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元独首相夫人が第二次世界大戦戦勝式典への出席を理由に職を剥奪される。

<記事原文 寺島先生推薦>
Ex-German chancellor’s wife fired for attending WWII victory celebration
So-yeon Schroeder-Kim was dismissed after visiting the Russian Embassy in Berlin to commemorate the defeat of the Nazis
ソー・イオン・シュレーダー・キム氏が職を剥奪されたのは、ナチスの敗北を記念するためベルリンのロシア大使館を訪問したからだった。
出典:RT 2023年5月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月30日



ソー・イオン・シュレーダー・キム夫人同伴のゲアハルト・シュレーダー元独首相© Getty Images / Sean Gallup


 ゲアハルト・シュレーダー元独首相夫人であるソー・イオン・シュレーダー・キム氏が、事業開発業者のNRW社で職を解かれたのは、同氏が戦勝記念日を祝福するため、ベルリンのロシア大使館を訪問したからだった。

 「シュレーダー・キム夫人はすぐに職を解かれ、当NRWグローバル・ビジネス社との雇用関係は無条件で終了しました」とNRWの報道官は火曜日(5月16日)ドイツの報道機関に述べた。

 同社の説明によると、同社は、韓国代表として勤務していたシュレーダー・キム夫人に、「微妙な問題、特にロシアやウクライナでの戦況について発言すべきではない」、と数回はっきりと伝えていたという。

 今回の措置は、シュレーダー・キム夫人と夫が、5月9日にロシア大使館を訪れ、第二次世界大戦でナチス・ドイツが敗北した78周年を祝う招待会に参加したことを受けてのことだった。この催しには、ドイツの複数の政治家も参加しており、右派大衆主義政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」党の共同党首ティノ・クルパラ氏や「気候変動対策とエネルギーに関する委員会」の委員である左翼党のクラウス・エルンスト氏も参加していた。

 シュレーダー氏自身も、ロシア当局との繋がりを維持していることで、反発を受けている。元独首相のシュレーダー氏は、首相の座にいた1998年から2005年までの間、ロシアと良好な関係を構築し、ノルド・ストリームやロシアの国営石油会社であるロスネチフでそれぞれ幹部をつとめていた。



関連記事:独元首相が「ロシアとの繋がり」を理由に党を除名されそうになったが、その危機を回避した

 シュレーダー元首相はウクライナでのロシアの攻撃に対して何度も反対の声をあげてきたが、自身がプーチン大統領と距離をとることにも疑問の声をあげ、「何も良いことをもたらさないだろう」としてきた。ロシア側が軍事作戦を開始した直後、シュレーダー元首相は個人的にモスクワに赴き、プーチン大統領と面会した。それ以来同元首相は、ロシアは今の紛争について交渉による解決を模索していると主張し、 「プーチン大統領と話をする機会」を模索し続けると誓約している。

 元首相の立ち位置は、与党社会民主党(SPD)の他の議員らとは相いれず、先日、同党の複数の党員が、未遂には終わったが、シュレーダー元首相を除名処分にすることを求めたこともあった。しかし昨年、社会民主党は、シュレーダー元首相が持っていた議員特権を剥奪することには成功した。

 現職のオラフ・ショルツ首相政権下で、社会民主党は、ロシアとの繋がりや、ロシア原産のエネルギーへの依存を減らそうとしている。さらにショルツ首相の指揮の下で、ドイツ当局はウクライナ軍に何十億ドルにも相当する武器支援を供給してきた。
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米国はノルド・ストリーム破壊工作の役割を「隠蔽」しようとしている(シーモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦>

US trying to ‘cover up’ Nord Stream sabotage role – Seymour Hersh

出典:RT 

2023年3月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日


CIAはパイプライン破壊の代替ストーリーをメディアに提供するよう指示されている、とベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュは述べている。



資料写真.ノルド・ストリーム2から流出するガス© Getty Images / Swedish Coast Guard


 ピューリッツァー賞受賞のジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、ロシアの海底パイプライン「ノルド・ストリーム2」の破壊にワシントンが関与したことを隠蔽するために、米国が意図的にメディアに偽の記事を提供したと主張した。

 ベテラン記者シーモア・ハーシュは、水曜日(3月22日)に自身の「Substack」上に投稿した記事で、CIAはベルリンの情報機関BNDと共同で、ノルド・ストリーム2の爆破に関する「代替案」をアメリカやドイツのマスコミに提供する偽装記事の作成を任されていた、と主張している。

 「情報機関の言葉を借りれば、バイデンがパイプラインの破壊を命じたという主張を否定するために、CIAは『報道機関を動かす』ことになった」と、ハーシュは外交情報に通じた匿名の関係者を引用して書いている。

 そして、CIAが任務を完了し、ドイツの協力を得て、ニューヨーク・タイムズ紙とドイツの週刊誌『Die Zeit』に記事を掲載したことを指摘した。この記事は、「親ウクライナ派」のグループが行ったとされる「その場限りの『オフレコ』作戦」に言及しており、豪華なヨットを使ってノルド・ストリームに爆発物を仕掛けた、とされている。


関連記事:「明らかに」米国がノルド・ストリームを爆破した(フランスの政治家の発言)


 「それは、アメリカの情報機関がドイツに伝え、あなたの話の信用を失墜させることを目的とした完全なでっち上げだった」と、アメリカの情報機関の関係者がハーシュに語ったと言われている。

 「CIA内部の偽情報専門家は、プロパガンダの作戦は、受け取る側の人間が、望まない真実を矮小化したり置き換えたりできるような話を必死に求めている場合にのみ機能することをよく理解しています。そして、問題となっている真実は、ジョー・バイデン大統領がパイプラインの破壊を許可したということです」と付け加えた。

 ハーシュは2月、昨年9月に起きたガスパイプライン「ノルド・ストリーム1」と「2」の爆発事故に関する爆弾レポートを発表し、ワシントンがこの攻撃を画策したと非難した。ホワイトハウスは責任を否定した。先週(3月第3週))、欧米の複数のメディアが、犯人はウクライナに関係している可能性があると主張した。モスクワは、この報道を 「メディアによる協調的なデマキャンペーン」と断じた。

セイモア・ハーシュがノルド・ストリーム破壊工作について新たな発言

<記事原文 寺島先生推薦>

Seymour Hersh makes new Nord Stream sabotage claim

出典:RT

2023年3月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日

ピューリッツァー賞受賞者のシーモア・ハーシュは、米国がパイプラインを爆破したのは、ウクライナに対するドイツの支援不足に不満があったからだと主張した。



エルマウ城(南ドイツ)で行われたG7首脳サミットで、ドイツ首相のオラフ・ショルツ(左)が隣の米大統領ジョー・バイデンに話しかけている© AFP / Lukas Barth


 ジョー・バイデン米大統領がノルド・ストリーム・パイプラインの破壊を命じたのは、ロシアと対立するウクライナに対してオラフ・ショルツ独首相が提供した支援が気に入らなかったらだと、ベテラン調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが主張している。

 ハーシュは、最初、2月に発表した記事で、ワシントンがヨーロッパの重要なガス供給ルート(ノルド・ストリーム)を破壊したと非難し、金曜日(3月24日)に発表した中国新聞とのインタビューで、さらなる主張を展開した。

 「(米国)大統領は、ショルツ首相が、(キエフに)もっと銃や兵器を投入することに前向きでないことを恐れていた。それだけです。それが怒りなのか、罰なのかはわからないが、結果として西ヨーロッパを通る主要な動力源を断ち切ってしまうことになってしまいました」とハーシュは主張している。

 米国はノルド・ストリーム攻撃への関与を否定しようとしているが、「欧州は、今、危機的状況にある」ので、バイデンは今後数ヶ月で「自分のしたことに対して多くの批判」を受けるだろう、とハーシュは主張した。

 ハーシュは、パイプラインを破壊する「仕事を最初に依頼された人々」は、2021年末ころ、ジェイク・サリバン米国国家安全保障顧問から連絡を受けたと主張した。


関連記事:ノルド・ストリーム2の近くにデンマーク海軍の存在(メディア報道より)


 ロシアのガスをドイツ経由でヨーロッパに届けるために建設されたノルド・ストリーム1と2に爆薬を仕掛ける当初の目的は、「(米国)大統領が(ロシアの)プーチン大統領に『(ウクライナで)戦争をするならパイプラインを破壊する』と言える選択肢を与えるためだった」とハーシュは主張した。




関連記事:米国はノルド・ストリーム爆破への関与を隠蔽しようとしている(シーモア・ハーシュの主張)


 バイデン自身はその姿勢を公然と認めていたが、「残念ながら、欧米のマスコミの人たちは忘れてしまったようだ」とハーシュは述べている。

 モスクワのウクライナでの軍事作戦開始のわずか3週間前、バイデンは2月7日の記者会見で「もしロシアが侵攻したら...ノルド・ストリーム2はもう存在しないだろう。我々はそれに終止符を打つだろう」と警告している。

 ハーシュによれば、バイデンが昨年9月にバルト海底で機雷の爆破を命じることを決めたのは、アメリカの視点から見て紛争が「ウクライナでうまくゆきそうもない」と考えたからだ、という。ハーシュが 「バイデン大統領が熱心に支援したアメリカの戦争」と表現したものは、その時期、「せいぜい膠着状態」だったのだ。

ノルド・ストリーム近辺で発見された謎の物体は何か?

<記事原文 寺島先生推薦>

Mysterious object found in vicinity of Nord Stream explained

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日

発見されたのは使用済みの発煙ブイであることが判明した、とデンマーク・エネルギー庁が発表した。


© Danish Defence Ministry


 デンマーク・エネルギー庁は水曜日(3月29日)、ノルド・ストリーム2の爆発現場付近で発見された謎の物体を引き揚げ、それが廃棄された発煙ブイであることが判明した、と発表した。

 「調査の結果、対象物は視覚的標示に使用される空の海煙ブイであることが判明した。この物体は危険なものではない」と、同庁は声明で述べた。

 この物体は今月初め発見されたもので、ロシアのプーチン大統領はテレビのインタビューで、昨年9月に破壊工作でパイプラインが破られた場所から約30キロ離れたガスプロム社の調査中に発見されたことを明らかにした。

 デンマークは、パイプライン事業者であるノルド・ストリーム2 AGの代表を引き揚げに参加させた。同時に、同国はロシアに対し、ノルド・ストリーム破壊工作の調査への参加を拒否している。デンマークのラース・ラスムセン外相は、デンマーク、ドイツ、そしてスウェーデンの3カ国が行っている調査は、これらの国の強力な「法の支配」を考えれば十分だと主張している。



関連記事:クレムリンは国連によるノルド・ストリーム調査結果に「遺憾」


 このブイの引き揚げは、国連安全保障理事会が月曜日(3月27日)、パイプラインの爆発に関する国際的な独立調査を求める ロシアが提案した決議案を否決した後に行われた。この決議は、ロシア、中国、ブラジルのみが支持し、他の12名の常任理事国および臨時理事国は棄権した。モスクワの国連常任代表であるヴァシリー・ネベンジアは採決後、「ノルド・ストリーム破壊工作の背後に誰がいるのかという疑念は増すばかりだ」と述べた。

 先月、ベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュは、この破壊工作がアメリカ大統領ジョー・バイデンによって直接指示されたアメリカとノルウェーの共同作戦であるとする爆弾的な調査結果を発表した。この工作の最終目的は、ドイツをロシアからの安価なエネルギー供給から永久に切り離し、ウクライナ紛争におけるドイツの支援を強固なものにすることであった。

 ワシントンとオスロはこの疑惑を強く否定し、作り話だと切り捨てた。ロシアの大統領は先週、ハーシュの結論に「完全に同意する」と述べた。

米国スパイの言葉:「親ウクライナ集団」がノルド・ストリームを破壊した(ニューヨーク・タイムズ紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

US spies say ‘pro-Ukrainian group’ bombed Nord Stream – NYT

出典:RT

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月5日

匿名の工作員が不特定多数の情報を引用し、パイプライン攻撃に対する米国の責任を否定した。



2022年9月28日、バルト海のアットシーで、ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の漏洩から発せられるガスの放出が確認された。© Swedish Coast Guard via Getty Images


 出処不明の新しい情報によれば、2022年9月のノルド・ストリーム・パイプラインに対する攻撃の背後に「親ウクライナのグループがいたらしい」と、ニューヨーク・タイムズ紙が匿名の米国当局者の話を引用して、火曜日(3月7日)に報じた。

 ニューヨーク・タイムズ紙の匿名の情報源は、「破壊工作員はウクライナ人かロシア人、あるいはその組み合わせである可能性が高い」とし、「アメリカ人やイギリス人は関与していない」と述べている。さらに彼らは、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領や彼の「最高幹部」が関与した証拠もなく、「いかなるウクライナ政府関係者」も攻撃を指示したとは言えないとした。

 匿名の関係者は、誰が「作戦」を指示し、費用を負担したのかについては言及できず、「ウクライナ政府またはその治安当局とつながりのある代理勢力によって、表に出ない形で攻撃が行われた可能性がある」と述べている。




関連記事:西側はノルド・ストリーム爆破の調査結果を隠蔽するつもりのようだ。フランスの一将軍の発言


 バルト海の海底で4本のパイプラインのうち3本をバラバラにした爆弾は、「軍や諜報機関に勤務しているようには見えない」ものの、「過去に政府の専門訓練を受けた可能性がある」経験豊富な潜水士たちが仕掛けた「可能性が高い」と、匿名の関係者は主張している。

 また、バイデン米大統領とその側近はノルド・ストリームへの攻撃を「許可していない」とし、爆破に「米国の関与はない」とも述べた。これらの発言は、米国が爆破を指示し、爆発物を仕掛けたと非難した調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュの先月の報告書に正面から反論している。

  西欧の当局者もこの攻撃が国家によるものだと考えているが、「米国の当局者は、この作戦が国家によるものだと考えていると公言していない」と同紙は指摘した。

 「ウクライナとその同盟国」がパイプラインを破壊する「潜在的には最も論理的な動機」を持っていると考える当局者もいる。同盟国がどこを指しているかははっきりしない。ただ、ポーランドはノルド・ストリームを最も露骨に批判しているし、米国とNATO圏全体は過去1年間に1000億ドル相当以上の武器やその他の援助をキエフに送っている。

 「キエフやウクライナの代理人に責任を押し付けるような調査結果は、欧州の反発を招き、欧米がウクライナを支持する統一戦線を維持することが難しくなる」と、同紙の記者は指摘している。

 ノルド・ストリームの爆発は、ロシア人ジャーナリストのダリヤ・ドゥギナが死亡したモスクワの自動車爆弾テロ事件から5週間後に起こった。米国の匿名スパイは昨年10月、ゼレンスキーではなくウクライナ政府内の「関係者」が犯人だと考えていると同紙に語ったが、誰の名前も挙げることはしなかった。キエフは公式にいかなる責任も否定している。

 「ノルド・ストリーム作戦の後、ワシントンでは、ウクライナ政府の一部が作戦にも関与しているのではないかという、ひそかな憶測―そして心配―があった」と、タイムズ紙は火曜日に報じた。

 同紙の取材に応じた匿名の関係者は、ウクライナ政府が関与している「証拠は今のところない」とし、ジョー・バイデン大統領のゼレンスキーに対する信頼は「着実に高まっている」と述べた。同紙は、キエフが米国に「深く依存している」にもかかわらず、米国の諜報機関が「ウクライナの意思決定に対する視界が限られている」ことは認めた。

ノルド・ストリームにおける環境的大惨事

<記事原文 寺島先生推薦>

Environmental Сatastrophe at Nord Stream

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日



バルト海のネズミイルカ


 ヨーロッパの科学者によると、海底ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の損壊は、バルト海の生態系を破壊することにつながったという。この破壊工作の結果はさまざまだが、自然への累積ダメージは甚大である。

 パイプラインの爆発がもたらした直接的な影響は、海洋動物の死であった。リサーチ・スクエアの調査によると、爆発は海洋環境に「連鎖反応」を引き起こし、タラやネズミイルカを含む特定の魚種や海洋動物の絶滅につながる可能性があるという。

 ネズミイルカは、北半球の海域に広く生息する小型のクジラ類で、その数はおよそ70万頭だ。しかし、バルト海にいるその個体群は、遺伝子的にも外見的にも、他の代表種とは異なっている。その数は500頭強で、実は絶滅の危機に瀕している。

 ネズミイルカは通常、5月と10月にスウェーデン領海のゴバーグズ(Goburgs)と、ミドスジェバンケン(Midsjöbanken)の周辺に集まってくる。これらは爆発地点から約40km東に位置する。この爆発により、半径4km以内の動物が死亡し、50km離れた動物が聴覚障害を負った可能性がある。科学者たちは、バルト海の亜種の動物が1匹でも死んだり怪我をしたりすると、その小さな集団全体に大きな影響を与えることを強調する。

 デンマーク自然保護協会のマリア・ジェルディング(Maria Gjerding)会長は、この状況がバルト海の運命に深刻な懸念をもたらすと指摘した。報告書によると、爆発によって海水の状態が悪化した。この海域は、すでに非常に深刻で危機的な状態になっているのだ。

 WWF(世界自然保護基金)のボー・オクスネビャーグ(Bo Øksnebjerg)デンマーク事務局長もこの考えに同意している。彼は、被害は水中に入り込んだ有害物質によって引き起こされたとも考えている。爆発とそれに伴う噴流によって、有毒物質を含む25万トン以上の汚染された海底がかき回された。ボーンホルム空洞の周辺にいる魚の内分泌系に有害物質が影響したため、タラはかなりの被害を受けたと考えられる。

 有害物質の中には、船体や技術構造物(杭、柱など)の汚れを防ぐための塗料の成分として使われているトリブチル錫(TBT)がある。これも爆発でかき回された海底に長く蓄積されてきた。報告書の作成チームを率いたオーフス大学環境科学部のハンス・サンダーソン上級研究員によれば、TBTは海洋動物の繁殖能力を破壊する。

 つまり、今、バルト海の海洋環境は、まさに生き残るために必死になっているのだ。

 デンマークの社会民主党のマグナス・ホイニッケ環境相は、「一見、影響は局所的なものに見えるが、バルト海はすでに深刻な状況にあり、そのため、我々はもちろん、その影響を強く懸念している」と述べている。デンマーク政府は継続的に監視し、バルト海周辺の近隣諸国と情報を共有することで、影響の全体像を把握し、適切な対応ができるようにすると述べている。しかし、ドイツ、デンマーク、そしてスウェーデンの3カ国は、まだ爆発事故の調査を終えておらず、一般市民や他の国には一切情報を提供していない。したがって、バルト海の生物多様性保全の問題は未解決のままである。

 以前は、ガスパイプラインの爆発が環境に与える影響について、メディアは主に水中や大気中への天然ガスの排出について書いていたことに留意する必要がある。特に水中では、その規模を評価するのは容易なことではない。

 排他的経済水域で破壊工作が行われたデンマーク、スウェーデン、そしてドイツは、流出の規模について異なるデータを発表した。しかし、いずれも大気中への排出を強調している。

 メタンの気候への影響を調べるには、二酸化炭素(CO2)換算するのが一般的だ。地球温暖化係数は、100年または20年の観点で計算さ れる。前者の場合、メタンの「温暖化」効果はCO2の28倍、後者の場合、84倍となる。

 ドイツ連邦環境庁(UBA)は、バルト海の海底に敷設されたパイプラインの爆発により、100年間で750万トンのCO2に相当する30万トンのメタンが放出されたと推定した。これは、同庁の報告書によると、ドイツの年間排出量のおよそ1%に相当する。

 デンマーク・エネルギー庁の数字は少し違う。4つの流出のうち2つは、デンマークのボーンホルム島付近だった。デンマークでは7億7800万立方メートルの天然ガスが計測され、これは1460万トンのCO2に相当し、2020年に同国が排出する全温室効果ガスの32パーセントに相当する。

 スウェーデンは、大気中の二酸化炭素よりもメタンの方が早く減衰するため、20年という予測期間をより正確だと考えている。「この漏洩は、20年間で4000万トンの二酸化炭素に相当する。これは、昨年のスウェーデンの総排出量4,800万トンに匹敵する」とスウェーデン・テレビ・ニュース(Svt Nyheter)はスウェーデン環境保護庁の環境経済学者を引用して書いている。

 ノルド・ストリームの破壊に関連して、もう一つ憂慮すべき事実がある。第二次世界大戦後、ドイツの非武装化に関するポツダム会議の決定により、ドイツの化学兵器はバルト海の底に埋められた。そのうちのかなりの部分が、ちょうど爆発が起こった近くのボーンホルム島の地域にある。3万2千トンの軍需品と1万1千トンの化学薬品が投棄されたのだ。70パーセントがマスタードガス、20パーセントがヒ素を含む物質である。今のところ、これらの危険な埋蔵地に重大な事態は起きていないが、科学者によると、海底が不安定になれば、深刻な事態につながる可能性があるという。

西側はノルド・ストリーム爆破犯人を知っている(タイムズ紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

West knows who is responsible for Nord Stream attack – The Times

出典:RT

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日

 妨害工作の背後にいるウクライナ人容疑者の名前は、「何ヶ月も前から諜報界に流れていた」と、タイムズ紙は指摘している。

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2022年9月27日、バルト海で発生したガスパイプライン「ノルドストリーム2」の漏れから発せられるガスの放出。© Getty Images / Swedish Coast Guard via Getty Images


 西側情報機関は、昨年のノルド・ストリーム爆破事件がウクライナと関係のある人物によって計画されたものであるとほぼ即座に判断したが、キエフとベルリンの間の外交問題を避けるためにこの情報を隠すことを選択したと、水曜日(3月8日)にThe Timesが報じた。

 タイムズ紙によると、スカンジナビアの調査団は、2022年9月、ロシアとドイツをバルト海底経由で結ぶ海底ガスパイプラインが攻撃された1週間後に、それが「あるウクライナ発の民間企業によって」仕掛けられたことを知ったという。彼らはブリュッセルで行われた情報説明会でこの情報を入手したとのことだ。

 「(攻撃の)民間支援者の疑いのある名前は...数ヶ月前から諜報界に出回っていたが、明らかにされていない」と同紙の記事は伝えている。

 タイムズ紙は、名前を公表することなく、犯人はキエフの政府関係者ではないウクライナ人であるとした。また、容疑者は「変わったテレホンカードを残しているようだ」とも指摘しているが、詳細は明らかにしていない。

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関連記事:ノルド・ストリームに関する新しい報道は「組織的なデマ」のように見える(モスクワ)

 
 また、この問題の調査がなぜこのように遅いペースで進んでいるのかについての質問を一切受け付けないよう、調査団は指示されているともこの記事は伝えている。

 タイムズ紙は、NATO当局が「ウクライナがドイツと公然と争いになることから守りたかった」ようだと指摘した。事件当時、ベルリンは同盟国の支援なしに、キエフにレオパルト2戦車を供給することに消極的だった。ドイツは2023年1月に考えを改め、他の西側諸国も戦車納入を約束した。

 この報道は、ニューヨーク・タイムズ紙が火曜日(3月7日)、匿名の情報源を引用して、パイプラインへの攻撃の背後に「親ウクライナ派」のグループがいた可能性があると主張したことを受けたもの。同日、ドイツのメディアは、この事件を調査している捜査当局が、攻撃に使われたとされるヨットが、2人のウクライナ人が所有するポーランドにある会社のものであることを発見したと報じた。

 これらの報道について、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、この疑惑は「メディアによる協調的なデマキャンペーン」であり、真犯人から注意をそらそうとする試みのように見えると述べている。

 先月、米国の著名なジャーナリストであるシーモア・ハーシュが、ノルド・ストリーム攻撃を画策したのはワシントンであるとする調査結果を発表した。ホワイトハウスは責任を否定しているが、1月にはヴィクトリア・ヌーランド米国務次官(政治担当)が、ノルド・ストリーム2がもはや稼働していないことを知り、ワシントンは「とても喜んでいる」はずだと述べている。

ポーランド大統領、ノルド・ストリームの爆破は欧州にとって「有益」と発言

<記事原文 寺島先生推薦>

Polish president claims Nord Stream blasts were ‘beneficial’ for Europe

出典:RT

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日

昨年の破壊工作は、モスクワの「支配」計画を混乱させたとアンジェイ・ドゥダは主張する。



資料写真:ポーランド大統領アンジェイ・ドゥダ© Global Look Press / Mateusz Slodkowski


 ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領が水曜日(3月8日)にCNNで語ったところによると、ロシアのガスをヨーロッパに供給するノルド・ストリーム・パイプラインの破壊は良いことであったという。ドゥダ大統領は、この破壊工作によって、大陸がモスクワの「支配」計画から解放されたと主張し、ポーランドのロシア産ガスへの依存が解消されたと付け加えた。

 この発言は、2022年9月に起きたパイプラインへの攻撃の背後に親ウクライナ派勢力がいた可能性があるというメディアの報道を受けたもの。ドゥダは、こうした主張を裏付けることはできないとしながらも、ノルド・ストリームが消滅すれば、欧州にとって「有益」であると主張した。

 ポーランドはガスパイプライン計画に大反対し、攻撃のおよそ1カ月前の2022年8月には廃棄を求める働きかけまでしていた。ドゥダはまた、このプロジェクトを、ロシアとの関係における欧州の宥和戦略の一部と呼んだ。




関連記事:ウクライナ国民がノルド・ストリーム爆破に関わっていた容疑は「ありえる」とドイツは主張


 今週初め、ニューヨーク・タイムズ紙は、米国の情報筋を引用して、2022年9月の攻撃の背後に「親ウクライナ派」のグループがいたと報じた。同誌はまた、西側の情報機関は妨害工作の背後にいる人物の身元を把握していたが、容疑者がウクライナと関係があるため、ベルリンとキエフの間の対立を避けるためにこの情報を隠すことに決めたと述べている。

 アラブ首長国連邦を訪問中にCNNのインタビューに応じたポーランド大統領は、ポーランドのMiG-29戦闘機をすべてキエフに引き渡すことも提案したが、それはあくまでも国際的連携の一環であるとした。「我々はこれらの戦闘機を提供する準備ができており、ウクライナもすぐに使用する態勢を整えられると確信している」と述べた。しかし、ワルシャワがソ連製戦闘機の数を、まだどれだけ保有しているのかについては明言しなかった。

 ドゥダは、ウクライナのパイロットに米国製F16戦闘機の操縦訓練を行うよう求め、キエフの軍隊はいずれにしても「NATOの水準に達する」ことを熱望していると発言した。「ウクライナ人パイロットの訓練は重要であり、必要不可欠だ」と彼は付け加えた。

 CNNによると、現在、少なくとも2人のウクライナ人パイロットが米国に滞在しており、フライトシミュレーター(模擬操縦訓練装置)を使って、米国製の各種軍用機の操縦を習得するために必要な時間を確認しているという。

CIAの隠れ蓑・前衛部隊がジョージア(旧名グルジア)のカラー革命をそそのかす。

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA Front Threatens Color Revolution in Georgia

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:Internationalist 360

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月31日

グルジア 1
世界中でカラー革命を煽る大富豪ジョージ・ソロス(左)、USAID長官サマンサ・パワー(右)


 2023年3月の第2週、ジョージア(旧名グルジア)の首都トビリシで、数千人が街頭に繰り出した。そして「海外からの収入が20%を超えるNGO」に「外国代理人」としての登録を義務付ける法律案に激しい憤りをぶつけた。

 彼らは警察と激しく衝突し、あらゆる場所に反ロシアの落書きをし、反乱的で好戦的なスローガンを唱え、EU、ジョージア、ウクライナの国旗をあたり構わず目立つように掲げた。EUと米国の当局者は、これらの広く報道された光景にぴったりするような、敵意あるコメントが絶え間なく流した。

 悪名高い戦争タカ派でUSAID(米国国際開発庁)長官のサマンサ・パワーは、ジョージアの国会議員に「外国代理人」法の提案を「取り下げ」よう呼びかけた。そして、この新法は「欧州-大西洋地域に関わるジョージアの将来像とジョージア人が経済的社会的その他の願望を実現する能力・技量を深刻に脅(おびや)かすものである」という、不可解な宣言をした。

 ジョージアの提案する外国代理人法は、欧州=大西洋に関わるジョージアの将来像と、ジョージア人が経済的社会的その他の願望を実現する能力・技量を深刻に脅(おびや)かすものである。私はジョージア議会に対し、これらの法案の取り下げを要請する。―サマンサ・パワー (@PowerUSAID) 2023年3月2日

 米国務省のネッド・プライス報道官は、外国代理人法に賛成したジョージアの議員に対し、威嚇的にこう警告した。「トビリシが期待している欧州=大西洋地域との将来関係が危うくなった場合」、その責任をおまえたちが負うことになるぞ、と脅迫したのである、さらに、この法律は「ジョージア人が自分たちのために描いた将来像、そして私たち米国が仲間として、その実現を援助し続けることを決意している将来像」と「一致しない」と断言した。

 ワシントンが外国代理人法に猛反対するのは驚くべきことではない。ジョージアのメディアや人権団体を含めた数千の団体は、過去30年間にわたって、全米民主化基金(NED)と米国国際開発庁(USAID)から資金提供を受けてきた。ちなみに、サマンサ・パワーは現在、USAID長官である。この隠しようもない事実、だが今まできちんと知られてこなかった事実を、これ以上に暴露するような改革は、今後、難しい問題を引き起こすだろう、その法案は、これら数千の団体の自立性と、これらの団体がこれまで追求してきて邪悪な目的について、答えることが難しい問題を提起するからだ。

 これらの数千の団体が米国からの資金提供の実態を隠蔽しなければならないことは、これらのNGOが公然とトビリシでの抗議活動の最前線に立っていることによって、十分に証明された。この法案が成立すれば、NEDから資金提供を受けているNGOの多くが、その海外資金を公開しなければならなくなるわけだから、ソーシャルメディアを使って不服の声を上げたのも当然だ。

 トビリシの国会議事堂前に集まった数千人が議事堂を襲撃する直前に、幸いにも、ジョージア政府は外国代理人法を撤回した。NEDとの関係を法律で公然と認めなければならなくなることを、抗議者たちが全面的に拒否した理由は何だろうか。

 NED(全米民主化基金)は1983年に設立されたのは、アメリカの諜報機関CIAが数々の恥ずべきスキャンダルに巻き込まれ、世間を騒がせた後のことである。このNEDの設立には、当時の中央情報局(CIA)長官であったウィリアム・ケーシーが中心的な役割を果たした。ケーシーは、「敵国政府を不安定化させ崩壊させるための武器となるような、海外の反政府グループやメディア、その他の反政府活動家に資金を提供する公的な仕組み」を構築しようと考えたのである。裏工作によって「敵国政府を不安定化させ崩壊させる」ことは、これまでCIAの専売特許であったものだが、もはやそれができなくなったからだ。それでそのことを可能にするような公的仕組みをつくろうとしたわけである。

 かくしてつくりあげられたNED(全米民主化基金)は、非常に狡猾な組織でありながら、ほとんどその実態は明らかになっていない。だから、この組織のおかげで、帝国アメリカは、いつでも外国政府を屈服させ、その政府が内外の問題でワシントンの承認する道から少しでも外れることがあれば、必要に応じて、その政府を完全に転覆させることができる。グルジアの2003年の「バラ革命」は、その見事な実例を提供している。


CIAは「落書き」アーティストにまで金をばらまく

 NEDは発足後すぐに東欧の共産主義撲滅に乗り出し、ポーランドの「連帯」のような活動家組織とその運動を支援した。しかし、ユーゴスラビアは今世紀に入るまで、NEDの干渉をかたくなに拒み続けた。2000年12月のワシントンポスト紙の非常に正確で詳細な調査報道は、次のような事実を詳細に描き出した。すなわち、それより2カ月前の10月に、ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ大統領をついに追放した自然発生的「草の根」反乱は、実はCIAの前線部隊であるNEDやUSAIDが密かに資金と指示を出していたのである。

 ミロシェビッチ大統領を貶(おとし)めるために、チューインガムや炭酸飲料を販売していた米国の広告業のプロたちが、キャッチーなスローガンや人目を引くPRその他の今までにない宣伝方法を考案していた。また事前かつ現地で大規模な世論調査が水面下で実施され、そのため無数の市場調査用の消費者グループが結成された。それは売り込み戦略を路上で検証し完全に成功させるためだった。一方、国会議員候補者や活動家たちは、ジャーナリストの質問に答え、ミロシェビッチ支持者の主張に効果的に反論するために、あらかじめ「指示されたとおりに」行動する術を密かに指導された。

 学生活動家集団オトポール(Otpor、セルビア語で「抵抗」の意)にも、広範な訓練と支援が提供された。彼らは破壊的ではあるが非暴力的な手段によって政府権力を弱体化させる様々な方法を学んだ。たとえば、ストライキの組織化、シンボルを巧く使って大衆に宣伝する方法、「恐怖克服」の方法、その他。

 USAIDは、学生活動家が国中に反ミロシェビッチの落書きをするために5000本のスプレー缶を提供した。またオトポールは、ワシントンからの資金で、「世論調査、ビラまき、有料広告など、幅広い高度な広報技術」も採用した。その宣伝文言はすべて米国が資金提供した世論調査に基づいていた。だから「どんなときでも国民に何を言うべきかわかっていた」と、このグループの活動家の一人は自慢げに語った。

 「私たちの方法は、企業の販売戦略を政治に活用することだった。つまり政治運動もマーケティング部門を持たなければならないということだった。コカ・コーラをモデルにしたんだ」と、2005年にオトポールの指導者が明かした。


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2001年3月30日、セルビアのベオグラード。獄に捕らわれたスロボダン・ミロシェビッチ大統領のポスター。「彼を収容するのはいつになるか?」という、「人民運動オトポール」の宣伝文句が付けられている。Darko Vojinovic|AP


 CIA、NED、USAIDなどの米国政府機関によって、わずか1年の間に、公然かつ隠然と、合計数千万ドルが反ミロシェビッチのために投入された。当時、ユーゴスラビアの人口は約1000万人で、実質的に国民1人に数ドルの資金が割り当てられたことになる。

 ユーゴスラビアの平均月給が30ドル以下であったことを考えると、この資金は実に巨大な意味をもち、政権交代の足がかりとなる人員を簡単に集めることができたのである。同じことをユーゴにしたと考えると、人口比で勘定すれば、ベオグラード(セルビア政府)が米国の大統領選挙に影響を与えるために何十億ドルも費やすようなものだ。もちろん、そんなことはアメリカで合法であったり容認されたりするわけではないが。

