATOとの調整でブリュッセルを訪れたが、その後にフィナンシャル・タイムズ紙に語った。

出典:RT

2023年2月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月5日

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昨年11月、ペンタゴンで記者会見を行うマーク・ミリー米統合参謀本部議長。© Getty Images / Alex Wong


 ウクライナ紛争は、交渉による和平交渉によってのみ終結することができると、マーク・ミリー米統合参謀本部議長は、木曜日(2月16日)に掲載されたフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで述べた。

 ミリー氏は「ロシアが軍事的手段で政治的目的を達成することは、ほとんど不可能である」「ロシアがウクライナを制圧することはありえない。それは起こり得ないことだ」とその見解の具体的な理由を示さずに述べた。また、「ウクライナが」モスクワ軍がすでに占領した領土の「隅から隅までを奪いかえすことは、今年の間には、非常に困難だ」とも付け加えた。

 アメリカ軍最高位の軍人は、今週初めにブリュッセルを訪れ、春の反攻作戦に向けたウクライナの戦力強化についてNATO同盟国との調整を行った後に、この意見を表明した。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は月曜日(2月6日)、キエフが西側同盟国の生産能力の「何倍もの」スピードで兵器を使い尽くしていると警告していた。


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関連記事:NATOはウクライナの弾薬消費量に警鐘を鳴らす


 ミリー氏は、弾薬の枯渇により、国防総省は武器在庫を見直し、支出を増やすことを検討しなければならなくなったと述べた。米国政府関係者は、数十年にわたり対テロ作戦や非従来型戦争に注力してきた供給量を再検討している。

 「この戦争の教訓の一つは、通常弾薬の消費率が非常に高いことであり、我々は、自分たちの在庫と計画が正しいかどうかを再検討している」とミリー氏はフィナンシャル・タイムズ紙に語った。「私たちは、真の必要量を見積もることができるよう、分析を試みています。弾薬は非常に高価なものだからです。」

 ペンタゴンの現在の年間予算は8,170億ドルで、世界の他の10大軍事支出国の合計を上回っている。ワシントンは、昨年2月にロシアの軍事作戦が始まって以来、ウクライナへの支援として、すでに1100億ドル以上を振り当てている。


関連記事:米国はウクライナの戦闘継続を望んでいる(ブリンケン米国務長官)


 フロリダ州のマット・ゲッツ下院議員やアリゾナ州のアンディ・ビッグス下院議員などの共和党議員は、ジョー・バイデン大統領の政権がウクライナ武装のために米国の武器備蓄を著しく枯渇させたと批判している。

 今週(2月第2週)初め、ミリー氏はブリュッセルで記者団に、ロシアはすでに負けたと語った。「彼らは、戦略的、作戦的、戦術的に負けており、戦場で莫大な代償を払っている」と述べた。


関連記事:米国はウクライナの戦闘継続を望んでいる(ブリンケン米国務長官)


 元米国防総省顧問のダグラス・マクレガー退役米陸軍大佐は、こうした主張がバイデン政権の信頼性を損ねていると指摘して、「ミリー将軍は、自分が左派と連携していること、またこの政権の一部であること、そして彼らが自分に言わせたいことは何でも言うつもりであることを明確にしている」と述べている。



米国国防総省、ウクライナのクリミア奪還の可能性を評価する。(ポリティコによる報道)

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Pentagon assess Ukrainian chances of retaking Crimea – Politico
Defense Department officials reportedly believe that success cannot be guaranteed.

国防総省幹部は、成功は保証されない、との見方を示したという。

出典:RT

2023年2月2日

<翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2023年2月20日

クリミア 1
ファイル写真。© STAFF / AFP


 ポリティコ(Politico)*によると、ウクライナがロシアからクリミアを奪取する計画は、近い将来に成功する可能性は低いと、米下院軍事委員会の議員らが国防総省との機密会合で語ったという。
*政治に特化したアメリカのニュースメディアである。テレビやインターネット、フリーペーパー、ラジオ、ポッドキャストなどの自社媒体を通じてコンテンツを配信している。

 ポリティコは、匿名を希望した4人の人物から会議の詳細を聞いたと報じている。その情報源によれば、国防当局はその評価に至った理由を説明しなかったが、主な主張は、ウクライナにはロシア軍を半島から追い出す能力がない、ということだった。また、そのような状況がすぐに変わるとも思っていない。もしキエフがそのような作戦を試みたとしても、その成功は保証できない、とも情報源の一人は指摘している。

 国防総省のサブリナ・シン報道官は、この機密の戦況説明に関する見解や、「将来の潜在的な作戦に関する仮説や推測」について言及することを避けた。しかし、シン報道官は、ウクライナの「戦闘能力や主権領土を取り戻す能力...それ自体が自ずと物語っている」と述べた。

 ポリティコの報道は、米国統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍が同様の評価を述べた数週間後に行われた。昨年ロシアへの併合を決めた旧ウクライナの4つの地域と、住民投票の結果2014年にロシアに復帰したクリミアについて、「今年中にロシア軍をロシア占領下のウクライナから軍事的に完全に追い出すことは非常に困難だと、私は依然として思っている」とミリー将軍は述べていた。

 ただ、ミリー将軍は、これらの地域を最終的にウクライナに取り込むことができないとは考えていないと指摘しつつ、それは、「非常に、非常に難しい」と強調した。


クリミア 2

関連記事:ロシアとの戦いはウクライナにとって「非常に、非常に難しい」―米軍最高位の将官は語る。


 ウラジミール・ゼレンスキー大統領を含むウクライナ当局は、キエフの旧領土をすべて奪還することが政府の最優先事項であり、クリミアもその一つだと繰り返し主張してきた。また、モスクワと敵対関係を解消するための交渉は、これらの土地からロシア軍が完全に撤退した後に行われるべきだとも主張している。

 そのために、キエフは西側諸国から、より高度で長距離の兵器の要求を強めている。その兵器には、前線のはるか後方にいるロシアの標的を攻撃するための、ロケット砲や戦闘機、ドローンから発射する誘導弾などが含まれている。

 一方クレムリンは、クリミアと新たに編入された4つの地域を含むロシアの領土に対する脅威があれば、ロシア軍による「より強力な武器」の使用につながると警告している。

 ロシア下院のヴャチェスラフ・ボロディン議長は、キエフが民間人を攻撃し、ロシア領土を奪取するために使用できる武器を西側諸国が提供し続ければ、「世界の悲劇」になりうると警告している。

元ゼレンスキー補佐官、ウクライナ軍の命運に疑問を投げかける。

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Ex-Zelensky aide casts doubt on Ukraine’s military fortunes
There is no guarantee that Kiev will be able to defeat Moscow’s forces, Aleksey Arestovich has said.

アレクセイ・アレストビッチ氏は、キエフがモスクワ軍を撃退できる保証はないと発言している。

出典:RT

2023年1月22日

<翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2023年2月17日

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ウラジーミル・ゼレンスキー大統領の元顧問、アレクセイ・アレストビッチ氏。© Wikipedia


 ウラジーミル・ゼレンスキー大統領の元顧問であるアレクセイ・アレストビッチ氏は、金曜日(1月20日)に、ウクライナはロシアとの紛争で勝利する機会を無駄にしてしまったと語った。

 政治評論家ユーリ・ロマネンコ氏とのインタビューで、アレストビッチ氏は、「誰もが戦争に勝つことが保証されていると考えているなら、その可能性は少ないようだ」 と述べた。

 アレストビッチ氏は質問した。「ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領の評価、つまり、ウクライナが生き残れるかどうかは基本的に確実ではないと言ったことを、あなたはどう思うだろうか? 彼は特別な理由もなくそう言ったのか、それとも何らかの情報をもとにそう言ったのか 」と。

 ドゥダ大統領は数日前、紛争における「決定的な瞬間」が、数週間から数カ月以内に訪れる可能性があると述べた。「そしてこの瞬間が、ウクライナが生き残れるかどうかの答えになる」と説明し、欧米製の武器でキエフを支援する必要性を強調した。

 また、アレストビッチ氏は、ウクライナは無敵だと考えてはいけないと警告した。「無敵でいられるのは、双方が激しく戦う状況になるまでのことだ。そのような状況になってしまえば、我が国はあっという間に打ち負かされてしまうだろう。」


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 この元政府高官は、ウクライナは 「軍事的好機を逃しただけでなく、貴重な時間も失い、そのせいでロシアは動員を始め、前線の状況を回復し、いくつかの場所で優位性さえ作り出すことができた」 と述べている。さらに、「こうなってしまったのは、西側が(ウクライナに)武器を与えなかったことだけが理由ではなく、国内や国家(政策)面において、我が国は絶好の機会を逃してしまったからだ」と付け加えた。

 火曜日(1月17日)、アレストビッチ氏は、南東部の都市ドニエプルにおいて、住宅街に落下し数十人が死亡させたロシアのミサイルは、ウクライナの防空隊によって撃墜されたと発言したことにより、職を辞した。その後、この元補佐官は自分の発言について「重大な誤りだった」と謝罪した。

 ロシア国防省によると、悲劇が起きた当日、ロシアは「ウクライナの軍事指揮統制システムと関連するエネルギー施設に」ミサイル攻撃を行ったという。ドニエプルの事故について、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は「ロシア軍は住宅や社会インフラ施設を標的にすることはない」と述べた。攻撃はあくまで軍事目標が目的だ」 と述べた。

 モスクワは昨年10月初旬に、キエフのインフラに対する攻撃を強化した。戦略的に重要なクリミア橋への致命的な爆撃や、ロシア国内でのウクライナによる度重なる破壊工作を理由とするものである。

ウクライナはもう時間切れだ。米元高官2名の主張

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine running out of time – former US officials

コンドリーザ・ライスとロバート・ゲイツは、更なる武器の供給は、ウクライナを苦しませることになるとの考えを主張

出典:RT

2023年1月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月24日



元部下のロバート・ゲイツ元国防長官(左)とコンドリーザ・ライス元国務長官と話しているジョージ・W. ブッシュ元大統領(右)© Getty Images / Chip Somodevilla


 ロバート・ゲイツ元国防長官とコンドリーザ・ライス元国務長官は、ウクライナの経済と軍はほぼ完全に西側からの緊急援助に依存していて、 劇的な状況の転換がなければ、ウクライナが勝てる好機は失われるだろうと認めた。

 ウクライナの「経済は崩壊状態にある」とこの元外交官と国防総省の元最高幹部は、土曜日(1月7日)にワシントン・ポスト紙に寄稿した。

 ウクライナの「軍事力と経済は、現在西側からの救援にほぼ完全に依存している」と両氏は続け、ウクライナが近い将来戦果を収めなければ、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と休戦交渉をするよう、西側から圧力を受けることになるだろうと主張していた。なお、ウクライナの指導者であるゼレンスキーは、この休戦交渉の検討を繰り返し拒んでいる。

 秋以降、前線では比較的膠着状態が続いてきたが、ここに来てロシア軍は、敵のウクライナを、バフムート/アルチェモフスク戦線において粉砕している。米国の傭兵団の司令官は先日、この戦線においてウクライナは、「尋常ではない数の戦死者」を出していると明言しており、ウクライナのカナダ大使であるヴァディム・プリスタイコ氏は、ウクライナ側の戦死者は、「多数」で「不明なほどである」としていた。

 ウクライナ政府は春に大規模な攻撃を行うことを明言しているが、ライス・ゲイツ両氏は、ウクライナが今の戦いを持ちこたえられるのは、「月単位ではなく週単位」の可能性がある、と書いている。

 最後に両氏は、ウクライナにさらに多くの、そしてさらに重装な武器を送ることを勧めていた。米国は2月以来、ウクライナに1100億ドル相当以上の軍事支援や経済支援を既に行ってきているが、両氏は米国政府は重戦車を供給する必要はない、と指摘している。ドイツなど「他の同盟諸国」が、米国の代わりにそのような武器を補給すべきだと両氏は主張していた。


関連記事:Ukraine conflict at 'critical point' – Biden

 金曜日(1月6日)、バイデン政権は、ウクライナに50機のブラッドリー歩兵戦闘車両を供与する予定であると発表した。この戦車は今までウクライナに送られた武器の中でもっとも近代的なものであり、総額30億ドルの武器支援の一環である。フランスも、車輪付きの「軽戦車」を多数供与すると誓約しており、ドイツは40機のマルダー歩兵戦闘車両の供与を約束している。

