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米国、旧ソ連共和国のアルメニアに介入:生物研究所に多額資金を投入しているCIA代行組織USAIDを使って

<記事原文 寺島先生推薦>
‘CIA Cutouts’, Big Money Grants and Biolabs: The Depth of US Interference in Armenia
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年9月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月12日



アルメニアの首都エレバンのUSAID(米国国際開発局)のサマンサ・パワー長官(左)と面会するアルメニアのニコル・パシニャン首相。2023年9月25日 © AP / Tigran Mehrabyan


米国政府は何百万ドルものお金をコーカサス地方にあるこの国につぎ込んできたが、この国はロシアと同盟条約を結んでいる国だ。



 ナゴルノ・カラバフでの停戦から数日以内に、米国国際開発庁(USAID)のサマンサ・パワー長官がエレバンに到着し、「アルメニアの主権を支持する」ことを約束した。RT は、USAID が親西側の首相の援助を受けてどのようにこの国を再建しようとしているかを検証する。


これまでのいきさつは?

 アゼルバイジャン軍による軍事的猛攻撃に直面した、紛争が生じたナゴルノ・カラバフ州のアルメニア人指導部は先週、武器を放棄し、この領土がアゼルバイジャンに編入されることを認めることに同意した。アルメニアのニコル・パシャニン首相は、アゼルバイジャンの攻撃を阻止できなかったとしてロシアの平和維持軍を非難したが、同首相はすでにこの領土をアゼルバイジャンのものと認識しており、伝統的な同盟国であったロシアから距離を置き、米国に取り入ろうと、米軍と合同軍事演習をおこなったり、ウクライナに援助金を送ったりしている。


USAIDは何をしているのか?

 パワー長官と米国国務省のヨーロッパ・ユーラシア問題担当次官補代理のユーリ・キム氏が月曜日(9月26日)にエレバンを訪問した。国務省の記者発表によると、今回の訪問の目的は、「アルメニアの主権、独立、領土の確保、民主主義に対する米国の支持を確認し、最近のナゴルノ・カラバフでの紛争に起因する人道的問題への対応を支援する」ことだという。

 USAIDのウェブサイトには、昨年USAIDはアルメニアに3370万ドル(約50億円)を支出しており、この金額のほぼ半分は政府および市民社会の取り組みに向けられた、と記載されている。USAIDによると、同組織の目的は、アルメニアを「より包括的で民主主義的で経済的に弾力性のある社会に戦略的に移行させる」ことにある、という。USAIDは米国政府が民間を通して外国支援をおこなう主要な組織である。年間予算が300億ドル(約4兆5000億円)に達するこの組織は、世界100カ国以上で活動している。USAIDの使命は、発展途上諸国に食物や薬品を提供することとされているが、危険な生物学研究に資金提供をしていることについて批判を受けてきており、ロバート・F.ケネディ・ジュニア次期大統領候補からは、「CIAの代行機関」と評されている。USAIDは現在、旅行業者や災害対策業者、広報活動計画をアルメニアで模索中だ。しかし既に米国政府の別の諸機関が何百万ドルも投資し、アルメニア政府や市民社会を米国の意に沿う形で再建しようとしている。


米国の影響

  米国政府の関連サイトによると、現在、国務省は、弁護士を雇いアルメニアの労働諸法の改正を計画しており、150万ドル(約2億2000万円)を投じ汚職を禁じる施策を取り、銃器を用いた演習を架空におこなう装置をアルメニア警察のために購入する、という。この演習装置については、パシニャン首相が、抗議活動者らに対して「強く出る」ために使用する、と誓約している。

 すでに国務省はUSAIDとEU、英国が資金提供したシンクタンク(政策立案所)に3万ドル(約450万円)を支払っており、その目的を「アルメニアでの情報操作工作や政府に対する中傷行為を暴くため」とし、さらにアルメニアの報道関係者らに「喧伝行為」に対応する訓練に必要な資金も提供している。くわえて7万ドル(約1000万円)が投じられ、アルメニアのテレビで米国報道機関が流され、2万5000ドル(約370万円)が「LGBT支援」計画に当てられている。また国防総省も現在、アルメニア国内に「生物学的脅威を減じるための」施設の建築を求めている。国防総省によるこの施設についての説明は不明瞭であるが、 ロシアは、米国がウクライナ国内にある同じような施設を使って生物兵器の研究や製造をしてきた、として非難している。


ロシアの対応

 アルメニアは元ソ連国内の共和国であり、集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国だ。この機構は、ロシアが主導する防衛同盟であり、おおざっばに言えばNATOと似た機構だ。 ロシア外相は月曜日(9月27日)、パシニャン首相は西側に視線を向けるという「大きな間違いをおかしている」と警告し、 ロシアとアルメニアには、「安全保障面、開発面において多くの共通の利益がある」が、米国がアルメニアに関心を示しているのは、「ロシアに戦略的な損害を与え」、「ユーラシア地域を弱体化」させるためだけだ、と断じた。

(この記事の初出はRT)



 サマンサ・パワー長官とユーリ・キム次官補代理がアルメニアを訪問した目的は、 ナゴルノ・カラバフ地域からアルメニア人を移動させることを見届け、首相退陣を求める市民による抗議活動に直面しているパシニャン首相を救うためだ!



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フランスで『トコジラミ緊急宣言』が発令される

<記事原文 寺島先生推薦>
French authorities acknowledge bedbug ‘emergency’
パリ五輪が迫る中、フランスが長年抱えてきた虫問題がさらなる大問題になりつつある
出典:RT  2023年9月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月11日



資料写真 © Global Look Press / H. Duty



 フランス政府は来週、公共交通機関において蔓延しているトコジラミ問題を提起する、と同国の交通大臣であるクレマン・ボニュー交通大臣が金曜日(9月29日)に発表した。

 X (旧ツイッター)上での投稿において、ボニュー交通大臣は、交通関連諸組織との異例の会合を招集するとし、その目的を「旅行者向けにこれまで既に取られている措置やこの先とられるであろう措置に対する情報を提供するため」であり、さらには一般市民に「安心を与え、保護するため」とした。

 この異例の会合の発表がおこなわれたのは、パリ市役所がフランス政府に対して公的に不満を述べたことを受けてのことであったが、同市はフランス政府に公共交通機関や公共施設、住居にはびこっているトコジラミに対し対策を打つよう促した。

 市当局の幹部らは、国が特別対策機関を立ち上げ、当局が血を吸う虫と呼ぶこの虫を「厳罰に処す」よう求めた。


関連記事:Parisians must live with rats – mayor

 「本当に国家的緊急事態です。市民が利用する全ての施設におけるパリ特有の問題なのです」とパリ市のエマニュエル・グレゴワ第1副市長は述べ、2024年のパリ五輪が迫る中、このトコジラミ問題は特に重要である、と主張した。

 「トコジラミは公共医療問題であり、そのように報告されなければならない問題です。政府は緊急にすべての関係機関を招集して、この問題を打開するための総括的な対策計画を打ち出さなくてはなりません。フランスが国を挙げて2024年のオリンピック・パラリンピックを主催するのですから」と同副市長は述べた。

 トコジラミはフランスの長年の悩みの種であり、フランス家屋の10軒に1軒がこの虫に侵入されている、と考えられている。トコジラミは柔らかい家具や衣服に寄生することを好み、夜になると、寝ている人々を餌食にして、血を吸う。

 フランスが長年抱えてきたこの虫の問題が、最近、悪化の一途をたどっているようで、オンライン上であげられている多くの動画には、この虫がバスや電車などの公共交通機関で群れを成し、映画館などの公共施設で蔓延している様子が映されている

ウルズラ・フォン・デア・ライエンの「ナチス家系」

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>
Ursula von der Leyen’s Nazi Pedigree
筆者:エヴァン・ライフ (Evan Reif)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年2月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月28日


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ウルズラ・フォン・デア・ライエンとヴォロディミール・ゼレンスキー大統領

彼女の父であるエルンスト・アルブレヒトは、1978年から1990年までドイツのニーダーザクセン州の大統領を務め、その間、社会復帰していないナチスを政府に登用し、左派の赤軍派の信頼性を傷つけるために作られた黒旗テロ作戦を実行した。


 ウルズラによれば、「ヨーロッパの価値観」は、人類の最も高い属性を表しており、自由や、正義、連帯感、そして法の支配など象徴している。

 もちろん、歴史をちょっとでも齧ったことのある人であれば誰でも、これらは婉曲表現以外の何物でもないと言える。つい最近まで、「ヨーロッパの価値観」という言葉は非常に異なるものを意味していた。これらの価値観は、ヨーロッパ人と彼らが征服した者の両方の血の海で、世界の境界を表している。ウルズラのヨーロッパ貴族家族の歴史を見ると、これらの「ヨーロッパの価値観」の真の姿と、支配階級がそれらを世界に押し付けることからどれだけ利益を得たかがわかる。


父の罪

「もし私たちが優れた能力を持つ人々を統治に持って来ることに成功すれば、一党独裁または少数派の支配は、民衆の支配よりも良い秩序を創り出すことができるだろう」 - エルンスト・アルブレヒト

 ウルズラ・フォン・デア・ライエンは、2つの貴族的なドイツの家族の出身。彼女はウルズラ・アルブレヒトとして生まれ、著名なヨーロッパの官僚であり、CDU党(キリスト教民主同盟)の指導者であり、ニーダーザクセン州の元知事であるエルンスト・アルブレヒトの娘だ。この家族はエルンストがほとんどの人生をEUおよびさまざまな前身の組織で働いていたため、国際的なイメージを慎重に育てた。ウルズラは父親から「Röschen(英語でRosieロージー)」という愛称で呼ばれ、幸せな家族の姿は父親の政治広告でよく取り上げられた。

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エルンスト・アルブレヒトと愛娘「Röschen」[資料: welt.de]

 アルブレヒト家は、神聖ローマ帝国の税関監督官としての地位を利用して、19世紀のブレーメンの綿市場を支配した。そこを出発点にして、アルブレヒトという名前はドイツの歴史全体において確固たる存在となった。

 アルブレヒト家の歴史は、ブルジョアドイツ人の典型なのだが、1936年から1945年までの間に謎の溝が存在している。彼らの権力や富がどこから来て、それを得るために何をしたのかという不快な質問を避けるために、アルブレヒト家は多くの他の家と同様に、ナチス政権が存在しなかったかのように振る舞うことを甘んじて受け入れている。私たちは永遠に答えを得ることはないだろうから、もしこの空白を取り巻くものに光を当てることができれば、それが投げかける影が、ウルズラの大のお気に入り「ヨーロッパの価値観」の真の姿を示してくれるかもしれない。

 まず、エルンストが政界で最初に就いた仕事は、同じ貴族であるハンス・フォン・デア・グローベンの指揮下にあった欧州石炭鉄鋼委員会であった。

 この時点で、ハンスは既に長い官僚経歴を持っていた。戦争中、彼はリヒャルト・ヴァルター・ダレ(Richard Walther Darré)の指揮下で国家農業省の副官として働いた。ダレは狂信的なナチ党員で、1926年に最初のファシスト宣伝文を執筆し、1930年にナチ党に加入した。

 彼はすぐにSS(親衛隊)に参加し、その忠誠心と献身心のために、ハインリヒ・ヒムラー(Heinrich Himmler)によって一本釣りされた。ヒムラーは親衛隊長ダレをSSの人種と移住本部長、そして後に国家農業省の長に任命した。ダレは党の主要な理論家の1人であり、農業と人種の事務所の任務を組み合わせて、「東部総合計画」(Generalplan Ost)の基盤を築いた。これは、スラブ系民族全体を絶滅させて東ヨーロッパを植民地化するナチの計画だった。

 ダレはナチスの「血と土地」農業政策の設計者で、新興の土地所有「アーリア人」貴族を創り出そうとした。彼は農地を相続するために「アーリア人証明書」を義務付ける法律を制定し、特にレーベンスボーン*計画という、ナチスによる優生学の執行計画において、新たな「アーリア人」超人の世代を育て、ドイツの「望ましくない血統」を浄化することを目指した。
*ナチ親衛隊がドイツ民族の人口増加と「純血性」の確保を目的として設立した女性福祉施設。一般的に「生命の泉」または「生命の泉協会」と翻訳されることが多い。ユダヤ人絶滅のための強制収容所と対照をなす、アーリア人増殖のための施設である。(ウィキペディア)

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ヒットラーと握手するダレ[資料: collections.ushmm.org]

 ダレの最も有望な信奉者の一人は、ヨーゼフ・メンゲレという名前の医師であり、メンゲレはその部門内で「人種的健康」政策を担当した。メンゲレは後に、アウシュヴィッツ強制収容所での産業規模の医学実験によって、史上最も卑劣な罪を犯す悪名高い「死の天使」となった。メンゲレはその犠牲者として特に子供たちを狙い、数か月間彼らを生かしておいたのは、できるだけ多くのデータを収集するためだった。メンゲレは自分がどこから来たのかを決して忘れなかった。彼は常に「人種的衛生」という考え方について、ダレをその着想の源として引用していたのだ。

 戦後、メンゲレは、「ネズミの道」を利用して、アルゼンチンに逃れ、後にブラジルに逃亡した。その「道」はナチスの戦争犯罪を認めなかったラインハルト・ゲーレン(Reinhard Gehlen)―CIA工作員であり、後の西ドイツ情報機関の長にもなった―によって運営されたものだった。彼はCIA長官アレン・ダレス(Allen Dulles)の個人命令のもとに保護され、ダレスはメンゲレをソ連に対する彼の戦争における有用な同盟者と見なしていた。メンゲレは1976年に自由な身で亡くなり、ブラジルのサンパウロにWolfgang Gerhardという名前で埋葬された。

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メンゲレ。CIAにはヘルムート・グレゴールの名前で知られていた。[資料: wikipedia.org]

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赤軍に解放された後のメンゲレの犠牲者たち[資料: bbc.com]

 ダレは自分の仕事を誇りに思っていた。彼はさまざまな出版物で自分の計画を数千ページにわたり詳細に記述し、ナチス・ドイツ内で彼の考えを宣伝する演説を定期的に行なった。

「電撃戦によって……秋が来る前に……我々は二つの大陸の絶対的な支配者となるだろう……新たなドイツの支配者の貴族階級が創造されるだろう……[その]奴隷が割り当てられ、これらの奴隷は彼らの所有物であり、土地を持たず、非ドイツ国籍者から構成される……実際には、中世の奴隷制の現代版を考えており、我々はそれを導入しなければならないし、私たちの大きな使命を達成するためにそれが急務であると確信している。これらの奴隷には、無知の恩恵のみが与えられる。将来、高等教育はヨーロッパのドイツ人のみが保有することになるだろう・・・」  リヒャルト・ダレ


 ハンス・フォン・デア・グローベンと共に、彼らは「飢餓計画」として知られるものを実施し、征服した領土の犠牲にしてライヒ(ドイツ帝国)を養うことを計画した。何百万人もの奴隷が飢餓の食糧割り当てで働き、文字どおり自分たちを抑圧するナチ機械を支えるために、どんな食糧もドイツ帝国に送ることを強制された。1944年までに、1,500万トン以上の食糧がソビエト連邦から徴発され、これにより1,000万人以上が意図的に飢え死にさせられた。ダレの計画によれば、スラブの「下等人間」は皆、不妊手術を受け、餓死させられた後、ダレの唱える新しい「アーリア人」の貴族階級に取って代わられ、この土地をドイツ帝国の便益のために利用されることになっていた。

 戦後、ダレはニュルンベルクで戦争犯罪の罪で逮捕され、裁判にかけられた。彼は有罪判決を受けたが、彼の犯罪の範囲と規模にもかかわらず、わずか7年の刑を言い渡された。彼はそのうちの3年間しか服役せず、1950年に釈放された。彼は1953年に肝臓癌で亡くなった。この判決は驚くほど寛大だったが、これが最悪ではなかった。ハンス(・フォン・デア・グローベン)は法廷の中に足を踏み入れることは一度もなかったのだ。

 こんなことは、戦後、特別なことでも何でもなかった。アメリカの外交政策を担当したアレン・ダレスなどの「自由主義国際主義者」たちにとって、ナチス政権の犯罪などどうでもよかった。実際、ダレスは1940年代初めからナチス・ドイツとの同盟を主張し、1944年にはナチスの情報機関と会談し、ソビエト連邦に対抗する武器としてナチスを利用するために分離した平和取り決め交渉を行なっていた。

 彼らは、最も極悪なナチスに対する裁判のみを求め、それでもなるべく軽い刑罰で済ませた。ナチス体制の一般党員や、ナチ機械を実際に稼働させ、大陸全体を支配し、抹殺する殺人的な仕事をした数多くの人々は、ほとんど罰せられないままだった。

 ハンス・フォン・デア・グローベンのような人々の場合、彼らは新しい「非ナチ化」された西ドイツ政府の職を得た。見かけは新ドイツとなったが、名前が変わっただけだった。同じ官僚たちは、どんな手段を使ってでも、ソビエト連邦とその人々の破壊を目指して働いていた。かつて大ゲルマン帝国と呼ばれていた国家機構は、今や北大西洋条約機構(NATO)と呼ばれる新しい構造に単純に吸収されたのだ。

 副職に就いたエルンスト・アルブレヒトは、1940年代に彼の上司が担当していた役割を引き継ぎ、今回は「血と土地」が「ヨーロッパの価値観」に変わった。

 エルンスト・アルブレヒトは自身がナチ党員になるためには年齢が数年足らなかったが、長い政治経歴を通じて、彼は自分が何に共感しているかを一点の曇りもなく明らかにした。エルンストは一般の人々に軽蔑の念を抱き、彼が「洞察力を欠いた」大衆の支配ではなく、ドイツにおいてエリート支配を実現しようとした。彼はどんな時でも第三帝国とその殺人者を称賛していたことから、エルンストがどのような人々をエリートと考えていたのかはまったくもって明確だ。

「人民の支配、特に直接の支配というのは、洞察力のある[エリート]の洞察によって決定されるのではなく、国民の過半数に基づく凡庸な平均レベルによって決まるものであると本質的に言える」。 エルンスト・アルブレヒト 『国家、アイデア、現実:政治哲学の概要』

 ドイツの二大政党の一つであるキリスト教民主同盟(CDU)の指導者として、ドイツのニーダーザクセン州政府の指導者としての任期中、エルンストは新ナチス党であるドイツ帝国党Deutsche Reichspartei(DRP)の党員をCDUの上層部に、まんまと引き入れた。DRPはエソテリック・ヒトラー主義として知られるものを実践した。これはヒトラーがヒンドゥー教の神ヴィシュヌの文字どおりの転生であり、ナチズムの「アーリア人」は古代インドに住んでいた同じアーリア人であると主張する奇怪な新ナチズムの一種だ。

 この思想は、フランス生まれのナチススパイで、1951年にナチスの宣伝を繰り返し広めたためにドイツから追放されたサヴィトリ・デヴィ(Savitri Devi)によって創出された。デヴィの最も親しい友人であるナチスのパイロットであり、南米のファシストの武器商人として活動し、ドイツ政府をナチスの独裁政権に変えるために積極的に陰謀を巡らせていたハンス‐ウルリッヒ・ルーデル(Hans-Ulrich Rudel)を介してサヴィトリ・デヴィはDRPに参加した。

 ルーデルとデヴィは、新しい帝国を築くことに成功した場合、ヒトラーは再びヒンドゥー教の神カルキ(Kalki)として転生し、すべての劣等人種を浄化し、アーリア人を「ハイパーボレア(Hyperborea)」という楽園に導くと信じていた。しかし、このため、アルブレヒトのCDUはDRPをほぼ完全に吸収した。なぜなら、DRPがそのままであれば、彼らの選挙支持基盤を浸食する可能性があると懸念していたからだ。ナチスにおもねる戦略はうまく機能し、アルブレヒトのCDUは1976年から1990年までこの地域を連続して統治した。

 エルンスト権力を握ったとき、彼が統治を任せたエリートの一人は、名前をハンス・プフォーゲルという法学者の司法大臣だった。彼は再び、狂信的なナチス党員を一本釣りしたのだ。プフォーゲルは1934年にナチ党の準軍事組織であるシュトゥルムアバイティルング(Sturmabteilung)(SA)に加入し、1937年までにはドイツ国内のナチ党(NSDAP)の地域指導者となった。プフォーゲルは弁護士としての技術を活かして、ナチスの人種的敵対者の殲滅を正当化するのに協力した。彼の博士論文は、ナチスの「人種問題」を解決する方法として、すべての劣等人種の集団安楽死と不妊手術を認める内容だった。

 1978年に彼(のナチス経歴)が暴露された際、プフォーゲルは自身が「スチールヘルメット」という小さな右翼団体に所属し、その団体はナチ党に吸収されたと主張。自分はナチスの過去を持っていないと嘘をついた。2012年にニーダーザクセン州議会が公開した文書は、彼の言葉が嘘であることを証明した。プフォーゲルは自身の博士論文の内容から距離を置こうともまったくしないで、誰もが知っている限り、彼は熱心なナチス党員として墓に葬られた。一方、エルンスト・アルブレヒトはこれに触れることは一切なかった。第三帝国が存在しなかったかのように振る舞う戦略は、アルブレヒト自身が実質的な影響を何も被らなかったことで、再び上手く行った。

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ハンス・プフォーゲル(左から2番目)とアルブレヒト(中央)そして彼の閣僚たち、1977。[資料: ndr.de]

「個人の社会における価値は、その人の人種的な個性によって測られる。社会において存在の権利を持つのは、人種的に価値のある人物だけだ。その人が劣っているために社会に無用であり、あるいは有害である場合、その人は抹消されるべきだ」。 ハンス・プフォーゲル


 エルンストは単にナチスのために働いたり、彼の内閣をナチスで埋め、そしてナチスを彼の党に招き入れただけではない。彼はまた多くの時間をかけ、ナチス支持者を取り込んでいた。エルンストと彼の副大臣たちは、ニーダーザクセン州全域で行われるナチスの退役軍人のイベントに頻繁に出席した。

 アルブレヒトの次官であり、親友であり、ナチスの役人だったウィルフリード・ハッセルマンは、1978年に開催されたナイトクロス協会の晩餐会で基調講演を行ない、ヒトラーの帝国で最も悪質な殺人者たちを勇敢で名誉ある人々として称賛した。そして彼らの勇気は将来の世代にとって「ヨーロッパの価値観」に感銘を与えるものになるだろうと述べた。

 アルブレヒトとプフォーゲルは、セレ・ホール事件として知られる爆弾攻撃にも関与していた。1978年7月25日に、ドイツのセレの刑務所の壁に爆弾がさく裂した。爆弾は望んだ効果が得られず、刑務所に入ろうとした12人の集団は逃げざるを得なかった。犯人たちは逃亡したが、ゴムボートや、逃走用具、ワルサー拳銃、偽造パスポートなどが詰まった1台のメルセデス(車)が見つかり、その中には収監中の左翼過激派シグルド・デブースの写真のついた偽造パスポートもあった。後から、事件全体が赤軍派(RAF)の失敗した脱走計画のように見せかけようとデブースの牢獄に工具が仕掛けられたのだ。

 アルブレヒトは、その攻撃を成功した作戦として賞賛し、それが強盗と殺人を阻止したと主張した(これについての証拠は一切示さずに)。そして、この出来事はデブースや他の収監中のRAFメンバーの待遇を悪化させる正当な理由として使用された。RAFはハンガーストライキで対応し、結局、1981年、それがデブースの死につながった。

 しかし、この話の結末はまったく納得がゆかないものだった。RAFのメンバーは無実を主張し、弁護士や一般市民からの圧力が高まり、最終的に1986年に議会調査が行われ、脱走未遂も強盗も殺人もなかったこと、そしてこの一連の出来事がドイツ連邦警察とニーダーザクセン州警察によって計画され、エルンスト・アルブレヒトの承認を得た偽旗作戦であることが明らかになった。あろうことか、ニーダーザクセン州の警官が爆弾をさく裂させている。しかし、それにもかかわらず、アルブレヒトやその政府には何も起こらなかった。この厄介な出来事はあっと言う間に隠蔽され、デブースの死はアルブレヒト家の利益のために餓死した多くの人々の長いリストの中の1つに過ぎないものとなった。

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エルンストとウルズラ、1982。[資料: diepresse.com]

 エルンスト・アルブレヒトが自国に対してこのテロ攻撃を実行した理由は未だ明確ではない;が、彼がナチスへの共感を示していたことへの報復として、RAF(赤軍派)が彼の愛娘ウルズラを誘拐しようとしているという根強い噂と関連があるかもしれない。ウルズラがロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに入学する際、彼女は自分の正体を隠すために「ローズ・ラドソン」という仮名を使った。その名前は無作為に選ばれたのではない。それは、むしろアルブレヒト家の「ヨーロッパの価値観」が世界に押し付けられた別の時代へつながる。


ディクシー・ローズ(アメリカ南部のバラ)

 「数年にわたり、黒人の宗教的および道徳的な指導は私にとって非常に興味深いテーマとなっており、私たちの彼らへの尽力(まだまだ多くのことが残っているが)が海外で誤解されているばかりでなく、正しく評価されていないと確信している。黒人を向上させることは、多くの人々(彼らを教育した経験がない人々)が認識している以上にはるかに骨の折れる課題だ。彼らは生来鈍感で、知力が低いのだが、一般的には優れた記憶力を持っている。そして、この慈善的な作業に従事してきた人々は、自分たちが頑張って与えようとした指示が、覚えてはくれるのだが、曲解され、あらぬ方向に向かってしまうことを嘆かざるを得なくなるのだ」。-ジェイムズ・H・ラドソン*( James H. Ladson), 『黒人への宗教的指導』
*1795年–1868年。サウスカロライナ州チャールストン出身のアメリカの農園主および実業家。彼はジェームズ・H・ラドソン&カンパニー(James H. Ladson & Co.)の所有者で、この主要なチャールストンの企業は米や綿の取引に従事し、200人以上の奴隷を所有していた。(ウィキペディア)

 ウルズラは、彼女の名前をサウスカロライナ州のラドソン家という彼女の家系の別の枝から選んだ。ラドソン家は奴隷商人、農園主、および分離主義者の家族だった。ラドソン家はアルブレヒトやフォン・デア・ライエンのような貴族の称号を持ってはいないものの、ヨーロッパの貴族階級と同様の特徴を備えていた。アルブレヒトの綿のビジネスは、アルブレヒト家をラドソン家と密接に接触させ、その関係は成長し、1902年にメアリー・ラドソン=ロバートソンがカール・アルブレヒトと結婚し、血縁によって2つの家族が結ばれた。

 アルブレヒト家の植民地とのつながりは、彼らがナチスと何の違和感も持たないことの説明になるかもしれない。ナチスとアメリカ奴隷制度の明白な類似点:①人種全体を奴隷化して経済的に搾取する、②大陸の植民地化、③人種の階層性、そして④産業規模での大量殺人。こういった類似点がある他、ナチスはアメリカの植民地制度を熱烈に賞賛していた。ナチスの人種制度は、具体的にアメリカ南部の人種制度が模範にすらなっていた。

 ラドソン家は、17世紀半ばにイングランドから移住してバルバドスで悪名高い道を歩み始めた。1679年、ジョン・ラドソンは新しいカロライナ植民地の最初の入植者の一人となり、チャールストンの外側にプランテーションを購入した。チャールストン市はそれ以来プランテーションを囲むように発展した。当時、バルバドスは奴隷貿易の主要な中継地であり、ここでラドソン家は初めて血と金(かね)のうま味を味わった。

 バルバドスは最初のイギリス植民地奴隷社会だった。この美しいカリブの島は、1630年からイギリスの支配下に入り、その天然資源を容赦なく搾取された。以前のスペインによる頻繁な奴隷襲撃、疫病、および集団虐殺政策により、先住民のアラワク族は絶滅し、島は奴隷が移り住むのに最適な場所になっていた。その温暖な気候と肥沃な土壌は、タバコとサトウキビを栽培するのにぴったりで、それらは後に蒸留してラム酒にされ、世界中で販売された。

 1636年までに、アフリカから島に連れてこられたすべてのアフリカ人とその子孫が、解放の手段がない永遠の動産とされる法律が実施された。1661年には奴隷法が強化され、すべての奴隷が不動産とみなされ、所有者の利益を生み出す唯一の目的のために生かされる存在とされた。奴隷は、第一に財産として考えられた。第二に人間として考えられたが、第一(財産)との間には千里の径庭があった。これらの規則は、奴隷の生命や尊厳を保護するためではなく、彼らを財産としての価値を守るために存在した。

 1630年から1807年までの期間に、約38万人のアフリカ人が自分の家から誘拐され、鎖に繋がれ、バルバドスに送られ、死ぬまで働かされた。そのうち数千人はラドソン家によって西半球中のプランテーションに売却され、その死と苦しみがラドソン家をとてつもなく裕福にした。

 バルバドスの奴隷たちは、ラドソン家のような奴隷所有者の手によって想像を絶する残忍な扱いを受けた。1705年から1735年までの間に、バルバドスに輸入された奴隷の数、そしてそこで生まれた奴隷を合わせて、おおよそ85,000人だった。しかし、島内の極端な死亡率のため、総人口はわずか4,000人しか増えなかった。

 奴隷の反乱や、キリスト教を受け入れないこと、または奴隷からの反抗行為は、他の奴隷たちに対する見せしめとして、有無を言わさぬ最大限の暴力で鎮圧された。この拷問と殺戮はあまりに普通のことだったので、ほとんどの場合は記録に残されなかった。しかし、残忍さについての直接証言の事例もある。その1つは、1654年のフランスの神父で伝道者であるアントワーヌ・ビエ神父の日記だ。

「彼らは自分の黒人奴隷に対して非常に厳しい仕打ちをする。日曜日にプランテーションの境界を越える者がいれば、棍棒で50回打たれる。これらの打撲傷はしばしば彼らをひどく傷つける。もし彼らが他の何らかのやや深刻な違反を犯すなら、際限なく打たれ、時には全身に火を当てられることもあり、それによって彼らは絶望の叫び声を上げる。私は、可哀想な黒人女性(おそらく35歳から40歳くらい)を見た。彼女の体は傷だらけで、それは彼女の主人が彼女に火を当てたことによるものだと彼女が言っていた。身の毛もよだつ話だった。これらのかわいそうな不幸な者たちは、与えられる食事が非常にひどかったので、時折、夜間に数人が脱走し、近隣の農園から豚などを盗みに行く。しかし、もし見つかってしまったら、許されることは絶対ない。ある日、私はアイルランド人を訪ねた。彼は豚を盗んだ哀れな黒人の一人を牢屋に入れていた。毎日、両手を鉄の枷で縛られたまま、監督は彼が血だらけになるまで他の黒人たちに鞭打たせた。監督は7、8日間このように扱った後、片方の耳を切り落とし、焼いてそれを本人に食べさせた」。

 それにもかかわらず、奴隷たちは抵抗した。抵抗行為は、個人的な場所で母国語を話すことから、労働中止、破壊行為、そして組織的な反乱に至るまでさまざまだった。残念ながら、イギリス当局は大規模で武装した警察力を維持し、バルバドスの森林はすべてサトウキビ畑のために伐採されていたため、反乱した奴隷たちはどこにも隠れ場所がなかった。反乱は常に鎮圧され、バルバドスの奴隷たちが解放されたのは1834年になってからのことだった。最初に「ヨーロッパの価値観」と接触してからほぼ200年経っていた。

 サウスカロライナ州で、ラドソン家は富と権力を集約し、最終的には州内で最も影響力のある家の一つとなった。金融や、政治、そして奴隷制などに深いつながりを持っていた。ヨーロッパの貴族と同様に、ラドソン家は他のエリート一家との婚姻関係を結ぶことで自分の一家を強化した。その多くは奴隷貿易に関与していた一家だった。彼らの祖先には、ジェームズ・ムーアという人物もいた。彼はカロライナ州の前知事で、4,000人以上の先住民アパラチー族を虐殺的な襲撃によって奴隷とし、その地位を獲得。最終的にはその部族を完全に絶滅させた。

 1790年代に、ラドソン家はワラッグ家との結婚を通じて奴隷貿易の最高層での地位を確立することができた。ジョセフ・ワラッグは最も多くの奴隷を取り引きする奴隷商人の一人であり、アメリカ大陸で最も裕福な人物の一人だった。彼は奴隷船の船長として出発し、十分なお金を稼いで、チャールストン近くの奴隷市場とプランテーションを購入することができた。1717年から1747年の間に、少なくとも1万人の人々がその住んでいた家から誘拐され、鎖につながれ、「ギニア人」と呼ばれた奴隷船の暗く、過密な船倉に押し込められた。そしてワラッグバラ(サウスカロライナ)にあるワラッグ埠頭でジョセフ・ワラッグ会社によって彼らは動産として売却された。

 イギリスからアフリカへ、アメリカへ、そしてイギリスへと戻る三角貿易として知られる過程で、推定200万人の奴隷が命を落とした。奴隷はまず財産とみなされており、たとえ殺すことになっても、利益を最大化するため、何でもやってのけた。空間を最大限効率的に活用するため、奴隷はできる限り密集して詰め込まれ、しばしば恐ろしい病気の発生や窒息につながることもあった。

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[資料: twitter.com]