 オトポールの成功は目覚ましく、大手メディアでの知名度も上がり、オトポールはビデオゲーム「もっと強い部隊、A Force More Powerful」の開発を始めた。プレイヤーは「実際の紛争で成功した方法を用いて、独裁者・軍事的占領者・腐敗した支配者に対抗する方法」を学ぶことになる。「最近の歴史から着想を得た」「12通りの別々の筋書き」を通してである。このビデオゲームは「非暴力抵抗運動や反対運動の活動家や指導者が使う」ことを意図しており、メディアや一般市民が変革の技術をより広く学ぶことを期待したものだった。

 オトポールによる変革の手順・見取り図は、2006年3月に発表され、その後数年以上も、繰り返し世界中に輸出された。NEDが提供したのである。この国際貿易の最初の輸出先はがジョージアだったというわけである。


政権転覆集団「クマラ(グルジア語でウンザリの意)」なんか、もうウンザリ・・・

 シュワルナゼは1970年代初頭から共産党第1書記としてグルジアを統治していた。その後、ソ連のベテラン政治局員となり、ミハイル・ゴルバチョフ政権では外務大臣・重要な改革派として冷戦終結に大きな役割を果たした。特に、アフガニスタン戦争の終結、ドイツの再統一、ヨーロッパからの赤軍の撤退、アメリカとの核兵器条約の交渉などである。

 ソ連崩壊後の1992年にシュワルナゼがグルジア大統領に就任した背景には、「ロシア支援のアブハジアと南オセチアの離脱運動」と「独立したばかりのグルジア共和国の装備不足の軍隊」が激しく対立する流血の内戦があった。この混乱を立て直すため、1992年3月、シェワルナゼは、グルジア国家評議会議長に選ばれた。最初は親露派であったが、1995年8月新憲法が採択され、11月大統領に選出されてからは反露派となり、彼の統治下でモスクワとトビリシの関係は概して良好ではなかった。

 一方、欧米諸国との関係は極めて良好であった。彼が指揮・監督した大規模な民営化は、アメリカやヨーロッパのオリガルヒを潤し、1997年の民法改正は外国資本の何千ものNGOの創設に道を開いた。トビリシは瞬く間に、米国の資金援助と軍事援助の最大の受益者のひとつとなった。シュワルナゼが大統領になってから10年目(2002)の終わりには、シュワルナゼはNATOと戦略的相互関係を結び、EUへの加盟を希望していることを明らかにした。

 2000年、オープンソサエティ財団の支部設立のためにトビリシを訪れたジョージ・ソロスは、シュワルナゼの個人的な賓客として歓迎された。ソロスは、当時のグルジア司法大臣ミヘイル・サアカシュヴィリにも会っている。サアカシュヴィリは国務省の奨学金で留学した米国のエリート大学を卒業した人物だ(そのエリート大学にはコロンビア大学も含まれている)。

 それから間もなく、若きサアカシュヴィリは鮮やかな転身を図って司法大臣を辞め、オープンソサエティ財団の支援を受けて政党「国民運動」を設立した。TV局ルスタビ2(Rustavi-2)を含む野党メディアへの、従来からあるソロスの資金提供も同様に強化された。そして、これらのメディアはシュワルナゼに対する批判的な発信をおこなった。それは、シュワルナゼ大統領をとりわけ醜く描いた風刺漫画や国家汚職に関する集中的な調査という形をとったのである。このようすを、トロント・グローブ・アンド・メール紙は、2003年2月、ソロスがグルジア政府を「打倒するための煉瓦を積み始めた」と、報じている。

 NEDとオープンソサエティ財団の支援を受けたグルジアの活動家ギガ・ボケリアは、2003年、「自由協会、リバティ・インスティチュート」を創設したNGOオトポールと会うためにセルビアに遣された。その結果、オトポールの代表者は、グルジアの首都トビリシに飛び、そこでシュワルナゼを平和的に打倒する方法を数千人に教えた。

その教えを受けて、彼らは、自分たちの「革命」集団を結成した(カッコ付きの「革命」集団で、実は政権転覆工作集団)。クマラとして知られるこの団体は、オトポールがミロシェビッチ大統領を追い落とした名声と宣伝戦略を大いに利用した(Kmara、グルジア語で「もういい、ウンザリ」の意)。NEDとオープンソサエティ財団の大規模資金が即座に流れ込んだ。

 この資金注入により、クマラは2003年11月のグルジアの大統領選挙に向けて、さまざまな宣伝物と戦略を開発することができた。投票前の10日間、TV局ルスタビ2はミロシェビッチ打倒のための米国のドキュメンタリー映画『独裁者打倒(Bringing Down a Dictator)』を繰り返し放送した。
訳注:Bringing Down a Dictator 2002年。セルビアの指導者スロボダン・ミロシェビッチの非暴力的敗北についての56分のドキュメンタリー。学生主導のオトポールの貢献に焦点を当てている。

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 「最も重要だったのは映画だった」と、この国民運動の代表者は後に語っている。「映画を観せられたデモ隊は皆、ベオグラード(セルビアの首都)での政権転覆戦術を暗記していた。だから皆、何をすべきか知っていた。これはセルビアの政権転覆を丸写ししただけで、その音量を大きくしただけだった」

 選挙は、公式発表では親シュワルナゼ派の政党連合が勝利した。しかし、NEDの依頼でおこなわれた出口調査では、「公式結果は不正であり、野党勝利が明らかである」との情報が、すぐに、しかも投票が終わる前に流され始めた。トビリシの国会議事堂には、全国から集まった大勢の反政府活動家たちが、カッコ付き「革命」集団クマラが費用を負担したバスで押し寄せた。

 外にはスピーカーと映画スクリーンが設置され、TV局ルスタビ2がNEDによる反対世論の調査(出口調査)を最も顕著に伝える道具となり、若い活動家たちによる抗議活動の様子も映し出された。クマラが率いる全国的なデモは数週間にわたっておこなわれ、2003年11月23日には、活動家たちがバラの花を振り回して国会を襲撃し、運動は最高潮に達した。翌日、シュワルナゼは辞任した。

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ジョージ・ソロス(GEORGIA SOROS)の模擬葬儀:サアカシュヴィリのお面をかぶったジョージアのデモ隊が、ジョージ・ソロスの人形の入ったUSドルが貼られた棺を運ぶ(2005年12月14日、トビリシ)。ジョージ・アブダラゼ|AP
(訳註:ソロス資金のおかげで大統領になったサアカシュヴィリは、独裁者となり、エリートの腐敗と貧困問題は依然として解決されなかった。)



「ひどく期待はずれ」な革命

 2004年1月、サアカシュヴィリは大統領に就任した。その後10年間、彼はグルジア経済をさらに「自由化」し、残存する国営産業の民営化を加速させ、広範な反腐敗活動を主導し、国防費をGDPの9.2%という驚異的な水準にまで高めた。

 米国政府関係者やTI(Transparency International国際透明性機構)、世界銀行などの団体は、サアカシュヴィリがグルジアを最もビジネスのしやすい国のひとつにし、2003年から2013年にかけて70%の経済成長を遂げ、その間に一人当たりの所得は約3倍になったと評価した。しかし、帝国アメリカの機関誌「フォーリン・ポリシー」でさえ、「バラ革命」の結果は「ひどく期待はずれ」だったと認めている。遠大な変革は「実際には実現せず」、「エリートの腐敗は依然として続いている」からである。

 サアカシュヴィリが大統領を退任するまでにグルジアの貧困はわずかに減少しただけで、人口のおよそ4分の1は依然として絶対貧困率以下で暮らしていた。さらに言えば、グルジアは権威主義そのもので、民主主義のかけらもなかった。実際、サアカシュヴィリの支配は、多くの点で、シュワルナゼにはなかったような独裁主義であった。

 例えば、サアカシュヴィリは「超大統領」機構に代わって、さらに権限を集中した「超々大統領」機構を導入し、主要な分野で彼に一方的な権力を付与した。この権限を使って、自分の政策に反対する政党を追放しようとするなど、独裁的な策略が目白押しであった。

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バラク・オバマ、ミハイル・サアカシュヴィリ、デイヴィッド・キャメロン。
2012年5月21日、シカゴで開催されたNATOサミットで、サアカシュヴィリ(右)、英国のキャメロン首相と話すオバマ大統領。パブロ・マルティネス・モンシヴァイス|AP


 さらに深刻なのは、ザルブ・ジュバニア首相のような不審死への関与も疑われていることだ。サアカシュヴィリはグルジアの治安部隊に指示して、オリガルヒのバドリ・パタルカツィシヴィリなどのライバルを暗殺させたことで知られ、サアカシュヴィリの命令で刑務所は拷問とレイプの政治的温床となった。サアカシュヴィリの在任中、同国の受刑者数は4倍の2万5千人に達し、国民一人当たりの受刑者数はヨーロッパのどの国よりも多くなった。

 2012年10月の大統領選挙では、サアカシュヴィリの死に物狂いの不正工作(NEDの必死の支援があった)にもかかわらず、彼は政権を失った。それ以来、政党「グルジアの夢、ジョージアンドリーム」率いる連合がこの国を統治している。国内の反対派および海外のキエフ支持者は、ジョージアのこの政党が親クレムリンであると非難している。NED出資の「恥の連合、Shame Network」は最近の反政府運動の先陣を切った。

 しかし、実際には、「ジョージアンドリーム」党は、EUおよびNATOへの加盟を推進しながら西側との関係を強化、そしてモスクワとの共存を維持するという微妙なバランスを常に取ってきた。ロシアのウクライナ進攻の後、これを維持するのはますます難しくなり、トビリシに対して、はるかに大きく豊かで強力な隣国、すなわちジョージアにとって最大の貿易相手国の一つ、ロシアに制裁を課し、キエフに武器を送るようにという欧米の圧力が常に高まっている。

 2022年12月、イラクリ・ガリバシビリ首相は、同年2月24日以来、キエフからロシアにたいする「第二戦線」を開くよう繰り返し要請されたがそれを拒否したことは、温かくは迎え入れられなかった、と述懐している。

 トビリシ(ジョージア政府)が全面衝突を避けたいのは当然で、それは特に2008年8月のロシア=グルジア戦争における悲惨な敗走のためである。この戦争は、サアカシュヴィリが米国の後押しでアブハジアと南オセチアの民間人陣地を攻撃し始めたことに始まる。わずか5日間であったにもかかわらず、20万人もの人々が避難し、数百人が死亡した。

 政権党「ジョージアンドリーム」が特に外国代理人法を導入しようとしたのは、ロシアにたいする「第二戦線」を開いてロシアに制裁を加えることを従順に受け入れる政府のつくろうとするNEDの画策を阻止するためではなかったか考えられる。


あえてクーデターと呼ぶ?

 控えめに言っても、NEDとUSAIDの指紋は、2014年2月のウクライナのマイダン・クーデターの至るところに付着していた。カッコ付きの「革命」(すなわち政権転覆・クーデター)のあらゆる段階で、両団体が資金提供した個人や組織が主役を演じていた。

 オレフ・リバチュク(Oleh Rybachuk)は、マイダン・クーデターに至るまで、何年も、USAIDが資金提供したいくつかの反対派集団を引き回してきた人物だが、洗脳して騒動を起こしてきたことをあからさまに語っている。その2年前のマイダン・クーデターについても、キエフの10年前の「オレンジ革命」についても、「もう一度やりたい、是非やりたい」と言っているのだ。その資金を提供した大富豪ジョージ・ソロスも、2014年5月、自身のオープンソサエティ財団がマイダン関連の事件で「重要な役割を果たした」とCNNに語っている。

 しかし、現在のところ、メディアは、マイダン・クーデターを煽動したことに対して米国が果たした役割を無視するか、あるいは、それはロシアの「偽情報」だとか陰謀論だとして、この命題を否定している。ウクライナ紛争が始まって以来、欧米のジャーナリストたちが躍起になって否定しようとしているのは、この騒動が(普遍的に受け入れられるものではないにせよ)圧倒的人気を博した「民衆反乱」以外の何ものでもなかったいう意見である。ミロシェビッチやシュワルナゼらの打倒にワシントンが果たした役割を自慢するような主流メディアは、明らかに以上のような事実を抹殺している。

 このような動かしようのない事実の抹殺は、世界中でNEDやUSAIDに対する敵意が高まり、政府がこれらNEDやUSAIDの活動を制限したり全面的に禁止したりしようとする動きが広まっているからだろう。特にワシントンが特に敵意を抱いている政府が、そのような動きに出るのは当然だろう。だからこそ、NEDやUSAIDの存在理由と活動方法のおぞましい実態を、欧米のジャーナリストが語らなくなっただけでなく、激しく否定すらするようになった。

 だから結局、大手メディアは、敵国と目されている国の指導者の言うことは真実であると認めることができなくなったのである。その代表例が、2015年7月の英紙ガーディアンの報道である。ガーディアン紙は、モスクワが外国代理人法に基づいてNEDを禁止し国外追放した件では、驚くべきことに、NEDの活動を説明するために自分で事実関係を調べるのではなく、NEDのウェブサイトから引用した短い文章を丸写しただけだった。その一方、2004年11月、その同じガーディアン紙は、その年のウクライナの「オレンジ革命」はNEDとUSAIDによる完全な画策だったということを、とくとくと自慢げに説明していたのである。

 したがって今や、強い政治的圧力をかけて海外での騒乱に外国が介入しているという主張は、大手メディアでは、ほとんど常に反撃の対象となっている。つまりデモ参加者には「行為主体性」があり、彼らの訴えは「正当な不満」だとアピールし反撃する。要するに、彼らは外国勢力によって指示されたとおりに行動しているわけではなく、抗議の内容も正当な不満であり外国勢力による入れ知恵ではないというわけである。しかし、最近トビリシで起きた扇動的な出来事では、このような訴えはまったく空虚に響く。米国政府高官の非難や声明と軌を一にして、外国代理人法の比較的些細な規制改正にこれほど大きな関心が組織的に沸き起こったことは想像を絶することだ。

 しかし、今のところ政権交代の流れは再び明確になっており、今回の抗議行動は単なる警告射撃に過ぎないように思われる。政府がこれほど簡単に屈服したのは、NEDが支援する現地の人的資産(NGO)によって革命が勃発する切迫した危険性を認識したからにほかならない。しかし、アメリカ帝国をなだめることができたとはいえ、脅威がなくなったわけではない。NEDがトビリシで活動する限り、この脅威は日常的な存続の危機であり続けるだろう。

写真|イラスト:MintPress News

キット・クラレンバーグは、政治や認識の形成における情報機関の役割を探る調査ジャーナリストであり、MintPresss Newsへの寄稿者でもある。これまでにThe Cradle、Declassified UK、Grayzoneに寄稿している。Twitter @KitKlarenbergでフォローしてください。

ドイツ:「巨大ストライキ」で交通停止―生活費上昇で大幅な賃上げ要求

<記事原文 寺島先生推薦>

‘Mega strike’ hits Germany
Hundreds of thousands of public transport workers walked off the job on Monday, bringing the country to a halt

月曜日、数十万人の公共交通機関の労働者が職場を離れ、国内の動きは停止した。

2023年3月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月28日

独、巨大ストライキ
ドイツ・フランクフルト・アム・マインの主要駅で公共交通機関のストライキ中、携帯電話をチェックする通勤客(2023年3月27日撮影) © AFP / Andre Pain


 月曜日(3月27日)、40万人以上の公共交通機関の職員が24時間ストライキに参加したため、ドイツ全土で空港、バス停、鉄道駅が停止した。労働者たちは、昨年からドイツで急騰しているインフレを補うための賃上げを要求している。

 ストライキは午前0時に始まり、火曜日(28日)の午前0時に終了する予定である。ドイツの主要8空港が影響を受け、ドイツ空港協会は、約38万人の旅行者が足止めを食らったと推定している。ミュンヘン空港は日曜日から完全に閉鎖され、すべてのフライトがキャンセルされ、ターミナルは閑散としていた。


 ドイツ鉄道は月曜日(27日)に、長距離路線はすべて運休し、地域路線は月曜日の夕方までに一部の地域で再開されただけだと発表した。路面電車、バス、地下鉄も全国で影響を受けた。

 貨物列車も停止し、ドイツ最大の港であり、ヨーロッパで3番目に交通量の多いハンブルグを発着する船舶の輸送も停止した。

 このストライキは、いくつかの主要な労働組合が出した賃上げ要求の結果である。約250万人の従業員を代表する公共サービス労組のヴェルディ(Verdi)は500ユーロ(75000円)を下回らない10.5%の賃上げを要求している。ドイツ鉄道とその他のバス会社の従業員約23万人を代表するEVGは、650ユーロ(92000円)を下回らない12%の賃上げを要求している。

独ストライキ その2

関連記事:ドイツは今や、米国産LNG中毒に(ドイツ国会議員)


 月曜日(27日)ナンシー・フェーザー内務大臣は、ロイター通信に対し、政府と労働組合の間で今週中に合意が成立する可能性が高いと述べた。

 公共サービス労組ヴェルディの代表であるフランク・ヴェルネケ氏はドイツのメディアに対し、およそ40万人の労働者がストライキに参加したと語った。ドイツの新聞は、この職場離脱を「メガ・ストライキ」と表現し、このような混乱は過去数十年で最大であるとしている。

 ヴェルネケ氏はドイツのBild紙に、賃上げの確保は生活費の上昇に対応するのに苦労している何千人もの従業員にとって「生存に関わる問題」であると語った。

 かつてヨーロッパの経済大国であったドイツは、工業生産高が縮小し、インフレ率は1990年代半ばから昨年ロシアがウクライナで軍事行動を開始するまでの0~2%の安定した割合から上昇し、2月には8.7%に達した。

 ドイツはウクライナ紛争以前、ロシアのガスと石油の輸入に大きく依存していたが、EUの制裁発動と米国が画策したとされるノルド・ストリーム・ガスパイプラインの破壊により、その輸入はすべて停止された。ドイツ政府は1月、今年の景気後退を辛うじて回避すると発表したが、格付け会社のフィッチは今月初め、ドイツ経済は2023年後半までに景気後退に突入すると予測した。

マクロン大統領の年金改悪に反対する100万人以上のデモで、警察がデモ隊と衝突

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Violent protests grip France — RT World News

フランスで暴力的なデモが発生

出典 RT 

2023年3月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月27日


© Twitter

 フランス当局は木曜日(3月23日)、エマニュエル・マクロン大統領の年金改革に反対する全国的な抗議デモを抑えるのに悪戦苦闘した。100万人を超えるデモ隊が全国で街頭に繰り出し、一部の治安筋はパリの政府に対する「暴動」と表現した。

 数万人の労働者がストライキを行い、デモ隊は公共交通機関、学校、石油精製所を封鎖した。デモ隊を追い払うために、警察は催涙ガス、高圧放水銃、閃光弾、警棒などを使った。ソーシャルメディアでは動画が出回り、重装備の警官が非武装のデモ参加者を棍棒で殴っている様子を映し出していた。


 他の映像では、パリの路上でバリケードが燃えている様子が映し出された。ヌーヴェル・アキテーヌの州都ボルドーでは、市庁舎の入り口が燃やされる事態も生じた。

 少なくとも消防士の一部隊が寝返って、デモ隊に合流した。複数の目撃者は、この状況を 「制御不能」と表現している。

 「パリは戦争状態だ、投稿する暇はない、気をつけろ」と、ある独立系メディアはツイートしている。


 150人近い警察官と国家公務員が負傷し、ラルド・ダルマナン内相は23日夜、この状況を「絶対に容認できない」とし、犯人の厳しい処罰を要求したと発表した。

 またダルマニン内相が記者団に語ったところによると、パリでの「略奪と放火」に関する尋問のため172人が拘束され、フランスの首都で190件の火災が発生し、そのうち50件は現地時間午後10時の時点でまだ燃えているとのことだ。 

 内相は、暴力の中でも特にひどいのは「極左」と「ブラックブロック」(黒装束をまとった過激派アナキスト主体の連合体、もしくは抗議の戦術)の無政府主義者であると非難した。

 警察は100万人以上の抗議者が街頭にいたと推定している。

 国民の不満の爆発の引き金は、マクロン大統領が来年から定年を62歳から64歳に引き上げると発表したことだった。マクロン大統領は、国民年金制度の破綻を防ぐために、この変更が必要であると主張している。


 エリゼ宮(フランス大統領官邸)は、1月以来、物議を醸すこの提案を検討しようとしていた議員に相談することなく、この変更を行った。これに対し、デモ隊はマクロン大統領に辞任を要求した。

 水曜日(3月22日)にテレビに出演したマクロン大統領は、自分の唯一の過ちは、この決定の利点を「人々に納得させることができなかった」ことだと述べ、たとえそれが「不評を買う」ことになったとしても、自分は引き下がらないと主張した。


 憲法で保護された抗議する権利はあるが、不満分子が暴力を行使するならば、「それはもはや民主主義ではない」とマクロン大統領は述べた。

 マクロン大統領はコロナウイルス対策としての過酷な封鎖や命令により激しく批判されたが、2022年には容易に再選を果たし、最終的には17ポイント差でマリーヌ・ルペンを破って当選した。なお決選投票では、1969年以来最低の投票率を記録した。

フランス全土で 「年金改悪は止めろ!」 と巨大なデモと集会

<記事原文 寺島先生推薦>

France paralyzed by pension reform protestsThousands take to the streets over the government’s plans to raise the retirement age from 62 to 64.

フランスは年金改革に対する抗議で麻痺状態。定年退職年齢を62歳から64歳に引き上げるという政府の計画に、多数の人々が街頭に繰り出す。

出典:RT

2023年3月7日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月26日


フランス北東部ランスで、フランス大統領の年金改革に反対するデモに参加する人たち(2023年3月7日) © François NASCIMBENI / AFP


 年金改革に反対する全国的なストライキと集会により、フランスでは、交通機関が大きく乱れ、石油精製所や大学が麻痺しています。これは、労働組合が国を「停止」させるよう呼びかけたからでした。

 定年を62歳から64歳に引き上げるという政府の計画に反対する抗議行動の最新波が6日目を迎える中、労働組合は火曜日(3月7日)に「200万人以上」が集会に参加すると発表しました。ちなみに、これまでで最大のデモが行われた1月31日には、公式発表によると約127万人が参加しました。



 デモ行進は全国各地で早朝から始まり、群衆はレンヌ第二大学やリヨン第二大学など主要な高等教育機関を封鎖したと、ソーシャルメディア上の映像や地元メディアの報道は伝えています。



 フランス西部の都市、ラ・ロッシュ・シュル・ヨンのバス発着所前には、デモ隊がバリケードを築きました。また、パリ近郊のサン・ドニ・プレイエルでは、学生たちがバス発着場を封鎖しましたが、治安部隊に押し戻されました。

 学生団体「挙げられた拳」Le Poing Leveによると、少なくとも100人がフランス西部のレンヌとロリアンを結ぶRN24高速道路を封鎖しました。同団体は、警察が集会を解散させるために催涙ガスを使用したと主張しました。



 労働組合組織である労働総同盟CGT-Chimieは、「すべての製油所」の出口で燃料の輸送が阻止されたと述べました。石油メジャー「トータル・エナジー」(フランスのパリ近郊ラ・デファンス に本社を置く多国籍企業)の経営陣は「フランス通信社」AFPに、影響を受けたことを正式に発表しましたが、同社のスタンドでは「燃料不足はない」と述べました。

関連記事:フランスの抗議デモで火災と衝突が発生(動画あり)

 また、労働組合は公共交通機関でのストライキをすると警告しています。月曜日(3月6日)、フランス国鉄SNCFとパリ交通公団RATPは、フランス国内の列車の移動が「非常に深刻な混乱」に陥ることを公式に発表し、地下鉄の運行も同様となるだろうということでした。

 一方、フランス民間航空総局は、航空会社に対し、パリのシャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港でそれぞれ20%と30%の定期便の減便を要請しました。

 年金改革に対する不安は、数週間前から急激に高まっています。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、今後25年間に予想される年金制度の赤字のためにこの構想が「不可欠」であると述べていますが、「エラベ」Elabeの世論調査によると、60%近くがこの改革に反対しており、国民の間でひどく人気がないことが判明しています。

ポーランド前外相、ロシアのガス・パイプラインの破壊を米国に感謝

<記事原文 寺島先生推薦>

Ex-Polish FM thanks US for destruction of Russian gas pipeline
Moscow has called the incidents a 'terrorist attack'

モスクワは一連の出来事を「テロリストの攻撃」と呼んだ。

出典:RT

2022年9月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日


© Twitter/screenshot

 米国、ロシア、そしてヨーロッパのほとんどの政府が、ノルド・ストリーム1、2を破損させた月曜日(9月26日)の爆発事故の背後に誰がいるのかについて判断を保留しているのに対し、ポーランドの元外相ラドスワフ・シコルスキはそのようなそんな躊躇いは一切持たなかった。

 シコルスキーは火曜日(9月27日)、バルト海の海域で発生した大規模なガス漏れの写真とともに、「ありがとう、アメリカ」とツイートした。デンマークのボーンホルム島沖で、2つのパイプラインが大きく損傷した。今ではそれを計画的な行為と呼ぶ者が多い。

 シコルスキーはその後、ポーランド語で、ノルド・ストリームが被害を受けたことで、ロシアがヨーロッパへのガス供給を継続したいのであれば、「ブラザーフッド・ガス・パイプラインとヤマル・ガス・パイプラインを支配する国々、つまりウクライナやポーランドと話し合う」必要がでてくる、とツイートし、それを「よくやった」と締めくくった。

 ノルド・ストリーム 1とノルド・ストリーム 2は、スウェーデンとデンマーク当局が後に一連の海底爆発があったと発表した後、月曜日(9月26日)にすべての圧力を失った。ノルド・ストリーム1は、ロシアが技術的な問題であると発表した後、容量を減らして運転され、ノルド・ストリーム2は、ドイツが(運転)認証を拒否したため、加圧は十分だったが運転に至らなかった。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、シコルスキーのツイートが「テロ攻撃であるとの公式声明」に相当するのかどうかの判断に、迷っていた。一方、モスクワの国連副大使ドミトリー・ポリアンスキーは、シコルスキーが 「民間インフラを標的としたこのテロスタイルの背後に誰が立っているのかを明確にした!」と感謝した。



 ポーランドのマテウス・モラヴィエツキ首相は、シコルスキー元外相ほどは踏み込まず、ノルド・ストリーム事件を 「ウクライナ情勢の趨勢を激化させる次のステップに繋がる破壊工作」と表現することを選択した。



関連記事:ロシアのガス・パイプラインが前代未聞の規模の被害を受けた(技師からの報告)


 ただの欧州議会議員ではなく、シコルスキーは元イギリス国籍で、数多くの米国やNATOのシンクタンクでフェロー(特別研究員)を務め、ポーランドの元国防相(2005~2007年)、外相(2007~2014年)でもあった。2014年10月、ロシアのプーチン大統領がウクライナをワルシャワと分割したいと考えているという主張を捏造したことが発覚し、その発言の撤回に追い込まれた。

 シコルスキーは2022年1月にロシアを「連続強姦魔」と呼び、6月にはウクライナのエスプレッソTVで「NATOはキエフに核兵器を与える権利がある」と述べた。彼はアメリカの評論家アン・アップルバウムと結婚しており、彼女もまたロシアを露骨に敵視している。

 シコルスキーがノルド・ストリーム破壊工作について米国に感謝したのに対し、キエフはロシアを非難した。ウラジーミル・ゼレンスキー大統領の顧問ミハイル・ポドリアックは「ロシアが計画したテロ攻撃であり、EUに対する侵略行為」と呼び、最善の対応はウクライナ軍にドイツの戦車を送ることであると主張した。

「武器を送るな、NATOから脱退せよ」 フランスでも各地で大規模な抗議集会

<記事原文 寺島先生推薦>

Anti-NATO protests hit France
Rallies against the US-led bloc and the supply of weapons to Ukraine have been held across the country

反NATOを求める抗議がフランスで起こる。
米国主導勢力とウクライナへの武器供給に反対する集会がフランス全土で開催された。

出典;RT

2023年2月26日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月14日 


© Twitter / Florian Philippot


 フランスのNATO加盟と、キエフへの継続的な支援に反対する大規模な複数の抗議行動が、日曜日(2月25日)に首都パリと国内の他の場所で行われた。

 2週連続で行われたデモは、パリでの集会に自ら参加したフロリアン・フィリポ氏率いる右派政党「レ・パトリオット」が主催したものだ。

 同政治家は、「平和のための全国行進」と名付けられた日曜日(2月25日)のイベントには、首都パリでの集会に、約1万人が集まった先週よりもさらに多くの参加者が集まったと述べた。フィリポ氏によると、小規模な反NATOデモは、フランス国内の他の約30カ所でも開催されたという。


 デモ隊は、「平和のために」 と書かれた大きな横断幕を持って、パリの街を行進した。デモ隊は、フランスが米国主導のNATOとEUの両方から脱退することを求め、ウクライナへの武器供与の停止を促した。デモ隊はまた、現職のエマニュエル・マクロン大統領を非難し、「マクロンは出て行け!」と唱えた。---- このスローガンは、マクロン大統領の任期中、さまざまな反政府デモ参加者がよく使っていたものである。

 デモ行進の後、デモ隊はフィリポ氏主催の集会を開き、フィリポ氏が支持者とともにNATOやEUの旗を汚す様子が撮影された。このイベントの映像は、同政治家本人がソーシャルメディアで投稿したものである。 


 この政治家は、昨年秋以降、フランスのNATOおよびEUへの加盟に反対する抗議活動を積極的に展開する一方、ウクライナへの武器供給に反対を主張している。2012年から2017年にかけて、フィリポ氏は昨年までマリーヌ・ルペンが率いるフランス最大の野党「国民集会」の副党首を務めていた。国民集会を去った後、41歳の政治家は自身の右派政党「レ・パトリオット」を設立した。

 フランスは、1年前に勃発したロシアとの紛争において、キエフを支持する最前線の国のひとつであった。マクロンは敵対行為の外交的解決を繰り返し求めているが、パリは装甲車や高性能の自走榴弾砲など、さまざまな兵器をウクライナに積極的に供給してきた。

「武器を送るな、賃金を上げよ」 イタリアで平和を願う数千人の集会。

<記事原文 寺島先生推薦>

Thousands rally for peace in Italy

ジェノバとミラノの都市で、キエフへの武器供給の中止を要求するデモが行われた。

出典:RT

2023年2月26日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月14日


*Ruptly提供。Ruptly GmbH は、ドイツのベルリンに本拠を置く、ビデオ オン デマンドを専門とするロシアの国営ビデオ通信社。ロシアの国営テレビ ネットワーク RT の子会社。


 土曜日(2月25日)、イタリアのジェノバとミラノで、数千人が平和のためのデモに集まった。労働組合員や左翼活動家らは、ローマ当局がウクライナに武器を送ることは、国内法に違反しているなどと主張した。

 ジェノバでの集会には、国内だけでなく、スイスやフランスからも4000人近い参加者が集まったと地元メディアは報じている。

 イタリア共産党の支援を受けた港湾労働者自治労組(CALP)グループが主催したこの抗議行動は、「武器支援をやめ、賃金を上げよ」というスローガンのもとに行われた。

 CALPのリカルド・ルディーノは、「ウクライナの紛争は昨年」 ではなく、「2014年、ドンバスのロシア語を話す住民の虐殺から」始まったと述べたとメディアで報道されている。


 デモ隊はジェノバ港を行進し、ウクライナ向けの武器輸送のための施設の使用停止を要求した。

 CALPの広報担当者ホセ・ニヴォイは、イタリア政府が 「イタリアから戦争状態にある国への武器の輸入、輸出、輸送を禁止した」1990年の法律185に違反していると非難した。

 また、同グループの代表は、志を同じくする 「ヨーロッパの各都市の団体や活動家」とネットワークを構築してきたとのべた。

<関連記事> ドイツのウクライナ政策に数百人が抗議行動

 デモ行進は大きな事件もなく、アナーキストによる数台の車を汚したり破損したり、銀行の窓ガラスを割るなどの破損行為があっただけだった。

 土曜日(2月24日)にはミラノでも抗議デモが行われました。ビデオ通信社Ruptlyは、数百人がスローガンを唱え、ロシアやドネツク人民共和国の旗を振る様子を撮影した。


 イタリアでのデモは、ドイツの首都ベルリンでのデモと同時に起こった。ベルリンでは、著名な左翼党の政治家サハラ・ヴァーゲンクネヒトと作家のアリス・シュヴァルツァーの呼びかけに、数万人の人々が応えた。

 「平和のための蜂起」と名付けられたこの抗議行動は、ウクライナでの敵対行為を終わらせるための和平交渉を呼びかけた。また、参加者はドイツ政府に対し、キエフへの武器輸送を中止するよう要請した。

 ヴァーゲンクネヒトは支持者を前に、オラフ・ショルツ首相が「ロシアを破滅させようとしている」と批判し、土曜日(2月24日)の抗議行動をドイツにおける新しい平和運動の始まりと表現した。

ウクライナへの武器供与に反対するベルリン集会、数万人が参加

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Berlin rally against arming Ukraine draws tens of thousands
An estimated 13,000 to 50,000 people attended the event calling for peace talks

和平交渉を求めるこの行事には、推定13,000~50,000人が参加した。

出典:RT 

2023年2月25日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月2日

ベルリン 1
2月25日の平和デモでスピーチをする左派党の政治家ザーラ・ヴァーゲンクネヒト*(右)と女性権利活動家で作家のアリス・シュヴァルツァー**(左)  Photo: Steffi Loos / Getty Images

*ザーラ・ヴァ―ゲンクネヒトは、1969年7月16日イエナ生まれ。政治家。左派党副党首。11月から左派党連邦議会議員副団長。デュッセルドルフ在住。(出典:ザーラ・ヴァーゲンクネヒト - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト (newsdigest.de)
**アリス・シュヴァルツァー(1942年12月3日 生まれ)は、ドイツのジャーナリスト、著述家、フェミニスト、フェミニズム雑誌『エマ(ドイツ語版)』の創刊者・編集長。シモーヌ・ド・ボーヴォワールに出会い、フランスの女性解放運動 (MLF) に参加。(出典:ウイッキペディア)