 しかしウクライナ政府は、さらに必要だとしている。先月(12月)のエコノミスト誌でのインタビューで、ウクライナのヴァレリー・ザルジニー将軍は、攻撃作戦を行うには、さらに300機の戦車と700機までの歩兵戦車両と500機の榴弾砲が必要だと述べていた。この数は、英国やドイツのこのような武器の全ての在庫の数を越えたものだ。

 これまでロシアは、ウクライナに武器を「注入」しても、結局はこの紛争の解決に何の効果もなく、戦闘を長引かせ、更なる流血を呼ぶだけだ、と主張し続けている。

国防省幹事会におけるプーチン演説(2022年12月21日)

<記事原文 寺島先生推薦>

President Vladimir Putin’s Remarks at the Meeting of the Defence Ministry Board Posted

国防省幹部会におけるウラジーミル・プーチン大統領の所見

INTERNATIONALIST 360° 

2022年12月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月10日

NATOのモスクワとの対立、軍隊の近代化、ウクライナでの作戦:
プーチン演説の要点


 現在ウクライナで進行中の紛争において、ロシアはNATOの潜在的軍事力にほぼ全面的に対峙していると、ウラジーミル・プーチン大統領は12月21日(水)に開かれた国防省の拡大幹部会で述べた。

 また、ロシア大統領は、現在のキエフとの紛争に至った経緯について意見を述べ、主権を維持するために自国の核戦力の近代化の重要性を指摘した。

 以下はプーチン演説の要約

西側との対決

 プーチンは、モスクワの「戦略的敵対者たち」は常にロシアを「切り捨て」、「解体」しようとしてきた、なぜならロシアは「大きすぎる」し、脅威をもたらすと考えているからだと述べた。これは、西側諸国が何世紀にもわたってやろうとしてきたことだと指摘した。

 一方、ロシアは、いわゆる「文明世界」の一員になることを常に望み、努力してきたが、プーチンによれば、そんなことは西側にはまったく相手にされないことだと理解するようになったのだという。

兄弟国としてのウクライナ

 ロシアは何年もかけて、ウクライナと隣人関係だけでなく兄弟関係を築くためにあらゆる手を尽くしたが、何もうまくいかなかったとプーチンは述べた。そして「我々は常にウクライナ人を兄弟的国民だと考えてきました」との言葉も。

 「私は今でもそう思っています。起こっていることはすべて悲劇です。私たち共通の悲劇です。しかし、それは我々の政策の結果ではありません」と大統領は述べた。

 さらに、ロシアの地政学的な敵たちは、旧ソビエト共和国、特にウクライナの内政に干渉することを含め、その目的を達成するために幅広い手段を用いるようになり、最終的に現在のキエフとの紛争につながったと付け加えた。かくして、それは「避けられない事態」となった、と大統領は結論づけた。

ロシアに敵対するNATO

 プーチンは、NATOは現在、加盟国のほぼすべての軍事力をモスクワに対して行使していると述べた。

 しかし、ロシアは過去の失敗から多くを学んでおり、ロシア国家を軍事化することによって自らを傷つけることはないだろうと指摘した。

 プーチンは、「我々は国を軍事化しないし、経済を軍事化しない」と宣言し、現在のロシアの発展段階では、そのような手段をまったく必要としないことを強調した。

 さらに、ロシア軍の軍事指導者たちはNATOの戦術と能力を研究する任務を負っており、ロシア軍の訓練や装備にこの情報を考慮するよう求められていると付け加えた。

核トライアド(戦略爆撃機、大陸間弾道弾、潜水艦発射弾道弾)

 ロシアの核兵器は、その主権を保証する重要なものである、とプーチンは述べ、新しい兵器がまもなく運用を開始し、国の防衛力の発展を約束する、と述べた。

 大統領は、ロシアは航空機、潜水艦、地上の移動式発射台とサイロ(地下に作られたミサイル格納庫)から発射されるミサイルからなる核トライアドの維持と改善を続けていくと述べた。

ロシア軍の近代化

 大統領は、ロシア軍におけるドローンの使用を強化する必要性を強調し、ロシアが水中無人航空機(UAV)を開発した経験を指摘し、これを改良してより高度な空・地上ドローンを創るべき、と述べた。

 また、通信体系の近代化と、すべての意思決定段階に人工知能技術を取り入れることを提案し、戦場では高速で自動化された体系が最も効果的であることが証明されていると指摘した。

 また、大統領は、NATOがロシアとの国境にある軍を強化し、フィンランドとスウェーデンに加盟を拡大する可能性があることを受けて、セルゲイ・ショイグ国防相が提案したいくつかの構造改革を承認した。

(以上はRTより引用)


国家防衛コントロールセンターで開催された国防省の拡大幹事会で発言するウラジーミル・プーチン

 幹部会に先立ち、大統領は各軍の装備、武器、弾薬、防護手段の最新および将来の姿を例示する展示会を視察した。大統領には、セルゲイ・ショイグ国防相とヴァレリー・ゲラシモフ軍参謀総長が同行した。展示会会場は、国家防衛管理センターのアトリウム(室内公開空地)だった。

ウラジミール・プーチンロシア大統領:同志のみなさん

 今回の国防省年次幹部会は、ロシアにとって非常に重要な時期に開催されています。特別軍事作戦が続いています。本日は、いろいろな戦闘作戦で得た経験をもとに、陸軍と海軍の重要な開発分野について議論します。

 まず、現在、前線や軍人養成所にいる兵士や将校に、心から感謝の意を表したいと思います。皆さんは、命をかけ、努力を惜しまず、必要なときには仲間をかばいながら、威厳を持って軍務を全うされています。

 そしてもちろん、今日は祖国のために命を捧げた戦友を称えなければならない。

(黙祷)

同志のみなさん、

 NATOのほぼすべての主要国の潜在的軍事力といろいろな軍事能力が、ロシアに対して広範囲に使われていることはよく知られていることです。

 それでも、わが国の兵士、軍曹、将校は、勇気と不屈の精神をもってロシアのために戦い、自信をもって一歩一歩任務を果たしています。間違いなく、新領土を含むロシア連邦の全領土でこれらの任務は遂行され、すべての国民の安全な生活が確保されるでしょう。我が軍の戦闘能力は日々向上しており、この過程を確実に向上させてゆきます。

 戦車隊員、空挺部隊員、砲兵隊員、機動銃隊員、土木工兵、信号手、パイロット、特殊作戦部隊および防空部隊、船員、軍事測量士、後方支援専門家、国家守備隊、そしてその他の部門に従事されているみなさん、今日戦闘任務を遂行している皆さんに、改めてその戦いぶりに感謝したいと思います。あなた方は、1812年戦争や第一次世界大戦、大祖国戦争の英雄たちのように(いいですか、こんな比較をすることを私は恐れていませんし、これは仰々しい言い方ではありません)戦っているのです。

 特別な感謝の言葉を軍医のみなさんに申し上げなければなりません。みなさんは勇敢に、しばしば自らの命の危険を冒して兵士たちを救ってくれます。それから、軍と民間人の建設作業員のみなさんです。みなさんは作戦対象地域で要塞や重要な基盤施設を建設し、解放された地域の民間人用地の再建に貢献されています。ほんとうにありがとうございます。

 一方、敵からの様々な戦闘行為は、これまで何度も議論してきた問題を含め、私たちが特に注意を払うべき問題を浮き彫りにしました。通信、兵員や兵器の自動指揮統制体系、対砲撃戦術、目標探知などです。

 この戦闘経験を、私たちは軍隊のさらなる発展と増強に生かさなければなりませんし、生かすつもりです。

 今日、私たちの目標は、軍隊の質的な刷新と改善を達成するために必要なあらゆる方策を実行することです。

 特に注目していただきたいのは、以下の点です。

 我々は、特別軍事作戦の期間中、NATO軍が我々に対して使用してきたすべての部隊と資源をよく知っています。あなた方は情報はすべて持っており、それを注意深く分析し、我が軍の増強のために利用すべきであり、私が述べたように、我が軍の戦闘能力を向上させるとともに、我が国の特殊部隊の能力も向上させる必要があります。

 私たちの部隊は、この特別作戦で豊富な戦闘経験を積んできました。

 国防省と参謀本部の仕事は、先ほど述べたように、この経験を注意深く分析し、できるだけ早く体系化し、人材育成、部隊全般の訓練、部隊への必要な装備の供給に関するプログラムと計画に盛り込むことです。

 加えて、今回の特別軍事作戦の経験や、わが軍がシリアで得たものは、これまで述べてきたように、戦闘訓練の大幅な改善に道を開くものであり、あらゆる段階の準備や演習・訓練に生かされるべきものです。

 また、今回の特別軍事作戦で模範的な成果を挙げた将校や曹長は、優先的に上級指揮官に昇進させ、参謀学校を含む軍の大学や専門学校に入学させるための有力な人材予備軍とする必要があります。

 第二に 政府、防衛省、その他の機関に注意を喚起したいのは、特別に設けられた部門である調整会議において緊密に協力する必要があるということです。また、地域の首長や防衛産業の代表者とも協力する必要があります。

 また、設計者や技術者には、現場に足を運ぶという習慣を続けてほしいと思います。定期的に足を運び、必要な装備の調整をしてくれていることに感謝したい。武器や装備の戦術的、技術的特性を実際の戦闘状況下で確認し、すでに申し上げたように、それらを改善する実践を続けていただきたい。

 一般的には、関係省庁と実質的な作業を行うことが必要です。何が本当に効果的で、何がさらなる努力を必要とするのかが見えてきているのです。技術者、技能者、科学者にこれが見えてきています。そして、全体が機械のように一体化して動いています。私が軍備を改善し、今後も改善し続けると言ったのは、この過程も念頭に置いてのことです。軍産委員会は、主に部隊への軍事技術供給に関する緊急および将来の課題を解決するために、防衛産業、科学、軍隊の相互交流のための本部とならなければなりません。私が言っているのは、装備品や弾薬などのことです。

 3点目です。私たちは、核トライアドの戦闘態勢を維持・改善し続けます。それは、わが国の主権と領土保全、戦略的対等、そして世界の軍事力の一般的な均衡が維持されるための主要な保証となります。

 今年、戦略核戦力における武装の近代化の到達度は、すでに91%を超えています。私たちは、戦略ミサイル部隊へ、アバンガルド・極超音速弾頭を搭載した最新のミサイル体系の再武装を継続しています。

 近い将来、サーマットICBMミサイルは初めて戦闘任務に就くことになります。一定の時間的遅れが出ることは承知していますが、計画を変更することはありません。我が軍は、ヤーズミサイルの供給を受け取り続けています。我々は、世界で他に類を見ない唯一無二の特性を持つ極超音速ミサイル体系の開発を続けます。来年1月初旬には、ソ連海軍のゴルシュコフ・フリゲート艦提督だった人が戦闘任務に就く予定です。繰り返しますが、この艦には世界に類を見ない最先端のジルコンシー・ミサイル水準の極超音速ミサイルが搭載されます。

 我々は、戦略的部隊に最新の兵器体系を装備することを継続します。繰り返しになりますが、私たちはすべての計画を実行に移します。

 次です。最新の防空体系で保護された領域で活動する戦闘機や爆撃機の数を含め、航空宇宙軍の戦闘能力を強化することが重要です。

 戦略・偵察用を含むドローンとその使用方法の高度化が喫緊の課題です。特殊作戦の経験から、ドローンの使用は実質的に場所を問いません。戦闘部隊、小隊、中隊、大隊の必需品になるはずです。攻撃目標はできるだけ早く特定され、攻撃に必要な情報は即時で伝達されなければなりません。

 無人機は相互接続され、単一の情報網に統合され、本部や司令官との確実な通信経路を持つべきです。近い将来、すべての戦闘機が無人機から送信される情報を受信できるようになるはずです。私たちはこれに向けて努力しなければなりません。技術的には、ごく近い将来、今すぐにでも実現可能です。そのために、隊員の装備や戦術的な道具のすべてを最終的に決定する際に、このことに焦点を当てるようお願いします。

 戦場に些細なことなどひとつもありませんから、特に注意を払う必要があります。国防省も取り組んでいるとは思いますが、あらためて強調しておきたいと思います。医療用具、食料、乾物、制服、履物、防護ヘルメット、防護服など、すべてが最新かつ最高水準であるべきです。部隊は十分な暗視装置、高品質の照準器、新世代の狙撃銃を持つ必要があります。戦闘員が使用するものはすべて最新で、便利で信頼できるものでなければならず、その供給は実際の必要に対応したものでなければなりません。もし省庁の基準の一部が時代遅れであれば、それを変更する必要があります。しかも迅速に、です。