私が目にした驚愕の光景を口にし、こんな船は人間を運ぶものじゃない、と非難したが、アフリカの海岸で長い時を過ごし、多くの船を訪れたことのある友人たちは、これが、彼らが見た中ではいちばん真っ当な船の一つだと教えてくれた。デッキ間の高さは時々わずか18インチしかなく、不幸な人々は回転したり、横になったりすることができず、その高さは彼らの肩幅よりも小さいのだ。そして、ここでは通常、首と足が鎖でデッキに繋がれている。このような場所では、苦しみ感と窒息感が強くなりすぎ、黒人奴隷たちはカルカッタのブラックホール*でのイギリス人のように狂乱に陥る。彼らはある時、ボニー川で奴隷船を捕まえた。奴隷たちはデッキ間の狭い空間に詰め込まれ、鎖でつながれていた。彼らは恐ろしい騒音と騒動を聞いて、それが何の原因から生じたのか想像することができなかった。彼らはハッチを開け、奴隷たちをデッキに上げた。彼らは2人、3人と手錠をかけられていた。彼らの多くは口から泡を吹き、最後の苦しみを味わっていた。生きている人が引きずり上げられ、その仲間が死体になっていることもあった。同じ鎖につながれた3人のうち、1人が瀕死の状態で、もう1人が死んでいることもあった。彼らが聞いた騒動は、息も絶え絶えの惨めな者たちが、怒りと絶望の最終段階で、なんとか脱出しようともがく狂乱の声だった。全員が引きずり上げられたとき、19人が回復不能なまま死んでいた。息をする場所を確保しようと、多くの者が互いに殺しあった。男たちは隣の者の首を絞め、女たちは互いの脳に釘を打ち込んだ。多くの不幸な人間たちが初めて手にした機会で船から飛び降り、その耐え難い人生から解放されるケースもあった。
*フォートウィリアム(カルカッタ)の地下牢で、1756年6月20日の夜、ベンガルのナワーブ、シラージュッダウラの兵士たちがイギリスの戦争捕虜を収容した場所で、その寸法は14フィート×18フィート(約4.3メートル×5.5メートル)しかなかった。(ウィキペディア)

1828年および1829年のブラジルに関するロバート・ウォルシュ師の通知文


 ラドソン家はまた、その被害者に対して「ヨーロッパの価値観」を押し付けることにも積極的だった。特に、ジェームズ・H・ラドソン(この家族には複数のジェームズ・ヘンリー・ラドソンがいたが、区別するための接尾辞がだれにも与えられていなかった。ここでは明確にするためにこの人物をジェームズ・H・ラドソンと呼ぶ)は、自身のプランテーションの一つに巨大な礼拝堂を建て、強制的な改宗を通じて奴隷たちに「ヨーロッパの価値観」を押し付けることで知られていた。これは南部に特有のもので、彼らの白人優越主義は家族的な性格を持っていた。奴隷所有者たちは自分たちを、金儲けのために苛酷に扱っているだけなのに、野蛮な黒人に「文明」をもたらす高潔で慈悲深い人間だと考えた。文明とは、「血と土」と「ヨーロッパの価値観」と同様に、単なる血なまぐさい婉曲表現に過ぎなかったのだ。

 実際、地元の新聞は彼を「古いカロライナの紳士の優れた例で、性格が純粋で、りっぱな取引を行ない、長年にわたりジェームズ・H・ラドソン&Co.の長であり、現在はW.C. Bee&Co.の代表である」と評した。「この会社は米と綿の仲介業務を幅広くかつ利益の上がるものとして行なっていた。彼はまた銀行の取締役でもあり、彼の生涯の大部分で、私たちの都市のセント・マイケルズ・エピスコパル教会の主要なメンバーで、キリスト教の美徳と積極的な慈善事業において抜きん出た人物だった」。

 この南部の立派な紳士は、「州の権利」の大義の猛烈な信者でもあった。「州の権利」とは、別の血生臭い婉曲表現でもある。この大義のためには、ラドソン家は人殺しも辞さなかった。実際の「州の権利」の真実は、ラドソン自身の行動によって明らかにされた:彼は南部連邦の大義のために骨身惜しまず働いた。そしてそれは自分の経済的利益を守るためであることは火を見るよりも明らかだった。

 総じて、ジェームズ・H・ラドソンの経済的利益のために、彼自身の息子を含む62万人の人々が死亡し、さらに100万人が負傷し、その多くが生涯不具となった。それに対して、彼は何の影響も受けることなく、奴隷と兵士の血と苦しみによって得たすべての富と名誉を保持し続けた。


どんなバラにも棘がある

「彼女はヨーロッパの深淵な文化を持っており、ブリュッセルで生まれ、ブリュッセルの官僚の娘ですので、彼女には(ヨーロッパ)連合のDNAがあると言えます」 - エマニュエル・マクロン


 ウルズラ・フォン・デア・ライエンの家族の財産と権力がどこから来たのか、そしてそれを得るために彼らが何をしたのかを尋ねることは何ら不当ではない。特に、ウルズラ自身が家族の富とその社会的関係を大いに利用して自身の立身出世を成し遂げていったことを考えればそうだ。彼女の経歴だけを見ても、汚職や、深刻な醜聞、無能、そしておそらくは完全な裏切りの例として独立して成り立つ可能性がある。彼女が政治家として振舞った時期だけを見ても、ウルズラのリンゴがアルブレヒト家の木からさほど遠く離れたところから落ちたわけではないことを示している。(訳注:ウルズラ・フォン・デア・ライエンのいろいろな政治的思惑は、アルブレヒト家がその背景にある、との意)

 ウルズラは2003年に政界入りした。この年、彼女はハノーファー地域選挙予備選でCDUの重要メンバーであるルッツ・フォン・デア・ハイデに技術的な理由で敗北した。これはウルズラの父であるエルンストにとって許容できないことであり、彼は以前の副官であるヴィルフリート・ハッセルマンと共に全面的攻撃を仕掛けた。ハッセルマンはかつてヴェアマハト(ナチス・ドイツの軍隊)の砲兵将校でもあった。

 二人は、ウルズラの選挙運動を行ない、同時に彼女の対抗候補を中傷した。当時、ウルズラは極右タブロイド紙「Bild」に長らく連載を持っていた。これは元ナチ党宣伝担当者CIAのスパイだったアクセル・シュプリンガーによって設立された新聞で、ドイツ法に違反したとして何度も制裁を受けたことがある。このことを通じて、彼女はフォン・デア・ハイデに対する攻撃を効果的に広めることができた。やがて、ドイツ全土が小さな地方選挙の予備選に関する最新の醜聞について読むようになった。

 選挙戦は決定的で、投票の第2局面でウルズラは2/3の多数票で勝利した。それは無風区だったため、ウルズラはCDUの新しい候補として簡単に選出された。これを考えると、ウルズラ・フォン・デア・ライエンと彼女の父の遺産(的影響力)を分けることは不可能だ。

 2年後、ほとんど政治経験がないにもかかわらず、アンゲラ・メルケルによって労働と家族の事務大臣として一本釣りされた。この役割で、彼女は主に視覚障害者向けの社会サービスを削減し、ヘビーメタルのアルバムを禁止しようとしたことで知られている。こんな経歴を積み上げてもさらなる昇進を正当化するとも思われない。

 それにもかかわらず、彼女は2013年に国防大臣に昇進し、これは野党を驚かせる動きだった。ここで、ウルズラ・フォン・デア・ライエンの「ヨーロッパの価値観」が再び形を現し始めた。

 ウルズラの使命は、ドイツ連邦軍(Bundeswehr)の拡大と戦闘態勢の向上であり、彼女はその仕事に熱意をもって取り組んだ。彼女は戦争を声高に主張し続け、ドイツ軍は、彼女がその日に思いついた新たな敵に対抗するには小さすぎて準備が不足しているとの意見を述べた。アフガニスタンや、イラン、中国、ロシア、シリアなど、どの国であっても、ウルズラは一貫してより多くの武器、より多くの戦争、そしてより多くの資金を提唱した。ウルズラはさらに、ドイツ連邦軍の隊列を強化するためにドイツ外人部隊を提案したこともあったが、この提案はあらゆる陣営から恐怖心と非難を持って受け止められた。

 あれよ、あれよという間に、彼女は国防省が外部の支援を必要としていると語り、新自由主義政治クラスのお気に入りで、最も犯罪的なコンサルタント会社のひとつ、CIAとつながりのあるマッキンゼー社を雇った。かつてはスーザン・ライス(Susan Rice)や、チェルシー・クリントン(Chelsea Clinton)、ピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg)といった華々しい人物、そして、疑わしい性格を持った政治家や実業界の重鎮たちが在籍していた会社だ。マッキンゼー社の触手は、世界中の政府や企業にまで伸び、政府、情報機関、大手企業の間の「回転扉」の代表的なものとなっている。

 マッキンゼー社は単なるコンサルティング以上のものだった:マッキンゼー社は国防省を直接的に支配し、コンサルタントのカトリン・ズーダー(Katrin Suder) は国防省内で新たな職位を授与され、武器部門の「改革」を担当した。ウルズラはマッキンゼー社やその他の企業に「コンサルティング」サービスとして約5億ユーロを投入したが、その見返りは完全にゼロだった。選挙で選ばれたわけでもないズーダーは、ウルズラの隣に頻繁にいたため、野党は彼女がウルズラの新しいボディーガードであると冗談を言った。

 この厚かましい汚職事件は「コンサルタント事件」として知られ、その重大さから、左派、右派両方の野党からの質問要求につながり、ウルズラ・フォン・デア・ライエンに対する圧力が高まった。ウルズラは主に質問に答えず、情報提供を拒否することで対応し、最終的には議会に呼び出される前に彼女の不正行為の証拠を隠滅した。証拠がなかったため、調査は失敗に終わった。この事件で、カトリン・ズーダーはウルズラ・フォン・デア・ライエンから連邦軍十字章を授与された。

 このスキャンダルは非常に深刻で、あまりにも厚かましく、不可解極まりないものだった。そこで野党の社会民主党は、ウルズラ・フォン・デア・ライエンを反逆罪で公然と告発し、ドイツの利益ではなくアメリカ政府の利益に従事していると非難した。

フォン・デア・ライエンは連邦国防大臣として、アメリカ大統領の要望に従い、軍事支出の増加を求めた。軍縮ではなく、軍事予算のますます増額と軍備のますますの増強だった。そして、この大臣はコンサルティング企業への高額支出やさまざまな人事決定によりトラブルに巻き込まれ、模範とは程遠い存在だったが、彼女はEU委員会の委員長に就任した。EU委員長は要となる役職であり、アメリカにとっても重要なのだ。

フォン・デア・ライエンの任命は静かに幕裏で行われた。良識ある人であれば、だれ一人、なぜ彼女にこの重要な役職が与えられたのか説明できない。一部の説明として、彼女は東欧の重要な国々の支持を受けていたということが挙げられる。アメリカ合衆国はこれらの国々に大きな影響力を持っているのだ。

最初の重要な危機的な場面で、フォン・デア・ライエンは、即座かつ明確に、イランそのものが中東での対立とイラン将軍の処刑に責任があるというアメリカの立場を表明した。彼女と共に、アメリカが他の出来事についても権利を主張でき、EU内部構造を形成する際に鍵となる役割を果たすことがたぶんできる、ということなのだろう。

―アルブレヒト・ミューラー(Albrecht Müller)、ドイツ社会民主党(SPD)議員。 2021年1月2日


 ウルズラのドイツ連邦軍は、寄生的なコンサルタント階級のための資金調達策謀に過ぎなかったわけではなかった。それはまた、彼女の父が一生をかけて促進した同じ邪悪なイデオロギーの温床でもあったのだ。フォン・デア・ライエン指揮下、ドイツ連邦軍の幹部クラスで極右派やネオナチの共鳴者が急増した。

 ドイツ連邦軍内外からの繰り返しの警告にもかかわらず、フォン・デア・ライエンは実質的に何も行なわなかった。彼女が雇用したマッキンゼー社コンサルタントは軍隊向けの感受性トレーニングコースを作成し、ウルズラは軍の基地を常時公開したが、問題はますます悪化し続けた。最終的に、2018年には、エリートの「特殊戦団」Kommando Spezialkräfte(KSK)特殊部隊から、ドイツの政治家を暗殺し、ドイツ政府を転覆させるための陰謀が発覚した。

 さらなる調査(2019年)により、この特殊部隊はネオナチ公然組織にまとわりつかれているだけでなく、少なくとも3年以上にわたりドイツ政府を転覆しようと積極的に計画していたことが明らかになった。さらに、繰り返し警告を受けながらも、ウルズラ・フォン・デア・ライエンと彼女の雇用したコンサルタント団は、最良の場合何もしなかったか、最悪の場合問題を積極的に悪化させていた可能性がある。

 ある強制捜索で兵器、爆発物、およびナチ記念品の隠し場所がわかった。さらなる監査により、4.8万発の弾薬と約135ポンドのプラスチック爆薬が責任の所在が不明であることが明らかになった。多くのドイツの政治家たちは、どれだけのテロリスト組織がドイツ連邦軍内に存在するのか疑問に思ったままだった。失われた弾薬と爆発物は今も見つかっておらず、結局、国防省はKSKを完全に解散せざるを得なかった。

 それにもかかわらず、ウルズラはNATOの事務総長としてヤンズ・ストルテンベルクの後任としての有力候補と見なされた。ナチスとの同盟の歴史を考えると、彼女の極右とのつながりが無視されたか、それを彼女の利点として数えられたこと―こちらの可能性の方が高いが―は驚きでも何でもないだろう。

 ウルズラが(NATO委員長として)選ばれなかった理由は、彼女が再び昇進の機会を逃したことと、欧州委員会の委員長に選ばれていたことだ。彼女は、自身の政党と野党の両方からほぼ一斉に非難されたにもかかわらず、欧州委員会の委員長に接戦で選出された。フォン・デア・ライエンの上司であり親友でもあるアンゲラ・メルケルは、ウルズラを候補にすらしないドイツ議会の拒否により投票を棄権しなければならなかった。

 しかし、この動きはエマニュエル・マクロンなどの外国の政治家からは歓迎された。彼は笑止千万の声明を出した。「私は、彼女のすぐれた問題処理能力と、特定の利益に囚われない公正な能力を見させていただいた」と述べたのだ。ウルズラは数か月前に外国の特定の利益に完全に従属していると非難されたばかりだった。また、ブルームバーグ紙は、彼女が自分の友人たちのために新しい内閣職をほぼ5年間作り続け、第二の「ミュンヘン一揆」を積極的に起こすことはないにせよ、よく言ってもそれに気づかないふりをしていたこの女性を、「頑強で見通しを持った改革者」と呼んだ。

 ウルズラはこの職を務めた最初の女性であり、ナチスと何らかの関りがある2人目の人物となった:かつてのヴェーアマハト(国防軍)の砲兵士官であり、ナチス法の教授だったヴァルター・ハルシュタインは、若い頃からニュルンベルク人種法美点主張して政治の道を歩み始め、「ヨーロッパの価値観」に生涯にわたって関りを持った。

 ブリュッセルでの新しい活動の場から、ウルズラ・フォン・デア・ライエンの「ヨーロッパの価値観」が世界中に広まった。ウクライナでの戦争勃発後、ウルズラは、より多くの戦争より多くの制裁、そしてより多くの武器を支持する最も力強く、不動の提唱者としてニュースを席巻した。

 ウルズラはウクライナにまで足を運び、最近奪還されたブチャでの有名なシャッターチャンス撮影をした。そこで虐殺の犠牲者たちにワニの涙を流したのだ。その虐殺はロシア軍が自分たちの陣地を砲撃して起こされたと信じさせようとしているが、実際はおそらくウクライナ軍砲兵によって引き起こされたものだった。

 実際には、ウルズラにはこの地域にも家族のつながりがある。ウクライナに最後に「フォン・デア・ライエン」の名前が登場したのは、ウルズラの遠い親戚であるヨアヒムがナチス・ガリシアのゴーティエ*として「ヨーロッパの価値観」をウクライナにもたらしたときだった。ナチスが「ラインハルト作戦」と呼んだこの地域は、ウクライナの民族主義者たちがナチス政権の処刑者として奉仕し、その後アメリカとNATOの努力によって罰せられることなく逃れることができたため、「ユダヤ人がいない」地域となった。
*レオン・ゴーティエは1915年2月1日にブールジュで生まれた。彼は古典を学び、歴史の教授になった。ゴーティエはWaffen-SSでUntersturmführerの階級でドイツのために戦った。彼は1944年秋に東部戦線でフランスの部隊を指揮し、ガリシアで重傷を負った。彼は1946年に強制労働刑にされ、1948年6月2日に釈放され、最終的には広告代理店のHavasで働いた。(ウィキペディア)

 今度は、ヨアヒムの子孫が再び国粋主義者たちと共に立ち、ウクライナと世界の人々に死と破壊をもたらしている。ウルズラ・フォン・デア・ライエンの「ヨーロッパの価値観」のために、まだどれだけ多くの人が犠牲にならなければならないのだろうか?

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この記事の著者エヴァン・ライフは、南ダコタ州西部の小さな鉱山町で、鉱夫と司書の子として生まれました。彼の父親が労働組合の組織者としての苦労や、コミュニティが産業の衰退と闘う姿は、エヴァンの左派政治への深い興味を育みました。これに加えて、彼の歴史への愛情が、彼を堅固な反ファシストとして育てました。執筆や研究、仕事以外の時間には、エヴァンは釣り、射撃、中国料理を楽しんでいます。エヴァンにはwharghoul@gmail.comで連絡が取れます。

中国がアメリカを追い越す― NATO加盟国ハンガリー首相の主張

<記事原文 寺島先生推薦>
China overtaking US – NATO member’s PM
出典:RT   2023年7月22日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月30日



ファイル写真 © Global Look Press / ゲンター・フィッシャー


世界の勢力均衡は変わりつつあり、ワシントンはその覇権が終わりつつあることを受け入れなければならない、とヴィクトール・オルバン首相は語った。

 世界はここ数十年で最大の勢力転換に直面しており、アメリカはその主導的地位を中国に奪われようとしている、とハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は土曜日(7月22日)に述べた。

 米国が永遠に「勝者」ではあり得ないことを受け入れない限り、それはワシントンと北京の間に大きな対立をもたらす可能性がある、とオルバン首相は警告した。

 「(中国)は製造大国となり、今やアメリカを追い越そうとしている」と、オルバン首相はルーマニアの東部トランシルヴァニア地方にあるバイレ・トゥスナドという町での年次演説で語った。

 ハンガリーの首相は、中国はわずか30年で、西洋が3世紀かけて成し遂げた産業革命を成し遂げたと述べ、アメリカは世界唯一の超大国としての地位に「さよなら」を告げようとしていると付け加えた。

 北京はまた、ワシントンが普遍的なものとして描こうとしている価値観に挑んでいる、とオルバン首相は語った。同首相は、中国はアメリカの価値観を 「敵対的イデオロギー」 とみなしているとし、「その考えには一理ある」とも述べた。



 <関連記事>アメリカはウクライナ紛争を即座に止めることができるはずだ --- ハンガリー

 このような展開は、いつまでも「世界の頂点に立ち続けたい」ワシントンと相容れないことは間違いない、とオルバン首相は警告した。彼は、既存の覇権に挑戦しようとする試みは、人類の歴史上、何度も大きな紛争を引き起こしてきたと語った。そして、「永遠の勝者と永遠の敗者は存在しない」と付け加えた。

 2つの大国の衝突はあり得るが、避けられないものではない、とハンガリーの首相は考えている。世界は新たな均衡を見つける必要があり、対立する2つの当事者はお互いを対等な存在として認めるべきだと彼は言う。主要国は、「今日、アメリカの支配の代わりに、空に2つの太陽があることを受け入れなければならない」とオルバン首相は付け加えた。

 彼はまた、ヨーロッパの将来について厳しい見通しを示し、世界経済における支配的な地位を失おうとしている、と述べた。オルバン首相は、このような事態を招いたのは西側の反ロシア政策だと非難した。EUはすでに「豊かだが、弱い」状態にあり、ロシアへの制裁を断行した結果、競争上の優位性をさらに失うことになると付け加えた。



 <関連記事>弱い国家は滅びる --- オルバン

 様々な制裁によってロシアを世界経済から切り離すことができるという考えは「幻想」だと彼は警告した。EUはすでにその誤った決断の結果を目の当たりにしている、とオルバン首相は言い、「他国が我々の代わりにロシアのエネルギーを購入し、我々はかつてないほど多くのエネルギー代を払っている」と付け加えた。

 オルバン首相によれば、イギリスとイタリアは世界の経済トップ10から脱落し、ドイツは現在の4位から10位に転落するという。制裁に関するあらゆる美辞麗句にもかかわらず、ヨーロッパ経済のかなりの部分は依然としてロシアとつながっている、と彼は述べた。

 モスクワとキエフの対立が続く中、ハンガリーは西側の政策に対する主要な批判者の一人として浮上している。ブダペストはウクライナの停戦と和平交渉を繰り返し要求し、EUがキエフに武器を送っていることを批判してきた。6月、オルバン首相はドイツのタブロイド紙『ビルト』に対し、戦場でのウクライナの勝利は 「不可能」 だと語った。ハンガリーはまた、反ロシア制裁はロシアを傷つける以上にヨーロッパを傷つけていると主張している。

プーチン大統領、ウクライナとベラルーシに対するポーランドの意図を警告

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin warns of Poland’s intentions in Ukraine and Belarus
出典:RT   2023年7月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年7月30日



ロシアのウラジーミル・プーチン大統領© Alexander Kazakov ; RIAノーボスチ


ポーランド政府はウクライナ西部の制圧を目指しているとロシア大統領が主張

 ポーランドの支配者層は、NATOの支援のもとの連合を結成してウクライナへの介入を計画しているが、その目的は、ウクライナ西部の一部だけではなく、おそらくはベラルーシをも占領しようというものだ、とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は金曜日(7月21日)、主張した。

 プーチン大統領はロシア安全保障理事会の常任理事国との会合で、キエフ当局は自国民を売り渡したり、ウクライナ領土を「外国の所有者」に引き渡したりするなど、権力を維持するためならどんな手段も厭わない、と述べた。

 ロシア大統領によれば、その第一候補はポーランドだろうとし、同大統領は「ポーランドはおそらく『NATOの傘』の下で何らかの連合を結成し、その後ウクライナ紛争に直接介入しようとするでしょう。その目的はウクライナからより広大な領土を『引き離す』ことにあります。それは、ポーランドからみれば歴史的には自国領だと考えられている領土を取り返すということです。それが、今日のウクライナ西部です」と述べた。

 金曜日の会談中、ロシア対外情報局(SVR)のセルゲイ・ナルイシキン長官も、ポーランド政府がポーランド・リトアニア・ウクライナの安全保障構想の一環として、同地域に独自の軍隊を派遣してウクライナ西部領土を占領することを検討していると主張した。

 ナルイシキン長官によれば、ポーランド当局者らは、ウクライナ側に送られた西側の軍事援助の額に関わらず、「ウクライナの敗北問題は時間の問題だ」という認識を徐々に持ち始めている、という。



 関連記事:ポーランド、ベラルーシ国境に軍隊を配備

 SVRの報告書について発言したプーチン大統領は、そのような連合の真の目的はウクライナ領土を占領することだけである、と示唆した。「見通しは明らかです。もしポーランド軍部隊が例えばリヴォフやウクライナの他の領土に入ったとすれば、その部隊はそのままそこに駐留するでしょう。その後も永遠にそこに駐留するでしょう。」

 プーチン大統領はまた、ポーランド政府がベラルーシ領土の一部の領有権も主張することを「夢見ている」のは「よく知られている」と述べた。

 しかし、ロシアの指導者であるプーチン大統領は、ウクライナには自国の領土を望むだけ売却する権利があるが、ロシアの連合国であるベラルーシに関しては、その一部に対するいかなる侵略もロシアに対する侵略を意味する、と警告した。

 プーチン大統領は「我が国はあらゆる手段を使ってこの動きに対応します」と述べた。

ストックホルムでのコーラン冒涜事件を理由に、スウェーデン大使がバグダッドから追放される

<記事原文 寺島先生推薦>
Western diplomat expelled over Quran desecration
出典:RT   2023円7月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月29日



2023年7月20日、ストックホルムのイラク大使館前で警察に護送される抗議者のサルワン・モミカ容疑者© Caisa Rasmussen / TT via AP


今週、バグダッドのストックホルム大使館も抗議者らに襲撃された。

 イラク政府は、スウェーデン大使をバグダッドから追放し、ストックホルム駐在の全権大使にイラクへの帰国を命じた。この措置は、スウェーデン政府が、イラク大使館前での活動家らの抗議活動を黙認したことに対する怒りを表明するものだった。この抗議活動の際、これらの活動家は、コーランの写本を踏みつけ、蹴るなどの行為を行っていた。

 イラクのモハメド・シア・アル・スダニ首相府は木曜日(7月20日)の午後、この決定を発表し、この決定を下した理由は、スウェーデンが「聖コーランの焼却を繰り返し許可した」ことに加え、「イスラムの神聖性に対する侮辱と、イラク国旗の焼却を許した」ためだ、とした。

 アル・スダニ首相は外務省に対し「イラク臨時代理大使をストックホルムのイラク共和国大使館から帰国させる」よう指示し、また「バグダッド駐在のスウェーデン大使にイラク領土から離れるよう指示した」という声明を、バシム・アラワディ政府報道官が出した。



 関連記事:コーランを燃やすという侮辱行為を行ったことへの抗議活動として、NATO加盟を申請中のスウェーデン大使館が放火される

 この大使追放劇は、両国間で外交上の問題が生じている最中に起こったものだ。その問題とは、先月ストックホルムで起こった、イラク国籍を持つ男性が、イスラム教の聖典に火をつけることを警察が黙認した事件に端を発する。また、イラク大使館前で行われた集会において見られた同じような行為も許されていたことを受けてのものだ。

 木曜日には大使館で小規模な抗議活動がおこなわれたが、AP通信によると、デモ参加者はコーランを燃やす寸前でその行為を中止したが、代わりにコーランを踏みつける場面が見られたという。イラクの国旗やイスラム教の有力聖職者ムクタダ・アル・サドル師の写真も地面に投げつけられたり、蹴られたりした。

 今週初め、未遂に終わったコーランを燃やす行為に怒ったイラク人がバグダッドのスウェーデン大使館に向かって行進し、建物を破壊して放火した。この事件で外交職員に被害はなかったが、スウェーデンのトビアス・ビルストローム外相はイラク政府が施設の保護を怠ったと批判した。



 関連記事:スウェーデン警察、聖書を燃やす抗議活動を黙認

 イラク当局はその後、スウェーデン大使館を襲撃した人々を非難し、大使館を警備することを誓ったが、「スウェーデンの地で聖コーランを燃やす事件が再発すれば、外交関係断絶は避けられなくなる」と語気を強めた。

 木曜日のストックホルムでの抗議活動直後、バグダッドのメディア・通信委員会は、スウェーデンの大手通信会社エリクソンの営業許可を停止したと発表し、他のスウェーデン諸企業との関係も断つ、と明言した。

NHS(英国国民保健サービス)の離職者数が「記録的数値」になったとの報道

<記事原文 寺島先生推薦>
NHS employees quitting in ‘record’ numbers – media
Nearly 170,000 healthcare professionals left their jobs in England last year, The Observer reports
英国では昨年、17万人近くの医療従事者が離職したとオブザーバー紙が報じた。
出典:RT   2023年7月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月22日



ロイヤル・ロンドン病院外の救急車、2023年1月29日© Justin Tallis / AFP


 オブザーバー紙は土曜日(7月1日)、2010年以来収集された職場統計の分析を引用して、昨年のNHSイングランド労働者の離職は少なくともここ10年で最高になったと報じた。

 2022年には病院や地域医療事業で4万1000人以上の看護師を含む17万人近くの従業員が離職したが、前年は約15万人だった。

 オブザーバー紙によると、離職には医師や救急隊員から管理職や技術職員に至るまで、あらゆる職業が含まれているという。

 新型コロナウイルス感染症の大流行からまだ立ち直り切れていない医療業界では、しばらくの間従業員の離職が続いており、離職理由として「職場で感じる圧力」、燃え尽き症候群、困難な労働環境、全体的な人材不足に対処しなければならないことを挙げている人もいる。



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 英国の医療事業は10年以上にわたって低下しているが、それは2010年に政府がNHS予算を抑制したことによる。英国医師協会(BMA)によると、現在742万人が治療を待っており、そのうち37万2000人以上が1年以上待っているという。これらの治療待ちの人々の存在により、将来的には状況が悪化する可能性が高く、医療事業への需要の増大につながる可能性がある。

 リシ・スナク首相は最近、NHSの人員配置危機に対処するための24億ポンド(4200億円)の計画を発表したが、これには医学生のための大学の定員の増加や新たな実習計画が含まれる。当局によると、一部の地域では治療待ちの人々が徐々に少なくなり、ある程度の進展が見られたという。

 NHSイングランドのアマンダ・プリチャード最高責任者は5月、「やるべきことはまだたくさんあるが、NHSが取り組まなければならなかったすべてのことを考えると、これらの進展は注目に値する成果だ」と述べた。

コソボ首相はセルビア人に対する新たな攻撃を計画中 – セルビアのヴチッチ大統領

<記事原文 寺島先生推薦>
Kosovo PM planning new attack on Serbs – Vucic
出典:RT 2023年7月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月22日



2023年6月21日、セルビアのベオグラードでの記者会見で話すセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領。AFP/オリバー・ブニック


コソボのアルビン・クルティ首相が、自分自身を「新しいゼレンスキー」だと考えている、とセルビア大統領は語った


 コソボのアルビン・クルティ首相は、ウクライナにおけるキエフ軍の新たな反撃に合わせて、同州の少数民族セルビア人に対する攻撃を開始する準備を進めていると、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領が日曜日(7月2日)に警告した。

 「クルティはただ新しいゼレンスキーになりたいだけだ。ウクライナの攻撃が始まると、コソボ共和国でもクルティ首相によるさらなる攻撃が起こるだろう。コソボ共和国の人々にお願いしたいのは、念の為、しばらくの間避難することだ。この恐怖がさらに激しくなるのではないか、心配だ」とヴチッチ大統領は記者団に語った。

 コソボでは4月から緊張が高まっている。それは、同州北部のセルビア人が過半数を占める4つの町でアルバニア人の市長が選出されたのだが、その投票にセルビア人が参加しなかった事件があったからだ。これらの市長たちは投票率が4%以下の市長選で勝利したにもかかわらず、クルティ首相はNATO軍の支援を受けて警察と特殊部隊を派遣して、5月にこれらの市長を就任させた。これに対して暴動が勃発し、一度の乱闘でセルビア人のデモ参加者約50名とNATO職員25名が負傷した。

 米国やEUの支持者らからの非難や制裁の脅しにも関わらず、クルティ首相はアルバニア人特殊部隊をコソボ北部に派遣し、十数人のセルビア人を拘束した。一方セルビア当局は、コソボとの国境のセルビア側でコソボ特殊部隊の隊員数名を逮捕した。



 関連記事:NATOはコソボのセルビア人を緊急に保護しなければならない – セルビア政府

 その後セルビア政府は、拘束したアルバニア人を解放したが、コソボ側は、逮捕したセルビア人を解放していない。ヴチッチ氏はクルティ首相に、彼らだけでなく、過去2年間に拘留されている約100人の釈放も要求している。

 ヴチッチ氏は日曜(7月2日)、「アルビン・クルティ首相の完全に非合理的で反セルビア的な動きを恐れている。このようなことが起こらないように全力を尽くす。ただし、セルビア人民を虐殺の犠牲者にする気はない」と語った。

 セルビア軍参謀総長ミラン・モジシロビッチ将軍は先月、クルティアが指揮するコソボ軍によるセルビア人住民への攻撃を阻止するようNATOに呼び掛けた。モジシロビッチ将軍は、西側諸国が「セルビア人とその生存権を守る」ことに失敗した場合、セルビア軍は「その任務を最大限に遂行する」と警告した。

 NATOは、アルバニア民族分離主義者のためにセルビアに対して78日間の空戦を行った後、1999年にコソボを占領した。国連安全保障理事会決議1244はセルビアの領土一体性を確認したが、コソボの臨時政府は2008年に独立を宣言した。セルビアによる離脱承認拒否は、ロシア、中国、インドを含む世界の約半数の国々から支持されている。

フィンランド経済相、アフリカ女性に対して「温暖化阻止のために堕胎を」と呼びかけた演説で辞任

<記事原文 寺島先生推薦>
Finnish economic minister resigns over ‘climate abortions’ speech
Vilhelm Junnila said he was stepping down to spare the country’s reputation after half a dozen scandals surfaced in just one week
ヴィルヘルム・ジュニラは、わずか1週間で半ダースのスキャンダルが浮上した後、国の評判を守るために退任すると述べた。
出典:RT  2023年7月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月19日


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© AFP / Eeva Maria Brotherus


 フィンランドの経済問題大臣であるヴィルヘルム・ジュニラは、新人議員として行った演説が再び浮上したことを受けて、金曜日(6月30日)、辞任した。その演説で、彼は地球を救うためにアフリカの女性に対して「気候中絶(温暖化阻止のための堕胎)」をフィンランドが後援することを提案していた。