 数万人のドイツ人が、土曜日(2月25日)、左翼党(左派党)の政治家ザーラ・ヴァ―ゲンクネヒトと作家アリス・シュヴァルツァーが主催する大規模な集会「平和のために立ち上がる」に風雨をものともせず参加しました。

 デモ隊はブランデンブルク門に集結し、ウクライナ紛争を終わらせるための和平協議を求め、ベルリンがキエフへの武器供給を停止するよう要求した。

 ヴァ―ゲンクネヒトは、ドイツ政府が「ロシアを破滅させようとしている」と非難し、平和協議を始めるためにモスクワに「申し出」をするよう指導者に求めた。この集会は、「市民の主導権の始まり」であり、「ドイツにおける新しい強力な平和運動の始まり」であると彼女は言った。



 この集会は、政治的領域を超えた抗議者たちを歓迎し、「誠実な心で」平和を望む者は誰でも歓迎すると宣言したが、メディアの注目を浴びようとするネオナチの挑発者たちは歓迎されなかった。



 主催者は参加者を5万人としたが、警察は1万3千人と控えめな数字を出した。

 ヴァ―ゲンクネヒトとシュヴァルツァーは今月初め、オラフ・ショルツ首相に「武器輸送の拡大を止める」よう求める「平和のためのマニフェスト」を発表した。それ以来、著名な知識人、政治家を含む50万人以上がこのマニフェストに署名している。



 シュルツ首相は、和平交渉を持てない理由は、ロシアが話し合いのテーブルにつかないからだと繰り返し主張している。この紛争が始まって以来、この紛争の平和的解決をモスクワが何度も試みてきたことには目がいかないようだ。


ベルリン 2

© Kevork Almassian on Twitter

ホワイトハウス記者会見で予告されていた「ノルドストーム破壊工作」:独首相も事前承認

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Video: America is at War with Europe

ビデオ:米国はヨーロッパと戦争状態にある。

筆者:ミシェル・チョスドフスキー(Michel Chossudovsky)

出典:Global Research 

2023年2月16日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月25日

チョフドフスキー



最新情報:「秘密作戦」は存在しなかった

 ノルドストリームの破壊行為が「米国につながることを追跡する」ことを防ぐための「秘密作戦」は存在しなかった。

 この[破壊工作の]事業は、シーモア・ハーシュが概説したように、2021年に密室で議論されていたが、このいわゆる「秘密作戦」の実際の計画は2021年12月に始まり、2022年6月には爆弾の仕込み、そして2023年9月26-27日には実際の破壊行為となった。(下の地図参照)。

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 2021年12月下旬、国家安全保障顧問のジェイク・サリバンは、ロシアの戦争準備に関わる「新たに結成された特別委員会」(統合参謀本部、CIA、国務省、財務省)と称される会議を開催した。

 その中で、ノルドストリームに関してどのような行動を取るべきか、議論が交わされた。「CIAは、何をするにしても、秘密裏に行わなければならないと主張した。特別委員会関係者は皆、危険の度合いを理解していた」。

 この「秘密作戦」とされる作戦の時系列を簡単に見てみよう。2021年12月下旬~2022年6月~2022年9月26日~27日:9ヶ月の期間。

2021年12月下旬:「(省庁間)特別委員会」が新たに発足 「新たに発足した(省庁間)特別委員会」がジェイク・サリバン国家安全保障顧問により招集された。

2022年初頭:秘密作戦が想定された。CIAは特別委員会に報告した。「パイプラインを爆破する方法がある」と。それは「追跡不可能な」爆破の方法だった。

その1ヵ月後。

2022年2月7日:ホワイトハウスでドイツのオラフ・ショルツ首相(米国を公式訪問中)と共に記者会見、バイデン大統領は次のように発言する:

ロシアが侵攻した場合、「ノルドストリーム2はなくなる」

2022年6月10日:(おおよその日付)
水中での爆弾の仕込み。バイデンは「いつでも爆発させられる権利、つまり私たちから遠隔操作でいつでも爆弾を作動させる権利が欲しかった」のです。

2022年9月26日~27日
バルト海のボーンホルム島近くで6個の爆弾が水中で爆発し、ノルドストリーム1、2の4本の主要パイプラインのうち3本を破壊(S・ハーシュ、上記地図参照)。


2022年2月7日のバイデン=ショルツ・ホワイトハウス記者会見
本記事にリンクされている記者会見のビデオをご覧ください。ホワイトハウスによる文字起こしもあります。

 「秘密」は何もなかった。 バイデン大統領とショルツ首相によるノルドストリームに関する公的な発言は、極めて明確である。

アンドレア(ロイター)質問:ありがとうございます、大統領。 そして、ショルツ首相、ありがとうございました。 大統領、私は、あなたが長い間反対してきたこのノルドストリーム事業についてお聞きしたかったのです。今、あなたはそのことに言及しませんでしたし、ショルツ首相も言及しませんでした。今日、ショルツ首相から、ロシアがウクライナに侵攻した場合、ドイツは実際にこの事業から手を引くという確約を得たのですか? また、「侵略」の定義がどのようなものになりうるか議論したのでしょうか。

バイデン大統領:まず、最初の質問です。 もしドイツが--ロシアが―つまり戦車や軍隊が再びウクライナの国境を越えて―侵攻してきたら、私たちは―もはやノルドストリーム2は存在しないことになる。 私たちはそれに終止符を打つでしょう。

質問:しかし、事業)とその支配権はドイツの管理下にあるのですから、具体的にどのようにするのでしょうか?

バイデン大統領:私たちは、約束します、必ずできます。 (ホワイトハウス記者会見、強調は著者)



「その事業はドイツの支配権の範囲内」

 オラフ・ショルツ首相は、バイデン氏のノルドストリーム2から手を引く決定に関して、ロイター通信の記者に回答している。

アンドレア(ロイター) [シュルツに対する]質問:そして、あなたは今日 – ノルドストリーム2を止めて、その事業から手を引くことを今日明言しますか? あなたはそれに言及しませんでしたし、言及していませんね。

ショルツ首相:すでに申し上げたように、我々は共に行動しており、絶対に団結しており、異なる行動をすることはありません。私たちは同じ行動をとり、それらはロシアにとって非常に、非常に困難なものであり、彼らはそれを理解するはずです。(強調は著者)



 記者の質問をさりげなく無視する。ノルドストリームは、シュルツが政府の長であるドイツの「支配下」にある。ショルツ首相はワシントンの要求を完全に守り、政治的な代理人として行動している。「我々は異なる手段をとることはない」と彼は言う。

 上記のショルツ首相の回答をお読みください。ドイツは米国の「半植民地」になってしまったのでしょうか?


ホワイトハウスの記者会見で公表された「秘密作戦」

 バイデン氏の記者会見での発言は、ドイツのショルツ首相に支持され、いわゆる「秘密作戦」が展開され、米国の攻撃が「追跡不可能」であるという考え方を無効とするものです。

 「バイデンとヌーランドの軽率な行動は、それが何であれ、計画者の何人かをいらだたせたかもしれない。しかし、それはまた好機でもあった。情報筋によると、CIAの高官の何人かが判断したことは、パイプラインを爆破することはもはや秘密の選択肢とは見なされない、なぜなら大統領がその方法を知っていると発表したばかりだからということでした」。(シーモア・ハーシュ)

 これは、ジョー・バイデンの失態ではなかった。大統領とヌーランドを含む彼の政治的側近が、ノルドストリームに対する米国の破壊行為が(ドイツ政府の支持を得て)想定されていることを知らしめた政治的決断であったのだ。(下記記事の分析参照)

 バイデンの公式声明は、計画された破壊工作が「ホワイトハウスまで追跡可能」であることを事実上認めている。それはもはや「秘密作戦」ではなかった。

 バイデンの声明は、2022年6月に実行されたいわゆる秘密破壊行為の数カ月前に、ドイツのショルツ首相のお墨付きを得て策定されたものである。

 何人かの分析家やジャーナリストは、「誰が破壊工作に責任があるのか」について熟考している。これはナンセンスな行為だ。答えは明らかだ。ドイツのオラフ・ショルツ首相と協議している米国大統領だ。

 バイデン大統領の2022年2月7日の宣告は、破壊行為の実行に「ゴーサイン」を出したのである。それはもはや「秘密作戦」ではなかった。破壊工作を行った者たちは、ドイツ連邦共和国政府のお墨付きで、ホワイトハウスから発せられた指示を実行に移したのだ。

 私の論文にあるように、ノルドストリームの破壊工作は、ドイツと欧州連合に対する米国の戦争行為であった。

 そして、ドイツの首相は、ノルドストリームに対する破壊行為が、4億人以上のヨーロッパの人々の不利益になるように、米国によって想定されていたことを十分に認識していたのである。(以下の分析参照)。この点で、オラフ・ショルツ首相が米国の戦略を受け入れたことは、反逆の行為であった。

2023年2月16日付


------------------------------------------------------------                                         
「米国はヨーロッパと戦争状態にある」
   ミシェル・チョスドフスキー著
   グローバルリサーチ
   2023年2月12日
------------------------------------------------------------

 情報筋によれば「この画策をしていた間ずっと、CIAと国務省の一部の職員は、“こんなことはするな。バカバカしいし、表に出れば政治的な悪夢になる”と言っていた」という。

  「これは子供だましではない」と、その情報筋は言った。もしこの攻撃が米国に帰することが出来るのであれば、「それは戦争行為だ」と。

「どのようにして米国はノルドストリームのパイプラインを破壊したのかセイモア・ハーシュ2023年2月8日、強調は著者)


展開する「政治的悪夢」

 ノルドストリームはジョー・バイデン大統領が命じた破壊行為の対象であったことを、証拠が十分に裏付けている。

 ノルドストリームは、ロシアからEU加盟国4カ国の領海を通過している。国際法では、「領土保全」は、国家の領海内にある「財産」にも及ぶ。

 法的な観点(国際法:国連憲章、海洋法)から、これはEUに対する米国の戦争行為であった。

 外国人行為者によって、または外国人行為者のために、一国の領海内の当該「財産」を意図的に破壊することは、戦争行為に該当する。

 ドイツのピーター・フランク検事総長は、綿密な調査で、次のように確認した

  「ノルドストリームのガスパイプラインの破壊について、ロシアを非難する証拠はない」。


ロシアでないとすれば、誰が背後にいるのか?

  ピーター・フランク検事総長によると:
 「外国人による破壊行為があったという疑いは、今のところ立証されていない」。

 ピーター・フランクは、米国大統領の役割(十分に確認されている)をさりげなく打ち消している(後述)。


ノルドストリームの破壊工作は「追跡可能」。それはEUに対する経済的、社会的戦争行為である。

 米国の破壊行為と制裁体制は、EU全域に社会的大混乱と苦難を引き起こした。エネルギー価格の上昇に端を発したインフレは、高騰を続けている。人々は暖房費を払うことができず、凍えている。

 メディアの報道では、米国の妨害行為が社会的、経済的にどのような影響を及ぼしているのかを認めていないが、EUの公式情報筋は(その原因には触れずに)次のように確認している。

 「エネルギーに窮している国民の数は1億2500万人(全人口の28%)に達する可能性がある」。

 ヨーロッパは前例のない債務危機を経験している。福祉国家は解体されつつある。


EU経済の不安定化

 ロシアからの安価なエネルギーに依存してきたEU経済は、工業生産(製造業)、輸送、商品貿易の構造全体の崩壊が顕著で、混乱状態にある。

 解雇や失業をもたらす企業倒産がEU全域で相次いでいる。中小企業は地図から消え去る予定である。

 「エネルギー価格の高騰がドイツの産業を苦しめている」...

 「ドイツの製造業は、同国の経済生産の5分の1以上を占めているが、一部の企業が危機を乗り越えられないことを懸念している。...」

 「フォルクスワーゲン(VLKAF)シーメンス(SIEGY)といった業界の巨大企業も供給網の障害に悩まされているが、(エネルギー価格上昇の)衝撃に耐えられないのは、ドイツのおよそ20万社の中小製造業者である」。

 「これらの企業は、ドイツの経済生産の半分以上と雇用の3分の2近くを占める260万社の中小企業「ミッテルシュタンド」[中堅企業]の重要な構成要素である。その多くは家族経営で、農村地域に深く根ざしている」。


ジョー・バイデン氏に感謝

記者会見(2022年2月)で「バイデンが秘密を漏らした」。
「あなたたちに約束します。私たちはそれができます。」と、ジョー・バイデンが述べた。
ジョー・バイデン:「ノルドストリーム2は、なくなるだろう。」




「政治家集団」の大逆罪

 米国は、もはやEUの「同盟国」ではない。全く逆である。EUに対する破壊行為における米国の陰湿な役割は、十分に立証されている。疑う余地もない。

 一方、EUの腐敗した政治家たちは、ロシアを非難するだけでなく、米国と協力し、ワシントンの利益のためにEUの破壊のための舞台を整えているのである。

 彼らは、「敵と寝て」欧州の人々に害を与えているのである。

 反逆罪とは、外国の権力者のためにヨーロッパの高位にある政治家が行う裏切り行為であり、さまざまな手段でEU全域に経済的・社会的混乱を積極的かつ意図的に引き起こしている。米国はEUの同盟国ではない。全く逆である。ワシントンは、腐敗した政府高官の支援を受けて、ヨーロッパに対して戦争を仕掛けているのだ。それは反逆の行為だ。

 必要なのは、EU全体の「政権交代」であり、腐敗した政治家に対する刑事訴追である。


マスコミの反応

 英紙デイリー・メール(2023年2月9日付)によれば、次のようになる。

 ピューリッツァー賞受賞の調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、米海軍のダイバーがジョー・バイデン大統領の命令でパイプラインを爆発物で破壊したという未確認の情報源を引用している。

 ロイターは、この疑惑の裏付けを取ることができなかった。ホワイトハウスは、「全くの虚偽であり、完全なでっち上げである」と断じた。ノルウェー外務省は、この疑惑は「ナンセンス」であると述べた。

 メディアによれば、「フェイクニュース」ということだ。

 ホワイトハウスが「完全なでっち上げ」と言っているが…

 2022年2月のテレビニュースでのインタビューで、米国大統領は、必要であればノルドストリームに対して行動を起こすことを認めた。この発言は、ロシアの侵攻の3週間前になされたものである。

ジョー・バイデン大統領:「もしロシアが侵攻してきたら、それは戦車と軍隊が再びウクライナの国境を越えることを意味し、その時はもうノルドストリーム2は存在しないでしょう」。

記者:「しかし、このノルドストリームの事業はドイツの管理下にあるので、具体的にどのようにするのですか?」

バイデン: 「やります。約束します。私たちにはそれができます。」(強調は著者)



バイデン大統領の記者会見




動画:ミシェル・チョスドフスキーへのキャロライン・メイユーのインタビュー  *原サイトからご覧ください。(訳者)

ドイツ、「明かりを灯し続ける」ために5,000億ドル支出---ベルリンの巨額の燃料補助金は、ウクライナ危機による経済的影響に対処するには十分でない可能性(ロイター通信)

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Germany spending $500 billion to ‘keep the lights on’ – media

出典:RT

2022年12月15日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2023年1月11日


先月(11月)、ベルリン郊外にある変電所の外に立つ作業員。© Getty Images / Sean Gallup


 ドイツは2月に始まったロシアとウクライナの紛争以来、エネルギー供給を補強し、「明かりを灯し続ける」ために約5000億ドルを割り当てたと報じられているが、この支出ラッシュは危機を乗り切るのに十分ではないかもしれない。

 ロイター通信は15日(木)、原油や天然ガスの価格が高騰し、ロシアからの輸入が途絶える中、ベルリンが採用したエネルギー救済策などの「累積規模」を反映して、推定総費用が算出されたと報じた。

 同通信は、様々な補助金を「エネルギー・バズーカ」と呼んでいる。この額は、ドイツの住民一人当たり5400ドル、GDPの12%にあたる。それは東欧での紛争が始まって以来一日当たり推定16億ドルに相当し、さらに多くの支出が必要になる可能性があると付け加えた。

 ドイツ経済研究所のマクロ経済研究部長ミヒャエル・グロムリング氏はロイターに対し、「危機がどの程度深刻化し、どの程度続くかは、エネルギー危機がどのように進展するかに大きく左右される」と述べた。

 「国民経済全体が大きな富の喪失に直面している。」

 紛争の経済的影響は、米国、ドイツ、その他のNATO加盟国が課した反ロシア制裁に大きく起因する。モスクワを罰し、孤立させようとする西側の努力にもかかわらず、石油とガスの輸出によるロシア政府の収入は、2022年の最初の11カ月間で10兆ルーブル(約1600億ドル)と、1年間で2倍以上になった。同期間中、エネルギー収入の増加により、政府予算の黒字は5570億ルーブル(8912億ドル)に達した。

<関連記事> ドイツ、記録的な借入金に頼る

 しかし、ロイター通信が指摘するように、ヨーロッパ最大の経済大国は現在、天候に「翻弄されている」ことに気づく。「この冬、ドイツが長い寒波に見舞われた場合、エネルギー供給が危機に陥ることになるだろう。というのも、今年は半世紀ぶりにロシアのガスを使わない冬になるのだから」と同通信社は指摘した。

 ドイツのキール世界経済研究所のシュテファン・クース副所長は、不確実なエネルギー供給がドイツ経済を「非常に危機的な段階」に追い込んでいると指摘する。さらに、「ドイツ経済はどのような状況にあるのだろうか。物価上昇率を見れば、高熱が出ている」 と述べた。

 ロイターの記事は、エネルギー企業への救済措置、LNG輸入インフラ、電力会社や貿易業者がガスや石炭を購入するための資金援助などへのドイツの支出をもとに計算を行ったものである。「これらの努力にもかかわらず、同国がどのようにロシアからのエネルギーに取って代えることができるかを巡っては、ほとんど確実性がない」 と同通信社は述べている。

<関連記事> EUのエネルギー危機は数年間続く - FT

英国の看護師組合が過去最大のストライキを実施。イングランド、ウェールズ、北アイルランドの施設で、医療従事者が長年の低賃金に抗議して仕事を放棄した。

<記事原文 寺島先生推薦記事>

UK nurses’ union launches largest ever strike

出典:RT

2022年12月15日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年1月9日


© Getty Images / Andy Barton

 イングランド、ウェールズ、北アイルランドの10万人以上の看護師が12月15日木曜日、イギリス看護協会(RCN)の労働組合106年の歴史の中で最大のストライキを行い、仕事を放棄した。

 Sky Newsによると、イングランドでは病院と訪問看護施設の約4分の1が、北アイルランドではすべての医療機関が、ウェールズでは1つを除くすべての医療機関が、12月20日火曜日にも予定されているストライキに参加しているとのことだ。

 英国の看護師は 「危機的状況」に達しており、ストライキ以外の選択肢はないと、RCN委員会のデニス・ケリー(Denise Kelly)委員長はSkyに語り、「長年の実質賃金カット」、 公務員職の数年にわたる賃金凍結、どんどん上がる生活費、さらにはインフレ率はプラス5ポイントである点などに触れ、看護師は19%の賃上げを要求していると述べた。

 政府は、ほとんどの看護師に対してわずか4.5%の賃上げを提示し、給与水準の低い者は最大で9%の賃上げを受け取るとしている。リシ・スナック首相の報道官は、12月15日木曜日にこの提案を「公正かつ妥当」とし、昨年は看護師が3%の賃上げを受けたと指摘した。


<関連記事> 英国の首相は、労働組合の取り締まりを示唆

 このような経済的な問題に加え、多くの看護師は患者の安全が脅かされていると主張している。ロンドンのセント・トーマス病院の訪問看護婦長はSkyに、「看護師はへとへとだ」、「1人の看護師が3人分の仕事をしている」ほど病院の人員不足で、それが患者を危険にさらすほどであると語った。

 ケンブリッジのアデンブルック病院の前でピケを張っている訪問看護部門の看護婦長は、Covid-19以来、「仕事量が2倍になった」、「来院する患者の病状はこれまでよりずっと重くなっている」と主張し、その変化に対応した人員増強は行われていない、と述べた。また、何万もの欠員がありながら、それを埋める人がいないことを指摘する人もいた。

 患者の擁護団体である患者協会は、看護師たちとの連帯を表明している。CEOのレイチェル・パワーは、この「恐ろしい時」に、「RCNとテーブルを囲んで、この解決策を見つける」よう政府に懇願している。

 国民だけでなく保守党内からさえも圧力が高まっているにもかかわらず、ダウニング街10番地(英国政府)は、看護師の給与体系を再考する 「計画はない」と主張している。 マリア・コーフィールド保健大臣は、1%余分に賃上げするごとに7億ポンド(8億5325万ドル)の費用がかかり、インフレに合わせようとしても問題が悪化するだけだと主張している。

 一方、スナック首相は今週初め、英国経済へのさらなる混乱を防ぐため、「より厳格な対ストライキ新法」を導入する用意があると警告した。交通運輸労働者、ロイヤルメール(イギリスの郵便事業のブランド名)、高速道路職員、その他の英国の労働組合は、今後数週間のうちにストライキを行う予定である。

EUの停電は避けられない、とオーストリアの防衛相が主張

<記事原文 寺島先生推薦>

EU blackouts inevitable – Austria
It’s not a matter of “if,” but “when” some parts of the bloc go dark, Vienna’s defense minister has said

EUの停電は避けられない。(オーストリアでの報道)
これは、「もしも起こったら」ではなく、「いつ起こるか」の話であると、ウィーン当局の防衛相が主張

出典:RT

2022年12月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月30日


2022年11月25日、ポーランドのワルシャワの夜の通り©  STR / NurPhoto via Getty Images

 ウクライナ戦争のさなか悪化するエネルギー危機により、欧州連合が停電を食い止められる可能性はほぼなく、停電の影響に備えるべきである、とオーストリアのクラウディア・タナー防衛相が、12月27日(火)に警告した。

 ディ・ヴェルト紙の取材に対し同相は、近い将来、EU内で停電になる地域が生じる可能性は、「非常に高い」という見通しを示した。「ウクライナ戦争の影響により、電気供給の停止が広まる危険性が、いま再び深刻に高まっています」と同相は述べた。さらに、「問題なのは、もしも起こったらではなく、いつ起こるかの話です」と同相は語気を強めた。 

 タナー防衛相がさらに、証拠を示すことなく述べたのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、西側諸国の電力供給網に「ハッカーによる攻撃」を加えようとしていることは、「ハイブリッド戦争」の一環である、という内容だった。

 「この攻撃を理論上だけのものだと捉えるべきではありません。オーストリアや欧州内での停電に備えなければなりません」と同相は語った。

 タナー防衛相によると、オーストリア軍をはじめ他の政府諸機関も関連した非常時のための訓練を行っているとのことだ。さらにオーストリア政府は、国民の意識向上の取り組みも行っていて、公共の場所で小冊子を配布し、停電の際にとるべき対応を広報しているという。


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 そのような措置は、「混乱状態」を引き起こすことにならないか、と問われた同防衛相は、その懸念を否定した。「平衡感覚をもって意識を高めることと恐怖を煽ることの間には、細い境界線しかないことは承知しています。しかしこれまでのところ、私たちはかなりうまく対応できていると思っています」と同相は述べた。

 停電になるのではという恐怖が欧州各地を覆うようになってもう数ヶ月になる。ウクライナでの戦争に伴う西側がロシアに課した制裁が原因で起きている燃料価格の高騰により、欧州大陸が浮き足立っている中でのことだ。

 今月(12月)上旬、ドイツの報道機関が、エネルギー節約のため、スイスで電気自動車の使用を制限する措置をとることを検討していると報じた。その同時期に、フランスの送電会社RTEのザビエル・ピエハジュク社長は、気温の低下とエネルギー需要の高まりのせいで、フランスが停電に直面する危険があると警告していた。さらに、いくつかの原子炉が、整備のため稼働停止を延長すれば、停電の危険はさらに高まるだろうと先週ブルームバーグ紙は報じた。

 11月下旬、ロシアのマリア・ザハロワの外務省報道官は、EU諸国の政策立案者たちは、現在進行中のエネルギー不足の責任は、身から出た錆であると主張していた。

チェコのプラハで、対ロシア制裁とウクライナへの支援の中止を求める大規模デモが発生

<記事原文 寺島先生推薦>

Major protest in EU capital calls for direct gas talks with Russia

Prague rally demands resignation of government, decrying its support for Kiev and anti-Russia sanctions

EU加盟国の首都で、天然ガスについて、ロシアと話し合いを要求する大規模デモが発生
プラハでの抗議集会は、政府の退陣を求め、キエフ当局への支援とロシアへの制裁を非難

出典:RT

2022年10月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月15日


10月初旬、プラハで、高騰するインフレに対する抗議活動を行っている市民連合の人々。© Getty Images / Sean Gallup

 10 月30 日(金)、何万人ものデモ参加者が、プラハの中央広場を覆い尽くし、チェコ政府が対ロシア制裁と、ウクライナ支援計画を支持する中で進行しているインフレを非難した。

 デモ参加者たちは、モスクワ当局との天然ガスについての直接の話し合いを持つことと、ペトル・フィアラ首相とその内閣の退陣を求めた。参加者たちは、チェコ国旗を振りながら、「退陣、退陣」と声を揃えた。

 この最新の集会は、9月に行われた同様の集会に続くものだが、その9月の集会では、推定7万人が参加したと報じられた集会もあった。

 ヴァーツラフ広場に集まった群衆は、エネルギー価格と食料価格の高騰の原因となっている、ウクライナ危機に関する対ロシア制裁へのチェコの参加の中止を求めていた。


 「ロシアは我が国の敵ではありません。戦争を求めている我が国の政府こそが、なのです」とは、AP通信が報じたデモ参加者の一人の声だ。この抗議活動を組織した、「チェコ共和国が一番」という名の団体は、NATOに反対し、チェコは軍事的中立の立場を取るよう求めた。


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 「今、新しい国家が再生しようとしています。そしてその目的は、チェコ共和国が自立することなのです」とロイター通信は、この抗議活動の組織者であるラディスラフ・ブラベル氏のことばを報じた。「人々で埋め尽くされたこの様子を見れば、誰もこの動きを止められないと確信しました」

 フィアラ政権は、抗議者たちを軽くあしらい、これらの抗議者たちを、「親露派」呼び、この抗議活動の組織者たちを非難し、ロシアが流す偽情報作戦に耳を傾けているとした。 チェコがNATOに加盟したのは、1999年3月のことで、米国が主導するNATOが、ユーゴスラビアを攻撃した数日後だった。さらにチェコは、2004年にEUにも加盟した。

ヴィット・ラクサン内務大臣は10月30日(金)、「私たちは、自分の友人が誰で、私たちの自由のために誰が血を流しているのかも、分かっています」とツイートした。「さらに、私たちは誰が敵なのかも承知しています。そんな人たちに、私たちの愛国心を乗っ取られるわけにはいかないのです。」とも。

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 チェコは、欧州のエネルギー危機において、特に厳しい打撃を受けている少なくともその理由の一つには、ロシアの天然ガスと歴史的な繋がりがあることが挙げられる。 報道によると、チェコの各家庭では、エストニアに次ぐ、EUで2番目に高い電気代に襲われているという。9月、チェコのインフレは18%に達した。

高騰するインフレにより、フランスで全国規模のストライキが発生

<記事原文 寺島先生推薦>

Soaring inflation triggers national strike in France
Trade unions have called for higher wages amid the cost-of-living crisis

(多くの労働組合は生活費が危機を迎える中で、賃上げを要求)

出典:RT

2022年10月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月9日


© AP / Daniel Cole

 
 10月18日(火)、フランスで全国規模のストライキが発生し、電車は不通になり、学校は休校になっているところも出ている。これは、高騰するインフレと、エネルギー危機の中で、多くの労働組合が賃上げを要求する動きを見せているからだ。

 フランス最大の労働組合であるCGT(フランス労働総同盟)によると、抗議運動者たちが要求しているのは、「給与や年金や最低限の社会保障額の引き上げと、生活と学習環境の改善」だという。CGTの説明によると、今日(10月18日)行われた労働争議は、数週間継続している製油所労働者たちによるストライキを拡大したものだとのことだ。なお、この製油所のストライキにより、ガソリンスタンドは、フランス中で休業となっている。この労働組合は石油業界の大手、特にトタル社とエクソン社の企業運営を非難し、生活費の危機に直面している被雇用者たちの要求は無視して、「巨額の利益」を得ている、と主張している。

 CGTは、エネルギー業界だけではなく、「公的機関と民間企業、両方」の様々な業界で、抗議活動の熱が高まっている今こそ、「被雇用者や退職者や青年層の人々」が、この労働争議に参加すべきだ、と呼びかけている。

 フランスのインフレ率は現在6%超となっており、フランスのほぼ全ての産業活動は記録的な低下を見せている。これは急速に進行しているエネルギー危機によるものであり、この危機は、対露制裁と、 ロシアからのエネルギー供給が急激に減少していることで、さらに悪化している。


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 今回のストライキは、いくつかの大きな労働組合が支持しており、大規模な混乱を招いている。フランスの国鉄であるSNCFは、「数路線が」不通になるという警告を発した。

 ユーロスター鉄道は、ストライキのために、ロンドン・パリ間のいつくかの電車を止めなければならなくなったと発表した。

 海運業界も影響を受け、10月18日(火)、数時間稼働を停止すると発表した港や波止場も出てきている。

 このストライキにより、休校になる学校も出てきている。教育省が出した最初の公的発表によると、教員の約6%がこのストライキに参加しているという。この数値は、特に専門学校で高くなっており、専門学校の教員のストライキへの参加率はほぼ23%に達している。

 パリやボルドーやレンヌなどを含むいくつかの都市では、数千人が様々な集会に参加しており、午後にはさらに多くの抗議運動が計画されていた。

 10月18日(火)、フランスの大臣の一人が、このストライキに対して声明を出し、ストライキの参加者たちは、「対話しないという姿勢に」固執している、と非難した。

 「ある一定の数の被雇用者の人々が、自分たちの購買力が改善されることへの期待を表明している状況は、理解できます。しかし、私がこれらの人々に言いたいことは、我が国の政府は、インフレの件に関しては、欧州で国民をもっとも保護している国だ、という点です」とエコロジー移行大臣のクリストフ・ベシュ氏はフランスのテレビ局Europe1の取材に答えている。

 同大臣が強調したのは、ストライキは事態をさらに悪くすることにしかならないという点だった。それは、すでにフランス経済は、「ウクライナでの戦争」と、経済悪化状況がより広がっているせいで、非常に困難な状況に追いやられているからだ、と述べた。

産業壊滅と破産の瀬戸際にある欧州

<記事原文 寺島先生推薦>

Europe at the Gates of Deindustrialization and Ruin

筆者:ミッション・ヴェルダッド(Mission Verdad)

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年10月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月9日


前代未聞の過酷な産業崩壊が進む欧州 (画像はル・モンド紙から)

 ウクライナでの戦争(この戦争の原因を作ったのは米国とNATOだが)勃発後、西側のほとんどの国々は、米国政府と足並みを揃え、前例のない規模で、ロシアに対する強圧的な措置を課すことを決めた。そのせいで、ロシア・欧州間の関係は悪化し、経済危機とエネルギー危機はますます深刻になっている。

  欧州連合(EU)各国政府は、悲観的な状況にあるのに、モスクワ当局に対して第二弾の「制裁」を準備している。気づいていないの意図的なのかは分からないが、このような動きは、欧州の未来を暗澹たるものにするしかないものだ。

 エネルギー危機について言えば、欧州内の諸工場での電気代は大幅に増加し、ロシアのエネルギーに大きく依存していた多くの製造業者は、産業活動が麻痺させられている。 経済面でいえば、欧州大陸内での高いインフレが、労働者たちが賃上げを求めて、ストライキを行う原因となっている。

 これらの様々な要因の影響を受け、欧州における生産費用は高騰し、脱産業化の過程が進行している。もっともそれは、新自由主義的な政策により、既に進行中だったことではあるが。


ドイツから逃げ出す諸企業

 経済的利益を守るため、もともと欧州で自社産業をたちあげてきた多くの強力な企業が「逃げ出し」はじめ、比較的生産費用がより安く済む国々に移転している。この現象は、特にドイツで顕著だ。 中国の新華社通信が再掲した、ドイツのハンデルスブラット紙の最近の記事によると、米国は60社以上のドイツ企業に、オクラハマ州での投資を持ちかけ、利益を増やすよう声をかけている。その企業は、ルフトハンザ社、シーメンス社*、アルディ社*、フレゼニウス社*である。 この4社だけで、最近の投資額をほぼ3億ドル増やしている。
[訳注]*シーメンス社、ミュンヘンにある電機メーカー
*アルディ社、ドイツに基盤を置くデスカウントストアのチェーン企業
*フレゼニウス社、ドイツ・ヘッセン州に本拠を置く医療機器の製造・販売会社

 この記事の解説によると、同じことが製薬業界や自動車業界でも起こっているという。バイエル社は、1億ドルかけて、ボストンに生物技術センターを建築し、化学会社のエボニック・インダストリーズ社は、2億ドルかけてインディアナ州に生産センターを建てる計画だ。フォルクスワーゲン社は、2027年まで、米国に710億ドルを投資する予定で、BMW社はサウスカロライナ州で、電気自動車に関する新しい一連の投資を始めるとしている。

 中国も、ドイツの諸企業が熱い視線を送っている国だ。ドイツの化学会社BASF社は、100億ユーロを投資し、湛江(たんこう)市に世界水準の統合基地を建設する予定で、先月初旬、その最初の計画が開始されたばかりだ。


BASF


中国南部湛江市で建設中のBASFの基地の航空写真(写真は新華社通信提供)

 7月、ドイツのザクセン州のミヒャエル・クレッチマー知事は、ディー・ツァイト紙に、ロシアを孤立させ、ロシアとの経済協力関係を断つことは、ドイツにとって危険な行為である、と語っていた。さらに同知事は、「制裁」がドイツの経済とエネルギーの安全保障に悪影響を及ぼすことを懸念し、モスクワ当局との関係には、「現実主義」を取るべきであるとし、EUが和平交渉を進めることで、ウクライナでの武力対立を停止すべきだ、とも語っていた。

 「我が国の経済体制は、完全に崩壊の危機にあります。慎重に動かなければ、ドイツは非産業化してしまう可能性があります」と同知事は警告していた。

 ドイツに届けられる天然ガスの3分の1以上は、産業界で消費されていて、ロシア・ウクライナ間の武力衝突が起きる前は、ロシアがドイツの天然ガスの半分以上を提供していた。米国とEUが原因を作った政治的及び技術的な状況のせいで、ここ数週間ロシアからの供給量が減少したため、ドイツ政府は厳しい現実に直面させられている。その現実とは、中期的に見て、ドイツは、ロシアからの天然ガスを諦めることはできないという現実だ。いくらここ数年、ドイツが最も力を入れている政策が、エネルギー移行計画という「大義」を掲げているにしても、そうなのだ。


産業界が警鐘を鳴らしているイタリア

 イタリアでは、北部と中央部の諸企業が、経済の非産業化が起こることに警鐘を鳴らしている。その原因は、ガスと電気の価格が法外に高騰し、国家の安全保障が脅かされていることだ。 エミリア・ロマーニャ、ロンバルディア、ピエモンテ、ベネト地域のイタリア産業総連合 (Confindustria) の会長たちの見積もりによると、生産費用は、最良で360億ユーロになるとしているが、410億ユーロにまで達する可能性もある、とのことだ。

 8月30日 、イタリアの産業生産の中枢部が集中している4地域の行政の経済開発部門の代表者たちの会合が開かれたが、この連合会の各地域の代表である、アナリサ・サッシ、フランセスコ・ブッゼラ、マルコ・ゲイ、エンリコ・カラロの4氏は、現在のエネルギー価格は、「尋常ではない高さで、しかも急激に高騰している」と語り、生産活動の完全閉鎖を阻止できる唯一の可能性は、欧州議会による介入しかないと述べた。

 地域連合会のこの4代表は、ガスと電気の費用が10倍になったことを報告書で記している。具体的には、2019年から2022年は45億ユーロだったのが、2023年には360~410億ユーロにまで高騰するとのことだ。イタリアでは前例のないこのような費用の高騰が起これば、産業は劇的に衰退し、イタリアの産業活動は完全に停止してしまうだろう。その際、一番大きな影響を受けるのが、中小企業なのだが、その危機は、外国に産業製品を輸出している大手企業にも影響を与えるだろう。

 その翌月、この産業連合会が発表したところによると、2023年の経済成長の見通しは、ゼロになるだろうという。 「私たちの経済は、複雑で、幾分暗く、面倒な方向に進むでしょう」と同連合会の代表であるフランセスカ・マリオッティ氏は、同連合会の研究センターが出した秋の経済予想を発表した際に語っていた。


記録的な企業倒産数を出しているフランス

 今年、ほぼ9千社のフランス企業が倒産しているが、この数は、ここ25年で最大だ、とラジオのフランスインホ局は、アルタレス社が出した数値を引用して報じた。

 今年の第3四半期、フランスでは、8950件の倒産手続きが取られたが、これは昨年の69%増しだった。アルタレス社によると、小規模店舗やレストランや美容院が、最も影響を受けたという。 2021年の同時期と比べると、レストランの閉店数は150%、美容所や美容院については94%増加している。

 アルタレス社はこの現状を、インフレの進行とサービス料金の高騰、そして国による企業支援措置の減少、さらには新型コロナウイルスの大流行後に消費者の習慣にやや変化が見られたことと関連付けている。

 昨年12月、ロシアからのエネルギー購入拒否運動が悪化する前のことだが、エネルギー消費者産業連合 (フランス語略称はUNIDEN)は次のように警告していた。「フランス国内の電気集中型産業は、価格状況が最悪になれば、近い将来、市場における供給の大部分を補充しなければならなくなるだろう」と。そしてその際の追加費用を、20億ユーロだと見積もっていた。

 UNIDENは、フランスで行われているエネルギー集中型産業を代表する団体であるが、食品業界、自動車業界、化学業界、セメントと石炭業界、建設業界、エネルギー業界、金属業界、製紙業界、運輸業界、ガラス業界も網羅している。この団体に加盟している諸企業は、フランス産業界の電気と天然ガスの7割を消費している。

 現在、フランスの燃料業界は、崩壊の瀬戸際にある。ガソリンスタンドの3割が、労働者たちによる大規模なストライキのために、ガソリンを所有していない。トタル社とエクソン・モービル社の労働者たちが激怒しているのは、現在のインフレ水準下、 補助金と援助なしでは今の給料で生活できない点だ。フランス当局は、堪忍袋の緒を切らせ、 ストライキを行っている労働者たちを、力づくで解散させ、従わなければ賃金カットも辞さない構えだ。


製油所の前で抗議活動を行っているフランスのトータル・エネルギー社とエクソン・モービル社の労働者たち( Photo: EFE )

 「労働組合が断固として合意の話し合いに応じないのであれば、必要な力を使って、できる手段を総動員して、精油作業を開始するしかありません。私が決める猶予期間は、時間単位、最大限許せて、日単位です。週単位ではありません。それでは時間がかかりすぎます」と、フランスのブルーノ・ル・メール金融大臣は述べている。


産業の経済的支柱なしで、欧州はどれほど継続できるだろうか?