 国防大臣、参謀総長、そしてここにいるすべての指揮官に注目していただきたいのですが、私たちには資金の制約は一切ありません。国、政府は、軍が求めるもの、何でも提供します。その回答が適切に策定され、適切な結果が得られることを期待しています。

 ドローンの話題に戻りますが、私たちは唯一無二な無人水中体系の開発で有益な経験を持っていることをぜひ申し上げたい。人工知能の要素も含め、最良かつ最高の戦術的・技術的特性を備えたさまざまな無人航空機や地上車両を生み出すために必要なあらゆる能力を、我が国の防衛産業は持っています。また、一般的には、最新の攻撃兵器の兵装を拡大する方法を検討する必要があります。

 第五に、いかなる状況下でも部隊の指揮統制の安定性と効率性を確保するために、管理・通信体系を改善する必要があります。そのためには、意思決定のあらゆる段階において、人工知能をより広く活用する必要があります。ここ数カ月のものも含め、経験が示すように、素早く、ほぼ自動的に作動する兵器体系が最も効果的なのです。

 さらに、今回の部分動員によって、ある種の問題点が明らかになりましたが、これは常識であり、早急に解決しなければなりません。必要な措置がとられていることは承知していますが、やはりこの問題には注意を払い、この体系を近代的な方法で構築すべきです。まず、軍事委員会事務局の体系を更新することが必要です。私が言っているのは、データベースのデジタル化と、地方や地域の当局との交流のことです。民間および領土防衛の組織や、産業界との交流も更新する必要があります。特に、動員中の部隊や陣形の展開に必要な武器、戦闘機器、物資の備蓄・保管体系を改善する必要があります。

 ご存知のように、30万人の人々が軍隊に徴兵されています。その一部は、すでに敵対地域にいます。国防大臣と参謀総長の報告にあるように、15万人が軍事施設で訓練を受けており、この予備役が作戦を遂行するのに十分な数となっています。基本的に戦略的予備軍であり、現在は戦闘行為に使われてはいませんが、人々はそこで必要な訓練を受けています。

同胞のみなさん

 前線に自動車、追加装備、ギア、防寒着を送り、病院にいる負傷者に手紙や贈り物を送るなど、親切心から我が軍隊を助けている人々に心から感謝いたします。たとえ国防省が軍隊に必要なものをすべて提供する部門もありますが、それでも私たちはそうしてくれる人々に謙虚に感謝すべきです。

 国防省にお願いしたいのは、国民のみなさんの率先した動きすべてに注意を払うことです。それには、批判を考慮し、それに適切かつ時機を得て対応することが含まれます。もちろん、問題を見た人の反応は、このような大きな、そして困難な事業には問題はつきものですが、その反応は感情的なものでもあるかもしれません。しかし、問題提起を黙殺するのではなく、その解決に貢献しようとする人々の声に耳を傾けることが必要であることには、寸分の疑いもありません。

 私は、国防省の国民との対話が今後も継続されると確信しています。ご存知のように、私たちの強みは常に軍隊と国民の団結にあり、それは変わっていません。

 さて報告に移ります。

 国防大臣が発言します。

 ご清聴ありがとうございました。

国防大臣セルゲイ・ショイグ:同志最高司令官殿、

 今回の特別軍事作戦からご報告いたします。

 今日ウクライナで、ロシアは欧米の集団軍と戦っています。米国とその同盟国は、ウクライナに武器を送り、キエフの軍人を訓練し、情報を提供し、顧問や傭兵を送り、ロシアに対して情報戦と制裁戦を繰り広げています。

 ウクライナの指導者たちは、テロ攻撃、契約部隊による殺人行為、そして民間人に対する重火器の使用など、禁止されている戦争行為に手を染めています。西側諸国はこれを無視しようとしています。また、ザポリージャ原子力発電所に対する挑発や、いわゆる汚れた核爆弾の使用計画など、核による恐喝の事例もあります。

 現在の状況が、まず、米国に有利に働いているのは明らかです。米国はこの状況を利用して世界支配を維持し、欧州の同盟国を含む他国を弱体化させようとしています。

 特に懸念されるのは、ロシア連邦とベラルーシ共和国の国境付近でNATOの前線基地が増強されていることと、ウクライナでの敵対行為をできるだけ長引かせて我が国をさらに弱体化させようとする欧米の思惑です。

 ミンスク合意の真の目的についてメルケル首相やポロシェンコ大統領などの政治家が告白した後、ウクライナの紛争の原因はロシアではなく、2014年にキエフで欧米が支援したクーデターが反ロシア勢力を生み出し、二つの兄弟民族を分断したことにあることは誰の目にも明らかになりました。これがドンバスでの武力衝突を誘発したのです。

 私たちは、大量虐殺やテロから国民を救うために行動を起こしています。

 ロシアは、建設的かつ平和的な交渉は常に歓迎しています。

 ロシア軍は軍事目標を破壊し続け、軍事管制体系、防衛産業企業、エネルギー施設を含む関連施設に高精度の大規模な攻撃を加えています。外国の兵器供給網を破壊し、ウクライナの軍事的潜在力を潰しているのです。同時に、民間人が死亡しないようあらゆる措置が取られています。

 その結果、ウクライナ軍は大きな損失を被り、作戦開始時に用意していた武器や装備のかなりの部分が破壊されました。この損失を補うために、米国をはじめとするNATO諸国は、キエフ政権への軍事支援を大幅に増やしました。27カ国はすでにウクライナへの武器供給に970億ドル費やしており、これは彼らがアフガニスタンで放棄した兵器の額をはるかに上回ります。米軍がアフガニスタンに残した兵器の一部はテロリストの手に落ち、世界中に拡散しています。ウクライナの兵器が最終的にどこに行き着くかは誰にもわかりません。

 NATOの職員、砲兵隊員、その他の専門家が敵対行為地域にいることを言及する必要があります。500以上の米国製およびNATO製の宇宙船(人工衛星)が、70以上は軍事用、そして残りは軍民兼用で、ウクライナ軍の利益のために動いています。

 米国とその同盟諸国は、ロシアと同盟諸国に対して情報的・心理的影響力を行使するために、かなりの資金を費やしています。私たちは、自由と言われる西側の報道機関が一体何であるかを完全に理解しました。ウクライナでの出来事に関する何千もの虚偽が、ワシントンの命令に従って、同じ様式に従って毎日公開されています。何百ものテレビ局、何万もの印刷物、そしてソーシャルメディアやメッセンジャー上の上方源が、この目的のために動いています。

 ウクライナ軍の戦争犯罪に対する西側メディアの沈黙は、皮肉な現象の極致です。一貫して、キエフの犯罪的なネオナチ政権が美化されています。ウクライナ軍のテロ手法は、合法的な自己防衛またはロシア軍の行為として紹介されています。武装したウクライナの民族主義者たちは、誰も退却しないように後方に控えています。私たちは、命令に従わないウクライナ軍の兵士が射殺されたという報告を毎日受けています。

 状況を安定させ、新しい領土を守り、さらに攻勢をかけるために、私たちは部隊の戦闘力と兵力を増強しなければなりませんでした。この目的のために、部分動員を行いました。これはロシア社会の成熟度を示すものであり、国と軍隊にとって真剣な取り組みです。

 動員計画は、大祖国戦争以来、実行に移されたことはありませんでした。動員準備の基本体系も、新しい経済体制に十分適応していなかったのです。そのため、部分動員が始まると、予備役国民への通知と呼びかけに困難が生じました。 

 私たちは、すべての問題を即座に解決する必要がありました。部隊や編成の軍事行政機関の組織や人員構成をできる限り早く変更し、あらゆる種類の支援を改善するための緊急措置を講じました。

 部分動員措置は予定通り完全に実行されました。約30万人の予備役が兵役のために徴集されました。この点では、連邦政府と地方政府の協調的な取り組みが重要な役割を果たしました。

 特に、徴兵の通知を待たずに志願した人が2万人以上いるなど、ロシア国民の積極的な参加は特筆に価します。

 国家経済を支えるため、83万人以上の人々が徴兵を免除されています。彼らは防衛産業や、国家の活動にとって不可欠な社会的に重要な分野の企業で雇用されています。

 最高司令官の決定により、動員された国民は契約軍人と同様の便益と保証を受けることができます。

 動員された軍人は、個人技の練習から部隊の結束に至るまで、戦闘行動に必要な訓練を受けます。

 軍政機関は大きな負担を背負わなければなりません。これにより、2018年の設立決定の正しさが確認されました。同時に、人員を戦闘活動に完全に対応させるためには、まだ多くのことを行わなければなりません。

 全般的に、部分動員により、部隊の戦闘能力を高め、戦闘を強化することができました。ロシア軍は、2月24日以前にルハンスクおよびドネツク人民共和国が占有していた面積の5倍を解放しました。5月下旬、ロシア軍は大規模な工業地帯であるマリウポリ市をナチスから完全に解放しました。キエフ政権は、マリウポリ市を、アゾフスタル工場工業地帯を中心とする強力な要塞地帯に変えていました。ロシア軍とドネツク民兵部隊の成功により、4000人以上の武装勢力が抹殺され、2500人のアゾフ民族主義者とウクライナ軍の軍人が武器を置いて降伏しました。

 平和な生活が取り戻されつつあります。ベルディアンスクとマリウポリの港は完全に稼働しています。私たちは、そこに海軍の船舶基地、緊急救助隊、船舶修理部隊を配備するために活動しています。アゾフ海は、わが国の300年にわたる歴史の中でそうであったように、再びロシアの内海となりました。

 クリミアとの陸路および鉄道による接続が回復しました。ドンバスとの鉄道輸送も間もなく通常に戻ります。マリウポリ、ベルディアンスク、その他の解放された居住区には、数ヶ月前から貨物が届いています。

 北クリミア運河を支配したことで、水とエネルギーの封鎖により8年間存在しなかったクリミア半島への水の供給が可能になりました。

 特別軍事作戦の間、ロシア軍の隊員たちは勇気、耐久力、そして献身的行為を発揮しています。ロシア連邦の英雄の称号120を含む10万人以上が国家勲章を授与されています。25万人以上の正規軍兵士が、特別軍事作戦中に戦闘経験を積んでいます。

 今日、ロシア軍は解放された土地で平和な生活を確立するために積極的に活動しています。27,000ヘクタール以上の土地から地雷を除去しています。マリウポリでは、軍の建設業者が12の居住区を建設し、さらに6つの居住区と幼稚園、学校の建設を続けています。ルガンスクとマリウポリでは、最新設備と260のベッドを備えた2つの多目的医療センターの建設が記録的な速さで完了しました。

 ドネツク、ルハンスク両人民共和国では、水の供給を回復するために多くのことが行われています。総延長200kmを超える水路の建設により、150万人以上に水が供給されるようになりました。現在建設中のドン川からの全長194kmの水路は、ドネツクの水供給を保証するものです。

 一般に、今回の特別軍事作戦は、指揮官や各統制段階の参謀の高い専門能力と、最も複雑な戦闘任務でも遂行できる軍隊の準備態勢が整っていることを実証しました。我が国の武器と軍備見本は、その例を見ない信頼性と効率性に太鼓判が押されました。

 今回特別軍事作戦は、軍隊の改善計画を練り直すために、現代の複合作戦の実施方法と、それに使われる戦力や手段を分析するまたとない機会を作り出しています。

 ロシア国民は、国家指導部とロシア連邦軍にかつてないほどの支援を提供しています。このことは、軍隊と社会の一体化によってはっきり示されています。

 今年、国防省は他の多くの重要な任務を解決してきました。今も解決し続けています。今年の初めには、カザフスタンの情勢を安定させ、同国の「カラー革命」を防止するための作戦をCSTO*諸国と共同で実施しました。
CSTO*・・・集団安全保障条約(Collective Security Treaty Organization=略称CSTO)は、1992年5月15日に旧ソビエト連邦の構成共和国6か国が調印した集団安全保障および集団的自衛権に関する軍事同盟である。3か国の新規加盟、3か国の条約延長拒否を経て、2022年時点でロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6か国が加盟している。同条約は計11条の条文から成り、加盟国の軍事分野における協力について規定している。(ウィキペディア)

 ロシア軍は、シリアとナゴルノ・カラバフの平和を維持するための主要な保証人であることに変わりはありません。この年、彼らは人道的活動を行い、地雷を除去し、住民に医療援助を行いました。