 「フィンランドが気候中絶を推進してその責任を担うことは正当なことでしょう」とフィンランド党の政治家(ヴィルヘルム・ジュニラ)は、2019年に述べていた。「気候中絶は人類にとっては小さな一歩ですが、人類にとっては巨大な飛躍となるでしょう」なる冗談めいた言葉も交えて。この党は、気候変動と闘うためにフィンランド人は生活様式を大幅に変えなければならない、という考えに反対し、他のヨーロッパ諸国よりその汚染度ははるかに少ないという考えを打ち出している。

 キリスト教民主党の国会議員であるパイヴィ・ラサネン(Paivi Rasanen)は、ジュニラが「人種差別関連」の外に身を置いているとしても、「エコ・ファシスト」の概念を推進していると非難した。彼女は与党の連立相手に対して、エコ・ファシズムも「過激派の運動」であることを思い出させた。

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 関連記事:NATO加盟国、ロシア支援削減でアフリカ支援削減を示唆

 フィンランドの大統領サウリ・ニーニスト(Sauli Niinisto)はこの状況を「たいへんな戸惑いを覚える」と表現した。一方、連立内のもう一人のパートナーであるスウェーデン人民党の党首であるアンナ・マジャ・ヘンリクソン(Anna-Maja Henriksson)は、ジュニラが辞任したことを「賢明な決断」だと称賛した。

 ジュニラは、フィンランドの評判を守るために辞任したと説明した。そして非難の数が増えているにもかかわらず、「党と私が所属する会派の信頼」を保持していると主張した。金曜日(6月30日)の早い段階で、フィンランド国営放送(Yle)は、彼は大学で政治学を学んだと言っているが、その授業を一度も受けていないことを報じた。また、彼のウェブサイトや選挙資料に掲載されている、政界に入る前にポーランドの技術系企業を創設して売却したという主張にも事実的な根拠は見つからなかった、とも。

 ジュニラが先週火曜日(6月27日)に今の職に就任した直後、一人の研究者が「フィンランドのネオナチ人名録」と評した極右団体が主催した2019年のイベントに彼が出席した、とEuronewsは報じた。その後もスキャンダルは積み重なり、水曜日(6月28日)には信任投票が行われ、彼はわずかに95対86で勝利したが、オルポ首相は彼に対して、閣僚として仕事を続けるためには行動を改める必要があると警告した。

 ジュニラは、自身が出席したイベントや、彼の批判者が発掘した一連の「愚かで幼稚な」ヒトラーやナチスのジョーク、その他のコメントについて、公に謝罪した。彼の議会助手に対するいくつかのFacebookメッセージも話題になった。その中には、クー・クラックス・クランのフードを被った雪だるまが縛り首縄を持っているインターネット画像も含まれていた。

 今年選出されたフィンランド政府は、現代における最も保守的な政府と呼ばれている。国会で最も議席を獲得した右派の国民連合党と、ジュニラの極右のフィンランド党によって主導される連立政権によって運営されており、気候への取り組みを軽視し、国際援助を削減し、移民に制限を設け、福利厚生を削減するなどの措置を取っている。これは、元首相サンナ・マリンの中道左派政権からの急激な転換となっている。

ウクライナは700億ユーロ(10兆8500億円)の使途を説明せよ - EU加盟国

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine must explain how €70 billion was spent – EU state
Hungary will not allow the bloc’s money to keep pouring into Ukraine unaccounted for, Prime Minister Viktor Orban has said
ハンガリーは、EU加盟国の資金が使途不明のままウクライナに流入し続けることを許さないと、ヴィクトール・オルバン首相が述べた。
出典:RT 2023年6月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>    2023年7月17日



記者会見するウラジーミル・ゼレンスキー大統領(2023年6月28日、ウクライナ・キエフにて) © AP / Efrem Lukatsky


 ハンガリーは、キエフがすでにEUから受け取った700億ユーロ(10兆8500億円)の使途を説明するまで、欧州委員会がウクライナに500億ユーロ(7兆7500億円)の資金援助を行う計画に反対すると、ビクトル・オルバン首相は金曜日(6月30日)に述べた。ブダペストとブリュッセルは、ウクライナへの現金と武器の供給をめぐって繰り返し衝突してきた。

 ブリュッセルが発表した最新の数字によると、昨年2月にロシアが軍事作戦を開始して以来、EUはキエフに720億ユーロ(11兆1600億円)の経済・軍事・人道援助を与えている。この前例のない資金流出にもかかわらず、欧州委員会は今月初め、キエフにさらに500億ユーロ(7兆7500億円)の融資と助成金を提供すると発表した。

 ロイターの報道によれば、オルバンはハンガリーのラジオに対し、「ひとつはっきりしていることは、われわれハンガリー人は......これまでの約700億ユーロ(10兆8500億円)相当の資金がどこに流出したのかを明らかにするまでは、ウクライナにこれ以上の資金を提供しないということだ」と語った。

 さらに続けて、「そして、我々は、債務返済にかかる費用を賄うために、さらに資金を拠出しなければならないというのは、我々が得る権利がある資金をまだ受け取っていないのに、まったく馬鹿げていて不合理なことだと思う」と述べた。そして、欧州連合(EU)の対外債務の利子負担がインフレの影響で今年は2倍になるという欧州委員会が最近発表についても言及した。




<関連記事> ゼレンスキーの盟友が、ハンガリーのオルバン首相を攻撃 - メディア

 欧州委員会は現在、ハンガリーとポーランドに対し、司法改革、学問、LGBTQ問題、移民問題などに関する両政府との意見の相違を理由に、数十億ドル規模の統合基金の利用を拒否している。欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は昨年、資金の差し止めは、ブリュッセルが加盟国に 「我々との協力」を強いるために使えるいくつかの 「手段」 のひとつであることを認めた。

 ハンガリーは昨年、ブダペストに対して保留扱いにしていた別枠の資金をブリュッセルが解放するまで、ウクライナへの180億ユーロ(2兆7900億円)の資金援助を阻んだ。最近では、ハンガリーのピーター・シジャルト外相が月曜日(6月26日)に、EUのウクライナ向け共通武器基金からの5億ユーロ(775億円)相当の一連の武器支援に対する拒否権をもう1ヶ月延長すると述べた。

 オルバンとシジャルトはともに、ウクライナでの即時停戦と和平交渉を繰り返し要求している。今週初め、オルバンは、戦場でのウクライナの勝利は「不可能」であり、即時停戦と欧米からの武器供与の停止がなければ、ウクライナは「莫大な富と多くの人命を失い、想像を絶する破壊が起こる」と説明した。

ドイツにEUに拠出できる金はもうない―財務大臣

<記事原文 寺島先生推薦>
Germany has no more money for EU – finance minister
With its budget drained by Ukraine, the bloc is reportedly asking its members to contribute more
ウクライナ(支援)で予算が枯渇し、報道によると、EUはメンバー国に対してもっと金を出すよう求めている。
出典:RT  2023年6月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月1日



クリスチャン・リントナーは、2023年6月14日にドイツ・ベルリンで行われた記者会見に臨む©AFP / ミケーレ・タントゥッシより。


 ドイツは、EU予算にこれ以上金は出せないと、財務大臣のクリスチャン・リントナーは金曜日(6月16日)にディ・ヴェルト紙に語った。ドイツはEU最大の資金拠出国でありながら、経済の縮小に伴い、その削減を余儀なくされている。

 「国家予算の必要な削減を考慮すると、私たちは現在、欧州連合の予算に追加の貢献をすることができません」とリントナーはブリュッセルで記者に語った。また、他の加盟国も同じ認識に至っていると付言した。

 リントナーは、EUが2027年までの長期予算を使い果たしていることを説明した。これは、主にEUがウクライナに対して豪華な一連の援助を提供した結果だ。ブリュッセル(EU本部)の最新の数字によれば、ロシアのウクライナ侵攻が昨年2月に始まって以来、EUはキエフに経済的、軍事的、人道的援助として720億ユーロ(790億ドル)を提供している。

 この前例のない財源枯渇にもかかわらず、欧州委員会は、報道によると、ウクライナ経済を2027年までなんとか維持するためにさらに720億ユーロの一連の追加金融支援を準備しているとされる。リントナーによれば、委員会は来週にも加盟諸国に追加の資金を要求する報告書を公表する予定だ。




関連記事:EUの経済の原動力が低下している理由


 ドイツはEUに対する最大の資金供出国であり、2021年にはEU予算に214億ユーロ(234億ドル)を拠出した。一方、隣国のポーランドは最大の予算消費国であり、2021年には129億ユーロ(142億ドル)を受け取った。

 かつてはヨーロッパの工業の中心地であり、EUで最も強靭な経済と見なされていたドイツは、現在、安価なロシアのガスからの切り離しと高価な緑のエネルギーへの移行の結果、産業の縮小を経験している。ドイツ経済は今年の第1四半期に景気後退し、オラフ・ショルツ首相の政府は今月末に約200億ユーロ(218億ドル)の予算削減を発表する予定だ。

 しかし、予算案の採決は遅れる可能性がある。なぜなら、ショルツとリントナーの連立相手である緑の党の党員らは、支出削減ではなく税金の引き上げを主張しているからだ。

西側はロシア人に的を絞り、第二次世界大戦で米国が日本人にしたような扱いをすべきだ―チェコ大統領

<記事原文 寺島先生推薦>
West should target Russians like US treated Japanese in WW2 - Czech President
“Scrutiny” in the West is “the cost of war,” Petr Pavel said
西側における「監視」は「戦争の代償」であるとペトル・パヴェルは、述べた。
出典:RT 2023年6月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月29日


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資料写真:ペトル・パヴェルチェコ大統領 © Thomas Kronsteiner / Getty Images


 西側に住むロシア人は安全保障機関によってその動きは緻密に監視されるべきだ、とチェコの大統領であるペトル・パヴェルは、主張している。彼は、第二次世界大戦中のアメリカによる日系人の扱いを戦時の安全保障措置の例として挙げた。

 パヴェルは、米政府が資金提供しているメディアであるRadio Free Europe/Radio Libertyへのインタビューで、木曜日(6月15日)、自説を述べた。

 「戦争が続いている場合、ロシア人に関連する安全対策は通常時よりも厳格であるべきです。西側諸国に住むすべてのロシア人は、過去よりもはるかに厳しく監視されるべきです」と彼は語った。

 チェコの指導者(パヴェル)は、第二次世界大戦中の日系アメリカ人の扱いを「厳格な監視体制」と「安全保障機関による監視」と表現し、それと対比した。

 「それは単に戦争の代償です」とパヴェルは明言した。

 米国と大日本帝国の緊張が高まる中、米国社会では日系人に対する背信の疑いが広がった。この不信感は、西海岸における歴史的な反アジア感情によって火に油を注がれた。

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関連記事:プーチンへの憎悪が米政府高官に「愚かなこと」をさせる―シーモア・ハーシュ

 1941年12月の真珠湾攻撃から2か月後、フランクリン・ルーズベルト大統領は行政命令を発令し、少なくとも12万5,000人以上の、ほとんどがアメリカ国籍を持つ人々が国内各地の収容施設で強制的に生活することを余儀なくされた。この政策は1946年まで継続した。

 ジミー・カーター大統領は、国家安全保障への影響や被害者への救済方法について検討するための委員会を設立した。1983年に発表されたその報告書は、この命令が軍事的必要性によっては正当化されず、人種差別的な偏見と戦争恐慌に根ざしていたと述べている。

 「重大な不正義が日本系のアメリカ人および在住外国人に対してなされた。彼らは個別の審査も証拠もなく、第二次世界大戦中、アメリカ合衆国によって排除・追放・そして拘束された」とその文書には書かれている。

 この結論については一部のメディアによって議論の対象とされた。1983年のワシントン・ポスト紙の記事は、西海岸には「かなりの数」の日本のスパイが生活しており、ルーズベルトがそのように行動する理由があったと述べている。

「パリ市民よ、ネズミと共存すべし」。市長の訴え

<記事原文 寺島先生推薦>
Parisians must live with rats – mayor
Around six million of the rodents are estimated to live in the City of Light
げっ歯類に属するこの動物が、「花の都」に600万匹いるとの推定
出典:RT  2023年6月12日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月29日



タンザニアで地雷を発見するよう訓練された嗅ぎネズミ。2004年5月3日© Getty Images / Xavier ROSSI/Gamma-Rapho via Getty Images


 パリのアンヌ・イダルゴ市長は、委員会を立ち上げ、フランスの首都パリ市民が、害獣として根絶させようとするのではなく、ネズミと平和共存できる道を模索する計画を立てている、とパリ当局が先週発表した。

 「市長が出した指針のもと、ヒトとネズミの共存問題についての委員会を立ち上げることが決まりました」と、パリの公衆衛生局のアン・スーイリス副局長が、木曜日(6月19日)のパリ議会の会議で述べた。

 新たに発表された政策では、パリに600万匹いると推定されるネズミに対抗するために導入されていたこれまでの措置とは、かなり違う方向性を示した。 180万ドルの資金を使って行われた2017年の対ネズミ方策では、げっ歯類撲滅政策が取られ、密閉ゴミ箱の土入やパリ中の何千もの箇所で、大規模に殺鼠剤を撒く措置が実施された。

 このネズミ問題は、パリ市内で先日起こった、年金改革法案に反対する抗議活動により悪化したと考えられている。この抗議活動により、パリ市街でのごみ収集が何週間もの間行われなかったためだ。



関連記事:ニューヨーク市長が「ネズミ対策皇帝」を任命

 パリのネズミの数は、パリ市民の人口を凌駕し、ネズミと人の数の比は約3対1になっている中で、新たな措置が考慮されている。スーイリス副局長によると、この委員会により、パリ市民とネズミたちが共存できるための「最も効果のある」施策が考え出されるだろうし、そのような施策は、パリに住む人々にとって「耐え難いものにはならない」だろうとのことだ。

 ただし批判的な意見を持つ人々は、この計画はこのげっ歯類問題に屈服するだけのものに過ぎない、と指摘している。「アンヌ・イダルゴ市長のもとでの対策委員会が落胆することはないでしょう」と政治家のジェフロワ・ブワー氏はツイートした。同氏はパリの「ネズミ蔓延」問題についてしばしば取り上げている。「パリはもっといい街のはずです」とも書き添えた。

 動物の権利を主張する団体からは、この新しい計画は歓迎されている。これまでの管理的なやり方は、「効果も薄く、残忍なやり方」だった、と「パリ動物警察」は述べた。「新たな施策が不可欠です。」

 パリは、この害獣と長年敵対関係にある。ネズミは腺ペストを広めた大きな原因であり、14世紀にはパリ市民の半数が亡くなった。ただし、1870年から1871年の普仏戦争によるパリ封鎖の際には、パリ市民を飢餓から救う救世主となった。

 パリだけが、ネズミ蔓延という長年苦しまされてきた問題に対して新たな措置を取り始めているわけではない。ニューヨークでは、4月に、いわゆる初代「ネズミ対策皇帝」が任命され、 同市のげっ歯類問題対策が講じられている。またフランスのトゥールーズ市では、フェレットを使ってネズミの数を制御可能な程度に抑える一助としている。

欧州委員会の警告:EU加盟国においてロシアが主張する言説の影響力が拡大している

<記事原文 寺島先生推薦>
Influence of Russian narratives growing in EU member states, commissioner warns
Citizens in some member states are siding with Moscow on Ukraine, Brussels’ transparency chief has claimed
ブリュッセル(EU)の透明性担当者は、一部の加盟国の市民がウクライナ問題でモスクワの肩を持っていると語った。
出典:RT 2023年5月16日
<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月23日

 

資料写真:ベラ・ヨウロヴァ、EU委員会副委員長兼価値と透明性担当委員。© Christian Charisius / picture alliance via Getty Images


 EUのある高官は、ロシアの主張に肩を持つ意見がEU内で増加しており、ますます多くの人がウクライナ紛争をそのような視点で見ていると警告した。EU委員ベラ・ヨウロヴァは、日曜日(5月14日)にドイツの新聞ビルトとのインタビューで、「ロシアのプロパガンダ」が市民に強い影響を与えているため、EU加盟国が「戦略的コミュニケーション」により多くの資金を投入するよう求めた。

 「RTはEU内で引き続き禁止されるべきであり、一方でヨーロッパ諸国に拠点を置く『独立した』ロシアメディアは支援を必要とする」と彼女は述べた。

 現在、価値と透明性委員会の副委員長を務めるチェコの政治家であり、欧州委員会のベテラン議員である彼女は、ウクライナ紛争などの問題におけるロシアの立場の人気の高まりについて懸念を表明した。

 「多くの国で、ロシアが侵略者ではなく被害者であるという物語が台頭しています」とヨウロヴァは語った。「スロバキアでは、50%以上の人々が陰謀論を信じており、その中にはロシアの侵略戦争に関するものも含まれています。これまで、私たちはロシアのプロパガンダの影響を過小評価してきました」。

 モスクワは、ウクライナの紛争はNATOの欧州における無制限な拡大と西側諸国がロシアの警告に耳を貸さなかったことに起因すると主張している。ロシア政府は2021年に事態の緩和を図る最後の試みを行ったが、その懸念は根拠のないものとされ、ウクライナは米国主導の軍事同盟に加入する権利があるとされた。ロシアの視点では、この紛争は西側によるロシアへの代理戦争の一環となる。



関連記事:EUはオンライン上でのさらなる検閲を要求

 EU市民がロシアの立場に同意してしまうのは、「モスクワが数十億ドルをプロパガンダに投資しており、私たちはそれに対抗するためにほとんど何もしていないから」とヨウロヴァは主張した。彼女は加盟国に対して、「戦略的コミュニケーションと偽情報への対抗にさらに投資するよう」呼びかけた。

 ヨウロヴァは、ロシアにとってドイツが特に重要な標的であると述べた。ドイツ国内で「平和運動が浸透している」ことについて懸念していると彼女は語った。

 「武器を供給する者は戦争屋であるとの主張は非常に危険です。こんなことを言えばウクライナへの支援を弱めるだけです」と彼女は語った。

 ヨウロヴァ委員は、EUがRTを検閲することを称賛し、RTは「メディア機関ではなく」、むしろ「戦時プロパガンダの武器である」と表現し、ヨーロッパにその居場所はどこにもない、と述べた。

 「代わりに、独立したロシアのメディアを支援すべきです。その多くはここベルリンや他のヨーロッパの都市にあります」と彼女は語った。

関連記事:クレムリンはワシントン・ポスト紙の「文書漏洩」報道は「100%嘘である」と主張

 ベラ・ヨウロヴァEU委員会副委員長は、EUに「外国メディア」を取り締まるための法律を導入するよう圧力をかけられている、との報道がある。Politico紙によると、同紙は3月の非営利団体の調査で、外国からの資金提供を受けているかどうか尋ねられている。これは「民主主義を守る」ための一連の立法計画に先立って実施された。

ロジャー・ウォーターズがナチス風刺に関する刑事調査の対象となる。

<記事原文 寺島先生推薦>
Roger Waters subject of criminal probe over anti-Nazi satire
The Pink Floyd co-founder performed at a concert dressed in a garb resembling an SS uniform
ピンク・フロイドの共同創設者(ロジャー・ウォーターズ)は、SS制服に似た衣装で演奏した。
出典:RT  2023年5月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年6月21日


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© Twitter / @OGAride

 ドイツ警察は、英国の伝説的ロック歌手であり、ピンク・フロイド共同創設者であるロジャー・ウォーターズに対し、ベルリンでの2つのコンサートでナチズムを美化した疑いについて刑事捜査を開始した。ウォーターズは、そのパフォーマンスはファシズムに対する抗議であると主張している。

 金曜日(5月26日)、複数のメディアが引用した声明で、ベルリン警察はウォーターズが憎悪を扇動した疑いがあると述べ、捜査は彼の5月17日と18日のベルリンでのパフォーマンスに焦点を当てていると述べた。

 ソーシャルメディアに投稿された映像で、ロジャーズはナチスの制服に似た革製トレンチコートを身に着け、それには十字のハンマーと赤い腕章が付いているのが見える。その後、彼は模型銃を取り出し、観客に向けて撃っている。


 「その時の服装から、ナチス政権の暴力的で独断的な支配を承認し、美化し、あるいは正当化する可能性があり、(ナチ)被害者たちの尊厳を侵し、それによって公共の平和を乱しています」と警察は述べた。

 ナチ関連のシンボルは、ドイツでは違法とされており、教育や芸術の目的である場合を除いては使用が認められていない。

関連記事:裁判所がロジャー・ウォーターズのコンサート中止を覆す

 ウォーターズのパフォーマンスは、あきらかに1979年のピンク・フロイドの同名アルバムを原作とした映画「ザ・ウォール」を参照したものだった。このロックスター(ロジャーズ)は、アルバムの主人公であり、ファシストの独裁者としてナチスの集会に演説する幻覚を見る役どころを演じている。

 ウォーターズのコンサートでは、イスラエルの武器会社であるエルビットシステムズとダビデの星のロゴが施されたブタの形をした風船が空中を浮遊した。ショーでは、スクリーンに徐々に現れる人物の名前も表示され、ナチスの強制収容所で亡くなったユダヤ人日記作家であるアンネ・フランクの名前が含まれていた。また、2022年5月にイスラエルの軍事作戦を取材中に殺害されたパレスチナ人でアルジャジーラのジャーナリストであるシリーン・アブ・アクレの名前も表示された。

 イスラエル国連大使であるダニー・ダノンは、ウォーターズはイスラエルをナチスに準(なぞら)えたいのだと語り、ウォーターズを「現代最大ユダヤ人嫌悪者の一人」と表現した。

 金曜日(5月26日)、ウォーターズはこの物議を醸す問題について、Twitter上で「私は自分の政治的な意見に反対する者たちから『不誠実な攻撃』の標的にされた」と書いた。

 「問題とされている私のパフォーマンスは、どこを取っても、あらゆる形のファシズム、不正義、そして偏見に反対する声明であることは一点の曇りもないことです」と彼は語った。さらに、私は一生をかけて、「独裁主義と抑圧に反対する」発言をしてきた、と付言した。

英国警察のテロ対策班がグレイゾーン(独立系メディア)のジャーナリストを拘束

<記事原文 寺島先生推薦>
UK anti-terror police detain Grayzone journalist
Officers interrogated Kit Klarenberg for five hours about his political views and reporting
警官たちはキット・クラレンバーグに対して、彼の政治的な見解や報道について5時間にわたって尋問した。
出典:RT  2023年5月31日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月18日



資料写真:ヒースロー空港(ロンドン)の外部をパトロールする武装した英国警察官© Scott Barbour / Getty Images


 ジャーナリストであるイギリス国籍のキット・クラレンバーグは、イギリス当局によって拘束され、彼の政治報道やあるとされるロシアとの関係をめぐって厳しく追及された、とグレイゾーンは、水曜日(5月31日)報じた。

 キット・クラレンバーグは、RTなど様々なメディアに執筆し、イギリスおよびアメリカの暗部情報機関の秘密を暴露することで知られている。その際リークされたもしくは非公開の文書を使用することがよくある。先月、現在滞在しているセルビアのベオグラードからの帰途、彼の飛行機がロンドンのルートン空港に着陸した直後、報道によれば、6人の私服テロ対策官が彼に近づいた。

 グレイゾーンによると、ジャーナリストであるキット・クラレンバーグはその後、警察によって全ての電子機器、銀行カード、カメラのメモリーカードやSIMカードを押収され、指紋とDNAを採取され、写真を撮られ、そして5時間にわたる尋問を受けた。拒否すると逮捕する、との脅しも受けた。

 尋問室で、クラレンバーグは、外国の不動産を所有しているか、なぜセルビアに住むことを選んだのか、そして彼がいくらの家賃を支払っているかなど、様々な問題について追及された、とのこと。また、彼のジャーナリストとしての活動についても質問され、どのメディアに寄稿しているか、グレイゾーンからどれくらいの報酬を受け取っているか、いつどのくらいの頻度で支払われるのか、どの銀行口座に支払われているか、そしてウェブサイト「グレイゾーン」の編集者であるマックス・ブルーメンタールとの接触はどれくらいあるか、といったことが質問された。

 その後、テロ対策官たちはクラレンバーグに対し、ロシアとの関係があるのかどうか、を尋問してきた。具体的には、グレイゾーンがロシアの安全保障機関との合意を持ってハッキングされた資料を公表しているか、クラレンバーグがロシアの諜報員と協力したことがあるか、またはロシアの国営メディアと関係のある人々と連絡を取ったことがあるか、そしてグレイゾーンがロシアからの支援を受けているかどうかについて質問がなされた。

 グレイゾーンによれば、警察はまた、クラレンバーグの所属する政治団体や彼の政治的信念、活動家としての関与、そしてロシア政府やウクライナ情勢に対する彼の意見についても追求した。



関連記事:バイデンの元補佐官タラ・リードが身の危険の不安からロシアへ逃れる

 テロ対策班の質問が出尽くした後、クラレンバーグによれば、自由の身となったが、依然として調査対象であると告げられた。拘束から1週間後、警察は彼のタブレットと2つのメモリーカードを返還したが、1つの古いSDカードは「刑事手続きに関連する可能性がある」との理由で押収されたままだ。

 グレイゾーンによれば、クラレンバーグの突然の尋問は、イギリスおよびアメリカの情報機関の陰謀に関する、彼の世間の注目を集めた報道と関連している可能性がある。クラレンバーグは過去1年間にわたり、トーリー党の国家安全保障強硬派がブレグジットを利用し、ボリス・ジョンソンを首相に据えるという報道を行った。2022年10月には、イギリスがクリミアとロシア連邦を結ぶケルチ橋を爆撃するとされる計画を暴露した。さらに先月、彼は、9/11のハイジャッカーの2人はCIAとサウジアラビアの情報機関が共同で採用した人間であった可能性を示唆する秘密文書について報じている。

警察署や市役所が年金改革に反対する抗議活動中に破壊される(動画)

<記事原文 寺島先生推薦>
Police station, town hall vandalized amid pension reform protest (VIDEO)
French security forces used tear gas to disperse a demonstration in the city of Lyon
フランスの公安部隊は、リヨン市内のデモ行進を分散するために催涙ガスを使用
出典:RT 2023年5月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月7日

(抗議活動の様子を伝える動画は原文サイトからご覧下さい。訳者)

 金曜日(5月26日)、議論が高まっている年金改革の件も含む政府の政策に反対する集会中に、抗議活動者たちが、リヨン市内でフランスの警察と衝突した。この暴動により、市内で火事が発生し、公共施設や商業施設が破壊された。

 警察や地元当局の推定によると、50程度の左派勢力や労働組合が組織した、いわゆる「豪華大衆祭」に、少なくとも300人が集まったという。この反政府運動は、当初平和的に行われており、「お祭り」やそれに合わせた衣装、歌、さらにはオーケストラの演奏までが予定されていた。

 しかしその後、手がつけられなくない状況になり、抗議活動者らの中には、リヨン市の第1地区にある市役所や、地元警察署を標的にするものも現れたと、地元の県当局は報じた。ソーシャルメディア上で流れた映像でも、暴動者らが石で窓を割り、街中で家具が燃やされ、が映されており、バリケードを張ろうとする姿が映されていた。

 地元警察が催涙ガスを使って、暴動者らを分散させようとする中、一人の抗議者が逮捕された。リヨン市当局は、「過激活動派」が、市内の住民らの「保安を危険な状態にする許されない行き過ぎた行為」を行ったと強く非難し、警察による催涙ガスの一斉射撃があったが、そのような警察の取り締まりのおかげで、住民や建造物が更なる被害を受けることから守られた、とした。



関連記事:100人以上の警官が、フランスの労働記念日の抗議活動中に負傷

 第1地区のヤスミン・ブアッガ地区長も、この発言に共鳴し、ツイッターでこう投稿した。「人気のある平和な祭典が、暴力的な人々に乗っ取られ、これらの人々により、略奪や焼き打ちが行われ、地方公共団体の業務が阻害された」と。

 フランスはここ数ヶ月間、全国規模での抗議活動で揺らいでいるが、それはエマニュエル・マクロン大統領が、定年を62歳から64歳に引き上げる計画を立てていることに対するものだ。4月にマクロン大統領は 憲法の特別な規定を用い、投票を行わないまま、自身の改革案を国会の下院で通過させた。このことが国民からの怒りに火をつけた。

 野党からの反発にもかかわらず、フランス憲法評議会は、年金体系を改革するというマクロン大統領の動きを支持した。さらに同評議会は、この件に関して住民投票を実施するという提案を退け、その理由を、憲法上の規定に合致しないためだとした。

元独首相夫人が第二次世界大戦戦勝式典への出席を理由に職を剥奪される。

<記事原文 寺島先生推薦>
Ex-German chancellor’s wife fired for attending WWII victory celebration
So-yeon Schroeder-Kim was dismissed after visiting the Russian Embassy in Berlin to commemorate the defeat of the Nazis
ソー・イオン・シュレーダー・キム氏が職を剥奪されたのは、ナチスの敗北を記念するためベルリンのロシア大使館を訪問したからだった。
出典:RT 2023年5月16日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月30日



ソー・イオン・シュレーダー・キム夫人同伴のゲアハルト・シュレーダー元独首相© Getty Images / Sean Gallup


 ゲアハルト・シュレーダー元独首相夫人であるソー・イオン・シュレーダー・キム氏が、事業開発業者のNRW社で職を解かれたのは、同氏が戦勝記念日を祝福するため、ベルリンのロシア大使館を訪問したからだった。

 「シュレーダー・キム夫人はすぐに職を解かれ、当NRWグローバル・ビジネス社との雇用関係は無条件で終了しました」とNRWの報道官は火曜日(5月16日)ドイツの報道機関に述べた。

 同社の説明によると、同社は、韓国代表として勤務していたシュレーダー・キム夫人に、「微妙な問題、特にロシアやウクライナでの戦況について発言すべきではない」、と数回はっきりと伝えていたという。

 今回の措置は、シュレーダー・キム夫人と夫が、5月9日にロシア大使館を訪れ、第二次世界大戦でナチス・ドイツが敗北した78周年を祝う招待会に参加したことを受けてのことだった。この催しには、ドイツの複数の政治家も参加しており、右派大衆主義政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」党の共同党首ティノ・クルパラ氏や「気候変動対策とエネルギーに関する委員会」の委員である左翼党のクラウス・エルンスト氏も参加していた。

 シュレーダー氏自身も、ロシア当局との繋がりを維持していることで、反発を受けている。元独首相のシュレーダー氏は、首相の座にいた1998年から2005年までの間、ロシアと良好な関係を構築し、ノルド・ストリームやロシアの国営石油会社であるロスネチフでそれぞれ幹部をつとめていた。



関連記事:独元首相が「ロシアとの繋がり」を理由に党を除名されそうになったが、その危機を回避した

 シュレーダー元首相はウクライナでのロシアの攻撃に対して何度も反対の声をあげてきたが、自身がプーチン大統領と距離をとることにも疑問の声をあげ、「何も良いことをもたらさないだろう」としてきた。ロシア側が軍事作戦を開始した直後、シュレーダー元首相は個人的にモスクワに赴き、プーチン大統領と面会した。それ以来同元首相は、ロシアは今の紛争について交渉による解決を模索していると主張し、 「プーチン大統領と話をする機会」を模索し続けると誓約している。

 元首相の立ち位置は、与党社会民主党(SPD)の他の議員らとは相いれず、先日、同党の複数の党員が、未遂には終わったが、シュレーダー元首相を除名処分にすることを求めたこともあった。しかし昨年、社会民主党は、シュレーダー元首相が持っていた議員特権を剥奪することには成功した。

 現職のオラフ・ショルツ首相政権下で、社会民主党は、ロシアとの繋がりや、ロシア原産のエネルギーへの依存を減らそうとしている。さらにショルツ首相の指揮の下で、ドイツ当局はウクライナ軍に何十億ドルにも相当する武器支援を供給してきた。

米国はノルド・ストリーム破壊工作の役割を「隠蔽」しようとしている(シーモア・ハーシュ)

<記事原文 寺島先生推薦>

US trying to ‘cover up’ Nord Stream sabotage role – Seymour Hersh

出典:RT 

2023年3月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日


CIAはパイプライン破壊の代替ストーリーをメディアに提供するよう指示されている、とベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュは述べている。



資料写真.ノルド・ストリーム2から流出するガス© Getty Images / Swedish Coast Guard


 ピューリッツァー賞受賞のジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、ロシアの海底パイプライン「ノルド・ストリーム2」の破壊にワシントンが関与したことを隠蔽するために、米国が意図的にメディアに偽の記事を提供したと主張した。

 ベテラン記者シーモア・ハーシュは、水曜日(3月22日)に自身の「Substack」上に投稿した記事で、CIAはベルリンの情報機関BNDと共同で、ノルド・ストリーム2の爆破に関する「代替案」をアメリカやドイツのマスコミに提供する偽装記事の作成を任されていた、と主張している。

 「情報機関の言葉を借りれば、バイデンがパイプラインの破壊を命じたという主張を否定するために、CIAは『報道機関を動かす』ことになった」と、ハーシュは外交情報に通じた匿名の関係者を引用して書いている。

 そして、CIAが任務を完了し、ドイツの協力を得て、ニューヨーク・タイムズ紙とドイツの週刊誌『Die Zeit』に記事を掲載したことを指摘した。この記事は、「親ウクライナ派」のグループが行ったとされる「その場限りの『オフレコ』作戦」に言及しており、豪華なヨットを使ってノルド・ストリームに爆発物を仕掛けた、とされている。


関連記事:「明らかに」米国がノルド・ストリームを爆破した(フランスの政治家の発言)


 「それは、アメリカの情報機関がドイツに伝え、あなたの話の信用を失墜させることを目的とした完全なでっち上げだった」と、アメリカの情報機関の関係者がハーシュに語ったと言われている。

 「CIA内部の偽情報専門家は、プロパガンダの作戦は、受け取る側の人間が、望まない真実を矮小化したり置き換えたりできるような話を必死に求めている場合にのみ機能することをよく理解しています。そして、問題となっている真実は、ジョー・バイデン大統領がパイプラインの破壊を許可したということです」と付け加えた。

 ハーシュは2月、昨年9月に起きたガスパイプライン「ノルド・ストリーム1」と「2」の爆発事故に関する爆弾レポートを発表し、ワシントンがこの攻撃を画策したと非難した。ホワイトハウスは責任を否定した。先週(3月第3週))、欧米の複数のメディアが、犯人はウクライナに関係している可能性があると主張した。モスクワは、この報道を 「メディアによる協調的なデマキャンペーン」と断じた。

セイモア・ハーシュがノルド・ストリーム破壊工作について新たな発言

<記事原文 寺島先生推薦>

Seymour Hersh makes new Nord Stream sabotage claim

出典:RT

2023年3月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日

ピューリッツァー賞受賞者のシーモア・ハーシュは、米国がパイプラインを爆破したのは、ウクライナに対するドイツの支援不足に不満があったからだと主張した。



エルマウ城(南ドイツ)で行われたG7首脳サミットで、ドイツ首相のオラフ・ショルツ(左)が隣の米大統領ジョー・バイデンに話しかけている© AFP / Lukas Barth


 ジョー・バイデン米大統領がノルド・ストリーム・パイプラインの破壊を命じたのは、ロシアと対立するウクライナに対してオラフ・ショルツ独首相が提供した支援が気に入らなかったらだと、ベテラン調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが主張している。

 ハーシュは、最初、2月に発表した記事で、ワシントンがヨーロッパの重要なガス供給ルート(ノルド・ストリーム)を破壊したと非難し、金曜日(3月24日)に発表した中国新聞とのインタビューで、さらなる主張を展開した。

 「(米国)大統領は、ショルツ首相が、(キエフに)もっと銃や兵器を投入することに前向きでないことを恐れていた。それだけです。それが怒りなのか、罰なのかはわからないが、結果として西ヨーロッパを通る主要な動力源を断ち切ってしまうことになってしまいました」とハーシュは主張している。

 米国はノルド・ストリーム攻撃への関与を否定しようとしているが、「欧州は、今、危機的状況にある」ので、バイデンは今後数ヶ月で「自分のしたことに対して多くの批判」を受けるだろう、とハーシュは主張した。

 ハーシュは、パイプラインを破壊する「仕事を最初に依頼された人々」は、2021年末ころ、ジェイク・サリバン米国国家安全保障顧問から連絡を受けたと主張した。


関連記事:ノルド・ストリーム2の近くにデンマーク海軍の存在(メディア報道より)


 ロシアのガスをドイツ経由でヨーロッパに届けるために建設されたノルド・ストリーム1と2に爆薬を仕掛ける当初の目的は、「(米国)大統領が(ロシアの)プーチン大統領に『(ウクライナで)戦争をするならパイプラインを破壊する』と言える選択肢を与えるためだった」とハーシュは主張した。




関連記事:米国はノルド・ストリーム爆破への関与を隠蔽しようとしている(シーモア・ハーシュの主張)


 バイデン自身はその姿勢を公然と認めていたが、「残念ながら、欧米のマスコミの人たちは忘れてしまったようだ」とハーシュは述べている。

 モスクワのウクライナでの軍事作戦開始のわずか3週間前、バイデンは2月7日の記者会見で「もしロシアが侵攻したら...ノルド・ストリーム2はもう存在しないだろう。我々はそれに終止符を打つだろう」と警告している。

 ハーシュによれば、バイデンが昨年9月にバルト海底で機雷の爆破を命じることを決めたのは、アメリカの視点から見て紛争が「ウクライナでうまくゆきそうもない」と考えたからだ、という。ハーシュが 「バイデン大統領が熱心に支援したアメリカの戦争」と表現したものは、その時期、「せいぜい膠着状態」だったのだ。

ノルド・ストリーム近辺で発見された謎の物体は何か?