  独・伊・仏、3カ国のこれらの事例は、ほんの数例を示したにすぎない。(これら3カ国の産業能力にとって、最も重要な事例だけ示したものだ)。そしてこれらの事例は、いま欧州連合が直面している一般的な現状を示すものだ。それは、非産業化が進行しているということである。

 産業の潜在能力が衰退すれば、失業率の高騰や、一般市民からの不満の増加といった、既に現れている直接の影響を招くだけでは済まない。それだけではなく、他国に依存して、不可欠な原料や部品などを入手しないといけない状況も生み出される。例えば、「錫とアルミの製造能力は、半分に抑え込まれ、金属の鋳造は衰退している」と欧州非鉄金属協会は発表している。

 このような状況が継続すれば、これらの天然資源を使って、これまで欧州大陸内で製造してきた原材料(例えば機械や航空機や車輪の部品など)を、アジアや米国からの輸入に置き換えなければならなくなるだろう。

 制裁による戦争を始めたことで、EU諸国は、自国主権を完全に手放すことになってしまった。この不当な制裁が課されるまでは、欧州の産業構造は、欧州大陸の各国が、ある一定の自決権を裁量できる力を維持できていた。しかし今は、欧州諸国の規則を決められるのは、欧州に原料や部品を供給する国になってしまいつつある。そのような原料や部品がなければ、欧州社会を維持してきた技術的な枠組みが回らなくなるからだ。

 米国は欧州にとって決定的な供給者になろうと、歩を進めてきた。そうなれば、EUが「米英にとっての下僕」という役割を担うことに甘んじざるをえなくなる。たとえ、英米の下僕になることが、欧州の人々にとって利益にならないとしてもである。

EU主要各国の首都で、巨大なデモや抗議集会

<記事原文 寺島先生推薦>

Massive Demonstrations Taking Place in the Main European Capitals

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年10月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月8日



 この週末は、欧州連合(EU)加盟国の首都を埋め尽くすような、大規模な反政府集会が、同時におこなわれた。
 最も大規模なデモは、ドイツの首都ベルリンの連邦議会議事堂正面と、チェコの首都プラハの中心部で行われた。
 ドイツのデモ隊は「ロシアの石油とガスをよこせ」「ショルツ(社会民主党)が率いる三党連立政権は、バイデン大統領の召使い」の横断幕を掲げて登場した。

 チェコの首都プラハでは、週末に抗議デモが数回行われ、デモ参加者は政府に辞任を要求している。しかしペトル・フィアラ首相は、「デモと集会に参加しているひとたちはモスクワに利用されている人だけだ」と述べた。

 オーストリアの首都ウィーンでもデモが行われ、多くのロシア国旗すら見受けられた。デモ参加者は、ネハンマー首相に対し、ロシアとの対立を放棄し、友好関係を再開するよう求めた。

 EU諸国における動員のきっかけは、インフレの継続的な拡大である。
 ドイツでは1950年代初頭以来、初めて2桁になった。電気・ガス料金の途方もない高騰が、実質賃金を大幅に引き下げている。
 チェコ共和国のインフレ率は8月に年率17%となり、昨年の約3倍となった。

生活費高騰に対するフランスでのデモ

 14万人以上のデモ参加者が、給与の引き上げや企業の特別利益への課税強化など、危機の影響を緩和する措置を求めて、10月15日(日)にパリでデモ行進をおこなった。
 主催者は、エネルギー、必需品、家賃の凍結を要求し、年金改革に反対した。警察との深刻な衝突、ゴミ箱の焼却、いくつかの銀行のショーケースの破壊、などの行為が行われた。

 ストライキをおこなってデモに参加したのは、製油所、原子力発電所の整備作業員、清掃作業員、国鉄、銀行などの労働者だった。「賃上げのための闘いは公正である」と参加者は叫んだ。
 この呼びかけが行われたのは、製油所や燃料タンクでのストライキが慢性的なガソリン不足を引き起こし、マクロン政権が守勢に立たされる中のことだった。
 数百万人の労働者や自動車に依存する市民に影響が及び、ガソリンスタンドには巨大な行列ができた。

 マクロン政権は、6月の立法府選挙で過半数を失った議会でも守勢に立たされている。特に、来年度の政府予算案の議会審議は難航している。

コービンを失脚に追い込んだ、2度目のブレグジット国民投票を呼びかけた謎の新党リニュー党の正体とは

<記事原文  寺島先生推薦>

How an obscure intelligence-linked party fixed a second Brexit referendum and torpedoed Corbyn

(諜報機関と繋がる謎の新党が2度目のブレグジット国民投票を仕掛け、コービンを失脚に追い込んだ。)

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:グレー・ゾーン(the GRAYZONE)

2022年9月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月16日


コービン人気が最高潮だった2018年2月19日に創設されたリニュー(Renew)党

親EU派のリニュー党は、「コービン人気」が最高潮だったときに、どこからともなく現れ、2度目のブレグジット国民投票の開催を主張し、労働党党首だったコービンの失脚に繋げる役割を果たした。リニュー党の創設者たちの裏に諜報機関の関与があったことは、ずっと隠されていた。 今に至るまで。
 
 覚えている人はほとんどいない英国のリニュー党が、2018年の2月にウェストミンスターのど真ん中で正式に創設されたとき、創設者たちが広げた大風呂敷には中身がほとんどなかった。この新党の若く、またほとんど世間からは知られていなかった創設者のひとりクリス・コグランは、大胆な親EU路線を掲げ、その焦点を2度目のブレグジット国民投票の実施に置いていた。

 ジェレミー・コービン党首の指揮のもと、労働党が市民からの支持を急増させていた最中に創設されたこのリニュー党が選挙戦に参画した時期は、英国支配層が、真の左翼にダウニング街10番地の首相官邸に乗り込まれることを恐れていた時期と重なる。この党の創設当初は、マスコミからの反応は冷たく、サンデー・タイムズ紙はこの党を、「不発の爆竹」と報じていた。しかし最終的にこのリニュー党はコービンの失脚に決定的な役割を果たした。これはこれまで誰も気づかなかったことだが。

 2017年の総選挙期間中、コービンは英国の欧州連合からの離脱を進めるという選挙公約を掲げて、大きな支持を得ていた。しかし2019年になると、労働党の綱領において無視することができない重要な構成員が、英国がEUに加盟する是非を問う2回目の国民投票を要求した。そしてこれがコービンと、彼が率いる労働党の歴史的敗北に繋がった。

 コービン人気の暗転は、多数の有権者の意志や、労働党を支持していた多数の労働者階級の思いとは食い違っていた。2019年12月、英国民は大袈裟にブレグジット派であると公言していた元ロンドン市長のボリス・ジョンソンを選び、一方で、労働党は1935年以来最悪の選挙結果を迎えたことも同様な不一致と言えるだろう。コービンはその翌日に、党首の座を降りた。

 コービンが2019年の総選挙期に、ブレグジット国民投票のやり直しをすることを支持したことは、善意と取られていたが、同時に政治的にみれば危険で、読み違えた一手だとも見られていた。しかし、2度目の国民投票をしようというこの運動がどこから始まったのかをよく見てみれば、もっとずっと狡猾な手口が使われていたことがわかる。

 実際、2度目の国民投票を求める声は、草の根の市民からのものではなく、この怪しげな新党のリニュー党から始まったものだった。本記事で後述する通り、リニュー党は英国の軍や諜報機関と深く強いつながりのある工作員によって設立されていた。しかもそこには長年にわたって軍の心理戦に携わってきた専門家たちが含まれていた。

 リニュー党の創設者たちと、コービンに対する悪意ある運動の裏にあるものを見れば、退陣したこの労働党党首の主張を立証しているように思える。彼は英国の諜報機関が自分の持っていた大望を「意図的に弱体化させた」と語っている。


「コービン大人気」期の最中に親EU政党が出現
 
 2015年9月にコービンが党首に選ばれるやいなや、多数の労働党国会議員、党の長老たち、記者や評論家たちは、コービンを「選ばれるべきでない」、受け入れ難いほど「過激」という烙印を押していた。この労働党の支配者層はさらに不意打ちを食らうことになる。英国民が2016年6月の国民投票でブレグジットを支持したときだった。そしてこの支持はその翌年の総選挙で波乱の舞台を準備することとなった。

 その総選挙の結果は、異常としか言いようがなかった。選挙運動開始時には25%の支持しかなかったのに、最終的にコービンは投票者の4割の支持を獲得し、勝利まであと2227票、というところまで躍進した。国政選挙での労働党の得票率は前回10%も上回り、このコービンの活躍により、テレサ・メイの保守党政権は致命的な打撃を受け、ブレグジットについての議論を再開せざるを得なくなった。しかも今回は力を失った過半数割れの政権担当者として。

 この支持率の増大は、1945年の歴史的な地滑り的勝利以来の総選挙における労働党の最高の躍進を示していたが、その要因は、少なくとも一部分ではあったが、コービンがブレグジット派の綱領を受け入れたことだった。

コービンは惜しくもダウニング街10番地の首相官邸に乗り込むことはできなかったが、コービンのこの驚くべき躍進に対して、彼を中傷していた英国の貴族階級やメディアは、コービンの存在を深刻な脅威であると見始めた。真の意味の進歩的な首相が生まれる可能性に直面したこれらの勢力は、強力かつ緊密に連携した取り組みによってコービンの選挙戦の見通しを覆そうとした。

 2017年の総選挙が終わった数ヶ月後は、大手メディアでさえ、「コービン大人気期」と報じる時期であった。テレサ・メイと彼女の政権下の諸大臣は、英国のEU離脱について、ブリュッセルのEU当局との骨の折れる交渉の過程に取り組んでいた。いっぽうコービンは、英国の野党党首として自身の立ち位置を見出したように映っていた。

 その年の夏は、コービンが行くところはどこでも、興奮した巨大な群衆が、コービンを出迎えた。コービンの人気は絶頂で、 総選挙直後、英国ヒルトンでのイベントのグラストンベリー・フェスティバルで挨拶を行った際、ガーディアン紙は、コービンが「この週末で一番観客を引きつけた」と報じた。

「コービン人気は留まるところを知らない」と同紙は書いていた。支配層が英国内で広がる予期できない崩壊状態と格闘する中、リニュー党は静かに、英国の選挙管理委員会に党の登録を済ませていた。

 リニュー党の党首が次の2月から英国の国政に参入するという発表をしたとき、その発表の場に馳せ参じた草の根の民衆の姿は見られなかった。「経験不足のせいですかね」とリニュー党の共同創設者のひとりであるクリス・コグランは恥じらいながら説明した。「この記者会見はマスコミの皆さんのためだけのものですので、我が党の支持者で部屋をいっぱいにすることは考えつきませんでした。今にして思えば、そうしておけば良かったのかもしれません。」


リニュー党の共同創設者のひとりクリス・コグラン

 
軍・諜報機関の怪しげな世界から「新しいマクロン」が登場
 

ではクリス・コグランとはいったい何者なのだろうか? さらに政治には素人に見えるこの人物はどこから現れたのだろうか?

 コグランは2017年の総選挙で、国政を目指し「無所属」として選挙運動を展開したが、有名人にはなりそびれた。コグランが出馬したのは、労働党が重要な選挙区として必勝を期していたバタシー選挙区だった。その一年後、コグランはジェームス・クラーク、ジェームス・トーランス、サンドラ・カドゥーリとともにリニュー党を立ち上げた。コグラン同様、クラークやトーランスもそれぞれ2017年の総選挙で国会議員に立候補していたが敗れていた。彼らも労働党が非常に重点を置いていた選挙区から出馬していた。バーモンドジー、オールド・サウスウォーク、ケンジントンだ。これらの地域は、EU残留派がとても強い選挙区だった。

 コグランや彼の同志たちによると、リニュー党は第三勢力を目指すために創設されたもので、「自己満足している英国政界の中枢に挑戦」し、「無党派層」の有権者の代表となることを目指す、とのことだった。 自らを、労働党でも保守党でもない「反体制派の」残留派と称し、リニュー党は党是の中心をEUへの残留の促進におき、2度目の国民投票の実施を掲げていた。

 創設当初から、この4名の創設者たちの政治戦略の方向性は、全く奇妙とまではいかないものの、間違っているようにみえた。リニュー党立ち上げの僅か数ヶ月前、強硬な親EU派の自由民主党は有権者の心を大規模な形で揺らすことに失敗し、英国の二大政党が有権者の82.4%の支持を集めた。この両党は、 ブレグジットを支持していたのだが、この82.4%という数字は、1970年以来最大のものだった。

 コグランとカドゥーリの話に戻るが、この2人は 「反体制派の潮流」を作り、導くには不思議な人物と思われた。

 地方メディアは、コグランについて、億万長者の銀行マンから転身して不人気のフランス大統領となった男を引き合いに出して「新マクロン」になる可能性があると評したが、彼は英国の保安機関と諜報機関の中枢から大歓迎を受けた。実際のところ、彼が英国外務連邦省テロ対策部の重役を辞したのは、2017年5月の国政選挙に無所属で立候補したほんの1週間前のことだった。

 当時36歳だったコグランは、選挙結果の如何に関わらず党首の座を維持するというコービンの誓約を受けて労働党から離党したと発表した。そして自身が国政に挑戦したのは、政治的中道派を組織するためだと呼びかけた。彼はさらに、労働党は「左派によるおとぎ話のような政策」を掲げていると強く非難し、自分が持っているものなら「何でも使って」、ブレグジット派と戦うと誓った。

 匿名を条件に、当グレー・ゾーンの取材に応じてくれた英国外務連邦省の職員の一人によると、このような国家機密に関わる役職にいる人物がそんな行動に出ることは、ほぼあり得ないことだった、という。高度な対テロ対策に従事していた経歴がある人物が、気まぐれで急に仕事を変えることなどありえない、というのだ。英国の公務員は、民間企業で務めることや、特定の党派に偏った政治活動をすることは禁止されており、自分の役職を辞した後も、しばらく冷却期間をおいてから、私人としてそのような行動を取ることが義務づけられている。

 その職員によると、コグランが即座に政界入りするには、かなり前から直属の上司の許可をもらうことが必要であっただろう、とのことだ。前例が全くなかったとは言えないまでも、どんな事情にせよ、コグランのこの転職のことは非常に異例である、とこの職員は考えている。

 コグランのリンクトイン(LinkedIn)の自己紹介欄には、対テロに取り組んでいたという記載は全くない。そのかわり、コグランは、2015年から2017年まで英国外務連邦省で「外交官」を務めていた、と記述している。英国の国家安全機関に批判的な人々の代表格である社会学者のディビッド・ミラーは、当グレー・ゾーンにこう説明している。「このようにコグランの出自がぼやかされていることは、その裏で陰の組織がうごめいている証なのかもしれない」と。

 対テロ対策はMI6が3つの「重点分野」として掲げているうちの一つだが、「英国外務連邦省」においてはそうではないとミラーは語っている。「対テロ対策に携わっている人々についての情報は、秘密扱いで、その人々は表向きは、「外交官」であると自称して潜入捜査を行い、機密を守るために勤務場所についての詳細は正確に示さないのが普通です。コグランの幅広い経歴や彼が従事していたことについての詳しい情報が欠如していることから考えれば、コグランが「外交官」をしていたとされる時期に、実際には英国の外国向けの諜報機関に関わる仕事をしていたとしても、驚くことではありません」。

 「外交官」としての仕事とは別に、コグランには長期にわたり英軍の予備兵を務めていた過去がある。コグランは、「生来の決意作戦」のもと、イラクでの従軍に動員された。この作戦は、米国が主導するISISに対する軍事干渉で、つい最近の2020年4月までつづいていたものだ。

 コグランがもつ職業履歴からは、英国の機密諜報機関とのつながりがさらにあきらかになる。コグランの以前のリンクトインには、ジェームス・ブレア-という人物から「いいね」をもらっていたが、この人物は、悪名高い英軍の第77旅団の一人だ。この77旅団は、戦争における心理戦に関わってきた旅団である。またコグランが主張していた「危機管理」能力について「いいね」を押したもう一人の人物に、第77旅団の予備兵のひとりがいた。



 コグランとともにリニュー党の創設者となったサンドラ・カドゥーリのリンクトインの自己紹介欄にも、同じような謎が見える。その記述には、カドゥーリが英国で政治活動を始めたのは、ジョージアでのNATOの任務に対して「戦略的な意思伝達方法」に関する助言者の仕事を辞した直後だ、とある。さらに、ジョージア滞在中に、カドゥーリは情報戦の技術に関して、ジョージア政府当局に「助言を与え、訓練の援助を行い」、「特に重きを置いていたのは安全に関する問題や、偽情報対策について」だった、とある。
 
 さらにカドゥーリが自慢していたのは、2010年10月から11月の間に「NATOの連合緊急対応軍団による大規模な演習に、文官助言者として参加した」という経歴だった。さらに、英国のエリート学校である英国防衛アカデミーと常設統合司令部で、「軍事演習のモジュール(一連の授業)のいくつか」にも参加した、とある。



 このような演習への参加は、カドゥーリが英国政府の陰の関連機関である「安定化協会(Stabilisation Unit)」で11年間勤務した後のことだった。この協会は、シリアやリビア、さらに多くの国々での政権転覆工作に関わってきた団体だ。この協会に勤めていた時期に、カドゥーリは、「短期でも長期でも、何度も海外に赴く準備ができていた」と記載されていた。

 興味深いことに、このようなカドゥーリの過去は、メディア報道が新しく立ち上げられたリニュー党で、彼女の果たした役割を報じた時には、取り上げられなかった。カドゥーリは常に、「元国連職員」とされていた。さらにもっとおかしなことは、現在カドゥーリのオンライン上の自身の履歴欄にリニュー党に関する記載が全くないのだ。リニュー党の創設に手を貸したことも、指導者として活動していたことも、もちろん書かれていない。

 カドゥーリの略歴の2017年10月から2020年3月までのことについては、ただ以下のように記載されている。「親EU派の政党とその選挙運動組織に対して、ある程度の戦略的助言やメディアを使った支援を行った」と。つまりその時期に、カドゥーリが実際行っていたことは、顧客である団体の広報について助言をすることであって、リニュー党はその団体のひとつに過ぎなかったということだ。

 
リニュー党は、「残留派のためのより激しい武装組織」
 

 2018年2月に、リニュー党の事務所が開設されたとき、共同創設者のひとりのジェームス・クラークはこの党のことを、EU残留派の運動における「より激しい武装組織」だと語っていたが、このような表現は、この党がもつ本質について、つい口をすべらせたものだろう。というのも、コグランやカドゥーリがこの発言を承認したという記録が残っていないからだ。

 創設記念式典ののち、リニュー党は英国で全国規模の遊説活動を激しく展開し、市や町を何十箇所も訪問し、学童たちに挨拶をし、 大小の催しを開催して、同党の新たな候補者を発掘し、2度目のブレグジット国民投票に対する人々の支持を高めようとしていた。

 リニュー党によるこれらの取り組みの模様は、前例のないほどの規模でマスコミから取り上げられ、ある欧州メディアは、コグランとフランスのマクロンを比較する記事を出し、この党を持ちあげた。また一方でカドゥーリは、 BBC
スカイ放送などのメディアから逆光を浴びていて、親ブレグジット派ナイジェル・ファラージの番組であるLBCショーにまで出演していた。

 創設すぐの英国の政党が、国内外でこれほど瞬時にかつ熱を持って報じられることは、かなり異例のことだった。しかも、その党の代表者たちが実績のある政治家ではなく、いわんや公人でもなかったことを考えれば、なおのことだ。

 どのメディアに登場する時でも、リニュー党創設者たちは、リニュー党は2度目のブレグジット国民投票を求める人々からの幅広い声の高まりをうけて創設された党であることを強調していた。しかしこの党の創設者たちは、自分たちが掲げているこの方針が人々に訴える影響力には限界があることを、しばしば実感させられていた。

 例えば、この党がウェールズを訪問したことを伝えた地方メディアの報道によれば、リニュー党の選挙対策部長のジェームス・トーランスはこう述べていたという。「ほとんどの人々にとって、ブレグジットは自分たちの生活における最重要課題ではなく」、医療や住宅供給や仕事や社会福祉のほうが、市民たちにとってのより大きな課題である、と。

 中道派のアトランティック・マガジン誌も、2018年2月に、リニュー党の実行可能性に疑問を投げかける記事を出し、英国の政治においての喫緊の課題はブレグジットが実現するかどうかではなくて、それをどのような形で実現するかの議論の方が大事である、と主張した。アトランティック誌は、リニュー党が、EUに残留することだけに政策の焦点を起き続けるのであれば、この先の総選挙を突破できる見込みはない、とも評していた。

 英国の支配者層の防衛に関する政策研究所のチャットハム・ハウス所属の一人の研究者がアトランティック誌に語った内容によると、ブレグジットの国民投票の結果を覆そうという努力をすれば、「我が国の政治体制に対する信頼を損なうことになるのは間違いないだろう。離脱派の有権者にとっては特にそうだろう」とのことだった。この研究者が代案として主張したのは、「妥協案」的な政策であり、 「民主主義的な手続きに則って行われた国民投票の結果」を尊重し、ブレグジットに対する様々な声も大事にしながら、ブリュッセル当局と交渉を重ねるべきだ、ということだった。

 コービンが、2019年4月にメイ政権と超党派の会談を持ったのは、まさにこの手法だったのだ。しかしこの会談は、残留派からは「裏切り行為だ」とされてしまった。

 その前年の英国地方選が近づいていた頃、コグランはタイムズ・オブ・ロンドン紙に爆弾のような論説記事を載せた。その内容によると、コグランが英国外務連邦省を辞したのは、「我が国の政治家たちが政府に対して機を捉えて、コービンやブレグジット強硬派と闘おうとしないことに落胆したから」だとのことだった。さらにコグランは、「自爆テロから我が国の国民を守ることに誇りを持っていた」が、英国外務連邦省を辞した、と語っていた。

 コグランによると、この先の選挙に向けてリニュー党を立ち上げた目的は、「コービンに、労働党に投票する有権者の圧倒的多数の人々の声に耳を傾けさせ、2度目の国民投票実施に踏み切らせ」、「誰も取り残すことのないIT革命」を導入させることだ、としていた。その政策を具体的にどう進めるかの手順は示さなかったが、コグランの主張によれば、そのような「革命」が、英国の家屋供給危機を解決し、気候変動を止め、ひどい貧困状況を食い止め、ガン治療にもつながる、としていた。

 リニュー党の創設者であるコグランは、自身の壮大な構想に具体性がないことを補うために、自分や仲間たちは、「すでに候補者は十分いるので、次の国政総選挙では、すべての選挙区で候補者を擁立できる(原文ママ)」などという勇ましい大言壮語をふりまいていた。

 
リニュー党は反コービン派の軍・諜報機関と同様の呼びかけを行っていた
 

 コグランが自信満々に大衆に訴えかけていた言葉とはうらはらに、リニュー党が地方選で擁立したのはたった16人の候補者だった。だが、結局一人も当選することができず、結果も惨憺(さんたん)たるものだった。その3週間後、コグランは電撃的に離党したが、その事情の詳細は不明だった。

 その後コグランはブルドッグ・トラストという組織に加わった。この組織は、表向きは慈善団体に金銭援助や助言を行う組織だ。この組織は、ロンドンに拠点をおく「トゥー・テンプル・プレイス(Two Temple Place)」という歴史ある団体の外郭団体である。そして、このトゥー・テンプル・プレイスの事務所がある建物には、英国政府やNATOが資金を出している「国政術研究所( the Institute for Statecraft)」という名で知られている悪名高い政策研究所の秘密本部が置かれている。
 
 当時、国政術研究所は、「インテグリティー・イニシアティブ」という組織の隠れ蓑的役割を果たしていた。このメディアはメディア調査研究計画という仮面をかぶった闇の喧伝(けんでん)拡散組織であり、軍や諜報機関の専門家たちによる運営されていた。このメディアは、国家の醜聞に巻き込まれたことがある。それは2018年下旬のことで、その内部文書がオンライン上で漏洩したのだ。そしてその文書からわかったことは、コービンが、クレムリンにとっての「使い勝手のいい愚者であり」、国費支出の規則を目に余る形で破棄しようとしている、と記載されていた事実だった。

 これらの文書から明らかになったのは、リニュー党の公式発表と全く同時期に、国政術研究所は、オックスフォード・ブルックリング大学近現代史学部のグレン・オー・ハラ教授を招き、トゥー・テンプル・プレイス所属の人々に詳細なプレゼンを行っていたことだった。その題名は「コルビナイツ(コルビン支持者の蔑称)とは何者か? そして彼らの考えは?」だった。

 以下はそのプレゼン時に使用されたスライドからの1枚だ。このスライドの全編はこちら。


 
 オー・ハラ教授が国政術研究所に呼ばれ、この研究所がコルビン対策で頭がいっぱいだったことは、注目に値する。というのもこの組織は、先述の陸軍宣伝組織である第77旅団の創設に秘密裏に一役かっていたからだ。この旅団はコグランが仕事上最も熱心に関係を築いていた人々が誇りをもって働いていた組織であった。
 


 ほかの漏洩文書には、このインテグリティー・イニシアティブという組織は、自分たちの取り組みを自慢して、「(国防)軍が、あらゆる種類の武器を使った近代戦争で戦える能力を得る援助」を行っている、と書いてある。また、この組織自身の記録によれば、インテグリティー・イニシアティブが英国軍に援助した内容には、「特別軍事予備隊(第77旅団や軍事情報専門団(Specialist Group Military Intelligence)など)」の創設などが含まれており、この両者とは今も密接で非公式なつながりを持っている(強調は筆者による)」という。
 
 このインテグリティー・イニシアティブのさらなる説明によれば、これらの情報戦部隊が採用しているのは、「軍が決して採用できないような人々であるが、愛国者として自分の時間と専門性を提供してくれる人々」だという。オックスフォード・ブルックリン大学のいくつかの学術機関が、軍事情報専門団を支援している機関として記載されていることから考えると、オー・ハラが行ったプレゼンは、英国軍が「すべての種類の武器を使った近代戦争の戦い方」を教授されている一つの例だったと言える。

 コービンが労働党党首として選挙を行った後に英国の軍支配者から狙いをつけられたのは明々白々である。2016年の軍第72諜報部隊の隊員に対して行われたプレゼン資料が漏洩しているのだが、このプレゼンでは、労働党党首の「視点」を分析するのに、まるまる一節を費やしていた。そこには、コービンがNATOやイラクやアフガニスタンやシリアでの戦争に反対していることも含まれていた。

 付随スライド(下図)には、コービンの躍進が、「軍に焦点が当たることの減少」につながり、コービンは、「軍事干渉や防衛支出に反対している」とも記載されていた。


 
 漏洩したプレゼン資料で取り上げられていた他の唯一の議題は、シリアでの戦争と、EUで起こっていた難民危機についてであった。明らかに英国軍の高級将校層は、コービンがもつ左翼的な視点を、軍事衝突や人災と同等の脅威である、と考えていたようだ。そして、この考え方は軽視できるものではない。第72諜報部隊の公式の記録によれば、このプレゼンの目的は「すべての階級の司令官たちに諜報活動の成果と、予見できる諜報分析力を提供した上で、決定をおこなえるようにすること」だったということだ。

 そのようにして第72諜報部隊が委託されたのは、「様々な情報源から集められた情報」を使って「敵の姿を作成すること(強調は筆者による):例えば、敵の居場所、重要人物、戦術」、また「敵が起こしそうな行為を見極め、次に起こりそうなことを予測する」こと、さらには軍や国防省の「資産」を「以前から存在する脅威や、以前には存在しなかった脅威」から護衛することだった。コービンも、そのような「脅威」の一つであると考えられていたようだ。

 コグランのもつ背景や人脈を考えれば、このプレゼンの内容を内々に知っていた可能性がある。そうなると、以下のような明白な疑問が浮かぶ。それは、「リニュー党は、純粋な政治的な取り組みから生まれたものなのか? それとも、軍や諜報機関が、コービンや、コービンを代表とする進歩的な動きへの対策として行った工作なのか」という疑問だ。


使命を果たしたのち、リニュー党はより大きな残留派の動きに合流
 

 2018年の悲惨な選挙結果と、コグランの離党にも負けず、リニュー党に残存した支持者たちは、全国規模の遊説を数ヶ月継続した。しかしその後の2019年2月、 保守党と労働党の国会議員の中の不満分子が親EU派である「チェンジ英国党」を創設したさい、リニュー党は先に控えていた欧州議会選挙への候補者を取り下げた。この対応に対して、チェンジ英国党は、リニュー党が元来持っている親ブリュッセル政策を思い起こさせる「価値も意味もある努力だ」と歓迎した。

 リニュー党が親残留派を一つにまとめようと努力したにもかかわらず、チェンジ英国党は、たった3.3%の得票率しか手にできず、まもなく党員6人が離党し、この党も解散に追い込まれた。

 この結果はさけられないものだった。チェンジ英国党が創設された同月、研究者のリチャード・ジョンソンは詳しい分析を出版したが、それによると、「離脱のほうに投票した保守党の端に位置する支持者たち」を取り込めるかどうかが、2019年の総選挙で労働党が勝利するかの基盤になるだろう、との分析だった。

 労働党が国会で過半数を確保するために必要だった64議席のうち、45議席はイングランドとウェールズの選挙区だったが、すべて保守党に奪われてしまった。その有権者の78%がブレグジット(離脱)派だった。

「国民投票実施後の英国政界の最も衝撃的な事実は、離脱派も残留派も、もとの考えをかたくなに保持していることだ」とジョンソンは警告していた。「それぞれが、EU離脱に関する国民投票で出した選択は、その後もずっと安定している」