 私たちは、戦略的抑止を保証するレベルで、核トライアドを維持しています。戦略核戦力の戦闘態勢は、91.3%という前例のない水準に達しています。

 戦略ミサイル軍では、地上発射型ミサイルシステム「ヤーズモビル」を搭載した2つのミサイル連隊の再装備が完了しました。さらに1個連隊が極超音速滑空機付きアバンガルドミサイルを装備し、戦闘任務に就いています。新型ミサイルサーマットの状態検査をしている間に発射が成功し、その配備を開始することが可能となりました。

 戦略航空核戦力軍は、Tu-160M戦略ミサイル運搬機とTu-95M航空機を受領しました。今年は、中国人民解放軍との共同での2回を含む73回の航空巡回を実施しました。原子力ミサイル潜水艦は、世界の海洋の指定区域で計画的な軍務を行っています。海軍は、ブラババ弾道ミサイルを搭載したジェネラルシムス・スボロフボレイA級原子力潜水艦を採用しています。軍隊の各部門や兵種の戦闘能力を強化する努力は続けられています。

 宇宙航空部隊は、統一宇宙体系をさらに発展させ、北半球のミサイル危険地域の継続的な監視を可能にする6号機「クポル」人工衛星を打ち上げました。訓練用航空機の整備も着々と進んでいます。新型の訓練用航空機の導入により、士官候補生の飛行時間は3分の1以上増加しました。今年、初めて女性パイロットが卒業しました。その半数以上が優秀な成績で卒業しました。

 海軍は、最新鋭の潜水艦、水上艦6隻、砲艦3隻、支援艦艇・ボート11隻、沿岸ミサイル複合施設2基を受領しました。

 海上型極超音速ミサイル「ジルコン」の運搬船が次々と就航しています。極超音速ミサイルを搭載した「ソ連元帥ゴルシュコフ」・フリゲート艦の諸準備が進んでいます。そして世界の海域で計画されていない戦闘任務に就くための準備が最終段階に入っています。

 2022年の国家防衛令の実施に欠かせないのが、特別軍事作戦に参加する武装勢力への武器・装備の納入です。彼らの戦闘能力を高めるため、主食納入体系は2024年と2025年から2023年に早められました。納入を効率化するため、10日間の日程が組まれました。その実施状況は、国防省、軍産委員会、産業貿易省、そして国防企業による合同作業団が見ています。

 武器や装備の追加供給を含む、承認された2022年の割り当てにより、軍隊への主食の納入を30パーセント、大砲やミサイル体系、航空機への弾薬の供給を69~109パーセント増やすことができました。同時に、主食に関する国家防衛令の実施率は91%に達しています。

 2022年、さまざまな段階で開催された14の国際演習を含め、作戦・戦闘訓練の計画されたすべての行事が実施されました。年頭には、ロシアに対する海上・海洋の軍事的脅威を撃退するための訓練として、一連の大規模な海軍演習を実施しました。

 最後の戦闘訓練は、14カ国から51,000人以上の軍人が参加した「ボストーク2022」司令部訓練でした。この演習では、共通の課題に取り組むための国際的な軍隊の編成が行われました。この演習では、国際的な軍隊が地域の安全保障の任務を効果的に果たすことができることが示されました。

 特別演習では、敵による大量破壊兵器の使用に対応するため、戦略核兵器部隊が大規模な核攻撃を行う訓練に成功しました。

 北極圏の東部地区とチュコトカ半島で、戦闘訓練と研究要素・実験を兼ねた北極探検が実施されました。これにより、北極圏で使用されるあらゆる種類の兵器の技術的特性が確認されました。

 西側諸国がロシアを孤立させようとしているにもかかわらず、我々は国際的な軍事・技術協力の地理を拡大し続けています。

 国防省は、アジア、アフリカ、中東、ラテンアメリカの109カ国の軍隊と関係を発展させています。今年は350の重要な国際行事を開催しました。

 国際陸上競技大会は、外国軍隊との主要な共同訓練行事の一つとなっています。34カ国から5,300人以上の軍隊が参加しました。12カ国で開催されたこの大会には、300万人以上の人々が参加しました。第1回大会から8年の間に、80カ所の訓練場が近代化されました。その訓練と資源能力は、軍人の戦闘訓練に広く活用されています。

 陸軍の年次集会は、国際的な軍事協力の強化に寄与してきました。85カ国から代表団が参加し、約200万人が来場しました。集会期間中、防衛関連企業と36件の国家間契約(525億ルーブル以上)が締結されました。この行事は、世界中の類似した展示会よりも生産性が高く、成功し、生き生きと発展している取り組みです。

 8 月には第 9 回モスクワ国際安全保障会議を開催し、70 カ国から 700 名を超す代表者が参加しました。世界で最も代表的な軍事・政治行事です。

 今年、第1回国際反ファシスト会議を開催しました。国家公務員と公共活動家、大祖国戦争の退役軍人、26カ国の9つの外国代表団と大使館付き武官が参加しました。集会の参加者は、現代世界におけるファシズム、ネオナチズム、排外主義のいかなる発現も明確に非難しました。この大会は毎年開催されることが期待されています。

 ロシアの高等軍事学校は、世界でも最上位の水準にあります。国防省の高等教育機関では、ソ連時代よりも多い55カ国からの学生が学んでいます。2023年9月1日から、ドネツク高等軍司令部学校は国防省の教育施設群に併合されることになります。

 国防省の大学前教育体制を改善するための活動を続けています。2023年9月1日までに、イルクーツクに新しいスボロフ軍学校が開校する予定です。

 私たちは、退役軍人のための連邦庁を創設するために関係諸機関と協力しています。これにより、退役軍人の社会保護制度を一元化し、より効果的なものにすることができるでしょう。大統領、この取り組みを支援していただき、ありがとうございます。

 4万9千人の軍人の家族の住宅事情が改善され、10万人がアパートを借りるための補助金を受けています。

 私たちは、軍隊医学の発展に大きな関心を寄せています。軍隊で行われる予防医療対策のおかげで、過去10年間で病状の発生率は30%以上減少しました。質の高い医療支援を提供する軍用医療施設の数は3倍に増え、提供される医療の範囲も2倍になりました。28,000人以上の患者がこのような医療支援を受けています。

 特殊軍事作戦で我が国の戦地衛生兵たちはその価値を証明しました。応急処置は10分以内に行われます。負傷者は1時間以内に医療団へ、24時間以内に軍病院へ搬送されます。

 避難段階での死亡率が低下しました。病院での死亡率は0.5%以下になり、これは軍事医学の歴史上最も低い数字です。

 ご指示のとおり、2027年まで軍の医療段階を近代化する取り組みを開始しました。カザンに150床の近代的な軍用病院が開院しました。リャザン、ユジノサハリンスク、ブリャンスク、クルスク、ベルゴロド、カスピエスク、セヴァストポリ、ミルニー、そしてウラジカフカズに9つの軍事病院が建設中です。カムチャッカの独特な温泉保有地に健康リハビリテーションセンターの建設が完了しました。

 国防省はCOVID-19に対して組織的な戦いを行っています。第6波で発病率が頂点に達するのを防ぎ止めました。

 私たちは、3,000を超える建物や構造物を建設し、軍事建設複合施設に関するすべての計画を達成し、戦略核戦力のための基盤施設整備に特別な注意を払いました。今年は、アバンギャルド、ヤーズ、サルマットなどのミサイル体系を含む650の高技術部隊を作り上げました。

 ガジエボにある北方艦隊の沿岸エネルギー・社会基盤施設を立ち上げました。カスピ海艦隊の基地に1,154mの停泊所を供用開始し、さらにもう一つの停泊所の建設が完了しました。空軍配備体制の拡充の一環として、15の軍用飛行場の基盤組織を再構築し、すべての最新航空機に対応できるようにしました。軍関係者が永住できる町の整備に向けた取り組みも計画通りに進みました。公園と兵舎宿舎区で625棟を完成させました。

 ご指示に従い、鉄道部隊はバイカル・アムール本線のウラクからフェヴラルスクまでの339キロメートルの区間の再建を続けており、すでに予定作業範囲の約半分に当たる約300万立方メートルの土盛りを完了しました。

 国防省は大規模な愛国教育・文化計画を実施しました。28の都市で軍事パレードが開催され、伝統的な海軍のメインパレードも行われました。あなたの指示により、全国民の重要な象徴であるサウル-モギラが、わずか90日で修復されました。この頂上には、再び永遠の炎が燃えています。

 ロシアの全地域で125万人以上の子どもたちが参加している「若い軍隊」運動を中心に、青少年の軍事・愛国心教育の推進に組織の広範な努力を結集して取り組みました。

 私たちは、ロシア連邦の各地域と協力し、軍事的愛国青年意識のためのアバンガルド教育と方法論センターを拡大することに取り組んできました。2022年には、20の地域センターと、人口10万人以上の都市に25のセンターを開設することができました。昨年1年間で、88のアバンガルド・センターで15万人以上の高校生がコースを受講しました。このようなセンターの設置は、全国の青少年の基礎軍事訓練と愛国心教育の基盤にならなければならないと考えています。

同志最高司令官殿

 全体として、軍隊は2022年に掲げた目標を達成し、戦闘能力を13%以上向上させ、国の防衛力を必要な水準で確保することができました。

ロシアの安全を増強する方策

 NATOがロシア国境付近で軍事力を増強し、フィンランドやスウェーデンを新加盟国として受け入れて同盟を拡大しようとしていることを考えると、ロシアの北西部にそれに対応する軍事部隊を作ることが必要です。

 軍隊の人員配置については、徴兵年齢を18歳から21歳に段階的に引き上げるとともに、徴兵年齢の上限を30歳に引き上げる必要があります。兵役を開始する国民が初日から契約兵役に就けるようにしなければなりません。

 モスクワ軍管区とレニングラード軍管区を、軍隊の中に二つの共同戦力戦略領土部隊として創設しなければなりません。

 我々は、軍隊の構成と構造の面で支部を改善し続け、部隊と編成の訓練と配備に関する司令部の責任を増大させなければなりません。統合軍を含め、ケルソンとザポリージャに新たに2個機動歩兵師団を、カレリアに陸軍軍団を創設する必要があります。

 西部、中部、東部の各軍事地区と北方艦隊で、7個機動歩兵旅団を機動歩兵師団にする必要があります。空挺部隊は、さらに2個航空攻撃師団を獲得する必要があります。

 各複合軍(戦車)には、その中に複合航空師団と、80から100機の戦闘ヘリコプターを持つ陸軍航空旅団が必要です。これに加えて、さらに3つの航空師団司令部、8つの爆撃機航空連隊、1つの戦闘機航空連隊、6つの陸軍航空旅団を追加する必要があります。

 戦略軸に沿って砲兵予備隊を構築するための超重砲兵旅団だけでなく、5つの地区砲兵師団を創設する必要があります。

 既存の海軍歩兵旅団を基礎に、海軍の沿岸部隊として5つの海軍歩兵旅団を創設する必要があります。

 ロシアの安全保障を確保するためには、軍隊の規模を150万人に拡大し、そのうち69万5千人を契約兵力とする必要があります。

 2008年から2012年にかけてのアウトソーシングへの移行により、陸軍の整備部隊は衰退し、武器や機械の運用状況に悪影響が出ました。2012年には、これらの構造を復活させるための取り組みが行われました。今回の特別軍事作戦では、軍隊の中で保守・修理部隊をさらに発展させる必要があることがはっきりしました。来年は、3つの修理工場を作り、部隊内の整備部隊を強化する予定です。

 徴用工事務所の職員は、軍の役職の増加に伴い、連邦国家公務員の地位を得ることになります。これらの徴用工事務所のデジタル技術への移行を完了させなければならない。

同志最高司令官殿

 あなたの同意を得て、上記の計画とその実施は、定められた手順に従い、軍隊の発展計画に含まれることになります。

2023年の優先事項は次の通りです:

 特別軍事作戦をその目標が完全に達成されるまで継続すること。ロシア軍は、ナゴルノ・カラバフとシリアの平和と安定を確保すること。

 NATOのさらなる東方拡大から生じる脅威に重点を置いた一連の作戦および戦闘訓練措置を完全に実施すること。

Zapad-2023演習の準備と実施のため。

大陸間弾道ミサイル「ヤーズ」「アバンガルド」「サルマット」を搭載した22基の発射台を戦略ミサイル部隊の戦闘任務に投入すること。

 航空戦略核戦力として、Tu-160戦略ミサイル空母3隻を就航させる。海軍に原子力潜水艦「インペラートル・アレクサンダー3世」、潜水艦4隻、そして水上艦12隻を配備。