<記事原文 寺島先生推薦>

Mysterious object found in vicinity of Nord Stream explained

出典:RT

2023年3月29日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月7日

発見されたのは使用済みの発煙ブイであることが判明した、とデンマーク・エネルギー庁が発表した。


© Danish Defence Ministry


 デンマーク・エネルギー庁は水曜日(3月29日)、ノルド・ストリーム2の爆発現場付近で発見された謎の物体を引き揚げ、それが廃棄された発煙ブイであることが判明した、と発表した。

 「調査の結果、対象物は視覚的標示に使用される空の海煙ブイであることが判明した。この物体は危険なものではない」と、同庁は声明で述べた。

 この物体は今月初め発見されたもので、ロシアのプーチン大統領はテレビのインタビューで、昨年9月に破壊工作でパイプラインが破られた場所から約30キロ離れたガスプロム社の調査中に発見されたことを明らかにした。

 デンマークは、パイプライン事業者であるノルド・ストリーム2 AGの代表を引き揚げに参加させた。同時に、同国はロシアに対し、ノルド・ストリーム破壊工作の調査への参加を拒否している。デンマークのラース・ラスムセン外相は、デンマーク、ドイツ、そしてスウェーデンの3カ国が行っている調査は、これらの国の強力な「法の支配」を考えれば十分だと主張している。



関連記事:クレムリンは国連によるノルド・ストリーム調査結果に「遺憾」


 このブイの引き揚げは、国連安全保障理事会が月曜日(3月27日)、パイプラインの爆発に関する国際的な独立調査を求める ロシアが提案した決議案を否決した後に行われた。この決議は、ロシア、中国、ブラジルのみが支持し、他の12名の常任理事国および臨時理事国は棄権した。モスクワの国連常任代表であるヴァシリー・ネベンジアは採決後、「ノルド・ストリーム破壊工作の背後に誰がいるのかという疑念は増すばかりだ」と述べた。

 先月、ベテランジャーナリストのシーモア・ハーシュは、この破壊工作がアメリカ大統領ジョー・バイデンによって直接指示されたアメリカとノルウェーの共同作戦であるとする爆弾的な調査結果を発表した。この工作の最終目的は、ドイツをロシアからの安価なエネルギー供給から永久に切り離し、ウクライナ紛争におけるドイツの支援を強固なものにすることであった。

 ワシントンとオスロはこの疑惑を強く否定し、作り話だと切り捨てた。ロシアの大統領は先週、ハーシュの結論に「完全に同意する」と述べた。

米国スパイの言葉:「親ウクライナ集団」がノルド・ストリームを破壊した(ニューヨーク・タイムズ紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

US spies say ‘pro-Ukrainian group’ bombed Nord Stream – NYT

出典:RT

2023年3月7日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月5日

匿名の工作員が不特定多数の情報を引用し、パイプライン攻撃に対する米国の責任を否定した。



2022年9月28日、バルト海のアットシーで、ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の漏洩から発せられるガスの放出が確認された。© Swedish Coast Guard via Getty Images


 出処不明の新しい情報によれば、2022年9月のノルド・ストリーム・パイプラインに対する攻撃の背後に「親ウクライナのグループがいたらしい」と、ニューヨーク・タイムズ紙が匿名の米国当局者の話を引用して、火曜日(3月7日)に報じた。

 ニューヨーク・タイムズ紙の匿名の情報源は、「破壊工作員はウクライナ人かロシア人、あるいはその組み合わせである可能性が高い」とし、「アメリカ人やイギリス人は関与していない」と述べている。さらに彼らは、ウクライナのウラジミール・ゼレンスキー大統領や彼の「最高幹部」が関与した証拠もなく、「いかなるウクライナ政府関係者」も攻撃を指示したとは言えないとした。

 匿名の関係者は、誰が「作戦」を指示し、費用を負担したのかについては言及できず、「ウクライナ政府またはその治安当局とつながりのある代理勢力によって、表に出ない形で攻撃が行われた可能性がある」と述べている。




関連記事:西側はノルド・ストリーム爆破の調査結果を隠蔽するつもりのようだ。フランスの一将軍の発言


 バルト海の海底で4本のパイプラインのうち3本をバラバラにした爆弾は、「軍や諜報機関に勤務しているようには見えない」ものの、「過去に政府の専門訓練を受けた可能性がある」経験豊富な潜水士たちが仕掛けた「可能性が高い」と、匿名の関係者は主張している。

 また、バイデン米大統領とその側近はノルド・ストリームへの攻撃を「許可していない」とし、爆破に「米国の関与はない」とも述べた。これらの発言は、米国が爆破を指示し、爆発物を仕掛けたと非難した調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュの先月の報告書に正面から反論している。

  西欧の当局者もこの攻撃が国家によるものだと考えているが、「米国の当局者は、この作戦が国家によるものだと考えていると公言していない」と同紙は指摘した。

 「ウクライナとその同盟国」がパイプラインを破壊する「潜在的には最も論理的な動機」を持っていると考える当局者もいる。同盟国がどこを指しているかははっきりしない。ただ、ポーランドはノルド・ストリームを最も露骨に批判しているし、米国とNATO圏全体は過去1年間に1000億ドル相当以上の武器やその他の援助をキエフに送っている。

 「キエフやウクライナの代理人に責任を押し付けるような調査結果は、欧州の反発を招き、欧米がウクライナを支持する統一戦線を維持することが難しくなる」と、同紙の記者は指摘している。

 ノルド・ストリームの爆発は、ロシア人ジャーナリストのダリヤ・ドゥギナが死亡したモスクワの自動車爆弾テロ事件から5週間後に起こった。米国の匿名スパイは昨年10月、ゼレンスキーではなくウクライナ政府内の「関係者」が犯人だと考えていると同紙に語ったが、誰の名前も挙げることはしなかった。キエフは公式にいかなる責任も否定している。

 「ノルド・ストリーム作戦の後、ワシントンでは、ウクライナ政府の一部が作戦にも関与しているのではないかという、ひそかな憶測―そして心配―があった」と、タイムズ紙は火曜日に報じた。

 同紙の取材に応じた匿名の関係者は、ウクライナ政府が関与している「証拠は今のところない」とし、ジョー・バイデン大統領のゼレンスキーに対する信頼は「着実に高まっている」と述べた。同紙は、キエフが米国に「深く依存している」にもかかわらず、米国の諜報機関が「ウクライナの意思決定に対する視界が限られている」ことは認めた。

ノルド・ストリームにおける環境的大惨事

<記事原文 寺島先生推薦>

Environmental Сatastrophe at Nord Stream

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日



バルト海のネズミイルカ


 ヨーロッパの科学者によると、海底ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の損壊は、バルト海の生態系を破壊することにつながったという。この破壊工作の結果はさまざまだが、自然への累積ダメージは甚大である。

 パイプラインの爆発がもたらした直接的な影響は、海洋動物の死であった。リサーチ・スクエアの調査によると、爆発は海洋環境に「連鎖反応」を引き起こし、タラやネズミイルカを含む特定の魚種や海洋動物の絶滅につながる可能性があるという。

 ネズミイルカは、北半球の海域に広く生息する小型のクジラ類で、その数はおよそ70万頭だ。しかし、バルト海にいるその個体群は、遺伝子的にも外見的にも、他の代表種とは異なっている。その数は500頭強で、実は絶滅の危機に瀕している。

 ネズミイルカは通常、5月と10月にスウェーデン領海のゴバーグズ(Goburgs)と、ミドスジェバンケン(Midsjöbanken)の周辺に集まってくる。これらは爆発地点から約40km東に位置する。この爆発により、半径4km以内の動物が死亡し、50km離れた動物が聴覚障害を負った可能性がある。科学者たちは、バルト海の亜種の動物が1匹でも死んだり怪我をしたりすると、その小さな集団全体に大きな影響を与えることを強調する。

 デンマーク自然保護協会のマリア・ジェルディング(Maria Gjerding)会長は、この状況がバルト海の運命に深刻な懸念をもたらすと指摘した。報告書によると、爆発によって海水の状態が悪化した。この海域は、すでに非常に深刻で危機的な状態になっているのだ。

 WWF(世界自然保護基金)のボー・オクスネビャーグ(Bo Øksnebjerg)デンマーク事務局長もこの考えに同意している。彼は、被害は水中に入り込んだ有害物質によって引き起こされたとも考えている。爆発とそれに伴う噴流によって、有毒物質を含む25万トン以上の汚染された海底がかき回された。ボーンホルム空洞の周辺にいる魚の内分泌系に有害物質が影響したため、タラはかなりの被害を受けたと考えられる。

 有害物質の中には、船体や技術構造物(杭、柱など)の汚れを防ぐための塗料の成分として使われているトリブチル錫(TBT)がある。これも爆発でかき回された海底に長く蓄積されてきた。報告書の作成チームを率いたオーフス大学環境科学部のハンス・サンダーソン上級研究員によれば、TBTは海洋動物の繁殖能力を破壊する。

 つまり、今、バルト海の海洋環境は、まさに生き残るために必死になっているのだ。

 デンマークの社会民主党のマグナス・ホイニッケ環境相は、「一見、影響は局所的なものに見えるが、バルト海はすでに深刻な状況にあり、そのため、我々はもちろん、その影響を強く懸念している」と述べている。デンマーク政府は継続的に監視し、バルト海周辺の近隣諸国と情報を共有することで、影響の全体像を把握し、適切な対応ができるようにすると述べている。しかし、ドイツ、デンマーク、そしてスウェーデンの3カ国は、まだ爆発事故の調査を終えておらず、一般市民や他の国には一切情報を提供していない。したがって、バルト海の生物多様性保全の問題は未解決のままである。

 以前は、ガスパイプラインの爆発が環境に与える影響について、メディアは主に水中や大気中への天然ガスの排出について書いていたことに留意する必要がある。特に水中では、その規模を評価するのは容易なことではない。

 排他的経済水域で破壊工作が行われたデンマーク、スウェーデン、そしてドイツは、流出の規模について異なるデータを発表した。しかし、いずれも大気中への排出を強調している。

 メタンの気候への影響を調べるには、二酸化炭素(CO2)換算するのが一般的だ。地球温暖化係数は、100年または20年の観点で計算さ れる。前者の場合、メタンの「温暖化」効果はCO2の28倍、後者の場合、84倍となる。

 ドイツ連邦環境庁(UBA)は、バルト海の海底に敷設されたパイプラインの爆発により、100年間で750万トンのCO2に相当する30万トンのメタンが放出されたと推定した。これは、同庁の報告書によると、ドイツの年間排出量のおよそ1%に相当する。

 デンマーク・エネルギー庁の数字は少し違う。4つの流出のうち2つは、デンマークのボーンホルム島付近だった。デンマークでは7億7800万立方メートルの天然ガスが計測され、これは1460万トンのCO2に相当し、2020年に同国が排出する全温室効果ガスの32パーセントに相当する。

 スウェーデンは、大気中の二酸化炭素よりもメタンの方が早く減衰するため、20年という予測期間をより正確だと考えている。「この漏洩は、20年間で4000万トンの二酸化炭素に相当する。これは、昨年のスウェーデンの総排出量4,800万トンに匹敵する」とスウェーデン・テレビ・ニュース(Svt Nyheter)はスウェーデン環境保護庁の環境経済学者を引用して書いている。

 ノルド・ストリームの破壊に関連して、もう一つ憂慮すべき事実がある。第二次世界大戦後、ドイツの非武装化に関するポツダム会議の決定により、ドイツの化学兵器はバルト海の底に埋められた。そのうちのかなりの部分が、ちょうど爆発が起こった近くのボーンホルム島の地域にある。3万2千トンの軍需品と1万1千トンの化学薬品が投棄されたのだ。70パーセントがマスタードガス、20パーセントがヒ素を含む物質である。今のところ、これらの危険な埋蔵地に重大な事態は起きていないが、科学者によると、海底が不安定になれば、深刻な事態につながる可能性があるという。

西側はノルド・ストリーム爆破犯人を知っている(タイムズ紙)

<記事原文 寺島先生推薦>

West knows who is responsible for Nord Stream attack – The Times

出典:RT

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日

 妨害工作の背後にいるウクライナ人容疑者の名前は、「何ヶ月も前から諜報界に流れていた」と、タイムズ紙は指摘している。

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2022年9月27日、バルト海で発生したガスパイプライン「ノルドストリーム2」の漏れから発せられるガスの放出。© Getty Images / Swedish Coast Guard via Getty Images


 西側情報機関は、昨年のノルド・ストリーム爆破事件がウクライナと関係のある人物によって計画されたものであるとほぼ即座に判断したが、キエフとベルリンの間の外交問題を避けるためにこの情報を隠すことを選択したと、水曜日(3月8日)にThe Timesが報じた。

 タイムズ紙によると、スカンジナビアの調査団は、2022年9月、ロシアとドイツをバルト海底経由で結ぶ海底ガスパイプラインが攻撃された1週間後に、それが「あるウクライナ発の民間企業によって」仕掛けられたことを知ったという。彼らはブリュッセルで行われた情報説明会でこの情報を入手したとのことだ。

 「(攻撃の)民間支援者の疑いのある名前は...数ヶ月前から諜報界に出回っていたが、明らかにされていない」と同紙の記事は伝えている。

 タイムズ紙は、名前を公表することなく、犯人はキエフの政府関係者ではないウクライナ人であるとした。また、容疑者は「変わったテレホンカードを残しているようだ」とも指摘しているが、詳細は明らかにしていない。

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関連記事:ノルド・ストリームに関する新しい報道は「組織的なデマ」のように見える(モスクワ)

 
 また、この問題の調査がなぜこのように遅いペースで進んでいるのかについての質問を一切受け付けないよう、調査団は指示されているともこの記事は伝えている。

 タイムズ紙は、NATO当局が「ウクライナがドイツと公然と争いになることから守りたかった」ようだと指摘した。事件当時、ベルリンは同盟国の支援なしに、キエフにレオパルト2戦車を供給することに消極的だった。ドイツは2023年1月に考えを改め、他の西側諸国も戦車納入を約束した。

 この報道は、ニューヨーク・タイムズ紙が火曜日(3月7日)、匿名の情報源を引用して、パイプラインへの攻撃の背後に「親ウクライナ派」のグループがいた可能性があると主張したことを受けたもの。同日、ドイツのメディアは、この事件を調査している捜査当局が、攻撃に使われたとされるヨットが、2人のウクライナ人が所有するポーランドにある会社のものであることを発見したと報じた。

 これらの報道について、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、この疑惑は「メディアによる協調的なデマキャンペーン」であり、真犯人から注意をそらそうとする試みのように見えると述べている。

 先月、米国の著名なジャーナリストであるシーモア・ハーシュが、ノルド・ストリーム攻撃を画策したのはワシントンであるとする調査結果を発表した。ホワイトハウスは責任を否定しているが、1月にはヴィクトリア・ヌーランド米国務次官(政治担当)が、ノルド・ストリーム2がもはや稼働していないことを知り、ワシントンは「とても喜んでいる」はずだと述べている。

ポーランド大統領、ノルド・ストリームの爆破は欧州にとって「有益」と発言

<記事原文 寺島先生推薦>

Polish president claims Nord Stream blasts were ‘beneficial’ for Europe

出典:RT

2023年3月8日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月6日

昨年の破壊工作は、モスクワの「支配」計画を混乱させたとアンジェイ・ドゥダは主張する。



資料写真:ポーランド大統領アンジェイ・ドゥダ© Global Look Press / Mateusz Slodkowski


 ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領が水曜日(3月8日)にCNNで語ったところによると、ロシアのガスをヨーロッパに供給するノルド・ストリーム・パイプラインの破壊は良いことであったという。ドゥダ大統領は、この破壊工作によって、大陸がモスクワの「支配」計画から解放されたと主張し、ポーランドのロシア産ガスへの依存が解消されたと付け加えた。

 この発言は、2022年9月に起きたパイプラインへの攻撃の背後に親ウクライナ派勢力がいた可能性があるというメディアの報道を受けたもの。ドゥダは、こうした主張を裏付けることはできないとしながらも、ノルド・ストリームが消滅すれば、欧州にとって「有益」であると主張した。

 ポーランドはガスパイプライン計画に大反対し、攻撃のおよそ1カ月前の2022年8月には廃棄を求める働きかけまでしていた。ドゥダはまた、このプロジェクトを、ロシアとの関係における欧州の宥和戦略の一部と呼んだ。




関連記事:ウクライナ国民がノルド・ストリーム爆破に関わっていた容疑は「ありえる」とドイツは主張


 今週初め、ニューヨーク・タイムズ紙は、米国の情報筋を引用して、2022年9月の攻撃の背後に「親ウクライナ派」のグループがいたと報じた。同誌はまた、西側の情報機関は妨害工作の背後にいる人物の身元を把握していたが、容疑者がウクライナと関係があるため、ベルリンとキエフの間の対立を避けるためにこの情報を隠すことに決めたと述べている。

 アラブ首長国連邦を訪問中にCNNのインタビューに応じたポーランド大統領は、ポーランドのMiG-29戦闘機をすべてキエフに引き渡すことも提案したが、それはあくまでも国際的連携の一環であるとした。「我々はこれらの戦闘機を提供する準備ができており、ウクライナもすぐに使用する態勢を整えられると確信している」と述べた。しかし、ワルシャワがソ連製戦闘機の数を、まだどれだけ保有しているのかについては明言しなかった。

 ドゥダは、ウクライナのパイロットに米国製F16戦闘機の操縦訓練を行うよう求め、キエフの軍隊はいずれにしても「NATOの水準に達する」ことを熱望していると発言した。「ウクライナ人パイロットの訓練は重要であり、必要不可欠だ」と彼は付け加えた。

 CNNによると、現在、少なくとも2人のウクライナ人パイロットが米国に滞在しており、フライトシミュレーター(模擬操縦訓練装置)を使って、米国製の各種軍用機の操縦を習得するために必要な時間を確認しているという。

CIAの隠れ蓑・前衛部隊がジョージア(旧名グルジア)のカラー革命をそそのかす。

<記事原文 寺島先生推薦>

CIA Front Threatens Color Revolution in Georgia

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:Internationalist 360

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月31日

グルジア 1
世界中でカラー革命を煽る大富豪ジョージ・ソロス(左)、USAID長官サマンサ・パワー(右)


 2023年3月の第2週、ジョージア(旧名グルジア)の首都トビリシで、数千人が街頭に繰り出した。そして「海外からの収入が20%を超えるNGO」に「外国代理人」としての登録を義務付ける法律案に激しい憤りをぶつけた。

 彼らは警察と激しく衝突し、あらゆる場所に反ロシアの落書きをし、反乱的で好戦的なスローガンを唱え、EU、ジョージア、ウクライナの国旗をあたり構わず目立つように掲げた。EUと米国の当局者は、これらの広く報道された光景にぴったりするような、敵意あるコメントが絶え間なく流した。

 悪名高い戦争タカ派でUSAID(米国国際開発庁)長官のサマンサ・パワーは、ジョージアの国会議員に「外国代理人」法の提案を「取り下げ」よう呼びかけた。そして、この新法は「欧州-大西洋地域に関わるジョージアの将来像とジョージア人が経済的社会的その他の願望を実現する能力・技量を深刻に脅(おびや)かすものである」という、不可解な宣言をした。

 ジョージアの提案する外国代理人法は、欧州=大西洋に関わるジョージアの将来像と、ジョージア人が経済的社会的その他の願望を実現する能力・技量を深刻に脅(おびや)かすものである。私はジョージア議会に対し、これらの法案の取り下げを要請する。―サマンサ・パワー (@PowerUSAID) 2023年3月2日

 米国務省のネッド・プライス報道官は、外国代理人法に賛成したジョージアの議員に対し、威嚇的にこう警告した。「トビリシが期待している欧州=大西洋地域との将来関係が危うくなった場合」、その責任をおまえたちが負うことになるぞ、と脅迫したのである、さらに、この法律は「ジョージア人が自分たちのために描いた将来像、そして私たち米国が仲間として、その実現を援助し続けることを決意している将来像」と「一致しない」と断言した。

 ワシントンが外国代理人法に猛反対するのは驚くべきことではない。ジョージアのメディアや人権団体を含めた数千の団体は、過去30年間にわたって、全米民主化基金(NED)と米国国際開発庁(USAID)から資金提供を受けてきた。ちなみに、サマンサ・パワーは現在、USAID長官である。この隠しようもない事実、だが今まできちんと知られてこなかった事実を、これ以上に暴露するような改革は、今後、難しい問題を引き起こすだろう、その法案は、これら数千の団体の自立性と、これらの団体がこれまで追求してきて邪悪な目的について、答えることが難しい問題を提起するからだ。

 これらの数千の団体が米国からの資金提供の実態を隠蔽しなければならないことは、これらのNGOが公然とトビリシでの抗議活動の最前線に立っていることによって、十分に証明された。この法案が成立すれば、NEDから資金提供を受けているNGOの多くが、その海外資金を公開しなければならなくなるわけだから、ソーシャルメディアを使って不服の声を上げたのも当然だ。

 トビリシの国会議事堂前に集まった数千人が議事堂を襲撃する直前に、幸いにも、ジョージア政府は外国代理人法を撤回した。NEDとの関係を法律で公然と認めなければならなくなることを、抗議者たちが全面的に拒否した理由は何だろうか。

 NED(全米民主化基金)は1983年に設立されたのは、アメリカの諜報機関CIAが数々の恥ずべきスキャンダルに巻き込まれ、世間を騒がせた後のことである。このNEDの設立には、当時の中央情報局(CIA)長官であったウィリアム・ケーシーが中心的な役割を果たした。ケーシーは、「敵国政府を不安定化させ崩壊させるための武器となるような、海外の反政府グループやメディア、その他の反政府活動家に資金を提供する公的な仕組み」を構築しようと考えたのである。裏工作によって「敵国政府を不安定化させ崩壊させる」ことは、これまでCIAの専売特許であったものだが、もはやそれができなくなったからだ。それでそのことを可能にするような公的仕組みをつくろうとしたわけである。

 かくしてつくりあげられたNED(全米民主化基金)は、非常に狡猾な組織でありながら、ほとんどその実態は明らかになっていない。だから、この組織のおかげで、帝国アメリカは、いつでも外国政府を屈服させ、その政府が内外の問題でワシントンの承認する道から少しでも外れることがあれば、必要に応じて、その政府を完全に転覆させることができる。グルジアの2003年の「バラ革命」は、その見事な実例を提供している。


CIAは「落書き」アーティストにまで金をばらまく

 NEDは発足後すぐに東欧の共産主義撲滅に乗り出し、ポーランドの「連帯」のような活動家組織とその運動を支援した。しかし、ユーゴスラビアは今世紀に入るまで、NEDの干渉をかたくなに拒み続けた。2000年12月のワシントンポスト紙の非常に正確で詳細な調査報道は、次のような事実を詳細に描き出した。すなわち、それより2カ月前の10月に、ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ大統領をついに追放した自然発生的「草の根」反乱は、実はCIAの前線部隊であるNEDやUSAIDが密かに資金と指示を出していたのである。

 ミロシェビッチ大統領を貶(おとし)めるために、チューインガムや炭酸飲料を販売していた米国の広告業のプロたちが、キャッチーなスローガンや人目を引くPRその他の今までにない宣伝方法を考案していた。また事前かつ現地で大規模な世論調査が水面下で実施され、そのため無数の市場調査用の消費者グループが結成された。それは売り込み戦略を路上で検証し完全に成功させるためだった。一方、国会議員候補者や活動家たちは、ジャーナリストの質問に答え、ミロシェビッチ支持者の主張に効果的に反論するために、あらかじめ「指示されたとおりに」行動する術を密かに指導された。

 学生活動家集団オトポール(Otpor、セルビア語で「抵抗」の意)にも、広範な訓練と支援が提供された。彼らは破壊的ではあるが非暴力的な手段によって政府権力を弱体化させる様々な方法を学んだ。たとえば、ストライキの組織化、シンボルを巧く使って大衆に宣伝する方法、「恐怖克服」の方法、その他。

 USAIDは、学生活動家が国中に反ミロシェビッチの落書きをするために5000本のスプレー缶を提供した。またオトポールは、ワシントンからの資金で、「世論調査、ビラまき、有料広告など、幅広い高度な広報技術」も採用した。その宣伝文言はすべて米国が資金提供した世論調査に基づいていた。だから「どんなときでも国民に何を言うべきかわかっていた」と、このグループの活動家の一人は自慢げに語った。

 「私たちの方法は、企業の販売戦略を政治に活用することだった。つまり政治運動もマーケティング部門を持たなければならないということだった。コカ・コーラをモデルにしたんだ」と、2005年にオトポールの指導者が明かした。


グルジア 2
2001年3月30日、セルビアのベオグラード。獄に捕らわれたスロボダン・ミロシェビッチ大統領のポスター。「彼を収容するのはいつになるか?」という、「人民運動オトポール」の宣伝文句が付けられている。Darko Vojinovic|AP


 CIA、NED、USAIDなどの米国政府機関によって、わずか1年の間に、公然かつ隠然と、合計数千万ドルが反ミロシェビッチのために投入された。当時、ユーゴスラビアの人口は約1000万人で、実質的に国民1人に数ドルの資金が割り当てられたことになる。

 ユーゴスラビアの平均月給が30ドル以下であったことを考えると、この資金は実に巨大な意味をもち、政権交代の足がかりとなる人員を簡単に集めることができたのである。同じことをユーゴにしたと考えると、人口比で勘定すれば、ベオグラード(セルビア政府)が米国の大統領選挙に影響を与えるために何十億ドルも費やすようなものだ。もちろん、そんなことはアメリカで合法であったり容認されたりするわけではないが。

 オトポールの成功は目覚ましく、大手メディアでの知名度も上がり、オトポールはビデオゲーム「もっと強い部隊、A Force More Powerful」の開発を始めた。プレイヤーは「実際の紛争で成功した方法を用いて、独裁者・軍事的占領者・腐敗した支配者に対抗する方法」を学ぶことになる。「最近の歴史から着想を得た」「12通りの別々の筋書き」を通してである。このビデオゲームは「非暴力抵抗運動や反対運動の活動家や指導者が使う」ことを意図しており、メディアや一般市民が変革の技術をより広く学ぶことを期待したものだった。

 オトポールによる変革の手順・見取り図は、2006年3月に発表され、その後数年以上も、繰り返し世界中に輸出された。NEDが提供したのである。この国際貿易の最初の輸出先はがジョージアだったというわけである。


政権転覆集団「クマラ(グルジア語でウンザリの意)」なんか、もうウンザリ・・・

 シュワルナゼは1970年代初頭から共産党第1書記としてグルジアを統治していた。その後、ソ連のベテラン政治局員となり、ミハイル・ゴルバチョフ政権では外務大臣・重要な改革派として冷戦終結に大きな役割を果たした。特に、アフガニスタン戦争の終結、ドイツの再統一、ヨーロッパからの赤軍の撤退、アメリカとの核兵器条約の交渉などである。

 ソ連崩壊後の1992年にシュワルナゼがグルジア大統領に就任した背景には、「ロシア支援のアブハジアと南オセチアの離脱運動」と「独立したばかりのグルジア共和国の装備不足の軍隊」が激しく対立する流血の内戦があった。この混乱を立て直すため、1992年3月、シェワルナゼは、グルジア国家評議会議長に選ばれた。最初は親露派であったが、1995年8月新憲法が採択され、11月大統領に選出されてからは反露派となり、彼の統治下でモスクワとトビリシの関係は概して良好ではなかった。

 一方、欧米諸国との関係は極めて良好であった。彼が指揮・監督した大規模な民営化は、アメリカやヨーロッパのオリガルヒを潤し、1997年の民法改正は外国資本の何千ものNGOの創設に道を開いた。トビリシは瞬く間に、米国の資金援助と軍事援助の最大の受益者のひとつとなった。シュワルナゼが大統領になってから10年目(2002)の終わりには、シュワルナゼはNATOと戦略的相互関係を結び、EUへの加盟を希望していることを明らかにした。

 2000年、オープンソサエティ財団の支部設立のためにトビリシを訪れたジョージ・ソロスは、シュワルナゼの個人的な賓客として歓迎された。ソロスは、当時のグルジア司法大臣ミヘイル・サアカシュヴィリにも会っている。サアカシュヴィリは国務省の奨学金で留学した米国のエリート大学を卒業した人物だ(そのエリート大学にはコロンビア大学も含まれている)。

 それから間もなく、若きサアカシュヴィリは鮮やかな転身を図って司法大臣を辞め、オープンソサエティ財団の支援を受けて政党「国民運動」を設立した。TV局ルスタビ2(Rustavi-2)を含む野党メディアへの、従来からあるソロスの資金提供も同様に強化された。そして、これらのメディアはシュワルナゼに対する批判的な発信をおこなった。それは、シュワルナゼ大統領をとりわけ醜く描いた風刺漫画や国家汚職に関する集中的な調査という形をとったのである。このようすを、トロント・グローブ・アンド・メール紙は、2003年2月、ソロスがグルジア政府を「打倒するための煉瓦を積み始めた」と、報じている。

 NEDとオープンソサエティ財団の支援を受けたグルジアの活動家ギガ・ボケリアは、2003年、「自由協会、リバティ・インスティチュート」を創設したNGOオトポールと会うためにセルビアに遣された。その結果、オトポールの代表者は、グルジアの首都トビリシに飛び、そこでシュワルナゼを平和的に打倒する方法を数千人に教えた。