 党の政策に対する市民からの支持が不足していたことを考えると、リニュー党創設の裏に隠れたハッキリとした目論見は、新党を打ち立てることにより、正当な草の根運動という姿を借りて、2度目の国民投票を求めることだった、と言える。この党の創設が必要だったのは、親残留派であった自由民主党が保守党と5年間連立を組んだことで劣化していたことを受けてのことだった。

 リニュー党がチェンジ英国党の露払いの役目を果たしたことも、否定できない成果だった。コグランが2019年のニュー・ステイツマン誌の論説に書いていた通り、リニュー党が創設されたのは、力を得るためだけではなく、「穏健派の国会議員が分裂して、新しい中道政党になってブレグジットに反対し」、ひいては「チェンジ英国党を促進させる」という目的もあった。

 奇妙なことに、コービンも、コービンの顧問も2度目の国民投票を推進している勢力が、本当にブリュッセルのEU官僚たちのことを崇拝してそんな動きをみせているのかどうかを考えずに、労働党の選挙での見通しを台無しにする決定を下してしまったのだ。

 コービンが2度目の国民投票を求める声を受け入れたことは、近年の英国の政界史における最も間違った政治的手法だったといっていい。保守党政権がブレグジットに向けた交渉をする過程において沈没しそうになっていた中、もっと支持を集められる政策を提案することもできたのに、労働党が選んだ道は、 新生の非主流派の政治運動と手を結ぶことだった。そしてその政治運動の出処は、英国の有権者たちが排除しようとしてきたまさに支配者層だったのだ。

 しかも労働党は、コービンの台頭を存亡の危機と捉えていた諜報機関から、静かではあるが、協調的に唆されて、わざとこの政治的な自殺行為に及んだ可能性も否定できない。

ドイツはトイレットペーパー不足に直面

<記事原文 寺島先生推薦>

Germany faces toilet paper shortage
Manufacturers say the energy crisis is leading to higher prices and limited supplies

(ドイツはトイレットペーパー不足に直面
製造業者はエネルギー危機のせいで、価格の高騰と 供給制限が引き起こされていると主張)

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月4日


©  Getty Images / Image Source

 ドイツのトイレットペーパーの生産は、ヨーロッパのガス危機に強く煽られて、製品不足に直面する可能性がある。エネルギー価格の高騰により、一部の企業はすでに倒産を宣言したり、生産を削減したりしている。

 「聞いたところによると、この危機はコロナ禍のときよりも、製造業にとって深刻なものになる可能性が高いそうです」とドイツ産業連合のエネルギーおよび気候政策の責任者であるカルシュテン・ロレ氏は、9月23日金曜日、ファイナンシャル・タイムズ紙の取材に答えた。

 ロシアからの天然ガス供給が減少する中、電力不足とエネルギー費用の上昇に対する懸念が高まっているため、ゼワ・リブレッセ・ロータスなどのトイレットペーパーのブランド商品を所有するエシティ社は、すでに価格を18%も引き上げる必要があり、代替燃料による供給源の使用を検討している、と発表している。

 一方、デュッセルドルフに本拠を置く、操業開始1928年のハックル社など他のトイレットペーパー製作会社は破産宣告を出している。その理由として、エネルギー価格の高騰、パルプの価格高騰、および輸送費の高騰により、財政的に事業の遂行が不可能になったためだ、としている。

 「非常に短期間で、電気とガスの価格があまりに急速に高騰したため、これに合わせて迅速に顧客に対応できない、ということです」とハックル社の流通責任者であるカレン・ユング氏は、ロイター通信の取材に答えている。


関連記事: German producer prices hit all-time high – data

 ドイツのハレ経済研究所によると、8月に約718社のドイツ企業が倒産したが、これは前年より26%増加したことになる、という。この数字は、9月には約 25%に留まるが、10 月には33%に上昇する、と予想されている。

 ドイツの製紙業界は現在、オラフ・ショルツ政府にエネルギー価格の上限を制定するよう求めており、それが倒産を止めることができる唯一の策であると主張している。「(エネルギー価格の)上限を設けない限り、倒産の波を止めることはできないと思います」と ハックル社のフォルカー・ユング専務取締役はファイナンシャル・タイムズ紙の取材に答えた。

 一方、製紙業協会のマーティン・クレンゲル副会長は声明を出し、「最優先事項」は「人々に生活必需品であるトイレットペーパーという商品を確実に供給すること」であると述べた。

 ドイツだけでなくEU の多くの国でも、価格は数か月前から急騰している。ドイツ連邦統計局 (Destatis) は今週、同国のエネルギー価格がここ12 か月間で約 139% 、さらに電気料金は174.9%急騰した、と報告した。 

 ドイツ経済は景気後退に向かっており、来年のGDPは0.7% 減少すると予想される、と警告している経済評論家もいる。

英国の国家債務がさらに悪化

<記事原文 寺島先生推薦>

UK sinks deeper into debt
High inflation is driving interest payments to record levels

(英国はさらなる借金地獄に沈んでいる。
高いインフレにより、利払い額が記録的な数値に)

出典:RT

2022年9月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月4日



英国ロンドンのオックスフォード通りにある、閉鎖された小売店跡地。2022年9月7日. ©  Mike Kemp / In Pictures via Getty Images


 英国政府の債務利子が記録上最高水準に達したと、国家統計局 (ONS) が今週報告した。

 先月(2022年8月)の支払利息は82億ポンド (92.5億ドル) で、これは2021年8月より15億ポンド (17億ドル) 高く、1997年4月に記録が開始されて以来の最高額であると、ONS は発表した。さらに支払利息額が不安定になっているのは、主にインフレ率の高騰によって引き起こされているものだ、とも発表した。

 英国の年間インフレ率は6月に9.4%に達し、過去40 年間で最高の数値を記録していたが、8月には8.6% にまで下降していた。

 英国政府は8月に、予想のほぼ2倍の額の借り入れを行い、予算責任局が見積っていた60億ポンド (67億ドル) ではなく、118 億ポンド (133 億ドル) を借り入れた。それは、税収入などの収入以上に支出が多かったためだ、とONSは説明した。


関連記事::ポンドが 37 年ぶりの安値に急落

 公営銀行を除いた官業の純債務は、GDPの約96.6% を占めており、前年同期と比較してGDPに占める割合で、1.9%増加している。

 市場は、リズ・トラス首相が発表した、家計と企業向けの一連の支援策が借入額を押し上げ、イングランド銀行が積極的に金利を引き上げることにつながることを懸念している。

 9月、英国ポンドは、同国の経済の不安定さに反応し、ドルに対して1985年以来の最低水準に急落した。

エネルギー危機へのスイスの節電対策

<記事原文 寺島先生推薦>

Swiss hospitals advised to cut power use

The move could help prevent energy rationing in the country in winter, the government says

(スイスの病院が電力消費を減らすよう助言
この動きが冬季のエネルギー配給を減らす一助になる、と政府が発表)

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月3日


© Getty Images / Peter Cade


 エネルギー危機が悪化する中、スイスの医療機関は電気消費量を減らすことを考えるべきである、とスイス連邦国家経済供給局エネルギー部門の責任者、バスティアン・シュワーク氏は述べた。

 「病院は電気やガスの使用量の制限を免除されていますが、どうすれば電気消費量を減らすかについても考慮すべきです」とシュワーク氏は、9月21日水曜日、スイスの新聞社であるノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング社の取材に答えた。

 シュワーク氏はさらに、医薬品産業のような重要な産業においても、生産を大きく削減することなしに、費用削減措置を取ることは可能である、と付け加えた。

 「現在、ほとんど全ての産業において例外が必要とされています。しかしそれは正しいやり方ではありません。むしろ、それぞれの産業が、危機的状況においてできることを考えるべきです」とシュワーク氏は述べ、さらにこう付け加えた。「例えばその中には、勤務時間の削減という策も考えられます。このような措置により、10~20%の電気消費量を削減できるのであれば、使用量の割り当て制度の導入を見送ります」 

 先月のスイス連邦参事会の発表によると、同参事会はスイスでの天然ガスの使用量を2022年10月から2023年3月までの間で、ここ5年間の平均使用量より15%減らすことを求めていく、という。この決定の理由として、この先ロシアからの天然ガスの供給が止まる可能性があることがあげられていた。

関連記事:Switzerland to slash winter energy consumption – media

 スイス当局は、天然ガスと電気の供給が不足した際に起こるエネルギー危機に対する緊急計画を立てている。この計画には、いくつかの段階が設定されていて、市民の意識向上をはかるため、店舗のショーウィンドウの電灯を落としたり、暖房の使用を止めるなどすることによりエネルギー節約の呼び掛けを行う段階から、 エネルギーを多く使う消費者3万人に対して、配電措置を取り、使用量に制限をかける段階までが考慮されている。

EU圏の経済成長率がゼロパーセンになる可能性

<記事原文 寺島先生推薦>

Eurozone economic growth may drop to zero – ECB
Economic output has been suffering due to rising energy costs

(EU圏の経済成長はゼロになる可能性――ヨーロッパ中央銀行の発表
 エネルギー価格の高騰により、経済状況は悪化)

出典:RT

2022年9月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月3日


© Getty Images / Nenad Stojanovic / EyeEm


 EU圏の経済成長が伸び悩み、成長率がゼロにまで落ち込む可能性がある、とヨーロッパ中央銀行(ECB)の副銀行長が、9月26日月曜日、ある会議の席でに語った。
 
 「第3四半期と第4四半期に大幅な減速が見られるため、成長率がゼロに近づく可能性があります」とルイス・デ・ギンドス副銀行長が語ったと、ロイター通信は報じている。

 エネルギー価格の高騰と、ロシアからの天然ガスの輸入停止により、経済生産は苦境に置かれ、暖房が必要になる季節が迫る中、エネルギーの配給危機が生じる危険が高まっている。エネルギー価格の高騰により、EU圏の年間インフレ率は8月には9.1%を記録し、 今月(9月)は9.6%にまで上昇すると見込まれている。これはEU圏において過去になかった高い値だ。

 今月初旬、ヨーロッパ中央銀行は利上げを行ったが、その数値は0.75%というこれまでにないものだった。しかも、つい数週間前にインフレ対策として、 0.5%の利上げを行ったばかりのことだ。 同副銀行長は、この先も更なる利上げが行われることになるとし、10月にも利率の変更が見込まれるという分析のもと、来春までのどの会議でも利上げが決められていくだろう、と語った。

 デ・ギンドス副銀行長は、この先の利上げがどのくらい積極的なものになるかは言及せず、「数値に基づいて」決められると述べるにとどめたが、インフレによる圧力はここ数ヶ月非常に高まっていることを強調した。

関連記事:ECB unleashes historic rate hike

 先週の同行の公式発表によると、ヨーロッパ中央銀行はこの先もインフレに対抗する策を講じ続ける必要がある、というのも経済の減速が消費者価格の引き下げには不十分であるため、とのことだった。

 「市場には、経済の減速がインフレを緩和するという考え方があります。しかし現実はそうはなっていません。何らかの金融政策が取られなければなりません」と同副銀行長は先週語っていた。

「なぜ共和制である我が国がエリザベス女王追悼のため半旗を掲げないといけないのか」フランスの多数の市長からの声 

<記事原文 寺島先生推薦>
French mayors refuse to lower flags for Queen
France should not “make preference” for a foreign monarch, one official declared


(フランスの市長たちが女王のために半旗を掲げる司令を拒否
ある市長は、フランスは外国の君主のために「敬意を示す」べきではないと発言)

出典:RT

2022年9月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月23日


フランスのパリのエリゼ宮殿の上に掲げられたフランス国旗の半旗。2022年9月9日撮影 ©  AFP / Christian Hartmann
 
 フランスの多くの市長が、半旗を掲げることで英国女王エリザベス2世に弔意を示す意向はないと発表している。理由は、君主制の考え方は、フランスの共和制とは相いれないため、ということだ。

 9月8日(木)のエリザベス女王の死去に伴い、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、英国で君主の座に史上最長在位したエリザベス女王に敬意を払った最初の国家元首のうちの一人だった。同大統領はエリザベス女王を「心の女王」と呼び、エリゼ宮殿はその翌日半旗を掲げ、エリザベット・ボルヌ首相は、次の月曜日(9月19日)に予定されている女王の葬儀の際には、市役所などの公共施設もそれに従うように、という指令を出した。
 
 フランスの左翼市長たちの間では、その指令は不人気のようだ。「このような要請は私には信じられないことに思えます」と、フランス社会党所属のヤン・ガルート(Yann Galut)ブルジョ市長は語った。「英国の友人たちの悲しみには敬意を払いますが、市の施設でフランス国旗[の半旗]を掲げるつもりはありません」
 
 「我が国は共和制国家です。それなのに、なぜ外国の君主のために哀悼の意を示さなければいけないのでしょうか?」とガルート市長はフランス3テレビの取材で語っている。
 

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 「私はこの指示には従いません」と、左翼政党である「服従しないフランス(La France Insoumise)」党所属のパトリック・プロイジー(Patrick Proisy)ファチェスートゥメスニル市長は語った。「他の国の国家元首が亡くなった時も、同じことをしてきましたか?共和制である我が国が一国の君主であり、とある宗教の教会長である人物に敬意を払っていいのでしょうか?」
 
 さらにプロイジー市長は言葉を続けた。「学校で半旗を掲げることで論理性が保てるでしょうか?学校には、“自由・平等・友愛”という文字が刻まれています。”君主制“ということばほど、”平等“という考え方からかけ離れている概念はありません」
 
 パリ郊外のジュヌヴィリエ市の共産党所属パトリス・ルクレール(Patrice Lecler)市長も、この指令を無視すると宣言したと、タイムズ紙は報じている。

 反旗を翻しているこれらの市長たちが、指令に従わないことで、何らかの罰を受けるかどうかは不明だが、フランス市長協会のフィリップ・ローラン(Philippe Laurent)副会長は、停職処分を受ける可能性があると警告している。しかし「服従しないフランス(La France Insoumise)」党所属のハドリアン・クルーエ(Hadrien Clouet)国会議員が、「そういう事態にはならないだろう、それは、フランスには国旗を降ろすべき状況を規定する法律がないからだ」と述べたことを、テレグラフ紙は報じている。

麻薬摂取疑惑に揺れるフィンランドの若き女性首相を北欧の女性たちが支援

<記事原文 寺島先生推薦>
Finnish PM finds friends in flashmobs

Women in Finland and Denmark are posting videos in support of Sanna Marin after videos of her at a private party were leaked

(フィンランドの首相が、フラッシュ・モブ(前ぶれなく街中やオンライン上で突如おこる運動のこと)での友情を享受

フィンランドとデンマークの女性たちが、私的なパーティでの様子を晒されて苦境に落ちている、サンナ・マリン首相を支援する多くの動画を投稿)

出典:RT

2022年8月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年9月6日


フィンランドのサンナ・マリン首相© Global Look Press / IMAGO / Saara Peltola

 北欧諸国の女性たちがオンライン上のフラッシュ・モブに参加し、フィンランドのサンナ・マリン首相への「連帯」の意思表示を行っている。同首相は、先週私的なパーティでの動画が流出したことで非難の的となっている。

 フィンランドとデンマークの女性たちが、自分たちが踊ったり騒いだりしている動画を#SolidaritywithSannaというタグをつけて、YouTubeなどのソーシャル・メディア上に投稿している。
  世界各国の政治家たちからマリン首相を守ろうという声が上がっている。例えば、豪州のフィオナ・パッテン国会議員は、「フィンランド国民は幸運です」、自国の首相が起こした最悪の事件が「パーティの動画の流出なのだとしたら」と記している。

 マリン首相を支援しようとする声が大きく広がったのは、36歳の同首相の2件の私的な動画が流出したことを受けてのことだ。 一件目の動画は友人たちとのパーティの様子を映したものであり、もう一件は、マリン首相がフィンランドの男性歌手であるオラビ・ウーシビルタ(Olavi Uusivirta)と踊っている様子を映したものだった。



 この動画が物議を醸し出したのは、この動画を見た人々から、マリン首相の振る舞いが一国の主として「相応しくない」と主張する声が上がったからだ。さらには、これらの動画のうちの1件で、後ろでコカインの話をしている声が聞こえていたことを指摘する人もおり、マリン首相が夜遊び中に麻薬を摂取していたのではないかという疑いが生じていた。

 動画が出回った後、マリン首相は法に触れる行為は行っていなかったと主張したと同時に、自身のプライバシーが侵害されたことを嘆いていた。マリン首相の主張によれば、そのパーティは、個人宅で数週間前に開かれたもので、勤務時間外で非公開にしておきたかったものだとのことだ。

 「休みをとって友人たちと過ごしただけです。不法行為は何もしていません」とマリン首相は断言し、行ったことは、「踊って、歌って、友人たちとハグして、アルコールを摂取しただけです」と語った。
さらにその週末には政治的な会合の予定はなかったことも明らかにした。

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 「2022年という年は、政策立案者でも、踊ったり、歌ったり、パーティに行ったりすることが受け入れられる年になればいいのですが」とマリン首相は続けた。「そのことをどう捉えるか[を決めるの]は、有権者が判断すべきことです」。

 しかし、フィンランドの多くの政治家は首相のイメージを損なう可能性があることに懸念の声を上げている。ミッコ・カルナ(Mikko Karna)国会議員は、マリン首相は自主的に薬物検査を受け、その結果を公表すれば、非難される余地は無くなるだろうと語っている。
 
 マリン首相はこの要求は「不当である」としながらも、「自分の身を法的に守るため」に薬物検査を既に受けており、その結果は約1週間後に出る、と語った。

(訳注:その後の報道で、この検査結果は陰性だったことがわかっています)

新型コロナは英国の大学制度の致命的欠陥をさらけ出し、取り返しのつかない崩壊を招いている

<記事原文 寺島先生推薦>Covid-19 has exposed the fatal flaws in Britain’s university system and hastened its inevitable decline
リサ・マッカンジー著

Dr Lisa McKenzie is a working-class academic. She grew up in a coal-mining town in Nottinghamshire and became politicized through the 1984 miners’ strike with her family. At 31, she went to the University of Nottingham and did an undergraduate degree in sociology. Dr McKenzie lectures in sociology at the University of Durham and is the author of ‘Getting By: Estates, Class and Culture in Austerity Britain.’ She’s a political activist, writer and thinker. Follow her on Twitter @redrumlisa.

RT 論説面

2021年12月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年1月30日




 今回のパンデミックのせいで、大学生たちはうつ病になり、大学のスタッフは燃え尽き症候群になってしまった。そして今回のパンデミックスか明らかにしたのは、高等教育制度における無数の課題だ。私自身大学講師の1人ではあるが、こう言わざるを得なくなっている。「この制度は全く崩壊の危機にある」と。

 今学期の授業日も残すところあと少しになったが、英国での大学講師としてのキャリアを10年以上持つ私からしても、今年度ほどキツい1年はなかった。

 9月以来、大学も大学生も、ニュースのネタから外されることはなかった。9月には、学生のあいだでのCovid-19の感染率が上がり続けていることがニュースになっていた。それから10月になると、ニュースの話題は、学生間の感染率の高さが、大学のある都市の人々に広がっていったことに移った。当時私はある記事を書いたのだが、その内容は、「感染が広がったことについて、頼むから学生たちを責めないでください。責められるべきなのは大学と政府です。両社の対応が悪く、危機に対する見通しも持てていなかったのですから」というものだった。

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 そして学期末を迎えた今、学生たちの精神状態についての新しい調査結果によれば、多くの学生たちはうつ病に苦しんでいることがわかっている。今私たちの頭をよぎるのは、マンチェスター大学で起こった、学生たちが学生寮に閉じ込められたという記事の見出しだ。さらにノッティンガムでは、学生たちに対して何千ポンドもの罰金が課された、という事件もだ。国のあちこちで学生たちが、自分たちは刑務所に入れられるかもしれないと噂している。というのも、大学が警察署を構内に入れて、立ち入り禁止の大学構内へ入ろうとする大学生たちを効果的に捕まえようとしているからだ。

  想像にかたくないことだが、家族から離れて寮に一人閉じ込められている学生たちも、自宅で監禁状態になって必要な機器が不足している中、なんとかオンライ授業を受けようと苦心している学生たちも、心の中は不安でいっぱいのはずだ。

 国中の同業者たちからも聞いたし、私自身実際に目にしたことでもあるのだが、自分のスマホを使ってオンライン授業を受けようとしている学生たちもいるようだ。というのも、彼らはラップトップのpcを持っていなかったり、大学からの学習ファイルを完全に受け取れる機器を持っていないからだ。学生支援センターも、都市封鎖措置やCOVIDによってもたらされたこれまでになかった課題に対応できる十分な資材を持っていない。

 大学の学習支援センターのサイトをひとつでも見れば、大学当局も苦心していることが一目で分かる。私たちは、学習に関する支援や、精神的な支えが必要だという学生たちからの声に応えることに潰されそうになっている。大袈裟な話でも何でもなくて、本当にみんなが燃え尽きそうになっている。今私たちに必要なのは、英国市民6000万人のためのワクチンだけではなくて、6000万人の精神状態を支える糸なのだ。

 こんなときに、大学で働いているすべての労働者たちに、大学の副総長から、これまでの苦労に感謝の意を伝えるメールが届くそうだ。ごめんなさい。はっきり言おう。今欲しいのは「ありがとう」じゃない。そんな言葉をもらっても嬉しくないし、それでは全く足りない。

 今明らかになっている課題は、初めからあったものだ。長年にわたり蓄積されてきたものだ。大学側は、大学が行う事業を、物を売る行為と同じだと考えているのだ。何百万ポンドも使って販売戦略を行い、「ビジネス」をめぐって世界中の大学と競争している。(申し訳ないが、ここでいうビジネスとは学生たちのことだ)。

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 大学の所在地の地方公共団体も学生から得られる収入に大きく依存するようになってきている。賃貸住宅業者も、いや近年では国際的に展開している不動産開発業者でさえも、世界各国から来る学生たちのおかげで大きな利益を得ている。このような構造だからこそ、学生たちも、大学当局で働く人々も、学生支援に関わる人たちも、上手く利用されているのだ。大学は今やハゲタカ資本主義が作り出した現代における「闇の悪魔の工場」に姿を変え始めたのだ。もはや大学はかつての「学び舎」ではない。

(訳注:「闇の悪魔の工場」とは17世紀の詩人ウィリアム・ブレイクの“ミルトン”という詩の一節。この詩は英国の愛国歌として親しまれている)


 何十億ドルもかけてこしらえたきらきらした大学キャンパスは17世紀のウィリアム・ブレイクの時代の「闇の悪魔の工場」には見えない。「ショッピング・モール」に見える。今その大学は使われず、構内は空っぽで、情け容赦ない借金が、学生たちや大学で働く人々のクビの周りにかけられている。ここ英国では、卒業生たちは、学生時代に借りた3万ポンド強のローンの頭金が返せるくらい稼げる会社に就職できるよう苦労しているのだ。こんなむだにぴかぴかした大学の建物の建築費の支払いが、国民一人一人に回されているのだ。というのも、きっと大学は今回の危機で生じた借金返済の救助を国に頼むだろうからだ。

  今回のパンデミックの結果明らかになったのは、すでに大学内部でくすぶっていた課題だけではない。もちろんそんな課題のせいで大学は今にも崩壊しようとしているのだが、もっと大事なことがある。それは、教育は公共の福祉として国民に提供されるべきもののはずだということだ。仕事を得るために証明書を授与する機関ではないのだ。

 昨年、私は労働組合の一員として、14日間というこれまでにない日数をかけて行われたストライキに参加した。そのストライキで要求したのは、給料や労働条件の改善であり、高等教育の本質がますます危うい状況に置かれていることについての抗議するためだった。その結果、私のキャリアに傷がついてしまった。この10年間で私たちが目にしてきたのは、大学当局は物価の上昇や、政府からの補助金の減額や、想像できないくらいにふくれあがった学生が負っている借金などに苦しんでいるのに、大学のキャンパスは五つ星ホテルのように改装され、副総長や経営者は多額の報酬を受け取っているという構図だ。いっぽう、大学の警備員や清掃職員や食堂で働いている人々は、雀の涙のような給料でかつかつの生活を強いられている。

 Covid危機が私たちに示したのは以下の3点だ。
 ①私たちの社会が実はどれほど病んだ状態にあるのか
 ②私たちが公共の福祉として受け取るべきものが何とわずかなものか
そして、
 ③市場資本主義に身を任せれば、どれだけ私たちの社会基盤が脆弱なものになるのか
だ。

 

EUよ、我々には問題が生じた。共産主義が崩壊して30年、東欧は自由民主主義に対する信頼を失いつつある。


<記事原文 寺島先生推薦>Brussels, we got a problem! 30 years after collapse of communism, Eastern Europe is losing its faith in Liberal Democracy


RT 論説面 2020年6月27日

ロバート・ブリッジ

Robert Bridge is an American writer and journalist. He is the author of the book, 'Midnight in the American Empire,' How Corporations and Their Political Servants are Destroying the American Dream. @Robert_Bridge

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年8月10日

 

 新しい政治体制を始めてから30年、中欧と東欧の国々は今支配者層やメディアや自由民主主義に疑いの声を上げている。これらの国々は以前のようなより権威的な政治体制に戻るのだろうか?

 1991年のソ連崩壊を受けて、以前のワルシャワ条約機構加盟国は自由民主主義という星にむかって歩みを進めた。それは、共産主義であれば手に入らない自由や解放が得られると期待したからだ。そして、間違いなく、多くの人は新しい政治体制からたしかな利益を得た。しかし、二つの全く違う政治体制を体験した中欧と東欧の国々の大多数の国民から見ると、おそらく自由民主主義体制の負の遺産の方が目立つようである。

 グローバル・セックという調査会社が行った世論調査の結果、CEE(中・東欧)10カ国(バルト三国、オーストリア、ポーランド、チェコ共和国、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、ルーマニア)の市民が、それぞれの国の自由民主主義体制をどう感じているかが明らかになった。その結果はかんばしいものではなかった。

 自由民主主義とそれに対する不満
 まずは民主主義体制に対する市民の声を見てみよう。大多数の市民は自由民主主義体制の完全な普通選挙や複数政党制については、肯定的な意見を持っている。一方、それぞれの国で民主主義が機能しているかについて満足しているのはたった40%だった。オーストリア市民(今回の調査の中で唯一元共産主義国家ではない国)が一番高い86%という満足度を示したが、他の国では、残りの国々の結果を見ると、ブルガリアはたったの18%の満足度だった。残り8カ国もすべて5割を切っていた。

 特筆すべきは、この調査が明らかにしていることが、回答者が自由民主主義体制をどう見ているかと、回答者の生活における幸福感とが強く相関した結果がでているということだ。平均すると自由民主主義体制を支持すると答えた回答者のうち83%が自分の生活に満足している、という結果が出ている。この結果からいえることは、資本主義にどっぷりつかり、自由民主主義体制のおかげで利益を得る材料を得ることが出来た人にとっては、彼らが享受している自由民主主義体制がもつ欠点に目をつぶったり、欠点が目に入らないかもしれないということだ。

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 しかし、政党に対する信頼についての質問の結果は、そんなによい結果ではなかった。平均して72%以上の人が自国の政体を信頼しておらず、CEE諸国のほとんどの国々で、伝統的な政党に投票しようという熱意は下がっていることが分かった。国民の態度がそうなっている理由は、それぞれの国によって様々であり、その理由は、ある国においては、EUとの長年の不和が影響しているのかもしれない。

 例を挙げると、ポーランドの「法と正義」党は最近欧州司法裁判所から怒りを買った。それはポーランド政府が、政府に反対する判事を懲戒処分に出来るという「尋常でない権力」を最高裁に与えたことに対してだった。EUの言い分は、このような動きはEUの民主主義路線とは相容れない、とのことだった。ポーランド政府の言い分は、平たく言えば「放っておいてくれ!」だった。

 EUが見せたもうひとつの力技は、欧州議会がハンガリーに制裁を加えたことだ。ハンガリーがNGOやメディアを厳罰に処したことが理由だと報じられている。国家主義政党である右派フィデス党の党首であるハンガリー政府のオルバーン・ヴィクトル首相は、EUのこの措置に対して「せこい報復だ」と吐き捨てた。彼の言い分は、不法移民がハンガリーを経由して西欧に抜けるのを遮ろうとしたことに対する制裁だ、とのことだった。

 この種の小競り合いが頻繁におこることで、親EU派陣営とEU懐疑派陣営の間の摩擦を増やすことになっている。そして、EU諸国はEUの民主主義推進政策に同意することに疑問を持たざるを得なくなっている。というのも、EUのやり方が日に日に民主的でなくなっているように見えるからだ。実際のところ、EUの持つこのような否定的な一面こそが、英国民がEUを離脱することにつながったといえる。



移民危機がさらに不信を煽っている
 強調すべきことは、不法移民がCEE諸国にとっての主要な関心事になっているということだ。そして、今回世論調査が行われた国々の中で、オーストリアだけが最近の移民危機の影響を直接受けているのだが、その結果によると、移民受け入れを拒否し続けている国々よりも、オーストリアの方が移民に対する懸念は少なかった。この世論調査をまとめた執筆者たちは、反移民政策をとっているCEE諸国こそが自国を「より閉鎖的で不寛容な国にしている」と結論づけている。

 皮肉にもこんな結論を出すということが、今多くの東欧諸国で行き渡っている政治に対する冷めた態度の説明になってしまうのだ。世論調査をまとめた執筆者たちが見ようとしていないのは、移民政策は各国で自由に決定すべきかどうかという根本的な問題だ。そんなこともなしに、「不寛容な国」だと決めつけているところに問題がある。結局のところ、すべてのCEE諸国がオーストリアのように移民の流入に対応できるような受け入れ体制をもっているわけではない、ということだ。

 もうひとつ考えるべきなのは、今見るべきなのはスウェーデンにおける移民政策だけだ、ということだ。例を挙げると、スウェーデンには、いわゆる「立ち入り禁止区域」となっている移民者の居住地が散在する。規制なしに移民を受け入れるとこのような高い代償をはらうことになってしまうのだ。このような何百万人もの移民者を自由にうけいれた失敗例から学ばずに、結局は移民者を地域に同化させることがほとんどできないままになっているEUの失政が、自由民主主義体制に対する猜疑心をあおることになっているのだ。

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Create chaos, welcome refugees, pay millions to US firm to process applications, pay refugees to go home. Well done, Europe!

メディアによる操作
 世論調査で報道分野も激しく批判されていることは別に驚くようなことではない。世論調査が行われた国々の中で、ラトビアだけが、大手メディアを信頼していると答えた回答者が主流派だった。他国では、回答者たちは、国家や少数の支配者層がニュースや情報を裏で操作していることを指摘していた。総合的に考えると、メディアに対する信頼の欠如のため、多くの人々は、ニュースや情報を得るために「代替メディア」を探すことを強いられていることが分かった。現状を把握するため、いわゆる「陰謀論」に手を伸ばす人もいるようだ。

 この世論調査は新型コロナウイルス流行蔓延中に行われたため、調査の結果、もう一つの頭が痛くなる現状が明らかになったとも言える。それは、回答者の半数以上が「身の安全を守るという名の下に自由を犠牲にする」ことを肯定していることだ。 これはゆゆしき問題である。というのも、今も昔も、自由民主主義の肝心要は、自由や自己表現の尊重であるからだ。しかし今日、自分の身の安全を気にする人がとても多くなっていて、自由民主主義は自分の身の安全の妨げになる、と考える人が多くなっているようだ。

 西側諸国の政府が、中欧や東欧で広まっている雰囲気を懸念しているのには、もっともな理由がある。それは、西側の大多数の資本主義諸国も、自国でも同様の厳しい問題に苦しめられているからだ。英国がEUから離脱しようとしているのも、米国が人種間の対立を鎮圧しようとしているのも、西側諸国が手に負えない状況に陥っている現れなのかもしれない。

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 当然の事ながら、このような社会の雰囲気は「自由民主主義」とういう名の政治体制に傷をつける。そして西側諸国の中には、自国の問題を解決する際、今までよりも非民主的な政治手法を試さざるを得なくなる国々も出てくるかもしれない。考えて見てほしい。例えば、今米国で起こっている抗議活動のせいでいくつかの都市では警察を解体しようとしているところも実際出てきている。避けられないことだが、このような思いもつかないような実験は、きっと最終的には失敗する。そして、政府は状況を打破するために、おそらく軍や戒厳令を使うことになるだろう。無法地帯で苦しんでいる市民たち、(実際もう既に ワシントン州シアトル市ではそのようになっているのだが)、 人々は諸手を挙げてこんな強行的な解決方法を歓迎するだろう。市民の安全と平和を守る手段であるならばなんでもよくなるだろうから。

 今月(7月)、元ロシア大使のマイケル・マックフォール氏はワシントン・ポスト紙でこう書いた。「西側諸国が政治体制上の一番の敵国であると目している中国が、独裁的で政府主導の政治体制で発展を遂げ、いまや世界のトップに立とうとしているが、中国のやり方が、自由民主主義とは違う選択肢になっている」、と。多くの西側諸国が困難な課題に直面している中で、 中国のような政治体制に急激に変革しようという国々が出てくるように思われるのだ。もちろん、そのような変革が行われいような努力は払われるであろうが。

 結論として、自由民主主義は本当に市民の利益に奉仕するものであり、特権階級として知られる一部の人たちに奉仕するものではないという信念があるならCEE諸国の市民たちはきっと安全でいられる。しかし、この自由民主主義政治体制は、社会のピラミッドの頂上を跨いで座っている人たちだけにしか奉仕しないことが、ますますはっきりしてきている。例を挙げると、何百万人もの難民たちがヨーロッパ大陸に流入することで、利益を得るのは誰だろう?ブリュッセルのEU本部が、離れたところから直接手を下さない方法で、各国への支配力を強める政治体制で得をするのは誰だろう?ただのうわべだけの変革ではない本当の変革が、現在自由民主主義政治体制を管理している西側機構におこらない限り、この後の未来に起こることは世論調査の結果が変わることではない。大規模な抗議活動が街中で発生する、そんな未来だろう。

「過去の栄光へのあこがれ?」他の過去の帝国の住民と比べて、英国民は帝国主義にノスタルジーを感じていて、33%の人が、植民地にされた国にとっても、よかったことだったと答えている。

<記事原文>
Yearning for past glory? Brits more nostalgic for empire than other post-colonial powers, 33% think colonies ‘better off’ – survey

RT UK News 2020年3月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 
2020年3月18日

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大英帝国のかつての植民地は、帝国の一部であったことで「より裕福になった」のだろうか? 答えは、「イエス」だ。新しい世論調査で、回答者の3分の1以上が、そう答えている。つまり、英国人は帝国の過去に憧れる傾向があることがわかった。かつて植民地を所有していた他の国々と比べて。
 

ネット上の調査機関YouGovによると、英国人の3分の1上がいまだに、最盛期には地球のほぼ4分の1を占拠していた大英帝国に「誇り」を感じているそうだ。かつての帝国への誇りが、英国民より強かったのは、オランダ国民だけだったことをその調査は明らかにした。

しかし、「帝国のおかげで、植民地がより裕福になった」と信じている人だけではなくて、フランス国民、スペイン国民、イタリア国民、ドイツ国民、日本国民よりも、今でも帝国の存続を望んでいる人が、英国民の中には、多そうだということが分かった。


countryhttps://www.theguardian.com/world/2020/mar/11/uk-more-nostalgic-for-empire-than-other-ex-colonial-powers …

興味深いし、おそらく想定内のことであるが、保守派は、労働党支持者のほぼ2倍の割合で帝国に親近感を感じているそうだ。やや皮肉なことに、「EU離脱派」の中には、「英国の国境支配権を取り戻す」ためにブレグジットを主張する人たちが多いのだが、彼らは、反離脱派の二倍以上に、植民地を有した帝国を懐かしく思っていることがわかった。

先月、保守党議員ジェームズ・アーリーは、こう言った。
「ブレグジットは大英帝国が“反撃する”つまり、EUの“束縛から解放する”チャンスだ」と。―これは、本当に不適切なものの言い方だ。

Also On RT. Com 2020031811163904b.jpg
What would it take for the UK to apologize for centuries of atrocities carried out under the British Empire?