 高精度極超音速ミサイル体系「キンザランド・チルコン」の供給を拡大すること。その他の最新兵器の開発を継続する。

 軍の組織において動員された市民の補充と新しい編成の募集を考慮して、年末までに契約に基づいて勤務する軍人の数を521,000人に増やすこと。

同志最高司令官殿

 ご指示の通り、来年も引き続き軍備の整備と戦闘力の強化に努めてまいります。

 業績の詳細については、取締役会の非公開部会で説明します。

ご清聴ありがとうございました。

以上で私の報告は終わりです。

ウラジーミル・プーチン:同志のみなさん、

 伝統に従って、私はこの会議の結論として一言だけお話します。大雑把な言い方ですが、私たちにとって関心のある事柄だと思います。少なくとも、これからお話しする事柄は、常に関心のあることですが、現在の状況においては特にそうだと思います。

 私は何度も指摘し、論文にも書いてきましたが、戦略的敵対者の目的は、わが国を弱体化させ、分裂させることです。これは何世紀も前からそうであったし、今も何も新しいことはありません。彼らは、わが国は大きすぎて脅威となる、だから縮小し、分割しなければならない、と考えているのです。過去何世紀もの間、どこを探しても、これが彼らの目標だったのです。今は例を挙げませんので、関連資料でご確認ください。彼らは常にこの考えとそのような計画を育み、何らかの形でそれを実行に移せることを望んできたのです。

 私たちとしては、常に、あるいはほとんど常に、全く異なる方向性と目標を追求してきました。いわゆる文明世界の一員になりたいと常に考えてきた。ソビエト連邦が崩壊し、私たち自身がそれを許した後、私たちはなぜかそのいわゆる文明世界の一員になる日が来ると思っていました。しかし、私たちの努力や試みにもかかわらず、彼らは誰もそれを望んでいないことが判明しました。私たちはもっと親しくなろうと、その世界の一員になろうとしました。しかし、無駄でした。

 それどころか、彼らは、コーカサス地方の国際テロリストを利用するなどして、ロシアを終わらせ、ロシア連邦を分裂させようとしたのです。この部屋にいる多くの皆さんは、1990年代半ばと2000年代初頭に何が起こったかを知っているので、これを証明する必要はないでしょう。彼らはアルカイダやその他の犯罪者を非難すると言いながら、ロシアの領土で彼らを利用することは容認されると考え、彼らにロシアと戦い続けるよう、物質、情報、政治、その他あらゆる支援(特に軍事支援)を提供したのです。私たちは、コーカサスの人々、チェチェンの人々のおかげで、そして私たちの軍人の英雄的行為によって、歴史の中のあの複雑な時期を乗り越えたのです。私たちはそれらの試練を乗り越え、その過程でより強く成長したのです。

 そこから、よく言われるように、離陸したのです。誰かを怒らせるわけではありませんが、やはり地政学的なライバルは、自分たちの課題を追求するためにあらゆる機会を利用し始めたと言えるでしょう。彼らはウクライナを中心としたソビエト後の空間全域で人々を洗脳し始めたのです。そして、彼らはそのことにかなり成功し、ソ連時代にはこれらの問題に取り組む完璧な機関を持っていたので、よく準備されていました。

 2014年のウクライナでの政府クーデターの後--新しい地政学的環境で関係を改善しようと数十年を費やしたことを強調しておきますが--私たちは隣人関係だけでなく兄弟関係を築くためにあらゆることを行いました:彼らに融資し、ほとんど無償でエネルギー資源を供給したのです。これは何年も続きました。そして、何の効果もなかった。つまり、無駄でした。

 ソ連が崩壊したとき、ウクライナはソ連から脱退したことを思い出してください。独立宣言の中で、確か--実は当時、ロシアの指導者はこれを考慮していたと思うのですが--ウクライナは中立国であると書いています。このため、当時のロシアの指導者たちがこうした脅威を感じなかったのは理解できます。ウクライナは中立国であり、同じ文化を共有し、共通の精神的、道徳的価値観を持ち、過去を共有する兄弟国であると考えたのです。脅威を感じることはありませんでした。しかし、我々の敵は自分たちの目論見を止めてはいませんでした。それがかなり効果的であったことを我々は認識しなければなりません。

 私たちは、このような関係を改善するための努力に望みを託しました。と、思います。しかし、効果はなく、期待する目的には到達しませんでした。強調したいのは、私たちは何も自分たちを責めることはないということです。私は全責任を持って、こう申し上げます。

 この件に関する私の立場はご存知の通りです。私たちは常にウクライナの人々を兄弟国として扱ってきました。今もそう思っています。現在起きていることは、もちろん悲劇です。私たち共通の悲劇です。しかし、それは私たちの政策から生じたものではない。そうではなく、ロシア世界を分裂させようと常に願ってきた他国、第三国が行った政策の結果なのです。

 それがある程度成功して、私たちは今のような瀬戸際に追い込まれたわけです。

 そして、2014年のクーデターの後のことです---このクーデターの理由については申し上げません。受け入れがたいものだったということだけは言っておきます。ご記憶でしょうか、2014年2月、ポーランド、フランス、ドイツの3人の外相がキエフに到着し、野党と現政権の合意の保証人として署名を入れました。その数日後にクーデターが起こりました。関係者全員この保証について忘却しました。そんな保証はまるでなかったかのようです。どうすればよかったのでしょう。「友よ、私たちは保証人であり、ヨーロッパの主要国である。だから、交渉のテーブルに戻り、投票に行き、政治的手続きでこの権力問題を解決してください」と言うだけでよかったのです。それだけでよかったのです。

 特に当時の大統領は、早期選挙を含む野党の要求をほとんどすべて受け入れていたので、良くも悪くも、当時の政府は確実に選挙に負けていたでしょうと、誰もが完全にわかっていました。そして、「同僚たち」に、なぜクーデターを許したのかと尋ねても、彼らは何も答えられないのです。彼らはただ肩をすくめて、ただ起きたことだと言うだけでした。やれやれ。ただ起きただけ?そうやって、親ロシア派軍はひとりもいないし、ロシアとの関係発展に少しでも賛成する政治家もジャーナリストも公人も、ただ路上で殺されただけ、と私たちに教えてくれました。そして何か調査しようなどと考える人はゼロでした。私たちは、かつての共通の国のこの部分と関係を回復する機会は全く与えられないし、端的にその機会は皆無だということが明らかになったのです。まさか?しかし実際はそうなのです。彼らは恥知らずで鉄面皮なやり方でテロを行いました。

 ウクライナ市民の洗脳と、何十年も続いたネオナチと極端な民族主義的基底概念が、ともかくも、功を奏しました。

 これはどういうことなのか?ヒトラーの従者が国家的英雄に祭り上げられたが、誰も気にしていないようです。確かに彼らは国粋主義者ですが、どんな国にもナショナリストはいますし、私たちにもいます。しかし、私たちはネオナチズムやファシズムを堂々と公言する勢力と戦っているのであって、それを国策にまで高めているわけではありません。一方ウクライナではそれが国策になっています。なのに、誰もそれに気づかないふりをしています。国粋主義は国益のために戦うことなので悪いことではないように思えますが、それがナチス、ネオナチの基底概念に基づいて行われていることは、誰も触れません。首都を含む主要都市の中心部で卍を身に着け闊歩していますが、まるで何も異常がないかのように振舞っています。なぜか?それは、1990年代から2000年代初頭にかけて、ロシアと戦う国際テロリストに対して彼らが使った手法と同じだからです。失礼ながら、彼らはそれがテロリストであること、国際的なテロリストであることを気にも留めなかった。ロシアと戦うために彼らを利用したのだから、気にもしなかったのです。今も同じです。ネオナチがロシアと戦うために利用されているのです。彼らがネオナチであるという事実は誰も気にしません。彼らにとって重要なのは、ロシアと戦っていることなのです。しかし、私たちは大いに気にします。

 当時、ウクライナを含むこれらの勢力との衝突が避けられないことは明らかで、問題はいつそれが起きるか、ということだけでした。軍事作戦や敵対行為には、常に悲劇と人命の損失がつきものです。私たちはそれを承知しています。しかし、避けられないことである以上、明日やるより今日やったほうがいい。聴衆の皆さんは、私が何を言っているのか、我が国の軍隊の状態や、我が国にはあって他の国にはない高度な種類の武器やその他の装備の利用可能性などを含めて、完全に理解していると思います。以上のことが、私たちにたしかな安全を与えてくれます。

 私たちの有利な点は、①核トライアド、②航空宇宙軍、③一定の部門からなる、等々です。私たちはこれを知っており、すべてを持ち、そのすべてが適切な状態にあります。また、陸上部隊、対砲兵戦、通信体系など、軍隊を改善するための課題も見えています。この場いらっしゃる皆さんは、私が言っていることを理解していますし、きっと同意していただけると思います。

 強調したいことがあります。私たちロシア(世界でも稀な国です。我が近隣諸国とも全く違います。彼らは、お金や武器、弾薬といった外国からの施しがなくなれば、すっからかんです--ロシアはそんな国ではありません)には、すべてが揃っています。私はこれを強調したい:我々はあらゆるものを持っており、この潜在能力を構築するための資源を持っており、我々はいかなる怠慢もすることなく確実にこれを行うでしょう。しかも、他の多くの国とは異なり、先ほど申し上げたように、我々は自国の(このことを強調したい)科学技術、生産、人材の資源に頼ることになるのです。さらに、経済成長や社会発展を損なうことなく、国民に対する社会的義務を確実に果たしながら、目標を達成する。ここで説明した計画、すべての長期目標は達成され、すべての計画が実行されます。

 私たちは、防衛力を強化するために、それが正当であるかどうかにかかわらず、経済に害を及ぼした過去の過ちを繰り返すつもりはありません。私たちは、国や経済を軍事化するつもりはありません。なぜなら、現在の開発段階や経済構造では、軍事化する必要がないからです。繰り返しますが、私たちは国民や経済、社会分野に害を及ぼすような、本当に必要でないことをするつもりはありませんし、するつもりもありません。

 私たちは、ロシア軍と軍事部門全体を改善します。私たちは、それを冷静に、日常的に、一貫して、焦らず行います。我々は、特別軍事作戦の目標を達成するだけでなく、一般的に防衛力を強化するという目標を達成します。

 軍隊のさらなる構造改革についてのご提案には賛成ですが、理事会での議論を経てご報告いただき、改めて詳しくお話を伺いたいと思います。

 私は、皆さんの努力に感謝し、私の自信を皆さんと共有したいと思います。皆さんも、ロシア全土に広まっている感情を感じているはずです。全国民が軍隊に注目し、皆さんの成功と幸運を願っているのです。そして、私たちは、私たちが計画したすべての結果、そしてあなた方が策定し、私に報告しているすべてのことを達成することを確信しています。私たちが設定したすべての目標は、必ず達成されると信じて疑いません。

ご清聴ありがとうございました。

幸運を願っています。

ロシア制裁での勝者は一国のみーロシア政府の主張

<記事原文 寺島先生推薦>

Only one winner from anti-Russia sanctions – Moscow
The US has capitalized on the restrictions, selling LNG to Europe at lucrative prices, the Russian Finance Minister said

米国はこの制裁を利用して、欧州にLNG(液化天然ガス)を破格の高値で売っていると、露の財務大臣は主張

出典:RT

2022年12月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月9日


ロシアのアントン・シルアノフ財務大臣©  Sputnik / Dmitry Astakhov
 
 ウクライナでの紛争に関わって、西側がロシアに課している制裁は、欧州各国に大きな負担をかけている一方で、米国だけが、この制限措置により利を得ている、とロシアのアントン・シルアノフ財務大臣は、12月24日(土)に述べた。

 アシャラク・ニュース(アラブ系のメディア)の日刊紙の取材に答えた同大臣は、西側による制裁は米国が目的を達成する手助けになっている、という考えを示し、「米国による欧州市場への石油やガスの供給が増加している」と語った。

 しかし、米国からのエネルギー輸入は欧州各国にとっては、費用がかかることが判明し、インフレの急上昇と、欧州各国の業界の競争力の低下を招いてしまった、とシルアノフ大臣は述べた。

 同大臣は、西側による制裁と9月のガスパイプライン、ノルド・ストリーム1、2爆破事件は、ともに、「米国政府から欧州各国への高価な液化(天然)ガスの供給を増やすために実行された」とも述べた。