その教えを受けて、彼らは、自分たちの「革命」集団を結成した(カッコ付きの「革命」集団で、実は政権転覆工作集団)。クマラとして知られるこの団体は、オトポールがミロシェビッチ大統領を追い落とした名声と宣伝戦略を大いに利用した(Kmara、グルジア語で「もういい、ウンザリ」の意)。NEDとオープンソサエティ財団の大規模資金が即座に流れ込んだ。

 この資金注入により、クマラは2003年11月のグルジアの大統領選挙に向けて、さまざまな宣伝物と戦略を開発することができた。投票前の10日間、TV局ルスタビ2はミロシェビッチ打倒のための米国のドキュメンタリー映画『独裁者打倒(Bringing Down a Dictator)』を繰り返し放送した。
訳注:Bringing Down a Dictator 2002年。セルビアの指導者スロボダン・ミロシェビッチの非暴力的敗北についての56分のドキュメンタリー。学生主導のオトポールの貢献に焦点を当てている。

グルジア 追加 1

 「最も重要だったのは映画だった」と、この国民運動の代表者は後に語っている。「映画を観せられたデモ隊は皆、ベオグラード(セルビアの首都)での政権転覆戦術を暗記していた。だから皆、何をすべきか知っていた。これはセルビアの政権転覆を丸写ししただけで、その音量を大きくしただけだった」

 選挙は、公式発表では親シュワルナゼ派の政党連合が勝利した。しかし、NEDの依頼でおこなわれた出口調査では、「公式結果は不正であり、野党勝利が明らかである」との情報が、すぐに、しかも投票が終わる前に流され始めた。トビリシの国会議事堂には、全国から集まった大勢の反政府活動家たちが、カッコ付き「革命」集団クマラが費用を負担したバスで押し寄せた。

 外にはスピーカーと映画スクリーンが設置され、TV局ルスタビ2がNEDによる反対世論の調査(出口調査)を最も顕著に伝える道具となり、若い活動家たちによる抗議活動の様子も映し出された。クマラが率いる全国的なデモは数週間にわたっておこなわれ、2003年11月23日には、活動家たちがバラの花を振り回して国会を襲撃し、運動は最高潮に達した。翌日、シュワルナゼは辞任した。

グルジア 3
ジョージ・ソロス(GEORGIA SOROS)の模擬葬儀:サアカシュヴィリのお面をかぶったジョージアのデモ隊が、ジョージ・ソロスの人形の入ったUSドルが貼られた棺を運ぶ(2005年12月14日、トビリシ)。ジョージ・アブダラゼ|AP
(訳註:ソロス資金のおかげで大統領になったサアカシュヴィリは、独裁者となり、エリートの腐敗と貧困問題は依然として解決されなかった。)



「ひどく期待はずれ」な革命

 2004年1月、サアカシュヴィリは大統領に就任した。その後10年間、彼はグルジア経済をさらに「自由化」し、残存する国営産業の民営化を加速させ、広範な反腐敗活動を主導し、国防費をGDPの9.2%という驚異的な水準にまで高めた。

 米国政府関係者やTI(Transparency International国際透明性機構)、世界銀行などの団体は、サアカシュヴィリがグルジアを最もビジネスのしやすい国のひとつにし、2003年から2013年にかけて70%の経済成長を遂げ、その間に一人当たりの所得は約3倍になったと評価した。しかし、帝国アメリカの機関誌「フォーリン・ポリシー」でさえ、「バラ革命」の結果は「ひどく期待はずれ」だったと認めている。遠大な変革は「実際には実現せず」、「エリートの腐敗は依然として続いている」からである。

 サアカシュヴィリが大統領を退任するまでにグルジアの貧困はわずかに減少しただけで、人口のおよそ4分の1は依然として絶対貧困率以下で暮らしていた。さらに言えば、グルジアは権威主義そのもので、民主主義のかけらもなかった。実際、サアカシュヴィリの支配は、多くの点で、シュワルナゼにはなかったような独裁主義であった。

 例えば、サアカシュヴィリは「超大統領」機構に代わって、さらに権限を集中した「超々大統領」機構を導入し、主要な分野で彼に一方的な権力を付与した。この権限を使って、自分の政策に反対する政党を追放しようとするなど、独裁的な策略が目白押しであった。

グルジア 5
バラク・オバマ、ミハイル・サアカシュヴィリ、デイヴィッド・キャメロン。
2012年5月21日、シカゴで開催されたNATOサミットで、サアカシュヴィリ(右)、英国のキャメロン首相と話すオバマ大統領。パブロ・マルティネス・モンシヴァイス|AP


 さらに深刻なのは、ザルブ・ジュバニア首相のような不審死への関与も疑われていることだ。サアカシュヴィリはグルジアの治安部隊に指示して、オリガルヒのバドリ・パタルカツィシヴィリなどのライバルを暗殺させたことで知られ、サアカシュヴィリの命令で刑務所は拷問とレイプの政治的温床となった。サアカシュヴィリの在任中、同国の受刑者数は4倍の2万5千人に達し、国民一人当たりの受刑者数はヨーロッパのどの国よりも多くなった。

 2012年10月の大統領選挙では、サアカシュヴィリの死に物狂いの不正工作(NEDの必死の支援があった)にもかかわらず、彼は政権を失った。それ以来、政党「グルジアの夢、ジョージアンドリーム」率いる連合がこの国を統治している。国内の反対派および海外のキエフ支持者は、ジョージアのこの政党が親クレムリンであると非難している。NED出資の「恥の連合、Shame Network」は最近の反政府運動の先陣を切った。

 しかし、実際には、「ジョージアンドリーム」党は、EUおよびNATOへの加盟を推進しながら西側との関係を強化、そしてモスクワとの共存を維持するという微妙なバランスを常に取ってきた。ロシアのウクライナ進攻の後、これを維持するのはますます難しくなり、トビリシに対して、はるかに大きく豊かで強力な隣国、すなわちジョージアにとって最大の貿易相手国の一つ、ロシアに制裁を課し、キエフに武器を送るようにという欧米の圧力が常に高まっている。

 2022年12月、イラクリ・ガリバシビリ首相は、同年2月24日以来、キエフからロシアにたいする「第二戦線」を開くよう繰り返し要請されたがそれを拒否したことは、温かくは迎え入れられなかった、と述懐している。

 トビリシ(ジョージア政府)が全面衝突を避けたいのは当然で、それは特に2008年8月のロシア=グルジア戦争における悲惨な敗走のためである。この戦争は、サアカシュヴィリが米国の後押しでアブハジアと南オセチアの民間人陣地を攻撃し始めたことに始まる。わずか5日間であったにもかかわらず、20万人もの人々が避難し、数百人が死亡した。

 政権党「ジョージアンドリーム」が特に外国代理人法を導入しようとしたのは、ロシアにたいする「第二戦線」を開いてロシアに制裁を加えることを従順に受け入れる政府のつくろうとするNEDの画策を阻止するためではなかったか考えられる。


あえてクーデターと呼ぶ?

 控えめに言っても、NEDとUSAIDの指紋は、2014年2月のウクライナのマイダン・クーデターの至るところに付着していた。カッコ付きの「革命」(すなわち政権転覆・クーデター)のあらゆる段階で、両団体が資金提供した個人や組織が主役を演じていた。

 オレフ・リバチュク(Oleh Rybachuk)は、マイダン・クーデターに至るまで、何年も、USAIDが資金提供したいくつかの反対派集団を引き回してきた人物だが、洗脳して騒動を起こしてきたことをあからさまに語っている。その2年前のマイダン・クーデターについても、キエフの10年前の「オレンジ革命」についても、「もう一度やりたい、是非やりたい」と言っているのだ。その資金を提供した大富豪ジョージ・ソロスも、2014年5月、自身のオープンソサエティ財団がマイダン関連の事件で「重要な役割を果たした」とCNNに語っている。

 しかし、現在のところ、メディアは、マイダン・クーデターを煽動したことに対して米国が果たした役割を無視するか、あるいは、それはロシアの「偽情報」だとか陰謀論だとして、この命題を否定している。ウクライナ紛争が始まって以来、欧米のジャーナリストたちが躍起になって否定しようとしているのは、この騒動が(普遍的に受け入れられるものではないにせよ)圧倒的人気を博した「民衆反乱」以外の何ものでもなかったいう意見である。ミロシェビッチやシュワルナゼらの打倒にワシントンが果たした役割を自慢するような主流メディアは、明らかに以上のような事実を抹殺している。

 このような動かしようのない事実の抹殺は、世界中でNEDやUSAIDに対する敵意が高まり、政府がこれらNEDやUSAIDの活動を制限したり全面的に禁止したりしようとする動きが広まっているからだろう。特にワシントンが特に敵意を抱いている政府が、そのような動きに出るのは当然だろう。だからこそ、NEDやUSAIDの存在理由と活動方法のおぞましい実態を、欧米のジャーナリストが語らなくなっただけでなく、激しく否定すらするようになった。

 だから結局、大手メディアは、敵国と目されている国の指導者の言うことは真実であると認めることができなくなったのである。その代表例が、2015年7月の英紙ガーディアンの報道である。ガーディアン紙は、モスクワが外国代理人法に基づいてNEDを禁止し国外追放した件では、驚くべきことに、NEDの活動を説明するために自分で事実関係を調べるのではなく、NEDのウェブサイトから引用した短い文章を丸写しただけだった。その一方、2004年11月、その同じガーディアン紙は、その年のウクライナの「オレンジ革命」はNEDとUSAIDによる完全な画策だったということを、とくとくと自慢げに説明していたのである。

 したがって今や、強い政治的圧力をかけて海外での騒乱に外国が介入しているという主張は、大手メディアでは、ほとんど常に反撃の対象となっている。つまりデモ参加者には「行為主体性」があり、彼らの訴えは「正当な不満」だとアピールし反撃する。要するに、彼らは外国勢力によって指示されたとおりに行動しているわけではなく、抗議の内容も正当な不満であり外国勢力による入れ知恵ではないというわけである。しかし、最近トビリシで起きた扇動的な出来事では、このような訴えはまったく空虚に響く。米国政府高官の非難や声明と軌を一にして、外国代理人法の比較的些細な規制改正にこれほど大きな関心が組織的に沸き起こったことは想像を絶することだ。

 しかし、今のところ政権交代の流れは再び明確になっており、今回の抗議行動は単なる警告射撃に過ぎないように思われる。政府がこれほど簡単に屈服したのは、NEDが支援する現地の人的資産(NGO)によって革命が勃発する切迫した危険性を認識したからにほかならない。しかし、アメリカ帝国をなだめることができたとはいえ、脅威がなくなったわけではない。NEDがトビリシで活動する限り、この脅威は日常的な存続の危機であり続けるだろう。

写真|イラスト:MintPress News

キット・クラレンバーグは、政治や認識の形成における情報機関の役割を探る調査ジャーナリストであり、MintPresss Newsへの寄稿者でもある。これまでにThe Cradle、Declassified UK、Grayzoneに寄稿している。Twitter @KitKlarenbergでフォローしてください。

ドイツ:「巨大ストライキ」で交通停止―生活費上昇で大幅な賃上げ要求

<記事原文 寺島先生推薦>

‘Mega strike’ hits Germany
Hundreds of thousands of public transport workers walked off the job on Monday, bringing the country to a halt

月曜日、数十万人の公共交通機関の労働者が職場を離れ、国内の動きは停止した。

2023年3月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月28日

独、巨大ストライキ
ドイツ・フランクフルト・アム・マインの主要駅で公共交通機関のストライキ中、携帯電話をチェックする通勤客(2023年3月27日撮影) © AFP / Andre Pain


 月曜日(3月27日)、40万人以上の公共交通機関の職員が24時間ストライキに参加したため、ドイツ全土で空港、バス停、鉄道駅が停止した。労働者たちは、昨年からドイツで急騰しているインフレを補うための賃上げを要求している。

 ストライキは午前0時に始まり、火曜日(28日)の午前0時に終了する予定である。ドイツの主要8空港が影響を受け、ドイツ空港協会は、約38万人の旅行者が足止めを食らったと推定している。ミュンヘン空港は日曜日から完全に閉鎖され、すべてのフライトがキャンセルされ、ターミナルは閑散としていた。


 ドイツ鉄道は月曜日(27日)に、長距離路線はすべて運休し、地域路線は月曜日の夕方までに一部の地域で再開されただけだと発表した。路面電車、バス、地下鉄も全国で影響を受けた。

 貨物列車も停止し、ドイツ最大の港であり、ヨーロッパで3番目に交通量の多いハンブルグを発着する船舶の輸送も停止した。

 このストライキは、いくつかの主要な労働組合が出した賃上げ要求の結果である。約250万人の従業員を代表する公共サービス労組のヴェルディ(Verdi)は500ユーロ(75000円)を下回らない10.5%の賃上げを要求している。ドイツ鉄道とその他のバス会社の従業員約23万人を代表するEVGは、650ユーロ(92000円)を下回らない12%の賃上げを要求している。

独ストライキ その2

関連記事:ドイツは今や、米国産LNG中毒に(ドイツ国会議員)


 月曜日(27日)ナンシー・フェーザー内務大臣は、ロイター通信に対し、政府と労働組合の間で今週中に合意が成立する可能性が高いと述べた。

 公共サービス労組ヴェルディの代表であるフランク・ヴェルネケ氏はドイツのメディアに対し、およそ40万人の労働者がストライキに参加したと語った。ドイツの新聞は、この職場離脱を「メガ・ストライキ」と表現し、このような混乱は過去数十年で最大であるとしている。

 ヴェルネケ氏はドイツのBild紙に、賃上げの確保は生活費の上昇に対応するのに苦労している何千人もの従業員にとって「生存に関わる問題」であると語った。

 かつてヨーロッパの経済大国であったドイツは、工業生産高が縮小し、インフレ率は1990年代半ばから昨年ロシアがウクライナで軍事行動を開始するまでの0~2%の安定した割合から上昇し、2月には8.7%に達した。

 ドイツはウクライナ紛争以前、ロシアのガスと石油の輸入に大きく依存していたが、EUの制裁発動と米国が画策したとされるノルド・ストリーム・ガスパイプラインの破壊により、その輸入はすべて停止された。ドイツ政府は1月、今年の景気後退を辛うじて回避すると発表したが、格付け会社のフィッチは今月初め、ドイツ経済は2023年後半までに景気後退に突入すると予測した。

マクロン大統領の年金改悪に反対する100万人以上のデモで、警察がデモ隊と衝突

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Violent protests grip France — RT World News

フランスで暴力的なデモが発生

出典 RT 

2023年3月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月27日


© Twitter

 フランス当局は木曜日(3月23日)、エマニュエル・マクロン大統領の年金改革に反対する全国的な抗議デモを抑えるのに悪戦苦闘した。100万人を超えるデモ隊が全国で街頭に繰り出し、一部の治安筋はパリの政府に対する「暴動」と表現した。

 数万人の労働者がストライキを行い、デモ隊は公共交通機関、学校、石油精製所を封鎖した。デモ隊を追い払うために、警察は催涙ガス、高圧放水銃、閃光弾、警棒などを使った。ソーシャルメディアでは動画が出回り、重装備の警官が非武装のデモ参加者を棍棒で殴っている様子を映し出していた。


 他の映像では、パリの路上でバリケードが燃えている様子が映し出された。ヌーヴェル・アキテーヌの州都ボルドーでは、市庁舎の入り口が燃やされる事態も生じた。

 少なくとも消防士の一部隊が寝返って、デモ隊に合流した。複数の目撃者は、この状況を 「制御不能」と表現している。

 「パリは戦争状態だ、投稿する暇はない、気をつけろ」と、ある独立系メディアはツイートしている。


 150人近い警察官と国家公務員が負傷し、ラルド・ダルマナン内相は23日夜、この状況を「絶対に容認できない」とし、犯人の厳しい処罰を要求したと発表した。

 またダルマニン内相が記者団に語ったところによると、パリでの「略奪と放火」に関する尋問のため172人が拘束され、フランスの首都で190件の火災が発生し、そのうち50件は現地時間午後10時の時点でまだ燃えているとのことだ。 

 内相は、暴力の中でも特にひどいのは「極左」と「ブラックブロック」(黒装束をまとった過激派アナキスト主体の連合体、もしくは抗議の戦術)の無政府主義者であると非難した。

 警察は100万人以上の抗議者が街頭にいたと推定している。

 国民の不満の爆発の引き金は、マクロン大統領が来年から定年を62歳から64歳に引き上げると発表したことだった。マクロン大統領は、国民年金制度の破綻を防ぐために、この変更が必要であると主張している。


 エリゼ宮(フランス大統領官邸)は、1月以来、物議を醸すこの提案を検討しようとしていた議員に相談することなく、この変更を行った。これに対し、デモ隊はマクロン大統領に辞任を要求した。

 水曜日(3月22日)にテレビに出演したマクロン大統領は、自分の唯一の過ちは、この決定の利点を「人々に納得させることができなかった」ことだと述べ、たとえそれが「不評を買う」ことになったとしても、自分は引き下がらないと主張した。


 憲法で保護された抗議する権利はあるが、不満分子が暴力を行使するならば、「それはもはや民主主義ではない」とマクロン大統領は述べた。

 マクロン大統領はコロナウイルス対策としての過酷な封鎖や命令により激しく批判されたが、2022年には容易に再選を果たし、最終的には17ポイント差でマリーヌ・ルペンを破って当選した。なお決選投票では、1969年以来最低の投票率を記録した。

フランス全土で 「年金改悪は止めろ!」 と巨大なデモと集会

<記事原文 寺島先生推薦>

France paralyzed by pension reform protestsThousands take to the streets over the government’s plans to raise the retirement age from 62 to 64.

フランスは年金改革に対する抗議で麻痺状態。定年退職年齢を62歳から64歳に引き上げるという政府の計画に、多数の人々が街頭に繰り出す。

出典:RT

2023年3月7日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月26日


フランス北東部ランスで、フランス大統領の年金改革に反対するデモに参加する人たち(2023年3月7日) © François NASCIMBENI / AFP


 年金改革に反対する全国的なストライキと集会により、フランスでは、交通機関が大きく乱れ、石油精製所や大学が麻痺しています。これは、労働組合が国を「停止」させるよう呼びかけたからでした。

 定年を62歳から64歳に引き上げるという政府の計画に反対する抗議行動の最新波が6日目を迎える中、労働組合は火曜日(3月7日)に「200万人以上」が集会に参加すると発表しました。ちなみに、これまでで最大のデモが行われた1月31日には、公式発表によると約127万人が参加しました。



 デモ行進は全国各地で早朝から始まり、群衆はレンヌ第二大学やリヨン第二大学など主要な高等教育機関を封鎖したと、ソーシャルメディア上の映像や地元メディアの報道は伝えています。



 フランス西部の都市、ラ・ロッシュ・シュル・ヨンのバス発着所前には、デモ隊がバリケードを築きました。また、パリ近郊のサン・ドニ・プレイエルでは、学生たちがバス発着場を封鎖しましたが、治安部隊に押し戻されました。

 学生団体「挙げられた拳」Le Poing Leveによると、少なくとも100人がフランス西部のレンヌとロリアンを結ぶRN24高速道路を封鎖しました。同団体は、警察が集会を解散させるために催涙ガスを使用したと主張しました。



 労働組合組織である労働総同盟CGT-Chimieは、「すべての製油所」の出口で燃料の輸送が阻止されたと述べました。石油メジャー「トータル・エナジー」(フランスのパリ近郊ラ・デファンス に本社を置く多国籍企業)の経営陣は「フランス通信社」AFPに、影響を受けたことを正式に発表しましたが、同社のスタンドでは「燃料不足はない」と述べました。

関連記事:フランスの抗議デモで火災と衝突が発生(動画あり)

 また、労働組合は公共交通機関でのストライキをすると警告しています。月曜日(3月6日)、フランス国鉄SNCFとパリ交通公団RATPは、フランス国内の列車の移動が「非常に深刻な混乱」に陥ることを公式に発表し、地下鉄の運行も同様となるだろうということでした。

 一方、フランス民間航空総局は、航空会社に対し、パリのシャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港でそれぞれ20%と30%の定期便の減便を要請しました。

 年金改革に対する不安は、数週間前から急激に高まっています。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、今後25年間に予想される年金制度の赤字のためにこの構想が「不可欠」であると述べていますが、「エラベ」Elabeの世論調査によると、60%近くがこの改革に反対しており、国民の間でひどく人気がないことが判明しています。

ポーランド前外相、ロシアのガス・パイプラインの破壊を米国に感謝

<記事原文 寺島先生推薦>

Ex-Polish FM thanks US for destruction of Russian gas pipeline
Moscow has called the incidents a 'terrorist attack'

モスクワは一連の出来事を「テロリストの攻撃」と呼んだ。

出典:RT

2022年9月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月17日


© Twitter/screenshot

 米国、ロシア、そしてヨーロッパのほとんどの政府が、ノルド・ストリーム1、2を破損させた月曜日(9月26日)の爆発事故の背後に誰がいるのかについて判断を保留しているのに対し、ポーランドの元外相ラドスワフ・シコルスキはそのようなそんな躊躇いは一切持たなかった。

 シコルスキーは火曜日(9月27日)、バルト海の海域で発生した大規模なガス漏れの写真とともに、「ありがとう、アメリカ」とツイートした。デンマークのボーンホルム島沖で、2つのパイプラインが大きく損傷した。今ではそれを計画的な行為と呼ぶ者が多い。

 シコルスキーはその後、ポーランド語で、ノルド・ストリームが被害を受けたことで、ロシアがヨーロッパへのガス供給を継続したいのであれば、「ブラザーフッド・ガス・パイプラインとヤマル・ガス・パイプラインを支配する国々、つまりウクライナやポーランドと話し合う」必要がでてくる、とツイートし、それを「よくやった」と締めくくった。

 ノルド・ストリーム 1とノルド・ストリーム 2は、スウェーデンとデンマーク当局が後に一連の海底爆発があったと発表した後、月曜日(9月26日)にすべての圧力を失った。ノルド・ストリーム1は、ロシアが技術的な問題であると発表した後、容量を減らして運転され、ノルド・ストリーム2は、ドイツが(運転)認証を拒否したため、加圧は十分だったが運転に至らなかった。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、シコルスキーのツイートが「テロ攻撃であるとの公式声明」に相当するのかどうかの判断に、迷っていた。一方、モスクワの国連副大使ドミトリー・ポリアンスキーは、シコルスキーが 「民間インフラを標的としたこのテロスタイルの背後に誰が立っているのかを明確にした!」と感謝した。



 ポーランドのマテウス・モラヴィエツキ首相は、シコルスキー元外相ほどは踏み込まず、ノルド・ストリーム事件を 「ウクライナ情勢の趨勢を激化させる次のステップに繋がる破壊工作」と表現することを選択した。



関連記事:ロシアのガス・パイプラインが前代未聞の規模の被害を受けた(技師からの報告)


 ただの欧州議会議員ではなく、シコルスキーは元イギリス国籍で、数多くの米国やNATOのシンクタンクでフェロー(特別研究員)を務め、ポーランドの元国防相(2005~2007年)、外相(2007~2014年)でもあった。2014年10月、ロシアのプーチン大統領がウクライナをワルシャワと分割したいと考えているという主張を捏造したことが発覚し、その発言の撤回に追い込まれた。

 シコルスキーは2022年1月にロシアを「連続強姦魔」と呼び、6月にはウクライナのエスプレッソTVで「NATOはキエフに核兵器を与える権利がある」と述べた。彼はアメリカの評論家アン・アップルバウムと結婚しており、彼女もまたロシアを露骨に敵視している。

 シコルスキーがノルド・ストリーム破壊工作について米国に感謝したのに対し、キエフはロシアを非難した。ウラジーミル・ゼレンスキー大統領の顧問ミハイル・ポドリアックは「ロシアが計画したテロ攻撃であり、EUに対する侵略行為」と呼び、最善の対応はウクライナ軍にドイツの戦車を送ることであると主張した。

「武器を送るな、NATOから脱退せよ」 フランスでも各地で大規模な抗議集会

<記事原文 寺島先生推薦>

Anti-NATO protests hit France
Rallies against the US-led bloc and the supply of weapons to Ukraine have been held across the country

反NATOを求める抗議がフランスで起こる。
米国主導勢力とウクライナへの武器供給に反対する集会がフランス全土で開催された。

出典;RT

2023年2月26日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月14日 


© Twitter / Florian Philippot


 フランスのNATO加盟と、キエフへの継続的な支援に反対する大規模な複数の抗議行動が、日曜日(2月25日)に首都パリと国内の他の場所で行われた。

 2週連続で行われたデモは、パリでの集会に自ら参加したフロリアン・フィリポ氏率いる右派政党「レ・パトリオット」が主催したものだ。

 同政治家は、「平和のための全国行進」と名付けられた日曜日(2月25日)のイベントには、首都パリでの集会に、約1万人が集まった先週よりもさらに多くの参加者が集まったと述べた。フィリポ氏によると、小規模な反NATOデモは、フランス国内の他の約30カ所でも開催されたという。


 デモ隊は、「平和のために」 と書かれた大きな横断幕を持って、パリの街を行進した。デモ隊は、フランスが米国主導のNATOとEUの両方から脱退することを求め、ウクライナへの武器供与の停止を促した。デモ隊はまた、現職のエマニュエル・マクロン大統領を非難し、「マクロンは出て行け!」と唱えた。---- このスローガンは、マクロン大統領の任期中、さまざまな反政府デモ参加者がよく使っていたものである。

 デモ行進の後、デモ隊はフィリポ氏主催の集会を開き、フィリポ氏が支持者とともにNATOやEUの旗を汚す様子が撮影された。このイベントの映像は、同政治家本人がソーシャルメディアで投稿したものである。 


 この政治家は、昨年秋以降、フランスのNATOおよびEUへの加盟に反対する抗議活動を積極的に展開する一方、ウクライナへの武器供給に反対を主張している。2012年から2017年にかけて、フィリポ氏は昨年までマリーヌ・ルペンが率いるフランス最大の野党「国民集会」の副党首を務めていた。国民集会を去った後、41歳の政治家は自身の右派政党「レ・パトリオット」を設立した。

 フランスは、1年前に勃発したロシアとの紛争において、キエフを支持する最前線の国のひとつであった。マクロンは敵対行為の外交的解決を繰り返し求めているが、パリは装甲車や高性能の自走榴弾砲など、さまざまな兵器をウクライナに積極的に供給してきた。

「武器を送るな、賃金を上げよ」 イタリアで平和を願う数千人の集会。

<記事原文 寺島先生推薦>

Thousands rally for peace in Italy

ジェノバとミラノの都市で、キエフへの武器供給の中止を要求するデモが行われた。

出典:RT

2023年2月26日

<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月14日


*Ruptly提供。Ruptly GmbH は、ドイツのベルリンに本拠を置く、ビデオ オン デマンドを専門とするロシアの国営ビデオ通信社。ロシアの国営テレビ ネットワーク RT の子会社。


 土曜日(2月25日)、イタリアのジェノバとミラノで、数千人が平和のためのデモに集まった。労働組合員や左翼活動家らは、ローマ当局がウクライナに武器を送ることは、国内法に違反しているなどと主張した。

 ジェノバでの集会には、国内だけでなく、スイスやフランスからも4000人近い参加者が集まったと地元メディアは報じている。

 イタリア共産党の支援を受けた港湾労働者自治労組(CALP)グループが主催したこの抗議行動は、「武器支援をやめ、賃金を上げよ」というスローガンのもとに行われた。

 CALPのリカルド・ルディーノは、「ウクライナの紛争は昨年」 ではなく、「2014年、ドンバスのロシア語を話す住民の虐殺から」始まったと述べたとメディアで報道されている。


 デモ隊はジェノバ港を行進し、ウクライナ向けの武器輸送のための施設の使用停止を要求した。

 CALPの広報担当者ホセ・ニヴォイは、イタリア政府が 「イタリアから戦争状態にある国への武器の輸入、輸出、輸送を禁止した」1990年の法律185に違反していると非難した。

 また、同グループの代表は、志を同じくする 「ヨーロッパの各都市の団体や活動家」とネットワークを構築してきたとのべた。

<関連記事> ドイツのウクライナ政策に数百人が抗議行動

 デモ行進は大きな事件もなく、アナーキストによる数台の車を汚したり破損したり、銀行の窓ガラスを割るなどの破損行為があっただけだった。

 土曜日(2月24日)にはミラノでも抗議デモが行われました。ビデオ通信社Ruptlyは、数百人がスローガンを唱え、ロシアやドネツク人民共和国の旗を振る様子を撮影した。


 イタリアでのデモは、ドイツの首都ベルリンでのデモと同時に起こった。ベルリンでは、著名な左翼党の政治家サハラ・ヴァーゲンクネヒトと作家のアリス・シュヴァルツァーの呼びかけに、数万人の人々が応えた。

 「平和のための蜂起」と名付けられたこの抗議行動は、ウクライナでの敵対行為を終わらせるための和平交渉を呼びかけた。また、参加者はドイツ政府に対し、キエフへの武器輸送を中止するよう要請した。

 ヴァーゲンクネヒトは支持者を前に、オラフ・ショルツ首相が「ロシアを破滅させようとしている」と批判し、土曜日(2月24日)の抗議行動をドイツにおける新しい平和運動の始まりと表現した。

ウクライナへの武器供与に反対するベルリン集会、数万人が参加

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Berlin rally against arming Ukraine draws tens of thousands
An estimated 13,000 to 50,000 people attended the event calling for peace talks

和平交渉を求めるこの行事には、推定13,000~50,000人が参加した。

出典:RT 

2023年2月25日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月2日

ベルリン 1
2月25日の平和デモでスピーチをする左派党の政治家ザーラ・ヴァーゲンクネヒト*(右)と女性権利活動家で作家のアリス・シュヴァルツァー**(左)  Photo: Steffi Loos / Getty Images

*ザーラ・ヴァ―ゲンクネヒトは、1969年7月16日イエナ生まれ。政治家。左派党副党首。11月から左派党連邦議会議員副団長。デュッセルドルフ在住。(出典:ザーラ・ヴァーゲンクネヒト - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト (newsdigest.de)
**アリス・シュヴァルツァー(1942年12月3日 生まれ)は、ドイツのジャーナリスト、著述家、フェミニスト、フェミニズム雑誌『エマ(ドイツ語版)』の創刊者・編集長。シモーヌ・ド・ボーヴォワールに出会い、フランスの女性解放運動 (MLF) に参加。(出典:ウイッキペディア)



 数万人のドイツ人が、土曜日(2月25日)、左翼党(左派党)の政治家ザーラ・ヴァ―ゲンクネヒトと作家アリス・シュヴァルツァーが主催する大規模な集会「平和のために立ち上がる」に風雨をものともせず参加しました。

 デモ隊はブランデンブルク門に集結し、ウクライナ紛争を終わらせるための和平協議を求め、ベルリンがキエフへの武器供給を停止するよう要求した。

 ヴァ―ゲンクネヒトは、ドイツ政府が「ロシアを破滅させようとしている」と非難し、平和協議を始めるためにモスクワに「申し出」をするよう指導者に求めた。この集会は、「市民の主導権の始まり」であり、「ドイツにおける新しい強力な平和運動の始まり」であると彼女は言った。



 この集会は、政治的領域を超えた抗議者たちを歓迎し、「誠実な心で」平和を望む者は誰でも歓迎すると宣言したが、メディアの注目を浴びようとするネオナチの挑発者たちは歓迎されなかった。



 主催者は参加者を5万人としたが、警察は1万3千人と控えめな数字を出した。

 ヴァ―ゲンクネヒトとシュヴァルツァーは今月初め、オラフ・ショルツ首相に「武器輸送の拡大を止める」よう求める「平和のためのマニフェスト」を発表した。それ以来、著名な知識人、政治家を含む50万人以上がこのマニフェストに署名している。



 シュルツ首相は、和平交渉を持てない理由は、ロシアが話し合いのテーブルにつかないからだと繰り返し主張している。この紛争が始まって以来、この紛争の平和的解決をモスクワが何度も試みてきたことには目がいかないようだ。


ベルリン 2

© Kevork Almassian on Twitter

ホワイトハウス記者会見で予告されていた「ノルドストーム破壊工作」:独首相も事前承認

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Video: America is at War with Europe

ビデオ:米国はヨーロッパと戦争状態にある。

筆者:ミシェル・チョスドフスキー(Michel Chossudovsky)

出典:Global Research 

2023年2月16日

記事翻訳 <寺島メソッド翻訳グループ>

2023年2月25日

チョフドフスキー



最新情報:「秘密作戦」は存在しなかった

 ノルドストリームの破壊行為が「米国につながることを追跡する」ことを防ぐための「秘密作戦」は存在しなかった。

 この[破壊工作の]事業は、シーモア・ハーシュが概説したように、2021年に密室で議論されていたが、このいわゆる「秘密作戦」の実際の計画は2021年12月に始まり、2022年6月には爆弾の仕込み、そして2023年9月26-27日には実際の破壊行為となった。(下の地図参照)。

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 2021年12月下旬、国家安全保障顧問のジェイク・サリバンは、ロシアの戦争準備に関わる「新たに結成された特別委員会」(統合参謀本部、CIA、国務省、財務省)と称される会議を開催した。

 その中で、ノルドストリームに関してどのような行動を取るべきか、議論が交わされた。「CIAは、何をするにしても、秘密裏に行わなければならないと主張した。特別委員会関係者は皆、危険の度合いを理解していた」。

 この「秘密作戦」とされる作戦の時系列を簡単に見てみよう。2021年12月下旬~2022年6月~2022年9月26日~27日:9ヶ月の期間。

2021年12月下旬:「(省庁間)特別委員会」が新たに発足 「新たに発足した(省庁間)特別委員会」がジェイク・サリバン国家安全保障顧問により招集された。

2022年初頭:秘密作戦が想定された。CIAは特別委員会に報告した。「パイプラインを爆破する方法がある」と。それは「追跡不可能な」爆破の方法だった。

その1ヵ月後。

2022年2月7日:ホワイトハウスでドイツのオラフ・ショルツ首相(米国を公式訪問中)と共に記者会見、バイデン大統領は次のように発言する:

ロシアが侵攻した場合、「ノルドストリーム2はなくなる」

2022年6月10日:(おおよその日付)
水中での爆弾の仕込み。バイデンは「いつでも爆発させられる権利、つまり私たちから遠隔操作でいつでも爆弾を作動させる権利が欲しかった」のです。

2022年9月26日~27日
バルト海のボーンホルム島近くで6個の爆弾が水中で爆発し、ノルドストリーム1、2の4本の主要パイプラインのうち3本を破壊(S・ハーシュ、上記地図参照)。


2022年2月7日のバイデン=ショルツ・ホワイトハウス記者会見
本記事にリンクされている記者会見のビデオをご覧ください。ホワイトハウスによる文字起こしもあります。

 「秘密」は何もなかった。 バイデン大統領とショルツ首相によるノルドストリームに関する公的な発言は、極めて明確である。

アンドレア(ロイター)質問:ありがとうございます、大統領。 そして、ショルツ首相、ありがとうございました。 大統領、私は、あなたが長い間反対してきたこのノルドストリーム事業についてお聞きしたかったのです。今、あなたはそのことに言及しませんでしたし、ショルツ首相も言及しませんでした。今日、ショルツ首相から、ロシアがウクライナに侵攻した場合、ドイツは実際にこの事業から手を引くという確約を得たのですか? また、「侵略」の定義がどのようなものになりうるか議論したのでしょうか。

バイデン大統領:まず、最初の質問です。 もしドイツが--ロシアが―つまり戦車や軍隊が再びウクライナの国境を越えて―侵攻してきたら、私たちは―もはやノルドストリーム2は存在しないことになる。 私たちはそれに終止符を打つでしょう。

質問:しかし、事業)とその支配権はドイツの管理下にあるのですから、具体的にどのようにするのでしょうか?