しかし、期待したようには上手くは、いかなかった。ブレグジットが、世界の舞台で影響力のある主要国の一員として英国が再出発できるチャンスになることを期待していた人達にとっては。むしろ、逆のことが起こっているようだ。ブレグジット後、英国が、国際的な影響力を失い、ますます孤立しているように見える。

英国とオランダの結果は、ドイツとベルギーのものとはまったく対照的だった。1871年から1918年までの帝国時代についての質問について、「誇りに思っている」と答えたドイツ国民はわずか9%。同様に、ベルギー国民は、「帝国主義が植民地を悪化させた」ことを、他の国民と比べて、最も多く認めた。




多くの国民が、「植民地が大英帝国のおかげでより裕福になった」と考えている理由は、以下のような事実に基づいていると言える。つまり、英国が自らの過去と、大英帝国が植民地に対して行った暴力や奴隷制や食糧不足や分裂という負の遺産を国民がきちんと受け止めていないという事実だ。

キングス・カレッジ・ロンドンの歴史学の教授、ジョン・ウィルソンは、ガーディアン紙に、「ベルギー、フランス、イタリアなどの国々では、過去の植民地であるコンゴ、アルジェリア、エチオピアなどに対して、彼らが何をしてきたかについて、オープンに議論されてきたが、英国では“そのような論議は行われてこなかった”」と語った。
Also On RT. Com20200318111653b58.jpg

Deaths caused by British Empire should be condemned just like deaths under Stalin



今回の調査での明るい見通しは、若い回答者が帝国を誇りに思う傾向が少なかったことだ。64歳以上の人は、18~24歳のグループの2倍以上、帝国に誇りを持っていることがわかった。ウィルソンは、その理由は、教育システムが改善されているからかもしれない、と述べ、「残酷な真実から目をそらすな」という考えに基づいた教育課程もでてきた、と指摘した。

理由はどうあれ、クリケットと英語で世界を文明化しようという慈悲深いイギリス帝国という神話は、今日の多くの英国人の心の中にいまだに生き残っているという事実が明らかになった。

英国メディアがフランス「イエローベスト」運動より
イラン反政府デモの報道に力を入れている。 なぜ?

記事原文<寺島先生推薦> ‘Don’t look there, look here!’ UK media much more excited about Iran protests than those in neighboring France‘Don’t look there, look here!’ UK media much more excited about Iran protests than those in neighboring France

RT Op-ed 2020年1月13日 Neil Clark

翻訳<寺島メソッド翻訳グループ o. n. 2020年1月20日〉



イランは英国から数千マイルも離れているが、権力エリートたちの支持があるため、テヘランの反政府デモは、ドーバー海峡一つ挟んだだけのフランスの反政府デモよりもはるかに広範な報道がなされている。

何人のイギリス人がイランを訪れたことがあるのだろうか?何人がイランに住んだことがあるのだろうか?どれだけの人がイランに別荘を持っているのだろうか?

そんなに数は多くないと思う。フランスとはかなり対照的だ。2018年には、イギリス人が訪れた国に関する調査でフランスがトップになったことが明らかになった。イギリス人の76%は人生のどこかの時点でフランスに行ったことがある。英国政府のウェブサイトによると、毎年約1700万人のイギリス人がフランスを訪れている。

私が前回フランスに行ったのは10月だった。それから、フランスに居住しているイギリス人がいる。2017年、19万人の英国生まれの人々がフランスに住んでいた。多くのイギリス人にとって、プロバンスに一年(あるいはそれ以上)に居住することは夢の世界の出来事ではない。

さて、ご自分が英国のニュース編集者だと思ってみてほしい。英国のテレビ視聴者は、遠く離れたイランよりも、彼らがよく知っているフランスでの大規模な反政府デモに関心があると考えるのが妥当ではないだろうか?

しかし、現実はそうなっていない。 今週末のイランでの反政府デモ(過失から起こったウクライナの旅客機撃墜に対するもの)は、BBCのニュース速報やトップ記事として日曜日に一日中流されたが、フランスのデモや年金改革をめぐる全国的なストライキについての報道はほとんどなかった。

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フランス人は自分が気に入らないことにはすぐに 「ノン」 と言うことで知られているが、彼らの基準からしても、そこで起きている抗議行動は通常の枠を越えていると言い方でも捉えきれないものだ。 「イエローベスト」によるデモは、2018年12月から毎週末にフランス全土で行われている。

先週末は デモ発生から61週目に当たる「アクト61」 だった。パリではデモ隊が警察に石を投げつけたり、通りにバリケードを築いたり、ゴミ箱に火をつけたりしていた。警察は催涙ガスと暴力で対応した。

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同時に、年金支給年齢を62歳から64歳に引き上げることを予定したマクロン大統領に反対するゼネストは31日目を迎えた。これを受け、マクロンはこの引き上げ案を一時取り下げた。この話の教訓は、直接的な行動が有効だということだ。

しかし、繰り返し強調しておくが、英国海峡を越えたところで起きているこれらの出来事はいずれも、英国の主要ニュースに値するとは見なされなかった。英国からのスコットランド独立を要求するために、グラスゴーで何千人もの人々が行進したことも同様の扱いだった。そのことも言っておかなければならない。びっくりしない方がおかしい。

そういったニュースの代わりに、私たちが日曜日に目を覚まして耳目に触れたのは、何千マイルも離れたイランでの反政府(いや「反体制」 )デモに関する広範な報道だった。「識者」と呼ばれる評論家達も同じようにイランに焦点を当てている。テヘランでの週末の抗議行動について発信されたツイートや声明の数と、フランスでの「イエローベスト」運動とデモへの無関心を比べてみてほしい。

「驚き」は、報道レベルの「開き」(わざと韻を踏んだわけではない)だけではない。「驚き」はそれぞれの抗議行動がどう受け止められたか、だ。イランの「反体制」街頭抗議運動は、12ヶ月前のベネズエラや香港での抗議運動と同じく、明らかにたいへん大きな支持を受けている。ドナルド・トランプは、支持を表明し、ガチガチのネオコンであるジョン・ボルトンは興奮を隠せず、「体制変換が進行中」とツイートしている。

しかし、「イエローベスト」運動はこういった「エリート層」の支持を得ていない。それどころか彼らはぼろくそに言われている。彼らは 「反ユダヤ主義」 で、極左で極右であると非難されてきた。実際を言えば、イエロー・ベストは信じられないほど民主的な草の根運動であり、不正な現状に怒りを感じるすべての人に開かれている運動だ。運動全体には有機的な繋がりがあり、どの政党や派閥の支配下にもない。それが権力エリートが恐れている理由だろう。「イエローベスト」抗議運動を、英国の支配者たちは我々に真似してほしくないと思っているため、それはほとんど報道されておらず、報道されてもしぶしぶだ。
むしろ彼らが望むのは、我々が石油の豊富なイランでの市民騒乱を応援することだ。イラン政府を弱体化させるものは何であれ、それが彼らの強欲で覇権主義的な利益に役立つことを彼らは知っているからだ。これらの権益は、イランが保有する膨大な原油・天然ガスの埋蔵量を確保することにとどまらない(推定530億バレルの新しい油田が発見されたのは、昨年十一月のことだった)。それはまた、中東を完全に支配するためのネオコンの計画に抵抗するテヘランとダマスカスとヒズボラの抵抗の軸を打ち砕き、パレスチナ人を支持する独立した主体を 「排除」 することでもある。

強調しておかなければならないが、本稿の趣旨はイランの抗議者や彼らが街頭に出てきた理由を批判することではない。「フランスではなくイランに視線を!」と我々に語りかける輩の隠された意図に光を当てることが本稿の趣旨だ。イラクの大量破壊兵器に関するでっち上げ事件があった。ニュース編集者たちは再び権力者の操り人形に成り下がっている。同じことの繰り返し。



 

英国議会選挙における「まぬけ」首相ボリス・ジョンソンの勝利は
メディアのプロパガンダ戦略の結果
――ロジャー・ウォーターズの分析と呼びかけ(ビデオ映像)

記事原文<寺島先生推薦> Corbyn was ‘smeared’, Johnson is a ‘buffoon’: Roger Waters says information war won big in UK elections (VIDEO)

RT U.K. News 2019年12月21日

翻訳 <寺島メソッド翻訳ニュース o.n. 2020年1月20日>



労働党に対するボリス・ジョンソンの勝利は、プロパガンダの力を示すものだとロジャー・ウォーターズはRTに語った。 ロックバンド「ピンク・フロイド」のリーダーでもあるロジャ-・ウォーターズは、手遅れになる前に体制に立ち向かおうと世界中の人々に呼び掛けた。

英国議会で今回トーリー党が多数派を占めたのは、英国のエリート層による大規模な情報戦争の結果である、とウォーターズはRTのインタビュー番組の「Going Underground」のホストであるアフシン・ラタンシに語った。さらに同氏は、ニュースや情報の操作が「私たちの生活の中で最も重要なもの」になっていると指摘した。

ウォーターズは、労働党党首ジェレミー・コービンがメディアに「信じられないほど叩かれ」、世論調査でジョンソンの数値を上げる道を開いたと言った。首相を「のろまでバカ」と表現し、選挙結果がさらなる混乱の兆しであることを示唆した。

主流メディアは非常に裕福で権力のある人々によって所有されている。その結果、彼らはあらゆるものをコントロールしよう
としているのかもしれない。単に選挙だけでなく、すべてのものを。


彼は、誤った情報は「部屋に陣取った象(わかっていても口に出したくない重要問題)」であり、世界の本当の状態について若者を教育するのを助けるのは不屈のジャーナリスト(例えばジュリアン・アサンジ)の責務だと主張した。 言い方は暗いが、ウォーターズは流れは変わっているという楽観的な見方を示し、世界中の「兄弟姉妹」が「新自由主義的」支配者達に反対の声を上げることを求めた

牛肉はどうなる?
Tescoの「完全菜食主義広告」に向けられた英国農民の怒り。
しかしスーパーマーケット業界も、長年農民を搾り取る。

What’s the beef? British farmers rail against Tesco’s VEGAN advert, but supermarkets have been squeezing them for years

RT Home UK News 2019年10月18日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo. 2019年12月13日)

<記事原文>寺島先生推薦
https://www.rt.com/uk/471251-farmers-tesco-vegan-ad/


© Reuters / Toby Melville

英国の小売大手Tescoの新しい「完全菜食主義」支持広告は、英国の農民を憤慨させた。 しかし、トレンドの変化、収益の低下、そしてスーパーマーケット自体が長年にわたってこの産業の存立を脅かしている。

ひとりの小学生の女の子が、「パパ、もう動物は食べたくない」とTescoの新しい広告「カールのすべてが変わる鍋料理」で言う。 カールは人一倍子煩悩なので、彼の代表的な料理のソーセージを植物ベースの代替品に取り換え、テスコの「植物シェフ・レンジ」のおかげで家族は再び幸せにというわけだ。

National Farmers 'Unionは、この広告に反対し、「肉を一つの食物群として悪魔化している」と反対している。肉は本来タンパク質が豊富で、「鉄、亜鉛、必須ビタミンの優れた供給源」であると彼らは言う。

「肉の悪魔化によって生計が危険にさらされている農民にとって、感情に先走った言説やまったく無神経な説教は、更なる打撃となった」と、酪農農家のノリーン・ウェインライトは、テレグラフ紙のコラムに後日書いている。

実際、近年の嗜好傾向の変化は、英国の農家に一連の打撃をもたらしている。 2018年の調査は、英国人の7%が完全菜食主義者で、14%がベジタリアンであると推定している。 赤肉の消費量は過去10年間で約10%減少し、ある牛肉製品の需要は昨年だけで7%減少した。 酪農産業も脅威に晒され、牛乳の消費量は1970年代以来3分の1に減少、5人に1人の顧客が豆乳やオート麦牛乳などの代替品を選択している。

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人間は雑食動物であり、植物ベースまたは肉ベースの食事で健康的に生きられる。 もっとも、完全菜食主義者は肉にのみ含まれる必須栄養素を補う必要はあるが。 しかし、食事の好みはさておき、経済的要因により、英国の農民は、肉離れが今後ちょっと進むだけで破局に至る可能性がある。

ほとんどの英国牛肉生産農家は赤字操業で、EUからの補助金に依存し、収支トントンの状態だ。 この生命線は、EUから離脱すればすぐに引き上げられてしまう可能性がある。 世界市場で、英国の牛肉生産者は北米でよく見られる産業方式との競争を余儀なくされている。北米方式は、牛に大量の成長ホルモンと抗生物質を投与してから屠殺する。 そして大特価で販売するからだ。

その結果、英国の牛の頭数は近年着実に減少している。 一方10箇所を越す「メガファーム」が出現して、牛乳パックや肉パックに頻繁に描かれていた田舎の牧草地に取って代わった。 規模の経済性だけで利益を上げているこれらのアメリカ式仕様上飼養場では、最大3,000頭の牛の群れが飼育され、その多くは草のない囲い地で長期間飼育されている。

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個々に、100万羽以上の鶏または20,000頭以上の豚を飼育している何百もの同様の事業も、英国の田舎で一般的になっている。

英国のスーパーマーケットも、小規模農家を廃業させる上で重要な役割を果たしてきた。 それは視聴者の気分をよくする完全菜食広告が流されるずっと以前からのことだ。 英国の買い物客の要求は高い健康基準と環境保護を考慮した英国産牛であり、しかもリーズナブル価格を求めている。 スーパーマーケットはこれを提供し、農民からは生産コスト以下で買いたたき、輸入の脅威を利用してコストを抑えていると、『ラベルの裏側』の著者フェリシティ・ローレンスは、ガーディアン紙に書いている。

「サステイナブル・フード・トラスト」の政策担当部長、リチャード・ヤング氏は、「メガファーム」から牛肉を調達することで、スーパーマーケットは「牛肉の小売価格を、従来の農家が生産できる価格よりも下げることができる」と言っている。 「しかしその結果、彼らは廃業するのですが。」

Tesco、Sainsbury’s、Morrisons、およびAsdaはすべて、「メガファーム」から肉を調達している。
したがって、英国の農民は四面楚歌の状態だ。 完全菜食主義者には、自分達の農産物は殺人であると言われ、環境保護主義者からは、母なる地球を破壊して生計を立てていると言われる。 より少ない金で、より多くの製品を搾り出そうとするスーパーマーケットに対して、英国の農民が脅威を感じるのは当然のことだ。

放映されたひとつの他愛もない広告は、大ごとには見えないかもしれない。 しかし、すでに生命維持装置をつけられた業界からすれば、そんな広告でも、農民には「重大な苦悩」を引き起こしているとする主張は、大袈裟な言い方でないかもしれない。

スエーデンの幼稚園で完全菜食の試行!
地球保護のための肉食禁止?

Ban meat to save the planet? Swedish preschool conducts mandatory vegan diet ‘experiment’

RT 31 Oct, 2019 04:27 / Updated 8 days ago

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo. 2019年11月)

<記事原文>
https://www.rt.com/news/472252-sweden-preschool-no-meat-climate/


 1歳から6歳までの乳幼児を預かるスエーデンの市町村子ども保育センターでは、一つの「実験」として食事メニューから肉料理をすべてなくそうとしている。 この地球をよりよい場所にしようとの考えからだ。

 今後2週間以内に、ウメオ市(スエーデン北東部)のギターレン幼稚園が、市町村立の幼稚園として初めて、完全に肉を断った給食を出すことになる。 「完全菜食」メニューの「試行的取り組み」をスタートさせようとするこの決定は、ギターレン幼稚園が1年以上に亘って取り組んでいる、大がかりな環境プロジェクトの一環としてのものだ。

「考えれば考えるほど、このプロジェクトは優れていると思えました」と地元紙フォルクブラーデットの記者に語るのはこの幼稚園で教師をしているマルカス・サンドストローム氏だ。 「持続可能な発展が(私たちの)出発点です。 そして肉は気候に影響力があります。」
 この実験で一番論議を呼んでいるのは、朝食ないし昼食にどうしても肉を食べたいという子どもにも例外を認めないというところだ。 スナックとして肉類を食べることすら認めていない。 

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https://www.rt.com/op-ed/468689-vegetarian-school-children-meal/

 「現在ベジタリアン食を食べたい人は特別食を申請します。 当幼稚園としてはベジタリアン食以外を特別食として扱うことにしました」とサンドストローム氏は説明した。 しかし、給食配送側としては、そんなやりくりは不可能だ、とのことだった。 それで幼稚園としては「やむを得ず」肉を完全に給食メニューから外すことにしたのだった。 もっと柔軟な解決策を模索することはしなかった。 

 幼稚園は栄養士を招き、菜食だけで子どもが必要とする栄養分はすべて吸収できることを科学的に証明してもらおうとまでした。 しかしながら、エクスプレッセン紙によれば、この完全菜食にはミルク、チーズないしバターなどの酪農製品や卵、そして週に1回は魚を食べることが必要だ。 
 
 「実験」は、計画としては1月まで。 その時点で、「実験結果」の評価を行う。 しかし、幼稚園としては、この方式をそれ以降も続けたいと考えている。 

 「当幼稚園としてはこの方式が永続的なものになり得るという信念と期待を持っています」とサンドストローム氏。 ただ、「それを一挙に実行ことは少し過激」だとは認めている。 何事であれ、まずは「適正な評価です」と氏。 氏の言によれば、幼稚園の動きに親たちの反応は前向きであるし、子ども達も「強い関心を持っているようだ」とのこと。

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https://www.rt.com/uk/472187-asthma-inhalers-climate-change/

 「モルチズサービス」(学校、子ども保育センター、そして社会奉仕施設に食事を提供する責任を持つ市町村単位の食事配送サービスのひとつ)も、この動きを「前向きな動き」と歓迎している。 もし合意が得られ、親たちに十分な情報が与えられるのであれば、親たちはこのプロジェクトにブレーキをかけるようなことは絶対に望まないだろう、とも。

 一見牧歌的な感じもするが、ギターレン幼稚園側は、今回の措置は現代の政治的潮流とは一応きちんとした一線を画している、ということを強調しておきたいと感じていた。 「当幼稚園としてはっきりさせておきたいと思っているのは、今回の措置に政治的なものはまったくないということです。 当幼稚園がそうしたのは、気候問題に前向きな一打を与えると信じているからです」とサンドストローム氏は語った。 

 ギターレン幼稚園の父母は前向きであっても、ツィッター上の反応は否定的だ。 多数意見としては、今回の幼稚園の措置を、全体的に、「子どもの健康を(脅かす)気候問題への警告」と捉えているし、その他の意見としては、環境に対してプラスの効果がある、との幼稚園側の思惑には、はっきり首を傾げたものだ。

ALSO ON RT.COM Meat is back on the menu, & scientists who want to ban cows for the sake of the planet are outraged
https://www.rt.com/news/470189-meat-study-harvard-environment/

 今回の動きは同時に、スエーデンで最大発行部数を誇る日刊紙「ダーゲンス・ニーヘーテル」が熱い議論に火をつけた。 同紙はギターレン幼稚園の措置に対する批判意見、賛成意見の双方を特別連載記事として掲載したのだ。 もっとも、そういった考えをひねり出したのはスエーデンのこの幼稚園が最初というわけではない。 以前、イギリスとフランスの学校が完全菜食主義をもっと厳格に守らせることを選択し、肉と魚を全面的に禁止、子どもたちに自前の弁当すら持たせなかったとの報道があった。 もちろん、すべて気候問題のためだ。 




ロンドンの凋落:犯罪が首都を破壊しているのに、
メイとカーンは時間を空費している

London has fallen: May & Khan fiddle while crime destroys capital

ジョン・ワイト

RT Home / Op-ed /  2019年7月16日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年8月21日)

<記事原文>寺島先生推薦
https://www.rt.com/op-ed/464301-poverty-crime-gangs-london/

ジョン・ワイトは様々な新聞、ウェブサイトで執筆しています。インディペンダント紙、モーニング・スター、ハフィントン・ポスト、カウンターパンチ、ロンドン・プログレッシブ・ジャーナル、外交政策ジャーナルなどです。


(left top) (left bottom) (right)
(左上)© Pool via REUTERS/Yui Mok;
(左下)© Global Look Press/ZUMAPRESS/Gustavo Valiente;
(右)© REUTERS/Simon Dawson


テレサ・メイがダウニング街(首相官邸)を去ろうとしているとき、イギリスが、これほどまでに衰弱し、崩壊し、指導者がいないように見えたことは一度もない。

ロンドンは、世界の主要な都市の一つとして、多文化主義、活力、事業、チャンスの指針に長くなってきた。そのロンドンで、巨大に広がった団地の通りに、死が忍び寄っている。暴力団同士の抗争で、主に10代の少年や若者の当事者の命が、殺し、殺される致命的シナリオで減少している。一方、首都警察は街の管理力を失ったという結論が、今や避けられなくなっている。首都警察自身の統計によれば、今年1月から6月までで次のことがわかる。 

• 125,190件の窃盗

• 108,084の暴行

• 9,998件の性的暴行

• 24,918件の公的秩序妨害

• 21,906件の薬物違反

• 40,409件の強盗

同じ6ヶ月期間になされた殺人の数は67人である。それは上記の暴力団抗争で殺された人々がかなりの割合を占め、衰える兆しのないナイフ犯罪騒ぎの犠牲者である。

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Also on rt.com ‘Unarguable link’: Sadiq Khan blames Tory cuts on rise in youth stabbings in London
(さらに読む)「‘議論の余地もない関連性’:サディク・カーンはロンドンの若者刺殺の増加の原因は、保守党が予算を削減したことだと非難する


それらは非常に核心を突いていると石に刻まれるに値する言葉で、サディク・カーンロンドン市長は最近宣言した。貧困と若者の暴力犯罪の間には関連があると。それは、太陽に晒すことと日焼けの関係を言うのと同じことだ、と。              

サディク・カーンが、ロンドンにおける法と秩序の壊滅的崩壊の責任があるにも拘わらず(いずれにしろ彼は市長だから)、大半の責任は、10年に及ぶ保守党の緊縮財政にある。緊縮財政とは、人間を絶望に陥れる巨大な実験であり、今後も続く厄介な用語である。

そしてとても贅沢に教育された、裕福な過激派からなる保守党の管理層の中で、現在テレサ・メイ首相は、手を血に染めている。今日それでも彼女は、内務大臣だったときに導入した大規模な警察官削減と、ナイフによる犯罪の蔓延との関連を、厚かましくも否定している。その削減は、イギリスとウェールズの第一線の警官が2010年より2万人少ないというレベルまで達した。

私達にあるのは、典型的で完全な騒乱だ。保守党の緊縮財政下、賃金は下がり、物価は上がり、公共サービスは完全に(最低限度まで)削減され、警官の数も削減された。原因と結果に取り組むのにアリストテレスである必要はない。それについては古代ギリシャの哲学者は何世紀も前に、サディク・カーンが喚起したことを理解していたのだ。つまり「貧困は、革命と犯罪の親である」と。

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Also on rt.com What’s the story Sadiq Khan? Oasis legend Liam Gallagher slams London mayor over knife crime
(さらに読む)「サディク・カーンの話は何なのだ? 元オアシスのリアム・ギャラガーは殺傷事件に関して、ロンドン市長を酷評する


ロンドンを飲み込んでいる暴力犯罪の危機を一層ひどくしたのは、ブレグジット(EU離脱)である。EU離脱は、国の政治指導者の全てのエネルギーと焦点を集めている。3年後の結果はカオスの極みである。イギリスは、第二次世界大戦以来直面してきた最も深刻な政治危機で、国の政治家や支配階級が国の舵取りができずに、政府機能麻痺に陥っている。

EU離脱は、まさに本当の意味で諺に出てくる壁の中のレンガだということがわかってきた。つまりそのレンガを取り去れば全体構造が崩れ落ちるということだ。イギリスは、植民地時代後に国民が団結できるというアイデンティティを失った。ただし、前述の第二次世界大戦の時、そして女王や他の王族のメンバーが、動物園の技をするように仕込まれたアザラシのように登場すると、儀式の旗を振るいつもの行事の時は、別としてもである。アイデンティティを失った国、これが2019年のイギリスだ。

どの都市やどの国の暴力団文化は、主流文化を反転させたものだ。暴力団文化は、社会的に無視され疎外されたコミュニティから若者を吸収することに、主流社会が失敗していることを示している。そして主流社会から拒絶されたことの反応として、これら若者達は、代わりに、主流社会の価値観もモラルも社会慣習も法律をも拒絶する。

怪物コディとしてよく知られているロサンジェルスの伝説的な暴力団の親分コディ・スコットが書いているように、「原則は尊敬であり、それは全ての人間関係に絶対不可欠な要をなすものである。だからゲットーやスラムでは30倍に拡大する」。彼はさらに多分こう続けただろう。何も持たない人々への尊敬は、それがない人間は、生きる価値がないというというところにまで高められる。一方、何も持たない人々への尊敬を犯そうとする者達は、生きる価値がないと見做される。

一方、「尊敬を欠く」ことの原則に関して、保守党のボリス・ジョンソンとジェレミー・ハントの指導部争いをご覧なさい。誰が勝とうが自動的に次期首相になる。党の18万人の党員だけの投票でそうなることは、民主主義の蹂躙である。


Also on rt.com Shock in south London after pregnant woman stabbed to death in broad daylight
(さらに読む)「妊婦が白昼刺されて死亡。南ロンドンの衝撃


さらに悪いことには、どちらがダウニング街(首相官邸)に入ろうと、すぐドナルド・トランプの懐に滑り込むだけである。次期保守党の首相は、アメリカ覇権の祭壇でひざまずくだろう。私はそれがどんなものかちょうど垣間見たところだ。ワシントンの命令で、イギリス海兵隊は、最近イランの石油タンカーに乗り込み拿捕したのだ。イランのタンカーは、ジブラルタル海峡で仕事をしていたときだ。

ロンドンは凋落した。在りし日の帝国の首都は今やどこにもないし、何もない。その基盤が崩れている時、力と権力の見せかけを取り繕おうとしているだけだ。かつて世界の4分の1に広がった帝国に敬意を表して、ロンドンに定着した堂々とした像や記念碑は、今や突然、かつて壮大だったが、今は見捨てられたテーマパークの展示品ように見える。

コソボ戦争 ----「人道的介入」、もしくは
ユーゴスラビアへの宣戦布告なき戦争
----すべてはここから始まった

The Kosovo War: “Humanitarian Intervention” or Undeclared War Against Yugoslavia?

By Dragan Vladic
ドラガン・ウラディッチ

グローバル・リサーチ 2019年3月14日

(翻訳:新見明 2019年4月28日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/the-kosovo-war-humanitarian-intervention-or-undeclared-war-against-yugoslavia/5671466



コソボ解放軍(KLA)とセルビア勢力の間の武力紛争は1992年、コソボ解放軍が非アルバニア人のセルビア警察を攻撃したときに始まった。セルビア警察はコソボに住んでいて、アルバニア人はセルビアに忠実であった。この低レベルの紛争は、1996年、コソボ解放軍が難民キャンプや他の市民や警官を襲撃し、何十人という無垢の死者を出したときにエスカレートした。すべてこの時点でに、コソボ解放軍はテロ組織と見られていた。

アルバニアで共産主義が倒れ、この国が無秩序に陥って、多くの軍事物資貯蔵施設が略奪され、トラック何台分もの兵器が、隣のコソボにこっそり持ち出された。麻薬や人身売買など増加する犯罪行為や、海外で働くアルバニア人への強制的徴税もコソボ解放軍に資金供給されていた。

コソボ解放軍のテロ活動の増加は、セルビア警察や軍の激しい抵抗にあい、市民が死んだり、家を追い出されたりした。続く国連決議1160、1199、1203は、1998年のホルブルック-ミロシェビッチ合意と共に、セルビア勢力の削減と紛争以前の状態への撤退を要求していた。セルビア政府はこれらの要求にほとんど従った。しかしその要求は様々な理由のため十分守られなかった。コソボ解放軍は武装解除せず、決議に従わず、テロ活動を増加させた。コソボ解放軍は、意図的に市民を危機にさらして、セルビア軍を絶えず挑発していた(サチ、BBCから引用)。彼らはわかっていた。「さらに多くの市民が殺され、国際介入の機会はますます大きくなった・・・」と

オルブライトとコソボ解放軍指導者ハシム・サチ

彼らは再びセルビア勢力が前に保持していた位置を再占拠し、ある時点で、コソボの40%まで支配した。コソボ解放軍は数百もの外国人傭兵やムジャヒディンによって再強化され、CIA、DIA、MI6、ドイツ情報局BNDからの支援を受け始めた。

ハシム・タシとマドレーヌ・オルブライト、1998年

オルブライトとKLA指導者ハシム・タシ


コソボ解放軍(KLA)は、またオサマ・ビン・ラディンやアルカイダによっても支援されていた。コソボ解放軍が国連決議やホルブルック=ミロシェビッチ合意に従わず、コソボ解放軍は停戦破棄に大部分責任があるにもかかわらず、戦争行為がかなり減少したとき、ほとんどすべての難民が元の生活場所に戻ったのだ。

最も重大な事件は、1999年1月15日に起こった。ラチャクの虐殺と言われる事件は、コソボ調査委員長ウィリアム・ウォーカーによって、不当に、しかも意図的にセルビア勢力のせいにされた。ウォーカーは、以前エルサルバドルの虐殺隠蔽にかかわっていた人物だ。

セルビア勢力が45人の無垢の男女や子ども達を虐殺したという主張は、セルビア、ベラルーシ、フィンランドの法律専門家によって退けられた。法律専門家が発見したことは、これらの人々は、近距離から虐殺されたり、殺されたのではなく、彼らのほとんどが手に火薬の残滓があり、実際、彼らはコソボ解放軍の戦闘員であったことであった。

報告はまた述べている。死者の中にはたった一人の女性と一人の青年がいただけであり、明らかではないが、一人だけが近距離から撃たれた可能性があると。これは決定的事実であるにもかかわらず、報告は直ちに公表されなかった。

この後、ランブイエ交渉が続いた。それはユーゴスラビア政府も他のどの政府でも受け入れがたい最後通告であった。このコソボ調査委員会が撤退した後、NATOの人道的介入、いやむしろ侵略が始まり、78日間続いたのだ。

数多くの学者たちや、コソボ国際委員会、そして政治家たち、特にNATO諸国から来た人々は、NATOの介入は民族浄化やジェノサイドや新たなホロコーストを防ぐと共に、地域の平和や安定のために正当化されると主張している。彼らは、国連憲章7条、国際人道法、世界人権宣言に基づいて主張している。フォークは次のように述べている。

    コソボ戦争は正しい戦争であった。なぜならそれは旧ユーゴスラビアの
    セルビア主導による「民族浄化」の事態を避けるためにおこなわれたの
    だから・・・それは正しい戦争であった。国連の認可なしで不法におこな
    われたにもかかわらず。そして、おびただしいコソボやセルビアの市民
    の死傷者を出したやり方にもかかわらず。だが、NATO側の死傷者のリ
    スクを最小限に抑えられたのだ。

しかしその他多くの学者達は、NATOの介入は違法で不必要であったと主張し、論証した。ニュールンベルグ戦争犯罪裁判所の元検察官ウィリアム・ロックラーは、次のように述べている。

    空爆戦争[1999年]は、国連憲章の基本条項や他の規定や条約に違反し、
    それらをズタズタにしている。ユーゴスラビアへの攻撃は、ナチがドイツ人
    に対する「ポーランドの虐殺」を防ぐために、ポーランドを攻撃して以来、
    最も厚かましい国際的侵略である。アメリカは国際的合法性や体裁を守
    る振りを捨て去って、狂った帝国主義の道を開始したのだ。

NATOの行動が一方的であったので、NATOの介入は違法であり、安全保障理事会を避けたので、それ故、国連憲章の各条項に違反していた。特に2条(3)、2条(4)、53条である。またNATO憲章第一条にも違反している。ランブイエ合意はウィーン条約の条約法(1969年)にも違反したのだ。セクション2:条約条項51と51条に対しても無効である。

NATO当局は、これは人道的介入であると主張した。しかし合同軍司令官マイク・ショート将軍は、NATOの介入は実際ユーゴスラビア連邦共和国に対する戦争行為であることを認めた(BBC, -)。

    同盟国の中には、戦争ではないと思っている人々もいることを私は
    認めるが、司令官として・・・私の心の中では戦争をしていた。そして
    私の管轄下の人々もそうであった・・そしてそれが我々の仕事のや
    り方である・・・。