関連記事:Russia to divert gas away from West – official

 「米国は利を得て、欧州は損失を受けている」と同大臣は解説した。ロシア政府はこの破壊行為をテロ攻撃だとしており、この爆発事件で最も利を得るのは、米国政府であると主張している。米国政府はこの事件への関与を否定しているが、アントニー・ブリンケン国務長官はこの事件は、欧州がロシアのエネルギーから手を引く「またとない好機」と述べている。

 シルアノフはさらに、制裁がロシアに影響を与えていることを認めた。「しかし、この制裁でより強く影響を受けているのは欧州であり、おそらくロシアよりもずっと苦痛を味わっている」と同大臣は付け加え、制裁ということばが、もはや口先だけになってしまっている状況を指摘した。

 同大臣は、ロシアの石油に対してEUが上限価格を設定したことに触れ、「これにより、価格や市場の歪みが生じるであろう」とし、西側の強制措置のもとでの契約を通しては、原油を供給しないというロシアの立場を再度明らかにした。

 ロシアの石油会社は、輸入先を西側から他の地域へ移行している、と同大臣は述べた。さらに、「新たな市場や物流を探しているところだ。その方が、より高価な取引ができる可能性もある」 ともした。

 今月(12月)上旬、EU、G7諸国、オーストラリアは、ロシアの海上輸送石油に上限価格を設定し、その価格を1バレル60ドルとした。この措置により、定められたこの価格やそれ以下の価格で購入されていない原油の輸送について保険などの事業を行うことも禁じられた。

 この措置を受けて、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、この措置により世界の石油市場に大混乱を招くと警告した。またロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この価格上限措置を支持している国々には石油を売らない計画を立てている、と語った。

ホロドモール飢饉はスターリンがウクライナを標的に人為的におこしたものだという神話

<記事原文 寺島先生推薦>

The Holodomor Myth

ホロドモール神話

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年12月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月9日



 今年(2022年)12月2日、私はミシガン州アナーバーで、3日にわたって行われた「研修」の2日目に参加しようとしていた。この研修の主催者は、「アナーバー反戦連合」という組織だった。初日の12月1日、主催者が「パボロジー(パブ仕様)」と名付けた素晴らしい催しが、「オリジナル・コテージ・イン」というレストランの2階のバーで開催された。立見席のみだったが、非常に混雑していて、参加者からは多くの(本当に多くの)優れた質問が出された。

 そしてその翌日の12月2日、「信心への旅」という名の教会で、私は尊敬すべき人々の集まりの中にいた。私は現地に早く到着し、会場内の脇に立って、考えを思い巡らしていた。(人前で話す時はいつも、その時にしかできない話をするのを目的にしているので、1時間の発表時間をうまく繋げられるよう、話すべきいくつかの話題の効果的な順番を考えていたのだ)。

 会場内に入ると、周りをさっと見渡してみた(そうするのが昔から私の習慣だ)ら、直ぐに目に止まったのは、一人の中年男性で、その男性は出席者用に並べられた椅子に座っていた。わたしがこのような催し会場に早く着いたときはほとんど、もう既に席に着いている人々は、少なくとも目で会釈してくれたり、笑いかけたりしてくれるものだ。しかしこの男性はそうはしなかった。そうはせず、手に持った一枚のチラシを凝視していた。そして目を上げた時、その顔は私を歓迎していない表情だった。

 私は、ウクライナ政府が支援している「ブラックリスト(大統領下の組織の一つである対偽情報対策センターが発行している)」に自分の名が挙げられていることを、軽く見てはいない。ロシアの喧伝家であり、情報テロリストだと名指しされ、戦争犯罪者として逮捕され、起訴される対象にされていることは笑いごとではない。同じことが、「ミロトウォレッツ(平和実現者)」の殺害すべき人物リストについても言える。これは、ウクライナ保安庁(SBU:諜報機関)が出しているものだ。この一覧表は、まさに「死のための一覧表」であり、殺された人物には、ウクライナの秘密機関の手により「消された」という印が加えられるものだ。

 つまり、この2つのリストのために、私の背中には巨大な標的が描かれているようなものだ、ということだ。そのリストを出している組織のうちのひとつには、私の祖国の政府が多額の支援を行っている。その目的は、憲法で保証されている、私の言論の自由の権利を抑圧するためだ。さらに、ここ米国では、ステパン・バンデラが提唱していた憎むべき基本概念が積極的に育成され、推進され、「英雄たちの公園」で展示されている。その公園にはバンデラと彼のナチスの同胞たちの胸像が、堂々と展示され、崇拝されている。そしてその公園の場所というのは、米国国会議事堂に面している。その国会議事堂では、かつて国会議員たちが、アゾフ大隊などのバンデラを信奉する組織の装備や訓練に、米国民の税金を使わせないという正しい決議があげられていた。 以前国会は、これらの組織は白人至上主義のもとでのネオナチのテロ組織だと捉えていた。しかし今は堂々と、アゾフ大隊の高官たちが国会で歓迎され、国会にいる偽善者たちから賞賛され、祝福を受けている。

 こんな政治的な暴力が吹き荒れる状況に置かれているので、そんなに苦労しなくても、バンデラ主義を心から信奉している人物が描く筋書きに出くわせるのだ。というのも、そんな人物は、米国政府が「情報テロリスト」と決めつけた人に対して行動を起こし、その人を消すことにお上から公式のお許しがもらえたと考えているからだ。

 そんなことを考えていると、主催者の一人が、私が立っていたところに、まさにこの男を案内してきた。この男は、オーバーコートを身にまとっていて、胴体や腰の部分はほとんど見えず、胸の前で腕を組み、手に書類をもっていたが、それ以外のことは知る由もなかった。その主催者の一人は、私に一枚の紙を手渡した。それは男が手に持っていたチラシの一枚だった。そして「この人があなたに質問があるそうです」と私に告げた。

 そのチラシ紙面の上部には、大きな字で「ホロドモール」、そして副題として「1932-33のソ連によるウクライナに対する人為的な飢餓工作」と書かれていた。字は赤と黒、すなわち血と土の色、バンデラ主義者が使う二色だ。

 チラシの最下部に書かれていた言葉は、「Slava Ukraini~ウクライナに栄光あれ」。バンデラ主義者が敬礼として使用する言葉だ。

 私の中で警笛が鳴った。部屋の様子をさっと見てみると、話をしに来た人々で急に混雑していた。この男の手助けをしようとしている人はいなさそうだったが、その状況が急変する可能性もあった。私は厚手の外套を纏ったその男に一歩近づき、迫り、その男が腕を出せないようにした。そうしながら、この男の目を睨み、何か良からぬ意図があるかどうかを探った。

 彼の目に映っていたのは、恐怖と怒りだった。

 「ホロドモールのことを知っているか?」とこの男は挑みかかるかのような声で聞いてきた。

 「知っているよ」と私は答えたが、目は依然として彼を睨み続けていた。

 「ロバート・コンケストの『悲しみの収穫』[1932-33に起こった飢饉についてきちんとした研究をもとに書かれた初めての本。この飢饉は、ウクライナも含めたソ連全体を襲ったもので、何百万人もの死者を出した]」なら読んだよ。80年代に、この本の初版が出た時にね。」

 「ということは、ウクライナの人々が受けた大量虐殺のことも知っているんだな?」とこの男は言った。
「何百万ものソ連国民を襲った悲劇のことなら承知している。ウクライナやベラルーシやロシアやカザフスタンの人々の、ね」と私は答えた。

 「お前はロシアの偽情報拡散家だ!!」とこの男は叫んだ。私はもううんざりした。この男は、誰でも喧嘩をふっかける相手を探していただけだ。わたしはもう半歩前に出て、さらにこの男に迫った。ナイフか何か武器を隠していたとしても、襲ってくる前に武器を奪えるところまで詰めたのだ。

 「クソ野郎」と私はいった。ハッキリと。この言葉が、この男と主催者をビックリさせた。「ここにきて、こんな話を俺に言うなんて、お前はいったい何様のつもりだ?」

 この男は憤慨した。「クソ野郎だって、ここはどんな催しなんだ?クソ野郎って?」

 私はさらに近づき、この男を睨んだ。「何だ。殴ろうとでもいうのか?」「いや」と私は答えた。頭突きをした後で、膝でみぞおちを蹴り、頭を踏みつける、が正解だった。そこまで行ってたら、の話だが。

 この男も睨み返してきた。「メンチの切り合い、上等だ」と。

 私は黙っていた。

 「お前は海軍にいたんだろ」とこの男。「俺を殺したいのか?」

 さてね、と私は心の中で思った。

 主催者が即座に割って入り、私たち2人を引き離した。この主催者は、男を落ち着かせようとしたが、彼はずっと混乱した様子だった。 私は彼から一歩離れたが、彼の手から目を離さなかった。そして、ずっと部屋の様子を探って、この男に手助けするものがいないか、気を払っていた。

 この男が暗殺者ではなく、ウクライナの件で誰かと喧嘩をしたがっている輩だということがはっきりしてきた。

 「ホロドモールについて何を知ってるって言うんだ?」と聞いてみた。「スターリンが起こした大虐殺だったんだろ。それを今、プーチンが引き継いでるんだ。」私は笑った。「お前は科学者か?ロシア研究の専門家か?」と聞いた。
「俺は政治学者だ。」
「ロシア語は話せるのか?自分でこの件について研究したことはあるのか?」と私は問いただした。
「ウクライナで5週間過ごしたぞ」
「いつ戻ってきたんだ?」と私はさらに聞いた。
「先週だよ」

 「分かった、じゃあハッキリさせよう」と私はとどめをさした。「お前は5週間ウクライナにいたんだな。お前の専門性なんてその程度さ。そんなお前が、俺とホロドモールの話をしたがってるのか?クソ野郎。ここから出ていけ。」

 この時点で、主催者が助けのものを連れてきて、この外套を纏った男は自分の席に戻されたが、その間ずっと私に対する文句を会場内の皆に叫んでいた。

 その後この催しは進行し、本当に大成功だった。外套を纏ったあの男には、質問の機会が与えられ、実際に質問した。私の答えがこの男のお気に召さなかったのは明らかだった。というのも、この男は大声で私のことを、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の操り人形呼ばわりしていたからだ。その後、この男は立ち上がり、この催しを妨害するという使命を捨て、立ち去った。

 その後、私はこの男が出席者に配っていたチラシの一枚を手にした。中身を読み終わってはっきり分かったことは、この男がもっと大きな政治的な運動の手のものであるということだ。その運動とは、ホロドモールに関する言説を利用して、ロシアを中傷し、ウクライナ国家主義を広めようとするものだ。

 チラシには高らかにこう書かれていた。「今こそ認識せよ。現在ウクライナで起こっている戦争は、ロシア国家が大虐殺を行うとしている政策の拡散によるものであることを。このような政策はソ連が弄していた手口で、それと同じ手口をウラジーミル・プーチンも取り続けているのだ。これは、ロシアがかつてソ連領であったが、今はロシア領内にはない諸共和国にまで領土を広げようとするものだ」

 さらにチラシにはこうあった。「今こそ、ウラジーミル・プーチンの主張を拒もう。プーチンの言い分は、ウクライナ人とロシア人は、“ひとつの民族”であるというものだ。それをこの戦争の口実にし、防御に使っているのだ。」

米国は、生物兵器研究所をウクライナ国外に移転しようとしているーロシア政府の主張

<記事原文 寺島先生推薦記事>
US moving bioweapons research out of Ukraine – Moscow

Unfinished projects are being relocated to Central Asian and Eastern European countries, according to the Russian military

米国は、生物兵器研究所をウクライナ国外に移転しようとしているーロシア政府

未完成の研究を、中央アジアや東欧諸国に移転しようとしている、とロシア軍は主張

出典:RT

2022年12月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年1月6日


©  AFP / Arun Sankar

 米国政府は、自国の生物兵器研究所をウクライナ国外に移転しようとしている、とロシアの放射線・化学・生物防衛部隊隊長が主張した。この発言は、トランプ大統領政権下で研究施設が存在したことが明らかになったことを受けてのものだった。 

 「国防総省は未完成の研究を、中央アジアや東欧諸国へ移転しようと積極的に動いています」とイーゴリ・キリロフ放射線・化学・生物防衛部隊隊長は、12月24日(土)の記者会見で述べた。