バイデン大統領:私たちは、約束します、必ずできます。 (ホワイトハウス記者会見、強調は著者)



「その事業はドイツの支配権の範囲内」

 オラフ・ショルツ首相は、バイデン氏のノルドストリーム2から手を引く決定に関して、ロイター通信の記者に回答している。

アンドレア(ロイター) [シュルツに対する]質問:そして、あなたは今日 – ノルドストリーム2を止めて、その事業から手を引くことを今日明言しますか? あなたはそれに言及しませんでしたし、言及していませんね。

ショルツ首相:すでに申し上げたように、我々は共に行動しており、絶対に団結しており、異なる行動をすることはありません。私たちは同じ行動をとり、それらはロシアにとって非常に、非常に困難なものであり、彼らはそれを理解するはずです。(強調は著者)



 記者の質問をさりげなく無視する。ノルドストリームは、シュルツが政府の長であるドイツの「支配下」にある。ショルツ首相はワシントンの要求を完全に守り、政治的な代理人として行動している。「我々は異なる手段をとることはない」と彼は言う。

 上記のショルツ首相の回答をお読みください。ドイツは米国の「半植民地」になってしまったのでしょうか?


ホワイトハウスの記者会見で公表された「秘密作戦」

 バイデン氏の記者会見での発言は、ドイツのショルツ首相に支持され、いわゆる「秘密作戦」が展開され、米国の攻撃が「追跡不可能」であるという考え方を無効とするものです。

 「バイデンとヌーランドの軽率な行動は、それが何であれ、計画者の何人かをいらだたせたかもしれない。しかし、それはまた好機でもあった。情報筋によると、CIAの高官の何人かが判断したことは、パイプラインを爆破することはもはや秘密の選択肢とは見なされない、なぜなら大統領がその方法を知っていると発表したばかりだからということでした」。(シーモア・ハーシュ)

 これは、ジョー・バイデンの失態ではなかった。大統領とヌーランドを含む彼の政治的側近が、ノルドストリームに対する米国の破壊行為が(ドイツ政府の支持を得て)想定されていることを知らしめた政治的決断であったのだ。(下記記事の分析参照)

 バイデンの公式声明は、計画された破壊工作が「ホワイトハウスまで追跡可能」であることを事実上認めている。それはもはや「秘密作戦」ではなかった。

 バイデンの声明は、2022年6月に実行されたいわゆる秘密破壊行為の数カ月前に、ドイツのショルツ首相のお墨付きを得て策定されたものである。

 何人かの分析家やジャーナリストは、「誰が破壊工作に責任があるのか」について熟考している。これはナンセンスな行為だ。答えは明らかだ。ドイツのオラフ・ショルツ首相と協議している米国大統領だ。

 バイデン大統領の2022年2月7日の宣告は、破壊行為の実行に「ゴーサイン」を出したのである。それはもはや「秘密作戦」ではなかった。破壊工作を行った者たちは、ドイツ連邦共和国政府のお墨付きで、ホワイトハウスから発せられた指示を実行に移したのだ。

 私の論文にあるように、ノルドストリームの破壊工作は、ドイツと欧州連合に対する米国の戦争行為であった。

 そして、ドイツの首相は、ノルドストリームに対する破壊行為が、4億人以上のヨーロッパの人々の不利益になるように、米国によって想定されていたことを十分に認識していたのである。(以下の分析参照)。この点で、オラフ・ショルツ首相が米国の戦略を受け入れたことは、反逆の行為であった。

2023年2月16日付


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「米国はヨーロッパと戦争状態にある」
   ミシェル・チョスドフスキー著
   グローバルリサーチ
   2023年2月12日
------------------------------------------------------------

 情報筋によれば「この画策をしていた間ずっと、CIAと国務省の一部の職員は、“こんなことはするな。バカバカしいし、表に出れば政治的な悪夢になる”と言っていた」という。

  「これは子供だましではない」と、その情報筋は言った。もしこの攻撃が米国に帰することが出来るのであれば、「それは戦争行為だ」と。

「どのようにして米国はノルドストリームのパイプラインを破壊したのかセイモア・ハーシュ2023年2月8日、強調は著者)


展開する「政治的悪夢」

 ノルドストリームはジョー・バイデン大統領が命じた破壊行為の対象であったことを、証拠が十分に裏付けている。

 ノルドストリームは、ロシアからEU加盟国4カ国の領海を通過している。国際法では、「領土保全」は、国家の領海内にある「財産」にも及ぶ。

 法的な観点(国際法:国連憲章、海洋法)から、これはEUに対する米国の戦争行為であった。

 外国人行為者によって、または外国人行為者のために、一国の領海内の当該「財産」を意図的に破壊することは、戦争行為に該当する。

 ドイツのピーター・フランク検事総長は、綿密な調査で、次のように確認した

  「ノルドストリームのガスパイプラインの破壊について、ロシアを非難する証拠はない」。


ロシアでないとすれば、誰が背後にいるのか?

  ピーター・フランク検事総長によると:
 「外国人による破壊行為があったという疑いは、今のところ立証されていない」。

 ピーター・フランクは、米国大統領の役割(十分に確認されている)をさりげなく打ち消している(後述)。


ノルドストリームの破壊工作は「追跡可能」。それはEUに対する経済的、社会的戦争行為である。

 米国の破壊行為と制裁体制は、EU全域に社会的大混乱と苦難を引き起こした。エネルギー価格の上昇に端を発したインフレは、高騰を続けている。人々は暖房費を払うことができず、凍えている。

 メディアの報道では、米国の妨害行為が社会的、経済的にどのような影響を及ぼしているのかを認めていないが、EUの公式情報筋は(その原因には触れずに)次のように確認している。

 「エネルギーに窮している国民の数は1億2500万人(全人口の28%)に達する可能性がある」。

 ヨーロッパは前例のない債務危機を経験している。福祉国家は解体されつつある。


EU経済の不安定化

 ロシアからの安価なエネルギーに依存してきたEU経済は、工業生産(製造業)、輸送、商品貿易の構造全体の崩壊が顕著で、混乱状態にある。

 解雇や失業をもたらす企業倒産がEU全域で相次いでいる。中小企業は地図から消え去る予定である。

 「エネルギー価格の高騰がドイツの産業を苦しめている」...

 「ドイツの製造業は、同国の経済生産の5分の1以上を占めているが、一部の企業が危機を乗り越えられないことを懸念している。...」

 「フォルクスワーゲン(VLKAF)シーメンス(SIEGY)といった業界の巨大企業も供給網の障害に悩まされているが、(エネルギー価格上昇の)衝撃に耐えられないのは、ドイツのおよそ20万社の中小製造業者である」。

 「これらの企業は、ドイツの経済生産の半分以上と雇用の3分の2近くを占める260万社の中小企業「ミッテルシュタンド」[中堅企業]の重要な構成要素である。その多くは家族経営で、農村地域に深く根ざしている」。


ジョー・バイデン氏に感謝

記者会見(2022年2月)で「バイデンが秘密を漏らした」。
「あなたたちに約束します。私たちはそれができます。」と、ジョー・バイデンが述べた。
ジョー・バイデン:「ノルドストリーム2は、なくなるだろう。」




「政治家集団」の大逆罪

 米国は、もはやEUの「同盟国」ではない。全く逆である。EUに対する破壊行為における米国の陰湿な役割は、十分に立証されている。疑う余地もない。

 一方、EUの腐敗した政治家たちは、ロシアを非難するだけでなく、米国と協力し、ワシントンの利益のためにEUの破壊のための舞台を整えているのである。

 彼らは、「敵と寝て」欧州の人々に害を与えているのである。

 反逆罪とは、外国の権力者のためにヨーロッパの高位にある政治家が行う裏切り行為であり、さまざまな手段でEU全域に経済的・社会的混乱を積極的かつ意図的に引き起こしている。米国はEUの同盟国ではない。全く逆である。ワシントンは、腐敗した政府高官の支援を受けて、ヨーロッパに対して戦争を仕掛けているのだ。それは反逆の行為だ。

 必要なのは、EU全体の「政権交代」であり、腐敗した政治家に対する刑事訴追である。


マスコミの反応

 英紙デイリー・メール(2023年2月9日付)によれば、次のようになる。

 ピューリッツァー賞受賞の調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、米海軍のダイバーがジョー・バイデン大統領の命令でパイプラインを爆発物で破壊したという未確認の情報源を引用している。

 ロイターは、この疑惑の裏付けを取ることができなかった。ホワイトハウスは、「全くの虚偽であり、完全なでっち上げである」と断じた。ノルウェー外務省は、この疑惑は「ナンセンス」であると述べた。

 メディアによれば、「フェイクニュース」ということだ。

 ホワイトハウスが「完全なでっち上げ」と言っているが…

 2022年2月のテレビニュースでのインタビューで、米国大統領は、必要であればノルドストリームに対して行動を起こすことを認めた。この発言は、ロシアの侵攻の3週間前になされたものである。

ジョー・バイデン大統領:「もしロシアが侵攻してきたら、それは戦車と軍隊が再びウクライナの国境を越えることを意味し、その時はもうノルドストリーム2は存在しないでしょう」。

記者:「しかし、このノルドストリームの事業はドイツの管理下にあるので、具体的にどのようにするのですか?」

バイデン: 「やります。約束します。私たちにはそれができます。」(強調は著者)



バイデン大統領の記者会見




動画:ミシェル・チョスドフスキーへのキャロライン・メイユーのインタビュー  *原サイトからご覧ください。(訳者)

ドイツ、「明かりを灯し続ける」ために5,000億ドル支出---ベルリンの巨額の燃料補助金は、ウクライナ危機による経済的影響に対処するには十分でない可能性(ロイター通信)

<記事原文 寺島先生推薦記事>

Germany spending $500 billion to ‘keep the lights on’ – media

出典:RT

2022年12月15日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2023年1月11日


先月(11月)、ベルリン郊外にある変電所の外に立つ作業員。© Getty Images / Sean Gallup


 ドイツは2月に始まったロシアとウクライナの紛争以来、エネルギー供給を補強し、「明かりを灯し続ける」ために約5000億ドルを割り当てたと報じられているが、この支出ラッシュは危機を乗り切るのに十分ではないかもしれない。

 ロイター通信は15日(木)、原油や天然ガスの価格が高騰し、ロシアからの輸入が途絶える中、ベルリンが採用したエネルギー救済策などの「累積規模」を反映して、推定総費用が算出されたと報じた。

 同通信は、様々な補助金を「エネルギー・バズーカ」と呼んでいる。この額は、ドイツの住民一人当たり5400ドル、GDPの12%にあたる。それは東欧での紛争が始まって以来一日当たり推定16億ドルに相当し、さらに多くの支出が必要になる可能性があると付け加えた。

 ドイツ経済研究所のマクロ経済研究部長ミヒャエル・グロムリング氏はロイターに対し、「危機がどの程度深刻化し、どの程度続くかは、エネルギー危機がどのように進展するかに大きく左右される」と述べた。

 「国民経済全体が大きな富の喪失に直面している。」

 紛争の経済的影響は、米国、ドイツ、その他のNATO加盟国が課した反ロシア制裁に大きく起因する。モスクワを罰し、孤立させようとする西側の努力にもかかわらず、石油とガスの輸出によるロシア政府の収入は、2022年の最初の11カ月間で10兆ルーブル(約1600億ドル)と、1年間で2倍以上になった。同期間中、エネルギー収入の増加により、政府予算の黒字は5570億ルーブル(8912億ドル)に達した。

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 しかし、ロイター通信が指摘するように、ヨーロッパ最大の経済大国は現在、天候に「翻弄されている」ことに気づく。「この冬、ドイツが長い寒波に見舞われた場合、エネルギー供給が危機に陥ることになるだろう。というのも、今年は半世紀ぶりにロシアのガスを使わない冬になるのだから」と同通信社は指摘した。

 ドイツのキール世界経済研究所のシュテファン・クース副所長は、不確実なエネルギー供給がドイツ経済を「非常に危機的な段階」に追い込んでいると指摘する。さらに、「ドイツ経済はどのような状況にあるのだろうか。物価上昇率を見れば、高熱が出ている」 と述べた。

 ロイターの記事は、エネルギー企業への救済措置、LNG輸入インフラ、電力会社や貿易業者がガスや石炭を購入するための資金援助などへのドイツの支出をもとに計算を行ったものである。「これらの努力にもかかわらず、同国がどのようにロシアからのエネルギーに取って代えることができるかを巡っては、ほとんど確実性がない」 と同通信社は述べている。

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英国の看護師組合が過去最大のストライキを実施。イングランド、ウェールズ、北アイルランドの施設で、医療従事者が長年の低賃金に抗議して仕事を放棄した。

<記事原文 寺島先生推薦記事>

UK nurses’ union launches largest ever strike

出典:RT

2022年12月15日

<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>

2022年1月9日


© Getty Images / Andy Barton

 イングランド、ウェールズ、北アイルランドの10万人以上の看護師が12月15日木曜日、イギリス看護協会(RCN)の労働組合106年の歴史の中で最大のストライキを行い、仕事を放棄した。

 Sky Newsによると、イングランドでは病院と訪問看護施設の約4分の1が、北アイルランドではすべての医療機関が、ウェールズでは1つを除くすべての医療機関が、12月20日火曜日にも予定されているストライキに参加しているとのことだ。

 英国の看護師は 「危機的状況」に達しており、ストライキ以外の選択肢はないと、RCN委員会のデニス・ケリー(Denise Kelly)委員長はSkyに語り、「長年の実質賃金カット」、 公務員職の数年にわたる賃金凍結、どんどん上がる生活費、さらにはインフレ率はプラス5ポイントである点などに触れ、看護師は19%の賃上げを要求していると述べた。

 政府は、ほとんどの看護師に対してわずか4.5%の賃上げを提示し、給与水準の低い者は最大で9%の賃上げを受け取るとしている。リシ・スナック首相の報道官は、12月15日木曜日にこの提案を「公正かつ妥当」とし、昨年は看護師が3%の賃上げを受けたと指摘した。


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 このような経済的な問題に加え、多くの看護師は患者の安全が脅かされていると主張している。ロンドンのセント・トーマス病院の訪問看護婦長はSkyに、「看護師はへとへとだ」、「1人の看護師が3人分の仕事をしている」ほど病院の人員不足で、それが患者を危険にさらすほどであると語った。

 ケンブリッジのアデンブルック病院の前でピケを張っている訪問看護部門の看護婦長は、Covid-19以来、「仕事量が2倍になった」、「来院する患者の病状はこれまでよりずっと重くなっている」と主張し、その変化に対応した人員増強は行われていない、と述べた。また、何万もの欠員がありながら、それを埋める人がいないことを指摘する人もいた。

 患者の擁護団体である患者協会は、看護師たちとの連帯を表明している。CEOのレイチェル・パワーは、この「恐ろしい時」に、「RCNとテーブルを囲んで、この解決策を見つける」よう政府に懇願している。

 国民だけでなく保守党内からさえも圧力が高まっているにもかかわらず、ダウニング街10番地(英国政府)は、看護師の給与体系を再考する 「計画はない」と主張している。 マリア・コーフィールド保健大臣は、1%余分に賃上げするごとに7億ポンド(8億5325万ドル)の費用がかかり、インフレに合わせようとしても問題が悪化するだけだと主張している。

 一方、スナック首相は今週初め、英国経済へのさらなる混乱を防ぐため、「より厳格な対ストライキ新法」を導入する用意があると警告した。交通運輸労働者、ロイヤルメール(イギリスの郵便事業のブランド名)、高速道路職員、その他の英国の労働組合は、今後数週間のうちにストライキを行う予定である。

EUの停電は避けられない、とオーストリアの防衛相が主張

<記事原文 寺島先生推薦>

EU blackouts inevitable – Austria
It’s not a matter of “if,” but “when” some parts of the bloc go dark, Vienna’s defense minister has said

EUの停電は避けられない。(オーストリアでの報道)
これは、「もしも起こったら」ではなく、「いつ起こるか」の話であると、ウィーン当局の防衛相が主張

出典:RT

2022年12月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年12月30日


2022年11月25日、ポーランドのワルシャワの夜の通り©  STR / NurPhoto via Getty Images

 ウクライナ戦争のさなか悪化するエネルギー危機により、欧州連合が停電を食い止められる可能性はほぼなく、停電の影響に備えるべきである、とオーストリアのクラウディア・タナー防衛相が、12月27日(火)に警告した。

 ディ・ヴェルト紙の取材に対し同相は、近い将来、EU内で停電になる地域が生じる可能性は、「非常に高い」という見通しを示した。「ウクライナ戦争の影響により、電気供給の停止が広まる危険性が、いま再び深刻に高まっています」と同相は述べた。さらに、「問題なのは、もしも起こったらではなく、いつ起こるかの話です」と同相は語気を強めた。 

 タナー防衛相がさらに、証拠を示すことなく述べたのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、西側諸国の電力供給網に「ハッカーによる攻撃」を加えようとしていることは、「ハイブリッド戦争」の一環である、という内容だった。

 「この攻撃を理論上だけのものだと捉えるべきではありません。オーストリアや欧州内での停電に備えなければなりません」と同相は語った。

 タナー防衛相によると、オーストリア軍をはじめ他の政府諸機関も関連した非常時のための訓練を行っているとのことだ。さらにオーストリア政府は、国民の意識向上の取り組みも行っていて、公共の場所で小冊子を配布し、停電の際にとるべき対応を広報しているという。


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 そのような措置は、「混乱状態」を引き起こすことにならないか、と問われた同防衛相は、その懸念を否定した。「平衡感覚をもって意識を高めることと恐怖を煽ることの間には、細い境界線しかないことは承知しています。しかしこれまでのところ、私たちはかなりうまく対応できていると思っています」と同相は述べた。

 停電になるのではという恐怖が欧州各地を覆うようになってもう数ヶ月になる。ウクライナでの戦争に伴う西側がロシアに課した制裁が原因で起きている燃料価格の高騰により、欧州大陸が浮き足立っている中でのことだ。

 今月(12月)上旬、ドイツの報道機関が、エネルギー節約のため、スイスで電気自動車の使用を制限する措置をとることを検討していると報じた。その同時期に、フランスの送電会社RTEのザビエル・ピエハジュク社長は、気温の低下とエネルギー需要の高まりのせいで、フランスが停電に直面する危険があると警告していた。さらに、いくつかの原子炉が、整備のため稼働停止を延長すれば、停電の危険はさらに高まるだろうと先週ブルームバーグ紙は報じた。

 11月下旬、ロシアのマリア・ザハロワの外務省報道官は、EU諸国の政策立案者たちは、現在進行中のエネルギー不足の責任は、身から出た錆であると主張していた。

チェコのプラハで、対ロシア制裁とウクライナへの支援の中止を求める大規模デモが発生

<記事原文 寺島先生推薦>

Major protest in EU capital calls for direct gas talks with Russia

Prague rally demands resignation of government, decrying its support for Kiev and anti-Russia sanctions

EU加盟国の首都で、天然ガスについて、ロシアと話し合いを要求する大規模デモが発生
プラハでの抗議集会は、政府の退陣を求め、キエフ当局への支援とロシアへの制裁を非難

出典:RT

2022年10月28日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月15日


10月初旬、プラハで、高騰するインフレに対する抗議活動を行っている市民連合の人々。© Getty Images / Sean Gallup

 10 月30 日(金)、何万人ものデモ参加者が、プラハの中央広場を覆い尽くし、チェコ政府が対ロシア制裁と、ウクライナ支援計画を支持する中で進行しているインフレを非難した。

 デモ参加者たちは、モスクワ当局との天然ガスについての直接の話し合いを持つことと、ペトル・フィアラ首相とその内閣の退陣を求めた。参加者たちは、チェコ国旗を振りながら、「退陣、退陣」と声を揃えた。

 この最新の集会は、9月に行われた同様の集会に続くものだが、その9月の集会では、推定7万人が参加したと報じられた集会もあった。

 ヴァーツラフ広場に集まった群衆は、エネルギー価格と食料価格の高騰の原因となっている、ウクライナ危機に関する対ロシア制裁へのチェコの参加の中止を求めていた。


 「ロシアは我が国の敵ではありません。戦争を求めている我が国の政府こそが、なのです」とは、AP通信が報じたデモ参加者の一人の声だ。この抗議活動を組織した、「チェコ共和国が一番」という名の団体は、NATOに反対し、チェコは軍事的中立の立場を取るよう求めた。


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 「今、新しい国家が再生しようとしています。そしてその目的は、チェコ共和国が自立することなのです」とロイター通信は、この抗議活動の組織者であるラディスラフ・ブラベル氏のことばを報じた。「人々で埋め尽くされたこの様子を見れば、誰もこの動きを止められないと確信しました」

 フィアラ政権は、抗議者たちを軽くあしらい、これらの抗議者たちを、「親露派」呼び、この抗議活動の組織者たちを非難し、ロシアが流す偽情報作戦に耳を傾けているとした。 チェコがNATOに加盟したのは、1999年3月のことで、米国が主導するNATOが、ユーゴスラビアを攻撃した数日後だった。さらにチェコは、2004年にEUにも加盟した。

ヴィット・ラクサン内務大臣は10月30日(金)、「私たちは、自分の友人が誰で、私たちの自由のために誰が血を流しているのかも、分かっています」とツイートした。「さらに、私たちは誰が敵なのかも承知しています。そんな人たちに、私たちの愛国心を乗っ取られるわけにはいかないのです。」とも。

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 チェコは、欧州のエネルギー危機において、特に厳しい打撃を受けている少なくともその理由の一つには、ロシアの天然ガスと歴史的な繋がりがあることが挙げられる。 報道によると、チェコの各家庭では、エストニアに次ぐ、EUで2番目に高い電気代に襲われているという。9月、チェコのインフレは18%に達した。

高騰するインフレにより、フランスで全国規模のストライキが発生

<記事原文 寺島先生推薦>

Soaring inflation triggers national strike in France
Trade unions have called for higher wages amid the cost-of-living crisis

(多くの労働組合は生活費が危機を迎える中で、賃上げを要求)

出典:RT

2022年10月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月9日


© AP / Daniel Cole

 
 10月18日(火)、フランスで全国規模のストライキが発生し、電車は不通になり、学校は休校になっているところも出ている。これは、高騰するインフレと、エネルギー危機の中で、多くの労働組合が賃上げを要求する動きを見せているからだ。

 フランス最大の労働組合であるCGT(フランス労働総同盟)によると、抗議運動者たちが要求しているのは、「給与や年金や最低限の社会保障額の引き上げと、生活と学習環境の改善」だという。CGTの説明によると、今日(10月18日)行われた労働争議は、数週間継続している製油所労働者たちによるストライキを拡大したものだとのことだ。なお、この製油所のストライキにより、ガソリンスタンドは、フランス中で休業となっている。この労働組合は石油業界の大手、特にトタル社とエクソン社の企業運営を非難し、生活費の危機に直面している被雇用者たちの要求は無視して、「巨額の利益」を得ている、と主張している。

 CGTは、エネルギー業界だけではなく、「公的機関と民間企業、両方」の様々な業界で、抗議活動の熱が高まっている今こそ、「被雇用者や退職者や青年層の人々」が、この労働争議に参加すべきだ、と呼びかけている。

 フランスのインフレ率は現在6%超となっており、フランスのほぼ全ての産業活動は記録的な低下を見せている。これは急速に進行しているエネルギー危機によるものであり、この危機は、対露制裁と、 ロシアからのエネルギー供給が急激に減少していることで、さらに悪化している。


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 今回のストライキは、いくつかの大きな労働組合が支持しており、大規模な混乱を招いている。フランスの国鉄であるSNCFは、「数路線が」不通になるという警告を発した。

 ユーロスター鉄道は、ストライキのために、ロンドン・パリ間のいつくかの電車を止めなければならなくなったと発表した。

 海運業界も影響を受け、10月18日(火)、数時間稼働を停止すると発表した港や波止場も出てきている。

 このストライキにより、休校になる学校も出てきている。教育省が出した最初の公的発表によると、教員の約6%がこのストライキに参加しているという。この数値は、特に専門学校で高くなっており、専門学校の教員のストライキへの参加率はほぼ23%に達している。

 パリやボルドーやレンヌなどを含むいくつかの都市では、数千人が様々な集会に参加しており、午後にはさらに多くの抗議運動が計画されていた。

 10月18日(火)、フランスの大臣の一人が、このストライキに対して声明を出し、ストライキの参加者たちは、「対話しないという姿勢に」固執している、と非難した。

 「ある一定の数の被雇用者の人々が、自分たちの購買力が改善されることへの期待を表明している状況は、理解できます。しかし、私がこれらの人々に言いたいことは、我が国の政府は、インフレの件に関しては、欧州で国民をもっとも保護している国だ、という点です」とエコロジー移行大臣のクリストフ・ベシュ氏はフランスのテレビ局Europe1の取材に答えている。

 同大臣が強調したのは、ストライキは事態をさらに悪くすることにしかならないという点だった。それは、すでにフランス経済は、「ウクライナでの戦争」と、経済悪化状況がより広がっているせいで、非常に困難な状況に追いやられているからだ、と述べた。

産業壊滅と破産の瀬戸際にある欧州

<記事原文 寺島先生推薦>

Europe at the Gates of Deindustrialization and Ruin

筆者:ミッション・ヴェルダッド(Mission Verdad)

出典:INTERNATIONALIST 360° 

2022年10月16日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月9日


前代未聞の過酷な産業崩壊が進む欧州 (画像はル・モンド紙から)

 ウクライナでの戦争(この戦争の原因を作ったのは米国とNATOだが)勃発後、西側のほとんどの国々は、米国政府と足並みを揃え、前例のない規模で、ロシアに対する強圧的な措置を課すことを決めた。そのせいで、ロシア・欧州間の関係は悪化し、経済危機とエネルギー危機はますます深刻になっている。

  欧州連合(EU)各国政府は、悲観的な状況にあるのに、モスクワ当局に対して第二弾の「制裁」を準備している。気づいていないの意図的なのかは分からないが、このような動きは、欧州の未来を暗澹たるものにするしかないものだ。

 エネルギー危機について言えば、欧州内の諸工場での電気代は大幅に増加し、ロシアのエネルギーに大きく依存していた多くの製造業者は、産業活動が麻痺させられている。 経済面でいえば、欧州大陸内での高いインフレが、労働者たちが賃上げを求めて、ストライキを行う原因となっている。

 これらの様々な要因の影響を受け、欧州における生産費用は高騰し、脱産業化の過程が進行している。もっともそれは、新自由主義的な政策により、既に進行中だったことではあるが。


ドイツから逃げ出す諸企業

 経済的利益を守るため、もともと欧州で自社産業をたちあげてきた多くの強力な企業が「逃げ出し」はじめ、比較的生産費用がより安く済む国々に移転している。この現象は、特にドイツで顕著だ。 中国の新華社通信が再掲した、ドイツのハンデルスブラット紙の最近の記事によると、米国は60社以上のドイツ企業に、オクラハマ州での投資を持ちかけ、利益を増やすよう声をかけている。その企業は、ルフトハンザ社、シーメンス社*、アルディ社*、フレゼニウス社*である。 この4社だけで、最近の投資額をほぼ3億ドル増やしている。
[訳注]*シーメンス社、ミュンヘンにある電機メーカー
*アルディ社、ドイツに基盤を置くデスカウントストアのチェーン企業
*フレゼニウス社、ドイツ・ヘッセン州に本拠を置く医療機器の製造・販売会社

 この記事の解説によると、同じことが製薬業界や自動車業界でも起こっているという。バイエル社は、1億ドルかけて、ボストンに生物技術センターを建築し、化学会社のエボニック・インダストリーズ社は、2億ドルかけてインディアナ州に生産センターを建てる計画だ。フォルクスワーゲン社は、2027年まで、米国に710億ドルを投資する予定で、BMW社はサウスカロライナ州で、電気自動車に関する新しい一連の投資を始めるとしている。

 中国も、ドイツの諸企業が熱い視線を送っている国だ。ドイツの化学会社BASF社は、100億ユーロを投資し、湛江(たんこう)市に世界水準の統合基地を建設する予定で、先月初旬、その最初の計画が開始されたばかりだ。


BASF


中国南部湛江市で建設中のBASFの基地の航空写真(写真は新華社通信提供)

 7月、ドイツのザクセン州のミヒャエル・クレッチマー知事は、ディー・ツァイト紙に、ロシアを孤立させ、ロシアとの経済協力関係を断つことは、ドイツにとって危険な行為である、と語っていた。さらに同知事は、「制裁」がドイツの経済とエネルギーの安全保障に悪影響を及ぼすことを懸念し、モスクワ当局との関係には、「現実主義」を取るべきであるとし、EUが和平交渉を進めることで、ウクライナでの武力対立を停止すべきだ、とも語っていた。

 「我が国の経済体制は、完全に崩壊の危機にあります。慎重に動かなければ、ドイツは非産業化してしまう可能性があります」と同知事は警告していた。

 ドイツに届けられる天然ガスの3分の1以上は、産業界で消費されていて、ロシア・ウクライナ間の武力衝突が起きる前は、ロシアがドイツの天然ガスの半分以上を提供していた。米国とEUが原因を作った政治的及び技術的な状況のせいで、ここ数週間ロシアからの供給量が減少したため、ドイツ政府は厳しい現実に直面させられている。その現実とは、中期的に見て、ドイツは、ロシアからの天然ガスを諦めることはできないという現実だ。いくらここ数年、ドイツが最も力を入れている政策が、エネルギー移行計画という「大義」を掲げているにしても、そうなのだ。


産業界が警鐘を鳴らしているイタリア

 イタリアでは、北部と中央部の諸企業が、経済の非産業化が起こることに警鐘を鳴らしている。その原因は、ガスと電気の価格が法外に高騰し、国家の安全保障が脅かされていることだ。 エミリア・ロマーニャ、ロンバルディア、ピエモンテ、ベネト地域のイタリア産業総連合 (Confindustria) の会長たちの見積もりによると、生産費用は、最良で360億ユーロになるとしているが、410億ユーロにまで達する可能性もある、とのことだ。

 8月30日 、イタリアの産業生産の中枢部が集中している4地域の行政の経済開発部門の代表者たちの会合が開かれたが、この連合会の各地域の代表である、アナリサ・サッシ、フランセスコ・ブッゼラ、マルコ・ゲイ、エンリコ・カラロの4氏は、現在のエネルギー価格は、「尋常ではない高さで、しかも急激に高騰している」と語り、生産活動の完全閉鎖を阻止できる唯一の可能性は、欧州議会による介入しかないと述べた。

 地域連合会のこの4代表は、ガスと電気の費用が10倍になったことを報告書で記している。具体的には、2019年から2022年は45億ユーロだったのが、2023年には360~410億ユーロにまで高騰するとのことだ。イタリアでは前例のないこのような費用の高騰が起これば、産業は劇的に衰退し、イタリアの産業活動は完全に停止してしまうだろう。その際、一番大きな影響を受けるのが、中小企業なのだが、その危機は、外国に産業製品を輸出している大手企業にも影響を与えるだろう。

 その翌月、この産業連合会が発表したところによると、2023年の経済成長の見通しは、ゼロになるだろうという。 「私たちの経済は、複雑で、幾分暗く、面倒な方向に進むでしょう」と同連合会の代表であるフランセスカ・マリオッティ氏は、同連合会の研究センターが出した秋の経済予想を発表した際に語っていた。


記録的な企業倒産数を出しているフランス

 今年、ほぼ9千社のフランス企業が倒産しているが、この数は、ここ25年で最大だ、とラジオのフランスインホ局は、アルタレス社が出した数値を引用して報じた。

 今年の第3四半期、フランスでは、8950件の倒産手続きが取られたが、これは昨年の69%増しだった。アルタレス社によると、小規模店舗やレストランや美容院が、最も影響を受けたという。 2021年の同時期と比べると、レストランの閉店数は150%、美容所や美容院については94%増加している。

 アルタレス社はこの現状を、インフレの進行とサービス料金の高騰、そして国による企業支援措置の減少、さらには新型コロナウイルスの大流行後に消費者の習慣にやや変化が見られたことと関連付けている。

 昨年12月、ロシアからのエネルギー購入拒否運動が悪化する前のことだが、エネルギー消費者産業連合 (フランス語略称はUNIDEN)は次のように警告していた。「フランス国内の電気集中型産業は、価格状況が最悪になれば、近い将来、市場における供給の大部分を補充しなければならなくなるだろう」と。そしてその際の追加費用を、20億ユーロだと見積もっていた。

 UNIDENは、フランスで行われているエネルギー集中型産業を代表する団体であるが、食品業界、自動車業界、化学業界、セメントと石炭業界、建設業界、エネルギー業界、金属業界、製紙業界、運輸業界、ガラス業界も網羅している。この団体に加盟している諸企業は、フランス産業界の電気と天然ガスの7割を消費している。

 現在、フランスの燃料業界は、崩壊の瀬戸際にある。ガソリンスタンドの3割が、労働者たちによる大規模なストライキのために、ガソリンを所有していない。トタル社とエクソン・モービル社の労働者たちが激怒しているのは、現在のインフレ水準下、 補助金と援助なしでは今の給料で生活できない点だ。フランス当局は、堪忍袋の緒を切らせ、 ストライキを行っている労働者たちを、力づくで解散させ、従わなければ賃金カットも辞さない構えだ。


製油所の前で抗議活動を行っているフランスのトータル・エネルギー社とエクソン・モービル社の労働者たち( Photo: EFE )

 「労働組合が断固として合意の話し合いに応じないのであれば、必要な力を使って、できる手段を総動員して、精油作業を開始するしかありません。私が決める猶予期間は、時間単位、最大限許せて、日単位です。週単位ではありません。それでは時間がかかりすぎます」と、フランスのブルーノ・ル・メール金融大臣は述べている。


産業の経済的支柱なしで、欧州はどれほど継続できるだろうか?