これは宣戦布告なき戦争なので、NATO諸国が参加する憲法やジュネーブ協定52条2にも違反していた。NATOは何度もこの憲章を破った。そして学校や病院やテレビ、ラジオ局、橋、工場、多くの都市の住宅街、水道施設、電気施設を爆撃し、戦争犯罪を犯した。グルデリツァの列車やジャコビッツァ近くのアルバニア難民輸送隊の場合、意図的に市民を狙って、75人から100人の難民が殺された。さらに、スペイン人パイロット、アドルフォ・ルイス・マーチン・デ・ラ・ホーズ大尉は、NATOの攻撃に従事していて、NATOが意図的に一般住民を標的にしていたことを認めた。BBCによれば、これはハビアー・ソラナとクラウス・ナウマン大将が、他のNATO諸国に相談することなく決定した。ハイデンはこれは意図的な行動であったと述べている。 

    ウォールストリートジャーナルの4月27日は、NATOは、「単なる軍事的
    目標よりも、政治的目標」を攻撃することに決定したと報道した。4月25
    日のワシントンタイムズの報道では、NATOは、「市民生活に直接かか
    わる発電施設や水道システム」を爆撃する計画であると報道した。

NATOのジュネーブ協定違反は、中国大使館を爆撃すると同様、ミロシェビッチ大統領の私邸を爆撃して、彼を暗殺しようとしていたことだ 。

さらにリットマンは述べる。

    「あらゆる手段が軍事力不足で(そして特に外交手段)が使い果たさ
    れたことがはっきり証明されない限り、軍事力の使用が必要だとは言
    えない。」

ランブイエ交渉はリットマンの声明にあまりにも沿わない。ユーゴスラビア政府はすべての政治的合意項目を受け入れた。そして合意の軍事面においても交渉の用意があった。しかしNATO合意の「付帯条項B」が、最終日前のある日、非交渉事項としてユーゴスラビア代表団に提示された。これは事実上NATOがユーゴスラビアを占拠することを意味し、当然受け入れられなかった。しかしユーゴスラビア政府は、さらに軍事的提案に関して交渉する準備があった。このことを証明するために、ユーゴスラビア政府は(1999年2月23日)、セルビア議会決議(1999年3月23日)と同様、ユーゴスラビアは国連指揮下の国際部隊を受け入れると宣言した。しかしNATOはランブイエ合意の軍事部分をすべて従うことを要求した。そしてアメリカ国務省高官によれば、「アメリカは意図的に、セルビアが受け入れがたいさらに高い要求をした。その高官によれば、セルビアは少しの爆撃を受け入れるほど道理をわきまえていた」。キッシンジャー博士は明らかに次のように述べている。

    ランブイエ文書は、セルビアにユーゴスラビア全体にNATO軍駐留を
    認めさせるものであり、それは挑発そのものであり、爆撃を開始する
    口実にすぎないというものだった。ランブイエはあどけないセルビア
    人がとうてい受け入れられない文書である。それはあのような形で
    決して提出すべきでないひどい外交文書であった。    

その上、多くの学者や政治家が、セルビア人を民族浄化や虐殺にかかわった犯人と見なしていた。確かに、セルビア落下傘部隊や取るに足らない犯罪者によってなされた殺人、略奪行為、無垢の市民への仕返しがあった。しかしながらこれらの残虐行為を、ユーゴスラビア政府は支持しておらず、NATOやメディアが報道するようなものとはほど遠いものであった。国連事務総長が1999年3月17日に国連に報告したところでは、コソボの状況は、コソボ解放軍の絶えず執拗な攻撃と、それとは不釣り合い名ユーゴスラビア当局の軍の使用であった。コソボ調査委員会報告は次のように述べている。期間中に・・・

    1999年1月22日と3月22日、NATOによって国連に伝えられたとこでは、
    この期間にすべての死者はセルビア人が27人、コソボアルバニア人が
    30人であった。別の調査ではアルバニア人の死者合計は5ヶ月間
    (1998年10月16日から1999年3月20日まで)で46人であり、1週間に平
    均2人である。対照的に1999年3月25日から6月10日まで11週間の
    NATO戦争では、NATOは1500人の一般市民を殺し、8000人が負傷
    した。これは1週間あたり平均136人の死者であり、戦争前の総死亡
    者数の30倍になる。

NATO介入の前に、双方の側で約10万人の難民がいた。しかし、爆撃が始まった後、この数は急速に80万人以上に拡大した。10万人のセルビア人や、アルバニア人、その他が中央セルビアに移動したことを含めて。ここでの問題は、セルビア人がコソボから彼ら自身の住民を民族的に浄化したということだろうか。真実は簡単で、難民のほとんどが、NATOの爆撃と、コソボ解放軍(KLA)とセルビア勢力の闘いが激化したことによって去って行ったということである。軍司令官であり、元ユーゴスラビアの国連軍の長官サティッシュ・ナビエールが認めるところでは、ユーゴスラビアにコソボを民族浄化する意図はなかったということである。同様に、カリントン卿は次のように断言した。

    NATOがセルビア爆撃によってしたことは、実際コソボのアルバニア
    人をマケドニアやモンテネグロへの流出を引き起こしたと私は思う。
    爆撃が民族浄化を引き起こし、・・・コソボにおけるNATOの行動が
    誤っていた・・・我々がしたことは、事態をさらに悪化させたことだ。

NATO介入前の時期に、OSCE視察団のフランス人メンバーであるジャック・プロドームは、「その間、彼は自由にペック地域を移動できた。彼も彼の同僚も組織的迫害や集団的、又は個人的殺害、住居への放火や退去とされるものは見なかった」と述べた。

また、セルビア人勢力が、「馬蹄作戦」によってアルバニア住民をコソボから浄化する計画をもっていたという報告があったが、それは後にドイツ情報部のプロパガンダであることが判明した。コソボのアルバニア人集団殺害のその他の主張では、アメリカ国務省大使のシェッファーの主張があり、14歳から59歳までの22万5千人のコソボのアルバニア人が不明であったというものだ。またイギリス外務大臣フーンの主張は、100件以上の虐殺で、1万人以上の人々がセルビア勢力によって殺されたというものであった。さらにセルビア勢力が、トレプカの立坑を使って、殺されたアルバニア人の捨て去り、またアルバニア人をかまどで焼いたという主張もあった。

これらすべての主張は、後にFBIやフランス、スペインの法律家によってナンセンスであり、NATOのプロパガンダであるとして退けられた。ウォールストリートジャーナルの報道では、1999年11月までに約2100人の死体が見つかり、これらにはセルビア軍、コソボ解放軍、NATOの爆撃で殺された人々や、自然の原因で死んだ人々も含まれているとされた。実際、最大の集団墓地は、マリセボ野町近くで発見され、コソボ解放軍によって切断された24人のセルビア人や非アルバニア人の死体があった。

最後に、NATOの侵略による人的、経済的、環境的コストは膨大なものであった。コソボを含めたユーゴスラビア連邦での人的損失の全体は、2500人で、そのうち557人の市民が殺され、12500人が負傷した。経済的損失全体は、25億ポンドのNATOの損失で、ユーゴスラビアの荒廃した経済やインフラにとっては300億ドルから1000億ドルの損失であった(。

環境への損失は計り知れない。例えば、NATOの爆撃機は、意図的にパンセボの科学工場群を狙って、約10万トンの高濃度の有毒で発ガン性化学物質や、8トンの水銀を落とし、空気や土壌、そして地下水やダニューブ川を汚染した。ノビ・サッドでNATOは150の石油タンクを破壊し、12万トン以上の石油派生物を流出させた。それは何日にもわたって燃え続け、地下水やダニューブ川に流出させた。クラグジェバックやボールで、NATOは変電所を破壊し、50トン以上の高濃度有毒ダイオキシンを流出させ、広範な地域を汚染した(cited in Djuric, 2005:4)。コソボと南セルビアではいくつかの地域が繰り返し劣化ウラン弾で爆撃された。10トン以上の劣化ウランが、ユーゴスラビアに投下されたという調査もある。スルブリャックの2005年初頭の報告(Djuric, 2005:4)では、肺や骨髄、肝臓、その他の器官のガンを患っている人々の率は、コソボのある地域では2004年の同時期より120倍高いということだ。

全体的に、NATOの「人道的」介入は、決して人道問題についてではなかった。これはユーゴスラビア主権国家に対する不当な侵略であり、宣戦布告なき戦争であり、国連憲章やジュネーブ協定違反であった。NATOの介入は、全住民にさらに大きな苦痛をもたらした。それはユーゴスラビア経済やインフラを破壊したが、同時にユーゴスラビアの環境や周辺諸国を荒廃させた。それはまたコソボのアルバニア人とセルビア人、その他の非アルバニア人との対立を激化させ、共存の可能性を減少させた。このことが証明されたのは、NATOがコソボを占拠し、アルバニア難民やコソボ解放軍がコソボに戻ってきた後、25万人の難民が出国したことでも明かである。それはまた、イスラム過激派の考えが元ユーゴスラビアの他の地域に広がり、サンジャクや南セルビアやマケドニアをさらに不安定化させた。ロシアはまたMATOの行動を警戒するようになり、軍事支出を増大させ、軍拡を再スタートさせた。

NATO侵略の本当の理由はつかみ難い。多くの著者が考えるところでは、この介入は冷戦後のNATOの新たな役割や信頼性を打ち立てることだったと言う。他の著者はこれを経済的拡大と同様、アメリカ帝国主義と覇権主義の結果で、フレミング(1999年)は、「市場をこじ開ける一つの方法として、それを起こしたのだと言う。他の者は又、これは東方に向けたアメリカの戦略的拡大の一部であり、それは共産主義に対する長年の闘いであり、世界におけるロシアの影響力を減少させる試みであるという。ユーゴスラビアは、当時まだヨーロッパで共産主義が支配する唯一の国であり、それ故ロシアの影響下にあったのだ。」

NATO介入がなされたのは、正義のためで、それ故ヨーロッパの中央で人道的大惨事を阻止する試みであったと考える者も確かにいる。しかし、すべての状況に対する彼らの理解は、コソボ解放軍やNATOの巧妙なプロパガンダであり、メディアの錯乱であり、現場の状況を十分理解していないために、ねじ曲げられたものである。

*
(訳注:文中の注や、脚注はすべて省略しました。必要な方は原文を参考にしてください。)

崩壊の瀬戸際にあるヨーロッパ

Europe on the Brink of Collapse?

ピーター・ケーニッヒ

グローバル・リサーチ 2019年1月17日

(翻訳:新見明 2019年2月21日)

<記事原文>https://www.globalresearch.ca/europe-brink-collapse/5665679


帝国のヨーロッパ属国城は、崩れかかっている。我々のすぐ目の前で。しかしだれもそれを見ようとしない。EUは隷属国家の複合企業体だ。トランプはEUを時代遅れだと批判する。トランプは属国が自分をどう思おうと気にかけていない。彼らが崩壊するのは当然だ。彼らEU属国は、28カ国グループからなり、人口は5億人である。推定19兆ドル相当の連合経済で、アメリカとほぼ同程度の経済規模だ。しかし重要な局面では、ほとんどワシントンの命令に従ってきた。


EUはワシントンの命令で、28カ国のEUメンバーに何の危害も加えていないロシアやベネズエラやイラン、そして無数の国々に制裁を加える命令を受け入れてきた。EUは屈辱的なNATOの軍事負担を受け入れてきた。そしてモスクワや北京に向けて高度な軍事基地を作り、ロシアと中国を脅してきた。ブリュッセルの外交政策は、基本的にNATOに引っ張られているのだ。

最初から明らかなことだが、ワシントンの気まぐれなルールに従わないロシアやその他の国々に課されてきたアメリカの制裁は、直接に、又はEUを介してなされるが、ロシア以上にEUに経済的打撃を与えてきた。これは特にいくつかの南ヨーロッパ諸国に当てはまる。南ヨーロッパ諸国の経済は、他のEU諸国よりも、ロシアやユーラシアの貿易に依存してきたのだ。

「制裁」の被害は、実に面倒なことになった。トランプが一方的に(イランとの)「核合意」破棄を決定し、イランとともに、イランと取引する者はだれでも、厳しい制裁を再び課す決定をしたのだ。ヨーロッパの石油・ガス大企業は大損害を被り始めた。その時、ドイツ主導のブリュッセルが、アメリカに従えないと、ブツブツ文句を言い始めた。さらに彼らはヨーロッパ企業を、主に石油・ガス大企業を支援し、彼らがイランと行ってきた契約を続けるとさえ言い始めた。

しかしそれは遅すぎた。ヨーロッパ企業は、ブリュッセルのEU政府の弱々しく、信頼の置けない言葉に自信を失っていた。多くの企業は長期契約を破棄し、そして核合意のあと更新したイランとの契約を破棄した。ワシントンによる処罰を恐れブリュッセルの保護を期待できないためだ。問題は英仏石油大企業トタルで、供給先をイランから、もちろんワシントンが意図したアメリカにではなく、ロシアに変えたが、すでに手遅れだった。属国はゆっくりと自殺の道を歩んでいる。

人々はもううんざりしている。ヨーロッパ人の半分以上が、ブリュッセルの毒牙から抜け出たいと思っている。しかしだれも彼らに要求しない。だれも彼らの言うことをきこうともしない。そして、それが「民主主義」(原文のまま)の中心地なのだ。だから人々は、反乱を起こしていて、至る所で抗議しているのだ。様々な形で抗議行動が起こった。ドイツでも、フランス、イギリス、ベルギー、オランダ、イタリア、ハンガリー、ポーランドでもだ。リストを上げれば切りがない。そしてそれを総称して、新しいフランス革命にちなんで「イエロー・ベスト」と呼ばれているのだ。

一連のアメリカのドイツやドイツ企業への攻撃(ドイツ企業総体への攻撃)の最近のものは、、もし彼らがノルド・ストリーム2を運用するなら、ドイツ企業に制裁を課すというアメリカ大使リチャード・グレネルの最近の脅しである。ノルド・ストリーム2は1,200kmのパイプラインで、ロシアのガスをヨーロッパに運び、2019年末までに完成予定である。それは実質的に、ロシアのヨーロッパへのガス供給能力を2倍にするものだ。それに対してワシントンは、ヨーロッパに、アメリカのシェールガス・石油を買うように求めている。そして特にヨーロッパを、経済的にかつ財政的にアメリカの勢力圏に保つことを狙っている。それはワシントンからの離脱をどうしても避け、明白に、かつ論理的にロシアとの同盟を回避するためだ。この試みは、ひどい失敗に終わるだろう。様々なドイツの大臣が(ハイコ・マース外務大臣を含め)、声だかに決意を込めて、アメリカの覇権的提案に反対している。さて、諸君はワシントンの主人を喜ばせるために懸命の努力をしてきて久しい。もう従属のくびきから解き放たれるときだ。

フランスではこの1月12,13日の週末に、イエロー・ベストが、独裁者マクロンに対して9回目の抗議行動に入った。彼の緊縮政策と、少なからず彼の労働者階級に対する卑劣な傲慢さに対して立ち上がっている。最近のマクロンの公式声明は卑劣な傲慢さを証明している。(仏語より翻訳)
「あまりにも多くのフランス人は、この国が陥っている苦悩を弁明しようとする"努力"を少しもわかっていない。」

イエロー・ベストとフランス人の大多数は、マクロンの退陣しか求めていないのだ。抗議する人々は一貫してフランス内務大臣クリストフ・キャスタネによって過小評価されている。先週末の公式人数は国内5万人のデモであったが、実際の数字は少なくともその3倍はあった。フランスの公式発表はイエロー・ベスト運動は減少していると、フランスの内外で考えられているという。そうではない。逆に彼らはフランス全土でデモを展開している。マクロン体制の暴力的制圧にもかかわらず。

RTの報道では、マクロンの命令で攻撃はさらに暴力的になり、フランス市民の抗議行動を押さえるために軍に鎮圧させている。何千人もが拘束され、何百人もが警官の暴力によって負傷した。それにもかかわらず、運動は大きな民衆の支援を得て、「イエロー・ベスト」の考えはヨーロッパ中に広まっている。この広がりは、もちろん主流メディアではほとんど報道されることはない。

実際、フランス人の80%がイエロー・ベストと彼らの「市民イニシアティブ国民投票」の考えを支持している。その国民投票で、市民は一般大衆の投票によって市民が自らの法律を提案することができるようになっている。RIC(市民イニシアティブ国民投票)は、実質的にフランス議会を回避し、フランス憲法にも書かれるだろう。同様の法律は、1848年以来、スイスでも存在し、スイス市民によって定期的に運用されている。それは直接民主主義の方法で、自分たちを民主主義と呼ぶどの国も、憲法に組み入れなければならない。

イギリスは、混乱状態だ。緊縮財政に反対する人民集会によって組織された何千人かが、ロンドンの通りに出て話している。そして衰えた保守政権を置き換えるため総選挙を要求している。彼らはフランスのジレ・ジョーヌ(イエロー・ベスト)に連帯して闘っている。イギリスの多くの抗議運動もよく目につくイエロー・ベストを着用している。

これは、これまで長く続いき、益々大きくなる「ブレグジット」の大失敗と直接関係している。つまりイエスかノーか、そしてどうやってという点で。この時点で、イギリスの将来がどうなるか誰にもわからない。プロパガンダと反プロパガンダは、人々をさらに混乱させる運命にあり、混乱した人々はたいてい「現状」にしがみつきたくなる。ある欧州議会メンバーによって組織された親「残留」プロパガンダの動きさえある。想像してみよう!主権について話そう。ブリュッセルが、ブリュッセルの命令下で残留したいかどうか、イギリス人に決定させることができないとするなら。

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ああ、イギリス人は大きく別れている。しかしまた、外国のプロパガンダによって揺り動かされた段階は過ぎた。イギリス人の大多数が、2016年6月に、とりわけEU離脱の微妙な問題において明確に決定した。テレサ・メイはブレグジット過程を見事に台無しにした。多くのイギリス人は、彼女が交渉したことは、「交渉なしの離脱」よりもさらに悪いものであると感じている。このことは多分、選挙で選ばれていないEU「指導層」の黙認のもとで起こった。EU指導層は、イギリスに離脱して欲しくないし、ワシントンの厳しい注文のもとで、イギリスにEUにおける重要なアメリカの防波堤の役割を必要としているのだ。

2019年1月15日、イギリス議会は、交渉されたブレグジット状態を受け入れるか、それとも「交渉なしの」ブレグジットを選ぶのか、もしくは「リスボン条約」第5条の下でのさらなる交渉の拡大を要求するのかに関して投票するだろう。(リスボン条約は、公的な投票なしで28カ国国家元首によって導入されたが、それはEU憲法に反する導入である。)他の選択肢は、総選挙であり、そこで新しい指導者を決める。又は法律的に2年後に可能な2回目の国民投票をすることである。後者の場合、厳しい社会不安を引き起こしがちである。すでに、イギリスでしばしば見られたように残虐な警察の圧力によってである。そのような場合、ただ内乱が回避されることを望む。

何週間もわたって、イエロー・ベスト運動はベルギーやオランダに広がった。同様の理由で、緊縮財政、つまりベルギーやオランダの主権に対するEUの独裁に対して大衆の不満があるのだ。先週の土曜日、ベルギーのイエロー・ベスト運動の一人が、トラックにひかれ、殺された。当局はそれを事故として報告した。

ギリシャの場合、主流メディアの報道は、すべて「うすのろ(?)」だ。ギリシャは回復していて、ここ何年かで始めてプラス成長をして、解放された資本市場にも再投資できるようになっていると報じている。ギリシャはもはや、腹立ち紛れの悪名高いトロイカ(欧州銀行、EC委員会、IMF)に依存していないと。しかし現実は全く違っていて、ギリシャ人のほぼ3分の2は、未だ生存レベルかそれ以下の状態をさまよっている。公的健康保険には加入できず、治療も受けられず、公立学校にも行けない。何度も年金を引き下げられ、ほとんどの公共資産や公共サービスはわずかな資金で民営化された。ここ何年か、基本的に何も変わっておらず、少なくとも大多数の人々にとっては良くなっていない。トロイカは国際的にはギリシャのイメージを偽って高めるために、ギリシャの民間資本市場を開放させていて、そして洗脳された民衆に向かっては「うまくいっている、我々トロイカはよくやった」と言うのだ。

何もうまくいっていない。人々は不幸だ。不幸以下だ。彼らは怒っている。彼らはアンゲラ・メルケルの最近のアテネ訪問に対して抗議デモをした。そしてその抗議運動は警官隊によって暴力的に制圧された。これでどんなことが期待できるのか。これがヨーロッパの現状だ。意気地のない属国のかなり抑圧された状態なのだ。

1月16日水曜日、ギリシャ議会はアレクシス・ツィプラス首相に対する信任投票をするかもしれない。公式の表面的理由は、マケドニアの名称に関する論争と考えられるが、その問題は実際、ずっと以前に解決している。真の理由は、果てしない緊縮財政により長期にわたって疲弊しきった大衆の不満である。緊縮財政は、貧困層から最後の1ペニーさえ吸い取るのだ。有名なイギリスの健康ジャーナル「ランセット」によれば、ギリシャの自殺率は急上昇している。だれもそれについて語らない。ツィプラスは、信任投票で生き残れるのか。もし生き残れなかったら、早期に選挙があるのか。ツィプラスの後をだれが引き継ぐのか。「民主主義」という言葉にだまされてはいけない。ギリシャ内外のエリート層は、いかなる政策変更も許さない。その時、人民のジレ・ジョーヌ(イエロー・ベスト)が起こるかもしれない。国内不安。もうたくさんだ。

イタリアでは、五つ星運動と少数派右翼の兄弟レガ・ノルテ(北部同盟)の連立は、レガ(同盟)のマッテオ・サルビニ副首相兼国務大臣によって極右に引っ張られている。サルビニ氏が明らかに取り仕切っている。そして同盟は、ブリュッセルに強く反対しているので、ブリュッセルがイタリア予算にルール違反の罪を課そうと試みている。しかし、その同じルールが、全てのEUメンバー諸国には等しく適用されていない。例えば、マクロンはフランスのロスチャイルドの代理人だが、予算制限に関しては、特権を持っている。サルビニの反ブリュッセル、反EUスタンスは秘密ではない。彼は多くのイタリア人の支援がある。イタリアのイエロー・ベスト運動は無視できない。
 
帝国の属国城は崩れかかっている。それも静かにでさえなく。

それから、旧ソ連衛星国ハンガリーとポーランドが右翼政権に変わった。彼らは、ハンガリーの反移民政策や、ポーランドにおける司法制度整備に関する議論にブリュッセルの介入をありがたく思わない。この国の行動に賛成しようがしまいが、放っておいてくれ。両者のケースは明らかにこれらの国の主権への干渉である。ヨーロッパ司法の強い警告にもかかわらずポーランドは実際、司法改革過程で首になった判事を黙認し、復帰させた。ポーランドのNATOびいきとブリュッセルのNATOの影響力の行使は、ポーランドの決定を逆転させるかもしれない。それにもかかわらず、ハンガリーと同様、ポーランドの一般大衆の不満は強いままである。移民や司法は単なる表面上の口実である。途方もない氷山の一角である。現実はもっともっと深いレベルの問題である。これらの国々はどちらもかつてソ連によって手錠をかけられていたことを思い出させる。「自由」はブリュッセルによって、命令されるものではない。

*

私達が留意しなければならないことは、大中東や西欧世界として知られているものの組織的・意図的な不安定化と破壊の三つの局面である。洗脳された西洋人にとっては、東方、つまりロシアや中国は、同時に厳かに渡り合う挑戦者となっている。いやむしろ、ロシアや中国の軍事力や情報能力について知っている人々にとっては、じっと我慢しながら渡り合う相手である。

破壊を伴った不安定化工作が、三つの局面からなる。まず、中東から始まり、ほとんどの場合、欧米同盟国による無差別殺害によって絶望的なこの世の地獄になる。つまり、帝国の操り人形や外国人傭兵によって、何百万人が殺され、ヨーロッパを不安定化する難民の止めどない洪水となった。それが2番目の局面である。それは真っ最中である。それは私達のすぐ目の前で起きているが、私達はそれがわからない。

それはイエロー・ベストであり、緊縮財政であり、不平等の増加であり、失業であり、公共部門が金融制度のよってゼロにまで搾り取られることである。そして、警官や軍隊によって大衆運動が抑圧されることである。それは人民の惨めな無気力さを反映している。それは街頭での「もうたくさんだ」に通じている。それは全ては必要とされていたことだ。カオスが多ければ多いほどいいのだ。カオスの中の人民は容易にコントロールできるのだ。

ここで第3の局面に移る。ラテンアメリカである。それは既に3・4年前に始まっている。「民主主義」という帝国の毒牙から逃れるため、何十年も苦闘してきた国々が、帝国の裏庭で偽選挙や議会「内」クーデターによって鎮圧されてきた。南端のアルゼンチン、チリ、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイはボリビアを除いてやられてしまった。ベルー、コロンビア、エクアドル、遙か遠くのガイアナまでネオリベラリズム、つまりネオ・ナチに隠れたワシントンの支配者に牛耳られている。しかし、ベネズエラ、キューバ、ニカラグア、そして今はメキシコもまだ屈服していない。そしてこれからも屈服しないだろう。

ティエリー・メイサンは『カリブ海の来たるべき悲惨な破壊』で素晴らしい分析を書いている。ペンタゴンは、ラムズフェルド、セブロスキーの計画遂行を未だにどれほど追求しているのかを見てみよう。今度は「カリブ海諸国」の破壊を狙っている。友人とか政治的敵など考慮していないと、ティエリー・メイサンは見ている。彼は続けて予測する。経済的不安化期間かと軍事的準備期間の後、実際の作戦が、今後始まるだろう。まずベネズエラ攻撃が、ブラジル(イスラエルが支援)、コロンビア(アメリカの同盟国)、そしてガイアナ(言い換えればイギリス)によって行われる。その次にキューバやニカラグアが狙われるだろう。ジョン・ボルトンによればそれらが「暴政のトロイカ」だそうだ。

言えることは、将来この計画がどの程度実行されるかだ。最初からその野望は、崩れゆく帝国の実際の能力を超えている。

*

一つの共通分母となるものを考えると、現在の欧米金融制度が廃されねばならない問題なのである。凶暴な民間銀行である。私達は、野蛮で大破壊を引き起こし、制御不能の金融制度の中に生きている。一連の果てしない貪欲は、どんどん突き進み、堅い鋼鉄の壁にいつぶつかるかもしれない。いつかはぶつかる。それは単に時間の問題だ。詐欺的ピラミッド・システムによって限りなく絞りとられるのにうんざりして、辟易している。それはアメリカとドル支配体制によって打ち立てられている。そしてグローバル化した民間巨大銀行によって維持されている。

私達は、経済発展とは何の関係もない民間銀行システムに生きている。しかし、民間銀行システムは、我々消費者を貪欲に支配して、あらゆるものが私達がコントロールできない借金やお金の形で売られている。私達が重労働によって稼いだお金にもかかわらず。それは私達が経済と呼ぶものに付加価値を加えた事実にもかかわらず。いや、このシステムは完全に個人を尊重しない。それは銀行システムを生きながらえさせる必要があるとき、私達のお金を盗もうとさえする。それは「運用」し、基本的に横領する自由さえある。私達のお金が民間銀行に入ったら、私達はそれを管理できなくなる。そして、いいですか、よく考えてください。民間銀行はあなたや私のためにではなく、株主のためにあるのだ。しかし何百年もの教化を通して、私達はそれに慣らされていて、私達自身のお金を借りるために利息を求められ、何もしないで利益を待つに過ぎない媒介者を通してだ。それが、「当たり前」になったのだ。

それではいけない。このシステムは廃止されなければならない。早ければ早いほどよい。民間銀行は根絶され、地域の公共銀行に置き換えられる必要がある。その地域公共銀行は、地域経済の生産力に基づいた地域通貨で運転される。資源の窃盗を助け、地域社会のセーフティ・ネットを空洞化させるグローバル化概念を取り除き、進歩のための緊縮財政という外観の全てを取り除くのだ。もう私達は、もっとよく知るべきだ。進歩のための緊縮財政はない。あったことも一度もない。この詐欺的IMF-世銀概念は一度も、どこでも機能したことがない。

私達は私達のお金を脱ドル化しなければならない。私達のお金を脱デジタル化しなければならない。そして人々の成長の目的のために公共銀行システムを通じて共同出資しなければならない。現在一つの良い例がある。ノースダコタ銀行[訳注]だ。ノースダコタ銀行は、2008年とそれに続く危機を通して米ノースダコタ州を助けた。経済不況のかわりに経済成長をもたらした。アメリカの他の地域や西欧世界の失業が急上昇したのに対して、ほとんど完全雇用を成し遂げたのだ。私達は、自立した経済を背景に、自立したお金で共通の富を築く必要がある。

帝国とその属国がひどく崩壊しているので、彼らはその基礎からぐらついている。私達が当然で、「正常だ」と思ってきたこと再考すべき時だ。つまり詐欺的ペテンの通貨制度を、何の裏付けもない、経済でもない、金でさえない通貨制度を再考すべき時だ。私達は、全く名目法の紙幣で生活している。民間銀行によるマウス・クリックで作られた名目紙幣だ。そしてそれが我々を負債の奴隷とさせる。

もうたくさんだ。イエロー・ベストは理解した。彼らは詐欺を増殖させ続けるだけの「マクロン」を排除したいのだ。崩壊がだんだん大きくなっているとき、考え直し、再出発するときだ。帝国のヨーロッパ属国は、ばらばらになり、ワシントンや覇権戦争やお金製造機を奈落に落とそう。

*

この記事は元々New Eastern Outlookで発表されたもの。

ピーター・ケーニッヒはエコノミストで地政学アナリストである。彼はまた水資源や環境問題の専門家である。彼は30年以上世銀や世界保健機構(WHO)で環境や水資源分野に関して世界中で働いてきた。彼はアメリカやヨーロッパや南アメリカの大学で講義している。彼はグローバル・リサーチの常連寄稿者である。ICH, RT, Sputnik, PressTV, The 21stCentury, TeleSUR, The Vineyard of The Saker Blog, the New eastern Outlook(NEO), その他インターネットサイトにも寄稿している。彼は『内破:戦争、環境破壊、企業の貪欲に関する経済スリラー:世界の世銀30年の経験と事実に基づいたフィクション』の著者である。彼はまた『世界秩序と革命---抵抗者からのエッセー』の共著者である。彼は「グローバリゼーション研究センター」の研究員である。 


[訳注:ノースダコタ銀行は下記のサイトを参照]
 ROCKWAY EXPRESS
http://rockway.blog.shinobi.jp/%E7%B5%8C%E6%B8%88/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%80%E3%82%B3%E3%82%BF%E5%B7%9E%E3%81%AE%E5%B7%9E%E6%9C%89%E9%8A%80%E8%A1%8C%E3%81%AE%E6%88%90%E5%8A%9F%E4%BE%8B
るいネット
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=238679

ジレ・ジョーヌ(イエロー・ベスト) 2019年:
フランスの民主主義は死んだのか、それとも生きているのか?

Gilets Jaunes in 2019: French Democracy Dead or Alive?