 米国はさらに、カンボジア、シンガポール、タイ、ケニアなどのインド・太平洋岸諸国やアフリカ諸国との提携も広げており、「国防総省は生物兵器研究の危険を抑え込めることがしっかりとできるこれらの国々にも関心を示しています」と同部隊長は付け加えた。

 同部隊長によると、ウクライナに存在する、化学兵器禁止機関に出席していた米国の代表は、米国が化学兵器条約(CWC)に違反しているというロシアからの糾弾に対する回答を拒否したという。

 「米国のこのような態度や、CWCの検証活動の再開に前向きになろうとしない米国の態度からもはっきりとわかることは、米国政府には何か隠したいことがあるということと、この会議で遵守すべき「透明性を確保する」ことは米国の眼中にないということです」と同部隊長は述べた。

関連記事:UN Security Council votes against probe into US biolabs

 「しかし、ロシアからの報告は他の国々に広く知られることとなり、化学兵器禁止機関加盟諸国が、軍事用生物研究の分野において、米国政府と提携することは非常に危険であることを再認識することになりました」とキリロフ部隊長は語気を強めた。

 ロシア軍は3月依頼、米国が支援していたウクライナの生物研究所の研究内容を徐々に明らかにしてきている。米国政府は「生物兵器研究をしていた」というロシア政府の主張を否定し、このような主張は、軍事作戦を正当化するためのロシアによる、偽情報であり、陰謀論であるとしている。

ウクライナ戦争最前線。戦闘面と経済面から考察。

<記事原文 寺島先生推薦>

Ukraine: Counter Artillery War – Financial Disaster

ウクライナ:対砲撃戦-金銭面での大惨事

筆者:アラバマの月(Moon of Alabama)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年12月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月4日

 今年(2022年)の中旬以来明らかになったことは、ウクライナでの戦争は、主に砲撃戦だということだ。

 ウクライナはこの戦いにおいて明らかに負けている。というのも、砲弾の量において、ロシアはウクライナが利用できる量の8倍の砲撃を発射している。それに対して米国と欧州諸国が、介入してきた。120ほどのM777榴弾砲と、砲兵武器で満杯にした多くのトラックが、ウクライナ軍に送られた。何百トンもの砲弾が運ばれた。米国と米国のいくつかの同盟国は、大砲の飛行範囲以上の武器を発射できるHIMARS(高機動ロケット砲システム)を供給した。

 ウクライナ側のこの体制に、ロシア軍は対応した。ロシア軍は、兵站組織と指揮組織を分配することで、HIMARSの標的を制限させる策に出た。さらにロシア軍は、電子戦の使用を強化し、ウクライナ軍が、標的を見つけるために使用しているドローンを撃ち落とした:

 電子戦術により、ウクライナ側の無人航空戦闘機が果たしてきた機能が阻害された。この戦闘機を使った戦術は戦争勃発当初の数ヶ月間は、キーウ側でもっとも効果的な戦術のひとつだった。 ウクライナ側は、優れた情報活動に頼っていたのだ。それを大きく支えていたのは、UAV(無人戦闘航空機)だった。それによりウクライナ側は、ロシアと比べてより小型の武器類しか所有していないが、その武器の精度を上げ、大きな銃口やロケット発射装置のある武器をもつロシアと対抗できていたのだ。

 しかし、ロシアによる電子戦により、これらのドローンの操縦や通信が妨害され、ウクライナ側が頼みの綱にしていた精度の高い攻撃が不可能になった。ロシア側にとっては、「(ウクライナ側の攻撃の)精度が落ちたことは、部隊の生存にとって決定的だ」と、専門家であるミハイロ・ザブロツキー氏、ジャック・ワトリング氏、オレクサンドル・ダニリューク氏、ニック・レイノルズ氏が、ロンドンの英国王立防衛安全保障研究所に出した論文の中で書いている。

 「クワドコプター(4個の回転軸を持つドローン)の平均耐性期間は、約3回の飛行だった」とザブロツキー氏、ワトリング氏、ダニリューク氏、レイノルズ氏は記載している。 「翼が改良された無人戦闘航空機の平均耐用期間は約6回の飛行になり」、「総計すれば、無人戦闘航空機による作戦が成功したのは3分の1程度だと言われている」


 ウクライナ側の武器の正味の戦闘能力が低下したため、より狙いやすい対象に、標的が変えられることになった。11月下旬から、ウクライナ側は砲撃やミサイルによるドネツク市内への爆撃を再び強化し始めた。ドネツク市内には、軍事施設や兵舎さえほとんど存在しないので、この攻撃は明らかに一般市民を標的にしたものだった。

ドネツク市内の打撃状況を示す「西側が提供した」地図
12月1日


12月5日

12月18日


(以下は訳者による参考画像)


朝日新聞のサイトより

https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ6F6D2HQ6FUHBI015.html


 ロシア語紙は、ウクライナ側の大虐殺により一般市民の犠牲者が出たと報じている。ドネツク共和国の政治当局の代表者は、この脅威に対して緊急作戦を取るよう求めている。

 厳しく包囲された前線においては、その前線を速やかに突破し、前線の向こう側にいる砲兵を捕らえることは不可能なので、ロシア軍は別の戦略を取った。ドネツク周辺のウクライナ軍による砲撃に対する攻撃に備えて、特殊組織が立ち上げられた。より多くの対砲撃レーダーが運び込まれた。発射場所を探索するため、衛星画像の分析も増やされ始めた。さらにより広範囲に対応できる対砲撃用砲台の数も増やされた。

 ここ10日間で、この作戦は大きな効果を見せ始めた。ロシア国防省からの最近の日報の多くは、この対砲撃作戦について焦点が当てられている。以下は、昨日(12月27日)の報告からである:

 対砲撃戦において、米国製M-777砲が一機発見され、操縦士と共に破壊された。場所は、ネタイロヴォ市近辺で、その操縦士はドネツクの住宅街を砲撃していた。もう1機のM-777砲がプレドラジェンカ(ザポリージャ地域)の近辺で破壊された。

 ウラガンMLRS(複数発射ロケット発射機)一機とグラートMLRS二機が、ネフスコエ(ルガンスク人民共和国)とゼベルスク(ドネツク人民共和国)近辺で破壊された。

 ウクライナ2S1グヴォズジーカ自走榴弾砲が、クラスノゴロフカとプレチストフカ(いずれもドネツク人民共和国)近辺の発射場所付近で破壊された。

 4機のMsta-B榴弾砲と2機のD-20榴弾砲がクピャンスク(ハルキウ州)、ベリカヤ・ノヴォショールカ(ドネツク人民共和国)、ノヴォグリゴローフカ(ルガンスク人民共和国)緊急で破壊された。

 航空防衛設備が、オルギンカとグセルスコエ(いずれもドネツク人民共和国)とペレモジノエ(ヘルソン州)で、ウクライナの無人戦闘航空機を3機撃ち落とした。

 加えて、コストグリゾヴォ(ヘルソン地域)で1機のウラガンMLRS(複数発射ロケット発射機)が、デバルツェボ(ドネツク人民共和国)で、3機の米国製HARM(高速対レーザー)ミサイルが、迎撃された。


 以下は今日(12月28日)の報告だ:

 対砲撃戦において、ドネツク市内の住宅街を砲撃していた、2機の米国製M-777砲と1機のドイツ製FH-70榴弾砲が、クラスノゴロフカ(ドネツク人民共和国)近辺の発射場所付近で破壊された。

 グラード多発ロケット用の3機のウクライナの戦闘機がセベルスク近辺で破壊された。

 3機のウクライナMsta-B榴弾砲が、 ペトロパブロフカ(ヘルソン州)、ベレストヴォエ(ドネツク人民共和国)、 チェルノバエフカ(ヘルソン州)付近で破壊された。

 ウクライナのD-20榴弾砲とD-30榴弾砲が、ゲオルギエフカとマリンカ(いずれもドネツク人民共和国)近辺で破壊された。


 別の報告によれば、敵機を検出して標的を定め反撃砲を発射するまでの所要時間は2分以内だという。 M-777榴弾砲の砲弾の設置と交換には、最大限の人員ときちんと訓練を受けた乗組員がいても最低3分はかかる。つまり、レーダーがウクライナ側のM-777榴弾砲からの発射を検出すれば、砲の準備がなされる前にロシア側は反撃できるのだ。

 この対砲撃作戦は、完全に成功していると言える。ウクライナがドネツク市内に最後に砲撃を行ったのが、12月23日であると報じられている。この作戦は、ウクライナ側が大砲を使い果たすまで、続けられることになるはずだ。今までのところ、ウクライナ側は「西側陣営」が生産できるよりも多くの砲弾を発射している:

 「控えめに見ても、ウクライナ側の砲弾の使用は、おそらく月に9万発くらいです」とバージニア大学の研究所のひとつであるC.N.A.のロシア研究部長であるマイケル・コフマンは、「破綻した戦争」というポドキャストの番組で、先週(12月第4週)に語っていた。さらに、「この数は、現在西側のどの国でも生産できる数を超えています。つまりこれらの砲弾はすべて在庫から使われているということです。銀行預金からお金を引き出しているのと同じようなものです」とも語っていた。

 ウクライナ側で、使える大砲の数が減れば、必要となる新しい砲弾の数も減ることになる。

 このことは、前線の要塞に兵を送りんでいるウクライナ側にとって良くない知らせだ。ウクライナ側が激しく打ち込んでいる砲弾のせいで、今でも既に大きな損失を出している状況が悪化するしかないからだ。この先、いつかの時点のどこかで、前線が破られ、ロシア軍が前進できる余地が生じることになるだろう。

 現在の戦闘は、アルテモフスク(バフムート)近辺に集中している。この都市を保持するために、ウクライナ側の司令官は、予備の武器を投与している。



 ロシアによる止むことのない砲撃のもと、現在バフムート内部と後方に配置されている(ウクライナ側の)16の旅団がひとつずつ粉砕されていくだろう。この戦闘の速度は緩慢で、ロシア側から見て、前線はごくわずかずつしか進まないものだ。しかし、ウクライナを非武装化するという観点において、非常に効果的な戦術だ。戦力の差が明らかなこの砲撃戦のために、ウクライナ側の損失は、ロシア側の損失と比べて何倍もの量になるだろう。

 経済面においては、ウクライナ側は既に戦いで敗れている。ウクライナは、「西側」各国政府からの借金で何とかやり繰りして、今後この借金を返済することはきっと不可能だろう:

 ウクライナ政府はこの戦争中に債券市場で金を工面しようと必死になっていて、ウクライナが集めた以上の金を投資家たちに支払っている、とウクライナ中央銀行は声明を出し、ウクライナが海外からの支援に深く依存している状況を指摘している。

 今年のウクライナ経済は約4割悪化するという見通しが出されており、税収入を使い果たし、 以前計画されていた、経済発展のために使われる予定の支出はずっと延期されている。12月26日(月)に出された中央銀行の声明によると、戦争によるウクライナの金融面のあまり見えていない停滞を指摘している。それは、 市場で金の工面ができなくなっている点だ。2月24日のロシア侵攻以来、ウクライナは戦争前までに溜まっていた借金の借り換えができていない。ウクライナは、当時債券市場で集めた以上の金を投資家たちに払っていたと、中央銀行は発表している。

 これら全ての要因のために、ウクライナの財政は、米国や欧州連合や欧州諸国がそれぞれ差し出す援助や、それ以外の支援者たちに深く依存する形態になってしまったのだ。そうでなくとも、ウクライナの財政は独立後の最も良かった時期でも不安定さを見せていたからだ。

 米国の統制下にある国際通貨基金(IMF)でさえ、ウクライナというブラックホールにこれ以上金を投入する気はないようだ。

 ウクライナ国会が承認した来年の予算案には、約360億ドルの負債も含まれている。支出の約半分は軍事や警察など軍事費関連だ。今年の赤字はもっと高くなっており、月に約50億ドルだ。長期にわたり、独立後、金融危機に見舞われたウクライナを支援してきた国際通貨基金は、この戦争中、大規模な融資の継続から手を引いている。

 「IMFが懸念しているのは、負債の持続可能性です」と語るのは、元経済相でキーウ経済大学のティモフィ・ミラヴァロフ教授だ。「IMFが負債の持続可能性や金融危機を懸念しているとしたら、民間の投資家たちがどう考えているかは想像がつくでしょう。」