  独・伊・仏、3カ国のこれらの事例は、ほんの数例を示したにすぎない。(これら3カ国の産業能力にとって、最も重要な事例だけ示したものだ)。そしてこれらの事例は、いま欧州連合が直面している一般的な現状を示すものだ。それは、非産業化が進行しているということである。

 産業の潜在能力が衰退すれば、失業率の高騰や、一般市民からの不満の増加といった、既に現れている直接の影響を招くだけでは済まない。それだけではなく、他国に依存して、不可欠な原料や部品などを入手しないといけない状況も生み出される。例えば、「錫とアルミの製造能力は、半分に抑え込まれ、金属の鋳造は衰退している」と欧州非鉄金属協会は発表している。

 このような状況が継続すれば、これらの天然資源を使って、これまで欧州大陸内で製造してきた原材料(例えば機械や航空機や車輪の部品など)を、アジアや米国からの輸入に置き換えなければならなくなるだろう。

 制裁による戦争を始めたことで、EU諸国は、自国主権を完全に手放すことになってしまった。この不当な制裁が課されるまでは、欧州の産業構造は、欧州大陸の各国が、ある一定の自決権を裁量できる力を維持できていた。しかし今は、欧州諸国の規則を決められるのは、欧州に原料や部品を供給する国になってしまいつつある。そのような原料や部品がなければ、欧州社会を維持してきた技術的な枠組みが回らなくなるからだ。

 米国は欧州にとって決定的な供給者になろうと、歩を進めてきた。そうなれば、EUが「米英にとっての下僕」という役割を担うことに甘んじざるをえなくなる。たとえ、英米の下僕になることが、欧州の人々にとって利益にならないとしてもである。

EU主要各国の首都で、巨大なデモや抗議集会

<記事原文 寺島先生推薦>

Massive Demonstrations Taking Place in the Main European Capitals

出典:INTERNATIONALIST 360°

2022年10月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月8日



 この週末は、欧州連合(EU)加盟国の首都を埋め尽くすような、大規模な反政府集会が、同時におこなわれた。
 最も大規模なデモは、ドイツの首都ベルリンの連邦議会議事堂正面と、チェコの首都プラハの中心部で行われた。
 ドイツのデモ隊は「ロシアの石油とガスをよこせ」「ショルツ(社会民主党)が率いる三党連立政権は、バイデン大統領の召使い」の横断幕を掲げて登場した。

 チェコの首都プラハでは、週末に抗議デモが数回行われ、デモ参加者は政府に辞任を要求している。しかしペトル・フィアラ首相は、「デモと集会に参加しているひとたちはモスクワに利用されている人だけだ」と述べた。

 オーストリアの首都ウィーンでもデモが行われ、多くのロシア国旗すら見受けられた。デモ参加者は、ネハンマー首相に対し、ロシアとの対立を放棄し、友好関係を再開するよう求めた。

 EU諸国における動員のきっかけは、インフレの継続的な拡大である。
 ドイツでは1950年代初頭以来、初めて2桁になった。電気・ガス料金の途方もない高騰が、実質賃金を大幅に引き下げている。
 チェコ共和国のインフレ率は8月に年率17%となり、昨年の約3倍となった。

生活費高騰に対するフランスでのデモ

 14万人以上のデモ参加者が、給与の引き上げや企業の特別利益への課税強化など、危機の影響を緩和する措置を求めて、10月15日(日)にパリでデモ行進をおこなった。
 主催者は、エネルギー、必需品、家賃の凍結を要求し、年金改革に反対した。警察との深刻な衝突、ゴミ箱の焼却、いくつかの銀行のショーケースの破壊、などの行為が行われた。

 ストライキをおこなってデモに参加したのは、製油所、原子力発電所の整備作業員、清掃作業員、国鉄、銀行などの労働者だった。「賃上げのための闘いは公正である」と参加者は叫んだ。
 この呼びかけが行われたのは、製油所や燃料タンクでのストライキが慢性的なガソリン不足を引き起こし、マクロン政権が守勢に立たされる中のことだった。
 数百万人の労働者や自動車に依存する市民に影響が及び、ガソリンスタンドには巨大な行列ができた。

 マクロン政権は、6月の立法府選挙で過半数を失った議会でも守勢に立たされている。特に、来年度の政府予算案の議会審議は難航している。

コービンを失脚に追い込んだ、2度目のブレグジット国民投票を呼びかけた謎の新党リニュー党の正体とは

<記事原文  寺島先生推薦>

How an obscure intelligence-linked party fixed a second Brexit referendum and torpedoed Corbyn

(諜報機関と繋がる謎の新党が2度目のブレグジット国民投票を仕掛け、コービンを失脚に追い込んだ。)

筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)

出典:グレー・ゾーン(the GRAYZONE)

2022年9月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月16日


コービン人気が最高潮だった2018年2月19日に創設されたリニュー(Renew)党

親EU派のリニュー党は、「コービン人気」が最高潮だったときに、どこからともなく現れ、2度目のブレグジット国民投票の開催を主張し、労働党党首だったコービンの失脚に繋げる役割を果たした。リニュー党の創設者たちの裏に諜報機関の関与があったことは、ずっと隠されていた。 今に至るまで。
 
 覚えている人はほとんどいない英国のリニュー党が、2018年の2月にウェストミンスターのど真ん中で正式に創設されたとき、創設者たちが広げた大風呂敷には中身がほとんどなかった。この新党の若く、またほとんど世間からは知られていなかった創設者のひとりクリス・コグランは、大胆な親EU路線を掲げ、その焦点を2度目のブレグジット国民投票の実施に置いていた。

 ジェレミー・コービン党首の指揮のもと、労働党が市民からの支持を急増させていた最中に創設されたこのリニュー党が選挙戦に参画した時期は、英国支配層が、真の左翼にダウニング街10番地の首相官邸に乗り込まれることを恐れていた時期と重なる。この党の創設当初は、マスコミからの反応は冷たく、サンデー・タイムズ紙はこの党を、「不発の爆竹」と報じていた。しかし最終的にこのリニュー党はコービンの失脚に決定的な役割を果たした。これはこれまで誰も気づかなかったことだが。

 2017年の総選挙期間中、コービンは英国の欧州連合からの離脱を進めるという選挙公約を掲げて、大きな支持を得ていた。しかし2019年になると、労働党の綱領において無視することができない重要な構成員が、英国がEUに加盟する是非を問う2回目の国民投票を要求した。そしてこれがコービンと、彼が率いる労働党の歴史的敗北に繋がった。

 コービン人気の暗転は、多数の有権者の意志や、労働党を支持していた多数の労働者階級の思いとは食い違っていた。2019年12月、英国民は大袈裟にブレグジット派であると公言していた元ロンドン市長のボリス・ジョンソンを選び、一方で、労働党は1935年以来最悪の選挙結果を迎えたことも同様な不一致と言えるだろう。コービンはその翌日に、党首の座を降りた。

 コービンが2019年の総選挙期に、ブレグジット国民投票のやり直しをすることを支持したことは、善意と取られていたが、同時に政治的にみれば危険で、読み違えた一手だとも見られていた。しかし、2度目の国民投票をしようというこの運動がどこから始まったのかをよく見てみれば、もっとずっと狡猾な手口が使われていたことがわかる。

 実際、2度目の国民投票を求める声は、草の根の市民からのものではなく、この怪しげな新党のリニュー党から始まったものだった。本記事で後述する通り、リニュー党は英国の軍や諜報機関と深く強いつながりのある工作員によって設立されていた。しかもそこには長年にわたって軍の心理戦に携わってきた専門家たちが含まれていた。

 リニュー党の創設者たちと、コービンに対する悪意ある運動の裏にあるものを見れば、退陣したこの労働党党首の主張を立証しているように思える。彼は英国の諜報機関が自分の持っていた大望を「意図的に弱体化させた」と語っている。


「コービン大人気」期の最中に親EU政党が出現
 
 2015年9月にコービンが党首に選ばれるやいなや、多数の労働党国会議員、党の長老たち、記者や評論家たちは、コービンを「選ばれるべきでない」、受け入れ難いほど「過激」という烙印を押していた。この労働党の支配者層はさらに不意打ちを食らうことになる。英国民が2016年6月の国民投票でブレグジットを支持したときだった。そしてこの支持はその翌年の総選挙で波乱の舞台を準備することとなった。

 その総選挙の結果は、異常としか言いようがなかった。選挙運動開始時には25%の支持しかなかったのに、最終的にコービンは投票者の4割の支持を獲得し、勝利まであと2227票、というところまで躍進した。国政選挙での労働党の得票率は前回10%も上回り、このコービンの活躍により、テレサ・メイの保守党政権は致命的な打撃を受け、ブレグジットについての議論を再開せざるを得なくなった。しかも今回は力を失った過半数割れの政権担当者として。

 この支持率の増大は、1945年の歴史的な地滑り的勝利以来の総選挙における労働党の最高の躍進を示していたが、その要因は、少なくとも一部分ではあったが、コービンがブレグジット派の綱領を受け入れたことだった。

コービンは惜しくもダウニング街10番地の首相官邸に乗り込むことはできなかったが、コービンのこの驚くべき躍進に対して、彼を中傷していた英国の貴族階級やメディアは、コービンの存在を深刻な脅威であると見始めた。真の意味の進歩的な首相が生まれる可能性に直面したこれらの勢力は、強力かつ緊密に連携した取り組みによってコービンの選挙戦の見通しを覆そうとした。

 2017年の総選挙が終わった数ヶ月後は、大手メディアでさえ、「コービン大人気期」と報じる時期であった。テレサ・メイと彼女の政権下の諸大臣は、英国のEU離脱について、ブリュッセルのEU当局との骨の折れる交渉の過程に取り組んでいた。いっぽうコービンは、英国の野党党首として自身の立ち位置を見出したように映っていた。

 その年の夏は、コービンが行くところはどこでも、興奮した巨大な群衆が、コービンを出迎えた。コービンの人気は絶頂で、 総選挙直後、英国ヒルトンでのイベントのグラストンベリー・フェスティバルで挨拶を行った際、ガーディアン紙は、コービンが「この週末で一番観客を引きつけた」と報じた。

「コービン人気は留まるところを知らない」と同紙は書いていた。支配層が英国内で広がる予期できない崩壊状態と格闘する中、リニュー党は静かに、英国の選挙管理委員会に党の登録を済ませていた。

 リニュー党の党首が次の2月から英国の国政に参入するという発表をしたとき、その発表の場に馳せ参じた草の根の民衆の姿は見られなかった。「経験不足のせいですかね」とリニュー党の共同創設者のひとりであるクリス・コグランは恥じらいながら説明した。「この記者会見はマスコミの皆さんのためだけのものですので、我が党の支持者で部屋をいっぱいにすることは考えつきませんでした。今にして思えば、そうしておけば良かったのかもしれません。」


リニュー党の共同創設者のひとりクリス・コグラン

 
軍・諜報機関の怪しげな世界から「新しいマクロン」が登場
 

ではクリス・コグランとはいったい何者なのだろうか? さらに政治には素人に見えるこの人物はどこから現れたのだろうか?

 コグランは2017年の総選挙で、国政を目指し「無所属」として選挙運動を展開したが、有名人にはなりそびれた。コグランが出馬したのは、労働党が重要な選挙区として必勝を期していたバタシー選挙区だった。その一年後、コグランはジェームス・クラーク、ジェームス・トーランス、サンドラ・カドゥーリとともにリニュー党を立ち上げた。コグラン同様、クラークやトーランスもそれぞれ2017年の総選挙で国会議員に立候補していたが敗れていた。彼らも労働党が非常に重点を置いていた選挙区から出馬していた。バーモンドジー、オールド・サウスウォーク、ケンジントンだ。これらの地域は、EU残留派がとても強い選挙区だった。

 コグランや彼の同志たちによると、リニュー党は第三勢力を目指すために創設されたもので、「自己満足している英国政界の中枢に挑戦」し、「無党派層」の有権者の代表となることを目指す、とのことだった。 自らを、労働党でも保守党でもない「反体制派の」残留派と称し、リニュー党は党是の中心をEUへの残留の促進におき、2度目の国民投票の実施を掲げていた。

 創設当初から、この4名の創設者たちの政治戦略の方向性は、全く奇妙とまではいかないものの、間違っているようにみえた。リニュー党立ち上げの僅か数ヶ月前、強硬な親EU派の自由民主党は有権者の心を大規模な形で揺らすことに失敗し、英国の二大政党が有権者の82.4%の支持を集めた。この両党は、 ブレグジットを支持していたのだが、この82.4%という数字は、1970年以来最大のものだった。

 コグランとカドゥーリの話に戻るが、この2人は 「反体制派の潮流」を作り、導くには不思議な人物と思われた。

 地方メディアは、コグランについて、億万長者の銀行マンから転身して不人気のフランス大統領となった男を引き合いに出して「新マクロン」になる可能性があると評したが、彼は英国の保安機関と諜報機関の中枢から大歓迎を受けた。実際のところ、彼が英国外務連邦省テロ対策部の重役を辞したのは、2017年5月の国政選挙に無所属で立候補したほんの1週間前のことだった。

 当時36歳だったコグランは、選挙結果の如何に関わらず党首の座を維持するというコービンの誓約を受けて労働党から離党したと発表した。そして自身が国政に挑戦したのは、政治的中道派を組織するためだと呼びかけた。彼はさらに、労働党は「左派によるおとぎ話のような政策」を掲げていると強く非難し、自分が持っているものなら「何でも使って」、ブレグジット派と戦うと誓った。

 匿名を条件に、当グレー・ゾーンの取材に応じてくれた英国外務連邦省の職員の一人によると、このような国家機密に関わる役職にいる人物がそんな行動に出ることは、ほぼあり得ないことだった、という。高度な対テロ対策に従事していた経歴がある人物が、気まぐれで急に仕事を変えることなどありえない、というのだ。英国の公務員は、民間企業で務めることや、特定の党派に偏った政治活動をすることは禁止されており、自分の役職を辞した後も、しばらく冷却期間をおいてから、私人としてそのような行動を取ることが義務づけられている。

 その職員によると、コグランが即座に政界入りするには、かなり前から直属の上司の許可をもらうことが必要であっただろう、とのことだ。前例が全くなかったとは言えないまでも、どんな事情にせよ、コグランのこの転職のことは非常に異例である、とこの職員は考えている。

 コグランのリンクトイン(LinkedIn)の自己紹介欄には、対テロに取り組んでいたという記載は全くない。そのかわり、コグランは、2015年から2017年まで英国外務連邦省で「外交官」を務めていた、と記述している。英国の国家安全機関に批判的な人々の代表格である社会学者のディビッド・ミラーは、当グレー・ゾーンにこう説明している。「このようにコグランの出自がぼやかされていることは、その裏で陰の組織がうごめいている証なのかもしれない」と。

 対テロ対策はMI6が3つの「重点分野」として掲げているうちの一つだが、「英国外務連邦省」においてはそうではないとミラーは語っている。「対テロ対策に携わっている人々についての情報は、秘密扱いで、その人々は表向きは、「外交官」であると自称して潜入捜査を行い、機密を守るために勤務場所についての詳細は正確に示さないのが普通です。コグランの幅広い経歴や彼が従事していたことについての詳しい情報が欠如していることから考えれば、コグランが「外交官」をしていたとされる時期に、実際には英国の外国向けの諜報機関に関わる仕事をしていたとしても、驚くことではありません」。

 「外交官」としての仕事とは別に、コグランには長期にわたり英軍の予備兵を務めていた過去がある。コグランは、「生来の決意作戦」のもと、イラクでの従軍に動員された。この作戦は、米国が主導するISISに対する軍事干渉で、つい最近の2020年4月までつづいていたものだ。

 コグランがもつ職業履歴からは、英国の機密諜報機関とのつながりがさらにあきらかになる。コグランの以前のリンクトインには、ジェームス・ブレア-という人物から「いいね」をもらっていたが、この人物は、悪名高い英軍の第77旅団の一人だ。この77旅団は、戦争における心理戦に関わってきた旅団である。またコグランが主張していた「危機管理」能力について「いいね」を押したもう一人の人物に、第77旅団の予備兵のひとりがいた。



 コグランとともにリニュー党の創設者となったサンドラ・カドゥーリのリンクトインの自己紹介欄にも、同じような謎が見える。その記述には、カドゥーリが英国で政治活動を始めたのは、ジョージアでのNATOの任務に対して「戦略的な意思伝達方法」に関する助言者の仕事を辞した直後だ、とある。さらに、ジョージア滞在中に、カドゥーリは情報戦の技術に関して、ジョージア政府当局に「助言を与え、訓練の援助を行い」、「特に重きを置いていたのは安全に関する問題や、偽情報対策について」だった、とある。
 
 さらにカドゥーリが自慢していたのは、2010年10月から11月の間に「NATOの連合緊急対応軍団による大規模な演習に、文官助言者として参加した」という経歴だった。さらに、英国のエリート学校である英国防衛アカデミーと常設統合司令部で、「軍事演習のモジュール(一連の授業)のいくつか」にも参加した、とある。



 このような演習への参加は、カドゥーリが英国政府の陰の関連機関である「安定化協会(Stabilisation Unit)」で11年間勤務した後のことだった。この協会は、シリアやリビア、さらに多くの国々での政権転覆工作に関わってきた団体だ。この協会に勤めていた時期に、カドゥーリは、「短期でも長期でも、何度も海外に赴く準備ができていた」と記載されていた。

 興味深いことに、このようなカドゥーリの過去は、メディア報道が新しく立ち上げられたリニュー党で、彼女の果たした役割を報じた時には、取り上げられなかった。カドゥーリは常に、「元国連職員」とされていた。さらにもっとおかしなことは、現在カドゥーリのオンライン上の自身の履歴欄にリニュー党に関する記載が全くないのだ。リニュー党の創設に手を貸したことも、指導者として活動していたことも、もちろん書かれていない。

 カドゥーリの略歴の2017年10月から2020年3月までのことについては、ただ以下のように記載されている。「親EU派の政党とその選挙運動組織に対して、ある程度の戦略的助言やメディアを使った支援を行った」と。つまりその時期に、カドゥーリが実際行っていたことは、顧客である団体の広報について助言をすることであって、リニュー党はその団体のひとつに過ぎなかったということだ。

 
リニュー党は、「残留派のためのより激しい武装組織」
 

 2018年2月に、リニュー党の事務所が開設されたとき、共同創設者のひとりのジェームス・クラークはこの党のことを、EU残留派の運動における「より激しい武装組織」だと語っていたが、このような表現は、この党がもつ本質について、つい口をすべらせたものだろう。というのも、コグランやカドゥーリがこの発言を承認したという記録が残っていないからだ。

 創設記念式典ののち、リニュー党は英国で全国規模の遊説活動を激しく展開し、市や町を何十箇所も訪問し、学童たちに挨拶をし、 大小の催しを開催して、同党の新たな候補者を発掘し、2度目のブレグジット国民投票に対する人々の支持を高めようとしていた。

 リニュー党によるこれらの取り組みの模様は、前例のないほどの規模でマスコミから取り上げられ、ある欧州メディアは、コグランとフランスのマクロンを比較する記事を出し、この党を持ちあげた。また一方でカドゥーリは、 BBC
スカイ放送などのメディアから逆光を浴びていて、親ブレグジット派ナイジェル・ファラージの番組であるLBCショーにまで出演していた。

 創設すぐの英国の政党が、国内外でこれほど瞬時にかつ熱を持って報じられることは、かなり異例のことだった。しかも、その党の代表者たちが実績のある政治家ではなく、いわんや公人でもなかったことを考えれば、なおのことだ。

 どのメディアに登場する時でも、リニュー党創設者たちは、リニュー党は2度目のブレグジット国民投票を求める人々からの幅広い声の高まりをうけて創設された党であることを強調していた。しかしこの党の創設者たちは、自分たちが掲げているこの方針が人々に訴える影響力には限界があることを、しばしば実感させられていた。

 例えば、この党がウェールズを訪問したことを伝えた地方メディアの報道によれば、リニュー党の選挙対策部長のジェームス・トーランスはこう述べていたという。「ほとんどの人々にとって、ブレグジットは自分たちの生活における最重要課題ではなく」、医療や住宅供給や仕事や社会福祉のほうが、市民たちにとってのより大きな課題である、と。

 中道派のアトランティック・マガジン誌も、2018年2月に、リニュー党の実行可能性に疑問を投げかける記事を出し、英国の政治においての喫緊の課題はブレグジットが実現するかどうかではなくて、それをどのような形で実現するかの議論の方が大事である、と主張した。アトランティック誌は、リニュー党が、EUに残留することだけに政策の焦点を起き続けるのであれば、この先の総選挙を突破できる見込みはない、とも評していた。

 英国の支配者層の防衛に関する政策研究所のチャットハム・ハウス所属の一人の研究者がアトランティック誌に語った内容によると、ブレグジットの国民投票の結果を覆そうという努力をすれば、「我が国の政治体制に対する信頼を損なうことになるのは間違いないだろう。離脱派の有権者にとっては特にそうだろう」とのことだった。この研究者が代案として主張したのは、「妥協案」的な政策であり、 「民主主義的な手続きに則って行われた国民投票の結果」を尊重し、ブレグジットに対する様々な声も大事にしながら、ブリュッセル当局と交渉を重ねるべきだ、ということだった。

 コービンが、2019年4月にメイ政権と超党派の会談を持ったのは、まさにこの手法だったのだ。しかしこの会談は、残留派からは「裏切り行為だ」とされてしまった。

 その前年の英国地方選が近づいていた頃、コグランはタイムズ・オブ・ロンドン紙に爆弾のような論説記事を載せた。その内容によると、コグランが英国外務連邦省を辞したのは、「我が国の政治家たちが政府に対して機を捉えて、コービンやブレグジット強硬派と闘おうとしないことに落胆したから」だとのことだった。さらにコグランは、「自爆テロから我が国の国民を守ることに誇りを持っていた」が、英国外務連邦省を辞した、と語っていた。

 コグランによると、この先の選挙に向けてリニュー党を立ち上げた目的は、「コービンに、労働党に投票する有権者の圧倒的多数の人々の声に耳を傾けさせ、2度目の国民投票実施に踏み切らせ」、「誰も取り残すことのないIT革命」を導入させることだ、としていた。その政策を具体的にどう進めるかの手順は示さなかったが、コグランの主張によれば、そのような「革命」が、英国の家屋供給危機を解決し、気候変動を止め、ひどい貧困状況を食い止め、ガン治療にもつながる、としていた。

 リニュー党の創設者であるコグランは、自身の壮大な構想に具体性がないことを補うために、自分や仲間たちは、「すでに候補者は十分いるので、次の国政総選挙では、すべての選挙区で候補者を擁立できる(原文ママ)」などという勇ましい大言壮語をふりまいていた。

 
リニュー党は反コービン派の軍・諜報機関と同様の呼びかけを行っていた
 

 コグランが自信満々に大衆に訴えかけていた言葉とはうらはらに、リニュー党が地方選で擁立したのはたった16人の候補者だった。だが、結局一人も当選することができず、結果も惨憺(さんたん)たるものだった。その3週間後、コグランは電撃的に離党したが、その事情の詳細は不明だった。

 その後コグランはブルドッグ・トラストという組織に加わった。この組織は、表向きは慈善団体に金銭援助や助言を行う組織だ。この組織は、ロンドンに拠点をおく「トゥー・テンプル・プレイス(Two Temple Place)」という歴史ある団体の外郭団体である。そして、このトゥー・テンプル・プレイスの事務所がある建物には、英国政府やNATOが資金を出している「国政術研究所( the Institute for Statecraft)」という名で知られている悪名高い政策研究所の秘密本部が置かれている。
 
 当時、国政術研究所は、「インテグリティー・イニシアティブ」という組織の隠れ蓑的役割を果たしていた。このメディアはメディア調査研究計画という仮面をかぶった闇の喧伝(けんでん)拡散組織であり、軍や諜報機関の専門家たちによる運営されていた。このメディアは、国家の醜聞に巻き込まれたことがある。それは2018年下旬のことで、その内部文書がオンライン上で漏洩したのだ。そしてその文書からわかったことは、コービンが、クレムリンにとっての「使い勝手のいい愚者であり」、国費支出の規則を目に余る形で破棄しようとしている、と記載されていた事実だった。

 これらの文書から明らかになったのは、リニュー党の公式発表と全く同時期に、国政術研究所は、オックスフォード・ブルックリング大学近現代史学部のグレン・オー・ハラ教授を招き、トゥー・テンプル・プレイス所属の人々に詳細なプレゼンを行っていたことだった。その題名は「コルビナイツ(コルビン支持者の蔑称)とは何者か? そして彼らの考えは?」だった。

 以下はそのプレゼン時に使用されたスライドからの1枚だ。このスライドの全編はこちら。


 
 オー・ハラ教授が国政術研究所に呼ばれ、この研究所がコルビン対策で頭がいっぱいだったことは、注目に値する。というのもこの組織は、先述の陸軍宣伝組織である第77旅団の創設に秘密裏に一役かっていたからだ。この旅団はコグランが仕事上最も熱心に関係を築いていた人々が誇りをもって働いていた組織であった。
 


 ほかの漏洩文書には、このインテグリティー・イニシアティブという組織は、自分たちの取り組みを自慢して、「(国防)軍が、あらゆる種類の武器を使った近代戦争で戦える能力を得る援助」を行っている、と書いてある。また、この組織自身の記録によれば、インテグリティー・イニシアティブが英国軍に援助した内容には、「特別軍事予備隊(第77旅団や軍事情報専門団(Specialist Group Military Intelligence)など)」の創設などが含まれており、この両者とは今も密接で非公式なつながりを持っている(強調は筆者による)」という。
 
 このインテグリティー・イニシアティブのさらなる説明によれば、これらの情報戦部隊が採用しているのは、「軍が決して採用できないような人々であるが、愛国者として自分の時間と専門性を提供してくれる人々」だという。オックスフォード・ブルックリン大学のいくつかの学術機関が、軍事情報専門団を支援している機関として記載されていることから考えると、オー・ハラが行ったプレゼンは、英国軍が「すべての種類の武器を使った近代戦争の戦い方」を教授されている一つの例だったと言える。

 コービンが労働党党首として選挙を行った後に英国の軍支配者から狙いをつけられたのは明々白々である。2016年の軍第72諜報部隊の隊員に対して行われたプレゼン資料が漏洩しているのだが、このプレゼンでは、労働党党首の「視点」を分析するのに、まるまる一節を費やしていた。そこには、コービンがNATOやイラクやアフガニスタンやシリアでの戦争に反対していることも含まれていた。

 付随スライド(下図)には、コービンの躍進が、「軍に焦点が当たることの減少」につながり、コービンは、「軍事干渉や防衛支出に反対している」とも記載されていた。


 
 漏洩したプレゼン資料で取り上げられていた他の唯一の議題は、シリアでの戦争と、EUで起こっていた難民危機についてであった。明らかに英国軍の高級将校層は、コービンがもつ左翼的な視点を、軍事衝突や人災と同等の脅威である、と考えていたようだ。そして、この考え方は軽視できるものではない。第72諜報部隊の公式の記録によれば、このプレゼンの目的は「すべての階級の司令官たちに諜報活動の成果と、予見できる諜報分析力を提供した上で、決定をおこなえるようにすること」だったということだ。

 そのようにして第72諜報部隊が委託されたのは、「様々な情報源から集められた情報」を使って「敵の姿を作成すること(強調は筆者による):例えば、敵の居場所、重要人物、戦術」、また「敵が起こしそうな行為を見極め、次に起こりそうなことを予測する」こと、さらには軍や国防省の「資産」を「以前から存在する脅威や、以前には存在しなかった脅威」から護衛することだった。コービンも、そのような「脅威」の一つであると考えられていたようだ。

 コグランのもつ背景や人脈を考えれば、このプレゼンの内容を内々に知っていた可能性がある。そうなると、以下のような明白な疑問が浮かぶ。それは、「リニュー党は、純粋な政治的な取り組みから生まれたものなのか? それとも、軍や諜報機関が、コービンや、コービンを代表とする進歩的な動きへの対策として行った工作なのか」という疑問だ。


使命を果たしたのち、リニュー党はより大きな残留派の動きに合流
 

 2018年の悲惨な選挙結果と、コグランの離党にも負けず、リニュー党に残存した支持者たちは、全国規模の遊説を数ヶ月継続した。しかしその後の2019年2月、 保守党と労働党の国会議員の中の不満分子が親EU派である「チェンジ英国党」を創設したさい、リニュー党は先に控えていた欧州議会選挙への候補者を取り下げた。この対応に対して、チェンジ英国党は、リニュー党が元来持っている親ブリュッセル政策を思い起こさせる「価値も意味もある努力だ」と歓迎した。

 リニュー党が親残留派を一つにまとめようと努力したにもかかわらず、チェンジ英国党は、たった3.3%の得票率しか手にできず、まもなく党員6人が離党し、この党も解散に追い込まれた。

 この結果はさけられないものだった。チェンジ英国党が創設された同月、研究者のリチャード・ジョンソンは詳しい分析を出版したが、それによると、「離脱のほうに投票した保守党の端に位置する支持者たち」を取り込めるかどうかが、2019年の総選挙で労働党が勝利するかの基盤になるだろう、との分析だった。

 労働党が国会で過半数を確保するために必要だった64議席のうち、45議席はイングランドとウェールズの選挙区だったが、すべて保守党に奪われてしまった。その有権者の78%がブレグジット(離脱)派だった。

「国民投票実施後の英国政界の最も衝撃的な事実は、離脱派も残留派も、もとの考えをかたくなに保持していることだ」とジョンソンは警告していた。「それぞれが、EU離脱に関する国民投票で出した選択は、その後もずっと安定している」

 党の政策に対する市民からの支持が不足していたことを考えると、リニュー党創設の裏に隠れたハッキリとした目論見は、新党を打ち立てることにより、正当な草の根運動という姿を借りて、2度目の国民投票を求めることだった、と言える。この党の創設が必要だったのは、親残留派であった自由民主党が保守党と5年間連立を組んだことで劣化していたことを受けてのことだった。

 リニュー党がチェンジ英国党の露払いの役目を果たしたことも、否定できない成果だった。コグランが2019年のニュー・ステイツマン誌の論説に書いていた通り、リニュー党が創設されたのは、力を得るためだけではなく、「穏健派の国会議員が分裂して、新しい中道政党になってブレグジットに反対し」、ひいては「チェンジ英国党を促進させる」という目的もあった。