ダイアナ・ジョンストン

グルーバル・リサーチ 2019年1月12日

(翻訳:新見明 2019年1月18日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/gilets-jaunes-2019-french-democracy-dead-alive/5665302



もしくは、埋もれたのか、それとも生き返ったのか?というべきか。なぜならパリの政治、金融、メディアの権力中枢とは無縁の多くの庶民にとって、民主主義は既に死にかけていて、彼らの運動はそれを救うための試みだからだ。かつてマーガレット・サッチャーが「他に代わるものがない」と宣告して以来、欧米経済政策は、金融市場の利益になるようにテクノクラートによって作られている。そしてその利益は庶民にトリクル・ダウンするだろうと主張する。おこぼれは大部分干上がっていて、人々は必要や願いが満たされるかどうかなどと考えるのにうんざりしている。そして願いは「わけありの」エリートによって全く無視されてきた。

エマニュエル・マクロンの新年の国民向け演説は、次のことを完璧に明らかにした。マクロンは、ジレ・ジョーヌ(イエロー・ベスト)抗議運動にわずかなパン粉を投げつけ、説得力がない中傷をした後、強行策をとる決意をしたのだ。

フランスは動乱期に入っている。状況はきわめて複雑だが、これが一体何であるのか把握するのに役立つ点がいくつかある。

方法

イエロー・ベストは、人目を引く目立った場所に集まる。例えばパリのシャンゼリゼや、他の都市の中心街や、小さな町外れの交通量の多い環状交差路などである。伝統的なデモとは違って、パリの行進は非常に緩やかで、自然発生的である。人々はただ歩き、お互いに話している。指導者もいなければ演説もない。

リーダの不在は、この運動につきものである。あらゆる政治家やデモに好意的な政治家でさえ信頼されておらず、だれも新しいリーダーを求めていない。

人々は自分たち自身で集会を組織し、苦情や要求のリストを明らかにする。

ドムレミーから車で30分行ったロレーヌ地方のコメルシ村は、ジャンヌ・ダルクが生まれたところであるが、そこで住民が集まって、彼らの宣言を6人が代わる代わる、節ごとに読んでいる。そんなところから彼らが指導者や特別なスポークスマンを求めていないことがはっきりする。彼らは時々言葉に詰まるが、テレビの語り手のように公衆の前で話すのに慣れていないのだ。コメルシでジレ・ジョーヌの第2アピールは、1月26日、27日の「集会の中の集会」に他の人もコメルシに来るように呼びかけている。



要求

去年の11月17日、イエロー・ベストを着て街頭に最初に出た人々は、表面的にはガソリンやディーゼル税値上げが、フランスの田舎の生活を直撃するものとして反対していた。「世界的都市」を大切にする余り、フランス政府は小さな街や村、そこに住む人々を犠牲にして次々に政策を行ってきた。もう我慢がならない状態だった。運動は急速に根本的問題に移った。つまり生活に関わる問題での人々の発言権だ。一言で言えば民主主義である。

何十年もの間、左派政党も右派政党も、選挙期間のスピーチがどんなものであれ、いったん権力の座につくと「市場」によって命令された政策を追求する。このため人々は全ての党や政治家を信用しなくなり、彼らの要求を聞いてもらえる新しい方法を求めている。

燃料税の問題は、要求項目が多くなるとすぐに忘れられた。運動の評論家は、非常に多くの要求を達成することはきわめて難しいと言う。人々の要求に注意を払っても無駄である。なぜなら愚かな人々は、あらゆる事を求めるからである。そして全くその反対のことを求めることもある。

その異議申し立ては、最も重要な唯一の要求「市民イニシアティブ国民投票(CIR)」として素早く表明された。

国民投票

この要求は運動の良い面を表している。「ねばならない」リストをつくるより、GJ(ジレ・ジョーヌ)は単に人々が選択できるように求めていて、国民投票は選ぶための手段だ。その要求には一定数の署名がいる。選択する国民投票の権利を得るには、多分70万人、あるいはもっと多くの署名者を必要とする。「市民イニシアティブ国民投票(CIR)」の権利はスイス、イタリア、カリフォルニアで存在する。その考えは、よくわかっている専門家はみな恐れる。もし人々が投票するなら、人々はあらゆる種類の愚かな事に投票するだろうと、知識人は身震いして見ている。

マルセーユ短期大学の温厚なエティエンヌ・シュアール先生は、何十年も国民投票を中心に、直接民主主義をどのように組み立てるか考察してきた。イエロー・ベストによってそのときが来た。国民投票は、感情的で即席の決定を避けるために、長い討論と考察の時を持たなければならない。そのような国民投票は、特定の利権によって左右されない、誠実で、独立したメディアを必要とする。法律を作る政治家は国民投票によって表明された国民の意思を尊重することが求められる。このことは全て、人民の憲法制定会議を必要とする。

国民投票はフランスの痛いところで、全てのジレ・ジョーヌ運動の力強い静かに横たわる大義である。2005年シラク大統領は(彼の観点からは愚かにも)、きっと承認されるだろうとEU憲法の批准を国民投票に求めた。政治家階級は、2・3の例外を除いて、全力で訴えた。新憲法の下で、新たな世界権力として繁栄する未来を求めよう。さもなければヨーロッパは第一次、第二次世界大戦に逆戻りしてしまうと。しかし普通の市民は、自主的に勉強する大きな運動を組織した。グループごとに膨大な法律資料に目を通し、それらがどんな意味で、何を意味しているかを解明しようとした。2005年5月29日、フランス人は68%の投票率で、55%が憲法に反対投票をしたのだ。パリだけがかなり賛成投票が上まった。

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3年後国会は、つまり全政党の政治家たちは、同じ内容の条文を実質的に採用することに賛成投票をした。それは2009年にリスボン条約となった。

明確に表明された人民の意思は打撃を受け、多くの者が力を落として政治から離れていくという幻滅を味わった。しかし今、それらが戻ってきたのだ。

暴力
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最初から政府は暴力で対応してきた。運動を暴力的だと非難するため、明らかに暴力行為を誘発するように意図されていた。

警察隊は、ロボットのような装備で、平和的なイエロー・ベストのグループを取り囲み、阻止した。催涙弾の煙で覆われ、フラッシュ・ボールのゴム弾をデモ隊に直接撃ち込み、何百人も怪我をした(公式の数字はない)。大勢が視力を失うか手が動かなくなった。政府はこれについて何も述べていない。

抗議行動の三日目の土曜日、この警察隊はデモを止めることが出来なかった。そして許可された命令のもとでか、大勢の暴力団やブラック・ブロック(不明の黒衣の集団)が運動に侵入して、器物を壊し、店を破壊し、ゴミ箱や駐車した車に火をつけ、世界のメディアにイエロー・ベストは暴力的で危険であるイメージを与えた。

これらのあらゆる挑発にもかかわらず、ジレ・ジョーヌはきわめて冷静で、確固としていた。しかし感情を害し、やり返そうとする人もいないわけではなかった。

ボクサー

8回目の土曜日、1月5日にプレキシガラスで保護された警官が、セーヌ川の橋のジレ・ジョーヌを暴力的に攻撃した。そのとき大柄な男が怒って群衆の中から出てきて、反撃した。彼はげんこつを握り、一人の警官を殴り倒し、他の者を退却させた。この驚くべき場面は撮影されていた。イエロー・ベストは彼を止めようとしたが、「ランボー」は止まらなかった。

これはクリストフ・デティンガーで、フランス系ジプシー、ボクシング元ライト・ヘビー級フランスチャンピオンであることがわかった。彼のニックネームは「マッシーのジプシー」である。彼は現場から消えたが、登場する前にビデオをセットしておいた。彼は警官が女性や他の無防備な人々を攻撃しているのを見て私がとった、「対応はまずかった」と彼は述べた。彼は運動が平和的に進められるように願っていた。


デティンガーは7年の拘留が迫っている。1日以内に彼の弁護資金は116,433ユーロ集まった。政府は拒否した。どんな法的理由かわわからないが。いま彼のための嘆願が回っている。

中傷

マクロンは大晦日のスピーチで、人々を叱った。「あなた方は、少し働いて、たくさん儲けることはできない」。まるで彼らがみな、ヨットでのんびり過ごし、株価が上がったり下がったりするのを眺めて過ごすのにあこがれているかのように言う。

それからマクロンは戦いを宣言した。

「最近、私は考えられないことを見て、受け入れがたいことを聞いた」。明らかに、デモ隊と共鳴しようとする2・3の反対派政治家を指して、「人民のために話している」振りをしていると激しく非難した。「しかし、憎むべき暴徒のスポークスマンは、選ばれた代表、警察、ジャーナリスト、ユダヤ人、外人、そしてホモを追いかけているだけなのだ。それは単なるフランスの否定だ。」

「ジレ・ジョーヌは誰も追いかけない。警察が彼らを追いかけているのだ」と、人々は組織的に運動を歪曲するチャンネルの撮影隊に対して、実に誇らかに声を上げたのだ。

運動からは一言も外国人やホモに反対する声は聞こえてこなかった。

キーワードはユダヤ人

飼い犬をおぼれさせたい人は、その犬が狂犬病だと言って非難する。(フランスの諺)

フランスの諺では「犬をおぼれさせたい人は誰も、犬が狂犬病だと言う」。今日、成功を台無しにしたい人、ライバルに対して仕返しをしたい人、個人の面目を失わせたい人、もしくは運動を破壊したい人は誰でも、彼らは反ユダヤ主義だと言って責めてくる。

だから、民主的運動の高まりに直面し、「反ユダヤ主義」カードを切ることは不可避だった。それはほとんど統計的に確かなことだった。何十万人の不特定多数の中で、ユダヤ人を否定的に言う者が一人や二人いるかもしれない。それはかまわない。タカ派メディアは見張っている。わずかな出来事も、運動の本当の動機がホロコーストの復活にある事を示すために使われる。

この穏やかな反語的な小歌が、フランスのある交差点で演じられ、「よい」体制が「悪い」普通の人と対比されていた。それはYouTubeで大ヒットだった。それは運動の雰囲気をよく醸し出している。「優しい人、意地悪な人---ジレ・ジョーヌ」。



この陽気な人々が、反ユダヤ主義だと責められるのに時間はかからなかった。なぜか。批判が皮肉にも二人の最も有害なジレ・ジョーヌ批判者に向けられたからである。それは68年5月革命世代のダニエル・コーン・ベンディットと、古い「新哲学者」ベルナール=アンリ・レヴィである。新たな世代は、彼らに我慢ならない。しかし待て、彼らはたまたまユダヤ人だ。ああ!反ユダヤ主義だ!

抑圧

政府スポークスマン、ベンジャミン・グリボーが、「政府転覆」を望む者たちを「扇動者」とか「暴徒」と描いたが、そのデモに対決するため、エドアルド・フリップ首相は、デモの権利をうまく「保護する」新たな法律を公表した。その主要な方策とは、時間や場所の公式許可を得ないデモの組織者を厳しく罰することである。

事実警察は既に、33歳のトラック運転手エリック・ドルエを、運動の被害者を弔う小さなキャンドルセレモニーを開いたことで逮捕した。その他に情報が得られない逮捕がたくさんいる(ついでながら、祝日にわたって、いくつかの都市の周辺のチンピラたちが、駐車した車を燃やす儀式を行った。特別な公表とか弾圧があったわけではなく。それらは労働者階級の人々が仕事に行くために必要な車だった。パリの富裕層の高価な車が破壊されて反感のタネをまいたわけではなかった。)

1月7日、「哲学者」で元青年・教育・研究大臣のリュック・フェリーは、とても上品ぶったラジオ・クラシックでインタビューをされた。彼は宣言した。「警察はこの暴力を終わらせる事が出来ない。それは耐えがたいことだ。聞いてくれ。奴らがかわいそうな倒れた警官を蹴っているのを見るなんて、もうたくさんだ!今回だけでも警察に武器を使わせてくれ。もうたくさんだ!・・・思い起こせば、我々は世界第4位の軍隊をもっている。このくだらないことを終わらせることが出来るんだ」と。

フェリーは、「改革」を推し進めるためにマクロンに共和党と連立を組むように呼びかけた。

先月、「市民イニシアティブ国民投票」に反対するコラムで、フェリーは書いた。「現在の専門家に対する非難やエリート主義に対する批判は、この時代の最悪の惨事である」と。

アンティファ

アンティファ・グループは、人々が集まるところはどこでも、「ファシスト」を根絶するために無差別の捜索するかもしれない。先週の土曜日ボルドーで、イエロー・ベストはアンティファによる攻撃と闘わなければならなかった。

今はっきりしたことは(実にいつもそうだが)、自称「反ファシスト」が現状の番犬である事だ。彼らのたゆみない「ファシスト」探しで、アンティファは動く者は何でも攻撃する。結局、彼らは不況を守っているのだ。そして奇妙なことに、アンティファの暴力は、黙認されているのだ。より平和的なデモ隊を侮辱し、攻撃し、逮捕する国家や警察によって。

メディア

疑ってかかれ。少なくともフランスでは、主流メディアはしっかりと「秩序」の側、つまりマクロン側にある。そして外国メディアは、国家メディアが書いたり言うことを反復しがちである。また一般的に、フランスの場合、英語メディアはしばしば正しく理解していない。

終わりに

まだよくわからない。これが革命ではないかもしれないが、運動は「体制」の本質を暴露した。権力は、「市場」に奉仕するテクノクラートの手にある。つまり金融資本の権力である。このテクノクラート社会は人間社会を再編することを願っている。それは我々自身の社会や全地球の人々を、資本主義の利益に奉仕させることを願っている。それは「グローバリゼイション」計画で、経済制裁や、圧倒的なプロパガンダや、軍隊(NATO)を使う。それは人々の同意なしで、人々の生活を方向づける。マクロンはこの体制の体現者である。彼は、有名なエリートによって選ばれて、EUに押しつけられた「市場経済」に指示された方策を実行する。マクロンは諦めることができない。しかし人々はいま進行していることに目覚めた。彼らはやめないだろう。どれほど学校システムが劣化しようと、フランス人は今日よく教育され、人々があるべき合理性を持っている。もし彼らが民主主義を勝ち得ないなら、民主主義は不可能である。

続く・・・

*

ダイアナ・ジョンストンは『愚か者の十字軍: ユーゴスラビア、NATO、西欧の幻想』の著者である。彼女の新著は『カオスの女王、ヒラリー・クリントンの不運』である。『ダイアナ・ジョンストンの父ポール・H・ジョンストンの思い出「MADから狂気まで」』は、彼女のコメント付きでクラリティ・プレスから出版された。彼女の連絡先はdiana.johnstone@wanadoo.fr.  ダイアナ・ジョンストンはグローバライゼイション研究センターの研究員である。

フランスの「黄色いベスト運動」は全EU諸国労働者の勝利

France's Yellow Vest movement strikes a victory for working people across the EU

ジョン・ワイト

RT Op-ed 2018年12月5日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年1月11日)

<記事原文>(寺島先生推薦)
https://www.rt.com/op-ed/445661-yellow-vest-victory-working-class/



ジョン・ワイトは様々な新聞やウェブサイトに寄稿している。その中には、the Independent, Morning Star, Huffington Post, Counterpunch, London Progressive Journal, and Foreign Policy Journalなどがある。 
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© AFP / Abdulmonam EASSA

フランスの「黄色いベスト運動」はどこからともなく噴出したように見えるかもしれないが、この成果に至るまでには時間がかかっている

カール・マルクスは言った。「人間は自分自身の歴史をつくる。 しかし、それは人間の自由意志からではない。 自分で選んだ環境のもとではなく、すぐ目の前にある、与えられ、維持されてきた環境の下でつくるのである。」  

そして、ここ数週間、「黄色いベスト」を着て抗議に立ち上がり、パリの中心部を占拠している数千人もの人たちが、更にはフランス国内の数百万もの普通の労働者も含めて、この間ずっと対決し続けているのは、破綻し、機能しなくなった新自由主義経済モデルがもたらしている深刻な現実に対してである。 それに輪を掛けて事態を悪化させているのが、フランス大統領エマヌエル・マクロンを中心とする新自由主義経済推進者たちの動きだ。 彼らは新自由主義の名で粉飾された、深刻で悲惨な現実(ディストピア)に人々が覚醒しないようにしているのだ。

フランス政府が燃料税の提案を保留する決定を下したことは、フランス国民の勝利だった。 人間の尊厳を保った生活の質を求める権利のために戦い、争うのはフランス国民の数世紀に及ぶ長い伝統なのだ。 

マクロンが、自分の信奉する新自由主義の神の言いなりに、国民を無視する態度は尋常ではなかった。 そんなマクロンを実力行使で譲歩させた黄色いベスト運動は、全EU諸国の労働者に大きな貢献をすることになった。 つまり、不正を前にされるがままというのは、更なる不正を招き寄せるということにしかならない、ということを思い起こさせたのである。  

マクロンは当初、譲歩は認めない(つまり、彼は以前しっかり譲歩をしていたことになる)という「ケーキを食べさせておけばいい」的なトンチンカンな大言壮語を身の程知らずにも国民に対して言明していた。 つまり、「燃料の価格が上がることに不満を言う人間は、汚染や子どもたちが苦しむ現状に不満を言う人間と何ら変わらない」と。どう転んでも、マクロンは自ら大統領職を辞任するか、次の大統領選で国民の審判を仰ぐかのいずれかだ。 

明々白々なのは、上位100の会社や企業だけで世界の71%の排出に責任があるという事実に、現在のエリゼ宮(大統領府)の占
拠者たちは良心の咎めをあまり感じていないらしい、ということである。マクロンは、経営者や富裕層の減税、そして年金削減と所得最底辺層の福祉削減などの施策を最近続けざまに行い、そういった会社や企業の気まぐれな関心に熱心に奉仕している。

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‘Out of touch’: Protesting French people want to be heard – but gov't does not listen


更に、そういった会社や企業に巨額な恩恵的資金が制度的に流れ込み、世界の一流銀行や金融機関が優遇されていると言われている。他でもない、2008年の世界的金融危機と世界規模の不況を引き起こした張本人は銀行だった。このことは、一転して、金融危機には責任のない庶民が、緊縮財政という形での経済的戦争に直面させられる事態となった。 

上に述べた汚点を明らかにすることでしか、体制側のメディアが執拗に吐き出す新自由主義的なプロパンガンダの霧の中を切り進む道はない。 メディアそのものが問題に取り込まれた存在と見られるようになってからだいぶ時間が経っている。 メディアの元々の役割は富裕権力層のお抱えではなく、労働者の顔に降りかかった塵を払うことだったはずだ。 

マクロンは、自分を世界の舞台で闊歩する巨像のように思っているかもしれない。しかし、彼以外の人間には安っぽいナポレオンにしか見えない。そんな人物が欧州軍を話題にする様子は、新自由主義が年月をかけてこしらえ、誕生させた政治家の典型の姿にすぎない。 現在の危機に至る前にも、彼の支持率は地を這うほど低かった。それでも、同じように贅沢な他の指導者たちと変わらず、現実世界には無頓着なだけなのだが、それを何故か強力な指導力と思ってしまうのだ。

そういったことは、実際のところ、問題のはぐらかしにしかなっていない。 つまり、他とは隔絶された西側の新自由主義支配層に寄生する輩が、自分たちに甚大な損害をもたらす経済的独裁の帰結に、一体、いつ目覚めるのかという問題だ。 もっとも、そんなことがあるとすれば、の話だが。

ここイギリスではトニー・ブレアが「反ブレグジット(=反EU離脱)」運動の事実上のリーダーとして担ぎ出されるという許しがたい光景が展開している。 中東に石油とマッチを持ち込んだ人間が、しかもこの国のブレグジット運動の中心ではハエほどの重さしか持たない人間が、金ぴかの豪邸とテレビ局を往復する車のお抱え運転手に指示を出す以上のことができる、と信じる人がいるということがびっくりだ。

アメリカに目を向けてみよう。 政治的には死んだはずのヒラリー・クリントンの棺桶の蓋がこじ開けられた。 犯人は現実を理解していないワシントンのリベラル派の体制である。 2016年の選挙でトランプが当選した後、地球を離れ、今でも宇宙のどこかで漂っているはずの連中だ。

トランプは、クリントンやオバマが長い年月アメリカ国民の食卓に提供してきたものを政治的受け継いでいる、という事実をアメリカのリベラル派が直視しないことは破局的な事態だ。 トランプが通常のビジネスをいやいや妨害するという話ではない。 自由の国アメリカで大麻の合法化に未だ反対する強力な議論が存在するのと同レベルの話だ。  

ドイツ西部の町トリーアが生んだ聖人カール・マルクスに話を戻す。 次の一節は19世紀の古典である『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』で、21世紀の各国政府が資本という神を祀る祭壇に額づく現実を詳細なテクニカラー版で描き出している。

「ボナパルト(=マクロン)はすべての階級に恩恵を施す長老として登場したいと思っている。 だが彼が一つの階級に恩恵を与えるには、もう一つの階級からむしり取ってこなければならない。」

黄色いベスト運動は、むしり取られるだけのフランスの労働者階級の時代が過ぎ去ったことを知らしめた。

一方、緊縮財政が大虐殺の大半を引き起こしてきたヨーロッパのこの国、つまりイギリスのことになると、フランスの運動に呼応して「黄色いベスト運動」に応えようとするものが何もない。 そんなところを見ると「フランスではエリートは人民を恐れるが、イギリスでは人民がエリートを恐れる」という古い諺が真実性を帯びてくる。 

2010年に保守党が権力を握って以来、イギリスの国中で、新自由主義支配層によってその腸(はらわた)がくり抜かれ、首には鉄環を巻き付けられたようになってしまった地域社会において、フランスの蜂起に呼応して聞こえてくるのは、今のところ飢えた子どもたちの腹鳴だけだ。 2018年には400万人以上の子どもたちが飢えているというデータがある。

さて、いくらイギリスが覚醒しにくいライオンだとしても、いつかは目を覚ます必要がある。 イギリスが覚醒したら、さて?

フランスの反対派は、マクロンのイエロー・ベストへの譲歩を拒否する。「市民革命」を求める声も

French opposition rejects Macron’s concessions to Yellow Vests, some demand ‘citizen revolution’

RT Home/World News/  2018年12月11日

(翻訳: 新見 明 2018年12月16日)
<記事原文>
https://www.rt.com/news/446122-macron-concessions-yellow-vests-reactions/

© Reuters / Philippe Wojazer

マクロンのイエロー・ベストへの譲歩は、抗議運動や反対派政治家をなだめるのに失敗した。例えば、(左翼党共同党首の)ジャン・ルュック・メランションは、富の公平な分配が達成されるまで「市民革命」を継続するべきだと訴えた。

フランス大統領マクロンがイエロー・ベスト運動メンバーによる大規模な抗議行動に応えて、「社会・経済的非常事態」を宣言し、国民の苦境に取り組むため大幅な譲歩を約束したすぐ後に、左翼反対派政治家のメランションは、次の土曜日に革命を継続すべく草の根運動を呼びかけた。

我が国の市民革命の第5段階が大動員の要素となると思う。

最低賃金100ユーロ増加、時間外手当の非課税、年末手当のマクロンの約束はフランス国民の「かなりの部分」には何の影響ももたらさないだろう、とメランションは言った。
しかしLa France Insoumise(不服従のフランス)は強調した。立ち上がるかどうかの「決定」は、行動している人々次第である。

「私達は本当の富の再分配を求めている」と元大統領候補でMouvement Generation(青年社会主義者運動)の創設者であるブノワ・アモンはBFMテレビに語り、マクロンのお金持ちを利する一連の政策を非難した。


社会党第一書記のオリビエ・フォーレも、戦う労働者に対するマクロンの譲歩を、彼は全般的路線を変化させることはないと批判した。

国民連合(旧国民戦線)党首マリーヌ・ル・ペンは、一定の税制改革を歓迎しながらも、大統領の統治「モデル」が「野蛮なグローバリゼーション、金融経済化、不公平な競争主義」に基づいており、イエロー・ベスト運動の社会的・文化的影響に取り組むのに失敗したと批判した。

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マクロンはフランスの「経済非常事態」を告げ、小さなサラリー増加を約束する(RT com ビデオ)


「立ち上がれフランス」議長ニコラ・デュポン=エニャンは、マクロンのスピーチは「大きな茶番」であったと、フランス大統領の「偽善」を非難した。

しかし多くの者は、「不合理な政府に対して立ち上がれ」というメランションの呼びかけが、67歳の反対派政治家が「楽天主義」とか「ポピュリスト」であると非難し、社会的抗議運動を自分のためにハイジャックしようとしていると見ていた。

さらに約54%のフランス人が、イエロー・ベスト運動は彼らの目標を達成し、そして運動をやめたいと思っている、とオピニオン・ウェイの調査は示している。調査回答者の半数がマクロンの反危機政策は疑問があると考えているが、別の49%は大統領は抗議参加者の要求に取り組むのに成功していると見ている。月曜日のマクロンのスピーチの後、回答者の約68%は特に最低賃金の増加を歓迎し、78%が減税を評価した。

先月の年金削減や燃料税増税に対するイエロー・ベスト運動は、ソーシャル・メディアを通して組織され拡大した。それはフランスの強力な労働組合や公式の政党の支援なしで広まった。そのような社会のあらゆるレベルからの大衆動員が、政府から予期せぬ譲歩を引き出した。それは組合が過去30年以上にわたって失敗してきたことだ、と述べる者もあった。

ジュリアン・アサンジ、近日中にエクアドル大使館から強制退去か?―グレン・グリーンウォルドの報告

Ecuador's president to hand Assange over to UK during London visit – Greenwald
Published time: 21 Jul, 2018 22:57
Edited time: 23 Jul, 2018 09:44
<記事原文>https://www.rt.com/news/433783-wikileaks-assange-ecuador-uk/
(翻訳:大手山茂 2018.7.24 編集:岩間龍男2018.7.30)    

FILE PHOTO © Pete Maclaine / Global Look Press

エクアドルのレーニン・モレノ大統領は、イギリス当局と近々合意をまとめて(すでに合意した可能性もある)、ウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジの亡命保護措置を解除することになると、グレン・グリーンウォルドが報告している。

モレノ大統領のイギリス訪問は、7月22日から28日にかけてのヨーロッパ歴訪の一環だ。彼の訪問は公式なものではないと言われており、イギリス政府高官と会うことはない。 その代わり、イギリス政府が共催する「世界障害者サミット」(7月24日)には参加することにはなるだろう。

しかし予測されていることは、モレノ大統領がこのイギリス訪問を利用して、「エクアドルがジュリアン・アサンジの亡命保護措置から手を引く合意をまとめること」だと、「インターセプト」の共同編集者であるグレン・グリーンワルドが報告している。グリーンウォルドは、エドワード・スノーデンがリークした機密文書を基に、アメリカの監視プログラムの詳細を真摯に報道し続けるジャーナリストとして世界中に知られている。グリーンウォルドは長年ウィキリークスに対しても、また彼のブログに情報を寄せてくれる数々の内部告発者たちにも支援と弁護活動をしてきた。                                                  

     Ecuador to hand over Assange to UK ‘in coming weeks or days,’ own sources tell RT's editor-in chief
モレノ大統領は「この合意をまとめるまで(その手続きが完了していないにしても)あと一歩の所にいる」とグリーンウォルドは書いている。そのニュースソースは匿名だが「エクアドル外務省と大統領官邸に近い情報提供者」からのものだとしている。さらに「この合意の下、ウィキリークス創始者ジュリアン・アサンジはロンドンのエクアドル大使館から退去を強制され、イギリス当局に身柄を引き渡される可能性がある、それも早ければ今週中にも」とグリーンウォルドのレポートは続く。

グリーンウォルドのレポートに先立って、RTの編集長であるマルガリータ・シモニャンは、彼女自身のニュースソースを引用、エクアドルがアサンジをイギリスに引き渡す準備が「ここ数週間、あるいは数日中」に整うと語っていた。グリーン・ウォルドによれば、そのような進展によって、アサンジは「最善のシナリオ」でも少なくともあと一年投獄されることになるだろう。これが意味していることは、「なんらかの罪で告訴されたり、まして有罪判決も受けていないのに」、アサンジが10年近く拘禁されてきたことになるということだ。

スウェーデン政府はアサンジのレイプ疑惑調査を2017年5月には取り下げていたので、アサンジがイギリス国内で現在直面している唯一の刑事訴訟案件は、「不出頭」に対して出されている2012年の逮捕状が未執行になっている件だけだ。それは、アサンジがイギリスでの保釈条件に従わず、エクアドルから亡命を認められ、ロンドンのエクアドル大使館に逃げ込んだことだ。

こういった違反にたいする刑期は3ヶ月だとグリーンウォルドは語っている。しかしイギリス当局がアサンジに対する罪名を「法定侮辱罪」に内々引き上げる可能性を心配している。そうなれば刑期は最大2年まで延びる。さらにイギリス当局がアサンジの身柄をアメリカに引き渡さないという保証を与えることはまず考えられない。アメリカはアサンジを秘密文書漏洩で刑務所送りにしようと待ち構えていることを隠そうともしていない。

機密文書の公表は専門的に見ればアメリカに在住する何人にも適用される犯罪である。しかし司法省の官僚達はこれまでその罪状で訴追することにあまり乗り気ではなかった。そのような事案は、逆に自分達が報道の自由、つまり憲法修正第1条「言論の自由」条項に違反していると告発される可能性を心配したからだ。

しかしトランプ政権はそのような心配はまったくないと表向き言明している。 マイク・ポンペオがCIA長官在任中に語った言葉:

    「(ウィキリークスは)憲法修正第1条が正義の盾になっているとみなしている
    ようだ。 ・・・・ 彼らはそう信じてきたが、どうやらそれは間違っている。」

ジュリアン・アサンジの迫害は、西欧的価値がもはや存在しないことの証明だ

The Persecution of Julian Assange Proves that Western Values No Longer Exist

ポール・クレーグ・ロバーツ博士
グローバル・リサーチ 2018年6月24日


西欧は、決して「民主的価値」について語ることをやめない。西欧の政治的論理では、民主主義が機能するのは、言論の自由と報道の自由によってである。市民とメディアは、しっかり発言することによって、政府に説明責任を果たさせることだ。

このリベラルな伝統とは、ある「犠牲者団体」と指定された者が、傷つけられたと訴えることができるからと言って、使えない言葉や用語がないことを意味する。政治的矯正と銘打ってなされる言論の自由への侵害は、今や大学や公立学校システムやグーグルのようなアメリカ企業やアメリカ人の文化適応習慣に制度化されていて、言論の自由の衰退を示している。政府も「テロ戦争」で、令状なしのスパイ活動や大量の監視や反対派への取り締まりを正当化して、言論の自由を侵害した。

報道の自由は、言論の自由よりもさらに劇的に衰退した。ペンタゴン・ペーパーのニューヨークタイムズが消え去ったのは第1期ジョージ・W・ブッシュ政権の時で、ブッシュ政権が令状なしのスパイ活動をしているという話を、新聞が握りつぶした時だった。ニューヨークタイムズは1年間その話を握りつぶし、ブッシュが難なく再選を果たし、政府にスパイ活動を既成事実として合法化する時間を与えた。

(さらに読む)「ウラジミール・プーチンは正直に語る。『世界を戦争へと導く』西欧の政治的嘘とは好対照」
https://www.globalresearch.ca/vladimir-putin-speaks-honestly-refreshing-contrast-to-western-political-liars-who-drive-the-world-to-war/5486141?utm_campaign=magnet&utm_source=article_page&utm_medium=related_articles
今日メディアはロシアやトランプを悪魔化し、ワシントンやその属国の戦争犯罪を正当化する宣伝省だ。

だから、ロンドンのエクアドル大使館にジュリアン・アサンジを6年間監禁していることにメディアは何の騒ぎも起こさないのだ。

ウィキリークスはニュース組織であり、他の自由報道となんら変わるところがない。ジュリアン・アサンジはオーストラリアとエクアドルの市民だ。彼はアメリカ人ではない。だから反逆罪は当たらない。しかし、ワシントンは彼に対してそのような事件をでっち上げるために、陪審を使ったと考えられる。

エクアドルの新大統領は、前任者ほど強力でも、善人でもない。モレノはワシントンの圧力でエクアドル大使館の生活をできるだけ耐えがたいものにしている。イギリス政府はアサンジを引き出して、イギリスの手に取り戻そうとしている。イギリス政府は、ワシントンの圧力に応えて、彼の保護施設を認めず、彼が大使館から離れることを阻止している。

この事件に「民主的価値」は存在しない。それはミンツェンティ枢機卿に対するソ連の扱いと同じである。自由を踏みにじっているのはモスクワではなくワシントンなのだ。

オーストラリア政府は他の全ての属国と同様、ワシントンに従ってアサンジ救出に何もしていない。ワシントンの利益を法や市民の利益より優先しているのだ。

今週オーストラリアでアサンジを支援して抗議行動が行われた。しかし西欧政府は今のところ市民の行動を無視している。革命とはほど遠いものが、西欧政府に説明責任を回復させることはあり得ないことを示している。

「西欧民主主義」は矛盾語法となった。マイクヘッドのこの記事は、西欧エリートが言論の自由や報道の自由や真実や市民的権利を軽蔑していることを示している。

*

この記事は元々ポール・クレイグ・ロバーツ政治経済研究所で発表されたもの。

ポール・クレイグ・ロバーツ博士はグローバル・リサーチの常連寄稿者である。
(翻訳:新見 明)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/the-persecution-of-julian-assange-proves-that-western-values-no-longer-exist/5645184
<新見コメント>--------------------------
ポール・クレイグ・ロバーツの「ジュリアン・アサンジの迫害は西欧的価値がもはや存在しないことの証明だ」をアップしました。

前回RT記事「ジュリアン・アサンジの救出に動く人気女優 」をブログに掲載しましたが、今回のPCRの記事はジュリアン・アサンジの状況をさらに詳しく論じたものとして重要なので翻訳しました。
    http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-47.html

エクアドル新大統領モレノがワシントンの圧力に屈していること、アサンジの出身国オーストラリは救出に何もしていないこと、そしてアメリカ人ではないのにアメリカで反逆罪が訴えられていることなど矛盾に満ちた状況が書かれています。

アサンジの窮状に対して西欧のメディアが何も伝えない。西欧の言論の自由や報道の自由が衰退していることを訴えている。

ポートン・ダウンの科学者は確認できず:スクリパル事件で使われた神経剤がロシアで作られたかどうか

RT Business News
 2018年4月3日



画像/Global Look Press

イギリスの科学者達は、ロシアが神経剤A-234(「ノビチョク」とも)を作ったかどうか証明できなかった。そのノビチョクは、セルゲイ・スクリパルとユリア・スクリパルをソールズベリーで毒殺するために使われたとされている。

モスクワが、その攻撃には無関係だと主張した数週間後、高度秘密陸軍基地ポートン・ダウンの科学者達は、そのサンプルをロシアと結びつけることができないとした。しかしテレサ・メイ政府は繰り返しクレムリンを非難し、ロシアに制裁を課した。それには外交官23人の追放が含まれている。



ポートン・ダウンの防衛科学技術研究所(DSTL)所長ゲーリー・アイケンヘッドはスカイニュースに語った。「我々はそれがノビチョクであることを確認できた。それは軍用レベルの神経剤であった。」

「我々は正確な出所を確認できなかったが、科学的情報を政府に提出した。そして政府は結論を出すために、他の多くの資料をそのとき利用した。」

二重スパイのセルゲイ・スクリパルズと33歳の彼の娘は、3月4日ウィルシアの公園のベンチで倒れているのを発見された。

ダウニング街(イギリス政府)は直ちにロシアを非難し、多くの厳しい制裁リストを挙げた。最も厳しいものは30年にも及ぶ。ヨーロッパ諸国はイギリスに説得されて、外交官を追放し、彼らをモスクワに帰還させるように求められた。

今、科学者達はロシアとの関連を確定できないと言っている、とアイトケンヘッドは付け加えた。「この特殊な神経剤が何であるかという科学的証拠を与えるのが我々の仕事であり、それが特殊な族(ノビチク)であり、軍事用であることを確認した。しかしそれがどこで作られたかを述べることは我々の仕事ではない。」

ノビチョクの解毒剤はわかっておらず、二人のスクリパルに誰が投与したのかはわからないと、アイトケンヘッドは述べた。その物質は「きわめて複雑な方法で作り出され、国家レベルの能力で可能なものである」と彼は示唆した。

OPCW(化学兵器禁止機構)は、ロシアの要請で委員会が午前中にハーグで開かれたと述べた。

(さらに読む:ロシアはスクリパル事件でOPCWに13の質問をした)

ロンドンのロシア大使、アレクサンダー・ヤコベンコは、ロシアは情報を知らされていないと繰り返し述べた。

ロシアは、テストできるようにサンプルを求め、調査が許されるべきだと主張した。しかしヤコベンコによれば、大使はイギリスの報道を通じた情報しか得られていないと述べた。

<記事原文>
https://www.rt.com/uk/423075-porton-down-skripal-proof/

フランス大統領選挙の主要問題: 国家主権とフランスの未来

ダイアナ・ジョンストン(グローバルリサーチ2017.4.21)

2017年フランス大統領選挙はヨーロッパの政治状況に重大な変化をもたらしている。従来の左翼右翼の対立から、欧州連合(EU)というグローバリズムと国家主権との間の対立へと転換してきている。
続きを読む(http://blog-imgs-106.fc2.com/t/m/m/tmmethod/20170624192427e9f.htm)

GLEXITへの行進ーグローバリゼーショからの離脱

http://blog-imgs-102.fc2.com/t/m/m/tmmethod/201703300009146f4.htm

スーザン・ジョージ:TTIPと新たなヨーロッパの運動

http://blog-imgs-102.fc2.com/t/m/m/tmmethod/20170330000954b52.htm

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