 逆に、ロシアとの国際貿易は、今年活況を呈しており、ロシアの財政状況は、先日プーチン大統領が語った通り、「西側」よりも良いようだ。

 まず、予想されていた経済崩壊は起こりませんでした。確かに、私たちは経済が停滞すると発表していましたが、再度その数値を申し上げます。ある約束が、いや予見や希望と言った方がいいかもしれませんが、ありました。それは、ロシア経済は縮小するというものでした。ロシアのGDPは、20%かそれ以上の20%~25%低下するとしていた人々もいました。確かにGDPは下がりましたが、その低下率は20%~25%ではありませんでした。実際は2.5%で済んだのです。これがひとつです。もうひとつは、インフレの件です。申し上げた通り、今年のインフレ率は12%強で済みました。これも経済の実状を現す重要な数値のひとつです。私が思うに、この数値は多くの国々よりずっと良い数値です。G20諸国よりも良いのです。もちろんインフレは良くないことですが、他の国々と比べてインフレ率が低いということは、良いことです。

 これも先程申し上げましたが、来年のインフレ率は、4~5%に抑えることを目標に努力します。それは、最初の四半期の経済状況にもよりますが。少なくとも、私たちはそうなることを期待しています。そして今はとても良い兆候があります。インフレ率が高騰している他のG20諸国では見られない兆候です。

 失業率は3.8%と、歴史的な数値を残しています。予算が赤字なのは確かですが、今年はたったの2%で、来年もそうです。そうなれば2025年には、1%やそれ以下になることが予想されます。私たちの希望は、0.8%になることです。他の国々の状況を指摘させてください。大きく経済発展を遂げている国々も、いわゆる経済先進国についてもです。これらの国々は、我が国よりもずっと酷い赤字に苦しんでいます。米国は、5.7%だと思います。中国は7%を超えています。全ての主要国は5%以上の赤字です。しかし、我が国は、そうではありません。
 
 これは、自信を持って2023年に進むためのとても良い根拠になります。


戦争が終わる時、ウクライナの借金は信じられないほどの額になり、何世代もかけても返せないくらいになっているだろう。外国人に売れる土地も無くなっているだろうし、価値のある産業も残っていないだろう。

 「西側」による対ロ制裁戦争を思いつき、設計し、実行した人々が、実際により大きい害を与えたのは、ウクライナであり、「西側」だった。そしてその規模は予想以上だった。しかしロシアを害することは全くできなかった。こんな不手際を見せた彼らはみな、クビになってもおかしくはない。

ポン引きがウクライナ人女性を売春に誘い込んでいる(チェコ共和国の地方紙の報道)

<記事原文 寺島先生推薦>

ポン引きがウクライナ人女性を売春に誘い込む―メディア
Young single mothers are being targeted for recruitment into the sex trade in the Czech Republic, local outlet claims

チェコ共和国において、若い未婚の母が性産業への勧誘の標的にされていると、地元メディアが主張している。

出典:RT

2022年09月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月4日



© Getty Images / piranka

 チェコ共和国のポン引きたちは、ウクライナ人難民の女性を売春に誘い、中には国境で「勧誘」される人もいると、今月(2022年9月)はじめ、地元の性的サービス提供者支援団体からの話を引用して、チェコのリドフキィー紙が報じた。

 女性保護協会の取りまとめ役、ズデンカ・ペハロワ氏は同誌に対し、「彼女たちはほとんどの場合、家計が苦しいという理由で性産業に足を踏み入れる」と述べ、アダルトサイト上にウクライナ人女性を現地の女の子の4分の1の値段で宣伝する不審な広告があると、同団体に情報が寄せられたことを明らかにした。同団体は以前、一部の女性が国境で売春に「勧誘」されているとさえ報告していた。

 警察は犯罪の発生を確認できなかったが、ペハロワはウクライナ人女性がポン引きの被害にあっていると主張し、最近また新たに同様の不審な広告を発見して警察に再度報告書を提出したという。


関連記事:英国の小児性愛者、ウクライナ難民の子どもを狙う

 ペハロワによると、ポン引きは特に若い母親を標的にしており、子供のいない学生よりも失うものが少なく「安全」だと考えているという。性労働者を支援する団体「危険なき喜び」が支援する顧客の約60%は母親で、主に未婚の母である。

 こうした母親たちの多くは、ウクライナを離れたら生きていくのにどれだけのお金が必要になるかを十分に理解しないまま、取るものも取りあえず家庭内の暴力から逃れてきた。「どんな危機にも、その状況を利用しようとする人たちがいます」と、「危険なき喜び」の広報担当者、パヴェル・ウブランコヴィッチは同紙に語った。

 「外国で、その国の社会制度も知らず、仕事もほとんどないと分かれば、家族の面倒を見るために何でもするようになる」と彼は言った。

 警察の報道官は、個々の広告が犯罪とみなされなかったとしても、「関連する専門家」がこの疑惑を調査中であることを明言した。

関連記事:生活費が英国女性を売春に追いやる―活動家たち

 支援団体「危険なき喜び」の調べでは、新しくやってきたウクライナ人女性は、主にウステツキー、カルロビ・ベリ、南ボヘミア地方で商売をしていることがわかった。彼女たちの中には母国で売春婦をしていた人もいるかもしれない。ただ、彼女たちの存在は地元の売春婦たちにとって脅威と映り、結局は両者の懐からお金を奪っていくことになる。

 ちなみに、チェコ共和国では、1万人から1万3千人が性サービス労働者として働いている。

米国によるイラク侵攻とロシアの対ウクライナ特殊軍事作戦はどこが異なるのか

<記事原文 寺島先生推薦>
ロシアはなぜこのような戦い方で特殊軍事作戦を行うのか?

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年12月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月3日



 ロシアのウクライナにおける特別軍事作戦は、2003年のアメリカのイラク侵攻とは異なる戦い方をしているが、それはロシアの軍隊が劣っていたり、近代戦を効果的に行うことができないからではなく、全く異なる種類の紛争だからである。

- ウクライナは地理的に大きく、人口も多く、軍備や訓練も充実している。

- ウクライナは過去8年間、ドンバス全域で要塞化された陣地を構築してきた。

- これらの防衛には、単に塹壕に座っている歩兵だけではなく、大砲、多連装ロケット発射装置、迫撃砲、戦車、対戦車兵器による長距離の火力支援も含まれている。

- これらの防御を破るには、ロシアはウクライナの長距離重火器を計画的に排除する必要がある。

- ロシアは、ランセットのような徘徊型兵器*を使用して、ウクライナの榴弾砲、ロケット発射機、対砲台レーダー装置、防空システムを破壊している。
*数時間にわたって目標地域上空を「徘徊」し、高価値目標を発見するかもしくは地上管制システムからの指令を受けて攻撃する無人航空機。

- ウクライナの重火器を破壊することで、ロシアは入念な砲撃準備の後、戦車、装甲兵員輸送車、歩兵戦闘車両で要塞を襲撃することができる。

- ウクライナはこのような攻勢の事前準備ができないため、ヘルソン/ハリコフ攻防戦のように多くの人員と装備を失うことは避けられない。

参考文献
ディフェンス・ポリティックス・アジア(防衛 政治 アジア)のサイトから―ウクライナの地図

ゼレンスキーは「帰ろうとしない居候」-タッカー・カールソン

<記事原文 寺島先生推薦記事>
Zelensky is ‘houseguest who wouldn’t leave’ – Tucker Carlson
Listening to the Ukrainian president demanding money was a “humiliating scenario” for Congress, the Fox News host said
ウクライナ大統領がお金を要求するのを聞くのは、議会にとって「屈辱的な場面」だったと、Foxニュースのホストが語った。

出典・RT
2022年12月22日
<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>
2023年1月3日


2022年12月21日、ワシントンDCの国会議事堂で議会合同会議に臨むウラジミール・ゼレンスキー © AP / Carolyn Kaster

 Foxニュースの司会者タッカー・カールソンは、ウラジーミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領の武器と資金の増額要求に拍手を送ったアメリカの議員を非難した。カールソン氏は、米国がキエフに流す数百億ドルの見返りは何もないと主張した。

 ゼレンスキーは水曜日にワシントンに到着し、ジョー・バイデン米大統領と会談した後、国会議事堂で議会演説を行った。そこでウクライナの指導者は、アメリカがすでに自国政府に送っている約680億ドルの軍事・経済援助に感謝し、民主党と共和党にさらなる「投資」を呼び掛けた。

 「スウェットシャツに身を包んだ外国政府の指導者が、合衆国議会で金を要求し始め、さらに何百億ドルもの金を彼に与えている人々に、それは慈善事業ではなく、投資だと言う勇気がある」と、カールソンはその夜、プライムタイムの視聴者に語った。

 カールソンは続けた。「どこからそんなことを言い出すんだ?私たちは自分たちのことをそんなに嫌っているのだろうか?そんなことを我慢して拍手喝采するほど、われわれはアメリカに対して敬意を払っていないのだろうか?」



 カールソンは、米国の保守派の中でも、米国によるウクライナへの資金援助に一貫して反対してきた数少ない著名人の一人である。彼は、キエフをロシアに対抗して武装させることは、米国を紛争に引きずり込む危険があり、米国の資金は、メキシコとの国境を強化し、急増しているフェンタニル[麻薬性鎮静剤]危機に対処するなど、自国で使った方が良いと主張している。



<関連記事>ゼレンスキー氏、「ハリウッドスタイル」の米国訪問は「代理戦争」の宣伝--- モスクワ

 フォックスの司会者は、民主党と共和党の両方がゼレンスキーの軍隊を支援していることを非難した。カールソン氏は、上院少数党院内総務のミッチ・マコーネル氏がウクライナ支援を米国の「最優先事項」と述べたことを指摘し、マコーネル氏の保守派有権者の多くが「日曜日に教会に行っている」ことを考えると、「彼が現在進行中のキリスト教に対する戦争*」についてゼレンスキー氏に尋ねないのは問題だと非難した。
[訳注]*11月下旬、ウクライナ軍(SBU)による、ハリコフの12カ所以上のウクライナ正教会に対する襲撃を指す。

 カールソンは、ゼレンスキーの演説とそれが議員から受けた複数のスタンディングオベーションについて、「地球上で最も偉大な国にとって、これ以上屈辱的な場面を想像することは不可能かもしれません」と述べた。「これは超党派のマゾヒズムだ。ユニパーティ[一党独裁]は健在だ。」

 「彼は帰ろうとしない居候だ。彼を許容するたびに要求が大きくなる。」

 駐米ロシア大使のアナトリー・アントノフは、ゼレンスキーの訪米を、米国の対ロシア「代理戦争」継続を確実にするための「ハリウッドスタイル」の慰安旅行と評した。

 議会は今週、ウクライナにさらに450億ドルを割り当てる1兆7000億ドルの支出法案を採決する予定であり、2月以降キエフに与えられた総額は約1130億ドルとなり、紛争前の同国のGDPの半分以上となる。モスクワは西側諸国に対し、キエフを武装させないよう繰り返し警告しており、これは紛争を長引かせるだけだと強調している。



ウクライナにおけるロシアの軍事作戦の最新情報(2022年12月30日)

<記事原文 寺島先生推薦>
ロシアのミサイル攻撃、新たな防衛力、そして2023年までの戦い

出典: INTERNATIONALIST 360°

2022年12月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年1月2日



2022年12月30日のウクライナにおけるロシアの軍事作戦の最新情報。

- ロシアは、特別軍事作戦の中で、これまでで最大と思われるミサイル攻撃を実施。

- ウクライナの電力網は引き続き供給力が落ちている;―バフムート周辺での戦闘が続いている。

- 欧米の分析家は、バフムート周辺でのロシアの戦闘は「無意味」だと主張しているが、ロシアの消耗戦の戦略には適している。

- ロシアはまた、接触線全体に大規模な防御構造を構築している。

- これらの防衛線は、ウクライナの攻撃部隊に、十分に準備された戦場でより多くの時間を費やさせ、大きな犠牲を強いる。

- ロシアは、これらの大規模な防衛施設で自陣を守りつつ、長期的な消耗戦に突入しようとしているようだ。

参考文献:

BBC―ロシア、空と海から120発のミサイルを発射―ウクライナ

ウオーズ・オン・ザ・ロックス―局地的攻撃。今後の戦いの行方

ニューヨーク・タイムズ紙―ロシアはウクライナの勢いを削ぐために、塹壕、罠、障害物を連携させる広大な組織体を構築している。うまくいくのだろうか?

ロシア国防省(テレグラム)―中央国防省技術部隊が特別軍事作戦の中で要塞を建てる

米陸軍、ベニン駐屯地―ロシア大隊戦術軍団の撃破

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