 奇妙なことに、コービンも、コービンの顧問も2度目の国民投票を推進している勢力が、本当にブリュッセルのEU官僚たちのことを崇拝してそんな動きをみせているのかどうかを考えずに、労働党の選挙での見通しを台無しにする決定を下してしまったのだ。

 コービンが2度目の国民投票を求める声を受け入れたことは、近年の英国の政界史における最も間違った政治的手法だったといっていい。保守党政権がブレグジットに向けた交渉をする過程において沈没しそうになっていた中、もっと支持を集められる政策を提案することもできたのに、労働党が選んだ道は、 新生の非主流派の政治運動と手を結ぶことだった。そしてその政治運動の出処は、英国の有権者たちが排除しようとしてきたまさに支配者層だったのだ。

 しかも労働党は、コービンの台頭を存亡の危機と捉えていた諜報機関から、静かではあるが、協調的に唆されて、わざとこの政治的な自殺行為に及んだ可能性も否定できない。

ドイツはトイレットペーパー不足に直面

<記事原文 寺島先生推薦>

Germany faces toilet paper shortage
Manufacturers say the energy crisis is leading to higher prices and limited supplies

(ドイツはトイレットペーパー不足に直面
製造業者はエネルギー危機のせいで、価格の高騰と 供給制限が引き起こされていると主張)

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月4日


©  Getty Images / Image Source

 ドイツのトイレットペーパーの生産は、ヨーロッパのガス危機に強く煽られて、製品不足に直面する可能性がある。エネルギー価格の高騰により、一部の企業はすでに倒産を宣言したり、生産を削減したりしている。

 「聞いたところによると、この危機はコロナ禍のときよりも、製造業にとって深刻なものになる可能性が高いそうです」とドイツ産業連合のエネルギーおよび気候政策の責任者であるカルシュテン・ロレ氏は、9月23日金曜日、ファイナンシャル・タイムズ紙の取材に答えた。

 ロシアからの天然ガス供給が減少する中、電力不足とエネルギー費用の上昇に対する懸念が高まっているため、ゼワ・リブレッセ・ロータスなどのトイレットペーパーのブランド商品を所有するエシティ社は、すでに価格を18%も引き上げる必要があり、代替燃料による供給源の使用を検討している、と発表している。

 一方、デュッセルドルフに本拠を置く、操業開始1928年のハックル社など他のトイレットペーパー製作会社は破産宣告を出している。その理由として、エネルギー価格の高騰、パルプの価格高騰、および輸送費の高騰により、財政的に事業の遂行が不可能になったためだ、としている。

 「非常に短期間で、電気とガスの価格があまりに急速に高騰したため、これに合わせて迅速に顧客に対応できない、ということです」とハックル社の流通責任者であるカレン・ユング氏は、ロイター通信の取材に答えている。


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 ドイツのハレ経済研究所によると、8月に約718社のドイツ企業が倒産したが、これは前年より26%増加したことになる、という。この数字は、9月には約 25%に留まるが、10 月には33%に上昇する、と予想されている。

 ドイツの製紙業界は現在、オラフ・ショルツ政府にエネルギー価格の上限を制定するよう求めており、それが倒産を止めることができる唯一の策であると主張している。「(エネルギー価格の)上限を設けない限り、倒産の波を止めることはできないと思います」と ハックル社のフォルカー・ユング専務取締役はファイナンシャル・タイムズ紙の取材に答えた。

 一方、製紙業協会のマーティン・クレンゲル副会長は声明を出し、「最優先事項」は「人々に生活必需品であるトイレットペーパーという商品を確実に供給すること」であると述べた。

 ドイツだけでなくEU の多くの国でも、価格は数か月前から急騰している。ドイツ連邦統計局 (Destatis) は今週、同国のエネルギー価格がここ12 か月間で約 139% 、さらに電気料金は174.9%急騰した、と報告した。 

 ドイツ経済は景気後退に向かっており、来年のGDPは0.7% 減少すると予想される、と警告している経済評論家もいる。

英国の国家債務がさらに悪化

<記事原文 寺島先生推薦>

UK sinks deeper into debt
High inflation is driving interest payments to record levels

(英国はさらなる借金地獄に沈んでいる。
高いインフレにより、利払い額が記録的な数値に)

出典:RT

2022年9月24日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月4日



英国ロンドンのオックスフォード通りにある、閉鎖された小売店跡地。2022年9月7日. ©  Mike Kemp / In Pictures via Getty Images


 英国政府の債務利子が記録上最高水準に達したと、国家統計局 (ONS) が今週報告した。

 先月(2022年8月)の支払利息は82億ポンド (92.5億ドル) で、これは2021年8月より15億ポンド (17億ドル) 高く、1997年4月に記録が開始されて以来の最高額であると、ONS は発表した。さらに支払利息額が不安定になっているのは、主にインフレ率の高騰によって引き起こされているものだ、とも発表した。

 英国の年間インフレ率は6月に9.4%に達し、過去40 年間で最高の数値を記録していたが、8月には8.6% にまで下降していた。

 英国政府は8月に、予想のほぼ2倍の額の借り入れを行い、予算責任局が見積っていた60億ポンド (67億ドル) ではなく、118 億ポンド (133 億ドル) を借り入れた。それは、税収入などの収入以上に支出が多かったためだ、とONSは説明した。


関連記事::ポンドが 37 年ぶりの安値に急落

 公営銀行を除いた官業の純債務は、GDPの約96.6% を占めており、前年同期と比較してGDPに占める割合で、1.9%増加している。

 市場は、リズ・トラス首相が発表した、家計と企業向けの一連の支援策が借入額を押し上げ、イングランド銀行が積極的に金利を引き上げることにつながることを懸念している。

 9月、英国ポンドは、同国の経済の不安定さに反応し、ドルに対して1985年以来の最低水準に急落した。

エネルギー危機へのスイスの節電対策

<記事原文 寺島先生推薦>

Swiss hospitals advised to cut power use

The move could help prevent energy rationing in the country in winter, the government says

(スイスの病院が電力消費を減らすよう助言
この動きが冬季のエネルギー配給を減らす一助になる、と政府が発表)

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月3日


© Getty Images / Peter Cade


 エネルギー危機が悪化する中、スイスの医療機関は電気消費量を減らすことを考えるべきである、とスイス連邦国家経済供給局エネルギー部門の責任者、バスティアン・シュワーク氏は述べた。

 「病院は電気やガスの使用量の制限を免除されていますが、どうすれば電気消費量を減らすかについても考慮すべきです」とシュワーク氏は、9月21日水曜日、スイスの新聞社であるノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング社の取材に答えた。

 シュワーク氏はさらに、医薬品産業のような重要な産業においても、生産を大きく削減することなしに、費用削減措置を取ることは可能である、と付け加えた。

 「現在、ほとんど全ての産業において例外が必要とされています。しかしそれは正しいやり方ではありません。むしろ、それぞれの産業が、危機的状況においてできることを考えるべきです」とシュワーク氏は述べ、さらにこう付け加えた。「例えばその中には、勤務時間の削減という策も考えられます。このような措置により、10~20%の電気消費量を削減できるのであれば、使用量の割り当て制度の導入を見送ります」 

 先月のスイス連邦参事会の発表によると、同参事会はスイスでの天然ガスの使用量を2022年10月から2023年3月までの間で、ここ5年間の平均使用量より15%減らすことを求めていく、という。この決定の理由として、この先ロシアからの天然ガスの供給が止まる可能性があることがあげられていた。

関連記事:Switzerland to slash winter energy consumption – media

 スイス当局は、天然ガスと電気の供給が不足した際に起こるエネルギー危機に対する緊急計画を立てている。この計画には、いくつかの段階が設定されていて、市民の意識向上をはかるため、店舗のショーウィンドウの電灯を落としたり、暖房の使用を止めるなどすることによりエネルギー節約の呼び掛けを行う段階から、 エネルギーを多く使う消費者3万人に対して、配電措置を取り、使用量に制限をかける段階までが考慮されている。

EU圏の経済成長率がゼロパーセンになる可能性

<記事原文 寺島先生推薦>

Eurozone economic growth may drop to zero – ECB
Economic output has been suffering due to rising energy costs

(EU圏の経済成長はゼロになる可能性――ヨーロッパ中央銀行の発表
 エネルギー価格の高騰により、経済状況は悪化)

出典:RT

2022年9月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月3日


© Getty Images / Nenad Stojanovic / EyeEm


 EU圏の経済成長が伸び悩み、成長率がゼロにまで落ち込む可能性がある、とヨーロッパ中央銀行(ECB)の副銀行長が、9月26日月曜日、ある会議の席でに語った。
 
 「第3四半期と第4四半期に大幅な減速が見られるため、成長率がゼロに近づく可能性があります」とルイス・デ・ギンドス副銀行長が語ったと、ロイター通信は報じている。

 エネルギー価格の高騰と、ロシアからの天然ガスの輸入停止により、経済生産は苦境に置かれ、暖房が必要になる季節が迫る中、エネルギーの配給危機が生じる危険が高まっている。エネルギー価格の高騰により、EU圏の年間インフレ率は8月には9.1%を記録し、 今月(9月)は9.6%にまで上昇すると見込まれている。これはEU圏において過去になかった高い値だ。

 今月初旬、ヨーロッパ中央銀行は利上げを行ったが、その数値は0.75%というこれまでにないものだった。しかも、つい数週間前にインフレ対策として、 0.5%の利上げを行ったばかりのことだ。 同副銀行長は、この先も更なる利上げが行われることになるとし、10月にも利率の変更が見込まれるという分析のもと、来春までのどの会議でも利上げが決められていくだろう、と語った。

 デ・ギンドス副銀行長は、この先の利上げがどのくらい積極的なものになるかは言及せず、「数値に基づいて」決められると述べるにとどめたが、インフレによる圧力はここ数ヶ月非常に高まっていることを強調した。

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 先週の同行の公式発表によると、ヨーロッパ中央銀行はこの先もインフレに対抗する策を講じ続ける必要がある、というのも経済の減速が消費者価格の引き下げには不十分であるため、とのことだった。

 「市場には、経済の減速がインフレを緩和するという考え方があります。しかし現実はそうはなっていません。何らかの金融政策が取られなければなりません」と同副銀行長は先週語っていた。

「なぜ共和制である我が国がエリザベス女王追悼のため半旗を掲げないといけないのか」フランスの多数の市長からの声 

<記事原文 寺島先生推薦>
French mayors refuse to lower flags for Queen
France should not “make preference” for a foreign monarch, one official declared


(フランスの市長たちが女王のために半旗を掲げる司令を拒否
ある市長は、フランスは外国の君主のために「敬意を示す」べきではないと発言)

出典:RT

2022年9月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月23日


フランスのパリのエリゼ宮殿の上に掲げられたフランス国旗の半旗。2022年9月9日撮影 ©  AFP / Christian Hartmann
 
 フランスの多くの市長が、半旗を掲げることで英国女王エリザベス2世に弔意を示す意向はないと発表している。理由は、君主制の考え方は、フランスの共和制とは相いれないため、ということだ。

 9月8日(木)のエリザベス女王の死去に伴い、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、英国で君主の座に史上最長在位したエリザベス女王に敬意を払った最初の国家元首のうちの一人だった。同大統領はエリザベス女王を「心の女王」と呼び、エリゼ宮殿はその翌日半旗を掲げ、エリザベット・ボルヌ首相は、次の月曜日(9月19日)に予定されている女王の葬儀の際には、市役所などの公共施設もそれに従うように、という指令を出した。
 
 フランスの左翼市長たちの間では、その指令は不人気のようだ。「このような要請は私には信じられないことに思えます」と、フランス社会党所属のヤン・ガルート(Yann Galut)ブルジョ市長は語った。「英国の友人たちの悲しみには敬意を払いますが、市の施設でフランス国旗[の半旗]を掲げるつもりはありません」
 
 「我が国は共和制国家です。それなのに、なぜ外国の君主のために哀悼の意を示さなければいけないのでしょうか?」とガルート市長はフランス3テレビの取材で語っている。
 

関連記事: Free speech campaigners defend anti-monarchy protests
 
 「私はこの指示には従いません」と、左翼政党である「服従しないフランス(La France Insoumise)」党所属のパトリック・プロイジー(Patrick Proisy)ファチェスートゥメスニル市長は語った。「他の国の国家元首が亡くなった時も、同じことをしてきましたか?共和制である我が国が一国の君主であり、とある宗教の教会長である人物に敬意を払っていいのでしょうか?」
 
 さらにプロイジー市長は言葉を続けた。「学校で半旗を掲げることで論理性が保てるでしょうか?学校には、“自由・平等・友愛”という文字が刻まれています。”君主制“ということばほど、”平等“という考え方からかけ離れている概念はありません」
 
 パリ郊外のジュヌヴィリエ市の共産党所属パトリス・ルクレール(Patrice Lecler)市長も、この指令を無視すると宣言したと、タイムズ紙は報じている。

 反旗を翻しているこれらの市長たちが、指令に従わないことで、何らかの罰を受けるかどうかは不明だが、フランス市長協会のフィリップ・ローラン(Philippe Laurent)副会長は、停職処分を受ける可能性があると警告している。しかし「服従しないフランス(La France Insoumise)」党所属のハドリアン・クルーエ(Hadrien Clouet)国会議員が、「そういう事態にはならないだろう、それは、フランスには国旗を降ろすべき状況を規定する法律がないからだ」と述べたことを、テレグラフ紙は報じている。

麻薬摂取疑惑に揺れるフィンランドの若き女性首相を北欧の女性たちが支援

<記事原文 寺島先生推薦>
Finnish PM finds friends in flashmobs

Women in Finland and Denmark are posting videos in support of Sanna Marin after videos of her at a private party were leaked

(フィンランドの首相が、フラッシュ・モブ(前ぶれなく街中やオンライン上で突如おこる運動のこと)での友情を享受

フィンランドとデンマークの女性たちが、私的なパーティでの様子を晒されて苦境に落ちている、サンナ・マリン首相を支援する多くの動画を投稿)

出典:RT

2022年8月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年9月6日


フィンランドのサンナ・マリン首相© Global Look Press / IMAGO / Saara Peltola

 北欧諸国の女性たちがオンライン上のフラッシュ・モブに参加し、フィンランドのサンナ・マリン首相への「連帯」の意思表示を行っている。同首相は、先週私的なパーティでの動画が流出したことで非難の的となっている。

 フィンランドとデンマークの女性たちが、自分たちが踊ったり騒いだりしている動画を#SolidaritywithSannaというタグをつけて、YouTubeなどのソーシャル・メディア上に投稿している。
  世界各国の政治家たちからマリン首相を守ろうという声が上がっている。例えば、豪州のフィオナ・パッテン国会議員は、「フィンランド国民は幸運です」、自国の首相が起こした最悪の事件が「パーティの動画の流出なのだとしたら」と記している。

 マリン首相を支援しようとする声が大きく広がったのは、36歳の同首相の2件の私的な動画が流出したことを受けてのことだ。 一件目の動画は友人たちとのパーティの様子を映したものであり、もう一件は、マリン首相がフィンランドの男性歌手であるオラビ・ウーシビルタ(Olavi Uusivirta)と踊っている様子を映したものだった。



 この動画が物議を醸し出したのは、この動画を見た人々から、マリン首相の振る舞いが一国の主として「相応しくない」と主張する声が上がったからだ。さらには、これらの動画のうちの1件で、後ろでコカインの話をしている声が聞こえていたことを指摘する人もおり、マリン首相が夜遊び中に麻薬を摂取していたのではないかという疑いが生じていた。

 動画が出回った後、マリン首相は法に触れる行為は行っていなかったと主張したと同時に、自身のプライバシーが侵害されたことを嘆いていた。マリン首相の主張によれば、そのパーティは、個人宅で数週間前に開かれたもので、勤務時間外で非公開にしておきたかったものだとのことだ。

 「休みをとって友人たちと過ごしただけです。不法行為は何もしていません」とマリン首相は断言し、行ったことは、「踊って、歌って、友人たちとハグして、アルコールを摂取しただけです」と語った。
さらにその週末には政治的な会合の予定はなかったことも明らかにした。

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 「2022年という年は、政策立案者でも、踊ったり、歌ったり、パーティに行ったりすることが受け入れられる年になればいいのですが」とマリン首相は続けた。「そのことをどう捉えるか[を決めるの]は、有権者が判断すべきことです」。

 しかし、フィンランドの多くの政治家は首相のイメージを損なう可能性があることに懸念の声を上げている。ミッコ・カルナ(Mikko Karna)国会議員は、マリン首相は自主的に薬物検査を受け、その結果を公表すれば、非難される余地は無くなるだろうと語っている。
 
 マリン首相はこの要求は「不当である」としながらも、「自分の身を法的に守るため」に薬物検査を既に受けており、その結果は約1週間後に出る、と語った。

(訳注:その後の報道で、この検査結果は陰性だったことがわかっています)

新型コロナは英国の大学制度の致命的欠陥をさらけ出し、取り返しのつかない崩壊を招いている

<記事原文 寺島先生推薦>Covid-19 has exposed the fatal flaws in Britain’s university system and hastened its inevitable decline
リサ・マッカンジー著

Dr Lisa McKenzie is a working-class academic. She grew up in a coal-mining town in Nottinghamshire and became politicized through the 1984 miners’ strike with her family. At 31, she went to the University of Nottingham and did an undergraduate degree in sociology. Dr McKenzie lectures in sociology at the University of Durham and is the author of ‘Getting By: Estates, Class and Culture in Austerity Britain.’ She’s a political activist, writer and thinker. Follow her on Twitter @redrumlisa.

RT 論説面

2021年12月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年1月30日




 今回のパンデミックのせいで、大学生たちはうつ病になり、大学のスタッフは燃え尽き症候群になってしまった。そして今回のパンデミックスか明らかにしたのは、高等教育制度における無数の課題だ。私自身大学講師の1人ではあるが、こう言わざるを得なくなっている。「この制度は全く崩壊の危機にある」と。

 今学期の授業日も残すところあと少しになったが、英国での大学講師としてのキャリアを10年以上持つ私からしても、今年度ほどキツい1年はなかった。

 9月以来、大学も大学生も、ニュースのネタから外されることはなかった。9月には、学生のあいだでのCovid-19の感染率が上がり続けていることがニュースになっていた。それから10月になると、ニュースの話題は、学生間の感染率の高さが、大学のある都市の人々に広がっていったことに移った。当時私はある記事を書いたのだが、その内容は、「感染が広がったことについて、頼むから学生たちを責めないでください。責められるべきなのは大学と政府です。両社の対応が悪く、危機に対する見通しも持てていなかったのですから」というものだった。

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 そして学期末を迎えた今、学生たちの精神状態についての新しい調査結果によれば、多くの学生たちはうつ病に苦しんでいることがわかっている。今私たちの頭をよぎるのは、マンチェスター大学で起こった、学生たちが学生寮に閉じ込められたという記事の見出しだ。さらにノッティンガムでは、学生たちに対して何千ポンドもの罰金が課された、という事件もだ。国のあちこちで学生たちが、自分たちは刑務所に入れられるかもしれないと噂している。というのも、大学が警察署を構内に入れて、立ち入り禁止の大学構内へ入ろうとする大学生たちを効果的に捕まえようとしているからだ。

  想像にかたくないことだが、家族から離れて寮に一人閉じ込められている学生たちも、自宅で監禁状態になって必要な機器が不足している中、なんとかオンライ授業を受けようと苦心している学生たちも、心の中は不安でいっぱいのはずだ。

 国中の同業者たちからも聞いたし、私自身実際に目にしたことでもあるのだが、自分のスマホを使ってオンライン授業を受けようとしている学生たちもいるようだ。というのも、彼らはラップトップのpcを持っていなかったり、大学からの学習ファイルを完全に受け取れる機器を持っていないからだ。学生支援センターも、都市封鎖措置やCOVIDによってもたらされたこれまでになかった課題に対応できる十分な資材を持っていない。

 大学の学習支援センターのサイトをひとつでも見れば、大学当局も苦心していることが一目で分かる。私たちは、学習に関する支援や、精神的な支えが必要だという学生たちからの声に応えることに潰されそうになっている。大袈裟な話でも何でもなくて、本当にみんなが燃え尽きそうになっている。今私たちに必要なのは、英国市民6000万人のためのワクチンだけではなくて、6000万人の精神状態を支える糸なのだ。

 こんなときに、大学で働いているすべての労働者たちに、大学の副総長から、これまでの苦労に感謝の意を伝えるメールが届くそうだ。ごめんなさい。はっきり言おう。今欲しいのは「ありがとう」じゃない。そんな言葉をもらっても嬉しくないし、それでは全く足りない。

 今明らかになっている課題は、初めからあったものだ。長年にわたり蓄積されてきたものだ。大学側は、大学が行う事業を、物を売る行為と同じだと考えているのだ。何百万ポンドも使って販売戦略を行い、「ビジネス」をめぐって世界中の大学と競争している。(申し訳ないが、ここでいうビジネスとは学生たちのことだ)。

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 大学の所在地の地方公共団体も学生から得られる収入に大きく依存するようになってきている。賃貸住宅業者も、いや近年では国際的に展開している不動産開発業者でさえも、世界各国から来る学生たちのおかげで大きな利益を得ている。このような構造だからこそ、学生たちも、大学当局で働く人々も、学生支援に関わる人たちも、上手く利用されているのだ。大学は今やハゲタカ資本主義が作り出した現代における「闇の悪魔の工場」に姿を変え始めたのだ。もはや大学はかつての「学び舎」ではない。

(訳注:「闇の悪魔の工場」とは17世紀の詩人ウィリアム・ブレイクの“ミルトン”という詩の一節。この詩は英国の愛国歌として親しまれている)


 何十億ドルもかけてこしらえたきらきらした大学キャンパスは17世紀のウィリアム・ブレイクの時代の「闇の悪魔の工場」には見えない。「ショッピング・モール」に見える。今その大学は使われず、構内は空っぽで、情け容赦ない借金が、学生たちや大学で働く人々のクビの周りにかけられている。ここ英国では、卒業生たちは、学生時代に借りた3万ポンド強のローンの頭金が返せるくらい稼げる会社に就職できるよう苦労しているのだ。こんなむだにぴかぴかした大学の建物の建築費の支払いが、国民一人一人に回されているのだ。というのも、きっと大学は今回の危機で生じた借金返済の救助を国に頼むだろうからだ。

  今回のパンデミックの結果明らかになったのは、すでに大学内部でくすぶっていた課題だけではない。もちろんそんな課題のせいで大学は今にも崩壊しようとしているのだが、もっと大事なことがある。それは、教育は公共の福祉として国民に提供されるべきもののはずだということだ。仕事を得るために証明書を授与する機関ではないのだ。

 昨年、私は労働組合の一員として、14日間というこれまでにない日数をかけて行われたストライキに参加した。そのストライキで要求したのは、給料や労働条件の改善であり、高等教育の本質がますます危うい状況に置かれていることについての抗議するためだった。その結果、私のキャリアに傷がついてしまった。この10年間で私たちが目にしてきたのは、大学当局は物価の上昇や、政府からの補助金の減額や、想像できないくらいにふくれあがった学生が負っている借金などに苦しんでいるのに、大学のキャンパスは五つ星ホテルのように改装され、副総長や経営者は多額の報酬を受け取っているという構図だ。いっぽう、大学の警備員や清掃職員や食堂で働いている人々は、雀の涙のような給料でかつかつの生活を強いられている。

 Covid危機が私たちに示したのは以下の3点だ。
 ①私たちの社会が実はどれほど病んだ状態にあるのか
 ②私たちが公共の福祉として受け取るべきものが何とわずかなものか
そして、
 ③市場資本主義に身を任せれば、どれだけ私たちの社会基盤が脆弱なものになるのか
だ。

 

EUよ、我々には問題が生じた。共産主義が崩壊して30年、東欧は自由民主主義に対する信頼を失いつつある。


<記事原文 寺島先生推薦>Brussels, we got a problem! 30 years after collapse of communism, Eastern Europe is losing its faith in Liberal Democracy


RT 論説面 2020年6月27日

ロバート・ブリッジ

Robert Bridge is an American writer and journalist. He is the author of the book, 'Midnight in the American Empire,' How Corporations and Their Political Servants are Destroying the American Dream. @Robert_Bridge

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年8月10日

 

 新しい政治体制を始めてから30年、中欧と東欧の国々は今支配者層やメディアや自由民主主義に疑いの声を上げている。これらの国々は以前のようなより権威的な政治体制に戻るのだろうか?

 1991年のソ連崩壊を受けて、以前のワルシャワ条約機構加盟国は自由民主主義という星にむかって歩みを進めた。それは、共産主義であれば手に入らない自由や解放が得られると期待したからだ。そして、間違いなく、多くの人は新しい政治体制からたしかな利益を得た。しかし、二つの全く違う政治体制を体験した中欧と東欧の国々の大多数の国民から見ると、おそらく自由民主主義体制の負の遺産の方が目立つようである。

 グローバル・セックという調査会社が行った世論調査の結果、CEE(中・東欧)10カ国(バルト三国、オーストリア、ポーランド、チェコ共和国、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、ルーマニア)の市民が、それぞれの国の自由民主主義体制をどう感じているかが明らかになった。その結果はかんばしいものではなかった。

 自由民主主義とそれに対する不満
 まずは民主主義体制に対する市民の声を見てみよう。大多数の市民は自由民主主義体制の完全な普通選挙や複数政党制については、肯定的な意見を持っている。一方、それぞれの国で民主主義が機能しているかについて満足しているのはたった40%だった。オーストリア市民(今回の調査の中で唯一元共産主義国家ではない国)が一番高い86%という満足度を示したが、他の国では、残りの国々の結果を見ると、ブルガリアはたったの18%の満足度だった。残り8カ国もすべて5割を切っていた。

 特筆すべきは、この調査が明らかにしていることが、回答者が自由民主主義体制をどう見ているかと、回答者の生活における幸福感とが強く相関した結果がでているということだ。平均すると自由民主主義体制を支持すると答えた回答者のうち83%が自分の生活に満足している、という結果が出ている。この結果からいえることは、資本主義にどっぷりつかり、自由民主主義体制のおかげで利益を得る材料を得ることが出来た人にとっては、彼らが享受している自由民主主義体制がもつ欠点に目をつぶったり、欠点が目に入らないかもしれないということだ。

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 しかし、政党に対する信頼についての質問の結果は、そんなによい結果ではなかった。平均して72%以上の人が自国の政体を信頼しておらず、CEE諸国のほとんどの国々で、伝統的な政党に投票しようという熱意は下がっていることが分かった。国民の態度がそうなっている理由は、それぞれの国によって様々であり、その理由は、ある国においては、EUとの長年の不和が影響しているのかもしれない。

 例を挙げると、ポーランドの「法と正義」党は最近欧州司法裁判所から怒りを買った。それはポーランド政府が、政府に反対する判事を懲戒処分に出来るという「尋常でない権力」を最高裁に与えたことに対してだった。EUの言い分は、このような動きはEUの民主主義路線とは相容れない、とのことだった。ポーランド政府の言い分は、平たく言えば「放っておいてくれ!」だった。

 EUが見せたもうひとつの力技は、欧州議会がハンガリーに制裁を加えたことだ。ハンガリーがNGOやメディアを厳罰に処したことが理由だと報じられている。国家主義政党である右派フィデス党の党首であるハンガリー政府のオルバーン・ヴィクトル首相は、EUのこの措置に対して「せこい報復だ」と吐き捨てた。彼の言い分は、不法移民がハンガリーを経由して西欧に抜けるのを遮ろうとしたことに対する制裁だ、とのことだった。

 この種の小競り合いが頻繁におこることで、親EU派陣営とEU懐疑派陣営の間の摩擦を増やすことになっている。そして、EU諸国はEUの民主主義推進政策に同意することに疑問を持たざるを得なくなっている。というのも、EUのやり方が日に日に民主的でなくなっているように見えるからだ。実際のところ、EUの持つこのような否定的な一面こそが、英国民がEUを離脱することにつながったといえる。



移民危機がさらに不信を煽っている
 強調すべきことは、不法移民がCEE諸国にとっての主要な関心事になっているということだ。そして、今回世論調査が行われた国々の中で、オーストリアだけが最近の移民危機の影響を直接受けているのだが、その結果によると、移民受け入れを拒否し続けている国々よりも、オーストリアの方が移民に対する懸念は少なかった。この世論調査をまとめた執筆者たちは、反移民政策をとっているCEE諸国こそが自国を「より閉鎖的で不寛容な国にしている」と結論づけている。

 皮肉にもこんな結論を出すということが、今多くの東欧諸国で行き渡っている政治に対する冷めた態度の説明になってしまうのだ。世論調査をまとめた執筆者たちが見ようとしていないのは、移民政策は各国で自由に決定すべきかどうかという根本的な問題だ。そんなこともなしに、「不寛容な国」だと決めつけているところに問題がある。結局のところ、すべてのCEE諸国がオーストリアのように移民の流入に対応できるような受け入れ体制をもっているわけではない、ということだ。

 もうひとつ考えるべきなのは、今見るべきなのはスウェーデンにおける移民政策だけだ、ということだ。例を挙げると、スウェーデンには、いわゆる「立ち入り禁止区域」となっている移民者の居住地が散在する。規制なしに移民を受け入れるとこのような高い代償をはらうことになってしまうのだ。このような何百万人もの移民者を自由にうけいれた失敗例から学ばずに、結局は移民者を地域に同化させることがほとんどできないままになっているEUの失政が、自由民主主義体制に対する猜疑心をあおることになっているのだ。

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Create chaos, welcome refugees, pay millions to US firm to process applications, pay refugees to go home. Well done, Europe!

メディアによる操作
 世論調査で報道分野も激しく批判されていることは別に驚くようなことではない。世論調査が行われた国々の中で、ラトビアだけが、大手メディアを信頼していると答えた回答者が主流派だった。他国では、回答者たちは、国家や少数の支配者層がニュースや情報を裏で操作していることを指摘していた。総合的に考えると、メディアに対する信頼の欠如のため、多くの人々は、ニュースや情報を得るために「代替メディア」を探すことを強いられていることが分かった。現状を把握するため、いわゆる「陰謀論」に手を伸ばす人もいるようだ。

 この世論調査は新型コロナウイルス流行蔓延中に行われたため、調査の結果、もう一つの頭が痛くなる現状が明らかになったとも言える。それは、回答者の半数以上が「身の安全を守るという名の下に自由を犠牲にする」ことを肯定していることだ。 これはゆゆしき問題である。というのも、今も昔も、自由民主主義の肝心要は、自由や自己表現の尊重であるからだ。しかし今日、自分の身の安全を気にする人がとても多くなっていて、自由民主主義は自分の身の安全の妨げになる、と考える人が多くなっているようだ。

 西側諸国の政府が、中欧や東欧で広まっている雰囲気を懸念しているのには、もっともな理由がある。それは、西側の大多数の資本主義諸国も、自国でも同様の厳しい問題に苦しめられているからだ。英国がEUから離脱しようとしているのも、米国が人種間の対立を鎮圧しようとしているのも、西側諸国が手に負えない状況に陥っている現れなのかもしれない。

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 当然の事ながら、このような社会の雰囲気は「自由民主主義」とういう名の政治体制に傷をつける。そして西側諸国の中には、自国の問題を解決する際、今までよりも非民主的な政治手法を試さざるを得なくなる国々も出てくるかもしれない。考えて見てほしい。例えば、今米国で起こっている抗議活動のせいでいくつかの都市では警察を解体しようとしているところも実際出てきている。避けられないことだが、このような思いもつかないような実験は、きっと最終的には失敗する。そして、政府は状況を打破するために、おそらく軍や戒厳令を使うことになるだろう。無法地帯で苦しんでいる市民たち、(実際もう既に ワシントン州シアトル市ではそのようになっているのだが)、 人々は諸手を挙げてこんな強行的な解決方法を歓迎するだろう。市民の安全と平和を守る手段であるならばなんでもよくなるだろうから。

 今月(7月)、元ロシア大使のマイケル・マックフォール氏はワシントン・ポスト紙でこう書いた。「西側諸国が政治体制上の一番の敵国であると目している中国が、独裁的で政府主導の政治体制で発展を遂げ、いまや世界のトップに立とうとしているが、中国のやり方が、自由民主主義とは違う選択肢になっている」、と。多くの西側諸国が困難な課題に直面している中で、 中国のような政治体制に急激に変革しようという国々が出てくるように思われるのだ。もちろん、そのような変革が行われいような努力は払われるであろうが。

 結論として、自由民主主義は本当に市民の利益に奉仕するものであり、特権階級として知られる一部の人たちに奉仕するものではないという信念があるならCEE諸国の市民たちはきっと安全でいられる。しかし、この自由民主主義政治体制は、社会のピラミッドの頂上を跨いで座っている人たちだけにしか奉仕しないことが、ますますはっきりしてきている。例を挙げると、何百万人もの難民たちがヨーロッパ大陸に流入することで、利益を得るのは誰だろう?ブリュッセルのEU本部が、離れたところから直接手を下さない方法で、各国への支配力を強める政治体制で得をするのは誰だろう?ただのうわべだけの変革ではない本当の変革が、現在自由民主主義政治体制を管理している西側機構におこらない限り、この後の未来に起こることは世論調査の結果が変わることではない。大規模な抗議活動が街中で発生する、そんな未来だろう。

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